衆議院

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第19号 平成13年7月10日(火曜日)

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平成十三年七月十日(火曜日)

    午後一時開議

 出席委員

   委員長 土肥 隆一君

   理事 河野 太郎君 理事 下村 博文君

   理事 鈴木 宗男君 理事 米田 建三君

   理事 安住  淳君 理事 桑原  豊君

   理事 上田  勇君 理事 土田 龍司君

      桜田 義孝君    下地 幹郎君

      高橋 一郎君    中本 太衛君

      西川 京子君    原田 義昭君

      三ッ林隆志君    宮澤 洋一君

      望月 義夫君    山口 泰明君

      木下  厚君    首藤 信彦君

      中野 寛成君    細野 豪志君

      松原  仁君    丸谷 佳織君

      赤嶺 政賢君    東門美津子君

      柿澤 弘治君

    …………………………………

   外務大臣         田中眞紀子君

   外務副大臣        植竹 繁雄君

   外務大臣政務官      丸谷 佳織君

   外務大臣政務官      山口 泰明君

   政府参考人

   (内閣府政策統括官)   安達 俊雄君

   政府参考人

   (警察庁刑事局長)    五十嵐忠行君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 河村  博君

   政府参考人

   (外務省北米局長)    藤崎 一郎君

   外務委員会専門員     辻本  甫君

    ―――――――――――――

委員の異動

七月十日

 辞任         補欠選任

  池田 行彦君     高橋 一郎君

  小島 敏男君     西川 京子君

  虎島 和夫君     三ッ林隆志君

  前田 雄吉君     松原  仁君

同日

 辞任         補欠選任

  高橋 一郎君     池田 行彦君

  西川 京子君     小島 敏男君

  三ッ林隆志君     虎島 和夫君

  松原  仁君     前田 雄吉君

    ―――――――――――――

六月二十九日

 一、千九百九十四年の関税及び貿易に関する一般協定の譲許表第三十八表(日本国の譲許表)の修正及び訂正に関する二千年十一月二十七日に作成された確認書の締結について承認を求めるの件(条約第四号)

 二、投資の促進及び保護に関する日本国とモンゴル国との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第五号)

 三、投資の促進及び保護に関する日本国とパキスタン・イスラム共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第六号)

 四、国際情勢に関する件

の閉会中審査を本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 国際情勢に関する件

 日米地位協定の見直しに関する件

 派遣委員からの報告聴取

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     ――――◇―――――

土肥委員長 これより会議を開きます。

 国際情勢に関する件について調査を進めます。

 この際、去る七月五日、沖縄県北谷町における在沖米軍軍人による事件に関する実情等調査のため、沖縄県に委員派遣を行いましたので、派遣委員から報告を聴取いたします。

 鈴木宗男君。

鈴木(宗)委員 去る七月五日、沖縄県北谷町における在沖米軍軍人による事件に関する実情等調査のため、沖縄及び北方問題に関する特別委員会とともに、沖縄県に委員派遣を行いました。私が委員長代理を務め、調査を行ってまいりましたので、派遣委員を代表して、調査の概要について御報告申し上げます。

 派遣委員は、民主党・無所属クラブの桑原豊君、自由党の土田龍司君、社会民主党・市民連合の東門美津子君、そして私、自由民主党の鈴木宗男の四名であります。なお、外務委員会委員でもある自由民主党の下地幹郎君及び日本共産党の赤嶺政賢君は、沖縄及び北方問題に関する特別委員会の委員として派遣されております。

 全行程、沖縄及び北方問題に関する特別委員会と行動をともにいたし、派遣委員は合同で調査を行いました。

 平成十三年六月二十九日、沖縄県北谷町で発生した在沖米軍空軍兵士による婦女暴行事件は、地域住民を初め沖縄県民に大きな不安と衝撃を与えました。警察庁は、事件発生三日後の七月二日に至り、容疑者に対する逮捕状をとり、政府は、同日、刑事手続に関する日米合同委員会合意に基づき、米側に被疑者の起訴前の拘禁の移転を要請いたしました。この要請に対し、米国側は、ワシントンでの調整を経て、四日後の七月六日、日本側への被疑者の身柄引き渡しに応じております。

 外務委員会としては、こうした事件、事故の再発防止、沖縄県民の負担軽減、日米地位協定の運用改善、ひいては日米地位協定の見直しの必要性という観点から、急遽、今回の委員派遣を行ったものであります。

 以下、調査の内容について御報告申し上げます。

 まず、那覇空港から県庁までのバス内で、外務省の橋本宏沖縄担当大使から、今回の事件の概要と捜査状況並びに日米地位協定の運用改善に係る被疑者の起訴前の拘禁の移転の要請に対する米国側の対応の状況について説明を受けました。身柄引き渡しについて政府としては努力は行っているものの、その時点では米側の回答は得ていないというものでありました。

 次に、沖縄県庁で稲嶺惠一県知事と懇談を行い、稲嶺知事より、事件の早急な解決に尽力することが求められるとともに、事件、事故の再発防止が担保される実効性のある具体的な対策と、日米地位協定の抜本的な見直しについて強い要望がなされました。これに対し、派遣委員から、身柄引き渡しに時間がかかっていることは残念であり、事件解決のため立法府の立場から努力する旨伝えるとともに、地位協定の改正について抜本的見直しをするという前提で米国をテーブルに着かせるときに来ている旨、発言を行いました。

 さらに、駐留米軍の削減、田中外相の沖縄訪問の必要性、事件の再発防止と米軍の綱紀粛正の実効性を確保するための措置、田中外相の事件に対する対応姿勢の是非等について質疑が行われました。

 次に、六月二十九日の婦女暴行現場である北谷町美浜の駐車場を視察し、沖縄県警察本部植田秀人警務部長から、事件の概要と捜査状況について説明を聴取しました。

 次に、米軍のキャンプ瑞慶覧を訪問し、アール・B・ヘイルストン四軍調整官(第三海兵隊機動展開部隊司令官兼在日海兵隊基地司令官)及びゲーリー・ノース嘉手納基地司令官(第十八航空団司令官兼嘉手納基地司令官)と懇談を行いました。

 まず、派遣委員から、被疑者の身柄引き渡しについて、現地司令官の立場から米本国に対し早期解決が大事であることを伝えていただきたいとの要請を行うとともに、日本の警察は公正で信頼に足るものであり、なぜ身柄引き渡しに時間がかかるのか疑問である、日米安保の重要性、駐留米軍のアジアや世界の安定への貢献は認識しているが、日米の信頼関係が最重要である、両司令官からも身柄引き渡しを働きかけてほしい旨、発言を行いました。

 これに対し、米側からは、軍人軍属の行動、品行には極力注意し、よき隣人となるべく努力しているが、このような事件が起こり大変残念であり、日米間の友好関係、沖縄県民との友好関係に悪影響が生じたことは大変遺憾である、身柄引き渡しについては日米合同委員会で提起されており、本国では国務省と国防省が最重要案件として協議している、両省とも早期解決を目指しており、米軍としても県民との良好な関係維持のため早期に解決したい旨、発言がありました。

 次に、北谷町役場を訪問し、辺土名朝一北谷町長と懇談を行いました。辺土名町長からは、今回の婦女暴行事件を踏まえ、国の責任において地域の安全措置を講じること、日米地位協定の改正等についての要望がありました。これに対し、派遣委員より、要望事項についてはしっかり受けとめたい、地位協定改正については県からの要望もあり、外務委員会で見直しに向けての決議を行いたいと思う旨の発言を行いました。

 次に、名護市辺野古の普天間飛行場代替施設建設予定地を訪問し、山崎信之郎那覇防衛施設局長から代替施設の工法等について説明を受けました。また、名護市会議員の意見を聴取したところ、名護市議会による普天間代替施設に関する意見書策定過程での政府高官の介入について発言がありました。

 次に、沖縄県庁において記者会見を行い、調査結果の概要を報告し、婦女暴行事件の被疑者の身柄引き渡しについて、政府、米軍に申し入れるなど努力したい、日米地位協定見直しについては両委員会で協力し、前向きに取り組みたい、外務委員会では閉会中審査を呼びかけ、地位協定の抜本的見直しの決議をしたい旨、発言を行いました。

 以上が調査の概要でありますが、今回の事件の被害者及び御家族の方に対し心からの悲しみの気持ちをお伝えするとともに、沖縄の現状を見て、沖縄の声を聞くことにより、沖縄県民の負担の大きさを改めて認識し、こうした沖縄の負担軽減のためにさらに努力しなければならないことを深く実感した次第であります。

 今回の調査に当たり、御協力いただきました関係省庁、沖縄県、北谷町、名護市等の関係各位に対し、心からお礼を申し上げまして、報告とさせていただきます。

土肥委員長 これにて派遣委員からの報告聴取は終わりました。

    ―――――――――――――

土肥委員長 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として、委員下地幹郎君の質疑に際し、外務省北米局長藤崎一郎君及び内閣府政策統括官安達俊雄君の出席を、委員上田勇君の質疑に際し、警察庁刑事局長五十嵐忠行君及び法務省大臣官房審議官河村博君の出席を、また、委員赤嶺政賢君の質疑に際し、外務省北米局長藤崎一郎君の出席を求め、それぞれ説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

土肥委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

土肥委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。下地幹郎君。

下地委員 きょう、こうやって閉会中審査が、このような事件が起こったことで行われることは非常に残念なことでありますけれども、この委員会で、今後このようなことが起こらないように努力をしていく、私どもは前向きな審議をしていかなければいけないと思っております。

 今度、先ほど委員会の報告がありましたけれども、私が印象的に残っているのは三つあります。

 一つは、一点目には、警察の警務部長さんの現場の説明を聞かせていただきました。委員会では全部を話すことはできませんけれども、まさにこれは凶悪な犯罪であるという認識を、その警察官の説明から私どもは受けました。そして、立件に向けても強い自信を沖縄県警が示したことも、私は非常にこの事件の重さを感じるようなことであります。

 それで、もう一つ、二点目には、北谷の町長が私どもの委員会に対してこんなことを言っておりました。日米安保条約を認めて、この沖縄に基地の存在が今すぐなくならないというふうなことになるならば、政府はその治安に対しても責任を持ってもらいたい。金銭的だとかいろいろな経済的な効果も非常に大事でありますけれども、この治安に関しても政府の責任で、日米安保条約を認めている以上はしっかりといろいろな対策をつくってもらいたい。そして、美浜に対する公園をつくる、そういうふうな県警の、厚みのある基地問題の対策をぜひ立ててもらいたいというのが二点目であります。

 三点目は、私どもがノース准将やヘイルストン調整官のところに行ったときに、私からも、きちっとしたメッセージが中央に届いていないからこんなにおくれているじゃないか、あなた方がもっと、この問題は非常に重い問題で、これは米国にとっては大きな貸しがある、だからこの問題に関しては早急な対応をしなければいけないというメッセージをきちっと送らないから、これが、犯人の引き渡しがずるずるずるずるここまで延びているのじゃないかという話をした。それに関して、いや、そんなことはないという話でありましたけれども、私は、この三つの委員派遣の中の私として重く感じた部分をしっかりとぜひ外務省にも受けとめてもらいたいというふうに思っております。

