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第3号 平成14年3月20日(水曜日)

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平成十四年三月二十日(水曜日)
    午後三時三十四分開議
 出席委員
   委員長 吉田 公一君
   理事 浅野 勝人君 理事 石破  茂君
   理事 小島 敏男君 理事 坂井 隆憲君
   理事 首藤 信彦君 理事 中川 正春君
   理事 上田  勇君 理事 土田 龍司君
      今村 雅弘君    小坂 憲次君
      小西  理君    高村 正彦君
      中本 太衛君    原田 義昭君
      水野 賢一君    宮澤 洋一君
      望月 義夫君    河村たかし君
      木下  厚君    桑原  豊君
      津川 祥吾君    細野 豪志君
      前田 雄吉君    丸谷 佳織君
      松本 善明君    東門美津子君
      鹿野 道彦君
    …………………………………
   外務大臣         川口 順子君
   外務副大臣        植竹 繁雄君
   外務大臣政務官      今村 雅弘君
   外務大臣政務官      水野 賢一君
   政府参考人
   (法務省刑事局長)    古田 佑紀君
   政府参考人
   (外務省大臣官房儀典官) 川村  裕君
   政府参考人
   (外務省欧州局長)    齋藤 泰雄君
   政府参考人
   (外務省中東アフリカ局長
   )            安藤 裕康君
   政府参考人
   (外務省条約局長)    海老原 紳君
   外務委員会専門員     辻本  甫君
    ―――――――――――――
委員の異動
三月二十日
 辞任         補欠選任
  中本 太衛君     小西  理君
  細野 豪志君     河村たかし君
同日
 辞任         補欠選任
  小西  理君     中本 太衛君
  河村たかし君     津川 祥吾君
同日
 辞任         補欠選任
  津川 祥吾君     細野 豪志君
    ―――――――――――――
三月二十日
 二千五年日本国際博覧会政府代表の設置に関する臨時措置法案(内閣提出第一四号)
 在外公館の名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員の給与に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第一五号)
同月六日
 核兵器完全廃絶実現等に関する請願(中林よし子君紹介)(第五八八号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 国際情勢に関する件


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     ――――◇―――――
吉田委員長 これより会議を開きます。
 国際情勢に関する件について調査を進めます。
 この際、お諮りいたします。
 本件調査のため、本日、政府参考人として、委員河村たかし君の質疑に際し、外務省大臣官房儀典官川村裕君、中東アフリカ局長安藤裕康君、委員松本善明君の質疑に際し、外務省欧州局長齋藤泰雄君、条約局長海老原紳君、法務省刑事局長古田佑紀君、委員上田勇君の質疑に際し、外務省欧州局長齋藤泰雄君の出席を求め、それぞれ説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
吉田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
吉田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。首藤信彦君。
首藤委員 首藤信彦でございます。
 川口外務大臣は御就任以来、御本人も述べられていることですが、ほとんど外交に見るべき点がない、ほとんど外交というよりは外務省内部の問題に忙殺されていて、本格的な外交がおできになっていないという御本人の御意見もございます。
 しかし一方、日本を取り巻く環境というのはますます厳しい状況にあるわけでございまして、例えば、この日本の周辺だけでも、フィリピンにおけるアメリカ軍のアブ・サヤフ討伐協力とか、日本の周辺事態法がひょっとしたら関係してくるのではないかというような事態も発生しております。しかし、その中においても、いろいろな問題の中においても、北方四島支援をめぐる鈴木宗男議員の一連のスキャンダル、そして、図らずも最近露呈した北朝鮮における有本恵子さん拉致事件、こうした事件は日本の外交姿勢の根幹を揺るがす大事件だと思っています。
 では、まず北方四島の問題から質問したいと思います。
 これは、現在、鈴木宗男議員のスキャンダルというような形で、特に入札介入疑惑などという問題によって鈴木議員が離党に追い込まれたというのは我々も知っているところでありますが、そうした事件に矮小化することは決してできない問題だと思っています。これは、日本の国のあり方を左右するような大変な事件であります。問題は、単に北方四島の施設の入札スキャンダルではなくて、戦後半世紀にわたる日本の北方四島一括返還の努力を一瞬で無にしてしまうような一種の反逆行為が一部の政治家によって画されていたことにほかならないと私は考えております。
 このようなやり方では、このようなやり方というのは、現地の北方四島の住環境を改善する、こういうようなやり方では、北方四島の一括返還などはとても難しいことでありまして、二島の返還すら怪しくなるというふうに多くの識者が指摘しております。
 このような国家や国民に対する裏切り行為を、鈴木宗男氏だけではなく、それに同調する外務省幹部がいたということが次々と露呈しております。これは本当にゆゆしき事態でありまして、外務大臣としては一体どのようにお考えか、後でその御意見をお聞かせ願いたい。
 私は、こういう一連の今だんだん明らかになってきたことを考えてみますと、単に施設の入札疑惑ということではなくて、北方四島問題自体を揺るがす大きな問題が行われていたということがわかってきました。我々は、ある意味では鈴木議員ははしけを提供している、そういうふうに考えていたんですけれども、現実に起こったことは、ある意味で国土を売り渡してきたことに等しいんじゃないか。ほかの国で、例えば旧ソ連では、こんな行為をやっていれば売国行為としてたちまち銃殺刑になるんじゃないか、そういうことを実はやられていたということに愕然とするわけであります。
 この問題の本質には、日本で急速に二島先行返還論、歯舞、色丹の二島を先行して返還しようという議論が表面化してきたことによるわけですけれども、これがいつごろから起こったのかな、そういうふうに考えて調査してみました。確かに、現実的な面からくると一歩ずつ行こうという考え方は漠然としてはいろいろな意見としてあったわけですが、それがあからさまになってきたのは一体いつごろかと思って調べたら、意外と最近だということがわかりました。
 外務大臣としては、今までの一括返還論でずっと行ったのが二島先行返還になってきた転換点を、いつでどのような事件であったとお考えか、その点をお聞きしたいと思います。
川口国務大臣 ロシア、北方四島返還問題につきましてさまざまな御意見があるということは承知をいたしております。ただ、それでは日本政府としてそういうことを言ったかというと、これはそういうことではございませんで、日本政府の方針としては、一貫して四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結するということでございます。
 日本も民主主義国家でございますから、いろいろな方がいろいろなお立場でおっしゃったり、あるいは議員としていろいろおっしゃられることはおありかと思いますけれども、そういったこととは関係なく、政府としては一貫しておりますので、今の御質問の、いつごろから二島先行返還論になったかということについては、それは政府としては、そういうことはなかったということを申し上げるということだと思います。
首藤委員 川口大臣、それはちょっと認識不足だと言わざるを得ません。単に、民間でいろいろな方が、あるいは政治の世界でいろいろな方が言っておられるのではなくて、この事件というものは、この傾向というものは、明らかにある一つの事件からその端を発している。
 それは何かといいますと、二〇〇〇年七月二十七日、都内のホテルで自由民主党の幹事長であった野中広務さんが、平和条約と領土返還とを切り離すべきと発言した。このことから、もう大規模にこの論議が表面化してきたわけであります。たちまちロシア側は、この発言に対して賛成するような意見表明を出してくる。
 そして、この国会においても、八月四日、鈴木宗男議員が、当時、外務委員会での筆頭理事だったと思いますが、鈴木議員が河野大臣に対して、野中提案を重視するか否かという質問を執拗に繰り返して、結局、野中提案を重視するというような意向を引き出したということであります。
 これは、もうそのときの外務委員会の議事録を見ればきちっと書いてあります。どういうようなやりとりがあったかも、外務省の方は、この問題にかかわる方はみんな御存じのはずですね。このことから、一政治家の発言が、実はもう国会において、そういう傾向があるのだという形で、大きな流れとして登場してきたわけですが、その件は御存じなかったんですか、外務大臣。
川口国務大臣 二〇〇〇年七月のその外務委員会における議論というのは、後で議事録をつぶさに勉強したいと思いますけれども、国会の場で御議論いただくということについては、今でもいろいろな御意見をいただいて、さまざまな問題について御議論があるわけでございます。
 ただ、この北方四島の返還問題について言えば、政府がロシアと交渉している過程で二島先行返還論というプロポーザルを出したということは全くございませんで、政府の方針は、先ほど申しましたように、四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結するということで一貫をいたしておるわけでございます。
首藤委員 大臣、この議事録を読んだことがないということで、私は、もうはっきり言って心が寒くなるような思いを感じます。この問題というのは、この外務委員会においても何度も討議されて、日本の北方政策をどうするかということで多くの方が議論されて、その流れの中から出てきたわけです。
 しかも、先ほど七月の外務委員会とおっしゃいましたけれども、そうではなくて、七月の終わりに野中さんがそういうような提言をされて、それを受けて鈴木宗男さんが八月四日に行われた。これはもう、この問題に関しては、本当に今までの政策の転換点となった外務委員会なんですね。ですから、それはぜひ読んでいただいて、真剣に考えていただきたいと思うわけです。
 既に新聞等において、昨年三月に来日したロシアのロシュコフ外務次官と鈴木議員との会談内容が報道されています。驚くべきことですが、そこに東郷当時の欧州局長が同伴されている。したがって、これはもう単に一議員の発言ではなくて、外務省の最高責任者、この問題における最高責任者が同伴されているということで、今まで述べていました二島先行返還ということにどっと流れが行っているわけです。
 鈴木議員が、この件だけではなくて、プーチンさんと会われたり、あるいは単独で行かれたり、あるいは外国から、ロシアから来た人に会ったり、その辺の資料を、一体どういう話をしたのか、そうした公電も含めて全資料を提出していただきたいと思いますが、外務大臣、その件は確約していただけますね。
川口国務大臣 昨年の三月の五日に、鈴木議員とロシュコフ次官との間で会談が行われたということについては承知をいたしております。この会談の内容について政府としてコメントをしますことは、これは先方の関係もございますので、差し控えさせていただきたいと思います。
 それから、この会談につきましては、鈴木議員が一人の議員として、来日中のロシュコフ次官との間で非公式に行われたというふうに承知をいたしております。
 それで先ほど、外務省のロシア行政の最高責任者が出席をしていたというお話がございましたけれども、この出席の経緯の詳細については私は承知をいたしておりませんけれども、この局長が政府を代表する立場でこの会談に出席をしたというふうには理解はいたしておりません。
首藤委員 外務大臣、結局、相手があるから情報は出せないという意見なんですけれども、当たり前ですよね、外交というのは相手があることなんですよね。しかし、こうした考え方はもうおやめ願いたい。なぜかというと、それは別にどこかで、関係ない人と話しているわけじゃないんです。ここは外務委員会なんですね。我々は、国民から委託されて、外交の問題、政府が行っている外交をチェックする立場にあるんです。ですから、ここできちっとそれを情報開示していただかなかったら、我々は国民の負託にこたえることができない。ですから、この場ではきちっとした情報を出していただきたい。
 それから、もう一つ大きな間違いは、一議員がやったというようなせりふがよく聞かれるわけですが、一議員、政府でない一議員というのは昔の話です。今は御存じのように、議員外交というのはセカンドチャンネル、マルチチャンネルといって、政府だけではなくて、いろいろな主体が関係するということがあって、したがって、一議員の外交が中東和平をつくったりすることだってあるわけですね。ですから、当然そのことが報告されておかしくないわけです。
 ですから、そうしたことで、相手があることですから、一議員ですからというような、そういうような答弁は、きょうは時間がないのでこの問題をこれ以上突っ込みませんけれども、もし二度と繰り返されることがあれば、それはまた別の対応があるということを考えていただきたいと思います。
 さて、問題は、昨年のイルクーツク会議で、プーチン宣言を見ると、もう歯舞、色丹の二島の平和条約締結後の返還以外には、国後、択捉の二島の返還の見込みはどこにもないということが、実は何度も討議されているわけですね。どうしてかというと、五六年の日ソ共同宣言を見れば、もうほかのところはどこにも書いていないんですよ。そこで私はしつこく言ったのは、プーチンさん自身も指摘していることですけれども、この間のいきさつがよくわからないと。だから、プーチン大統領も、この間のいきさつをもうちょっと専門家に聞いて研究しよう、調査しようということをこの宣言の際に言っているわけですね。
 そこで私は、昨年の三月二十八日の外務委員会で、五六年の日ソ共同宣言におけるロシア語正文と日本語正文との間に微妙なニュアンスの差があるんじゃないかということを指摘させていただきました。それから、外務省に対して、一体どういうことでこの五六年宣言が出てきたのかということをもっと詳細に調査して、我々が頼るべきは五六年宣言しかないわけですから、この五六年宣言が出てきた附帯資料、附属資料、背景資料を明らかにするようにというふうに外務省に強く主張したわけですが、現在はどの程度その解明が進んでいますか。外務大臣、いかがですか。これは、本当に今後の北方問題を左右する大きな問題なので、ぜひしっかりお答え願いたいと思います。
川口国務大臣 この点につきましても、これはロシアとの交渉の経緯にかかわることでございますので、この点についての御意見を申し上げる、あるいは資料をお出しするということについては、差し控えさせていただきたいと思います。
首藤委員 外務大臣、それだったら、我々は要らないということですか。ここにいて、資料もない、何もない、何もわからないといったら、一体我々は何でここで質問しているんですか。一人二十分の時間をあてがわれて、何を質問しているんですか。あなたはお立ちになって、いや、済みませんが、相手があるから出せません、仮定の話は出せませんと言ったら、我々がここにいる存在意義がないじゃないですか。国民から選ばれている我々は、一体何のためにここにいるんですか。我々はなぜここにいるんですか。なぜ時間を使っているんですか。
