衆議院

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第10号 平成13年5月30日(水曜日)

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平成十三年五月三十日(水曜日)

    午後零時四十二分開議

 出席委員

   委員長 土肥 隆一君

   理事 河野 太郎君 理事 下村 博文君

   理事 鈴木 宗男君 理事 米田 建三君

   理事 安住  淳君 理事 桑原  豊君

   理事 上田  勇君 理事 土田 龍司君

      池田 行彦君    金田 英行君

      小島 敏男君    高村 正彦君

      桜田 義孝君    下地 幹郎君

      虎島 和夫君    中本 太衛君

      原田 義昭君    宮澤 洋一君

      望月 義夫君    山口 泰明君

      伊藤 英成君    木下  厚君

      首藤 信彦君    武正 公一君

      中野 寛成君    細野 豪志君

      丸谷 佳織君    赤嶺 政賢君

      東門美津子君    柿澤 弘治君

    …………………………………

   外務大臣         田中眞紀子君

   外務副大臣        植竹 繁雄君

   外務大臣政務官      丸谷 佳織君

   外務大臣政務官      小島 敏男君

   外務大臣政務官      山口 泰明君

   政府参考人

   (外務省総合外交政策局国

   際社会協力部長)     高須 幸雄君

   政府参考人

   (外務省条約局審議官)  林  景一君

   外務委員会専門員     黒川 祐次君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月三十日

 辞任         補欠選任

  虎島 和夫君     金田 英行君

  前田 雄吉君     武正 公一君

同日

 辞任         補欠選任

  金田 英行君     虎島 和夫君

  武正 公一君     前田 雄吉君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 国際労働機関憲章の改正に関する文書の締結について承認を求めるの件(条約第八号)

 最悪の形態の児童労働の禁止及び撤廃のための即時の行動に関する条約(第百八十二号)の締結について承認を求めるの件(条約第九号)

 相互承認に関する日本国と欧州共同体との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第一一号)




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     ――――◇―――――

土肥委員長 これより会議を開きます。

 国際労働機関憲章の改正に関する文書の締結について承認を求めるの件、最悪の形態の児童労働の禁止及び撤廃のための即時の行動に関する条約(第百八十二号)の締結について承認を求めるの件及び相互承認に関する日本国と欧州共同体との間の協定の締結について承認を求めるの件の各件を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 各件審査のため、本日、政府参考人として、委員桑原豊君の質疑に際し、外務省条約局審議官林景一君の出席を、委員赤嶺政賢君の質疑に際し、外務省総合外交政策局国際社会協力部長高須幸雄君及び外務省条約局審議官林景一君の出席を、また、委員東門美津子君の質疑に際し、外務省総合外交政策局国際社会協力部長高須幸雄君の出席を求め、それぞれ説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

土肥委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

土肥委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。桑原豊君。

桑原委員 十分しか時間がございませんので、早速質問に入ります。

 まず、日本と欧州共同体の相互承認協定について、三点お伺いしたいと思います。

 まず最初に、欧州共同体との間に相互承認協定を結ばれた、その理由は何か。なぜ欧州共同体と結んだのか。

 それからもう一点は、現在、四分野に限って一応協定の対象といたしておりますけれども、この分野をさらに広げていく、そういった考えはあるのかということと、この先、欧州共同体以外のところとこういった協定を結んでいく、そういう予定があるのかということ。

 それから、私は前の条約のときにも少しお話をいたしましたが、非常に時間がかかっておるわけですね。協定が締結されるまでの間に六年間かかっております。最初の三年間というのは、それぞれの国で制度などについていわゆる調査研究をするということですから、これは準備期間としてそういうことだろうと思うんですが、その後またさらに三年間かかっておる。その間に、欧州共同体からは、早く締結をしてほしい、早期妥結というような要請があったはずですね。そういったことがあったにもかかわらず、これだけ時間がかかっている。この点について、なぜそうなのかということをお聞きしたいと思います。