 それで今、この問題が起こってからずっと動きがあります。初めは、地位協定の改定、そういうふうな話が新聞紙上も多く起こりましたけれども、今の新聞紙上は全部、運用の改善をすべきである、運用の改善を先にしなければならないというトーンに変わっております。

 これは、私からすると、間違いなくこのトーンは後退をしているトーンだというふうに思っているのです。なぜ私がこの運用の改善を後退していると言うのかということは、この委員会の議事録を全部とればいい、歴代の外務大臣がどんなふうに答えてきて、役所がどんなふうに答えてきたかを全部見れば、私は、そのトーンがまた同じ歯車に、三年前に戻っていることを感じればいいと思うのです。

 平成十年の十月七日午前四時二十五分、中城村において上間悠希さんという女の子が交通事故に遭って亡くなりました。ひき逃げですよ。ひき逃げ、飲酒運転、スピード違反、これは殺人ですよ。これは、この三つの重なっているような状況の中で十八歳の子供が亡くなった。そのときに河野外務大臣にも話をした、これはぜひ運用の改善をしてもらいたいと。私ども自民党は、そのときは、地位協定の改定よりもまず先にできるもの、それは運用の改定ですよ、運用の見直し、これをやってもらいたい、だから早急に運用の見直しをして、十七条の五項の(c)であるその他事項に、殺人と暴行に放火も加えたらどうでしょうか、それにこういうひき逃げの凶悪な交通事故も加えたらどうでしょうか、そういう話を三年前に私どもはやったんですよ。

 三年前にやって、外務省の当時の大臣は何と言ったかというと、前向きに検討します、その問題を重く受けとめてやりますと言って、三年間たった。そして、ことしの一月にも北谷町で放火の事件があった。一月の放火があって、そのときも、これは放火も運用のその他事項に加えたらいいのじゃないかという話があった。それもやって、もう今になって、七月までずっとほったらかしている。

 藤崎局長は、この前の私の六月十三日の質問にも言っていますよね。私が、地位協定のその他事項、相当煮詰まっているみたいですけれどもいかがですかと質問をしたら、一月の放火事件を契機に前外務大臣から指示がございまして、これにつきましては、関係省庁と十分に協議を重ねました結果、米側と五月に至りまして協議を開始したところですということなんですね。本件に関しては、米側のいろいろな立場もございますし、私どもの日本政府の中でも、司法当局、外務当局、防衛当局といろいろなすり合わせが必要でございますので、まだ御報告できる状況ではございませんが、引き続き鋭意努力してまいりますと。

 まあ、あのときは別の件で質問させていただいたからこれで終わりましたけれども、この答弁はもう三年間続いております。三年間続いて運用改善の話ができていないから、私どもはこれはどうなっているのかと思うのは当たり前のことだと思うんですね。

 それで、もし外務大臣が、小泉総理がですよ、運用の改善をしますとか何とか言っても、だれが信じますか、そんなもの。十八歳の子供が亡くなってから、三年間も運用の改善を一個も外務省はしないで、今、運用の改善をやります、やりますと言って、その場的に今言って、だれが本当に、沖縄県民が、これは前向きにやりますねと、そんなことだれが思うんでしょうかね。全くこれは信頼のできない話だと思いますよ。

 私は、この問題をその場限りには終わらせてはならないと思うんですよね。いつでもその場限りです、いつでもその場限り。初めてですよ、委員会でこうやって地位協定に対する決議をしようと。それに関してもいろいろな話が出ております。

 それは後で採決されるはずですけれども、怒られるかもしれませんけれどもね、私は、この三時以降に採決される文言に関しても、心の中からすっきりおりるような採決の文章じゃないと思っていますよ。これは理事の皆さんに怒られるかもしれませんけれども、本当にそれでいいのかどうなのかねと、そろそろ本気で考えてくださいよ。事件が起こるごとに怒っても何もしないでずっと来て、それで今また改定という文句も入らないような採決をして、私は、これで多くの皆さんがよかったと思うかといったら、思わないと思うのです。

 ぜひそのことを政府は頭に入れて、私は、どんなふうに感じているのかということを感じてもらいたいなと思いますよ。外務大臣、どうですか。

田中国務大臣 まず、今回の北谷の事件につきましては、私は、被害者御本人はもちろんですけれども、御家族、それから沖縄県民の皆さん、そして、こうした事件をメディアを通じて知った日本人皆さんが感じている怒りですとか、それから、許しがたいことであって、もちろんあってはならないことでありますし、そして、こういう痛ましい事件に対して、今後絶対起こらないように、とにかくどういうことができるのかという思いを、私も共通する立場にございます。その中で私なりに最善の努力をしてきたつもりでございますけれども、今委員がおっしゃったことの意味は十二分に痛いほどよくわかっております。

 この安全保障条約そのものについて、根本的な問題を私たちは冷静にまず考えていかなければならないというふうに思います。

 冷戦は終わりましたけれども、やはり相変わらず世界の中では幾つも火薬庫もありますし、日本を取り巻く環境の中には不確実性、不安定性というものがあります。その中で、米軍のプレゼンスというものは絶対必須であるというふうに私ども与党は考えているわけでございますから、その米軍の果たす役割の重要性というものをしっかり認識しながら、その中で、一九六〇年に前身である日米行政協定というものが改正されて今日に至っているということは御案内のとおりですけれども、現実にこういうことに直面している中で、今回も、とにかく本当に新しい政権、両方ともできてまだ時間のたっていない両政権の中でこうしたことが起こって、しかも、小泉総理が訪米なさったそのときでございましたので、事件が起こったのは。したがって、このことにつきましては、今の範囲内で、法律その他、協定の中ででき得る最善の努力をさせていただいたわけでございます。

 その中で、やはり即応性ということ、皆様の質問を全部拝見して一番思いますことは、とにかく、今この協定の範囲内においても、なぜもっと早く犯人の引き渡しができなかったのかということを一番どの方も共通項としておっしゃっているというふうに思いますけれども、これはやはり即応性、機敏に対応するということ以外の何物でもないというふうに思います。

 そして、相手もあって、そしてこちらもある中で、決められたルールの中で最善の努力はしてきたつもりでございますけれども、鈴木宗男委員がおっしゃったようなあの調査団の御意見、それから、一般の方々の気持ちをしっかりと、沖縄の皆様の気持ちはもう当然でございますけれども、それを踏まえて御意見を拝聴しながら事を進めていかねばならないというふうに考えております。

下地委員 外務大臣、外務大臣になられてからまだ二カ月ですから、僕らはもう五年間同じ質問をある意味でしているんですね、五年間、運用の改善をやっているのです。もし運用の改善のその他事項を、あの上間悠希さんの事件の後二カ月でも三カ月しても外務省が変えていれば、こんな大きな問題にはならなかったですよ。今外務大臣が言っている即応性というのもそのころにきちっとできていましたよ。放火と暴行と、重要なもの、三つか四つつけ加えるというふうなことを要求してきたのは僕らなんだから。ずっとやらないでおいて、今の事件が起こってから言っても説得力がないというのは、これはもう外務省の積み上げなんです。それは、外務省の改革をする田中外務大臣だったら、ずっと見てきた私どもとしては、ぜひ役所のそういうのに縛られないでやってもらいたいというふうに思っております。

 それともう一つ。犯罪を起こした米軍人がいる、九〇%の米軍人は沖縄の人と交流をして、本当に親しい関係がある。一部ですよ、犯罪を起こす米軍人というのは一部。これが三分の二もおれば、半分もおればといえば問題かもしれませんけれども、一部の犯罪を起こす人たちを早急に裁く、そういうふうな体制をつくって日米安保条約が崩れますかね。日本とアメリカの信頼関係が崩れますか。米国のプレゼンスというお言葉がありました、日米安保条約という話がありましたけれども、犯罪を起こした一人か二人、そういうふうな人たちに対して厳しい処罰をするということが、アメリカの国民が、日本がアメリカに対して不快な対応をしているだとか、その中に入っている軍人がおかしいとか、そういうことを思いますか。テレビのインタビューでも同じ軍人が言っていますよ、自分たちの方が恥ずかしいと。ここで何で米国のプレゼンスが出てきて、日米安保条約が出てくるんですかね、地位協定の問題で。ふだんは、何回も言いますけれども、九九%はうまくいっているんですよ。犯罪者だけです、犯罪者。

 本当に外務大臣は、この日米安保条約が、この地位協定のこの部分の状況が変わる、見直しをすることで日米安保条約が崩れるだとか、アメリカの信頼が伴わないだとか、まさかそんなことは思ってないでしょうね。

田中国務大臣 先ほど委員がおっしゃった北谷町長のお言葉が、これは大変重いというふうに思います。すなわち、政府は治安に安保がある以上は責任を持つべきであるということ、それから、地方のメッセージが中央にしっかり伝わっているのかということ、このことは本当に重く受けとめなければいけないし、そういう思いを持っていらっしゃるということはよくわかっております。

 ただ、ことし一月の放火事件の発生を契機といたしまして、いろいろと合同委員会等で合意もいたしておりまして、そして、ことしの五月十五日にも第一回の会合を開催いたしておりますので、今後も、今おっしゃった、本当に一%か二%かわからない、九九%はうまく沖縄県の皆様とも暮らしておられるということを踏まえながら、もう一度アメリカと精力的に話をするという努力をしてみたいというふうに思います。

下地委員 外務大臣、いつまでに運用の改善をやるおつもりですか。相手があるからとかは言わないでくださいよ、もう何十年もやってきているわけですから。その他事項に載せる運用の改善、いつまでに目鼻をつけたいとお思いになっておりますか。ここはもうはっきりしてもらわないと。

田中国務大臣 今現在、犯人の引き渡しも終わったところでございますし、アメリカ側も新しい大使を迎えられて、原点に立ち返って一から努力をするとおっしゃっておりますので、できるだけ時間を切る、それは切ってとっとっと進めば済むことですけれども、やはり最善を尽くしながら、合同委員会を頻繁に開きながら事を進めていくということをいたしたいというふうに思います。

下地委員 上間悠希さんの問題から三年歳月がたちました。お気持ちとして大体いつなんですかね。もう積み上げてきているはずですよ、北米局長は。

田中国務大臣 委員のおっしゃっているお気持ち、それからほかの委員からの御質問を見ましても、この点にやはり集中しておりますので、もうそのお気持ちは十二分によくわかっておりますけれども、アメリカ側も、今回は本当に私どもが長時間かけて、とにかく自分のこととして、まだ至らないと思われるかもしれませんけれども、何でこういうことが続いて起こるのかと、それは司法の違いという問題もあると思いますけれども、トップにまで話を上げ、そしてこちらも当然トップに話を上げてあるわけでございますから、その中で今最善を尽くしてくれておりますから、その状態を見守る、その進行を見守る、見守るというとのんびりしているふうに感じるかもしれませんけれども、その努力というものをしっかりと見きわめていくということも必要ではないかというふうに思います。

