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第7号 平成14年4月5日(金曜日)

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平成十四年四月五日(金曜日)
    午前十時三分開議
 出席委員
   委員長 吉田 公一君
   理事 浅野 勝人君 理事 石破  茂君
   理事 坂井 隆憲君 理事 首藤 信彦君
   理事 中川 正春君 理事 上田  勇君
   理事 土田 龍司君
      今村 雅弘君    岩倉 博文君
      小坂 憲次君    高村 正彦君
      中本 太衛君    丹羽 雄哉君
      細田 博之君    水野 賢一君
      宮澤 洋一君    望月 義夫君
      伊藤 英成君    金子善次郎君
      木下  厚君    桑原  豊君
      前田 雄吉君    松原  仁君
      丸谷 佳織君    松本 善明君
      東門美津子君    鹿野 道彦君
      柿澤 弘治君
    …………………………………
   外務大臣         川口 順子君
   外務副大臣        植竹 繁雄君
   外務大臣政務官      今村 雅弘君
   外務大臣政務官      水野 賢一君
   政府参考人
   (警察庁警備局長)    漆間  巌君
   政府参考人
   (外務省大臣官房審議官) 佐藤 重和君
   政府参考人
   (外務省アジア大洋州局長
   )            田中  均君
   政府参考人
   (外務省北米局長)    藤崎 一郎君
   政府参考人
   (外務省欧州局長)    齋藤 泰雄君
   政府参考人
   (外務省中東アフリカ局長
   )            安藤 裕康君
   外務委員会専門員     辻本  甫君
    ―――――――――――――
委員の異動
四月四日
 辞任         補欠選任
  細野 豪志君     金子善次郎君
同月五日
 辞任         補欠選任
  宮澤 洋一君     岩倉 博文君
  金子善次郎君     松原  仁君
同日
 辞任         補欠選任
  岩倉 博文君     宮澤 洋一君
  松原  仁君     金子善次郎君
    ―――――――――――――
四月四日
 新たな時代における経済上の連携に関する日本国とシンガポール共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第一号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 新たな時代における経済上の連携に関する日本国とシンガポール共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第一号)
 国際情勢に関する件


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     ――――◇―――――
吉田委員長 これより会議を開きます。
 国際情勢に関する件について調査を進めます。
 この際、お諮りいたします。
 本件調査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房審議官佐藤重和君、アジア大洋州局長田中均君、北米局長藤崎一郎君、欧州局長齋藤泰雄君、中東アフリカ局長安藤裕康君、警察庁警備局長漆間巌君の出席を求め、それぞれ説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
吉田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
吉田委員長 質疑の申し出があります。順次これを許します。最初に、桑原豊君。
桑原委員 おはようございます。民主党の桑原でございます。
 いろいろ御質問したいことがございますが、まず初めに、大変深刻な様相を呈しておりますパレスチナ関連のことでお伺いをいたしたいと思います。
 私、せんだってNHKのドキュメントを見ておりまして、イスラエルの青年が徴兵拒否をする、そういう動きが少しずつ大きくなっている、こういうような内容でございました。シャロン政権の非常に強圧的な姿勢というものに対して、イスラエルの国内でも、そのことに対して批判、そういう動きが出てきている。やはり、その青年たちの心に、人道的にそういったことは許せるのか、こういうような気持ちがございまして、そういう動きが出ている、こういう内容でございました。
 私はやはり、ぜひ、イスラエルともあるいはパレスチナとも良好な関係にあって、双方にいろいろな意味で影響力を持つことができる、そういう格好の位置にある日本として、それを最大限に活用して、今回の事態に本当に調停役として、仲介役として適切な役割を果たしていただきたい、そういうような思いでいっぱいでございます。
 私も、昨年の九月にイスラエルを訪問いたしまして、ペレス外相などともお会いしたわけですけれども、双方、パレスチナ側と会うことはできませんでした。しかし、お会いした限りでは、本当に、この問題の難しさといいましょうか、困難さというものをしみじみ感じてきたわけです。
 しかし、ともあれ、武力で、力で応酬するのではなしに、何とか停戦をして話し合いに持ち込まなきゃならない、これはみんなの気持ちの底には共通したものがあるわけでございまして、ぜひその一点を信じて、日本が積極的な役割を果たしていただきたいと思います。
 アメリカを初め、国連あるいはEU、さらにはアラブの国々も、こういった事態を受けてかなり積極的な動きを展開し始めております。日本としても、この事態を受けて既に幾つかの行動はとられたかと思いますけれども、どういった動きをされたのか、あるいは今後どういう立場でそれに積極的にかかわろうとしているのか、そのあたりをお聞き申し上げたい、こう思います。
川口国務大臣 委員もおっしゃられますように、私も、パレスチナの過激派によるテロの継続、イスラエル軍のパレスチナ自治区侵攻とその議長府の包囲といった暴力の悪循環については、大変に心配をしております。情勢がさらに不透明化しているということを憂慮しております。
 私は、まず深刻な現状の打開に向けまして、先月の二十九日にアブ・アラ・パレスチナ立法評議会議長と東京でお会いをいたしました。さらに三月の三十一日に、ペレス・イスラエル外務大臣と電話でお話をいたしました。また、その翌日の四月の一日に、パウエル国務長官とも電話でお話をいたしました。四月二日に茂田前イスラエル大使を、私の手紙を言づけまして、イスラエル、パレスチナに派遣をいたしました。茂田大使は、アブ・アラ立法評議会議長にお会いをし、きょう、シモン・ペレス・イスラエル外務大臣とお会いをすることになっております。
 私が、あるいは茂田大使がお伝えをしているメッセージといいますのは、双方に対して、暴力の停止のための最大限のことを行ってほしい。イスラエルに対しては、即時撤退を含めて最大限の自制をしてほしい。パレスチナサイドに対しては、過激派のテロをとめるべきであるということを伝えているわけでございます。
 今後、アメリカとも密接に連携をとりながら、ほかの国とも密接に連携をとりながら、我が国として最大限の働きかけを行っていきたいと考えておりますし、私がみずからその地域に行くことも含めまして、その可能性の検討も含めまして、今後我が国として何ができるかということを考えていきたいと思っています。
桑原委員 ぜひ積極的な役割を果たしていかなければならない。私たち国会も、今議運等で、国会決議をもって日本の、国会の意思を明確にしていく、こういうことも議論されております。この問題の及ぼす世界的な影響、そういうものを考えていきますと、何があっても、やはり力の応酬、暴力の応酬だけは停止しなければならない、そのために最大の努力を払わなければならないということを改めて申し上げておきたい、このように思います。
 そこで次に、一連の不祥事。昨年の正月早々から、いわゆる報償費の詐欺事件、そういった昨年は幕あけでございまして、それ以来、もう次から次へと外務省に関連をした不祥事が相次いでまいりました。プール金の問題、果ては鈴木議員に関連をしたさまざまな問題、こういうことで今日に至ったわけでございます。
 私は、それらを振り返って見てみますと、やはり外務省としての閉鎖的な体質といいましょうか、あるいは、ほかの役所に比べてもエリート意識の強い体質といいましょうか、そういったことが災いをして、本当に何でもかんでも隠して、外部には見せない。この報償費の問題も、いわゆる機密費という一つの枠の中で、何でもかんでもそういうものにベールをかぶせてしまうということであったかと思いますし、また、お互いに、いろいろな問題が生じてもそれをかばい合うということで、それが早い段階で発覚をしてちゃんと処理をされていくということがついつい先送りになってきた。本当にさまざまな問題が体質的な問題としてあるのではないか、私はそんな思いがいたしております。
 そしてついには、ある意味では外交の政策そのものにまでいろいろな影響を及ぼすような、そういう力が、外務省の中で不当な力が働いて、不当な介入が働いて、そういうことにまで結果するような事態に至った。これはやはり、外務という、この厳しい時代にあって、日本の政策の軸をしっかりしていろいろな問題に、困難に立ち向かっていかなきゃならぬ、そういうときであるだけに、なおなお一層深刻な問題ではないか、私はこういうふうに思うわけでございます。
 そこで、いろいろと大臣にお聞きをいたしたいわけですけれども、加えてもう一つ申し上げたいのは、やはり、幹部と言われる皆さん方の姿勢ですね。いわゆる問題が生じたときに、それを適切にちゃんと処理せずに、何かしら先送りというか、あるいは見て見ぬふりというか、聞かない、聞いていないというようなふりというか、黙認といいましょうか、そういう姿勢でやはり終始してきたんではないか。そこら辺も大変大きな問題として、幹部であるだけに、外交の基本というものを踏まえて、それを遂行していく本当に前線の人たちであるだけに、大変憂慮すべきことだというふうに思わざるを得ません。
 そこで、そういったことに対して、節々でいろいろなけじめがつけられてきた、処分が行われたりいろいろなことがやられてきたわけではございますけれども、どうも私は、そのことも、振り返ってみて、本当に適切なものであったのかどうかということには疑問を感ぜざるを得ません。
 そこで、改めて御質問申し上げたいのは、前回の委員会でもいろいろやりとりがございましたけれども、今回の対ロシア外交関係の何人かの方々に処分が下されましたが、この処分については、その理由が大変にわかりにくい。対ロ外交の政策決定ラインに混乱をもたらした、一体その混乱の中身というのは何なのかということの説明がほとんどなされていないために、この問題の本質が何であったのかということが全然伝わってまいりません。
 そこで、改めてこの中身について、もっとわかるように説明をしていただきたい。何が問題で、一体だれにどんな責任があったのかということを明確にしていただきたい、こういうふうに思います。大臣、いかがでしょうか。
川口国務大臣 まず、四月二日に発表いたしました処分というのは、「北方四島住民支援に関する調査結果報告書」及び「在京コンゴー民主共和国臨時代理大使等を巡る諸問題に関する調査結果報告書」、この二つを踏まえまして、ヒアリングを含めました調査を行いまして、これに関する人事上の措置を行ったものでございます。
 この報告書には、特定の「議員の意向が突出した形で重視されるに至っており、同議員による直接的な働きかけがあった場合に加えて、外務省側が日頃の接触等を通じ同議員の意向を推し量り、それを無視し得ないものと受け止めて、これを実現する方向に動かざるをえない雰囲気が省内に存在していた」というふうに書いてございます。
 そして、これを踏まえて調査をした結果、先般発表させていただいたわけでございますけれども、東郷オランダ大使につきましては、対ロ外交を推進する省内体制に混乱をもたらした結果、外務公務員の信用を著しく失墜させたということでございます。
 それで、中身がおわかりにくいということでございますので、もう少し敷衍をさせていただきますと、まず一つは、鈴木議員や特定の外務省職員の役割を過度に重視したため、省内のロシア関係者を事実上分断し、彼らの士気を低下させた。もう一つは、その過程で、同僚や部下に対して、外務省幹部としてふさわしくない言動があった。三番目に、対ロ外交の推進に係る省内の政策決定のラインを混乱させたということでございます。
 東郷大使は特別職の国家公務員ですので、この東郷大使につきましては、国家公務員法の九十九条、これは信用失墜行為の禁止の違反ということでございますが、これが特別職の公務員として直接に適用になりませんので、これは外務公務員法第四条によって準用されておりますので、それを適用いたしたということでございます。それで、特別職でありますので国家公務員法の適用ができないので、これは八十二条に懲戒というのがございますが、それが適用できません。したがいまして、外務省職員の譴責に関する規則に基づいて、その中で最も重い厳重訓戒処分にしたということでございます。
 それから、その職を辞していただくことが適当と考えましたので、四月二日付で帰朝命令を出して、職を免ずるための所要の手続を今後進めるということでございます。
 私といたしまして、その処分の理由といたしまして、今申し上げさせていただいたところで十分具体的であると考えておりますし、こうした理由に基づきまして、最終的に外務大臣である私の判断で処分を決定いたしたということでございます。
桑原委員 それは前回お聞きしたわけですが、私は、今お聞きした限りでは、省内のいろいろな議論の中でどんな意見が突出したということなのか、そこら辺、よくわからないんですね。
 省内でいろいろな意見の違いがあって議論をする、それが突出しようが突出しまいが、私は、それは大した問題ではないんではないか。それを処分の理由にするというのはどうもおかしいんで、例えば、その突出した意見が省内の今までの基本としてきた意見と違って、そして、それが何か外交ルートの中で一つの国の考え方として示されたようなことがあったとすれば、それは大混乱だ、混乱の原因をつくったというような、処分にも直結するような理由になり得るんですけれども、そういう事態ではないということですか。
 よくわからないんですね。意見が違ってラインがどうのこうの、政策決定がどうのこうのというのが入ってきますので、どういうことなのかというのが、そこら辺のあれがよくわからないんですけれども、どうでしょう。
川口国務大臣 委員が今おっしゃられましたように、省内で政策をめぐってさまざまな意見の交換があるということは望ましいことであると私は考えておりまして、それがなければ外交は停滞をしてしまうと考えております。したがいまして、今回の処分については、省内でいろいろな議論があって、政策をめぐる議論があって、その議論自体が望ましくなかったということで処分をしたということでは全くございません。
 省内の決定のラインに混乱をもたらしたということがわかりにくいとおっしゃられますので、もう少し申し上げさせていただきますと、例えば、欧州局長当時、直属の部下を使うことなく、鈴木議員や特定省員と相談をしながら欧州局の事務を進めたというようなことを挙げることができるかと思います。
 先ほど委員がおっしゃられましたように、省内でのさまざまな議論の結果、政府として異なる政策の決定をしたということは、具体的には、例えば二島先行返還論のことを頭に描いていらっしゃるのかと推測をいたしますけれども、それについては、政府としてそういう提案をしたことは全くございませんので、今回の処分とは全く関係はございません。
桑原委員 今、少し具体的に説明をしていただきましたけれども、それでも全くわからないという感じがいたします。
 そこで、角度をちょっと変えてお聞きしますが、北方領土返還にかかわる日本側の外交方針、これは、四島一括返還、そしてそれが確定をした段階で平和条約を結ぶ、こういう基本に変わりはないと思うんですが、例えば、森首相の当時出されておりました、いわゆる二島については、歯舞、色丹については返還の交渉をする、これは五六年の宣言で内容が定まっているんだ、そして残りの二島は、その帰属について交渉していく。これは、四島一括返還が大前提ですから、交渉のやり方というのがそれぞれにちょっと内容が違うという程度の話で、並行してそういう協議をしていくという考え方、この考え方は現在も日本側の考え方としてある、こういうことなんでしょうか。それをちょっとお答えいただきたいと思います。
川口国務大臣 政府といたしまして、北方四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結するということは一貫した方針でございまして、これを堅持いたしております。このような方針に基づいて交渉を進めてきておりますし、今後とも進める考えでおります。
 他方で、政府としては、北方四島に居住するロシア国民の人権、利益及び希望を返還後も十分尊重していくとともに、四島への日本の主権が確認されれば実際の返還の時期、態様及び条件については柔軟に対応をする考えです。このような意味におきまして、政府といたしましては、四島一括返還という用語は使用いたしておりません。
 政府といたしましては、ロシアとの関係については、平和条約締結問題、経済分野における協力、国際舞台における協力という三つの課題を同時に前進をさせるという考え方で、幅広い分野での関係の進展に努めているわけでございます。
桑原委員 鈴木議員が不当に介入をして、政策決定の中でいろいろな議論が行われたときの鈴木議員の主張した内容というのは、二島先行返還というような、そういうはっきりしたものであったのか、あるいは、今私が申し上げたような、帰属を決めて交渉のやり方をいろいろやっていこうという内容であったのか、それはどっちだったんですか。
川口国務大臣 鈴木議員が、議員として、二島先行返還論あるいは四島返還等の、この北方四島の帰属問題あるいは領土返還問題についてどういうお考えをお持ちでいらっしゃるかということにつきましては、私はよく承知をいたしておりませんので、ちょっとコメントができないわけでございます。
桑原委員 では、それと関係なしに、政策決定の中でどんなことが摩擦のもとになったんでしょうかね。
川口国務大臣 先ほど申し上げましたように、この発表させていただいた人事的措置、これにつきましては、北方四島住民支援と在京コンゴ民主共和国の臨時代理大使についての二つの調査の報告書、これを踏まえまして、さらにヒアリング等を行って人事的な措置をとったということでございまして、二島の先行返還の問題につきましては、これは我が国の政府としては提示をしたことは全くございませんので、このことと今回の措置とは関係がないということでございます。
桑原委員 提示をしたことがないというのは、それは当然だと思うんですが、その議論の中身が、何をめぐって議論をして、それがいろいろな不当な介入になって、あるいは、それが省内のいろいろなものを分断して混乱を起こしたということになるのか、そこら辺が説明されない限り私は納得できません。
 そこで、私は一連のこの不祥事を振り返ってみながら思うんですが、日本の外交、今、大変厳しい困難なときを迎えて、本当に強い意思を持って、しっかりした軸のもとにやっていかなければならないこの時期に、こういうていたらくで本当に日本の外交はちゃんとやっていけるのか。これは、ひとり私にとどまらず、国民の多くが、みんな大変不安を覚え、不信を持っているところだと思います。
 そこで、大臣、私は、この一連の状態を見ておりますと、日本の外交というのは極めて脆弱なんではないか。例えば、今までずっといろいろ言われておりますけれども、日本に外交はあるのか、ある意味ではもうアメリカの傘の下で、アメリカ主導のもとで日本の外交というのは九九%展開されているんじゃないか、そういう状況で本当に日本の外交というのはあるのかという声も批判としてはあると私は思います。そういう意味で、私は、日本の外交の将来というものを考えると、本当にこれでいいのか、本当に自立して日本としての考え方をしっかり押し通して世界に伍してやっていけるのかということを甚だ不安に思うわけです。
 大臣、例えば、今大臣が、ある若い外務省の職員に、日本の外交というものの目指すものはこういうことなんですよ、あるいは、日本の外交のよりどころというのはこういう精神なんですよということを端的におっしゃるとしたら、どういう言い方で言えるんでしょうか、おっしゃるんでしょうか。そこをお聞きしたいと思います。
川口国務大臣 先日、四月の一日に外務省で入省式を行いました。その際、私が新しく入った職員に言いましたことは、外交の目標というのは我が国の平和と繁栄を確保することである、それが我が国の国益である。その国益を守っていくということは、抽象的には平和と繁栄の確保という言葉で表現をされるわけですが、国益を具体的に守っていくという局面ではさまざまな具体的な課題があって、それに対して具体的にこたえていく必要がある。その内容として何を行っていくかというのが個々の外交政策であるけれども、国益を守ることができるきちんとした考え方を身につけるために、若い新入の職員に対しては、さまざまな勉強をし、さまざまな経験を積み、国益が何かということを自分で考えることがきちんとできる人間になってほしい。私は、おおむねそういう筋のことを申しました。
