衆議院

メインへスキップ



第8号 平成13年5月18日(金曜日)

会議録本文へ
平成十三年五月十八日(金曜日)

    午前十時開議

 出席委員

   委員長 土肥 隆一君

   理事 河野 太郎君 理事 下村 博文君

   理事 鈴木 宗男君 理事 米田 建三君

   理事 安住  淳君 理事 桑原  豊君

   理事 上田  勇君

      池田 行彦君    金田 英行君

      小島 敏男君    高村 正彦君

      桜田 義孝君    下地 幹郎君

      虎島 和夫君    中本 太衛君

      原田 義昭君    宮澤 洋一君

      望月 義夫君    山口 泰明君

      伊藤 英成君    木下  厚君

      首藤 信彦君    中野 寛成君

      細野 豪志君    前田 雄吉君

      丸谷 佳織君    赤嶺 政賢君

      東門美津子君    柿澤 弘治君

    …………………………………

   外務大臣         田中眞紀子君

   外務副大臣        杉浦 正健君

   外務大臣政務官      丸谷 佳織君

   外務大臣政務官      小島 敏男君

   外務大臣政務官      山口 泰明君

   政府参考人

   (防衛施設庁長官)    伊藤 康成君

   政府参考人

   (外務省大臣官房長)   飯村  豊君

   外務委員会専門員     黒川 祐次君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月二十六日

 辞任         補欠選任

  中本 太衛君     仲村 正治君

五月一日

 辞任         補欠選任

  仲村 正治君     中本 太衛君

同月七日

 辞任         補欠選任

  小島 敏男君     松宮  勲君

  野田 聖子君     高村 正彦君

  平沢 勝栄君     山口 泰明君

  水野 賢一君     米田 建三君

同日

 辞任         補欠選任

  松宮  勲君     小島 敏男君

同月十八日

 辞任         補欠選任

  虎島 和夫君     金田 英行君

同日

 辞任         補欠選任

  金田 英行君     虎島 和夫君

同日

 理事小島敏男君同月七日委員辞任につき、その補欠として米田建三君が理事に当選した。

    ―――――――――――――

四月五日

 女子差別撤廃条約選択議定書の批准に関する請願(川田悦子君紹介)(第一一三四号)

 同(中林よし子君紹介)(第一一三五号)

 米原潜衝突事故の行方不明者の救助、原因の徹底究明に関する請願(春名直章君紹介)(第一一五四号)

 外務省機密費疑惑の徹底究明に関する請願(石井郁子君紹介)(第一一五五号)

同月十三日

 女子差別撤廃条約選択議定書の批准に関する請願(水島広子君紹介)(第一二〇五号)

 同(北川れん子君紹介)(第一二三二号)

 同(赤嶺政賢君紹介)(第一三〇二号)

 同(石井郁子君紹介)(第一三〇三号)

 同(石毛えい子君紹介)(第一三〇四号)

 同(瀬古由起子君紹介)(第一三〇五号)

 同(中林よし子君紹介)(第一三〇六号)

 同(藤木洋子君紹介)(第一三〇七号)

 同(山口富男君紹介)(第一三〇八号)

五月十七日

 米原潜衝突事故の行方不明者の救助、原因の徹底究明に関する請願(大幡基夫君紹介)(第一六五五号)

 外務省機密費疑惑の徹底究明に関する請願(石井郁子君紹介)(第一六五六号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 理事の補欠選任

 政府参考人出頭要求に関する件

 国際情勢に関する件




このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

土肥委員長 これより会議を開きます。

 理事の補欠選任についてお諮りいたします。

 委員の異動に伴い、現在理事が一名欠員になっております。この際、その補欠選任を行いたいと存じますが、先例によりまして、委員長において指名することに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

土肥委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 それでは、理事に米田建三君を指名いたします。

     ――――◇―――――

土肥委員長 この際、田中外務大臣、杉浦外務副大臣、丸谷外務大臣政務官、山口外務大臣政務官及び小島外務大臣政務官から発言を求められておりますので、順次これを許します。外務大臣田中眞紀子君。

田中国務大臣 今般、外務大臣に就任いたしました田中眞紀子でございます。土肥委員長を初め委員の皆様方にごあいさつをさせていただきます。

 外交の要諦は、言うまでもなく、国益を守り増進することであります。私は、外務大臣として、我が国の安全と繁栄を確保し、国民の皆様の生命及び財産を守ることを最優先の課題として取り組んでまいります。その上で、我が国にとって重要な世界の安定と繁栄を確保するために、我が国が国際社会で占める地位にふさわしい役割を果たしてまいります。そのためには、できるだけ明確なメッセージを世界に向けて発信し、また確実な実行力を持って発信した内容を実現してまいります。

 私は、改革断行内閣として発足した小泉内閣の外務大臣として、外交の分野においても改革を断行し、日本外交に対する信頼を取り戻すため、全身全霊を挙げて取り組んでまいります。そのためには、外務省の自己改革がまず必要であり、先般の機能改革会議の報告を踏まえ、みずから具体的改革案の作成にかかわり、自分の責任において発表いたします。

 国民の目線に立ってしっかりと国益に基づいた外交政策を展開するためには、本委員会の御議論は極めて重要と考えております。委員各位の御指導と御鞭撻をよろしくお願いいたします。

 ありがとうございました。(拍手)

土肥委員長 次に、外務副大臣杉浦正健君。

杉浦副大臣 皆さん、おはようございます。外務副大臣に就任いたしました杉浦正健でございます。土肥委員長を初め委員各位に謹んでごあいさつを申し上げます。

 我が国は、国際社会の重要なメンバーとして、二十一世紀にふさわしい国際システムの構築に努力していかなければならないことは、申すまでもございません。また、田中大臣がただいま申し上げましたとおり、改革断行内閣として発足した小泉政権にとりましては、外務省の改革も重要な課題の一つであります。私としても、大臣に協力いたしまして外務省の改革に全力で取り組んでまいります。

 種々の外交案件が山積する中、私は、田中外務大臣を補佐し、外務副大臣としての職責を全うするため、全身全霊で取り組んでまいります。委員長を初め本委員会の皆様方の御指導と御協力を賜りますよう心からお願い申し上げ、就任のごあいさつとさせていただきます。

 ありがとうございました。(拍手)

土肥委員長 次に、外務大臣政務官丸谷佳織君。

丸谷大臣政務官 おはようございます。引き続き外務大臣政務官に就任をいたしました丸谷佳織でございます。

 担当地域であります中東和平の問題、また文化交流、環境問題等、田中大臣指導のもと、全力で外務大臣政務官の使命を全うしてまいりたいというふうに思っております。

 土肥委員長を初め各委員の皆様の御指導と御協力を心よりお願い申し上げます。(拍手)

土肥委員長 次に、外務大臣政務官山口泰明君。

山口大臣政務官 おはようございます。外務大臣政務官に就任をいたしました山口泰明でございます。

 我が国は、世界から尊敬され、信頼される国家にならなければなりません。そのための外交を積極的に展開し、外務大臣政務官としての職務を全うするため、田中大臣の指導のもと、誠心誠意努力、汗を流す覚悟でございます。

 委員長を初め委員の皆様の御指導と御協力を切にお願いいたします。

 ありがとうございました。(拍手)

土肥委員長 次に、外務大臣政務官小島敏男君。

小島大臣政務官 おはようございます。このたび外務大臣政務官に就任いたしました小島敏男です。土肥委員長を初め委員各位にごあいさつを申し上げたいと思います。

 我が国が二十一世紀の国際社会において安全と繁栄を確保していく上でも、国際社会が抱える諸問題を克服して、よりよい世界の実現を目指す必要があります。そのためには、我が国としても、持てる力を活用して国際社会をリードしていかなければなりません。我が国がこうした役割を果たすために、田中外務大臣のもと、外務大臣政務官として職務を全うし、最大限の努力をしてまいりたいと思っております。

 なお、政務官の中では、私が特に本委員会を担当することになっております。委員長を初め本委員会の皆様の御指導と御協力をいただけますように心からお願い申し上げまして、ごあいさつといたします。

 どうぞよろしくお願いします。(拍手)

     ――――◇―――――

土肥委員長 国際情勢に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として、委員桑原豊君の質疑に際し、外務省大臣官房長飯村豊君及び防衛施設庁長官伊藤康成君の出席を求め、それぞれ説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

土肥委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

土肥委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。伊藤英成君。

伊藤(英)委員 民主党の伊藤英成でございます。

 今、大臣のごあいさつを伺いまして、大臣は、文字どおり外交の面におきましても改革を断行するというお話を、しかも国益の観点からという話をされましたけれども、ぜひ文字どおり改革断行を外交の面でもされますように、心から期待を申し上げます。

 まず、最初に申し上げます。

 大臣御承知かと思いますが、民主党はシャドーキャビネットならぬネクストキャビネットというものを構成しております。私が民主党のそのネクストキャビネットの外交・安全保障担当大臣、こういうことでやっているわけでありますが、今後たびたびこの場でも大臣と外交問題等につきましてまさに忌憚のない議論をしたいと思っておりますので、ぜひよろしくお願いをいたします。

 きょうは、幾つか大臣の考え方も伺いたい、このように思いますが、まず最初に、日米関係の問題について伺いたいんです。

 まさにアメリカの方もブッシュ政権ができました。日本も小泉内閣ができました。しかも、あたかも二十一世紀が始まったところですね。そういう意味で、改めてこれからの日米関係はどうあるべきだろうかという点について大臣の所見を伺います。

田中国務大臣 お答え申し上げます。

 私は、官邸での就任のときにもお話をして触れておりますけれども、日本の外交の基軸が日米関係であるということを信念として持っております。そして、ただ、これは二国間の問題だけではなくて、世界情勢もいろいろと変化しておりますから、国際情勢を含んだ幅広い対話を通じながらこの政策協定も含めて推進していきたい、このように考えております。

伊藤(英)委員 本件についてまた今後詳しくいろいろと議論もしたいと思っています。

 今後の日米関係ということを考えながら伺うわけでありますが、今週の初めの予算委員会等でもたびたび議論されたことでありますが、ちょっと改めてこの場でお伺いをしたいんです。アメリカのアーミテージ国務副長官が来られた際の田中外務大臣との会談の問題について、大臣からは、予算委員会の場でも、会談については調整中であったんだよ、そして、決定されていたものをキャンセルしたんではないんだという話がいろいろありましたね。

 私自身は、アーミテージ副長官とも過去何度もお会いしたり、ちょうど一年半くらい前でしょうか、彼のアーミテージ・アソシエーツの事務所で、まさに二人で、アジア太平洋あるいは日本とアメリカとの関係はどうあるべきなんだろうか、あるいは日本の基地の問題についてもどういうふうにすべきなんだろうかということ等についてもいろいろ議論もしたりしたんですよ。あるいは、この間の二月のときに、宇和島水産高校の実習船が衝突、沈没した問題につきましても、ハワイとワシントンにも行ったんですが、そのときにもホワイトハウスやら国務省、国防総省にも伺った。そのときにいろいろ議論をした関係者は、これまたいわばアーミテージとは非常に近い関係の人ばかりという私の認識であります。そういう意味でも、いろいろと忌憚のない意見を、特に今副長官という立場であることを考えても、議論をする話は非常に有益であったんではないか、私はこう思うんですね。

 そういう意味で、ちょっと再確認したいんですが、調整中だったとか、いろいろな話があったんですが、外務大臣みずからアーミテージ副長官と会う意思があのときあったんでしょうか。

田中国務大臣 もちろんございました。もちろんございましたから、二日に、コリン・パウエル長官と電話でお話ししましたときに、あちらからは何もメンションがなかったんですけれども、私の方から、お会いすることを楽しみにしているという発言をしたぐらいでございますから。

伊藤(英)委員 しかし、あのときに、官房長官とか副大臣とかそうした方、あるいは事務方との会談をアーミテージ副長官はされたりしていたわけですね。そうした人たちの日程が決まっていたのにもかかわらず、大臣のそういう意向があったにもかかわらず、なぜ決まらなかったんだろうかと、私、ちょっと不思議なんですよね。大臣の意を受けて官僚の方がしっかりと動かなかったのか、どうも大臣の意をよく理解していなかったのか、これはどういうことになるんでしょうかね。

田中国務大臣 ここは何遍でも同じことを申し上げざるを得ないんですが、過去の発言も当然伊藤先生御了解の上で、納得なさっていないからお聞きになると思うんですけれども、私はお目にかかるつもりで楽しみにしておりました。ですけれども、ここの辺が言い方が上手に言えなかったもので、またメディア等を通じて叱責を買いましたけれども、本当に疲労の極限状態、総裁選挙が大変熾烈で、ほとんど寝食を忘れて全国飛んで歩いていて、そのままどどっと組閣になりまして、とまらない列車に乗っているような状態。そういう中で、本当に気分がすぐれない、気分というか体調というかトータルで、もう本当に寝不足でもあったし、しておりました。

 それで、困ったな、どうしよう、でも健康のことを言うのは余りよろしくないという思いが政治家ですから基本にありましたし、最大限、どんなことがあってもお目にかかる、どなたであってもお目にかかる、これがオブリゲーションなんだという、自分の立場からいったら倒れてもしなければいけないことということはわかっておりました。

 ですけれども、幸い、官房長官も総理も防衛庁長官も、それから我が方の副大臣、今、一人御出張中ですけれども、皆様がお会いになるし、実務の方も会ってくださると言われれば、言ってみれば、親書も総理がじかにお受けになるので、そんなにつらいんだったらば、調整はまだしているだけであって、コンファームしたものではありませんから大丈夫ですと言っていただけたので、それではちょっと体を休めることと、それから、外務省というのはオールラウンドでイシューがたくさんございますので、それをただレクチャーだけ聞いていて、はい横からと、こちらが疑問とか、私の従来の考え方を開陳する間もなく、消化不良で行くところは即トラブルが起こりますから、それを自分なりにちょっと整理をしておかないとつぶされるという思いがありまして、大学ノートを二冊持っていたので、それで国会図書館に行きまして、附せんをつけて、このテーマは何だろうかと、とにかく三十分ぐらい、ちょっと休みながらそれをいたしました。

 幸いなことに、きのうでございましたか、アーミテージさんがワシントンで、自分が田中外務大臣と会談しなかったことが日本で波紋を呼んでいるが、米政府としては問題視しない立場を明確にしている、そして、むしろ小泉純一郎首相を初め多くの友人らとすばらしい会談を持ててよかったというふうに言っておられる。会談のときも、特にセットしてあるとは自分は承知していなかったし、外相が事前に会談に同意していたかどうかも自分は知らない。要するに、調整中であったということはしっかりアメリカ側に伝わっておりましたので、そのことをぜひ皆様に御理解いただきたいというふうに思います。

伊藤(英)委員 お互いですが、大臣、激務ですから、健康は十分に気をつけていただけたらと思います。本当に、外交あるいは外務大臣は物すごく激務ですよね。ここにも外務大臣経験者も何人もいらっしゃいますが、私もそれなりに承知していると思っていますが、大変な激務。だから、ぜひよろしく御自愛の上頑張っていただきたい、こう思います。

 私自身は、いつも思っているんですが、先ほど申し上げたように、それはワシントンであろうがピョンヤンであろうが北京であろうが、台北まで含めてですが、あるいはこの間は韓国も参りましたけれども、問題があればいつもその当事者と直接話をして、いい方向に持っていこうという思いでやっている。私は野党でありますが、そういう感じでおりますし、もちろん、日本に来られたいわば外国の要人にもできるだけ直接会って話をしたい、こういうふうに思っています。ぜひまたよろしくお願いします。

 それで、今外務大臣は、アーミテージに本当は会いたかったんだよ、しかし、ありていに言うと、ちょっと体調もあるかもしれない、準備不足ということもあるからということだったと思うんですが、今この時点で、ああやはり会えばよかったかなという感じがあるか、あるいは、そのときはそういうことであったとして、できるだけ早く会いたいものだ、こういう感じをお持ちですか。

