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第22号 平成14年7月17日(水曜日)

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平成十四年七月十七日(水曜日)
    午前十時開議
 出席委員
   委員長 吉田 公一君
   理事 浅野 勝人君 理事 石破  茂君
   理事 坂井 隆憲君 理事 西川 公也君
   理事 首藤 信彦君 理事 中川 正春君
   理事 上田  勇君 理事 土田 龍司君
      伊藤信太郎君    今村 雅弘君
      小坂 憲次君    中本 太衛君
      丹羽 雄哉君    原田 義昭君
      細田 博之君    松野 博一君
      水野 賢一君    宮澤 洋一君
      望月 義夫君    伊藤 英成君
      金子善次郎君    桑原  豊君
      武正 公一君    前田 雄吉君
      山村  健君    丸谷 佳織君
      松本 善明君    東門美津子君
      松浪健四郎君    鹿野 道彦君
      柿澤 弘治君
    …………………………………
   外務大臣         川口 順子君
   外務副大臣        植竹 繁雄君
   外務大臣政務官      今村 雅弘君
   外務大臣政務官      松浪健四郎君
   外務大臣政務官      水野 賢一君
   政府参考人
   (警察庁警備局長)    漆間  巌君
   政府参考人
   (防衛施設庁建設部長)  中矢 信之君
   政府参考人
   (総務省郵政企画管理局長
   )            團  宏明君
   政府参考人
   (外務省大臣官房長)   北島 信一君
   政府参考人
   (外務省大臣官房審議官) 林  景一君
   政府参考人
   (外務省大臣官房文化交流
   部長)          糠澤 和夫君
   政府参考人
   (外務省大臣官房領事移住
   部長)          小野 正昭君
   政府参考人
   (外務省総合外交政策局長
   )            谷内正太郎君
   政府参考人
   (外務省総合外交政策局国
   際社会協力部長)     高橋 恒一君
   政府参考人
   (外務省アジア大洋州局長
   )            田中  均君
   政府参考人
   (外務省北米局長)    藤崎 一郎君
   政府参考人
   (外務省中東アフリカ局長
   )            安藤 裕康君
   政府参考人
   (外務省経済局長)   佐々江賢一郎君
   外務委員会専門員     辻本  甫君
    ―――――――――――――
委員の異動
七月十七日
 辞任         補欠選任
  高村 正彦君     伊藤信太郎君
  細田 博之君     松野 博一君
  木下  厚君     武正 公一君
  前田 雄吉君     山村  健君
同日
 辞任         補欠選任
  伊藤信太郎君     高村 正彦君
  松野 博一君     細田 博之君
  武正 公一君     木下  厚君
  山村  健君     前田 雄吉君
    ―――――――――――――
七月十六日
 刑を言い渡された者の移送に関する条約の締結について承認を求めるの件(条約第一四号)(参議院送付)
同月十七日
 オゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書の改正(締約国の第九回会合において採択されたもの)の受諾について承認を求めるの件(条約第六号)(参議院送付)
 オゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書の改正の受諾について承認を求めるの件(条約第七号)(参議院送付)
 残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約の締結について承認を求めるの件(条約第八号)(参議院送付)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 アジア=太平洋郵便連合憲章の第二追加議定書及びアジア=太平洋郵便連合一般規則の追加議定書の締結について承認を求めるの件(条約第五号)
 刑を言い渡された者の移送に関する条約の締結について承認を求めるの件(条約第一四号)(参議院送付)


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     ――――◇―――――
吉田委員長 これより会議を開きます。
 アジア=太平洋郵便連合憲章の第二追加議定書及びアジア=太平洋郵便連合一般規則の追加議定書の締結について承認を求めるの件を議題といたします。
 この際、お諮りいたします。
 本件審査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房長北島信一君、大臣官房審議官林景一君、文化交流部長糠澤和夫君、領事移住部長小野正昭君、総合外交政策局長谷内正太郎君、国際社会協力部長高橋恒一君、アジア大洋州局長田中均君、北米局長藤崎一郎君、中東アフリカ局長安藤裕康君、経済局長佐々江賢一郎君、警察庁警備局長漆間巌君、防衛施設庁建設部長中矢信之君、総務省郵政企画管理局長團宏明君の出席を求め、それぞれ説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
吉田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
吉田委員長 これより質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。最初に、伊藤英成君。
伊藤(英)委員 民主党の伊藤英成でございます。
 まず最初に、外務大臣にお伺いいたしますけれども、きょうの新聞やテレビでも報道されておりますが、外務省の人事の問題で、西田経済協力局長の後にといいましょうか、その交代後ということでしょうか、平沼大臣にお願いをして経済産業省から人を充てるということについていろいろ報道されております。
 実は、私自身は、こういうことを言っていいかどうかわかりませんが、個人的には、西田経済協力局長は今の外務省の中で大変な逸材ではないか、こんな感じを持っていたんですけれども、今回、どういうことで、何のために、何を考えてそういう人事を行おうとされているのか、まず伺います。
川口国務大臣 国会も終わりに近づいてきまして、各省人事の季節に入っているわけでございまして、それぞれいろいろな構想でやっていらっしゃると思いますけれども、外務省としても、定期異動の一環ということで、人事は今いろいろ考えつつございます。
 それで、個別の人事につきましては、これは局長以上の人事だったと思いますけれども、官邸の人事検討会議というプロセスがございまして、そういう過程をきちんと経て決まっていくということでございますので、現在さまざまな人事を検討中でございまして、今の御質問については、検討中であるということを申し上げさせていただきたいと思います。
 それで、個別の人事ということについてはそういうことでございますが、一般論として私が今考えておりますことでございますけれども、まず、人事について、これは大分前に、この夏を目途に約十人ぐらいの方に外部から来ていただくということを申し上げまして、それは本省の局長、審議官等、それから大使ということでお話をさせていただいておりますけれども、今のところ、本省については三人、それから大使については三人、外務省以外の方にお願いを既にいたしております。外務省改革の一環として、意識改革というのは引き続き重要でございますので、十人を目途にということを申し上げておりますので、それは引き続きその流れとして続けたいと考えております。
 それからさらに、外務省の改革の中で、私は十の改革ということを申し上げたわけでございます。これは二月に申し上げましたけれども、その一つの項目として、経済協力について、きちんとした文言、どういう言葉を使ったかちょっと覚えておりませんけれども、透明性あるいは効率性という観点から改革が必要だと考えております。
 それで、その過程では、既に西田局長の指導といいますか、そのリーダーシップのもとで、外務省は経済協力についてかなり改革の案を出してきておりまして、先般、十五の改革について発表させていただきましたし、私自身が議長をいたしまして、これもはっきりとした名前、ちょっと違っているかもしれませんが、総合政策会議という会議をいたしまして、これはもう既に二回会議を開いております。こういった路線を踏まえてさらなる改革を進めることが大事だというふうに考えております。
 そういったさまざまなことを考えながら人事については進めていきたいと考えておりますけれども、個別の人事につきましては、先ほど申し上げましたようなことで、ただいま検討中であるというふうに申し上げさせていただきたいと思います。
伊藤(英)委員 けさのテレビのニュースでもそうですけれども、あるいは新聞等でもそうですが、検討中なのかもしれませんが、方針といいましょうか、そういうものはほぼ確定しているんだろう、こう思うんです。
 これは調整中なんですが、大臣はどういうふうにしたいと思っているんですか。
川口国務大臣 一般論は先ほど申し上げたとおりでございますけれども、個別の人事につきましては、本当に、まことに申しわけないんですけれども、官邸のプロセスをきちんと経た上で決まっていくということでございますので、個別の議論ということでございましたら、恐縮ですが、検討中であるというふうに申し上げることになるかと思います。
伊藤(英)委員 この経済協力のODAの問題というのは本当に大変重要な話なんですが、では、いわゆるODA改革ということについて、大臣はこれからどういうふうにしたいと思っていらっしゃいますか。
 実は、一兆円近い額もあるんですが、現在の日本の財政状況やら、あるいは最近の日本の国債の格付の引き下げの話にしてもそうなんですが、私は、当面、しばらくの間は、日本の今後のためにも、日本はいわゆるODAの総額についてもかなり大きく落とした方がいいと思っているんですよ。
 そういう額を落とすことやら、あるいはどういう国に、どういう分野にこれからODAをシフトさせるか、あるいは重点を置いていくかということは、今までの延長線上じゃなくて、大きく、それこそ抜本的に変えるべきだ、こう思っているんですが、外務大臣は今どういうふうに思っていますか。
川口国務大臣 ODAについて私が基本的なところで考えていることは、国民の税金を使ってODA、援助をやっていくということでございますから、これはきちんと透明性を確保して、そしてこのお金をむだなく効率的に使っていく必要があるということでございます。
 そして、これについては、どういうふうに考えていくかということで、先ほど申しました、私が議長をやっているODA総合戦略会議ですけれども、ここで外部の方に入っていただいて、皆さんODAの専門家でいらっしゃるわけですけれども、学者の視点あるいはNGOの視点あるいは企業の視点、さまざまな立場から携わっている人たちに入っていただいてODAの戦略を考えていくということでございます。
 それから、実施の分野においては、NGOの方々とうまく連携をして、国の実施で手が回らない、よりきめ細かい分野でODAがきちんと実施をできるように、それも重要であると思っていまして、NGOの参加については別途の枠組みで一緒に議論をしていくということを考えております。
 それで、委員がおっしゃった金額のことでございますけれども、私は常々中で言っておりますことは、やはり国民の皆様にODAが必要であるということの認識をきちんといただくということが大事であって、そう思っていただくためには、まずODAの改革が必要だ、ODA改革が初めにありきであるということを言っております。
 それで、金額を減らした方がいいかどうかということでございますが、もちろん、効率的に透明性を持って資金を必要な分野に使うということですけれども、現在、国際的に考えますと、むしろ先進国は、ODA援助疲れを卒業して、援助が必要だというふうに変わってきております。
 例えば、この間のモントレー会議で、米国のブッシュ大統領は、ODAについては今後三年間で五十億ドルをふやしていくんだということを言っておりますし、EUは、GNPの比率を上げていくんだということを言っているわけでございまして、もしアメリカがそういうことで五十億ドルを三年間でふやし、我が国がODAの水準を今のままでずっと維持したというふうに仮定をしても、二〇〇六年には我が国のODAの金額はアメリカの半分になってしまう、そういうことになるわけでございまして、やはり援助というのは我が国としては、国際的に貧困をなくす、あるいは人道的な立場、あるいは国づくりの支援、さまざまな角度から非常に重要なことでございますので、改革の上に乗った上でODAの金額がふえていくことが大事だろうと私は思います。
 その上で、重点化とおっしゃいましたけれども、これについては私は重要な検討事項だと思っておりまして、これもいろいろな観点がありますけれども、我が国全体の外交の一環として、ODAをどういう国に、そしてどういう分野にやっていくかということを考えていく必要があって、これをやっているのが私が議長をやっているODA総合戦略会議、そういうことでございます。
伊藤(英)委員 実は、今大臣も言われた、最近、外務省でODA改革、十五の具体策を出されました。これは何かというと、いわば行政の仕方、つまり行政改革ですね。そもそも、ODAをどういうふうにしようかというものでは全然ありませんよね。これは、いわばODA改革じゃないよね。これは外務省のODA改革というような代物では全然ないなというのが私の印象です。そんなもの当然の、仕事の仕方の問題だということであります。
 だから、そういう意味では、多分、先ほど言われたODA総合戦略会議というところで、本当にODAをどうしようかということだろうと私は思うんですよ。そこで結論が出るまで待とうというのか、大臣がこれからどういうふうにしていこうと思うかということに関連するわけなんですが、私は、さっき言ったように、額もだと思っていますけれども、その中身の問題についても、人材育成の教育の問題やら、あるいは環境の問題やら、エイズその他、いわば福祉といいましょうか、そうしたこと等について、あるいはソフトの面で日本が本当にやらなきゃいけないんだろうと私は思います。どう思いますか。
川口国務大臣 基本的に、おっしゃることには賛成でございます。
 まず、十五の改革が純粋な意味でのODAの改革ではない、行政の改革だとおっしゃられることについては、私は、国民の皆さんがODAについて考えていることにこたえるためには、この十五の改革で言っていることというのは非常に重要だと思っておりまして、これも立派なODA改革だと思っています。透明性、むだに使わない、ちゃんと評価をする、監査をする、その他、それを国民に適切に広報していく、非常に必要なことだと思っておりまして、一生懸命にやりたいと思っております。
 それからもう一つの、総合戦略会議で国別、分野別の基本政策を議論するということでございますけれども、これについては、たて糸と呼んでいますが、国別の話、よこ糸という分野の話。
 それで、分野の話については既に中期目標で考えていることがあるわけでございまして、それを必要に応じ、また議論をしながらということですし、国別については、今ODAの国別援助計画を順番につくっておりますので、その延長線上で引き続き幾つかの国についてはつくっていきたいと考えています。
 全体として外務省がどういう外交を展開するかという中で、どの国にどれぐらいの支援をするか、またどういう分野で支援をするかということについて総合的に、これは経済協力の分野だけではなくて、全体を考える中でのその一部として経済協力があると私は認識をしていまして、そういう意味で、これを検討していくということは非常に重要だと私は思います。
 そういう意味で、委員のおっしゃることと私はほぼ同じラインのことを考えていると思っています。
伊藤(英)委員 その組織的なことも考えていらっしゃいますか。
 実は、私ども民主党としても、このODAの部分についてはもう独立させた方がいい、だから、例えば経済協力庁とか、いわばODA庁という形で独立させて、そのトップは閣僚にした方がいい、こう思っているんですよ。そういうような構想についてはどう思われますか。
川口国務大臣 ODAをどういう形で考えていくか、実施もありますし、その政策レベルの話もありますけれども、それを今のように外務省や文科省やその他さまざまな省庁で、たしか十一ぐらいの省庁に分かれていると思いますが、やっていくのがいいのか、あるいはそれを、援助庁、いろいろな名前で呼ばれていますが、国際協力庁とかそういうところで一元的に決定し実施をしていくのがいいのかということは恐らく、私の知る限り、もう何十年議論になっているわけでございまして、いろいろな意見、立場がありますけれども、結論が出ないでいる。また、最近いろいろな御議論が引き続きあるということはよく承知をしています。
 これを考えるときに、幾つかの考え方があると思いますけれども、先般の行政改革でもこの点についてはいろいろ議論がありまして、昨年の一月から施行された中央省庁等改革基本法では、外務省が、政府のODAに関する全体的な企画等について、調整の中核としての機能を担うということとされているわけでございます。それで、外務省は、各府省間の連絡協議会を定期的に開催をする等で関係省庁の連携強化を行っているわけです。
 それから、今私が申し上げたそのODA総合戦略会議、私が議長をしているものですけれども、これは先般、二カ月ぐらい前だったでしょうか、第二次ODA改革懇談会というところで提案がなされたことを受けて始めた会議でございます。そしてまた、こういった会合を利用しつつ、この会合には各省の方もオブザーバーで出てきていただいておりますので、そういったことを通じて連携強化をしていく必要があると思います。
 ODAというのは、私は重要な外交のツールであると思っております。したがって、そういう観点から、別に閣僚を置いてやるのが適切なのか、そうではないのか。私は、適切ではないのではないか、私見でございますがそう思っておりますし、外務省としてもそう考えていると理解をしています。
伊藤(英)委員 その件についてはまた議論する機会があると思っております。
 冒頭私が申し上げた今度の局長人事の件で、私は、経済産業省から経済協力局長にというニュースを知ったときに、実は、率直に言うと、非常に驚きを感じました。本当にいいのかなという感じです。それは、経済産業省からということもあるな。あるなというのは、私は疑問に感じた一つであるということです。それから、もしも外務省以外の他の役所で考えたときに、経済産業省なのかなということなんですね、実は。要するに、これから日本のODAは、戦略的にという話を考えながらいろいろやるんだけれども、そのときに経済産業省かなという印象なんですよ。大臣はどうですか。
川口国務大臣 先ほど申しましたように、個別の人事につきましては検討中であるというふうに申し上げさせていただくということでございますけれども、一般論として申し上げまして、基本的に、今まで既に外務省にほかの省庁の人、これは大使館なんかも大勢来ていただいているわけですけれども、いろいろなところから来ていただいていますし、外務省からも出向をしています。そういった過程を通じて、私は、役人が、国家公務員がいろいろな仕事の経験を積んでいく、あるいはいろいろな発想の仕方を学んでいくというのは非常に重要なことである、私の経験に照らしてもそういうふうに思います。
