衆議院

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第37号 平成27年8月26日(水曜日)

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平成二十七年八月二十六日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 奥野 信亮君

   理事 安藤  裕君 理事 井野 俊郎君

   理事 伊藤 忠彦君 理事 盛山 正仁君

   理事 山下 貴司君 理事 山尾志桜里君

   理事 井出 庸生君 理事 漆原 良夫君

      大塚  拓君    門  博文君

      門山 宏哲君    金子万寿夫君

      今野 智博君    佐々木 紀君

      白須賀貴樹君    辻  清人君

      冨樫 博之君    藤原  崇君

      古田 圭一君    細田 健一君

      宮川 典子君    宮崎 謙介君

      宮澤 博行君    宮路 拓馬君

      宗清 皇一君    村井 英樹君

      簗  和生君    山口  壯君

      若狭  勝君    黒岩 宇洋君

      階   猛君    鈴木 貴子君

      柚木 道義君    吉村 洋文君

      大口 善徳君    國重  徹君

      清水 忠史君    畑野 君枝君

      上西小百合君

    …………………………………

   法務大臣         上川 陽子君

   法務副大臣        葉梨 康弘君

   法務大臣政務官      大塚  拓君

   政府参考人

   (警察庁長官官房総括審議官)           村田  隆君

   政府参考人

   (警察庁刑事局長)    三浦 正充君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    林  眞琴君

   政府参考人

   (法務省矯正局長)    小川 新二君

   政府参考人

   (法務省入国管理局長)  井上  宏君

   法務委員会専門員     矢部 明宏君

    ―――――――――――――

委員の異動

八月二十六日

 辞任         補欠選任

  門  博文君     金子万寿夫君

  菅家 一郎君     宗清 皇一君

  今野 智博君     白須賀貴樹君

  宮崎 謙介君     村井 英樹君

  重徳 和彦君     吉村 洋文君

同日

 辞任         補欠選任

  金子万寿夫君     門  博文君

  白須賀貴樹君     今野 智博君

  宗清 皇一君     佐々木 紀君

  村井 英樹君     細田 健一君

  吉村 洋文君     重徳 和彦君

同日

 辞任         補欠選任

  佐々木 紀君     菅家 一郎君

  細田 健一君     宮崎 謙介君

    ―――――――――――――

八月二十六日

 税務訴訟での裁判所の公平性に関する請願(松本文明君紹介)(第三九八八号)

 登録免許税の不当課税に関する請願(松本文明君紹介)(第三九八九号)

 裁判所の人的・物的充実に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第四〇六一号)

 同(池内さおり君紹介)(第四〇六二号)

 同(梅村さえこ君紹介)(第四〇六三号)

 同(大平喜信君紹介)(第四〇六四号)

 同(笠井亮君紹介)(第四〇六五号)

 同(穀田恵二君紹介)(第四〇六六号)

 同(斉藤和子君紹介)(第四〇六七号)

 同(志位和夫君紹介)(第四〇六八号)

 同(清水忠史君紹介)(第四〇六九号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第四〇七〇号)

 同(島津幸広君紹介)(第四〇七一号)

 同(田村貴昭君紹介)(第四〇七二号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第四〇七三号)

 同(畑野君枝君紹介)(第四〇七四号)

 同(畠山和也君紹介)(第四〇七五号)

 同(藤野保史君紹介)(第四〇七六号)

 同(堀内照文君紹介)(第四〇七七号)

 同(真島省三君紹介)(第四〇七八号)

 同(宮本岳志君紹介)(第四〇七九号)

 同(宮本徹君紹介)(第四〇八〇号)

 同(本村伸子君紹介)(第四〇八一号)

 選択的夫婦別姓制度導入の民法改正を求めることに関する請願(清水忠史君紹介)(第四一二九号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 矯正医官の兼業及び勤務時間の特例等に関する法律案(内閣提出第六〇号)(参議院送付)


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     ――――◇―――――

奥野委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、参議院送付、矯正医官の兼業及び勤務時間の特例等に関する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として警察庁長官官房総括審議官村田隆君、警察庁刑事局長三浦正充君、法務省刑事局長林眞琴君、法務省矯正局長小川新二君及び法務省入国管理局長井上宏君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

奥野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

奥野委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。門博文君。

門委員 おはようございます。自由民主党の門博文でございます。

 このたびは、質問の機会を頂戴いたしまして、まことにありがとうございます。また、刑事訴訟法の濃密な審議の後の、お盆を挟んでの、次の法案であります本法案の審議のトップバッターとして質問させていただきますので、よろしくお願いいたします。

 さて、本題のこの法案の質問に入る前に、お許しを得て、少し別のテーマについて冒頭質問をさせていただきたいと思います。入国管理についてであります。

 お手元に資料をお配りいたしました。

 先日、皆さんも御承知のように、観光庁より、本年一月から七月までの訪日外国人旅行客の状況が発表されました。一月から七月の七カ月間で、一千万人を超え、一千百六万人の来日があったということであります。本年末までには一千八百万人を超える勢いであるということもあわせて報告されております。

 現在、政府は、訪日外国人に関して、東京オリンピックの年、すなわち二〇二〇年までに二千万人、そして十年後の二〇三〇年には三千万人の高みを目指すという目標を掲げて観光政策に取り組んでおります。しかし、今回の報告に触れますと、いずれも上書き、前倒しをしなければならない状況が目の前に到来しているという感じがいたします。これは、地方創生を考えますと、ありがたく、大変うれしい悲鳴でもあります。

 そこで、この件に関して、法務省が大きく関係する、入国管理局の所管される入国審査業務、いわゆるCIQのIの部分ですけれども、このことについて冒頭少し御質問をさせていただきたいと思います。

 先日、私の地元にあります関西国際空港の関係者から、外国人旅行客の入国審査に極めて長時間を要して大変苦労しているというお話がありました。今は、法務省の方も十分対応していただいて、随分改善されたということでしたけれども、聞くところによりますと、最長三時間待たされたというようなお客様からのクレームもあったようであります。

 私たちが海外に出向いて入国審査場で三時間も待たされるようなことに遭遇するとすれば、待たされた側の心情というのはおのずと察しがつくということだと思うんですけれども、これでは、おもてなしの国を標榜している国と言えないのではないかなというふうに思います。

 お盆前にも、私も、関空の現場に御案内いただきまして、現場を見させていただきました。ちょうど入国のピークを迎える少し前の時間帯ではありましたけれども、それでも、私たちの前には入国審査を待つ外国人の方々が皆さん列をなしまして、この方々が最終入国審査を終えるのに大体どれぐらいかかりますかと言いますと、三十分から四十分はお待ちいただかなければならないということでありました。

 そして、十月には国慶節という中国の休日がありまして、中国周辺からの旅行客もさらに増加するということが予測をされております。

 そこで、入国管理局から、このあたりの現状把握、今改善に取り組んでいらっしゃる点、そしてまた、将来にわたってどういう手だてを考えていただいているのか、冒頭お答えをいただけたらと。お願いします。

井上政府参考人 近年、関西空港におきましては、外国人の入国者数が急増してございます。

 このような中、法務省といたしましては、入国審査の待ち時間を極力短くすべく、効率的な審査体制の構築、増員等々さまざまな取り組みを行ってきたところでございますが、最近では平成二十二年が待ち時間が非常に長くて、そのころ三十八分だったんですが、昨年までは、かなり短縮して、平均二十七分まで縮めることができておったところでございます。

 しかしながら、本年一月から七月まで、外国人入国者数が昨年同期比で約六〇%と非常な勢いで増加してございまして、これに伴って審査待ち時間も大変長時間化しておるのが実情でございます。

 ただいま、三時間待たされたというクレームがあったとの御指摘がございましたが、当局の調査では、一応、一番長かった日が四月にございまして、八十七分ということでございまして、ちょっと数字が違いますが、いずれにしても、一月から七月まで平均すると最長待ち時間が三十六分に達しているということで、大変長くなっているということは遺憾なことでございます。

 観光立国の実現に向けまして、出入国審査のさらなる迅速化、円滑化は非常に重要でありまして、とりわけ、御指摘にあったような関西空港の現状を踏まえると、審査場の混雑緩和に向けた取り組みは急務であると認識してございます。

 そこで、関西空港における人的体制の整備といたしましては、まず、平成二十七年度におきまして入国審査官三十九人の増員が措置されております上、本年七月には、いわゆる緊急増員といたしまして、関西空港等に機動的に赴いて審査を行う機動的な要員として入国審査官十人の増配置をしておるところでございます。

 引き続き、関係機関の協力も得つつ、審査ブースの整備、さらにそれに伴う審査官、さらには審査場内での各種案内や補助を行う体制の充実など、人的、物的体制の強化を進めていくとともに、より効率的な審査体制を工夫するなどいたしまして審査待ち時間の短縮に極力努めてまいる所存でございます。

門委員 ありがとうございました。

 今御答弁いただいたように、いろいろお取り組みをいただいているということですけれども、今起こっていることは現実が予想を大きく超えていこうとしていることでありますので、私が申し上げたいのは、今も十分手だてをしていただいていますけれども、ぜひともそれ以上の十二分な手だてをしていただきたいと思いますし、また、ここにいらっしゃる委員の皆さんの御理解、御協力も得て、さらなる予算の獲得、さらなる人員の獲得もしていかなければならないというふうに思っております。

 それでは、本題の方の質問に入らせていただきます。

 矯正医官が不足してその定員が大幅に満たされていない状況が続いており、これを改善するために本法案が提出されました。私は、この法案に賛成をし、一刻も早く現場の窮状を改善しなければならないと感じております。その上で質問させていただきたいと思います。

 本法案の骨子は、一つ目は、矯正医官の兼業の特例ということで、兼業許可の弾力的運用が掲げられております。また、二つ目には、勤務時間の弾力化、いわゆるフレックスタイム制を適用し、勤務時間の見直しや、それを生かして外部での研修などに参加しやすい環境をつくるということとなっております。

 兼業を認めることやフレックスタイム制の導入、新しい試みを取り入れていただくのは大変結構なことだと思うのですが、一方、これによって逆に矯正施設内での通常業務に支障が生じるおそれはないか、そういうふうな心配も頭の中をよぎります。

 取り越し苦労かもわかりませんけれども、このあたりの手だてについてお考えがあれば、お答えをいただきたいと思います。

小川政府参考人 お尋ねをいただきました、本法律案における、まず兼業の許可に関する特例でございますけれども、医師としての能力の維持向上に資する診療を行う兼業につきまして、内閣官房令、法務省令で定めるところにより、法務大臣の承認を受けることにより可能とするものでございます。

 その内容につきましてはこれから検討することになりますけれども、具体的には、矯正施設の医療に支障が生じない範囲内で、兼業による心身の著しい疲労のため職務遂行上その能率に悪影響を与えるおそれがない場合であることなどを条件に法務大臣の承認を与えることを想定しております。

 また、本法律案におけるフレックスタイム制についてでありますが、矯正医官について、公務能率の向上に資すると認められる場合に、人事院規則で定める範囲内で、矯正医官の申告を経て、勤務時間を割り振ることができるようにするものでございます。

 この人事院規則の内容につきましても今後検討していくことになりますけれども、具体的には、矯正施設内での被収容者の診療時間が十分に確保できるよう、平日昼間の一定の時間をいわゆるコアタイムとして勤務時間を割り振らなければならないこととすることなどを想定しております。

 このように、本法律案は、通常業務に支障を生じさせるような兼業の承認や勤務時間の割り振りを認めるものではございませんので、実際の運用においても、御指摘のような懸念がないように運用してまいりたいと考えております。

門委員 ありがとうございました。

 ぜひ通常の業務に支障を来さないように、そしてまた、新しい試みというのは、私もいろいろ民間会社で経験がありますけれども、これがいいと思ってやったらいろいろ支障を来したりとか、いろいろなことがあると思いますし、また、矯正施設ごとにそれぞれの特性もあると思いますので、もしこの法案が成立してこの運用が始まったときに、そういうところは、ぜひとも柔軟に対応できる範囲は対応していただいて、通常業務に支障を来さないというような体制づくりをしていっていただきたいと思います。

 次に移らせていただきます。

 私は、今回この質問をさせていただくに当たりまして、地元の和歌山に和歌山刑務所がありますので、そちらに見学、そしてまた意見を伺いに行ってまいりました。

 幸い、和歌山刑務所は、矯正医官の定員が一名で、現在は一名が御勤務いただいておりまして、その点では充足しているということでありました。

 しかしながら、一人の内科の常勤医師が矯正医官として勤務していただいているんですけれども、五百名を超える女子受刑者、しかも、二十四時間、三百六十五日、表現が適切かどうかわかりませんけれども、滞在をしております。刑務所内で医療を担っているこの一人の矯正医官の肩にのしかかっているいろいろなものというのは大変なものであるのかなと感じました。

 今回は常勤医官の確保のための特例法でありますけれども、矯正施設内の医療体制においてはいろいろな課題もあるということも聞かせていただきました。

 例えば、外部の医療機関に受刑者を通院で受診させる場合、当然ながら、刑務官が同行しなければなりません。そしてまた、さらには、入院をさせる必要があった場合、交代で、泊まりのシフトで三人ずつ付き添うということも伺いました。このような場合、通常の刑務所内の勤務シフトの中に大きな負担が生じるということも言われておりました。

 このように、刑務所、矯正施設内の医療体制については、まだまだ改善をしていかなければならない点がたくさんあると思います。

 この点で、地域の医療との連携という観点から本法案の意義としてどういうものが考えられるか、また、矯正施設の近くにある医療機関から非常勤の勤務医そしてまた嘱託という形で医師を派遣していただくことなどもあわせて、いろいろなことがまだこれから考えられると思いますけれども、この点についても御見解をお伺いしたいと思います。

小川政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のありましたように、矯正施設におきましては、地域の医療機関から矯正施設に医師を派遣してもらったり、また、矯正施設内で対応することが困難な患者が発生した場合等に地域の医療機関の協力を得て治療を実施するなど、現在も地域の医療機関の支援を受けている状況にございまして、地域医療との連携が不可欠であるというふうに認識をしております。

 他方、多くの矯正施設は、医師や医療機関の少ない地域に立地しているのも事実でございまして、そのような地域そのものも、深刻な医師不足の問題を抱えているところがあるというふうに承知しております。

 本法律案におきまして、矯正医官が地域の医療機関で医療業務に従事することが柔軟に行えるようになりますれば、地域の医療機関から矯正施設に医師を派遣してもらうだけでなく、矯正医官が地域医療に貢献することも可能となります。そうしますと、双方の協力による連携を一層強化することができるものと期待をしております。

 次に、非常勤医師あるいは嘱託医師につきましては、これまでも、地域の医療機関等の協力を得て、常勤医師であります矯正医官が配置されていない施設のみならず、矯正医官がいる施設を含めて、多くの矯正施設において医療需要に対応するために配置してきたところでございます。

 矯正医官の確保は喫緊の課題でございますけれども、常勤医師のみで医療需要を満たすことは困難でありますので、非常勤医師、嘱託医師等を確保することも重要と考えております。こうした点も踏まえて、地域医療との一層の連携強化に努めてまいりたいと考えております。

門委員 ありがとうございました。

 ぜひ、刑務所、矯正施設の中だけということでなくて、地域の医療機関との連携をとって、継続的な仕組みづくりを各矯正施設でつくっていっていただきたいと思います。

 それでは、次の質問に移らせていただきます。

 本法案の内容には含まれておりませんけれども、通常、例えば待遇の改善といいますと、やはり給与のことがまず第一義的に考えられるんですけれども、この給与の改善という点で、矯正施設の矯正医官の給与については民間より少ないというふうに承知しております。この点、給与の改善等も必要じゃないかと思うんですけれども、この点はいかがでありましょうか。