田中国務大臣 ぜひ早い機会にお目にかかりたいと思っております。

 ですけれども、会談の内容につきましては、この間の衆議院予算委員会で、ここもちょっと誤解をされているところなんですけれども、私自身も誤解して岡田克也先生の質問にお答えしたので、何もわかっていないんじゃないかと言われてしまったんですけれども、外務省側が長時間にわたって極めて実務的なお話をなさっていまして、その中でお互いにどのようなQアンドAがあったかということがなかなか上がってきておりませんでした。

 見るならこれをどうぞと電話帳みたいな膨大なものが来まして、それはこの時間の中でとてもやりくりできるものではないので、骨の部分を下さいと言ったのが、結局四時過ぎまで委員会の最中は来ませんでしたけれども、今回、きのうもきょうもよくレクチャーを聞きまして、それから、日米間の大きなイシューについては理解はしておりました。したがって、今度はアドバンストな形でお話し合いができると思って、ぜひ早くお目にかかる機会があればというふうに楽しみにいたしております。

伊藤(英)委員 早く会って率直な話をしたいものだという意向なんですが、いつごろまでに、例えばワシントンに行きたいとか、そういうような気持ちはありますか。

田中国務大臣 今、具体的な日程は上がっておりませんけれども、双方の都合のよろしいときにというふうに思っております。

伊藤(英)委員 双方の都合のいいときに会いたいということだそうでありますので、ぜひ早く会談をされるといいと私は思います。

 先般もアーミテージが来られましたね。彼が来たときにニューヨーク・タイムズの支局長にも会ってというか、支局長の単独会見があったようですが、そのときにも、日米関係あるいは日米同盟について、いわば米英と同じような感じに日米の関係を持っていきたいんだというような話から始まりまして、本当に日米間がどういう協力の仕方をするといいのかということ等についてもいろいろなことを話されたりしているわけですね。

 まさに日米関係というのが日本の外交上、あるいはこの辺のアジア太平洋ということを考えてももちろんなのですが、どんなに重大か、どんなに重要か。そして、今まさにどんどん動きつつあるといいましょうか、考え方を含めて動かさなきゃいけない時期であるということを考えれば、私はその必要性を一層感じます。

 だから、今お話しのように、できるだけ早く会いたい、そして双方の日程の調整ができればということのようでありますので、ぜひ実現していただければ、このように思います。

 それで、先般アーミテージが来たときに日本で会った方々にもいろいろお話があった話で、例のいわゆるミサイル防衛の問題について、いわばこれも、日本は重要だから、日本と協議をして、そしてその上でいろいろ事を決めていきたいよという姿勢で来られたんだと思うんですね。

 今までNMDあるいはTMDということで進めてきた問題についてでありますけれども、日本はTMD計画の技術研究について共同研究に参加をしているんですが、そのときに、私の理解では、NMDとは異なるから、TMDは我が国の防衛に必要なものであるから、こういう観点でTMDの共同研究にかかわってきたと私は思うんです。

 もしも、今言われているように、今までのNMD、TMDを含めたといいましょうか、いわゆる新ミサイル防衛構想なるものが提示されて、そういう構想が出ているときに、そのときに、我が国のTMDの研究と新ミサイル防衛のこの構想との整合性、これはどういうふうに考えますか。

田中国務大臣 日米の共同研究でございますけれども、開発ではなくてまだ研究ですね、これは、求められる技術水準というものに差があるというふうに思います。ですから、共同の技術研究を行ってはいますけれども、開発段階への移行、それから配備の段階への移行というものについては、別途判断した上で決定しなければならないという性格のものでありますから、我が国の防衛のためのシステムトータルということでもって考えなければいけないというふうに思っております。

伊藤(英)委員 ちょっとわかりにくかったんですが、いわば、従来言われていたTMDだけですとある意味ではそれなりの説明はまたつくのかもしれませんね。今度はそうじゃないよ、いわば新防衛構想ということで、全部包含したような格好でやろうとしているわけだと私は理解するんですね。そうしますと、日本の防衛だけだからいいよということは必ずしも言えないかもしれませんね、いかがですか。大臣にお願いします。

田中国務大臣 日本のミサイル防衛問題というものが、軍備の管理ですとか軍縮努力を含む国際的な安全保障の全体の環境の向上に資する形で扱われていくということを望んでおりますから、米国が同盟国やロシア、中国などと十分に協議をすると表明もしておりますから、そういうことも歓迎しつつ進めていきたいというふうに思っております。

伊藤(英)委員 ある意味では、日本の場合には、憲法の制約上のこともあり、必ずしも他の国と同じようにというのはなかなかできないでしょうね。したがって、この問題は、その辺のことについて明確なといいましょうか、あるクリアをする必要があるだろうと私は思うんですよ。そういう意味で、きょうはもうこれ以上伺いませんが、ぜひその辺を十分に考える必要があると私は思います。

 それから、次に沖縄の米軍基地の問題について伺いますけれども、実は沖縄の基地の問題につきましても、私も何度もここで議論もしたり、それこそさっきのアーミテージなんかとも、日本における米軍基地についてどういうふうにすることができるんだろうか、あるいはどういう環境が整ったら基地をどうすることができるだろうかというようなことについても直接いろいろ議論もしたりしたんですよ。私からすれば、これはまさに、戦後五十数年たってなお今日のように大きな規模の基地があることが本当にいいんだろうか、やはり違うんじゃないかと。だから、ぜひ今の日本における基地の縮小問題について本当に具体的に考え、そしてそれを実行したい、こういう思いで私としてはいろいろな議論もしたりしているわけです。

 つい最近も、今まだ行っていらっしゃるのでしょうか、沖縄の知事などもワシントンに行って米国当局者といろいろな話もしたりしている。そのときも、我が日本の政府が真剣に取り組んでいないんじゃないか、そういう思いでワシントンに行っていらっしゃると私は思うんです。そういう旨の発言もされている、私はそういうふうにも思うわけですね。

 それで、まず一つは、基地そのものについての、いわゆる地位協定の問題です。

 多くの犯罪等が起こったり、そのためにいろいろもめたり、いわゆる不祥事がいっぱい起こったりしているわけですね。そういうような状況を踏まえて、私ども民主党も昨年の五月に地位協定の改正案をつくりまして、当時、外務大臣にもそれをお渡しして改正方を要請したり、あるいはアメリカ大使館の方にも要請もしたりということをしているんです。

 もちろん沖縄県からも改正の問題について強く要請をされていると理解しているんですが、外交の改革ということも含めて、この地位協定の改正問題について外務大臣がまさに真剣に取り組んでいただきたい、私はこう思うんですが、いかがですか。

田中国務大臣 本当に伊藤先生がすべて問題点をよくおっしゃったと思うんですけれども、この沖縄の基地の問題は、沖縄県民の皆様に多大な負担をおかけしてきているということは私も実感としてよくわかっております。そして、その負担を軽減するために、SACOの最終報告の着実な実施等、最大限努力も払ってきてはおります。稲嶺知事はもう帰っていらしたんですか、まだですか、もうそろそろお帰りになろうかと思うんですけれども、普天間の飛行場の移設に係る使用期限の問題ですとか、そういうことについては平成十一年末の閣議での決定に従って対処をしていくという姿勢ではおります。

 それから、民主党さんが、先生のところでもって地位協定に関する改定書をお出しになっていらっしゃるということもよくわかっておりまして、やはりこういうときは政党を超えて一緒に、日本の安全保障がどうあるか、それから沖縄の負担をどのようにして軽減していくかというポジティブな皆様とのコンセンサスを得ながら進めていかなければいけない。ですから、場合によっては地位協定の改定ということも視野に入ってくるかというふうに思っております。

伊藤(英)委員 地位協定の改定も視野に入れてという話は、私はぜひ、まさにこの問題は真剣に取り組まなきゃいけないということで、積極的にやりますというふうに断定してほしいくらいですが、ともかく改定も視野に入れましょうという話ですから、その辺は積極的に取り組んでいこうという意欲を示していると思うんですが、それはそう解釈してよろしいですか。

田中国務大臣 運用の改善ということも含めまして、そのように御理解いただいて結構です。

伊藤(英)委員 ありがとうございました。運用の改善も含めて、改正の問題についても積極的に取り組みたいということでありますので、これはもちろん民主党としては協力するといいましょうか、全力で取り組んでまいりたいと思いますので、よろしくお願いします。

 それから次に、普天間の移設の問題について、これは今回も、稲嶺知事も、ワシントンでもやはりこの問題について話をされたというふうに認識しておりますが、いわゆる使用期限の十五年問題です。この問題についても、今まで何度も出ている話は、日本はいわば、私からすれば、沖縄の知事さんたちがこういうふうに主張しておりますということをワシントンに伝えているというような感じを私は持っているんです。

 政府として本当にどういうふうにしようとしているのかということが私にはほとんど見えないんですが、この十五年の使用期限問題について、外務大臣はどのように考えていらっしゃいますか。あるいは、どういうふうに解決しようとされていますか。

田中国務大臣 普天間飛行場の移設に係る使用期限の問題ですけれども、平成十一年末の閣議決定、先ほども申しましたけれども、それに従って適切に対処していくとともに、国際情勢が肯定的に変化するような外交努力を積み重ねていきたいというふうに考えております。

伊藤(英)委員 国際情勢が肯定的にというふうに今話されましたね。ちゃんと文書にも、共同宣言の中にも入っていますね。

 私はよく思うんですよ。これはアメリカ政府に私も申し上げました。今、日本にとって、この間のガイドラインの関連法案の議論のときもそうなんですが、非常に議論になった話は何かといいますと、朝鮮半島ですね。例えば北朝鮮が攻撃してきたらどうだろうかとかいうふうな話がいろいろと議論もされました。

 もしも朝鮮半島が脅威でなくなった状況が生まれたならば、沖縄の基地は抜本的に、ゼロじゃなくても、縮小することは可能だというふうに外務大臣は思われますか。

田中国務大臣 その時々の変化の情勢、やはりあらゆる危機といいますか、そういうことも踏まえて判断していかなければならないというふうに思っております。

伊藤(英)委員 今、日本の周辺で考えれば、やはり一番の問題は、今申し上げたように朝鮮半島だろうという気が私はするんですよ。今大臣は、そのときの状況がという話をされましたが、朝鮮半島以外だと、あと何を、どういうところを心配されますか。どういうことが起こる可能性を思われますか。

田中国務大臣 不確実性とか不安定性というものはあらゆるときに歴史の中で起こってきますので、それらを基準として考えていかねばというふうに思います。

伊藤(英)委員 それでは、これも私はよく言うんですよ。これもアメリカ政府にも言ったりしておるんですが、今沖縄にいる海兵隊の人たちです。海兵隊は、やはり沖縄にいなくてもといいましょうか、沖縄からほかのところに移っていただくとかいうようなことは、全部でなくても、例えばかなりの部分とか、いろいろな選択肢はあると思うんですが、そういうことは追求する価値が十分にあると私は思っているんですが、大臣はそういう印象をお持ちですか。

田中国務大臣 ちょっとしっかり聞いておりません。海兵隊の削減……(伊藤(英)委員「海兵隊」と呼ぶ)海兵隊の削減についてですね。

 これは、在日米軍の兵力の構成というものは、日米安保共同宣言にありますように、両国は、国際情勢の変化に対応して、在日米軍の兵力の構成等を軍事態勢に基づいて緊密に協議をしていくというふうな基本があるわけですけれども、あらゆる変化が想定されるわけですけれども、この問題自体については、もう少し全体の情勢の変化というものを見なければ、軽々になかなか、相手もあることでもありますし、また、その情勢がどのように変化するかということもありますので、少しフレキシブルに考え、そして対応できるようにしていかなければというふうに思います。

伊藤(英)委員 情勢等も判断しながらいろいろやるわけですが、まず冒頭、私は日米関係とはどうあるべきかという話をいたしました。それから、今大臣が、兵力構成等についても日米で協議をするということになっているんですと。ここからが問題なんですね。そして、日本がもっともっと自立した外交をやりたい、私なんかはいつもそういうふうに言っているんですが、そうしたときに、あそこの兵力構成を考えたときに、そもそもあの海兵隊は沖縄のあそこにあれだけいなくてもいいだろうなと私なんかは思うんです。

 それで、もしも政府が、あるいは大臣が同じような感じを持つとしたら、これはアメリカに、要するにアジア太平洋を守るためにもというか、この平和を維持するためにもなんだけれども、ここのところはこういうふうにした方がいいのではないかというふうに提起をすることがあって当然だと私は思うんですね。それが協議なんですよね。向こうから言われたことを、はい、どうしましょうか云々じゃなくて。ということだと私は思うんです。

 そういう意味で、まさにリーダーシップを誇る外務大臣でありますから、そうしたことについても検討し、積極的にアメリカ側とも協議をしていこうというふうに思われるかどうかという意味で伺いました。

田中国務大臣 もちろんそのように思っております。トータルな意味で、実態をよく掌握して、そして将来の見通しというもの、それから今現在どういう状態であるかということももちろん掌握した上で、やはりわかりやすい、国民の皆さんにわかる形で進めていくべきであるというふうに思っております。

伊藤(英)委員 つい最近もランド・コーポレーションから報告書が出たりしていますね。それこそあの責任者は、まさに今政府の責任者でもある人なんですね。そういう人でさえ、それはいろいろな考え方のもとにでしょうが、沖縄の海兵隊の移設についても提起もしたりしているんです。

 だから、そういうようなことも含めて、その辺の兵力構成等が本当にどうあるべきかということはこれから研究をして、あるいはよく調べられて、こういうことではあるんですが、いわばアメリカサイドの、しかも政府に関係している人たちでさえ今私が申し上げたようなことは提起もしたりしているくらいですから、ぜひ大臣も、あるいは日本政府としても、この沖縄の基地の問題、なかんずく今申し上げた海兵隊の削減の問題についても積極的に取り組んでいただきたいと思うんですが、どうですか。

田中国務大臣 今、ランド研究所のことをおっしゃいましたし、アーミテージ・レポートのこともおっしゃいましたけれども、これらは民間で知恵を出していらっしゃることですから、一々それらについてのコメントはいたしませんけれども、基本的には、確かに日米同盟の中で大きな負荷が沖縄の方にかかってしまっているということをしっかりと認識し、その痛みを知りながら、日米の中でどのようにして安定的な、そして緊急のときに危機管理ができるような体制を組むかということもトータルで含めて、いろいろな御意見を幅広く伺いながら進めていかなければならないというふうに思っております。

伊藤(英)委員 まさにフレキシブルに、そしてまた日本の国益あるいは国民感情、あるいは沖縄の人たちの気持ちも含めて、ぜひ取り組んでいただきたい、このように思います。

 それから、予算委員会の場でもいろいろ問題になりましたけれども、日本が特に日米の協力のもとにどういうふうにやっていくかという意味で、集団的自衛権の話が提起されたり、あるいは総理からも発言があったりいたしましたね。この問題について、総理からも、国会決議でやっていったらどうかというようなことについても発言がありました。

 外務大臣は、あの国会決議で集団的自衛権の行使を容認するという考え方についてはどう思われますか。

田中国務大臣 小泉総理の集団的自衛権に関する御見解というものは、私は支持をいたしております。

 ただ、私なんかが申し上げるまでもありませんけれども、国際法では集団的自衛権というものは認められておりますけれども、第九条がありますから我が国がそれを行使するということはできないということでありますけれども、検討をしていく、いろいろな意見を衆知を集めて聞いていきたいという総理の姿勢には、私は共鳴をいたしております。

伊藤(英)委員 そのアメリカの関係者からは、集団的自衛権を日本も行使できるようにしてほしいという話も出たりしますね。ついこの間も、関係者のマイケル・グリーンが日本に来られました。私の部屋にも来ていろいろ話をしていて、あなたたちの言う集団的自衛権というのはどういうことを、何を一番考えているんですかと。

 いわば伝統的な集団的自衛権といいますと、それこそ、例えば日米で考えれば、アメリカが攻撃されたら日本が攻撃されたと同じように考えて、相手に対して日本が攻撃するとかいうようなことが、一番オーソドックスなといいましょうか、伝統的な集団的自衛権のまあまあの概念でしょう。

 ところが、今はそういう感じじゃなくて、日本は、いわゆる武力行使の一体論というのが湾岸戦争のころから起こってきたりしたんですね。そこのところは気になるなということだと思うんです。

