衆議院

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第11号 平成13年6月1日(金曜日)

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平成十三年六月一日(金曜日)

    午前九時四分開議

 出席委員

   委員長 土肥 隆一君

   理事 河野 太郎君 理事 下村 博文君

   理事 鈴木 宗男君 理事 米田 建三君

   理事 桑原  豊君 理事 上田  勇君

   理事 土田 龍司君

      池田 行彦君    小島 敏男君

      高村 正彦君    桜田 義孝君

      下地 幹郎君    虎島 和夫君

      中本 太衛君    原田 義昭君

      宮澤 洋一君    望月 義夫君

      山口 泰明君    伊藤 英成君

      木下  厚君    首藤 信彦君

      中野 寛成君    細野 豪志君

      前田 雄吉君    丸谷 佳織君

      赤嶺 政賢君    大森  猛君

      東門美津子君    柿澤 弘治君

    …………………………………

   外務大臣         田中眞紀子君

   内閣官房副長官      安倍 晋三君

   外務副大臣        植竹 繁雄君

   外務大臣政務官      丸谷 佳織君

   外務大臣政務官      小島 敏男君

   外務大臣政務官      山口 泰明君

   政府参考人

   (防衛庁防衛局長)    首藤 新悟君

   政府参考人

   (防衛庁運用局長)    北原 巖男君

   政府参考人

   (防衛施設庁長官)    伊藤 康成君

   政府参考人

   (外務省北米局長)    藤崎 一郎君

   政府参考人

   (外務省経済局長)    田中  均君

   政府参考人

   (外務省経済協力局長)  西田 恒夫君

   政府参考人

   (文部科学省初等中等教育

   局長)          矢野 重典君

   外務委員会専門員     黒川 祐次君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月一日

 辞任         補欠選任

  赤嶺 政賢君     大森  猛君

同日

 辞任         補欠選任

  大森  猛君     赤嶺 政賢君

    ―――――――――――――

五月三十一日

 二千一年の国際コーヒー協定の締結について承認を求めるの件(条約第三号)

 文化交流に関する日本国政府とロシア連邦政府との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第七号)

 税関手続の簡易化及び調和に関する国際規約の改正議定書の締結について承認を求めるの件(条約第一〇号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 二千一年の国際コーヒー協定の締結について承認を求めるの件(条約第三号)

 文化交流に関する日本国政府とロシア連邦政府との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第七号)

 税関手続の簡易化及び調和に関する国際規約の改正議定書の締結について承認を求めるの件(条約第一〇号)

 国際情勢に関する件




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     ――――◇―――――

土肥委員長 これより会議を開きます。

 国際情勢に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として、委員大森猛君の質疑に際し、外務省北米局長藤崎一郎君の出席を、委員東門美津子君の質疑に際し、防衛施設庁長官伊藤康成君の出席を、委員米田建三君の質疑に際し、外務省経済協力局長西田恒夫君、防衛庁防衛局長首藤新悟君、防衛庁運用局長北原巖男君及び文部科学省初等中等教育局長矢野重典君の出席を、また、委員上田勇君の質疑に際し、外務省北米局長藤崎一郎君及び外務省経済局長田中均君の出席を求め、それぞれ説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

土肥委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

土肥委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。土田龍司君。

土田委員 おはようございます。時間が短いですので、早速質問に入りたいと思います。

 大臣は、十五日の予算委員会の席上で、アメリカのミサイル防衛構想に関して、事務方から説明を受けていないと再三にわたって答弁をされました。二回も三回も四回も、私は聞いていないという説明をされたわけですね。その翌日の十六日に、すぐに記者会見を自分から申し込まれて、あれは間違いであったという陳謝をされているわけですが、予算委員会で答弁した内容について記者会見で撤回するという方法が一般的だと思いますか。

田中国務大臣 これにつきましてはもう一回きちっと整理をしておいた方がよろしいと思うのです。アーミテージさんが来られたのが五月の八日だと思いますけれども、その前に、着任をしてすぐに、外務省が抱えているマター、たくさんいろいろな問題がございますけれども、それについて事務方から簡略な説明は受けております。個別については、それぞれ案件のあるときに説明をするという形でスタートしております。そして、八日にはお目にかかることができなかったのですけれども、その日に、事務方が長時間にわたって、詳しく言いますと、朝とお昼と、大勢でもって会って、具体的な事項について事務的な話し合いをしています。そのことについて私に速やかに報告を上げてほしいということを再三再四言っていたのですけれども、それはありませんでした。

 ですから、その質問のときに、岡田議員でしたでしょうか、先月おっしゃったときには、アーミテージさんと話したことというふうに私は理解したものですから、通告文もそうなっていました、アーミテージさんとどのような話があったのかということなので、その日の朝の質問です、朝一番でしたから、それがまだレポートが届いていませんでしたので、聞いていないと申し上げたのです。ところが、その日の午後四時半ごろになって委員会に、途中で何か膨大なものを持ってきたり、違うものを持ってきましたが、結局夕方四時半過ぎに、実はこれですというものが届きました。

 ですから、そのことを申し上げて、時系列的に違っているのであって、発言が二転三転は一切しておりません。

土田委員 そういうことを聞いているのじゃないのです。委員会で答弁した内容と違っていた、それを撤回しなければならないのに、なぜ記者会見の場でやったのですかと聞いているのです。

田中国務大臣 それは、報道が先走っておりますので、それが定着をすると認識にそごが生じると思いまして、まずマスコミに対して、それは委員会がもちろん一番重要なことは百も承知でございますけれども、メディアが何かを言うことによってどんどんそれが増幅されていって誤解が生じてきます。そうすると最終的に委員会にも御迷惑をかけると思いましたので、懇談といいますか、そういう形で発言をいたしました。

土田委員 そういう答弁ではなくて、やはり予算委員会で答弁したことを訂正するならば予算委員会でやらなければならないと私は思っております。やはり委員会を軽視する、そういった姿勢が出ているのじゃないかという気がするのですね。

 あるいはまた、外交機密費の上納問題をめぐって、五月十四日の答弁では再調査をしますと言っておきながら、十五日には調査に慎重な考えを示されたわけですが、こういった話を聞いておりますと、外務大臣と部下である外務官僚との間に意思の疎通ができていないのじゃないかという気がしてならないのです。あるいは、それが非常に明白になってきているという感じがするのですね。

 こういった外務官僚と大臣のあつれきが表面化しますと、我が国にとって、みずからの弱いところを諸外国に見せてしまうということになりかねない。ということは、我が国の名誉や国益を著しく損ねるわけです。何だ、日本の国は外務大臣と官僚とうまくいっていないそうじゃないか、話が毎回食い違っているじゃないかということになるわけでございまして、だから、外務大臣が官僚とはうまくいっているという上辺の言葉だけでは、なかなか諸外国から見て信用されないというふうに私は思っているのです。そのことが国益を損ねるのだということを私は思っているのです。

 そこで、外務大臣に改めて問いますけれども、事務方との意思疎通はできておりますか。あるいはまた逆に、事務方の連絡や報告体制は十分にできているんでしょうか。

田中国務大臣 最初の問題に申し上げますが、委員会軽視などではございません。そういうふうな誤解を生じるといけないと思ったものですから、時を早くに話をしたということが、最初のことでございます。

 それから、十四日の機密費を十五日に、これはもう行動と結論を見ていただければわかるわけでして、一分、一秒、一日単位で見ていただかない方がよろしいと思います。機密費につきましては、しっかりと事務方の協力も得まして進行いたしております。ですから、一々メディアでこう書いてあるから、朝刊に載ったから夜こうではないか、夕刊に載ったから朝こうではないかというような拙速は避けるようにしなければいけないと思っております。

 それから、事務方、外務省の方と私は非常に、ほんの一部、何か思惑とか、あるいはほかの手法をとろうと思っている方がおられるかもしれません、五千人も職員がおりますから。ですけれども、ほとんどの方は、外務省を活性化するために、この新しい内閣の誕生を好機として、よくしたいという機運が非常に強くて、極めて緊密に情報も上げてくれておりますし、私の判断も速やかに浸透しております。

 これは、結果を見ていただければおわかりになると思います。御安心ください。

土田委員 副大臣がおられますので、同じ質問でございます。

植竹副大臣 今、委員お尋ねの点につきましては、私ども、大臣とともども一生懸命やっておりまして、改革問題その他、外務省の方々と打ち合わせしながら前向きにやっておりますので、その点は委員御懸念のようなことではないと思います。

 そういう点は協力してやっておりますので、私は機能していると思っております。

土田委員 確かに外務省には、大臣がおっしゃったように、伏魔殿的な要素があるんじゃなかろうか、国益を盾にした秘密主義というのが外務省にあるような感じが私もしているのです。その証拠に、機密費が詐欺事件の温床になった。これが事実でございまして、そういった面では、なかなか難しい部分はあるかというふうに思っております。

 しかしながら、外務大臣が外務省の改革を優先するばかりに、日々新たな対応を迫られる外交議題をおろそかにしたということは、やはりこれまでの一カ月の中で言えるんじゃないかという気がするのですね。大臣がおっしゃったように、心身ともにパニック状態だったとか、あるいは事務方の報告がないとか、そういったことで答弁を拒否される内容のものではないというふうに私は思っているわけです。

 言いわけのために、これまでたびたび事務方が、事務方がと。事務方がしてくれない、事務方が報告しない、怠けているとか、そういったふうに使うのではなくて、事務方はやはり国益に使わなければならない。そういったことが当たり前でございまして、人や組織を大臣がうまく使いこなすことが大事であるわけです。

 特に今回、大臣のほかに、副大臣、政務官と大勢の方が幹部として入られました。いわゆる田中眞紀子チームが外務省に入ったわけでございまして、そういったものを十分に機能させなければならない。日本の外交は、あくまで大臣を頂点として事務方の末端に至るまで一体で取り組む、そういった姿勢でなければならないと思うのですが、大臣の見解を聞きたいと思います。

田中国務大臣 これは、中にいらっしゃればよくおわかりになると思いますし、きょうもまた副大臣や複数の政務官も出席してくださっていますが、日に日に極めて緊密になりつつ、また公開性も高まりながら、とにかく若い外交官の皆様たち、それから、若くなくても、先輩で退官なさった方もそうですけれども、この小泉内閣、このチームを中心にして、今までの外務省のよどみを一掃してほしいという機運が非常に高まっておりまして、どうぞ委員もお遊びにお出かけいただきまして、マスコミ等の取材だけではなくて、どれだけみんなでポジティブな、前向きないいエネルギーを出しているか、結果として、国民の皆様からも、委員の皆様ももちろんですけれども、ああ、やはりあれはあのとき一過性のものだった、すごい勢いでもって改革が進んでいるなということを必ず思っていただけるように、確信できるように日々これ努めております。

土田委員 私は、田中さんの外務大臣としての資質や見解、見識には疑問符がつくと思っているのです。

 理由は何かといいますと、大臣の発言の振幅、幅が広過ぎてしまう、揺れ動き過ぎているのです。アーミテージに会わなかったという理由につきましても、あるいは李登輝さんへのビザの発給をめぐる発言につきましても、国家の命運を左右するような非常に重要なときに、揺れ動いてしまう。こういうことは、国家としての重みを非常に失わせるといいましょうか、そういった部分がやはりあるんじゃなかろうかと思うのですね。

 政治家の言葉は、やはりその根底には明確な政治的な意思がなければならないというふうに思うわけでございます。

 今回、たまたまけさのテレビニュースで見たのですが、ゆうべ小泉総理大臣から、外交に専念してほしいという話があったそうですね。それについて、大臣は了解をしたというふうに伝えられておりますけれども、小泉総理大臣の、外交に専念してほしいというのはどういった意味だったのでございましょうか。

田中国務大臣 きのうは、総理とお目にかかり、また電話でもお話をしておりますが、そのようなことは報道以外、私は直接一度も伺っておりません。むしろ、よくやってくれてありがとうということを直接伺っております。

土田委員 ということは、外交に専念してほしいという言葉はなかったのですか。

田中国務大臣 直接は一度も総理の口からは聞いておりません。メディアでそういうふうに報道されたということは承知しておりますけれども。

土田委員 では、テレビと新聞が間違って報道している、小泉総理大臣からは外交に専念してほしいという言葉はなかったということですね。

田中国務大臣 再度申し上げます。

 私に対しては、ございません。

土田委員 あなたはたびたび撤回されますからね。きょう、今二回もそういうことはなかったと言うけれども、またあした記者会見で、いや実はありましたということにならないように、ひとつ気をつけていただかないと、毎回毎回、撤回撤回、謝罪謝罪じゃ、どうしようもないという感じがするのです。

 外交につきまして、やはり確かにいろいろな案件があると思うのですが……(発言する者あり)大事なことを聞いている。外務大臣の資質がどうかと聞いているのですよ。これがなぜつまらない問題ですか。(発言する者あり)

土肥委員長 お静かに、お静かにお願いします。

土田委員 外務大臣の友人でありましたといいますか今も友人だと思うのですが、平沢勝栄議員が……(発言する者あり)ちょっとうるさいよ、本当に。大事な問題について話しているんじゃないか。(発言する者あり)

土肥委員長 お静かに、お静かに。

土田委員 大臣の資質の問題を今話しているのです。

 平沢勝栄議員が自分で書かれた本の中に、田中眞紀子さんについて書かれた部分がございます。多分読んでいらっしゃると思うのですけれども、その中で、彼女は、破壊するためには最高の人物だが、何かを創造することは苦手だと思う、彼女の政治評論は洞察に富むことで定評がある、しかし、総理・総裁は決して一人で務まるものではない、周囲の人間をうまく使いこなし、知恵、能力をかりて、トータルとして高いレベルで任務を果たすことが重要である、しょせん一人だけではこなせない仕事だというふうに、去年の十一月に出版された本で書かれております。今の大臣と外務省の職員の関係を非常に言い当てているというような感じがするわけですね。

 そこで、いろいろな外交案件に関しては、やはり事務方の役人の意見を十分聞いた上で、熟慮した上で、訂正しないような、しなくて済むような発言をしなきゃならないわけですけれども、そういうことで、田中外務大臣が目指しておられる外務大臣像といいましょうか、今までの状態でいいと思っていらっしゃるのか、それとももっと高まった、国を代表するような大臣であってほしいと思うわけですが、大臣の見解をお話しください。

田中国務大臣 日々外交に専念しておりますものですから、十一月に議員さんが書かれた本は読んでおりませんが、いろいろな方がいろいろな本をお出しになっていますので、それは今聞きおくということでございますが。

 チームとして非常によく職員の皆様とも、それから政務官や副大臣の皆様とも仕事ができておりますので、それをまず御報告申し上げますし、一カ月ぐらいではなくて、すべてを、トータルを一カ月で決められたら歴史なんというのはめちゃくちゃになってしまうわけでございますから、もう少し落ちついて長い目で本質をごらんいただきたいと思います。

 なお、資質については、それぞれの方が主観をもってお決めになる問題ですから、私からコメントすることではないと思います。

土田委員 大臣に対していろいろな方から、勉強した方がいいんじゃないかとか、勉強が足りないという発言が相次いでいるわけです。ですから、大臣になってから勉強するんじゃなくて、勉強してから大臣にならなきゃならないというふうに私は思っているわけです。

 そこで、機密費の問題について少し触れたいと思います。

 一月の二十五日に、外務省が内部で調査報告書を作成して、同時に十六人に対して処分を決めたわけですね。このときは五千八百万円の横領に対する容疑であったわけです。ところが、その後松尾元室長は三回起訴されて、四回目の逮捕が近く行われるであろうと言われておりますし、その被害額は四億七千万から五億円を超すんじゃないかと言われております。となりますと、このように被害額が八倍も十倍もふえてくるということになりますと、当然、松尾元室長の上司である外務省の幹部の処分は一月のときよりも重くならざるを得ないと私は考えますし、それが普通だと思っているんです。

 そこで、この事件に関して、追加処分をするのかしないのか、外務大臣の考えをお聞かせください。

田中国務大臣 外務省すべてを、今のお尋ねのことも含めて抜本的に改革するためにはどうすればいいかというような改革会議の提言、それからそのほかにも副大臣を中心として提言ができてきておりますので、それらを踏まえて皆さんで前向きに検討して結論を出します。

土田委員 前の答弁とまた違うじゃないですか。外務大臣は、五月二十三日の本委員会において、十六人の外務省幹部については、逮捕された元室長一人のせいにして十六人は大変な高給をもらって退職するそうじゃないですか、お茶を濁すことは国民の立場では絶対に納得できないと言って、再処分を検討する答弁をされております。今の答弁は相当トーンダウンしているわけですけれども、これは何ででしょうか。

田中国務大臣 すべてを含めて、今おっしゃったことを全部含めて、改革会議等の提言も含めて検討して決断を下すということを申し上げております。

土田委員 再処分をすると言って、今度はそれも含めて総合的に検討すると。一遍にトーンダウンした理由は何ですか。

田中国務大臣 全然トーンダウンはいたしておりません。結果をごらんになってください。

土田委員 では、その結果はいつごろ出されるんですか。

田中国務大臣 内閣の一部、一員でございますので、もちろん総理や官房長官等と相談をして結論を出します。

土田委員 冒頭述べました五千八百万円の横領事件から、今度は五億円を超そうという、金額が一遍にはね上がっている、それでも再処分については今のような答弁になるんですか。

田中国務大臣 すべてを勘案して結論を出します。

土田委員 大臣のこの前の答弁の後に、外務省の服部報道官は、新たな処分の必要はないと、大臣と全く正反対の会見をされているわけですね。さらに、杉浦副大臣は、新たな事実が出てきたとしても、ただ単に処分が軽いからけしからぬということでは再処分はできないというふうにおっしゃっている。この間、大臣と報道官の意見のすり合わせをされたためにこういったトーンダウンになったんじゃないかと思うんですが、冒頭再三おっしゃっているように、こういった意見の食い違いがいまだにあるような気がするんですけれども、もう一回大臣の答弁をお願いします。

田中国務大臣 食い違いはございません。ただ、時系列的にしっかりと物事というのは申し上げなければいけないと思うんですが、マスコミにどうぞ振り回されないでいただきたいんですが、二十四、二十五、二十六と、二十四日の朝の飛行機でASEMの会議に行くために北京に参りました。その記者会見は、多分二十三日の午後というか夕方、報道官がなさったらしくて、そういうことがあったことも私は知りませんでした。そして、飛行機の中だったでしょうか、そういうことの発言があった、そして報道をされているけれども、報道官の真意はそうではなかったと。新聞やテレビでどう放送されたか知りませんけれども、私もそれは帰ってから後で見ましたけれども、報道官が、自分が言ったこととは全然違うことが放送されているので、大臣にそういう間違ったものが伝わるといけないというようなコメントがあった、報道官から、ぜひ大臣の耳に入れてほしいという話があったというので、ああそうですかと聞きました。

 ですから、別にそごもありませんし、多分追加でお聞きになるんでしょうからまとめてお話ししますけれども、その後、では報道官を更迭するかとか、何とかかんとか書いているようですが、そんなことは一切ありませんで、定期的にきちっと報道官は仕事をやっていらっしゃると思います。事務方の皆さんが心配をして、これは困ったなというふうな動きはあったのかもしれませんけれども、それは私は承知しておりません。

土田委員 事務方のせいにされて、今度はどうも、メディアがまずいんだ、報道が間違っていて、そういうふうにおっしゃるんですけれども、それもどうもやはり言いわけにしかならないんじゃないか。大臣の発言から、あるいは大臣の行動からこういった問題が発生しているわけでして、原因者はやはり大臣にあるんですよ。マスコミが悪いんじゃないんです。大臣が原因者ですよ。そういった問題が出てくるから大事だということを言っているわけでして、報道官に記者会見をするなと言っておきながら、今度はまたやってもいいと。まさしく朝令暮改じゃないですか、あなたがやっていることは。

 次の問題に行きますけれども、五月の二十一、二十二日の参議院の予算委員会で、我が党の戸田邦司先生が日中の外相会談の内容を聞かれました。それについて外務大臣は、先方の立場もあって、外交というものは双方の関係があるから言えない、申し上げるわけにはいかないというふうに答弁されております。戸田先生の質問というのは、相手の中国の外務大臣が何を言ったかを聞いているんじゃないんです。日本の田中外務大臣は、あなたは何をおっしゃったんですかと聞いているわけでして、それさえも秘密にする理由は何もないと思うんです。

 もう一回お尋ねしますけれども、このやりとりについて話されるおつもりはありませんか。

田中国務大臣 電話会談につきましては、やはり先方のお立場もありますし、短い時間でもありましたし、逐一御報告はしないことになっております。

土田委員 内容については、もう何回も何回も、答弁しないことになっているとおっしゃっているんですが、通信社が政府関係者から入手した会談録によって、五月七日に行われた日中外相電話会談の内容が報じられております。大臣も御存じなのかどうか、多分外務省の人たちは御存じでしょう。既にインターネットで、大臣と中国の外務大臣のやりとりが報道されているんです。

 明らかになった会談録は、中国側の厳しい姿勢と田中外相の中国に配慮する姿勢が改めて浮き彫りになっている、同会談で唐外相は終始日本語を用いて、李登輝さんの訪日問題や教科書問題について、両国関係にあってはならない大損害をもたらしたとした上で、田中外相に特別な役割を果たされることを希望するというふうにおっしゃったんだそうです。

 これに対して田中外相は、前の内閣がその終盤に、混乱の中、国民の十分な合意がないまま決断をしたと言って森前政権の対応を批判し、唐外相の御指摘を踏まえて何ができるかよく考えたいという、中国の意向を尊重するような発言があったと。

 もうちゃんと出ているのです。大臣が幾ら隠したって、今まではそんなことは言えない、言えないと言ったって、インターネットで既に報道されてしまっているのです。このような詳細な会議録が出てきているのに、それでもまだ外務大臣は言えないとおっしゃるのですか。

田中国務大臣 インターネットに詳細な会議録とおっしゃいましたか。そうですか。

 私は、とにかくどこの国も相手があるものでございますから、ですから、こういうことは逐一、私が着任する前から、前外務大臣も複数いらっしゃいますけれども、こういうところでもってコメントやら発表はしないというのが外交の原則でございます。

土田委員 既にインターネットで公になっていても、私は言えないと言い張るのですか。もう一度お答えください。

田中国務大臣 相手がありますから、逐一そういうことについてはお答えをしないというのが原則でございます。

土田委員 次に、ASEMについて、時間がないのでちょっとお尋ねしますけれども、中国の江沢民主席が演説をされて、ASEMをアメリカの覇権を防止する有力な安全保障システムの一つであるというふうな発言をされております。ASEMが国際政治経済の新秩序を推進する重要なパワーになるべきだともおっしゃっておりますし、ASEMの政治的な役割に大きな期待を江沢民主席は寄せておられる発言をしているわけです。

 そこで、日本の外交の基軸は何といっても日米関係であるということは言うまでもないと思うのですけれども、そうしたときに、アメリカが入っていないASEM、ここにおいて日本と中国の立場というのは非常に重要であると私は思うわけですね。

 そこで、田中外務大臣は、このASEMにおける日本の立場あるいは中国の思惑、これについてどういうふうにお考えになっているか、お答えください。

田中国務大臣 外交の中で、他国がどのような思惑を持っているかとかいうことは、私どもがそれについてコメントをするべきではありませんし、ASEMがアメリカを抜いてというよりも、ASEMというのはアジアと欧州の外相会議でありまして、初めからアメリカが入っていない会議として国際的に認知された機関でございますので、それについてコメントを私がするというのは筋違いだと思います。

土田委員 それなら、今度は日韓問題に行きます。

 日韓の外相会談において、もちろん歴史教科書の問題なのですが、韓国側からは強くその修正を求められているわけですね。そうしたときに、外務大臣は、総理大臣と文部科学大臣に報告をしますと、いわゆる持って回った言い方といいましょうか、修正についての期待を持たせるような発言をしておられるのですが、こういったものは外交方法としてまずくはないですか。

田中国務大臣 会談のその場にいらっしゃらなかった方が、持って回った言い方をしたかしないかどうしておわかりになるのか、先ほど来非常に不思議に思っておりますけれども。

 質問の御趣旨は何でしょうか、もう一回お願いします。

土田委員 韓国から修正を要求されたことに対して、日本の外相として明確に日本の立場を主張しないで、持って帰って総理大臣と文部科学大臣に報告をしたいと言ったというふうに報道されているのです。そういった期待を持たせるようなやり方をしたのですかと聞いているのです。

田中国務大臣 期待を持たせたかどうか、そういうふうな情緒的なことは私はわかりませんが、三十五の質問のポイントにつきましては、もう委員御存じじゃないのでしょうか。

 これは文部科学省マターでございまして、そこで三十五のポイントについては、今鋭意真摯に受けとめて精査をしておりますというのが一つ。それからもう一つは、村山談話でもって日本政府の歴史認識はしっかりと示されております。それから三つ目は、日本の政府の歴史認識というものが、出版社、具体的には八社ですけれども、そこで書き述べられているものと必ずしも一致するとは解されるべきものではない、それを申し上げてあります。それ以上、何も言っておりません。

土田委員 終わります。

土肥委員長 次に、中野寛成君。

中野(寛)委員 民主党の中野寛成でございます。

 田中外務大臣とは、どういうわけか、これまで公私にわたってこうしてお話を申し上げる機会がなくて、きょうは何か初めてという感じがいたします。そういう意味で、改めましてよろしくお願いをいたします。

 同時に、御就任以来、大変御苦労、御心労も多いようでありますが、御自身でみずからつくり上げた御苦労も多いようでありますので、せっかくですから、大いに御健闘をいただきたいと思います。

 さてそこで、まず最初に、外務大臣が御就任の最初のごあいさつの中でおっしゃいましたけれども、国益という言葉をお使いになりました。その後もたびたび、国益のために、国益に即してというお話でございます。

 マスコミ受けも、聞いておりますと、こういうふうに国益ということを早々に述べた外務大臣は珍しい、外交とは国益をメーンにしてやるものだというふうに大変評価をしておりました。

 さてそこで、国益とは一体何だろう。いろいろな切り口があると思います。例えば国民の利益または国家の利益というものもありますし、それを延長していくと、国際社会の利益、普遍的な利益ということもあるだろうと思います。また、時には、国家的利益と国民的利益というのは、民主社会ではほぼ一致しますが、全体主義国家になりますと、これは相反することもよくあります。

 そういたしますと、外務大臣がお使いになられた国益とは一体どういうことを指しておっしゃっておられるか、どういうお気持ちでおっしゃっておられるか、まずそのことから確認をしておきたいと思います。

田中国務大臣 お答えを申し上げる前に、中野先生と私は初めてではございませんで、厚生委員会の理事のときに、先生の御地元の豊中市にバスでみんなで押しかけまして、親しく視察をさせていただいて、お昼も御一緒したと思っておりますが、印象が薄かったようで、今度はしっかり覚えていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 それから、国益ですけれども、私も常にそういうことを自分で考えておりまして、広義のものと狭義のものとあると思います。狭義にとらえてしまいますと、非常に愛国心だけが中心になるようになってしまいますので、むしろ広義な意味で、過去の歴史を踏まえて、民族の歴史、いい意味でも悪い意味でもいろいろとあるわけですけれども、それを明るい将来につなげるために現在何をなすべきかということが国益にかなうと思います。

 それは、今の時代ですから、自分の国の中だけで鎖国でいるわけじゃございませんから、近隣諸国はもちろんのこと、世界とどのようにつながっていくかという、やはり社会の、人類全体の幸せとか安定とか繁栄ということにつながる国益でなければならないというふうに考えております。

中野(寛)委員 大変広義に解釈をしておられるようですから、私はそれでいいと思います。ただ、余り広義に解釈をいたしますと何のこっちゃわからぬ。

 結局、国益とはいろいろなケースがあるんですね。そのいろいろなケース、例えば今、土地収用法の問題がいろいろ議論されておりますけれども、あれもどちらを判断するか。国益に照らしてといったって、これだけでは判断の基準にならないわけですね。そういう意味では、余り広くやり過ぎると国益とせっかく言っても何も言っていないことと同じということになりかねませんね。

