衆議院

メインへスキップ



第12号 平成14年4月24日(水曜日)

会議録本文へ
平成十四年四月二十四日(水曜日)
    午前十時三分開議
 出席委員
   委員長 吉田 公一君
   理事 浅野 勝人君 理事 石破  茂君
   理事 小島 敏男君 理事 坂井 隆憲君
   理事 首藤 信彦君 理事 中川 正春君
   理事 上田  勇君 理事 土田 龍司君
      小坂 憲次君    高村 正彦君
      中本 太衛君    丹羽 雄哉君
      原田 義昭君    細田 博之君
      水野 賢一君    宮澤 洋一君
      望月 義夫君    伊藤 英成君
      大島  敦君    金子善次郎君
      木下  厚君    桑原  豊君
      前原 誠司君    丸谷 佳織君
      松本 善明君    東門美津子君
      鹿野 道彦君    柿澤 弘治君
    …………………………………
   外務大臣         川口 順子君
   内閣府副大臣       村田 吉隆君
   外務副大臣        植竹 繁雄君
   外務大臣政務官      水野 賢一君
   政府参考人
   (警察庁警備局長)    漆間  巌君
   政府参考人
   (防衛庁防衛局長)    守屋 武昌君
   政府参考人
   (公安調査庁次長)    栃木庄太郎君
   政府参考人
   (外務省大臣官房審議官) 滑川 雅士君
   政府参考人
   (外務省アジア大洋州局長
   )            田中  均君
   政府参考人
   (外務省北米局長)    藤崎 一郎君
   政府参考人
   (外務省欧州局長)    齋藤 泰雄君
   外務委員会専門員     辻本  甫君
    ―――――――――――――
委員の異動
四月二十四日
 辞任         補欠選任
  金子善次郎君     前原 誠司君
  前田 雄吉君     大島  敦君
同日
 辞任         補欠選任
  大島  敦君     前田 雄吉君
  前原 誠司君     金子善次郎君
    ―――――――――――――
四月二十三日
 投資の自由化、促進及び保護に関する日本国政府と大韓民国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第一六号)
 犯罪人引渡しに関する日本国と大韓民国との間の条約の締結について承認を求めるの件(条約第一七号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 投資の自由化、促進及び保護に関する日本国政府と大韓民国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第一六号)
 犯罪人引渡しに関する日本国と大韓民国との間の条約の締結について承認を求めるの件(条約第一七号)
 国際情勢に関する件


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――
吉田委員長 これより会議を開きます。
 国際情勢に関する件について調査を進めます。
 この際、お諮りをいたします。
 本件調査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房審議官滑川雅士君、アジア大洋州局長田中均君、北米局長藤崎一郎君、欧州局長齋藤泰雄君、警察庁警備局長漆間巌君、防衛庁防衛局長守屋武昌君、公安調査庁次長栃木庄太郎君の出席を求め、それぞれ説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
吉田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
吉田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。最初に、伊藤英成君。
伊藤(英)委員 外務大臣にまず最初にお伺いしたいんですが、外務大臣のこの国会における、あるいはこの外務委員会も同じなんですが、いわゆる国会答弁ということについて基本的な認識をお伺いしたいと思うんです。
 それは、この間の十七日の午前中にこの委員会で、私から、日朝赤十字会談の問題につきまして、その開催予定とか日程について質問をいたしました。大臣からは、早く開かれることを期待する、期待するんだけれども現在調整中であるという答弁をされました。私からは、そういう姿勢の中で、いつ、どうなのかというようなことについていろいろ詳しくお聞きしたわけでありますけれども、先ほどのお話のようなことでございました。
 ところが、その開催予定につきまして、その日の夕刊、十七日の夕刊には、二十九、三十日に開催することが報道をされました。もちろん、インターネットにも流れておりました。そして、十七日のみならず十八日の朝刊には、各紙そのことについて報道をされたわけですね。どういうことなんだろうか、これは。
 要するに、国会を無視しているのか、あるいは野党だから無視するのか、あるいは民主党だから無視するのか、軽視するのか。御承知のとおりに、この件につきましてはこの外務委員会の理事会でも議論になったというふうに伺っております。どういうことなんでしょうか。
川口国務大臣 この件につきまして、私は、国会を無視するつもりもございませんし、したつもりもございませんし、野党を無視したつもりもございませんし、民主党を無視したつもりも全くございません。
 これについては、新聞に事前に出てしまったというのは、私は非常に遺憾であり、どういうことでそうなったのかよくわかりませんが、問題があると思っておりますけれども、日朝赤十字会談の開催日程について十八日に、すなわち伊藤先生からの御質問があった次の日に、たしか夕方という話だったと思いますが、公表をするという方向で、二十九日、三十日に会談を行うという形の最終調整をやっていたわけでございます。
 したがいまして、北朝鮮側とのお約束では、十八日に公表を双方で同時にしましょうということで最終調整をしていた段階でございまして、今までの経緯でいうと、例えば坂口厚生大臣のケースといったようなこともあったわけでございまして、私としては、最終的に、そのときには調整中でございますということを申し上げたということでして、そういう形でしか御答弁をそのときはできなかったということは、民主党のネクストキャビネットの外務大臣でいらっしゃる伊藤委員にはぜひ御理解はいただきたいと私は思っております。
伊藤(英)委員 もう一度伺いますが、では、十七日の日に私が質問しましたときに、二十九、三十日にやる予定であるということは大臣は御存じだったですか。
川口国務大臣 そういうことで、当時、最終調整の段階にあったということでございます。
伊藤(英)委員 私自身は、二十九、三十日にというのは、ほかのところから実は聞いていたんです。しかし、こういう交渉のことであるから、それなりといいましょうか、私としても、私からその日にちを申し上げるのはよろしくない、こう思ったんですよ。
 それで、二十九、三十日にやる予定であって、その発表を翌十八日の夕方にというふうに双方で決めていたとして、私は、物は言い方があると思っているんです、物は言い方がある。もしもそのとおり十八日に、双方の約束したとおりに、十八日の夕方なら夕方に発表するという形にちゃんとなればまだいいんですよ。しかし、先般のように、十七日に質問をして、大臣が先ほどのような言われ方をして、その日ですよ、出たの。
 私は、いろいろな事情があるとしても、余りにも当局は誠意がないではないかと思うんです、大臣なのか、あるいは外務省、あるいは事務方なのか。と私は思いますが、私がそう思うのは理解できますか。
川口国務大臣 もしその情報が流れていたということが、私は、その御答弁を申し上げた時点でそういうことが流れていたということは全く知りませんでしたけれども、もし、そういうことが外務省の事務方から仮に出ていたということがあれば、それは大変におかしな話であるというふうに思いますけれども、私が知っている限りは、それはそういう形で出たわけではございませんので、これは相手方との信義ということを考えれば、外務大臣として、国会の場でそういうことになっているということをその時点で申し上げることはできなかったということを、まさにネクストキャビネットの外務大臣には、ぜひ御理解をいただきたいと私は思います。
伊藤(英)委員 私が二十九、三十日に予定されていることについて耳にいたしましたのは、外務省関係者じゃありません。それはむしろ外務省の皆さん方のために私は申し上げておきますが。
 それよりも何よりも、ああいう形で報道された、もしも本当に誠意を持ってやろうと思うなら、その日にでもだれか説明に来ていいと私は思うんですよ。うそならうそ、何らかの説明があっていい。だれもその日は説明ありませんよ。まともだと思われますか。
川口国務大臣 今委員がおっしゃったようなそういう動き方というのは、私は、あり得たと思います。
伊藤(英)委員 その十七日の日に、どなたかがちゃんと説明するなりなんなりのそういうことはあり得たろうと思うという意味ですか。
川口国務大臣 国会の場での御説明という意味で申し上げたわけではございません。
伊藤(英)委員 もうちょっとはっきりと言われた方がいいと思うんですよ。なぜもっと素直に言われないのか。要するに、言わない方がいいだろう、説明しない方がいいだろうという思いなんでしょうか。どういうことなんですか、大臣。
川口国務大臣 先ほど委員から、そういうことであれば、十七日に国会が終わった後で説明があってもよかったではないかという御趣旨の御発言をいただいたと私は理解しましたので、そういう動きもあり得たと思いますと申し上げたわけでございます。
伊藤(英)委員 もちろんそういう手も本当はあったはず、ただのあったはずじゃなくて、ああ、そうすればよかったな、せめてそうすべきであったなというふうに思っても、私は、おかしくないと思うんですよ。いかにも第三者的といいましょうか、傍観者といいましょうか、外務省の一番の責任者という意識で話をしてくださっているのかしらん、そういうことなんですよ。
川口国務大臣 外務省にとってこの際一番大事なことは、まさに大事な赤十字会談が始まるという段階にあったわけでございまして、それが何らかの理由で、前回、坂口大臣のときにあったようなことにならないということを確保することが一番大事であると私は思っておりました。
 二十九日、三十日、これからでございまして、今後どういう展開の話になるかということでございますけれども、それが第一の前提でございまして、それはそういう形で、どういうところからどういうふうに情報が出たのか、私、全くわかりませんけれども、そういうふうになってしまったということは非常に残念であり、もし日本の国内から出たということであれば、これは日本国に対して、会談が始まる前に信頼について仮に云々されたとしても仕方がなかった状況であっただろうと思います。
 ですから、これは考え方としては実は非常に難しいことだと思っておりますので、私が、とにかく第一に、御質問をなさった委員の方に説明に行ってらっしゃいよと言うことも一つやり方としてはあったと思います。あったと思いますが、とにかく日本国から、要するに外務省がこの点についてきちんと信義を北朝鮮側に対して持つという姿勢をきちんとしたかったということもございました。
伊藤(英)委員 私のきょうの持ち時間はそんなにたくさんあるわけじゃないものですから、もうこれ以上申し上げませんが、私は、北朝鮮との関係で、その信義を守るどうのこうのが問題じゃないんですよ、そのことを今言っているんじゃないのです。外務省の皆さん方の国会に対する、あるいは議員に対する姿勢のことを私は申し上げている。よく理解していただきたい。それで、ぜひ今後気をつけていただきたい。そのことを強く申し上げて、次に移ります。
 先般の、四月二十一日の小泉首相が靖国神社に参拝したことについて伺うのですが、現在、中国や韓国のこの問題についての状況について、外交の責任者であります外務大臣はどういうふうにとらえていらっしゃいますか。
川口国務大臣 小泉総理は、所感でもおっしゃられましたように、明治維新以降の国のために命をささげた方々に対して平和の祈りを込めてお参りをするということでいらしたというふうに私は承知をしております。
 このことについて、これをめぐりまして、中国、韓国から、若干異なった反応ではございますけれども、強い不満が表明をされ、あるいは深い遺憾の念が表明をされているという状況にあるわけでございますけれども、これについて、ことしは中国と韓国との間に新たな国民交流年という形で、さらに広がったベースでの交流を進めたいと両国が考えているという年でもございまして、私としては、両国との間で未来志向の協力関係を築いていくことができるということが、私の願いでございます。
伊藤(英)委員 外務大臣は、総理が靖国神社に参拝に行かれること、行ったことについて、最初に、いつ、どなたから聞きましたか。
川口国務大臣 二十一日の朝、聞きました。朝、ある新聞社の方から電話が私の自宅にありまして、総理が靖国に行かれたということを聞きました。私自身そういうことですけれども、総理も、お決めになったのは当日の朝と聞いておりまして、そういう意味では、私が当日の朝知ったということでございます。
伊藤(英)委員 朝、突然総理が行かれた、その行かれる直前なんですか、行ってから聞いたんですか。記者から聞いたんですか、総理から聞いたんですか。
川口国務大臣 今申し上げましたように、新聞社から電話があって知りました。
伊藤(英)委員 外交の責任者たる外務大臣がこれほど重大なことについて事前に話を聞かなかったことについて、どう思われますか。
川口国務大臣 総理もお決めになったのが当日の朝であるとおっしゃっていらっしゃいますので、そういうことかなと思っております。
伊藤(英)委員 ではもう一度、外交の責任者たる外務大臣として、朝突然決めて行かれ、そして、外務大臣にも事前にお話をされることもなく行かれたということについて、どう思われますか。
川口国務大臣 総理のお気持ちを私が推しはかることもできないわけでございますけれども、総理には総理のお考えがあってそういうふうになさったんだと思っております。
伊藤(英)委員 いや、そうなんでしょうが、外務大臣はそれについてどう思いますかと。それは、非常にいい話だ、いいやり方だと思われますか。あるいは、そんなことは事前にせめて相談なりしてほしかった、そういう感じはありませんか。
川口国務大臣 総理がいろいろお考えになられて、そういう行動をとられたんだと私は思っております。
伊藤(英)委員 それでは、昨日、中谷防衛庁長官が中国を訪問することについて、そしてまた同時に中国の艦船が日本に来ることについて、中国側から延期したことについては外務大臣はどう思われますか。それはおかしな話だと、あるいは理解できるか、どういうふうに思われますか。
川口国務大臣 日本と中国は安保の分野でも対話を深めていこうということのお話し合いがあったわけでして、それにのっとってその話が動いていたということでございますので、私としては、それは残念に思っております。
伊藤(英)委員 昨年八月十三日に総理が靖国神社を訪問されました。私はその後、秋に北京にも行きまして、そして北京のそれぞれ政府やら党の関係者がこの問題についてどんな感じであるか、現実に、あれからしばらくの間、日中間の外交関係はストップしていたと私は思うんですよ。彼らもそう言っていました。国交三十周年の準備の作業もストップという状況だったと私は思うんです。
 だから、帰ってから私は福田官房長官に、直接官邸に伺いまして、そして私の認識するところ、あるいはどういうことをした方がいいんだろうかというお話もしたのですよ。
 日本にとって、もちろんアメリカとの関係、それから中国、韓国との関係というのが、今でもそうなんですが、これからの日本のアジア外交ということを考えてどんなに重要か。現在、三十周年ということでいろいろな活動もしたりしていますよね。あるいはもう一つつけ加えれば、例えば中谷防衛庁長官がということよりももっと、あそこの艦船が日本に来るということの意味は、ひょっとしたらこれは日中間にとって非常に重要なイベントだったかもしれませんね。それがこういう状況になっている。
 そのことの重要さについて、外務大臣はどう考えるのだろうか。私は、先ほどのあのお話だけですと、いかにもわからないなと。どうですか。
川口国務大臣 委員がおっしゃっていらっしゃることは私はよくわかっているつもりでございます。したがいまして、そういったことが今起こったことは残念だと思っているわけですが、私としては、今後、日中関係がきちんとした、未来志向の発想にのっとって協力関係、友好関係が深まっていく、そのための努力をするということが私の務めだと考えております。
伊藤(英)委員 今回の問題について、外務大臣も事前に総理からも聞いていない、官邸方面からも聞いていない、記者から云々というような状況、私は非常に残念ですよね。そういうような状況で、外交の責任者としてまさに日本の国益を担って本当にできるのかなということを私は非常に心配します。日本の運命は外務大臣にかかっているかもしれないというぐらいの気持ちで私なんかは外交関係について思っているつもりなんですよ。だから、そんな意味でぜひよろしくお願いをいたします。
 次に、きょうは警察庁からもおいでいただいているので、北朝鮮による日本人拉致問題についてお伺いしたいんです。
 三月十一日に警視庁が、よど号乗っ取り事件メンバーらが八三年、欧州留学中だった神戸市の有本恵子さんを北朝鮮に拉致したとされるこの事件で、北朝鮮による拉致の疑いがあると認定をして、捜査本部も設置されました。この認定に伴って、有本さんの失踪の過程や、あるいはよど号の妻たちや北朝鮮工作員が関与した人物についての情報が次々に報道もされたりしておりますね。
 実は、これらの問題について、九一年当時、ほぼ同じような情報がいろいろ報道もされたりいたしました。私も見ました。あるいは九七年には、警視庁がCIAなどから、このよど号の妻たちと拉致日本人との関連を結びつけるようないろいろな情報が、これも報道されました。私もそれらはずっと見ました。本当にもう詳細にずっと報道もされたりしているんですよ。この件については、国会においてもいろいろ議論もされました。そしてそのときには、捜査上の秘密ということで明確な答弁はされておりません。
 そこでお伺いするんですが、今の時点で、この有本さんの事案について、九一年の週刊誌、あるいは九七年の先ほど申し上げたそうした記載、あるいはキム・ユーチョルという人物についての話等、いろいろ書かれているんですが、捜査本部を今設置した理由はどういうことか。今まで本格的に捜査をしなかったということなのか。今のその理由はどういうことなのか、まず伺います。
漆間政府参考人 委員御指摘のように、有本恵子さんの事案に関しまして、これまで各種の報道があったことは承知しております。
 警察といたしましては、北朝鮮による拉致の疑いのある事案ということを認定する場合には、北朝鮮の国家的意思が推認される形で、本人の意思に反して北朝鮮に連れていかれた疑いがあるということについて、それを裏づけるような資料等が入手されているか、それが大変重要な要素であります。
 今回、よど号グループの元妻から新たに得られた供述を含めまして、日本国内外での捜査結果等を総合的に判断して、そのような裏づけの資料が整いましたので、したがって北朝鮮による拉致の疑いがあると判断したものでありまして、警視庁も、この有本恵子さんの拉致容疑事案につきまして、その全容を解明するために捜査本部を設けたものであります。
伊藤(英)委員 今海外に捜査員を派遣しておられますね。その捜査の状況はどうなっています。
漆間政府参考人 先ほど申し上げましたように、今警視庁において捜査を遂げているところでありまして、捜査員をどこに派遣したかというのは、捜査に関する事項でありますので、捜査上の秘密の観点からお答えは差し控えさせていただきます。
伊藤(英)委員 では、今回の八尾証言も踏まえまして、この実行犯と見られますよど号グループのメンバーの時効の問題等も含めて、今後どういうふうに進めていくのか、その方針はいかがでしょうか。
漆間政府参考人 警視庁が有本恵子さんの拉致容疑事案について捜査本部を設けているその理由の一つが、先ほど申し上げましたように事案の全容解明でありまして、その中には関係者の時効成立の可能性も含めまして、全体的に、今後とも国内外の情報機関等との意見交換とかあるいは関係者からの事情聴取とかそういうものを進めていきまして、全容解明のために今後最大限努力していくというふうに考えております。
伊藤(英)委員 外務省に伺いますけれども、今回、警視庁が有本さんの問題について、北朝鮮の拉致の疑いがあると認定をして、そして捜査本部を設置したという事実をどういうふうに受けとめますか。
田中政府参考人 私ども、有本恵子さんの事案も含めた欧州の失踪邦人の事案というのは、既に、平成三年だったと思いますけれども、北朝鮮との関係で、その安否についての調査を申し入れしておりますし、国交正常化交渉の機会には必ず議論をしてきているということでございます。
 今回、まさに拉致の容疑があるということで捜査本部がつくられたということは、当然重く受けとめて、警察ともよく協議をしながら進めていきたいというふうに思います。
伊藤(英)委員 過去の状況を見ますと、一九八八年には梶山国家公安委員長が国会の場で、あのときは一連のアベック失踪事件についてだったと私は思いますが、北朝鮮による拉致の疑いが十分濃厚でございますというふうに答えられた。そして、その後、警察白書でもこれが公表されるようになりました。
 その後、日朝交渉がずっと行われました。まず、その直後から八回行われましたね。あの日朝交渉が八回行われた本会談においては、多分私の記憶では、日本側からは一度しかこの拉致問題を提起していないと思うんです。もちろん二〇〇〇年に入ってからのときにはこの問題は出ているんですが、そういう状況でありました。
 そして、先般、国会決議も行いました。そして、外務大臣もこの問題について、政府としての取り組みについての意見も言われました。そういう状況の中で、どのくらい本当に真剣にやるのかということ、どういうことなんでしょう。どういうふうに考えますか。
 私は、こうした問題に取り組むときに、日本自身が北朝鮮とということもある、しかし同時に、国際社会によくこの問題について理解してもらうことも必要だ。私自身が、例えば日本・EU議員会議でもそうです、私は過去三回ぐらいずっとこの問題についても、いわゆる拉致の問題についてヨーロッパの議員にもわかってもらうために説明もしたり、あるいはついこの間の、三月かな、あの国際会議が行われましたけれども、その場でも私からは説明もしたりいたしました。
 そういう国際的な取り組みも含めて、これから本当にどうするのか。大臣、どうですか。
川口国務大臣 拉致問題につきましては、御案内のように、我が国の政府としては、これが国民の生命に係る非常に重大な問題だという認識で、今まで北朝鮮側に対しても、この問題を国交正常化交渉の過程では避けて通ることはできないということはきっちりずっと言ってきているわけでございます。
 その中で、例えば、委員が今おっしゃられたような国際社会の理解と協力ということも重要であると思いますし、そのために情報を国際社会に対しても発信していくということも私は大事だと考えております。余り詳しく今申しませんけれども、例えば、ホームページで英文で出していましたり、あるいはその説明のためのファクトシートを用意したりということは、政府としても今までやってきているわけでございます。
 今後、これからどうしていくかというお尋ねでございますけれども、最近展開をしているさまざまなこの件についての事象を見ますと、今この問題についての新しい段階に入ってきていると私は認識をいたしております。例えば、杉嶋記者の解放もございましたし、それから行方不明者を捜すということを再開するという話もございましたし、日朝赤十字会談の再開ということもございます。また、国際的にも、北と南の対話、米朝の対話、そういった話が動いているわけでございます。延期にはなってしまいましたけれども、坂口厚生大臣のお話もございました。
 そういった新たな展開が今いろいろ起こってきているということをきちんと踏まえまして、国会の決議もいただいておりますので、きちんとそれを踏まえ、政府としてはきちんと適切に対応することが大事であると考えております。
伊藤(英)委員 今大臣は新しい段階に入ったという認識を言われました。これは私自身もそう思っているんですね。私自身がこの問題についても、前にもお話ししたと思いますが、北朝鮮にも二回参りました、もちろん中国やアメリカ、ついこの間ワシントンに行ったときもこの問題についても話もしたりしているわけでありますが、明らかに新しい状況に入っていると私自身が思っています。
 今大臣もそういう認識を言われました。目の前にもちろん日朝赤十字会談もあるわけでありますが、今本当に動きつつあると私は思っているんです。ぜひ本当に日本が、日本の人権あるいは主権という問題を含めてこの問題に全力投球で取り組んでいただきたい、心からお願いをして、私の質問を終わります。ありがとうございました。
吉田委員長 伊藤英成君の質疑は終了いたしました。
 次に、木下厚君。
木下委員 おはようございます。民主党の木下厚でございます。
 私自身ずっと、北方四島支援事業についていろいろな委員会で追及をしてまいりました。先般、四月十七日の決算行政監視委員会におきまして、北方四島事業にかかわる追加契約について質問をいたしました。
 そのとき、これは決算行政監視委員会でお配りした資料なんですが、北方四島事業のうち、色丹島のディーゼル発電それから国後島のディーゼル発電それから択捉島のディーゼル発電、さらに国後島緊急避難所兼宿泊施設、いわゆるムネオハウス、これについて多額な追加契約があったということを追及したんですが、本来ならばそのとき一緒に資料を出してくれれば二回に分けてやる必要はないんですが、なかなか資料が出してもらえず、つい最近また新たな資料が出てきましたので、資料をお配りしてございます。それを見ていただければおわかりのように、これだけまた追加契約があるわけですね。
 国後・択捉・色丹プレハブ倉庫、これに対して一括契約で廣木建設が受注しているんですが、契約金額が七千七百万。それに対して、国後島については五百八十万、色丹・択捉プレハブ倉庫については一千百万、これだけの追加契約があるんです。以下ずっとこのように追加契約があるんですが、資料を見ても、どうももう一つよくわからないところがあります。
 これについて若干説明をしていただきたいと思うんですが、外務省さんが出してきた資料はこういう資料なんですが、これには支払い決裁書とあるだけで、一体どういう科目に追加費用となったのか、追加契約したのか、その具体的な中身が全く記載されていない。これはどうなっているのでございますか。
齋藤政府参考人 お答えいたします。