 それで、実はこの間のガイドライン関連法案のときでも、この問題がいろいろと、いわば一つの問題となって、いわゆる周辺事態が起きたときに米軍に対して行える支援が、その戦闘地域と一線を画した後方地域ということで、後方地域支援についてはいいよ、こういう感じになっているわけですね。だから、実は、その辺の話が非常にわかりにくいよ、あるいは、ちょっと何となく現実的じゃないんじゃないのというようなことがあって、総理や、あるいは山崎幹事長もそうかもしれませんが、この辺はちょっとおかしいんじゃないの、相手の領土、領空、領海へ行って戦闘するというわけじゃないんだからという話がありましたよね。

 それで、外務大臣は、例えば周辺事態といったときに、公海上における後方支援、いわゆる伝統的な後方支援といいましょうか、地域限定をしない格好で、いわゆるロジスティックサポートという後方支援というものはやはり実施できるように考えていいんじゃないんだろうかというふうに思われますか。

田中国務大臣 伊藤先生がおっしゃるように、アメリカ側にもいろいろな意見があり、また我が国の方にもいろいろな意見があるわけですから、私の立場では、当面、いろいろ御意見を伺いながら、国会での議論も十二分に踏まえて今後検討してまいりたいというふうに考えます。

伊藤(英)委員 外務大臣御本人はどうしたらいいと思うかなというような意味で伺ったのですが。これからいろいろ検討をされるとして、どういうふうに持っていくべきなんだろうかという意味で伺ったのですが。

田中国務大臣 御趣旨はよくわかっておりますけれども、きょうは実質的に一日目で第一問目でございますし、いろいろな御意見がやはり幅広くこの問題はあると思いますので、伺わせていただきたいということを申し上げました。

伊藤(英)委員 次に、北朝鮮の問題についてであります。

 実は、私はさっきもちょっと申し上げたように、北朝鮮の問題というのは、いわゆる日朝正常化の話もある、近い国でありますから、いかにこれを正常化するかという重要な問題もある。しかし同時に、日本の基地だとかいうようなことも含めた、この辺の、あるいは北東アジアの平和ということを考えたときに、やはり北朝鮮問題というのは最も重要なテーマの一つですよね。

 そういう意味で伺うのですが、一応、国交正常化交渉も始まった、しかし現時点はいわば一とんざしている状況だと考えた方がいいと私は思うんです。

 それで、私は、特に外務大臣につきましては、お父様がそれこそ日中国交正常化のために大変な決断を果たされてやってこられたということも想起しながら余計言うんですが、外務大臣は、この日朝国交正常化問題についてどういうふうにしていったらいいと思われるのか。

 特に日本の場合には、もちろんいろいろなファクターがあるんだけれども、やはり日本側から見て非常に大きな問題は、いわゆる拉致疑惑の問題ですよね。この問題を、それこそ、入り口論でやるのか出口論でやるのか、あるいはほかの代替案があるのかとか、そういうことも含めていろいろなやり方があるんですが、どういうふうにこれから進めようと思われますか。

田中国務大臣 北朝鮮との日朝国交の問題ですけれども、これは、正常化をするためにどのようなプロセス、どのようなやり方をとるかということで外交としては極めて悩ましい問題ですが、基本にあるのは、やはり今おっしゃったような拉致とか人道上の問題もありますし、それからまた安全保障上の問題もあるわけですから、そうした二つのことを必ず念頭に置きながら、今までどおり日米韓の関係、すなわち、韓国は地政学上も近くて、人種、民族が一緒でいらっしゃる、それからアメリカは、バックアップなさっていても地政学上、地理的に遠くて、違う民族であるし、私たちは、民族が違っても、地政学上非常に近いし、過去からの文化の歴史も長うございますから、その三者が一体となって緊密に連携をとりながら上手な形で軟着陸をしていく、解決に結びつけるということの知恵を、やはり常にオールラウンドで頭を働かせながら、いろいろな情報を集めながらやっていかなければならないというふうに考えております。

伊藤(英)委員 実はこの問題も同じなんですよね。この間も、アーミテージが来られたときに、日本の後韓国に行って、北朝鮮問題についてもいろいろやったりしていますよね。本当は日本に来たときにそうした問題についても議論をすべき。しかも、極めて近いうちにアメリカの北朝鮮に対する政策のレビューは一応終わり、そして結論が出る予定になっているわけですよ。

 先月、私でさえ、国務省から日本に来たときに、どういうふうにした方がいいか、どう考えるかということで意見を聞かれて、私の意見をいろいろ申し上げたりしたのです。

 私は、この北朝鮮問題は、よっぽど強い内閣でないと、あるいは国民に支持されている政権でないとなかなか難しいだろうなという感じさえ持つんですよ。今の小泉内閣の支持率は、びっくりするくらいに大変な支持率ですね。しかも、小泉内閣、田中外務大臣という強力なメンバーがやっていらっしゃる。まさにこの北朝鮮問題について本当にどうするかという意味では、非常に重要な、あるいは、ある意味ではいろいろなことで、ひょっとしたらできるかもしれない内閣ではないかと私は思ったりするんですよ。そういう意味で、さっき申し上げた中国との関係で大変な貢献をされたお父様の話もあるわけです。

 だから、そういう意味で、外務大臣にこの北朝鮮問題について取り組む決意をちょっと伺いたいんです。

田中国務大臣 世界がボーダーレス化してきている中で、北朝鮮の国民の皆様は、なかなかそういう情報が世界から自由に入ってくることもなく、少し、大変な状態で暮らしておられる方もおられるのかしらというふうには思っております。こちらも十二分なインフォメーションがないと。かつての、今おっしゃったような国交回復前の中国と同じような状態、似たような、完全にシミラーじゃありませんけれども、そういう国との交渉というのも、外交マターに限っていけば大変重要なんですけれども。

 政権というものができたときに、どういうでき方、これはちょっと政局っぽいことになりますが、私は、本当に力のあるとき、一番世論があるときに一番プライオリティーの問題をどんとやるのが政治じゃないかと。役所から言われたものを、たくさんごちそうを並べられて、どれもこれも食べ散らかすのではなくて、常にマインドとしてあるものを一番パワフルなときに、めちゃくちゃにやるんではありませんよ、よく分析しながら、タイミングを押さえて、冷静に客観的に判断をして、どんとやるのが政治だと思うんですね。

 それをやるには、一人で暴走はできませんので、そうでなくても暴走しがちだと思われているようですので、やはり、これは小泉内閣でございますから、総理が、それが経済問題であるのか外交であるのか、どのようにこの問題をとらえておられるか、見きわめたいというふうに思っております。

伊藤(英)委員 私がさっき申し上げたように、北朝鮮問題というのは、朝鮮半島問題というのは、我が日本の将来に対して、あるいは朝鮮半島が統合されたら、統一されたら、あるいは連合体形式かどうかわかりませんが、そういうふうな話になったときに、一体どういうふうになっていくんだろうか。そのときに、日本あるいはアメリカ、ロシア等との関係はどうなっていくのかというような意味でも、極めて重大な問題だと思っているんですよ。

 だから、私も、北朝鮮にも、去年もあるいは一昨年も行ったりして、率直な私の意見なんかを申し上げたりしているんですが、さっき大臣は、自分のマインドにあるものを果敢にという言い方をされましたけれども、この北朝鮮問題はマインドにありますか。

田中国務大臣 外務大臣になると私は夢にも思ってもおりませんでしたけれども、外交の中では、それはもう大変、あるうちの一つでございます。ただ、外交問題以外にも一政治家としてあるということもつけ加えさせていただきます。現在は外務大臣ですから、もちろんある、幾つかのうちの一つと申し上げます。

伊藤(英)委員 幾つかのうちの一つといえば幾つかの一つですが、私はちょっと気になりますね。ちょっと気になります、今の発言は。

 要するに、この問題がどのくらい大きな問題かということですね。それは、日本があの戦争のときの後始末といいましょうか清算といいましょうか、アジアに対してこれからどうしていくんだとかいうような話も全部含めて、日本がどんな清算をしてこれから生きていくんだろうか、世界の中でどういうふうに日本が、ある意味では、尊敬をされながら、けじめのある国としてやっていけるんだろうかという意味においても、ぜひ真剣に取り組んでいただきたいという私の気持ちで……(田中国務大臣「よろしいですか、発言」と呼ぶ)はい。

田中国務大臣 おっしゃっている意味は痛いほどよくわかっておりまして、同じ言葉を申し上げたいと思っています。

 近隣諸国、特に韓国、北朝鮮、中国、台湾、ほかにもたくさんありますから、あれ言わなかったと言われてしまうと困るんですけれども、その辺で御理解いただきたい。もうおっしゃるとおりだと思っております。

伊藤(英)委員 では、ちょっと伺います。

 そもそも論もあるのですが、今度は、来週二十四、二十五日にASEMの会議もあったりする。ここでも私は問題になると思うんですが、その会議があるからということで私は言うんじゃないんですが、昨日も、中国の方からも、靖国神社に対する参拝の問題につきましても、そしてまた教科書の問題についても、その懸念が表明をされて、そして韓国と共同歩調をということも言われておりますね。

 この靖国神社の問題、そして教科書問題について、外務大臣としてどういうふうに考え、どういうふうに日韓、日中、それぞれの関係をよくしていきたいと考えますか。

田中国務大臣 まず、靖国神社問題で、ちょっとお時間をいただいてお話ししたいんですが、私は、我が国が国民や遺族の方々のことを思い、及び近隣諸国の国民の感情など諸般の事情を総合的に考慮して、慎重かつ自主的に検討してきた上で判断するべきなんだというふうな考え方を一般にしていらっしゃるということは理解した上で申します。それから、小泉総理も参拝なさるということも聞いております。

 私個人は、偶然なんですが、子供のころは市谷に住んでおりまして、もうずっと、戦後でございましたけれども、遊ぶところというと靖国神社の境内の周りしかございませんで、区立の小学校でおてんば娘だったので、あの境内は能舞台もあるし、たしか拝殿の後ろのところにお池があってコイがいると思うんですけれども、その辺を我が庭のように、本当に今思うと傍若無人のおてんばで、小学校のころ、ちゃんちゃかちゃんちゃか走り回っておりました。そして、みたま祭りも……(発言する者あり)個人的なことは言わない方がいいんですか。みたま祭りにも家族で行っておりましたし、つい最近も、四月三十日ですけれども、大臣になっておりましたけれども、時間がありましたので、帰宅途中に参拝をいたしております。

 でありますけれども、私は、前回科技庁長官のときも参拝はいたしませんでしたし、今回も、日ごろはしょっちゅう通りがかりで参拝をしておりますけれども、国務大臣として参拝はいたしません。するつもりは今ございません。

 それから、歴史教科書の問題ですけれども、これはこの間も国会でお話し申し上げましたけれども、これは基本的に、文部科学省が検定基準に基づいて、そして近隣諸国条項を踏まえて厳正に検定をなさったという結果が出ていたもの、その結果が合格したものであるというのが事実でございます。ただ、韓国及び中国から、直接には修正は韓国から来ているわけですけれども、これは私、両国の大臣と電話でお話ししましたときも大変強いお言葉がありましたので、もうよく耳に残っておりますけれども、そうしたお声を真摯に受けとめながら、まず文部科学省において、教科書検定にのっとって、専門的、学問的見地から精査が行われたわけですね。

 ですから、じゃ、直すのかというふうなことが、修正というふうな話が出てくるかもしれませんが、これは、明白な事実の誤りがあれば、それはそうすることはあるのかもしれませんが、そうでない限りは、やはり我々が円満な解決に向けて知恵を絞っていく、そういうふうなことに最善を尽くしていきたいというふうに思っております。

伊藤(英)委員 今、日中間には、今の教科書問題から、あるいはセーフガードの話やら、あるいはこの間の李登輝さんの訪日の問題などなど、これは中台、あるいは米中の関係も含めてなんですが、日中間には本当にいろいろな問題ばかりというぐらいに、そして、さっき申し上げたように、ASEMの会議もある、日中の外相会談も開かれるというふうに聞いています。

 どういうふうにこの日中関係をよくしようと思われますか。

田中国務大臣 これはセーフガードの問題もございますし、日中間も、先生が御指摘なさったようなもろもろの問題もございますけれども、やはり過去の現実をしっかりと認識して、そして、将来お互いの国民の皆様たちが幸せな気持ちで交流ができるように、そして、双方の国が発展することに資するような形になるように知恵を集めるということが、あらゆる分野でポジティブなエネルギーとして集結していけば、必ずや解決するものだというふうに思っております。

伊藤(英)委員 今お話をされただけでは、何となく私もう一つわかりませんが、歴史的な事実の話を思い浮かべながらちょっと話をされたかもしれないと思って私は言うんですが、私は実はこういう感じを持っているんですよ。我が日本は、この間の教科書問題も同じなんですが、いわば歴史的な事実ないしは事実らしいことと言った方がいいかもしれませんが、我が国の人たちが、子供たちも含めてそうした事実についてしっかりと認識しよう、その上で、将来間違いを起こさないというふうにしなければならぬと思うんですね。そのときに、歴史的な事実をしっかりと認識しようという気持ちというか、姿勢といいましょうか、形といいましょうか、そういうものが不十分だという気が私はしてならないんですよ。

 この間も、ワシントンでホロコーストミュージアムを見ました。私はあそこをもう二回目に見るんですが、いわば、あれはナチスの話なんですが、そうした事実を子供たちが見て、ああ、こういうことをしてはいけないなと。実際に行って見てみるとわかりますが、例えば、この間私が見たときなんかも、中学生くらいの女の子が先生に連れられて、そこで見て、そしてビデオも見ながら、ある人は涙を流しながら見ている。そして、日記なんかがある。その日記を、たまたまそのときは、私の理解では、家族で来ていたお父さんが子供たちにフランス語で日記に書いてあることを説明しているようでした。子供たちが一生懸命にそれを聞いているんですね。

 そういうことも含めて、日本は今、アジア歴史資料センターをことし末ぐらいから、開くといいましょうか、みんながアクセスすることができるように一応なっているんですが、あれでもそうですよね、どこかに展示してあって、みんなが見られるようにしよう、そういうやり方じゃないですね。そういうやり方ではない、我が日本は。

 だから、もっと歴史的な事実を十分に国民が見て、そして間違いを起こさないようにというような姿勢が本当に必要だ。アジアの中でこれから日本がアジア圏とかいろいろなことを考えなきゃいけないと私は思っているんですが、そうした姿勢が本当に必要だ。そういうものがないと、要は信頼関係というのがアジアの国々との間でうまく築かれないんじゃないかということを思うんですが、大臣、どう思いますか。

田中国務大臣 全く、極めて同感です。

伊藤(英)委員 最後に一つだけ伺います。

 先般、予算委員会の席で、総理が民主党の菅幹事長の質問について、こういうふうに答えられていますね。

 国連の常任理事国入りの問題でありますが、菅幹事長が、小泉総理は国連の常任理事国入りについてかねがね慎重ないし反対に近い立場を表明されておりましたが、今も同じですかという趣旨で質問したと私は思います。それに対して小泉内閣総理大臣は、まず最初に「変わっておりません。」というふうに言って、いろいろと説明をあれこれされておりました。外務大臣はどう思いますか。

田中国務大臣 総理もどういうつもりでおっしゃったのか、私も全部総理の発言を体じゅう耳にして聞いているわけでもございませんし、個人的にお話を、こういう件、これはどうですかとすり合わせをしているわけでもございませんので、お許しいただければ、私もう一回、総理の発言というもの、背景とか御趣旨を伺う時間をいただきたいと思います。そうでないと、閣内不一致とかなんとか言われても困りますので。いかがでしょうか。

伊藤(英)委員 外務大臣が総理の発言についてよく見ておられなくて、しかもお話も十分にされていないということであるならば、結構であります。

 改めてまた伺いますが、実は、私からいたしますと、我が日本にとっての外交の中で国連外交というのがどんなに重大な外交であるか、柱ですよね。その中で、今日までそれぞれの関係者が、あるいは私たちもいろいろな方に申し上げてきたんですが、日本の常任理事国入りの問題については、当然、今の憲法下における日本の軍事力の行使という意味での制約を前提にした上で、どんなに意味があるか、日本が常任理事国に入ってやることが。それで、分担金もなぜあんなに多くなったか、あの金を出しているのかということを考えたときに、常任理事国入りの問題について総理の発言は、私からするとほとんど理解できないぐらいの感じであります。

