衆議院

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第17号 平成14年5月31日(金曜日)

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平成十四年五月三十一日(金曜日)
    午前九時三十七分開議
 出席委員
   委員長 吉田 公一君
   理事 浅野 勝人君 理事 石破  茂君
   理事 坂井 隆憲君 理事 西川 公也君
   理事 首藤 信彦君 理事 中川 正春君
   理事 上田  勇君 理事 土田 龍司君
      今村 雅弘君    小坂 憲次君
      小西  理君    高村 正彦君
      中本 太衛君    原田 義昭君
      細田 博之君    松野 博一君
      宮澤 洋一君    望月 義夫君
      伊藤 英成君    金子善次郎君
      木下  厚君    桑原  豊君
      前田 雄吉君    丸谷 佳織君
      松本 善明君    東門美津子君
      松浪健四郎君    鹿野 道彦君
      柿澤 弘治君
    …………………………………
   外務大臣         川口 順子君
   外務副大臣        植竹 繁雄君
   外務大臣政務官      今村 雅弘君
   外務大臣政務官      松浪健四郎君
   会計検査院事務総局第一局
   長            石野 秀世君
   政府参考人
   (防衛施設庁長官)    嶋口 武彦君
   政府参考人
   (法務省大臣官房審議官) 桂   誠君
   政府参考人
   (外務省大臣官房審議官) 佐藤 重和君
   政府参考人
   (外務省大臣官房審議官) 塩尻孝二郎君
   政府参考人
   (外務省大臣官房審議官) 黒木 雅文君
   政府参考人
   (外務省大臣官房文化交流
   部長)          横田  淳君
   政府参考人
   (外務省大臣官房領事移住
   部長)          小野 正昭君
   政府参考人
   (外務省総合外交政策局軍
   備管理・科学審議官)   宮本 雄二君
   政府参考人
   (外務省総合外交政策局国
   際社会協力部長)     高橋 恒一君
   政府参考人
   (外務省条約局長)    海老原 紳君
   外務委員会専門員     辻本  甫君
    ―――――――――――――
委員の異動
五月三十一日
 辞任         補欠選任
  水野 賢一君     小西  理君
同日
 辞任         補欠選任
  小西  理君     松野 博一君
同日
 辞任         補欠選任
  松野 博一君     水野 賢一君
    ―――――――――――――
五月三十日
 エネルギー憲章に関する条約の締結について承認を求めるの件(条約第一二号)
 エネルギー効率及び関係する環境上の側面に関するエネルギー憲章に関する議定書の締結について承認を求めるの件(条約第一三号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 会計検査院当局者出頭要求に関する件
 政府参考人出頭要求に関する件
 エネルギー憲章に関する条約の締結について承認を求めるの件(条約第一二号)
 エネルギー効率及び関係する環境上の側面に関するエネルギー憲章に関する議定書の締結について承認を求めるの件(条約第一三号)
 国際情勢に関する件


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     ――――◇―――――
吉田委員長 これより会議を開きます。
 国際情勢に関する件について調査を進めます。
 この際、お諮りいたします。
 本件調査のため、本日、会計検査院事務総局第一局長石野秀世君の出席を求め、説明を聴取し、また、政府参考人として外務省大臣官房審議官佐藤重和君、塩尻孝二郎君、黒木雅文君、文化交流部長横田淳君、領事移住部長小野正昭君、総合外交政策局軍備管理・科学審議官宮本雄二君、国際社会協力部長高橋恒一君、条約局長海老原紳君、防衛施設庁長官嶋口武彦君、法務省大臣官房審議官桂誠君の出席を求め、それぞれ説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
吉田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
吉田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。最初に、坂井隆憲君。
坂井委員 自由民主党の坂井でございます。
 私は、e―Japanのことをずっといろいろやっていました。それで、e―Japan重点計画が、ことしの五月九日にIT戦略本部で新しい重点計画ができたんですが、昨年のものからずっと見ていまして、ことしのものも見ているのですが、例えば、世界最先端のIT国家、すなわち高度情報通信ネットワーク社会を目指す、これは、一つは地球規模での高度情報通信ネットワーク社会の実現に向けた国際貢献が行われる社会であるとか、あるいは国際インターネット網の整備をするとか、いろいろないいことが書いてあります。
 各省庁がそれぞれそれに取り組んでおりますが、いろいろ見ていますと、どこを見ても外務省の顔が余り見えない。国際的な環境整備というところもあります、電子商取引で。これからの高度情報通信社会において、そういう社会状況の中での外交のあり方というのは非常に変わってくると思うのですが、外務省はこういう点についてどういうふうに取り組んで、考えていらっしゃるのか。その辺、ちょっと大臣の御意見をお聞きしたいと思います。
川口国務大臣 e―Japanは、私は、日本の情報化の進展、高度化に向けて非常に重要な取り組みであると思っております。
 このe―Japan戦略の主たる目的でございますけれども、これは、我が国のすべての国民がITを積極的に活用して、その恩恵を最大限に享受できる社会をつくる、五年以内に世界最先端のIT国家となるということを目的としているわけでございますが、その際に、国際的な協調や貢献の推進を念頭に置くことが重要であるということにつきましては、外務省としてもきちんと認識をいたしております。
 この中に、アジア・ブロードバンド計画というのがあるようでございますけれども、これは主として総務省を中心に取り組むということになっているようでして、したがって外務省の顔が見えないというふうにおっしゃられるのかとも思いますけれども、外務省は外務省として、国際的なIT協力推進というプログラムは幾つか持って推進をしております。
 IT戦略のつくり方と外務省が進めようとしている協力と、うまくそこの整合性がとれていない、戦略のつくり方が、主として日本国の国民のIT度を上げるということに重点があるので、重心が国際協力にない、そういうことが一つあるのかなというふうに思います。
坂井委員 私は、今回の北朝鮮の、総領事館への駆け込み事件を見ていまして、後の北朝鮮の人たちの質問を聞いていますと、韓国の通信社に前もって連絡していたとか日本の通信社にも連絡していたとか、そういう話がありますが、これから高度情報社会の中で、やはり情報戦略というのが一番重要であって、それは、よく言われているようなソフトパワーみたいな話になるんですね。
 やはり外務省というのは、情報のとり方にしても、あるいは収集と同時にどういうふうに情報を保全するかという話もありますが、この一年の外務省の姿を見てみますと、情報がぽろぽろ漏れたり、あるいは情報のとり方も遅かったり。例えば今回の北朝鮮の侵入事件でも、テレビで放映されているから見せてくれと言ったら、どうもそういうものは保存していない。しかし、外務省の中にはちゃんと情報局があるわけですから、やはり全体に対応がのろいなと思うんですね。
 そういう意味では、外交フォーラムの二〇〇〇年のものに「IT革命と外交」ということで書いてありまして、やはり外交革命というものには未知なる情報空間が誕生するから、そういうものの戦略でソフトパワーということを頭に入れてやっていかなければいけないといいながら、非常におくれているなという感じがします。だから、やはりこういうところはこれからも十分配慮してもらいたいなというふうに思います。
 それから、ITの関係でいいますと、これは私もずっとかかわってきていることなんですが、単に携帯電話とか電話網だけじゃなくて、これからは画像情報になってきています。私は実は、昨年内閣府の副大臣をしているときに、このe―Japan戦略の中にアーカイブという言葉を入れました。これは、いろいろ画像処理を含めての情報の保存です。
 どういうことを考えているかといいますと、例えば北欧を見ていますと、いろいろな歴史研究を、ノルウェーはノルウェー、フィンランドはフィンランド、業務分担してやったりしています。そういう意味では、非常に各国間の協調の仕事をしている。これは単に、今回日韓の歴史研究もやるんですが、そういうものだけではなくて、どういう文献を研究するか、訳するか、そういうものをあわせてやる、それを例えばネットで公開する、こういうことをやっているわけですね。
 外務省には、お手元に届けましたけれども、例えば近隣諸国のそういういろいろな資料のコンテンツの保存、流通ということを見てみますと、中国とか台湾、韓国などは非常にそういうものの保存をよくやっています。私は、党内でいろいろ勉強しています。例えば中国は、今度オリンピックをやるものですから、中国の国がいかに文化的にすぐれているかということを今のうちにやりたいということがあって、例えば大日本印刷が中国の故宮博物館のアーカイブの仕事を受け持つ、あるいは日立製作所、これは画像情報が非常に技術的に進んでいるところですが、そういうところに中国が接近したりしていて、情報をどういうふうにしてやったらいいかとかいろいろ聞いたりしている。
 一方で、ユネスコですね。ユネスコは今、松浦さんが事務局長で行かれていますが、今回、カブール美術館というものを平山郁夫先生がネットで公開しているんですよ。これはアフガンのカブール。それは、そういうものの遺跡をいろいろネットで見せながらやっていくということです。
 私は、何でITのことを言っているかというと、これからの一つの外交の中に、単にITの技術をどうのこうのするとかいうことだけじゃなくて、文化政策と絡んで、あるいは歴史の共同研究と絡んで、やはりそういうことを十分やっていったらどうかなと思うんです。やはり外交というのは、まず相手のことをよく知ることから始まります。
 歴史を知ること、それはもう個人のつき合いもそうなんです。私は四月に靖国神社を参拝しました。私は毎年靖国を参拝するんですが、これは話が飛びますが、実は秀吉が朝鮮征伐したときに、加藤清正が朝鮮で負けちゃったんですね。そのときに韓国は、勝ったという記念碑をつくったんです。それを戦前、日本軍が持ち帰ってきまして、その持ち帰った碑が靖国神社にあるんですよ。今回、私は、靖国を参拝したときにそこをちょっと見に行こうと思ったんですが、靖国にそれを返してくれと韓国は言ったんですが、結局返さなかった。その結果、模造品を韓国はつくったんですね。例えば日韓一つ見ても、やはりいろいろな歴史の問題がある。
 そういうときに、今、日本と韓国の間も、日本と中国の間もそうですけれども、やはり歴史をお互いに共同研究する、あるいは難しいところであれば、まず文化的な交流をし始めて、あるいは今言ったように、北欧がやっているように、いろいろな、仏教の仏典にしてもそうですが、お互いに分担してそういうものを研究し合う、そういうことが非常にこれからの時代で必要じゃないかなと私は思っているんです。
 そういう意味で、これからの外交政策の中で、もともとODAに文化がなじむかという議論があります。外交フォーラムの二〇〇〇年の四月号も「外交も文化にあり」ということで、この中に、ODAの定義、文化に対する高いハードルがある、しかし、文化観光という概念をユネスコが仕掛けてきたんだ、こう書いてありますね。だから、この文化観光という形の中で、ODAの役割というものを見直していく。
 その中で、特にこれはアジアについて、特に中国、今回こういう問題が起こりましたけれども、中国とか韓国、やはりこういうものについて文化的な共同基盤、EUみたいに一遍に通貨統合はできませんから、私は、そういうところの土台の交流から始めていただければなと思って、こういう意見を言っているんです。
 そこで、e―Japan重点計画に絡んで、土曜日は竹中大臣が韓国に行かれてIT閣僚会議に出られるような話も聞いていますが、やはり外務省としても、どういうような形で各国間の協調を図っていくのか、十分考えていただければと思います。
川口国務大臣 いろいろなことをおっしゃられて、お答えが長くなっちゃいそうなんですが、とりあえずちょっと申し上げたいことなんですが、私は、外務省の情報化ということを考えましたときに、実は、外務省に来まして一つ驚いたことがあります。
 それは、私の机の上にコンピューターが欲しいと言いましたら、二台あらわれたんですね。なぜ二台必要かといいますと、これは外務省の中のシステムと外のシステムを分断して、そういう設計になっているということでございますので、外務省の各職員がインターネットに自分の机の上でアクセスをしようと思ってもできないということなんですね。各課に一つだけ、インターネットにアクセスできるコンピューターがある。
 したがいまして、これはなかなかインターネットを、自分の家に帰れば自由にアクセスできるんでしょうけれども、仕事の過程で、机の上にインターネットにアクセスできるコンピューターがないということはやはりその距離を遠くするということがありまして、外務省の情報化を進めるということの観点からいうと、各人の机の上に二台コンピューターを入れるための予算が必要であると私は思っております。したがいまして、外務省のホームページを各職員が自分の机の上で見ることはできないということになっているわけでございます。その辺から、物理的な面で改善することが非常に必要だということが一つでございます。
 それから、おっしゃっている文化財についてインターネットでそのイメージを、アーカイブのようなものをつくる、私は非常にいい考えであると思います。ただ、これについては著作権等の問題がございますので、そういった面からの検討が必要であるかというふうに思いますので、それは今後の課題として検討してみたいと思います。
 私は、環境大臣でございましたときに、インターネット自然研究所というのを環境省でつくりました。それは、環境省の所管している国立公園の風景を一時間に一回ずつカメラを設置しまして見ることができる。ですから、日本のどこにいても国立公園の状況を四シーズン見ることができるということでして、それとあわせて国民が書き込みができる。ですから、自分の地域では桜が咲いた、田植えが始まった、季節情報を書いて国民参加型のカレンダーをつくれるというものをつくりましたけれども、ODA等についても、それから文化財についても、そういったことで国民が見ることができるというようなシステムがつくれたら私はすばらしいんではないかと思っております。そういったことも今後の課題として考えたいと思います。
坂井委員 大臣、どうぞ御退席ください。
 あと若干時間が残っておりますので、副大臣にちょっと。
 この情報化に絡んで、私はよく外務省のホームページも各省庁のホームページも見るんです。これは別に外務省だけの問題じゃないんですけれども、情報が極めて多くなったときには、一方でどういうポータルサイトのものをつくっていくかというのが課題なんですね。今どこの役所も縦割りになっていますから、それぞれの役所にアクセスしていってずっと中に入っていかないとよくわからない、こうなってきています。一方で各省庁の垣根も低くなってきていますから、横断的なものをどういうふうにポータルサイト的な形でつくるかというのも課題になると思うんですね。
 例えば、これからの世の中はだんだんネットワーク社会になってきていますから、もうインターネット社会で、直接諸外国の個人と個人が交流する、あるいは個人と企業が交流する、こういうようになってきています。その場合に、一つはNGOみたいな動きもある。あるいは地方分権の中で、地方自治体自身が国際交流課をつくっていろいろな交流をしている。どこにアクセスすれば全体が見えるのかよくわからない。
 旧自治省は、地方自治体の国際交流のところの担当課がありますけれども、やはり全体を、外務省の中でちゃんとホームページでもリンクできるようなポータルサイトをつくってもらうとありがたいなと思うんですよ。まずそういうことから始めて、一つの国の研究とかあるいは情報を個人が知るとかそういうことに努めていただきたいなと思います。
 その辺をちょっと副大臣に要望しまして、私の質問を終わらせていただきたいと思います。
植竹副大臣 私は、外交というものは、やはり各省庁全体と、今までの外交のあり方よりも、こういう各省庁との連係プレーの中に一つのものができてくると。縦割り式の今の場合に、このホームページ、あるいはそういった情報の連係プレーというのは非常に重要だと思っています。そういう意味におきまして、私は、今まで以上にその辺を強化してまいりたいと思います。
 それには、このもとは総務省ですから、総務省ともその分担とかをよく研究、検討しながらやっていきたいと思います。さらにまた、外務省が国際間におきましても、文化交流の点、さらにODAなどのあり方についても、どうやったら一番効率的に外国に日本の行き方というものを伝えるかという点についても、これも今後の外務省のあり方として、検討課題としてやっていきたいと思います。
坂井委員 どうもありがとうございました。
吉田委員長 次に、上田勇君。
上田(勇)委員 きょうは私の方からは、ロシア関係、それからインド・パキスタン情勢などにつきまして、若干時間をいただきまして御質問させていただきます。
 まず初めに、二十四日にモスクワでアメリカとロシアの首脳会談が行われまして、米ロ戦略核兵器削減条約が締結をされました。この条約については、削減の方法の実効性などを疑問視するような意見もありますけれども、私は、ブッシュ大統領も大変高く評価しているように、これまで以上にアメリカとロシアの関係が安定し、改善したあらわれではないかというふうに理解をしております。
 そこで、この条約の締結及び米ロ関係について我が国としてはどのように評価をされているのか、まず御見解を伺いたいというふうに思います。
植竹副大臣 今回の米ロの首脳における核兵器制限の条約の締結というのは、本当にこれからの国際間のあり方という中において新しい一ページを加えたものだと思っております。特にこの中で、法的拘束力を有する形式で担保したということは大変重要なことであるかと思っております。
 今後、両国においてこの批准、履行というものがまず早期に行われることを期待しております。そして、そのような関係を踏まえた新たな戦略的枠組みを考えようというその強い意思に基づいて、我が国におきましても、国際的な軍備管理あるいは軍縮、不拡散の動きを促進して国際安全保障環境の向上が図られるということを非常に期待しておりまして、着実な努力が必要だと思っておるところでございます。
 したがいまして、我が国の今後の行き方といたしまして、こういうことが我が国の周辺その他にとりましては非常に安全で重要な役割を果たすものだと思っております。高く評価しております。
上田(勇)委員 今、副大臣の方から、我が国に対しても非常にいい影響があるのではないかという評価でありましたけれども、私は、やはりアメリカとロシアの関係がこのように改善されていくというのは、今いろいろと課題があります日本とロシアとの関係を促進させていく絶好のチャンスではないかというふうにも思います。
 ロシアとの関係でいえば、ロシアは、インド・パキスタン紛争においてもその解決に向けて重要な役割が期待されておりますし、京都議定書の発効などにおいてもかぎを握っている国でもあります。また、積年の課題であります領土問題、平和条約締結という問題もありますし、今、非常に重要な局面ではないかというふうに思います。
 しかし、残念ながら、どうも我が国の対ロ外交というのは、北方支援事業に絡むいろいろな不正疑惑から機能不全に陥っているのじゃないかというようなことまで言われているわけでありまして、こういう好機に早くそういうロシアに対する外交体制を立て直して対ロ外交を積極的に進めるべきであるというふうに考えますけれども、副大臣のお考えを伺いたいというふうに思います。
植竹副大臣 私は、今ロシアとの間で問題になっておりますのは、何といっても北方領土の問題が最重要の一つであると考えます。そのためにも、ロシアとの間に平和条約の締結あるいは経済分野における協力あるいは国際舞台における協力というような三つの課題を基本として推進していき、さらに関係の広い分野において進展をしてまいると考えられます。
 いずれにしましても、この平和条約締結問題というものは最大の課題でございまして、そのためには北方四島の帰属の問題を解決してやっていくことが最大の問題だと考え、今後も精力的に交渉をしてまいりたいと思っております。
上田(勇)委員 ロシアとの関係でいえば、これまで我が国としては、北方領土交渉の環境を整えるという目的から、北方支援事業、それからビザなし交流などのいろいろな事業を実施してきたわけでありますけれども、ここ最近、いろいろな不正や疑惑などのことが報じられたりいたしまして、事業の実効性あるいは適切さについていろいろと疑問が投げかけられております。
 先日は尾身大臣が国後島を訪問されて、交流事業は引き続き進めていく必要性があるんだというふうに述べられておりますし、また、現地ではこの支援事業についても大変な継続の要請があったというふうに伺っております。私は、こうした北方領土の地域とのかかわり方というのは、今後とも我が国としてこの地域に関与をし続けていくということは重要であるというふうに思いますので、こうした事業についてさらに充実させていく必要があるという面もあるんじゃないかというふうに思います。
 ただ、いろいろと指摘されているさまざまな不正、疑惑、そういったことについては、そうした内容をしっかりとレビューし、見直して、その上で交流事業や人道支援事業というのはやはり必要性はあるのではないかというふうに考えているんですけれども、今後どういうふうに対応していくのか、外務省としての御見解を伺いたいというふうに思います。
植竹副大臣 今委員お尋ねのとおり、ビザなし交流という問題につきましてお話ございましたが、これは本当に、ビザなし交流の団体は、今まででも四島交流推進全国会議及び北方四島交流北海道推進委員会等が実施しておりまして、一九九二年四月から現在まで、九千人に及ぶというような非常な人数が相互に訪問したわけでございます。したがいまして、四島の住民と日本との交流が非常に行われる。そういう中にありまして、今回、いろいろな支援委員会の問題につき不祥事があったということは大変残念であると考えておるところでございます。
 したがいまして、支援委員会のあり方につきましても、四月二十六日の専門家会議の提言を重く受けとめまして、今後支援委員会を廃止し、新しい枠組みをつくってまいりたいと考えております。しかし、何といっても支援委員会の問題につきましては、ロシア等、他の締結国との協議というものが必要になっておるわけでございます。
 現状について申し上げれば、支援委員会の事業について抜本的な改善策が講じられるまでは、現在、必要最小限の経常的な経費を除いて、基本的に実施を見合わせるということをしておりますけれども、今後の交流のあり方を継続して推進していくことが基本問題である北方四島の返還ということに大きく影響がありますので、我が国といたしても、これを新しい方向で推進してまいりたいと考えるところであります。
上田(勇)委員 私も、こういう領土問題が存在する中で、やはり我が国としてこの地域に関与していくということ、その必要性については理解をしているところでありますけれども、これまで行われてきたさまざまな事業の効果に対してもいろいろな疑問も呈されておりますし、その事業内容が果たして、発電所の建設であるとか港湾設備だとか、そういったことがその目的に沿ったものであったのかというようなこともまた、今見直しの必要性が迫られているんだというふうに思います。
 そうしたことも、どういう関与をし続けることが効果が最大限にあらわれるのか、またどういう事業内容にしていくのか、その適正な執行を確保していくためにどういうことをするのかということを引き続きぜひ、これはやはり今は関係を進めていく非常にいいチャンスでもありますので、早急にその辺の考え方をまとめていただきまして実施していただきたいというふうに考えております。
 先ほどちょっと申し上げました条約に基づいてそれが履行されますと、ロシアの核弾頭が、現在約五千五百と言われているものが約二千にまで削減されるというふうになっておりますが、そうなりますと、配備されている核弾頭を削減して、その管理や廃棄といった問題が非常に重要になってまいります。
 ロシアは恒常的に資金が欠乏しておりますし、どうも管理体制にもいろいろな疑問が言われております。配備していた核弾頭を取り除いたのはいいんですが、万一これがどこかに横流れしてしまう、最悪の場合には、今よく言われているテロリストの手に入ってしまうというようなことになってしまうと、これはもう国際社会全体にとっての大変な脅威になってしまうわけでありますので、こうしたことについても我が国として何らかの対応をしていく責任があるんではないかというふうに思います。
 これまでも、ロシアのそういう核兵器の削減、廃棄について、我が国として二国間で合意して協力をしてきましたけれども、必ずしもその辺の運営というのはうまくいっているとはちょっと言いがたい面があるんじゃないかというふうに思います。とはいっても、配備されている核兵器を減らしていくというのは、これは我が国の外交の目的からいってもやはり非常にかなっているものであるというふうに思います。
