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第9号 平成14年4月12日(金曜日)

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平成十四年四月十二日(金曜日)
    午前十時十八分開議
 出席委員
   委員長 吉田 公一君
   理事 浅野 勝人君 理事 小島 敏男君
   理事 坂井 隆憲君 理事 首藤 信彦君
   理事 中川 正春君 理事 上田  勇君
   理事 土田 龍司君
      今村 雅弘君    小坂 憲次君
      高村 正彦君    中本 太衛君
      丹羽 雄哉君    林 省之介君
      原田 義昭君    細田 博之君
      宮澤 洋一君    望月 義夫君
      伊藤 英成君    金子善次郎君
      木下  厚君    桑原  豊君
      松原  仁君    松本 剛明君
      丸谷 佳織君    松本 善明君
      東門美津子君    松浪健四郎君
      鹿野 道彦君    柿澤 弘治君
    …………………………………
   外務大臣         川口 順子君
   外務副大臣        植竹 繁雄君
   防衛庁長官政務官     木村 太郎君
   外務大臣政務官      今村 雅弘君
   外務大臣政務官      松浪健四郎君
   政府参考人
   (警察庁警備局長)    漆間  巌君
   政府参考人
   (防衛施設庁施設部長)  大古 和雄君
   政府参考人
   (防衛施設庁業務部長)  冨永  洋君
   政府参考人
   (外務省大臣官房長)   北島 信一君
   政府参考人
   (外務省大臣官房外務報道
   官)           服部 則夫君
   政府参考人
   (外務省大臣官房審議官) 佐藤 重和君
   政府参考人
   (外務省大臣官房参事官) 鈴木 庸一君
   政府参考人
   (外務省欧州局長)    齋藤 泰雄君
   政府参考人
   (食糧庁長官)      石原  葵君
   外務委員会専門員     辻本  甫君
    ―――――――――――――
委員の異動
四月十二日
 辞任         補欠選任
  水野 賢一君     林 省之介君
  金子善次郎君     松本 剛明君
  前田 雄吉君     松原  仁君
同日
 辞任         補欠選任
  林 省之介君     水野 賢一君
  松原  仁君     前田 雄吉君
  松本 剛明君     金子善次郎君
    ―――――――――――――
四月十一日
 国際電気通信衛星機構(インテルサット)に関する協定の改正の受諾について承認を求めるの件(条約第二号)
 国際労働基準の実施を促進するための三者の間の協議に関する条約(第百四十四号)の締結について承認を求めるの件(条約第三号)
 世界保健機関憲章第二十四条及び第二十五条の改正の受諾について承認を求めるの件(条約第四号)
同日
 核兵器廃絶条約の締結に関する請願(粟屋敏信君紹介)(第一五三五号)
 同(山田敏雅君紹介)(第一五三六号)
 沖縄の新米軍基地建設反対に関する請願(松本善明君紹介)(第一五三七号)
 えひめ丸沈没事件に関する請願(春名直章君紹介)(第一六五七号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 テロリズムに対する資金供与の防止に関する国際条約の締結について承認を求めるの件(条約第九号)
 国際情勢に関する件


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     ――――◇―――――
吉田委員長 これより会議を開きます。
 国際情勢に関する件について調査を進めます。
 本件調査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房長北島信一君、大臣官房外務報道官服部則夫君、大臣官房審議官佐藤重和君、大臣官房参事官鈴木庸一君、欧州局長齋藤泰雄君、警察庁警備局長漆間巌君、防衛施設庁施設部長大古和雄君、業務部長冨永洋君、食糧庁長官石原葵君の出席を求め、それぞれ説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
吉田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
吉田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。最初に、松本剛明君。
松本(剛)委員 おはようございます。民主党の松本剛明でございます。
 川口大臣がまだお見えにならないということでございますので、通告をさせていただきました質疑の順番を変えまして、防衛施設庁の関係の問題から先に質問させていただきたい、このように思います。
 日米の安全保障条約のある意味で根幹をなす部分だろうと思いますが、沖縄県の基地をめぐる問題、その提供施設の、民間地を借りている借料の問題について二、三、お伺いをしてまいりたい、このように思いますので、よろしくお願いをいたします。
 そうしたら、順番も変わりましたので、資料の二番をちょっと配っていただけますか。
 この提供施設の借料というのは、総額で毎年一千億ほどのお金を予算で執行されておられると思うわけですが、この借料を決定するに当たって、どのような基準で決定をされておられるのかということをまずお伺いしたいと思います。政務官でよろしいですか。
木村長官政務官 松本委員にお答え申し上げます。
 御承知かと思いますが、沖縄の借料の評価額につきましては、施設庁が財団法人日本不動産研究所に委託しました調査結果に基づき評価額を算定しております。また、沖縄における防衛施設用地の土地所有者の大部分が加入する沖縄県軍用地等地主会連合会、いわゆる土地連は、毎年度、みずから算定した評価額を踏まえて、土地所有者の意見を取りまとめ、借料の概算要求の増額要請を当庁に行っております。
 このため、毎年度、沖縄借料の概算要求額の決定に際しましては、限られました私どもの基地対策経費の中で防衛施設の継続的、安定的な使用を目指す当庁と、その生活が地代収入に影響を受ける人が多い沖縄の土地所有者の意見を取りまとめ借料の概算要求額の増額を求める土地連との間で、厳しい調整が行われているところであります。
 この上で、個々の土地所有者へ支払う借料額は、当該年度の借料予算総額の枠内において、年度末まで、防衛施設局と土地所有者との間で、近傍における土地評価額水準の推移などを踏まえながら、厳しい交渉の上決定されているところであります。
松本(剛)委員 不動産研究所ですか、客観的な基準があるということなんですよね。その中で、限られた予算の中で折衝がある、こういう理解でいいわけですか。
 民間の土地を国が借りるというケースがどのぐらい国全体としてあるのかは私も把握をしておりませんけれども、通常の民間の契約であれば、当然市場原理が働いて、この値段であれば貸す方もオーケーだ、借りる方もオーケーだということであれば合意で契約になる、合意できなければ、ではこっちを借りる、もしくは借りるのをやめるという話になるわけでありますが、この基地の借りるということに関しては、そういうことにはならないわけですね。
 国にとっては、必ず借りなきゃいけないという使命がありますし、現実に、同意されない方に対しては法的な措置をとることが可能な道があるわけですよね。ですから、ある意味では、最終的には必ず合意をする、国の力によって合意をするという仕組みになっていると思うんですね。そうなると、今おっしゃった、客観的な基準がありながらまだ交渉の余地があるという形のものでそもそもいいのかということをお伺いしていきたいと思っておるわけであります。
 今、一方で客観的な基準がある、一方で厳しい交渉があるというお話がありました。私も沖縄へ行って、那覇の防衛施設局の方に伺ってまいりました。毎年、年度末までぎりぎりの折衝を各地主会と行うというお話でもありました。その前段階として、概算要求基準についても、先ほどおっしゃった、いわゆる土地連さんの要請行動があって金額が変わるという問題があるというふうにも把握をしているわけであります。
 ここに、土地連さんの平成十二年度の事業報告書があるんですが、十三年度の予算折衝状況についてということで、当初、那覇の防衛施設局は、国の厳しい財政状況から一・七五%が限度である、こういうふうな話であったわけですが、危機感を持って土地連三役が上京し、強力な要請行動を行った結果、三・三%増となった、概算要求でですね。さらに、大蔵内示に備えるべく上京し、強力に要請した結果、満額認められる内示となった、こう書いてあるわけですね。
 極めて政治的に決まっているということ、少なくとも土地連の皆さんはそういう認識でおられるだろうというふうに思うわけであります。そこに相当裁量の余地があるということ自身が、いろいろな意味で不透明な要素が出てくるのではないかということを申し上げたいわけであります。
 特に、今お話をさせていただいたように、国の都合でどうしても借りなきゃいけないということであれば、その土地を持っている方々の財産権は当然憲法によって保障されなければいけません。ですから、客観的に国が鑑定をして出しているとすれば、その基準に基づいて、むしろきちっと一律に行われるべきものではないか、このように考えるわけであります。
 委員各位にも、今お配りをさせていただいた資料をちょっとごらんいただきたいと思いますが、右から二行目に予算額と書いてありますが、平成四年度には五百六十八億であったものが、十四年度には八百六十六億になってきているわけであります。この四年から十四年にかけて日本の土地の値段がどうであったかというのは皆さんもよく御存じのとおりだろうというふうに思いますが、沖縄は少し事情が違うという話でありましたので、私も調べてまいりました。
 しかし、やはり、沖縄の不動産関係の団体が発表している指数を拝見しますと、昭和六十二年を一〇〇とした数字で、平成四年が一六八、ピーク時が平成七年で一七五でありますが、平成十二年は一五〇に落ちてきているわけであります。少し上がったけれども、その後は下降傾向ということであります。
 先ほども、厳しい折衝の中でという話がありました。私も防衛施設庁の方にお伺いをさせていただいたときに、そもそも要求額と相当乖離があるということで折衝を行うんだという話でありましたが、もしそうだとすれば、十三年、十四年が適正な金額に近づきつつあるとすれば、平成四年のときは適正な水準のほぼ半分ぐらいで地主さんに我慢をしろと言っていたということになるわけですね。その辺のところが非常に不透明な決定の仕方をされているということになってくるわけであります。
 その点について、政務官、御所見がもしありましたら。――先へ進めましょうか。よろしいですか。
木村長官政務官 ただ、借料の評価額につきましては、昭和二十七年に閣議了解されております駐留軍の用に供する土地等の損失補償要綱等によりまして算定基準が示されておりまして、これに基づいて、借料額の基本となる評価額というのを毎年度算定しているところであります。
 また、この算定基準というものは、公共事業を実施します国、地方公共団体等が公共用地を借り上げる場合に適用される算定基準と基本的には同じでありまして、本土、沖縄に限らず、ただいま松本委員もおっしゃっておりましたが、一律的に適用されるものである。
 こういった基本を踏まえて、先ほど答弁した手続を踏みながら決定されていくというのが現実であります。
松本(剛)委員 政務官は沖縄へ行かれたことがございますか。
木村長官政務官 子供のとき、一回だけ行きました。それ以来、まだ行っておりません。
松本(剛)委員 防衛政務官、ぜひやはり一度足を運ばれるのがいいかと思います。政務官の選挙区は青森でいらっしゃるはずですから、飛行機で行くと大分かかるかと思いますが。
 沖縄へ行ってみるとよくわかります。基地の占めている面積が非常に大きいということでございます。本土でもあちらこちらに基地があるわけでありますが、恐らく本土であれば、金額はそれなりに周辺の地域との対比で、土地の鑑定でありますから若干の幅がないとは言いませんけれども、かなり客観的に決めることができると思いますが、今話題になっている宜野湾にしても、かなりの部分がむしろ基地で占められているとなると、その中の土地の価格をどう決めるかというのは、かなり難しいことがあるのは事実だろうというふうに思います。
 ただ、だからこそそこに、何らかの形で不動産鑑定をされて客観的な基準を決めているのであれば、むしろそれに基づいておやりになるべきで、先ほど申しましたように、当初、那覇防衛施設局は一・七五と言ったといって東京へずっと、これは陳情先も全部出ているんですが、お名前は申し上げません。一つだけ申し上げさせていただけたら、鈴木宗男総務局長のところも必ず行かなきゃいけないということで、アポイントをとって行ったという報告書が出ているわけですが、そういう関係議員のところへずっと行くと、一・七五が三・三になる、こういう仕組みをそもそも改める必要がおありではないかということを申し上げているわけであります。
 最初に申し上げたように、一般の民間の、こちらがだめならこちらをとるという、国でもそういうものはあると思うんですね。そういうものでないわけですから、これの場合は。そこにそういう政治的なものが、もしくは交渉の余地というのを残すことがかえって不透明な形になるということを私は一つ申し上げたいわけであります。
 現実に、土地連さんの関係する政治団体というのが平成十二年度だけで、政治資金の収支報告書に届けられている政治団体が六百万、政治献金をしています。さらに個人名義を借りて二百万円、鈴木宗男さんに献金をしたというふうに書いているわけであります。
 土地連さんとしては、一・七五が三・三ということでありますが、十億単位の話でありますので、六百万、七百万献金をして十億ということであれば、経済合理性はある意味ではある行動ということになるわけでありますが、十億、二十億のそのお金は申すまでもなく税金でありまして、どう執行するかということは厳正に行われなきゃいけないわけで、そこに、要請行動を行ったり、献金と直接関連があるかどうかは今ここではっきりとしたことは申し上げられませんけれども、献金を行ったりしながら行うという形をそもそもお改めになるべきではないかと思うわけであります。
 限られた財源という話でありましたけれども、国会としても、沖縄県の住民の方々、地主の方々の財産の補償をするのに、厳正に認められた適正な価格に必要な予算であれば、これは認めなきゃいけない話でありますし、認めるべきものであろうというふうに思うわけであります。
 説明を伺っていると、限られた予算なので、本来の評価額よりも予算が足らないから、交渉して我慢してもらっているというお話がありましたけれども、むしろそういうことをおやりになるべきものではないのではないかと思いますが、政務官の政治家としての御意見をお伺いしたいと思います。
木村長官政務官 土地連という団体が陳情等をなされることに対して、我々防衛庁あるいは施設庁としてどうこうということは差し控えたいと思っております。
 一般的に、防衛関係のみならず、いろいろな団体が陳情等活動することはごくごく普通なことであるだろうし、私どもは、防衛庁あるいは施設庁として、やはりルールに沿って相手方と交渉していくという姿勢はこれからも大事にしていきたい。また、やはり土地でありますから、毎年毎年、交渉の場を持つということは意義あることだ、こう私は思っております。
松本(剛)委員 平行線のようでありますので、これ以上申し上げてもあれですが、今申しましたように、もう一度繰り返しますが、本来、交渉の余地があるということそのものの中に必ず裁量の不透明さが出てくると思うわけであります。
 今、小泉内閣では、いろいろなところで民営化というキーワードをお使いになっている。これは、チェックをするのに市場原理というのは一つの大きな原理だから、そのために民営化という言葉をお使いになっているんだろうと思いますが、外交、安全保障の問題、基地の問題はだれも民営化しようとは言わない。これは当然だろうと思いますが。
 では、かわる仕組みは何かと言えば、私は公開だと思うんですね。表に出せるものはしっかり出していただく。もちろん外交機密という話がありますが、この賃借料の決定ないしは賃借料の内訳というのは、これは非公開の性格のものではないと思うわけでありますね。ですから、ぜひ、これはむしろ政務官の方からこういうものをきちっと透明にしていただきたいということを申し上げたいと思います。
 現実に、いわゆる土地連さんをめぐってはさまざまな形でお金が流れているわけであります。御存じのとおり、この借料そのものも土地連さんを経由して各地主さんに払われておられますよね。今、残念ながらある大手の銀行は振り込みで大変信用を失っておりますが、本来であれば、国が契約をしているのであれば各地主さんに、委任状もとっているという話でしたけれども、契約を全部しているわけですから、銀行口座を教えてもらえば全部どんと国のお金が振り込めると思うんですけれども、なぜ土地連さん経由で八百億以上のお金をお渡しになるのか、その理由をお聞かせいただきたいと思います。
大古政府参考人 お答えいたします。
 沖縄に所在する防衛施設用地につきましては、先ほどから御説明しています土地連に土地所有者の大部分が加入しております。この所有者につきましては、各市町村単位で結成されております各地主会、これが傘下にございますが、土地所有者の方はこの地主会に賃貸借契約の締結及び賃貸料の受領を委任してございます。さらにこの地主会は、賃貸料の受領につきまして土地連に再委任している、こういう状況にございます。
松本(剛)委員 そういう形をきちっと整えておられるということはわかっていますが、そもそも、なぜ直接払わずに土地連さんを経由されるのかということをお聞きしているわけであります。
 ここに土地連さんの平成十二年の決算報告があるんですが、一般会計で、会費収入は一億五千万ほどであります。受取利息が一千四百万あるんです。一億五千万のお金を動かして一千四百万も利息が出ることは今あり得ないわけでありまして、八百億以上のお金がそこへ残っていくから、これだけの利息が出るわけですよね。
 これは国のお金でありまして、国から地主さんに直接払えばいいわけで、土地連さんにそれだけのお金を置いておくことによって、土地連さんに利息が生まれるということになるわけであります。ある意味では、これも土地連さんにお金を渡しているということになってもおかしくない部分があるわけでして、事務を委託されるというのは、たくさんの数があるから煩雑だというのはわかりますが、委任状をとる、そのときに銀行振り込み口座をとって、どんと発注すれば、全部で万単位の振り込みであることは承知をしていますけれども、これはできない話じゃないはずですし、おやりになった方が早いのではないかと思いますが、なぜ土地連さん経由でお金を渡すことになったのか、お聞きをしたいと思います。
大古政府参考人 お答えいたします。
 先ほど申しましたように、各地主さんが民法上の委任契約を結んでおります。支払いについては、それを代行ということでやっておりますので、政府側としても、借料を支払うに当たっては、その民法上の契約にのっとって、委任された方に支払うということでやっております。
 そういう意味で、国側は土地連の方に払いまして、土地連の方から各地主会に払って、それから各地主会から個々の地主さんに支払われます。これについては当庁の関知する問題ではございませんけれども、国側から支払った後は遅滞なくそういうふうに支払われていって、特に地主さんからクレームがついている状況はございません。
松本(剛)委員 理由と結果が逆なんですよ。土地連さんを通すということがあるから、そうやって委任状をとって、代金受領の委任状もとるわけじゃないですか。直接お払いになることもできるわけでしょう。
 その後遅滞ないということですけれども、これをどのぐらいの地主の皆さんが御存じかということも出てくると思うんですよね。大ざっぱに言うと、八百億が、昨今、〇・二%くらいがせいぜいの金利でしょうから、でもやはり一月とどまっていないとこれだけの金利は出ないわけですよね。国のお金が土地連さんに行って、二十五ありますか、地主会さんへ行って、それから地主に行くわけですよね。三段階式になっているわけですよね。
 確かにいろいろな事情はあると思いますが、しかし、各地主さんのほぼ大半の数の方々は、きちっと委任状も出されて、書類の手続もとっておられるわけですから、直接お渡しになればいい話をこういうふうにお金を土地連さん経由にするということによって、そこにも不透明なお金が出てくるということをぜひ指摘をさせていただきたいと思います。
 もう一つ、土地連さんと各地主会さんに事務委託料というのをお払いになっておられますね。これも、委任状をとる、またその代金をかわりに渡すということで事務委託料をお払いになっておられるんだろうと思いますが、この事務委託料というのが平成十一年、それまで一千万であったものがほぼ二千万と倍増になっております。その理由をお伺いしたいと思います。
大古政府参考人 お答えいたします。
 平成十一年度の事務委託費の関係でございますが、沖縄の基地につきましては、土地所有者の世代がわりということが平成に入りましてからございまして、いろいろ所有権者がかわるということがございまして、土地連の方から、この十一年度につきましては、今までの事務委託費について五千万円増額してくれということで強い要請がございました。当庁といたしましては、いろいろ実態を踏まえまして調べましたところ、この事務委託費については実態に合わせて見直す必要があるということで判断いたしまして、この年の予算額につきましては、事務委託費を九百八十万円増加いたしまして二千三百五十万円としたという経緯がございます。