田中国務大臣 桑原委員にお答え申し上げます。

 まず、なぜECを相手に選んだんだろうかというポイントでございますけれども、欧州共同体は、市場統合の経験を踏まえ、九〇年代初めから他国と相互の承認協定を締結し始め、現在では欧州共同体を中心に相互承認協定のネットワークが国際的に形成されてきております。

 我が国は、欧州共同体の経験ですとか我が国との貿易量、そういったものを踏まえまして、また、制度や技術面での同等性が確認されたことなども踏まえて、この協定の締結相手として欧州共同体を選択いたしました。

 それから、二つ目のお尋ねでございますけれども、相手国の市場規模、それから産業界の要請状態ですとか、それから相手国との基準の認証制度の同等性などの要素を勘案して、適切と考えられる国と相互承認協定を締結していきたいと考える次第でございます。

 それから、えらく遅いではないかというお尋ねがあって、これは時間がたしかかかっていたようでございますけれども、その理由は、この協定は我が国にとって初めての二国間相互承認協定でありまして、国民の健康や安全にもかかわることでありますから、交渉に当たっては、基準認証に関する双方の制度について詳細な情報の交換とか調査でありますとか研究を行って、双方の制度が同等であるということを確認し合う必要がありました。このため、交渉を始める前に約三年、そしてその後二年半を要するということになってしまいました。

 以上です。

桑原委員 輸出入に関しての手間を省く、あるいはコストを下げていくという意味では、大変有益な協定だというふうに思いますし、私は、これからさらに品目等についても拡大をしていく、そういった方向で頑張っていただきたいと思います。

 ただ、やはり、最初の三年間でその点の調査というのは十分にやる余裕を持って期間が設定されているわけですから、その後さらにそれだけの年月を要するというのは、どうも今の説明でも私は十分納得がいきません。そういう意味では、やはりもう少しこの手のものについてスピードアップをしていく、そういった対応が必要ではないかということをつけ加えておきたいと思います。

 次に、ILO関係についてお伺いをいたします。

 まず、ILO憲章を改正して、一応その目的を達したとか、あるいは不要になったとか、そういうような必要性がなくなったとかというような条約について廃止をしていく、廃棄をしていくという改正手続ができたということは、これは特に異論はございません。そういった方向でやるべきだというふうに思います。

 一つ、最悪の形態の児童労働の禁止等に関する条約でございますが、これは一九九九年、おととし採択をして、既に六十三カ国が締結をしておるということで、私は、この児童労働の問題も、大変人権にかかわる、ある意味では本当に素早く締結をしていくということも求められる、そういう条約だと思うのですが、我が国は、そういった意味では大変締結がおくれておるのではないか。

 これに先立って、就業が認められるための最低年齢に関する条約というILO百三十八号条約もあるのですが、これも一九七三年に採択をされて、日本が批准をしたのは去年なんですね。ですから、二十七年間かかっておるということで、どうも、先ほどの協定もそうなんですが、そういった点で非常に年月がかかり過ぎる。なぜそういったふうなことになるのかということをお聞きしたいと思います。

田中国務大臣 もっと迅速にできなかった理由でございますけれども、昨年の第百三十八号条約の国会での審議において、第百八十二号条約を早急に締結すべしとの御指摘があったことも踏まえて、鋭意検討作業を進めた結果、今国会に提出することになりました。

 それから、百三十八号はなぜそんなにまた遅くなったかということなんですけれども、我が国がILO条約の批准を検討するに際しましては、条約の内容ですとか国内法制との整合性等について政府部内で十二分に検討して、批准が適当という意思統一が図られたからであります。第百三十八号の条約につきましては、我が国の労働基準法が平成十年に改正され、この条約を実施するための国内法令上の措置ができたため、この条約の締結が可能となり、昨年、国会の御承認を得ることとなったわけでございます。

桑原委員 そういう御説明では、この先この種のものを政府としても早くやっていく、先進国の中では非常におくれをとっているわけですから、国内的なそういう整備も早急にやって、条約をきちっと早期に締結ができるように努力をしていく、そういう対応というのがどうも出てこないんじゃないかというふうに思います。