 そのようなお答えをされていたら、外務省の改革なんか一歩も進みませんよ。そうじゃないですか。我々が使っているこの一分一秒は、やはり国民の負託を受けて、日本がもう岐路に立っている、日本が間違った方向に行かないように、それで質問しているんじゃないですか。ですから、そのようなお答えを続けられるなら、私は、外務省の改革、日本の改革などは絶対あり得ない、そういうふうにも思います。
 さて、もう一つのテーマですけれども、北朝鮮の拉致問題ですね。
 有本恵子さんをイギリスから誘い出してデンマークで北朝鮮の工作員に渡させたという八尾恵という人物がいるわけですが、何と一九八八年に逮捕されているんですね。そして既に、ハイジャック犯の、例えば柴田とかそういう人たちと電話連絡もして、それから有本さんの拉致に関係したということはわかっている。一体それがなぜこんなに今ごろになって出てくるんですか。外務省としては一体何をやっていたのか、どういう努力をして、有本さんを日本に帰還させようという努力をされたのか。外務大臣、いかがですか。
川口国務大臣 八尾恵さんの件につきましては、これは捜査当局が捜査をしているということでございますので、外務省の立場で申し上げることではございませんけれども、有本さんにつきましては、今までに、日朝の外交関係の正常化の交渉等の場では、その安否等については問い合わせたという経緯がございます。
首藤委員 いや、それはもう時間がないからお勉強されていないのかもしれませんけれども、外務省は関係ないというのはとんでもないことですよ。だって、これはただ警察が捜査しているのではなくて、何度も訴訟が行われて、ずっと高級裁まで行って結論が出ていることです。したがって、それは内容を見ればわかっていることですね。その中で当然こういう問題も触れられている。
 第二に、パスポートの問題が絡んでいるんですよ。ですから、当然のことながら外務省が関係省庁でありまして、このことに関しては詳細を知らなきゃいけない。そうした外務省の行為というのは、ただ知らなかったということだけではなくて、明らかにこの問題を握りつぶそうとしていた。
 これもまた新聞によって報道されているわけですが、九九年、村山訪朝団に関して、国交を急ぐべきでないという自民党の外交部会の声に対して、たった十人ぐらいの拉致者でということを発言された外務省の幹部がおられると聞いていますが、それは事実ですか、いかがですか。
川口国務大臣 その件につきましては、官房副長官がそのような雰囲気があったということをおっしゃられまして、私どもも、そのときの状況については省内で聞き取り調査を始めておりますけれども、今まだそれは継続中でございます。
首藤委員 私は、この拉致問題というのは本当に深刻な問題だと思うんですよ。それは、拉致された方が悲劇なのではなく、その方が再度日本に工作員としてお戻りになる、あるいはその方の子孫が工作員として日本の安全を脅かしてくる、そういう可能性があると、その方は二重三重にある意味で罪が重くなってくる、そういう現実があるじゃないですか。
 ですから、外務省はどうしてこの問題をそういう視点からもっと真剣にとらえないのかと私は思うんですが、そうした可能性のある、拉致された方というのは、大体、一体どれぐらいの方がヨーロッパで拉致されて、今北朝鮮やあるいは日本に戻ってきたり、そういう状況にあるというふうに想定されておられますか。いかがですか、外務大臣。
川口国務大臣 拉致の問題は、委員もおっしゃるように非常に重大な問題でございまして、人の、国民の生命がまさにかかっている問題でございます。私も、拉致された方の家族の方とお会いをいたしてお話をいたしましたけれども、やはり私自身も家族がいますので、逆の立場に、その立場に立ったらと考えますと、とても言葉に気持ちをあらわせないという感じがいたしました。
 それで、外務省といたしましては、この問題は非常に重要な問題、重大な問題でございますので、粘り強く交渉をするという姿勢をずっと持っているわけでございますし、北朝鮮に対しましても、日朝国交正常化の過程で、拉致の問題というのは避けて通ることができない問題だということはその都度お話をしているわけでございます。
 それで、御質問のどれぐらいの人数がということでございますが、外務省としては、捜査当局においてこれまでの捜査結果を総合的に、かつ慎重に検討いたしました結果、有本さんの事案も含めまして、八件、十一名の事案が拉致の疑いが強い事案とされているというふうに承知をしております。
首藤委員 もう時間がほとんどなくなりましたけれども、結局、八尾恵という人のいろいろ供述しているところによると、四十人ぐらいの拉致に関係したということを言われていると思うんですね。ですから、そういうことを、人数もきちっと把握していただきたい。
 それから、今までもやってきたというんじゃなくて、今までとは違うレベルでこれは取り組まないと、もうまさに悪の枢軸としてアメリカが名指ししているわけですから、いいかげんなことでは、もうまさにそうした日本と半島の間で緊張がどんどん高まっていってしまう。だから、こういうことこそ、我々がしっかりして、いや、この問題は解決できましたよということを、今までと違うレベルで取り組まなきゃいけないということをお伝えしたいと思いますね。
 例えばこの解決に関しても、昭和五十三年に起こった事件では、レバノンから拉致された人たちに対して、レバノン政府は徹底して交渉して結局取り戻したといういきさつがあります。それぐらいのことを、努力をぜひしていただきたいと思います。
 最後に、時間になりましたので一つだけ短くお答え願いたいんですが、日中政府間で協議が行われている不審船です。引き揚げのめどはどうなっているのか。それはあくまでも外交的なめどです、技術的なめどではなくて。それから、既に外形の映像はありますけれども、当然のことながら内部の映像もあると思います。その開示をぜひしていただきたいと思いますが、御意見、いかがですか。
川口国務大臣 不審船の問題につきましては、今、捜査当局が鋭意捜査中でございます。それで、外側からの調査を今やっているわけでございます。
 手順としては、今後、引き揚げていくという手順になると思われますけれども、いずれにしても、今調査をやっていることの結果をきちんと分析した上で、次の手順は何かということを考えていく話だと考えております。
首藤委員 終わります。ありがとうございました。
吉田委員長 次に、河村たかし君。
河村(た)委員 河村たかしでございます。きょうは、二十分ですけれども、いわゆるシリア大使館問題についてお話を伺いたいと思います。
 時間がありませんものですからちょっと端的にいきますが、シリアは重要な国でありますけれども、一方、日本の法律もやはりしっかり守ってもらわにゃいかぬということで、私としては、一月二十四日の夜のいわゆる密会疑惑、議員と役人のずぶずぶの関係というものをやりました関係上、そのときにいろいろな議員の名前も出てきましたから、どちら側についておるというわけではありません、やはり真実を追求するということがとにかく重要ではないかということで質問するということです。当たり前のことですけれども、私はどちら側からも一銭も金をもらっておりませんので、一応確認をしておきます。
 まず、外務省にお伺いしますが、中立デベロップとシリアの賃貸借契約書がありますよね。賃貸借契約をされました。これについては、シリアとしては個人が契約したのか国が契約したのか、どっちでしょうか。
安藤政府参考人 私どもは、その点についてシリア側と詰めたことはございません。ただ、私ども外務省との関係では、当該物件を大使館もしくは公邸として登録することについての外務省の意見を聞いてきたので、我々としては、その物件を大使館にするもしくは公邸にするということについて、アンレコメンダブルである、推奨できないという口上書で意見を返したことはございます。そういうやりとりでございます。
河村(た)委員 それはそれですけれども、向こうの、きょうのお手持ちの、今配ってあると思いますけれども、賃貸借契約書はそのままつけてありませんが、この資料の英語の文書ですね、三十三番という文書、日本語が頭についておりますが、「賃貸借契約書はシリアアラブ共和国外務省が承認したものであり、よって現在も有効であります。」こういうふうに書いてありますから、これはこれで、やはりちゃんと国の契約書として受け取ったんでしょう。受け取ったというか、そう理解しておるんでしょう。
安藤政府参考人 ただいま委員御指摘の二月二十六日付のシリア側の口上書でございますが、これについては、確かに私ども受け取りました。その上で、そこの中には、カブール前在京シリア臨時代理大使が締結した本件建物に係る賃貸借契約が現在でも有効であるという旨が書かれていたわけでございますので、私どもとしましては、それに対しまして三月八日付で口上書で返事をいたしまして、外務省としては、本件賃貸借契約の有効性について在京シリア大使館より通報を受ける立場にはない、また、本件については最高裁において決定が下されていることに同大使館の注意を喚起するということを内容といたします口上書を発出した次第でございます。
河村(た)委員 賃貸借契約の存在というのは、いつ知ったんですか。
安藤政府参考人 私も、新任でございますので、いつという正確な時点は承知しておりませんけれども、平成十一年の九月の十四日、大分前でございます、この時点で期間十五年の賃貸借契約を締結したというのが現在の文書として残っております。それをいつの時点で私どもが知ったのかということは、必ずしもつまびらかにいたしませんが、平成十二年の四月の十九日に、先ほど私がちょっと申し上げました本物件への移転に係る外務省の意見を照会してきておりますので、それ以前の時点でこういう契約があったということは承知していたというふうに私は……(河村(た)委員「承知していた、その前からわかっていた、四月十九日以前に」と呼ぶ)と思われます。ただ、そこについては、私もそこまで立ち入ってまだ調査をしたわけではございません。
河村(た)委員 またそれは調査をしていただいて、どんどん先に進みます。
 次は、皆さんのお手元に行っております文書は、報告書二というものですね。これは、裁判所に出されました第七号証という報告書です。これの二ページ目の下のところですね、アンダーラインが引いてある「特権免除班の保坂氏」ということで、ちょっと時間がありませんから中心的なところに行きますが、上から四行目ぐらいですか、「外交特権が存在しないことは、明らかであるから、何も気にすることはありませんので法的手続きをとってくださいとのことでした。 外交特権が存在しないことについて、外務省儀典官室特権免除班・保坂氏が話をした旨を裁判資料として頂いても構わないとのことでした。」こういうことを保坂氏は語ったと言っておりますが、これは真実ですか。
川村政府参考人 本人について聴取しております。詳細に関しては覚えていないけれども、確かに本件照会がございまして、外務省は、在本邦シリア・アラブ大使館より口上書で、同大使館事務所は港区赤坂にある、大使公邸は六本木にあるということの通報を受けている、麻布永坂町の建物については、外務省としては、同大使館より、大使館事務所もしくは公邸と認識しておらないので、したがって外交特権の対象とはならない、そういう趣旨の発言はしたと思うという答えでございました。
河村(た)委員 それはそうなんだけれども、この言葉には間違いないですね、この言葉自体。
川村政府参考人 一字一句に関しましては、本人の記憶に定かでないところはあるのでございますけれども、趣旨に関しましてはおおむねそういうことであったということでございます。
河村(た)委員 それから、次のページをめくっていただいて、三ページですが、きょうはこの方はそこにお見えになっていますが、三のところ、上から五、六行目、「平成十三年八月三日に外務省中東第一課の米山氏から担当が藤本氏に変更になったとのことで、新しい担当者の藤本氏と打ち合わせを致しました。 藤本氏は、現在の状況を判断すると本当に競売妨害の可能性があるのではないかとのことでした。」と。この部分はこう言われましたか、藤本さんは。
安藤政府参考人 今委員御指摘の資料は、本件不動産を競落いたしました民間会社によって作成された文書なものですから、外務省として、その内容、表現について責任を負うものではありませんけれども、細かい言い回しは別といたしまして、発言の趣旨はおおむねそのような立場に沿ったものだったというふうに承知しております。
河村(た)委員 それから、下まで行きまして、下の行ですね、「外務省としては、本物件は大使館の登録はなく、治外法権を付与していないので株式会社イトイ側で十分法的手続きを取れるものと判断するとのことでした。」と。これもこのとおり言いましたか。
安藤政府参考人 先ほどと同じでございまして、細かい言い回しは別といたしまして、各発言の趣旨はおおむねかかる立場に沿ったものだったというふうに承知しております。
河村(た)委員 問題は、もう一回お伺いしますが、これは例えば、この時点では届け出がなかった、大使館、公舎ですか、公邸と大使館のオフィスと両方あるからね、なかったということだけれども、仮にこの後で届けを出してしまえば、これは認めるんでしょう。どうですか。
川村政府参考人 外交関係に関するウィーン条約の第二条におきまして、「常駐の使節団の設置は、相互の同意によつて行なう。」と規定されております。
 派遣国が大使館を設置する場合でございますけれども、一般的には、接受国への通報が行われ、接受国がこれに同意を与えるということになります。その際、接受国といたしましては、自動的に同意を与えなければならないというわけではございませんで、大使館として認めるのに支障がある場合には異議を申し入れることも可能であると思います。例えば、公館の保護に関しまして、接受国は特別の責務を外交関係のウィーン条約第二十二条二項において負っておるわけでございますけれども、そういった責務を果たし得ない事情等がある場合などに関しましては、こういった異議を申し入れることができるというふうに考えております。
河村(た)委員 それより、本当にここを借りたという書類ははっきりあるんだから、借りたという書類はあって、それも、個人じゃない、国が出しているということはシリア側が言っていますよね。だから、この間の初めのときに出した確認の書類のように、お伺いを立てるよじゃなくて、ここに移転しましたよ、こう言えば、それは外交特権の対象になるんでしょう。これは端的に言ってください。もし出したとすれば。
川村政府参考人 本件のシリア大使館の事例に当てはめますと、平成十二年四月、同大使館から、本件物件への移転についての当省の意見を照会してきたことに関しましては、委員御指摘のとおりでございます。
 それで、当省の方からは、口上書をもって推奨できないという形で返答しておるわけでございます。したがいまして、本件物件については、通報はあったものとは認識しておりますけれども、接受国政府として同意は与えてはおりません。
 あと、繰り返しになりますけれども、通報が行われた場合は、接受国として自動的に同意を与えなければならないわけではございませんで、大使館として認めるのに支障がある場合には異議を申し入れることも可能でございます。
河村(た)委員 いや、そんなことを言っていますけれども、きのうの話とはえらい違いますね、これは。
 要するに、ある不動産屋さんが土地を買うときに、皆さん、これはこの旨しゃべられた、こういうふうに言っていますよね。イトイさんが出されたこの書類がどうも正しいようでございますけれども。こういうことを外務省としては、要は、普通は届け出があれば一応、そこにいなくても、よくあるのだけれども、賃貸借契約というのは、賃貸借契約を結んで、何かの事情でそこへ入らないときというのは結構あるのですよね。そういう場合、それでもやはりそこに占有すべき権限というのがあるのでして、そこへわざわざ皆さんが立ち入って、いやいや、賃貸借契約はあるけれども、これは競売妨害の可能性があるとか、治外法権は付与していないので十分な法的手続をとれるものと判断するなんて、こんなことまで言ってしまって、後でもし本当に出されたら、これはどうなったのですかね。たまたまシリア側はそうしませんでしたからよかったのだけれども、では、自分はここを借りますよということで届け出を出されたらどうなったか、こういう問題があるわけですよ。それはそれで、次へ進みましょう。