桑原委員 時間が来ましたので終わりますが、大臣の今のお話の中で、私は、やはり一つ、日本の外交はちゃんと自分の足で歩く、自立したそういう外交でなければならないという点が抜けているんではないかというふうに思いますので、その点を申し上げて、質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。
吉田委員長 次に、松原仁君。
松原委員 民主党の松原仁であります。
 きょうは、拉致問題を含む北朝鮮問題について大臣の御所見をお伺いいたしたいと思っております。
 まず、冒頭お伺いしたいことは、拉致問題解決なくして国交回復なしと小泉総理も言っているわけでありますが、この総理方針、当然、大臣も共有していると思うんですが、御見解をお伺いいたしたいと思います。
川口国務大臣 政府といたしましては、拉致問題は国民の生命にかかわる重要な問題であるという認識を持っておりまして、この認識のもとで、従来から、日朝国交正常化交渉等の場で、北朝鮮に対しまして、日朝関係を改善していくに当たって拉致問題は決して避けて通ることのできない問題であるということを繰り返し伝え、その解決を強く求めてきているわけでございます。政府といたしまして、日朝国交正常化交渉の進展に粘り強く取り組み、こうした努力を通じて、拉致問題を初めとする人道上の問題や安全保障上の問題の解決を目指す方針でございます。
 小泉総理も、そのような趣旨で御発言をなさったと私は承知をいたしております。
松原委員 そういう小泉総理に対してのお話でありましたが、この北朝鮮という国家に対しての川口大臣の御認識を私はお伺いしたいわけであります。
 アメリカのブッシュさんは、北朝鮮を悪の枢軸という表現を使ったわけであります。適切かどうかという問題は別でありますが。
 我々の日本にとっては、古くは、よど号ハイジャック犯の受け入れに始まり、そして、八尾恵元ハイジャック犯の妻が有本さん拉致事件を裁判所で証言したということで、また日本の国民の怒りを大変に大きくしておりますいわゆる拉致事件、この拉致事件に関しては、日本の警察が認定しているだけで八件十一人、恐らく七十人、八十人がいるのではないかと言われております。また、いわゆる不正送金の問題、さらにはテポドン、これは衛星だと言っていますが、ミサイルだった可能性が極めて高いわけであります。核兵器開発疑惑、さらには麻薬、武器の密輸売却疑惑、そして先般においては金正男と思われる男の不法入国、そして昨年末の不審船による銃撃事件と、大変に、一つ一つをとっても大問題でありますが、そういう問題で北朝鮮と密接に絡んでいると思われる事件が、もう長い時間においてずっと起こり続けているわけであります。
 こういう国家、この国家は、拉致をする国家、犯罪国家ではないかというふうに私は思うわけでありますが、北朝鮮、これは拉致をする国家、犯罪国家ではないかということに対しての大臣の見解をお伺いいたします。
川口国務大臣 米国の政府、アメリカは、一九八七年の大韓航空機の爆破事件、これを契機といたしまして、八八年以降、北朝鮮を、テロ行為を支援している国家ということで、テロ支援国家リストに載っけてきています。
 我が国といたしましては、北朝鮮をめぐっては、安全保障上及び人道上の難しい問題が存在をしているわけでございまして、これについては、先ほど述べましたように、日米韓の緊密な連携を維持しながら、日朝国交正常化交渉等の場で北朝鮮に対しまして粘り強く働きかけ、この問題に取り組んで、諸問題の解決をしていくという方針をとってきております。
 北朝鮮との関係におきましては、昨年来、外務省から、拉致問題を初めとする諸懸案につきまして、北朝鮮からの前向きな態度、前向きな対応をあらゆる機会に強く申し入れてきたという経緯がございます。そのような北朝鮮とのやりとりの中で、北朝鮮側から、例えばことしの二月の杉島元日経記者の解放といったような具体的な動きが出てきたと考えるわけでございまして、そういった粘り強い努力、強く申し入れるということをずっとやっていくことが必要だと思っております。
松原委員 今、アメリカは北朝鮮をテロ支援国家というふうに考えているという話がありましたが、私は今大臣にお伺いしたのは、北朝鮮という国をどうとらえるか。やはり日本の北朝鮮に対する外交、もちろん粘り強い交渉は、例えば、どこかで人質がとられて犯人がどこか建物に立てこもった場合も粘り強い交渉というのは当然必要なわけでありますから、それは当然のことでありますが、我々の認識としては、北朝鮮は、まさに拉致ということを考えたら、拉致というのは考えてみれば自分の意思ではなくてどこかに連れ去られるわけで、これは立派な犯罪であります。
 そういった立派な、まごう方なき犯罪をしている国家というのは、アメリカがテロ支援国家というふうに言っているわけでありますが、私は、日本の北朝鮮に対する対応としては、これは犯罪国家という認識を持つべきだ。大臣も拉致という言葉を何度も使っているわけでありますから、拉致ということ自体はもう犯罪行為でありますので、犯罪国家という認識でやはりこれから対応していかなければいけないと思っております。そういった認識で北朝鮮との外交交渉はぜひとも進めていただきたいと思うわけであります。
 次に、そうした犯罪国家という北朝鮮に対して、我々がこれまでどういうことをしてきたのかというのを考えてみたいと思うわけでありますが、我々は、特に人質というか拉致された人たちを解放したいという思いもあって、常に北朝鮮に対してはギブ・アンド・ギブというのですか、与え続けるような方式をとってきたのではないかと思っております。平成七年の合計三十五万トンの有償米支援、また昨年の五十万トンの無償の米支援を含め、延べ百十八・二万トンの米支援が行われているわけであります。
 しかし、こうした我々の善意の対応に対して北朝鮮はどのようにやってきたのかということでありますが、平成七年の三十五万トンの有償米支援について言えば、これはここに資料もあるわけでありますが、五十六億円の元本は今日に至るも全く支払われていない。相手は、国ではなくて北朝鮮国際貿易促進委員会ということでありますが、それは、利息の五・六億円のうちの八千万円分しか払われていない。極めて誠意ない対応であって、そのことに対して説明がきちっと行われているということでもないわけであります。
 さらには、昨年暮れの北朝鮮赤十字による拉致された人たちに対する調査の打ち切り、また、ことしの一月三十日には国連人権委員会が強制的失踪に関するワーキンググループ審査打ち切り、これは北朝鮮の協力がないために打ち切らざるを得なかった、こういうことであります。
 一方において、日朝国交正常化交渉は一九九一年一月から二〇〇〇年十一月まで十一回行われているわけでありますが、それ以降は一年半行われていない。今、粘り強い交渉ということをおっしゃっておられましたが、そういった意味では、国家の主権、また拉致された御家族の心中を察するとき、もはや一刻の猶予もないというふうに思うわけであります。
 これに対して、従来のものにプラスして、どのような交渉ルートあるいは対策をお考えか、大臣にお伺いいたします。
川口国務大臣 これは、日朝国交正常化交渉等のさまざまな場、そういう場におきまして、粘り強く人道上の問題、安全保障上の問題について働きかけていくということでございます。そして、これを日米韓連携のもとに行っていくということであると思っております。
 私も、拉致をされた方の家族の方とお会いしてお話をさせていただきました。その方々のお気持ちは、私も家族がおりますのでその立場に立って考えると、本当に何とも言えない気持ちに私もなりました。そういった大勢の方のお気持ちをきちんと踏まえまして、粘り強くいろいろな問題について働きかけていくということが大事だと考えております。
松原委員 今、大変に苦しい御答弁だというふうに私は思っているわけであります。
 現実には、これだけの米支援を含むことをしながら効果はなかなか検証されていないというのが実際ではないかというふうに私は思うわけでありまして、そういった意味では、従来の外務省の北朝鮮に対する対応というのは、やはり、生ぬるいという表現を使っていいかわかりませんが、非常に反省をするべき成果のない方針だったのではないかというふうに私は思うわけであります。
 考えてみれば、外務省は、ある意味で、北朝鮮に対して毅然とした対応をしてこなかったのではないかという声もあるわけでありまして、既に申し上げたように、金正男と見られる男性が入ってきたときも、事なかれ主義的にそれを国外に出してしまったというふうなことも含め、どうもそういう事なかれ主義、もしくは毅然とした対応というものがそこにないように私は思うわけであります。
 また、一部伝わるところでは、外務省高官が、国交回復の上で何人かの拉致、行方不明者の問題はささいな問題というふうな発言をしたという話がありますが、国賊的発言、獅子身中の虫というふうに思うわけであります。
 こういったことに対して、大臣、もう一回お話をお伺いしたいと思います。
川口国務大臣 北朝鮮に対してどういうやり方で働きかけていくかということについては、さまざまな御意見があるということを私は承知をいたしております。
 北朝鮮に対しまして、国交正常化交渉の過程で拉致問題は避けて通ることができない問題であるということも、再三再四強く言っていますし、国民の生命にかかわる重大な問題であるということも言ってきているわけでございます。
 委員おっしゃるように、言うべきことはきちんと言うということは、これはどこの国との交渉においても非常に大事なことでございまして、北朝鮮においても、外務省としては、そういったことで交渉をしているつもりでおります。
 引き続き、安全保障上及び人道上の諸問題につきまして、日朝国交正常化交渉等の場で粘り強く取り組んで、課題の解決を目指して進みたいと思っております。
松原委員 日本の国民の意識も大分変わってまいりまして、こういった日本の国の毅然とした対応を求める声というのが大変大きくなっているわけであります。
 最近の世論調査、毎日新聞の調査では、ここにありますが、拉致問題が解決するまでは人道的支援や国交回復交渉はするべきではないという声、さらには、アメリカへの軍事的協力も含め強硬な姿勢で問題解決に臨むべきであるというのが、この調査では六〇%に上がってきている。ある意味では、北朝鮮に対して犯罪国家という認識を持ちながら毅然とした対応を求めるという声が、今国民の中で非常にほうふつとしてきているんだろうというふうに私は思っているわけであります。
 しかし、具体的にどういう手を我々は講ぜられるのかということになりますと、その手法というのは極めて限られているわけであります。一つは、解決に向けて国際世論の喚起をするということでありますが、日本はもちろん直接的に交渉しているわけでありますが、他の、第三国から北朝鮮に対して、この拉致問題に対してはきちっと申し入れをするというふうなことも必要だというふうに思っております。
 先般、インドネシアのメガワティ大統領が訪朝し、金正日さんと会見したということでありますが、このときは日本の拉致問題は触れたのかどうか。インドネシアに対して我々は、多額の、いろいろな経済的な関係を持ってやっているわけでありますが、触れるような努力を事前に外務省は当然するべきだったと思うんですが、触れたのかどうか。もし触れたとしたら、それに対して北朝鮮はどういう返事をしたのか。
 さらには、金大中さんの特使が今北朝鮮へ行っていますが、小泉さんがお会いしたときにそれに対して話をしているわけですから、当然、金大中さんの特使は北朝鮮の人にこの拉致問題を話をするはずでありますが、これは触れているのかどうか。触れたとすればどういう話があったのか。
 こういう検証を一つ一つしていかなければ国際世論を喚起するということにもならないわけでありますが、今の二つの事例に関して、触れたのかどうかも含め御答弁をお願いいたします。
川口国務大臣 今二つの、インドネシアそれから韓国についてお話がございましたけれども、インドネシアにつきましても、メガワティ大統領に事前の、我が国の立場につきましてはお話をさせていただいております。
 それから、韓国につきましても、さきの首脳会談におきまして、総理から金大中大統領に対しまして、拉致問題に関する我が国の基本的な考え方を伝えるということをいたしておりますし、先般の林特使の訪朝に当たりましても、そうした考えを伝えたということでございます。韓国側は、このことを踏まえてしかるべく対応をしているものと期待をいたしております。
 韓国の林特使は何人かの方にお会いになられたというところまでは聞いておりますけれども、私どもとしては、韓国の場合も、インドネシアの場合にも、そうした我が国の基本的な考え方を踏まえてしかるべく対応をしていただいているというふうに期待をいたしています。
松原委員 期待をしているということでありますが、具体的にそれは言うのは当事者でありますから、我々がそこに行って言うわけにはいきませんが、やはり、本当に真剣に取り組んでいるならば、メガワティさんもこれに触れてもらうような努力をし、触れて、また、その韓国の金大中さんの特使もそれに触れて、そういう環境をつくらなければ、私は、外務省が真剣に拉致問題解決に取り組んでいるというふうには言えないと思うわけであります。
 ですから、それは小泉さんが向こうに行って金大中さんと会って話をしてそうなったわけなので、これに対しての検証、これをきちっとやってもらわなきゃいけないということを申し上げたいと思うわけであります。
 時間もありますので、次に進んでまいります。
 今言った国際世論を喚起するというのは一つの大きな視点でありますが、同時に、制裁を含む毅然とした姿勢をとるということも我々は考えていかなければいけないと思っているわけであります。
 私は、二つ具体的に申し上げたいわけでありますが、一つは、新潟港に月一回、万景峰92号という船が入ってくるわけであります。入港するわけであります。毎月一回ぐらい入ってきて、人間が向こうに行ったりこっちに来たり、もしくはいろいろな交流があるわけでありますが、これが、さまざまなことが行われているだろうという議論もありますが、この万景峰92号の入港といいますか接岸に関して、これを、厳しい言葉で言えば禁止するとかいうことも一つの制裁措置を含む毅然たる態度のあらわれになると思うんですね。すぐにやるというのではなくて、可能性を示唆するだけでもそれは、日本も本気だ、毅然として対応してきたというふうなことになると思うんです。
 もう一つは、先ほど北朝鮮は犯罪国家だということを私は申し上げたわけでありますが、北朝鮮への送金の問題であります。
 この送金は、いろいろな形で行われていてよくわからない。アメリカはテロ支援国家と北朝鮮を認定したわけでありますが、我が国は、昨年十月三十日に署名し、今国会で既に提出されているテロ資金供与防止条約がありますが、例えばこれを速やかに批准し、同時に、提出されている関連法案も早期に成立させて、実際、テロ支援国家と言おうと犯罪国家と言おうと、それは同じようなたぐいでありますので、これを、送金の停止を含む制裁措置を毅然と考えること、それぐらいのことに踏み込んで、こういった世論調査のデータもあるわけでありますから、我々は毅然として対応をしていくべきだと思いますが、大臣の所見をお伺いいたします。
川口国務大臣 委員おっしゃられますように、北朝鮮との関係では、毅然として、そして粛々と進めていくということが大事だと私は考えております。したがいまして、先ほど申しましたように、日朝国交正常化交渉等の場でさまざまな働きかけ、さまざまな問題について繰り返し言っていくということが大事だと考えております。
 おっしゃったテロ資金防止条約につきましては、これは今国会にお願いを申し上げることといたしておりますので、ぜひよろしくお願いを申し上げます。
 米につきましては、これは現在、この支援を行うということについての検討は行っておりません。
 問題の解決に向けたやり方として、海外、ほかの国につきましても働きかけていくということについては大変に重要なことだと思っておりまして、これを行っているわけでございます。
松原委員 きょうは、私は大臣の北朝鮮に対する姿勢を聞きたいという思いだったんですね。北朝鮮をどういう国家として見るのかと。非常に大きな枠組みでの話で、私は、拉致をする国家、人をさらっていく国というのは、これは犯罪国家というふうにみなすべきだと申し上げました。そういう認識に立って行動するべきだと。そういう中で、今、具体的には国際世論に訴えると。今回、金大中さんの特使が言ったり、メガワティさんがそれについて触れなかったりするならば、私は、外交努力をしているというふうにはならないと思うんですよ。不十分だ。これはきちっとやってもらわなきゃいかぬ。
 しかし、それ以上に私がお伺いしたいのは、制裁措置も含む毅然とした対応、毅然としたというのはやはりこういった、今二つ私は具体的に申し上げましたが、こういったものを含まなければ毅然とした対応にならないと思うので、そういった毅然とした対応をやるんだという決意を、私は、では具体的にどうするんだということではなくとも、毅然とした対応を、今言った二つのような具体的にできる制裁ということを含め、やるんだということを大臣の御答弁でお伺いしたいので、もう一回御答弁をお願いします。
川口国務大臣 北朝鮮と我が国の関係といいますのは、国交正常化がまだ行われていないという意味で不正常な関係にある国家であると私は考えております。そして、安全保障上あるいは拉致問題を含む人道上の諸問題の解決が必要であると考えております。その上で、毅然としてそういった問題について北朝鮮に強く申し入れるということは非常に重要でございますし、先ほど来申し上げていますように、それは行っていると私は考えております。
 制裁措置をというお話がございましたけれども、物事の解決の仕方についてさまざまなやり方というのがありますし、それについてさまざまな考え方があるということは承知をいたしておりますけれども、我が国としては、従来より、日朝国交正常化交渉等の場で、日米韓と連携をとりながら、北朝鮮に対してこういった人道上、安全保障上の諸問題について強く申し入れを行っていくという方針でやってきておりまして、昨年来、外務省より、拉致問題を初めとする諸懸案についても、北朝鮮の前向きな対応をあらゆる機会を通じて強く申し入れをしてきた経緯もあるわけでございます。したがいまして、毅然と、そして粛々と粘り強く働きかけていくということであると私は思っております。
 なお、いろいろな国の首脳が北朝鮮に行かれるに際して、その国に我が国の基本的な考え方の御説明をきちんとしているかということでございますけれども、その確認をするということでございますけれども、我が国としては、そういった首脳の方が我が国の考え方を北朝鮮側に伝えるということは当然に期待を申し上げてやっているわけでございまして、それ以上のことにつきましては、これは北朝鮮とその国の関係がございますので、我が国としてその関係を尊重すべき立場にあると思います。
松原委員 成果が上がらなければやはり外交はいかぬというふうに思うわけでありまして、今の川口大臣の発言で本当に拉致問題が解決するのか。私は、今言ったような毅然として、もしあれでしたら、それは議論することは議論しなければいかぬ。しかし、国交がなくても、こういった具体的なことで制裁はできるわけですから。
 そういうことを含めて、やはり毅然として臨んでいかなければ私は問題の解決ができないと思いまして、きょうは私はもうちょっと前向きな御答弁がいただけるかと思って来たわけでありますが、ちょっとその辺は残念であるというふうに申し上げたいわけであります。
 最後に、不審船の問題をお伺いしたいわけでありますが、今中国の李鵬さんが日本に来ているわけであります。そして、川口大臣も直接お会いをしてお話をしているかのように聞いておりますが、国際法と国内法にのっとりきちんとやるつもりだ、個人的には楽観的に考えていると李鵬さんは言っているわけですね。その水域は中国の排他的経済水域でありますから、一定の抗議は行うものの、引き揚げ問題は両国の関係を決定的に悪化させることにはつながらないと認識している、こういうふうに李鵬さんは言っているわけであります。
 また、その一方において、中日双方の関係部局が協議し、双方が満足する解決方法を見出していくことでどうかということで、これだけ見ると、前向き、楽観的、引き揚げができるというふうに我々は認識として持つわけであります。この関係部局が協議しということなんですが、どこが関係部局かということでありますが、トウカセン外相が、全人代終了後に朝日新聞記者があえて質問したものに対して答える形での発言や、また、先月二十九日の、王さんというんですか、中国アジア担当外務次官の発言、我々は事態が拡大、複雑化することを望んでいない、これは後ろ向きの発言ではないかと私は認識しているわけであります。
 この発言をそごと見るかどうか、この辺について大臣はどういうふうな御認識なのか。そして、この引き揚げ問題に関して、李鵬さんの発言はこういう発言だったけれども、関係部局はちょっと違う、温度差のある発言をしている、これに関しての川口大臣の御認識をちょっとお伺いしたいと思います。
川口国務大臣 この問題につきましては、李鵬委員長もおっしゃっていらっしゃいましたように、不審船の問題を日中間の政治問題あるいは外交問題とすることなく、理性的な話し合いを通じて適切に処理をしていくべきだと考えております。
 どこの担当部局の間かという御質問がございましたけれども、李鵬委員長との間では、両国の外交部門の間で協議を行いということをおっしゃっていらっしゃいます。
