衆議院

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第41号 平成27年12月4日(金曜日)

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平成二十七年十二月四日(金曜日)

    午前十一時三十分開議

 出席委員

   委員長 奥野 信亮君

   理事 安藤  裕君 理事 井野 俊郎君

   理事 伊藤 忠彦君 理事 門  博文君

   理事 山下 貴司君 理事 山尾志桜里君

   理事 井出 庸生君 理事 漆原 良夫君

      大串 正樹君    大塚  拓君

      門山 宏哲君    菅家 一郎君

      木村 弥生君    小松  裕君

      今野 智博君    白須賀貴樹君

      田所 嘉徳君    辻  清人君

      冨樫 博之君    中谷 真一君

      長尾  敬君    藤原  崇君

      古田 圭一君    宮川 典子君

      宮澤 博行君    宮路 拓馬君

      簗  和生君    山口  壯君

      若狭  勝君    黒岩 宇洋君

      階   猛君    鈴木 貴子君

      柚木 道義君    重徳 和彦君

      大口 善徳君    國重  徹君

      清水 忠史君    畑野 君枝君

      上西小百合君

    …………………………………

   法務大臣         岩城 光英君

   総務副大臣

   兼内閣府副大臣      松下 新平君

   法務副大臣        盛山 正仁君

   文部科学副大臣      義家 弘介君

   厚生労働副大臣    とかしきなおみ君

   法務大臣政務官      田所 嘉徳君

   最高裁判所事務総局刑事局長            平木 正洋君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  向井 治紀君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 露木 康浩君

   政府参考人

   (総務省大臣官房審議官) 宮地  毅君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 高嶋 智光君

   政府参考人

   (法務省大臣官房司法法制部長)          萩本  修君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    小川 秀樹君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    林  眞琴君

   政府参考人

   (法務省矯正局長)    小川 新二君

   政府参考人

   (法務省保護局長)    片岡  弘君

   政府参考人

   (法務省人権擁護局長)  岡村 和美君

   政府参考人

   (法務省訟務局長)    定塚  誠君

   政府参考人

   (法務省入国管理局長)  井上  宏君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           義本 博司君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           吉本 明子君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           吉田  学君

   法務委員会専門員     矢部 明宏君

    ―――――――――――――

委員の異動

十月九日

 辞任         補欠選任

  盛山 正仁君     田所 嘉徳君

十二月四日

 辞任         補欠選任

  宮川 典子君     大串 正樹君

  宮崎 謙介君     白須賀貴樹君

  宮路 拓馬君     木村 弥生君

  簗  和生君     長尾  敬君

同日

 辞任         補欠選任

  大串 正樹君     宮川 典子君

  木村 弥生君     宮路 拓馬君

  白須賀貴樹君     中谷 真一君

  長尾  敬君     簗  和生君

同日

 辞任         補欠選任

  中谷 真一君     小松  裕君

同日

 辞任         補欠選任

  小松  裕君     宮崎 謙介君

同日

 理事盛山正仁君十月九日委員辞任につき、その補欠として門博文君が理事に当選した。

    ―――――――――――――

九月二十五日

 一、外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律案(内閣提出第三〇号)

 二、出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律案(内閣提出第三一号)

 三、総合法律支援法の一部を改正する法律案(内閣提出第五七号)

 四、民法の一部を改正する法律案(内閣提出第六三号)

 五、民法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案(内閣提出第六四号)

 六、裁判所の司法行政に関する件

 七、法務行政及び検察行政に関する件

 八、国内治安に関する件

 九、人権擁護に関する件

の閉会中審査を本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 理事の補欠選任

 政府参考人出頭要求に関する件

 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件


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     ――――◇―――――

奥野委員長 これより会議を開きます。

 理事の補欠選任についてお諮りいたします。

 委員の異動に伴い、現在理事が一名欠員となっております。その補欠選任につきましては、先例により、委員長において指名するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

奥野委員長 御異議なしと認めます。

 それでは、理事に門博文君を指名いたします。

     ――――◇―――――

奥野委員長 この際、岩城法務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。岩城法務大臣。

岩城国務大臣 このたび、法務大臣に任命されました岩城光英です。どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 法務行政は国民の皆様の安全、安心な生活を守る基盤であり、まずもって、堅実に職務を遂行していかなければならないと考えております。

 他方で、国民生活を取り巻く状況は国内外で急速に変化しており、法務行政も、新たな課題を的確に捉えて対応していかなければなりません。

 委員長を初め委員の皆様方には、日ごろから法務行政の運営に格別の御尽力を賜っております。盛山正仁副大臣、田所嘉徳政務官と協力し、法務省職員と一丸となってさまざまな課題に取り組んでまいりますので、より一層の御理解と御協力を賜りますよう、よろしくお願いを申し上げます。(拍手)

奥野委員長 次に、盛山法務副大臣及び田所法務大臣政務官から、それぞれ発言を求められておりますので、順次これを許します。盛山法務副大臣。

盛山副大臣 法務副大臣の盛山正仁でございます。

 法務行政の諸課題については、いずれも国民生活の基本、根幹にかかわる重要なものばかりでございますので、田所法務大臣政務官とともに、岩城法務大臣を支え、精力的に取り組んでまいります。

 奥野委員長を初め、理事、委員各位の御指導と御協力をよろしくお願い申し上げます。(拍手)

奥野委員長 次に、田所法務大臣政務官。

田所大臣政務官 法務大臣政務官の田所嘉徳でございます。

 ますます重要性を増しております法務行政を前進させるために、岩城大臣そして盛山副大臣のもとでしっかり取り組んでまいります。

 奥野委員長、そして理事の皆さん、委員の皆さんの御指導、御協力をよろしくお願い申し上げます。(拍手)

     ――――◇―――――

奥野委員長 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 各件調査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官向井治紀君、警察庁長官官房審議官露木康浩君、総務省大臣官房審議官宮地毅君、法務省大臣官房審議官高嶋智光君、法務省大臣官房司法法制部長萩本修君、法務省民事局長小川秀樹君、法務省刑事局長林眞琴君、法務省矯正局長小川新二君、法務省保護局長片岡弘君、法務省人権擁護局長岡村和美君、法務省訟務局長定塚誠君、法務省入国管理局長井上宏君、文部科学省大臣官房審議官義本博司君、厚生労働省大臣官房審議官吉本明子君及び厚生労働省大臣官房審議官吉田学君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

奥野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

奥野委員長 次に、お諮りいたします。

 本日、最高裁判所事務総局平木刑事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

奥野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

奥野委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。階猛君。

階委員 民主党の階猛です。

 きょうは、岩城新法務大臣、文科の義家副大臣、そして総務省兼内閣府の松下副大臣、よろしくお願いいたします。

 最初に、私のきょうの質問の問題意識をお話ししたいと思います。

 日本国憲法は、御案内のとおり、国家統治の仕組みとして三権分立ということを定めているわけです。国家権力の抑制と均衡を図って、国家権力の暴走によって国民の権利が侵害されないようにという趣旨です。

 ところが、最近は、今の国会の情勢もそうですけれども、憲法五十三条の規定に反して立法府である国会は開かれない。また、それによって、行政を監視、是正する機能が国会では弱まっている。他方、三権のもう一つ、司法については、現在の法曹養成制度のもとで法曹志願者が激減し続けています。このままでは、中長期的には、裁判を通じて、人権のとりでとして、警察、検察を含む行政権を監視、是正する機能が維持できるか、不安に思っています。

 そうした中で、今般、マイナンバーによって、行政権が国民のプライバシーを捕捉しやすくなる、あるいは、特定秘密保護法によって、行政権に不都合な情報は国会にも国民にも知られにくくなる、こういう状況もあります。このままでは、三権分立ではなくて、行政権に国家権力が集中して、権力が暴走しても誰もとめられない一権突出になってしまうのではないか、そういう不安を持っています。

 このような問題意識から、きょうは、時間が許される限りにおいて、法曹養成制度、マイナンバー、特定秘密保護法についてお尋ねしたいと思います。

 最初に、文科副大臣に法科大学院の問題についてお尋ねします。

 まず、資料一をごらんになってください。

 この棒グラフ、実は、昨年の同じ時期にも一年前の数字をお示ししたところであります。これは何を意味しているかというと、法科大学院に入学するには、その前提として適性試験というものを受けなくてはいけません。その適性試験を受けた人が、次の年に法科大学院に入学を志願して、そして許された者が法科大学院に進む、こういう制度になっています。この数字を平成二十三年から見ていただきますと、一目瞭然で、適性試験の実受験者数も法科大学院全体の実入学者数も右肩下がりになってきているわけです。

 しかも、これをより詳しく見ていきますと、適性試験の受験者よりも法科大学院の実入学者の減り方は少ない。つまり、競争倍率が下がってきているわけですね。競争倍率が下がってきているということは、普通に考えれば、入学者の質も下がってきている、こういうふうに推察できるわけです。

 こういう中で、そもそもこの法曹養成制度、どういう理念だったかというと、質量ともに豊かな法曹を輩出するということが理念であったわけです。まさにこれと反するような数字の状況になっていると思うんです。私は常々この委員会でも言っているんですが、法科大学院を中核とする法曹養成制度というものは、残念ながら失敗だったのではないかと思っています。まず、その点について副大臣の御所見をお聞かせください。

義家副大臣 私も、副大臣就任の前、自民党内の法科大学院PTに所属しまして、インナーで何十回も議論をしてまいりました。

 まず、今スタートしている、国家の意思としてスタートしたこの法科大学院制度ですが、失敗と断じるのではなく、危機感を持って不断の改革をしていくことが現在求められている、そういうふうに認識しております。

階委員 危機に陥ったということ自体が私は失敗だと思っております。本来であれば、改革して、前よりよくなる、もっと質量ともに豊かな法曹が育つ、そういう環境をつくるべきだったのに、実際そうなっていなくて、危機になっているわけですから、これは端的に言えば失敗だったのではないかということをまず申し上げます。

 その上で、私は、この問題については、実は、私たちが政権担当当時、総務大臣政務官として政策評価という形で取り組んできました。実は、その政策評価に基づいて毎年フォローアップというのを実施していまして、政策評価の結果幾つか勧告した内容について、担当の役所がちゃんと対応しているかどうか、これをチェックしているわけです。

 直近で、十一月六日に三回目のフォローアップというものを総務省でまとめてきました。この中で、もともとの勧告という中で、「競争性の確保」ということで、「法科大学院における入学者の質を確保する観点から、依然として競争倍率が二倍を下回っている法科大学院に対し、更なる取組を促していくこと。」こういうことを言っております。これに対して文科省は、競争倍率二倍の確保についてさまざまな取り組みをしてきており、毎年その点については回答をまとめてきている。

 この競争倍率二倍の確保というのが大変重要な目標だということは文科省も御認識されているというふうに理解していますが、先ほどの資料のとおり、実際見ていただきますと、実は昨年から、競争倍率二倍というのは、この全体の数字です、個別の法科大学院ではなくて全体で見た場合は、もう割り込んできている。

 こういう中で、競争倍率二倍の確保をもし本当に重視するのであれば、今出ている数字、平成二十七年の適性試験の実受験者数は三千六百二十一人と出ておりますから、当然のことながら、法科大学院の入学者は千八百人程度となるのが妥当ではないかと思いますが、この点はいかがでしょうか。

義家副大臣 本年六月の法曹養成制度改革推進会議の決定では、当面の間、毎年千五百人程度は司法試験合格者が輩出されるように必要な取り組みを進め、さらには、これにとどまることなく、社会の法的需要に応えるために、今後もより多くの質の高い法曹が輩出され、活躍する状況を目指すべきとされております。これは委員御存じのとおりであります。

 それを受けまして、中央教育審議会で、千五百人の合格者を輩出するために必要な定員数の試算や、過度な定員削減による教育力の低下の可能性、実際の入学者数等を踏まえ、目指すべき定員規模を二千五百人としつつ、適切な競争倍率の維持や志願者増のための取り組みの必要性を指摘したものと認識しております。

 文部科学省といたしましては、公的支援見直し加算プログラムを導入いたしまして、めり張りある予算配分を通して法科大学院に自主的取り組みを促している、現在進行形で行っているところでありますが、同プログラムの見直しにより、適切な定員設定や競争倍率維持をさらに推進してまいりたいというふうに思っております。

階委員 今、定員を二千五百人に削減するというお話もありましたけれども、この二千五百人という数字と競争倍率二倍の確保というのは、直近のデータを見る限り矛盾しているのではないかと思っていまして、今、三千六百二十一人という適性試験の受験者しかいないわけですね。二倍だったら千八百人にしかならないので、なぜ二千五百人も必要なのかというふうに思うわけです。

 どうして二千五百人必要なんですか。

義本政府参考人 お答えいたします。

 階議員御指摘のとおり、志願者数が減になっている、あるいは競争倍率が二倍を下回って、直近では一・八七ということでございまして、これは、私どもとしてはしっかり危機意識を持って取り組まないといけないと思っているところでございます。

 一方、具体的な定員設定につきましては、これは、法曹養成制度改革推進会議の決定におきまして、千五百人程度をベースにしながら、さらに需要を見た上で考えていこうということで、質量ともに豊かな法曹をつくっていくということがベースでございます。

 一方、先ほど副大臣から答弁させていただきましたように、適切な競争倍率の維持、それから志願者の増につきましては、例えば倍率につきましては、認証評価制度の中において一つの目安として二倍という競争倍率を持ち、それを下回るところについては一定の指導をしていくですとか、それから加算プログラムにつきましては、従来では、競争倍率につきましては見直しの基礎的な指標にはしていなかったところでございますけれども、司法試験の合格率、入学定員の充足率に加えまして、今後新たに基礎額の指標として競争倍率を導入しまして、学生の質の確保を促していくという形で合格率の向上に努めていきたいと思っております。

 一方、先ほどお話がございましたように、これまでのデータによりますれば、入学者あるいは定員はなかなか厳しい課題がございますけれども、あわせて法曹の魅力をしっかりお伝えするということも並行して、日弁連あるいは関係機関と協力してやらせていただいているところでございまして、個別の取り組み、特に課題があるところについては個別に指導させていただいて、今やっているところでございます。そういう中においてしっかりした取り組みをし、競争倍率を確保するとともに、志願者の増について文科省としても努めてまいりたいと存じます。

階委員 私は、質量ともに豊かな法曹養成ということには賛成します。ただし、その前提として、もし二千五百人という定員を必要だと思うのであれば、やはり最低でも五千人ぐらいは、つまり二倍ぐらいは志願者が出てくるような、そういう改革をしないと意味がないと思っているんですね。

 二倍に足らないところは個別の法科大学院の支援を打ち切っていくみたいなお話もありますけれども、それは、二倍という数字が法科大学院をどんどん縮小させて、むしろ法曹養成の質量がどんどん貧弱になっていく方向になっていっていて、私は、五千人にふやすということを目標にした方がより建設的ではないかと思いますし、これから四年間、集中改革期間の間で最低二倍の五千人にふやすというような目標を掲げるべきではないかと思います。

 義家副大臣、これは今お話を伺っている中で私が率直に思ったことなので、通告はしていません。政治家として、副大臣としての御所見を伺います。

義家副大臣 階委員の危機感、そして法曹が今後担っていく重要性についての認識は私も共有するものであります。

 私は、政治というのは、理想をしっかりと見据え、絶えず研さんを積むことは大事だと思っていますけれども、まず目の前の現実を直視し、適切な改善や適切な改革を行っていくことによって理想に近づいていくということが求められる仕事であろうというふうに思っております。まずは、大きな理想を掲げることも大事ですけれども、今の法科大学院の実態に即してでき得る限りの改革をすることによって、新たな理想を生み出していく環境をつくり上げてまいりたいと思っております。

