衆議院

メインへスキップ



第18号 平成14年6月5日(水曜日)

会議録本文へ
平成十四年六月五日(水曜日)
    午前十時五分開議
 出席委員
   委員長 吉田 公一君
   理事 浅野 勝人君 理事 石破  茂君
   理事 坂井 隆憲君 理事 西川 公也君
   理事 中川 正春君 理事 上田  勇君
   理事 土田 龍司君
      今村 雅弘君    小坂 憲次君
      高村 正彦君    佐藤  勉君
      中本 太衛君    丹羽 雄哉君
      原田 義昭君    細田 博之君
      水野 賢一君    宮澤 洋一君
      望月 義夫君    上田 清司君
      生方 幸夫君    木下  厚君
      桑原  豊君    伴野  豊君
      前田 雄吉君    松本 剛明君
      丸谷 佳織君    松本 善明君
      東門美津子君    松浪健四郎君
      鹿野 道彦君    柿澤 弘治君
    …………………………………
   外務大臣         川口 順子君
   内閣官房副長官      安倍 晋三君
   外務大臣政務官      今村 雅弘君
   外務大臣政務官      松浪健四郎君
   外務大臣政務官      水野 賢一君
   政府参考人
   (防衛庁防衛参事官)   中村  薫君
   政府参考人
   (防衛施設庁長官)    嶋口 武彦君
   政府参考人
   (外務省大臣官房長)   北島 信一君
   政府参考人
   (外務省大臣官房審議官) 林  景一君
   政府参考人
   (外務省総合外交政策局国
   際社会協力部長)     高橋 恒一君
   政府参考人
   (外務省アジア大洋州局長
   )            田中  均君
   政府参考人
   (外務省北米局長)    藤崎 一郎君
   政府参考人
   (外務省欧州局長)    齋藤 泰雄君
   政府参考人
   (外務省経済局長)   佐々江賢一郎君
   政府参考人
   (文部科学省スポーツ・青
   少年局主任体育官)    徳重 眞光君
   政府参考人
   (厚生労働省大臣官房総括
   審議官)         木村 政之君
   政府参考人
   (経済産業省大臣官房長) 林  良造君
   政府参考人
   (海上保安庁長官)    縄野 克彦君
   外務委員会専門員     辻本  甫君
    ―――――――――――――
委員の異動
六月五日
 辞任         補欠選任
  望月 義夫君     佐藤  勉君
  伊藤 英成君     松本 剛明君
  金子善次郎君     上田 清司君
  桑原  豊君     生方 幸夫君
同日
 辞任         補欠選任
  佐藤  勉君     望月 義夫君
  上田 清司君     伴野  豊君
  生方 幸夫君     桑原  豊君
  松本 剛明君     伊藤 英成君
同日
 辞任         補欠選任
  伴野  豊君     金子善次郎君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 エネルギー憲章に関する条約の締結について承認を求めるの件(条約第一二号)
 エネルギー効率及び関係する環境上の側面に関するエネルギー憲章に関する議定書の締結について承認を求めるの件(条約第一三号)


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――
吉田委員長 これより会議を開きます。
 エネルギー憲章に関する条約の締結について承認を求めるの件及びエネルギー効率及び関係する環境上の側面に関するエネルギー憲章に関する議定書の締結について承認を求めるの件の両件を議題といたします。
 この際、お諮りいたします。
 両件審査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房長北島信一君、大臣官房審議官林景一君、総合外交政策局国際社会協力部長高橋恒一君、アジア大洋州局長田中均君、北米局長藤崎一郎君、欧州局長齋藤泰雄君、経済局長佐々江賢一郎君、防衛庁防衛参事官中村薫君、防衛施設庁長官嶋口武彦君、文部科学省スポーツ・青少年局主任体育官徳重眞光君、厚生労働省大臣官房総括審議官木村政之君、経済産業省大臣官房長林良造君、海上保安庁長官縄野克彦君の出席を求め、それぞれ説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
吉田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
吉田委員長 これより質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。最初に、中川正春君。
中川(正)委員 おはようございます。民主党の中川正春です。
 最初に条約の方をまずやらせていただきたいというふうに思うんですが、毎回私はこうしたたぐいの条約が出るたびに同じことを聞いているんですが、このことによって経済的なインパクトというのはどのように予測をしているのかということ、これがいつも、そんなこと考えたことないというような答弁が出てきまして、これは私は、何という組み立てをしているのだということが不思議で仕方がないんですよ。
 前の議定書の話でもそうですし、あるいはその後のモントリオールでもそうですけれども、これはそれぞれが、やはり経済活動に密接に絡んだ、この国の構造と将来の方向性というのを左右してくる条約なんですね。それに定量的な分析をやらないで、結果的にこうなるよという想定をしないで、条約のテクニカルな部分だけを議論していくということではないと思うんですよ。大要を見て、やはり国民に説明をする義務がある、それを前提にしていいか悪いかというのを決めるものだ、こういうことだと思うんです。その大もとが出てこないというのは何たることかということなんですが、今回はどうですか。ちゃんとそれは理論構成していますか。
佐々江政府参考人 お答え申し上げます。
 この条約は、先生御承知のように、エネルギー分野の貿易それから投資の促進、保護等について定めているわけでございます。したがいまして、この条約を適用することによりまして、基本的には、豊富なエネルギーを有する旧ソ連諸国のエネルギー分野の改革が促進される、また、これに伴いまして、世界的なエネルギー供給量の増加に貢献することを期待しているわけでございます。
 それに伴いまして、我が国が締約国となった場合に、こういう世界的なエネルギー分野の貿易、投資の促進に参画するということになるわけでございます。また、そのことによりまして、この地域に進出します我が国企業の活動の支援が可能になるということで、このことによりまして、直接間接に我が国のエネルギー供給増をもたらすことを期待しているということでございまして、したがいまして、この結果、我が国のエネルギーの安全保障に資するということがこの条約の非常に大きな意義であろうと思います。
 先生から、しからば、これに入った結果、恐らく投資額、貿易量のことを言っておられるのだろうと思いますけれども、具体的にどの程度これがふえることになるのかということにつきましては、この条約そのものが、どちらかというと定量的なものというよりは定性的なものでございまして、そのすべての結果をあらかじめ予見してどれくらいの量がふえると言うことはなかなか難しいのではないかと思いますし、これは単に我が国のみならず、ほかの加盟国あるいは事務局も含めまして、そのようなことを具体的な金額、数字で示すことはしておらないし、難しいということをぜひ御理解いただきたいと思います。
 しかしながら、先生の、この間のこともおっしゃられておりましたが、私どもちょっと努力をしてみまして、参考までに若干の数字なりともお示しできればということで、ちょっと汗をかいてみたのでございます。
 石油の探鉱開発に関する投資額というのを例にとって、これは例えばの話でございますが、アメリカのエクソン・モービル、シェブロン・テキサコ、BPアモコ、コノコ、シェルといったような主要六社が世界じゅうに探鉱開発ということで、一九九九年で約二百五十億ドルの規模の投資をしているわけです。これは、サイズというか額の規模として、レファレンスとして念頭に置いていただければと思うのでございますけれども、仮に全くの額の比較ということでいえば、こういうような投資がこういう条約の締結によって促進されるということになれば、当然のことながら、油田の開発というのも促進をされるということになるわけです。
 ここから以下は仮説、仮にということでございますけれども、その結果として、例えば一日当たり二十五万バレル、これは比較的大き目の油田の産出量でございまして、サハリン1の油田並みの規模なんでございますけれども、そういう原油の増産が可能になるというふうにまた仮定をするとすれば、これもまた仮定でございますが、一バレル二十五ドルとして、一日当たり六百二十五万ドル、すなわち、一年間約二十三億ドルの生産増が可能になるということで、先ほど主要六社の世界の投資合計は二百五十億ドルと申しましたが、大体この十分の一ぐらいの生産増のものが出てくる計算になる。
 こういったことも理論的にはあり得るということで試算をしてみました。これが絶対こうなるということを言っているわけではなくて、例えばそういうこともあり得るという例として申し上げました。
 以上でございます。
中川(正)委員 これからもこうしたたぐいの条約というのは出てくると思うんですが、改めてお願いをしておきます。やはりそうした定量的な説明を加えて、かつ、それに向かって、逆にデメリットということも十分にあるわけでありますから、そこのところをあわせ持って、我々に事前に説明をした上での議論ができるという土壌をつくっていただきたい、このことを改めて申し上げておきます。
 次に、幅広い議論に入っていきたいというふうに思うんですが、この間から国会が紛糾をしておるその一つに、官房長官の発言があります。これは我々の委員会にとっても密接に関連をしておりまして、ぜひ、改めてこの時点で、外務大臣自身の考え方というのを確認しておきたいというふうに思います。
 あの発言の中で問題になっているのは、一つは憲法の解釈ですね。日本の今の憲法というのは日本が核を使うということを可能たらしめているのか、それともそうでないのかという論点と、それからもう一つは、非核三原則、これに対して改めて官房長官が、その定義のし直しといいますか、我々の国家の基本姿勢というのを問い直すような、そうした発言をしたということ、この二つが問題になっておるんですね。
 この二点について、官房長官のコメントはともかく、外務大臣としてはどう考えておられるのか、改めて質問をしたいというふうに思います。
川口国務大臣 まず、非核三原則をどう思うかということでございますけれども、私は、これは歴代の内閣がずうっと、我が国の政策として堅持をするということを言ってきているわけでございまして、これを明確に今後とも維持をするということについては変わりはないと考えております。
 それから、条約の面で、我が国はNPTを締結しているわけでございますし、それをすることによって、核兵器のオプションは放棄をしたということを国際社会の中で明確に言っているわけでございます。
 それから、国連総会で毎年核廃絶決議案を提出している、あるいはCTBT、包括的核実験禁止条約ですが、これの早期発効に向けた働きかけをしている、こういった面で積極的に外交の努力をしているわけでございまして、核兵器について我が国がこういう態度を持っているということは、どこから見ても揺るぎがないと私は考えております。
 それから、国内法の分野で考えてみましても、原子力基本法、これにおいては原子力の平和利用ということを言っているわけでございまして、まさに、この点からいっても、我が国が核兵器を保有することはないということでございます。
 個人としてという御質問であれば、私も個人的に全くそう思っております。
 それから、憲法の観点でどうかということでございますけれども、私は個人的には全然専門家ではございませんけれども、この点について、今までずうっと法制局の長官等が御答弁になっていらっしゃると思いますけれども、我が国が自衛のために必要最小限度を超えない実力を保持するということは憲法九条二項によっても禁止されていないということでございます。したがって、その限度の範囲にとどまるものである限り、保有するということは憲法は禁じていないというのが今行われている解釈であると私は承知をいたしております。
中川(正)委員 核を保有するということは、基本的には、核を持つということによって、その抑止力というものを前提にした戦略を立てていくということですね。わかりやすく言えば、核を使うということよりも、核を持っているということが相手の行動を抑制させるという、その前提に立って、だから、核は持っているけれども使わないんだというような前提に立って説明をしているわけですね。
 その上で、憲法上想定をされる限度内なのかどうかという議論があるかと思うんですが、先ほどの大臣の説明だと、核は憲法上許された範囲内の兵器なんだというふうに外務大臣自身も解釈をされているというふうに受け取っていいんですか。
川口国務大臣 非核三原則、これは堅持をしてきているということは先ほど申し上げました。その非核三原則というのは、まさに、持たず、つくらず、持ち込ませずということであるということでございます。
 それから、憲法の理解ということでいえば、自衛のための必要最小限度を超えない実力を保持することは憲法九条二項によっても禁止をされていない、したがって、そのような限度の範囲内にとどまる限り、核兵器であると通常兵器であるとを問わず保有することは憲法の禁ずるところではない。ただし、我が国は非核三原則を、先ほど申しましたけれども、これを政策として明確に持ち、維持し、将来とも維持をしていくということであると思います。
中川(正)委員 私は、これは大臣とは見解を異にします。
 さっき申し上げた、核の想定されている抑止力というのは、冷戦時代の、保有するということ自体が防衛につながるという前提でなされた議論なんですが、実はこれが崩れてきているんですね。崩れてきて、その中で、核自体が、抑止力じゃなくて具体的に攻撃兵器として使う、いわゆる戦略核は特にそうなんですけれども、そういうような形の再定義がなされながら、今アメリカがその可能性を探り始めているということなんですね。そういうふうになってくると、核兵器そのものが憲法に違反したものだという解釈、これが正しい解釈だというふうに私は思っております。
 そうした意味で、どうも大臣も福田さんと同じような考え方の中でこの核を正当化していくような流れが見られるということでありまして、ここについては、私は改めて大臣の姿勢そのものを強く抗議していきたいというふうに思っております。
 次に、対ロシアの外交についてひとつお尋ねをしていきたいというふうに思います。
 最近、齋藤欧州局長がロシアを訪問して、鈴木宗男議員の一連のスキャンダル以降さまざまな形でロシア外交が混乱をし、その収拾をしていかなければならないという第一歩というか、初めてそれ以降行っていただいたということだと思うんです。
 まず、齋藤欧州局長に改めてお尋ねをしたいんですが、今回行って、ロシアサイドからどういうメッセージを受けて、かつ、こちらは何を説明してきたか、今何が起こっているのかということをまず説明していただきたいというふうに思います。
齋藤政府参考人 お答えいたします。
 私は、五月三十日から六月一日にかけましてモスクワを訪問いたしまして、三十一日、ロシュコフ外務次官及びベールイ外務省第二アジア局長と会談をいたしました。
 会談におきまして、私の方から、日ロ関係の発展は日ロ双方にとって重要であり、幅広い分野の協力を通じ日ロ関係全般を発展させていかなければならないという日本の方針に変更がないということを申し上げました。また、そうした強固な日ロ関係を構築していくためにも、首脳間の信頼関係が重要であるということを説明いたしました。これに対しましてロシア側からは、日ロ関係は戦略的な関係を有しており、これを後退させてはならない、日本側が日ロ関係全般を発展させる方針を堅持するとしていることを歓迎するといった発言がございました。
 鈴木議員に関連する問題に先生御言及ございましたけれども、この件につきましては、会談におきまして私の方から、外務省職員及び鈴木議員をめぐる一連の問題は日ロ関係を悪化させようとの意図から生じたものではないということを説明いたしました。これに対しまして先方からは、外務省職員や鈴木議員をめぐる問題は日本の国内問題であると理解しているといった発言がございました。