松本(剛)委員 何というんでしょうかね、外国の市場へ行って交渉しているわけではないので、一千万円を、片っ方五千万円と言ってきて、じゃ二千万円で折り合った。先ほど申しましたように、借料そのものも、一・七五と最初言ってみたけれども、どんと要請したら三・三になる。何十億、何千万というお金がそういう交渉で行ったり来たりするということ自身が、国のお金を動かすということに関しては極めて基準がおかしい。そこに、土地連さんが常に政治家に献金をしながら要請行動を東京へ来て行うという形で決まる、こういう形そのものをこういう機会にぜひ改めるべきだということを私は指摘させていただきたいと思います。
 政治家の関与ということに関して、この土地連さんから鈴木宗男議員に二百万の献金、土地連さんではありませんけれども、土地連さんの関連する政治団体の名義ではなくて、個人の名義を借りて二百万の政治献金をされたということが三月に報道で明らかになりました。これは軍転特措法改正に関することで鈴木宗男先生に献金をした、こういうふうに土地連の方々は言っておられるわけですけれども、この軍転特措法改正の経緯で鈴木宗男議員から何らかの働きかけがあったかどうかというふうにお聞きをしても、ないとお答えになるでしょう。
 とりあえず、これは給付金その他の関係で、最終的にはこの三月の沖縄振興法の中に含まれたというふうに私も理解をしておりますけれども、この給付金の関係、鈴木宗男議員から説明を求められたり説明に行かれたということはありますか。
大古政府参考人 お尋ねの法案の返還給付金の部分につきましては、防衛施設庁の方で担当いたしておりまして、その国会提出に際しまして、沖縄選出の国会議員を初めとする関係する一部の与党議員に対し、この法案の考え方、施設庁の考えにつきまして御説明し、理解を得た経緯がございます。その際、お尋ねの鈴木議員に対しても同じ説明を行っております。
松本(剛)委員 鈴木議員のところへ説明に行ったときに、何か御意見がありましたか。机をたたかれたりとかいうことがあったかどうかまではわかりませんが、どういう御意見があったか。
大古政府参考人 当庁の考えを御説明いたしまして、鈴木議員の方から当庁の考えについて御理解をいただいたところでございます。
松本(剛)委員 お手元にお配りをしたニュースの原稿でありますが、この真ん中あたりに、事務局長の方から、軍転特措法の改正について貢献していただいたことに配慮して、こちらから持参をしたと。法の改正というのは国会議員の本来の業務でありまして、その業務に関連をしてもしお金を受け取ったということであるとすれば、これは大変大きな問題にならざるを得ないわけであります。こういうことが日常的に行われているとすれば、これはもっと問題ということになるわけでありますけれども、これは渡した側の気持ちを記者会見で言われているわけでありますけれども、この点について、今のお話からすると、鈴木宗男議員は何もなかったということでございますか、働きかけ等は。
大古政府参考人 先ほども申していますように、沖縄選出を初めとする一部の与党議員に御説明いたしました。その一環として鈴木議員にも説明させていただきまして、鈴木議員からも、この法案の中の返還給付金の部分について御理解をいただいたということでございます。
松本(剛)委員 私も、御説明に行かれたときの現場にいたわけではないので中身は恐らくはっきりしないんだろうというふうに思いますが、そもそも、こういうふうに何らかの法改正なり制度改正に対してお金を関係者が持っていく、当然、これは持っていく側に有利にしてくれという話で持っていくわけでありますし、そういう形がこの国で常に行われているというような誤解を生じるようなことがあるとすれば、これはこの国にとっても非常に不幸なことであります。
 最初から申し上げてきましたように、借料というお金の問題にしても、それから土地連経由にしているという問題にしても、事務委託費の問題にしても、交渉すると国からお金が出てくるというふうに土地連の皆さんに思わせるようなことを今までされてきたから、今回のこの法改正でも、お金を渡して協力をしてもらえばいいことがあるかもしれない、こういうふうに思うような仕組みをつくっちゃっていることが最大の問題なわけでありますね。
 これは、少なくとも土地連の方々ははっきりと、法改正について貢献をしていただいたのでお金を持っていったと言っているわけですよ。本当にお金をもらって法改正に協力をしていたとすれば、国会議員として何をしていたのかということになりますし、法改正に対して何ら動きをしていなかったとしたら、これは土地連の皆さんが勝手に勘違いをしたのか勘違いをさせるようなことをしたのか、これまた大変国会議員の信頼を失墜させる話になるわけであります。
 これは、この場でこれ以上申し上げても時間も限られていますからあれですが、改めて政務官に、さっきお話ししたように、お金の流れというのをやはりきちっと透明な形にしていただく、きちっと決められた形にしていただく、交渉の中でいろいろなものが関与する余地というのをこういう問題についてはぜひなくしていただくことが必要だと思いますが、御所見を伺っておきたいと思います。
木村長官政務官 土地連という一団体が献金をしたことに対して私ども防衛庁として、その団体に対して、寄附をどうすべきだ、ああすべきだ、やりなさい、やめなさいとかそういうことは言えないと思っております。
 ただ、先ほど来私また部長も答弁したとおり、防衛庁としての我々サイドのルールに基づいて、相手方、土地連との交渉というものはやはりしっかりルールに基づいてこれからも取り組んでまいりたいというふうに思っております。
松本(剛)委員 これ以上言っても同じ御答弁になるかもしれません。交渉に基づいてとか裁量の余地をなくされた方がいいんではないかということを申し上げたわけであります。実際に施設局の方々も交渉で大変苦労されているわけでありますが、最後は全部必ず借りなきゃいけないからこそ逆にそういう苦労をされるわけですが、もうこれはぱしっと決めておやりになる、客観的な基準でしっかり決める。
 もし今の財源が国から見ても全く足らないということであれば、むしろ、きちっともう一度財政当局にも要求をし、国会にも要求をし、沖縄県民の地主の方々の財産権はしっかり保障するという形をおとりをいただくようにお願いを申し上げて、この件を終わらせていただきたいと思いますが、政務官にもぜひ、こういうものをやはり透明化をすることによって裁量の余地をなくすことは重要だという共通の認識を持っていただくようにお願いを申し上げておきたいと思います。
 大臣、お見えになってしばらく間がありました。もうちょっと早く終わる予定だったんですが、外務省のことについてお伺いをさせていただきたいと思います。川口大臣、よろしゅうございますか。
 外交の問題がさまざま山積をしていることは承知をしておりますけれども、先般、予算委員会で加藤紘一参考人、今はもう前議員ですね、やりたいこともいろいろあるけれども、幾ら何を言っても信頼がなければ意味がないといった趣旨の御発言がありました。今の外務省におかれても、外交問題も山積をされておりますが、改革をされる、信頼を回復されるということは大変重要なことであろうというふうに思います。
 きょうは、その中の、外交のお金のことについてお伺いをしたいというふうに思うわけでありますが、大臣の十の改革の中でも、外務省予算についての透明性といったようなことも記載をされておられました。できることはすぐにでもやるという話でありましたが、予算の効率的使用、透明性の確保について、既におやりになったこと、また近々予定をされておられること、ありましたら簡潔にお伺いをしたいと思います。
川口国務大臣 委員おっしゃいますように、外交への信頼を国民の方に持っていただくためには、改革を進め、外務省への信頼を国民の方に持っていただくことが大事だと思っております。
 予算の効率的な使用、透明性を確保するために何をやっているかということでございますけれども、調達の会計手続の見直し、監察査察制度の活用等を幾つかやっております。もし、さらに具体的なことが必要でございましたら、政府参考人から答弁をさせたいと思いますが。
松本(剛)委員 例示が幾つか出ているんですが、「新年度に検事を監察査察官に任命する予定です。」こう書いてありますが、任命されましたですか。
北島政府参考人 お答え申し上げます。
 監察査察制度の活用ということでございますけれども、四月一日付で法務省の北田検事に外務省に来ていただいていまして、監察、査察両分野についての仕事をお願いしております。
松本(剛)委員 さて、そこで、この「外務省予算の効率的使用・透明性の確保」ということでも、今の監察査察官とか、前へお進めをいただいているということは私どもも一つ一つ理解をさせていただきたいと思いますが、問題は、信頼を回復する。その前に信頼の失墜があったわけであります、この失墜の部分をしっかりと明らかにしない限り、ここから先、こういう制度をつくる、もちろんこれは大事なことでありますが、失墜した信頼をまずきちっと明らかにするということが何より重要なことであろうというふうに思うわけであります。
 今お手元に配らせていただいていますが、大臣のお手元に行っていますでしょうかね、この資料は。
 一つの例として、昨年も随分と問題になりました沖縄サミットの関連の予算について、一、二お伺いをしてまいりたいというふうに思うわけであります。
 二枚物でお配りをさせていただいたわけでありますが、実は、ことしに入りましてから、沖縄サミットの予算についてということで、私が外務省関連の予算の総枠はどうなっているかということをお伺いしましたら、いただいた表が一枚目であります。二枚目は、昨年、外務委員会の委員であった同僚議員が外務省からいただいた資料であります。
 若干仕分けが変わっているわけでありますけれども、大臣、まず一枚目をごらんになっていただいてもわかると思います。いわゆる予算書の費目とは違いますけれども、予算と支出済み額で、一枚目の真ん中あたりにマイナスがあるのをお気づきでございますね。大臣も役所にお勤めだったから、よくおわかりだと思います。予算と支出済み額でマイナスの表をつくるということ自身が相当おかしな状態だと思いますが、大臣、いかがお感じですか。
川口国務大臣 通常、予備費等から何かを出すということはあるかもしれませんけれども、どういうところの分類をとっているか、これはその表のつくり方なのかもしれません。よくわかりません。
松本(剛)委員 二枚目をちょっとごらんいただきたいと思いますが、二枚目の色がついている線の一つ上の行ですね。「その他」と書いてあるところを見ていただくと、平成十二年度予算額一億一千八百万に対して執行額十六億八千三百万、こう書いてあるわけですね。
 去年の段階で、いただけるものは幾つか、外務委員会の方なり委員にお出しをいただいた資料を私も拝見させていただきました。かなり細かい費目まで予算はちゃんと決めておられる表があることはあるんです。しかし、これを見ていただく中で、一つ一つはもう申し上げている時間がありませんが、細かい中身と予算額が合っているのが平成十一年度予備費のところまでなんですね。平成十一年度補正予算額になってくると、内訳表のような細かいものを足したものとこの表に出てくる予算額とが既に少し変わってくるんですね。十二年度に至っては、十二年度の予算額ということでお出しをいただいた表とこの予算と違う。
 例えば、これは一枚目と二枚目でいきますと、一枚目の一番下に「文化交流事業関係経費」と書いてあります。実は、二枚目の方にはそれらしき項目はない。ですから、ベースが若干違う部分はあろうかというふうには思うんです。あろうかというふうには思いますが、明らかに同じような部分の、例えばプレス関係に関するプレスセンター設営費とか通信インフラも、これは平成十三年に出していただいた資料ですよ、それで十二年度予算額が変わっちゃうんですね。予算額は変わる、予算から関係なく金額はお出しになる。
 十一年度の決算額も、実は変わっているんですよ。一番わかりやすいところで申し上げたら、一番上の左上、事前準備会合等に要する経費、予算二億四千二百万に対して、支出済み額、十一年度、五千七百万、ところが二枚目では二千九百万ですね。これは、十三年の二月、三月ですからね。もう既に十一年の決算報告が国会に提出されている段階で、執行済み額がころころ変わるというのが実態なんですよ。
 ぜひ、沖縄のサミットの予算について、きちっと資料を公開していただいて御提出をいただきたい、また、外務省の中でももう一度全面的に検証していただきたいということを申し上げたいと思います。
 時間ももう間もなくだと思いますが、先日外務省の方にも、サミットの予算に関する資料を出していただきたいということを求めました。押収をされているので出せないという、ないというお話でございました。松尾逮捕は三月でありますが、そのときは家宅捜索はなかったと思いますが、小林、浅川逮捕は七月、九月、そのときの家宅捜索で恐らく押収されたものを指しておられるんだろうと思います。
 その後、十一月までに国の決算をまとめられて、今、検査院の検査結果を受けて国会へ提出されている。もし七、九の段階で押収をされているとすれば、今回出されている決算は、その部分に関してはきちっとした決算ができてないという留保条件つきで国会に出ているのであればまた話はわかりますが、そうじゃないわけですから、ちゃんと資料がおありになるんだろう、私もこのように思いますので、ぜひ、沖縄関係の予算の資料を公開していただくことと、外務省で調査をしていただくということを大臣からお約束いただくことをお願いして、私の時間が終わったと思います、答弁をお願いいたします。大臣、お願いします。これは大臣に。
川口国務大臣 その資料が入手できなかったのか、押収されて存在をしていないのか、あるいは区分の仕方に違いがあったのか、どういうことで二つの表に差があるのかということについて聞いてみたいと思います。
吉田委員長 予算、決算という重要な部門ですから、資料を提出していただくようにお願いいたします。
松本(剛)委員 では、終わります。ぜひ、委員会に資料の提出をお願いいたします。
吉田委員長 次に、木下厚君。
木下委員 民主党の木下厚でございます。
 さて、きょうは、私自身は、北朝鮮による日本人拉致疑惑、この問題についてちょっと議論をさせていただきたいと思います。
 既にこの問題については、今回の有本恵子さんの問題が明らかになって以後、当委員会並びに各委員会でも質疑がされておりますので、事実関係だけ確認しながら、むしろ対北朝鮮政策、これについて話を進めてまいりたいなと思います。
 特にこの拉致問題というのは、もう既に皆さん御承知のように、人権問題であり、あるいは国家主権を侵害する大変重要な問題であると同時に、やはり私も子供を持つ親でございます。自分の子供がこのように拉致されて何十年も行方知れずということであれば、これはもう本当に私だったら耐えられない、場合によっては命覚悟で北朝鮮へ乗り込んでいって探す、そのぐらいの気持ちだろうと私は思います。
 そういうことを考えますと、私も長いことジャーナリストとしてこの問題を追及してまいりました。しかし、相も変わらず同じ答弁、毅然たる態度をとる、こういうことの繰り返しで今日まで来てしまった。そういう意味で、今回はその問題を少し追及させていただきたいと思いますが、その問題に入る前に、今回の有本恵子さんを含む八件十一人の拉致疑惑以外に、警備当局さんは何らかの拉致にかかわる疑惑は把握しておられますか。
漆間政府参考人 お答えいたします。
 警察としては、八件十一名以外の幾つかの事案につきましても、北朝鮮による拉致の可能性があると見ております。
木下委員 その件数は今段階でどのぐらい、何件何人ぐらいと見ていますか。
漆間政府参考人 具体的な件数、人員につきましては、事案の究明に当たっての予断を与えることにもなりかねませんので、それはお答えできません。
木下委員 そうしますと、有本さんの御両親が、八尾さんが恵子さん以外にも二人の日本人女性の拉致にかかわった、こう話しているとの報道がありますが、この二人の日本人女性、これも含まれておりますか。
漆間政府参考人 有本さんの御両親が、二人の日本人女性の拉致にかかわったという趣旨の発言をされたという報道があったということも承知しておりますが、その後、有本さんの御両親は、二人は男女で、拉致と言ったのは勘違いであったという旨の、発言を修正されたとの報道もあったと承知しております。
 我々といたしましては、拉致されたかどうかについていろいろな情報を得ているところでありまして、それぞれ捜査をいろいろ継続しているところでございますので、具体的なことについては答弁を差し控えます。
木下委員 そうすると、もう一度確認だけさせていただきますが、有本恵子さん、この女性についての認定は、八尾恵さんの証言、あるいはほかに証拠も相当あったということでございますか。
漆間政府参考人 ただいま御質問のあった女性からの供述も含めまして、それまでに海外の関係機関ともいろいろな情報交換をしておりまして、そういうものを総合的に判断いたしまして、北朝鮮による拉致の疑いがある事案というふうに認定したわけでございます。
木下委員 警備当局としては、こういった、今わかっているだけで八件十一人、これについて、今後疑惑解明に向けてどのような捜査をしていく、再捜査という話も伝わっていますが、どのように考えておられますか。
漆間政府参考人 有本恵子さんの事案につきましては、もう既に警視庁が特別捜査本部を設けておりますし、ほかの事案につきましても、それぞれ捜査班とかあるいは対策班とかいうのを設けておりまして、今懸命にいろいろな情報を集めている、あるいは立件までいけるかどうかというところを詰めているところでございます。
木下委員 まだまだ、一説によると七十人という数字も出てきております。できるだけ、身元不明者も含めて、北朝鮮関係の、もし拉致があるとすれば、事実確認を全力を挙げてお願いしたいと思います。
 次に、今後の北朝鮮政策について大臣にお伺いしたいと思うんですが、今回の有本さんの拉致認定以後、日本の対北朝鮮政策、何らかの変更は考えておられますか。
川口国務大臣 政府といたしまして、拉致問題は国民の生命にかかわる重要な問題であるという認識を持ちまして、従来から国交正常化交渉等の場で、北朝鮮に対しまして、日朝関係を改善していくに当たって拉致問題は避けて通ることができない問題であるということを繰り返し説明をしてまいってきているわけでございます。そして、その解決を強く求めてきているわけでございます。
 最近の日朝関係におきまして、本年二月の杉島元日経記者の解放、三月には朝鮮赤十字会によります行方不明者調査事業の再開、日朝赤十字会談の開催の提案等、北朝鮮側からの前向きな動きが見られるわけです。政府は、こうした動きに対しまして注目をする一方で、拉致問題を含む日朝間の諸問題につきまして、北朝鮮に対しまして、より一層建設的な姿勢をとることを求めていきたいと考えております。
 さらに、政府といたしまして、北朝鮮政策に関しまして今まで緊密な調整を韓国及び米国と行ってきているわけでございまして、先般も、いろいろな場において説明をいたしました。今後、一つには、韓国、米国以外の関係国等、さまざまな国に対しましてこの問題について説明をし、連携をしていきたいと考えております。
 この拉致問題の解決のために何が効果的な方策であるかということを真剣に考えながら、諸外国との連携を強めていき、日朝国交正常化交渉に粘り強く取り組んで、こうした努力を通じまして拉致問題の解決を目指す方針であるということで、その考え方に変更はないわけでございます。
木下委員 いや、大臣の今の話を聞いていますと、それは従来から言ってきたことなんですね。それを繰り返してもらっても困るんですよ。やはりここは、大臣も再三言っています毅然たる態度をとる。あるいは、小泉さんもはっきり言っています。毅然たる態度とはどういうことか、具体的におっしゃってください。
 日朝交渉でこの問題を取り上げるから、そういうことはもう従来から言われてきたことなんです。これを機に、本当に真剣に拉致問題を解決しようとするには、これから議論をするんじゃないです。もう何年来、この問題は議論をされてきたはずです。具体的に言ってください、どういうことを考えてやろうとしているのか。
川口国務大臣 先ほど申しましたように、日朝国交正常化交渉等の場で、この拉致問題が非常に重要であり、解決が大事であるということを強く働きかけていくということを、毅然たる態度で粛々と進めていきたいと考えております。
木下委員 いや、だから毅然たる態度というのはどういうことなのかということを聞いているんですよ。態度なんというのは、やはりこっちから条件を出すなりあるいは本当に具体的に問題を提示しないと、ただ毅然たる態度と言われたって、これはもう従来から言われてきたことなんで、それをあれしてもあれなんですが、実はきのう、日本人拉致疑惑の早期解決を求める決議案の採択を国会でいたしました。これは一つには、中身の問題は別にして、一歩前進であろう、そう思います。
 しかし、新聞報道によると、実は、この国会決議をするに当たって、外務省のアジア大洋州局の幹部が、その決議案を出さないでくれと強く働きかけた、あるいは提出を取りやめるような働きかけがあった、これは三月二十日の産経新聞、こういう報道がございます。これについて、実際あったのかなかったのか、大臣、いかがですか。
川口国務大臣 そういうことはなかったと承知しています。
木下委員 そうすると、この新聞は誤報ということですか、大臣。
川口国務大臣 私は、その新聞の記事を細かく読んでおりませんので、新聞記事との関係ではよくわかりませんけれども、さっきおっしゃったような、そういう事実はなかったということでございます。