 それから、三月十三日にシリアの大使が外務省を訪ねられておるのですよ。これはだれが出席をされましたか、この会合は。
安藤政府参考人 私、新任の中東アフリカ局長でございますが、ハイダールさんという駐日のシリアの臨時代理大使が表敬に来たいというお話でございましたので、三月十三日に私がハイダールさんとお会いした、これはあくまでも表敬においでになったということでございます。
河村(た)委員 あとの方、何人いたか話してください。
安藤政府参考人 私のほかにでございますか。これは、中東一課の担当官と、ほかに、先方が通訳も含めてほかに二名いたというふうに私は記憶しております。
河村(た)委員 担当官はどなたですか。
安藤政府参考人 担当官は、あのときには鈴木首席事務官でございます。
河村(た)委員 どういうやりとりがありましたか。
安藤政府参考人 あくまでも新任の局長に対する表敬訪問というものですから、いろいろな話になりました。日シリア関係の話であるとか中東の問題であるとか、いろいろな話になりましたけれども、今御議論いただいておりますこの建物に関しても言及はございました。私からは、従来の外務省の立場を従来のラインで御説明をいたしました。
河村(た)委員 以下のような言葉は言われませんでしたかね。小林さんからダイジェストを聞きました。できてしまったことで両国の関係が悪い方向にならないようにしましょう。それから、私たちの知る限り、契約書はシリア・アラブ共和国の契約書であり、カブール大使個人でないことを現認していると。これはどうですか。
安藤政府参考人 一つは、先ほど申し上げましたようにいろいろな問題に言及いたしましたので、私、一々のやりとりを正確に覚えているわけではございません。それから、外交的なやりとりでございますから、すべてを申し上げることはできない点は御容赦いただきたいと思います。
 それからもう一つは、これは通訳を間に介して話しております。初めは英語でやり始めたのですけれども、先方がぜひ通訳を入れたいと言いまして、通訳の方が、私はどういうふうに先方に通訳したのかというのはわからない部分がございますが、それを前提にして申し上げますと、私が申し上げたかった趣旨は、この賃貸借契約が個人として結ばれたか、あるいは国として結ばれたか、そういうことを私どもは問題にしているのではなくて、問題は、大使館の事務所もしくは公邸としての登録が外務省になされていない以上、大使館としての特権免除が認められず、右に基づいて最高裁の決定がなされていること、そのことについて注意を喚起する口上書を出したのだというふうに、私は前に出した口上書の趣旨を御説明したわけでございます。
河村(た)委員 それからもう一つ、私たちの間にある、何かミスアンダースタンディングと言ったらしいのですが、誤解が起きてしまったことはぜひ許してください、こういうことを言ったと言われておりますが、こういうことは言われませんか。
安藤政府参考人 私、誤解という言葉を使ったかどうかわかりませんが、本件をめぐって外務省とシリアの大使館の間でいろいろやりとりがあったということを踏まえまして、日本とシリアのためにこの問題は解決していきたいというか、問題としないようにうまくハンドルしていきたいという趣旨を申し上げたことはございます。
河村(た)委員 今の私の言った内容とかなり違いますが、いわゆる契約書は個人でないことは現認しているとか、ミスアンダースタンディングについてはぜひ許してくださいと言ったことは、そういうことは言っていないというように否定されますか。
安藤政府参考人 私が申し上げたかった趣旨は先ほど申し上げたとおりでございます。この問題を大きな問題にして日シリア間の関係を悪くするようなことにしてはいけないというのが大きな趣旨と、もう一つは、口上書の趣旨はこういうことでございますということを申し上げたわけで……(河村(た)委員「謝ったことはないですか」と呼ぶ)謝ったことはございません。
河村(た)委員 それから、ダマスカスでやはりこの問題について話をしておるはずなんですよ、ダマスカスで。これについてはどういう話をされていますか。
安藤政府参考人 ちょうど一昨日、十八日から中東地域駐在の大使の大使会議が東京で開かれております。その直前に、天江駐シリア大使がシリアの外務次官のところに参りまして、中東会議を前にしていろいろ意見交換をしてきておられます。その際に、この件についても言及がございました。
 そのやりとりの詳細については、これは外交関係の問題でございますので、そのすべてを明らかにすることは差し控えたいと思いますけれども、本件に関しましては、当方から、在京シリア大使館より何か連絡を受けているかというふうに聞きましたところ、先方から、特に問題にするような連絡は受けていないというお答えがあったというふうに私は承知しております。
河村(た)委員 その場合に、何か例えばODAでいろいろな解決をしていく、そういう話はなかったですか。
安藤政府参考人 本件との絡みでODAを云々というお話はなかったと承知しております。
河村(た)委員 私も一言言いたいのは、こういういろいろややこしいことになったときに、最後はとにかく国民の税金であるODAに全部しわ寄せをする、またぞろ、この間うち問題になったような問題が発生しておるのではないかということをひとつ懸念をしておるところです。
 それから、今までの話を聞いて、大臣、シリアとの関係も大事にせにゃいかぬ、しかし日本の法律もきちっと守っていかなければ、私も、必ずしもどっちがどっちということはないけれども、今後この問題についてどういうふうに対処されるおつもりか、一言おっしゃってください。
川口国務大臣 日本国の政府として最高裁の決定に従うというのは当然のことだと考えております。あわせて、日本とシリアの二国間の関係というのは重要でございますので、今後とも友好関係を維持するための努力は継続したいと考えております。
河村(た)委員 以上で終わります。これからまたいろいろ真実を追求するためにお時間をいただくことになると思いますけれども、よろしくお願いします。
吉田委員長 次に、桑原豊君。
桑原委員 大臣には初めて質問させていただくということで、きょうは基本的なところを幾つかお伺いをしたいと思っております。
 まず、大臣は、十六日の日に沖縄を訪問されました。一日で強行日程をこなされたようで、大変御苦労だったかと思いますけれども、大臣としての初めての訪問だ、こういうことで、沖縄問題についてまず少しお尋ねをしたいと思います。
 私もきのう、おとついと沖縄へ行ってまいりました。私は、大臣とは訪問の目的が違いまして、沖縄の公共事業と特定の政治家とのつながりというようなことで、野党の合同の調査団をつくっていろいろ調査をしてきたわけです。
 沖縄の現状、大変公共事業に依存せざるを得ない経済の実態がある。いわゆる建設業が基幹産業というような位置づけをされていまして、特に、景気が悪くなってきて民間の事業が少なくなってくる、そういった建設事業の中でも公共事業の割合がどんどんふえてくる、非常に厳しい競争が展開をされる、そういうことの中で政治家とのさまざまなつながり、予算をつける段階あるいは企業が受注をする段階、そういう段階でいろいろなつながりができてくる、こういうようなことで、それに関連をしたさまざまな問題、疑惑、そういったものを我々は調査をしてきたわけです。
 やはり、その背景を考えてみますと、大変厳しい沖縄の戦後の歴史といいましょうか、復帰をして今日に至るまで、本土との厳しい格差を直していかなきゃいかぬ、是正していかなきゃいかぬ、そういうことで、自主的な財源が乏しい中で、財政に依存をしながらやらざるを得ない。それは、一方ではまた基地に非常に特化をしておりますから、これまた基地の立地をめぐるさまざまなしわ寄せ、そういうものもどう是正をしていくかというようなことの中で、公共事業がそういう位置を占めてきたということが私はあると思うのですね。やはりこうした問題の背景にある沖縄の厳しさというものを私はそれなりに実感ができたわけです。
 そこでお聞きしたいのですが、大臣、日米地位協定の問題については、現状では運用の改善でやっていきたいのだ、事があれば改定なども視野に入れていきたいというような、これまた従来の歴代の大臣の域を超えないようなお話でございました。それとまた、普天間飛行場の代替基地の十五年使用問題についても、これも稲嶺知事との会談ではほとんど言及をされなかったようですし、また、後の記者会見では、いろいろな情勢を見ながら、なかなか難しい問題だというようなことでお話しになっておるようですけれども、これも従来の大臣のそういう域を超えていないわけですね。
 私は、やはり非常に長い期間にわたって、この問題というのは大変切実な沖縄県民の要望として突きつけられてきた課題でして、決して先延ばしが許されるような問題ではないだろうというふうに思うのですね。
 そういう意味で、まず一つお聞きしたいのは、大臣として、この問題の背景にある沖縄のいろいろな事情というものをどういうふうに理解しておられるのか。沖縄の要望ではあるけれども、日本の全体のことを考えていくとなかなかそんなわけにはいかないのですよという程度の理解なのか。この問題の背景にある沖縄の現状というものをどういうふうに理解しておられるのかということを、まずお聞きをしたいと思います。
川口国務大臣 沖縄をめぐる情勢を非常に大きな視点からとらえられた問題の提起をしていただいたと思いますけれども、私はずっと現場主義ということを、環境大臣のときも言っておりまして、実はその前からずっとそういうことをやってきておりまして、その中で、外務大臣になってなかなか東京を離れることができないでいるわけですけれども、今回、海外、国内含めて初めての出張という形で沖縄を訪問することができて、とてもよかったと私は思っております。大変に勉強になりました。
 それで、沖縄をめぐる問題というのは非常に大きな問題である、まさに今委員がおしゃったように非常に大きな問題だと思います。
 日本の安全を保障するためのさまざまな取り組みといいますか枠組み、安保条約等でございますけれども、それが日本全体、あるいは日本だけではなくてこの地域の平和と安全のためにプラスになっているということが片方にあるわけですけれども、他方で、そのための負担が圧倒的に沖縄に行っている。日本にある米軍の施設・区域の七五%が沖縄にあるという形で行っているわけで、沖縄県民の方にその負担が課せられているということになっているわけでございまして、それがまさに沖縄の問題の非常に根本にある問題だというふうに思います。沖縄の県民の方の負担というのを政府としても軽くするための努力ということを積み重ねていかなければいけないと思っております。SACOの最終合意を実施するということが非常に大事だと思っております。
 それから、普天間飛行場の十五年の問題について私が触れなかったということでございましたけれども、私は、稲嶺知事とお話をさせていただいたときに実はこの要望書をいただいたわけでございます。この要望書にさまざまなことが書かれていまして、非常に短い時間でこれについてどういうふうに私の方からお話をしたらいいだろうかと思って、大きな項目をベースに、これだけでも六つあるわけですけれども、このほかにアメラジアン問題というのもございまして、それを短い時間で本当にかいつまんで申し上げたということでして、普天間飛行場の移設問題は、移設についてということでございましたので、代替施設協議会で行っている議論についてこれについては触れたということで、私の方から十五年問題を避けて通るというつもりは全くございません。
 これは、後で夕刊を見ましたら、そういうふうな見出しがありましたのでちょっとびっくりいたしましたけれども、それで記者会見ではこれについてお答えをさせていただいたということでございます。
 それで、十五年使用期限問題、それから負担の軽減等について言えば、先ほどまさに委員がおっしゃっていただいたようなことを私が申し上げたということでございます。
桑原委員 大臣は、一昨日の日本記者クラブでの政策演説で、川口外交のスタイルということで、私は、強く、温かく、わかりやすい外交を目指します、日本外交は強くなくてはなりません、我が国の安全と繁栄のため、国際社会において言うべきことは言い、やるべきことはやるという主体的で積極的な外交を私は目指しますと。私も全くそのとおりで、非常に大事なことだというふうに思うのです。
 そこで、沖縄のこの問題、私は沖縄の負担を何とか軽減しなきゃならぬという思いは非常に強いし、沖縄の皆さんは、そういった安保体制の中にあって、何とか最大限負担を軽減してほしい、こういう要望で従来から強く主張されてこられたわけですね。
 ですから、例えば十五年の問題にしても、代替基地は要らない、こう言っているわけじゃないわけですね。その期限を、いつまでもということではなしに、一定期間にぜひ区切るような立場で、姿勢で交渉してほしい、こういうふうに言っているわけですね。
 それから、地位協定にしたって、地位協定なんというものは要らないよ、こういうことじゃなしに、今の現状では、何かあったときに対応していくというやり方ではなしに、やはりちゃんとした協定の中で、どんな事態になってもちゃんとした対応ができるように、今までいろいろ問題があったわけだからやってほしい、決してそんな過大な要求をしているわけじゃないわけですね。そういう意味で、世界的ないろいろな状況を見ながら、基地の存在というものをそれなりに認めた上で、ぜひここだけはやってほしい、こういうような要望だというふうに私は思うんです。
 ですから、それをどう受けとめていくのかというのが大変大事だと思いまして、大臣の外交のスタイルからいえば、私はちゃんとその問題を、沖縄の人が要望しているからこうなんだという言い方ではなしに、日本の外務大臣として、私自身がこう考える、そういう日本外交の考え方としてきちっと主張してこれから交渉していく必要があるんではないか、こういうふうに私は思うんです。それが本当の意味で、ちゃんと言うべきことを言う、強い、きちっとした主張をするときには主張する、わかりやすいことにも私はつながるんではないかと思うんですけれども、今後のこの問題の姿勢ということを含めて、その点、考え方をお述べいただきたいと思うんですが、どうでしょうか。
川口国務大臣 強く、温かく、わかりやすくということは、私はいろいろな問題に対応していくときにそのスタイルでやりたいというふうに考えております。
 それで、沖縄の問題につきまして、地位協定の話ですが、運用の改善ということを申し上げているわけですけれども、やはりさまざまな問題に機敏に対応していくということが大事だと考えておりまして、機敏に対応していく、それを運用の改善をすることによってやっていくということで考えたいと思っております。
 この運用の改善については、この間、市町村の長の方々とお話をさせていただきましたけれども、いろいろなお話がそのとき、でも全部の方から御意見を伺えなかったんですけれども、聞きました。私はそれについても、それぞれは物すごく大きな問題ではなくて、その地域にとっては非常に重要な、だけれどもたくさんある、そういう問題があるわけでございますね。そういうこともきちんと取り上げて話をしていくということの姿勢は大事だというふうに思っておりますし、そういうことをやっていきたいと考えております。
 それから、その運用の改善でやはり効果が出ないということであれば、そのときには、相手の国もあることですけれども、地位協定の改正も視野に入れていくということだと思います。
 それから、十五年の使用期限問題、これにつきましては、私は先般、パウエル国務長官とお話をいたしたときにも取り上げさせていただいたところでございまして、やはりそういったことについて、何もやらないのではなくて、そういう機会があったときに取り上げさせていただくということかと思っております。
桑原委員 問題を取り上げる、あるいは沖縄の要望を伝えるというようなのが従来のあり方でして、ぜひこれはこうしてほしい、こういうような外交姿勢では私はなかったと思うんですよ。ですから、ぜひ大臣は自分の主張として、日本外交の主張としてこうなんだというふうに主張しなけりゃ、こういうものは全然迫力も何にもないわけですね。私はどう思っているのかわからぬけれども、沖縄ではこういう要望があるんです、聞いてください、こういう姿勢ではやはりだめなんじゃないか。そこが、今まで問われていて結局突き崩せなかった壁ではないかと私は思っているんです。