 そしてまた同時に、この重大な問題を、私としては、外務大臣はあの話があったときに即、総理やらあるいは事務当局やら、そういうところと協議をしていただけるとよかったなということを私は思います。

 それだけ申し上げて、これから調べられてお話をということでありますから、また後刻ということにいたしますが、ぜひよろしく。

 どうもありがとうございました。時間でございます。

土肥委員長 次に、桑原豊君。

桑原委員 民主党の桑原でございます。

 大臣は新潟県、私は石川県で、同じ日本海側に面したところでございますけれども、私は、日本の外交、言うまでもございません、平和で繁栄した、安定した国際社会をつくっていく、その中で積極的な役割を果たしていくということが肝要でございます。特に我が国にとっては、北東アジアの地域、ここでそういう状態を実現していくということが何よりも安全保障の面を含めて大変重要であろう、こういうふうに思っております。

 北東アジアというのは、人によっていろいろ、どの地域を指すというのが多少の違いはございますが、私は、日中、そして南北の朝鮮半島、そしてロシア、あるいはアメリカ、そういった国々にモンゴルを含めて、そういった地域を一応北東アジア、こういうふうに呼びたいというふうに思うんですが、この地域は、御存じのように、冷戦構造が世界では終わったとはいえ、まだその残りかすがいろいろな形で残っております。言うまでもございません、韓国と北朝鮮、この朝鮮半島の問題というのはその最たるものでございますし、また中国と台湾の問題もございます。それから、我が国とロシアの間の北方領土の問題も、言うならばそういう問題の一つであろうというふうに思います。

 この地域でさまざまな二国間あるいは部分的な幾つかの国の安全保障をめぐるいろいろな対話というのはあるわけですけれども、やはり私たちが目指すべきは、将来的にそういうものをトータルに統合した安全保障の協議体、行く行くは集団的な安全保障という形にまとまっていければいいわけですけれども、当面はそこに至らずともそういった協議体をつくっていく、その中でいろいろな話し合いをちゃんとやって、対話と協調の関係が醸成されていくということが望ましいと思うんです。

 そういう意味で、私は、日本の外交の大事な部分としてそういう協議体をどう構想していくのか、戦略的にどう考えていくのか、このことが大変重要ではなかろうかというふうに思うんですが、その点について外務大臣、どういった構想あるいは見解をお持ちか、まずお聞きしたいと思います。

田中国務大臣 石川県御出身の桑原先生と私、新潟県は本当につながっていて、同じような条件で、同じような意識でこの北東アジア地域を見詰めているということを確認したいと思いますし、それからまた、私たち政治家としての大変大きな関心事の一つであるというふうにも思っております。

 そして、安全保障体制というものを対話と協調という形でこの地域で構築していくために、二国間あるいは多国間ではさまざまなレベルでそうした話し合いの努力が続けられてきているということは、もう御案内のとおりだというふうに思います。

 この話し合いの場を設定していく中に、小渕総理のときに六者協議というものが提案があったわけですけれども、これが必ずしもすべて今ワークしているわけではないでしょうけれども、そうした御提案も踏まえながらやはり各国に働きかけていって、今後ともいい方向に行くように努力をしてまいりたいというふうに考えます。

桑原委員 それを発展させて一つのそういう形をつくっていくということが私は大変大事だろうというふうに思いますので、そういう展望を持ってぜひやっていただきたいというふうに思います。

 それで、実は、この地域というのは国家体制の違いがある国々の地域でもありますし、また経済的な力の差というのは大変際立っている、そういう地域でもございます。そういう意味で、経済協力あるいは環境保全面でのいろいろな連携協力、あるいはエネルギーを確保していく面での協力、そういった安全保障や政治的な部分以外のさまざまな協力というものが同時並行的に進められていくというのも大変大事だろうというふうに思います。

 例えば豆満江開発なんかはロシア、中国、北朝鮮、そういったところの国境を接する地域で共同して開発をやろうという構想なんですけれども、残念ながら、資金的な面とかいろいろな違いでそれぞれの国がそれぞれにやるというような形に今はなっておるわけです。これをどうそういった形で共同開発のようなものを現実化していくかということになると、私は、資金的な問題というのが非常に大きいウエートを占めておるというふうに思います。国交があるとかないとか、そういう体制的な問題ももちろんありますけれども、資金面で非常に大きなネックがあると思います。

 それぞれ北東アジアの国々は日本の支援というもの、日本の資金力というものを非常に期待いたしておりますけれども、日本とて大変厳しい状況のときです。いろいろなところでそういう要望があるからといって、むやみやたらと、それに何でもこたえられるというそんな簡単な状況ではございません。

 そこで、資金面で考えると、例えば世界銀行あるいはアジア開発銀行、そういったところで、加盟していないところは加盟をし、どうそこら辺にいろいろな資金を供給していくことができるか。民間の皆さんの中ではあるいはアジアの国々の中では、北東アジア開発銀行をまた別個につくればいいではないか、こんな意見もあるようですけれども、それも一つの方法ではあるとしても、ともかく資金面でどうそこら辺の供給を確保していくか、そこら辺が、安全保障の対話と同時にそういうものを醸成していく環境をつくっていく意味で大変重要であろうというふうに私は思うんですが、その点、大臣、そういった面での方策、何を考えておられるのか、どういうふうな意向を持っておられるのか、お聞きしたいと思います。

田中国務大臣 今、即、具体的にこのプロジェクトとかこれということは申し上げられませんけれども、桑原先生がおっしゃっている御趣旨の、協力体制をこの北東アジア全体で、体制の違いがあるところもあるにせよ、例えばエネルギー問題ですとか世銀を通じた資金協力であるとか、できるだけ身近な形でできることからあらゆる分野でやっていこうという御趣旨、そういうことをやはりもう一回精査をして、そして整理をし直しまして、できるところからやっていくというような体制をつくっていきたいというふうに存じます。

桑原委員 私は、大臣就任以来、発言でもいろいろな話題を呼んだり、あるいはいろいろと撤回を、修正をさせられるような話になったりいろいろあるわけですけれども、日本の外交を、外務省改革も含めて根本的に改革をしていくという意欲のあふれた姿勢であるというふうに基本的には考えておるわけです。そこで、やはりこれらの問題についても、たまたま新潟県のそういう意味では御出身でもあり、日本海をめぐるこの地域の平和、安定、繁栄、そういうものにはやはり特段のしっかりした目を向けていただいて、ぜひ全力を挙げて取り組んでいただきたいということを申し上げておきたいと思います。

 そこで、先ほど伊藤英成議員の方から沖縄問題、基地関連についていろいろお話がございました。私は、まず基地問題の解決の一つのポイントは、SACO最終報告というものがしっかりと実施をされていくこと、それも、そうもたもたすることなく県民の皆さんの理解、国民の理解を得てしっかりと実施をされていくということが大事だろうというふうに思うんです。その中心にあるのが、何といいましても普天間の基地の移設の問題であります。

 いろいろと移設先あるいは環境問題、工法について深く関連をするわけでございますが、あるいは十五年という使用期限の問題など非常に多くの課題がこの問題にはまつわっているわけでありまして、沖縄県民の皆さんもいろいろな意味で意見が大きく分かれている、そういう状況にございますし、御存じのように、一方では、県民の皆さんの理解を得ていくという意味では、たび重なる米軍の事故あるいは事件が起きたりして、もう海兵隊は削減してほしい、あるいは町によっては、もう出ていってくれ、こういうような県民の決議や自治体の決議が相次いで行われたわけですね。

 そういうような厳しい環境にあるということなんですが、問題は、それを県にげたを預けるということではなしに、田中大臣のさっきの決意を聞いておったらやはり改革をしたいんだと、これは日本の外交姿勢の改革にもつながっているんだろうと私は思うのですが、やはり日本の外交として、この問題をしっかりと取り上げて、重く受けとめて、十五年問題は、アメリカに伝えるという姿勢ではなしに、沖縄にげたを預けるのではなしに、ちゃんと自分の問題として、自分の課題としてアメリカと積極的に協議をしていく、解決の打開を図っていくというような姿勢が必要だろうと思うので、まず、この普天間の問題についてはどういう決意でやっていこうとされているのか、お聞きをしたいと思います。

田中国務大臣 一口に普天間の基地の移設ということ、私もあそこに行ってもまいりましたし、関係者ともお話をつぶさに伺う機会があったんですけれども、移設ということがたまたま象徴的なことであって、それに関連して、地位協定の問題ですとかSACOができなければならなかったような背景ですとか、いろいろなものが総合的、複合的にあるんですね。過去の経緯も見ながら、やはりアメリカとも緊密に、最大限に努力、お話し合いを胸襟を開いてしていくということを、過去にも諸先輩が努力してこられていますけれども、さらにやっていかなければならないわけです。

 一番大事なことは、今国際情勢というものが変わってきていますので、海兵隊の削減の問題もさっき伊藤先生がおっしゃっていましたけれども、やはりこれらはすべてトータルな問題ですから、代替地の問題も全部込みの問題だと思いますから、やはりオールラウンドで、一つやれば終わるというものではなくて、むしろ立体的にとらえていかなければならないんですね。

 そして、アメリカと世界の情勢の動き、それから地元の方たちの負担をいかに軽減していくかという、いろいろ具体的な問題を見ながら、この地位協定の中にはいろいろな問題がたくさん入っていますから、全部を同時にできなくても、まずというプライオリティーから片づけていく。それは、やはり情報も開示して、アメリカ側も日本も、何よりも沖縄の方たちがわかる形でもって解決していくということなんですね。ちょっと違いますか。

桑原委員 一般的に言われるそういう言い方はわかりますけれども、私の申し上げておるのは、例えば十五年問題を、沖縄の知事がアメリカへ行って関係者の皆さんにある意味では直訴している、こういう状況をさっきはさらりと大臣はおっしゃられましたけれども、私は、ある意味では日本外交の不在を証明しておるようなものだと。言ってみれば、この問題はそんな形でどうこうするという、努力はあってもいいとは思うけれども、本当に解決の主体になって汗をかいて頑張るのはまさに田中外相そのものだと私は思うんですよ。

 ですから、そういう姿勢でこの十五年問題もこれからちゃんと取り組んでいくのか。あるいは、普天間の移設についても県民の世論はいろんな意見に分かれています。そういったことをどう調整してどう具体化をしていくのか。そのことの先頭に立つのはまさに大臣でなければならぬわけですよ。そこら辺の決意はどうなんだということをお聞きしているので、所与の条件とか、それは一般的にそのとおりだと思うんですよ。そんなことを今までの大臣のように何遍繰り返しておっても話は先に進まないわけで、大臣がさっき言われた改革の姿勢というのは、まさにそのことの先頭に立つということなのかどうなのか、私はそのことをお聞きしておるのです。

田中国務大臣 就任直後、最初のお客様が沖縄県の稲嶺知事でございまして、そこで私は、何で十五年ですか、何で十四年、十六年じゃないんですかと伺ったときに、お返事をなさいませんでした。もっと早く来る可能性があってもいいわけですから。そうしたことも含めながら、総合的に勘案しながら動かす、相手のあることでもありますし、国際的な情勢もありますから。ですから、それで判断をするんだということを申し上げています。

桑原委員 移設に関する最終方針がおととしの十一月にまとまったわけですけれども、その中では、いわゆる十五年問題に関連をして、国際情勢、世界情勢に関連をして、軍事的な配置、兵力構成、そういうものを検討していくんだ、協議をしていくんだということになっておるんですが、先ほど来の伊藤議員の発言にもありましたように、まさに世界情勢や日本周辺の情勢というものが、そういうものをしっかり議論していく今そういう段階にあるのではないか。だから、それを受けて、アメリカが言い出してこなかったら対応するというのではなしに、自分たちの方から積極的にやっていくという姿勢が必要だというふうに思うんですが、その点どうですか。

田中国務大臣 なかなか意を尽くせませんで、言葉不足で申しわけないんですけれども、もちろん、こちらの方から問題を提起もしていきますし、アメリカが何か言うのを待っていようとか、そんなつもりは毛頭ありません。

桑原委員 積極的に対応されていくということを確認したいと思います。

 そこで、稲嶺知事そして岸本名護市長が連れ立って、大臣はお会いできなかったわけですけれども、アーミテージさんにお会いした。そしてパウエルさんにもお会いをして、短い時間だったけれども、この十五年問題について、残念ながらそういう実のある回答ということにはならなかったようですけれども、大変な努力をされて、きょうは帰って来られるんだと思うんですが、そういうことだと思います。

 もう一遍繰り返しますけれども、こういう現地の首長がわざわざ出向いて訴えてこなければならないというこの状況というのを、一体大臣はどうとらえているのか。現地の首長が思い余って行かれたんだからそれはそれでいいということなのか、こうまでして行かなければならないほど、日本の外交というのはある意味ではやるべきことを国としてやっていない、そんなふうに見るべきなのか。そこはどうですか。どんなふうにこれを見ていますか。

田中国務大臣 稲嶺知事の口から直接伺わなければ何とも申し上げられませんけれども、そういう思いがあふれて行動を起こしていらっしゃるということは、今までの日本外交に対する地元の皆様たちの不満、それを直接届けざるを得ないやむにやまれぬ気持ちでいらっしゃっているんだろうというふうに、もちろん思います。

桑原委員 それはそれで私もそう思うんですが、それを見たときに、日本外交としてそれをさせていいのか。ある意味では、私たちの力足らずの結果だというふうに見ないのかどうかということを聞いたのです。今後も含めて、決意も含めておっしゃってください。

田中国務大臣 ですから、またおしかりを受けるかもしれませんけれども、やはり総合的なことをよく見ながら適宜適切に判断をいたします。

桑原委員 もうそろそろ時間が終わりますが、最後にもう一つだけ。

 伊藤議員が、大臣が非常に前向きに対応されたというふうに確認したんですが、地位協定の改正は、本当に、我々も長い間いろいろ申し入れをし、要望し続けてきた事柄です。いわゆる運用の改善というものについては、SACOの最終報告の中でも数々の項目が出されてはおりますけれども、しかし、やはり地位協定そのものを改正しなければ解決しない問題というのもまだまだたくさんあるわけですよ。ですから、大臣はさっき、協定については、運用改善も含めて必要性について考えていきたいと言われたわけでして、我々も既に出しておるわけですから、それを十分しんしゃくされてやられることを改めてもう一度要望して、終わりたいと思います。

田中国務大臣 御発言、よくわかっておりますので、先ほど伊藤先生にお答えしたのと同じでございます。

桑原委員 どうもありがとうございました。

土肥委員長 午後二時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十一時三十分休憩

     ――――◇―――――

    午後二時開議

土肥委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。桑原豊君。

桑原委員 外務省の報償費、いわゆる機密費についてお伺いをいたします。

 昨日の新聞でしたか、外務省は、機密費について今年度一〇%以上節約を考えている、検討しているというような記事が載っておりました。何ゆえに、どのような部分を削減するというふうに考えておられるのか、また、どんな方法で削減を考えておられるのか、検討段階かと思いますけれども、そこら辺、教えていただきたいと思います。

田中国務大臣 お答えを申し上げます前に、昨日の朝日新聞の朝刊一面で、一〇%強を削減という記事が載っておりましたけれども、あれは外務省当局も私も全然知らないことでございましたので、このニュースソースがどこかということも含めまして、昨日の正午、朝日新聞社政治部長橘某氏に外務省から連絡をとりましたところ、これは拙速記事であったということを先方が認められましたので、以後こういうことがあるといけないというふうに強く抗議といいますか、御注意をした次第でございます。

 それで、お尋ねの本論に入りますけれども、その削減につきましては、報償費というものは、先進国にはシークレットファンドというものがありますし、本来の目的にかなうものは、それはある程度の緩みを持って必要かと思いますけれども、それ以外に使われていた経緯があると思いますので、私は、着任以来ずっと、この中身の項目について見せてほしいと言っておりまして、昨日、実態は相当大部なものでございましょうけれども、一枚紙で一回来まして、それでは中身がわからぬといって、もう一回やり直しをしてもらいましたら、もう少し詳しいものが来ておりますので、もっとブレークダウンしたものをもらって、そしてどの部分を生かして、どの部分を減らすかということをやりたいというふうに思いますし、また国会で御報告をしたいというふうに考えます。

