衆議院

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第1号 平成14年10月30日(水曜日)

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本国会召集日(平成十四年十月十八日)(金曜日)(午前零時現在)における本委員は、次のとおりである。
   委員長 吉田 公一君
   理事 首藤 信彦君 理事 中川 正春君
   理事 上田  勇君
      伊藤 公介君    今村 雅弘君
      植竹 繁雄君    嘉数 知賢君
      河野 太郎君    高村 正彦君
      下地 幹郎君    新藤 義孝君
      武部  勤君    土屋 品子君
      中本 太衛君    松宮  勲君
      水野 賢一君    宮澤 洋一君
      伊藤 英成君    池田 元久君
      金子善次郎君    桑原  豊君
      前田 雄吉君    丸谷 佳織君
      藤島 正之君    松本 善明君
      東門美津子君    松浪健四郎君
      鹿野 道彦君    柿澤 弘治君
    ―――――――――――――
十月十八日
 吉田公一君委員長辞任につき、その補欠として池田元久君が議院において、委員長に選任された。
平成十四年十月三十日(水曜日)
    午前九時三十三分開議
 出席委員
   委員長 池田 元久君
   理事 今村 雅弘君 理事 嘉数 知賢君
   理事 河野 太郎君 理事 水野 賢一君
   理事 首藤 信彦君 理事 中川 正春君
   理事 上田  勇君 理事 藤島 正之君
      伊藤 公介君    植竹 繁雄君
      小西  理君    高村 正彦君
      下地 幹郎君    新藤 義孝君
      武部  勤君    松宮  勲君
      宮澤 洋一君    吉野 正芳君
      伊藤 英成君    金子善次郎君
      桑原  豊君    前田 雄吉君
      吉田 公一君    丸谷 佳織君
      松本 善明君    東門美津子君
      松浪健四郎君    鹿野 道彦君
      柿澤 弘治君
    …………………………………
   外務大臣         川口 順子君
   外務副大臣        茂木 敏充君
   外務大臣政務官      新藤 義孝君
   政府参考人
   (防衛庁運用局長)    西川 徹矢君
   政府参考人
   (外務省北米局長)    海老原 紳君
   政府参考人
   (外務省中東アフリカ局長
   )            安藤 裕康君
   外務委員会専門員     辻本  甫君
    ―――――――――――――
委員の異動
十月三十日
 辞任         補欠選任
  土屋 品子君     吉野 正芳君
  中本 太衛君     小西  理君
同日
 辞任         補欠選任
  小西  理君     中本 太衛君
  吉野 正芳君     土屋 品子君
同日
 理事石破茂君九月三十日委員辞任につき、その補欠として水野賢一君が理事に当選した。
同日
 理事西川公也君同月四日委員辞任につき、その補欠として今村雅弘君が理事に当選した。
同日
 理事浅野勝人君、坂井隆憲君及び土田龍司君同月十七日委員辞任につき、その補欠として河野太郎君、嘉数知賢君及び藤島正之君が理事に当選した。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 理事の補欠選任
 国政調査承認要求に関する件
 政府参考人出頭要求に関する件
 国際情勢に関する件


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     ――――◇―――――
池田委員長 これより会議を開きます。
 このたび、外務委員長に就任しました池田元久です。一言ごあいさつを申し上げたいと思います。
 現在の世界の状況は、依然として続くテロの脅威、地域紛争や民族紛争の頻発、地球環境問題など、国際社会と協調しながら我が国が主体的に取り組んでいかなければならない問題が山積をしております。また、最近では、きのうから始まったばかりの北朝鮮との交渉の行方等が国民の関心を呼んでおります。
 こうした状況の中、国際情勢及び我が国の外交政策について議論を行う当外務委員会の役割は極めて重要だと思います。その委員長に選任されましたことは大変光栄であり、その職責の重さを痛感しています。
 委員の皆様の御指導、御協力をいただきまして、公正かつ円満な委員会運営に全力を挙げるつもりです。
 どうかよろしくお願いをいたします。(拍手)
     ――――◇―――――
池田委員長 理事の補欠選任についてお諮りいたします。
 委員の異動に伴い、現在理事が五名欠員になっております。この際、その補欠選任を行いたいと存じますが、先例によりまして、委員長において指名することに御異議ございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
池田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
 それでは、理事に
      今村 雅弘君    嘉数 知賢君
      河野 太郎君    水野 賢一君
   及び 藤島 正之君
を指名いたします。
     ――――◇―――――
池田委員長 次に、国政調査承認要求に関する件についてお諮りいたします。
 国際情勢に関する事項について、本会期中国政に関する調査を行うため、衆議院規則第九十四条の規定により、議長に対し、承認を求めたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
池田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
     ――――◇―――――
池田委員長 国際情勢に関する件について調査を進めます。
 この際、お諮りいたします。
 本件調査のため、本日、政府参考人として外務省北米局長海老原紳君、外務省中東アフリカ局長安藤裕康君、防衛庁運用局長西川徹矢君の出席を求め、それぞれ説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
池田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
 速記をとめてください。
    〔速記中止〕
池田委員長 速記を起こしてください。
    ―――――――――――――
池田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。桑原豊君。
桑原委員 おはようございます。民主党の桑原です。
 質問に入る前に、我が党の石井紘基議員が右翼の暴漢に襲われて亡くなりました。本当に言論の府にある者として許しがたい出来事だというふうに思いますし、深い悲しみと憤りを禁じ得ないというふうに思います。
 この委員会の前田委員も、数日前に演説中に襲われたと。幸いにして大事には至りませんでしたけれども、こういった風潮があるということを本当に残念に思うわけでございまして、石井議員に対しては哀悼の意を表するとともに、私たちは、やはりしっかりと民主主義を守り、そして言論の自由というものを大切にしていく、そういうことで前進をしていかなければならない、そういうふうに思うところでございます。
 さて、きょうは、北朝鮮問題は後日集中審議ということでございますので、私は、アフガンの情勢並びにイラク問題について質問をさせていただきたいと思います。
 昨年の九月十一日のテロ以降さまざまなことが行われてまいりましたけれども、その中でも最大の活動というのは、やはり米軍を中心にしたアフガンに対するテロ掃討作戦だというふうに思います。後から申し上げるイラク問題もこれと関連づけていろいろ議論をされておりますので、まず、アフガンでの作戦、これに対する現状の評価というものをお聞きしたいと思います。
 アメリカは大変いろいろな困難な条件、例えばアフガンの部族間の、あるいは部族の内部でのさまざまな主導権争い、あるいは掃討作戦そのものが山岳地帯の非常に厳しい条件のもとでの作戦である、地元の人たちとテログループとの見分けがつかないとか、いろいろな要素が重なって非常に手をやいているというのが現状だろうというふうに思います。むしろ、掃討が進むというよりも、ある意味では治安の維持に全力を傾注しなきゃならないというふうにも伝えられておるわけでございまして、私は、この作戦の効果に甚だ問題、疑問を感ずるわけでございますけれども、この点についてどのような現状の評価を持っておられるのか、まずそれをお伺いしたいと思います。
川口国務大臣 お答えを申し上げる前に、私からも、石井議員が亡くなられたことに対して深い哀悼の意を表させていただきたいと思います。
 御質問の、アフガニスタンにおけるテロの撲滅作戦の効果、評価は何かということですけれども、アフガニスタンでは、アメリカ軍を中心として引き続きテロとの闘いが続いているわけですけれども、オサマ・ビンラーデンはまだ捕まっていない、オマル師もまだ行方不明のままであるということでございます。そして、テロとの闘いは世界各地で引き続き続いているという状況でございます。また、おっしゃったように、アフガニスタンでは、治安の問題も引き続き大きな問題としてあるということが現状です。このアフガニスタンにおけるテロとの闘いというのは、そういう意味で引き続きまだ続いているし、米軍の投入の数等を見ても、むしろ闘いはますます大きくなってきているということだと思います。
 この効果を何ではかるかというのは非常に難しいことでございますけれども、そういった努力を引き続き続けるということが大事であると私は考えております。テロとの闘いというのはそう簡単なことではなくて、粘り強く闘い続けるということが必要ですし、そう短い期間でこれが終結をするということではないと思いますが、これは我が国も当然含むわけですけれども、テロは国際社会全体に対する脅威であるということは変わらない、この闘いをやめてはいけないと私は考えております。
桑原委員 大変困難な状況の中で、ますますテロとの闘いが激しさを増し、そして拡大をしていく、こういうふうな御認識だというふうに思うんですが、私は最近特に感じるのは、イエメン沖でのフランスのタンカーの爆破テロ、あるいはフィリピン、そして最近ではバリ島のああいう大がかりなテロ、そしてモスクワの劇場におけるチェチェンの武装勢力のテロ、本当に今あちこちで頻発しておりますし、また、計画段階で、いろいろうわさされているものもたくさんある。こういうことで、だんだんだんだん、日本の遠くの話ではなしに、アジアも含めた広域にわたってこういう状態が出てきている。これは、アルカイダがある意味では拡散をして、そしてさまざまなテロ組織が連鎖的に連携をしながらといいましょうか、そういう形であちこちで行動を起こす、こういうことになっているのではないかというふうに思うんです。
 そうすると、アメリカのそういう作戦そのものがそうしたものを触発しているのではないか。ある意味では、今までアルカイダと直接関係なくても、そういういろいろな展開の中でアルカイダとの接触を図ったりして、九・一一のテロを撲滅する、そういうことの行動の中からだんだんだんだんそういう連鎖反応が出てくる状況になりはしないかと大変恐れるわけですけれども、その点について、戦線が拡大するのはやむを得ないというふうに見るのか、やはり問題があるというふうにとらえていくのか、そこら辺の認識をお聞きしたいと思います。
茂木副大臣 桑原委員の方から、テロの最近の国際的な頻発、そしてまた連鎖という大変重要な問題につきまして御指摘をいただきまして、先ほど池田新委員長のごあいさつの中でも、このテロの問題、そしてその対策の課題を冒頭で取り上げていらした。まさに今委員御指摘のとおり、このテロの国際的な撲滅の問題、これは国際社会の最優先課題である、こういうふうに考えているわけであります。
 まず、そこの中で、国際社会そしてアメリカのテロ撲滅についてでありますが、昨年の九月十一日の米国の同時多発テロの発生以降、テロリストに安住の地を与えないために、国際的な法的枠組みの強化及び捜査、情報面での協力、強化等、テロの防止と根絶に向けた米国を初めとする国際社会の取り組みが強化をされております。米国によりますと、これまでにアルカイーダの構成員二千四百名の拘束など、多くのアルカイーダ構成員の拘束等の成果が上がっている、このように承知をいたしております。