木下委員 実は、私は先週の金曜日にも対ロシア政策をめぐって発言をいたしました。要するに、外務省が、本当に国家国民、国民の生命財産、そういうことを考えるのじゃなくて、まさに省益であったり、あるいは私利私欲あるいは御自身の出世のため、そういうことで動いている、その一つのあらわれではないか。
 さらに、そこに政治家が見事に関与してくる。これは、先週の金曜日、二島先行返還にかかわった鈴木宗男さんあるいは当時の東郷欧州局長あるいは佐藤前分析官、この話を持ちました。それを決定づけたのが、二〇〇〇年七月の、当時の野中広務幹事長のいわば平和条約締結と領土問題の分離、切り離しということが二島先行返還につながった、これは金曜日お話を申し上げました。
 実は、この対北朝鮮政策にもやはり一人の政治家が深く関与している。ちょっと資料を配ってください。この問題も金曜日ちょっと触れましたが、時間がなかったものですから詳しくは触れられませんでした。
 その資料をお配りする前にちょっとお伺いしますが、私、きのう、おとといの夜のテレビを見ていましたら、いわゆる世界食糧計画、WFPから、今年度の米支援要請が北朝鮮からあったというニュースが流れましたが、このニュースは見ておられますか。
佐藤政府参考人 ただいま委員御指摘がございましたとおり、十日にWFPの方から、二〇〇二年の北朝鮮に対する緊急食糧支援活動に関しまして、国際社会に対しまして、三十六万八千トンの追加的な食糧支援が必要であるということをWFPの方で発表しているというふうに承知をしております。
 これは、昨年十一月にWFPの方で二〇〇二年度の対北朝鮮の食糧支援のアピールというものを行っておりまして、それは六十一万トンに上るものなのですが、それを踏まえて、現在の状況でこれだけの食糧が足りないので、こういうことでございまして、これ自体は、特に日本政府に対して行われた要請ということではなくて、国際社会に広く向けてなされた呼びかけというものであるというふうに承知をいたしております。
木下委員 国際社会に向けて呼びかけた。その中で、日本にも要請したい、こう言っておられるのじゃないですか。
佐藤政府参考人 おっしゃられるとおり、WFPとして、これまで主要な支援国として日本があったということでございますので、日本に対して期待を持っている、そういう事実はあると思います。
木下委員 この米支援については、資料をお配りいたしました、これは、金曜日お配りした資料、ちょっとわかりにくいというので、改めてできるだけわかりやすいように書いたのでございますが、二〇〇〇年に、いろいろな議論がありましたが、五十万トンの政府米を北朝鮮に支援した。
 これについては、当時、一九九七年十一月の森訪朝団、ここで五十万トンの密約があった、あるいはなかったという議論がありました。これははっきりしていません。ところが、実はこの米支援にはもっと前段階があるのです。
 資料2を見ていただければと思うのですが、野中広務さん、自民党元幹事長とJA京都府連会長中川泰宏さん、この関係が資料2に書いてございます。
 この資料2の下段の方に、野中さんが北朝鮮への米支援を中川さんに持ちかけてきたときのことを、中川氏は雑誌テーミス二〇〇〇年五月号で、インタビューで次のように語っています。
 九六年夏、携帯電話におっさん、野中さんのことを中川さんはこう呼んでいるらしいのですが、おっさんから連絡が入り、北朝鮮に米を送ってくれないかと言われた。北朝鮮が水害で食糧危機に陥っていて、子供もたくさん死んでいるらしい。国交もない、承知のとおり普通の国ではないが、おまえならできると言われ、引き受けた。中川さんは、野中さんとの関係をこのように雑誌でインタビューに答えています。
 これは一九九六年です。資料1の表を見ていただければわかりますが、実は、一九九六年九月二十七日、これを皮切りに、中川さんはその後、九七年だけで三回北朝鮮に行っています。そして、そのたびに金容淳朝鮮労働党書記にお会いして会談をしています。
 この金容淳労働党書記という方はどういう方ですか、ちょっと教えてください。
佐藤政府参考人 金容淳氏につきましては、北朝鮮の労働党の書記ということで、主として国際関係を担当しておられる方というふうに承知しております。
木下委員 金容淳書記、この方はいわゆる対日関係の総責任者なんですね。ですから、さまざまな形で対日政策に関与してきている、いわば米支援の北朝鮮側の最高責任者。そうですね、間違いございませんね。
佐藤政府参考人 先ほど申し上げましたとおり、日本を含む国際関係について重要な役割を果たしておられる方だというふうには聞いております。
木下委員 なぜこれだけ北朝鮮の高官に中川さんが、いわばどちらかというと民間人です、会えるのか。それは野中さんのバックがあったからなんです。ですから、一九九七年四月五日に行ったときも、七月十三日に行ったときも、八月二十五日に行ったときも、常に金容淳さんと会談をしている。そして、実はここで百万トンの米支援の要請をしているわけです。
 これは、この経緯を見てもわかるように、野中さんの意を受けて民間レベルで話をしている、しかしバックには野中さんがいる、これは金容淳さんも十分承知していた。
 そして、九七年八月七日、中川さんは全国農業協同組合連合会、ここにおいて、人道的な見地から国内の余剰米百万トン支援を日本政府に要請する、これを決議し、農協グループとして支援運動を展開することを初めて全国農業協同組合中央会、JA全中に提案することを決定し、その後さまざまな形で政府に働きかけ、あるいは農林族に働きかけていく、そうじゃありませんか。
 当時、この余剰米はどのような状況でありましたか。食糧庁、いらっしゃいますか。
石原政府参考人 お答え申し上げます。
 その当時、国内で政府米、非常に過剰がございまして、農業団体としては、それが価格低迷のもとだということで、これの処理につきまして大いなる関心があったということは事実でございます。
木下委員 私の調べによると、当時米の在庫が三百五十万トン、まさに過剰米の負担で農協組織がパンク状態にあったんです。ですから、何とかしてこの在庫米を北朝鮮に持っていきたい、これが農協関係者の一致した考え、そして、それを後押ししたのが当時の野中幹事長代理なんです。
 そして、実は政府に、いわばそういった農協団体あるいは農林族、そういった方々から相当強い働きかけがあったんじゃありませんか、どうですか。
石原政府参考人 ただいま先生の方から百万トンの援助について決議したというお話ございましたけれども、そのときの全農の理事会では、政府が北朝鮮に支援するよう取り組んでいくことを決めたということでございます。それで、具体的にどのような行動をしたかということは、我々承知しておりません。特に農林水産省に働きかけがあったということはございません。
木下委員 そんなことはないんで、それが実は二〇〇〇年九月下旬、ここに書いてございます。
 自民党農業基本政策小委員会で松岡小委員長が、政府米在庫から五十万―百万トンを国際援助枠として隔離する、これを提案し、そして、その後十月四日に開かれた自民党外交部会、小委員長の松岡さんと当時総務局長の鈴木宗男さんが農林族議員の若手を引きつれて、ここへ乗り込んでいって、とにかくすさまじい圧力をかけたんじゃありませんか。それによってこの五十万トンの米支援が決まったということでしょう。どうですか。
佐藤政府参考人 この北朝鮮に対します米支援でございますけれども、北朝鮮に対する、北朝鮮の食糧事情を踏まえたそういう人道的な支援という観点と、それから対北朝鮮との関係、あるいは朝鮮半島情勢という種々の要素をも総合的に勘案して、政府の中で検討をし、そして実施を決定してきたということでございます。
 その過程で、重要な政策の決定でございますから、必要に応じて与党の部会等関係機関あるいは議員に御報告をする、御説明をするということは当然あったわけでございますが、そうした検討、実施に当たりましては、政府の中で検討、実施を決定してきたということでございます。
木下委員 実は、先ほども言いましたが、これには五十万トンじゃまだ足りないんです。百万トンを実は密約してある。中川さんが九七年八月七日に明らかにし、そしてその前に、金容淳さんと百万トン、しかもそれは、先ほど言いました野中さんの密命を帯びて行っているんですよ。ですから、野中さんもそれをつかれて、二〇〇〇年十月三十一日に、実は九七年の森訪朝団で百万トンの米支援の密約があったことを認める、そういう報道がなされたんじゃありませんか。そしてその後、野中さんは慌ててこれを否定している。
 密約があったんでしょう、百万トンという。どうですか。
佐藤政府参考人 先ほど来お話が出ております中川氏の訪朝については、私ども一切連絡を受けたこともございませんし、承知をいたしておりません。
 それから、その九七年の与党訪朝団のお話については、与党の訪朝団のお話ということでございますので、政府としてお答えをする立場にはないわけでございますが、かつて、当時の官房長官よりは、その訪朝団から米支援の約束を行った事実はないという説明があったというふうに述べておられると承知しております。
木下委員 いや、民間が勝手にやったことだから外務省あるいはその他が関知していない、そうじゃないでしょう。これは北方四島のときも言いました。民間がやっているから、あるいは一議員がやっているから、そんな情報がないんで、よく外務省やっていられます。あらゆる情報を得て、そして、本当に北朝鮮政策がきちんといっているかどうか、これを監視していかないと、外務省要らないですよ。民間に任せておいて、民間が勝手に密約してきた、あとは外務省が後追いでやっていけばいい、これじゃ外務省要らないでしょう。外務省の主体性はどこにあるんですか。
 ですから、小泉さんが今後は米支援を凍結する、そう言っていますが、先ほども、世界食糧計画の方から日本にも二〇〇二年に要請すると言っています。そうなると、北朝鮮としては、この二〇〇〇年には三月に十万トン、そして十月に五十万トン、六十万トン行っています。ですから、残りあと四十万トンを約束だから送ってくれ、必ず言われますよ。それを送らないと、拉致問題どころじゃないですよ。
 まして、なぜ、この二〇〇〇年だけ突然、従来はまあ多くても、本当に人道的な立場から十万トン前後送られてきた。ところが、二〇〇〇年になって突然六十万トン、これはもう既に人道支援を超えています。
 九七年、アメリカのカーギル社、穀物商社ですが、ここが五十万トンの米を北朝鮮に送っています。しかし、これはかわりに鉱物と交換する、代金を取る、鉱物代金で、そういう報道があります。日本だって、当然、無償援助じゃなくて、それだけのお米を出すんだったら、やはりきちんとしたこうした形で、これこそまさに毅然とした態度なんです。
 どうですか、大臣。そういう密約を含め、小泉さんが言ったように、本当に米支援凍結しますか。はっきり答えてください。
川口国務大臣 政府に対しまして、今WFPから具体的な支援要請があるわけでもございませんで、また、北朝鮮に対する新たな食糧支援について具体的に検討を行っているということではございません。
木下委員 あっても凍結するということでよろしいですか。そのお答えを聞いて、質問を終わりにさせていただきます。
川口国務大臣 北朝鮮に対します食糧援助につきましては、これまでも、北朝鮮の深刻な食糧事情を勘案いたしまして、人道的な観点から行ってきておりまして、実際の支援の決定に当たっては、こうした人道上の考慮に加えまして、総合的な観点から判断を行ってきているわけでございます。
 一般論として申し上げれば、北朝鮮に対する食糧支援につきましては、今申し上げましたように、政府として、人道上の考慮に加えまして、種々の要素を総合的に勘案しながら検討していく問題だというふうに認識をしております。
 小泉総理も、現時点で、拉致問題等の懸案を棚上げにして米支援を行うことは非常に難しい情勢にあるということをおっしゃっていらっしゃいます。
木下委員 ぜひ毅然たる態度を、おっしゃるなら行動で示していただきたい。それだけ要請して、質問を終わります。ありがとうございました。
吉田委員長 次に、首藤信彦君。
首藤委員 ただいま委員長、御指摘されたと思いますが、今、与党席を見れば三人。やりようがないでしょう、これ。これは外務委員会ですか。外務大臣、いかがですか。日本の生命線で、日本がこれからどうなっていくのか、こんなときに、討議にもならない。これは外務委員会じゃないよ、はっきり言ったら。ここで私は何を質問すればいいんですか。委員長、いかがですか、こういう状態。
吉田委員長 今首藤委員から御指摘がありましたので、早急に委員各位に御連絡をいただきますようにお願い申し上げます。
首藤委員 私、もう一回言わせていただきますが、こんなことでは条約の審議はできない。一切の条約は、これは通らない。こういうような状態が続くんだったら、外務委員会、これはもうノンイグジスタンス、存在していないということです。ですから、ここでは条約の審議はできない、そういうふうに言わせていただきます。
 さて、きょうの質問でありますが、真っ先に外務大臣にはパレスチナ情勢についてお聞きしたいと思います。
 これは二日前に私もまた聞かせていただいたわけですが、パレスチナ情勢は、先日、国会でも決議が出ましたけれども、本当に深刻な問題であります。私は、それが深刻さをどんどん増しているんじゃないか、そういうふうに最近は危惧しているんです。
 それは、イスラエルの軍隊が一部の町からは撤退している、こういうのを見て、これは少し収束の方向に行っているんじゃないか、そういうふうに考える方もおられるかもしれない。しかし私は、同時に非常に危惧しているのは、アメリカのパウエル国務長官がやはり入るのが遅い。なぜこんなに遅いのか。この間にイスラエルは、まだどんどん新たな町へ侵攻しているんですね。それを見かねて、どうなっているかというと、実はイラクが石油の禁輸をしようとしている。それからさらに、イラクは、自爆テロの被害者、家族に対して資金援助を増加させようとしている。それから、最近では、やはりパレスチナ側にイラクが援助しようとしているというニュースが伝わってきます。
 何を言わんとしているかというと、事態をほうっておけば、これはアラブ諸国、なかんずく今そういうパレスチナを支援しようとしているイラクなんかがどうしても、国論からいっても、手を出してこざるを得ないんです。このことは、まさに悪の枢軸、そしてイラクに対して攻撃の理由を見つけようとしているアメリカの、ある意味で思うつぼの状態になっていくわけですよ。
 こういうものを私たちはとめていかなければいけない。日本が平和を保つためにも、世界の平和を維持するためにも、こうした危険の芽を私たちは摘んでいかなければいけないんですよ。ですから、今こそ大きな力を発揮してこれを解決していかなければいけないと思うんです。
 そして、既に欧州議会は、これも先日指摘したとおり、四月の十日、第一にイスラエルに対する経済制裁、第二に平和維持・監視部隊の派遣の要請をしようと、ここを決めているんですよ。それぐらい、たとえイスラエルから非難されたとしても、やはり国際正義のためにそれをやろうと、欧州議会で、ストラスブールの議会でそういうふうに決めているわけですよ。
 それに対して、世界の三極を構成するとついこの間まで我々も誤解していたこの日本、アメリカとヨーロッパ勢力とそれからアジアの日本と、こういう誤解していた我々は一体何をやっているんですか。外務大臣、いかがですか。これからどういう戦略を持って、どういう手でこの問題に関して、平和をつくるために、なおかつ我が国が国際社会で名誉ある地位を占めたい、その私たちの思いにこたえようとしているんですか。いかがですか、外務大臣。
川口国務大臣 我が国として、イスラエル、パレスチナにつきましてどういう働きかけを、あるいはアメリカに対しましてどういう働きかけを行っているかということは、先日、首藤委員の御質問にお答えをしてかなりお話をいたしましたので、重複するところは省略をさせていただきたいと思いますけれども、その後、引き続き、茂田前イスラエル大使は現地で、イスラエルサイドあるいはパレスチナサイドとさまざまな話し合い、働きかけを行っているわけでございます。
 それからさらに、南レバノンの情勢につきまして、悪化のあるいは緊張の高まりが見られますので、この点につきましては、在京のイラン大使に、ヒズボラに対して自制をするようにという働きかけを高野外務審議官から行いましたほか、シリア、イラン、それからレバノンの我が国の大使館を通じまして、ヒズボラの自制を促すための働きかけをするように指示をいたし、それを実行いたしております。
 それからさらに、昨日の時点で、在京のイスラエル大使に対しまして私から、イスラエルの即時撤退、停戦、そして、今パウエル国務長官がこれから調停に入ろうということでやっていただいているわけでございますので、この機会をつかんで、即時撤兵を行い、停戦をし、その先の話し合いをやっていくようにという強い働きかけを行いました。また、パウエル長官の御努力につきまして最大限の支持をするということで、談話を出させていただきました。
 さらに、ソラナEU上級代表から、先方からお話をしたいということがございましたので、昨日電話会談をいたしまして、お互いに考え方を、分析を交換しまして、今後、実は月曜日にEUでは閣僚理事会が開かれることになっておりますので、そういった結果を踏まえ、情勢の分析あるいは今後の行動について引き続き密接に連携をとっていくということの話し合いをしたわけでございまして、引き続きこの点の連携は実際に行っていくことになるかと思います。
 現在は、米国による仲介の努力が実を結ぶかどうかということが問題の解決にとって非常に重要な焦点となっているわけでございます。このパウエル国務長官のミッションが成果を生むように、なかなかこれは難しい問題でございまして、パウエル長官としては非常な勇気を持って御努力を今していらっしゃるわけでございますので、これについては日本として最大限に働きかけたい、支援をしたいと思っております。
 今後、こうした国際情勢の進展、委員がおっしゃられますように非常に早く動いておりますので、情勢をきちんと見きわめ、分析をし、その点について関係の諸国と情報を交換し、連携をとりながら、我が国として機動的な外交をさらに積極的に展開をしたいと考えております。
首藤委員 外務大臣、どうもありがとうございました。きちっと対応されて、国民にも、私たちにも、外務大臣の直接のそうした大きな展望を持っている活動というのを伝えることができて、大変うれしく思います。
 あえてこの分野での専門家として言わせていただくと、最初におっしゃったイランとの会談、これは非常に重要な意味があると思います。ともかく、この問題がもう一段階エスカレートするのは、やはり南レバノン、特にヒズボラとの関係であるということがもうだんだん明確になっておりましたから、そういうところで、イランに対して日本が外交的なメッセージを送るというのは大変有意義なことだったと思います。
 しかし、もう一つお願いしたいのは、そうした御努力がやはり外で見えるようにしていただきたい。それは、我が国の国民に対してと同時に、アラブ社会、中東世界におけるメッセージともなるように、日本も乗り出しているんだ、日本も皆さんのことを忘れているんじゃないですよ、日本もアメリカのしっぽについているんじゃないんですよ、日本が今までこの地域で確立したさまざまな評判やさまざまな善意の蓄積を生かして、ここで平和をつくっていくんですよと。ですから、ぜひ中東にもみずから足を運ばれて存在感を示していただきたい、姿を見せていただきたい。ぜひお願いしたいと思うんですね。
 それから、先ほどヨーロッパのソラナさんとの話もありましたけれども、それも、電話会談だけではなくて、特別な、ヨーロッパに影響力のあるいろいろな人がおられるわけですから、ぜひそういう人も派遣したりして、この問題に関しては、本当に与野党、全国民を挙げて取り組んでいかなければ、私は、現代の世界におけるこの紛争をとめることができないのではないか、そういうふうに考えておりますので、ぜひ引き続きお願いしたいと思うんですね。
 しかし、一つ残念なことは、外務省というのはまだ今リカバリー中だと言われておりますけれども、そこで、官邸あるいは首相そのものが、首相その人がやはりリーダーシップをとるということが必要なんですね。しかし、小泉首相、今はどこにおられますか。一体なぜ海南島の博鰲会議なんかへ行く必要があったんですか。現在のこんな緊張している状態の中で、中国との最大の懸案の事項は一体何なんですか。いかがですか、外務大臣。
川口国務大臣 先ほど申し上げました一連の中東関係の外交の展開につきましては、これは常に官邸と密接に連携をとりつつ進めさせていただいているわけでございます。
 それから、ただいま小泉総理が博鰲フォーラムに行っていらっしゃるわけですけれども、この場は、アジア各国、地域の政財学の関係者が一堂に会しまして、アジア域内あるいはアジアと他の地域との関係につきまして、経済分野での協力強化が何ができるかということを自由に意見交換を行っている、それを目的とした会合でございます。
 我が国としては、この地域の経済発展には非常に大きな責任を持っているわけでございますので、こうした議論の場に積極的に総理に行っていただいて、加わって、我が国の考え方を発信していくということは、これはこれで非常に重要な、かつ有意義なことだと考えております。アジアの外交にせよあるいはアメリカとの関係にせよ、常に三百六十度すべての地域に対して政府として手分けをしながら外交をやっていくということだと思います。
 それから、このフォーラムにつきましては、これは中国で開催をされるということですので、今回の総理の御出席によりまして、日中の両国が、このフォーラムを含めて、多国間の場でも協力を深めつつあるということを国際社会に示すという観点からも非常に意義があると考えます。
