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第21号 平成14年7月12日(金曜日)

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平成十四年七月十二日(金曜日)
    午後二時二分開議
 出席委員
   委員長 吉田 公一君
   理事 浅野 勝人君 理事 石破  茂君
   理事 坂井 隆憲君 理事 西川 公也君
   理事 首藤 信彦君 理事 中川 正春君
   理事 上田  勇君 理事 土田 龍司君
      今村 雅弘君    小坂 憲次君
      中本 太衛君    原田 義昭君
      細田 博之君    水野 賢一君
      宮澤 洋一君    望月 義夫君
      伊藤 英成君    金子善次郎君
      木下  厚君    桑原  豊君
      前田 雄吉君    丸谷 佳織君
      松本 善明君    東門美津子君
      小池百合子君    鹿野 道彦君
      柿澤 弘治君
    …………………………………
   外務大臣         川口 順子君
   内閣府副大臣       村田 吉隆君
   外務副大臣        植竹 繁雄君
   外務大臣政務官      今村 雅弘君
   外務大臣政務官      水野 賢一君
   会計検査院事務総局第一局
   長            石野 秀世君
   政府参考人
   (内閣官房内閣参事官)  加藤 利男君
   政府参考人
   (法務省刑事局長)    古田 佑紀君
   政府参考人
   (外務省大臣官房長)   北島 信一君
   政府参考人
   (外務省北米局長)    藤崎 一郎君
   政府参考人
   (外務省欧州局長)    齋藤 泰雄君
   参考人
   (日本銀行理事)     三谷 隆博君
   外務委員会専門員     辻本  甫君
    ―――――――――――――
委員の異動
七月十二日
 辞任         補欠選任
  松浪健四郎君     小池百合子君
同日
 辞任         補欠選任
  小池百合子君     松浪健四郎君
    ―――――――――――――
七月十一日
 アジア=太平洋郵便連合憲章の第二追加議定書及びアジア=太平洋郵便連合一般規則の追加議定書の締結について承認を求めるの件(条約第五号)
同月十二日
 女子差別撤廃条約選択議定書の批准に関する請願(石井郁子君紹介)(第六五四二号)
 同(瀬古由起子君紹介)(第六五四三号)
 同(中林よし子君紹介)(第六五四四号)
 同(藤木洋子君紹介)(第六五四五号)
 えひめ丸沈没事件に関する請願(春名直章君紹介)(第六五九五号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 会計検査院当局者出頭要求に関する件
 政府参考人出頭要求に関する件
 参考人出頭要求に関する件
 アジア=太平洋郵便連合憲章の第二追加議定書及びアジア=太平洋郵便連合一般規則の追加議定書の締結について承認を求めるの件(条約第五号)
 国際情勢に関する件


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     ――――◇―――――
吉田委員長 これより会議を開きます。
 国際情勢に関する件について調査を進めます。
 この際、お諮りいたします。
 本件調査のため、本日、会計検査院事務総局第一局長石野秀世君の出席を求め、説明を聴取し、また、政府参考人として外務省大臣官房長北島信一君、北米局長藤崎一郎君、欧州局長齋藤泰雄君、内閣官房内閣参事官加藤利男君、法務省刑事局長古田佑紀君の出席を求め、それぞれ説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
吉田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
 引き続き、お諮りいたします。
 本件調査のため、本日、参考人として日本銀行理事三谷隆博君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
吉田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
吉田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。最初に、金子善次郎君。
金子(善)委員 まず、冒頭でございますが、瀋陽事件の処分につきまして発言したいと思います。
 七月三日の決算行政監視委員会の場でも、私の方から外務大臣に対しまして、国家公務員法に基づく処分、その後に明らかになりました事実を踏まえた報告書の作成、これにつきまして要請をしたわけでございます。翌日発表されました処分内容を見ますと、国家公務員法に基づく処分は岡崎総領事のみで、報告書も作成されていない、こういう状態でございます。
 また、外務大臣でございますが、七月四日、処分をした日でございますが、阿南大使につきまして記者会見におきましてこういうことを言っておられます。阿南大使ですけれども、大使館は瀋陽の総領事館と直接の指揮命令系統の関係にはない、ただ、総領事関係者に対して適宜適切な助言を与えられなかったという責任があると述べているわけであります。
 これは明らかに認識が間違っているのではないかと私は思います。まず、適宜適切な助言が与えられなかったのではなくて、大臣御自身もその後認めているわけでございますが、岡崎総領事に対しまして不適切な助言をした、これが真実ではないかというふうに思います。これでは国民も納得していないのではないかと私は思います。
 お伺いするところでは、二十六日の日に外務委員会で阿南大使の参考人招致が実現する運びとなったようでございますので、その段階でまた改めて、私かあるいは同僚議員の方から種々質問させていただきたいというふうに思います。
 そこで、金融庁と日銀の方にお伺いしたいと思います。
 四月二十六日の外務委員会でございますが、朝銀の信用組合問題につきまして質問をさせていただきました。これまで既に朝銀に対しましては、国民の税金でございます公的資金が五千二百八十五億円投入されていること、あるいは預金量、店舗数、組合員の数から見て、受け皿となる信用組合の健全経営はなかなか難しいではないのかというような懸念を申し上げたわけであります。これに対して村田副大臣は、十三年三月期決算で公表債務超過額が四千三百四十七億円であるが、金融庁としては、財務内容を含めて、受け皿として適格な状態にあるという認定をしたとの答弁をされたわけであります。
 しかしながら、日銀及び金融庁の資料によりますと、この答弁を村田副大臣がされたときに、既に朝銀六行は、日銀特融という形で千八百六十億円、それから全信組連でございますが、全国信用協同組合連合会から四千七百億円、こういうことで、合わせて六千五百億円を超える資金提供が朝銀の方になされているわけであります。
 そこでお伺いしたいと思いますが、副大臣は四月二十六日の答弁の時点におきまして、日銀特融など合計で六千五百億円の資金提供があったことを承知されておられたかどうか、その点についてまずお伺いしたいと思います。
村田副大臣 当然そのことは知っておりまして、破綻した朝銀が、その破綻に際しまして資金繰りに問題を生じた、こういうことから全信組連あるいは日銀によりまして借り入れを行いまして、預金の支払いに応じた。その結果、今先生がおっしゃったような借り入れがそれぞれになされたということは私も承知して答弁させてもらいました。
金子(善)委員 知っておられたということでございますが、公的資金の投入の必要性を論ずる場合には、全体的な情報の公開ということをぜひとも心がけていただきたい、このように要望をいたしておきます。
 そこで、日銀の方にお伺いしますが、今後どの程度の特融が必要であり、今後もふえると予想されます融資したお金の返済見通しと申しますか、日銀特融といってもあくまでも貸付金でございますから、これはどういうような見通しを持っているか、お伺いしたいと思います。
三谷参考人 お答えいたします。
 現在、日本銀行は朝銀近畿信用組合に関しまして特融を実施しておりまして、その残高は二千億円弱ということになっております。この信用組合、基本的に預金が破綻後大幅に流出しておりまして、その資金に一部充当されたということでございますが、このところ流出のテンポは極めて緩やかになっておりまして、これが今後これ以上大きく膨らむことはないというふうに現時点では認識しております。
 この特融の返済の可能性でございますけれども、この特融そのものは、御承知のとおり、平成十二年の十二月に朝銀近畿信用組合が整理管財人の管理下に置かれました際に、当時の大蔵大臣及び金融再生委員会から、預金保険機構による資金援助を前提とした事業譲渡等をもって金融整理管財人による管理が終了するまでの間、朝銀近畿信用組合の預金払い戻し等、事業の継続に必要な資金を貸し付けるよう要請されて行っているものでございまして、最終的に、その受け皿金融機関の譲渡等によりこの管理が終了する際に、預金保険機構の資金援助等によりまして全額返済されるものと認識しております。
金子(善)委員 見通しとして、日銀としては全額返済されるということを言っているわけですが、これは金融庁の方からいただいた資料なんですけれども、要は、預金保険機構、これから公的資金をまた投入しなけりゃどうにもならないというようなことのようなんです。これはまさに矢印が出ているんですけれども、公的資金を投入して、それを借入金の返済に充てる、こういうような構図が示されているわけであります。ということは、今後の公的資金の投入ということでございますが、少なく見ても六千五百億円はまず必要だと。
 現在、新しく認可しました信用組合に対しまして、定款で、役員体制をきちっとしなきゃならないとか、いろいろな条件をつけているわけですが、要は、受け皿金融機関、受け皿銀行と申しますか、この移行に際して健全経営というものがどうも期待できない状態になっているのではないかということが懸念されるわけです。
 そこで、金融庁として、今後どのようにこの問題、役員体制の刷新の問題を含めまして、どのように考えているのか。私といたしましては、恐らくこの経営というものは、前回の質問でもさせていただきましたように、なかなか大変だなというような感じがするわけですが、責任追及の問題あるいは今後の見通しにつきまして、副大臣の方から答弁をお願いします。
村田副大臣 受け皿金融機関につきましては、今四つあるわけでございますが、総連等に対します過去の不正な融資というものもあらわれまして、そういう観点から、総連等の組織からの独立性ということが今委員がおっしゃるような経営の健全性を確保するための一つの大事な条件であるということで、新設の受け皿四組合につきまして、その人的構成につきまして、そうした組織からの独立性を確保するということを定款に定めさせました。
 そういう意味で、ただいまのところ、役員の経歴につきましていろいろな御指摘も先生方からも国会を通じていただきまして、役員体制についてさらなる改めをしているところであります。
 そういうことを通じまして、私どもは、新しい受け皿の発足に際しまして、公的資金、税金を投入してスタートするわけでございますので、そういう意味では、新しい組織が健全な金融機関としてスタートするように期待しているところであります。
金子(善)委員 そこで、金融庁に対しまして二つの点について確認だけさせていただきたいと思います。慎重に聞いていただきたいと思います。
 定款の付記事項からいたしまして、受け皿銀行に移行する際には、朝鮮総連に対する融資、それと朝鮮総連が担保として提供している債務は、受け皿銀行に行くのではなくて、RCC、つまり整理回収機構が引き受けるというふうに解釈していいのかどうか。それが第一点です。
 もう一点でございますが、朝鮮総連の役員個人に対する融資、あるいは総連の役員が担保として提供している債務がどうなるのか。
 要は、RCC、受け皿銀行との関係でどういう整理の仕方を考えておられるのか。その点について、明確な答弁をお願いしたいと思います。
村田副大臣 前者につきましては、委員御指摘のとおりというふうにお答えさせていただきたいと思います。前者につきましては、定款の付記事項に、経営の独立性、透明性の確保、こういう観点で1の3という規定がございますので、そういう観点から、委員の御指摘のとおりの解釈になろうかというふうに考えます。
 総連の役員をした者、個人のものはどうかということでございますが、これはどういう形になるかは金融整理管財人が御判断なさるのではないかというふうに考えております。
金子(善)委員 管財人が判断することじゃなくて、そもそも定款というような形で新たな条件まで付されているわけですから、この辺もきちっとその趣旨に合った形でいくというのが本来じゃないか。恐らく金融管財人の仕事はそういうところまでは、私の質問をしている趣旨はおわかりだと思うんですが、そういう観点まで踏み込んだ仕事をするということではないのではないかと思うんですが、その点はどうなんでしょうか。
村田副大臣 破綻した金融機関、このケースでは信用組合でございますが、この残余財産の整理につきましては、ひとえに金融整理管財人が責任を持って整理を行う、こういう形になっているわけでございまして、金融整理管財人が一々、一本一本の債権を、資産を見ながら判断されるのではないか、こういうふうに考えております。