小川政府参考人 委員御指摘のように、矯正医官と民間医療機関の医師の給与水準には格差があるところだというふうに認識しております。

 具体的に申し上げますと、平均給与月額で比較いたしまして、平成二十六年の国家公務員の給与の実態調査では、矯正医官は、平均年齢五十・四歳で八十一万円余りでございます。他方、民間医療機関の医師の場合には、平均年齢四十二・三歳の医師で八十五万六千円余りでございますし、医科長になりますと百十三万円余りということで、かなりの開きがあるのが実情でございます。こういったことが矯正医官不足の原因の一つとなっていることにつきましては、矯正施設の医療の在り方に関する報告書でも指摘されているところでございます。

 これまでも、人事院等には改善に取り組んでいただいてきたところでございますけれども、今後も、法務省として必要と考える給与改善の要望等を行ってまいりたいと考えております。

門委員 公務員の給与ですから、ほかとのバランスとかいろいろなこともあると思いますけれども、このあたりも、今回の法律で改善する部分と別のことになりますけれども、絶えずそういうところも重視をしていただいて、今後とも、そういうことに対しても、配慮ができる範囲で対応することができればぜひ取り組んでいただきたいと思います。

 あと、今回は法案の審議ということですけれども、この矯正医官の定員を埋めるべく取り組んでいただいている点で、法整備以外のことでお取り組みの点がありましたら、ちょっと端的にお聞かせいただきたいと思います。

小川政府参考人 本法律案の整備以外における矯正医官の待遇改善のための取り組みといたしましては、先ほど給与の改善要望につきましては御説明いたしましたけれども、そのほかに、医療スタッフの増配置、あるいは医療機器の整備といった執務環境の改善などが挙げられます。

 また、矯正医官確保のための取り組みといたしましては、矯正医療の重要性等に対する広報啓発活動の推進、また、定年年齢の引き上げの検討及び任期つき採用の活用、さらに、医学部生に対するリクルートの強化、推進を図ることとしております。

 このため、平成二十七年度の予算におきましては、看護師七人、薬剤師六人、理学療法士四人及び臨床工学技士二人を増員し、医療スタッフの充実を図っておりますほか、医療機器の更新経費を計上しております。また、矯正医官広報経費を計上しておりますし、さらに、矯正医官修学資金を月額五万四千円から十五万円に増額するなどの措置を講じているところでございます。

 このように、本法律案以外の施策とあわせて総合的に取り組むことが必要と考えておりますので、引き続き矯正医官の人材確保に努力してまいりたいと考えております。

門委員 ありがとうございました。今の項目も含めて、ぜひお取り組みをいただきたいと思います。

 それでは、最後の質問をさせていただきたいんですけれども、これもちょっと本題から外れるんですが、和歌山刑務所に伺ったのは、日付でいいますと七月の二十七日で、大変暑い日でありました。和歌山刑務所は、五百名の定員に対して現在五百七十名ということで、過剰収容となっております。一人部屋に二人、そして六人部屋に八人というような部屋もありまして、当然ながら冷房設備はなく、蒸し風呂状態の中、押し合いへし合い就寝している状況が容易に想像できました。

 矯正施設内の過酷な環境は、これもいたし方ないのかと思いますけれども、そんな折、七月の三十一日、翌八月一日に、私の選挙区であります、同じ和歌山市内にあります大阪刑務所の丸の内拘置支所という施設で、勾留中の男性被告らが相次いで熱中症の症状で緊急搬送されるという事態が発生しました。その結果、一人が死亡、二人が重体となる事故に至りました。

 矯正施設という性質上、通常の生活空間に比べて過酷な状況も当然ということでしょうが、このように、命を失う、ないしは失いかねない状況が発生したことは、大変問題であると思います。さまざまな考え方があるのは承知しておりますけれども、このような設備面の原因で矯正施設で人命が失われたということは、施設のあり方や施設環境の指針を改めて検証すべきではないかというふうに思っております。

 このことに鑑みまして、当局の御見解をお伺いしたいと思います。

奥野委員長 最後の質問ですね。(門委員「はい」と呼ぶ)総じて大臣から、いろいろと、今の御指摘等を含めて御回答願います。

 上川大臣。

上川国務大臣 委員が、御質問をするに先駆けて和歌山の刑務所の方に視察に行っていただき、また、医療の現場につきましても、事実に対して、大変厳しい状況にあるということを把握していただいた上での御質問ということで、大変ありがたく思っているところでございます。

 今の熱中症の件につきましては、年々猛暑が続くという状況の中で、やはり命を預かっているということでございますので、それに対して、これまでの取り組みで十分だったのか、そして、さらにこれからも猛暑が続く、そうした年々の厳しい状況を踏まえた形でいきますと、さらに検討すべきことはないかどうかということについて真摯に受けとめて、こうした事態が二度と起こらないようにしていくように、こういう指示をしたところでございます。

 ただいまの御指摘、大変重く受けとめているところでございます。

門委員 ありがとうございました。

 お亡くなりになった方の御冥福をお祈りします。

 また、例示としては適当ではないかと思いますけれども、私たちが子供のころは冷房や暖房がなかったところが、今では、学校や、自宅はもちろんですけれども、列車の中ももう冷房も暖房もきくような環境になりまして、生活環境は随分改善されてきたと思います。

 そして、このような事故が発生すると、心配されるのは、例えば職員の皆さんがその業務において管理責任も問われかねないというようなこともありますので、ぜひそういう設備の改善をしていただいて、その責めが職員の皆さんにも及ばないようにしていっていただきたいというふうに思います。

 いずれにしましても、矯正医官の待遇を改善していただいて、一日も早く定員が充足し、現場が不自由しないようにしていっていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 これにて私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

奥野委員長 次に、國重徹君。

國重委員 おはようございます。公明党の國重徹でございます。

 本日は、矯正医官の兼業及び勤務時間の特例等に関する法律案について質疑をさせていただきます。

 一昨年の四月、私が議員になって初めての予算委員会の分科会で、刑事施設における常勤医師が慢性的に不足している現状、定員に比べて約二割が欠員している現状と、それに伴う問題点について取り上げました。当時の谷垣元法務大臣も、矯正医官の確保について、できることは何でもやっていかないといけないと感じているとおっしゃっていただいて、質問後三カ月もたたないうちに、法務省に、矯正医療の在り方に関する有識者検討会が設置されました。

 昨年一月にはその検討会から報告書が提出されまして、本年二月には上川法務大臣が、省内で開かれた座談会で、全国にいる矯正医官の方十一名の皆さんから現場のさまざまな声を聞かれております。

 そして、今般、本法律案が提出されまして、矯正医官の安定的な確保、また、矯正医官の方の能力の維持向上に向けて大きな一歩が踏み出されたことを私も非常にうれしく思っておりますし、今回のこの法案を本当に実効性あらしめるものにしなければならないと思っております。

 参議院でも基本的な事項に関しては審議がされたと思いますけれども、検討会の報告書でも指摘をされておりますが、刑務所、拘置所、少年院などの矯正施設で働く矯正医官の方というのは、一般の医療現場にはないストレスに日常的にさらされております。患者は、犯罪や非行を犯した被収容者に限られるという特殊性があります。自分勝手な要求を繰り返したり、暴言を吐いたり、反抗して暴れる場合もあれば、刑務作業をサボるために詐病を訴えたり、はたまた自傷行為や異物をのみ込んだりと、一般社会には見られない特殊な患者も多いというふうに報告書では記述されております。

 しかも、民間の医療機関に比べて矯正医官の方は、給料も安い、矯正施設にいる被収容者を対象にする医療ということで、症状が限定されていて臨床医としての経験を積みにくい、最新の医療機器もなくて医療技術の維持向上が難しいなどといった問題もございます。

 そのような大変な環境の中で使命感を持って社会貢献的な職務に携わっているにもかかわらず、世間では、この矯正医官という仕事がほとんど認知されていない。かえって、どうしてあんなところで働いているんだろうというような見方をされる場合もある。とても正当な評価を受けているとは言えません。こういったことは、上川法務大臣が矯正医官の皆さんから現場の声を聞いて、よくよく認識されていることと思います。

 矯正医官を確保するためには、民間病院との兼業を可能にするといった今回の法改正、制度的な面の対策だけではなくて、矯正医官の方が誇りとやりがいを持って仕事ができるように、その勤務を正当に評価してたたえる、こういったこととともに、その社会的評価を一層向上させる対策、また、矯正医官をしているという経験がキャリアになるような仕組みづくりなど、矯正医官の方のモチベーションをアップさせる具体的な取り組みを考えていく必要があると思いますけれども、これに関する大臣の見解を伺います。

上川国務大臣 ただいま、委員から、大変重要な御指摘をいただきました。

 谷垣大臣の当時、矯正医療の現場が大変危機に瀕している、そうした切実な状況を踏まえた上で、スピードアップをしながら今日に至る取り組みをしていくように、こうした御指示のもとで今回の法律案にも至った次第であります。

 その中でも、矯正医官の皆さんが誇りとやりがいを持って業務を遂行することができる、社会的なそうした評価もしっかりとしていただくことができるようにしていくということは大変大事な課題であるというふうに思っております。私も、医官の皆さんとお話をする折に、例えば、子供たちに対して、自分はどこで働いているのかということについてなかなか表にできないというような、そうした内面の言葉もいただいたところでありまして、堂々と、そうした矯正医官として働いていることについて社会の中で認知され、そして誇りを持って取り組んでいただくということについては大変重要な課題であるというふうに考えているところでございます。

 さまざまな取り組みということでございますけれども、例えば、医学会の場でありますとかあるいは医学教育の場等におきまして、医療関係の皆さんに対して、矯正医官の現状あるいは評価のあり方についてきちっと周知をしていくというのは大変大事なことであるというふうに思っておりますし、また同時に、一般の国民の皆さんの御理解も、十分に理解していただくことができるような広報活動や啓発活動、こうしたことにつきましても、社会的な評価を一層向上させるために大変大事なことであるというふうに思っているところでございます。

 今年度につきましては、この理解醸成対策費として二千万円ということでございますが、国民の理解醸成のための予算を確保しながら、認知度を高めるための広報活動に努めてきたところでございまして、これにつきましては、厚生労働省あるいは文部科学省とも連携を図りながら取り組んでいるところでございます。

 さらに、表彰制度ということでございますけれども、二十六年度におきましては、八王子医療刑務所の所長が人事院総裁賞をいただくことができまして、矯正医官の果たす重要な役割ということについて、その方の顕彰を通じて、矯正医官として勤務している人たちに対しても、これからも頑張っていただく励みになるということでございますので、いろいろな観点から施策を組み合わせていくということは極めて大事なことだというふうに考えております。

國重委員 ぜひよろしくお願いします。

 広報も大事だと思いますし、先ほど言ったキャリアアップにつながるような仕組み、こういったことを考えていくことも重要だと思いますので、ぜひよろしくお願いいたします。

 続きまして、矯正医官の方を孤立させない、共助し合える取り組みについて伺います。

 平成二十七年度におきましては、矯正医官の定員は三百二十八名、欠員は七十一名、欠員率二一・六%となっております。ほとんどの矯正施設では、常勤医師は一人しか配置されておりません。そして、その一人の常勤医師が数百人の受刑者の医療を担って、さまざまな症状について第一次的な対処を行うこととなっております。まさに、医師としての総合的な能力、知識が必要になってまいります。

 こういった点において、矯正施設における医療というのは、山間部や離島など、医師の確保が難しい僻地での僻地医療に類する負担があるとも言えます。このような負担を軽減して、医師を孤立させない、何らかの協働体制を構築していくことが重要と考えます。こういった取り組みが矯正医官の安定的な確保また離職の防止にもつながると思います。

 今の現状におきまして、各矯正施設に複数の常勤医師を配置するというのは現実的な対策ではないと思いますけれども、先ほど触れました僻地医療におきましては、僻地診療所と僻地医療拠点病院とのICTによる連携、また専門医による巡回診察、代診医を派遣するなどといったことが行われております。

 そこで、矯正施設における医療におきましても、専門科目の異なる矯正医官同士がお互いの知識を補い合って共助し合えるような仕組み、例えばレントゲンの読影、またカルテを通じた意見交換、さらに進んで遠隔診断のようなもの、こういったものの導入を検討してはどうかと思いますけれども、これについてのお考えをお伺いいたします。

小川政府参考人 委員御指摘のとおり、医療専門施設であるとか医療重点施設を除きますほとんどの矯正施設におきましては、常勤医師が一人しか配置されておりません。また、専門外の分野につきましては、非常勤職員や嘱託医の援助をいただきながらも、当該施設における保健衛生あるいは医療上の全責任を一人の医師が担っているという状況にございます。

 もとより、常勤、非常勤とを問わずに医師同士で共助することも行われておりますし、もっともっと進めていく必要があると思いますけれども、そのような機会の少ない施設もございます。この点、現時点におきましては、施設間におきまして診療情報を交換する等の事例はございますけれども、レントゲン読影であるとか診療データを用いた常勤医師同士の意見交換のような仕組みは構築されていないのが実情でございます。

 一人配置の常勤医師に対しまして、他の常勤医師の意見を聞けるシステムを導入することにつきましては、費用対効果であるとか汎用性等について検討する必要はあるとは思いますけれども、大きな負担軽減となり得ると考えますので、常勤医師相互がその知識及び経験を共有できるような仕組みについて検討してまいりたいと考えております。

國重委員 ぜひよろしくお願いいたします。

 続きまして、女性医官の積極的な登用について伺います。

 今、お医者さんのうち約二割が女性です。そして、近年、女性の社会進出に伴って、医師における女性の割合が高まっております。現在、医学部生の約三分の一が女性です。より詳細に言いますと、平成二十四年時点で、医学部入学者に占める女性の割合は三二・九九%、二十代の医師に占める女性の割合は三五・五%となっております。

 もっとも、女性医師の中には、妊娠、出産等によって仕事と生活を両立させることが難しいということでキャリアを中断せざるを得ない、しかも、それが相当長期にわたる場合もあります。一般的な医師不足対策としても、こういった結婚、出産、育児を機に現役を退いた女性医師の皆さんに再び活躍していただくための議論が今なされております。

 そして、女性医師が仕事を続ける上で必要な制度は何かと聞いた調査がございます。これは、平成二十一年三月に日本医師会から出されました、女性医師の勤務環境の現況に関する調査報告書というのがあります。仕事を続ける上で必要な制度、支援について聞いておりますけれども、この中で、宿直等の免除、六二%の方がこれが必要だというふうに言われています。また、フレックス制度の導入、これに関して四一%の方が必要だというふうにおっしゃっております。

 今回の法案におきましては、矯正施設においてフレックス制度が導入されることになっております。また、一般的な矯正施設は宿直はございません。こういったことからも、矯正施設における医療は、一面では、女性医師の実情に応じた医療現場になり得る可能性を秘めていると思われます。

 また、これは聞いた話ですけれども、矯正施設の医官が女性である場合の方が、男性医官の場合よりも、男性受刑者がより素直に言うことを聞く傾向にあるということもお話を聞きました。

 ただ、矯正施設の女性医官の割合というのは、一般の医療現場の女性の割合、先ほど二割と言いましたけれども、それよりも低くて、一五から一六%になっております。

 今後、矯正施設においても、十分な配慮をした上で女性医師に矯正医官として活躍していただく取り組みを一層推進していけば、矯正医官の確保につながっていくと思いますけれども、これに関する大臣の見解を伺います。

上川国務大臣 結婚、出産を機に医療現場から離れている女性医師の活用を図るということにつきましては、これは日本全体としても大変重要な課題でありますし、また、矯正医官の確保のためにも有効な手段ではないかというふうに考えているところでございます。