桑原委員 今年度の予算からそういうふうに点検をして、検討して、削るべき部分、必要のない部分は削っていく、こういう考えで取り組んでおられるということで理解をしてよろしいのでしょうか。

田中国務大臣 御案内のとおり、十三年度予算につきましては、どれほど細かく切り込めるかわかりませんけれども、次からは確実に、明確にわかる形にしていきたいというふうに思っておりますが、十三年度ももちろんよく見てまいります。

桑原委員 外務大臣の外務省改革、とりわけこの問題を通じてのいろいろな再調査や改革ということについては、就任以来非常に意欲的にその部分については語られておられますので、我々もその点については大変大きな期待をいたしております。ぜひそういうふうに、前言は翻すことなく、しっかりとそういう方向で頑張っていただきたいということをまずお願いしておきます。

 そして、私どもの党では、報償費一般について、普通のいろいろな書類並みに情報公開をするということはできないとは思いますけれども、一定の年限が経過をした後で公表できる部分は公表する。書類によっては十年後、あるいは二十五年後、そんなふうに、情報公開はいずれの時期にかしっかりとやらなきゃいかぬ、こういうふうに、具体的な法案も今準備をいたしております。

 そこで、諸外国でも大体、年限は違ってもそんなふうな規定があるわけでございますけれども、この報償費について、今後そういった検討をされるおつもりはございますか。

田中国務大臣 民主党さんがそのような検討を進めていらっしゃるということは理解して、承知もいたしておりますが、今のような形で、何十年か存じませんけれども、かなり、だれも、国民、私たち納税者がわからない形で使われてきたということに問題があるので、今委員おっしゃったように、本来の目的にかなうように、それから危機管理というふうなこともやはりこの世の中にはございますので、そういうことも含めまして、ぎちぎちなハンドルじゃハンドル切れませんから、ある程度の幅を持たせたものというものはつくっていきたいと思いますが、そうであれば、私は公開をする必要はないと今の時点では考えております。アメリカのような情報開示とはちょっと性格が違うというふうに思っています。

桑原委員 やはり、いずれの時期にか公開をされるんだということであれば、そういった機密にかかわるものであっても、何でも好き勝手にやっていいということではなしに、おのずから、それなりの自制というのが働くわけでして、そういう意味では、私は、何十年後かにちゃんと公開し得る部分は公開するんだというような規制をかけていくというのは大変有効な手段だというふうに思っております。

 ぜひ、そのことも含めて検討いただきたいと私は思いますが、どうですか。

田中国務大臣 大変御示唆に富む御意見だというふうに思います。

 これも一つの方法でしょうけれども、私は、もう一つ、外務大臣を拝命する前に、幹部公務員の情報開示というふうなことについての、情報を秘匿しないように、それで、不作為の行為、要するに見て見ぬふりをして、国益を著しく損なったり、税金のむだ遣いがあったりしてはいけないという議員立法、もう法案ができ上がっておりまして、これをまさに生み落とさんとするときにこの組閣になりましたので今つるし状態になっておりますけれども、そういう方法もあろうかと思います。

 それは、役所の側だけではなくて、立法府も行政府もともに、それを見て見ぬふりして大臣でいた人間は、今私どもの法律は七年ですけれども、逆に何年間さかのぼってでも責任を問うという形にするという手法もあることをまた御検討いただければと、私からのプロポーザルでございます。

桑原委員 それから、上納と言われる問題、これは上納という表現が適切かどうかは私はよくわかりません。上納という表現ではその我々が意図するものは余り正確にあらわしていないのかもしれませんけれども。要するに、外務省の機密費が外務省の機密のために使われずに、他省庁、今問題になっているのは内閣の機密のために毎年使われている。それが一定額で、決まり切ったように毎年移しかえをされるものだから、いわゆる上納、こういうふうな表現をしておるわけですけれども、これについては大臣は、この問題についても調査をすると一遍言われて、その後調査を含めて検討する、こういうふうに大分トーンダウンをされたように受けとめております。これは一体どっちなんですか。

田中国務大臣 一番最初の就任直後は、私が検討した方がいいのではないかと思っておりましたことは、これは行き違いではありませんので、正確に頭に時系列的に畳み込んでいただきたいと思うんですが、メディアで報道されていること、それから、私は予算委員会のメンバーになっておりましたので、予算委員会で見聞きしていた事柄等を見て、もしそういうことがあったのであれば、それを座視してこのままいくということは問題ではないかという認識を持っておりました。

 その後、小泉先生が候補になり、総理になられて、私も図らずも閣僚という地位になったわけでございます。それで、改めて、これはどういうことなのかということで、私は関係者、内閣もそうですけれども、いろいろな方に伺ってみました。

 結論的には、もっと後退したとおっしゃると思うんですけれども、これは、ずっと歴史を見ましても、昭和四十年ごろと言われていますが、あるいは平成二年ごろもそうだったそうですが、過去においてもこの上納の問題について、私なんか議員になる前のときもあるんですけれども、国会で問題になったことがあるんだそうですね。そのたびに問題になっているけれども、時の総理も、外務大臣も官房長官も、事実なかったと、そのときそのときしっかり精査をした結果、上納はなかったという結論に至っているということでありますので、がっかりなさると思いますけれども、やはり上納はないということを申し上げなきゃなりません。

 ところが、この小泉内閣は、やはり小泉先生は選挙のときから、そして今現在、総理になられてからも、機密費の削減ということは非常におっしゃっていますね。大変な関心事で、ずっと継続して見ていられますし、それから、河野前大臣のころから改革するための制度もつくっておられて、要綱も出るんです。

 私が着任した晩に、これは事務次官が責任者でありますと言ったので、私はぱっと勘が働いて、だめです、それは私を責任者にしてくれと。そうしないと、ぺらぺらっときれいな紙ができ上がって、大臣の判こを押しておきましたよと言われたら、それでおしまいで、中がもぬけの殻かもしれませんので、それは私がコミットして、私の責任で出させてもらいますよ、政の方が関与させてもらいますということまで言っています。

 三つ目。副大臣それから政務官の皆様と一緒に、いろいろな省員の方からヒアリングをしています、どう思っておられるか、どうあるべきか。これは外務省改革とも関連がありますが、機密費の問題で本当にいろいろな思いを持っておられますから、そういう方々に集まっていただいて、ヒアリングを数回、副大臣もやってくだすっていますね。

 それから、私のところに内部告発のような電話とか、実名、匿名でペーパー、メール、ファクスが外務省から来ております。

 ですから、全部それに私が目を通しているわけではございませんけれども、すべてを勘案して今後は改革をやっていかなければならないと思いますけれども、上納につきましては、これだけの先輩がないと言っているのでございますから、ないんだと申し上げます。もっと後退したとおっしゃらないでください。

桑原委員 ないと言っているから、ないというのでは、これは今までだってずっとそう言い続けてきたわけで、田中大臣にかわって、意欲的にこの問題に切り込んだということにはやはりならぬわけです。

 それで、私どもからすれば、ここら辺の報償費関係はすべて情報公開なしですから、何の手がかりも我々はないんですよ。やれるのは、やはりそれにタッチできる大臣以外にないと私は思うんです。大臣が、職員の皆さんあるいは先輩がそういうことはあり得ないと言ったから、ないと言った時点で、この問題は、ある意味では、大変な疑惑があるにもかかわらず、もうその先に進めなくなっちゃうわけですね。

 やはり、それが本当であるということを具体的に証明する仕組みが必要ではないかと私は思うんですよ。国民の皆さんに、本当にないんだということを、言葉だけではなしに何らかの形でちゃんと説明ができる仕組みというのを考える必要があるのではないかと思うんですが、どうですか。その仕組みを、どういう仕組みがあるのかというのは私は今提案することはできませんけれども、そんなふうに考えることはできませんか。

田中国務大臣 先生も今、提案するものが今すぐはないとおっしゃいましたけれども、ぜひほかの先生方も含めて、与野党を問わず知恵を出していただきますように、お待ちいたしております。

桑原委員 お待ちいたしておるのではだめなので、私どもには手だてがないんですよ、はっきり言って。手だてがあるのはまさに大臣、あなたのところにすべてのそういった情報は集中しておるわけですから、それを何かうまく料理して、本当に国民に、はっきり、ないというふうに解明できるような手だてを少し検討していただきたいと思います。そうしないと、これは信用できない。

 というのは、何遍も何遍もそういう疑惑が出て、そして、いろいろなマスコミの方々も、はっきりはしないんだけれども、それがあるんだ、こういうような確信を皆さん持っておられるんですよ。我々だって、これだけいろいろなことが言われれば、この疑惑は、全くその言葉を信じて、ないものというふうに信じることはできません。そういう意味では、これから再調査をされるというふうに言われたわけですから、その再調査の中でもう少し新たな手だてをぜひ考えてほしいと私は思います。どうでしょう。

杉浦副大臣 今の点でございますが、外務省機能改革会議における「提言」というのがございます。その提言の4に「不正と疑惑の根絶」という大きな項目がございまして、いろいろな仕組み、二重三重のチェック体制の確立とか、業務監察制度の創設とか、外部有識者の監察査察への参加とか、報償費制度の改革等がございます。

 これらの提言を踏まえまして、大臣と我々、よく相談させていただいて、できるだけ早い機会に改革案を出させていただくように御相談をいたしておるところでございます。御指示もございます。

桑原委員 これは引き続きの中でまた我々の同僚議員から追及していただきたいと思いますけれども、今言われたことはこれからやるべき当然のことなんです。それは当然そういうふうにやっていかなきゃならないわけだけれども、今まで出されてきた疑惑を解明して、それはなかったんだ、あるいはこうだったんだということをはっきり示す新たな手だてを考えてほしいということを言っておるわけでして、それを含めてぜひ再検討していただきたいと私は思います。

田中国務大臣 改革をして、いろいろ先ほど申し上げたようなことをやるわけですけれども、その中で手だても同時進行で考えますし、そこで何か証拠があった場合には御報告いたします。

桑原委員 そういう方向でひとつ積極的に取り組んでいただきたいともう一度申し上げておきます。

 それから、要人外国訪問支援室というのが設置をされました。平成二年ですか、設置をされたわけですけれども、その当時の、設置をされた決裁文書をぜひ出してくれ、我々は常々それを要求してきましたけれども、その文書は出せないとか、あるいは、あるのかないのかということもはっきりしないまま、結局今日に来たわけです。ところが、今、情報公開制度でそれを求めたら出てきたんですよ。情報公開制度が施行になった後に我々が資料請求したら出てきたわけです。

 それで、その文書を見て驚いたのですが、役所の中にある室を設置した、こういう文書が秘になっておるわけですね。マル秘の秘ですよ。「秘」で「無期限」と書いてあるわけです。何でこんなものが無期限の秘になるんですか、説明してください。

飯村政府参考人 お答え申し上げます。

 今先生の言われましたとおり、今般、情報公開法にのっとりまして、開示請求を受けまして、今先生御指摘の決裁書は公開したところでございますけれども、この決裁書の決裁を了しました段階におきましては、要人外国訪問支援室が実際に遂行する業務として、要人の外国訪問、特に総理でございますけれども、警備あるいは人事等、当時、関係者以外に知られることが不適当と想定されました事項があったために秘指定したわけでございます。

 その後、こういう事態になりまして、情報公開法の中で発表させていただいても差し支えないということで開示をした次第でございます。

桑原委員 中身を見ましたけれども、そんな、公開してもおかしなような話はどこにも書いていないわけです。総理が訪問するときの仕事をするための部屋だということを書いてあるだけで、そんなものは何にも書いていないわけですよ、秘密にしなきゃならないような内容は。私は、それが秘の無期限だなどというところからまず改革をしていただきたい。問題にならない。

 それから、この中身について踏み込んで聞きますが、従来、この室の担当事務は何かと聞いたら、総理の訪問だけだ、こう言っておったわけです。ところが、これを見ると、明示してあるのは総理だけではございません。外務大臣、皇族等要人、こうなっているわけですね。

 総理等というふうに答弁をされて、その等というのは何なんだと聞いたら、最終的には、いや総理だけです、こういうふうに答えが今までは返ってきておったのです。実際見たらそうなっているわけですよ。こんなところを何のためにうそをつくのか全く理由がわからない、それが一つ。

 それから、精算事務。まるで松尾が室長になって初めてお金をさわるようになった、こんなふうな言い方でしたけれども、この文書では、精算事務も含めてこの室が、すぐに担当はしませんけれども、本来的にはこの室の事務として決められておるわけです。恐らく段階を追ってすべての精算事務を担当するようになったんだろうと思うのですけれども、何も松尾になって初めてそうなったわけじゃないのです。ちゃんと精算事務もやるようにこの室は決められているわけです。いかにも松尾個人の犯罪のように、松尾がやったんだ、初めてお金に手をつけたんだと。これは私は、やはり今まで違う答弁をしてきたんではないか、こういうふうに思います。

 それから、人事のローテーションなんですが、松尾は六年間同じポストを務めました。これがあの犯罪の非常に大きな背景にあるわけです。

 この文書では、ここの部屋の人事は長くて一年だと書いてあるのです。というのは、いろいろなことでなれてもらわなきゃならぬし、いろいろな意味でローテーションを速くしてみんなが習熟してもらわなきゃいかぬ、こう書いてあるわけです。一年なんですよ、最長。ところが、松尾は六年。普通、室長なら二年とか三年とかという話だったんだけれども、説明でそういうふうに言われていましたけれども、文書に書いてあるのは一年なんです。これは六年。

 私は、三年なのが四年になったとか、二年なのが三年になったとかというのならまだ理解はできますけれども、一年と書いてあるものが六年になった、これはやはり相当背後に組織的な背景がなければこんなことにはならぬわけです。あらゆる面で、私は、松尾個人の犯罪ではなくて、組織的なかかわりがあって初めて、あるいは組織的な隠ぺいがあって初めてこういった事件に発展したんだろう、こういうふうに言わざるを得ません。

 そういう意味で、大臣、ぜひこの問題についてもやはり調査をもう一度やってほしいと思います。そうして、責任の所在を明らかにしていただきたい。私は、恐らくもっともっと大物でたくさんの人がかかわっていたのではないか、そういうふうに思いますので、ぜひもう一度調査をやっていただきたいと思います。

 弁明があったら、官房長からまずしていただいて、その上で答えてください。

飯村政府参考人 私の方から、事実関係のみお答えを申し上げさせていただきたいと思います。

 まず第一点の、外相、皇族の方々の外国訪問のロジ業務という点でございますけれども、これは今委員御指摘のとおり、この室が設置された当初はそういったことを担当すると。ただ、この文書に書いてございますとおり、体制の整うまでの間は経過措置を見ながらやるという趣旨が書いてございます。結果としては、このロジ室の体制はこういった多くの外国への訪問を扱うに足りる体制になりませんでしたので、基本的には総理の外国訪問を扱うという形でつい最近まで至っているわけでございます。

 それから二番目の、精算業務でございますけれども、精算業務につきましては、確かにこの決裁書にも書いてございますけれども、この中で書いてございます精算業務というのは、総理が外国に行かれるときの一般的な経費でございます報償費以外の経費についての精算事務、それについて言及しているものでございまして、松尾元室長が扱っておりました内閣官房の報償費というのは、この精算業務とは別のものであるということでございます。

 それから三番目の、人事ローテーションの問題につきましては、先生のおっしゃるとおり、こういった一人の人物が長い間同じ任務をやっていたということに今般の不正の大きな原因があると考えております。当初は一年ぐらいの任期ということを想定していたわけですけれども、ロジ関係の専門知識、経験が必要とされるということで、人事異動を行う機会を逸してしまったということでございまして、決して意図的に長い間置いていたということではございません。

 ただ、このような不正事件が起きたことにつきましては、こういった同一人物が同一ポストに長期にいるということがあったと思われますので、私どもとしても深く反省している次第でございます。