 ただ、現在外務大臣が頑張っておられるケースからいうと、省益あって国益なしとか、役所のことをよく批判する言葉に使いますけれども、そういう意味では、どうぞ国益を基準に頑張ってもらいたいものだというふうに思います。

 さてそこで、私自身も死んだ人と比較されるのは嫌なんですけれども、ただ、外務大臣の場合、どうしてもお父さんとの比較が出てきたりすると思いますね。

 それで、私先輩にも聞きましたら、田中角栄先生は大臣になられたときに、まずみずからの戦略、戦術、その役所の担当する戦略、戦術について語る、そしてそれを実現するための布陣をしいていく、そしてそれに必要な人事をやっていく、よって人事に対して文句が出ないという、人事の妙を心得た方としても評価をされているように聞いたことがあります。

 外務大臣はその手法をおとりになりたかったかもしれませんが、事の経緯からいって、なかなかそうは順番がいかなかったというふうに思っておられるのか、または、そうではなくて、これが私の流儀だということで今取り組んでおられるのか、どのようにお考えでしょうか。

田中国務大臣 今、父とのことをおっしゃってくださいましたけれども、父と比較されるのはヒカク三原則で、私としてみると余りありがたい話じゃないわいと思っておりますけれども、ただ、亡くなってからいろいろとお手本のように褒められて、多分泉下の父も面映ゆい思いをしているのではないかと思います。

 史上一番若い郵政大臣に父がなりましたとき、私は中学でございましたけれども、あのときも、郵政の労働組合とのっけからばんとぶつかっていまして、早速首切りをだあっとやって、批判をされて、もうとにかく父が動くと大混乱。当時は今ほどマスコミは発達しておりませんでしたけれども、もう常に常に、どうしてお父さんの思いが通じないんだと。わけがわからないとか無手勝流でひっかき回しているということを言われておりました。総理になる前の、大蔵大臣のときもしょっちゅうでしたし、通産大臣のときに至っては、日米繊維交渉があって、全然今までの役人手法を無視しているということで、もう批判されっ放しで、本人は本当に懊悩しておりましたので、私なんか以上に、この十倍以上は父の方が激しい手法で大台風を巻き起こしていたと思いますので、まだまだまだと私は思っております。頑張らねばと思っております。

中野(寛)委員 お父さんはそれをなさるときに、単に大旋風を巻き起こしただけではなくて、よしあしは別なんです、実を言うとその手法の内容については我々は異論があるのですが、ただ、いろいろな気配り、配慮を、事前に根回しをされておったと判断しています。もっとも、配ってはならぬものまで配られたかどうかは知りません、そこまでは申しませんが、いろいろなことがあったのでしょう。

 ぜひ、我々は、今国際社会は大変急激に動いておりますから、旋風を巻き起こす中で、外に向かって旋風を巻き起こすのは大いに結構でございますが、中の旋風は早くいい形で終結させていただきたい。いい形とは、さっきの国益の概念のようにちょっとあいまいな言葉ですが、あえてここではそれ以上のことは申しません。

 さて次に、訪米をされるということです。時期については国会対策委員会や議運にお任せをしたいと思いますが、ここで、どうぞ国会日程の調整のために御協力くださいと大臣に言われても私は立場上困るので、前もってお断りをしておきたいと思いますが。

 さて、訪米の目的、これはやはりはっきりしておいた方がいいと思いますね。今、与党三党幹事長が訪米をされているようです。ニュース解説の一部によると、総理訪米の根回しも兼ねているという言い方をする人もいます。それはそれで、その役割はあるんでしょう。しかし、今の三党幹事長がいかなることをされようとも、それとは別に、総理の訪米日程が六月三十日、ブッシュ大統領ともお会いになるようでございますが、本来はその前に外務大臣がその段取りをされる、そして下ごしらえをするなどなどのことがやはりなされておくべきであろう。よって、総理よりも前に外務大臣が訪米されるということは私は至極当然のことだと思います。

 別にアーミテージさんに会ったとか会わないとか、誤解をされているとかされていないとか、そんなことはどうでもいい話で、アーミテージか、ああミステークか知りませんけれども、それよりも、私はあの問題も余り殊さらに取り上げようとも思わないんです。相手も問題にしていない。だって、あの段階での田中外務大臣に彼が会ったからといって、何かメリットがあるとか、何か進展するとかと向こうも期待していなかったろうと思うんですね、残念ながら。ですから、向こうとしても、会えなかったからといってがっかりはしなかったというだけのことかもしれませんね。

 事のついでに申し上げると、北京へ行かれた、中国、韓国の外務大臣ともお会いになった、仲よく、にこやかに韓国語や中国語も使ってあいさつをされた、その段階なんでしょうね。だから、向こうの方も余り真剣に、さあ田中眞紀子外務大臣に何かぶつけようかとか、今の懸案をとかというふうに構えてお会いになったのではないだろうと思うんですね。むしろ、これからが問題でしょう。

 そういう意味で、私は今までのことについてはそれほど過大評価もしませんし、過小評価もしないと思っているんです。

 そこで、米国へ行かれますと、堂々と、私は総理大臣の訪米前に外務大臣として当然なすべきことをやりに行くんですということでいいはずなんです。そして、そのときに具体的に何をなすかということが問題なんですね。今大臣は訪米をみずからの意思で表明されたということでありますが、この時期に何をしに行こうとされるのか、改めてお聞きしたいと思います。

田中国務大臣 外務委員会それから予算委員会等で、衆参両院で議論されている中で、日本の国会が、要するに有権者の皆様の代表である国会議員の皆様が質問なさっているアメリカに対する質問、これに、私がアメリカに対して、私のカウンターパートはコリン・パウエルさんですけれども、今時期的なものは折衝中ですので、まだ日にちは確定しておりませんけれども、そういう委員会の中で出ているテーマ、イシューといいますか、そういうものについてやはり日本人のスタンスとして話を伺ってくる、意見交換をするということだと思います。

 具体的には、ミサイル防衛構想の問題でございますとか、それから沖縄に関する、もう細かいことは申しませんけれども、たくさん委員会で出てきています、私は皆様がぜひとおっしゃることはメモにとっておりますので、それらをもとにして、日本の意見をやはり対等に、アメリカに言われて帰ってくるのではなくて、日本の立場、現状も、アメリカといえども、世界じゅうとおつき合いがあるわけですから、全部細かくつまびらかに掌握なさっているわけではないと思いますので、それらについて日本の主張をしてくる。全部がイエスと言ってもらえると思いませんけれども、でもやはり日本の代表で行きますのですから、小泉内閣の外務大臣として参りますのですから、こういう委員会で伺うことについてはぜひ時間を十二分にいただきたいというふうに、それも申し入れをしております。

中野(寛)委員 国会で指摘をされたこと、要望されたことを持って行くということでありますが、それはそれで民主主義上、大変大切なことなのですが、それよりも何よりも、まず、外務大臣として就任をされて、私はこういうことをやりたいのだ、私の外交戦略、外交戦術、そして日米関係はこういう考えなのだ、それを持ってぶつけに行くのだ、相手の意見も当然聞こう、そういう中に、あわせて国会の意思もしんしゃくをしながら、みずからの主張を構築してぶつかっていこうということでなければ意味がないわけで、大変謙虚に国会で指摘されたことを持って行きますとおっしゃるだけでは、ちょっと謙虚でおっしゃっているのか素直でおっしゃっているのかわかりませんけれども。

 私は、あなたの外交戦略、戦術を聞いているわけであります。どうですか。

田中国務大臣 謙虚でありまた素直でもあるのでございますが、そうでない面も私もございまして。

 やはりアメリカとの同盟は極めて重要であると思っております。日本にとって大変重要なものでありますので、今までの諸先輩が築いてこられたものを基本としながらも、もっとイーブンな、きのうの委員会でもほかの委員の方に私は御答弁を申し上げてございますけれども、やはりもう日本の経済力も世界第二位になっていますし、国民の皆様の意識も大変、外交問題に関してもですけれども、高まっておられます。

 ですから、そうした受益と負担の関係もどういうふうにあるべきか、世界と協調して日本がどういうことができて、どういうことはできないのかということを、いろいろな世代の方たち、いろいろな階層の方が御意見を持っておられますので、そういうものを私なりに収れんして、議員として、また政治家として考えたものがございますので、そういうものをしっかりと持っていきたいということでございます。

 ですから、国会で言われたことだけを使いっ走りで行ってきましょうということ、それはもちろん皆様からぜひ言ってくれと負託されていますからそれもございますけれども、大くくりでは、もっと、今の日本の状態、経済力も社会的なものも、政治的には極めて脆弱化しているから余り相手にされていないのかなと思って心配していますが、そうではない政権ができたのです、ここから新しい日本の二十一世紀は始まるんだということについて説明をしっかりしてくる、それはございます。

 そして、大人の関係でしっかり目と目を見て話ができる関係をつくる。これが新しい日米の緊密な協調。そして、それが、東南アジアはもちろんヨーロッパ、ASEMのときに非常に感じましたけれども、日本とアメリカだけ、日本と韓国だけではなくて、アジアに対して日本がどういう役割を果たすべきか。それから、欧州もラテンアメリカもアフリカもあるわけですから、そういう中でもってアメリカはどういうふうに戦略を持っているのか、日本はそれに対してどう考えるか。その答えを頭で考えられるような資料もしっかりともらってこようと思っています。

中野(寛)委員 ブッシュ大統領になって新しい政権のもとでアメリカの新しい外交戦略そして安保戦略が練り上げられている。そういう中で、それが既に決定したもの、または検討中のものとして表にどんどん次々に出てきます。恐らく彼は意図的に、クリントン時代とは百八十度とまではいかなくとも、九十度か百度か、もっと大胆な転換を図ろうとしていることだけは間違いがない。ただ、アメリカの国会事情もあって、民主党の方が今度は過半数を握るようになる。また、外交委員長は民主党が握るというようなアメリカの国会の事情もありますから、そこはいろいろと高度な政治判断も加えてされるんだろうと思います。

 しかし、いずれにいたしましても、アーミテージ報告とかランド研究所報告、先ほど来たびたび話題になっておりますが、こういうものから推しはかっても、これからの新しいブッシュ政権における外交戦略というのは透けて見えてくるわけですね。

 例えば、ヨーロッパとの関係についてはおおよそ一段落、これからはやはりアジア、そのときにアジアにおけるパートナーが必要、その最も大きな役割を担う、逆に言えば最も大きな荷物を背負わせようとするのが日本。日本を重視していると言えばきれい、しかしアメリカからすれば、日本に大きな荷物を背負わせようと考えていると言いかえることもできます。

 その中で考えられることが、集団的自衛権の行使、そして有事法制の制定、そして日米防衛協力の範囲の拡大、これは必ず出てくる話です。そうすると、これに対してどうこたえる、どう対応する。憲法の枠内でという旧態依然とした抽象的な言葉だけでは済まない、そういう対応が望まれる。

 と同時に、一方、こういうものを実行するとしても、よりソフトランディングさせる、例えば沖縄の問題など、やはりきちっとその障害になるような問題は事前に解決をしていくという姿勢が必要でしょう。多くの難題を抱えている。しかも、相手はより一層急ピッチに急激な変化を日本に求めてくる。そしてまた、日本が抱えている問題もある。

 これらのことを総合的に――訪米なさるとなれば、向こうも必ず持ち出すわけです。これにどうこたえるか、こっちは何を持ち出すのか。また、こっちが何を持ち出そうとしているのかというようなことについては先ほど大臣は抽象的にしかおっしゃらなかった。我々は、大臣が何を持ってアメリカへ行こうとしているのか、行くと自分でおっしゃったのだから、行くと言うからにはそれだけのものが、確としたものがあるはず、それがなければ高い金を使ってアメリカくんだりまでわざわざ行く必要はない。とすれば、もう少し具体的にあなたの外交戦略を聞かせていただきたい。

田中国務大臣 細かいことを言えば切りがありませんけれども、基本的には、ブッシュ政権になって強力に打ち出していらっしゃるミサイル防衛構想、これでどのようなことをどのぐらいのスパンで考えておられるのかということ、私どもはその研究を今一緒にやっておりますわけですから、そういうふうなことでもっと深い話をさせていただきたい。見通しですね。

 それから、ASEMのときも話がヨーロッパの外相から出ましたのですけれども、これはワーキングランチのときで通訳なしで話をしたときなんですけれども、ヨーロッパでも、それぞれ国によって、このミサイル防衛構想についていろいろな思いを持っておられて、もちろんアメリカと非常に強い同盟関係が皆さんあるわけですけれども、であるにもかかわらず、やはりどういうふうなことか、ビジョンがわからないので、ブッシュさんが、何か近々、サミットの前でしたか後でしたか、ちょっと正確に記憶しておりませんが、欧州に行かれるそうです。

 ですから、そういうときに、どういうふうなメッセージを発信されるか、それに対して自分たちがどういう考えをまとめておかなければいけないか。そういうことを、それがまた中国とも、中国だけじゃありませんけれども、そういうトータルな世界の平和の中で、どういうふうになるのだろうかということを、中国のセンキシン前の外務大臣、今の副総理でしょうか、もおられる中で、彼もかなり活発に意見をおっしゃっていましたけれども。

 ですから、私の立場でいけば、それは日本、アジア、全体の安定のため、そういうことについてどういう見通しでおられるか。それがそうであれば、私たちはほかのアジアと一緒にどういうことを考えていくか。要するに安全保障の問題ですね。これについては絶対に、2プラス2もあるわけですけれども、それは九月ですので、やはり今の段階で。

 それから、アメリカ国内でこのことを全員アメリカ人が支持しているかどうかもわかりませんので、ああいう状態でブッシュさんが勝たれたという経緯もありますし、ですから、そうじゃない方たちの意見も聞ければいいけれども、時間が多分タイトで、国会がお許しくださるかどうかもまだわからない状態ですので、何とも言えませんけれども、オールラウンドでどういう状態かということが想像がつくようなお話をしたい、それが一点です。

 それから二つ目の大きな柱は、もう皆様御存じのとおり、沖縄の問題それから安全保障、沖縄に一番如実にあらわれているいろいろな問題で皆様も御苦労なさっておられるわけでして、いろいろな矛盾とかを抱えていることは十二分にわかっておりますけれども、それに象徴的にあらわれているような日本の安全保障のあり方、それは今先生も御関心の集団的自衛権の問題、憲法解釈の問題、それらについて、今、日本でもこの国会、衆参両院で、憲法調査会でいろいろな御議論が出ていることは大変いいことだと思いますけれども、そういうようなことの分析もこちらからもお話を申し上げ、そして個別具体に、アメリカがどういうことは変えられるのか、見直しができるのかできないのか、できないのはなぜなのか、いつならできるようになるのか、そういうアメリカのブッシュ政権としての見通し。

 それから、ブッシュ政権だけではなくて、やはりアメリカの世論というものも客観的にキャッチする必要があるのではないかなという思いが私はちょっとしております。何しろ予算の関係、おっしゃったようにむだ遣いになってもいけませんし、時間も限られていると思いますので、完璧なものはなかなかできるかどうかわかりません。

中野(寛)委員 いわゆる問題提起はアメリカの方がする、そしてそれに対して日本がどう対応しようか、そしてまた対応するに当たってはアメリカの真意はどこにあるか。どうしても、アメリカというのは全世界を踏まえて考えていますし、また一番能動的に行動できる国際的地位にありますから、向こうの方が能動的、そして日本の方が受動的になりかねない。そして、田中外相といえどもやはり向こうの真意を聞きに行く、そういう姿勢。今答弁をお聞きしていて、日本が今抱えている問題はこうだ、こういうことをアメリカに要求するという話にはならないですね。

 それは、ある意味では望むべくしてなかなか難しいことなのかもしれませんけれども、そういうことも含めて、訪米されるまでにしっかりと踏まえてやっていただきたいと思います。通訳がつこうがつくまいが、私には関係ありません。

 さて、集団的自衛権のテーマでありますが、ここでちょっとお聞きしたいことがあります。

 国際法上の概念として集団的自衛権の考え方が確立されたのは、国連憲章ですね。そして我が国においては、一九五一年のサンフランシスコ平和条約、それから同じ年に発効しました旧日米安保条約、それから六〇年に改定された現行の安保条約、そういう中で、我が国が国連憲章第五十一条の定める集団的自衛権を有していることを確認しているわけですね。ところが、その後、政府見解というのは微妙に変化をしてまいりまして、集団的自衛権はあるけれども、権利はあるけれども、それを行使することは憲法上許されていないと今解釈されているわけですね。憲法上許されていない集団的自衛権が、どうして条約などには登場してくるんでしょうか。

 私は、集団的自衛権もいろいろなランクがあると考えておりまして、だから、集団的自衛権を一まとめにして、あるとかないとかという論じ方は余りふさわしいと思っていないんです。むしろ、集団的自衛権の中で武力行使を伴うか伴わないかという別の物差しというものも含めて考えなきゃいけないだろうというふうに思っているのですが、我が国としては憲法上許されていない集団的自衛権が、どうしてこういう外交文書、条約等には活用されているのか。憲法上、日本は集団的自衛権があるなし、使える使えない、条約等の関係について整理してお答えをいただきたい。

田中国務大臣 集団的自衛権につきましては、先生が既に御案内のとおりで、過去にもそういう御議論をずっとなさってきていらっしゃると思いますけれども、国際法上は認められていますけれども憲法上は許されぬといって、もうずっと確定してきているということでございます。

 それで、先生が自衛権にもいろいろあるとおっしゃいましたとおり、集団的自衛権も、個別的自衛権も、それからマイナー自衛権、いわゆる小競り合いを処理するようなものもあるということも聞いております。それから、あとサンフランシスコ平和条約ですとか、今お触れになりました国連憲章の五十一条、これで自衛権についても述べられているわけでございます。それから、日米安全保障条約の中におきましても、新と旧とあってそれぞれ主張が述べられていますが、最終的なものとしましては、繰り返しになりますけれども、国際法上はそれは認めてあっても日本の憲法上これは許されないということで確定をいたしておりまして、それに立脚して処理されてきているというふうに申し上げます。

中野(寛)委員 憲法解釈上、一くくりにして果たしてそういうふうに――内閣法制局等が言ってそれが政府見解になって、そしてまたそれがいろいろな波紋を呼んでいるわけですね。その功罪もまたあるんです、両方とも。

 ただ、そのときに、言葉の遊びになってはいけませんので具体的に申し上げますが、集団的自衛権、例えばこの際日米関係で申し上げますと、集団的自衛権の行使で実力行使に当たる活動として考えられるのが、米国の本土や第三国における米軍への攻撃に対する直接の支援、協力。これは一番ハードなものでしょうね、日本側がアメリカに協力するとすれば。また、我が国近海を含む公海上において米国艦艇が攻撃を受けた場合への救援、支援、TMDの配備、運用、米軍に対する後方支援、米軍との共同哨戒活動、あるいは実力行使を念頭に置いた演習、訓練。これは、米軍から、言いかえれば米国側から日本に望まないでしょうね。現実論ではないということです、今申し上げたものは。

 これをベースにして、またこれを例にしてよく議論されることがあるけれども、アメリカは、米国本土を攻撃されるとも思っていないでしょうし、また、そのときに日本に助けてくれ、協力してくれと要求するとも思えない話です。また、米国のメンツにかけてもそういうことはしないだろうと思う。これは非現実的な話です。

 また一方、今度は実力行使に当たらない活動として、施設・区域の提供とか資金、情報の提供とか、これはやっていますね、日本は。これは集団的自衛権の行使ではないんですか。

 そして、その中間にグレーゾーンとして、限定的な個別情報の提供、例えば、ある特定目標に対する攻撃に必要な個別情報を提供する活動とか、直接戦場に空挺部隊から武器弾薬などを投下する活動とか、そしてまた医療部隊に組み込まれるような医療活動とか、そういうところが言うならばグレーゾーンとしてどうなるんだろうという議論が今行われているんだろうというふうに思うんですね。

 ですから、集団的自衛権というのを一くくりにしてハードな部分だけをクローズアップさせて言うのではなくて、その辺の整理をきちっと日本政府としてやっておかなければ、やれ憲法改正だ、国会決議だと言ってみたって始まらない話で、どこをどうしてどういう解決をしたいのか、どういう方向へ日本は行きたいのかという、まさに安全保障上の戦略、戦術というのがしっかり分類して組み立てられなければ意味がないんではないんですか。

 訪米されるとなると、そこがまさにアメリカとの折衝の一番のキーポイントになるんではないんでしょうか。そのことについてどうお考えですか。

田中国務大臣 今のところは個々の例で判断をしていると思いますけれども、今中野先生がおっしゃったような状態でありますからこそ、この小泉内閣は、世の中のいろいろな変化も踏まえまして幅広く多様な意見を聞いて、それで、集団的自衛権の問題もそうですけれども、アメリカとの関係、今おっしゃった安全保障全体について検討をしよう、研究をしていこうというのがこの内閣の姿勢でございます。

 それ以前は、先ほど先生がおっしゃったように、内閣法制局が五十年近く言っていた一種の呪縛みたいなものがあって、その範囲内でやっていたんだと思いますけれども、時代の変化、要請もありますので、それを踏まえてもっとオープンに検討していこうということを、この内閣ははっきりしております。

 ですから、先ほども申し上げましたけれども、衆参で憲法調査会もできておりますし、私も最初のときから憲法調査会のメンバーをこのポストをいただくまでやらせていただいていましたけれども、本当に多種多様な意見が出てきていますので、そうしたものが早く国家の意思として、そこだけではもちろんありませんけれども、収れんしていくということを見きわめなければならないというふうに思っております。

中野(寛)委員 いろいろな議論が憲法調査会の議論の糧になることは言えると思いますが、私は、憲法調査会にそこまで期待していない。言うならば、日本国憲法が将来改憲までいくかどうかも含めて、憲法を取り巻く環境についていろいろ議論をしておりますけれども、憲法の解釈について憲法調査会で結論づけるわけでもありませんし。また、憲法調査会で議論をした何年か後に、その後の日本国憲法のあり方について、修正か改憲か、つくり直しか現状維持か、そういう結論をやがて出すことになるでしょう。しかし、現在の憲法調査会には、そういう一つの方向性を勝手に結論づける権限は、国会法上、与えられておりません。

 そういう意味で、この前から他の質問に対しても、外務大臣はたびたび憲法調査会という言葉を持ち出すんだけれども、余り憲法調査会での議論をこっちへ持ち込むのではなくて、こっちの議論が憲法調査会に反映されるのは結構ですが、逆だと思っています。ですから、憲法調査会の議論というのは、こちらでは余り参考になる話ではないと思っているんです。それはむしろ、外務大臣は過大な期待を憲法調査会に持ち過ぎだと私はきれいに言いますが、逆に言えば、御本人はその意思はないかもしれませんが、結果として逃げ口上に使っているとしかならないんですというふうに申し上げておきたいと思います。

 ですから、集団的自衛権の問題については、私が申し上げたようなこと、これは個別具体じゃないですよ、例示をしているわけです。ここまできちっと整理して、恐らくこんなことをわざわざ申し上げて質問する必要はないんでしょうけれども、私なりに丁寧に御質問申し上げたいと思って申し上げている。こういう分類をきちっとして、その中で、これは非現実的で、ありません、これはもう既に沖縄など含めて全国的に基地提供なども含めてやっております。このグレーゾーンについて、アメリカがどこまで要求し、日本はどこまでこたえられるのか。これは憲法の枠内などという抽象的な問題ではなくて政策判断の問題ですから、それをきちっと整理して訪米してくださいと申し上げているわけです。いかがですか。

田中国務大臣 憲法調査会を逃げ口上にして言っているのではなくて、私みたいな者が、国会議員に当選してたった八年ですが、これよりももっともっと早くに憲法について、タブー視しないで議論をする場があればよかったのに、政界の諸先輩がそういうふうな問題意識を早くに持ってくださればよかったのにと。でも、遅きに失した感はありますけれども、こういうところでもって、憲法についていろいろな議論ができるようになったということが大変よかったなという意味でありまして、委員会を軽視したり憲法調査会の結論を待っているとか、そんなことを言っているわけではございませんので。では、そうしたら、以後、憲法調査会については、何か唇寒しになりますので、余り触れないようにした方がいいのかなと今一瞬思ったりもいたしました。

 それからあとは、今おっしゃったように、分類してよく整理をして、そしてグレーゾーンについて発言をするべきだ、考えていくべきだと。おっしゃる趣旨は理解いたしました。

中野(寛)委員 趣旨を理解されても困るんですが、理解されないよりはされる方がいいですけれども。あなたの戦略、戦術を確立して行ってくださいというふうに申し上げている。趣旨は理解しましたということは、まだ御自身のを確立されていないということなんでしょうから、それはそれとして、その段階だというふうに受けとめておきます。

 さて、沖縄の問題について、これは当然出てくるだろうと思いますので、お尋ねをいたしますが、私はこう思っているんですね。

 日米安保条約に基づく在日米軍の存在というのは、ある意味では、西におけるNATO的な役割をアジアにおいて果たしている。しかし、日本の国内では、ややもすると、それは日本の防衛のために日米安保条約に基づいてアメリカが駐留しているような説明がメーンとしてなされる。

 しかし、実際上は、間接的には、結果的にはと言ってもいいでしょうが、日本の安全にもつながることではありますが、直接的日本防衛以外のことについても当然米軍は出動をしているわけです。そのときに、まず洋上へ訓練に出かけてそこから作戦変更で中東へ行くということも言いわけとしてありましたが、そういうフィクションが在日米軍の場合、また日米安保の場合には多いんですね。

 実際上は、ユーラシア大陸を、一方はNATO、一方は日米安保条約、アジアにはNATOのような条約機構みたいなのはなかなかつくれませんから、だから、結局、日米安保条約が地理的環境からいっても歴史的経緯からいっても使いやすいから、それが一方であってNATOとユーラシア大陸を挟み打ちにしている。それでロシア対策や、昔でいえばソ連対策や中国対策も含めてやっているというのがアメリカ側の思っている実態ではないでしょうか。

 それに対して、日本は日本なりに、歴史的経緯もありますから、フィクションをつくって、そして、言うならばまやかしの説明を時に国民にしているというのが実態なのではないか。

 これは、例えば、朝鮮半島がもし将来統一をされた、解決をした、そうなれば沖縄の海兵隊は要らなくなるんだという説明をする人さえいます。私は違うだろうと思います。沖縄の海兵隊というのは朝鮮半島対策で置いているのではないと思います、本当はそう思いたいですけれどもね。しかし、実態は違うだろうと。

 そうすると、在日米軍及びアジアの駐留米軍を移動するとか、移動はある程度その中でできるかもしれませんけれども、しかし、それを削減するというのは、全世界の軍縮のバランスの中で、全体の軍縮の一環としてどこから削減していくかということでなければならぬ、また、そうしかアメリカは考えていない。日本の沖縄の実態や日本の国民感情に合わせて、日本からだけ引き揚げますとか削減しますとかという話にならないというのが実態なんではないでしょうか。だとすれば、実態を踏まえて交渉をし、実態を踏まえて対策を講じなければいけないのではないでしょうか。

 沖縄のことについても、なかなか言うはやすく実行は伴っていません。例えば普天間基地の移設、返還というのが一番今望まれていることです。しかしながら、それがなかなか進んでいかない理由は何なんでしょうか。

 一つは、日本政府が沖縄の意向をアメリカに伝えるだけ、すなわち伝達者に成り下がってしまっている。二つ目は、米側が、普天間問題は日本の国内問題だと言って当事者意識を持とうとしない。三番目に、沖縄にとって代替施設は十五年の使用期限を付さざるを得ないという政治的立場がある。これは知事の選挙公約でもある。これらが三つどもえになってこの実態を進めていかない、そして普天間基地はいまだにそのまま供用されているというのが実態ではないでしょうか。

 どこかに突破口を切り開かなければなりませんけれども、それは今までの過去の発想ではならぬわけで、小泉改革が進められるとするならば、また田中改革が進められるとするならば、こういう膠着状態にある問題に突破口を開いてこそ意味があるわけで、いろいろ議論をします、皆さんの御意見を聞きますだけでは済まない話ではないか。どう切り開いていこうとされているのか、それについてのお考えも、この際、訪米前ですから、お聞かせをいただきたいと思います。