中川(正)委員 実は私も連休中に、五月の連休中でありますが、ロシアに行きまして、先ほどもお話の出たベールイさんと話をしてまいりました。その中で、ロシアの対日窓口といいますか関係者の懸念というのは、鈴木宗男さんに対しては、これは国内問題であるしスキャンダルであるということ、この理解はしている、しかし、それにかかわって、一連の、いわゆる日本で言うロシアスクールの面々、これは日本の対ロシア窓口として交渉を重ねてきた人たちでありますが、この人たちが更迭をされたということ、これについて、どういうことだったんだ、どういうメッセージが日本にとってあるのかということなんですね。
 あの時点で大臣の方から、この人たちに対しての更迭理由というのが、ロシア外交を混乱させたということですね。混乱させたということでやめさせたということであるとすれば、それは一体ロシアにとって何を意味するのかということ、これがはっきりしない。そこに日本自体のロシアに対する外交姿勢というのが基本的に変わってきたんではないか。しかも、世論からいくと、特に北方四島の問題については、国会決議もこれありで、非常に厳しい原則論に戻りつつある。そこのところをどう説明するのかというのがロシア外交のまず出発点だというふうに私は受け取ってまいりました。
 ここについて、さっきの説明では、ただ原則論を繰り返すだけで本当の説得には至っていないというふうに私は受け取ったんですが、大臣、改めて、このロシアに一つのメッセージを発するためにも、これはどういうことだったのか。ロシアスクールを結果的には、あの北方四島に関する交渉過程以外のところでそれぞれ刑事責任や何かを追及されている今の状況はありますけれども、あの判断はその以前の話ですから、いわゆる外交の意思決定の中で混乱をさせたという理由に基づいた処分であったわけでありますから、そこのところは改めて説明をする必要があるというふうに思います。大臣、そこについて答弁をしてください。
川口国務大臣 ロシアとの関係というのは日本にとって非常に重要な関係でありまして、今まで、北方四島の問題もございますし、それ以外に、経済の分野で、あるいは広く国際舞台での協力といった幅広い関係を持ち、今後とも深めていく必要があるわけでございます。
 ロシアの関係について、北方四島の交渉の問題、これはずっと今までやってきたわけでございますし、今後とも、今までの蓄積の上に立って、基本方針にのっとってやっていくべきものであると考えておりますけれども、その他の面について、これは今まで同様に、同じようなベースで今後進めていくべきであるということについて、ロシアと日本の間で何ら意見の差はないと私は考えております。
 委員は、外務省の行いました一連の処分について説明が必要であるということをおっしゃっていらっしゃるわけですけれども、我々は、ロシア側からもしこのことについて質問があれば、それは当然にお話をしていくわけでございますし、私は例えばG8でロシアのイワノフ外務大臣とお会いをしますし、そのときにでも、もし御質問があれば幾らでもこれは御説明をするつもりでございますし、我が国のロシアとの関係での考え方、これについては全く変更がないということは今までもロシアに言ってきているわけですし、それもあわせて再度お伝えを申し上げたいと思います。
中川(正)委員 答弁になっていないんですけれども。
 では、もっと具体的に聞いていきます。
 北方四島に関するこれまでの交渉過程というのは、四島一括で平和条約を結ぶという原則論は原則論としてあって、それに基づいて、ソ連が崩壊していく過程でエリツィン大統領を相手にさまざまなオプションが検討をされてきて、話し合いをしてきた経過がありました。
 その中で、クラスノヤルスクからイルクーツクから、あるいは東京宣言から川奈からとさまざまにしてきた過程で整理をすると、歯舞、色丹の二島というものに対して、これは返還交渉をやっていく、それから、国後、択捉というのは帰属の問題だというふうな性格、中身の認識から、片方は国境を策定していくという交渉、そしてもう片方は返還交渉をやっていくという、いわゆる並行協議というふうなオプションが練られ、さらにそのオプションの中に、鈴木宗男さんが関与をしたであろうと言われている、二島先行返還が終わったら、そこでもう平和条約を結んでもいいじゃないか、こういう間違ったメッセージをロシアに与えて、ロシアがそれに乗るか乗らないかというような協議まで始めたというふうな、そういうさまざまなオプションといいますか協議の中身があったというふうに私は認識しております。
 それについてはどうですか。そういう協議があった、また、政府見解としてもそうしたオプションの中でこの問題を解決しようとしていたという、この事実については認めますね。
川口国務大臣 我が国の北方四島の返還についての交渉の基本方針は、四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結するということでございます。これは一貫として変わっていないわけです。今後とも変わらないわけです。
 そして、委員が示唆をされている二島先行返還論ということは、政府として今まで提案をしたということは一度もないということでございます。
中川(正)委員 いや、ちゃんと答えてくださいよ。そういう話をしているんじゃなくて、いろいろな交渉の過程で、政府として、その二島先行返還という意味は、二島先行返還した上で平和条約をもう結んでしまう、あとの二島はそれからの相談ですよというスタンスはとったことがないということ、これを言っているわけでしょう、さっき大臣が言われたのは。そこの部分ですね。
川口国務大臣 御質問をちゃんと理解していないのかもしれませんが、先ほど申し上げましたように、二島先行返還論を提案したことはないということでございます。
中川(正)委員 大臣、平和条約を結ぶポイントなんですよ。それを二島を返還した時点で結んでしまったら、四島一括返還、いわゆる四島の話が全部おさまってから平和条約ですよという形に対しては、真っ向からこれは考え方が違う話だということ、こんなことはわかっているんですよ。
 そうじゃなくて、二島は返還交渉をする、それで国後と択捉の方、これについては帰属の交渉をしていくという、いわゆる同時並行的に、中身が違うから同時並行的にやっていこうというような、そういう考え方のオプションというのは日本としても出したということ、これは認識しているんでしょう。
川口国務大臣 依然として先生の御質問を十分理解していないのかもしれませんけれども、例えば、上海での日ロ首脳会談が行われましたときに、歯舞、色丹の返還の議論と国後、択捉の帰属の議論、これを同時にかつ並行的に進めていこうということでおおむね一致をしたということで、おっしゃっていることがそのことであるとしましたら、そういうことは上海の日ロ首脳会談で昨年の十月に議論されたところでございます。
中川(正)委員 その上に立っていうと、今回いわゆるロシアスクールと言われている人たちが更迭をされたという、その理由というのは何なんですか。この人たちはそのことを中心になって進めていたということではなかったんですか。
川口国務大臣 一連の、ことしの三月に発表いたしました処分に関連をして、まず、ロシアスクールを更迭したということではないわけでございます。これは、幾つかそのときに申しましたけれども、対ロ外交を推進する省内体制に混乱をもたらした結果、外務公務員の信用を著しく失墜させた等々の理由で処分を行ったということでございます。
 ということでございますので、それはまさにそういうことでございまして、この北方四島の交渉の具体的な内容あるいは交渉の進め方、交渉の中身自体とは関係がないということでございます。
中川(正)委員 だとすると、ますますわからなくなるんですね。
 外務公務員の信用を失墜させたというのは、基本的には、この二島先行返還論も含めて、鈴木宗男さんが進めた話も含めて、外務省の中に政策的な混乱があった、それを整理するためにやった、そういう受け取り方をするのが当然だというふうに思うんですね。
 それじゃ、具体的な、何を失墜、どの行為をもって失墜させたのかという話になってくると思うんですが、これは、ちょっと時間が来てしまいましたので、これからしっかりとした整理を求めていきますけれども、ここのところをしっかりメッセージを出さないと、これは相手が今の日本の状況をどのように受け取ったらいいのか、本当に迷いながら手探り状態になっているということ、私はロシアに行ってつくづく感じました。
 そのことを改めて指摘をしながら、この問題についても、どうも大臣そのものもしっかり頭の中で整理ができていないようでありますから、時を経て、改めて質問を繰り返していきたいというふうに思っております。
 以上、きょうの質問は終わります。
吉田委員長 次に、木下厚君。
木下委員 おはようございます。民主党の木下厚でございます。
 まず最初に、質問通告はしていないんですが、けさの新聞で、外務省の情報局の前分析官、佐藤優容疑者と、それから支援室の課長補佐の前島陽容疑者、この二人が五日、きょう付ですか、起訴されましたが、改めて、起訴されたことに対して大臣としての御見解をまずお伺いしたいと思います。
川口国務大臣 このことについては、外務省として厳粛に受けとめております。大変に遺憾なことだと存じています。
 昨日付で、この二人につきましては、休職処分、休職にいたしております。
木下委員 この休職処分というのは、まあ国家公務員法違反ということらしいんですが、扱いが非常に緩やか、極めて責任のあれだと思うんですね。もっと厳しい内容であるべきだと思うんですが、なぜ休職という形におさまったわけですか。
川口国務大臣 両名を昨日の段階で休職にいたしましたのは、一般論として、処分を行うということのためには両人の話を聞かなければいけないということでございますけれども、この両名から今直接十分な事実関係を確認することができなかったということでございまして、したがって休職にしたということでございます。
 私、先ほど休職処分と言いましたけれども、休職処分じゃなくて休職でございます。
 両名の処分については、今後、正確な事実関係を把握いたしまして、そして司法手続の進展を見きわめながら対処をしたいと考えております。
木下委員 いや、もし両人の意見を聞けなかったという判断で休職ということであれば、これは今まで、去年から外務省の職員の皆さん、何人も処分をされています。起訴段階でも相当重い処分をされている部分もあるし処分が軽い部分もあるんですが、それと比べても極めて軽い。今までの処分者は全部本人から聞いたわけでございますか、事情を。
川口国務大臣 そういうことでございまして、今までの場合は本人から直接話を聞くことができて、本人がそれを認めているということでございます。今回はまだ話を聞くことができない、そういうことでございます。
木下委員 そうすると、このまま、起訴されて裁判へ行ったら、外務省の方で事情聴取できないんじゃないですか。どうなんですか。
北島政府参考人 本人たちの話を聞けるように今試みているところでございます。
木下委員 そうすると、それは可能なんですか。もし可能でないとすれば、このまま休職という扱いでずっといくわけですか。どうなんですか。
北島政府参考人 近日中に実現し得ることを期待しております。
木下委員 もしそういうことであれば、事情をきちんと聞いて厳正な処分をひとつしていただきたいなと思います。
 さて、もう一つ。これは私もよくわからないんですが、現地からの情報によりますと、在カザフスタンの森敏光特命全権大使がことし四月末ごろ突然退任され、急遽、臨時代理大使として徳永さんが就任しましたが、この森全権大使の退任、これはどういう理由でございますか。
北島政府参考人 森前カザフスタン大使につきましては、欧亜局審議官在任中に対ロ外交を推進する省内体制に混乱をもたらした結果、外務公務員の信用を著しく失墜させたことから、四月二日付で、特別職の外務公務員である大使に科せられる処分のうち最も重い厳重訓戒処分とするとともに、給与の二〇%の一カ月分を自主返納してもらうこととした次第です。
 これに対しまして、森大使より、東郷局長のもとで欧亜局のナンバーツーの地位にあった者としての責任を痛感しているということで辞職の申し出がございました。その上で、森大使が四月二十六日付で依願退職になったということでございます。
 なお、カザフスタンにつきましては、五月三十一日付で、後任として角崎大使が発令されております。
木下委員 いや、森さんがロシアンスクールの一員であるということは私もよく知っています。しかし、退職した理由はそんな理由じゃないでしょう。正確に言ってください。私、はっきり言いますよ。
北島政府参考人 退任の具体的理由ということでございますけれども、先ほど申し上げたとおり、本人から、欧亜局のナンバーツーとしての責任を痛感しているということで辞職の申し出があって、これを受けたということでございます。
木下委員 そんな理由じゃないですよ。私、ちゃんと確認しています。これは個人的な名誉の問題にかかわりますのであれですが、ある女性から告発されそうになって、刑事告発寸前まで行ったんじゃないですか。どうなんですか。
北島政府参考人 辞職の理由は、先ほど申し上げたとおりです。
 その上で、今委員が御指摘になったようなことはございません。
木下委員 私、女性の名前までわかっているんですよ。そんなうそ言っちゃいけませんよ。私、随分現地の人たちにも話を聞きました。女性の名前までわかっているんです。プライバシーありますから言いませんが、これはいずれ週刊誌に出ますよ。はっきり答えてください。本当にそんな理由ですか。その女性から告発されそうになったんじゃありませんか。
北島政府参考人 辞職の理由は、先ほど申し上げたとおり、本人が責任を痛感して辞職したいという申し出があって、これを受けたということでございます。
 その上で申し上げますが、今、委員が御指摘になったこと、そうしたことは私は承知しておりませんが、いずれにしても、職員のプライバシーにかかわる事項ということであれば、公の場でコメントすることは差し控えたいと思います。
木下委員 プライバシーといっても、特命全権大使ですよ。日本国の顔として現地にいるわけですよ。そうした日本を代表する外交官が女性から訴えられそうになった、そのために慌ててやめた、もしこれが事実だとすれば、あなた責任とりますか。近く週刊誌に出ますよ。
北島政府参考人 同じお答えで恐縮でございますけれども、委員から、森前大使が退任した具体的な理由はどうかというお尋ねでございましたので、先ほど申し上げましたとおり、本人については、対ロ外交を推進する省内体制に混乱をもたらしたということでの処分をしたわけですけれども、その上で、本人から、責任を痛感しているということで辞職の申し出があって、これを受けたということが理由でございます。
木下委員 いずれこれは明らかになります。もし事実関係が明らかになったときは、あなた責任とりますね、間違いないですね。あるいは、きちんと調査してください。
 これは大変な問題ですよ。プライバシー、確かにプライバシーかもしれない。しかし、日本を代表してカザフスタンへ行って、特命全権大使でやっているわけですよ。そういう方が女性から訴えられそうになった。これはただごとじゃないですよ。もし事実と違っていたら、あなた責任とりますか。それとも調べますか、きちんと。もう一度答えてください。
北島政府参考人 具体的な辞職の理由は何かというお尋ねでしたので、先ほど来のお答えを申し上げた次第であります。
木下委員 責任をとるかと言っているんですよ。それとも調べますか。そこだけ答えてください。責任をとりますか、もし事実だとわかったら。あるいは、事実関係を調査しますか。答えてください。――では、はっきり言います。セクハラでしょう。セクハラで刑事告発寸前までいっているんじゃないですか。調べてください。女性の名前まで私はわかっていますよ、全部。実家まで私は電話を入れています。調べてくれますか。大臣、答えてください。調査しますか。
川口国務大臣 辞職の理由ということであれば、本人から、責任をとってやめたいという話があって、それでそれを受理したということでございます。
 それから、今委員がおっしゃったような、そういうことが本当にあったとしたら、大使たる者の立場からいって、非常に遺憾であると私は考えます。もしこの人間が現職の大使でしたらば、外務省の内規によって当然に処分をされるということだと私は思います。ただ、この方はもう辞職をしていまして、外務省の人間ではないということで、外務省としては、今の時点で処分をするということはもはやできないということかと思います。
木下委員 いや、現職のときにそういうことがあって、理由はどうであれ責任をとってやめたわけでしょう。だから、省内に混乱をもたらした、それは表向きの理由かもしれないけれども、そういう事実関係があったから慌ててやめたんですよ。
 調査しますか、どうですか。
川口国務大臣 私としては、在職中にそういうことがあったかどうかということは聞いてみたいと思います。