松原委員 早期引き揚げをするということは、やはりこれも毅然とした日本の姿勢を国内のみならず国外にも示すことにつながると思うので、これはもう万難を排して、毅然たる外交を行う外務省と。外務省はずっとさまざまな問題、ごたごたがあったわけでありますから、そういった意味では、少なくともこの部分では毅然とした対応をしてほしいという思いで、特に今国会で成立する、申し上げましたテロ資金供与防止条約なんかもあるわけでありますから、送金の停止をするぞぐらいの制裁措置を示唆していくということは、私は外交上当然のことだと思うんですよ。
 新潟における万景峰号の接岸禁止とか、それぐらいのことをやっていく。もちろん今回、金大中さんの特使が向こうに行って拉致の話をしないとしたら、これはやはり外務省当局の努力不足が必ず指摘される問題、批判される問題だと思っておりまして、ちょっときょうの答弁は私は不十分だと思っているのでして、こういったものをきちっとやってもらわないと、ただでさえ外務省は今評判が悪いわけですから、きちっとこの問題では対応してほしいということを強く要望しておきたいと思います。
 そして、私が最後に申し上げたいのは、先ほどの毎日新聞の記事でもあったように、日本の国は毅然たる態度が必要だということ、そして、フランシス・フクヤマというアメリカの日系の学者が書いた「歴史の終わり」という書物にもあるように、国家というのは気概を持たなければいけないということだと思うんですね。気概を持って行動するということが、やはり名誉ある日本をつくるためにどうしても必要なことだというふうに思っております。名誉ある国家であって初めて、そこに住む一人一人の国民も名誉を感じ、そして倫理を持って行動するのではないかと私は思っております。
 そういった意味では、特にこの北朝鮮の問題というのは、相手は拉致を当然のようにやるような犯罪国家でありますから、もちろん、だからといって攻めるだけではないわけでありますが、犯罪国家に対してはそういう認識のもとに、大臣も認識を改めていただいて、毅然たる対応をしていただきたいということを申し上げまして、時間が参ったようでありますから、私、松原仁の質問といたします。
吉田委員長 次に、木下厚君。
木下委員 民主党の木下厚でございます。
 昨年一月に、いわゆる外交機密費、報償費ですね、この私的流用事件発覚以後、本当に外務省にかかわるさまざまな事件が起こりました。今まさに、鈴木宗男さん、それから東郷さんを含め、大量の処分を出した。この経過を見てみますと、まさに外務省の皆さんが、国家国民よりも、あるいは国益という観点よりも、私利私欲、省益、こういったものにこだわった、その結果がこういった一連の事件の背景にある、これこそまさに外務省の体質である。実は、先ほど来質問に出ておりますが、北方四島をめぐるさまざまな疑惑、あるいは北方四島をめぐる対ロシア交渉、あるいは今お話が出ました北朝鮮の拉致事件、これは全部同じ背景を持っている。
 要するに、国家国民あるいは国民の生命財産、そういったことを守るよりも、一政治家であったり一官僚であったり、そうした人たちが勝手に税金を私物化したり、あるいは国益を損ねるような二元外交をやったりする。北朝鮮も全く同じです。あるいは、これは対中国外交あるいはアフリカも全部一緒なんですね。そういう意味で、もう一度この日本外交のあり方、これを考えてみなきゃいけない、そう思います。
 そういう意味で、先ほど来お話が出ていますが、北方四島返還、これについてもう一度私自身も、繰り返ししつこいようですが、質問させていただきます。
 北方四島返還にかかわる政府の基本的な考え方、これをもう一度確認させていただきたいと思うんですが、私が平成十三年三月に欧州局のロシア課からいただいた資料によると、こうあります。対ロ外交の基本的な考え方、「真に安定的な日露関係を構築することは、日露両国の利益に適うのみならず、北東アジア地域の平和と安定に寄与する。」、二番目に、「このような認識に立ち、我が国としては、(イ)東京宣言に基づき北方領土問題を解決し、平和条約を締結して日露関係の完全な正常化を達成するために最善の努力を払うこと、」こうあります。
 まさにこの東京宣言、これは九三年十月、エリツィン大統領が訪日時に署名したものでありますが、これには、ポイントは、領土問題を、北方四島の島名を列挙して、その帰属に関する問題であると位置づけているわけですね。そして、(ロ)として、「四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結し、両国関係を完全正常化するとの手順を明確化したこと。」これがいわゆる対ロ外交の基本的な考え方である。
 欧州局のロシア課は文書にして私に示してくれたんですが、この考えは今も変わっておりませんか。
川口国務大臣 変わっておりません。
木下委員 そうしますと、私も北方領土に関するこれまでの交渉経過を表にまとめてみました。実は、二〇〇一年、昨年ですが、十月二十一日に小泉首相とプーチン会談でいわゆる並行協議の開始に合意しました。この並行協議というのは、先ほど来話が出ていますが、大臣はどういうふうに考えておりますか。
川口国務大臣 まず、北方四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結するという一貫した方針は前提でございます。この方針に何ら変更はございません。
 それで、歯舞、色丹の引き渡しの議論、それから国後、択捉の帰属の議論、国後、択捉の議論、これを同時かつ並行的に進めていくということにつきましては、昨年の十月の上海での首脳会談においておおむね一致をいたしたわけでございますけれども、これは、歯舞、色丹の引き渡しについては一九五六年の日ソ共同宣言で既に合意をされているという意味におきまして、歯舞、色丹の問題と国後、択捉の問題との間に交渉の進捗状況に違いがあるという事実を踏まえたものでございます。
 先ほど申しましたように、四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結するというのは、これは前提でございまして、これには変更はないということです。
 いずれにいたしましても、重要なのは議論の形式ではなくて内容であるということでございまして、両国は、今後引き続き両方が関心のあるすべての問題を議論していくことになると考えます。
木下委員 五六年の日ソ共同宣言による歯舞、色丹の両島の返還、もうそれは認めているわけです、ロシア側も。国後、択捉については、これから帰属問題を協議するということでしょう。だから、もし並行協議を認めたというのであれば、これは明らかに、先行する二島が返ってきたら、後、継続してロシア側が協議するかどうかわからない、場合によっては、二島だけ返ってあとが返ってこない場合がある。だからこそ、鈴木さんは二島先行返還論を言っていたわけです、並行協議を盛んに言っていたわけです。
 その辺の違いを大臣はどう考えていますか。
川口国務大臣 重要なのは、議論の形式ではなくて内容の問題だと考えております。現在、両国が、双方が関心を持つすべての問題について議論をしていくということで一致をしているわけでございます。
木下委員 川口大臣は、ことし三月十五日の国会で、並行協議という形式で日ロが合意したことはありません、こう述べているじゃないですか。述べていませんか。
川口国務大臣 具体的な言葉については記憶がありませんけれども、そういう趣旨をお話ししたかと思います。
木下委員 そうすると、この並行協議というのは日ロで合意したものじゃなくて、日本側が勝手に、あるいは小泉さんが勝手に合意したと言った、国民の皆さんに発表しただけですか。ロシア側は全くこれに合意していないということですか。
齋藤政府参考人 お答えいたします。
 昨年十月のAPEC首脳会議の際に開かれました上海での日ロ首脳会談の際に、小泉総理から、この歯舞、色丹の引き渡しの態様に関する議論と国後、択捉の帰属に関する議論を同時かつ並行的に議論していきたいということをプーチン大統領に言われまして、大方プーチン大統領の合意を得たところでございました。
 しかるに、ことしの三月十三日に次官級協議が行われました際、また、それに先立ちましてロシアの国家院においてイワノフ外務大臣が発表いたしましたことにあらわれているとおり、ロシア側としては、いわゆる並行協議は自分たちにとって都合の悪いものであるという方針を示したわけでございまして、そういった意味で、明確にいわゆる並行協議について日ロ間で合意があったわけではないという趣旨のことを大臣が三月十五日におっしゃったわけでございます。
木下委員 そんないいかげんな話はないでしょう。昨年の十月二十一日、中国・上海でのプーチン大統領との会談の後、並行協議で合意した、日ロ首脳で合意したと小泉さんははっきり発表し、一斉にマスコミが書いているんですよ。今おっしゃったように、それをたまたま次官級会議で合意していなかった、そんな話を受け入れるんですか。総理の判断、総理が発表した発言というのはどうなるんですか。大臣、お答えください。
川口国務大臣 先ほど私もそれから局長もお話をしましたように、昨年の十月の上海での首脳会談において、歯舞、色丹の引き渡しの態様の議論と国後、択捉の帰属の議論を同時かつ並行的に進めていくことについてはおおむね一致をしたわけでございますが、平和条約締結交渉というのは、これは領土問題という非常に困難な問題をめぐる交渉でございまして、紆余曲折を伴うということは当然なことだと考えております。日ロ双方がこれまでにこの件について精力的に交渉をしてきたわけでございますけれども、それぞれが国内世論を背景といたしまして難しい対応を求められることもあるわけでございます。
 したがいまして、一回の交渉で、そこにおけるどちらかの対応ぶりについて、そこの局面だけでとらえていくというのは、必ずしも適切でないかというふうに思います。粘り強く主張をすべきところを主張していくということでございまして、いずれにしても、重要なのは議論の形式ではなくて内容でございまして、両国がそれぞれ関心のあるすべての問題について話し合っていくということで両国は一致をしているわけでございます。
木下委員 領土交渉に紆余曲折がある、これはみんな承知していると思うんです。ただ、今までは、帰属問題、これを一括してやった上で平和条約という話だったのが、あるときから並行協議という線が出てきた。この並行協議の原点をたどっていけば、これは明らかになってくるんです。これは、まさにその根底にあるのは二島先行返還論なんです。
 これが強く意識されたのは、いわば二〇〇〇年の七月、自民党の当時の野中広務幹事長が平和条約と領土問題の切り離しを提起してからなんです。その後、これに力を得た鈴木さんと、それからその人脈につながる当時の東郷欧州局長あるいは佐藤優前主任分析官らがスクラムを組んで、二島先行返還論をずっと主張してきたんです。そして、日本政府とは違ったシグナルをロシアあるいは旧ソ連に送り続けていたんじゃないですか。どうですか。そうじゃありませんか。
齋藤政府参考人 先生のお話を伺っておりますと、いわゆる並行協議は二島先行返還論につながるのではないかという趣旨でお話しになっているという印象を受けましたけれども、歯舞、色丹の議論と国後、択捉の議論を同時かつ並行的に進めていこうということは、五六年宣言で前者は解決しているわけでございますので、その問題と、まだ今日に至るまで未解決でございます国後、択捉の帰属の問題、この二つを同時かつ並行的にやろうということで、他方の議論をすることがまた他方の議論にも好影響を与えていくんではなかろうか、こういうことでございます。
 いずれにいたしましても、四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結するという大前提のもとで、一つの技法として、このいわゆる並行協議というものを提案してきているということでございます。
木下委員 そういう詭弁を言っちゃいけないですよ。当初、これは、九三年の細川政権時代の東京宣言で、四島をきちんと明記して、帰属をきちんとするとはっきり記しているんですよ。それが途中からどんどん変わってきて、そして並行協議という形になった。
 共産党さんが三月十九日に公表した外務省の内部文書によると、鈴木さんは昨年の三月に来日したロシュコフ外務次官に対して、東郷欧州局長が同席する場で、歯舞、色丹の二島を日本側に渡し、国後、択捉二島は継続協議にする、これを提案しているんじゃないですか。この内部文書、外務大臣、確認していますか。
川口国務大臣 おっしゃっている文書につきましては、これは出所がよくわからない文書でございますので、この点についてのコメントは差し控えさせていただきたいと考えております。
木下委員 これは、共産党さんの言っているように、佐藤優さんのところから出ている。はっきり明示してあります。調べましたか、佐藤さんのところ。
川口国務大臣 その文書に言われている三月の五日の鈴木議員とロシュコフ次官との間で会談があったということについては、外務省としては承知をいたしております。
 ただ、この会談の内容につきまして政府としてコメントをするということは、先方との関係もございますので、差し控えたいと考えております。
 それから、この会談は、鈴木議員が来日中のロシュコフ次官と一議員として非公式に行われたということを承知しております。
木下委員 常に一議員、一議員と逃げますけれども、鈴木さんは、一議員であっても、だれよりもロシアに精通して、ロシアとの人脈があるんです。あるいは、当時の東郷欧州局長も出席しているじゃないですか。あるいは、佐藤さんも出席しているじゃないですか。そして、ロシュコフ外務次官とこうした話をしている。
 もしこれが事実ならば、これは明らかに日本の対ロ外交、この転換を示唆しているんです。どうですか。もう一度答えてください。
川口国務大臣 その文書、今お触れになられた文書につきましては、これは、外務省といたしましては、出所不明でございますので、コメントは差し控えたいと考えております。
木下委員 出所不明じゃなくて、佐藤さんが出したと言っているでしょう。佐藤さんのところから出ている。名前を挙げて私は言っているんです。佐藤さんを調べましたか。調べるつもりはありますか。
川口国務大臣 その文書は佐藤のところから出たとされているようでございますけれども、そこについては、そういうふうにされているわけでございますので、出所不明の文書で、私としてはコメントは差し控えたいと考えます。
木下委員 これほど、日本の外交の根幹にかかわる話ですよ。それは、はるか行方知らずの人を捜すわけじゃないんです。今、外務省にいるんでしょう。聞いたらいいじゃないですか。なぜ聞かないんですか。聞くつもりはないですか。出所不明じゃないんです。事実関係を明らかにしてください。
川口国務大臣 先ほど申しましたように、三月五日に鈴木議員とロシュコフ次官との間で会談が行われたということについては、外務省は承知をいたしております。
 ただ、これは鈴木議員の非公式な会談であったということと、それから、先方との関係もございますので、会談の内容について政府としてコメントをするのは差し控えたいと考えます。
木下委員 そこの席には東郷さんも出ていた、あるいは佐藤さんも出ていた、それは確認していますか。
齋藤政府参考人 東郷局長が同席していたということは確認しておりますけれども、主任分析官当時の佐藤は同席していなかったというふうに承知しております。
木下委員 そこまで確認しているんなら、文書ぐらい簡単に確認できるでしょう。なぜしないんですか。内容はいいです。では、その文書は確かに佐藤さんのところから出たものかどうか、それを調べてください。
 これは、これからの対ロシア外交にとって基本的な問題を含んでいるんです。大変重要な問題ですよ。もしこれが事実ならば、これは日本外交にとって戦後最大のミスである、誤ったシグナルを送った、日本の外交にとって一大汚点になります。調べていただけますか。
川口国務大臣 この文書は佐藤のところから出たとされているわけでございますけれども、それは、されているということでございまして、出所は不明であるということで、それについてコメントを申し上げるのは差し控えたいと思いますし、内容につきましては、先ほど申し上げたようなことで、政府として、会談が行われたということは承知をしておりますけれども、その内容については、相手の国もございますので、コメントは控えたいと考えます。
木下委員 文書はあるんですか、ないんですか。そこだけ確認していただけますか。中身はいいです。あるいは、違った文書があるかもしれない。そうした文書は佐藤さんのもとにあるんですか、ないんですか。
齋藤政府参考人 佐藤のところから出たとされているというふうに申し上げておりますけれども、これは共産党の志位委員長が記者会見で発表された紙にそういうふうに書かれているというふうに私は承知しておりまして、いずれにいたしましても、文書の存否も含めまして、内容等につきコメントするのは適当でないと思いますので、差し控えさせていただきたい、こういうことでございます。
木下委員 いや、広く流布しているんですよ。これが誤って国民に伝わっていたら大変なことになります。違うなら違うと言ってください、調べて。委員長、お願いしますよ。
 では、これをやっていてもあれですので、北朝鮮の拉致問題、これについて、せっかく捜査当局の方がいらっしゃっているんですが、時間があれですので。
 まず、北方支援、いわゆる北方四島に対する人道支援、それによってロシアが柔軟になって日本に北方四島を返す、それがいかに幻想であるか。同じことを北朝鮮でもやっているんです。拉致された、今、八件十一人。そして、我が国は米を大量に送っている。この米も、これは、対ロシア政策を鈴木さん一派がゆがめたように、北朝鮮政策も一人の政治家によってゆがめられている。
 ちょっと資料を配っていただけますか。
 実は、昨年ですか、米五十万トンが北朝鮮に渡りました。しかし、今表をお渡ししていますが、これを見ると、野中さんと極めて親しい中川泰宏さんというJA京都府連会長、この表の三番目に四角で囲ってあります。この方がこれだけ訪朝して、要するに米百万トン支援を約束しているんです。
 一九九七年八月七日の毎日新聞によると、中川さんは人民議事堂で金容淳書記と会談し、そして米百万トンを約束しているんです。一九九六年、九七年、九七年は四回北朝鮮へ行っていますね。七月十三日にも中川さんは金容淳さんに会っています。そして、帰ってきた一九九七年八月七日に、全国農業協同組合連合会、ここで定例理事会を開き、人道的な見地から国内の余剰米百万トンを北朝鮮に支援することを提案し、日本政府に要請することを決議して、それ以後日本政府に強烈な働きかけをしている。
 これは、いわば野中さんの密命を帯びて、そして行っているわけですね。そして野中さんは、これは米支援の百万トンの密約があった、こうして認めているわけですね。そして余剰米の処理に当たった。余剰米を何としても処理しなければいけないというのが中川さんの北朝鮮もうでだったんですが、こうした形で一人の政治家と一人の密命を帯びたJA幹部が余剰米処理のために必死になって北朝鮮へ走り回り、そして百万トン、これを密約しているんです。結局五十万トン出しましたけれども。
 ですから、小泉さんは米支援はもう当分しないと言っていますが、密約があるとすれば、さらにことし、あるいは来年にかけて追加米支援という形が北朝鮮側から出てくると思うんですが、これは承知していますか、この中川さんの北朝鮮訪問について。
佐藤政府参考人 お答えいたします。
 御指摘の方の北朝鮮訪問につきましては、外務省としては、連絡を受けたことがございませんので、承知をいたしておりません。
木下委員 もう時間ですので、この問題はまた改めて論議したいと思うんですが、このように、北方四島もあるいは北朝鮮も、一人の政治家あるいは一人の一民間人、この協力によってやはり政策がゆがめられている、このことを指摘して、日本の外交、外務省、何をやっているんだということを改めて指摘して、終わりにさせていただきます。
 ありがとうございました。
吉田委員長 次に、首藤信彦君。
首藤委員 民主党の首藤信彦です。
 現在、中東情勢、パレスチナ、イスラエルにおける情勢はどんどん緊張を高めています。イスラエル軍は西岸をほとんどを制圧しつつある、そしてついに、聖域と考えられていたヘブロン、そしてジェリコにも戦車を派遣する準備を進めている、あるいはもう既に進めているというふうに言われております。これは、この中東における紛争のもう最終局面であるというふうに考えられるんですが、それにもかかわらず、そしてまたアメリカ、ヨーロッパ各国からのさまざまな平和路線への復帰を要望する声にもかかわらず、シャロン首相は一切それに耳をかさないというような状況であります。
 そのイスラエル、そしてまたパレスチナ側にも非常に多くのパイプを持っている日本、そして援助をし続けた日本。政府の対応というのは余りにも微々たるもので、しかも遅いと言わざるを得ないと思うんですが、川口大臣、この事態の急変に直面して、政府はどのような施策を打たれようとしているのか、お聞かせ願いたいと思います。
川口国務大臣 この問題について政府の対応が遅いというお話でございましたけれども、私は決してそう思っておりません。
 三月の二十九日の時点で、外務省が招聘をいたしましたアブ・アラ・パレスチナ立法評議会の議長が来日をしまして、私はアブ・アラ立法評議会議長とお話をいたしております。それから、翌々日の三月三十一日に、イスラエルのシモン・ペレス外務大臣と電話で会談をいたしました。さらに、その翌日の四月一日に、私はパウエル国務長官と電話で話をいたしました。さらに、その翌日の四月二日に、前イスラエル大使の茂田大使を、私の書簡を言づけましてイスラエル、パレスチナに派遣をいたしまして、茂田大使は、現地でアブ・アラ立法評議会議長と会い、さらに本日、これからでございますけれども、シモン・ペレス外務大臣と会うことになっております。さらに、現地でジニ特使とコンタクトをすることになっております。
