衆議院

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第27号 平成14年9月20日(金曜日)

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平成十四年九月二十日(金曜日)
    午後一時二分開議
 出席委員
   委員長 吉田 公一君
   理事 浅野 勝人君 理事 石破  茂君
   理事 坂井 隆憲君 理事 首藤 信彦君
   理事 中川 正春君 理事 上田  勇君
   理事 土田 龍司君
      岩崎 忠夫君    高村 正彦君
      竹下  亘君    中本 太衛君
      細田 博之君    水野 賢一君
      宮澤 洋一君    望月 義夫君
      茂木 敏充君    伊藤 英成君
      金子善次郎君    木下  厚君
      桑原  豊君    前田 雄吉君
      渡辺  周君    丸谷 佳織君
      松本 善明君    保坂 展人君
      松浪健四郎君    鹿野 道彦君
    …………………………………
   外務大臣         川口 順子君
   内閣府副大臣       村田 吉隆君
   外務副大臣        植竹 繁雄君
   外務大臣政務官      松浪健四郎君
   政府参考人
   (警察庁警備局長)    奥村萬壽雄君
   政府参考人
   (公安調査庁長官)    町田 幸雄君
   政府参考人
   (外務省アジア大洋州局長
   )            田中  均君
   外務委員会専門員     辻本  甫君
    ―――――――――――――
委員の異動
九月二十日
 辞任         補欠選任
  今村 雅弘君     岩崎 忠夫君
  小坂 憲次君     茂木 敏充君
  桑原  豊君     渡辺  周君
  東門美津子君     保坂 展人君
同日
 辞任         補欠選任
  岩崎 忠夫君     竹下  亘君
  茂木 敏充君     小坂 憲次君
  渡辺  周君     桑原  豊君
  保坂 展人君     東門美津子君
同日
 辞任         補欠選任
  竹下  亘君     今村 雅弘君
    ―――――――――――――
七月三十一日
 一、国際情勢に関する件
の閉会中審査を本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 国際情勢に関する件


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     ――――◇―――――
吉田委員長 これより会議を開きます。
 国際情勢に関する件について調査を進めます。
 この際、お諮りをいたします。
 本件調査のため、本日、政府参考人として外務省アジア大洋州局長田中均君、警察庁警備局長奥村萬壽雄君、公安調査庁長官町田幸雄君の出席を求め、それぞれ説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
吉田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
吉田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。最初に、石破茂君。
石破委員 外務大臣、大変お疲れのところをお出ましをいただきまして、平素の御労苦に心から敬意を表したいと存じます。
 私どもはまず冒頭に考えてみなきゃいかぬこと、それは日本国憲法前文に書かれていること、つまり、我々は「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。」これはどういうことなのか。私は、かねてから申し上げているけれども、そうであればそれにこしたことはない、我々はそう願いたい、しかしそうでなかったらどうなのかということを私たちはいつも考えていなければいけない、そのことを今回つくづくと思ったことであります。
 私は、今回の総理の訪朝は日朝関係に新たな段階を開いたものだ、今回総理の御訪朝という決断がなければ、非常に悲しい、残念なことではあったけれども、拉致された人々の消息というものはわからなかった、そして、ミサイルにしても核にしてもあるいは工作船にしても、そのようなことについて新たな段階に入ることはできなかった、そう思っております。そういう意味で、今回の総理の御訪朝は大きな意味があったものだというふうに考えております。
 大事なことは、これをどうやって国民世論として支えていくかということだと思います。国民の支持と理解があって初めて外交は力を持つものだと思います。新たな段階を迎えた日朝の関係において、そしてまた北東アジアの安全にとって、国民の理解と支持を得るべく、政府そして外務省は万全の努力を今後もしていただきたい。そのような観点から、幾つか質問させていただきたい。
 かてて加えて申し上げれば、ここ数日の報道において、朝鮮人学校の生徒さんやそういう方々に対して、嫌がらせであるとか脅迫であるとかそういうようなものが行われておるというふうに仄聞をいたしております。そのようなことは、日本人として最も恥ずべきことであるというふうに私は思います。そのことを政府はきちんと認識し、国民の皆様方にも呼びかけていただき、そしてまた、そういう方々が悲しい目に、不幸な目に遭わないように政府としても万全の措置をとっていただきたい。心からお願いを申し上げたいと存じます。
 さて、まず外務大臣にお伺いします。
 今回、金正日総書記・国防委員長から、拉致という事実を認め、おわびをするということがございました。私は、この問題は、単なる犯罪ではなくて国家主権の侵害としてとらえるべきものだというふうに理解をいたしております。すなわち、誘拐をされたということで、単なる犯罪としてとらえるのではなくて、これは明確な国家主権の侵害であるというふうに理解をしております。その点についての御認識を承りたい。それが一点です。
 第二点、伝えられておりますように、亡くなられたとされる方、これは言葉を気をつけなきゃいかぬのですが、死亡が確認されたなどという言い方が当日なされたが、それは、北朝鮮が死亡という情報を伝えた、それが確認された方ということであって、まだ何ら確認はされているものではない。死亡が確認された方などという言葉は間違っても使うべきではないと申し上げておきます。
 その亡くなった日について、その日時はきのう報道であったとおりであり、官房副長官が会見されたとおりだったというふうに私は今思っています。しかしながら、そのことを御家族にお伝えするべきではなかったか。まだ未確認ではあるけれどもというただしつきで御家族に伝えるべきではなかったか。
 私も、その日飯倉公館におりました。福田官房長官、そして植竹副大臣、伝えられる方々がどんなにおつらかったかということは私もよく認識をしております。あの場におった者が涙しなかったはずはないのであります。
 しかし、家族の方が待っているのは、亡くなったか亡くならないか、生きておられるかということと同時に、それがいつなのか、どのような状況であったのかということを一番知りたかったはずで、亡くなったかどうか、生きているかどうか、そのことだけ断片的に伝えられても、それは納得しろと言う方が無理に決まっている。未確認ではあるけれどもということで、亡くなった日をお伝えすることは、私は、外務省として必要なことではなかったかというふうに思っている。
 そのことについて、官房長官も、あるいは外務大臣もそういう方向であるべきだというふうにおっしゃっておられるが、私は、必要なのは、御家族に対してそのことは非であったというふうに認めることだと思っているんです。
 主権の侵害だというふうに申し上げました。それは、御家族と政府が別なのではない、御家族と政府、御家族と外務省、それは一体となって当たっていかなければいけない。御家族の理解なくして、この交渉が一歩でも先に進むと思っていただきたくない。だとすれば、このことについて、外務省として率直に伝えるべきであった、申しわけなかったと言うことが私は肝要ではないかというふうに考えております。
 以上、お答えをいただきたい。
川口国務大臣 石破委員から幾つかの点についての御質問がございました。
 総理が北朝鮮に行かれたことについての認識について全くおっしゃるとおりだと思いますし、また、そのことについて国民の御理解をいただきながら進めていくことが必要であるということもおっしゃるとおりでありますし、それから、嫌がらせが起こりつつあるということについて、そういったことがあってはいけないということも全くおっしゃるとおりだと思います。
 それから、拉致の問題について、今回のことで国民あるいはすべての人が、そういった情報が出てきたということについて、非常に悲しむべき本当にむごい話が今表に出てきているわけで、拉致された方の御家族の方々のお気持ちが今どのようなことであるか、本当におつらい気持ちをお持ちであろうというふうに私は思います。心からお見舞いを申し上げたいと思います。
 それから、先ほど委員がおっしゃられたような、あちら側から、北朝鮮から出てきた情報、死亡の年月日ということについて情報を外務省が直ちに明らかにするべきであったということについて、これは、私は、いろいろな考え方はあると思います。と申しますのは、そのときのこちら側の考え方として、恐らく、その非公式なものをお出しして、非常につらい思いをおさせ申し上げて、それでまたその上で違ったとかいろいろなことがあってはいけないという配慮があったということはあると思いますけれども、それにしても、御家族の方からすれば、少しでも多くの情報をそのことについて知りたいと思っていらっしゃるお気持ちがあるわけですから、私としては、その時点で、そういった非公式、もしかしたら間違っているかもしれない情報だけれどもというふうにお断りをして、そのお話を申し上げた方がよかったと思っております。
 そのことについて、御家族の方に外務省が情報を出さない、あるいは外務省に対しての信頼を失わせる、そういうような形になっているということは非常に残念でございますし、大変にその点については御家族の方に申しわけないと思っております。外務省としては、やはり石破委員がおっしゃいましたように、家族の方と信頼の関係を持ちながらこれをこれから進めていくということが何よりも大事なことでございまして、そのための努力は精いっぱいいたしたいと考えております。
 それから、もう一つの御質問でございます。これは、国の主権が侵害をされたかどうかということについてでございますけれども、基本的に、北朝鮮が日本人を拉致したということについて、幾つかきわめないとはっきり言えない部分というのも残っていると思いますが、いずれにしても、北朝鮮の当局が我が国の国内において日本人を拉致するということは、我が国の領土主権の侵害に当たると考えます。ただ、これはどういう状況で行われたかということにつきまして、まさにこれから話し合いの過程で明らかにしていくことでございますので、そういった真相の究明をするということがまず必要であるというふうに思っております。
石破委員 先ほど私は申し上げました。御家族は御家族、政府は政府という認識を持たないでいただきたい、御家族と政府は一体なんだと。そして、これは主権の侵害であるということであって、御家族は御家族、政府は政府、そういうような考え方を持たないでいただきたいのであります。それは、本当にその方々の気持ちに立って物事を考えてみる、そしてそれは国家主権の侵害なんだという認識を持てば、一体でやっていくのが当然であるというふうに私は思っておるから申し上げておる。
 言いにくいことですけれども、今まで御家族たちに対して、どれだけ政府がきちんとした対応をしてきたか、温かい対応をしてきたかといえば、それは首をかしげざるを得ないことがたくさんあった。ここに至るまでに、私なんかよりもっと一生懸命努力をしてこられた議員の方々もおられる、支援してきた方々もおられる。そういう方々の話を聞くにつけ、本当に外務省が、政府が、家族の悲痛な訴えをきちんと真摯に受けとめてきたかといえば、そうでないと言われても仕方がない。そうであったとおっしゃるかもしれないけれども、少なくとも、そう受け取っていないことを認めねばならないというふうに思います。今後一層の努力をお願いいたしたいと存ずる次第であります。
 今、大臣がおっしゃったように、これから先必要なことは、真相の究明、責任の明確化、そして正当な補償、これを求めていくということが必要なはずであります。
 十月から再開される。しかし、きょうは九月の二十日である。まだ十日もある。その間に、御家族がピョンヤンに行かれる、向こうの赤十字会を通じて必要な情報は知っていただく、少なくとも、十月に交渉を再開するまでにそのことはきちんとやっていただきたいというふうに私は思っておる。御所感を承りたいと存じます。
 続いて伺います。
 これは警察庁かもしれない。これから先どのように捜査をしていくかということについてであります。真相の究明というのはそういうことであります。だれがどのように拉致をしたのかということの状況。生きておられる方は、どのようにして生きておられるのか。あわせて、亡くなったという情報が伝えられた方は、どのように亡くなられたのであるか。
 国防委員長が、それは一部の英雄主義的な人たちがやったことで、既に処分したというふうにおっしゃっておられるけれども、この場合に、誘拐をしたということは、刑法に照らして考えてみた場合に、それが日本で誘拐をされているわけですから、当然、日本の刑法が適用になるということのはずであります。未成年であり、成年であり、そしてまた、不法に入国し不法に出国しということについては、少なくとも日本の刑法の適用がある。属地主義が日本の刑法のうたうところであります。
 しかしながら、本当に向こうが捜査に協力をするのか、国際刑事機構にも入っていない北朝鮮、向こうは協力するのか、そのことはわからない。しかし、日本の国の主張として、その辺を明確にしてくださいということは強く訴えていかねばならないし、それが、法と正義によって北朝鮮という国が裁かれるべき点は裁かれ、そうした法と正義、国際法と国際正義の中で、北朝鮮という国が国際社会の中で生きていくということの取っかかりにおいて最も必要なことであろうと思っております。
 申し上げたいことは、最初からボタンをかけ違ってはいけないということなんです。最初からボタンをかけ違ったままずっといって、このことはうやむやにして、とにかく正常化交渉ありきだ、正常化ありきだというようなことを思っておられる人は一人もいないと私は信じている。そういう思いで交渉してこられたというふうに、私はそれを疑うものではありません。だからこそ、その点を明確にする必要があるだろうと思っている。
 そして、亡くなった日が不自然だということがずっと言われています。同じ日というのはおかしいではないか、だれが見たっておかしいと思います。そのことをもって、予断を持って申し上げることはいたしません。しかしながら、捜査をしていって、亡くなった状況というものがあるいは刑法のほかの罰条に触れるものであるとするならば、構成要件に触れるものであるとするならば、それはどうなるんだと。これは、属人主義の例外になるはずなんですね。つまり、仮に故意に命を落とされた、奪われたということであっても、残念ながら、これは日本国刑法の適用にはならないはずなんです。それが刑法の条文のはずです。
 これから先どのように捜査をしていくのかということも含めまして、外務省並びに警察庁の御答弁をお願いしたい。
植竹副大臣 今、石破委員のお尋ねの前段でございますが、私は、当時、福田官房長官と私が直接御家族の方に安否についてお伝えいたした点から申し上げますと、委員おっしゃるとおり、不備であったことを本当に反省し、心から申しわけないと思っておるところでございます。そして、御家族の方がこの実態解明のために行かれる手配をできるように、すぐ指示いたしました。
田中政府参考人 私も、冒頭、副大臣並びに外務大臣が先ほど言われましたとおり、御家族に非公式なものとはいえ直ちに伝わらなかったこと、この結果については大変反省をしています。おわびを申し上げたいと思います。
 それから、委員が御指摘になった点、私どもとしては、できるだけ早い機会に御家族の北朝鮮への訪問を実現させるということで、現在、先方との折衝に取りかかっておるということでございます。御家族の気持ちを最大限配慮申し上げたいと思いますし、その中で、できるだけ早い機会に訪朝が実現するように最大限の努力をしてまいりたいと思います。
 それから、委員御指摘の二点目でございますけれども、ずっとこれまで私どもも、拉致を認めろ、八件十一名の方の安否情報を全部として日本に提供するべきだということを言い続けてきて、初めて、今回総理が訪朝されて、拉致を認め、遺憾なことである、おわびするという発言を金正日総書記から引き出した。