金子(善)委員 そうしますと、金融庁として、このいわゆる定款の条件の趣旨と申しますか、そういうことを踏まえた指導はしていかない、こういう考えでよろしいのでしょうか、第二点目について。
村田副大臣 いや、一般論といたしましては当然、この定款の趣旨が貫徹されるように私どもは監督権を用いて指導していくという権限は有しているということでございます。
金子(善)委員 そういう定款の趣旨もあるわけですから、そこは基本的な考え方に沿った指導をしてもらうように強く要請をしておきます。
 では副大臣、ありがとうございました。これで結構でございます。
 次に、七月三日の決算行政監視委員会で、松尾元室長、いわゆる機密費の詐取事件につきまして、国民の納得できる結論が得られているかどうかということにつきまして検証するためということで、外務大臣に質問をさせていただきました。
 そこで、既に判決が確定しました。これまで、捜査中あるいは裁判中というようなことで資料の提供をなかなかしていただけない状態にあったわけで、大変遺憾に思っていたわけでございますが、今回、内閣府におかれましては早急に対応をしていただきました。ただ、その中で三点ほど内閣府の方に質問をさせていただきたいと思います。
 まず第一点ですが、加藤内閣参事官名での警視庁刑事部捜査第二課長あての被害届に関してでございます。
 実は、これまでの国会の答弁、河野元外務大臣の答弁までさかのぼるわけでございますが、あるいは昨年、平成十三年の一月二十五日に出しました最初の報告書でございますけれども、松尾氏自身が任意に提出した第一勧銀の口座ぐらいしかないのではないか、したがって詳細はわからないような、そういう国会での答弁ぶりであったわけであります。
 ただ、今回内閣府の方から資料提供がございまして、被害届を見ますと、十八回の外遊について、それぞれ渡した金額もわかっております。これは外務省も当然わかっていたわけでございますから、この被害届は、外務省が告発文を出しまして、そのことを受けて被害届を出したという経過がたしかあったように記憶をいたしております。
 これまでの答弁、大変いいかげんだな、無責任な答弁じゃないか。報告書自体も、詳細がわからないというような報告書の内容になっているわけであります。こうしたことにつきまして、大臣の感想をまず求めたいと思います。
川口国務大臣 松尾事件が起こりましたのは、私が外務大臣になる一年前のことでございまして、その詳細についてきちんと私自身が把握しているわけではございませんけれども、これは、外務省についての国民の皆様の信頼がなくなっていく、そういったことの一番最初の段階であった話でございまして、やはり金銭上の問題というのが外務省の信頼をなくしていくということについて非常に大きかったということについては、私も外にいて考えておりました。
金子(善)委員 大臣に答弁してほしかったのはそういうことではなくて、これまでの答弁、ずっとさかのぼって全部見ていただけばよくわかると思うんですが、これだけの一連のいろいろな問題のスタート時からの話なんですが、河野元外務大臣の時代になるわけですが、私どもとしては、極めていいかげんな答弁ぶりであった。報告書の内容も、本来わかっていることまで隠して、そうした報告書の内容になっているということを申し上げたわけであります。こういう情報隠しというような姿勢では、国会で幾ら時間をかけて審議をしてもどうにもならないというのが実際の感想であります。
 そこで、一点、外務大臣のお考えをお聞きしたいと思います。
 松尾事件の当事者でございます、一番責任あるのが外務省だと私は思います。そこで、告発文について、これも資料要求をしてきておるわけであります。民主党の外務省疑惑解明プロジェクトチームというところで、資料要求の一環といたしまして、告発文を出せないのかということで、本当に長期間にわたりまして、再三にわたりまして要求をしてきました。
 内閣官房の方は、被害届を明らかにしているわけです。その被害届の前提になっているのは告発文だというふうに容易に推察をされるわけですが、事務方からお伺いしたことでは、告発文は一回警察の方に提出しているのでもう警察の管理下にある、だから、外務省としてはそういうものを出せないんですというような答えでございました。
 この点について、大臣、公表するつもりはありませんか。
川口国務大臣 どういう状況なのか、話を聞いてみたいと思います。
金子(善)委員 全体的な流れとして、外務省はいろいろなことを積極的に公表しない、そういう体質があるんではないかと私は思います。
 というのは、刑事訴訟法の五十三条第一項でも、要は、裁判が終わればいろいろなそういう裁判の記録というものは大体だれでも見られる体制にあるわけなんです。これは、法律で保障されております。今回の松尾事件は、裁判も確定してしまいましたから、刑事訴訟法にのっとって、我々が閲覧することは可能になってきているんです。そういう状態にあるのにもかかわらず、なぜ民主党の要求に対してそれは出せませんというような答えをするか、本当に考えられない。
 その辺について、外務大臣は検討してみるというようなことでございますから、改めて事務方からよく話を聞いていただいて、対応していただければというふうに思います。答弁は結構ですから。
 そこで、実は、決算行政監視委員会で私も強く主張しておりましたので、内閣官房の方からも、今回、被害届を初めといたしまして資料が提出されてきました。外務省にも八項目要求しておりましたが、残念ながら、ほとんどがゼロ回答ということで来ております。どうもこれは、いわゆる隠ぺい体質というところまでは言いたくありませんけれども、隠す必要のないようなことまで、出せない、出せないと。何か、出すことによって責任が回ってくると申しますか、そういうような気持ちがあり過ぎるんではないか。出せるものは出して、きちっと説明すればそれで十分なわけですから。
 そういうことで、私は、これからもいろいろな委員会を通じまして、外務委員会を初め、これらの問題については追及をしていきたい、このように思っております。これまでの対応については、甚だ不満だということを申し上げておきたいと思います。
 それから、内閣官房の方に質問いたしますが、いわゆる被害届のところで、松尾氏に対しまして現金を交付した者の職業及び氏名欄が、いずれもわからない、不詳ということになっているわけなんです。考えてみますと、つい二年か三年前のその仕事の任にあった者の名前も何もわからないというようなことはちょっと考えられないというふうに思いますが、この点について内閣官房の方から答弁をお願いします。
加藤政府参考人 お答え申し上げます。
 先生、今お話ありました被害届でございますが、これは、平成十三年一月二十五日に外務省から発表のありました松尾前要人外国訪問支援室長による公金横領疑惑に関する調査報告書、これに基づきまして、内閣官房といたしましても、その調査報告書のとおりであれば内閣官房の資金に被害が生じている、そういうおそれがあるということから、その早期の真相解明に資する観点から、当該調査報告書を前提として捜査当局に対して被害届の提出を行ったものであります。
 今申し上げたような観点から、捜査当局に対して取り急ぎ被害届を提出したものでございますが、その時点におきましては、松尾元室長に交付した事実、これは確認できました。しかし、残っておりました記録を見る限りにおいては、その時点で、交付を行った者を確認するまでには至らなかった、そういう観点で、被害届の段階では不詳ということにしておるわけでございます。
金子(善)委員 今の説明は、一般の国民の方々が聞いたらとても納得できる説明ではないと思います。それは、だれかに責任が及ぶというようなことで名前をできるだけ出さないようにした。五年も六年も前の話ではない、二、三年前の話を、それが名前を出していない。当然、その仕事の任にあった担当の者が渡しているということはほぼ特定できるんではないかと思います。渡したという事実はわかっているけれども、だれが渡したかわからない、そういうばかげた話は私はないと思いますが、要は、そういう隠ぺい体質があるということを指摘しておきたいと思います。
 それから、第三番目といたしまして、松尾元室長から国の債権の回収状況、これも資料要求で提出してもらいました。この中で、関係者の努力によりまして、本年一月から八回に分けて合計で三億四百九十八万円の回収ができたというふうになっております。
 一点わからないんですが、いわゆる競走馬、競馬の馬ですが、松尾元室長は、外務省の事前に出された報告書では十五頭、約一億四千万円が使われたという内容になっております。これに対しまして、回収された金額というのが、競走馬に関しましては二千五百四十九万円。その中の一部で、一頭だけだったという回収状況になっています。残る競走馬十四頭分についてはなぜ回収できないのか、その点について御説明をお願いしたいと思います。
加藤政府参考人 今先生お話ありました、外務省の調査報告書において松尾元室長が所有していたとされております競走馬の処分でございますが、これは相手方の代理人においてすべて責任を持って処分が行われていると私どもは承知しております。この処分によって得られました売却金額、これについてはすべて銀行預金に入金されております。私どもとしては、松尾元室長の銀行預金についてはすべて回収を行っておりますので、その中に競馬馬の売却代金も含まれておるということでございます。
 なお、お示しした資料で一頭分が掲載されておりますが、これは、その馬につきましてはまだ小さかったということもございまして、精算が必要であった、その精算行為が必要だったので、他の馬の売却時期とはずれて、後から、銀行預金の形といいますか、その処分した金額を私どもが回収したということで、時期のずれによるものでございます。ですから、当初処分した競馬馬の処分金額については銀行預金の中に入金されており、それを私どもとしては回収を行った、こういうことでございます。
金子(善)委員 はっきり言ってよくわからないんですね。もうちょっとうまく説明してもらえば。改めて資料で説明してもらいたいと思います。これは委員長、よろしくお願いします。
 これは、みんな不思議なんですよね。十五頭いたのが、一頭分だけが回収されて、あと十四頭はどうなったんだと、非常に関心のあることでもございますので。
 時間が限られておりますので、先に進みたいと思います。
 これは外務大臣にお伺いしたいと思います。
 これはNHKの報道でございました。いわゆる外務省機密費のことにつきまして奇妙な報道がなされたのを記憶されているかどうかわかりませんが、実は、この報道がありまして、翌日の五日、外務省にその内部文書の資料提供を求めたわけでございますが、内部の運営に関する文書なので提出はできませんと、また拒否の回答がございました。
 これは何で提出できないのか。これは理由にならない。現実に存在しているというふうに思います。というのは、電話の回答でございましたが、提出できないという言葉は、あるんですけれども提出はできないんだということだと思うんです。
 そういうことで、ちょっと質問をさせていただきたいと思いますが、はっきり言って、情けないという感じがするわけです。別に、資料を提供しないということじゃないですよ。外務省の中で物を考えられていた事柄がちょっと情けないという感じが私はいたします。
 大臣は既に事務方から聞いておられるかどうかわかりませんけれども、要は、外務研修所の中での話かもしれませんけれども、第五部研修員、アタッシェですよね、この懇親会を開くということで、「開催依頼について」という内部文書があるわけなんです。
 内容を簡単に申しますと、外務省と他省庁の出身者が壮行会を開催するということなんです。これは結構なことだと思うんです。大いにいろいろな外交を、健全な外交を進めるということからいえば、いろいろな場を通じて懇親も深めて意思の疎通を図っていくということも大切なことであろうかと、私はそこは理解いたしております。
 しかし、こう書いてあるんです。二枚目のペーパーなんですが、「本件は公務員間の接宴であるため、接宴要求書の参加者欄には実際に参加するリストとは別に、在京外交団等を含めた形式とするようお願いします。」実際に出席していない外交団ですよ。外国のいわゆる外交官をいかにも接待したように、まさにこそくな偽装工作をやる。
 しかも、これはそんな昔じゃないんです。この文書が書かれているのは平成十年なんです。国家公務員についてもいろいろな接待の問題、地方公務員を初めとしていろいろな問題が出始めたころ。
 少なくとも公文書です。これは人事課の庶務班。しかも、人事課といえば恐らく職員のいろいろな服務関係も統括する部署だと思うんですが、その中から偽装工作を初めから指示するような文書が出ているというのは、極めて話にならない話だというふうに私は思います。
 大臣、これはきちっと調査をしていただきたいというふうに思いますが、いかがですか。
北島政府参考人 委員御指摘の最初の文書でございますけれども、これまで申し上げてきておりますけれども、この種の会合については必要な経費を報償費から支出したものもあったこともあり、報償費の使途に係る文書について公開することは差し控えさせていただきたいというふうに考えているわけです。
 それから、委員が言われました、外交団等を含めた形式云々という文書でございますが、その存在は確認されておりません。
金子(善)委員 時間が参りましたから、大臣にお聞きしたいと思います。
 私は、金の使い道について云々言っているんではないんです。要は、必要なものは使うのは当たり前です、そんなことは。報償費であってもですよ。これもマル秘、無期限となっているんですよ、文書は。別にこれはNHKからもらったんではないんです。きちっと我々はそのコピーを持っております。こういう情けない偽装工作をしてまで、報償費の使い道だから言えないと。人事課長名でもちゃんと文書は出ているんですよ。これは公文書です、あくまでも。