 そこで最後に、ILOの全般についてでございますが、百八十三の条約がございますけれども、我が国が批准をしているのはそのうちの四十四本です。OECDの先進国のいわゆる平均の批准数は六十六というふうに聞いております。そういう意味でも、私は、OECDの仲間入りをした国として、また世界の一、二を争う経済的な先進国として、そういった状況というのは余りにもおくれをとっているのではないか、こういうふうに思います。

 ぜひ、先ほど来の条約の締結のおくれということも含めて、なぜそうなのか、そしてどうしていきたいのか、そのことをどう考えておられるのかということをもう一度お伺いしたいと思います。

田中国務大臣 確かに、G8諸国の中で締結本数を見ましても、フランスが百十五、イタリアが百八、そういうふうな数字と比べてみましても、日本は四十四本ですから、御指摘は正しいというふうに思います。

 それで、外務省としては、関係省庁とともに、それぞれの条約の目的ですとか内容ですとか、あるいは我が国にとっての意義などを十二分に検討した上で、その時々の国内の世論ですとか国際世論、世界の世論や動向もすべて勘案して批准することが適当と考えられておりましたものですから、国内法制との整合性を確保した上での批准を進めてきておりますので遅くなりましたが、もう少しナーバスになって、全体のもの、トータルでもって機動的に動くようにして、迅速性を確保するようにいたしたいと思います。

桑原委員 終わります。どうもありがとうございました。

土肥委員長 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 私も持ち時間が十分しかありませんので、はしょって質問をしていきたいと思います。

 まず、日・欧州共同体相互承認協定については、その中身が、事業者の時間的、経済的コストの軽減が締約者双方の経済的利益にかなうこと、対等な経済関係という観点を踏まえたものであること、また、安全の保護の観点から必要と認める措置をとる権限について協定が制限していない等、さらに、製品流通における安全性が配慮されていると認められていることから、日本共産党はこの協定には賛成であります。

 それで、時間の関係で、ILOの問題に絞って質問を行いたいと思います。

 このILOの新条約の批准については、我が党としてはこれも賛成でありますけれども、世界じゅうで二億五千万人とも言われる児童労働をなくしていこうという趣旨であります。それで、この間、国際的に児童の権利を擁護、拡充していこうという大きな流れが方向づけられていることは極めて重要なことでありますけれども、この条約の第六条には、行動計画の策定及び実施が定められております。その第六条の中に、「加盟国は、最悪の形態の児童労働を優先的に撤廃するための行動計画を作成し及び実施する。」と要請しております。

 我が政府は、さまざまな国内法で担保されているからそういう行動計画は必要ないんだというような御見解のようでありますけれども、改めてこの委員会の場でお伺いいたしますけれども、条約第六条に基づいて行動計画をつくることは我が国は関係がないという立場ではなくて、必要があれば大いに検討していくという立場が求められると思いますけれども、大臣の見解をいただきたいと思います。

田中国務大臣 お答えいたします。

 子供の権利を守るということ、この児童労働の問題は、アジアそれからアフリカ、南米等でも問題になっていたことはよく承知しております。この最悪の形態の児童労働が大きな社会問題となるような事態が生じた場合には、現実には進行していますけれども、この条約に定める児童労働の撤廃のための行動計画を策定することを含めて、必要な措置を講じていかなければいけないと思うんですが、これは、今は日本は、ちょっと数字を調べておりますけれども、日本が何か資金的なものを拠出するとかいう面では貢献しておりますけれども、やはりもっとほかの形でもって、NGOとの関係もあると思いますけれども、何かもう少し日本が直接にかかわれるような形も早急に工夫していかなければならないのではないかというふうに思っておりました。

林政府参考人 条文の解釈のところでございますので、補足させていただきます。

 結論的には、第六条の行動計画につきましては、御指摘のとおり、我が国に関しましては、この締結に当たりまして、改めて第六条の行動計画の作成は求められておらないというふうに判断しております。