 その一方で、委員御指摘のとおり、最近、バリ島での爆破テロの事件等に見られるとおり、国際社会に対するテロの脅威は依然として除去されていない、そのように今認識をいたしております。そういった中で、我が国としても、このテロに対して、どういう因果関係があるのか、さらにどういう連関があるのか、今後とも引き続き注意深く調査をし、対応していきたい、このように考えております。
桑原委員 果てしなく広がって、収拾がつかないことになって、世界じゅうに戦線が拡大する、そういうことだけはやっちゃいかぬことでありまして、やはりきちっとした目的の特定といいましょうか、そういうものに基づくやり方というものをきちっとしていかないと、本当にあらゆるものがテロと関係してくるというような話になりかねませんので、そこは、テロ特措法のときにもそういう議論は相当やりましたけれども、やはりきちっとやっていく必要があるだろうというふうに私は思います。
 さて、アメリカがアフガンの問題と深く関連づけて考えているわけですが、イラクの問題、特にフセイン政権の問題、これをどういうふうに見ていくのかということについてお尋ねをしたいと思います。
 ブッシュ大統領は、イラクは悪の枢軸というふうに名指しをして、イラクに対して相当厳しい対応をやろうといたしておるわけであります。既に、着々とイラク攻撃ができる準備を整えている、包囲網をしきつつある。兵力の配置もしかりでございますし、先制攻撃も含めた武力行使容認の国内での決議も、既にアメリカの上院、下院を通って大統領も署名をした、こういうことでございますし、新聞などで伝えられるところによれば、いわゆる日本のGHQの占領政策、そういうものを参考にして、イラクの戦後の再編というようなものまでいろいろ検討しているというふうなことなどまで伝えられておるわけでございまして、相当な準備を進めているわけでございます。
 このアメリカの、悪の枢軸、こういう見方、これに対する我が国の評価と申しましょうか、我が国はどうそれを考えているのかということをお聞きしたいと思います。
川口国務大臣 悪の枢軸というのは、ことしの一月にブッシュ大統領が使った言葉ですけれども、この発言というのは、まさに委員が御指摘になっていらっしゃるようなテロの脅威、そして大量破壊兵器の脅威、こうしたことが問題である、これに対する闘いをしなければいけないという強いブッシュ大統領の決意を表現したものだと私は考えています。
 その後の世界のさまざまな動きを見ましても、この悪の枢軸の発言というのが、テロとの闘い、そして大量破壊兵器の問題についての国際社会の取り組みに対して、何らかの後押しの効果といいますか、名指しをされた国の態度の変化に多少の影響はあったということは、北朝鮮の状況を見てもそういうことであるかと思います。
 この大量破壊兵器の問題というのは大変に大きな問題、我が国にも密接に関係してくる問題でありまして、イラクのこととの関係でいえば、今、国連の安保理で決議の議論がなされていますけれども、即時、無条件、無制限ということで安保理の決議がなされ、イラクがそういった形の受け入れ、査察の受け入れをするということが大事であると思います。我が国としてもそのための必要な外交努力は行っておりますし、私も、イラクの外務大臣と国連で会談をいたしまして、そのことをお話ししました。
 現在のその安保理における決議を採択するという努力が実を結んで、必要な、かつ適正な安保理の決議が早期に採択をされて、イラクが無制限、即時、無条件で査察を受け入れるということにつながっていくということが重要だと思います。この点について、我が国は、米国とともにこういった状況が早く来るように努力をしていくつもりです。
桑原委員 イラクがそういう疑いを持たれて、そして非常に危険な存在だということは私は理解をできるわけですけれども、それを悪の枢軸というふうに名指しをして、もう言葉をきわめて非難をして、そして、いかにもテロの震源地のような、そういうことも含めて表現をするということについては、私はやはり逆に、何といいましょうか、力でそういったものを圧殺していくというようなことにつながっていく、そういう大変危険な反応というものを感ずるわけです。
 そこで、一つお聞きしたいのは、九・一一のテロの問題とイラクとのかかわりについてどういうふうな関係があるというふうに、日本としてその状況をつかんでいるのか、何らかの確証的なものがあるのか、そこら辺の関係についての認識をお伺いしたいと思います。
茂木副大臣 御質問いただきました昨年の九月十一日の米国の連続多発テロとイラクの関係でありますけれども、イラク北部にアルカイーダのメンバーが存在しているとの情報等々は持っているわけでありますが、現時点でイラク政府と昨年の米国におきます同時多発テロを直接結びつける確たる情報はない、このように我々は理解をいたしております。
桑原委員 確たる、そういう確証というものはないということです。
 そこで、フセイン政権の基盤について次にお伺いしたいんですが、前回の信任は一〇〇%だというふうに発表されておりますし、それからフセイン大統領の長男や次男が軍の枢要な地位につくというようなことで、政権そのものの基盤というのをどういうふうに評価をされておられるのか、その点をお聞きしたいと思います。
安藤政府参考人 お答え申し上げます。
 ただいま御指摘のとおり、イラクのフセイン大統領は、一九七九年に大統領に就任して以来、二十三年間にわたりイラクを統治しております。今月の十五日の信任投票におきましても、お話がございましたように、一〇〇%という支持率で再任をされたということでございまして、フセイン大統領自身はイラク国民全員からの絶対的な信任を得ているということを誇示しているわけでございます。
 私ども、外から見ておりまして、イラク政権そのものは、クルド人による自治状況にある北部の三県を除きまして、国内をほぼ掌握している模様であるというふうに認識をしております。経済的には、国連の経済制裁下にありますので、非常に苦しい状況にはございますけれども、それなりに国民の生活は安定している、低いレベルで安定しているということは言えるかと存じます。
桑原委員 今、経済制裁の話にも触れましたけれども、経済制裁が行われてから十二年が過ぎようとしております。非常に厳しい国民生活の状況だ、こういうふうに思いますし、途中に若干石油の輸出等で緩和措置もあったようですけれども、大変厳しい状態が続いている。そして、このまま追い詰めていきますと、ある意味では窮鼠猫をかむような形になってこないかという心配もあるわけでございますし、アメリカが悪の枢軸と名指して、まさに攻撃せんとするという態勢を組んでいったときに、それが本当に実施をされるということになれば、私はやはり大変な状態になっていくのではないかと非常に憂慮いたします。
 イラクへの攻撃は、当然イラクの反撃という形で、イスラエルに対する反撃にも及ぶだろう。そうなりますと、今度はイスラエルも、そうなったときには我々も反撃の権利があるんだということで、アメリカもそれを了承したというようなこともございましたし、一気に戦線が拡大をしていく。
 アラブ全域に、あるいはアジアの国々もイラクとの関係では非常に親密な国もございますし、いろいろな形でつながりの深いところでございますから、アジアにも大きな影響を及ぼしてくる、あるいはヨーロッパにもいろいろ関連をしてくるというようなことで、イラク攻撃というのは本当に全域に戦火を拡大していくというか、緊張を拡大していくというか、そういう大変なことにやはりつながりかねない、こういうふうに思いますので、そこら辺、経済的な状態もございます、やはり十分な話し合いをして、イラクにそういうしっかりとした対応を迫っていくということが私は必要だろうと思うのですけれども、そういった経済的な問題も含めて、あるいは今後の対応の仕方、そこら辺についての考え方をお伺いしたいと思います。
川口国務大臣 委員がおっしゃるように、平和的な解決を目指してこの問題に対応していくことが大事であるということは言うまでもないわけでございまして、それのために、今国連で、安保理のメンバーの中で決議の採択をする努力をしているということであると私は思います。
 この国連の決議について、今後どういうことが起こってくるかというのは、我々は安保理のメンバーではありませんので実際にそれを動かすということはできないわけでございますけれども、先ほど申しましたように、日本としても、このような形でイラクが査察を受け入れるように努力をしていくということだと思っております。
 イラクの経済的な問題、経済制裁の影響があるということはおっしゃるとおりでございます。それで、イラクの経済制裁が解除されない原因、これはまさに、ひとえにイラクにあるわけでございまして、重要なことは、イラクが即時、無条件、無制限に査察を受け入れる、そして大量破壊兵器についての、あるいはこれを含むすべての国連の今までの決議を守っていくということを見せるということがまず大事であると私は思います。
 経済制裁の影響は、いろいろ人道面であるという可能性はあるわけですけれども、この点については、イラクに対する経済制裁は今オイル・フォー・フードということでございまして、イラクが石油を輸出して、原油を輸出して、それでその範囲内で必要なものを買えるということになっておりますので、人道的な物資の購入もイラクとしては可能だ、そういうことにあるわけですし、我が国としても必要な支援は人道面については行っているということでございます。
桑原委員 今国連決議の問題にもお触れになったわけですが、私は、日本としてこの国連決議がどういう内容であるべきか、この点については明確な考え方が出されていないのではないかというふうに思います。
 いろいろな国連決議のやり方があると思います。一つは、国連決議そのものは要らない、イラクに武力行使をするのは、現状でもいわゆる国連決議六百八十七号の停戦決議に違反をしているんだから、必要があれば武力行使ができるんだ、こういうふうに見る見方もあろうかと思いますし、それから、国連やIAEAの査察要求決議と武力行使容認の決議を切り離して二段階で決議をしていく、査察の状況を見て、新たな決議をして武力行使の容認というようなフランスやロシアの考え方もあろうかと思いますし、それから、アメリカやイギリスのように、査察の状況次第では武力行使ができるように一本の決議でやっていく、いろいろな考え方が出されて今議論されているわけですけれども、小泉総理は、いろいろな機会にこのことについての考え方を述べておられます。
 今外務大臣がおっしゃられたこともそれに沿ったお話だと思うんですが、国連の一般討論の演説で総理は、「この関連で、国際社会にとり大きな懸念となっているイラクの問題についてふれたいと思います。」ということで、「イラクは、全ての関連する国連安保理決議に従うべきです。特に、直ちに無条件で国連の査察を受け入れ、大量破壊兵器を廃棄すべきです。この問題の解決のために国際協調を維持し、国連を通ずる一層の真剣な外交努力が重ねられることが重要です。その努力を通じ、必要かつ適切な安保理決議をできる限り早く採択することを追求すべきです。」こういうふうに述べられておるわけですね。外務大臣もそれに沿って今お話をされたかと思うんですけれども、これは当たり前のことですね。
 当然のことなんですけれども、今問題になっているのは、その国連決議の中身をどういうものにすべきかということがいろいろ議論されておるわけでございまして、要するに、その中身を具体的にどういう手だてでやっていくのかということが今争点になっているわけですから、そこら辺についての考え方をはっきりしないと、いろいろ言っておるけれども何にも言っていないということに等しいのではないかと私は思うんです。
 そういう意味で、日本としてこの国連決議の中身についてどういう考え方でおられるのかということをもう一回聞きたいと思います。
川口国務大臣 国連決議の中身についての御質問でございますけれども、私どもは、我が国といたしましては、まさにここで国連の安保理のメンバーが、国際社会の一致した共通のポジションということで一本となって、毅然たる態度をイラクに対して示すことが重要であって、そのために安保理で現在努力が続けられているということだと思っています。
 今、イラクへの攻撃をめぐる、何も決議が要らないとか、あるいはフランス・ロシア案、分かれているという印象でお話しになられましたけれども、今国連で行われていることは、まさにそうした一致した国際社会の態度を示すための決議に合意をするという努力でございまして、まさに一本のものにする努力をしている、そういうことであって、現在非常に対立をした関係に国々があるというふうには私は理解をしていません。