 それからもう一つ、いかなる出身の人であれ、民間企業の人であれ、あるいは大学の人であれ、あるいは省庁の人であれ、いかなる人であっても、外務省に来て外務省の職員として仕事をする以上は、外務省の職員として仕事をすることが期待されているし、そういう人材でなければ私は外から来てもらわない、そういうことでございます。
伊藤(英)委員 これから決められるということなんですが、経済産業省から入れることを考えているんですか。
川口国務大臣 恐縮でございますが、個別の人事については検討中であるということでございます。
伊藤(英)委員 大臣の気持ちもわからないんじゃないんですが、実は、この外務委員会は、私の率直な感じを申し上げますと、議会は何かな、議会は何だろうということを川口外務大臣になってから非常にしばしば思っています。議会は何なんだろうと。それだけ申し上げておきます。
 ちょっと別のテーマに移りますけれども、北朝鮮絡みの問題なんですが、先週、よど号グループのメンバーの小西容疑者ほか四名が日本帰国に向けて準備を始めた報道がありました。そのときに、帰国に向けて日本政府と事前の協議を行うことを希望しているというような話もありましたし、また、そのときに、いわば投降的な帰国はあり得ないんだということも語っているようであります。
 今の時点で、日本の政府として、よど号のメンバーあるいはその関係者から何らかのコンタクトはあったのかどうか、まず伺います。
川口国務大臣 いろいろな情報には接しております。
田中政府参考人 今、大臣がお答えのとおり、いろいろな情報はございますが、具体的に日本政府に対してコンタクトがあったという事実はございません。
伊藤(英)委員 では、現在のところは、本人たちないしはその関係者からのコンタクトはないということですね。
 それから、もしも帰国というようなことになったときに、我が国政府として、ある何らかの特別な配慮というか恩恵というかを与えるというようなことがあるのか。それは来たときには、いわば法にのっとって逮捕して取り調べをするというようなことになるのか。この辺は実際には政府としてはどういうふうにすることになるんでしょうか。
漆間政府参考人 政府としての対応というよりも警察としての対応でお答えしたいと思うんですが、よど号事件の犯人については、強盗致傷等の容疑で国際手配をしておるわけでありまして、もし帰国するということになりましたら、警視庁の方で身柄拘束の上で必要な捜査を遂げていくことになるというふうに思います。
伊藤(英)委員 犯人の容疑といいましょうか、罪状というんでしょうか、彼らは現在はどういうことになっているんでしょうかね。
漆間政府参考人 よど号の犯人グループは、まさによど号という航空機を乗っ取ったわけでありますけれども、そのころハイジャック防止法がございませんでしたので、機体を乗っ取ったそのときに人に危害も与えていますので、したがって、代表的には強盗致傷というような罪名で国際手配をしております。そのほかにも国外移送拐取とかいろいろな罪名がございますが、たくさんありますので省略をさせていただきますが、航空機を乗っ取った、そのときに一定の人間に傷を与えたので強盗致傷、これが代表的な罪名であります。
伊藤(英)委員 済みません。代表的でいいのかもしれないんですが、たくさんあるように言われたんですが、ざっとどんなのがあるんでしょうかね。
漆間政府参考人 全体に共通する、つまりハイジャック事件としての罪名は、強盗致傷、監禁、国外移送略取、同移送、爆発物取締罰則違反、出入国管理令違反ということになります。
伊藤(英)委員 そこで、このよど号のメンバーの方が帰国に向けて日本政府に対して事前の協議を求めてきた場合、そのときは政府はどのように対応するんでしょうか。
田中政府参考人 私ども政府の立場として、よど号の犯人は日本の刑法上重要な犯罪を犯したということで身柄の引き渡しを求めているということでございますから、どういう形の事前協議を求められているのかわかりませんけれども、基本的に考えれば、日本への帰国手続ということであるならば、事前の協議が必要であろうというふうには思っておりません。日本の法律にのっとって手続をするということだと思います。
伊藤(英)委員 先般、よど号の人たちが、実際には帰国のための渡航証の発給申請にもサインをして、出国したいというか日本に来たいという話になったわけですが、報道によりますと、彼らは、自分たちが北朝鮮にいることで、北朝鮮がテロ支援国家だという国際世論がつくられ、攻撃材料にされているからだなど、そういう話もされたりしているんですが、今回、北朝鮮の方で、どういう目的で、あるいはどういう背景でこういうふうになっているんだと外務省は思われますか。
田中政府参考人 私どもも、このよど号の犯人の人々に直接事情聴取をしたわけではございませんので、その背景というのを断定的に申し上げることはできないと思います。ただ、種々の報道等によりますと、本人たちが日本への出国を希望しているということは言えるんではないかと思います。
 と同時に、やはり常識的に考えますと、北朝鮮の政府がこれを認めるということがなければ、多分この人々は出れないのではないかという気がいたしますし、そこに北朝鮮としての何らかの意図が働いているということは推測ができると思います。
 ただ、その意図が那辺にあるかというのは、ちょっと私どもが推測をすることではないのではないか。我々の立場は、五人は日本に戻さなければいけないという立場でございます。
伊藤(英)委員 漆間局長、もう結構でございますから。ありがとうございました。
 アリラン祭、北朝鮮でアリラン祭、あれは何のためにやっているんでしたかね。
田中政府参考人 私どもが承知しております限りでございますけれども、毎年、北朝鮮は四月の十五日には故金日成国家主席の誕生日に生誕祝賀行事を行ってきているということで、ことし、本年については、金日成主席の生誕九十周年、金正日総書記の生誕六十周年及び朝鮮人民軍創設七十周年に当たるということで、この祝賀行事として、四月二十九日からアリラン祭と称して、マスゲームとか芸術公演が開催されているというふうに承知しております。
 なぜ、そういうものをやっているのかという御質問でございますけれども、一般的には、外貨の獲得とか国威の発揚というようなこと、体制内の結束固めをしているという見方もあります。ただ、断定的に申し上げることはできないと思います。
伊藤(英)委員 今外貨の話がありましたけれども、私なんかがちょっと聞きますと、当初予定した部分の二割ぐらいしか集まらない、そのために実は現在の期間の延長もしているという話も聞いたりしたんですが、そういう考え方はできると思われますか。
田中政府参考人 私も委員と同様の推察をするしかないわけですけれども、これまで、四月二十九日に開幕をして、六月下旬になって七月の十五日まで延長する、さらに、昨日だと思いますが、昨日の朝鮮中央放送によると、また延長するということを言っている。ですから、いろいろな人の話を聞きますと、期待されたような観光客が来ていない、外貨の獲得が十分ではないといったようなことというのは、当然一つの理由ではないかというふうに推測はしております。
伊藤(英)委員 北朝鮮の今後の食糧事情あるいは経済状況、その辺についての見通し、これから年末まで、あるいは来年の初めぐらいまで、大体そのくらいの感じの部分での見通しについてはどういうふうに考えていますか。
田中政府参考人 これも、今の北朝鮮の経済情勢というのは非常に困難な状況にある。いろいろな方の話を聞きますと、特にピョンヤン以外の地域において、エネルギー、暖房とか、そういう電気、電力、そういうことについての著しい欠乏状況があるということだと思います。
 食糧につきましては、FAO及びWFPの見通しによりますと、本年の穀物生産量自身は昨年の約三八%増ということでございますけれども、ただ、需要量とのギャップということから見ますと、本年は約百四十七万トンの穀物輸入が必要とされている、こういう見通しが示されるとともに、食糧支援についてのアピールが出ているという状況でございます。
伊藤(英)委員 今回、もしもよど号のメンバーが日本に帰ってくる、こういうふうになった場合に、米国が北朝鮮をテロ支援国家と呼んでいるんですが、この問題について、これは変化があるというふうに考えていいのでしょうか。その辺はどうでしょうか。
田中政府参考人 アメリカの政府は、一九七九年の輸出管理法、武器輸出管理法及び海外援助法という三つの法律に基づきまして、国務長官が国際テロ行為のための支援を繰り返し行っているという判断をする場合には、テロ支援国家というふうに指定をしている。現在のところ、北朝鮮を含め七カ国がこのリストに載っているということでございます。
 それで、私どもがその有権的な解釈をするわけにはいきませんけれども、例えば二〇〇一年の国務省のテロの年次報告というのを見てみますと、そのテロ支援国家という指定をしている理由として、一つには北朝鮮がよど号犯をかくまっているということのほか、テロとの闘いに協力するための実質的な措置をとっていない、それからテロリストに武器を売却していること、そういう指摘もされているということでございますし、私どもの米国との意見交換等を通じましても、このよど号の犯人が国外に出されたことのみをもってテロリスト国家の指定から外れるということは、多分ないだろうというふうに想定がされるということだと思います。
伊藤(英)委員 この間、日朝赤十字会談はたしか六月に行われる予定になっていた、こう思うのですが、それが延期になりましたね。これはどういう理由でそうなったのでしょうか。
田中政府参考人 日朝の赤十字会談は四月に再開をされまして、そのときの合意事項として、六月ごろをめどに再度会合をしましょうということになっておりました。それで、現在までそれが行われていない。
 これは、具体的なコンタクトはとられているわけでございますけれども、必ずしもその理由は明らかではありませんけれども、同時に、この赤十字会談を無期限に延期するとか、そういうことではございません。準備がいまだにできていないということでございます。
 私どもとしては、早急にこの会合が再開されるということを期待しておるということでございます。
伊藤(英)委員 今、準備がまだできていないということだったんですが、それぞれ、どういうような準備ができたら可能だろうというふうに思われますか。
田中政府参考人 多分、これは私の推測になりますけれども、日朝赤十字会談といっても、赤十字会談だけのコンテクストで日程が決められたり議論がされるわけではないんだろう。要するに、北朝鮮の体制を見ますと、赤十字といえどもやはり政府の意図ということと無関係ではあり得ないということだと思います。
 御案内のとおり、赤十字会談においては、いわゆる行方不明者問題についての調査をきちんと再開していくということであるとか、あるいは、北朝鮮に渡った日本人妻の帰還問題、被爆者の問題等々について議論をしていく。日本人妻の帰還の問題については具体的に実施をしていこう、こういう方向になりつつあるということでございます。
 ですから、そういうもろもろの点、行方不明者の調査、それから日本人妻の帰還の問題等々について、北朝鮮側で十分準備ができていないのではないかというふうに推測をいたします。
伊藤(英)委員 今回、よど号メンバーが帰国した場合に、例えば日朝赤十字会談だとか、あるいはいわゆる日朝関係、そういうものにはどういうふうに影響をすると思いますか。いい方向に向かうか、どんな感じでこの辺の問題について思いますか。
田中政府参考人 先ほども御答弁申し上げておりますとおり、よど号犯について引き渡しを求めるというのは、日本政府の方針として累次やってきたところでございますから、それが実現するというのは明らかにプラスの材料であろうと私は思います。
 ただ、そのプラスの材料をもって日朝関係のすべてを判断するというわけにはいかないと思います。拉致の問題を初め、安全保障の問題もそうですけれども、日朝間には数多くの懸案があるわけでございます。ですから、そういう観点から見れば、これも累次、総理を初め大臣が御答弁をされていますように、日朝関係については、国交正常化交渉というものを追求しつつ、そういう各種の懸案というものを解決していきたい、こういう基本方針でございますから、一つの前向きの材料であるということはありますが、日朝関係がそれだけをとらえて大きく改善するものではないというふうに考える次第でございます。
伊藤(英)委員 次に、先ほど、経済情勢やエネルギーの問題等々について見通しも若干あったんですが、今後、いわゆる脱北者というのはどういうふうに見通しをされるか。脱北者の数といいましょうか、そういう脱北者の状況について、どういうふうに見通しを持っていらっしゃるのか。実は、私自身は、今後、秋以降かもしれませんが、ひょっとしたらかなりふえるかもしれないという感じを持つんですね。その辺はどんなふうに思っていらっしゃいますか。
田中政府参考人 幾つかのことが言えると思いますけれども、一つは、脱北者で韓国に渡る人は間違いなくふえている。もう既に、昨年一年分ぐらいの脱北者の人々が韓国に受け入れられているという状況がございます。
 実際、その脱北者が何人いるかということは非常に把握が困難でございますし、数万人から数十万人ということが言われていますけれども、その脱北者自身の定義というのも明らかでない。御案内のとおり、あそこの国境から出てまた戻る人たち、あるいは中国の国内でしばらく、何年も居を構えている人たち、いろいろな形の人々がおられるわけでございます。
 ですから、そういう意味で、最近になって脱北者の数が急増しているということは多分言えないんだろうと思います。ただ、そういう人々が第三国、特に韓国に向けて出国を求める、こういう事態は引き続き続くのではないかというふうに考えております。
伊藤(英)委員 実は、本当にどのくらいになるかというのはわからないんですが、日本が、もしも脱北者が結構いたときにどういうふうに対応するか。あるいは、日本が受け入れるかということがあるかもしれませんね。そのときに、特に、日本人、日本の国籍を持っている人、あるいは元在日朝鮮人、そういう関係の人たちは、ひょっとしたらほかの人とはちょっと違うかもしれないと思ったりしますね。
 その辺について、特に今、日本人の難民はもちろんなんですが、その人たちの受け入れというようなことについては当然考えなきゃいけないと思うんですよ。私は、そうしたことについて今や十分にシミュレーション等いろいろされている、こう思うんですが、一体その辺のことについてはどういうふうにしようと思っていますか。
田中政府参考人 委員お尋ねの点、特に脱北者についてどうするのかという御指摘、これは幾つかありますが、一つは、この間の瀋陽の事件の反省ということにもかんがみまして、非常にきめ細かな具体的な対応というのは各公館に指示をしてあるということでございますし、その基本というのは、館内に入ったときに人道的な対応をするということでございますが、個々の対応がどうかということについては、一概に申し上げられないと思います。
 それから二番目に、日本人あるいは日本人の子供たちであったらどうするかということでございますが、これは明らかに日本政府の責務として、脱北者であるか否かにかかわらず、日本国籍を有する者が日本の公館に庇護を求めてきた場合には保護をし、安全を図るというのは、政府として当然の責務であるというふうに考えております。
 それから、在日朝鮮人であった方がどうかということでございますけれども、在日朝鮮人の人々については、一般の外国人とは異なる法的地位を有しておられたということはあると思います。ただ、これはもう個々の事案によって、人道的な対応をするという中で判断をすべき問題であるというふうに思います。
 それから、この脱北者の問題をどういうふうにしていくかというのは、実は日本のみならず米国、韓国でも非常に難しい問題として頭を悩ませている問題で、引き続きそれらの諸国と協議を続けていくということでございます。
伊藤(英)委員 最後に、外務大臣にちょっとお伺いしたいんですが、今月末にブルネイでARFの会議がありますね。そのときに、北朝鮮の白南淳外務大臣と会うことを希望しているのか、会われる予定になっているのか、会った場合にどういう話をしようと思っていらっしゃるのか、伺います。
川口国務大臣 まず、ブルネイで開かれるARFの閣僚会合ですけれども、この会合に北朝鮮からどなたが御出席になるかということについては、まだ最終的に決まっていないということでございます。ただ、インドネシアに北朝鮮の金永南最高人民会議常任委員長が訪問をしたときに、恐らく白南淳外務大臣が派遣されるだろうという説明はあったということは聞いています。
 このARF閣僚会合の際に、私は今、二国間会合をいろいろな国とアレンジ中でございますけれども、北朝鮮については、先方から御出席がはっきりしていないので、まだ今の時点でお会いするということは何ら決まっていません。ただ、私としては、もしおいでになるのであれば、この外務大臣とお会いをするという可能性は探りたいと思っています。
 それで、その際にどういう話をするかということでございますけれども、二年前に河野外務大臣がARFに行かれたときにやはり会談を持っていらっしゃいまして、このときには、善隣友好関係の実現等について、その努力について協議をなさったというふうに聞いておりますので、私がお会いするということが可能であれば、そういったことについてお話をすることになるのではないかと思いますし、先般韓国に参りましたときに、韓国の金大中大統領、それから外務大臣とお話をしましたけれども、日本が北朝鮮と会談を持つことができるのであれば、それはいいことではないかというような感じのお話もございました。
伊藤(英)委員 時間になりました。終わります。ありがとうございました。
吉田委員長 次に、桑原豊君。
桑原委員 民主党の桑原でございます。
 最初に、本日の案件になっておりますアジア=太平洋郵便連合憲章追加議定書に関連をして、二点ほどお伺いしたいと思います。
 まず、郵便業務がグローバル化をいたしまして、それが進む中で、万国郵便連合のもとにある地域的な限定連合、アジア=太平洋郵便連合というものでございますが、このたぐいのものは世界には数多くあるわけですけれども、こういったものが持つ存在意義、そしてその中で我が国が果たすべき積極的な役割というのは一体何なのかということをまずお伺いしたいと思います。
高橋政府参考人 お答え申し上げます。
 委員御指摘のとおり、国際間の郵便業務の効果的な運営を目的とする国際機関といたしましては、国連の専門機関でございます万国郵便連合がございまして、そして、その万国郵便連合におきましては、加盟国に地域的な郵便連合、限定連合と言っておりますが、を設立することを認めておりまして、現在、こういった限定連合が十五設立されております。
 そして、今回お諮りしておりますアジア太平洋地域のアジア=太平洋郵便連合というのは、この十五の限定連合の一つとして設立されたものでございまして、我が国は昭和四十三年にこれに加盟しているわけでございます。
 地域内には、日本だけではございませんけれども、郵便分野における先進国というのが幾つかあるわけでございますけれども、日本はその中の最も有力な国としまして、アジア地域におきます郵便業務を行っている機関の間の協力、それからいろいろな郵便業務の効率化のための技術協力といったようなことにつきまして、指導的な役割を果たしてきております。
 我が国がこのアジア=太平洋郵便連合に加盟しておることによりまして、地域内の郵便分野におきます緊密な協力体制というものが進んでおりまして、それがひいては地域全体の郵便業務の効率化が図られているということに貢献しているというふうに考えておりまして、それは我が国にとっても利益になるというふうに考えております。