田中国務大臣 松尾事件以降の決裁書は警察に現在行っているということを役所が言っておりますが、それ以前があるはずですから、それについてちょっと検討をさせていただきたい。副大臣と今……(発言する者あり)そうですか、また後に下がったとか前へ出たとかと言われるのも苦しいのですけれども、それのことをちょっと私も……(発言する者あり)はい、検討いたします。

桑原委員 ぜひ検討してほしいと思いますし、官房長が答えられた所掌事務や精算事務等についても、ちゃんと文書を出して、そのときからきちっとした説明をすれば、私のような誤解をだれもしないのですよ。ちゃんと説明をしないから要らぬ疑いをいろいろなところにかけられるのです。ちゃんと反省してもらわなきゃならぬと思います。

 それでは、時間も大変迫ってまいりましたので、最後に、二月の六日の共同の配信で、HOYA株式会社のアメリカ現地法人HOYAコーポレーションUSAが、アメリカの核兵器研究所の核融合施設、NIFに、国立点火施設というのですけれども、レーザー光線増幅用の特殊ガラスを納入している、こういう問題が報道されました。これについて、日本のいろいろな方々もさまざまな反応を示しております。原水禁を初め多くの団体もいろいろな意味で抗議をいたしております。

 なぜそうなるのかといいますと、NIFと言われるこの施設の主たる目的は、米国のエネルギー省の資料によりましても、核兵器に関連した物理学の専門家集団をアメリカで維持することにある、こういうことが言われておりますし、また、HOYAの製造能力に関するニュースリリースというのがございまして、この説明によりましても、NIFはエネルギー省の核兵器維持管理計画、SSPと言われるこの計画のかなめの一つである云々というふうな説明がなされております。

 この施設はそういった核関連の施設だということは、もうアメリカでは常識になっているわけですけれども、いわゆるHOYAの方は、会社側の方はそれを否定しております。

 その根拠は、大阪大学レーザー核融合研究センター所長の山中教授の一九九八年におけるあるシンポジウムでの報告書で、NIF計画というのは国防技術の維持、拡大を中心に据えたものではない、こういう論述がございまして、それを論拠にしてその施設は違うんだというふうに否定をしておるわけですけれども、いろいろな面から見て、これは間違いなく核関連の施設ではないか、こういうふうに言われているわけです。

 それで、一たんHOYAの方はこの製品の納入を中止いたしましたけれども、その後、反論しまして、先ほど言ったような論拠をもとにして納入を再開するということを宣言いたしております。現実にはまだ納入しているかどうかということはよくわかりませんけれども、そういう状況にございます。

 そして、先ほど申し上げた大阪大学のこの先生は、原水禁の方からそうじゃないんではないかというふうな質問状に対する回答で、実は、この施設は国防技術の維持管理を目的とし、拡大を目的としたものではないというふうに、拡大を目的としたものではないけれども維持管理は目的だというふうに訂正いたしております。そういうふうに訂正いたしております。

 そういったことで、結局、HOYA側の論拠も大きく揺らいでいる、崩れた、こういうふうに言わざるを得ないわけでして、原水禁の方からも外務省に対して、ぜひHOYAのそういった製品の納入は中止をすべきではないか、こういう申し入れをいたしております。このことについては担当の審議官がお受けになって、いろいろ検討するというふうに言われたそうなので、その検討についてはどうなっているのかということをお聞きしたいと思います。

田中国務大臣 このHOYAコーポレーションのレーザー増幅用特製ガラスの納入の件ですけれども、これは基本的には民間のことですから細かい情報は現在得てはおりませんけれども、NIFの実験を初めとするいわゆる核融合、ニュークリアフュージョンに係る研究は、包括的ないわゆるCTBTがありますけれども、CTBTの禁止する核爆発には該当しないということが報告されている、それが今の社会的な通念、国際社会の通念でありますという報告を受けております。

桑原委員 この施設の大半の業務というのは、八五%と言われていますけれども、核兵器関連の維持管理、そういったものを中心にやっているということはもう常識であります。そういう意味では、私は、CTBTに直接触れるかどうかは別にして、非常に触れる可能性がある、あるいは武器の輸出三原則、禁輸の三原則、そういったものにも触れる可能性があるというふうに思います。

 ぜひこれらについては、今、余り深く検討していないのでというようなお話もございましたけれども、十分に検討していただいて、さらに見解というものを明らかにしていただきたい、これは申し上げておきたいと思います。

 以上で終わります。

土肥委員長 次に、安住淳君。

安住委員 民主党の安住でございます。一時間質問をさせていただきます。

 大臣が外務委員会においでいただいたおかげで、国民に外務委員会の議論が大変見えるようになったことは、私ども大歓迎をいたします。ただし、政策論はしっかりとやはりやっていただかないといけませんので、きょうは、日米安全保障条約、さらに集団的自衛権、時間があれば日ロ関係等々について、基本的な考え方をお伺いさせていただきたいと思います。

 ところで、まず最初に、ちょっと御感想を伺いますが、田中大臣は、外務大臣のポストというのは望んで引き受けられたんですか。

田中国務大臣 違います。

安住委員 ということは、全く想定しないで外務大臣をお引き受けになったということなんですか。

田中国務大臣 先ほど来何度か言っていますが、就任以来も言っていますが、総裁選挙は大変熾烈でございまして、もう疲労こんぱいしました。したがって、入閣なんということは本当に考えていませんで、小泉総裁を実現することによって総理を実現して、今の日本の閉塞感を変えたい、その思いだけでしたので、自分のポストなんか思ってもおりませんでした。

安住委員 外交問題に対しては、得手ですか、不得手ですか。

田中国務大臣 後になって評価されることだと思います。

安住委員 さてそこで、私は、もう三週間も外務大臣やっておられるわけですから、基本的なところは当然踏まえていらっしゃるものだと思います。

 中身に入る前に、これは今の話の続きで、一言だけ。松尾事件は個人の問題ですか、それとも、省の中にある、ある種組織的なところから起因した事件ですか。このことだけ、一言だけちょっと教えてください。このことについては、また別途時間を設けて我が党はやらせていただきますけれども。

田中国務大臣 二週間しかまだやっておりませんから、今申し上げると、また前言を翻したとかなんとかと世間じゅうを騒がせたくないので、本当は申し上げたくないんですが、あえて、お尋ねだから申し上げますが、大臣になるよりも、その前の方が、松尾事件のことを見ていた期間が長いので、そのときの印象からいくと、一人の事件に片づけてしまうというほど軽い問題ではないんでしょう、長い間のおりがたまったのではないかしらということを思っておりました。

安住委員 民主党は、国会の中でこのことはさんざんやってきたんです。民主党は問い合わせてきた。しかし、大臣も御存じのとおり、外務省の今までの対応は何かといったら、聞いていません、わかりません、資料がございません。国会のことを言う前に、国会が議論の場になっていないということを、私は非常に感じたんですよ、予算委員会でも。あなた自身もそれは認めていらっしゃいますよね。そういうことはこれからやはりやめてもらいたいということなんです、私どもは。我々も改革には協力しますから、ぜひやっていただきたいと思います。

田中国務大臣 大変心強く思います、今のお言葉を伺いまして。よろしくお願いします。

安住委員 それでは、政策に入ります。(発言する者あり)前置きは、まあ三分でした。

 大臣、日米同盟関係の重要性は、私は全く共通認識であるのかなと思います。これはなぜかというと、少し歴史的な経緯を話すと、五五年体制と違って、やはり本質的な議論をしっかりできるような環境というのがこの外務委員会でもできてまいったのは、実は最近だと思います。しかし、その中で、今、新しい安全保障の概念、つまり、新しい時代に入ってガイドライン等々の問題が出てきました。私は、この安全保障政策についてしっかりとした認識を持っておられないと、やはり外務大臣という職責を全うするのは大変難しいと思うんですね。

 そこで、基本的なことを、日米関係の問題、特に安全保障の問題と集団的自衛権の問題にもかかわりますが、議論を進めてまいります。きょうは、もう朝から、私のところにも、質問するんだけれども、いじめるんですかみたいなのがあって、取材まで来て、実は非常に私も閉口しているんです。だけれども、これは政策の話ですから、私はぜひ真摯に議論を進めていきたいと思います。

 さて、日米安全保障条約、そして一九九五年以降、アライアンスという言葉が盛んに使われるようになりました。同盟ということですね。大臣は、この同盟という言葉をどういうふうにとらえていらっしゃいますか。

田中国務大臣 それは、同じ価値観を共有しているものというふうに考えていますけれども、言葉の意味だけをおっしゃっているなら。

安住委員 軍事的な同盟関係を結ぶというのは、価値観を共有しているだけではだめだと私は思うんですよ。やはり、統一行動をとることをしっかりと約束するという意味合いが、この同盟という言葉には使われるわけですね。ですから、過去、鈴木内閣のときに伊東外務大臣の辞任問題にまで発展するわけですよ。同盟という言葉の定義の中に軍事的な問題が入るかどうかということを昭和五十年代はかなりやったわけですね。しかし、今は比較的、この同盟という言葉は、我々もすんなりと受け入れる環境はあると思うんです。

 しかし、その中で、日米安全保障条約というのは、ほかの条約に比べて、米韓、それからEUとアメリカとの関係から言うと、非常に特異な特徴のある条約だと私は思うんです。その条約の特異性とは何かというと、片務性だと思うんですね。御存じですね。片務性の問題についてしっかりと認識をなさるかどうかということが、私は非常にこれからの外交政策に重要だと思うので、この片務性についてどういう考えを持っていらっしゃるか、お伺いします。

田中国務大臣 やはり、軍事面だけではなくて、先ほどの同盟という言葉にも、その片務性にも関連すると思いますけれども、あらゆる意味で、同じような協力関係というか価値観を持ちながら進むかということに、簡単に言うと尽きるというふうに思うんですけれども。

安住委員 いや、大臣、法律論でしっかりとした議論をしたいので申し上げますと、なぜ、この片務性を安全保障条約が持っているのかということ、外務大臣におなりになるときに、多分この話から外務省は入ったと思うんですね。

 つまり、本来であれば、安全保障条約は双務性を持たないといけないわけですよ。一方だけが攻撃されたときに助ける条約なんというのは、本来であればやはりないわけですよ。なぜ、安全保障条約がそうなっているのか、いや、そうならなければならなかったかということが、実は、終戦から今日の日本の歴史を考えるときに、極めて重要な法律的な問題なんですよ。ですから今聞いているんです。片務性というものをちゃんと認識しておられますかということなんです。

田中国務大臣 集団的自衛権の問題もありますので、これからきちっと検討もしていかなきゃいけませんけれども、日米安保条約のもとで我が国の行為が憲法の枠内で行われるものであるということは、同条約の五条において、自国の憲法上の規定及び手続に従って対処するとされていることにもあらわれているということで御理解いただけますでしょうか。

安住委員 日米安全保障条約では、アメリカの日本に対する防衛義務規定を明確に規定しております。しかし一方で、我が国がアメリカに対していわば双務的な義務を負っていませんよね。それはいいですね。

田中国務大臣 よろしいと思います。

安住委員 これはなぜですか。なぜこういう条約になりましたか。

田中国務大臣 日本国の現在の憲法に基づいているからです。

安住委員 これは政治論でも言われていますが、そこから派生する言葉が個別的自衛権ですね。よろしいですね。

 つまり、個別的自衛権というのは、憲法上は双務性を認められないからこそ片務条約ができてきたんです。そのために安全保障条約というのは今そうなっているということであります。実はこのことをしっかりと理解しないで集団的自衛権の議論はできないんですよ。私はそう思うんですけれども、いかがですか。

田中国務大臣 ですから、先ほど申し上げましたように、現在の憲法を前提として集団的自衛権についてやはりよく検討していくということになります。

安住委員 いやいや、個別的自衛権に派生する根拠として安全保障条約を締結しました。大臣、よくおっしゃられるホスト・ネーション・サポートの問題は、だからこそ派生しているんですよ。地位協定の問題もそうだし、ACSAって御存じですか、物品、役務の問題、これは全部片務的な条約だからこそ我々国会でも苦労して地位協定ができて、その地位協定で足りないところを思いやり予算という形でまでやってきた。つまり、日米の――大臣、聞いていらっしゃいますか。質問をぜひ聞いてください。法律的にいうと、そういう意味からいうと、個別的自衛権の行使は十分に認められる、つまり自衛権に派生するからです。

 ならば、集団的自衛権についてはどうかといいますと、大臣は就任の記者会見でも、先ほどの我が党の伊藤議員の質問に対しても、実は、検討の余地があるという小泉さんの考え方を評価すると言っているんですよ。そうですね、評価すると。それで、検討の余地があると。どこを検討するんですか。つまり、これは幹の部分だからあえて言うと、集団的自衛権と個別的自衛権とは全く違うものです。全く違うものを、集団的自衛権を加味するということは、何を検討するんですか。集団的自衛権の何を検討しますか、もしそうおっしゃるんだったら。そこをぜひ聞かせてください。

田中国務大臣 日本が集団的自衛権というものを今行使できません。したがって、現在、施設・区域を提供したりしている。要するに、ホスト・ネーション・サポートの問題もありますけれども、そういう形になっているということです。

安住委員 いやいや、先ほどもお答えになったように、集団的自衛権について検討する余地がある、議論をするのは大いに結構だと言っているんです。しかし、実は、個別的自衛権をしっかり持っている現行憲法でやってきた今までの概念とは全く違うんですよ。白と黒の話なんですよ、集団的自衛権というのは。ですから、検討する余地なんかないと私は思いますよ。その証拠に、政府が国会で今まで出した見解を私は申し上げますから。

 いいですか。日本の武力行使が許されるのは、我が国に対する急迫不正の侵害に対処する場合に限られる、他国に加えられた武力攻撃を阻止することを内容とする集団的自衛権の行使は憲法上許されないということを、だれの内閣で言ったか知っていますか。田中内閣で、お父さんが内閣総理大臣のときの十月の参議院での政府見解でこれがぴしっと決まっているんですよ、大平外務大臣が。

 つまり、集団的自衛権は憲法違反であるということを我が国の政府も認めてきたんですよ。つまり、検討の余地なんて、実は憲法を改正しない限りないんですよ。

田中国務大臣 安住先生がたまたま田中内閣のときのお話をなさいましたけれども、あれから時代が推移いたしまして、御案内のとおり、現在、衆議院と参議院で憲法調査会が開催されております。私も初めからそのメンバーでございますけれども、その中で、やはり時代の推移に乗っていろいろな意見が開陳されていますし、また、いろいろな参考人から意見のヒアリングもしておりますので、そのことを含めて小泉総理大臣は検討していきたいとおっしゃっていると思いますし、私もそれでよろしいというふうに考えています。

安住委員 大臣、憲法改正の問題は全然次元が違うんですよ。私どもの意見を言わせてもらうと、私個人も言っている、集団的自衛権は考慮するに値すると思います。しかし、そのためには、やる場合は、我が国は法治国家ですから、やはりしっかりと憲法改正の議論をした上でこれをやらないといけない。つまり、憲法の現行のままの解釈で何かができるという考え方があるとしたら、それは間違いですから訂正していただきたいと思うんです。

 なぜかというと、毎日新聞の四月二十七日の会見で、大臣はこのことについて、今の解釈でも可能なことはあるかもしれないから検討すると実は言っているんですよ。私、ちょっと法律をきちっと認識なさったら、こういう発言というのはやはり本当は訂正していただかないと困ると思うんですね。

田中国務大臣 それは一議員として申し上げたことなんですけれども、現在外務大臣でもありますし、また同時に、衆参両院で憲法調査会がそうしたあらゆる問題点も加味しながら、新しい体制を構築していきたい、国民の皆様に情報を開示しながらいろいろな議論を起こしていきたいといってまさにやっている最中だというふうに認識しています。

安住委員 全体に憲法論議や安全保障の問題をするという議論を私はしているんではなくて、現行の安全保障条約における我が国の今置かれている状況下で集団的自衛権の話を軽々にするということは、積み上げていく議論を全くほうり投げる話なんですよ。だから、そうであれば政府の今までの解釈を全部変えないといけないという話ですが、今現行の憲法を持っている限り、憲法九条、今までの法体系でいったら、どう逆さに読んでも横に読んでも、今の現行憲法の中でどういうふうな――つまり、私が最初片務性という難しい話をしたのは、双務性にする条約にもしするんであれば、どうやったって憲法の問題にぶち当たりますよ。