 ぜひ今後の姿勢として、本当にその背景にある県民の皆さんの気持ち、あるいはそれをどう突破していかなきゃならぬかということを本当に考えたときには、ぜひもう少し積極的に対応していただきたいということを要望しておきたいと思います。
 次に、これも非常に大きな問題ですけれども、川口大臣の外交スタイルにも関連をしてくるわけですが、戦後の日本外交、いい悪いは別にして、アメリカとの関係が基軸で展開をしてまいりました。冷戦の時代はもちろんでしたけれども、冷戦が終わった後も日米関係というのは新しく定義をされまして、いわゆるアジア太平洋における日米関係という位置づけの中で一つの関係がつくられてきているわけですけれども、そこで、そういうことになりますと、アメリカという冷戦後唯一の超大国になったこの国の外交姿勢というものは、いや応なしに日本の存在全体に大きな影響を及ぼしてくるというふうに思うわけです。
 それは、私がそう思うだけではなしに、そういう現実になるわけですけれども、最近のブッシュ政権の外交姿勢、甚だ私はいろいろな面で憂慮すべきことがたくさんあるように思います。
 大臣自身が地球温暖化防止条約で、アメリカがそこから抜けていくということの中で、大変御苦労されて、いろいろな話し合いをして、何とかつなぎとめて世界のそういう新しい環境の秩序の中に組み入れていこうという努力をされたと思うんですけれども、あの問題もそうでございましたし、またCTBT、包括的な核実験の禁止条約、これを死文化させようというようなそういう動きもいたしました。
 また、ABM制限条約への一方的な脱退通告であるとか、あるいはいろいろな憂慮もあるMD構想、生物化学兵器禁止条約への検証制度に対して異議を唱えていくとか、そういったことが相次いでおりまして、あげくの果てと申しましょうか、年頭の一般教書の演説では、ブッシュ大統領はイラク、イラン、北朝鮮、名指しで悪の枢軸、こういうふうに決めつけたわけですね。
 世上、ユニラテラリズムであるとかいろいろな表現でこの一連のアメリカの姿勢というものが批判をされていますけれども、私は、唯一の、ある意味では経済的にも、軍事的にも、政治的にも超大国としての存在であればあるほど、その行動、主張、そういったものは非常に慎重でなければならないし、また、新しい世界の秩序をつくっていく中心に位置するわけですから、世界の国々と協調していくということが責任として求められていくというふうに思うんです。
 九月十一日のテロのときには、いろいろな意味でアメリカが諸外国の協力を得て行動しなきゃならぬということになって、この段階ではアメリカも少し方向を変えるんじゃないか、変えたんじゃないかというようなことが言われもいたしましたけれども、しかし、その後の推移を見ていても、基本的には、アメリカのある意味での力任せと申しましょうか、アメリカの独断専行的なあり方というのは余り変わっていないように思うわけであります。
 そういう意味で、このアメリカの姿勢に対してはいろいろな意見が出されているわけですけれども、外務大臣として、このアメリカの姿勢、一連の動きというものをどのように見ておられるのか、そのことをお聞きしたいと思います。
 やはりアメリカに対して、外務大臣は、先ほど申し上げた日本記者クラブでの演説の中でも非常に好意的におっしゃっております。米国とのかたいきずながブッシュ大統領訪日の際に改めて確認をされた。あるいは、基本的な価値観を共有する、世界第一位、第二位の経済大国で、重要なパートナーだ。そして、アジアにおけるアメリカのプレゼンスも地域の安定に重要だ。今後とも、互いに言うべきことは言いつつ、しかも決して離れることのない協力関係を発展させていかなきゃいかぬ、こういうふうにおっしゃっているわけです。
 ここにも、言うべきことは言う、こういうふうに言われているわけですけれども、私は、やはり一連のこのアメリカの姿勢を見ていると、それに対しては言うべきことは言うべきではないか、こういうふうに思うんですよ。そこら辺、大臣は、この一連の外交姿勢、どういうふうに見ておられるか、お聞きをしたいと思います。
川口国務大臣 アメリカとの関係は、日米関係というのは、今まさに引用していただいた私の日本記者クラブにおきます話、講演にも言わせていただきましたけれども、日本にとって非常に重要な関係、この同盟関係は非常に重要な関係だと思っております。政治的にもそうですし、経済的にもこれほど相互依存関係を強く持った国というのはないわけでございまして、非常に大事であると思います。
 それから、最近の日米関係は、特に首脳同士の個人的な強いつながりによってさらに強化をされたというのが、私の先日の日米首脳会談に同席をいたしましての感想でもございます。
 先ほど委員は、米国は大国であって、大国は慎重でなければいけないというふうにおっしゃられたかと思いますけれども、私は、米国は大国として、リーダーとして、慎重であることも必要ですし、それから果敢であることも必要だと思っております。まさに果敢に、世界のリーダーとして、必要なときにリーダーシップをとるということができるというのは、まさに米国が世界の中でリーダーであり続けることができるということの一つの条件ではないかと思います。
 我が国として、あるいはほかの国として、こういった米国の考え方につきまして、きちんと言うべきことを言っていくということは、私は講演でも言いましたけれども、非常に大事だと思います。私自身、先ほど委員がおっしゃってくださった京都議定書の交渉を一年以上にかかっていたしましたけれども、その過程できちんと言うべきことは言ったつもりでございます。
 それで、アメリカも大国でありリーダーでありますけれども、やはりどの国もそうですが、アメリカも内政と外交という二つのことを考えながらやっていかなければいけないということはあるわけでございまして、そうしたさまざまなアメリカの事情、アメリカの立場について理解を持ちながら、それでいて言うべきことはきちんと言っていくという態度が必要でございまして、日米関係というのは私は本当に重要な関係だと思っております。
桑原委員 悪の枢軸という発言ですね、これはどう評価されますか。
川口国務大臣 これはいろいろな場で総理もおっしゃっていらっしゃいますけれども、米国としては、この三国につきましては、まさに大量破壊兵器あるいは国際的なテロということを考えたときに、大量破壊兵器を開発あるいはそれを拡散というようなことをやるということは非常に問題だということを考えているわけでして、そういった問題意識を表明したものだというふうに思っておりますけれども、同時に、この間の日米首脳会談、それから私がパウエル国務長官と行った会談におきましても、米国はすべての選択肢を排除はしていないけれども、平和的に物事を解決したいと思っている、外交的な解決をしたいと考えているということを言っていまして、そういう考え方でいると考えております。
桑原委員 大量破壊兵器ですとかテロ、そういうものは憎むべきといいましょうか、やってはいけないことだ、これはわかるんですけれども、それをなくするためにどういう表現をしていくか。やはり、悪の枢軸というふうに決めつけた、それも名指しで表現をしていくということが本当に指導的大国のやるべきことなのかと私は甚だ疑問に思います。それが何かしら非常に強い決意のあらわれだと。リアクションというのを十分に考えて、特にアメリカのようなそういうリーダー的な立場にある国なら、それは十分考えて発言をしていかなきゃならぬというふうに私は思うんですよ。
 そういう意味では、極めて私は不適切だと思うんですが、そんなことではありませんか。大臣の言うべきことというのは、そんなときにちゃんときちっとしたことを言わなきゃならぬのじゃないですか。それはどうですか。
川口国務大臣 これはアメリカのブッシュ大統領が一般教書の中で使った言葉でございまして、言ってみれば、我が国の総理大臣が施政方針演説の中でどういう言葉を使うかということであるというふうに思います。
 そういったことについて、国際的にといいますか、私どもは、そういった一般教書の中でブッシュ大統領が使った言葉について、それがいい悪いということを直接に言う立場にはないと思っておりますけれども、気持ちとしては、先ほど申し上げたようなことでおっしゃったんだろうと思いますし、実際の考え方につきましては、先ほど私が言いました、すべての選択肢を排除したわけではないけれども、平和的に交渉をしたいというふうに考えているということであると私は理解をいたしております。
桑原委員 平和的に交渉をしたいということを言うのなら、本当にそう思うのなら、私は、そういった悪の枢軸などという表現というのは決してそういうふうな面でプラスにはならない、こういうふうに思います。
 既にアメリカは、単なる一国ではなくて、ある意味では本当に世界に大きな影響を及ぼす、そういう大国なんですね。そこのトップがそういう表現を使って、いかにも挑発をする、いかにも決めつける、これはどう考えても、とても私はそういうふうに認められる言動ではなかろうということをつけ加えておきたいと思います。そういったときに、いろいろな方々が、世界の指導者でも、それは言い過ぎだとか、それは問題だとかという極めて適切な論評もするわけですから、そこら辺がしっかりできなければ私はやはりだめだということも申し上げておきたいと思います。
 最後に、もう時間も大分迫ってまいりましたが、アメリカの力任せといいましょうか、一つのあらわれと見られるのではないかというふうに私は思うんですが、ペンタゴンが核体制の見直し報告というものを議会に行って、その中で、ある部分が非公開の部分があった、それが三月九日付のアメリカのロサンゼルス・タイムズ紙で報道された、これが日本の新聞に出ていたわけです。
 日本の各紙が伝えた内容によりますと、アメリカは、脅威となる国を名指しして、これは核使用の対象となる国だと七カ国挙げておりますね。イラク、北朝鮮、中国、ロシア、イラン、リビア、シリア、そういった国々を名指しし、これは非常時に核使用の対象になるんだ、こういうようなことを言ったと。
 そして、核使用が想定されるケースとしては三つのケースを挙げておりまして、一つは、通常兵器では撃破できない、二点目は、核や生物化学兵器による攻撃への報復、三点目は、予想を超える軍事上の展開、こういったケースに核の使用が想定をされるんだと。具体的なケースとして、アラブとイスラエルの衝突、中国と台湾の戦争、北朝鮮による韓国への武力行使、そういう場合に核兵器の使用が想定されている、そのために戦場の状況に応じて使える小型核兵器を新たに開発するということを指示した、そういう旨の機密部分が報道されたわけです。
 これが事実かどうかというのはもちろんわからないわけですけれども、私は、もしこれが事実であるとすれば、従来の核兵器というのは、持っているということによって相手から攻撃をさせない、いわゆる核抑止、いざ攻撃をしたら大変な報復を受ける、壊滅的な状態になる、だから抑止力として核を持つ、こういう意味があったわけですけれども、それが具体的に対象国まで名指しして、それを使い得るものとして核兵器の使用が見直しをされてきたということになると、これはやはり従来の核戦略の大きな転換になり得る話でして、その点については極めて憂慮すべきことではないか、事実だとすれば。
 そこで、この報道についてはどのように把握をし、確認をされたかということをまずお聞きしたいと思います。
川口国務大臣 米国は、二〇〇一年度の国防予算授権法が国防省に今後五から十年間にわたる米国の核体制について包括的な見直しを実施することを義務づけていることに基づきまして、核体制の見直しが議会に提出をされたわけでございますけれども、この中で、おっしゃったような報道が一部について行われたということは承知をいたしております。
 ただ、米国防省は、報道されている部分、内容については、誤解を招くようなものであるとしつつも、コメントはしない旨を発表いたしております。私、我が国といたしましては、そのようなことを踏まえまして、米国に確認はいたしておりません。
桑原委員 本当にこれからも確認しないんですか。ペンタゴンはあるかないかはっきり言ってないわけですけれども、これがもし事実としてやられたということであれば、従来の核戦略の大転換にもなるわけですし、我が国にとっても、台湾だとかあるいは北朝鮮などもそういう具体的なケースとして想定されているということであれば、大変大きな影響を及ぼされることは当然ですから、そこら辺、今後、どうなんですか、確認するんですか、しないんですか。
川口国務大臣 御指摘の報道につきまして、パウエル国務長官は上院の公聴会におきまして、我々が先制攻撃を考えているとか、あるいは我々が核の敷居を下げたとかいうような報道等について言えば、我々はそのようなことは行っていない、NPRを読んでも、米国が核兵器を使用する可能性が高まるとか、米国が核兵器の使用にもっと速やかに進むという結論には至らないと述べていると承知をいたしております。
 また、チェイニー副大統領も記者会見で、報道はNPRが七カ国に対する先制的核攻撃を準備しているということを意味すると述べているようだが、それは考えられないと述べていると承知をいたしております。
 また、米国防省は、先ほど言いましたように、報道されている内容については、誤解を招くようなものであるとコメントしつつ、コメントはしない旨、発表していると承知をいたしております。
 ということで、私、我が国としては確認をするということは考えておりません。
桑原委員 例えば、小型の核兵器を開発して戦場の状況に応じて使い得るんだというようなことなども、これは新しい展開だと思います、もし事実だとすれば。今おっしゃられたように、先制攻撃をしないとか、そういったことについてはそういう考え方なのかもしれません。
 そのほかにもいろいろ、どうなのかというふうにただすべきことはあると私は思うんですけれども、どうなんですか。
川口国務大臣 その隠された部分があると報道された部分につきまして、確認することは考えておりません。
桑原委員 核の被害を唯一こうむって、非核三原則を持って、そして今後も核廃絶に向かって努力をしなきゃならぬ、これがやはり日本の一つの、外交にとっても基本的な、当然これからの行き方の基本に一つあると私は思うんですね、そういうことが。
 そういう外交姿勢を堅持していこうとする国が、アメリカは同盟国ですね、そういう意味では日本の平和と安全に一番大きな影響を持つ国ですよ、アメリカ自体のいろいろな外交、いろいろな対応というのが。その国の核戦略がそんなふうな形で見直しされているかもしれない、そういう状況があるのに、一切そういったことはやる気はありませんと。
 そういう姿勢では、どう考えても私は、日本の核戦略というものが、核に対する考え方というものが問われるのではないか、そう思うんですが、どうですか、改めてもう一回聞きますけれども、そんなに難しいことなんですか、確認するというのは。
川口国務大臣 日本と米国は、一般に、安全保障問題について言えば、さまざまな場で意見の交換を十分に行っているわけでございます。その上で、その報道されたNPRの秘とされた部分について、その部分について確認するつもりはないということを申し上げているわけです。
桑原委員 そんなに親密に、常々からお互いに連絡をとり合って協議をしているのなら、これくらいのことは簡単に確認し、聞ける話ではないかと私は思うんですけれども、そのことを申し上げて、時間が参りましたので質問を終わりたいと思います。
 どうもありがとうございました。
吉田委員長 松本善明君。
松本(善)委員 外務大臣に伺いますが、昨日、私ども日本共産党の委員長が記者会見で発表いたしました秘密文書といいますか、鈴木議員とロシュコフ外務次官が昨年の三月五日に会談をしたという記録、よく読んでおいていただきたいということを申し上げましたが、お読みいただいたでしょうか。
川口国務大臣 よくという形容詞が適切かどうかはわかりませんけれども、読ませていただきました。
松本(善)委員 この会談が行われたかどうか、その点について見解を聞きたいと思います。
齋藤政府参考人 お答えいたします。
