衆議院

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第8号 平成14年4月10日(水曜日)

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平成十四年四月十日(水曜日)
    午前十時三十五分開議
 出席委員
   委員長 吉田 公一君
   理事 浅野 勝人君 理事 石破  茂君
   理事 小島 敏男君 理事 坂井 隆憲君
   理事 首藤 信彦君 理事 中川 正春君
   理事 上田  勇君 理事 土田 龍司君
      今村 雅弘君    金子 恭之君
      小坂 憲次君    高村 正彦君
      高木  毅君    中本 太衛君
      丹羽 雄哉君    細田 博之君
      水野 賢一君    宮澤 洋一君
      望月 義夫君    伊藤 英成君
      金子善次郎君    木下  厚君
      桑原  豊君    前田 雄吉君
      丸谷 佳織君    松本 善明君
      東門美津子君    松浪健四郎君
      鹿野 道彦君    柿澤 弘治君
    …………………………………
   外務大臣         川口 順子君
   外務副大臣        植竹 繁雄君
   外務大臣政務官      今村 雅弘君
   外務大臣政務官      松浪健四郎君
   外務大臣政務官      水野 賢一君
   経済産業大臣政務官    下地 幹郎君
   会計検査院事務総局第一局
   長            石野 秀世君
   政府参考人
   (防衛施設庁業務部長)  冨永  洋君
   政府参考人
   (外務省大臣官房長)   北島 信一君
   政府参考人
   (外務省大臣官房審議官) 林  景一君
   政府参考人
   (外務省大臣官房参事官) 西林万寿夫君
   政府参考人
   (外務省アジア大洋州局長
   )            田中  均君
   政府参考人
   (外務省経済局長)   佐々江賢一郎君
   政府参考人
   (農林水産省総合食料局長
   )            西藤 久三君
   政府参考人
   (経済産業省大臣官房審議
   官)           佐伯 英隆君
   外務委員会専門員     辻本  甫君
    ―――――――――――――
委員の異動
四月十日
 辞任         補欠選任
  原田 義昭君     金子 恭之君
  宮澤 洋一君     高木  毅君
同日
 辞任         補欠選任
  金子 恭之君     原田 義昭君
  高木  毅君     宮澤 洋一君
    ―――――――――――――
四月十日
 テロリズムに対する資金供与の防止に関する国際条約の締結について承認を求めるの件(条約第九号)
同月八日
 沖縄の新米軍基地建設反対に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第一三五四号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 会計検査院当局者出頭要求に関する件
 政府参考人出頭要求に関する件
 新たな時代における経済上の連携に関する日本国とシンガポール共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第一号)


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     ――――◇―――――
吉田委員長 これより会議を開きます。
 新たな時代における経済上の連携に関する日本国とシンガポール共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件を議題といたします。
 この際、お諮りいたします。
 本件審査のため、本日、会計検査院事務総局第一局長石野秀世君の出席を求め、説明を聴取し、また、政府参考人として外務省大臣官房長北島信一君、大臣官房審議官林景一君、大臣官房参事官西林万寿夫君、アジア大洋州局長田中均君、経済局長佐々江賢一郎君、防衛施設庁業務部長冨永洋君、農林水産省総合食料局長西藤久三君、経済産業省大臣官房審議官佐伯英隆君の出席を求め、それぞれ説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
吉田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
吉田委員長 これより質疑に入ります。
 質疑の申し出があります。順次これを許します。最初に、丸谷佳織君。
丸谷委員 おはようございます。私は、この日本・シンガポール新時代経済連携協定に賛成の立場から質問させていただきたいというふうに思います。
 この協定は、一九九九年に、当時の小渕総理とシンガポールのゴー・チョクトン首相の首脳会談で産学官による共同検討会の設置を合意してから、歴代の総理、森総理とゴー・チョクトン首相の首脳会談、そして、ようやく、二〇〇二年、本年一月に、小泉総理とゴー・チョクトン首相の首脳会談で協定に署名ができたという、いわば日本政府の三代歴代首相の悲願がようやくかなったと言ってもいい協定だというふうに思います。
 その上、我が国経済の活性化、またアジア地域との経済の連携の強化という面、また、協定の内容を見ましても、投資あるいは貿易のみならず、人材の養成ですとか金融サービス、また情報通信等、幅広い分野を網羅している協定としまして評価をさせていただいております。
 その一方、一言言わせていただけるのであれば、一九九一年にマレーシアのマハティール首相から、本協定と全く内容が一致するものではないものの、FTAの、この示唆があった。今までの十何年の間、各国の動向をにらみつつ、また環境整備を図りつつ取り組んでこられたというふうには思うのですけれども、ちょっと遅かったのかな。我が国がこの経済の流れから取り残されつつある状況にもなったという批判の声も、私は免れないものがあるというふうに思います。
 その上で、この協定の意義をまずお聞かせください。
植竹副大臣 丸谷委員にお答えいたします。
 この日本とシンガポールの経済連携協定は、委員御指摘のとおり、我が国にとりましては、地域間の協定というものは初めてのことでございます。
 その趣旨は、丸谷委員からお話ございましたように、二国間の貿易や投資の自由化、円滑化のみならず、幅広い分野において二国間の経済連携を強化するという目的のためにするものでございまして、この締結によりまして、両国間の物品、サービス、あるいは資本、人、情報等々の移動が今まで以上に促進され、そして、両国間の経済が一段と活性化されるということが非常に期待されるわけでございます。
 もちろん、我が国の対外経済政策の基本は、何といってもWTOを中心とする多角的貿易体制の維持強化でありまして、その一方、自由貿易協定は最恵国待遇原則の例外でありますが、政府としては、このシンガポールとの貿易協定の締結を契機といたしまして、多角的貿易体制を補完し、さらに、貿易自由化や経済の活性化ということについて、その一つの方策といたしまして、二国間の自由貿易協定も対外経済政策の一つの重要な柱として今後も推進していこうということでございますので、今回の協定というものは大変重要だと考えるわけです。
 今後とも、多くの国または地域との経済連携を積極的に進めてまいる所存でございます。
丸谷委員 本年一月に行われました日経新聞のアンケートの調査を見ましても、これは、グローバル化に対応した企業戦略について日本企業に行ったアンケートの結果が出ていまして、FTAの意義として企業側のとらえているものは、相手国との相互依存関係が深まるという点、また、日本企業のビジネスチャンスが増大するなど、非常にFTA自体に対する期待感は高まっております。また、日本が現在、交渉、検討を始めていますFTAの中では、日韓に対する期待というのが四一%、日本・シンガポールが三五%、日本・メキシコが一三%という結果になっているわけなんです。
 よく日本は、外交の場面あるいは経済の場面で、アジアの中の一員という位置づけあるいは言い方をするわけなんですが、次に、ASEANという視点でFTAについてお伺いをさせていただきたいというふうに思います。
 小泉総理、本年一月にASEANを歴訪なさいました。この際に、包括的経済連携構想というものを提案されまして、貿易・投資から科学技術、あるいは人材育成、観光など、非常に幅広い分野での連携を提案されたわけなんですけれども、この構想自体はまさに、日本とASEAN諸国とが素直なパートナーとしてともに歩み、ともに進むという、この基本理念を実施するものとして非常にASEAN各国から評価を受けているというふうに評価をしています。また、この提案のより具体的な措置としまして、FTAの締結をASEAN各国が求めているという現状もあると思いますし、タイのタクシン首相も、小泉総理にこのFTA協定締結を求めているというふうにも存じております。
 日本としまして、ASEAN各国からの自由貿易協定締結の要請に今後どのように対応をしていくのか。さまざまな問題も実際あると思います。というのは、ASEAN各国、発展段階もさまざまでございますので、いろいろな問題点もあると思うんですけれども、問題点もあわせてお伺いします。
田中政府参考人 お答えを申し上げます。
 今、丸谷委員お話がありましたように、日本の東アジアにおける外交戦略としても、それから日本の対外経済政策としても、この地域において包括的な経済連携の網の目をつくっていくということは非常に大事なことだというふうに考えています。そういう観点もございまして、本年一月、小泉総理がシンガポールにおいて政策演説をされまして、その中で、ASEANとも包括的な経済連携構想を追求していきましょうということでございました。
 具体的に申し上げますと、日本のそういう戦略という観点から見れば、まずシンガポールで今回経済連携協定が署名をされた、今審議をお願いしているということでございますが、韓国との関係におきましては、ことしの三月に総理が公式訪問をされまして、産官学の研究会を立ち上げる、こういうことで進めていきましょうということになっております。
 ASEANとの関係におきましては、ASEANの十カ国というものが当面対象でございますけれども、ASEANの十カ国というのはそれぞれ発展段階が違うわけでございまして、必ずしもシンガポールで結びました包括的な経済連携協定というものがそのまま当てはまるものではないんだろうというふうに思います。と申しますのは、非常に発展段階が違う国があるわけでございますから、相当きめの細かいことをやっていかないとだめなのではないかというふうに考えております。
 もちろん、相手国の要望ということもございまして、特に、これも丸谷委員御指摘のとおり、タイにつきましては非常に熱心にやりたいということでございますので、ASEAN十カ国との関係も念頭に置きながら、個々の国で、積極的に進めたいという国との関係におきましては、具体的にどういうスコープで、どういうことができるかという議論を続けていきたい、こういうふうに考えている次第でございます。
丸谷委員 ことしの一月に今井経団連会長がシンガポールを訪れて、その際にゴー・チョクトン首相と会談をされています。その際に、首相の方から、小泉総理が提案しましたこの包括的経済連携構想につきまして、すべての分野で急いで合意をしようとしないことだ、三年から五年をかけて包括的協定になればいいというふうに述べたと新聞の記事で読みましたけれども、今田中局長おっしゃいましたように、ASEAN各国、発展段階がさまざまであるということから、一カ国一カ国丁寧に、シンガポールが一つのモデルにはなるんだとは思いますけれども、段階的に、逆に言うと、まだ一気にFTAという連携を進めていけない状態だというような考えでよろしいでしょうか。
田中政府参考人 今、丸谷委員御指摘がございましたけれども、いろいろ発展段階が違うということもありますし、実際の産業のニーズであるとか、いろいろな国の国内の困難性ということも当然あるわけでございまして、そういうものも慎重に考えていかなければいけないというふうに思っております。
 ですから、そういう意味で、FTAの可能性を排除しているわけではございません。ですけれども、まずはどういった形で、シンガポールを一つの参考の例としながら、私どもは、できるだけ幅広い連携をつくりたい、その中で、各国に合わせて、どういうスピードでどういう中身でやっていくのが最も適当かということについて相手国と協議をしてまいりたいというふうに考えております。
丸谷委員 では次に、冒頭副大臣が発言なさいましたけれども、日本というのはWTOという多角的な多国間での交渉というのを基本にしていくんだという御発言もありましたが、このFTAとWTO、実際日本は両方持つわけです。この両方持ったときの今後の戦術について次にお伺いしたいというふうに思うんです。
 日本はこれまで、主要国の中ではFTAというものを持っていなかった数少ない国でありました。これからもWTOの多角的な貿易体制を基本としていくという原則は変わらないというふうに思うんですけれども、このFTAとWTOの関係をどのように整理しているのかということ。
 また、FTAというもの自体はWTOのルールをしっかりと守っていかなければいけないものです。WTOのルールの中では、ガット第二十四条におきまして、事実上すべての貿易を自由化することが求められています。この事実上すべての貿易というものは、WTOの中でも明確な基準というのは確立していないものの、数多くの協定を締結していますEUなどを見てみますと、貿易量の九〇%以上を自由化して主要分野を除外しないことが事実上のルールだとも言えるというふうに思いますが、我が国は、この事実上すべての貿易というのをどういうふうに解釈しているのか、あわせてお伺いします。
佐々江政府参考人 お答えいたします。
 先生が今おっしゃられましたように、二国間自由貿易協定あるいは経済連携協定については、基本的にWTOを中心とするレジームを補完する位置づけで考えております。その関係で二つは両立するものだというふうに考えておりまして、先ほど来述べておりますように、我が国としても、今後このFTAというものを積極的にガットと整合性のある形で推進していく必要があるというふうに考えているわけでございます。
 そこで、FTAにつきましては、先生が今御指摘になられましたとおり、ガットの二十四条、あるいはサービス協定でも別途規定があるわけでございますが、最恵国待遇の例外としてこれを認めているということでございまして、その二十四条では例外のための条件というものを付しているわけでございます。
 この二十四条におきましては、先生が今御指摘になられましたとおり、事実上すべての貿易について規制を撤廃しなければならない、あるいは域外国に関しては、締結前より高度のあるいは制限的なものとしてその障壁を課してはならないということが規定をされているわけでございます。
 そこで、先ほど先生の御質問の、事実上すべての貿易というのはどういうことかということでございますが、これはまさに御指摘のとおり、なかなか一つの、例えば何十%とかいうような確立した解釈というのはないのでございますけれども、しかし主要分野がカバーされていなければいけない。例えば、農業とかある特定のセクターを除外するというようなことはだめであるということ。
 それからもう一つは、そのレベル、貿易量あるいは貿易額に比しまして極めて低いレベルのものはやはりだめだろうということで、EUの締結しております協定は、もう九〇%を超えるような極めて高いものでございますので、基本的にはそういうものがガットの常識では適合するものであるというふうに考えられているということでございます。
丸谷委員 そうしましたら、今の御答弁の中で、とりあえず、例えば分母が幾つであろうと分子が幾つであろうと、その品目について除外されていなければそれはルールにのっとっていると。例えば、FTAを結ぶ二カ国間の域外国からの非難も浴びないという基準ですか。
佐々江政府参考人 おっしゃるとおりでございます。
丸谷委員 そういう基準の感覚を今後実際にお持ちになって交渉を進めていくと、今後非常に難しい交渉になってくるのではないだろうかというふうに私なんかは思うわけです。
 では、実際に今回のシンガポールという例をとってお伺いしたいんですけれども、シンガポール側は貿易量の一〇〇%、日本側は九四%自由化することで、量的にはWTOのルールに反していません。ただ、主要分野というところでは、農林水産品の自由化は、分母が二千二百七十七、分子が四百八十六品目というのに今回とどまっているわけですね。
 この点について、交渉の中でWTOや域外国から非難されるようなことはなかったのかどうか教えてください。
西藤政府参考人 日・シンガポールの経済連携協定の中における農林水産分野の取り扱いでございますけれども、品目的には、先生御指摘のように、考え方として、私ども、WTO無税譲許品目及び実行無税品目を協定の対象にすることによりまして、外務省からも御答弁ありましたように、農林水産分野をそういうことによってカバーすることによってセクター除外という形をとらない、そういうことでWTO協定との整合性を確保しつつ、円満に協定を締結したというふうに思っております。
 また、農林水産分野、その協議の過程においても、一部報道等で農産物の関税の取り扱いが争点になったやの報道もございましたけれども、私ども、実態的に、交渉において、シンガポール自体、農林水産分野が御案内のような状況でございますので、争点にはならなかったというふうに理解をいたしております。
丸谷委員 今回シンガポールは争点にならなかったものの、今後、メキシコですとかあるいは韓国、タイとか台湾の交渉の中では、農業分野というのは今のシンガポールよりも日本が非常に高度な戦術を用いて交渉に取り組まなければいけないというふうに私は理解をしています。
 実際に農林水産品につきましては非常に難しい状況であろうというふうに思いますが、私自身は、農林水産委員会にもおりましたし、日本の食糧の安全保障という観点から、WTOで農林水産品に対しては多角的かつ包括的な交渉をしていくという姿勢は大賛成でございます。
 ただ、一点危惧を申し上げさせていただきますと、WTOとFTAというのが相互補完関係にある中で、例えば、日本は農林水産分野の調整でFTA締結に時間がかかってくる。一方、国際社会の方は、実際そうであるように、FTA締結の加速化が進んで地域統合が進んでくる。それによってWTO自体が軽視をされて、このWTOの場で農林水産品を議論しFTAに反映させていこうと思っていたこの日本の戦略自体というのが弱くなってくるのではないかという気もするんですね。