 そこで、今回こうした条約が締結されるという段階において、ロシア側から我が国に対してそういうような協力の要請はあったんでしょうか。また、現在なかったとしても、当然これからそういった協力の要請が想定されるんですけれども、そういったときには、今の実施体制でいろいろな問題があるというのは事実でありますので、その辺をしっかりと見直して、これはやはり早急にそういうような対応方針を決める必要があろうかというふうに思いますけれども、御所見を伺いたいというふうに思います。
植竹副大臣 今委員お尋ねの核弾頭の管理、廃棄の問題は重要な問題でございます。特に、核弾頭の安全な管理、廃棄というものは、軍縮、安全保障、またテロ対策を含む不拡散及び環境保全にも利益するところが大でありまして、我が国にとっても非常に国際的関心事項であります。したがいまして、このため、サミットを含めましたG8の場でも議論されてまいったわけでございますが、こうした議論を踏まえまして、ロシアに対して協力を行っていきたいと思っております。
 しかし、廃棄及び関係する環境問題の解決においての協力要請というものは、九三年に設立されました日露核兵器廃棄協力委員会におきまして具体的なプロジェクトをロシア政府からの書面により要請を受けまして、いずれの方法でやるか、実施につきまして日ロ間で決定した上で事業を進めることになっております。
 そういう点にかんがみまして、五月の米ロ首脳会談や戦略核兵器削減条約署名に伴って、ロシアより新たな要請が出されている事実は、現在のところございません。
上田(勇)委員 これは本当に、極東に配備されている核兵器もあるわけでありまして、我が国の安全にとっても非常に重要な課題でありますし、先ほど申し上げましたように、万一それがどこかに横流しになった場合に、これは日本だけじゃなくて、世界じゅうにとっての脅威になりかねないということでありますので、ぜひその辺はいろいろと、米ロとも協議をしつつ、鋭意努力をしていただきたいというふうに思います。
 最後に、残された時間で、カシミールの問題について何点かお伺いしたいというふうに思うんですが、カシミール地方では、インド、パキスタン両国、非常に緊張が高まっておりまして、両国とも核保有国であるということから、ほかのところとはちょっと比較にならない脅威になっているわけであります。アメリカもイギリスもロシアも、それぞれ、軍事衝突を何とか回避したいという意向で、外務大臣また特使を派遣するなど、積極的な外交努力を行っているわけでありますが、我が国からも今杉浦副大臣が派遣されているということであります。
 現在のところ、そうしたいろいろな国の見解を見ていると、パキスタン、インド両国の首脳は何とか衝突を回避したいという意向が非常に働いているので、直ちに武力衝突が予測される事態ではないのではないかというのが主力の見方だというふうに承知しております。しかし、どうも両国の軍部はかなり強硬な姿勢であるようですし、世論のテンションも非常に高まっているのではないかというふうに思います。昨日も、インド領内ではテロが発生したというニュースも耳にいたしました。
 そういう意味で、今、杉浦副大臣が両国に派遣されているわけでありますけれども、そうした両国の緊張関係、現状認識はどういうふうにとらえられているのか。また、今、この両国の首脳と会われているわけでありますけれども、どういうような提案をされているのか。また、その過程において、アメリカやイギリス、ロシア、中国、そうした関係各国とはどういうような連携をとられているのか。御見解を伺いたいと思います。
植竹副大臣 委員お尋ねの三つの問題がございました。
 まず、この発端は、昨年十二月のインドの国会襲撃事件以来の印パ関係の緊張というものが、五月十四日のインド側カシミールにおけるインドの陸軍駐屯地襲撃事件によりまして非常に高まってまいった結果、今回、両国の緊張度を加えまして軍事衝突に発展する可能性があるということは、委員御指摘のとおり、大変憂慮しておるところでございます。
 我が国といたしましても、この両国の緊張緩和を図るべく、パキスタンに対しましては、カシミール過激派の活動が実効的に抑止されるようにさらなる努力を、今回の杉浦副大臣などもこの件に関しましてパキスタンに行き、また、きょうはインドの執行部と対談しておると思いますが、インドに対しましては、国際社会全体の要請を受けて外交努力を尽くすことを強く希望する旨の働きかけを行っているところであります。
 また、この杉浦副大臣の働きかけと、期せずして英国ストロー外相が両国を二十八日から訪問し、あるいは六月初旬にはアーミテージ米国国務副長官が両国を訪問する、さらにはロシアの外務次官補のサフォノフ氏が両国を訪問しまして、この問題の衝突を回避できるように努力を行っておりまして、我が国といたしましては、今後とも、米英ロの各国を含む国際社会と連携しながら、この両国間の緊張緩和と対話の再開に向けて働きかけを推進していく考えでおります。
上田(勇)委員 インド、パキスタン両国はアジアの大国でありますし、両国とも核兵器を保有しているという国で、この衝突が一歩間違うと大変な結果を招いてしまうということでありますので、そういう意味では、今本当に、日本のアジアの中における外交の取り組みというのが問われているのではないかというふうに思います。ぜひ、頑張っていただきたいというふうに思うわけであります。
 そこで、もう一つ。パキスタンは、これまでアフガニスタンの国境地域に配備していた軍隊を、今カシミールに向かって緊張が高まる中で移動しているというふうにいろいろ報道されているわけでありますが、その結果、アフガニスタンの国境の警備が手薄になって、アルカイーダのメンバーがパキスタンの国内に侵入してくるというおそれが高まるんじゃないかということも言われております。
 こうしたカシミールでの緊張が高まっているということが、結果的にアフガニスタン国内でのテロ掃討作戦を長期化させたり、あるいはパキスタン国内にまでその活動が拡大をしたり、そういうような影響も及ぶんじゃないかということを危惧しているわけでありますけれども、そういったことについての認識、それから、掃討作戦の性格が変わってくると、我が国も支援活動を行っているわけでありますので、それに対する影響も当然出てくるのではないかというふうに思いますけれども、お考えを伺いたいというふうに思います。
植竹副大臣 今回の印パの問題が、アフガニスタンのテロに対する影響がどう出てくるか、我々も大変懸念するところであるわけです。
 そして、この移動に伴う、いわば手薄になるとかそういう点につきまして、本来のテロのあり方についてどうやっていくか、その点については、米国からは、アフガニスタンにおける闘いというものはいまだ終わってない、そういうことでまだ行うべきことがたくさんあるというような連絡を受けておりまして、我が国におきましても、先般、テロ対策特別措置法の基本計画を変更して、米軍等に対する協力支援活動等を実施する自衛隊の派遣期間をさらに半年間、十一月十九日まで延長したところであります。
 我が国といたしましては、米国とさらにいろいろ密接な連携をとりながら対処していきたいと考えておるところでございます。
上田(勇)委員 最後になりますけれども、このパキスタン、インドの紛争、緊張が高まる中で、アメリカもイギリスもフランスも、外交官やその家族を避難させたり、在留している国民の退避を進めているというふうに言われております。
 我が国としても、邦人の保護にぜひ迅速に対応して万全を期していただきたいということをお願いいたしまして、質問を終わらせていただきます。
吉田委員長 次に、伊藤英成君。
伊藤(英)委員 伊藤英成でございます。
 きょう、私の時間は余り多くないんですが、約三十分ということで、外務大臣に幾つか質問させていただきたいと思うんです。
 まず最初に、本日、日韓共催のサッカーのワールドカップが始まるわけですね。きょう開会式を迎えるわけですが、この日韓共催のワールドカップに対して外務大臣はどういう思いで、そしてまた、どういうふうにこれからの外交等を期待されるかということについて伺いたいんです。
 実は、私自身のことを申し上げますと、このサッカーのワールドカップをどういうふうにといったころでありますが、これはいろいろな方がいろいろなことを思われたと思うんですけれども、少なくとも、私が直接関与したといいましょうか、話をした部分でいいますと、当時、東京におられた韓国大使が、日韓で共催できたらどんなにいいかということを言われたんです。その問題について、本当に熱っぽく一緒にいろいろお話をし、そういうことができたらどんなにか日韓の今後のためにもという話をしたのを思い出すんです。その大使は、必ずそれを実現させるんだという熱意、熱い情熱を込めながらお話をされたのを、今改めて思い出すんです。
 今回のこのサッカーは、日韓共催たる意味で非常に意味があるし、私自身も非常に期待もするんですが、外務大臣として、まさにきょうこのときにどういうふうに思われるか、その辺についてまず伺います。
川口国務大臣 私も、委員がおっしゃられますように、そもそも共催をするという決断をしたこと自体が大変な英断、いい決断であったと思います。
 それから、もちろん、その開催の準備、あるいは、まさにきょう開会されて実際の大会を運営していく過程で、日本と韓国の間にさまざまな共同作業があった。これは、その周辺の部分も含めてあったと思います。それにも意義があったわけですし、昨今の報道を拝見しておりますと、日本と韓国が共催をするということで、韓国についての報道がずっとふえている。恐らく、これは韓国においても同様に日本についての報道がふえているのではないかと思います。また、実際に多くの人が両国の間を往来するイベントである。
 そういった意味で、両国の幅広い交流を促進する試みであるということが一つあると思います。同時に、世界に向けて、日本と韓国が共催をする、一緒にあることをやっていくんだということを言う、その関係について世界にも認識を持ってもらうということの意味もあったと思います。そういった意味で、これを数年前に決めたという当時の英断というのは、私はすばらしいものがあったと思います。
 まあ、共催ではありますけれども、実際の試合の場では仲よくということではございませんで、これは日本がぜひ勝たなければいけないと私は思っておりまして、この大会で日本が優勝するように、その願いを込めて、きょうは赤い服を着てまいりました。
伊藤(英)委員 きょうの勝負服は、優勝のために勝負服ということなのかもしれませんが、私もすばらしい大会になることを本当に心から思っているんですが、実は、今の大臣のお言葉よりはもっともっと大きな意味というか熱いものを、私自身はそういうことを思ったりしております。
 今回の件で、ちょっと余談になるかもしれませんが、カメルーンのチームが中津江村に来てくださった。あるいはまた、それがおくれた状況やらいろいろなことについて、本当に連日のように報道されたり、あの中津江村の皆さん方がどんなにか温かい気持ちでいろいろやってくださっているか、そのままの気持ちがいろいろなところに報道されているのを見たときに、私なんかは本当にうれしくなる。最近の日本の状況なんかを見るにつけ、日本の状況と言ったらおかしいのかもしれません、外務省の状況を見るにつけ、中津江村のあの人たちの心はどんなにかというぐらいの感じをちょっと思ったんです。
 それで、ワールドカップは本当にすばらしい成果を私としても期待するわけでありますが、瀋陽の総領事館の問題についてお伺いしたいと思います。
 この問題は、もう今までも何度となくいろいろなところで議論もされたりしておりますので、ひょっとしたら重複する部分があるのかもしれませんが、私が非常に気になっている部分もあるものですから、ちょっと伺うんです。私は、今回の瀋陽の総領事館の事件を見ているときに、ひょっとしたら、本当は外務省だけじゃないかもしれませんが、外務省の状況を象徴しているかもしれないなと思っているものですから、ちょっと伺うんです。
 まず最初に、五月八日にあの事件が起こった。そして、衝撃的な映像がビデオで放映されたんですね。もちろん、外務省としても、現地に調査にも行かれたり、いろいろな活動もされたんですが、あの調査活動をされたりするとき、あるいは調査報告をつくるときに、あの放映されたテープ、あれは手に入れたんでしたか。
川口国務大臣 外務省は、テレビの撮影ビデオは見ました。ただ、そのテレビのもともとのテープそのものを入手しているわけではございません。
伊藤(英)委員 あれは、放映された部分、その前の部分もあるかもしれないし、その後の部分もあるかもしれないですね。入手しようとされたんですか。
川口国務大臣 私どもが承知をいたしておりますことは、共同通信社が二十九日に、瀋陽総領事館事件の取材、ビデオ・写真撮影をしたのは同社の記者であったと公表をいたしました。そして、共同通信社によれば、女性三名が取り押さえられた後、同社の記者は現場を離れたため、総領事館から二名の……(伊藤(英)委員「いや、大臣、外務省としてあれを入手しようとしたんですか」と呼ぶ)ですから、しておりません。
伊藤(英)委員 私が伺ったのは、入手しようとしたのかどうか。
 実は、私ども民主党の外務・安保部門会議に外務省から来ていただいて説明を聞いたんですよ。責任者が来られました。私は聞いたんです、入手しようとしましたかと。しません、そういうことはマスコミだからやらないと言われたんですよ。僕は、なぜやらないんですか、なぜ調べようとしないんですかと。そうしたら、マスコミだからしません、こう言ったんです。私には信じられないですね。
 なぜ事実を本当にちゃんと確認しようとしないんだろうか。テープを買うなら買えばいいではないか。そういうアプローチをなぜしないのかというのがわからないんですよ。
 外務大臣はそのことを御存じですか。
川口国務大臣 外務省は、そのテープについて外務省に提供するように、提出するようにということは、共同通信社に対しては言っておりません。
伊藤(英)委員 もしもそうならば、いいですか、担当課長が私どものところに来て、そういうことはしませんという話をしたんです。私は、なぜ今そんなことを言ったかというと、いかにも執念が足りないではないか、本当に事実を確認しようとする、その熱意がないじゃないかという気がしたんです。後からいろいろなことが出たりしましたね。ああいうのも、だから起こってくるんじゃないかという気さえするんです。
 私は、今回の状況で非常に残念だったのは、もういろいろ議論もされたことなんですが、例えば報告書が出たりする。そして、もちろん中国からもいろいろな事実関係ないし事実関係らしいものが言われたりいたしました。そのときに、外務省が報告をされたことについて、事実はこうだと言われたときに、外務省がこういうふうに言うから多分事実だろうと多くの人が思うんだったら、本当に幸せだといいましょうか、いい。ところが、多分、外務省の人が報告したもの、事実について、本当かな、ひょっとしたら隠しているんじゃないかなと多くの人がまた思うわけですね。このことがそもそも大問題だなという気が私はするわけです。
 そのときに、では、何でそんなふうに思うのだろうか。
 例えば、私自身が外務省から聞きました。東京の中国大使館の人からも話を私聞きました。これは印象を申し上げます。いいですか。
 外務省の人にこのことについていろいろ事実関係を聞いたときに、本当に、本当かねと何度もそういう質問をするのね、私たちは。しなきゃならぬ。これはどうなっているの、本当と言って。いいですか。では、中国大使館の人が説明したとき、私は中国側の報告が全部正しいということを言っているわけじゃないんです。これはあくまでも印象ですよ。私が聞きますね。そうすると、まず文書を説明して、ここのところはこうです、そして、質問に対して、この部分はこうだと思います、推測する、この部分については、質問したことについては、それはわからないというようなことをはっきりと言われるんですね、はっきりと。そういうのを聞いたりしていますと、あれは本当かな、外務省の報告についてそういうことを思ったりするんです。
 だから、私は、今、外務大臣はあのテープを共同通信にという話がありましたけれども、共同通信もあるかもしれない、実際に撮影したそれぞれの当事者だってあるではないか、そういうところに皆アプローチしたのかしらん、後には何が映っているのかしらん、前に何が映っているのかしらんとか、なぜもっともっと執念を持って事実を確認しようとしないのかというのが私には不思議なんですね。どうですか。
川口国務大臣 先ほども申しましたように、外務省としては、放映をされなかった部分のテープについて確認をするということはいたしていないわけでございます。これは、いろいろ考え方は私はあると思いますけれども、報道されていない情報を特定の報道機関に対してその提供を求める、政府が求めるということについては、これは報道の自由との関係で慎重であるべきであるというふうな考え方というのも私はあると思います。
 それから、委員がおっしゃっていらっしゃる、今回の事件につきましてどういう情報の提供の仕方を政府として行うかということにつきましては、どこかの段階でやはりきちんと考えてみる、本当にあれでよかったかどうかということは考えてみる必要があるだろうと思いますし、その上で、改める点があれば改めるし、あれでいいということであればそういうことだと思いますが、今回の争点は同意があったかどうかということでございますので、調査の報告書というのは同意がなかったということについてお出しをしているわけでして、例えば、あと一人領事が出てきたかどうかというようなお話ですとか、幾つか報告書に盛り込んでいないことで御指摘を受けたことというのは確かにございます。
 それについては、そういうことの事実関係については、その都度お答えをしてきているわけでございまして、最初の調査のあり方といいますか、報告書の出し方、これが、両方の国が協議をしている、五人の方が出国ができるようにということで交渉しているという段階でどのような出し方をするか、これについてはまた改めて考えてみる必要があると思いますけれども、これについてはいろいろな考え方があると思いますし、外務省は同意がなかったということを焦点として報告を出させていただいた、そういうことでございます。
伊藤(英)委員 私がテープのことを申し上げたのは、テープはいろいろな人が撮っている、フリーの人もあるいは撮っているかもしれない。要するに、私が申し上げたのは、あらゆる手段といいましょうか方法で事実を確認しようと。ああいうのが報道されているんだから、ほかのテープだっていっぱいあるかもしれませんとかいうことについて、何も共同通信だけじゃなくて、そういう、本当に調査しようという熱意を感じないなということが問題だ。私たちが感じられないということです。これは報告書だけの問題じゃなくて、実際にその責任者に来ていただいて説明を聞く、党の正式な会議ですよ、そのときの答え方、それなんかを見ていると、本当かなと私は思ったということです。
 それから、今回、あの五人の方が中国から出国されることになって韓国にという話になってきたりしたんですが、一体なぜあんなに長くかかったんだろうかということの一つは、もちろん、不可侵権が云々という話について私も重視をするんだけれども、何となく、不可侵権だけをひょっとしたら考えていたのかしらん。百歩譲って、総領事館の人が、百歩譲ってと言っていいんでしょうかね、彼らが何を考えていたんだろうかというようなこと等を考えたときに、私は気になるなと。
 何でかといいますと、私は時間が余り長くないんだけれども、例えばNATOがコソボを爆撃したとき、中国大使館を爆撃しましたよね。ミスか故意かそれは知りませんよ。あのときにすぐに問題になったうちの一つは、こういうことだったと私は思うんですよ。そのときの一つの考え方は、人道問題を本当に考えるのか、国家主権を考えるのか。あのときに中国は人道問題よりも国家主権を考えてすぐに反応したんではないかという考え方がありますね。知っているでしょう。有名な人がそれを書いていますよ。いいですか。それはまあ横に置きましょう。
 今回のああいうことが起こったときに、日本人は、あるいは日本の在外公館は、あるいは瀋陽の総領事館の人は、何を本当に考えて仕事をしているんだろう。要するに、人間に対して、あえて言えば人権だとか人道だとかいう言葉かもしれません。要するに、人間に対する限りない愛情といいましょうか、愛を感じてそれを大事にしているのか、何を大事にしてあそこで仕事をしているんだろうということなんですよね。
 それが、ああいうことが起こったときに、よく言われることですが、二歳でしたかね、あの女の子をすぐ抱きかかえて助けてあげようとか、あるいは、あの奥さんがああいう状況で武装警官にやられたりしているときに何とかしよう、これは私からすれば法とか条約とかそういう以前のものだと思っているんですよ。そういうことを大事にしようという気持ちで日ごろ仕事をしているんだろうかということなんですね。非常にわかりやすく言えばそういうことだと思うんです。
 要するに、人間に対する、あるいは人権とか人道とか、そういうものをまず第一に考える、日本の外交の一つの大きな柱はこういうことなんだよということがあれば、実は状況はかなり違ったんだろうと思う。
 にもかかわらず、出てくるのは不可侵権、不可侵権云々という話ばかり。誤解のないように言いますが、私は不可侵権は非常に重要だと思っていますよ。そうなんだけれども、まずは人間じゃないかという部分が非常に欠けているんじゃないかというふうに、あの映像を見れば思うんですね。そういうのをどう思いますか。
川口国務大臣 まず最初におっしゃった、時間がかかり過ぎたではないかということについてでございますけれども、八日に事件が起こって、実際に五人の方が出国をしたというのは二十二日でございましたので、約二週間近い時間がかかっているわけです。この時間が長かったか短かったか、これはいろいろな見方があると思います。
 確かに、同じときに起こった米国大使館、カナダ大使館へ入った人たちは、この五人よりは早く中国を出国したということではあります。ただ、他方で、案件によっては、いろいろ例はありますけれども、例えば一年以上かかったというケースもあるわけでございます。一概に、これはもう本当に、案件あるいはその態様、そのときの状況、さまざまありますから、約二週間が長かったか短かったかというのは一義的には言えない話であると思います。
 それから、人道上の問題を重視していなかったのではないかということでございますけれども、これは当初から、我が国といたしましては、関係の国際法及び人道上の観点から極めて問題であるということで、今委員も、不可侵の侵害について、それが問題でないと言っているわけではないというふうにおっしゃられましたけれども、私どもも、国際法上の問題と人道上の問題をずっと最初から言っているわけでございます。そういう意味で、私どもの認識はまさに委員の認識と同じではないかというふうに私は思っております。
 それから、確かに映像が事態がわかった後で流れたということがありましたから、あそこに立ち尽くしている女の子の顔、叫ぶ声、これは本当に耳について離れないという方は多いと思います。私も目に焼きついて、耳について離れないという感じがございます。
 それは、全部のことが明らかになってそう思うということでありますけれども、これは報告書でも申しましたけれども、瀋陽の総領事館で、さまざまな人が総領事館に入ろうということで、これまでもけんかがあったり騒ぎがあったりということがあったわけでございまして、最初の時点で、最初に人が中から出てきたときに、これがそういう脱北者であるということが直ちにわかったかというと、これはそうではない。
 これはもう本当に、考え方によっては、これは中国の方も私におっしゃいましたけれども、例えば、こういう時代ですから、脱北者かもしれないしテロリストかもしれないし、あるいはほかの目的を持った人間かもわからない、そういうことが瞬間的には全部わからない状態、まずけんかであろうと思ったということで、これは後からいろいろなことは言えるかと思いますけれども、そういったことを考えると、日本国として、人道上の点を考えないでこの交渉をやってきたと私は思いませんし、私自身もそういうつもりでやってきたわけでは全くございません。
伊藤(英)委員 私は、あそこの領事館の人たちの行動を見たときに、何を言おうが、あの映像を見たときに、本当に人間をまず大事にしようという行動かな、そういうふうに思えないなということで言っているんです。
 それこそ、私はいつも言うんですけれども、普通、国はどうやって栄枯盛衰を経るのかなということを考える。前にも他の委員会で私は申し上げたことがあるんだけれども、テロ特のときにも話をいたしました。
 これは塩野七生さんがあのテロが起こったときに書いていた文章なんですが、そのときに、一つの大国が崩壊するというのはどういうときなんだろう。あれは、例えばテロとか何かで爆撃されて滅びるんじゃない。国家が滅びるというのはどういうときかというと、そんなんじゃなくて、例えば何かの故障があってもすぐに修理をされずに放置されるんだとか、あるいはつまらない行政の怠慢から始まるんであって、国家はそうやって滅びていくんだと彼女は書いているんですね。
 これまた、私もよく言うんですが、今京都大学にいらっしゃる中西教授が「大英帝国衰亡史」という本を書いていますよね。あの中で見ていますと、それぞれの国家がどうやって滅びていくんだろうか。まさに気概ですよ。特に指導者層の気概ですよ、どんなものだって。
 もうきょうは時間がないから余り多くは申し上げませんが、例えば今の外務省のあの姿を見れば、一体どこに、本当に自分たちがエリートとして日本をという気概があるんだろうか。そういうものが見えない。僕なんか残念でならぬのですよ。残念でならない。なぜこんな国になってしまったんだろうかということを私は痛感いたします。
 それで、何でこうなっているかなと。今外務省改革でいろいろなことを取り組んでいらっしゃいますね。一つだけ物すごく私は気になって、これから民主党もいろいろな提案もしたり、今までもしたりしまして、例えば大使の任用の問題についてどうしようかという話なんかもしたりしているんですね。今までも提案もしてまいりました。一つちょっと聞きたいんですよ。