 御案内のとおり、今の日朝間においては国交がございませんから、国交がない相手とのことでございますから、委員が御指摘のようないろいろな点をこれから解明していかなきゃいけない。まず、その事実関係の究明ということをやっていかなければ物事は進んでいかないということでございますし、そのためにも、交渉の場というものがないとなかなか物事は進んでいかないということも事実でございます。ですから、国交正常化交渉の前、その中、あらゆる機会を利用して、そういう真相の解明をまず進めさせていただきたいと考える次第でございます。
 それから、正常化ありきということではございません。平壌宣言にもございますように、あの宣言の精神と原則に従った正常化ということでございます。
奥村政府参考人 お答えをいたします。
 警察といたしましては、この拉致容疑事案につきましては、事案の重大性にかんがみまして、これまで国内外におきまして、まさに地面をはい、血のにじむような捜査を営々と一生懸命行ってきたところでありますが、今般、北朝鮮が拉致を認めたことは、まさに私どものこの捜査が当を得ていたということになると考えております。
 警察といたしましては、今後とも事案の全容解明のため、法令と証拠に基づく捜査を、これまでどおり最大限の努力をもって厳正に進めていく決意でございます。
 ただ、御指摘のとおり、北朝鮮とは国交がございませんし、またICPOにも入っていないということでありますので、外務省等の関係各機関と十分な連携をとりながら必要な捜査を進めてまいりたい、こう考えております。
石破委員 最後に、一点申し上げておきたい。
 これから六カ国の枠組みをつくるというお話であるのですが、この六カ国の枠組みは必ず必要です。早急につくっていかねばならない。しかし、その土台となるのは日米の安全保障体制であるということを御認識いただきたい。日米安全保障体制がきちんとして、確固なるものとなって、だからこそこの六カ国の枠組みがうまくいくということであって、有事法制の整備なりそのようなことは、急ぐことがありこそすれ、怠ることがあってはならないということであります。
 それから、今後どのような支援をしていくかということであります。時々、これは人道的支援なのだからという名のもとに米が送られたりしたこともあった。これは国交正常化とは関係ない、人道的なことであるからということで行われることがあった。しかし、私どもは、このような事実が明らかになった以上、まず真実の解明が第一である、人道的という名のもとに、これから先きちんとした解明がなされない限り、そういうことが行われてはならないということだと思っております。
 以上をもちまして私の質問を終わります。
吉田委員長 関連質疑で、浅野勝人君。
浅野委員 今回の日朝首脳会談は、戦後の歴史の中で最も高い評価のできる画期的な外交成果であったと受けとめています。その評価はそれとして、一つ疑問がございます。
 北朝鮮が死亡したと発表した八人は、いずれも病死または災害死と説明されています。本当はほかの死因ではないかと推定される、断片的ですが、信憑性の高い情報を入手しています。同じ日に二人が死亡したという不自然さを含めて、田中局長はどのように分析しておいでですか。
田中政府参考人 先方から十七日の日に説明があったこととしては、今委員が御指摘のように、病死または天然災害によるものであるということがございました。私どもは、それに対して、亡くなった経緯について徹底的な事実関係を開示されなければいけないということを申し上げました。
 ですから、何を信じるかということよりも、私どもは、やはりきちんとした調査に基づく彼らの調査というものを聴取したい。これからのプロセスでそれはやってまいりたいと思います。現段階で予断を持ってお答えすることはできないというふうに思います。
浅野委員 終わります。
吉田委員長 次に、上田勇君。
上田(勇)委員 公明党の上田でございます。
 これまでのところ、隣国であります北朝鮮との間に正常な国交がないというのは、これはどう考えても決して健全な状態ではないので、今回、日朝首脳会談を契機として正常化に向けての交渉が再開されるということは、これは確かな前進であるというふうに考えております。
 しかし、今回の一連の経緯の中で、拉致問題についても納得のいく結論が得られているとは到底言えないということでありますし、もう一つの懸案であります安全保障上のさまざまな問題についても、平壌宣言では、ミサイルについては発射の停止、これはモラトリアムを延長するということだけですし、核開発疑惑については、先方がどういうような対応をするのかということが具体的には明記されていないというふうに思うわけであります。
 こうした問題というのは、これから、十月から始まります交渉の中で解決していくということになるわけでありますけれども、今後どのような進展が見られるのか、それによって今回の日朝首脳会談の評価が定まってくるのではないかというふうに私は考えているわけでございます。私としても、この交渉が進んで、多くの成果が得られることは大いに期待しているところでございますので、外務省、ぜひこの交渉をしっかりと進めていただきたいというふうに考えているわけであります。
 それで、現在一番大きな問題になっている拉致問題についてでありますが、今回の、拉致された日本人に関する北朝鮮側からの報告、これは極めて耐えがたいものでありました。御家族の方々はもちろんのこと、日本じゅうが悲しみと怒りに今包まれているというふうに思っております。
 報告では、先ほどの石破委員の質問の中にもありましたけれども、不自然な点が余りにも多いし、ましてや死亡年月日などが公表されて、まさに北朝鮮が一体何をしたんだろうというような疑惑は一層深まったというのが事実ではないかというふうに思います。
 そういう意味で、この拉致事件について、これからの交渉の中で、いつ、どのように、だれの指令でだれが実行したのか、そうした全容の解明、あるいは、残念ながら亡くなられた方々、どういう原因で亡くなられたのか、そしてそれに至る経緯はどうであったのか、そういう全容の解明が正常化交渉の中での最優先課題であるというふうに考えております。
 今後、十月に交渉が再開されることで合意されているわけでありますが、それまでの間に外務省としてはどういう対応をしていかれるのか。また、私は、この拉致問題について納得のいく前進が得られるまでは経済協力についての交渉、こうしたことはやはり入るべきではないというふうに思いますし、また、人道上というような理由があったとしても、そういうような形での経済協力も実施するべきではないというふうに考えておりますけれども、その交渉に臨むに当たって、この辺の外務省としての基本的な考え方をお伺いしたいというふうに思います。
川口国務大臣 まず、拉致問題でございますけれども、政府といたしまして、今後、御家族の方々の要望をきちんと踏まえ、御家族の方々とともに、早急に、御家族の被害者の方との再会あるいは生存者の御本人の自由な意思による帰国について調整をしたいと思っておりますし、また北朝鮮側に対しまして、亡くなられたとされる方々についての事実関係、今委員がおっしゃったようなことについての真相が何かということを徹底的に調査をするように申し入れを、既にこれは行っております。そして、国交正常化の交渉の過程で、拉致問題を最重要課題としてこれを取り上げていきたいと思っております。また、省内に、拉致された方々の御家族を支援するチームを現在立ち上げつつあるところです。
 経済協力その他、さまざまほかに案件があるわけでございますけれども、安全保障といいますか、委員もお触れになった、この北朝鮮については、ミサイルや核の疑惑といったような懸念も、これは国際社会も含めてあるわけでございまして、こうした問題もきちんと取り上げていく必要があるというふうに考えております。
 こうしたさまざまな問題をこの正常化交渉の過程できちんと取り上げて、解明を一つ一つしていくということが大事であるというふうに考えております。
上田(勇)委員 今、大臣からも安全保障上の問題についてもお話がございました。平壌宣言においては、モラトリアムを延長するということでは合意をされたんですが、決してこれで我が国に対する脅威がなくなったというふうには理解できないわけであります。
 やはりこれからの交渉においては、北朝鮮に日本を標的にしているテポドンとかノドンというミサイルがあるという疑いが濃いわけでありますので、そうしたミサイルがまず撤去される、そして同時に、日本としても、安全保障を確保するために、そうした措置がとられたことを確認するというようなことが合意される必要があるというふうに思うわけであります。
 これも、我が国を標的としているようなそういうミサイルを設置したまま国交正常化ということは、これだけの近い距離の隣国でありますので到底あり得ないわけでありますので、このこともこの交渉の中で、まず日本を標的としているそういうミサイルは撤去すること、そして、日本としてしっかりとそういう措置が確実にとられたことを確認できるような措置、そこまで含めて合意すべきだというふうに考えておりますけれども、交渉においてはどういうようなスタンスで臨まれるんでしょうか。
田中政府参考人 委員御指摘のとおり、日朝の平壌宣言に盛り込まれている点というのは、種々の問題についての基本的な原則とか精神も含め、安全保障の問題についても、ミサイルのモラトリアムを延長していくことであるとか、あるいはミサイル問題というのは、ミサイル問題全般でございますけれども、開発であるとか配備あるいは輸出といったことについて、関係国との協議により問題解決を図るということが書かれておるわけでございます。核の問題については、国際的な合意を遵守するということでございます。
 ですから、そういう観点を踏まえて、私どもは平壌宣言の中でも盛り込まれております安全保障の協議というものを立ち上げてまいりますし、そういう観点から、一つは、これは日本だけの問題ではございません、国際社会の非常に大きな懸念でもあると思います。ですから、とりわけ米国、韓国と連携を強めながら、日本としても、北朝鮮との間で安保協議を立ち上げて、北朝鮮が誠実にこういう宣言を遵守していくのかどうかということを見きわめてまいりたい、かように考えております。
上田(勇)委員 これからの対応の枠組みとか方法というのは今おっしゃったとおりなんだというふうに思うんですが、我々日本国民として最も脅威に感じていることというのは、ミサイルは日本を標的にしているというふうに思われているものが配備されているという現実があるわけでありまして、国交を結ぶに当たっては、そこに対する脅威、何が具体的に除かれなければいけないのかというのは、もうちょっとやはりはっきりしたスタンスをお持ちじゃなければいけないんではないかというふうに思います。ちょっと今のでは余りにも、一般論としては確かにそのとおりですけれども、果たしてそれで本当に脅威が除去されるのかというと、私は納得のいくお答えではないんじゃないのかなというふうに思います。
 今局長から御答弁いただいたんですが、今度、交渉が十月中に開始されるわけでありまして、今申し上げたように、拉致問題についてもまだ全然解決の道筋が立っていない。また、安保の問題についても、具体的にどういう交渉をしていくのかということもここでお話をしていただけないわけであります。また、大臣は先ほど、経済協力をそういった一定の進展がないまま行うべきではないんじゃないかということを私が申し上げたことに対しても、明確なお答えはなかったように承りましたけれども、私は、この正常化交渉は大きな前進ではあるし、交渉を続けていくことは必要なんですが、我々が非常に大きな、国民としても大きな関心を持っている拉致問題、それから安保の問題、これについては、やはり一定の成果が得られない限り、これをもって経済協力の話に入ること自体が国民の理解が得られないんではないかというふうに思うわけであります。
 こうした国民の気持ち、そして世論、そして政府としても毅然とした態度で交渉していく。これはやはりそうした政治的なメッセージを大臣が第一回目の交渉において直接北朝鮮側に私は伝えていただきたい。その意味では、第一回目の交渉、それの前後になるかもしれませんけれども、ぜひ北朝鮮と直接大臣がお話をして我が国としての姿勢をお伝えいただきたいというふうに思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。
川口国務大臣 これから行われます国交正常化交渉の過程、これを我が国は誠実に進めていくつもりでおりますけれども、私はその指揮は外務大臣としてとるつもりでおります。実際に会合を北朝鮮の外務大臣と持つかどうか、これはブルネイで一回会合をいたしました。また、そういう機会あるいはそういう段取りのことがあるかもしれません。今、どういうふうに今後進展をしていくか、まず第一回目を外務大臣の会合から始めるかどうかということは、これはまた相手もあることでございますので決めているわけではございませんけれども、全体の指揮は私はきちんととるというふうに考えております。
上田(勇)委員 終わります。
吉田委員長 次に、伊藤英成君。
伊藤(英)委員 私は、この北朝鮮の問題につきまして、九九年の十二月の村山訪朝団のときの一員としても、そしてまた翌年、二〇〇〇年の、一昨年の十二月に民主党の訪朝団の団長としても北朝鮮に渡りまして、拉致問題等も含めて真剣な議論をしてきた経緯、そしてまた日朝関係について強い関心を持って取り組んできたつもりであります。
 今回総理が、まさに日本人の拉致問題について具体的な進展がなければ国交正常化交渉の再開はあり得ない、こういうことを言われて行かれたわけでありますけれども、いろいろな側面はありますが、八名死亡された、そういう信じがたい結果が報告もされたりしております。日本が今まで、八件十一人のすべてに関して北朝鮮が安否を報告すること、あるいは、その問題について国家として拉致の関与を正式に認め、口頭ながら謝罪もされたということであります。しかしながら、拉致や謝罪のことにつきましても、今回の共同宣言の中には、その拉致や謝罪の言葉ということも文書の中には入っておりません。
 そういう意味では、拉致問題の解決に道筋がついたというふうに言えるかどうかということでありますし、今回、極めて残酷な非情な結果でありまして、家族の皆さん方の本当に長きにわたる精神的、肉体的な苦しみを思い、日本の国民として、この起こった悲劇に対して、本当に私はあの報を聞きながらも胸が張り裂けるほどの悲しみと憤りを感じました。まさに主権侵害と人道的な見地からも、これからも本当に毅然として取り組んでいかなければならぬ、こういうふうに思います。
 さらに今回、金総書記が、拉致問題、不審船問題も軍部の一部にその責任を帰したわけですが、この平壌宣言では、みずから軍の最高責任者としての国防委員長の肩書で署名しているわけですね。そんなこと等を考えたときに、本当に国家責任をどういうふうにとるんだろうかということも非常に大きな問題として残っていると思います。
 いわば、こういう状況の中で小泉総理がこの平壌宣言に署名したわけでありますけれども、日本側が、八名の死亡確認で拉致問題が解決し、あるいは不審船事件も片づいたんだ、こんな感じで北朝鮮に誤解を与えることになりはしないだろうかと非常に危惧をするわけであります。
 こうした点について、外務大臣はどのように認識をされますか。
川口国務大臣 拉致問題につきまして、今回、北朝鮮から、公式、非公式の通知として、拉致被害者の安否の確認及び死亡年月日に関する情報の提供がございました。
 我が方としては、当然のことながら、これで問題が終わったとは毛頭思っておりませんで、これが国民の生命と安全にかかわる重大な問題であるというふうな認識を持っております。今後、再開をされる国交正常化交渉の中で、この問題について北朝鮮側に対して、事実関係については徹底的に究明をするように、それを求めていくということでございます。
 総理のお考えが北朝鮮側に対して誤解を与えたことにならないかという御質問でございましたけれども、これは、今回の会談を通じて総理は、日朝間の諸問題、たくさんあるわけでございますけれども、これについて包括的な促進を図る上で一定のめどがついたという御判断の上に立って日朝平壌宣言に署名をなさったわけでございます。政府としては、これから開催される国交正常化交渉、それから安全保障協議の場で、北朝鮮がこの宣言の内容を行動に移すことが大事でございますので、それを注視し、さらなる調査、それから再発防止、そういったことの確保に努めてまいりたいと考えております。
伊藤(英)委員 田中局長に伺う話だと思いますが、この首脳会談に至る準備会談のとき、そのときに、この安否の状況というのはどのくらいわかっていたんでしょうか。だれか、一部死亡された方がいるというようなことは全然わかっていなかったのか、何か聞いていたんでしょうか。
田中政府参考人 私どもが事前の協議あるいは水面下での協議も含めて一貫して求めてきたことは、八件十一名の方々の安否情報をすべて出すということを求め、かつ、拉致を拉致として認めて、それに対してしかるべく措置をとってくれということを一貫して求め続けてきたわけです。
 ですから、そういう観点で、物事を包括的にとらえ、安全保障の問題もその他の問題についても日本の主張というのは変えない、そういう前提基盤の中で国交正常化の交渉を再開するということについての準備をしてまいったわけでございます。