 これは、第六条が規定いたします行動計画の作成と申しますのは、最悪の形態の児童労働が国内法令上禁止されているにもかかわらず法令の実効性が確保されていないような場合、実際に社会問題、構造問題といった形になっているような場合、撤廃のための即時のかつ効果的な措置として作成が求められているということでございますが、我が国につきましては、国内法令上、こうした児童労働は禁止されているのみならず、個別の法令違反といった程度のものはございますけれども、これが実際に社会問題となっているという状況ではないので、必要ないというふうに判断しております。

 ちなみに、これまでに締結いたしましたアメリカ、ドイツ等の諸国におきましても同様の考え方をとっておるということに承知しております。

 ちょっと補足まででございますが。

赤嶺委員 今の林審議官のお話を聞いていると、その条約にこたえて日本の国は行動計画をつくらないといけないなという感をますます深くいたしました。

 最悪の児童労働が社会問題になっていないとはいっても、国連児童の権利委員会が最終所見として、児童に関して、我が国について、子供買春、児童ポルノ、また薬物問題についての厳しい指摘をしているわけですね。児童買春、児童ポルノ禁止法ができて、個別の犯罪はそれで処罰するとしても、最高裁の判事がそういう犯罪を犯すというショッキングな事件も起きていますし、それから、児童虐待の防止に関する法律があるとはいっても、毎日のように深刻な児童虐待が報道されている今日です。

 やはり我々は、条約が求められていないのではなくて、条約が求められていないという判断を政府がやっているわけですから、最悪の形態の児童労働の禁止という条約の趣旨を生かして、必要であれば、社会的にそれに取り組む課題として、個々の犯罪を処罰するにとどまらず社会の水準を引き上げていく課題として、行動計画をつくる方向をぜひ探求していただきたいと思うのです。

 時間がありませんので、その問題とあわせて質問をいたしますけれども、今度はNGOの支援についてです。

 さっき田中大臣も少し触れておられましたが、やはり国際的なNGOの取り組みが児童の権利条約や本条約の採択に大きな役割を果たしています。NGOとの協力は非常に重要であると思いますが、田中大臣、NGOとの関係で、この問題でも協力関係を深め、NGOとの率直な意見交換の場を積極的に設けたりその提案に真剣に耳を傾ける点で、大臣の決意も伺いたいと思います。先ほどの行動計画とあわせて御答弁をお願いしたいと思います。

田中国務大臣 赤嶺委員がおっしゃっているのは大変重要なポイントだと思います。

 なぜかといいますと、先ほどおっしゃった、日本は児童労働みたいなものは先ほど申し上げた地域のような状態ではない。ところが、国内だけではなくて児童買春等の問題が非常に深刻だと私は思いまして、これは議員立法で、二年前ぐらいでしたか、複数の先生方と超党派でやらせていただきまして、法律ができ上がってよかったと思いました。

 このときには、たまたま在京の大使、夫人たち、それから宗教団体の方々が大変熱心に働きかけられまして、我々が日ごろ本当に恥ずかしいと思っていること、それから、世界の子供たちはみんなの、世界の宝でありますのに、日本の人たちはそういう意識がない人がいるということを外国人から非常に指摘されたので困っておりましたが、決してあの法律が完璧だと思っていませんが、常にみんなで関心を持っているべきことというふうに思っております。

 それから、NGOにつきましても、国際会議等に呼ばれて行きますときに、常にNGOというのは国ができないものを埋めてくれていてありがたい存在だと思います。特にセーブ・ザ・チルドレンなんかは本当によくやっているというふうに思っています。そのほか私も直接知っているものがあります。

 ですから、役割が単に重要だというだけではなくて、もっと緊密に、言葉がどうかわかりませんが、差別することなく、やはり密接に連携し合っていい仕事をしていけるように、システマチックに機能するようにしていきたいというふうに思っております。

赤嶺委員 今の大臣の答弁、本当に私も積極的に受けとめていきたいと思います。

 私も、森山眞弓法務大臣の「よくわかる児童買春・児童ポルノ禁止法」という本も読ませていただきました。国際社会で日本がどんなに恥ずかしい経過をたどってきたかということもよく理解できましたが、やはり条約が求めている行動計画は日本には必要ないんだという立場をとるのではなくて、必要であれば大いにやるという方向で積極的に取り組んでいただきたいと思います。