 ただ、これはこういう、委員も御案内のような性格の事件であるということでございましたら、それをこういった場でお話しするということは差し控えたいと思います。
木下委員 では、後で大臣の方へ女性の名前をこっそりお伝えしますので、事情を聞いてください。(川口国務大臣「女性の名前は別に必要ないです」と呼ぶ)では調べてください。カザフスタンの現地を調べればすぐわかるんですよ。部下の人たちに、今現在いる人たちに、何があったのか、調べればすぐわかることですから、ぜひ。
 委員長、これはぜひ理事会で、調査するように、大変大事な問題ですから、お願いします。
吉田委員長 理事会で協議いたします。
木下委員 それでは、これは再三私自身もあるいは同僚の議員も質問しているんですが、国後島のディーゼル発電施設の建設、これの問題を改めて問いたいと思うんです。
 実は、今ここに、一九九八年、平成十年十一月、パシフィックコンサルタンツインターナショナル、PCI、これが調査した北方四島住民支援発電設備増強計画という、これだけ分厚いのがあります。これを全部私は読みました。ところが、これを読んで、どこにも、今新たに国後島に発電施設が必要だと一行もないです。
 むしろ、ここにはっきり書いてあるのは、「需要予測」として、「一般家庭について潜在需要の調査結果、家電製品はすでに先進国並に各家庭に普及しており、今後安定した電力の供給が得られたとしても、急激な人口増加が無い限り、電力需要が増加するとは考えられない。一方、産業用電力需要についても、調査時点に限れば、待機需要も無く、短期的には上記の最大需要電力で推移すると推測される。」さらに、「また、夏季においては、最大約二千キロワットの需要で、需要の少ないこの時期に発電機の保守・点検が可能である。 よって古釜布発電所の発電機増強の必要性はないと考えられる。」こう結論づけています。
 さらに、東京電力、一九九九年八月、平成十一年、これもこれだけ分厚い調査報告書があります。この中にも、発電施設が必要だなんというのは一行もないんです。「当面設備を新設するよりも、存在する設備の補修により、供給能力を増加させることが経済的であり、望ましいと考えられる。」こう二つの調査というのをやっているわけですね。きちんと、もう必要ないと言っている。
 ところが、先般の毎日新聞を見ますと、こう書いてあるんです。これだけ読むのは大変だ、全部読み切れないというので、要約書をこれにつけている。A4判の一枚物だそうです。この中には、こういったことは一行も書かれていないで、補修で十分という結論部分をそっくり削って要約してある。そして、それを外務省のロシア課の人たちあるいは支援室の人たちが読んで、ああ必要だ、それで結論づけた。毎日新聞には、こう出ています。六月二日付です。この要約書はあるんですか。
齋藤政府参考人 お答えいたします。
 先生が御指摘になられました新聞の記事については、私も承知しておりまして、調べてみましたが、外務省の中で回覧された東京電力の調査報告書の要旨というものとして、報道されているような文書があるということは確認されておりません。
 というよりは、むしろ私どもの方で確認できましたことは、この膨大な調査報告書の要旨を回覧しているのは事実でございますが、その回覧された要旨の中には、引用させていただきますけれども、「島の現在の電力需要(二千七百キロワット)は既設のディーゼル発電設備(可能出力三千二百キロワット)で満たされており、現時点で新規の電源開発の必要性は認められない。」それからもう一つ、「既設のディーゼル発電設備の補修による出力増加も可能と思われる。」こういった記述が含まれておりまして、調査報告書の内容と異なるものとなっているというふうなことではございません。
木下委員 では、その回覧した要約書をぜひ見せてもらいたいと思うのですが、見せられますか。
齋藤政府参考人 後ほど御提出させていただきたいと思います。
木下委員 だとすれば、それだけ、改修だけで足りる、それから電力需要もそれほど伸びないという正確な回覧が回っていながら、なぜ突然二十一億円もかけて、これは再三私自身も質問しましたし、同僚議員も質問しましたが、もっと具体的に、なぜ必要だったのか、なぜつくったのか、そこをはっきり言ってください。
 これまで何回も聞いているんですが、はっきりわからないんです。この前の説明では、将来の電力需要の増加を予想してと言っていましたが、人口がふえないと書いてあるんです。産業用もふえないと。それなのになぜ新たにつくったのか。この前の答弁違っていますね。ここにははっきり、人口もふえない、産業用もふえない、これで十分だと。いかがですか。
齋藤政府参考人 国後島の電力に関します調査につきまして、今先生が御指摘になられたPCIと東京電力、この二つの報告書、これでは、増強の必要性がないとか補修によって対応可能ではないか、こういう調査報告があるわけでございますが、それに先立ちましてJICAが実施した報告書も当時ございまして、その中では、早晩、発電設備の更新が必要不可欠であるとか、そういった指摘もなされているわけでございます。
 いずれにいたしましても、いろいろな報告書がある中で、当時、二〇〇〇年までに平和条約を締結するよう全力を尽くすというクラスノヤルスク合意を踏まえまして、交渉のモメンタムを一層高めるために北方四島住民支援が拡大されていく中で、この国後島ディーゼル発電所の設置が必要であるという判断がなされたということでございます。
 しかしながら、現時点において振り返ってみますと、本件の実施が本当に望ましい姿でなされていたか否かについては反省すべき点もあるのではないかというふうに考えております。
 いずれにいたしましても、北方四島住民支援のあり方につきましては、今後、支援委員会を廃止し、新しい枠組みをつくっていくということで、川口大臣の方から指示もございますので、その方向でロシアほか他の締約国と協議してまいりたいと思います。また、北方四島住民支援の規模、形態等につきましては、この新しい枠組みの中で抜本的に見直すこととし、現地のニーズや経済状況に見合った適切な支援が行われますように、これまで以上に意を用いてまいりたい、こういうふうに考えております。
木下委員 そんな発言、幾ら聞いても、これはしようがないことで。ですから、もし政策ミスであったなら、きちんと政策ミスであったと、言いわけはもう聞きたくないんで、そこはきちんと言ってください。
 それと、この案件に関して鈴木宗男さんから相当強い圧力なり要請があったんでしょう。どうなんですか。
齋藤政府参考人 外務省の方で実施いたしました調査として二つございますが、三月四日に発表させていただきました園部参与による調査報告書、この件については、「鈴木議員の関与は確認されなかった。」ということでございますし、それから、新日本監査法人に調査してもらいまして、四月二十六日にその調査報告書が発表されておりますけれども、その点についても、「鈴木議員の意向を配慮する形で案件内容、入札条件、入札評価等が変更された事実は発見されなかった。」ということでございます。
木下委員 そんな調査報告書は私も読んでいます。何回も読んでいます。そんなことを聞いているんじゃないんです。どういう働きかけがあったか。あったはずなんです。鈴木さんは電力調査にも行っているんです。それはまたいずれあれします、時間があれですので。
 いずれにしても、九九年の十二月七日に外務省のロシア支援室でこれを決定しているんです、新設するのを。これは先般も同僚議員が、当時の決裁書、これを提出してほしいと要請していますので、私も改めて、これは必ず出してください。この経緯を知る上で絶対に必要ですので、これを必ず出してください。それは、委員長、改めて申し上げておきます。
吉田委員長 はい。理事会で諮ります。
木下委員 それからもう一つ、色丹島のディーゼル発電、この契約金額十四億五千万円、それに追加支払いとして約一億三百万円かかっています。そのうちの荷揚げ地変更に伴う追加代金として、六千三百万円追加支払いしているんです。荷揚げ地変更というのはどういうことですか。
齋藤政府参考人 これは事前調査の結果、最大二十トンに及びます資機材の重量にかんがみまして、資機材の荷揚げは、色丹島において最も強度が高い斜古丹港の国境警備隊管轄の桟橋を使用することを想定しておりまして、島側に対しまして、資機材を運び込む場合はこの斜古丹港を使用させてほしいということで要請をしていた経緯があるわけでございますけれども、最終的に、この斜古丹港は軍港であるとの理由から使用許可が出なかったために、穴澗港に荷揚げ港を変更せざるを得なくなったということでございます。
 穴澗港の場合は、穴澗湾の水深が浅いために、追加的に貨物船から陸まで輸送する際に必要な台船及びそのための作業員が必要となったほか、発電所用の大型資機材を荷揚げするため整地等の諸費用が生じまして、また、クレーンを備えた貨物船が新たに必要になるということで、追加的な費用がかかった次第でございます。
木下委員 私も昨年、色丹島へ行ってきましたよ。斜古丹港が軍港であるなんということは、これは最初からわかっていることじゃないですか。日本の民間の船が入れないというのは、こんなもの、最初からわかっているんです。我々も行きました。写真撮影、一切できない。それほど厳重なところへ民間の船が入れないというのは最初からわかっているんです。
 なぜわかっているところを見積もって、突然、穴澗湾に行ったから金がかかった、こんなずさんな事前調査なりあるいは契約をやっているんですか。なぜ事前にそんなもの、調査しなかったんですか。
齋藤政府参考人 先ほど申し上げましたように、島側に対しましては、斜古丹港を使わせてほしいということで働きかけを行っていたわけでございますが、当時、その働きかけを行うことにより斜古丹港での機材の荷揚げの許可が得られるものというふうに判断したということのようでございますが、この判断が甘かったというふうに御指摘でございますけれども……(木下委員「いや、結構です、それだけで」と呼ぶ)
木下委員 要するに、判断が甘かったんでしょう。これは、北方四島支援事業すべてにわたっているんです。私も何回も指摘してきました。あれだけ、それぞれの事業に追加支払い、追加支払い。事業規模が膨大に膨れ上がっているんです。いかにずさんな見積もりをやり、いかにずさんな入札をやったか、ここにもあらわれているんです。これは発電施設についても同じなんです。こんなことをやっているから鈴木さんの思うつぼで、どんどん事業規模は膨らみ、そしてそれが政治献金となって出てくる、そういうことでしょう。
 それからもう一つ、国後島と択捉島、色丹島に支援団が行っていますね。一九九九年九月十七日、それから択捉島には同じ年の十月十五日、色丹島には二〇〇〇年十月二十九日。支援団のメンバーの数と氏名、会社名、支援団の目的、費用、これを明らかにしてくださいとお願いしましたんですが、明らかになりますか。
齋藤政府参考人 ただいま先生が御指摘になられました具体的な日付のその時期に出航した支援団の存在というのは、私ども確認できておりません。ただ、もし私どもが把握している調査団ですとか支援団の派遣の事実関係についてお求めであれば、御説明をさせていただきたいと思います。
木下委員 時間ですので、もしその資料がわかったら、ぜひ提出していただきたいと思います。質問を終わります。ありがとうございました。
吉田委員長 次に、上田清司君。
上田(清)委員 民主党の上田でございます。
 早速ですが、外務大臣、支援委員会の基本的な支出は、九三年と九四年まではまともであったんです。相手側もおりました。しかし、九五年以降は、相手側もいなくて、要請主義という実態もなく、そして評価もなく、相手からの合意もとらないままに支出が行われて、しかも日本国内の関連法規そのものにも逸脱しているということの御指摘を、私は去る五月二十二日の予算委員会の集中審議でさせていただきました。
 小泉総理も、このように言っておられます。「定義はともかく、上田さんの言っているとおり、おかしいですよ。そういう反省のもとに、外務省、考えなきゃいかぬ。字義の定義じゃない。物品の定義はともかく、常識で考えて、何でこんなおかしいことやったんだという反省をしなきゃいかぬ。そういう認識から始まって初めて改革ができるんですよ。 だからそれは、外務省、私は今のような答弁を聞いて、まだ反省が足りない。きっちりと私は指導します。」このように、小泉総理は基本的な問題について、おかしい、こういう判断をされて私に同調されておりますが、総理からどのような御指導をいただいたんでしょうか。
川口国務大臣 総理からは、きちんと反省をするようにというお話はいただいています。
上田(清)委員 反省だけ。だけですか。
川口国務大臣 総理がおっしゃったこと、一言一句全部覚えているわけじゃないのですけれども、外務省は反省が足りないというお話はございました。
上田(清)委員 関連法規に逸脱しているという私の指摘に対しては、外務大臣はどのように御判断されているんですか。
川口国務大臣 一般的に関連法規に逸脱をしているとおっしゃられましても、それぞれ関連の法規に逸脱をしたかどうかということは、具体的にあることがしているかどうかということで判断をされるべきだというふうに私は思います。
上田(清)委員 さんざんしてきたじゃないですか。何を言っているんですか、今さら。いっぱいしてきたじゃないですか。
 では、大臣、一つ一つ聞きますよ。色丹島のプレハブ診療所。支援委員会の協定の第三条の(a)項の(3)だという判断をされているんですよ。いいですか、「受益諸国が現在置かれている困難な状況の中でこれらの諸国の国民の相当な生活水準を確保するために必要なその他の物品であって委員会が適当と認めるものの購入」と。相手国はいないんですよ、このときはもう、代表者は。まあいいですよ、それは一歩でも百歩も譲って。しかし、これで、支援委員会の協定に基づいて出したと齋藤局長も言っておられますけれども、どの項目なんですか。その他の物品であって、生活水準を維持する。診療所は物品なんですかと私は聞いているんですよ。大臣は本当に物品だと思うんですか。本当に思うんですか。
 ここに、私、総理官邸の、新しい官邸に今回どんな物品が購入されたか、リストをいただきましたよ。総額で三億六千万。一つ一つのものはせいぜい一千万から何百万。ちなみに、各省庁で高額な物品を出してみろと言ったら、経済産業省で十億のコンピューターが一つありましたけれども、それ以外はみんな一億以下ですよ。
 物品というのは箱の中に入っているもののことなんですよ、普通は。診療所がどうして物品と言えるんですか。違反じゃないですか。大臣、答えてください。
川口国務大臣 まず、私も今まで申し上げてきていますように、この支援委員会の予算の支出のあり方、あるいは業務の実施の仕方について、必ずしも望ましい姿で行われてきたわけではないということは、私も予算委員会等で再三再四お答えをしたとおりでございます。
 それから、物品ということについて、このプレハブの仮設の診療所が物品であったかどうかということですけれども、当時の判断としては、このプレハブ仮設診療所そのものではなくて、それの資材というものが物品に該当する、それから、これを使用した据えつけの工事等が役務に該当するということで、当時そういう解釈があって、それが行われたということであろうかと私は思います。
 その上で、こういった仮設診療所の資材が物品かどうかということについて言うと、法律的な解釈、条約上これが読めるかどうかということについては、これはさまざまな考え方はあるだろうと思います。そういった意味で、それはあると思いますが、一般的に国民の常識ということからいえば、そうじゃないだろうなと思うというところはあるかもしれませんが、条約の解釈としていろいろこれはあり得る、少なくとも当時はそういう考え方をしたということでございますし、今もそこの見方、読み方についてはいろいろあるのではないかと私は思います。
上田(清)委員 各省庁は、何が物品かということを判断する立場にはありませんけれども、少なくとも、物品管理法と国有財産法というものがあって、それに基づいて、何が物品で何が物品でないかというのを明らかにしているんです。
 聞きましょうか。厚生省、おられますか。診療所というものは物品になりますか。
木村政府参考人 物品管理法の第二条第一項におきまして、同法における物品につきまして、国が所有する動産などと定義されておりまして、厚生労働省におきましては、通常の診療所は不動産であることから、物品管理法上の物品としては取り扱っていないところでございます。
上田(清)委員 その二十二日に、自航式はしけについても、齋藤局長は、今の協定の(a)項の(4)の「緊急人道支援」、いいですか、緊急ですよ、人道ですよ、「支援の実施のために必要な機材、車両等の購入」、これに自航式はしけが当たると。私は、これははしけじゃなくて船だと言っている。しかし、外務省の独自の判断によれば、極めて偏った判断によれば、はしけになっている。