 争点となっている主なことというのは、イラクが新たな決議を守らなかったときに、あるいは今までの決議を守らなかったときにどういうような結果が生ずるかということが一つの争点であると理解をしていますし、それから、査察をどのように強化をしていくかという点がもう一つの争点であると私は理解をしていますけれども、こうした点について、まさに方法論としてどういうことをやっていったらいいかということについての意見を闘わせているというのが今安保理で起こっていることであるということです。
 我が国としては、先ほど申しましたように、こうした安保理での決議がまとまって、そしてイラクが査察を受け入れて、無条件、無制限、それから即時に査察を受け入れて、大量破壊兵器についての、あるいはその他の国際社会のイラクに対する懸念を払拭し、今までの国連決議を守っていく、そういうことになることが大事であるというふうに考えます。
桑原委員 意見の対立があるということではないということのようですけれども、私は、やはりこの問題を解決をしていく姿勢には差があるのではないか。いわゆる力を前面に押し出して、査察で不十分なところがあればあらゆる手段を使えるんだ、こういうような形で対応していくのか、そこで一息入れて、もう一度議論をして、あるいはイラクの出方も見ながら、話し合いをベースに置いて次の対応を決めていくのか、私は姿勢には違いがあるのではないか、こういうふうに見ているんです。だから議論になっているんだろうというふうに思うんですが、そういう状況で見たときに、日本としてどういう構えなのか。
 小泉総理のいろいろな場面でのお話を聞いておりますと、やはり国際協調の体制が必要なんだ、この体制のもとで、ある意味では耐えがたきを耐えてこういうことをなしていくことが大事なんだということで、話し合いといいましょうか、協調のあり方を追求していくということに非常に力点が置かれているように私は受けとめるんですが、この決議に関連して言ったときに、その姿勢はどういう姿勢なのかということをお聞きしたいということなんです。
 あくまでもやはり二段階論というのは私はそういう構えだというふうに思うんですけれども、そこら辺どうでしょうか。違いがないというふうにおっしゃいましたけれども、その点、日本の姿勢としてどうなんでしょうか。
川口国務大臣 違いがないと申し上げたというのは、国際社会が一致してこのイラクの大量破壊兵器の問題等に対応する必要があるということについて違いがない、平和的に解決をしていこうということについて違いがないということでございまして、方法論をどうするか、方法論のレベルでは、今まさに、どういう方法論が一番有効で適切かということの議論を国連でしているということであると思います。
 それで、武力を使うべきだということにウエートを置いているところが片方であるというふうにおっしゃられましたけれども、アメリカの上下院両院の決議においても、これは、まず言っていることは米国の外交努力の支援であるということでございまして、まさにここで、大統領の外交努力を支援するということもこの上下院両院の決議に入っているわけです。
 ですから、国連で決議をして、そして、イラクが過去の国連の決議を守り、大量破壊兵器の懸念を払拭するようなことをどうやったら一番有効な形でさせることができるかということをめぐる、まさに方法論の違いであって、そのイラクがそういうことをやるようにすることが大事だ、これを国際社会が協調してすることが大事だということはまさに日本の考えであり、この点については、我が国はアメリカとも、それからほかの主要国とも意見は一致をしている、そういうことでございます。
桑原委員 アメリカは、一方では外交努力をすると言いながら、一方では攻撃に備えて万全の態勢を整えていくということの両面でやろう、こういうふうにしているわけでして、その点をしっかりと押さえた上で、ある意味では、例えば国連で話がまとまらなかった、どうしてもできなかったというようなときでも先制攻撃も含めてやるんだ、そういう決意というのはやはり私はうかがえると思うんですけれども、そういうことでこの問題の解決というのはできるのかという点では甚だ私は疑問を持っているわけでして、そのことに対する日本側の考え方というのがもう一つはっきり見えてこないというところを申し上げておきたいと思います。
 時間が参りましたので、私は最後に、この問題の解決というのは、あくまでも国際的な協調体制を堅持して、その体制の中で平和的な解決、話し合いの解決、そういうものを最終的な目標として目指していくということが基本的なスタンスとしては大変大事なんだろう、こういうふうに思っております。日本政府として、その基本的なスタンスと、それから、そのスタンスに立って我が国が今なし得るものは何なのか、我が国がなし得る役割というものについてどう考えているのかということを最後にお聞きして、質問を終わりたいと思います。
川口国務大臣 国際社会が協調して、イラクに対して、国連決議を遵守し、査察を受け入れ、大量破壊兵器等についての国際社会の懸念を払拭することが必要であって、そのために国際社会が一致して行動することが大事であるということが我が国の考え方でありまして、我が国としてはそのための外交努力をしていくということでありますし、国連の安保理の場で必要かつ適切な決議がなされることが重要であるというふうに考えているということが我が国の基本的な考え方である、そういうことでございます。
 ですから、その中での我が国の役割というのは、そういった我が国の立場として外交努力を積み重ねていくということでございまして、私もイラクの外務大臣と会ってそういうお話をいたしましたし、それぞれの場で、APECその他でもこの話が出ましたけれども、外交努力を積み重ねるということが大事であると考えています。
桑原委員 終わります。
池田委員長 次に、首藤信彦君。
首藤委員 民主党の首藤信彦ですけれども、ただいまの桑原委員の質問に続きまして、イラク問題について質問させていただきます。
 きょうは残念なことに、朝鮮問題を話してはいけないということで、そういう何か取り決めになっているそうですが、そういうことで、ある意味ではそれと同等に我が国にとって大きな課題であるイラク問題について質問させていただきたいと思います。
 まず、今、桑原委員からの質問にもありましたけれども、アメリカで武力攻撃容認決議というものが上下院を通っているわけですね。これに恐らく国連でも幅寄せされていくだろうというふうに考えられるわけですが、日本政府としては、このアメリカの武力攻撃容認決議を、上下院を通った決議をどのように評価されておられますでしょうか、外務大臣。
川口国務大臣 米国の議会の上下院が決議をしたわけでございます。その中で、まず第二条で、米国の外交努力の支援ということを言っているということでございます。この決議は、イラクにまさに関連の安保理決議を遵守させるということが大事、そのための安保理を通じた努力を支援するためのものであるということでございます。
 ブッシュ大統領が、これは今月七日に演説で言っていますけれども、決議の採択によって米国による軍事行動が差し迫り、不可避になるものではないというふうに言っているわけで、私もそのように理解をしております。
 大事なことは、イラクが従来からの国連決議を遵守して、査察を無条件、無制限、それから即時に受け入れる、そして国際社会の懸念を払拭することが大事であると考えております。
首藤委員 いや、大臣、全然私の質問に答えていただいていないですね。この上下院決議のエッセンスがどこかということですよ。
 それは言うまでもなく、多くの新聞で指摘されているのは、別に今、川口大臣が言われたようなことじゃなくて、四十八時間の通告だと。要するに、通告でもう武力、承認ではなくて、もう通告だけでこれを実行することができるということなんですが、そうした決議についてどのようにお考えでしょうか。いかがですか。
川口国務大臣 これはアメリカの議会が行った決議でございまして、よその国の政府の人間がよその国の議会が決議をした内容について具体的にあれこれ言うという立場にはないと思いますけれども、大事なことは、今米国も、それからほかの国も一致して、イラクに対して、この査察の受け入れや大量破壊兵器の廃棄等の国際社会の懸念を払拭するための行動をイラクにとらせる、これが大事であるという認識でおります。そういう認識をアメリカも、それからほかの国も我が国も持っているということだと思います。
首藤委員 外務大臣、それも違いますね。
 それは、例えばフィジーやコスタリカが勝手な決議をして、それに対して我が国はどうするかというのじゃなくて、日本の同盟国であるアメリカがあって、それに対してもう既にいろいろな形で、テロ特措法に見られるように、もう既に我々一歩も二歩も三歩も踏み込んでいるわけですね。それで、アメリカが四十八時間で、もう通告だけでいいと。さらに、大臣も御存じのとおり、二十八日、遊説先のニューメキシコで、要するにもう国連の承諾なしでも軍事行動もやるということをブッシュ大統領が言っているわけですよね。
 ですから、外務大臣、そういう状況の中で、この決議を日本政府としてはどう考えているのかをお聞きしているんですが、お答え願いたいと思います。
川口国務大臣 米国の政府の人間であるブッシュ大統領は、この決議によって戦争が差し迫ったものになる、あるいは不可避なものであるということではないということを言っているわけでございます。
首藤委員 意味不明な御答弁でございます。
 この決議が、国連を通してもうちょっとやわらかなものにしていこうとか、いろいろ形はあるわけですが、しかし基本はアメリカ案が中心となるわけですね。そうしたアメリカ案を中心とする国連の議案が当然出てくるわけですが、それに対して国連の一員である日本はどういう態度をとられるわけでしょうか、外務大臣。
川口国務大臣 国連の安保理の場で安保理の理事国が、イラクが無条件、無制限、そして即時の査察を受け入れ、大量破壊兵器を初めとする今までの国連決議を守るということをやらせるような必要かつ適切な決議がつくられるということが大事であると思っておりまして、そういった決議に早期に合意することを願っているわけです。
首藤委員 ですから、それはもうそういうふうに、イラクさん、きちっと国連の言うことを守ってくださいという決議に参加するということはいいわけですが、そんなことは前から言っているわけで、結局それに対して、その次のステップとして武力攻撃がありますよという案になった場合は、日本政府はどうされますかということをお聞きしているんです。
川口国務大臣 アメリカあるいはその他の国々による武力攻撃を今の時点で予断した御質問にお答えするということは、適当ではないと私は考えております。
首藤委員 外務大臣、そういう国会の常套用語を言ったって、我々は国民を代表しているんです。戦争がもう目の前に今迫っているのは明らかなんですよ。本当に十一月にやるかもしれない、中間選挙が終わったらすぐやるかもしれない、あるいは一月にはやるかもしれない、遅くても二月だという話が言われているわけです。差し迫っているときに予断というのは、それはどういうことですか。もうこれは世界じゅうが、やるだろう、やるだろうと言っているんですね。
 では、それをやめさせるために、外務大臣は、もしそういうことがあったら、それが好ましくないんだからとめようとしている、そういう日本の外交努力はどのような努力をされておられますでしょうか。例えばカーター大統領は、ノーベル賞を受賞したわけですけれども、それはやはりいろいろな形で武力攻撃は認めないと言っていますけれども、日本政府の立場としてはいかがでしょうか。
川口国務大臣 大事なことは、イラクが無条件、無制限、そして即時に査察を受け入れて、大量破壊兵器やその他のことに関する過去の国連決議を守り、国際社会の懸念を払拭する、それがそもそもの一番の根本であって、我が国の努力としては、そういうことをイラクが行うように働きかけるということであると考えています。
首藤委員 委員長、私は前からそういうことを聞いているんですよ。ですから、問題は、それは当たり前なんで、武力決議に対してはどうかということを聞いているんですが、ちょっとアドバイスをお願いしたいと思います。
池田委員長 質問の内容に入りますので、委員長から特に申し上げることはございません。議事の運営上であれば発言をしたいと思いますが、その他問題がございましたら理事会でお話をしていただきたいと思います。お願いします。
首藤委員 外務大臣、そのことはもう十分わかっているんですよ。お立場もよくわかっているんですよ。しかし目前まで武力攻撃が、もうアメリカが武力攻撃をやるかもしれない、もう国連が何を言ってもやるということをアメリカ大統領が――政治は言葉ですね。アメリカではもっと重いんですよ、大統領の言葉というのは。大統領がどこかの大学の卒業式に行って卒業生に向かって一言言った言葉が、本当に実際の軍事行動に結びついてくるわけですね。