田中国務大臣 今の中野先生が発言なさった中に、日米間の一番ポイントとなることがまことに見事に収れんされていたなと思って、さすが大先輩の御発言で、感服して聞いておりました。

 それらをもう一回私なりに考えて、わからないところは、外務省の皆さん、それからやはりベテランの、先輩の外務大臣経験者もいらっしゃいますので、その時々で対応なさるのに、判断をなさるといいますか、苦悩、懊悩なさった方たちがここにお三方もいらっしゃいますし、また、その中で知恵を絞られた方もいらっしゃると思いますので、ぜひそういう皆様方の、やはり経緯といいますか、それも伺いながら、新しい展望――そして、最初先生がおっしゃったように、アメリカというのはやはり世界を見ているわけですから、とかいっても、私たちは、世界も見るけれども、まずこの極東と日本ということを考えなきゃいけませんので、その中の沖縄というもの、沖縄の皆様があれだけ苦労なさっているということは、沖縄の痛みは自分の痛みでありますから、したがって、そういうことも踏まえて、繰り返しになりますが、私の先輩、きょうは三人お見えになっておられますけれども、どういう点に御苦労なさり、もっとこういうところは改善できるはずであるというような、経験を踏まえた御指導を仰いで進みたいと思います。

中野(寛)委員 三人の先輩の話が出てくるとちょっと質問がしにくくなるのですが、三人の先輩ができなかったのですね。そして今は大改革を掲げて小泉内閣が誕生しているんですね。だとするならば、余り三人の先輩に頼らぬ方がいいのとちゃうかいなと。頼りがいがあるかどうか、私、知りませんけれども、御本人たちもいらっしゃるので、はっきりは申し上げませんが。私は、それも外務大臣の先輩に対する御配慮だと思いますが、もうそういう余計な御配慮はない方がいいと思う。むしろみずからのスタンスを明確に打ち出してこそ田中眞紀子流外交と言えるんではないかという気がするので、そこをまず私は期待をしたいと思うのです。逆に、三人の先輩が邪魔さえしなければという気持ちで持ち上げられたのであれば、それはそれで何をか言わんやでありますが。こういうことを言うと、またその部分だけに答弁が返ってくるので、これはもうそれ以上余計なことは申しません。

 ただ言えることは、この代替施設についても、これは外務大臣御本人が、なぜ十五年か、十四年ではいかぬのか、十六年ではと、何か御答弁のどこかでお使いになったように思いました。もっともだと私は思うのです。しかしこれは県知事に聞いてみないとわからぬ話ですけれども、果たして十五年という使用期限というのは、現実可能なのか。その持つ政治的意味は、沖縄県民の皆さんの最大限の譲歩としての気持ちをあらわしているとは思います。しかし、この十五年の問題についても、なぜ十五年か、そうではなくてもう少し、十五年はめどだけれども流動的なもので、その間にこれだけのことを精いっぱい努力する、よって十五年ぐらいでいけるかなというめどを立てるところまでいかないと、この普天間基地問題は解決しないのではないかというふうに思うのですね。

 ですから、僕は、この前大臣が、なぜ十五年か、十三年ではいかぬのか、十三年か十四年か十六年かちょっと忘れましたけれども、あれは的確な御指摘だと僕は思うのですね。ならば、どうすべきかということについて大臣の方針はありますか。

田中国務大臣 申し上げる前に、私、三人の外務大臣経験者は本当に……(中野(寛)委員「そんなのどうでもいいんです」と呼ぶ)いや、どうでもよくないんですよ。どうでもよくありません。そういうことで判断間違えますからはっきり申し上げますけれども、私はへつらっているわけでもなくて、大変日本の外交のために尽力なさったし、懊悩なさったと思いますよ。それが現実なわけですから。我が自由民主党の先輩たちが、国益とそして世界の平和のために本当に知恵を出されて、懊悩なさっていると思うのですね。批判するのは簡単だと思うのですけれども。ですから、その知恵を、その御苦労を踏まえて新しい展開をして、そして過去の先輩の皆様にもよくやったと言っていただけるように、三人だけじゃありませんよ、また誤解されるといけませんから、日本の国の方たちに将来にわたって、あのとき時代の転換、かじを切ったのは間違いじゃなかったと、最大公約数ですよ、全員じゃありません、それが政治じゃないでしょうか。ですから、それは私は、発言をなさらないで我慢していらっしゃる諸先輩にかわってぜひ申し上げたいと思います。私は、自由民主党員でございます。

 それから、十五年問題につきましては、この発言は、私が何で十五年ですかというのは、たまたま私が着任いたしまして数日後に、渡米なさる前に稲嶺知事がいらっしゃったのです。そのときに私がぽろっと、何で十五年ですか、十五年でなければいけないんでしょうかと伺ったのです。そうしましたら、知事はびっくりなさって、絶句なさって何もコメントなさらなかったというのが実態です。事務方も驚いたらしいんですが、それが実態でございます。

 そして、具体的に十五年問題につきましては、移設についてはもう取り組んでおりますことは御案内のとおりですけれども、十五年についてはまた取り上げるといいますか、いろいろな知恵を拝借しながら考えていきます。スーナー・ザ・ベターであるということはわかっておりますけれども。

中野(寛)委員 早い方がベターであるという答えで終わるのではなくて、例えば十五年なら十五年で、その十五年の持つ意味と、そして十五年で移設をするまたは解決をするというプログラムなりスケジュールなり目標なり方法論なりというものが裏づけされませんと、沖縄は納得できないでしょう。そういうことをどうお考えなのか。まず、なぜ十五年かという外務大臣の御質問から始まって、そこで絶句されて答えがなかったで答弁が終わってしまっては困るわけで、そうではなくて、その十五年なら十五年を目標にして、その間に何をどうするのか、そのことの説明がなければ沖縄は十五年にこだわる以外ないじゃないですか。そういう具体的な方策について何か前向きのお考えを、たとえ抽象的でもお持ちなのですかとお聞きしているのです。

田中国務大臣 ですから、舌足らずで申しわけないのですけれども、基本計画の策定に今具体的に取り組んでおりますので、それを踏まえてまいります。

中野(寛)委員 普通ここでわかりましたと言うところですが、わかりません。しかし、これ以上お聞きしてもまた答弁がないことも事実ですから、次へ行きます。

 インドネシアの問題を聞きます。

 インドネシアという国、これは日本にとって大変重要な国であります。他の国と比較しては失礼ですが、例えば中国やフィリピンやその他の国々に比してもまさるとも劣らぬくらいに重要な意味をインドネシアは持っていると思います。人口、面積、GDP、東南アジア最大の国家であります。そしてまた、日本にとってはまさにエネルギー供給源、天然ガスを初めとして日本の死活問題を握っている国でもあります。また、それがためにと言っても過言ではないと思いますが、我が国のODA最大の供与国でもあります。

 そういう中で、インドネシアはなかなか落ちつきません。このインドネシアの政治危機が我が国及びアジアの諸情勢にどういう影響を与えるのか、ASEAN諸国も、ASEANのメーンの国ですからしっかりと見守っています、タイもフィリピンもマレーシアも。しかし一方、そういう周辺諸国でこのインドネシアの問題にまでサポートしたりという能力、余力がないことも事実です。だとすれば、このインドネシアの問題は日本がどうかかわるか。内政干渉ではいけませんし、軍事介入するわけにもいきません。それだけに大変厳しい外交能力が問われるところであります。何とか政治エリートの対立の枠でおさまってくれればいいと思います。国民的対立、また大騒動にならないことを願っています。

 このインドネシア問題をどのように今外務大臣として把握し、どういう対応を日本外交のかなめとしてやっていくのか。そして、想像したくはありませんが、この騒動が発展したときに、在留邦人の救出について今からやはり常にあらゆる場合を想定して考えておかなければいけませんが、どのように対応しようとされておりますか。

田中国務大臣 御指摘がありましたように、天然ガスというものが提供されておりますし、また、我が国からは毎年大体二千億円ぐらいの援助をしているというふうに思います。

 このインドネシアとの関係というのは極めて緊密でなければいけませんし、歴史的にも、私も、スハルト政権ができて一週間後ぐらいのときに公式訪問の随員で行ったことがございますけれども、対立が強いときはかなり根深い対立が長く続くところで、そして安定するとかなり長期化するという特徴のある国だなというふうに見てきておりますけれども、今回の政治問題、ワヒド大統領が絡む問題がどのように収れんされていくかということは注意深く見なければいけないというふうに思います。ですけれども、大事な関係であるということは先ほど申し上げたようなことになりますので、インドネシアの法律にのっとって、早急に安定するように決着がつくことを望んでおります。

 そして、邦人救助の問題というのは、後手後手にならないように、やはり我が国の危機管理というものは、国内の地震とかオウムとかそういうことももちろんありますけれども、これだけ国際化している中で、たくさんの日本の方が世界じゅうで分散して活躍なさっていますので、一種の危機管理として常時アラートでありたい、またそうあるべきだと思っておりますので、また内閣としても危機管理大臣にもそういうことを改めて再度お願いいたします。

中野(寛)委員 まさにこういうとき、こういう国の対策のためにこそ外交機密費はあるのではないかとさえ思うのでありますが、的確な判断をこういうときにきちっとやってもらいたい、外務省の中で内輪もめをやっている段階じゃないというふうに改めて私は思います。

 最後に、というのはたくさん質問は用意していたんですが、きょうだけで終わらないでしょうから、また私の次の機会まで外務大臣が外務大臣でいらっしゃるだろうとは思いますが、そのときに譲るといたしまして、中国問題で一つお聞きします。

 中国という国を大臣はどういうふうにお考えなんだろう。これは、例えば日米同盟の最大のある意味では対象なんですね。その中国について我々はやはり正しく認識をしておく必要があると思うんです。当然のことながら、大臣も中国を大事にされると思います。日本にとって大切な国です。ですから、私は中国のことを中傷誹謗しようとは思わないのですが、実態を考えるときに、中国は大変だなと思うんです。

 沿岸部と内陸部との格差、そのために西部大開発を計画されている。しかし、西部大開発を進めるお金が要る。いろいろな開発が行われる、環境破壊が伴う、エネルギーの多消費が行われる。環境破壊とエネルギーの多消費による問題、そういうものを兼ね合わせますと、大きなジレンマを中国は抱えている。西部大開発というのは実は難物の難物で、なかなかできる話ではないということだろうと思うんです。それがおくれると、今度は中国国内の国民の皆さんの不平不満というのが爆発している。もう既にデモ、ストライキ、テロ、いろいろなことが全国で起こっているわけですね。そのすべての報道はされませんけれども、それがにじみ出てきますね。そういたしますと、今中国というのは実に大変な状況にある。

 これは、ある雑誌からの引用で恐縮ですけれども、尉健行さん、行政局の常務委員、中国の書記ですが、中国には残念ながら八つの不名誉な世界一がある。結局、一年間に摘発された汚職件数が三万八千件。そういうことで処分を受けた党員、公務員が十三万人。麻薬、覚せい剤の汚染者は全国で三千二百万人。賭博による家庭崩壊が二十二万戸。風俗産業に従事する女性が千二百万人。年間売上高、日本円にして五兆二千億円。そして、刑法犯罪で逮捕された容疑者数が六十六万人。これは中国の中の方が、残念ながら自分たちの国の実態として報告をされたという報道であります。

 そして、失業者があふれ、西部大開発の先行きは実に大変厳しいとなると、結局、大都市のきらびやかな姿を見、また沿岸部の一部発展しているところを見て中国の発展といって称賛しているわけにはいかない。

 我々は、中国の経済発展も、そして民主的な発展も、国民の皆さんの幸せも願っている。そういう中で、中国をどのように見て、そしてまたその中国は、日本からODAを差し上げている、中国もまた今度は外国に対してお金を出している。これらに対しても日本国内でも批判があるのです。ややもすると、我々は、中国を敵対関係で見たり、逆に中国を無条件で好きだと言う人に至るまで、日本人の中国に対する感覚は非常に幅広いです。そういう中で、しかし、その実態を見ながら冷静なおつき合いをしていくということが大切です。

 中国対策、これは日米間で最大の懸案事項にこれから発展していきますので、その中国に対する考え方を外務大臣にお尋ねしておきたいと思います。

田中国務大臣 十三億の民がいる中国の実情を中野先生が上手にまとめてお話しなさいましたので、繰り返しませんけれども、この話は、やはりASEMの中でよく出た問題なんです。

 中国で、私たちはこれだけきょうは歓待してもらって、ごちそうをいただいている、けれども、中国の将来、今の現状も憂えることがある、将来はこういうふうな形であってほしい、あらまほしき姿について結構忌憚なく中国の幹部に私たち言わせていただく機会がありました。特にヨーロッパの外務大臣はかなり率直に、ごちそうをいただきながら申しわけない、申しわけないと言うと、中国が、それを言ってください、そのための会議ですよ、自分たちもアジアのメンバーですからとおっしゃっていまして、いい御意見が出ました。

 中国も余りに規模が大きいですし、いろいろな問題がありますから、環境問題ももちろん議題にもなりましたけれども、そういうことも踏まえながら、中国の方たちが幸せになるような経済発展もしていかなければいけない。そして、そういうふうなつき合いを、我が国からのODAも含めてでしょうけれども、欧州ともそれぞれ前の関係があるわけです、アメリカともあるわけです。ですから、我々がむしろ、アメリカが今この席にいないけれども、本来だったらもう少し小規模でアメリカも入って、もう一カ国入って話ができたらばもっとファンクショナルになるのにねということを申しました。

 その視点を、私が外務大臣を拝命して初めて出していただいたあの会議で今の世界の抱えている中国に関する関心が極めて色濃く出ていたというふうに感じましたので、また原点を踏まえて、先生のアドバイスや御懸念も拳々服膺しながら進んでまいります。

中野(寛)委員 時間が来ましたから終わりますが、まだなかなか外交戦略、戦術が見えてまいりません。しかし、日本が置かれている国際的な環境というものは大変厳しいものがあります。早急にそれらのことがしっかりとまとめられ、確立されることを強く要請しておきたいと思います。

 終わります。

土肥委員長 次に、首藤信彦君。

首藤委員 民主党の首藤信彦です。

 外務大臣に日本外交の現状そして将来の展望についてお聞きしたいと思います。

 まず最初、最初といいますか、なかなかお目にかかることもないので、外交についてどのようなお考えを持っているか、もう一度だけ確認させていただきたいと思います。外務大臣は、外交姿勢というか外交の要諦そして外交の基軸といいますか、そういうものに関してどのようにお考えでしょうか。

田中国務大臣 中野寛成先生からの御質問の冒頭にもありましたことの復唱になりますけれども、それでよろしゅうございますか。(首藤委員「どうぞ」と呼ぶ)質問者が違いますので、改めて、また違った気分でお答えをさせていただきます。

 言葉を自分なりに収れんしていくと、やはりまず日本の国益があって……(首藤委員「短目にお願いします」と呼ぶ)いえいえ、一言でなかなか言えないんですよ、未熟なものですから。やはり国益であるし、国益が何ぞやについては、先ほど中野先生には申し上げました。

 それにプラス、やはり世界の平和とか安定とかにどのように資するか。それも、いろいろな紛争、世界じゅうに今も十幾つかあるかわかりませんが、火薬庫と言われるようなもの、それからお互いの国が脅威と感じるようなものが世界じゅう、地球儀を頭にイメージするとわかると思うんですけれども、最近、特に民族紛争を中心にしたものがあると思います。過去の歴史をずっとひもときましても、将来にわたってそれがないということを保証できないわけじゃないですか。

 その中でもって、どのようにして少しでも、最大公約数ですが、地球上のみんなが、特に私たち日本人ですから、日本の隅々の皆さんが幸せだと感じられるような生活。それは外交だけではなくて、社会保障の問題もありますし、そのほかいっぱい、経済とかあるわけですけれども、トータルに見て外交の面ではどのようにそのようにアクセスしていけるか。少しでもいい方向ですね。

 でも、悪いときには即応できる力を持たないと、何でもよかれと思って物が起こったらつぶれちゃったんじゃこれはとんでもありませんので、やはり万々一の危機管理というものは、常時その手を考えておかなきゃいけないということです。

首藤委員 何かちょっとおもちゃ箱の中みたいで、たくさんあってよくわかりにくいところがあるんですけれども、一貫して、外務大臣は国益ということを外交の基底に据えておられる。そのことは大変果断でもあるし、明確な主張であると思いますけれども、そうすると、四月二十四日の外務省機能改革会議の提言とどのようにそこの整合性はつくられますか。

田中国務大臣 外務省機能改革会議という名のとおり、やはり外交の最前線に立つ外務省がもっと機能的にいいエネルギーを出せるようにしていくということで整理を今回するということです。

首藤委員 確かにそうだと思うんですけれども、外務省機能改革会議というのは、一連の機密費、報償費問題とか、田中外務大臣自身が御指摘のように組織的な問題とか、さまざまな問題を改革しよう、国民にもっと近い、開かれた外務省にしようということで野心的につくられた。今のような組織であるとなかなかできない。こうした改革会議であると思うんですけれども、そこの基本は、国民のための外交、国民とともに歩む外交というふうになっております。要するに、今までの国益中心、外交官中心の外交ではなく、国民を中心に据えた、人間を中心に据えた外交に切りかえていくべきだ、これが改革会議の提言なんです。

 この改革会議の提言に関して、こういう方向で進まれるのか、あるいは、就任以来ずっと主張されているように、国益中心の考え方で進まれるのか、そこのところを明確にしていただきたいと思います。外務大臣、お願いします。

田中国務大臣 国民の目線を忘れた外交をやっていたのでいろいろな事件が起こったのではないでしょうか。したがって、国民の目線、国民の皆様の考え方をベースにして国益につなげるということでございます。

首藤委員 それは非常に漠然とした話なんですよね。ですから、今までずっと就任以来お話しされてきた日本の国益を中心とする考え方と、それから外務省の改革会議で主張している国民とともに歩む外交というものは、かなり内容が違うということなんですよ。

 それから、もう一つお聞きしたいのは、そうすると、外交青書に書かれている今後の外交方針と今まで国益中心とおっしゃっていた田中外相の主張とは、どういうふうに整合性をつくられるんでしょうか。

 例えば、ここでの基軸というのは、まず普遍的な価値と諸制度、科学技術とグローバルな影響、それから国際的な協調、この三点こそがこれからの外交の要諦であるとなっています。言うなれば、今までの国益中心の古い外交から新しい外交へ一歩踏み出したということで、この外交青書は非常に高く評価している。また、学界においても評価されております。それに対して、国益中心の外交というのは何か冷戦時代に戻ったようで、私としては驚いてしまうということですが、その辺はどのように外務大臣はお考えでしょうか。

田中国務大臣 言語感覚が違うのかもしれませんけれども、私は、外交青書の中にありますのも、それから外務省の今回の改革のことにしましても、私が言っていることも、一つの点で、ばらばらのようでも全部糸でつながっていくものだと思います。

 すなわち、国民の皆様の目線、それが過去には一番欠落していたのかもしれません。ですから、もう一回その目線に立った外交をすることによって国益が増進をしていく、そのことによって皆様からの信頼も回復して、国のため、世界のために役に立つということです。

首藤委員 残念ながら、それはちょっと、余りこんなことばかりに時間を使っておられませんけれども、ただ単語がばらばらとつながっているだけで一つも整合性がないんですよね。ですから、今までの国益という考え方、外務省の機能改革会議で求めようとしている方向、外交青書で主張している方向性、これはきちっと整合性をつくって、ぜひ頭の中でまとめておいていただきたいと思うんです。

 ここでやはり重要となる問題は、冷戦構造の崩壊を受けまして、外務省も含めて、外交そのものが大きく変わろうとしています。その一つの考え方が人間の安全保障という考え方ですね。日本は人間の安全保障に対して基金を設けて、それからUNHCRの緒方貞子さんなんかをそれのリーダーに据えてやっているわけですけれども、国益中心の考え方と人間の安全保障の考え方とどうやって整合性がつくられるんですか。

田中国務大臣 国益というのは、私は、先ほど中野寛成先生に広義である、広い意味でということをいろいろ例を挙げて申し上げたので、お聞きになっていらっしゃらなかったのかもしれませんけれども、国益とか愛国心とかということは、狭くとらえると軍国主義みたいな狭いものになりますけれども、国益というものは、先ほども言ったことの繰り返しになりますけれども、やはりあまねく世界の人々とうまくコミュニケートしていく。そして日本も世界の中でともに生かし生かされている存在ですから、その日本国民の幸せを追求していくということでありますので、言語的にどういうふうに先生が理解なさっているのか、もう一回わかるようにお話をいただけますでしょうか。

首藤委員 人間の安全保障というのは、今までの国益中心、国家がいい、要するに、国民の幸福は必ずしも国家の幸福ではない、国家の幸福は必ずしも個人の幸福ではないというような発想から出てきている考え方なんですよね。ですから、要するに人皆兄弟、世界じゅうでみんな仲よくしましょう、そこから国も栄えていきます。では、国が栄えて、隣に国があって、その国と問題があったらどうなるか。そうするとやはり国益中心の考え方になっていくわけですよね。

 ですから、それは、英語で言えばエブリバディーハッピー、みんながすべて幸せになるということでは必ずしもなくて、やはり人間の安全保障、要するに安全というものの単位を、国家、国益中心のものから人間中心なものにシフトしていこうというのは革命的な大転換なんですよ。そこを御理解いただけなくて、ただ一緒にみんなが幸せになれば国も栄えるみたいな考え方をされては私は全然納得できないということですが、ここの点だけを言っていきますと何時間もかかってしまうので、もうちょっと現実的な外交について次に質問をさせていただきたいと思います。

 現実的な外交として田中外務大臣が国際社会にデビューしたのはASEMなんですけれども、もちろんこれは最近の会議の特色ですから、昼飯があったり晩飯があったり、あるいはパワーブレークファストといって朝飯で話し合ったり、いろいろなものがあります。非公式なのも公式もある。しかし、幾つかの会議はやはり公式なんですね。いかにも砕けた調子で話しています。しかし、そこは真剣勝負の火花を散らす世界であるというのは外交の常識なんですね。

 私が知りたいのは、ランチはいいんです、それからブレークファストも、朝飯も晩飯もいいんです。それじゃなくて、正式の会議で一体何を話されたかということがよくわからないんですね。外務省の方に何度も何度も一体何が話されたんだということを、国会議員なものですから多少はそういうことを外務省の方にもお聞きしたんですけれども、これは概要しか出てこないんです。我が方からの発言といいまして、朝鮮半島情勢、国連、WTO、環境、二国間会談、こういうふうに書いてあるだけなんですね。あれだけお金も使い、時間も使い、こんな一番忙しいときに使ってやられたこと、何にもないんですよ。

 そこで、もう一回読みましたら、ここにこう書いてあります。朝鮮半島情勢、国連、WTO、環境の四つの事項について、概要、以下の発言をすべて英語で行ったと。英語のドラフトはどこにありますか。英語のドラフトを出していただきたい。それはきのう質問が出まして、事務方に言って用意させますのような発言がありましたけれども、いかがですか、外務大臣。

田中国務大臣 何か首藤先生がおっしゃったのは国際会議は砕けていると。先生からすれば砕けているかもしれませんが、私が行きましたASEMは砕けておりませんで、フレンドリーでしたけれども極めて実質的な会議でございまして、どこも砕けておりませんでした。まずそれを御報告いたします。何でしたら、傍聴していただければよかったですね、次回どうぞ。

 それで、私どもは、朝鮮半島問題ですとかWTOの問題、それから国連の問題と環境、これについてテーマ別に手を挙げて、関心のある順に発言をいたしました。通訳を使った国もおありになりますし、私も語学力がありませんから、わからないところは通訳の方に、テクニカルな専門語は何なんだろうかと、誤解をしてはいけませんから、聞いてもらったりも教えてもらったりもいたしました。

 でも、それの発言につきましては、英語のものがちゃんとございますからお届け申し上げます。御満足いただけますようにちゃんとお届けいたします。

首藤委員 ありがとうございます。それでこそ外務大臣です。開かれた外務省、透明な外務省ということで、これから外務大臣の手腕に大いに期待しております。その英語のフルテキストといいますか、一体どういうことがきっちり話し合われたかというフルテキストを、概要ではなく英語のフルテキストをぜひお願いしたいと思います。

 なぜそういうことを言うかといいますと、先ほど中野寛成議員も言っておられましたけれども、その席上で、ASEMの中で田中外相がアメリカのNMDに疑念だ、日米同盟基軸を逸脱、こういう派手なキャプションが載っているわけですけれども、それはともかく、ではこのNMDについてどこを話したのかというと、概要に書いていないのです。ですから、やはり私たちは、フルテキストを見ないと一体どういうことが話されたのかがわからないということで、必ずフルテキストをお願いしたい。よろしいですね。

田中国務大臣 ミサイル防衛構想については、ASEMというのはアジアとヨーロッパの会議でございますので、テーマになっておりません。個別に話をするようなことはありました。ほかの国間が何をしゃべっておられるか、私は聞こえませんでしたけれども。ですから、イシューになったことについてお送り申し上げると申し上げているのです。

首藤委員 きのうの御発言の中で、このASEMでいろいろなことを話し合いましたと。特に朝鮮半島情勢に関しては、みんなも余り言わないので、私が大いに発言しましたということで、私は英語でやりまして、横田めぐみさんの問題もキッドナッピングの問題ということでお話しされたということをきのう言われ、テレビの中で何度も何度も言われておりますけれども、それは事実でしょうか。

田中国務大臣 朝鮮半島はもう御案内のとおり、北と南の問題もございますし、それから日米韓の中でなければなかなか解決できないような問題もたくさんございます。そして、そういう中でもって、欧州の方、今回のASEMに来られた代表の中では、日本と北の間でもって誘拐事件があった、拉致事件があったということをつまびらかには御存じない方もいらっしゃいますので、そういうことは日本から当然の問題として提起して、御理解をいただく。一人でも理解者が多い方がよろしいと思いましたので提案をした、お話を申し上げたということです。

首藤委員 ありがとうございます。それは大変外務大臣として立派なことだと思います。

 そこで、要するに誘拐事件に関して、キッドナッピングであるということをおっしゃった、そのように解しておりますけれども、それでよろしいですね。

田中国務大臣 アブダクションという言葉を使ったかもしれません。自分のしゃべった英語を全部チェックしているわけではございませんけれども。

首藤委員 それはきのう問題になりまして、実はいろいろなところから、新聞社にもいろいろ聞いたり、そういう情報が外務省の方にも伝わっているわけですけれども、これはきのうテレビで何度も何度もキッドナッピング、キッドナッピングと。誘拐と日本語も出ました。キッドナップというのは、基本的には、ランサム、要するに身の代金を要求するような身の代金誘拐のことをいうのですね。拉致というのはアブダクションですよ。それはそうなのですよ。この差というのは大きいのですよ。

 何で大きいかというと、これは外交ですから、一つの国が営利誘拐して、日本の少女を連れていって、お金をよこせ、お金をよこせと言っている。あるいは、冷戦下において何らかの問題でそういう拉致事件が起こった。これは本当に大きな差なのです。

 外交というのは、やはり言葉なのです。同じ意味を持っていても、その言葉を一つ一つ精査して使っていかなければいけない。それが国際社会のルールというものなのですね。ですから、私は、田中外相のように高校でアメリカへ留学したこともありませんけれども、英語の能力も限界がありますけれども、外交の場においては、言葉を非常に注意して使わなければいけない、そういうふうに思っています。

 では、これを機会にもう一つだけ言わせていただきますが、外務大臣は就任のときに、外務省の人事をフリーズするとおっしゃいました。フリーズという言葉が日本のテレビで報道されたのは、外務大臣の前にはいつですか。