 昨年三月五日に鈴木議員とロシュコフ次官の間で会談が行われたことについては承知しております。
松本(善)委員 出席者はどういうことでしょうか。
齋藤政府参考人 出席者につきましては、東郷欧州局長及びパノフ大使が同席していたというふうに承知しております。あと、双方の通訳でございます。
松本(善)委員 東郷局長も出席をしているということですね。
 この文書は存在しているんでしょうか。文書の存在については確認されたでしょうか。
齋藤政府参考人 出所不明の文書につきまして、外務省としてその内容や存否につき確認することは差し控えさせていただきたいと思います。
松本(善)委員 外務大臣に伺いますが、外務大臣、まあ、よくという形容詞まではつけられないかもしれないが読んだと。もしこれが事実とすれば重大だというふうに考えておられますか。
川口国務大臣 これにつきましては、鈴木議員という一人の議員の方が先方とお話しになられたということであるわけでございまして、その議員の方の会談につきましては、私の方からコメントさせていただくのは控えさせていただきたいと思います。
松本(善)委員 このことについては、調べようと思えば、東郷氏や佐藤氏に聞けばすぐわかることですけれども、これを調べるという考えはありますか、外務大臣。
川口国務大臣 東郷局長が同席をしたというふうに書かれているわけでございますけれども、私どもとしては、東郷局長が政府の公的な立場で出席をしたというふうには承知をいたしておりません。
 それから、佐藤については、出席をしたというふうに承知しておりません。
松本(善)委員 官房長官の会見では、確認しなければならぬというふうに言っていますけれども、官房長官とは考えが違うんですか。昨日の会見ですね。
川口国務大臣 確認したいと官房長官がおっしゃったというふうに委員おっしゃいましたけれども、何を確認しようということで官房長官がおっしゃられたのか、ちょっと私、そこを、申しわけございませんが、フォローいたしませんでしたので、よくわかりません。
松本(善)委員 記者の方から、外務省の欧州局長が自民党の総務局長であった方と非公式でも接触をしていることの是非を聞いたわけですよ。それに対して官房長官は、東郷当時の欧州局長に確認をしなければいけない、こういうふうに思います、こういうふうに会見では言われているわけです。
 そうすると、私は、やはり東郷さんなり佐藤氏なりに聞くのは当然ではないかと思いますが、官房長官の意見とは違うんですか。
川口国務大臣 東郷局長がどういう経緯でその会合に出席をすることになったかということについては、東郷局長に聞いてみたいと思っております。
松本(善)委員 そうすると、出席をしたということは認めていられるが、どういう経緯かということを確かめたい、こういうことですか。
川口国務大臣 私は、例の会談に東郷局長が出席をしたというふうには、そのお示しになられた文書で読んでおりますので、そういった経緯については聞いてみたい、そういうことでございます。
松本(善)委員 この文書ですけれども、前文が、お読みいただいたと思いますが、改めて申し上げますが、
 昨年三月五日に行われた鈴木宗男議員とロシア外務次官の会談記録をお送りします。この記録は当時の佐藤主任分析官が保管する書類の中から昨年入手したものです。この記録からも明らかなとおり、鈴木議員と東郷局長は政府の基本方針に反するメッセージをロシアに伝えていた一例です。内容からもお察し出来ると思いますが、この記録は外務大臣にも官房長官にも報告されませんでした。また、外務省にも正式な記録は残っていません。
ということで、我が党の志位委員長に送られてきたものであります。
 鈴木議員と東郷局長が政府の基本方針に反するメッセージをロシアに伝えていたということになると、重大だと思いますが、そう思いませんか、もしそうなら。
川口国務大臣 この文書は、そういう前書きをつけて送られたということは今伺いましたけれども、政府としては、先ほど出所不明の文書と申しましたけれども、そういった文書についてコメントをすることは控えさせていただきたいと思います。
 それから、政府といたしまして、この北方四島の返還問題について、方針はずっと一貫して、四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結するということでございますので、そこに何ら変わりはないわけでございます。
松本(善)委員 この会談が行われている昨年の三月五日、正式の専門家協議が行われたと思いますが、その事実はありますか。
齋藤政府参考人 御指摘の日ロ専門家協議は、三月五日開催されております。
松本(善)委員 その出席者はどういう人ですか。
齋藤政府参考人 出席者は、日本側より加藤外務審議官、東郷欧州局長、谷内総合外交政策局長、海老原条約局長ほかが、また、ロシア側からはロシュコフ外務次官、パノフ駐日大使ほかが出席しております。
松本(善)委員 報道によれば、そのときに加藤良三外務審議官が、日ソ共同宣言により色丹島と歯舞群島が平和条約締結後に日本に引き渡されることは合意済みであり、平和条約交渉の対象は択捉島と国後島の帰属を解決することにある点を踏まえ今後の交渉を促進するという項目を声明に加えるよう強く要求をしたということが報道されておりますが、そういう内容を加藤審議官は主張したんでしょうか。
海老原政府参考人 お答えいたします。
 私もその協議に出ておりましたけれども、詳しい一言一句、正直言って覚えておりません、一年前のことですので。ただ、加藤外務審議官の方から、五六年宣言において歯舞、色丹につきましては平和条約の締結の後に引き渡されるということが合意されているので、あとは国後、択捉の帰属の問題を解決するという問題が残っているという趣旨のことは発言したというふうに記憶しております。
松本(善)委員 基本的には私の言ったとおりですね。ちょっともう一遍。
海老原政府参考人 私の記憶では、先ほど私の申し上げたところが私の記憶にあるところでございます。
松本(善)委員 大筋、私が読み上げた報道のとおりであると思います。
 これが、いわば我が国の、我が政府の基本的な主張なんですね。だから、歯舞、色丹はもう既に合意済みなんだ、領土交渉というのは国後と択捉なんだ、これが政府の公式主張であると思います。私どもは、何かの機会があれば言いますけれども、四島返還論ではありませんけれども、政府の公式の主張であることは、これは間違いないと思います。
 そこで、問題は、この会議の後に、いわゆる問題の秘密交渉が行われるわけです。
 文書の一ページを申しますが、鈴木議員は、本日はよい協議が行われたか。これは、その前に行われた会議のことを言っている。ロシュコフ次官は、我々は友好的な雰囲気の中で協議を行った。しかし、意見の一致を見出せなかった。我々は、よい雰囲気で、またよい同僚と協議を行っているのに、意見の一致が見られないという矛盾に身を置かれている。このため心の中で葛藤を感じており、残念である。言うならば、ロシュコフ次官は、この正式の専門家協議に対して不満を持っているんですよ。問題は、それに対して鈴木議員が一貫して政府の公式主張と違うことを述べているのが、この会議の秘密文書の中身です。
 それで、ちょっと読みます。二ページ目は、しかし、自分や――要するに正式主張をする人と違って、自分や東郷局長は弾力的な姿勢でロシアとの関係を考えていたという立場で、このような姿勢でパノフ大使とも働いているんだ、こういうことです。本日の専門家会議については、まだ東郷局長より報告を受けていないが、いずれにしても、昨年九月の訪日の際にプーチン大統領が五六年の日ソ共同宣言の有効性を認められる発言をされており云々、こういうふうになっています。
 それで、その後、ロシュコフ次官は、下から数行目ですけれども、モスクワで丹波大使と話し、日本側が姿勢を厳しくするなら、ロシア側の姿勢も厳しくなると伝えた。正式態度、政府の公式主張に対して、ロシュコフ次官は一貫してこの問題を言っているわけです。
 ところが、鈴木議員は、ここから別のことを、政府と違うことを言っている。
 例えば、福田官房長官については、問題の発言、これは四島返還論ですね、問題の発言等をしたけれども、自分は、翌日の記者会見でその発言を訂正させた。そもそも福田官房長官の発言など気にする必要もない。
 それから四ページ。さきの橋本大臣の発言に対しても自分は不満に思った。これは四島一括返還論です、全体を読めばわかりますが。橋本大臣は、自分、これは鈴木議員のことですね、自分が所属する派閥の指導者であるが、それでもだめなことはだめだという立場で橋本総理に意見をしたんだ。
 それから、一番問題なところですが、その次の鈴木議員の発言です。五六年宣言を明記すること、そしてできれば、ここからが問題なんですが、無人島であり日本側に渡してもロシアが損することはないであろう歯舞群島を日本に渡し、また面積は狭く、なくなってもロシアの国益を毀損するようなことはないであろう色丹島を日本側に渡し、国後島、択捉島については継続的に協議を行って結論を出す、それも、そのことが日ロ双方がそれぞれの世論に説明できるような解釈を可能にするような文案をぜひ知恵を出してつくり出してほしいと思う。
 これは、もう日本の主権を主張する立場ではないわけです。歯舞、色丹については、ロシアは持っていてもしようがないだろう、大して役に立たぬから日本に返してくれという、これはもう明白に日本の主権を放棄した立場なんです。
 鈴木議員が外務省の職員を殴ったということについての問題も、これとの関係です。私は関係者に若干聞きましたが、外務省の報告もありますが、これは主権の問題だということで議論になって、その結果、殴るということになったというような経過であります。その問題はまた機会を改めて、きょう時間があればやれるんですが、ひょっとすると時間がとれないかもしれません。
 そういう立場でやり、さらに次の五ページ。河野外相は、一月の訪ロの前に橋本元総理から誤ったアドバイスを受けられ、外相会談で少し強硬な姿勢をとり過ぎたようだ。東郷局長とも緊密に協議を行いながら、森総理とプーチン大統領との電話会談を実施した。
 ということで、自分を売り込みながら、それから正式の代表や大臣を非難しなさる、そういう会談をやっているわけです。
 この問題はどうして重要なのか。委員長の会見のものも一緒にお配りしたのは、この文書がなぜ大事かということの問題であります。
 実は、この会議の前です、これは二〇〇一年三月五日ですね、二〇〇〇年の十一月三十日に、ロシア政府は日ソ共同宣言の、これは委員長の会見の一ページ目の、この会談に至る事実経過のところです。十一月三十日に、日ソ共同宣言の歯舞、色丹の引き渡し条項は、二島返還で領土問題を最終決着させるという規定だったとの見解を正式に日本政府に伝えた。
 ですから、その後の二島返還論というのは、ソ連側がこういう立場だということを承知の上でやることなんです。そういう点では、日本にとっては非常に不利な、ロシア側にとっては非常に有利なことになるんです。
 ですから、加藤審議官が述べた立場をロシアの事務次官が批判をし、それに対して、いや、そうじゃないんだ、実際はこうなんだということで、事実上、歯舞、色丹の主権さえ放棄をするという議論を展開しているのが、この鈴木議員の立場なんです。政府の内部文書でも領土放棄論のようなものが出てくる。首尾一貫しているんです、彼は。そういうものが出てきたということであります。
 これだけ解説をしても、外務大臣、この問題を重大な問題だとは思いませんか。
川口国務大臣 これは、コメントを申し上げないということについては変わりございません。
松本(善)委員 それから、東郷局長が出席している会談で、私的な一議員の会談などということは言えないと思いますが、外務大臣の見解を聞きたいと思います。
川口国務大臣 一人の議員の会合に、局長が政府を代表する公的な立場で出席をしたとは私どもは承知をしていないわけでございます。どういう経緯でそこに出席をすることになったかということについては聞いてみたいと考えています。
松本(善)委員 出席をしたことは認めたが、それはどういう立場かわからぬという話でございます。
 私は、それについてさらにお聞きをしたいと思うんですが、二〇〇一年の三月二十五日に予定されていましたイルクーツクの日ロ首脳会談に向けた日ロ専門家協議、これはモスクワで十九日に行われたのではないかと思いますが、どうでしょうか。
齋藤政府参考人 イルクーツク首脳会談に向けましての日ロ専門家会議というのは三月五日に行われておりまして、ただいま御指摘のありました三月十九日のモスクワの会議でございますか、これは日ロ専門家会議という政府とは関係のない民間レベルの会合ではなかったかと思います。
松本(善)委員 報道によりますと、事前の専門家協議が十九日モスクワで行われ、日本側は東郷和彦欧州局長、ロシア側はロシュコフ外務次官が出席し、首脳会談で発表されるイルクーツク声明(仮称)の文案をめぐって大詰めの協議となるということが報道されていますが、このイルクーツクでの会談の声明、それを協議するための会議が行われたのではありませんか。
齋藤政府参考人 日時等を確認する必要があるかもしれませんけれども、東郷局長がそのときにモスクワに行っているということであれば、それはイルクーツク首脳会談を控えたいろいろな打ち合わせということで、欧州局長としてモスクワに行ったということだろうと思います。
松本(善)委員 この会談で加藤審議官は、このときにはもういわゆる事務方の中心ではなくなっているんですね。
齋藤政府参考人 加藤外務審議官は、当時依然として外務審議官でございましたけれども、そのときの打ち合わせは欧州局長がやった、こういうふうに理解しております。
松本(善)委員 そうすると、政府の公式主張を行った加藤審議官が、この直前になると中心ではなくて東郷局長にかわるんですよ。東郷局長が、先ほどの秘密文書で言いましたように、政府の方針と違う、そういう立場で鈴木議員と一緒にやっていた。この人が今度イルクーツク声明の起案の中心に座る。これは加藤審議官の更迭といいますか、加藤審議官が先ほどの会議までは中心になっている、かわって東郷局長になってイルクーツクの会談になる。これも、この経過はおかしいというふうには思いませんか。外務大臣に聞きましょう。
川口国務大臣 経緯については私は聞いていませんけれども、基本的に、役所の会談で審議官と局長がいろいろな都合でかわるということは、いつでもあるいは幾らでもあり得ることだと考えます。
松本(善)委員 それはありますよ。だから私は経過をお話ししたんです。
 加藤審議官は政府の公式主張を述べているんですよ。それについてロシア側は批判をしているわけですよ、不満を。――ちょっと、聞いていてくださいよ。そんな、後ろから聞くことはないんだ、あなたの考えを聞いているんだから。本当にそうですよ。今日本外交は大変なところへ来ているんだと思いますよ、このロシア外交は。そんな、後ろからの話じゃないんですよ。
 私が説明いたしましたように、公式主張に対してロシア側が不満を言っている。それに対して、先ほどの鈴木議員が一生懸命、いや、そんなことはないんだ、おれと東郷は柔軟なんだ、そんな橋本大臣だとか福田官房長官とかそういうのはだめなんだ、おれが言って変えているんだという話をしているんですよ。そして、その実質は、主権は放棄をして、ロシアは歯舞、色丹は大したことないから返してくれと。
 そういうことで話をしているということが、これはもう二元外交で、こんなことをほうっておいたらロシア外交は成り立たないですよ。これは、こっちに会談のメモがあるぐらいですから、向こうにはもちろんあります。本当の日本側の真意はこれなんだということで外交が進められたら、大変なことじゃありませんか。外務大臣、どう思われますか。
川口国務大臣 日本の行政機関の組織というものは、だれが代表して会合に出ようと、それは政府の基本方針を踏まえて交渉を行うというものでございます。
 審議官が都合が悪ければ、局長がかわってその交渉のトップを務めるということはもう往々にしてあることでございまして、委員が今までおっしゃったいろいろな経緯ということについては私は存じませんし、コメントを申し上げませんけれども、基本的に、局長と審議官が、交渉の当事者がかわったということ自体は、特にそれ以上のコンテクストにおいて議論をするということではないと考えております。