 ですから、アメリカがこう言っているのに日本はどうするのか、どういう態度をとるのか。現行法の中できちっとやるのか、それとも一歩踏み込むのか、あるいはそこまでは認められないという態度なのか、そこのところをはっきり言っていただかないと、我々は国民を代表して、こんなところで時間を使っている意味がないんですよ。そこのところだけきちっと話してください、外務大臣。
川口国務大臣 議員は戦争が目の前だというふうにおっしゃいますけれども、今まさに国連で安保理の理事国が決議を行って、そしてイラクがこの問題の根本である大量破壊兵器その他に関する国連の決議をきちんと履行するというための努力をしているわけです。ブッシュ大統領自身も、この戦争については、差し迫っているわけでもない、不可避でもない、イラクが受け入れるということが大事なんだということを言っているわけでして、今国際社会の努力は、日本の外交努力も含めてでございますけれども、イラクがそういったことをまさに実行する、まずこれにかかっているわけでございまして、このために努力をしている、そういう段階であると思います。
首藤委員 外務大臣、これは、イラクがどれだけのことを見せても、不満だったら結局やるということなんですよ。ですから、そういう状況にあって、日本はどんどん巻き込まれていくんですよ。ですから、それに対してどういう態度をとるかということなんですけれども、もう時間がございません。このことに関しては、次回もまた刻々と、毎週質問させていただきます。
 問題になっているのは、なぜ深刻かといいますと、なぜアメリカは深刻にこの問題をとらえているかというと、言うまでもなくパレスチナ問題とリンクしているわけですね。この問題で世界じゅうが反アメリカ的になり、またアメリカはどうしても今回はイラクから大量破壊兵器を完全に抹消しなきゃいけないと考えているのは、やはりパレスチナ問題があるわけですよ。
 それに対して、外務大臣、いろいろ問いかけされましたけれども、現状もどんどんエスカレートしている。今までは入らなかった、今まではナブルスやジェニンをやっていたわけですが、ついにガザにまで入り始めて、どんどんエスカレートしている。こういうような状況において、パレスチナという地域に今まで膨大な支援をしてきた日本、我々の税金でやった我々の援助がこれは無に帰していくわけですね。こういう状況の中で、国民の、我々の財産、私たちが積み重ねた名誉を守るために、外務大臣、日本の外交は一体何をしていますか。
川口国務大臣 私は、就任をして以来、パレスチナそしてイスラエル双方に対して、暴力の悪循環はやめるべきである、これを停止するために、パレスチナ側に対しては、過激派を取り締まることが大事である、そしてそのために努力をしてほしい、それからイスラエルに対しましては、自治区からの撤退と封鎖を解くこと、これを粘り強くずっと働きかけてきているわけでございます。
 委員おっしゃられましたように、我が国はパレスチナに対してもさまざまな支援をしている、人道的な観点からの支援も、改革の支援も行ってきているわけでして、これについて、イスラエルの攻撃によって日本の支援をしたものが被害を受けるということも生じておりますけれども、これについてもイスラエルに対して申し入れをしているということもやっております。
 我が国としては、引き続きパレスチナの人たちの努力を支援していく、改革の支援をしていくということもやっていく必要がありますし、場合によってはイスラエルのペレス外務大臣が日本においでになるようなことがあるかもしれないということも、不確定ではありますが聞いておりますので、もしもそういうことがあれば、またそういう機会を利用して、私としては最大限の働きかけを行っていきたいと思います。
 いずれにいたしましても、我が国は現在も引き続きいろいろな場でパレスチナの問題あるいは中東の和平については積極的にかかわっておりますので、その努力を続けていきたいと考えています。
首藤委員 外務大臣、私は外務大臣にお話をしているのか、それとも外務報道官に対して話しているのか、本当に疑問に思います。外交としての具体的な話が全然出ていないじゃないですか。
 今、ペレスさんが来られるかもしれないと期待を込めておられました。外務大臣、新聞をお読みですか。労働党は政権を離脱すると書いてあるじゃないですか、ペレスさん以下みんな辞表を出すと。そうでしょう。今、労働党もついに現政権から、シャロン政権から離脱すると。シャロン政権は、極右派を取り入れて、多数を最小限でとってともかく運営を乗り切らなきゃいけないと情報で流れているではないですか。どうして、こんな状況の中、ペレスさんが来るかもしれないと。もう辞表を出されるということを言っているわけです。あるいは、辞表を絶対に出されないという確信を何か持っておられるのなら、それを言っていただければいいんですけれども。
 いろいろお話しになるのは結構なんです。いろいろ言って、私はそれも価値があると思います。本当に価値があると思いますよ。日本の外務大臣が行って、非常に苦労されて、私も知っています。本当に、都合をつけて行かれて話していることは非常に評価していますよ。しかし、外交というのは、話すだけじゃなくて、それだったらお茶飲み話になっちゃうから、結局、その外交が実効なかったときには、それを実効あらしめるための行動をとるんですよ。
 ですから、よく言われるのは、しっぺ返し戦略とかティット・フォー・タットと言うんですけれども、ゲーム理論では。要するに、何かをやったらぴしゃっとたたく、何かをやってくれなかったらぴしゃっとやるというのがあるんですけれども、例えば、そうしたら、どんどんエスカレートして、ジェニンをやりナブルスをやり、それから暗殺をどんどん続行して、ついにガザまで入っていくシャロン政権に対して、日本政府はどういうしっぺ返しをされたでしょうか。何もパンチをやる必要はないんです。しっぺ返しでぴしゃっと、ここはだめよと。そうした外交努力はどんなものがあるか、具体例を示していただきたいと思います、外務大臣。
川口国務大臣 先ほどの、労働党がイスラエルの政権から離脱する可能性については、私も承知をいたしております。承知をいたしているがゆえに、不確定ではあるけれども、もしそういうことがあるとしたらというふうに申し上げた、そういうことでございます。
 イスラエルとの関係で具体的に何をやったかということですけれども、先ほど来申し上げているように、イスラエルに対しては、さまざまな働きかけ、私も参りましたし、それから電話でもペレス外務大臣とは話をしています。そういうことを続けてやってきておりますし、また、パレスチナに対する支援という意味では、パレスチナの改革のタスクフォースというのがございまして、その会合に日本はずっと参加をしてきているということで、中東和平については一生懸命に取り組んでいるというふうに私は考えております。
 委員はこの分野においていろいろな知見をお持ちでいらっしゃるのはよく承知をしておりますので、さらにこういうことをやったらどうかという御示唆等ございましたら、いつでも私は伺わせていただきたいと思っております。
首藤委員 最後のところは非常にいいことだと思うんですね。
 ですから、今まで私たちは野党だが、欧米では政治家が国民の代表として、野党であろうが与党であろうが、いろいろな形で、政府に入ったり、政府の会議に出たりする。ところが、現実には、外務大臣、私はこの分野における、例えば小型武器の問題、麻薬の問題、紛争解決の問題、平和再建の問題、NGOの問題、みんなエキスパートですが、私が議員になってから、そういう外務省がオーガナイズさせた会議からまさに締め出されていくわけですよ。ですから、しようがないから一般の、普通の人間としてはがきを出して、しようがないから壁の周りに立っている。それが現実じゃないですか。もう全然うそ偽りですよ、おっしゃっていることは。しかし、それは本題ではないから、きょうはその話はしません。
 しかし、私は先ほど、しっぺ返しぐらいやるべきだと。パレスチナで死んでいく子供たちがいるわけですから、それに対して、例えば日本はイスラエルとの文化交流をとめるとか、あるいは大使を一時召還させるとか、呼び戻すとか、何らかのジェスチャーをとらないとやはりそれはいけないんじゃないですか。
 私は、それはパレスチナのためだけにやるんじゃないですよ。場合によってはパレスチナ側にも厳しい意見を言うべきですよ。そういうことを、やはり具体的に目に見えることをやっていただかないと、まあ、本当にお忙しいのかもしれませんけれども、やはり世界が注目しているものに対して、日本はただただ沈黙している外交だ、無外交だ、外交じゃなくて無外交になってしまっているということを私は危惧しているわけであります。
 このパレスチナの問題もそうですけれども、結局ずっとテロが世界じゅうに広がりつつあるわけですよ。その問題がなぜかというのはまた、それはもう時間がないので言いません。しかし、やはり最近アジアでも起こりますよね。まさに有名な、デンパサールで起こったテロなんですけれども、日本の方も亡くなられた。もうテロは川の向こうの話ではなくて、太平洋の向こうの話ではなくて、まさに我々と一衣帯水の関係にあるこの地域で起こりつつあるわけですね。
 これは現在、例えばジェマー・イスラミアというグループが言われています。しかし、インドネシア通の方に言わせると、むしろ反オーストラリアのテロではないかということも言われておるんですね。ですから、これは必ずしもアルカイダだけではなくて、むしろ、いろいろな可能性があって、いろいろな攻撃がインドネシアで行われる可能性がある。
 ところが、このインドネシアというのは、御存じのとおり、大体政府援助でも膨大な金額が行っているわけですね。二兆円ぐらい行っているんですか。民間のものも合わせると九兆円ぐらいになるんじゃないかと言われておるんですね。もう多くの日本の方が、邦人がたくさんいるわけです。こういう方は、どうやってこの地域で邦人を守るか、どういう対策を今打っておられますか。外務大臣、いかがでしょうか。
茂木副大臣 テロがまさに我が国自身の問題である、そういう点に関しましては首藤委員と同じ意見であります。
 委員とは、以前もテレビ討論等でも何度も御一緒させていただきまして、常に鋭い舌鋒でありまして、国会でまたこういう議論ができる、大変緊張もいたしますし、これから建設的な意見交換もできるのではないかな、こういうふうに考えております。
 まず、バリ島におきます爆発事件の背景につきましてでありますが、委員御指摘のとおり諸説あるわけでありますが、インドネシアの治安当局、現在捜査が続行中でありまして、我が国としては、その捜査の進展を注意深く見守り、また連携もしていきたい、このように考えております。
 そこの中で、邦人の安全確保につきまして、主に四点のことを進めております。
 まず第一に、今次事件発生後、即座に現地及び東京において対策本部を立ち上げて、邦人保護の対策に努めております。
 それから二番目に、現地の公館を通じまして在留邦人への注意喚起、これを行っております。
 それから三番目に、当省のホームページを通じてスポット情報を発出しております。
 それから四番目に、インドネシアのバリ島及びジャカルタを含む地域に関する危険情報の引き上げ、これを行いました。
 こういったことを通じて、広く国民への注意喚起を行い、さらに邦人の保護に努めてまいりたい、このように考えております。
首藤委員 茂木副大臣が答弁されたということでは大変意味があることだと思うんですけれども、茂木副大臣は同時に、外務省刷新の与党側の座長を務められたと思うんですね。
 私はなぜ今こういう質問をするかというと、今副大臣がおっしゃられたことは、今までだってずっとやっているんですよ。何か起こるたびにやっているんですよ。ほとんど効果がない。しかし、今この時点は、どこか繁華街に行って、夜二時ぐらいにぶすっと刺されたというんじゃないんですよね。普通の、要するに昼間の、夕方になったからもう帰ろうかという人たちも含めてどーんと爆弾が破裂するという事件なんですよね。
 ですから、現在、日本で延べで千四百万人ぐらい年間いるんですか、これを今の領事移住部でもう、そんな邦人の安全を守れるのかということですよね。
 それは、言っている意味は恐らく茂木さんもおわかりになると思うんですけれども、茂木さんの案でも恐らく、それはもっと拡大して領事移住局にするとか、それから、我が民主党案では総合国際危機管理局にしようということで、国際情報も含めて、危機管理の情報も含めて大規模に局にして、あるいは場合によっては、例えば海外市民庁ぐらいの庁にして、国際開発庁みたいなものが考えられるのと同じように、海外市民庁みたいにしてそれぐらいの対応をしていこうと。それをしないと、もうこんなにテロが蔓延し、しかも同盟国である日本に対しても攻撃が行われるような事態では、もはや今までの、領事移住部でございます、邦人保護課でございますというのでは対応できないというふうに考えますけれども、専門家としていかがですか。