田中国務大臣 存じません。

 それから、公式の発言のときは、きのうは誘拐というか拉致事件のことについて、日本語で――だから間違いがやはり生じるといけないのですけれども、拉致事件のことにも触れただろうかというお尋ねがほかの会でありまして、触れましたと言ったのですね。そのときに私は確かにキッドナッピングと言ったのかもしれませんが、公式の発言録が残っておりまして、そこでは私はアブダクション・オブ・ジャパニーズナショナルズと言っておりますので、御心配なく。

 そうなりますと、もう国会では片仮名が――先生のように英語のお上手な方はよろしゅうございますけれども、私みたいな者はとてもとても、日常も外国語を使わない、やはり全部漢字にしなければいけないことになると思いますけれども。

 それから、もう一つの言葉のことについては、いつ使われたか私は存じませんので、御存じでしたらどうぞお教えくださいませ。

首藤委員 最初の部分ですが、それは結構です。ですから、議事録を出してください。やはり我々も誤解している面があって、何かちょっとどこかでミスしているのじゃないかというような気持ち、疑心暗鬼にもなりますので、ぜひフルテキストを出してください。ある意味で外交は連続性があるとはいえ、やはり就任早々一カ月ぐらいで、それは確かに間違いがあるかもしれない。ですから、こういうものをごまかさないで、きちっとフルテキストで出してください。我々も批判するものは批判するし、その中から甘受できるものは甘受し、改善するものは改善したらいいじゃないですか。これが基本的なルールだと思うのですね。

 そこで、今のフリーズですけれども、なぜこんなことを聞いているかというと、別に田中外務大臣の英語能力を試しているわけではないのです。これは、一九九二年、ルイジアナのバトンルージュで、日本の留学生の服部君というのがハロウィーンのときに撃ち殺されたのです。そのときに、撃ち殺した人間がフリーズと言って、動くなと言って、わからない服部君は、ハーイとかなんとか言ったら、すぐドンと撃たれて死んでしまったというのですね。ですから、この言葉は禁句として、危険な言葉として、その当時非常にいろいろなところで伝えられているわけですね。

 何を言わんとしているかというと、やはり外交には外交の言葉というのがあります。ですから、外務大臣たる者がフリーズなどということを大きな声で、フリーズ、フリーズなどと言ってはいけない。フリーズなんというのは、現場の軍曹や現場の治安維持系の警察官が使う言葉であって、外務大臣が、人事を凍結するということにフリーズ、フリーズなんと言ったらいけないわけですよ。

 ですから私は、外務大臣が英語に堪能なのは結構ですが、英語でディスカッションするのは五年早い。どんなに英語がうまくても、本当に帰国子女の方もたくさんおられますよ、でも、外交の英語というのは、プロトコールも含めて、やはり非常にセンシティブだ。そこのところを注意していただいて、英語でやってきましたなどと威張ることではなくて、そこのところは真剣に考えて改善してほしい、そういうふうに思っています。

田中国務大臣 英語でやったなんということは、全然威張ってもおりませんし、自慢もしておりませんし、私の英語はつたないのでございますし、外交官の専門家のサポートも得ております。

 それから、人事は凍結ということを申しまして、急だったので、メディアもびっくりしたのでフリーズですと言ったので、そこがサブリミナルで、何度も何度もメディアで報道されておりますけれども、私はほとんどちゃんと日本語でしゃべっております。

 これからはきっと、首藤先生ぐらいに英語が得意でない人は、細かいところを全部調べられる人でないと外務大臣は務まらなくなる。したがって、日本の外交官はこういう質問を外務委員会でされると、これから日本の政治家はみんな日本語でやって、常に全部通訳、通訳も間違いがあるということを申し上げなければいけません。特にこれからは、科学技術用語もありますし、医学用語もありますし、法律用語も経済用語もありますので、それをオールラウンドでもって、スワヒリでもタガログでもスペイン語でもできる人というのはなかなか得がたいということを申し上げます。

首藤委員 そうなのですよ。結構です。御主張をそのようにされて、私も十分に理解しています。そういう非常に大衆受けするような言葉をたくさんおっしゃるわけですけれども、それが外交に必ずしもプラスとなっていないということを一例としてお伝えだけしたにすぎないのです。

 例えばテレビで、ホテル問題というのがありまして、二十八万円ですか、すごい高級ホテル。何からせんがあるところをやめて九万円のところへ変えたというのがあります。これも恐らく田中眞紀子さん、小さいときからやはりエリートとして育てられて余り下積みをやったことがないのだと思うのですが、そのとき、二十八万円の部屋、私これは嫌よと言って変えたらどうなりますか。これはドタキャンというのですよ。普通は二十八万円のキャンセルフィーがつくのですよ。ですから、普通これはどうやるかというと、これは機密費の問題で精査すればわかると思いますけれども、報償費とかああいうレベルで。要するに、二十八万ドタキャンで二十八万やって、九万円新たに部屋を追加して、さらに、通常、外相が行くときは、謁見ではないですから、そういう細かいミーティングをする部屋が必要なんですね。そうすると、また新しい部屋を借りる。だから、結局四十万ぐらい費用がかかってしまったということですよ。

 もしそれが、いや、事務方に言って向こうにのませたというんだったら、それは外交的にそんな圧力をかけたことが日本に対する反感を生んで、国益を損する可能性だってあるのですね。

 ですから、私が言わんとしていることは、確かに、今の政局からいって、外相がそうしたスタンドプレーをとることは結構ですが、確かに日本向けには非常にいいかもしれないけれども、そういうものは現在の、二十四時間、CNNですとか、全部国際社会で報道されていく。ですから、そういうものに関しては、必ずしも日本だけの対応ではなくて、世界を視野に入れて行動していただきたい、そのように思っています。

 時間もないので、次に、ロシア問題についてお聞きしたいと思います。

 ロシア問題に関しては、一番皆さん御存じのとおり、この間の森前首相とプーチンさんとの間で、日本とロシアの問題というのは五六年の日ソ共同宣言に戻る、こういう話になっているのですね。

 しかし、日ソ共同宣言をよくごらんになったと思いますが、これは、外務省が出している「われらの北方領土」というところに出ています。ここに書いてありますように、これは、どこにも国後、択捉の話は出てこないのですね。「歯舞群島及び色丹島を日本国に引き渡すことに同意する。ただし、これらの諸島は、日本国とソヴィエト社会主義共和国連邦との間の平和条約が締結された後に現実に引き渡されるものとする。」こういうのがあるのですね。

 これに対しては、実は前回の外務委員会で私が質問しました。この文書に関しては、日本語とロシア語が二つとも正文になっている、しかし、実は微妙に表現が違うんだということを指摘して、これは恐らくそこの事務方のお手元にもあると思いますが、そういうことで、ロシア語の原文を引きまして、「日本国の要望」というところと「日本の国益」というところの表現が違う。「日本の国益」というところで書かれていることは一体何なのかということを東郷欧州局長に聞きまして、そして東郷欧州局長から、これは精査しますと。

 要するに、二島以外、国後、択捉に関係しているのはどこにもなくて、もしあるとしたら、唯一可能性のある表現が、日本の国益を考えてとか、このたった一行の間で何らかの意味がここに出てくるということなんですね。それに対して、外務省はどのような考えを結果的に持たれることになったでしょうか。それをお聞かせ願いたいと思います。

田中国務大臣 お答え申し上げます。

 その前に、何か先ほど、ホテルがどうとかいっぱい言っておられましたけれども、私も仕事を一生懸命やっておりまして、そういうものを見ている暇もないのですが、ドタキャンとかおっしゃいましたが、これは外国で通じないと思いますので、それも英語力のない私から専門の先生に、ロシア語もよくわかっていらっしゃるそうですので、お伝え申し上げます。これは、土壇場でキャンセルするということで、ドタキャンと外国で言われても通じないんじゃないかなと思ったりしましたが、先生なら通じるんでしょうか。

 そして今、日ロの交渉後とおっしゃいましたけれども、これは再三再四、ずっといつも申し上げていることなんですけれども、これは、過去数回、いろいろな会談が来て、最後のつい最近の森総理とプーチンさんとの会談にまで至っておりますけれども、基本は四島の帰属をどうするかという問題なんですね。北方四島の帰属の問題をしっかり解決して、それから平和条約に結びつけましょうという政府の見解は、基本は何ら変わってきておりません。

 ですから、そこに基本があるということをよく御理解いただきたいというふうに思っております。

首藤委員 政府の姿勢が変わらないということをもう一度聞いて喜ぶために質問しているのではないのですよ。

 私が前回質問した、要するに、日ロ、日本語とロシア語の正文の中で微妙な表現の違いがあるし、なぜこういう表現になるのか。ここに、そのときに話し合ったさまざまなことがパッケージとして、キーワードとして入っているんじゃないか。だからこそ、プーチンさんが、これは専門家によって研究してみなければいけないということを言ったわけですね。

 だから、ここに一体何が含まれているのかということに関して、それを調べてください、教えてくださいということを東郷さんに言って、東郷さんはそこでうなずかれて、河野さんもうなずかれたのですけれども、それがどうなりましたかという質問なんですよ。

田中国務大臣 私の前任者と前欧亜局長がどのような会話になったのか聞いておりませんので、事務方から後ほど先生のお部屋に御報告させていただくので、よろしゅうございますか。

首藤委員 よろしくございません。それは、やはり外交の基本として、これは事務方だけの話ではなく、外交は連続性ですから、外交は連続してやらなければいけない。外交の連続性を維持するためにも、これは一体どのようなことをやられたかということをぜひ御回答をお願いしたいと思います。いかがですか。

田中国務大臣 基本的なベースは、先ほど申し上げたようなことで日本の政府は一貫していますから、そういうことであろうと推測はいたしますが、また、先ほど申し上げましたように、御報告を正確にお届け、英語のですね、ASEMでの会議の、そんなにびっくりなさらなくて大丈夫です、御要望のものを、ちゃんと正確なものをお届けいたします。

首藤委員 ぜひよろしくお願いします。

 これは別に外務大臣を苦しめようと言っているのではなくて、ここに日ロ交渉の最大のキーがある、このほんの一行に日ロ交渉のこれからの四島の帰属をめぐっての最大のかぎがある。ですから、それは私に説明していただくと同時に、外務省の中で徹底的にこの問題を理解していただきたい、そういうふうに思います。

 さて、時間も迫ってまいりましたので、次のテーマに移りたいと思いますけれども、次はODAの問題について御質問させていただきたいと思うのです。

 日本の経済がだんだんと苦しくなってきている。こういう状況の中、日本はODAは何と世界一らしいですね。何か最近の新聞を読みますと、日本の国力は大体世界二十二位、そんなものじゃないかなんと言われていますけれども、ではどうしてODAを、日本の経済規模、身の丈に合った援助にしていかないのかという疑問がそこで出てくるわけですね。

 現在、ODAの徹底的な見直しが必要というのがあります。このきっかけは何と、自由民主党の亀井静香代議士がODAは三割削減しろ、こういう発言をされて、それに対して、では民主党も三割削減しなければいけないということで、いろいろ精査を始めたわけですね。

 私も、例えばODAの大綱基準、あるいは核実験をやっている国、軍事大国、あるいは、いわゆる卒業国条項といいましてもう発展途上国でなくなっていく国とか、あるいは腐敗政権、こういう国をODAの対象から排除しますと結構減っていくのですね。驚くほど、一割から二割ぐらいは簡単に減っていくのじゃないかなという感じもしているのですね。

 そういうところで出てきたのがケニアのソンドゥ・ミリウダムですね。私は長年アフリカ援助の問題に関係していても、これは本当に驚くようなプロジェクトなんですけれども、この問題に関しては、既に日刊紙や週刊誌で取り上げられて、私自身も質問主意書を政府に提出しております。この質問主意書はごらんになりましたでしょうか。

田中国務大臣 この問題は副大臣が大変詳しくておられますので、副大臣から答弁いたします。

植竹副大臣 今、首藤委員のお尋ねでございますが、質問書についてはまだ見ておりません。

 ただ先般、私は、LDC、低開発諸国の国際会議に行きまして、そのとき、ODAにつきましては、日本に非常に期待を持って、多くの低開発諸国の方々から要望があったということは事実でございます。

 しかし、ODAを出すためには、相手国の環境とかいろいろな状況を調べて出しておるわけでございます。したがいまして、お尋ねのケニアのソンドゥ・ミリウダム建設につきましても、本計画案を、再生可能なエネルギーである水力を用いてやるということは、例のCOP3のときにも水力発電というものが……(首藤委員「そこまで聞いておりません」と呼ぶ)

土肥委員長 質問の範囲内で答えてください。

植竹副大臣 その質問主意書はまだ見ておりません。

首藤委員 これはぜひ見ていただきたい。本当はきょうが回答期限だそうですけれども、二週間延ばしていただきたいということで延ばしておりますけれども、本当ならば、もう当然見ていただいていると期待しているんですが。

 長年こういう問題にかかわってきた者からしますと、このソンドゥ・ミリウダムプロジェクトというのは、外務大臣、よく聞いていてください、次、外務大臣に質問行きますよ、その流量のほとんどを取水堰で集めて、トンネルとパイプで発電所を通して六十メガワットの発電をするもの。これはもう既に参議院でも恐らく一回話題になったと思いますけれども、これがどこで行われているかというと、ケニアなんですよね。

 ケニアは、御存じのとおり半乾燥地帯。外務省のODA関係のホームページを見ますと、ケニアがいかに半乾燥地帯であるかということがずっと出ているんですね。実際またそうしたプロジェクトが組まれているんです。要するに、ケニアは半乾燥地帯なんですよ。私は若いときに長年アルジェリアにいたんですけれども、アルジェリアの砂漠、タシリ高原に行くと、カバとかワニとかの壁画がたくさんあるんですね。ケニアは、しばらくするともうすぐ砂漠になってしまう、こういうふうに言われている地域なんですね。そういうところで、このダムというのは水量のほとんどをとって発電用に使うんですね。

 そうすると、問題なのは、ではもとの川はどうなるかというと、その十キロぐらいの川に関しては、水をちょろっと出しますというんですよ。その量が毎秒〇・五立米なんですよ、〇・五トン。大体おわかりになると思いますけれども、バスタブが大体一トンですかね。要するに、ふろおけの半分ぐらいの水があのケニアの乾燥地帯の中でようやく流されていく。こうしたものを見れば、当然のことながら、もとの川というのは干上がってくるわけでありまして、水草も絶滅していくし、一度破壊された環境というのは二度と戻ってこないんですね。ですから、このプロジェクト自体にフィージビリティースタディー、FSといいますけれども、これは全然されていないわけですよ。

 これに対して、環境問題もあるということが当初から言われて、ここに日本工営のアセスメントのあれがあります。本当に薄いものです。ほとんどが二次データで、重要テーマがほとんど数行の記述しかない。こういうような環境のデータしかないんですけれども、これに関して、外務大臣はいかがお考えですか。

田中国務大臣 我が国はいろいろな国に対してたくさんの、各種のODAをいたしておりますけれども、その一つ一つについて申し上げることはできません。ただし、やはりそれぞれが必要性があって、そうして先方からもぜひということがあってスタートしていると思いますので、やはり進行している中でもって問題が起こることもありますでしょうし、またそれを乗り越えて、さらに継続する方がいいというものもあると思いますから、それぞれの具体的なケースをよく精査して、今後ODAのあり方がどのようにあるべきか、ちょうどターニングポイントに来ているということもあるのではないかというふうに考えます。

首藤委員 おっしゃるとおりだと思いますね。ですから、このケースは本当に、日本のODAが曲がり角にあるときにたまたま出てきたケースではないかな、そういうふうに思っています。

 ただ、このプロジェクトには、問題となっているのは単に事業化可能性あるいは環境問題だけではなくて、よくわからない点が多過ぎるんですよ。例えば、このプロジェクトは、先ほど言いましたけれども、だれが考えても環境に対して害がある。確かに、それは水力ダムで、石油を燃すのではないからいいという考え方もあります。しかし、ダムがどんなに環境破壊かということはだれでも知っているわけですね。ですから、そういうものに関しては、当然のことながら環境的な配慮がされていなければいけない。

 ところが、何ですか、このプロジェクトに関しては環境特別金利で、要するに環境にいいから特別金利にしようと。スリランカのケースは、何と〇・七五%の金利になっていた例もあるんですね。素人考えですけれども、こんなにめちゃくちゃに環境に悪いプロジェクトがどうして環境特別金利の対象となったのか、そこの点は非常にわかりにくいところだし、みんなが関心を持っているところで、前から田中外相が言っておられるように、外務省の透明性、公開性を前提として、なぜこのプロジェクトが環境特別金利の対象となったかをぜひ公表していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

植竹副大臣 特別環境案件金利の対象というのは、先ほど申し上げました低開発諸国の環境問題というものは非常に重要だとCOP3で取り上げられたというときに、我々は同じ年度におきまして、この問題について、これを特別環境金利に適用したという次第でございます。

首藤委員 私は、それをなぜやったかじゃなくて、そのいきさつを公開していただきたいということを外務大臣にお願いしているんです。外務大臣、それは公開していただけますね。

田中国務大臣 経緯がわかりませんので、持ち帰って検討いたします。

首藤委員 だんだんプロフェッショナル外務大臣としておなれになってきたのかなという感じがしないわけでもありませんが。

 この問題は本当に深刻な問題なんです。対象がケニアになっています。ケニアは、御存じのとおり、重債務国といいますか、お金を借りて借りて借りて、それがたまって、さらにその金利がまたたまってという国なんですよ。今世界では、世界の国が貧しいのは、貧しい国が借りた借金がその貧しい国を苦しめているんだということに世界の流れはずっといっているんです。ケルン・サミットで、日本も参加しているわけですけれども、そこで、ケニアは重債務貧困国として認定して、ここにはもう要するにお金を貸さない、お金を貸すことがこの国を貧しくさせるんだというふうな考え方も出てきているわけですね。

 それから、この時期に、田中外相も御存じかもしれませんが、例えばNGOでは、ジュビリー二〇〇〇といって、要するにそうした先進国がつくり出した債務を帳消しにしようという運動だってあったんですね。ジュビリー二〇〇〇の対象、あるいはケルン・サミットの対象もそうですけれども、驚くことに、ほとんどが日本の債権、累積債務なわけですよ。ですから、我々が貸したものが、ほとんどが帳消しの対象となってくる。

 この貸した金というのはどこから来ているかというと、お金持ちが、貧しい人、かわいそうな人にお金を上げようといって出しているんじゃないんですね。そういう慈善ではないんです。それは私たちの税金で、そして、そういうところに貸して、貸したために、受け取った国は貧しくなり、紛争が起こり、環境が破壊された、こう言っているわけですね。ですから、世界では、それを消そうと。

 そういうふうに考えていくと、このプロジェクトもそうですけれども、重債務国と認定され、いわゆる債務帳消しの対象となっているところへまださらに追加していくということなんですよね。こういうことをやると、私もNGOの代表者として、NGOとして行くと、世界じゅうから非難されるんですよ。日本が世界を悪くしている、日本が紛争を拡大している、日本が環境を破壊している。こういうプロジェクトをやっていくと、日本がやったODAが結局その国で批判され、またその国の環境を決定的に破壊していく。

 憲法には、我々は国際社会で名誉ある地位を占めたいと思うと。しかし、現実にこんなプロジェクトをやっていたら、やればやっただけ国際社会から名誉を失っているじゃないですか。こんなプロジェクトはある意味では憲法違反じゃないですか。いかがですか、外務大臣、どのようにお考えですか。

田中国務大臣 ケニアの問題に大変詳しくていらして、るるおっしゃっておりまして、円借款というものは、相手国の債務負担能力というものを含む経済状況に配慮した上で供与を決定すべきことであるということを御指摘なさったと思います。まさしくそのとおりでございますから、やはりこれもしっかりと精査をするという対象だと思います。

首藤委員 それで結構です。それでしっかり精査していただきたいと思うんですね。

 ただ、このプロジェクトは、私ども議員としても、国民としても、またそれからNGOとしても、本当に真剣に考えなければいけないプロジェクトだと思っています。今まで、援助はいいことだ、我々が一生懸命働いて、血と汗と涙で働いたお金が、やはり発展途上国のアフリカの貧しい人たちみんなが喜んでくれる、そして、どこへ行っても、ああヤパン、ヤパンが来たかとか、ヤポネ、ヤポネと、ジャポネ、ジャポネと言って、みんな日本人を温かく受け入れてくれる、こういうものだと思っているんですね。しかし、現実に、私たちのODAすら、やり方によっては発展途上国を苦しめている場合だってあるんだということを我々は考える必要があると思うんですね。

 特に、今の流れは、要するに先進国が援助という形で悪いことをしないということが今一番大きなテーマとなっているんですね。ですから、その辺ぜひ精査していただきたいと思うわけであります。

 長らくNGOにいた者からすると、IMFとかあるいは世銀というのは大変評価が低いというか悪いわけですけれども、そのIMF、世銀ですら、プロジェクトの入札は、本当に小さな業者に至るまで全部ホームページで公開してあります。ですから、日本のODAに関しても、いろいろ世界から批評されているIMFや世銀と同じくらい、我々も徹底して入札に関しては公開していただきたいと思っています。

 そのIMF、世銀ですら、ケニアに関しては九七年から追加融資を停止しているというのは、外相は十分に知っておられることだと思うのですね。

 もう一つここに問題がありますね。現在第二期工事が進行しているのですけれども、これは日本のコンストラクターの、私はよくこの業界を知らないのですけれども、鴻池組という企業さんがやっているのですね。

 立派な会社だと思うのですね。例えば、鴻池組の社長さんは、九四年に海外建設協会の会長になられています。この鴻池組というのは非上場会社なんですね。ですから、我々は有価証券報告書も見ることはできませんし、よくわかりませんけれども、海建協の会長に選ばれていくということは、大変名誉ある立派な会社だと思うのです。

 ただ、そこでどういう会社かなと調べてみますと、例えば新聞の記事検索を見ますと、ちょっとこれはいろいろ問題があるのですね。例えば、日本での阪神大震災後の建設の談合に関して問題があった企業の中に名前が出てくるとか、あるいは断トツに政治献金が多いとか、さらに沖縄の金融機関をめぐって無担保融資が行われているとかいうワシントン・ポストの記事もあるのですね。

 ですから、何を言わんとしているかというと、私たちは、だれが見ても私たちのお金がきれいで、そして私たちが提供する発展途上国の貧しい人たちが本当に喜んでくれる、こういうことを期待するわけですけれども、それを曇らせてはいけない、そういうふうに思うのですよ。

 現在、この問題に対しては、先ほど言った、IMF、世銀がすべて小さい下請け業者に至るまで全部価格とやっていることをホームページで出すように、本当に全面公開が前提なのです。

 企業でいえばもっと厳しくて、私の見たところでは、例えばIBMという会社がありますけれども、そこの企業の行動規範というのを見ますと、疑いのある取引をしてはいけない。では、疑いのある取引とは何ですかというと、そこに書いてあるのですよ。疑いのある取引というのは、その件が、あるとき人が朝刊を見て、あっ、これはきっと怪しいなと思うようなものは疑いがあるからだめだ、こう書いてあるのです。大変厳しい基準ですよ。民間企業ですらそうなんです。

 まして、公金を、国民の税金を使う私たちは、やはりそれくらいの厳しさを持って臨まなければいけない、そういうふうに思うのですね。ですから、たとえ優良な日本を代表するような企業であっても、やはり疑わしいものへ我々は関与していってはいけないということだと思うのですよ。ですから、日本の立場というのはだんだん国際社会の中で厳しくなってきます、こういうときにこそ、先人の知恵である、瓜田にくつを入れずとか、李下に冠を正さず、こういう精神を私たちは忘れてはいけない、そういうふうに思うわけであります。

 このことに関しては、日本の政治家も随分関係しているというふうな記事はたくさんありますね。例えば、森前首相も、このことを推奨されたと外務省のホームページにも書いてあります。

 それから、今ちょっとおられませんけれども、この委員会を代表する鈴木宗男議員のように立派な外交の専門家も、ここに名前が載っていたりしているのですね。

 この週刊誌の記事なんかを見ますと、例えば先ほど私が言った鴻池組から五十万円の献金があるとか、トップとの関係も深いと聞きます。政治家として、それは鈴木議員のような有力な方には献金したいとか、いろいろな方、いろいろな企業もあるでしょうから、それは合法的である限り問題はないと思うのですね。

 それから、週刊誌の記事なんかを見ますと、九九年八月十八日の公電には、鈴木官房副長官とケニアのモイ大統領、モイさんというのはかなり腐敗で有名だった人なんですけれども、その会談があって、そこで円借款の推進方針が決定されたなんということが、公電だなんて載っているのですよ。

 公電なんというのが外へ出ること自体が問題だと思うのですけれども、この点に関しては、鈴木宗男議員の個人の名誉がかかわることですから、ぜひこの資料は公開して、人格高潔な鈴木宗男議員、関係ないのだ、鈴木宗男議員のためにも、ぜひ公電は全面公開していただきたい。いかがですか、外務大臣。

植竹副大臣 私から。

 実は、ゼネコンのお話が出ましたが、私は今副大臣をやっておる前に建設省の総括政務次官をやっておりまして、このゼネコン対策の問題につきましては、大変私どもは厳しくやっております。

 いわゆる入札の公開性、透明性というものをやって、国民の皆様の税金を使うわけですから、これをいかにして厳しくやっていくか、そういうものを強くやっております。

 そして、例えば評価の問題も、前評価、中評価、後の評価といったことによりまして、これからはそういうことは一切ないというふうに指導もしておりますし、やっております。

 さらに、そういう二期工事につきましてのお話でございますが、この点につきましては、これはケニア政府自体がやったので、二期分の追加部分については、鴻池が関係しているとか、それは私ども一切関係ございませんし、また……

首藤委員 質問にだけ答えてください。

 質問を繰り返します。九九年八月十八日の公電というものに、鈴木官房副長官とケニアのモイ大統領との会談があって、そこでこれを大いに推進するということを決めたということで、大体こんな公電が外へ出ることがけしからぬと言っているのですよ、一つは。

 ですから、それは粛正を、組織的にそういうことをきちっとしていただきたいというのと同時に、同じ政治家として、自分の名前がそんな公電にあって、それがうそであるならば、それは否定しなければいけない。ですから、鈴木宗男さんの個人の名誉のために、ぜひ公電を公開していただきたい。そのことを外務大臣にお願いしているのですが、いかがでしょうか。

田中国務大臣 委員は、それは週刊誌か何かでごらんになったのでしょうか。

首藤委員 そのとおりであります。

田中国務大臣 そうでありますと、一々政府から委員の方に、何とか調べるとかそういう筋ではないと思いますので、きょうの委員会で最初のお尋ねの方にも申し上げましたけれども、もう今退席されましたけれども、マスコミにこう書いてある、テレビでこう言った、だからこれはどうだ、これはどうだと言ったら政治は機能しなくなりますので、それは私どもとしてはいたしません。

首藤委員 それは異なことをおっしゃいます。私は、それが例えばワシントン・ポストであろうが、ニューヨーク・タイムズであろうが、朝日新聞であろうが、あるいは日刊何とか、週刊何とか、あるいはテレビ何とか、関係ないと思います。

 問題は、事実であるかどうかじゃないですか。事実であれば、どんなにマイナーなメディアであっても、フリーのカメラマンが撮った一枚の写真でも、事実ならば事実であり、それが事実でないというなら、事実でないという証拠をきちっとやって、鈴木さんの無念を晴らしてあげてください、そのようにお願いしているのではないですか。

田中国務大臣 まだ鈴木先生は亡くなったわけではありませんから、無念だとか思っておられるかどうかもわかりませんから、余りフライングなさらないでください。

 公電内容について、一つ一つ公表もいたしませんし、それに基づいて、調査をしろとおっしゃいましたか。(首藤委員「公開してください」と呼ぶ)公開。それはちょっと大変かと思いますけれども、ただ、今教えてもらったところによりますと、現在実施中の水力発電計画第一期工事につきましては、一般アンタイドの調達条件のもとで、ケニア側の責任において国際競争入札が行われて、この結果、鴻池組とノルウェーの企業及び南アフリカ企業から成る共同体が受注している、そして本計画の検討と実施に当たっては特定の政治家の関与ないし影響力の行使があったという事実は一切ありませんということですが、先生のお尋ねは、そうであってもマスコミの方が正しいであろうから調べろとおっしゃったんでしょうから、答えは、先ほどのとおり、公電について一々対応はいたしません。