 大臣、この点について改めて調査をする意思があるのかないのか。もしなされないということであれば、透明性も大臣が約束しております、日本の外務省の今後のあり方について、透明性、実効性を確保していくんだということを言われているわけですが、そういうこともすべて秘密にしますという姿勢なのかどうか。そこを改めて御質問いたしまして、私の質問を終わらせていただきます。
川口国務大臣 この話につきましては、私は話を聞きました。その話の中では、そういった偽装工作をするようなことはやっていないということを聞きました。
 それで、もし仮に委員がおっしゃるようにそういう偽装工作があったとすれば、これは適切ではないと私は思います。そういう文書があったかどうかについては、もう一度事務当局に聞いてみます。
金子(善)委員 終わります。
吉田委員長 次に、前田雄吉君。
前田委員 民主党の前田雄吉でございます。
 川口大臣、私は、最初にまず、あなたの外務省改革というのはにせものだということを申し上げたい。
 けさほど報道されました百億円のモスクワ大使館、プールがあり、テニスコートがあり、そして日本庭園まである。国民の皆さんは苦しい生活をしているんだ。どう説明しますか、国民の皆さんに。
川口国務大臣 このモスクワの大使館につきましては、百億円という報道がございましたけれども、まず、結論的に申しますと、委員がおっしゃるように、百億円かける必要があるということを役所はきちんと説明する必要はあると思います。それは必ずしも今まで十分になされてなかったかもしれないと思います。
 ただ、実際問題といたしまして、このロシア大使館事務所につきましては、ロシアにおける外交交渉が我が国の国益にかなった形で行われるようなことを保障する必要があるということでして、これは、例えばロシアの場合ですと、セキュリティーがきちんとなされているかとか、それから寒いところでもございますので、それなりにお金のかかることもあるということでございます。もちろん、在外公館の施設が必要以上に豪華であってはいけないということは当然のことであると思います。
 そして、これについて聞きましたところ、施工するに当たっては、複数の事業者から見積もりをとって、それで決めたということも聞いておりますので、そういった意味で不透明な形で契約がなされているわけでもないと私は思います。
 いずれにしても、最初に申しましたように、こういった国全体として景気その他で非常に苦しい状況にある中で、こういうものに幾らお金をかけることが適切であるということについては十分に説明をする必要があると思いますし、足りない分については、これからそれを行っていく努力をしたいと思います。
前田委員 これから国民の皆さんにしっかりと説明してください。
 そして、私はこの件についてまた伺いたいことがあります。どうして五カ月も着工を隠しておられたんですか。大使館の秘密性とかいろいろあると思いますけれども、これは別に隠す必要はないと思うんですけれども、いかがですか。
川口国務大臣 ちょっと、私は、五カ月それを隠していたという状況があったのかどうかを直接承知しておりませんので、それについてはどういう状況だったかを聞いてみたいと思います。
前田委員 このモスクワ大使館は七年前に設計が開始されたということですけれども、それ以降、外務省には不祥事が数多くありました。松尾事件もそうです。先ほど金子委員が質問されました。それから、プール金、機密費、いろいろな事件がありました。それにも懲りずに、この設計を変更すらしないんですか。どうしてこんな豪華な大使館が必要なんですか。この点、御説明いただきたいと思います。
川口国務大臣 ですから、その点につきましては、例えば、ロシアにある大使館にふさわしい安全を確保するための設備ですとか、普通の、東京に建物を建てるのとは異なったスペックといいますか配慮が必要であるといったことがあって、それを複数の施工業者の方から見積もりをとって、比較をして、それで決めたというふうに聞いておりますので、その過程で不透明なことがあったというふうにも考えておりません。
 いずれにしても、今委員がどうしてとおっしゃられましたけれども、そういうことについて十分に説明を役所としてはしていかなければいけないと思います。今までの説明で不十分であった部分については、これからも国民の皆様に説明をしていく努力を続けたいと考えております。
前田委員 ぜひ、しっかりと説明していただきたいと思います。何せ国民の皆さんは、本当に苦しい生活をしているんだ。いいですか。
 また、先般、七月九日、ODA改革の十五の具体策というのが発表されました。私も、これはすばらしいものだというふうにずっと読み進めましたけれども、その中に、「人材の発掘・育成・活用」というところに紛れ込んでいる言葉があるんですよ。「「国際協力人材開発センター(仮称)」について必要な検討を開始。」すると書いてあります。
 ODAの額を減らし、構造改革をし、そうしたときに、どうしてまたこんな公益法人をつくるんですか。必要ないじゃないですか。JICAもあるし、外務省傘下に数多くの人材開発の公益法人がありますよ。どうしてこんなところにまた紛れ込ませるんですか。大臣、お答えいただきたい。
川口国務大臣 ODAの改革というのは、私も、外務省の改革の中で特に力を入れている点の一つでございまして、最初に就任をしたときに出した十の改革の中にもODAの改革ということを入れております。
 それで、ODAにつきましては、そういった十の改革あるいは第二次ODA改革懇談会の最終報告を踏まえて、この間、十五の改革というものを出させていただきました。中身の細かい点については、まだこれから詰めるべき点もありますし、そこで盛り込まれていない点について、今後さらに改革を進めていくことが必要な部分もあると私は考えております。
 それで、そこに出てきました国際協力人材開発センターでございますけれども、これがねらっているところは、国際協力に関する人材情報のネットワーク化ということ、人材のマッチングを効率的に促進するための新しい枠組みということでございまして、検討を行っているものです。具体的なその機能等につきましては、現在、鋭意検討中でございます。
 委員がおっしゃっていらっしゃるような形で、例えば新しい財団ができるとか、そういったことについては、今の時代、なかなか財団をつくるというのにも、基金を集めることも容易ではございませんし、それから、仮に基金を集めたとしても、金利が低いので運営が非常に難しいというような状況がございます。
 他方で、さまざまなITで、情報も非常に集まりやすくなっている、それを大勢の人が見ることも可能になっている。そういったさまざまなことを考えて、ただ、この国際開発についての一つの大きな問題というのは、この仕事に携わる人材があちこちにあって、必ずしも集中をしていないことだと私は考えております。そういうことですので、現代の技術を駆使して、そしてこういった機能を果たすことができるセンターをつくるということは、私は非常に必要なことだと思っております。
 どういう形でつくるかは今検討中でございますので、また検討を待ちまして、どこかで、決まった段階では発表できるのではないかと思います。
前田委員 では、今の答弁にもありましたように、新しくそんな公益法人等をつくるんではないということを約束してくださいよ。
川口国務大臣 まさに今検討に入ったばかりでございますので、頭から、何が可能で何が可能でないかということを私一人の判断で今申し上げることはできませんけれども、現代、今の時代にふさわしい、そして必要な人材のネットワーク化ということを行う、そういう組織を考えたいと思います。
前田委員 本当に、改革の中に紛れ込ませるような、これは官僚がよくする手ですよ。こんなこと絶対許せませんよ、国民は。いいですか。
 では、きょうの本題に入ります。
 国後のディーゼル発電所の建設の関係に入らせていただきます。
 九八年四月に橋本・エリツィン会談があった。そこに、日本側から、電力分野における協力が盛り込まれました。これが盛り込まれるに至った経緯、どういう政策決定があったのか、具体的に御説明いただきたいと思います。地元からの要請等があったのかどうか、この点も明らかにしていただきたいと思います。欧州局長、お願いします。
齋藤政府参考人 お答えいたします。
 本件に関します要請につきましては、平成六年十月、これは北海道東方沖地震の直後であったと思いますけれども、当時南クリル地区長をしておりましたポキージン氏から、発電機の供与につきまして要請がございました。さらに、平成十年一月に、カラーシン外務次官から当時の丹波外務審議官に対しまして、四島の電力分野における協力の要請がなされました。
 これらの要請を勘案いたしまして、平成九年十一月のクラスノヤルスク合意を踏まえまして、交渉におけるモメンタムを一層高めるという観点から、平成十年四月に、先生今御言及なされました川奈における日ロ首脳会談におきまして、日本側からロシア側に対しまして、四島住民に対するディーゼル発電施設の供与につき意図表明を行った次第でございます。
前田委員 委員会の皆さん、これはよく聞いていただきたいと思いますけれども、もう二カ月前に、この外務委員会理事会から外務省に対して、橋本・エリツィン会談に至る政策決定過程、このディーゼル発電がどうして加えられたか、これを要求しましたところ、返ってきませんでした。そして、よいものでも、一週間前に出したものもありますけれども、返ってこないものがある。
 例えば、九八年の色丹、択捉ディーゼル新設の省内の決裁書、三点目ですけれども、国後、択捉、色丹三島分の完工書、工事が完了した書面ですね、これが出てこないんですね。この理由は、伺いますと、特に後半二つ、色丹、択捉の決裁書と完工書、これについては、外務省にある、しかし東京地検の要請があって出せない、こうおっしゃいました。
 東京地検、どこが出せないと言われたんですか、欧州局長。
齋藤政府参考人 今御指摘のございました二つの文書でございますが、この資料につきましては、これまで、先生からの御要望に対しまして、捜査にかかわるものでもございますので提出を差し控えさせていただきたいというふうに申し上げてきた次第でございます。
 東京地検のどこからということでございますけれども、特捜部からそのような要請を私どもとしては受けているというふうに理解しております。
前田委員 最初の、理事会から二カ月前に要求しました、橋本・エリツィン会談に至る、この電力協力が加えられる政策決定がわかる文書というのは全く出てこなかったわけですね。これはもう明らかに委員会に対する挑戦ですよ。何を隠すんですか。出すべきものを出さずに隠ぺいするものはどんどん隠ぺいする、これは外務省の悪い体質ですよ。そう言っても進まなければ話を変えますけれども。
 押収物について、例えば地検が捜査に入って、押収物についての公開はどのようになされるのか、どういう規定があるのか、刑事局長、伺いたいと思います。
古田政府参考人 委員御案内のとおり、刑事訴訟法四十七条という規定がございまして、この規定は、訴訟に関する書類は、公判の開廷の前は原則としてこれを公にすることができないということを定めたものでございます。
 この規定の趣旨は、公判の開廷前にいろいろな訴訟関係の書類が公になりますと、関係の方々のプライバシーや名誉を侵害するおそれもありますし、また、捜査あるいは公判、これにいろいろな意味で悪い影響が出るというような問題がございますので、それを防ぐためにこのような規定が設けられているわけでございます。
 これは、ただいま申し上げましたとおり、訴訟に関する書類ということではございますが、押収物につきましても書類の形態を持つものとかいろいろございまして、やはり、ただいま申し上げたようないろいろな弊害を防止する、こういう趣旨は、押収物についても刑事訴訟法四十七条の規定の趣旨が及ぶというふうに理解されているところでございます。
前田委員 ありがとうございます。
 ということは、今現在、例えばロシア支援室、そこにある文書というのは、この押収物と同じように東京地検のコントロールのもとにあるわけですね。そうでしたら、出てきている資料の中で少しこれから話をさせていただきたいと思います。
 皆さん、今資料をお配りいたしました。一枚目の資料1、真ん中のところを見ていただきますと、補正予算計上、三島で四十億円、正確に言いますならば四十億七千万円、九八年十二月、第三次補正予算でございます。ここで、この国後分について約二十億円もう予算がついているわけですね。ずっとその国後島のところを下へ見ていただくと、大きな字で書いてありますけれども、九九年十二月、十二月七日ですけれども、新設で省内決裁とあります。時系列でいくと、先に予算がついていて、それから省内決裁があるわけですよ。いいですか。決める前にもう予算があるわけですよ。
 これはまた、先ほど申し上げましたけれども、国後分が入った理由がわかる文書を理事会から出してほしいと言った。出せない。そして、もう一点要求しました。この補正予算計上の四十億七千万円、これの積算根拠のわかるもの、例えば、業者から見積もりをとってどういうふうでした、だからこの四十億七千万円になったんですよといった積算根拠のわかるものを出してくれと言ったら、二カ月たってやっと、きのう言葉で返ってきました、文書はありませんと。
 皆さん、資料4を見ていただけますか。これは、そのときに外務省が主計局の外務係に提出しました補正予算の事由審査表というものでございます。
 私は、きのう、ロシア支援室に、四十億七千万円の根拠、どうして国後分が入っているのかと伺いました。そうしましたら、支援室から伺った答えは、四カ所分ということで、国後分ということではありませんという答えをいただきました。私は再度確認いたしました。四カ所分で、国後分が入っていないということですね、そうです、間違いありません、こう支援室は答えられました。