 先ほど、女性のキャリア継続の壁になるものは何かという中に当直勤務があるということでございますが、その点につきましては、御指摘のとおり、矯正医官については原則として当直勤務がございません。また、女性被収容者を収容する女性刑務所と言われている施設におきましては、同性としての特性を生かすことも可能でございます。また、男子施設におきましても活用を積極的に図っていくということ、その際に、診療対象者が男子被収容者であることに不安を感じるというような女性医師もいらっしゃるということでございまして、そうした不安の払拭ということについて十分にした上で、さらにフレックス制の導入等をうまく組み合わせながら、そうした女性医師の一層勤務しやすい環境を整えることによって、女性医師の活用については積極的に図っていくことが大事ではないかというふうに考えております。

國重委員 大臣も女性大臣ということで、ぜひ、女性医官の促進に関しても十分な配慮をした上で取り組んでいただきますよう、よろしくお願いいたします。

 次に、矯正施設における矯正医官以外のその他の医療従事者に関してお伺いします。

 医療につきまして医師のみに負担がかかるとすれば、これはかえって十分な医療を提供することができず、適切ではありません。例えば、民間病院では、御存じのとおり、看護の分野につきましては、看護師が医師と対等の立場で、責任と誇りを持って職務を行っております。矯正医療におきましては、施設の中で医療を行うことが原則ですので、民間病院における病棟看護のように、看護師の果たす役割は小さくないものと思われます。

 ただ、平成二十六年四月一日現在、矯正医官は三百二十七名、それに対して看護師は三百五十七名、医師一人に看護師がほぼ一名ということで、一対一の割合になっております。これは、民間病院に比べ、看護師の数が著しく低いということになっておりまして、刑務官が看護師の役割も担っているのが現状でございます。もともと矯正医官も不足している、その上、看護師も不足しているということになれば、本当に矯正医官に、より負担のしわ寄せが来ます。

 そこで、矯正医官の負担軽減の観点から、看護師を初めとする医療従事者を充実させて、相応の役割を担っていただくということも矯正医官の安定的な確保につなげる上で有効と考えますけれども、これについての見解を伺います。

小川政府参考人 御指摘のとおり、矯正医療充実のためのみでなく、医師の負担軽減の観点からも、看護師を初めとする医療従事者の充実は極めて重要であるというふうに考えております。

 御指摘のように、実態としましては、ほとんどの刑事施設で、医師一人、看護師一人または二人程度しかおらず、薬剤師も刑事施設全てに配置できてはいない状況でございます。

 このように、民間の医療機関に比べて医療スタッフが充実しているとは言えないところでございますけれども、被収容者の高齢化、生活習慣病の増加によって医療需要が増加しておりますし、また、被収容者の健康管理や病状把握の必要性も大きくなってきておりますので、今後、医療スタッフが矯正医療に果たす役割は増大していくものと認識をしております。

 平成二十七年度の予算におきましては、看護師七人、薬剤師六人、理学療法士四人、臨床工学技士二人の増員を得たところでございますけれども、引き続き、必要な医療従事者の確保に努めるとともに、研修等を通じて能力を向上させ、さらに役割に応じた待遇を確保するなどして、矯正医官を支える環境整備に努めてまいりたいと考えております。

國重委員 ぜひよろしくお願いいたします。

 医師不足は、矯正施設だけではなくて、社会全般の課題でございます。

 我が党の難民政策プロジェクトチームが本年四月一日、上川法務大臣に、難民認定制度の改善に向けた申し入れをさせていただきました。その中で、全国三カ所ある入国管理センターにおいて常勤医師が不在になっている問題に関し、今般の特例法での改正も参考としつつ、同センターの常勤医師の不在の解消を図ることを要望させていただいております。

 今後、矯正医官の確保の取り組みとともに、こういった課題解決へ向けてのより一層の取り組みをお願いいたしまして、私の質問を終わらせていただきます。

 本日は、本当にありがとうございました。

奥野委員長 次に、鈴木貴子君。

鈴木(貴)委員 皆様、改めまして、おはようございます。

 時間も限られておりますので、早速、矯正医官に関する法律案の審議を始めさせていただきたいと思います。

 これまでの門先生そして國重先生同様に、私も、矯正医官の安定的な確保、そしてまた矯正医官の皆さんの働きがいの実感の向上というものが非常に大事だ、このように思っておるところであります。

 そこで、この法律案なんですけれども、目的としては、矯正医官の能力の向上、そして安定的な確保、そして、私が気になったのは目的が示されている一条の冒頭部分なんですけれども、この書き出しなんですが、「この法律は、矯正施設に収容されている者に対する医療の重要性に鑑み、」と書かれております。

 ここで、この答えは一つだけでなくていろいろあると思うんですけれども、ぜひ法務大臣から、矯正施設内における医療の重要性というものは具体的にどういったことが挙げられると考えているのか、お示しいただけますでしょうか。

上川国務大臣 矯正施設におきまして受刑者の皆さんが健康で、そしてしっかりと受刑をし、そして社会にまた帰っていただくという意味で、健康でなければ矯正ということの効果も出ませんし、その意味もないということでありまして、一番の基盤になるのが健康のための対応ということであるというふうに理解をしているところでございます。

 矯正施設におきましては、対象者が被収容者ということでございまして、その点が特色ということでありますが、基本的には、一般社会におきましての医療と遜色のない水準のものを提供するというのが基本であるというふうに考えているところでございます。

 矯正医官としても、そのような状況の中で患者さんに対してしっかりとした対応をしていくという意味では、やはり常勤医師をしっかりと配置しながら、また看護師さんも含めましてチームでしっかりと対応できるようにしていく、重篤になった場合にはしっかりした治療も受けられるようにしていく、いろいろなステージの中できめ細かな対応をしていく必要があるというふうに考えているところでございます。

鈴木(貴)委員 ありがとうございます。基盤は健康である、私も同様の考えを持っております。

 そしてまた、続けて、非常に基本的な質問になってくると思うんですけれども、これに関連して我々が考えないといけないのは、刑事施設の意味というところにつながってくるかと私は思うんですね。いわゆる犯罪者を収容している施設でありますけれども、その犯罪を犯した者たちに何を期待する場なのか。

 根本的なテーマだと思うんですけれども、改めて法務大臣から答弁いただけますでしょうか、刑事施設の意味合い、意義。

上川国務大臣 刑事施設におきましては、受刑者の皆さんは収容されている、自由を拘束されるわけでございます。

 通常の医療というのは、自分の健康に対して自分で判断をし、またお医者さんに対しても選択をする自由があるということでございますが、収容ということになりますと非常に特殊な環境でございまして、その点、矯正医官についても、被収容者という特殊な立場にある、しかし患者さんである、こういうことの中で診療を行う、こういう状況になっております。

 医療費が全て公費負担であるということもございますし、また、被収容者がお医者さんに対して信頼感を持って取り組んでいける環境に、お互いに信頼感ができるようにしていくわけでありますが、しかし、例えば、被収容者の方から執拗に検査を要求されたり診察や投薬等の要求をされるというような場合があるというのもこの現場の中の現実でありますし、また、刑務作業を免れるために詐病、仮病を使う、そういったことについても見抜かなければいけない、こういう特殊性もあるということでございます。さらに、感染症でありますとかの発生や蔓延を防ぐという意味での強制的な医療措置をとる場合があるということもございまして、こういう中で特殊性をしっかりと見きわめながら、しかし患者さんに対してしっかりとした治療をしていくということが大事な分野だというふうに思っております。

鈴木(貴)委員 ありがとうございます。

 これまでの大臣の答弁を伺いながらも、矯正施設における医療の重要性というのは、後に社会復帰をしていくあくまでもその更生施設である、そしてまた後々社会に出ていく上でもやはり健康は基盤である、こういった考えが根底にあるんだと思うんですね。

 今なぜこれらの質問をしたかというと、実は第三条の一項に、広報活動という国の努力義務について書かれているんです。広報活動ということで、矯正医官とは何ぞやということを幅広く周知するということも一つ広報活動だと思うんですが、私は、矯正医官の意味合い、社会的な意義、貢献度というものも含めて周知をするということがこれからより一層重要になってくるのではないかと。

 なぜならば、今大臣が答弁いただいたように、結局、矯正医療には、先ほどほかの先生の質疑の中で出てまいりましたが、国民の中に、なぜ犯罪を犯した者に対して国費、税金を投じて病気を治してあげないといけないんだ、なぜ手助けをしないといけないんだ、こういった考えが全くないとは言い切れないと思うんです。

 だからこそ、ただただ痛みを緩和するためだけに医療行為をしているのではなくて、更生に資する、ひいては再犯の防止に資するんだというところまで広報活動に徹するというのが重要だろうし、また、矯正医官の皆さんにとっても、なかなか閉塞的な環境で、限られた施設設備の中で自分は働いている、だけれども、これだけ大きな社会的貢献をしているんだという働きがいというところを今まで以上に感じていただくということが、まさに矯正医官になりたいというなり手をふやすことに直結をしてくるのではないのかな、私はこのように思うんです。

 そこで、広報活動を国の務めとして果たしていくとありますが、ぜひともここで私からお願いをさせていただきたいのは、ただただ、例えばフレックスタイム導入とか、給料が上がりましただとか、矯正医官求むといったような求人ポスターではなくて、意味合いの部分もしっかりと周知をするような広報活動にそれこそ税金を投入していただきたいと思うんですけれども、大臣、いかがでしょうか。

上川国務大臣 御指摘の三条、国の責務のところで書かれている、国民の皆さんに理解をしていただくということの重要性ということでございますが、まさに御指摘のとおりでございます。

 そのことを実践していくためには、医療を供給している医師あるいは看護師あるいは関連する職種のスタッフの皆さんが誇りを持って国民に対しての役割をしっかりと果たしているということに対して、国民の皆さんに理解をしていただくということがやはり大事ではないかというふうに思っております。

 その意味では、職務の意義でありますとかあるいは魅力につきまして、医学会の場でありますとかあるいは医学教育の場を通して周知を徹底していくということ、また、メディアを通じても、広く国民に御理解をいただくことができるようなさまざまな視点で丁寧に広報、啓蒙活動にしっかりと努めてまいりたいというふうに考えております。

    〔委員長退席、伊藤(忠)委員長代理着席〕

鈴木(貴)委員 大臣、ありがとうございます。

 ぜひとも、そういった社会的貢献度というか、矯正医官の皆さんがより一層誇りを持てる職場づくり、こういったものにこそ積極的に措置をとっていただきたいな、このように思います。

 そこで、矯正医官の皆さんの負担の軽減ということも一つ重要な議論だと思うんですけれども、矯正医官と、いわゆる一般的な病院で勤務されている医師の違いというのは、私は、一つ、閉塞的な環境にあるということと、精神的な負担というものも、これは同じ医師というカテゴリーではあっても、また違うのではないのかなと思うんですけれども、大臣はそこら辺はどのようにお考えでしょうか。

上川国務大臣 民間の医師に比べてどうかということでございますが、何よりもまず国家公務員としての身分がございます。その意味では、研修とか兼業についての制約が課されているということ。そして、先ほど来御指摘があったように、キャリアとしての社会的な評価ということについては、これも私も直接先生方からお伺いをした中でも、大変心が苦しい思いをするぐらい大変厳しい中で、しかし、なかなかそれを表に出すことができない、そういう状況に今あるというのも事実でありました。

 また、施設内におきましての症例等が非常に限定的でありますし、また、医療設備あるいは機器につきまして必ずしも十分な設備の設置になっていないということもございまして、最先端の医療から取り残されてしまうのではないか、そうした不安を生じやすいということもございまして、そういう意味で、特殊な中で頑張っていただいているというのが実態であるというふうに思っております。

 また同時に、先ほどちょっと申し上げましたけれども、被収容者の、患者さんの側の特殊性というのも若干ございまして、その点、そうしたことを見抜きながらも丁寧に患者さんに対して治療をしていくということが求められるということでございますので、なかなかストレスを抱えながら取り組んでいるというのが現実ではないかというふうに考えております。

鈴木(貴)委員 まさに大臣が現場で働いていらっしゃる医官の皆さんから直接聞いた生の声ということなので、大臣の答弁にも、これまでの過去のどんな法案審議の答弁よりも非常に重みというか深み、説得力があるなと思い、感謝をしているところなんです。

 今の答弁などを伺いながら、そしてやはり被収容者の特殊性、犯罪を犯した、そしてまた犯罪を犯すまでの過程というものもこれまた特殊だと思うんですね。ただ単に犯罪を犯したという結果が特殊なのではなくて、そこまでのその方のバックグラウンドであるとか生い立ちであるとか、そういったものが積み重なって、非常に殊さらに特殊な状況を生み出すということもあるかと思います。

 そしてまた、大臣がおっしゃっておられた、医官の皆さんの、最先端の医療から取り残されるんじゃないかという自分自身のキャリアへの不安感ということを考えると、例えば、人生経験そしてまた臨床経験というものが豊かなベテランの医師の皆さんにより積極的に矯正医療の場で活躍をしていただくということも必要なのではないのかな、質と数、両方の面で考えていくポイントなのではないのかなと私は思うんです。

 今回、有識者検討会の中でも、まさにそのような観点から、今、国家公務員ということで定年六十五歳であるけれども、プラス三年の延長もありますけれども、定年年齢の引き上げ自体を考えるべきではないか、こういった意見も出されたかと思います。

 今回の法案に定年年齢の見直し、引き上げというものが盛り込まれなかった理由について、ぜひお聞かせください。

小川政府参考人 お答えいたします。

 現在の矯正医官の定年は六十五歳でございますけれども、委員御指摘のように、矯正医療の在り方に関する有識者検討会の報告におきまして、社会一般では七十歳を超えた医師が現役で医業を行っている例もあるので、人的資源の有効活用の観点からも定年年齢を見直すことが必要ではないかといった提言をいただいたところでございます。

 そこで、本法律案の立案におきましても定年の引き上げについても検討したわけでございますけれども、御承知のように、矯正医官と同様に現在定年が六十五歳とされている他の国家公務員である医師及び歯科医師との均衡の問題がございます、また、定年が六十歳とされている他の一般職の国家公務員との均衡も考慮する必要があるということがありまして、本法律案において実現することは困難であるという結論に至ったところでございます。

 しかしながら、御指摘のように、矯正医官の定年の引き上げにつきましては、矯正医官の勤続年数を延伸するということで新しい欠員の発生を抑制するという効果がございますし、また他の医療機関等を定年退職した医師を矯正医官として任用することによって欠員補充の機会をふやすという効果もございますので、法務省としては、今後も、人事院等の関係省庁とも協議しながら、適切に検討していきたいというふうに考えています。

 また、民間の、専門的な知識経験だとか、あるいはすぐれた識見を有する者を任期を定めて任用する任期つき職員という制度もございます。この制度は定年の引き上げとは趣旨の異なる制度ではございますけれども、民間病院等において活躍された比較的年配の医師等を任用する上でも活用できる場面もあると考えておりますので、こういった制度も適切に活用してまいりたいと考えております。

鈴木(貴)委員 ありがとうございます。ぜひとも、引き続き前向きに検討していただきたい。

 というのも、仮に、では、定年制廃止というか引き上げましょうとなって、求人をしたところで、実際問題、六十五歳プラスアルファの皆さんがやります、やりますとたくさん出てきてくれるかというと、これはやってみないとまたわからない話でもあると思うんです。

 問題としては、やはり矯正医官が足りないというのがこの十数年来ずっと傾向として続いてきてしまっている。ゆえに、これは早急に手だてをしないといけないということを政府としても出している。その政府の、国のあり方を応援する意味合いでも、前向きな検討がこれは求められていると思います。