首藤委員 外務大臣はそういうふうにおっしゃいますけれども、だれが考えても、今、こんなところでそんな、ある意味で公式の政府間交渉でない私的なフォーラムなんですよ、そこへ行くのは不自然なんですよ。ですから、もう既にさまざまなところで報道されているように、小泉さんは不審船の引き揚げのために、不審船の引き揚げとパッケージで、このために行ったんじゃないか、そういうことが言われているわけですが、私はそういう外交手段は極めて危ういと。恐らく、今質問されてもそれは否定されるから、この問題はあえてお聞きしませんが、これは私は極めて危ういと言わざるを得ない。ですから、それはぜひ外務大臣からも総理に、そういうことに関して御忠告していただければいいと思いますが、時間がないので次の問題に行きます。
 私は、この外務委員会の権威あるいは外務委員会の機能というものがこの国会ぐらいないがしろにされ、そして疑問符をつけられている国会はない、そういうふうに思っているんですよ。本当に外務委員会の存続をかけたものだと思うんですね。最近、外務委員会の権威というのはないわけですね。
 例えば、先日私は、民間の学者が特別代表という形で軍縮なんかの問題に関して大使として赴任することに関しては、それは国会の承認とかあるいは外務委員会での承認とか、そういうものが必要なんだと。ただの外務省の職員がそのまま外務省の任命によってどこかの国へ行くのではなくて、特定の非常に重要な特命大使として、そういう民間の学者が行く、そのこと自体はすばらしい。そのこと自体がすばらしいことと国会における認証というものは別だということで、この問題に関しては慎重に扱うように、この人事自体に反対ではありませんが、やはりルールを決めてからやってほしいということを私は大臣にしつこく二回にわたって話させていただきました。
 けさ閣議でもう決まって、きょう発令、そういうニュースが流れておりますが、まさかそんなことはございませんね。外務大臣、いかがですか。
川口国務大臣 猪口上智大学法学部教授には軍縮代表部大使をお願いするということで先般発表させていただきまして、委員おっしゃいましたように、けさ任命のための閣議決定が行われまして、また、憲法及び外務公務員法の規定に従いまして、天皇陛下の認証を経て、本日発令をされることとなります。
 なお、外務公務員法第八条によりますと、「大使及び公使の任免は、外務大臣の申出により内閣が行い、天皇がこれを認証する。」ということとされております。
首藤委員 やはり本当に大きな問題があります。今の外交を揺るがしているのは、大使、大使館の問題ですよ。ですから、やはりこの問題に対して国民のチェックが入っていかないということが外務省を腐敗させていったんですよ。ですから、外務省の職員が大使として赴任することに関しても、民主党は、アメリカと同じように、諸外国と同じように国会での承認を求めよう、そういうことを言っております。
 まして、地域の専門家で地域へ送るというのではなくて、軍縮という日本の外交の中核にある人がどうして民間の学者でなければいけないのか。では、外務省に人はいないのか。大きな問題がありますよ。前から言っているように、このパレスチナの問題に関しても、イスラエル大使がまだ決まっていない。
 それからさらに、そういう大使経験者がほかの方、例えば北方四島支援などの事務局長に行こうというときに、鈴木さんのような自由民主党の政治家が出てそれをブロックして、結局最後は高野さんという事務局長が選ばれていく。これは新聞に出ているじゃないですか。私の外務委員会での質問の外務大臣の答えと違いますよ、朝日新聞に書いてあることは。
 残念ながら、今時間がありませんから、これは次回また質問させていただきます。
 最後に、私の残された一分の時間の中でお聞きしたいんですが、今世界ではいろいろな取り組みが行われています。特に、このパレスチナの問題に関してもそうですが、アフガニスタンではアメリカがまだ空爆を続けています、こういう問題に関してもICCの存在というものは非常に重要となるわけで、最近のニュースでは、ICCに関してはいよいよ発効するという情報になっているんですよ。これに対してアメリカは、直ちにそれを拒否するということになってきます。しかし、やはり基本的にはICCの問題というのは、今のこの不安定化する世界の中で、人権、人道を守っていくために大変重要なものなんですね。
 これに対して、日本はなぜまたアメリカ外交、アメリカ追随の態度をとるのか、そして日本政府はこのICC問題に対してどういう展望を持っておられるのか、外務大臣のお話をお聞きしたいと思います。
川口国務大臣 ICCにつきましては、現在、この規定の内容を精査するとともに、国内法令との整合性について必要な検討を行っているところでございます。
 また、具体的に申しますと、国際刑事裁判所は、集団殺害罪、人道に対する罪、戦争犯罪、侵略の罪に対しまして管轄権を行使し得るということとされておりますけれども、戦争犯罪について述べますと、我が国はジュネーブ諸条約を締結いたしておりますけれども、この関係の国内法令につきまして法整備が見送られてきたという事情もあるわけでございます。また、このほかにも問題点はございますけれども、こういったことを踏まえながら、我が国の国内法令との整合性につきまして必要な検討を行っているわけでございます。
首藤委員 それでは最後になりますが、それでは前向きに取り組んでいるということですね。そういう御回答でよろしいですか、外務大臣。
川口国務大臣 必要な精査を現在行っているわけでございます。
首藤委員 終わります。
吉田委員長 次に、中川正春君。
中川(正)委員 民主党の中川正春でございます。引き続いて議論をしていきたいというふうに思います。
 まず最初に、先ほどの木下委員の拉致問題に関連してもう少しお聞きをしたいと思うんですが、先ほど大臣もちょっと御指摘があったように、最近、北朝鮮の風向きというか、さまざまな意味での姿勢というのが変わってきているということ、これはそれぞれの関係者の間で指摘をされておることであります。
 その中で、先ほどちょっと話の出ましたスパイ容疑で抑留をされていた杉島前日本経済新聞の記者、この方と大臣が一日の日にたしか会見をされている、外務省の方に杉島さんが訪問をして大臣に報告をされているというふうに思うんですね。そのときの内容、特に、なぜ今のタイミングで彼が解放されたかということ、この辺はどのようにお聞き取りになったか、あるいはまた大臣自身はどういう解釈をされているのか。そこのところ、ちょっと申しわけない、通告は具体的にはしなかったんですが、これは大臣自身がこの間会って話をされておることでありますから、特にお聞きをしたいというふうに思います。
川口国務大臣 先日、杉島元日経新聞記者とお会いをいたしましたのは、先方からごあいさつをしたいということでおいでになられたということでございまして、お会いをしたわけでございます。
 北朝鮮との関係につきましては、昨年来外務省から、拉致問題を初めといたします諸懸案につきまして、北朝鮮のより前向きな対応をあらゆる機会をとらえて働きかけてきたという経緯がございます。そのような北朝鮮とのやりとりの中で北朝鮮側から、例えば杉島記者の解放といったような具体的な動きが出てきたということかと思います。一連の赤十字会談ですとか、あるいは行方不明者の調査の再開ですとか、そういった動きは北朝鮮からの前向きな動きであるというふうに認識をしております。
中川(正)委員 外務大臣としては、日本の公式あるいは非公式の接触とそれぞれ外務省の努力によってと、こういうことを言いたいんだろうと思うんですが、実はその後、杉島さん自身が記者会見といいますか、プレスに対していろいろ話をしていまして、その中で、解放という形に突然なった、その変化があらわれてきたのは、ブッシュ米大統領の、北朝鮮などを悪の枢軸と名指しで非難をして強硬姿勢をとり始めた直後の二月の十一日ごろから北朝鮮の態度が変わってきた、それが解放に結びついてきた、こういうことなんですね。
 いわゆる一連の北朝鮮の緩和策というか、やわらかい態度に変わってきたのは、日本に対してだけじゃなくて、やはりアメリカとの交渉が始まってきたという報道もありますし、特にKEDOについて改めて交渉が再開をされるというめどがついてきた。それに日本の赤十字会談ということですね。
 そんな中で考えていくと、日本政府としても、これまでの北朝鮮に対するスタンスといいますか態勢というのを一度、原点に戻ってというよりも、ここではっきりと方向性を私たちに対してもあるいは国民に対しても示していくことが必要なんだろうというふうに思うんです。それが、今回の不審船の引き揚げをどうするか、あるいはこれからの米問題、これをどういうふうに持っていくか。さっきそれぞれの議論の中で、毅然としたという話が出ましたが、この毅然としたということの中身、これをどういうふうに考えていくか、これが一つポイントになってきたように思うんですね。
 そうした意味で、これまでの外務省というのは、そこのところが今のブッシュ政権とは全く逆のスタンスであったと私は解釈しています。どちらかというと、余り物事を大きくせずに、特にこの拉致問題についても余り大きく取り上げずに、事なかれというか、なるべく波風を立てない形で北朝鮮と交渉をさせてほしいということ、このことが私は外務省の基本姿勢だったというふうに理解をしています。
 ところが、結果的に今出てきたことというのは、それこそそうした態度とは全く逆の姿勢を北朝鮮には示さなければいけないんだ、言うべきことは言う、やるべきことはやる、その上に立って交渉をしていくということ。このことが、ブッシュ政権の悪の枢軸ということを善意に解釈した、私はこの言葉は必ずしも正しいとは思っていないんですが、善意に解釈した上での外交姿勢が功を奏しているということではないかというふうに思うんです。
 そういう観点に立って、川口外務大臣は、大臣としてどういうふうにこのことを理解していられるのか、改めてこの基本姿勢というのをここで確かめておきたいというふうに思います。
川口国務大臣 我が国の北朝鮮に対する政策といいますのは、日朝国交正常化交渉等の場で粘り強く取り組み、こうした中で拉致問題の解決を目指すということで、これにつきましては今までも再三再四御説明をさせていただいているわけでございます。
 それとあわせて、つい先日も、韓国、米国と一緒に行っております三国調整グループというのがございまして、その会合もございましたけれども、そういった場で北朝鮮に対しての各国の取り組みにつきレビューをし、情報の交換あるいは考え方の交換、議論をしているというようなこともございます。また、さまざまなそのほかの場でも、北朝鮮との関係、特に拉致問題につきましては、例えばアジアとEUとの外務大臣の会合であるASEMの会合、あるいはG8の会合、ARFの閣僚会合等のさまざまな場で言ってきているわけでございます。
 委員が今おっしゃったことにつきましては、非常に単純化をして整理をさせていただきますと、外交のやり方として、例えば北風と、それから南風といいますか太陽、北風と太陽というような仕分けがある、それから、外交の過程をどこまで透明にして外交をやっていくかという問題があるということを、二つおっしゃっていらっしゃるということでございますけれども、この外交につきまして私が思いますのは、そういった二元、委員も二つに分けて言っていらっしゃるわけではなくて、あえて私が今単純化させていただいてということでございますけれども、そういった二つの極でどちらかという判断をするということではなくて、その問題問題、あるいはそのときの国際情勢、そういったことを背景にそれぞれの具体的な政策を機動的に展開していくことではないかというふうに考えております。
 ちなみに、米国につきましては、悪の枢軸ということを言ったと同時に、この北朝鮮との対話についてはいつでもどこでも前提条件を置かないでやるということも言っているわけでございまして、そのあたりは情勢に応じ、状況に応じ、課題に応じ、機動的に外交政策を展開していくということではないかというふうに私は考えます。
中川(正)委員 先ほどのお話を日本の外交の意思として具体的なものに翻訳をさせていただくと、こういうことでいいんですか。
 今回、小泉さんが博鰲に行かれて、朱鎔基さんと、中国と引き揚げについての問題を整理するということですね。その整理をするということは、日本の意思として、引き揚げをするということ、これは決まっていますよというメッセージを北朝鮮にも発するということ、これが一つ。それからもう一つは、拉致問題については、これは米の支援の議論というのがこれから具体的になってきますけれども、この拉致問題、まずこれをはっきりさせよう、米の支援なんというのはそれからの話ですよというぐらいの気概を持ってこれに臨むということ、さはさりながら、それぞれの外交チャネル、特に赤十字における話し合い、あるいはまた非公式な接触というのは大いにやっていきますよ、そういうことでいいんですか。
川口国務大臣 まず、博鰲の会議につきましては、これは、その地域の政財学の人たちが集まって、地域の経済の問題、経済協力の問題あるいはこの地域と地域外との問題について自由に話し合うという場でございまして、アジアの経済に非常に大きな責任を持つ我が国として、その問題に積極的に取り組む、総理が御出席になって取り組むということについては非常に大きな意義があると思いますし、また、先ほど申しましたように、これは中国で行われる会議でございますので、日本と中国が協力をして一緒にそういった多国間の問題に取り組んでいるということを諸外国に発信していくということについては、非常な意味があると私は考えております。
 それで、不審船の問題につきましては、一部の報道にありましたように出席と不審船の問題を取引したというようなことは全くございませんで、不審船についての我が国の考え方というのは、これも今まで申し上げていますように、まず調査をして場所を特定し、それから船体調査等を行い、それぞれのステップを経て、今後の手順としては引き揚げるという段階に行くんであろうというふうに思いますけれども、一つ一つ段階を経て進んでいくということで我が国の方針に全く変更はございません。
 さらに、食糧の支援について言いますと、これも北朝鮮の深刻な食糧事情を勘案して人道的な観点から行ってきている、そうした人道上の考慮に加えまして、種々の要素を総合的に勘案しながら検討していく問題であるというふうに認識をしているということに変わりはないわけでございます。
中川(正)委員 次に、ロシア関係の話に移っていきたいというふうに思います。
 最初に、実は、北方四島、それから鈴木宗男議員の関連の中で、先ほども話が出ましたが、実際どのような話し合いが行われたのかということ、これを明快にするためにも、この委員会に、東郷現のオランダ大使、それから佐藤優前の主任分析官、こういう当事者を呼ぶということ、もちろん鈴木宗男さん自身も証人喚問ということで要請をしておるわけでありますが、特にこの東郷さんについては、これは委員会自体で与党のサイドの同意も得ましてやっていこうということになっているんですね。ところが、これを本人が拒否をしているということ、このことが返事として来ました。
 これはまだ大使でありますから、大臣の意向によって、こちらに召還したときにこの委員会に出席をさせようと思えばそうすることができるということだと思うんですが、特に佐藤優さんについては、まさにもう大臣のこのことに関する考え方次第だというふうに思うんですよね。そういう意味で、改めてそのことを本人に伝えて、指示をして、それぞれここに参考人として出席をするように取り計らっていただきたい、そうすべきだというふうに思うんですが、どうでしょうか。
川口国務大臣 東郷大使につきまして、先ほど委員がおっしゃいましたように、外務委員会理事会から参考人として出席をするように求められているということは承知をいたしております。この旨を北島官房長から東郷大使に伝えているわけでございますけれども、本人からは、既に処分された身であって、帰国後に職を解かれるということでもあって、参考人としての出席は差し控えたいという気持ちが表明されていると承知をいたしております。
 佐藤前主任分析官につきましては、佐藤は現在、課長補佐の職にございまして、本来、国会に対しましては管理職以上の責任ある立場にある者がお答えすることが適当であろうというふうに思います。
 委員のお話の、私から東郷大使について直接話をすべきではないか、その意思を伝えるべきではないかということかと思いますけれども、私といたしましては、国会の場というのが重要でございますので、参考人の招致要請には応じてほしいと思っております。それから、既に処分が行われていることもございまして、できるだけ早く帰国をするようにという指示もいたしております。
 他方で、東郷大使は、現時点でオランダに駐在をしている日本国の大使でございまして、帰国に当たりましては、日本とオランダの関係に悪い影響を及ぼすことがないように、きちんと処理すべき事務を処理し、離任する大使としましてあいさつをする等々のことを行った上で帰国をすべきであるというふうに考えております。
中川(正)委員 ぜひ、それぞれに、参考人としてここに出てくるように積極的に働きかけていただきたい、働きかけてというよりも、これは命令をしていただきたいというふうに思います。
 実は、今回の鈴木宗男さんを中心にする日本の外交のあり方というのが、ここに非常に大きな形で、いわゆるリパーカッションというか、相手の国につけ入られるというか、問題視されることが起きているように思うんです。
 一つは、ちょっと以前にも指摘をしましたが、ロシアの国会の下院で北方四島に関する公聴会が開かれて、三十人からの人たちがそこでさまざまな発言をしております。
 私、実はこの発言の内容について、外務省のサイドで恐らく資料を取り寄せておるだろうと思ったので、それを出してくるように、こういう話をしたんですが、最初に出してきたのは、この紙切れ一枚で、要約した、一番、二番で、領土問題の存在を認めた南クリル諸島の帰属の問題へのアプローチの見直しの可能性を再検討することというのと、それから、国境の画定問題については、これは善隣協力条約を締結することを積極的に打ち出すべきで、この画定問題の話には乗るなということ、この二つが話し合われました、これだけなんですよ、外務省から出てくるのは、最初。
 そんなばかなと言って私が怒りまして、一人一人の要約を持ってこい、こう言いましたら、それらしきものがやっと出てきたんですけれども、最終的にロシアのホームページを見てみましたら、全部載っているんですよ、ここに。何という感覚で外務省というのは情報をコントロールしているのかというのが、私はつくづく悲しくなりました。本当に悲しくなりました。そのことを一つ指摘しておきたい。これは、次の話でもっと詰めたことを申し上げたいんですけれども。
 これはこれとして、それと同時に、これはきょう届いた外電だと思うんですが、アレクサンドル・ロシュコフ外務次官が、日本の読売新聞の記者にさまざまな形で答えているんですね。
 その中で、問題になる発言というのは、日ロ関係の水準を高めてきた人たちが罰を受けている、こういうふうに述べて、ロシア側としてパイプを失ったという認識をしている、そういう発言をしていますね。
 それから、日本外務省の態勢が整わない限り、本格的な協議再開は難しい、見通しについては、事務方の入念な準備が前提ということで、早期開催には慎重姿勢を示した。これは、北方四島についての話し合いの再開、こういう意味なんですけれども、こういう発言をしております。
 それから、日ロ共同のプロジェクトを進めようとしても、日本側では、だれもかかわりたがらない、小泉首相ら政府首脳が関係改善を口にする一方で、日ロ関係の水準を高めてきた人たちが罰せられており、ロシア側から見れば、日本からのシグナルは矛盾している、こういうことですね。
 最後に、これはけしからぬ発言だと私は思うのですが、こういう政経不可分が続くようだと、ロシアは中国、米国やインドとの関係強化を優先せざるを得ない、こういうことですね。
 大臣、これはどういうふうに思われますか。
川口国務大臣 読売新聞でございましたでしょうか、その記事につきましては、これは、私どもは直接その場にいたわけでもございませんで、どういう意図でロシュコフ次官がおっしゃったかにつきましては、私としては直接にコメントを申し上げるということは控えさせていただきたいと思います。
 我が国の、ロシア、特に平和条約との関係で考え方ということは一貫をいたしておりまして、四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結するということで、あらゆる問題を話し合うということで、先般、高野外務審議官がロシュコフ次官と三月の中旬にモスクワで話し合いましたときには、そういったことで合意をいたしているわけでございます。
 我が国としては、日ロ関係が今後とも引き続き円滑に発展し進展をするように、我が国として最大限の努力をしたいと思っております。今までも三つの分野についての協力、平和条約についての話し合い、それから経済についてのさまざまな協力、それから国際舞台上での協力ということで合意をしているわけでございまして、日ロ関係が現在特に後退したとも、あるいは変更の過程にあるとも認識をいたしておりません。我が国としては、従来の方針にのっとって、ロシアと円滑な関係を進めるということでございます。
中川(正)委員 ここで本当に、そうした、それこそ毅然たる態度で積極的に外交を進めるという気力が外務大臣としてあふれてこなきゃいけない、そういう局面だと思うんですよね。
 それはそれとして、もう一つ指摘をしておきたいのは、こういう反応が出たときには、パイプが余りにも細過ぎた、この反省があったわけでしょう。逆に言えば、外務省というのは、外者というか、外務省以外の人たちを排除する力が非常に働いていると思うんですよね。特に、さっき示させていただいたような情報開示ということになると、さっきのようなありさまですから。これだけじゃない、さまざまなことで言える。