 いいですか。この資料4を見てください。私が丸で囲みました「ディーゼル発電機の供与(国後島、択捉島、色丹島に計四ケ所)」、ちゃんと国後島と書いてあるじゃないですか。欧州局長、答えてください。
齋藤政府参考人 先生まさに今御指摘いただきましたとおり、補正予算を要求する時点におきまして、この国後島、択捉島、色丹島の三島にディーゼル発電機を供与するという前提で予算要求をいたしまして、御承認いただいた次第でございます。
前田委員 だったら、私の部屋へ来て説明されるときに、そんないいかげんな説明するんじゃありませんよ。
 いいですか。国後、ここに入っていますよ。きのう、入っていないと言ったんですよ。私は確認しましたよ。説明を私たちにするときは、しっかりと資料に基づいて言っていただきたい。いいかげんなことを言っていただくと、もうこれは私たちに対する冒涜ですよ。いいですか。
 では、もう少し話を進めますと、国後へのディーゼル発電機新設の根拠となったのが、新しくつくる根拠となったのが、九九年十月に鈴木氏がゼーマ南クリル地区長と話し合った会談であるということでございました。
 さあ、皆さん、まず資料の2を見てください。これは、外務省に出していただきました九九年十二月七日の決裁書でございます。新設ということで決裁する、その決裁書ですね。それに附属して、この右側、波線を引いておきました、「鈴木議員とゼーマ「地区長」との会談」というのがございます。
 次のページをめくってください。これはゼーマ氏がディーゼル発電でということで要求したということですけれども、実際はこれは少し違うんではありませんか。どう違うか。
 このAと書いてあるところを見てください。これは、ノーソフ氏の会話です。ノーソフ・サハリン州渉外課長ですね。「大きな意味を持っているのは「南クリル」での地熱発電である。日露間では首脳会談が行われているが、その間サハリン州としても文書をまとめてクリル諸島の発展計画の実現に協力してほしいと主張してきた。」こうあります。
 それに対して鈴木議員は、「サハリン州は国後島においてディーゼル発電施設を設置することに反対なのか。」こう一種の恫喝をされるわけです。
 実際、ノーソフ氏は、いや、そんなことじゃありませんよと言いながら、また地熱発電の話をされているんですよ。「「南クリル」全体として、連邦計画の中では地熱発電の開発に努力が向けられており、これを発展させていきたいということである。」と言っていますね。
 ということは、これは、現地が要求したのは地熱発電であり、東電の、東京電力の調査報告書でもありました。また、五月二十五日、尾身大臣が訪問されたときに、南クリルの地区長は言われました。ディーゼル発電はコストがかかって要らない、こう言われています。
 現地は地熱発電を要求したんじゃありませんか。それをディーゼル発電でまとめ込んだのではありませんか、欧州局長。
齋藤政府参考人 地元からは、先ほど申し上げましたように、北海道東方沖地震の後、ディーゼル発電機の供与について要請があったわけでございます。
 それで、地熱の要請がなかったかといえば、それはロシアの連邦政府の、中央の計画の一環として、サハリン州に地熱発電をやりたいということがあったようでございまして、この御指摘のノーソフ・サハリン州渉外課長も、まさに中央政府あるいはサハリン州の代表ということでこの会談に同席していたようでございますが、地熱につきましては、東京電力による調査を行いましたけれども、これはいろいろと、技術面も含め、費用面も含めまして課題が多いということで、地熱の開発に踏み切るにはさらに詳細かつ長期の調査が必要であろうということが結論であったわけでございます。
 そういったこともございまして、当初の要請でもありましたディーゼル発電施設の供与ということがより現実的であるということで実施に移した次第でございます。
前田委員 これは明らかに地元の要求をねじ曲げてきている話だと僕は思うんですね。最初にまず決定ありきじゃないんですか、天の声の。いいですか。
 それから、Bのところを見てくださいよ、同じく資料3ですね。「ディーゼル発電施設を設置することが四島のためになる。四島のためになることはサハリンのためになるし、サハリンのためになることはロシアのためになると思っている。九月初めにもファルフッジノフ知事に東京でこのことをお伝えした。」とあります。
 皆さん、これはまだ決裁前ですよね。決裁前に既に鈴木氏は先方に、ロシアに対して、このディーゼル発電の設置を言われているわけですよ。外務省の省内決裁がおりる前に先方にもう伝えているんですよ。これに対して欧州局長、どう答えられますか。
齋藤政府参考人 これは、先ほど申し上げました、九九年七月に、実は東京電力による調査結果が出ているわけでございますが、この調査結果を当時の鈴木官房副長官がファルフッジノフ・サハリン州知事に伝えたということでございます。
前田委員 これはまさに、先ほど言いました、もう国後分のお金も、予算も先につけている、そして、もうつくるんだということも最初に決まっている、そういうことじゃありませんか。すべて、まさに鈴木氏の影響下で動いていたことではありませんか。皆さん、こうしたことが明らかになったと思います。
 きょう金子議員も質問されましたけれども、明らかに外務省は出してくる資料をすぼめながら、出すべき資料は出さない。出してきた資料でも、これだけのことがわかってくるわけですよ。いいですか。
 情報といえば、外務省は、これは政治家や企業に容易に漏えいしてくる、そんな体質があるんではありませんか。
 例えば企業について言えば、三井物産の清水社長が、社長表彰を飯野部長、容疑者にされています。そのときに、どういうふうにその社長表彰の理由を社内報で伝えているか。日本政府の北方領土支援政策を察知した功績をたたえ、察知した功績をたたえと言っているんですよ。政府資金援助をいち早くビジネスに結びつけるために北方四島向け発電所プロジェクトに着目、こう言っているんですね。
 この清水社長も、川奈会談のころの通信・輸送・産業プロジェクト本部の本部長でございました。まさに支援事業をやっていた本人ですね。実際、今までこの三井物産への入札情報とかが漏らされていたという件は、いろいろもう明らかになっております。
 それから、皆さん、外務省はまさに天下り人事をこれまで許してきている、そんな体質の中から情報漏えい等がされていく、そうではありませんか。
 例えば、平成十三年五月一日、日本工営に入社されました、日本工営は、御案内のとおり、ムネオハウスの受注者ですね。アフリカ関係に強いところであります。ここに入社された中村武さん。セネガル、モーリタニア、ガンビア、マリ、ギニアビサオ、歴代アフリカ大使ですよ、歴任しているわけですよ。あるいは、やはりムネオハウスの関係の日揮。ここは、日揮は、アラブ関係に強い。渡辺伸さん、平成十三年七月に入社されています。アラブ首長国大使、アルジェ大使。そして、この国後のディーゼル関係では、橋本・エリツィン会談のときにロシア大使をされておられました都甲岳洋さん。この方は、同時に支援委員会の委員でもありました、平成八年十月から十一年十月まで。それで、先ほど私が申し上げた、九九年十二月七日、この省内決裁、国後にディーゼル発電をつくるんだという省内決裁の前日に外務省をやめられております。そして三井物産に入られている。
 こうした天下り人事を許していていいのですか。我が民主党は天下り禁止法案を出しておりますが、この天下りに対して、外務大臣はどう思われますか。
川口国務大臣 今、企業と官との間の人の交流といいますか、こういうことについては一定のルールがあるわけでございます。そして、企業の方もそれから官の方も、そのルールにのっとってやっているわけでございます。私は、日本全体を考えたときに、適材が適所に行くということは非常にいいことだと思っております。ルールにのっとって物事が行われる限りは、何ら問題がないと思います。
前田委員 実際に、今回、三井物産はこんなに問題になっているんですよ。そこにこうやって天下りをされているロシア大使、この方も、じゃ適性と言うんですか。
川口国務大臣 おっしゃっていらっしゃるのは、都甲前駐ロシア大使が三井物産の顧問に就任をしたということであるかと思いますけれども、今問題になっているディーゼル発電施設の設置を三井物産が受注したことと、大使が三井物産の顧問を務めているということは関係がない、独立をした話であるということでございます。
 これは、都甲さんが支援委員会の設置協定で支援委員会の日本側の代表であったわけでございますけれども、在ロシア大使に在任をしているときに、御案内のようなことで支援委員会は実は開かれていなかったということでございます。したがって、都甲さん自身が支援委員会の代表としてこの案件の形成にかかわったということは全くないわけでございまして、先ほど申し上げました官と企業との間の人の動きについてのルールにのっとって行われた、そういった人事であったと私は考えております。
前田委員 おかしいじゃありませんか。橋本・エリツィン会談のときにロシア大使、そして、国後のディーゼル発電の開所式には三井物産顧問としてこの方は行っておられるんですよ。そうした、密接にディーゼル発電の新設とかかわっている方が、外務省から三井物産に籍を移しただけじゃないですか。いいんですか、そんなことで。これは、やはり問題ですよ。しっかりともう一回文書で、外務大臣、この点について、こうした天下りが適任かどうか、しっかりともう一度整理して答え直していただきたいと思いますね。
 また、もう一つ、政治家についての情報漏えいでございますけれども、もうあやふやになっているものが一つだけあるんです。鈴木氏に連日公電が配達されていた。当外務委員会で四月の三日に中川委員が質問をいたしました。そうしましたら、外務大臣は、調査を進める考えを明らかにされております。そして、服部外務報道官は、この同日の記者会見で、責任者から話を聞くことになると述べ、鈴木氏と関係が深かった東郷オランダ大使、元欧州局長から事情を聞く考えを示されたわけであります。
 これは今までずっとほったらかしですよ。どうなっているんですか。調査された結果を、外務大臣、答えてください。
川口国務大臣 御指摘の点につきまして、関係者から外務省において聞き取り調査を行いました。結果を先に申し上げますと、鈴木議員に対して、国家公務員法上の守秘義務違反を行って公電を渡していたという事実は今の時点で確認をされていません。
 まず、鈴木議員が官房副長官でいらしたときに渡っている公電には、全くこれは問題がないということでございます。
 その他の部分について、当時の東郷欧亜局長が、この局長は、ある文書がその守秘義務の対象になっているかどうか、それを解除するかどうかということの権限は持っているということでございまして、東郷欧亜局長が政策遂行上必要だと判断をしていたというふうに思われるということでございまして、守秘義務に反して公電を渡していたという事実はなかったというのが、今の時点ではそういう事実は確認されていないというのが調査の結果でございますけれども、いずれにしても、秘である公電が本来それを受け取るべき立場にない人のところに渡されるというのは適切ではないと私は思います。
 ただ、調査いたしました結果、国家公務員法上の守秘義務違反に明白に該当するという事実は確認されていないということでございます。
前田委員 これはまた、おかしなことを言われていますね。
 マスコミ各社が省員の皆さんにインタビューされた、調べられた。省員の皆さん、言われているんですよ。例えば、鈴木事務所のソファーに機密文書が無造作に投げ出されているのを見たと話す省員。ロシア課の担当者にかわって配るように言われたときに、関係者が、明らかな国家公務員法違反だとわかっていたので依頼されたその場で断ったとか、いろいろと証言が出てきているのですよ。
 何で外務大臣が調査されたらこれが明らかにならないんですか。こんないいかげんな調査じゃだめですよ。もう一回調査を約束してください。
川口国務大臣 調べた結果を先ほど申し上げて、その理由を御説明申し上げたつもりですけれども、もう一回ちょっと御説明をさせていただきます。
 まず、鈴木議員にヒアリングをして調査をいたしました。それで、その結果といたしまして、鈴木議員に公電が提供されていたということについては、まずその結果としては判明をしているということでございます。
 次に、これが違法であったかどうかということであるわけですけれども、まず、官房副長官在任当時、この時点においてはこれは問題はないということでございます。
 それから、それ以外のとき、東郷欧亜局長が指示をして公電を提供していたというようなことでございますが、東郷欧亜局長は秘であるかないかということを判断する、あるいは秘を解除する権限を持っているということでございまして、彼の指示に基づいて行われたということについては、公務員法、要するに守秘義務違反ではない、そういうことでございます。
 ただ、先ほど申しましたように、公電が第三者のところに渡るということは、私は適切ではないと考えております。
 ただ、調査をした結果、国家公務員法上の守秘義務違反に明白に該当するかといえば、そういうことは見つかっていない、そういうことを申し上げているわけです。
吉田委員長 時間が来ていますから。
前田委員 時間が来ましたので。
 私は、九九年十月以降、鈴木氏が内閣から出られた後の話をしているんです。いいですか。これについて、東郷さんがどう答えられたのか、内部でどうされたのか、しっかりと文書で理事会に出してください。お願いします。
 以上です。