 私は、外務省は責任のとり方、責任のとらせ方というのが非常に生ぬるいんじゃないかと思っているんです。基本的にそう思っている。
 それから、もう一つ。外務省の人は入省したらほとんどの人がそのまま、よっぽど理由がなければみんな上に、上にといいましょうか、例えば経済産業省とか、元通産省だとか、元大蔵省とか、そういうようなところですと、みんな途中で勧奨制度、早期退職勧奨といいましょうか、そういうことが行われたりしますね。外務省は多分そういうのはないんだと思います。それで、ほとんどみんな大使なり総領事なり、そういう形で出ていく、何か問題を起こしても、本来責任を負わなきゃならないことが起こったとしても、何となくそのうちにどこかのまた在外公館の何がしかになっていく、こういうやり方をしていると私は思うのです。
 多分、私はそういう点は一番ベースかもしれない、直さなきゃならないところである、こんなふうに思いますが、どうですか。
川口国務大臣 今回の瀋陽の総領事館事件というのは、これは国会でも申し上げさせていただきましたように、特に初動の段階でいろいろな面で反省すべき点がたくさんあると私は思います。
 それで、これを一度きちんと考えて改善策をつくり、その改善策は、単に制度の面、予算をふやすとか人をふやすとか、そういうことだけにとどまらず、やはり基本的なことの問題が何であったか、その考え方を外務省の改革に流し込んでいくということは必要であると思います。組織としてのその規律のあり方ということがやはり外務省の問題の基本にあるというふうに私は思っております。そういったことを考えながらいい改革をしていくということが大事だと私は思っています。
伊藤(英)委員 私の時間がほとんどなくなったんですが、最後に、大使の問題について、民間からも、あるいは国会議員OBも含めて、もっともっとたくさん登用するべきではないかという話は、民主党も今までも主張もしてきたんです。
 そこで、最近いろいろ問題になっておりますガーナの浅井大使の件についてお伺いしたいんです。先日の外務委員会でもこの問題も出たりしているんですが、私は本当にもう一つわからないなというのは、あれだけいろいろ報道もされたりしているんですね。彼女について仕手株との関係がどうだとか云々とか話が出ている。実は、私は経済部の新聞記者に聞いてみた。そうしたら、その人からも、ああ、そんなことはみんな知っていますよと言われたんですよ。経済部の記者をやっていた方がそう言われました。
 そこで伺うんですが、ああいう報道がされて外務省として調査をしたんですか、調査をされようとしているんですか。
川口国務大臣 浅井ガーナ大使につきましては、これは選ぶ過程でさまざまな基準に基づいて、この方が適当である、適材であるという判断をいたしまして、さまざまなことについて確認をさせていただいた上で決定をし、内閣に推薦をさせていただいたという手続を経ております。ということで、いろいろ出ていることについては確認をしております。
伊藤(英)委員 今の最後の話は、今報道されている内容等については調査をした上で決められたという意味ですね。
川口国務大臣 浅井大使を大使にお願いをする過程で、浅井大使の、弁護士をずっとしていらしたわけでございますので、それまでの活動につきましては確認をさせていただいたということでございます。その上で判断をしているということでございます。
 そして、いろいろ記事に載っている、週刊誌等に報道されていることでございますけれども、浅井大使が週刊誌の記事にあります企業の監査役を務めていたということは事実でありますけれども、その間に、これらの企業の取締役が違法な手段によって株価操作を行ったというような事実はなく、また、御本人がこれらの企業の株取引によって利益を得たこともないということは、浅井大使御自身から確認をいたしております。
 そして、一部の週刊誌記事におきまして、刑事事件に関与をしている人物と浅井大使が個人的なつながりがあるというような報道がございますけれども、そのような事実がないということも、浅井大使から確認をいたしております。
 外務省として可能なこと、可能なやり方でいろいろな確認はさせていただいた上での決定でございます。
吉田委員長 先生、時間ですから。
伊藤(英)委員 はい。
 今の報道されている内容にも関連をして、これが問題になった場合には、外務大臣としてはどういう責任をとられますか。
川口国務大臣 確認をいたしておりますので、そういったことが問題になるようなことはないと考えております。
伊藤(英)委員 浅井大使に参考人としてこの委員会に来ていただくように、委員長の方にお取り計らいをしていただくようにお願いをいたします。
吉田委員長 理事会で協議をさせていただきます。
伊藤(英)委員 では、終わります。
吉田委員長 次に、金子善次郎君。
金子(善)委員 民主党の金子善次郎でございます。
 これまで各委員会におきまして、ロシア関連で、支援委員会あるいは日露青年交流委員会の問題について、多くの議員からも指摘がされてきたところでございます。
 三月十三日の私の決算行政監視委員会で質問をいたしました日露青年交流委員会についてでございますけれども、その際、大臣は、この件に対しまして調査をするというふうに答弁なさったわけです。以来、早いものでございまして、二カ月半以上時間が経過しているわけでございますけれども、いまだその報告がなされたというふうには聞いてないわけでございますが、それはどういうようなことになっているんでしょうか。
川口国務大臣 調査についてはかなり進んでいると承知をしておりますので、できるだけ早く調査の結果をまとめるように督促をしているところでございます。
金子(善)委員 その際また、会計検査院の金子院長の方から、お金の流れについて調べる必要があるというふうに認識をしていますという答弁をいただいたわけであります。
 この私の質問でございますが、必ずしも交流委員会だけではなくて、国際機関、二国間協定とかいろいろございますけれども、そういうことについてもお金の流れについて調べる必要があるというふうに会計検査院院長がみずからお答えになったわけでありますが、その検査の状況でございますが、どうなっておりますか。
石野会計検査院当局者 今お話しの支援委員会それから日露青年交流委員会に対します拠出金につきましては、適宜外務本省に対しまして実地検査を実施するなどいたしまして、その実態の把握に努めているところでございます。
 それから、今お話ございました、それ以外の国際機関への拠出金がどうなのかということでございますが、いろいろございますので、これらにどういった優先順位をつけるか、どういった形で検査を行っていくか検討中でございます。
金子(善)委員 そこで、会計検査院に、今のお話ですと、優先順位を考えながらやっているというような話ですが、具体的にいつごろまで、やっているやっているというような話、今、外務大臣もそういう話がありましたが、こういう問題がある場合にはそれなりの、優先順位をつけるならつけるで、早く一つの検査結果というものを公表すべきであると私思いますが、いつごろまでに会計検査院はそれを出す予定になっていますか。
石野会計検査院当局者 今お話ししましたとおり、事実関係あるいは実態がどういうところにあるのかという、その把握に今鋭意努めているところでございまして、今後、それらを分析し、どういう評価をするのかということを検討していくということになろうかと思います。
 今、そういうことで、まだまだその前段の実態の把握という状況でございますので、いつまでにということをなかなか申し上げる段階にはございません。また、どういった形での御報告ができるかということにもかかわってくると思いますので、まさに検討中ということで御了解いただきたいと思います。
金子(善)委員 いろいろな機関がありますから、すべて早くというわけにはいかないかもしれませんが、少なくともこの日露青年交流委員会等につきましては、できるだけ早く結論を出すように要請をしておきたいと思います。
 そこで、次の問題でございますが、この交流委員会の費用で飲食したと思われます当時の東郷局長あるいは都甲大使、森欧州局審議官等が国家公務員の倫理法に基づく贈与等の報告書を提出していない、届け出をしていないということ、これも三月十三日の決算委員会で指摘をしておいたわけであります。その後、東郷さんは大使をおやめになったわけでございますが、東郷さんにつきましては、十八回の夕食会や昼食会などに参加をしているということが判明しているわけであります。
 外務省は、私の指摘に対しまして、この件について確認作業をされたのかどうか、その点についてお伺いしたいと思います。
川口国務大臣 この件につきましては、今確認作業をしております。
 まず、国家公務員倫理法施行、平成十二年の四月一日ですが、以降は、課長補佐級以上の外務省職員が日露青年交流委員会の費用負担、これは五千円以上の場合で会食を行ったケースについて、倫理法で贈与等報告書の提出を義務づけられているわけですけれども、これについて漏れがなかったかどうかということについて、各会食の参加者からの確認を含む網羅的な調査を実施いたしました。
 この結果、計八名の職員につきまして、計十八件の会食について贈与等の報告書を期限内に提出していなかったという疑いがあると判断をされましたので、倫理法に定められました手続に従いまして、五月の一日に国家公務員倫理審査会に対しまして調査の端緒に係る報告というものを行いました。
 それで、現在、倫理審査会の事務局と協議を行いながら、関係者が法に定められた期間内に報告を行わなかった事情、これらの会食がそもそも贈与等の報告書を提出すべき五千円を超える飲食の提供に該当したかどうかということについて、改めて詳細な事実関係の調査を行っている、そういうことでございます。
金子(善)委員 次に移らせてもらいますけれども、核に関する国際機関といたしまして、朝鮮半島エネルギー開発機構、いわゆるKEDOがございます。これは、廃棄とか廃止するということではなくて、これからつくっていくということになるわけでございますので、将来にわたる運用管理、最終処分、そこまでがこれからの問題になってくるというふうに思います。
 これも私が質問をいたしましたが、四月二十六日の外務委員会でございますが、今年度の予算で十七億四千万円が計上されていることを指摘いたしました。その際、田中政府参考人から、国際協力銀行から三百十七億円が無利子融資されており、国の予算からこれまで六十一億円が拠出されているとの答弁がございました。
 そこで、現在までの事業の進捗状況についてお伺いしていきたいと思います。現在はどのような作業をしているのか、この点につきまして質問をしたいと思います。
佐藤政府参考人 お答えをいたします。
 KEDOにつきましての現在の状況でございますが、KEDOは将来的には軽水炉を二基建設するということをプロジェクトの骨格といたしておりますけれども、このプロジェクトにつきましては、二〇〇〇年の二月にKEDOとその請負業者間で契約が発効をしておりまして、現在、本格工事が行われているところでございます。昨年九月から掘削工事が始まりまして、本年八月には原子炉の基礎部分のためのコンクリートの注入ということが予定をされております。
 KEDO側が北朝鮮に対して現在示しております建設工程では、一基目の軽水炉の完成が二〇〇八年、そして二基目が二〇〇九年に完成をする予定になっているというふうに承知をしております。
金子(善)委員 そこでお伺いしたいんですけれども、国際原子力委員会、IAEAの査察を行うというようなことになっているわけですが、この現在の状況、そして今後の見通しにつきましてお伺いしたいと思います。
佐藤政府参考人 ただいま委員御指摘のように、本件、北朝鮮の関係の施設につきましては、IAEAによる査察というものが行われることになっております。
 米朝間の、このKEDOのもとになりました合意された枠組みにおきましては、北朝鮮に対して重要な原子力部品を引き渡す前に、北朝鮮は、IAEAが必要と考えるすべての措置をとることを含めて、IAEAの保障措置協定の完全履行、それに基づく査察というものが行われるというふうになっていると承知しております。
金子(善)委員 指摘しておきたいと思いますのは、そういう十分な査察というものが行われていないわけでございますが、そういう中で、工事も始まっている、作業を続けているということでございますが、お聞きいたしましても、この査察との関係というのは、恐らく明快な答弁というのは出てこないのではないかというふうに思うわけでございます。
 そこで、一つお伺いしておきたいのは、日本企業で、この事業にどういうようなかかわりを持っているのか。その点についてお伺いしておきたいと思います。
佐藤政府参考人 KEDOの軽水炉プロジェクトにつきましての調達でございますが、この調達につきましては一定のルールに基づいて行われてきておるわけでございますが、幾つかの日本企業もこの軽水炉プロジェクトに既に参加をしているということで、既に幾つかの企業がその関係の機材の供給等について正式契約を行っているというふうに承知しております。
金子(善)委員 ですから、今お聞きしておりますのは、日本企業がかかわりを持っているというのは当然我々承知しているわけですが、具体的な名前は出せないんですか。
佐藤政府参考人 私どもの承知しているところでは、軽水炉のタービンの発電機について、日立及び東芝が供給することで正式契約に至ったというふうに承知しております。そのほかにも、一部部品について、三菱重工が参加をしているというふうに承知をいたしております。
金子(善)委員 そこでお伺いしておきますけれども、この軽水炉の完成後の維持、運営、管理、これはどこがどのようにすることになるのか。あわせまして、事故が発生した場合の損害賠償、これもいろいろ問題になっているというふうに聞いているわけでございますけれども、その点と、もう一つでございますが、工事をした責任はいつまで負うことになるのか。これは軽水炉自体を最終処分するときまで及ぶのか。これにつきましてお伺いしておきたいと思います。
 この質問の趣旨でございますけれども、完成後の維持、運営、管理と事故の責任などということになってきますと、これは今の政府が次世代の国民にも負担をかけるというようなことになるおそれが十分あるわけでございますが、そういうふうにならないようにしなきゃならないのではないかと思うわけでございますけれども、その点について質問をしたいと思います。
佐藤政府参考人 この軽水炉が完成をした場合の運用並びに事故の問題、あるいは工事の責任の問題等について御質問がございました。
 まず、軽水炉が完成した場合の運用の責任でございますが、将来この軽水炉が完成をした場合には、この軽水炉というのは北朝鮮により自主的に運転、運用がなされるということとなっております。この運転につきましては、したがいまして、今そのための訓練を北朝鮮の技術者に対しても行っているというのが現状でございます。
 それから、原発事故が起きた場合の責任問題でございますが、これはKEDOと北朝鮮との間に供給取り決めというものが結ばれておりますが、その供給取り決めの中で、今後原子力の損害の賠償については別途の取り決めを結ぶということが規定をされておりまして、原子力損害の賠償議定書に関して目下交渉が行われているというふうに承知しております。
 それから、工事の責任等についての御質問がございましたが、これは基本的に、KEDOから北朝鮮側に引き渡されるときまでということであろうかと考えます。
金子(善)委員 ですから、私が指摘をしておきたいと思っていますのは、事故が起きた場合には損害賠償をどうするんだというようなことを別途協議をしているというような今説明があったわけでございますけれども、そうしますと、今工事を既にもう着手してどんどん始めているというような中で、一番肝心な、後世代にもしかすると大変な負担を強いることになるかもしれない、その重要な部分がまだ決められないままにこういう工事をどんどん進めていくというのはいかがなものかという点について指摘をしておきたい。これはよく考えてもらいたいというふうに思います。極めて重要な問題が発生するおそれがあるということを指摘しておきたいと思います。
 次の質問に移らせていただきます。
 これも同じく国際機関でございますが、アジア生産性機構というものがございます。これにつきまして、実は外務省に資料要求をしているわけでございますけれども、活動状況あるいは経理内容のわかる資料というものはいただけませんでした。そこで、外務省の方で、昨晩でございますが、運営に関する内部規則等についてはアジア生産性機構に直接聞いてもらいたいというような返事だったわけでございます。
 しかし、外務省の国際機構課が直接担当、所管している国際機関だと思うわけでございますが、外務省自身が経理内容あるいは運営に関する規則というものを把握していないというのは、日本がかなりの分担金というものを出している国際機関でございますから、ちょっと考えられないなというような感じがするわけでございます。これについて、これは一九六一年、昭和三十六年に行政取り決めで決められた、条約ではなくて行政取り決めで決められたもののようでございますが、ずっとこんな形で外務省は対応してきたのかという心配もあるわけです。これについてはどうでしょうか、大臣。
黒木政府参考人 お答えいたします。
 アジア生産性機構につきましては、先生御指摘のとおり、アジアの十八の国、地域が加盟した国際機関でございまして、一九六一年以来、四十年間にわたり活動をしてきております。
 日本につきましても、このアジア生産性機構の加盟国ということで、かつ主要な分担金、拠出金の負担国ということで、他の加盟国同様、理事会に政府代表ということで理事を出しておりまして、その理事会での議論を通じて、このアジア生産性機構の活動等についてチェックをしているところでございます。
金子(善)委員 そこで、お金の関連についてお聞きしておきたいと思いますが、いわゆる支援委員会とか青年交流委員会みたいな形で、この国際機関も経理責任者の個人口座に分担金とかそういうものが預金されているのかどうか、それについてお答えいただきたいと思います。
黒木政府参考人 お答えいたします。
 アジア生産性機構は、法人格を有しております国際機関でございまして、分担金、拠出金の振り込みは、アジア生産性機構に対して行っております。
金子(善)委員 そうしますと、これは行政協定に基づく機関だということで、今申し上げた支援委員会とか交流委員会というようなものと、いわゆる多数国でやっているということはわかりますが、法人格はどういう形で得ているわけですか。今法人格を得ているというお話がありましたけれども、では、逆に言いますと、支援委員会とか交流委員会は法人格を得ないで、個人の名前で、経理責任者の名前で預金をしているというような状態が続いてきたわけでございますけれども、それはどうしてそうなっているのかということについて説明をお願いします。
高橋政府参考人 お答え申し上げます。
 委員御質問の件は、我が国の国内法上、国際機関に対して法人格を与えている場合と与えていない場合があるんじゃないかということで、そのとおりでございまして、これは民法の第三十六条の一項のただし書きがございまして、我が国において外国法人として認許されないと、我が国の国内法上国際機関は法人格を持てない、そういうことになっております。
 実際どういうことになっておるかと申しますと、いろいろな国際機関と日本の間に条約が、取り決めが締結されるわけでございますけれども、その条約、協定の中で当該国際機関が法人格を有するということが明記されており、かつ、その取り決めが国会承認条約であるという場合に、我が国の国内法上、その当該国際機関は法人格を有するということになります。
 国際機関として一番有名なのは、国際連合とか、それから専門機関でございますけれども、国際連合及び専門機関との間では、例えば国際連合に関しましては、国際連合の特権及び免除に関する条約というものを締結しておりまして、国会承認条約でございます同条約におきまして、国際連合が法人格を有するということが規定されております。また、専門機関につきましても同様な条約が締結されておりまして、それに基づきまして我が国で法人格を有することとなるということでございます。
 今問題になっておりましたAPOが行政取り決めで設立されたということについて、それがどういう経緯かというのは、私、所管じゃございませんのでよくわかりませんが、我が国に本部が設置されることになった時点で、国会承認条約でございます特権免除協定というものがAPOと我が国の間で締結されたということをもちまして、先ほど申しました民法の三十六条一項のただし書きの要件を満たしたということで、そこの時点からは我が国で法人格を有する、そういう国際機関になっておるわけでございます。
 それから、支援委員会につきましては、これは行政機関で設置され、その後もそういう特権免除取り決めというような国会承認条約が締結されていないということでございますので、我が国の法律上は権利能力のない社団ということで現在も存在しておる、そういうことでございます。
金子(善)委員 よくわからないのですが、このアジア生産性機構については今後も質問をしていきたい、こう考えております。
 そこで、委員長にぜひお願い申し上げたいと思いますが、外務省の国際機構課の方から、内容については直接アジア生産性機構に聞いてくれというような話だったわけです。そこで、委員長にお取り計らいをお願いしたいと思いますが、具体的な経理内容、それから職員の勤務状況、あるいは退職金の問題等につきまして、運営全般がわかる資料について、外務委員会として提出、報告するよう外務省の方に求めていただきたい、こういう要請をお願いしておきたいと思います。
吉田委員長 理事会で協議します。
金子(善)委員 よろしくお願いいたします。
 引き続きまして、日中民間緑化協力委員会という、これも協定に基づく国際機関でございますが、これは平成十一年度に百億円が拠出されております。ところが、平成十三年六月現在で、九十八億六千九百万円が繰り越しをされているという状況になっております。ですから、百億円という基金を積んで、それで現在、九十八億六千九百万円が繰り越しをされているという状態でございます。
 今、国、地方を合わせて七百兆円というような借金体質の中で、必要な金は出していかなければならないということは理解もできるわけでございますけれども、一挙に百億単位で、まだ九十八億も残っているというような、しかも、これは二国間の協定に基づく国際機関だというようなことで、会計検査院の調査も一切及ばないというような状態になっているわけでございます。
 これは問題意識として、今指摘したとおりでございますけれども、これもあれでしょうか、会計責任者の個人口座に預金されている、この九十八億六千九百万円、現在ではかなり動いているのかもしれませんけれども、個人口座なのかどうか、これを質問したいと思います。
佐藤政府参考人 ただいま御質問がございました日中の緑化のための委員会でございますが、御指摘がございましたとおり、これは、日中間の取り決めに基づく国際機関という形で設立されたものでございます。
 今御質問がございました具体的な会計上の処理の点につきまして、恐縮でございますが、ただいま私、手元に資料がございませんので、どういう形での処理になっているか、今ここでは、調べた上でお答えをさせていただきたいと思います。
金子(善)委員 恐らくこれは、支援委員会とか青年交流委員会的なやり方でやるしかないというような形で、法人格がないわけですから、そうやっているんじゃないかと思います。
 そこで、国際機関への支出の仕組みの問題でございますけれども、これは会計検査院の検査も一切及ばないというようなことになっているわけで、運営全体についても言えることなんですけれども、このお金の透明性というものがなかなかはっきりしない。
 今後、そういうものはやはり透明性というものをはっきりさせる必要があるんじゃないか。それにはやはり第三者のチェックというか、そういう仕組みというものを。しかも、お金を出すのは、日本サイドばかり出しているわけですから。基本的に、両国がそれぞれ金を出すというような場合は、またいろいろあるかもしれません。ただ、日本が、こういう財政状態が厳しい中でお金を出していくわけですから、少なくともその使い方が、本当に有効に間違いなく使われているのかどうかということを、会計検査院の検査が直接及ぶような仕組みというものを考える必要があるんではないかというふうに思います。
 そこで、一つの提案ということになるわけですが、新たに協定を結ぶ場合には、少なくとも日本の税金で拠出された分担金の場合には、これは会計検査院の検査をすることができるというような一項目を、日本サイドだけがお金を出すというような場合は特に、この条項を協定の中に入れるということができないのかどうか。その辺につきまして、大臣の考え方を聞きたいと思います。
川口国務大臣 一般的に、国際機関というものは、複数の国が集まって、そこで協定を何らかの形で結んで仕事を、事業をしているというものでございます。ですから、その国際機関として本来はさまざまな、透明性を確保するための努力をし、広報をし、やっていくべき種類のものであると思います。
 それで、そこに日本の会計検査院の検査を入れるということは、国際機関の性格からして、まさに国際機関がいいと言えば別ですけれども、そうでなければ、それは成り立たない話であるというのは一般的な考え方であると私は思います。
 ただ、恐らく委員がお考えのような、日本だけがお金を出している、そういったものについて、その透明性をどうやって確保するかということについて、日本だけお金を出しているとしても、本来、理事会があり、その理事会には、国際機関である以上は複数の国の代表が入っているわけでございますから、やはりそこの判断で、透明性を確保するための努力はやるべきであると思います。
 ただ、外務省として、外務省が関係をしているものについて、できるだけ国民に、拠出をしたものについて、その組織の透明性を高めていくための努力をするということは当然だと思いますが、それを前提に国際協定を結べるかというと、これはなかなか難しい問題があると私は思います。