 そういったさまざまな動きを通じまして、我が国といたしましては、イスラエルの即時撤退を含む最大限の自制、パレスチナサイドに対しましては、過激派のテロの中止、停止ということを働きかけているわけでございまして、両国の、両サイドの、両国じゃないですね、失礼いたしました、訂正をいたしますが、パレスチナ、イスラエルの悪の循環的な暴力の、悪循環的な暴力の継続が停止をされるよう、最大限の働きかけをしているわけでございます。
 今後につきましては、事態の進展を見ながら考えたいと思っておりますけれども、私自身のイスラエル、パレスチナへの訪問も含めまして、その可能性を検討することも含めまして、我が国として何ができるかということを検討したいと考えております。
首藤委員 ただいま川口大臣、大変重要なことをおっしゃって、私としては意を強くしたわけですが、悪の循環とおっしゃいました。パレスチナでテロがあって、それに対して行き過ぎた攻撃、反撃を行われた。すなわち、パレスチナも悪であり、イスラエル側も悪である、今はっきり言っていただきました。どうもありがとうございました。
 それでよろしいですね。
川口国務大臣 暴力の悪循環と言うのをちょっと言い間違って、訂正をその後させていただいたということでございます。
首藤委員 この問題を一生懸命やっておられるということは十分に理解しております。
 ただ、ちょっと不思議なんですね。今、いろいろな方、もう、シモン・ペレスさんからパウエルさんから、いろいろな方がおられました。通常、こういう問題がありますと、現地大使と、日本大使と真っ先に相談して、そこから情報を得てやらなければいけないのですけれども、どうして大使は出てこないんですか。登場されないんですか。
川口国務大臣 前イスラエル大使の茂田が、今大使の、何と申し上げたらいいんでしょうか、今、イスラエルの大使のポストが任命をされていなくて、代理大使がいるという形になっておりますので、茂田大使を派遣しているわけでございます。
首藤委員 意地悪い質問だと思われるかもしれないけれども、これは本質的な問題なんですよ。
 私も去年、西岸に入って、ガザに入って、茂田さんとも何度も打ち合わせしました。それは、もう本当にその地域のことをよく知っていて、パレスチナ側とイスラエル側と両方にもパイプを持っている重要な人物だと知っております。しかし、逆に言えば、茂田さんが日本にいて、日本に帰ってきて、現地が空白になっているということが、日本の外交にとってどんなにダメージが大きいかということなんですよ。
 今、代理大使とおっしゃいました。代理大使で、このような状況の中でどうして日本のスタンスが示せますか。どうやって情報が得られますか。中東社会において、ボスとボスが会わなければ情報は一切入ってこないんです。なぜ代理大使であって、この危急の時期に早く大使を任命されないんですか。川口大臣、いかがですか。
川口国務大臣 外務省でのさまざまな問題をめぐっての人事異動が必ずしもタイムリーに行われない状況に残念ながらあることの一つのあらわれになってしまいましたけれども、イスラエル大使をできるだけ早く任命するということは重要であるという認識は十分持っておりますので、近々その手続が始まると考えております。
首藤委員 川口大臣、今おっしゃったことは重大な問題ですよ。ここは、外務大臣は何より、外交というのはどういうことですか。外との交流でしょう。外との交流なんですよ。このために、我々は税金を使って外の交流をしているわけでしょう。それが、うちの理由で、家のごたごたですから外で働けません、そんなばかなことがありますか。例えばサラリーマンが、会社がもう大変だというときにも、ちょっとうちの理由で会社に出ていけません、通らないですよ。
 どうしてこんなことが今まだ実際されていないんですか。どういうごたごたでそういう問題があるんですか。川口大臣、いかがですか。
川口国務大臣 人事異動というのはできるだけすき間なくということが望ましいわけでございますけれども、適材適所という人事の異動を旨といたしますと、時々そういった、人事異動に空間があくことというのはないわけではございませんで、さらに、一連の人事異動が不規則な状態に外務省は現在ございますので、そういったことの余波が及んでしまったということで、私としては、先ほど申しましたように、大変にこれは問題があることだと考えておりますので、近々このポストについては手続をとりたいと考えております。
首藤委員 近々とおっしゃいますけれども、では、近々決められた大使を言いましょう。ジュネーブの軍縮大使じゃないですか。おかしいじゃないですか。この話なんて、つい最近出てきたわけですよ、民間人を充てるというのは。ちゃんと送れるじゃないですか。どうしてこのイスラエルの問題に、本当に重要なところに大使が送れないんですか。いかがですか、外務大臣。
川口国務大臣 ちょっと御質問の趣旨がよくわかりませんで、ジュネーブの軍縮大使とイスラエルの大使との関係について、もう一度御質問していただけますか。
首藤委員 では、もう時間もだんだんないので、全部まとめて言います。
 軍縮大使が、民間人を送れる。要するに、この人間を外務省の中じゃなくて外からも引っ張ってきて、ぱっと送れる。要するに簡単に送れるわけですよ、送る気になれば。それがなぜ、こんな重要な時期に、すぐ送らなきゃいけないイスラエル大使を送っていないのかというのが質問です。これが第一点です。
 もう時間がないので、ついでに答えていただきたい。これから外部の――じゃ、いいです。それをまずお答え願いたい。
川口国務大臣 民間大使を一人選ぶということも、あるいは中の人間を大使として選ぶということも、それなりにそう簡単でない問題はございます。
 昨日発表させていただきましたジュネーブの軍縮大使につきましても、それなりにかなり長い時間をかけて適材適所の人物を選び、その上でお願いをし、その方に所要の手続、必要な手続をとっていただき、あるいは周りの了解をとっていただき、その上で、派遣が実際に行われるのは五月の半ばになるわけでございますので、民間の大使について少なくとも数カ月必要とするわけでございます。
 それから、組織の人事異動に携わっていただいた方にはおわかりいただけると思いますけれども、省内で人を配置するということにつきましては、一人を動かしますとその後を埋めなければいけない。しかも、現在は国会中でございまして、国会の議員の方の御質問にお答えするという観点からは、今人を、要員を動かすということが難しい時期にございます。
 そういったさまざまな観点がございまして、人事異動をするということは、そうさっというふうにできることではないということを申し上げたいと思います。
首藤委員 私は、そうした内部の理由で外交がゆがめられたり、あるいは日本が名誉を失うということを何よりも恐れるのです。
 よく言われるのは、日本はパールハーバーでだまし討ちにした、何度も何度も言われます。それが、事実はともかくよく言われていることは、日本が送った電報を翻訳したり、あるいはだれが届けるかとか、いろいろ討議しているうちに結局戦争が始まってしまって、日本はだまし討ちにしたといって、五十年間私たちは不名誉な思いをしている。やはりこういう重要なときに早く動くというのがいかに重要かということを、もう一度再認識していただきたい。
 きょう私が二十分かけてした質問も、外務大臣は、要するに台所事情の話しかしない、外交の話が重要なのに、台所事情のような話しかしないことで、本当に私はがっかりしたのですが、最後にその点に関してもう一点お聞きします。
 民間の方を任命されました。外務省の内部の方ならいいですが、民間の方を採用するときには、やはりその適材適所が問題となると思います。今度大臣が任命された方が軍縮大使として最も適切であるとは、私は正直言って思いません。
 私は、この段階ではっきり言いたいのは、外部の、民間の人間をこれから大使として採用する、非常に多くなってくると思います。そのときには、国会の決議、国会の承認、あるいは最低限この外務委員会での公聴会を経て任命していただきたい。いかがですか、外務大臣。
川口国務大臣 それについての御質問はたびたびいただいておりますけれども、これは、大使は認証官でございまして、外務大臣が内閣にこの人をというお話をし、内閣でそれに賛成をいただいた上で、所要の手続をとるということでございます。
 外交につきまして、内閣と外務省というのは一体となって外交を行っているわけでございまして、そういった政府がどの適材適所の人物をどのポストに送るかということについては、外交をつかさどるポジションにあるその部署の判断というのが重要であり、かつそれが尊重されるべきであると考えております。
 その上で、アメリカで行っていますように、国会で大使の人事を行う、それについての議論をし、承認をいただくということをやっている国もないわけではございませんけれども、まさにこういった迅速性等の局面でいろいろアメリカでは問題が起きておりまして、大統領が就任をして以降、かなりの期間それぞれの国のポストで大使が埋まらないという現状もあるわけでございまして、そういった問題点もあるかと考えます。
首藤委員 私がこういう質問をしているのは、外務省刷新と関係あるからなんですよ。外務省のやり方を大きく変えていくためにはそうしたやり方が必要だということを、多くの識者が提言しております。ですから、この点は、これをやりますとまた時間がなくなりますので、もう一度また別な機会にさせていただきますが、ぜひ御検討いただきたいと思います。
 それから、先ほどから人事の話を随分しておりますけれども、先日も質問させていただきましたが、北方四島及びコンゴ民主共和国関係者をめぐる処分に関してお聞かせ願いたいと思います。
 先ほど、桑原委員の方からもこの質問がありましたけれども、なぜこの方々が処分されなければいけないのか、これが非常に明確でないのですね。ここに処分のリストがたくさんありますけれども、処分の内容だけ書いてありまして、一体これはどうして懲戒なのか、どうして厳重注意なのか、どうして注意なのか、これがわからないのですね。
 ですから、なぜこういうふうになったかということを個別具体的に公表していただきたいと思いますが、いかがでしょうか、外務大臣。
川口国務大臣 今回の処分は、三月四日に発表いたしました北方四島住民支援に関する調査結果報告書及びコンゴ民主共和国臨時代理大使をめぐる諸問題についての調査結果報告書、この二つを踏まえまして、ということは、この二つで指摘をされた問題に関連をして外務省の職員の責任を明確にするという観点から行ったものでございまして、処分の具体的な理由につきましては、対象となった職員によりましてそれぞれ異なるわけでございます。
 まず第一に、北方四島住民支援を含むロシア関係に携わってきた処分というのがございまして、この理由につきましては、大ざっぱに申し上げますと、東郷駐オランダ大使、森駐カザフスタン大使及び佐藤前主任分析官については、対ロ外交を推進する省内体制を混乱させて外務公務員の信用を著しく傷つけた、著しく失墜させたその責任により処分をされております。
 それから、佐藤補佐が主任分析官を務めていた間の国際情報局の局長及び分析第一課長につきましては、監督責任を問いまして処分をいたしております。
 西村前OECD代表部大使、篠田元ロシア課長、安部元ロシア支援室長及び渡邉元ロシア支援室長につきましては、北方四島住民支援事業に係る入札の参加の資格の決定に際しまして、結果として適正な職務の遂行を行わなかったという責任によりまして処分をいたしております。
 齋藤欧州局長及び杉山ロシア支援室長につきましては、入札に係る秘指定の内部文書が漏えいしたことに関連しまして、文書管理の責任を問い処分をいたしました。この二人は、漏えいの時期がわからないので、基本的にはどの文書管理者のときに漏えいしたかわからないわけですので、現在の文書管理の責任の場にある二人を処分いたしました。
 アフリカに関する一連の問題に関しまして、職員の処分につきましては、在京コンゴ民主共和国臨時代理大使のIDカードが発給されなかったことの責任では、同国の臨時代理大使がその職を解かれた後でもIDカードの回収を行わないで放置をした件で、在日コンゴ民主共和国関係者の在留資格について不適切な対応を行った責任、及び政治家によるタンザニアへの送金に関し不適切な便宜供与を行った責任で、それぞれ関係する事案によりまして、一部処分理由に重複はありますけれども、合計十二名の職員を処分いたしました。
 さらに、私自身と植竹、杉浦両副大臣、野上前事務次官、竹内現事務次官及び歴代の官房長につきましては、一連の問題が生じたことに対する監督責任を問いまして、それぞれ処分をいたしております。
 以上です。
首藤委員 ありがとうございました。
 ぜひそれを表にして、いただきたいと思います。
 委員長、これは、各委員も、こういうのを、全体的なものを見ませんと、何も、なぜそうなったのかもわかりませんので、ぜひ理事会で検討していただきたいと思います。
 それから、その中で今明確でなかったのは、国際情報局関係者なんですね。七名の方が処分されているわけですが、一体こういうことがなぜここへ出てくるのか。監督責任者として、偉い方はわかります。また、アフリカの問題もわかります。北方のことはわかります。しかし、なぜ国際情報局関係者がこんなにも処罰されなければいけないのか。いかがでしょうか。
川口国務大臣 佐藤現補佐は、主任分析官を国際情報局の中で務めていたわけでございまして、その監督責任ということで、その間の国際情報局長と、それから直属の上司であった分析第一課長を監督責任で処分したということです。
首藤委員 こういう表を一つつくるのでも、よく見ると、例えばなぜ佐藤さんが一番上に来るのかとか、いろいろなことがわかるんですけれども、この人事に関しては、したがいまして、もう一度、一体なぜ、どういうことで問題になったのかということをまた質問させていただきます。
 また、この問題に関しまして、先日、支援委員会の事務局長をしていた高野さん、高野保夫前コンゴ民主共和国駐箚特命全権大使をお呼びして、いろいろお聞きしたわけです。そこで話が出まして、なぜこんな、コンゴにおられた方が急に北方四島の事務局長になるのかということで、だれか政治家の関与があったのじゃないかという話をしていたわけであります。しかし、それに対しては、そういうことはありませんでしたという御意見を高野さんがおっしゃっているんですね。それからまた欧州局長も、そういう趣旨の御意見も言っておられると思います。
 これは、しかし一方、朝日新聞を見ますと、「鈴木氏関与で変更」、支援委員会の事務局長人事と、はっきり書いてあります。鈴木代議士の意向を踏まえ、外務省が人選を変更していたことが明らかになった、こういうふうに書いてあります。高野さん初め欧州局長も、この外務委員会でうそを言っていたということですか。外務大臣、この事実関係はどうでしょうか。
川口国務大臣 まずはっきり申し上げておきたいことは、支援委員会の事務局長につきましては、これは適材適所で選んでいるということでございまして、支援業務に関する理解あるいは人格といった点、あるいはその他の点もいろいろあると思いますが、総合的に判断をして外務省が人選しているということでして、高野事務局長につきましても、こういう点で外務省として適任であると判断をして人選し、その場所に任命をした、任命をしたといいますか、その適任であるという判断をしたということでございます。
 それから、他方で、当時の関係者から聴取をいたしましたところ、高野事務局長の人選に先立って、ある人間について検討していたことがあったようでして、その候補について鈴木議員が否定的な意見を表明していたという経緯があったということは判明をいたしました。ただ、高野事務局長の人選につきましては、鈴木議員から働きかけがあったということはなかったということでございます。
首藤委員 それは、また聞いたぞ、同じことですよ。入札と同じじゃないですか。一般公開入札で、いや、公正にやっていますと言っていても、結局最後はこれしかいない。例えば、外務省でさっきから人事の話をしていますけれども、浮き玉ってないんですよ。もう人を動かしていったら、あいている大使経験者で、次のポスト、どこへ行くかというのは、余りないんですよ。ですから、ある人を否定したら、あとは、浮いているのは前コンゴ大使しかいないじゃないですか。全く同じシナリオじゃないですか。またここでやっていたということじゃないですか。
 こういうことをつまびらかにしないで、我々は一体、前回、何の参考人招致をやったんだ。パフォーマンスだけじゃないですか。こんなことをやっていたら、国民の負託を得てやっている外務委員会が成り立たないですよ、外務大臣。我々委員全体の責任でもある。こんなことをやったら、参考人招致自体が何の役にも立たない。この辺は、我々委員も含めて、大いに反省するところであるし、外務省としても大いに反省していただきたいと思います。
 もう時間がないので最後の質問に移りたいと思いますが、このアフリカの利権に関して、コンゴの問題に関しては、やはり鈴木宗男議員の秘書のムルアカという人の問題があったんですね。
 この方は、何か知りませんけれども、コンゴの通商代表部とかなんとか、いろいろやっています。もう必死になって、コンゴの外交官IDを得ようとしたりしている。おかしいですよね。そんなもの、大したことないじゃないですか。もう日本人と結婚して、日本で十分に活動している人が、どうしてこんなことをしているのか、一体どんな経済活動をしているのかと思って、不思議に思います。
 そして、企業自体は決して、大してもうかっていないわけですね。では、何なんだろう。どこかにこの人の口座があって、そこに巨額のお金が入っている、そんなことは絶対ありませんね。外務省の調査の中で、そんなことは出てきませんね。外務大臣、いかがでしょうか。
川口国務大臣 お答えする前に、先ほどの点につきまして一言だけ触れさせていただきたいと思いますけれども、通常、人事を行う場合に、このポストにはこの人しかいないということはないわけでございまして、外務省のような大きな組織ですと、数人の、複数の候補者から選ぶ、それは全部が適材適所である。この場合は、高野事務局長も含めということを申し上げたいと思います。
 それから、ムルアカ氏の口座の件でございますけれども、これは、外務省といたしましては全く知り得る立場にはございません。
首藤委員 私は、外務省がそういうことを知り得る立場にないとかいう答えを期待して質問しているのではございません。
 なぜこの質問をしているかというと、今、日本の中では、ODAというものに対しての大変な疑惑があります。多くの人が言っていることは、実はODAというものが何らかの形で日本に戻ってきているんじゃないかと。それは決して日本の問題じゃなくて、実は、ミッテラン政権やフランスなんかがいろいろやっていたことなんですよ。ですから、今、ODAというものが、どうも何らかの形で日本に還元してくる可能性がある。そこで、そういういかがわしいいろいろな人間がどういう口座を持っているかということで、マネーロンダリングを含めて、いろいろな問題があります。
 そして、今問題となっているのがペイオフです。ひょっとしたら巨額の資金が口座にあるんじゃないかということで、これからどんどん調査が入ってきます。そういう段階でもしそんなことが、巨額の資金があるというようなことがあれば、もしそれを調べなかったとしたら、外務省の責任は膨大ですよ。外務大臣、その点をよく、最後に答えていただいて、徹底的に調査をして、日本のODAが国民の信頼を失わないようにしていただきたい。
 その意味で、このムルアカの、一体何をして、どうしてこういう活動をして、そしてどこかにそういう口座があるんじゃないかということをきちっと調べていただけますね。外務大臣、いかがでしょうか。
川口国務大臣 ODAにつきまして、国民の皆様に御理解を持っていただくことは重要でございまして、外務省としては今、改革を考える中で、さらなる透明性の付与をどうしたらできるかという観点で議論をしておりますし、先般、第二次ODA改革懇談会、これは基本的に、今「変える会」で議論していることの内容を先取りする性格のものですけれども、その報告も出していただいたわけでございます。この点については、さらに努力をしたいと思います。
 他方で、ムルアカ氏の個人的な情報に関しては、委員の御期待に沿えないことは私は大変に残念ですけれども、外務省としてこれを知る立場には全くございません。
首藤委員 終わります。
吉田委員長 この際、休憩いたします。
    午後零時九分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時四十一分開議
吉田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。土田龍司君。
土田委員 最近のアフガニスタン情勢について、幾つかお伺いしたいと思います。
 新聞報道あるいは外務省からのいろいろな報告はなされておりますけれども、いま一つわからない点も幾つかあるわけでございますので、よろしくお願いしたいと思います。
 まず最初に、アフガニスタンにおける難民の状況なんです。今後、我が国としてもアフガンへの支援をやっていくわけでございますが、そのときに、難民の状況がどうなっているのか、まず、アフガニスタンからパキスタンあるいはその周辺諸国に流出をした難民がどの程度帰ってきているのか、あるいは、アフガニスタンの中で、移住地を離れた難民がどの程度帰ってきているのか、そういったのを含めまして、全体的な難民の状況について、外務省が把握している状況を御説明ください。
安藤政府参考人 お答え申し上げます。
 国連難民高等弁務官事務所、UNHCRによりますと、同時多発テロ以前から、約三百五十万人のアフガニスタン難民がその周辺国におりまして、さらに、同時多発テロ以降、新たに、主としてパキスタンに流出した難民が約二十三万人いるというふうに私どもは承知しております。