 プレハブ倉庫でございますが、まず国後島のプレハブ倉庫につきましては、悪天候であったという事情に加えまして島側の荷役協力が不十分だったという事情がございまして、工期が四日間ほど延長されました。それに伴いまして、要員、機材の追加拘束料等が発生いたしまして、五百八十万円の追加経費を払ったということでございます。
 それから、色丹島、択捉島、これは一括して工事が行われましたけれども、こちらのプレハブ倉庫につきましては、国後島でその前の年に行いました作業の経験から、当初予定していた機材よりも追加的に必要になると思われたものが幾つか、ライトバンですとかあるいは九十型ハウスとか小型投光装置ですとか、そういった追加的に必要になるものが生じたということ等のために一千百万円の追加経費が必要になったというふうに承知しております。
木下委員 これは前回の決算行政監視委員会でも指摘したんですが、ディーゼル発電関係でも、本来、ここにある追加支払い代金というのは、これは事前に、やはり入札するとき、そういったものも当然加味される。これは入札のときに予定価格というものをはじくわけなんですが、例えばディーゼル発電所なんかは、荷揚げ地の変更に伴う追加代金とかケーブル敷設とか地盤改良とか、こういう形で次々と追加契約されているわけですね。
 本来、事前調査をして、やはりきちんと予定価格をつくる、これは支援委員会の仕事じゃないですか。当然、それだけの予定価格に沿って入札するわけですよ。ですから、その予定価格がこんなふうにどんどん追加契約でふえていく、これは明らかに、支援委員会の予定価格の換算あるいは事前調査が不十分だった、そういうことじゃありませんか。
齋藤政府参考人 北方四島におきます工事の実施に当たりましては、北方四島におきますインフラが未整備でありますとか、あるいは事前に把握し得る情報量に限りがあるとか、あるいは何回でも足を運んで現地を調査できるわけではないという、渡航の枠組みが限定されているものですから、そういった問題。それから、要員とか資機材等を現地調達することが管轄権の問題に関連して難しい。こういうさまざまな制約のもとで実施せざるを得ないという事情がございまして、先生御指摘のように、現地に行ってみて、事前に考えていたよりは、地盤の問題ですとか立地の問題ですとかあるいは天候の問題ですとか、いろいろな事情によって変更を余儀なくされる点があるという事情は、確かに北方四島の場合あろうかと思います。
木下委員 いや、北方四島への支援事業が始まってもう十年たつわけですね。その間、何人も、関係者も行っておられる、支援委員会の人たちも行っておられる。そういうところからいえば、それは多少環境が違う、それはもうこの前も私も指摘したように、環境が違うのはわかります。あるいは、こっちから運んでいかなきゃいけない、そういう事情もわかります。しかし、それにしても、これだけ、すべての事業に追加契約という形で、しかもそれに対する審査、どういうふうな要請があって、きちんと審査したのかどうか。
 その中身が、私も何回もその資料を出してくれと言っているんですが、一向に出てこない。出てくるのは、こういった金額を出した、こういったものしか出てこない。中身が全くわからないですね。
 ですから、もしおっしゃるようなことがあったら、どういう条件で追加契約になったのか、それをきちんと出してもらわないと、あるいは、どういうやりとりがあってこういう追加契約になったのか、それをきちんと出してもらわないと、これは納得できないです。いかがですか。
齋藤政府参考人 たしか、提出させていただいた資料の中にも、それに添付されるような形の記載等があるところもあると思います。そういったものをごらんいただかないと詳細が御理解いただけないというのは、御指摘のとおりだろうと思います。
 一遍にすべてのものがお出しできないというのは、手続上また資料の収集上、困難がございまして、対応できていないところ、申しわけございませんけれども、今御要望のありました点につきまして、できるだけおこたえできるように努力してまいりたいと思っております。
木下委員 前回も私指摘しましたけれども、これはどう見ても、私は、一部が利益の上乗せになっているんじゃないかと。そういうことはありませんか。
齋藤政府参考人 それぞれの工事につきまして必要な追加経費が生じたということは説明できているというふうに私どもは理解しておりまして、利益の上乗せのために追加経費を行ったということはないというふうに承知しております。
木下委員 実は、十七日に私が質問した後、大変大きな反響がありました。いろいろな業者の方から指摘を受けました。ファクスなんかもいただきました。
 それによりますと、本当に専門の業者の方々がみんな、例えば地盤改良にしても、何であんなにお金がかかるんだ、倍あるいは三倍かかっている、そういう指摘がほとんどなんです。価格がきちんとしていない、だからお手盛りでやっているんじゃないか、多くの方が、業者の方、専門家の方が指摘してきているんです。
 どうですか、きちんと精査をして、ちゃんと支払っていますか。
齋藤政府参考人 先ほども御説明申し上げましたとおり、追加支出が行われる態様は案件ごとに異なりますけれども、いずれにいたしましても、契約業者からの追加経費にかかわります見積もりに基づく請求を受けまして、追加支出を行ってきているというふうに承知しております。
木下委員 そんなことを言っているんじゃないんですよ。きちんと精査したかどうか、一々の単価について。その点、いかがですか。どういう精査、調査をして追加契約を認めたわけですか。
齋藤政府参考人 業者からの追加費用の請求を受けて、事務局の方で精査して支払ったというふうに私どもは承知しております。
木下委員 そんな中途半端な答弁じゃあれですよ。どういう調査をしたんですか。ただ、書類だけ見てあれしただけですか。本当に、例えば現場へ行くなり、あるいは単価を一々全部はじき出して、あるいは相場等引き合いに出して点検した上でオーケーしたわけですか。書類だけじゃないですか。
齋藤政府参考人 現場に行って確かにこういう追加費用が必要だったということを確認していることはないと思いますけれども、それは先ほど申し上げましたようないろいろな制約から、そういったことが難しいということで御理解いただけると思いますけれども、精査は主として書面に基づいて行われたものだというふうに理解しております。
木下委員 これだけ一千万も二千万も、あるいはディーゼル発電については一億円近いやはり追加契約が出ているんですよ。そういったものを、現場も調査しないで、向こうの言われる、業者の言われるままにほいほいと支払う。これじゃ何のための入札ですか。
 全部もう一度チェックしてくださいよ。どうですか。
齋藤政府参考人 先ほども申し上げましたように、追加的に必要になったものについて、さらに先生の御要望におこたえできるように資料を集めていきたいと思いますけれども、いずれにいたしましても、事務局において、いま一度、当時の精査に問題がなかったかどうかということについては調べさせてみたいと思っております。
木下委員 では、必ずそれはきちんと調査してください。
 それで、専門の業者さんが指摘しているのは、例えば土地改良、こんなものは、くい打ち工事を採用した場合、一千万ぐらいでできると。あるいは、例えば消火栓の施設、こんなものも一千万あればできるという専門家の指摘がありますので、この辺をもう一度十分あれしながら、きちんとした根拠を出してください。
 これはいつごろまでに出せますか。
齋藤政府参考人 できるだけ早くお出ししたいと思います。
木下委員 いや、ずっと三月から、できるだけ早く、できるだけ早くと言って現在までかかっているわけですよ。
 それで、これでも、きょうまで出した資料でも、全部じゃないでしょう。まだ支援事業やられていますよね。例えば学校とか、あるいは、ここに出ているのは診療所は択捉島だけなんですが、実際には違うところでもありますね。あるいは燃料とか、まさか食料品とかそういうものには僕は追加契約はないと思うんですが、これを見ていると、あるいはあるかもしれない。
 どうですか。これ以外に追加契約というのはありますか。
齋藤政府参考人 工事案件につきましては、これまでにお出ししたもの以外に追加費用が発生したものはないというふうに聞いております。
 それ以外の、燃料ですとか、あるいはマイクロバス、これは数万円の看板か何かのつけかえとか、そういうことのようでございますけれども、あるいは、燃料ですとか食料品の輸送に関連しまして船舶費用でございますね、天候のために少し日にちがかかったとか、あるいは、島側の受け入れ準備が間に合わなかったために根室港からの出航がおくれたために、船舶拘束料がおくれた日数だけ追加的にかかったといった事情によります追加費用というのはございます。
 希望丸と友好丸、これは工事といいますか製造の方でございますが、この船についても追加費用は生じておりますけれども、工事案件については先ほど申し上げたことに尽きているというふうに聞いております。
木下委員 そうすると、ほとんどの物品について、燃料を含めて、そういった輸送に関するさまざまな要因によって経費が支払われていたということですね。そうすると、それも一緒に出してください。
 それからもう一つ、今、根室造船に上架されている希望丸、それから友好丸、この国籍はどこにあるのですか。日本にあるのですか。船籍はどこにあるわけでございますか。
齋藤政府参考人 希望丸につきましては、ロシアの船籍を取得しているというふうに聞いております。
 また、友好丸につきましては、島側におきます手続が順調に進んでいないようでございまして、いまだ船籍を取得するに至っていないというふうに承知しております。
木下委員 いや、もし希望丸がロシア船籍というと、おかしな話になりますね。あそこは外務省の言い分によると日本の領土である、だからビザをとって行っちゃいけないと言っているわけですね。そこへ供与したのに、何でロシア船籍になるのですか。外務省さんが言っているのと違うんじゃないですか。要するに国後島で使うわけですよね。そこに供与したとすれば、これは住民に対する供与ですから、ロシアに上げるという話じゃないでしょう。そこはどうなんですか。
齋藤政府参考人 希望丸は、島側に引き渡しました時点からその維持管理を島側に移転しているということでございまして、どの国の船籍を取得するかにつきましても、島側の判断にゆだねられているということでございます。
 四島のロシア人住民がこの希望丸につきましてロシア船籍を取得したとしましても、それはロシアにおきます四島の不法占拠という現実の一面でございまして、我が国の北方領土に関する法的立場がそれによって害されるというふうには考えておりません。
木下委員 大臣、今までの政府側の答弁を聞いて、追加契約の問題、それから今の、希望丸がロシア船籍になっている、これについてどうお考えでございますか。御答弁をお願いしたいと思います。
川口国務大臣 追加費用の問題につきましては、すべて透明性というのは私は大事だと思っておりまして、現在、ある企業でございますけれども、検査をしていただく監査法人にお願いをして全面的に見ていただいておりまして、また、それを踏まえて、どのような新しいやり方が適切かどうかということも、専門家の方に集まっていただいて御議論をいただいているところでございますので、そういった過程で明らかになってくると思っております。
 それから、船籍の話は、今局長から答弁を申し上げましたように、例えば日本の船でパナマ船籍というのもたくさんあるわけでございまして、基本的に、船籍がどこになるかということと北方四島の話、領土の帰属の問題ということは切り離して考えられる問題であると私は考えます。
木下委員 いや、それはおかしい、おかしいですよ。船を供与したんですから、ロシア船籍にする必要はないんじゃないんですか。外務省さんは、北方四島に行くのにビザを取って行っちゃいけない、そう言っているわけでしょう。ちょっと時間がありませんので、その問題はまたいずれ質問させていただきます。
 もう一つ、今度はミャンマーの、ビルマの問題について質問させていただきたいと思うんです。
 実を言うと、一九九五年七月、あの民主化運動指導者のアウン・サン・スー・チーさんが六年ぶりに自宅軟禁から解放された直後の八月、私自身、世界最初にスー・チーさんにお会いしてインタビューをいたしました。それから、九月にも改めて再度伺いまして、二時間にわたってスー・チーさんにインタビューしたわけでございますが、そのとき、スー・チーさんが最後まで私に言ったのは、日本政府に対して、経済援助を市民レベル、国民レベルの形でしてほしい、軍事政権を助けるようなODAは何とかしてやめてもらえないかということを再三にわたって私に訴えました。
 そういう観点から、現在のODAの問題について質問させていただきますが、その前に、現在いろいろな情報が流れていますが、政権側とスー・チーさんとの関係、対話の機運が出てきたというような話がありますが、どういうふうな把握をされておられますか、大臣。
川口国務大臣 スー・チー女史は二〇〇〇年の九月から自宅軟禁の状態にあるというふうに思っております。我が国からは働きかけを行っておりますし、また、国連の事務総長特使のラザリさん、この方の尽力もありまして、二〇〇〇年の十月から、ビルマ政府とスー・チー女史との間では対話があるというふうに理解をいたしております。
 ただ、これは直接の対話ですけれども、この中で何が話し合われているか、あるいはどういうことがその結果としてあったかということについては、これは外に出さないという形で話が進んでいると私は理解をいたしております。スー・チー女史もこの対話には真剣に取り組んでいらっしゃるというふうに聞いています。
 ミャンマー政府が政治犯を二百五十人ぐらい釈放したということはあるわけでございますけれども、さらに政治犯の釈放が行われる、あるいはスー・チー女史の自宅軟禁解除といった前向きの措置がとられるということによりまして、この対話が実質的な政治対話に進展をしていくように、我が国としても今後とも働きかけていきたいと考えております。
木下委員 時間がありませんので、ちょっと先を急ぎます。
 日本のODAには有償資金協力、円借款ですね、これと無償資金協力、技術協力という二つのパターンがあるわけなんですが、資料一に、お配りしてございますが、戦後、一九九九年までのここ十年間を見ますと、ほとんど無償技術協力が中心になっている。九五年、とりわけスー・チーさんが自宅軟禁されてからというのは、もう有償資金は凍結されてこういう形になっています。そのうちの債務救済無償資金協力が相当な金額になっている。それで、これが使途不明の形になっている。
 いわゆる債務救済無償資金協力は、使途報告をきちんとミャンマー政府が、ビルマ政府が日本に提出しなければいけないということになっているのですが、先般、使途報告を外務省さんから出してもらったところが、相当な使途不明、要するに何に使ったかわからないという金額が、実はこの四年間で五十億円になっているんですね。これについてどういうふうな判断をされていますか。
滑川政府参考人 お答えいたします。
 ミャンマーの債務救済無償に関する使途不明金の御指摘でございますけれども、昨年、情報公開手続に沿いまして私どもで使途報告書につきまして公開させていただきましたが、その使途報告書の記載に不十分な点があったことは事実でございます。
 この点につきましては、既に政府といたしましてミャンマー側に説明を求め、順次回答が参ってきておるところでございます。そして、これにつきまして私ども今精査をしておるという状況でございまして、その結果、この使途不明金というのはほとんど埋まってくるのではないかというふうに思っておりますが、最終的な精査を今しておる段階でございます。
木下委員 それから、その実態については、資料二の表四に書いてございます。こういう形であれなんですが、もう一つ問題なのは、資料一の表三、債務救済援助を受け取った政府機関、これが石油化学公社でありミャンマー木材公社なんですね。ですから、石油、燃料、ガソリンその他、あるいはミャンマー木材公社ということになると、資料二のものと比較しますと、ブルドーザーとかトラクターとか、恐らくそういった木材伐採用の資材、機材を買っていると思うんです。
 実は、こういったものは、いわゆる庶民、市民の問題ではなくて、むしろ軍事政権側に利用されているんじゃないか、むしろ軍事政権を強化する方法で使われているんじゃないかと私は思うんですが、どうですか。
滑川政府参考人 御説明を申し上げます。
 債務救済無償資金援助で行いました資金につきましては、交換公文で、この資金が経済の開発及び国民生活の強化に使われるということで規定がなされております。そして、その規定に基づきまして、相互でどういうものに使ったかという使途報告を受けてチェックをするという仕組みになっておるところでございまして、私ども、ミャンマーの方で使われているものにつきましては、その範囲に入っているものというふうに理解をしているところでございます。
木下委員 もう一点だけ。
 この政府機関に、三番目にニュース定期刊行物公社として多額の金が渡っています。しかし、ミャンマーは、御存じのように政府系の新聞しかないのですよ。一般の報道の自由はありませんから。そうすると、軍事政権の宣伝のために、要するに何で日本政府がお金を出してやらなきゃいけないのか。どうですか。
滑川政府参考人 御説明申し上げます。
 幾つかの中で、定期刊行物公社という名前が入っておりまして、例えば印刷機等の購入が行われたというような報告がなされているということは承知しております。
 これの使途でございますが、私ども基本的には、いわゆる広報活動等に使われているということかと存じますし、それが、ミャンマーの事情というものがあるにしても、基本的に国民の方々にさまざまな情報が知らされるという意味では、先ほどの範囲内に入っているのではないかというふうには考えておるところでございます。
    〔委員長退席、中川(正)委員長代理着席〕
木下委員 時間ですので終わりたいと思いますが、最後に、やはりミャンマーの軍事政権を私たちの税金で助ける、強化させるということのないように、もう一度ビルマに対する経済援助あるいはODAについてはチェックしていただきたいし、私も関心を持って今後も追及していきたいと思いますので、ひとつよろしくお願いしたいと思います。
 ありがとうございました。
中川(正)委員長代理 次に、首藤信彦君。
首藤委員 民主党の首藤信彦です。
 外務大臣には、先ほどの我が党の伊藤英成議員からの質問との関連で、もう一度、小泉首相の靖国神社参拝の問題についてまず質問させていただきたいと思うんですね。
 この問題に関しましては、けさ新聞各紙で報道されていますように、アジア諸国が一斉に反発を強めている。場合によっては、来るべきワールドサッカーにすら悪影響があるというような記事もあります。私は、この問題は大変に深刻な問題だと思っていまして、また、ある意味においては、昨年八月の総理の参拝以上に、この状況というのはアジアの安定にとって非常に不安材料ではないかなと考えております。
 それはなぜかと申しますと、これはみんながいろいろ考えながらやっている中で生まれたのではなくて、小泉首相は、この前に海南島で行われた博鰲会議ですか、そこに出て中国の指導者ともいろいろ話し合っているはずなんですね。それにもかかわらず、こういうことを強行されたということですね。アジアに対して大変な影響があると思うんですが、これに関して、先ほど、驚いたことに、外務大臣はこの首相の靖国参拝に事前の相談を受けなかったとも聞いております。これはもう愕然とするというか驚天動地といいますか、川口外務大臣の前任者の田中大臣のときですら、すらというのはちょっと表現が正しくないのかもしれませんが、田中前大臣と小泉首相との間でかなりいろいろな話がされていたわけですね。
 それに対して、今回は、官邸との間で非常に太いパイプを持っている川口大臣にも全く事前の情報がなかったということであります。これは明らかに日本のアジア外交に大変な脅威となるような行動なんですが、この件に関して外務大臣は総理に対してどのようにクレームしたのかということをお聞きしたいと思います。いかがでしょうか。
川口国務大臣 まさにこれは総理御自身が当日の朝お決めになったことでございまして、所感にあるようなお気持ちで行かれたということでございます。このことによって、ちょっと具体的な言葉は今手元にありませんが、警戒をあるいは不信を与えるということはまさに総理御自身がお望みにならないところであるというふうにおっしゃって、熟慮をされた上で、こうした明治維新以降の日本の国のために命をささげた人に対する総理のお気持ちをあらわすということと、不信を周りの国に持っていただかないようにという二つをお考えになられて、そういうふうにお決めになられたということであると私は思っております。
首藤委員 外務大臣、こんなことは私が言わなくても恐らく外務大臣みずから察しておられると思いますけれども、そんな問題ではないのですね。個人の真情なんかの問題ではないのです。これは外交の問題なんですね。
 例えば、小泉総理が文部科学大臣に対してこういうことを事前に相談しなかった、それはある程度理解できます。しかし、これは明らかに日本のアジア外交にとって心臓を撃つのに近いような大きな問題なんですね。この問題が日本にとって大きな問題であるということはこの数年ずっと続いているわけですが、それに関して、外交に直接的な影響がある問題に関して、なぜ怒らなかったかということは大変疑問であります。それにも増して問題なのは、外務大臣がそうしたことで、これは小泉首相の個人的な意向によるものだ、それは内閣のボスなんだから勝手に決めていいのだということになれば、日本の外交は成り立たないわけですよ。
 ですから、例えばそれが個人的には是認するような行為であっても、外務大臣としてはアジアのためにきちっとクレームしなかったらいけないと思うんですが、その辺はどうお考えでしょうか。
川口国務大臣 総理としてもいろいろお考えになられた上で朝突然お決めになられて、それで実行に移されたというお考えだと私は承っております。外務大臣としては、この問題はあったわけでございますけれども、中国及び韓国と未来志向の協力関係が築いていけるように努力をいたしたいと考えております。
首藤委員 ですから、外務大臣、小泉さんが御自身の意思でやられる、それは御狂乱だろうが殿御乱心だろうが、あるいは深い熟慮だろうが、それはいいのですよ。しかし、外務大臣としては、アジアの諸国に対して、アジアの方を見ながら、こういう問題に関しては慎重を期すべきであった、あるいは私に事前に相談があるべきであったということはきちっと言わないと、日本の外交はどっちを向いているんだ、官邸の方だけ向いているのか、あるいはアジアの人々にも向いているのかということがわからないではないですか。
 ですから、こういうことがあれば、それは小泉首相がどういう行動をとろうが、外務大臣として、アジアあるいは世界に向かって態度をきちっとしないと、外交はできないじゃないですか。いかがですか、外務大臣。
川口国務大臣 外務大臣といたしましては、あるいは外務省といたしましては、今後、中国、韓国との間で未来志向の関係を築いていくための努力をいたしていきたいと考えております。
首藤委員 外務大臣、私が聞いているのは、外務省そして外務大臣の姿勢なんですよ。まず、そうした未来志向の、これからいろいろ変えていきましょう、いろいろな問題を解決していきましょうというためにも、振り返る前に、やはり小泉首相に対して、これらの問題に対しての説明を受け、そして、これに対してはやはり私に相談あるべきだ、アジアのことを考えるべきだったということをきちっとクレームしていただきたい。それがなかったら外務大臣としての責務を果たせない、そういうふうに言わざるを得ないと思います。
 今、日本の外交にとって問題なのは、外交がもうほとんど空白になっているということなんですね。外務大臣、就任以来大変な御努力をしていると思いますが、ほとんど外交課題は解決されていない。ほとんど日本の外交が空白なままである、そういうふうに言わざるを得ないわけであります。
 例えば、今世界はもう本当に戦争のふちに転がり落ちようとしているわけですよ。今、中東の問題、中東和平の問題、パレスチナの問題というのはどんどんどんどんエスカレートして、もう解決ができないのですよ。これから和平をやろうとシャロンさんなんかはいろいろメッセージを送っていますけれども、これだけの人間が殺されて、どうして和平が、口先で、言葉だけでできますか。それはもうできないわけですよ。
 ですから、そういうことにおいてもっと積極的に世界が取り組もうということで、アメリカが動けないならヨーロッパ、あるいは国連、そういうふうに動いています。どうして日本は何も動けないのですか。外務大臣、これに対して、この間もしつこく、毎回毎回私は質問させていただいていますけれども、ほとんど同じ質問であり、ほとんど同じ答えになっている。
 パウエルさんと電話しました、シャースさんと電話しました、ペレスさんと電話しましたというのじゃなくて、例えばヨーロッパがやっているように特使を派遣する、あるいは国連がやっているように緒方貞子さんを動かす、そういう目に見える日本の動きというのはどうしてできないのか。外務大臣、どのような展望をこのパレスチナ和平に持っておられるのか、いかがでしょうか。
川口国務大臣 この問題は、おっしゃるように、世界のすべての国にとって今非常に重大な問題でございまして、今電話をするだけではなくとおっしゃられたその直後に、また電話の話になりますけれども、昨晩は私はパウエル長官からお電話をいただいて、この問題について話し合っておりました。
 そういったさまざまな努力を重ねて、国際社会が協調して、それぞれやるべきことを分担し合って、このイスラエルとパレスチナの紛争の解決に向けて、停戦それからその後のプロセス、さらにその後の復興のプロセス、さまざまな過程があるわけでございますので、我が国としてどういう形で何を行っていくのが一番いいかということを話し合いながら、今、適切な、あるいは我が国として最もこの問題に貢献できるあり方が何かということを考えているわけでございますし、そういった我が国の考えをどういうタイミングで発表するのがいいかということにつきましても、委員のおっしゃったような具体的な案も含めて、今また考えているところでございます。
首藤委員 私は、これを毎回毎回、もうほとんど一月の間、毎週二回ぐらい言っているわけですが、全く進歩していないわけですね。
 電話というのは確かにやっておられる。確かにそうかもしれない。しかし、中東に一歩足を踏み入れた人間はわかるように、電話なんて何の価値もないんです。電話で話ができるのは、ウォールストリートとロンドンのシティーだけですよ。中東で最も重要なコミュニケーションは、お茶を飲むことなんです。行って、お茶を出されて、お茶を飲む、これが外交であり、話し合いのすべてなんです。ですから、現実にそこへ行って一緒にお茶を飲まなかった人間には何の権利もないんですよ。