 さらには、全世界の郵便問題の国際機関でございます万国郵便連合におきまして、アジア太平洋地域としての声をまとめまして、ただ単に理事国の選挙だとかそういうことだけではなくて、万国郵便連合で取り上げておりますいろいろな問題全般につきまして緊密な協力を行い、アジア太平洋地域としての声を出していく、そういう場としても非常に有益な役割を果たしている、こういうふうに考えております。
桑原委員 もう一点、去年の九月のアメリカの同時多発テロ事件では、円滑な郵便事業という面でも大変大きな打撃を受けたと思いますし、また、その後、米国における炭疽菌事件では、直接そういった郵便事業の安全性に対する深刻な問題が生じたわけでございまして、このように不安定な国際郵便情勢ということの中で、このアジア太平洋地域における郵便事業の安全性の確保、こういう面でいかなる取り組みがなされているのか、その点について教えていただきたいと思います。
高橋政府参考人 アジア=太平洋郵便連合におきましては、昨年の同時多発テロが起きる前、既に平成十二年の九月にアジア太平洋地域におきます郵便事業の安全性の問題というものを検討し、これを確保するためのアジア=太平洋郵便連合郵便保障委員会というものを設置しております。
 この郵便保障委員会を中心といたしまして、それ以降、郵便物の一層の安全確保のための情報交換を推進するとともに、郵便事業の安全を担当する職員を対象といたします訓練、それからセミナーといったものを積極的に実施いたしてきております。
桑原委員 ありがとうございました。
 それでは次に、外務省改革について大臣にお伺いしたいと思います。
 外務省の職員の皆さんが中心になって、「変えよう!変わろう!外務省」というものがこの七月の十二日に、いろいろ検討してきた結果を提言と報告という形で公表、発表いたしました。
 活動に参加した職員は二百二十一人に及んだ。そして、三月以降この七月の五日まで、十四回の全体会合を持って集中的に議論してきた。「変える会」が打ち出すそういう改革案を待つことなく、職員みずからが自主的に、そして積極的に、また精力的にこういった改革案をまとめ上げたということで、私は、職員みずからが非常な危機感を覚えて、そういう姿勢で立ち上がってまとめた、その誠実な姿勢も含めて、大変評価をしたい。ある意味ではほっとした気持ちもあるわけですけれども。
 この提言と報告について、大臣はどのように全体的に評価をされ、今後どういうふうにそれをしんしゃくするなり取り扱っていこうとしているのか、その点をまずお聞きしたいと思います。
川口国務大臣 この「変えよう!変わろう!外務省」の会は、委員がおっしゃったような形で、五つのグループに分かれまして相当に熱心に議論をしてくれたと思います。このメンバーとしては、管理職もいれば管理職でない人もいまして、そういった人たちがまざり合って、例えばリーダーは管理職でない人で、その下に管理職の人がいるというような、普通の仕事の仕方とは違ったやり方で、とても熱心にいい提言をしてくれたと私は思います。
 委員がおっしゃるように、改革というのは、中から自発的に変えようという動きがあるということが一番基本でございまして、そういう意味で、私は高く評価をしています。
 今後、これを受けてどうするかということですけれども、提言を先日私はもらいました。そして、「変える会」でも議論をして、間もなく提言をいただけると思います。自民党その他でも、外務省の改革についてはいろいろな御意見をいただいています。
 こうした意見を踏まえまして、外務省としては、できるだけ早く改革をする具体的なプログラムを出しまして、私は、このプログラムというのは何をいつまでにするという行動計画でなければいけないと思っておりますが、それをできるだけ早く出しまして、そしてそれの実行を着実に速やかに行って、国民の皆様の外務省に対する信頼を早く回復したいと考えております。
桑原委員 ぜひそういう方向で努力をしていただきたいと思います。
 私もこの提言と報告を読ませていただきましたが、この提言と報告は、今取り組むべき改革は、人事等の制度にかかわるもの、それから政策立案にかかわるもの、職員の意識にかかわるものという三つの側面がある、この側面を三位一体で進めていく必要がある、こういうような基本的な考え方でいろいろ取り組んだ、こういうふうに言われております。
 特に私が注目をいたしましたのは、新聞などでも報道されておりましたけれども、政策立案の強化、この中身の問題で、いわゆる基本的な認識として、「冷戦が終了し、外部環境が変化した後も、それ以前の定型化した外交方針をその有効性を再点検することなくとってきているのではないか。(外交方針の定型化、硬直化)」そういったことを主張している。
 それから、「重要政策分野での外交上の取り組みが、専門家集団の内部でしかわからない」、密教化という表現をされておりますが、「「密教」化し、硬直化しているのではないか。「なわばり意識」があり、特定国・地域に対する外交政策の在り方について、主管課以外が議論を提起することを歓迎しない雰囲気があるため、政策論議の不在の状況が生じているのではないか。外務省職員にも共有されない外交では、国民の理解は得られないのではないか。」と。
 私は、ある意味では、中にいていろいろ取り組んできたからこそ、こういう意味での一つの反省点というものが生まれてくるのではないかと思いますし、そういう意味では、内部でこういう反省が出てきたということの重みというのは非常に意味がある、こういうふうに思っておるんです。
 それで、この部分の基本認識について大臣はどう評価をされているのか、その点、ちょっとお聞きしたいと思います。
川口国務大臣 ここに書いてあることというのは、私は、事実認識としてはそういうことだろうと思います。
 私が理解をしていますところでは、この認識について、これは外務省の中でも実はかなり前から持たれてきていて、総合政策局というのを今から十年ぐらい前でしょうかつくりましたのも、こういった観点で外務省として総合的に政策の調整を行う、その機能を評価することが大事だということであったかと思います。
 そういうことで進んできましたけれども、恐らくここで反省すべきことは、総合政策局が所期の機能を果たしているかどうかということでして、その点を踏まえてのこの「変えよう!変わろう!外務省」の会の提言であるかなと思います。
 ここをどうするかということについて、これは、自民党等でもお出しいただいた提言の中でも基本的に同じような問題意識を持っていらっしゃると私は拝見をいたしておりますけれども、外務省が具体的に今後、政策立案機能を強化し、国民の皆様の信頼を取り戻すときに、これは避けて通れない、ぜひ取り組まなければいけない課題であると私は考えています。
桑原委員 先ほども、いわゆるODAに関連をした人事の問題で少し議論がございましたけれども、私は、外部から人材を取り入れて外務省のある意味での活性化を図っていくとか、あるいはいろいろな物の考え方をそこに入れ込んでいくという必要性というのは非常にあるというふうに思うんですが、問題はやはり、ここでも指摘をされているように、外務省自身が本当に日本外交の目標をしっかり定めて、それに向かって戦略的な観点をしっかり打ち出していく、戦略的なそういう方法をしっかり持っていろいろなことをやっていく、その背骨をしっかり通すということが一番大事だというふうに思うんですね。
 それがなくて、何かいろいろなものを入れてやっていけばいいということにはならないと思うので、外務省自身がそこをしっかり打ち出していくということが一番肝心だろうというふうに思うんですが、その点はどうでしょうか。
川口国務大臣 おっしゃるとおりだと思っています。
桑原委員 おっしゃるとおりということになれば、例えば人事の問題についても、やはりそこら辺をしっかり踏まえた上でどうしていくかというふうに提起をすべきであって、巷間言われているように、何か他省庁からそういう人材を入れていくというようなことを安易に先行させるというようなことがあってはならないということをまず私は指摘をしておきたいな、こういうふうに思います。
 それで、次にお伺いしたいのは、いわゆるICC、国際刑事裁判所の管轄権に関する安保理決議についてなんです。
 日本政府は、この管轄権に関する安保理決議について大臣の談話を十三日の日に出しておるわけでございますけれども、大臣の談話は、この安保理決議については非常に現実的な解決が図られたということでまず歓迎したい、こういうふうに述べておられます。それから、アメリカのプレゼンスがボスニア・ヘルツェゴビナを初めとする世界の諸地域の安定のために高い役割を果たしているので、そういったプレゼンスがこのことによって確保されたので非常に歓迎する、喜ばしい、こういうようなことなんですが、私は、これは一面的ではないか、こういうふうに思うんです。
 アメリカが、自分の国のPKO要員等がこの刑事裁判の訴追の対象にならないように、こういうことで、みずからはその批准もせずに、そのことを主張してこれに反対をしてきた、こういう経緯があるわけですね。そういうことの中で妥協が図られて、一年間はそういったことは凍結をして、その後については一年ごとに検討してやっていくんだ、こういう形で妥協が図られたわけですね。
 そういう意味では、アメリカのプレゼンスが確保されたということについては、それは評価をする点があるのかもしれませんけれども、このICCの設立の目的、いわゆる人道の罪であるとかジェノサイド、戦争犯罪あるいは侵略の罪、そういったものを国際間の関係の中からなくしていこう、そのために一つの裁きの場を設置しよう、こういう趣旨からしていけば、私は、今回の措置については、ICCの設置の目的、制度の趣旨をやはり非常にゆがめていく、そういうことになるのではないかというふうに思いますので、大臣の談話における評価というのは一面的だ、こういうふうに言わざるを得ないと私は思うのですが、その点はどうなんでしょうか。
川口国務大臣 お答えする前に、先ほど委員がおっしゃられた、外務省の政策を重点的につくる必要と、それから外部から人材を入れて意識改革をすることとの関係について、私は、これは両々相まって両方がうまくいくということではないかというふうに思っております。
 それから、ICCの管轄権に関する安保理決議に対しての外務大臣談話に関してでございますけれども、私は、これは現実的な解決であったというふうに評価をしているわけでございます。
 米国がボスニア・ヘルツェゴビナを初めとする世界の諸地域の安定に果たしている役割を高く評価いたしております。米国がこれらの地域にプレゼンスを維持するということは、国際の平和と安全の維持という観点から非常に重要であるというふうに思います。
 そして、今般全会一致で決議を採択したということでして、これは、起こっていた問題がすべての関係者にとって受け入れ可能な形で対応が行われたという意味で、引き続きボスニア・ヘルツェゴビナにおける国連PKOのプレゼンスが可能となったという意味で、現実的な解決であったというふうに評価をしているということでございます。
 米国がICCに対して懸念を持っているということはそういうことでございまして、ことしの五月に、当事国となる意図は有していないということを国連に通知したわけでございまして、こういったことを踏まえれば、これは現実的な解決であったと私は考えています。
桑原委員 いろいろ譲って今回は現実的な解決であったとしても、非加盟国がそういう形で訴追を免れるというような、そういうものがこの先そういう形で行われていくということになれば、私は、ICC自体の現実的な機能というのは全うすることができないのではないか、こういうふうに思うんです。
 そういう意味では、我が国がこれにどうかかわっていくのかということも含めて、この先そういったことでいいのかということについてどう考えておられるのか、このことをお聞きしたいと思います。
川口国務大臣 委員のおっしゃっていらっしゃるような形で、今後ほかの国も同じようなことになって、ICCが本来の目的を達成できないということが問題であるという懸念については理解をいたしますけれども、現実的な解決と申し上げたのは、やはり対応しなければいけない問題はさまざまあるわけでございまして、いろいろな制約の中でどういう解決が可能かということをみんなで模索し合った結果、すべての国が満足をする形であったということを申し上げているわけでございます。
 そして、我が国についてのことでございますけれども、ICCにつきましては、設立を一貫して支持して、その実現に向けて努力をしてきております。この締結をすることにつきましては、この規程の内容や各国における法整備の状況を精査するとともに、国内法令との整合性について必要な検討を行ってきているわけでございます。この七月にICCの規程が発効をいたしましたことを踏まえまして、政府としては検討を進めていきたいと考えています。
桑原委員 ぜひ早期に、この署名そして批准、そういう方向で我が国が対応していくことを要望しておきたいと思います。
 先ほど、伊藤英成委員からも日朝の問題について質問がございましたが、私は、先般大臣が韓国の崔成泓外交通商部長官とお会いになった、その後、金大中大統領とも会談をされた、こういうことで、その状況について少しお伺いをしたいと思います。
 その前に、田中大洋州局長は、あの銃撃事件の後、米国に行かれていろいろな協議をされてきたと思うんですが、そのポイントだけ簡単にひとつ御報告をいただきたいと思います。
田中政府参考人 北朝鮮政策については、日米韓の連携というのが非常に大事だという観点から、銃撃事件が起こりました後、かつ、外務大臣が十三日の日に韓国で日韓外相会談をやるということがございましたので、その前に米国に参りまして、米国の関係者、私が話したのはアーミテージという国務副長官とジム・ケリーという国務次官補、ほか北朝鮮政策の関係者ということでございました。
 ポイントとして、実は七月の十日から十二日まで、ジム・ケリーという次官補がアメリカの大統領の特使的な役割を持ってピョンヤンに行くということになっていたわけですが、これが銃撃事件等もあり撤回をされた。アメリカの基本的な政策が本当に変わっていないかという点が一つの大きなポイントでございまして、種々の議論の結果、米国の基本的な政策、すなわち北朝鮮と対話を追求していく、包括的な解決を目指して対話を追求する、この大統領の方針には変わりがないということでございました。ただ、冷静に事態を見きわめていく、同時に、日米韓の連携をさらに強化しよう、こういう点が主要な点であったというふうに思います。
桑原委員 大臣は崔成泓長官と会われたわけですが、その概要報告の中で、崔長官は、今回の北朝鮮軍の行為、あの銃撃戦での行為は事前に緻密に計画された意図的な攻撃であるが、こういうことを述べられておりますけれども、意図的な攻撃というのはどういうねらいがあったのか、その点についてはどういうふうにおっしゃられておられるか、お聞きしたいと思います。
川口国務大臣 外務大臣からは、今委員がおっしゃったような、事前に緻密に計画をされた意図的な攻撃というふうに評価をされるということでございましたけれども、どのレベルでその指示があったかということについては今分析中であるということでございました。これは国防軍の発表であったわけですけれども、お会いしたときにも、引き続きそれについては分析中であるということでございました。
桑原委員 あわせて大統領にもお会いになったということで、大統領もそれから長官も、いわゆる包容政策というものについてはその基調を維持していく、こういうことを言われたということでございますが、私は、ああいう厳しい銃撃戦があって相当韓国の世論も沸騰し、なかなか厳しい対応が考えられているのかなというふうにも思ったんですが、かなり抑制的で、冷静に、慎重に対応する、こういうような感じであったのかというふうに思うんです。
 その包容政策の基調を維持するということの意味、これは、北朝鮮のあの対応というものをどういうふうに分析しているのかというのも深くかかわると思うんですけれども、そこら辺をどのように理解されてきたのかということをお聞きしたいと思います。
川口国務大臣 金大中大統領は、今回の銃撃戦を受けまして、今度の銃撃戦が太陽政策のゆえに起こったということは全く事実と合わないということをおっしゃっていらっしゃいます。そして、確固たる安保体制、韓米軍事同盟の基盤の上に南北間の和解、協力を追求する、そのような太陽政策を続けることが我々の立場であるということをおっしゃっていらっしゃいます。そして、戦争をしない限り、南北関係にあって、表現は何であれ、政府としては、和解、協力の道を進んで、いつかは平和的に統一する、そのような政策を持つしかないというふうに表明をしているわけでございます。
 まさに、太陽政策を堅持していくことのみが南北の平和的な統一を可能とするという大統領の強い政治的な意思あるいは考え方ということが基盤にあると考えておりまして、お話を申し上げていて、金大中大統領の非常に強い考え方を私はそばにいてひしひしと感じました。
桑原委員 時間が参りましたので、最後の質問です。
 日朝の会談をARFの際にぜひ何とか実現していきたい、こういうようなお話でございましたが、この間、日米、そして日韓、そういう形で、いろいろな意味での緊密な連絡をとり合うことができた。私は、ぜひARFの機会には、日中韓と中国、やはり中国をも含めた北朝鮮政策のすり合わせと申しましょうか、そういうものも必要ではないか、こういうふうに思いますので、そのことをどういうふうに考えておられるのかということをお聞きして、終わりたいと思います。
川口国務大臣 これは開催をすることといたしております。
桑原委員 どうもありがとうございました。
吉田委員長 次に、土田龍司君。
土田委員 まず、条約から二、三質問いたします。
 郵便業務の国際的な性格及びグローバル化が進む状況で、今日では、他国との郵便関係の調整を図る限定連合であるアジア=太平洋郵便連合なんですが、これで行うよりも万国郵便連合で行った方がやりやすいんじゃないかというふうな気がするんですが、このアジア=太平洋郵便連合の存在意義がどこにあるのか、それについてまず説明をしてください。
林政府参考人 一応、万国郵便連合というのは世界のほとんどすべての国を網羅しております。百八十九カ国が入っておるわけでございます。アジア=太平洋郵便連合はたしか二十八だったかと思いますけれども、そういういわば小さい限定的な連合によって郵便業務の改善を図るということが、グローバル化の中では、むしろ大は小を兼ねるという形で行うべきではないかという御指摘かと思うのでございますけれども、必ずしもそうではないのではないかなというふうに思っております。
 問題意識として、不断にこの種の国際機関の活動について見直していくべきではないかということはおっしゃるとおりかと思いますし、まさにそういう問題意識に立って今回もアジア=太平洋郵便連合の組織の合理化、見直しをやったわけでございます。
 郵便連合、限定連合の役割というのは、もちろんUPU全体でグローバルに行う調整というものもあるわけでございますけれども、先ほどもちょっと同種の御質問でお答えいたしましたように、密接な政治的、経済的、地理的な関係にあります国の間で、さまざまな協力を行うことによって郵便業務を改善していく。特にアジア太平洋におきましては途上国も多いわけでございますけれども、そういう国との関係におきまして、先進国であります我が国がさまざまな技術協力を行うということによりまして、郵便は双方向でございますから、我が国の人が出す、あるいは我が国の人が受け取る郵便についても迅速化、効率化というものを図ることができる。そういうものをある程度まとまった密接な関係にある単位で行うということも、引き続き有意義ではないかなというふうに思っておるわけでございます。
土田委員 太平洋連合というのはいわゆる限定連合ですね、今、林さんがおっしゃったように。