 他方、アフガニスタンにその後戻った難民の方の数でございますが、これもUNHCRによりますと、まず、昨年十一月から十二月までの二カ月間で約六万人、それから、ことしの一月から二月までの二カ月間で約十五万人、さらに、三月以降で十五万人が、それぞれ、パキスタン及びイランから帰還しているという数字を私ども持っております。
 他方、先生御指摘のアフガニスタン国内における移動でございますけれども、この移動の状況につきましては、国連の関係機関も一元的には把握していないということで、私どもも正確な数字は持っておりません。ただし、UNHCRが、本年末までに約四十万人の国内避難民に対する支援を計画しているということがございまして、この四十万人という数字が、一応私どもとしては、国内における移動の一つの指標の数として考えられるかと考えております。
土田委員 といいますことは、まだ難民についてはそれほど落ちついてないといいますか、非常に混乱した状態にあるというようなイメージを受けましたけれども、そういう雰囲気でございますね。
 そういった状況で、我が国は、昨年十二月に、生計費用とか緊急性の高いものとして、アフガニスタン暫定政権基金に対して百万ドルの支援を発表いたしました。また、アフガン難民支援のために、今お話がありましたように、国連難民高等弁務官事務所等国際機関に対して四千二百七十一万ドルを支援した。ことしになってから、一月に、アフガン難民、避難民の窮状を緩和するため、UNHCR等国際機関に五千九百四十九万五千七百九十ドルの拠出を行う。この三月には、アフガニスタンにおける劣悪な医療状況を改善するための支援策として、暫定行政機構に対して十六億七千万円の緊急援助ということを決定しているわけですね。
 政府が発表したこうした支援についてなんですが、この一月に東京において行われたアフガニスタン復興支援国際会議で我が国が表明した、いわゆる二年六カ月で五億ドルという金額を提示したわけでございますが、この金額の中に、今申し上げた費用は全部入っているという理解でよろしいのでしょうか。
安藤政府参考人 お答え申し上げます。
 アフガニスタンに対します人道復興支援につきましては、昨年の秋以降に三つのカテゴリーがございます。
 一つは、昨年十月に、国連ドナーアラートというアピールに対しまして、それに応じて我が国が拠出いたしました一億二百万ドルの支援がございます。それから、先生御指摘の、ことしの一月のアフガニスタン復興支援国際会議でございますが、ここで、向こう二年六カ月の間で五億ドルを支援するということを意図表明しております。三番目といたしましては、先般、カブールの近くで地震がございまして、これに対して、緊急支援、人道支援ということで支援を行っております。この三つのカテゴリーがございます。
 先生のお話のありましたUNHCRでございますが、これはまず、今申し上げました昨年の国連のドナーアラートに応じまして、その一億二百万ドルの中の内数として、UNHCRに対して二千百五十万ドルを支出いたしております。そのほかに、今回の一月のアフガニスタン復興支援国際会議で表明した五億ドルの中身としても、UNHCRに対して拠出をしているというものがございます。この辺、若干複雑に入り組んでおります。
土田委員 余り詳しく、よくわかりません。
 昨年来拠出を決定されたことは報告、公表されているわけですが、もっと具体的に、どれだけの額が、いつ、どのような方法によって拠出されたか、わかりにくいわけですね。ですから、これまでアフガニスタンに対して実施された支援方法、いつ、それからどのような方法で、あるいは幾ら、どこへ、さらにはその費目、どこから出した、そういったのをもう少し整理してお答え願いたいと思うのですが、決定された分、決定したけれどもまだ支出していないというか、それを含めて、お願いしたいと思います。
安藤政府参考人 お答え申し上げます。
 先ほどお答え申し上げましたように、昨年の秋以降は、我が国が支援をいたしましたカテゴリーは三つあるわけでございますが、これらの支援のそれぞれにつきまして、若干長くなりますけれども、細目を御説明させていただきます。
 まず一つは、UNHCR、国連難民高等弁務官事務所に対しまして、昨年十月の時点で政府開発援助経済開発等援助費等で約五百八十六万ドル、同じくUNHCRに対しまして、ことしの一月に予備費で約千五百六十万ドル、UNHCRに対して合計約二千百四十六万ドルを支出しております。
 それから二番目に、WFP、世界食糧計画でございますが、これに対しましては、昨年十一月に、政府開発援助経済協力国際機関等拠出金という費目から約二千三百二十六万ドルを支出しております。
 それから三番目に、OCHA、これは国連人道問題調整事務所でございますが、この機関に対しまして、ことしの一月、予備費で約五百六十二万ドルを拠出しております。
 次に、四番目でございますが、ICRC、赤十字国際委員会に対しまして、昨年十一月に政府開発援助経済協力国際機関等拠出金によりまして約二百九十九万ドルを、さらにことしの一月、予備費で約五百三十万ドルを支出いたしております。合計で、ICRCに対しては約八百二十九万ドルでございます。
 それから、IOM、国際移住機関に対しましては、昨年十一月に政府開発援助経済協力国際機関等拠出金によりまして約二百七十六万ドルでございます。
 それから六番目に、ユニセフ、国連児童基金に対しまして、昨年十一月に政府開発援助経済協力国際機関等拠出金によりまして七百八十四万ドル、同じくこのユニセフに対しまして、ことしの一月に予備費で千四百五十七万ドル、それから、同じくユニセフに対しまして、ことし二月に政府開発援助経済開発等援助費で六億六千七百万円を支出しております。合計で、ユニセフに対しましては約二千七百五十万ドルでございます。
 それから次に、UNDP、国連開発計画に対しまして、ことし一月に予備費で約千九百四十万ドルを支出しております。
 次に、アフガニスタン暫定行政機構、これは先方の現在の暫定的な政権でございますが、これに対します行政支援という形で、ことしの二月に政府開発援助経済開発等援助費で一億九百十万円を支出しております。これは公用車の購入のための資金でございます。それから、ことしの三月に政府開発援助経済開発等援助費で十六億七百万円、これは医療器材等購入のための資金でございます。以上、アフガニスタンの暫定行政機構に対しましては、合計で十六億一千六百十万円を支出しております。
 最後に、先ほどちょっと申し上げました地震災害への支援ということでございますが、この三月に、アフガニスタン暫定行政機構に対しまして政府開発援助経済開発等援助費で四十万ドル、また二千六百万円相当の緊急物資を供与している、以上でございます。
土田委員 地震の件は後でまた聞こうと思ったんですが、御説明いただきましてありがとうございました。
 アフガニスタン暫定機構がお金がない、いわゆる資金難のために本格的な復興がなかなか難しい状態にあるというふうに伝えられているわけですね。
 我が国を含めて、ほかの国からの資金の拠出状況、これについてまず御説明願いたいのと、暫定行政機構が復興に向けて本格的な活動をできるように検討する必要性があるんじゃないかと思うんです。この後段については大臣にひとつお答え願いたいと思うんですが、前段は局長からお願いします。
安藤政府参考人 前段についてお答え申し上げます。
 主としてG8各国が支援の体制を組んでおりますけれども、先般東京で開催されましたアフガニスタン復興支援国際会議において、G8各国からも具体的な支援表明がありました。
 そのときのプレッジ額でございますが、これは、アメリカが二〇〇二年に二億九千六百万ドル、ドイツが四年間で三億二千万ユーロ、イギリスが五年間で五億ポンド、フランスが二〇〇二年に二千七百五十万ユーロ、カナダが二〇〇二年に一億カナダ・ドル、イタリアが二〇〇二年に四千五百万ドル、EUが二〇〇二年に五億ドル。ちなみに、G8の一国でございますロシアは明確な支援額を表明しておりません。
 このプレッジ額のうち幾らが実際に拠出されたかという点につきましては、現在、各国がそれぞれに行っているものですから、直接の二国間支援や、あるいは国際機関を通ずる拠出等いろいろな形がありまして、それが幾ら実際に実行されたかという点については、きょうの時点ではまだ把握しておりません。
 ただし、来週十日、十一日に、アフガニスタンの首都カブールにおきまして、復興支援に関する先般の東京会合のフォローアップとして、執行グループ、いわゆるインプリメンテーショングループの会合が開催されることになっておりまして、この場で、各国からの支援額が具体的に何になったかということが明らかになると思われます。
川口国務大臣 アフガニスタン暫定行政機構についてのお尋ねでございますけれども、委員おっしゃいますように、アフガニスタンの暫定行政機構の機能を強化することは、アフガニスタンの今後の復興に向けての努力の中で大変に重要なことだと認識をいたしております。
 このアフガニスタン暫定行政機構は、昨年の十二月に発足をいたしまして、国内の復興活動を実施する能力を初めといたしまして徐々にその体制を確立いたしまして、行政能力を高めていく努力を行っているところです。
 一月のアフガニスタン復興支援会議におきまして、国際社会は、復興の取り組みに当たりまして、暫定政権及び国民の復興に向けての努力を支援するという決意を表明いたしましたけれども、この中で我が国は、暫定政権の安定的な運営を確保するために、アフガニスタン暫定政権基金に百万ドルを拠出いたしましたほか、公用車八台を購入するための資金を供与いたしました。
 今月、第二次アフガニスタン支援調査団をカブールに派遣いたしまして、暫定行政機構への専門家の派遣や暫定行政機構からの研修員の受け入れに関しまして具体的なニーズを調査する予定でございます。調査結果に基づきまして、いかなる技術協力ができるか具体化に努めていきたいと考えております。
土田委員 次に、我が国の大使館のことについてお尋ねしたいと思います。
 昨年の十二月二十二日に暫定政権を政府として承認しました。七九年のソ連のアフガン侵攻以来、初めてアフガンと正常な外交関係を再開できたわけです。
 そこで、本年二月十九日に、カブールに在アフガニスタン大使館の再開を通報して、駒野欽一さん、臨時代理大使がパキスタンよりアフガニスタンに異動した。本格的な活動を開始したというふうにされているわけですが、今後のアフガニスタンの和平のプロセス、あるいは復興支援に対して積極的に貢献するには、在外公館の体制ができてなきゃならないというわけでございます。
 そこで、現在の在アフガニスタン大使館の体制はどうなっているのか、あるいは現在の活動状況はどうなっているのか、御説明ください。
安藤政府参考人 お答え申し上げます。
 アフガニスタンに対する復興復旧支援は、我が国外交上の最重要課題の一つでございますので、外務省といたしましても、現地で外交活動、支援活動の拠点となる大使館の人員体制を早急に整備することが必要であろうというふうに考えております。
 そこで、具体的な現在のアフガニスタン大使館の人員体制でございますが、現在は十名体制をできるだけ早く実現したいというふうに考えております。現時点、きょう時点で申し上げますと、近隣公館からの応援出張、これは現在三名おりますが、それを含めて現時点でアフガニスタンには七名の大使館員が存在しております。これをできるだけ早急に十名を実現し、さらにはそれ以上に拡大していきたいと思っております。
 各種、現在も経済協力のミッションがカブール入りしておりますが、そのほかにも国会議員の先生方やいろいろな方々が、要人がお見えになるようでございますので、現地の大使館をできるだけ早く整備して、この取り組みを強化していきたいというふうに考えております。
土田委員 現在七名で、なるべく早い時期に十名にしたいということですね。わかりました。
 三月の三日から十三日まで、今話が出ましたその調査団が、暫定機構の閣僚や関係者と協議をしたり、あるいは施設を視察したりというふうにやってきたと言われております。
 結果の概要によりますと、難民の再定住支援、地雷除去、メディア・インフラあるいは教育、保健医療、そして女性の六分野について具体的な支援内容を挙げているわけでございます。
 しかし、この四月から行われる応急復旧・緊急支援の項目において、基本的にはお金を、資金を拠出するだけで、いわゆる顔の見える支援がされていないんじゃないかという気がするんですね。いわゆる専門家の派遣等の人的な支援。よく言われる、お金だけ出して人は出さないというふうなことじゃないかと言われるように感じるわけですけれども、確かに、まずお金が必要であるということは当然なんですが、日本がお金だけ出して人は出さない、人的な支援はしないんだというふうなことを言われないためにも、やはり日本政府として人的支援を積極的にしていかなきゃならないんですが、どのような状況にあるでしょうか。
安藤政府参考人 お答え申し上げます。
 まさに先生御指摘のとおり、我々といたしましては、日本の顔の見える援助、支援ということを実施していきたいというふうに思っているわけでございます。
 そこで、現在の経済協力の体制といたしまして、先ほど申し上げました大使館の体制が、まだ一〇〇%完全にはなっておりませんが、今週、JICAの専門家であった方が大使館員として着任をいたします。それを踏まえて、先生御指摘の人的な協力、専門家の派遣等につきましても、これから、地方への展開も含めて、いろいろな措置を講じていきたい、人的面についても一生懸命努力していきたいというふうに思っております。
 ちなみに、顔が見える支援ということで、ちょっと一例を申し上げさせていただきますが、最近、バック・ツー・スクールというプロジェクトがございました。これは、百以上の学校を、みんな壊れてしまっておったものですから、これをもう一度再建して、復旧して、文房具とか黒板とか、そういう機材とあわせて支援をしようというプロジェクトでございまして、これは国連機関のユニセフが中心になって実施したものでございます。
 その式典が、つい二週間前の二十三日に現地で開かれました。その折に、暫定政権機構の教育大臣、アミンさんという方でございます。それから国連のブラヒミ特使、これらの方々がおいでになって、いろいろごあいさつされましたが、その中で、教育大臣の方が、アミンさんがこう言っておられます。日本がアフガニスタンの教育再開に向け多大の貢献を行っていること、このプロジェクトにも最大の貢献を行ってくれたことに特に感謝したい。それからブラヒミ特使は、日本国民の皆様及び政府に対し特に感謝したい、この予算の実に六割が日本からの支援によるものであるということをおっしゃいまして、このお二人のスピーチの中で個別の国に言及したのは実に日本だけであったということでございまして、これは私ども大変うれしいことだと思っておりますが、このように、できるだけ日本の顔が見えるような形で援助を行っていきたいと思っております。
土田委員 三月初めの支援調査団の結果報告、これによると、今後の留意点として、カブール市内では、人々の生活に活気が感じられる、復興が始まっているとの印象があるが、政治、治安情勢は引き続き注視する必要があるという報告でございます。
 今後、我が国だけでなくて、いろいろな国からも、経済協力関係者あるいはマスコミ関係者、NGO、場合によっては政治家、そういった人たちがアフガニスタンに滞在し、あるいはいろいろな活動をするわけでございますが、そういったときに、現在の治安状況を具体的に知っておくということは必要だと思うんですが、現在、現時点でのカブール市内の支援関係者の安全は確保できているか、あるいは安全に活動ができる状態にあるのか、この点を御説明ください。
安藤政府参考人 お答え申し上げます。
 カブール市内におきましては、昨年十二月二十九日から、国際治安支援部隊、ISAFでございますが、これと地元警察が合同パトロールを開始しております。
 にもかかわらず、先般、二月の十四日に、カブール空港でアブドル・ラーマン航空・観光大臣が殺害されるという事件がございました。また、先ほどのISAFに対する銃撃も二月の十六日、二十一日、三月三十日というふうに起こっておりますので、カブール市内が完全に平穏になったというふうには言えないかと思います。
 したがいまして、この国際治安支援部隊も、引き続き現地にとどまるということになっておりまして、その主力をイギリスからどこに引き継ぐのかといったことが、今問題になっているわけでございます。
 したがいまして、カブールが完全に平穏になったということは言えませんけれども、他方、全般的な治安は改善されてきつつあるというふうに、私ども承知しております。したがいまして、外務省の発出いたします海外危険情報につきましても、カブールについては、先月の三月二十六日付で危険度を五から三に引き下げたところでございます。
土田委員 カブール以外の都市についてお尋ねしたいんですが、軍閥が割拠していて、昔よりもかえって治安が悪くなったというような報道もあるわけでございますが、外務省が把握しておるところだけで結構ですので、地方の都市についての安全度、お願いします。
安藤政府参考人 お答え申し上げます。
 地方に関しましては、先生御指摘のとおり、各軍閥が支配して暫定政権の影響力が限られているという現状がございます。また、アフガン各派が六月の緊急ロヤジェルガ開催に向けまして影響力の確保、拡大を試みておりますので、一部地域での治安状態は不安定化しているという見方が強いと思っております。他方、有力な軍閥が押さえている地域では、表面上は治安が安定している模様でございます。
 いずれにいたしましても、軍閥内部の権力抗争等もありまして、今後とも、地方につきましては予断を許さない状況であるというふうに承知しております。
土田委員 同じく支援調査団の結果概要によりますと、暫定政権閣僚たちは復興への強い熱意を示しているが、行政機構の機能を初めアフガニスタン政府の援助吸収能力は未知数であるという報告をしているわけですね。
 このような状況の中で、具体的な支援を行っても、その資金が適宜適切に使われているかどうかという判断をするのはなかなか難しいんではないかと思うのですね。
 そこで、この支援を行う側としましても、支援が本当にアフガニスタンの復興に役立つものとするためにも、行政機構の機能の充実、あるいは拡大、強化等が欠かせないわけでございますが、この点について我が国としてどういった協力を考えているか、御説明ください。
安藤政府参考人 お答え申し上げます。
 確かに、アフガニスタン暫定政権内部の行政能力の向上という点は非常に重要な点でございます。そのために私どもといたしましても、既に百万ドルの行政経費の拠出をしたわけでございますが、そのほかに種々の協力をこれからも行っていきたいと思っております。
 他方、このアフガニスタン暫定政権自体だけではなくて、ドナー国、関係国際機関等も一致協力して調整を行いながら支援をしていく必要があると思っております。
 先ほどちょっと申し上げましたけれども、東京会合のフォローアップといたしまして、実施グループの会合を十日、十一日に開催する予定でございます。これは今後四半期ごとに開催していく予定にしておりますが、そうした会合の場でも現地の政権との話し合いをしていきたい、今後の復興支援の枠組みをきちっとつくっていきたいと思っております。
 また、それに加えまして、そういう臨時の会合に加えて、現地におきまして暫定政権側とドナー国との間で適切な協議体制を確立するということが必要になると思っています。
 そういう種々の措置を通じまして、アフガニスタン全体としての政権自体の問題も含めて国づくりに協力していきたいと思っております。
土田委員 このアフガンの復興を願っているわけでございますが、そうであれば、支援実施後の、今局長がおっしゃったフォローアップ、非常に重要であると思うわけでございますが、支援が本当に必要なところに渡っているかどうか、これの確認作業はどうなっているでしょうか。
安藤政府参考人 お答え申し上げます。
 我が国を初めといたしまして、関係国あるいは国際機関からの支援というものは、それぞれアフガニスタンからの要請に基づいて実施しているものでございますので、第一義的にはアフガニスタン側が責任を持つものでございます。したがいまして、アフガニスタン暫定政権といたしましても、先般の東京会合の場におきまして、これらの支援の実際の運用に当たりましては、透明性、効率及び説明責任というものに対するコミットメントを果たしていくという点を強調しておりました。
 ただ、それに加えまして、国際社会、それぞれのドナー国あるいは関係国際機関も、そのような支援がきちんと公平かつ適切に使われるように、私どもの方としてもできる限り留意してまいりたいというふうに思っております。
土田委員 いろいろな国から、いろいろな機関を通じて、何回も巨額のお金がアフガンに入っていくわけですね。暫定政府も、なかなか行政機構が整っていないということになりますと、不正があるとは言いませんけれども、適正な場所に行くかということは非常に大事だと思うんですね。しかも、今の日本の大使館は七人しかいない。これから人数をふやすにしても、十人程度までふやしたいと。世界のいろいろな国際機関がやるといいますけれども、我々の税金で賄われることには違いないわけでございますから、ぜひ的確に行われるようにお願いをしたいと思います。
 それから、先ほど地震の件で説明がございましたけれども、二千六百万円供与して、それからJICAの職員を現地に派遣したということでございますが、その後、現時点でといいましょうか、地震の復興について、地元から何らかの要求あるいは要望が来ておりますでしょうか。
安藤政府参考人 お答え申し上げます。