階委員 冒頭で危機感を持っていると言っている割には、余りにも悠長な発言だったと思います。

 私はこの委員会でも既に申し上げていますけれども、この四年間の集中改革期間が終わっても修了者の合格率七割が達成できないような場合には、法科大学院を中核とする法曹養成制度というものは諦めて、私は、法科大学院を出なければ原則として受験資格が与えられないという仕組みをやめたり、あるいは、そもそも法科大学院の志願者がそれだけ少ないのであれば、和光にある今の司法研修所に二千人なら二千人最初から入れて徹底的に鍛え上げる方がよっぽど法曹養成には合っているのではないかと思っています。

 それぐらいの覚悟を持って、この四年間、集中改革に取り組む、そういう意思を示していただきたいんですが、いかがでしょうか。

義家副大臣 覚悟については文部科学省全体で共有しております。

階委員 覚悟を共有しているということですので、きょうはこの程度にさせていただきます。ありがとうございました。どうぞ御退席ください。

 それで、司法試験の問題について、法務大臣にお伺いします。

 以前、この委員会で、昨年の司法試験の結果を取り上げたことがあります。そのときは、合格者数が減少し、合格点も大幅に下がっているということでした。それを踏まえて、受験生の質の低下が進んでいるのではないかという指摘をさせていただきました。

 翻ってことしなんですが、ことしは逆に、合格者がふえて合格点は大幅に上昇している。しかし、平均点の方も大幅に上昇しているので、ややうがった見方をすると、去年より受験生の質が向上したというよりは、問題を易しくして平均点と合格点を上昇させて、受験生の質が上がったように偽装しているのではないか、そういう感もあるわけです。

 ところで、そういうような疑念に対して、問題のレベルや合格者の判定方法について大臣としてはいかに認識しているかということをお答えいただけますか。

岩城国務大臣 お答えをさせていただきます。

 委員御承知のとおり、司法試験の合格者の決定は、法曹となるべき能力の有無を判定するという観点から、学識経験を有する考査委員の合議による判定に基づき司法試験委員会が行うこととされております。この考査委員の合議は非公開とされている上、判定に際していかなる事項をどの程度考慮するかは、個々の考査委員に委ねられております。

 そこで、その内容について私としてどう考えているかということであろうかと思いますけれども、昨年の合格者数からことしの合格者数はふえておりますし、また、平均点も上がっているんじゃないかという御指摘がありました。その点につきましてはそのとおりでありますし、今後どう推移するかにつきましては、考査委員の合議によりましてさらにいろいろと総合的に検討していくものと思っております。

階委員 あともう一問、大臣には、司法試験の漏えい問題の再発防止策ということについてもお聞きしたいと思います。ちょっとこの後の質問もあるものですから、手短にお答えいただけますでしょうか。

岩城国務大臣 漏えいの問題につきましては、あってはならないことだったと思っておりますし、ワーキングチームをつくりまして、委員御指摘のとおり、さまざまな検討を今進めております。

 そして、とりあえず平成二十八年の司法試験については、法科大学院において現に指導している者は司法試験の問題作成に従事しないことなどの提言をいただきました。それを踏まえて、今、来年に向けた準備を進めているわけでありますが、その後のことにつきましても、ワーキングチームにおいて引き続き漏えい事案の原因究明の調査や再発防止策の検討を行っていくもの、そのように考えております。

階委員 この点については、問題があればまた改めてお尋ねしたいと思います。

 副大臣、お待たせしました。

 松下副大臣には、マイナンバーの御担当ということで、今、我々も、地元に戻りますとマイナンバーについていろいろ聞かれます。それで、一番よく聞かれるのが、通知カードとセットになって個人番号カード交付申請書というのが送られてきました。この個人番号カードというのを申し込んだ方がいいのかどうかということを聞かれます。

 私も、正直言って結構手続が面倒ですし、本当につくる意味があるのかなと思っているんですが、案内を見ますと、「申請してね、個人番号カード」と言っているから、役所としてはつくってもらいたいと思っているんですね。

 もし本当にそう思っていらっしゃるのであれば、そのメリットをまずちょっと手短にわかりやすく御説明いただけますか。

松下副大臣 お答えいたします。

 国民にとっての利便性ということだと思うんですけれども、一番は、今まで自分を証明するものが日本にはなかったわけですけれども、それを、私はこういう何々ですということが証明できるということがあります。それによって、添付書類、住民票ですとか自分を証明する免許証とか、そういったようなものがこのカード一つで済んでしまうということで、幾つもの証明するものが一つになるというのが一番のメリットだというふうに説明しております。

 以上です。

階委員 まさに本人確認の身分証明書というところが一番のメリットだというところで、私は、これが逆にあだになったりしないだろうかということを法律家の立場から思うわけですね。

 例えば、今おっしゃったように、個人番号カードをつくると、本人確認の際の身分証明書として、金融機関で口座を開設するとき、あるいはクレジットカードやレンタルビデオ店の会員証をつくるときなども、提示して、大抵そういうところではコピーをとられますね。コピーをとられて、これが、マイナンバーも一緒にコピーがとられることで不正に取得されて、犯罪に悪用される可能性はないのだろうかと思うわけですけれども、この点についてはいかがですか。

松下副大臣 お答えいたします。

 この一月一日から個人番号カードがいよいよスタートするわけですけれども、実際手にとってもらってこの利便性を感じていただきたいんですが、今委員から御指摘いただきましたように、いろいろなところで活用していただきたいというふうに思います。

 そういった意味で、我々は、セキュリティー、このマイナンバーカードが悪用されない、また不正に使用されないようにさまざまな施策をとっているところでありますが、一つは、先進国では、後発の利と申しますか、いろいろ教訓がありました、失敗もありました、ほかの国で。それを、今回の日本の方式では是正してスタートすることにしております。

 今御指摘がありました、例えばビデオ店でマイナンバーカードをコピーしていただくということは今想定しておりませんで、これを提示するということであります。免許証の場合はコピーをされたと思うんですけれども、この個人番号カードについては提示をするということで、顔写真がありますから本人確認が済むということになるというふうに御理解いただきたいと思います。

階委員 そこは徹底する必要があると思いますね、不正を防ぐためには。

 事務方で結構なんですが、今副大臣がおっしゃったように、コピーは許されないということで法令上はいいんですか。

宮地政府参考人 お答えを申し上げます。

 コピーの点につきまして、このマイナンバーカードにつきましては表面と裏面がございまして、いわゆる一般のそうした店舗で本人確認の証明として使う場合は表面を使うことになります。表面のところにつきましては、通常本人確認に使う情報だけが入っておりますので、これについてはコピーも可能だというふうに考えております。

 ただ、裏面の方につきましては、番号が上がっておりまして、これは番号を扱える者でないと見られないという扱いとしております。補足をさせていただきます。

階委員 そこはぜひ徹底していただきたいのと、やはり見えないところでコピーをとられちゃうと、裏面までコピーをとられている可能性も否定できないわけですよ。顧客に見えるところでコピーをとるというところまで徹底していただかないと不安だなというのはありますので、よろしくお願いします。

 それからもう一つ、このセットになっている申請書、いろいろ書いて顔写真も張って返信用封筒で送りますと、何やら交付通知書というものが後日送られてくる。その交付通知書とこの通知カードと、あと本人を確認する書類を持って役所に来たら個人番号カードを上げますよ、こういうたてつけになっていますよね。

 さっき、副大臣、本人確認がこれによって便利になるよと。私は、逆に言うと、本人確認が今不便な人にこれを持ってもらいたいのに、役所に本人確認をする書類を持ってこいというのは矛盾ではないかと思うんですけれども、これは、その本人確認の書類、曖昧な書き方になっていまして、特に限定しているものではないと思うんですが、例えば、自分宛てに来た手紙とかはがきに住所とか宛名とか書いていますよね。こういったものでもいいんでしょうか。

松下副大臣 お答えいたします。

 これは、個人番号カードを発行するときに、御足労でも一回役所に来ていただいて本人確認をするわけでございます。具体的には、免許証とか、顔写真が入っているものはそれで足りるんですけれども、それ以外は二つ以上の証明書で本人確認をいたします。

 これをお願いしておりますのは、御面倒でも、十年間有効でありますので、きちっとこの信頼性を確保、担保する上でも、役所において一人一人確認をさせていただく作業になってまいります。御協力をよろしくお願いしたいと思います。(階委員「はがきとか手紙とかでもいいんですか、住所、氏名が書かれてあれば。事務方でも結構です」と呼ぶ)

宮地政府参考人 お答えを申し上げます。

 本人確認の場合に、例えば運転免許証などで、厳格に本人確認できるものについては一点でよい場合もございますが、それ以外の場合は、市町村長が認めるような書類を二点用意していただくなどの扱いの中で、公共料金の領収証など、そういう住所が確認できるものも使っていただく、それは可能でございます。

階委員 そういうことで手続の負担を軽くするというのが一つ大事である反面、ただ、そうはいっても、本人が行かなくちゃいけないというのはなかなかおっくうだなということで、せっかく届いたこれを放置したままにしておく。放置したままにしておくと、これは通知カードと申請書がセットになっていますね。これだけでも重要な情報がいろいろある。

 それから、さっき言ったように手紙とかはがきでも本人確認として足りるということであれば、利便性としてはいいんですけれども、赤の他人がもしこれを入手した場合に、簡単に成り済ましをして、その人の写真を使った偽造の個人番号カードをつくって、それでもって、印鑑証明とか、あるいは保険証にも使えるとどこかに書いていましたけれども、そういったものに使って犯罪を生じるのではないかと思っております。

 こういったことにも懸念して法務省としては犯罪防止に取り組むべきだと思うんですが、大臣からその点について御所見を伺います。

岩城国務大臣 階委員から、マイナンバー制度にかかわるさまざまな懸念が示されました。

 マイナンバー制度は法務省が所管するものではなく、大臣としてお答えする立場にはありませんが、一般論として申し上げますと、罰則規定もある新たな制度が導入されれば、当該制度に係る犯罪が発生する可能性は考えておく必要があるものと思っております。そして、捜査機関としてはそうした犯罪に適正に対応していくことになるもの、そのように考えております。

 以上です。

階委員 非常に国民の関心も高く、また不安を抱く方も多いということで、ぜひ副大臣には丁寧な御対応をよろしくお願いしたいと思います。

 では、副大臣はもう結構です。ありがとうございました。

 もう時間が少なくなりましたので、最後に、特定秘密保護法の担当でもいらっしゃるということで、法務大臣に伺います。

 きのう、参議院の情報監視審査会というところで、国会では初めて、政府から特定秘密が記載された文書を提出させて、それをチェックするということを行ったようです。これは、国会の行政権の監視という意味では、冒頭に申し上げた三権分立の観点からも非常に重要なことで、ぜひ政府には積極的に対応していただきたいと思っています。

 私は今、民主党の中で行政改革、行政刷新担当のネクスト大臣というものを拝命しておりまして、きのう行われたこの情報監視審査会でどういう秘密が提出されたのか、また、その秘密指定が適正と判断するに至った経緯とか議論の中身なども、同僚の議員もその場に出ておりますので、ちょっとお聞きしたいなと思っているんですね。

 ところで、これは特定秘密保護法違反にはならないのかどうか。私としては、国会議員として当然の職務でありますし、今の私の立場からしてもこれは必ずやりたいなと思っているんですが、これによって私が罪に問われることはないですか。

 では、委員長、時間が参りましたので、後刻理事会にでも文書の形で、事は私が犯罪者になるかどうかということにかかわることですから、でも、非常に重要なことだと私は思っていますので、ぜひ文書の形で御提出いただければと思います。

 以上で終わります。ありがとうございました。

奥野委員長 それでは、法務省の大臣、しっかりと報告書をつくって理事会に出してください。

 次に、鈴木貴子君。

鈴木(貴)委員 皆様、お疲れさまでございます。久々にようやくこの発言席に戻ってくることができました。民主党の鈴木貴子でございます。

 きょうは、まず、岩城法務大臣、盛山副大臣、そして田所大臣政務官、御就任おめでとうございます。

 そして、きょうは大変特別で意味のある日だと私は思っております。

 その理由の一つが、まず、きょう十二月四日は岩城法務大臣のお誕生日である。おめでとうございます。

 そして二つ目、きょう十二月四日、一年前を振り返りますと、今この委員会にいる私どもは皆、選挙三日目を迎えていたわけですね。それぞれの選挙区でそれぞれの訴えをされていたとは思いますが、私は、一つ共通しているのは、私たちは国家国民のために働きます、国民の代表として押し上げてください、その思いで、一年前のきょう、私たちはたすきをかけさせていただいていたのではないのかな、このように思っております。

 そしてまた、少し振り返りますと、通常国会最終盤、安倍総理も、時の政府の皆さんも、安全保障関連法案に関しても国民により一層丁寧な説明をしていく、このようにおっしゃっておられました。また、TPPも大筋合意をなされた。

 まさに国会というのが、本来であれば国民の代表として働くべき、そしてまた説明をするに一番見合っている、必要な場である、このような意味からも、私は、質問に入らせていただく前に、やはり国民の代表である私たちは、しっかりと臨時国会を召集し、そして国民の代表たる仕事、職責を全うすべきである、このように訴えさせていただいて、限られた質問時間を全うさせていただきたいな、このように思っております。

 それでは、きょうは、大きく二つのテーマで質問をさせていただきたいと思っております。通告の順序をちょっと変えさせていただきまして、犯罪白書の通告の方から質問させていただきたいと思います。

 十一月の十三日に法務省が平成二十七年版の犯罪白書を公表されました。その中で、特集で組まれているものがありました。それは、社会的関心も非常に高く、また、被害者の人格また尊厳を著しく侵害する性犯罪、この性犯罪者の実態と再犯防止というものが特集として組まれておりました。

 さまざまな動向であるだとか傾向というものを私も興味深く読ませていただいたわけでありますが、中で、被害者支援の制度の拡充などによって表に出る数もふえてきたのではないか、そういったある意味プラスというか、救援措置に関してはある一定の評価も見えてきているというようなことも公表がされておりました。

 そういったことで、やはり、それなりの措置、制度、法的担保をとれば、そういった一定の効果も出る。であるならば、まずは未然に防ぐためのそういった措置というものの必要性を私は改めて強くさせていただいたわけであります。

 二〇〇六年以降に、性犯罪者の再犯防止の処遇プログラムというものが導入されたかと思っております。実際に、この白書によりますと、性犯罪で懲役刑が確定した千七百九十一人を対象に実施した調査では、刑務所と仮釈放後の保護観察所の両方でプログラムを受講した人の出所後三年間の再犯率というのは、両方ともそのプログラムを受けなかった満期出所者の約五分の一にとどまった、こういった成果というか結果というものも挙げられております。

 そこで、一つ、さらなる改善点といいますか、質問というか提言をちょっとさせていただきたいと思っているんですけれども、実際には、再犯率が高いのはいわゆる強制わいせつ事件なんですね。体をさわったりだとかというのが一番多いんですけれども、実はその刑期は短い、しかし再犯率は高いというところで、せっかくのこの一定の効果もある処遇プログラムが十分に受けられないという指摘も現実問題として浮かび上がってきていると思うんです。