金子(善)委員 一つの例えとして会計検査院ということを申し上げたわけでございますけれども、やはり何らかのチェック機能というものを入れていかないと、二国間で協定を結んで、国際機関だという分類らしいんですけれども、私に言わせれば、実態は、国際機関なんてとても呼べるものではないというふうに思います。
 そういう中でいろいろな問題が生じてきた。ただ努力して透明性を確保するというようなことじゃなくて、新たな仕組みというものを何か考え出していかなければならないのではないかということで申し上げているわけでございます。単に努力をします、透明性を確保するようにします、そんなことじゃなくて、何かの仕組みを考える、そういう意思を大臣はお持ちかどうか、それをお聞きしているわけでございます。
 たまたま会計検査院ということを申し上げましたけれども、これは、そのほかの方法もあるかもしれません、そういう何らかのものを今後入れていく考えはないかどうか、それをお聞きしているわけであります。
川口国務大臣 先ほど申しましたように、国際機関は、国際機関である以上は、理事会等でそのあり方を議論し、その場で透明性を高めるための努力を、合意をして出していくということだと思います。日本は、お金を出している以上は、当然そういった理事会等の場で発言をし、透明性を高めるための方向をとるべきであると私は思っております。
 その上で、おっしゃったような問題のあった案件、これは支援委員会等もありますけれども、見直していった暁には、やはり透明性をきちんと制度的に位置づける、これは重要なことだと思っています。
金子(善)委員 終わります。
吉田委員長 次に、桑原豊君。
桑原委員 民主党の桑原でございます。
 まず、瀋陽総領事館の問題についてお伺いをしたいと思います。
 このことについては、いろいろな問題点が指摘をされております。そして、そこから引き出された教訓というのも相当あるわけでございますが、何点かお伺いしたいと思います。
 大臣は就任に際して、外務省の改革は、透明性、スピード、そして実効性を合い言葉にして取り組んでいくんだ、こういうことでございました。ぜひ、この問題につきましても、そういったことでしっかりとこれから取り組んでいただきたいということを申し上げておきたいと思います。
 そこで、まず第一点目は、在外公館の不可侵が侵害されたということでございますけれども、このことにつきましては、日本側は同意を与えた覚えはないということを明確に言っておるわけですけれども、中国側は同意を得て入ったんだ、立ち入りしたんだ、こういうことで、主張は真っ向から対立をしております。いろいろとこれから交渉をしていくとしても、そのことについて一定の決着をどういうふうなところで見ていくのかというのは非常に難しいところがあると思うんですけれども、この点について、まず、どういった見通しを持っておられるのか。
 これは非常に難しい問題ですけれども、外務省というものが本当にいろいろな批判の中で立ち直っていく、そういう中で、どういう明確な指針を持って対応して、どういう決着をしていくのかというのは、この一事をもってしてある程度見きわめていくことができるほど、私は大事な問題だというふうに思います。そこで、これの見通しをお聞かせいただきたいということ。
 それからもう一つは、このことに関連をして、いろいろ外務省の責任問題が取りざたをされております。どういった責任が外務省にあって、そのことについてどう対処していこうとしているのか。例えば、大使がああいうことを事件の起きる直前に発言をしたことが影響したとか、あるいは総領事のこの問題の起きたときの対応、あるいは副領事の対応、いろいろ責任があるというふうに言われているわけですけれども、外務省全体として、どこに責任があって、これからどう対処をしていくのか、そのことについてどういうけじめをつけていくのか。そこら辺がもう一点。
 それから、外務省改革の中では、職員の意識改革というものが大変大事だということで、それに項目を起こして、強く意識改革をやっていくということを主張されておりますけれども、この問題に関連をして、どのような内容の意識改革と申しましょうか姿勢と申しましょうか、そういうものをこれから外務省の中に徹底をしていこうとしているのか。そのことについてお伺いをしたいと思います。
川口国務大臣 たくさんの御質問が一度にございましたので、順番にと思いますけれども。
 まず、瀋陽事件の、事実関係が不可侵の侵害について異なるということでございますけれども、これはまさに委員が御指摘のように、不可侵の侵害について同意があったかなかったかという基本的な認識について、両国の意見が異なっているわけでございます。
 さまざまなことが日本側の調査について不備であるという御指摘がございましたけれども、こういった点はすべて、この事件について同意があったかなかったかというその基本的な点にかかわるものではございませんで、そういった意味で、同意がなかったという日本側の主張が揺らぐ性格のものではないわけでございます。我が国としては、こういった点につきましては、今後とも中国に対して毅然として主張をしていくべきものであると考えております。
 そうした我が国の立場を踏まえまして、今後中国に対して具体的にどのような対応をしていくかにつきましては、現下の情勢におきまして、中国側の出方を見きわめつつ、日中関係の大局を踏まえて冷静に対処をしていきたいと考えております。
 それから、外務省の対応についての責任問題でございますけれども、調査の結果の中にも書かせていただきましたけれども、危機意識の希薄さ、指揮命令系統及び警備の体制について問題があったと私は思っております。こうした問題については厳しく反省をして、再発をしないように改善策を講じていくということが必要でございますし、責任問題については、この問題についてのめどがついた時点で、こういった問題についてきちんと総括をし精査をしまして、その過程で処分問題については考えたいと考えております。
 阿南大使についてのお話がございましたけれども、阿南大使の御発言が今回の事件に影響があったかどうかということですけれども、まずその発言の概要が、これも再三再四申し上げておりますように、警備、これを一層厳重にすべきことは当然である、そういう考え方を示したものでございまして、この発言が今回の事件との関係において影響を及ぼしているということについては、私は、現時点では関係はないと考えております。
 それから、もう一つ、改革でどういうふうにしていくかということですけれども、今度の事件をいろいろ考えていく過程で、今まで私が必要であると思っていた改革、これが果たして本当に十分なのだろうかという観点で、もう一回きちんと考え直してみないといけないと今私は思っております。
 何をどのようにさらに深めていくかということについて、これはやはり「変える会」の皆様の御意見をちょうだいしながら、さらに、改革をどうやっていったら外務省に対しての国民の信頼を回復することができるのか、そして、その結果として外交に対しての国民の信頼を回復することができるのかということをきちんと考え、改革に反映をさせていきたいと思っております。
 意識の改革というのは、このために既にさまざまなことをやっておりますけれども、直接的に意識を変えるためのさまざまな改革というのもございますけれども、恐らく、改革全体がさらに外務省の職員の意識の改革に資する、改革全体がうまくいったときに意識が変わっている、そういうことではないかと思います。
桑原委員 いずれにしても、国民にとって、本当に外務省がしっかりと立ち直ってやっていくという毅然とした姿勢というものがはっきりわかるように、そしてまた、外務省の職員の一人一人が本当に高い使命感を持って、国の主権を守り、そしてまた国際的な人道というものにしっかり配慮してちゃんと対応していくんだ、そういうことがはっきりわかるように、私は、このことをもってぜひ外務省改革の本当の実を上げていただきたいということを申し上げておきたいと思います。
 そこで、このことに関連をして、日本の難民に対する対応ということがさまざま議論もされているわけですけれども、いわゆる国際法的な難民という規定になりますと政治難民ということになるわけですが、政治難民というふうに端的には言えないとしても、その国の政治体制というものがさまざまな面に影響を及ぼして、そして難民化せざるを得ない、こういう事象というのはたくさんあるというふうに私は思います。あるいは一時的な庇護であるとか、いろいろな意味で守ってあげなければならない、そういう人たちもたくさんやはり出てくるというふうに思うわけです。
 そういった面で、これから、難民に対する対応を人道的な見地に立って日本は見直していかなければならないんではないか、こういうふうなことを思うわけですけれども、この点について、それぞれの党でも検討が始まっておりますけれども、政府として、今後どう前向きにしっかりとした対応をして、国際社会に恥じない、ある意味では国際社会から本当に信頼をされる、そういう方に導いていこうとされているのか、その点について、これは法務省でしょうか、お伺いしたいと思います。
桂政府参考人 お答え申し上げます。
 今の委員の御指摘の難民でございますが、御案内のとおり、難民条約に定義がございまして、「人種、宗教、国籍若しくは特定の社会的集団の構成員であること又は政治的意見を理由に迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有する」者云々という定義がございまして、私どもとしましては、そういう者であるかどうかということを個別に審査した上で、従来から難民として認定すべき者は難民として認定しておりますし、また、それ以外の場合でも、人道的観点から必要と認められるときには本邦での在留を特別に許可する、こういう制度がございまして、そのようにしているところでございます。
 おととしにつきましては、難民として認定した者は二十二名、国際的には絶対数は少のうございますけれども、難民認定率で申しますと、我が国の場合は約一四%でございまして、これはイギリスの一二%、ドイツの一五%、オランダの七%、スウェーデンの二%などと比較しても、決して低いものではないと思います。
 また、先ほど申しましたように、難民として認定しない者であっても、人道的な観点から在留を特別に認める場合があるわけでございまして、例えば昨年の場合には、難民認定した者は二十六名でございますけれども、難民に認定しなかったものの人道的観点から特別に在留を許可した、こういう者が六十七名でございます。これを合わせますと、実質的に庇護した者の割合は約二七%ということでございます。
 いずれにしましても、難民認定につきましては、今後もその適正な運用に配慮していくつもりでございまして、今後の難民認定制度のあり方に関しましては、国際的な人権や人道に対する意識の変化に配慮するとともに、我が国社会に与える影響等もございますので、十分これを考慮しつつ考えてまいりたい、そのように考えております。
桑原委員 今、率がどうのというお話がありましたけれども、私は、この問題は率ではかるような問題ではないと思います。日本の国の力、国際的な位置、そういうものを考えて、日本の将来を考えたときに、やはり国際的な社会においてしっかりとした信頼と位置を占めていくときには、これはそんな率で云々なんという話では通らないので、本当にそれにふさわしいしっかりとした、やはり多くの人を本当に受け入れていくことができる、そういうことにしなければならないと思います。
 言われておりますように、やはり日本は難民に対して厳しい国だ、温かい国ではないというようなことで、日本に対してそういうふうなアプローチをしようとする数が、絶対数が少ないわけですから、そこに問題があるというふうにとらえないと、率で切り返すような話ではない、このことを申し上げておきたいと思います。
 それから次に、先ほどもございましたが、インド・パキスタン情勢です。
 私は、パキスタンが今度三回にわたってミサイルの発射実験を行った、昨年末はインドの国会議事堂への襲撃事件があったとか、それ以来本当にこのカシミールをめぐる緊張というのが激化の一途をたどっているように思います。これは、やはりその背景には、アフガンに対するテロ掃討作戦とのかかわりというのを見過ごすことはできないというふうに思うんですね。
 先ほどのお話にも少しございましたけれども、パキスタンの西部に配置をされていた軍が一部カシミールの方に移動した。これは、アルカイダ等の潜入を防ぐための措置でもあったと思いますし、また、米軍の活動をある意味ではしっかり注視していく、そういう役割も果たしていたというふうに思うんですが、そういう意味では、それが移動するということは、一部の報道でも言われておりますように、米軍の行動がかなり自由度を増すんだということだから、アメリカはそれを黙認しているんではないか、こんなふうな報道もございますけれども、やはりアフガンのテロ掃討作戦と深くかかわっている、こういうふうに私は思うんですが、その点をどういうふうに分析されておられるのか。
 それからもう一つは、ムシャラフ政権に対して、いろいろな国内の見方があるんだろうと思うんですけれども、この間のアフガンとのいろいろなかかわりの中で、相当反発もあるんではないか。そのことに対して、国論をある意味では違う方向に向かわそうということでこういった強硬な行動に出る、こういうふうな分析もあるわけですけれども、そこら辺、カシミールのこういう現下の緊張を生み出そうとする背景というものが何なのか。
 それから、インドのこれに対する対応の仕方の背景に何があるのか、そこら辺を政府としてどう分析されているのか、特に、アフガンとの関係でどういうふうに見ておられるのかということをお聞きしたいと思います。
川口国務大臣 インドとパキスタンの関係につきまして、昨年の十二月のインドの国会襲撃事件以来、インドとパキスタンの間は緊張が高まっているわけでして、またそれが、特にこの五月十四日のジャンムーでのバスの襲撃ということから、ますます再び高まっているということでございます。
 インドとパキスタンと我が国は、両方と良好な関係を持っているわけでございまして、こうした事態については大変に憂慮をいたしておりまして、小泉総理も両国の首脳に働きかけられましたし、私も両国の外務大臣にお話をさせていただきました。そして、パキスタンについては、カシミール過激派の活動が実効的に抑止されるようなさらなる努力が必要である、インドに対しては、外交的な努力を国際社会の要請にこたえて尽くすようにということを言っているわけでございます。
 現在、杉浦副大臣が向こうに、インドにいらっしゃいますし、それから、G8の外務大臣の中で緊急声明を出そうということで調整をしておりまして、うまく調整が進めば今晩にも出せるのではないかと期待をしているわけです。
 それぞれアフガニスタンとの関係についての御質問もございましたけれども、これは軍を国境に配置する過程で、パキスタンはこの引き揚げを行って配置をするということでして、これに対してアメリカは懸念を表明しておりまして、例えば、国防省の五月二十八日の記者ブリーフですけれども、報道官から、国内の他の地域に監視員や人員を配置がえせざるを得ないとすれば、それは懸念をするということをアメリカは言っているわけでございます。そして、世界にとっての優先事項であるテロとの闘いに対して、パキスタンが引き続き広範に関与をしていくことを求めているというふうに言っております。
 それぞれの国内事情というお話でございましたけれども、パキスタンは今改革を進め民主化を進める、今度選挙も行うということで、先日私はパキスタンの選挙管理委員会の委員長とお話をさせていただきましたけれども、努力をして、今国内に選挙の話をし、いい制度をつくって選挙をしていこうということを考えているようでございます。もしこの紛争がエスカレートするということになってしまいますと、こうしたパキスタンの国内の民主化努力、改革努力に影響が及ぶのではないかという懸念も私としては持っているわけでございます。
桑原委員 我が国とパキスタンは投資協定を結んで間もないわけですし、あるいは、我が国にとっては、インド、パキスタン、インド洋、あの地域は本当にさまざまなものを輸送する、エネルギーを中心にした非常に重要な輸送ルートでもございます。また、万が一戦火を交えるということになれば、核が本当に使われてしまうんではないかという大変な問題を生じかねません。中東やアフガン、さまざまなところに及ぼす影響も本当にはかり知れないものがあるというふうに私は思います。ぜひ、事態の重要さ、深刻さ、そんなものを認識されて、本当に日本としてできるだけの最大限の対応をしていただきたいと思います。
 両方とも我が国とはいい関係にあるわけですね。イスラエルとパレスチナのときもそうですけれども、両方とも我が国はいい関係、そこら辺じゅうでみんな我が国はいい関係にあるわけでして、いい関係にあるんだがなかなか影響力を行使できない、そういうもどかしさを常に感ずるわけですけれども、今回もそういったことで、特に私は、アメリカの動きあるいはロシアの動き、英国もいろいろ努力をされているようですけれども、そういったところの影響力を持つ国々とも実際にしっかりと話し合いをして、共同して事に当たるような、そういう努力もぜひしていただきたいということを申し上げておきたいと思います。
 最後に、今有事法制が議論されております。これは、一たん有事が起きたらどうするか、おそれがあったら、予測されたらどうするか、そういう有事を前提にした議論なんですけれども、それはそれとしての必要性があるわけですが、やはりそれを起こさない、これをどうするかというのも、ある意味ではもう一つの有事対応として、特に外務省ということになれば、起きた場合どうするかということももちろんですが、それを起こさないということに全精力を費やす。死力を尽くすという表現がございますけれども、本当にそれくらいの覚悟で、ある意味では外務省は有事に対応すべきではないか、私はこういうふうに思うんです。
 そこで、日本外交の有事を考えたときの一つの重要なポイントとして、北東アジアというエリア、これが安定し得るかどうかというのが、周辺事態なども含めて、日本にとっては本当に大事な地域だ、私はこういうふうに思います。
 ASEANであるとか、あるいはASEANプラス3、あるいは日米韓の協議とか日中韓の協議であるとか、APEC、ASEM、あるいはこの地域のいろいろな二国間関係、それはそれなりにみんなあるわけですけれども、トータルにこの北東アジア、私が言うところの北東アジアは、中国、ロシア、南北の朝鮮半島、そしてモンゴルやアメリカも含めて、もちろん日本はそこに位置するわけですけれども、そういったこの北東アジアの平和と安定に向けて、日本がある意味では結び目としての大変重要な役割を果たし得る位置にあるというふうに私は常々思っておるので、ぜひこの地域をトータルに考えた安全保障であるとか対話、そして経済協力。
 大変国情が違って、あるいは国の経済的な力も違って、本当に協力しにくい条件がたくさんあるわけですけれども、逆に言うならば、技術のあるところ、資本のあるところ、あるいは労働力があるところ、いろいろそれぞれに補完的な関係に立ち得る、逆に協力し得るような、そういう関係もあるというふうに思うんですね。
 そこで、この地域をまず大臣はどういうふうに見ておられるのか、日本外交にとって戦略的にどんな位置にあるというふうに見ておられるのか、そのことをお聞きし、時間もございませんので、あわせて、安全保障のこの地域での対話とかあるいは経済的な協力、そういうものについてどういうふうな考え方を持っておられるのかということを一気にお聞きしたいと思います。
川口国務大臣 委員がおっしゃいますように、不断の外交の努力というものが何よりも重要であるということは全くそのとおりでございまして、外務省としても日夜努力をしているわけでございます。
 この北東アジアの地域というのは、地理的にも歴史的にも、言うまでもなく我が国と非常に密接な関係にある地域でございまして、この地域の平和と安定が全く我が国に直接に響いてくる、この地域が我が国の平和と安定のために非常に重要である、それだけではなくて、国際社会全体の平和と安定のためにも重要であるという認識を持っております。
 このために、委員がおっしゃられるような、政治、経済、安保、文化、経済協力、さまざまな分野で重層的な協力関係を持っていくことが重要だと私は考えております。
 例えば、対話その他からいきますと、ARF、ASEAN地域フォーラム、ASEANプラス3、日中韓の枠組み、さまざまな対話と協力の場があるわけでございまして、今後、外務省としても引き続きこの努力を継続していきたいと考えております。
桑原委員 そういう一般的認識はそれでいいんですが、私は具体的に、二国間あるいは三国、そういった対話の上に、この地域をトータルに包み込んでいくような、そういう一つの枠組みを日本が構想力を持って戦略的に進めていくということがどうか、こういうふうに問うているわけでございまして、日本の外交を、いろいろな面で外務省も批判をされるわけですけれども、何かしらしっかりとした日本ならではの目標というか、そういうものが一つの背骨として外務省にあるのかということがやはり問われていると私は思うんですね。
 受け身で、どこかの国が、どこかが提唱したことにうまく乗っていくという外交、それも私は大事だと思いますけれども、しかし、日本が本当に自分たちの力というものを国際社会に生かそうとしていくなら、そういう大きな構想力を持って、使命感というのはやはりそこから生まれてくると思うので、そういうことが一番必要ではないか、こういうふうに思いますので、そのことについて一言大臣からお答えをいただいて、質問を終わりたいと思います。
川口国務大臣 ARFで一つ枠組みがありまして、そこで二〇〇〇年の七月から北朝鮮も加えて対話を行っていく、これについては引き続き進めていきたいと考えております。
 これに加えまして、我が国はかねてから、日、米、中、ロ、韓、北朝鮮、この六者が参画をした対話の場の設定を提案してきているわけでございます。
 このような話し合いの場は、他の関係国の意向もございまして、必ずしも容易ではないわけですけれども、今後ともこの実現に向けて努力をしていきたいと考えています。
桑原委員 ありがとうございました。
吉田委員長 次に、前田雄吉君。
前田委員 民主党の前田雄吉でございます。
 きょうは、まず初めに申し上げたい。きょう、この場に欧州局長がおられませんね。私は、昨年の田中外務大臣が言われた言葉を思い出しました。外務省には得意わざがあるんだ、都合の悪いことが起きたらば海外に飛ばすんだ。当然、国後島の電力発電の施設の建設に関する話が出てくるこの委員会を前にして、昨日、欧州局長は、ロシアに今の日本の外交は変更がないということを伝えに旅立たれたということですけれども、なぜきのうじゃなければいけなかったんですか、外務大臣。
    〔委員長退席、中川(正)委員長代理着席〕
川口国務大臣 委員御案内のように、日ロ関係というのは、我が国にとって非常に重要な二国間関係でございます。もちろん、国会に出席をして国会議員の方の御質問にお答えするというのも局長の重要な役割でございますけれども、それと同時に、本来のやるべき外交のための努力というのも非常に重要でございます。
 ということで、現在、欧州局長は、まさに一番国会に与える影響が少ない日程を選びまして、ロシアに出張をしているわけでございます。
前田委員 やはり、きょう、現実にこの委員会に出てこられないわけですから、私は、これはあくまでも外務省の隠ぺい体質そのものじゃないか、そんなふうに感じます。
 せんだっての外務委員会で、ガーナ大使の選任について、我が方から首藤委員の質問がありましたけれども、なぜアフリカに、なぜガーナにと、この部分が余りにも不明瞭であった。もう一度、簡単に明瞭に御答弁いただきたいと思います。
川口国務大臣 浅井大使は、ずっと渉外関係の弁護士をなさってきた方でいらっしゃいまして、国際経験が豊富な弁護士でいらっしゃる。そういった弁護士としてのお仕事はもちろんでございますし、国際問題にも造詣が深い方です。アメリカや英国で高等教育も受けられている、外国語能力や海外生活の経験といった意味でも申し分がない方でございまして、我が国の大使として適任な方でいらっしゃるというふうに判断をいたしています。
 アフリカとの関係でも、浅井大使は、仕事でガーナやナイジェリアに行っているということはもちろんですけれども、個人的にもアフリカには関心を持っていらっしゃる。それで、平成十二年二月以降は、社団法人のアフリカ協会の個人会員ともなっていらっしゃいます。
 浅井大使の起用につきましては、これらの点に加えまして、アフリカ各国の駐在大使の在任期間や離任の時期などを勘案いたしまして、総合的に判断をした結果、お願いをしたものでございまして、個別の人事にかかわる事柄でございますので、詳細を明らかにするということは控えさせていただきたいと考えております。
前田委員 結局、詳細は明らかにすることは控えさせていただく。こういうのはおかしくありませんか。
 こうやって、日本の外交全般にわたってチェックの機能を果たすのがこの外務委員会ではありませんか。アフリカに対する特性がなかったら、ゼネラルの部分で大使を採用したとはっきり言われればいいんじゃないですか。そうした明快な答えがないから、あやふやになってしまう。
 では、浅井氏を推薦なさったのはどなたですか、外務大臣に。
川口国務大臣 浅井大使は非常に適材、適任な方を適所に置かせていただいていると私は思っております。
 人事の細かいことについては、まさに人事でございますので、これについては控えさせていただきたいと思います。
前田委員 杉浦副大臣の御推薦があったというふうに私は伺っていますけれども、はっきり、そんな隠さずに言えばいいじゃないですか。どんなグループから、大体こういう考えで私は選びました、そうやって明らかにすべきですよ。だから、全くあいまいなまま進んでいってしまう。
 浅井氏にやみ金融人脈がある、あるいは仕手に参加する企業の監査役をやられているという背景があるという情報が流れていますけれども、これについて、調査されて選任なさったのか、あるいは後になって気づいて調査されているか。この点、どちらでございますか。