 先ほどの地震の調査団につきましては、三月二十八日に東京を出て、二十九日にカブール入りしたわけでございますが、その後、現地まで百六十キロもございまして、しかも日本の百六十キロとは大分違う状況でございまして、現地に到達するのに非常に難しい状況でございますし、また連絡もままならずという状況でございますけれども、とりあえず私どもが現地から得ている情報では、市街全般にわたりまして、土壁の住居はおおむね崩壊しているけれども、シェルター関係を初め、援助物資は順調に配布されている模様である、したがいまして全体として状況は落ちついてきているという報告を受けておりますが、なお詳細については報告を受けたいというふうに考えております。
土田委員 といいますのは、具体的な要望は現時点ではまだ来ていないということですね。
 では次にですが、これは大臣にお伺いしたいと思います。
 アラビア海北部で米軍等支援のため活動中の海上自衛隊は、その技術と実績を米英両国からも高く評価されているというふうに思いますし、ブッシュ大統領も、国会演説の中で、日本の自衛隊は重要な支援を行っていると称賛をしたと言っております。
 しかしながら、新聞に出ていた、この産経新聞のことを言っているんですが、現場海域におきまして、NATO諸国やオーストラリアの艦隊が米軍から直接、作戦情報あるいは作戦方針に対する連絡を受けているわけですが、日本の海上自衛隊だけは直接でなくて、横須賀の艦隊司令部を経由してそういった作戦計画が寄せられるということが書いてあるんですね。もちろんこれは海上自衛隊の仕事ではありますけれども、外務省として、こういった事実に対して、これが事実かどうか、あるいは、これに対して外務省としてどういった感想をお持ちでございましょうか。
川口国務大臣 テロ対策特措法に基づきます海上自衛隊の艦艇による協力支援活動の実施状況につきましては、防衛庁より随時御連絡をいただいております。
 この新聞記事は拝見いたしましたけれども、海上自衛隊は現地において関係国と十分意志疎通を図っておりまして、御質問にあったような事実関係はないと承知をしております。非常に有意義な活動を行っているということでございますが、我が国の在外公館からも、このような活動の円滑化には協力をしているところです。
 さらに、我が国の協力支援活動につきましては、先般来国会で申し上げていますように、米国を初めとする多くの国より、高く評価をされていると考えています。
土田委員 ということは、この新聞の記事は間違いだとおっしゃるわけですね。連絡についてはじかに、その現場で連絡がよくとれていると。
 外務省がこの報告を受けたわけじゃなくて、自衛隊からの、防衛庁からの報告でしょうけれども、この新聞にはそう書いてありますね。直接じゃないんだ、ほかの軍隊はみんなアメリカからじかに情報や作戦の連絡を受けるんだけれども、日本の場合はそうじゃないと。自衛隊の幹部は、これについては特にコメントしていませんね、決して共同で行動しているわけではないというふうに書いてありますけれども。――わかりました。これについては、ちょっとまた私も調べてみたいと思います。
 ちょっと時間がございませんので、パレスチナ問題を最後に一問だけお尋ねしたいと思います。
 三分しかございませんのでお尋ねしますが、茂田さん、前イスラエル大使が、外務大臣の親書を持って現地に今行かれているわけですね。刻々といろいろな情報なり報告が上がってきていると思うんですが、茂田前大使からパレスチナ情勢について、大体新聞で読んだだけでございますけれども、外務大臣から、より具体的に、どういった内容が来ているか、あるいはまた、我が国からの働きかけについて外務大臣としてはどういった指示を出されているのか、御説明ください。
川口国務大臣 茂田大使につきましては、現地においてイスラエル政府関係者及びパレスチナ暫定自治政府関係者等と会談をしまして、双方に停戦のための努力を働きかけることといたしております。昨四日でございますが、まず、アブ・アラ・パレスチナ立法評議会議長と会談をして、暴力停止のための最大限の努力を求めました。これから後、シモン・ペレス外務大臣と話をすることになっておりまして、我が国の憂慮の念を伝えることになっております。
 全般として、アブ・アラ立法評議会議長と話をした印象といたしましては、前回、東京でお話しになられていたときよりもさらに情勢が厳しいということを反映して、厳しい態度でいられたということを聞いております。
土田委員 こういった大事なときに、先ほど民主党の方からも質問がございましたけれども、イスラエルの大使を置かない、アフガニスタンも大使を、これは臨時代理大使ですか、むしろ逆だと思うんです。何もないところは臨時大使でもいいし、空白でもそんなに差し支えはないんでしょうけれども、こういった重要なところに大使がいないということについてはむしろ不自然だと私は思うんですけれども。
 最後の質問として、この中東問題、やはりアメリカが大きな発言力、あるいは仲裁能力といいましょうか、実力を持っているわけですので、アメリカに対して、日本政府としても既に何らかの要請といいましょうか、要望といいましょうか、そういったことをなされたかどうか、御説明ください。
川口国務大臣 イスラエルの大使につきましては、たまたま人事のタイミングの関係で今こういう状況にありますけれども、近々、できるだけ早くこのポジションについては大使を置くということで行いたいと考えています。
 それから、アフガニスタンの臨時代理大使につきましては、これは、大使館の立ち上げの時期ということでございましたので、臨時代理大使ということでスタート、これは通例そういうことのようでございまして、ということでしたけれども、現在は、かなり仕事も本格化してくる段階に入りましたので、大使という形にすることで手続を始めているところです。
土田委員 今、大臣が打ち合わせをされているときにはずっと質問をしていたんです、アメリカに対してどういった依頼をされましたかと。
川口国務大臣 アメリカはこの問題についてはかぎを握っている重要な国でございまして、私としましても、パウエル国務長官と四月の一日にお話をいたしまして、その旨をお伝えしております。あわせて、我が国の努力とアメリカとの連携についてもお話をさせていただいているわけでございます。アメリカも、そういった情勢の認識をきちんとしておりまして、現在、その調整といいますか仲裁の努力をしていると考えております。
土田委員 終わります。
吉田委員長 次に、松本善明君。
松本(善)委員 外務大臣に、きょうは、東郷氏らの処分にかかわりながら、二元外交の問題を伺いたいと思います。
 外務大臣は四月の二日に東郷前オランダ大使などの処分を発表して、三日の本委員会でもこれは議論されました。一昨日、外務大臣は、東郷前駐オランダ大使などの処分理由として、対ロシア外交の政策決定ラインに混乱をもたらしたと述べて、それ以上の理由を述べないだけでなく、東郷局長が二島先行返還論を推進したから処分したというのであれば、そうでないという答弁もされました。そして、具体的に言えという質問に対しては、抽象的な三つの理由を挙げられるだけでありました。
 これを繰り返してもしようがありませんので、これはもう何遍も聞いておりますから、そういうような答弁ではなくお答えをいただきたいと思います。
 外務大臣の答弁にもかかわらず、鈴木、東郷氏が二島先行返還論であることはもう公知の事実です。例えば四月三日付の朝日、読売、産経の社説、四月四日付の毎日、日経の社説、全国紙はすべて、鈴木、東郷氏らが二島返還論ないし二島先行返還論に立ってロシア外交をゆがめたことを前提に議論を展開しております。
 例えば四月四日付の日経は、「鈴木氏は様々な問題で外務省に圧力をかけ、政策や人事をゆがめたが、最も深刻なのは二島先行返還論である。二島先行返還論は歯舞、色丹だけの返還で終わり、残る二島の放棄につながりかねない。」と述べています。「歯舞・色丹の二島返還で決着されかねない並行協議方式で、ロシア側との秘密交渉に走った。」というのが毎日の社説です。朝日は、「問題は政府の基本方針とは別ルートで相手を利する二元外交を進めたのではないか」こう言っています。それから、読売の一面トップ記事は、東郷氏の責任は、日ロ交渉で正規ルートと鈴木ルートの二元外交の素地をつくった点だと、はっきりそういうふうに述べています。
 東郷氏のもたらした混乱とは、二島先行論に基づいて二元外交を行ったという点にあるのではないか、そして混乱をもたらしたのではないでしょうか。
 外務大臣の言っておられることは、今までの答弁や記者会見で言っておられることは、全国紙のすべての社説で否定されているんですよ。今までの答弁だけだったら、外務大臣が裸の王様だということを証明する、女性相手に裸の王様というのはちょっと余り品がよくありませんけれども、寓話としてお聞きをいただきたいと思うんです。今までの答弁だけだったら、これは外務省に対する信頼がますます弱まりますよ、低くなる。国民はみんなそう思っているのに、外務省だけが否定するんですから。
 外務大臣、これらの社説や報道について何と考えられますか。
川口国務大臣 社説あるいは報道がいろいろなことをお書きでいらっしゃると思いますけれども、外務省として二島先行返還論を提案したことは全くないわけでございます。
松本(善)委員 そう言うだけでは、これからの対ロ外交を進めていかれる責任ある立場にある外務大臣としては、私は大変頼りないというふうに失礼ながら思います。
 先ほど民主党の木下委員から、この根源には野中発言がある、そして、野中、鈴木、東郷、佐藤、こういうことで日本外交をゆがめた、こういうお話がありました。私、全くそのとおりだと思いますが、野中氏が並行協議をするという発言をされたんです。それは大きく報道をされまして、対ロ二元外交表面化する、こういう形で報道され、これは野中さんが講演で言われたんですね、それから自民党総務会で。それで、そこから大きく変わり出すというのが論調なんです。
 これについて、櫻井よしこさん、これは私たちとは相当立場が違う方で、御存じと思いますけれども、この方が文芸春秋に「鈴木宗男はロシアにひれ伏す 二島先行返還という暴論。とんだ国益の代弁者だ」という論文を書かれている。外務大臣、読まれましたか。
川口国務大臣 櫻井よしこさんはよく存じ上げておりますけれども、それについては読んでおりません。
松本(善)委員 では、多少紹介いたしましょう。その中心部分ですね。
 この野中発言を「重く受けとめた」と明言した人々がいる。外務官僚たちである。明言したのは東郷和彦(当時・欧亜局長)、川島裕(同・事務次官)の両氏である。
  彼らは外交のプロでありながら、国益を損ねる野中発言にブレーキをかけることもせず、なぜ、容易に“重く受けとめる”などと論評したのか。
  外務省中枢部に近い人物が匿名で語った。
 「野中発言の直後、鈴木宗男さんがすぐに外務省に電話をしてきて、野中発言に関してはコメントするな、取材され質問されたときは、「重く受けとめる」と言えと指示したのです」
 これが全部本当かどうか私は櫻井さんにもまだ聞いておりませんけれども、責任を持って署名入りで出されたものですから、私はこういう事実についてやはり調べなくちゃいけないと思いますが、外務大臣、いかがですか。
川口国務大臣 櫻井よしこさんは私も尊敬をするジャーナリストでいらっしゃいますけれども、ジャーナリストの方が個人の情報源、取材源の情報でお書きになられたことにつきまして、私どもとしてコメントをする立場にないわけでございまして、外務省としては、先ほど申し上げましたように、四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結するという方針はずっと一貫をしているわけです。二島先行返還論を提案したことは全くございませんということを申し上げたいと思います。
松本(善)委員 そういう答弁をされるから官僚答弁だと。私は、外務大臣は官僚としては非常に優秀な人だったんだと思います。だけれども、今の外交を担う責任者としては、そういう答弁ではだめだと思うんです。外務省の疑惑についてだれが発言しようと、疑惑が起こればやはりそれは徹底的に調べる、そして外務省の日本外交についての信頼を取り戻さなければならない、そういう気迫は全然伝わってこないです。
 あなたは、政府は一貫して四島返還論を主張してきたというふうに言われます。それなら混乱は起こらないんですよ。一括返還という言葉は使っていないとさっき言われましたけれども、橋本北方担当大臣、これははっきり答弁でそう言っておられますよ。言いましょうか。予算委員会の昨年の二月十九日、はっきりそう言っていますよ。やはり、官僚の言っていることをうのみにしちゃだめですよ。それで、やはりきちっと自分で調べなくちゃ。
 それから、聞きたいことは、一括かどうかはともかく、四島返還論をずっと主張してきたんなら何の混乱もないじゃないですか。省内の議論だけだったら、先ほど来何回も言われている、これは混乱じゃないですからね。日本外交が二元外交で混乱をしたということはあくまで否定しますか。私の聞いたことにお答えいただきたい。
川口国務大臣 北方領土の返還交渉が混乱をしていたというふうにおっしゃられますけれども、平和条約締結交渉ということにつきましては、非常に領土問題というのは解決するのが難しい問題、どこの国の領土問題をとっても解決は難しい問題であるわけでございまして、したがって、紆余曲折があるのは当然と申し上げたいと思います。
 日ロ双方は今まで真剣に、精力的に交渉をしてきているわけでございまして、その過程で、先ほど申しましたように二島先行返還論を我が国として提案したことはないわけです。ずうっと、四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結するという方針で来ているということでございますので、通常の領土交渉において起こり得る紆余曲折、これはさまざまあったと思いますし、今後ともあると思いますけれども、混乱をしたという言葉で表現をするのは当たらないと思います。
松本(善)委員 紆余曲折という言葉で、半ば認めた、半ば否定した。私は、きっぱり否定するかと聞いたら、そういう答弁になって返ってまいりました。
 これからそのことを明らかにしていこうと思いますが、まず、東郷前大使と鈴木議員との関係ですが、先ほど外務大臣の答弁は、鈴木議員との関係が背景にあったが、鈴木議員との関係を切るというような意図の処分ではない、こういうふうに言われましたが、東郷前大使が鈴木議員と非常に密接な関係で、同じ立場で行動していたということは認めますか。
川口国務大臣 北方四島の住民支援についての報告書でございますけれども、これについてここに書かれていますことは、「鈴木議員の意向が」……(松本(善)委員「ちょっと、質問をちゃんと聞いて答えてください。わかっていますか」と呼ぶ)はい、質問を伺っておりますけれども。「鈴木議員の意向が突出した形で重視されるに至っており、同議員による直接的な働きかけがあった場合に加えて、外務省側が日頃の接触等を通じ同議員の意向を推し量り、それを無視し得ないものと受け止めて、これを実現する方向に動かざるをえない雰囲気が省内に存在していた」ということがこの調査に書かれているわけでございます。
 鈴木議員と東郷局長との関係について言えば、こうした文章であらわされているというふうに考えます。
松本(善)委員 ちょっと根本問題に戻って聞きますが、外務大臣は歯舞、色丹二島を北海道だと考えていますか。
川口国務大臣 我が国固有の領土だと考えております。
松本(善)委員 北海道だと考えているかと聞いています。
川口国務大臣 ずうっと、北海道の一部として、我が国の行政機構といいますか、その組織の中には位置づけられたと承知しています。
松本(善)委員 これはついでに紹介しておきますが、サ条約の批准国会で鳩山総理が、歯舞、色丹は北海道の一部である、これは当然ソ連が返還すべきものだ、これが基本的な立場で、当時の答弁はすべてそうなっております。
 そこでお聞きしたいのですが、私どもが発表いたしました内部文書に関して、先ほど木下議員も質問をされました。二〇〇一年三月五日の会談の存在、東郷局長の出席、これは認められました。先ほどの外務大臣の御答弁で、内容については、相手の国のこともあるので答弁を差し控えたいと。内容は知っているんですか。
川口国務大臣 内容につきましては、政府としてコメントをすることは差し控えたいと考えます。
松本(善)委員 内容をコメントするんじゃなくて、知っているかというんですよ。差し控えたいというのは、知っているけれども言わないという意味でしょう。だから、知っているかということを聞いているんですよ。
川口国務大臣 先方との関係がございますので、内容については差し控えたいと思います。
松本(善)委員 ということは、知っているということかと聞いているんです。
川口国務大臣 ですから、コメントをすることは差し控えたいというふうに申し上げているわけです。
松本(善)委員 まあ普通は、日本語では、そういう場合は、知っているということですよ。
 コメントをしないということなんですが、これは個人の会談ですか。それとも、東郷局長も出席をしています、これはどういうふうに考えているか。調べてみるというか、官房長官も言ったし、あなたも言われた。これはどういう会談ですか。
川口国務大臣 この会談は、三月の五日に鈴木議員とロシュコフ次官との間で会談が行われたというものでございまして、鈴木議員は一議員として、来日中のロシュコフ次官と非公式にお会いになられたというふうに承知をしておりまして、東郷当時の欧亜局長はこれに参加をしたということと承知をいたしております。
松本(善)委員 外務省は、鈴木議員とロシア側要人との会談という記録を私たちに配りました、記者ブリーフの記録。これには、プーチン大統領との会談、平成十二年四月四日、イワノフ安全保障会議書記との会談、平成十二年十二月二十五日、ロシュコフ外務次官との会談、平成十三年十月二十三日、イワノフ国防相との会談、平成十三年十月二十四日、これはありますが、今の、二〇〇一年三月五日の会談はありません。
 記者会見のブリーフを今ごろ国会議員に配るということの不見識もありますが、鈴木議員とロシア側要人との会談、ロシュコフ外務次官との会談ということになれば、これはさっき言った十三年の十月二十三日もやっているわけです。当然ここに入れなければならないのに、何で入れなかったか。これは秘密会談なんですか。御答弁をいただきます。
川口国務大臣 一番最初に挙げられましたその一連の会談が、ちょっと私、その資料が、そういった会談があるという資料を外務省がお出ししたのか、何かよくわかりませんけれども、いずれにいたしましても、このロシュコフ次官と鈴木議員の会談につきましては、私どもとしては、政府として、相手、先方のことがございますので、コメントをするのは控えさせていただきたいと考えております。
松本(善)委員 外務大臣、ごらんになってください。これは、前の委員会の後、私に渡された、恐らくすべての議員に渡されたんだというふうに思います。
 それはさておきといきましょう。それで何遍も議論をしても始まりませんから。
 それで、やはりこれが日ロ外交をゆがめたということについて、少しきちっとお話をしようというふうに思います。少し長くなりますが、聞いていていただきたいと思います。
 ロシア政府は、二〇〇〇年の十一月三十日に、日ソ共同宣言の歯舞・色丹引き渡し条項は二島返還で領土問題を最終決着させるという規定であったとの見解を正式に日本政府に伝えております。
 この状況のもとで、鈴木議員が、二〇〇〇年十二月二十五日から二十六日まで、森首相の特使として、プーチン大統領あてとイワノフ安全保障会議書記あての親書二通を持ってモスクワを訪問し、イワノフ書記やロシュコフ外務次官と会談をして、森訪ロの日程や二島先行返還論などについて協議した。この後、新聞報道は対ロ二元外交表面化ということで大きく報道され、その後もずっとこの問題については報道をされています。
 そして、翌二十六日、河野外相や福田官房長官は、鈴木議員の訪問を、これを正式会談とするとまずいですから、二島先行返還論などを、これを一議員の立場、個人の資格ということで発言をしたわけです。
 それで、橋本北方担当大臣は、二〇〇一年の国会で、四島一括返還論を言い続けているというふうに答弁をしておられるわけでございます。先ほども言いました。
 先日、私どもが会見で発表しました、そして皆さんにも、外務大臣にもお渡しをいたしました三月五日の鈴木・ロシュコフ会談、この第一の特徴は、これらの日本政府首脳を、河野さん、福田さん、橋本さんなどの発言を非難して、自分を二島先行返還論の柔軟な立場に立った政治家として売り込み、東郷局長が同席して、異論を述べなかったというものなんです。これは、記者会見で鈴木氏は胸を張って、私はそういうことなんだ、こう言ってやっているんですよ。
 これは経過ですが、最も大きな特徴は、鈴木議員は、日ロ首脳のイルクーツク会談では一九五六年の共同声明の有効性を共同文書に明記しよう、これをたびたび要求しているんです、あの文書の中で。しかし、ロシア側は、先ほど申しましたように、これは二島返還で領土問題を最終決着させるという規定であったという見解を正式に日本政府に伝えているわけですよ。
 この状況のもとで、共同宣言への明記を日本側から主張するということは、このロシア側の主張を認めることになる。そして現実に、三月二十五日のイルクーツク声明に盛り込まれることになる。イルクーツク声明が、一九五六年の日ソ共同宣言を平和条約締結に関する交渉のプロセスの出発点を設定した基本的な法的文書であることを確認した、これは非常に重大なことだと私は思っています。