 せっかく、予算もつけて、人も投入してのこのプログラムです。なお一層の成果を上げるためにも、私は、こういった刑期の短さから今このプログラムを受講できていない方々にもしっかりとこのプログラムを受けていただくような新しい手はずというか枠、そういったものが必要なのではないか、弾力的な判断というものが必要でないかと思うんですけれども、法務大臣、どのように考えていらっしゃいますか。

岩城国務大臣 まず冒頭に、私の誕生日に対しましてメッセージをお送りいただきまして、ありがとうございます。初めての経験でございます。

 今、性犯罪者処遇プログラムにかかわる御説明と、それから所感、そしておただしをいただきました。確かに、このプログラムを受けている人、それから受けていない人によって、その再犯の確率は違う数字が出ております。極めて大事なことだと思っております。

 したがいまして、今後、今、委員から御指摘のありましたことも踏まえまして、私ども、柔軟に、前向きに検討していきたいと考えております。

鈴木(貴)委員 ありがとうございます。

 大臣のお誕生日でありましたが、前向きな答弁というプレゼントを私が逆にいただいたような、そんな思いであります。

 そして、もう一点なんですけれども、今前向きにということで、非常にありがたいなと思っております。また、法務省の皆さんの方でも、四カ月短期集中プログラムというようなものも実際に検討、そしてまた導入を考えられているという話も伺っておりますが、受験生の夏期講習とはまた全然性質が違うわけでありますから、集中すればいいということではなくて、プログラムをやり終えればよいということではなく、ちゃんとしっかりとそれが消化されているか、再犯を未然に防ぐという趣旨にかなっているかという点をしっかりと踏まえた上でそのプログラムを卒業というような制度にしていただきたいな、このように思っております。

 また同時に、せっかくのこのプログラム、実際に実施される側の皆さんの育成、こういったことにもぜひとも引き続き御尽力を賜りたい、このように思っております。

 続きまして、私がずっとこの法務委員会に入らせていただいてから継続的にやらせていただいております冤罪に関する質問の方に入らせていただきます。

 まず冒頭、法務大臣に一点お尋ねをしたいんですけれども、私は、この法務委員会で死刑制度についてもよく質問をさせていただいております。廃止するべきか継続するべきかという議論ではなくて、私は、死刑制度、死刑というものがどういうものなのか、そしてまた、それをやることによって果たして本当に公共の治安というものの維持に資するのか、そういったことを、科学的根拠なども織りまぜながら国民的議論にしていくのがまずは一番大事なのではないのかな、このように思っております。

 岩城法務大臣は、まず、この死刑制度についてどのような認識とお考えを持っていらっしゃいますでしょうか。

岩城国務大臣 お答えをいたします。

 死刑制度の存廃は、我が国の刑事司法制度の根幹にかかわる重要な問題であります。国民の世論に十分配慮し、社会における正義の実現等、種々の観点から慎重に検討すべき問題だと思っております。

 そして、現在、国民世論の多数が、極めて悪質、凶悪な犯罪については死刑もやむを得ない、このように考えておりまして、凶悪犯罪がいまだ後を絶たない状況等に鑑みますと、その罪責が著しく重大な凶悪犯罪を犯した者に対しては死刑を科することもやむを得ないものと考えており、死刑を廃止することは現段階では適当ではない、そのように考えております。

鈴木(貴)委員 今、法務大臣が、廃止は現段階で適当でないというお話をされました。

 つまり、今の法務大臣の御答弁そしてお考えというものは、あくまでも刑事司法というものに間違いはないという前提があって初めて成り立つ考えだと私は思うんですね。なぜならば、死刑制度というものを容認する皆さんであればなおさら、人の命をあやめてしまった、奪うような重大な犯罪に関係した人にはしかるべき裁きが必要であるという考えであれば、逆を言えば、無実の人を罪に問うようなことは逆に許してはいけないということである、このように思っているんです。

 そこで、冤罪問題にもちょっと入らせていただきたいんですけれども、これは事務方に答弁をお願いしたいんですが、まず、再審無罪判決、ここ数年でも何件も、何度となく出てきております。もう委員会の皆さんは重々御承知だと思いますが、足利、布川、氷見、東電OL事件、あと最近十月でいえば大阪少女強姦事件、あれも再審無罪となりました。

 こういった再審無罪判決確定後、果たしてその捜査のどこに間違いがあったのか、もしくは、なぜそういった不当な捜査に走ってしまったのかという事後検証というものはどのようになされているのか、刑事局長の答弁をお願いします。

林政府参考人 再審無罪判決がありますと、これについてどのような問題があったのか、原因等については、やはり個々の事件ごとにその原因、内容、背景等異なりますので、まずもって個々の事件ごとに分析、検討が、具体的には当該事件を扱った検察において検討がなされております。

 また一方で、こういったことにつきましては、やはり分析、検討の結果については検察全体で共有化して、これを今後の他の事件にも生かしていくということが非常に必要でございますので、検察当局におきましては、無罪判決あるいは再審無罪判決等がありました場合には、当該事件における捜査、公判活動の問題点等について検討した上で、教訓とするもの、反省すべき点、そういったことにつきまして、検察庁内で勉強会を開催したり、あるいは、各種の全国の会同、会議がございますが、そういったところで事例として報告する、また、そういった資料を各検察官がアクセスできるように資料として整えておく、こういったことを通じまして、以後の捜査、公判の教訓としているものと承知しております。

鈴木(貴)委員 いつもの林刑事局長の、淡白というか、クールというか、冷静な答弁に懐かしさも今感じながら聞き入っておりましたが、こういった、林刑事局長のような、まさに冷静さというものが捜査当局に常々あれば、不当な捜査、机をたたきながらの密室の中での取り調べというものには至らなかったのではないのかな、そんなふうに思っているところであります。

 そこで、今、林刑事局長、当該捜査に当たった者からもいろいろと話を聞いているというふうにあったんですけれども、例えば、実際、再審無罪というのは、たかだか三年、五年で出てくる話ではないですよね。

 例えば布川事件でいいますと、これは一九七八年にまず確定判決が出ている。特に、事件自体は一九六七年なんですね。この間、それこそ非常に悲しきニュースでありましたけれども、冤罪で服役までされましたお二方のうちのお一人であります杉山さんが六十九歳で早過ぎる最期を迎えられたわけであります。杉山さんにおいては、二十一歳のときに逮捕をされまして、実は、再審で無罪になったのは四十三年たってからなんです。

 ということは、刑事局長がおっしゃったように、当時かかわっていた捜査官がいかほど本当にその検証にコミットしているのか。例えば、OBになられていても、その方々から話を聞いていらっしゃるんでしょうか。刑事局長、答弁をお願いします。

林政府参考人 無罪判決あるいは再審無罪判決等についての検証につきましては、やはり事件ごとでさまざまに検証の仕方等は異なっておると思います。

 過去にいろいろと検証して、さらにその結果を公表した事件等につきましては、当時の関係者等からのヒアリングとか、そういったこともなされた事案があったかに思います。必ず全ての事件でそのような検証がなされているわけではございませんけれども、検証するに必要な範囲での検討というものはなされていたように思います。

鈴木(貴)委員 なされていたように思います、非常に第三者的というか、当事者意識というものが薄いのではないのかなと。

 実際に、今、たった一例ではありますけれども、これからさまざまな夢や希望を持って人生を歩み始めている二十一歳で逮捕をされ、二十九年間刑務所で身柄を拘束され、ようやく、本当に再審無罪になるまでには何と四十三年かかったんです。そういった皆さんがいらっしゃる中での今の発言というものは、果たして本当に当事者意識がいかほどあるんだろうかと。

 「検察の理念」というものは、ただつくった、発表した、これでよかった、そういったものではないはずなんですね。「検察の理念」に自分は今触れさせていただきましたが、例えば「権限行使の在り方が、独善に陥ることなく、真に国民の利益にかなうものとなっているかを常に内省しつつ行動する、謙虚な姿勢を保つべきである。」御自身でこう「検察の理念」を掲げていらっしゃるわけであります。

 ここで、「内省しつつ行動する、」もしかしたら、林刑事局長、今のような、これまでの答弁で、内省しているんだ、自分たちの中では実際に検証しているんだとおっしゃるのかもしれません。であるならば、逆にお聞きしたいんです。内省だけじゃ足りないんじゃないか。表に出さないとだめじゃないでしょうか。

 実際に「検察の理念」もつくった、毎回毎回それぞれの事件ではさまざまに環境が違う、だから個々に合わせて検証も行っていると。結構な話だと思います、それが果たしてしっかりと行われていれば。しかし、それが実際に次に生かされていないといけない。

 にもかかわらず、これは戦後に発生し、特に限定で選んでありますが、死刑か無期懲役の判決が確定した事件で再審開始が決定されたものだけでも過去に八件ある。この間大阪の事件もあったので、これは九件にもなったんですね。かつ、あと大阪の住吉の事件もあったので、これは十件になるんです。

 こういったように、どんどんどんどんとこういった事件、再審無罪かと言われる再審開始事件がふえているということは、内省のあり方をいま一度検証すべきではないかと思うんですが、法務大臣、どのようにお考えでしょうか。

岩城国務大臣 さまざまなお話がありました。非常に大事なポイントだと思っております。

 いろいろといきさつがありましたけれども、こういった再審無罪判決を受けたということにおきまして、検察当局においては、このことを重く受けとめ、今後の捜査それから公判の教訓としていくもの、そのように考えております。

鈴木(貴)委員 法務大臣も今のように答弁をいただきましたが、それを受けて、重ねて事務方にお聞きしたいんですけれども、ならば、いわゆる冤罪、結局は無実の人を捕らえていた、その冤罪の責任は誰が負うのかというのは国民の一般的な興味、関心だと思うんですね。

 例えば、過去の再審決定文をちょっと読み上げさせていただきます。自白調書が捜査官らの誘導等により作成されたものである可能性を否定できない、捏造されたと考えるのが最も合理的であり、現実的にはほかに考えようがない、そして、このような証拠を捏造する必要と能力を有するのは恐らく捜査機関をおいてほかにないと思われる、これは再審開始のときの決定文なんですね。私は、これは非常に踏み込んだ決定文だったなと思って、衝撃とともに読ませていただきました。

 刑事司法への国民の信頼をしっかりと取り戻すという意味でも、まさに今警察の、捜査当局の姿勢が求められていると思うんですけれども、冤罪の責任はどのようにとられる、とるべきだと、刑事局長の立場で結構です、どのようにとることができるか、いや、もしかしたら、どのようにとっていきたいというその決意のほどをお聞かせ願えますでしょうか。

奥野委員長 これは局長ですか。大臣の方が適当だと思うけれども。(鈴木(貴)委員「刑事局長で結構です、最近やりとりしていないので」と呼ぶ)

 刑事局長。

林政府参考人 無罪判決、再審無罪判決等におきまして、例えば検察あるいは捜査機関にその原因がある、またそこに違法な捜査等があったということになりますれば、それは、違法なものにつきまして国家賠償請求訴訟というものを提起されて、その中でその責任というものが確定されるということが一つあろうかと思います。

 他方で、無罪判決の原因というものも必ずしも捜査機関の違法な捜査等によるものばかりではございません。その中でも、しかし、全体の刑事司法システムとして、実際に無実の人が長期間拘束されたとか、そういったことについては、やはり全体の制度の中ではあってはならない、防がなくてはいけないことでございますので、先ほど申し上げたように、今後の捜査あるいは今後の裁判にそういった教訓というものを生かすべく議論していく、それがやはりそういったことを防ぐための一番重要なことだと思っております。

鈴木(貴)委員 今、林刑事局長の答弁をいただいて、問題意識は共有できていると思うんです。やはり生かされていないといけない、私も強く強くそう思っているんですね。

 今ちょっと一つひっかかるというか気になったのが、国家賠償という制度もあるんだと。国家賠償というのは、つまりお金ですよね。これはお金で簡単に解決する問題でしょうか。お金で解決する問題だったら、そもそも司法という制度は必要ないですよね。何かあったときに、お金を渡して、はい、解決、こうはならないですよね。

 私は、国家賠償というやり方もあるというのが出てきた時点で、ああ、これはまだ「真に国民の利益にかなうものとなっているかを常に内省しつつ行動する、」という「検察の理念」がしっかりと育まれていないというか、落ちていないんじゃないかな、こんな強い危機感を持っております。

 ここで、大臣にぜひ、今のこのやりとりを聞かれていて、率直に大臣のお考えを聞かせていただいてもよろしいでしょうか。

岩城国務大臣 基本的には刑事局長からお答えしたとおりでありますけれども、違法な捜査、これはあってはならないことでありますし、しっかりとそういったことを教訓としてこれからも取り組んでいくもの、そのように受けとめております。

鈴木(貴)委員 時間も迫っているんですけれども、きょうは、この時間をもってして、法務大臣、副大臣、そしてまた大臣政務官に、こういった問題意識を持っているんだ、そしてまた、こういった問題が現にあって、ぜひリーダーシップを発揮して事に当たっていただきたいという思いから質問をさせていただいております。

 違法な捜査のあり方を正していかないといけない。これは、違法な捜査もそうですし、不当な捜査もそうだと思うんですね。違法と不当というのは若干違うと思うんですよ。法を犯していなければ何でもやっていいのかというと、やはりそうじゃない。机をたたきながらがんがん取り調べをやるのがいいのか、ないような家族の問題を持ち出して精神的に負担をかけていくやり方がいいのか、そういったことも問題であるし、そういったことを防いでいくようにしていかないと、真に国民の安心、安全というものは約束されない、私はこのように思っております。

 最後に、林刑事局長にもう一度、謙虚な姿勢を保つべきであるという「検察の理念」を掲げていらっしゃる、そしてまたこの作成に当たって大変な尽力をされた林刑事局長にお尋ねをいたします。

 不当な捜査が明らかになった場合に、その担当捜査官であるとか関係した捜査当局の皆さんはこれまで本当に十分な内省そしてまた謝罪をされてきたとお思いでしょうか。満足をしていらっしゃるのか、それとも、これまで以上に一層謙虚な姿勢で事に当たっていくというお考えでしょうか。最後に、その一点、お聞かせください。

林政府参考人 先ほど冤罪の責任ということを言われましたものですから、一つの法的な責任の例として国家賠償というものを挙げさせていただいたわけでございますけれども、違法も含めつつ、一方で不当な部分まで含めまして、そういったことが行われないようにするための取り組みというのは、まさしく「検察の理念」に掲げられた理念に沿いまして内部で検討しているわけでございます。

 例えば、違法にとどまらず、不当な捜査というものについては、最高検察庁の監察指導部というものにおきまして、そういったことがあったかどうかを確定いたしまして、あればそれに対して指導を行うということを常々やっておるわけでございますし、また、それがさらに懲戒事由に当たるようなことであれば、当然内部的な懲戒処分ということを行っているわけでございまして、そういった意味におきまして、こういったことが起きないように組織全体として取り組んでいるものと承知しております。

鈴木(貴)委員 時間も参りました。

 引き続き、私自身はこういった問題意識を持っているということ、そしてまた何よりも国民の代表であるという自覚と責任感、使命感を持ってこれからも頑張らせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

 ありがとうございました。

奥野委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時三十五分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

奥野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。清水忠史君。

清水委員 日本共産党の清水忠史です。

 冒頭、憲法五十三条の規定に基づき臨時国会を開催すべく野党が求めているにもかかわらず、安倍内閣が今日に至るまで開催していないことについて強く抗議を申し上げます。

 その上で、閉会中に起こった二つの事件を通じて、刑事司法の問題点について大臣の認識を聞かせていただきたいと思います。

 この間、警察官から利益誘導されて自白した疑いがあるとして、十一月二十四日、東京高裁が事件を一審に差し戻したという事件について報道がありました。資料の一です。「警察官被告に謝罪」とあります。