 そうならないためにも、FTAに積極的に取り組みつつも、WTOというこの議論の場で、しっかりと日本の存在感と説得力、また仲間をつくっていくことが非常に大切だというふうに思うわけなんですけれども、新ラウンド交渉とFTAのバランスのとり方についてお伺いします。
佐々江政府参考人 ただいま先生がおっしゃられましたように、今度のラウンド交渉におきましては、引き続き農業分野も含めまして交渉が行われることになっております。そういう意味で、農業交渉をどういうふうにしていくかというのは非常に大きな課題であるというふうに認識をしておるわけでございますが、同時に、その交渉を今後進めながら、それをも見ながら、他の二国間の取り決め、FTAの可能性について今度検討を進めていくということでございまして、この両者はある意味で密接に連関しているということでございます。
 他方において、諸外国からはより自由化の声もありますし、しかし同時に我が国として必要な保護はしなければいけないということで、その両者の均衡をとりながら、我が国として、FTAがガットとの整合性のとれた形で、批判されないような形で処理をしていくということが重要であるというふうに考えております。
丸谷委員 そうしましたら、農水省にお伺いしたいんですけれども、今後のFTAの交渉時においては農林水産品というのは非常にテーマになってきますが、その際に、農林水産品の関税についてさらなる削減あるいは撤廃を行わないという状況でFTAというのは締結できる見通しというか、その点についてはいかがですか。
西藤政府参考人 先生御案内のとおり、日本国、農林水産分野で申しますと世界最大の農産物純輸入国の状況になっております。その裏側として、食糧自給率という観点で、熱量ベースで見て四〇%、穀物ベースで見て二七%、これも、先進国はもちろんのこと、人口の多い国としては異例に低い状況にございます。
 FTAによる関税撤廃の状況ということでいいますと、私ども、現在、農林水産業の貿易自由化に関連して、構造政策を進めながらその体質強化に取り組んでいるという状況、それと日本が世界最大の農産物純輸入国であることから、当然のことながら、特定の国に対して関税の引き下げ等の実施は既存の輸出国との間で摩擦を生ずるという状況も出てきます。
 先ほど来御説明ありますように、私ども、既にWTO農業交渉が農業協定二十条の規定に基づきまして二年前から開始され、現在三年目に入り、昨年のカタール閣僚会議を踏まえまして、来年の三月までに交渉の態様を決定していくという状況でございます。そういう点で、WTOの中で公平かつ透明性の高い形で対応することが必要だろう。
 一方、先ほど来、メキシコ、韓国との関係、あるいはシンガポールとの関係での御論議ございましたが、シンガポールとの関係での農産物の貿易の割合というのは一・四%でございます。一方、今御指摘の韓国で見ましても四・四%、メキシコでも五・九%というウエート、一割がどうかということはありますけれども、農林水産分野の貿易額の占める割合というのはこういう状況でございます。
 シンガポールとの関係で、先ほど申したような状況で御説明しておりますので、今後とも、我が国の農林水産業に悪影響を与えないという形で対応していきたいというふうに思っています。
丸谷委員 今後の交渉におきまして、外務省とまた農水省と、息の合った、また高度な交渉術を見せていただきたいというふうに思います。
 時間も近づいてまいりましたので、最後に、大臣、現在のパレスチナ情勢についてお考えをお伺いさせていただきたいと思うんですが、よろしいでしょうか。
 ちょっと、通告をしていないものですから、大臣のお考えをお伺いできればというふうに思うんですけれども、日に日に、パレスチナ情勢、最悪の状況をさらに最悪にしているという現状だというふうに思います。本委員会の方でも、随分とパレスチナ情勢というのは審議をされていたわけなんですけれども、大臣の御答弁の中で、例えば、パウエルと電話をして意思疎通を図ったとか、あるいはペレス外相とやりましたとか、あるいは前イスラエル大使の茂田さんをまた現地に送りました等々、御答弁がありました。
 ただ、私の感想では、実際に今まで日本はアラブ諸国あるいはイスラエルと均等におつき合いをしてきたし、この中東和平というのは私たち日本政府としても悲願であるという状況の中で、いろいろな、ペレス外相との電話会談とか、あるいはパウエル国務長官との電話会談というのは、今までの延長線上でしかないんじゃないかという感想を私は持っております。
 今のパレスチナ情勢というのは、今まで停戦合意がなされていた状態とはもうまるっきり違って、いわば戦争状態だというふうな認識をしなければ、また、今までの電話会談あるいは前イスラエル大使を送るというよりも、より積極的な対応と日本の意思表明が求められているのではないかというふうに思うんですね。
 ですから、例えばアメリカあるいはイギリス、EUに対して、元の外務大臣を送られるとか、そういったところの、もっと積極的な働きかけがひとつ必要ではないかという私の考えに対して、大臣、どのように思われるかという質問が一点。
 また、先日新聞を見ていましたら、イスラエルに対しまして、EU欧州委員会のプローディ委員長は、このままパレスチナ自治区からの軍の即時撤退をイスラエルがしない場合に、EUとして対イスラエル経済制裁を検討すべきだというような新聞記事もありました。こういったことに対して、経済措置も日本として可能性は否定できない、否定すべきではないというふうに私は思うんですけれども、この点について大臣のお考えを聞かせてください。
川口国務大臣 現在のパレスチナ、イスラエル情勢が、双方の暴力によりまして暴力の悪循環の状況になっており、これがさらにエスカレーションをしている状況であるということは非常に憂慮をいたしておりまして、先ほど委員おっしゃられましたように、今までも、イスラエルの即時撤退を含む最大の自制、アラファト議長府の包囲をやめる、それで撤退をするということも言っておりますし、また、パレスチナ自治政府に対しましては、イスラエルに対して過激派のテロの攻撃をやめるようにしてほしいということも言っているわけでございます。
 先ほど委員が、今までと同じことをやっているではないかというふうに言われたと思いますけれども、我が国の考え方というのは一貫をいたしておりまして、そういう意味で、今やっていることは、ずうっと、今までの基本的な考え方にのっとってやっているわけです。
 言うまでもなく、これは、イスラエル・パレスチナ紛争につきまして、イスラエル、パレスチナの二国家が、安全が保障され、かつ、相互に承認された境界の中で平和裏に共存することを両当事者が交渉によって合意をするということでございまして、この紛争が解決されるということを希望するというのが我が国の基本的なスタンスでして、これにのっとっていろいろな働きかけを行っているということでございまして、今後も、この基本的なスタンスに立ってさまざまな努力をしたいと思っております。
 具体的にどういうことが可能であるかということについては、情勢の進展を見つつ、それから、この基本的なスタンスに立って我が国として何ができるかということを考えているということでございます。
丸谷委員 暴力の悪循環ということは常日ごろ言われていることで、実はあそこの地域において言われていることですから、現在の状況をまだ暴力の悪循環ということでとらえるのは、私は違うというふうに思います。例えば、火事を消すにも、小さな火事に対して出す水の量と、より大きくなった火事に対して出す水の量というのは違うわけですから、それに対しては機敏な、また、より日本のメッセージ、姿勢が伝わる行動をとっていただきたいというふうにお願いしまして、私の質問を終わらせていただきます。
 ありがとうございました。
吉田委員長 次に、前田雄吉君。
前田委員 民主党の前田雄吉でございます。
 本日は、日本・シンガポール新時代経済連携協定について御質問いたします。
 こうした条約審議に際しましても、外交の実行官庁である外務省に対して本当に信頼が寄せられるかどうか、こういうことが非常に問題であると私は思います。私たちの、国会議員の質問に対して、あるいは資料請求に対して、外務省は誠実に答えていない。私は、これは衆議院の持つ国政調査権に対する挑戦であると思います。私は二週間前に質問に立たせていただいて、全くそのときと状況が変わっていない。本当に川口大臣は外務省を変えるという気持ちがあるんですか、ないんですか。まずお答えいただきたい。
川口国務大臣 そのために全力を尽くしております。
前田委員 でしたら、きょうは、外務省を本当にきょうから変えるんだというお気持ちで真剣に御答弁いただきたいと思います。
 田中大臣の出されました外務省の改革案、それから一年たたないうちに川口大臣は新しい改革案を出されたわけでありますけれども、これは、田中大臣の改革案がだめな部分があるから川口大臣は新しい改革案をつくられたと思うんですけれども、どの点が田中大臣の改革案ではだめで、川口大臣の案ではそれがこういうふうに改正されているという、その御説明をいただきたいと思います。
川口国務大臣 外務省が、河野元大臣の時代から、そして田中大臣の時代につくった、あるいは表明をした改革案、それはそれぞれ非常に重要だと思っておりまして、決して、だめだというふうに全く思っておりませんし、そういうことを言ったつもりもございません。
 他方で、それではなぜあの「開かれた外務省のための十の改革」という形で出させていただいたかということですけれども、これは、河野大臣の時代あるいは田中大臣の時代に行われるとされた改革案が、今の時点で外務省が必要とする改革を考えたときに、必ずしも十分でないということを考えたからでございます。
 例えば、どういうことで十分でないか。政と官のかかわり合いということについてきちんと言う必要があるだろう。もう一つの例を申し上げますと、NGOの方との新しい関係、これをどうするかということについても明示的に取り上げられていなかったといったようなことが、例示でございますが、ございます。それからさらに、今までの改革案について何をいつまでにやるというそのタイムテーブル、工程表といいますか、それが示されていない。これを今回のその改革案をつくる過程できちんとしていって、しかも、その後、今の「変える会」のメンバーでそれをちゃんとフォローをしていただくというプロセスをつくるということが大事であるということを考えたということでございます。
前田委員 川口大臣が出されました「開かれた外務省のための十の改革」、ここの冒頭に、大臣が重視される透明性、スピード、実効性をキーワードに以下の改革を行いますということで、改革案が並んでいるわけであります。私は、全くこの三つの言葉が実体が伴っていない。私がその例を一つ挙げたいと思います。
 今、皆さんのお手元に資料が配付されたと思います。私が一月の二十五日に、田中大臣時代の更迭者、更迭日、そして現在の職について一覧表をいただきたい、こう外務省に対して資料請求をいたしました。そうしましたら、皆さん、資料一を見てください。二十五日に要求して、二月七日になって出てきた資料はこれであります。これは、どういったおつもりでこれを出されたのか、どの方が責任を持って出されたのか。大臣、御説明いただきたい。
川口国務大臣 これは、この前も申し上げたことでございますけれども、外務省としては、私としては、要求をいただいた資料についてはできるだけ早くお出しをするようにということで話をいたしておりますけれども、また御迷惑をおかけしているということについては残念に思います。
 ただ、同時に御理解をいただきたいことは、現在、さまざまな調査あるいは資料の御要求がございまして、限られた人数でそれをこなしている。今、全部の資料の要求が何件あるかということはちょっと申し上げられないんですけれども、相当な数がございまして、国会その他あるいは日常の業務をやりながらこれらの御要求にできるだけ早くお答えするということが、職員に対してのかなりの負担になってきているということも事実でございまして、私は、そういったことについてもぜひ御理解をいただきながら、なおかつ私どもも一生懸命に対応させていただきますので、そういうことで御理解をいただきたいと思います。
前田委員 確かに、多くの疑惑が外務省にあり、資料請求が多いかもしれない。しかし、余りにもひどくありませんか。
 次、資料二を見てください。
 私が一月の二十五日に要求しまして、再度、何度にもわたって外務省に電話をかけ、今度出てきたのが二月十九日。何ですか、これは。全く要求していない資料じゃありませんか。川島事務次官以前の四人の事務次官経験者の氏名、退職日、現在の就職先について、こんなこと聞いていませんよ。何でこんな違った資料を出すんですか。
 そして、もっとひどい、二月二十五日、一カ月たった後で出してきた資料がこれですよ。これは、実は八枚にわたってこの表が続いているんですよ。田中前大臣在任中課長級以上の人事異動の異動日、異動内容、こんなこと聞いていませんよ。これが八枚にわたって続いているんですよ。全く外務省は我々の国政調査権に対して挑戦しているとしか思いようがない。
 そして、我が党がプロジェクトチームとして大体同じような時期に資料請求をしました。再度、田中外務大臣時代の更迭者の氏名、更迭日、そして現在の職、私企業に入っている場合は例えば何とかのメーカーとか、そういう形でもいいから出してほしいという資料請求をこの三月の頭に出しました。それから一カ月、何も出てきていないじゃないですか。
 そういった、隠そう隠そう、そんなことで日本の外務省はよくなりますか。全く何も変わっていないじゃないですか。だから、先ほど大臣が言われた十の改革の冒頭にあった透明性、スピード、実効性、全くこの三つの言葉は空虚としか言いようがない。こういうけじめのなさが日本の外務省をだめにしているのではありませんか。腐らせている。
 外交機密費、それから在外公館の猫ばば事件、プール金、裏金、この公金の流用の監督責任を問われて外務次官の皆さんはやめられていったわけでありますけれども、林貞行駐英大使、柳井俊二駐米大使、川島裕元次官、退職金は幾らでございますか。――大臣、大臣、大臣です。
北島政府参考人 お尋ねの林前駐英大使、柳井前駐米大使及び川島前事務次官の退職金の件でございますけれども、国家公務員の退職金につきましては国家公務員退職手当法に定められた一定の基準に従って支給されますので、委員の方におかれても大方の見当はつかれているということではないかと思います。
 他方、特定職員の退職金の額につきましては、個人情報に当たりますので、これは、外務省に限らずどちらの役所でもそういうことだと思いますけれども、公表を差し控えさせていただきたいと思います。
前田委員 これ、おかしくありませんか。国民が税金を出して、いい仕事をしてほしい、そんな思いで納税していると思うんです。この国会でそうしたことがチェックできないのだったら、どういうことができるんですか。
 実際、農林水産省の方では、農林水産委員会で、BSEの折に退職された熊澤次官の額面が答弁の中で出てくるではないですか。一つ例を挙げましょう。我が党の楢崎議員に対しての、これは二月二十八日の農林水産委員会です、きちっと出ております。そして、一月二十四日の予算委員会で小泉総理も、この熊澤前事務次官の勧奨退職扱いになっていることについて、詳しく相談したいとか、割り増しになっていることについても、はっきりと総理も言っているんですよ。それから、まだまだ予算委員会の中でもこの熊澤次官についての退職金の額が出てきます。何で外務省だけは隠ぺいするんですか。
北島政府参考人 農水省の熊澤前次官の退職金につきまして、そういう議論があったことは私も承知しております。
 先ほど私が申し上げましたのは、一般的に個人情報に当たるため、公表を差し控えるというのが政府の考え方であるということを申し上げたわけですが、今議員が言及されました、勧奨退職かどうかということについても議論があったではないかという点については、林前駐英大使、柳井前駐米大使及び川島元事務次官については、いずれも勧奨退職ということでございます。
前田委員 それは記者会見で川口大臣がもう既に述べられている。そんなこと、繰り返し私は聞いていませんよ。
 雑誌のアエラが推計しました額がありますけれども、林氏、柳井氏は一億五百四十六万円、川島氏は八千四百三十九万円。更迭されたにもかかわらず、何でこんな一億円にもわたる退職手当が渡されるんですか。おかしくありませんか。一般国民は納得できませんよ。間違いがあるから首を切られた。首を切られたにもかかわらず、こんな一億円にもわたる退職手当が渡されるということは、おかしくありませんか。
 まあ、続けます。先に行きます。
 今、更迭なのにという言葉を使いましたけれども、田中大臣以降に更迭されました野上事務次官、小町氏、そして重家氏、この更迭三人組は、いまだに外務省の、特別の個室をつくっていただいて、官房付でそこにいるというわけではありませんか。
 野上元事務次官の、官房付の彼の俸給は幾らですか。
北島政府参考人 野上前事務次官、現在官房付でございますけれども、俸給についてでございますけれども、申しわけありません、特定個人の給与額につきましては、個人情報に当たるため、回答を差し控えさせていただきたいと思います。
 他方、つけ加えたいと思いますけれども、野上前次官は現在官房付でございますが、官房付で指定職でございます。これは、私、先般の国会答弁で申し上げておりますけれども、その場合の指定職の号俸の格付につきましては、対象となる職員の職責、経験等を総合的に勘案して、査定官庁たる人事院と協議の上、決定しております。
 その上で、一般論として申し上げれば、外務省では、事務次官経験者が官房付となった場合には、人事院と協議の上、通常、指定職七号俸、これを適用しております。
前田委員 それはもう人事院に私も聞いてわかっています。指定職七号俸、百二万五千円、こうしっかり出ているじゃありませんか。それを個人情報だといって我々のチェックできないような言い方をされるのは、何ですか、私はちょっと納得できない。しっかりした答弁をされるまで、速記をとめてくださいよ。
吉田委員長 前田さん、はっきりというのは。
前田委員 大臣が、大臣の責任でしっかりと、いいですか、この国会の、この委員会の場で、こうした指定職の俸給について答える、こういうことが大事じゃありませんか。我々がチェックできないというのは間違っていると思います。これについてのしっかりとした方針を大臣に答えていただきたい。
吉田委員長 速記をとめてください。
    〔速記中止〕
吉田委員長 それでは、速記を始めてください。
 川口外務大臣。
川口国務大臣 御質問につきましては、特定の個人の給与額、だれの給与は幾らであるということにつきましては、これは個人の情報でございます。個人の情報でございますので、この点についての答弁は差し控えさせていただきますが、指定職の号俸の格付につきましては、対象となる職員の職責、経験等を総合的に勘案いたしまして、人事院と協議の上で決定をいたしております。