首藤委員 この件は、我々政治家の名誉の問題もありますけれども、同時に、ここに出てくる一人の方が青木大使なんですね。青木大使はペルーの日本大使館占拠事件で問題になった方ですけれども、青木大使がこのプロジェクトに関して積極関与しているということは、日本のメディアだけではなくて、ケニアのメディアにもいろいろなところで出てきているんですね。

 ですから、一体そういうことを大使というものが本来すべきことなのかどうかということがありますけれども、ロシアの問題に関しては、小寺課長さんですか、呼び戻していろいろ聞かれているということなんですが、ぜひ青木大使も、この問題は一体どうなのかということを、召還していただいて、外務省の内部及びこういう外務委員会でぜひヒアリングさせていただきたい、そういうふうに思いますけれども、外務大臣、いかがでしょうか。

田中国務大臣 今そのような考えはございません。

首藤委員 それはどういうことですか。原理原則だからそうですか。それとも、こういう臭い物にふたという意味でおっしゃっているんですか。

田中国務大臣 臭い物ともわかっておりませんし、メディアで報道されたことについて一々対応はしないというのが基本原則だと申し上げています。

首藤委員 ぜひ調べてくださいとお願いしているので、果たして臭い物であるかそうでないか、調べたころにまた質問をさせていただきたいし、私の質問主意書もきちっと答えていただきたいと思います。

 それから最後に、この問題で一番重要な点をお伝えしたいと思います。

 それは、環境問題があってもケニアの発展にはどうしてもこの電力が必要だ、わかりますよ。本当にそういう気持ちはわかりますよ。ただ、問題なのは、住民の方も納得させなきゃいけない。日本のダムもそうですけれども、住民の方がどれだけ合意しているかなんですよね。

 そこで、私は必ずしも環境万能主義者ではないんですから、一体どうですかということをJBICにも聞き、外務省にも聞き、財務省にも聞き、それから現地にも聞き、いろいろな人に聞きました。出てこないんですよ。

 それで、二日間ミーティングを開いた、一月の二十四日、二十六日に公聴会を開いたというのがあります。これは、来た人が書いていて、最後にぺらぺらと一枚だけ、推進方針だという紙が一枚ついています。これで果たして住民の合意ができたなんて言えますか。

 先ほどの原点に戻りますけれども、私たちが稼ぎ出した、この不況の中の苦しいところでつくり出してきたお金というものが、それを受け入れる発展途上国の人たちにとってみてありがたい、うれしい、本当に日本はいいことをしてくれたというふうに確信を持てないと、私たちは私たちの大事なお金を出せないじゃないですか。ですから、この件に関しては、ともかく集会の議事録をくれくれと言って、もう一カ月かかって出てきたのがこの二枚ですよ。

 やはり僕は、ちょっと立場を離れてもそうですが、本当に思うんですよ。もう長年こういう問題に関係して、田中外務大臣は外務省と官僚主義と闘って一カ月かもしれないけれども、私は二十年間外務省と闘ってよく知っていますよ、問題を。しかし、やはり時代は変わっているんです。今こそこういう問題に関してはきちっとした態度をとってやっていただきたい、そういうふうに思うんです。

 ともかく、本当にこのプロジェクトが現地社会にとって、経済的に意味があるものか、社会的なインパクトが小さいか、環境への影響が小さいか、そういうことをきっちり確保をして、そしてなおかつ、それに対して入札は、これを環境特別金利だとすると日本の企業と現地の企業しか入札できないですよね。本当に国際社会で一番安くていいものをつくっているところから、場合によってはオランダかもしれない、場合によってはインドネシアかもしれない、そういうところも入れてきちっとしたプロジェクトを確立してやっていただきたい。

 その意味で、事業化調査、それから環境影響調査、住民集会とその合意、入札、すべてこれをやり直して、私はこのプロジェクトに反対しているんじゃないんです、やはりプロセスに欠陥がある、ですから、それをきちっとして、私たちに一票一票を投票してくれた国民に対しても、これはいいプロジェクトですよ、これは私たちの今苦しいところの財布から出ているお金ですけれども、それは必ずケニアの人たちに評価されます、必ずそのことが日本の名誉につながっていきます、そういうことをぜひ確認していただきたいと思いますね。

 そういうことのために、ぜひNGOの代表者などとも会って、そういうテーマで話し合っていただきたいと思いますが、それに対しての、もう時間もほぼなくなりましたが、外務大臣としての総括的な御意見をお聞きしたいと思います。

田中国務大臣 ODAは、本来の趣旨、それにかなっているかどうかという原点に立ち返って、見直すなり検討をいたします。

首藤委員 もう本当に時間がありませんが、最後にあと一つだけお聞きしたいと思います。

 今非常に私の心を痛めているのは、五月に富山県小杉町で起こったコーランの廃棄事件です。これは、こういう表現は悪いのかもしれませんが、文書がはんらんしている世界の中で、週刊誌がその辺に捨てられている世界の中で、一冊の本が破り捨てられた、何だという気持ちもあるかもしれない。しかし、このことはイスラム世界にとってみれば限りない犯罪的な行為なんですよね。ですから、このことの対応を間違えますと、これはイスラム世界だけではなくて、全世界で日本製品に対する不買運動が起こったり、あるいはアメリカの旅行者なんかがアフリカや各地で問題となっているように、攻撃をされたりする、それから、駐在員の家庭に対する嫌がらせや攻撃が加わってきたり、これは本当に、今のこの時点で起こった最初の小さな兆候でありますが、大問題に発展していく兆候になります。

 この問題はぜひ真剣に考えて、特別チームをつくって、外務省で真剣に対応していただきたい。これはある意味では教科書問題をはるかに超える大きな問題に発展してくるかもしれない。それに関しての外務大臣の御意見はいかがですか。

田中国務大臣 いろいろな民族、いろいろな宗教が地球上にございまして、それぞれの立場をやはり尊重できるような人づくり、そして、またこんなことが起きないように、起こった場合もそれにしっかりと対応できるような体制を準備いたします。

首藤委員 外務大臣らしい答弁でございました。どうもありがとうございました。

 これで終わります。

土肥委員長 次に、大森猛君。

大森委員 日本共産党の大森猛でございます。

 ハワイ沖での米原潜と宇和島水産高校実習船えひめ丸の衝突事故から四カ月近く経過いたしました。私はちょうど三カ月前の三月一日の予算委員会で、この問題に関連して、当時の河野外務大臣に質問をいたしました。その中で、同様の事故を二度と再び起こしてはならない、事故の原因、責任の徹底追及、御家族など関係者の要望への十分な対応、こういうことを強く求めました。特に、日本の近海でこうした原潜による事故の危険性、これは大もとには日本に原潜が日常的に寄港しているということがあるわけでありますけれども、特に二つの具体的な危険性、これを指摘して、調査とアメリカへの要請、提起等を河野外務大臣に求めました。

 この点についてまずお聞きをしたいと思うんですが、こういう事故を日本近海で起こしていく二つの具体的な点の一つは、今回のえひめ丸の場合にも大問題になりました、民間人同乗での訓練、デモンストレーション、こういうものが日本近海で頻繁に行われているということを指摘しました。こういう民間人同乗訓練などを行わないよう強く申し入れるべきじゃないかという要求を行いまして、三月一日の予算委員会で藤崎北米局長も、潜水艦にどのような乗船を行ったのかという具体的な点については把握しておりませんで、実態把握に現在努めているところですと答弁をされました。

 その後、三カ月経過をしたわけでありますけれども、実態把握はできたでしょうか。調査そして米軍への照会や申し入れは行われたでしょうか。御答弁をお願いしたいと思います。

藤崎政府参考人 お答え申し上げます。

 今大森委員御指摘の点につきまして、米原潜を含めまして、米軍艦船の入港という問題につきまして、これは河野前外務大臣が米側に対しまして安全確認を徹底するよう指導してほしいということを重ねて申し入れた次第でございます。米側からは、海軍のトップから下に至るまで、細心の注意を払って適切な手順を構築するよう新たな指示を行っているという説明がございました。

 民間人の乗船の問題につきましては、今委員御指摘のとおり、実態把握をしているという御答弁を申し上げたところでございまして、その後、私どもといたしましても、アメリカ側に対しまして情報を提供するようにということを重ねて申し入れておりまして、私どもとしては近く入手することとしたいというふうに考えております。

大森委員 あなたが実態把握に努めるとおっしゃってから既に三カ月たったわけであります。実態把握はまだできていないのですか。その点をお聞きしたいと思います。どういう照会をされたのか。

藤崎政府参考人 御答弁申し上げます。

 私ども、今御指摘のとおり、委員会で御答弁申し上げました後、米側に対しまして、民間人乗船についての情報を提供するようということを重ねて要望いたしまして、現時点で御報告できることはございませんが、近く入手して御報告したいというふうに思っております。

大森委員 我が党の調査団も、えひめ丸の事故直後に現地に飛びまして、そして米軍当局者ともいろいろ会見等を行いまして、その後、米軍側から、例えば民間人の乗船について日本近海では六十人という回答などをちゃんといただいているわけです。外務省の調査というのは本当にこの三カ月間何もやっていなかったのに等しいのじゃないかと思いますので、これは実態把握を全面的に行って、きちんと報告していただきたいと思います。

 日本近海の原潜の事故の危険性のもう一つは、きょうお配りをしました資料の一番最後につけておりますけれども、小泉首相のそれこそ地元の横須賀近く、相模湾が米原潜の訓練区域、行動区域に指定されて、そこで、告知によれば、実弾演習以外のすべての演習が行える、魚雷の模擬発射も含むという演習がここで行われている、この問題も取り上げたわけであります。

 これは河野前外相はもちろん御存じなわけなんですが、相模湾というのは、漁業者、遊漁船が大変多いところであります。私どもの調査でも、大体、遊漁船、漁船で静岡、神奈川で四千数百隻、あと、プレジャーボートとかヨット等々でも四千七百隻と大変な船舶の集中地域になっている。これは、歩行者天国でいえば、歩行者天国にダンプカーが突っ込むようなものじゃないか、しかもダンプカーには原子炉も積まれているということを指摘して、こういう状態では漁業者、関係者などの安全が守れるのかという質問を河野大臣にいたしました。そして、河野大臣は、訓練する場所として首をかしげる、こういう答弁をされました。

 さらにその後、三月二十八日の当委員会、外務委員会でこれが問題になりまして、河野外務大臣はこの外務委員会では、「この水域は極めて多くの、例えば遊漁船、釣り船を初めとして漁船その他たくさんの船がいるわけで、彼らは皆そこでつまり生計を立てる、なりわいを立てている人たちでございますから、そうした人たちのことは十分に考えてもらわなければ困るわけで、日米合同委員会その他でこの問題については問題提起をするように私は指示をいたしました」こう答弁をされているのですね。

 そこで、お聞きしますが、外務省は日米合同委員会にどのような提起をされたでしょうか。

藤崎政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員御指摘の本年三月一日の委員と河野前外務大臣の質疑でございますが、河野大臣からは、今御指摘の発言の後に、「しかし、海軍の立場に立てば、」ということで御説明がございまして、「あの辺は米海軍にとってみればかなり重要な場所という意識もあるかもしれません。 いずれにしても、私は、この問題については施設庁ともよくお話をして、今回の事故にかんがみて、あの場所の安全性というものを確認できるような努力をしてみたいと思っております。」こういう答弁でございました。

 私ども、この前大臣の指示を受けまして、相模湾潜水艦行動区域における安全の確保につきましては日米合同委員会で米側に対しまして提起を行いまして、提起を行いましたのは三月八日の日米合同委員会でございますが、三月二十二日の日米合同委員会で、米側より、日本の領海内における潜水艦の行動の安全は米海軍の最重要事項であり、安全確保のためにあらゆる努力を払うという回答がございました。

大森委員 河野前外務大臣の答弁は、私への答弁でも外務委員会での答弁でも、こんな場所が訓練場所としていいだろうかというそもそもの疑問を表明されているわけですね。つまり、歩行者天国にダンプカーが乗り入れてよいのかという疑問だと思うんです。

 こういう点で、今日米合同委員会で提起した中身というのは、ダンプカーがだめだということじゃなくて、ダンプカーに安全運転をしてくれと言うだけじゃないか。私は、その意味では、前外相の答弁とは大きくかけ離れた日米合同委員会の提起じゃないかと思うんですね。

 これは三月二十九日の神奈川新聞でありますけれども、大きな見出しで、「米原潜の相模湾訓練で河野外相 日米合同委で廃止や縮小を視野に要求へ」、こういう廃止や縮小を視野に要求するという新聞報道もされているわけです。私のところに伝わってくるいろいろな状況も、河野当時の外務大臣の思いもそうしたことと一致をしているわけですね。

 日米合同委員会の日本側の提起がそういう内容であれば、私は、国会での河野外相の私への答弁や外務委員会での答弁や、そういうものと全くかけ離れているのじゃないかと思うのです。その点はいかがですか。

藤崎政府参考人 御答弁申し上げます。

 今委員御指摘の河野大臣との質疑でございますが、大臣の方からは、確かに委員御指摘のとおり、私自身は、こういう場所が適当な場所であるかどうかということは少し首をかしげたくなる場所であることは事実でございます。「しかし、海軍の立場に立てば、あの近くにはちょうど修理、点検を行う場所があって、そうした修理、点検の後のテストといいますか、そういうものに使う場所というふうにも考えているかもしれません。あるいは、首都圏に極めて近い場所ということもあって、あの辺は米海軍にとってみればかなり重要な場所という意識もあるかもしれません。 いずれにしても、私は、この問題については施設庁ともよくお話をして、今回の事故にかんがみて、あの場所の安全性というものを確認できるような努力をしてみたいと思っております。」という答弁を前大臣はしているわけでございます。

 次に、三月二十八日の外務委員会、当委員会でございますけれども、その場では、外務大臣は、この水域は極めて多くの、例えば遊漁船、釣り船を初めとして漁船その他の多くの船がいるわけで、ということを言われて、「そうした人たちのことは十分に考えてもらわなければ困るわけで、日米合同委員会その他でこの問題については問題提起をするように私は指示をいたしましたが、既に日米合同委員会では問題提起をしたということでございます。」というふうに答弁をしております。

 大臣が言っておりますのは、三月八日の日米合同委員会において、我が方より、相模湾潜水艦行動区域における米原子力潜水艦の行動内容について、情報提供、航行の安全につき確認したいということを要請いたしましたのに対しまして、三月二十二日の合同委員会において、米側より、日本の領海内における潜水艦の行動の安全は、世界の他のすべての地域においてと同様、米海軍の最重要事項である、日本近海、その他あらゆる地域において、米海軍の潜水艦の通過、行動の安全の確保のためにあらゆる努力が払われる、その行動の安全に適用される関係法令は重視されるということを回答してきた、このことを言及している次第でございます。

大森委員 昨日の参議院の外交防衛委員会でも、上瀬谷そして富岡倉庫の米軍基地、これに関連して、遊休地問題で河野外相が調査すると言ったものについて事務方がしていないということが明らかになった。

 私は、今回のこの問題でも、大臣の答弁、その全体の流れ、それを大変低く解釈して事務方はやっているんじゃないか。そのことが明確じゃないかと思うんです。外務省というところは、大臣の発言をそんなふうに軽く扱うのか。しかも、国権の最高機関であるこういう国会での大臣の答弁でありますけれども、簡単にそれをねじ曲げて、単なる安全航行だけに目標を矮小化してしまう、これは決して許されないことだと思うんです。

 外務大臣、そこでお聞きしますけれども、大臣は近くアメリカに行かれるわけでありますけれども、先ほど申し上げたように、こういう遊漁船、釣り船等々が一万隻近く集中する、恐らく世界でも最も船舶の集中する地域の一つだと思うんです。そういうところに原子力潜水艦が入っていく、入っていくだけじゃなくて、模擬魚雷の発射を含む実弾演習以外のすべての演習を行うことができるというようなことが本当にいいだろうか。これは五十年前に設定されたわけでありますけれども、もうここらで見直しをすべきじゃないかということを、ぜひ直接アメリカ側に伝えていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。大臣にお聞きします。

田中国務大臣 きのうの委員会でございました上瀬谷通信施設の問題とか、あれはきのうお答え申し上げましたので繰り返しませんけれども、この問題も、相模湾の行動区域ですけれども、あのえひめ丸の事件等もありますから、やはりみんな非常に過敏にならなければならないということでありますので、今のところ、今のところと言いますとおかしいですけれども、本件自体は、水域を撤廃するというところまでいくかどうかわかりませんけれども、やはり、安全の確認といいますか、そういうことをもう一回、アメリカも少しねじが緩んでいるかもしれませんので、常に危機管理としてそういうことをしっかりと、外務省だけではございませんで地域ももちろんそうですし、あらゆる面でしっかりと緊張の糸を張るようにしていきたいというふうに思います。

 アメリカでの発言に加えるかどうかということでございますけれども、これは個別に言っていると山ほどになってしまうと思いますので、国内でもう少し対応できる問題とそうでない問題と、できることは国内でもっともっと外務省がやらなきゃいけないこともあると思います。ですから、アメリカでじかにパウエルさんにそういうことを言うかどうかという中に本件が含まれるかどうかはちょっと難しいかというふうに思います。

大森委員 原子力潜水艦の問題は、これはそれこそ六〇年代以来日米間の最大の政治課題であったわけですね。この問題で大変不思議なのは、とにかく原子力潜水艦が登場する以前、一九五二年、ノーチラス号が発進したのは一九五四年ですから、一般の潜水艦しかない時代に設定された訓練区域が今日もなお五十年近く存在している、このことだと思うんです。原子力潜水艦については、これをそのままそこに適用する、こういう性格のものでももちろんない。

 調べてみますと、原子力潜水艦の日本寄港、この問題で最初にあったのは、一九六一年、当時の池田首相が訪米した際に、ラスク・小坂外相会談が行われて、ここで日本に原子力潜水艦を寄港させたいがどうかという打診がありました。しかし、当時は、このときは小坂外相は、日本の国民感情その他を考えてこの話はなかったことにしてくれということで一たんおさまるんです。そして、改めて日本に対してこういう寄港の打診があったのが二年後の一九六三年の一月でありました。当然これは国会でも大変大問題になった。国民の運動も大きく広がったわけであります。日本政府もたびたび、原子力に対する我が国民の特殊な感情を考慮してアメリカ側に問い合わせる、日米間の交渉も随分やられたんですね。今言っているのは原子力潜水艦の寄港と出航だけですよ。

 そうした中で、一九六四年、約二年後に、アメリカが、原潜寄港に関するエードメモワール、それで八月の二十四日には、外国の港における合衆国原子力軍艦の運航に関する声明、いわゆる合衆国の声明というのを送付して、その中でいろいろな約束をしたわけですね。最近問題になりました原潜の入港時刻、停泊場所など二十四時間前に通告すること、あるいは、領海内を原子力潜水艦が通過できるのは、日本の港に直接進入または出航する場合に限るということをこの中で約束しているわけですね。これを受けて、日本側は初めて原潜寄港受け入れを表明する。

 最初に小坂外相にあってから四年近くかかっているわけですよ。原子力潜水艦の寄港、出航だけでこれだけのことがやられた。この間、国民の運動も大きかったわけです。ですから、日本の領海内を通過できるのは、港に直接進入もしくは出航する場合に限る、寄り道をしてはならないとなっているわけですね。これを条件に原潜の寄港を認めましょうと。国民の側はだめだと大変な運動が起こったわけですね。

 こういう経過から見ると、原潜登場以前につくられたこういう潜水艦訓練区域、ここで訓練、演習を行うことは、この日米間の取り決めにも反するんじゃないかと思うんですが、いかがでしょうか。

田中国務大臣 今たまたまラスク長官と小坂さんの話が出ましたけれども、あれは、アメリカはケネディ政権でディーン・ラスク、こちらは池田政権で小坂善太郎さんで、私は、あのときは父が大蔵大臣だったので、ケネディ政権のラスクさんにもお会いしましたし、あれからずっとであれば、大変長い間の時が流れたんだということを実感としてわかります。

 それで、先ほど藤崎局長から、三月の二十二日ですね、この日にアメリカ側から、引き続き米海軍の最重要事項であって、安全確保のために今後ともあらゆる努力を払うというふうな回答があったと。それはつい最近のことなわけですけれども、そうではありますけれども、今おっしゃった、ディーン・ラスク、ケネディ、池田内閣ですね、そのころからのことであるということを伺って、今一番直近、うちの藤崎局長が聞いてきたこともわかりますけれども、やはり、もう一回原点に返って、私がパウエルと話をするというより以前に、現場でもう少し話が詰められないかどうか、もう一回事務方におろしてみようと思います。

大森委員 現場の話が出ましたので、私も現場の話を調べてきました。

 今資料で配付をしておりますけれども、訓練区域のことが報道されたり、事故やさまざまな被害への不安が今改めて広がっているわけですね。これは、私どもの党の方で今回、漁協、釣り船など、二百六十八カ所に調査用紙を送って回答してもらいました。こんな調査はもちろん初めてで、私は本来はこういうことこそ政府にやってほしいと思いますけれども、二十一通の回答、回答数は少ないわけでありますけれども、極めて貴重な調査結果だと私は思うんですね。

 それによると、回答の三分の二の十四通が潜水艦を見た。また、区域の廃止を求める、これが十二通もありました。体験として、資料にも掲載をしておりますけれども、

 漁具その他への直接の被害はありませんが、潜水艦は通常の航海をしているときは一般船舶と同じ法規にもとづいて航行するはずだと思っておりましたが、数回にわたり無謀な航法によって恐ろしい眼にあったことがあります。それは、あたかも弱小な漁船等そっちのけで避けろといわんばかりの威圧を感じました。ちなみに私の船は、法定定員三十六名の十四トンの遊漁船です。相手側からも相当の大きさで認識できるはずです。一日も早くこれらの不安から解放されたいと願っております。今後とも、なおいっそうの尽力をお願いします。

こういうことなんですね。

 それで、現場にもう一度戻すという御答弁であったわけなんですが、私は、潜水艦というのは本質的に事故、衝突が起こりやすい。もともと相手にできるだけ見えないようにするというのが基本的な任務でありますから、事故は宿命なんですね。

 それで、これは早稲田大学理工学総合研究センターがインターネットで紹介していますのを私引いてまいりましたけれども、潜水艦衝突事例、これは通常及び原子力の両方なんですが、ずっと紹介してある。八〇年代以降だけでもほとんど毎年重大な事故が起こっているわけですね。幸いというか、死傷者、負傷者はまだ少数でありますけれども、多いのもあるわけなんですが、こういう状況なんですよ。

 だから、原子力潜水艦は事故を起こすものという認識と、重ねて申し上げますけれども、相模湾は何千隻、一万隻近い船が集中しているところだ、これは両立しがたい、そういうものだということを申し上げて、これは、そういう意味では、原子力潜水艦の問題として単に事務方に任せるような問題じゃないと思うんです。今回の日米会談、もしくは他の場所も含めて、改めて大臣に、五十年前に設定されたものを大臣のお力で、これはなくす、あるいは抜本的に見直しを行う、そういう御答弁をぜひお聞きしたいわけなんですが、いかがでしょうか。

田中国務大臣 先ほどの繰り返しになりますが、事務方にもう一回現場で確認をよくするように申します。

大森委員 この問題は改めていろいろな場で、私どもも、区域の撤廃、安全航行を、ああいうえひめ丸のような事故を二度と再び起こしてはならないという立場から追及してまいりたいと思います。

 次に、きのうもお話のありました上瀬谷通信基地に関連してであります。

 横浜市の米軍上瀬谷基地、私もこの問題では昨年、森内閣の当時に質問主意書も出しましたけれども、きのうも我が党の小泉議員から話があったように、同基地の現状はごく一部、一八%程度の塀で囲まれた地域を除けば、もう全く通信基地として使われていない。大臣、ごらんいただきたいんですが、きのうもお示しした、同じものではないんですけれども、これが上瀬谷通信基地、提供区域で、塀で囲まれているのはこの赤い部分なんですね。わずか一八%。他の部分は、耕作したり、海軍道路と通称言われている道路で、車がどんどん走っている、市民が日常的に利用している。ですから、知らなかったらここが米軍基地なのかと気がつかない、そういうところが圧倒的に多いわけでありますね。

 ここで、この基地内に土地を持つ森茂徳さんが、国との賃貸契約が切れた、それから使用目的が終了したということで、所有する土地の明け渡しを求めて国に今訴訟を起こしておられるわけです。今ここでそれ自体について問題にするわけじゃないんですが、問題は、横浜地方裁判所で今行われておりますけれども、この裁判で現地の検証を裁判所がやるかどうかということが、それ自体が争われたわけですね。

 国側はあれこれ理由をつけてやる必要はないと主張し、原告側はぜひやってほしいという争いになって、では、横浜地裁はどう判断したかということで最高裁に確認をしたわけなんですが、最高裁の方から連絡があったのは、横浜地裁は基地内の検証を昨年の九月二十八日に決定した。そして、平成十三年五月三十日、つまり一昨日ですね、横浜地裁が外務省に対し立ち入り許可申請書を送付したとなっているわけですね。あわせて、六月十四日に現地で検証をやりたいということも決定されているわけです。

 これは確認をしたいんですが、外務省の方にこの申請書、届いていますね。届いているかどうか。

藤崎政府参考人 お答え申し上げます。

 今、上瀬谷通信基地につきまして、御承知のとおり、国としては裁判所による検証は必要ないとの意見書を提出いたしました。しかし、司法当局は本件検証を行うとの判断を下しまして、一昨日、横浜地裁から私どもに対しまして上瀬谷通信施設への立ち入り申請が提出されたことを受けまして、これを米側に伝達したところでございます。

大森委員 米軍基地にかかわる裁判で、米軍の行為による損害賠償など以外でこういう検証を裁判所が決定するということは恐らく初めてじゃないかと言われているわけなんですが、そういう意味では非常に画期的なわけですね。被告、国側と原告側が検証自体で争った結果、裁判所が検証すると決定したわけですから、田中外務大臣、これは当然のことでありますけれども、この裁判の決定に国としても、外務省としても協力する義務が生じたわけであります。

 そこで、この検証が実現するよう外務大臣としても最大限の努力をしていただきたいということをお聞きしたいと思います。

田中国務大臣 今局長が申しましたことと同じでございますけれども、やはり司法当局がそのような検証を行うという判断を下したんでありますれば、それはもちろん、アメリカに伝達をしたということでございますけれども、それに適切に対応していくということになります。

大森委員 検証自体を争って、その結果、裁判所の決定として検証を行うということで、当然国にもこの検証に対する協力義務が生ずるわけでありますから、事前のそれこそ事務方との折衝の中で、こういう申請書が来たら粛々と米軍に送るという答弁がありましたけれども、これではやはりこの裁判の決定を軽く見ていることになると思うんですね。やはり司法の決定に対して国として厳しくこれを受けとめ、その実現のために最大限の努力を行っていただきたい。

田中国務大臣 もちろん国も検証に協力をいたしますことを約束いたします。

大森委員 以上で質問を終わります。ありがとうございました。

土肥委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時七分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時一分開議

土肥委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。東門美津子君。

東門委員 社会民主党の東門美津子です。どうぞよろしくお願いします。

 まず第一点目ですが、外務省の沖縄事務所のあり方についてお伺いいたします。

 もうお聞き及びかと思いますが、ことし二月上旬から三月中旬にかけまして、米軍の岩国基地所属のFA18戦闘機が夜間、訓練区域になっていない名護市街地の上空で飛行訓練を行いました。当然のことながら、市民から多数の苦情がありまして、四月の五日、名護市議会の代表が那覇防衛施設局と外務省沖縄事務所に名護市内での訓練中止を申し入れました。そのときの橋本大使の対応、本当にこれでいいのかなということが地元紙で報じられ、あるいは地元に帰ってじかにお聞きしてきましたので、そのことについて大臣の御見解を伺いたいと思います。