茂木副大臣 御指摘のとおり、今領事移住部は二百四十人の体制でやらせていただいておりまして、その二百四十人としてはそれぞれ一生懸命やっている、このように思っておりますけれども、今後、今のテロの多発の問題等々考えたときに、領事部門の機能強化が必要だと私は思っています。
 与野党から、また「変える会」からもさまざまな提言をいただいておりまして、そういったものも踏まえながら、そんな遠くない将来、できるだけ早く、今後の外務省全体としての機構のあり方、そこの中での領事移住部門の位置づけをしっかりと考えていきたい、検討していきたいと思っております。
首藤委員 これは本当にもう無理なんですよ。
 実例を一つ言いますよ。
 私は、この間のパキスタンの総選挙で、アジアの選挙監視団の一員として、NGOの一員として、パキスタンの選挙監視をやりました。日本の政府も送りました。どこに送ったか。イスラマバードとペシャワールですよ。全く安全な都市にちょろちょろ行ったわけですね。私はどこへ行ったかというと、辺境、トライバルエリアという民族自治区へ入ってやりました。もう山の向こうはアルカイダの世界ですよ。そこへ入っていった。
 私が入って、国会議員であり国民の代表をしている者に対して、日本の大使館は電話一本すらかけてこなかった。携帯電話の番号すら教えているのに、電話一本かけてこなかったんですよ。私がもしそのトライバルエリアで死んだらどうなりましたか。やはり大きな問題でしょう。私は別に大使館で日本食を食わせてほしいなんて言っているんじゃないんですよ。しかし、邦人が日本の名誉のために、日本人もここに参加した、国境まで行って頑張っているのに、電話一本かけてこないというのはどういうことですか。もし死んだらどうなりますか。
 私は、これは外務省かつパキスタンの大使館の怠慢だと思いますけれども、同時に、やはり邦人保護は、今のようなNGOと一緒に組まなきゃいけないとか協力し合わなきゃいけないとか、いろいろな個人が世界じゅうで働いていて、それとも連絡をとりながら日本人の安全を守っていかなきゃいけないというのに、全然対応できていないんですよ。ですから、今茂木副大臣が言ったように、もう抜本的にこれは改革して強化していってほしい。
 私は、外務大臣は就任以来ずっと外務省の改革というのに取り組まれておられると思いますけれども、それは余りにも遅いと言わざるを得ないし、余りにも小さいと思わざるを得ない。このような本当に差し迫った問題に対して、しかも、これからまたさらに世界じゅうでテロが行われるかもしれない、そう言いながら、一方では、邦人保護課がいろいろ電話をかけまくっている。こんな状態では国民を守れないじゃないですか。
 外務大臣、外務省刷新の改革の責任者として一体どういうふうに考えているか、それはいかがですか。それは外務大臣の話をお聞きしたい。
川口国務大臣 委員がパキスタンの選挙の監視ということでトライバルエリア、部族地域に行かれたということについては聞いておりますし、そのときに外務省といたしましては、先ほど、自分が死んだらどうするのかとおっしゃられましたけれども、それについてはきちんと対応をさせていただいてきていると思っております。
 具体的に幾つか申し上げますと、まず、九月の十八日に外務省の担当者が首藤委員を訪問させていただいて、この地域の治安情勢についてお話をさせていただいたということでございます。
 そして十月四日に、パキスタンの日本大使館を訪れたNGO監視員三名に対して、担当者から、部族地域での治安情勢及び活動の際の留意事項、手続等を説明したということです。そしてその際に、邦人保護の観点から、パキスタン大使館において各監視員の連絡先のリストを入手して、また、パキスタン大使館及び大使館の担当者の連絡先を伝達した。その後数回、担当者と当該NGO監視員との間で電話連絡があったというふうに聞いております。
 それから、五日及び九日に、部族地域での活動に当たっての安全確保支援のために、パキスタン大使館から北西辺境州の当局に対して、NGO監視員の氏名、展開先のリストを手渡して監視員の安全確保を申し入れまして、先方から、安全確保にはできるだけのことをするという回答を得ております。
 ということをやっておりまして、邦人保護については万全の体制でやってきたということでございます。もちろん、邦人の保護それからNGOとの連携の重要性というのは、外務省として十分にこれは大事なことだと認識をしているということです。
 それで、邦人保護のためにどういう機構改革が必要かということについては、先ほど副大臣からお話をしたとおりでございます。
 もともと外務省としては、ことしの十月に機構の改革についての中間報告を出すということを言っておりました。そして、年内に最終報告を出すということを言っておりましたけれども、この前、今の検討状況について中で議論をしたときに、やはり外務省の機構というのは、これから十年先、二十年先の外交を考えて抜本的に考えるべきである、十月という期間、これが頭にあって小手先の改革をやるというのでは意味がないというふうに私は申しまして、抜本的な改革をする、あるいはその考え方を整理するために、十月ということは少し先に延ばすということで今考えております。
首藤委員 ぜひ抜本的改革の中では邦人保護をやはり真剣に考えて、今までのような領事移住部のフレームワークではなくて、もっと大きな、本当に大きな形でしっかりと、全体的に情報も人員も資源もあるような形でやっていただきたいと思います。
 今外務省で起こった問題は、あの瀋陽の事件も含めてかなりの部分が、実は領事体制ができていない、領事移住部の体制が不十分だと。世界がだんだんと危険の多い状況になっているのに、まだ領事移住部、この言葉だけでもこれはもう古いわけですね。ですから、そういうものを根本的に変えて、海外での日本人の市民活動をどうやって支援するか、どういうふうに安全を守っていくかということで、本当に外務省を真っ二つに、半分がこれに関係するぐらいの大きな庁をつくる、あるいは大きな局をつくってきちっとやらないと、毎回毎回こういう問題が出てくるということになるので、ぜひ茂木副大臣もこの点は特に注力してしっかりやっていただきたいと、国民を代表して申し上げます。
 最後に、今、アフガニスタンのアブドラ外務大臣が来られています。そのアブドラ外務大臣に対して百六十七億円の無償を出すということで、一回の額としては過去最大ということでございまして、それは日本の英断に、かつ私自身もこの十月にアフガニスタンを訪問しまして、アフガニスタン大使館の大使以下末端の専門員に至るまで本当に皆さんよくやっていて、私は、大変日本が誇りにしていい大使館の一つだと思います。
 一方、カンダハルというのは、もう御存じのとおり、まだタリバンが、残党がたくさんいるところですけれども、危険が非常に高いところでございます。カブール、カンダハルというのは、その東側はまだ非常にタリバンの残党、アルカイダの残党が多いところなんですね。ですから、このプロジェクトは結構ですけれども、これの安全確保という点に関しては、どういう手段を講じてこのプロジェクトの安全を守られる予定でございましょうか。
川口国務大臣 アブドラ外務大臣と私はきょうお目にかかることにしておりまして、委員がお触れになったアフガニスタンに対する平和の定着構想のための支援、これについても、このうちの二つの部分について署名をするということになっています。
 アフガニスタンにおける邦人の安全ということですけれども、きょうアブドラ外務大臣とお話をするときに、私は、邦人の安全そして治安、これの重要性についてはお話をするつもりでおります。
 現地の大使館も、駒野大使以下、今、情報を集めるということについては鋭意努力をしています。国連のブラヒミさんとも緊密に連携をとってやっておりますし、もちろんアフガニスタン政府とも連携をとってやっております。
 こうしたことを通じまして、ISAFあるいは政権との連携等を通じまして、邦人の安全については最大限の注意を払っていくというふうに考えております。
首藤委員 この点に関しては、もちろん日本の憲法上の制約もいろいろございますけれども、いろいろな形で、連絡員も含めて、本当に現地の治安組織と緊密な連絡をとってやっていただきたいと思います。向こう側に任せるだけでは、御存じのように、今、もう非常に分裂しておりますから、向こう側も実は一枚岩ではない。ですから、向こうに任せれば安全というのではなくて、こちらもどういう形で刻々と変わる現地の治安情勢に対応できるかということを、ぜひプロジェクトを組んでしっかりやっていただきたいと思います。
 最後に、時間がなくなりましたけれども、情報の中で、緒方貞子アフガニスタン支援政府特別代表の提言に基づく地域総合開発支援計画というものが五十億円も入っているということなんですが、もし、この件に関して政府としておっしゃりたいことがあれば、最後にお聞きしたいと思いますが、いかがでしょうか。
川口国務大臣 まず、その件については、今回の支援の中に入っています。それで、地域の開発ということは平和の定着という観点からは非常に重要であります。カブールだけがこのアフガニスタンの安定、発展ということのベースになるわけではなくて、地域でこれをやるということも非常に大事なことで、そういう観点からこれを入れております。
首藤委員 終わります。
池田委員長 次に、藤島正之君。
藤島委員 自由党の藤島正之でございます。
 まず初めに、二十七日の日中首脳会談についてちょっとお伺いしたいのですが、江沢民主席がかなりの時間にわたって靖国神社参拝について抗議をした、こういうふうに言っておるのですね。要約しますと、昨年、首相は盧溝橋を訪問された。このような行動は、その夏の靖国参拝に対する一つの意思表示だったと思う。しかし、首相は本年、また靖国を参拝した。時期は八月でなく四月だった。また、日本側の説明では戦争の犠牲者となった多くの方々のためと聞いた。しかし、どうしても首相が見てとらなければならないのは、この問題が十三億の中国人民の感情を傷つける問題だということだと、まさに脅迫とも言えるようなことを言っておるわけですね。
 これはまさに我が国に対する内政干渉そのものだ、こういうふうに私は思うのですが、外務大臣の見解をまず伺いたいと思います。
川口国務大臣 この問題について、江沢民主席が率直な御自分の御意見を総理に対して述べられ、総理も江沢民主席に対して、総理がずっとこの件についてお考えのことを率直におっしゃられた。両首脳の間でこの点について率直な意見の交換があって、相互の理解が一歩進んだということについて、私は評価をいたしております。
藤島委員 この段階になってきますと、率直な意見の交換、そういったものじゃない、よその国であれば、敢然として内政干渉として抗議する、そんな内容だと思うのですね。
 昨日の自民党の総務会の方でも、これに対して断固とした抗議をすべきだ、こういうような意見がかなりあったと聞いておるわけですけれども、まさにそういう内容で、率直な意見の交換だったなんという、そんな生っちょろいことではなくて、断固として私は抗議すべきだ、こういうふうに申し上げておきたい、こう思います。
 次に、きょうは北朝鮮問題は内容に立ち入らないという申し合わせでありますので、内容については立ち入りませんが、今回任命されております日朝交渉大使ですね、鈴木大使。私は、まれに見る、外務省の中でも骨のある立派な方だと尊敬しているわけですけれども、こういう方を任命された川口大臣の見識は、私は、この際は非常に多とするものでありますけれども、この件について、何かおっしゃることはございますか。
川口国務大臣 鈴木大使のこの役割にふさわしいという資質について評価をしていただいて、私も非常にうれしく思っております。
 鈴木大使は、私はかなり前から個人的にも存じ上げていますけれども、非常にしんのある、立派な、この仕事にふさわしい大使であると思っております。
藤島委員 今、川口大臣のような、そういう評価でございますので、外務本省としても最大限のバックアップをして、この件についてはぜひ成功の方に導いてやってもらいたい、こう実は思っているところであります。
 次に、APECの件についてお伺いしたいと思います。
 二十七日に閉幕しておりますが、この中で従来から方向性で議題になっていたのが、アジア太平洋圏を一つの経済圏として発展させ、その中で我が国も重要な役割を果たすべきではないか、これがこれまでの方向だったというふうに私は感じているんです。ヨーロッパではEUみたいな形でかなりまとまった形になっているということもありまして、アジアでもそういった方向を模索すべきではないか、こういう議論が実はあったわけですけれども、これに対して外務大臣はどういうふうにお考えになっていますか。