 したがいまして、特定の個人の情報という形では申し上げられませんけれども、一般論として申し上げれば、外務省の事務次官経験者が官房付になりました場合には、人事院と協議の上、通常、指定職七号俸を適用いたしておりまして、この給与は百二万五千円でございます。
前田委員 でしたら、先ほどの三名の次官の退職金、これは勤続年数から割り出せば、個人じゃなくて、勤続何年のこの事務次官の方は幾らということは、そういう言い方はできますでしょう。それをしっかり出してください。
吉田委員長 北島官房長。これは、指定職第七号ともう発表しているわけだから、ほかの人のも、指定職第何号、幾らだか発表できるでしょう。もう一人だけ発表しているんだから、ちゃんと。
北島政府参考人 先ほどの三大使、林前駐英大使、柳井前駐米大使、それから川島前事務次官の退職金につきましては、ですから、先ほど申し上げましたとおり、国家公務員退職手当法に定められた御承知の基準に従って支給されておりますので、委員の方でも、その上で十分な御理解を既にお持ちであるというふうに思っております。
 他方、特定職員の退職金の額については、個人情報に当たるということで、公表を差し控えさせていただきたいと存じます。
前田委員 まだ意味がわかっていない。ここは委員会なんだ。国民にかわって我々はチェックしているんだ。
 ちょっと時間がもったいないですから、では、勤続何年で勧奨だとこういう額になったという、三名、勤続何年という言い方で結構ですよ。それをしっかり資料として、後で私のところに、我が民主党のところへ出してくださいよ。
 さらに、四月の二日、北方四島住民支援、コンゴ民主共和国関係等をめぐる諸問題に関する人事上の措置というのが川口大臣から発表されましたけれども、ここで免職になった方もある。こういう処罰を受けた方に関して、まさか、官房長、次の職をあっせんするようなことはありませんね。
北島政府参考人 処分の発表が先週あったわけですけれども、現時点で何もしておりません。
前田委員 私が言っているのは、現時点じゃない。これから未来永劫にわたって、そういう処分を受けた人間に対して新しく職をあっせんするようなことがもしあったらば、それが、だらだらとけじめのない、際限のない外務省になってしまうもとをつくっているのですよ。何をやってもいい、しばらく我慢していれば人は忘れる、みんなやっているからプール金もいい、そういうあり方が今の外務省を腐らせているのですよ。
 先ほどの、私は更迭三人組を言いました、野上氏、小町氏、重家氏、彼らのために改築してつくった個室は幾らの国費を使ったんですか、大臣。
北島政府参考人 野上前次官、重家前局長、それから小町前官房長のオフィスについてのお尋ねですが、既にある会議室、それから付の部屋、人によってちょっと違いますが、例えば重家前局長の場合ですと、中東局の中に空き部屋がございました。そういったところを使っておりまして、この三人のために新たな費用を出して部屋をつくった、そういったことはございません。
前田委員 ということは、改築に使ったお金は全くない、そういうことですね。(北島政府参考人「そうです」と呼ぶ)わかりました。
 今、私はいろいろなことを伺いましたけれども、これはもう一度大臣にしっかりと説明していただきたい。一般の会社では、首を切られたら、おまえはだめだ、この罪ではだめだ、もうその職を去れと言われたら、会社をやめていくんですよ。何でこの三人は官房付でそのままいるんですか。
川口国務大臣 一般の会社で首を切られた場合というふうに委員おっしゃられましたけれども、一般の会社で首を切られた場合はおっしゃるように会社をやめることになりますけれども、一般の会社で異動をする、あるいは人事刷新のためにその職を辞して別な部署に移る、あるいは子会社に出向する等、さまざまな形があるわけでございまして、今回の野上前次官、小町、重家の場合には、委員がおっしゃられたような意味で首を切られたわけではございません。したがいまして、そういった状況でも一般の会社との類似性というのは存在をしているわけでございまして、違うということではないと思います。
前田委員 今、一般の国民は全くそういう理解をしていない。そういう説明をもっとこれからきちっと大臣の口から国民に対してしてください。記者会見の場でも何でも結構です。
 前回、私は、野上氏に対する慰労金が払われたんではないか、こういうことを大臣に伺いました。これについて大臣は、あるかないか調べてみるとおっしゃいましたけれども、どうですか。
川口国務大臣 そういう事実は全くございません。
前田委員 では、更迭三人組、彼らは官房付で今どんな仕事をしているんですか。私は、これについて資料請求しましたら、全部同じ一行の文章しか出てこない。では、彼らは給料をもらって、税金で給料をいただいて、どんな仕事をしているんですか。それも明らかにならないようでは、私たちのこの委員会の意味がないではないですか。それぞれの仕事の内容をしっかりと御説明いただきたい。
北島政府参考人 委員の資料請求に対しまして、たしか、大臣の特定する業務に従事してもらう、そういう趣旨のお返事を差し上げたかと思います。
 重家前中東局長の場合ですと、中東問題に明るいということで、中東関係の仕事、相談に乗ってもらうとか、いろいろなことをやってもらっていますし、小町前官房長の場合ですと、私の前任でございますけれども、官房関係の仕事、いろいろあるものですから、それをお願いしているということがございます。
 さらに、この両名につきましては、御案内のように、昨年来、在外公館の活動のチェックのために査察をより頻繁に行うということを発表しているわけですけれども、この査察の業務、これについても従事してもらいたいと思っております。
 それから、野上前次官の場合ですと、中東問題とかいろいろな問題についての相談に乗っていただく、そういったことがございます。
前田委員 だったら、その内容をどうしてきのうの資料請求のときに出さないんですか。これまた、おかしいじゃありませんか。
 そして、今度は大臣に伺います。
 今、大使の空席が非常に問題になっていると思うんです。幾つぐらい空席があるんですか。これは前にお答えがありましたけれども。だったら、そんなに野上氏が中東問題に詳しかったら、一カ月半空席であいているイスラエル大使にどうして行かせないんですか。そういう、官房付、官房付と言って、新しくこれからしてもらうようなつもりですとか、そんなことではいかぬじゃないですか。では、今何を仕事やっているんですか。国民はそんな人たちを食わせるために一生懸命汗水垂らして税金を払っているわけではないんですよ。
 では、どうしてイスラエル大使に野上氏を送らない、その理由をちょっと言ってください。
川口国務大臣 現在、イスラエル大使につきましては空席になっておりますけれども、これについては、事態非常に急を告げているわけで、空席というのは非常に望ましくないことでございますので、大使につきまして今手続中でございまして、手続が終了いたしましたら早急に発令をいたしたいと考えております。
前田委員 では、時間がありませんので先に進みますけれども、今度は二〇〇〇年八月、サハリンで起きました外務省省員による買春のあっせん疑惑について伺います。
 報道はいろいろされましたけれども、大臣、これはまさか事実ではありませんね。
北島政府参考人 先週末の報道の件だと思いますけれども、これは、平成十二年の八月に国会議員団が政治経済事情視察及びサハリン地域洋楽演奏会への出席を目的としてサハリン州を訪問した際に、外務省として同議員団に対し現地で便宜供与を行ったという件でございます。
 その際の関係の外務省職員から事情を聴取しました。これは、先般の国会での御質問もあり調査をしたということでございますけれども、あの際に、夕食後、一部の議員を日本人が経営する現地のカラオケ店に案内したという事実を確認しております。他方、これまで聴取をいろいろしたわけですけれども、そのカラオケ店において、同行した外務省の職員が議員に女性を個別に紹介したといった報道されている事実、これはございません。
前田委員 では、今官房長はそう言われましたけれども、大臣は、これは責任を持って、外務省職員がそういうあっせんをしていないと言えますか、大臣。
川口国務大臣 私も、もしこういうことがあったとしたらこれは大きな問題であると思いましたので、きちんと確認をするように言いました。それで、そういうことはないという返事をもらっています。
 このことは、こういう情報が流れる、どういう形で新聞に報道されたのかわかりませんけれども、ここに絡んでいるとされた相手の方にも大変に迷惑をおかけする話でございますので、きちんと調べた結果、そういう事実はないということを確認いたしております。
 なお、今後、そういった問題が、あるいはそういう報道がされるような疑惑を招くようなことがないように、十分に気をつけるように言いたいと私は思っております。
前田委員 男女共同参画型社会を目指している時代に、こういう問題が起きてくるというのは非常におかしい。せっかく女性大臣ですから、この問題についてしっかりとお調べいただきたい。
 それから、これは、北川議員の月曜日の質問に対して大臣はお答えになっているわけでありますけれども、調査をすると。今だけではなくて、例えば一年、二年、これをそのスパンで見て、こういう事実がほかにないのかあるのか、こういう調査をしっかりされる意思はありませんか。
川口国務大臣 何か具体的な御指摘があった場合には調査をさせていただきます。
前田委員 では、私が先般六時間かけていただいた、この便宜供与に関する基準というのがあります。きちんとした基準があると言われたにもかかわらず、ただ二枚の紙なんですよね。これはいつつくられて、いつ在外公館に周知されて、実際には、これは目次のようなもので、ここから、例えば設宴、宴会を設けるとか、そのときにはどうするとか、そういったもっと細かいマニュアルがあると思うんですけれども、大臣、それを見せていただけませんか。
北島政府参考人 この便宜供与の基準でございます。これは委員に御説明申し上げましたけれども、現在ある便宜供与の基準というのは、昨年来、平成十三年一月九日付で改定を行いまして、その上で、十日付で全在外公館に送付して、この処理要領に基づき、引き続き適切な便宜供与の執務に当たるように指示したものでございます。
 それから、委員に提出し御説明しました便宜供与取扱基準、委員が御指摘になったように二ページ物でございますけれども、これよりも詳細なものはございません。
前田委員 そんなことで対応はできるんですか、詳細なものはないというのは。これまた資料を隠しているじゃありませんか。こんなもので対応できない。これは、もう一度しっかり私も資料請求させていただきますので。そんないいかげんなことで、このいろいろな便宜供与が図られているとは思いません。
 いろいろ言ってまいりました。先ほどの外務省員による買春のあっせん疑惑、これは相手国の国民感情にも非常に悪い。そして、もしそれが諜報機関等で使われたら、これは我が国の外交にも非常に大きなダメージを与える。私は、このことについて、また継続して質問させていただきたいと思います。
 本日は、新時代経済連携協定の審議でありますので、これについて一つ伺いたいと思います。
 この自由貿易協定拡大という世界の潮流に乗りおくれたことによって、我が国の企業は、非常に通商上の利益あるいは競争力を失ったのではないかという危惧を私は感じておりますけれども、この点について、いかがでございますか。
佐々江政府参考人 お答え申し上げます。
 経緯的に申しますと、我が国は、戦後長い間、ガット、WTOを中心とする多角的貿易体制における自由貿易を推進するということを対外政策の中心としてきたわけでございますし、この方針というのは間違っておらなかったと思いますし、これは、今後も基本的にガットを中心とした体制を守り立てていくべきだというふうに思っているわけでございます。しかしながら、同時に、近年になりまして、これを補完するものとして、利害の共通する国、地域との間で多くの協定ができるに至ったということは、先生御指摘のとおりでございます。
 したがいまして、この地域におきましても、日本のほか、韓国、台湾、それからシンガポール、中国等、二国間取り決めは結んでおらないわけでございますが、この地域においてもやはりそういうものをつくっていこうという機運が盛り上がってきているところでございまして、我が国としても、そういう中で今後積極的にこの問題に取り組んでいきたいというふうに考えております。
前田委員 先ほど川口大臣は、本日の私の質問に対して、四月五日のような報道は、大臣の職をかけてそういうことはなかったと明言されましたので、それを信じまして私の質問を終えさせていただきますが、今後も腐った外務省と闘わせていただきますので、そのことを宣言させていただきまして、私の質問を終わります。
 以上です。
吉田委員長 次に、金子善次郎君。
金子(善)委員 民主党の金子善次郎でございます。
 きょうは、日本とシンガポールの新時代経済連携協定に関連いたしまして、御質問をさせていただきたいと思います。
 本日も、このことにつきましていろいろ議論があったわけでございますが、いろいろなこれまでの報道あるいは実際のいろいろな話を聞きましても、初めての自由貿易協定ということで、このシンガポールとのものができるということで国会承認を求めるというような動きになったわけでございます。
 今、前田議員の方からも、日本はこの動きに乗りおくれているのではないかというような指摘があったわけでございますけれども、実は、そもそものこのシンガポールとの話が始まったのが、平成十一年の十二月、シンガポールのゴー・チョクトン首相が訪日されまして、その際に申し入れがあったというふうに聞いているわけでございます。
 確かに、この協定の内容を見ますと、相当のボリュームでもあり、あらゆる分野に及んでいる協定でございますから、この協定をつくる作業というものは、かなり時間的なものがかかることは当然予想されますけれども、時代の流れ、そういう観点からいって、どうも、世界の変化のスピードについていくには時間がかかり過ぎているのではないかという気さえするわけでございますけれども、この点につきまして、大臣、冒頭、どういう感想をお持ちでいらっしゃいますか。
川口国務大臣 交渉にはそれなりの時間がかかるものでございまして、しかも、本件はかなり幅の広い、内容において野心的な部分も含むものでございますから、そのぐらいの時間はかかるであろうと私は考えております。
金子(善)委員 これぐらいの時間がかかるというような答弁でございましたが、物事には、急がなきゃならないものであれば集中的にやらなきゃならないものも当然あるわけでございますから、それは物によって判断してもらわないと。これは日本の経済全体にかかわる問題でもございますから、今、日本の経済の現況を見ましても大変な状態にある、こういう中で、そうした時間がかかるのは当たり前だというような答弁をしてもらっては困ると思うんですよね。これは、今後、いろいろな国ともまた想定されているという状況もあるようでございますので、その点をしっかり踏まえて対応していただきたい、このように思います。
 そこで、きょう、農林省の方にも来ていただいていると思うんですが、シンガポールとの関係につきましては、比較的やりやすい国であったからできたというような評価が一般的になされている。これからほかの国も想定されている面もあるわけでございますけれども、確かに、国内の農林水産業と申しますか、こういう分野との整合性をどうとって国際的な二国間協定というものを結んでいくか、これは大変な難しい問題であることは十分わかるわけでございますけれども、こうした点。
 一方におきまして、我が国は資源もない国でございます。世界の中で、経済活動というものを通じて、この国の礎と申しますか、そういうものをきちっとしていかなきゃならない。これは全国民もみんなが認めていることであろうと思います。
 一方において、農業問題、これとの調整、大変な問題があるということは理解できる面もあるわけでございますけれども、今後の他の国々、先ほども若干の答弁等もございましたが、農林水産物関連の輸出量も、かなりシンガポールとは違って、既に日本との間ではそういう量があるわけでございますから、その点、農林省の基本的な政策、これからどうするのか、そこの基本的な考え方をまずお聞きしておきたいと思います。
西藤政府参考人 先生御案内のところでございますけれども、我が国は世界最大の農産物の純輸入国の状況にございます。その結果として、食糧自給率、これもまた逆に先進国の中では最低ですし、大変低い水準にございます。そういう状況の中で、国民の多くの方々が、我が国の食糧安全保障に懸念を有されているという状況がございます。
 自由貿易協定による農林水産物の関税撤廃ということにつきましては、一方では、例えば昨年来、野菜のセーフガード問題が議論されましたが、その中で私ども、野菜の生産性向上あるいは消費者ニーズに対応した野菜の供給ということで、生産構造の改善に現在取り組んでいるわけでございますが、関税の撤廃ということはこういうことを非常に困難にしていくということ。それと、最初申し上げましたように、我が国が世界最大の農産物の純輸入国であるということは、特定の国との間で関税の撤廃、引き下げは既存の主要輸出国との間で貿易摩擦を誘発するおそれがあるという状況がございます。
 そういうような問題がございますので、私ども、農林水産物の関税につきましては、これも既に二年前から開始されておりますWTO農業交渉の中で、公平かつ透明性の高い方式で対応することが適切であるというふうに思っております。
 しかし一方、こういう中で、シンガポールとの関係での我が国として最初になる経済連携協定におきましても、セクターとしての農林水産分野の除外というのはWTO協定との整合性で問題があるということから、無税品目、WTO無税譲許品目及び実行無税品目を協定の対象とすることによって、協定との整合性をとりながら対応してきたことでございます。
 今後とも、FTAを検討するに当たりましては、食糧安全保障の確保など我が国農林水産業に悪影響を与えないような観点から配慮することが不可欠であるというふうに考えております。
金子(善)委員 このシンガポールとの二国間協定につきましては、これからいろいろまだまだ作業をしていかなきゃならない点があるというふうに、この協定にも書いてあるわけでございます。そういう流れの中で、そうした協定を実効あるようなものにしなきゃならないということで、第八条には総括委員会、あるいは各テーマごとの合同委員会というような規定がございます。