 ですから、日本は、その意味で、これからどうなるかわかりませんこの中東和平に対して、何にも貢献しなかった。犯罪的な沈黙ですよ、はっきり言えば。これだけ日本が貢献して、いろいろなことをやり、中東へ行けば、日本人がいろいろな問題にトラブったときも、ああ日本人かということで助けてもらっている。そういう中東社会において、何にもやらずに沈黙しているということは犯罪的な状況になっているということを、外務大臣、ぜひ認識していただきたい。これは、私がここに立つたびに、またこれからも永遠に言い続けますけれども、目に見える貢献をぜひしていただきたいと思うわけであります。
 今、外交が空白だということは、私は本当に危惧しております。一方、外務省が空白であり、この外務委員会がだんだん形骸化している。
 ほら、だれもいないですね。政務官はどうした。政務官はいますか。政治家同士で話をしているのに、政務官がいなかったらしようがないじゃないか。政務官はどうしたの、政務官は。何だ、この委員会は。政治主導でやろうと言ったのに、違うじゃないか。どうなっているんだ。委員長、どうですか。
中川(正)委員長代理 今呼びに行きましたから。続けてください。
首藤委員 こういう外務省、外務委員会が機能していないということも、外務委員会自身がやはり問われているわけですよ。こんなことでは本当に日本の外交を、我々は国民から負託されている身として進めることができない。そういうことを真剣に考えていただきたいと思うわけであります。
 今何を言わんとしているかというと、一方では外交が空白である、一方では官邸でどんどん決まっていってしまうんですよ。
 私は通告していなかったんですが、今、同僚の木下議員からミャンマーの援助という話がありました。したがって、この問題に関しては外務省としてもよく研究されておると思いますが、今、驚くべき情報が流れているわけですよ。それは何かといいますと、私のところなんかにも新聞社から盛んに電話がかかってくるわけですが……(発言する者あり)ちょっと静粛にお願いしたいんですが。
中川(正)委員長代理 与党の方、呼びに行ったんでしょう。
首藤委員 結局、ミャンマーに関して、今、驚くべきなのは、バルーチャン水力発電所の無償援助に関して閣議決定が行われるというニュースが、ばあっとこの世界で今広がりつつあるんですよ。
 私は、先ほどの私の同僚の木下委員の質問をちょっと受けて、この問題について関連質問させていただきたいんですが、一方では、今木下委員が質問したように、軍事政権に対してどうするのか、あるいは、アウン・サン・スー・チーさんとの対話路線がうまくいっているのかどうか、これはほとんど情報がないんです。すなわち、日本の外交自体がミャンマーに対して沈黙している、状況も何もわからない。にもかかわらず、一方では、もうこの世界で、そのバルーチャン水力発電所に対して閣議決定がなされる、こういううわさがわあっと広がっているんです。
 私は、そんなことはあり得ないと驚いているんですが、そういう現在の状況に関しては、外務省そして外務大臣、いかが状況は進んでおりますでしょうか。いかがでしょうか。
川口国務大臣 バルーチャンの第二水力発電所の補修計画でございますけれども、これにつきましては、昨年の四月に、河野当時の外務大臣がキン・マウン・ウィン外務副大臣に対しまして、この案件を実施するとの方針を伝達なさいまして、その後、八月と十一月に二回にわたりまして事前の調査団を派遣いたしまして、技術的な検討を行ってきたわけでございます。
 この補修工事につきましては、老朽化が進んでいるということと、民生の支援として緊急に実施をする必要があるということでございます。また、これは、日本政府として力を入れているミャンマーの民主化に向けた対話の進展を促すという観点から、実施に向けて準備を進めているところでございます。
 閣議決定についての御質問でございましたけれども、無償資金協力の実施につきましては、閣議決定を行った上で資金供与に関する国際約束を締結することによって決定されるわけでございます。個別の案件について、国際約束の具体的な締結の手続につきまして、これは相手国との関係がございまして、締結までは明らかにしないということでございますので、お答えはその点については差し控えさせていただきたいと思います。
 いずれにいたしましても、これは、先ほど申しましたように、老朽化が進んでいるということと、民生支援として緊急に実施を必要とする案件であるということと、民主化の対話の促進に資するということでございまして、実施に向けた準備を進めているわけでございます。
首藤委員 外務大臣、私は、バルーチャンの補修に対して反対しているわけじゃないんです。私自身も、これを見に行って、四日間現場で調査をしました。このプロジェクトの意味もよくわかっています。
 ここで問題としているのは、例えばミャンマーの民主化とかミャンマーのこれからの進む方向に関しての日本の外交の問題を言っているわけです。外交の問題に関してはほとんどよくわからない、何も進んでいるとは思えない、情報もない、一方では、閣議決定がある日ぼんと出てしまう、こういうことを言っているわけですよ。そうすると、本来ならばミャンマーのバルーチャンの水力発電所の修復に関してそれなりの理解を持っている人も、何だということになるわけですよね。
 ですから、現状、閣議決定が本当にされるのかどうかというのを、もう一度お答えをお願いしたいと思います。
川口国務大臣 まず、ミャンマーについての考え方でございますけれども、今、軍事政権下にある、スー・チー女史を自宅軟禁下に置いている軍事政権に対して、どういうやり方で接していくかということについては、いろいろな考え方があると思います。欧米のような、北風をというやり方もあるだろうというふうに思います。
 我が国としては、ミャンマーについて考えておりますのは、民主化とそれから国づくりということが大事だというふうに考えておりまして、そういう姿勢でミャンマーに対応しているということでございまして、先ほど申しましたように、閣議決定につきましては、これは締結までは公表しないということでやらせていただいておりますので、お答えは差し控えさせていただきたいと思っております。
首藤委員 もう時間になりましたから、一つだけお聞きして終わりますけれども、結局何をここで言わんとしているかというと、外務省、外交が、我々国民の代表が全然チェックしないところで、一つも進展しないし、チェックもできない。一方、あるところで閣議決定が済みました、閣議決定しました、閣議決定は公表できませんから秘密にしておきました、当然でしょう、こういう話をされたら、我々、一体何のためにここにいるのかということですね。
 ですから、やはりそうした問題に関しても、本当に日本政府としてこれを認める方向にあるのかどうかということを言っていただかないと、我々はチェックすることができない。終わった後、はい終わりましたということでは、我々は国民の負託を受けている意味がないわけですね。
 もう一件お聞きしますが、では、同じように問題になっている、そして、これからまた外務委員会で参考人も呼んで討議することになっているケニアのソンドゥ・ミリウダムに関しての閣議決定の状況はいかがでしょうか。
中川(正)委員長代理 時間が来ていますので、これを最後にしたいと思います。
川口国務大臣 これについては、委員御案内のように、第二期工事について、今さまざまな議論が行われているということでございます。
首藤委員 終わります。
中川(正)委員長代理 次に、桑原豊君。
桑原委員 二十分という時間ですから一問だけと思っておりますけれども、先ほど来の議論を聞いておりまして、どうしても一点だけ、これは通告をしてございませんが。
 いわゆる小泉総理大臣の靖国神社への参拝、これに対して、何の相談も受けなかった、御自身の判断でやられたと。しかし、この問題というのは、もう従来から日本のアジア外交にとって大変重要な問題である、このこといかんで非常に中国との関係や韓国との関係がこじれたり、大変な事態を今まで引き起こしている問題なんですね。このことについて、現に今、中国や韓国は大変な抗議をいたしております。
 大臣として、なぜ小泉総理に、ちゃんとした相談をしてほしいとか、あるいは慎重にやってほしいとか、そういうような発言ができないのかというのが私には解せないんですけれども、外交の一番大きな懸案問題の一つでもあり、現にこういうことで反響が起きているという、このことに対して、未来志向としてやっていかなきゃならぬことは当然ですけれども、なぜそれを言えないのかというのがどうもわからぬのですが、そのことについてお尋ねをしたいと思います。
川口国務大臣 外交につきましては、総理あるいは官邸と外務省というのは、御相談をしながら外交をやっていくということであると思っております。したがいまして、総理としては、常に外交と内政両方をお考えになられた上で御判断をいろいろなさっていらっしゃるというふうに思います。
 この問題について、たまたま私への第一報が新聞社からあったということでございましたけれども、その後、話は聞いたわけでございます。それから総理からも、事後的には、外務省に相談を、話はしなかったということについてのお話もいただいておりますけれども、これはいろいろな観点を持たれて、総理としてお考えになられたということだと私は思っております。
 私として、このタイミングでこういうお話になるということを予期していなかったことも、また他方で事実でございます。
桑原委員 ぜひ御自分の、外務大臣としての判断というものをきちっとやはり総理に伝えていく。特に、こういう大きな問題でございますから、そうして日本の外交としての大きないろいろな方針というものをつくっていかなきゃならぬわけですから、それは総理が決めたことですから、総理が御判断されたことですからと言ったら、外務大臣の存在価値、外交の最高責任者としての価値というのはどこにあるのかと私は言わざるを得ませんので、ひとつ姿勢としてきちっと正していかなきゃならぬ、正していただきたいということを私は申し上げておきたいと思います。
 それでは質問に入りますが、三月の末に、韓国の米軍基地が今後十年、二〇一一年までに、現在の約五五・三%、返還をされるといいますか削減をされる、こういう協定ができるということになったそうでございます。二万四千四百ヘクタール、このうちの一万三千五百ヘクタールが段階的に削減をされるということになったようでございます。韓国と同じように米軍の基地をたくさん抱えている我が国としては、非常に関心のあるところでございまして、このことについてお聞きしたいと思うんです。
 御存じのように、冷戦が終わってから、アメリカの世界に展開をしているさまざまな基地が大きな変化を受けております。特にヨーロッパでは、ドイツを中心に、本当に多くの基地が削減をされるということになっておりますが、アジアに目を向けますと、こちらの方では、ヨーロッパとは違って、フィリピンのスービックやクラークの基地の返還はございましたけれども、そのほかの基地というのは、余り目立ったそういう形にはなっておりません。
 そういう意味では、これからこの問題についてどう対応していくのかというのも非常に大きな外交課題だというふうに私は思うんですが、そういった中にあって、この時期に韓国でそういった約束がされる、このことの理由とか背景についてどのようにお考えになっておられるのか、まずお聞かせ願いたいと思います。まず大臣にお聞きします。
川口国務大臣 まず、一番基本的な問題といたしまして、日米安保条約に基づく日米安保体制、これが我が国に平和と安定をもたらしているということでございますけれども、それのみならず、そのことが極東地域あるいはアジア太平洋地域における安定と発展のための基本的な枠組みであるという評価が存在をすると思います。
 ただ、他方で、アジア太平洋地域には、まだ依然として不安定性、不確定性があると言わざるを得ないと思っております。したがいまして、ヨーロッパとアジアと比較をしたときに、当然、その背景となる国際情勢あるいは安全保障のための背景というのが異なってきているというふうに私は考えております。日米安保体制ということは、非常に必要な基本的な枠組みであると思います。
 韓国は、委員がおっしゃったような削減のお話があったわけでございまして、これにつきましては、在韓の米軍施設・区域の整理縮小が行われるということでございますけれども、その背景あるいは理由につきましては、米国と韓国の間のお話でございますので、日本政府としてこれにコメントをする立場にはないと考えております。
桑原委員 これまたおかしな話で、コメントをする立場にあるとかないとかという問題ではなしに、どういった理由と背景があるのかと。
 アメリカの世界に展開をしている基地、とりわけ日本の安全保障にとって韓国におけるそういった状況の変化というのは、そういう立場からしても、角度からしても、私は、ある意味では、そんなヨーロッパの基地の問題のような話ではなしに、やはり極東におけるいろいろな安全保障を考えていったときに大変重要なかかわりを持つ問題だろう、こういうふうに思うんですよ。これは韓国とアメリカの話でコメントする立場にない、私はこういうような問題ではないというふうに思うんです。
 それと、巷間いろいろなことがこのことをめぐって伝えられておりますけれども、韓国では、従来からアメリカ軍の基地に対しては、日本の沖縄におけると同様に、米兵の犯罪が頻発をしているとか、あるいは訓練場で誤爆事故があったとか、基地施設周辺の環境問題が非常に取りざたをされているとか、いろいろなことがあって、相当の反対運動といいましょうか、アメリカ軍に対する感情的な問題も含めて、いろいろなことがあって交渉を重ねられてきておるわけですよ。加えて金大中大統領のいわゆる包容政策、そういうものも背景に全くない、こういうふうには言い切れないと私は思うんですよ。そういったことなどもあって、恐らく一つの話し合いというものが煮詰まっていったんではないか。
 アメリカの立場にすれば、いわゆる基地の使い勝手の問題、今の現状よりも、再編成をして、そして基地を活用していくということの方が非常にいい、こういうようなアメリカ側の思惑もあって、恐らく交渉が進展していったんではないかというふうに思うんです。
 これは、いろいろなところで私は情報も入り、政府として関心を持って見ていかなければならない問題だと思うんですけれども、コメントする立場にないというのではお話にならないと思うんですが、どうですか、大臣。
川口国務大臣 韓国の全土に占める基地の比率というのは〇・二%ということでございまして、韓国は狭い国土でございますので我が国と比べますと、我が国は沖縄に集中をしていて沖縄では非常に高い比率でございますけれども、全体として比べますと日本に比べて非常に高い。我が国が〇・〇八%ということでございますので、けたが一つ違うということになっているわけでございます。
 韓国については、一方で縮小をするということを行うと同時に、新規の土地の提供、あるいは韓国側が移転を要求した九つの基地の代替施設の建設及び提供ということもあるわけでございますけれども、両方の立場の報道を見ますと、韓国側からは、このLPP、ランド・パートナーシップ・プランが施行されると、長期間累積してきた住民の請願解消と同時に、バランスのとれた地域発展を促進する契機となって、在韓米軍には安定的な駐屯条件を提供し、韓米同盟関係がさらに強固なものになるというふうに述べております。
 それから、シュワルツ在韓米軍司令官は、LPPは韓米同盟のパートナーに多大な利益となるウイン・ウイン効果をもたらしてくれるということで、韓国内に駐屯する米軍兵力は以前と同じである中で、バランスのとれた準備体制を維持し、在韓米軍部隊を防護し、施設の質的向上を図る基地の効率的な縮小、統合により米国が利益を得るであろうというふうに双方が述べているわけでございまして、これ以上に韓国と米国との間に立ち入ってコメントをするということについては、これは避けさせていただきたいと思います。
桑原委員 それでは、時間もありませんから角度を変えて聞きますが、この韓国と米国の協定化について、日本も在日米軍基地については、今のような情勢認識の中にあってもなおかつ整理縮小、そういった方向でこれからも努力をしていこうというのは、これは外務省の基本的な考え方だと私は思うんですが、これからの日本のこの基地の整理縮小問題について参考になるものは何かあるのかどうか、この韓国とアメリカの交渉の中で。
 私は中を詳細に見てみると、問題の共通性というのはたくさんあるわけですね。これはまだ後でちょっと述べますけれども、参考になるものがあるのかどうかということを聞きましょう。
川口国務大臣 このLPPの中身については、私は、詳細についてはこれから少し勉強したいと思っておりまして、今の時点ではこの部分がということを申し上げる立場にはないということでございますけれども、私自身としては、この点について、代替施設を提供するという、いろいろな手法についてはいろいろな共通性があると思ってこれを見ております。こういった点について、もう少し詳しく勉強したいと思っております。
桑原委員 最後になりますけれども、今代替施設のことをおっしゃられました。普天間に関連をしたような話とも共通してくるんですが、一応基地を返還するけれどもその機能を確保するために代替基地というものを確保していくという、これはまさに普天間の場合と同じ内容になっております。
 それから、環境問題ですね。アメリカにこの基地の環境問題を、原状復帰する義務というのはないんだと。これは、韓国もアメリカの基地を返還するに当たってはそういう内容になっていますし、それから、現に日本でも、いわゆる実弾演習の演習場については、沖縄ではなしに、今、自衛隊の基地も含めて、本土を含めた基地にそういった実弾演習は展開をしながら、いわゆる自衛隊との共用というようなことも、これもまた韓国では韓国軍の基地と米軍のそういう共用というようなものが手法としてとられているようでございまして、いろいろこの基地をめぐる問題については、韓国とアメリカ、日本とアメリカの交渉過程、大変私は共通したものが多いと思うんです。
 そういう意味で、この問題について日韓の間で話し合われたことがあるのかどうかということと、それから、日米韓の定期協議というのもあるわけですけれども、そういったことの中で議題になっているのかどうか。私は、今後積極的に、特に日韓の間ではこういった問題については相当突っ込んで考量をし、話をした方がいいんではないか、そういうふうにも思いますので、そういった提案も含めて現状をお聞きして、終わりたいと思います。
藤崎政府参考人 今の御指摘の情報交換、意見交換でございますけれども、日本はアメリカとの間ではこれは密接にやっておりますけれども、韓国との間でもさまざまな意見交換を行ってきております。
 こういう問題は日米韓の三国でやることが適当かどうかということについては、これは必ずしも私どもは、三国間でやるべき問題かどうかということは、今言われたようなこと、やや疑問を感ずるわけでございますけれども、今委員から、情報交換、意見交換をさらに重ねて、あらゆる情報を入手しながらやっていくべきであるというのは、まさに御指摘のとおりだろうと存じます。
桑原委員 これで終わります。どうもありがとうございました。
中川(正)委員長代理 次に、前原誠司君。
前原委員 民主党の前原でございます。
 まず、拉致問題につきまして質問をさせていただきたいと思います。
 八尾恵さんというよど号ハイジャック犯の元妻の方が、情報提供ということで有本恵子さんの話をされることになりました。その事実に基づいて、警察庁が対策本部をつくって、拉致事件と新たに認定をして調査を行う、これが現状でございます。
 私は、いろいろな可能性というものを考えて、少し議論をさせていただきたいと思います。したがって、いろいろなシミュレーションといいますか、可能性の話でございますので、断定した答えはできないと思いますが、その可能性の中での議論をさせていただきたいと思います。
 実は、私の方に、この八尾恵さんの背景をもう少し調べた方がいいんではないか、こういう話がございました。といいますのは、ひょっとすれば、純粋にみずからの行ったことに対して良心の呵責というものに耐えかねて、そして事実をお話になっているかもしれないということでありますが、そうでない可能性もあるんではないか。つまりは、北朝鮮と何らかの関係がいまだにあり、そして、情報、連絡をとりながら動いておられる可能性も否定できないんではないか、こういう話もございます。
 例えば、その話に付言して申し上げると、有本恵子さんという方が近々表に出られる可能性もある、しかしながら、北朝鮮に拉致をされてもうかなり時間がたち、日本人妻の帰国のときにもあらわれたように、洗脳という言葉が正しいかどうかわかりませんが、もう北の考え方に感化をされて、御自身は拉致をされたんではない、また、拉致問題というものは存在をしていないということを、いわゆる北朝鮮の政府を代弁する形でおっしゃる可能性もなきにしもあらずだ、こういう情報提供もございました。あくまでも、何度も申し上げておりますが、可能性の話でございます。
 そこで、公安調査庁に伺いたいんですが、八尾恵さんの背景、つまりは、実際問題、今御本人が吐露されているような状況が正しいのか、あるいは今私が仮説として申し上げたことについての可能性はあるのか、あるいはその他の可能性もあるのかについて、公安調査庁として今どのような情報をお持ちか、御答弁をいただきたいと思います。
栃木政府参考人 いわゆる日本人拉致容疑事案につきましては、当庁としても大変関心を持って、さまざまな角度から情報の収集に当たっているところでございますが、現在も調査を遂行中でございますので、御指摘のような具体的な事実に関しましては答弁を差し控えさせていただきたいと思います。
前原委員 具体的な事項については答弁を差し控えるということでありますが、可能性が全くないと断言されるんですか、それとも、あるかもしれないとおっしゃるんですか。その点については触れてもらわないと、何のために来ていただいたのかわかりませんので、そこははっきりしてください。
栃木政府参考人 ですから、今現在調査しているところでございますので、さまざまなことが考えられると思います。
前原委員 さまざまなことが考えられるということでありますが、八尾恵さんには娘さんがおられますね、北におられると。どういう状況で北におられるかということは、公安調査庁は把握されているんですか。
栃木政府参考人 具体的、個別的なことでございますので、その点につきましても答弁を差し控えさせていただきたいと思います。
前原委員 娘さんがおられるわけです。まだ北朝鮮におられて、悪く言えば、身内がまだ北朝鮮にいるということは、私が先ほど申し上げた可能性というものは否定できないというふうに思います。
 さて、この二十九、三十に日朝赤十字会談が行われるということでございますけれども、この有本恵子さんの問題あるいは拉致全般の問題を含めて、この問題が一つの大きな主要テーマになると思いますが、川口大臣にお尋ねをいたしますけれども、この会談の見通しについて、また、日本国政府としてどのような問題提起というものをされるのか、その点について御答弁をいただきたいと思います。
川口国務大臣 今月の二十九、三十と北京で日朝赤十字会談が開催をされるということでございまして、その会談では、行方不明者の安否調査、日本人配偶者の故郷訪問、その他日朝両国が互いに関心を持っている人道問題について議論をするということになると承知をしております。
 今、日朝の間には拉致問題という非常に重要な問題があるわけでして、我が国政府としては、今までもこの問題については北朝鮮に対しまして、国民の生命にかかわる重大な問題である、この問題を避けて通ることはできないということを繰り返しはっきり言ってきているわけでございまして、解決を求めているわけでございます。そういった中で、この会談がこの分野での非常に貴重な、重要な一歩となるということを私としては期待しているわけでございます。
 今さまざまな動きがございまして、まさにこの動きというのもその一つでございますし、それから、国際的に見れば、南北間の話し合いあるいは米朝会談に向けての動きがまたいろいろあるわけでございまして、北朝鮮による行方不明者の安否調査の再開ですとかこの会談、あるいは、うまくいきませんでしたけれども、坂口厚生大臣の会談のお話等ございまして、こういったことを考えますと、日朝の関係が新しい局面に入ってきているということを認識しております。
 この新しい局面に入ってきているということをきちんと踏まえまして、適切に、そして慎重に対応をしていくことが政府としては必要なことだと考えております。
前原委員 少し技術的なことを二点だけ申し上げて、簡単に御答弁いただきたいんですが、拉致問題と行方不明者問題と言葉が違うんですけれども、外務省としては拉致問題としてしっかりと北朝鮮に物をおっしゃっているのかということが一つと、新しい局面ということをおっしゃったのは、それは、南北の話あるいは米朝交渉の話もされましたけれども、具体的に日朝間で新たな動きというものを感じ取っておられるのか、あるいはその可能性について見通しを持っておられるのか、その二点、簡単に御答弁ください。
川口国務大臣 二つございましたけれども、まず拉致問題、拉致か行方不明かということでございますが、北朝鮮側は、御案内のように、これは行方不明者という形で言っているわけでございますが、政府といたしましては、この問題につきましては、きちんと、北朝鮮により拉致された疑いのある事案であるということを従来から言っているわけでございます。
 それから、二番目の、新しい局面であるという認識でございますけれども、先ほど申し上げたようなこと、杉嶋元日経記者の解放といったような一連の動きをとらえて、今新しい局面に入ってきているという認識を持っているということでございます。
前原委員 その日経の記者の方の話は私もよく伺うんですが、向こうももう面倒になったという話も伝わってこないわけではありません。何をもって新しい局面と言うかということはかなり慎重に見きわめた方がいいし、有史以来、二千万人を超える国で、あのような情報統制なり専制体制がとれている国というのはなかなか珍しい体制だと私は思うんですね。歴史上も非常に珍しい体制。ですから、この国との外交交渉をやるのは相当な覚悟としたたかさを持ってやっていただかなくてはいけない話だというふうに思います。
 そこで、ぜひきょうはここの点だけは確認したいと思ったんですが、先ほど私が仮定の話で申し上げました、有本恵子さんが出てこられるかもしれないと。そのときに、自分は拉致されたんではない、また、北朝鮮には拉致問題は存在しないと思う、こういうことをおっしゃる可能性は全く排除できないわけでありますが、さっき大臣がおっしゃったように、拉致事件というのは有本恵子さんの話だけではないんですね。他の問題もあります。横田めぐみさん初め、政府が認定をしているだけでも、有本恵子さんを入れて十一名ですから、他の方は十名あるわけですし、また、そのほかの、北朝鮮によって拉致されたのではないかという疑いを持たれているものもあります。