 九百八十キロ、千二百キロ走れる、一回燃料を積めば。北方四島から東京湾まで来る船が一つ。それから、名古屋まで行く船が一つ。何がはしけなんだと私は申し上げたいし、ちゃんと内部文書でも書いてある。本船の特徴と、ちゃんと書いてあるよ。本船の特徴、一、本船は国後島の古釜布云々、技術的性能、航海速力約九ノット、時速十七キロ、航続距離九百八十キロ、二日半航続可能と、ちゃんと書いてあるよ。船内にはと。それから、航海レーダーがあるとか。はしけに航海レーダーが必要なのか。
 今のは希望丸の話。友好丸は千二百キロ走れる。同じように、本船とかいろいろ書いてある。しかも、この友好丸は全然動いていない。緊急人道だから、すぐ動かなくちゃいけないでしょう。動いていなきゃ緊急でも何でもないということでしょう。いろいろな意味からおかしいんですよ。
 海上保安庁、国土交通省、船の定義、物品、機材に入るのか車両に入るのか、教えてください。
縄野政府参考人 国有財産法におきまして、二条の二号で船舶は国有財産として扱う、物品管理法の二条におきまして、国有財産法の国有財産は、この物品管理法に言う物品ではないということになっておりますので、私どもは、船舶は、小型のゴムボートのようなものは除きまして、国有財産法の国有財産として扱っております。
上田(清)委員 全部言うとそうなんですよ。友好の家も、文部科学省の定義によれば、それは物品じゃないし機材にもならない。船を持っているのは、警察庁、農水省、文部科学省、防衛庁、国土交通省、海上保安庁。今言ったゴムボート以外はみんな、物品でもなければ機材でもないんですよ。明らかに今までの支出の、友好の家もそう、ディーゼル発電機もそう、全部入らないんですよ、この中に、この協定のどこを見ても。
 ちゃんと書いてあります。第三条、「日本国政府は、日本国の関係法令及び利用可能な資金の範囲内で、委員会に対し、自らが決定する額の資金を拠出する。」日本国の関連法規に従ってやっているんですよ。間違っているじゃないですか。大臣、正してください。
川口国務大臣 先ほどと同じようなパターンになるんですけれども、まず、はしけについておっしゃられたわけなんですが、これも、当時の考え方としては、それが読めるという解釈であったと思います。
 その読み方ですけれども、これは物品あるいは機材として読んだということではなくて、協定第三条1の(a)の(4)、これは「緊急人道支援の実施のために必要な機材、車両等の購入」に該当するということで供与をしたということでして、はしけは機材ではないけれども、支援物質等の陸揚げに不可欠なものであって、車両という輸送手段が認められる以上、はしけについても「車両等」の「等」で解したということが当時の解釈であったということでございます。
 それで、当時の考え方はそういうことであったということでして、現在これを解釈したらどうかということについて、法律的にはこれはいろいろな考え方があると私は思います。いろいろあると思いますけれども、先ほど委員からレーダーがついているというお話があったかと思いますけれども、私、これにレーダーが装備をされているかどうかということについては確認をいたしておりませんが、そういった意味では、必ずしも最も望ましい姿でこれが行われたというふうに私は思っていないわけでございます。ただ、法律の解釈としては、これはいろいろあり得ると私は思います。
上田(清)委員 「車両等」といって、「等」といったらロケットでも入っちゃうのかというんですよ、「等」がつけば。そんなばかなことはないんですよ。
 第一、緊急人道支援といって、動いていないじゃないですか、友好丸は。どこが緊急なんですか。使ってもいないものが何で緊急なんですか。医療薬品だとか食糧というのは、使うから緊急なんですよ、人道支援なんですよ。どこが人道なんですか。使ってもいない、動いてもいない。
 大臣、おかしいですよ、そういうことを言ったら。私はもう告発書を用意しております、実は。きょうの答弁次第によっては、外務大臣、あなた自身を告発します。はっきり答弁してください。いろいろ解釈がありません。だから各省庁の皆さんがはっきり答弁しているんじゃないですか。関連法規に従って、物品管理法と国有財産法に従ってちゃんと答弁されているじゃないですか。何で、どんな解釈があるんですか。もう一回答えてください。
川口国務大臣 繰り返しになりますけれども、先ほどのプレハブ仮設診療所の件ですけれども、これは当時の考え方を今申し上げているわけですが、これは診療所自体を物品として供与したということではないということでございまして、それを構成している資材、これが物品である、そういう理解であったというのが当時の理解であったと思います。それから、はしけについては、先ほど申しましたように、「車両等」の「等」で読んだというのが当時の理解であると思います。
 その上で、法律の解釈ということについてはいろいろあると思いますけれども、この供与が最も望ましい姿で行われたかというと、それは必ずしもそういうことではなかったんではないかということを申し上げているわけです。
吉田委員長 外務大臣、今の、現在の話ということですから。
上田(清)委員 私が聞いているのは、現在の判断で法律に反しているかどうかということを確認しているんです。私は違反していると言っているんですよ。では、違反していないと言うんだったら、違反していない根拠を言ってくださいよ。
川口国務大臣 それは、現在の解釈についてはいろいろあり得るであろうと私は思います。
上田(清)委員 官房副長官、来ておられるんですか。――来ていない。
 政府見解が違うということです。委員長、政府見解が違うということです、各省庁で。外務大臣は、いろいろな考え方があると言っておられますけれども、いろいろな考え方はないんです。もう既にいただいています、答弁を。文部科学省にも、そういう答弁をいただいています。見解が違うじゃないですか、いろいろな考え方があるって。関連法規ですよ、これは。国内の法規でやっているんですよ。ロシアの法規でも何でもない。
川口国務大臣 申し上げていることは、この診療所についてのプレハブの資材、それを構成している資材ですね……(上田(清)委員「資材を聞いているんじゃないと言っているじゃないですか。診療所です」と呼ぶ)いえいえ、それが物品であるという解釈を当時行ったということを説明しているわけでございまして、各省から先ほど来お話のあった物品については、それなりのそれぞれのところであると思いますけれども、外務省は診療所を物品と申し上げたことはないということでございます。
 それを念のために申し上げておきまして、この支援のための協定の解釈、これについては、当時はこれは正しいという解釈をした。今の考え方として、法律的にはいろいろあるかもしれません。(上田(清)委員「いろいろはない」と呼ぶ)いろいろないということでございましたら、改めて現在の解釈が何であるかということを外務省から提出させたいと思います。
上田(清)委員 外務省から答弁してください。大臣が答弁できないんだったら、だれか答弁してください。――いいですよ。外務大臣が答えられないと言うんだったら、どうぞ、政務官、答えてください。
今村大臣政務官 先ほど大臣のお話にもありましたとおり、あくまで解釈としては「車両等」にこのはしけが入るということで行ったものであります。これが、一般的には船舶、車両というじゃないかということで「等」に含めてしまうというのはおかしいというのはお気持ちはわかりますが、解釈としてはそういうことになっております。
上田(清)委員 友好の家はどうなるんですか。物品ですか。
今村大臣政務官 診療所等はプレハブを中心にしてつくっております。ですから、先ほど物品等の話もございましたが、持ち運びできるものというものはある意味じゃ物品。診療所等も、コンクリート等で、しっかり鉄筋コンクリートの頑丈な建物をつくれば、それは不動産ということになるかと思いますが、物品として解釈できないこともないんじゃないかというふうに思います。
上田(清)委員 では、発電所はどうなるんですか。ディーゼル発電所はどうなるんですか。
今村大臣政務官 ただいま、物品と資材と、これはちょっと間違えました。資材でございます。
上田(清)委員 ディーゼル発電所の三基は資材ですか。
今村大臣政務官 発電機そのものは、やはりこれは物品であると私は思っております。
上田(清)委員 経済産業省、発電所は何ですか、ディーゼル発電機。
林(良)政府参考人 発電機、発電所一般について最終的に物品管理法上の解釈をする立場にございませんけれども、当省敷地内に設置しております自家発設備につきましては、従来より、物品ではなくて国有財産として管理をしてきております。
上田(清)委員 今村政務官、持ち運びの発電機のことを言っているんじゃないんだよ。これは二十七億したり十数億する発電施設なんだよ。機材でもなければ物品でもないの。どこを見て物品と見えるの。おかしいんじゃないの、目が。
今村大臣政務官 それは、発電所ということではそういうことかもしれませんが、発電機というのはあくまで物品だと思います。
上田(清)委員 では、ディーゼル発電施設は何ですか。
今村大臣政務官 発電施設は施設です。
上田(清)委員 今までそういうこと言っていないんですよ。ちゃんとこの中で、(a)の(4)項で、緊急人道支援上の実施のための必要な機材、車両の購入か、あるいは(a)の(3)の、物品であって委員会が適当と認めるもの、この二つのうち一つなんですよ。あなたは物品じゃないと言ったけれども、外務省は今までそれと違うことを言っているんですよ。外務大臣、どっちなんですか。政務官と外務大臣、違うじゃない、考え方が。
川口国務大臣 政務官と私は常に一緒に考えておりますが、今お尋ねのものについては、その必要な資材が物品に該当をするということを申し上げているわけでございます。
上田(清)委員 ディーゼル発電所は一体何なんですかと聞いているんですよ。何項に匹敵しているんですか。ふざけたことばかり言わないで。一つ一つの資材を聞いているんじゃないんですよ。でき上がったものを聞いているんですよ。でき上がっていく途中のものはみんな資材じゃないかなんて、何を言っているんだよ。鉄骨であったりねじであったり、当たり前のことじゃないか。何を言っているんだよ。
川口国務大臣 発電機そのものは物品でございまして……(上田(清)委員「発電機のことは聞いていません」と呼ぶ)発電所については、それを構成している、それをつくるために使っている資材が物品であるというのがそのときの解釈でございました。
上田(清)委員 まじめな答弁をしていませんので。安倍官房副長官、見てわかりますように、こういう二十七億もするような発電施設が資材だと言われるんですよ、外務大臣は。各省庁の皆さん全部集まって……(川口国務大臣「そんなこと言っていないじゃないですか」と呼ぶ)言っているじゃない。では、何なんですか。
川口国務大臣 発電所が資材であると私は申し上げておりませんで、まず、発電所を構成するもののうち、発電機は物品である、それから、その他のもののうち、それを構成する資材、それが物品である、そういうことを申し上げているわけで、発電所が資材ということを申し上げたことはございません。
上田(清)委員 では、何なんですか。委員長、まじめに答弁しておりませんよ。いいですか。ビルディングがありました、これはビルディングですといって、物品管理法上あるいは国有財産法上、ビルディングはビルディングでちゃんとその中に入って、物品じゃないわけです。ところが、その中にはガラスがあります、鉄骨があります、それぞれは資材でありますとあなたは答弁しているような話じゃないですか。ばかなことを言っちゃいけませんよ。
吉田委員長 要するに、上田委員は発電所は何だということを聞いているんですか。発電所は物品か物品でないかということを聞いているの。(上田(清)委員「委員長、許しちゃだめだよ、こんなへ理屈を」と呼ぶ)いや、へ理屈とかなんとかより、答弁は答弁なんです。
川口国務大臣 今争点になっているのは、仮設診療所なり発電所なりがこの協定で読めるか読めないかという議論であると私は理解をいたしております。
 それで、読めるか読めないかということで言いますと、再三申し上げていますように、当時の協定の解釈として、これは先ほど申し上げたような形で、すなわち、はしけについては「機材、車両等」の「等」で読める、あるいは発電機については物品、それから発電所の施設については、それを構成している施設が物品であり、それをつくるのに仕事をした部分は実施に伴う役務ということで読める、そういう解釈で協定上読めるという判断をしたということでございます。
 現在の時点で、協定の解釈については、それは先ほど来申し上げていますように、いろいろあると思います。読めるという解釈も私はあると思っております。しかしながら、常識で考えたときに、こういったことがこの協定に照らして最も望ましい姿で行われたかということでいうと、必ずしもそうではなかったかもしれないという反省を外務省としてはしている。そういうことを先ほどから再三再四申し上げているわけでございます。
上田(清)委員 では、現在はどうなんですかと聞いているんですよ。あなたは現在の大臣じゃないですか。
川口国務大臣 これもまた繰り返しになりますけれども、協定の解釈の仕方にはいろいろあり得るというふうに思います。しかしながら、これが最も望ましい形で行われていたか、支出が行われていたかということについては、いろいろな、外務省としては反省をすべき点が多くあったというふうに私は思っているわけです。
上田(清)委員 安倍副長官、先日の二十二日に、この問題をめぐって総理は、常識では考えられない、上田さんの言うとおりだ、私の言うとおりだ、こう言って、ちゃんと外務省に猛省を求めるような答弁もなされておられるんですよ。
 それで、反省はしていると。反省はしているでは済まないんですね。国際協定違反です。しかも、国際協定といっても、第三条で日本国内の法規に基づいて支出をすると書いてあるんです。その日本国内の法規に基づいて支出をする、その支出が間違っていると私は指摘している。
 明らかに当時、外務大臣も言われますように、どうも常識からするとおかしいなと言っておられる。常識からしておかしいなと言って、今の判断としていろいろな考え方がある。いろいろな考え方では困るんですよ、法令の解釈というのは。いろいろな考えがあるでしょう。しかし、その中でどの解釈をとるのかで行政が決まるんじゃないですか。あるいは条約が決まっていくんじゃないんですか。お互いに合意するんじゃないですか。その合意をされた条約に基づいて批准をしていくわけでしょう。それで国会が承認する。そういう仕組みを我々はつくっているわけですから。
 この法令に基づいて、どんな解釈で行われたか、どういう解釈で当時は支出をされ、現在はどのような解釈になっているのか。答えは一つですよ。いろいろな考え方があると、それを集約したのはどうなんですかと言っているんです。
吉田委員長 外務大臣、現在はどう思われているか、こういうことですから。
川口国務大臣 この協定の解釈については、先ほど申し上げましたように、これは、読めるという解釈とそれから読めないという解釈とあり得ると私は思いますが、外務省の現在の解釈はということをお聞きでいらっしゃいますので、外務省の協定の解釈は当時とは変わっていないということを申し上げます。
上田(清)委員 そうすると、官房副長官、各省庁に、いわゆる船の定義あるいは診療所の定義、発電施設の定義、それぞれ確認しましたけれども、外務省と違うということになりますが、各省庁で違うんですか。
安倍内閣官房副長官 ただいまの上田先生の御質問は、先般の総理の予算委員会での答弁におきまして、外務省は「まだ反省が足りない。きっちりと私は指導します。」ということにおいて、総理はどのように考えているんだという御指摘だろう、こう思うわけでございますが、総理も外務省に対しまして、協定の解釈はともかくといたしまして、これまでの支援委員会の事業について、国会等で上田先生等からも厳しい御指摘があったわけでございますので、こうした御指摘を踏まえて、外務省として、反省すべきは反省し、今後の支援のあり方の改革に取り組んでいくことを求めたということでございます。
 こうした総理の意向を踏まえまして、先般、川口外務大臣も、支援委員会の廃止ということを委員会で表明をされたというふうに承知をしているわけでございまして、総理といたしましても、今後の取り組みについて、やはり反省すべき点は反省をしなければいけないということをおっしゃったということでございます。
上田(清)委員 一番大事なことは、行政が行われる、その中で、どういう状況の中で、だれが判断し、だれが失敗したか、なぜそんなふうになったかということを解明しなければ、何度も同じことを行うじゃないですか。無責任な体制になってしまいますから、当時だれがどのような決定をし、現在はどのような考え方に立って当時のことをきちっと総括するのかということを確認しているわけですけれども、川口大臣の答弁はまともに答えておられません。