川口国務大臣 大使をお願いするわけでございますから、この大使をお願いするという方針を固めるに当たりましては、当然のことながら、これまでの弁護士としての活動の状況等につきまして確認をさせていただいております。
 かつて浅井大使が、週刊誌記事にあるような企業の監査役を務めていたということは事実でございますけれども、その間に、これらの企業の取締役が違法な手段で株価操作を行うといった事実はなく、また、御本人がこれらの企業の株の取引によって利益を得たこともないということを、浅井大使御自身から確認をさせていただいております。
 それから、一部の週刊誌記事において、刑事事件に関与をした人物と浅井大使との間に個人的なつながりがあったという指摘がございますけれども、そのような事実はないということも浅井大使から確認をいたしております。
前田委員 この浅井大使の選任について、では、川口大臣は責任を持たれているわけでありますね。確認いたします。
川口国務大臣 これは当然に、外務省が内閣に推薦をするに当たっては、私は外務省の一番トップでございますから、当然に責任を持って推薦をいたしました。
前田委員 わかりました。
 では、次に移らせていただきます。
 今、皆さんのお手元に資料を配らせていただきました。国後の発電施設に関する関係資料をつくらせていただきました。
 これは、鈴木議員が電力事情調査にもかかわられる、例えばJICAの予備調査にも参加をされている、あるいは東京電力の調査にも参加されている、非常に積極的に電力施設の敷設について関与をなさっているわけでございます。
 皆さん、そこでよく見ていただきたいところがあります。
 九八年十月、色丹・択捉電力施設の新設。これは、新しくつくると決定されて、その上で、九八年の十二月、第三次の補正予算で、三島合計で四十億七千万円、これが計上されているわけであります。三島といっても、まだ国後については決裁がおりておりません。国後が決定したのは九九年の十二月でございます。まだ決定していないにもかかわらず、その分まで含めて四十億七千万円の補正予算の計上をされた。
 この経緯について、どなたが起案されて、どなたの責任でこの政策決定がなされたのか、詳しい御説明をいただきたいと思います。
塩尻政府参考人 御説明申し上げます。
 そもそも北方四島にディーゼル発電機を供与するということについては、そこの表にございますけれども、九八年四月にございました川奈会談の前に基本的な考え方を決定しております。これを受けまして、九八年の川奈会談で、当時の橋本総理から、四島住民にディーゼル発電機を供与したい旨の意図表明をされておられます。そういったことを受けまして、九八年度補正予算、十二月でございますけれども、色丹、択捉、国後、三島分のディーゼル発電機の供与を予算計上をしております。
 そのときの、どういう決裁でやったかという御質問でございますけれども、外務省としまして、これは各省も同じでございますけれども、予算要求をするに際しましては、各課あるいは室がそれぞれの要求を行います、それを取りまとめまして省内で調整を行うという手続をとっております。したがいまして、お尋ねの予算政策決定にかかわる起案者というものは、特に個別に特定されるわけではございません。
 一つ申し加えますと、この表にもございますが、そのときの、補正予算を決めたときの支援室長というのは渡邉室長でございます。
    〔中川(正)委員長代理退席、委員長着席〕
前田委員 私が聞いているのは、いいですか、まだ決めてもいない国後の発電事業に対しての予算がなぜ含められて四十億七千万円という計上がなされるんですか。決定がなされる前に、もうそれまで含めているわけですよ。そんないいかげんなものですか。答弁お願いします。
塩尻政府参考人 今の御質問でございますけれども、同じお答えにならざるを得ないんですけれども、九八年にございました川奈会談においてそういう意向を表明したということで、それを受けまして九八年の補正予算を計上したということでございます。
前田委員 そんなあいまいなことで納得できるわけがありません。いいですか、もう一回しっかりと、私また次回聞きますから、どうしてまだ決裁もなされていないものまで含めて補正予算に計上されるのか、この点はっきりとしてください。いいですか、予算にかかわることですよ、国民の血税ですよ。外務省には国民の血税を使っているという意識がない。
 次に移りますけれども、これは三月の十三日の参議院の予算委員会で小泉委員も質問されておりましたけれども、そちらの方でこのPCIの報告書の話が出ていまして、国後について、発電機の増強の必要はないんだ、地震で崩れた外壁修理などで三億三千万でいいんだと言われている。あるいは、きょうの資料の二に、東京電力ですね、国後の電力調査の報告書を挙げましたけれども、ここにあるように、新たなプラントの新設は時期尚早である、そんな結論が出されているわけであります。それをはね返して、何と二十一億ものお金が使われた。これはおかしくありませんか。全くこれはおかしい。天の声でもあったんですか。
 実際、昨日の朝日新聞ですけれども、前島容疑者が、鈴木議員は親しい国後島の地区長から要請を受けて、ロシア支援室幹部に働きかけることで、改修で十分という判断を覆させた可能性がある、こういうインタビューが載っております。また、この五月の二十五日に尾身大臣が国後島を訪れたときに、南クリルの地区長から、この国後の発電について、非常にコストがかかり過ぎる、不満に思うという発言がなされたと聞いております。つまり、ロシア側にしても何もありがたく思われていない。日本側の都合だけでこの予算が決定されていったのではありませんか。
 このいきさつについて、どういうように省内の決裁が九九年の十二月七日なされたのか、この根拠を知らせていただきたい。
塩尻政府参考人 お答え申し上げます。
 外務省としまして、国後島の電力事情を調査するということで調査団を送りましたのは、先生御指摘のとおりでございます。技術的観点からいろいろ調査をいたしました。
 その調査を踏まえまして、二〇〇〇年までに平和条約を締結するよう全力を尽くすというクラスノヤルスク首脳会談での合意を受けて、平和条約交渉のモメンタムを一層高めるということで、北方四島住民支援を拡大する必要があったということがございます。
 それから、国後島からディーゼル発電機に対する支援要請がございました。それから、色丹、択捉に設置して国後島に設置しないというのはバランスを欠く等々、いろいろ議論をいたしまして、政策的観点を勘案して、九九年の十二月に国後島にディーゼル発電機を設置するということで決定したということでございます。
前田委員 政策的観点からやられたということですけれども、これは全くまた説明になっていない。具体的にどんなことで、だれがどのような発言をして、どのようにしてこれを決めたのか。二十一億もの税金ですよ。いいかげんに使ってもらっては困る。実際、この二十一億のお金を弱い人のために使えば、まだまだ使えるわけですよ。こういう税金のむだ遣いというか、これは絶対やめていただきたい。そのためにも、これがどうして使われることになったのか、はっきりともう一度答弁いただきたい。時間がありませんので、次回までに、しっかりまた調べておいていただきたいと思います。
 三月の十三日の予算委員会の話を、この二十一億の件で先ほど挙げましたけれども、その折に外務大臣は、小泉委員の質問に対して、どうして二十一億にはね上がったのかということに関して、十分に調査をして答えられる、そう答弁なさっておられます。もうあれから二カ月以上たっておりますけれども、外務大臣、この件に関して調査はされましたか、その結果どのようなことがわかりましたか、お答えください。
川口国務大臣 まさに今塩尻審議官からお答えをしたようなことでございます。
 それで、私は、これは先ほど塩尻審議官からお話をしましたように、二〇〇〇年までに平和条約を締結をする、そのために全力を尽くすというクラスノヤルスクの合意が九七年の十一月にあったわけでございまして、それを踏まえて、交渉のモメンタムを一層高めるために北方四島の住民の支援が拡大をされていく中で、国後島のディーゼルの発電所の設置が必要であるという判断があって実施をされることになったということは事実だと思います。ただ、しかしながら、今の時点で振り返ってみますと、この実施が本当に望ましい姿でなされていたかどうかということについては反省すべき点もあると思います。
 いずれにいたしましても、この北方四島住民支援のあり方につきましては、今後、支援委員会を廃止をして新しい枠組みをつくっていきたいと考えております。もちろん前提としてはロシアの合意があるということが必要でございますが、そういう形で考えているということでして、そういった中で、北方四島の住民支援の規模ですとかそれから形態についてはやはり抜本的に見直して、現地のニーズそれから経済状況に見合った支援がどのようなものであるか、適切な支援を考えていくということが必要だと思っています。
前田委員 今外務大臣がお認めになったように、非常に問題がある決定でございました。またこれをしっかり調査され、二度とこのようなことがないように、税金のむだ遣いのないように、これから外務省の皆さんにお願いしたいと思います。
 以上です。
吉田委員長 次に、首藤信彦君。
首藤委員 民主党の首藤信彦です。
 前回から問題にしておりますガーナ大使の件でございます。
 前回の質問でも、浅井和子さんがアフリカに非常に造詣が深いというふうに、外務大臣みずからが記者会見の中でおっしゃっているわけですが、それに対して私は、えっ、そんな方が本当にアフリカに造詣が深かったのかと。もちろん、アフリカ協会の会員になられている、それは会費さえ払えば何でもなれますけれども、そうじゃなくて、一体どういう活動があるのかということをお聞きしました。
 それからさらに、アフリカに旅行されたというお話も聞いているんですが、旅行というのは何なんですかと。エジプトのピラミッドを見てもアフリカへの旅行でありますし、ヨハネスブルクなんかしょっちゅう国際会議を開いていますから、そういうところへ行かれるならそういうこともある。一体どういう活動をされたんですかということを前回もお聞きし、また次回もお聞きしますということを伝えてありますので、一体どういう活動をされたか、そこを明言、お願いしたいと思います。
川口国務大臣 まず初めに申し上げておきたいと思いますけれども、浅井大使は、私どもが、ガーナ大使を務めていただくに当たり、私どもの持っている基準に照らし、適材であるという判断をいたして推薦し、認証をいただいた大使であるということでございます。
 その上で、委員は、浅井大使のアフリカについての関心について御関心がおありであるようでございますので、まず御参考までに申し上げたいと思います。
 アフリカで仕事をした経験がおありになるということについては、昨日でしたか一昨日か、前回申し上げましたように、ガーナ、ナイジェリアに、これは仕事で行っていらっしゃるということでございます。それから、アフリカについて個人的に御関心がおありであるということについては、先ほど委員もおっしゃいましたが、個人会員として、アフリカに関心を持って団体に入っていらっしゃるということもございます。
 そういった点が、私が記者会見で、どういう言葉を使ったかは忘れましたけれども、アフリカについてもそれなりの知識あるいは経験を持っているという意味で申し上げたその理由でございます。
首藤委員 外務大臣、そのことなんですよ、私が言っているのは。
 外務大臣は恐らく、アフリカといっても、なかなかぴんとこられないかもしれない。しかし、アフリカというものに取り組むと、行ったところがガーナ、ナイジェリア、おおっと驚くんですよ、はっきり言うと。
 ナイジェリア、御存じですか。ナイジェリアへ行ったことがございますか。ラゴスへ行ったことがありますか。アパパの港を見たことがありますか。ナイジェリアの石油利権を知っていますか。それから、ナイジェリアこそ、いわゆるブラックマーケットの金融があることを御存じですか。日本でも、ナイジェリアに関して、そのブラックマーケットの金融のことが何度も問題になっていることを御存じでしょう。
 私は別に、この方がそれに関係していると言っているんじゃないんですよ。ただ、週刊誌とかいろいろな情報を見ますと、ブラックマーケットとか、仕手戦とか、金融の問題とか、いろいろな問題が出ていますね。ですから、ガーナ、ナイジェリアに行かれたなら、一体何をされていたのか、そのことが果たしてガーナ新任大使に資するものであるのか、あるいは、むしろその将来の仕事にとって瑕疵のあるものになっていくのか、そこをお聞かせ願いたいということで前から言っているわけですよ。どんな仕事をされていましたか。
川口国務大臣 委員のただいまの御質問の背景にお持ちの問題意識が、浅井大使のガーナ大使としての適性に御疑問を持たれての御質問であるといたしましたら、これについては私どもが、この浅井大使について、さまざまな判断をした上で適材であるということを考えて、任命をするための推薦をしたということでお答えをさせていただきたいと思います。
 その上で、多少、御関心にお答えをさせていただきたいと思いますけれども、これは弁護士活動の一環として、お仕事でアフリカに行っていらっしゃいますので、弁護士の仕事の上での守秘義務との関係があって詳しくは申し上げられませんけれども、ガーナについては、平成十年に、我が国の企業と現地企業との契約の関係の事務で行っていらっしゃるということです。それからナイジェリアについては、平成十二年に、鉱物資源の開発及び輸入に係る我が国の企業と現地企業との間の商談、及び大手電子部品メーカー、商社から成る調査団に同行をしている、そういったようなことでございます。
 それから、委員がお話しになっていらっしゃる新聞あるいは週刊誌等に報道をされている件、これについては、そういった事実はないということを御本人からも確認いたしておりますし、また、個人的に刑事上の問題がある人物とつき合いがあるということについても、そういう事実はないということを確認いたしております。
首藤委員 外務大臣、私は、あなたとずっと何度もお話ししていますよ。きょう私に与えられた十分の中で、外務大臣、同じ話を三回もされましたね。刑事訴追されている人等との関係はございませんとか、同じことを三回お話しされた。内容のあることは一体どれだけ話していただけましたか。
 外務大臣、私たちはすごく期待していたんですよ、清潔な外務大臣が来られて、能力のある外務大臣が来られて、外務省がどんなに改革されるか、どんなに透明性が高まるか。おっしゃっていることは、昔の暗黒の外務大臣じゃないですか。よらしむべし、知らしむべからずの外務省じゃないですか。どこが開かれた外務省になりましたか。どこが透明性の高い外務省になりましたか。こんな問題に関して、どうして明らかにできないんですか。
 先ほど、判断させていただきました、判断させていただきました、判断させていただきましたと何遍もおっしゃった。では、どういう基準で判断されましたか。私は、この人がだめだとか言っているのじゃないんですよ。国民の代表として、一体どうしてこういう形で選ばれているのか、判断されたのか、それを開示していただきたい。
 特に今のような外務省においては、もう李下に冠を正さず、瓜田にくつを入れず、そういう状況になっているわけですよ。そしてまた、末端ではいろいろなことに疑義がある。ハイヤー代がどうだ、こういうのは怪しいじゃないかといって、どんどん処罰がされている。それなのに、何かよくわからない形で大使がぽんぽんと決まっていってしまう。しかも、アフリカの中核国にそのようになって行く。しかも、その方は政治家とも関係が深くて、政治資金団体にその三分の一以上を寄附している方がおられる、そういうのが親戚にもおられる。そういうことでは、国民がやはり疑問を持つというのは当たり前じゃないですか。
 だから、どうしてこういうことに関して、なぜこの方を選ばれたのかということを明確にできないんですか、そこをお聞きしているんですよ。どうしてこの方を今の段階で選ばれているのか、なぜ、この人にメリットを感じて選ばれたのか。
 この程度の業績のある方はもうたくさんいるんですよ、女性でも、弁護士でも。国際活動をやっている人も、国際弁護士もたくさんいます。世界でも名の知れた人もたくさんいます。しかし、どうして検索しても名前が出てこないような無名の方を選ばれているのか、どうしてこの方を選ばれたのか、その判断基準を示してくださいと私は言っているんですよ。そこはどうですか。
川口国務大臣 外務省が、民間の方の中で大使あるいは本省の幹部に登用をする、この夏までに十人をめどにするということを前に発表させていただいておりまして、この基本的な方針につきましては、外務省の今後の意識改革にとって非常に意味がある、そして外務省の透明性に資するものであるという意味で、私は、大勢の方にこの点については評価をいただいていると思います。
 それで、そういった民間の方を登用していくに当たって、どういう基準で外務省がこれを考えているかということについて、やはり明確な基準に基づいて考えるということが重要であると私は思っておりまして、そういう意味で、今まで何人かの方、六人の方を発表させていただきましたけれども、それぞれについて、その基準に照らして適切な方であるかどうかという判断をしてきております。そういった基準についても、昨日の段階で公表をさせていただいております。
 これは人事の問題でございますので、外務省として責任を持って適材を選び、そしてそれを、大使の場合には内閣に推薦をさせていただくという仕組みになっているわけでございまして、そういう公表させていただいた基準に照らして、この方が適材である旨判断を私どもがしたわけでございます。それ以上の詳細な点につきましては、これはまさに人事でございますので、ここでお話をすることは差し控えさせていただきたいと私は考えております。
首藤委員 この問題に関しては、当然のことながら参考人、先ほど我が党の伊藤英成議員から参考人招致を要望されまして、理事会で検討されるということになっておりますから、またそのときに追加してお聞きしたいんですが。
 時局柄、最後に一つお聞きしたいんですが、インド・パキスタン紛争が、もう本当に最終局面に近づきつつあります。軍隊というのは動員をかけたらとまらないというのが歴史の鉄則でありますが、こういうような状況で、もし戦火が交わることになれば、戦争になれば、日本のパキスタンへの投資協定は廃棄されますでしょうね。外務大臣、いかがでしょうか。
川口国務大臣 現在、この地域に紛争が起こらないように、要するに紛争がエスカレートしないように、我が国も、それから国際社会も努力をしているわけでございます。
首藤委員 時間が来ましたので終わりますが、その答えはもう、私が質問したときどういう答えが返ってくるかはもう知っています。それではなくてもう一歩踏み込んだことを、外務大臣にぜひお願いしますよ、これから。ぜひよろしくお願いします。
 以上で終わります。
吉田委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。
    午後零時三十二分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時一分開議
吉田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。土田龍司君。
土田委員 さて、きょうは一般質疑でございますし、時間もある程度ございますので、外交関係全般にわたって質疑をさせていただきたいと思います。
 今、我が国の外務省、さまざまな問題が発生をしておりますが、やはり外務省としてのふがいなさがどうも国民の目に映っているような感じがしてなりません。国家主権を脅かす事案に対する政府の弱腰外交といいますか、そういったイメージがあるんじゃないかと私は思います。
 そこできょうは、まず領土問題、それから瀋陽の亡命事件、あるいは不審船の問題、そういったのを順次質問させていただきたいと思いますが、まず領土問題で、これまで対ロ外交について、鈴木宗男議員が非常に大きな役割を果たしてきた。鈴木議員が退場されたと思うんですが、それと同時に、ロシアンスクールのこれまで対ロ外交を引っ張ってきた方々が失脚をされた。
 これについて、先日この外務委員会で、十七日に民主党の議員が同じような質問をいたしました。今後どうするのかという質問に対して外務大臣は、この四島の帰属問題を解決して平和条約を締結するという方針は全く変わりない、これまでと一貫しているんだという答弁をされました。あるいは、ほかの委員会でも同じような答弁をされました。つまり、鈴木問題あるいはロシアンスクールの方々の問題、この事件とは全然別なんだという答弁を繰り返されているわけですね。
 今回、朝日新聞に「密室外交の破綻」というシリーズ物が六回シリーズで出され、二島先行返還論についての過程が非常に詳しく報道されました。あるいはほかのマスコミからも、二島先行返還論をロシアンスクールの方々や鈴木宗男さんが推進をしてきたんだと報じられた。あるいはまた、今回逮捕された元ロシア支援室課長補佐の前島容疑者も、この二島先行返還論を推進してきたというふうに認める発言をしているわけです。
 この問題は密室で行われてきたわけでございますから、現在の川口大臣がその辺のことをつぶさに知っているとは思いませんけれども、外務大臣は、この鈴木議員の行動は政府とは関係ないんだという考えをお持ちのように私は感じられます。ところが、実際的には、鈴木宗男さんがロシアに行ったとき、何回も行っておられますけれども、必ず外務省の事務官が同行しているわけでございまして、そういったことを考え合わせますと、ロシア側から見れば、まさに鈴木さんは日本政府を代表しているというふうにとられるのは当然だというふうに私は思うんですね。
 そこで、質問なんですが、鈴木議員や一部のロシアンスクールの人たちが結託して進めてきた対ロシア外交について、これの功罪について、あるいはまた、今後、領土問題について、外務省として、川口大臣としてどのように進めていかれるのか、その二つについてまずお尋ねをしたいと思います。
川口国務大臣 北方四島の問題、これは我が国が真剣に取り組んでいかなければいけない問題でございまして、外務省としても今まで真剣に取り組み、また、今後とも真剣に取り組んでいく重大な課題と認識をしております。
 それで、平和条約交渉をずっと今までやってきたわけでございますけれども、この二島先行返還論等いろいろ言われているわけでございますが、これについて、今までも何回も申し上げておりますけれども、政府としては一貫とした方針を持っておりまして、それは、北方四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結するということでございまして、一般に言われています二島先行返還論というものをロシア側に提示したということはないわけでございます。
 それから、外務省で政策を決める過程で、一部の人間が方針を決定したということはございませんで、それなりの手続をとって外務省の方針は決められてきているということでございます。
 それから、北方領土の交渉について今後どういうようなことをやっていくかということについては、これはハイレベルの協議、一番近いところでは六月のG8の外務大臣会合というのもございますし、それから首脳レベルのG8のサミットというのもございます。そういったさまざまな場でいろいろお話をする機会もあるでしょうし、今後、四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結する、そういう一貫した方針のもとで交渉を進めていく考えでおります。
土田委員 鈴木さんやロシアンスクールの方々がそういった動きをしてきたという事実があらゆるところから発信されている、あるいはそういった事実を認めている人もいる。それなのに、そういったことは全くなかったということで済ませられる問題でしょうか。これまでの五十年間の領土返還問題、特にこの数年間、五、六年間でしょうか、非常にいろいろな動きがあった。さまざまな工作をお互いしてきた。そういったのをすべてなかった、なかったといってこれからも進めるということは、私は、やはり外務大臣、間違いだと思いますよ。
 こういった事実があったということも含めて、やはり対ロ外交についてもう一回組み立て直す、そのためにやはり公開をする。こういうことがあった、こういう人がこういった発言をしたということを認めなければ、なかなか国民の理解を得られないし、あるいはロシアの理解も得にくいんじゃないかという感じが私はしております。
 そうした中で、やはりロシア問題なわけですから、この前もこの委員会の場で申し上げましたが、ロシアの外務次官、日本を担当している外務次官が、鈴木さんがいなくなったのでだれと信頼関係を結んだらいいのか、だれと本音の話をしたらいいのかという発言までしているわけでございまして、私は、今外務大臣がおっしゃったように、なかった、なかったで済む話じゃないというふうに思いますし、改めて、早目に政府の高官レベルで協議を、もう一回仕切り直しといいましょうか、始めなきゃならない時期へ来ていると思うんですが、どういうふうに考えますか。
川口国務大臣 そういった政府のハイレベルでロシアとの間で話し合いが行われることは、私は重要であると思います。
 先ほど申しましたように、近い時点ではG8の外務大臣会合、あるいはG8の首脳会合というところがございますので、そこではロシアと話をするということになると思います。また、そういったところで行われるべき政治対話について事務的な調整を行うために、現在、齋藤欧州局長がロシアに出張をしているということでもございます。
土田委員 前段の質問なんですが、これまで二島先行返還論というのはなかった、そういった行動は一切なかったと言うんですが、外務大臣が言っておられる開かれた外交ということからすると、やはり反するんじゃないかと思うんです。もう一回、私にではなくて国民にメッセージを発するつもりで、この問題について今後どう取り組むか答弁してください。