 と同時に、今話を聞きながらふと思ったのが、この法案では定年の引き上げが難しかったというのは、まさに法務省が刑事施設を見る観点、物の考え方というのが非常に大きいと思うんです。

 例えば矯正医療ではありますけれども、あくまでも幅広い意味で医療という形で考えれば、ましてや、矯正施設内での医療もいわゆる一般的医療と同水準に引き上げることが望ましいと先ほど大臣からもありましたけれども、であれば、例えば厚労省の、あくまでも医療、国民に対して必要な医療のサービスというものを提供していく、これが健全な社会のあり方だというような観点で考えれば、この定年の見直し、引き上げというのはもっと積極的な議論が生まれるのではないか、私はこのような可能性を考えているんです。

 ぜひ、医療を所管する厚生労働省とも省庁横断的にこの点を議論していただければ新たな突破口というものが見えてくるのではないかと思うんですけれども、大臣、いかがお考えでしょうか。

上川国務大臣 国家公務員の定年年齢につきましては、さまざまな御議論をしていただかなければいけないということでございますが、先ほど局長の答弁にありましたように、やはり定年に達したからそれでということではなくて、地域の中の医療の大変大事な医師という立場でありますので、こうしたお立場の方々をしっかりと矯正医療の分野におきましても積極的に活躍していただくことができるようにしていくためにはどうしたらいいのか、そういう中の一つとして、今おっしゃったような定年年齢の話もあろうというふうに思っております。その意味で、しっかり検討してまいりたいと思っております。

鈴木(貴)委員 省庁横断的、幅広い議論を求めるというところにつながってくると思うんですけれども、例えば他省庁だけでなく外部の医療機関であるとか、もっと具体的に言えば、例えば専門医の皆さんとの協力体制の強化というものも私は強く訴えさせていただきたいと思っております。

 先ほど國重先生の質疑への答弁だったかと思うんですけれども、人事院総裁賞を受賞された大橋所長も、ちなみに、皆さん、人事院総裁賞というのは、私も今回の法案審議でいろいろ資料を読んでいて初めて知って勉強をしたんですけれども、実はこれは、天皇陛下、皇后陛下と御接見もできる、お言葉も頂戴できるという非常に名誉ある賞であります。それを受賞されたのが八王子医療刑務所の大橋所長で、この大橋所長というのはまさに矯正医療一筋で長らく御尽力をされた、その功績が認められて、はえある受賞となった方であります。そして、その方が人事院総裁賞を受賞された際のインタビューで触れられていたのが、まさにこの専門医の必要性なんです。

 特に、過去の一般質疑、刑訴法の質疑の中でも、高齢者による犯罪がふえてきている、これが諸外国ではなかなか見られない、日本独自の特異な傾向の一つだというような議論もなされてきたわけであります。高齢者の受刑者がふえるということはどういうことかというと、過去に大病を患っていて、例えばリハビリが必要であるとか、もしくは日々の日常生活においても介護が必要である、もしくは物理的介護は必要なくとも例えば食事面でそしゃくがもっとしやすいものが必要であるだとか、言葉は雑かもしれないですけれども、非常に手間暇、時間と労力が非常にかかってしまうという現状もあるかと思うんです。

 という意味では、矯正医官の数をふやすだけでなくて、時代に即した抜本的な改革、見直しをしていくという中では、例えばリハビリ専門の方であるとか介護職員、こういった方々をふやしていく、確保していくということも、おのずと矯正医官の皆さんの負担軽減にもつながっていくのではないか。

 もっと広く考えれば、例えばそういった専門家の方々に矯正施設で働いていただくことによって、ほかの被収容者の、研修じゃないんですけれども、そういった場にもつながっていく可能性、さまざまな可能性が考えられると思うんです。例えばリハビリ、介護職員の確保、導入、増員、これらについて、大臣のお考えを聞かせてください。

上川国務大臣 まず、刑事施設におきまして受刑者の皆さんの持っていらっしゃる健康等についての問題がかつてとは少しずつ異なっているということについては、御指摘の高齢化が進んでいるというところに象徴されるような動きでございますが、そうなりますと、認知症というような疾病を抱える方もいらっしゃいますし、また生活習慣病であります高血圧等の循環器系の疾病につきましてもふえている、また糖尿病の患者さんもふえている、そういう状況でございます。

 高齢化と同時に、生活習慣病が増加をする、また疾病も複雑化してきている、多様化してきている、そういう中にありまして、医療に対してもしっかりと取り組むことができるようにしていくという意味では、専門医が大変大事な役割を果たしていただくことになるわけでございます。

 そうしたそれぞれの施設の特徴をしっかりと把握した上で、それにどのように医療の供給をしていくことができるかというのは実は大変大きな課題でございまして、この点につきましても、十分なる検討をした上でしっかりと対応していく必要があるというふうに思っております。

 また、医療のみならず、介護というところでございますが、高齢者の収容者がふえているということ、そして先ほど申し上げたように、認知症と診断されていなくてもそれに匹敵するような方もたくさんいらっしゃるようになってきているということもありますので、そういった面で、医療と介護というような観点からの検討ということについてもしっかりとしてまいりたいというふうに思っております。

鈴木(貴)委員 ありがとうございます。

 そこで、医療の水準、そしてまた疾病が多岐にわたるというところからも伺いたいんですけれども、例えば、被収容者が外部の医療機関でセカンドオピニオンを受けるということは今現在可能なんでしょうか。これは事務方の答弁で結構です。

小川政府参考人 お答えいたします。

 被収容者は身柄を拘束されて自由が制限されているという状況にありますので、受診する医療機関や医師を選択する自由についても制約があることは事実でございます。したがいまして、被収容者に対しまして、治療法を見出すために、刑事施設の職員ではない医師の意見を聞く機会を設けているわけではございません。

 他方、国は、被収容者に対しまして、社会一般の医療の水準に照らしまして適切な医療上の措置を講ずる義務がございます。矯正施設におきましては、矯正施設内での治療が困難な場合には、専門医の非常勤医師等によって対応することもございますし、また、必要に応じて被収容者を地域医療機関に通院、入院させるなどして、地域医療の支援を受けさせることもございます。また、傷病の種類または程度に応じて、可能な場合には、常勤、非常勤とを問わず、医師同士で共助することも行われております。

 こういった過程で、外部の医師も含めて、いわゆる主治医ではない医師による専門的知見も事実上診療に反映されているものとは承知しております。

 以上でございます。

    〔伊藤(忠)委員長代理退席、委員長着席〕

鈴木(貴)委員 三大疾病といえばやはり真っ先にがんが思い浮かぶかと思うんですけれども、がんもセカンドオピニオンを我々もとりに行くと思うんですよね。必要な医療行為をする上で、やはり本当にその病状というか症例が合っているのかということを確認する必要性からも、セカンドオピニオンは非常に重要になってくると思うんです。

 特に、例えばがんでもそうなんですけれども、これまでに実際に、C型肝炎、肝硬変の受刑者に必要な検査がおくれてしまったがために、肝細胞がんの発見がおくれて死亡されたケース。ちなみにこれは国家賠償一千二百万円で和解がもう既にされているケースであります。

 もしくは、同じくC型肝炎なんですけれども、血液検査で異常が出た、矯正施設の中での血液検査で異常があった、しかしながら、その後の精密検査が行われなかったがゆえに、これもまたがんの発見がおくれまして、この方も熊本刑務所で亡くなっていらっしゃいます。これももう既に和解が成立、八百万円という国家賠償が成立しております。

 がん以外にも、白内障の症状を訴え続けていたにもかかわらず、専門医、外部の医療機関を受診することができなくて、結局、失明をしてしまった。これは二千万円で徳島刑務所は和解をされています。

 そしてまた、今の時代において、これは平成二十三年なので数年前なんですけれども、低体温症を訴えていたにもかかわらず、診察しながらも放置し、神戸拘置所においては凍死。これは四千四百万円の賠償がなされたというところであります。

 やはり矯正施設というのは非常に閉塞的な、この間、刑訴法のときには密室の中の取り調べという言葉がありましたが、まさに私は密室での医療というものが問題だと思うんですね。というところでいえば、例えば被収容者もしくは弁護人もしくは御家族が、今現在どういう健康状態なのか、どういった医療行為を受けているのかという情報開示を求めた場合には、速やかに開示をするということが求められていると私は思うんですが、現行法では実はこれはブラックボックス化されているんですね。

 私は、袴田巌さんの支援をしているときに、非常に痛感したんです。成年後見制度の手続をしたくとも、本人が採血を拒否しているがゆえに後見制度の申請ができないであるとか、健康診断を本人が拒否しているので受けられないといって入り口ではね返されてしまう。

 こういったことがあってはならないと思うんですが、医療における情報開示についてぜひとも前向きに取り組んでいただきたいと思うんですが、大臣、答弁いただけますでしょうか。

上川国務大臣 ただいまの状況の中で被収容者の例えば釈放というようなことにつきましては、施設の中での治療、これが釈放された後にも引き続き治療をする必要があるということもございまして、当該被収容者から交付の希望があった場合につきましては、診療情報の提供書という形で交付をしているところでございます。

 自分の健康状態を自分で知る、そしてそれに対して自分も責任を持つことができるようにしていくということの意味は大変大事だというふうに思っております。いろいろな場面の中の情報開示ということにつきましては、適切な対応ができるように検討してまいりたいというふうに考えております。

鈴木(貴)委員 ありがとうございました。

奥野委員長 次に、山尾志桜里君。

山尾委員 民主党の山尾志桜里です。

 きょうは矯正医官の質問ということで、よろしくお願いいたします。

 早速ですけれども、まず最初に、いわゆる空研修と言われる問題について、これから先どうなっていくんだろうということを質問します。

 私も、今回、やはり、刑務所の中のお医者さんをふやすためにちょっと硬直的な制度を柔軟にしていくということは、必要なことだと思っています。ただ、これまでも、本当に少ないがために、言うべきことをなかなかお医者さんに言えないでいたのではないかという点もちょっと感じられますし、これから先、制度が柔軟になったときに、柔軟な制度が不適切に使われるようになってはいけないという思いもありますので、まずはその観点からちょっと質問させていただきます。

 小川矯正局長にお伺いをいたします。

 今までの制度の中のいわゆる空研修なるもの、皆様のお手元には、資料の一番最初の表でありますけれども、これは黄色い本に載っていたものであります。平成二十二年度報告分から平成二十五年度報告分に、一から十二という十二件が会計検査院で指摘をされたものというふうに載っています。

 空研修というのは幾つかタイプがあるようですけれども、研修中ということであれば、実際に公務員としての勤務実態の中に含まれて、もちろん給料が支払われるわけですが、実際には、全く研修に行っていない、あるいは報告した場所と違う場所に研修に行っていた、あるいは、研修ではなくて、そこからまた別の報酬をもらって実質兼業をやっていた、こういうものが全部一体となって、不当事項という形で一から十二まであります。

 まず、矯正局長、この十二件について、当事者であるドクターの行政処分の状況というのはどういうふうになっているんでしょうか。しっかり処分はなされているんでしょうか。

小川政府参考人 お答えいたします。

 配付資料の資料一に基づきましてお答えいたしますと、まず、平成二十二年度から平成二十五年度における決算検査報告におきまして、この十二件につきまして不当事例として指摘を受けたところでございます。

 そのうち、当時在職していた医師六名につきましては、監督上の措置として訓告を行っております。具体的な例で申し上げますと、資料の番号で申し上げますと、一番、三番、四番、五番、それから七番、最後に十二番の事例につきましては、当該医師に対して訓告を行っております。

 そのほかの六名の医師につきましては、いずれも発覚当時退職しておりましたので、処分ができなかったというふうに承知しております。

山尾委員 それでは、同様に、監督者、刑事施設の長であるとかですね、そういう監督する者に対する処分の状況はこの十二件の中でありましたか、ありませんでしたか。

小川政府参考人 お答えいたします。

 先ほどの十二件につきましては、いずれも刑事施設長等に対する行政処分は行われていないと承知しております。

山尾委員 それでは、これは、場合によっては刑法で言う横領にも当たり得る事案も中には含まれるかもわかりませんが、横領など、いわゆる刑事事件として起訴をされた例はありますか、ありませんか。

小川政府参考人 先ほどの事案につきまして、把握している限りで申し上げますと、起訴された事案は見当たりません。

山尾委員 私の問題意識は、施設長を処分すべきだとか、必ずしもそういうことを言いたいのではないのですけれども、少なくとも、これまで実際に税金が不当な形で給料として支払われてしまったという事案なものですから、それに対してしっかりけじめをつける処分が、少なくとも当事者ドクターにできているものは半分にすぎなかったと。

 これは、なぜ半分だったんでしょう。普通でいえば、やはりこういった国家公務員ですから、しっかり処分をしてから職を辞してもらうというのが当たり前であるかと思うんですけれども、処分できなかった理由を教えてください。

小川政府参考人 お答えいたします。

 処分できなかった者につきましては、当時退職されておりまして、法律上処分ができなかったということでございます。

山尾委員 これは、会計検査院の検査で判明した、タイムラグもあるということなのかもわかりませんけれども、実際にこの中身についても聞きたいんです。

 先ほど、大体三類型あるのではないかと申し上げました、一から十二まで。この三類型、要は、全く実態がなかった、別の場所で研修していた、あるいは実際は兼業であった、この割合というか、何件ずつあったんですか。

小川政府参考人 お答えいたします。

 勤務を欠いていた時間に主として兼業を行っていたと考えられる事案が五件ございます。また、事前の申告と異なる場所で研修を行っていたと考えられる事案が六件ございます。それ以外の事案が一件ということでございます。

山尾委員 私も資料をいただきまして、手元にあるんですけれども、それについて、要は、中身が何だったかと。「勤務を欠いていたとされた時間の内容については、本人の申告等による。」と、わざわざただし書きのような形で一文あるんです。だから、読み取るに、主に本人の申告で認定されているのではないかな、特に客観的に一生懸命しっかり調査をして、実態があったとかなかったとかというところまではやられていないのではないかなと推測をするわけです。それでもなお、今の話を聞くと、では、これから先、空研修なるものがどうなっていくのかということをちょっと考えたいんです。

 兼業が十二分の五。ここからは、この制度によって兼業を認めていこうということですから、こういった形の不適切なあり方というのは間違いなく減っていくんでしょう。ただ、実際に何の実態もないパターンと、あるいは報告されている場所と別の場所で研修しているよというパターンは、これから先も研修が残る以上、十分にあり得るわけですね。

 そういう中で、これから先、こういったこれからもあり得る事態をどのように防ごうというふうに考えていらっしゃいますでしょうか。

小川政府参考人 お答えいたします。

 矯正医官の外部研修の問題につきましては、これまでも累次通達、通知等を発出しておりまして、研修時の実施状況を確実に把握できる仕組みとしてきているところでございますけれども、今回、特例法が成立した暁におきましては、兼業につきましては大臣の承認によりまして正規にできることになりますので、問題は少なくなるかと思いますけれども、フレックスにつきまして、実際にフレックスの実態があるのかとか、施設外勤務の実態があるのかにつきましては、きちんと確認をする必要があると考えております。

 まず医師の方から施設外勤務をしたいというふうな申告なり申し出が当然ありますので、それについて、施設の方で、実態があるのかどうかとか、真偽について確認をした上で承認をするかどうかを決めるということになると考えておりますし、そこでしっかり把握をしていきたいと考えております。