 本来は、外交なんというのは、与党、野党の対立軸でやるんじゃなくて、それこそ政府と国会というのが信頼関係の中で一つの方向性を見出しながら進めていくということ、これはどこの国でもそういう構図の中で進めているんです。ところが、今確実に起こっているのは私たちの間の大きな溝です。信頼関係が完全に、どちらも疑心暗鬼になってしまって、崩れているということ、ここを意識していただきたいと思うんですね。
 その上に立って、また改めて私も委員会に対して、あるいは国会全体に対して提案をしたいと思うんですが、例えば秘密会、あるいはそのような信頼関係の持てるような形の情報の共有化、ここですね。これを何とかもう少し広い範囲に持っていかないと、鈴木宗男議員の事件の中での一番の反省というのは、特定の一人にこれが偏っていた、それにかき回されたということなんです。情報を共有すること自体は、その中でやはり必要なんだろうと思うんですよ。それを否定することは、私はこれは間違った考え方だというふうに思っております。
 特に、基本的な外交方針というのを決めていく中に、例えばさっきの北朝鮮に対する基本的な日本の態度というのを議論しようと思ったら、これは外務省が勝手にやっちゃいけない話なんです。これはみんなで情報を共有しながら考えていく、そういう体制というのをとっていきたい、こういうことですね。
 そのことを一つ提案していきたいと思うんですが、外務大臣、私も、今の委員の中でのあるいは国会の中での秘密会の活用というのは、罰則規定もそう大したものでない、議員に対して本当にそれが可能かどうか、いわゆる守秘義務が守られるかどうかといったら、それはどうでしょうかねという話が出てくるのは当然だと思うんです。私らのサイドも、そういう意味では、やはり議院証言法を改正してでもこれを変えていくという姿勢は必要だと思うのですが、その上に立って、どうですか、大臣。
 私たちが、今回のロシアの問題、もう一回北方四島の関連とロシア外交については総括をしなきゃいけないと思うのですよ。何が起こっていたのかということをまず把握した上で、もう一回これは立て直さなきゃ、向こうの外務次官にこんなことを言われてそのまま引き下がっているようでは、これはだめだというふうに私は思うのです。
 その上に立って、提案をさせていただきたいのですが、私たちがそういう予備的な準備をした上で、外務省としてもその話に乗ってきていただいて、情報を共有しながらこの問題を総括してみるというふうな姿勢、これを持っていただけませんか、どうでしょうか。
川口国務大臣 国会が機密保持ということについてどういうことをお考えになられるか、あるいは秘密会というものをどういうふうにお考えになられるかといったことにつきましては、これは国会の問題でございますので、私の立場からコメントを申し上げるということではないと考えております。
 外交につきましては、一般的に申しまして、内閣は、「外交関係を処理すること。」というふうにされているわけでございまして、そういった憲法の規定に基づいて外交をやらせていただいているということですけれども、当然、我が国が、よい外交と言うと非常に抽象的な言い方になりますけれども、を進めていくためには、それなりに国民の皆様の理解をいただくということも大事だというふうに思っておりますし、他方で、外交の過程では非常に機微な問題、相手国との信頼が非常に重要な問題もございまして、それも大事だろうというふうに思っております。
 国民の方の理解を外交にいただくための努力は、政府といたしましても、外務省といたしましても、それは引き続き行っていきたいと考えております。
中川(正)委員 終わります。
吉田委員長 午後一時から委員会を再開いたします。この際、休憩いたします。
    午後零時二十四分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時三分開議
吉田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。土田龍司君。
土田委員 中東問題についてお尋ねするんですが、既に何人もの方から質問が出ておりますけれども、今まさに紛争の最中である、戦争状態にあると思うわけですが、それについて幾つかお尋ねしたいと思います。
 この問題に対する取り組みについて、大臣は、四月十日の本委員会で、我が国としては三月三十日に談話を発表したことを非常に強調されておりますし、前回の私の質問に対しても、十分な取り組みをやっているということをおっしゃっております。
 先日、ドイツのシュレーダー首相が演説の中で、イスラエルとパレスチナ両国は、既に自分たちの問題を解決する能力をなくしてしまっている、仕切り直しが必要じゃないかということを言っているわけですが、こういった発言は、国際社会が行ってきたこれまでの努力と違った取り組みをする必要があるんじゃなかろうかという指摘だと私は思うんですね。まず、この件について外務大臣はどういった認識を持っておられますか。
川口国務大臣 現在、イスラエルとパレスチナの間で暴力の悪循環が発生をしていまして、それぞれ相手方に対しては大変に厳しい思いを持っているということは、そういうことであろうかと思います。
 今、現状打開の糸口が見えない状況にありまして、国際社会として、情勢の鎮静化、和平交渉の再開に向けまして、必要な努力と支援を行わなければいけないと考えております。その意味で、国際社会の適切な働きかけが必要であると考えております。我が国としても、これまでさまざまな形で働きかけておりまして、今後もこうした努力を継続していきたいと考えております。
 今の時点で、パウエル国務長官が現地にいて仲介の努力をしているわけでございまして、この努力が実を結ぶかどうかということは非常に大事な点でございます。我が国として、パウエル国務長官の支持を全面的に行って、両当事者にパウエル国務長官への協力を求めているわけでございます。
土田委員 国際社会が、こういったパレスチナ問題の解決に向けて一丸となって方策をいろいろ考えているわけでございますが、三月十二日に、国連安保理事会においても、イスラエルとパレスチナの自治政府が二つの国家として共存することを肯定するというような採択をしたというふうに私は感じるわけですね。この安保理決議の採択によって、今後、パレスチナの国家としての樹立について、どのような手段によって、いつまでに実現していくかがこれからの課題であるというふうに思うわけです。
 四月十日にドイツ政府が公表した和平構想におきましても、パレスチナの国家としての樹立承認をまず求め、その後二年以内にエルサレムの地位や国境の画定など懸案を解決していくことがいいということを提案しているわけです。
 この四月三日の外務委員会において、川口大臣は、和平交渉を経てパレスチナが平和裏に国家独立を宣言する場合には、我が国としてその国家承認を早急に、速やかに検討するという発言をされているんですが、その程度に発言がとどまっているわけですね。我が国政府としまして、パレスチナの国家樹立に向けて、国際的な取り組みについてなんですが、どういった認識を持っておられますか。
川口国務大臣 我が国といたしましては、従来から、パレスチナ人の独立国家樹立の権利を含む民族自決権、これを支持してきております。近い将来、この権利に基づいて、平和裏にパレスチナ国家が樹立をされ、イスラエル、パレスチナの二国家の平和共存が達成されることを希望しているわけでございます。こういった立場は国際社会で広く共有をされていると考えます。
 委員がおっしゃられたドイツにつきましては、フィッシャー・ドイツ外務大臣が、パレスチナ国家樹立を含む和平提案を、十五日、来週月曜日に開かれますEUの閣僚理事会で提案をするという情報を持っておりまして、この和平案をめぐる今後の動きについて注目をしているわけでございます。
土田委員 さっき大臣は答弁の中で、パウエル長官が果たす役割は大きくて期待をしているというふうにおっしゃったわけですね。そのパウエル長官も、イスラエル軍が撤退後の現地の治安について、監視団を派遣することを提案しているわけでございますが、一方、国連、ロシア、EUの多国籍で停戦監視団を編成することも提案しているわけです。しかしながら、イスラエルのシャロン首相は、従来からこのことについて強く反対しておりますね。どういうことかというと、パレスチナ自治区に国際監視団が入ってくると、将来的にイスラエル軍が過激派を討伐する場合の邪魔になってしまうということを言っているわけで、かなり抵抗が予想されるというふうに思うわけですね。
 しかしながら、深刻なパレスチナの戦闘を停止させるためには、何らかの強制力を持った監視団が行かないことには、なかなかおさまりがつかないのじゃないかというふうに思うのですが、この点については大臣はどう考えられますか。
川口国務大臣 パウエル米国務長官は、暴力の停止への道筋を示したテネット了解の履行状況を監視するオブザーバーあるいは監視団の派遣について前向きの発言をしていらっしゃる、前向きに検討しているということを発言しているということは承知をしております。
 第三者による監視につきましては、我が国は、昨年のG8の外相会合及び首脳会合の後の声明文で述べられていますように、この第三者の監視が両当事者によって受け入れられるならば、テネット了解やミッチェル報告書の実施を通じて、停戦と交渉への復帰を実現する上で有益であると考えております。
 このような監視団の受け入れを含めまして、現在、パウエル長官とジニ特使が現地におきまして、イスラエル、パレスチナ双方に対して事態打開の仲介努力を行っているわけでございます。我が国としては、この成果に最大の関心を持ちまして、現在注視をしているわけでございます。
 基本的には、これは、両当事者が交渉を通じて和平を達成するということが大事であると思います。この和平交渉を側面支援するという意味で、我が国と国際社会が果たす役割は重要だと考えております。
土田委員 おととい、EU加盟国で構成する欧州議会が、ヨルダン川西岸のパレスチナ自治区へ侵攻しているイスラエルに対しまして経済制裁を科すのを求める決議を採択したわけです。もちろん強制力はないらしいのですが、EUは十五日に開催される予定の外相理事会でこの問題を協議して、制裁も辞さないという強い姿勢を打ち出すというふうに言われているわけですね。
 そこで、パレスチナの暴力連鎖を断ち切るためにも、一刻も早い停戦を望んでいるということを我が国も示す必要があるわけでございまして、イスラエルに対する経済制裁措置を日本は検討するのか、あるいはしたのか、この点について御説明ください。
川口国務大臣 四月の十日に、EU加盟国で構成をいたします欧州議会が、イスラエルに対しまして、EU・イスラエル連合協定の停止を含む経済制裁を科すように求める決議の採択をいたしましたが、この決議につきましては、賛成と反対がほぼ真っ二つに分かれているという状況でございました。賛成が二百六十九に対して反対が二百八ということであったわけでございまして、ほかにも棄権があったということです。
 この決議に関しまして、EU議長国のスペインのピケ外務大臣が、EU・イスラエル連合理事会において現状を分析することを検討中である、今後を予測するのは時期尚早であるというふうに述べたということを承知いたしております。
 いずれにいたしましても、昨日からアメリカのパウエル国務長官が仲介の労をとられているわけでございまして、パウエル国務長官の御努力、御苦労が実って一日も早く停戦が実現をするように、そうした考え方で、我が国といたしましても引き続き、イスラエル、パレスチナ両方、あるいはヒズボラの関係等もございますので周辺の国にも働きかけまして、パウエル国務長官の御努力を支援したいと考えております。
土田委員 ドイツ、フランス、イギリスなどがイスラエルに向けての軍事物資の輸出を禁止する措置をとっていることが報じられております。この措置は、欧州連合の決定抜きにして、どういう決定になろうとも、大多数の西欧諸国が武器輸出の認可をおくらせたかあるいはまたおくらせつつあるというようなことであると私は思うんです。こういった措置がイスラエルの軍事行動に反対するメッセージとしてわかりやすく出ているんじゃないかというふうな感じがして、やはり意義があると思うんですね。
 我が国政府は、こういった措置についてどういった見解を持っておられるのか。
 また、問題はアメリカなんですが、年間十八億ドルに上る軍事援助をイスラエルに対してアメリカは行っているわけですが、これに対しても、やはりこういった措置を欧州連合の各国がやるということは大きな圧力になっていくんじゃないかというふうに思うんです。
 先ほどから大臣の答弁を聞いていますと、パウエルさんの努力に期待したいとか、その結果を見詰めているんだというような答弁をされております。いわゆる経済措置についても明確な答えが出てこないというところを見ると、多分そういったことは考えてもいないんじゃないかと思うんですが、我が国として、こういった世界各国が、あるいは特に欧州各国が武器の輸出をしないんだとか、あるいはアメリカに対しても明確なメッセージを発しているわけでございますが、日本はもうちょっと具体的な形でメッセージを発信すべきじゃないかと思うんですが、この二つについて感想と御意見を聞きたいんです。
川口国務大臣 ドイツ、フランス、イギリスがイスラエルに対して軍事物質の輸出延期に着手をしたという報道があるということは、報道については承知をいたしております。
 我が国としては、これは武器輸出三原則及び武器輸出に関する政府見解に基づきまして、原則として軍事物質の輸出は認めないということとされておりますので、これは我が国にとってはそもそも初めからない選択肢だと思います。
 アメリカのパウエル国務長官が御努力をなさっていらっしゃるということにつきましては、イスラエル・パレスチナ問題の解決に向けて最大の力を持っている当事者以外の国としてはアメリカでございまして、アメリカがこの問題の解決のためのかぎを持っているということは、自他ともに許している話だと思います。したがいまして、我が国としては、先ほど来申し上げていますように、パウエル国務長官の御努力を最大限支援するということでございます。
 あわせて、例えば南レバノンの情勢が非常に緊張を増してきておりますので、ヒズボラに対して影響力を行使して自制をするように働きかけることを、イラン、シリア、レバノンに、我が国の在京の大使館及び現地の大使館を通じまして働きかけているわけでございます。
 あわせて、EUのソラナ上級代表とも昨日お話を電話で、先方から電話をいただきましたので、お話をさせていただきましたし、今後とも、情勢の分析、あるいは国際的に何ができるかということについても話し合っていこう、密接に連絡をしていこうということで合意をいたしているわけでございます。
 私としても、ペレス外務大臣、アブ・アラ立法評議会議長、在京のイスラエル大使、米国の国務長官、ソラナ上級代表等、可能な限りの連絡をしておりまして、イスラエルの即時撤退を含む最大限の自制、停戦、和平交渉への取り組み、また、パレスチナ側に対しましては、自爆テロの停止を進めるということ等を働きかけているわけでございまして、できることは全部やっていると申し上げてもいいと思います。
 なお、今、茂田前イスラエル大使が現地で、イスラエル側、パレスチナ側の方々とお話をして、また最大限の努力をしているわけでございます。
土田委員 パウエルさんに期待している、アメリカが一番力があるから、それを後方から支援していきたい、あるいは、ソラナさんとかパウエルさん、いろいろな方と連絡はとり合っていると言いますけれども、僕は具体的にはそんなに何もしていないと思いますよ。日本政府が発信していることは何も見えてこないような気がするんです。国会決議があっただけですよ。そんなに外務省として、あるいは日本政府として、世界各国に見えるような、発信するような、この戦争に対して大きな行動をしていないような気がしてならないんです。
 先ほど民主党の方からも発言がありましたように、日本は世界の国の中で通商国家としていろいろな国々と商売をしていかなきゃならない。通商国家として生きていくためには、その国に紛争があったり、地域紛争があったり、あるいは国内的に混乱が多過ぎたり、あるいは日本と友好関係がなかったりしたら、商売できないわけですね。言うならば、日本ほど世界平和を望んでいる国はないんです。だから、こういった紛争があったときはもう真っ先に日本は、軍事行動はできないわけですけれども、何らかの発信をして、やはり世界に貢献する姿勢を見せなきゃならないと私は思っておりますよ。
 今、茂田前大使が現地に行っていらっしゃると言うけれども、イスラエル大使が不在になってから何日たっているんでしょうか。私は正確に知りませんけれども、こういった、イスラエルにとって非常時、非常事態、このときに日本の特命全権大使がいないということが果たして許されるんでしょうか。確かに茂田さんは前大使で、あの辺のことはよく御存じですよ。人間関係もできていらっしゃる。しかしながら、臨時大使が最高責任者であそこにいて、外務大臣からの、本国からの指示は滞りなくできるといいながらも、やはり大使がいるのと臨時代理大使ではイメージが違ってくるわけです。
 では、この非常事態に、イスラエル大使をここまで長期にわたって不在にしている理由は何ですか。
川口国務大臣 イスラエル大使につきましては、早急に発令を行うべく、今所要の手続をとっている最中でございます。
土田委員 この人事がこのようにおくれている理由は何ですか。単なる純粋な人事問題じゃないということを僕は言いたいんです。非常事態ですよと言っているんです。非常事態なのになぜ特命全権大使を送らないんですかと言っているんです。どういった準備を今されているんですか。
川口国務大臣 まず、茂田前大使はイスラエルの主要閣僚を初め全員の必要な人にお会いできていますので、実態的に、現在、日本政府とそれからイスラエル政府との間でのコミュニケーション上の問題は全く存在をしていないと考えております。
 私も、シモン・ペレス外務大臣と先日お話を直接いたしましたし、必要があればいつでもお話ができる状況にございます。
 それから、イスラエル大使の発令につきまして今手続をやっておりますと申し上げましたのは、これは、相手国のアグレマンを初め、大使の発令についてはさまざまな必要なことがございますので、それを行っているということでございます。
 それから、イスラエル大使が現在空席になっているということにつきましては、これは人事の上の、人繰りと申しましょうか、国会が開会中でございますので、そういった中で大きく人事異動をすることはできないということで、五月雨式といいますか、順番に少しずつ人事異動を行っているということでございます。
土田委員 余り理解できないですが、通常の場合ならば別にそれで構わないと思うんです。大臣が指名して閣議決定して宮中で承認を得てアグレマンをとるわけですけれども、こういった非常時に通常と同じようなやり方、考え方というのはまずいんじゃないですかというふうに僕は申し上げているんです。ということを申し上げておきたいと思います。
 次に、アフガニスタンの支援問題、前回に続いてお尋ねいたします。
 前回は、局長に来ていただいてお金の問題や具体的な話を聞かせてもらいましたけれども、アフガニスタン復興のための執行グループ会議が、おとといときのう、二日間の日程でカブールで行われたわけでございます。
 そこで、まずお尋ねするんですが、アフガニスタンにおいてこの六月に緊急の国民大会議があるんだそうですね、ロヤジルガというのでしょうか。国際治安支援部隊本部へロケット弾が打ち込まれる事件があった。カブールの治安が非常に不安定になっている。これは暫定行政機構に揺さぶりをかける動きじゃないかという見方があるわけですね。
 今後ともこのような事件が幾つも発生してくる可能性もあるわけでございますが、先日、駒野臨時代理大使、ここもまた臨時代理大使しか出していないんですけれども、治安が確保されていないと援助ができない、日本の限界は明白だというような発言といいましょうか、本国への報告をしてきているわけでございますが、これができなければ、治安が確保されていない以上は、復興支援のための人的な貢献は事実上不可能なわけです。このことについて、外務大臣はどういった見解を持っておられますか。
川口国務大臣 駒野在アフガニスタン臨時代理大使が議員が御指摘のような発言をしたということは、承知をいたしておりません。
 それから、なぜ臨時代理大使であるかということでございますけれども、これについては、館の立ち上げのときは大体そういうことになっているということのようでございます。
 治安全般の話につきましては、カブール市内で昨年の十二月の二十九日から、国際治安支援部隊、ISAFと呼んでいますけれども、これと地元の警察が合同パトロールを開始いたしておりまして、全般的な治安改善がなされているという見方が有力でございます。
 今月の五日から第二次アフガニスタン支援調査団をカブールに派遣いたしておりまして、こうした調査の結果に基づきまして、我が国としては協力の具体化に努めていきたいと考えております。
土田委員 その治安確保をした上でないと具体的な支援ができないということは、もう当然のことだと思うんです。駒野臨時大使がそういった発言をしたことはないというふうにおっしゃいますけれども、報道ではそういうふうに、ほかの新聞にも出ておりまして、治安確保が最優先である。そういったのを新聞記者には言うけれども本国政府には報告しないということは僕はないような気がするんですけれどもね。
 しかし、その点は別にしましても、いろいろな方法があるわけでございまして、治安体制を維持するために例えば警察力を整備させる、そういった面ででも貢献策はあるわけでございますが、もうちょっと、治安維持のための今言った警察力を整備するということを教えるとか、そのための人を派遣するとか、そういった貢献策は考えられませんか。
川口国務大臣 当然のことながら、治安の確保は重要なことでございますし、復興を進めていくための前提条件であると思います。