下地委員 一カ月とか二カ月とか、日にちは言えませんか。この問題は、起訴された後裁判するだけですから、もうこれは関係ないんですよ。その他の問題がいつ起こるかもわからない、そういうふうな中で、一カ月か二カ月には報告をしますとか、できる、できないも含めて報告をしますとか、精力的にやりますとか、やはり時間を入れてもらいたいですね。

田中国務大臣 きょうの質疑の内容につきましても早速報告ももちろんいたしますし、報道もされますし、それを受けて真摯に話を、ぜひ本当に文字どおり早く対応できるような体制を、また再確認をしていただけるように、報告もしていきたいというふうに思います。

下地委員 もう時間が、この委員会短いので言えませんけれども、私の考え方を申し上げさせていただきますけれども、私は、この地位協定の改定を、根本的な改定をするというのじゃなくて、今の地位協定を一回破棄して、五十年前に駐留軍と結んだような地位協定じゃなくて、破棄して、もう一回この委員会で地位協定をやって、新たな地位協定の締結をするというのが非常に大事なことだと思っております。

 それと、フィリピンなんかもそうでありますけれども、思いやり予算と一緒のように、五年に一回は国会決議を得る。もう今のやり方じゃなくて、役人に任せてやるというのじゃなくて、先進国同士でありますから、裁判制度も少々違うかもしれないけれども、それを妥協点を持ってできるような国同士であるから、今の協定を破棄して新協定を結ぶ、そして五年に一回は国会決議を受けてまた新たにアメリカと結ぶという地位協定をすれば、私は、日米間の信頼はもっと深まるし、沖縄県民も、いろいろな声に対応できる。

 委員会で幾ら審議をしても前に進まない。三年間運用改善だけでも待ってきたんですからね、三年間。きのう、きょう言って返事がないといって怒っているわけじゃないんです。歴代の外務大臣は三年間何もやらなかったんだから。私は、そこを重く受けとめてぜひ頑張ってやってもらいたいというふうに思って、ずっと委員会でも派遣でも、沖縄にずっといて、いろいろなマスコミだとかいろいろな人の声を聞いて、本当に怒り心頭で、あの少女暴行事件から始まって、放火が始まって、今のような事件が続いている沖縄を本当に本土の人はわかっているのかなと。日米安保条約が大事だとか米国のプレゼンスが大事なんというのは、沖縄の人は大事じゃないのか、こんな感情論になりますよ。

 その辺のところをじっくりと認識をして、私は田中外務大臣だから期待しますよ。どれだけの期間でどれだけのものが変わるのか。百二十万県民はしっかりとこの地位協定の改定に関して、運用からやるのだったら運用からやるでも、田中大臣の考え方でいいかもしれませんけれども、私は、アメリカに押し込まれないように、県民の立場と日米安保条約のためには、この地位協定の問題をしっかりするのだという認識を持って頑張ってもらいたい。そういうようなことを申し上げて、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

土肥委員長 次に、上田勇君。

上田(勇)委員 今回の沖縄県北谷町で発生をいたしました大変痛ましい事件がきっかけとなりまして、今、沖縄県におけるそうした事態をどうやって抜本的に改善できるのか、そのために地位協定見直し、運用改善というようなことがこの委員会で議論に上がってきているわけであります。

 それで、そうした議論をする前提としてちょっとまずお尋ねをしたいのですが、平成七年には刑事裁判手続に関する日米合同委員会の合意が行われました。内容はもう御承知のことだというふうに思いますので繰り返しませんけれども、これまで、この合意に基づく殺人、強姦といった凶悪な犯罪で、そういう事例というのが具体的には少なかったというふうにも承知はしておるのですが、今回の事例を通じてお尋ねしたいのですが、今回、確かに起訴の前に身柄の引き渡しが行われました。そういう意味では、この合意が生かされたという面もあるかというふうに思います。ただ、他方、その決定までに非常に時間がかかったという批判があります。

 そういうことを総合して、交渉に実際に当たられた外務省として、今回の事件を通じて、米側が平成七年の合意を誠意を持って対応しているのか、適切に対処されているというふうに評価をされているのか、認識を伺いたいというふうに思います。

田中国務大臣 今回は確かに起訴以前に被疑者の身柄の引き渡しがあったわけでございまして、これまでには本当に大変な議論がありまして、これはもう基本的には司法制度の違いということがあったわけでございますし、それが核であったというふうに私は整理して考えておりますけれども。運用の改善という言葉が、もう納得いかない、限界であるということはよくわかっておりますが、しかし、今回のケースは、最善の努力をして、そして被疑者の身柄が起訴以前に渡されたということ自体がやはり運用されたということだと思いますし、では改善はどうかといったら、もっと早くすること、こんなに時間をかけずに、すぐに被疑者の身柄が引き渡されること、これが改善だというふうに思います。

 ただ、私は、アメリカが司法制度の違いを超えてここまで決断をしたということの背後にあるのは、ベーカー大使の着任直後、着任なさった朝、宮中で信任状奉呈があり、その十二時間後の夜、即このことで仕事になって、夜中に、夜、呼び出しをさせていただいたんですが、そこで大使が私の意見を聞いてくださり、そして翌日、外務省に来られて、被疑者を引き渡しますとおっしゃったときに冒頭言われた言葉が、この事件の持つ意味の大きさと同時に、日米の関係、過去に積み上げてきたこと、そして将来の日米の善隣友好やこの地域の安定等を考えた場合に、日本の要求に従って被疑者を起訴前に引き渡すことが重要であるという判断をしたというお答えをいただきました。

 ですから、この日米関係の重要性というものも十二分に御理解をいただいた結果であるというふうに思いますが、それが結果として、アメリカは極めて真剣に、ぎりぎりのところまで持っていって判断をしてくださったんだというふうに私は感じておりますけれども。

上田(勇)委員 これからの地位協定の見直し等を含めますその認識、前提は今承りました。

 それで、今回、この事件発生後、外務大臣それから総理もいろいろな御発言もされております。私は報道でしか見受けておりませんが、大臣は最初、たしか協定の見直しというようなことを言及されたというふうに思いますし、総理は、運用の改善がまず最初なんじゃないかというようなことをおっしゃったというふうに思います。

 それで、今、前提条件として、米側はこの平成七年の合意、これは誠意を持って対応しているというような認識というふうに承りましたので、そうすると、政府の、改めて見解を確認いたしますけれども、そうすると、政府としては、まずは運用の改善、これをまだ若干改善する余地があるというふうに今お話しでもありましたので、そこをまず努めるということが当面の政府の方針であるというふうに理解してよろしいんでしょうか。それとも、やはりこの地位協定の見直しの検討を早急に開始するというのが政府の方針なのか。その辺を、ちょっと申しわけないんですが、改めて確認したいと思います。

田中国務大臣 前者であるというふうにお答えさせていただきます。

 なぜかと申しますと、私は、事件発生後三日、四日たったときに、これは運用の改善ではもう立ち行かなくなるかなという判断を自分がいたしました。したがって、そのときに、これはもう本当に、もう一歩踏み込まないとだめだというふうな思いもしたんですけれども、それにアメリカがこたえてくだすったので、運用の改善、これは最善を、常に、もちろん真剣で最善の努力をしていくという意味でございます。

上田(勇)委員 今の沖縄県における状況、また全国民が抱いている感情、そうしたことを考えたときに、これはやはり私は、地位協定の見直しということもしっかり視野に入れた検討を開始しなければいけないというふうに思います。ただ、これは時間がかかることであるというのは私もよくわかりますし、相手のあることであるというのもよくわかります。もちろん、協議を開始したからすぐに結論を出せと言うことというのはなかなか難しいというのはよく理解をした上で、それでもやはり、今のこういう非常にもやもやした憤りというものを解消していくためには、それに向けての取り組みが必要なのではないか、こう私は思っております。このこともぜひお考えをいただいて今後取り組んでいただきたいというふうに思います。

 同時に、これは御要望でありますが、当然、地位協定の見直しの協議にしろ、運用の改善のためのいろいろな話し合いにしろ、相手のあることだ、時間もかかる、特にこれは個人の権利にかかわることなので米側としても慎重な検討も必要な面もあろうかというふうに思いますので、その間、いかにして犯罪を抑止していくのか、発生を防止していくのか、県民あるいは国民の安全を確保していくのかということがやはり重要であるということはもう申し上げるまでもないので、これもまた外務省だけで対応できる話ではありませんが、関係省庁とも十分御協議をいただいて、最善の努力をしていただきたいということを要望させていただきたいというふうに思います。

 そこで、今回の一連の、外務大臣も大変、米側との交渉された、米側のいろいろな意見もあったというふうに承知しております。私も、報道で聞いているところでは、米側からは被疑者の権利というような観点から幾つか要請されたというようなことも伺っております。報道されているところでは、まず、通訳の適切な選任の問題、もう一つは、取り調べ時での弁護士の立ち会いの問題が挙げられておりますけれども、実際には米側からはこうした要請があったんでしょうか。また、そのほか、被疑者の権利擁護という観点から、何かほかにも要請があったんでしょうか。その辺の事実関係をお伺いしたいというふうに思います。

田中国務大臣 根本にあったのはやはり人権、日本人も人権がもちろんあるわけなんですが、アメリカがヒューマンライツということについて大変かたくなでございまして、私どもから言わせてもらえば、被害者は日本人なんです、我々被害者の人権はないのかということが私は根底の意識にありましたし、また、アメリカ側にいたしましても、自分たちの司法制度とか捜査とかそういう方法があるわけですから、なかなか私どもの、そうした日本の司法なり捜査制度について信頼をしていただけなかったというところが過去にはあったと思いますけれども、これからは本当に、私どもが立証してみせますので、被疑者といえどもその方の人権、それから公正で人道的な扱いを必ずいたしますということを証明いたしますので信頼をしてくださいというこの一点を私どもあらゆる角度から説明をさせていただいて、そしてそのことによってアメリカ側は今回は信頼に足るという確信を持ってくださったというふうに思っております。

上田(勇)委員 もうちょっと具体的にお答えを伺いたかったんですけれども。

 今、新聞で、報道等で二つの点、私も申し上げたんですが、この二つの点、確かに米側としては被疑者の権利の擁護、これが適切に行われるということは米側の関心事項だろうというふうに思います。今大臣もおっしゃったとおりだというふうに思います。この通訳の制度というのは、やはり、被疑者の意思疎通を正確に図っていくという意味では非常に重要な要件なんだというふうに思うんですけれども、そのためには、当然、十分な語学力と同時に法律の件に関しても基礎知識はなければならないだろうというふうに思うわけであります。