 まず、警察庁、この事件の概要を説明していただけますか。

露木政府参考人 お尋ねの事件でございますけれども、被告人が、平成二十五年七月、都内の小売店において、偽造したクレジットカードを使用して家電製品など十二点を詐取したほか、同年九月にも、同様の方法により都内のコンビニエンスストアにおいて化粧品一点を詐取するとともに、タクシーの乗車料金の支払いを免れ、財産上不法の利益を得るなどした事件でございます。

 なお、被告人は、保釈後に覚せい剤取締法違反で逮捕、起訴され、ただいま申し上げた偽造クレジットカード詐欺事件と併合審理されていたものと承知をしております。

清水委員 この偽造カードを使った起訴事実について、当初男性は認めていたんですが、途中で否認しました。

 被告側の主張によりますと、この男性は、複数の警察官から、一、認めれば余罪を立件しない、二、共犯者を逮捕しない、三、早期の保釈を検察にかけ合う、四、刑を軽くするなどと持ちかけられ、虚偽の自白を行ったと主張しているんです。

 控訴審では、同じ被告が保釈後に、取り調べを担当した警察官二人に電話をかけて、その会話内容をICレコーダーで録音したことが、司法取引、警察官から利益誘導されて自白した疑いがあると高裁で認められた決め手となりました。

 岩城大臣、この事件について御存じですか。

岩城国務大臣 御指摘の事件につきましては、報告も受けておりまして、承知をしております。

清水委員 私も判決文を取り寄せました。

 これは生々しく被告と警察官のやりとりが記載されておりまして、被告が警察官に電話をかけて、「俺はやってないのに、他の人間パクらないとか他の事件はやらないという約束で、この事件は認めたのに、」おかしいじゃない。警察官「うん、そうだよね。」被告人「だから、本件認める場合は小さくしますよっていう話だったわけじゃないですか。」警察官「俺の力不足でそこまで抑えられなかったっていうのはあるのはしょうがないですね。申し訳ないです、それは。」という会話内容が録音されておりました。

 重大なことは、被告自身が、今回の捜査は違法捜査じゃありませんか、つまり、司法取引じゃないですかということを述べたことに対しても、この警察官はこれを否定しなかったということなんですね。

 最高裁判所にお伺いします。

 この事件の判決文で、裁判長は、先ほど紹介したICレコーダーの会話内容についても認めているんですが、その上で、第四の三「検討」の(2)ウの「以上によれば、」以下、この判決文に何と書いていますか。

平木最高裁判所長官代理者 委員御指定の箇所には次のように記載されております。

 捜査段階において、警察官から利益誘導を受けて自白したという被告人の原審公判供述は、それ自体に不自然なところは見出し難く、かつ、その供述に沿う内容の会話の録音もあることに照らすと、その信用性を直ちに否定することはできない。そして、被告人の供述する利益誘導の一つである被告人の余罪を立件しないということに関しては、結果的にそのとおりとなっているし、保釈の経過、検察官の求刑等を考慮すると、弁論再開後に否認に転じた理由についても相応に納得できるものである。

  したがって、被告人が、警察官から利益誘導をされて自白した疑いを払拭することはできず、この点を明らかにするためには、被告人の取調べを担当した天利警察官及び山下警察官の証人尋問を実施する必要があったというべきである。

このように記載されております。

清水委員 このように判決文は、利益誘導があった、この疑いは払拭できないということで、一審に差し戻しをしたわけであります。

 岩城大臣にお伺いします。

 一般的に、警察官が被疑者、被告人に対して利益誘導を行い、不利益な供述を強要する、これ自体は違法ではありませんか。

岩城国務大臣 御指摘の利益誘導、その意味するところが必ずしも明らかではないことなどから一概にお答えすることが困難な面はございますけれども、最高裁判例として、「被疑者が、起訴不起訴の決定権をもつ検察官の、自白をすれば起訴猶予にする旨のことばを信じ、起訴猶予になることを期待してした自白は、任意性に疑いがあるものとして、証拠能力を欠く」旨を判示したものがあるものと承知をしております。

 したがいまして、取り調べ官が被疑者の取り調べにおいて、自白をすれば事件の処分について一定の便宜を図ることを約束し、これに基づいて自白がなされました場合、その自白については証拠能力が否定され得るものと考えられます。

清水委員 今大臣が述べられたとおりです。証拠として使われません。これは違法な取り調べだと言わなければならないですね。

 この事件に始まった問題ではなくて、これまでもさまざまな問題で、捜査機関側による利益誘導に基づいた虚偽の自白等々が冤罪事件を生み出してきた根源にあると言わざるを得ません。

 私は警察庁にただしたい。警察官による違法な取り調べ、今回の事件でも明確にそうだと私は思いますが、これを防止するためにどのような手だてをとっているんですか。

露木政府参考人 取り調べの適正は捜査の基本でございます。それが極めて重要であると私どもも認識をいたしております。

 警察におきましては、警察大学校あるいは都道府県警察に置かれております警察学校等におきまして、適正な取り調べというものをテーマとした教育課程を幾つか実施しております。また、全国会議を初め、各都道府県警察における署長会議、刑事課長会議などの各種会議においても、必要な指示などを繰り返し行っております。また、熟練した捜査員などによる実践的な技能指導、職場実習などの機会を利用して技能指導なども実施をしております。こういった幾つかの教育プログラムなどを継続的に実施し、捜査員の取り調べ技能の向上を図るとともに、不適正な取り調べの防止に取り組んでおるところでございます。

 また、これらのほか、警察捜査における取調べ適正化指針にのっとりまして、平成二十一年からでございますけれども、捜査部門以外の部門が取り調べに関する監督を行う取り調べ監督制度というものを開始しておるところでございます。

清水委員 いろいろ今述べられたんですけれども、そうした努力を行われた結果、このような違法な取り調べが行われていたとしたら、全くこれは機能したというふうに言えるものではありません。

 私は、この通常国会で、ガソリンスタンドで不正にガソリンを盗んだという事件を紹介し、警察官による違法な取り調べがあったということを指摘した際、それに先立つPC遠隔操作事件などにも触れながら、再発防止だとか綱紀粛正といつもおっしゃるんですが、繰り返しこうした違法な取り調べが起こっているということではありませんか。

 今、取り調べ監督制度についてお話しされましたが、この取り調べ監督制度につきましても、罰則が極めて低いんですね。

 これは、六月十六日、山尾委員の質問に答えられているんですが、仮に、違法な取り調べがあった、それを監督官が発見した、処分をする。しかし、その最高の処分が、退職金の支払われる停職である、甘い処分にとどまっていることが指摘されました。これでいいんですかという指摘を受けて、山谷国家公安委員長も、一度預からせてほしいというふうに答弁していたんです。預かったままなんですね、預かったまま。

 ですから、毎回毎回同じような反省や対応策を言うのではなく、どうすれば違法な取り調べを根絶することができるのか、捜査機関側に真剣に考えていただく時期に来ているんじゃありませんか。

 私は、大臣に今のやりとりを聞いていただいた上で、本当に警察や捜査機関が違法な取り調べの反省をしてきたのかが問われていると思います。全く機能していないんじゃないか。だからこそ、冤罪事件がなくならないと思うんです。どうでしょうか、大臣。

岩城国務大臣 委員から御指摘、さまざまな懸念についてございました。

 これまでも真摯に受けとめて取り組んできたものとは思いますけれども、今後、さらにそういったことを踏まえまして、教訓としていっていただきたい、そう考えております。

清水委員 しっかりと教訓として、対応策を具体的に進めていくことを強く求めたいと思います。

 次に、資料二にありますように、東住吉冤罪事件、これを紹介したいと思います。

 一九九五年七月二十二日、大阪市東住吉区の青木恵子さん宅が全焼し、入浴中だった、青木さんの当時小学六年生の長女が逃げおくれて亡くなった事件です。

 青木さんと内縁の夫、朴龍晧さんが保険金目的の放火殺人事件の犯人として逮捕されました。全く物証のないまま起訴もされました。二人を犯人であるとした直接の証拠は自白以外になく、青木さんと朴さんは一貫して無実を主張しましたが、九九年に無期懲役の判決、〇六年に確定しました。

 お二人と弁護団は、これは放火ではなく車のガソリン漏れによる自然発火の可能性が高いとして再審請求し、ことし十月二十三日、大阪高裁が検察の即時抗告を棄却、地裁の再審決定を改めて支持し、二日後に青木さんと朴さんは、何と二十年ぶりに釈放されたという重大事件です。

 大臣、先ほどの事件同様、この事件についても経過を御存じでしょうか。

岩城国務大臣 ただいま御指摘の事件につきましても、報告を受けておりますし、承知をしております。

清水委員 最高裁に改めてお伺いします。

 死刑または無期懲役で起訴され、その後、再審開始決定がされた事件の名称、その数は幾つあるか。また、死刑判決が下った事件で、被告の身柄拘束期間が今回の東住吉事件のように二十年以上のものは幾つあるか。さらに、最も長い期間はどの事件で、何年ですか。

平木最高裁判所長官代理者 死刑または無期懲役の判決が確定し、再審開始決定がされた事件についてお尋ねでございますが、最高裁判所事務当局におきまして、死刑または無期懲役の判決が確定し、昭和五十年以降に再審開始決定がされた事件については把握しております。

 通称事件名は、加藤老事件、財田川事件、免田事件、松山事件、梅田事件、島田事件、足利事件、布川事件、東京電力女性社員殺害事件、袴田事件、東住吉事件でございまして、その件数は合計十一件でございます。なお、袴田事件については、再審開始決定は未確定となっております。

 ただいま申し上げました十一件のうち、原裁判が死刑判決のものは五件ございまして、起訴日から再審開始決定がなされるまでの期間が二十年以上経過しているものは五件全てでございます。この五件のうち、起訴日から再審開始決定がなされるまでの期間が最長のものは袴田事件でございまして、その期間は約四十七年でございます。

清水委員 資料の三をごらんください。

 今お答えいただいた十一件の起訴日あるいは再審開始決定日等を資料としてつけさせていただきました。

 死刑事件は全て二十年以上拘禁され、今おっしゃったように袴田事件は再審開始決定されるまで四十七年ですよね。人生のほとんどの自由を奪われた事件です。

 この資料を見ていただいたらいいんですけれども、十番、十一番の、袴田事件と今私が問題にしている東住吉放火事件以外は全て無罪なんです。無罪判決になっているんです。

 もう一つ言いたいのは、再審を求めていた名張毒ブドウ酒事件、ずっと無実を訴えておられましたけれども、奥西勝さん、亡くなられました。四十三年間、確定死刑囚のまま無念の死を遂げられた。

 実は、皆さん御存じかどうかわかりませんけれども、きょうから人権週間なんですよね、法務省。法務省のホームページを見ますと、年間強調事項ということで十七項目記されております。例えば、女性の人権を守ろうとか子供の人権を守ろうとか高齢者を大切にする心を育てようとか、あるいはホームレスに対する偏見をなくそうとか性同一性障害を理由とする偏見をなくそうとか、いろいろ、十七項目あるんですが、ここに、岩城大臣、冤罪被害者の人権だとかあるいは刑務施設に入所中の人々の人権とか、こうしたものが記載されていないということに私気がつきまして、お手持ちの資料としてお渡しさせていただきましたが、当然、冤罪被害者の方々の人権、無実の罪で長期間拘束された人の人権、これは何よりも保障されなければならないのではありませんか。

 これは私、質問通告しておりませんが、岩城大臣の、政治家としてその所見を述べていただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。

岩城国務大臣 おただしの件につきましては、今現在その対象になっておりませんけれども、今後、委員の御指摘のことも踏まえまして検討してまいりたいと考えております。

清水委員 ぜひお願いしたいと思います。

 ここに書いていないものが大切にされないということではありませんが、やはり法務省としてしっかりと意識していただくということは何よりも重要だと思います。

 それで、この東住吉事件における刑の執行停止決定の理由について紹介しますと、両名に対して無罪を言い渡すべき蓋然性がより高くなっていると言えること、無罪の蓋然性が高いと。逮捕以来の身柄拘束期間が二十年に及んでいるということに照らすと、刑の執行を今後も継続することは正義に反すると考えられるとあるんです。

 改めて岩城大臣にお伺いいたしますけれども、結局、自白偏重の捜査のあり方、この東住吉事件も、唯一の証拠は自白なんですよ。捜査機関の描いたストーリーに沿った供述の強要が虚偽の自白をつくり出してきたのではないかと指摘されているわけですね。そして、今なお、今言われたような事件以外に、無実の罪で獄中につながれ、再審を求める事件が多数残されております。

 冤罪により長期の拘束を受けた被害者を生み出してきた日本の刑事司法の問題点、冤罪なんていうのは絶対生み出してはいけないものだというのは、当然大臣もそう考えていらっしゃると思うんですが、しかし現に、今資料にありますように、無期懲役、死刑という重い罪で冤罪であった、無罪が確定した、こういう状況の問題点をどこにあるというふうにお考えですか。

岩城国務大臣 犯人でない人を処罰する、そのことは、当然のことながらあってはならないことだと私も考えております。

 具体的事件において無罪判決が言い渡される理由、それはさまざまでありまして、一般論として、犯人でない人を処罰するような事態を生ずる原因としてはどのようなものがあるかを申し上げることは困難であります。

 他方、過去の無罪事件の検証におきましては、一つには、客観的証拠の吟味が不十分であったこと、二つ目に、DNA型鑑定に対する理解が不十分であったため鑑定結果を過大に評価してしまったこと、三つ目に、自白の信用性に対する吟味とか検討が不十分だったことなどの指摘がなされているものと承知をしております。

 いずれにしましても、検察当局において、例えば、徹底した客観証拠の収集、分析に努める、消極証拠を十分に検討するなど、基本に忠実な捜査、公判の適正な遂行に努めることが必要である、そのように考えております。

清水委員 今、岩城大臣も、冤罪はあってはならないこと、無実の人を罰するというのはあってはならないこと、そのとおりでございます。その理由について明らかにすることは困難というふうにもおっしゃいました。

 そして、非常に重要なポイントは、個別の事件に関して言うと、証拠の吟味が不十分だったというふうにも今おっしゃられましたね。違うんです、大臣。証拠の吟味が不十分だったんじゃなくて、証拠そのものが出されない、証拠隠しが冤罪事件を生み出す大もとにあると私は指摘したい。

 例えば東住吉事件におきましても、弁護人が原審において検察官に対し証拠開示の申し入れを繰り返し行いましたが、検察官は拒否しました。極めて限定された範囲のみ、言いかえれば、有罪方向を示す証拠のみの開示になったんです。取り調べ録音テープだとかあるいは取り調べ日誌など、弁護人が強く求めていた証拠開示の多くは再審請求審に持ち越されたんです。確定審では出てこなかった。それでも検察は拒否をし、裁判所が勧告して、出しなさいと言って、青木さんと朴さんの取り調べ日誌などがようやく提出されたわけなんですね。提出されたのは事件から十七年経過した二〇一二年のことなんです。

 ですから、私は、大臣、これも法務大臣として、政治家としての所見を述べられたらいいと思うんですけれども、やはり勝負というのは正々堂々やらなきゃならないものだと思うんですよね。裁判においてもそうです、公正公平な判決を導き出すためには。もっと言えば、無実の人を罰するようなことがないように、冤罪を生み出さないためには、あらゆる証拠を十分吟味できるように、証拠隠しをなくす、必要な証拠は全部出す、こうした公判が日本の司法制度の中に求められているんですが、実際そうなっていないんです。