 これからのいろいろな作業を精力的にやっていただきたい、このように要望を申し上げるところでございますけれども、一つ、これとは直接関係するわけではございませんけれども、今仄聞するところによりますと、韓国、それからメキシコ、タイとの、あるいは広くASEAN各国ということになろうかと思いますけれども、いろいろな勉強会がスタートしているというようなことも仄聞いたしております。
 そうした中で、産学官の共同の勉強会だというようなことも聞いているわけでございますけれども、実効性あるスピーディーな活動ということは当然求められるわけでございますけれども、お金の分担、どういうような公明正大な形で、費用も結構かかるのではないかと思うんですが、その辺はどんな基本的な考え方でなさっているのか、お伺いしたいと思います。
佐々江政府参考人 まず、シンガポールの協定との関連について私からお答えさせていただきたいと思います。
 先生御承知のとおり、この交渉に先立ちまして、民間の方々に入っていただきましてスタディーをするという作業をシンガポール側と行ったわけでございますし、それからその後、交渉に入ってからも交渉委員として委嘱する形で参加していただいたという経緯がございまして、これらに関連して、旅費等の必要な支援は行ったという経緯がございます。
 それから、現在行われておりますメキシコとの関係、あるいは韓国との関係は今後あるわけでございますが、その点につきましてどのような方針で臨むかについては、調べてお答えいたしたいと思います。
金子(善)委員 今の御答弁ですと、基本的には国の仕事として、委託をやっているということであれば、要は国の仕事としてそれをやっているという答弁だというふうに理解したわけでございますけれども、これからのいろいろな国との関係、特に外務省のこれまでいろいろな、私も関心を持って注目させてきていただいたんですが、その辺のルールというか、そういうものをきちっとした上でやっていただくように要請をしておきたいと思います。
 そこで、質問させていただきますけれども、いわゆる国際機関というものが数多く存在していることは国民周知のところでございます。そうした中で、国会の承認を必要とする条約等によりまして国内に存在している国際機関、要は国会承認の国際機関と言えるかと思いますが、私どもの民主党の外務省疑惑解明プロジェクトチームの資料要求によりまして、長いことお待ちいたしまして、先日資料を受け取ったのが、五つの機関があるという回答を得ました。
 そこで、国会承認を必要とする条約等によって、先ほどの五つの機関は国内にある国際機関でございますが、外国に存在する国際機関にはどのようなものが幾つあるかということをここで答弁いただけますか。
北島政府参考人 国会承認により設置された国際機関、国内のものは、委員が御指摘になりましたとおり、私ども御説明申し上げたわけですが、五つでございます。海外に本部のある国際機関でございますが、国際約束に基づく国際機関が多数に上るものですから、正確な数についてはまだ調査をしております。
 主要なものは、御承知のとおり、国際連合、国連食糧農業機関、ユネスコ、UNIDO、世界保健機関、世界気象機関、OECD、国際原子力機関、国際復興開発銀行、こういったものが主要なものでございますけれども、その他、国会承認により締結した国際約束に基づく国際機関の中にはまだまだございまして、正確な数は今調査しているところでございます。
金子(善)委員 それでは、今調査中だということでございますから、日本の条約、国会承認を得ているような機関を今調査中だというのはちょっと情けない感じがするんですけれども、それはやむを得ない話でございますから、それは調査をして、はっきりと資料を出していただきたい、このように思います。
 そこで、それぞれの、外務省OBの方々がこれらの機関に対して就職をされている状況、あるいは外務省の現役の職員の方々の出向の状況等についてもあわせてお伺いしたいと思ったんですけれども、今の官房長の答弁ですと今調査中というようなこともございますので、では、答弁できればしていただきたいと思います。
北島政府参考人 こちらの方は調査がより簡単だったわけでございますけれども、国会承認条約に基づいて設立された国際機関に外務省から派遣されている現役の外務省員、これは十名でございます。それから、外務省のOBでございますけれども、外務省OBの再就職先のすべてを実は把握しているわけではございませんけれども、御質問があり、私ども調べました。現時点で外務省で把握している範囲では、国会承認条約に基づいて設立された国際機関の業務を行っている当省OB、これは五名でございます。
金子(善)委員 そこで、お願いしたいと思うんですけれども、調査中というようなものを含めまして、一覧表にいたしまして資料の提出をお願いしたいと思いますが、いかがでございますか。
北島政府参考人 今御説明できますが、国会承認条約に基づいて設立された国際機関に派遣されている……(金子(善)委員「委員長、誤解があると思うので、よろしいですか」と呼ぶ)
吉田委員長 はい、どうぞ、金子君。
金子(善)委員 その前に調査中と言われましたよね。それを一覧表にして、調査した結果を一覧表にして出してもらいたいということを言ったんですよ。
北島政府参考人 はい、わかりました。
吉田委員長 じゃ、お願いします。
 金子善次郎君。
金子(善)委員 国会承認の国際機関についてお話をさせていただいたわけですが、次に、国会承認を必要としない協定などによりまして設立されております国際機関、これは資料の要求をいたしまして、それに対しまして、国内と海外合わせて二十六の機関があるという回答をもらっておりますけれども、これは間違いありませんね。
北島政府参考人 はい。私ども調べまして、行政取り決めに基づく国際機関、これは二十六機関ということで、海外に本部があるものは十七機関、それから、国内に本部があるものは九機関ということでございます。
金子(善)委員 これらの機関に対しまして、兼任のケースもございますけれども、このうち国内にある九つの機関の事務局長すべて、外務省のOBまたは出向者ということになっております。
 これから大臣は、一つの外務省改革の方向として、大使の人選については民間人の登用というものも考えていくということを表明されているわけでございますけれども、こうした国際機関に対しても民間人の、民間人という表現はおかしいんですが、民間の方々を適材適所で人選をするというようなこともぜひ考えていただきたいと思っております。これは一つの要望でございます。
 ところで、これらの国際機関に平成十三年度及び十四年度に幾らの予算措置が講じられているか、総額で結構ですけれども、答弁をお願いしたいと思います。
北島政府参考人 まず、行政取り決めにより設立された国際機関に対する日本の拠出金から御説明申し上げたいと思います。
 申し上げました二十六の機関のうち、外務省で予算計上をしているものに限って申し上げますと、平成十三年度は四十一・七億円、平成十四年度は四十四・八億円でございます。
 それから、他方、国会承認により締結した国際約束に基づく国際機関、これは先ほど申し上げましたとおり多数に上りますけれども、主要な例ということで外務省で予算を計上している機関について申し上げますと、国連の分担金、これが平成十三年度、二百十七・二億円、平成十四年度、二百五十二・九億円。OECD、平成十三年度、三十九・二億円、平成十四年度、五十四・九億円。IAEA、平成十三年度、四十・九億円、十四年度、四十三・三億円。それから、ユネスコ、平成十三年度、六十四・五億円、十四年度、五十八・八億円でございます。
 これは、機関本体に対する義務的な分担金ということで申し上げました。
金子(善)委員 一部を答弁していただいたというふうに思います。
 財務省の査定資料でございますけれども、いわゆる国際分担金その他諸費といたしまして、平成十四年度予算でございますが、千百九十八億六千三百四十九万円というものが計上されております。
 私がなぜこの問題を取り上げて質問をしているかというのは、想像もついておられるかもしれませんけれども、これらの中には、例の支援委員会や日露青年交流委員会などの国際機関への拠出金というものが含まれている。一方においては、今官房長が言われましたように、国際連合やユネスコというような分担金というようなものも計上されているわけでございます。
 私の調べでは、拠出金や分担金を支出している、要は税金でお金を出している機関、組織は百三十以上に上っていると思います。すべてが非常に正常になされているところも恐らく数多くあると思います。当然のことながら、そうだとは思いたいわけでございますけれども、一方において、支援委員会とか日露青年交流委員会というようなものも、極めてずさんな、本当に極めてずさんなお金の使い方をされた国際機関も事実としてあるわけでございます。
 外務大臣にお伺いしたいと思いますけれども、この際、こうした分担金や拠出金のすべての必要性というものを一度再検討をぜひお願いしたいと思いますが、その点、いかがでございましょうか。
川口国務大臣 国際機関につきましての分担金というのは、これは我が国が幾ら出すということを決めるということではございませんで、その国際機関で、各国がそれぞれ幾ら負担し合うかということを国際的に決めているものでございます。したがいまして、我が国が独自にその金額を払う、払わないということを言う自由はない。それは、その機関から脱退をするということを決めるかどうかということの判断の上に立った判断になるというふうに思っておりますので、それを見直すということは、要するに適当でないというふうに思います。
金子(善)委員 恐らく大臣の今の答弁は、私の質問の趣旨を取り違えていらっしゃると思っております。
 それは、もちろんそういう機関もあると思います。また、その国際機関がしっかりした監査体制というものをしいてしっかりやっているところも恐らくあると思うんです。
 ただ、私が申し上げるのは、百三十以上もいろいろなところにお金を出している、その中に、たまたまだったかもしれません、不幸にして二つだけがそうだったのかもしれません、この支援委員会と交流委員会ですね。でも、そのほかのものも、この二つがああいうようなやり方をやっていると、例えばの話ですが、この支援委員会と日露青年交流委員会でございますけれども、この事務局は、大臣、どこにあったか御存じですよね。一つは霞が関ビル、もう一つは隣の新霞が関ビルにあったんです。それで、我々もいましたけれども、一つにして、何かで仕切りをつくってでもいいと思うんですけれども、この二つをうまく統合的にその事務所運営というものをやれば、年間一千万以上の税金が助かっていたんですよ。
 私は、そういうことをこの際、いい機会ですから、確かに国連本部に出しているお金を日本政府が乗り込んでいって調査するというのは、それはできないかもしれません。しかし、できるものについてはこの際きちっと、大臣、一度見直し、見直しということよりも、きちっと、むだなことはないのかどうか、そういう整理というものを職員に命じてやられてはどうかなということを提言しているわけでございます。大臣、いかがでございますか。
川口国務大臣 我が国が分担金なりあるいは拠出金なりを支払っている国際機関に対して、その運営が適切に、効率的に行われているかという観点で見ていくということは大事なことだと考えております。これは、国際連合におきましても、あるいはその他の国際機関におきましても、常に我が国はほかの国と一緒に、そういうことについてははっきりと言ってきているわけでございます。
 頭に描いていらっしゃるような、あるいはその今おっしゃった例のようなケースというのは、まさにむだな支出をしないという観点から見直していくべき話だろうと思っておりますけれども、国際機関が適切に動いているかどうかということについては、我が国として、いつも日本の政策を見ていく過程でも議論をしなければいけないと思いますし、国際機関等で理事会等がございますので、そこでも議論をしていかないといけないと思っております。その上で、我が国の力で変えることができるものについては、ほかの国の賛同も得て、極力変えていくべきだと考えております。
金子(善)委員 大臣から、私が要請を申し上げましたことについて、そうするというような前向きの答弁をいただいたというふうに理解いたしておりますけれども。
 実は、大臣、先ほども我が党の前田議員が審議の中で、外務省のいわゆる誠意というんでしょうか、はっきりいって、先ほどの前田議員が大臣にお見せしました回答というのは、まさに小ばかにしたやり方だと思うんですね。それは忙しいとか何かという話ではないですよ。出す以上はきちっとしたものを出す。こういうことが現実に行われている。
 私は、もう一つ申し上げます。
 実は、日露青年交流委員会の問題は大変世間を騒がせました。私も外務委員会で質問をさせていただきました。あるいは、その他の委員会でもさせていただいたと記憶しておりますけれども、要は、お金の使い方というものが問題になったわけなんです。だれだれの、まあ特定の名前はどうでもいいんですけれども、このお金の使い方、余りにもずさんじゃないか、目的外に使われているじゃないか、そういうような観点から我々は強くこの問題を指摘して、取り上げてきた経過があるわけです。
 実は、二月に資料要求をいたしました。ところが、交流センターという、事務局のことを言っているんだろうと思いますけれども、一カ月以上、一カ月どころじゃないですよね、一カ月半、そろそろ二カ月になると思うんですが、いまだ会計内容についての資料を、出せないということを言っておられるんじゃないですよ、取り寄せ中だからということで、まだ我々の手元に来ていないんです。審議できないですね、本当の細かい点については。
 これは、まあ外務大臣は大臣室からいろいろ指示もなさっているんでしょうけれども、確かに外務省がいろいろな問題で忙しいとか何かとあることは、それは認めてもいいわけなんですけれども、一カ月以上、取り寄せ中だからといって一カ月半も待たせて、しかも、資料要求している我々は民主党外務省問題のプロジェクトチームとしての立場でいろいろお願いしているわけでございまして、どうも大臣のそうした意向というものが、下の方までと申しますか伝わっていないのではないかというふうに思われてならないわけでございます。
 そういう点については、とにかく、要は、なぜそういうことが起きるかというと、交流委員会、その事務局は霞が関ビルにあるわけでございますけれども、そうしたことに外務省本省のいわゆる指導監督体制と申しますか、あるいは注目をしていくというその姿勢がなさ過ぎたのではないか。だから、今ごろになっても取り寄せますと言っている。
 恐らく会計帳簿も何もないんじゃないかということさえ疑われる。あれば、取り寄せればすぐ出てくるわけですから、全部出せないとなったらば出せるところから出すということだってあると思うんですが、そもそも会計帳簿も何もなかったんじゃないかということさえ疑わざるを得ない。どうですか、大臣。
北島政府参考人 申しわけありません。官房長といたしまして、支援委員会のその資料要求の件について詳細に承知しませんけれども、先ほど外務大臣が申し上げましたとおり、私ども、資料要求につきまして、特に国会議員からの資料要求、民主党のプロジェクトチームの資料要求に対して誠心誠意対応してきているつもりでございます。
 申しわけありませんが、先ほど前田先生からの御指摘の点につきまして、ただいま委員も御指摘されましたので、ぜひ御説明させていただきたいと思います。
 先ほど前田議員が提示されたコピーの関連でございますが、私ども、人事課が担当部局でございますけれども、そちらの担当との意思の疎通が十分でなかったということでおわび申し上げたいと思いますけれども、他方、田中外務大臣時代に更迭された者のリストということを言われた場合に、更迭という概念が私ども人事当局の中に必ずしもなくて、要するに通常の異動と更迭とどう違うのかという議論がなかなか難しかったものですから、私ども、前田先生の秘書を通じてその点について御説明したところ、更迭された者を特定できないということであれば、その人事異動の異動日、異動内容のリストを提出することで構わないということで、二月二十五日にそのように対応したということでございますので、私どもの誠意についてはぜひ御理解をいただきたいと思うわけです。
金子(善)委員 官房長に申し上げたいと思います。事務次官を官房付にして、通常の人事異動とは何事ですか。
 ちょっと問題発言と思いませんか、理事、我が党。ちょっと、いいんですか、委員長、こんな答弁を許して。
 通常の人事異動。いいですか、事務次官を官房付にしたんですよ。通常の人事異動だと認識しているとは何事か。そんなことを言っていて、国民が許すと思いますか。大臣、どうですか。
吉田委員長 まず最初、官房長。
北島政府参考人 最初、資料要求をちょうだいしました際に、田中外務大臣在任中に更迭された職員の氏名、処分日、現在の就職先ということでのお尋ねがあったわけです。私ども、そのような要求にお答えする場合に、当然誠意を持って幅広く考えるということで、今、特に御指摘になったケースを超えて、幅広く考えたわけでございます。
 通常云々という言葉を使ったことが不見識であるということかもしれませんけれども、先ほど申し上げましたとおり、更迭というカテゴリーがないものですから、異動者のリストであるということで差し支えないかということでお尋ねをして、それで結構であるということで、そのリストを提示した。その結果、非常に長いものを提示したということだったわけです。
金子(善)委員 驚く発言でどうしようもないのですけれども、その程度の認識では本当に困ると思います。本当は大臣から答弁をいただきたいと私は思ったわけでございますけれども、その程度の感覚なのかと改めて思った次第であります。
 今後もこうした問題は、国民が納得していないですよ。いろいろな方に聞いたことありますか、官房長。大臣、聞いたことございますか、この問題について。だから、我が党だけじゃなくて、この委員会でいろいろな国会議員がこの問題について質問をしているということをよく頭に入れてもらわないと本当に困ると私は思っております。
 では、最後に一つだけ聞いておきます。プール金の問題についてですが、国際交流サービス協会というのはどこにありますか。
北島政府参考人 国際交流サービスの場所についてのお尋ねですが、霞が関にございます。
金子(善)委員 ところで、国際交流サービス協会とはこれまでどおり取引をされておりますか。
北島政府参考人 国際交流サービスとは、外務省としまして、いろいろなことを、取引ございます。
金子(善)委員 それではお伺いいたしますけれども、プール金のあったホテルニューオータニについては、我が党の松崎議員が決算行政委員会で、要は、ホテルニューオータニにおきまして国際会議を開くというようなことをちょっと、一つのペナルティー的なものとして控えておくというようなことを外務大臣は答弁されております。