 そこで、米側からこの通訳の問題についてそういう懸念が若干表明されたというふうにも聞いているので、警察にちょっとお伺いをしたいんですけれども、実際に、今回の事件では、警察の取り調べにおける通訳というのはどういう人物が担当されて、それはどういう能力というか、資格かもしれませんが、そういうようなものを持っている方なのか、そして、今回の取り調べが、十分な意思疎通が図られるような、そしてそれを通じて被疑者の権利が侵害されるようなことはなかったのか、そのあたりの見解をお伺いしたいというふうに思います。

五十嵐政府参考人 捜査を行うに当たりましては、個人の基本的人権を尊重いたしまして、かつ公正、誠実に捜査の権限を行使しなければなりません。取り調べ官の補助的立場にある通訳人においても、捜査の公正を期するという意味で同様の配慮が要請されるわけであります。

 沖縄県警察におきましては、外国人犯罪の捜査を適正に行うために、外国語能力が十分であると認められる者を渉外事件調査員として採用いたしまして、刑事訴訟法等の捜査手続や被疑者の権利に関する知識、あるいは通訳人としての心構え等について教育をした後に、主として米国軍人等の取り調べを行う際の通訳業務や、供述調書等の文書の翻訳業務に従事させているところであります。

 本件捜査に当たりましても、被疑者の取り調べに際しましては、ただいま申し上げました渉外事件調査員を通訳人として充てているところであります。この職員につきましても、警察部内において通訳専門職員としての研修を受けるなど、通訳能力はもちろんのこと、捜査手続や被疑者の権利等に関する知識も十分に備えているものと考えているところであります。

上田(勇)委員 次に、具体的な要請としてのもう一点、弁護士の立ち会いの問題、これは法務省の方にお伺いをしたいのですが、米国においては、取り調べへの弁護士の立ち会いというのが原則としては保障されているというふうに理解をしております。もちろん、捜査方法だとか司法システム全体が違いますし、裁判の内容も日米間では違うのは当然ですし、国民性も違うということを考えれば、どっちがいい、それを全部アメリカ側に合わせろというようなことを言うつもりはありませんけれども、米側の、そういう意味で自分のところのシステムと違うということによる懸念というのは理解できなくもないんだというふうに思います。

 本件においても、取り調べへの弁護士の立ち会いは認められていないわけでありますし、一般的に日本では、刑事訴訟の手続の中で認められておりませんけれども、一般論として、取り調べへの弁護士の立ち会いを認められない理由を御説明いただければというふうに思います。

河村政府参考人 お答え申し上げます。

 被疑者の取り調べに対します弁護人の立ち会いにつきましては、我が国の刑事司法制度と申しますのが、被疑者の取り調べを含みます綿密な捜査と、それに裏づけられました、検察官によります起訴、不起訴の決定段階における厳格なスクリーニングをその真髄といたしておりまして、起訴前の被疑者の身柄拘束には、令状主義と最長二十三日間の期間制限という厳しい限定を設けているところでございます。

 このような捜査段階におきます被疑者の取り調べに弁護人の立ち会い権を認めるということになりますと、捜査におきます真相解明機能など捜査手続全般に種々の影響を及ぼすといった問題があろうかと考えております。

 他方、刑事訴訟法は、被疑者と弁護人との十分な接見交通権を保障していることなど、被疑者の権利保障は十分担保されているものと考えております。

上田(勇)委員 今、警察それから法務省の方から御説明をいただいて、そういうふうに米側から伝えられているというような懸念について、我が国の司法制度の中でも公正さが十分担保されているものであるというふうに理解をいたしました。

 ただ、これは多分、今回身柄の引き渡しに米政府として応じたということは、そうした我が国の司法制度、システムについて一定の信頼感を持って対応したことだというふうに思いますけれども、ただ、これは政府だけじゃなくて、やはりアメリカの国民にも、我が国の司法制度が十分信頼に足るものだ、公正なものであるということを理解してもらう必要があろうというふうに思います。

 これは、特にアメリカにおいては、こうした刑事手続の間における被疑者の権利に対しては非常に気を使うお国柄でありますので、やはりこれは、我が国のシステム、こういうふうに運用されているから問題はないんだというようなことを、しっかり関係省庁協力をして、米政府だけではなくて、米国民に伝わるような形でわかりやすく説明をしていただいて、問題を円滑に解決できるように努力をしていただきたいというふうに思うわけであります。

 もちろん、その次のステップとしては、やはり地位協定の見直しということが重要になってくるわけでありまして、私も神奈川県でありますが、沖縄に比べれば当然のことながら基地の負担というのは比べようもないのですけれども、多くの米軍基地を抱えております。地元の関係地方自治体の方々も、地位協定のあり方については非常に関心を持っていることでございますので、引き続き、ぜひこの地位協定の見直しに向けての早急な検討、協議を始めていただくことを重ねて要請をいたしまして、私の方からの質問を以上で終わらせていただきます。

土肥委員長 次に、桑原豊君。

桑原委員 私も、先般、委員会の派遣で、一員として沖縄の方に訪れて、つぶさにいろいろなお話をお聞きし、現場を見て、いろいろ考えさせられることがございました。本当に痛ましい今回の事件、そして繰り返されて、いつまでたっても問題の根本的な解決というところには至らない。これをどうしていくのか、本当に重い課題が今私たちには突きつけられている、こういうふうに思います。

 今回、私は、この事件は最終的には、運用の改善というものが図られたその一つの結果として身柄が引き渡しをされた、こういうふうに思うわけですけれども、しかし、それに至るまでのプロセスは、運用の改善のある意味では限界というものも明らかにしているのではないか、そんなふうに思います。そういったことを踏まえて、当然のことながら、沖縄県を初め各市町村、各界から、協定の改定を求めていく、抜本的に求める、こういうような声が一段と高まっておるわけでございます。

 大臣は、この委員会でも、最初に私どもの民主党の伊藤英成議員が質問したときに、この協定の問題については、この事件が起きる以前の問題ですけれども、その段階でも、協定の改定については、それも視野に入れていろいろ考えていきたい、こういうようなかなり前向きなお考えを明らかにされたというふうに思います。

 今回も、この問題が起きて、いろいろ新聞の報道で見る限りは、大臣はそういった見解をお持ちだ、こういうふうに私は見ておるわけでございますけれども、もちろん運用の改善も含めてということも常におっしゃっておるわけですけれども、その限界も大臣は多分感じておられるのではないかというふうに思います。

 そういう意味で、改定を視野に入れてというこの考え方なんですけれども、具体的に、この身柄の引き渡しだけではないんですね、問題は。環境保全の基地の問題ですとか、あるいは航空機の乗り入れや移転や、そういったものに関連をした民間空港の使用の問題ですとか、あるいは移転名目に名をかりた飛行訓練というようなものも取りざたをされておりますし、そういった問題がそのほかにも幾つも、協定に絡む問題点というのは指摘をされておりまして、私は、大分そこら辺の論点も詰まってきているのではないかというふうに見ておるのです。

 そういう意味で、大臣は、この改正を視野に入れていくという場合に、どこら辺までを含んでこの協定については議論していかなければならぬというふうに考えておられるのか。その中身をまずお聞きしたいと思います。

 それから、大臣は確かに視野に入れるというふうなことをおっしゃっておるのですけれども、小泉首相、そして官房長官などの談話も載っておりますが、あの人たちは、むしろ運用の改善で十分だ、それがまず必要なのだということで、協定の改定を視野に入れるというようなことはおっしゃっておらないようですね。そこら辺は、閣内の不一致、どうなのですか、一致しているのですか。そこもあわせてお聞きいたします。

田中国務大臣 二点目につきましては、報道等が多分十二分ではなくて、ページ数等とか時間の関係があって、そんなふうに報じられているというふうに認識されるのは大変残念でございまして、総理も官房長官も同じ思いでいらっしゃるというふうに思います。すなわち、運用の改善で対応していって、そしてどうにもならないときにはやはり改定というものも十二分に視野に入れてやっていかなければならないと思っていらっしゃる。これがワンフレーズであるということは言わずもがなでございます。

 それで、最初のお尋ねの件ですけれども、私も、民主党の菅先生を初めとして、先生以下各党の議員の先生方が外務省にいらっしゃって、申し入れをなさいました。特に菅先生からは、もう具体的に民主党案としてペーパーもいただきまして、それも拝見しまして、その中では、今おっしゃったような環境ですとか、あるいは民事の賠償の問題ですとか、そのほかたくさん触れていらっしゃるということも十二分には理解をしております。

 現在は、環境の改善ということはもちろんそうですけれども、緊急車両の基地への乗り入れでございますとか、そうした具体的なことを、できることからやっていますが、今のような、こうした事件が起こったときの身柄の引き渡しなんというものは、これはもう最優先である、待ったなしでやってほしいというふうに思っておりますけれども、ただ、では身柄の引き渡しだけをすればもうそれでいいのかというと、そうではなくて、先ほど言っていますように、民主党案の中にあるようなことにつきましても、もちろん全般的なことを視野に入れて考えていかなければならないというふうに思います。

 ただ、今回起こった問題について言いますと、まさしく先ほど来申していますように、司法制度やそのほか捜査の制度上の問題を超えて、まさしく信頼をしていただいたことによって身柄の引き渡しが起訴以前にあったということ、これは運用されたというふうに思います。そして、では改善かといったら、もっと速やかにすること、そうでないと、運用の改善という言葉が一つにならないわけですから。私は、その途中において、これはなかなか、かなりきつそうで、運用の改善だけでは済まないかという思いが心をよぎった時期があったことも事実でございますけれども、今回は、すべてこうしたことも含めて、そして環境の問題等も勘案しながら、全般的にこの地位協定の問題全体に目配りをしていきたい、かように考えております。

桑原委員 協定の改定ということが頭をよぎったことがあったけれども、今は運用の改善に、運用問題にすべてを集中していくということなのか。そういうふうに今おっしゃったのですけれども、では、協定の改定を視野に入れるというのはどういう意味なのですか。

田中国務大臣 ですから、これは先ほども言っておりますけれども、やはりこうしたことを改善しながら、そして、いろいろと考えていく中で、実際に効果的でない場合には、地位協定の改定というものも視野に入っていくようにしなければいけない。ですから、その前の段階で、今回も引き渡しになかなか時間がかかったではないかというおしかりもあるかと思いますけれども、もっと改善が十分効果的になるような努力を進めていきたいということを申し上げております。

桑原委員 後から我々は、委員会の全会一致で、この緊急な非常に問題のある事態を改善していくためには、もはや地位協定の見直しというのは避けられない、抜本的な改革なしにこの事態を打開することはもはや難しい、私たちはこういう認識を全会一致で示すことになるのですが、今の大臣の御答弁では、その私どもの認識と余りにもかけ離れているように私は思うのです。もはや、そんな事態ではないのではないでしょうか。むしろ大臣が改定を視野に入れているということを素直にやはりいろいろな意味で表現をされた方が、事態の深刻さにマッチしているのではないかというふうに私は思うのです。