 岩城大臣、どのように思われますか。

岩城国務大臣 お答えをいたします。

 個別の事件、係属中の事件についてコメントすることは差し控えさせていただきたいと存じますけれども、再審請求審において検察官手持ち証拠を全面的に開示することとすべきではないかといった趣旨の御質問だと思いますが、それでよろしいですか。(清水委員「はい」と呼ぶ)

 再審請求事件の審理は、通常の公判手続と異なり、当事者主義に基づく証拠調べの手続をするものではなく、裁判所が職権により事実の取り調べをすることから、一般的な証拠開示のルールは適用されず、個々の事件において適宜適切に判断すべきものと考えております。

 再審請求事件においても、いわゆる検察官手持ち証拠の全てを被告人または弁護人に開示することにつきましては、関係者の名誉、プライバシーの侵害、証拠隠滅、証人威迫等の弊害が生じる場合があることや、国民一般から捜査への協力を得ることが困難になるおそれがあるなどの問題があり、慎重に検討する必要がある、そのように考えております。

清水委員 今、関係者のプライバシー等々おっしゃられましたけれども、そうしたら、無実の罪で拘禁されている人の人権はどうなるんですか。例えば、再審請求審というのは、死刑や無期懲役を争う重大事件が多いんですよ。これを吟味するのに、あれこれ理由をつけて証拠を出さない。こうした姿勢が数々の冤罪事件を生み出す根源になってきたという認識をもっと大臣に強く持っていただきたいというふうに思うんですね。

 冤罪事件を根絶する上で、証拠の全面開示、これは再審請求審も含めて必要ですが、もう一つは、何よりも、取り調べの中に違法性がなかったか、いわゆる虚偽の自白を強要するような捜査がなかったか。これは、先ほど述べた偽造クレジットカードの事件もそうですけれども、司法取引のようなものが行われていたということもそうですけれども、今回、東住吉事件、即時抗告が棄却されて二人が釈放されたことを受けて、日弁連、日本弁護士連合会の村越進会長が声明を出されました。

 一つは、「証拠開示の遅れが本件の真相究明を遅らせたことは否定できない。このような検察官の対応は、誠に遺憾である。」と批判している問題と、もう一点は、やはり冤罪防止のためには、全ての事件、全ての過程において取り調べの録音、録画が必要だというふうにも述べられております。

 この東住吉事件の青木恵子さんに関しては、相当体調悪化がうかがえる中、黙秘権を告げず、取り調べ官はたびたび大声で執拗にどなるといった暴力的な取り調べがあったことが後に証拠として開示され、取り調べメモなどで明らかになりました。判決文は、これら自白の採取過程に存する問題点は各自白の信用性判断にも影響を与えると言うべきと指弾しているわけなんですね。つまり、違法な取り調べがあった、体調が悪いにもかかわらず自白を強要した、本来これは違法ですよ。

 朴龍晧さんは、どうしてうその自白をしたのか、なぜやってもいないことをやったと言ったのか、このことを顧みてこうおっしゃっています。恐怖心や絶望が自分の限界を超えて、理性が崩壊したことで心が自殺をしてうその自白をしたと思っている。恐怖心や絶望を与えるような違法な取り調べが許されるはずがありません。

 大臣、「何人も、自己に不利益な供述を強要されない。」黙秘権を保障した憲法三十八条に違反するような取り調べは、絶対に許されるものではありません。これを根絶する保証として、担保として、日弁連会長も述べているように、全ての事件の全ての過程を録音、録画していく、これしかないんじゃないですか。大臣、どう思われますか。

岩城国務大臣 全ての事件を一律に制度の対象とすることは、その必要性、合理性にも大きな疑問があり、制度の運用に伴う人的、物的な負担も甚大なものとなると思われます。また、録音、録画制度は、捜査機関にこれまでにない新たな義務を課すものであり、捜査への影響を懸念する意見もあります。

 そこで、法律上の制度としては、取り調べの録音、録画の必要性が最も高い類型の事件を対象とすることが適当であると考えられております。

清水委員 最後に私は訴えたい。

 必要性、合理性というふうにおっしゃいましたが、そういったことを言っているからこそ、冤罪事件や違法な取り調べというのはなくならないんですよね。類型的に重い犯罪のみ録音、録画をすると言いますが、私が最初に取り上げた事件の詐欺事件などは録音、録画の対象となっておりません。

 ですから、やはり全ての事件、全ての過程で録音、録画する、違法な取り調べをやめさせる、そして、再審請求審も含め全証拠を開示してこそこのような問題を解決することができる。ぜひ大臣には、この二つの事件を教訓として、冤罪根絶のために努力をしていただきたい。強く求めて、私の質問を終わります。

奥野委員長 次に、井出庸生君。

井出委員 維新の党、信州長野の井出庸生です。大臣、よろしくお願いいたします。

 きょう、久しぶりの委員会ということで、また、大変申しわけないんですが、警察庁の方からお話を伺っていきたいと思います。

 もう申し上げるまでもなく、通信傍受の警察施設内での傍受をこれからやっていく、その検討状況がどうであるかということを伺いたいのです。これはまだ参議院の審議も残っておりますので、またそこでの議論もあるかと思いますが、私の思いとしては、衆議院で議論を尽くして、私としても中身にもう少しというところもあるのですが、修正案を通過させた。特にこの通信傍受の警察施設内での傍受の仕方をどうしていくかというところは、ここは運用の部分ですけれども、参議院でもこの法律の一つ大きいポイントになってくると私は思いますので、きょうも伺いたいと思います。

 ここまでの議論を私なりに少し整理しますと、新たに導入される機器というものは、立会人の機能を完全に補完するものだと。それは、恐らく、暗号化によって改ざん、改変というものが全くできないということだと思います。

 警察官の立ち会いによって、通信傍受捜査を始めるときに立ち会うことによって、スポット傍受、そのスポットの設定を適切にやってもらう。そのスポットが本当に適切かどうかというところは、新しい法律では原記録も閲覧が可能になりますので、最終的には裁判の場で見ることも、その可能性も広がってきます。また、その終わり、捜査が終わった部分での手続も、最後、きちっと立ち会うと。

 私が問題としているのは、やはりその間、通信傍受中の話なんですけれども、私は、記録の改ざん、改変というものはできない機械をちゃんと開発される、そこは信じているんですが、ただ、やはり一方で、そこで聞いていることを例えばメモしたり、聞いている人間が読み上げたり、その聞き方というものが本当に適正かどうかというところは、今想定されている機械ではできないと。ですから、巡回ではなくて、常時の立ち会い指導というものを求めております。これは、私としては、ぜひ、これから参議院の審議がありますので、そこに向けて検討をして、参議院の理解の得られるような運用状況というものを示していただきたいと思います。

 そうはいいましても、まだ開発も途上ですし、検討はこれからだというところもあると思うんですけれども、いつまでにその運用状況を検討されて示されるかというところをまず教えてください。

露木政府参考人 委員が今御指摘の点でございますけれども、さきの通常国会において当方の三浦刑事局長からもるるお答えを申し上げてきたとおりでございますけれども、新たな方式による通信傍受では、傍受の適正は特定電子計算機の機能により担保されるということが大前提でございます。その上で、機器を確実かつ適正に使用するということが特に重要であるという観点から、通信傍受の開始の前、実施期間中、そして終了後の各段階において、現場を含めて必要に応じて必要な指導をする、こういう趣旨で申し上げてきたものでございます。

 その指導の体制のあり方についての検討の出口のようなイメージでございますけれども、これは技術的な指導なども含みますので、機械の具体的仕様なども定まってまいりませんと、なかなかその検討を終えるということはもちろんできない性格のものでございまして、法律案が成立をいたしますれば、その段階で機器の調達などの作業にももちろん入ってまいりますので、そういうものを含めて検討を具体化させていくということになっていくのであろうというふうに考えております。

井出委員 そうしますと、私は当面の間、法務委員会に所属をしなければいけないな、そういう思いを今持ったんですが。

 ただ、その機械は、ずっとここまで、最低限、記録の改ざん、改変というものはできない機能というものをつくるとおっしゃられているわけで、私がいろいろな説明を聞いて最後にお願いをしているのは、傍受中に、聞いている人がメモをとったり、それを聞いたそばから読み上げたり、そういうことが万が一にも、これは今までは事業者に行ってやっていましたから、事業者の人、公務員の人が立ち会っていました。今度は完全に身内の施設内になりますから、ですから、巡回指導ではなくて、立ち会い指導というところを強く求めたいんですね。

 私が求めている点は、これは機械の有無、例えば傍受している人が聞いたものを端から読み上げたらそこで機械が自動的にストップするとか、そういう機械を開発してくださるんだったらまだ私も考え直す余地はありますけれども、今つくられる機械の状態は、ある程度、発注されるものの中身は決まっておりますから、そうすれば、機械の開発を待って検討するよりも、やはりここで常時立ち会いをすると言っていただくことは、非常にこの法律の実効性、この法律が、どれだけ、もう一歩、通信傍受を厳密にやるかどうかのポイントだと思いますので、本当に、私は少し前になりますが参議院に法案の趣旨説明に参ったんですが、やはり参議院の先生方は良識の府ということもあって、私のような若造が衆議院で一生懸命やったんだろうけれども、参議院はそうはいかぬぞ、そんなような顔をして見ておられたので、ぜひ常時立ち会いというものを前向きに考えていただきたいんですが、いかがでしょうか。

露木政府参考人 通信傍受の指導でございますけれども、指導を実施する職員は、通信傍受を実施している個別具体の事件の捜査に従事している捜査員をむしろ排除する、それに従事していない者を充てて、客観、公正な立場からの指導を行わせるという趣旨もございます。したがって、傍受の中身に立ち入った、例えば犯罪関連通信かどうかの該当性の判断をその指導者が判断するということにはちょっとなじみにくいものであろうと考えております。

 いずれにいたしましても、通信傍受が適正に行われるという趣旨で指導を行うという点はそのとおりでございますので、そういう趣旨に沿った指導体制を確保するということで検討をもちろん進めてまいる所存でございます。

井出委員 答弁で、いずれにしましてもという言葉が出てきたときは、私は注意しなきゃいけないなと思っているんですが。

 では、具体的にお聞きしますけれども、私が申し上げている、聞いた中身をメモするとか、それをその場で読み上げるとか、そういうことは、捜査に携わっている、事件の捜査をやっている人間だけでやるときに起こる確率、これも低いんだと思います。だけれども、そこに捜査と関係ない指導官を入れる、私はそっちの方がもっとその可能性が低いと思いますし、通信傍受捜査というものは、皆さんもおっしゃっていますけれども、いろいろな捜査を尽くした最後の手段で、もう失敗するわけにいかないんですよ。その事件を一生懸命やってきた人が、あと一歩のところだということで欲を出して、何かそれをメモしてしまったとか、そういうことすらも許されない最後の段階なんだから、やはり私は常時立ち会いが必要だと思うんですけれども、これに反論があれば、反論いただきたいと思います。

露木政府参考人 これも繰り返しになりますけれども、やはり指導の職員、体制を確保するというもともとの趣旨というものは、この特定電子計算機による新たな通信傍受の方式というものに、もちろん、今、誰も経験したことのないものでございますし、しかも、今回、対象事件の拡大ということもございますので、今まで従事をしていたジャンルとは違うジャンルの事件の捜査員も通信傍受の業務に従事することになるといったようなこともございます。

 そういう観点で、これまでの捜査員の経験ですとか習熟度ですとか、そして、新しい機械が導入されるということによる技術的な知識の不足を補うための技術的な、あるいは法令的な指導ということでございますので、常時必ずそこにいなければならないという類いのものではないのであろうと思います。

 ただ、職員の経験、知識などの不足を補うために、かなりの頻度、かなりの時間その場に滞在するということは十分あり得ることでございますので、そういった意味で、ある事件については結果として常時ということもあり得るというふうには考えております。

井出委員 新しい捜査で技術的なところということは前に三浦さんもおっしゃっておりましたけれども、それは、捜査に入る段階、捜査前の段階、機器の取り扱い等も含めてだと思いますけれども、あと、捜査が終わった後ですね、きちっと終わりの手続、法令手続を踏むとか、そういうところだと思うんですけれども、その中間の部分、傍受中の部分については、もう既に三浦さんも八月二十六日に、スポット傍受の実施状況の確認、そういうことでその必要性にはきちっと触れていただいているんですよ。

 ですから、ここのところが果たして常時になるのか、常時にならないのか。常時にならないんだったら、警察の施設で身内の人だけでやったときに、メモしたり、私なんかは視察に行ったときのことが頭にあるんですけれども、イヤホンで聞かなきゃ誰でも聞けるわけですから、そういうことがないという何か新たな担保でも欲しいぐらいなんですね。

 そこは、言っていただければ、また考え直してもいいのかなと思うんですけれども、そこの部分は、本当はこれをクリアして年を越したかったところなんですが、ちょっときょう結論が出そうにありませんので、またの機会にさせていただきます。

 もう一点だけ関連で伺いたいのが一時保存の問題ですね。今度はデータを一時保存して聞くことができるようになって、それは、一時保存というものは、可及的速やかに、そんなに一週間も十日もという話ではありませんというところは言っていただいているんですけれども、私は、本当に一両日中ですとか、そういうきちっと期限を示した運用をやっていただきたいと思いますけれども、いかがでしょうか。

露木政府参考人 一律の時間を決めるというのはなかなか難しいという面がございますけれども、法律上も期間後速やかに聴取をするということになっておりますし、そもそも犯罪捜査というのは迅速性を要するというのが一般的でありますので、もたもたしていると犯人を取り逃がす、あるいは証拠が散逸するということもございます。

 したがって、ずるずると引き延ばすということは想定しがたいというふうに考えております。

井出委員 余り前回から前進といいますか、三浦さんのおっしゃったことと同じだなという思いで、またここも粘り強く考えさせていただきたいと思います。

 そうしましたら、次の話題に行きたいのですが、裁判員裁判の判決と控訴審判決の結論が違うこと、これはさきの国会の裁判員法の改正でも取り上げさせていただきました。大臣もこれまでの記者会見の中で、特に裁判、司法をわかりやすく、そういったことも一言触れられていたところもあったかと思うんです。

 今回取り上げたいのは、先日高裁で無罪判決が出ましたオウムの事件、菊地直子元被告、釈放されましたので、ちょっとまだ上告があるかないか、私は把握しておりませんが、きょうは元被告ということで呼ばせていただきたいと思います。

 これは、新聞、テレビを見ておりますと、事件から二十年がたっていて、裁判での証言を被告に有利に解釈するのか不利に解釈するのか非常に難しい裁判だった、また、専門用語も飛び交っていて大変難しい裁判、プロの裁判官が一審でやって二審の裁判官をプロがやったとしてもその解釈がひっくり返ることもあるというような報道もありましたし、また、裁判員裁判というスケジュールを区切ったスピード審理が影響したのではないか、そんなような指摘もありました。

 実際、裁判員裁判はたしか二カ月で十二人の証人を呼んだと聞いておりますが、ただ、菊地元被告が逮捕されてから裁判に至るまでに二年近くありましたので、その公判前手続なんかも踏まえれば、果たしてスピード審理だったから一審が有罪で二審が無罪と言えるかどうかというところは非常に評価が分かれるかなと思います。