 しかし、そういった検討がなされたというふうにおっしゃいますけれども、実態としてやはりむだが多過ぎるんじゃないかな、あるいは合理的じゃないんじゃないかなと。このくらい通信手段が発達をしたわけですから、検討した結果これはまだ必要であるという判断になったということなんですが、私はどうも本当はそう思えないんですね。これはやはり万国郵便連合で賄える範囲じゃないかという気がするんですが、林さん、もう一回答弁してください。
林政府参考人 郵便量の実績の数値というのを一つ申し上げますと、日本から対世界ということで四億通超ございまして、APPU加盟国向けで一億通超ということでございまして、全体でもう二七%ぐらいを占めるというような実績といいますか、郵便におきますニーズというものがあるというふうに承知しております。
 そういう中で、先ほど申しましたとおり、途上国を多く抱えますこのアジア太平洋地域におきまして、地域内の郵便業務能力の向上、確実化、迅速化というものを図っていく上で、UPUのレベルではもちろん技術協力というのも若干行っておりますけれども、やはりこれは、まさにグローバルであるがゆえに百八十九カ国との関係において考えるということでございますから、必ずしも行き渡らないところがある。そこを地域別にきめ細かく技術協力等を行っていくことによって郵便業務の改善が図られる、そういう面において、引き続きアジア太平洋におきます限定連合というものは意義を有しておるのではないかというふうに思っておる次第でございます。
土田委員 次に、大臣にお尋ねいたします。
 昨年の一月に松尾事件が発覚をしたわけですが、それ以来、外務省の職員による一連の不祥事、さらにはプール金、あるいは最後にはロシア支援室の問題まで、さまざまな問題が発生をしたわけです。外務省に対して、あるいは外務省の職員に対してもそうなんですが、非常に国民の信頼というのは地に落ちてしまったということを私は感じておりますし、だからこそ、外務大臣が殊さらに外務省改革をするんだということをおっしゃっているわけです。
 これまでに、昨年の四月には外務省機能改革会議の提言があり、六月には外務省改革要綱の策定があり、そしてさまざまなプロジェクトチームによって問題点への対応があったり、ことしに入ってからは、二月の大臣の「開かれた外務省のための十の改革」、五月の「変える会」の中間報告、そういったものがたくさんたくさん提言され、あるいは部分的に具体化され、実現してきていると思うわけでございますが、現在のところ、去年の一月一日以来、この外務省改革について総合的に判断して、期待どおりの改革が進んでいるかどうか。外務大臣は、感想としてどういうふうに思っていらっしゃいますか。
川口国務大臣 外務省の改革については、今委員がおっしゃったようなさまざまな努力あるいは提言がなされているわけでございまして、それを受けて私の感想としては、かなり着実に改革が進んでいると考えております。
 そのたびごとに、できるだけそれを発表させていただいておりますけれども、必ずしも全部一遍に見えない部分もあるかと思います。
 例えば報償費の関係でいいますと、十万円以上の報償費の案件については副大臣以上で決裁ということでやらせていただいております。それから、入札等につきましても、今まで各局でやっていたのを一元化するということでやっております。そうしたさまざまな手続上の問題。
 それから、人事改革という意味でいいますと、十人をめどに夏までに外部の登用をするということを言いまして、大使や本省の幹部に、今、登用が進みつつあるわけでございます。
 ODAの改革についても、先般、十五の改革ということを発表させていただきまして、その一つとして、ODAの総合戦略会議というものでは私自身が議長を務めて、考えているということでございます。
 今後、「変える会」の会合が実はけさもございましたけれども、そういった会合で提言をいただくことになっています。その提言を踏まえ、それから、今までいただいた提言のうちまだ実行に移していないもの、それらをまとめて外務省の改革プログラムとして、何をいつまでにやるということを出させていただいて、それを着実にやっていきたいと私は考えています。
土田委員 これらの提言の中で、今大臣もおっしゃいましたし、以前もおっしゃっていたのが、やはり意識改革と人事制度の再構築だというふうに思うわけですね。
 それで、今の答弁で、外務省改革は着実に進んでいるんだというような言い方をされていますけれども、そんなに進んでいないというふうに私は感じております。
 この五月九日に出された「変える会」の提言、それから、十二日には「変えよう!変わろう!外務省」、これが出されている。この二つの内容を私も読んでみたんですが、膨大な量でして、私は、役人の経験もないし、朝から晩まで外務省のことを考えているわけじゃございませんので、一通り目を通したんですが、本当を言うと、難し過ぎてわかりません。副大臣は多分おわかりになっておると思いますけれども、なかなかわかりません。
 大臣はこの二つの提言、もちろん隅々までお読みになって、あるいは理解できないところは説明を受けて、詳しく内容を御存じだと思うんですが、そういう理解でよろしいですか。
川口国務大臣 隅から隅まで眼光紙背に徹して読んだかとおっしゃられれば、そういうことではございませんけれども、ざっと全体は見ましたし、それから説明もきちんと受けております。
土田委員 特に、外務省の方がつくった「変えよう!変わろう!外務省」の中身ですね。コピーを私ここに持っておりますけれども、まずびっくりしたのは、何でこんなにたくさんあるんだろうということなんです、分量が。こんなこともできていないのかということですね。これに出てくるということは、これがよくないからこういうふうに変えようというのがこの提言の趣旨でございますから、この一ページ目から見ましても、余りにもひどい内容といいますか、こんなこともできていないのか、こんなこともやっていないのか、こんなふうにやっていたのかということを非常に感じるわけです。
 ですから、この提言自体はいいんですけれども、特に僕は、ここの中で書いてあるのが、「はじめに」というところから始まって、「改革の継続性を維持するために」、ここが一番大事だと私は思うんです。「真の改革を不断に実行していくためには、しっかりとした実施・評価体制の構築が不可欠であり、このための常設的な内部機構が必要と考える。」ということですね。これは、別にこの変えよう会の提言が終わりでなくて、きょうが始まりなんだ、それで、常設的な機構をつくってこれを常に監視し、あるいはチェック体制をやっていかなきゃだめだというふうに書いてあるわけですね。
 ですから、これをだれがやるのかわかりませんけれども、「この機構については、官房に設置し、大臣及び次官の直接の指揮の下、官房長を補佐し、」云々と、こういったセクションの人がやらなきゃだめだろうという提言をしているわけです。
 ですから、一年半たって、だからどうということじゃないんですが、継続的に改革を進めていくという意識を外務省の職員全員が持ってやっていくことが非常に重要だなということを感じております。
 ただ問題は、先ほど言いましたように、この二つの提言の内容を見ましても、やはり人事だと思うんですね、人事。これをどうやって確実に進めていくかということだと思うんですが、「変える会」と変えよう会の内容を見ましても、例えば大使の外部登用について、数値目標を設定しようという「変える会」と、数値目標は要らない、やるべきではないという外務省の会で、意見が違っているところもあります。
 さらにいろいろなところからの意見が出てくるわけですが、大臣がさっきおっしゃっておりましたように、八月中には抽象的な作文ではなくて具体的なアクションプログラムを策定するんだというふうにおっしゃっているわけでございまして、今言いましたように、組織改革を伴う人事制度がやはり一番問題だと思うんです。
 今回、経済協力局長の問題でもそうです、さんざん反対してくるわけですね。職を賭してまでこれに反対してくる。これから外部登用で、大使の人事、外部から何人も入れよう、あるいは幹部についてもいろいろな、外部から入れたり、入省年次にとらわれずやっていくということになっていかなきゃならないときに、このように何回も何回も大臣にじかに折衝して反対をしたり、職を賭してまで反対する人が出てくるような状況の中で、大臣は改革を断行していく自信はおありですか。
川口国務大臣 改革の重要性というのは言うまでもございませんし、また、改革が重要だということを外務省の職員全員が思っているということも、私は間違いがないところだと考えています。であればこそ、この「変えよう!変わろう!外務省」のような会合ができて、提言が行われるわけだと思います。
 改革をどのように進めるかということについては、これはさまざまな考え方があるということは自然であり、当然であり、望ましいことだと私は思っています。そうした改革のやり方については、外からも意見をいただき、御支援をいただき、御指導をいただき、そして中ではさまざまな議論を重ねながら改革をやっていきたい、これについては私は断固たる決意を持っています。
土田委員 いや、改革はみんな賛成しているんですよ。外務省の五千人の方々、みんな、反対している人はいないと思いますよ、建前上は。その一番の問題になってくるのはやはり人事ですねという話をしているんですよ。経済協力局長を、外務大臣が反対を押し切って外部から登用したことがきょうのNHKのトップニュースですよ、新聞のトップ記事で出てくるんですよ。この程度のことがトップニュースに出てくるような状態で、これから改革はできるんですか、特に人事に伴う改革はできるんですかということを聞いているんです。
 事務方はいわば組織防衛に走っていきますよ。大臣はあと何年外務大臣をやられるか知りませんけれども、この役人の方々というのは、これからずっと定年までやっていかなきゃならない。組織防衛をみんな図っていきますよ。だから、田中眞紀子さんと違うんですから、事務方と反発していたってなかなかうまくいかない、やはり事務方の理解も得なきゃならない。
 前回の私の質問に対して、いろいろな改革案に対してことごとく外務省の内部から、事務方から反発が出ているというようなことを指摘したらば、そんなことはないんだというふうに大臣はおっしゃっていましたけれども、徹底的にやるには、やはり人事の問題がどうしてもあるんだということなんです。それについて、もう一回その決意を聞かせてください。
川口国務大臣 改革を進める中で人事の改革というのが重要だということは、もう御指摘のとおりだと思います。私もそう思っております。
 先ほど改革は着実に進みつつあるということを申しましたけれども、人事の面でも着実に改革は進みつつあると私は思っています。先ほど申し上げましたような外部からの登用ということもそうですし、例えば、年功序列制が非常に幅をきかせている霞が関の中にあって、外務省の局長で一番若い人は四十九年に役所に入ったという人でして、ほかの省全部を見渡したわけでございませんので、こういった若い局長がいる省がほかに全くないとは申しませんけれども、かなり少ないのではないかと私は考えております。私が今まで閣僚をしていた環境省では、四十九年に入った人で局長になっているという人は、残念ながらまだいないということでございます。
 そういった意味で、外務省は人事面も含めてかなり改革はやってきている。それは、もちろん十分にやっているということでは全くありませんで、これからまたさらに相当にやっていかなきゃいけないということも、これも当然のことだと思います。それで、その人事についての改革ということでは、私は重要だと思っていますので、強い決意を持ってやっていきたいと考えています。
土田委員 ぜひ、その強い気持ちでやっていただきたいと思います。外務省の改革は進んでいるといいますが、今言いましたように、経済協力局長のことがトップニュースになるようなことは、まだ進んでいない証拠なんですよ。そういうことを私は申し上げたんです。
 ちょっと話を変えまして、アメリカのパウエル国務長官が言った発言、演説の内容です。ODAのことです。
 前回の委員会で私自身が、ODAに関して、被援助国、いわゆる相手国の開発にどういった影響があったか、あるいはそのODAのお金が我が国の国益に対してどういった評価をされているかということについて質問をいたしました。
 パウエル長官が十二日の演説で言っているのは、世界銀行の調査で、一九九〇年代に、開発途上国のうち貿易と投資を最も拡大した二十四カ国がODAなどに頼った他の諸国よりも国民一人当たりの所得はずっとふえた、開発途上国の経済発展にはODAよりも投資や貿易の方がはるかに有効であるということを強調したというふうに言っているんですね。米国の開発途上国からの輸入総額は、それら諸国が受け取る援助総額の八倍だと言っている。また、民間の資金は、腐敗の横行する領域は自然に避け、清潔な領域へと集まっていくとしているわけですね。
 つまり、ODAもいいけれども、ODAよりもはるかに民間の投資の方が有効であるという見方をパウエル長官は言っているわけでございますが、これについて大臣はどう考えますか。
川口国務大臣 政府開発援助も重要ですけれども、民間セクターの投資あるいは貿易というのも非常に大きな効果を上げているということは、例えばこの東アジアの地域で、戦後あるいは最近見たときにどれぐらい経済成長が進んでいるかということを見ていただければおわかりだと思います。
 我が国としてもこれについてはきちんとした認識を持っておりまして、ここに植竹副大臣いらっしゃいますのであるいは副大臣からお答えいただいた方がいいかもしれませんけれども、この前、三月にモントレーで行われました会合、開発資金国際会議での植竹副大臣がなさった演説の中でも、民間資金が開発に重要な役割を果たしているということを正しく認識しなければいけない、貿易も重要である、この点、日本の途上国からの輸入額は毎年二千億ドルの規模に上っている、国内の資金、投資を含む海外からの資金、貿易、援助などをうまく組み合わせて開発をしていくことが重要だという認識を示しているわけでございまして、パウエル国務長官の言うことと私どもの考え方は全く一致をしているということです。
土田委員 以上で終わります。ありがとうございました。
吉田委員長 次に、松本善明君。
松本(善)委員 アジア=太平洋郵便連合憲章に関連して、国際郵便の問題を伺いたいと思います。
 それとの関連で、国内での盲人用郵便物について総務省に聞きたいんですが、現行の郵便法は、点字、録音物などの盲人用郵便物は無料と規定しております。今参議院で審議中の郵政公社法案では、この規定が削除をされている。このために、障害者の生活と権利を守る全国連絡協議会とか、全日本視覚障害者協議会とか、全国肢体障害者団体連絡協議会など三つの団体が、とりわけ、いわゆる盲人用郵便物の無料規定を法案から削除せず、現行制度を維持、継続してほしいと要請をしております。
 万国郵便条約では第八条で、「点字郵便物については、航空増料金を除くほか、郵便料金を免除する。」とされておりまして、無料が維持されるのに、我が国の国内法では無料規定が削除をされる。このために、点字の国際郵便は無料で国内郵便には定めがないことになって、矛盾した規定の仕方になる。どうして、この郵政公社法案で無料規定を残さなかったのか。
 これは、国内でも引き続き無料化を続けるべきだというふうに考えますし、その趣旨の答弁もありましたけれども、万国郵便条約でこのような規定がある限り、国内は有料にするということはあり得ないと思いますが、総務省、どう考えますか。
團政府参考人 お答えいたします。
 御指摘のとおり、現在参議院で審議中の公社法の施行法案ということで、郵便法を改正するということにしてございます。その中では、現行の郵便法におきましては盲人郵便物は無料とするという規定がございますが、この規定はなくなっております。
 その考え方でございますけれども、今度、日本郵政公社というのを発足させますが、そこにおきましては、国から独立した主体として、自律的、弾力的経営を行うということにしてございます。そういう観点から、この無料の規定ということについては削除しているということでございます。
 しかし、お話もございましたように、特に国際的な条約の関係もあるように、この盲人郵便物というものにつきましては非常に重要なものであり、また御指摘のような要望も強いものがございます。したがいまして、新しい郵便法におきましても、三種、四種という料金の減免の制度というのは残しているわけでございます。残した上で、その料金の無料というところだけは、これは認可の料金にするということにしているわけでございます。したがいまして、日本郵政公社も、その減免の制度はこれを実施しなくてはならないということにしているわけでございます。
 そこで、お話ございましたように、最終的にはこれは認可ということになってまいりますので、総務大臣も、それから総理大臣も同種の答弁をされておりますが、この認可に当たっては、無料というものを基本に認可をしていきたいということによりまして、現行のこの取り扱いについては継続していくことにしたいということを言っているものでございます。
 諸外国の法制も調べてまいりましたけれども、いろいろ区々でございまして、法律で無料の規定を置いているところも置いていないところもございますけれども、実際上は国内の料金を無料にしているということでございます。
 そういう法制の面でも、そういうことも参考にして決めたわけでございますけれども、扱いとしては、既に総務大臣も答弁しているようなことで、認可におきまして、無料を基本として対応してまいりたいというふうに考えているところでございます。
松本(善)委員 そういう趣旨の答弁は総務委員会でもあるんですが、この万国郵便条約八条がある限りはやはり無料を続けなければならぬ、こういうふうには思いませんか。
團政府参考人 お答えいたします。
 この万国郵便条約の関係では、国際郵便が無料ということを義務づけられておりますので、これを執行します事業体は、お互い無料でこれを適用していく、この条約がそのまま国内にも適用されますので、これは継続されるということでございます。
 一方、国内につきましては、先ほど申し上げたとおりでございますけれども、公社というものが国とは別の主体となりますので、これは法律で無料とまで規定できるかということについては、随分衆議院の方でも議論があったわけでございますが、そこまでの拘束を法律でやるのではなくて、公社の主体性の中でこれを実施していただく。しかし、行政としては認可というところがありますので、行政の方針としては、無料というものを当面認可の方針としたいということに構成しているわけでございます。
松本(善)委員 当面というところに少し引っかかりますけれども、外務大臣、やはりこういう郵便条約との関係で、外務省は、こういう無料規定が削除されるということについては一言言うべきではなかったのかと思うんですが、閣内でそういうことを外務省は問題にしたでしょうか。この点を外務大臣に伺いたいと思います。
川口国務大臣 閣議でこの点が問題になったかどうかということについては、閣議ではこの点についての議論はございませんでした。
松本(善)委員 いや、閣議だけでなくて、閣僚懇談会もありますし、あるいは外務省として何か物を言ったかということです。
川口国務大臣 閣僚レベルでこの点についての議論はいたしておりません。事務的にどういうことがあったかということについては、事務当局からお答えをいたします。
高橋政府参考人 お答え申し上げます。
 先ほど総務省の方が御答弁なさいましたように、今回の公社法の施行法案において削除されました盲人郵便物を無料とする旨の規定は、専ら国内郵便物に関する規定でございます。
 私ども、法令協議を受けたときには、国際郵便につきましては、委員御案内のとおり、万国郵便条約八条の四項の規定がございます。しかしながら、この国際郵便にかかわる部分に関しましては、「郵便に関し条約に別段の定のある場合には、その規定による。」という我が国の郵便法の規定がそのまま今後とも生きることになっておりますので、国内郵便の料金をどうするかということにつきましてはいろいろな御意見があるかと思いますけれども、万国郵便条約との関係におきましては、国際郵便料金につき、新しい法案については特段の問題はないという御意見を申し述べさせていただきました。