 それから、NGOについても協力関係を追求していきたいということですが、そのNGOの活動に対してもいろいろな援助を政府としても積極的にやっていくお考えはないかどうか、最後にお尋ねいたしまして、質問を終わらせていただきます。

田中国務大臣 またケース・バイ・ケースでアドバイスを受けながら検討してまいります。

土肥委員長 次に、東門美津子君。

東門委員 きょうも時間が短いので、私も急いでやっていきたいと思います。

 最初に、日・欧州共同体相互承認協定についてお伺いいたします。

 まず、これまでは、医薬品を相手国に輸出するに当たっては、成分表に従って製造されているかどうか、そういう出荷前試験を輸出国で行うとともに、輸入国でも再度検査を行っていましたが、本協定によって製薬工場が行った試験の結果を相手国が受け入れるようになり、輸入国では検査が免除されることになります。これによって確かに手間とコストが削減されて経済効率性が向上するということははっきりしておりますが、しかし、医薬品は人体に直接影響を及ぼすものであり、単に経済効率性からのみ判断してよいものではないと思います。

 これまで行われていた輸入国での再検査が省略されることによって安全性が低下するおそれはありませんか、政府の見解をお伺いしたいと思います。

田中国務大臣 私もお答えできますが、せっかく副大臣が大変このことを御熱心に勉強していらっしゃるので、副大臣から御答弁でよろしゅうございましょうか。

植竹副大臣 ありがとうございます。私も答弁の機会を待っていたのですが、お答えさせていただきます。

 さて、今お尋ねの点でございますが、安全性の点につきまして、我が国といたしましては、欧州共同体の適合性評価機関等の内容のことが非常に問題でございまして、両国におきます適切な業務を行っていないからそういう問題があったので、これからその点を両国で適切に検査するようにしていけばこれは解消されるものと思います。

東門委員 何かよくわかったようなわからないような、時間があれば……

植竹副大臣 では、さらに申し上げます。

 両方の機関が適切な業務を行っていないという場合にはどうしたらいいか。これらの機関に対しまして異議申し立てをいたしまして、適合性評価の結果、データを申し入れて、やっていく。

 いずれにいたしましても、御指摘のとおり、制度が効果的にあるためには実際の制度の運用というものが問題であり、その点はよく両国間において適切に協議しながらやってまいりたいと思います。

東門委員 安全性が低下するおそれは絶対にないということでしょうか。(植竹副大臣「はい」と呼ぶ)

 では、次に、最悪の形態の児童労働の禁止等に関する条約についてです。

 現在、世界では五歳から十四歳までの児童二億五千万人が労働に従事していると推計されておりまして、このうち一億二千万人がフルタイムで労働に従事していると言われております。さらに、これらの児童労働の中でも有害で危険な仕事に従事している子供たちは二〇%から三〇%にも達すると言われております。

 児童労働の約六〇%がアジアで発生していることが指摘されており、同じアジアの一員である日本としてもそれは看過できないと思うのです。また、国境を越えた児童の人身売買や児童買春の存在は国際社会が協力して対応していく必要があることに異を唱える人はいないと思います。

 それで、我が国としても、本条約への国内的な対応のみならず、児童労働撲滅のために国際的な取り組みに対して積極的に参加していく必要があると思いますが、我が国の児童労働撲滅に対する取り組みについて、ぜひ大臣から御所見を賜りたいと思います。

田中国務大臣 私もこれは日ごろからニュースで拝見したり、あとは南米で、昔はアジアでよくありましたね。もう何十年も前ですけれども、ゴルフ場なんかで、日本の商社マンとかいろいろな方がゴルフをやっておられる、一般の方でしょうけれども。子供たちがボールを拾って走り回ったり、川とか池に落ちたボールを競争で拾ってきて、それを私は、当時中学生ぐらいでしたからゴルフなんかしません、初め何をやっているかと思ったのですが、ゲームかと思ったら、持ってくると御褒美でお金をもらうという状態を見ました。