 したがって、日朝間の懸案事項の大前提の拉致問題というのは、決してこの有本恵子さんの問題だけではないと思いますし、政府が認めているだけでも、少なくとも、この人たちの安否の確認、そして日本への帰国というものを大前提として、外務省としてしっかりと取り組んでいただけるということを外務大臣から御答弁いただきたいと思います。
川口国務大臣 先ほど申し上げたような動きを踏まえまして、適切に、そして慎重に取り組んでいきたいと考えております。
前原委員 要は、拉致問題というのは、政府が認定された、先ほど有本さんを除いて十名ということを申し上げましたけれども、その問題解決なくして日朝間の正常化交渉の進展はあり得ない、そういう認識でよろしいんですね。
川口国務大臣 政府の基本的な方針でございますけれども、これは、日朝国交正常化交渉の進展について粘り強く取り組み、こうした努力を通じまして、拉致問題を初めとする人道上の問題あるいは安全保障上の問題の解決に向けて取り組んでいく、解決を目指していくということでございます。
前原委員 先ほどの日経の記者の方の帰国ということが新たな状況だとおっしゃいましたけれども、私は全くそれは思っておりません。そしてまた、どのような状況の変化というものが向こうを利する形でやってくるかわかりません。したがって、大原則だけは持って交渉していただきたい。つまりは、一つの新たな変化で何か前進したような錯覚だけは持っていただきたくない、私はそのことをしっかりと大臣にお伝えをしたいと思います。そのことについては御答弁は結構です。
 村田副大臣が来ておられますので、朝銀の問題についてお話をさせていただきたいと思います。
 安全保障委員会で、副大臣には何度も来ていただいて御質問しておりますが、同じ目的で向き合っているんだということは御理解をいただけていると思います。金融庁の方にも、私の得ている情報についてはすべてお伝えをしております。そして、定款に基づいた厳正な対処をお願いしたいということであります。また、昨日の財務金融委員会で、同僚の五十嵐委員からも村田副大臣に対して質問がございました。
 したがいまして、改めての確認になるわけでございますが、私どもの得ている情報では、四信組の理事長、常務理事の面々については、総連の元幹部であるという情報があり、そして定款違反であるということを私どもは確信をしています。
 したがって、その理事長を変更してもらうということが四信組のスタートの前提になるというふうに考えておりますが、漏れ伝わってくるところによりますと、一部の理事長の交代というものでお茶を濁そうと金融庁はしているんではないか。つまりは、向こうの顔を立てるためにどこかの信組の理事長を交代させて、それで金融庁もかえさせた、向こうも首を差し出したということでお茶を濁そうとしているのではないかという懸念を私は持っているわけでありますが、すべての役員、理事長、常務理事の背景を調べて、すべて残らず、しっかりとした定款違反にならない人事が行われるということを、ここでもう一度確約をしていただきたいと思います。
村田副大臣 前原委員には、本件をめぐりまして大変貴重な御指摘をたびたびちょうだいいたしまして、感謝をいたしたいと思っております。
 今、御指摘の件につきましては、委員会におきます、これは安全保障委員会の方だったと思いますが、そちらの方での御指摘も受けまして、まず、私どもは銀行法二十四条に基づきます報告を徴しまして、そういう意味では我々の監督体制のより万全を期すという行動をとらせていただいたということでございますし、それから、いろいろな委員会での、今前原委員もおっしゃいましたような新設の受け皿信組の役員の人事をめぐりまして、情報提供もありますし、また役所の中でのいろいろな意見交換も踏まえまして、私どもとしては、当該信組の役員の皆さん方と、まずは国会での厳しい御指摘の状況について御説明を申し上げまして、定款違反の事実がないことを確認しつつ、今いろいろな相談をしているというところでございます。
 もとより、私どもとしては、定款違反の事実がない、そういうことを期待するところでございますので、引き続き、私どもとしては相手側との調整を進めていきたい、こういうふうに考えております。
前原委員 簡潔にお答えいただきたいんですが、私は、足して二で割るような話には落ちつけてほしくない、そうであれば、徹底的にまたいろいろな場面で追及をしていきたいと思います。つまりは、すべての役員について洗いざらいその背景を調べていただけるか、一部の役員の交代ということでお茶を濁してもらっても困るということを言っているわけです。その確認をもう一度してください。
 それから、前々回ですかね、安保委員会でも質問をいたしましたけれども、また、村田副大臣からはそのときは前向きの御答弁をいただきましたが、今経営中の三信組がありますね、中部とか西とか。これについての定款を早くこの四信組並みに変えてもらわないと、同じ形になってしまう。これについては前向きの御答弁をいただきましたけれども、具体的にいつまでにそういうことをするのか、先ほどの御答弁とあわせて、二つ御質問いたします。
村田副大臣 もちろん、役員の人事でございますので、私ども、すべての役員について、定款に定めていただいているようなことが守られているかどうかについて、すべて洗い直して検討させるということはそのとおりでございますので、努力をいたしたいというふうに思っております。
 二つ目の、既存のといいますか、三つの信組につきましては、これは新設でないものですから、新しい受け皿信組のケースと違いまして、お願いをするというか、新しい信組と同様のことを貫徹するというのはなかなか難しいところがございますけれども、私どもとしては、できるだけそういう今先生がおっしゃるようなこと、つまり、総連等の機関からの独立性、これが信組の経営の健全性を確保するために必要なことであるという観点から、なお努力を続けているということをお答え申し上げたいと思います。
前原委員 時間が来ましたので終わりますが、今お答えになった二番目の問題については、少し内部で検討してください。つまりは、しっかりとした、三信組についても総連からの独立というものが目に見える形でやるかということは、ぜひ内部で、ある時期までにそういうものを目指すということを決めていただかないと、ずるずる時間が経過してしまうと思いますし、その間、また同じように金庫がわりに使われるという事態が発覚したときは、これは金融庁の大汚点ですよ。国民からの非難は免れないと思いますので、またそれについては御質問いたしますが、ぜひそういう内部での取り組みを加速させていただくことをお願いして、質問を終わります。
中川(正)委員長代理 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。
    午後零時十二分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時一分開議
吉田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。土田龍司君。
土田委員 きょうは、久しぶりではないのですが、外務省改革について重点的にお尋ねをしていきたいと思います。
 久しぶりじゃないと言ったのは、一月にも二月にも三月にもやりましたので、頻繁にやらないといけないなというふうに思っておりますのでやるのですが、その前に、大臣、小泉総理の靖国神社参拝がございましたので、その問題だけ先に片づけておきたいというふうに思います。
 ちょうど去年の今ごろ、自民党の総裁選があった最中に、小泉さんは、だれが反対しようと、何があろうと、八月十五日には靖国神社に参拝するんだというふうにおっしゃった。そして、総理就任後も続けておっしゃった。多分何十回もおっしゃったと思うのですが、報道機関はそれをまた何倍も報道しますので、多分何百回も、去年の八月までその問題が報道されたわけです。
 今回、春の例大祭に総理が行かれた。当然、中国や韓国から反発の声が上がったわけでございます。まず、この問題は、内政問題ととらえておりますか、それとも外交問題だととらえておられますか。
川口国務大臣 両方に深く関係を持った問題だととらえております。
土田委員 そこで、中国と韓国から日本の大使館が呼ばれて、厳重注意したのか説明を求められたのかわかりませんが、いずれにしても、外務省の職員が説明に行ったということでございますが、外務大臣としましては、どういった説明をするように指示を出されたんでしょうか。
川口国務大臣 これにつきましては、小泉総理が所感を出していらっしゃいまして、その所感についてきちんと先方に御説明をするように、そういうことでございます。
土田委員 具体的にはどういった説明をしたのか、あるいはするように指示をしたのか、お尋ねしております。
川口国務大臣 まさにこれは、中国、韓国に対しては、小泉総理がおっしゃっていらっしゃる所感、この中身というのは、委員も御案内のように、「明治維新以来の我が国の歴史において、心ならずも、家族を残し、国のために、命を捧げられた方々全体に対して、衷心から追悼を行う」ということが総理のお考えでございまして、終戦記念日やその前後の参拝にこだわり、再び内外に不安や警戒を抱かせることは総理の意に反するところであるということをおっしゃっていらっしゃって、そういったことも含め、事実関係を説明したということでございます。
土田委員 中国の外交部の方々やあるいは全人代の方々と話しましても、この靖国神社問題、いわゆる歴史認識の問題については、毎回毎回、けんかになるぐらいに、テーブルをたたいて彼らは議論をしてくるわけでございます。靖国神社問題についても、特にA級戦犯のことですね、これについては今回どういった説明を具体的にされたのでしょうか。
川口国務大臣 今回について、中国、韓国については、事実関係を御説明申し上げておりまして、特に、歴史認識についてこちらから御説明をしたということではございません。
土田委員 中国に対しましては、多分、中国が言っているのはA級戦犯の合祀の問題でございまして、この取り扱いについての説明をしなければ、僕は多分、中国は納得しないといいますか、避けて通れない話題だと思うのですね。ですから、それについての説明がなされたのか。あるいは、説明に行った在外公館の方から、どのような報告を受けておられますか。中国側あるいは韓国側の反応についてでございます。
川口国務大臣 いろいろな反応が双方の政府からございます。
 二十一日午後の時点で、中国の外交部のスポークスマンの談話がございまして、これにつきましては、靖国神社を参拝することに断固として反対をする、強い不満を表明する、いろいろございますけれども、簡単に言うとそういうトーンでございました。
 韓国につきましては、外交通商部のスポークスマンが、やはり二十一日の午後に声明がございまして、これにつきましては、深い遺憾を表する、憂慮せざるを得ない、そういうことでございました。
土田委員 毎年毎年、年中行事みたいにこの靖国神社の問題が取り上げられるということは、やはり韓国、中国だけでなくて近隣諸国に対する我が国のあいまいな態度、明快にしていないというところに問題があるのじゃないかなという気がしてならないのです。何十年にもわたって、こういった問題がいまだに、解決しなくてもいいのですが、問題として取り上げられ、そのたびに両国が気まずい思いをしているということに対しては、非常にまずいことだというふうに思っております。
 今後、この靖国問題あるいは教科書問題等を含めて、近隣諸国への対応について、外務大臣の基本的なお考えをお聞かせください。
川口国務大臣 国の内外に警戒あるいは不安を抱かせるということにつきましては、これは小泉総理が所感でおっしゃっていますように、まさに小泉総理の意に反するということでございます。熟慮の上で、今月の二十一日を選んで参拝をなさったというふうに私は承知をいたしておりますけれども、今回の参拝の趣旨については、さまざまな機会を通じて説明をしながら、中韓両国との間で未来志向の協力関係を築いていけるように、外務省としても努力をし、取り組んでいきたいと考えております。
土田委員 次に、外務省改革のことについてお尋ねをするのですが、昨年の一月一日に松尾事件が発覚をした。日付を見ますと、ちょうど去年のきょう、四月二十四日に、外務省機能改革会議が提言を発表したわけですね。それを受けて、外務省の改革要綱というのを田中外務大臣のもとでつくられて、六月六日に発表をしたということでございますが、この改革要綱の進捗状況ですね。これは杉浦副大臣が担当かもしれませんけれども、当然大臣も報告を聞いていらっしゃると思いますので。
 田中眞紀子外務大臣は、就任直後は外務省改革に対して非常に熱意を持っておられたんです。ところが、だんだんその熱意が冷めてきて、夏以降はほとんどもう改革に対する情熱をなくされてしまったと私は見ておりました。
 川口大臣がこの一月に就任をされて、いろいろな不祥事を背負ってといいますか、改革の熱意に燃えてこられてきたわけでございますが、まず、去年のきょう発表された提言に基づいて外務省改革がどのように進んでいるかということについて御説明をいただきたいと思います。
川口国務大臣 まず、外務省の改革は、今、外務省の職員が一生懸命に取り組んでいることでございまして、もちろん、私も、「変える会」の委員の皆様も、それから、昨日は自民党の外務省の改革の小委員会の方々にお話を伺わせていただきましたけれども、一般の国民の方を含め大勢の方が外務省の改革に関心を持っていただいて、そして、改革が進むように励まし、あるいは御指導いただいているということは、私としては非常にありがたいことだと思っております。
 それで、御質問の外務省改革要綱のことがどこまで今動いているかということでございますけれども、ここにはさまざま盛り込まれているわけでございまして、それを端から申し上げていくと、多分、時間が相当にかかってしまうと思いますけれども、全体的には、それなりに今動きが見えてきているというふうに私は思っております。
 例えば、領事業務従事を1種、専門職職員もするというようなことについては、ことしから、在外研修が終わって各在外公館に配置をされる人たちについてそういうことを取り組もうということで動きが始まっておりますし、下からの評価ということについても既に行われておりますし、そういう形で、それなりに動きが見えてきている状況にあると私は思っております。
土田委員 外務大臣がこの四月二日に外務省の処分を発表された、これについてはこの委員会でもさんざん議論がなされてきたわけでございますが、内容的には、過去との決別というふうに大臣はおっしゃっているんですが、それとはちょっとほど遠いなという感じが私はしてならないんです。
 鈴木宗男議員の北方四島支援事業などへの影響力の行使について、三月四日に公表された調査報告書、それを受けた処分なわけですね。範囲が北方支援事業やコンゴ人の秘書の問題に限定された調査報告書でございまして、我々が特に知りたいと思うのは、鈴木宗男議員の介入によって北方領土問題がどのように影響があったのか、特に、二島先行返還論、あるいは四島の帰属問題との関係はどうなっていたのか、肝心なところが説明が抜けているんじゃないか、あるいは説明責任を果たしていないんじゃないかという気がしてならないんです。
 事は、対ロ外交に関する基本的なことでございまして、この前も申し上げましたように、この五十年間ほとんど結果的に進捗をしなかったという現状において、今後どういった対ロ外交にしていくのか。ロシアの外務省の次官から、鈴木さんがいなくなったことによって信頼できる交渉相手がいなくなったとまで言われてしまった、こういう状況について、何らかの検討が当然外務省の内部でされたと思うんです。その上で、今後どういった方向で領土問題を継続していくのか、これについて大臣の見解をお尋ねしたいと思います。
川口国務大臣 まず、委員が先ほどおっしゃった、四月二日の処分を発表して過去との決別をしたというふうに私が申し上げたという記憶はちょっとございませんで、これにつきましては、まさに委員おっしゃったように、問題になった事柄、北方四島の住民支援をめぐる幾つかのこと、あるいは、アフリカのコンゴ民主共和国の大使館の臨時代理大使の件といったようなことについて処分を行ったということでございます。
 それで、北方領土問題について十分に説明をしていないのではないかというふうにおっしゃられましたけれども、これについては、たびたび申し上げていますように、平和条約締結交渉について、北方四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結するということは一貫した方針でございまして、これは全く変わっていないわけでございますし、二島先行返還ということにつきましては、こういうことを提案したことはないということにつきましても繰り返し御説明をさせていただいているわけでございます。
 両国は、北方領土問題の解決に向けて今までさまざまな努力をやってきたわけでございまして、一九五六年の日ソ共同宣言、九三年の東京宣言、九七年のクラスノヤルスク合意、それから昨年三月のイルクーツク声明といったような積み重ねがあるわけでございます。政府といたしまして、今まで積み重ねられてきたこれらの諸合意を踏まえまして、今後とも問題の解決に向けて精力的に取り組んでいきたいと考えております。
土田委員 この鈴木宗男さんの問題につきましては、政と官のあり方、これが一番問われているんじゃないかと私は思うんですね。外相の私的諮問機関である「変える会」で、この件についても、来月、中間報告がまとめられるというふうに聞いているわけでございますし、私たち自由党の中でも、政と官のあり方についても随分議論をしたことがございます。また、自民党の中でも、外交部会で、そういった外務省改革に対する提言というんですか、取りまとめといいましょうか、その話があった。ただ、自民党の中では、政と官のあり方については、答えとしては出てきていませんね、内部的に議論があったとは聞いておりますけれども。
 政と官のあり方について、「変える会」が提言をしてくるでしょうけれども、大臣はこの件についてどのように考えておられますか。
川口国務大臣 政と官の関係につきましては、これは今までも、今、委員がおっしゃったようなさまざまな場で御議論をいただいているわけでございまして、先ほどの自民党の小委員会の中にも提案が、この関連では二つ盛り込まれていると私は認識をしております。
 私個人がこのことについてどう考えているかというお尋ねございましたけれども、私個人としては、今、いろいろ、どういう形がいいかということを悩みながら考えているというふうに申し上げるのが一番いいかと思いますけれども、幾つかその基本的な考え方はあると思っておりまして、例えば、一番望ましい形というのは、政と官が政策について、しかもかなり大きな政策の考え方について、緊張関係を持って議論を続けていくということが非常にいい形であると私は思っております。
 したがいまして、いかなる制度がつくられることになるにせよ、そういった政策論議の芽が摘まれてしまうような、そういうことにならないことが大事だと思っております。
 これは、外務省だけの問題ではございませんし、政と官、広く政治家の方、あるいは官にある人間の間で議論をされることが大事ですし、どちらにも属さない国民の方もいろいろな御意見をお持ちであると思いますので、その問題についてずっと議論が続けられていくということが大事だと思っております。
土田委員 外務省が他国との協定に基づいて設立し、日本から拠出金を受けながら、会計検査院の検査を受けなくてもいいということになっている国際機関が二十六あるというふうに報道されております。このような国際機関の中には、内容について明らかにされている機関もあるわけでございますが、大部分はほとんど実態が不透明である。第三者のチェックが入らないで、ほとんど外務省の一部の方々が執行といいますか運営をされているわけでございまして、この国際機関に関することが鈴木さんの問題にも発展したんじゃないかということが想像されるわけですね。例えば、支援委員会でもそうですし、青年交流委員会でもそうです。
 このチェックされていないと言える国際機関について、やはり整理しなきゃならないだろうというふうに私も思っているわけですが、改革するために今後どのような措置をとろうとしていらっしゃるのか。あるいはまた、相手国があるわけですから、日本が一方的に、勝手にもうやめますよというわけにはいかないかもしれませんが、相手国に説明し、説得し、あるいは了解した上で進めていくのが当然でございますが、どういうふうにしていきたいか、あるいは具体論について、外相の考えを聞きたいと思います。
川口国務大臣 国際機関もいろいろあるわけでございますけれども、委員が念頭にお持ちでいらっしゃるような、例えば支援委員会につきましては、支援委員会の予算の使い方については非常に問題があったと思いますし、運営のあり方についてもいろいろ問題があった、透明性が十分でなかったという問題があると私は思います。
 これにつきましても、さまざまな改革の御議論をいただいている中で、一般的にも議論をしていただいているわけですし、委員の方にお願いをして、専門委員会というのがございますが、この専門家会議の場でもどういうあり方が望ましいかということを今御議論いただいておりまして、近々といいますか、それほど遠くない将来に御報告をいただけると思っております。
 したがいまして、支援委員会そのものについてはそういったところでの議論を待ちたいと思っておりますが、一般的に、国際機関についてどのように適切な機能の仕方を確保していくかということにつきましては、これは通常は、国際機関には理事会というものがございまして、そこにお金を出している各国の理事がその機関の仕事の仕方については厳しく見ているということでございまして、そのやり方の中でおのずと透明性あるいは運営が適切であるということが確保されているというふうに考えます。
 日本政府といたしましても、日本がメンバーになっている、加盟をしている国際機関のほとんどについては、それが世界銀行であれあるいはユネスコであれ、運営のあり方については厳しく意見を言っているわけでございます。
土田委員 外務省の悪い癖が僕はそこにあると思うんですが、今回の外務省疑惑が出て、たくさんあったわけですが、それに対する対応策は、外務省は、話が表に出たこと、あるいはリークされることによってばれてしまったこと、それに対してしか対応しないんですね。たまたまこの支援委員会とか日露青年交流委員会、これについては今大臣も答えましたけれども、あとはうまくいっていますというふうに言うだけでございまして。だって、チェックされていないんですから。会計検査がされていない。会計監査はされているかもしれませんけれども、会計検査はされていない。理事会でうまくやっているというふうにおっしゃいますけれども、この支援委員会も日露青年交流委員会も、一度も委員会を開いていないんですからね。
 こういう実態が既に明らかになっているということならば、表に出た話については対応するけれども、ほかのことについては対応しないという態度は、ますますこういった悪さが温存されていくということになりはしないかなと私は思うんです。だから、この二十六ある機関の中で、これがいわゆる治外法権化してしまっているわけでございますので、具体的なことを決めていかなきゃならないというふうに私は思いますよ。
 そこで、自民党の改革案でも、今話が出た二つの委員会や、あるいは日本・ベラルーシなどもやめてしまう、業務執行はJICAに移行するというような提案がなされているようでございますが、これはやはり部分的なことでございまして、全体的な今後の国際機関のあり方、これについてやはり一度まとめて整理して方向性を示さなきゃならないと思っているんです。これについて大臣の見解をお聞きしたいと思います。
川口国務大臣 国際機関、さまざまございまして、委員が今おっしゃった二十六というのは、行政取り決めに基づく国際機関、これは二十六ございますので、これのことをおっしゃっているのかなと思っておりますが、これ以外にも、先ほど申しましたユネスコですとか、数多くの国際機関があるわけでございます。
 それで、このすべてについて外務省が関係して、外務省の専管であるということではございませんので、それぞれ関係省庁あるものがございますけれども、先ほど委員が、外務省は問題が指摘されないとそれに対して調べないというふうにおっしゃられましたけれども、一般論として国際機関について言いますと、それは中で、先ほど申し上げたような予算執行が適切に行われているかということを理事会でチェックいたしますし、それから監査というのもやっているわけでございまして、それは国際機関それぞれがきちんとその組織の責任においてやっているというのが通常の姿でございます。
 支援委員会といった非常に問題なケースはもちろんあったわけでございまして、これについて適切に今改善をしていかなければいけないということは、先ほど申し上げたとおりでございます。
 それで、外務省は、御指摘があったものについては、これは調べますということを私申し上げておりますし、また、御指摘のなかったものについても、実は支援委員会との類似性が非常にある可能性があると思いまして、こちらで調べますと申し上げたのが日露青年交流委員会。これは、支援委員会といいますか、北方四島の住民支援等についての報告書を出させていただいたときに私からそういうことを申し上げておりまして、これについては今調べているところでございます。
 それ以外のことにつきましては、もちろん何か具体的に問題があるという御指摘がございましたら、そこについては調べさせていただきたいと思いますけれども、これは理事会あるいは国際機関との政策協議等の場でその執行の適切性はチェックをしているわけでございます。
 それから、我が国の会計検査につきましても、これは外務省が関係する部分については、外務省に対する会計検査の中で、あわせてその拠出金を出した国際機関についてのお話を聞かれるということもあるわけでございます。
 ですから、先ほど申しましたように、何か問題があるという御指摘があれば、そこについては調査をさせていただきたいと思いますけれども、一般的には国際機関は、おのずから透明性を持ち、みずからチェックをする機構が働いて機能しているということであると思います。
土田委員 ODAの問題に入ります。
 この外務省所管のODAで、鈴木宗男さんが随分いろいろな分野で関与していたんじゃないかというふうな話がありました。去年、ケニアのソンドゥ・ミリウダムを見に行ったときに、鈴木さんも私も一緒だったんですが、日本工営の現場所長さんがずっと同行してくれて説明をしたんですが、鈴木さんが随分このODAについて詳しいな、あるいは、請け負っていたのが日本工営で、それから施工していたのが鴻池組で、そういった方々とも随分具体的な話もされておりましたし、非常に親しくされておったというようなイメージを私は持っております。