 市議の方たちが大使に対して、独立している国かどうかが問われていると前置きをして発言を始めると、大使は、日本はとっくに独立している、そんな話を受けるわけにはいかない、私はちゃんとした日本国の立派な役人だ、聞く耳を持たないとおっしゃって、そして市議が発言を続けると、やめてほしい、幾らあなたが言ったって聞かない、聞こえないと怒りをあらわにされたという報道が地元紙でなされました。その態度、そういう対応はないのではないかというのが沖縄県民の気持ちですが、私もそれを読んだときには本当に怒りました。

 米軍の駐留にかかわる事項について、関係市町村等の意見あるいは要望を聴取して政府に伝えること、そして、それらの問題に対処するに際して在沖米軍との連絡調整を行うこと等が外務省沖縄事務所の大使の役割だと思っております。その大使が地元の意見に対して聞く耳を持たないのであれば、何のために存在しているのかわからないとしか言いようがありません。その後、大使は名護市議会に出向かれまして謝罪をされたということはありますので、そのことについてはこれ以上追及しませんが、でも、その一件で県民の外務省に対する信頼が大きく損なわれたことは確かです。

 また、先月の稲嶺知事の訪米に際しても、協力を求める知事に対して、田中外相は全面的に協力をしたいと答えられたのに対して、橋本大使はむしろ知事の訪米を牽制するとも受け取られるような発言をされて、それにも後日釈明するということをしておられます。

 このような一連の動きを見ますと、外務省沖縄事務所は、沖縄県民の意思を米国に伝えるよりも、むしろ米国の側に立って、米国の意を受けてそれを沖縄に反映させることを主たる任務としているかのようにさえ見えます。沖縄事務所が本来の目的に従って県民から信頼される沖縄事務所となるよう、私は田中外相の指導力を強く期待したいと思います。ぜひ御所見を賜りたいと思います。

田中国務大臣 ただいまの夜間訓練ですけれども、訓練区域外での訓練が一応オーケーされているとはいえ、やはり安全性とか住民の皆様の騒音に対する思いとか、そういうことに対するデリカシーといいますか、デリカシーというほど簡単なことじゃないと思いますね、そういう基本的な認識がやはり欠落しているのではないかという感じがいたします。もし自分がそこにいたらどうだったろうかということも想像しなければいけないことで、今の東門先生の御発言は重く受けとめていかなければというふうに思います。

東門委員 今回のことに対しては、県民も、外務省に対する不信感がいろいろな意味で今出ていますね、そういう中で、こういう意味では沖縄もかということになっておりますので、ぜひ対応をお願いしたいと思います。

 次は、前回の委員会においての外相の答弁との関連ですが、沖縄の基地問題について、受益と負担という観点から考えるべきだとの見解を述べられました。そしてまた、極東の平和と安全を守るために、故郷から遠く離れた日本で若い米兵たちが訓練に励んでいるその姿に感銘を受けたというお話もされたと記憶しております。若い米兵に対するそういう尊敬の念はともかくとしまして、米軍の駐留についての外相の認識は少々一面的過ぎるのではないかというのが私の感想です。

 米軍が我が国に駐留しているのは、我が国の平和と安全を守るためというよりも、むしろ第一義的には、米国がアジア地域における自国の国益と影響力を確保するための米国の国家戦略の一環として認識すべきであり、また事実、米国内においても当然そのように理解されています。実際、これまで在日米軍基地は、朝鮮戦争やベトナム戦争、そして湾岸戦争など、米国が主導した戦争において補給基地あるいは出撃基地として重要な機能を果たしてきており、現在もアジア太平洋地域のみならず、インド洋あるいは中東地域をもカバーする前線基地としてそういう役割を担っています。

 我が国は、こうした米国の国家戦略を支えるために、基地を提供するとともに、米軍駐留経費も他の国々と比較してけた違いの額を負担してきています。外相のおっしゃる受益と負担とは、日米安保体制によってもたらされる受益に対してそれに見合う負担をしなければならないということかと思いますが、我が国は、アジア地域における影響力を確保するという米国の国家戦略を支えるために、既に十分過ぎるほどの目に見える負担を行ってきていると私は思います。

 外相は、日米安保体制の本質的な意味、そして受益と負担の関係の現状について、こうした御認識をお持ちなのかどうか、伺いたいと思います。

田中国務大臣 さきの委員会で受益と負担というのを申しましたのは、あれは沖縄だけが負担をしてほしいというふうなことで矮小化して言ったものではございませんで、私は、あの米軍の若い兵隊さんそれから日本の自衛隊の一線にいる方たちの緊張感というものを目の当たりにして、そのすごさというものを知らなければいけないということを言うつもりでございました。

 すなわち、残念ながら、我が国のこの地域にはまだ不安定ないろいろなファクター、不安定要素、そういうものがあります。これはやはり、どの時代でも、世界じゅうのどの地域を見ても、また将来にわたってもゼロということはないかもしれません。その中でもって、米軍のプレゼンスはやはり残念ながらアジア太平洋地域のために必要であると。

 ただ、沖縄県だけに七五%以上もの兵力が集まっていて、そしてあらゆる負担を強いているということは、沖縄県の方にとって決して受益があると私は思わない。強盗だの殺人だのいろいろな事件が起こっていて苦しんでおられるということは十二分にわかっています。ですから、再三再四私が言っておりますけれども、むしろ沖縄県の痛みは我々日本人一人一人が自分の痛みとして分かち合わなければいけない、そういうことをいつも感じております。

 そして、米軍の兵力の構成について、先生も毎回おっしゃっておられますけれども、国際情勢が変化してきていますから、その変化に基づいて対応して、アメリカ政府との間で緊密に協力をしなければいけないということは基本線にございます。それについても、多分先生が次におっしゃるのでしょうが、今度の訪米でもそういうことを念頭に置いて発言をしなければいけないと思っております。そして、その負担軽減のために、いわゆるSACOの最終報告、これの着実な実施ということは私どもも心がけていかなければならないということでございます。

 ですから、もう一回言いますが、受益と負担は、日本じゅうが受益があるから沖縄だけが負担をしてくれとか、そんな意味では全然ありません。国際関係の中にあって、これは安全保障だけではなくて、私は社会保障制度なんかでもそう思っていますけれども、あらゆる意味で、受益だけではないのだ、それに既に国民の皆様が気づいているのではないかということ、税制もそうでしょうし、むしろあらゆる面で考えていかなければいけないというのが私の基本的な思いの中にございます。

東門委員 そうしますと、沖縄県民の負担の軽減――受益者は日本国民全員である。負担は、ある意味で大臣がおっしゃるようにかなり沖縄に集中している。よその県がないとは私申しません。ただ、七五%という米軍専用施設があるということは、かなり大きく沖縄県民の肩にのしかかっているわけですね。その負担の軽減をどのようになさるか、大臣の見解をお願いします。

田中国務大臣 ですから、これが先ほど申し上げたSACOの最終報告ということになりますけれども、SACO最終報告の実施によって、先生すべて御存じのことですけれども、沖縄県に所在する米軍施設・区域の二一%が、面積は例えば返還される。ほかの地域でももちろんそういう問題がありますけれども、沖縄県に限って、当面申し上げられることはそれでございます。

 それから、米軍の一部訓練の移転ですとか、地位協定の運用の改善など、かなり一生懸命盛り込んで実施をする方向でやっているというふうに申し上げなければなりません。そして引き続き、SACOの着実な実施によって、沖縄県民の皆様が担ってくだすっている負担を軽減するという努力をいたしております。

東門委員 SACOの最終報告の着実な実施を行うことによって二一%の軽減があると今おっしゃいました。これは何度も私も質問をしていることなのですが、二一%というのは、七五%から二一%ではなくて、普天間の移設をする、それによって二一%といいますけれども、実際に七〇%は残るのです。確かに全体の五%ぐらいは減るかもしれません。しかし、新たな基地がつくられる、移設される。今老朽化した普天間の基地をそこに移すことになっているわけです。移設が本当に実現すれば、むしろそれは運用年数、耐用年数が長くなって、私は負担の軽減には決してならないと思うのです。むしろ負担はさらに大きくのしかかってくる。そうしか思わないのですよ。

 ですから、SACOの最終報告の実施ということが常に前外務大臣からも聞こえた言葉なのですが、これではどうにもなりませんよということなのです。むしろ、本当に私が田中大臣にお願いしたいのは、2プラス2のお話もあるということです、先ほどパウエル国務長官ともお会いになる、御予定がいつになるかわからないけれどもということはあっても、その御予定があるということですので、いつも大臣がおっしゃるように、沖縄県民の本当の痛みを自分の痛みとしておわかりになるのならば、そこをしっかりお話ししていただきたい。お話しするだけではなくて、大臣の意見として、こうしなければいけないのではないかという提案をしていただきたいと思うのです。それでなければ、沖縄県民の負担の軽減は到底あり得ないと私は思います。よろしくお願いします。

田中国務大臣 基本的な考え方にありますのは、拡大ではなくて整理縮小ということです。

 それから、先ほど申し上げました二一%というのは、米軍の施設・区域の二一%、すなわち面積でいえば五千二ヘクタールですから、面積を申し上げているわけでございます。

東門委員 そして、先ほど日米地位協定の運用の改善ということもまたお出しになったのですが、前回の委員会でも私は地位協定について質問をいたしました。それに引き続いてなのですが、今、日米地位協定の運用の改善についてとおっしゃいました。協定の改定を提案していくということは一切考えておられないということなのでしょうか。ちょっとお聞かせいただきたいと思います。

田中国務大臣 これは結論だけ申し上げますと、改定できることはしていかなければならないと思いますけれども、要は、もっと機敏に即応性を持って対応できるようにするということがまずあると思います。

東門委員 これはこの間の答弁でもお伺いいたしました。しかし、外務大臣にわかっていただきたいのは、沖縄県民が地位協定についてもう運用の改善ではどうしようもないということを考えていること、そして、本当に望んでいるもの、真に望んでいるものは協定の改定であるということなのです。それをぜひわかっていただきたいと思います。それでもなお協定の改定ではなくて運用の改善で対応するという姿勢を示されるのはなぜなのか。即応的、機動的に、機敏にとおっしゃるのですけれども、今までそれがほとんどなされていない。まあ一例、二例はあるかもしれませんが、そんなにないのです。

 私は、やらなければいけないことは協定の改定だと思います。運用の改善と協定の改定は二者択一の問題ではないと思うのですよ。一方で運用の改善を図りつつ、並行して協定の改定を交渉していくということは可能だと思います。この間も申し上げました、ぜひ大臣に一歩も二歩も踏み込んでいただきたい。日本側から、大臣の方から協定の改定について提案をしていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

田中国務大臣 改定を望んでいらっしゃるお気持ちは十二分にわかりますけれども、先ほど来申し上げていますように、まず、やはり改定できることはやりながら、さらにもっともっと迅速性を持って、そして即応性を持って機動的に対応していくという段階でございます。

東門委員 改定をできるところはしっかりとやっていきたいという御答弁だったと思います。ぜひそうしていただきたいと思います。

 これまでに地位協定の改定について日本から提案をしたということはありますでしょうか、ちょっとお伺いします。

田中国務大臣 私の知る限りではございません。

東門委員 なぜでしょうか。これまで何度も、沖縄県も、沖縄県民から、あるいは渉外知事会からも要請が出ていると思います。外務省にはちゃんと届いていると思います。これだけ何年も何度もそういう要請をして、一度も提案をしないということは何なのか、ぜひお聞かせください。

田中国務大臣 即応性、機敏性ということを先ほど来申し上げているのですけれども、これはまずは運用の改善をしてみるというところから、やはり相手のあることでもありますので、そこからスタートしていると言わざるを得ません。

東門委員 日本とアメリカが対等な立場で同盟国として、これまでもそうでした、これからもやっていこうというのが日本政府のスタンスであれば、対等な立場で、運用の改善だけではなくて協定の改定、それまで踏み込むべきだと私は思います。それなくして、一度も提案をせずに運用の改善、運用の改善と、それも何か事件が起きるときだけ対症療法的に対応していく、これが今の日本政府、外務省の姿勢なのです。なぜ提案ができないのか、私にはとても理解ができません。いや、沖縄県民だれだって理解できません、日本国民だれも理解できないはずです。

 これまで長い期間、九五年、それ以前からもちろん声はありました、しかし特に九五年のあの事件以来大きなうねりになって出てきているはずなのです。それに対して、時間がかかり過ぎるから、運用の改善の方が早いからという形で逃げている。機敏性、即応性というのはどういうことなのでしょう。五年、六年かかっても改定の提案さえできないということがそういうことを意味するのか、見解を聞かせてください。

田中国務大臣 目的ということとか、それから起こってきている個別事案とか、それぞれやはり精査してみなければいけないと思うのです。個々の問題をしっかりと解決していくということはやはり大事なことだと思いますし、それから、改定ということにはまたそれなりの大きな意味があるわけですから。やはり個別のことは、本来なら起こらないように未然に、もっともっとアラートな状態であるということが基本だと思いますけれども、やはり個別の問題に柔軟に、機敏に、即応性を持って対応していくということしか、今当面ちょっと考えられません。

 改定ということになると、またもう少し時間も要するでしょうし、検討に値するとは思いますけれども、今のところはやはりこの状態で、もう少しそれをアクセレレートして、加速して、むしろもっと未然に防ぐような方法の知恵も出すということも考えてみたいと思います。

東門委員 私が申し上げたいのは、政府の姿勢、外務省の姿勢ですよ。特に沖縄県で生活をしていると感じるのですが、政府は一体どこの立場に立っているんだろうか。私たちの立場に立って対アメリカで話をしておられるのだろうか。納得がいかない。常にアメリカの立場に立って私たちに戻ってきているような感じさえ受けます。

 この地位協定も一つの例なんです。もう時間もかなりかかっています。そして、沖縄県のみならず、渉外知事会、全国の基地を抱えている知事さん方からもそういう要請が入っているはずなんです、います。文書で回答も求められていると思います。そういうことに対して、そういうものをごらんになって、外務省では何をしているんでしょうか。なぜ一言も提案ができないのかというのがとても納得がいかない。

 そして今でも、今、大臣は一月そこらですからそれはわからないわけでもないのですが、やはり地位協定の見直し、こういうことを見直ししてほしいというのが細かく提出されているはずです。それにぜひ目を通していただきたい。沖縄県民があるいは渉外知事会の皆さんが何を要望しているのかということ、それはぜひ目を通していただいて、大臣の大きな力で、とにかく、私も一気に全部とは思いません、しかし、先ほどおっしゃったように、できるものはやっていきたいという、そこからスタートしていただけたらと思います。ぜひよろしくお願いします。

 もう一度御決意をお願いします。

田中国務大臣 今おっしゃったリストは、まだ時間が短くて、日々追われておりますものですから見ておりませんけれども、ちょっと時間のあるときに、落ちついてしっかりレクチャーを聞きながら、私自身、これは疑問があるとか、なぜできないのかということを聞きながら、今その時間的ゆとりがまるっきりありませんので、ちょっと時間をいただきたいと思います。

東門委員 お忙しいのはよくわかります、大変だということも。しかし、これはやはり多くの人の願いですので、なるべく早いうちに目を通していただいて、レクチャーも受けられて、アメリカへ行く前にそれにぜひ目を通していただきたいと思います。

 次に、在日米軍基地の使用協定についてお伺いしたいと思います。

 日本が米軍に提供している各施設・区域ごとの使用目的がしっかりと明記された使用協定はありますでしょうか。

田中国務大臣 お待たせしました。ございます。例えば、昭和四十七年五月十五日、沖縄の復帰に伴う個々の施設・区域の提供に関するもの、こういうものです。

東門委員 五・一五メモのことは知っていますけれども、沖縄だけに特化しているのではなくて、ほかの在日米軍基地の施設・区域の施設ごとの使用協定、使用目的がしっかり明記された使用協定というのがありますかというのが質問です。

田中国務大臣 特別ありませんけれども、必要に応じてその都度決めているということでございます。

東門委員 米軍に施設を提供、土地を提供していくときに、この基地が、この土地がどういう目的のために使われるか、あるいはそこにどれだけの兵力が入るかということは事前にわからないのでしょうか。その都度というのは、どういうことですか、ちょっとお聞かせください。必要に応じてという意味がよくわかりません。

田中国務大臣 目的に応じて明記してやる場合とそうでない場合とがあるということです。これは通告質問でございましたか。(東門委員「いや、時間があればということで」と呼ぶ)ちょっと細かいことは通告なしだと間に合わなくて、申しわけありません。

東門委員 いや、私が本当に聞きたかったのは、今普天間の移設先とされている名護市の市長は、使用協定を締結するということが前提条件に入っていたのです、そのことをお伺いしたかったものですから施設ごとのとお聞きしたのですが、そのことについての御見解を聞きたいと思います。使用協定は締結されるということでしょうかということです。

田中国務大臣 それは、されます。

東門委員 作業は。

田中国務大臣 細かいことにつきましては、通告なしですので、事務方からお答え申し上げます。

伊藤政府参考人 先生御指摘の、普天間の移設先の使用協定につきましては、平成十一年の閣議決定におきましても、そのような使用協定をつくるということでお約束をしているところでございます。もちろん、米側との使用協定そのものは、基地の運用が始まりませんとできないものでございますので、今すぐということではございませんけれども、そういうことで作業しております。

 そして、現段階は、どういうことをその使用協定に盛り込んだらいいのか、それをまず国と地元名護市との間でよく話し合おうではないかということで、実務者協議会というレベルでございますが、今御相談をさせていただいているところでございます。

東門委員 ただいまの御答弁で、実務者のレベルで話し合いをしている、相談をしているということで、今その進捗状況というのはどの付近まで行っているのでしょうか、ちょっとお聞かせください。まだ移設が決まっていませんね。使用協定は確かに運用が始まってからというのはよくわかりますけれども、そういう中でどの付近まで行っているのか、お聞かせいただければ。

伊藤政府参考人 これはちょっと数字であらわせるものではございませんので、なかなか難しいわけでございますが、地元名護市の方からは、基本計画の策定までには国と、その合意書と申しますか確認書と申しますか、言葉はいろいろとあろうと思いますが、何らかの枠組みをつくりたいという御要望をいただいておりますので、私どももそれに向けて努力をしているところでございます。

東門委員 基本計画の策定はいつになりますか。もう予定は立っていますね。

伊藤政府参考人 基本計画につきましては、もう先生御承知と存じますが、代替施設協議会という場におきまして鋭意議論を進めておるところでございます。そして、これまでに大体の、滑走路が例えば二千メートルでございますとかそういったような大枠が合意をされておりまして、次回には、いろいろな工法ごとにどういうような施設になっていくのか、その場合に自然環境にどういう影響があるか等につきまして御報告をしたいと思っているところでございますが、その上で、いろいろ御意見を伺わなければいけません。

 したがいまして、政府といたしましては、できるだけ早くと思っておりますけれども、地元、県、市ともよく御相談しながら進めてまいるということでございます。

東門委員 きょう施設庁長官においでいただいたのは、実は、四月四日の本委員会での私の質問に対しての答弁に関する質問をしたくておいでいただきましたけれども、その委員会で、楚辺通信所を使用している米国防総省直轄部隊の国防通信沖縄分遣隊の駐留根拠について、私質問いたしました。

 その答弁で長官は、日米安保条約第六条の英文を持ち出しまして、我が国において施設・区域の使用を許されますところの陸軍、海軍及び空軍とは、英文におきましては、固有名詞のアーミー、エアフォース、ネービーという表現ではございませんで、ランド・エア・アンド・ネーバル・フォーシズとされていますと御答弁なさいました。つまり、そのときの長官の説明では、ランドイコール陸上兵力、エアが航空兵力、ネーバル・フォーシズが海上兵力としておられて、条約の中に使用されている陸軍、海軍、空軍とは明らかに異なるという御発言だったと思います。

 そこで、お伺いしたいんですが、これらの言葉の違いはあるんですか、的確に御説明していただけますか。そして、なぜ日本語文ではなくわざわざそのとき英文を引用なさったのか。そうであれば、どちらが正文なのか、どちらも正文なのか、そこもちょっと教えていただきたいと思います。

伊藤政府参考人 先般、四月四日に確かに私の方から今御指摘のような御答弁を申し上げました。ただ、いささか越権だったかと反省をしておりますが、条約の解釈でございますので、本来外務省の方から正確なところはお答えいただくのが正しかったかと思います。あえて四月四日に申し上げましたのは、従来このように答弁を申し上げておりますということで御説明を申し上げた次第でございます。

 いずれにいたしましても、今の御質問の中で、英文、日本文どちらが正文かということであれば、これは条約にも両方とも正文であるというふうに書かれておるわけでございます。そして、その日本語文の解釈としては、当然、ひとしく正文でありますところの英文をも参照しながら解釈するということであろうと思いますけれども、正確なところは外務省からお答えいただくのが正しいかと存じます。

東門委員 時間なので、ではこの次はそれをぜひ外務省にお聞きしたいと思います。

 最後に、大臣にもう一度お願いしたいと思います。

 地位協定の問題、普天間基地の移設の問題につきましては、ぜひ沖縄県民の長年のこれまでの苦労、負担というものにも心を寄せていただいて、大きな一歩が踏み出せますよう、よろしくお願いいたします。ありがとうございました。

土肥委員長 次に、米田建三君。

米田委員 さきの五月二十三日の当委員会で、私は、李登輝氏に対するビザ発給問題に関連をし、安倍内閣官房副長官が槙田アジア大洋州局長を指して、総理が決定したことについて外務省の一局長のために国がおかしくなったのは前代未聞である、万死に値する罪であると語った旨四月二十一日の各紙で報道されたことを指摘いたしました。

 私がいろいろな方面から聞いている範囲では、槙田局長は政府の高官に虚偽の情報を流した、このことが、ビザ問題に対する政府の決断の時期を含め、また中身もあわせて影響を与え、結局、最終的には政治問題化するに至ってしまった、こういうことであります。具体的にいいますと、李登輝氏は、実は元気でぴんぴんしておる、あるいは倉敷の中央病院の光藤先生が自分でなくても治療できると言っているとか、あるいは台湾の医師会が訪日に反対をしている等々であります。また、さらに槙田局長は、日本側の機関である交流協会の台北事務所の山下所長にビザ申請を受け付けるなと指示を出したとも言われております。

 私は、こういうことがもし事実であるならば、これはまさに今日の我が国の大きな政治テーマである政治主導、これに反する、官僚としてのその枠を超えた越権行為であるというふうに思っているわけであります。

 そこで、安倍官房副長官にお見えをいただきましたけれども、お立場もおありでしょうから固有名詞の名指しは無理になさらなくても結構ですから、一局長とおっしゃっていただいても結構ですけれども、あなたは、万死に値する、この万死に値するというのはすごい言葉ですけれども、一体何をもって万死に値をする罪であるというふうにおっしゃったのか、お話をしていただきたいと思います。

安倍内閣官房副長官 ただいま委員御指摘の点は、もう一カ月ぐらい前になると思いますが、私の発言をめぐる報道について取り上げられたのではないか、こう思うわけでございます。

 固有名詞を挙げたこと自体については、先輩各位から少し勇み足ではないかという御叱責をいただいたようなところでございますが、私も確かにそういう点があったというふうには思います。しかしながら、総理が既に決断をしたことについて、役所のレベルにおいて必ずしもその意向の方向に政策を遂行しないというのは問題ではないかということで、問題提起をさせていただいたということでございます。

米田委員 私が具体的に槙田局長の政府に対する虚偽の状況報告をさっき申し上げましたが、それに類似する事実はあったわけですね。

安倍内閣官房副長官 李登輝氏を受け入れるかどうかというのは大変大きな政治的決断でございましたから、それぞれの意見の違いというのは当然ございました。その中でお互いに情報を交換するということがあったわけでございますが、確かにその中で、今委員が御指摘をされたような情報等の報告もあったというふうに私は仄聞をいたしております。

米田委員 私、立派な副長官だと思いますね。政治家として尊敬しますね。堂々と、はっきりとおっしゃるわけであります。

 そこで、外務大臣、私は槙田局長のことを安倍副長官もおっしゃっていると思うんですが、この間の質疑では、副長官とは余り親しくないんだとかおっしゃっていましたけれども、同じ政府の中で当然対話をされる機会があると思いますが、その局長がだれであるのかということをどうか確認をしていただいて、お二人同士で結構ですから、私は、今の安倍副長官のお話にありましたとおり、それが事実であるならば、やはりこれは冒頭申し上げたとおり官僚の越権行為である。政治家に対して正確な情報を提供する、そして最終決断は政治家がやる、これが政治主導じゃないですか。それに私は反していると思うんですが、その局長がだれであるかを、外務大臣、あなた御自身が確認をされたならば、その局長をそのまま放置してよろしいんでしょうか。私は何らかの処分を行うべきだと思いますが、いかがですか。

田中国務大臣 私は、副長官と親しくないなんてことは前回言っておりませんよ。同期で親しいし、また同じ閣内で一緒に行動しておりますよ、あなたよりも、むしろ米田先生よりもお会いする機会が多いんじゃないかしらということを申しました。間違いのないように記憶をしっかり整理していただきたいと思います。

 それから、これは前森内閣での出来事だというふうに思っておりますから、私もそれを実際に皆様のように直接見聞きしたわけでも何でもございませんけれども、これもこういう委員会でおっしゃるから初めて、ああそうかと思うだけでございますので、政治主導でいかなければならないと思いますし、一局長がそのようなことでもって政局に影響を、結果的には与えなかったわけですね、李登輝さんの訪日については。ですから、それはちゃんと政治主導で動いたということの証左ではないんでしょうか。

米田委員 それはおかしい。私は結果がどうだったかと言っていない。そういう虚偽の報告をしたことが重大な責任があると言っているんですよ。

 それから、森内閣で起きたこととおっしゃいましたが、それはおかしいじゃないですか。だって、あなたは伏魔殿退治に乗り込んだ正義の味方でしょう。なぜこの某局長だけ寛容な態度をおとりになるんですか。

田中国務大臣 まだ寛容とかなんとかということは私は決めても思ってもいませんし、それほどその局長が私と仕事を始めてから一カ月の中でそうした恣意的な発言なり誘導を私にしたとは思っておりませんから、その局長のことだけに何でこだわっておられるか。結果として、結果オーライで、ちゃんと李登輝さんも日本にいらっしゃって喜んでお帰りになったんですから、私が思っている状態とはちょっと違うのですが。申しわけありません。

米田委員 そういうことではないのですよ。

 つまり、あなた自身が常日ごろ、外務省にいろいろ問題がある、我々もそれは承知しています、それに対して、これから改革をするのだとおっしゃっているんでしょう。その改革の対象になるいろいろな事象あるいは人物というものは、あなたが入閣される前から外務省にいて、そして、森内閣も含めたところの過去の外務行政の蓄積の中にあるわけですよ。私が今指摘している問題もそうであるわけであって、あなたが就任する以前のことは一切関係ないんだ、判断のらち外であるとおっしゃるならば、日ごろからあなたがおっしゃっている、外務省は伏魔殿であるのでこれから私がだんびらを振るうのだという話は論理矛盾ではないですか。

田中国務大臣 全然論理矛盾しておりません。

 伏魔殿というのは、私が着任いたしましてから一カ月ちょっとですけれども、その間、意図的に発言していないものをしているようなことを言ってメディアに流すとか、それから、首脳とのバイの電話、そういうものについても事実でないものを流すとか、そのほかいろいろありますよ。今も上がってきている、海外援助の話も午前中にございましたけれども、そういうときに政治家が暗躍しているとか、それをまた何かやっている人がどうだとか、そういうことが私のこの一カ月の中だけでも、出入りをしている業者であるとか政治家であるとか関係のあるマスコミとか役人との中で、あるということを言っているのであります。

 ただ、今御指摘の局長につきましては、これから神経をとがらせて、よく何か起こるかどうか見るようにいたします。それでよろしゅうございましょうか。

米田委員 とにかく安倍副長官は経緯をよく御存じですから、よく聞いていただいて、ひとつ外務省改革を標榜するあなたでありますから、きちんとしていただきたいというふうに思います。