 そこで、七月の二十三日にパウエル長官がおいでになってお会いになると思います。ここで、この地位協定の問題についてどういう立場でお話をされるのですか。そのことをちょっと教えてください。

    〔委員長退席、安住委員長代理着席〕

田中国務大臣 訪日は、まだ決定いたしておりません。調整中でございます。

桑原委員 もし会われるということになれば、この問題についてお話しされるのですか。

田中国務大臣 私が、サミットがあって、その後また立て続けに、ベトナムで会議がハノイでありまして、それに行く時間と、それから今一応発表されているパウエル長官がいらっしゃる時間帯がちょっとすれ違っておりますので、どなたがパウエル長官にお会いするかどうかということが決まっておりません。

桑原委員 ぜひ、お会いになるということであれば、私は、積極的にやはりこの地位協定の問題、もちろん運用の改善を含めてですけれども、お話をされて、日本の立場、日本の国民の利益、そういうものをしっかり打ち出していただきたい、こういうふうに思います。

 さて、今回のこの事件、一九九五年のあの痛ましい少女暴行事件を踏まえて、いわゆる運用の改善が合意をされた、そして今回の事件になったということですね。ですから、我々とすれば、あの運用の改善がなされたのだから、今回のような事態は速やかに、ある意味では、身柄の引き渡しを含めた事件の処理というのは行われるであろう、こういうふうに期待をしておったわけです。

 ところが、逮捕状が出されてもなかなか身柄の引き渡しまでには、丸四日間、五日目にならないとそういう事態にはならなかったというようなことで、それにはいろいろな理由があったわけですけれども、特に、先ほど来も議論になっている人権の問題、被疑者の人権の問題。通訳をどうするか、あるいは弁護士をどうするか、そういった人権の問題がいろいろ議論になって、なかなか米側の決断というものがなされなかった、こういうようなお話なんですけれども、振り返ってみれば、いわゆるこういった運用の改善がなされた時点で、それらのことはある意味ではあらかじめ想定をできることなんです。運用の改善をどう具体的な内容づけをしていくかということの中で、そういった被疑者の扱いについては、当然議論をしていて、こうあるべきだというふうに米側との間で話し合うことができた問題ではないかというふうに私は思うのですよ。

 そういう意味では、事件が起きてから議論をして時間がかかったという、これはやはりおかしいのではないかと私は思うのです。あらかじめ想定ができる問題で、話し合っておかなければならない、決めておかなければならないことが、怠慢でやられていなかったのではないか、こういうふうに私は思うのですけれども、その点どうなのですか。運用の改善の中身、極めて形だけで中身がなかったのではないですか。

    〔安住委員長代理退席、委員長着席〕

田中国務大臣 すべての状態が、今回のことだけに限りませんで、全部口外されているわけでも、外部に出ているわけではございませんから、見えにくいこと、わかりにくいこと、御不満の点はあるかというふうに思いますが、今回に限りましても、やはりアメリカ側は、きのうのNHKの夜の番組でベーカー大使が出て発言なさっておりますけれども、ブッシュ大統領とパウエル国務長官が本当に真剣に話し合いをしてくださり、そして私も、総理、官房長官はもちろんですけれども、と本当に緊密に連絡をとり合いまして、そして本当に最善の努力をして、そして、ブッシュ大統領も小泉総理と初めてお会いになった後でしたし、私もパウエル長官とお目にかからせていただいて、そうした人間関係の中で、今まで、過去先人が積み上げてきた日米関係及び今後の日米関係の重要性というものをかんがみて、ここはアメリカ側が、折れるといいますか、日本の司法や捜査制度というものを信頼するということを真剣に、これは政治的判断として踏み切ってくださったこと、その結果であるというふうに思っております。

 したがって、この運用の改善というものは、私は、最善の努力をすることによって機能するというふうに今確信いたしております。

桑原委員 いや、私が言うのは、こういった被疑者が起訴前に引き渡されるというようなことがあらかじめ運用の改善で合意をされていたとすれば、その被疑者がどういう扱いを受けるのか、弁護士をどうするのか、あるいは通訳をどうするか、この種の問題は、もう運用の改善が決められた時点でちゃんと話し合いをして、日米が合意しておかなければならない最低限の中身ではないんですかと。それが、事態が起きてからそういうことを話していたのでは結局遅いんじゃないですか、そこら辺まで決めて初めて、運用が改善をされた、中身が備わっているというふうに言えるんじゃないかということを言っておるんです。

 そういう意味では、怠慢ではなかったのか、十分決めておかなければならないことを決めていなかったのではないか、運用の改善も極めて不十分であったのではないか、こういうことを言っているので、その点について、大臣どうでしょう。

田中国務大臣 先ほども申し上げましたように、それはいろいろなケース・バイ・ケースで想定をしながら考えていたと思いますが、根本にあるのは司法制度の違いというものがありまして、そういうことにつきましては、やはり想定の中で一生懸命運用の改善について討論、議論をしていても、事前に事務方なりあるいは政治家同士で常にしていたにしましても、超えられない、なかなか難しいそういう制度の違いというものがあるわけですから、それは、今回のように個別の事件にぶつかったときに、やはり政治的な判断を極めて柔軟な形でしていただいたというふうに考えております。

桑原委員 結果がよかったわけですから、それはそれとして、問題は、今のそういう問題の中に運用の改善というものの限界があるのではないかというふうに私は逆に思うんです。最終的に政治的なそういう力にゆだねなければならないというところに問題があると私は思うんです。

 というのは、これからこの種の事件が起きたときに、そのたんびたんびに新しい事態だということで、結局は両国の首脳まである意味では話が及んで、常にこんな形で時間をかけていろいろと議論をしなきゃならぬ。それも日米合同委員会で決められるというような話じゃもうなくて、運用の改善の内容があいまいなために結局は政治的にトップレベルまで今回のように話が及んで、そしていろいろ議論していかなきゃいかぬ。たんびたんびにそうしていかなければならないというのがやはり運用の改善の限界だというふうに私は思うんです。

 だから、いわゆる日米合同委員会のレベルでも、ちゃんと協定の条文を見たらこうしなければならぬのだということがはっきりわかるような協定に改正をしてやっていくというのが問題の解決の道筋ではないか、こういうふうに私は思うんです。政治的ないろいろな柔軟な判断で結論が出たからそれでいいということではなしに、そこに問題があるというふうに私は思うんです。

 その点について、大臣、もう一回御見解を聞かせてください。

田中国務大臣 ですから、双方の国の司法及び捜査制度の違い等につきましても具体的に意見交換をするというふうなことも含めながら、やるかどうかというふうなことにもかかってくるというふうにも思いますので、またこれも検討をするように閣内でいろいろ議論を深めていきたいというふうに思います。

桑原委員 最後に、私は、今回のこの事件の身柄の引き渡しが大変おくれたということの理由の一つになるかどうかはわかりません、大臣のお答えを聞かなきゃわかりませんが、七月五日の産経新聞ですか、大臣がこの問題について、七月二日の日でしょうか、同僚の国会議員の皆さんと食事をした際に、この女性にもやはり一部の責任があるのではないか、そういうお話をされたというふうに新聞は報道しておりました。そして、沖縄の知事が大臣にお会いになっていろいろな話をしたいというふうに来たときにも御都合があって結局お会いになれなかった、そういうふうな新聞の報道があるんですけれども、これは事実……(発言する者あり)何を言っているんだ。そのことを、事実かどうなのかということをちょっとお答えください。

土肥委員長 質問を聞いてください。

田中国務大臣 新聞に報道されているような発言はいたしておりません。むしろ私は、ベーカーさんと会談いたしましたときに、私も息子も娘もおりますけれども、もし自分の娘がそういう被害に遭った場合どういう思いであるか、そういう話もいたしております。ですからそれは間違いであります。

 それから二つ目の、知事とは電話で何度かお話もさせていただいておりまして、緊密に連絡はとり合っております。

桑原委員 私は、新聞の報道が事実でないというお話ですから、それはそれとして受けとめておきますけれども、大臣の発言が、しょっちゅうこんな形で、発言をしたというふうな報道があって、大臣にお聞きするとそれは違うと、これが余りにも多過ぎるものですから……(発言する者あり)黙っていろ。おかしいというふうに言うわけですけれども、やはりこの問題の立ち上がりの段階で、大臣は非常に後半部分に努力をされて最終決着を導かれたわけですけれども、立ち上がりの段階ではかなり動きが鈍かったのではないか、こんなふうに私は思います。むしろ積極的に、単身沖縄に乗り込んで、そして現地で陣頭指揮をとるくらいの意気込みを本当は見せてほしかったということを一言申し上げて、質問を終わります。

土肥委員長 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢でございます。

 今回の米兵犯行について、北谷町の婦人連合会は次のような決議を行っています。

 六月二十九日未明、北谷町美浜で発生した米兵による女性暴行事件は、子を持つ親として、女性として激しい怒りを覚えるとともに、言い知れぬ恐怖感をもたらした。基地脱却の思いを込めてつくられた北谷町の美浜地域は、多くの町民や若者たちが集う場所として発展し続けている。実際美浜地域は、基地依存からの脱却を図る地域活性化成功例として全国的に注目を集めている。このような美浜地域で、傍若無人な、女性の人権を踏みにじる暴行事件が引き起こされた。美浜地域で事件が起こったことを一つの注目に入れています。

 北谷町の辺土名町長は、私たち外務委員と面談をしたときに、美浜地域を基地経済からの脱却、自立を図る町づくりとして進めて、アメリカンビレッジと名づけて、そして若者や観光客の人気のスポットになっている、こういう町で、米軍基地を返還させて地域経済の活性化の町づくりで成功し、若者や観光の人気スポットになっているこの地域でこういう事件が引き起こされたことについて、極めて無念な思いを吐露しておられました。目撃者が今度の犯行は異常に多かったと言われていますが、それは、その町の特徴を反映させたものであります。

 それで私、沖縄におけるこういう事件、認識の仕方というのを一つ申し上げたいんですが、こういう事件が起きたときに、私たちがすぐ脳裏に浮かべる歴史的な出来事があります。それは、六歳の女の子が米兵に暴行され殺害された一九五五年の由美子ちゃん事件であります。当時の沖縄教職員会、先生方の互助共済組織でありますが、この事件について声明を発表しております。喜々として遊んでいた純真無垢の幼女が、一夜明ければ嘉手納海岸の砂浜に、凶暴な野獣のえじきとなり、草の葉を握り締め、唇をかたくかんだまま無残な死体となって投げ出されていた。これが由美子ちゃん事件として今日まで語り継がれているものであります。これは、米軍占領下の当時起こった特殊な出来事ではありません。