 三日に、ジュネーブにおきまして第二回アフガニスタン復興支援運営グループ治安会合が開催をされまして、我が国からも出席をいたしましたけれども、ここでも、国際社会の認識としても、支援の必要性が確認をされているわけでございます。
 我が国といたしましては、このような治安の重要性にかんがみまして、治安分野での支援についても何らかの貢献の可能性を探りたいと考えております。現在のところ、国軍の創設はアメリカ、警察はドイツ、それから麻薬についてはイギリス、司法についてはイタリーが、主導国としまして国際社会の協力を調整するということで確認がされております。
 我が国といたしまして、現在、先ほど申し上げました支援調査団がカブールに行っていますので、その調査結果に基づきまして、いかなる支援が可能かを検討を進めていきたいと思っております。
土田委員 次に、アメリカのミサイル防衛構想についてお尋ねします。
 去年の夏ごろはこの委員会でも随分取り上げられたんですが、最近ちょっと聞いていないんですが、その間に随分進んできたなという感じがするんですね。
 アメリカの国防総省が二〇〇五会計年度に、ミサイル防衛構想に基づく日米初の迎撃ミサイルの共同飛行実験を計画しているということが内部文書で明らかになっていたようです。また、実験は日米が共同研究している部品を搭載した迎撃ミサイルを使って、これはノーズコーンというんですか、そういったのを使って、約二年間続くと見られているということでございます。
 そこで、ことしの二月に、日米外相会談の際に川口大臣は、ミサイル防衛を含め、安保に関する日米対話をさらに強化していきたい、日米安保体制はアジア太平洋地域の平和と安定のかなめであるというふうに述べたと言われておりますが、これが外務省が出された日米外相会談概要に掲載されておりました。また、この外相会談を伝える新聞によりますと、アメリカが進めるミサイル防衛構想について日米の実務者協議を早急に開始することで合意したということになっております。
 そこで、この外相会談の際に、ミサイル防衛構想、ミサイル防衛に関してどのような合意がされたのか、御説明ください。
川口国務大臣 二月に日米外相会談がございましたけれども、その席上で私は、委員が今言われましたように、ミサイル防衛を含め、安保に関する日米対話をさらに強化していきたいということを申しました。それに対しまして、パウエル国務長官から、日米安保体制はアジア太平洋地域の平和と安定のかなめである、アジア太平洋地域における米国のプレゼンスは重要であることに異論はない等のお話がございました。
 実務者協議云々ということにつきまして、外相会談でそういう合意があったということはございません。
土田委員 これまで示してきた我が国の態度といいますか、正式な言葉なんですが、ミサイル防衛構想に対して、アメリカは検討するというふうに言ったことに対して、日本は、理解する、検討することを理解するという立場をとってきたわけでございますが、こういった計画が出てきたということは、今後はより積極的にこのアメリカのミサイル防衛構想にかかわっていこうという意味でございましょうか。
川口国務大臣 我が国としてのミサイル防衛についての考え方につきましては、従来から申し上げているとおりで、変更はございません。
土田委員 ということは、アメリカのミサイル防衛構想には理解する、そういう言葉ですか。
川口国務大臣 いろいろ、幾つか言っていることがあるわけですけれども、今委員がおっしゃられた、理解をするという言葉が入っているという意味では、米国がミサイル防衛計画を検討していることを我が国として理解しているということも言っております。
土田委員 ちょっと時間がないので、この前大臣が行われたタウンミーティングについてお尋ねしたいと思います。
 「開かれた外務省のための十の改革」という中の広報体制、広聴体制再構築として、タウンミーティングがこの前の七日の日に開催されたわけでございますが、第一回目の会合のテーマが外務省改革ということで、大臣が具体的にどういった改革を目指しておられるのか、そういったことについて直接質問があったり、説明があったわけでございます。
 しかし、厳重なボディーチェックが行われたり、録音しちゃいけないとか、なかなか厳しい状況の中でそういったタウンミーティングがあったわけですが、そういった雰囲気ではなかったというような話も伝え聞いております。あるいはまた、質問者が、聞きたい方がたくさんいたんだけれども、時間ですからということで打ち切ってしまったということでございますが、大臣として、開かれた外務省、外務省改革について国民の皆さんに広く理解してもらいたいという一環でおやりになったと思うんですが、どういった感想をお持ちでございますか。
川口国務大臣 タウンミーティングは、私が、昨年の一月に環境庁が環境省になりましたときに始めたことでございまして、それはその後、昨年の春、小泉内閣が発足をした後、小泉内閣によっても引き続き内閣のタウンミーティングとして行われているわけでございます。
 私は、環境大臣時代に、昨年一年間で約七回だったと思いますけれども、タウンミーティングをいたしまして、日本のさまざまな場所で直接に国民の皆様と、これは公募をして参加をしていただいたわけでございますけれども、お話をするということをいたしました。そのタウンミーティングとの比較を私の心の中でいたしますと、やはり、環境相時代のタウンミーティングとちょっと雰囲気が違う展開であったかなという気はいたしております。
 それがどのような理由であったのかということにつきましては、これは、実はその後、一度関係者で話し合いも既に持っておりますし、さまざまな理由があったかと思いますが、今後、そのタウンミーティングへの感想を含めて、御出席の方、あるいは、広く国民の方から御意見をいただくことにしていますので、そういったことを踏まえて、次回タウンミーティングをやるときには、改善すべきことは改善をしていきたいと考えております。
 警備が過剰であったというお話がございましたけれども、これは基本的に、考え方としては、内閣のタウンミーティングでやっていることと同じことをやらせていただいたわけでございますけれども、会場の皆様への御説明が必ずしも十分ではなかった点があったかという気もしておりますので、この点についても、次回以降改善をしたいと考えます。
土田委員 環境大臣としておやりになったタウンミーティングと、今回、外務大臣としておやりになった。いわゆる外務省に対する非難といいましょうか、不信感といいますか、そういったのがたくさん出てきたんじゃないかと思うんです。私は内容は知りませんけれども、外務省に対する非難や不満がたくさん出たんじゃないかと思うんですが、それについて、外務大臣、どういうふうな感想を持たれましたですか。
川口国務大臣 私は日ごろ、現場主義ということを言っておりまして、そういう意味で、タウンミーティングで国民の、参加者の皆様の意見をじかに聞けるということが非常に重要なことだと思います。その観点から、外務省の幹部にも、かなり多くの人間に、御意見を聞くために出席をしてもらいました。
 あわせて、タウンミーティングでは、外務省がどういう考え方をしているか、改革について何を考え、どう進めようとしているかということをお伝えすることも大事だと考えております。国民の皆様からもさまざまな御意見があったわけでございまして、その一つ一つについては、私たちがこれから改革を進めていく過程で、きちんとそれを踏まえて改革を進めたいと考えております。
土田委員 多分、大臣が想像していた以上に国民の皆さんの不満が高かったんじゃないかなというふうに想像したので、今その質問をしてみたんですけれども。
 今回のそのタウンミーティングで、ODA計画について、役人だけで決めるシステムを改め、どの国にどのような援助をするかということについては第三者に意見を聞くと発言されたようです。これは、三月二十九日に発表された第二次ODA改革懇談会が提言するODA総合戦略会議を具体化して新たにつくろうということなんでしょうか。具体的にはどのような機関を立ち上げようとしているのか、御説明ください。
川口国務大臣 タウンミーティングでは、確かにODAに関しまして委員がおっしゃったような御意見をいただきました。それについて私がお答えをしましたことは、今委員がおっしゃられたODA総合戦略会議というものの設置についてでございまして、この三月の終わりに、第二次ODA改革懇談会、これはずっと前から開いていたものですけれども、これの最終報告がございました中に、「国民参加を具体化し、ODAの透明性を高めるために、国民各層の代表から成る「ODA総合戦略会議」を常設する。」というふうに書いた御報告をいただきましたので、私はそれは直ちに実施に移しますということを申し上げておりまして、そのお話をさせていただいたわけです。
 また、このODAの方向性を決めることにつきましては、今進めている「変える会」での御議論の中でも、ODAの透明性、効率性を進めるということで御議論をいただいておりまして、このODA総合戦略会議の御提案というのは、まさに「変える会」で議論をしようとしていることの先取りをして答えを出していただいたということだと私は思っております。
 具体的にどういう方に委員をお願いしてやっていくかということについては、今、中で詰めてもらっておりますので、できるだけ早く立ち上げたいと考えております。
土田委員 以上で終わります。
吉田委員長 次に、松本善明君。
松本(善)委員 きょうは、外務大臣に対ロ領土外交全般についてお伺いしたいと思います。
 本題に入ります前に、若干の事実関係を欧州局長に確認をしておきたいと思います。
 それは、一昨日の我が党の志位委員長の党首討論に先立ちまして、二〇〇一年三月五日、鈴木議員と東郷欧亜局長が出席して開かれたロシア側との会談の場所でありますが、委員長も角崎審議官に確かめ、私も確かめました。そして、欧州局長も知っているということなので伺いますが、この場所は赤坂の料亭ですか。
齋藤政府参考人 お答えいたします。
 同席いたしました東郷大使に聞いてみましたところ、たしか大乃という料亭であったということでございました。
松本(善)委員 それから、もう一つお聞きをしておきますが、東郷局長はどういう経緯で、どういう資格で参加をしたのかということを角崎審議官が聞かれたところが、東郷氏はどういう経緯で参加したか記憶がないと述べ、そして角崎審議官はそれ以上聞かなかったということを志位委員長にも話しましたし、私も確認しているところであります。これも欧州局長が知っているということですが、これはそういう経緯でありましょうか。
齋藤政府参考人 御指摘のとおり、東郷大使に聞いたところによりますと、記憶にないという答えであったと承知しております。
松本(善)委員 それで、もう一回聞くことはしなかった、それ以上聞くことはしなかったということですね。角崎審議官が聞いたんでしょう。
齋藤政府参考人 聞いた人が角崎審議官であったかだれであったか、ちょっと私承知しておりませんが、いずれにしましても、聞いた結果、経緯については記憶にない、こういう答えであったというふうに聞いております。
松本(善)委員 それでは、外務大臣に本題を伺おうと思います。
 前回、四月五日の本委員会で、五六年の日ソ共同声明についてどう考えているかということをお聞きしたところが、大臣は、その声明の後段を読み上げられて、そして、平和条約交渉の対象となるべき重要な問題というのは、日ソ共同宣言で解決されなかった、すなわち国後、択捉の問題であるというふうに答弁をされました。これは声明の文言からすれば明白でありますが、再確認をしたいと思いますが、それでよろしいでしょうか。
川口国務大臣 委員が今おっしゃったような形の御答弁を申し上げたか、私は、たくさん御質問をいつもいただいていますので、ちょっと記憶にございません。
松本(善)委員 これは速記録で確認をしたものでございます。
 改めてお聞きをいたしましょう。
 日ソ共同宣言では、大臣が読み上げられたとおりを申しますと、後段で「ソヴィエト社会主義共和国連邦は、日本国の要望にこたえかつ日本国の利益を考慮して、歯舞群島及び色丹島を日本国に引き渡すことに同意する。ただし、これらの諸島は、日本国とソヴィエト社会主義共和国連邦との間の平和条約が締結された後に現実に引き渡されるもの」というふうに規定をされているということで、最後に、したがいまして、この平和条約交渉の対象となるべき重要な問題というのは、日ソ共同宣言で解決されなかった領土問題、すなわち国後、択捉の問題であると。この点については欧州局長も、これはもう解決済み、こういうふうにこの間の委員会では述べました。
 この文言からすれば、要するに「歯舞群島及び色丹島を日本国に引き渡すことに同意する。」こういうふうに明記をされておりまして、これはもう歯舞、色丹は解決済み、国後、択捉が領土問題の対象だ、解決されなかった領土問題だ、これはもう明白で、そのことを述べられたんですが、そのときにどう述べたかということは記憶にないということがあってもいいが、現在どう考えていますか。
川口国務大臣 日ソ共同宣言第九項に、両国間の外交関係の回復の後、平和条約締結交渉を継続することに同意をすると書いてございます。さらに、ソ連は、歯舞諸島及び色丹島を日本に引き渡すことに同意、ただし、これらの諸島は平和条約が締結された後に現実に引き渡されるものとするというふうに書いてございます。
松本(善)委員 ですから、領土交渉の重要な問題は国後、択捉だ、こういうことになるでしょう、この間述べられたとおり。そういうふうにちゃんと述べられましたよ。その前言は変更されるんですか。
川口国務大臣 この五六年の日ソ共同宣言につきまして、ここで書かれている、先ほども言いましたように、平和条約交渉の対象となるべき重要な問題は、日ソ共同宣言で解決されなかった領土問題、すなわち国後、択捉の問題であるということは明らかであったということでございます。
松本(善)委員 ところでロシア側は、この我が国の考え方、領土交渉の主な問題は国後、択捉だ、こういう考えに同意をしているんでしょうか。外務大臣、おわかりならお答えいただきたいし、何だったら欧州局長でもいいですし。
齋藤政府参考人 日ロ間の平和条約締結交渉のやりとりについて詳細に御説明することは差し控えさせていただきたいと思いますし、ロシア側の解釈についても同様でございます。
 いずれにいたしましても、日ロ間では、一九九三年の東京宣言以来、四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結するということについて認識は一致しているわけでございまして、我々としては、そういった日ロ間の共通の認識に立って交渉を進めてきているところでございます。
松本(善)委員 領土交渉をやるというのに、相手がどういうことを言っているか、もしこれは同意しているんなら領土交渉は終わりですよ、どこが違うのかということを国会に言えないと、それはおかしな話なんですよ。そういうことだから、日ロの領土交渉について、国民が、あるいは相手国にも日本の立場が理解をされない、こういうことになるんだと思う。その争点もわからないんですか。わかってはいるけれども国会には言わぬということですか。
 これは外務大臣に聞きましょう。今の欧州局長の答弁では、我が国の外交がどこを焦点にしてやっているのかというのは全くわからないですよ。それを国会には明らかにしない、こんなことでいいんでしょうか。外務大臣の見解を聞きたいと思います。
川口国務大臣 国会に対しましてきちんと御説明を申し上げるべきこと、あるいは御説明できることについては申し上げているわけでございます。
 したがいまして、今の欧州局長の答弁につきましても、五六年の日ソ共同宣言以降、さまざまなステージを経まして、現在ロシアとの関係でお話をしておりますことは、四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結するということでお話をしているわけでございまして、それについて欧州局長から今答弁があったということでございます。
松本(善)委員 一致しているんならこの問題は交渉を終わるわけですよ。一致してないから交渉が続いているわけですよ。どこが一致をしてないのかということは国民の前に明らかにするのは当然じゃないですか。外務大臣、お答えをいただきたいと思います。
 そういうことも明らかにしないでいいという、それでは国民の理解は絶対得られませんよ。それでいいというお考えですか、その点だけ伺いたいと思います。
川口国務大臣 四島の帰属の問題を解決して平和条約を結ぶということについては一致をしているわけでございますけれども、だからといって、それでは帰属の問題が解決をしたということではないわけですから、現在、話が終わって平和条約を結ぶ段階にないということでございます。
松本(善)委員 外務大臣は四島の問題を解決して平和条約を締結するという点で一致をしているということを言われますけれども、これは現状は違いますよ。
 外務大臣、先ほど日ロの領土交渉は後退しているとは考えないというようなことを答弁されましたけれども、同僚委員も述べましたけれども、クラスノヤルスク合意では二〇〇〇年平和条約締結の方向で努力をするということになっていましたが、それどころか、二〇〇二年の今日、振り出しに戻ったというのが現状じゃないですか。
 ロシアの下院は三月十八日、南千島の経済政策、安全保障の諸問題と題する公聴会を開催して、その公聴会が大統領あての勧告書を採択いたしました。ここには、一九九〇年代の交渉を通じて領土問題の存在を認めたソ連、ロシア指導部の姿勢を全面的に見直すように求め、戦争状態の終結により、いわゆる領土問題は、戦後、法的かつ公正な解決を見ており存在しないから、新たな平和条約は必要ないとしている。完全に逆戻りして、交渉は明らかに振り出しに戻ったのではありませんか。
 これは欧州局長じゃないよ。これは、外務大臣が日ロの領土交渉を進めることにどれだけ真剣になっているかという問題なんですよ。今の外務大臣は、四島の返還を解決して平和条約を結ぶんだということで一致をしていると。これがソ連側の見解ですか。はっきり外務大臣の言葉で答えていただきたい。だめだ、欧州局長では。外務大臣の答弁を聞いてから、もし私が必要だと思うならば欧州局長に聞きたいと思います。それは今回のレクではっきり申し上げてあります。外務大臣の所見といいますか、見識を聞きたいわけであります。
川口国務大臣 先ほど私が申しましたことは、イルクーツク声明におきまして、東京宣言に基づいて四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結するということが再確認をされているわけでございます。
松本(善)委員 イルクーツク声明をどう解釈するかということについて、日ロ間に大きな違いがある。そこは後から申しますけれども、いずれにしても、イルクーツク声明は、二島、歯舞、色丹の返還は既に解決をしているという日本側の見解をロシア側が認めた、こういうふうに外務大臣は理解をしているんですか。
川口国務大臣 一九五六年の日ソ共同宣言におきまして、平和条約締結後に歯舞諸島、色丹島が日本に引き渡されるということは明文で規定されているところでございまして、この宣言が義務的であるということはロシア側も認めているわけでございます。
 他方でロシア側は、五六年宣言に規定されている歯舞、色丹の引き渡しの条件は交渉の対象であるということでございまして、この趣旨は必ずしも明確ではございません。
松本(善)委員 前回の委員会でも申し上げましたけれども、二〇〇〇年十一月三十日の日ロ事務レベル協議において、五六年の日ソ共同宣言の歯舞、色丹の引き渡し条項は二島返還で領土問題を最終決着させるという規定だったという見解を正式に日本政府に伝えたということが報道をされております。
 この十一月三十日ごろに開かれた日本とロシアの外交上の接触は、だれとだれの会談で、そのようなことが述べられたことがあるのかどうか、明らかにしてほしいと思います。これは、外務大臣ではなくて欧州局長でもいいでしょう。
齋藤政府参考人 ロシュコフ・ロシア外務省次官と東郷局長の間の専門家会議が十一月三十日に開かれたと承知しております。
松本(善)委員 内容についてはどうですか。私が言ったように、日ソ共同宣言の歯舞、色丹の引き渡し条項は二島返還で領土問題を最終決着させるという規定だったという見解を正式に日本政府に伝えた、こういう報道がありますが、そのとおりですか。
齋藤政府参考人 二〇〇〇年の十一月三十日にモスクワにおきまして行われたこの東郷・ロシュコフ協議につきましては、平和条約締結問題についてのやりとりがございましたけれども、今なお交渉中の平和条約締結問題でございますし、その内容に立ち入って御説明することは差し控えさせていただきたいと思います。
松本(善)委員 内容を言うことは差し控えたいということですけれども、今の報道というのは二〇〇〇年十二月一日の朝日の夕刊であります。ところが、十二月二日になりますと、すべての新聞、全国紙の読売、毎日、日経、産経、皆同じ趣旨の報道をしております。私は、これは外務省が言わなければ、すべての新聞がそのような報道をすることはないと思います。
 外務大臣に伺いますが、マスコミがすべて報道していて、国民はその報道を知っている、それを否定するんではなくて、その内容を国会で言えない、こういうことが、先ほども問題になっていましたけれども、国会に対する外務省の態度ですか。国権の最高機関ですよ。マスコミが知らなくても、国会で真っ先に報告をするというのが、本来国会に対する態度ではないか。外務大臣は、そういうような、今の欧州局長のような態度で、外務省はこれからもやっていくつもりですか。それでいいと思いますか。外務大臣のお考えを聞きたいと思います。