山尾委員 多分、次に予定していた質問もあわせて少し答弁に入っていただいたのかなと思います。

 まず、私としては、仕組みを柔軟にするのは結構だと。でも、柔軟になった仕組みの中でこういう不適切な事例がまた表に出ていくと、それこそリスペクトを養うという趣旨からもすごく外れてしまうので、やはりここは、今まではどうしても、処分するにできないというか、余り厳格にし過ぎると、それこそやはり来てもらえなくなってしまうのではないか、当事者ドクターだけではなくて、いわゆる派遣してもらっている病院そのものに、そんな面倒くさいことがあるならいいやと言われてしまうのがやはり不安だという、矯正局あるいは関係者の皆さんの現状があったんだと思うんですね。

 ただ、これからは、こうやって制度も柔軟にやっていくのであればこそ、それが不適切に使われない、不適切に使われたときには、これはやはり、正しかるべきは正しくあれということで、処分すべき場合は処分もするということは、しっかりやっていただきたいというふうに思うんです。

 フレックスタイムのことについて伺います。

 フレックスというのをこの法案の中でまず見たときに、私は、女性医師あるいは子育て中の男女も含めた医師がより働きやすくなるようなフレックスというものなのかなと思っていたんですね。そうしたら、それは今回のフレックスの趣旨ではないということを聞いて、ちょっと意外でありました。

 このフレックスタイム制の趣旨、何のためにフレックスにするのかということを簡単に局長の方からお伺いしてもよろしいですか。

小川政府参考人 フレックスタイム制導入の趣旨でございますけれども、矯正医官につきまして、矯正施設における医療の実施に必要な能力の維持向上を図るためには、通常の勤務場所を離れて、外部医療機関等において臨床医療の立ち会いをさせたりであるとか、矯正施設の内外におきまして医療に関する調査研究をさせたりする必要がございます。

 これらの矯正施設外における勤務、あるいは矯正施設内における本来の被収容者に対する診療また研究といったさまざまな業務がございますので、これらを両立させるために、矯正医官の申告を考慮して、勤務時間を弾力的に割り振ることによりまして、矯正施設内外での勤務をしやすくするというのがこのフレックスタイム制導入の趣旨でございます。

山尾委員 ちょっと私なりにかみ砕いて申し上げると、フレックスじゃない本来の時間というのは八時三十分から五時までというふうに決まっている。でも、その時間帯の外で研修を受けたい場合がある。わからないけれども、朝の回診だとか手術の立ち会いだとか、そういうものについても研修を受けさせたい。しかし、業務時間をずらすことができないと業務時間外の研修となってしまって、いわゆるこの制度の中の研修とは認められなくなってしまう。だから、研修を実際に受けられる時間に、矯正医官としての業務時間を柔軟に、幅を広げたりあるいは後に送ったり、こういうことをできるようにするんだ、こういうお話でありました。

 これ自体は別に悪いことではないと思うんですけれども、ちょっと、先ほど私が言っていた、柔軟になってそれが不適切に使われることのないようにという懸念の具体例として一つ申し上げます。

 本来の業務時間、八時半から五時でいうと、兼業したいとき、今回からは時間内兼業も認められます。時間内兼業も認められるけれども、本来業務の時間帯でいうと、その兼業時間は時間内に当たる。できます。ただ、時間内の兼業であれば、公務員としての給与はその分支払われません。当たり前だと思います。

 では、もし、この時間に兼業したいと、本来業務時間をフレックスを使って時間外の兼業にした場合はどうなるか。これは、兼業としての報酬も支払われますし、こっちの、公務員として、矯正医官としての執務時間内の給与も当然減額されることなく支払われます。こういうことにフレックスタイム制度が使われると、これは本来の目的を逸脱するということになるわけですよね。

 でも、これは正直言ってあり得ることかなというふうに思うんです。だって、これは本当に悪いことなのと。例えば、朝の時間に兼業としてやるんだと。フレックスでずらしてですね。このずらした分の時間は、ちゃんと公務員として、しっかりと矯正医官として仕事をするんだと。それぞれで働いていて、それぞれの働いている給与として、こっちは国からもらい、こっちは民間からもらう。別にいいんじゃないのというふうに思う面もあるかもしれないんですね。

 でも、フレックスタイム制で時間をずらすというのは、こういう目的のためにあるわけではないわけですよね。そこの部分をどのようにチェックしていくんでしょうか。

小川政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のように、フレックスタイム制を導入することによりまして、本来の勤務時間、午前八時半から通常夕方五時まででございますけれども、その時間の一部が勤務時間から外れるということがあります。その外れた時間に兼業するということ自体は考えられることでございますし、兼業すること自体につきましては、許可を得ていれば違法ではないということになりますので、そういった事態は生じ得ることではございますけれども、もともとフレックスタイム制の導入は、それを目的としたものではございません。

 問題は、フレックスタイム制を認めた場合に、そのフレックスタイム制の前提となる施設外の勤務が、実態があるのかどうか、あるいは必要性があるのかどうかということだと思います。フレックスタイム制を認める前提としまして、それがもともとの矯正医官の職務として必要なんだということが前提になりますので、まず、そういった施設外での勤務をしたいという申し出があったときに、そういう実態があるのかどうか、真にそこで勤務するのかどうか、何をするのかといったことについて施設の長が確認しまして、実態を把握した上で承認するかどうかを決めるという流れになろうかと思います。

山尾委員 実態の確認ということは、平成十五年に報告書の提出が義務づけされたり、二十三年には指導担当者の確認印の義務づけがあったり、去年には、自宅とか図書館ではだめだとか、内容確認文書を取り交わすんだとか、御努力を重ねられているのは私も知っているんですけれども、その確認印すら、ちょっと実態と違う印が押されていたという事案も起きたばかりで、やはりそこは、ちょっと引き続き、本当にどうやって実態を確かめていけるのかということを研究していただきたいなというふうに思います。

 もう一つフレックスについて思ったのは、これは、研修が必要だという理由で、本来の勤務時間を本当にフレックスにしましょうという話なんですよね。でも、それで、もちろん実際の矯正医官としての施設内の勤務に影響がなければ、いわゆる伸び縮みしても構わない、できるよという前提にこれからなっていくんだと思うんですね。そのときに、では、ワーク・ライフ・バランスのためのフレックスというのはやっちゃいけないのかなということを疑問に思うわけです。

 もちろん、同じように、本来の矯正医官としての施設内の勤務に支障の出ない範囲でフレックスを使ったらだめなのかなと。朝の研修に出たいから朝の時間を早くするということができるんだったらば、朝、どうしても子供を送らなきゃいけないので、ちょっとその分を後ろにずらすとか、曜日も研修との兼ね合いでいろいろ変えられるんだったらば、月曜日は実家に頼めるけれども火曜日は頼めないから、月曜日を長くして火曜日を短くするとかですね。

 でも、残念ながら、今回の改正だと、そういう理由でのフレックスの使い方はできないということなのですよね、局長。

小川政府参考人 お答えいたします。

 先ほど御説明しましたように、今回のフレックスにつきましては、ワーク・ライフ・バランスを実現することを直接の目的として導入するものではございません。あくまで、施設外勤務であるとか、矯正医官として必要な勤務について柔軟に対応できるような勤務時間にするということが目的でございます。

 ただ、もともとそういった施設外勤務等が必要があって正当な場合に、もともとの勤務時間から外れた時間について、例えば家事とか育児に充てるということは当然十分考えられることでございますので、そういった意味では、間接的にはワーク・ライフ・バランスに資する効果も期待できるのではないかと考えております。

山尾委員 では、ちょっとここは、一言、今の話で大臣にもコメントをいただければと思うんです。

 今回はそういう趣旨のフレックスタイム制の導入ではないということでありました。でも、公務員全体としては、これから先、フレックスというのをやっていこうというのが政府全体としてあるのも知っています。

 ただ、今回、この矯正医官で、特に大臣も参議院の中でも、女性医官、あるいは女性に限らずだと思うんですけれども、やはり育児や介護、家庭と仕事を両立できる、しかも、やりがいのある、医者の一つの選択肢として広報していこうという中で、ぜひ、これから先、これでフレックスが導入されたということは、何回も申し上げるように、矯正医官としての執務に悪影響のない限りは、時間をずらしてもそれはできる職業だということが一つはっきりしたんだと思うんです。

 なので、理由の一つにワーク・ライフ・バランスも入れていくような制度をできれば早く検討してほしいなと思うんですけれども、いかがでしょうか。

上川国務大臣 女性の医官ということでのニーズ、これは大変重要であるというふうに思っておりますし、女性だけではなくて男性も含めて考えていくという意味では、これは政府挙げてのワーク・ライフ・バランスの取り組みということであります。

 働く側の自由裁量という形で選択できる幅を広げていくというのがワーク・ライフ・バランスの非常に大きな考え方ということでございます。今の場合には、逆に言うと、働く環境をいろいろ整備して、それに合わせていただくということでありますけれども、逆に言うと、やはり働く側のということも同時に大事であるというふうに思いますので、とりわけ女性ということに鑑みまして、また検討を深めてまいりたいというふうに思っております。

山尾委員 ぜひ具体的な、前向きな検討をお願いしたいというふうに思います。

 大臣もあわせて言ってくださったとおり、当然、ワーク・ライフ・バランスは女性だけの問題ではありませんで、男女ともにということだと思いますが、ただ、実際に刑務所の中の環境というのは、少なくとも女性医師にとって、ちょっとやりにくい環境が多少あるのではないかというのも事実であろうかと思います。有識者検討会の報告書にも、「物的設備面においても女性医師が勤務しやすい環境整備を」とありました。

 これは局長にお伺いしますが、今回の改正案でも、三条二項で勤務条件の改善の努力義務がありますよね。この中に、その物的設備面における女性医師の勤務しやすい環境整備というのは含まれているんでしょうか。

小川政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のように、女性の医官が働きやすい環境にすることも当然含まれております。

 現状を申し上げますと、これまで、御承知のように、刑事施設では同性の職員が被収容者を処遇するということを基本としておりましたので、特に男性の被収容者を収容する男子施設におきましては、必要最低限の女性トイレしか設置していないとかということで、女性職員が勤務することに十分配慮したとは言いがたい執務環境でございました。

 しかしながら、現在は、医師に限らず、女性職員の活躍促進のために、男子施設におきましても女性職員が勤務する機会がふえておりますので、女性職員の勤務が容易になるような執務環境改善も鋭意進めていきたいと考えております。

 それから、先ほどの訓告の関係の御質問で、一点、答弁に間違いがございました。

 一覧表で十二番の事例が訓告を行ったと答弁いたしましたけれども、正しくは十番でございましたので、この機会に訂正させていただきます。

山尾委員 ぜひやってほしいと思うんですよ、トイレだとか更衣室だとか、やはりいろいろ不便があると思うので。

 ちなみに、では、今いる女性医官というのは、女子刑務所に勤務しているのか、あるいは結局はほとんど男性の刑務所に勤務しているのか、ちょっとそこら辺の実態をお伺いしたいんですけれども、全体の矯正医官の中で女性医官の占める割合は一五から一六%、これは先ほど國重委員の話でも出てまいりました。では、お伺いしますけれども、今、女性の矯正医官が何名いて、その中で女子刑務所に勤務していただいている方は何名おられるのか、わかりますでしょうか。

小川政府参考人 お答えいたします。

 本年四月一日現在でございますけれども、全国の矯正施設に在職する女性矯正医官は四十一人でございます。そのうち、女子刑務所で勤務する女性矯正医官は二人でございまして、比率からいうと五%ということになります。ちなみに、女子少年院に勤務する女性矯正医官もございまして、六人おります。したがいまして、一五%で、合計二〇%が女子施設で勤務されている。

 これを引きまして、残る三十三人、八〇%の方につきましては、現在、男子施設で勤務されているという状況でございます。

山尾委員 今答弁いただいたとおり、女性矯正医官が女子の施設で勤めているのは二割、八割は男性の患者さんを診ているということになります。なので、そういうところでは、本当に女性用の施設というのはほぼこれまで予定されていない中で勤務をしていただいている、あるいはこれからしていただくということになりますので、その点をぜひお願いしたいなというふうに思います。

 では、あと五分ということですので、幾つか質問を飛ばさせていただきまして、先ほど鈴木委員の話にも出た、定年とか採用時年齢の引き上げが見送られたことについてちょっとお話を聞かせていただきたいと思うんですが、これも局長にお伺いをいたします。

 勤務のあり方は別として、今、実際、六十五歳以上で矯正医官を務められている方というのは何人ぐらいいらっしゃるんですか。

小川政府参考人 お答えいたします。

 本年二月一日現在でございますけれども、矯正施設に勤務する常勤、非常勤を含めた医師の人数について申し上げます。全体で六百七人でございますけれども、そのうち六十五歳以上が九十二名、比率でいうと全体の一五・二%という状況になります。

 なお、常勤と非常勤で分けますと、常勤の方は、全体で二百五十二名中九名でございます。それから、非常勤の方は全体で三百五十五名中八十三名ということでございまして、非常勤の医師の方が六十五歳以上の方の比率が多い状況にございます。

山尾委員 ちなみに、最高齢の方は何歳でやっていただいているかというのはおわかりでしょうか。

小川政府参考人 最高齢の方でございますけれども、八十九歳でございます。非常勤の方でございまして、福岡刑務所飯塚拘置支所に勤務されております。

山尾委員 ちょっと私も今初めてお伺いをしたんですけれども、実際に一五・二%、六人から七人に一人の方は六十五歳以上の医師が担っていただいている、その中では八十九歳の医師の方も担っていただいているということがわかりました。なので、本当にぜひ引き上げを検討してほしいんです。

 先ほど、任期つき採用もこれから利用していきたいということがありましたけれども、局長、任期つき採用というのは、人が足りていなくて、この人がちゃんとできるから、こういう理由だけで採用できるんでしょうか。もうちょっと、民間の人を任期つきで採用すべき、何か別の理由を挙げていかないと難しいんじゃないかなという気がするんですけれども、その点はいかがなんでしょうか。

小川政府参考人 お答えいたします。

 任期つき採用につきましては、一般職の任期付職員の採用及び給与の特例に関する法律というもので制度がつくられておりまして、趣旨としましては、民間人材の採用の一層の円滑化を図るため、公務に有用な専門的な知識経験を有する者を任期を定めて採用できるようにするということでございますので、そういった要件が必要になるということでございます。

山尾委員 ということで、任期つき採用を使うなと言っているのではないんですけれども、やはり任期つき採用というのは、民間人材ならではの知見とか、そういうものが必要だからお願いしますと、やはり理由づけがどうしても必要となってくるんだと思うんですね。でも、私たちが今話しているのは、六十五歳以上の方でも十分に矯正医官たる役割を果たしていただけるのではないか、実際に果たしていただいているのではないか。

 そして、もう一つ言うならば、やはり塀の中の受刑者、いろいろなことがあると思います。そういう方の健康を診るということは、ある程度年齢を重ねた、いろいろな経験がある方が診ていただくということの一つの有用性もやはりあるのではないかというふうに思うので、ぜひやっていただきたいのです。

 実際に、これから先、矯正医官だけではなくて、在外公館医務官も、検疫所の医師も、ハンセン病療養所の医師も、それぞれ定員割れしています。検疫所の医師に至っては、黄色い本の百六十五ページを見ると、五二%の定員割れもあります。そんな中で、こういう矯正医官だけではない、ある程度の横並びでもいいと思うんですけれども、やはりこの医官の定年年齢の引き上げというのを早くやっていただきたいと思うんですけれども、最後に大臣、一言お願いします。

上川国務大臣 先ほど、矯正医官の最高年齢というのが八十九歳、大変大きな力をいただいているということでございます。

 年齢を問わず、そうした専門的な知見をしっかりと治療に役立てていただくという意味では大変大事な御指摘であるというふうに思っておりますので、その点につきましては、関係のところもございますけれども、検討をしてまいりたいと思っております。