 その間、具体的な安否の情報が寄せられたことはございません。
伊藤(英)委員 十七日のそのときに、共同宣言案についての話なんですが、これは一応事前に準備はされていたと思うんですけれども、どちらからか、両者で準備されていたんでしょう。十七日の日に一部修正されたところはあるんですか、ないんですか。
田中政府参考人 十七日の日に修正されたところはございません。
 とりわけ拉致の問題については、私どもが一貫して求めてきた安否情報を全体として出すということ、それから、これは総理御自身が強く求められ、首脳会談の中で金正日総書記が、拉致問題については遺憾なことである、おわびをするということで、拉致を事実上認める、その説明をする、そういうことも含めて総合的に総理が判断をされ、まさに国交正常化交渉を再開するということだから一定の基盤はできたという意味で、総理が最終的に承認をされ、宣言に署名をされたものであるということでございます。
伊藤(英)委員 この宣言文の中では、日本は過去の植民地支配の問題等につきまして謝罪等もしているわけですね。北朝鮮が、まさに国家的犯罪として拉致ということを認め、あるいは口頭では謝罪もした、こういうことなんですが、もう一回改めて伺うんですが、共同宣言案の中には拉致とか謝罪という言葉を入れなくてよいと判断したのか、入れようと努力といいましょうか主張はしたけれども結果はこうなったということなのか、もう一度伺います。
田中政府参考人 平壌宣言の三の中に「日本国民の生命と安全にかかわる懸案問題については、朝鮮民主主義人民共和国側は、日朝が不正常な関係にある中で生じたこのような遺憾な問題が今後再び生じることがないよう適切な措置をとることを確認した。」というくだりがございます。これは、「日本国民の生命と安全にかかわる懸案問題」、明らかに拉致の問題を意味しているわけでございまして、この「遺憾な問題」、ですからこれは……(発言する者あり)いや、先方ともこれは確認をしているわけでございますけれども、まさに、今まで全く、安否の情報についても、拉致についても認めてこなかった、それを総理が行かれて、彼らが調査をした結果というのを出してきた、なおかつ、国家の最高責任者としての金正日国防委員長が、その事態を説明し謝罪をしたということは、重いものであるというふうに受けとめております。
伊藤(英)委員 私は、今のように判断をされて、入れようともしなかったということなんですが、これはいわば基本的な認識の問題ですね。これから正常化交渉を進めていく上においても、あるいは正常化交渉をする前の段階で、日本がどうしていくかということについての認識の話だと思うんです。
 これは、ただ口頭で言っただけじゃなくて、いわばこの宣言文の中にしっかりと書いてあるかどうかということが、今後に与える影響も含めて、どんなに重要かと思うんですが、そうは思いませんか。外務大臣、どうですか。
川口国務大臣 ただいま田中局長からお話を申し上げましたけれども、まず、日朝の首脳会談では、拉致問題について、遺憾なことであり、おわびをするという発言があったわけでございます。それから、その日、北朝鮮外務省が、北朝鮮側、我々は本件に重く向き合っている、かつて日朝関係が不正常であった際にかかる問題が発生したことは遺憾である、我々は今後、かかる問題が発生することを防止する等の内容の談話を発表したわけでございます。日朝平壌宣言においては、拉致問題を念頭に、先ほど局長が申し上げたようなことが書いてあるわけでございまして、そのような北朝鮮側の対応を全体として見れば、この問題に対しての北朝鮮側の姿勢は明らかであるというふうに考えます。
 いずれにいたしましても、ここで我々は国交正常化の交渉の再開のまさに最初の入り口に立ったわけでございまして、引き続き、今後徹底して拉致問題については真相究明をしていくということでございますし、国交正常化交渉の場や新たに実施をされる安全保障協議の場でも、この件については協議をしていきたいと考えております。
伊藤(英)委員 今後再開をしていくということについては、どういう段階かは別にして、私は賛成なんですよ。やっていくんだけれども、その前提はあるんではないか。
 もう一度言いますと、先ほどの局長の話ですと、私はこういうことだと思うんですよ。いいですか。共同宣言案は十七日の朝の段階で準備されておりました。それで、十七日になってから、八人の方も死亡されたという話もわかった、あるいは北朝鮮側から国家として拉致したということも認めた、あるいは謝罪したということもあった。そういう状況は、あの共同宣言の原案が朝ある段階ではわかっていなかったということでしょうね。しかし、このことがわかった。にもかかわらず、共同宣言案を修正しなくていいんだろうかということをなぜ思わないんだろうかということがわからないんです、私は。もっと答えますか。
田中政府参考人 当然のことながら、これは相手がある話でございますし、かつ、今まで北朝鮮との関係が、こういうものが出せるような状況になかったことも事実だと思います。
 通常、正常化交渉というのは実はずっとやってきている、十年以上前に開始がされてずっとやってきていることでございます。今回、宣言に書かれてあることは、正常化交渉を十月から始めるということでございまして、そのために、こういう共同宣言を総理が行かれて署名をされたということでございます。
 その間、確かに拉致の問題について情報が、安否情報が全面的に開示をされたとか、その問題について謝罪がなされたということは、十七日において首脳会談で起こったことでございます。ですから、総理としても、そういう全体、先ほど大臣が御答弁になりましたように、外務省のスポークスマンの発言もありますが、そういう全体をとらえて、総理は、まさにこれから拉致問題をさらに解明していく上でも交渉はやっていかなければいけないという判断をされ、宣言に署名をされたということでございます。
伊藤(英)委員 共同宣言というのは、もともとあってやるんじゃないんですね。要するに、本来、交渉をする、議論をする、その結果、共同宣言というものはされるんです。だから、いいですか、その首脳会談が行われる前には知らなかった新しい重要なことが起こってくれば、それを反映した共同宣言にするのは当然だと思うんですよ。なぜその努力をしないんだろう。先ほどの局長なんかの話を聞いていますと、何で人間の命をこんなに軽く見るんだろうかというふうに私は思いました。
 じゃ、次に伺います。
 今、きのう、きょうも非常に大きく報道されたりしておりますが、いわゆる死亡年月日つきのリストの話なんですが、これはなぜすぐ翻訳しなかったんですか。私は、そのリストを下さいと言ったんですが、外務省は下さらない。何枚あるんですか。なぜ翻訳にそんな時間がかかったんですか。
田中政府参考人 事実関係を申し上げさせていただきます。
 私どもが朝、事前協議をやりましたときに、これはあくまで赤十字―赤十字の行方不明者に対する安否情報として正式に伝えるものであるという前提の中で、口頭でその内容について説明がございました。その段階では、亡くなられたとされる方々の死亡の年月日はもちろん入っていなかったわけでございます。
 その会合が終了したときに、先方から、非公式なものだがという前提で、最終的には赤十字―赤十字の通知文を待ってくれということで、非公式な紙が渡された。通訳がそれを受け取って、それを翻訳に回したということでございます。
 結果的にその翻訳ができたのが遅かったということはありますが、すべての前提というのは、北朝鮮という国でございますから、そこは私ども、きちんと正式にやってくるものというものを見きわめないといけない。正式にやってきたものの中には、死亡者、死亡年、日時、年、月について記述はなかったということでございまして、それが正式なものということでございますので、その正式なものを採用した、情報としては使ったということでございます。
 ですから、翻訳に時間がかかった、そういう大部のものではございません。ですから、そういう意味では、翻訳に長い時間がかかったというのは、多少誤った言い方かもしれません。
伊藤(英)委員 じゃ、総理に、総理の耳にこの内容が、その死亡年月日等が入ったのはいつですか。結論だけ。
田中政府参考人 首脳会談直後、首脳会談宣言式の以前でございます。
伊藤(英)委員 じゃ、死亡年月日が入っていたということは、その通訳の方かどなたかは知りませんが、我が日本政府の関係者は、だれか知っていたんですか、知らなかったんですか。
田中政府参考人 その文章が配られたときに、私たちも含めて政府の関係者は知り得たということでございますが、これは総理も言っておられますけれども、やはり一番重要なのは、生死ということも含めそういうことであり、それから総合的に判断をして物事を決めるということであって、総理は、これをごらんになった上で宣言への署名を決められたということでございます。
伊藤(英)委員 公式か非公式かとか、正式かそうでないかという話は、もちろんそれなりに意味があるんですが、それがすべてではないんですね。
 今回は、我が日本国家の最高責任者の総理が行って交渉しているわけです。したがって、赤十字云々という話も含めてもそうなんですが、そこにあるあらゆる情報といいましょうか、重要な情報は頭に入れて交渉はしなければなりません。
 十七日の午前中に、十一時前に日本側に手に入っていた。そして、十一時から交渉も行われる。午後の二時からも交渉が行われました。そのときにこんな重要な話が何で耳に入らなくていいのか、なぜそんなことを踏まえて交渉しなくていいのかということについて、今の局長の話なんか聞いていますと、何か当然かのごとく発言されるのが、私は全く理解できないんです。
田中政府参考人 これは一貫して私ども申し上げているところでございますし、私も、最初に八件十一名の方の安否情報を受けたときには、非常に強くショックを受けました。動揺をいたしました。
 ただ、その会合の場で、何よりも必要なのは亡くなられたとされる方々についてきちんとした情報が開示されなきゃいけない、そういうものを総合的に勘案しなければいけない、まさにそういう調査をやってもらいたいということを申し上げ、総理も首脳会談の場でそういうことを申し上げた。まさに私どもがやっていかなければいけないのは、これから交渉の場も含めてそういう事実関係をきっちり究明すること、交渉の場がないところではそれはできないということでございます。
伊藤(英)委員 今のような話を聞いてみても、あるいは最近の状況を見てもそうなんですが、私自身もこう思うんですね。よく最近言われます、外務省の隠ぺい体質そのものじゃないか。外務省は、拉致問題について当事者意識がないんじゃないだろうか、日本の国家をあるいは国民を本当に守るんだ、そういう気概で本当にやっているかなと。それはまた、今回のケースで言っても、家族の人たちの気持ちや、あるいはもっと言えば人間の気持ちというものをどのくらいわかっているんだろうかなというふうに私は思うんです。ほとんどわかっていないんじゃないかとさえ私は思う。
 もう一回聞くんですが、今回、拉致被害者の家族の人たちになぜすぐ知らせなかったのか。条件づきでも構わないんですよ、条件づきでも。なぜ知らせないんだろうか。なぜ知らせなくていいと思うのか。これは、局長、大臣、どうですか。
田中政府参考人 これは、先ほどから御答弁を申し上げていますとおり、委員も訪朝団等に参加をしてこれまで拉致問題の解決に御努力をいただいてきておりますから、よく承知していただいていると思いますけれども、北朝鮮の場合には、やはりきちんとした公式な情報ということをベースにしないと、こういう重い問題というのは、なかなか後では撤回がきかない。したがって、彼らが最終的な文章は赤十字―赤十字の通知文であるということを言っている以上、私どものそのときの判断は、この通知文をもとに御家族の方に通報を差し上げるということであった。しかしながら、その判断というものが、非公式なことであるということを十分御説明した上で直ちに通報すべきであったという判断をすべきであったというふうに私も今は思っております。
伊藤(英)委員 私は、先ほど申し上げたように、北朝鮮の問題については自分でも結構関与してきていると思っているんです。それでも、非常に今までも、例えば外務省の方の説明の中でも、よくこういう話が出ました。北朝鮮という国は本当に自尊心の高い国だ、だから云々という話がよくあったんですね。私はそのときに言ったんですよ、日本、私たちも自尊心が高い国ですよと。今の私の言った意味は、私の受け方は、自尊心が高い、誇りを持った国だから、いわば相手を傷つけないようにという言い方のように思えてならなかった。拉致問題でも同じなんですね。
 だから、しばしば言われますように、例えば、具体的な名前を言って申しわけないんですが、阿南局長のときでも、あるいは槙田局長のときでも、要するに拉致の十人のことで日朝国交正常化がとまっていいのかというような趣旨をいろいろ言われたと報じられますよね。本当にこういうような感じを持っているんじゃないかと私も思っているんですよ、外務省は。今回の一連の動きを見ても、あるいはそれに続いておる対応の仕方を見ても、私は、本当にそういうことの延長線上だなと。さっき申し上げたように、本当に日本を守る、日本の国民を守るという意識が本当にどれだけあるだろうか、あるいは家族の気持ちを考えているんだろうか。
 外務大臣、私がさっき申し上げたのは、この北朝鮮外交は、さっきお二人のアジア局長のお話を申し上げていたんですが、少なくともそういう側面はあったと思うんです。外務大臣として、今までのそうしたことについて家族の皆さん方にもおわびの気持ちもあってしかるべきだ、今までの外交の仕方の問題についてもと私は思うんですが、そうしたことを含めて、今までの北朝鮮外交についての認識を外務大臣に伺います。
川口国務大臣 私といたしましては、これは外務省が本当にどのように一生懸命にやってきたかということとは別に、世の中にはある種の認識、パーセプションというものがあるといたしましたら、それはそういうものがあるというふうに受けとめて反省をしなければいけないというふうに思っております。ただ、他方で、これは外務省として今までこの拉致をされた方々を救出するために決して手をこまねいていたということではなくて、誠心誠意それぞれの時点において努力をしてきたと思います。
 これは、まさに委員よく御存じのように、ずっと冷戦が続いていたという国際情勢もございましたし、日本と北朝鮮との間の歴史的なさまざまな事情もございました。そうした中で、努力に努力を重ねて、これは外務省も当然のことですが、伊藤委員を初め大勢の方々の御努力をいただいて物事が少しずつ進んで、きょうこういう事態にまでようやくなった、再開が可能になったということであったかと思います。
 その間、外務省が努力をしてきたにもかかわらず、世の中に違うような印象を与えてきたとしたら、それは私としては残念なことだと考えますけれども、今後、そういったことについては、できるだけそういうふうに世の中が外務省をごらんになるようなことがないように、これは外務省改革の一環としても十分に注意をして仕事をしていくべきだと思っております。
 拉致の方々との関係では、今回、先ほど申しましたけれども、省内に、拉致された方の御家族を支援するチームというのを設けて全力を挙げて御支援をし、また、外務省は外交面でも一生懸命にこの問題の徹底的な究明を図っていきたいと考えております。
伊藤(英)委員 私の持ち時間がもう参りましたので、最後に一つだけお伺いいたしますが、さっき、他の同僚議員の質問に対してなんですけれども、いろいろな、拉致の問題等々重要課題について、交渉の過程でいろいろやっていくような話がちょっとあったと思うんです。私は、交渉の過程でやるものもあるんですが、交渉を再開する前にやっておかなきゃならないことも今回は多々あると思っているんです。
 それで、例えば拉致の被害者の家族の方の訪朝の問題とか、あるいは生存者の帰国の話とか、あるいは今回の拉致事件についての詳しい状況なり、責任の明確化なり、補償の問題等、その他いろいろあると思うんですが、大臣は、交渉を再開する前にはこういうことをやっておかなきゃいけないなというのはどういうことがあると今考えていらっしゃいますか。
川口国務大臣 今委員がおっしゃったような問題、これは全部重要な問題であると思います。交渉の再開前、今から既に取りかかっているわけでございますし、国交がない国でございますので、引き続き交渉の過程で取り扱っていくということにもなるかと思います。
伊藤(英)委員 いや、具体的に何をするかということです。
川口国務大臣 まず、生存をしていらっしゃる方の御家族につきましては、これはできるだけ早い機会に訪朝をしていただいて、そして御確認をいただくといったようなことがまず必要だと思います。
 それから、残念ながら亡くなられたとされている方々の御家族につきましても、やはりいろいろな、その時期の真相を一刻も早く、少しでも多く知りたいと思っていらっしゃると思いますので、もちろんこれはそれぞれその御家族が御希望なさってということが前提でございますけれども、行っていただいて、いろいろお話を聞いていただくということが大事かと思います。