川口国務大臣 よく言われています二島先行返還論、これについて政府として先方に提示をしたことはなかったということでございます。それから、政府の方針は一貫として変わっていない、四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結するということは変わっていないわけでございます。
 ロシアと、昔はソ連と日本との間の北方四島の返還をめぐる交渉の長い歴史の中では、それなりのいろいろな変化はあったわけでございまして、例えば、一時期ソ連は、一九七〇年代、領土問題は存在をしないという立場をとっていた時期もあります。それがまた今変わってきているということでもございます。
 そういったさまざまな変遷を経て、日本の立場というのは、北方領土四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結するといった方針は、一貫としてそれを持っているわけでございます。
土田委員 次に、瀋陽の事件の問題でございますが、やはり三つの問題があったと思うんですね。まず、亡命を希望した五人の取り扱い。それから、瀋陽総領事館の対応ぶり、あるいはまた、中国による不可侵権の侵害の問題だと思うんですね。
 順番にやっていきたいと思いますけれども、まず、今回、韓国総領事館に北朝鮮人が逃げ込んだということでございますが、それに対して中国側が身柄の引き渡しを求めた。その根拠となるものが、中国にある外国大使館は第三国公民に対して庇護権を持たないということを中国は主張しているという報道がされました。
 この問題でございますが、国際法上、中国の主張は正しいんでしょうか。
海老原政府参考人 お答え申し上げます。
 国際法上というお尋ねでしたので、先に、国際法上、今おっしゃいましたような在外公館が、領域国の観点から、逃れようとしてくる者をかくまって、それに庇護を与える権利があるか。つまり、大使館の国の方がそれを権利として国際法上主張し、それを領域国の方は義務として受け入れなければならないという意味での権利があるかということであれば、このようないわゆる外交的庇護の権利というものは確立しておらないということでございます。
 ただ、実際の取り扱いといたしましては、そのように逃れて在外公館の中に入ってきた者を外に出して、その者の生命、身体に危険が及ぶということが明白であるというような場合には、その者に一時的ないわば庇護というようなものを与えて在外公館の中にとどめ置くというようなことは、割と行われているということだと思いますし、それをもって直ちに不可侵権の乱用だとかいうふうな問題が生ずるということではないというふうに考えております。
土田委員 局長、もう一回わかりやすく、じゃ、今中国が言っているその根拠としていることは、国際法上は正しくないということでよろしいんですね。
海老原政府参考人 私が先ほど申し上げましたのは、国際法上、当然にそのような外交的庇護を与える権利は在外公館の派遣国にはないという意味においては、正しいということは言えると思います。
 ただ、個々具体的な個別のケースにおきまして、実際上の取り扱いとして、人道上の観点から、その者の生命、身体に対する危険を避けるという意味で一時的に在外公館に置くことが国際法上違反であるということも言えないだろう、それは結局、個々のケースによって判断せざるを得ないことだろうというふうに申し上げた次第でございます。
土田委員 第二の問題ですが、この瀋陽総領事館の対応ぶりについて、この調査報告書の中でも非常に手抜かりがあったというふうに報告をされ、あるいは、外務大臣も小泉総理も、初動にはいろいろ間違いが多過ぎたというような話をされております。
 そこで、いずれ外務省としましても、近いうちに今後の対応策について方針を決めて、あるいは実行に移されると思うんですけれども、現時点でどういった具体的な対応要領の作成あるいは訓練を考えておられるんでしょうか。
川口国務大臣 こういった問題が再発をしないということは非常に重要であると私は思います。
 委員が先ほどおっしゃいましたように、そして調査の結果の発表のときにも申し上げさせていただいていますけれども、初動の段階で、危機管理の意識ですとか情報の連絡体制、あるいは警備の状況についてさまざまな問題があったわけでございまして、私どもは、これについて早速改善の手は打ち始めております。例えば、警備の問題としては、ビデオカメラの位置、あるいはその中にフィルムが、写真が残るような形にしておく、または警備の増強、それから国際電話の発信、着信の両方が可能になるようにする、そういったことについても指示を既に出しております。
 そういったことをきちんとしながら、そして今の時点で十分に把握をされていない点、例えば、本省の危機管理体制をどうするべきかというような話もいずれ議論をしなければいけないと私は思っておりますけれども、そういったことについて、これから再発が起こらないようにという観点で進めていきたいと思っております。
土田委員 瀋陽問題で最後の質問でございますけれども、今回の事件は国家主権の問題ではないと外務大臣は前回答弁をされました。国際法上はそうかもしれませんけれども、国家主権に準ずるものだというふうに私は思っておりますし、世界各国は、日本側の対応あるいは中国側の対応に非常に注目をしている。あるいは、日本国民も注目をしている。何十回もあのビデオを見て、今後日本はどういった態度をとるんだろうかというふうに注目をしていると思うんですね。
 外務大臣は、繰り返し、多分これもまた何十回も、毅然とした対処をするんだというふうにおっしゃった。前回、当委員会で私の質問に対しても、毅然とした態度をするというふうにおっしゃった。きょうはどうしても聞きたいんですが、その毅然とした処置、具体的な話を聞きたいんです。どういう毅然たる処置をするのか、答弁してください。
川口国務大臣 まず、今回の瀋陽総領事館事件についての事実の認識、これについては日中間で立場に相違がございます。ございますけれども、中国側武装警察官の瀋陽総領事館の立ち入り、それから関係者の連行について、日本側が同意を与えていないということを言っている、この主張が揺らぐものでは決してないということでございまして、この点については、まさに中国に対しては毅然と主張をしていくべきであると考えております。
 一方で、こうした我が方の立場を踏まえまして、中国側に対して具体的にどのような対応をしていくかということにつきましては、現下の情勢において、中国側の出方を見きわめつつ、日中関係の大局を踏まえて冷静に対処する必要があると考えています。
土田委員 ウィーン条約三十一条に反しているというわけですね。当然のことですね、同意がなかったんですから。中国側が同意があったというのは、現場の方がシェシェとか言ったというだけの話でして、この総領事館の最高責任者、もしくはそれが指名した人が同意をしない限りは同意があったとみなさないというわけですから。
 これを、どういった形といいますか、だれが、いつ中国側に今後話し合いをしていくんですか。だれを派遣するんですか。大臣が行くんですか。
川口国務大臣 不可侵の侵害についての中国側との話についてでございますけれども、現下の情勢で、中国側の出方を見きわめつつ、日中関係の大局を踏まえて冷静に対処をしたいということでございます。今の時点で、具体的にいつという日程が確定をしているわけではございません。
土田委員 全く具体論じゃないですね。慎重にとか、よく見きわめてからとか、そういったことしか言えないんだったらば、毅然たる対処とは言えないでしょう。具体的に今後やっていくんだというふうに何回も何回も答弁しておきながら、そのくらいの答弁しかできないんだったら、全然具体論じゃないですよ。
 こういったことをやっているから、弱腰外交だとか、みんなからばかにされるような、こういった外交になってしまうんじゃないですか。国民が一番不安がっているわけですから、毅然たる対処をすると言ったらやりなさいよ、そのとおりに。具体的にやらなきゃだめですよ。だんだん時間がたつに従って忘れられて、日中友好三十周年だといってそんなことばかりやっていると、だんだん毅然たる対処なんかできなくなるのは当たり前でございまして、大臣、もうちょっとこれは考えていただいて、具体的な方針を早く決めて、具体的な対策をやってくださいよ。だれか派遣するなり呼びつけるなり、具体的にやらないと、だんだんおかしくなっていくという気がいたします。
 それと同じように、今回、瀋陽問題でなくて、不審船の問題でございます。植竹副大臣が非常に熱心に取り組んでおられたのを知っておりますけれども、引き揚げるかどうか、政府の意思は決まったんでしょうか。
川口国務大臣 この不審船の問題につきましては、きょうの閣議の後の記者会見で私からも申し上げさせていただきましたけれども、きょう、閣議の後で、小泉総理から扇国土交通大臣と私に対しまして、不審船の引き揚げについては台風シーズン前に可能となるよう中国側と協議をし、理解を得て進めてほしい、そういう指示がございました。引き揚げの問題については、総理の指示に従いまして、中国側と調整を図りながら、適切に対応をしていきたいと考えております。
 それから、必要な手順といたしまして、先般、有人潜水調査をいたしましたけれども、その結果について中国側に説明をするために担当者を中国に派遣いたしまして、本日、中国側に説明を行ったところでございます。
土田委員 この事件が発生してから、この不審船が、どこの国かわからないわけですから、沈んだ時点ですぐに引き揚げる準備をしなきゃならなかった。なぜならば、発砲事件までやって、何人もの人がその船に乗っていて死んだことがわかっているわけですから、日本の国益を損なうのがわかっているこの事件が発生したすぐに、どうやって引き揚げるか、いつ引き揚げようかという準備をしなきゃならなかったのに、やはり機を逸していると私は思うんですね。あれから五カ月たってしまったわけです。
 その間、いろいろな問題があるとか、中国の了解を得てないとか、そういうことを言い続けてきて、やっときょうになって、台風シーズンの前といいますから何月かわかりませんけれども、引き揚げることをやるわけですね。やはり機を逸しているというふうな感じがしますよ。
 そこで、植竹副大臣あるいは外務大臣も以前答弁されましたけれども、この件について、やはり中国の了解を得る必要があるんだというふうにおっしゃっていた。しかし、この問題について、中国の排他的経済水域ではありますけれども、国際法上から見ても、了解を得る必要はない。資源探査や生物の探査をやるわけじゃなくて、そういう問題じゃないわけですから、なぜ中国にこれまで、遠慮といいますか、了解をとるために時間がかかったんでしょうか。この問題、法律の問題だけなんですか。
川口国務大臣 まさにこの問題につきましては、事件が起こった以降、技術的な調査も必要でございまして、そういった手順を踏みながら一歩一歩進めてきたということでございます。
 それから、中国側との協議でございますけれども、これは委員がおっしゃられましたように、海洋法条約によりまして中国の排他的な経済水域とされている地域でございますので、天然資源に対する主権、それから環境上の問題が起こらないということは大事でございますので、この点については中国と協議を進める必要があるということでございまして、総理の御指示も、中国側と協議をして理解を得て進めるように、そういうことでございました。
土田委員 中国政府からそういった即答がもらえないというような外交をしていること自体が、やはり間違いだと思うんですよ。十二月に事件が発生して、さまざまなことが言われた。あるいは、沈んだ船はその前に中国の港にいたんじゃないかという話もあった。それに対して調査もしない。あるいは、中国から、今言ったようになかなか、江沢民さんまで出てきてさせないとかいうような外交では非常によくないというふうに私は思うし、中国に対して少しこびを売り過ぎるのかなという感じがします。
 そこで、巷間言われているように、チャイナスクール、ロシアンスクールじゃなくてチャイナスクールにもやはりメスを入れる必要があるんじゃないかと思うんです。この点、大臣、どう考えていますか。
川口国務大臣 チャイナスクールというのは、外務省において、中国ですとか香港ですとか、あるいはそういった中国語が話される地域で研修をした人たちのグループを指して俗にチャイナスクールと言っているということであります。同じように、語学の研修がどこで行われたかということで、ロシアスクールとかそういった呼び方もあるようでございます。
 こういったグループが特定の地域に対する日本の政策に影響を持っているかどうかということでございますけれども、当然にそれなりの国の人脈もありますし、その地域に関心を持っている人たちの集まりですから、関心があり、政策についての考え方も当然あるわけですけれども、それが即そのまま外務省の政策になっているかというと、それはそういうことではありません。
 外務省の中の組織、例えば地域局があると同時に、条約局ですとか総合外交政策局ですとか、そういった局があり、官房があるわけです。そういう組織の中で一つの重要な政策を決めるということは、外務省の組織の中では、そういったさまざまな人の目を、あるいはチェックを、あるいはその考え方についての議論を経た上で外務省の政策となっているわけでございまして、外務省が外交を進めていく上で言葉というのは非常に大事なことですので、それぞれ主要言語について、その言語について研修をした人たちがいるということは、これはもう必然であり、必要だと思っております。
土田委員 大臣は外務省改革をするんだとおっしゃっているのならば、大胆な機構改革は避けては通れない。大胆な機構改革をしなくて外務省改革はないわけですから、その程度の改革もできないんじゃ外務省改革はほど遠いなという感じがしてなりません。
 さて、もう一つ、中国の問題でございますけれども、この九月に日本と中国は国交回復三十周年を迎えるわけです。そこで、中国にたくさんあります反日の名所、反日本、日本のことを、前の戦争の傷跡といいましょうか、これをついて、中国各地に、日本に対する悪いことをたくさん記録に残し、そういった記念館をつくっているところが五十を超えると言われております。この雑誌、見たことがあるかと思うんですが、それのコピーです。中国に五十カ所以上の反日のための施設、記念館がある。それをまだ今もつくられているということでございます。
 つまり、中国の国民は、生まれたときから日本に対する反日感情、それを植えつけられて育っていくというふうに感じられるわけです。なぜならば、多分学校の子供たちはこういった記念館を見学し、そういった説明を受け、日本人が中国人を何百万人も殺したんだ、あるいは一千万を超える人を傷つけたんだ、日本人はひどい人間だということを記録に残すための記念館が五十カ所以上あって、これが非常に大きな思想決定といいましょうか、子供のころから植えつけられるような感情になってくる。そこで、表面上幾ら日中友好だとか隣人としてさらに友好を深めようとかいろいろ言っても、非常にむなしく聞こえてしまう。
 こういった記念館があって、大臣が行ったことがあるかどうかわかりませんけれども、こういったことについて今どういった感じを持っておられますか。
川口国務大臣 中国の国内で過去の我が国の行為についてさまざまな複雑な感情が存在をしているということは現実にあると思いますし、その現実は我が国の国民として直視をしなければいけないと私は思っております。
 そういった施設が、中国の国内に委員がおっしゃったような施設があるということも報道で見ました。また、一方で、これらの施設については、中国としては、青少年の愛国主義教育、これを主な目的として活用していて、必ずしも反日をあおるといったための施設ではないと承知をいたしております。
 小泉総理が、中国人民抗日戦争記念館を訪問なさって、そのときにおっしゃったことで、改めて戦争の悲惨さを痛感した、侵略によって犠牲になった中国の人々に対し心からのおわびと哀悼の気持ちを持って、いろいろな展示を見させていただきました、二度と戦争を起こしてはならないと、そういうことが戦争の惨禍によって倒れていった人の気持ちにこたえることではないか等々とおっしゃっていらっしゃいますけれども、まさにそういうことではないかと思います。
 我が国として、今後とも、過去の事実を謙虚に直視をし、そして未来志向の見地から近隣の諸国といい関係を持っていく、相互信頼の一層の深化を図っていくということが重要だと私は思います。
土田委員 反日感情をあおるような建物じゃない、そういったものじゃないというふうにおっしゃいますけれども、現実にこの内容を見ますと、そういったことになっているような気がしますよ。
 私は、年に一回中国へ行きまして、外交部の方とも意見交換したり、あるいは全人代の方々とも意見交換しますけれども、普通の話になるとなかなか和気あいあいとやっているんですが、今度歴史認識の話になると一遍にお互い感情的になって、けんかになってくるんですね。去年も、相手に聞いたらば、若い人ほどそれが激しいと言うんですね。ある程度年配の方、特に戦争を経験した人はそれほど日本に対して悪い感情を持っていないような気がするけれども、若い人ほど反日感情というのが強いんだと言うんですよ。戦争を経験していない人ほど強いんだという話を聞いたことがありますけれども、やはりこういった反日の記念館に影響されているんじゃないかという感じが私はしてならないんですけれども。
 これについて、もう一回外務省で検討されるように私はお勧めしたいと思います。こういったことが存在して、だんだん若い人に行くに従って反日感情をあおられる、あるいは中国人の殺された数がだんだん年々ふえていく、そういった状況にあるときに友好だ友好だと言ってもなかなかおさまりがつかないんじゃないかというふうに私は思っております。
 植竹副大臣、この件で何か御答弁があったらお願いします。
植竹副大臣 今委員がおっしゃったことですが、私は中国に何回か行っておりますし、この記念館にも行っております。記念館自身はそういう反日的なものじゃないですが、中に写真とかそういうものはあります。
 しかし、江沢民主席も、日中というものは二千年の歴史があると。そして、一時期不幸な出来事があったけれども、それはそれとして、我々日中はそういう長い歴史の上に立ってこれから共存共栄していかなくちゃいけない。また、そういう一時的な事実は事実として認識することはあるけれども、非常に短視眼的に見てはいけないと私は思うんです。やはり歴史というものの大切さというものをよく理解する必要があります。現在というのは過去の歴史の上から成り立つし、将来というのは現在の歴史の上から将来があるわけでございます。そういう広い観点に立っていくべきだと思います。
 ただ、瀋陽事件のようなものは、言うべきことは正しく言っていかなくちゃいけないと考えておるところです。
土田委員 韓国の教科書問題を最後に一問質問いたします。
 去年の十月に日韓歴史共同研究委員会をつくるということが決められ、これはもうできたんでしょうかね。この共同委員会、できたかどうかというのが第一問です。
 それから、第二問は、ここで仮に学者同士が議論をして日本と韓国である程度の歴史に対する統一的な見解ができたとしますね。日本の教科書にそれが生かされてくるんでしょうか。あるいは、もしも生かされてこなければこの共同委員会の意味がない、あるいはさらに日韓のこの問題というのは尾を引いていくような気がするんですが、これについて二問お願いします。
川口国務大臣 まず、委員会がちゃんと動いているかどうかということでございますけれども、今月の二十五日に、民間の専門家から構成される日韓歴史共同研究委員会、この第一回会合がソウルで開かれたところでございます。
 それから、この結果が教科書に反映されるかどうかという二番目の御質問ですけれども、この共同研究は共同研究委員会の責任で実施をして、その成果はその委員会の責任で取りまとめられて合同支援委員会に提出をされるということでございまして、この合同支援委員会は、両国の政府関連機関、国会議員、大学を含む研究機関や民間がこの結果を活用することができるように、広く配付をして周知させるということです。
 我が国の教科書との関係については、委員御案内のように、これは教科書の検定制度を踏まえて対応をするということでございます。この研究成果が関係者に周知をされるということによりまして、学者や専門家や教科書をつくる会社等が、この内容を承知して、そして将来、歴史教科書が編さんをされる過程でこれが参考として考慮をされるということが考えられると思います。
土田委員 以上で終わります。ありがとうございました。
吉田委員長 次に、松本善明君。
松本(善)委員 きょうは、北方領土問題についてお聞きをしようと思います。
 けさの朝日新聞に、大臣はお読みになったかどうかわかりませんが、「領土交渉「冬の時代」へ」の見出しで、クナーゼ・ロシア元外務次官の語ったことが報道をされております。
 クナーゼ氏によりますと、国後、択捉については、せいぜい話し合うだけ、最悪なら協議の凍結もと語ったということであります。さらに、新生ロシアは、九二年初め、法と正義の原則を対日政策の基本方針とすることを決めた。国後、択捉の問題は、法と正義の原則から、ロシアは受け入れがたいものだ。プーチン大統領は、国後、択捉の問題は協議したくない。この政権は、前政権ほど勘定高くなく合理的だが、それだけに原則にこだわる、こういうふうに言っている。
 こういうふうに言っていること、そういうロシアの状況や、対ロ外交をこれから進めるについて、外務大臣、どう考えておられるか。私も何遍も質問しましたし、今も質問がありまして、対ロ外交の基本方針はもう耳にたこができるぐらい聞いておりますので、それではなくて、ロシアの元外務次官がこういう発言をしているという状態についてどう考えるのか。そして、このロシアの状況に対してどういうふうに対処していったらいいと思っているのかという、生の外務大臣の気持ちを聞きたいと思います。
川口国務大臣 今、これは交渉中の事柄でございます。交渉中の事柄について、いろいろな人がいろいろなことを言うということはよくあることでございまして、それぞれ個人の立場でいろいろな考えをおっしゃるというのは全く自由でもあり、また、それなりの思いを持って皆さんおっしゃるわけでございます。
 この交渉については、ずっとやってきた長い交渉の中で、いろいろな紆余曲折もありましたし、いろいろな局面もあったというのも委員よく御存じのとおりでございまして、いろいろな発言は当然に出てくるということでございます。
 ただ、そういうことは当然に、ある背景、あるいは交渉の周囲での発言ですけれども、我が国の基本的な考え方、これはもう、耳にたこがとおっしゃいましたけれども、一貫しておりまして、何回言っても必要であるということは全く変わりないわけでございまして、再び申し上げさせていただきますけれども、北方四島の帰属の問題を解決して平和条約を結ぶ、これは本当に変わりがないということは改めてきちんと申し上げたいと思います。
松本(善)委員 私は、こう思いました。
 一九九三年のエリツィン大統領と細川首相との間の共同宣言で、法と正義の原則というのは日本とロシアとの間で確認をしている。私は、改めて、やはりこの法と正義の原則に立って、国際法的な観点からも日ロ関係の問題を整理する必要があるんじゃないか。前々から私どもはそう思っておりますが、改めて痛感をしたのであります。
 今、鈴木宗男議員の問題が、政治と金の問題にとどまらないで、ロシア外交やロシアとの領土交渉の根本問題に触れるものだということが、今も同僚議員から質問がありましたが、明らかになってきています。その中で、事実上の二島返還論、さらに領土放棄、経済交流論まであったことが明らかになってきました。
 こういう点からも、領土要求の原点が議論される必要が出てきているというふうに思います。それが国民の前で議論されてこそ、領土交渉が国民に支持されるようになると思います。そういう立場でやってこそ、ロシア国民にも世界にも説得力のある議論が展開されるのではないかと思うんです。
 いわゆる北方領土問題の根本にある問題は、ソ連、それを引き継いだロシアの占拠が不法なものだというところにある。外務大臣は、本委員会の私に対する質疑でもそのことを答弁されました。
 日本共産党は、第二次世界大戦の最終段階に、ソ連の指導者だったスターリンが日本の歴史的領土である千島列島の併合を対日参戦の条件として要求し、しかも平和条約の締結も待たずに併合を実行してしまったことに始まったものであり、日本国民がロシアに領土返還を要求する根拠は、スターリンのこの横暴を正して、日本の歴史的領土の回復を要求するものだというふうに考えております。
 外務大臣は、これは不法占拠だということを答弁されておりますが、ロシア側は、戦後のこのいわゆる北方領土、千島列島などの占拠をいかなる根拠に基づくものだと言っておりましょうか。
海老原政府参考人 お答えいたします。
 我々の理解をいたしておりますところでは、ロシア側は、一つは、まさに今松本委員がおっしゃった、ヤルタ協定のことをおっしゃったと思いますけれども、そのヤルタ協定で、千島列島はソ連に引き渡すとされているわけでございます。それから、サンフランシスコ平和条約、これはロシアは当事者ではございませんけれども、そこで我が国が千島列島に対する権利、権原、請求権を放棄しているというところを根拠にそのような主張をしているというふうに承知いたしております。
松本(善)委員 ヤルタ協定に日本は拘束されないと思いますが、いかがですか。
海老原政府参考人 ヤルタ協定でございますけれども、これは当時の米英ソの首脳が共通の目標を陳述したという文書でございまして、我が国はその当事国ではございませんので、したがいまして、今おっしゃいましたように、我が国はこれに拘束されないというふうに考えております。
松本(善)委員 それから、サンフランシスコ平和条約は、ソ連は当事者でないので、ソ連との関係で日本はこれを放棄したということではありませんね。