川口国務大臣 マスコミが報道し、その結果として国民が全部知っているということと、国会の場で政府が何をお話しするかということは、全く別な問題でございまして、それは具体的なケース、そのマスコミが報道し国民が知っているという問題が何であるか、それを政府がマスコミにお話をした問題であるのかどうかといったことがベースになって、それは判断されるべき問題だと思います。
松本(善)委員 委員長、これではちょっと質疑できないんじゃないかと思うのです。
 イルクーツク声明をどのように解釈するか、これが日ソ間の非常に重大な問題なんです。ロシア側の立場に立てば、イルクーツク声明は、これは二島で終わりという意味だよ、こういうことになるのです。日本側は、歯舞、色丹はもう決着済みなんだ、あと、領土交渉というのは国後、択捉なんだ、これが先ほど来言っている答弁です。この違いがあるということを各紙が報道しているのに、その内容について国会に言えない。私、これでは質疑をしている意味がないと思うのです。
 委員長、しかるべき措置をとっていただきたいと思います。
吉田委員長 まず、欧州局長。
齋藤政府参考人 北方四島をめぐります領土交渉については、先生つとに御承知のとおり、一九五六年の日ソ共同宣言があるわけでございますが、この共同宣言で領土問題に最終的な決着がつかなかったがために、日ソ共同宣言という形をとったわけでございまして、平和条約締結交渉は、引き続き、国交回復後継続していくということを合意したわけでございます。
 今日に至るまで、領土問題についての解決策は両国間で残念ながら見出しておりませんけれども、二島で決着ということを日本政府がのめるのであれば、これは五六年に平和条約が締結できていたはずでございまして、それが、日本政府の立場上、そういう二島返還で決着するということをのむことができなかったがために、今日に至るまで交渉を続け、今後とも交渉を続けていく。すなわち、四島は日本固有の領土である、この四島の返還に向けて日本政府として交渉を続けてきている、こういうことでございます。
松本(善)委員 そんなことを長々聞かなくてもわかっていますよ。そういうことを何か答弁らしく装って答弁するというのが官僚の典型的な悪いところなんです。
 聞いているのは、日本側は、領土交渉は国後、択捉が中心なんだと言っている。ロシア側は、歯舞、色丹で決着済みだ、正式に申し入れた、そういう立場です。
 最近の報道では、外務大臣は極めて楽観的というか、真剣に考えているのかどうかということを私は感ずるのですけれども、ロシアの有力紙のコメルサントのことしの三月十六日付は、鈴木氏は、既に九五年、日本にとって領土返還は何の意味もなく、南千島の経済開発にロシアと共同して進むべきだと語っていた、こういう報道をしている。これは鈴木氏に関する内部文書でもその種のことは、外務省の発表した内部文書でもその種のことを言っています。ロシア側はそこまで言っているのですよ。ロシア側のどこが日本側の解釈と違うのかというのは重大な問題なんですよ。
 先ほどの、歯舞、色丹で決着をしているということを正式に申し入れた、このことについて国会で述べないということについて、私は到底納得できません。私は、それでは質疑ができないんじゃないか。外務委員会の質疑そのものが存在意義が問われるということを、同僚委員が先ほど来申しましたけれども、委員長、これでいいんでしょうか。
 私は、やはりきちっと外務大臣が責任を持って、きょう答えられなければ次の機会でもいいですから、そのことについてきちっと調べて答弁をすべきであると思いますが、委員長の議事運営をお願いしたいと思います。
吉田委員長 今、松本善明理事から、質問事項の中で、歯舞、色丹についてはイルクーツク声明で既に決着済みで、他の二島についてはもう交渉する必要はないという声明を正式に出した、こういうことでございまして、それについて、外務大臣あるいは外務省の見解を、次の理事会まで提出していただくようにお願いをいたします。
 それでよろしいですか。
松本(善)委員 ちょっと待ってください。
 外務大臣、後から御答弁いただいてもいいですが、正確に申しますと、ロシア側が二〇〇〇年十一月三十日に、欧州局長が認めたロシュコフ外務次官と東郷局長との会談の中で、五六年の日ソ共同宣言の歯舞、色丹の引き渡し条項は二島返還で領土問題を最終決着させるという規定だったという見解を日本政府に伝えた。その後やられましたイルクーツク声明というものは、ロシア側はこの立場で解釈をした。日本側は、先ほど来外務大臣も述べているように、国後、択捉が返還の対象なんだというふうに解した。重大な食い違いがあるまま、このイルクーツク声明が発せられた。私どもは、ロシア側に有利に解釈をするという状況になっている、こういうふうに思っているわけです。
 その前提の十一月三十日の申し入れについて、各紙が報道しているにもかかわらず、国会では、それを否定もせず、中身も言わない。これは国会に対する重大な軽視だというふうに私は思うので、きょうそれについてきちっと物が言えない、きょうは言えないというのであれば、外務大臣に同じことを言ってもらってもしようがないんです。それに弁解するようなことを言ってもらってもしようがないんです。今、委員長から言われたように、次の機会に、きちっと準備をしてその点の答弁をしていただきたい、こういうことであります。
 外務大臣が、その欧州局長の答弁を否定して、ちゃんとお答えになるなら答弁をしていただきたいと思いますけれども、この中身について答弁を差し控えたいというのならば、御遠慮願いたい。
川口国務大臣 今の御質問に対してのお答えでございますけれども、まず、二〇〇〇年の十一月三十日にモスクワにおいて東郷欧亜局長とロシュコフ次官との間で協議が行われたことは事実でございます。
 それで、その結果につきましては、これはイルクーツク声明においてきちんと書かれているわけでございまして、五六年共同宣言を交渉プロセスの出発点として位置づけ、その有効性を文書で確認したということと、その上で、東京宣言に基づいて、四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結することを再確認したということでございますから、イルクーツク声明におきまして、結果として何が出ているかということについては、きちんと声明に書かれているわけでございます。
 ただし、十一月三十日のモスクワにおける東郷局長とロシュコフ次官との間の協議の内容については、そういう協議があったということは事実でございますけれども、その内容につきましては、これは情報公開法によりましてもお話をできない、出すことを控えさせていただく必要がある内容でございまして、まず、これは現在交渉中の案件でございまして、相手国もある問題でございますので、この内容について御説明をすることは差し控えたいと考えております。
 いずれにいたしましても、先ほど申しましたように、イルクーツク声明において、日ソ共同宣言が交渉プロセスの出発点である、その基本的な、法的な文書であるということを確認して、その上で、東京宣言に基づいて、四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結すべきということを再確認しているわけでございます。したがいまして、イルクーツク声明において五六年の日ソ共同宣言の有効性を確認したことは、二島のみの返還による領土問題の最終解決を意味するということではないということでございます。
 政府といたしましては、今後とも四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結するという一貫した方針に基づいて、精力的に交渉をしていきたいと考えております。
松本(善)委員 やはり基本的には、欧州局長の先ほどの答弁と同じなんですよ。
 もしロシア政府が、二島で決着済みだ、そういう五六年宣言だったという解釈のもとにイルクーツク声明を、これを出発点だということになるならば、これは日本政府の考えとは違って、ロシア側は、二島で決着だ、こういうことで合意をしたというふうになりかねないんですよ。そういう有力な根拠を与えるから言っているんですよ。
 私は、外務大臣が、その点についてまだ十分お考えになっていないのではないかというふうに御答弁から推察をいたします。だからこそ、こういう非常に重大な問題になっている。二元外交がこういうものをもたらしているということだから、今でもすべてのマスコミが、二元外交だ、そして振り出しに戻ったということを言っているんですよ。そこに耳を傾けないでひとりよがりのことを言っていたって、これは一歩も進みません。私は、こういうやり方では、対ロ領土回復のための交渉は成功しない。
 きょうは時間がなくてすべてを展開できないんですけれども、ロシア国内で返還反対の強硬論が広がっている。これは、日本政府が領土問題について、国際的に説得力ある立場に立たないまま、一方的に妥協による妥協を続けている取引に終始をしている、そして、鈴木宗男議員らの二重外交の画策を容認してきたからなんだ。外務大臣の言うようなことであれば、日ロ外交はもう済んでいますよ。そうならないで、ロシア側では、もう領土交渉をする必要がないという議論まで出てきているという事態をどう打開するかということが、今の日本に与えられた課題であります。
 私どもは全千島返還論ですが、我が党も、私もそうですが、我が国の領土交渉を成功させるという立場で質問しているつもりです。我が党の立場を承認しろということを迫る考えではないんです。それは、今の話だったら国民もだれも納得しませんよ、言えないというんだから。そして、世界の世論だってこれは支持をしませんよ。
 私は、我が党の見解を明らかにしながら質問をしようと思いましたが、その時間は十分ありません。それで、外務大臣に聞きますが、日本側の態度、これは世界の世論を納得させていますか。あるいはロシアの世論を、なるほど、日本に返さなければならぬというふうな説得力を持っていますか。ロシアの世論は今どう言っていますか。外務大臣は、ロシアの世論をどう考えているか、お答えいただきたいと思います。
川口国務大臣 ロシアの中には、領土問題についてさまざまな意見があると思います。こうしたさまざまな意見については、日本としては、我が国の立場について、この考え方について、折あるごとにさまざまな努力をして働きかけているわけでございます。
 いずれにいたしましても、我が国としては、四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結するということで、粘り強く精力的に交渉を進めているわけでございます。
松本(善)委員 事実は、ロシア側の圧倒的世論は、日本に返す必要はないと。日本の領土だったということさえ知らない。せいぜい北方四島の中で、歯舞、色丹、国後、択捉の中では少しの人が知っている。四島の中でもほとんど知らないという方々もたくさんいるというのが現状だと思いますよ。それは、日ロ交渉の経過を見れば極めて明らかです。
 東京宣言で、法と正義の原則がこの交渉の基礎だということを合意いたしました、細川内閣で。私は、道理に立った議論を展開しなければだめだ。世界の世論の支持を得ることが大事だ。
 今の日本政府の立場というのは、南千島は千島にあらずという議論でしょう。それは、一九五五年までは日本政府もとらなかった態度であります。吉田全権ははっきりと、国後、択捉は千島南部二島だ、こういうふうに述べています。南千島は千島にあらず、この議論を展開している限りは世界の世論は納得しないだろう、私はこう思います。
 私は、もう時間がありませんので詳しく展開をすることが、大変残念で、この次の機会にしようかと思いますけれども、私は外務大臣に真剣に考えてもらいたい。日本の国民はみんな、この千島の返還について、北方領土の返還について期待をしております。それが進んでいない。
 私は一つだけ質問をして終わろうかと思いますが、これの根本問題は、第二次世界大戦での戦後処理について、ソ連が支持をした大西洋憲章でも、両国は領土的その他の増大を認めずと明記しているはずです。ソ連もその後に加盟をしたカイロ宣言でも、右同盟国は自国のために何らの利益も欲求するものにあらず、また領土拡張の何らの念も有するものにあらずと強調している。連合国側は、領土不拡大を最大の原則として確認をしておりました。ところがソ連は、千島列島だけでなく、ヤルタ協定で言及もされなかった北海道の一部である歯舞、色丹まで軍事占領し、一九四六年、平和条約も問題にならない間に千島列島と歯舞、色丹のソ連領への編入を一方的に強行した。
 私は、北方領土の問題というのは、この不法を正し、この誤った戦後処理を正し、ソ連の不法占領の事態から日本の主権を回復する、そこに起点がなければならぬ、こう思いますが、外務大臣は、この対ロ領土交渉は主権回復のための交渉だと考えているかどうか、それだけ一言聞いて、質問を終わりたいと思います。
川口国務大臣 北方四島は、我が国固有の領土でございます。したがいまして、我が国としては、粘り強くかつ精力的にこの領土交渉を進めていく、四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結するということで交渉をしているわけでございます。
松本(善)委員 時間で終わりますけれども、一言だけ指摘をしておきましょう。
 ポーランドの三分の一は、ドイツの固有の領土でした。ヨーロッパは、ほとんどの領土というのは、ほかの国の領土が今そうなっています。固有の領土論というのは領土回復の交渉で非常に弱いものということを指摘して、質問を終わります。
吉田委員長 次に、東門美津子君。
東門委員 社会民主党の東門美津子です。よろしくお願いいたします。
 通告はしてありませんけれども、冒頭、どうしてもお伺いしなければいけないと思いまして、伺わせていただきます。
 フィリピンでのイスラム過激派アブ・サヤフ掃討作戦に参加するために、在沖米海軍工兵大隊三百五十人が派遣される構想があると報道されています。外務省はその情報を入手していると思いますが、現時点で判明している分だけで結構ですから、ぜひお知らせいただきたいと思います。
川口国務大臣 米軍がフィリピンで行っている活動は、フィリピン政府の要請に基づきまして、フィリピン政府がフィリピン国内で行っている対テロ対策を支援するものであると承知をいたしております。
東門委員 そういう報道に対して県の方では、沖縄の基地が前線基地化されてはならない、されていくという不安の声が上がっています。
 沖縄が前線基地化されることがあってはならないとの県民の要望について、その不安の声について、外務大臣いかがお考えでしょうか。
川口国務大臣 沖縄県民の方には常にいろいろな思いがおありになるというふうには思っております。他方で、米軍がフィリピンで行っている活動は、先ほど申しましたように、フィリピン政府の要請に基づいて、フィリピン政府が国内で行っている対テロ対策を支援するものであるというふうに承知をいたしておりまして、我が国として、沖縄との関係でどうなっているのか、米軍の軍事オペレーションについて申し上げる立場にはございません。
東門委員 これは地元紙だけではなくて、本土紙、全国紙の方でも報道されております。確かにフィリピン政府からの要請ということは知っておりますが、これは毎日新聞です。「ブッシュ政権が対テロ戦争の第二段階に位置づけているフィリピンでの米軍展開に、沖縄が前線基地としての役割を果たすことになる。」これが新聞の報道なんですね。前線基地として沖縄が使われていくということがしっかりと見えるわけですよ。
 そういうことに対して、沖縄には沖縄県民の思いがあるけれどもアメリカ軍に対しては日本政府としては言えないということは、おかしいと思います。基地を提供しているのは、日本政府です。沖縄の基地は、前線基地ではないはずです。それはしっかりと大臣おわかりだと思います。その点について、もう一度お聞かせいただきたいと思います。
川口国務大臣 先ほど申しましたように、フィリピンにおける米軍の活動と在日米軍の関係につきまして我が国として申し上げる立場にはございませんで、この活動に在日米軍が参加をしているということを前提になさっていらっしゃる質問にお答えするということは、適切ではないと考えております。
東門委員 大臣、沖縄が前線基地になるかもしれないんですよ。今、そういうふうに見られているわけですよ。そうすると、沖縄はどこの領土ですか。アメリカですか、日本でしょう。日本国の一県ですよ。そこが前線基地として今回のフィリピンへの派兵に対して使われるということがどういう意味かということを私は伺っているんです。それで、フィリピンとアメリカとの間のことに対しては言えないということではないと思いますが、いかがでしょうか。私が間違っていますでしょうか。ぜひお聞かせいただきたいと思います。
川口国務大臣 先ほどの繰り返しになって恐縮でございますけれども、私といたしまして、フィリピンにおける米軍の活動と在日米軍の関係についてお答えを申し上げる立場にはないということでございます。
東門委員 大臣、沖縄の基地がなぜ置かれているか、どういう機能をすべきかということをしっかりとわかっていただきたいと思います。この次にまたお伺いしたいと思います。そういう答えしか返ってこないということは、大臣がきっとおわかりにならないんだということだと私は思いますので、次回までそのところを、なぜ沖縄に基地があるのか、この基地の機能は何なのか、何が期待されているのかというところをぜひお勉強していただきたいと思います。
 防衛施設庁においでいただいていると思いますので、一点お伺いいたします。
 四月八日に発生しました、嘉手納基地上空での米軍のF15戦闘機から照明弾の落下した事件です。一昨日のこの委員会におきましては、防衛施設庁の答弁では、情報入手までの時間的経緯を把握しておられなかったわけですが、改めて伺います。事件は何時に発生して、防衛施設庁が情報を入手したのは何時か、改めて伺いたいと思いますし、また、再発防止策として、施設庁としてどのような対応、どういうふうになさるつもりか、そこまでお伺いいたしたいと思います。
冨永政府参考人 嘉手納基地の上空におきまして、嘉手納基地所属のF15戦闘機から小型の訓練用照明弾、フレアと呼ばれるものですけれども、それが分離したというのが四月八日の十二時二十分ごろでございます。
 その後、沖縄県警の方から、住民の方から通報があったということで那覇防衛施設局の方に連絡が入っておりますが、それは同日の十三時三十二分ごろということでございます。ただ、通報の内容につきましては、嘉手納基地において戦闘機から物が滑走路上に落下して、その破片が滑走路上に散らばっているという内容のものでございました。
 その後、その直後でございますけれども、同日の十三時四十分ごろに、那覇防衛施設局が嘉手納基地に対しまして、そのような通報があったということをお伝えするとともに、その事実があったかどうかということの確認を行ったということでございます。
 それから、再発防止ということでございますけれども、これは機材にかかわる可能性もありますし、事故原因をしっかり分析する必要があろうと思いますので、事故原因をしっかりと分析して、その上でできるだけ速やかに再発防止策をとってもらうということで、米側と調整をとってまいりたいと思っております。
東門委員 ぜひ早目に、その調査結果もまたお知らせいただきたいと思います。
 関連で、通報体制についてですが、一昨日の委員会におきまして、私は通報体制がどうなっているかと大臣に質問いたしました。そのとき大臣は、一般的通報体制は存在すると承知しているが、機能の仕方が問題であり、勉強した上で、改善の余地があれば考えてみたいとの趣旨の答弁をなさいました。どうですか、この時点で、大臣、何か結論にたどり着いたかどうか、大臣の認識をお伺いしたいと思います。
川口国務大臣 今勉強を始めたところでございまして、今の時点でこういうことですと私の方から申し上げる段階にまだ至っておりません。
東門委員 では、なるべく早いうちに大臣のそういう結論もお聞かせいただけたらと思います。
 米軍から通報がないとか遅いというのは決して今回が初めてではありません。最近でも、二月二十二日に米軍が普天間基地内で不発弾を爆破処理した際、処理の通報が爆破の一時間半前までなされず、しかもその場所は小学校の近くで、児童の下校後に処理してほしいと要望したわけですが、それも聞き入れられませんでした。また、三月七日に普天間基地の駐機場で大型輸送ヘリコプターが燃える火災があったのに、翌日まで宜野湾市あるいは県には通報がありませんでした。
 このような事件が何度も繰り返されています。その都度米軍は、きちんと連絡体制をとると、もちろん口頭では答えてきますけれども、米軍が通報するかどうかを勝手に判断している、そういう状況ではいつまでたっても改善される見込みはありません。基地内で起こったあらゆる事件、事故は直ちに通報するよう米軍に義務づけていくべきではないかと思いますが、大臣、いかがでしょうか。
川口国務大臣 事件、事故の防止につきまして、それの通報のルールということでございますけれども、これについては、まず事件、事故の防止というのは非常に重要であるということは言をまたないわけでございますけれども、既に具体的な幾つかの策が講じられているということでございまして、今後の問題といたしまして、さらにどういう知恵を絞ってやっていけるかということであるかと思います。引き続き努力をしたいと考えております。
東門委員 地位協定について伺わせていただきます。
 沖縄県は、平成十二年八月の日米地位協定見直しに関する要請において、米軍の活動に起因して発生する公共の安全または環境に影響を及ぼす可能性がある事件、事故については、施設及び区域内で発生した場合においても、速やかに事件、事故に関する情報を関係地方公共団体に提供することを求めています。
 この沖縄県の要請については、昨年七月十日に本外務委員会で全会一致で議決された日米地位協定の見直し決議において言及されて、別紙として、沖縄の要請事項全文がつけられています。そして決議では、「政府は、沖縄県など在日米軍基地を抱える関係自治体等の要望を踏まえ、国民の基本的人権を保障している我が国の法律を駐留米軍も尊重するよう、日米地位協定の見直しをも早急に検討し、事態の抜本的改善に取り組むべきである。」と結んでいます。