 そして、政府の立場として、亡くなったとされている方々のその状況について、やはり全力を挙げて情報を集める、真相究明を図るということがまず大事だと思っております。
伊藤(英)委員 終わります。ありがとうございました。
吉田委員長 次に、首藤信彦君。
首藤委員 民主党の首藤信彦です。
 まず最初に、ピョンヤンにおける共同宣言でございますけれども、今の時点で日朝首脳会談を持つことに関しては、私は必ずしも合意できない点が非常に多々あると思います。
 短期的には、確かに、行くことによって、今まで国交がないところへ総理が行くわけですから、何らかのお土産を持って帰ることもあるだろう。しかし、長期的には、日本の全体的な東アジア外交戦略において、果たしてどういった整合性を持っているんだろうか、そうした長期的な視点からは私は非常に問題があるんだ。しかも、今の時点で行くことは、必ず相手のペースに乗せられるということで、大変危惧をしておりました。しかし、それは私だけではなくて、多くの人がそうだったと思うんですね。
 これに対して小泉総理は何とおっしゃっていたか。正常化交渉開始のためにピョンヤンに行くんじゃない、正常化交渉を果たして金正日総書記との間で本当に始められるかどうかを見きわめに行く、こういうことをテレビの前でおっしゃっていたわけです。しかし、現実にはどうですか。行ったらもう宣言文は決まっていて、一言一句修正せずにサインしてくる。
 私は、この交渉がこんなにも短期でやったということに最初から危惧を持っていました、これでは交渉なんかできないじゃないかと。こんな微妙なことがあって、問題を見きわめるだけでも、幾つかの問題を整理するだけでも、幾つかの問題を通訳を通して言うだけでも、とても一日使ってしまう。一体、どうしてこんなことができるんだろうかと思ったら、わかりました。要するに、これは、もう日朝正常化で交渉を始めるんだ、その合意でそのサインに行くと最初から決まっていたわけですね。外務大臣、いかがですか。
川口国務大臣 我が国と北朝鮮との間にはずっと五十年以上国交がないという、そういう意味では極めて不正常な関係にあるわけでございまして、しかも、北朝鮮は我が国の本当にすぐ近くにある国でございますから、そのもたらす不安定性というのはかなり大きなものがあったわけでございます。
 そして、その点について、総理は、拉致問題を初めとする日朝の間の難しい懸案問題について、首脳レベルで対話をして、正面から解決を迫って、そして進展を図るということを目的として訪朝をなさったということでございます。そして、この首脳会談によりまして、拉致問題や安全保障問題や国交正常化といった基本的な問題について一定の前進があったということであったため、総理はこの結果を総合的な見地に立って判断をされて、前に進める、すなわち国交正常化交渉の再開ができるというふうにお考えになったということでございます。
 その結果として平壌宣言への署名があったわけでございまして、これは初めから署名ありきで総理は行かれたということでは決してございませんで、そういうことが可能かどうか、首脳間同士の話し合いでそれを見きわめる、そういうことのために行かれた、その結果として署名があった、そういうことでございます。
 今回のこれで問題が払拭をされたということではなくて、まさにこれから交渉が始まるということでございますから、交渉前、交渉中、具体的にそういった問題については前進を図っていく、そういうことでございます。
首藤委員 いや、質問に全然答えていただいていないですよ。それは、魚で尾っぽとひれだけ出して、はい、魚ですと言われているのと全く同じです。私の質問に全然答えていないじゃないですか。
 本当にどれだけ真剣にここで交渉するつもりがあったか、本当にどれだけ見きわめるつもりか、全然明確じゃないじゃないですか。もう決まったとおりの文言を言って、一言一句変えない。それでどうしてあなたのおっしゃったような見きわめるということが言えるんですか。
 ただし、私、時間がないので次へ進ませていただきますが、この交渉を見れば、これは限られた時間で説明しなければいけないので残念ですが、もう本当に相手のペースに乗せられたと。恐らくは、例えば待合室で、交渉が中断する、その間で話している仲間同士の話だって全部盗聴されて、それが全部向こうの交渉戦術になってきて、これがなければ進めるのをやめましょうね、総理と言ったら、向こうがぽんと出してくる。これはまさに乗っかっているじゃないですか。
 私は、驚いたのは、そうした対象と例えばアメリカが交渉するときは、よくカプセルなんか持っていきますよ。全く防音の、音が一切漏れないもの。大体、どれだけ準備を田中局長がやっておられるか、これも聞きたいわけですが、さらに驚いたのは、日本の映像を見れば、小泉さんは厳しい顔をして握手していますね。しかし、ピョンヤンで流れた放送、どうですか。こうやって、ほほ笑みをもって話している映像になっているじゃないですか。あの映像は、あそこに、現場におられたからよくわかっていると思いますけれども、どうして日本では放映されていないのですか。田中局長、いかがですか。
田中政府参考人 どの映像を使うかということについては、私ども承知をいたしておりません。
首藤委員 いや、だから、現場でその映像はあったわけですね。向こう側は別なカメラで撮っていて、我々は撮っていなくて、向こう側だけが撮っている映像というのはあったわけですね。いかがですか。
田中政府参考人 基本的には、会議の冒頭、日本と北朝鮮側双方が映像を撮ったということでございます。
首藤委員 いや、私が見たのは、会談している中の写真が撮られていたんですけれども、これはどういうふうに解釈すればいいんですか。テレビカメラがあったんですか。どこかにあったんですか。
 ただし、今時間がないから私はこれ以上言いませんけれども、非常に不明確ですよ。一体何が行われていたのか。我々が毎回毎回、朝から晩まで見ているのが本当の映像なのかどうかということですね。実際には何が行われていたかということです。
 今回の問題は、当然のことながら、拉致の問題で非常に我々はショックを受けたわけです。私も、こういう海外の安全の問題、海外における邦人の安全の問題に二十数年間携わってきて、本当にもうこの問題に関しては心の痛い思いをしております。
 そこで、こうした問題、特に北朝鮮の問題に関しては、公安調査庁は外務省とは別ルートで、別な方向からいろいろな調査をしております。例えば横田めぐみさんに関しては、安明進という工作員が九三年八月、すなわち、いわゆる北朝鮮情報によると横田めぐみさんがお亡くなりになったその直後に韓国に亡命しているということになっていますが、この時期というのは、まさにノドンが出て、核疑惑が出てくる非常に緊張した時期なわけです。こういうときに安工作員が出てきて、またそのころいろいろな工作員が入ってきたりして、捕まったりしています。
 こういうときに、公安調査庁は、実は横田めぐみさんの安否に関しては明確な情報を持っていたんじゃないか。例えば、この安という人はいろいろなことを、横田さんに関して必要以上によく知っているんですよ。ですから、そういう意味ではきちっと調査をされ、またさらに大物の亡命者としてファン・ジャンヨブという方は韓国に今亡命されているわけですね。当然のことながら、公安調査庁としては別ルートで明確な情報を持っていたと思うんですが、いかがですか。
町田政府参考人 当庁は、北朝鮮に関しまして、我が国国民の安全に大きな影響を及ぼすおそれがあるという観点から調査を行ってまいりました。その中で、御質問の拉致被害者の安否につきましても、重大な関心を持って、さまざまな情報収集手段を用い、全力を挙げて関連情報の収集に努めてきたわけでございます。
 しかしながら、国交のない地域内のことであり、また、北朝鮮という特殊な閉鎖的体制下のことであるという難しさがあります上に、政治や経済等の動きでありますと、少なくとも一定範囲の人にはその目的を伝えますので、情報がどうしても表に出るわけでありますから、これを手がかりにさらなる情報を入手しやすい、そういうことでありますが、個々の拉致被害者の安否情報についてはそういう性格がなく、しかも、北朝鮮は北朝鮮名をつけて隠ぺいする等して意図的に隠しておりましたので、今御質問の中で御指摘がありましたようなことがないと、必ずしも、何というんでしょうか、的確な情報の入手は難しいわけです。私ども、いろいろな角度から全力を挙げて努力したわけですが、結果的には的確な情報の入手に成功していなかったわけでありまして、まことに遺憾に思っております。
 なお、今後もさまざまな手段を使って、可能な手段を使って、示された情報の正確性を含めて関連情報の収集に努めてまいりたいと思っております。
首藤委員 そんなことは今後やらなくて結構です。税金を使ってこれだけの組織を維持しているんですが、もう価値がないということです。私は、組織的に、公安調査庁の意味はないんじゃないか、それに関しては、組織的な行政改革の対象として当然考えなければいけない問題だと考えております。
 さらに問題なのは、最後に、有本恵子さんの問題を話させていただきます。
 有本恵子さんが、日本に生存を伝える手紙があった、その後、急に、その北朝鮮情報によれば死亡しているということになっています。
 私は、この海外安全の問題、あるいは誘拐や拉致の問題に取り組んできましたけれども、こういう情報があったらどうするか。あったら、最初にまず、誘拐した犯人、拉致した側に対して、その対象となった犠牲者の安全を確実に確保しなさい、もし危害を加えることがあれば、それは物すごい報復がありますよということをきちんとした明確なメッセージで言うわけですね。
 外務省は、例えばこの有本恵子さんの生存情報に関して、有本さんに危害が加わらないような対応をどのようにとられましたか。外務大臣、いかがですか。
川口国務大臣 政府といたしまして、拉致をされた被害者の氏名の公表については慎重に対応をしてまいりましたところでございます。御家族の御了承なしに、拉致の対象となった、被害となられた方の氏名の公表ということは控えてまいりました。
 それから、政府といたしまして、拉致をされた方々の生命の安全のためにどういうような方法が効果的な方策であるかということを真剣に考えながら、ありとあらゆる機会をとらえて北朝鮮に真剣に働きかけてきたわけでございます。
 今回の日朝首脳会談の折に、北朝鮮側から安否について調査の結果の非常に悲しい知らせが届いたわけでございますけれども、政府としては、引き続きこの事実関係を解明するように北朝鮮側に対してきちんと申し入れをしていく、そういうことでございます。
首藤委員 私は、恥を知れということですよ。外務大臣、外務省の皆さん、全員ですよ。
 外務省、有本恵子さんに関しては、例えば、ことしの三月二十四日に、有本恵子さんの生存情報について報道されています。あるいは小泉政権の前の森総理も、第三国でどこか見つかるんじゃないか、こんな話をずっとされていたわけですよ。それと今我々が手元にもたらされた情報とどういう整合性があるのか。どういう努力をやっていたのかですよ。
 この横田めぐみさんの本、「めぐみ、お母さんがきっと助けてあげる」という本ですよ。お母さん、一生懸命めぐみさんを助けようと思って、いろいろ活動されて、こういう本を書かれました。めぐみさん、外務省がきっと助けてあげる、こんな本が書けますか。せいぜい一枚か二枚の事書きじゃないですか。ここは国会なんですよ。これは国民を代表しているんです。この件に関しても、私は、小泉総理がこの場に来てきちっと釈明することを要求して、私の質問を終わりたいと思います。
 以上です。
吉田委員長 次に、金子善次郎君。
金子(善)委員 民主党の金子善次郎でございます。
 植竹副大臣おいででございますので、ちょっと質問させていただくことから始めたいと思います。
 官房長官と御一緒だったというような報道もございますけれども、九月十七日の日でございますが、被害者家族の方々に対しまして、北朝鮮から示されました一枚のペーパーをもとに安否の状況をお伝えになった。その場合はかなり断定的なお話であったというようなことが家族の方々からいろいろな機会に耳に入るわけでございますが、これはあくまでもこのペーパー、北朝鮮の方から、まあ赤十字というような話もございますが、このペーパー以外の何かの根拠もおありだったのかどうか。まずそこを副大臣の御答弁をお願いしたいと思います。
植竹副大臣 十七日の十一時からピョンヤンにおいてこの交渉の第一回が始まったわけでございます。そして、午前中は総理の方から、内容については皆様御存じのようなことでありますが、申し入れ、そして二時から先方から回答があったという点につきましては、これは向こうからペーパーというよりも、電話というか、そういうような連絡があった。ペーパーもございましたが、今極めて断片的とおっしゃいましたけれども、その部分的なこと、連絡があったことだけが私どもに参りました。それをお伝えしたということでございます。
金子(善)委員 今副大臣のお話がありましたように、一枚のペーパーをもとに、あくまでも本来、そういうことが北朝鮮の方から話があったという伝え方をすべきところを、断定的な言い方をされたというようなことで、以来、家族の方々は大変な、この情報内容に対しましていわば不信感に近いものが渦巻いている、そういう状態になっていることは御承知のとおりだと思うんです。
 そこでなんですけれども、北朝鮮が示してきたペーパー以外にほとんど判断材料がないというようなことだと思うんですが、北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会、いわゆる救う会という会がございます。この会のお話によりますと、昨年八月二十四日、朝鮮日報は、九〇年代末までにピョンヤン、平壌に、八人の拉致された日本人がピョンチョン地区アンサン招待所に集団生活していることが確認されたと報じたと言われているわけです。
 救う会が、それに基づきまして調べた。その話によりますと、この新聞情報は、現在韓国に住む北朝鮮亡命者、これは氏名は伏せられているわけですが、目撃した情報であるということが確認されたということでございます。この救う会は、N氏から聞いた話といたしまして、自分が目撃した中に、今回の安否情報では亡くなられたと言われている横田めぐみさん、それから、生存されていると言われている奥土祐木子さんの顔写真とよく似た女性がいたという証言があることを確認していると。
 実は、このN氏の証言は外務省にも伝えられているということでございますが、大臣、これは御存じでいらっしゃいますか。
植竹副大臣 その朝鮮日報から出たということは、私、見ておりません。
 なお、先ほどおっしゃいましたペーパーということですが、これはピョンヤンにおける会合のことを伝えてきた日本側のペーパーでございまして、北朝鮮側のペーパーではありませんということをお伝えしておきます。
金子(善)委員 私が言いたいのは、今回は北朝鮮政府として赤十字という機関を通じた形で出してきているわけですが、さっき同僚議員の方からも公安調査庁に対しまして質問あったように、いろいろな情報がある。これは一つ一つ調べていって検証して、その事実関係というものをはっきりさせていくというのが国民の生命財産を守る政府の役割だというふうに私は思います。
 そういう観点からいいますと、例えばでございますけれども、こういう情報を日ごろからきちっと分析をしていれば、この奥土祐木子さんと、今回、イギリスの公使、梅本さん、お会いになっているはずですから、こういう情報をよく、いつも頭に入れておけば、そのとき、実はこういうあれがあったんだけれどもどうなんだということぐらい聞いて当たり前じゃないかと私は思います、本当に救出するという気持ちがあればですね。
 そこで、はっきりしたことをここで御答弁いただきたいと思いますけれども、今回の北朝鮮の安否情報というものはあくまでも北朝鮮が出してきた情報にすぎないのであって、これは、例えばその中で死亡とされている方は一人残らず死亡とは断定していない、外務省としては断定していない、日本国政府としては断定していないということを確認させてもらいたいと思います。いかがですか、大臣。
田中政府参考人 委員御案内のとおり、確かにこれまでもいろいろな情報、果たして十分な信憑性があるものかどうかということはありますけれども、いろいろな情報があったことは事実だと思います。ですから、私どもは、一定のプロセスの中で、北朝鮮が正式に政府として安否情報を出してくるということを求めてきたわけでございます。その結果が、公式に赤十字の通報ということで今スタンドしているということです。ですから、北朝鮮から公式に来た情報ということで、安否情報ということでございます。
 これから私どもがやっていかなければいけないのは、それに基づいてきちんとした事実関係の解明を進めていかなければいけないし、それから、生存されている被害者の方々の家族との面会を通じて確認作業ということもやっていかなければいけない、こういうことでございます。