松本(善)委員 やはり外務省の方は特に何も言わなかったみたいですね。何も問題はないという。私は、万国郵便条約でこういうことがあるならば、やはり削除すべきではないということを外務省側から言うべきではないか、そういうようなことがなかったということは極めて遺憾だし、今後、これがある限りは無料でなければ認可はしない、こういう方針をとるべきだということを申し上げて、次の問題に行こうと思います。
 米軍のイラク攻撃の問題であります。
 前回もこれは問題にしたのですけれども、七月五日付のニューヨーク・タイムズは、米軍当局が策定した大規模なイラク攻撃計画の文書が存在するということを報道しております。軍の内部での準備は進んでおり、攻撃への合意が形成されれば、大統領は地上軍の展開などについて決断を下すことになるとしております。十日付の同紙は、複数の軍高官の話として、米軍が、今後予想されるイラク攻撃に際して、ヨルダンの空軍基地と通信指令施設の使用を検討しているというふうにも報じております。
 外務大臣、米軍のイラク攻撃の可能性についてはどう考えておりますか。
川口国務大臣 新聞でいろいろな報道が出ているということは承知をいたしております。委員がおっしゃったニューヨーク・タイムズを初め、いろいろなことが出ているわけでございます。
 ただ、私どもが承知をしていますのは、ブッシュ大統領は、イラン、イラク、北朝鮮について、彼らの行動パターンを変えるよう国際社会が協力する必要がある、我々は、すべての選択肢を排除していないけれども、平和的に解決したいと考えている、外交的努力を続ける考えであるということを述べていらっしゃると理解をしています。
松本(善)委員 すべての選択肢を排除しないということは、これはあり得るということになるわけですが、ことしの二月にブッシュ・アメリカ大統領が来日をされたときに、小泉首相との会談で、ブッシュ・アメリカ大統領は、我々はイラクを攻撃する、間違いなくやると言明していたことが報道をされております。
 イラク攻撃を明言したのは、二月十八日の午前に行われました少人数の席で、同席者は、高野紀元外務審議官とライス大統領特別補佐官の二人だけで、大統領は、時期に触れなかったものの、イット・ウッド・ビー・スイフト、迅速に片づけたいということを二回繰り返し、アフガニスタン攻撃のように長期化させない考えを示したと報道されております。
 川口外務大臣は、小泉首相あるいは高野審議官から、公式にも非公式にも、このブッシュ大統領からイラク攻撃の話があったということを知っておりますか、それとも、全く知りませんか。
川口国務大臣 そういう話があったと私は聞いておりませんし、それから、大統領がイラクを攻撃する旨明言をして総理が了解をしたというような事実はございません。
松本(善)委員 報道はごらんになりましたか。
川口国務大臣 報道は見ております。
松本(善)委員 その報道を見たら、当然に、高野審議官なり総理大臣に、どういうことだったのかということを聞くのが外務大臣の仕事ではないでしょうか。今、我が国にとっては中東外交は非常に重要であります。それを意識しないというのは、私は、相当問題なんだと思う。
 小泉総理は、イット・ウッド・ビー・スイフト、迅速に片づけたいというのをオウム返しに述べて、アメリカ側は、この会談で将来のイラク攻撃に対する日本の了解を取りつけたと受けとめているとされている。これは重大な問題なんです。
 この問題については、私は、報道はごらんになって何も聞いてないというのでは、これはどうしようもないと思うんです。総理大臣に聞かれるなり、あるいは高野外務審議官に聞いて、そして調査をした上で、これははっきりしているんですから、もし違うというならば、私は、報道を問題にしないといけないと思うんですよ。これは六月九日の毎日新聞です。この問題について調査をする意思があるかどうか、お聞きしたいと思います。
川口国務大臣 私が先ほど、そういうことは聞いていないと申しましたのは、私は、二月の日米首脳会談で首脳同士が少人数で会った会合には出席をしていませんけれども、その日米首脳会談のときには既に外務大臣になっておりましたから、この状況はきちんと把握をしています。
 そういった私のかかわり合い方があったわけですが、聞いていないということを申し上げたわけで、その後段に、先ほど申し上げましたのは、こういう事実はさらにないということを申し上げているわけです。
松本(善)委員 私は、これは非常に大事な問題なので、本当は総理大臣が本委員会に来て質疑に応じられるべきだと思いますが、それはいろいろ理事会の協議でできなくなったようでありますけれども、高野審議官を参考人として本委員会に招致をして、そして事実を聞くという機会を持つようにしていただきたいと思います。
吉田委員長 理事会で協議いたします。
松本(善)委員 外務大臣に続いて伺います。
 こういうことが単に一つや二つの報道ではないんですね。イラク攻撃が次の国際政治の課題になると前回も申し上げました。時期まで指定をして報道されたり、あるいはアメリカの研究機関が発表したりしているという状況であります。
 ブッシュ政権が対イラク軍事行動に出た場合に、アフガニスタン作戦支援を名目に出動しております自衛隊による米艦に対する洋上給油を検討しているという報道があります。こういうことがあるんでしょうか。既にアフガニスタン作戦支援を名目に出動していますね、自衛艦が。それが、米軍がイラク攻撃に出た場合も洋上給油を検討しているという報道です。
川口国務大臣 先ほど申し上げていますように、米軍がイラクに対して軍事行動をとるということを予断した御質問にお答えをするということは、私どもは適当でないと考えております。
松本(善)委員 私は、中東外交が大事だからということを先ほど申しましたが、真珠湾攻撃は本当にわずかな人間しか知らなかった。そして、日本の国民は大変な災害に遭いました。秘密外交というのはやはり許されないと思う。イラク攻撃を米軍が始めて、そして自動的に日本が協力するような事態を、そのことが起こってから初めて日本の国民が知るというようなことは絶対に許されない、私はそのように考えます。
 この報道は、共同のワシントン支局からの十二日の配信であります。
 先ほどは外務大臣は、あらゆる選択肢を排除しないという趣旨のことを述べました。これはずっと、外務大臣がテロ特でも述べたことがあります。すると、米側がイラク攻撃を考えている可能性もないというのか。今までの外務大臣の答弁では、イラク攻撃の選択肢は排除されていないという、あり得るというふうに考えているんですね、外務大臣。
川口国務大臣 米国政府は、イラク攻撃につきましては、イラクの行動パターンを変えるように国際社会が協力をする必要がある、すべての選択肢を排除していないけれども、イラクに対しては平和的に問題解決をしたいと考えていて、外交努力を続ける必要があるということを述べているわけでございます。
 したがいまして、私どもとしては、米国がイラクに対して軍事行動をとるということを予断して、何かそういう前提で御質問に答えるということは適当でないというふうに考えています。
松本(善)委員 そのことの一点張りの答弁なんですけれども、起こりましたら責任をとりますか、これ。イラク攻撃に日本が協力をするということは、日本の外交としては重大な問題ですよ。それが起こりましたときには、みんな知らないうちに起こったときには、外務大臣、どういう責任をとりますか。
川口国務大臣 イラク攻撃の可能性というのは、先ほど申し上げたとおりでございまして、それを前提にして御質問にお答えをするというのは適切でないということで考えているわけでございますけれども、テロ特措法の関係で、その協力支援活動について一般論として申し上げれば、この活動については、昨年の九月十一日のテロ攻撃によってもたらされている脅威の除去に努めることにより国連憲章の目的の達成に寄与する諸外国の軍隊等に対して行うものであるということでございまして、今後の協力支援活動等のあり方については、このような原則に基づいて、我が国として主体的に考えていくということでございます。
松本(善)委員 私は、あえてきょうは防衛庁関係を呼ばないでお聞きをしているのは、外務大臣がどういう決意でこれに臨んでいるかということを聞きたいからです。
 高野審議官の出たこの日米会談の日米共同記者会見では、このイラクへの武力攻撃の可能性に言及したのかということについて、大統領は、すべての選択肢はテーブルの上にのせられていると。総理大臣は、あらゆる手段を辞さないでテロに毅然として立ち向かうということだと理解していると。これはイラン、イラクの名も挙げてです。さらに、フランスの外相は悪の枢軸発言を非難しているがという質問に対しては、我々のコミットメント、関与はアフガニスタンにとどまらない、ここまで言っているんです。
 私は、そういう状態で国民にはっきり物を言わないというのは、外務大臣としては非常に重大な問題だと思います。
 さらに、もしイラクに対して米軍が軍事攻撃をしかけたとき、そのときに自衛隊はどうするんですか。撤退するんですか、それともそのまま協力するんですか。それについては外務大臣は知っていますか、それとも防衛庁でなければ知らないんですか。
川口国務大臣 先ほど来申し上げておりますように、米軍のイラクに対する軍事行動を予断した御質問についてお答えするのは適当でないと考えております。
 その上で、テロ特措法に基づく自衛隊の活動については、あくまでこの法律の定めるところに従って実施をするということは当然であるということでございます。
松本(善)委員 予算委員会で小泉総理大臣は、アフガニスタンからテロ組織が移動して、戦線が移動するなら、法律では無限定ではないかという質問に対して、無限定といえば無限定だ、しかし、戦闘が行われているところには行かないと。
 今もそういう立場でアフガニスタンの戦争に協力をしているわけですが、相手方からすれば一緒に作戦しているということになると私どもは思うんです。だから、やはりイラクを攻撃した場合に、自衛隊は撤退しないでそのままなのかどうかということは極めて重大ですよ。その問題については、それを前提にの答弁はしないということをあくまで言いますか。それで日本の国民は納得すると思いますか。お答えをいただきたい。
川口国務大臣 繰り返しになってまことに恐縮でございますけれども、米軍のイラクに対する軍事的行動を予断した御質問にお答えすることは適当でないと考えているわけでございます。
 そして、テロ特措法に基づく自衛隊の活動については、あくまでこの法律の定めるところに従って実施をするということは当然であるということでございます。
松本(善)委員 私は、やはり外務大臣に、そういう状態では国民は絶対納得しないということを改めて申し上げます。
 アメリカの四年ごとの国防計画見直し報告でも、アメリカは、西欧と北東アジアにあるアメリカの重要な基地を維持していく、それらは世界の他の諸地域での将来の非常事態に戦力を投入する中核としての追加的役割を果たすだろうということを明確に位置づけている。
 アフガン攻撃でも、北東アジアの米軍は在日米軍だけがアフガン戦争に参戦しているんですよ。第七艦隊の空母キティーホーク、随伴艦としてイージス駆逐艦のカーチス・ウィルバー、ミサイルフリゲート艦のゲアリー、ディエゴガルシア海域で空域監視の任務についたイージス巡洋艦ビンセンス、それから、空爆開始にトマホークを発射した四隻のうちの一隻、スプルーアンス級駆逐艦オブライエンなど、これが加わった米艦です。
 アメリカの国防総省幹部も、米国がイラクと開戦すれば沖縄の海兵隊が出動するだろうと述べている。ブッシュ政権は、在日米軍基地をアジアでのテロ掃討の前進基地として位置づけている。
 私は、もう質問するだけの時間の余裕がありませんけれども、日米安保条約六条では、「日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため、アメリカ合衆国は、その陸軍、空軍及び海軍が日本国において施設及び区域を使用することを許される。」私は、今の日本政府の行動というのはこの問題からも大きくかけ離れている。そして、日本の国民に何事も言わないで、わからないうちに、アメリカがイラク攻撃をして初めて事態がわかる、こういう事態になることは絶対に許されないということを強く申し上げて、質問を終わります。
吉田委員長 午後一時から委員会を再開いたします。この際、休憩いたします。
    午後零時十二分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時開議
吉田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。東門美津子君。
東門委員 社会民主党の東門でございます。
 まず最初に、アジア=太平洋郵便連合憲章についてお伺いいたします。
 リメーリングの問題ですが、本来は国内の郵便局から出されるはずのダイレクトメールが、さまざまな手段で香港など外国から日本あての国際郵便物として差し出されるという広い意味でのリメーリングの問題が、我が国の郵政事業の赤字要因として既に十年以上問題となっています。その背景には、香港などの一部の国、地域の国際郵便料金が日本の国内料金よりも安いことがありますが、この問題の厄介な点は、赤字を解消するために郵便料金を値上げすればするほど、このリメーリングをふやし、赤字をふやす結果になることです。
 九四年にソウルで開かれました万国郵便連合大会議で防止策が決められたにもかかわらず、依然として、日本から差し出す国際郵便に対して、日本に入ってくる国際郵便物の数はその後もふえ続け、現在ではその差は三倍近くに達しています。この事実は、相当な数のリメーリングが現在でも行われており、その根本的な対策は、結局のところ、郵便料金の内外価格差自体をなくすこと以外にはあり得ないことを示していると考えますが、政府の認識を伺いたいと思います。
團政府参考人 お答えいたします。
 御指摘のリメーリングの問題でございますが、委員御指摘のとおり、本来国内で出すべき郵便を料金価格差を利用して外国から出すということをリメーリングと言っております。
 この発生の理由でございますけれども、これは、内国の郵便料金よりも外国来の国際郵便の料金の方が有利な場合があるというふうなことで発生しているものでございます。
 さらに、どうしてそういうことが起こっているかということでございますけれども、これは御承知のとおりでございますけれども、国際郵便の場合に、差し出し国から受け取る配達国がございますけれども、配達国が差し出し国の郵政庁からの到着料として料金を受け取りますが、これが、特に途上国の場合におきまして、実際のコストより非常に低廉な水準である。具体的に申しますと、現在のところ、例えば二十五グラムの郵便でありますと、到着料は大体十三円ぐらいしかもらえない。国内で郵便を出しますと八十円かかりますから、その差がございます。その趣旨はもともと、例えば途上国におきますところの国際郵便、いろいろ所得の格差もございますので、なるべく安く出せるようにということで低廉にしております。
 したがいまして、リメーリングのこの価格差を利用しますと、国内郵便の国外への流出ということになりますので、UPU条約におきまして、これを防止するということが認められておりまして、こういうリメーリングの郵便については配達しなくていいというふうなことになっておりますし、そういうことがあった場合には、国内郵便料金を徴収するか、あるいは差し出し国に返送することができるというふうなことに規定されているわけでございます。
 したがいまして、我が国におきましても、全国八局、八つの郵便局で国際郵便の交換局を設置しておりますけれども、ここにおきまして、そういう御指摘のような疑わしいダイレクトメールがあった場合には、差出人に連絡をとりまして、内国郵便局の郵便料金の支払いを請求するということにしてございます。最近の数字でございますけれども、平成十三年度におきまして、こういう料金徴収した、返送したものと合わせますと、十九件で約八万通ということでございます。
 御指摘のとおり、そうはいいましても、国内料金が余り高いということになりますと一層これを促進することになりますので、やはり極力国内の料金を抑えるということと、さらに、こういう制度の悪用につきましては、啓蒙ないしその指導というものを徹底してまいることが大事ではないかというふうに考えている次第でございます。
東門委員 細かく御答弁いただいたんですが、今の到着料のことはわかりました。あと一点だけお聞かせください。
 郵便料金の内外価格差の要因なんですが、その要因である日本の郵便料金の高さ、今もお話にありました。郵便事業経費の約八割を占める人件費になっているんでしょうか。さらには、郵便取扱量の見通しを誤ったことによる過剰投資、さらには一九七〇年代後半の民間宅配便の参入、あるいは雑誌配送など第三種郵便への民間攻勢によって厳しい競争にさらされていることが問題であるとされております。
 したがって、郵便事業への民間参入がさらに促進されると、我が国の郵便事業を担っている公共事業体が郵便料金の内外価格差を解消するための体力さえなくしてしまうのではないかと懸念されるわけですが、我が国の郵政事業のあり方と、そして内外価格差解消の見通しについてお聞かせください。
團政府参考人 我が国の郵便料金についてのお尋ねでございます。
 たまたま現在、信書便法と郵政公社法というのを審議いただいておりまして、きょうも総務委員会やっていただいております。そういう中でもやはり、郵便事業への民間参入になるからこれからどうなるかという御質問がございます。そういう中で、やはり利用者にとっては極力安い料金で安心してサービスを受けられるということが一番必要じゃないかというようなことでございます。
 特に、コストの面からいいますと、御指摘のとおり、どうしても人力依存度が高いということで、人件費にかかる部分が多い。それからもう一つは、郵便の特性からいいまして、地方の方はやはりどうしても非常に効率が悪いということになりますので、試算しましても、やはり東京地域では大きな黒字ということがありますが、特に地方部に行きますと、採算を計算しますと、ほとんどが赤字ということになります。そういうユニバーサルサービスをどう守っていくか、こういうことが郵便の経営にとって非常に重要な問題というふうに考えております。
 そこで、今度の郵便の参入につきましては、いいところだけ入りますと、これはもう地方部はどうしても大変なことになりますので、参入につきましては、やはり全国にサービスをしていただくということを前提に、フェアな競争をさせていただくというふうな条件をつけて参入していただくというふうなことで考えております。
 しかし、そうはいいましても、また郵便の合理化も必要でございますので、逐次、七けたの区分を行うとかいうふうな内部の合理化等を進めまして、今後につきましても、今後数年間で、郵便だけでも一万五千人の定員削減をやるということとか、いろいろな物件費のコスト削減もやっております。昨年だけでも、十三年度でございますが、五百億円のコストの削減をやっております。
 そういうふうな合理化、効率化と相まちまして、また、競争にも対抗できるというふうなサービス水準、料金水準というものを維持していくという努力が必要ではないか。それから、法制的には、今言いましたように、ユニバーサルサービスということを確保するという前提での競争条件をつけさせていただくということによって、今後いろいろな切磋琢磨ということもできるんじゃないかというふうに考えている次第でございます。
東門委員 では、前回に引き続きまして急使の問題についてお伺いいたします。