 南米でも本当に、信号がとまったときに子供たちが物を売りに来る。それで、その子供たちを追い払うために、ひき殺しそうな危険な思いにさらしながら逃げ惑うような車もあって、たくさん来るわけですね、子供たちが物を売りに。生活が困窮しているのはよくわかりますし、こういう状態に日本は何をしてあげられるのかと思ったこともあります。

 ですから、今、日本は現実には拠出しているわけでして、ILOが推進している児童の労働撤廃国際計画に対して拠出金の提起を、またお金ばかりというのはどうかと思いますが、まずそういうことをやって撤廃に向けて協力をしております。

 ちなみに、出資国は、日本のほかにもアメリカとかベルギーとか二十三の国と団体がありまして、そして、その対象になっている国は、先ほどもちょっと言いましたけれども、アジア、アフリカ、それから南米などの三十七カ国になっております。

 いずれにしても、こういうことがなくなるように、トータルで、やはり意識の面でも、そういう国の方たちとおつき合いがある一人一人の国民がわきまえるということも、拠出はもちろん国からいたしますけれども、そういう気持ちを涵養していくことも大事ではないかというふうに考えます。

東門委員 この児童労働の実態というのは本当に心が痛むものがありますので、ぜひ我が国としても、特にアジアが一番多いわけですね、六〇%にも上っているということで、やはり政府としても、そういう分はやっていただきたいなと思いますので、よろしくお願いします。

 時間がないようです。最後になりますけれども、国際労働機関憲章の改正についてでございます。

 ILOのソマビア事務局長は、条約や勧告をつくる基準設定活動を含めた基準活動の見直しの必要性を認めていますが、その方向性については、政府、使用者、労働者間や、先進国と途上国との間でもコンセンサスはできていないと聞いております。また、ILO条約は、現在百八十三本あり、さらに毎年一本のペースで新たな条約が採択されている現状では、ある程度テーマを絞って条約を作成していく必要があるわけです。

 しかし、国際労働基準を設定するILO条約には、ある程度の一般性がなくてはならない。必要以上に厳格な規定は批准阻害要因となり、結果的にはILOの目的を達成できないことになります。

 一方で、国際労働基準が規範である限り、権利義務の確定がなされていなくてはならず、法的厳密性は要求されますし、余りにも低い水準の労働基準を設定しても意味はないということになるわけですが、現在のILOにおける議論と今後の我が国政府の対応についてお聞かせいただきたいと思います。

高須政府参考人 ILOはこれまで百八十三本の条約を締結してきている、その際に、基準をどういうふうに設定するかということについて見直しをすべきだということは、おっしゃるとおり、非常に真剣な議論がILOで行われているということでございます。

 条約で余り高い労働基準をつくるということになりますと、結局は多くの国が批准できない、実施できないということになってしまう。他方、多くの国が既に達成しているような低い基準をつくるということでは、たくさんの加盟国があるけれども、条約をつくった意味があるかということになるわけでございます。そのバランスをどうやってとるかということが今の焦点でございます。

 日本政府といたしましては、こうした点を踏まえまして、まず、達成可能であるけれども労働者の福祉の向上に役に立つ、そういう基準をつくるという観点から、かつまた、多くの国がこれに締結できるということが確保されるように、その結果をもって国際的な労働者の地位の向上につながる、そういう成果を上げるような条約をつくるように引き続き努力してまいりたいと思います。

東門委員 時間ですので終わります。ありがとうございました。

土肥委員長 これにて各件に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

土肥委員長 これより各件に対する討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決いたします。

 まず、国際労働機関憲章の改正に関する文書の締結について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

土肥委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 次に、最悪の形態の児童労働の禁止及び撤廃のための即時の行動に関する条約(第百八十二号)の締結について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

土肥委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 次に、相互承認に関する日本国と欧州共同体との間の協定の締結について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

土肥委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました各件に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

土肥委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

土肥委員長 次回は、来る六月一日金曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後一時十七分散会




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