川口国務大臣 私は、APECがそもそも一九九〇年にスタートをしたころにこの仕事に若干かかわったことがございますけれども、当時、十二カ国でスタートをしたこのAPECの基本的な考え方は、アジア太平洋地域が、多様ではあるけれども、今後、世界の中での成長を引っ張っていく重要な地域であって、この地域においてさまざまな共通の、共同のプロジェクトをやって経済関係を深めていくことが重要であるという認識に基づいて、当初、たしか六つぐらいのプロジェクト、人材育成ですとか、あるいはデータの共有ですとかエネルギーですとか、そういったプロジェクトを始めたということであったと思います。その後、メンバーが大分ふえまして、南米も入ってきまして、真の意味でのアジア太平洋という弧ができかかっているということになって、ますます発展をしていっている。
 この共通の基盤、緩やかではあるけれども、その中で一緒の目的を抱いて進んでいこうというこのやり方というのは、私は非常にこの地域にふさわしい取り組みだと考えております。
藤島委員 私も、まさに今大臣がおっしゃったような方向が非常に望ましい、我が国にとってもあるいはアジア全般にとっても望ましい方向だというふうに考えておったわけですが、ここに来て急に流れが変わってきている。要するに、FTAですか、各国がそれぞれ相手を探していく自由貿易協定、こういうふうな流れがかなり強く出てきている、そういうふうに思われるわけですね。今回のAPECについても、そういうFTAを評価する、そういった表現が盛り込まれている、こういうふうに思うんですが、その点はどう考えていますか。
川口国務大臣 APECの考え方とFTAの考え方が相互に矛盾をしていくものであるというふうには私は思っておりませんで、APECがスタートしたときに志向した、世界の中でも発展をする地域としてこの地域を大事にしていこうという考え方がFTAにもあらわれている、方法論を多様に考えているということになったということであると私は思います。
 FTAは、日本についていえば、小泉総理がシンガポールで発表なさった東南アジアと我が国の関係についての一つの柱となっているわけでございまして、これについて我が国は今話をしつつございますし、中国も、東南アジアの国々とFTAを考えている。それから、ごく最近、APECのときに発表されましたが、アメリカもそれをまた考えているということで、APECの志向したことをむしろ加速化するという意味でのFTAのあり方、これをその手段として考えていく、そういうことではないかと個人的には思っております。
藤島委員 その点について、私は見解を異にするんですけれども、実はちょっとそこはまやかしじゃないかなと。
 APECの、最初に申し上げていた、川口大臣もこういう方向が望ましいと言っていた方向がなかなかうまくいかない。それは、日本だけがうまくいかそうと思ってもなかなかうまくいかない。アメリカやEUはそれぞれの思惑があって、むしろアメリカやEUは、自分と直接アジアの国と結んでいった方がいい、こういう考え方の方が最近強いということでそちらに来ているので、私は、APECの考え方そのものとそこのところでは矛盾してくるんじゃないか、こう思うんですが、その辺もう一度。
川口国務大臣 APECが始まって十二年間あるいは十三年間の間に、この地域における国々の相互の関係というのはかなり変わってきたと思います。その変化は、一部、APECの取り組みが始まったことによってもたらされたと思います。
 志向しているところは、より強い経済関係、より強い相互依存関係、それによってこの地域のそれぞれの国の経済的な成長なりあるいはその厚生が高まっていくということでございまして、FTAというのは、それぞれは基本的に一つの国と一つの国のつながりではありますけれども、地域全体として、我が国としては東南アジア全体に対してのFTAを考えているわけでございまして、これは方法論といいますかアプローチの違いで、ねらっているところは同じであるわけですから、今の時点にふさわしい、逆の言い方をすれば、今の時点だからこそできるようになったアプローチを補完的に使って、総合して本来のこの地域の発展ということが可能になっていくと私は考えています。
藤島委員 最終的にアジア地域の発展という点では同じ結果になるのかもわかりませんけれども、当時、ドル、ユーロに対しまして、アジアではやはり日本の円圏、そういったものが念頭にもあったんじゃないかと思うんですね。それに対して、どうも草刈り場のような形でアメリカ、EUに食いちぎられていっている、各国それぞれの関係で。例えば、EUは域内から東欧にも広げ、あるいは中南米、中東諸国とも結ぶようになり、あるいは米国はカナダ、メキシコにそれぞれ行き、アジアにもどんどん入ってきているという感じで、いわば日本外しみたいな形でやられているんじゃないかなという、そんな感じがしているんですね。
 そこで、一歩譲って外務大臣のような考えがあるとしても、その場合に、それじゃ日本のFTA政策を本当にきちっと考えているのかどうか。シンガポールが最初のFTAの相手になったという問題についても、農業問題といったものがないから、あるいはメキシコの場合は経済産業省が熱心だった、そんなところから優先順位が決まって進められていっているんじゃないかというふうな感じがするわけです。
 APECの最終的なまとめじゃなくて、各国でやるにしても、そういった意味でFTAの流れがあるのであれば、それに対する我が国の戦略といったものがないと、どんどん、まずアメリカとEUあるいは中国にAPEC諸国の関係が食われていってしまって、最後に日本だけがちょろちょろと行く、そんな構図がどうしても私の頭の中に出てくるんですが、その辺、外務省が取りまとめて、きちっとした戦略を持って進めていかないと、本当に日本は二流国、アジアにおいてさえそういう形にどんどんいってしまいかねない。その点はどうでしょうか。
茂木副大臣 委員の方からFTA戦略の重要性につきまして御指摘をいただいたわけでありますが、まさに先々週、外務省としてこのFTA戦略の素案を発表させていただきまして、既にホームページ等々でも皆さんにごらんいただけるような形にしてございます。
 そこの中では、まずこの国際社会、御指摘いただいたAPECでもそうでありますが、WTOにおいても、何しろ参加国がふえている、そして、そこの中で扱う課題も、貿易だけではなくて、農業からサービスから知的所有権からいろいろなものを扱っていかなきゃならない。そうすると、大きな舞台ではなかなかできない部分を補完しながら二国間でやっていって、それによってWTO、APECを強化していく、こういう意味からもFTAの有用性というのは高まってくるであろう、こういう評価のもとで、例えば日本としてはまずアジアを重視する、こういう視点等々も打ち出させていただいております。
 ただ、当然国内のいろいろな産業に対する影響等々もあるわけでありまして、さまざまな分野の方々からそういった御意見もいただいて、しっかりしたFTA戦略をまとめていきたい、こういうことで、先々週、素案は発表させていただいております。
藤島委員 やはりチャンスというかタイミングがあるわけですから、それに乗りおくれちゃってからではなかなか取り戻せないわけですよね。いろいろな有力な国が先にもう入り込んじゃっていろいろやっているところに日本がのこのこおくれて行ったんじゃ間に合わないわけですから、ぜひ急いで戦略を組んで、関係省庁とも連絡をとりながら取りまとめて、やはり外務省のリーダーシップみたいなものを発揮していってもらいたいなと。本当に我が国もいろいろな意味で地盤沈下をしつつあるわけですから、こういう新しいことが起こる際には早目早目に前向きにやってもらわないといけない問題だろう、こういうふうに思いますので、ぜひよろしくお願いしたい、こう思います。
 それから次が、ちょっと前の話になりますけれども、十日ぐらい前ですけれども、日ロの外相会談が行われたわけですね。日ロといえば、鈴木宗男さんの問題がどうしても絡んできていたわけですけれども、こういうふうになって、鈴木さんが抜けた後の日ロ問題ということでは初めてな関係になるわけですが、その辺は外務大臣はどんなことで話されたのか。
川口国務大臣 私は、今月の十一日から十五日までロシアを訪問いたしまして、イワノフ外務大臣とフリステンコ副首相、それからプーチン大統領とお目にかかってお話をさせていただきました。
 今、日本とロシアの関係をどういうふうに築いていくかということを基本的なテーマとしてお話をさせていただいたということでございまして、私がお会いをした先方の大臣の皆さん方あるいは大統領は、幅広い日ロの関係を築くために行動計画をきちんと決めて、それを海図としてやっていこうと。そういうことによって二十一世紀にふさわしい新たな日ロ関係を築いていく、そして、その中の一番大事な柱はもちろん平和条約の話でございますので、そういったことを議論してきたということでございます。
 総理の一月の訪ロの日程もそのときに決めさせていただきましたので、それの準備を外務大臣としては一生懸命にやり、今後もやり続けるということでございます。
藤島委員 やはり北方領土問題が我が国にとって一番関係あるわけですね、経済的な問題もあるんですけれども。議論をしてきたとおっしゃるんですけれども、単に議論をしてきただけなんですか、これまでと変わって何か成果があったかどうか。
川口国務大臣 議論をしてきたといいますのは、そういった日本とロシアの二十一世紀にふさわしいあり方について議論をしたということでございますし、それから、総理が一月にいらしていただいたときにプーチン大統領との間で合意をしていただく日ロ行動計画、先ほど海図と申し上げましたけれども、これの中身を詰めたということでございます。それをまさに、その成果といいますか、海図として、二十一世紀の日ロ関係をこれからともに考えていくということで、それが新しい展開の基盤となると考えます。
藤島委員 先ほど申し上げた鈴木さんの問題で、この日ロ関係、言葉はあれですけれども、かなりひっかき回されておった。そういうものがなくなって、整々とまた議論を進められる、そういう段階にちょうど行かれたわけなんですね。
 だから、そういう意味で、何か今までとちょっと違った意味での進展があったのか、単に議論だけをしてきた、つなぎのために行って議論してきた、この程度なのか、それをちょっと伺いたかったんです。
川口国務大臣 行動計画の大きな要素ということについて合意をいたしました。
 それで、その要素というのは今六つ考えておりまして、政治対話の深化、平和条約の問題、経済関係の強化、国際舞台における協力、そして文化の交流、治安・防衛の分野、それを六つの要素といたしまして、それについての内容をさらにより細かく議論をいたしました。
 これについての詰めは今引き続き続いておりますけれども、これを総理が訪ロなさる前に確定をする。それで、最後、議論を総理とプーチン大統領としていただいて、合意に達することができればそこで署名をしていただく、そういうことで考えております。
 日本とロシアの関係というのは、これはイワノフ外務大臣にもプーチン大統領にも申し上げましたけれども、この地域にかかわりのある大きな国々の間の二国間関係、どの二国間関係をとっても一番弱いリンクであるということでございます。貿易の関係をとりましても、あるいは人の交流をとりましても、例えば人の交流でいうと、日米関係を一とするならば、日ロ関係の人の交流というのはその六十五分の一にしかすぎない。貿易関係についていえば、日ロ関係は日米関係の三十分の一にしかすぎない。ちょっと数字が間違っているかもしれませんが、そのオーダーの話であるということだと思います。
 そういったことをこの行動計画を進めることによって強くしていく、そうして日本とロシアがG8の二国にふさわしい国同士の関係になる、これが大事であるということをお話をし、そして意見の一致がこの点について見られていると思います。
藤島委員 やはり、ロシアもそうですが、我が国も本当に頑張っていかないとどんどん世界の中で地盤沈下をしていきかねない。そういう中で、何となく似たような感じのする両国が隣の国同士であるわけで、単に行っていろいろ話をしてきましたということじゃなくて、やはり前向きに一つ一つ問題を解決していってもらわないと、いつまでたっても懸案として残ったままになってしまうんじゃないかなという気がしますので、せっかく行かれたら、今度総理も行かれるようですけれども、少しでも懸案を解決する方向でやってもらいたい、こう思います。
 最後に、もう時間がないんですけれども、テロ対策についてまた次回伺いたいと思いますが、私は今回提案だけしておきたいと思うんです。