 だから、年間一兆円も使うようなODA予算について、やはり不正がないように、鈴木さんがあったと言っているんじゃないですよ、不正がないようにしなきゃならないというふうに考えるのが当然でございまして、ばらばらにやらないで、やはりODA予算は一括して、一元化した方がいいという提言が以前もございましたね。省庁再編成のときに一元化すべきだという意見があったわけでございますが、私もやはりこれについては、外務省の手から離れて、あるいは連携をとりながらでもいいんですが、効率性と透明性という観点からは、外務省から離してやって一元化した方がいいように感じるんです。
 この点については、大臣はどういうふうに考えていらっしゃいますか。
川口国務大臣 まず、ODA予算について効率性と透明性を高めるということについては、私は大賛成でございます。
 私の「開かれた外務省のための十の改革」におきましても、これは一項目として挙げさせていただいております。それから、外務省の第二次ODA改革懇談会という場で御議論をずっといただいてきておりまして、この点については最終報告の中で、ODA実施の透明性、効率性の向上について有益な御提案をいただいておりますし、この提案の一つであるODA戦略会議を設置するということについては、早速これを行うことといたしまして、私自身がこれの議長といいますか座長といいますか、それを務めることにさせていただいているわけでございます。
 したがいまして、ODAにつきましては、今さまざまな試みをやって、さらなる効率性、透明性の向上には取り組んでいます。
 それで、それでは今のODAに透明性、効率性がないかというと、実際のところかなり透明性は上がってきていると私は考えております。具体的に申し上げますと、例えば案件選定をするときの透明性の向上ということでいいますと、円借款の候補案件リストは公表をいたしております。また、無償資金協力における案件選定のための調査報告を入札後に公表するということをいたしております。
 事業を実施するという面でいいますと、入札が適正に行われたかどうかということについては、実施機関が厳正にチェックをしております。また入札結果については、応札業者名、応札額も含めて公表をいたしております。さらに、不正行為が行われた場合における罰則を決めまして、これを実施いたしております。
 評価はどうかということですが、評価面では既に、事前から事後に至る一貫した評価プロセスの確立を目指しておりまして、外部有識者評価フィードバック委員会というのを立ち上げております。新たな、あるいはより適切な監査手法の導入については、検討を開始したところでございます。
 委員が一元化というふうにおっしゃいましたけれども、一元化の意味するものが何かということでございますが、今、ODAについては外務省が予算の大体半分ぐらいを持っておりますが、恐らく全部と申し上げていいかと思いますが、全部あるいは全部に近い省庁がそれぞれODAの予算を持って、それぞれこういった観点でODAの実施を行っているわけでございます。
 これを一つにまとめる方が透明性それから効率性という観点でいいかどうかということについては、私はさまざまな議論があり得ると思っております。その方がいいという考え方もあると思いますし、また、幾つかの官庁が関係をしていた方が、例えば円借款ですと、四省庁体制ということで、まだそういう形が残っておりますけれども、四つの省庁の目が光っている方が、より透明性は達せられるという考え方もあると思います。
 したがって、どの組織が何をやるにいたしましても、やはり大事なことは、透明性、効率性がきちんと確保されているというような制度になっているということでございまして、外務省としてはそういう観点で、先ほど申し上げた、既に確保されている透明性、効率性に加えて、新たに今さらに改善を目指して取り組んでいるということでございます。
土田委員 私は、今の大臣の発言は賛成できませんね、やはり反対ですね。それは、各省庁に配分されたODA予算が、例えば四つあれば四つのチェックが入るんだということは、僕は、実際は、現実は違うと思いますよ。今の役所の縦割り構造を見ていますと、そんなに四者でチェックする体制にはなっていない。
 あるいは、外務省はちゃんとやっています、透明性は高まっていますと言っていますけれども、一番信用できないのは外務省ですよ。世間はそう見ているんですよ、大臣。この前も、タウンミーティングでもそういう話が出たんじゃないですか。今までさんざんうそを言ってきたんだもん、プール金つくってきたんだもん。金をごまかしてきて、書類は出さない、外部については公表しない、こういったことばかりやってきた外務省が、今はうまくいっています、透明性は上がってきていますと言ったって、だれも信用しませんよ、そんなの。
 外務省改革というのは、大臣が、意識を変えるんだ、職員の意識を変えることが先だというふうにおっしゃったそうですが、職員の意識というのはそんなに変わるものじゃないと思いますよ。人間の意識がそれだけ変わるんだったら、人類はもっと立派になっていますよ。なかなか変わらない。社長が朝礼で毎朝意識を変えろと言っても、どこも会社変わらないんですよ。
 では、何をするかというと、そこで機構改革をやるなり人事を大胆にやるなりして、そういったことを通して意識は変えていかなきゃ変わるものじゃないですよ。だから、今の外務省がそういったことはやらないで、私は外務省改革はできると思っておりません。
 確かに、外務大臣の仕事を見ていますと、忙し過ぎるなという感じはするんです。外交もやらなきゃならない、勉強もしなきゃならない、国内的なこともあるし、もちろん国会もある。だから多分、大臣は、外務省の幹部といろいろ改革について意見交換したり、説明したり、あるいは幹部だけでなく若手からも意見を聞くような時間がないんじゃないかという気が僕はするんですよ。あるかもしれませんけれども、そんなにないんじゃないか。
 河野大臣から田中大臣になって、そして川口大臣になったんですが、私は、外務省というのはやはり変わっていないというふうにしか見えない、どうしても見えないんです。だから、いろいろな、意識改革をしなさいというふうに言ってやるけれども、ほとんど機構も変わらない、人事も大胆に変わっていないというふうに思えて仕方ないんですね。
 大臣だけがオールマイティーじゃないわけでして、一人でできるわけじゃないので、それこそやはり、副大臣の方がいらっしゃる、あるいは政務官の方もいらっしゃる、川口チームとして外務省に入って、役人じゃない立場で外務省改革をしなきゃならないという熱意がだんだん大臣は薄れてきているんじゃないかという気がするんです。就任当時から比べても、国会答弁をずっと聞いておりましても、何か役人の気持ちに戻っておられるんじゃないかという気がしてならない。
 副大臣にちょっとお尋ねしますが、今の外務省改革といいますか、川口大臣が取り組んでおられるわけですね。変える会をつくった。外務省の職員の中で今度は変わる会をつくったというふうに話を聞いていますけれども、本当に外務省を変えようという雰囲気は省内にあるんですか。
植竹副大臣 今土田委員のお尋ねでございますが、私は、河野大臣のときは存じませんが、田中大臣からずっと見てまいりました。それを見ますと、あのときは改革会議から提言がありまして、それを踏まえまして外務省改革をつくりました。それで、三つのPTに分けまして、そして、監査とかロジ業務とかいろいろな点において改革してきたわけでございます。
 特に私は、副大臣に就任したときも1種、2種、3種と言われる方々からも、若い人からも意見を聞いておりますし、また、川口大臣が十の改革を推進するに当たりましても、若手からの意見とかそういう人たちの意見を多く取り入れまして、非常に意識が改革されつつあるということはあえて申し上げる次第でございます。委員がお話しのように、ちょっと眼鏡のかけ方が違っているんじゃないかとさえ思われるくらいに私は感じております。特に若手の方々については、最近非常に意識を持っておりまして、どうやったらいいかという提言をいただいております。また、大臣におかれましても、大臣室に、いろいろな方からの進言みたいな、そういう箱も設けまして、それをもとにやっております。
 ですから、スピードの問題は相当に進んでおりますし、先般の第五回の「変える会」におきましても、我々がやってまいりましたそういう提言も入れながらやっておることを申し上げさせていただきたいと思います。
土田委員 両副大臣とも政治家でございますので、ぜひ大臣をサポートしながら外務省改革に頑張っていただきたいと思います。月に一回ぐらい、やはり外務省改革について僕は質問いたしますので、ぜひ進捗状況もまた詳しく教えていただきたいと思います。
 ありがとうございました。
吉田委員長 土田龍司君の質疑は終局いたしました。
 次に、松本善明君。
松本(善)委員 外務大臣に伺いますが、きょうの外務委員会でも各党の同僚委員が、靖国神社を総理が参拝したという問題が重大な外交問題として取り上げられてまいりました。韓国や中国の大使が抗議に来たり、中国が防衛庁長官の訪問を拒否するとかいうような、アジア外交に重大な影響を与えたと思います。
 外務大臣にも相談せず、朝思いついてやる。何といいますか、衝動買いというのがあるけれども、衝動外交ではないか。衝動買いというのがあるでしょう、そう思ったらよく考えないでやる。本当に私は軽率きわまりないことだ。総理大臣というのは日本に一人しかいないんですよ。それがどういう行動をとるかということを、どういう影響があるかということを、外交を担当する外務大臣や外務省に相談もなく勝手にやるというのは、私は、総理大臣の資格を疑うぐらいの問題ではないかというふうに思います。
 外務大臣はこれに対して、今までの質疑の中では、何も総理に言わないそうでありました。総理の参拝を前提として、これ以上悪化させないように外交努力をしていくというような趣旨の御発言だったと思います。
 しかし、今、武力攻撃事態法というのが国会に提出をされて、そして与党はこれをこの国会中に成立させようとしている。もしそういうことをやりますと、私は、靖国問題と一体になってアジア外交はますます重大な事態になる、取り返しのつかないような事態になる危険性があると思いますが、外務大臣はこの問題についてどういうふうに考えていますか。法案が成立するというようなことになったら、これは靖国神社問題と一体になって重大な影響をアジア外交に与えるのではないか。あなたはそれをどう考えているかということです。
川口国務大臣 まず、靖国神社に総理がいらしたことにつきましては、これは総理は所感でもおっしゃっていらっしゃいますように、明治維新以来の我が国の歴史において、心ならずも家族を残し国のために命をささげられた方全体に対して衷心から追悼を行うということが目的であったと承知をしております。二度と悲惨な戦争を起こしてはならないとの不戦の誓いを堅持することが大事であるとおっしゃっていらっしゃるわけでございます。また、終戦記念日やその前後の参拝にこだわって再び内外に不安や警戒を抱かせることは私の意に反するところであるというふうにもおっしゃっていらっしゃいます。この二十一日を選んで参拝をすることによって、総理の真情を率直にあらわすことができると考えられたということでございます。
 私としては、中国、韓国との関係においては、未来志向の協力関係が両国との間で築けるよう外務大臣として努力をしていきたいと考えているわけでございます。
 その問題と武力攻撃事態対処関連の三つの法案につきまして、これはまさに総理がおっしゃっていらっしゃいますように、備えあれば憂いなしということでございまして、国の独立と主権、国民の安全、これを確保していくということは、私は国としての責務であると考えております。したがいまして、日本国憲法のもとで我が国に対する武力攻撃に対処する体制をつくっていくということは、これはまさに国としての責務だと考えております。
松本(善)委員 そういう認識だと、やはり大変ぐあいが悪いと私は思いますね。私は敗戦のときに海軍兵学校の最上級生で、あと半年戦争が続いていれば靖国神社に行くということになっていた年齢です。これは、あの侵略戦争を支える精神的支柱なんですね。靖国神社に祭られることが名誉なことだということが教えられていた。あなたも、御年齢からすれば多少は敗戦のときの記憶があるだろうと思うんです。
 外交問題を考える上では、これは、我が国は東京裁判を受け入れて、そして講和条約を結んだんです。これは全世界に対する公約なんです。そして、そのA級戦犯が祭られている靖国神社に総理大臣が参拝をするということは、いつであろうと侵略戦争を肯定するということなんです。今でも、今でさえも、アジア外交をもう一回やり直さなくちゃならない、侵略戦争の反省を明らかにしないと済まないんじゃないかという議論まで出てきておる状態であります。
 この武力攻撃事態法、あなたは関係ないと言いますが、韓国や中国、アジア各紙がこれに批判の論調を出しています。中国の人民日報が編集する国際ニュース中心の環球時報は、「小泉首相の靖国参拝」「内閣が有事立法案提出」「日本はますます危険な道に」と見出しを掲げて、この靖国神社の参拝を、一九九九年の周辺事態法から今国会の戦争国家法案の流れに位置づけて批判をしているんです。
 戦前は、国家総動員法が一九三八年にできまして、四一年に真珠湾攻撃なんです。
 私は、こういう法律ができていきますと、それは本当にアジアの皆さん方に深刻な影響を与えることは明白だと思う。そのことについてもう一回、最初御答弁されたことを繰り返すのならお断りです、お断りですが、そのことを本当に考えませんか。外国がそういうふうに、あなたが本意であるかどうかは別です、中国や韓国がそのような受けとめ方をする、もう既にしているんだけれども、そういうことについて真剣にあなたは考えませんか。伺いたいと思います。
川口国務大臣 政府といたしましては、小泉総理もおっしゃっていらっしゃるように、二度と戦争をしないという考え方、これの誓いを堅持するということが大事であると私は考えておりまして、その上で、近隣の諸国と未来志向の協力関係を結んでいくということのために、私としても努力をしたいと考えているわけでございます。
松本(善)委員 言っていることと行動が逆なんですよ。それが問題なんです。
 それで、外務大臣は安全保障会議の議員になるわけですね、今でもそうですけれども。だから、今度あの法案が成立すると、安全保障会議は九人です。基本方針については諮問をされるわけです。ですから、外務大臣の考え方というのはとても大事なんです。
 それで、安全保障会議の議員としての認識も聞きたいと思うんですけれども、防衛庁が毎年出しております「日本の防衛」では、米ソの対決のあった一九八九年版では、米国とソ連は太平洋を挟んで軍事的に対峙し、我が国に近接した地域において米ソ両国が厳しく対峙する状況になっている、このような極東ソ連軍の動向は我が国に対する潜在的脅威であるとして、この地域の軍事情勢を厳しくしている要因となっている、こういうふうにして、潜在的脅威としていたんですね。
 それがソ連の崩壊後、毎年毎年緩和をされてきてというか変わってきまして、二〇〇一年版の「日本の防衛」は、「第一章 国際軍事情勢」のトップに、「冷戦の終結に伴い、圧倒的な軍事力を背景とする東西間の軍事的対峙の構造は消滅し、さらに、ロシアの通常戦略は冷戦後大幅に低下し、全世界で軍事的に米国に対抗できる国は出現しておらず、冷戦期のような世界的な規模の武力紛争が生起する可能性は遠のいている。」
 外務大臣、現在の国際情勢の中で、我が国を武力攻撃する、そういうおそれがある、そういうことが予想されるというようなことがありますか。どういう国際情勢の認識をしていますか。
川口国務大臣 現在、我が国に対する武力攻撃の可能性が具体的に存在をすると私は考えておりません。ただ、我が国が、これは総理がさまざまな場所でまさに述べていらっしゃいますように、国の独立と主権、国民の安全と平和、これを確保していくということは国の責務でございまして、まさに備えあれば憂いなしと総理が言っていらっしゃるということはそういうことであると私は考えております。
松本(善)委員 具体的な脅威がないにもかかわらず、備えあれば憂いなしということでやるということになると、現在は必要ではない、必要になるかもしれないという認識だということになろうかと思います。国家総動員法などこの種の法案は、そういう言い方でできて、そしてすべて戦争につながっておるということを指摘しておこうと思います。
 具体的に一つ聞きますけれども、現在、ロシアの陸軍は太平洋から六千キロのウラル山脈東の全シベリアで七万四千人、陸上自衛隊の約半分しかおりません。太平洋艦隊で動ける水上艦艇は二隻と、極端に空洞化が進んでいる。これはロシアの軍事力が脅威になる可能性は全くないと思いますが、いかがお考えでしょう。
川口国務大臣 現在、我が国に対する武力攻撃のおそれが具体的な形で存在をしているとは考えておりません。
松本(善)委員 北朝鮮について聞きます。
 ロシア、中国が韓国と国交樹立をしています。韓国と北朝鮮の国力の差は、ほぼアメリカとメキシコほどに拡大をしている。北朝鮮の軍事力も衰えて、韓国が北の崩壊による自国経済への影響を恐れて、他国にも北朝鮮支援を頼んで回るありさまだ。この北朝鮮の国力、それをめぐる国際情勢をどう考えていますか。
川口国務大臣 まず、どの国がということではございませんけれども、現在、我が国に対して武力攻撃という意味で差し迫った脅威があるということは考えていないわけでございます。
松本(善)委員 もう一つ聞きましょう。中国について。
 台湾の軍事力の近代化は急激に進んでおりまして、過去五年で武器輸入は中国の四倍以上、海空軍の戦力差が拡大をして、議会で国防部作戦次長が、中共の台湾侵攻は根本的に不可能であります、こういうことを答弁する状況になっています。中国と台湾の軍事力など、中国の情勢をどういうふうに見ていますか。
川口国務大臣 個別個別の国についてということで申し上げているわけではございませんが、現在我が国に対して差し迫った脅威がある、武力の攻撃という可能性があるというふうには考えておりません。一般論として申し上げております。
松本(善)委員 そういうことであれば、これは徹底的に十分審議して、差し迫ったものではないので、国民のいろいろな意見を聞いて、慎重に、私どもは絶対反対ですけれども、慎重に審議をするという性質の法案ではないかと思いますが、外務大臣、どのようにお考えですか。
川口国務大臣 まさに備えあれば憂いなしと総理がおっしゃっていらっしゃるわけでございまして、日本国の憲法のもとで、我が国に対する武力攻撃に対処する体制を整えておくということは、国としての責務であると私は考えております。
 我が国がみずからの安全確保のために主体的に努力をするということは、我が国の防衛の重要な柱でございます日米安保体制への信頼性を増すということで、まさに我が国の安全を一層確かなものにするというものであると思いますし、国際協調のもとで我が国の安全を確保していく上でも重要であると考えております。
 また、こういった法制を整備するということは、我が国の対応についてより透明性を与えるということにもつながると考えますし、また周辺の国については、こういった考え方については十分に説明をしていく必要がありますし、いきたいと考えております。
松本(善)委員 急いでやる必要があるというような趣旨の答弁は全くないと、私の質問にはその点でのお答えはなかったわけですが、とにかく緊急性があるということは一言も言われなかった。
 そこで伺いますが、法案の中身ですけれども、これは安全保障会議の議員ですから、やはりしっかりわかっていてもらわなければならぬ。
 「武力攻撃事態への対処においては、日本国憲法の保障する国民の自由と権利が尊重されなければならず、これに制限が加えられる場合は、その制限は武力攻撃事態に対処するため必要最小限のものであり、かつ、公正かつ適正な手続の下に行われなければならない。」というのが第三条の第四項であります。
 自由と権利、我が国民の憲法で保障された自由と権利が制限される、しかし必要最小限でなければならぬ。そうしますと、必要度がうんと高くなれば、この最小限というのがどんどん拡大するんですよ。この歯どめは一つもありません、法案の中に。
 我が国の基本的人権は、永久に侵すことのできない権利として憲法上保障されています。それがこういう形で制限されているということについて、外務大臣はどのように考えていますか。
川口国務大臣 三条四項におきましては、まさに、日本国憲法の保障する国民の自由と権利が尊重されなければならないというように規定をされております。そして、これに制限が加えられる場合には、その制限は必要最小限のものであって、かつ公正、適正な手続のもとで行われなければならないというふうに、まさに規定がなされているとおりであると思います。
松本(善)委員 それは条文をお読みになっただけの話で、私の方が条文を読んで質問しているのに、一言も答えないわけですよ。
 私が聞いたことは、必要度が高まっていけば、この最小限度というのがどんどん広がるじゃないか。それで……(発言する者あり)当然だと言う。大変な事態ですね。
 戦前も、国民の、あの当時は臣民ですね、臣民の権利保障というのはありました。だけれども、法律の範囲内ということでありましたものですから、治安維持法などが猛威を振るったわけですよ。これが必要最小限という規定でありますが、歯どめがないということになりますと、これは重大なことなんです。
 あなたは、私が歯どめがないではないかということに対して、条文を読むという答弁しかできなかった。それは、私は事実上歯どめがないということを認めたというふうに言わざるを得ません。
 もう一つ伺います。
 自衛隊法百三条、これは、今までの法律で国民の物や人をいわば徴用できる、昔の言葉で言えば徴用です。今度は、公用令書というのを発動して、そういうことができるわけです。防衛出動時の業務従事命令が含まれて、医療、土木、建築工事または輸送を業とする者を動員するという。
 この処分のために、従事すべき業務、場所及び期間が公用令書に記載されて交付されることになっています。昔で言えば徴用ですね。ここで言う場所が地理的にどこまでの区域を指すかという問題。これは国内に限らない、条文上読めば外国へまでも従事が命令されるということがあり得る。条文上限界はないですね。伺います。
吉田委員長 防衛局長。
松本(善)委員 防衛局長、だめです。きのうレクをするときに、私はこう言いました、安全保障会議の議員なんだと。わからないというのならわからないと答えてください。それから私は、外務大臣の答弁ではだめだというときには防衛局長に聞くことがある、そういう意味で防衛局長が来るようにということを言ってあります。
 安全保障会議の議員としてあなたはどう考えているか、考えていないなら考えていない、わからないならわからないとお答えください。
川口国務大臣 内閣総理大臣が告示する地域であって、日本国の中に限るというふうに私は承知をしておりますけれども、細部については防衛局長に答弁をしていただきたいと思います。
守屋政府参考人 お答えいたします。
 この百三条は、日本の国が攻められたときに、国会の承認を得まして内閣総理大臣が防衛出動という命令を発しまして、自衛隊の部隊が行動する際に起きる問題でございます。
 どうしてこういう問題が起きますかといいますと、自衛隊の部隊というのは駐屯地におります。ですが、こういう武力攻撃の起きる場所というのは駐屯地の近くとは限りませんので、そういうところに自衛隊の部隊が出ていきまして、守るために、自衛隊の部隊を展開させる土地を使用する必要があるわけでございます。
 その場合は……(松本(善)委員「限界があるかと聞いているのです。外国とか国内とか」と呼ぶ)外国に行ってそういうことをやることは全く考えておりません、百三条は。
松本(善)委員 考えていないと言うけれども――もういいよ。考えていないと言うし、それから外務大臣も、お答えを聞いても、これに限界があるんだという答弁ではないのです。
 これは条文上からすれば、外国へもあり得る。法律上、そういう限界は一つも書いていないのです。そういうことについて、いや、限界がありますという答弁がなかったということをはっきりしておいて、私は次の質問に移りたいと思います。(発言する者あり)答弁はさっきしたじゃないか。だから、私はちょっと時間の関係で、委員長が延ばしてくれるというのならやるのはいいですよ。
吉田委員長 いや、そうはいかないけれども。だけれども、それは松本委員の見解ですから。
松本(善)委員 それで終わります。
 それで、日ロ青年交流事業について聞きます。
 日ロ青年交流事業で、二〇〇二年二月末現在、七十九グループで約一千百人のロシア人が来日をして、七十九グループのうち五十二グループが鈴木氏を表敬訪問しております。
 このうち、鈴木氏との会食まであったと聞いておりますが、鈴木氏との会食は何回あったのか。この会食の費用はだれが負担をしたのか。交流委員会持ちが何回で、鈴木氏持ちが何回か。また、ことしに入って鈴木氏と会食したのはいつか。これを欧州局長から聞きたいと思います。
齋藤政府参考人 お答えいたします。
 平成十四年二月末現在で、招聘しておりますグループ七十九グループ、合計千百三十人でございますが、このうち、鈴木議員と会食を行ったのは三十九グループ、四十四回でございます。
 また、表敬及びインタビューを行った回数は、御指摘のとおり五十二回でございます。
 本年に入ってから二月末までの招聘回数は四回、鈴木議員への表敬回数は三回であるというふうに承知しております。
松本(善)委員 なぜ鈴木議員を表敬訪問する日程を組むのか、大変疑問であります。
 この間参考人としてお呼びした高野支援委員会の事務局長は、私の質問に、日本政府の交流委員の指示があったからだというふうに答えました。日本政府の交流委員とはだれですか。
齋藤政府参考人 ロシア交流室長のことを高野事務局長は指して言ったのだろうと思います。
松本(善)委員 外務省から聞いたのでは、丹波實在ロシア日本国大使、小池孝行日本外務省ロシア交流室長、川端一郎在ロシア日本国大使館参事官、こう外務省から事前に聞いていますが、違いますか。
齋藤政府参考人 交流委員会を構成しているメンバーは、日本側は先生今御指摘のとおり三名でございます。また、これに呼応する形で、ロシア側も三名おります。
松本(善)委員 やはり、高野さんの陳述とそれから今の答弁を聞きますと、外務省の幹部が鈴木議員の表敬訪問を指示したということなんです。
 しかも、一月になってからも表敬訪問しています。一月に入って、アフガニスタン復興会議のNGO参加拒否問題が浮上して、鈴木議員の介入が大きな問題になった時期。にもかかわらず、私どもが外務省から調べたのでは、一月二十三日、一月二十五日、二月七日、二月十三日に鈴木もうでをやっている。
 大臣、これは、本当に情けない、鈴木さんの外交の私物化というか、そういうものだと思うのですね。私は本当に遺憾な事態だと思います。外務大臣、今の事実を聞いてどう思われますか。
川口国務大臣 一人の方に偏っているということはそういうことであったというふうに、私も数字を聞いて感じました。
 この交流委員会のあり方につきましては、今、中で調査をいたしておりますので、そういった過程で、どういうことであったのかということは私も聞きたいと思っています。