 ちゃんと予告した上でこういうことを言って、答弁されない以上、たった今、地方検察庁の方にあなたを告発します。公金を背任で支出をしているということについて、私は告発することを宣言いたします。
 終わります。
吉田委員長 次に、土田龍司君。
土田委員 先に、条約について一問、二問質問させていただきます。
 エネルギー憲章第七条は、石油や天然ガスのパイプラインや電力網による第三国を通じたエネルギーの通過について、締約国は、関税と貿易に関する一般協定第五条の通過自由の原則に従って、エネルギー原料及びエネルギー製品を、出発地、仕向け地、所有者、価格により差別せず、また不合理な遅延、制限、料金を課すことなく、通過を促進するために必要な措置をとる義務や、通過に関する紛争が発生した場合でも、有効な解決策を探るために、少なくとも十六カ月の調停プログラムの間はエネルギー原料及びエネルギー製品の通過を妨害しないということを決めているということですね。
 そこで、石油や天然ガスを運ぶパイプラインは、初期投資が莫大な上、一度設置されるとルートの変更が難しい。その安定供給は、生産国のみならず消費国にとっても重要な課題である。そのため、各締結国は、各国が通過に関して一層踏み込んだ義務を負うことによって、エネルギーの安定供給、投資の促進及びエネルギー貿易の拡大を目指すために、二〇〇〇年二月から法的束縛力を持つ通過に関する憲章議定書の交渉が開始されているということでございますが、その交渉が難航しているというふうに聞いております。現在の交渉の進捗状況と今後の妥結の見通しについて、御説明をお願いしたいと思います。
佐々江政府参考人 お答えします。
 ただいま先生がおっしゃられましたとおり、エネルギー憲章に関する条約第七条におきましては、複数の国境にまたがる石油や天然ガスのパイプライン、それから送電線にかかわるエネルギーの通過について規定しておるわけでございますが、九九年の十二月のエネルギー憲章会議におきまして、この規定を補足、強化するために通過に関するエネルギー憲章に関する議定書を作成することが決定され、先生が御指摘されましたとおり、二〇〇〇年から交渉が開始されているということでございます。
 現在、この交渉につきましては、通過ワーキンググループというところで議定書の交渉が行われておりまして、まさに、通過中のエネルギーの不法な取得の防止、パイプライン、送電線の余剰輸送能力の利用に関するルールあるいは通過料の設定基準、紛争解決手続等に関して議論を続けておるという状況でございます。
 今後どうなるかということでございますが、交渉でございますので、なかなかはっきりとした見通しを立てることは困難な面もございますけれども、昨年の十二月に開催されましたエネルギー憲章十周年記念会合においても、我が国を初め多くの国がこれを早く作成すべきだということを指摘しておりまして、可能な限り早く交渉が妥結するように、我が国としても各国とともに努力をしていきたいというふうに考えております。
 エネルギー憲章事務局自身は、目標としては、できれば本年中に採択したいという希望を持っているようでございますが、これは交渉でございますので、そのようにいくかどうか、まあ全力を尽くすということだろうと思います。
土田委員 質問通告していなかったんですが、もう一点、気になりますのでお尋ねしますが、カスピ海の開発の件です。
 石油だけでなくて、天然資源などが豊富に埋蔵されているというわけでございまして、そこに対して日本からも投資をするということですね。特に重要になってくるのが、カスピ海に面するイランや中央アジアとの外交関係だと思うんです。これらの国々に対して、今まではどうやってつき合ってきたか、今後どうやってつき合っていくか、ちょっと概略だけでも御説明ください。
佐々江政府参考人 カスピ海の沿岸諸国を含めまして、この中央アジア、コーカサス地域が、天然ガスそれから石油等のエネルギー資源を有しているという極めて経済的な重要性を有しているということ、それから、この地域はロシア、中国、中東に接しているということで、地政学的にもあるいは戦略的にも非常に重要な地域であるということで、シルクロード地域に対する外交ということで、この地域に対する関係の強化に努めているということでございます。
 とりわけ、政治対話と並びまして、この経済協力や資源開発協力が重要であるというふうに考えておりまして、我が国としましても、特に民主化、市場経済化のための人材育成と制度づくり、経済インフラの整備に対する協力、それから保健、医療、教育等の社会セクターへの協力、環境保全を重点として協力を進めるということを実施してきております。
 また、このような、特にエネルギーの分野におきまして強化しなければいかぬということで、本年四月に中国の海南島で総理が演説で述べましたところでございますが、近くシルクロード・エネルギー・ミッションをこの地域に派遣することを政府として検討している、そういう状況でございます。
土田委員 さて、今問題となっております非核三原則の問題について質問いたします。
 安倍官房副長官が、集団的自衛権について憲法をどう変えていくかということを議論する必要があるということを言っておりますね。憲法改正は非常に難しい議論であるが、その前に集団的自衛権の政府解釈を変更すべきであると発言しているわけですね。
 我々自由党は、有事法制の整備の必要性を非常に前々から主張してきましたし、今衆議院で審議中の政府提案のような拙速な法整備ではなくて、憲法の問題、特に集団的自衛権の問題をどうするのか、議論を深めた上で法整備を行うべきであるというふうに言ってまいりました。
 しかし、政府は、この憲法問題には全く触れないで、とにかく早く成立をさせようとしているだけで、政府提案の中身は全く詰まっていないというふうに私は感じております。
 片や、内閣を構成する官房副長官は、国会の外で、憲法を変えたらいいとか、集団的自衛権に踏み出すべきだと発言をしているわけでございますけれども、これは、いわゆる内閣の不一致という問題ではなくて、国会を少し軽視しているのじゃなかろうかというような感じがしてならないんです。
 国民の安全に対して責任を持っている政府として、こういったいろいろな発言をされることについて、大臣はどのように考えておられますか。
川口国務大臣 おっしゃっている発言については、これは個人の立場で政府の外でなされたものであろうと私は思いますので、それについて具体的にコメントを申し上げることは差し控えさせていただきたいと思います。
土田委員 いやいや、違うんですよ。安倍官房副長官の発言や、今政府がやろうとしている、法律を通そうとしている態度について、少し趣旨が違うんじゃないかというふうに私は感じるんですが、大臣はそのように感じませんかということです。
川口国務大臣 安倍副長官の発言とおっしゃっていらっしゃるのが、この前、安倍副長官が早稲田大学で学生たちに対して授業を、あるいは講演をするときにおっしゃった発言をお指しになっていらっしゃるのであれば、私、その発言の内容を全部はっきり記憶しておりませんが、いずれにいたしましても、これは大学という場で話されたということですから、個人の立場で大学で話されたということについては、そこは自由に御議論をなさるということは別に問題はないというふうに思います。
 政府の官房副長官が政府の意見としておっしゃったということではなくて、個人で、あるいは政治家としておっしゃったということであれば、そこは御議論を自由になさってそれでよろしいのではないかと思います。
土田委員 そういうのじゃないんですけれども、まあいいでしょう。
 福田官房長官の非核三原則の見直し発言、これが本当であれば内閣が吹っ飛んでしまうというふうに本人もおっしゃっていて、変えるつもりはないんだということも、私もあの発言から大体理解できます。
 しかし、この問題についてやはり大きな波紋が広がっているのは事実でございまして、例えば中国の外務省は、日本国民が国の根本利益に立って正確な判断と選択を行うことを信じると述べておりまして、やはり国際的な反応が出てくるわけですね。
 恐らく、今言ったように、福田官房長官も非核三原則の見直しをするつもりはないのはわかりますけれども、話した場所が若い記者との懇談の場であったということを言っておりますけれども、何回こういった言いわけをしても、やはり大臣の発言というのは大きな波紋がどうしても広がるわけでございますので、やはり内閣として、こういった発言はしないように外務大臣としても追及すべきじゃないかと私は思うんですけれども、閣僚の一員としてどういうふうに考えておられますか。
川口国務大臣 福田官房長官の御発言については、福田官房長官御自身で記者会見の場でお話をなさっていらっしゃるので、特に私からコメントを申し上げる話でもないと思いますが、これは国の安全保障のあり方について、それぞれの時代状況、国際情勢等を踏まえたさまざまな国民的議論というふうにおっしゃっていらっしゃるので、非核三原則を堅持するということについては、そうであるということについては、全くそのとおりおっしゃっていらっしゃるということですから、それはそれで別に問題はないと私は思っております。
 非核三原則は、政府としてずっと維持をしてきた重要な政策であります。NPTや原子力基本法の中でも、そのことはきちんと言っているわけでございまして、これが日本の政策であるということについてはだれも疑う人はいないということだと私は思います。
土田委員 閣僚の中でそういった発言が飛び出して、国際問題化するようなことが行われるということについて、ぜひ注意をお願いしたいという意味で質問をいたしたわけでございます。
 次に、大臣がこれから行かれるインドとパキスタンの問題です。
 カシミール問題をめぐって、いよいよ軍事的な緊張が高まってきております。一九四七年の両国の独立以来、過去三度戦いがございました。特にカシミールに関しては、二度それが引き金となってきているということでございまして、心配されるのが、印パ両国が九八年に核実験を行って、事実上の核保有国に今なっているわけです。
 このために、世界各国、日本もそうですが、非常に注目をし、心配をし、その対応をしているというふうに思うわけでございます。アメリカの国防総省が、もしも核戦争が始まったらば千二百万人が死ぬんじゃないか、そういった推計まで出しているわけでございますので、当然、大臣も、パキスタンに行かれ、今度インドに行かれ、そういった対応をされるというふうに思うわけでございますけれども、ただ、アメリカの対応なんですね。
 アメリカは、去年の九月のテロ事件が発生してから、核実験を続けていた両国に対して経済・軍事制裁を解除したわけです。これは、従来の核拡散阻止という政策目標よりも、テロ対策、テロ根絶を優先させたというふうなことでございまして、大きな外交政策をアメリカは転換したわけですね。さらにアメリカは進んで、核関連物質の安全管理や施設警備の面で、ムシャラフ政権に対する積極支援に乗り出しているというわけですね。つまり、パキスタンの核保有を否定しないで、そこから先の拡散や核兵器の暴発を視野に入れた政策に進みつつあると言えると思うんです。
 そこで、我が国の問題なんですけれども、同じテロ対策を優先する立場から、十月下旬に印パ両国に対して経済措置を停止しましたですね。このことは、印パ両国を事実上の核保有国として扱っていこうとアメリカはしているわけですけれども、これについて日本の政府は追随していくのか、アメリカの政府に対してこれを容認するのかという問題があろうかと思うんですが、この点については大臣はどう考えておられますか。
田中政府参考人 お答えを申し上げます。
 委員御指摘のとおり、米国が経済制裁を停止し、それから日本も、昨年、インド、パキスタンに対して経済措置を停止したということでございます。
 それで、私どもの前提は、インド、パキスタンに対して、CTBTの署名、批准ということを求めているということでございますし、かつ、インド、パキスタンともに核実験のモラトリアム、そういうことについて事実上約束をしているという状況の中で、まさにアフガニスタンとの関係において、パキスタンの国づくり、パキスタンを支援していく、インドも同様に重要な役割を果たしてもらいたいという思いを込めて経済措置を停止したわけでございまして、これは、仮に今後インド、パキスタンが核実験を続けるといったようなことがあれば、当然のことながら、我が国の措置というのは見直しをしていく必要があるということであるというふうに思います。
 それから、核の管理とか、まさに私どもも、今回のインド、パキスタンにかかわる対立について、これはもう全世界が同じでございますが、唯一の被爆国として非常に強い意識を持っているのは、まかり間違っても核兵器が使われるというような事態になるのはあり得ないということでございまして、これは、インドは核の先制使用ということはしないんだということを言っておりますし、ムシャラフ大統領も、核兵器の話をするのはまさにおこがましい、そういうつもりは全くないということは言っているということでございますが、日本としては、引き続きインドに対する自制、それからパキスタンに対しては、テロとの闘いの中で、管理ラインを越えてパキスタンのと言われる過激派が侵入をしていく、こういうものをとめなきゃいけない、それを具体的な形で示してくれという働きかけを累次行ってまいりました。小泉総理大臣はムシャラフ大統領に電話をし、川口外務大臣も二度にわたり電話をしております。
 ですから、日本としても、パキスタン側の過激派が入っていくのを実効的にとめる措置、これを求めてまいりたいし、インドに対しては、外交的な手段を尽くすように自制を求めてまいりたい、かように考えているわけでございます。
土田委員 田中局長の今の答弁は、要するに、アメリカの政策を追認していない、追認するんじゃなくて独自の判断をしているんだというふうなことをおっしゃりたいんだと思いますけれども、現状において、我が国がインドとパキスタンに対して、例えば、核実験の凍結を求めたり、包括的な核実験禁止条約の調印を粘り強く求めていくというようなことを今まで主張してきているわけですけれども、どうも、国際的に見ると、ジェスチャーにすぎないんじゃないのと。今は立派なことを随分おっしゃいましたけれども、そんなに大きな力が日本にあるのかなという感じがしてならないんですけれども、もっと具体的な方法というのはあるのかないのか、あるとすればどんなことを考えておられるのか。教えてください。
田中政府参考人 私どもも外交的な手段を尽くす、インド、パキスタンに対して核実験のモラトリアムの継続を求めていくわけですし、それから、事実としてパキスタン、インドが核実験をして、いろいろな情報では核弾頭を保有するに至っていると。一番大きな懸念というのは、そういう核弾頭がきちんとした管理をされない、あるいは過激派の手に渡るといったようなことがあってはならないことである。
 特にパキスタンの場合には、まさに今のアフガニスタン、アルカイダとの闘い、それから、現実にパキスタンの中に過激な分子がいることは間違いがないということでございますし、ムシャラフ大統領はそれを抑える、まさにそういう、ムシャラフ大統領が国を民主化していく、過激派を抑え切れるような形で国づくりをしていくために経済措置の停止ということもやっているわけであります。ですから、常に経済措置の停止を解除するという政策的なオプションは日本にはあるということだと思います。
土田委員 アメリカやいろいろな国が、インド、パキスタン両国に滞在している自国民のいわゆる引き揚げを決めたり、実行に移したりしているわけでございますが、現在の軍事的な緊張状態が武力衝突に発展する可能性というのはどの程度だと、あるいはどういうふうに考えておられますか。
 これは大臣がいいかもしれませんね。大臣、パキスタンに行かれて、今度インドに行かれるわけですから。
川口国務大臣 この緊張関係が実際の戦争あるいは軍事衝突という形に発展する確率というのを数字で申し上げるのは非常に難しいというふうに思います。我が国を初めとしまして、すべての国が、こういうことがないように圧力を両国にかけ、対話を求め、パキスタンに対しては過激派の越境を禁止するようにということを言っているわけでございます。
 それから、私がパキスタンにこの前連休のときに参りまして、外務大臣とお話をさせていただきまして、可能であれば、今回イスラエルに行く前にインドに寄りたいということで考えておりますけれども、現在日程調整中でございまして、最終的に私として決めたという段階にはまだなっていないわけでございます。
土田委員 わかりにくい答弁なんですが、インドを訪問された杉浦副大臣が、五月三十一日にシン外相との会談の後、テロ根絶に対する非常に強い決意を感じた、パキスタンとの軍事衝突に向かう可能性が高いと感じたというようにおっしゃっているんですね。こういった認識は、どこからこういうふうに感じられたのかというのを含めて、前の質問とリンクするのですが、どの程度の可能性がある、非常にこれは危険な状態なのか、そういったことを聞いているんですけれども、どう感じておられますか。