    〔委員長退席、中川(正)委員長代理着席〕
中川(正)委員長代理 土田龍司君。
土田委員 中国・瀋陽の亡命者連行事件に関連してでございますが、中国政府が、我が国に対して、日中間の新たな領事条約の締結を検討しましょうという提案をしたことに対して、外務大臣は前回の委員会で、新たな領事条約の締結も含め、再発防止の協議を継続していくというような答弁をされております。
 しかし、日中間の新しい領事条約の締結について、内容は今回と違うわけでございますけれども、過去に二回中国側から提案がされたことがございました。それに対して外務省は、即時拒否をされたということがあったわけでございますけれども、これに対して拒否をされた理由が、ウィーン条約に日中双方が参加しているわけですから特に必要がないということだったということですね。
 今回の事件に関しましても、当然ウィーン条約の適用で解決できる問題であって、何ら中国側と新たな条約を結ぶ必要はないわけです。ここで中国側の不当な主張を取り入れた条約を結ぶということになれば、日本に不利になるのは当然なことでございまして、新たな条約でなくて、まずはこのウィーン条約の厳格な適用ということが重要であります。特に、外務大臣が何回も言っておりますように毅然たる態度ということになれば、それを今後とも中国側に要求していくということをおとといのこの委員会でもおっしゃっているわけでございますから、そういうことが本来の外交ではないかと思うのです。
 これについては、大臣はどう考えられますか。
川口国務大臣 中国と六月十九日に私がどういう話をしたかということについては、この前申し上げたとおりですので、ここで繰り返しませんが、いずれにしても、現在、中国側からは再発防止のために領事条約、協定の締結の提案がありまして、この領事条約、協定の締結の可能性を含め、再発防止のために協議を行うということになっているわけでございます。この点について合意をしたということでございます。
 それで、今後についてですけれども、まず、どういう内容のものなのかということがあるわけでございまして、これは、日中間で協議をしていく中で、その内容によって、二国間条約の中で規定することが適当なのか、あるいは何らかのガイドラインを作成する方がよいのかということを含めて検討をしていくということでございます。
 いずれにしても、中国側が提案をしたということでございますので、まず意図を聴取して議論をしたいと考えております。
 それから、先ほど委員が、過去において提案をして日本は即座に拒否をしたということをおっしゃられましたけれども、過去において提案があったということはあったようでございますけれども、いずれにしても、日本側がそのことについて即座に拒否をしたという事実はないと私は承知をいたしております。
土田委員 即座な拒否かどうかはわかりませんが、いずれにしても、ウィーン条約はあるんだ、双方それに参加しているわけですから。
 今回もそうでしょう、ウィーン条約を守らないわけですね、中国は。ウィーン条約を守るんだったらば、当然中国は謝罪をする態度に出なきゃならないのに、新たな条約を結んだってほとんど意味がないような気がするんです。それよりも、まず大事なことは、毅然たる態度をとる、中国に対して引き続いて条約を守りなさいということを言うことが大事だと思っているのです。
 同じく、前回の委員会で、外務省の人事制度の再構築について、今月末に予定されている「変える会」の最終報告、これを受けて順次実施していくというふうに答弁をされました。
 「変える会」の中間報告では、「どのように現在の外務省の機能・制度・人事・省員の意識等を変えるかが問われている。」としておって、当然ここには人事制度だけではなくて外務省の組織改革も含まれているわけですね。
 にもかかわらず、今月の四日に、自民党の総務会が、条約局の廃止とかいろいろの大幅改編を含む外務省改革を提案したわけですけれども、それに対して、外務省は改革案に消極的かつ批判的であるという報道がなされました。マスコミ各社は、大臣や幹部の方の発言から、非常に消極的であるというような受け取り方をしたようです。
 これはすなわち、川口外務大臣自身も自民党の改革案に対しては消極的である、あるいは批判的であるというふうに考えざるを得ないわけでございます。外務省改革を外務大臣は就任当初から言ってこられた、自分が改革をなし遂げるんだということを言ってこられた、これに反するんじゃないかと思っているのです。
 この自民党の外務省改革について、実は我が自由党でも、やはり外務省改革に対する熱意といいますか、内部的にいろいろ意見交換したり、あるいは、どうしたら改革できるかということを随分やっております。今、話が全部まとまっているわけでもないし、発表するまでに至っておりませんけれども、しかし、自民党の中でまとめられた十の改革案については、我が党においてもやはり同じような、似たような意見が出されておりまして、ぜひやれるところはやっていくべきだという思いが私にはあるわけですけれども、どうも外務大臣の態度は後ろ向きとしか考えられないのです。
 これについては、大臣はどういうふうに考えますか。
川口国務大臣 私の言動のどこを見て改革に後ろ向きだとおっしゃっていらっしゃるのか、教えていただきたいと思いますけれども、私としては、今委員の御発言を聞いて、改革を支援してくださる力強い味方がまたもう一人あらわれてくださったというふうに感じております。
 自民党の「政治主導で断行すべき十の提言」というものも、この間いただきました。これのかなりの部分について、私は非常にいい考えだと思うということを直接に申し上げました。それから、きのう「変えよう!変わろう!外務省」のグループ、これは省内の改革をやっていこうという人たちの任意の集まりですけれども、そこからも、五つの分野についてこういうことをやりたいという報告を私はもらいました。そして、「変える会」の報告も出てきています。
 ぜひ、委員からも改革のいい御提案をいただいて、外務省の改革を進める力にしたいと私は思っております。
土田委員 大臣のどの発言が改革に後ろ向きかというのは、さっき言いましたように、大臣がそのままおっしゃっているわけではなくて、新聞各社、マスコミ各社は、外務省の幹部の発言からそのように受け取れるということを書いているということなんです。それは、外務省の幹部が言っているということは大臣の考え方でありまして、幹部が一体となって、大臣、副大臣あるいは政務官、事務次官一体となって、外務省を変えなきゃならないという機運が盛り上がってこなきゃだめだということを私は申し上げているわけでございまして、そういった発言があるなら、むしろ大臣の方からやはり注意しなきゃならないということだと私は思いますよ。
 きょうのこの委員会が終わってから韓国を訪問されるわけですが、韓国では、どういう話になるかわかりませんが、多分、先日の韓国西海岸沖での銃撃戦、北朝鮮との交戦のことが議題になるかと私は思うんです。
 アメリカは、この事件を受けて、七月に予定されていた米朝協議の延期を通告してきましたね。外務省は、外相の訪韓に先立ちまして、日米韓の対北朝鮮政策の再調整を協議するために田中局長がアメリカに行かれて、米朝協議の再開は、南北交戦事件の真相や、あるいは北朝鮮側への対応、南北関係の変化などに左右されるというふうに思われるわけです。
 順調に進まなければ、また長期間にわたって停滞するということも考えられるわけでございますけれども、この米朝協議の再開の見通しについて、大臣はどのように考えておられますか。
川口国務大臣 米朝関係で、米国が、米国代表団の訪朝、この日程に関して、これを取りやめた、テーブルからおろしたということを言ったわけでございますけれども、この理由といたしましては、米国代表団の訪朝日程に関する北朝鮮からの適時の回答が得られなかったこと、そして、黄海における銃撃戦事件によって米朝対話が行い得ない状況がつくり出されたということによって、当面困難ということになったと承知をいたしております。
 見通しということでございますけれども、同時に、米国政府としては、北朝鮮と真剣な協議を行う用意があるという方針は引き続き有効であると言っておりまして、そして、北朝鮮側との定期的な接触を維持していく意向であるというふうに表明をしていると承知をしております。
    〔中川(正)委員長代理退席、委員長着席〕
土田委員 今回の南北艦艇の交戦事件について、韓国国防省は、北朝鮮による計画的な、意図的な奇襲攻撃であるという調査結果を発表しているわけです。これに対して、小泉首相は、八日の日に、引き続き正常化に取り組む、冷静に対処し、挑発に乗らないことだという発言をしておられます。あるいは福田官房長官は、報告はどのレベルの決定に基づくのかわからないとしている、引き続き情報収集に努め、真実を明らかにするということではないかと述べておられます。
 この北朝鮮の国のことを考えますと、軍事優先体制であるわけですから、もしも計画的な行動であれば、軍の最高司令官である金正日国防委員長が知らないはずはない。当然、彼の了解のもとでこの事件が発生をした、あるいは奇襲攻撃に至ったというふうに考えられるわけでございますけれども、この韓国国防省の発表やアメリカとの協議を行った結果、我が国としては、北朝鮮のこういった奇襲攻撃の意図について、どのように大臣は判断をされておられますか。
 あるいはまた、周辺国との緊張を高めるいわゆる瀬戸際外交の一環とすれば、この南北関係だけでなくて、我が国の、ひいては東アジアの平和と安全に重大な脅威を及ぼすわけでございますので、大臣はどのような見解を持っておられますか。
川口国務大臣 七日に、韓国政府から、今回の北朝鮮軍の行為は事前に緻密に計画をした意図的攻撃と評価をされる、ただし、どのレベルからの指示に基づいてなされたものであるかについては、さらなる分析が必要であるという発表が行われております。
 今回の事件につきまして、政府といたしまして憂慮すべき事態であると考えておりましたけれども、これまで韓国政府と緊密に連携をとりまして、種々の意見交換を行ってきております。政府といたしましては、今般、この事件につきまして、当事者の片方である韓国政府からこのような分析が発表されたということにつきましては、重要であると考えております。
 他方で、今回の韓国政府の発表につきまして、韓国として、どのレベルからの指示があったかということについてはさらに分析をする必要があるということを言っているわけでございますし、私としては、この点についても、今回韓国に行きましたときにさらに話し合いができればと思いますし、我が国として、韓国、米国とも連携、協力をしながら、関連情報を収集して分析に努めていきたいと考えています。
土田委員 いや、単なる重要であるという答弁じゃなくて、今申し上げましたように、韓国はこういうふうに主張している、アメリカはこういうふうに言っている。我が国が集めた情報の中で、もしもそういった意図的、奇襲的な攻撃を北朝鮮がやったとなれば、非常に大きな、重大な問題がある。これについて、外務省の責任者である大臣はどういった判断をされておりますかということなんです。どういったふうに考えていますかということなんです。
川口国務大臣 先ほど申しましたように、この点につきましては、さらに情報収集を続け、検討を進めたいと考えています。
土田委員 余り答弁になりませんけれども、次に参ります。ODAの問題です。
 ODAの問題で、九日の日に十五の具体策について大臣は発表されました。監査、評価等、一から五まで項目があるのですが、私は、当然上から読んでいきますので、この監査のところを見て、経済協力の各スキームについて外部監査を充実するとか、抜き打ち監査をやるとか、監査結果を踏まえてどうするとか、監査法人等の参加を得てとか、そういったのが冒頭からたくさん並んでいるわけです。非常に悲しいことだなという感じがするのです。
 お役人は悪いことをしないし、中立で、まじめで、仕事熱心にやらなきゃならないところに、こういった監査、監査という文言が出てくるということについては、やはり外務省は大いに反省しなきゃならないと私は思いますよ。
 これまでも、言葉は忘れましたけれども、監査委員会みたいなものをつくって、今、監査をやっていますね。在外公館の検査をしたり、監査をしたり、査察をしたり、いろいろなことをやらなきゃならない。このODAについても、冒頭からこういった監査、監査ということが非常に出てくるようなありさまで、非常に悲しいことだと私は思っております。
 そこで、この十五の具体策について、大体結構なんですが、一つだけ欠落している内容があるんじゃないかというふうに私は感じるんです。それは何かというと、いわゆる事後評価について、多くのプロジェクトごとの個別の影響力の評価は出ています。出ていますが、被援助国の、いわゆる相手国の経済システム全体への影響力で評価することはないんではないかと考えているんです。
 どういうことかといいますと、我が国の援助が相手国の開発にどのように貢献したのか、それが我が国の国益にどうつながってきたのか、それを評価する、その体制ができていないんじゃないか。いわゆるお金を使いっ放し、使うための監査、評価はできるけれども、それが我が国の国益にどうつながってきたのか、それをどう評価するのか、その体制ができていないような気がするんですが、大臣はどうでしょうか。
川口国務大臣 委員は二つのことをおっしゃられたわけですけれども、まず、監査の重要性ということでございますが、私は、監査は大変に重要だと思っております。国民の……(土田委員「情けないと言っているんです」と呼ぶ)それをやらなければいけないということが情けないということでは全くなくて、監査というのは、ある制度に透明性を入れガバナンスを増していくという意味で、今非常に重要な、ますます重要度が増してきていることであると思います。