金子(善)委員 次の点を質問をさせていただきますけれども、実は、先ほどの田中局長の答弁で、これまでずっと北朝鮮に対しては、八件十一人の問題について明らかにしろということを、これまでの事前交渉というんでしょうか、ずっと言ってきたと。ところが、これは御承知だと思うんですけれども、今回も、八件十一人のリストに入っていない方々の情報も北朝鮮の方から来たという事実があるわけです。
 この日本人の北朝鮮による拉致事件について、最も一生懸命心血を注いでこの問題に取り組んでこられたのは、救う会を中心にした方々であるというふうに私は思っております。そこが作成したリストがあるわけですが、これは今回の八件十一人のほかに四十人以上の疑いのある方々、これは警察は証拠がはっきりしないというようなことで、八件十一人というのは、日本の警察がはっきりした証拠がありますよということで認めた方々なんです。今回も、きょう、お昼、テレビでも放映されていましたけれども、ソガさんという方が新たに発見されたと。これはこのリストにさえも載っていないんです。ですから、本当のところ、北朝鮮にどれだけの方々が拉致されたかわからない、これが実情だと思います。
 とすれば、本当の意味で拉致問題というものを解決した暁に日朝交渉というものを積極的に進めるということであれば、この八件十一人だけじゃなくて、少なくとも疑いのある方々については調べていく必要があると私は思います。
 その中で、私はちょっとお聞きしたいんですけれども、この点について、日本がこの人たちについてどうなんだと言うだけではなくて、これから日朝の正常化がなされる中で、経済援助の話もちらほら出ている、あくまでも北朝鮮が本当に誠意があるとすれば、今まで拉致した方々の安否というものを日本政府に、日本国民にはっきり言うべきではないか。言わせるべきではないか。それぐらいの迫力を持って交渉しないことには、またこの八件十一人というのは矮小化されてしまうおそれがあるんじゃないか、私はそのように思うわけですが、この交渉についての決意、四十人以上について、どういう扱いを外務省としては外交交渉でやっていくつもりがあるのか、その点について明快な答弁をお願いしたいと思います。
田中政府参考人 委員御案内のとおり、これまでは、非常に厳しい関係の中で、日本が拉致があると言ってもないと言い、そこで何らの事実も解明されなかったというのが残念ながら実情であったと思うんです。ですから、まさにそういう事実を解明していく上でも、一定の協調的な関係になるんだという決意がないとなかなか物事が前に進んでいかないということだと思います。ですから、全く敵対的な関係の中で、拉致があると言って、相手が認めないということでは物事が進まないということも事実だと思いますので、そういう観点から、小泉総理はまさにそこを打開されたということだと思います。
 ですから、そういう意味で、私たちにも非常に驚きであったわけですけれども、リストの中には含まれていない人があったということで、そこは、北朝鮮側がいろいろな調査をしたことの証左ではないかというふうに考えていますし、当然のことながら、私どもは、基本的には警察の捜査の結果挙がってきたものをもとに我々の交渉を組み立てるということでございますけれども、今後の協議の中では、まさに北朝鮮がどれだけ誠意を持ってこういう問題に取り組もうとしているのかということについては常に見きわめながら、きちんとやっていきたいというふうに考えています。
金子(善)委員 私の方から強く要望をいたしておきますけれども、とにかく、先ほど来の各先生方の質問に対する答弁等、外務大臣の答弁も含めまして聞いておりますと、あくまでもこれは、拉致問題というものは入り口論、つまり、この疑惑がはっきりした段階で本来の交渉に入っていくというような位置づけであるべきだというふうに私は思っております。そういう観点から対応を強くお願いいたしておきたいと思います。
 最後ですが、一点だけお伺いしておきます。
 例の非公式文書と言われている安否の、特に亡くなられた方々の年月日、これが示されている、ハングル文字で書かれたペーパーが北朝鮮から非公式に提出された、既にこの内容は外務省から電話によりまして被害者家族の方々に通知されたというふうにも報道がなされているわけですが、この文書を、たとえ非公式文書でありましても、既に国民の中に報道を通じまして明らかになってきておりますので、これをぜひこの委員会に提出をしていただくようお願いしたいと思いますが、委員長のお取り計らいをお願いいたします。
吉田委員長 理事会で協議をしたい、こう前提に思っております。
金子(善)委員 以上で終わります。
吉田委員長 次に、渡辺周君。
渡辺(周)委員 民主党の渡辺でございます。もう時間がありませんので質問を進めたいと思いますが、今の同僚の金子委員の質問に続きます。
 拉致問題の解決なくして国交正常化はあり得ないと繰り返し述べられてきました。我々も当然そうでございます。これは日本国のコンセンサスであろうと思うわけであります。どの時点で拉致問題は解決をされたと判断をするか。この拉致問題について今、まだこちらの八件十一人以外に行方不明になっている方、そして北朝鮮が今回出してきた方、あるいは救う会の方々が非常に疑わしいと見ている方々のお名前が複数挙がっているわけでございます。こうした方々に対して、日本国として今後どのような要請をしていくのか、どの時点において拉致問題が解決されたと判断するのか、その点について政府の御見解を伺いたいと思います。
田中政府参考人 少なくとも今回安否情報として正式に提出があった方々については、先ほど来申し上げていますように、必要な事実関係の解明であるとか御家族の方々の面会というような一連の当面急いでやっていくべき事項というのは多々あると思います。多分、そのうち、いろいろな形での議論の中で、国交正常化交渉の中でやっていかなければいけない案件もあると思います。
 ですから、大事なのは、宣言の趣旨にもありますように、こういう遺憾な事件が二度と起こらないような適切な措置をとるということでございますから、仮に過去そういう、これ以外の拉致の問題があるということであるならば、それも徹底的に解明をされなければいけないということだと思います。ですから、そういう交渉、状況を見ながら拉致問題というのはとらえていく、交渉していくということだと思います。
渡辺(周)委員 そうしますと、例えば交渉の過程において、日本国籍を有する人間が北朝鮮の国内にどれぐらいいるのか、そういうのを全部出させなきゃいかぬと思うんですね。その方々がどういういきさつで北朝鮮に移り住んできたのか、あるいは帰国運動で日本人妻として帰ったのか、あるいは我々の知らぬところで拉致をされ、何らかの形で北朝鮮国内に存在している、そのことをやはり北朝鮮側に対してはっきりと、これは、日本国籍を有する者で北朝鮮国内の人間に対しては、それについて明らかにせよとやるべきだと思う。
 そうしませんと、またいずれ新しい拉致と思われる方々のお名前が出てきたときに、またこの確認作業をしていくとまた時間がたってしまう。下手をすると、また向こうからこの方は死亡しましたなんということで、また向こうのペースにはまって、生死も全くわからないまま向こうの一方的ないわゆる発表を待つということになりやしないかというふうに思うわけであります。
 その点については、この拉致問題が解決されたという判断の一つ明確な点は、これは政府内でしっかりと議論をしていただきたいというふうに思うわけでございます。
 そしてまた、今後のスケジュールについてどうされるかということです。
 北朝鮮に任せて、とにかく返ってきた返事をそのままうのみにして、北朝鮮の調査をしたらこうでございました、北朝鮮当局がこう言っていますというのでなくて、我々が主体的に日本国として、この亡くなられたと向こうが発表する方々の、本当にそうであるか、あるいはそれは事実ではないということを確証するためにも、まずは我々の国が、北朝鮮の、向こうが発表する死亡したという方々に対してどのような手だてを講じることができるのか。
 これは、結果として、不幸にして万が一亡くなっているということであるのならば、そう信じたくはないわけでありますが、例えば、その方々の墓はあるのか。あるいは、その方々の残された家族が例えば髪の毛一本もらってきてDNAの鑑定をして、そこで本当にそれが家族のものであるのかどうなのか。あるいは、もし最悪の結果を考えれば、遺骨があったとすれば、それを例えば持って帰ってくる、そういうことはできるのかどうなのか。今後はどうされるわけですか、外務省として。その点については、何か交渉は今後用意されているんでしょうか。
 それからもう一つ、生存が確認されてお会いしたという四名の方、この方々の、実際に何ら証明するものがない。どういういきさつでこの方々と梅本英国公使が会われたのか。ピョンヤン市内の高層アパートの一室で会ったというふうに報じられていますけれども、なぜそこには何の記録も残っていないのか。その方が会ったというだけで、全く記録がないわけであります。
 例えば、朝、会談の休憩時間に突然連れていかれて、実は、この方がここにいます、会ってくださいと言われたから、何も、写真も、カメラも持っていなければ、テープレコーダーも持っていなかった。その方をどう信用しろということを、まさに客観的な証明するものがないわけでありますから、その点については、どういういきさつでその生存者という方に引き合わされたのか、その点についてお答えいただけますでしょうか。
田中政府参考人 首脳会談が始まる前に、事前の準備会合をやりましたときに口頭で安否情報の開示がありました。そのときに私が求めたことの一つは、生存者の方々に対して直ちに政府関係者による面会の便宜を図ってくれということでございました。ですから、そういう意味では、あの日の午後になったと思いますけれども、急遽、梅本駐英公使が準備本部の本部長ということでございましたので、何人かの人とともに面会をさせたということでございます。面会自体につきましては、梅本公使が帰国後、詳細なお話を家族にさせていただいている。
 ただ、これも北朝鮮の赤十字会から日本赤十字社に対する通知の中にありますが、彼らも御家族の訪問について便宜を供与する用意があるということでございますから、当面必要だと思うのはできるだけ早く御家族に行っていただきたいということで、現在その調整をさせていただいているということでございます。
 それから、いろいろな協議でございますけれども、当然のことながら、私どもも、亡くなられたと言われている方々についての事実関係の調査、これはもう既に総理からも私どもの方からもしてあるわけでございまして、できるだけ早い段階で、御家族も含め、御家族の御希望がある場合にはぜひ行っていただきたいというふうに思いますけれども、その辺も含めて調整をさせていただきたいというふうに考えております。
渡辺(周)委員 一日も早く行きたいという方もいれば、心の整理がつかないからまだかの国に行きたくないという方も当然御家族の中にはいらっしゃるんだと思います。そこの点については、拙速に、すぐにでも行けというふうに断言できるだけの思いはまだ私どもにもあるわけじゃございませんけれども、ただ、客観的な何らかのことは何一つないわけでございます。
 だとするならば、例えば、ちょっと話は戻りますが、先ほどの生存者の、梅本公使が会ったと言われる方々、この方々を、なぜテレビカメラも連れていくことができなければ、御本人の声を聞くなり、何らかの客観的なことを残そうとできなかったんですか。あるいは、北朝鮮側からカメラやテープレコーダーの類のものは一切持っていくなと、ある意味では言われたのかどうか、その点の事実はどうなんでしょうか。
田中政府参考人 先ほどの答弁の繰り返しになりますけれども、朝の段階で、直ちに政府関係者の面会を認めてくれという要請をして、彼らがそれに応じたということでございまして、他方、同時に、その生存者の方々については、家族とか政府関係者がきちんと面会をする機会を将来つくるという約束もございました。
 ですから、そういう意味で、とりあえず面会をするというのはどうしても必要なことだと思いましたけれども、本当に確認をするためには、十分な準備をして、かつ御家族の方も含めて確認をするという作業がどうしても必要である、北朝鮮側はその便宜を保証するということを言っておりますので、そういうプロセスをたどっていきたいということでございます。
渡辺(周)委員 先ほどから便宜、便宜という言葉が出てくるんですが、そんなの当たり前のことなんです。日本人を拉致して連れていったのが北朝鮮でありまして、それを帰国させる便宜を図ってもいいとか、あるいは入国させる便宜を図ると言っていますけれども、便宜を図るというのはサービスをするということでありまして、これは当然のことじゃないですか。向こうが犯罪を犯しているわけですから、その家族なりが会いに行く、あるいは釈放して帰すということ、帰国させることは当然であります。
 先ほど来のお話を聞いていますと、日本側は、便宜を図ってくれた、便宜を図ってくれたと言いますけれども、北朝鮮の完全なペースに、もう皆さんも実は洗脳されていたんじゃないかと思うんですね。これは便宜じゃないですよ。当然のことなんですよ。日本人がさらわれて、日本の主権が侵された人間を帰してやってもいいよ、あるいは、その家族が会いに来るんだったら便宜を図ってやるよ、こんなことを向こうに平気で言わせること自体が、この交渉は実は非常に日本にとっては、はなから北朝鮮のペースにもう乗せられていたんじゃないかと言わざるを得ないわけであります。
 この問題については改めてやりますけれども、いずれにしても、今回、まさに北朝鮮に都合のいい交渉の舞台を用意した。日本がそれに乗ってしまった。申し上げれば、ピョンヤンという相手国の、サッカーでいえば、ホームとアウエーがあればアウエーで日本の国はあえて試合をせざるを得なかった。
 先ほどちょっとありましたけれども、例えば、盗聴器が総理大臣の、官房副長官の休憩室の中に、いろいろなところにあったんですよ。そうすると、午前中の会談を終えて午後の会談までの間に、ひょっとしたら盗聴器が仕掛けてあって、その昼間の時間に、これはもう交渉決裂だ、席を立とうといったときの会話が全部向こうに筒抜けになっていて、それで、これはえらいことだと思ったから、あえて謝罪を冒頭にせざるを得なかった、そういうふうに当然考えられるわけなんです。
 ですから、相手の国を交渉場所に選んだという時点で、この交渉というのは非常に最初からハンディを負っていたと我々は思わざるを得ないわけです。
 最後に、もう時間がございませんので申し上げますけれども、先ほど、当日修正したところはないと。しかし、この共同宣言には二〇〇二年十月ということがもう既にあるわけです。そうすると、これは本当に署名をするためだけのセレモニーだったんじゃないかと思われる。
 直前の共同通信からの文書取材で、文書回答で金正日総書記は「大きくない問題をもって中傷し」云々とあるわけですね。つまり、もう拉致問題というのは大きくない問題だというふうに彼らは、かの国は思っているわけであります。
 まさにそのことを考えますと、今回の正常化交渉の開始における共同宣言、この点についてのすり合わせの時点ではもう既にほとんどレールが引かれていた、そう思わざるを得ない。
 ここでお尋ねしたいんですけれども、この共同宣言は、一体いつからすり合わせをしていて、どの時点で総理の了承を得ていたんですか。その点についてお答えいただきたい。
田中政府参考人 その前に、先ほど便宜ということを申し上げましたけれども、これは、北朝鮮赤十字会という機関が便宜を図るということを言っているということを申し上げたにすぎません。ですから、その点は御了解をいただきたいというふうに思います。私が北朝鮮が便宜を図るということを意味したわけではなくて、北朝鮮赤十字会というものが便宜を図るということを言っているということを申し上げているわけでございます。
 それから、共同宣言でございますが、総理は、まさにそういう共同宣言の素案、いろいろな形で準備の作業がございましたけれども、その過程で常に御相談をしてきているわけでございます。なおかつ、そのバランスからいって、いろいろな形で日本としての懸念事項というものが、方向性というものができているという御判断をされた上で、今回の首脳会談におきましては、個々の問題について改めて金正日総書記の考え方をただすという形で物事を進めていかれたわけでございます。そういう形で、金正日自身の考え方も反映されているということを確認された上で署名をされたということだと思います。
 ただ、同時に、私ども一夜にして北朝鮮という国に対する見方が変わるわけではないわけで、当然のことながら大きな懸念が残っています。まさに、そういう懸念を解消していくためにも正常化交渉をきちんとやろうということが今回の署名の意味であるというふうに思います。
渡辺(周)委員 今のお答えの中で、金正日総書記の意思が反映されているとありますけれども、日本側の意思は反映されていないんですよ。拉致問題ということについては、先ほど来出ていますように全然書かれていない。そのことを考えますと、やはり我々の国として、共同宣言自体は、もう初めから、すり合わせの時点で、もしかしたら、文言には北朝鮮側の体面を考えて拉致という言葉を入れない、そのかわり会談のどこかで謝罪を入れるというふうな口約束が、実は約束があったんじゃないかと思うわけです。その点についてお尋ねをしたいのが一点。