 我が国の世界のテロ対策の中で、テロ対策基金みたいなものを設けて我が国がその主体的な役割を演じていく。要するに、テロが起こってから大変な損害が生ずるわけで、そういうのから見れば、事前の予防に相当の金をつぎ込むというのは大変意味があることであり、我が国は、具体的な行動としては、やはりそういった金を出して、例えば飛行場に入る際の検知器なんかも、簡便な方法で厳密にやれる、そういった新しいものをどんどん開発するようなものとか、いろいろなことでやれるような、そういう基金を世界的に提唱して、我が国がかなり出して、そういったことを考えるべきではないかなというふうに思っておりますが、この点については、時間が来ましたので、また来週の質疑時間の際に議論させていただきたいと思います。
 終わります。
池田委員長 次に、松本善明君。
松本(善)委員 イラク問題について質問をいたします。
 インドネシアのバリ島やフィリピンでの大規模な爆弾テロ事件が起きて、モスクワの劇場占拠事件でも多数の犠牲者が出ました。APECでも反テロ声明が採択されました。テロを根絶するということは二十一世紀の国際社会の重大な課題であると考えております。
 我が党は、テロと報復戦争の悪循環になることを警告してまいりましたが、私はそうなる危険性があることを深刻に憂慮しております。特に、同僚委員もいろいろ質問をいたしましたが、イラクに対してアメリカが国連決議なしで先制攻撃するならば、もっと重大なことになることは目に見えております。
 我が党は、緒方参議院議員、党の国際局長でありますが、を団長とする代表団を中東諸国、湾岸諸国に派遣をいたしまして、この平和解決のための努力をしております。
 アラブ二十一カ国とパレスチナの自治政府が加盟をしておりますアラブ連盟の代表は、イラク攻撃は中東で地獄の門をあけるものだ、こういうふうに言っています。イスラム諸国五十七カ国の加盟するイスラム諸国会議の代表は、アメリカのイラク攻撃が実行されれば、反テロの国際連合は、特に中東において維持できなくなるというふうに述べております。
 緒方代表団は、ヨルダン、イラク、エジプト、サウジアラビア、カタール、アラブ首長国連邦の政府と会談しましたが、それはすべてアメリカのイラク攻撃に反対をしております。アメリカが単独または同盟国、今ではイギリスだけでありますが、米英軍でイラクを攻撃すれば、イスラエルを含む中東全体を巻き込み、世界は経済問題を含めて大混乱になると考えていますが、外務大臣の御認識は、その点ではどうでしょうか。
川口国務大臣 ブッシュ大統領は、イラクが過去の国連の決議を遵守して、査察を即時、無条件、無制限に受け入れる、このことが、まさにこのイラクを争点として紛争にならない、これを回避する唯一の方法であるということを述べているわけでございまして、戦争が今差し迫っているわけでもない、戦争が不可避でもないということを言っているわけです。
 まさに、国連で今行われている決議に合意するための努力というのは、これを行うための国際社会全体としての努力であるということでございまして、イラクに対して今軍事行動が行われるということが決定されているわけではないということでございます。
 イラクが行動をとるということが問題解決のかぎであるということでございまして、そのために必要かつ適切な安保理決議が行われることが大事である。我が国としては、これについてアメリカと全く意見は一致をしているわけです。
松本(善)委員 今お述べになりましたブッシュ大統領の演説は七日のものであります。前回の委員会でも外務大臣はそういうふうに述べておられました。
 しかし、今状況が随分変わってきているんですね。二十八日のニューメキシコ州でのブッシュ大統領の演説は、フセインを武装解除させる意思や勇気が国連にないなら、米国は同盟国を率いて行動する、有効な対策がとれないなら国際連盟と同じだというようなことを演説しておられます。
 そういう演説は、十七日のパウエル国務長官のニューヨークでの発言、あるいはブッシュ大統領の二十五日のノースカロライナ、サウスカロライナ、アラバマの三州の演説、あるいは二十二日のペンシルベニア州の演説でも同様のことを述べておられます。七日の時点から大きく変わっているんですね。
 しかも、それに危機感を感ずるアメリカの平和を求める世論も大きくなっている。カーター元大統領はその代表と言ってもいいですが、ワシントンで二十万のデモをやった。サンフランシスコで十万のデモ。それから、武力行使を容認する決議には下院で三分の一近くの議員が反対をしている。これは、武力攻撃が差し迫ったものでない、また不可避のものでもないという演説とは、大分もう違った状況が生まれてきているのではないか。
 アメリカの上下両院での軍事力行使権限をブッシュ大統領に与える決議、アメリカ空母の出動態勢、ラマダン、いわゆる断食月や砂あらしとの関係から、十一月作戦開始、来年三月までに作戦終了などというようなこともいろいろ専門家や防衛庁筋からも言われている。
 これはやはり、今は外務大臣の言われるような状況ではなくて、イラクへの武力攻撃が差し迫っておる、不可避であるというふうにアメリカは考えているのではないでしょうか。
川口国務大臣 まさに今、国連の力、国連の権威がテストをされている状況にあるというのがブッシュ大統領の認識であると思います。それをお話しになられることによって、国連の安保理における決議あるいはそのメンバーの理事国の間での一致した行動をとるための、態度をとるための妥協といったことを促している、そういうことであると私は考えています。
松本(善)委員 こういう状況の中で、国連安全保障理事会の緊急公開協議が十六日から始まって、非同盟諸国会議議長国であります南アフリカ共和国のクマロ国連大使は、我々は国連兵器査察官の無条件復帰を認めたイラクの発表を歓迎をする、この提案は問題の平和解決に道を開くものだと平和的解決を強調いたしました。
 言うまでもありませんが、国連憲章では第二条三項で、すべての加盟国はその国際紛争を平和的手段によって解決しなければならないとし、第三十三条の「平和的解決の義務」でも、いかなる紛争でもその継続が国際の平和及び安全の維持を危うくするおそれのあるものについては、交渉、審査、仲介、調停、仲裁裁判、司法的解決等の平和的手段による解決を義務づけております。
 ブッシュ政権がとろうとしている先制攻撃戦略は、前回この説明をいたしましたけれども、米国の敵対者に対しては必要なら先制的に攻撃するというもので、もしこういう無法が許されますならば、国連憲章に基づく国際秩序が根本から覆る大問題だ。あくまで戦争を回避する外交努力を尽くすのが日本政府のとるべき立場ではないか。
 先ほど述べましたように、我が党も可能な限りの野党外交を展開しています。今の情勢のもとで、政府はこの戦争回避の努力をどういうふうにしているのですか。
海老原政府参考人 お答え申し上げます。
 今、安保理の方で、まさにこの問題の解決に対する努力が行われているということにつきましては、先ほど大臣から御答弁申し上げたとおりでございまして、我が国としても、その努力を今後とも支援をしていくということでございます。
 私の方から、今松本委員がおっしゃいました先制攻撃のことにつきまして簡単に答弁をさせていただきたいと思いますけれども、今、アメリカは国家安全保障戦略におきまして先制攻撃をするというお話がございましたけれども、これは同じ戦略の中に、米国が脅威に対して先制的に対処するために必ず武力を行使するというふうに言っているわけではございませんで、むしろ先制を侵略のための口実としてはならないということが明記されているわけでございます。
 今、松本委員おっしゃいましたように、国連憲章二条四項におきまして違法な武力の行使というのが禁止されているわけでございますけれども、米国は国連憲章のもちろん当事国でございますし、日米安保条約の一条、七条におきましても、国連憲章を遵守して違法な武力の行使を行わないということを我が国に対しても約束をしているわけでございまして、政府といたしまして、米国は国際法上の権利義務に合致した形で行動するということについて、何ら疑いは有しておりません。
松本(善)委員 今の答弁は、前回やられたことと同じなんですよ。私は、正確に言えば先制行動戦略だけれども、アメリカの政府のコメントではそれに先制攻撃も含まれるということをはっきり言っているから、それでいわゆる先制攻撃戦略だと言われているということを言っているわけであります。
 それから、アメリカについての、国際法を守るという点についても、外務大臣、前回答えられました。外務大臣は、米国が行動する場合に国際法上の権利と義務に合致した形で行うというふうに答弁をされました。今の北米局長の答弁と同じ趣旨を前回述べておられるわけでありますが、これは、国連の決議に基づかないでアメリカがイラク攻撃に踏み切るという場合にはそれを黙認しないということであるのか、それとも、アメリカが国際法違反をやるはずがないという意味なのか、お答えをいただきたい。
川口国務大臣 国連の決議に基づかないでという前提でおっしゃられましたけれども、先ほど来申し上げていますように、アメリカは今戦争をすると言っているわけではない、まさに国連で安保理が決議をする、そのための努力を率先して行っているということでございますので、そういった仮定に基づいて、アメリカが戦争をするであろうということを、しかも国連の決議に従わないで戦争をするであろうということを予断した御質問にお答えするというのは、今適当ではないと考えております。
松本(善)委員 そうはいっても、先ほども紹介をいたしましたが、ブッシュ大統領は言っているんですよ。一番最近の二十八日の演説をもう一回紹介すれば、フセインを武装解除させる意思や勇気が国連にないのなら米国は同盟国を率いて行動すると。
 今イラクに求められているのは査察なんですね。それを、武装解除しなければ行動するというのは、国連決議がなくても攻撃をするという意味ではないですか。大臣に聞きたい。
川口国務大臣 これは、国連の決議をするということがどれぐらい可能であるかどうかということにもよるかと思いますけれども、一番最近の記事でございますと、パウエル長官が、国連でのこれまでの安保理各国との交渉を踏まえて、多数が承認する決議を採択することは可能であるという認識を示しているということでございまして、アメリカが、まさにほかの国と一緒に安保理で決議に合意をするということの努力を率先して今やっているということであると思います。
松本(善)委員 ブッシュ大統領の演説と比べると、必ずしも私は外務大臣の答弁をそのとおりであるというふうにも言えないんじゃないかと思います。
 我が党の先ほど紹介いたしました緒方代表団はイラクへ行きまして、イラクに対しても、これまでの対応の中には、国連の査察を拒否したり、事実を隠したり、他を欺いたりするなどの問題点があったことを率直に指摘いたしました。そしてさらに、イラクの大量破壊兵器全廃という国連安保理事会決議を完全に実行するために、イラクが無条件査察を受け入れ、事態を国連の場で、国連憲章に基づいて解決することが、イラクだけでなく、二十一世紀の国際平和秩序を確立するという意味でも、国際社会全体にとっての重大な課題になっているということを指摘し、イラクが関連する国連決議を実施することが求められていると、イラクの努力を求めました。
 イラク国民議会のハマディ議長とファイサル外務省第一政務局長と会談をしたわけですが、その際に、あれこれ条件をつけずに、新たな国連査察チームによる無条件査察を受け入れるとの約束を得ました。ハマディ議長らは、八つの大統領宮殿を含むすべての施設、場所への査察を無条件に認めると言明をいたしました。
 このことは、イラクへの無条件査察を実施することに既に障害はないということになったのではないかと思いますが、外務大臣は、イラクがこのとおり実施すれば、イラクへの武力攻撃が必要がなくなるという認識でありましょうか。これも外務大臣に伺いたいと思います。外務大臣がお答えできないということならば、局長に聞くこともあるかもしれません。
    〔委員長退席、中川(正)委員長代理着席〕
川口国務大臣 イラクが言っていることで十分ではないかということでございますけれども、国連は、即時、無条件、無制限ということを言っているわけでございます。今イラクが言っていることについては、この国連の言っている即時、無条件、無制限ということを満足していないというふうに思っております。
松本(善)委員 今、イラクが無条件で認めるということを言明したと。無制限というのはどういう意味を持つんでしょう。例えば、八つの大統領宮殿を含めて、すべての施設、場所への査察を無条件に、これは場所的にいえば無制限ということになります。それでいいのか。それとも、それ以上のことを何か意味しているのか。無制限ということの意味を日本の外務省はどういうふうに考えているか、お答えをいただきたいと思います。それは局長でもいいでしょう。
安藤政府参考人 無制限といいますのは、査察対象への無制限のアクセスが保障される、主に場所的な概念が頭にあるわけでございますが、この点はこれまでの安保理決議でも明示的に求められているところでございます。実効的な査察を確保するためにも、査察対象への無制限のアクセスが認められるということが重要だというふうに考えております。