 ところで、この国際交流協会にもプール金があったわけです。これは外務省の調査によるプール金の報告書にも書いてあるのですけれども、では、ホテルニューオータニはそのペナルティーとして取引はちょっと控える、それに対しまして国際交流協会は何のあれもなくそのままずっと継続されておる。何か、一つの一貫性がない考え方で対応しているように思うのですが、その点、いかがですか。
北島政府参考人 御指摘のとおり、ホテルニューオータニとの取引につきましては、平成七年のAPECの関連会合にかかわる公金詐取容疑で、当省職員とともにホテルニューオータニ社員が警視庁に逮捕されるという事態があったものですから、その上で、当面の間新たな取引を原則として見合わせるという措置をとってきたわけでございます。
 ホテルニューオータニ以外に、委員が御指摘のとおり、プール金のあったところがございまして、まさに外務省の所管法人である国際交流サービス協会においてもプール金の存在が確認され、これは公表したわけですけれども、ホテルニューオータニのケースのような公金詐取容疑、刑事事件ということではなかったことも踏まえ、対処しておるということでございます。
金子(善)委員 どうもその話を、今の答弁を聞いておりますと、要は犯罪事件があったからと。プール金問題については、別に全体として刑事事件になるような犯罪ではないというようなことで、別扱いだというふうに聞こえたのですけれども、確かにだれかが逮捕されたとか何かということではないかもしれないけれども、何らかのけじめというものを、このプール金、厳密に言っていけば公金そのものがごまかされて使われたわけですから、それは立件された犯罪というそこまでは私も申し上げるつもりはないけれども、大変な公金が変な形でプールされていたわけですから、これは大変な問題なんです。だから、犯罪者が、逮捕者が出たかどうかという問題とは全く違うわけで、その辺も認識をきちっとしておかなければ困ると私は思うのです。
 そういう意味で、とにかく私が申し上げたいのは、取引を絶対しちゃだめだよというようなことを申し上げているつもりは毛頭ないのです、けじめというものをつけてもらわなきゃ困る。外務省の今までのいろいろなことをお聞きしていますけれども、それはうまく答弁で逃げているような感覚でいるかもしれませんけれども、やはりけじめをすべてつけないこの体質が、今国民の目、我々も何かおかしいなと常に感じています。そこにあるわけなんです。
 その辺を指摘いたしまして、私の質問を終わらせていただきます。
吉田委員長 次に、首藤信彦君。
首藤委員 きょうの質疑の中心課題は、日本とシンガポールの新時代経済連携協定ということなんですね。
 日本とシンガポールの自由貿易協定ということに関しては、ああ、それはいいことだな、同じように工業国であるし、余りひっかかるものもないし、これはどんどん進めたらいいんじゃないか、そういうふうに思われる方が非常に多いと思うのですね。
 しかし、私は、それは非常に甘い考えであると言わざるを得ない。なぜならば、果たしてシンガポールという国が今のままのような自由貿易、そして自由な社会を基盤とする国家であり続けるかどうかということには、現在大変な疑問が出てきているわけであります。
 例えば、シンガポールの背後にはマレーシアというイスラム国家がある。そして、シンガポールのその目前にはインドネシアという、アチェやアンボンやイリアンジャヤとかさまざまな地域で、宗教紛争あるいは民族紛争を繰り広げている地域があるわけですね。そう考えると、シンガポールの将来というものも一抹の不安を感じないわけにはいかない。だからこそ、我々はこのイスラム圏での紛争を、イスラム圏における緊張を抑えるためにも、現在の中東和平、イスラエルとパレスチナの紛争に積極果敢に関係して、そして、一刻でも早い和平の実現というものを可能ならしめなければいけないと思うんですね。
 しかし、現実はどうか。ナブルスへの攻撃が進んで、さらにジェニンへの攻撃にまで発展してきた。そして、現在は何と、新聞報道によりますと、パレスチナ側は百五十人が死亡した、あるいはその攻撃側のイスラエル兵の十三人が爆弾によって瞬時に死亡するという状態が発生していると言われているわけですね。
 そういうような状態の中で、アメリカが遅まきながらパウエル特使を送り出してきた。しかし、そのパウエルさんもモロッコを経由して行くなどという、イスラム諸国からは何か時間稼ぎじゃないか、そして、イスラエルの方ではその時間稼ぎの間にさらに駆け込みでパレスチナ側への攻撃を続けている、こういうような状況があるわけであります。
 時間はもう一刻の猶予も許されない、こういうような状況の中で、一体日本は何をしているのか。例えば、先ほど前田議員のお話がありましたが、ヨーロッパは経済制裁に乗り出そうとしている。それが果たして実効性があるものかどうかは別として、やはり国際社会に向けて、そして、何よりもイスラエルに対して即時停戦、それを要求するために、はっきりとした態度声明が必要だと思いますが、外務大臣はそのような日本の態度声明をどのようにおとりになるつもりでしょうか。
川口国務大臣 委員がおっしゃられましたイスラエルのパレスチナ自治区からの即時撤退ということにつきましては、私はこれまで、イスラエルのシモン・ペレス外務大臣と話をした折にも伝えておりますし、その他、パウエル長官にもお話をいたしておりますし、また、茂田前イスラエル大使も今回現地でそのことについてははっきりとお伝えをしているわけでございます。
 我が国が、委員がおっしゃられるように、この問題についてきちんと態度を表明し、国際社会と連携のもとで働きかけていくというのは大変に重要なことだと私も思っておりまして、そのような方向でさまざまな取り組みをいたしておりますし、今後ともいたす予定で、考えでおります。
首藤委員 いや、外務大臣、全然違うんですよ。私の言っていることは、電話線の中で、部屋と部屋の間で二人で話すということじゃないんですよ。日本の態度声明、日本とはこういうことだ、平和憲法があり、世界の平和のために働いて、我々は国際社会で名誉ある地位を占めたいと思う、それを希求しているんだ。こういう日本が、今起こっている、今我々のこの同時代で、同じ秒数の中で起こっている紛争に対してどうして何の声明も出せないのか、世界じゅうが納得するように、日本は平和を希求していますということがどうして声明できないのかということなんですよ。
 では、日本と同じように戦争によって敗戦国となった国の例を言いましょう。フィッシャー外相、これはまさに和平七項目を、すなわちアメリカと国連とそしてEUとロシア、この四者によって、四者が担保することによって和平七項目を実現あらしめよう、こういう声明を出しているじゃないですか。ドイツがやっているのに、どうして日本は密室の中での電話線で、これで事足りる、そのようにお考えなんでしょうか。外務大臣、御意見いかがですか。
川口国務大臣 私も、三月三十日に談話を出しております。
首藤委員 その談話は、外務大臣、世界じゅうでどのように受けとめられたでしょうか。いかがですか。
川口国務大臣 この談話についての特定の反響については、私はまだ確認をしておりません。
首藤委員 外務大臣、よく聞いてください。これはもう日本の正念場ですよ。日本の五十数年間にわたる平和国家としての歩みが今問われているんですよ、本当に。日本は本当に、口で言うだけの平和国家なのか、あるいは世界の平和をつくることに努力しているのか、それが今問われているのに、どうして、談話は出しました、世界の動きはそれに対してどう反応したかは知りません。冗談じゃないですよ。談話を出して反応がないんなら、反応があるような談話を出してください。もう時間はどんどん限られている。それをぜひ、そういう談話をきっちり出していただきたいと思います。
 外務委員会としては、金曜日に、今週ももう一度質疑の時間があります。私は、またもう一度そのときに質問をしたいと思います。二日ありますので、ぜひその間に日本の態度声明、日本のスタンスはこうだ、日本は本当に平和を希求し、そのために一生懸命になっているんだという声明を出していただきたいと思います。外務大臣、いかがでしょうか。
川口国務大臣 特定の談話に対しての世界の反応ということが重要な問題だということではなくて、日本の今までこの地域について行ってきたさまざまな働きかけ、さまざまな援助、そういったことが総体として世界に認識され、評価をされているかということが問題なのだと私は考えております。
 そういう意味で、日本が今までやってきたことにつきましては、イスラエル、あるいはパレスチナ、あるいはアメリカ、これは私が個人的にやった範囲でということでございますけれども、そういったことについてそれぞれの方から、日本に対してのさらなる期待あるいは今までやったことについての認識と感謝といったようなことはきちんと聞いております。
首藤委員 私は、その今のお言葉を聞いて、もう本当に心から落胆した。これが日本を代表する外務大臣の回答であるか、本当に私は落胆しました。しかし、まだ時間はあります。金曜日にもう一度お聞きしますから、そのときまでに何とか対応していただきたいと思います。
 前回私が質問した中に、民間の大使をジュネーブに送るという話がございました。過去にはこういうことがあったのかというと、実は四十一年前にあった。この方はインド大使として赴任されたと言われています。このような地域局が関係するような、すなわち地域を問題にする大使じゃなくて、軍縮のような国家の基本的な方針について大使を送ったというケースは何年前にございますでしょうか。
川口国務大臣 今委員がおっしゃられたのは学者、民間大使は実は大勢おりまして、民間大使の中で学者出身の大使が四十年ぶりだということでございます。民間出身の大使は今現在でも、私、記憶が正確かどうかわかりませんが、二、三人いると思いますし、過去においてもかなりの数の民間出身の大使の方がいらっしゃいました。
首藤委員 言葉が足りず、失礼しました。見事に揚げ足を取られましたけれども。
 学者大使が、学者という専門職が、専門性を持った人間がいて大使として赴任したのは、四十一年前にインドに赴任したケースだと言われています。ということは、こうした軍縮のような国家の基本的な問題に関して、恐らく学者を送ったという例はないんではないか、私はそう思ったわけですね。
 もう時間がないので、意見だけ言ってまた金曜日に続けますが、これはもう既に、大使そのものに関しても、外務省が勝手に認証して送るんではなくて、やはり国会の審議を経るべきだ、承認を得るべきだという意見があり、なおかつ、我が党では、その辺に対してそうした法律を出そうとしています。ましてや、日本の国家戦略の中心的な課題である軍縮に関して民間の学者を送るということに関しては、当然のことながら、国会での承認あるいは外務委員会での、果たしてそれが適切であるかどうかの疑義に関してやらなければ、これは外務委員会の意味がない、そういうふうに解釈しております。
 この件に関しては、時間が今はございませんので、金曜日にもう一度、徹底的に審議させていただきますが、この辺は本当に日本にとって重要なことなので、いいかげんに拙速で進めることのないよう、そのように私は言明して、きょうの質疑を終わらせていただきます。ありがとうございました。
吉田委員長 午後一時から委員会を再開することといたしまして、この際、休憩いたします。
    午後零時四十分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時二分開議
吉田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。土田龍司君。
土田委員 通告しました質問の順番を少し入れかえさせていただきまして、先に北朝鮮問題それから不審船をやりましてから、時間の許す範囲でこのシンガポール問題をやっていきたいと思います。
 まず北朝鮮の問題でございますが、今月の四日に韓国の大統領特別補佐官が北朝鮮を訪問したわけですね。その中で、金正日総書記がアメリカの訪朝団を受け入れる用意があるという話があった。と同時に、日本人の行方不明者の問題に関しても早期解決、あるいは日朝関係を改善する用意があるんだということを言ったという話があった。
 それに対して、アメリカのグレッグ元駐韓大使は早速六日にピョンヤンに入っておられる。四日にその会談があって、中一日置いて六日にすぐに行動したわけですが、非常に迅速な対応といいますか、アメリカの行動を評価できると私は思うんですが、日本の、我が国の外務省としては、まず、四日の報道を受けて、あるいは報告を受けて、どういった行動をされたのか、お尋ねします。
田中政府参考人 委員御指摘の点でございますけれども、林東源という韓国の特使がピョンヤンに参りまして、その結果、南北関係については、これまで一時冷えたわけですけれども、あった現状に戻ったという理解だろうと思います。
 その中で、金正日氏が日本あるいは米国との対話に関心を示した、日本との関係については、拉致ということは認めない、しかしながら、行方不明者の問題としての調査には関心を示し、かつ日本との間での赤十字会談ということにも関心を示したということでございます。
 実は昨日、日米韓で北朝鮮政策に対する調整会合というものを持ちまして、その中でも評価をしたわけでございますが、基本的には、そういう流れというものを前向きな流れとして受けとめるということでございました。
 委員御指摘のグレッグ氏につきましては、これは以前から計画がされていたもので、確かにグレッグ氏は昔の米国の駐韓大使ではございますけれども、これは、先ほど申し上げた三カ国の会合の場でも議論があったんですが、彼については全くの個人の資格で行くということでございまして、将来、米国については、今朝鮮問題担当大使でプリチャードという人がおりますけれども、その人がピョンヤンに行く可能性はある、こういうことでございました。
 私ども日本につきましては、当然のことながら、こういう流れも踏まえまして、従来からありますように、実はいろいろな非公式なコンタクトというのもあるわけでございますけれども、日本の場合にはいろいろな懸案があるわけでございまして、特に拉致問題というのは国民の生命財産に直結する問題でありますから、できるだけ早く問題の解決をしたいという気持ちがございまして、まずは四月の末にでも赤十字会談というものを実現したい。その中で、私ども、議論のための議論ということではなくて、やはりきちんとした準備をして、こういう拉致問題それから安全保障の問題、国交正常化の問題、こういうものに取り組みたいというふうに考えております。
土田委員 きのうその会議があって、その一部を今田中局長お話しをいただいたというふうに思うわけですが、南北の話し合いができた、それから米朝の話し合いができた、日朝はこれからだということですが、前回の日朝交渉から随分時間もたっているわけですし、その間に非常に、この日朝交渉については、この外務委員会でもいろいろな方が質問をされました、与野党問わず質問をされたわけでございますが、ほとんどが進展していないという状況であったわけですね。
 それについては、南北の話し合いもさることながら、やはり米朝交渉の進展によって随分影響されるだろうというふうな話や答弁もなされてきたわけでございますが、今回、南北の話し合いがあって一気に進展して、そしてきのう、三者会談といいましょうか三国会談でしょうか、日米韓の調整合同会議をやって、田中局長はそこにお出になったわけですね。
 もう少し詳しくお話しいただけませんでしょうか。例えば、発表できない点もあるかもしれませんけれども、特に拉致問題、そして平和条約といいますか日朝友好条約を結ぶまでに、具体的にどういった話し合いがなされて、そして我が国として韓国と米国に対してどういった要請をしたのか。お願いします。
田中政府参考人 昨日、北朝鮮に関する日米韓の三国調整グループ会合というものを持ちました。日本からは私が代表として参加をいたしました。米国からは東アジア担当のジム・ケリーという次官補が参加をいたしました。それから、韓国からは李次官補が参加をしたということでございます。
 この会合自体につきましては、基本的には二つのことが話をされた。一つは、北朝鮮との関係で、現状をどういうふうに評価するかということでございます。それは、韓国の北朝鮮との関係、それから米国の北朝鮮との関係、日本の北朝鮮との関係ということでございます。
 韓国につきましては、林東源という特使の訪朝の結果ということについてブリーフィングがございました。
 それから、先ほど委員、米国との関係が動いているということを示唆されましたけれども、必ずしも米国との関係が今大きく動いているわけではございません。今後動く可能性があるかもしれないということでございます。
 それから、日本との関係については、私の方から、日本が今抱えている問題、いろいろな問題がございますけれども、なかんずく拉致の問題の現状ということを説明いたしまして、米国、韓国においても、日本がこういう人道問題を抱えていることを十分理解をしてほしい、それぞれが北朝鮮と接触を持つ場合にそういうことを常に留意をしてもらいたい、こういう話をいたしまして、これについては米国も韓国についても理解を示しているということでございます。
 それから、全体の評価として、この韓国の特使の訪問というのは成功であった、我々は、日米韓とも北朝鮮との間でいろいろな大きな問題があるし、大きな懸念はある、しかしながら、そういう対話の流れというものを前向きに評価をして、それぞれが対話に粘り強く取り組んでいこう、その過程で、日本と米国と韓国、三国の連携が非常に重要だということが会合の結論ということでございます。
 日朝関係につきましては、確かに停滞をしているということではございますけれども、実は、この数カ月の流れの中で、例えば、元日経の記者が無条件で解放されてきた。あるいは、赤十字の会談の再開の意図が北朝鮮側から発表された。それから、行方不明者の調査の再開が発表された。これは別に突然起こっているわけではないわけであります。当然のことながら、私どももいろいろなことをしているわけで、ただ、私どもが一番強く思うのは、口ではなくて結果で示されねばならないということで、私どもも、ぜひ具体的な結果をつくっていきたいし、そのためにいろいろなことをしてまいりたい、こういうふうに考えているわけです。
土田委員 大臣にお尋ねしますが、このことによって日朝交渉の再開の糸口が見つかったというふうに考えられますか。
川口国務大臣 今後、物事が円滑に進展をしていって、そういうことになることを希望しているわけでございます。
土田委員 次に、不審船の問題でございますが、日米合同で調査チームを発足させるという方針を決められたようでございますが、これについて、どういった理由でアメリカ側と合同でやるのか、その点についてお尋ねします。
植竹副大臣 今、不審船のことについてお話ございましたが、米国に対しましては、今の状況とかそういうことは御説明しておりますが、引き揚げにつきまして米国に協力を依頼したとかということはございません。