 一九七二年、沖縄県が祖国に復帰してから一九九九年までの凶悪犯、殺人、強盗、婦女暴行の検挙件数は五百二十三件です。婦女暴行事件だけで百十四件。これは表に出ただけの数であります。よき隣人政策というのは沖縄では全く成り立たないという、この数字が雄弁に物語っております。

 そこで外務大臣に伺いたいんですが、外務大臣はどのような再発防止策を持っておられるのか、二度とこういう事件を起こさないための再発防止策はあるのかどうか、これを最初に伺いたいと思います。

田中国務大臣 これも、過日、小泉総理がベーカー新任大使とお会いになったときもおっしゃっていますし、私も、ベーカー大使をお呼びしてお会いしたときも、それからその後、犯人、被疑者の身柄引き渡しが決定した後も申し上げましたけれども、先ほど下地委員の発言にもありましたが、多くの米兵は全員で一生懸命職務に邁進し、日本との友好関係樹立に努力をしておられるにもかかわらず、やはり綱紀粛正、それから規律の強化、こういうものを本当に徹底していただきたい。そのためには、米軍が何ができるかということを、総理もそれから私も申しておりますので、こうしたことについて、やはりもう一回原点に返ってアメリカ側も具体的に検討していただきたい、かように考えております。

赤嶺委員 多くの米兵はまじめである中で、まじめであるということを信じたにしても、これだけの事件が繰り返されて、再発がどんどんどんどん引き起こされているわけです。綱紀粛正、規律の強化と言いますが、これで外務大臣、再発防止ができますか。どうですか。

田中国務大臣 昨年の十月にワーキングチームが発足したことは御存じだと思いますけれども、今回の事件を受けまして、さらに特別、事件、事故防止に関する臨時会議というものを開いて早急に検討するつもりでおりますので、再発防止には、やはり一回一回、くどいようですけれども、確実に双方が最善の努力を積んでいく、そういう地道な努力というものが大切だろうというふうに思います。

赤嶺委員 これまで最善の努力がなかったからこういう事件が起きたということになりますよ、外務大臣の今の答弁では。同時に、そういうことでは再発防止策にならなかったんですよ。この辺が全く認識が違うんです。その場逃れの綱紀粛正、規律の強化、これだけを繰り返しているのが日本政府なんですね。

 北谷町の先ほどの婦人連合会の決議は、続けて次のように述べています。これまで、在沖米軍人軍属らによる事件は後を絶たず、そのたびに米軍は二度と起こさないと、再発防止、綱紀粛正を誓っている。しかし、ことしに入ってからも北谷町北前で起きた放火事件、美浜で起きたグリーンベレー隊員の器物破損など、目に余る事件が続発しており、今回の女性暴行事件はそれに輪をかけた悪質きわまりないものだと言わざるを得ない。このような事件は、すべて、基地あるがゆえに引き起こされているものにほかならない。私たちは女性の人権を守るため、女性の力を結集し怒りを持って抗議する。これは北谷町の婦人連合会の決議なんです。

 婦人連合会の認識は、基地あるがゆえに起こった事件なんです。綱紀粛正、規律の強化、これは沖縄では物の役にも立っていないんです。ワーキングチームなんて、つくられてこういう事件が起きているんじゃないですか。基地あるがゆえに起きている事件、基地を減らさない限り再発防止にならない、こういう認識はありませんか。

田中国務大臣 きょうの委員会の冒頭でも申し上げましたけれども、日本を取り巻く中で、不透明、不確実ないろいろな要素がある中でもって日米安全保障条約というものを、安保を堅持するというのが私ども与党の立場でございます。その中で残念ながらこういうことが起こっておりますけれども、大多数の米軍人はよき隣人として、先ほど自民党の委員がおっしゃったように、本当に善隣友好のために努力をし、それから職務に精励しておられるわけでございます。

 したがって、こういうことが起こってはならないわけで、これを是認するなんて一切言っておりません。私も怒っております。ですけれども、こういうことについて、そのまま一回一回済めばいいのではなくて、やはり事故の再発防止のために最善何ができるかということについて、日米双方が具体的に知恵を出し切っていこうという努力をしていることは御理解いただきたく存じます。

赤嶺委員 よき隣人という言葉で触発されて発言したくなったんですが、沖縄県出身の作家で一番最初に芥川賞を受賞した大城立裕さんという人の作品が一九六八年に発表されておりますが、それは、よき隣人というのがいかに沖縄では成り立たないものかと。主人公がよき隣人としていろいろ行動したけれども、結果として自分の娘を米兵に暴行された、そういう小説があります。ですから、よき隣人ということを沖縄に向かって言う場合には、そういう「カクテル・パーティー」という小説も読まれて、外務大臣の感想も聞きながら、そういう議論をしていきたいと思います。成り立たない話なんです。

 それで私、どんなに再発防止、綱紀粛正を言っても、これが県民にとって全く信用ならない、政府がそれだけを繰り返していると信用ならないという点で、例えば、地元の新聞の社説はこう言っています。沖縄の基地問題を解決につなげる最も近道は、兵員の数、基地面積など米軍駐留の規模を劇的に減らしていく政策を、日米間で協議させることであろう。そうでないと、同様な事件は繰り返し起きる。

 また、沖縄弁護士会は、今回の事件で声明を出しまして、基地の整理縮小こそが極めて重要であることを認識すべきだと。基地を具体的に減らす、これが事件の再発防止だ、これに手がけることなくして綱紀粛正と言ってみたって効果は上がらない、これが認識なんです。

 ところが、あなたたち政府がやっていることは、基地の整理縮小どころか、SACO合意で、ジュゴンのすむちゅら海、きれいな海への巨大な新基地建設、あるいは地球上でも西表と屋久島と山原しか残されていない、その山原の亜熱帯雨林を破壊しての基地建設、遊休化した那覇軍港を最新鋭の機能を備えた新軍港として建設する、基地と引きかえに失敗が明白になっているハブ港建設など、県民への負担軽減になっていない。逆の方向を行っている。

 安保容認の立場からでも許されない事態であり、沖縄で進めるべきは基地の新設、強化拡大ではなくて基地の整理縮小だ、これが沖縄県民の事件の再発防止を願うその悲願にこたえる道だ、そして、政府はそれと逆の道をやっているんだというような認識はありませんか。

田中国務大臣 私どもが一方的に米軍基地の強化拡大をしようというふうな努力をしているということはございません。むしろ、いつもの委員会でも御答弁申し上げておりますけれども、在日米軍の兵力の構成そのものについて、もっと私たちは率直に、客観的に国際情勢の推移というもの、変化をよく見きわめて、それに対応するようなものをつくるために米国政府との間に緊密に努力そして協議を続けてきておりますので、拡大強化だけすればいいなんということは私ども一度も考えてもおりませんし、繰り返しますけれども、状況の変化に応じて米軍とも現実に基づいた話し合いをするように努力を繰り広げているということは間違いございません。

 そして、沖縄県民の皆様の負担を軽減するためにはどうすればよいかということについては私たちも具体的に話をしておりますし、この夏休み前の委員会で御提案のありました海兵隊の訓練の一部移転、このことにつきましては、私は、この間渡米のときにパウエル長官に具体的に話をさせていただいて、そしてパウエル長官も、そのことについてはラムズフェルド長官に上げる、そこまでおっしゃってくださったわけですから、本当に顔と顔を見て、心と心で、実際にどれだけのプレゼンスが必要であって、どれだけが機能的であって、どれだけが沖縄にとって負担を最小限にできるかということについて話をしております。

赤嶺委員 国際情勢に話し合って出てくる結論は、沖縄における米軍のプレゼンスは重要だ、それ以外の結論は出てこないんですよ。

 それから、訓練の移転といいますが、訓練の移転は基地負担の軽減にあらずというのは、県道一〇四号越え実弾砲撃訓練が移転された後でも、金武町の伊芸区での今なお実弾射撃訓練によって苦しめられている事実を見れば明らかなんですよ。訓練の移転なんて県民の負担の軽減にもならない。そして、皆さんが負担の軽減、再発防止や綱紀粛正ということを事件が起こるたびに繰り返して、それで再発防止につながらない、それについて何の反省も示さない、沖縄の基地は減らそうとしない、そこに最大の問題があるということを指摘しておきたいと思います。

 それで、私、日米地位協定の運用改善で最大の問題は、やはりその運用改善がアメリカの好意的配慮によって行われるもの、つまりアメリカが裁量権は最後に持っている、だから交渉しなければいけなくなるし、犯人の身柄引き渡しもおくれるということだろうと思うんですよ。それで、さっき犯人引き渡しの迅速性と言いましたけれども、私は、この好意的配慮という日米間の関係を取り除いて、そして本当に地位協定の見直しに入っていかなければ、この問題は解決しないと思います。日米関係が余りにもいびつで、従属的であります。

 司法の違いなんかじゃないんですよ。被害者は日本人ですから、被害を受けた、そして日本の国で犯罪を起こしたわけですから、それを日本の法律で裁いて世界にどんなはばかりがあるというんですか。日本の国民だれ一人とて、そういう犯罪を起こして逮捕されて身柄勾留されることに意見を言う人はいないですよ。まさに私たち日本の国への主権の侵害。司法の違いとかというものじゃないんですよ。そこに平気で入り込んできて身柄を引き渡そうとしない主権侵害に物も言えない政府の方が大問題だと思うのです。

 私、そこで、小泉総理大臣の発言について取り上げたいんですが、小泉首相は八日のフジテレビあるいはNHKの番組に出演して、当面は運用の改善で対応する方針を示しました。これについて沖縄の現地の新聞は、沖縄の米軍基地問題に対する小泉首相の感度の鈍さには失望した、このように言っています。それで、地位協定改定論議を、小泉首相はこのテレビ番組の中で、反安保、反基地、反駐留軍、反米闘争に持っていこうとするグループもいると発言しています。この発言を聞いてさらに沖縄の新聞は、この人は、小泉首相です、沖縄のことは何もわかっていない、このように指摘をしております。

 これだけの米軍犯罪が繰り返され、そこに意見を言う、これは沖縄の県民として当然ではありませんか。地位協定の見直しを求めていくのは当然ではありませんか。それを、反米闘争に持っていこうとするグループもいると言って、逆に安保容認であっても許されないような事態についてそこまで踏み込もうとしないという態度はおかしいと思いますけれども、この小泉総理の発言を撤回すべきだ、内閣として撤回すべきだと思いますが、いかがですか。

田中国務大臣 残念ながら、与党である私の考え方は共産党さんと完全に同じではございませんけれども、総理がおっしゃっている趣旨は、運用を最大限に改善して、そのことに全力を挙げて、そしてそれが機能するようにしたいということをおっしゃっていて、そしてそれが効果的でない場合にはやはりこれも改定を視野に入れるということをおっしゃっているというふうに思います。