 きょう、最高裁の平木さんにまず伺いたいんですが、やはり、一審の裁判員の判決と二審の判決とが異なると、民意を覆したとかそういうことで大きなニュースになります。実際に、確かに裁判員制度が始まってから、裁判員の判決を尊重するべきだ、そういう一定の共通理解があるということはたしか前の議論でもあったかと思うんですけれども、民意を覆すケースというものは私はそんなに多くないんじゃないかと思うんですけれども、そのあたりはどのような御認識をお持ちか教えてください。

平木最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 刑事訴訟法上、裁判員裁判の判決につきましても、事実誤認や量刑不当を理由に破棄することができることになっておりますが、具体的にどのような場合に破棄できるかにつきましては、事件ごとに各裁判体が判断すべき事項でございますので、事務当局としてお答えする立場にございません。

 もっとも、一般論として申しますと、委員も御指摘されたように、裁判官同士での議論におきましては、裁判員裁判においては第一審の判断を尊重するという議論が広く行われておりまして、現に、例えば主要な十五罪名の破棄の割合につきましては、第一審が裁判官裁判であった事件に対する平成十八年から平成二十年までに終局した控訴審判決と、第一審が裁判員裁判であった事件に対する制度施行当初から平成二十七年九月末までに終局した控訴審判決を比較いたしますと、前者の破棄率が一七・六%に上るのに対し、後者の破棄率は八・八%にとどまっておりまして、破棄の割合は低くなっているところでございます。

 なお、最高裁判所は、事実誤認に関して、控訴審が第一審判決に事実誤認があると言うためには、第一審判決の事実認定が論理則、経験則等に照らして不合理であることを具体的に示す必要があると判示しているところでございます。上訴事件を受けた裁判体は、このような最高裁判例を考慮に入れながら、事件ごとに適切に判断していくものと考えておるところでございます。

井出委員 今、一審をプロの裁判官がやっていた時代、これは二審と結果が違うときは一七%ぐらいあった、裁判員裁判が導入されてからその数字が八・八%に減ったと。数字を見れば、裁判員裁判というものが尊重される、そういう環境にある、そういう状況にあるということがうかがえると私は思うんですね。

 ただ、ここで問題なのは、一審をプロの裁判官がやって二審もプロの裁判官がやっているときは、判断が違った、何で違ったのかがニュースになるんですけれども、裁判員裁判と二審のプロの裁判官の判決が違うと、やはり、そこに民意を否定した、そういう話がくっついてきてしまう。

 一審の裁判をやった経験者の方にマスコミが取材をすると、自分は一生懸命頑張ったと。自分を責める方というよりも、何かすごく無力感を述べられたりとかそういう記事をよく見まして、それで、マスコミなんかは、民意を覆した、常識の感覚を変えた、そういう論調になるんですけれども、私は、別に一審と二審の判決が違っても、裁判員の方が、では自分たちは間違っていたのか、そう思うのは自由なので私も強制はしませんけれども、少なくともそう思ってもらう必要はない。別に一審と二審で違うことはあるんですよ、そういう環境をつくっていかなきゃいけないかなと思うんですけれども、そのあたりの議論というのは始まっているんですか。

平木最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 裁判所といたしましても、裁判員の精神的負担という点につきましては十分認識しておりまして、その負担軽減のため、各庁におきましてさまざまな取り組みを行っていると承知しております。

 委員御指摘の点に関しましては、まず、裁判員の方に対し、判決宣告終了後も何らかの疑問や不安等がある場合には、いつでも裁判所に連絡をとっていただきたいとお伝えしています。そして、裁判員裁判の結果が上訴審で変更された場合にも裁判員経験者が負担感を覚えることがないよう、判決を言い渡した後などに裁判員に対して、裁判である以上、裁判員裁判の結論が上訴審で覆る可能性はあり、また、九人全員で出した結論なのであるから、仮に上訴審で変更されても負担に思う必要はないなどといった説明を行いまして、あらかじめ、裁判員の理解を得るように努めております。

 また、最高裁判所におきましても、裁判員経験者を対象とした裁判員メンタルヘルスサポート窓口を設置しておりますが、ある程度の時期がたった後に負担感が生じることも考慮いたしまして、そのサポート窓口の利用には時間的な制限を設けておりません。

 裁判所といたしましては、今後とも、このような取り組みを通じまして、裁判員の精神的な負担の軽減に努めてまいりたいと考えております。

井出委員 今、裁判所の方で対応していただいていることをお話しいただきました。

 これから裁判員裁判というものがますます定着、成熟したものになっていくときに、もう少し、社会全体といいますか、裁判員裁判の判決がひっくり返ったら全てが悪と言えるのか、全てをネガティブに捉えていいのか、そういうことも考えていかなければいけないと思うんですね。

 そのときに、私は、今回の事件を見て改めて思ったのは、やはり裁判員制度というのは、なかなか完成した状態というものはすぐに見えてくるものじゃなくて、不断の努力でつくっていかなきゃいけないなと思うんです。

 今、二審の裁判官が一審をひっくり返すときに、論理則、経験則、不合理を具体的に示さなければいけないというお話がありました。私は、裁判員裁判を導入すると、やはり一審にかかわるプロの裁判官の役割というものが、我々が思っている以上に重くなってくるんじゃないかと。

 間違っていたら指摘していただきたいんですが、恐らく、裁判員裁判で判決文を起草するのはプロの裁判官の三人のうちのどなたかだと思いますし、そこに裁判員の方の意見も入れると思うんですけれども、もちろんひっくり返ることもあるという説明もして、それでも裁判員の皆さんの意見を入れて、書きぶりは、不合理を具体的に示されないように、これが我々の裁判体としての総意なんだ、そういうものを示さなければいけないと思うんです。

 だから、一審の裁判官の役割というものは、もちろん、ここまで、裁判員が参加しやすく、意見を言いやすくとか、裁判員に重きを置いた議論もずっとありましたけれども、それ以上に、一審の裁判官の持つ役割というのが非常に重くなってきているんじゃないかなと思いますが、そのあたりはどうでしょうか。

平木最高裁判所長官代理者 裁判員裁判は、国民一般の方から裁判員として参加していただきました方の健全な常識と、それから、職業人である裁判官のプロとしての専門的知識、経験を融合させて、よりよい判断を目指すというものでございますので、委員御指摘のとおり、一審の裁判官の役割は非常に大きいものと思っております。

 地裁の裁判官は、日々、いろいろな研究会、検討会などを開催しまして、自主的に過去の裁判例なども検討しまして、これからもよりよい判断ができるように努力しているものと認識しておるところでございます。

井出委員 この菊地元被告の裁判は、これから最高裁にかかるのか、かからないのか、ちょっとわかりませんが、判決文を私自身が見ても、当然、事件自体も二十年前の話ですし、裁判で裁くということは大変難しい事件なのかなと思いますが、この裁判員裁判の制度を考える一つの問題提起をしてくれているのかな、そういう裁判なのかなと思って、引き続き見守っていきたいと思います。

 そうしましたら、次に、入国管理の関係を伺いたいと思います。

 ことしは、ISの邦人殺害事件ですとか、あとヨーロッパでの難民の問題、またフランスでの昨今ありました同時多発テロ、また、TPPの大筋合意を受けまして、海外ではビザが大幅に緩和される、そういう報道もあるんですが、入国管理のことについて伺います。

 十月の一日に、出入国管理インテリジェンス・センターというのができた。これは、新聞報道によると、規模は二十人で、テロを起こしそうな人、またそれに関連する人に特化した顔写真のデータベースを作成したりすると。

 そういうことが新聞報道で書かれておりますが、これは、この二十人というのは、顔写真のデータベースとかだと警察とかからも来ているのかとか、出身省庁がどうなっているのかという問題と、あと、実際に顔写真のデータベース化というものは、何人というか、どのぐらい進んでいるのか、インテリジェンス・センターの活動状況を教えていただきたいと思います。

井上政府参考人 お答えいたします。

 インテリジェンス・センターは、二十名の体制で発足いたしましたけれども、現在のところ、メンバーは全員入管の職員でやってございます。

 そして、インテリジェンス・センターの仕事は、情報の収集と分析の総括的な、企画的、司令的部分と、実際に分析の作業をしていく部分と、両方を含んでございます。

 したがいまして、今お尋ねになりました写真、顔画像のデータベースのお話につきましては、これもこれから非常に大きく構築していくことになりますけれども、現在のところ、顔画像も使ったブラックリストというものは割合と少ない。ブラックリストは指紋を中心に今構成してございますので、そういう状況の中で運営しておりますが、今後は、予算要求中でもございますけれども、新たなデータベースの開発、システムの開発等を進めまして、早急にデータベースを構築し、それを入国審査で使えるようにしてまいりたい、そういう段階でございます。

    〔委員長退席、伊藤(忠)委員長代理着席〕

井出委員 十月の一日にこのセンターができるということはことしの夏ぐらいから報道されておりまして、十一月の十八日の産経新聞では、実際に、「顔写真などの外見的な情報や、利用されやすい渡航ルートも分析し、テロリストや協力者に特化したデータベースを蓄積している。」とありまして、私はもう現在進行形のことかなと思ったんですが。

井上政府参考人 お答えいたします。

 顔写真のデータベースにちょっと特化して答え過ぎましたけれども、インテリジェンス・センターといたしましては、そのほかにも、PNR、乗客予約記録といいます、航空券を買って渡航してこられるお客様の、今まではそれの旅券上の情報、氏名とか国籍、それだけ入手しておったんですが、法改正をいたしまして、ことしの一月からは、券を買ったときの状況、どこの代理店で、いつ、どういう支払い方法で買ったとか、何枚、誰と一緒に買ったとか、前後の旅行先はどうであるとか、そういう総合的な情報が得られるようになりました。これは現在は紙媒体ベースで個別にお願いして収集しているんですが、これを来年の一月からは電子的に、データでいただけるようになってくる。

 ただ、インテリジェンス・センターといたしましては、現在でも、個別に紙媒体でもらっている情報につきましても、それを集約して分析することによって、やはり非常にリスクの高い者のあぶり出しが一部できてまいりますので、その辺はもう既に始めておる、そういう趣旨の報道であろうと思います。

井出委員 水際対策は、こういう時世ですので、大変重要だ、そう思います。

 実際、総理大臣も、国際テロをいろいろと防いでいくために、テロを国際的に防いでいくためにさまざまな発言をされておりまして、最近話題になっているんですが、外務省の方で、今度、国際テロ情報収集ユニット、これを当初の予定より前倒しして新設する、そこに国際テロ情報収集・集約幹事会というものもつくるというようなことが報道されておりまして、その報道の中に、水際対策として、入国審査の際の顔画像をテロリストの顔画像と照合するため、バイオメトリクスと呼ばれる技術を活用するとか、今お話があった乗客の予約記録、そういうことも出ているんです。

 この出入国管理インテリジェンス・センターというものは、これから発足します国際テロ情報収集ユニットですとかその幹事会とはどういう連携、かかわりというものが想定されるのか、今の段階のことを教えてください。

井上政府参考人 お答えいたします。

 御指摘の情報収集ユニットにつきましては、法務省側からの構成員としては、入管ではなくて、実は公安調査庁の方が行くことになってございます。非常にインテリジェンス性の高い情報集約の場になろうかと思います。

 入管といたしましては、むしろ、そういうところで集約された情報をいただいて、それを水際対策に役立てる、実際に審査ブースに来られた人でリスクの高い者を効果的に選別いたしまして、その者について慎重に審査して確実にとめる、そういうオペレーションをすることになりますので、インテリジェンス・センターというものは、むしろ、そこの情報の収集と分析、それを活用させるところの司令を行っていく、企画、司令を行っていく、そういう位置づけのものとしての機能を予定しております。

井出委員 もう少し伺います。

 今、国際テロ情報収集ユニットの方には公安調査庁が入る、入管のつくるインテリジェンス・センターの方は情報提供を受けることがある、そういうお話でしたが、当然、この外務省の方にできるテロ情報収集ユニットというものは、特定秘密保護法、これと密接に関係のある組織になるのかなと私は思っているんですが、この入管の方の出入国管理インテリジェンス・センターというものも、例えば特定秘密の提供を受けたり、もしくは、鑑識作業といいますか、そのセンターでやっている顔写真とか指紋等の情報等、そういうもので特定秘密を扱い得る、そういう可能性があるのかないのか、そこのお考えを教えてください。

井上政府参考人 お答えいたします。

 その情報収集ユニットの方から、仮にそちらで特定秘密ができまして、それの提供を受けたとしたら、そのときにおいて、その指定をするのか、十分な保全をするのかという取り扱いになろうかと思いますが、一般的に申し上げまして、今、入管の方で取り扱っているいわゆるブラックリストの関係につきましては、特定秘密としての指定はしてございません。ただ、機密性の高い情報もありますし、大事な個人情報がたくさんありますので、その保全には十分注意をしてやっておる、そういう状況でございます。

井出委員 そういう、例えば国際的に手配がされているですとかテロを起こすようなおそれのある人のブラックリストというものは、多くの人が知るところでなくても、関係者の知るところではあると思うので、今お話があったように、これまでも特定秘密の扱いではなく、これからも今までどおりということで、原則的なところは確認をさせていただきました。

 それともう一つ、出入国管理インテリジェンス・センターについて、水際対策と同時に観光立国の推進の方も掲げられていて、今、海外から非常にたくさんの方が来る、東京オリンピックに向けてもっともっとおもてなしをしていく、そういう中で観光立国の推進ということも掲げられておりまして、実際に、最長審査待ち時間の短縮というものを掲げられているんですが、これは今、実態的にはどうなんですか。

 ちょっとひっかかって別の部屋で特別官と話し合うこともあるかと思うんですけれども、そこに至らない最初の入国審査というものは大体どのぐらいの時間を外国人の方はとっていて、日本人の方がスムーズなのかなと思っているんですけれども、外国人の方はどのぐらいの時間がかかって、それをどのぐらいの時間に持っていけると目的を達成するというか、そのあたりの見通しを教えていただきたいと思います。

井上政府参考人 お尋ねは、いわゆる入国審査の最長待ち時間のことであろうと思います。

 一般的に、外国人につきましては、入国は許可になりますので、申請を受けまして、いろいろと上陸条件に合致しているかどうかを審査し、指紋をとり、顔写真を撮り、ブラックリストに照合してという作業をいたしますので、日本人に比べてある程度長い時間がかかるということはやむを得ないところでございますが、いろいろな合理化の工夫等もいたしまして、なるべく早い時間で処理しようと進めておるところでございます。

 そして、現在のところ、待ち時間はどのくらいのオーダーになっているかということでありますが、いわゆる四大空港、成田、羽田、中部、関西空港について言いますと、関西空港は、最近非常に外国人の入国者がふえまして、三十分台後半が最長待ち時間の平均値になってございますが、成田につきましてはおおむね二十分程度、羽田、中部につきましては二十五分程度になってございます。

 ただ、これにつきましては、私ども、観光立国アクション・プログラムにおきましても、最長待ち時間を二十分以内にしようという目標を掲げてございます。そして、それを実現するために、まず、私ども、今、予算措置等々を講じて進めておりますのは、審査をするブース、箱が足りないところについては、まずそこをふやして、その中で働ける審査官の増員をしていただく。人をふやすことによって単位時間当たりの審査の数をふやして時間を短縮するというのがベースになってございますが、さらに、機械化の措置といたしまして、一つは、自動化ゲートの利用者を、今、外国人につきましては非常に限定的な人しか使えませんが、今後につきましては、頻繁に短期でリピートするビジネスマンのような方々などを主たる対象といたしまして、事前に審査して登録することによって自動化ゲートで入れるようにしよう。そのようなことによりまして、一般の審査の待ちの列はより短くなるだろうということを一つ進めております。