 そのことは、ある組織が問題があるかないかということとは本来無関係に独立をして、透明性を増すための制度でございまして、現在アメリカで株価が下がっているということの背景の一つとして、この監査が十分であったかどうかということがあるわけでございまして、まさに制度の健全性ということから、監査というのは大変に重要であるということを、どんなにいい企業であれ、どんなにいい制度であれ、監査があって初めてまともな制度であるということを申し上げたいと思います。
 それから評価の点でございますけれども、評価については、まさにこの二番目のところで柱として申し上げているところでございます。事後評価については、委員がおっしゃったような、ある特定の案件がその国にどれぐらい役立ったかということも当然に入ってくるわけでございますし、我が国にとってそもそもその援助をやることがどれぐらい意味のあることであるかということについて、事前にも、それから事後にも当然これは考えていくべきことでございまして、それについて、その評価というところで、評価のあり方、連携を強化して評価を充実させるということを書いてあるわけでございます。
土田委員 いや、これに書いていないから質問しているんです。
 事後評価といいますか、それが我が国に対して、どういった国益につながる、有効に使われたお金であるかということを評価する体制をもう少し強化してほしいという意味でございます。
 中国に対するODAですね。二千億円になる金額を援助しているわけですが、これに対してさまざまな反対意見あるいは疑問を出す声が出ております。中国は、その軍備増強を図っているわけでございますし、あるいはほかの国にも、正確に数字は覚えておりませんが、百カ国に近いような国にも中国は援助をしているわけでございまして、そういった国に対して、日本もこれまでと同じようにODAを続けていいのかという指摘があります。大臣は、これについてどう考えておられますか。
川口国務大臣 中国に対するODAについて国内にさまざまな御意見があるということは、私どもは十分に認識をいたしております。
 まず、中国が安定をして発展していき、日中間に安定した友好関係が築かれること、これは我が国だけではなくて、アジアの近隣の諸国にとっても、そしてもちろん中国にとっても極めて重要なことであるわけです。
 我が国は、中国に対するODAにつきましては、ODA大綱を踏まえて、中国の援助需要や経済社会の状況や日中の二国間関係を総合的に考えて、対中経済協力を実施しているわけでございます。
 近年、我が国の厳しい経済財政事情がございます。そして、中国においては開発課題の変化等もございます。また、先ほど委員がおっしゃったような、国内にさまざまな意見もございます。したがいまして、こういったことを踏まえまして、政府といたしましては、昨年の十月に対中国経済協力計画を策定いたしました。対中国のODAにつきましては、この計画に基づいて実施をしていく考えでおります。
 なお、平成十三年度の中国に対する円借款につきましては、前年度比約二五%の減になっております。これは、先ほど申し上げました対中国経済協力計画の趣旨を踏まえまして、我が国の財政事情や、中国の経済発展と国力の増大、個別案件の日本としての重点分野との整合性等を勘案いたしまして、慎重に検討した結果、こういうことになったということでございます。
土田委員 時間が来ましたけれども、もう一点大事なことを忘れておりました。
 四月の二十九、三十と日朝の赤十字会談が行われましたね。そのときの話の結果は、大きな進展はなかったけれども、次回の会合は六月中に行うことが決まったということになっていたんですが、行われたんでしょうか。
川口国務大臣 現在、日程を調整中でございます。
土田委員 六月にはできなかったけれども、近々やるということで、今調整中ということでよろしゅうございますか。そういうことでしょうか。
川口国務大臣 日程を調整中ということです。
土田委員 では、六月中には、なぜやらなかったのでしょうか。
川口国務大臣 日程が、今調整を行われている、調整ができていないということです。
土田委員 以上で終わります。
吉田委員長 次に、松本善明君。
松本(善)委員 外務大臣に伺います。
 ブッシュ大統領は、六月の一日、陸軍士官学校での演説で、我々の安全保障が求めているのは、すべての米国民が前を見詰め決意を持つことであり、我々の自由と生命を守る必要があるときは先制攻撃をいとわないことであると述べました。
 国際法というのはどの国にも平等に適用されるわけですけれども、先制攻撃を許されるということになりますと、私は、国際社会に重大なことになるんじゃないか。このブッシュ大統領の演説は、アメリカが先制攻撃を行う政策をとるということをはっきり言明したということだと思いますが、外務大臣はどう考えていますか。
川口国務大臣 ブッシュ大統領が、今委員がおっしゃいましたように、六月一日に行った演説において先制行動に関する発言をいたしました。これは、米国の安全保障のためには、すべての米国民が積極的かつ確固とした決意を持ち、米国の自由と米国民の生命を守るために必要な場合の先制行動の用意がなければならないということで言われたわけですけれども、米国及びその国民の安全保障の確保の決意を示し、また国民の決意を促すものであって、現時点では具体的な軍事行動をとることを宣言したものではないと考えております。
 米国が仮に将来新たな軍事行動をとる場合には、米国の国際法上の権利及び義務に合致をして行うということは当然だと理解をしております。
松本(善)委員 その趣旨は参議院の本会議で総理大臣も答弁をされたわけでありますけれども、具体的な軍事行動の宣言をするということになってからでは、それはもう行動をとるということになる。私は、もちろんそんなことではないと思いますけれども、アメリカが先制攻撃をするという政策をとろうとしている。
 これは、一月二十九日のブッシュ大統領の一般教書演説での先制攻撃を辞さない立場の公言以来、アメリカの高官の発言が続いているわけです。一月のラムズフェルド国防長官の国防大学での講演での先制攻撃を排除しない方針。また、フォーリン・アフェアーズ五月、六月号で同氏が、時には先制攻撃も必要になるという言明をし、六月十日の世界の保守政党の国際組織、国際民主同盟の会合ではチェイニー副大統領が、必要な場合には先制的行動をとる責任があると演説している。ごく最近では、パウエル米国務長官が七月九日の米上院外交委員会の公聴会で、我々は常に先制攻撃の選択肢を持っているとの発言などがある。
 これを系統的に見るならば、これは、もちろん具体的にこれから先制攻撃をするんだというような、そういう宣言ではありませんけれども、アメリカが先制攻撃の戦略をとる、これは全世界に公言したということになるんではないかと私は思います。それは、世界の平和にとっては非常に重大なことだと大臣はお考えになりませんか。
川口国務大臣 先ほど申しましたように、米国が仮に将来新たな軍事行動をとる場合には、米国の国際法上の権利及び義務に合致をして行うということは当然であると考えております。
松本(善)委員 それは抽象的に述べられているわけですけれども、安全保障理事会の決議で、自衛のため以外には軍事行動をとらない、武力行使をしない。先制的な軍事行動をとるということになりますと、これは根本的に世界の秩序といいますか、そういうものが変わってくるんではないか。
 ワシントン・ポストの六月二日付、大統領の演説の翌日の報道では、演説は、九月十一日以降の世界における米国の新たな役割をブッシュがどう考えているかについて最も広範に定義づけた最新のものである、彼は、米国が時と場所を選び、先制、一方的軍事行動を行うだけでなく、テロと侵略に関与する者たちを罰するし、善と邪悪の間の道徳的明確さを受け入れさせるために力を入れると述べた、先制攻撃の戦略態勢は、米軍が軍事力に関する考え方を抜本的に転換することを必要とするだろうというふうに言っています。
 米軍が先制攻撃戦略をとるという軍事方針の大転換をしたんだというふうにワシントン・ポストは言っているんですね。これは、米軍の方針の大転換だけではなくて、世界に対して重大なことを言っているというふうに私は思います。
 私は、大臣に聞きたいのは、今言われたのは、言うならば、アメリカが国際法違反をするわけはないというふうに言われたのと同じだと思います。新たな軍事行動をとる場合は、米国の国際法上の権利及び義務に合致して行うと。先制攻撃が国際法に合致をしているという考えで大きく軍事行動を転換しようとしている、そういう認識を明らかにしたワシントン・ポストの報道、見解、これは違っていると思いますか。
川口国務大臣 一つの新聞の言ったことについて一つ一つコメントをするということについては、差し控えたいと思います。
 委員が引用になられた記事は、ワシントン・ポストが米国の政策をどう考えるかということでございますので、ワシントン・ポストの見解であるわけでございまして、一つ一つそれについてコメントを申し上げることは差し控えたいということでございます。
松本(善)委員 ワシントン・ポストは一例として言っただけで、全体を見るならば軍事戦略を大きく転換しようとしているということは、私は客観的に見ればもう明らかだと思います。明らかに国連憲章五十一条に違反をしている。この五十一条の解釈が、米国はこういうふうに解釈をしてもよろしい、ほかの国はこういうふうに解釈はしてはいけないということになりますと、これは国際法が本当にめちゃくちゃになる。どこの国も先制攻撃をしてもよろしいということにならざるを得ない、それは大変な事態だと私は思うんです。
 このアメリカ政府の先制攻撃戦略が核攻撃と結びついているということが重大なんだと思うんです。ブッシュ政権の新核戦略、核態勢の見直し、これは一月八日のアメリカ国防総省の報告でありますが、テロへの対抗、大量破壊兵器への対抗という名目で、七カ国を具体的に名指しで核兵器の使用計画の策定を指示した。この七カ国の中には、核兵器国である中国、ロシアだけでなく、北朝鮮、イラク、イラン、リビア、シリアという非核保有国も含まれております。この国防総省の報告とそれからブッシュ大統領の今問題にしました演説とをあわせますと、これは核の先制攻撃をやる、非核保有国にもやるということになります。
 大臣は、これについてどう考えられますか。これを容認することができますか、日本は。
川口国務大臣 幾つかのことをおっしゃっていらっしゃいますが、一つは、核態勢の見直し、NPRが核兵器の使用等に言及をしているという報道について、これに対しては米国防省が、誤解を招くようなものであるとしつつもコメントをしない旨発表をしたと承知をいたしておりますので、これについて直接にコメントをするのは控えたいと思います。
 それから、米国が戦略あるいは戦術を転換したかどうかということでございますけれども、委員がおっしゃった国連憲章の五十一条におきましては、自衛権の発動が認められるのは武力攻撃が発生した場合であってというふうに書いてあるわけでございます。武力攻撃のおそれや危険があるというだけでは自衛権は発動することはできないということでございますが、他方で、自衛権の発動は武力攻撃によって現実の被害が発生しなければ認められないというものでもないというふうに考えます。武力攻撃が発生したときというのは、基本的に武力攻撃が始まったとき、すなわち相手が武力攻撃に着手をしたときという意味であると理解をいたしております。
 したがって、アメリカは核兵器による先制攻撃を考えているのではないかというふうにおっしゃられているわけでございますけれども、例えば特定の、米国はこの一月に、例えばイラク等について行動パターンを変えるようにということを言いましたけれども、悪の枢軸という言葉を使いましたけれども、米国政府は、私が理解をしていますところでは、イラク等についてはその行動パターンを変えるように国際社会が協力をする必要がある、米国はすべての選択肢を排除していないけれども、平和的に解決したいと考えていて外交努力を続ける用意がある、続ける考えであるということを表明しているわけでございます。
 したがって、米国が特定の国に対して軍事行動をとるということを予断して考えるということは今適切ではないというふうに思っております。
松本(善)委員 六月十二日の党首討論では、小泉総理は、コメントをしないというふうに言うのではなくて、このこと自体は否定をしないで、核態勢の見直し報告については否定をしないで答弁をしております。これは前提として認めているということだと思います。
 それで、これはアメリカでも同じで、ボルトン国務次官もこの秘密報告書については否定も肯定もしないで、非核保有国への核兵器の不使用という米国のこれらの政策について、全体的な見方を変えようとしている、その大部分は核態勢の見直しの結論に盛り込まれている、これはアメリカの軍備管理協会のホームページです。これは事実上内容を認めている。これはコメントをしないというようなことで済むものではないと私は思います。
 先制核攻撃を行うという言明、具体的な行動をとるということではありませんけれども、その言明は、これはアメリカだけの問題ではなくて、人類全体に及ぶ、核戦争を先に起こすということがあるんだということを言っているわけです。これは唯一の被爆国である我が国として容認することは絶対できないと思いますけれども、これは黙ってほっておくんですか。アメリカに対して、これはそうすべきでないということをはっきり言明すべきではありませんか。