 そんなことをしっかりとわかった上でこういう議論を検討の余地があると言っているんだったら、やはり法的根拠を示してもらわないといけないと私は思っているんですけれども、いかがですか。

田中国務大臣 ですから、一外務大臣だけで個人的な意見だけを申し上げても、一議員ではありません、やはり国務大臣でありますから、先ほど来申し上げたようなことに尽きるんですけれども、やはり広くあまねく意見を聞きながら、矛盾点があるということはいろいろな方がもう気づいているわけですから、それらをどういうふうに修正するのかしないのか、議論を起こしていきたいということに尽きます。

安住委員 憲法ですか、それは。今言っているのは憲法ですよね。憲法のお話ですよね。

田中国務大臣 もちろんそうです。

安住委員 憲法の改正問題は、先ほどから言っているように、これはまた別の次元の問題だと私は思うんですよ。つまり、今やっていいことと悪いことというのをしっかり踏まえてアメリカと協議しなかったら、大臣、先ほど地位協定の話とかSACOの話と言いましたけれども、いいですか、少なくとも、例えば我が党が政府・与党になって外交を担ったとしたって、このことをしっかり踏まえないと、SACOの話も地位協定の話も根拠が全くなくなってくるんですよ。だから歴代外務大臣も相当苦労なさったわけですよ。その中で事前協議の問題とかが出てきたんですよ。

 当然事前協議に対する御認識を持っていらっしゃると思いますが、事前協議の今のあり方について、大臣、どういう認識を持っていらっしゃいますか。もう感想だけで結構ですから、大臣。

 委員長、ちょっと……。

土肥委員長 事前協議についての感想をお述べください。(安住委員「難しいことはいいですから、大臣、事前協議の感想を」と呼ぶ)

田中国務大臣 事前協議については、直接関係がありません、今、集団的自衛権と。

安住委員 いやいや、私が質問しているのは、大臣、こんな片務性の中で、どうしたって双務性になれなかったから、この片肺状態の中で、我が国としては、やれるだけのことはやってこようということで努力してきたわけですよ。その中で、佐藤内閣の時代に非核三原則の問題とかがあって、それで、事前協議の話というのが大きな政治テーマになってきたわけですよ。御尊父の田中内閣のときもこの問題は大きくなりました。

 つまり、これは政治論で、ぜひ一般論で、事前協議を我が国はアメリカに対して今まで要求したことはあると思いますか、ないと思いますか。事前協議というのが有効に機能していると思いますか、思いませんか。

田中国務大臣 多分ない、当時のことですね、ないと思いますけれども。

安住委員 そのとおりなんですよ。大臣、外務省の機構改革も重要なんですけれども、実は、今、日本外交で一番やらないといけないことは、対アメリカ的な政策を追随型からしっかりと物を言う外交にするというのは、あなたのいわば政治姿勢ですよね、これは確認しておきますけれども。

田中国務大臣 そのとおりですし、ブッシュ新政権が日本に求めているものも、そういうふうなことも含まれているのではないかと今の段階で理解はいたしております。

安住委員 だったら、今まで、原潜の入港があったじゃないかとかいろいろなことが言われてきました。つまり、事前協議そのものが有名無実化している現実に対して、あなたはどういうふうにこれからなさいますか。

 私どもは、アメリカと真のパートナーシップをつくるためには、事前協議を積極的にやって、私は、逆にそこがまた沖縄の問題なんかに絡んでくると思うんですよ。つまり、逆に言うと、日本の政府がアメリカにしっかり物を言っていない証明じゃないですか。

 あなた、これを変えるつもりはありますか。これは政治家として伺っているんですから。

田中国務大臣 おっしゃっている意味は十二分に理解しておりますが、事前協議については、こちらからは特別、発議はいたしません。

安住委員 いやいや、発議をするんじゃなくて、事前協議というのが片務性の条約の中でいかに我が国に与えられた重要な権利かということをちゃんと認識するのであれば、新しい二十一世紀の日米関係を大臣が言うような強い姿勢でやっていく、本当の、真のパートナーシップになっていくというのだったら、このことこそ実は改革してもらわないとだめなんですよ、大臣。アメリカにはっきり物を言うということはそういうことですから。違いますか、大臣。

田中国務大臣 おっしゃっている意味は、痛いほどよくわかります。

 そして、米国は、事前協議にかかわる事項につき、これはもう知っていますとおっしゃるに決まっているんですけれども、日本政府の意思に反して行動をとるという意図がないことを事前におっしゃってるわけですから、そういうようないわゆるアンビギュアスなことについて、もう少しクリアカットで話を胸襟を開いてするようにしていかなければならないという意識は私は持っております。

安住委員 大臣、そこまで答弁されるのであれば、それでは、事前協議の対象になる三項目ということを御存じですか、全く有名無実化しているんですけれども。存じ上げていらっしゃいますか。

田中国務大臣 核の持ち込み、装備における変更、配置における変更。

安住委員 今までこういう例が多々あるんですよ。例えば、その例に当てはめると、航空母艦が日本の港に入ってきますね、そのときに補給を受けて出港した、何時間後にそこから爆撃機が出撃したと。日本の港において給油を受けたにもかかわらず、何時間後かに、外洋に出て、そこから例えばベトナムに行ったとか、こういうのを事前協議するかしないかというのは、実は非常に重要な話なんですよ。大臣、私たちの国ではそのことを全くやってきていないんですよ。

 そういうことに関しては、アメリカ側から何か言われたじゃなくて、あなたがおっしゃる真のパートナーシップを築くのはだれしも賛成、そうであれば、もしそういう事案があったときには、やはりアメリカに対してアピールしないといけないと思いませんか。

田中国務大臣 直接の戦闘行動につながらなければ、これは協議の対象にはならないんです。

安住委員 つまり、そこで今までの流れと同じことになっちゃうわけですよね。

 私は何でこんなことを言っているかというと、この間、アメリカの偵察機が中国機と接触して大きな問題になったでしょう。大臣、ああいう場合、例えば日本から行った、公海上でやったと。しかし、考えようによっては、これはこの事前協議の中にかする話だと思いませんか。何にもアクションしていないですよ、外務省。そうすると、これは追随型という話でしょう。そうなりませんか。

田中国務大臣 これは偵察行動でありまして戦闘ではありませんので、協議の対象にはなり得ません。

安住委員 今は協議の対象ではないかもしれません。しかし、私が言っているのは、事前協議というものをしっかりと有効的にやはり活用していく時代、そういうふうな関係に変わっていかないといけないんじゃないかということなんです。

 なぜこういうことを言うかというと、大臣は京都議定書の問題でホワイトハウスに対して抗議のファクスを送られましたね。私は、あれは非常に大賛成でした。つまり、こういう姿勢はこれにつながらないと、都合のいいときだけ格好いいこと言って、都合が悪くなると外務省の今までの慣例の中に閉じこもるというのでは、今までの大臣と大して変わらないんですよ。だから私申し上げているんですけれども。

 もう一回伺います。事前協議というものを、積極的にアメリカに対してこれから、中身を含めて変えていく、もっとより広範な部分について事前協議というものの対象にしていくお考えはありますか、ないですかということをお伺いします。

田中国務大臣 これからアメリカとの間で2プラス2、防衛庁と外務省の関係です、これがあることは御存じだと思いますけれども、日米間では安全保障上緊密に連絡というものはとっております。

安住委員 ちょっと歯切れが悪くてあれですけれども、この話はまた私が外務委員会にいる間は延々とやりますので、ぜひ、勉強していただいて、お互い議論を深めたいと思います。自民党もぜひ前向きな安全保障政策をどんどん出していただいて、要するに我が国の二十一世紀の安全保障体制をちゃんとしたものにしていかないといけないから私は言っているんですよ。

 そこで、さらに踏み込みますから、申しわけございませんが。

 大臣、一九九六年に、日本とアメリカの関係というものをもう一回見直そうと安保再定義という問題がありました。このことについては御存じですか。また、もし御存じであれば、なぜ再定義を必要としたかということをぜひお話ししていただきたいと思います。

田中国務大臣 これは、冷戦後の安保がどうあるべきかということについて話し合いをしたときであるというふうに思います。(発言する者あり)

安住委員 ちょっと静粛にさせてください。

 これは非常に重要な問題の最初の入り口だから、現実にこの認識が違ったら議論なんか今から成り立たないから、私はあえて聞いているんですよ。

 大臣、これは東アジアの中で安全保障条約をどう考えるかということで、我々はその再定義をしてきたわけですよ。つまり、冷戦構造が終わって、いわばソビエトやある種共産圏に対する防波堤的な意味合いでの安全保障条約から、東アジア全体の公共財といいますか、安全を担保するための有力な財産であるという位置づけのもとに実は再定義の問題があったということですね。これはお認めになりますね。

田中国務大臣 そのとおりです。

安住委員 そこで、新ガイドラインの問題が出てきました。平成九年の九月にガイドラインの問題が公式な場で閣議報告されて、それで周辺事態という概念の中で、日米で具体的に何ができるか、つまり、私が言っている、片務的条約の中でも可能な具体的な肉づけをしながら安全保障政策をやっていきましょうという段階に来たわけですよ。そこで周辺事態法というのは出てくるわけですよ。そうですね。大臣もいろいろなところで実は講演なさっているんです、このことで。私、調べさせていただきました。

 大臣、基本的に伺いますけれども、周辺事態の周辺というのはどういうふうに定義なさっていらっしゃいますか。

田中国務大臣 これは地理的な概念ではありません。

安住委員 地理的な概念ではないわけです、全く。しかし、私、ちょっと気になることがあるんで、ちょっとこれを聞いてください。

 周辺諸国は台湾を含むと正直に言ったらいいんです。私はこの間、中国の陳健大使に初めてお会いしました。そのときに、私が、日本の周辺諸国には台湾は含まれるんですよと言ったら、大使は、あなたの意見を理解しますとにこにこして言っていましたよ。そうした人間関係ができれば、日本の国を守るにもいいんじゃないですか。

 どなたの発言でしょうか。

田中国務大臣 私めの発言に違いありません。でも、大臣になってからじゃないですよ。

安住委員 私は、大変御正直に申されたなと思って評価したんですよ。しかし、そこで外務大臣になって、地理的概念は含まないという話になると、どちらが本当の政治家田中眞紀子なのかなと思っちゃうわけですよ。

田中国務大臣 あなた様の質問の中に答えがあると思うんですけれども、今は私は国務大臣でございます。それを発言したときは、大分前の、陳健さんが就任なすったころのことではないでしょうか。

安住委員 九九年であります。

 私は、そのことは問題だと思っていないんです、実は。つまり、はっきりと言うからこそ、外務大臣、田中さんは国民の皆さんからも大変な評価をされているわけですよ。しかし、周辺事態に関して言うと、今まで積み上げてきた議論でいうと、やはりこれはいろいろな政治的な問題もあるので、要するに地理的な問題ではないというふうなことに落ちついたわけですよね。そのことはしっかりと踏まえて、これからも周辺事態法について考えていくというふうな見解でよろしいですか。

田中国務大臣 それで結構です。

安住委員 そこで、我が国でもう一つ問題になっているのが有事法制の問題です。

 大臣、有事法制については、私どもの考えというか、私の個人的な考えは後で申し上げますが、有事法制が今日本にないということに関して、どういう感想をお持ちですか。(田中国務大臣「質問を聞いてなくて、ごめんなさい」と呼ぶ)有事法制、今日本にないわけですよ。あった方が私は個人的にはいいと思いますけれども、大臣、いかがですかということです。

田中国務大臣 平時において必要であるというふうに思います。

安住委員 いやいや、ただ必要だとか、有事法制がいいとかと言っているんじゃなくて、国会の中で議論をさせていただくと、なぜ必要かということが大事だと思うんですよ。これはやはり、私は、安全保障条約をしっかり持って、自衛隊を持ったときから、実は有事を想定して法整備をすべき話だったと思うんですよ。それを五十何年間ほったらかしにしてきたのは、実は政治の方が大きな問題があるという認識から伺っているんですけれども、いかがですか。

田中国務大臣 まさしくそうでして、国の危機管理ということだと思うんですね。危機管理の根幹にかかわる問題というのは、平時においてこそ非常時を想定するというようなことが必要である、備えが必要であるという意味です。

安住委員 そうであれば、どういうふうにこれから緊急事態法制といいますか、整備していくかという基本的な考え方をぜひ教えていただきたいと思うんですね。やはり基本的な人権の侵害にかかわる問題だから、だからこそ有事のときの超法規的な措置をやらせないための歯どめとして実は緊急事態に対して法整備は必要ではないかというふうに、党の考えというよりも私個人の考えですけれども、持っているんですよ。いかがですか。

田中国務大臣 やはりそれがいわゆる抑止力といいますか、そういう機能は果たすだろうというふうに思いますので、これは検討する必要がありますし、スケジュール等については内閣官房を中心に関係官庁が協力して十二分に検討し、外務省としてもこれに協力をするということになるわけです。

安住委員 いやいや、私は今ちょっと気になったんですけれども、抑止力じゃないんじゃないですか。抑止力のために有事法制というか緊急事態法制をつくるというのは、法律的にはちょっとおかしいと私は思うんですよ。

田中国務大臣 語彙不足で使い間違いましたので、では、危機管理と言い直させていただきます。抑止力を消して、危機管理。

安住委員 私は、むしろ基本的な人権を守る、平時における基本的な人権をしっかり守る、そのために緊急事態が起きたときに対応するという考え方でこの問題に取り組んでいただきたいということなんですよ、実は。お願いしますが、いかがですか。(発言する者あり)

田中国務大臣 十二分に検討いたします。

安住委員 法律論ばかりでうんざりするかもしれませんけれども、実はこれは非常に重要な話なんですよ、皆さん。つまり、我々がやっていかないといけないのは、立法府ですから、ただそのときに、軽々しく有事法制なんて使ってもらいたくないという思いもあるんです、私。何のためにそういうことをやるか。それは、先ほどから言っているように、人権をどうやって守るか。

 例えば、攻撃を他国から受けたり、ゲリラが来ますでしょう。破壊をされた家とか、何かのことで必要で没収された土地とか、そういうことに対して、例えばその事態が終了したときに、しっかりと政府が何らかの保証をして、原状に、できるだけ可能な形に復帰をするとか、そういうことを踏まえるのが私は緊急事態だと思っているんですよ。そういうことをしっかり踏まえた上で、言葉遊びをしないために私はこういうことを聞いているんですよ。そのことをぜひ考えていただきたいと思います。

 次に、極東のプレゼンスの問題、つまり在日米軍の問題に話を移します。

 今、前方展開されている十万人のプレゼンスについて、大臣、適正な規模であるかどうかと聞けば、当然、適正な規模だというふうに言うと思うんです。

 そこで、もう一つ踏み込んで言いますと、実は、ブッシュ政権は政権交代後、この十万人のプレゼンスについて見直しを始めました。このことについて、どういう結論になるかわかりませんけれども、大臣はどういうふうな御感想をお持ちですか。

田中国務大臣 アメリカから出てくる結論というものをしっかりと見きわめたいというふうに思います。

安住委員 これは、逆に言うと、日本側はアメリカに対して何か物を言わないといけないことになるんじゃないですか、実は。新ガイドラインもできて、防衛協力もかなり進んだ。そうなったら、昔であれば受動的で、私はそれはしようがないと思いますが、九六年以降の日米の安全保障をめぐる話でいうと、アメリカに対してプレゼンスの問題をしっかりと日本側の主張はやはり言わないと、日本の外交には頭がないということになるんですよ。アメリカから言われて、アメリカが二万人削減します、一万人削減しますと言うと、結構でございますと言うんだったら、今までと同じになっちゃうんじゃないですか。大臣、いかがですか。

田中国務大臣 先ほど申し上げましたように、2プラス2の機会も九月ですか、ありますので、フランクなお話し合いができるようにしたいと思います。

安住委員 そこで何を議論するかがやはり問題なんですよ。そこで地位協定の問題や、結局またもとに戻っていくんですよ、安全保障というのは本当に深いですから。沖縄にある在日米軍の問題もすべてここに行くわけですよ。だから稲嶺知事が行かれて、沖縄の苦しみは本当に我々も理解するわけですね。