川口国務大臣 これは緊張はかなり高まっているというふうに思います。したがいまして、それが軍事衝突に発展しないようにインドもパキスタンも、それから各国とも努力をしているということでございます。
土田委員 日本国民を退去させるという方法について、いろいろな方法があるかと思うのですけれども、民間のチャーター機あるいは政府専用機あるいは自衛隊機、具体的にそういった準備、あるいはもう具体的には進んでいるんでございましょうか。
田中政府参考人 委員御指摘のとおり、今不断に、渡航情報であるとか滞在者に対する退避のお勧めといったような形で、毎日毎日きめ細かく渡航情報を流し続けているというのが状況でございます。
 現在のところは、まだ民間機の飛行について全くの支障はないということでございますし、できるだけ邦人の方々に民間航空機を使って退避をしていただくのがいいだろうということで、いろいろな形でお知らせをしているというのが状況でございます。
 仮に航空便が満杯になっていくというような状況があれば、チャーター機を飛ばすという段取りは整えつつあります。仮にチャーター機も飛ばないような状況が想定される場合には、政府専用機であるとか自衛隊機であるとか、可能なあらゆる手だてを尽くして邦人救出をするための具体的な協議、準備というのは現在進行形でやりつつあるということでございます。
土田委員 時間がありませんので、もう一問、ちょっと田中局長にお尋ねしたいと思います。
 先ほど、いわゆるテログループ、あるいは過激派等の話をされておりましたけれども、アフガニスタンでいろいろ手間取っているわけですね、アルカイダやタリバンの掃討作戦に。そういったことについては、やはりムシャラフ政権が協力しないことにはなかなかうまくいかないわけでございまして、このムシャラフ政権を追い詰めることは得策でないというのは当然なんですけれども、そういうときに、インドを満足させるような過激派の取り締まりが果たして短期間にできるかどうかということについては、どう考えておられますか。
田中政府参考人 まさに委員御指摘の点が短期的に言えば最も重要な点でございまして、パキスタンの中も一枚岩ではない。パキスタン側のカシミールから、幾つかテロリストのキャンプがあるということが言われていますけれども、そこから過激派がインド領に侵入をしてテロをするといったような事態をとめるというのが、インドが求めていることでもあり、国際社会が求めていることでもあると思います。
 ムシャラフ大統領は、昨年の十二月のインドの国会に対する襲撃事件の後、スピーチをし、そのテロリストグループを廃止する、あるいは資金を断つ、関係者を逮捕する、それで、現に数千名の関係者を逮捕したということもございます。それにもかかわらず、この五月にインド側のカシミールに自爆テロが起こり、三十数名の人が亡くなったという事態を受けて、非常に強い緊張状態が現在あるということでございます。
 ですから、ムシャラフ大統領は繰り返し、管理ラインから過激派、テロリストグループが入っていくということはないんだということを言っておられますが、我々が求めているのは、それを目に見える措置、目に見える形でやってもらいたいということであり、そこで、果たして本当に行っていないのかというような検証の問題もあると思いますけれども、実はあの辺は物すごい山岳地帯で、なかなか検証が難しいということがあると思います。
 ですから、委員御指摘がありましたけれども、今の一つの大きな国際社会の持っている希望というのは、ムシャラフ大統領がつぶれるということがないように、かつ、ムシャラフ大統領の今の力で過激派を抑え込む、そこを何とかやりたいというのが特に米国なんかの非常に強い希望であり、今後、ラムズフェルド国防長官であるとかアーミテージ国務副長官というのが行きますが、まさにアメリカにやってもらわなければいけないのは、その実効的な措置をパキスタンに求め、その結果、インドが緊張緩和に応じていく、そういうことが今後のプロセスにおいて重大なかぎを握るんだろうというふうに考えております。
土田委員 以上で質問を終わります。
吉田委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。
    午後零時十三分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時一分開議
吉田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。松本善明君。
松本(善)委員 外務大臣に伺いますが、午前中も福田官房長官の発言についてのいろいろ質疑がありました。この問題は、やはり日本の外交姿勢に対して他国の信頼を著しく傷つけたという、私は本当に重大な問題だというふうに思います。
 その前提として、先ほど来御議論もありましたが、今核保有国でありますインドとパキスタンが緊張状態にあって、これはアメリカのアーミテージ国務副長官も、核兵器が使用される可能性について心の片隅にとどめておかなければならないということを述べるという事態であります。これが核戦争に発展をするという可能性を全く否定することはできないという極めて重大な事態、外務大臣も緊張が高いということを言われました。アメリカやロシア、中国など、国際社会が紛争を回避するための努力を今続けているという状況で、外務大臣も、我が国の外務省もいろいろやっているということは、先ほど来答弁もされました。
 それで、中国、ロシアの首脳の働きかけとの関係で、中国、ロシアなど十六カ国の首脳が四日にカザフスタンのアルマトイで第一回アジア相互信頼醸成会議を開いている。アジア非核地帯構想を支持するということであります。
 緊張緩和の努力がもちろん重要で、それはもう即刻やっていかなければならないんですが、核兵器廃絶のための努力、これは、インド、パキスタンが核保有国だということで非常に世界が心配をしているわけですね。先ほども御紹介がありましたけれども、アメリカの国防総省の推計では、核戦争になれば千二百万の人たちが死亡するということを言っております。
 それで、外務大臣にお聞きしたいのは、このアルマトイ宣言で言うアジア非核地帯構想を支持するかどうか。それから、今緊張緩和の努力をすると同時に、やはり核兵器廃絶のための外交努力をするということが、唯一の被爆国である日本にとっては非常に重要なことではないか。先ほど、田中アジア大洋州局長は、まかり間違っても核の使用があってはならないということを答弁いたしました。そういうことを外務大臣はどう考えていらっしゃるか。アジア非核地帯構想を支持するかということと、核兵器廃絶のための外交努力が今非常に重要だということについてどう考えているか、お答えいただきたい。
川口国務大臣 昨日、私はパキスタンの外務大臣とお話をいたしましたけれども、パキスタンの外務大臣はそのときアルマトイにいまして、この信頼醸成会議に出席をしているところであるということでございました。
 この会議で提唱のございました非核地帯をつくっていこうということでございますけれども、我が国としては、核廃絶ということで、毎年国連総会に決議案を出しているということでもございます。この構想についても、幾つか守られなければいけない条件というのはあると思いますけれども、その条件の中でサポートをしていくべき考え方であると思います。
 細かいことは、私読んでおりませんので、よくわかりませんけれども、まず、これが世界とその地域の平和に資するものでなければいけないと思います。それから、核保有国を含むすべての関係国が同意をしていくということが大事だと思いますが、そういった条件のもとでこれは追求をされるべき構想ではないかと思います。
松本(善)委員 今お述べになったように、やはり核兵器の廃絶、世界じゅうから核をなくすということは、我が国の重大な外交政策の一つであるというふうに思います。そういう答弁であったと思います。
 福田官房長官の発言については、野党四党は、福田長官の罷免と、総理出席の集中審議を有事法制特別委員会で求めている。これは、そう簡単にこういうことが起こるわけではないんですよ。外務大臣は、非核三原則は堅持をしているという答弁を再々しておられます。問題は、福田官房長官が非核三原則見直し発言をしたということの事実関係についてどう考えているかということです。
 なぜ野党四党がそういう態度に出たかというと、非核三原則が将来変わることがあるかもしれないという政府首脳発言が大きく報道されて、それで、その政府首脳発言というのは、普通は官房長官をいうのですけれども、結局、問い詰められて、それは私の発言だということを認めたわけですよ、福田官房長官。ということは、私は、この非核三原則が将来変わることがあるかもしれないということを言った、これは非核三原則見直しがあり得るということなんですよ。だから、そこはもう決定的なんですよ。この事実について、外務大臣はどう考えているか、まずお聞きしたいと思います。
川口国務大臣 私は、福田官房長官の御発言については、その場にいませんでしたので、官房長官が記者会見で御説明をなさったことを伺ったわけですけれども、はっきりと、現内閣において、非核三原則の変更や見直しを考え、あるいは今後の課題として検討しているということは全くないということをおっしゃっていらっしゃるわけでして、将来政府として非核三原則を見直す可能性を示したものであると私は全く考えておりません。
松本(善)委員 内閣がそれを検討しているということを言ったら、それこそ内閣は吹っ飛んじゃいますよ。解散ですよ、すぐ。それでいいのかということになりますよ。そんなことはないんです。
 ただ、今言ったように、これは、非核三原則は将来変わることがあるかもしれないという、そのことを言って、後から小泉内閣は非核三原則を堅持するというふうに、外務大臣もそう言っておられますけれども、一たんそういうことを言ったということはもう消せないんですよ。その事実も認めないんですか。
川口国務大臣 私は、福田長官の発言がそういうことであったとは承知をしておりませんで、国の安全保障のあり方について、これは議事録をこの部分について読んだ範囲でございますけれども、国民的な議論があり得るということはおっしゃったのかもしれませんけれども、政府としてこの考え方について議論をするということは全くおっしゃっていらっしゃらないと私は認識をしております。
松本(善)委員 政府として言ったら、それこそもう大変なことなんですよ。しかし、官房長官にある個人が言ったとしても大変なんです。
 それを認めるかどうかということ。それから、少なくも、この発言が非核三原則堅持それから核兵器の廃絶という我が国の外交政策、外交姿勢に対して他国の信頼を大きく損なうものである。この二点について、外務大臣、どう考えているか。事実の有無と、それから我が国に対する信頼。
川口国務大臣 私は、福田長官の御発言が非核三原則の変更を何らかの形で示唆したものであるとは毛頭思っておりませんで、福田長官は、非核三原則は政府として堅持すべきものであるということについては揺るぎない考えをお持ちでいらっしゃると思います。個人としても、そういう議論が必要であると思うということをおっしゃっていらっしゃらないと理解をしております。
 それから、この発言の国際的な影響でございますけれども、福田長官は発言をきちんと記者会見で説明をしていらっしゃるわけでございまして、この御説明をきちんと聞いていただければ国際社会の理解は十分に得られるものだと思っております。
 一部、違った形での報道がございましたので、それを読んだ人たちが違うことを考えた、あるいは言ったということはあったのかもしれませんけれども、この発言の真の意味というのは福田長官がみずから説明をしていらっしゃって、それを読む限り、全く理解が違ったふうにはならないと思います。
松本(善)委員 結局、福田長官の発言を擁護する、それを各国に理解をしてもらおうといっても、これは事実の問題ですから、後から言い直したからといってそれでおさまるものでは決してありません。
 私は、既に国際的な波紋を広げているという事実をやはりしっかり認識をしないといけないと思う。
 お隣の韓国では、野党のハンナラ党が、福田発言は両国がワールドカップを共催している中で行われたが、日本の真意がどこにあるかを明らかにした、我々はこれを地球規模の平和に対する挑戦と考えるとの見解を発表し、そして韓国政府に対して強く対処するよう要請したということが報じられています。
 中国の外務省の態度も、先ほど御紹介もありましたが、改めて申しますと、中国も、核問題で日本が国際社会に行ってきた公約を指摘し、こうした公約や原則に明らかに背いている、平和と発展が時代の主流となり、国際的な核軍縮が絶えず進展している今日、日本政府高官がこのような発言をしたことには驚かされるというふうに述べて、厳しく批判をしております。
 私は、もうその事実の有無は聞きません。私は、外務大臣の理解は間違っていると思いますけれども、事実の有無ではなくて、この発言がとにかく諸外国に、特にアジア諸国に大きな影響を及ぼして日本の外交姿勢を傷つけた、この事実を認識しているかどうかということを聞きたいと思います。
川口国務大臣 我が国が非核三原則を堅持しているということにつきましては、今までも外国に対して説明をしてきたわけでございますし、今後ともしていくつもりです。それについての理解は十分に近隣の諸国にシェアをされていると思っています。
 今回の発言について、発言の真意が一部誤解をされている向きも見られましたので、これについては、これを受けまして説明はいたしました。ということでございますけれども、本当に真実の発言がきちんと伝わっていたとしたら、私は誤解は招かなかったのではないかと思います。
松本(善)委員 外務大臣のその答弁は野党四党に対する挑戦ですよ。野党四党が、これがあったということで正式に福田官房長官の罷免を要求している、それに対する挑戦的な答弁だというふうに言わざるを得ないと私は思います。
 エネルギー関係の二案件について聞きます。
 地球温暖化の防止を目指す気候変動枠組み条約、要するに京都議定書では、二酸化炭素などの温暖化ガスを九〇年比で五%削減する数値目標を定めている。こういうことに比べて、今回の議定書は数値目標を設けていない。地球の温暖化を軽減させるために、各国が政策的手段によって軽減させようとしている。京都議定書よりも緩いものですが、なぜこういう数値目標を定めないということになったのか、説明をしてほしい。
佐々江政府参考人 お答え申し上げます。
 この議定書は、エネルギー利用と環境保全を結びつけて扱うといった点において、九〇年代初期において交渉をされたということがまず背景にあると思います。
 御承知のとおり、九一年から九四年にかけてこの交渉が行われたわけでございますが、その当時としては、この交渉参加国間で、環境問題に関連して具体的な数値目標等を導入する国際約束を作成すべきだというふうな議論にいかなかったということでございまして、むしろ、今先生がおっしゃられましたとおり、各国が自主的にエネルギー効率を高めることによって環境問題に対応するという方法が選択されたということになったわけでございます。その後に、九〇年代の後半にかかって京都議定書の議論で出てきたということでございます。
 一つの背景としては、この当時想定された国が旧ソ連諸国で、市場経済に移行することを目指していたということもありまして、基本的には、貿易投資の自由化によるエネルギーの効率化という方にむしろ焦点を当てて、それを補完するものとしてこの環境の問題も出てきたということが挙げられると思います。
 ですから、対象国もやや京都議定書とは異にしておりますし、それから環境の対象の方も、CO2のみならずより広範なものを対象にしているということ、また国連のもとではなかったということ、いろいろ差異があると思いますけれども、当時としては、そのような状況のもとで、むしろ各国が自発的にこのような努力をすることを協定の主眼にした、そういうことでございます。
松本(善)委員 この議定書に一カ所でも義務条項があるかどうかということが一つ、それからさらに、今も答弁で触れられましたが、現在は義務的な条項を入れる、そういう条約の準備がされているのかどうか、その国際的な状況について答弁をしてほしいと思います。
林(景)政府参考人 この議定書は、全体的には、いわゆる実体規定のところにつきましてはかなり努力義務的な規定が多うございまして、いわゆる法律的な義務として明示されておりますのは、十一条におきまして、この議定書から生ずる事務局及び憲章会議の費用を負担するというのが、これは非常に個別具体的な義務として規定されておるところでございます。
佐々江政府参考人 現時点でのこの議定書を前提にできる限り多くの参加国を募るということに主眼が置かれまして、先生の言われたように、この議定書をさらに直すという動きは現在のところはございません。