 もう一つ、審査ブースで行う審査手続の一部を前倒しでやろうという試みを来年度から進めていきたいと思っております。それは、今、審査ブースの中で指紋と顔写真をとるのに一定の時間がかかっております。それを審査待ちの行列の最中に、別働隊をつくりまして、そこでとって、その情報、データを審査ブースに送ってすることによって、いわば、待ち時間を利用して実際に行う審査の時間を三割くらい縮められるのではないかという取り組みを進めようとしておるところでございます。

 そのほか、いろいろな合理化の措置等々を図りまして、二十分以内の最長待ち時間を達成しようと努力しているところでございます。

    〔伊藤(忠)委員長代理退席、委員長着席〕

井出委員 テロとか犯罪の関係の対策も非常に重要ですが、今おっしゃっていただいた取り組みですとか、きちっとと言ったら変ですけれども、一般の海外の方が日本に来るときに来やすい環境、そういうことの方もしっかりやっていっていただきたいと思います。

 残りの時間で、私は、大臣の記者会見をいろいろとずっとここまで読ませていただきまして、最初に、十月の八日の訓示、職員の方に向けて、法務行政は、国民にとってどうしてもわかりにくく、なじみにくい、それをわかりやすく、なじみやすくなるように努めていただきたい、大臣自身もよく考えてみたいと思っていますし、職員の皆さんも諦めないで不断に検討を行っていただきたい、そういうお話をされているんです。

 二カ月近くになります。法務行政は非常に分野が広くて、私なんぞも大変質問が偏っておるんですが、これをどうわかりやすく大臣として発信していくか、そのことについての今の思いを聞かせてください。

岩城国務大臣 ただいま委員からお話がありましたとおり、一般の国民から見ますと非常になじみにくい法務行政であったと思いますし、現在もそういう面が多々ございます。私自身もそうでありました。

 ただ、私は、地方議会の議員であったこともありますし、市長であったこともありますので、ある程度行政の仕組みについては理解をしてきたつもりであります。

 そこで、自分自身が心がけておりますことは、法務省は各地方にもさまざまな組織、機関を持っております。地方の皆様方は、そういった機関とかかわって、法務行政についていろいろな意見、それから考えをお持ちになっているわけであります。当然のことながら、期待とか要望もあろうと思います。ですから、自分自身、極力、それぞれの現場の組織、機関に赴いて、そこで仕事についている職員の皆さん、また、その機関に寄せられるさまざまな声、そういったものをお伺いしながら、それらをしっかりと受けとめて、わかりやすい行政につなげていきたいと思っております。

 具体的にも、さまざまな施設等に自分自身もこれまでに伺わせていただきましたし、それぞれの地域、それぞれの機関で抱えている、またそれぞれの自治体で抱えている課題等についても伺ってきたつもりでありますので、そういったことに少しでもお応えをしていく姿勢を持ちながら、これからもわかりやすい法務行政の執行に向けて努めていきたい、そのように考えております。

井出委員 課題が山積しておりますので、きょう、大変申しわけないんですが、たくさんの皆さんに来ていただきまして、沖縄との裁判の関係で訟務局長さんですとか、あと大臣会見でおっしゃられた子どもの人権SOSミニレターの関係で人権擁護局長さんとかに来ていただいたと思うんですが、私から大臣にお願いしたいのは、大臣の会見の中で、例えば、地元の更生保護施設を見に行かれたですとか、そういうお話もありましたが、ぜひ、たくさんあるテーマの中で、これはというものをつくっていっていただきたいと思います。

 また、これから国会で大きい法律の議論があれば、前の上川大臣なんかはちょうど刑訴法の議論があったときに大臣をしていた、そういうこともあって、刑事司法のことについて大変よくやっていただいたかなと思うんですが、ぜひ、わかりやすさというものは大臣の発信というものも非常に大きいと思いますので、そのことをお願いしたいと思います。

 本当は法務委員会だけでも臨時国会を開催したいということもあったんですが、国会の波というものは、開かれても波があれば、開かれないという波もある、そういうこともわかりまして、きょうは、最後に奥野委員長に一言、お世話になったお礼を申し上げまして、私は、特に刑訴法で修正案のときに、最後の方、御同席をいただいたということは大変感謝しております。その修正案への思いは、今、警察の方に一生懸命お願いしているところなんですが、そういう思いもありまして、一言感謝を申し上げて、質問を終わりたいと思います。

 どうもありがとうございました。

奥野委員長 十一人の参考人を呼んで三人しか答えなかったので、これは、これからの合理化アイテムだろうと思います。そういうことも頭に入れながら能率のいい運営をしてもらいたいな、こう思います。

 次に、山尾志桜里君。

山尾委員 民主党の山尾志桜里です。

 岩城大臣並びに盛山副大臣、そして田所政務官と、きょうはとかしき副大臣にもおいでいただきました。ありがとうございます。

 それでは、早速質問に入りたいのですが、岩城大臣のきょうの御答弁、本当に丁寧な物腰で御答弁をいただいていまして、私としては、しっかり岩城大臣の所信演説を聞いた上でそれに対する質問をさせていただいて、そして一般質疑なり個別のテーマなりに入る、やはりそういう手順をしっかり踏んでいきたいものだというふうに改めて思いました。

 そういう手順が踏めていないのも、突き詰めて言えば、一番責任が重たいのは安倍総理大臣だと思います。安倍総理が、臨時国会を憲法上開くべきであるのに開かない。ただ、岩城大臣も内閣の一員でありますので、やはりこれは聞かせていただきたいというふうに思います。

 私たちは、十月二十一日に、衆議院百二十五名、参議院八十四名、それぞれ当然四分の一以上をもって臨時国会の召集を要求しましたが、開かれておりません。憲法五十三条には、いずれかの総議員の四分の一以上の要求があれば、内閣はその召集を決定しなければならないと書いてあります。

 岩城大臣にお伺いをいたします。

 このたび臨時国会を開かないことは憲法五十三条に違反すると思いますか、違反しないと思っていらっしゃいますか。

岩城国務大臣 端的にお答えをさせていただきます。

 憲法五十三条の解釈についてということでありますけれども、憲法に関する一般的解釈にかかわるものでありますので、これは、政府部内におきまして憲法に関する一般的解釈について全面的に責任を負うべき地位にあるのは法務大臣ではなく内閣とされていることに鑑み、私のお答えは差し控えさせていただきます。

山尾委員 上川前大臣も、憲法の解釈は私の所管ではないということで、常に憲法の解釈から逃げておられました。大変残念なことだというふうに思います。

 岩城大臣は、十月七日、初登庁後の記者会見においてこのように述べておられます。「法務省は、法秩序の維持、国民の権利の擁護を通して、国民生活の安全・安心を守るための法的基盤を整備するという重要な使命を帯びています。その大臣を拝命し、とても身の引き締まる思いです。」

 法秩序を維持する職務の法務大臣が内閣の一員として臨時国会を開かないことを是とするならば、憲法五十三条との関係で法秩序が壊れていないことをぜひ説明していただきたいと思いますが、もう一度いかがですか。

岩城国務大臣 重ねてのおただしになりますけれども、憲法に関する一般的解釈につきまして、私からお答えを差し上げることは差し控えさせていただきます。

 ただ、内閣としての判断ということであります。それにつきまして、既に内閣官房長官等がさまざまな場面で御説明しているとおりであります。

山尾委員 大変残念です。

 憲法の一般的な解釈をお伺いしているわけではありません。実際に憲法五十三条の明文に反している。今この状態が、臨時国会が開かれていない、今のまさに現実に起きている個別の状況について憲法の明文に違反しているように読めるのだがどうでしょうか、こういう質問でございました。

 それでは、もう一つお伺いをしたいと思います。これは所管ではないというふうにはお答えしないと思いますが、公平を期して言うならば、通告をしておりません。

 大臣は、やはり初登庁後の十月七日の記者会見で、刑事訴訟法、まさにこの法務委員会の所管について記者さんからこんなふうに質問されておられます。「不法な盗聴をしないという担保がどこにあるとお考えか、」こう聞かれて、このときは大臣は、「私も十分に承知していない部分がありますので、よく担当者から説明を聞き、ヒアリングをした上で、しっかりと考えていきたいと思っています。」こう答えられました。

 この日は初登庁の日でありますから、翌々日の九日、再度記者さんから同じテーマについて、「担当者からお話を聞くことはできましたでしょうか。それを踏まえ、現在のお考えを」と大臣は再び尋ねられました。それに対して大臣は、「残念ながらまだ担当者からヒアリングをする時間がとれないので、なるべく早い時期に直接ヒアリングをし、それからお答えさせていただきたいということでお願いしたいと思います。」このようにお答えになっております。

 最初の質問の十月七日からほぼ二カ月がたとうとしております。大臣、この問題についてヒアリングをされたでしょうか。そして、それに対して、通告していませんので根っこの部分の短い御回答で結構です、御回答いただけますでしょうか。

岩城国務大臣 おただしの件につきましては、その後、ヒアリングを当然のことながら受けております。

 その上でお答えをさせていただきますが、担保の問題等もお話がありましたけれども、この点につきましても含めまして適切に運営されていってほしい、そういう思いのもとに、これから自分自身、大臣として取り組んでいきたいと思っております。

山尾委員 中身については先ほど井出委員からもやりとりもありましたし、しっかり時間をかけて、まだ成立していない法律でありますので、これからもまたということになるんでしょうけれども、ただ、私自身の感覚で申し上げますと、この刑事訴訟法の傍受についての、不法な盗聴にはならないかという質問というのは、本当に、この法務委員会における最大の法案に対する国民の率直な懸念を伝える超基本的な質問だと思います。

 例えば、農林水産大臣が新しく大臣になられて、TPPによって農家は打撃を受けないのですかと聞かれて、大臣になったばかりなので追って答えますというふうにはならないんでしょうし、例えば厚労大臣が、今回かわっていませんけれども、仮に新しくなったとして、今国会の派遣法で本当に非正規から正規への転換は進むのですかと聞かれて、新しくなったばかりなので後にしてくださいということにはならないんだと思います。

 やはり刑事訴訟法については、この法務委員会ではみんなで、本当に根幹にかかわる刑事司法の大きな改革、それを改悪ではなくていいものにしたいという思いでやってきましたし、これからもさまざまな話が出てくると思いますので、改めて、先ほど申し上げた傍受のことも含めまして、ぜひ次回以降は大臣なりのいろいろな御所見をお伺いしていきたいと思いますので、よろしくお願いします。

 それでは、きょうのテーマですけれども、司法面接を含む多機関連携ということについてお伺いをしたいと思います。これは、重徳委員もこの委員会で随分と御発言をされましたし、我が党の後藤祐一議員も極めて一生懸命取り組んでいるものであります。

 皆さんのお手元に資料をお配りさせていただいていると思います。この司法面接を含む子供の犯罪被害者のための多機関連携について、十月二十八日に、第一歩としては本当に大事な通知が三通出されました。それぞれ、最高検、警察庁、そして厚生労働省からの通知であります。

 これもちょっと岩城大臣の言葉をお聞きしたいなと思うのは、なぜ、こういった子供の犯罪被害者に対しては、幾つかの複数の機関が、プレーヤーが連携をすることが必要だねというふうに考えられるようになったのか、その理由といいますか、背景というようなものをもしお聞かせいただけるのならばというふうに思います。

 私自身が考えるのは、まず、それは何のことをイメージすればいいのかということから多くの方はスタートされると思います。司法面接とか多機関連携と言っても余りぴんときません。それをいわば五W一Hみたいな形で私なりに説明するならば、まず、ホワイというところでいうと、子供の負担軽減とその被害供述の信用性をしっかりと支えるために。ホエン、いつということでいうと、これは、子供が犯罪の被害に遭ったときに。誰が、フーということでいえば、子供を支える立場の多数の機関が。ホエアというところでいえば、できれば一つの屋根の下で。ホワット、何をということでいえば、とにかく子供の利益を中心に連携をして、子供をいろいろな機関にたらい回しにせずに支え切ること。ハウ、どのようにといえば、その中核を担う制度の一つとして司法面接というのが位置づけられるのかなというふうに感じております。

 その上で、ちょっと冒頭、大臣、こういった制度がなぜ今改めて求められるようになったのか、その理由や背景について一言コメントをいただけますでしょうか。

岩城国務大臣 このことにつきましては、まさに委員がお話しなさったとおりだと思います。子供さんの負担を軽減する、そして、同じような質問というか、何度も一人のお子さんに聞かすこと、そういった機会を多くすること自体が非常に大変なことになるわけでありますので。

 そこで、これまでも検察当局におきましては、児童の事情聴取に当たり、事案の性質に応じて警察と連携するなど、児童の負担軽減等に努めてきたものであります。ただ、児童の負担軽減及び児童の供述の信用性確保、こういった観点から、警察及び児童相談所とのさらなる連携強化が必要であり、より一層の工夫、改善を加えつつ、児童への配慮を行っていく必要があることから、今般の通知を発出するに至ったものである、そのように考えております。

山尾委員 まず、最初の理解を一にしていただいてありがとうございます。

 私自身が検察官をやっていたときに、恥を忍んで申し上げますと、やはり、極めて重大な性犯罪を受けた子供も含めて、犯罪被害を受けた子供から直接被害状況を聞くということを私もやっておりました。そのときに私の頭の中に一番あった思いは何かといいますと、私の手元には警察官が既に聞き取った供述調書があります。その上で私が検事として重ねて話を聞きますが、とにかく目の前のお子さんが警察の調書と違う話をしないでほしいと念じて話を聞いておりました。

 それはなぜかと申しますと、話が変わってしまうと、当然、その子供の供述の信用性が裁判で低く扱われてしまうからです。本来であれば、その子にとって一番負担のない方法でどうやって聞けるんだろうか、まずそれが一義にあるべきであるし、違う話をしないでほしいなんということを、中心に、頭に据えて聞くべき場面ではないのだけれども、そういう状況でありました。それは、こういうできるだけ一回で聞き取ろうという制度はもちろんありませんでしたし、一方で、私自身、子供から被害状況を聞き取るための専門の学びというものも特別には受けていなかったからということもあると思います。

 そういう中で、やはり今回の通知の第一歩を、本当にぜひ、子供の利益を中心とした、いわゆる画期的な制度へと育てていきたいなというふうに思っているのです。

 この法務委員会で視察に行かせていただきました。この子供の司法面接を中心とする多機関連携を進めているのは、アメリカそしてイスラエル、もちろんほかもあるんでしょうけれども、よく言われるのはこの二カ国です。私たちが法務委員として行かせていただいたのはイスラエルでありました。

 イスラエルも、ホワイ、理由のところはほぼ同じです。

 ではまた、どういうときというところからいきますと、十四歳未満の子供を中心に、そういった子供が犯罪の被害に遭ったとき。

 そして、誰がということを見ますと、司法面接官。これは、警察官ではなくて、今は、厚生労働省の職員、イスラエルでいう福祉省の職員が特別の研修を受けて、司法面接官として百人規模で用意をされています。それで、司法面接官、警察官、小児科医、ドクター、ソーシャルワーカー、そして子供の心理的な負担をよりほぐすためのハウスマザーと言われる方々がいらっしゃいました。

 ホエア、どこにいるかというと、診察室も面接室も一つ屋根の下にある、いわゆる子供の権利擁護センターというような場所で、これは六つあるとおっしゃっていました。二つ建設中なので、八つになるとおっしゃっていました。