川口国務大臣 先ほどのNPRの話でございますけれども、これについては、パウエル国務長官は上院の公聴会で、我々が先制攻撃を考えているとか、あるいは我々が核の敷居を下げたとかいうような報道等について言えば、我々はそのようなことは行っていない、NPRを読んでも、米国が核兵器を使用する可能性が高まるとか、米国が核兵器の使用に最も速やかに進むという結論には至らないと述べていると私は承知をいたしております。
 したがいまして、委員がおっしゃったような、アメリカが核による先制攻撃を考えているというふうに私は承知はいたしておりません。
松本(善)委員 しかし一方で、この公聴会で、我々は常に先制攻撃の選択肢を持っているということを言っているわけです。全体の趣旨を見るならば、これはやはり大きな転換をしようとしているということだと思うんです。私は、先制核攻撃の危険があるというふうに見ないということは、殊さらに目を背けているということではないかと思います。
 四月の非同盟諸国の会議では、これは重大な約束違反だと批判するコミュニケを出しております。アメリカの方針について非同盟諸国会議が非常に心配をしてコメントをしている、コミュニケを出している。だから、やはり明確に先制核攻撃はしないようにということを日本政府がアメリカ政府に意思表示をする。なぜそれをやらないんですか。やっちゃいけないんですか。
川口国務大臣 先ほど申しましたように、米国が先制的な核攻撃をするというふうには私は承知をいたしておりませんので、そういうことを前提にした御質問に対してお答えするということは適切ではないと思います。
 それから、これは私から申し上げるまでもなく、国際の安全保障が結果的に核が使用されない形で確保されるのが望ましいということについては言うまでもないことでございます。我が国としては、核兵器が二度と使われるような事態があってはならないと考えておりまして、核軍縮に関する決議案を国連総会に提出するなど、核軍縮、不拡散のための外交努力を積極的に行ってきているわけでございます。我が国としては、核兵器を含む軍備削減、国際的核不拡散体制の堅持、強化等の努力を重ねて、核兵器を必要としないような平和な国際社会をつくっていくことが重要であると考えています。
松本(善)委員 内外の報道はみんな、アメリカの今の先制攻撃の方針、それから核使用の方針について非常に危惧を抱いた報道をしていることは明白です。私は、殊さらにそれをそうではないと言うのは間違っているんじゃないか。
 特に私が指摘をしたいと思いますのは、昨年十一月二十九日の国連総会で、非核保有国に対する核攻撃を禁止する国際協定を締結すべきだという決議がなされて、日本も賛成をしております。この立場からするならば、やはりそういう懸念があるような言明がたくさんなされているわけですから、アメリカ政府に対して改めて、非核保有国に対する核攻撃をするなということを言うのは当然ではありませんか。私は唯一の被爆国の政府としては当然だと思うんですけれども、なぜそれをやらないのか。
 今大臣は、アメリカの戦略はそういうふうに見ていないと言われるんですけれども、それは世間に通用しないですよ。これだけ何人も何人ものアメリカの高官が先制攻撃について発言し、そして核態勢の見直しについては、これは米国政府も否定はしないという状況で、それが公然と世界で論議をされている。その中で、外務大臣のように、そんなことはないんだ、私はそれは通用しないんじゃないか。そういう懸念があるならば、我が国の立場としては、そういう非核保有国に対して核攻撃をするというようなことをしない、あるいは先制攻撃をするというようなことをしないようにということを明確に意思表示をしてもいいじゃないですか。そういうことをやるとなぜいけないんですか。
川口国務大臣 米国が核による先制攻撃を行うということを予断した御質問にはお答えをすることが適切ではないと考えるわけです。
松本(善)委員 私は予断ではないと思います。私だけが勝手にそういう判断をしているんじゃなくて、非核保有国がそういうコミュニケを出しているじゃないですか。それから、イラク攻撃については先制攻撃をするということ、さっきもちょっと言われましたけれども、悪の枢軸という三つの国に対してこの先制攻撃があり得る、これは今、世界じゅうがその心配をしているわけですよ。イラクに対する攻撃は十一月だとかあるいは年内だとかいうようなことを軍事専門家が言うとか、そういうような事態になっている。私は、外務大臣の答弁は大変、率直に言いますならば、国際情勢の動きに対して鈍感なんじゃないかと。それでいいんだろうか。
 総理は、昨年の広島の平和祈念式に出席をしたときに、我が国は、今後とも国際社会の先頭に立って、核軍縮、核不拡散の取り組みを推し進め、核兵器の廃絶に全力で取り組んでまいります、全世界の先頭に立って核兵器の廃絶に取り組むと。
 これは、核使用の懸念があれば、当然にそれについての懸念を表明するというのが、核兵器の廃絶のために全世界の先頭に立ってやるということだ。そういうことをしなければ、小泉内閣はうそをついているということ、広島でだけは適当なことを言って、実際の行動はやらないということになると私は思います。
 私は、今の外務大臣の答弁ではもちろん納得できないです。私は、改めて、この問題についてのアメリカの言明を詳細に調べて、そして日本の、唯一の被爆国の政府としての行動をとる責任があると思いますが、重ねて伺いたいと思います。
川口国務大臣 我が国としての核兵器の使用に関する考え方といいますのは、委員御案内のとおりでございますけれども、国際の安全保障が、結果的に核が使用されない形で確保されるのが望ましいということは言うまでもないわけでございます。
 他方で、現実の国際社会におきまして、いまだ核戦力を含む大規模な軍事力が存在をしているわけでございます。核兵器のみを他の兵器と切り離して取り扱おうとしても、それは現実的ではなくて、かえって抑止のバランスを崩す。そして、安全保障を損なうこともあり得るわけでございます。安全保障を考えるに当たっては、関係国を取り巻く諸情勢に加えまして、核兵器等の大量破壊兵器や通常兵器の関係等を総合的にとらえて対処しなければならないと考えます。
 いずれにいたしましても、我が国としては、核兵器が二度と使われるような事態があってはならないと考えておりまして、核軍縮に関する決議案を国連総会に提出をするなど、核軍縮、不拡散のための外交努力を積極的に行ってきております。我が国としては、核兵器を含む軍備削減、国際的な核不拡散体制の維持強化等の努力を重ねて、核兵器を必要としないような平和な国際社会をつくるために努力をするということが大事だと考えています。
松本(善)委員 時間ですので終わろうと思いますが、やはり、一般的な核兵器廃絶の方針をどれだけ述べても、現実が動いてきているときにきちっとした行動をとらなければ、それは口先だけだということになる。私は、もう時間がありませんのでそのほかの引用をしませんけれども、ニューヨーク・タイムズやワシントン・ポストだけではありません、世界じゅうの世論が心配をしている事態が起こっているんですよ。
 私は、改めてまたこの問題について質問をするということを申し上げて、質問を終わります。
吉田委員長 次に、東門美津子君。
東門委員 まず最初に、中東和平問題について伺います。
 ブッシュ大統領の六月二十四日の演説において示された中東和平構想は、前回の本委員会でも何人かの委員の方が指摘していましたように、直接名指しはされなかったものの、新しい指導者の選出を求めるという表現で、アラファト議長の排除を求めるものです。パレスチナ人の指導者はパレスチナ人自身が選ぶべきであり、外国がこれに口出しすべきではありません。自分の意に沿わないからといって、他国の政府首脳の交代を求めるというブッシュ政権の姿勢は、余りにも横暴だと言えます。
 他方で、イスラエルによるパレスチナへの侵攻については、即時撤退を求める明確な表現は含まれていません。これでは、中立的な立場での仲介とは言えません。
 ブッシュ政権の発足以降、米国は一国主義的な傾向をますます強め、ABM制限条約からの脱退、京都議定書からの離脱、悪の枢軸発言等、力による外交を推し進めています。だれもが納得できる理念を示していません。力で抑えつけるだけでは、本当の意味での世界の平和と安定にはつながりません。
 我が国は、従来、パレスチナとイスラエルの双方に対し、暴力の悪循環を断ち切り、早期に和平交渉に復帰するよう呼びかけていました。そして、アラファト議長を民主的な選挙によって選ばれたパレスチナの正当な指導者と認めており、このことは、前回の委員会で、川口外務大臣の答弁でも確認されています。
 そのような我が国の従来からの方針からすれば、パレスチナ国家建設など一部評価できる部分は含まれているものの、一方的にアラファト議長の排除を求めるというブッシュ大統領の構想を無条件に支持することはできないはずです。
 それなのに、今回のサミットでは、欧州、カナダ、ロシアが米国提案に慎重な姿勢を示す中で、小泉総理は、いち早くブッシュ提案を評価する姿勢を示しました。米国の方針に盲目的に追従するだけでは、我が国外交の影が薄くなるのみならず、中東地域において手が汚れていないという、我が国の絶好のポジションを生かすこともできなくなります。
 サミットでは、結局、米国の和平構想について、パレスチナの独立国家樹立を支持することについては首脳間で一致はしましたが、アラファト議長排除については合意されませんでした。来年のパレスチナの選挙の結果、選ばれた者がだれであっても、パレスチナの正当な指導者として認めるというのが、米国以外のサミット参加国首脳の共通認識であるはずであり、我が国としても、米国の姿勢に追従するだけではなく、米国に対して、言うべきことは言うという姿勢で臨むべきです。
 新たなパレスチナの指導者としてアラファト議長が再選されたとしても、パレスチナ人の民意を尊重して、その指導者を交渉相手として中東和平構想を推進するよう米国を説得すべきだと考えますが、外務大臣の御見解を伺いたいと思います。
川口国務大臣 ブッシュ大統領の演説でございますが、我が国は、ブッシュ大統領が演説によって、米国が和平に向けた積極的な関与をしていくという姿勢を表明したということを高く評価をしております。この評価は、我が国だけではなくて他の多くの国によって表明をされておりますし、さきのサミットでも、G8の首脳間でも共有をされたと考えております。
 また、パレスチナについては、改革、治安への真剣な取り組みとともに、パレスチナ国家の樹立に向けてパレスチナ人が希望を持つことの必要性について、首脳間で認識の一致を見たというところでございます。
 委員がおっしゃったように、我が国としては、アラファト議長が、民主的な選挙によって選ばれた、現在パレスチナを代表する正当な指導者であるということを考えております。我が国としては、アラファト議長が今改革を進めているところですので、アラファト議長のパレスチナ自治政府の改革、そして治安改革の支援を行って、公正な選挙でパレスチナ人自身が新しい指導者を選出するということを行うことが大事であって、こうして選ばれた指導者が、テロ防止あるいは治安組織の改革等に向けて改革を行って、和平の交渉に取り組んでいくということが重要であると考えております。
東門委員 随分おっしゃったんですが、私が最後に申し上げたのは、これまでいろいろ米国の発言がありました。ブッシュ大統領の発言もそうですが、パウエル長官あるいはライスさんの発言もありました。そういうのを見ていますと、いや、もう必ずかえるんだというふうに私は感じているわけです。それではなくて、もし次の選挙でアラファト議長が再選されたら、やはりその人がパレスチナ人が選んだ人なんだということを日本はアメリカに外務大臣の立場で申し上げるべきではありませんかということを私はお聞きしたんですが、その点いかがですか。もう一度お願いします。その点だけで結構です。
川口国務大臣 我が国としては、先ほども申しましたけれども、来る選挙で選ばれた指導者がパレスチナの指導者であるというふうに考えております。
東門委員 私は、アメリカをむしろ説得すべきではないかと申し上げたのですが、もうよろしいです。進みます。
 我が国は従来からも、パレスチナとイスラエルの双方が暴力の悪循環を断ち切り、話し合いのテーブルに着くよう求めていました。川口外務大臣の六月のイスラエル・パレスチナ訪問においても、双方に対し、暴力の悪循環を断ち切るべきことを求めたようですが、イスラエル側は、暴力の悪循環ではなくテロに対する自衛権を行使しているだけであると言い、パレスチナ側は、イスラエルがパレスチナの治安維持能力を壊しているとして、お互いに相手の方に責任があると主張したようですが、実際に現地を見てこられた外務大臣の御認識としては、どちらの主張により説得力があると感じられたでしょうか、お聞かせいただきたいと思います。
川口国務大臣 それぞれイスラエルにしてもパレスチナにしても、今までの長い歴史の中で相手に対する不信感を持っておりまして、二つの間の信頼感を醸成していくということは非常に大変なことであると思います。
 イスラエルは、まさに今委員がおっしゃったようなことを思っているわけでございますし、パレスチナも同じことを言っているということでございまして、現地に行きまして、双方それぞれの立場についての認識を一層深くいたしましたし、この情勢を打開していくことの困難さも改めて感じたわけでございます。
 どちらがより説得的かということについては、これは、それぞれの立場で物事を考え、言っているということだと思います。
東門委員 では、沖縄にある米軍基地の問題について質問いたします。
 前回の委員会におきまして、ベースタクシーに対する米軍による入域料といいますか、入構料とおっしゃるのでしょうか、入構料徴収の根拠を尋ねた際、藤崎北米局長は、地位協定第三条において米軍に基地の管理権があること、そして、第十五条に基づく歳出外資金諸機関が料金を徴収していることについては、同機関が独立採算制を前提として運営されている以上問題ないと答弁しました。