山尾委員 ありがとうございました。

奥野委員長 次に、井出庸生君。

井出委員 維新の党、信州長野の井出庸生です。きょうもよろしくお願いいたします。

 まず、大臣、刑訴法は大変お疲れさまでした。私も疲れましたと言いたいところなんですが、冒頭、一点、その件で伺いたいことがありまして、きょうまた三浦さんに来ていただきました。そのことを、冒頭ということなので、簡潔に伺いたいと思います。

 私が通信傍受の最後の日にお願いしておりました、新しい機器を使ったときの、警察施設で通信傍受をするときの警察官の指導のことなんですが、この間、八月二十一日の参議院の本会議で、山谷国家公安委員長が民主党の小川議員の質問に対する答弁の中で、「新たな方式による通信傍受では、技術的に高度な機器を使用することなどから、その適正かつ効果的な実施を担保するため、専門的知見を有する職員が必要な指導を行う体制を整えることを検討をしております。」

 これを聞いていて、私がここの議論で修正をお願いしたのは、別に、最新のすばらしい機械を現場できちっと説明するために職員をそこに置くことを求めていたわけではなかったと私は思うんですね。立ち会いがいなくなる、それに対して立ち会い的な意味合いでしっかりと指導してほしいということでお願いをしていたはずでした。

 実際、八月五日、衆議院の最後の法務委員会のときに、山尾委員が同じことを質問されているときに三浦局長がお話をされているところがあるんですが、「特定電子計算機を用いて捜査機関の施設において通信傍受を行う場合には、当該事件の捜査に従事していない警察官または警察職員、各都道府県においては適正捜査の指導を行う部署の警察官となるということを今念頭に置いておりますけれども、そうした者が、傍受または再生の実施状況について適正を確保するため、現場において必要な指導をする体制を整えるということを考えているところであります。」

 私、この山尾委員に対する答弁も、何だか抽象的で、これからみたいな話だなと思っておったんですが、まだこの八月五日の方が、私どもがお願いしていた立ち会いの代替的な意味合いの指導の趣旨が明確であったかなと思うんです。

 この点、もう一度、立ち会いにかわる指導だということを念押しさせていただきたいんですが、いかがでしょうか。

三浦政府参考人 まず、前提としまして、警察施設で特定電子計算機を使って通信傍受を行う場合につきましては、全ての傍受結果を機械的かつ確実に暗号化処理して記録するなどの特定電子計算機の有する機能によって、現行法で立会人が果たす役割は漏れなく代替されると考えておりまして、こうしたことで傍受の適正性は確実に担保されると考えております。これが大前提でございます。

 その上で、大臣が申し上げたのは、新たな方式による通信傍受では、技術的に高度な機器を使用することなどから、その適正かつ効果的な実施を担保するため、専門的知見を有する職員が必要な指導を行う体制を整えることを検討している、このように申し上げたかというように思います。

 もちろん、指導する職員が現場に存在するということの意味はいろいろあるわけでございまして、その新しい機器、さまざまな機能を有する高度な機器でもございますので、それが確実に適正に使用されるようにといったような観点からの配慮も必要でありますし、また、現場にそうした捜査に携わらない警察官あるいは技官等が存在することによって、傍受の適正といいますか、そうしたことについての意識というものがより向上するであろう、そうしたことも期待をするわけであります。

 そうしたもろもろの趣旨を含めて、そうした指導をする人間を現場に行かせようということを考えている、そういうことでございます。

井出委員 今の御答弁は、私は順番が逆だと思うんです。まず、傍受の適正な実施をきちっと担保するためにその指導をやっていただきたい。高度な機械の使い方というものは、そもそも捜査に入る前に実際に傍受する捜査員が知っておかなければいけない話であって、そこは実際、傍受のときは、もう確認的な意味合いだと思うんです。ぜひ頭の切りかえをお願いいたします。

 私がこれにどうしてこんなにこだわっているのかといいますと、衆議院では清水委員もおっしゃっていましたし、この間の参議院では民主党の小川先生が、通信傍受という捜査手法を、違法な濫用をするようなケースがあった場合に、その傍受記録も原記録も通知もしなくていいんだ、そっちは完全にブラックボックスだと。

 これまで十何年間の実績を見れば、慎重にやってきたとおっしゃられるのには私は一定の理解はしているんですけれども、そもそも、どんなに立会人の機能を万全に備えた機械がこれから開発されたとしても、機械を使うのは人なんですよ。人が何をするかというところをやはり人の目で見ていただきたい。

 ですから、私が八月五日にこの件をお願いしたときに、一定程度の頻度の巡回で、一旦そこに行った場合には、一定程度の時間滞在をしてその状況を見る、スポット傍受などが行われているかどうかといったところを確認するということを三浦局長はおっしゃっていただいているんですけれども、ぜひ、一定程度なんてそんな控え目なことを言っていないで、ちゃんと全件、全時間見ていただくように重ねてお願いをしますが、いかがでしょうか。

三浦政府参考人 今回、新しくそうした指導制度というものを考えているわけでありますけれども、その指導の内容としましては、まさに御指摘をいただきましたように、通信傍受の開始前あるいは実施期間中、特に実施期間中が重要だということかと思いますけれども、また終了後の各段階において、例えば、スポット傍受の実施状況の確認でありますとか、あるいは傍受記録の作成などを含む法令手続面に関する指導、あるいは傍受の現場における機器の設定、接続等の技術的な指導などを考えているところであります。

 こうした指導を行うに当たりまして、捜査官の経験や熟練度というのは事件ごとに異なりまして、指導の内容もさまざまと考えられますので、必ずしもその指導を行う者が常時その傍受場所に所在をする必要があるというところまでは今のところまだ考えていないわけでありますけれども、適時、巡回をするといいますか、現場に赴くことによりまして、そうした適正な実施というものがきちっとなされているかどうかということを常にチェックしていく。

 実施をしている側からすれば、いつ何どきそうした指導の者があらわれるかわからないといった緊張感を持たせるといったような意味合いもあると思いますけれども、そうした形で、適正な実施ということを外形的にも信頼していただけるように進めてまいりたいと考えております。

井出委員 また質問の機会もありますし、私は東大の野球部の出身でして、九十四連敗しても一勝をつかみに行く、そういう精神を持っておりますので、大変申しわけありませんが、引き続きおつき合いをいただきたいと思います。きょうは、三浦さん、ありがとうございました。

 そうしましたら、矯正医官の方の質問をしていきたいと思います。

 まず、矯正医官の件で具体的な要望をいただいておりまして、これをまず大臣初め法務省の方にお願いしたいんです。

 日本医師会が医学生向けに発行しているフリーペーパーで「ドクタラーゼ」というのがありまして、そこの担当の方が、この法案が通過したら医学生向けに募集に資するような記事を書きたい、取材したいという話がありまして、大臣、局長、また一線で活躍されている矯正医官の方なんかにぜひその取材に協力をしていただきたいと思います。つなぎ役は私がやりますので、私が取材を受けるよりよっぽどいいと思いますので、よろしくお願いをいたします。

 もう一点は、私も刑訴法をずっとやっていたせいか、矯正医官をやると言ったら、ある拘置所にいた方から、口内炎の薬を頼んだんだけれどもしもやけクリームしかもらえなかった、そういったお話をいただきまして、何か私も刑事司法の通報窓口みたいになってきたなという思いもあるんですが。

 矯正医官の待遇を改善していこう、少しでも数をふやしていこうということについては、私も大変結構だと思います。ただ、今現状で矯正施設での医師不足がいろいろなところにどれだけ影響を及ぼしているのか、そういうところをきょうは具体的に伺っていきたいと思うのです。

 矯正施設の目的というものは、裁判、刑の執行を受ける者を収容し、その人権を尊重しつつ適切な処遇を行うことが目的である。また、被収容者の改善更生等円滑な社会復帰を図って、再犯、再非行を防止することが一つ大きな使命だと思うんです。

 先ほどの鈴木委員の話にもあったんですが、やはりどうしても、税金を使って犯罪者の面倒を見るのか、何か入る前より健康になって出てきたとか冗談じゃない、そういう声が、確かに実際、残念ながらあると思います。私も聞いたことがありますし、それだけ実生活で苦労されている方が多いからだと思うんですけれども、実際に、この法案作成の前に、矯正医療の在り方に関する有識者検討会が平成二十六年一月に報告書を出しているんですが、その十七ページを見ても、「被収容者の健康の保持は国の責務ではあるが、犯罪者等に対する医療のために多額の税金を投入する必要はないという意見が存在することも否定できず、矯正医療は、国民からなかなか理解と賛同を得にくい領域であると思われる。」といったような記述もあります。

 矯正施設の医療体制、医療環境を考えるときにどうしても向き合わなければいけないのは、この刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律なんですが、例えばその百三条を見ますと、ここは、各種指導、被収容者に対する指導の部分なんですけれども、「刑事施設の長は、受刑者に対し、犯罪の責任を自覚させ、健康な心身を培わせ、並びに社会生活に適応するのに必要な知識及び生活態度を習得させるため必要な指導を行うものとする。」

 ですから、犯罪者を刑務所に収容するときに税金をそんなに使う必要はない、何でそんな健康管理をするんだ、そういう声を、まずはっきりときょうこの場で打ち消していただきたい、そのように思うのですが、大臣、いかがでしょうか。

奥野委員長 ちょっとその前に、警察庁はまだ要るんですか。(井出委員「さっき、ありがとうございましたと言ったので、大丈夫ですよ」と呼ぶ)

 では、上川大臣。

上川国務大臣 国民の皆さんに矯正医療に対しての理解をしっかり持っていただくということからも、大変大事な御指摘だというふうに思っております。

 矯正施設におきましての被収容者の健康保持、回復ということでありますが、先ほど御指摘いただいたとおり、適切な処遇を実施する極めて大事な基盤でございます。そして同時に、健全な社会復帰を可能にしていただくという意味で、再犯防止にもつながるというふうに思っております。

 さらに、被収容者の中には、結核とかC型肝炎ウイルス等の感染症に罹患している者が少なくない実態にございまして、刑事施設収容中にこうした患者に適切な治療を施すことによりまして、施設内においての安全衛生の確保と同時に、その者が社会復帰した後の二次感染防止という意味からも、国民生活にも大変直結した使命というものを有している、こうした側面もあるということについても御理解をいただきたいというふうに思っております。

井出委員 ありがとうございます。

 刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律をいろいろ見ておりますと、例えば、死刑が確定している被収容者に対してもその心情の安定をきちっと図っていかなければいけないですとか、そういうことがきちっと書いてありますので、私も、大臣と同じように、健康というものは基盤である、そういうふうに考えております。

 次に、小川矯正局長に伺いたいのですが、ですから、そんなに予算の問題でけちけちしている場合じゃないと私は思います。

 矯正施設医療関係費の予算を見てみますと、平成十七年度から二十六年度で、平成十七年度は三十三億二千四百五十七万八千円だった。それが、多少の増減、ばらつきはありますが、平成二十六年度の段階で六十億六百四十五万七千円と、倍近くにその予算がふえている。

 一方で、収容人数は減ってきている。

 収容人数が減っているにもかかわらず医療関係費はふえているということは、それだけ大変な状況なのかなと推測をしているんですけれども、この医療関係費が矯正施設関連の予算全体に占める割合と、それがまたこれからどう増減していくような見込みを立てているのか、教えてください。

小川政府参考人 お答えいたします。

 ただいま委員から御指摘ありましたように、被収容者に関連する矯正収容費の医療費の推移につきましては、被収容者数が減少に転じた平成十九年度以降も、平成二十七年度予算に至るまで、基本的には増加傾向にございます。その間、被収容者が三一%減少いたしましたけれども、それに対しまして医療費は四六%増加しております。

 その主な増加要因としましては、近年の矯正医官の欠員の増加に伴いまして、矯正施設内での診療が弱体化したり困難になっていることなどによりまして外部医療機関での診療等の経費が増加していることや、高齢受刑者が増加していることに伴いまして、矯正施設内の医療のみでは対応が難しい重い疾患が相対的にふえているという状況があるのではないかと考えております。

 全体の予算に占める割合でございますけれども、平成二十七年度におきまして、(組織)矯正官署という全体の予算が二千三百十五億一千八百万円ございます。うち医療費の予算が、平成二十七年度は、二十六年度から若干減りまして五十九億九千六百万円でございましたので、比率としては約二・六%という割合でございます。

 今後の見込み、見通し等はなかなか難しいところでございますけれども、本法案を初めとした医師を確保するための施策を行いまして、矯正医官の欠員状態を解消することができますと、外部医療機関における診療経費の削減にもつながっていくと考えております。

 他方、高齢受刑者の収容動向や疾病の動向によって増減額することもありますので、そのあたりの動向等も適切に把握し、予算に反映してまいりたいと考えております。

井出委員 今、外部の診療機関で受診をすることで経費がふえているというお話がありまして、そういう意味では、矯正医官の方が就職しやすい環境を今回の法律で整える、そして、病気にしても、そういうきちっと矯正医官が整った中で早期発見をすれば、治療費もそんなにかからないのではないのかなと思います。

 また、被収容者が収容から社会に復帰することを考えますと、今、出所者が出たときに、例えば年間二万五、六千人の出所者がいて、そのうちの半分ぐらいは家族や親族、知人のもとに保護される。だけれども、その五分の一が更生保護施設に入る。

 これは、更生保護施設、何の身寄りもなくて生活保護を受給されるような方もいると思いますし、私の地元、自分の家の近所には、生活保護を受けていて、重篤な認知症ですとか障害のある方が入るような施設もあるんですけれども、身寄りのない方がそういう保護施設に入るというような状況を考えたときも、やはり健康であるか否か、刑務所できちっと健康状態を保てば、外に出たときに、保護施設でかかる経費にもつながってくると思いますし、被収容者が社会に復帰する先を見据えても、健康にきちっと気を使っていただきたい、そういうふうに考えております。

 具体的なところを少し伺いたいのですが、刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律の六十一条で年に一度以上の健康診断が義務づけられているんですが、これは、年に一度やっているのか、それとも二回、三回とやっているのか、また、医師が不足してできない、矯正医官が足りなくて残念ながら二年に一回になっちゃっているとか、そういう影響が出ているかどうか、教えてください。

小川政府参考人 お答えいたします。

 刑事収容施設法六十一条に基づく健康診断につきましては、年一回、各施設において行っております。常勤医官等が欠員の施設もございますけれども、非常勤医師等の協力を得まして確実に実施しております。

井出委員 では、そちらへの影響はないと。

 続いて、同じ法律の百七十六条に、死亡した際の通知というものがあります。刑事施設の長は、被収容者が死亡した場合、法務省令で定めるところによって、遺族等に対して、その死亡の原因及び日時並びに交付すべき遺留物、支給すべき作業報奨金云々を速やかに通知しなければいけないと。

 この死亡の原因で、病気で亡くなってしまった、そこに直接的に、いや、ちょっと矯正医官がいなくてなかなか大変なんだというところまで伝えるのかどうかわからないんですが、死亡通知の部分で病死というものがふえてきているのか、医師不足、矯正医官不足の影響というものがあるのかないのか、そのあたりを伺いたいと思います。

小川政府参考人 お答えいたします。

 矯正施設におきまして被収容者が死亡した場合には、刑事施設及び被収容者の処遇に関する規則に基づきまして、刑事施設の長が行政検視を行うということになっておりまして、その際には、医師を立ち会わせ、その意見を聞かなければいけないということになっております。常勤医師がいる場合には常勤医師が立ち会う場合もございますし、いない場合には非常勤医師あるいは嘱託医等の協力を得るということも当然ございます。