 川口外務大臣は、前回の委員会での答弁におきまして、合同委員会合意の適切な運用という観点からは、深夜のプライベートでの飲食についても急使の仕事をしていると言えるかどうかということについて疑問を持ったと発言されました。そして、急使の任務遂行のあり方について米側に申し入れていると答弁されました。常識的に考えれば、だれしもそのように感じると思います。その意味で、この問題についての大臣の感覚は世間の常識と同じだと思います。
 しかし、外務省という特殊な社会に長い間つかっていて世間から隔離されていると、ここまで常識からかけ離れた感覚を持つようになるのかというような事例もございます。九日に行われた定例記者会見での橋本沖縄大使の発言は、まさにその典型です。橋本大使は、この急使による窃盗事件について、深夜のプライベートでの飲食中に行われたことがわかっているのに何の疑問も示さず、この軍人が公務中であるとして特権が認められたことに問題はなかったとの認識を示したとのことです。
 大臣の指示によって、急使の任務遂行のあり方について米側に申し入れたということは、この橋本沖縄大使の発言を事実上否定したものと受けとめていいのでしょうか。また、このように日本外交を担う立場にありながら、日本国民の権利を守ることよりも米国の立場を守ることを優先しようとする外務官僚の姿勢について、大臣はどのように認識しておられるか、お聞かせいただきたいと思います。
川口国務大臣 急使の件について橋本大使が言ったということについて、大使の立場としては、現在そうなっている、制度的にそうであるということを申し上げたんだろうと思います。
 いずれにしても、これについては米側に申し入れを行いましたし、それから、今回のこの件を踏まえまして、いかなる場合が合同委員会の合意に言う急使に当てはまるかという点等につきまして米側と協議をしていきたいと考えています。
東門委員 申し入れを行ったが、まだ米側から何の返答も返ってきていないということでしょうか。国として一応は申し入れたということだけでしょうか。
藤崎政府参考人 お答えいたします。
 今の申し入れという件でございますけれども、これは七月十日に、外務省の沖縄事務所の副所長より、在日米軍の沖縄調整事務所長に対しまして、この急使等の任務の遂行のあり方について適切性を確保されるよう求めたいという申し入れをした次第でございます。
 本件につきましては、今大臣から申し上げましたように、日米間で急使のあり方について、いかなるあり方が適切なのか、きちんと協議してまいりたいと思っております。
 今橋本大使のお話がございましたが、今大臣の方から御答弁申しましたように、橋本大使はこの制度について説明したものでございますけれども、この制度の運用の仕方が適切であるかどうかという点は別な問題でございまして、今まさに大臣が申し上げたとおり、私ども、きちんと協議してまいりたい、こういうことでございます。
東門委員 今の局長の御答弁は、米側と協議していくということでしたけれども、ぜひそれをやっていただきたい。いつも政府はおっしゃっています。運用改善をしている、運用改善でやっていく、その方が効果的だとも言えるような発言がありますが、しっかりとその運用の改善を米国側に求めるべきだと思います。ぜひやっていっていただきたいと思います。
 何度も私はこの委員会で指摘していますが、沖縄では、米軍人軍属、その家族による事件、事故はふえています。減ってはおりません。昨年も、一月の連続放火事件や、六月の女性暴行事件などの凶悪事件がありました。このような凶悪事件の加害者が急使という身分証明書を持っていたらどうなるのだろうかと非常に心配になります。
 今回の事件を引き起こした兵士の本来の職務が整備士であったように、急使の身分は、恒常的なものではなく、任務があると、それにつれて付与されるようですが、急使は米軍兵士ならだれでも任命される可能性があるのか。その身分はどの程度の期間で与えられるのか。相当長期間にわたる場合もあるのか。また、沖縄県内の米軍基地においても急使が任命されることがあるのか。あるとしたら、一日当たり、もしくは月平均で何人ぐらい任命されているのか。お聞かせいただきたいと思います。
藤崎政府参考人 今、いろいろたくさん御質問いただいたわけでございますけれども、この急使は、どういう者が任命され、また何名おるのかというお話でございます。
 まず、この急使につきまして、専任で従事する者と、また随時任命される者とあるわけでございますが、専任で従事する者は、在日米軍全体で十数名というふうに承知しております。他方、随時必要に応じて任命される者はこれ以外におりまして、この人数については、現在私ども承知しておりませんが、引き続き米側から把握してまいりたい、こういうふうに思っております。
東門委員 在日米軍の中で、専任で急使としておられるのが十数名ということでありましたが、沖縄県内にもいますか。もう一度お聞かせください、そこのところ。
藤崎政府参考人 私は、今ここで、大変申しわけございませんが、数字を含めまして、沖縄県内にいるかどうかということについては承知しておりません。
 ただし、米軍全体で急使という制度がございまして、そのうち、日本に十数名が常時駐在しているということでございます。今沖縄県に何名おるかということについては、大変申しわけございません、私は今把握しておりません。
東門委員 今回の事件で強く感じたことは、米国が、公務中と公務外を自分に都合のいいように使い分けているのではないかということです。
 今回の急使のようなケースまで公務中としながら、いわゆるプライベートで食事をしている、飲食をしている、それまで公務中としながら、交通事故などの場合は、公務中の範囲を狭く解釈しようとします。
 六月初めに本委員会で私が指摘しましたように、地位協定第十八条に基づく請求権、民事裁判権の適用は、公務中か公務外かでその扱い方がかなり異なってきます。
 公務中の事件、事故の場合、日本政府が肩がわりして損害補償しますが、米国にのみ責任がある場合は、米国がその費用の七五%を分担することになっています。
 しかし、公務外の場合は、基本的に、事件、事故を起こした者の個人の責任とされ、米国は、行為により金額を自分で決定して慰謝料を支払うだけであり、その金額が裁判所の判決に満たない場合、それを補てんするのは日本政府であって、実際、米国側の支払いは、判決の金額の二〇%に満たないものが大部分であることを私は先月指摘いたしました。
 それゆえ、巨額の補償が必要となりそうなケースでは公務外としようとし、他方で、一九七四年にさかのぼりますが、伊江島射爆場内で演習終了後に草刈りをしていた島民に対する米兵の発砲事件のように、米兵の責任が厳しく問われそうなケースでは公務中として、地位協定第十七条により、日本の裁判ではなく、米軍の裁判管轄権にしようとしているのではないかと疑いたくなるようなケースもありました。
 結局、地位協定においては、条文上も、また条文の解釈においても、すべてにおいて米軍に有利になるように運用され、国民、住民の権利がないがしろにされているところに問題があります。
 今回の事件で、政府は、急使の任務遂行のあり方について米側に申し入れていますが、急使の問題に限るのではなく、地位協定全般について米軍による恣意的な運用が行われないようにすべきです。
 そのためには地位協定の見直しが一番いいのですが、政府がまず運用改善をやってからというのであれば、米国が自分に都合のいいように解釈できる余地がなくなるような全面的かつ徹底的な運用改善を行ってもらいたいと思いますが、これは大臣の御見解を伺いたいと思います。
川口国務大臣 運用改善によって対応していくということがさまざまな問題について機敏に対応できるということで、これをやっていくということは今まで申し上げているとおりでございます。今まで申し上げてきたように、これについては、いろいろな問題が生じた場合には、それに応じて、必要と思われる対応を適切に行っていきたいというふうに考えております。
東門委員 ぜひ、今の大臣のお言葉どおり、どんどん進めていっていただきたいと思います。
 時間がありませんので、ちょっと急ぎます。
 もう一点は、米軍基地に出入りするタクシーに対する入構料の件ですが、七月十日の委員会において、沖縄エクスチェンジ本部事務所が米軍基地に出入りするベースタクシーから入構料を徴収できる根拠について質問をしました際に、政府は、第三条に基づき米国政府に基地の管理権があることと、第十五条に基づき設置される歳出外資金による諸機関が独立採算制を前提として運営されているということを挙げました。
 しかし、海軍販売所、PX、食堂、社交クラブ、劇場、新聞など、権力行使とは無縁であるはずの諸機関が、なぜ米国政府に認められた権限である第三条の管理権を行使できるのかが納得できませんでしたので、前回の委員会で、政府はこれらの諸機関を米国政府と同等のものと位置づけているのかと私は問いました。まさか、食堂や社交クラブあるいは劇場などが政府と同じであるなどという答えが返ってくるとは思っていませんでしたが、藤崎北米局長は、これらの諸機関が米国政府と同等の機関であると答弁をしました。
 それならば、これらの諸機関が米国政府の権力行使を代行することを認めた取り決めでもあるのかと思って、これらの歳出外資金による諸機関について日米間に何らかの合意があるかを尋ねたら、第十五条第一項のみが日米間の合意であるとのことでした。
 しかし、第十五条は、「歳出外資金による諸機関は、合衆国軍隊の構成員及び軍属並びにそれらの家族の利用に供するため、合衆国軍隊が使用している施設及び区域内に設置することができる。」と規定しているだけであり、どこにもこれらの諸機関の権限についての規定はなく、また、第十五条以外の地位協定のどの条文を見ても、これらの機関が第三条の管理権を行使できると読める規定はありません。
 設置することができるという規定だけで、どうして、これらの諸機関が米国政府と同等であり、米国政府に対して認めた管理権を行使する権限を持つと解釈できるのか、政府の見解を伺いたいと思います。
藤崎政府参考人 お答え申し上げます。
 前回の御答弁で、あるいは言葉が足りなかったのか存じませんが、私の申し上げた趣旨は次のとおりでございます。
 在日米軍基地につきましては、これは二条に基づいて日本政府が米国政府に提供しているわけでございますが、一たん提供いたしますると、日米地位協定三条に基づきまして、米軍に施設・区域の管理権があるわけでございます。したがいまして、米軍がタクシー会社等を含めまして車両の入構を認めるかどうかという点については、米軍による施設・区域の管理権の行使として考えられる次第でございます。
 他方、タクシーの入構料の問題でございますが、これは、地位協定十五条に基づく歳出外資金諸機関でございますエクスチェンジサービス、これが徴収しているということでございますが、この地位協定十五条に基づく歳出外資金諸機関は、米軍関係者の福利厚生を図るために、独立採算で運用されるということでございます。このエクスチェンジサービスが契約者等からの料金の徴収という形で運営しているということは、私どもは、日米地位協定上特に問題があるものというふうには考えてございません。
 政策論的に、何が適当かどうかということについてはいろいろ御議論があり得るというふうに存じますが、法律的な仕組みは今申し上げたとおりでございます。
東門委員 委員長のお顔を見ていて、もう時間ですよとおっしゃりたいのか、一点だけ質問させてください。
 私、前回の委員会におきまして、横田、横須賀、佐世保などの本土にある米軍基地では、タクシーはパスをもらって出入りしているが、入構料を払っていないと指摘した際、局長は、改めて調査をすると答弁されました。調査の結果はどうだったのか、その報告だけをお願いします。
藤崎政府参考人 お答え申し上げます。
 本件につきましては、私ども、まず最初に調査いたしました際に、沖縄以外の本土の基地におきましては、かかる入構料あるいは入構は認められていないと承知している、これは米軍に照会した結果でございました。しかし、委員の方から、それは自分の調査とは違うという御指摘がございましたので、今改めて調査させていただいているわけでございます。
 私ども、御指摘を踏まえまして今調査しております途中経過でございますけれども、陸軍及び空軍におきましては、基地への入構は認めていないという結果が来ておりますが、今、海軍、海兵隊について調査中でございます。一遍に全部調査結果が来ておりませんで申しわけございませんが、引き続き調査中ということで御了解いただきたいと思います。
東門委員 ありがとうございました。終わります。
吉田委員長 次に、丸谷佳織君。
丸谷委員 公明党の丸谷佳織でございます。よろしくお願いいたします。
 まず最初に、アジア=太平洋郵便連合憲章の第二追加議定書及び同連合一般規則の追加議定書の改正について質問をさせていただきまして、その後、国際情勢についてお伺いをさせていただこうと思います。
 まず、この両議定書の改正の問題なんですが、今回の憲章及び一般規則の改正では、連合の組織であります中央事務局及びアジア=太平洋郵便研修センターを廃止し、新たに事務局を設けること、また、この事務局は管理部門及び研修部門で構成することになっておりますが、なぜこのような組織変更を行う必要性があるのかという点と、また、今回の改正によって、マニラとバンコクに分散していた組織が今度はバンコクに統一され、組織的にスマートになるというふうに言えると思うんですが、この合理化効果というのはいかなるものか、この点についてお伺いします。
高橋政府参考人 お答え申し上げます。
 今委員御指摘のとおり、今回の改正の目的は、従来、中央事務局というのがマニラにございまして、他方、バンコックにアジア=太平洋郵便研修センターというものがございまして、小さな組織なのに二つに分かれておりまして、これをそれぞれまず廃止いたしまして、新たにバンコックに管理部門それから研修部門から成る統合的な事務局というものをつくる、そういう形で組織を単純化し、事務の合理化を図るということが目的でございます。
 ただいま申し上げましたように、マニラにございました中央事務局と、それからバンコックにございました研修センターというものを廃止いたします。この組織改正によりまして、このアジア郵便連合は大変小さな国際組織でございまして、職員総数二十二名でございますけれども、このうち三名を削減することができることになります。十九名の組織になるということでございます。さらに、一つになることによりまして、人員政策上、より適切な人員配置というものが可能になるのではないかということを期待いたしております。
 それから、予算面に関しましては、当面、従来マニラにありました部分のある部分はバンコックに移転をさせなければいけないということで、引っ越し費用がかかります。それから、バンコックにおきましては、既存の施設というものを少し補修する必要がございますので、そういう臨時の予算というものを計上してございますので、当面、若干ふえるということになりますが、これを差し引いた通常の予算ということで考えれば、大きな節約というものが期待できるのではないかというふうに考えております。
 以上です。
丸谷委員 ということは、中長期的に考えまして、組織のスリム化、また、より一層の予算の削減というか、小さな組織を大きく機能させていこうという目的のために今回の組織改正もあるのだというふうにお伺いをしました。
 もう一点、我が国でも現在議論になっていますが、先進国におきましては郵便事業の自由化ということが今問題になっています。今までの流れですと、郵便事業というものは歴史的に国の独占事業であったところが多いと思うんですが、この郵便事業の自由化ということは、これを管理監督します郵政監督庁の利害というものとは必ずしも一致しないというふうに思います。
 そこで、今回、アジア=太平洋郵便連合あるいは万国郵便連合が、今後郵便事業の自由化が進んでいく中で、郵政監督官庁が構成するこの連合組織をどのように機能させていくのか、先進国において郵便の自由化が進む中で、この二つの連合はどのような貢献を国際社会になし得るのか、この点についてお伺いをします。
高橋政府参考人 委員御指摘のように、先進国の中におきまして郵便事業の自由化という動きが現在見られているわけでございます。
 UPUそれからこのアジア郵便連合におきましては、これを構成しております郵政庁というものがございますけれども、この郵政庁の中身につきましては各国それぞれ国内法令で定義するということになっております。実態的には、郵便業務の監督を行う組織の規制体と、それから実際の業務、経営を行います組織ということに分かれるわけでございます。
 それで、郵便事業の自由化というものが進んでいきますと、経営を行う、事業を行う組織というものの中に、公社だとか、それからさらには全くの民間の事業体というものも入ってくる可能性があるわけでございまして、UPU及びアジア郵便連合におきましても、この枠組みにおきましても、加盟国がそういうふうにした方がいいというふうに判断をいたしますれば、民間事業者もこの郵政庁の概念に含めて、UPUあるいはアジア=太平洋郵便連合の活動に参加できる、そういう体制がとられるというふうになっております。
 しかしながら、現時点におきましてはまだそこまで、例えばアジア郵便連合におきましても、ニュージーランドにおきましてはかなり自由化が進んでおりますけれども、そういう形には今のところはなっておりません。
 いずれにいたしましても、こういう動きというものがございますけれども、万国郵便連合にいたしましても、世界のいろいろな文化、社会、経済的な背景の違う、そういう国家間の郵便関係というものを最も効果的に運営していく、それから、加盟国の領域のすべての地点において恒久的かつ合理的な価格のもとで受けることができるような普遍的な郵便業務を増進する、そういう万国郵便連合の役割というものが規定されているわけでございますけれども、この役割というのは依然として変わらない重要なものがあるだろうというふうに考えております。
 それから、アジア=太平洋郵便連合におきましても、郵便業務の円滑化ということを目的に、郵便職員の研修等の事業をやっているわけでございますけれども、多様な通信手段というものの恩恵を十分に享受できない、そういう途上国が多い地域でございますし、不便な地域に住む郵便利用者というものもたくさんいらっしゃるわけでございますので、こういったことを考慮に入れますと、APPU、アジア郵便連合の役割というのは今後とも重要であると考えられます。
 ただし、先ほど申しましたように、今後自由化の動きというのがどんどん進んでいきますれば、枠組みとしては、構成する郵政庁の概念に民間の事業者が入ってくるということもありますので、そうなればそれでまたいろいろな新しい動きが出てくるかと思いますが、それぞれの組織が目的としている役割だとか意義というものは皆理解しながらそれを運営していくということになるだろうと思います。
丸谷委員 その目的、また役割に関しては非常に賛同するところでありますけれども、現実問題として、両議定書の署名国というのは我が国を含めて二十二カ国、そして締結をしているのがベトナム一カ国ということになるわけです。ですから、その大きな目的、また役割を完結させる意味においても、この議定書への加盟というのは推進していかなければいけない立場にはあると思うんですけれども、この議定書に関しての質問の最後は、連合加盟国の締結に向けた現状と今後をお伺いします。
高橋政府参考人 この議定書は既に七月の一日に発効いたしておりますけれども、六月末現在におきまして両追加議定書の締約国というのは、委員が御指摘のとおり、ベトナム一国だけでございます。
 この両追加議定書につきまして、これからほかの署名国がどういうような形で締結していくかというような見通しにつきましては、現在のところ、私ども詳細な見通しは持っておりませんけれども、しかしながら、今回の組織改革というものが持っております有用性、意義につきましては加盟国の間では広く、よく理解されているものでございますので、連合加盟国におきましては、早期に締結する、いずれの国におきましてもそういうことが理解されているものというふうに考えております。