松本(善)委員 そんなことを外務委員会で、公式の場で、それは審議官と局長がかわることはある、そういうようなことを外務大臣に聞くわけがないでしょう。そんなことは当たり前で、だれでも常識ですよ。あなたにここで説明してもらうまでもないですよ。なぜ聞いているかというと、この文書の問題が重大であるから言っているんですよ。この場合は、これを調査しなければならぬとは思いませんか。あなたがこの問題について、ここまで言っても調査をしなければならぬと思わぬかということなんですよ。
川口国務大臣 そのメモにつきましては、出所不明の文書でございますので、私としてはコメントをいたしませんし、それについて調査をするということは考えておりません。
松本(善)委員 調査をすることを考えていないと。これは、私は大変なことだと思いますよ。私は、そういう態度だったら、今、大新聞の社説でも、鈴木議員のかかわった交渉を全部検証しなければならないという社説が出ています。私たちの主張だけではありません。それから、日ロ交渉の基本的な枠組みを考え直さなければならない、これはもう各紙がみんな言っているんじゃないですか。それを何か、何でもなかったというようなことで調査もしない。私は、とんでもないと思います。
 文書は、佐藤主任分析官の所持する文書だということですから、彼の持っている文書は全部出させる。鈴木議員の関与したロシア側との交渉を全部明らかにする。そして、これなどは東郷元局長、それから佐藤元主任分析官に聞けばすぐわかることです。それをやる気がないと。そういうことは、私は、外務大臣としての資格を問われることじゃないだろうか。
 議員が委員会で、ここで起こっている、国権の最高機関ですよ、国会というのは。そこで問題になり、これだけの資料が出てくる。これは調査をして、そういうものがないという調査結果なら、これはまた別です。調査さえしないと。これは、とんでもないことじゃないでしょうか。改めてもう一回聞きます。
川口国務大臣 この文書は出所不明の文書でございまして、したがいまして、その内容あるいはその存否について確認をするということは差し控えたいと考えております。
松本(善)委員 私は、やはりそういう態度では、これからのロシア外交を進めることはできないんじゃないかというふうに思います。
 この点につきましては、また改めて私ども基本的なことを言おうと思いますけれども、やはり今の状態では、ロシア側はもう領土交渉はやめろという議論が起こっているというのは御存じだと思います。やはり、なぜ日本が千島列島あるいは北方領土、これを返せと言っているかということの世界に通用するような議論を展開しなければならない。
 私どもは、時間的な問題がありますので全部は述べませんけれども、この会談の協議内容がイルクーツク宣言に盛り込まれる結果になっている。これは委員長の記者会見での文書で書かれていますので、後でお読みいただきたいと思いますけれども、私どもは、この領土の問題につきましては、日ロ領土問題の根本には、領土不拡大という第二次世界大戦の戦後処理の原則に反して、ヤルタ会談での密約に基づいてスターリンが千島列島を不法に占領したこと、そして、一九五一年のサンフランシスコ平和条約が結ばれた際に、日本がこの条約の領土条項で千島列島の放棄を宣言してしまったことにあるというふうに考えております。
 サンフランシスコ条約で決まっていても、御存じのように、例えば沖縄は、条約どおりだとアメリカの領土か、あるいは委任統治になるようになっていた。しかし、日本側の運動や主張で、これは復帰をいたしました。
 そういうサンフランシスコ条約での領土の放棄、日本が侵略したところではないわけです。それについて、スターリンが不法に占領したことについて、根本的に問題を明らかにして、そして世界の世論に通用するような、そういう領土交渉をやるべきだと私どもは思っております。
 歯舞、色丹はもともと北海道の一部なんです。これはもう無条件に日本の主権を回復すべき地域であります。そして、国後、択捉だけではなくて、占守島まで含む北千島全体が、これは侵略によって得た領土ではありませんから返還の対象になるべきだ、こういうふうに考えているのであります。
 このことは改めて議論をすることもあろうかと思いますが、この点だけ言っておきますが、委員長にお願いしたいんですが、この問題については外務省は調べる考えはないと言う。私は、そういうことでは絶対だめだと思います。それで、この点でも、鈴木議員、それから東郷和彦氏、それから佐藤優氏、この三名を証人としてこの委員会に呼んで質問をするということを私は要求をいたします。
吉田委員長 理事会で協議をいたします。
松本(善)委員 まだ若干の時間がありますので、鈴木議員の暴行事件、これについて一言お聞きをしておきますが、これは暴行が行われ、傷害を受けたという外務省職員がいる。これに対して、鈴木議員は事実無根だと言っていますけれども、外務省の立場は変わりませんか。外務大臣から伺います。
齋藤政府参考人 事実関係について御説明させていただきます。
 平成八年五月、四島交流訪問団が国後島を訪問いたしましたが、現地で植樹祭の実施を企画し、チシマザクラ、アカエゾマツなどの苗木を持参しておりました。外務省職員が同行しておりましたけれども、現場でこの企画を知らされ、入域手続に関連しまして、ロシア側税関職員がこれら苗木の検疫証明書を要求したことに対しまして、外務本省とも電話連絡をとった上で、そのような証明書を提出することは、ロシアの管轄権に服することになり、北方四島に対する我が方の基本的立場を害するので、そのような証明書を提出することはできないとの応答をいたしました。この問題をめぐり日ロ間で種々やりとりを行いましたが、最終的には、苗木は持ち帰ることとなりました。
 帰りの船の中で、五月二十六日夜から二十七日夜半過ぎにかけまして、国後島からの帰路の船中でございますが、本件訪問団に顧問として参加していた鈴木議員は、外務省のこのような対応を強い口調で批判し、同行していた外務省員の足をけり、また、顔面を殴ったとのことでございます。
吉田委員長 もう先生の質疑時間はないんですよ。
松本(善)委員 わかっています。だから簡単に大臣に聞こうと思ったんですが、長々とやったものだからちょっと延びますけれども。
吉田委員長 では、外務大臣、どうぞ。
川口国務大臣 診断……(松本(善)委員「変わりませんかということですよ、鈴木議員は事実無根だと言っているけれども」と呼ぶ)変わりませんというのが、何から変わらないかということがちょっとよくわからないんですけれども。
松本(善)委員 今言われた暴行を受けて、そして傷害を負ったということがあったということについて変わりませんかという意味です。それが本当だという意味です。
川口国務大臣 事実かどうかという御質問であれば、そういうことだと思います。
松本(善)委員 ちょっともう一点、注文だけ。
 そうすると、鈴木議員はうそを言っているということですね。それをお答えいただきたい。
川口国務大臣 鈴木議員がどうかということについては私は申し上げませんけれども、外務省の立場として、私の立場としては、そういう事実はあったと考えます。
松本(善)委員 終わります。
吉田委員長 次に、小島敏男君。
小島委員 きょうは、時間が刻々と経過しているわけでありますけれども、大臣が所用のために、植竹副大臣並びに水野政務官の答弁をいただくわけであります。
 思い起こしますと、私も、ことしの一月まで、きょう出席をされている丸谷佳織議員さんと一緒に政務官をしていたわけでありますけれども、その折、植竹副大臣のもとで外務省改革に東奔西走したというんですか、大変に、外務省の今後のあるべき姿という形で勉強を重ねてきたわけであります。それが成果をあらわし、そして「変える会」というまた新しい会ができてそれが進められていること、このことに対しては評価をするわけでありますけれども、いずれにしても、外務省は非常に危機的状態にあるということは、私が政務官として入った中で感じております。
 ですから、外務省の職員の個人個人の優秀さというのはあると思うんですけれども、やはり世間の一般常識的なことに欠けているということを私は感じています。ですから、今度の改革においては、エリート意識はなくしなさいなんて、そういうことまで、本当にイロハのイの字のことを話さなければならない外務大臣の気持ちもよくわかります。
 入った当初は私自身も田中前外務大臣のもとで政務官をしたわけでありますけれども、次々に起こる外務省の不祥事、このことを考えると、もう本当にこれはいつとまるのかなという形の問題が露出したわけであります。最初に入ったときには、沖縄サミットの外務省のいわゆる松尾事件というのがありまして、それがその処分が適正かどうかということで大荒れをして、それからデンバー、パラオの事件が起き、その後、今度はホテルの疑惑、プール金問題、そしてタクシーの問題、それが終わったら今度は人事の問題ということで、矢継ぎ早に起きて、いろいろな問題が惹起されたわけであります。
 私自身が考えると、田中大臣が更迭をされた、いろいろな問題があって、田中大臣の資質の問題だとか、外交資質だとか、いろいろなことを言われるんですけれども、すべてが外務省の省員が起こしたことなんですよ。そうでしょう。田中大臣が起こしたことじゃないでしょう、はっきり言って。すべての問題は、タクシーにしろ、ホテルにしろ、沖縄サミットにしろ、デンバー、パラオにしろ、全部外務省の省員が起こしたことなんですよ。
 だから、そういうことからすると、鈴木宗男議員と田中眞紀子前外務大臣、この人の、いわゆる更迭をされたり、鈴木議員が今批判をされていること、このことについては、根底ではやはり同じような問題があるんじゃないかなということを私感じます、はっきり言って。
 それは、田中大臣がなって、五月ごろ、いわゆる外国の要人と話をした、そうしたらば全部リークされたでしょう。そのことについて新聞が大きく取り上げ、テレビが大きく取り上げ、田中大臣が国益に反するようなことを言ったというんですよ。しかし、そのことはいずれにしても、オーストラリアの外務大臣もイタリアの外務大臣も、そんなことは触れていないということを言っているわけですよ。
 ですから、いわゆる外務省の組織防衛ということも私なんかはわからないわけじゃないんですよ。しかし、そういう一つの省益を守るためにいろいろな文書が出ていくということ、またリークするということは改めるべき点でありますし、私は、外務省改革じゃなくて外務省改造と言っているんですよ。
 今、自民党の外交部会の中でも小委員会、茂木敏充議員が小委員長になりまして、外務省の改革というのを「変える会」とは別につくって、一週間に二回会議をしながら、ともかくこれからのあるべき外務省はということで論議を重ねているんですよ。
 ですから、今変わらなければ将来変えることはできませんから、私は声を大にして言いたいのは、やはり外務省の職員も真剣にこの問題をとらえて、みずからが変えるという形がなかったら、人がやるんじゃないんですよ、自分たちがやることなんだから。それを履き違えているから、私は外務省の中でも大きな声を出してそのことを訴え続けたんですけれども、どうも文書がどんどん出てくるということになると、私がどなったことなんか全部メモされているんじゃないかと思って非常に驚いているんですけれども、いずれにしても、改革という問題は相当これから真剣に考えなければならない問題だと思うんですね。
 ですから、今いろいろな話をしましたけれども、鈴木議員だけじゃなくて、やはり外務省のあり方というのも、姿勢というのも考えていかなきゃならないわけでありますけれども、現在指摘されている問題点を踏まえて、外務省の姿勢、根本から改めて、再発防止に努めなきゃならないと思うんですけれども、この件に関して植竹副大臣の御答弁をいただきたいと思います。
植竹副大臣 今、小島委員の御質問でございますが、平たい言葉で言えば、ともにかまの飯を食って、いかにこの外務省改革に取り組むかということは同じ気持ちでございます。特に、今、一連のいろいろな問題のお話がございました。そして、その中から、本当に国民の多くの方に御迷惑をおかけしたことは、本当にこれは外務省として心から反省をしなくちゃならないと思っております。
 そのためにはどうしたらいいかということで、御承知のように、私ども杉浦副大臣のもと、先ほど言われました政務官の方々と一緒になって外務省改革を立ち上げたのであります。そして、皆様には、三つのプロジェクトチームをつくって、それを一部ではもう実際にいろいろ実行するという中に、そしてまた、今度は川口新大臣のもと十の改革をやって、これが今、「変える会」などでもっていろいろ御提案をいただいたりして改革に臨んでおるところでございます。
 いずれにしましても、本当に国民のため、日本国の代表としてできる外交に取り組むべく、大臣以下、小委員全部が取り組んで、必死になって努力しておるところでございます。
小島委員 基本的には、植竹副大臣の言われたことは私どもも十分にわかります。ただ、今の改革は道半ばであるということと、これだけの人員とこれだけの予算をかけてみんなで考えているという、そのことに対して職員が、省員が、後ろの方にいるけれども、しっかり聞いていなきゃだめだよ、省員は。ちゃんととらえて、みずからがやはりやっていくんだという気持ちがなかったら、幾ら声を上げたって、幾らお金をかけたってできませんから。ですから、そういうことをしっかりと認識して、みんなで取り組んで、みんなでよくするように努力したいと思うんですよ。
 そこで、「開かれた外務省のための十の改革」というのがありますけれども、その中に「秘密保持の徹底」という項目があって、「外交では、信頼が基本です。そのために、秘密保持を更に徹底し、それに反した場合には厳しく対応します。」という、この一項目が載っているわけであります。
 これは、今お話ししたように、どうも情報公開というのは、今の時代で、どんどん情報公開をしながら、国民に顔が見える外務省であってほしい、国民がわかりやすい外交であってほしいということはあるんですけれども、先ほどの答弁の中で、国益に反すること、それから相手国に迷惑がかかること、このことについては開示ができないというのは、やはりそれ相応の理由があればやむを得ないことだと思います。しかし、やはり、出せるものは出すというんですけれども、今の秘密保持だかマル秘だか何だかわかりませんけれども、どんどん書類が外に出ていくこと、では、何のためのマル秘だということで疑問を抱かざるを得ません。
 内部文書の開示についてのルールを外務省独自で定めたようでありますけれども、そのルールは本当に公正さを担保できるものとなっているのか、また、今後、外交機密と行政のアカウンタビリティーのバランスをどのようにとっていくのか、この辺についてお伺いいたします。
    〔委員長退席、首藤委員長代理着席〕
植竹副大臣 ただいま御質問の秘密文書の問題でございますが、これはやはり、先ほど委員がおっしゃられましたように、日本の国益そしてまた相手国の国益、その中に立って外交は行われるものであります。したがいまして、秘密保持というのは大変重要なことであり、これを堅持していかなくちゃならない。そこで、外務省におきましては、三月十八日に、文書の秘密指定、さらにはその秘密指定の解除について基本的な考え方を発表いたしまして、周知徹底する措置をとったわけでございます。
 そもそも、文書の秘密指定につきましては、秘密保全の必要性を踏まえつつも、一方では、情報公開の要請にこたえるためには必要最小限にとどめるものとしていかねばならないと考えておるところであります。また、特に国会議員からの秘密指定文書の提出要求につきましても、その文書の秘密保全の必要性の観点と、透明性を高める、情報公開の要請にこたえるとの観点のバランスを図る必要があると考えるわけです。さらに、外務省内における手続にいたしましても、政治レベルの決裁を含めて、これは大臣以下、副大臣、政務官等、そういういろいろなレベルにおきましても、省内の意思決定のプロセスをもう一度明確にするということであります。
 外交は、何といっても信頼関係がその基本でありまして、秘密保持につきましては今後とも万策をもって取り組んでまいると同時に、また、秘密保持に違反した者につきましては厳しく対応していきたいと考えておるところでございます。