海老原政府参考人 これは、サンフランシスコ平和条約の二条(c)項で千島列島を放棄しておるわけでございますけれども、この放棄した千島列島がどの国に属するのかということについて、日本は認定を行う立場にはないということでございまして、もちろん、当時のソ連のために放棄したということではございません。
松本(善)委員 サンフランシスコ条約以降のことは、後から議論しましょう。
 まず、それまでの問題ですが、もともと第二次世界大戦の戦後処理については、ソ連も支持しました大西洋憲章でも領土不拡大の原則が明記をされている。ソ連も後から加盟しましたカイロ宣言でも、「右同盟国ハ自国ノ為ニ何等ノ利得ヲモ欲求スルモノニ非ズ又領土拡張ノ何等ノ念ヲモ有スルモノニ非ズ」と強調して、連合国側は領土不拡大を最大の原則としていたと思いますが、どうでしょうか。
海老原政府参考人 今先生のおっしゃったとおりだと思います。
松本(善)委員 ポツダム宣言にはカイロ宣言の履行が明記されていますので、もちろんサンフランシスコ条約後は別ですが、日本は連合国側の戦後処理が領土不拡大の原則に沿って行われるべきだということを主張できるものだ、私はそういうふうに考えていますが、この点はどうでしょう。
海老原政府参考人 今委員がおっしゃいましたように、ポツダム宣言の第八項において、カイロ宣言は履行されるべしというふうに書いてございます。カイロ宣言には、先ほど委員もおっしゃいましたように、領土不拡大の原則というのが書いてございますので、ポツダム宣言もそのような考え方に基づいて書かれており、我が方もそれを前提として受諾したということだと思います。
松本(善)委員 ソ連がヤルタ会談で対日参戦の条件の一つとして千島列島のソ連への引き渡しを要求したこと、それにアメリカ、イギリスが応じたことは、ともに領土不拡大という戦後処理の原則、連合国のいわば公約と言ってもいいものでありますが、それに反していると考えますが、この点はどうでしょう。
海老原政府参考人 先ほど申し上げましたように、ヤルタ協定、我が国は当事国ではございませんので、その背後にある考え方について、私どもから有権的に解釈をするというわけにはいかないわけでございますけれども、私の理解しておりますところでは、米国は、ヤルタ協定はそこで表明された諸目標を最終的に決定したものではないというようなことは従来から表明してきているというふうに考えております。
松本(善)委員 ソ連への千島列島の引き渡しを条件にしてソ連が対日参戦をしたということは、これはソ連の領土の拡大ということを条件として参戦したということにもなる。そういう点でいえば、これは明白に領土不拡大の原則に反するのではないかというふうに思います。
 それについて重ねて聞くと同時に、サンフランシスコ条約の締結のときに、吉田全権はこの問題についてどのように言っていますか。
海老原政府参考人 重ねて同じことを申し上げて恐縮でございますけれども、ヤルタ協定につきまして、当事国でない我が方から、その背景、考え方等について申し上げるのは差し控えさせていただきたいと思いますので、領土不拡大原則との関係について申し上げることも差し控えさせていただきたいというふうに思います。
 それから、サンフランシスコ平和会議で当時の吉田全権が述べられたことというのは、細かくはいろいろとあると思いますけれども、一言で言えば、この関連で言えば、いわゆる北千島と南千島のいろいろな経緯というものが異なっているということを強調された上で、国後、択捉の両島が日本の領土であるということについては帝政ロシアも異議を挟まなかったということを述べられたものというふうに考えております。
松本(善)委員 答弁を差し控えられたわけですけれども、領土不拡大の原則に反しているということは、これはだれが見ても明白であります。外交的な配慮その他で答弁を控えたと思いますけれども、これはもうだれが見ても動かすことのできない領土不拡大の原則に対する違反であることは明らかだと思います。
 外務大臣は、私に対する答弁でも、歯舞、色丹は北海道の一部だという趣旨の答弁をされ、歯舞、色丹が日本に返還をされるということは、五六年の日ソ共同宣言によって既に解決済みの問題だということも答弁をされました。
 ソ連は、千島列島だけでなく、ヤルタ協定でも言及されなかった北海道の一部である歯舞、色丹まで軍事占領をし、一九四六年、平和条約も問題にならないうちに千島列島と歯舞、色丹のソ連領への編入を一方的に強行したのであります。
 歯舞、色丹については、千島列島問題での議論その他の議論の余地は全くなく、直ちにでも日本に返還されるべき極めて不当なものではないかと思いますが、外務大臣はいかにお考えですか。
川口国務大臣 おっしゃるとおりだと思います。
松本(善)委員 その後、サンフランシスコ条約に、アメリカの要求で千島放棄条項が入れられることになった。私どもは、これはヤルタ協定での不公正な密約を具体化したものだというふうに考えております。
 しかし、日本はヤルタ協定の当事者でもなく、そこでの秘密の取り決めに日本国民が拘束される理由はどこにもない。これが戦後処理の原則であり、そして、それ以降の世界の国際法の原則でもある領土不拡大の原則。二十世紀の前半であるならば、領土をとられたから取り返す、こういうことで戦争ということもあるわけですけれども、今の戦後処理の原則は、やはり領土不拡大の原則。そういうことで世界の平和を進めていこう、こういうものだと思います。
 日本国憲法の九条も、国際紛争の平和的解決ということを言っています。それだけに、この問題が、いわゆるロシア側も言う法と正義の原則に反するということ、領土不拡大の原則、これに反することが法と正義に反するんだということ、これを太く強く主張する必要があるんじゃないか。戦後処理は、この不公正を国際的な民主主義の道理に立って是正するということが不可欠だと思う。
 米英ソ三国のヤルタ協定はもちろんのこと、サンフランシスコ平和条約の千島放棄条項にも拘束されないで、歴史的な領土の回復を要求するという日本側の大義をはっきりさせることが重要だと思います。これを抜きにしては、日ソ交渉の中でも、国際世論の前でも、日本の領土返還要求の正当な根拠を明らかにすることはできないんじゃないか。
 サンフランシスコ条約で千島列島を放棄をしているという関係がありますから、この問題の国際法的な処理はいろいろの問題がありますけれども、しかし、ヤルタ協定やサンフランシスコ条約の千島関連条項を日ソ交渉の不動の前提としないことが重要なのではないか。これはもう絶対動かすことができないというのではなくて、この問題は一体どうだったんだろうか、領土不拡大の原則に反する、国際的な正義に反するものではないんだろうか、こういう観点ということが必要なんじゃないか。
 私は、このサンフランシスコ条約での千島関連条項を日ソ交渉の不動の前提とするのかどうか。不動のものと考える、いささかも動かせないのか。ソ連は直接の関係当事者でもありません、そして領土不拡大の原則にも反しています。この点を不動のものと考えないということが大事だと思いますが、この点は外務大臣いかがお考えでしょう。
川口国務大臣 千島列島につきましては、これは我が国が、サンフランシスコ平和条約第二条(c)項で、同列島に対するすべての権利、権原及び請求権を放棄しているということでございます。この条項を一方的に廃棄をするということはできないわけでございます。
松本(善)委員 ソ連、ロシアとの関係ではない条約ではありますが。
 私は、サンフランシスコ平和条約の個々の条項に明記された内容が、その後、条文の公式な取り消しなしに実際に変更された例があることを指摘する必要があると思います。
 その例としては、沖縄です。サンフランシスコ条約第三条は、日本が沖縄などを合衆国を唯一の施政権者とする信託統治制度のもとに置くとする国際連合に対するいかなる提案も同意するとし、このような提案が行われかつ可決されるまで、アメリカのあらゆる施政権を認めるということになっております。沖縄は、アメリカの施政権のもとに置かれるか、合衆国を唯一の施政権者とする信託統治制度のもとに置かれるか以外にないことになっていた。だから、沖縄が日本に復帰をするということは、当時不可能だと考えられていたのだ。法制上、サンフランシスコ条約上できないと考えられていた。
 しかし、一九七〇年代初め、米軍基地が残されたまま施政権は返還されました。沖縄の祖国復帰が、沖縄県民を初めとする国民的な強い運動で全国的な運動になった。信託統治に置くとする同意が翻った。
 私は、この例から見ても、サンフランシスコ条約の千島放棄条項を不動の前提とする必要がないと思うのでありますが、いかがでしょうか。
海老原政府参考人 今沖縄の例について御指摘があったわけでございますけれども、サンフランシスコ平和条約は、二条におきましては、千島列島、それから台湾とか澎湖島もそうでございますけれども、日本が権利、権原、請求権を放棄することを明記したものでございます。他方、三条におきましては、今まさに松本委員がおっしゃいましたように、施政権を米国に与えるという規定でございまして、あくまで沖縄に対する領有権というものは放棄はしておりませんで、いわゆる潜在主権と呼んでおりましたけれども、主権は依然として日本にあるということで、そういう規定になっております。
 その意味におきまして、沖縄の例というものと北方四島の例というものを直ちに同列に置くというわけにはいかないと思います。
 ただ、おっしゃいましたように、沖縄については施政権が七二年に返還されたということでございますので、同様にロシアにおいても北方四島を返還すべきであるというふうに考えております。
松本(善)委員 条文上の違いがあることはそのとおりですけれども、沖縄の返還前は、やはりこれは本当に不可能と考えられていて、不可能を可能にしたということで、沖縄県民の誇りにもなっているんです。
 私は、やはり人間が決めたことは人間がつくり直すことができるんだと思います。しかも合意を得るならば、平和的ないろいろな交渉、あるいは国際的な世論、日本の世論、こういうものの動きも必要ですが、私はそのように考えているということを述べておきます。
 我が党が主張している領土返還と同じ考えの方もいらっしゃいます。この方は、オーストラリアの外交官の経歴を持つグレゴリー・クラーク元上智大学教授で、現在多摩大学名誉学長で、田中外務大臣の私的懇談会のメンバー、その他多くの政府の諮問機関のメンバーなどになって活躍されている方であります。
 このクラークさんは、九二年九月十二日の朝日新聞に載っているんですが、このように言っておられます。「日本は立場を変えれば、もう少しうまく交渉できる。」日本に非常に好意的な立場から、助言のように言っておられるわけですね。「領土問題を歯舞、色丹と択捉、国後に分け、歯舞、色丹は北海道の一部だから当然返してもらい、択捉、国後は千島列島の一部分として返還を主張する。その場合、日本は千島列島を不当に放棄させられたのだから、択捉、国後だけでなく、千島全部を要求しなければならない。」「択捉、国後だけを要求したときから日ソ交渉はこじれてしまった。」こういうふうに述べておられるわけですけれども、どういうふうに考えますか。
海老原政府参考人 クラーク上智大学の教授が、今おっしゃったようなインタビュー記事を出しておったというのは承知をしております。
 ただ、いずれにいたしましても、政府といたしましては、国後、択捉、歯舞、色丹、四島の返還を求めているわけでございまして、九三年の東京宣言におきましても、領土問題はこの四島の帰属に関する問題であるということを島名を列挙して書いてあるわけでございまして、この東京宣言につきましては、今のプーチン大統領もイルクーツク声明において改めて確認をしているということでございますので、いずれにしろ、政府といたしましては、引き続き四島の帰属の問題を解決して平和条約を解決するという姿勢で臨んでいきたいというふうに考えております。
松本(善)委員 平和条約が決まって初めて日ロの領土関係というのは決まるわけです。私どもとしては、北千島の放棄を前提とするということは同意できないというふうに考えていることは申し上げておこうと思います。
 クラーク氏は、千島問題で吉田全権が何回も米国に抗議したなど、不当に放棄させられた証拠になる外務省の秘密文書を公表すべきだということも言っておられますが、そういうものはあるんですか。
海老原政府参考人 承知いたしておりません。
松本(善)委員 今、日本政府が、千島列島のサンフランシスコ条約での放棄を前提として対ロ交渉をやるということになれば、どういう根拠でこれをロシアに返せと言っているんですか。簡単に言ってください。
海老原政府参考人 これは、一八五五年の日露通好条約によりまして、日本と当時の帝政ロシアとの間の国境は択捉島と得撫島の間にあるというふうに明記をされておりまして、それ以来、北方四島は我が国の領土でございます。したがいまして、当然に我が国に返還されるべきものであるというふうに考えております。
松本(善)委員 いわゆる外国の領土になったことのない、一言で言えば固有の領土論、それで、これは千島でないという立場であろうかと思います。
 固有の領土、外国の領土になったことが一度もない領土が、戦争の結果、外国に領有されるということに至った例は、それは世界に幾らでもある。クラーク教授は、この固有の領土論というのは一番弱い、こういうふうに言っておられます。
 それから、サンフランシスコ講和会議で吉田全権の代表演説は、千島列島南部の二島、国後、択捉と述べておられる。一九五五年までは、放棄した千島列島には国後、択捉が含まれると西村条約局長が何遍も答弁をしております。一九五五年の十二月九日の衆議院外務委員会で初めて、国後、択捉は千島に含まれないという答弁をして、それ以来、それが政府の統一見解となっているということであります。
 この解釈について、日本政府は、アメリカ、フランス、イギリスに見解を聞いたことがあります。私は、ここへ持っているその当時の日ソ交渉の全権代表の松本俊一氏の回想録「モスクワにかける虹 日ソ国交回復秘録」、この本ですけれども、それを読みました。三国の回答は、これは全部引用いたしますと大変長いものになりますので、要旨を申し上げます。
 アメリカは、千島の定義は対日平和条約でもサンフランシスコ会議の議事録にも定められていない。将来の国際的決定こそ、南樺太及び千島の究極的処理となるであろう。米国は、日本が択捉、国後を、これら諸島が千島列島の一部でないという理由で日本に返還するよう、ソ連を説くことに何ら反対するものではない。
 イギリスは、英国政府は、米国政府との考えの間に数点の相違があり、なかんずくヤルタ協定の内容に関し見解の相違があるため、米国の見解に同意を表明し得ない。
 フランスは、サンフランシスコ条約は千島問題を第二条(c)項に規定するのみである。サンフランシスコ会議議事録は、千島の範囲に関し言及をしている。特に日本代表が国後、択捉を南千島として言及していることに注意を喚起するというものであります。
 クラーク氏はこのことについてどう言っているかというと、ロシア側は、「二国間の問題でなぜ米国や欧州の応援を求めるのか。特に米国は、サンフランシスコ平和条約が締結された一九五一年には、日本の立場を支持していなかった。だから日本は北方領土を放棄せざる得なかったのだ。」と。千島列島という意味でしょうね。一九五六年のころ、「米国は日ソの接近を妨害するため態度を百八十度変え、「国後、択捉を要求しないと沖縄を返さない」と言い出した。明らかに米国は自分の利益のためにやっており、支持を受けても意味はない」、これがクラークさんの見解なんですね。
 クラークさんの言っていることが全部いいかどうかはわかりませんが、ロシア側が、アメリカがこう言っているからといってそう簡単に応ずるものではない。私は、南千島は千島にあらず論、それから固有の領土論というのは、やはり全世界を納得させる法と正義に立った議論というわけにはいかないんじゃないかということを思っております。
 大臣でも審議官でも、何かこの点について言いたいことがあれば、おっしゃってください。
海老原政府参考人 今松本委員がおっしゃいましたように、一九五五年に米国その他に対しまして立場を照会したことは事実でございます。その際、米国よりは、ヤルタ協定の当事国が以前にロシア領でなかったいずれかの地域をソ連に領有させることを意図したという記録はないというような見解が明らかにされております。
 その他の国につきましては、それらの国との関係から、それらの国の見解というものの公表を差し控えてきているということは、これもまた従来から国会等で答弁をさせていただいているとおりでございます。
 ロシアが、アメリカが日本を支持したからといって直ちに北方四島を返すわけではないという点につきましては、我が方としては、あくまでも日ロの間の平和条約交渉において北方四島の帰属の問題を解決するということで取り進めているわけでございまして、アメリカの支持というものだけに頼ろうというようなことを考えているわけではございません。
 いわゆる南千島の問題についてもお述べになりましたけれども、サンフランシスコ平和条約で放棄をいたしました千島列島に、国後、択捉、歯舞、色丹が入らないということについて、これまた一貫して政府はそのように述べてきております。千島列島の放棄そのものについての御党のお立場というのも一貫しておるというふうに考えておりますけれども、政府といたしましては、我が方の立場に立って平和条約交渉を引き続き進めてまいりたいというふうに考えております。
松本(善)委員 私は、領土交渉というのは、それぞれの国の国益だけで衝突をして、そしてその国益の立場を擁護するという観点だけの議論をやっていれば、これは一致するわけはないと思うんですね。やはり、国際法の原則、法と正義の立場に立って、非常に困難であるかもしれないけれども、全世界がなるほどと。日本の国民も今では、ソ連によって不法に占拠されたものだ、そのことさえ知らないで、もう領土はいいんだという議論さえ起こっているという状態。私は、日本の国益ということからももちろん大事ですけれども、それのみならず、やはり全世界に通用する、そういう議論を進めていくということが大事なんじゃないか。
 今、この領土問題は振り出しに戻ったとも言われています。二元外交を検証する必要があるということも本委員会でもたびたび、きょうも議論がされました。
 ロシアの有力紙のコメルサントの三月十六日付は、鈴木氏は、既に九五年、日本にとって領土返還は何の意味もなく、南千島の経済開発にロシアと共同して進むべきだと語っていたと報道している。その真偽はともかく、少なくも、ロシアの有力紙にこのように報道されている事実はやはり到底無視をすることはできないと思うのです。
 外務大臣はたびたび拒否をしておられますけれども、やはり鈴木氏がかかわった、鈴木氏が対ロ外交をねじ曲げたということは、それの事実がどうかはさらに議論もいろいろあるでしょうけれども、やはりもう客観的には事実だと私は思います。その対ロ交渉をすべて検証する、国会に報告する、これが一つ必要ではないかと思います。
 それから、領土返還についての法と道理に基づいた主張が弱くて、その論の弱いところを経済交流でというのではだめだと思うんですね。そういうことになると、二島返還論になったり、さらに領土問題棚上げ、経済交流だけ、こういうことになるわけです。日本の立場からいえば領土放棄論です。
 私は、この領土交渉というものが日本の国民の大きな関心事になってきた今こそ、この領土問題を、なぜ日本に領土を返せと言うのかということの根拠を明確にする、そして、それが法と道理にかなったものだということをもう一度日本国民として検討するということがどうしても必要なんじゃないか。
 私どもは、私どもの立場を日本の外務省に承認しろということで迫っているものではありません。しかし、日本の国民に、先ほども同僚委員が、この委員会からメッセージを発すべきだと言われましたが、私も、きょうの私の質問は一つのメッセージだというふうに思います。日本の国民がこの問題に、どの立場に立とうと、真剣に、なぜ領土の返還を要求するのかと考えるようにしなければならないと思いますが、外務大臣の御見解を伺って、質問を終わろうと思います。
川口国務大臣 委員がおっしゃられますように、この北方四島の問題、領土問題に対して、国民の皆さんがより大きな関心を持っていただけるようにメッセージを発していくということは、私は重要なことであると思います。
 そのときに、いかなる論拠で我が国が、この北方四島が日本の領土であるということを言うかということについては、我が国の政府といたしましては、我が国固有の領土である、法的にも歴史的にも他国の領土であったことはない領土であるということを言っているわけでございまして、そういった考え方で進めてきているわけでございます。
 交渉というのは、さまざまな経緯をたどって交渉になっていくわけでございまして、私どもは、この問題が振り出しに戻っているということはないと考えておりまして、前進をしているというふうに考えております。五六年共同宣言、これを出発点として、まさに現在では、ロシア側は、日ロ間で国際法によって画定された国境線、国境がないということを認めているわけでございまして、これを出発点として認めているわけでございます。
 今後とも、まさに、四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結するという我が国の基本方針、これをきちんと踏まえて交渉していきたいと考えています。
松本(善)委員 終わります。
吉田委員長 次に、東門美津子君。
東門委員 社会民主党の東門でございます。
 通告はしてありませんが、私の方にもけさ入ってきたことですので、ぜひ大臣にお伺いしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 大臣は、日ごろから、七五%の米軍基地が集中している沖縄県民の負担の軽減に努めるとおっしゃいますが、外務大臣として胸を張って、真剣に県民の負担の軽減に努力しているとおっしゃることができますか、まずそこからお聞かせください。
川口国務大臣 私として、できる限りの努力をいたしております。
東門委員 ということは、アメリカに対して、県民の置かれている状況、多発する事件、事故、それに対する県民の怒り、県民感情を率直に伝えておられるというふうに理解してよろしいでしょうか。
川口国務大臣 そのように努力をいたしております。
東門委員 そうであればとてもうれしいと思いますし、ぜひ、そうであってほしいと思います。
 そこで、伺いますが、沖縄の米軍基地は、沖縄県民にとって有益であるとお考えでしょうか。
川口国務大臣 だれにとって有益であるか、有益でないかということについては、それぞれ、お一人お一人の立場でさまざまな考え方があると思いますけれども、私は、日米安保体制というのは、我が国及びこの地域の平和と安定にとって、非常に重要な役割を果たしていると考えています。この地域に平和と安定があるということは、広く国際社会にとって重要であると私は思っています。
 この日米安保体制の重要な要素である部分というのが、米軍の施設・区域であるわけでございまして、この点について、私が何回も申し上げていますように、七五%が沖縄県にあるということで、沖縄県民への負担が非常に大きいということは、全くそういうことで、私もそういうふうに思って認識をしております。
 そういう意味では、沖縄県民の方にいろいろなお考え方が、お一人お一人をとった場合にはあると思いますけれども、まさに、この日米安保体制が我が国の平和と安定、この地域の平和と安定、ひいては国際社会にとって重要なものであるという認識を私は持っています。
東門委員 長い御答弁でしたけれども、私がお聞きしていますのは、沖縄の米軍基地が沖縄県民にとって有益であるとお考えでしょうか、地域の平和と安定に重要な役割を果たしているとかなんとかではないんです、沖縄の県民にとって有益だとお考えですかとお聞きいたしました。
 続けますけれども、昨日、これは米国では二十九日になります、ワシントン市内での記者会見で、ウォルフォビッツ米国国防副長官は、在沖米軍についてこのような発言をしておられるそうです。ある程度の負担を与えていることは理解していると述べる一方で、米軍のプレゼンスは、東アジアの安定への寄与など、沖縄を含む日本の安全保障にも貢献しているのだから、結局は、沖縄県民にとって極めて有益と強調したということなんです。
 大臣、この発言に対する大臣の御意見をお聞かせいただきたいと思います。
川口国務大臣 米国国防省のウォルフォビッツ副長官が、シンガポール訪問に先立って、記者会見を現地時間で二十九日に行って、今委員おっしゃいましたように、米国として、沖縄の方々の御負担を最大限軽減し、できる限りよき隣人であろうと、常に大きな努力を払っているということを述べて、米軍の駐留が地域の安定のために非常に重要な役割を果たしていることから、究極的には、沖縄を含め、地域のすべての方々の利益となっているとの趣旨を述べたというふうに私は承知をいたしております。
 これについて、どう思うかということでございますけれども、冷戦終了後もこの地域においては引き続き不確定性、それから不安定性というものがあるわけでございまして、そういったアジア太平洋の地域で、沖縄も含めまして、米軍のプレゼンスを確保して、その抑止力をもって我が国の平和と安全を確保していくということは極めて重要であると私は思っています。そうしたアメリカの、米軍の果たす役割、この地域の平和と安定のために果たす役割ということについては、今も引き続き存在をしていると思います。
 他方で、これが沖縄県民の方々に日本の中で特に御負担をおかけしているということは、これも事実であると私は思っております。
東門委員 今の御答弁をお伺いしていますと、大臣は国防副長官の発言に対して、まあ仕方がないだろう、容認をしている、正しいというふうに受け取ってよろしいのか、お聞かせください。
川口国務大臣 繰り返しになりますけれども、この地域の安定と平和に対して、アメリカの軍の存在、日米安保体制の存在というのが重要な役割を果たしているということは事実であると私は思っていまして、その他方で、この問題が沖縄の県民の方に特に御負担をおかけしているということが事実として存在をするということはきちんと私も認識をしている、そういうことを申し上げたわけです。