丸谷委員 ありがとうございました。
 我が国におきましても、構造改革そして行政改革というのが非常に大きなテーマになって、今これに取り組んでいるわけですけれども、国際機関におきましても、目的に応じた改革というのは柔軟な姿勢で行っていかなければいけない、また、今後この連合組織についても、必要なのであればその姿を変えていくようなことも必要ではないかというふうに感じているという感想を述べさせていただきたいと思います。
 また、もう一点。改革という面では、外務省においても改革は昨年から引き続き大きなキーワードになっていると思います。この二年間、では本当にどのように外務省を変えればいいのか、また外務省はどのように変わっていくべきなのかというのは議論し尽くされたと思いますし、今の段階では、もうその改革案を実行に移すときが来ているというふうに思います。
 しかしながら、先週の、七月の十二日金曜日の朝刊を見ましても、駐ロシア日本大使館の公邸建設の記事が載っておりまして、あのような記事を見ますと、外務省が今改革をしていくという流れの中で、それに逆らうような報道内容に受けとめられまして、正直言って非常に残念な気持ちがしております。本当に外務省は心底変えようと思っているのかな、変わろうとしているのかというところが、応援団の一員ではありますけれども、不安に思う点ですので、この在外公館について質問させていただきたいと思うんです。
 駐ロシア日本大使館が非常に華美ではないか、また巨額のお金をかけ過ぎるのではないかという点が新聞紙上では指摘をされるわけですが、一般的に言って、在外公館を建設する基準というものは外務省の中にあるのでしょうか。この点についてまずお伺いします。
北島政府参考人 お答え申し上げます。
 かつて、外務省の中で有識者の意見を聞くという場をつくりまして、そうした有識者の意見も伺いながら整備基準を設けたということがございます。その整備基準に則した形で、館員数に応じて床面積等を算出して設計をするということでございますけれども、同時に、場所によっての特殊性等がございますから、例えばモスクワの場合ですと相応のセキュリティー対策を講じる必要があるといったことがあるわけですけれども、そうした個別事情も踏まえて建設するという考え方でございます。
丸谷委員 地域の特殊性を踏まえて、また館員の数によって、床面積ですとかを計算するというのが基準というお答えだったと思いますが、そうしますと、今マスコミ等で指摘をされていますプールあるいはサウナといった態様、これはどのような必要性から建設をされるのですか。
北島政府参考人 モスクワの日本大使館の場合ですと、特殊な事情ということで御理解をいただければと思いますけれども、セキュリティー対策のために、建物の構造強化、それから資機材の検査、建設現場の警備対策等、こういったことが必要で、こうしたセキュリティー対策のために通常以上に費用を要するというようなこととか、それから、当方の要求性能を満たす資機材、鉄骨を初めとする資機材、電気や機械などの設備機器等のかなりの部分を日本を初め第三国から調達せざるを得ないということで、よその国において我が国大使館事務所を建設する場合と比較して、全体として相対的に高額とならざるを得ない事情が存在するといったことがございます。
丸谷委員 私が今申し上げたのは、高額過ぎませんかという質問ではなく、在外公館としてプールあるいはサウナ等の設備を備えることに関して、これはなぜ必要なんですかという質問をしました。もう一度お答えください。
北島政府参考人 申しわけございません。
 プールとサウナについての御指摘でございますけれども、まずプールでございますけれども、モスクワにおいては、寒さが厳しい、それから屋外における活動が制限される期間が長く続くということで、このような生活環境が厳しい地域においては、館員の心身の健康維持を図る一環として、プール等の厚生施設の設置を考慮しているということでございます。
 ちなみに、近年モスクワにおいて建設されたアメリカ、ドイツ、イギリスといった主要国の大使館においても、プール等の厚生施設が設置されているということでございます。
 さらに、在外公館のプールの場合、厚生施設としてのみならず、非常時の防火用水、生活用水の確保に対応できるよう、危機管理機能の面からも必要性があるというふうに考えています。
 さらに、新事務所に設置予定のプールにつきましては、在留邦人の方々にも利用していただくことを考えております。
 それから、サウナでございますが、これは、経費の削減に努めたいということで今いろいろな見直しをやっております。その中で、サウナについては見直しの対象として考えたいというふうに思っております。
丸谷委員 この経済状況のもと、やはり見直すべきところは見直していただかなければいけないのは当然なんですけれども、実際に、私も北海道出身でございまして、北の暮らしの厳しさというのはわかっているつもりでございます。
 今のプールの御説明に関してでも、実際に、じゃ自分の学校はどうだったかなと考えますと、やはり外にプールはなかなかつくれないので、学生の健康維持のためには室内温水プールというものを有していたというふうに思って、理解できる部分もあるんですが、生活用水あるいは避難ということもおっしゃられましたよね。これを聞くと、本当なのかなという、ちょっと疑問も実は残ります。
 実際に今までこの公館のプールが生活用水に役立った経験があるのかどうか、この点をお伺いします。
北島政府参考人 一九九〇年に湾岸危機が発生した際に、クウェートの大使館、日本大使公邸の地下にプールがございまして、在留邦人の皆様のために、この公邸の地下のプールの水を生活用水として活用した例がございます。
丸谷委員 国民の目も、外務省の改革、具体的にどのように行っているのか、非常に期待とともにまた厳しい監視の目もあるということを十分に御理解していただいた上で、必要十分、不可欠な改革を外務省に再度お願いしたいというふうに思います。また、これをお願いとしまして、次の質問に入らせていただきます。
 次に、ICCについてお伺いをします。
 七月一日に発効しましたICC条約なんですが、この大きな目的としまして、国際社会に人道主義と法治主義を広めていく、そして非人道的な大量虐殺、戦争犯罪を抑止する力というものを国際社会に与えることが挙げられると思いますが、その意味から、日本もこの条約の発効に関して大きな役割を果たしてきたというふうに認識をしています。
 しかし、この条約に一度署名をしました後撤回をしましたアメリカは、この条約のもとでは米国要員が訴追されるおそれがあるとしまして、ボスニア・ヘルツェゴビナでのPKOの期間の延長に拒否権を行使しました。条約の目的とその意義から考えて特例は認められないと主張する国もあったとお伺いしていますが、結局、国連の安保理でPKO要員に対するICCの訴追を猶予する決議案を採択し、とりあえず年内、十二月三十一日まではアメリカのPKO参加は延長されることになりました。
 ブッシュ政権に移行しましてからのアメリカ政権は、今回の一連の問題もそうなんですが、一国主義に偏り過ぎてはいないか、その部分が目立ち過ぎていませんかという批判があっても私は仕方がないと思いますし、また、一国の圧力で公平な裁きの場であるべき司法の独立性に傷をつけたのではないか。また、ICCのみならず、今後も国連を中心としました多国間の協調体制というものが脅かされるような危惧を私は感じるわけなんですが、外務大臣は今回の一連の事態をどのように認識していらっしゃいますか。この点をお伺いします。
川口国務大臣 ICCにつきましては、米国の主張に関連して、安保理におきまして、PKOの要員に対するICC管轄権をめぐる問題に関しまして現実的な解決が図られたと私は歓迎をいたしております。
 これは、国連のPKOあるいは多国籍軍といった安保理で承認をされた活動というのは、国際の平和と安全に関連して大きな役割を果たしてきているわけでございますけれども、ここにおいて米国の役割というのは非常に大きく、この役割は高く評価をしているわけでございます。そして、米国が引き続きこれらの地域で、例えばボスニア・ヘルツェゴビナといった地域でプレゼンスを維持するということが重要であるということで、その意味で現実的な解決であったということでございます。
 米国は、委員が御案内のように、このICCとの関連でいいますと、規程には署名をいたしましたけれども、ことしの五月に入って、ICC規程の当事国となる意図は持っていないということを言っているわけでして、これについては幾つかの理由を挙げているわけでございます。
 こうした米国の立場を考えまして、委員のおっしゃっているICCの精神がゆがめられることになるのではないかということについての御懸念については理解しますけれども、こういった米国の態度と国際の平和と安全に米国が果たす役割の重要性ということを考えますと、今回の解決というのは現実的なものだったと私は思っています。
丸谷委員 大臣の御答弁では、現実的な対応であったと。私は、ぎりぎりの妥協案であったのかなというふうに思うんですけれども、実際に、ICCを批准している国は現在七十六カ国あるわけですけれども、この中で、安保理に入っているアメリカ、ロシア、中国は署名もしておりませんし、日本も署名をしておりません。また、インドも署名をしていない。その理由として、ICCの実効性あるいは効力に疑問を持たざるを得ないという意見もあるわけなんです。
 しかし一方で、たとえアメリカが主張しているような危惧があるにせよ、PKOであっても、非人道的な行為が行われた場合には、当然これは裁かれなければいけませんし、もともと、PKOであっても非人道的な行為というものが許されていいことではございません。
 また、条約の補完性の原則によりまして、自国で適正な捜査と処罰が行われる場合にはもともとICCは管轄をしないという原則があるわけですから、国際社会全体に人道主義と法治主義を根づかせようとする大きな目的のために各国がより積極的な行動をとることによって、その効力、実効性に疑問を持たざるを得ないと言われているICCを強化し、意味を持たせることにつながると私は思います。
 そういった意味で、日本も署名をしていない状況ですけれども、各種国内の法整備の問題は存じておりますが、国内法の整備というのを関係省庁に迅速に指示していくべきというふうに思いますが、今後の対応をどうされるつもりなのか、この点についてお伺いします。
川口国務大臣 我が国といたしまして、国際社会における最も深刻な犯罪の発生を防止して、国際の平和と安全を維持するという観点から、ICCの規程につきましてはずうっと一貫して支持をし、実現に向けての努力をしてきたわけです。
 この規程の締結につきまして、現在、内容、各国における法整備の状況を精査するとともに、国内法令との整合性について検討をしています。それで、七月にICC規程が発効したということを踏まえまして、政府としても検討を進めていきたいと考えています。
丸谷委員 実際に、有事法制のみならず、新規立法が必要になってくる部分もあるというふうに思いますので、この点につきましてもしっかり取り組んでいかなければいけないというふうに思っていますし、また、積極的な日本の姿勢を示すということが一つの国際社会に対するメッセージにもつながるというふうに思っておりますので、ぜひ積極的かつ素早い対応をお願いしていきたいと思います。
 続きまして、サミットについて幾つか質問をさせていただきたいというふうに思います。
 今回のサミットは、サミット自体が形骸化してきているのではないかという指摘を踏まえてか、いろいろな面で改革、新しい試みがなされ、私も評価するところでございますが、その中で、ロシアがG8に正式に参加することが決定をし、また経済討議にも参加していくことが決まり、二〇〇六年のサミットはロシアで行うことが決まるなど、領土問題を抱える我が国にとっても非常に大きな意義があるサミットであったというふうに思います。また、国際テロですとか、あるいは大量破壊兵器の拡散問題に対応していく上でも大きな意義を持つというふうに思います。
 ただ、このサミットが、石油危機後の世界経済の安定化を図るために始まったものでございますが、実際には経済討議の場から政治討議の場へと変わりつつある中、ロシアを含めて経済討議をしていく、このロシア全面参加の意義について政府はどのように考えていらっしゃるのか、この点についてお伺いしたいと思います。日本は経済外交を今まで中心としてきたということもありまして、このロシア、経済的にはオランダと大体同じぐらいかというふうに思いますけれども、ロシアが経済討議にも正式にかかわっていくというこの意義についてお伺いをします。
川口国務大臣 サミットが七五年に始まって以来の流れというのは、今委員がおっしゃったように、経済から始まって政治に移ったということでして、最近はそれにグローバルなさまざまな問題が対象として加わってきている。例えば貧困の問題ですとか環境の問題ですとか、そういったことが入ってきているわけでございます。そうしたさまざまな、その時々の国際社会の課題をサミットで取り上げて、具体的にどういう方向で解決をしたらいいかということについての方向性をサミットで出してきたということです。
 我が国として、今度サミットにロシアが参加をするということになったことは、歴史的な意味で非常に大きな決定であると考えております。こうした決定に基づいてロシアはこれ以降参加をしていくわけですけれども、国際社会で、G8の一員として、重要でかつ意味のある役割を果たしていくということを期待したいと考えています。
丸谷委員 今回のサミットは、九・一一、昨年の九月十一日以降初めて主要国の首脳が一堂に会する場というふうになりました。その意味からも、対テロに関する施策、あるいは、ロシアが保有する核兵器など大量破壊兵器ですとか核関連物質がテロ組織に流出するのを防止するための新たな支援の枠組みとしてG8グローバルパートナーシップというものが合意されたわけです。これは、G7として十年間で約二百億ドル、そして、日本の小泉首相も二億ドル拠出することを言明されていますが、ロシアの核不拡散ということに関しては、我が国は九三年に核兵器廃棄協力委員会というものを設置しまして、非核化支援として二百億円を既に拠出しているわけですね。ただし、これは、ロシア側の協力体制が不備であるという残念な結果から約百五十八億円が未執行になっていると認識をしています。
 こういった背景も踏まえて、このG8グローバルパートナーシップの二億ドル、核兵器廃棄協力委員会との関係をどのようにしていくのか。対テロに対して、あるいは核不拡散という大きな問題に対して、お金を出さないというのも悪いんですけれども、出したお金を有効に使えないというのも、これはよくないというふうに思うんですね。ですから、すっきりとした形を見せてほしいというふうに思うんですが、この協力委員会との関係、どのように調整していかれるのか、この点についてお伺いします。
川口国務大臣 おっしゃったような、カナナスキス・サミットで合意された、大量破壊兵器及び核物質の拡散に対するG8グローバルパートナーシップということにつきましては、おっしゃったテロ対策という観点からも、安全保障という観点、それから環境という観点からも大きな意義を持っていると私は考えています。
 我が国は、このうち当面二億ドル余りを貢献するということになっていまして、これは、委員が先ほど御指摘になったような、ロシアでこういった事業を実施していく上でさまざまな困難があるということを踏まえて、指針をまず合意をいたしまして、それを受けて、今後の事業の実施上の諸困難が解決されるということを前提として決定をされたということでございます。
 そして、その二億ドルのうち、一億ドルがG8が新たに設立をする国際機関に拠出をするということになりました。そして、この機関への拠出分以外の一億ドル余りにつきましては、G8の新たな枠組みであるこのパートナーシップのもとで、関係国の実施上の困難を除去する努力等を見きわめながら、非核化協力委員会の抜本的な見直し作業を行う中で具体的な使途を検討していきたいと考えております。
丸谷委員 九三年に設立しました核兵器廃棄協力委員会、目的はすばらしいものでしたけれども、実際にはいろいろな問題で未執行のお金が残っているということも踏まえて、どのようにしたらロシア側の協力を確保して十分な支援ができるのかということを、ぜひ今までの経験を生かしていただきたいというふうに思いますし、有効に二億ドルというのは使われるべきだというふうに思います。
 では、経済局長にお伺いをさせていただきたいというふうに思います。
 サミットは、経済討議の場から政治討議の場、また、大臣がおっしゃいましたけれども、グローバルな、環境の問題あるいは貧困の問題の討議の場に変わってきている面もあるという一面、やはり経済というのは非常に大きな問題であると認識をしています。
 今回のサミットに関しまして、新聞の論調を見ますと、「世界経済深入り避ける」とか「日米株安、ドル安…避けて通るしかない?」あるいは「G7、楽観論あえて強調」、こういった見出しが躍っていたわけなんですけれども、市場の期待にこたえていなかったのではないか、こういった論調が目立ちました。
 これを逆に言えば、サミットは世界経済の安定化に向けて主要国が政策協調を進めていくことが期待されるというふうに言えるとも思うんですが、今回のサミットでの経済討議自体が二時間足らずのものであった。世界経済の不安解消のための政策協調自体は、議長サマリーには上がっていなかった。逆に、懸念材料となるものを書き込むというよりも、世界経済の成長の見通しに自信を示すものであったというふうに私は議長サマリーを読みました。
 しかし、サミット直後の世界経済の現状を見ましても、議長サマリーとは全く違う方向へ行っている。このサマリーに見られた世界経済安定への自信と現在の経済の状況、なぜこんなにも乖離しているのか、総括を含めてお話をお伺いします。
佐々江政府参考人 お答え申し上げます。
 このサミットの結果について、我が国の新聞等も含めまして、先生が今おっしゃられましたように、サミットが果たして現在の問題に適切に対処しているのかという問題提起もあったことは十分私どもも承知しているわけでございます。
 他方、今回のサミットでは、第一日目の午後のG8の会合で、世界経済のところで、これは開発問題も含めて、あわせて議論をしたということでありまして、今回、サミット全体が通常のサミットに比べて日程も短かったということもございますけれども、その中でも、世界経済自身についてそれなりの時間が割かれて、議論が行われたというふうに思っております。
 その結果につきましては、今先生がおっしゃられましたように、基本的には、今の世界の経済の基本的条件は健全である。これはもう、その前にG7の蔵相会議でもそういう基本的な認識で、この延長上で議論が行われたということであります。ただし、その機会に、同時に、すべて楽観論で終始したということではなくて、最近の市場の動向等に注意していくべきであるという議論も出ましたし、この過程で、先ほど先生が御指摘のありましたような、企業の不正会計等の問題についても言及は行われたということでございます。
 もちろんその過程で、世界的な株安あるいはドル安についての不透明感が増しているということで、リスク要因があるという議論はあったわけでございます。特に、それは地域情勢とか、あるいは当面、短期の問題もありますねという議論もあったと思いますけれども、しかしながら政策的な認識として、やはり中長期に見て、今はそういう問題はあるけれども、中長期の問題としては健全な方向に向かっている。去年に比べて今はいいし、今に比べて来年はよくなる、そういう見通しである。だから、基本的ないろいろな指標はいい方向に向いているということは事実としてありますし、またそれが共通の認識であったというふうに思うわけです。