 なお、先般新聞に出ておりましたけれども、これは、全然その事実はございません。
 それからまた、アメリカに依頼とかそういうお話がございますけれども、この問題は、そういう協力を依頼した事実もございませんし、そういう仮定の問題については、ちょっと返答を差し控えさせていただきたいと思います。
 なお、現状でございますが、今、ダイバーを入れるかどうか、天候その他の状況を見ながら調査に入るということでございます。そして、そのダイバーの結果を見まして、これを引き揚げるかどうかというものを検討していくということになると思います。
土田委員 というと、この産経新聞に出たのは誤報だというわけですね、そういう事実がないということですから。産経新聞の四月八日の朝刊でございますが、不審船の引き揚げについてアメリカと合同チームを発足させるというふうに、これはだれが答えたとは書いてありませんけれども。
 もう一回聞きますが、では、これは間違いで、こういうことをしないということですね。
田中政府参考人 この問題は、まさに重大な犯罪が犯された、それに対して日本が事実の究明、事態の究明をやるということでございますから、そういうことについて米国に依頼をした事実はございませんし、そういうことは考えられないというふうに思います。日本には十分な技術がありますし、他の国の協力を得る必要もないということでございます。
土田委員 その点はわかりました。誤報だということで理解できましたけれども。
 これに対しまして、この引き揚げに関して、私は、けさのテレビで、ちょっとしか見なかったのですが、李鵬さんが、反対といいましょうか難色といいましょうか、そういった態度をとっておられるようですが、これについて、ちょっと事実関係と外務省の今後の方針について説明してください。
田中政府参考人 李鵬全人代の常務委員長につきましては、これは総理とも会談をいたしましたし、それから川口大臣とも会談をされました。
 その中で、総理、外務大臣より、この問題についての重要性、まさにこれは犯罪究明ということでやっていく、かつ、日本の国内の意識、こういうものも御説明になりまして、李鵬常務委員長は、この問題については二国間できちんとやっていきましょうと。こういう問題は二国間の大きな政治外交問題にしてはいけないということについて、日中の了解ができているというふうに思います。
 本日の朝の報道でございますが、私の理解は、各種のことが日本で報道をされている、委員が御指摘の米国と合同でやる云々、こういう話も伝えられてきている、それに対して、そういう話というのは自分は聞いていないし、そういう話というのは中国にとって好ましいことではない、こういう反応があったのであるというふうに聞いております。
 いずれにしましても、外務省、私どもといたしましては、中国の排他的経済水域の中で、中国が天然資源あるいは環境について一定の権限を持っているということは事実でございますし、そういう観点から、必要な調整は中国と粛々とやらせていただきたい、こういうふうに考えております。
土田委員 ということは、李鵬さんも、このアメリカとの合同チームをつくるという誤報を聞いたためにそういった発言になったということですね。
 僕は、大臣にもう一回、以前した質問をするんですが、不審船を引き揚げて事実究明をしろという、国民の多数といいましょうか、たくさんの意見があると思うんですね。今の国会の中でも、多くの議員が、不審船をなぜ引き揚げないのか、早く事実究明しろというような意見があるんですが、なぜ引き揚げないんですか。
川口国務大臣 先ほど田中局長からお答えをいたしましたように、現在、まず、どこに沈んでいるかという場所について調べたということでございます。今後、船体の調査をしていくということになるわけでございます。
 その次の手段、その次にとるべき手として、引き揚げていくということになるだろうということでございますけれども、それは、それまでの間の調査その他を踏まえて、そのたびそのたびで判断をきちんとしていくということであると考えております。
 なお、これも先ほど田中局長がお話をいたしましたように、李鵬全人代委員長との話においては、そういった日本人の、国民の気持ちということは私からお伝えをしたわけでございます。
土田委員 その答弁じゃ、僕は理由にならないと思うんですね。中国側との話し合いは当然、粛々でもどんどんでもいいんですが、進めていかなきゃならない。やはり日本政府として、引き揚げて事実関係を究明しようという姿勢がなければできないと思うんですが、何か外相の答弁というのは非常にあいまいで、そのときそのときに判断していこうと。引き揚げる意思があるのかないのか、それを答えてくださいよ。
川口国務大臣 先ほど申しましたように、今、まず場所を調べて、次に船体について外部から調べるということをやるわけでございます。そういった調査を踏まえて、今後の順番といいますか、手順といたしましては引き揚げる、そういう手順になると思いますけれども、これは、それまでの、そのときの調査の状況、天候といったこともあると思います。そういったことを踏まえて、順番に対応をしていくということであると考えております。
 当然のことながら、この海域については、これも先ほど田中局長が言いましたように、中国が天然資源について権利を有している、あるいは海洋環境について管轄権を持っているという地域でございますから、この点については、中国の持っている権益に影響がある場合につきましてはきちんと中国と相談をしていくということで、従来から、この事件の発生の当初から中国には情報の提供をいたしておりますし、今後ともそれはきちんとやっていくという考えでおります。
土田委員 前回、私は、海洋調査船の問題でこの委員会で質問をいたしました。中国の海洋調査船が日本近海に来て、協定違反をやっていろいろな場所で調査をしている。しかも、普通ならばやってはいけないエアガンによる調査とかボーリング調査とか、いわゆる単なる海洋調査でなくて資源探査をやっているんじゃないですかという話をしたときに、外務省は、北京政府に対して文書じゃなくて口頭で注意をしたというふうに言っていました。
 中国がやっている、中国にやられていることについて日本は非常に弱腰なのに、今回も、中国の排他的経済水域の中にあるというだけで、中国の利益とか環境とかいろいろなことを言って引き延ばしているように、あるいはまた中国の顔色ばかりうかがうような態度というのはよくないと僕は思うんです。
 中国に対して、この引き揚げがいかに重要であるかということを説明すれば中国もわかってくれると思いますし、あるいは、今大臣が二回も同じことをおっしゃいましたけれども、どこに沈んでいるか、引き揚げられるかどうかというのは、海保庁の長官の発言でもうわかっているじゃないですか。今後引き揚げると思うけれどもというような大臣のあいまいな答弁は、やはり責任ある立場としては納得いかないような気がしますね。
 だから、具体的に、いろいろな状況が整えば、いつ引き揚げて、どういう調査をして、どういう処理をするのかというような見通しについても、できればその話をしてほしかったなというふうに思います。――副大臣、いいです。大体、大臣の話で感じがつかめましたので、時間がありませんので、シンガポールの方の話を少しさせてもらいます。どうしても答弁したいですか。じゃ、どうぞ。
植竹副大臣 ちょっと誤解があってはいけませんが、日本としては引き揚げる意思はあり、そしてその所定のところにダイバーが入ってみて、そして、それを引き揚げるときに、もし船首が折れたり何かしますと油が漏れるわけです。そうした場合に、今回の排他的経済水域の中には、資源の問題と、もう一つは環境に対する管轄権というのが向こう側にあるわけです。ですから、そういった油漏れなんかのために、今回、管轄権の問題でもって調査をする、そういう意味でございますから、その点、資源探査ということではございませんから、そういうことで、調査を進んでやっていきます。
土田委員 その件はわかりました。そんな、油漏れは大した問題じゃないですよ。日本の資源を探査されているのに、それを中国に許しておいて、油漏れなんか大した問題じゃないですよ。
 シンガポールの件でございますが、まず、アジアにおける我が国の経済連携のあり方についてお尋ねしたいと思います。
 今後、自由貿易協定を拡大していく場合に、現在、我が国に対して協定締結を申し出ている国にメキシコやチリがあるわけですね。もちろん、魅力的な相手であることは間違いありませんけれども、やはり我が国としては、アジアを想定といいますか、地理的関係からも、現実の経済上のつながりからも、第一に考えるべきじゃないかというふうに私は思うわけです。その意味で、今回のシンガポールとの協定締結は、通商上非常に有益であるというふうに私たちは考えております。
 ただ、アジアの中では、日本のように非常に先進工業国もあれば、韓国、台湾、シンガポール、マレーシアなどのように新興工業国もある、あるいは最近になって急速に発展した、工業化した国もある、さらにはベトナムやカンボジアみたいに、あるいはミャンマーもそうでしょうか、発展段階が異なる階層的な国がたくさんあるというふうに思うわけですね。
 そこで、ヨーロッパのように、ほぼ同じような水準にある国々と事情が違うわけですが、このようなアジア地域での自由貿易協定を含む経済連携のあり方として、政府はどのようなモデルを考えていらっしゃいますか。
田中政府参考人 今委員が御指摘のお考えというのは、実は私たちも概要において同じような考え方を有しているということでございます。すなわち、ヨーロッパでは非常に経済統合が深く進み、アメリカではNAFTAを中心にしてそれが拡大していっているという状況の中で、日本のアジア政策としても、対外経済政策としても、アジアにおいてできるだけ幅広い経済連携の網の目をつくりたいということが基本の考えであろうかというふうに思います。
 他方、これも委員御指摘されたとおりでございますけれども、経済の発展段階が大きく違う国の間で、こういう自由貿易協定であるとか包括的な経済連携協定というのは無理がある場合があるということも御指摘のとおりでございまして、そういう観点から見て、シンガポールというのは、所得水準等も含めまして、日本とそういう市場の連携をつくるということに適した国である。
 それじゃ、アジアでほかにどうか。私どもは、韓国というのが一つの非常に大きな候補ではないかというふうに考えております。韓国につきましては、先般、総理が公式に訪韓をされたときに、産官学で研究会をつくって進めていこう、こういうことになっておりますし、できるだけ幅広い、シンガポールのような経済連携構想というものを進めていきたい。
 これもことしの一月に総理がASEANを訪問された際、シンガポールで演説をされましたけれども、ASEANとの関係においても、これは十カ国それぞれ発展段階が違うので、同じようなものにはならないと思います。ですけれども、そこは工夫をしながら、やはり日本との経済連携を強化するということを積極的に推進をしてまいりたい、かように考えております。
土田委員 きょうは下地政務官にお見えいただいておりますので、政務官の方にもひとつお尋ねをしたいと思います。
 シンガポールという国は、国土が狭いということや国際的な交通の要衝にあるわけでございまして、そういった特性から、中継貿易を中心に発達している。アジアにおいては、ビジネスハブ的な存在になっているし、それを目指しているわけでございますが、そういったことから、シンガポールのインフラが非常に進んでいるといいましょうか、よくできているなという感じがするわけですね。
 例えば、港湾のコンテナの取扱量が世界で一位であるし、入港は、二十四時間、三百六十五日いつでもできる。あるいは、機械の自動化、無人化、あるいは各種のサービス等も非常に充実をしている。そして、費用は日本の半分だったり三分の一だったりということになってくるわけですね。あるいは、空港だって二十四時間いつでも使える、四千メートル級の滑走路が二本もあるということになってくると、どうしても、こういったメリットを持ったシンガポールに拠点を移そうという、例えば我が国にある会社もそっちに、シンガポールに移そうということも考えられるわけです。
 そこで、やはり日本としましても、これに対抗するような、あるいは日本の経済の空洞化を防ぐための手段を考えなきゃいかぬだろう、当然考えておられると思うのですが、その点について、どういうふうに思われますか。
下地大臣政務官 お答えをさせていただきたいと思っております。
 今回の日本・シンガポールの新時代経済連携協定の意義については、先生よくおわかりのように、貿易の拡大、そしてそれに伴って両国の経済の活性化、これに大きな意義があるわけであります。
 今度の締結によって、お互いの市場に非常にアクセスがしやすいということも起こってくるわけでありまして、今回の提携が結ばれますと、通信端末機器や無線機器、電気製品、これは相互承認があるわけでありまして、認証コストの削減や承認期間が短くなる、そのこともビジネスにとっては大きな意義があると思います。それによって、日本からシンガポールに対する投資も、シンガポールから日本に対する投資も大きくなってくるという意味では、私たち経済産業省としては、この協定によって産業の空洞化は起こらないだろうというふうに思っております。
 ただ、産業の空洞化があるということも言われていることは事実でありますから、今、私たち政務官の中でも、国土交通省そして財務省、私たち経済産業省三つで、どうしたら物流のコストが安くなるのか、どうしたら産業電力のコストが安くなるのか、どうしたら通関システムのコストがスピーディーに、そして安くできるのか、そういったことを協議しながら、産業空洞化の歯どめをかけたいというふうな作業もさせていただいております。
 そして、今、知的所有権の問題、新しいニュービジネスの問題などを考慮しながら、付加価値のある産業を日本につくり出そう、そういう努力もしておりますので、そのことによって空洞化の波をとめたい、そういうふうな対策を出させていただいております。
土田委員 以上で終わります。
吉田委員長 次に、松本善明君。
松本(善)委員 外務大臣に伺いますが、まず、この協定に入ります前に、パレスチナの情勢が深刻になっております。同僚委員も質問をいたしましたが、私、外務大臣の御答弁を聞いていて、どうしても、あの蛮行、人がたくさん死んでいるという事態をなくそうという決意といいますか情熱といいますか、これが感じられない。
 三月の三十日に談話を出した、こういうふうに言われましたけれども、三月の三十日には国連決議の一四〇二が決議され、それで、四月の三日には一四〇三の緊急決議になっているんですね。三十日に談話を出したということでは済まないと思うのですよ。そして、やはり人がたくさん死んでいる事態をどうしても防ぐというための行動を日本政府はとるべきだと思うのです。その考えがまずあるかどうか、あれば、どうするのかということを聞きたいと思います。
川口国務大臣 現在までの取り組みといたしましては、先ほど委員がおっしゃった談話、それから、我が方で御招待をいたしましたパレスチナ立法評議会議長のアブ・アラ議長との会談、あるいはシモン・ペレス・イスラエル外務大臣との会談、パウエル米国国務長官との会談、前イスラエル大使の派遣、それから、その前イスラエル大使の現地での、パレスチナ及びイスラエルの関係者といいますか、その政府のリーダーとの会談、及び米国のジニ特使との会談等々、このほか、総理からの親書その他いろいろございますけれども、さまざまな取り組みを行ってきております。
 委員がおっしゃられるように、こうした事態のエスカレーションは非常に問題でございまして、こういった一瞬にも失われていく人命に対しては、できるだけ速やかに、世界の国々と一緒に取り組まなければいけない問題だという認識を持っております。
 今後、我が国としてどういう手が打てるか、具体的な案が考えられるかということについては、さまざまな検討を行っておりますけれども、現在、パウエル国務長官がこれからその地に入ろうということで、今、アラブの関連諸国の方とお話をしていらっしゃいますので、そういったことも踏まえながら、さらに具体的にしていきたいと考えております。
松本(善)委員 今までやったことの、先ほど御答弁のあったことの、基本的には繰り返しのように思います。
 やはり、国連が緊急決議をやっているわけですから、できるだけ速やかにやる、直ちに全占領地から撤退をする、そういうふうにしろということをイスラエル政府に要求すべきじゃないですか。
 それから、パウエル長官のことを言われましたけれども、事実上イスラエルの行動をアメリカが支援しているというのが世界の認識ですよ。例えば、シャロン首相は、我々は米国がアフガニスタンで攻撃を行ったようにパレスチナを攻撃すべきだ、そうしたらブッシュ大統領は、そのシャロン政権の蛮行を、自衛だとか理解できる、こういうふうに言っているわけですよ。
 やはり、アメリカの後ろについていくんじゃなくて、日本は平和のために断固とした行動をとるんだ、国連決議に従って、イスラエルはパレスチナの全占領地から直ちに撤退すべきだということを公式に、代理大使を通じてでも、あるいは特使を派遣してでも、改めて要求すべきじゃないですか。そのことについての決意があるかどうか、伺いたいと思います。
川口国務大臣 先ほど申しましたさまざまな取り組みあるいは働きかけの中で、イスラエルに対しましては、パレスチナ自治区からの即時の撤退を含め、最大限の自制をするようにということははっきりと言っております。
松本(善)委員 国連も、三十日にやって、さらに四月の三日にやっているわけでしょう。それは、やはり今までの状況だけではいけないんですよ。この機会にきちっと、直ちに撤退せよということをイスラエルに日本政府の意思として伝えるということをやるんですか、やらないんですか。
川口国務大臣 今まで、すべての機会にそういうことを言っておりますし、今後ともそれは言い続ける考えでおります。
松本(善)委員 国連も、緊急に安保理事会を開いてもう一回決議しているんですよ、それは一刻も早くそうしようという。私は、言っている言っていると言うけれども、事態の発展についての敏感さが非常に欠ける、そういうことでは困るということを申し上げて、協定の問題について質問をしようと思います。
 このシンガポールとの経済連携協定、これは二国間の自由貿易協定の締結の初めての問題であります。
 これは、シンガポールは国民一人当たりのGNPは三万百七十ドル、日本が三万二千三百五十ドル、発展した国同士の協定ということで、お互いの立場を害するということは少ないと思います。
 我が党は、こういう場合に、各国家間の経済関係を考える場合に、やはり平等互恵、経済主権の尊重ということがしっかり据わっていかなければならない、相手国の経済を破壊するとか、あるいは我が国の国民経済に重大な影響があるというようなことは避けなければならない、こういうふうに思うのです。