東門委員 済みません、もう一度お伺いします。イエスかノーでお答えいただきたい。その長たらしい御答弁は結構です、いつも聞いております。
 私がお伺いしていますのは、国防副長官の発言はそのとおりだと容認をしておられるんですか、そうではないんですかとお伺いしている。それだけをお答えいただきたいと思います。
川口国務大臣 すべての問題がイエスかノーでお答えできる問題ではないと私は思っておりまして、したがいまして、繰り返しになりますけれども、米軍が存在をしているということが平和と安定のために非常に重要だ、その反面で、これが沖縄県民の方に日本の中で非常に大きな負担をおかけしているということは事実だと思っておりますし、その問題については、集中をしているということについては、私は決してこの現状のままであってはならないというふうに思っております。
東門委員 委員長、お願いです。時間がありません。長い答弁は控えさせていただきたいと思います。時間がたっぷりあればそれはいいんですけれども。回りくどく、何をおっしゃっているかわからない。
 こういうことでは、沖縄の県民が求めている基地の整理縮小、これは政府もはっきりおっしゃっているじゃないですか、そういうことはもう遠のいてしまう。しかも、政府の姿勢が、外務大臣の姿勢がそうであれば、ますますこれはもってのほかだと思うんです。どうして国民、県民の側を向かずに常にアメリカを向いているのかなと私は何度も申し上げました。これをまた再度申し上げておきたいと思います。
 訂正を申し入れるおつもりはありませんかとお聞きしようと思いましたが、これはもうやめます。今の大臣の御答弁を聞いていると、その意思など全くないというふうにうかがえましたので。
 それで、委員長、お願いがございます。私は、この外務委員会にぜひ小泉総理大臣の御出席をお願いしたいと思います。今回のこの一件だけではなくて、今の外務省の問題、日本の外交の問題、何としてもやはり内閣総理大臣にお伺いしたいことがございますので、ぜひ内閣総理大臣の御出席をお取り計らいくださいますようお願いいたします。
吉田委員長 理事会で協議をいたします。
東門委員 たくさんこの件で伺いたかったのですが、後に回します。今の大臣の御発言を聞いていますと、同じ答弁しかできないでしょうから。
 大臣は先ほど、真剣に沖縄県民の負担の軽減に努めていると胸を張って言えるとおっしゃっていましたので、その観点からお伺いいたします。
 最近では、米国のメディアが沖縄を取り上げることは少なくなっている。沖縄返還三十周年もほとんど取り上げられず、一連の米軍機の事故についても米国では一切報道されていないとのことです。続発する航空機事故に対して県議会は抗議決議まで採択していると国務省の広報担当者に伝えると、そんなことがあったのと驚いた様子だったとのことです。
 問題があることすら知らなければ、米国が基地問題の改善や基地の整理縮小に本気で取り組むはずもありません。米国は民主主義の国であり、国民世論の動向が大きな影響力を持ちます。それだからこそ、沖縄の米軍基地が大きな問題を抱えていることを、常に米国の国民にわかるように訴え続けていかなければならないんです。
 やはりそのためには、大臣の方から、一昨日は現場の司令官に申し入れたというお話もございました、それもいいとは思いますが、しかし、大臣としては、カウンターパートであられる国務長官に強く抗議をして、米国民にも沖縄の現状がわかるようにすべきであると思います。
 この状況が改善されなければ、思いやり予算を削減することもあり得ますよとか、あるいは基地の撤去を求める可能性もありますよとか、それは外交も駆け引きですから。また、そう言うことによって米国の世論にインパクトを与えるためにも、言って構わないと私は思います。
 沖縄問題についての米国世論を喚起するためには政府は何をしていこうとしておられるか、お伺いいたします。
川口国務大臣 アメリカにおいて、沖縄問題についての関心が小さい、三十周年についてほとんど取り上げられなかったというお話がございました。
 私は、この点について、沖縄に関してのアメリカにおける当時の報道がどういうものであったか、あるいはどれぐらいあったかなかったかということについて、全く今は情報は持っていませんけれども、そういったことについて、これはまさにアメリカ側として、アメリカの国民としてと申し上げた方がいいかもしれませんけれども、さまざまな世界じゅうに関する関心の中で、一部の人は当然沖縄について余り知らないだろうし、一部の人は、特に沖縄で過ごした人については、非常に関心を持って見ているというふうに思います。それがマスコミの取り上げ方とパラレルになっているかどうか、平行になっているかどうか、これはまさに、そのときにどういう取り上げるべきほかの問題があるかということとの関連ですから、それは独立して考えるべき話であると私は思っております。
 それで、こうしたいろいろの問題について、日本が、あるいは私がアメリカとの間でどういうことについてどのように取り上げていくつもりかということでございますけれども、これはもう再三再四、いろいろな場で、こういうことをしていますということをお話をいたしておりますので、全部ここでまた改めて申し上げることはいたしませんけれども、例えば、外務大臣になって二週間ぐらいたった後の日米外相会談というところでも、沖縄のSACOの最終報告の実施のための協力、あるいは普天間飛行場の十五年使用期限の問題、それから環境の問題、刑事裁判の手続の問題、さまざまな問題について外務大臣との間で取り上げさせていただきましたし、それから事故、事件についても、前に沖縄に行きましたときにはグレッグソン四軍調整官との間で、また最近では、この間申しましたようにファーゴ太平洋軍司令官との間で、こうしたことを機会あるごとにお話をさせていただいているわけでございます。
東門委員 大臣はすごくうまくそらしてしまうので、私の本当に意図するところは聞いておられないなという感じです。
 アメリカの国民が、実際に沖縄でどういうことが起こっているのか、沖縄県民がどういう感情で怒りを訴えているのか、そういうことを政府が発信していかなければ、これはアメリカ国民に知らせるチャンスがない。そのために政府は何をしますかと伺っているんです。国務長官に、事故があったら、こういう事故があった、これではいけないんじゃないのとはっきりおっしゃっていただきたいということなんですよ。何かいつも同じような答弁が返ってくるのがとても残念です。
 これもひょっとしたら同じ答弁が返るかもしれませんけれども、やはり伺いたいと思います。
 一昨日の本委員会におきまして、基地において事故あるいは何らかの事態が発生したことが外部から確認された場合には、当該地方自治体側に立入調査を行う権限を認めるべきであり、そのためには地位協定の見直し、それが難しい場合には新たな運用改善を申し入れるべきではないかとお伺いしました。しかし、大臣からは明確な答弁はありませんでした。
 もう一度伺いますけれども、地方自治体の速やかな立入調査についての運用改善を米国に申し入れる意思があるのかないのか、明確な御答弁をいただきたいと思います。
川口国務大臣 沖縄で最近、事故、事件が特に続いているということについては、我が方からさまざまな機会に申し入れをしているわけでございます。一連のいろいろな申し入れをやったことについては、これは繰り返しません。橋本大使、藤崎局長あるいは私のレベルで、さまざまに申し入れております。
 それから、最近の例ですと、五月三十日の日米合同委員会で、日本側代表ですけれども、藤崎局長から、四月二十四日に発生した嘉手納基地の飛行場所属のF15戦闘機の風防ガラスの落下については、特に地元の不安が払拭されていないので、事故の原因究明それから再発防止策の検討が速やかに行われて、その結果が公表されるようにということを要望いたしたわけでございます。
東門委員 またもすれ違いです。
 私がお伺いしていますのは、基地においてでもいいです、その上空でもいいんですが、何らかの事態が発生したことが外部から確認された場合、これはやはり周辺地域にはかなりの不安を与えますね。ですから、そのときにはその地方自治体の方が立ち入りをできるような、そういう権限を与えるようなことをぜひ。これは、本当でしたら日米地位協定を見直していただきたい。しかし、それには時間がかかるから、運用の改善でと常におっしゃっておられましたので、せめて運用の改善を、外部からこういう事態が確認されたときには、地方自治体の関係者の方が基地の中に立ち入って調査ができるような、そういう運用改善を交渉していただけませんか、その気持ちはありませんかということであって、今のような御答弁ではない。
 それを再度、これで恐らく前回と合わせて四回目の質問だと思います、はっきりとお答えいただきたいと思います。
    〔委員長退席、首藤委員長代理着席〕
川口国務大臣 立ち入りということですけれども、その前に少し別なことを申し上げたいんですけれども、まず、米軍は一定以上の規模の事故について事故調査報告書を作成するというふうに私どもは承知をしていまして、政府として、この場合に、日米合同委員会の枠組みにおいて事故調査報告書の提出を求めて、米側から提出された報告書を地元の自治体に対して公表をしてきているということです。
 他方で、事故調査報告書が作成されないような、そういう事故につきましても、地元の皆様の深い御懸念を踏まえて、可能な限り原因究明及び再発防止策がとられ、これについて適切に説明を行っていくということが重要であると考えております。先ほど申し上げた藤崎局長が五月三十日に行った申し入れというのは、この例でございます。
 そういうことがあるわけでございまして、その上で、米軍機に係る事故の調査につきましては、航空交通管制に関する合同委員会合意というのがございまして、そこで定めていますけれども、米軍機と我が国の民間機が関係する事故については、これは共同調査が行われるというようなことであるわけでございます。(東門委員「委員長、関係のない答弁ですから、いいです」と呼ぶ)
首藤委員長代理 簡潔にお願いします。
川口国務大臣 いずれにしても、アメリカ軍側がその調査を行うということでございまして、その上でそれを適切に公表をしていく、それから必要な場合にはそれをきちんと地元の方に説明をしていく、そういうことであると思いますし、一連の今回の事件につきましても、地元関係者を事故発生現場である嘉手納飛行場及び普天間飛行場に招いて説明会を開催した、そういうことでございます。
東門委員 ここで大臣とやり合っていることが本当に意味があるのかなと思うような、本当に関係のない答弁をなさる。私が質問したことにはお答えにならずに、全然別のことを答弁なさる。それが大臣の手なんでしょうかね。とても不思議です。沖縄県民の負担を軽減するために胸を張って頑張っていると言う大臣のお言葉とも思えません。常に上に立っているのは米軍の立場ということを感じているということを、ここで申し上げておきます。
 次に、原潜の寄港についての事前通報の再開の必要性について伺います。
 住民に情報を流そうとしない米国の姿勢があらわれている事例が結構ありますが、その中の一つです。
 昨年の九月十一日、同時多発テロ以降、米原潜が国内に寄港する際の二十四時間前の事前通報がテロ対策を理由に非公表となってから、既に半年以上が経過しています。その間、関係自治体などによると、横須賀へ十隻、佐世保へ十隻、沖縄へ十隻、延べ三十隻が入港したということです。
 既に米軍の警戒態勢は平常に戻りつつあり、米軍基地の警備のために全国から応援に来た機動隊も撤収しています。このような状況の中で、あくまでも一時的、例外的措置であるはずの事前通報の非公表が、このままなし崩し的に続いてしまうのではないかと、その危惧を抱かざるを得ません。
 政府はこの事前通報中止措置についてどのように認識をしているのか、また、いつになったらこの措置が解除され事前通報を再開するようになるのか、外務大臣の見解をお伺いいたします。
川口国務大臣 事前通報でございますけれども、まず日米地位協定第五条によりまして、米軍の艦船は我が国の港に出入りする権利を有しているわけでございます。その上で「外国の港における合衆国原子力軍艦の運航に関する合衆国政府の声明」というのがございまして、これは先方の一方的措置ということで幾つか書いてある中で、例えば、安全上のすべての予防措置、手続を日本でも行うとか書いてある中で……
首藤委員長代理 なるべく直接答えてください。
川口国務大臣 合衆国政府が、通常、受け入れ国政府の当局に対し、少なくとも二十四時間前に、その原子力軍艦の到着予定時刻及び停泊または投錨の予定位置につき通報するということを言っているわけでして、これが事前通報をアメリカがやるということの根拠でございます。
 それで、先ほどの、最近になって通報についての公表がないということについてですけれども、これは、通報はまずきちんと二十四時間前にこれまでも行われている、現在でも行われている、寄港に関連しての通報ですね、これは行われているということでございます。
 他方で、この公表をするということの措置については、昨年の九月の同時多発テロ以降、米側から、我が国の港に寄港中の米艦船に対する万一の脅威がないようにと、善処の要請があったということを踏まえまして、我が国における米軍施設・区域の警備強化の一環といたしまして、これを不公表にしているということでございます。不公表であるということです。
 では、これを解除、緩和しないのかということでございますけれども、在日米軍は、情勢を踏まえながら警戒レベルというものは常時見直しているわけですが、米の原子力潜水艦の寄港についての情報は、安全上の観点から、依然としてその不公表を維持するということであると承知をしているわけです。
東門委員 本当に質問されたことだけにお答えいただきたいと思います。長過ぎます。簡潔にお答えいただくようお願いいたします。
 これは、長崎県だけではなくて、あるいは神奈川県だけではなくて、沖縄からも、三県からちゃんと要望が入っていると思います、早目に解除をしてほしいと。やはり地域住民は懸念をしております、どうなんだろうと。そういうことに対して、やはり政府がしっかりと、アメリカ側、米軍側に申し入れをしていく。アメリカがよろしいというときにするんではなくて、日本政府からしっかりと働きかけるということも大事だと思います。
 こういうような事前通報中止措置ですか、それは国民の知る権利を制限する情報統制であると私は思います。有事下での自由や権利の制限がこうした形で行われるという事例になっているとの指摘もあります。国民のこのような疑念に対してどのようにこたえられるのか、大臣の認識をお伺いいたします。短目にお願いいたします。
    〔首藤委員長代理退席、委員長着席〕
川口国務大臣 まさに先ほどそのために申し上げたわけでございまして、これは米側の一方的な措置として行っているということで、現在安全上の問題があって不公表を維持する必要があるとアメリカ側は引き続き思っている、そういうことです。
東門委員 次に、米軍の楚辺通信所の移設工事についてお伺いいたします。
 沖縄では、また最近新たに、自治体や住民への説明あるいは情報提供がないことによる問題が発生しています。米軍の楚辺通信所、これは通称象のおりと言われていますが、その象のおりのキャンプ・ハンセンへの移設工事が、自治体や住民に説明もないまま、ことし一月から始められているということが地元の新聞で報道されていることをまず申し上げておきたいと思います。工事による赤土の流出で水源が汚染されることが懸念されており、また電磁波の影響を心配する声も出ております。
 何よりも許せないのは、これをやっているのが米軍ではなくて、日本政府の機関である那覇防衛施設局がやっているということなんですね。米軍基地の事件、事故などによる不安と恐怖にさらされている住民にとって、頼れるのは自分の国の政府しかない。その住民の味方であるはずの政府までもが住民を無視して勝手に工事を始めている。地元の区長が工事中止を申し入れても、施設局は中止も変更もできないという報道がなされております。
 総理大臣も外務大臣も、政府の関係者は本当に口々に、先ほどの大臣の御答弁にもありました、沖縄の負担を軽減しなければとおっしゃいますが、言っていることとやっていることは全く違うのではないか。結局、政府は、基地の負担は全部沖縄に押しつけて、見返りに多少の財政支援をやっておけばいい、そういう程度にしか沖縄のことを考えていないのではないかと思っても、私は不思議ではないと思います。
 なぜ事前に住民に説明しようと考えられないのか。なぜ住民が不安を感じるようなことを秘密裏に行おうとしたのか。その理由が、事前に説明すれば住民に反対されて工事が進めにくくなるからというものであるならば、それは本当に言語道断であると思います。これは防衛施設庁長官の納得のいく説明をお伺いしたいと思います。
嶋口政府参考人 お答えいたします。
 確かにこの工事、工事というか、本体そのものの工事じゃございませんけれども、赤水対策等のために、防災工事というものをことしの一月に始めたということでございます。もちろん、先生御案内のとおり、キャンプ・ハンセンへの象のおりの移設につきましては、これまで長い時間をかけて、地元金武町長それから恩納村にも説明しております。平成十一年だったと思いますけれども、説明しております。
 そういう中で、ことしから防災工事を始めたものでありますけれども、この防災工事も赤水対策を十分やるようにということで、県の条例に従い、また県とも調整して、納得してもらって始まったということでございます。
 ことしの四月になって、地元の喜瀬武原地区の方から、赤水について懸念があるということで説明してくれということでございましたので、説明に行っております。ただ、これは若干おくれて、五月だったんですけれども、そういうことで今説明をしておるところであります。
 先生御指摘のとおり、私自身も、防災工事とはいえ、なぜ事前に地元に説明しなかったのかということについては厳しく指導しておりますし、その点につきましては説明会の際でもおわびをするようにということで、今理解を得るべく努力しているというところでございます。
東門委員 喜瀬武原区の皆さんはすごい不安感を持っているという報道で、私もこの質問をしたわけですが、その喜瀬武原区の皆さんは、六月の五日には建設現場を直接視察できるよう今防衛施設局に要請をしているようですが、それは可能なんでしょうか。
嶋口政府参考人 そういう要望が出ておるということでございますので、私ども、今米軍と調整を始めております。
 それから、先ほど一点忘れましたけれども、電磁波の問題、これは象のおりでございまして、デリケートなものですから詳細は説明できませんけれども、パッシブ、受信地区でありますので、そういう懸念はないというふうに考えております。
東門委員 わかりました。
 次に、普天間飛行場代替施設の関連でお伺いいたします。
 普天間飛行場代替施設の十五年使用期限問題について、去る十五日、稲嶺沖縄県知事は読売新聞のインタビューで、十五年期限は移設受け入れの条件であり、いつまでも残るとして、この問題が解決しない場合には代替施設の着工を認めないこともあり得るとの方針を明らかにしております。
 他方、外務省の加藤駐米大使は、現地時間五月十四日の定例記者会見において、十五年期限に関し、我々のレベルはもちろん、要人間でも提起されていると述べる一方、格段の進展が見えるということは率直に言ってないとも発言したようです。
 大臣は、本委員会を初め、どこの委員会でも、いつも一言一句変えることなく、SACO合意の着実な実施を唱えられますが、沖縄県知事や名護市長の側が十五年期限は移設受け入れの条件であるとの立場を変える意思が全くなく、米側との交渉進展のめども立たない状況においてSACO合意の着実な実施などはもはや不可能であり、先日も言いましたけれども、SACO合意は完全に破綻しているのではないかと思います。大臣、いかがでしょうか。
川口国務大臣 普天間基地の代替飛行場の十五年使用期限問題については、平成十一年末の閣議決定、これに従いまして適切に対処してまいりたいと考えます。
東門委員 時間がもうなくなりますので急ぎますけれども、今の関連ですが、続きです。
 政府がいかに、努力している、閣議決定のとおりにやっていくと訴えても、本当に具体的な成果が出てこなければ、それは着実な実施と言えるものではないわけです。現在、膠着している状態において、SACO合意の着実な実施ということは絶対にあり得ないと私は思います。知事、名護市長の側か、米国側のいずれかが譲歩しなければ、事態の進展はないのではないでしょうか。SACO合意の着実な実施を行おうとする以上、政府としてはどちらかに譲歩を求めなければならないはずです。
 政府としては、知事あるいは名護市長の側に譲歩を求めるか、あるいは米国側の、どちらが譲歩すべきだと考えておられるのか、お聞かせください。
川口国務大臣 まさに閣議決定の中に書かれていますように、これを米国政府との話し合いの中で取り上げるとともに、国際情勢の変化に対応して、代替施設を含め、在沖縄米軍の兵力構成等の軍事体制につき、米国政府と協議をしていくということで努力をしているわけでございます。
東門委員 ということは、稲嶺県知事の強い主張、名護市長の強い受け入れ条件、それはやはり真摯に受けとめるというふうに書いてあると思いますが、それをしっかりと体してアメリカ側とは交渉していく、アメリカ側に譲歩を迫るというふうに受け取ってもよろしいのでしょうか。
川口国務大臣 平成十一年末の閣議決定に従いまして、適切に対処をしていきたいと考えております。
東門委員 伺います。外務大臣、SACOの最終報告は全部もうお読みになったわけですね。
川口国務大臣 ざっと目を通しております。
東門委員 とても大事なものだと私は思います。それは閣議決定もそうです。細部まで外務大臣は知る必要があると思います。なぜ全部知らなければいけないのかということでは、私は済まされないと思います。
 沖縄県がこの三十年間、いや五十七年間ですよ、背負ってきたもの、押しつけられているんです。私たちがここに置いてくださいとお願いしたものではありません。国が押しつけているんです。国策です。そういうものを体して、外務大臣としてアメリカ側と交渉していくときに、しっかりとそれを実施していく。
 私は、決してSACOの最終合意がいいというわけではありません。私はそれには反対です。しかし、常にそれを持ち出されるからには、隅から隅まで私は知っておられるべきだと思います。でなければ、ただ後ろで書いたペーパーを読むだけ、そうすると何も進展はないじゃないですか。大臣として対米交渉に当たられるときに、私はこれではとても弱いと思います。
 伺うところによりますと、英語は一流、そして、タフネゴシエーターですばらしい方ということです。私もそれを信じたいと思います。ただ、これまでのこの外務委員会、あるいは沖北委員会等での大臣の御答弁を伺っていますと、それがまだ出ていないのかなと、とても残念でなりません。
 私は、ここに沖縄県民の思いを体して立っております。ですから、常に沖縄県の問題を取り上げております。それを本当に我がこととして体していかれるならば、何らかの進展は見えるはずです。この三十年間ほとんど動いていない。少しは動いたかもしれません、いい方へかどうかは別としてです。県民がどう評価するかは別として、とにかく、余りにもスロー過ぎる、余りにもアメリカ側を見ている、そういう外務省、北米局だと私は思います。それを申し上げまして、時間ですから終わります。
     ――――◇―――――
吉田委員長 次に、エネルギー憲章に関する条約の締結について承認を求めるの件及びエネルギー効率及び関係する環境上の側面に関するエネルギー憲章に関する議定書の締結について承認を求めるの件の両件を議題といたします。
 政府から順次趣旨の説明を聴取いたします。外務大臣川口順子君。
    ―――――――――――――
 エネルギー憲章に関する条約の締結について承認を求めるの件
 エネルギー効率及び関係する環境上の側面に関するエネルギー憲章に関する議定書の締結について承認を求めるの件
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
川口国務大臣 ただいま議題となりましたエネルギー憲章に関する条約の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。
 この条約は、平成六年十二月にリスボンで開催された国際会議において採択されたものであります。
 この条約は、エネルギー原料及びエネルギー産品の貿易並びにエネルギー分野における投資を促進すること等を目的とするものであります。
 我が国がこの条約を締結することは、エネルギー分野における経済的協力の強化に寄与するとの見地から有意義であると認められます。
 よって、ここに、この条約の締結について御承認を求める次第であります。
 次に、エネルギー効率及び関係する環境上の側面に関するエネルギー憲章に関する議定書の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。
 この議定書は、平成六年十二月にリスボンで開催された国際会議において採択されたものであります。
 この議定書は、エネルギー効率を高め、望ましくない環境上の影響を軽減するための政策上の原則等について定めたものであります。
 我が国がこの議定書を締結することは、エネルギー効率及び環境保護の分野における国際協力を一層推進するとの見地から有意義であると認められます。
 よって、ここに、この議定書の締結について御承認を求める次第であります。
 以上二件につき、何とぞ、御審議の上、速やかに御承認いただきますようお願いいたします。
吉田委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
 次回は、来る六月五日水曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後三時六分散会


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