 もう質問時間が終了しまして、これでやめますけれども、もう一つ。
 戦後の外務省のいろいろな北朝鮮政策をしてきた中で、一つお尋ねしたいんですが、最近本を出された青山健煕さんという方、この方が実は外務省の北京大使館を経由して日本に帰ってきた。もう極秘情報を何度も、北朝鮮の元工作員として情報を外務省に渡しているけれども、自分の身柄については守ってくれていないというようなお話があるわけですが、その点については、この人物を知っているか、この人物の言っていることは事実かどうか、その点だけ最後にお尋ねをして、この問題については改めてやりたいと思います。お答えいただきたいと思います。
田中政府参考人 大変申しわけございませんが、特定の個人にかかわる問題でもございますし、お答えを控えさせていただきます。(渡辺(周)委員「最初の質問の方は」と呼ぶ)そのような事実はございません。
 まさに首脳宣言というものは、総理は非常に明確に、一定のバランスをつくる、国交正常化交渉を一定の精神の中でやっていくというための一つの土台をつくるということでございましたし、同時に、拉致の問題については明確に、安否情報、それにかかわる一連の調査、それから謝罪、そういうものをきっちり求めるという考え方で臨まれたということだと思います。
渡辺(周)委員 終わります。
吉田委員長 次に、土田龍司君。
土田委員 自由党の土田龍司でございます。
 今回の首脳会談、拉致事件に関しましては大変悲しい結果に終わってしまいました。そしてまた共同宣言につきましても、非常に一方的な宣言に署名をして帰ってきた。全く評価できない残念な結果だと私は思っております。
 この八月三十日に小泉総理は、十七日に首脳会談をやる、それはこの一年間水面下で活動してきたその成果だというふうに言っておられますけれども、私は明らかにそれは間違いだと思います。これまで外務省が水面下で努力をしてきた。何とかしたいという気持ちはわかりますけれども、具体的な進展は全くなかったんじゃないかと私は思っているんです。
 四月三日に北朝鮮から、アメリカや日本と話し合う用意があるんだというメッセージが伝えられた。それを受けて、四月の二十九、三十に赤十字会談が行われた。その際も、ほとんど話は進展しておりません。六月に開く赤十字会談も延期されたままになって、外務大臣がブルネイで北朝鮮の外務大臣と話し合われて初めて交渉再開の糸口が見つかったんじゃないかと思っているんです。
 そして、田中局長が北京で会談されたのが八月の二十五日、このときもまだ首脳会談の話は出ておりません。可能性としてはあるというぐらいの話だったと思うんです。たったこの一週間の中で、この日朝交渉を進展させるために、小泉総理は一気に首脳会談をやるという話に飛びついたんです。全くのパフォーマンス、人気取りでしかあり得ません。今、首脳会談をやる時期ではない。これは私たちはそのときも言いましたし、我が党の党首であります小沢党首も総理にじかに言いました、今、首脳会談をやる時期じゃないでしょうと。そして、このような結果に終わってしまったわけです。
 共同宣言の内容につきましても、第一項目は十月から交渉を再開するということで、第二項目めからはすぐに今度は補償問題、お金の問題に入ってきている。全く一方的な北朝鮮のペースにはまってしまったようなやり方であると私は直観をいたしております。
 外務大臣にお尋ねするんですが、今回の首脳会談について、こういった拙速なやり方をいいというふうに思っておられますか。
    〔委員長退席、中川(正)委員長代理着席〕
川口国務大臣 日朝間にさまざまな問題があるわけでございますし、また、国際社会の北朝鮮に対する懸念というものもあるわけでございますけれども、そうした中で、我が国は北朝鮮との間で五十年以上にわたって国交が正常化されていないという異常な状態にある、これをきちんと正常化していくことが歴史的な責務であるというふうに総理はお考えになっていらっしゃって、それでそういった、先ほど申し上げたような諸問題について北朝鮮側が誠意を持って対応するつもりがあるかどうかを直接に自分の目で確かめるということで総理は行かれたわけでございます。
 そういったことの結果、一定の前進が見られ、国交正常化の交渉の再開が可能だろうという御判断があったということでございまして、拉致の問題その他、たくさん解決をしていかなければいけない問題がございますけれども、それらがまさに交渉ができる場がつくられ、そういった場でこれから交渉を進めていこう、もちろんその前にもやらなければいけないことは当然拉致の問題に関してございますけれども、そういったことも含め、交渉再開の場でさまざまな問題を取り上げていくということであるかと思います。
土田委員 小泉総理は、繰り返し、拉致問題の解決なくして国交正常化はあり得ないというふうに言われてまいりました。今回、別に、総理がピョンヤンまで行って首脳会談をやって、ああいった共同宣言に署名しなくても、当然、局長級会談があって、大使級会談があって、そこで詰めていけば十分にできたはずです。今回の首脳会談でこの共同宣言に署名したばっかりに、今後の交渉というのは日本側にとって非常に大きな負担になっていくというふうに私は思っているんです。
 今大臣が、五十年間国交がなくて、いろいろな問題、諸問題があって、それを解決するためにはそれしかなかったというふうにおっしゃいますけれども、私は、外交的には全く間違った、失敗だったなという感じがしてなりません。
 先ほど言いましたように、この共同宣言の第二番目にはすぐに日本からの謝罪の問題、補償の問題、補償という言葉は入っておりませんが、経済協力の問題になってくるわけですね。今回、この問題について一番北朝鮮が望んでいること、それがその前面に出てくる。確かに、共同宣言の文書を読んでみますと、日本側はとか北朝鮮側は、あるいは双方はという言葉を非常にバランスをとってやってありますけれども、その中身はほとんど一方的に北朝鮮の希望を聞いただけ。そこで軽々しくサインしてくるものじゃないというふうに私は思えてならないんです。
 そこで、拉致問題についても幾つか聞きたいと思うんですが、もう与党側からも野党側からもたくさん出ましたので、ちょっと、その次の問題として、過去の清算について私は外務省にあるいは外務大臣に確認をしておきたいと思っております。
 当然、この過去の清算のことが問題になるわけですね。そのときに、これまでの日朝交渉において、北朝鮮は補償とか賠償を求めてきた。日本は、それについては全く補償とか賠償はしない、交戦関係になかったんだというふうに言ってきた。そして、今回の共同宣言では、お互いの財産及び請求権も放棄するということを合意したわけですね。
 さて、そうなってきますと、三十七年前に日韓で合意した経済協力、合計五億ドルの経済協力をしたわけでございますが、この性格について一度検証しておかなきゃならないというふうに思うんです。それと同時に、今後、北朝鮮に対して、賠償責任がないわけですから、それで財産権も放棄したということになると、果たして経済協力を行う目的があるかどうかということになってくるんじゃないかと思うんです。もちろん、今日本が行っている途上国におけるODAについて、そのレベルならわかりますけれども、そういった話し合いを前面からする必要があるのかどうか。この二つについてお答えください。
田中政府参考人 委員御指摘のうち、前段の方で共同宣言についてのお話がございましたけれども、私どもとしては、少なくとも、一つは、国交正常化にかかわる基本原則にかかわる問題として、まさにこういう宣言の精神に従った正常化ということを言っておりますわけで、いろいろな安全保障上の懸念とか、そういう日本の安全を脅かすようなことも含めて、そういう問題についてもきちんと包括的に議論をしていくという前提の中での正常化ということでございます。
 経済協力についてのお尋ねでございますけれども、御案内のとおり、日韓基本条約の際には、相互に請求権を放棄して、いわゆる経済協力である一括方式という形をとりましたわけでございます。北朝鮮は一貫して、過去五十年間、日本に対して、日本と交戦状態にあったんだという主張をし、なおかつ植民地に対する被害等について補償という概念でしか応じないということを言ってきたわけでございますが、今回、基本的な考え方として、一括方式、経済協力かつ請求権の相互放棄という形で、それを基本原則にして今後正常化交渉の中で具体的に協議をしていくということでございます。
土田委員 つまり、補償じゃない、植民地支配の代償であるならば、それは国際法的にどういった根拠があるんでしょうか。それは行わなきゃならない問題なんですか。
田中政府参考人 植民地支配に対する賠償として行うものではありません。相互の請求権の放棄、それに伴う経済協力方式として日韓で行ったのと同じ方式で行うというのが我が国の考え方でございます。
土田委員 先ほどから出ておりましたけれども、この拉致問題の解決なくして国交正常化はない。それで、田中局長、何回か質問がありましたけれども、国交正常化の話し合い、そしてこの経済協力の話し合いに入る前に拉致問題を解決するのか、あるいは同時並行でいくのか、ちょっともう一回正確に答弁してください。
田中政府参考人 小泉総理御自身も、外務大臣も先ほど申し上げましたけれども、拉致問題の解決なくして国交正常化なしということでございます。
 今回の平壌宣言におきましても、国交正常化の問題とかそれから懸案の解決というのはやはり包括方式でやっていくということでございますし、なおかつ、宣言の中にも明記をしてございますけれども、こういう宣言の原則に従った国交正常化であるということでございますし、当然のことながら、先ほど大臣も御答弁をされましたけれども、国交正常化交渉の中で最優先の課題として検討をしていくということも申されています。ですから、包括方式でやっていくということでもありますし、国交正常化交渉の最優先の課題として検討をしていくということでもあります。なおかつ、国交正常化交渉を開始する前にやることも多々あるということでございます。
 ですから、どちらをどれだけやるのかという問いに対しては、それは包括的なのが基本的な原則ですし、安全保障の課題については安全保障協議ということを立ち上げてこの宣言のフォローアップをしていきたい、かように考えているわけでございます。
土田委員 ということは、拉致問題の解決に向けての話し合いもすると同時に、経済協力の、いわゆるお金の話、幾らにするとかどうやって支払うとか、そういった話し合いも同時にやっていくというわけですね。
 改めて聞きますけれども、外務大臣に聞きたいと思いますが、日朝の正常化交渉を急ぐ理由は何ですか。
川口国務大臣 日朝の正常化交渉の再開ということでございますから、これから再開をして、これからさまざまな懸案について議論をしていくということでございまして、そういった問題を解決して正常化を図るということで、これを誠実に進めたいと私どもは考えておりますけれども、決して、一定の日までにこれをやらなければいけないとか、そういうふうには考えておりません。
土田委員 北朝鮮側は、この共同宣言にありますように、第二項目めからお金の話になっているわけですね、極めて重要だと。北朝鮮が望むのはここだと言わんばかりに書いてある。日本側は、この共同宣言には、先ほどから話に出ていますように、拉致問題や工作船の話は全く出ていないんですね。日本はなぜそんなに、拉致問題をあいまいなままにして日朝正常化交渉を急ぐ理由は何ですかと聞いているんですよ。
 確かに、九二年から始まりました、何回も中断してきましたけれども、交渉を始めるということはわかります。結構ですよ。始めてもらいたいと思いますけれども、正常化を急ぐ理由は何ですかと聞いているんです。
川口国務大臣 この宣言に書かれていますように、この宣言に示された精神及び基本原則に従い正常化の交渉を私どもはやるということでございまして、これについては誠実にやっていきたいと考えておりますけれども、先ほど申しましたように、いつまでに正常化を果たさなければいけないというふうに考えているわけではございませんで、もし北朝鮮がこの精神と基本原則に反するようなことがあれば当然に国交正常化も進まない、そういうことになるわけでございます。
土田委員 来月から早速金額の話になるようですから、少し聞いておきたいと思うんですけれども、正常化交渉において、経済協力の具体的な規模と内容を誠実に協議するということになった。経済協力の規模については日韓方式でいくと。これは書いてないようですけれども、事務レベルの話ではもう既にそうなっている、日本側からはそういうふうに要求している。日韓の場合は、無償資金が三億ドルで有償資金が二億ドルの計五億ドルが韓国に対して供給された。
 その方式でいくならば、今度、北朝鮮はどうなるのか。一説に言われているのは、北朝鮮は既に百三十億ドルぐらいを要求しているというような報道がございますけれども、明確な根拠がないですね。合理的な積算根拠が見つからないままやることについては、これは国民の皆さんの理解も得られないんじゃないかというふうに思っております。
 そういったことで、なぜ経済協力をしなきゃならないかというふうに疑問を持っている方もたくさんいるわけでございまして、経済協力の規模の算定方法について、今後政府はどういった基本的な方針で臨まれるのか。
田中政府参考人 委員、経済協力の規模について日韓方式ということをおっしゃいましたけれども、必ずしも私はそう申し上げていないわけで、方式としては日韓と同一の方式ということを申し上げましたけれども、規模につきましては、まさに今後、日本の国内、政府の関係者、当然のことながら十分協議をしながら交渉を進めていく。どの段階でどうだということを、今まだ交渉の具体的な日程が設定されていないときに申し上げることはできませんけれども、今後、当然のことながら、経済協力の考え方、その具体的なあり方、そういうものについて国内の議論をしながら北朝鮮との間で正常化交渉の中で話をしていくということでございます。
土田委員 確かに外務大臣も田中局長も規模についてはおっしゃっていませんけれども、ちまたではその話にみんな関心を持っているわけでございまして、政府としてどういった基本的な方針でいくのかということについては、現段階で、発表できるといいましょうか、基本的なことについては話しておくべきだと思うんですが、どうでしょうか。
田中政府参考人 申しわけございませんが、今、私がここでお答えをするべきことでもありません。今後、政府内で協議をしながら北朝鮮側と協議をしていく課題であろうというふうに思います。
 ただ、同時に、これは結果的には条約という形になるわけでございまして、当然のことながら国民的な合意が得られないような条約ということにはなり得ないということでもございますし、当然慎重に検討していくということでございます。
土田委員 北朝鮮の過去の外交姿勢を見てみますと、交渉において合意されたことがしばしば破られているということが感じられるわけですね。金大中さんとの約束も幾つも破られているといいますか、実行されていない。一割ぐらいしか実行されていないと言う人もいる。あるいはアメリカとの約束についても実行されていないようなことがたくさんある。あるいは日本との交渉でも、行方不明者はいないんだ、いなかったということも言ってきている。そして、そのために一方的に日朝交渉を中断してきた経過があるわけですね。
 今回の共同宣言に華々しくいろいろなことを書いてございます。国際法を遵守し互いの安全を脅かす行動はとらないとか、北東アジア地域の平和と安定を維持強化する、互いに協力していくんだとか、朝鮮半島の核問題の包括的な解決のために国際的合意を遵守するとか、安全保障にかかわる協議を行っていくとか、モラトリアムを二〇〇三年以降もさらに延長していくとか、非常にこういうたくさんのことを書いてあるんですが、いつ一方的に破られるかわからないということも当然ございますね。先ほど言いましたように、今までの外交姿勢を見ていますと、いつも一方的に破っている国ですから。
 こういった状況で、経済協力というお金の話を急ぐのは構いませんけれども、さっき外務大臣がおっしゃったように、日本側からも、話が進展しない、約束を守らないんだったらばいつでも中断しますよと、そういった姿勢を持っていくことは非常に大事だと私は思っているんです。ですから、その点について、外務大臣、もう一回決意を伺いたいと思います。
川口国務大臣 まさにそういう趣旨のことがこの平壌宣言に書かれているわけでございまして、「この宣言に示された精神及び基本原則に従い、」途中飛ばしますが、あらゆる努力を傾注し、正常化交渉を再開をするということでございますので、先ほど申し上げましたように、この精神及び基本原則に北朝鮮側が従わないということがあれば国交正常化は前に進まない、そういうことになります。
土田委員 最後に、アメリカとのことについてちょっと伺っておきます。
 川口大臣は、アメリカでパウエル長官ほかいろいろな方とお会いになって、今回の日朝首脳会談についての説明をされました。アメリカとしては、支持する、あるいは歓迎するというコメントを出しておりますけれども、一方では、ミサイル問題への深刻な脅威は変わっていないんだということもアメリカは言っております。