 ちなみに、イスラエルの人口が八百三十四万人ですので、人口百万人当たりに約一つぐらいの計算で今整備されようとしている。これが本当に最も適正規模かどうかは全くわかりませんが、同じ感覚でいえば、例えば日本でいえば百二十カ所ぐらいあるというイメージになるんだろうと思います。

 何をするのかというと、やはり福祉、医療、捜査、こういった立場の大人が連携をして、ハウ、司法面接を含めて子供の権利を守る。

 このやり方というのは、私が学んでいる限りは、アメリカで行われているやり方と大きな柱は一緒です、プロトコル、聞き方が違ったりしますけれども。

 あとは、日本では、いわゆるワンストップとして子供のこういう被害を守っている神奈川の子どもの権利擁護センターもあります。これはNPOがやっています。ここもおおむね同じようなシステムで、今、一生懸命民間でやってくださっています。

 そういう中でこういう通知が出て、私はとてもうれしいんですが、ちょっと残念なのは、まず、これは、厚労省のホームページ、そして警察のホームページ、これには三通知ともちゃんと公開してあるんですが、法務省あるいは最高検、どこを見ても、こういうことを始めるよという通知がホームページに載っていないのですけれども、これには何か載せられない理由があるのでしょうか。大臣でも事務方でも結構です。

林政府参考人 委員御指摘のとおり、最高検から発出された通知につきましては、警察庁及び厚生労働省のウエブサイトには掲載されておりますけれども、それ以外のところには掲載されていないという状況がございます。

 この点につきましては、法務省と最高検察庁の関係という問題から、最高検察庁が出したものについてストレートで法務省のウエブサイトに載せるということがなされていなかったわけでございますけれども、いずれにしても、今後、その掲載については検討してまいりたいと思います。

山尾委員 ぜひお願いします。

 最高検で出した通知が厚労省に載っているわけですから、法務省に載っていても全く問題ないというふうに思いますので、これはぜひ掲載していただきたいと思います。

 それで、では、中身に入っていくんですけれども、ホワイ、理由のところはお伺いをしましたので、これから先、こういう制度を始めようの第一歩の中で、では、この通知を見ると、ホエン、どういうときにこういった司法面接を含めた多機関連携をしようとしているのか、これをまずは事務方の方にお伺いをしていきたいと思います。

 まず、厚労省にお伺いをしますね。

 厚労省の通知を見ますと、これは、四枚めくっていただいて、ページ数でいくと右下番号五になります。この通知を三つ通して見ると、要するに、最初のきっかけを児童相談所が把握した場合は連携の必要があるかどうかを児童相談所が判断する、最初のきっかけを警察が把握した場合は警察が連携の必要性を判断する、何かこんなふうになっているようなのです。

 児童相談所で最初のきっかけを把握した、間々あることだと思います。では、どういうときに児童相談所は、これは警察そして検察と連携が必要だなというふうに判断をするのかということが載っているのですが、下線の部分です。「刑事事件として立件が想定される重篤な虐待事例など、児童相談所において、子どもの特性を踏まえた面接・聴取方法等について、三機関で協議することが必要と判断した事例」。

 これは、児童相談所あるいは厚労省にお伺いをいたします。児童相談所が、刑事事件として立件が想定されるか否かを判断できるのでしょうか。

吉本政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま御紹介のありました通知のとおり、通知におきましては、刑事事件として立件が想定される重篤な虐待事例など、子供の特性を踏まえた面接、聴取手法について協議することが必要と判断した事例というふうにさせていただいております。

 具体的には、まず、児童相談所の方に通告等がございましたときは、初期調査というふうに申しまして、通告要件となった子供の何らかの発言あるいは寄せられた情報として、性暴力被害等を受けている可能性があるかどうか、あるいは何らかの危険が発生しているかどうかといった、いわゆる最低限のそうした把握をいたしまして、その結果、児童相談所内で、今申しましたような、協議にかける事案かどうかということを検討し、所長が最終的には判断するといったような手続でやらせていただいております。

 ここで言う「刑事事件として立件が想定される重篤な虐待事例」というのは一つの例示でございまして、個々の児童相談所において適切に判断してまいりたいというふうに考えております。

山尾委員 吉本審議官におかれましては、愛知県で東海初の女性の副知事ということで、つい先般まで県でもお世話になりました。この司法面接の事案についてもぜひしっかりお世話になりたいと思うんですけれども、とはいえ、今言っていただいたような内容というのは、いわゆる刑事事件として立件をするかどうかという判断要素とは随分違う切り口なんですね。

 そして、恐らく、証拠の十分性だとかあるいは犯人性の問題だとかいうことは、児童相談所の方というのは当然研修も受けていないと思いますし、今の段階で受けているべき必要は、今の段階まででは少なくともそうなかったんだろうというふうに思います。なので、適切に判断しますとおっしゃられましたけれども、制度上というか職務上、なかなかそう適切には判断できないんだろうというふうに思うんです。

 例示なんですけれども、こういう紙において例示というのは現場でそれなりの重たい意味を持つということも皆さん御承知のとおりでありまして、もう一つ言いたいのは、やはりこれは、子供に面接をしてしまってからでは遅いんですね。やはり、最初に子供に事情を聞く前に判断をすることが極めて重要。一度でもその子供にいわゆる被害の内容についての聞き取りをスタートしたところから子供の記憶というのはいわゆる汚染が始まっていくという言葉を使う人もいます。なので、その入り口前のところで余り絞りをかけ過ぎると、この制度趣旨が生かされないでしまう事案というのが随分出てくると思うんですね。

 そういう意味で、副大臣、例ではあるんだけれども、重篤というふうに、例として挙げられているのがかなり絞られているように読めますし、そしてまた、当然、児相の人がなかなか判断しにくい立件要素が入っている。ちょっとそこの部分は、もう少し幅広に、そしてもう少し児相の職員さんが判断できるような間口で捉えていただいた方がやはりいいと思うのですが、副大臣、いかがでしょうか。

とかしき副大臣 お答えさせていただきます。

 山尾委員のおっしゃることはとてもよくわかります。

 ただ、児童相談所にいらした場合、私たち児相としましては、どう対応していいのか、要は、被害状況はどの程度なのか、そして、保護した方がいいのかしない方がいいのか、こういうことを本人からある程度聞き取りをしないと、やはり周りの方だけの情報ではそれが把握できない場合もありますので、これは、ですから、全てそういう被害状況を、まずは、どの程度の危険が発生しているのかということを、状況を判断しなくてはいけないということで、先ほどお話がありましたように、初期被害調査面接というのをさせていただきます。

 その後、先ほど言いましたように、児童相談所長が、子供の発言を踏まえて児童相談所内の会議等で検討した結果、やはりこれは三者機関で協議する必要ありというふうになった場合に適切に判断していこうということで、今回、例示という形にさせていただきました。

山尾委員 ちょっとこれは確認ですけれども、では、この制度がスタートしても、厚労省は、子供本人から初期被害調査という形で聞き取ることを大前提とした上で、その後に三者の連携が必要かどうかを判断する、副大臣のおっしゃることはそう聞こえたんですが、そういうことでよろしいんですか。

とかしき副大臣 お答えさせていただきます。

 子供に聞き取りをするのを前提にしているわけではなくて、被害の事実を詳細に把握するための手段の一つとして、お子さんに聞くというのも一つの方法としてあるということであります。

山尾委員 被害事実を詳細に判断するのは、恐らくこの後のことなんだろうと思います。事務方の皆さん、うんうんと言っていただいているように私には見えるのですが、被害事実を最初の入り口で単一の機関が詳細に判断しようとするから、子供が、結局その後は、別の機関でもさらに詳しく別の切り口で聞かれる、さらに検察に行って別の切り口で詳しく聞かれる。今までそうだったから、子供から被害事実を詳細に聞くのはできるだけ一回にするために、詳しく聞く前に、事前にそれぞれの機関がそれなりに判断をして、まず連携しましょうと。連携した上で、では、子供から被害事実を詳細に聞くのは検事がいいのかな、警察官がいいのかな、児相の職員がいいのかな、はたまた、もしかしたらこれからは、司法面接官というような、何らかのきちっとした研修を受けた別の単独の専門官ということもあり得るのかな、そういうことでやっていこうというのが多分この多機関連携、そしてその中核に当たる司法面接だというふうに思います。なので、ちょっとその点はぜひ御理解をいただきたいと思います。

 ちょっと警察の方に伺いますけれども、警察の通知を見ますと、警察の方では、これは右下三ページ、警察が把握をした場合。警察が把握をした場合には、このように書いてあります。「刑事事件としての立件が見込まれ、かつ要保護児童として児童相談所の関与が必要と認められるものについて、」と。ここには重篤な虐待というような例示にはなっていないんですけれども、これはなぜでしょうか。

露木政府参考人 重篤な虐待が含まれることはもちろんでありますけれども、刑事事件としての立件が見込まれるものであれば、当然私どもとしては捜査をしなければならないという立場でございますので、そういう限定をしていないという趣旨でございます。

山尾委員 ありがとうございます。

 今の観点からも、重篤な虐待に限らず、もしそれが重篤ではなくても、やはりその子はその後、状況によっては警察、検察という司法のルートに乗っていく可能性がある。そうであれば、できるだけ最初から一回で聞くべき必要性があるかないかということは、それが重篤かどうかということとは直接つながりがないんですね。

 なので、ちょっとその点を踏まえて、ぜひこの例示がひとり歩きをすることがないような構えを厚労省としてとっていただきたいというふうに思うのですが、いかがでしょうか。

とかしき副大臣 ありがとうございます。

 おっしゃるように、例示が束縛するようなことはないようにということは考えておきたいと思いますし、児童相談所の目的は、法的手続をとることが目的ではなく、その児童を保護していくかどうか、そこの立場で、やはり面談を行ったりとか、考え対応させていただくという、それが趣旨で対応させていただいておりますので、警察と検察の立場と児童相談所の立場は、少し違う立場で対応させていただくのは御理解いただけたらありがたいかなというふうに思います。

 以上です。

山尾委員 ここでちょっとテーマをかえようと思ったんですが、もう一度言いますけれども、今ある問題というのは、児童相談所は子供の保護ということがやはり一番のメーンにある、警察は捜査である、検察は有罪をとることも含めたやはりそれの立場がある。ただ、それぞれ立場が違うので、それを大人の都合で切り分けていたことによって、子供が何回も供述を強いられたりだとか、物理的にも場所を何回もたらい回しにされたりだとかがあったので、そういうそれぞれの目的は別だけれども、むしろ全員が子供の利益という同じ目的を共有して最初から連携しましょうねということだと思いますので、ぜひ今までの部分を副大臣の力でさらに乗り越えていただきたいなというふうに思います。

 次に、面接を誰がやるのかということがとても重要なことになってまいります。

 まず、ちょっと前提で法務省にお伺いをしたいのですが、この制度がスタートするに当たり、「三機関のうちの代表者が児童から聴取する取組の実施も含め、」検討するとあるんですけれども、三機関のうち誰かがやるということも当然あるでしょう、でも、三機関ではない中立の第三者がやり得る余地もあるでしょう、私はそう読んでいるんですけれども、そういった理解でよろしいですか。

林政府参考人 委員御指摘のとおり、個別の事件でどのような聴取をするのかということについてをこの三機関で協議しよう、連携しようということでございますので、その過程の中でどういう形で誰に協力をいただくかということは、また協議の中の検討事項となってこようかと思います。

山尾委員 ありがとうございます。

 私も、今余り主体を定めるのは時期尚早だというふうに思っています。これからスタートするに当たって、しっかりケースを積み上げていただいて分析していただいて、どういう場合に誰が面接官をやるのがいいのかということを私たちも含めて一緒に検討していきたいなというふうに思っています。

 とはいえ、当面は、日本に司法面接官なるものが制度上位置づけられていない今、場合によっては、やはり検察官や警察官や児童相談所の職員が聞き取るということが出てくるんだろうと思います。

 では、これもやはり法務省にお伺いをします。

 子供の被害者からの聞き取りをする検事が、少なくとも子供から聞き取ることについての専門的な研修を最低限これだけは受けていますというラインが今あるのでしょうか。

林政府参考人 この司法面接的な手法による事情聴取、取り調べ、参考人の取り調べ、こういったことにつきましては、もちろん古くから取り組んでいたわけではございませんが、最近になりましては、法務・検察におきましてさまざまな研修等を打っております。それは、各自、経験年数に応じて各種研修をしておりまして、まずは、初任の検事には初任の研修の中で必ずそういったことを講義しますし、また、三年後ぐらいの一般研修というのがございますが、そういったところでも研修をしております。

 その上で、既にこの司法面接的手法による事情聴取というのはこの通知を出す前から各地で行われてはおりまして、そういった場合にはどのようにしているかといいますと、実際にそれを担当する検察官が、自分が代表者として事情を聞くことになったときには、改めてまた、その分野の、これに非常に詳しい専門家がございますので、事情聴取に先立ちまして、その聴取の際の手法について専門家に聞いた上で事情聴取に臨むというふうな形で今対応しておるところでございます。

山尾委員 さまざまな段階で研修はしているということなんだと思うんですけれども、実は、これはことしの五月十九日の毎日新聞なのですが、やはり、司法面接、ある地検で被害児童に配慮した質問の聴取方法を学ぶという記事が出ております。それで、ある検事の感想で、「これまで子供から聴取する機会は多かったが、質問方法などを具体的に教わったことはなかった。今後実践していきたい」、こんなふうに述べておられて、これは率直な感想だと思うんですね。

 なので、今回のスタートを本当に子供のための画期的な制度に飛躍させていくために、この研修を含めてたくさんの課題があります。きょう、質問したいことのまだ三分の一ぐらいしか終わっていないのですが、まずはこうやって共有させていただいて、感謝をしたいというふうに思っております。

 そして、最後に、臨時国会が開かれないということであれば、残念ながら、年内、この法務委員会がきょうで最後になるやもしれません。本当に、今国会、ことし、この司法面接も法務委員長に実際大変御尽力をいただいたと私は認識しておりますし、刑訴の議事の進め方、あるいは法務委員会の大変充実した視察、大変感謝をしております。

 ぜひ、この長い国会を含めて、委員長から、これからの法務行政、そして議論のあり方について一言お言葉もいただきたいと思うのですが、委員長、よろしいでしょうか。

奥野委員長 私は答弁する立場にないんですけれども、御質問ですからお話をさせていただくとすれば、そんな長いことを言うわけではないんですが、百八十九国会、九十五日間の延長を含めて二百四十五日間、皆さん方とともに議論をしてきました。

 しかし、中を見ると、必ずしも能率的であったかというとやや疑問がありますけれども、特に刑訴法については、皆さん方の理解を得ながら、なるべくみんなで合意する答えを出そうよ、そういう主張をして運営に努めてきたつもりであります。最終的には、参議院を含めればたくさんの法案が残ったわけですけれども、皆さん方の納得できる刑訴法ができたとするならば、これは参議院の方にも御協力をいただいて、ぜひ早く成立することを期待しております。

 いずれにしても、議会が納得する答えを出すということが一番大事だろうと思いますし、もう一つ言わせていただくならば、国会対策なんということを考えないでスピーディーに議論をするということが、私は、企業経営者として考えると一番の問題点であったんじゃないかな、こんなふうに思います。

 大変お世話になりました。ありがとうございました。(拍手)

 本日は、これにて散会いたします。

    午後三時散会


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