 この関係で、構造改革を成功させるためにリーダーシップが必要ですという議論もあったわけでございますけれども、当面の短期の市場の問題について、G8自身として、例えば協調的な行動をとるというようなことについて議論されなかったのは、まさに先生のおっしゃるとおりでございます。ただし、首脳の認識としては、そこの面に焦点を当てるよりは、むしろいい方向に行っているということに基本的に自信を持つべきだという方向に結論をしたということでございます。
丸谷委員 実際に、このサミットをどのように改革し、うまく機能させていくかという大きな問題にもつながってくるというふうには思うんです。グローバルの問題、環境の問題、貧困の問題を話し合うのはいいことだというふうに思うんですが、この貧困を克服するにも、やはりG7を初めとして日本の経済も安定していかなければ貢献できない部分も多いわけでございます。
 そういった意味で、経済討議というものが、お互いの顔色を見ながら書けるところだけ書いておこうみたいな、そういった楽観主義的な部分というものを、また一面仕方ない部分もあるかというふうには思うんですけれども、こういったことを乗り越えながら、本当に貧困や環境問題を克服するために貢献できるような、世界経済安定に向けたしっかりとした経済面での主要国の合意ができるようにと、次のサミットに期待をさせていただきたいというふうに思います。
 時間がなくなりましたので、最後に、もう一つサミット関連のテーマとして大きなものの一つがアフリカ問題だったと思うんです。このアフリカ、毎回サミットでテーマになりますが、重債務貧困国の対応について、最後にお伺いをさせていただきます。
 日本におきましては、債務削減を行いますと、新たな借款の供与は困難になって、無償資金協力というのが原則になるわけなんですけれども、九二年のリオ・サミットから、先進国は途上国に対するODAをGNPの比率〇・三三%から〇・七%に上げようと目標を立てたのにもかかわらず、二〇〇一年には、実際にはGNPの比率にしてODAが〇・二二%に減少していますし、逆に途上国の債務というのが三四%にふえています。
 この債務の問題、非常に深刻な問題である以上、重債務貧困国を救済していくためには柔軟かつ多岐にわたる手段が必要かと思います。その意味から、日本の原則の変更の見直しも必要になってくるのではないかという質問が一点と、これはアフリカではないんですけれども、ヨルダンに対しますODAの債務について、あわせて二点お伺いしたいと思うんです。
 六月二十五日の日米首脳会談でブッシュ大統領は、ヨルダン国王の訪日に際しまして、対ヨルダンの有償のODA千七百五億円に対し、これを帳消しにというようなリクエストもあったようでございます。この扱いについてどのようにされるのか。帳消しにした場合、ヨルダンに対して借款を供与することは現在は不可能になってくるわけで、どのように支援を続けていかれるのか。
 この点、二点お伺いします。
川口国務大臣 二つ御質問がありまして、一つがアフリカ支援ですが、まず一般的に申し上げまして、債務救済イニシアチブが適用される重債務貧困国に対して、我が国としては、ODA債権及び適格な非ODA債権を一〇〇%削減をするということにしておりまして、これらの国々に対して、我が国としては債務救済イニシアチブを迅速かつ効果的に実施をしていく、そして貧困削減、社会開発につなげていくということが重要な課題の一つだと考えております。
 これらの債務削減を行った国々に対しては、我々としては、新規の借款を供与しないで、無償をやっていくということで考えております。開発課題に対しては、無償資金協力及び技術協力を中心にして対応していくことを考えていくというのが我が国の立場でございます。
 それから、ヨルダンですけれども、七月一日にアブドラ国王が小泉総理と債務繰り延べについてお話をなさいました。先方から、有利な条件で債務繰り延べをしてほしいという要請があったわけです。その後、七月八日から十日までパリ・クラブの会合がありまして、そこでヨルダンの債務繰り延べが要請をされた。それに対して、我が国としては、ヨルダンの経済改革の努力を支援するために、この議論に積極的に参加をいたしまして、一定の債務について、ヨルダンと主要債権国との間で最大で二十年間繰り延べをするということについて合意をいたしました。今後、二国間の合意をやっていくということでございます。
丸谷委員 以上で終わります。ありがとうございました。
吉田委員長 次に、柿澤弘治君。
柿澤委員 柿澤です。
 久しぶりに質問の席に立たせていただきましたので感想を申し上げますと、最近、外務委員会の質疑が余りおもしろくない。これは、田中大臣のころは自分の言葉で語っていた。私は、川口大臣にはもう少し自分の言葉で語っていただきたいなということをまずもってお願いをしておきます。中身は違ってもいいんですよ。ただ、本人の言葉で、ここは国会の議論なんですから、官僚的なやりとりではやはり活性化しない。これはみんなが感じていることだと思いますので、ひとつお願いをいたしたいと思います。
 きょうはAPPUの追加議定書の質疑ということですが、これについては、APPUの存在意義そのものについては各委員からもいろいろな疑問が出されました。UPUで足りるのではないかという話もありましたが、アジア太平洋の国々がさまざまな分野で交流を深めていくということは結構なことだと思いますし、内容は合理化につながることだということですので、私は賛成をしたいと思っています。
 ただ、国際機関の中には、どうも、分担金を払っていて納得できないというものが多々ある、国際連合を初めとして。そういう意味で、日本はただ黙って、サイレントタックスペイヤーであってはならない。必ず合理化のために積極的に提言をしていくべきだというふうに私は思っておりますが、この点について、川口大臣から決意のほどを聞かせていただければ幸いだと思います。
川口国務大臣 国際機関のいろいろな合理化あるいは改革ということについて、私は、我が国はかなりの努力をしてきていると思います。国連しかり、ユネスコしかりということでございます。これについても、そういった我が国の考え方と、それから今までの経験を生かして対応していくべきであり、そうしたいと考えています。
柿澤委員 努力をしていることは認めますけれども、例えば、日本が支援をしてつくったパレスチナ自治政府の建物ががんがん壊されていく、それを黙って見ていなければならない、非常につらいところですね。アフガンについてもそうならないように、ひとつ政治的な関与も含めて、しっかりと日本の支援の結果をフォローアップしていただきたいというふうに思っています。
 それから、きょうはAPPUということでアジア太平洋が舞台になっておりますので、私はかねがね、アジア太平洋の中でやはり地域共同体をつくっていくべきだということを主張しております。その意味では、ASEANプラスジャパン、ASEANプラスチャイナ、さまざまな形で自由貿易地域の想定が、勉強が進んでいることは大変結構なことだと思いますし、チェンマイ・イニシアチブを初めとして、アジアの中での通貨協力の仕組みが組み立てられ、そして、将来にはアジア通貨単位、そしてアジア通貨基金のようなものまで構想されていくというのは大変結構なことだと思っています。それは何もグローバリズム、グローバリゼーションを妨げるものではなく、グローバルな、地球社会に対する地域の協力体としてプラスに、ポジティブに働くのではないかというふうに考えているからであります。
 そういう意味で、アジアの共同体をつくっていかなければならないんですが、やはりそれには、多様性を尊重しつつ、しかも相互理解を深めていく、心の信頼感を高めていくということが非常に大事じゃないか、心のアジア共同体をつくるべきだというふうに考えています。アジア諸国の中には歴史認識その他さまざまな課題があることは承知しながら、それを乗り越える努力をしていく。
 その意味で、実は私自身も、アジア・太平洋議員フォーラムというのがあります。二十五カ国ほどでできておりまして、既に十回、毎年会議を開いておりますが、一九九八年のソウル大会のときに、アジア太平洋芸術文化祭を実行しようという決議をしたことがございます。
 これは大臣御承知だと思いますが、EUの中では、欧州委員会の指令によって毎年一カ所をヨーロッパ文化首都ということで選んで、メンバー国その他、日本も参加していますけれども、文化行事をやっていく。その中で、多様性を認識しつつ、欧州の文化の未来への発展、融合を目指して努力をしている。そういう試みを日本がイニシアチブをとってアジア太平洋地域でやっていくべきだというふうに考えているんですが、これについて川口大臣の御意見を伺えれば幸いです。
川口国務大臣 アジアは一つという言葉がありましたし、アジアは多様であるという言葉もございます。両方が正しいんだと私は思っていますけれども、そういったアジアのさまざまな文化を交流していって相互に理解を深めるということは、私は非常に意味のあることだと思っています。
柿澤委員 その意味で、外務省の中で文化交流というものの役割をもっと重視していくべきではないかというふうに思っているんです。
 ですから、私自身が外交に直接携わっておりましたときにも、経済協力局という名前でなくて、対外協力とか国際協力とかいう形で文化交流も含めてやるべきじゃないかという提言もしたことがあるんですが、やはり経済協力というのにこだわる方々もいらっしゃって、現在のようになっているんです。
 外務省の中には、御承知のように、別に文化交流部というのが存在して、文化交流をやっていらっしゃる。文化交流部長には、きょうおいでいただいていますけれども、川口大臣のイニシアチブで民間からの登用ということで、糠澤部長が就任をされている。糠澤部長は、経団連の場で、またハンガリー大使として、さまざまなそうした現場を見ていらっしゃるわけで、できれば、外務省だ、文部科学省だ、文化庁だ、そういう省庁の縄張りを超えて、文化交流行政の推進のために、特にアジア太平洋の文化交流の推進のために一肌脱いでいただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。
糠澤政府参考人 どうもありがとうございます。
 外務省といたしましては、諸外国との相互理解を増進するためにいろいろ前から努力いたしておりましたが、最近は少し文化交流の予算が減っているので、その少ない予算を大事に使おうと思って一生懸命努力しているところであります。
 片や、今先生おっしゃいました文化庁の方はいろいろ予算のつき方が非常によろしいので、私どもも一緒にその元気のいいところと協力して文化交流を伸ばしていかなきゃいけない、そういうふうに思っています。
 縄張り意識があるというふうなことはございませんで、私どもは、文化交流というものを全体として伸ばすためには、前の機関車、後ろの機関車、どちらが前の機関車かわかりませんけれども、両方に機関車がついたような形で、これから難しい国際社会の中で文化交流という列車をどんどん前に進ませていかなきゃいけない、苦しい坂を上っていかなきゃいけない、そういうふうに思っています。もし、垣根があるとか縄張り意識があるというふうな御印象がおありになれば、我々としては一刻も早くそういうところは直していかなければいけないので、御注意願います。
 どうもありがとうございます。
柿澤委員 今までの文化交流は、ともすれば、日本におけるフランス年とかドイツにおける日本年とか、ことしは中国年、日本年ということで、中国、日本、やっておりますけれども、そういうバイラテラルだったと思うんですが、ぜひこれからはマルチの交流というふうに心がけていただきたいなということをお願いしておきます。
 文化交流部長、抜てきされて省内へ入ったんですけれども、今、経済協力局長の人事が問題になっていますが、住み心地はいかがですか。
糠澤政府参考人 まだ住み心地というほどのことはありませんで、六月十二日に就職しましたので、今は習い心地というところでございます。だんだん左右、東西南北がわかりまして、自分の意見を言って、それに対して抵抗があるというふうなことがあれば、住み心地がいいか悪いかがわかると思います。
 どうもありがとうございます。
柿澤委員 やはり外務大臣が経済協力局長人事でこだわっていらっしゃるのも、異質のものを入れて、そして新しい刺激をというふうにおっしゃっていると聞きました。
 先ほどの質問を聞いていますと、まだ進行中ですということですが、平沼大臣がそういう要請を受けたと言っているんですから、要請はされたことは間違いないですね。
川口国務大臣 私が願っているような結果に導いていくための過程としては、お相手にお話をしなければいけないということは当然でございまして、今そういった過程を進みつつございますが、いずれにいたしましてもこの件は検討中でございまして、官邸の人事検討会議、それを経まして決まっていくということになると思います。
柿澤委員 経済産業大臣に接触をされたということはお認めになったということですので、経産省の方というふうに考えますと、本人の資質の問題、私も正確には知りません、個人的には知っていますけれども。しかし、今経済協力に関して、ODAに関して官民癒着、官業の癒着ということが問題になっている。商社の一部の人が逮捕されるという事態になっている中で、距離感からいうと、外務省とそうしたODA関係民間業界との関係よりも、経産省とそちらの方が近いんじゃないかというのが国民の常識的な判断、感覚だと思うんです。
 例えば、今まで、経産省の方で大商社に社長として天下っている方もいました。それから、副社長として天下っている人もいました。これからもそういう後輩が出てくるかもしれない。そういうところで、あえて李下に冠を正さずというようなことを破ってやるというのは、私は改革の精神に非常にイメージとしては反するように思うんですが、この点は、大臣は全く配慮されませんか。
川口国務大臣 経済協力で改革をしなければいけない点というのは、非常に多岐にわたっていると考えております。委員がおっしゃった点というのも確かに一つございますけれども、こういった点については、透明性を上げ、そして効率性を増すことによって、そういった改革をしていくことによって対応していくということでもあると思います。
 それから、その経済協力政策の中で、国ごとにきちんとした政策がないではないかという御指摘もいただきました。それも問題の一つであると思います。あと、経済協力を実施していく上で、人事といいますかその人材、それが十分でない、あるいはそれを実施する機関について改革が必要ではないかということの御指摘もございます。そういったことにも対応をしていかなければいけません。そういったさまざまな、三百六十度にわたる改革を進めていく必要があるというのが経済協力の現状であると思います。
 今、改革については十五の改革を出させていただいて、一歩一歩進みつつあるということでございますので、そういった路線にのっとって外務省としては改革を一層進めていきたいと思います。
 改革について、これはまさに改革を進めていく人材が重要であり、それから、どういう人かということが重要であり、また、経済協力のみでなく、外務省の仕事の仕方全般に新風を吹き込むということも一つの課題であると思います。
 いずれにしても、外務省の人材となりました以上は、要するに、どのポストであれ外務省の人となっている以上は、これは大使館についても、それから、今既に本省もまさに糠澤部長を初めとして大勢の人がいますけれども、外務省の職員として活動をしてもらうということは当然であり、そして外務大臣としても、過去の職歴はともかく、外務大臣として責任を果たしていくというのは当然である、そういうことでございますので、全員そういうことで進んでいると私は考えております。
柿澤委員 時間がありませんのでこれで終わりにいたしますが、私は、経済協力という言葉自体をもうやめるべきだと思っているんです。むしろ、やはりもっと幅広い、人間の安全保障に関する協力とか、それから環境協力とか、そういうものに重点を移していくべきだと思いますので、少なくとも日本の経済的利益、しかも商社を初めとするビジネスマンの利益を追求するかのごときイメージを与えるというのは望ましくない、これだけははっきり申し上げておきたいと思います。
 その意味で、文化交流等も含めてもっと幅広い対外協力というものを考えていく。そのためには、私は、対外協力省というような省を独立してつくるというのが大事だと本当は思っているんです。そういう方向で大臣に前向きに検討していただければ幸いだと思いますし、そのときには、例えば長官には、文化庁長官に河合さんを抜てきしたように、曽野綾子さんか何かを据えるとか、そのくらいの思い切ったことをやらなきゃいけないんじゃないかなと思っています。
 田中眞紀子前大臣はいろいろな形で外務省改革に火をつけた、結果としてまだできていませんけれども。しかし、今回の一石を投じられた川口大臣の勇気は多とするものでございますが、これで挫折をして、川口順子大臣が眞紀子化してしまってはいけないということを心配いたしますが、眞紀子化の懸念は感じませんか。
川口国務大臣 田中先生は田中先生、私は私でございます。
柿澤委員 もっと言いたいことはありますが、終わります。
吉田委員長 これにて本件に対する質疑は終局いたしました。
    ―――――――――――――
吉田委員長 これより本件に対する討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。
 アジア=太平洋郵便連合憲章の第二追加議定書及びアジア=太平洋郵便連合一般規則の追加議定書の締結について承認を求めるの件について採決をいたします。
 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
吉田委員長 起立総員であります。よって、本件は承認すべきものと決しました。
 お諮りいたします。
 ただいま議決いたしました本件に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
吉田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
    〔報告書は附録に掲載〕
     ――――◇―――――
吉田委員長 次に、刑を言い渡された者の移送に関する条約の締結について承認を求めるの件を議題といたします。
 政府から趣旨の説明を聴取いたします。外務大臣川口順子君。
    ―――――――――――――
 刑を言い渡された者の移送に関する条約の締結について承認を求めるの件
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
川口国務大臣 ただいま議題となりました刑を言い渡された者の移送に関する条約の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。
 この条約は、昭和五十七年九月にストラスブールで開催された欧州評議会の閣僚委員会において採択されたものであります。
 この条約は、外国において刑を言い渡された者をその本国に移送するための手続等について定めたものであります。
 我が国がこの条約を締結することは、刑事法の分野における国際協力の発展に貢献し、刑を言い渡された者の社会復帰を促進するとの見地から有意義であると認められます。
 よって、ここに、この条約の締結について御承認を求める次第であります。
 何とぞ、御審議の上、速やかに御承認いただきますようお願いいたします。
吉田委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
 次回は、来る七月十九日金曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後二時三十二分散会


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