 これまでブッシュ政権は、北朝鮮への厳しい態度をとってきているわけですね。核攻撃も辞さないというようなことも言ってきている。その逆に、今度は金大中さんの太陽政策にも理解を示している。ソフトランディングはいいんだということも言っている。実態として、やはりアメリカは北朝鮮をそんなに信用していないというふうな感じを私は受けるわけです。つまり、北朝鮮が何を言ってこようとも、今の金正日独裁体制、これが続く限りは脅威はなくならないんだという方針に、アメリカは変わっていないと思うのですよ。
 大臣は、実際にアメリカの首脳と会われて、本当に今回の日朝首脳会談の成果を手放しでアメリカは喜んでいるかどうか、どういう感触を持っておられますか。
川口国務大臣 ただいま委員がおっしゃいましたように、北朝鮮の核開発あるいは大量破壊兵器の疑惑、それからミサイル技術の輸出といったようなことについて国際社会が懸念を持っているということは事実でございます。そして、今後再開される国交正常化交渉においては、経済協力の問題のみならず、ミサイルの問題ですとか核開発といったような安全保障の問題も取り上げていくということは当然であるわけでございます。
 小泉総理はブッシュ大統領にお電話をなさったということでございますけれども、私は、ワシントンにおりまして、パウエル国務長官やライス補佐官と、会談終了後、こういう結果であったというお話をさせていただきまして、そのときにお二方から、小泉総理の努力を支持し、歓迎をするということをおっしゃられました。
 金正日総書記は、この合意された枠組みを含む国際的な枠組み、これを守るというふうに言っているわけでして、今後、この実行がどのように行われていくかということをきちんと見ていくことが大事だろうと思います。
 また、今次の首脳会談においては、日朝両首脳は、新たに日朝安全保障協議の立ち上げについて意見の一致があるということでございますので、この協議において、国交正常化交渉と連携をさせながら、核の疑惑、核の問題、あるいはミサイルといった安全保障上の問題も集中的に議論していくことになると思いますし、アメリカあるいは韓国といった関係の国と緊密に連携をとりながらこういったことの話をしていくということによって、正常化が東アジア地域の平和と安全に資するような形で行われていくということが大事だと考えております。
土田委員 以上で終わります。
中川(正)委員長代理 次に、松本善明君。
    〔中川(正)委員長代理退席、委員長着席〕
松本(善)委員 私は、日朝首脳会談について、まずこの問題についての日本共産党の見解を述べて、質問をいたします。
 日本共産党は、この会談で、過去の植民地支配の清算、日本国民の生命と安全にかかわる懸案問題の再発防止措置などに関し日朝共同宣言が交わされ、国交正常化交渉の再開が合意されたことは、悲劇の中の一歩ではありますけれども、重要な前進の一歩だと考えております。
 この会談の中で、北朝鮮が日本人の拉致を行っていたという重大な事実が明らかになりました。他国の国民を暴力によって自国に拉致することは、国家主権を侵害し、基本的人権と人道に反する重大な国際犯罪であります。私は、日本共産党を代表して、この場をかりて厳しい抗議の態度を表明するものであります。
 拉致された方々のうち、五名生存、八名死亡、一名不明という結果を聞いて、交渉再開についての首相の決断は重くつらいものであったと思いますが、これで懸案が解決したわけではないが、交渉なしに改善は図られないとの立場からの決断を我が党は強く支持するものであります。
 交渉の前途に曲折、困難も予想されますが、日朝共同宣言に基づいて、懸案の諸問題を理性と道理をもって解決し、敵対関係を協力の関係に転換し、日朝両国の平和と友好への道が開かれることを願ってやみません。このために、日本共産党は、引き続き必要な協力を惜しまないことを最初に述べておきたいと思います。
 また、拉致の事実が明らかになったとはいえ、思いも寄らない痛ましい結果であり、御家族の皆さんのお悲しみはいかばかりかとお察し申し上げるものでございます。
 拉致問題で北朝鮮側が事実を認め、遺憾なことでありおわびすると述べたことは、問題の真相解明の重要な一歩でありますが、これで済まされる問題ではもちろんありません。拉致問題の真相の全容を明らかにすること、責任者の厳正な処罰を行うこと、被害者への謝罪と補償を図ることなどを国交正常化交渉の中で提起し、解決を図ることが必要であると思いますが、外務大臣の見解を伺いたいと思います。
川口国務大臣 先ほど申しましたように、我が国と北朝鮮との間には五十年以上国交がないという、近くの国同士の間の関係としては極めて異常な関係に今あるわけでございまして、これを正常化させるということは歴史的な責務であるというふうに小泉総理はお考えになって、また、その方向に向けての前進が可能かどうかということを見きわめるために、金正日総書記と直接にお話しになるということでピョンヤンに十七日にいらっしゃって、その結果として、まさに委員もおっしゃったように、拉致の問題についての非常に無残な、むごい結果を聞くということになりましたけれども、その中で、あえて厳しい思い、御判断をなさったということでございます。
 そういうことで、さまざまな問題をこれから国交正常化交渉をやっていく中で解決をしていかなければいけないわけでございますけれども、まさにこの平壌宣言の精神、基本原則に従った形でこれを進めていくことが大事だというふうに考えております。
松本(善)委員 拉致者については、拉致された日時、場所、どのようにして拉致されたか、拉致された後の扱いはどうだったか、これを北朝鮮側がどう言っているのか、御説明をいただきたいと思います。
田中政府参考人 十七日の段階では、安否情報と、金正日総書記が拉致という言葉を初めて口にし、その関与を認めて謝罪をするということでございまして、きちんとした事実関係の究明はこれから行われるということでございます。
松本(善)委員 これはしっかりやってもらいたいと思います。
 生存していると伝えられている方々は、どこでどのような生活をしているか、家族の皆さんの一番心配しておられることと思います。面会、そして帰国を希望されている方の帰国が一刻も早く実現するように全力を尽くすべきだと思いますが、この点についての交渉の見通しをお話しください。
田中政府参考人 全力を尽くして御家族の訪朝、面会が実現するようにしたいというふうに考えます。
松本(善)委員 死亡したと北朝鮮側から伝えられた方々は、いつ、どこで死亡したというのか、死亡の原因、状況はどういうふうに言っているのか、お答えをいただきたいと思います。
田中政府参考人 まさに、おっしゃる点も含めた死亡に至る経緯というのが解明されなければいけないということで、徹底的な調査を求めております。
松本(善)委員 北朝鮮に入ったことが確認できないと言われております久米裕さんについて、北朝鮮は拉致を認めているのかどうか。船から落ちたということも言われておりますが、真相はわかっておりますか。
田中政府参考人 久米さんについては、共和国の管内に入った記録はないというのが北朝鮮側の安否情報による回答でございました。
松本(善)委員 今回明らかにされました十一人以外の拉致者はいないのか。この点は警察庁に聞こうと思います。
奥村政府参考人 警察といたしましては、この拉致問題につきまして、これまであらゆる捜査を行ってまいりまして、北朝鮮による拉致の疑いのある事案として八件十一名を認定しておるわけでございますけれども、これ以外の幾つかの事案につきましても、北朝鮮による拉致の可能性があると見ております。
 ただ、件数を申し上げることによりまして、一つの予断を与えることになりますので、件数につきましてはお答えを差し控えたいと思います。
松本(善)委員 この点についての外務省の方針はどういうものですか。
田中政府参考人 警察庁と十分連携をとりながら検討をさせていただきたいというふうに思います。
松本(善)委員 被害者や被害者の御家族の憤り、悲しみは、察するに余りあるものであります。これに対する北朝鮮側の謝罪、補償については、どういう方針で臨みますか。
田中政府参考人 これは先ほど来御答弁を申し上げておりますように、外務省スポークスマンの談話ということで遺憾の意の表明、それから、日朝宣言におきます、この遺憾なことが二度と起こってはならないという宣言、それから、国家の最高指導者としての金正日総書記の小泉総理に対する発言ということで謝罪、遺憾の意というのは表明をされている次第でございますけれども、今後、私どもがやっていかなければいけないのは、きちんとした事実関係の調査、それの情報を北朝鮮に求めていくということであり、そういう事実関係を解明していく中でいろいろな問題を検討していかなければいけない、かように考えているわけでございます。
松本(善)委員 被害者の心情を考えますと、私の聞いておりますのは、北朝鮮側に直接、被害者に対しての謝罪を求めていくかどうか、それから補償を求めていくかどうかということであります。この点についてはどうですか。
田中政府参考人 今後いろいろな場合があり得ると思いますけれども、まず、事実関係の調査を進めるということが先決だろうというふうに思います。
松本(善)委員 そこは全然違うんじゃないですか。拉致をしたということは認めているわけです。それが犯罪行為であることは明白です。それが、生存をしていても、それから死亡をされたということになっていたとしても、いずれにしても補償をしなければならないことは明白なんです。そのことについて方針がないということではだめだと思います。外務大臣の御見解を伺いたいと思います。
川口国務大臣 この拉致の件といいますのは、委員もおっしゃられましたように、被害者となられた方御自身もさることですし、それから御家族の方々のお気持ちを考えると、本当に煮えくり返る思いをしていらっしゃるというふうに思います。
 今後、さまざまなやり方があり得ると思いますけれども、まず、どういうことが実際に起こってどうだったのかという真相を調べることが第一歩でございまして、その上に立って、おっしゃった幾つかのことのうち何をすべきか、何をするのがいいかということを考えるということだと思います。
 それから、先ほど申しましたように、外務省の中で、拉致された方々の御家族を支援するチームというのを現在立ち上げつつございますので、そこでさまざまなお手伝いをさせていただきたいと思います。
松本(善)委員 アジア局長、補足することはありませんか。
田中政府参考人 ございません。
松本(善)委員 共同宣言に基づいて個人に対しての補償をすることができるかどうか、できない場合にはどうするかということについて政府の方針があるかどうかということを聞きたいと思います。
 これは局長では無理かな。大臣か副大臣か、内閣としてその点についてどう考えるかということです。
吉田委員長 松本先生、もう一回言ってください。
松本(善)委員 要するに、共同宣言に基づいて直接補償を求めるということができるのかどうか、もしできないというならば、政府としてどうするつもりなのか。
川口国務大臣 被害に遭われた方御自身あるいはその御家族が北朝鮮の政府に対して直接補償を求めることができるはずというふうにおっしゃっていらっしゃる質問だというふうに理解をいたしましたけれども、そのことも含めまして、まず、どういう状況で何が起こったかということを、真相をきわめることが第一歩である。その次に、そのわかった事実関係に基づいて何を行うのが適切かということを考えていくということだと思います。
松本(善)委員 私は、共同宣言の中でそれができるのかどうかということは、これは宣言の解釈の問題であります。だから、事実関係を調べるということの前に考えなければならぬ。まだ内閣としてどうするかは決まっていないみたいでありますが、これは日本国政府が補償するのか、あるいは直接補償を求めるのかということは大変大事なことでありますので、内閣でしっかり討議をしてもらいたいと思います。
 金正日総書記は、拉致は特殊機関の一部が行ったということを言ったということであります。それは、どういう機関で、いつできて、今はどうなっているのか、これはわかっていますか。あるいは、これからその点を明らかにさせる考えがありますか。
田中政府参考人 私ども、一般的な知識として、北朝鮮のいろいろな工作機関というものは承知をしておりますけれども、この件について、具体的にどの特殊機関がということを承知しているわけではございません。今後、事実関係を究明する中で取り上げてまいりたい、かように考えるわけでございます。
松本(善)委員 拉致の実行犯の特定、処罰の内容はわかっているのか、わかっていなければ明らかにするよう求めるべきだと思いますが、どうですか。
田中政府参考人 金正日総書記は、関係した責任者は処罰をしたという言葉を使われていますけれども、この点も含め、今後事実関係を調査してまいりたいというふうに考えております。
松本(善)委員 犯人、実行犯あるいは関係者、この拉致という犯罪を行った犯人の引き渡しを求めるという問題については、政府はどう考えていますか。
田中政府参考人 国交がない国でございます。犯罪人引き渡し条約というものもございません。したがって、法的な問題として難しい側面があると思います。何よりも大事なのは、まず事実関係の究明を行うことであるというふうに思います。
松本(善)委員 その他の懸案ですね。過去の植民地支配などの過去を清算する問題、それから経済協力の問題、ミサイル問題、核開発問題、工作船問題などについての方針をお聞かせいただきたいと思います。その問題についての交渉方針ですね。
田中政府参考人 委員が御指摘の問題すべてについて、共同宣言の中で基本的な考え方が盛られているとおりでございます。
 過去の清算と言われましたけれども、そういう問題については、基本的には日韓方式でやるというのを基本原則にするといったようなこと。それから安全保障の問題については、ミサイル問題、核問題、それぞれ必要な措置というか、基本的には北朝鮮側の、核についてはすべての国際合意を遵守するということ、それからミサイルについては、問題解決のため関係国との対話を行っていくということでございますし、信頼醸成のために将来的には一つの枠組みを考えていこう、こういうことでもございます。
 今後、まさにそういう中で私どもが考えていかなければいけないのは、懸念というものが解消されたわけでは全くないわけですから、安保協議、国交正常化交渉、そういうことを通じて、北朝鮮がそういう約束を着実に実施しているのかどうかということをきちんと見きわめつつ、日米韓という協力体制の中で、安全保障の問題については必要な措置をとっていくということでございます。
松本(善)委員 北朝鮮側に米朝対話の用意があるということを米側に伝えてほしいということでしたが、これは伝えたのかどうか。特に大臣は、アメリカでパウエル国務長官と会談をしたということですが、この点は伝えたのかどうか、アメリカ側の反応はどうだったのか。
 それから、時間もありませんから伺いますが、さらに、南北朝鮮、日、米、中、ロの六者協議について、ロシア大統領は、これを有益と考えると前向きに受けとめたということでありますが、この関係諸国の反応はどうだったのか、伺いたいと思います。
川口国務大臣 まず、私の方から最初のことについてお答えをいたしまして、二番目の方は田中局長からお答えをすることにさせていただきたいと思いますが、パウエル長官、それからライス補佐官両方に対しまして、総理が向こうからメッセージを、米朝の対話を進めたいと考えているということを話をしてほしいというメッセージについてお伝えをいたしました。
田中政府参考人 委員お尋ねの二番目の問題は六者協議の問題であろうと思いますけれども、ロシアは、基本的に従来から前向きの認識を示しているということでございます。その他の国は、従来北朝鮮が非常に強く反対をしていたということもございまして、必ずしも現段階でその旗幟を鮮明にするということではない。もちろん、韓国は、六者協議ということについての概念自体については賛成をしているということだと思いますし、米国も、概念自体について否定をしているわけではないということだと思います。
 共同宣言の中にありますように、この地域の正常化が進むにつれ、そういう枠組み、六者協議と具体的に決めているわけではございませんが、日本がイニシアチブをとって何らかの形の信頼醸成の枠組みをつくっていきたい、そういう基本的な考え方に北朝鮮も合意をしているということであろうと思います。
 ちなみに、この過程の中で北朝鮮は、民間、まあ実態は民間ではないんですけれども、知的な対話の枠組みとして、民間を含む六者協議、北東アジアの協力対話ということでございますが、これに参加の意思を表明しているということでございます。
松本(善)委員 最後に、大臣でも局長でもいいですが、この日朝首脳会談についての国際的な反応、特に関係国、主要国、国連の反応はどういうものか。韓国の反応については、韓国からの拉致者もいるということだけれども、韓国政府はその点をどう考えているのか、お答えをいただきたいと思います。