 問題は、これからの二国間協定を結んでいくということについてどういう方針をとるかということに重大な関心が、特に農林水産関係では非常に大きな関心があります。
 御質問も前にもありましたが、まずシンガポールについて、これは関税撤廃を約束した農水産品は四百八十六品目で、いずれもWTOで無税の産品になっていますので、これらの産品の輸入によってシンガポールとの協定で国内への打撃が広がるということはないと思いますが、この農水産品の関税について、基本的にどういう方針を持って交渉に臨んだか、シンガポールの対応はどうか、今後はどういうふうにしていくつもりか、それを、大筋は外務大臣に答えていただいて、必要があれば政府委員に答えていただいても結構です。
佐々江政府参考人 お答えいたします。
 農産品の貿易につきましては、先ほども議論がございましたけれども、この協定のもとでの物品の貿易が、全体としてガット二十四条に言う実質上すべての貿易について関税を撤廃するという自由貿易協定の要件に整合的である必要があるということを確保するために、農水産品につきましても、我が方の関税につきまして、今議員御指摘のとおり、WTO無税譲許品目とそれから実行無税品目を協定の対象とすることにしたわけでございます。
 これは、この協定をWTO協定に整合させつつ、協定の国内の農林水産業への影響にも配慮したということでございまして、基本的に我が国の交渉方針というのは、ガットに整合的ということと国内への影響を避けるようにするという、この二つの基本方針でもって交渉を行ったわけでございます。
 御承知のとおり、シンガポールの方自体につきましては、この農産品の輸出ということについては、先ほど先生御指摘のとおり、他の大農産物国というわけではございませんので、実態上の問題においてさほど鋭く大きく要求があったということではございません。
 他方、今後この二国間の協定の可能性を検討してまいります際には、当然のことながら相手国の経済の発展段階、とりわけ農業の状況あるいは輸出の状況も踏まえまして、我が国として、先ほど申しましたこの二つの要請の適切なバランスの上に立って交渉をしていく必要があるというふうに考えております。
松本(善)委員 メキシコとの協定ではこれが準備されているというふうに言われていますが、これはどうなのか。メキシコの場合には、これは農産物の輸入については非常に大きな問題があろうかと思います、豚肉とか果樹とか野菜とか。こういうことについて我が国でも非常に大きな関心があります。
 メキシコのみならず、そのほかこれから広げていくのか。韓国、チリとかオーストラリア、ニュージーランド、アメリカなども言われているんですけれども、この二国間協定についての我が国の方針、これを聞きたいと思います。
佐々江政府参考人 今メキシコについての言及がございましたが、メキシコにつきましては、御承知のとおり、今、産官学のチームによりまして研究が行われているという状況でございまして、この夏にもその研究が終了する見込みであります。したがいまして、その終了した時点で、改めて政府としてこの問題をどういうふうにするのかということを考えていかなければいけないと思っております。
 それから近隣諸国では、先ほども話がございましたけれども、韓国とはこれから産官学の研究を始めていくという段階にあるわけでございます。それから、ASEANのほかの国々につきましても、まずそれぞれの国と話し合いを進めていって、やはりふさわしいものから優先的に始めていくということを検討しなければいけないというふうに思っておりまして、主として、当面念頭にありますのはアジア太平洋地域の国であるというふうに考えておりますが、他方で、ではそれでおしまいかというと、ほかの国からもリクエストもございますので、全体として、それぞれのケースに即して、我が国として最も国益上有益なパートナーとしてこのような協定を結ぶことが適切かという観点から判断していきたいというふうに考えております。
松本(善)委員 今後の二国間協定を結ぶ上で、WTOで無税譲許している品目及び実行無税品目から関税割り当て制度対象品目を除いた品目に限って関税を撤廃するシンガポールのようなやり方を貫くということは言えますか、どうですか。
佐々江政府参考人 シンガポールの場合は、やはり日本とシンガポールの間の農業貿易の現状も踏まえまして、それに即した形で処理を行ったというふうに考えておりまして、一つの考え方としてはそういうものも交渉のプロセスではあり得るだろうと思いますけれども、では、すべての協定においてシンガポール方式を適用するのが妥当かどうかということについては、その国ごとの事情に照らしてやはり判断する必要があるというふうに思っております。
松本(善)委員 外務大臣に伺いますが、外務大臣は日本の農業が、米についても、それから野菜についても、それから今問題になっている畜産についても、非常な危機に来ているということを御存じかどうか。
 例えば、ホウレンソウ一束十円とか、ニンジンが昨年比五一%安いとか、白菜が七二%安くなっている、キャベツが五八%安くなっている、レタスは六一%安くなっている、ミカンはキロ三十円だとか、リンゴはキロ百円以下だとか、果物の暴落でも苦しんでいますし、畜産農家はもう詳しく言うまでもありません。稲作農家も、一俵六千円以上の暴落で、農業もこのままでは崩壊しかねない状態です。
 外務大臣はそういう状況を認識しているかどうか、そして日本の農業を守るという立場で外交を進めるという考えであるかどうか、伺いたいと思います。
川口国務大臣 まず、最初の質問につきましては、存じております。
 それから、二番目の質問でございますけれども、我が国の農業が、我が国に必要な食糧の供給を行い、かつ健全な姿で産業として存在し続けるということは重要であると考えております。
 やはり我が国の消費者に一番近いところにあるのが我が国の農業でございまして、そういった消費者の安全と安心への希求といったことについてもきちんと理解をしているわけでございますし、また、そういったことにこたえることができるのも我が国の農業だと思っております。
 私としては、我が国の農業が、今後そういった消費者のニーズをきちんと踏まえ、また、必要な我が国の食糧についての安全保障、それもきちんと踏まえた上で、健全な農業として育っていくということを希望いたしているわけでございますし、外交に携わる立場からは、そういった農業のあり方を踏まえ、今後適切に外交を行っていきたいと考えております。
松本(善)委員 この協定では、セーフガードについても問題があります。
 本協定の中の二国間のセーフガードは、WTOの一般セーフガードに比べて、締約国がとることのできる措置が大きく制約をされている。例えば、数量制限が決められていないこと、一品目について一回しか発動できないこと、発動期間が最長でも三年などとなっております。
 このように、二国間のセーフガードの仕組みが弱められていくということは、締約国の手を縛るという点で問題だ。シンガポールは農業国ではありませんから、シンガポールとの間では問題がなくても、二国間協定がさらに広がっていきますと、全体としてセーフガードの仕組みが力を持たなくなってくる。
 本協定の十八条の五では、一般セーフガードをとることを妨げないと解釈できる規定がありますけれども、この協定のセーフガードの規定と、それからWTOの一般のセーフガードの規定は、どういうかかわりを持つのか、外務省の見解を聞きたいと思います。
林政府参考人 お答えいたします。
 この協定で認められておりますセーフガードと申しますのは、まさに今御指摘ございましたように、この協定で定めます関税の引き下げまたは撤廃の結果によります輸入の増加ということを対象にしておりますので、要するに、この協定を通じましてシンガポールに、WTOと比較しまして掘り下げた形での関税の撤廃を行っておるわけでございますけれども、その部分に関しまして、この協定のセーフガードが働くということでございます。したがいまして、シンガポールとの関係において特別に供与した約束、関税撤廃の約束を取り下げる等の対応をとることができる、二国間の関係において働くということでございます。
 当然のことながら、御承知のとおり、WTOにおきますセーフガードと申しますのは、これはMFNを通じまして全世界的に働くものでございまして、これはWTOで供与したものに対して働くということでございます。
松本(善)委員 これはシンガポールだけで、今後広げていくということではないと伺っていいですか。
林政府参考人 ちょっと御質問の御趣旨を理解しているかどうかあれですけれども、この協定のセーフガードというものは、この協定全体を交渉し妥結させた中におきまして定められたものということでございます。今後のお話については、ちょっと今の段階ではまだ申し上げられないんではないかと思いますけれども。
松本(善)委員 それでは、外務大臣に聞きましょう。
 やはり、セーフガードを弱めるという二国間協定が幾つも続く、特に農業国との間で続くということになりますと、私は、WTO協定での農業についての、食糧安全保障でありますとか環境を守るとか、そういうことについての我が国の主張も弱めることになる。外務大臣としては、このセーフガードを弱めるということを、シンガポールはそう影響はありませんけれども、今後とも続けるつもりなのかどうか、伺いたいと思います。
佐々江政府参考人 このシンガポールで交渉しましたセーフガード、二国間のセーフガードというのは、あくまでもこの二国間、シンガポールとの間でのセーフガードの取り決めでございまして、ほかの国と仮に結ぶ場合に、どういうセーフガードを結ぶかということは、やはりその国の状況に照らして考えなければいけない問題だと思います。ですから、これをそのまま適用すればいいというふうには必ずしも考えておりません。
 他方で、先ほども御指摘ございましたけれども、ガットの一般的なセーフガードは、それが適切な場合にはいつでも援用し得るのだということでございますから、この二国間とガットとの間で、両方のものが適用し得る。もちろん、サブジェクト、対象は違うのでございますが。
松本(善)委員 セーフガードの問題は、今我が国では非常に重大な問題になっております。
 やはり中国との関係でセーフガードが問題になっていますが、衆参両院の農水委員会では、超党派で、セーフガードを発動しなければ産地が崩壊するということを決議しているのですよ。それが、正式発動が見送られました。
 そして、その後の輸入状況を見ますと、暫定セーフガードを発動した期間は、シイタケ、長ネギは確かに輸入は減少しましたけれども、その後は増加をしている。そのほか、野菜でいえば、キャベツが二・四倍、キュウリが四割増し、ニンジン、ブロッコリー、ピーマン、冷凍ブロッコリーなどが増加をしている。それから、ミカン、リンゴ、パイナップル、冷凍イチゴ、さらにリンゴジュース、オレンジジュースは激増しておりまして、こういう果実の自給率は四四%。非常にゆゆしい事態になっているのですね。
 やはりシイタケ、長ネギ、畳表のセーフガードを発動するということ、輸入が増加をしている野菜、果実、果汁などについてセーフガードを、直ちに発動の調査に入り、発動することが必要だと思います。それから、中国への対中特別セーフガードの発動が今度のでできるようになっていますけれども、これのための法的措置を至急にとること。そういうことをやって農業の空洞化とか開発輸入を規制しませんと、日本の農業は本当につぶれてしまいます。
 先ほど外務大臣は、そういう農業について非常に重大なことになっているという認識を示されましたが、今、私が言ったようなことをおやりになる考えはありませんか。
西藤政府参考人 先生お尋ねのネギ等三品目のセーフガード問題は、昨年の十二月に、私どもの武部農林水産大臣と平沼経済産業大臣、それと中国側の石部長と協議を行い、最終決着をし、三品目に関する協議会を立ち上げることによって、需給等について両国の共通認識を醸成していく、そのことを通じて、今後、両国の貿易摩擦問題の解決にも資していく、そういう形で取り組んできております。現に、農産物需給協議会自体は、三月末の二回目を含めて、関係者の参加を得て実施されてきている状況にございます。
 また、私ども、農産物のそれぞれの需給動向に応じて、現在、農林水産省におきましては独自に、たしか十五品目でございますけれども、省としての監視品目ということで、需給動向、価格動向を監視している、モニタリングしている、そういう状況にございます。
 最近の輸入状況は、先生御指摘のような状況もございますが、一方、ネギ、シイタケ等の状況を、私ども、財務省の御協力も得ながらモニタリングしておりますが、いずれも本年に入りましても前年をかなり大きく下回る状況で輸入が推移しているという状況でございますし、野菜全体という観点で先生御指摘ございましたが、私、手元に平成十三年の年間計の生鮮野菜の輸入状況を持っておりますが、前年に対して一〇五%、五%増という状況でございます。
 果実等も品目による輸入増加の状況ございますが、いずれにせよ、我々、各品目ごとの輸入の動向、国内需給の動向、価格動向を今後もモニタリングしていきたいというふうに思っております。
松本(善)委員 農家がとても安心できる状況ではないということを申し上げて、最後に質問したいのは相手国との関係ですが、この協定には、相手国の投資を許可する段階で内国民待遇を付与すること、また、相手国からの投資に対して現地調達や自国への技術移転などの条件を課すること、いわゆるパフォーマンス要求を禁止している。これは、今まで日本が締結した協定には含まれていません。新しい問題です。この点は、やはり相手国の事業を束縛するようなことはよくないんじゃないか。
 ドーハのWTO閣僚会議で、インドなど途上国からの強い反対で、最終的に交渉方式について明確な合意ができるまで開始できないことになりました。こういう発展途上国に、相手国との関係でこの問題をどう考えるかということと、それから、今回の協定で、完全撤廃の約束から皮革製品は除外されているが、その理由と、皮革製品の保護を今後とも続けていくかどうかということをお聞きしたいと思います。
佐々江政府参考人 最初の方のいわゆるパフォーマンス要求の問題につきまして、私の方からお答えさせていただきたいと思います。
 従来の投資協定では、投資の許可後の事業活動に関する保護が中心となっていた例が多いわけでございますが、このたびの協定におきましては、内国民待遇の保障は投資財産の設立、取得、それから拡張に関しても及んでおりまして、投資家の権利保護という観点からは先駆的なものであるというふうに考えております。
 我々としては、この技術移転要求あるいはローカルコンテンツの要求等、途上国に往々にして見られるものでございますが、こういう特定措置の履行要求というものは投資阻害効果を有するということで、したがいまして、シンガポールとの間では、この点について交渉をいたしまして、広範なパフォーマンス要求の禁止を合意したわけでございます。
 シンガポールのような国は、途上国、さらに言えばASEAN諸国の中でも比較的先進的な立場にあるということで、ガットのいわゆるトレード・リレーティド・インベストメント・メジャー、つまり投資に関する協定におきましても、このようなパフォーマンスリクワイアメントの、いわゆる投資阻害効果を有するような要求については禁止をされているところでありまして、シンガポールもこのようなガットの協定に合意をしているということでございます。そういう意味ではそれほど抵抗はなかったわけでございますが、先ほど委員御指摘のように、途上国の中には、こういう投資阻害的な効果を持つようなものを依然として維持している国もございます。
 我々としては、基本的にはこういうものは、そもそも先進国、ほかの地域からの途上国に対する投資を阻害するものであって、途上国自身の経済発展にとってもよくないのだということを、途上国に対して理解を求めるようにこれまでも交渉をしてきておりますし、今後もこのような方針で臨む考えであります。
吉田委員長 松本善明君、時間がないんですよ。ちょっと過ぎていますから。
松本(善)委員 しかし、質問に答えようとしているんだけれども、ちょっと答えさせたら。ちょっと時間は過ぎているけれども。
吉田委員長 わかりました。
佐伯政府参考人 では簡単に、第二問目の御質問、皮革製品についてお答えを申し上げます。
 皮革製品に関しましては、御承知のとおり、ウルグアイ・ラウンドの合意を踏まえまして関税は着実に引き下がってきておりまして、今回、日本とシンガポールの経済連携協定で何か新たに譲許をしたというものはございません。
 今後の方針についての御質問でございます。
 これは、先ほどから外務省の方からも御答弁をいただいておりますけれども、どういう品目について相手側がどういう程度の関心を示すのかとか、あるいは全交渉品目についてのバランスというのを我が国の国益を守るという観点から総合的に判断をして、ケース・バイ・ケースで決められるべきものと考えておりますが、同時に、我々といたしましては、皮革産業が置かれております経営基盤の脆弱さ、あるいは国際競争力が弱いといったところは十二分に配慮をする必要があるということは認識をいたしております。
    〔委員長退席、中川(正)委員長代理着席〕
松本(善)委員 時間が来ましたので終わりますが、外務大臣に、日本の農林水産業を守ること、それから相手国の経済主権を守るように、そういう経済外交を進めるよう要求をして、これで質問を終わります。
中川(正)委員長代理 次に、東門美津子君。
東門委員 協定に入ります前に、照明弾落下問題についてお伺いをしたいと思います。
 防衛施設庁がおいでになっておられると思います。済みません。急でしたけれども、ぜひお伺いしたいと思います。
 まず、事実確認はどうなっているのでしょうか。訓練なのかあるいは事故なのか、そこから教えてください。
冨永政府参考人 御質問の件につきまして米軍に確認いたしましたところ、四月八日十二時二十分ごろに、通常飛行訓練から帰還途中の嘉手納基地所属F15戦闘機から小型の訓練用の照明弾、これはフレアというものですけれども、フレアが嘉手納基地の上空において分離した、この訓練用の照明弾は基地内の上空で完全燃焼したけれども、現在のところ、人的な被害あるいは施設に対する被害というものは一切ないということでございます。
 訓練用照明弾が分離した原因そのものにつきましては、現在、米側で調査中であるという状況でございます。
東門委員 そうすると、まだ、訓練の最中のものなのかあるいは事故なのかというのはおわかりにならないということですね。今調査中ということですよね。
 今の御答弁で、十二時二十分ごろ、その事故が起きた、事故というよりも照明弾落下があったということですが、嘉手納基地を抱える地元自治体がマスコミからの問い合わせによって情報をキャッチしたのが八日の午後一時、米軍側から関係自治体に連絡が入ったのが午後四時前となっているようですが、防衛施設庁に米軍から情報が入ったのはいつですか。