松本(善)委員 日露青年交流委員会でのロシア人の招聘というのは、鈴木もうでだけでなくて、この招聘事業を鈴木氏が私物化したと思われる問題がほかにもあります。外務大臣にも、よく調査をして考えてみたいということですが、お話ししておきましょう。
 訪日したロシアの青年たちに渡されたパンフがあります。これは外務省からもらっている。このパンフによりますと、その表題は、大きな活字で「日本」と書かれて、その下に「訪日ロシア青年代表団のための案内」と書かれている。中身は主要都市の観光案内、こういうパンフが配られている。
 このパンフの中に、「日本の主要都市についての情報」の中の一つに、東京の赤坂の紹介がある。赤坂の由来を注釈して、主に赤坂の飲食店を地図上で案内したもの。ここには三十三のお店が紹介をされている。サントリー映画博物館や旭屋書店を除いて、三十一店すべてが飲食店です。飲食店の中では、鈴木宗男氏と関係のあると言われている同一女性が経営しているステーキ店「大友」と、バー「和」の店まで紹介をされています。
 このパンフがあることは外務省から聞いているんですが、外務大臣、こういう鈴木氏と関係のある特定の店までも紹介をしたパンフがロシアの青年に配られている。これはもう本当に異常な、完全な私物化ですわ。外務大臣、この事実を聞かれてどう思われますか。
川口国務大臣 特定の飲食店が鈴木議員と特に深い関係がおありになったかどうかについては、私はちょっと、全く存じませんので、コメントは控えさせていただきたい。
松本(善)委員 これは広く報道されているんです。もしそれが事実であるとすれば、重大だと考えますか。
川口国務大臣 全く確認を私はできておりませんので、お答えは差し控えさせていただきたいと思います。
松本(善)委員 では、パンフレットが存在するかどうかだけ欧州局長に聞いておこう。
齋藤政府参考人 この御指摘のパンフレットは、二〇〇〇年の二月に、日露青年交流センターがロシアから招聘されてまいるグループの人たちのためにロシア語で作成したパンフレット、このことを先生指しておられるんだろうと思います。
松本(善)委員 パンフレットの存在は認められましたが、外務大臣、私が言っていることは、巷間広く言われています。今、交流委員会の仕事をもう一回調査し直さなくちゃいかぬということも言われましたが、この点も調査されますか。
川口国務大臣 パンフレットに特定の方の写真が載っていたというのは、これは政府のお役職にあったときの写真であるわけでございますので、特に問題はないのではないかと私は思っております。
松本(善)委員 外務大臣、外務大臣はどうしてそういうふうに鈴木議員のやっていたことを、私はもう本当に異常だと思いますよ。それを何で、今はコメントしないという答弁から、むしろ弁護の答弁。どういうことでしょうかね。私は、もう極めて遺憾に思います。
 それから、もう一つお聞きをしたいんですが、鈴木氏の圧力がいろいろな形であらわれておりますが、日露青年交流委員会の事務局長の人事。
 報道では、九九年当時、外務省のOBの支援委員会事務局長が一時的に交流委員会の事務局長も兼ねていた。このOBの後任として、九九年の夏から秋にかけて帰国をした前大使の中から、支援委員会に前バングラデシュ大使、交流委員会には前モンゴル大使を充てることが内定していた。ところが、鈴木氏に相談したところ、それぞれ問題があったとして難色を示した。このために、同省は内定を取り消して、コンゴ大使だった高野保夫氏に両委員会事務局長を兼務する形で就任させたと報道をされています。
 この間の高野氏の参考人質疑でも、本当に、まさに鈴木氏に従属するような状況だったということが答弁の端々に見られました。
 事務局長人事をめぐって、外務省が九九年、鈴木議員の意向を受けて当初の内定案を変更していた。強い影響力があったことを示すと思います。この両委員会事務局長に高野氏がつく前に、支援委員会、日露青年交流委員会、それぞれの事務局長に別の人が内定していたんではないか、それを取り消した事実があるのか、これを外務大臣、お調べになったことがありますか。――外務大臣に、お調べになったことがあるかということをまず聞いております。
川口国務大臣 私が聞いておりますのは、ある内容、ある人を考えている段階で、それについて否定的なお話があったということは聞いておりますけれども、といって、この人がいいという形での関与はなかったというのが私の理解でございます。
 なお、私の記憶違いがあるといけませんので、欧州局長から答えさせたいと思います。
齋藤政府参考人 高野事務局長の人選に先立ちまして当初検討をしておりました事務局長候補につきまして、先ほど大臣から御答弁ございましたように、鈴木議員の方から否定的な意見の表明があったという経緯がありましたことが判明しておりますけれども、高野氏の人選について鈴木議員の方から働きかけがあったということは承知しておりません。
松本(善)委員 これもやはりきちっと調査をすべきだろうと思います。
 先ほど来のお話もありますが、こういう状況というのがもういろいろな形で各同僚委員からも指摘をされているという状態です。日露青年交流委員会のさっき申し上げましたような異常なやり方、鈴木氏のやり方は、やはり社会通念上あってはならない不透明な関係があった、こう言わざるを得ないと思います。交流委員会のあり方そのものを、これは廃止も含めて再検討すべきであると思いますが、外務大臣は今、この日露青年交流委員会についてどのようにお考えですか。
川口国務大臣 調査の結果を待っているところでございます。
松本(善)委員 いつごろその調査の結果が出るようになっておりましょうか。
川口国務大臣 私はできるだけ早くと思っておりますけれども、いつということで私から申し上げられる段階にはないと思います。
松本(善)委員 やはりこれだけ国会で問題になっているわけですから、そんなのんびりするわけに私はいかないんじゃないか。やはり期限を切って調査をして、廃止するなら廃止すると。私は、そういうことをきちっとやらないと、何回も何回も外務省改革の問題が議論されていますけれども、実質が出てこなければだめだと思うんですよ。やっています、やっていますでは、だめだと思います。これについて、期限を切って調査結果を求めるという考えはありませんか。
川口国務大臣 できるだけ早く出してもらいたいと考えております。
松本(善)委員 北方四島支援事業やロシア人道支援事業なども実施をしてきた支援委員会、これもムネオハウス、ムネオ号など、鈴木宗男議員の深い関与と、それから社会通念上あってはならない異常な数々の疑惑が、我々も指摘をしてきましたし、本委員会でも指摘をされました。支援委員会についても、そのあり方そのものを、廃止を含めて再検討すべきではないかと思いますが、外務大臣、どのようにお考えですか。
川口国務大臣 支援委員会につきましては、今まで国会で御答弁申し上げていますように、今、専門家の委員会をつくりまして、そこで、北方四島の住民支援あるいはロシアに対する市場化支援のための技術支援、それからロシアに対する人道支援、こういった仕事をするのに、何がどういう組織でやるのがいいかということ、あるいは何を改めたらいいかということについて議論をいただいているわけでございます。
 できるだけ早く、私としては四月いっぱいを目途にこの報告を出してもらいたいと考えているわけでございます。
松本(善)委員 外務大臣の認識を伺っておきたいと思うんですが、日露青年交流委員会にせよ、北方四島支援事業、ロシア人道支援事業などに鈴木宗男議員の深い関与があった、そして、それは社会通念上あってはならないものであったというふうに考えているのかどうか、この認識を伺っておきたいと思います。
川口国務大臣 今まで、この前発表させていただきましたその調査によりまして、関与のあったもの、あるいは関与が確認をされなかったもの、さまざまな形がございました。それは報告書に書かれているとおりでございますけれども、関与のあったものについて申し上げれば、そのときに私が申し上げたように、社会的な通念から見て異例であるという形はあったと思います。
松本(善)委員 もう少し確かめておきますが、その中には日露青年交流委員会、その後も国会での論議はどんどん進んでいろいろな事実が明らかになってきているわけですね。日露青年交流委員会、北方四島支援事業、ロシア人道支援事業、やはり社会通念上あってはならぬことがあった、だからこそ調査をしているんではないか、だからこそ私は廃止を含めて検討すべきだというふうに言っているんですが、これらの事業についても社会通念上あってはならない異常な事態があったというふうな認識ですか。
川口国務大臣 この前の調査の中には、日露青年交流委員会あるいは日ロ青年交流については含まれていないわけでございます。
 私が先ほど申し上げましたのは、この前調査を行ったもの、すなわち北方四島住民支援のうち国会で御指摘のあったもの、それについての調査でございます。したがいまして、全部が含まれていて、それで先ほどのことを申し上げたわけではございません。あくまで、調査をした対象のうち鈴木議員の関与が認められたもの、確認されたもの、そういうことでございます。
松本(善)委員 時間が終わっていますので終わりにしますが、今の答弁だと、やはりあのときの外務省の報告から一歩も前進していないわけですよ。この国会で、この委員会で何遍この鈴木議員の問題が各党の議員から指摘をされたか。そういうのは何か逆戻りをして、あの調査委員会の結論だけで物事をやっていくと。
 そうすると、先ほど来議論が起こっていますけれども、外務委員会の存在意義をあなたはどう考えているんだろう。そのときそのときを答弁で過ごしてくればそれでいい、それは局長クラスならそれでいいですよ。しかし、外務大臣なんですよ。ここの委員会で問題になったことをやはり受けとめて、では、どれは実施していくか、どれはやっていくか、そういうことがなければ外務委員会で何遍議論したって意味がないのですよ。
 私は、やはり外務大臣の国会に対する姿勢、それから外交についての責任感、これをしっかり持ってほしいということだけ言って、質問を終わります。
吉田委員長 松本善明君の質疑は終局いたしました。
 次に、東門美津子君。
東門委員 社会民主党の東門です。よろしくお願いいたします。
 けさの民主党の桑原委員の質問の中に、在韓米軍基地の返還についての質問がありました。報道では知っておりましたけれども、きょう改めて質疑の中で感じたこと、我が国政府、外務省と韓国の関係者の方と大きな違いというのを感じたような気がいたします。
 今後十年間で五〇%以上の米軍基地を返還するということまでこぎつけていった皆さんの努力、大変だったと私は思いますが、やはり国民の声にしっかり耳を傾けて、生活を見ながら、政府として何をしなければいけないかということをしっかり道をつけてきたものの成果だと私は思います。
 それに対して大臣は、日本の国土面積に占める米軍基地の面積は〇・〇八%、それに対して韓国は〇・二%、そういう問題もあるのかというようなコメントがございましたけれども、大臣、沖縄県に占めている在日米軍基地、これは施設・区域ですね、沖縄県全体で何%で、沖縄本島だけだと何%だと思いますか。それはもう御存じだと思いますので、まずそこからお聞かせください。――いえ、これは大臣にお聞きしたいと思います。通告はしてありません。しかし、これは朝の質問と、これまで席にいて、もう既に三カ月にもなっていますから。
川口国務大臣 ちょっと私の記憶の混乱を確認いたしておりましたけれども、御質問の米軍の基地が沖縄の全土に占める割合というのは一〇・三%ということでございます。
東門委員 済みません、それで、本島ならどうですかと二つ質問をいたしましたけれども。全県と本島、両方聞きました。
川口国務大臣 本島における数字というのは持っておりません。
東門委員 残念です、とても。沖縄県に米軍基地が集中しているといつもおっしゃいます。その県民の負担はよくわかる、軽減に努めますと。そのときに必ず大臣の口から出てくるのは、七五%という施設が集中していると。それが県土に占める割合は約一〇%超ですね。それに対して本島はどれだけかといいますと、一九%なんです。沖縄本島の面積に占める米軍基地施設、その割合というのは約二〇%、一九%ということなんですよ。
 いかに沖縄県民が本当に過重な負担を負わされているか、私は、もう大臣はそれを既に御存じだと思っていました。というのは、常にそういうお話をなさるし、沖縄にもいらしたし、いつも話されるので当然のことだと思って、けさの在韓米軍基地から私はどうしても伺いたかったのですが、そういう沖縄県民であるということをまず念頭に置いていただきたいと思います。
 通告しました質問をさせていただきます。
 まず、フィリピンでの合同演習に関する問題ですが、一昨日、四月二十二日ですね、フィリピンでの合同演習に参加する在沖縄海兵隊の普天間基地所属のヘリなど五機が、給油のため下地島空港に飛来しました。それに先立って十七日には、副知事がグレグソン四軍調整官に対して、緊急時の使用以外は認められないということで使用自粛を要請したにもかかわらず、強引に米軍が押し切ったものです。
 報道された米海兵隊のコメントでは、自粛を求める県知事の要請を配慮しあらゆる可能性を探ったが、演習期限内に展開させる方法がなかったと言っているようですが、全く白々しいコメントだと言わざるを得ません。
 昨年も同じように、フィリピンでの演習に参加するためとして、県の自粛要請を押し切って米軍機が、民間空港である下地島空港そして波照間空港に強引に着陸をしております。演習などはあらかじめ日程が決まっているものであり、昨年の経験を踏まえれば、下地島空港を使わない飛行計画は十分に立てることができたはずです。毎年同じことを繰り返しているその背景には、下地空港など民間空港の使用を既成事実化させようとする米軍の意図が感じられると言わざるを得ません。
 昨年の本委員会でも私は質問しましたが、米国のランド研究所が下地島などの琉球諸島南部の軍事基地化を提言しており、その地ならしのためにこのようなことが繰り返されている可能性があると思います。米国がランド研究所の報告で示されたような方向に向かおうとしているのであれば、なし崩し的に沖縄全土が軍事基地化されてしまうおそれが十分にあります。
 四月十二日に、フィリピンのアブ・サヤフ掃討作戦に参加するための在沖米海軍工兵大隊の派遣が沖縄の前線基地化につながるとの県民の不安について私は大臣に質問した際、大臣は、フィリピンにおける米軍の活動と在日米軍の関係について申し上げる立場にないなどと、木で鼻をくくったような答弁を繰り返していましたが、このような背景を考えれば、我が国としても、フィリピンでの米国の活動に十分注意を払わなければならないはずです。
 米軍は、日米地位協定第五条により我が国の飛行場を利用する権利を認められていますが、それは、あくまでも緊急事態が発生した場合などに限られるはずなんです。沖縄には、先ほども申し上げました七五%の基地が集中しておりまして、これだけ基地で県全体を覆い尽くしながら、なおこの上、民間飛行場まで使うなどということは許されるべきではありません。
 政府は、米国に対し、このような形での米軍による民間空港の使用は断じて許されないと強く申し入れるべきでありますが、いかがでしょうか。そして、それが聞き入れられないのなら、地位協定第五条を見直すべきだと私は思いますが、大臣の見解をお伺いしたいと思います。
川口国務大臣 この件につきまして、四月の初めから、アメリカ側から外務省沖縄事務所及び那覇防衛施設局に対しまして説明がありまして、沖縄県を含めまして、その対応ぶりについては関係者の間で協議をしてきたわけでございます。
 委員がちょっと触れられましたように、沖縄県からは、県民感情も踏まえて使用の自粛と代替手段の検討の要請がございました。米側からは、この沖縄県の要請を受けて種々の検討を行ったけれども、最終的には、フィリピンに移動するヘリの一部である四機とこれらのヘリへの給油のための給油機一機については、往路、行きだけ下地島空港を使用せざるを得ないという判断をしたということでございました。
 これは、まさに委員がおっしゃられましたように、日米地位協定の五条によりまして、我が国の飛行場に米軍の航空機は出入りをする権利が認められているわけでございまして、今回の使用に当たりましても空港の管理者と所要の調整を行ったと承知をいたしております。下地空港についても、これまでも米軍機が利用してきたという実績もあるというふうに聞いております。ということでございますので、米軍の飛行機が、日米地位協定五条によって使う権利を持っているということだと私は承知をいたしております。
東門委員 私、今さっき申し上げました日米地位協定の五条は、確かに空港を使える、ただしそれは緊急事態が発生したときのみだというふうになっているはずなんです。緊急事態だったのでしょうか、それが一点。もう一点、沖縄県側からは使用自粛の要請があった、県民感情に配慮してほしいという要請があった、それに対して米軍側からはという二点を今大臣はおっしゃいました。政府はどうだったんでしょうか。外務省として、どこの立場に立ったか。この二点、お答えいただきたい。これは大臣にお答えいただきたいと思います。
川口国務大臣 日米地位協定第五条について、緊急事態のときに使うということだと委員はおっしゃられましたけれども、私どもの理解はそういうことではございませんで、日米地位協定五条で飛行場及び港湾を米軍が使用する権利が認められているのは、平素から米軍の円滑かつ効果的な活動を確保し、もって緊急事態の発生を抑止するためであるというのが私の理解でございます。
 ただ、政府としては、米軍が日米地位協定に従いまして我が国の飛行場あるいは港湾を使う場合には、地元との関係を考慮することが必要であるというふうに考えています。米軍の使用によりまして、民間航空機や船舶による飛行場、港湾の使用に支障が出ないよう、できるだけ影響を与えないように、従来から米軍に対して配慮を求めてきているわけでございまして、引き続き、米側には同様の配慮を求めていきたいと考えているわけでございます。
東門委員 今の大臣の答弁を聞いていますと、本当に沖縄全土、全島が何か基地化されても全然構わない、港湾であれ空港であれ、米軍は使う権利があるんだ、そして、県民の方から、県の側から要請があっても米軍の方が優先をするというふうにしか私には聞こえないんですよ。いかがですか。やはりそうなんでしょうか。
 軍事、いわゆる米軍基地、米軍の行動を、活動を円滑にする、これが最大の優先事項で、県民のそういう思い、戦後この方、基地と共生をさせられている、これは本当に好むと好まない、もう好まない中をと申し上げた方がいいかもしれません、国に押しつけられた、そして、こういうことに対しては常に配慮をしていただきたいということをお願いしてきても、政府の態度がこうであれば、本当に沖縄の基地の問題、私はこのままでは済まないのではないかと思います。大臣の今の御答弁、しっかりと私も覚えておいて、これからまたそういう活動面にも使っていきたいと思います。
 これからお尋ねする件ですが、事件、事故、いかに米軍基地のその重圧から住民が、県民が事件、事故に悩んでいるか、苦しんでいるかということ、大臣、しっかりと考えていただきたいと私は思います。前にも同じような質問をしましたけれども、今回もさせていただきます。
 先週金曜日の質疑で、米軍の綱紀粛正、事件、事故の再発防止について伺った際に、大臣は、三者連絡協議会や事件・事故防止のためのワーキングチームにおける協議を挙げ、米軍の方でも、教育プログラムの改善、生活指導巡回の拡大、基地ゲートにおける飲酒のチェックなどの方策をとっていることをかなり強調されたと私は覚えております。
 しかし、これらの方策は、昨年六月末に発生した米空軍兵士による女性暴行事件以前からも行われていたものであり、これらの措置では事件、事故防止に効果が上がらない、そういうことから、沖縄県は、三者協、ワーキングチームによる協議の場で、米兵の深夜外出禁止を求め続けてきたのです。それを米軍は拒否し続けているというのが現状であるということですね。
 このように、三者協では、沖縄県側と米軍側の意見が対立し、昨年以降、実質的な進展がない状況にあります。沖縄県の立場からすれば、米軍の現在の対策では不十分であり、新たな対策が必要だというのが共通認識になっているのに、川口外務大臣は、沖縄県の意見を無視し、米軍の主張のみを評価、そして、米国の主張する教育プログラムの改善、生活指導巡回の拡大、基地ゲートにおける飲酒のチェック、それを行っていれば対策として十分であると考えておられるのだろうなということを思ってきましたけれども、それで沖縄県民の、いや、日本国民の人権が守られると思っておられるのでしょうか。大臣、見解を伺わせてください。
川口国務大臣 東門委員が、私が米軍の権益といいますか関心だけを守っている、沖縄県民の懸念について配慮がないというふうにおっしゃられましたけれども、私自身は全くそういうことはないというふうに思っておりますということを、まず申し上げさせていただきたいと思います。
 それで、さまざまな、いろいろな試みが今行われていますということについては、この前申し上げたとおりでございまして、例えば三者協のワーキングチームのお話を申し上げたわけですけれども、その会合はきょうまた行われているところでございまして、今回は、米軍関係者の子弟による事件、事故の防止のための対策等について話し合われているところでございます。
 より詳しいことにつきましては、北米局長からお答えをさせます。
東門委員 大臣の最初のコメントなのですが、これまで私は、深夜外出禁止について二回ほど質問してきまして、そのたびに、大臣からの御答弁の中で私が感じたこと、そのまま率直に伝えさせてもらいましたということを、私も申し上げておきたいと思います。
 三者協は、沖縄県と、外務省沖縄事務所あるいは那覇防衛施設局などの国の機関と、それから在沖米軍のトップによる話し合いでありますが、沖縄県側と米軍側の意見が対立する、そういう中で、外務省や防衛施設局がどのようなスタンスなのか見えてこないというのが正直な実感です。
 昨年九月の報道では、橋本沖縄大使が稲嶺知事に対して、米兵の外出禁止の要求を取り下げてもらえないかと打診したとの指摘もあるのですよ。この報道は真実なのかどうかお伺いしたいし、外務省は、先ほども申し上げました、県民と米軍のどちらの立場に立っているのでしょうか、国民の権利そして米国の利益、どちらが大切だと思っているのでしょうかということをお伺いしたいと思います。
藤崎政府参考人 今委員が御指摘のような報道が行われたというようなことを私も耳にしたことがございますが、かかる働きかけを、沖縄事務所の所長でございます大使から知事に対して行ったという事実はないというふうに承知しております。
東門委員 局長、私、もう一つ質問していました。沖縄側の方に立っているのか、アメリカ側に立っているのかということが一点。
 それから、今、橋本大使はそのような事実はないということだったと、それは信じましょう。それに対して、では、皆さん、マスコミ、マスメディアには抗議をしましたか、これは事実に反していますよということを申し上げましたか。
藤崎政府参考人 これはかねてより委員にいろいろなところで御説明をさせていただいているところではないかと存じますけれども、国の立場と申しますのは、沖縄県民の多大な負担ということにかんがみまして、これをできるだけ軽減するという基本的な考え方がございます。同時に、米軍の行動の円滑化ということも重要な要素として考えなければならないところでございます。
 この三者連絡協議会につきましては、米軍の管理運営から生ずる問題ということにかんがみまして、県と国と米軍が共通の関心を有する事項に関しまして円滑な意見交換が行われますようにという観点で、三者で協議してきておりまして、これまでも既に二十二回開催され、事件、事故の防止その他の問題について有意義な意見交換を行ってきたところでございます。
 第二点で、間違った報道があったことについて抗議をしたかということでございますけれども、私は、その点については、申しわけございません、承知しておりません。
東門委員 報道は間違いで、その事実はないけれども、抗議をしたかどうかだけは知らないということですか、今のは。――はい、わかりました。それでいいです。続けます。
 米軍は、深夜外出制限、それを拒む理由として、米兵の人権を主張しています。そうなると、沖縄県民の人権はどうなるのでしょうかというのが私の素朴な疑問です。米軍が人権問題で深夜外出禁止ができないというのなら、米兵の犯罪容疑者は、いかなる犯罪容疑でも、直ちにその身柄を日本の警察に引き渡すようにしなければ、米兵の人権と県民の人権の権衡はとれないということになります。
 米兵がどれほど犯罪を引き起こしても、人権があるからといって、堂々と深夜徘回し、犯罪を犯したら、基地内に逃げ込み、知らぬ顔をする。県民は泣き寝入りをするしかない。これが本当に独立国の姿なのか。国民の基本的人権をこのように踏みにじられて、主権国家の外務大臣として、川口大臣は、本当に米軍が言っている対策だけで十分と考えておられるのでしょうかということを感じます。
 政府としても、沖縄県と歩調を合わせて、米兵の深夜外出禁止を求めるか、さもなければ、すべての犯罪容疑者の即時引き渡しを行うよう、地位協定の見直しもしくは運用改善、いつも外務省が言っている運用改善を行うか、いずれかの措置をとるべきであると思いますが、大臣、いかがでしょうか。これは大臣にお願いします。
川口国務大臣 夜間の外出制限についての議論の中で、委員が、アメリカ人の人権、それならば沖縄の県民の人権はどうだということをお考えになるお気持ちは私はわかりますけれども、ただ、これはまさにそれぞれルールがあってやっていくという話でございます。
 在日米軍犯罪者の身柄引き渡しにつきましては、これは日米合同委員会の合意によって、現在、殺人、強姦等の一定の凶悪犯罪について、我が国として重大な関心を有するものについて、起訴前の引き渡しを可能にする道を開いたということでございますし、また、米軍に起因する事件、事故、これは私は非常に問題があると思っておりますけれども、これは、先ほど申し上げたさまざまな場、例えば三者連絡協議会等の場、ワーキングチームの場、そういったところで議論をして、事態の改善をすべく、三者で話し合いの努力をしていくということであると私は考えております。
 それぞれの取り組みを行い、努力を行って、この米軍人あるいは軍属、その家族による犯罪及び事故が減っていくように努力をすべきものだと私は考えております。
東門委員 大臣がおっしゃる身柄の引き渡しの条項、あれは合同委員会の合意事項のことだと思うのですが、これはもうずっと前、七年前からのあれですね。それでも事件、事故は減らない。三者協でいろいろ対策を練っている、それでも事件、事故は減らない。それに対して、国はどうなんですかと。
 ですから、県は、深夜の外出を制限してほしいと申し入れる、それに対して国は何も動かないということを、私、この間から言い続けているのですよ。それに対して、政府としてどういうふうに対応なさるんですか、ぜひ申し入れてほしい、申し入れましたかと質問をしましても、大臣の答えはいつも同じで、そのことについては三者協でとか、種々の対策を練っている、それだけしか返ってこない。ですから、政府が本当に何をしているか見えないということなんです。