 施設の中での死亡者につきましては、今、詳しい数字が手元にございませんけれども、年間三百人程度でございまして、特段増減はないという状況でございまして、矯正医官の欠員がふえていることによって何か影響を受けているということについては把握してございません。

井出委員 ここ十年ぐらい、今おっしゃったように、三百人前後、二百何十人だったときがあったり三百人を超えることもあるんですが、そういう増減を繰り返しているのかなというのが状況なんです。

 もう一つ、この法律の中で、百五十七条に不服申し立てという項目があるんですが、「刑事施設の長の措置に不服がある者は、」不服を申し立てて、「審査の申請をすることができる。」その一項三号で、診療を受けることを許さない、または、規定による診療の中止、この医療関係のところも不服の申し立てができるようになっております。

 矯正施設、刑事施設というのは、先ほどの質疑にもありましたが、刑事施設の長が医療を受診するかどうかを判断する。ですから、被収容者が、医者にかかりたいと。でも、ちょっと待ってくれ、うちは最近医者が足りないからちょっと今回は我慢してくれ、そういうことも現実としてあるかなと思うんですけれども、この不服申し立てのところで、そういう治療環境に関係するような不服の申し立ての事例というものがふえてきているのかどうか、そのあたりの実情を教えていただきたいと思います。

    〔委員長退席、伊藤(忠)委員長代理着席〕

小川政府参考人 お答えいたします。

 御指摘の刑事収容施設法百五十七条の一項三号に基づく審査の申請につきましては、指名医による診療、つまり、常勤の医師とかではなくて、もともと被収容者が社会内でお医者さんにかかっていて、そのお医者さんに診てもらいたいとか、そういった、医師を指名して診察を受けたい、治療を受けたいというふうな申し出をして、それについて施設の長がこれを許さなかったとか、あるいは中止をさせたというふうなことについて不服申し立てをするというふうな制度でございます。

 これにつきましては、指名医による診療の不許可処分を対象とする申し立ての数は年間で約三千件余りございますけれども、今手元にあるのは平成二十四年から二十六年の三年間の数字でございますけれども、特段ふえている状況にはございません。

 以上でございます。

井出委員 今、三千件という話があって、私も、数字だけ聞きますと、全体像がどれだけあるのかわかりませんが、医療関係の数は結構多いんだなというところを感じました。

 もう一つ、今度は、きょうは警察庁の村田総括審議官に来ていただいているんですが、この刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律というものは、警察の留置場についても、刑事施設、刑務所と中身の細かいところは違いますけれども、似たような構成で留置人の処遇について細かく規定をしております。当然、医療の関係もあるんですが、今回は矯正施設ということで、法律改正の部分に留置場は入らないのかな、矯正医官のフレックスタイムとかは留置場に関係ないと思っているんですけれども、この機会に、留置場の医療環境、今、矯正施設では医師不足が問題になっているから、それに対してこういう法律改正をしようと思っているんですけれども、留置場の医師の定員ですとか医師不足ですとか、そのあたりの現状を教えていただきたいと思います。

村田政府参考人 お答えいたします。

 警察の留置施設におきましては、常勤の医師がいないことから、外部に委嘱した医師が被留置者の健康診断を行っております。

 また、被留置者から持病や体調不良の申し出があった場合、これらの場合には、外部の医師による診察を受けさせるということのため、診療護送を実施して、適切な医療を迅速に受けることができるようにしております。

 被留置者でございますけれども、平成二十六年で申し上げますと、延べ人員で約三百四十八万人、一日にいたしますと約九千五百人であります。また、健康診断などを委嘱している医師の数につきましては、約千六百人となっております。

井出委員 基本的には外部に委嘱をされているということなんですけれども、延べ三百四十八万人、一日当たり九千五百人、今そういう数字をいただいたんですけれども、現場として、医療の要望が多いのになかなか外部に持っていく機関がないですとか、留置人を外部に診察させるとなると、それなりに、逃走をしないようにやらなきゃいけないと思うんですけれども、そのあたりの困難、苦労というのは現場であるのかないのか、教えてください。

村田政府参考人 お答えいたします。

 そういった被留置者の医療上の要求につきましては適正に毎日見ておりますので、違うことを言う場合もあるのかもしれませんけれども、基本的には、体制をとって外部の診療機関に適時適切に連れていくということを行っております。

井出委員 訂正ですか。どうぞどうぞ。

    〔伊藤(忠)委員長代理退席、委員長着席〕

小川政府参考人 先ほどの審査の申請の関係で若干数字の間違いがございました。

 三千件余りと申し上げましたのは、百五十七条に基づく審査の申請の総数のうち、各管区長に対して申請があった件数でございます。

 お尋ねは百五十七条一項三号の医療の関係でございますので、指名医関係での審査の申請の件数につきまして申し上げますと、管区長に対するものは、平成二十四年、二十九件、二十五年、三十五件、二十六年、六十六件ということでございます。また、法務大臣に対する件数は、二十四年が十六件、二十五年が十三件、二十六年が十三件でございます。

井出委員 今回は矯正施設の常勤医師の確保という趣旨での法律改正なんですが、この刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律、矯正施設だけではなくて、留置場ですとか海上保安庁の収容施設といったものの収容環境というものが書かれておりますので、ぜひ、今回の議論を機に、幅の広い問題意識を持っていただきたい、そのように思います。

 次に、先ほどもちょっと話にありました受刑者の高齢化なんですが、矯正局からいただいている資料ですと、平成十七年から二十六年の間に、高齢化率、六十歳以上の受刑者が、平成十七年に一一・六%だったのが、平成二十六年で一八・四%になったと。処遇上の配慮として、刑務作業時間の短縮、食事の配慮、食事、入浴等の介助、保温のための衣類の増貸与などが挙げられているんですけれども、例えば、認知症と診断されている方は少ないみたいなんですけれども、認知症が疑われるような方というのはもう少しいるのかなと思いますし、認知症の疑いがあるときに、認知症かどうかわからぬと。

 一番気になるのが刑務作業時間の短縮なんですけれども、作業時間の短縮というのは、刑にちゃんと服して更生ということを考えると、刑の作業時間はきちっと全うしてもらわなきゃいけない。ですが、一方で、やはり被収容者の身体的なことを考えれば、刑務の作業時間の短縮ということも当然考えなければいけないんですけれども、そのあたりは、何か問題意識を現場で共有されているというか、どんなような対応になっているのか、小川局長に伺いたいと思います。

小川政府参考人 お答えいたします。

 お尋ねは、認知症の可能性があるような高齢者についての刑務作業の状況ということでございまして、やはり、なるべく軽い作業を実施させるだとか、あるいは単独で生活させるよりも集団で生活させた方が認知症の進行も遅いということもありますので、なるべく集団で処遇するとかということで、養護工場というふうに言いますけれども、そういった軽作業中心の工場を設けて、そこで作業を行わせるというふうなことを各施設で行っております。

 作業時間等につきましても、各施設の裁量の中で健康に留意しながら実施しているという状況でございまして、統一的な決まりなりがあるわけではございませんけれども、共通認識のもとで各施設で配慮、努力をしているという状況でございます。

井出委員 この刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律の三十条で、受刑者の処遇の原則というのがありまして、「受刑者の処遇は、その者の資質及び環境に応じ、その自覚に訴え、改善更生の意欲の喚起及び社会生活に適応する能力の育成を図ることを旨として行うものとする。」

 私、この条文を見たときに、認知症ですとか病気、けが、そういったものがあると、冒頭の資質にかかわってくるのかなと。「その自覚に訴え、改善更生の意欲の喚起及び社会生活に適応する能力の育成を図ることを旨として」ですから、認知症ですとかいろいろな病気で体や心に問題が発生してくれば、それだけ改善更生も、資質や環境に応じて、元気な人より、そこの改善更生の部分が、若干、求めるレベルが高いものを求められなくなる、そういう条文の理解をしたんですけれども、これはそういうことでいいんですかね、三十条というのは。

小川政府参考人 御指摘のとおりでございまして、やはりそれぞれの体力であるとか健康状態であるとかということも加味して考えて、それぞれが対応できる、適応できる範囲内で改善更生を目指すということだと思いますので、当然、被収容者の状況によってそのレベルを変えたりだとか、あるいは達成度を変えていくということに配慮しながら処遇をしていくということになると思います。

井出委員 今お話あったように、社会復帰をして改善更生をするためにも、やはり健康であって、冒頭大臣が言っていただいたように、健康というものを基盤にしていくことが大事だと。そのために若干でもこの法律改正が資するものだと思っておりますので、私も、またこっちの問題にも刑訴法同様関心を持っていきたいと思います。

 きょうはどうもありがとうございました。

奥野委員長 次に、清水忠史君。

清水委員 日本共産党の清水忠史でございます。

 きょうは、矯正医官の兼業及び勤務時間の特例等に関する法律案について、法務省矯正局並びに法務大臣の見解を尋ねたいと思います。

 この法律は、矯正施設、刑務所、拘置所、少年院など、現二百九十三カ所に勤務するお医者様、医師の恒常的な人員不足の解消を目的として、兼業緩和やフレックスタイム制の適用など、国家公務員法等の枠組みを緩和する特例法ということで、既に参議院先議で全会一致により通過をしております。

 慢性的な医師不足というのはそのとおりであり、その確保のために兼業緩和やフレックスを導入するということは当然のことであり、私たちも反対するものではありません。

 ただ、今から十二年前、二〇〇三年、行刑改革会議第三分科会第一回会議に出されたアンケート、いわゆる矯正医官の方々の生の声をつづったアンケートを読ませていただきますと、十二年前の時点で、医師の確保については、「待遇を破格にするか、条件をもっと緩和する必要がある。」こういう声が出ておりましたし、率直な意見もありまして、これは勤務時間のことについてなんですけれども、「守れない規則を作って守らないより、現実的な守れる規則を作るべき。」という意見なども出ておりました。

 当時は今のように二割以上の欠員が出ているというような状況ではありませんでしたが、本来ならばもっと早くこうした立法を行うべきではなかったのかというふうにも思っております。

 もちろん、矯正医官を確保するということは大事なんですけれども、医師がいれば矯正医療がそれで全て完結するということではないというのも事実だと思うんですね。本法案の成立により、いわゆる矯正医療全体にかかわる体制の整備にどのような効果、影響が見込まれるのかということについても確認をさせていただきたいと思います。

 有識者検討会の報告書では、施設の老朽化、一般の医療水準に見合った最新の医療機器が整備されていないこと、さらには医療刑務所でさえ設備が十分でないということなどが指摘されているわけなんですが、まず、法務大臣、今後、医官の確保はもとより、こうした施設の整備、あるいは医療機器、医薬品、医療資材、こうした確保等についてどのように取り組んでいかれるつもりか、お考えを聞かせていただけるでしょうか。

上川国務大臣 ただいま御指摘いただいた平成二十六年一月に提出されました矯正施設の医療の在り方に関する報告書におきましても、矯正施設の医療設備、機器が十分でないこと、また施設の老朽化などが医師不足の一因となっている、こうした御指摘を受けているということについては承知をしているところでございます。医師の医療行為にとって、医療機器、医薬品が整っているというのは大変大事なことであるというふうに思っております。

 医療設備、機器につきましては、その施設の医療体制でありますとかあるいは収容動向、さらには使用頻度などを総合的に勘案しながら整備をしているところでございますけれども、被収容者に適切な医療を提供するだけではなくて、先ほど申し上げたように、医師の確保あるいは医療の技術の維持向上のためにも重要であるというふうに認識をしているところでございまして、行財政の事情も十分に踏まえながらということでありますが、適切な医療設備、機器の充実を図ってまいりたいというふうに思っております。

 また、施設の老朽化についてでございますけれども、これにつきましても、国民の理解を十分にいただきながら必要な施設整備につきまして進めてまいりたいというふうに思っております。医療施設の老朽化等につきましては、現在、平成二十九年度開設に向けまして、国際法務総合センターの中に、八王子医療刑務所、関東医療少年院及び神奈川医療少年院を集約した形での矯正医療センターの整備を進めているところでございます。こうした取り組みにつきましても積極的にやってまいりたいと思っております。

清水委員 私、きょうの質疑を前に、おととい、兵庫県加古川市にあります少年施設加古川学園、播磨学園の方を視察させていただきまして、両園長や職員の方々とお話をさせていただき、医務室も含めて視察をさせていただきました。比較的築年数の浅い少年施設ですからほかに比べると設備は行き届いているのかなというような印象を受けましたが、全国的には建物全体が築九十年を経過した施設もあるということです。

 ですから、国民の理解を得てということも重要ですし、その予算をどう確保するかということも重要ではありますけれども、やはり矯正医官が本当に必要な医療を矯正施設において実施することができる環境を整えていくということは極めて重要なことだと思いますので、ぜひ努力を進めてもらいたいと思っております。

 具体的にお伺いさせていただきます。

 矯正施設内における病室、あるいはこれはもちろん執務室もそうなんですけれども、冷房設備のない施設が多数あるとされております。矯正施設における病室、いわゆる患者、受刑者や非行少年を必要に応じて休息させる、そうした病室に真夏の暑いときに冷房設備がない。こうしたことは患者の健康管理上好ましくないという指摘もあるわけなんですけれども、これは、矯正局、どのように認識されているんでしょうか。

小川政府参考人 お答えいたします。

 矯正施設の中には、病室等に冷房設備が整備されていない施設があることは承知しております。矯正施設には医療上室温管理を必要とする者を収容することもありますので、当該施設所在地の気候の状況にもよりますけれども、冷房設備あるいは暖房設備等を設置することが必要であるというふうに考えております。

 これまでも各施設の必要性に応じまして冷暖房設備等を整備してきているところでございますけれども、被収容者の健康の保持は被収容者を強制的に収容している国の責務でありますので、引き続き、これも行財政事情を踏まえつつということになりますけれども、国民の理解を得て適切に対応していきたいというふうに考えております。

清水委員 被収容者というふうにおっしゃるんですけれども、例えば拘置所における未決拘禁者は罪証隠滅と逃亡の防止のために収容されているわけですし、受刑者は、大臣も述べられておりますが、自由を拘束する、行動の自由を奪う禁錮や懲役刑を科しているわけで、健康を侵害する刑を受けているわけではないわけですよね。真夏の暑いときに、しかも患者を冷房設備のない病室に置いておくということ自体はやはり問題ですし、早急に改善が求められるのではないかと指摘をしておきたいと思っております。

 ことし七月末に、和歌山県にあります大阪刑務所丸の内拘置支所で、男性三人が熱中症と見られる症状で病院に搬送され、うち四十代の男性が亡くなっています。居室にはエアコンがなく、刑務作業をしていた際に体調を崩したと報じられております。このことについて、どのように受けとめておられるんでしょうか。

小川政府参考人 御指摘のありましたように、和歌山市内にあります丸の内拘置支所におきまして、熱中症の疑いで外部医療機関に搬送された者が三名ございまして、二名につきましては既に症状は回復しておりますけれども、残念ながら、一名の者については搬送先の外部医療機関で死亡が確認されました。死因につきましては急性循環不全というふうに承知しております。

 熱中症対策についてでありますけれども、暑さが年々厳しくなってきておりますので、ますます熱中症対策が重要になってきているというふうに考えておりまして、従前から、各施設に対しまして熱中症対策を指示しているところでございますけれども、今般、熱中症の疑いによる救急搬送が続いた、また死亡者も出たということを深刻な事態として受けとめておりまして、改めて、全国の矯正施設の施設長に対しまして、矯正局長名と、それから担当課長等の名前で通知を出しております。

 内容としましては、発症リスクの高い者等に対する配慮であるとか、重篤な患者に対する速やかな診察であるとか、水分補給、気温や湿度に対する配慮など、従来から行ってきていることでございますけれども、そういった熱中症対策の徹底及び改善を指示したところでございます。