 憲法第六十六条によりまして、内閣は、行政権の行使について、国会に連帯して責任を負っているのであり、本委員会が全会一致で行った決議を軽視すべきではありません。決議は、国民を代表している立法府の意思として示されたものであり、内閣に対する政治的、道義的な拘束力があると私は思います。
 そこで伺いたいんですが、政府は、委員会において議決された決議の意義、それをどのように受けとめておられますか。
川口国務大臣 国会でなさった決議につきましては、この趣旨を体して、その時々の課題、事態の改善であるなりなんなりでございますけれども、それに鋭意努力をしていくべきでもある、あるいはそういうことを申し上げているということだと思います。
東門委員 済みません、もう一度。私、よくとれませんでした。大臣、もう一度お願いいたします。申しわけありません。
川口国務大臣 決議につきましては、その趣旨を十分に尊重して努力をしていくというべき筋合いのものだと考えております。
東門委員 それでは、本委員会の決議に別紙としてつけられた沖縄県の要請事項の意義については、どのように受けとめておられますでしょうか。
川口国務大臣 おっしゃっていらっしゃるのは、二〇〇〇年に沖縄県が政府に対して日米地位協定改正の要望書をお出しになっている、そのことでよろしゅうございますか。
 これにつきましては、沖縄県民の方に、在日米軍の施設・区域が沖縄に集中しているということにつきまして御負担をおかけしているということでありまして、その県民の方々のお気持ちのあらわれとして、こうした項目、要望書が提出をされているというふうに思います。
 政府といたしまして、米側と協議、協力をいたしまして日米地位協定の運用の改善に努力をいたしているところでございますが、その際、関係地方公共団体の御意見も勘案して対処をしていく考えでおります。
 なお、前にも申し上げたかと思いますけれども、このような日米地位協定の運用の改善につきましては、二月に私がパウエル国務長官とお話をいたしましたときに、日米地位協定について、刑事裁判手続に関する協議の決着が必要である、また環境問題について十分な注意を払い、個別の問題に関して緊密に協議をしていくということを申し上げて、一致をしたところでございます。今後とも、これらの努力を継続していきたいと考えております。
東門委員 今のパウエル長官との協議のところに後で戻ってきたいと思いますが、私も質問を準備しているのをまず続けていきたいと思います。
 決議の本文において、「政府は、沖縄県など在日米軍基地を抱える関係自治体等の要望を踏まえ、」とされていることを考えれば、要請事項のすべてについて、事態の抜本的解決に向けて政府は何らかの行動をとるべきであると思います。決議から既に九カ月が経過しています。この間に、政府はこれらの事項に関しどのような行動をとってこられたのか、承りたいと思います。
川口国務大臣 何をやってきたかということでございますけれども、例えば沖縄県より、日米地位協定第十七条に関連しまして、被疑者の起訴前の拘禁移転につき要請をいただいているわけですけれども、日米合同委員会の場におきまして、日米両国は、殺人または強姦という凶悪な犯罪やその他の特定の場合についての被疑者の起訴前の拘束の移転に関して合意をしていまして、これについて努力を引き続きしていこうということにつきましては、先ほどお話をしたとおりでございます。
 それから、地方公共団体の施設・区域内への立ち入りという点がございますけれども、これに関連しても、立ち入り許可手続や緊急車両等についての日米合同委員会合意があるわけでございます。
 その他、日米合同委員会合意の速やかな公表に関してでございますけれども、これも、SACO後、関連事項に関する日米合同委員会合意等の中で、原則として今後行う合意の内容は公表するとして、日米合同委員会合意の一層の公表を確保することにつきましても合意をしているということでございます。
東門委員 ただいま大臣の御答弁にありました三点について、特に一点目、起訴前の被疑者の身柄の引き渡しについて、これは合同委員会で合意されたのは平成七年ですね。あの痛ましい事件のあった後に、米軍の好意的考慮によりという一節を入れて合意されたものだと私は思っています。七年前です。
 私がお話ししているのは、昨年の北谷のあの事件から九カ月、この間、県はそれ以前からずっと要請はしてきているんですが、この被疑者の身柄の引き渡しについて、これは七年前ですよとまず申し上げました。立ち入りは、二週間前に申請をし、米軍から許可がおりるのが三日前、時によっては拒否される、それも知っております。合同委員会の合意事項、議事録を速やかに公開してください、公表してくださいと言ってもなかなか公表しないんですが、その三点は除いて、それでは伺います。というのは、もう七年前と六年前の話ですから。
 いかがですか、昨年の九月からこれまでに、国としてこういうことはアメリカ側と交渉をし、こういうところで合意をしていますというのがありましたら、この場でぜひお伝えいただきたいと思います。
川口国務大臣 運用の改善につきましては、その時々の問題について努力をしないといけないと考えておりますけれども、昨年の九月以降ということで何をやったかということでございますが、刑事裁判手続の運用改善についての協議につきましては、刑事裁判手続に関する特別専門家委員会等の場を通じまして、協議を引き続きしているところでございます。
東門委員 その件については、四月五日のこの委員会でも藤崎北米局長は答弁しているんですね。その答弁は、起訴前の引き渡しが速やかに実現するように議論を重ねていると。それは私が先ほど申し上げました。七年前に合意されたと、ちゃんと出ているんです。それはもうよく承知しております。
 私が申し上げているのは去年の九月以降これまでということなんですが、加えまして、今そういうお話の中で出てくるのが、昨年の二月、北谷町で放火事件がありました。その件についても、私は昨年外務委員会で何度か質問をして、どうなっておりますかと。いわゆる凶悪犯罪であるのは殺人であり強姦ということになっていますけれども、その中に放火が入るんじゃないかということに対して、外務省は協議をしていますと。
 今まで、それはどうなっているか、報告が全然ないんです。恐らく、なされているかなされていないかさえもわからない。そういうことで、運用の改善でとおっしゃると、一体運用の改善というのは何だろう、本当に役に立っているのだろうかというふうに問わざるを得ないんです。ですから、去年の、私はこの九カ月間と言います、去年の初めからでも結構です、本当にこの一年、どういうことが議論をされて、協議をされて、どういうことが合意されているか、そこらのことをお聞かせいただきたいと思います。
川口国務大臣 去年の夏からということで申し上げますと、例えば環境問題につきまして、これは環境原則に関する共同発表というものを出したわけでございますけれども、この具体化作業の成果といたしまして、まず、昨年の六月の時点で、環境分科委員会を定期的に開催をするように、この付託事項を改定をいたしまして、その上で、昨年の八月には、この環境分科委員会のもとでJEGS、環境管理基準の見直しに関する日米間の協力を強化することを目的といたしました作業部会や、提供施設整備事業における建設に関連した環境問題の技術的な検討を行うための作業部会を設置することが日米間で合意をされたというようなことが挙げられると思います。
 なお、このJEGSの作業部会は、昨年の十月の終わりに第一回会合が開催をされておりますし、この提供施設整備事業における建設に関連をいたしました環境問題の技術的な検討を行うための作業部会は、昨年の九月の下旬以降、今まで四回開催をされています。
東門委員 環境関連で作業部会を設置するというのが合意されて設置をした、そして一回か四回か会合が持たれた。そこでは、こういうことを環境問題に対してはどうするという合意事項はまだだということですね。まだその合意点には何も達していないということでしょうか。部会は立ち上げられました、協議もしております、会合も持っております、その中で何か出ていますか、フルーツが。
川口国務大臣 質問の御通告がございませんので、私はディテールについては全部を承知いたしておりません。
東門委員 私は、通告では、地位協定について御質問いたします、決議文もよく読んでいてください、そして通報体制をやりますと、しっかりいたしました。
 今大臣の方からそういう、私の質問とかなりそれたんです。御答弁によって、私も質問をしていますから。私は、本当に地位協定そのもの、ディテールをお話しする気はなかったんですが、大臣の方がそうそれられたので。いいんです、答弁は。私もそれにこたえているということですから。では、そのディテールもぜひ早目に答えられるようにしていただきたい。
 続けます。
 先月、これは三月の二十日です。衆議院沖縄及び北方問題に関する特別委員会において可決されました沖縄振興特別措置法案に付せられ、全会一致で可決した附帯決議でも、
  広大な米軍基地の存在等、沖縄を取りまく経済社会情勢にかんがみ、県民が安心して安全に暮らせることが肝要であり、米兵犯罪の根絶に努めるとともに、日米地位協定の見直しの検討をも含め、今後とも沖縄の負担軽減に全力を尽くしていくこと。
という一項目があります。
 国会で、一年のうちに二度も地位協定の見直しを検討することが決議されているんです。この意味を、外務大臣、本当にどう受けとめておられるのでしょうか。運用改善といっても、その運用改善においてよほどの成果が得られるのでなければ、地位協定の見直しの検討に入るべきであり、そうでなければ、憲法で定められた国会に対する内閣の連帯責任を果たせないのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
川口国務大臣 おっしゃられました沖縄振興特別措置法の附帯決議に際しまして、尾身沖縄及び北方対策担当大臣から、十分に附帯決議の趣旨を尊重して努力をしていく所存である旨の御発言があったと承知をいたしております。
 私も尾身大臣と同じ考えでおりまして、これらの決議の趣旨を体しまして、事態の改善に鋭意努力をしていきたいと考えております。
東門委員 先ほどの外務委員会での決議、そして、今度の沖縄及び北方問題に関する特別委員会での附帯決議、それに関連しての大臣の御答弁、政府としてもやはり真摯に受けとめると。私はそういう、お言葉はそうじゃなかったにしても、今のお言葉、そうだと、言葉をちょっと変えてそのように受けとめているというふうに理解してよろしいんでしょうか。政府としても、しっかりと受けとめて、その方向に努力をしていくというふうに理解してよろしいのでしょうか。確認をしたいと思います。
川口国務大臣 先ほど申しましたように、私も尾身大臣と同じ考えでおりまして、これらの決議の趣旨を体しまして、事態の改善に鋭意努力をしていきたいと考えております。
 具体的には、政府といたしましては、日米地位協定につきましては、その時々の問題について運用の改善により機敏に対応していくことが合理的であるという考えのもとで、運用の改善に努力をいたしているところでございまして、これが十分に効果的でない場合には、我が国のみで決定し得ることではありませんけれども、日米地位協定の改正も視野に入れていくことになると考えております。
東門委員 そっくりそのまま、一言一句たがわずに、これは河野外務大臣のときから聞いている答弁なんですが、本気でやる気があるのかなと。
 今まで私は、運用の改善が行われていない、なされていないということは、全然とは言いません、大してなされていないということは、七年前から今までこれだけしかできていませんよとお話ししました。去年の二月の放火事件についてさえもまだ処理されていませんよと申し上げました。ですから、運用の改善ではもう難しいんだということははっきりしていると思います。その中でずっと、運用の改善を、それがだめなら改定も視野に入れてと、それさえ言っておれば多分大丈夫だろうというふうな御発言かと思うと、とても残念でしようがありません。全然わかっておられないのではないかという気さえいたします。
 一昨日のこの委員会の質疑において、民主党の委員さんの質問で、外務省改革についての質問の中で田中前外務大臣と川口外務大臣の改革案の違いを問われたときに、今までの改革案については何をいつまでにやるのかというタイムテーブルが示されていなかった、これを今回の改革案をつくる過程できちんとしていって、その後、「変える会」のメンバーがフォローするプロセスをつくることが大事であると川口大臣が答弁されております。問題を解決して改革を進めるためにはタイムテーブルを示す必要があるという考え方には、本当に大賛成です。これは、地位協定の問題でも当然当てはまる考え方だと思います。
 運用改善について米国側と議論をして、納得いく状況にならなければ地位協定改定も視野に入れると常におっしゃっているその言葉なんですが、これは本当に、先ほども申しました、河野外務大臣以来、田中外務大臣、そして今まで歴代外務大臣の一貫した答弁なんですね。運用改善について、いつまでにどのような議論をするのか、いつまでに納得いく状況にならなければ地位協定見直しの協議に入るのか、タイムテーブルを示していただきたいと思います。
川口国務大臣 運用の改善については、鋭意努力をいたしていきたいと思います。ただ、いかなる時点で、いかなる場合にどうなるかということについては、これは鋭意努力をいたしますけれども、相手のあるお話でございまして、外務省の改革を私が先頭に立って行うということとは問題の性格がおのずから異なると考えます。
東門委員 日本の外交の最高責任者として、外務大臣というポストについておられるわけです。相手がある、当然ですよ。当然です。外交というのはそういうものでしょう。中に向かってやるものじゃないわけですよ。職員がどうのこうのより、大臣の意思一つだと私は思います。誠意だと思います。熱意だと思います。
 私は、地位協定については、今までおさらいをして見てきたところ、運用の改善というのがうまくいっていない、あるいはこれぐらいしかできていない、これからどうなんだ、そこを見通しをつけて、もしこれがうまくいかなければ、いつまでにはこういうことをしていきたいということを相手に示すのも私は大事だと思います。
 そういうタイムテーブルをつくるということ、外務省改革にタイムテーブルをつくる、いろいろな仕事にタイムテーブルをつくる、とても大事だと思います。そういうのがなければ、どこに行くかわかりません。いつまでに何がなされるかわからないわけですよ。
 そういう意味でも、やはり地位協定の見直しについては、タイムテーブルをつくる、そして、いつまでに運用の改善が本当になされなければ、納得いく状況にならなければそれも視野に入れていくということを私は大臣として示していただきたい。それが、やはり、日米同盟を大事にする日本の国の外交政策、その責任者である川口大臣の責務だと私は思いますが、いかがでしょうか。
川口国務大臣 日米地位協定につきましては、その時々の問題について、運用の改善により機敏に対応していくことが合理的であるという考えを持っております。その認識のもとで、運用の改善につきまして努力をしているところでございまして、先ほど申しましたように、外務省の改革でタイムテーブルをつくるということと、それから地位協定の運用の改善についてタイムテーブルをつくることと、問題の性格がおのずから異なっていると考えますが、運用の改善につきましては引き続き努力をしていく所存でございます。
東門委員 では、委員長にお願いします。
 外務省の方にぜひやっていただきたいことなんですが、運用の改善でその時々の事態に機敏に対応していく、九五年以降これまで、先ほどお話のありました三点については私もよく存じておりますが、それ以外、ほとんど見えません。幾つか、いや、あと一、二点加えられるかもしれません。それ以外に、こういうことが運用の改善でここまで来ていますという事例、実例をぜひ委員会に出していただきたい。ぜひこの委員会に出していただいて、外務省が日米地位協定をどのように受けとめて、沖縄県からの要請あるいは渉外知事会からの要請、あるいは外務委員会での決議、それをどのように受けとめて、運用の改善に本当に機敏に対応されているか、そういう実例、事例をぜひ出していただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
吉田委員長 理事会で協議をいたします。
東門委員 よろしくお願いいたします。
 質問は随分準備してきたつもりですが、ちょっと時間がかかり過ぎまして、ちょっと変えて、これは通告しておりませんが、通告なしでできることだと思いますので、よろしくお願いいたします。
 けさ入ってきた地元からの新聞です。稲嶺知事にインタビューを行ったところ、十五年期限問題で稲嶺知事の見解が示されております。基地の問題、十五年期限の問題、地位協定の問題、これは沖縄県だけの問題ではない、日本全体で考える問題だという発言をしておられます。
 その後にですが、お持ちでしょうか、この記事です。ひょっとしたら、外務省、行っているかもしれません。十五年期限問題が解決されない場合は代替施設の着工を認めないのかという質問が記者から行われたときに、稲嶺知事は「「イエスとか、ノーとか言っていないが、そうとらえられても当然だ」と同問題の解決なくして着工は認められない意向を示した。」という記事が出ております。
 十五年使用期限の問題、これは何度か大臣にも質問してきました。アメリカの方は難しいと言っている、それも何度も伺っております。しかし、県民にとっては、これはとても大きな問題なんですね。アメリカが、相手があるからだめです、では、沖縄県民はどうなるんですかということ、日本国の問題としてどうとらえるんですかということをぜひ聞きたいと思いますが、これは知事の大きな意味のある言葉だと私は思います。「解決なしの着工認めず」という見出しになっておりますが、大臣、いかがでしょうか。
 十五年使用期限問題、何か日はどんどん過ぎていきます。そういう中で、我々県民はとても気にしております。十五年使用期限問題について、外務省、外務大臣として、どのように県民の要望にこたえていかれるのか、あるいは、稲嶺知事のその言葉をどのように受けとめられるのか、お聞かせいただきたいと思います。
川口国務大臣 稲嶺知事のこの記者会見の記事というのは、今初めて拝見をいたしましたけれども、普天間飛行場代替施設の使用期限の問題につきましては、これは平成十一年末の閣議決定にもございますように、政府といたしましては、国際情勢もあり、厳しい問題があるという認識を持っていますけれども、稲嶺知事及び名護市長の御要請を重く受けとめておりまして、これをアメリカ政府との間での話し合いの場で取り上げております。私も、去る二月の十八日にパウエル国務長官とお話をさせていただいたときに、この問題については触れさせていただいたわけでございます。
東門委員 二月十八日のパウエル長官とのお話は前にも伺いました。
 では、こういう知事の見解をごらんになって、これから大臣として、アメリカの方といつごろには交渉される、あるいは、随分、電話会談もなさっているようですが、そういうお気持ちはおありでしょうか。十五年使用期限、それはおわかりだと思います。稲嶺知事も名護の岸本市長も、条件なんですね、受け入れるときの。十五年使用期限というのは、受け入れの条件の一つなんです。これが受け入れられなければ撤回もあり得ると岸本市長は明言しています。文書にもそうなっております。
 アメリカ側と近いうちに、その件についてぜひ協議をしたい、話し合いたいというお気持ちがおありでしょうか。お聞かせいただきたいと思います。
川口国務大臣 普天間飛行場代替施設の使用期限の問題につきましては、平成十一年末の閣議決定に従いまして適切に対応したいと考えております。
東門委員 終わります。
     ――――◇―――――
吉田委員長 次に、テロリズムに対する資金供与の防止に関する国際条約の締結について承認を求めるの件を議題といたします。
 政府から趣旨の説明を聴取いたします。外務大臣川口順子君。
    ―――――――――――――
 テロリズムに対する資金供与の防止に関する国際条約の締結について承認を求めるの件
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
川口国務大臣 ただいま議題となりましたテロリズムに対する資金供与の防止に関する国際条約の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。
 この条約は、平成十一年十二月にニューヨークで開催されました国際連合の総会において採択されたものであります。
 この条約は、一定のテロリズムの行為を行うために使用される資金を提供し、または収集する行為を犯罪として定め、その犯罪についての裁判権の設定、その犯罪に使用された資金の没収等につき規定するものであります。
 我が国がこの条約を締結することは、テロリズムに対する資金供与の防止に関する国際協力の強化に資するとの見地から有意義であると認められます。
 よって、ここに、この条約の締結について御承認を求める次第であります。
 何とぞ、御審議の上、速やかに御承認いただきますようお願いいたします。
吉田委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
 次回は、来る四月十七日水曜日午前十時五十分理事会、午前十一時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後三時七分散会


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