松本(善)委員 日本政府は、これを義務化するような努力をやはりすべきではないかと思いますが、外務大臣、どうですか。あなたの現在のお考え。
佐々江政府参考人 私は、将来の課題として、この旧ソ連邦諸国がよりフルに市場経済国に移行し、かつまた非常に広範な国が入ってくるような形で、かつまた京都議定書が非常に確固としたものとして国際的な規範として確立していく過程で、恐らくエネルギーと環境の問題についても見直したらどうかという意見は出てくる可能性はあると思います。ですから、そのことを念頭に置いて、将来の課題として考えていくべきではないかというふうに思っております。
松本(善)委員 京都議定書が確実になるということが、地球の温暖化を防止する上では一つ重要だということの趣旨の答弁もありました。
 京都議定書について聞くんですが、我が国は四日に閣議決定をし国連に批准書を寄託した。EUも、全加盟国の十五カ国が三十一日に国連に批准書を寄託した。しかし、発効のためには、一七・四%の排出量を持つロシアの批准は絶対欠かせない。ところが、ロシアの下院のグラチョフ環境委員長は、批准は早くても年明け以降になるという見通しを明らかにしていますが、外務省はどう考えているか、外務大臣はこのロシアの批准のためにどのような努力をするつもりか、答えてほしいと思います。
高橋政府参考人 お答え申し上げます。
 京都議定書の発効のためにはロシアの締結というものがどうしても必要だというのは、委員御指摘のとおりでございます。
 ロシアは、現在までのところ、この京都議定書の締結に関しまして公式な決定というものはまだ行っておりません。しかしながら、先般の四月十一日の閣議におきまして、この問題についての議論をかなりやったようでございまして、その閣議の結果を踏まえまして、現在、京都議定書締結のためにどういう国内措置を準備することが必要かということ、それから、これを締結した場合、ロシアの経済にどういう影響が出てくるだろうかという、この二点につきまして十分な検討をする、調査をするという必要があるということでございまして、現在はその作業を行っているというところでございます。
 一応、伝えられるところによりますと、七月いっぱいぐらいで報告をまとめて、その後政府としてどうするかということを決定した上で議会に諮るということになると思いますが、それが具体的にいつごろになるかということにつきましては、ちょっと私どもはまだ情報を持っておりません。
 いずれにいたしましても、我が国はこれまで、例えば二月二日に日ロ外相会談が東京で行われておりますが、そういうような場を通じまして、ロシアによる京都議定書の早期締結というものの働きかけを行ってきております。我が国の締結を踏まえまして、京都議定書のできるだけ速やかな発効を目指しまして、今後とも引き続きロシアに対して早期締結を積極的に働きかけてまいりたいというふうに思っております。
松本(善)委員 このグラチョフ氏は、同時にこういうことも言っているんです。ただでは批准をしない、対外債務の減免などが前提条件だ、欧州連合や日本との交渉が必要になると。
 日本の対外債務、そういうところに結びつけて発言をするというのは、私はこれはもうとても考えられないこと。やはり、人類が生存条件を守ろうとしてみんなやっていることでありますから、こういう姿勢では困るんじゃないかと思いますが、これについては事実がどうなのか、外務省はどう把握しているのか、それからどういう対処方針を持っているか、聞きたいと思います。
高橋政府参考人 京都議定書のような各国の経済に大きな影響を与えます重要な条約を締結するに当たりまして、いろいろな観点から国益というものを検討するというのは、これはもう当然のことであろうと思います。しかしながら、今委員が御指摘のような、具体的なことでロシアが検討をしておる、日本に対して何か言ってきておるとか、そういうようなことは私どもは全く承知しておりません。
松本(善)委員 外務大臣は、今の議論を聞いて、グラチョフ氏の言っていることも含めて、どういう決意で臨まれるのか、お聞きしたいと思います。
川口国務大臣 今の発言については確認をされていないということでございますが、ロシアが京都議定書に参加をするということは、発効のために、委員おっしゃるように、本当に大事なことだと思っておりますので、このための働きかけは今までもいたしましたし、今後、例えば近い機会では今度のG8がございますので、その場でも働きかけたいと思っております。
松本(善)委員 京都議定書が発効したとしても、地球環境の温暖化防止のためには、世界で最大の三六%もの排出量を占めているアメリカの離脱と、それからその離脱した後の提案も非常に重大です。
 ブッシュ大統領が二月の十四日に発表した温暖化対策は、国際的努力に逆行する重大な提案だと思います。
 その内容は、国内総生産比でガス排出量を今後十年間で一八%削減するもので、拘束力はない。絶対量を削減するものでもない。仮に、今後十年間で、年の経済成長率が三%だとしますと、GDP比では一八%削減を達成しても、京都議定書の基準では一〇%の増加に当たります。これでは、他の工業諸国が京都議定書に基づく削減目標を達成しても、それが帳消しにされて、工業国全体で排出量は増加することになる、こう言われております。
 外務大臣は、このアメリカの大統領の提案が拘束力のないこと、これは決定的に問題ですし、それと削減量が少ないこと、これを重大な問題だととらえていますかどうか。
川口国務大臣 アメリカがこの京都議定書を支持しないと言ったことについて、私はかなり心配をいたしておりましたけれども、この新しい政策をアメリカが打ち出して、これから温暖化政策にはきちんと取り組んでいくということでございます。このアメリカの今の政策というのは、本当に初めにしかすぎない。今後米国が、このアメリカの政策の中で言っていますように、技術開発を進めて、技術ができるということが削減のためには非常に重要なことですので、一段と強化をしていくということを、私としてはアメリカに望みたいと考えております。
 いずれにいたしましても、京都議定書について、アメリカやあるいは先進国だけではなくて発展途上国が共通のルールを持って温暖化ガス削減に一緒に取り組んでいくということは、人類の将来のためにとって非常に重要なことですので、私は、引き続きアメリカに対しては働きかけを続けていきたいと考えております。
松本(善)委員 三%の成長でかえって逆になるということで、これはもう欧州各国やEUも厳しく批判をしています。
 EUの環境相に当たりますバルストロム氏は、ブッシュ提案は温室効果ガス削減につながるのではなく逆に著しい増加を招く、提案は、地球温暖化に対処する唯一効果的な国際的な枠組みである京都議定書の代替案にはならないと言っています。
 ベルギーのドゥルーズ・エネルギー開発庁長官は、非常に衝撃を受けている、富は二〇〇二年に生きる我々のものであり、困難は子供たちやアフリカ、アジアの人々に押しつけると言ったようなものだ、ここまで批判をされています。
 ドイツのトリッティン環境相は、中身は失望せざるを得ない、温室効果ガスの世界最大排出国の責任を免れさせるわけにはいかないと強調している。
 フランス外務省報道官は、温室効果ガス排出量の絶対的な削減が早急に必要だったというのが科学的な共通見解だが、特に排出量削減の強制措置が組まれていない等々の批判が出されています。
 二月二十日の、アメリカ提案に対するEUの初めての公式見解は、京都議定書が温室効果ガス排出量を九〇年比で約五%減らすという排出の絶対量削減達成を掲げていることを指摘し、アメリカの提案では、排出絶対量の増加を許し、気候変動に効果的に取り組む上でも不十分であるとした上で、先進国が九〇年の水準に戻すことを定めているにもかかわらず、新提案はそのような安定化につながらない、米国の現在の排出傾向が続けば、二〇一二年には九〇年比三三から三九%程度の増加になるとしています。これはEUの公式見解。
 EUやEU参加諸国がこのように批判している。これを第一歩とさっき言われましたが、違うんではありませんか。日本だけがアメリカに追随をしているというふうに私は思います。この提案が地球温暖化を防ぐことにプラスになると考えているんですか。欧州の、あるいはEUの批判に対して、外務大臣はどういうふうに考えていますか。
川口国務大臣 重要なことは、今後、米国だけではなく先進国それから途上国、全部が共通のルールにのっとって温暖化削減ができるように、そうしたルールの構築をするように働きかけていくことであるというふうに考えておりまして、そのために米国との間ではハイレベル協議も持っておりますし、現実にそのために働きかけの仕事をしている、そういうことでございます。
松本(善)委員 時間であるので終わりますけれども、アメリカがこの議定書から離脱をしたことも重大であります。私は、このアメリカの横暴な姿勢というのは、自分たちの提案を入れさせながら最後に離脱をする、この新しい提案はむしろマイナスになるという評価がされるようなものに対して、やはり厳しい批判というものを日本もしなければならない。
 特に、京都議定書だけではなくて、アメリカのこのごろの外交姿勢は、ABM条約にしても、包括的核実験禁止条約にしても、国際刑事裁判所設立条約にしても、生物兵器禁止条約検証議定書にしても、それから化学兵器禁止機関の事務局長の解任とか、地球温暖化の研究者である気候変動に関する政府間パネルの議長追放など、アメリカが、これまで確立されてきた国際合意よりもアメリカの国益を最優先にする、いわゆるユニラテラリズム、一国中心主義。これに対して、外務大臣は一切批判的見解を持っていないのかどうかということを聞いて、質問を終わりたいと思います。
川口国務大臣 我が国としては、我が国が必要と考える、重要であると考えるさまざまな国際取り決めに積極的に参加をし、その目的とするところが実際に実現されるように努力をする、その過程で、もしそれに参加をしていない国があるとしたら、より多くの国が参加するように、参加をしていない国々に対して働きかけをやっていくということであると考えております。
松本(善)委員 非常に不満ですけれども、終わります。
吉田委員長 次に、東門美津子君。
東門委員 社会民主党の東門でございます。
 まず最初に、条約に関して質問申し上げます。
 エネルギー効率を高め、望ましくない環境上の影響を軽減するための政策上の原則等について定めるエネルギー効率等に関する憲章議定書の第八条は、「締約国は、自国の状況に最も適したエネルギー効率に関する計画を作成し、実施し及び定期的に更新する。」と規定しています。そして、その実施については、締約国が制度上及び法律上の十分な基盤が存在することを確保することを定めていますが、締約国がそのような基盤を確保することを怠った場合の罰則規定を定めているわけではありません。
 本議定書の締約国が実際にエネルギー効率を高めるための努力を行っているかどうかは、憲章条約によって定められている憲章会議のもとに設けられているワーキンググループにより監視されているとのことですが、その監視体制について御説明をお願いいたします。
佐々江政府参考人 お答え申し上げます。
 エネルギー効率、それから関係する環境上の側面に関するワーキンググループというものがこの議定書のもとに設置されていることは先生御指摘のとおりでございまして、このグループにおきましては、年二回開催をいたしているところでございます。そして、この議定書の締約国におけるエネルギー効率等に関する状況や政策について審査を行い、その結果について報告をされ、それについて意見交換が行われているという状況でございます。
 前回のワーキンググループにつきましては、昨年十一月に開催をされておりまして、ブルガリア、スロバキア、ポルトガル、クロアチア、マケドニアについて議論をされております。このうち、スロバキアにつきましては、以前に出されていた勧告の実施状況が検討されたということでございます。
 なお、このワーキンググループにおきます議論を踏まえまして、エネルギー憲章事務局は、各国に対しまして政策的な指針を示す出版物を種々作成し発行しているということでございます。
東門委員 エネルギー憲章条約事務局の中には、各国が作成した計画をレビューすることは他の機関にやらせた方がよいのではないかとの意見もあるようですが、締約国の中には、北欧諸国を中心に、この活動を強化していく必要があると考える国も少なくないと言われています。
 エネルギーの効率化や省エネルギー分野で国際社会において指導的立場にある我が国としては、この議定書を締結する以上、リーダーシップを発揮して実効性のある体制を築き上げていく必要があると考えますが、政府の見解をお伺いいたします。
佐々江政府参考人 このワーキンググループの活動がどうか、必ずしも十分ではないのでないかというお尋ねでございますが、私どもといたしましては、このグループは、単に加盟国だけでなくていろいろな国際機関も入って、非常に専門的な見地からレビューを行っているということで、非常に積極的にやっているというふうに少なくとも評価をしているわけでございます。
 もちろん、いかなるグループの活動も、十分であるかといえば、十分でない側面も恐らく先生御指摘のようにあるかもしれませんし、幾つかの国は不満があるのもあり得ると思いますけれども、いずれにしましても、このグループが非常に効率的、効果的に働くように、我が国としても必要なリーダーシップを発揮していきたいというふうに思っております。
東門委員 次に、けさから多くの委員の皆さんが質問しておられるのですが、私も、重複いたしますけれども、やはり一点御質問をしておきたいと思います。福田官房長官の発言についてです。
 官房長官の、我が国は核兵器保有が可能であるとの発言、非核三原則見直し発言は、非核政策を国是とする我が国政府の閣僚として、到底許しがたい発言です。
 しかも、大陸間弾道ミサイル、ICBMは専守防衛の範囲を逸脱するため憲法上保持は許されないとの従来の政府見解すら御存じないかのように、専守防衛の範囲なら法理論上持てるが、政策判断として保有していないと発言をされて、秘書官の説明を受けて発言を修正する始末であったというふうに報じられています。内閣のスポークスマンである官房長官として、そして大臣としての適格性に大きな疑問をつけざるを得ないと思います。
 小泉内閣は、昨年四月発足当初から、集団的自衛権問題や靖国神社参拝問題などでタカ派的体質をあらわにしており、特に昨年九月の米国におけるテロ事件以降、テロ対策を口実に、テロ対策特措法、今回出ています個人情報保護法案、有事法制など、国民の大多数が現在も圧倒的に支持をしている平和憲法を形骸化しようとする政策を推進してきました。
 アジア諸国は、このような小泉内閣の体質に懸念を示していますが、今回の官房長官の発言は、より一層アジア諸国の懸念を深めるのみならず、戦後一貫して核兵器反対、核兵器廃絶を推進する姿勢をとってきた我が国の歴代内閣の努力をも無にするものであり、福田内閣官房長官、さらには任命権者である小泉総理大臣の責任は重大であると言えます。
 そういう中で伺いますが、発言に対する外務大臣としての御認識は先ほど伺いましたので、私の方は、この発言が我が国の外交、とりわけアジア外交にどのような影響があると外務大臣はお考えかということが一点。もう一点目は、大臣の方から、外務大臣としてアジア各国に対し今回の官房長官発言に関して釈明する御意思があるかどうか。この二点をお聞かせいただきたいと思います。
川口国務大臣 まず、近隣の諸国への影響についてでございますけれども、これについては、例えば中国のスポークスマンがおっしゃっていらっしゃることとか、報道されていることはございます。
 この発言の本当の真意については、先ほどお話をいたしましたので省きますけれども、我が国がずうっと堅持をしています非核三原則、これの見直しの可能性について言及をしたということではないということについては、そして、非核三原則は、我が国がずっと堅持し、今後もしていく政策であるということにつきましては、今までも近隣諸国に対して説明をしてまいりましたし、今後も常にしていくわけでございますけれども、今回のこの発言を受けて説明を再度いたしました。
 ということで、私が釈明をするかどうかということでございますけれども、外交ルートでそういう説明をしてきているわけでございます。
東門委員 では、沖縄にある基地問題について御質問いたします。
 先月五月二十九日に、ラーセン在沖米海兵隊基地司令官が、これは自民党本部で自民党の若手議員の方々と懇談をした際の発言ということで読売新聞の報道がございました。そこで報じられましたラーセン司令官の言葉で、看過しがたいと私はすごく強く思いましたので、その発言の事実確認をした上で政府の認識を伺いたいと思います。