清水委員 今局長がおっしゃられた通知というものを、きょう、資料でお渡しさせていただいております。

 一枚目が矯正局長の名前で施設の長に出された通知ですね。赤線を引っ張っております。「熱中症対策について」というところで、「さらに、体温の急激な上昇、脱水症状、意識障害、痙攣等の重篤な症状を有している場合は、速やかに医師の診察、外部医療機関への搬送等の措置を講じるなど、熱中症対策に万全を期すようお願いします。」こうあるんですね。

 私は、これを読んで、すごく違和感を感じました。非常に危険な状況じゃないですか、いわゆる意識障害とかけいれんを起こしている。こういう状況にある場合は、速やかに医師の診察を行うどころか、一一九番して病院搬送しなければならないような場面だと思うんですね。こうなってから速やかに医師の診察というのが出てくるわけで、本来ならばこうなる以前に適切な診察なり処置をするべきで、裏を返せば、このような重篤な状態にならないと診察もできない、病院にも搬送されないということでは本当に再発防止になるのかなという疑問が湧いてきます。

 二枚目をごらんください。これは、さらに、その具体的運用について留意すべき事項ということで出された通知なんですね。これもあの死亡事故を受けて出されたものなんですけれども、その一番というところを見てください。何と書いているか。「節水の意識以上に、熱中症対策を意識すること」。

 私は、これを読んで、驚きました。受刑者なり被収容者に水分補給させることと節水を比較して書いているということに、私は非常に驚きを持ちました。こう書いているんですね、「節水以上に熱中症対策が重要であることは言うまでもない。」と。言うまでもないということをわざわざここに記しているということを見まして、これでは私は本当に熱中症対策になるのかなと。

 扇風機を設置するとかうちわを貸与するということも別のところで言われているんですけれども、その他どういう対策を講じるかということで、一番最後のページに、これは法務省矯正局の方が環境省熱中症予防情報サイトというところを引用して、いろいろ、注意すべき目安だとか、どのように対応しろというのをずっと書かれているんですが、適切に冷房を使用するというのが出てこないんですよ。これは環境省は一番最初に言っていますよ、適切に冷房を使用すると。

 つまり、私は、先ほど、必要性を認め、しかもこうしたさまざまな対策が必要であるにもかかわらず、予算だとかあるいは国民の理解だとかいう以前に、被収容者の健康管理の基本の部分にしっかりと対応していくということが大事だと思いますし、果たしてこの通知だけで十分と言えるのかというのは非常に問題があるというふうに思っております。

 局長、本当にこの通知で対策は十分なのかどうか、その実効性について確認しておきたいと思います。

小川政府参考人 お答えします。

 委員御指摘のように、本年八月五日付で、本職、課長等の通知をもって、現在想定できる対策ということで指示をしているところでございます。

 熱中症は、当日の気候だけでなく、被収容者の年齢、体力、疾患等の有無が影響することもありますので、これで矯正施設における熱中症患者の発生が全てなくなるとは言い切れないところがございます。

 ただ、被収容者の健康の保持は被収容者を強制的に収容している国の責務でありますので、引き続き、その年の気候等を注視する、さらに、気温の上昇が予想される場合には問題意識を持って水分補給や休養等の事前の対策を早目に講じる、また、熱中症または熱中症の疑いの患者が発生した場合には速やかに医師の診察を受診させたり外部医療機関に搬送するといった措置を講じるように各施設に対する指導を徹底してまいりたいと思いますし、委員の御指摘も踏まえて、さらに進展させるべきことがあれば進展させていきたい、徹底させていきたいと考えております。

清水委員 ぜひお願いしたいと思います。

 大臣に、この問題で一問お伺いしたいと思います。

 私が先日視察を行いました少年施設では、精神的なことからくる不眠症状を訴える少年もいましたし、それから皮膚疾患、水虫も含めてさまざまな症状を訴える入所者が後を絶たないということなんですね。

 しかし、診察日や診療時間というのは限られておりますから、一日に五十件、六十件という診療件数をこなすことができずに、結局、当日には受診できずに翌日以降に回されるという被収容者もいるということで、思うように診察をしてもらえなかったということで、施設の長に対して苦情の手紙を出す頻度も非常に高まっていると伺いました。

 例えば打撲や捻挫の場合、ひょっとしたら骨折しているかもわからないというケースもあるわけですね。しかし、それを確認するためにはレントゲンを撮らなければわからないわけですが、先ほども申し上げましたように、全ての矯正医療施設にレントゲン機器があるわけではありません。

 被収容者が診察なり検査を希望する場合は、速やかに必要な措置をとることが求められていますし、必要であれば外部医療機関でそのことを行うということが重要だと思うんです。刑務官やその他職員の恣意的な判断や介入によって、おまえ、詐病と違うんかとか、そんな大層に痛がる必要はないだろうとか、もうちょっと我慢できるはずだという判断や介入によってそうしたことが遮られるようなことになると、矯正医療の本質とか独立性というものが奪われていくことになりかねないと思います。

 そういう点で、被収容者の希望に応じて、また医師の判断が必ず尊重される、そういう矯正医療体制を構築していくということが非常に重要だと思いますが、いかがでしょうか。

上川国務大臣 そもそも、病気の状態についての判断をし、またそれに対して的確に治療を施すというのが医師の専門性そのものであるということでありまして、これはどの医療施設におきましても、あるいは医療に携わる先生方共通のことであるというふうに思います。その意味では、矯正施設でも同じように施されるべきものだというふうに基本的に考えております。

 患者さんとの間の信頼関係は非常に大事であるということで、その意味で矯正医官の大変重い役割というのがあるということでございまして、ここのところに、先ほど詐病という話がありましたが、現実にそうしたクレームのような形で行われることもあるということをしっかりと見抜いて、的確に判断をし治療していく、こういったことができるようにしていくということ、これを絶えずチェックしながら維持していくということは重要であるというふうに考えております。

清水委員 まさしく病状を診断するのは医師であり、そこがしっかりと尊重されなければ信頼関係というものも崩れていくというふうに思いますので、しっかりと指導をお願いしたいと思います。

 次の問題に移ります。

 本法案が施行されることによって、第四条にも書かれておりますけれども、兼業許可の特例につきまして、内閣官房令そして法務省令で矯正施設における勤務時間に基準が設けられることになったということですね。矯正施設内にこれだけは矯正医官の方は勤務してくださいねと。

 具体的には、矯正施設内における医師の勤務時間についてさらに詳しい規定を設ける見込みというのはございますか。矯正局、お答えください。

小川政府参考人 詳細については、内閣官房令、法務省令、今後検討するということになりますけれども、最低限どういった服務をしてもらうかなどにつきまして細則を定めることになると考えております。

清水委員 もちろん、兼業緩和だとかフレックスの適用といいましても、矯正施設内での勤務時間が著しく短いということでは、いわゆる法案の趣旨ともたがえるわけですから、一定の勤務時間をお願いするというのは、法務省令になるにしろ、あるいは通達にしろ、非常に重要なことだと思っております。

 ただ、そうした矯正施設内での勤務時間の規定がより厳格になることによって、現在常勤の矯正医官を派遣してくれている例えば医大から、この法施行に伴う省令などが規定されることをもって、そんなに長い時間拘束されてしまうと、大学内でいわゆる研修や研さん、医師としての技能の維持や向上ができなくなる、研修の時間が十分保障できなくなるので、常勤医師として今後同様に派遣し続けるのはなかなか難しいというようなことになり、施設から現在勤めている常勤医師が引き揚げるというようなことになっては本末転倒だと思うんですね。

 医官を確保するための法律なのに、この法施行によって医官が減少してしまう、これは避けなければならないというふうに思うんですね。このことについては、どうでしょうか。

小川政府参考人 お答えいたします。

 まず、先ほど申し上げましたように、内閣官房令、法務省令、あるいはそれ以下の下位法令におきましてどういうふうに定めるかにつきましては、これから検討することになりますけれども、現在矯正施設に勤務していただいている常勤医師の方々に引き続き矯正施設で勤務していただくことも重要であります。したがいまして、矯正施設における医療体制の確保に配慮しながら、現在の常勤医師が勤務しにくくなる事態が生じることはできるだけ避ける必要があるというふうに認識をしております。

清水委員 まさしくそのとおりだと思うんですね。

 もし常勤医師がいなければどうなるのか。私が視察しました加古川学園、播磨学園は常勤医師が一名おられますので、現在、加古川学園医務課診療所ということで診療所の資格があるわけなんですね。常勤医師がいなくなると診療所の開設もできませんし、診療所としての資格を失うわけなんです。では、診療所でなくなるとどういう弊害が起こるかというと、施設内薬局を置けなくなるんですね。処方箋を出して、そこで薬を出すということができませんから、外部薬局で購入しなければならなくなり、手間もそれから費用もかさむということなんですね。

 ですから、もちろん非常勤の医師で何とかカバーしていく、現況そうした施設も多数あると思うんですけれども、わざわざ、今何とか維持している診療所が、常勤医師が引き揚げることによってさまざまな医療の機能を失っていくということになってはいけないと思いますし、今の矯正局長の答弁も、そうした事態については避けなければならないというお話がございました。

 内閣官房令や法務省令であらかた決めるんでしょうけれども、法務大臣訓令という形で、この勤務時間等についてさらに定めていくことにもなろうかというふうに思っております。

 そこで、繰り返しになるんですが、最後に、この問題で大臣にお伺いさせていただきたいと思います。

 今回の法施行で兼業緩和ということなんですが、全ての矯正医官が兼業を希望しているかどうかということについても私たちはよく見ておかなければならないと思うんですね。いや、兼業は別に希望していない、今の給料で十分です、平成二十四年からの公務員給与の一律カットというのももう終わりましたから従前の給料水準に若干戻っているわけなので、兼業するよりは今のペース、いわゆる矯正施設での診療と、そして例えば大学などでの研修、こうしたものを引き続きやっていきたいという医官がどういう思いでいるのかということについてもしっかり捉えなければなりませんし、そうした声に応えていくということは重要だと思っております。

 矯正医官を確保するための法律の施行によって今言いましたような弊害が生じることのないように、ぜひ法務大臣としてもできる限りの努力、柔軟な対応をお願いしておきたいと思うんですが、いかがでしょうか。

上川国務大臣 今回の法律案によりまして、常勤医師がそれぞれの矯正施設の中でしっかりと本来の目的を果たしていただくことができるような、そうした制度になるように全力で取り組んでまいりたいというふうに思っております。

清水委員 よろしくお願いいたします。今の答弁で大丈夫ですね。私が確認するのもあれですけれども、ぜひよろしくお願いします。

 それで、最後の残された時間で確認したいのは、やはり矯正医官や矯正施設での医療についての国民的な理解、広報活動、啓蒙活動だと思うんですね。それは、医師を目指す学生やそういう人たちだけに広報するというより、やはり国民的な理解がなければ私はなかなかうまくいかないというふうに思っております。実際、私も、矯正医官と耳だけで聞いて何のことかわかりませんでしたので、初めてしっかりと勉強して矯正医官の大切さというのを理解しているところです。

 そして、この法律では、国が広報活動、啓蒙活動を通じて矯正医療の重要性に対する国民の関心と理解を深めるように努めなければならないということにしています。

 昨年の三月に参議院の法務委員会の方で、そうした広報活動が必要で、世間にもっと知っていただくことが大事だという答弁が既にあるわけですが、例えばこの一年間の広報活動や啓蒙活動の取り組みについて、端的に御紹介いただけるでしょうか。

小川政府参考人 お答えいたします。

 この一年間の広報、啓蒙活動について概略を申し上げますと、本年四月には、矯正施設の医療の重要性に関する国民的な周知、理解に向けてより一層積極的な取り組みを行うことを大臣から御指示いただきまして、矯正施設におきましては、地域医療機関等との協議会を開催したり、所在地の医師会あるいは医療機関に対して矯正医療の特殊性、困難性について丁寧に説明を実施するなどしております。

 また、矯正管区におきましては、矯正管区長が大学医学部等に行きまして矯正医療について講義をするといった機会をつくっておりまして、矯正医官に関する広報を各方面で積極的に実施したり、インターネットの医師求人サイトに広告を掲載するなどしております。

 また、矯正局におきましても、医学関係の各種学会に広報ブースを出展するなどして広報に努めているところでございます。

清水委員 最後は要望して終わりたいと思います。

 広報活動について、費用も限られていると思うんですけれども、やはり効果的に行っていくという点で一つ提案したいのは、ショートムービーですね。法務省のインターネットサイトなどにショートムービーなどをつくる。できたら有名人を矯正医官にしたドラマ風の仕立てにして、そして被収容者との心の触れ合いや信頼関係などにもフィーチャーして、矯正医官という職業の役割や意義についてできるだけ多くの国民に認知してもらえるような効果的な広報活動というものをぜひ検討していただきたいと思いますし、私、アイデアがありますので、詳しく聞かせろということであれば、別途御報告もさせていただきたいと思いますので、このことを要望して質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

奥野委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

奥野委員長 これより討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 内閣提出、参議院送付、矯正医官の兼業及び勤務時間の特例等に関する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

奥野委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

奥野委員長 この際、ただいま議決いたしました本案に対し、盛山正仁君外四名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、維新の党、公明党及び日本共産党の共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を聴取いたします。山尾志桜里君。

山尾委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表いたしまして、案文を朗読し、趣旨の説明といたします。

    矯正医官の兼業及び勤務時間の特例等に関する法律案に対する附帯決議(案)

  政府は、本法の施行に当たり、次の事項について格段の配慮をすべきである。

 一 矯正施設における適切な医療の提供は、被収容者の身柄を強制的に拘禁している国の責務であることに鑑み、矯正医官の減少により医療の提供が危機的な状況にある現状を重く受け止め、関係機関との連携を更に強化し、常勤の矯正医官の確保に万全を期すとともに、医療の提供体制の在り方について今後も検討を進め、一層の改善を図ること。

 二 矯正医官には原則として当直勤務がないことなどに加え、本法により勤務時間の見直し等の待遇改善が図られ、男女ともに家庭と仕事の両立がしやすい勤務環境が整備されることを受け、多様な人材の矯正医官への積極的な登用を進めること。

 三 国の責務として、矯正医官の勤務条件の改善等の措置を講ずるよう努めなければならないこととされていることに鑑み、矯正医官が誇りを持って職務を果たすことができるような執務環境や女性医師が勤務しやすい環境等の整備に努めること。

 四 本法による兼業許可の特例の趣旨が医療を通じた地域社会への貢献及び医療知識・技術の維持・向上にあることを踏まえつつ、矯正医官の兼業によりその職務に不都合が生じることのないよう、兼業許可の適正な運用・管理に努めること。

 五 診療所の管理には常勤医師が必要とされることを踏まえ、本法による兼業許可の特例について、内閣官房令・法務省令で矯正施設における勤務時間に基準が設けられることにより、診療所である矯正施設において医療の円滑な提供に支障が生じることのないよう、柔軟な対応に努めること。

 六 本法により勤務時間の見直し等の待遇改善が図られた矯正医官のほか、国家公務員及びそれに準ずる身分で医療職に従事する医師の待遇改善についても、検討すること。

以上であります。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

奥野委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

奥野委員長 起立総員。よって、本動議のとおり附帯決議を付することに決しました。

 この際、ただいまの附帯決議につきまして、法務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。上川法務大臣。

上川国務大臣 ただいま可決されました矯正医官の兼業及び勤務時間の特例等に関する法律案に対する附帯決議につきましては、その趣旨を踏まえ、適切に対処してまいりたいと存じます。

    ―――――――――――――

奥野委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

奥野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

奥野委員長 次回は、来る二十八日金曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    正午散会


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