小島委員 秘密保持の関係については、今お話がありましたように、信頼が外務省に与えられるかどうか、こういう重要な点を持っていますから、やはりこれからのマル秘の情報だとか何かというものをよく精査をして、この情報は外に出てもいいんだといえば、私も政務官をしておるときに、ほとんどマル秘なんですよね。こんな問題をマル秘にする必要はあるのかなと思うものまで、マル秘、マル秘、マル秘と出てくるんですよ。だから、そういうことも、ぜひ副大臣が、少しそのマル秘のルールづくり、これもやってもらって、わかりやすい外務省のあり方、しっかりとした線を引けるような、そういうルールづくりをしていただきたいと思います。
 時間がともかく迫っていますから、次に北方領土の問題に移りたいと思います。
 この問題については、前の議員さんも全部取り上げて、北方四島のあり方ということで、いろいろな角度からお話があったわけでありますけれども、これは今までは、いわゆる北方四島を返還してもらうという形の中で、一九九七年の橋本・エリツィン会談によるクラスノヤルスク合意で交渉進展への期待が高まって、いわゆる二〇〇〇年までの平和条約締結は実現しなかったものの、いずれにしても、二〇〇一年の森・プーチン会談で、プーチン大統領が一九五六年の日ソ共同宣言を有効と認めるなどの動きがあっただけに、これからの動向が非常に期待をされたわけです。しかしながら、期待をされたんですけれども、今回の次官級協議では交渉停滞になってしまったということで、このことはまた、期待を持っていたんですけれども落胆の方に変わってしまったということであります。
 これは、北方四島の返還については、先ほど来話がありましたように、同時並行協議という形で日ロ間の合意というのはなかったのかどうか、鈴木議員との関係でロシア側が態度を変えたということはないのか。また、同時並行協議という方式は外務省内で正式に合意がなされていたのか、それとも鈴木議員の影響力により推進されたものなのか。これは、先ほど外務大臣が、そういうことはなされていなかったというような発言をしたんですけれども、これは事実でしょうか。
植竹副大臣 ただいまの北方四島の帰属の問題でございますが、基本的には、結論から申し上げますと、日本政府は一貫して、四島帰属を行った上で平和条約を締結する、そういうことの基本方針は変わっていないことはまず申し上げておきます。
 しかし、二〇〇一年のイルクーツク会談、さらには外相会議を通じまして、日本側から、歯舞、色丹の引き渡しを行って平和条約を締結するという問題と、そして、国後、択捉の帰属問題を同時並行的に行うということを提案いたしました。しかし、その後の話し合いの中で、この問題については、特にこれをどうという、枠ということじゃなくて、形式的じゃなくて、何といっても内容が重要であるということで、話し合いの中であり得るすべての問題について討論をしていくということでこれは合意したわけでありまして、特にロシア側においてこれが反対だということじゃなくて、日本側がそういうことで合意したことについて反論もございませんでした。
 したがいまして、今後とも、そういう基本方針におきまして、我が国といたしましては、四島帰属の問題を、その返還方針というものは変わらない方向でいくと考えております。
小島委員 今までの同僚議員の発言を聞いていると、いずれにしても、北方問題の問題点というのが非常に浮き彫りになってきたと思うのですよ。これは何かというと、いわゆる政府の対応、それから国内の世論、それから議員の考え方、こういうことがここのところでばたばた出てきて、北方領土不要論まで飛び出してきた。経済に使えばいいんだというようなことも、いわゆるメモによってそういうものが出てくるということになると、相手国にすれば、日本の国内というのは一枚岩じゃないな、冗談じゃないと。だから、今まで日ロで交渉してきたことが、果たしてどこにその本意があるんだろうかということでロシア側も迷ってきていると思うのですよ。ですから、さっき言ったように、事務次官会議においてもなかなかテーブルにのらなくなってしまった。それから、ロシアの議会の方では、もう日本には返さない、一九五六年のことはもうなしだということで、北方四島の人たちの一万数千人の署名までとって、もう日本に返さないということまで、向こうでは強硬な手段が始まってきたわけですよ。
 ですから、非常に今回、こういう日ロ、いわゆる北方四島の帰属問題に関して日本が一貫して言っていることが、どうも誤って伝えられているような感じもするわけですけれども、今後の日ロ交渉はどのようにお考えでしょうか。
植竹副大臣 今委員御質問の今後の日ロ交渉の方向でございますが、確かにロシア国内におきましては、北方領土の問題に関してさまざまな意見があるということは承知しております。日本といたしましても注意深くフォローしていくところでございます。
 他方、我が国の北方領土である、その返還に対する国民の強い願いというものは十分認識いたしております。こうした国民の願いを踏まえまして、政府といたしましては、四島帰属の問題を解決して平和条約を締結するという一貫した方針というものは変わりませんし、これを精力的に交渉を継続してまいりたいと考えておるところでございます。
    〔首藤委員長代理退席、委員長着席〕
小島委員 北方四島の問題も、もうこの辺で私の質問を終わりますけれども、一番の問題というのは、私が今言ったことだと思うのですよ。ですから、日本のこういう答弁で言っていること、また皆さん、議員さんが、こういうことがあったじゃないかとか、全部伝わっていますからね。そうなると、もう本当に日本という国は一枚岩じゃないということで、その間隙を縫って、もう日本には返さないという運動が起きてくるわけですよ。
 ですから、政府として、やはり一つの方針というものを立てて、もうこれに絶対に変わらないんだということを、しっかりとしたメッセージを送って、今までのそういう出てきた問題をどう処理するかというのは、これはもう真剣に考えていただきたいと思うのです。ぜひ、よろしくお願いします。答弁、結構です。よろしくお願いします、時間がなくなってきましたから。
 それでは、水野政務官、初答弁になるわけでありますけれども、私自身も、政務官になって質問してもらいたいなと思ったら、だれも質問してくれなかったので、なかなか答弁をする機会がありませんでした。ぜひ、これから大きく伸びていく水野政務官に期待をしながら、これから、政務官が御担当されているアジア諸国の問題ですので、拉致問題と北朝鮮の問題を質問いたしますので、よろしくお願いしたいと思います。
 北朝鮮の問題は、先ほど質問にも出ておりましたけれども、有本恵子さんが北朝鮮に拉致された疑いがあると認定したということで、この拉致をされたと認定した拉致疑惑の関係については八件、十一人目ということになりました。拉致は私たちが本当に許せない行為でありますけれども、小泉首相は昨日、被害者の家族とお会いをして、拉致問題の解決なくして国交正常化交渉の妥結はあり得ないということをお話をしていたようであります。
 悪の枢軸ということで、イラン、イラク、北朝鮮の三国がアメリカに指定をされたことでありまして、私たちは、近くて遠い国北朝鮮という認識で今思っているのですけれども、やはり近い国であれば早く拉致問題も解決して仲よくしなきゃいけないと思いますけれども、この辺の北朝鮮対策、改めて見直す必要があると思いますが、政務官の考え方をお聞かせいただきたいと思います。
水野大臣政務官 今、小島前政務官がおっしゃられたこの拉致問題というのは、非常に重大な人権上の問題であり、なおかつ、これが他国による行為であるとするならば、我が国にとっても重要な主権の侵害でもあるわけですから、我が国としてはこの問題を、北朝鮮との国交正常化の交渉においては決して避けて通れない問題だということは常々申し上げているわけでございます。
 これは、心においては、気持ちにおいては、きのう小泉総理がおっしゃったように、拉致問題の解決なくして国交正常化なし、そういう気持ちで主張すべきことは断固として主張していく、そういう気概で解決に当たっていきたいと考えております。
小島委員 北朝鮮に対する力強い態度というのは、これを崩さずに、ともかくしっかりととらえていただきたいと思います。
 北朝鮮ということになると、人道支援という形で米支援の問題があるわけであります。私どもも、自民党の部会で、五十万トンの米を出すべきか出さないべきか、これは大議論をしたわけでありますけれども、少なくとも人道支援であるということと、拉致の問題で一歩でも前進すればいいということで五十万トンの米を北朝鮮に送ることを決定したわけでありますけれども、その米を出したにもかかわらず、昨年の十二月、北朝鮮の朝鮮赤十字会が、拉致された日本人の消息調査を全面中止するということを発表したわけであります。
 政府は、北朝鮮に対する米支援を当面行わないという方針を出しているわけでありますけれども、米支援というのは、先ほどもお話しいたしましたように人道支援であって、北朝鮮の国民の本当に食糧難という形のものが我々のところに伝わってくると、何とかしてあげたいという気持ちは私たちも持っています。ただ、米支援は世界食糧計画、いわゆるWFPの要請によって行われるわけでありますけれども、この拉致問題が遅々として進まないことと、朝鮮赤十字会が調査を打ち切るということを出しましたので、今後WFPから要請があっても日本の政府の対応というのは非常に、どうしたらいいかということで対応を迫られるのではないかと思いますけれども、このことについてはいかがお考えでしょうか。
水野大臣政務官 今、小島委員御指摘のとおり、昨年末に北朝鮮の朝鮮赤十字会が、彼らの言うところの行方不明者の調査の打ち切りというか、全面中止というものを発表いたしましたけれども、これは日本政府としては到底受け入れることのできないことであり、あくまでもこの拉致問題の解決ということを断固として訴えていきたい、そういうふうに考えております。
 また、食糧支援についてお話ございましたけれども、これも人道ということで数回にわたって食糧支援を行ってきましたけれども、この問題、確かに食糧支援が人道というのであれば、一方で拉致問題というのも重要な人道問題でありますから、これは我々は訴えなきゃいけないわけですけれども、今後の食糧支援については、政府としては、人道上の考慮に加えてさまざまな要素を総合的に勘案しつつ検討していく問題ではあるのですけれども、当面、今現在、こういう食糧支援を行うということは考えていません。
小島委員 拉致問題の解決なくして平和条約の交渉はあり得ないということを総理が言っていますけれども、一方では人道支援という問題もありますし、大臣は、この問題については、北朝鮮からの拉致問題解決へ向けての前向きな動きがあれば、直ちに米支援を再開する用意があるというメッセージを世界の国々に向かって発信する必要があるのではないかと私は思うのです。だから、拉致問題が解決しなければだめだというのだけれども、その拉致問題を解決するために前向きな努力をしてくれということをやはり外務省としても発言していかないと、すぐの対応というのはできませんので、この辺については、川口外務大臣、きょうおられませんけれども、ぜひ検討課題としておいていただきたいと思います。
 それからもう一つ、拉致問題の関係については、先ほど発言したのは首藤さんだったかな、たった十人のことで日朝国交正常化がとまっていいのかということをいわゆる外務省の幹部が発言したというのですけれども、先ほど名前を言ったのは槙田さんだったね、槙田さんが発言したというのですけれども、外交部会でこの発言が出て、そして、この発言については安倍官房副長官に聞いてくれということで、新聞報道によると、杉浦副大臣がそのことの確認をするということなんですけれども、植竹副大臣がその件については聞いていますか。
植竹副大臣 今の件について杉浦副大臣から確認するという、その答弁がなされたということは私は聞いておりませんし、存じません。
小島委員 これは新聞に載っていた記事でありますので、いずれにしても、杉浦副大臣がそのことについて調査をするということであります。
 こういう発言をすること自体が大体間違っていますよ、はっきり言って。そうでしょう。今、政務官が言ったでしょう、米の問題も人道支援だけれども拉致の問題も人道問題なんだと。その人道問題を外務省の幹部が、たった十人ぐらいで日本と朝鮮の国交正常化がとまっていいのかということを発言したということは重大な問題ですよ、はっきり言って。これは絶対重大な問題。だから、こういうことは決して言うべき問題じゃないですよ。
 これは真相解明をして、やはり国民の前でも、拉致された御家族がいるのですから、その人の前でもちゃんと謝罪をすべきだと思いますけれども、いかがですか。
植竹副大臣 委員がおっしゃるとおり、ということは、先ほど調査ということがございましたが、それは調査の上で御報告ということになるかと思いますが、ただし、今の拉致問題については、生命というものは大変最重要な問題であり、日朝の交渉においてこれをのけて通るということは絶対してはいけないと私も考えております。
小島委員 この問題についてはやはり、新聞でも出ている問題ですから、きっちりと結論を出していただきたい、このことを強く要望しておきます。
 それから、今度は政務官に聞きたいのですけれども、これもまた北朝鮮絡みということでありますが、不審船の問題。この問題については、中国の排他的経済水域内に沈没したものでありますけれども、私は当初から、私たちの勉強会でも言ったんだけれども、引き揚げる、引き揚げると言っていても、中国はどうなのかと、中国の出方が非常に気になっていたわけですよ。ところが、案の定、中国はこのことについて非常に抗議をし始めた。この問題は外務省としてはどう考えていますか。
水野大臣政務官 いわゆる不審船が中国の排他的経済水域、EEZの中に沈んでおるということは、事実上中国の排他的経済水域とされているところに沈んでいるということは、我々も承知しております。しかしながら、排他的経済水域というのは、そこにおいて他国が許可なく経済的行為を行うことが許されていないという認識でおりますので、それそのものが中国の経済的権益を侵さないこと、例えば不審船の引き揚げということだけであれば、大きい問題は国際法上はないのじゃないのかな。ただ一方で、そういう意味で、中国の排他的経済水域である以上、そこに情報提供とか緊密な交流とか、そういうようなことは当然しながら、もしそういう段階に至ったときには、緊密な交流は行いながらやっていくべきだとは思います。
小島委員 確かに、今お話があったように、中国の排他的経済水域内であるということは私も認識しているわけであります。
 政務官、ちょっと昨年来のニュースを見てみると、中国のいわゆる海洋調査船が日本の排他的経済水域に、ともかくいつもいつも出没しているわけですよ。これに対して日本は抗議しているわけです。おかしいじゃないかということで抗議をして、そのときに、中国と話し合った中で、事前相互通報制度の枠組みをつくり上げたわけですよ。そして、もしもこちらに来る場合には、こういう目的でもって日本のいわゆる排他的経済水域内に入るということを事前に通報しましょうよという話があったんです。
 今回のいわゆる引き揚げを我が国が中国の反対を押し切って実施した場合、それを理由として、中国が事前相互通報制度を無視した海洋調査を行う口実を与えることにならないか。我々は、中国のあれが来たときに、事前に了解しないと入っちゃだめだと、ちゃんと了解してくれよと。今度の場合は、船が沈んだということで、今政務官はこれは別じゃないかということなんですけれども、中国が執拗に、この船の引き揚げに対して非常に神経を使っている。慎重にやれとか何かというので、どんどん言っているわけですよ。
 こういうことは、今後中国に説明をしながらこれを引き揚げるという形にしないと、小さなことが大きくなる可能性もあるわけですよ。ですから私は、引き揚げた船が果たして何を積んでいるか、こういう問題も今後の北朝鮮、中国の関係等には相当大きな問題を提起するのではないかと思いますけれども、その辺はいかがでしょうか。