 このことばかりやっているわけにいきませんので、次にODAに関連して何点か質問したいと思います。

 我が国は、十年連続のトップドナーでありまして、昨年の実績も百三十・六億ドルという巨額なものになっているわけであります。そこで、経済協力局長、来ていただいていると思いますが、中国に対する一九八〇年以降のODAの累積額をちょっと具体的に言ってください。

西田政府参考人 お答えいたします。

 今ちょっと数字を出しますので、お待ちくださいませ。

米田委員 時間がないんだ。では、私が言うよ。

 中国に対する一九八〇年以降のODAの累積額は、二兆六千八百八十三億三千三百万円でありますが、インドネシアに次ぐ大変な我が国の供与国であるわけであります。

 さらにまた、我が国の中国に対する経済支援というものは、中国国内のいろいろなインフラ整備に大変貢献しておるのですね。道路事業、随分あちこちで、我が国の支援の結果、中国の高速道路を初め整備がされました。それからまた鉄道も、やはり同様に各地で、我が国の経済支援の結果、鉄道網の整備も行われているわけであります。さらに、空港に関しても同様でありまして、北京の首都空港整備事業、あるいはウルムチ空港の拡張事業とか、上海の浦東国際空港の建設事業とか、まさに中国全土にわたってインフラの整備に長年我が国は協力をしてきたし、また、今申し上げたような交通関係インフラ以外でも、いろいろな分野で支援をしてきました。これは、外務大臣も御承知だと思います。

 さらに、ODAだけではありません。アンタイドローン、この累積承諾額は二兆二千三百三億円でございますし、また、輸出金融七千三十八億、投資金融四千九百三十七億、輸入金融十三億と、それぞれ累積承諾額でありますが、かなりの力を入れて中国に対する経済支援体制を我が国はしいているわけであります。

 しかしながら、この間、中国の国民に果たして我が国のそういう貢献がしっかり伝わっているのだろうかということが常々議論をされてまいりました。

 最近、北京空港のプレート、私はこれは原文を入手しましたが、感謝の言葉らしきものがないのでちょっとがっかりしたのですが、一応日本の支援ということは触れています。しかし、全般的に果たしてどうなのか、依然として甚だ疑問を持っているのですが、経協局長、我が国もしっかり中国の国民にわかってもらわなくてはいけませんから、そういう努力をどういうふうにしているのか。

西田政府参考人 お答えいたします。

 先ほどは、どうも失礼いたしました。

 御案内のように、中国国内におきますODA広報は極めて重要というふうに認識しておりまして、ただいま御指摘ありました飛行場もそうでございますが、例えばそのプロジェクトごとの広報用の看板を設置する、あるいは各種の広報資料をつくる、プレスに対するプロジェクト視察のツアーを実施する、あるいは北京にございます我が方の大使館のホームページを通じてインターネット等を広報に使うなどさまざまな活動を実施いたしております。

 我が方の認識としましては、中国側においても重要性についての認識は深まりつつあると認識しておりますけれども、今後ともさらにいろいろな手段を活用して広報に努めていく必要があろうかというふうに考えておる次第です。

米田委員 それはしっかり徹底してください。

 それと、外務大臣、我が国の政府開発援助の大綱というものがありまして、これは平成四年の六月三十日に閣議決定されているわけでありますが、その中に原則がございます。

 この原則というのは一体何なのか、こういうことでありますが、四項目ありまして、一つは「環境と開発を両立させる。」二番目が「軍事的用途及び国際紛争助長への使用を回避する。」三番目が「国際平和と安定を維持・強化するとともに、開発途上国はその国内資源を自国の経済社会開発のために適正かつ優先的に配分すべきであるとの観点から、開発途上国の軍事支出、大量破壊兵器・ミサイルの開発・製造、武器の輸出入等の動向に十分注意を払う。」それから四項目めが「開発途上国における民主化の促進、市場指向型経済導入の努力並びに基本的人権及び自由の保障状況に十分注意を払う。」こういうことになっているわけであります。

 私は、中国に対する巨額の我が国の経済支援のあり方というものが、まさに今申し上げたこの原則の三と四に明らかに反するのではないかという疑いを実は持っているわけであります。

 すなわち、目覚ましい最近の中国の軍事力の増強というものを指摘したいわけでございます。中国は、一九八〇年代の前半期に第一世代の戦略核兵器を完成させました。言ってみれば、最小限の核抑止力を保有したわけです。そして、八〇年代の後半から次世代の戦略核兵器の開発に着手をしまして、そして、今世紀の初頭には、かなり強力な各種の弾道ミサイルあるいは核弾頭の小型化とか、核戦力が飛躍的に向上するというふうに見られているわけであります。

 そこで、防衛庁に伺いますが、中国のこの最近の国防費の増加ぶりというものについて、数字をもって示していただきたいと思います。

首藤政府参考人 お答え申し上げます。

 中国の国防費でございますが、八九年以来、十三年連続で対前年度に比べて一〇%以上の伸びを示しておりまして、本年度は実に約一七%という伸びで、伸び率ではここ数年で最高の水準となっております。

 なお、これまで国防費のGDPに占めます割合は一%程度でございまして、ここ数年は徐々に増加している、また、国家予算に占める割合は約八・一%でございまして、ここ数年で徐々に低下しているという状況でございます。

 ただ、今申しましたのは公表国防費でございまして、いろいろな説、アメリカその他の見方もございますが、公表国防費以外にも実際にはいろいろな経費が存在しているはずであると。例えば、装備の購入、あるいは外国から買ってくる、あるいは開発経費、その他いろいろな種類の経費が計上されていないではないかとも言われておりまして、そういうものを常識的な線で算入すると、実際の国防費はこれの二ないし三倍に上るのではないかと言われているような状況にあるわけでございます。

米田委員 今の防衛庁の説明にございましたとおり、極めて急速に中国は軍事力の強化を図っているわけであります。

 さらにまた、装備の近代化にも努力をしておりまして、核戦力関係でいいますと、九〇年代に新型IRBM、東風二十一を配備しました。また、九九年八月及び二〇〇〇年十一月にはICBMの東風三十一と見られるミサイルの発射実験を実施し、今世紀初頭には配備されるだろうというふうに見られております。

 また、ロシアからソブレメンヌイ級の駆逐艦二隻を、去年と本年、一隻ずつ導入しております。この駆逐艦の特徴は、対艦ミサイル、マッハ二の速度を出すことができますが、水面ぎりぎりまで飛べるというかなり高性能なもので、もし配備されれば米海軍も相当苦しい立場に追い込まれると言われるほどの高性能の駆逐艦です。あるいは、キロ級潜水艦四隻を九〇年代に導入もしております。

 あるいは、航空機につきましても、スホーイ27、これは我が国の主力戦闘機であるF15に近い性能でありますが、これも九八年からライセンス生産を開始している。約五十機導入されている。それから、スホーイ30、これも四十機の引き渡しが本年中に行われる。

 こういうふうな状況でありまして、着々と、かつての毛沢東戦略、毛沢東思想によるいわゆる量の軍隊から質の軍隊へ大きな転換を図り、いわば海外をにらんだ戦略というものを明確に今中国は持っているというように私はにらんでいるわけであります。

 と申しますのも、これはちょうど中国が量から質へと猛然と力を注ぎ始めた時期に当たるわけでありますが、一九八七年の人民解放軍の機関紙、解放軍報に極めて注目すべき論文が実は掲載されたわけであります。それは戦略的境界という概念です。戦略的境界とは何かというと、地理的境界に対して提起された概念。では、地理的境界とは何なのかといいますと、これは何のことはないんです、国際法で認められた普通の領土、領海のことだと。では、国際法で認められた領土、領海に対する、中国が新たに打ち出した戦略的境界というのは何かというと、領土、領海、領空に制約されず、総合的国力の変化に伴って変化する境界である。つまり、総合国力の増減に伴って伸縮するものである。この戦略的境界というものを拡大して、有効に長期間支配することが国家と民族の生存空間を決定づけるんだ。

 これは、平たく言うと、もう軍事覇権主義そのものだというふうにも受け取れかねないんですね。いや、受け取るべきだと私は思っているんです。こういう戦略を持っている国家に対して、我が国はこれまでと同様に金をつぎ込み続けていいんでしょうか、大臣、どうでしょう。

田中国務大臣 かねてから米田先生はこのことを党内でも発言なさってこられて、よく勉強なさって疑問を呈しておられるということは十二分に承知しております。

 事実、日本からの千二百億ドル近くのODAというものがありますけれども、初めの趣旨は、今防衛庁も言いましたから間違いない数字だと思いますよ、基本はもうわかっておられるでしょうけれども、やはり国内に中国に対するODAについてのいろいろな意見があることはわかっておりますが、内陸部はまだまだ貧しくて、環境とか貧困とか医療ですとかそういうふうな、言ってみれば草の根レベルのところに行くようにという意味でもってこのODAはスタートをしています。そしてまた、それを必要としているような地域が多いということも申し上げなきゃならないと思うんです。

 しかし、やはり軍事力がかなり……(発言する者あり)いえいえ、大事なことでございますので、私にもしゃべらせてくださいませ。軍事力が増強されているということも今おっしゃってのことですし、やはり軍備予算の不透明な部分もあるし、伸び率が高い、高水準で推移しているということも実態としてあります。したがって、やはり適切な評価、ODAのありようについて評価をしたいというふうに思っております。

 この内閣は、いつも小泉総理が聖域なき改革ということをおっしゃっておられますし、外務省マターとしても、どこが節約できるか、どこを見直すべきかという中で、ODAは私はもう一番最初に挙げておりますので、中国に対するものも、機会を見て、米田先生の御指摘も受けまして、よく検討をさせていただきます。毎度毎度同じことを聞かなくて済むようにさせていただきますので。

米田委員 よく検討していただけるということで希望を持ちましたが、大臣、要するにこういうことなんですよ。

 言うまでもなく、ODAというものは当然非軍事部門への支援、これは当たり前なんです。ところが、その支援が巨額であることによって、本来自国の力で投入すべき民生費が浮くわけですよ、結果として。これは玉突きの論理ですが。そして、その結果、軍事費に回るということに結局なっている、構図としては。もしも我が国を初めとする諸国の支援額が今より少なければ、国民の、民衆の生活レベルアップのために、軍事費を削ってでも普通は民生費に回すわけでありますから。結局、民生費の部分を我が国を中心としてよその国が支えている結果、軍事費が増大しているという構図になっているのではないか。

 これは、実は私は数年前にアメリカへ行ったときに、アメリカ政府に大変大きな影響力を持つあるシンクタンクの研究員たちと討論しましたが、明確にこれを指摘しました。こういうことを続けていくことは日本のためにもならないし、アジア太平洋地域の諸国のためにもならないし、最も実は中国そのもののためにならない。古典的な覇権主義の道を歩むそのカラーが濃厚であるということを実はアメリカのシンクタンクの人たちも言っていました。

 私は、これは日本と中国は隣同士でお互い引っ越すわけにいきませんから、それは恒久的な友好関係をつくらなくちゃなりません。それだけに、中国が誤った方向に行かない、そうするためにもやはり、短期的には厳しい対応というふうに映るかもしれませんが、私はこのODAの中身というものをしっかり見直す必要がやはりあるだろうというふうに思っているわけであります。

 時間も余りないようですが、最後に教科書問題で伺います。

 ASEMに行かれて、二十四日に日中外相会談、それから二十六日に日韓外相会談を行った。外務大臣御承知かと思いますが、我が国政府の総理や文部大臣のこの間の見解をたどってみますと、これは明確に、我が国と中国や韓国との教科書の制度が違う、国定教科書ではないんだ、検定教科書なんだ、だからそれを政府の力で修正なんということはできないんだ、平たく言うとこのことを繰り返し言ってきているわけであります。

 しかし、報じられたところ、また、外務省からもちょうだいしましたが、外相会談のペーパー、これを拝見すると、その辺のところをはっきり言われなかったのかなと思うのですが、いかがでしょうか。

田中国務大臣 公式の発言は、時間の関係もありまして、もう御存じでしょうから、お話はしてありますけれども、あの会議は、えらく集中的にワーキングランチ、ワーキングディナー、ワーキングランチという形でやりまして、そして幸運にも隣がずっと韓長官でありまして、それでいろいろなことを話をすることがありました。

 ですから、最後の日に、もう最後の回は必要ないかしらとお互いに冗談を言うほど緊密に朝から晩まで一緒にいました。その中で、多分先生が今一番おっしゃりたいこと、すなわち前委員会で御指摘なさったポイントですけれども、教科書のつくり方、それからいろいろな物の見方があるということについて、むしろ、ほかの国も日本の歴史について違った言い方を書いているとおっしゃいましたね。私は、それが宿題としてちゃんと頭に入っていましたので、それを言い終わるまであなた様の顔が頭から、脳裏から去らずに困ったぐらいで頭を振っていたぐらいですから、そういう意見もちゃんとありますよということは私は隣に座っておられるときによく話をしてございますことを御報告いたします。

米田委員 時間が来ましたので、残念ですが、終わります。

土肥委員長 次に、河野太郎君。

河野(太)委員 自由民主党の河野太郎でございます。

 まず、外務大臣にお伺いをしたいと思います。

 今はもう外務大臣でお忙しいでしょうから日用品の買い物に行かれる時間はないと思いますが、ふだん、外務大臣になられる前にでも近所のスーパーマーケットでお買い物をなさるときに、食べ物の表示というものに田中眞紀子さんはどれぐらいの注意を払っていらっしゃったでしょうか。

田中国務大臣 子供たちが大きくなりましたけれども、相変わらずやかましいのは、値段と賞味期限でございます。

河野(太)委員 四月の一日から、我が国にやっと遺伝子組み換え食品の表示の義務づけというのがスタートいたしました。大豆、トウモロコシが主でございますが、遺伝子組み換え食品について、使用しているのか使用していないのか、そういうことの表示を食べ物にしていかなければいけないというルールが、この四月の一日からスタートしたわけでございます。

 この遺伝子組み換え食品の表示の問題というのは、具体的な数字はあれですが、一千数百万人の消費者の皆様からの請願の署名をいただきまして、また千を超える地方自治体からの議会の決議というのが寄せられまして、当初、厚生省あるいは農水省が表示は必要ないよと言っていたのが、主婦の皆様を初め消費者の皆様の後押しで、自分たちが食べているものは何なのかを具体的に知る必要があるではないか、そういう声に後押しを受けて、この遺伝子組み換え食品についての表示というのがスタートしたわけです。

 特に、日本というのは、アメリカ、カナダから大変多くの食料品を輸入しておるわけですから、食卓を預かる主婦の皆様方にとっては、何を食べているのか、そして自分たちの子供に本当に安全なものを食べさせなければいけないという要望はほかの国にも増して強いものがあるというふうに思っておりますし、現に、そういう声が大きかったからこそ遺伝子組み換え食品の安全性というのが問われて、表示の問題がスタートしたわけでございます。

 ところが、この遺伝子組み換えの問題は、食べ物が安全かどうかということと一緒に、遺伝子組み換えがされた植物が生態系の中でどのように動き回っていくのか、どのような影響を出していくのかということが実はまだまだわからないところがあるわけです。

 我が国あるいはアメリカでも食料品として使用が認められていない遺伝子組み換えをした植物が実は食料品の中にまざっていた、スターリンクと呼ばれているものがまざっていて、それが出回ってしまって、某食料品メーカーが慌ててこれを回収した。そういうこともあって、今この問題に対する消費者、主婦の方々の注目というのは、食べ物の安全性と、この遺伝子組み換えが生態系に及ぼすもの、両方について大変に強いものがございます。

 さて、外務大臣になられる前に一家の食卓を預かって切り盛りをされていた外務大臣にお伺いをいたしたいと思いますのは、今、この遺伝子組み換えの植物に関して、これをやはり生態系の中できちっとコントロールを本当にしていけるのだろうかという疑問にこたえなければいかぬということで、生物多様性条約の中にカルタヘナの議定書というのがございます。この議定書は、こうした問題についてこれからしっかり取り組んでいかなければいかぬということを早く言えば言っている議定書で、いわば地球温暖化問題の京都議定書と同じようなものだろうと思います。

 問題は、我が国は、この遺伝子組み換え食品に関して、あるいは遺伝子組み換えという技術に対して、大変強い主婦あるいは消費者の皆様の注目、後押しというのがあるわけでございますが、このカルタヘナの議定書に実はまだ日本は署名をしておりません。アメリカという国は、この親条約本体に入っておりませんから当然この議定書にも署名をしていないわけでございますが、先進国はアメリカを除いてほぼすべて、日本も署名をしておりませんから日本とアメリカを除いてほぼすべて署名をしている現状でございます。

 これを外務省の事務当局に、何で我が国は署名をせぬのかと聞きますと、署名というのは国によって重要性が違うんです、国によって、条約の署名をどこでやるかというのは位置づけが違うんですという御説明を事務方はされるわけですね。

 それはそうかもしれませんけれども、九十四カ国を超える国が既に署名をしていて、条約に参加をしている先進国で、アメリカは条約に参加しておりませんからアメリカを除く先進国すべて、日本を除いて署名をし、なおかつ九十数カ国が署名をしているという段階でございますから、国によって条約の署名の意味合いが違いますといっても、その国が全くこの問題に興味がないなら別ですけれども、日本のように、この問題に非常に大勢の主婦、消費者が興味を持っている、にもかかわらず署名をしないというのは、なかなかこれは国民の皆さんに、政府の対応、外務省の対応の説明をするのが難しいのが現状だろうと思います。何でこの議定書に日本は署名をしないのかという声が山のように来るわけでございますが、事務方の説明を聞いていると、全くこれは納得できません。

 なおかつ、別な説明として、まだ国内法が担保されていない、こう言うわけでございます。これは、今までガイドラインでやっていたものに法的な根拠を与えて、いろいろこれから日本に入ってくる種ですとか苗ですとかそういったものをちゃんと間違いなくコントロールするんだ、そういう国内法をつくらなければいけないわけでございますが、その国内法の担保がないと事務方は言うんですね。

 これは当然のことでございまして、まだ遺伝子組み換えをされたものがどのようにコントロールされるかというのを今一生懸命みんなで考えているわけでございますから、地球温暖化をどうやって防ぐかというのをみんなが一生懸命考えているのと同じ状況でございます。

 国内法で担保されていなければいかぬというのは、条約を締結、批准するときには、これは国内法がきちっと担保されていないと締結、批准というのはできないわけでございますが、署名というのは、ある面、その国がこれをやりますよという意思でございますから、国内法の担保というのは全然必要がないわけでございます。

 例えば爆テロ、爆弾テロに関する条約なんていうのは、爆テロ、爆テロと事務方はおっしゃっておりますが、未遂犯の取り扱いをどうするのか、法務省と外務省で全く混沌として、国内法が担保されておりませんから、署名をしたままずっとたなざらしで、まだ締結がされておりません。これは、国内法がないわけですから、なかなか締結ができないわけでございます。

 あるいは、京都議定書のように、今一生懸命、メカニズムをどうしようとか、国内法をどうしようという議論をしているわけですから、これはこれから、アメリカが入るかどうかということも含め、批准に向けて一生懸命努力をするわけでございますが、京都議定書というものは、地球温暖化、これは大事だという意思表示をするために、我が国もちゃんと議定書に署名をしております。

 そういうことを考えますと、これだけ大勢の消費者、主婦が注目をして見ているカルタヘナ議定書、つまり遺伝子組み換えが生物多様化に及ぼす影響について国際的な枠組みをつくっていこうというものに、我が国がなぜ今もって署名をしないのかという説明を国民にわかりやすくするというのは極めて困難でございまして、これはもはや事務方では手に負えないことだろうと思います。

 六月四日が署名期限でございますから、今から外務大臣がやるぞという決断をしていただければ、これは署名ができるわけでございます。この問題に関して、外務大臣が事務方からどれぐらいの、まず説明、ブリーフというのがあったのかどうかということを外務大臣にお伺いをしたいと思います。

田中国務大臣 お答えする前に、太郎先生のお父ちゃま、私の前任の外務大臣も御苦労が多かったでしょうに、また、どんどんと早く片づけていれば私がこんな苦労しなくて済むのにというぼやきをまず申し上げておきます。パパによろしくおっしゃってください。

 このカルタヘナについて、話は事務方から聞いております。膨大な、いろいろなイシューがありますので、一つ一つ、すぐ目の前にあることをほい来たほいという方が早いものですから、大体のアウトラインしか聞いておりませんが、六月四日が期限であるということであれば、これは少し集中的に勉強させていただきます。

 ただ、この遺伝子組み換えにつきましては、私も本当に、週末とかじゃないと家族じゅうそろいませんけれども、若い人は極めて関心を持っていますね。それは、アトピーとかいろいろな問題が出てきて、私たちが子供のころにはなかったような病気とかいろいろなものが起こっていますから。そして、科学技術も進んでいる。したがって、科学技術庁ではどういう研究をしているのか、農林省はどういう基準で輸入しているのか、外務省もほかのケースをどのぐらい知っているのか、縦割りで日本が相変わらず物事が決められずにいるんじゃないんだろうねというところにいつも食卓では結論がいってしまうんですね。

 そして、その遺伝子組み換え自体がどういう状態なのか。お店屋さんなんかに行ったって、もう前からそんなの入っているそうですよなんというのもありますし、このトウモロコシは本来は家畜だけのものであったりするんだけれども、日本ではそれを輸入して普通のコーンで売っているとか聞いてぎゃっと思うこともあります。でも、それを証明するだけのバックグラウンドというか知識が、我々普通の生活者、主婦にはないという段階なんです。

 お答えになりますが、署名を見送ったけれども、署名はしなくても加入はできるというルールだということを御存じでいらっしゃいますか。そして、前回署名をしなかった理由は、新しい分野であるために省庁間の協議に時間がかかったためと。要するに、いわゆるお役所仕事でぐるぐるたらい回しでやったということじゃないかと思いますけれども。

 要するに、署名をしなくても加入はできるということですから、やはり縦割りをやめて総合的に、チームをつくって考えて、そして六月四日に間に合うものであれば、それまでにしっかりと回答を出すということにしたいと思いますが、いかがでしょうか。

河野(太)委員 六月四日までまだ数十時間あるわけでございますので、ぜひ政治決断をしていただきたいと思います。

 大変強い関心を持たれている方が大勢いらっしゃいまして、確かに署名しなくとも締結はすることができるわけでございますが、締結するまでにまだまだこれは数カ月以上の時間がかかることになると思います。そうしたときに、この問題に大変関心を持っているはずの日本政府が、縦割り行政の弊害が顕著に出ていて何も対応ができなかったというのは、極めて遺憾なことでございます。

 田中大臣におかれましては、このカルタヘナ議定書の署名に向けて最後の最後までぜひ最大限の御努力をいただいた上で、もし万が一署名が間に合わないということがあれば、ぜひ大臣の方から公式に声明を出していただいて、この議定書には日本政府が前向きに取り組んでいくんだ、そういうことを国民にきっちりと、大臣のお言葉で公式に伝えていただきたいと思いますが、いかがでございましょうか。

田中国務大臣 もうちょっとしゃべっていていただけたらありがたいんですが。この間幾つかばあっとイシューがあったうちの一つかもしれませんので、正確を期するために、もう少しこの重要性についてお話しいただけますか。すぐできますから。

河野(太)委員 それでは、大臣を助けるために、もうちょっとやりましょう。

 とにかく、この間の環境委員会の席で、そこに座っておられますが、丸谷大臣政務官にお尋ねをしましたところ、全く政治の場には上げられていない。事務方のみが署名をするかしないかを決めていて、大臣は当然お忙しいわけですから、大臣に上がらなくとも、少なくとも政務官の一人にはきっちりと御説明があって、そこで政治レベルでの御判断があってもいいのではないかと思うわけでございます。

 政務官、きょう御出席でございますから、こうしたことには、事務方の判断だけでなく、積極的に政務官が政治の判断にかかわっていただいて、政務官が大臣の判断が必要だと思われるようでしたらば、大臣の方にきっちりと上げていただきたいと思うわけでございます。

 よろしいでしょうか。では、大臣、よろしくお願いします。

田中国務大臣 友情に感謝いたします。

 このカルタヘナ議定書の問題ですけれども、これは署名にはちょっと間に合わなかったんですが、締結に向けて極めて積極的に今努力、鋭意やっているというところですから、先ほどの私の答弁よりもずっとずっと前に出ております。

河野(太)委員 署名に間に合わなかったとおっしゃいましたけれども、署名の期限は六月四日でございまして、実はまだ間に合うわけでございますので、勇敢な大臣の政治決断をまだ我々は待っていたいというふうに思うわけでございます。

 さて、次の問題に行きますが、ビルマのバルーチャンというダムのことでございます。

 先ほどODAの関係でケニアの問題が取り上げられておりましたが、このバルーチャンの第二水力発電所、これも極めていかがわしい面が多々あるのではないかと私は思っております。

 バルーチャンの第二水力発電所というのは、一九六〇年に戦後賠償でつくったものでございまして、一九八六年に古くなった施設をもう一度借款で新たにした、そういう経緯があるわけでございます。

 今、軍政が続くビルマに対して三十数億円の無償援助をこの第二水力発電所の改善計画に関して出そうという話がどうも外務省の中であるようでございます。これは外務大臣にどこまで事務方のブリーフがあるかどうかわかりませんが、非常に多くの問題を抱えておりまして、ほいこれと出せるものではないと私は思っております。

 一つは、一九九七年ごろからこのバルーチャンの川の水量が大幅に減っております。発電のために取水しますと、周辺の農業に大きな影響が出てくるおそれが十分にある。ところが、その影響に関して、どれぐらいの影響があるのかという査定を我が国の政府はほぼやっていないようでございます。

 それから、このプロジェクトの場所でございますが、軍事政権とカレニーと呼ばれる少数民族の間の対立の拠点になっておりまして、本当に工事がしっかりできるのかどうかわからぬというのが現状でございます。

 さらに、この辺はいわば軍事領域化しております。要するに、この周辺の住民をいわば強制労働につかせて、工事をするための部品の移動その他を行っているという事実がありまして、日本のODAでこうした工事が加速すればさらにそういう強制労働の範囲が広がるおそれがあるわけでございますが、どうも外務省当局は全くそういう問題を認識していないのではないかという状況がございます。こうした問題にもきっちりとこたえていただかなければいかぬと思います。

 また、私の理解では、ビルマからの借款の返済があると、それをそのままどうぞお使いくださいという形でもう一度出しているんだろうと思います。これはたしかことしも、前年度末に同じようなことで、十数億円そのままどうぞといって、右から左にスルーしていると思います。十数億円出していて、さらに三十数億円このプロジェクトに金を出すというのは、軍事政権に対しては人道援助だけをするという規模をはるかに超えております。こうした点も問題だろうと思っております。

 さらに、世界ダム委員会、これは世界銀行などが中心になったものというふうに私は理解をしておりますが、二〇〇〇年十一月に、こうしたプロジェクトをやるときには、幾つかの問題点を解決せねばいかぬよという勧告が出ております。このバルーチャンのダムについては、周辺に軍事政権が埋めた地雷の問題がある。それから、先ほど申し上げました、水が減ったために流域の農民に対して影響が出始めている、この問題が解決されない限りはこれを進めてはならぬというような勧告が出ておりますが、こうしたものがクリアされていないはずでございます。

 さらに、外務省は、この三十数億円の水力発電所の計画が人道支援だと言うのですね。何となれば、電気がないから、こう言うわけでございますが、病院その他に電気がないならば自家発電の設備を病院につければいい。三十数億円も出せば、いい自家発電の設備を何百カ所も、まあ何百カ所かどうか、それだけの必要性があるかどうかわかりませんが、つけることができるわけでございます。

 さらに、ここで発電された電力は、軍事政権の収入になるように国境を越えて他国に売られているという話もございますが、外務省はほとんどこの認識をされておりません。また、ここでつくられた電力は、ほとんどが軍事政権の軍事施設にまず優先的に流されておりまして、一般市民にここでつくられた電力が流れているというのは、非常にまれでございます。なおかつ、一般市民向けの電力料金と、軍事政権あるいは軍人向けあるいは軍事施設向けの電力料金に十倍近い差があるわけで、現在のビルマの市民の皆さんの生活状況を考えれば、そのように設定された電気を使うことはほぼできないわけでございますから、これが人道支援だというのはまやかしでございます。