 私、本当に残念だと思います。大臣が外交の最高責任者として外務大臣のポストについて、私は在任中にこのことはやろう、このことだけはしっかりしようと、外務省の中の改革だけではなく、外交の責任者という意味でです、何かないのかなと。そういう中で、日常的に起こっている米軍人軍属、家族によるそういう事件、事故に対してどういう手を打てば本当に効果的かと。これを三者協に任せるとかワーキングチームに任せる、あるいは米軍の言うことだけを聞く、そういうものじゃないと思うんですよ。本当に、どういうふうに真剣に取り組んでいくかという、その姿勢が見えないということがとても残念だと思います。
 やはり日米安保体制がとても大事である、それは百歩譲ってそうだとしていいんですよ。でも、それなら、それを大事に堅持していくためには外交の場でどういう努力をしなければいけないか。米軍を喜ばせるために県民はどうでもいい、国民はどうでもいいということはないはずなんです。そういうところにもっと配慮していただけないのかなということを強く感じています。この外務委員会の質問のたびに思っていることだということをまず申し上げておきたいと思います。
 続いて行きますけれども、ことしの二月十二日に開かれた三者協において、稲嶺知事が、昨年まで三年連続で米軍人軍属等による事件、事故が増加したことを指摘して、米軍が深夜外出制限に応じない理由の説明を求めたのに対し、グレグソン四軍調整官は、零時前、いつも大臣がおっしゃるシンデレラタイムですね、零時前の帰宅励行や飲酒者のゲートチェックなどの措置で軍人の検挙者が減少したと主張して、これらの措置が実効性と公正さを確保できるとして、深夜外出制限を拒否しております。このグレグソン四軍調整官の説明は到底受け入れることはできません。
 沖縄県は、米軍基地が存在することによって発生する事件、事故、その防止を求めているんですよ。軍人の検挙者は減ったとしても、軍属、家族を含めた米軍構成員全体ではふえているという事実に目を向けてください。米軍基地は、軍属も軍人の家族も含めて機能しているはずであります。四軍調整官が軍人の行動にしか責任を負わないというのなら、じゃ、軍属や家族には本国に帰ってもらうしかないと言わざるを得ないじゃないですか。
 米軍構成員による犯罪件数も、平成八年から十一年までは五十件を下回っていますが、十二年は五十三件、十三年は七十件と大きく増加しております。七十件というのは平成七年と同じ件数であり、この平成七年に、SACOが設置されるきっかけとなりましたあの少女暴行事件が発生したんです。沖縄の全刑法犯に占める米軍構成員の割合も、平成七年以降は一%を下回っていたのが、平成十三年は一・三%と、七年ぶりに一%を超えております。
 沖縄県の米軍に対する不信、反感はあの平成七年の水準に近づいているということを大臣は認識しておられるのかなと、私、本当に気にしております。それでもなお、米軍の言うがままの効果の上がらない対策で十分だと考えておられるのか。私は、大臣の見解をお伺いしたいと思います。
川口国務大臣 三者協やシンデレラタイムのことばかり言っているとおっしゃられましたけれども、東門委員のお目にとまっていないというのは非常に私としては残念でございますし、意外でもございますが、例えば、三月十八日に、私は沖縄に参りましたときに、グレッグソン四軍調整官とお会いをいたしまして、委員が御指摘のこの米軍人軍属及びその家族の事件、事故のことにつきまして、四軍調整官にお話をさせていただきました。
 先ほど米軍人のことしか考えていないのかという趣旨のお話がございましたけれども、ちゃんと軍属、家族の問題も、特に最近家族の犯罪がふえておりますので、これは非常に重大な問題であると私は思いまして、四軍調整官については、米軍が引き続きよき隣人であるということが重要である、家族によるものも含めて事件の発生は遺憾であって、改めて綱紀粛正の徹底、事件、事故の防止をお願いしたいということははっきり申し上げております。これについては、当日の新聞にもキャリーをされていたかというふうに思います。
 いずれにいたしましても、委員がおっしゃられるように、この問題が特に、ほかのことに加えても県民の方の気持ちに与える影響は非常に大きいわけでございますし、実際に事件、事故が起こったときのその被害というのも大変に問題であるわけでございますので、引き続き私としても、極力委員のおっしゃる見える形で、これには取り組みたいと考えております。
 先ほど申し上げました三者協ですとか、今、本日開かれております会合等についてのより詳しいことについては、必要でしたら北米局長からお話をいたします。
東門委員 大臣が沖縄に行かれて、いや、早い沖縄訪問だったので、本当に私はすごく喜んでおります。そのときは申し上げたと思います。その中で、稲嶺県知事にお会いになり、グレグソン四軍調整官にお会いになり、普天間基地等も視察してこられたということは、報道でも見ましたし、大臣にもじかにこの委員会の場でもお聞きいたしました。
 今の大臣の御答弁も同じなんです。そのときからちっとも変わっていない。まあ振り出しに戻ったなと、きょうの質問の一番最初に戻ったなと思うんですが、グレグソン四軍調整官にこういうふうに申し入れました、はい、申し入れた、それはわかります。それが、どのように何を具体的に申し入れて、どういう返答が返ったかというのは一つも見えないんですね。それを見えないと言っているんですよ。
 お話ししましたかではないんです。それは、ハロー、ハウ・アー・ユーでもお話になりますよ、失礼ですけれども。それのたぐいもお話になりますよ。アポをとって行かれるわけですから、お話はあるでしょう。その中で大臣が具体的に何を要請され、どういう返答が返ってきたか、そしてそれに向けてどういう解決策で具体的に進んでいるかということをこれまでずっとお伺いしてきているわけで、そういうことが見えないということ。三者協だとかシンデレラタイムということは、それはずっと前から行われていることで、今改めてこれでやって、じゃここまで到達点を持っていこうという、決してそういう策ではないと私は思っております。
 もう時間がなくなるので急ぎますが、最後の質問になるかもしれません。
 この事件、事故がなくならない最大の理由、何だと思いますか。もうはっきりしていますね、答えは。沖縄に余りにも多くの米軍基地があるということなんですよ。基地というものは、その存在自体が非日常的なものであり、そこにあるだけで周辺住民に多大なストレスを与えるということをぜひおわかりになっていただきたい。
 本来、沖縄のような狭いところにこれほど数多く置いていいものではないはずです。前県政の大田知事はよくおっしゃっていました、本当に米軍基地がそれだけ大事なら、国民全体で応分の負担をしてほしいと。私もそのとおりだと思います。一県だけに押しつけているという現状、とても容認できないと思います。
 今のまま放置していまして、これ以上沖縄の基地に対する反感が高まり、平成七年を超えるような大規模な反基地運動に火をつけるようなことになれば、政府が大事にしている日米安保体制の存在自体が危うくなることだって十分考えられますし、これは今の沖縄の県知事、稲嶺さんもおっしゃっておられます、マグマがたまっていると。私は前にも申し上げました。沖縄の不満はもうその水準に近づいているということをぜひわかっていただきたいと思います。
 もはや政府の決まり文句であるSACOの着実な実施だけでは、県民の納得を得ることはできません。さらなる基地の抜本的な整理縮小が必要であります。このような状況を前にしながら、なぜ、政府は米軍に対し、基地の整理縮小について協議をしようとなさらないのか。日本が米軍に対して行っている支援の大きさを考えれば、交渉の余地は十分あるはずではないかと思うんですが、いかがでしょうか。
藤崎政府参考人 今、委員から、基地のさらなる削減ということを沖縄で考えるべきではないだろうかという御指摘がございました。
 沖縄県民の方々がこの基地問題で多大な負担を背負っておられるということは、まさに御指摘のとおりでございまして、私どもとしても、現在のままでいいということではございませんので、その観点から、とにかくSACOをきちんとやっていく、これが私どもに与えられた一番の仕事ではないだろうかということで、これは外務省だけではございませんけれども、御案内のとおり、九九年十二月の閣議決定にもございますけれども、内閣を挙げてこのSACOの着実な実施というのに取り組んでいるというところでございます。これは委員よく御承知のところでございます。
東門委員 済みません。私、時間を間違えまして、まだ時間があるようですから、続けます。
 SACOの最終合意の着実な実施だけではもうだめなんですよということを申し上げているのですね。この件については、もう少し時間があるときに、大臣に直接伺っていきたいと思います。
 地位協定の見直しの決議について、一点質問させていただきます。
 私は、四月十二日の委員会においても、この外務委員会で昨年七月に行った地位協定見直し決議について、大臣の見解をお伺いいたしました。そのとき大臣は、決議については、その趣旨を十分に尊重して努力していく筋合いのものと答弁をされておられます。その際、決議の別紙である沖縄県の要請事項についてもお伺いいたしましたが、大臣の御答弁は、沖縄県の要請がなされた平成十二年八月以前に既に措置された事項を述べられただけでした。
 沖縄県の要請は、大臣が答弁した措置では不十分である、それだけでは不十分であるから、それを改善するために地位協定の見直しを求めたものであるのですよ。そして、この要請は、昨年七月の本委員会の決議によって別紙として一体的に議決されたものであり、もはや沖縄県だけの要請ではなく外務委員会の意思であり、外務委員会が、この要請の内容も踏まえて事態の抜本的改善に取り組むべきであると政府に対して求めたものなんです。そして、大臣も前回の答弁で、その趣旨を十分に尊重して努力していくと答えておられます。
 そうであるなら、この要請で求められている各項目について、前回の答弁のように、既に六、七年前に措置されたことをもって決議にこたえているとは私はおっしゃれないと思うんです。新たに米国に対し何らかのアクションを起こさなければ、決議の趣旨には反すると思います。
 決議の趣旨を十分に尊重して努力していくために、外務大臣が今後とろうとしている措置、それについて見解を伺いたいと思います。
川口国務大臣 この決議につきましては、これは当時、田中外務大臣のときに出された決議でございますが、田中大臣からそのときに、決議の趣旨を体し事態の改善に鋭意努力をしていきたいという御表明がございましたし、また、先月の衆参両院の沖縄振興特別措置法の附帯決議に際しまして、尾身大臣から同じような御発言があったわけでございます。私も、田中大臣あるいは尾身大臣と同じ考えでございまして、これらの決議の趣旨を体しまして事態の改善に鋭意努力をしていきたいと考えております。
 具体的には、政府といたしましては、日米地位協定につきましては、その時々の問題につきまして運用の改善により機敏に対応していくことが合理的であるとの考えのもと、運用の改善に努力をしているところでございまして、今後ともかかる努力を最大限行っていきたいと考えております。
東門委員 大臣、いつも同じような答弁が返ってくるのはもう避けられないのかもしれませんが、運用の改善でうまくいっていない、機能していないからこそ申し上げているのですよ。運用の改善が、外務省、大臣がおっしゃっているように本当にちゃんと機能しているのであれば、本当にそれが有効であれば、私はこんな質問を何度もしないでいいと思います。運用の改善が有効でないということを私は申し上げているのですよ。それを本当に立ちどまって、本当にどうなのかということを大臣みずからがやはり検討していただきたい。
 これまで私は、この委員会で何度も似たような質問をしてまいりました。これからも多分し続けていくと思います。沖縄県から出てきた者として当然のことだと思っております。でも、今の日米地位協定は余りにも不平等であるということ、そして、その不平等から起こる不利益を、被害をこうむっているのは沖縄県民が圧倒的に多いということ、それをぜひわかっていただきたい。そこからの要請に耳を傾けるという大臣の姿勢を私は期待したいと思います。それもできないようなら、本当に日米安保体制とは何なんだ、本当にこれでいいのかと言わざるを得ないと思います。日米地位協定の見直し、これに一歩踏み込むぐらいの決意をして当たっていただきたいと私は思います。
 済みません、終わります。
吉田委員長 東門美津子君の質疑は終了いたしました。
 次に、中本太衛君。
中本委員 自由民主党の中本太衛でございます。
 先ほどから東門先生が、沖縄のみ米軍の基地問題があるということをおっしゃいましたけれども、実は、沖縄に次いでの基地県は我が神奈川県でございます。神奈川県は、昭和二十七年のサンフランシスコ講和条約が結ばれたときには、百六十二カ所、三十六平方キロの米軍の施設がありました。数は今でこそ十六カ所に減りましたけれども、それでも二十一平方キロの面積を擁しております。
 神奈川県では、もちろん有名なのは横須賀でございますが、その次に多いのが、私の地元でございます相模原市でございます。キャンプ座間、相模総合補給廠、米軍住宅、合わせて四・五平方キロの広さがありまして、市の面積に対しまして五%の面積を占めております。先ほど沖縄が二〇%という数字を出されましたけれども、それに比べれば低いかもしれませんですけれども、このような首都圏では異例の面積を占めていると思います。
 現在、相模原市の人口は六十一万人でございます。人口密度は何と六千六百人。大体、首都圏の米軍施設を抱えている都市は、多少の差異はありましても、ほとんど人口密集地であると思います。もちろん、以前はほとんど周辺には何にもなかった、人も余り住んでいなかった地域が、首都圏の膨張によりまして爆発的に人口が増加してしまった点があると思いますけれども、何とかこの首都圏から、本当に基地が必要なのか、決して田舎に置けばいいと言っているわけではありませんけれども、この人口密集地に米軍施設がとどまる軍事的な意味、必然性が本当にあるのかどうか、大臣にお聞きしたいと思います。
川口国務大臣 冷戦は終わりましたけれども、北東アジア、この地域においては、依然としてアジア太平洋地域全般に不確定性、不安定性が存在をしているわけでございます。我が国としては、米軍の駐留が我が国の安全の確保及びアジア太平洋地域の安定と安全に寄与しているという観点で重要だと考えております。
 御指摘の相模原市は、人口六十万人の中で、相模総合補給廠、それからキャンプ座間でございますね、さらに住宅というのも合わせますと、五%ぐらいの比率があるというふうに私も認識をしております。これらが重要な在日米軍施設・区域であるというふうに思っております。
 同時に、政府といたしましても、これらの施設・区域が安定的に円滑に使われていくということは大事でございます。施設・区域の存在と米軍の活動に伴って生ずる周辺にお住まいの方々との問題、この住民の方の理解、協力というのが大変に重要であると思います。したがいまして、米軍の活動の結果としての周辺住民への影響が非常に最小限になるように、政府としても今後とも努力をしていきたいと考えております。
中本委員 実は、相模原南部から大和市、綾瀬市、海老名市、この周辺は厚木基地の騒音に悩まされている地域でございます。実は、私の自宅の上空も、厚木基地の飛行機の離発着の航路になっておりまして、夜間飛行訓練はもちろんでございますが、また、昨年のテロ以降、夜中の三時だろうが四時だろうが、通告なしの離発着が行われております。
 もちろん、国家という観点から見れば、個人エゴであるとか地域エゴ、これは抑えていかなければならないわけでございますが、沖縄のように人的な被害と違いまして、物理的に都市部の機能を阻害しているのは確かだと思います。
 都市機能の充実や安全面を考えれば、都市部、人口密集地にある米軍施設は移転した方がより国土の有効利用が図れると私自身は考えます。都市部の高い土地を売って、より地価の安い地域に基地を移転すれば、工事費も賄えると思いますけれども、大臣、いかがお考えでしょうか。
川口国務大臣 都市部にあるかどうか、人口密集地域にあるかどうかといったことにかかわらず、米軍が活動するに当たっては、公共の安全をきちんと配慮するということは大事だと思っております。
 政府といたしまして、米軍の活動に起因する事件、事故に対する周辺の住民の方の御不安、御懸念については十分に承知をいたしておりまして、従来から米軍側に申し入れて、安全確保に万全の注意を払うように言ってきているわけでございます。アメリカ側も、この点については留意をしていると承知しています。
 いずれにいたしましても、この米軍施設・区域の移設の可否、それから適否につきましては、個々の施設・区域の目的、機能等に配慮しながら、慎重に検討されるべきものであると考えております。
中本委員 私、二つの質問をさせていただいたんですけれども、人口密集地になぜとどまる必要があるかという答えにはなっていないと思うんですけれども、それを明確にお答え願えないでしょうか。
川口国務大臣 まず、米軍が活動するに当たって、周辺の住民の安全に注意を払うということは大事であるということを一点申し上げさせていただいたわけですが、その上で、米軍施設・区域の移転の可否、それから適否につきましては、それぞれの施設・区域の目的や機能に着目をして慎重に検討をすべきである、されるべきものである、そういうふうに申し上げたわけです。
中本委員 相模総合補給廠について質問させていただきたいと思います。
 JR相模原駅というのがありまして、その駅前に、もう駅の真ん前でございますが、二平方キロの敷地を擁する相模総合補給廠があります。二年前に、保管されていたPCB含有廃棄物の移管で大変問題になった場所でございます。
 保管されている数量、種類等について、外務省は平成十二年の六月に地元自治体の相模原に対して説明を行いましたけれども、その後、情報提供がなされていない状況でございます。地元住民の不安を払拭する意味でも、早急に情報提供すべきだと考えますけれども、現在の状況を教えていただきたいと思います。また、二年もの間、米軍側が情報提供をしてこなかったのは何らかの支障があるのかどうか。外務省、お答え願えないでしょうか。
    〔委員長退席、中川(正)委員長代理着席〕
藤崎政府参考人 お答えいたします。
 相模総合補給廠のPCB物質保管についてのお尋ねでございます。
 これは今委員がまさに申されましたとおり、平成十二年の相模補給廠からのPCB物質の運び出し等に伴いまして、住民の方々が御不安、御懸念があるということで外務省等より照会をいたしまして、米側が発表を行いまして、これに伴いまして、平成十二年六月に、当時の状況についての説明を行った次第でございます。
 このPCB物質につきましては、私どもとしては、米側に対しまして常に厳重な保管ということ及びこの状況いかんということを照会しておりまして、現在、これにつきまして、先般受けました説明以降の新たな説明は受けていないところでございますが、米側としては、環境管理基準に基づいて安全かつ適切にPCB廃棄物を保管しているということは説明してきております。
中本委員 その保管を確認するために、相模原市が市の職員による立ち入りを要請しておるわけでございますが、現在までには実現しておりません。米国側と調整を行っているようでございますが、一体どのような状況になっているのか、お聞かせください。そして、米軍側は、環境調査のみであるにもかかわらず立ち入りを認めないのはなぜなのか、それもお聞かせ願えればと思います。
藤崎政府参考人 今委員御指摘のとおり、相模原市から基地への立ち入りの要望というのは寄せられているところでございます。
 米側といたしましては、私ども日本側と平成八年十二月に日米合同委員会の合意ということを立ち入り問題についてつくっておりまして、軍の運用や施設・区域の運営を妨げることのない限り、立ち入り申請に対して妥当な考慮を払うということになっているわけでございます。
 私どもといたしましては、相模原市の意向を米側に伝えておりまして、話し合いをしてきているというところでございます。今その状況の詳細について御説明を申し上げられませんけれども、相模原市の御意向は十分承知しておりまして、話し合いを続けているというところでございます。
中本委員 ぜひとも早期に環境調査の立ち入りをお願いしたいと思います。
 先ほどの質問来、大臣は、日米地位協定の運用の改善を検討されるというお話をされました。しかし、やはり運用の改善では重要時に約束がほごにされる可能性があると思いますし、根本的な解決にはならないと思います。海兵隊のいるような沖縄では、犯罪者の引き渡しなど事件、事故に関する問題の改定が必要と考えられますが、首都圏の米軍の施設では、例えば緊急車両の通行や環境調査の立ち入りなどの改定が必要不可欠だと思います。本当のことを言えば、周辺住民にとりましては、武器弾薬の種類までの確認を望む声もありますけれども、軍事的な意味合いからそれは無理としても、早々に改定できる点は積極的に行うべきだと思います。
 地域と共存共栄していく意思があるのであれば、これは大臣、日米地位協定の改定は沖縄だけの声でないことを御認識し、早期に実行していただきたいと思いますけれども、いかがお考えでしょうか。
川口国務大臣 在日米軍の施設・区域の存在が地域の住民の方に御負担をおかけしているということは、その集中が非常に大きい沖縄はもちろんのこと、沖縄以外の地域についても、地元の住民の方に御負担をおかけしたり、関係の自治体の方に御負担をおかけしたりということは私も承知をしております。
 政府といたしましては、かねてから施設・区域の安定的で円滑な運用を図っていくために、施設・区域の存在と米軍の活動に伴い生ずる周辺住民への影響が最小限にとどめられることが大事だと考えておりまして、また、可能な限り地元の住民の方の御理解、御協力が得られることが大事だと思っております。今後とも、こうした考え方に基づきまして、最大限の努力をしていきたいと考えております。
 日米地位協定につきましては、その時々の問題について運用の改善によって機敏に対応していくということが合理的であるという考え方のもとで、運用の改善に努力をしてきているところでございます。これが十分に効果的でない場合には、これは相手がありますので我が国だけで決定し得ることではございませんけれども、日米地位協定の改定も視野に入れていくということになるかと考えております。
中本委員 日米地位協定の改定につきましては、もう保守、革新関係なく、基地を抱えている地域の議員としてこれからも一生懸命やらせていただきたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。
 それでは次に、アメリカも含めたアジアの外交について質問させていただきたいと思います。
 昨年暮れ、私は、自由民主党の青年局数名で台湾に参りました。そのときの青年局長は、今政務官でいらっしゃいます水野賢一先生でございます。もちろんそのときも御一緒で、李登輝前総統、陳水扁総統とも会談をさせていただきました。
 政務官も、そのときのお話を覚えていらっしゃると思いますけれども、李前総統からは、中国に対して大変強気な発言があったと思います。独立であるとか二つの中国であるとか、これを盛んに主張されておりました。その自信の裏づけには、アメリカの対中国の政策の変化があったからだと思います。
 御存じのとおり、クリントン前政権は、中国に対し、台湾の独立を支持しないことを明言されました。しかし、ブッシュ政権は、その政策を放棄して、明らかに台湾の主権を認め、TMDの関与も含めて台湾寄りの政策を行い、前政権との差別化を図っていると思います。この中国、台湾の対立はアジアの緊張を高めており、遠いアメリカにとっては好き勝手なことを言っていればいいかもしれませんけれども、日本にとりましては大きな問題であることを認識しなければいけないと思います。
 また、先日、政権内で基盤の弱かった陳総統が民進党の党首になられたことも、また独立の論が高まると思われます。
 そこで、日本はどうするのか。日中共同声明、日中平和友好条約及び日中共同宣言を厳守するのであれば、あくまでも台湾は中国の一部として、内政問題として全く干渉しないのが本来ならば筋だと思います。しかしながら、共同声明が出されて以降も、閣僚の中にでさえ台湾の独立を支持する声がちょっとは聞こえてくるような感じがいたします。日本の政治家が台湾に行くと大歓迎をしてくれるわけでございますが、政治という観点から見れば、実にあいまいな対応を日本はしているような感じがすると思うのですが、政務官、いかがお考えでしょうか。
水野大臣政務官 中本議員と去年の十二月、私が自民党の青年局長だったときに何名かの若手議員で御一緒に台湾に伺わせていただいた、そしてそのときに、李登輝前総統、陳水扁総統などといろいろお話をさせていただいたというのは、委員御指摘のとおりでございます。
 李登輝総統の非常に強い信念というものもそのとき印象的だったわけですけれども、委員の御発言ですと、アメリカの政策変更というものが李登輝発言の背景にあったんじゃないかという御指摘ですけれども、私の印象では、どちらかというと、李登輝前総統の本省人としての今までの経験とか広い学識、深い学識というものに裏打ちされての発言だったのじゃないかなと思うわけです。
 アメリカのブッシュ政権になって態度が変わったんじゃないかという御指摘ですけれども、ことし二月のブッシュ大統領の中国訪問のときは、アメリカの政策に基本的に変化はないというふうにおっしゃっていますし、もちろん政権がかわったわけですから、ニュアンスの変化というものは微妙にはあるかもしれませんけれども、基本的には変化はないというふうに発言していますし、我々もそういうふうに認識しております。
 日本政府の立場としては、一九七二年の日中共同声明で、第二項だったでしょうか、中華人民共和国政府が中国の唯一の合法政府だという立場に全く変わりはない、そういう中で両岸の問題を平和的に当事者で解決をしていただきたい、挑発的なことはしていただきたくないというのが我々の基本的な姿勢でございます。
中本委員 アメリカという国はよくわからない国でございまして、台湾、中国の問題は内政問題と言いながら、政権ごとに明確な意思を出しているような感じをしております。そこで、余りにも日本があいまい過ぎるのではないかという質問をさせていただいたわけでございます。
 私は、先ほど申しましたとおり、神奈川の人間でございます。神奈川には、日本有数のチャイナタウンが横浜にあるわけでございますが、よく華僑総会の方といろいろとお話をすると、前の田中大臣のときは、華僑総会の皆さん方、大臣に対する誹謗中傷が大変大きかったような感じがいたします。
 そこで、政務官にお話を聞きたいと思いますけれども、日本にとりまして台湾という国家は存在するのかどうか。そして、これから外交政策としてどのような位置づけをして考えればいいのか。闘う政務官として自民党の若手から尊敬されております水野政務官、お答え願いたいと思います。