 我が党は北千島を初めから放棄する立場でないことは先日の委員会でも申しましたけれども、政府の四島返還論の立場から見ても、極めて重大であります。といいますのは、日ソ共同宣言第九項は、「歯舞群島及び色丹島を日本国に引き渡すことに同意する。」とはっきり書いてある。この二島返還は既定のことで、無条件で日本に引き渡すことになっていて、ただ、「平和条約が締結された後に現実に引き渡されるものとする。」となっているだけであります。先ほど欧州局長も、歯舞、色丹は解決しているという答弁をいたしましたから、恐らくそのことを言っているんだと思います。
 ロシア政府が、日ソ共同宣言の歯舞・色丹引き渡し条項は二島返還で領土問題を最終決着させるという規定だったとの見解を正式に日本政府に伝えている状況のもとで、これを基本的な法的文書として扱うことは、日本側にとっては、歯舞、色丹の無条件返還、二島について無条件に主権回復する道を閉ざすことになる。ロシア側には、歯舞、色丹の返還を領土問題の終着駅にしようとする思惑に有力な根拠を与えることになる。だから、私は、これは重大なことだと言う。二元外交は、こういう重大な日本外交のゆがみをもたらしているんです。
 それで、外務大臣に質問したいことは、五六年の日ソ共同宣言第九項をどう見ているか。これは無条件に歯舞、色丹については日本に返すという、このことを既定のこととしている、こういうふうに見ているかどうか、伺いたいと思います。
川口国務大臣 一九五六年の日ソ共同宣言第九項前段におきましては、日ソ間に「正常な外交関係が回復された後、平和条約の締結に関する交渉を継続する」といたしまして、後段では、「ソヴィエト社会主義共和国連邦は、日本国の要望にこたえかつ日本国の利益を考慮して、歯舞群島及び色丹島を日本国に引き渡すことに同意する。ただし、これらの諸島は、日本国とソヴィエト社会主義共和国連邦との間の平和条約が締結された後に現実に引き渡されるものとする。」というふうに規定をされているわけでございます。
 ということが、イルクーツク声明、二〇〇一年の三月、あるいは東京宣言以降でございますけれども、特にイルクーツク声明におきまして、この五六年共同宣言を交渉プロセスの出発点として位置づけて、その有効性を文書で確認をした、その上で、東京宣言に基づいて、四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結するということを再確認をいたしたわけでございます。
 したがいまして、その平和条約交渉の対象となるべき重要な問題というのは、日ソ共同宣言で解決されなかった領土問題、すなわち、国後、択捉の問題であるということが明らかであったということだと思います。
松本(善)委員 そういう答弁をされるから、大変失礼だけれども、外務大臣として私はだめだと申し上げるんですよ。
 この解釈は、ロシア側と日本側で真っ正面から違うんですよ。その問題をあなたは認識してない。日ロ外交というのは、これは今、日本の非常に重要な外交問題の一つですよ。この日ソ共同宣言第九項についての解釈がその程度のことで考えておられるということになると、私は、本当に、率直に言って情けない思いをいたします。
 それでは、形を変えて聞きますが、これは欧州局長に聞いた方がいいかもしれぬね。外務大臣はちょっと無理かもしれません。
 ロシア側が、二〇〇〇年十一月三十日、日ソ共同宣言の歯舞・色丹引き渡し条項は二島返還で領土問題を最終決着させるという規定だったという見解を正式に日本政府に伝えたことを、日本政府はどう見ているか、これに対して反論をしているかどうか、お答えいただきたい。
齋藤政府参考人 今、二〇〇〇年十一月ですか、日本政府にそういうふうに通報しているというふうにおっしゃいましたけれども、何に先生が言及されているのか、ちょっと私よくわかりません。
 いずれにいたしましても、日本政府としては、日本政府の立場を随時ロシア側に申し入れて主張してきていることは、一貫して日本政府としてやってきておることでございます。
松本(善)委員 欧州局長がこのありさまでは、これはどうしようもないですわ。私、本当に日本外交について憂慮をいたします。
 私どもがあの文書を発表し、志位委員長が記者会見でこれらの問題点は指摘しているのですよ。それは立場は違うかもしれぬけれども、それについての研究ぐらいはしておいたらどうだ。これは国会で議論されておる。立場は違うけれども、国会の議論を聞いて、そして、外務省の立場はこれでいいかどうかということを検証しながらやっていくために国会の議論をやっているのでしょう。これはもう、欧州局長も失格だな。それは幾ら聞いても、今の答弁では、知らぬのだからどうしようもない。
 私は、鈴木氏の二島先行返還論について、河野さんも福田さんもそれから橋本さんもみんな、これは個人の立場だと言って、いわば否定した。それは、これは危険だ、日本外交にとっては危険なものだということを感じたから直ちに否定したんですよ、個人の立場だとかそういうふうに。そこの真意を理解しないでいるというところが問題なんだ。だから、彼は、私どもが発表をした文書の中で河野さんや福田さんや橋本さんをくそみそに言っているのですよ。そこがあの会談の特徴なんですよ。
 これが、イルクーツク宣言で、先ほど言いましたが、先ほどの文章が入ったということは、日本外交にとっては非常に重大なことでありまして、櫻井さんをもう一回引用いたしますと、彼女は、「森首相がとった立場は」、イルクーツク声明ですよ、「森首相がとった立場は五六年の日ソ共同宣言を文書によって確認するという馬鹿気たものだった。一気に四十五年間も歴史を逆戻りさせたのだ。日本にとって歯舞、色丹両島の返還は既定のはずである。ロシアは両島返還について法的義務を負っている。」「「時計の針を逆に戻すもの」とはまさにこのことだ。そしてその背景には東郷氏がいて、さらにそのうしろには鈴木氏がいた。」私に言わせれば、さらにその後ろに野中さんがいた、こういうことなんですよ。このことを本気で考えないと、私はロシア外交は進まないと思います。
 このイルクーツク声明というのは、ロシア側に二島返還で最終決着と主張する有力な根拠を与えたのではないか。もしそうでないと言うならば、私は、鈴木議員のやったことを明確に総括をする、全部明らかにして、そして公式に否定しておくことが必要だと思いますが、外務大臣、今までのお考えではちょっと答弁が期待できないけれども、私の話を聞いてそういうふうに思いませんか。
川口国務大臣 繰り返しになりますけれども、政府といたしましては、一貫して四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結するということで交渉をしてきているわけでございまして、このことは、イルクーツク声明にもちゃんと書かれているわけでございます。
松本(善)委員 その辺は、やはり外交というのは非常に難しいとさっき言われたでしょう。こんな公式的なものだけではだめなんですよ。私は、そのことを言っておきましょう。
 そのことは、私どもが言っているだけではありません。この鈴木議員――野中さんも入れましょう、野中氏、鈴木氏それから東郷局長らによってゆがめられたロシア外交を検証することがやはりロシア外交の出発点になるのじゃないか。これは私どもだけの考えではありません。読売新聞の四月三日の社説は、「二島先行返還論なるものがどのように形づくられたのか、それと四島帰属問題はどういう文脈にあったのか、事実関係が明らかにされなければならない。」「残された大きな課題だ。」と言っています。
 外務大臣、このことを真剣に受けとめて、この二元外交問題について総括をする、検証をするという考えはありませんか。
川口国務大臣 政府としての考え方というのは、北方四島の帰属の問題を解決することによって平和条約を締結するということで一貫して交渉をしてきたわけでございまして、まさに二島先行返還論は提案をしてきていないわけでございます。
 他方で、政府としては、北方四島に居住するロシア国民の人権、利益及び希望をも返還後も十分尊重していくとともに、四島への日本の主権が確認されれば、実際の返還の時期、態様及び条件について柔軟に対応するという考えで来てまいっております。
松本(善)委員 さっき以来言っているように、ロシア側は、日ソ共同宣言は歯舞、色丹で決着なんだ、そういう解釈なんだと言ってきているわけですよ、欧州局長は知らぬらしいけれども。そういう状況のもとでイルクーツク会談で声明というのが重大なんですよ。もう一回ちょっと検討し直してほしいと思います。
 それで、官僚についての、外務省の職員についての処分がありました。そして、外務大臣も、それから歴代の次官、官房長も責任を問うという立場でありました。しかし、外務省の職員だけの責任を問うのでは、私はやはりだめだと思いますよ。政治家がかかわっているのです。
 これは、野中さんも鈴木さんも、それから、そういう点でいえば歴代の外務大臣、河野さんや高村さん、高村さんは今おいでになるのですか、それから森総理大臣、森さんは並行協議を推進したと言われている、こういう方々についてもやはり聞かなければ、外務省の職員は、東郷さんなんかは、それは何でおれだけ処分されるんだということになります。
 外務大臣は、政治家についてはそういうことはできないんだ、こういうふうに言っておられますので、やるのはやはり国会だと思うのです。
 私は、外務省は、そういう意味では、言葉は悪いけれども共犯者といいますか、一緒に鈴木議員と二元外交を進めた。これは、外務大臣は一生懸命否定されますけれども、客観的にはそうです。世間はみんなそう見ているのですから。
 これはやはり国会の責任でありまして、今まで野党四党で鈴木氏の証人喚問、東郷、佐藤両氏の参考人質疑を要求してまいりました。そして与党も、東郷氏については賛成だ、時期を見る、こういうところまで来ましたけれども、私は、やはり今日本外交、特に日ロ外交を立て直す上で国会の果たす責任というものは本当に大きいと思います。政治家からいろいろな事情を聞くことも含めて、この委員会でやっていかなければならないと思います。
 その問題について、委員長に、理事会で協議をしていただくよう御要望をいたします。
吉田委員長 わかりました。
松本(善)委員 まだ少しありますので、外務大臣に伺います。
 こういうふうにゆがめてきたということについての鈴木議員の暴行、脅迫というのは、大変なもののようですね。社説では、東郷さんは鈴木氏に赤の広場で焼身自殺をしろ、そういうふうに言われて、それ以来もうすべて彼の言うことを聞くようになった。前回も言いましたけれども、脅迫、暴行はほかでもいっぱいあるということが報道されています。私は、やはりどうしてもこの暴行問題を避けて通ることはできない。
 外務大臣は、先日は、あの当時、加賀美氏については抗議すべきだった、こういうふうに言われました。そして、あの当時の外務省の対応を批判されたわけですが、これからどうするかということは検討すると言われました。どういうふうに検討されましたか。私は、当然告発すべきだと思います。外務省の職員が堂々と自分の意見が言えるようにしなければ外務省の立て直しはないと思います。外務大臣の見解を伺って、終わりにします。
川口国務大臣 お答えする前に、誤解があってはいけませんので念のために申し上げさせていただきますけれども、委員の御発言が、今回とった人事上の措置が二島先行返還論と関連があるということを示唆しているようにお聞きするものですから、申し上げるわけでございますけれども、これについては、東郷大使の言動によって政府の立場が二島先行返還論に変更されたことはないわけでございます。したがって、東郷大使に対する今般の人事上の措置は、二島先行返還論とは全く関係がないということを念のために申し上げさせていただきます。
 それで、お答えの方でございますけれども、ただいま検討をしているところです。
松本(善)委員 やはり遅いと思います。
 それから、世間が二島先行返還論と関係があるとみんな見ているということを最初から御紹介したわけです。
 これを言って、質問を終わります。
吉田委員長 次に、東門美津子君。
東門委員 これまでも何度か出ておりますが、まず最初に、外務省の職員の処分について、私も一、二点質問したいと思います。
 大臣は四月二日、北方四島支援事業やコンゴ民主共和国臨時大使へのID発給問題などを理由に、東郷オランダ大使、それから森カザフスタン大使ら三十四人の処分を発表されました。特に、東郷オランダ大使と森カザフスタン大使は、国家公務員法上の厳重訓戒処分及び帰朝を命令されており、東郷オランダ大使は免官となっています。しかしながら、田中前外務大臣を更迭にまで発展させたあのNGO問題で中心と見られておりました野上前事務次官は、厳重訓戒処分のみです。
 東郷大使の処分理由について、大臣の記者会見での発言は、まず省内の士気を低下させたこと、それから外務省幹部としてふさわしくない言動があったこと、三つ目に政策決定のラインに混乱をもたらしたことの三点を挙げられて、結果として、それが外務省の信用を失墜したとしておられます。その三点は、そのまま野上前事務次官にも当てはまるのではないかなというのが専らの意見だと思います。
 野上前次官の辞任の理由、それはNGO問題に関する国会混乱の責任をとることであったはずです。野上さんの言動も、国会で田中前外相の言動を真正面から否定する、これは国家公務員法と照らしてどうなんでしょう。そして、国会を混乱させて、省内の士気低下からその後の内部資料流出につながっており、東郷大使の処分理由がそのまますっぽりとそれにも当てはまるのではないかと思います。
 いかがですか、外務大臣。NGO問題については国家公務員法上の処分はなされない、均衡に欠けていると思いますが、大臣の見解をお伺いしたいと思います。
川口国務大臣 まず、今回の野上前次官についての処分の理由でございますけれども、これは私や植竹副大臣も同様でございますけれども、監督責任ということでございます。これには野上前次官だけではなくて、もう外務省をやめましたけれども、柳井元次官、川島元次官、野上前次官の監督責任を問うているわけでございまして、現職である野上前次官と現在の竹内次官について厳重訓戒処分にしたということでございます。
 それで、NGOの件につきましては、当時小泉総理が、これにつきまして、国会を混乱させたということで苦渋の選択をなさった、その中で、野上前次官が次官の職を辞したということでございます。この次官の職を辞したという行為、これは大変に重いものであると私は思っております。
 NGOの問題につきまして、NGOの人たちの一部を参加させないと決定した判断自体は、確かに間違っていると私は思います。思いますが、その後田中大臣に御指導いただいて、これは後に判断を戻しているわけでございます。ということで、そのこと自体、判断を間違え、さらに判断を戻したわけでございまして、結果的には正しい判断になったわけですので、そのことについて責任を、処分をということではないと考えております。
    〔委員長退席、首藤委員長代理着席〕
東門委員 大臣としてそういう答弁は仕方がないのかもしれませんが、同じだと思うんで、すごく均衡を欠いていると思うんです、東郷オランダ大使に対する処分と野上前次官に対する処分。
 今、御本人が事務次官の職を辞した、それはすごく重いものだということ、それはよくわかります。しかし、あの騒動、あの国会を混乱させて、停止させて、長いことやった、あれは田中さんだけのことじゃないですよね。田中大臣に、国家公務員として、公務員の行動、やるべきこと、もうよく御存じだと思いますが、上司に対して、本当にあの場でああいうような形で対応していく、それはどうなんでしょう。全然問題ないと。本当のことを言ったかどうかはわかりません、事実はだれが言ったか、真実はどうかわかりませんが、そう言ったのだから信じるしかないということが大臣の見解ですか。私にとっては、すごく不均衡な、均衡のとれない処分だと見えるんです。それをもう一度お聞かせください。短くて結構です。
川口国務大臣 今回の人事上の措置につきましては、私は、その後さまざまな方からさまざまな御意見をいただいております。今、東門議員がおっしゃったような御意見もございましたし、重過ぎる、軽過ぎる、さまざまな御意見の御表明を伺わせていただきました。
 私は、処分の理由については非常に明快であると思っておりまして、これについて、私としては、調査あるいはヒアリングを踏まえて相当自分としても考えて、その結果としてこの処分、この措置が正しいと思って決めたわけでございます。
 それで、野上前次官のNGOとの関係につきましては、これは確かに野上前次官は一時的に判断を間違えているわけでございます。ただ、判断を間違えたわけですけれども、それを田中前大臣に御指導をいただいて直したわけでございますから、それについては、判断を間違えたということ、一時的に間違えたということについては、私はこれは処分の対象にはならないと考えております。
東門委員 東郷大使の処分理由の中に、これは記者会見においての大臣の答弁の中ですが、ふさわしくない言動とは何ですかとの質問に対して、さまざまあるが差し控えたいと答えられております。そして、処分理由が余りにも抽象的であると聞き返されると、いろいろこれは申し上げるとかなり事実関係としてはあると発言されていますが、その具体的内容の説明は一切ありませんでした。
 今、本当に外務省に国民の目が集中しています、外務省はどのように変わっていくんだろうと。外務省の職員の意識はどのように変わり、外務省が本当に国民から信頼される省庁として、本当に外交を行っていける省庁として、透明性の高い、大臣のおっしゃる三つのキーワード、それがしっかり実践できる省庁としてどのように変わっていくのかと注目されているところなんですが、大臣の今回の説明の中で、やはり、事実関係がしっかりと国民の目にもわかるように説明されなければ私は納得いきませんし、外務省はそのままだろうな、まず、「変える会」などを発足させても変わらないだろうなとしか思えないんです。
 ですから、そのおっしゃったふさわしくない言動、あるいはさまざまあるが差し控えたい、あるいは事実関係としてはある、そういうものをこの外務委員会で、例えばということで例を幾つかでもお挙げいただけたらいいのではないかと私は思いますが、いかがですか。
川口国務大臣 外務省に対する、あるいは外交に対する信頼を国民の前で回復をしなければいけないということは全くおっしゃるとおりでございまして、それをやっていくことが私の務めであり、外務省の務めであると思って今やっているわけでございます。その一つとして、より外務省が透明性を高めた役所になるということは大事なことだと考えておりまして、その方向で今いろいろ検討を進めています。
 ただ、そのことと、すべての情報を明らかにすることができるかどうかということとは別な問題であるというふうに申し上げざるを得ないと思います。相手国の問題もありますし、それからプライバシーの問題もあります。そういった問題についてはきちんと守るという姿勢がなければ、逆に外務省への信頼は落ちるということになって、外交に悪い影響を与えるということだと思います。
 難しいのは、この兼ね合いをどこに置くかということでございまして、このケースにつきましては、さまざまな調査あるいはヒアリングを関係者からした段階で、なかなか、公表されるということを前提にしますといろいろなことを話してもらえないという状況がありますので、これについては発表をしないという約束で話を聞いているわけです。という意味で、そういう約束事の上にのっとったヒアリング調査に基づいた処分ですから、私から、それはこういうことです、こういうことですということを申し上げるのは差し控えたいということで言ったということです。
 ただ、あえてふさわしくない言動があったということについての御質問がございましたので、例えば、多少抽象的ですけれども例を挙げさせていただきますと、部下に対して、将来への人事に悪い影響があるということをほのめかして、鈴木議員の意に沿った対応をとるように指示したケースというようなことがあるということを一例として申し上げたいと思います。
東門委員 今回の処分対象となった職員は、直接あるいは間接的にだと思いますが、鈴木議員との関係が理由であるというふうに外には見えるわけですが、その鈴木議員が外務省に介入していった事実過程あるいは背景の説明がなければ、外務省は本当に変わってはいかない。外務省の職員もわからないんじゃないかと思うんですね、ごく一部の調査をされた方々以外は。
 今大臣がおっしゃるように、これは約束をして話してもらったから出せない、わからないでもないんですが、しかし、なぜこのような処分、この人たちにはこれ、例えば東郷さんにはこのような処分、野上さんにはこれだというのがわからない、そういうのでは困るんじゃないかと思うんです。
 そういう意味でも、やはりどのようにして鈴木議員が介入していったか、そういうものはしっかりと説明していただかなければいけないと私は思うんですが、いかがでしょうか。
川口国務大臣 委員がおっしゃるように、処分を受けた当人がいかなることによって処分を受けたかということが明快でなければならないと思います。これについては、本人にきちんと話をしておりますので、明快であると思います。
 どういうプロセスで外務省がそういうような状況になったかということについては、委員おっしゃるように、これは再発防止という観点からきちんと総括をして必要な反省をするということが大事だと思っております。これは、組織の外の人間が分析をして、そういうことがあったから問題だということを言うのではなくて、みずからきちんと総括をし反省をする過程というのが大事だと私は思っておりまして、そういうふうに省内の職員には言っております。
 その作業は現在行われていると私は考えております。幾つか、勝手連的なというとちょっと言葉がおかしいかもしれませんが、幾つかのグループでそういった作業も始まっていると私は聞いておりますので、望ましい動きであると思っています。