 ただ、先ほど触れられました好意的な配慮という言葉ですけれども、これも日本語で聞いても、何で被害者である日本人が好意的行為を受けるのかと思いまして私も英語を見ましたらば、英語版ではもっと、こういう形で、シンパセティック・コンシダレーションという言い方をしていまして、何でシンパセティックになってもらうのかという疑問を禁じざるを得ません。したがって、こうした認識が間違ってミスリードをするということもあると思いますので、私はこのことは非常に問題意識としてありますので、これはこういう認識の、言葉の中に、日米間の先ほどおっしゃったちょっとしたねじれとか思い違い、総理がおっしゃっている、あるいは私たちが思っているようなものがストレートに反映しないようであれば、そこはしっかりともう一回事務的にも確認をしていく必要が絶対にあるというふうに思っております。

赤嶺委員 総理の発言の、反安保、それから反基地、反駐留軍、反米闘争に持っていこうとするグループもいる、この事件で発言をするということは反安保、反基地、反駐留軍、反米闘争ですか。日本として、主権国家として当たり前のことを、しかも、安保容認であれば許される事態ですか、今の事態は。安保容認であっても安保反対であっても、主張しなければいけない事態でしょう。安保容認だからこの事態を認めよう、余りきつく言うとそれは反米闘争だ、こういう認識を首相が持っている、こういう……(発言する者あり)これはテレビで言っているんですよ。マスコミじゃないですよ。テレビできちんと、ビデオを見てもいいですよ。

 そして、そういうことについて、沖縄の新聞が、こういう首相の発言からすると、この人は沖縄のことは何もわかっていないとしか思えないと。沖縄で起こっている事件についてこういう感覚でしか受けとめようとしない、党派的な感覚でしか受けとめようとしない、これは沖縄のことを何もわかっていないのだ。

 だから、内閣として私はこの発言を撤回すべきだと思いますが、撤回するかしないか、あるいは外務大臣として、小泉総理にそういう発言は沖縄の起こっている事件の性格からすると不謹慎だということで撤回を求める意思があるかどうか、最後に伺いたいと思います。

田中国務大臣 総理のそのような発言は私どもでは確認ができておりませんので……(赤嶺委員「テレビでやっているんですよ」と呼ぶ)テレビのどれでございましょうか。私ども、今……(赤嶺委員「フジテレビとNHKですよ」と呼ぶ)NHKの「日曜討論」七月八日の……(赤嶺委員「フジテレビ、フジテレビ」と呼ぶ)それはちょっと確認しておりませんのでコメントいたしかねます。

土肥委員長 もう時間が来ておりますので。

赤嶺委員 では、終わります。

土肥委員長 次に、東門美津子君。

東門委員 社会民主党の東門でございます。

 いつもラストバッターですけれども、あと二十分間よろしくお願いいたします。

 大臣、外務大臣に就任されて二月余りがたったわけですが、これまで一番難しい案件として大臣が苦労されたのは何ですか、お聞かせいただきたいと思います。

田中国務大臣 外務委員会で取り上げているあらゆる問題でございます。

東門委員 そのあらゆる問題の中から、特にこれはちょっと手ごわかったなとか難しかったなと思われるのがあると思うのですよ。ぜひそれをまたお聞かせください。

田中国務大臣 あらゆる問題が、外交というものは相手があることでございますので、そして、時々刻々と情勢というのは変わっていきますので、それぞれが難しいというよりも、やりがいがあるといえばやりがいがありますし、大変緊張感を強いられるものであるということは申し上げられます。

東門委員 本当に御苦労さまでございます。

 いろいろな難しい案件を抱えられて頑張っておられると思うのですけれども、今回の事件につきまして大臣が一番最初にお聞きになったのはいつでしょうか。

田中国務大臣 二十九日、これは、金曜日が定例の閣議がございまして、その閣議の始まる寸前、九時何分かであったというふうに思います。

東門委員 最初にニュースをお聞きになって、その時点では確かにいろいろな意味で詳細が判明していなかったかと思います、私も二十九日の朝に聞きましたので。その中で、大臣がそれについて一番最初にアクションをとられたのはいつでしょうか。

田中国務大臣 すぐ事務方に調べてくれるように申しまして、それが閣議が終わって役所に戻りましてすぐですが、なかなか細かい情報がすぐ入りませんでして、それで、三十日土曜日の午前中だったと思いますが、川島次官に、とにかく現場の橋本大使からじかに現場の声を私は聞かないと、真ん中に伝言ゲームみたいに入っていたらなかなかよくわかりませんので、橋本大使からじかに、私も自宅にずっとべったりいますので、刻々と報告をくれということを翌日の朝申しました。

東門委員 その件につきましては、では、総理がアメリカへ行かれる前にお話をされておられますか。

田中国務大臣 総理は二十九日の午後行かれておりますけれども、その件についてお話し合いをする時間はございませんでした。

東門委員 私がそれをお尋ねしたのは、アメリカに行かれて総理がブッシュ大統領にお会いして、ブッシュ大統領の方からその事件に対して遺憾の意が表明されたというのは報道で出ました。それに対して、我が国の総理は一言のコメントもないというのが出たのです。何も見えなかったのです。それに対して、私はすごく奇異に感じました。そういうことでお聞きしたわけですが、その後の、今赤嶺委員からも発言がありましたけれども、いろいろな対応を見ていると、本当に国民の生命、安全、財産を守るトップの方なのかなということを少し疑問を持って見ていかなければいけないのかと思いました。

 私の次の質問は、先ほど桑原委員からありました七月二日の夜の産経新聞の記事のことですが、大臣、そのような事実はありませんという否定がありましたけれども、それは完全に産経新聞の誤報ですか。

田中国務大臣 記事にあるような発言はいたしておりません。この部屋に今いる方も何人かおられましたけれども、そのような発言はいたしておりません。

 むしろ私は、美浜、北谷というところは沖縄の中でどういうところなんですかということは質問を沖縄出身の議員にいたしましたけれども、私と六、七人おりましたけれども、現職閣僚はこのことについて深く発言はいたしておりません。

東門委員 そのとき、北谷町の美浜という区域がどういう地域だという答えがあったのでしょうか、お聞かせ願えますか。

田中国務大臣 嘉手納基地の西側にあって、大変、若い人が遊びに行くといいますか、若い人で人気のあるところだというふうな話を伺ったというふうに覚えております。

東門委員 そのとおりです。先ほど赤嶺さんの方からも話がありましたけれども、北谷町は、そこの基地を幾らか返還してもらった跡と、それから埋め立てた部分をしっかりと活用して、そこに、観光スポットということも含めて、あるいは県民の憩いの場としても交流の場としてもつくりたいと、とにかく町民を挙げて町づくりに取り組んでいる最中なんです。

 そういう中で、本当に安全であるべき、観光産業というのは平和産業でなきゃいけないわけですよ、平和でなきゃ観光産業は伸びないわけですから、そういう場所で今回この事件が起きた。町長の、北谷町の思いは、アメリカンビレッジと名をつけたのも、むしろアメリカ側との友好関係を促進したいという思いで、とにかくそういう場所に、いい場所にしていきたいということだったのですが、特にことし年明け、放火事件を初めとして北谷町はいろいろな事件が起こっているのです。それで今回のこの最悪の事態になっているわけですよ。

 そういうことに対して、この女性の被害者の立場というのを考えたときに、女性として、私も娘を持っている身ですが、とてもやりきれない思いと怒りと悔しさが込み上げてきます。

 特に、今回と同様の事件の被害者は、その傷の余りの深さ、大きさに普通の生活に戻れない、そういう人が多いということをよく聞くわけです。人権が踏みにじられて、人間としての尊厳が本当にずたずたにされて、生涯トラウマとなってその人が引きずっていかなければならない、最悪の事件だと私は思います。

 せめて周囲の人たちが、あなたは悪くないのよと言ってあげることが、その人に伝えてあげることがその被害者にとっては必要なのに、夜中の二時までとかという言葉が出てくると、私どもははっとさせられるのですね。むしろ、あなたは悪くないのよと。これは県警もはっきり言っているのです。被害者の女性に非はありませんでしたと視察団にはっきり言っていました。私は、これを聞いてとてもほっとしました。もうその時点ではっきりそういうのが明言できるのですよ。そうであれば、特に女性の立場からは、そういうことを言ってあげたい、その被害者に。

 そういう中で、産経新聞の報道が誤報ということにします。それはそれでいいと思います、おっしゃっているわけですから。では、それが誤報だとおっしゃるなら、この今回の事件に対しての大臣の見解というのですか、お気持ちというのですか、それをお聞かせいただけたらと思います。

田中国務大臣 この会の冒頭に申し上げましたけれども、被害に遭われた方、その女性のお気持ち、その御家族、それから沖縄県の皆さんの怒りは当然ですけれども、私たち日本人全体として、被害者は日本人なんですね、加害者はアメリカ人なわけです、そういう実態の中で、やりきれない思いとか怒りとか悲しみとか、いろいろなものが物すごく本当に一人一人心の中にあって、そういう思いを私は共有するということを最初の質問者に申し上げましたけれども、それは原点にあります。

 その中で日米安保があって、そして地位協定があって、どういうふうにして、今後こういう問題も最小限に、なくして、ゼロにしていきながら、日米安保、隣人関係として、日本が、この核もない国の中でもって確実に日本自体が安全を、そして平和を守っていけるかという原点の問題について、私たち一人一人が考えていかなければいけない国民の問題だというふうに思っています。

 それから、私は先ほど半分しか申しませんでしたけれども、ベーカー大使が、日本の政権を、そして司法も捜査制度も信頼をして、そして、起訴前に引き渡しもしますというお話をおっしゃってくだすったとき、私はさっき半分しか申しませんでした、それは、もしこの被害者が自分の娘であったらどんなだろうか、そのことをもうずっと、もう起こったときから、ほかの事件もそうですけれども、常に母親というのはそういうふうに思うと思います。また、米兵の人権ということを非常にアメリカはおっしゃいました。それは、では、私は息子がいますけれども、息子がもし被疑者であったらその人権を、被疑者ですから、どうするか、そのことだって考えるんですということをベーカー大使に申しました。

 ですから、政治家として、やらなければならないこと、決めなければいけないこともありますけれども、根本にあるのはそういう思いがあって、そして、解決をするためにどうやって大所高所からきめの細かい政策を皆様の合意を得ながら進めていくかということに、やはり原点に立ち返って努めていかなければならないというふうに考えております。

東門委員 今のお言葉、しっかりと聞きましたけれども、ただ、私、先ほどもちらっと申しました。私がとても今回奇異に感じているのは、政府の側に被害者の心身の傷をいたわる姿勢が見えないと思います。私はそう感じています。被害者への謝罪のお言葉、外務大臣からも出ておりませんし、総理からも全然聞こえておりません。政府の側から被害者への謝罪の言葉、何も聞こえていないということ。基地の提供者としてごく当然だと思います。国民がこういう目に遭ったときに、私は当然だと思うのですが、いかがでしょうか。