 しかし、本当に現実的にそれを実行するためには、十万人の東アジア全体に展開する米軍の配置について、お互いに共通認識を持ちながら、削減がいいのか、それとも、北朝鮮情勢が不安定だから、さらに例えば整備が必要なのかということは率直に話をしないといけないと思うんです。そのときに大臣はどういう姿勢で臨むかということは、外務大臣としてしっかりと、削ってほしいんだったら削ってほしいということをやはり言わないといけないと思うんですね。

田中国務大臣 安住先生の御趣旨はよく理解できているつもりでおりますけれども、やはり国際情勢の変化とか、話し合いというのは相手もありますので、先方の意見もよく聞きながら、こちらの言うべきことははっきり申していきます。

安住委員 そのことをより具体的に言っていただくことを期待します。そのことが沖縄の皆さんが一番やはり知りたがっていることなんですね。

 実は、こういう話をしてきて、安保のことでちょっと最後に申し上げますと、大臣、伊藤議員も言いましたけれども、今まで私が言ってきたような基本的なことを踏まえて、SACOのことから何からやってきたキーマンというのはアメリカに何人かいるわけですよ。前政権でいえば、大臣知っているようにキャンベルさんもそうでした。つまり、アーミテージさんという人は、対日政策で、私が今言ったことをしっかりと踏まえて、いわばその軸になってこれからの四年間、この政策について日本に物を言う非常に重要なパーソンだと思うんです、私は。だから、いろいろなことはおありになりましたけれども、やはり大臣は何をおいても実はアーミテージさんにお会いした方が私はよかったんでないかなと思います。

 ただ、そのことについてはもういろいろ今までお話あったから感想は聞きませんけれども、私が今時間を費やして言ってきたその結論で言うと、アーミテージさんという人は会わないよりははるかに、やはり会っておかないと、今後のことを含めてやはり重要な人だったんでないかなということだけつけ加えさせていただきます。

 それで、冷戦が終わって、そこで北朝鮮の問題。つまり、ミサイルの問題も全部これに起因するわけですよ。アメリカの国土防衛ミサイル構想にしたってそうだし。内向き政策にかなりシフトしてきましたね、アメリカが。エネルギー問題もそうですよ。議定書の問題を見たって、リーダーシップを発揮しようというよりは、アメリカ国内の理論に非常に巻かれていくというか、そういう傾向を私は非常に実は懸念しております。その中で、北朝鮮の問題で、ちょっと米の支援のことだけお話をさせていただきたいと思います。ロシアにいく前ですが。

 大臣、また前の発言をとって本当に申しわけないんだけれども、私、これははっきりおっしゃっているんで非常にいいなと思っているんですが、先ほど、米支援については人道上の観点等々からというお話をなさいましたよね。だけれども、大臣はこういう発言をなさっているんですね。去年の十月に石川県で、北朝鮮への米支援について、福井や新潟の原発にもしテポドンが当たったら日本じゅうが被曝する上、拉致された人たちをどのように守るかという戦略もない、千二百億円という財政出動をして送る理由がどこにあるのかとお話しになったと。これはネットにも載っているんですね。私はある種、一方で理解しているんです、このことについては。

 このことについての御感想を、今どういうふうにお考えになっていらっしゃるか、聞かせてください。

田中国務大臣 あれはたしか馳さんのところで、石川県で言った、去年だと思います。一緒におられた方もおられますので、たしかそうだと思います。

 それから、それの関連で、あれは何とかいう朝のテレビの番組で、ちょっと違うことですけれども、この米について、私も北朝鮮問題は大変重要な問題になるというふうに政治家として勘が働いていましたので、米の五十万トン支援、拉致があるからけしからぬという意見があったわけですけれども、むしろ政治というのはタイミングで、イタリアと国交を結び、次オーストラリアになる、次ばたばたっと、今度、今もうEUの方にいくようですけれども、そういうふうな展開をするものなんですね、特にああいうふうな長い間閉ざされていた国は。オーストラリアになるというから、私はもう頭に血が上りましたよ。

 そして、まだ日本が、拉致があるから米の支援云々と言っているから、それだったら、五十万トンなんて言わずに、百万トンでもどんどん出した方がいいと。政治はタイミングなんですよ。ずっと風を見ていて、いろいろな議論を踏まえているけれども、今一番ベストだと思うときにドンと走り出すのが政治ですよ、全責任を持って。それをやるべきだということを言ったら、後でもって意味がわからないと言う方もおられたんですが。

 この北に対する米の支援というのは、私は、一議員として自分の感性と自分の知識と情報の中で言っていたことと、今現在この重責の中であえいでおりまして、寝不足の頭の中で、当然これは人道上今までもやってきていますし、昨年の五十万トンはそのうちの十八万トンぐらいが行っていて、これはずっと何年かで五十万トン全部行くわけでしょうけれども、これはやはり、皆様、先生方の御意見とか情報量も総合的に、農林省がどう言っている、あるいは外務省ではなくて、我々国会議員がみんなの英知を集積してやりませんか。そうしないと、やはり後でまたほぞをかむのは嫌だなと思います。

安住委員 それはそれでいいと思います、私も。

 ただ、私の意見を言わせてもらうと……(田中国務大臣「いいと思っているなら」と呼ぶ)いや、大臣、私、後ろのところは支持しているんですよ。一千二百億円の財政出動をして送る理由なんかどこにあるかと。実はこれは私も農林水産委員会でさんざんっぱら議論した話なんですよ。つまり、日本の過剰米対策に北朝鮮を使っているという意味合いもあるわけですよ。

 実際、我が党はこういう主張なんですよ。支援をするのはいい、人道上だから。ならば、一千二百億円かけなくても、もし東南アジアの過剰米、つまり長粒種と言われるそれを買って出せば、我が党の計算だって少なくともこの十分の一のお金で同じ効果があるんですよ。

 しかし、自民党はどうでしたか。過剰米対策ということで、これは農林部会で決めた話ですよ。北朝鮮の人道支援の美名のもとに国内の過剰米処理をやるということを私は大きな問題だと思うんですよ。大臣もそういうことでこの話をしたのかなと私思ったので、いかがですか。

田中国務大臣 やはりあらゆる意味で人道的支援であり、そして総合的な判断ということに尽きると思います。

安住委員 これは大臣、難しいというか、確かにすっきり言えないかもしれないけれども、人道的支援とどんな米を納税者の……(発言する者あり)自民党からやじが来ましたけれども、より安いお金で、より安い税金で、より多くの貢献をすべきだという立場で我々は言っているんですよ。ぜひこの意見を、民主党の意見を参考にしてください。

田中国務大臣 拳々服膺いたします。

安住委員 さて、十分弱しかありませんが、日ロの問題について触れさせていただきます。

 イルクーツクでの会談で一定の成果があったということは外務委員会でも実は議論を続けてきました。しかし、一つ私も大変気になっているのは、森さんがおやめになってからテレビでああいう発言をするというのは、どうなんでしょうかね。それを否定はなさっているけれども、ついこの間まで総理大臣をやっている人がまじめにああいう話をすると、やはり我々から見ると本当かなと思っちゃうわけですよ。つまりセパレート論ですよね。大臣、いかがですか、あの話に対する御感想を聞かせてください。

田中国務大臣 おやめになってすぐによくまあ発言なさったものだと思っておりましたけれども、コメントは差し控えます。

安住委員 私は、この問題は十分ぐらいでできないので、幾つかだけで、また時間を改めてとってじっくりやらせていただきますけれども、大臣が御就任のときに、田中・ブレジネフ会談、七三年ですか、あのときのやりとり。あのとき一緒に行かれたんですか。あのときは、要するにこういうことですね。未解決の問題が両国にあるということを認識するかということに対して、ブレジネフ書記長は、口頭でダーと答えたということですね。

田中国務大臣 そのとおりだと思います。

安住委員 それで、私はこれまでの日ロ交渉の流れをざっと申し上げますので、もし間違っているとか認識が違うというんだったら教えていただきたいんですけれども、五六年の日ソ共同宣言における条文をどう読むかというのは非常に重要なんですよね。実は、これがすべてに起因するんですよ、大臣。

 これは鳩山・フルシチョフ会談ですけれども、鳩山由紀夫ではなくて鳩山一郎の方ですね、日ソの戦争状態の終結というのが、まずこのときは非常に大きかったんですよ。それで、領土問題については、第九項のところで、ソ連は歯舞諸島及び色丹島を日本に引き渡すことに同意する、ただし、これらの諸島は、日本とソ連との平和条約締結後に現実に引き渡されるものとする。日本語の解釈ではそうなっているんですよ。まず、これは現実的にお認めになると思うのです。

田中国務大臣 それは共同宣言にあるとおりだと思いますけれども。

安住委員 それでは伺いますが、今度のイルクーツク会談は、この日ロ共同宣言をいわば有効であるというふうにプーチン大統領が認めたということが大きな成果ということになりますね。

田中国務大臣 一つの成果であるという言い方ができるかとは思いますけれども。一つの成果であると言えると思います。

安住委員 そこで、問題になるのが、やはり四島の帰属の問題であります。

 実は、この帰属の問題をやっていくと、セパレートした議論と帰属を認める話というのは、全く違う話にならざるを得ないんですね。二島先行返還というのは、四島の帰属を認めた後の方法論としては、選択肢としては排除されないものだというふうには私は思うんですが、いかがですか。

田中国務大臣 領土問題というのは、私の認識では、この四島は日本固有の領土でありましたので、この帰属の問題をはっきりとして、それから平和条約を締結する、これは一貫しております。

安住委員 確認しますが、帰属の問題をしっかりと確定した上で平和条約を結んで、それで四島の返還の具体的なプロセスに入るというのが田中外交の対ロ戦略ということでよろしいですか。

田中国務大臣 まず、帰属の問題が明確になればということです。

安住委員 実は、去年、おととしあたりから、二島先行論というのはないないと言いますが、これだけ新聞とかに書かれている以上、多分、与党内を含めて先行論はあるんだと私は思うんですね。それは、政治家ですからいろいろな考えを持っていていいわけですよ。そのことすら実は委員会ではないないと言うものですから。

 では、外務省の基本方針は変わってないわけですね。帰属の問題をまずやって、平和条約を結んでということです。

田中国務大臣 政府としては二島返還論などということを言ったことは一度もありませんので、政府は一貫しています。ここでどのような議論が政治的になされたかは存じませんが。

安住委員 イルクーツク会談の中で、もし森総理が言っているような発言であるとすると、森総理が言っているダブルテーブル、歯舞、色丹と国後、択捉、もし事実であるとすれば、そういう協議の方式というのはちょっと誤解されると思うんですよね。

 私も見たんだけれども、森さんは言っているんですよ。森さんのおっしゃっていること、これは完全に事実と違いますか。

田中国務大臣 きのうでしたか、おとといの新聞だか、ごらんになりましたでしょう。ロシア側が、そういうふうなことはない、取り消すとか否定なさっているんですよ。

 ですから、森前総理の発言は、あれは何であったのかなと思いますが。

安住委員 わかりました。我が党も、実は、四島の帰属をまずしっかりと認めて、その上で平和条約を結ぶという、このラインを崩すべきじゃないということを思っているのです。そのことをしっかりと約束していただいて、交渉事ですから後ろでいろいろなことがあるのは当然ですから、そんなことまで情報公開しろなんて我々は言いませんから。ただし、この基本ラインを崩さないということだけ、お約束ください。

田中国務大臣 これは、間違いなく、確実にお約束いたします。

安住委員 ところで、ロシア課長の復帰をさせたという話、大臣、これはどういうことですか。我々はよくわからないものだから、ぜひ聞かせてください。

田中国務大臣 これも、やはりいろいろ聞いてはおりましたが、あれは今現在最善の選択をしたというふうに思っているということを御理解ください。

安住委員 政策的に四島の帰属をしっかり明確にするために、今までやってきたキーマンだったから復帰をさせたというふうに我々は思っているんですけれども。

田中国務大臣 人事の詳細については一々お答えできませんけれども、おっしゃることはよく理解ができます。

安住委員 ところで、対ロ政策について言うと、実は、私は一つ心配があります。

 クラスノヤルスク合意がありました。クラスノヤルスク合意で何が一番重要だったかというと、橋本・エリツィン会談の中で期限を決めたことであります。期限なき交渉がどれだけ日ロ交渉に対して空白の時間をつくったか。その後、政治的にいろいろな問題があるたびに日ロ交渉は前進をしませんでした。しかし、イルクーツク会談で私どもが一番心配しているのは、期限を区切っておりません。どこまでの時点で何をするか、そういう作業テーブルにのることすらこれからの交渉であります。

 日ソ共同宣言をプーチンさんは存在を認めました。しかし、歯舞、色丹を含む島の帰属、さらには返還の方法については微妙な言い回しをしております。要するに、専門的な意見を交えた両国の勉強というか研究が必要だと言っている。ということは、よく考えてみると、またゼロからスタートする可能性もあるなと。

 対ロ交渉については、ぜひ、イワノフ氏に早急にでも会われて、期限なりをきちっと設定してその中で結果を出してもらいたいと私は思うんですけれども、いかがでございますか。

田中国務大臣 外交は原則が一番大事である、原則を崩してはならないというふうに私は哲学として思っておりますけれども、このイルクーツクのことの総括もしなければなりませんので、それをした上で、ちょっとお時間をいただいて考えてみなければいけないと思いますが、原則は原則です。

安住委員 こちらからアプローチをするということは原則だということではないんですか。大臣、やはりそれは必要だと思いますよ。

田中国務大臣 原則と申し上げたのは、領土交渉とかで、こちらの政府のスタンスというものは、原則は絶対曲げないということを申し上げたんです。

 それから、日程については、日程が合えばいっときも早くお目にかかれればいいと思いますが、先方も御多忙でしょうし、こちらもかなり先まで予定が入っておりますので、まあ早くにしたい、こう思います。可能であればというふうに存じますが。

安住委員 あと二分ぐらいで質問を終わらないといけないので。

 確かに、省内改革、これも大変だし、外務委員会で私みたいなのにこうやって細かい質問もされて、日米関係も大変だし、日ロ関係も大変だし、委員会も大変だと思います。しかし、さっき大臣は、プライオリティーをしっかりつけるのが政治だ、プライオリティーをしっかりつけて、優先順位でだっとやっていくんだと、タイミングを見計らって。それからいうと、実は日米、日ロというのは、僕は、非常に重要だし、最優先でやらないといけない問題だから、きょう、ちょっと入り口の話だけさせていただいたということなんです。

 機密費を含めた外務省の問題については、毎日新聞の社長さんが座長になっておられる改革会議の話は、比較的いいこと書いてありますよ。やはりこれは外部でやったから私は非常に参考にしているんだけれども、その中で一番問題にしているのは、外務省の意識構造の問題だと言っているわけです。意識構造。

 これを変えるためには、松尾事件というのは実は単に個人の問題でないんだということを、やはりしっかりと世間にあなたの口で言って、それを証明しないといけないと私は思うんですよ。我々は、そのことを国会でも言ってきたから、その点だけはぜひエールを送りたいと思うんですね。さっき言ったように、上納の問題も全部これは一緒なんですよ。この雲を払ってもらうことをぜひ御期待申し上げたいと思います。

 最後に、ODAのことだけ伺います。

 一兆円を超えるODAをやっているのは御存じだと思います。大臣、むだな公共事業とか道路財源の話が出ましたね。改革を言うんだったらば、ODA改革こそが外務省の大きな改革だと私は思いますけれども、これは基本的な認識だけ聞いて、私の質問を終わります。

田中国務大臣 これは、小泉総理が聖域なき改革というふうなことをおっしゃっていますけれども、ODAもそうであります。善意で始めたものも、長い間にいろいろな問題点も出てきていると思いますし、皆様お一人一人認識している点もおありと思いますので、これも改革すべきはする、守るべきは、貢献しているところは守っていくというスタンスでございます。

安住委員 終わります。ありがとうございました。

土肥委員長 次回は、来る二十三日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時三十一分散会




このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.