 報道によれば、ラーセン司令官は、米国は既に四千二百エーカーの土地を返還した、整理縮小がうまくいかないのは日本政府と沖縄県に問題があるのではないか、返還跡地の対策もおくれているし、普天間飛行場の移設先の場所や工法が合意していないと述べ、さらに、海兵隊を含む兵力削減問題について、整理縮小はするが兵力の削減は考えていないと発言したとされております。
 政府は、常に、SACO合意の着実な実施をおっしゃり、平成十一年十二月の閣議決定を言います。前回の外務委員会でも、川口外務大臣はこの閣議決定のフレーズをそのまま読み上げられました。その閣議決定の中でも、「沖縄県知事及び名護市長から要請がなされたことを重く受け止め」とされており、また、前回の質問で、沖縄県と名護市の側が譲歩すべきか、あるいは米国側が譲歩すべきかをただした際にも、県や名護市側の譲歩を示唆する部分は全くありませんでした。
 しかし、このラーセン司令官の発言では、米国側には譲歩する気が全くなく、日本政府と沖縄県に問題がある、すなわち、日本政府と沖縄県が交渉によって解決策を見出すことを求めているということですね。米国側がこのようなスタンスに立つのであれば、普天間飛行場の名護への移設はもう白紙に戻すしかないと思います。
 このラーセン司令官の発言が事実なのか、事実であるならば政府としてこれはどのように受けとめておられるのか、お聞かせいただきたいと思います。これは大臣の御答弁をお願いします。大臣です。――いや、私はそれは話してあります。北米局長は私がお願いするときにだけにしてくださいと、ちゃんとそれは前もって言ってありますから、これは大臣にお願いします。とても大事なことです。
川口国務大臣 読売新聞にそういう報道があったということは承知をいたしております。
 米国の方針というのは、沖縄県とも密接に協力をしながらSACO最終報告を着実に実施していくということでございまして、これについては、先般二月に私がパウエル国務長官と会談をいたしました際においても、私とパウエル国務長官との間で確認をされているわけでございます。
東門委員 済みません。私の質問には全然答えておられないんですよ。
 ラーセン司令官の発言があったことは御存じである。これはきのう通告してあります。ですから、それについてどうなんでしょうか。アメリカ側は、これはラーセン司令官のお言葉ですが、政府と沖縄県に問題があるということを言っている、それに対して政府はどういうふうに受けとめておられますかということなんです。
川口国務大臣 ですから、この発言があったかどうかということについては、まさにラーセン司令官の懇談の場であったということでございますし、外務省の人間はこの場には出席をしていないので確認ができないということでございます。
 これについて、そういうことがあったかどうかということを問い合わせました段階では、そういう趣旨の発言をしていないという返事をいただいております。
東門委員 それはすごく異なことをお聞きします。最初大臣は、その発言があったことは承知しておりますとおっしゃったんじゃなかったんですか、今さっき、一番最初。(川口国務大臣「新聞で」と呼ぶ)新聞で、私も報道でなんです。ちゃんと報道に出ているんですよ。そうしたら、確かめたらそれがなかったというのは、だれがそう言ったんですか。
川口国務大臣 そういう趣旨の発言がなかったということです。
東門委員 しっかり趣旨の発言が出ているじゃないですか。これを否定なさるんですか。わかりました。では、これは後で私、またもう一度やります。
 地位協定の十八条関係についてお伺いいたします。
 これまで本委員会におきまして何度も指摘してきましたように、沖縄においては、米軍基地に起因する事件、事故が住民の生活を脅かし続けています。一連の米軍機事故や米軍人軍属などによる殺人、暴行、放火などの刑事事件による住民の不安や怒りは言葉では言いあらわせないものがあります。しかも、このような大きな事件、事故以外にも、米軍人軍属やその家族によって引き起こされたものであるゆえに大きな問題となるものもあります。その一つが、米軍人軍属あるいはその家族による交通事故です。
 日米地位協定第十八条は、請求権、民事裁判権について定めており、米軍人軍属が公務中に起こした事故については、十八条第五項において、日本政府が肩がわりして損害に対して補償することになっています。しかし、公務外の事件、事故の場合、十八条第六項の規定では、合衆国当局は、遅滞なく、慰謝料の支払いを申し出るかどうかを決定し、かつ、申し出る場合には、その額を決定するとされています。すなわち、慰謝料の支払いを申し出るかどうかを決定するのは米国であり、慰謝料の額も米国が一方的に決定することになっているのです。
 また、日本政府の対応について、第十八条第六項が規定しているのは、公平かつ公正に請求を審査し、請求人に対する補償を査定し、並びにその事件に関する報告書を作成して合衆国の当局に交付することのみであり、被害補償についての日本政府の果たすべき役割については何も規定されていません。つまり、米軍人軍属の公務外の事件、事故については、米国政府も日本政府も法的な責任はなく、損害を補償する義務がないことになっています。
 このように、十八条第六項による米国からの慰謝料の支払いは、米軍の一方的な好意で支払われるという性格のものであり、しかも、被害者がこの慰謝料を受け取るためには示談書に署名することを強いられます。
 被害者が米国が提示した金額に納得できない場合は、これを拒み、裁判に訴えることはできるが、米兵個人の責任を追及しても、米兵はいわば体一つで駐留しているようなものであり、補償できるような財産も持っておらず、また、自賠責保険のみで任意保険に入っていない例が多かったわけです。
 さらに、米兵が国外に異動、転勤してしまえば、被害者は結局一銭の補償も受けられないことになってしまう。それゆえ、かつてはわずかばかりの慰謝料を受け取り、泣き寝入りすることを強いられていました。
 SACO合意により、この状況は一定の改善はなされました。自動車保険については、平成九年一月から、地位協定のもとにあるすべての人員を任意自動車保険に加入させることを決定し、被害者への補償についても、米側当局による請求の最終的な裁定がなされる前に、日本側当局が必要に応じ無利子の融資を提供する制度が導入されて、米国政府による支払いが裁判所の確定判決による額に満たない場合には、日本政府は、必要に応じて、その差額を埋めるため、請求者に対し支払いを行うよう努力することとなりました。被害者の救済という面では、これは一定の前進であると思います。
 しかし、これだけでは、根本的に問題が解決されたとは到底言うことはできません。今から、その問題点について一つ一つ指摘をしていきたいと思います。
 まず第一番目ですけれども、任意自動車保険への加入について伺いたいと思います。
 SACO合意で、「地位協定の下にある全ての人員を任意自動車保険に加入させることを決定した。」と明記されていますが、この決定は米軍人軍属にとって義務なんでしょうか。現在加入していない者は一人もいないのか、政府はこの点について確認をとっているのかどうかからまず伺いたいと思います。
藤崎政府参考人 お答えいたします。
 今、SACO及び日米地位協定については、委員の方から、いろいろな制度改善等を含めまして詳しく御説明いただいたわけでございますが、このうち、任意保険の今の加入状況という点でございます。
 これにつきましては、平成九年一月から、すべての人員を任意自動車保険に加入させるということになりまして、米国が任意自動車保険の加入を実質的に義務化しているということでございます。
 この方法でございますけれども、米軍人軍属は、私有車両を登録するのに当たりまして、米軍の車両登録所に任意保険に入っているということを証明する証明書を提出し、その証明書が提出されない限り米軍は私有車両の登録を行わないという仕組みを導入したというふうに承知しております。
東門委員 今の局長の答弁、自主的に義務づけているとおっしゃったと私は思います。確認だけ、そうですね。米軍が自主的に義務づけていると。イエスかノーで結構です。そういうふうにおっしゃいましたよね。自主的に義務づけていると聞こえました。
藤崎政府参考人 今お答え申し上げましたのは、私は、平成九年一月からすべての人員を任意自動車保険に加入させることにいたしまして、米側が任意自動車保険の加入を実質的に義務化する、こういうふうに申した次第でございます。
東門委員 実質的に義務づけている。声が小さいのでよく聞こえないんです。済みません、大きな声でやってください。
 それで、私は、現在加入していない者は一人もいないのかと聞きました。今の局長の答弁からでしたら、いないとおっしゃると思うんですが、どうしても調べていただきたい。確かに一応は加入する、しかし、パスをもらったら解約をしているという話も多々聞こえてまいります。ですから、それはぜひ米軍側に確認をとっていただきたいと思います。私はそれは確認をとっておられるかと思ったんですが、ぜひお願いします。
 では、SACO合意では「地位協定の下にある全ての人員」となっておりまして、軍人軍属の家族は含まれておりません。しかし、最近では軍人軍属の家族による事件、事故がふえています。軍人軍属の家族の任意保険加入の状況はどうなっているんでしょうか、政府はこれについて米側に何らかの要請を行っているのか、そして、その場合米側の反応はどうなっているのか、お聞かせください。
藤崎政府参考人 今お尋ねがございましたSACO最終報告でございますけれども、「全ての人員」ということになっておりまして、これにつきましては、米軍人軍属、それらの家族というものを対象としている次第でございます。
東門委員 では、全員が、軍人も家族も対象になっている、軍属、家族も対象になっているということですね。
 家族の事件、事故については、地位協定十八条第六項による、米軍による慰謝料支払いの対象となっていないという重大な問題があります。
 交通事故に限らず刑事事件などでも、軍人軍属の家族が引き起こした場合、被害者は、米国側からも日本政府からも何の補償も受けられず、裁判において加害者の個人責任を追及するしかないですが、既に申し上げましたように、米兵は体一つで駐留しているのであり、短期の滞在が前提となっているゆえに個人資産も持っていない。当然、その家族にも差し押さえできるような財産もなく、米兵が転勤してしまえば、もはや被害者は追及するすべを持ちません。
 軍人軍属の家族も、米軍が駐留するから日本に来ているのであり、米軍基地がなければ、彼らが日本に来ることはなく、彼らによる事件、事故も発生しなかったはずなんです。そして、彼らは、一般の日本人や在日外国人と異なり、基地の中という地元警察の権限の及ばない特殊な場所で生活しており、出入国管理においても、一般外国人とは異なる特別の処遇が与えられています。
 このような特殊な状況にある軍人軍属の家族が加害者である場合でも、一般の交通事故や犯罪と同じ扱いで、被害者は軍人軍属の家族の個人としての責任しか追及できないのでは、被害者の権利を守ることは不可能です。日米両政府による何らかの被害者救済のための措置が必要ではないかと思いますが、いかがでしょうか。
藤崎政府参考人 今、在日米軍の人員の家族の起こした事件、事故についてのシステムが不十分ではないかという御指摘でございます。
 これは現在、こういう事件、事故に係る損害賠償の処理につきましては、御提起になりましたとおり、我が国に滞在する一般の外国人が起こした事件、事故に係る損害賠償の処理と同様に、我が国における通常の司法手続にゆだねられるわけでございます。
 日本における一般の外国人と同様に取り扱うということにつきましては、NATO地位協定あるいはその他各国の地位協定も同様に、米軍人軍属等につきましては地位協定において対処する、家族につきましては一般の外国人と同様にしているわけでございます。
 こういう点で、問題が確かに生ずるということをできるだけ防ぐという観点からも、先ほどまさに委員から御指摘のございましたSACOの合意におきまして、単に米軍人軍属だけではございませんで、家族を含めましてこの任意自動車保険の加入を実質的に義務づけるということで改善を図ってきた次第でございます。
東門委員 この点について、もう一つどうしても聞きたいことがありますので。この点についてはもう一回やりますけれども。
 SACO合意によって、米国政府による支払いが裁判所の確定判決による額に満たない場合には、日本政府は、必要に応じて、その差額を埋めるため、請求者に対し支払いを行うよう努力することになり、被害者は補償金を満額受け取れるようになったことで、金銭的な補償という面ではかなり改善されたと言えます。しかし、この措置でも、軍人軍属の家族についてはこの措置は適用されないという大きな穴があることを私は指摘してきました。
 被害者の立場からすれば、お金の出どころは余り関係ないかもしれませんが、納税者の立場に立てば、なぜ米兵が起こした事件、事故の補償に日本国民の税金が使われなければならないのか、非常に疑問があります。
 四つの民事訴訟の結果として、SACO支払いの状況について記したものがここにございますけれども、それによりますと、四人の方がSACOの支払いを受けているんですね。これはもちろん裁判を経てです。金城さん、海老原さん、喜屋武さん、儀保さんの四方が受けておられますが、金城さんの訴訟に対する判決による賠償金額は六千二百万円、米国の支払いは、その四〇%である二千五百万円となっています。海老原さんの訴訟では、三千六百六十三万円の判決に対し、米国の支払いは、その一五%の五百五十六万円。喜屋武さんの訴訟では、二千六百万円の判決に対し、米国の支払いは、その一六%の四百二十五万円。もう一人の方は、七千五百万円に対し、米国は一八%の一千三百四十万円となっています。
 すべて米国の支払い額よりも日本側の支払い額の方が上回っており、お一人は四〇%ということになっておりますが、あと三人はいずれも二〇%以下ですね、アメリカの方は。
 なぜ日本側がこれほど多額の負担をしなければならないのか。米国はどういう基準で支払い額を決定しているのか。まず、そこから御説明をお願いします。
吉田委員長 どなたが答弁ですか。
東門委員 これは局長じゃないですか。アメリカ側がどういう基準でその支払い額を決定しているかということです。これは外務省だと思います。
藤崎政府参考人 今、米側の補償額と日本側の補償額の間の差異が生じるという御指摘でございまして、これは全くそのとおりでございます。
 米側の補償額というものが、本来ならば、日本側が確定判決等で定めました額に匹敵するものであるということが望ましいわけでございますけれども、米側としては、みずからの法律に従いまして、外国人補償法だったと思いますが、決めているわけでございまして、その差額が生ずる場合に国民の一人一人の方々の被害を招かないようにということで、SACO合意の際に、日本政府がこの差額を補てんするという制度を導入いたしまして、今委員が御指摘のとおり、既にすべてのケースについて確定判決の額を支給してきたということでございます。
東門委員 もう時間ですので終わりますけれども、これ一つとってみても、地位協定というものはやはり見直していかなければいけないということになるんじゃないでしょうか。これから私はどんどんその面を取り上げていきたいと思いますが、地位協定はやはりおかしい、余りにも不平等であり、不公平であるということを強く申し上げて、終わります。
吉田委員長 これにて両件に対する質疑は終局いたしました。
    ―――――――――――――
吉田委員長 これより両件に対する討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。
 まず、エネルギー憲章に関する条約の締結について承認を求めるの件について採決いたします。
 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
吉田委員長 起立総員であります。よって、本件は承認すべきものと決しました。
 次に、エネルギー効率及び関係する環境上の側面に関するエネルギー憲章に関する議定書の締結について承認を求めるの件について採決いたします。
 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
吉田委員長 起立総員であります。よって、本件は承認すべきものと決しました。
 お諮りいたします。
 ただいま議決いたしました両件に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
吉田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
    〔報告書は附録に掲載〕
    ―――――――――――――
吉田委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後二時六分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.