水野大臣政務官 今小島先生御指摘のように、日中間で海洋調査活動に対する相互事前通報の枠組みというのが去年の二月に成立しているわけですけれども、これは、まさに海洋の科学的調査をするときのための事前通報制度ですから、今回の不審船の問題には直接は当てはまらないのじゃないかというふうに私は考えています。ただ、中国側にいろいろな口実を与えたりとか、そういうことはしないためにも、そういう意味の留意というものは払っていく必要はあるのじゃないかとは思います。
小島委員 時間が来たようですけれども、最後に、今の政務官の答弁で気になる点があるわけですよ。これは何かというと、アメリカの偵察衛星の写真によると、同型の船が中国の上海付近の軍港に寄港していたと報道をされているわけでありますよ。ですから、中国側はこれを否定しているようでありますけれども、この写真が不審船と同じであったということになると、その不審船は中国の軍港に停泊していて日本に来たということになるわけでありますけれども、私なんかが心配しているのは、不審船を引き揚げてから、アメリカの衛星写真と照合したりした場合に新たな問題が起きるのではないかなということを心配しているんですけれども、この辺は何か話題にのっているでしょうか。
水野大臣政務官 いずれにいたしましても、今回の事件に関しては事実関係を解明するということが大切であり、そのために関係当局において鋭意捜査が進められ、先月には、御承知のとおり、沈没位置特定のための調査も行ったわけでございますから、そういう中で事実関係を究明するということをまず第一に考えたいなというふうに考えています。
小島委員 きょうは、外務大臣が所用でいなくなったということで、植竹副大臣並びに水野政務官に答弁をお願いしたわけでありますけれども、大変に私どもの質問に対していろいろと対応してくれたことを感謝をしたいと思います。
 なお、水野政務官は初めての答弁に立ったわけでありますけれども、初心を忘れずに、ともかくこれからも外務省の改革並びに外務政務官としての仕事を一生懸命やっていただきたいと先輩として一言申し上げて、質問を終わります。どうもありがとうございました。
吉田委員長 次に、上田勇君。
上田(勇)委員 初めに、政府の対ロ外交、特に北方領土返還交渉への基本姿勢についてお伺いしたいというふうに思います。
 報道等によりますと、鈴木宗男議員の影響力もあって、政府の対ロ北方領土返還交渉への姿勢がゆがめられたんではないかというようなことが報道されております。いろいろなことが新聞等で報道されていて、一体全体、政府の基本的な方針というのはどうなのか、これまでの考え方というのがそういうようなことでゆがめられた結果であって、真意は別のところにあるのか、その辺が非常にわかりにくくなっているのが現状じゃないかというふうに受けとめております。
 これまでの経緯については、きょうの質疑でもほかの委員の方からもいろいろと御質問があったんですが、最近のことでいえば、昨年の三月に、森・プーチン会談で並行協議、すなわち歯舞、色丹両島の返還協議と、それから国後、択捉の帰属の問題の交渉、これを並行して協議していくということが提案をされ、十月には、小泉総理とプーチン大統領との間で、総理の方から、森総理の提案を継承する、これはすなわち並行協議を再提案し、基本的には合意に達したというふうに言われております。
 ところが、昨年のこの外務委員会での大臣の答弁などではちょっと並行協議について否定的なような言い方もございましたし、また、先週の日ロ次官級協議では並行協議の方針を取り下げたというようなことも報じられているところでございます。そうすると、これは一体、日本政府のこの問題についての現在の基本方針というのはどういうふうになっているのか、そこを確認をさせていただきたいというふうに思います。
植竹副大臣 委員お尋ねのいわゆる並行協議の問題でございますが、これはイルクーツクの会談、また上海の日ロ首脳会議でこの並行協議ということがおおむね一致したということでございますが、日本政府としては、基本的には、ほかの委員にも御回答申し上げたとおり、四島の帰属問題を解決してから平和条約を締結という基本は変わりございませんが、その過程におきましてこの並行協議を進めておるわけでございます。しかし、その問題について日ロ間で協議の形式については明確な形の上で合意があったということではございません。
 いずれにしましても、私ども政府にとって重要なのは論議の形式ではなくて内容であるわけでございます。したがいまして、十三日の次官級協議においても、歯舞、色丹の議論と国後、択捉の議論をそれぞれ提起したところであります。したがって、今回の次官級協議によって平和条約締結交渉そのものが後退したとは考えておりません。日ロ間においてのあらゆる問題について協議、議論していくということでは変わりないところでございますので、今後とも、四島帰属の問題を解決して平和条約を締結する、そういった一貫した方針は変わりないということでございます。
上田(勇)委員 わかりました。
 それで、ちょっと今御答弁の中で、私は、たしか昨年、外務省としてはそういう並行協議で基本合意に達したというような形で発表されたんではないかというふうに記憶をしているんですけれども、それは、今副大臣の方からおっしゃったように、形式ではなくて内容が重要なんだということでございましたが、これは形式と内容両方にかかわる部分ではないのかなというふうに思います。
 それで、この並行協議という言葉も、どうも何かさまざまなニュアンスというんでしょうか、解釈があるように思います。当初は、この並行というのは領土返還交渉と平和条約の締結協議、これを並行して協議していくというふうな意味で使われていたんだというふうに思いますけれども、今は、どっちかというと、二島の具体的な返還の交渉とそれから四島の帰属の問題を並行して協議していくというふうに、そういうことを指しているんだというふうに私は理解をしているんですが、そこから二島先行返還論とかというのが出てきているんだというふうに思います。
 ちょっと一部の理解では、この並行協議の方針というのは、歯舞、色丹両島の返還のみを求めて、国後、択捉の領有権を放棄するというようなふうにも言われているところがあるんですが、そこで、ぜひ改めて確認をしたいと思うんですが、今のこの並行協議という方針のもとでも、政府として、国後、択捉の両島の帰属について、これは日本固有の領土であるという認識の上に立っているということをここで確認をさせていただきたいというふうに思います。
齋藤政府参考人 いわゆる並行協議と言われているものでございますが、これは歯舞、色丹の引き渡しの態様の議論と、それから国後、択捉の帰属の議論、この二つの議論を同時かつ並行的に行っていこうということでございます。すなわち、どちらかの議論だけをするということではなくて、日ロ間で領土問題に関する交渉を行うときにはこの二つの議論をあわせてやるということをねらったものでございます。
 これは、一九五六年の日ソ共同宣言におきまして、またイルクーツク首脳会談でその有効性が確認されたわけですけれども、この日ソ共同宣言におきまして、歯舞、色丹は平和条約締結後に日本に引き渡すということが既に合意されております。他方、国後、択捉の帰属の問題についてはまだ解決を見ていないということでございまして、交渉の進捗状況に違いがあるということに着目いたしまして、この二つの議論を同時並行的にやろうというのが、いわゆる並行協議というふうに皆さんが呼んでいらっしゃるものの実態でございます。
 このような議論の進め方は、北方四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結するという日本政府の一貫した方針を当然の前提にしているものでございまして、したがいまして、国後、択捉二島の日本への帰属を放棄したということでは毛頭ございません。
上田(勇)委員 今までそういう方針のもとで協議してきたということはよくわかりました。
 ところが、ここ最近の展開を見てみますと、ちょっとこれはまた壁に突き当たっているんではないのかなという感じがいたします。ロシア側でも否定的な発言がいろいろ出ているわけでありますし、また、どうも日本側の方針も、こうした一連の問題なども絡んで混乱しているんではないかというふうに映ります。少なくとも、そういうような形で今国民の目には見えているんではないのかなという感じがいたします。
 そこで、やはりこうした現状を打開していくためには、我が国としても、これまでの対処方針、果たしてそのままでいいのかどうか、そういったこともよく検討して見直す必要があるだろうというふうに思いますし、今の両国の首脳あるいは外相レベルで直接会って率直な意見交換をし、話し合う、そういうような場を設ける必要が早急にあるんではないかというふうに考えますけれども、その辺について御見解を伺いたいというふうに思います。
植竹副大臣 今の会談のことでございますが、二月二日の外相会談及び三月十三日の次官級協議におきまして、小泉総理の訪ロが本年の最重要課題であるということが再確認されておりまして、また、ロシア側から川口外務大臣の早期訪ロの招待がございました。
 今後は、これらの会談におきましても、四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結する、そういう方針のもとに、この御招待あるいは訪ロにつきましてはまた期待をしておりますし、それでこちらでも我々再度検討していくところでございます。
上田(勇)委員 ありがとうございます。
 率直なところ、やはり日本側もロシア側も混乱をしているというような感じがありますので、ぜひそれは早急に、やはりトップ同士でそういう率直な意見交換をしてもらって、また現状のちょっと行き詰まった状況を打開していただかなければいけないんじゃないかというふうに思いますので、ぜひよろしくお願いしたいというふうに思います。
 それで、次に、北方支援事業について若干何点かお伺いしたいというふうに思いますが、九三年以来、人道物資の提供や友好の家、桟橋、発電所の建設、診療所の建設等さまざまな支援を行ってきておりまして、その金額も相当な額に上っているわけでございます。
 そこで、そもそもこの北方支援事業の目的というのはどの辺にあったのか、それから、これまで多額な予算を投じて支援事業を行ってきているわけでありますけれども、この領土交渉、あるいはもっと大きな日ロ関係という意味でも結構でございますけれども、どういうような効果が上がったというふうに評価をされているのか、見解を伺います。
齋藤政府参考人 旧ソ連邦が崩壊いたしました折に、十五の国に分かれたわけでございますけれども、バルト三国を除きまして十二の国につきましては、その民主化あるいは市場経済化への移行というのが大きな課題になっておりました。これに対しまして国際的に支援をしようという機運の中で、日本としてどういう形で支援するのが適当かということで検討をいたしました結果、支援委員会というものを設立いたしまして、この国際機関を通じて支援するということにしたわけでございます。
 ロシアとの関係につきましては、ロシアに対する人道支援、それから市場経済化を促進するための技術支援、それから今御指摘の北方四島住民に対する支援という、この三本柱でこれまで実施してきているところでございます。
 四島住民の支援につきましては、モスクワの目がなかなか北方四島の住民に行き届かないという非常に厳しい状況のもとで生活を余儀なくされているというところから、人道的な支援が必要だという判断があったわけでございますけれども、それに加えまして、やはり領土問題を抱えております我が国としまして、こういった住民に支援の手を差し伸べることが、日本に対する信頼感あるいは期待感を高め、ひいては領土問題の解決に向けての環境を整備することに役立つのではないかという認識があったわけでございます。
 私ども、これまで九年間にわたりまして、御指摘のとおり北方四島住民支援を行ってまいりましたけれども、住民の我が国に対します信頼感というのは着実に高まってきているというふうに考えておりますし、領土問題解決に向けての環境整備にもそれなりに貢献してきているのではないかというふうに思っております。
上田(勇)委員 今、それなりの効果が上がっているというふうなお話でありましたけれども、今の時点を見てみますと、果たしてそうなのかなという気がいたします。確かに、人道的に必要な面もあった、地震とかがありましたので、そういうことは十分わかるんですが、日本の、我が国の外交としての、そういう戦略的な意味でその効果が果たして十分上がったのかどうか、この辺はちょっと見直す必要があるのではないかというふうに私も考えております。
 そこで、ちょっと北方支援の件に関してもう一点お伺いしたいというふうに思うんですけれども、鈴木議員のいわゆる暴行事件報道をきっかけといたしまして、いわゆる苗木の植物検疫の問題が提起されて、北方領土における国家主権の問題というのがちょっと提起されたんじゃないかというふうに思います。
 この事件については苗木の問題だったんですけれども、北方支援事業ではたくさんの資材が送られているわけであります。何か建設したものの資材のほとんどは内地から持っていったということを聞いておりますし、延べ数百人の技術者、労働者がこの事業に携わったというふうに聞いております。
 そうすると、その際に、この主権の問題というのがあいまいにされてきたのかなということを感じたんですが、当然、そういう中では輸入手続だとか入国手続だとかというようなことがあるんじゃないかというふうに思いますけれども、そういったことを通じて、実質的にロシアの主権を認めるようなことはなかったのかどうか、そのあたりの外務省の御見解を伺いたいというふうに思います。
齋藤政府参考人 先生まさに御指摘のとおり、北方四島、これは我が国の固有の領土でございまして、これに対します我が方の支援が我が国の法的な立場を害するような形のものであってはならないということを我々としても十分認識しておりまして、細心の注意を払って対応をしてきているところでございます。
 そういった観点から、先ほども御説明いたしましたけれども、支援委員会という国際機関を通ずる支援という形をとっておりまして、我が国が直接支援するということにはしていないわけでございます。
 また、我が国の関係者が訪問あるいは支援の実施のために現地を訪れる際に、これがロシアの管轄権に服することにならないようにということで口上書を日ロ間で取り交わしておりまして、その中で、北方四島への緊急人道支援の実施の枠組みを定めた口上書の中で、日本国民の四島への訪問及び協力がいずれか一方の側の法的立場を害するものとみなしてはならないということを明確に確認しているわけでございます。
 先ほど先生、資材がほとんど内地から持っていかれているという御指摘がございました。まさにそのとおりでございます。これは、現地で売買等を行って現地の資材を調達するということになりますと、ロシアの国内法の管轄を認めて商行為を行うということにもなりますために、国内から持っていっているということでございます。
 それから、北方四島の不法占拠を助長することにならないようにということで、固定化、既成事実化に通じるようなことは避けるべきとの基本的立場を踏まえつつ、四島支援事業の実施に当たっているところでございます。
上田(勇)委員 本当は、もうちょっとこの件について何点か伺いたいこともあったんですけれども、もう時間でありますので、最後に一言、またこれは違う、いわゆる拉致事件について御要望だけさせていただきたいと思います。
 先日、裁判での証言で、北朝鮮が日本人の拉致に深く関与していたという疑惑がさらに深まったというふうに思います。先ほどから各委員からももう御質問があって、それについての答弁もありましたので、答弁は結構でございますが、ぜひ政府として、この真相解明と、それから日本人の保護に速やかに応じるように、外交チャンネルを通じて強く求めていっていただきたい、このことを要望して、質問を終わらせていただきます。
 ありがとうございました。
吉田委員長 質疑は終了いたしました。
 次回は、来る二十二日金曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会いたします。本日は、これをもって散会いたします。
    午後六時四十二分散会


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