田中政府参考人 今回の日朝首脳会談については、韓国を含む主要国より極めて前向きな反応が出されているということでございます。
 韓国につきましては、外交通商部のスポークスマンの声明によって、歓迎をする、国交正常化交渉が円滑に進展し、朝鮮半島と北東アジアの平和と安定に寄与することを期待するということでございました。金大中大統領も、説明のために訪韓した高野外務審議官に対して、今回の訪朝は北東アジアの平和に大きく寄与するということで、日米韓の緊密な関係が今後も維持されることを期待するということでございました。総理が金大中大統領に電話をされたときも、極めて前向きな反応が得られました。
 米国につきましては、外務大臣がお答えをしたとおりでございます。
 中国につきましては、外交部の定例記者会見で、今回の訪朝はこの地域の平和と安定に寄与すると信じているということでございます。
 ロシアにつきましては、プーチン大統領から小泉総理に対して、非常に生産的であったという趣旨の発言がございましたし、EUの諸国も、押しなべてそのような反応がございました。
 国連につきましては、国連の事務総長が声明を発出いたしまして、日朝平壌宣言は地域の平和と安全に対する画期的な貢献であるという声明を発出されています。
松本(善)委員 正常化交渉で日朝間の懸案、私が指摘したような問題につきましても道理ある形で解決をされ、日朝両国関係が敵対から協調、友好の関係に転換することを強く期待して、質問を終わります。
吉田委員長 次に、保坂展人君。
保坂委員 社会民主党の保坂展人です。
 去る九月十七日の小泉総理大臣のピョンヤン訪問で実現した日朝首脳会談で、中断していた国交正常化交渉が再開されることを日朝共同宣言で合意されたことを、大変重いスタートでありますけれども、大きな歴史の一歩ということで評価をしたいと思います。
 そして、このスタートの時点で、きょうもずっと議論されました拉致事件被害者の安否情報、これは余りに残酷で信じがたいものでありました。二十代から三十代の若さで八人中六人の方が亡くなっているという情報、その後に追加をされてきました死亡年月日、こういったことを考えますと、被害者家族の方たち、とても納得できる状況ではないというふうに思います。
 田中局長に伺いたいんですが、正式のリストというふうにたびたび答弁をされていました。この正式のリストでは年月日の方はなかったんだということだったんですが、こちらの生存しているか亡くなっているかというその部分について、確認の手段はなかったのではないか。とするならば、この年月日の部分も、これも確認できないわけですから、生死の判別という物すごく重い情報だけを出してしまった。ここを正式、非公式ということで分けたということは、やはり納得が得られないのではないかと思いますが、いかがですか。
田中政府参考人 北朝鮮側が言ってまいりましたのは、安否情報については、赤十字会の通報、通知というものが公式なものである、それを待ってくれ、こういうことでございました。
 したがって、あくまでこれは、その説明責任は北朝鮮側にあるわけで、私どもが判断する材料というのを直ちには持たないわけですから、北朝鮮が公式なものであるということを言ってきて、特にそれが首脳会談という指導者の間で行われることですから、それについては公式ということで、北朝鮮側の文書として私どもはそれに基づいてやるべきだという意識が非常に強くあったということでございます。
 したがって、おっしゃるとおり、生死も含めて、本人確認あるいは事実関係の究明というのはこれからやっていかなければいけないことで、それについて私どもが今の段階で確証を持っているわけではございません。しかしながら、北朝鮮が正式に言ってきたことというのは、私どもはそれに重きを置くということでございまして、非公式にだということで言ってこられたものを使うということに対しては、大変なちゅうちょがあったということでございます。
保坂委員 信じがたい残酷な結果を告げられたわけですけれども、今回の経過、この犯罪行為をだれがどのように計画し、実行して、その責任者はだれだったのか、一日も早く真相の究明を進めていかなければならないと思います。
 きょう、日本側のリストにはなかった五人目の生存者の方が、佐渡で十九歳で失踪された方ではないかという報道がなされております。現段階でどのような確認がなされているのか、現段階で結構ですから、外務大臣、お答えいただけないでしょうか。
田中政府参考人 私どもの方に生存が確認された者が一名いるという通知が北朝鮮側からあったわけでございますが、本件に関しては、目下、調査、確認作業を行っていただいているということであり、プライバシーにかかわる問題もあり得るので、情報の公表を差し控えているということでございました。
 他方、報道等では既にお名前が出ているということでございますが、現時点で断定をしているわけではございません。警察を通じ、引き続き確認、調査を行っていることでございますし、北朝鮮側に対しても、今後確認を求めていく必要が出てくるものだというふうに考えております。
保坂委員 今回の首脳会談に至る経過について質問をしたいと思います。これは田中局長にいたします。
 これまで十一回にわたる国交正常化協議の中断後、北朝鮮の姿勢に大きな変化が見られたということを報道されておりますけれども、昨年のアメリカでのテロ事件の発生の後、平松北東アジア課長が北朝鮮が日本との関係改善を求めているという情報を確認するために中国に出張されたりというようなことも伝えられています。田中局長自身が北朝鮮の姿勢転換ということをいつどのような形で認められたのか、その点について伺いたいと思います。
田中政府参考人 具体的にだれがどこでというお話についてコメントを申し上げるわけにはいきませんけれども、非公式な接触あるいは公式的な接触、公式的な接触というのは、日朝外相会談あるいは局長級会合、赤十字協議ということでございました。そういうものあるいは非公式な接触という中で、実は朝鮮半島をめぐっていろいろなことが起こったわけですけれども、比較的迅速に日本側が主張することについて措置をとってきたというようなこともございますし、それから、公式な協議のプロセスにおいても、最初の日朝赤十字会談の後、随分時間がたった場合もあります。それは朝鮮半島の情勢とか国際情勢にも影響されているわけでございますが、先ほど申し上げたように、比較的北朝鮮が従来にはない姿勢を見せ出しているということがございました。
 当然、私どもは、拉致というのが最も重要な問題ですけれども、安全保障とかそういうことに対して懸念を持っているわけで、そういう懸念に対して北朝鮮が誠意を持って取り組む用意があるかないかということがすべてであって、そういうものに対応する様相というのを見せ出して、総理の首脳会談ではそういうことであったということだと思います。ただ、今後の問題が非常に重要だというふうに考えます。
保坂委員 韓国の反応について外務大臣に伺いたいと思いますけれども、今回の首脳会談の直後、南北を隔てる二つの鉄道の工事が始まって、地雷等除去されているというニュースが入ってきています。
 二〇〇〇年の南北首脳会談以降、両国の関係あるいは会談での合意事項は必ずしも順調に推移したわけではないというふうに思います。また、韓国国内でも、金大中大統領が掲げる太陽政策に関しては、それでいいのかという意見、異議もある中、太陽政策というものが進められてきたというのも事実だと思います。
 この金大中大統領の太陽政策というものを日本政府としてどのように評価するか、小泉総理大臣とも電話での会談があったと伝えられていますが、そのあたりについて、外務大臣よりお答えいただきたいと思います。
川口国務大臣 我が国といたしましては、一貫として韓国の太陽政策は支持をしてきているということでございます。今、南と北の関係がまた進みつつある、鉄道や道路の起工式をするという話が現実のものになってきている等、進展が見られるということについては、私どもは支持をさせていただいているわけでございます。
 日本と北朝鮮の関係が正常化に向けて前向きに進むということと同時に、南と北の関係が進んでいくということも大事であると思いますし、また、米朝の関係が進んでいくということも大事だと思います。アメリカと韓国と日本と三つの国が連携をとりながら、北朝鮮を国際社会との対話に導いていくということが大事だと考えております。
保坂委員 この共同宣言の中身に入りたいと思いますけれども、今回の宣言では、これは村山総理の談話、ここを基調にして書かれるということを総理も事前に言っておられましたけれども、アジアの人々という村山談話の部分、これは「朝鮮の人々」というふうになっているんですね。
 これはちょっと確認的な質問になりますが、この「朝鮮の人々」とは、どの範囲の人々を指すのでしょうか。
田中政府参考人 これは、北朝鮮の人々という認識でございます。
保坂委員 朝鮮の人々というときに、今北朝鮮の人々と言われましたけれども、例えば、みずからの意思によらずに、日本本土及び、例えばサハリンであるとかあるいは旧満州、中国の東北部などに移動させられた人々、在日の方も多いんですが、これらの人々も含んでのことなんでしょうか。
田中政府参考人 これはそういう厳密な意味で申し上げているわけではないと思いますが、基本的には、韓国の人々については、既に日韓の共同宣言においてそれがうたわれておりますし、そういう意味では、朝鮮半島の人々ということをカバーしているわけでございます。ここでは北朝鮮の人々ということであるわけでございますが、そういう観点からいけば、そこはいろいろな解釈があり得ましょうが、これは法的な文章ではなくて政治的な文章であります。
保坂委員 これは正確な統計は難しいかもしれないんですが、南北朝鮮に分断をされる前、日本が植民地として支配をしていた朝鮮から、みずからの意に反して日本本土及び本土以外に移動をさせられた人の数というのはどのぐらいなんでしょうか。
田中政府参考人 今、私、正確に申し上げる数字を持ち合わせておりません。
保坂委員 時間がありませんので次に進みますが、この宣言に「在日朝鮮人の地位」という部分がございます。また、「文化財」という言葉も出てまいります。これらの議論を日本政府は今後どのようにしていこうというふうに考えていらっしゃるんでしょうか。
田中政府参考人 在日朝鮮人の地位に関する問題については、これまでの国交正常化交渉において北朝鮮側より問題提起がされておるわけでございます。我が方としては、在日朝鮮人の法的地位及び待遇向上のため努力をしてきているということは累次説明をしてきている次第でございます。
 したがって、今次国交正常化交渉が再開されれば、その中でも在日朝鮮人の地位に関する問題を議論していくということでございますし、文化財の問題についても、今後の国交正常化交渉において議論をしていきたい。先方が提起をしている問題ではございます。
保坂委員 先ほども冒頭出ましたけれども、在日の朝鮮学校の生徒の方に、あるいは学校に嫌がらせの電話などがあり、大阪の府知事がこれは大変人権上問題があるというメッセージを出したり、森山法務大臣もそれについて触れているようでございます。
 外務大臣の所見を伺いたいと思います。
川口国務大臣 まさに、日本国民の人権意識が試される話でもあると私は考えております。
保坂委員 田中局長にさらに伺います。
 この宣言に「すべての国際的合意」とありますが、この国際合意の中に、一九九二年一月の南北朝鮮の朝鮮半島非核化宣言も含まれているのかどうか。これは、外務省がまとめられた資料によると、総理はそのことも含めて発言をされているようですが、先方からはどういう応答があったのかもお答えいただきたいと思います。
田中政府参考人 関連するすべての合意として、例えば核兵器不拡散条約、NPTや国際原子力機関との保障措置協定、米朝間の合意された枠組み、南北間の朝鮮半島の非核化に関する共同宣言等を念頭に置いております。北朝鮮側もかような理解であるということでございます。
保坂委員 ちょっと外務大臣に伺いますが、これも含めて国際合意を遵守するということが、本当に事実としてきちっとこれが履行されるならば、朝鮮半島が非核地帯ということになり、また我が国も非核三原則を国是とする国として、いわば、朝鮮半島、南北朝鮮と日本とが非核地域ということになる可能性が出てくるかと思います。既にモンゴルでは、国連総会にて一国非核地位ということで承認もされていますけれども、そういった萌芽が生まれる可能性があるかどうか、認識を伺いたいと思います。
川口国務大臣 国際的な合意を遵守していくということを金正日総書記が言われているわけですけれども、たしか総理も記者会見でおっしゃったかと思いますけれども、これを実際に行動で示していくということが何よりも今大事であると思いますし、また、六者間の安全保障の枠組み等の場でこういった問題については今後引き続き協議をしていくことが大事だと思います。
 そして、おっしゃられました極東アジア地域の非核化構想の問題でございますけれども、この地域ではこの構想の実現のための条件がまだそろってはいないというふうに考えております。それはどういうことかといいますと、一つは、依然として不透明な様相あるいは緊張関係が存在をしているということでもございますし、また、現実に核戦力を含む大規模な軍事力が存在をするといったことが挙げられるわけでございます。
 我が国としては、極東アジアの平和と安定を確保していくために日米安保体制、これを堅持しながら、二国間や多国間のさまざまな枠組みで、さまざまなレベルで信頼関係の醸成を図っていくということ、それから、大量破壊兵器やその運搬手段がなくなるような努力を現実的に重ねていく、そういったことかと思います。
保坂委員 そういった懸念が残っているということは私もよくわかります。ですから萌芽と申し上げたわけですけれども、ぜひそういった萌芽が生まれる方向で努力をしていきたいというふうに思います。
 今、六カ国間協議のお話が出ました。この共同宣言によりますと、「この地域の関係各国の間に、相互の信頼に基づく協力関係が構築され」というような表現、地域の信頼醸成の枠組みという表現なんですが、これも、外務省でまとめられたやりとりを見ると、このことを総理が投げかけられて、これに対して、信頼醸成の対話は関係各国間の正常化が行われるにつれ整備されていくだろう、共和国もそのような対話の場に参加する用意があるという記録が外務省から出されているんですが、これは、その枠組みの中に入る用意があるということでよろしいんでしょうか。
田中政府参考人 「この地域の関係国間の関係が正常化されるにつれ、」ということでございますし、直ちにそういうものが立ち上がるということを想定しているわけではございません。ただ、将来的な方向として、今委員御指摘のとおり、将来的には参加をする用意があるということでございますので、この六者協議というものの重要性は北朝鮮側も認識をしているというふうに考えております。
保坂委員 時間が近づいてきましたので、最後の質問にします。
 大変困難なこの交渉、交渉を始めるまでにも大変大きな問題が山積みしていると思います。しかし、この交渉をしっかりと進めて正常化というゴールにもし至ったとすれば、あるいは至る過程で、今六者間の話もありましたけれども、日韓条約の第三条で、当時、大韓民国が朝鮮における唯一の合法政府、こういう部分も含めて、これは韓国とも当然話し合わなければいけないでしょうけれども、そういったことも含めて考えられているというふうにとらえてよろしいでしょうか。
田中政府参考人 日韓基本条約の中で、唯一合法政府というのがございますが、あれは国連決議を前提にしている。国連決議は、国連が監視することができた地域、すなわち三十八度線以南ということでございますので、日韓との基本条約を修正するという必要性はないということでございます。
保坂委員 では、最後に外務大臣に、そういった今まで質問させていただいた諸課題を含めまして、今後の交渉あるいは交渉に至る努力、いつごろどのように始められるのか伺って、終わります。
川口国務大臣 まだ入り口の手前にいるわけでございまして、これから入り口に入るためにも多くのことをしなければいけませんし、入り口に入った後、問題解決のためにさまざまな努力を重ねなければいけないと思っております。
 今最も優先的な課題としてございますのは、拉致された方々の家族の方、この方がお望みになるのであれば、現地に行き、生存していらっしゃる方の場合にはお会いいただいて確認をいただく、あるいは不幸にしてそうでないとされている場合には、どういう状況でそうなったかということが、事実関係が究明されるように、そういうことのための努力を、今とりあえずしなければいけない最優先課題だと考えております。
 そのために、外務省の中には、支援をするためのチームを今立ち上げつつございます。それからまた、入り口に入った後でも、この拉致の方々の関係の議題というのは、これは最優先課題と考えておりますし、それからその他のさまざまな問題がございますので、これらに精いっぱい取り組んでいきたいと思っております。
保坂委員 終わります。
吉田委員長 本日は、これにて散会いたします。
    午後四時十七分散会


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