 しかし、第三条においては管理権を認めてはいますが、合衆国すなわち米国政府に対して認めているのであり、歳出外資金諸機関に対して管理権を認めているわけではありません。米国政府が日本で営利活動を行うことなどだれも想定していないはずであり、米国政府に管理権があるからといって、歳出外資金諸機関がそれを利用して営利活動を行ってもいいとはならないと思います。
 そもそも第十五条の歳出外機関の規定は、民間企業的な活動を行うこれらの機関に対し、その活動が基地内で行われるという特殊性から、日本の規制、免許、手数料、租税等を課さないという趣旨の規定であり、これらの機関はあくまでも民間企業的な活動をする機関であって、米国政府と同等の立場にあるわけではないはずです。
 政府は、地位協定第十五条の歳出外機関を米国政府と同等のものと位置づけているのか、どうでしょうか。政府の認識を伺いたいと思います。
藤崎政府参考人 お答えいたします。
 歳出外機関でございますMCCSでございますが、これが政府と全く同じかということでございますと、これは全く政府と同じではございません。他方、日米地位協定の十五条で歳出外諸機関というものは認められているわけでございます。
 この歳出外機関というものは、日米地位協定の十五条に基づきまして、施設・区域内に設置することができるということを決めているわけでございますけれども、実際に、御質問のございましたバスにつきましても、施設・区域内に設置されているわけでございます。
 他方、この活動につきまして、施設・区域内に限られるかということでございますが、これは、バスの運行の範囲というのが施設・区域外に及んでいるということでございまして、これが日米地位協定、今委員から御指摘のございました十五条一項の趣旨を逸脱するというものとは私どもは解しておりません。
東門委員 局長、質問をしっかり聞いてください。私はバスの話はしませんでした。なぜMCCSが出てくるのかもわかりません。ベースタクシーの話をしたんですよ、ベースタクシーの。入構料徴収の話をしたんですよ。
 どうなんですか、入構料徴収。これは多分エクスチェンジがやっていると思うんですが、歳出外機関を米国政府と同等のものと位置づけているのかということを聞いているんです。管理権の話をこの間局長はなさったので、それを聞いているんです。もう一度簡潔にお答えください。
藤崎政府参考人 歳出外諸機関ということでございますと、MCCSもエクスチェンジサービスも、この十五条一項に定められた機関でございます。バスの方はMCCSでございますし、タクシーの方はエクスチェンジサービスで認めているわけでございます。
 この歳出外諸機関は、これ自体が政府ではございませんが、地位協定十五条に基づきまして認められておるという意味で政府と同等の機関である、こういうことでございます。ただ、これが米国政府自身かといえば米国政府ではございませんけれども、米国政府と同等の機関ということで、あえてわざわざ地位協定十五条で認められているということでございます。
東門委員 ということは、第三条の管理権とは関係がないということですね。この間局長が答弁なさった、管理権があることだからとおっしゃったんですが、それとは関係ないということですか。そこだけはっきりしてください。
藤崎政府参考人 御指摘の、三条と十五条の関係でございますけれども、基地、施設・区域の管理権ということを認めておりますのは、委員が今言われた三条でございます。それで、どういうタクシーが、あるいはバスが、あるいは使用者が施設・区域に入ることができるかということは、これは管理権の問題でございまして、したがいまして三条も関係しているわけでございます。
 他方、入構料徴収という観点でございますと、これは十五条の歳出外機関が担当しているということでございます。
東門委員 これまで、この第十五条の解釈、それと同条に基づく歳出外機関の活動について、日米間での協議が行われたことがありますか。また、何らかの取り決めが存在するのか、どうでしょうか。もしあるのでしたら、資料を提出していただきたいと思います。後でもいいんですが、いかがでしょうか。
藤崎政府参考人 今歳出外機関についてどういう合意があるのかということでございますが、まさに十五条一項が日米間の合意でございます。
東門委員 ということは、それでしっかり読める、そこが根拠だということですね。そうですね。――わかりました。後でまた聞きます。
 前回の本委員会で、在本土米軍基地への民間タクシーの乗り入れは一切ないのかと私が質問しましたら、それに対して局長は、現在民間タクシーが入構していないことを調査したと答弁しておられましたが、その事実は間違いありませんね。もう一度お聞きいたします。
藤崎政府参考人 お答えいたします。
 今おっしゃった事実というのは、私どもが前回調査したということは事実でございます。これは私どもが米側に確認しましたところ、現在沖縄におけるような形の入構は認めていないということでございましたが、もしこれで不正確ということを御指摘になっておられるのであれば、改めて調査したいと思います。
東門委員 全く情けないですね、こういう答弁は。これで不正確というのであればという言い方ですか。調査しましたとおっしゃったんですよ、前回。本当になさったんですか。
 私はしました。横田基地も聞きました。横須賀も聞きました。佐世保も聞きました。入構料は徴収していません。しかし、パスをもらってちゃんと出入りしているんです。なぜ沖縄だけなんですかとこの間聞きましたら、いや、本土の場合はゲートでおりているんだというお話でした。
 それでいいんですか。地位協定の十五条に根拠があります、そういう形でいいんでしょうか、局長。もし不正確というのであればというこんなあいまいな答弁をしていて、本当に日米地位協定の見直しにも手もつけないというような、私には理解できません。答弁してください。
藤崎政府参考人 今委員がそういうふうにおっしゃるのであれば、私どもは改めて調査させていただきます。
東門委員 何と言葉を継いでいいのかわかりません。すごいずさんな仕事のやり方ですね。いかに地位協定の見直しをずっとお願いしていても、沖縄の状況だけはこうですよと言っても、いや、頑張っています、やっておりますといつもおっしゃる。何もやっていないじゃないですか。アメリカに対して何も言っていないじゃないですか。調査さえしないじゃないですか。正直言って、もう本当は終わりたいという気持ちです。しかし、大事な時間ですから続けます。
 しっかりと調査をして出してください、どうなっているか。なぜ沖縄だけ入構料を徴収しているのか、それは本当に正しいことなのか。私はそれを本土でやれとは言いません。沖縄も撤廃すべきです。徴収したものは返してもらってください。それだけはっきり言っておきます。余りにも情けないということを強く申し上げておきます。
 大臣、ぜひその件で指導してください。地位協定というものは本当に不平等なんです。それも沖縄だけが不平等に扱われるということは、絶対我慢ができません。そこのところをしっかり御指導お願いいたします。
 この間も通告してありました急使というものの特権的地位の是非についてお伺いいたします。
 ことしの六月、那覇市内の飲食店で窃盗容疑で逮捕された米軍人が、日米合同委員会合意の刑事裁判管轄に関する事項に定められた急使の身分証明書を持っていたことから、逮捕直後に釈放されるという事件があったとの報道がありました。事件そのものは千五百円相当のライター一個を盗んだというものであり、釈放されたこと自体にあえて異論を挟むつもりはありませんが、問題は、また一つ米軍の特権が明らかになったことです。
 刑事裁判管轄に関する事項では、急使その他機密文書もしくは機密資料を運搬または送達する任務に従事する軍務要員は、その氏名及び所属部隊を確かめるという必要以上に、いかなる目的のためにも身柄を拘束されることはないとされているとのことですが、急使の任務を遂行途中であるというのならともかく、プライベートで飲食をしていた場所で行われたことについてまで、急使の身分証明書により逮捕できないというのは納得がいきません。なぜプライベートでも急使としての扱いをしなければならないのか、お聞かせください。
川口国務大臣 この件につきましては、急使というのは今委員がおっしゃったようなことになっているわけでございますけれども、他方で、委員がおっしゃっていらっしゃいますように、この六月に発生をした窃盗容疑事件につきましては、逮捕された米軍人が深夜に飲食をしていたということでございました。
 それで、本件の合同委員会の合意の適切な運用という観点からは、深夜にまさにプライベートで飲食をしていても急使の仕事をしていると言えるかどうかということについて、私も疑問を持ちました。ということで、これについては、急使の任務遂行のあり方について米側に申し入れるように言いまして、米側に申し入れてございます。
東門委員 ぜひ、それが来ましたら、どういうことなのか、お知らせいただきたいと思います。
 それで、今回の急使、その方は整備士だということですが、そういう今回の事件を見て私たちも本当に驚いたんですが、急使という身分証明書を持っていれば何をしてもいい、どういう犯罪を犯してもいいのかなと思うくらい驚き、今回はたまたまそれが軽微な犯罪だったので、みんなそんなに大きな問題にはなっていないと思うんですが、でも、これは考えればとても大きな問題になり得るんです。
 それで、これは局長にお伺いします。沖縄の基地に急使という身分証明書を持つ兵士がいますか。いるなら、どれくらいいるのか教えていただきたいと思います。
藤崎政府参考人 今、私直ちにここで、何名の者が急使の証明を有しているか承知しておりませんので、早速確認したいと思います。
東門委員 よろしくお願いします。
 今回の事件だけでなく、今までに起こった事件、事故、さらには有料バスあるいはベースタクシーの問題でも、地位協定がまるで米軍に治外法権を認めたような使い方をされています。これでは、幕末の不平等条約ならぬ平成の不平等条約です。明治時代の先人たちは、不平等条約を解消するため、全力を傾けました。小泉内閣においても、先人たちの努力を見習い、国民の権利を守るため、地位協定の抜本的見直しに取り組むべきではないかと思いますが、大臣、いかがでしょうか。
川口国務大臣 地位協定につきましては、これも同じことの繰り返しになってしまいますけれども、その都度運用を改善していくということで対応していくということが適切であるというふうに考えております。そして、その改善で効果が見られないということがありました場合には、これは相手があることではございますけれども、地位協定の改定を視野に入れていくということが日本政府の立場でございます。
東門委員 大臣に就任されてから、もうしっかりと五カ月たっています。大臣は、もう既に地位協定には精通しておられると思います。いかがでしょうか。本当に、この地位協定は今大臣がおっしゃっているようなことでいいのでしょうか。運用の改善がしっかりと効果的に行われていると思いますか。本当にいかがでしょうか。全部お読みいただいて、私がこの委員会で、これまでにも何度も質問をしてきました。お聞きになっておられると思います。それを判断されて、本当に地位協定というものは運用の改善で効果的になされていると思われるのでしょうか。そこのところをもう一回お聞かせください。それで終わりたいと思います。
川口国務大臣 なお一層、運用の改善に努めてまいりたいと考えております。
東門委員 もうこれ以上言う気もありませんので、終わります。
吉田委員長 各委員の質疑は終局いたしました。
     ――――◇―――――
吉田委員長 次に、アジア=太平洋郵便連合憲章の第二追加議定書及びアジア=太平洋郵便連合一般規則の追加議定書の締結について承認を求めるの件を議題といたします。
 政府から趣旨の説明を聴取いたします。外務大臣川口順子君。
    ―――――――――――――
 アジア=太平洋郵便連合憲章の第二追加議定書及びアジア=太平洋郵便連合一般規則の追加議定書の締結について承認を求めるの件
    〔本号末尾に掲載〕
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川口国務大臣 ただいま議題となりましたアジア=太平洋郵便連合憲章の第二追加議定書及びアジア=太平洋郵便連合一般規則の追加議定書の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。
 これらの追加議定書は、平成十二年九月にテヘランで開催されたアジア=太平洋郵便連合の第八回大会議において採択されたものであります。
 これらの追加議定書は、アジア=太平洋郵便連合の組織及び運営の合理化のため、アジア=太平洋郵便連合憲章及びアジア=太平洋郵便連合一般規則の改正について規定するものであります。
 我が国がこれらの追加議定書を締結することは、引き続きアジア=太平洋郵便連合の加盟国としてアジア=太平洋地域における国際郵便業務を円滑に行う上で必要であると認められます。
 よって、ここに、これらの追加議定書の締結について御承認を求める次第であります。
 何とぞ、御審議の上、速やかに御承認いただきますようお願いいたします。
吉田委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
 次回は、来る七月十七日水曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後四時四十一分散会


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