水野大臣政務官 今御質問あった件に関して、我が国としては、先ほど申し上げたように、七二年の日中共同声明において、中華人民共和国政府が中国の唯一の合法政府であるということを承認する旨を表明しておりますので、台湾の方を国もしくは政府という形で扱うことはいたしておりません。その点は一貫しております。
 ただ、もちろん、実務的なレベルで台湾との友好関係というものを深めていく、親善を深めていく、信頼関係を深めていくというのは基本的に極めて重要なことだと思っておりますし、そういう関係は今後も進展させていきたい、そういうふうに考えております。
中本委員 アメリカのアジア研究者の多くは明確に、北朝鮮の問題よりも中国と台湾の危機を最近は言及されております。
 これは本当に仮にの話でありますし、いろいろなシミュレーションがあると思うんですけれども、中国が台湾に武力行使を行った場合、日本はどのような行動をとられるのか。民主主義ということを旗頭に上げているアメリカはどういった行動をとるか、多分これは見えてくると思いますけれども、日米安保条約のもとアメリカに追従するのか、それとも日中共同声明を重視するのか、見解をお答え願いたいと思います。
水野大臣政務官 我が国としては、こういう問題に対して、仮定の質問にはなかなか答えがたい部分もあるんですが、ただ、基本的には、武力攻撃、つまり、今委員おっしゃった中国から台湾に対する武力攻撃というようなことはあってはならないことというふうに考えておりますし、双方が挑発的な行為を行わないことを期待し、そのための国際環境をつくっていくということに全力を尽くしていく、そういうつもりでございます。
中本委員 議事進行のために、これで最後の質問にさせていただきたいと思います。
 小泉総理のアジア外交は、私自身、非常にあいまいで無責任だったと思います。これは、自民党の総裁選挙のときに、李登輝氏の入国問題を総裁選挙の課題として掲げました。また、靖国神社の参拝の問題も総裁選挙の課題として取り上げました。その後、本人が淡々と行えばよかったものを、あえて政治的な問題にしてしまった。
 これはこれで構わないことかもしれませんですけれども、であれば、政治的な解決を本当に行ったかどうか。私は全く行っていないように思います。戦争責任の声におびえて、靖国の問題などは、きちんとアジアの諸国に対しての説明をすればいいのにもかかわらず、それを怠ってきた外務省にも私は責任があると思います。
 戦後の戦争を知らない私たちは、戦争責任に言及されること自体もう嫌になってきている。若手の政治家の皆さんも多分そのようなお考えだと思っております。若き政務官、どうか日本の意思を明確に伝えられる外交を行っていただきたいと思いますし、政務官のように強い意思を持った方にリーダーシップをとって外交を行っていただきたいと思いますが、いかがお考えでしょうか。
水野大臣政務官 今、靖国参拝のお話ございましたけれども、総理の靖国参拝については、先ほど来の質疑にもあるように、総理が所感で述べていらっしゃるとおりだと思いますし、我々もそういう形で理解をしておるわけでございます。
 アジア外交全般についてのお話ございましたが、もちろんこれは、近隣地域の安定や平和を図るということに全力を尽くしていくのは当然であります。しかし、その中では当然、近隣諸国にも言うべきことは主張する、日本の国益を踏まえながら、主張すべきは主張する、しかしその中で相互の信頼関係を図っていく、そういう原則で歩んでいきたい、そういうふうに考えております。
中本委員 政務官、これからも闘ってください。
 これで終わりにします。
中川(正)委員長代理 次に、丸谷佳織君。
丸谷委員 公明党の丸谷佳織でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。
 本日の外務委員会での議論を聞いておりまして、いろいろな観点からの議論、またいろいろな指摘がなされているというふうに聞いておりました。その中で、大臣に対しまして、例えば外交責任者としての責任感がないのではないかとか、外交姿勢がよくわからない等の厳しい指摘もなされましたが、私は、大臣就任以来、大変な中、本当によく尽力されているというふうに思います。
 大臣が環境相のときから、京都議定書に関しても非常に情熱を持ってまとめ上げるという仕事をなされてきた大臣でいらっしゃいますから、外交に関しても、大臣の大臣として就任しているうちにこれをやりたいという情熱を持っていらっしゃるというふうに思うんですけれども、大臣が外交にかける情熱、外務大臣として就任されているうちに自分はこれをやりたいと思っている観点を教えていただきたいと思います。
    〔中川(正)委員長代理退席、委員長着席〕
川口国務大臣 いろいろなことを今走りながら思っているわけでございまして、まず第一に大事なのが外務省の改革であるということは言をまたないと思っております。
 それから二番目に、外交課題、これはさまざまあるわけでございまして、米国にせよ中国にせよロシアにせよ、アジア、ASEANにいたしましても、さまざまな地域の外交の課題というのはあるわけでして、これはきちんと先見性を持って取り組んでいかないといけないと思っております。
 それに加えて、私はこの前、私の外交のスタイルについて、強さ、温かさ、わかりやすさということを申し上げさせていただきましたし、現在外交が、二国間の問題を超えて国際的な舞台でさまざまな課題が生じていて、それへの取り組みを行うことが、日本は世界の中でも有数の力を持った国でございますので、大事だと考えております。
 一つは、今問題になっています、例えばアフガニスタンのような失敗してしまった国、その国に対して何をやっていくのか。その復興の過程で、ある問題、例えば地雷の問題ですとか、あるいはそれの関連でいくと広く軍縮の問題ですとか、そういった軍縮、軍備管理といった分野が一つあると思います。
 さらに、それを続けていきますと人間の安全保障につながっていくわけでして、感染症の問題ですとかあるいは環境の問題ですとか、そういった問題があるわけで、私は環境大臣をやっていて環境に取り組んできたということもございまして、そういった問題について特に力を入れていきたいというふうに思います。
 それから、アフリカについて、これはなかなか今まで、日本と地理的に遠いということもありまして余り、実は地道に取り組んできているということではありますけれども、世界の中で日本がTICADという場を持って、これは既に二回会合をやっていまして、まさに人間の安全保障という観点からもアフリカは重要な舞台でございますので、これにも引き続き力を入れていきたいと考えております。
 課題が非常に大きく、たくさんありまして、やらなければいけないことは本当に山ほどあると思っていますけれども、大勢の方に御指導をいただきながら、我が国としてふさわしい外交をやることができれば、それのリーダーシップをとっていくことができればいいと私は念じております。
丸谷委員 今、大臣の御答弁の中から、アフガニスタンへの支援、また地雷、軍縮、人間の安全保障、感染症、またアフリカに関してはTICADというお言葉をいただきましたので、通告をさせていただいてはいないんですけれども、この人間の安全保障、感染症の問題に関しまして、実は私、先月、モロッコ・マラケシュで三日間にわたって行われましたUNDP主催のアジア・アフリカ女性議員による人間の安全保障とジェンダーという会議に出席をしてまいりました。その中で、二十四カ国の女性議員が集まりまして、まさしく感染症の問題、あるいはトラフィッキングの問題、それから紛争の中で女性として、また子供がどのように生き延びていくかという問題について真剣に話し合ってきました。
 その場において、TICADを初めとして、日本がこのアジア、アフリカの人間の安全保障に対して貢献できるという期待度が非常に大きいということも感じましたし、また、この会議自体は日本政府の拠出金で行われたものです。第二回目は、ことしの秋ごろ、インドあるいはバンコクで行いたいということなんですけれども、このような会議を主催し、また、日本政府が関与していって、その中で知恵を出して貢献していくと、非常に顔の見える外交ができるのではないかなというふうに思います。
 その中で、大臣、ぜひ、こういった人間の安全保障、アジア、アフリカという地域において、ヒューマンセキュリティーとジェンダーの問題も、またしっかりと取り組んでいただきたいというふうに期待をさせていただきたいと思います。
 マルチの場という観点でいえば、二月の外務委員会でも質問させていただいたんですけれども、五月八日からニューヨークの方で始まる予定であります子ども特総、これに対しまして、私は、大臣に対して、一点として、ぜひ出席をしていただきたい、そして二点目として、この子ども特総の中で子どもの権利条約の選択議定書に署名をしてきていただきたい、この二点をお願いしたんですけれども、その後二カ月経過しまして、関係省庁と検討作業を加速化させていただきますという御答弁をいただいておりましたが、進捗状況はどのようになったのかと、大臣の出席はかなうのかどうか、二点お伺いします。
川口国務大臣 まず、子ども特総への私の出席のことでございますけれども、私もぜひ出席をしたいと思いましたけれども、さまざまな日程の関係、国会での審議のこともございまして、今、恐らく、まだ最終的に国会のお許しをいただく段階になっていないかもしれませんけれども、別な女性の議員の方に出席をしていただくということで動いているのではないかと思います。
 そこで、児童の売買、児童買春及び児童ポルノに関する児童の権利に関する条約の選択議定書、及び武力紛争における児童の関与に関する児童の権利に関する条約の選択議定書、これにつきましては、昨年の十二月に日本政府が横浜会議を開催いたしまして、それから、この五月の子ども特総を踏まえまして、子ども特総を目途にこの二つの議定書の署名ができるように、現在、省内及び関係の省庁と緊密に連携をいたしまして、鋭意検討作業を進めているところでございます。
丸谷委員 大臣の出席がかなわないということのようでございますけれども、もうそろそろ子ども特総、開始の日まで日にちが近づいてまいりました。今行っていただいている各省庁間でのすり合わせと、また国内法の整備に向けた意思疎通の作業を一層加速化させていただきまして、何としても、この子ども特総の中で日本が署名という形で日本の外交姿勢を示せるような、そういった枠組みをぜひつくっていただきたいというふうにお願いをさせていただきたいと思います。
 そして、大臣が先ほど御自分の外交政策の中で一生懸命取り組んでいきたいというふうにおっしゃられましたアフガニスタンの支援なんですけれども、近々、外務大臣はアフガニスタンに訪問の予定と聞いておりますが、それはよろしいですか。
川口国務大臣 国会のお許しをいただいて、そういうことで進めさせていただきたいと私は思っております。
丸谷委員 子供のことにこだわって恐縮なんですけれども、ぜひ、アフガニスタンに行った際に、アフガニスタンの子供たちの状況をしっかりと視察をしていただきたいというふうに思います。
 二月二十七日の外務委員会で子供兵士について質問をさせていただいた際に、外務大臣の御答弁の中にも、アフガニスタンにおける子供兵士の問題、そういった子供たちに教育を与える重要性ということについて述べていただいたというふうに思っております。
 外相がおっしゃいますように、このアフガニスタンの子供たちが地域社会の一員として成長していくことができるような体制というのは、国際社会の協力で整いつつあるというふうに思うんですけれども、実際に、その子供たちのケアまで結びついているのかどうか。そして、子供兵士だった子供たちもいると思います。そのような子供たちがどのような状況でいるのか、その現状をぜひ視察の一部に加えていただきたいと思いますが、この点いかがでしょうか。
川口国務大臣 アフガニスタンにつきましては、先般、アフガニスタンの教育大臣が日本においでになられましたときに、教育のお話、それから教育を受ける子供のお話について若干お話をさせていただきました。
 今度のアフガニスタン訪問に際しましては、実はそのときに私は、ぜひ学校を視察させていただきたいというお話をいたしまして、そのときに教育大臣から、ぜひ見てほしいというお話もいただいておりまして、現地の学校訪問をいたしたいと思いまして、今調整をしてもらっているところでございます。
 アフガニスタンの教育大臣からもありましたけれども、日本がアフガニスタンで果たす役割というのは、今までの歴史から見ても、日本は非常に中立的にアフガニスタンの復興に、心からそれを望んでいる国であるというふうに受けとめていただいていまして、日本の支援についての大変熱い希望をそのとき伺いました。
 この意味で、日本は教育についてはかなり支援をしておりまして、ユニセフがアフガニスタンで行っているバック・ツー・スクール・キャンペーンというのがありますが、そこにかなりの金額の拠出をいたしておりますし、UNDPを通じましてREAPプロジェクトというのがありますが、そのプロジェクトで学校の修復もなされているわけです。草の根無償資金協力を通じた教育への支援も考えております。
 それから、私は最近、アフガニスタンの女性についてスペインのジャーナリストが書いた本を実は読みまして、アフガニスタンの女性及び子供の教育の話も大分書いてございましたけれども、そこについて、勉強もしましたし、思うところもあったわけでございまして、我が国がアフガニスタンの人たちの期待にこたえて、教育についてもっと支援ができ、将来を担う子供たちについての支援がもっとできるということになるといいと思っております。
丸谷委員 時間もなくなってまいりましたので、中東情勢について触れさせていただきたいというふうに思います。
 中東情勢、この委員会でも何度も議論をされておりますし、私も意見を述べさせていただいております。
 まず、政府としまして、このイスラエルのパレスチナ自治区への侵攻について、国際法上どのような認識をされているのか、この点からお伺いします。
川口国務大臣 イスラエルの侵攻についての国際法上の考え方、これについては、さまざまな考え方が現在あるというふうに私は承知をしておりまして、もちろん、我が国の立場というのは、イスラエルは即時撤退をすべきであるということでありまして、侵攻自体は国際法上非常に問題があるというふうに、そういう考え方が強いわけでございますけれども、また同時に、国際法学者の間では、さまざまな考え方があるというふうにも聞いております。
 いずれにしても、私は、国際法学者ではございませんので、この点について国際法上こうであるという評価を下すことは必ずしもできないわけでございますし、日本の国としても、日本国がこの問題についての片方の、どちらかの当事者ということではございませんので評価は差し控えたいと思いますけれども、基本的に日本の立場というのは、イスラエル軍が侵攻しているということは全く問題の解決には資さない、直ちに撤退をすべきだということで、イスラエルに対してもこれははっきりと言っております。
丸谷委員 例えば米国のブッシュ大統領は、イスラエル軍の侵攻というのをテロへの自衛権だというふうにおっしゃっているわけですね。
 ただ、国際法上で言います自衛権となりますと、要件がございまして、武力攻撃が発生した直後の緊急性という点が一点と、武力で自衛するほかにとるべき手段がない必要性が二点目、また、相手から受けている武力攻撃と同程度の自衛行動である均衡性の三つ、この要件を満たしたときに自衛権というものが認められているわけなんですけれども、評価というよりは、国際法上、このイスラエル軍の侵攻を日本としても自衛権として認識をされているのかどうか、自衛権とみなすから、この中東・パレスチナ情勢について自衛権行使をするのをやめよということが言えないのかどうか、この点についてはいかがですか。
川口国務大臣 なかなか難しい御質問をいただいているわけでございますけれども、先ほど申しましたように、国際法上これをどう考えるかというのは、まさに委員も幾つかおっしゃられましたように、さまざまな立場があって議論をされていると私は思っております。
 我が国の立場というのは、イスラエルは直ちに撤退をすべきである、今イスラエルがやっていることは問題の解決には資さないということを言っているわけでございまして、これを自衛権であるというふうに断言をしていくということについては、なかなか難しさもあるのではないかと私は考えます。
丸谷委員 そうしますと、この国際法上の認識いかんは別にして、日本とアメリカという同盟国の関係、あるいは中東に対する今までの外交路線の中から、なかなか日本の主張が見えやすい外交政策による行動というものは、それほど急ハンドルを切ることができないという状況なのかなというふうに私も思いますけれども、ただ、その中でも、やはり中東情勢というのは、今、暴力の悪循環というよりももっと最悪化して、先回も言わせていただきましたけれども、戦争状態だと言ってもいいというふうに思います。
 私、一議員の立場から言わせていただきますと、中東情勢の最悪化に関しては、やはりイスラエルのシャロン首相の対話をないがしろにした強硬な政治姿勢というのがこの状況を招いたと言わざるを得ないというふうに思いますし、今までの和平への道のりというものにまさしく逆行しているというふうに私には思えてなりません。
 しかし一方、イスラエル国内に目を向けてみますと、昨年秋より激化している武力抗争の中、軍務拒否を表明する兵士というのは増加しているようです。また、先月末の報道によりますと、その数は既に三百人に達していると言います。
 敵対するアラブ諸国に囲まれて一九四八年に建国をしたイスラエル、今までは国是として治安の維持というものを最も重要視してきた国内において、このような動きというのは、珍しいというか異例なことと言ってもいいというふうに思います。
 なぜこのような軍務拒否が増加しているのか、これを考えるときに、一因には、やはりパレスチナ人に対する非人道的な行為というものがイスラエル人自身の正義感を喪失させるのだという、イスラエル人の軍務拒否をした方のインタビューも新聞に載っておりました。そのような自省の念と軍への強硬姿勢の反発から、こういった軍務拒否が国内では起きているのではないかというふうに思います。
 軍務拒否の支援団体によりますと、こういった拒否希望の相談というのは約千人の兵士からなされていまして、その九割が三十代から四十代の予備兵であるということです。
 こういったことを聞いていますと、時代が変われば中東情勢も変わるのかなという、そういった無責任な希望も一方にあり、また実際に、軍務拒否支援団体のように現場で闘っている皆さんは、こういった動きが大きな平和運動につながっていくのではないかという期待もされているというふうに思います。
 日本が中東和平のためにどのような知恵を出せるのか、口出しは今できないのかもしれないですけれども、どのような知恵が出せるのかというのは、私たち議員もしっかりと考えていかなければいけないというふうに思っています。
 きょうの議論の中で、中東情勢に対しては犯罪的な沈黙状態だと、非常にいい言葉だというふうに思いましたけれども、本当に、戦争という状態において沈黙は悪であるということは、私たちは政治家として思い起こさなければいけないのではないかというふうに思います。
 そういった意味において、日本としてできること、当該地域において、例えば次世代を担うような平和勢力、学者の方もいるでしょうし、ジャーナリストもいるでしょう、こういった方たちによるセカンドトラックとでもいうべき対話の場を提供するということも、日本ができる大きな貢献ではないかと思いますが、このことについてはいかがでしょうか。
川口国務大臣 先ほど申しましたさまざまな外交課題の中で、この中東問題というのは、今緊急に取り組まなければいけない一つの課題だと私は考えております。幾つか日本がやるべきことを段階に分けて考えなければいけないと思っておりますけれども、とにかく、今一番必要な緊急の課題というのは停戦の実現であるということです。
 そのために、では日本が何ができるのかということで申し上げますと、まず、日本の立場というのを明確にきちんと発信をしていくということが一つあると思います。この立場が何かということは今ここで繰り返しませんけれども、これについては、私は、ペレス外務大臣あるいはパレスチナサイドのアブ・アラ立法評議会の議長ですとか、シャース、あちらの外務大臣に当たる方ですが、とお話をしたり、G8の議長のカナダの外務大臣、あるいは、昨晩もパウエル国務長官からお電話をいただいてお話をしていましたけれども、そういったさまざまな取り組みを日本として発信をするということをまずやっているということです。
 停戦の実現に向けて二番目に大事なことというのは、アメリカが決定的な力を持っていますので、この米国の努力について日本が支持し、最大限の支援をするということだと思います。これについても、さまざまな働きかけ、EUのソラナさんも含めて、国際的に協調してやろうということで、またパウエル長官とも、きのうは、これからもよく連携をとって、コミュニケーションをしながらやっていきましょうというお話をしておりまして、そういうことでやっているということです。
 停戦が実現した暁に、その次の段階で何をやるかということですけれども、その課題は、政治的なプロセスの推進だと私は思っております。それについては日本も積極的に関与する必要があると思っておりまして、これをやるために何を考えているかということについては、私は、近い将来、近い将来といいますか早い時期に外に発表をしたいと思っております。これの中には、今委員がおっしゃったセカンドトラックのお話、これは前に私が政策についての発表を記者クラブでさせていただいたときにもちょっと触れさせていただいておりますけれども、そういうこともタイミングを見てやっていくということが大事だと思っております。
 それからもう一つ、こういった中で日本が果たせる役割ということは非常に大事でございまして、それは一つには、日本が昨日発表いたしました、二十三日に発表いたしました三百三十万ドルの緊急人道支援というのがございます。これは、日本はパレスチナに対しては第二番目の支援国でございまして、緊急人道支援をさらに追加をして発表したということでございますし、南レバノンでヒズボラがいろいろ動いていることに対して、ここで緊張を緩和していくということが非常に大事なものですから、イラン、シリア等に対して働きかけまして、もう一つ、レバノンですね、この地域での活動を抑えるということの働きかけを、在京の大使館それから現地の大使館を通じてやっているわけでございます。
 こういったプログラムといいますか、政策、対策を総合的にやっていくということが日本として大事なことだと考えております。
丸谷委員 その緊急人道支援に関しても、ぜひやっていただきたいことですし、非常に評価もできることだというふうに思います。
 ただ、やはり日本外交としまして、お金は出すけれども口は出さないというのではなくて、お金も出してしかも知恵も出すというような両方面での貢献が必要だというふうに思いますし、そういった意味で、今大臣が近々発表される予定だという中にどのようなものがあるか、非常に期待をさせていただきたいというふうに思いますし、中東地域における平和勢力を国際場裏に引き出す努力というものも日本にとっては必要だというふうに思います。
 きょうは以上で終わらせていただきます。ありがとうございます。
吉田委員長 丸谷佳織君の質疑は終了いたしました。
     ――――◇―――――
吉田委員長 次に、投資の自由化、促進及び保護に関する日本国政府と大韓民国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件及び犯罪人引渡しに関する日本国と大韓民国との間の条約の締結について承認を求めるの件の両件を議題といたします。
 政府から順次趣旨の説明を聴取いたします。外務大臣川口順子君。
    ―――――――――――――
 投資の自由化、促進及び保護に関する日本国政府と大韓民国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件
 犯罪人引渡しに関する日本国と大韓民国との間の条約の締結について承認を求めるの件
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
川口国務大臣 ただいま議題となりました投資の自由化、促進及び保護に関する日本国政府と大韓民国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。
 政府は、平成十一年九月以来、大韓民国との間でこの協定の交渉を行いました。その結果、平成十四年三月二十二日にソウルにおいて、我が方寺田特命全権大使と先方チェ・ソンホン外交通商部長官との間で、この協定の署名が行われた次第であります。
 この協定は、投資の許可段階における最恵国待遇及び内国民待遇の原則供与並びに技術移転要求を初めとする特定措置の履行要求の原則禁止を規定するとともに、収用等の措置のとられた場合の補償措置、支払い等の自由な移転、投資紛争解決のための手続等について定めております。
 この協定の締結は、我が国と韓国との間の投資の増大及び経済関係のさらなる緊密化に大いに資するものと期待されます。
 よって、ここに、この協定の締結について御承認を求める次第であります。
 次に、犯罪人引渡しに関する日本国と大韓民国との間の条約の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。
 政府は、平成十二年九月以来、大韓民国との間でこの条約の交渉を行いました。その結果、平成十四年四月八日にソウルにおいて、我が方森山法務大臣及び寺田特命全権大使と先方ソン・ジョンホ法務部長官との間で、この条約の署名が行われた次第であります。
 この条約は、我が国と韓国との間の逃亡した犯罪人の引き渡しに関し、引き渡しの対象となる犯罪の範囲、引き渡しを拒む事由、自国民の引き渡し、引き渡し手続等について定めております。
 この条約の締結により、相互に一定の要件のもとで犯罪人を引き渡すことが義務づけられ、また、あらかじめ引き渡し手続を定めることにより犯罪人引き渡しが円滑に実施され、犯罪人の処罰及び犯罪の抑圧のための両国の協力に資することが期待されます。
 よって、ここに、この条約の締結について御承認を求める次第であります。
 以上二件につき、何とぞ、御審議の上、速やかに御承認いただきますようお願いいたします。
吉田委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
 次回は、来る四月二十六日金曜日午前十時理事会、午前十時五十分委員会を開会することといたし、本日は、これにて散会いたします。
    午後四時五分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.