田中国務大臣 先ほど最初の質問者の方の中に、北谷の町長さんがおっしゃったことで、地方の声が中央に届いていないのではないか、それからもう一つは、日米安保をやっているからには、何でしたか、ちょっとメモをそこに置きましたけれども、政府は治安に絶対的な責任を持て、これはもう本当に当然のことだと思っておりまして、こうしたことを勘案して、当然そうしたことを重く受けとめておりますので、政府が、では、ごめんなさいと言ってこのまま制度を維持していけばいいというものでは決してないと思いますので、ですから、こうした町長さんの思いは本当の沖縄県民の皆様のお一人一人の思いだということを思っておりますので、どのような策を今後考えていくかということについて具体的に真摯に努力をすることが私たち政府のやるべきことであると思いますし、それを現在進行形でやっているということを申し上げております。

東門委員 確かに政府はいろいろな施策を講じていかなければいけない、安全を確保するために。でも、こういう被害に遭った人に対して、本当に、基地を提供している政府の側から一言おわびがあっていいと私は思います、その被害者に対して。それを申し上げておきます。

 そうすると、今回の被害者への補償、あるいは精神的ケアについてはどのように考えておられるでしょうか。

田中国務大臣 もちろん北谷を初め、知事さんとは何度もお話ししておりますけれども、そうしたトラウマ的なものとか、それからまた、そういうことをした、間接的ではあっても、私たち日本人みんなが感じているものというのは非常に深く大きいと思いますので、被害者はもちろんそうですけれども、また、私たちからお役に立てることを、メディカルなこともそうですけれども、メンタルな面も含めて、お役に立てることがあれば、もう最善を尽くしていかなければというふうに思っております。

東門委員 沖縄に在日米軍専用施設の七五%が集中しているということは、もうこれは周知の事実ですから、大臣もそれはいつもおっしゃっていることなんですが、その事実、七五%が沖縄に集中しているというこの事実は、大臣、正常な状態だとお考えですか、それとも異常でしょうか、お答えいただきたいと思います。

田中国務大臣 このことについて私はほかのときにも、受益と負担という問題について、日本人全員が、沖縄の痛みは私たち日本人一人一人の痛みでなければいけないので、日本人が自分たち一人一人、都会の人も、山の人も、海の人も、みんながですよ、あらゆる階層が、自分の国の平和と安定を守るためにはどのようなことが必要であるかということについて、ただ沖縄にだけ負担をかけておいて、自分たちが全部受益でいい思いをしていればいいのではない、そういうことを私は再三再四、外国でも日本でも、そして安全保障でないことにつきましても、前、覚えておられるかどうかわかりませんが、社会保障制度のあり方についても、それから財政の問題につきましても、税負担についても、負担だけは人がやってください、自分だけはいい思いをしますということはだめなんですと。これが私の政治家としての信条ですし、私はそうした思いを、こうした事件が起こって、特に安全保障の面で強く感じております。

東門委員 しかし、現実的に、実際に七五%を押しつけられて苦しんでいるのは沖縄県民なんですよ。私は、今お伺いしたのは、それは正常なんですか、政府としてそれを正常と認めて今までやってきて、これからも進めていこうとしているのですかということをお伺いしたいのです。

 実際に私たちが苦しんでいるんです、県民が。被害者もほとんど県民じゃないですか。それに対して受益と負担、その話は前にもお聞きしました、わかります。今その話を聞いているのではありません。このままでいいのでしょうかということをお伺いしているのです。もう一度お答えいただきたいと思います。

田中国務大臣 実務的には、SACOの最終報告の着実な実施に全力で取り組んで、沖縄県民の皆様の負担の軽減をするように全力で努力をしております。

東門委員 また同じところの繰り返しになりますが、SACOの最終報告の着実な実施は、面積的に少し減るだけなんですよ。それでも七〇%。普天間飛行場が移設されて七〇%残ることになります。それで本当に正常な状態になるとお考えでしょうか。

田中国務大臣 ですから、沖縄だけで七五%の負担をして、あとの人たちが受益を享受しているということが正しいとか正常であるとは申しておりませんので、受益と負担ということについて一人一人がやはり考えていかなければならないということを私は申しております。

東門委員 その点に集中していきたいと思います。

 実際に負担をしている県民がここにいる、百三十万県民が。余りにも小さなかごに余りにも多くの卵を入れ過ぎた、それでいろいろな事件、事故が起こっている、沖縄県民の不満がすごく募っているということをキャンベル氏はおっしゃいました。そのとおりだと思います。余りにも小さなかごなんですよ。そこに余りにも多くの卵を入れている。卵を減らしていく。かごは同じ大きさですから、やむを得ません。大きくはならないと思います。しかし、卵の数をどんどん減らしていくことによって、私は、今回の事件のようなことが、本当の意味での再発防止というのは近くなっていくのではないでしょうかと思うんですよ。卵の数を、その小さなかごから卵を取り出していくということを国がやらなければいけない。これができるのは国なんです。それを国にお願いするわけです。外務大臣というポストにおられる、外交の今トップでおられるその大臣が本当にリーダーシップをとってできることなんです。ぜひもう一度御意見をお聞かせください。

田中国務大臣 おっしゃっていることは痛いほどよくわかりますけれども、今現在申し上げられますことは、SACOの最終報告の土地の返還、土地でしかないとおっしゃっていますけれども、そうしたこと、それから米軍の一部訓練の移転、これはこの間アメリカへ行って私はパウエルさんに申しました、海兵隊の訓練の一部移転の問題。それが不満というところもおありになるかもしれませんけれども、そういうふうな努力も、アメリカはとにかく検討する、伝えるということをおっしゃってくださったわけですから、あとは地位協定の運用の改善などがありますので、それを見ながら、引き続き負担の軽減に向けて最大の努力を続けていくということでございますが、またさらに閣内でいろいろと討論をするという機会も設けていきたいというふうに思います。

東門委員 世界のどこを探しても、本当に沖縄県におり立って、五十八号線に出てください、それを北上すると考えてください、道の両側にあれだけのフェンスがあるというのはほかにはないんじゃないでしょうか。私は世界全部回っているわけじゃないからわかりません。ただ、私の理解するところでは、主権国家の中にそういう一県があるということ、異常な状態だと思います。その異常な状態を放置しているというのは本当に合点がいかないということです。

 ぜひ、今閣僚の皆さんともということをおっしゃったんですが、そういうところも、いつまでも沖縄県民に負担を押しつけるのではなくて、本当に大臣がいつもおっしゃる受益と負担という考え方に立たれるのならば、そこのところをしっかりと考えていただきたいと思います。

 お願いしまして、私の質問を終わります。ありがとうございました。

     ――――◇―――――

土肥委員長 ただいま委員長の手元に、鈴木宗男君外六名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、自由党、日本共産党、社会民主党・市民連合及び柿澤弘治君共同提案による日米地位協定の見直しに関する件について決議されたいとの動議が提出されております。

 この際、本動議を議題とし、提出者から趣旨の説明を聴取いたします。鈴木宗男君。

鈴木(宗)委員 私は、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、自由党、日本共産党、社会民主党・市民連合及び無所属柿澤弘治君を代表して、ただいま議題となりました動議について、その趣旨を御説明いたします。

 本件は、今月五日、本委員会が沖縄県北谷町における在沖米軍軍人による事件に関する実情等調査を行った際に、沖縄県知事、北谷町長など関係者から強い要望があったものであり、本委員会としてもこれを重く受けとめ、真摯に対応すべきものであると認識し、本決議案を提案する次第であります。

 案文を朗読いたします。

    日米地位協定の見直しに関する件(案)

  本年六月二十九日に沖縄県北谷町で発生した在沖縄米空軍兵士が容疑者となっている女性暴行事件は沖縄県民に大きな不安と衝撃を与え、国民も強い憤りを感じている。今年に入ってから沖縄での米兵による女子高生に対する強制わいせつ事件、連続放火事件などの事件が相次いでいる。米軍は事件が発生するたびに再発防止、綱紀粛正、軍人等の教育などの対策を講じてきたが、現状を見ると十分な効果があったとは言い難い。

  また、今回の事件において、日米両国政府の折衝の結果、平成七年の日米合同委員会合意に基づく運用改善により、起訴前の被疑者の身柄引渡しが決定されたが、引渡しの決定まで相当の時間を要したことは国民の不信感を招くものであり、迅速な引渡しが実施されるよう手続きを含め更なる改善が求められている。

  本委員会は、七月五日、沖縄県に委員派遣を行い、当該事件に関する実情等調査を実施し、関係者の意見を聴取したが、現地における住民感情は非常に厳しく、沖縄県知事及び北谷町長からは事件・事故の再発防止のための実効性のある具体的な対策と日米地位協定の抜本的見直しを求める強い要望があった。沖縄県からは昨年八月にも被疑者の起訴前の拘禁の移転、環境条項の新設等十一項目(別紙)の日米地位協定の見直しが要請されている。

  政府はこれら地方自治体や住民の思いを真摯に受けとめねばならない。政府には、これら米軍基地に起因する様々な事件・事故等から国民の生命、財産、人権が確実に守られるよう最善の策を講じる責任がある。

  よって政府は、沖縄県など在日米軍基地を抱える関係自治体等の要望を踏まえ、国民の基本的人権を保障している我が国の法律を駐留米軍も尊重するよう、日米地位協定の見直しをも早急に検討し、事態の抜本的改善に取り組むべきである。

  右決議する。

以上でございます。

土肥委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 鈴木宗男君外六名提出の動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

土肥委員長 起立総員。よって、本件は本委員会の決議とするに決しました。

 この際、ただいまの決議につきまして外務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。外務大臣田中眞紀子君。

田中国務大臣 ただいまの皆様の御決議に対しまして、所信を申し上げたく存じます。

 まず、去る六月二十九日、沖縄県内の北谷町で発生した痛ましい事件につきまして、改めて強い遺憾の意を表したいと存じます。

 本件に関しましては、昨日、小泉内閣総理大臣より、表敬のため訪れたベーカー駐日米国大使に対しまして、事件の再発防止及び規律の強化の徹底を申し入れておりますほか、私よりも、パウエル国務長官及びベーカー大使に同趣旨の申し入れを行ってきております。

 政府といたしましては、今後とも、米国側に一層の努力を促してまいります。

 今般、平成七年の日米合同委員会合意に基づき、米軍人被疑者の起訴前の身柄の引き渡しが行われました。政府といたしましては、より速やかな身柄の引き渡しが実現することが望ましいと考えております。

 政府としては、沖縄県に事情調査のため委員を派遣した本委員会の決議の趣旨を体し、今後、事態の改善に鋭意努力をしてまいりたく存じます。

土肥委員長 お諮りいたします。

 ただいまの決議の議長に対する報告及び関係当局への参考送付の手続につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

土肥委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 本日は、これにて散会いたします。

    午後二時五十七分散会

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