冨永政府参考人 ちょっとおくれまして恐縮でございます。時間はちょっと手元の資料にないんですけれども、私どもの方は、沖縄県の警察本部の方から御連絡を受けて、米側に事実確認をしたという状況でございます。
東門委員 その沖縄の県警の方からの連絡があった、あるいは問い合わせたというのはいつなんですか。けさですか。
中川(正)委員長代理 これは事前通告したんでしょう。どうしているの。
東門委員 はい、その件については、きょう急いで追加をお願いしたんです、その件について聞きたいと。――委員長、急ぐので、済みません。
 気になるのは、いつも通報体制がどうなっているのかわからないんですよ。事件、事故が起こるたびにです。私たちはいつも、早目にその原因を究明してほしいという要請をします。そのたびにお願いをするのは、米軍の情報開示、あるいは地元自治体、関係機関への通報のおくれ、それを改善してほしいとお願いをし、それが常に指摘されるにもかかわらず、本当にいつも遅いような気がする。どのようになされているか見えない。
 ですから、国としてはその通報体制についてどういうふうに思っておられるのか、それをお聞きしたかったものですから、いつ、何時ごろ連絡があったのでしょうかということです。防衛施設局に入って、防衛施設局から施設庁の方へ来るということだと思うんですが、今、警察本部だということでしたけれども、どうなっているんですか。その通報体制です。
冨永政府参考人 通常の場合であれば、米軍の方から事故についても連絡がありますけれども、本件については、それを目撃された住民の方から警察の方に通報が入って、それを私ども、那覇防衛施設局がございますけれども、そちらの方に連絡をいただいたということでございます。
東門委員 次回、金曜日にもお伺いすると思います。何時ごろそれをお知りになったか、教えてください。
 危険性がないというのは確かにおっしゃられました。地元の新聞にもそう書いてあります、危険性はない。でも、それは結果論にすぎないと思うんですよ。事実関係の把握、連絡体制、米軍の管理体制、それは即県民の生命に直結する重大な問題だと声を上げて言わなければいけないと思っています。
 本当に、国は米軍に対していつまでにこの真相解明を求めていくお考えか、それをお聞かせいただきたいと思います。
冨永政府参考人 本件につきましては、技術的な観点からの調査もございますでしょうから、私どもの方でいつまでにということではお答え申し上げることはちょっとできませんけれども、できるだけ早く原因を解明して、それに対する再発防止策をとってもらうということで調整してまいりたいと思います。
東門委員 その件に関して、外務大臣からぜひコメントをいただきたいと思います。
 今お聞きになったとおり、いろいろな事故が起こります。そのたびに問題になるのが通報体制であり、本当にそれが機能しているかということ。それは、一番不安に思い、危険を感じるのは県民だということ。米軍にそのたびに要請をし、あるいは抗議を申し込んだとおっしゃられるかもしれませんが、その結果がなかなか見えない、調査結果、原因が何だったのか。
 防衛施設庁は技術的な面が主かもしれませんが、外務省の方でもやはりそれはぜひやっていただきたいと私は思います。米軍に基地を提供している責任者は国です。外務大臣の大きな役目だと思います。大臣として、ぜひお願いします。
川口国務大臣 こういったこと一つ一つについて地元の住民の方が御不安に思っていらっしゃるという気持ちは、私もよくわかります。
 一般的な通報体制というものは当然存在をすると私は承知をいたしておりますけれども、その機能の仕方が実際にどうなっているかということが問題であるわけでございますので、これについては、私もきちんと勉強した上で、もし何かさらに改善をする余地があるようなことであれば考えてみたいと思いますし、いずれにしても、存在するルートあるいはその仕組みと、それから、現実に、そういったことがその時々のさまざまな事情によってうまく動かないケースがある、そういうこともあるかと思いますので、このケースがそういうことであれば、また、できるだけそういったことが再発をしないように、これも防衛施設庁とも御相談の上、議論をしてみたいと思います。
東門委員 もう一件なんですが、宜野座村では、水陸両用車が民間道に進入してきたということがまたもう一つ上がっております。防衛施設庁にはそれも通告してありました。
 四月七日の夜九時半ごろのことですけれども、宜野座村の民間道に二台の水陸両用車が進入してきたということが報道されております。その付近の民家の方の証言によりますと、それが進入してきたとき、地震のような地響きがした、そして家の中から外を見てみると、無灯火で、奇声も聞こえて怖かった、とにかく許せないと憤りの声が上がっています。
 無灯火で夜九時半です。情景がもうおわかりだと思います。言葉はわからないわけですから、奇声も聞こえた、何をされるかわからないという怖さが先に立ったという証言もあるんですけれども、その件に関して、地元の宜野座村からは、まず進入理由の調査報告、それから道路標識や説明板の設置、そして隊員への指導の徹底と再発防止、それについて文書で回答するよう求めているということが報道されておりますが、いつまでにそれに対応できるのか、お聞かせいただきたいと思います。
冨永政府参考人 本件につきましては、通常の進入路、潟原進入路というところがございますけれども、その通常の進入路からハンセン演習場の方へ移動する予定であったところ、道を間違えて一般道に入ってしまったということでございます。
 それで、具体的には宜野座村の方からもお話をいただいておりますので、具体的にどういう形で再発防止をとるのかということについては、これは米側とも調整しまして、できるだけ早急に回答したいと思いますが、具体的に何日までということは、これについても、恐縮ですけれども、申し上げられない状況でございます。
東門委員 照明弾の件にしましても、それから今回の民間地域への進入にしましても、県民には本当に日常的な恐怖、危険がつきまとうということはおわかりだと思いますが、米軍に再発防止を求める、それはもう常にやっておられると思います、私もよく知っておりますが。再発防止を求める以外に、何か国として打つ手はありませんか、大臣。
 たび重なる事故です。そういうことを防止する、そういうことが起こらないようにするというのは、そのたびに聞こえる弁明です。国もそのようにしますとおっしゃいますが、やはり起こっている。それも、結構数多く起こっている。それに対して国はどのようにされるのか、それをお聞かせいただけたらと思います。
川口国務大臣 どういうことができるか、まず勉強をしてみたいと思います。
東門委員 後でこれへ戻ります。
 では、協定について質問をいたします。
 幅広い分野での日本とシンガポールの連携強化を目指す本協定においては、人材養成の分野における協力についても規定しています。第百二十二条では、学者、教員、学生などの交流を奨励し、第百二十三条では、教育研究機関同士の緊密な協力を奨励するとしています。我が国にとっても、シンガポールにとっても、人的資源が最も大切であり、人材養成のための協力は大いに進めてもらいたいと本当に思います。
 沖縄におきましては、現在、尾身沖縄担当大臣の発案によります新大学院大学構想が進められております。教授陣と学生の半分は諸外国から受け入れ、講義や会議は英語とするとしているようですが、先月には尾身沖縄担当大臣がシンガポールを訪問されて、シンガポール国内の大学や研究機関を視察され、沖縄の新大学院大学構想との連携の道を模索してこられたとのことです。
 本協定において人材養成のための協力を行うに際しては、沖縄の新大学院大学構想は最適の環境を提供できるはずであり、ぜひとも同構想との連携を図っていただきたいと思いますが、大臣の見解をお伺いしたいと思います。――これは大臣にお願いしたいと思います。
中川(正)委員長代理 東門さんのたっての希望でございますから。
東門委員 はい。その件は大臣にお願いしたいと思います。
川口国務大臣 沖縄に、今尾身大臣が御検討をして一生懸命に取り組んでいらっしゃる新大学院が設立をされ、そこでいろいろな研究なりあるいは学生、教育者の養成が行われた暁には、これは、シンガポールの大学等とこの枠組みを使って相互に合意ができれば、連携はおのずからできてくるものではないかというふうに思っております。そういう意味で、この協定が新たな可能性を開くものだと私は考えております。
東門委員 ぜひ大臣の方も、その件をまたプッシュしていただきたいと思います。
 本協定では、観光分野における協力も規定されています。第百三十六条において、観光が両国間の相互理解の増進に寄与すること、両国の経済にとって重要な産業であることを認識して、観光の促進と発展に協力するということが定められています。
 昨年三月三十日から四月一日にかけてシンガポールにおいて開催されましたトラベルフェアに沖縄県シンガポール事務所が出展をし、沖縄の魅力をアピールしたようです。シンガポールの方々の反応は、沖縄が日本でも有名なリゾート地であること、すぐれた伝統文化を有する地域であることがわかり、機会を見つけてぜひ行ってみたいという大変好意的な反応だったということが言われております。
 観光の振興においては、できるだけ多くの人にその観光地の情報を提供することがもちろん重要であります。本協定の第百三十八条の規定により設置される観光に関する合同委員会においては、観光の促進、発展に関する情報交換を行うことになっていますが、そこで交換される情報の中にぜひとも沖縄の情報も入れていただきたいと思います。政府の御見解を伺いたいと思います。
    〔中川(正)委員長代理退席、委員長着席〕
佐々江政府参考人 先生御指摘のとおり、観光分野における交流というのは両国の経済に非常にいい影響をもたらすということで、我々としても、この協定のもとでの両国の観光の交流というものを大いに促進していきたいというふうに考えております。
 その意味で、この合同委員会で、具体的な情報交換も含めまして、今後いかなることをやっていくかということを具体的に検討していく必要があるというふうに考えておりまして、その中で、ただいま先生が申されましたような沖縄の魅力についても、我々としてもできる限り先方にアピールしたいというふうに考えております。
東門委員 ぜひ、そのようにお願いしたいと思います。
 シンガポールは、面積約六百五十平方キロメートル、東京二十三区とほぼ同じ大きさの島国であり、人口は約四百万人です。沖縄は二千二百七十平方キロメートルで、シンガポールの三倍強の面積ですが、人口は約百三十万人、ほぼ三分の一です。どちらも暑い地方の島であるという共通点、あるいは中継貿易を行って、沖縄は歴史的にもそうなんですが、今シンガポールはそれでかなり栄えているところです。
 大きく違うのは、何といっても沖縄は基地で覆い尽くされているということです。シンガポールを見習っていろいろな産業を振興しようとしても、常に基地の存在がそれを邪魔している現実です。最大の基幹産業である観光業でも、昨年のテロ事件のときのように、沖縄は危険だといううわさが流れれば、たちまち大打撃を受けるということになります。シンガポールと観光についての情報交換を行っても、沖縄は基地の町だという情報が誇大に伝わっては、シンガポールからの観光客の増加を期待できなくなってしまうのではないかという懸念もあります。
 そうならないためにも、そして、先ほど大臣が私の質問に対して、米軍に再発防止を求める以外に国として何か打つ手があるかという質問に対して答えられた、何ができるか考えてみたいというお答えでしたけれども、そのことに関してですが、やはり米軍基地の整理縮小、それしかないと思います。そのためには海兵隊の削減ということが行われなければならないと思いますが、この件に関しては、大臣の御答弁をお願いしたいと思います。
川口国務大臣 恐縮でございますが、ちょっと前段の協定との関係について必ずしも質問を理解していないと思いますので、もう一度おっしゃっていただけると幸いでございます。
東門委員 シンガポールとの協定が結ばれる、いいことだと思います。そして、観光もお互いにいろいろと振興を考えていこう。観光の発展も、日本、シンガポール、その中にもちろん沖縄も含まれると今さっきお話ありましたけれども、そういう中で、沖縄が本当に、青い海、すばらしい自然、緑、それで観光客に訴えましても、ややもすれば、基地の存在、しかも広大な基地の存在がそれに対してかなりのブレーキになり得るということもあるわけです。それは昨年のテロでももう証明済みだと思います。
 そういうことにならないためにも、そして、私が言ったので大臣ちょっと勘違いされたと思うんですが、大臣は国として何ができるか考えてみたいとおっしゃった、国としてできること、やはりこれは基地の整理縮小に手をつけるということ、そして、そのためには、海兵隊の削減、それに一歩踏み込むということが言えるのではないかということを申し上げているんです。それに対しての大臣の見解をお伺いしたいということです。
川口国務大臣 在日米軍の施設・区域の七五%が沖縄に集中をしているという現実があるわけでございまして、沖縄県民の方にはこの点で御負担をおかけしていると思います。
 私といたしましては、SACOの最終合意の実施を着実に進めていくということで考えております。
東門委員 SACOの最終合意の実施で沖縄県民の負担はどれぐらい軽減されますか。面積でおっしゃらないでください。先ほど事故の話もいたしました。そういう事故が起こるたびに、地域の住民、県民は本当に恐怖を覚えます。そういう中で生活をしているということをぜひわかっていただきたい。SACOの最終合意の実施は、面積的にちょっと減りますよ、それでも七〇%以上の基地は残るんですよということは大臣もおわかりだと思います。それではなくて、本当に一歩踏み込んで何かをしていただかなければならないときだと思います。
 そういう意味で、大臣には、これまで私、この一年九カ月、国会に来てから、同じ質問をして同じ答えが返ってくるのがとても残念ですが、本当にアメリカに対してしっかりと物を言っていく外務省でなければいけないと私は思うんです。どんなに交渉が厳しくても、これぐらいはやってみたいという決意で結構です。できるというお約束はないかもしれません、今この場でしてくださいとは申し上げられませんが、しかし、大臣としてこういうことはやっていくという決意で結構ですから、ぜひお聞かせいただきたいと思います。
川口国務大臣 SACOの最終合意の実施はきちんとやっていきたいと考えております。
東門委員 SACOの最終合意の実施では沖縄県民の負担は軽減されないということを強く申し上げておきます。
 あと一問だけ質問させていただきますが、昨年の十月、上海で行われましたAPECに出席された平沼経済産業大臣は、台湾の林経済部長との会談において、自由貿易協定締結のための民間レベルの共同研究を提案されたことに対し、前向きの姿勢を示されたということであります。
 台湾は、シンガポールと並んでアジアにおけるハイテク先進国であり、国民所得は高く、我が国とさほど格差はありません。企業間の取引も盛んであり、我が国にとっては、経済的な観点だけで見れば、有力な自由貿易協定の締結先となるはずです。しかしながら、台湾との結びつきを強化する際、政治がリンクする場合は、中国との関係が非常に難しくなるのも事実です。
 台湾は、沖縄県と地理的に非常に近いところにあり、もし台湾との自由貿易協定が締結されれば、大きな影響を受けることになると思われます。沖縄の立場からすれば、事前にその情報は知っておきたいというふうに感じておりますが、台湾との自由貿易協定の可能性があるのか、あるとすればいつごろなのか、政府の認識をお伺いしたいと思います。
佐々江政府参考人 台湾についてのお尋ねでございますが、先生御承知のとおり、中国とともに、台湾は最近ガットの方に加盟をいたしております。ですから、どのようにして中国と台湾がガット上の義務あるいは国際的なシステムの中に入っていくかということがまず第一義的な課題であろうというふうに思っております。
 そういう意味で、我々は、その動向を見ながら考えていかなきゃいけない問題で、現時点で、台湾との自由貿易協定の可能性を検討しているということはありません。
東門委員 かなり時間が迫っていますのでもう終わりたいと思いますが、ただ、やはり大臣に強くお願いしたい、毎回お願いしなければいけないと思っているのは、沖縄の在日米軍施設、そのままではいけない。SACOの最終合意の実施だけでも、決して沖縄県民の負担の軽減にはつながらない。事件、事故、頻発しております。犯罪もふえております。そういう中で、SACOの最終合意、これは前に合意されたものですけれども、ここに風穴をあけて、沖縄県民が本当にどういう思いでずっと政府にお願いをしているのかということをぜひ考えていただきたい。
 大臣になられて二カ月少しだからとおっしゃるかもしれません。私は、それは、やはりその場におられる方の、外交の最高責任者としての大きな力、決断があれば動かすことができるものだと思います。時間はかかろうとも、一歩踏み出すということはとても大事なことではないかと思いますので、大臣には、沖縄県に行きました、沖縄県民の声、知事の声、グレグソン四軍調整官と会いましただけではなくて、県民が本当に何を望んでいるか、何を希望しているか酌み取っていただきたいということをお願いして、きょうの質問を終わります。
 ありがとうございました。
吉田委員長 御苦労さまでした。
 これにて本件に対する質疑は終局いたしました。
    ―――――――――――――
吉田委員長 これより本件に対する討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。
 新たな時代における経済上の連携に関する日本国とシンガポール共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件について採決をいたします。
 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
吉田委員長 起立総員であります。よって、本件は承認すべきものと決しました。
 お諮りいたします。
 ただいま議決いたしました本件に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
吉田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
    〔報告書は附録に掲載〕
    ―――――――――――――
吉田委員長 次回は、来る四月十二日金曜日に委員会を開会することといたしまして、本日は、これにて散会いたします。
    午後二時三十五分散会


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