 それから、ある処分の内容がどれぐらい外部の方にわかりやすいかという問題は確かにあるわけで、わかりやすい方がいいということはもちろんそういうことでございますけれども、先ほど申し上げたような理由で、必ずしも細かいことについては外に言うことはふさわしくない事情がこの件についてはあると思っております。
 処分の基本は、外部の人がそれに賛成をするかということではなくて、ある組織として、その組織のルールにのっとって公正な処分が行われたかどうかだというふうに私は思っておりまして、外務大臣として、この点については十分に注意を払い、公正な処分をいたしたつもりでおります。
    〔首藤委員長代理退席、委員長着席〕
東門委員 では次に、地位協定についてお伺いいたします。
 前回の委員会でも確認しましたが、昨年六月の在沖縄米軍兵士による女性暴行事件の判決が、先月の二十八日、那覇地裁で言い渡されました。その判決では、強姦の事実を認定した上で、被害者の受けた精神的、肉体的苦痛も大きく、刑事責任は重いとして、懲役二年八カ月の実刑判決を言い渡しております。
 これについて福田官房長官は、二十八日午前の記者会見において、その判決と日米地位協定の問題はちょっと違うのではないかと述べられて、地位協定の見直しと今回の事件は直接関係がないとの認識を示しておられます。この発言には、沖縄県民としては本当に落胆せざるを得ません。
 この事件は、県内初の起訴前の身柄の引き渡しとなった事例ですが、米側が示した身柄引き渡し条件をめぐって日米両政府の交渉が難航し、引き渡しまでに時間を要したため、運用改善の実効性が改めて問われた事件であるということからです。
 当外務委員会でも、その直後に現地の視察を行い、これはこの間も申し上げましたが、閉会中にもかかわらず、日米地位協定の見直しに関する件を全会一致で決議いたしました。まさにこれは現在の地位協定の問題を象徴した事件です。それなのに、先ほどの官房長官の発言です。
 そこで、政府は、昨年六月の女性暴行事件が発生した理由及び背景をどのように分析しておられるのか、そして、いかなる理由でこの事件と地位協定の見直しは関係がないとの認識に至ったと見ておられるのか、お伺いしたいと思います。
藤崎政府参考人 お答え申し上げます。
 今委員御指摘のとおり、このウッドランドにつきまして、昨年六月二十九日の事件の発生後でございますが、取り調べ及び引き渡しがございまして、このたび、二年八カ月という今委員が言われたとおりの判決に至った次第でございます。
 今、この事件が起こった理由と背景についてということでございますけれども、この事件の起きた理由、背景等につきましては、まさに今委員も御指摘のとおり、裁判の過程で議論されたことでございますので、政府としてこの判決について云々するのはいかがかと存じます。
 他方、今言われたとおり、沖縄県内で初めて実現しました身柄引き渡しということでございますけれども、まさに平成七年十月二十五日の合同委合意に従いまして起訴前の引き渡しが実現したわけでございます。私どもは、この間に四日間を要したわけでございますが、より速やかな引き渡しが今後とも実現するように一生懸命努力しているところでございます。
 この合同委合意、今申しました平成七年十月の合同委合意と申しますのも地位協定の運用の改善の重要な一環でございまして、この合意に従いまして速やかな引き渡しが実現するよう努力してまいりたい、かように考えております。
東門委員 私が質問したのは、判決がどうのこうのじゃないんです。なぜこの事件が発生したか、発生した理由及び背景をどのように分析していますかと。判決の中でいろいろ言われましたということですが、政府としてどういう見解を持っておられますかというのが一点。
 それから、今の局長の答弁は私よくわからなかったんですが、運用の改善が速やかに行われたという、より速やかに行われるようになったということなのか、これから努力していくということなのか、ちょっとそこのところはっきりしていただきたいと思います。
藤崎政府参考人 先生が今御指摘の二点でございます。
 一点は、事件発生の理由と背景についての政府の見解ということでございますけれども、本件は、御案内のとおり司法にかかわる問題でございまして、外交当局がこの事件の発生の理由、背景等についてコメントをすることはいかがかと思いますので、その点については差し控えさせていただきます。
 今私が申しました合同委合意との関係につきましては、これは平成七年十月二十五日に、沖縄における少女暴行事件の後に、起訴前の引き渡しということについての道を開いたわけでございます。これも委員よく御承知のとおりでございますが、起訴前の引き渡しについて合意を行ったのは、これは日本だけでございまして、ほかの国には一切ない。これは、接受国として一番引き渡しが早い合意でございます。
 これも、いわゆる合同委合意という形、すなわち運用の改善をもってしたわけでございますが、今回四日間引き渡しにかかったことについて、沖縄県民だけでなく国民に広く、より速やかな引き渡しが実現されるべきであるという声がございましたし、私どもとしても、今後ともより速やかな引き渡しが実現するように努力してまいりたい、こういうことでございます。
東門委員 では、引き渡しまでに四日間かかったということ、それはアメリカ側にはちゃんと抗議あるいは要請の形で申し入れられているのでしょうか。
藤崎政府参考人 去年の七月の引き渡しまでに、これは連日米側と折衝をして速やかな引き渡しを求めたわけでございます。この点については、その際、国会等でも議論をいただきまして、御説明した次第でございます。
 その後も、御案内のように、起訴前の引き渡しが速やかに実現するようにということで議論を重ねているということでございます。
東門委員 連日引き渡すようにとアメリカ側に要請して、四日かかった。その四日間に基地の中でどういうことが行われていたか、私、これは前回の委員会で質問しまして、答えは返ってきませんでしたが、局長なら答えていただけると思います。
 基地の中に沖縄の弁護士が呼び入れられまして、日本の法律についてレクをさせられたという報道がありました。その報道について、事実はどうなんでしょう。局長は把握しておられますか。
藤崎政府参考人 今委員が御指摘の報道があったことは承知しております。
東門委員 そして、外務省としてもそのときにそれは把握しておられましたか、その事実を。
藤崎政府参考人 一般論で恐縮でございますけれども、被疑者が弁護士と面会するということにつきましては、これは日本国におきましても米国におきましても被疑者の権利でございまして、私どもとして、弁護士と面会することについて問題があるというふうには考えておりません。
東門委員 その四日間で、私はいろいろなことが行われたと思います。それに対して、今の局長の答弁はしっかり聞きましたけれども、運用の改善といつもおっしゃいます。いかにもそれがうまく機能しているかのように、しっかりとなされているかのように聞こえますが、運用の改善などは全然やられていない、私の目にはそうしか映らないんですよ。
 逮捕状が出て、要請をして、四日もかかってやっと引き渡される。確かに起訴前の身柄の引き渡しにはなりましたけれども、いつも担当北米局が、日本だけです、接受国の中では日本だけですよと鬼の首でもとったようにおっしゃいますが、私はよその国との比較をしているのではないんですよ。沖縄のこと、日本のことを話しているんです。そこでどうなんですか、被害者の立場でどうなんですかということをお話ししているので、そこから見ましたら、運用の改善なんて一切なされていないという感がします。
 その件についてはまた私は質問をしていきたいと思いますけれども、残りがあるので、ちょっと急ぎます。
 今回の判決に対して米軍の嘉手納基地は、日米地位協定に示されているとおり、日本の司法判断を尊重し、全面的な協力を続けるとのコメントを発表しています。政府として、アメリカ側は今度は全面的な協力をしたと理解しておられるのかどうなのか、その認識をお伺いしたいと思います。
藤崎政府参考人 米軍は捜査につきまして協力したということは事実でございます。他方、私どもといたしましては、今申しましたように、より速やかな引き渡しが実現するように今後とも努力してまいりたい、こういうことでございます。
東門委員 いつも、より速やかにとおっしゃるんですけれども、今回の事件の公判においても、被告側は被害者の女性を本当に侮辱するような発言をしている。それはもう耳に入っていると思います。判決においても、犯行後も被害者の心情を深く傷つけているとして、被告側の態度を断罪しております。これらの事実は、外務省あるいは在日米軍が常に口にする綱紀粛正、より速やかに、よりスムーズにと、そういうものが全く実効性を有していないということを証明しているのではないかと思います。
 それで、事件の防止のためにですけれども、夜間外出禁止のような実際の行動あるいは規則こそが必要ではないかと考えますと、この間も私は大臣には伺いましたけれども、いかがでしょうか、大臣、大臣の認識を聞かせていただきたいと思います。
 この事件は夜中に起こっているんです。夜間です。本当に深夜に起こっている事件。事件が起こると、綱紀粛正を徹底します、教育をしっかり強化していきますというのが米軍側からの答弁。外務省も同じようなことを言う。ところが、事件、事故はなくならない。ほとんどが夜間ですよ。
 そういう意味で、夜間の外出禁止。それに対して、せんだっても伺いました、アメリカ側はかなり消極的です。それに対して政府はどのようにして臨まれるか、ぜひ御意見を。――いや、これは大臣にお願いしたいと思います。委員長、大臣にお願いします。
川口国務大臣 沖縄において米軍人軍属、それからそれらの人たちの家族が事故を起こさない、事件を起こさないということは大事なことだと、私は今回沖縄に行って改めて認識を深く強くいたしました。
 この点につきましては、私は先日、三月の半ばでございますけれども、沖縄に行きましたときに、グレッグソン四軍調整官とお会いをいたしまして、お話をいたしまして、申し入れをしたわけでございます。
 米側が綱紀の粛正に取り組むというのは、まず必要なことで、重要なことでございます。それはもちろんのことですけれども、さらに、国や米軍や地方自治体が協力をして、こういう事件、事故が防止されるように取り組むことが大事であるわけでして、こういった関係の人たちで構成をする事件、事故防止のためのワーキングチームで引き続き努力をしていくことが必要だと思います。
 夜間外出制限につきましては、例えば、昨年の七月の十三日の事件・事故防止に関する臨時会合で合意をされました沖縄県内で行われているシンデレラタイムキャンペーンの米軍の協力は、夜間におけるおっしゃったような事件、事故の防止に効果のある措置であるということを考えております。政府としても、その強化に引き続き協力をしていきたいと考えております。
東門委員 シンデレラタイム、この間も出ましたので、もうその件については申しませんが、米軍人軍属あるいは家族による犯罪というのはふえているという事実もぜひわかっていただきたいと思います。
 そして、その事後処理がどうなっているか、一点伺わせてください。
 これは、平成十二年の十二月、沖縄県の、今普天間飛行場移設先と政府が一生懸命頑張っておられるあの名護市で起こった事件ですが、これは米軍人の家族の未成年の男の子ですが、十九歳、十八歳、そして十七歳の三人が、沖縄県読谷村内のコンビニエンスストアの駐車場に駐車をしてあった乗用車を盗み、それを運転して名護市まで行き、そして紳士服店に突っ込んで、同店舗及び商品に損害を与えました。そこも大きな問題なんですが、今回はその後について伺いたいと思います。
 平成十三年三月十六日に、その三人のうちの一人の父親が被害者に対し四十万円を支払った。A、B、CのCとしましょう、Cについては示談が成立しております。ところがあとの二人については、それはいまだかつて何もされておりません。判決、これは地裁に送られまして、民事訴訟を提起されて、そして総額約百六十八万円の支払いが命じられたわけですが、今もってまだそれが支払われない。
 地位協定によりますと、これは地位協定の十八条で、支払いの義務があるのは軍人軍属、現在その任務に当たっている人たちですね。軍人であり軍属であると。その家族は入ってないんです。しかし、その家族によって引き起こされた事件、事故。今の場合は未成年ですね、十九歳、十八歳、十七歳。その子供たちによって引き起こされた今回のような事件であり事故の場合はどうなるのでしょうか。被害者は県民、加害者は軍人の家族、ところが、それに対しては米軍も日本政府も補償しないというような、そこに大きな穴があるんですよ。
 ですから、ぜひ日米地位協定、いろいろな観点があると思いますが、これも一つであるということ、今私は実際の件をお話ししたわけですが、そういう意味からも、政府があるいは米軍にちゃんと折衝して、この分を支払うと額はちゃんと明示されているわけですから、そういうことをすべきではないかということを申し上げているわけですが、いかがでしょうか。
藤崎政府参考人 米軍人の、あるいは軍属の家族の行為による犯罪というものにつきましては、これは非常に大変問題であるという意識は政府としても有しております。
 先般、川口大臣が沖縄に出張いたしました際にグレッグソン四軍調整官と会いました際にも、この家族等の犯罪あるいは行為による被害といったものについては問題であるということで、綱紀粛正を先方に要請したところでございます。
 この軍人の家族による被害でございますけれども、これにつきましては、地位協定そのものではございませんけれども、民事によりまして、当事者間の示談等によって解決することではございますけれども、同時に、この判決が出まして、あるいは示談が調いまして、その結果を実施するということにつきましては、当然これを尊重してもらわなければならないわけでございまして、きちんと行われない場合にはこれを慫慂していくということで、本件につきましては、地位協定十八条の運用に係ります防衛施設庁那覇防衛施設局から米軍に申し入れているところでございます。
東門委員 防衛施設局から米軍に申し入れて、今現在、ではどうなっているか、どこまでいっているか、把握している分を教えてください。防衛施設庁の方ではこれは確かに軍に要請しているけれども、軍からは何の返事もない、軍は何のアクションもとっていないというふうに聞いております。局長、そこのところはどのように把握しておられますか。
藤崎政府参考人 まだ回答に接していないということはそのとおりでございますけれども、本件補償について誠意を持って対応すべきであるということは、防衛施設庁も、また私どもも同じ考えでございますので、米側に申し入れてまいりたい、かように思っております。
東門委員 この一点をとってみても、やはり地位協定は今のままではいけないということなんですよ。
 四十年以上も前につくられた地位協定、手つかずで、いや大丈夫です、運用の改善でできます、合意議事録が出ています、公表しておりますと言うんですが、公表している議事録を、その公表している分だけでも出してくださいと言って二週間、まだ出てこない。公表している分だけですよ。しかもそれを限定して、量が膨大で、三メートル四方もあると言うものですから、では、沖縄県から要請が出ている十一点の項目について、合意している分、全部合意しているかどうかわかりません、日米合同委員会で協議をして合意された分、公表した分だけでも下さいと言っているんですが、二週間以上たっていますが、まだ出てこない。こういう状況では、私は、やはりこれは本当に不公平な協定、一日も早く改定すべき協定だと思います。
 今のように、被害を受けて、ではその後はどうするかといえば、防衛施設局がやります、軍に申し込んでおります、しかし今のところ何もありません、それではいかないでしょう。ですから、県民がアメリカ軍の基地の存在に対して怒りを持つわけです。ちゃんとフォローをしないで、いや、沖縄県民の負担は軽減しますと。負担はどんどんどんどん重くなっていくだけじゃないですか。負担を軽くするという気持ちが本当に政府のサイドにおありでしたら、地位協定の改定には踏み込みますと、外務委員会でも決議をしておりますから、私はそれをやっていただきたい。全部一斉にやることができなければ、この部分からでもやりますということが必要なのではないでしょうか。
 外務大臣、もうこれまでに地位協定を何度もお読みになって、地位協定のやはりここはおかしいと思うところもきっと出てきておられると思います。この件だけからでもよろしいです。外務大臣の、地位協定に関して、見直しに関する御意見をお聞かせください。相手がありますからということ、もちろん交渉には常に相手があります。しかし、ここの誠意が問題なんです、熱意が問題なんです。そこをお聞かせいただきたいと思います。
川口国務大臣 まず、沖縄の県民の方に偏っている負担ということについては、私はこれはきちんと認識をいたしておりますし、できるだけそれを軽くするための努力をしたいと考えております。
 地位協定との関係につきましては、私は、これは再三再四国会の場で申し上げさせていただいておりますように、その時々の問題には、その時々、運用の改善によって対応をしていくのが合理的であるということはそのように思っておりまして、その考え方のもとで運用の改善に取り組んでいきたいという考えでおります。その上で、運用の改善によって十分でないという場合には、これは委員も今おっしゃられましたけれども、相手の国もあることですけれども、地位協定の改定も視野に入れるということになろうかと思います。
 この運用の改善の問題につきましては、二月にパウエル国務長官とお目にかかりましたときにも、私はこのお話はさせていただいておりまして、犯人の問題につきましても、刑事裁判の手続の問題につきましても、それから環境問題につきましても、これについては運用の改善について密接に協議をしていくことが大事であるということを申し上げたところです。
東門委員 運用の改善がいかにスムーズにうまくいっているか、その事例をこの委員会に出していただきたい。地位協定で運用の改善はこのようにやっています、このようにうまく運んでいます、このようになされていますということをぜひ出していただきたいと思います、その実例を。そうすることによって、ああこれだけ運用の改善が生きているんだというのであれば、これ以上地位協定について質問はしません。今までのところ、運用の改善、私たちには一切見えません。そのことを申し上げているんです。
 判で押したように、運用の改善で、できなければ改定も視野に入れてとおっしゃいますが、本当に大臣、それをおわかりなんですか。今私、事例も挙げました。被害を受けるのは沖縄県民なんですよ、国民なんですよ、沖縄だけじゃなくていろいろなところで。それを政府は常に、それだけ、一つだけの答え方しかできない。動いていないという証拠じゃないですか。
 大臣の熱意と、副大臣以下、北米局の熱意と本当に誠意を持ってアメリカに当たれば、私は可能だと思います。一歩も動かないうちからそれだけ言っていたら、話になりませんよ。そうであれば、沖縄の基地は本当に減らしてください、海兵隊は出してくださいという沖縄県民の気持ちがわかると思います。政府の努力は、ただ、やります、負担の軽減に努めます、そして振興策をします、それだけじゃないということを強く申し上げて、きょうは終わります。
 ありがとうございました。
     ――――◇―――――
吉田委員長 次に、新たな時代における経済上の連携に関する日本国とシンガポール共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件を議題といたします。
 政府から趣旨の説明を聴取いたします。外務大臣川口順子君。
    ―――――――――――――
 新たな時代における経済上の連携に関する日本国とシンガポール共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件
    〔本号(その二)に掲載〕
    ―――――――――――――
川口国務大臣 ただいま議題となりました新たな時代における経済上の連携に関する日本国とシンガポール共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。
 平成十二年十月の我が国とシンガポールとの間の首脳会談において、二国間経済連携協定締結のための交渉を開始することで意見が一致したことを受け、平成十三年一月以来、両政府間で協定の締結交渉を行ってまいりました。その結果、本年一月十三日にシンガポールにおいて、我が方小泉内閣総理大臣と先方ゴー・チョクトン首相との間で、この協定の署名が行われた次第であります。
 この協定は、我が国とシンガポールとの間で貿易及び投資の自由化及び円滑化を一層進める我が国初の自由貿易協定であり、金融サービス、情報通信技術、科学技術、人材養成、貿易及び投資の促進、中小企業、放送並びに観光といった幅広い分野での連携を強化するものであります。
 この協定の締結により、両国の経済が一段と活性化され、両国間の経済上の連携が強化され、ひいては両国間の関係がより一層緊密化されることが期待されます。
 よって、ここに、この協定の締結について御承認を求める次第であります。
 何とぞ、御審議の上、本件につき速やかに御承認いただきますようお願いいたします。
吉田委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
 次回は、来る四月十日水曜日午前十時二十分理事会、午前十時三十分委員会を開会することといたしまして、本日は、これにて散会をいたします。
    午後三時四十七分散会


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