 さらに、政治的なタイミングで、アメリカの議会の公聴会で、国務長官が、この日本のダム支援はいかがなものか、現在政治対話が滞っている中で、このタイミングでこうした額の援助を出すことはいかがなものかという、アメリカ政府は、理解ではなくて疑問を示しております。これは外務省の事務方の説明は、アメリカにはいろいろ説明しているから理解をしてもらっているというのであれば、認識が甘い。理解をしているんであれば、国務長官が議会の公式の場である公聴会で疑問を示すことなどはないわけでございますから、外務省の事務当局の認識は極めて甘いと言わざるを得ないと思います。

 そうしたことを考えますと、これは外務大臣の政治的な決断で、そうした問題が完全にクリアされるまでこのプロジェクトはまず停止をするというのが正しい我が国の政府の道筋だと思いますが、いかがでございましょうか。

田中国務大臣 大変勉強になりました。

 これはちょうど米田先生が先ほど来指摘なさっている、当省の幹部がついこの間行ってこられて、うまく機能しておりますという報告を受けたばかりでございますけれども。

 だから、もう皆様の方がよく御存じですけれども、ODAは大体、民生目的の支援ですね。基本的にそういうことで始まっていますし、このバルーチャンもそうだと思うのですけれども、私が一番直近に受けた報告が、私は、軍政であるけれども大丈夫なんだろうか、軍の方に電力が利用されるとか今の為政者に利用されてしまわないか、アウン・サン・スー・チーの問題を言っているところもあるし、その辺の兼ね合いはどうかというふうな質問もいたしましたけれども、大丈夫なんだと。

 細かいことも言いながら、そのまま聞いていました。聞いておりましたけれども、今河野先生が熱弁を振るわれておりますので、ちょうどまた先ほど、ほかの地域に対するODAのお尋ねがほかの政党からもございましたように、やはり日本が戦後やってきたODAを、こんなに活発に見直しとか、それからこういう問題意識を持って与党も野党の先生方も、もちろんメディアもあるでしょうけれども、実際に出したり、調査なさっているのだと思うのですね。

 ちょっと反問権があるかどうか知りません、委員長、よろしければ。これはどうやって調べたのですか。インターネットですか。

河野(太)委員 私のところに、今三十名弱のボランティアをしてくれている太郎塾と呼んでいるスタッフがおりまして、その中にODAを担当しているグループがございます。そのメンバーと、それから現地に行っている世界各国のNGOがいらっしゃいまして、緊密に連絡をとった上、また先般、ビルマ側のNGOの方が日本に来た際には小島政務官にもお目にかかっていただきましたが、いろいろ現地の一次情報に近いものをなるべくとるように頑張って勉強しております。

田中国務大臣 なるほど、説得力があるというふうに思いました。

 役所の視察団をまた無視するわけでもございませんから、やはりたくさんの情報を、私が世界じゅう全部飛んで見るというわけにもいきませんので、幸いこの内閣が聖域なき見直しということを言っておられますので、本当に真剣に改めてODAというものを、どれは推進し、どれは少し無理があってもまたさらに推進する、これはもうやめるというふうなことをちゃんと見直しをする、いい御示唆に富んだ御発言をいただいたというふうに思いますので、それをもってお答えとさせていただきます。

 最後に、また同じセリフでございますが、お父様が外務大臣、私の前任者のときにたくさんやっていただければよかったのにと思っておりますので、くれぐれもよしなに、およろしくお伝えくださいませ。

河野(太)委員 余り親子の会話がないものですから、大臣から直接言っていただいた方が早く伝わるのではないかと思いますが。

 この件につきましては、今質問主意書を用意しておりますので、出させていただきまして、大臣はとてもお忙しいと思いますので、この件につきまして、小島政務官を初めいろいろ御説明もさせていただいております。できれば、ぜひ質問主意書の回答は、事務方だけでなく政治も参加をして回答をいただきまして、ぜひこの問題を解決に向けて大きく動かしていきたいというふうに思っております。

 まだちょっと時間が残っておりますが、大臣もお疲れのようでございますのでここで打ち切らせていただいて、またいずれの折か質問させていただきたいと思います。どうもありがとうございました。

土肥委員長 次に、上田勇君。

上田(勇)委員 大臣、ASEMの外相会談の御出張、まことに御苦労さまでございました。きょう幾つか通告をさせていただいておりますけれども、もう私が最後の質問者でございますので、もうしばらく御辛抱いただきたいというふうに思います。

 ただ、質問に入る前にちょっと一言だけ、午前中のやりとりの中のことについて、これは答弁は結構でございますので、コメントをさせていただきたいと思うのです。

 多分大臣、中国の外相との会談の内容について公開しないのが原則だというふうにおっしゃったと思うですが、私はそれはちょっと違うのではないのかなというふうに思うのですね、原則とまで言うのは。というのは、外交とはいっても、これはやはり国民の税金で行われていることでありますので、できるだけのことは公表、公開する、それが原則であって、その中でやはり外交上機微な問題もある、だからそれは公開できない部分もあるんだ、それが本来の筋ではなかろうかというふうに思いますので、もし、原則としてこれは公表しないんだというようなのが外務省のスタンスであれば、むしろ大臣の力でぜひそれは改革をしていただきたいというふうに思います。これは一つお願いを申し上げたいというふうに思います。

 それでは、質問の方に入らせていただきます。きょうはODAの問題について今までも何人かの委員から御質問がありましたけれども、小泉内閣、先ほど大臣もおっしゃったように、聖域なき改革、それから財政の構造改革ということを掲げておるわけでありますので、来年度の予算編成の具体的な方針というのはまだ決まってはおりませんけれども、その考え方については、ほかのいろいろな点についてはいろいろ既に示唆される内容が言われております。

 そうすると、ODAの予算もやはり聖域なき改革の例外ではない、先ほどおっしゃったというふうに思いますけれども、それはこのODAの予算、経済協力費というのが一兆円近くの予算でございますので、当然昨年来このことについては削減すべきではないかといういろいろな議論がございます。率直な世論というか、一般の方々の御意見の中にも、国の財政がこれだけ困っているのに他の国の援助をそんなにやる必要があるのか、そういうような率直な疑問もございます。

 そうなりますと、今いろいろ私が申し上げたことからすると、来年度以降のODA予算については削減の方向で検討しているというふうに思うんです。もちろん、ODAというのは重要な外交手段でありますので、一概に何割削ればいいというふうな乱暴な言い方をするつもりはございませんけれども、今の財政事情、あるいは国民世論、それからその他いろいろな状況を考えたときに、このODA予算について今後の基本的な考え方を、まずこれは植竹副大臣にお聞きしたいというふうに思います。

植竹副大臣 今、上田先生のお尋ねでございますが、確かにODAの問題につきましては、経済財政状況の中以外にもまたいろいろな問題もありますので、特にその見直しは強く、いわゆる小泉内閣の聖域なき改革という点からもすべきであり、したがいまして、ODAの一層の効果的な、また効率的な実施に努める必要があることは私どもも十分認識しておるところであります。

 こうした認識のもとに、ODA事業のうち既に機能していないもの、あるいは時間とともに実施の見通しが立っていないものにつきましては、もう一度原点に返って見直しを行っていく考えであります。

 さらにまた、先月二十三日には、ODAを見直しまして今後のODAのあり方について有識者に提言をいただくべく第二次ODA懇談会を設置いたしました。今後は、このODA懇談会におきましてできる限り広範囲な側面から忌憚のない議論を行っていただき、今後のODAのあるべき姿につきまして私どもは検討していきたいと思っております。

上田(勇)委員 おっしゃるとおりだというふうに思うんですが、国の歳出の面とかでいろいろなことがもう既に具体的に言われているものもあります。ODAについても、そういう意味では削減の方向で検討しているということで理解してよろしいのでしょうか。ちょっと確認です。

田中国務大臣 トータルで削減とか何%ということではございません。それは委員が先ほどおっしゃったとおりでして、ODA本来の目的が何であるかという原点に立ち返って、プロセスの中でもっていろいろな問題が生じているところもあるでしょうし、それをまた乗り越えてさらにやった方が大きな成果を生むというものであればそれは推進する。しかし、どう考えてもこれは難しいというものであれば、個々の案件別に整理をしていく。そして、結果としては今現在よりも当然縮小の方向に向かうであろうという見通しでございます。

上田(勇)委員 わかりました。

 その中で、先ほど米田委員からも中国に対するODAの問題についてお話がありまして、今後のあり方について検討していくという大臣の御見解をいただいたんです。

 中国に対するODAというのは、先ほどの繰り返しは避けますけれども、昨年来いろいろな問題点が指摘をされてまいりました。ほかの国にさらに援助している国に何で援助しなきゃいけないのかというようなことも含めて、いろいろな問題点の指摘があったんですけれども、それに対して政府として、昨年来中国のODAのあり方について検討して、これは報道によるとですけれども、近々その支援計画をまとめるというふうに聞いておるんです。

 先ほど大臣がおっしゃった検討していくということは、そういう意味では、近々その結論が出るということと同じことであるというふうに理解してよろしいのでしょうか。

田中国務大臣 中国だけが聖域ではございませんので、それも含めてと理解していただいて結構です。

上田(勇)委員 いや、もちろん中国だけのことというふうに言っているわけではありませんが、とりわけ昨年来そのことについてはいろいろ議論があったので、あえて中国に対するODAのことについてお尋ねさせていただいたんです。

 先日、日中の外相会談が行われまして、私の伺うところによりますと、先方から日本のODAについて感謝の言葉が述べられた。それに対して、これは外務省から伺った報告ですけれども、それ以上の議論はなかったということであります。

 今、いろいろあったODAに関する我が国の国内の財政事情のことであるとか世論の動向であるとか政府内の検討状況、そういったことを踏まえて、やはり我が国としての考え方をこの外相会談の場で伝えるべきであったのではないかというふうにも考えるんですけれども、それはいかがでしょうか。

田中国務大臣 そういう御意見もあろうかと思いますが、何分にも時間がえらく限られておりましたし、それから、中国側は議長国でしたから、基本は国際会議だったんです、ですから、バイのときにそれほどたくさん時間をいただくわけにいかなかったものですから、ちょっと時間的な問題でかないませんでした。

上田(勇)委員 報道でしか私どもは知り得ないんですけれども、中国の外相との会談というのは一時間半ぐらいされたということでもありますし、わざわざ先方からODAについてのお話があったのであれば、私は、先ほど縮小の方向というようなこともありましたし、後々この問題はどうせ予算編成の段階になってくると議論に上ってくるので、そういう意味では、誤解を避ける意味でも、その点について率直なところをお話ししていただいた方がよかったのではないのかなというふうに思います。もう終わったことでございますので、それ以上のことは申しませんけれども、意見として申し上げたいというふうに思います。

 それで、次の話題に移らせていただきたいんです。

 先日も私の質問の中で取り上げさせていただきましたし、きょうの午前中も中野寛成先生から触れられた集団的自衛権の問題につきまして、先日私がさせていただいた質問で、いわゆる外務省としてのお考えが必ずしも判然としなかった面がございますので、きょうはちょっと細かい点に入っていきますので、植竹副大臣にお伺いをさせていただければというふうに思うんです。細かい点については副大臣の方にお伺いをしたいと思うんですが、その前に、大臣に基本的な認識だけ一言お伺いしたいと思うんです。

 私は、政府の憲法解釈として集団的自衛権の行使が認められていないというこの事実が、やはり我が国の外交、安保政策の決定、それは日米安保条約の内容もそれによって規定をされるし、PKO活動の範囲あるいは周辺事態法の内容、こういったこともこうした解釈の事実によって非常に重大な影響があるというふうに考えております。

 そういう意味で、政府の憲法解釈として集団的自衛権の行使が認められていないということ、これが我が国の外交や安保の政策にとって重要な要素だというふうに大臣はお考えなのか、どういう御認識をお持ちなのか、その重要性についての認識をお伺いできればというふうに思います。

田中国務大臣 集団的自衛権の問題は、きょう午前中かなり細かく中野寛成先生にお話し申し上げたというふうに思っていますが、今のお尋ねに対しましてですけれども、我が国の外交、安全保障政策は、いつも言っていることなんですけれども、そうした憲法の解釈の枠内で遂行されておりまして、その意味で、政策の中で大変重要な要素であるというふうに考えております。

上田(勇)委員 わかりました。先日も同じようなことをお伺いしたんですけれども、それに対して明確にお答えが伺えなかったので、改めてで大変恐縮でございますけれども、質問させていただいたんです。

 そこで、副大臣、これも先日大臣に伺ったんですが、改めて整理をして御答弁いただきたいというふうに思うんです。小泉内閣として、集団的自衛権の行使が認められることが必要、これはいつというようなことは別にして、必要だというふうにお考えになっているということでありますけれども、それはどのような事態を想定してのことなのかを伺いたいというふうに思います。

 これは先ほど中野委員の御質問の中にもあったんですが、私は、どういう事態において行使が必要とお考えになっているかによって今後の検討の具体的な方向とかプロセスが変わってくると思うんですね。それは果たして憲法の改正が必要になってくるのか、あるいは解釈の改正なのか、それとも今までの政府方針の中でどこまで対応できるのかというようなこともあるでしょうから、そういう意味で、何を、どういう事態を想定されているのかということが非常に重要だというふうに思いますので、その辺の御見解を改めて伺いたいというふうに思います。

植竹副大臣 今委員お話しの点で二つあると思うんです。

 まず、どのような事態を想定しているかということですが、基本的な問題といたしましては、これは総理も外務大臣も私も同様でございますが、問題意識として考えてみますと、我が国の平和と安定のみならず、国際の平和と安定という観点から、他国と協力しながら何を行っていくべきかということをもう一度原点に立ち返って主体的に考えていかねばならない。このような考え方から、日米安保体制がより有効に機能するような観点から、日本として従来以上の役割を果たす余地はないか。そして、国際の平和と安全のために、国連などを中心とする国際的な活動や努力に対しまして、日本として従来以上の寄与を行う余地がないかということを改めて真剣に考えていかなくちゃならない。

 そして、委員がお尋ねの中で、憲法の改正なのか、周辺事態法とかPKO法の法改正がどうであるかということにつきましても、私は、日本の国益にとりまして何をなすべきか、何をなすべきでないかということを考察しまして、それを実現していくための法的な問題を検討して、整理していくべきじゃないか、そういうふうに考えておるところであります。

 いずれにしましても、憲法に関係する問題でございますし、その点については、世の中の変化を踏まえつつ、幅広い議論が行われるということが大変重要であり、集団的問題につきましてもさまざまな角度から検討していくことが必要ではないかと思っております。

上田(勇)委員 今のも全くおっしゃるとおりなんですけれども、ただ私は、例えば小泉総理が、日米が共同訓練を行っていたときに攻撃を受けた場合であるとか、あるいは米軍の救助の場合だとかに日本の自衛隊が参加できないだとか、こういったことというのは、実際に本当に前向きに考えていかなければいけないことじゃないかというふうに思うんです。日米安保体制のもとで常識的な対応をすることが当然のことであるというふうに思いますので。ただし、今おっしゃったように、それをあらゆる問題と絡めてくると、本来は対応が可能なことも実はできなくなってしまうんじゃないかということをむしろ心配しております。

 いわゆる憲法の改正という話になると、先日来大臣は憲法調査会の話をされるんですけれども、憲法調査会の結論が出るまでには相当時間がかかりますよね。そうすると、それを受けてという話になっちゃうと、本当に急いでいることができないでしょうし、解釈の変更ということになると、そこまでは時間がかからないにしても、また相当な時間がかかるだろうと。

 そうすると、やはり現行の憲法も解釈も基本も変えないで対応できるところから順番に、段階的に考えていかなければ、いろいろ言葉ではおっしゃるんですけれども、アクションプランができなくて、最終的には、結局は先送りになってしまうのではないのかなという気がするんですけれども、そのあたり副大臣はいかがでしょうか。

植竹副大臣 その点につきまして、いわゆる政策面で考えるのがどうあるべきか、あるいは実態論で考えていくかということも大変重要になってまいります。特に、いわゆる武力の一体化という問題は非常に難しい。つまりグレーゾーンの問題もいろいろあるわけです。

 ですから、具体的にそれがどうあるべきかということを、一つ一つ検討を解釈の中に進めて、一方ではそういうグレーゾーンの問題をはっきりするために、基本的にはやはり憲法の問題にいくんじゃないかということでありますから、政策論、実態論を踏まえまして、それをどちらに、どういうふうに解釈とか実際に適用していくかということを実態論から考えていくことが必要じゃないかと私は思っております。

上田(勇)委員 ありがとうございます。

 先日来いろいろとお話を伺っていると、その辺の整理がまだ必ずしもうまくついていないのではないのかなと。そうすると何か言葉だけが先行をして、結局は具体的な議論ができないのではないかということを私は非常に懸念をしておりましたので、今のような形で、具体的な事例そして実態、そしてそれに必要とされるプロセスといったものを整理していただいて、それについてどういうふうな議論をしていくか、ぜひそういう方向で進んでいきたいというふうに思いますので、またよろしくお願いをいたします。

 次に、もう一点お伺いをいたしますけれども、先日、NATOの外相理事会がございました。そこでアメリカのパウエル国務長官がミサイル防衛構想について説明をしたところ、NATOの同盟国の方から軍拡競争を招くのではないかという慎重論も多かったというふうに聞いております。

 昨日、この質問通告をさせていただきまして、そうすると、これはけさの産経新聞に、田中外相の北京でのイタリア外相との会談の折の発言が引用されておりまして、私はこの記事の真偽のほどは全くわかりませんし、そういう意味ではこれがどうのこうのということではないんですが、ただ、ここに書いてあることだとするとちょっと今までのスタンスと少し変わったのかなというふうにも感じられるので、ミサイル防衛構想について我が国としてどのように考えているのか。先日、アメリカからも来日されて事務レベルではいろいろな御説明があったというふうに伺っておりますので、我が国として、また外務省としての考え方をお尋ねいたします。

田中国務大臣 これは別に情報を隠す必要もないので申し上げますけれども、ディーニ外相とは、こちらが韓国、こちらがイタリアという感じでいつもいつもずっと一緒におりまして、その中でいろいろな会談をすることができました。オフィシャルな発言を前を向いてやっているほかにもしゃべるわけですよね。そういう中において、アメリカに自重なんて全然言っていませんで、ブッシュ大統領が、サミットの前でしたか後だったか、ヨーロッパに来る。そのときに、こういうふうなミサイルの防衛構想ですか、NMDについて話が出るだろうから、ぜひ親しく自分たちも欧州としては聞いてみたいのだという話で、この私どもの会合にはアメリカは当然入っておりませんでしたからアメリカに対してどんなことだろうかとじかに聞けなかったものですから、そういう……(上田(勇)委員「ミサイル防衛構想について、日本としてはどういうふうに考えているかという質問をさせていただいたのです」と呼ぶ)今おっしゃったのは、違うんじゃないですか。

上田(勇)委員 別に私はその記事の内容で責めるつもりはないので、それは真偽のほどはわかりませんけれどもというふうに申し上げたつもりだったのですが。ですから、ミサイル防衛構想について、日本としての考え方はどうなのかということをお伺いしたのです。

田中国務大臣 また新聞の間違い記事をもとに聞かれているかと。すぐ思い込むものですから、済みません。

 これは基本的には、ミサイルの拡散がもたらす深刻な脅威については、日本も認識を共有しておりますし、それから、とにかく核の一番大事なことは、一層の核兵器の削減ということが目的にアメリカにあるわけですから、そのことは私たちも非常によく理解をしております。そして、こういう理解をもとにいたしまして、共同で日米で研究をするということは今後も推進していきたい。

 以上でございます。

上田(勇)委員 さっき、その記事のことについてのお話があったのですけれども、ということは、やはりここに記事で書かれているようなことというのは必ずしも正確ではなくて、基本的に日本の考え方は別に特に変わっているわけではないということだというふうに思います。

 もちろんさっきから大臣がおっしゃっているように、新聞記事一つ一つでじたばたするなということもそのとおりだというふうに思うのですけれども、ただ、新聞に書いてあることというのが、はっきりと確認をしてみないと、それが本当のことだというふうに思われる。それが今のメディアの怖いところだし、力なものですから。

 そういう意味では、これは一面だったものですから、あえてきょうちょっと引かせていただいたのですが、逆に、今しっかりと大臣の方からお話をしていただいて――しかもこの記事はひどいのですね。「独断、日米基軸を逸脱」なんというようなことが書いてあって、ひどい。逆に言うと、大臣に対する誹謗みたいなことも書いてあるものですから、改めてその基本姿勢を確認させていただきましたので、それで結構でございます。

 それでもう一つ、ちょっと通告の順番と前後して申しわけないのですけれども、機能改革会議の問題でございます。

 以前、外務省の方からは、機能改革会議の提言を受けて、具体的な改革の要項を五月中には取りまとめられるだろうというふうにおっしゃっていたのですけれども、もう六月になったわけでありますが、今の進捗状況をお話しいただければというふうに思います。

植竹副大臣 外務省の機能改革の問題につきましては、これは大臣から、二人の副大臣、それから三人の政務官に機能改革をいかにやるべきかということで、研究し、それを取りまとめるというお話がございまして、私どもは、前に提言があり、それから外務省プロパーの改革案もありまして、それを検討に入れながら、私ども独自で新しい二十一世紀の外務省のあり方はどうすべきかということを検討しております。

 実は、一昨日、二十九日に、私どもの五人のメンバーによるそれを最終的に出しまして、田中大臣に上げまして、目下、田中大臣においてその三つの問題を中心に御検討いただいており、私は、大臣から近々最終的な決裁というか御指示をいただけるものと思っております。大臣も、特に五月いっぱいにそれを出せということでございますし、極めて速やかにお出しになるというふうに伺っておるところでございます。

上田(勇)委員 しっかり進んでいるということで、安心をいたしました。

 それで最後に、ちょっとこれは何かテレビのワイドショーのような話題を取り上げて恐縮なのですけれども、これは事務方の方でお答えをいただければと思うのです。

 大臣が北京に御出張されたときに、ホテルの部屋が余りにも豪華過ぎるということで普通の部屋に移られた。これは本当に国民の目線に立った非常にわかりやすいことで、本当にいいことをしていただいたというふうに私は思っております。外務省の予算といっても国民の税金でありますので、それを大切に使っていくという姿勢を示していただいたというのは大変多くの方々から支持いただいているのではないかというふうに思います。

 ただ、それでちょっと気になったのは、では、もともと外務省ではそのように大臣をしてすらそんな豪華なものは要らないというような、そんな必要以上の高い部屋を用意したというのは、何でそういうようなことをされたのか。また、今回の大臣の御判断によって、これはどのぐらいの公費の節約ができたのか。これは何かささいなことだというふうに批判も受けるかもしれませんが、やはりこういう積み重ねというのが大事だというふうに思いますので、あえて伺わせていただきたいと思いますけれども、いかがでしょうか。

田中政府参考人 お答えを申し上げます。

 まず、外務省の事務当局として、外務大臣のお部屋についてどういう判断でしたのかということでございます。私ども、こういう国際会議に大臣が行っていただきます場合に、幾つかの判断の基準というのがございまして、一つは警備が十分できるのか。それから、大臣の部屋というのは必然的にいろいろ人が出たり入ったりいたしますから、そういう意味で、他の宿泊の皆様に御迷惑をかけてはいけない、こういう問題。あるいは、場合によっては二国間の外相会談ということもやらざるを得ない場合がございますから、そういう施設はあるかどうか。あるいは、国際会議の作戦会議を大臣の前でやらなければいけない、こういう場合もございまして、そういう判断に基づいて、これはそれぞれの国際会議とか、あるいはホテルによって違いますけれども、私どもが判断した部屋はその様式のスイートであった。これが一泊二千四百ドルということでございました。

 それで、これは大臣の了解を全部いただいてやったことではなくて、大臣がまずその部屋をごらんになって余りにも広い、高過ぎるということで、急遽部屋を変えさせていただいたということでございまして、その部屋が一泊六百八十ドルということでございました。ですから、これはサービスとかあるいは税金ということもございますけれども、どれだけの公費の節約になったかというお尋ねでございますけれども、これは一泊二千四百ドルと六百八十ドルの差額、これの二日分というものが公費の節約ということでございます。

 私どもとしても、いろいろな考える要素はありますが、今回大臣の御判断があったわけで、これからは大臣の御判断を尊重してやっていきたい、こういうふうに考えております。

上田(勇)委員 もう時間が終わりますけれども、ただ、わずかと言っていましたけれども、二日目を足してみると三千五百ドルですから、結構な額の節約ができたのだというふうに思います。本当に大臣の御判断は正しいものだと思いますので、また今後ともそういう意味での改革に取り組んでいただければというふうに思います。よろしくお願いいたします。

     ――――◇―――――

土肥委員長 次に、二千一年の国際コーヒー協定の締結について承認を求めるの件、文化交流に関する日本国政府とロシア連邦政府との間の協定の締結について承認を求めるの件及び税関手続の簡易化及び調和に関する国際規約の改正議定書の締結について承認を求めるの件の各件を議題といたします。

 政府から順次提案理由の説明を聴取いたします。外務大臣田中眞紀子君。

    ―――――――――――――

 二千一年の国際コーヒー協定の締結について承認を求めるの件

 文化交流に関する日本国政府とロシア連邦政府との間の協定の締結について承認を求めるの件

 税関手続の簡易化及び調和に関する国際規約の改正議定書の締結について承認を求めるの件

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

田中国務大臣 ただいま議題となりました二千一年の国際コーヒー協定の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明申し上げます。

 この協定は、平成十二年九月にロンドンで開催された国際コーヒー理事会において採択されたものであります。

 この協定は、有効期間が延長された千九百九十四年の国際コーヒー協定にかわるものであって、コーヒーに関する国際協力の促進を主たる目的とするものであります。

 我が国がこの協定を締結することは、コーヒーの安定的輸入の確保に資すること、開発途上にあるコーヒー生産国の経済発展に引き続き協力すること等の見地から有意義であると認められます。

 よって、ここに、この協定の締結について御承認を求める次第であります。

 次に、文化交流に関する日本国政府とロシア連邦政府との間の協定の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明申し上げます。

 我が国とロシア連邦との間では、昭和六十一年に署名された日ソ文化交流協定に基づき、文化、教育及び学術の分野における交流が行われてきておりますが、民間レベルにおいても相当の拡大が見られる両国間の文化交流の実態に合わせて現行協定を全面改正することとし、平成十一年十二月以来、このための政府間交渉を行いました。その結果、平成十二年九月五日に東京において、我が方河野外務大臣と先方イワノフ外務大臣との間でこの協定の署名が行われた次第でございます。

 この協定は、両国政府が文化、教育及び学術の分野の交流を奨励するとの規定を設けることにより、両国政府が今後の両国間の文化交流の促進のために果たすべき適切な役割を反映した新たな法的枠組みを提供するものであります。

 この協定の締結により、民間レベルにおいても相当の拡大が見られる両国間の文化交流が一層発展し、強化されることが期待されます。

 よって、ここに、この協定の締結について御承認を求める次第でございます。

 次に、税関手続の簡易化及び調和に関する国際規約の改正議定書の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。

 この改正議定書は、平成十一年六月にブラッセルで開催された関税協力理事会において採択されたものであります。

 この改正議定書は、税関手続の一層の簡易化及び調和を図り、もって国際貿易を円滑にすることを目的とするものであります。

 我が国がこの改正議定書を締結することは、国際貿易の促進に寄与するとの見地から有意義であると認められます。

 よって、ここに、この改正議定書の締結について御承認を求める次第でございます。

 以上三件につきまして、何とぞ御審議の上、速やかに御承認いただきますようお願い申し上げます。

土肥委員長 これにて提案理由の説明は終わりました。

 次回は、来る六日水曜日午前九時理事会、午前九時十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時四分散会




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