 ただ、先ほど大臣から申し上げましたけれども、即時、無条件、無制限の受け入れというのが私ども、あるいは国際社会が要求しているところでございまして、そういう意味において、先般のイラクの査察受け入れ表明というものは重要な第一歩だというふうに考えております。
 ただ、大切なことは、言葉だけではなくて、実際に行動として、査察官がイラクに行って無条件かつ無制限な査察が行われるということでございまして、言葉だけではない、行動が伴うということが必要なわけでございます。ただ、過去においてイラクはさまざまなことを言ったりして、実際になりますと査察が無条件かつ無制限に行われなかったということがあるわけでございますので、無条件、無制限の査察を確保するためにどういう決議をつくったらいいかということが、今行われている国連での作業だというふうに了解しております。
    〔中川(正)委員長代理退席、委員長着席〕
松本(善)委員 大事なことなので確認をしておきますが、要するに、無制限というのは場所的な意味、大統領宮殿をどこでも全部査察ができる、こういう意味だということでいいですね。
安藤政府参考人 場所だけではございません。場所を含めて無制限に行われるということでございまして、何が無制限で何が無条件かということは、国連でもその定義があるわけではございません。
松本(善)委員 そうすると、もし無制限というのが軍隊の動向だとか事実上の軍事占領だとか、あるいはイラクの武装解除だとか、新たな決議なしに武力行使ができるということだとか、そういうことまでを含めて無制限というならば、これはかなり重大な問題になると思いますけれども、場所的な意味だけではないというのは何を意味しているんですか。
安藤政府参考人 この無条件、無制限というのは、軍事行動云々とは全く無関係でございまして、査察を実施するに当たって、国連の査察官がイラクに行って査察を行う際に、即時、無条件かつ無制限に行われる必要があるという点でございます。
松本(善)委員 もう一回確かめますが、場所的な意味と、それから妨害をしないでちゃんと査察ができるように、こういう意味ですね。
安藤政府参考人 基本的には、無制限かつ無条件に査察が実施されるようにという意味でございます。
松本(善)委員 もう一つ、ちょっと別のことを伺いますが、我が党はアフガニスタンに対する戦争についても報復戦争として反対の意思を表明いたしましたが、イラクとテロの関係は国際社会に何ら表明をされていない。そこがかなり違うものだと思います。同時多発テロの対応に限った特別措置法は米国のイラク攻撃支援には適用できないと私は考えておりますが、外務大臣はいかがお考えでしょう。
川口国務大臣 これもイラクとの間で武力紛争が起きるということを前提になさっての御質問でございますので、今国連で懸命な努力が行われているときに、その問題に、武力紛争を予断した前提の御質問にお答えするのは適当ではないと思います。ただ、いずれにしてもテロ特措法については、まさにこの法の目的に沿った形でこれは使われる、実施される、そういうことであると思います。
松本(善)委員 要するに、大量破壊兵器の査察、これを問題にする場合には、核保有国との関係も起こるんですよ。そうすると、大量破壊兵器を問題にする場合には、やはりこれは平和的手段をとらなければならない。あのアフガニスタン同時多発テロについては、そういう議論もあり得た。私どもは反対でしたけれども、あったと思います。しかし、それと大量破壊兵器に対する対処方法というのは全く違わなければならない。
 例えば、インド、パキスタン、これも大量破壊兵器を持っていることははっきりしているんです。これをテロ特措法のような形でやるということは絶対できない。だから、そこの区別をしておられるかどうかということを聞いております。もし必要なら、局長でもいいです。
海老原政府参考人 私、必ずしも質問の趣旨を正確に理解しているかどうか自信がございませんけれども、いわゆるテロ特措法に基づきます支援の対象というのは、あくまでも昨年の九月十一日の米国におけるテロ攻撃からもたらされる脅威の除去に寄与する軍隊等に対する支援ということで、限定がかかっております。今のお話のような場合につきましてテロ特措法が発動できるかどうかということにつきましては、この点を中心に検討すべき問題だろうというふうに考えております。
松本(善)委員 これは検討の余地のない、そんなことはできないということは明白だということを申し上げ、そして、やはり国連憲章と日本国憲法を遵守するという外交が行われなければならないということを申し上げて、質問を終わりたいと思います。
池田委員長 次に、東門美津子君。
東門委員 社会民主党の東門です。
 きょうは米軍機の事故についてお伺いしたいと思います。
 ことし四月、沖縄でF15戦闘機の照明弾落下事故、燃料漏れ事故、風防ガラスの落下事故など、米軍機による事故が立て続けに発生し、本委員会でも何度か質問いたしました。そのたびに政府は原因究明と再発防止を申し入れると答弁をしてきましたが、事態は改善されるどころかますますひどい状況となっています。
 七月三十一日と八月一日、二日続けて嘉手納基地でF15が火災事故を起こし、八月二日にはキャンプ・シュワブでヘリコプターがエンジントラブルを起こし、施設内の海岸に不時着、八月七日には嘉手納基地でヘリが緊急着陸、九日にもFA18、C130輸送機、F15が相次いで緊急着陸、八月二十一日には沖縄本島沖百キロの海上にF15が墜落しました。
 その後も連日のように米軍機の緊急着陸が行われており、報道されただけでも九月は十回以上もあります。今月も、十二日に石垣空港にヘリ二機が緊急着陸、嘉手納基地でもF15が、十六日には一機、二十一日には三機、二十三日には二機、緊急着陸し、二十五日には米軍輸送機から水タンク三個が落下する事故も発生しています。
 わずか三カ月足らずの間にこれほど多くの事故が発生しているのです。もはや再発防止などという言葉は何の意味も持ちません。米軍の言うことは何も信じられない。このようなことを繰り返し続けていて、よき隣人でありたいという言葉はうつろにしか聞こえません。
 幸いにして、現時点では人的被害は出ていませんが、何度も申し上げているように、そうなってからでは遅いのです。国民の身体、安全を守るため、政府は最善を尽くす義務があります。政府は現在の状況をどのように認識しておられるのか、また、住民の安全を確保するため、どのような方策をとっていかれるのか、まず大臣の見解を伺いたいと思います。
川口国務大臣 今委員が、ことしになって起こったさまざまの事故について述べられました。これを挙げられましたけれども、ここに出てくるように、ことしになってかなり事故が起こっているということについては、私も非常に遺憾であると思います。県民の方がこうした事故が立て続けにあるということについて不安な気持ちをお持ちになられるということは、私としても認識をきちんといたしております。
 政府として、今までこういったことについて遺憾の意を表明しまして、再発防止そして事故の原因究明ということについて申し入れをしてきたということは、委員がおっしゃったとおりでございます。アメリカ側からは、この事故について、再発防止には真剣に取り組んでいるという説明を聞いております。今後とも、こういうことに対しましては、アメリカ軍に対する申し入れも含めまして、その案件ごとに、それにふさわしい適切な対応を政府としてとっていきたいと考えております。
東門委員 その事故ごとにアメリカに再発防止、原因究明を強く申し入れて、そして、アメリカ側からもそのように努力するという返事を受けているということなんですが、しかし、それはちっとも変わりませんよね。むしろふえているということを私は申し上げたのですよ。申し入れる、米側が、そのように努めます、これでいいのでしょうか。住民に対し、本当に安全なんですよ、もう大丈夫ですよというその行動は何もない。
 先ほど、言葉ではなくて行動ですよと、別の委員の質問に答えておられましたが、そのとおりなんですよ。申し入れました、アメリカからはこのように返事がありました、ああ、そうですかというのがこれまでの外務省だったと思うんです。それに対して、本当に、沖縄側の、沖縄の住民の不安、それをどのように取り除くのですかというのは全然見えません。
 これだけの事故がふえているという状況をどのように認識しておられるか。ふえています、それだけじゃないと思います。では、どのような方策で沖縄の住民の不安を取り除いていかれますか。もう一度お聞かせください。
川口国務大臣 私としても、こういったことについての県民の懸念あるいは不安を一挙に取り除くような妙策が本当にあればと思いますけれども、これはやはり、アメリカ軍側がきちんとそれぞれのことに対して対応をするように、再発が起こらない、あるいはそのために事故の原因がはっきりわかるといった、そのステップをきちんと踏んで対応していく、粘り強い取り組みをやっていくということが大事であると私は考えております。政府として、こちらも、そのための粘り強い対応をしていきたいと考えています。
東門委員 米国側は、先ほど私が申し上げました一連の緊急着陸について、予防着陸であるとして、米軍の準機関紙ともいうべきスターズ・アンド・ストライプスは、九月一日付の記事で、沖縄で緊急着陸と言っているのは予防着陸で、米軍にとっては普通の出来事であり、予防着陸が深刻な事態を防いでいるのであって、それを沖縄の報道機関が訓練への懸念をあおり、県民の不安を助長させているとの趣旨の記事を掲載し、あたかも沖縄の報道が悪いような見解を示していますが、とんでもない話です。緊急着陸と予防着陸の違いなど単なる言葉の遊びであり、現に機体に何らかの異常があったからこそ、米軍の言う予防着陸を行ったのです。
 このようなふぐあいを抱えた機体が頭上を飛び交っていることに対し、県民が不安に感じるのは当然のことです。八月には実際に火災事故や墜落事故が発生しています。たまたま基地の中あるいは海上で発生したから大事には至りませんでしたが、市街地の真上でこのようなことが起こった場合のことを考えると、ぞっとします。
 県民の立場としては、予防着陸だろうが緊急着陸だろうが、そのような事態は一切ないように、万全の状態で飛行機を飛ばしてもらいたいという以外ないのであり、それが保証されないのならば、整備が万全になるまで飛行を中止してもらうしかありません。その件に関して、政府の見解を伺いたいと思います。
海老原政府参考人 お答え申し上げます。
 今、東門委員の方から、緊急着陸、予防着陸の話がございました。これは、私の理解しているところでは、確かに米側のいわばカテゴリー分けということであろうと思いまして、いずれの場合であっても、地元の方々に不必要な不安を与えることのないようということは当然でございますし、また、米軍の訓練、このこと自体は必要なことだろうと思いますけれども、その訓練に当たりまして安全性の確保に万全を期すということ、これはもう当然のことでございまして、先ほど大臣からもお話がありましたように、従来からいろいろなレベルで申し入れを行っておるところでございますけれども、今後とも、しかるべく米側に申し入れを行って、安全について万全が期されるよう、政府としても全力を挙げていきたいというふうに考えております。
東門委員 私が申し上げたいのは、本当に安全であるということが保証されないのならば、整備がちゃんと万全になるまで飛行中止、それを申し入れてもらいたい、それをアメリカ側に要求してもらいたいということなんですよ。そのことに対して政府の見解をと。今までどうしてきましたかということじゃないんです。
 とにかく、住民、県民が不安を感じる。本当に、ちょっと間違えばひどい状態になるのは皆さんよく御存じだと思います。そのままほっておいて、もし何か起こったらということを考えたことがございますか。そういう飛行機、いわゆる欠陥のあるふぐあいな、そういうものを抱えた機体が頭上を飛び交っているなんということが許されるでしょうか。それに対して、整備をちゃんとするまで、安全が確保され保証されるまでとめてください、飛行は中止してくださいということを申し入れてほしい、いや、強く要求してほしいと思いますが、もう一度お願いいたします。
海老原政府参考人 事故等が起きたときに、その安全策につきまして、それがとられるまでその使用を中止すべきであるというお話であったと思いますけれども、これは従来から、そのような事故が起こった場合に、安全性を確認するまで米側の方におきましてその訓練を中止する、しばらく差し控えるというようなことは、その都度、必要に応じて行われてきたというふうに考えております。
 それを超えまして、訓練そのものをすべて中止するということであれば、それは先ほども申し上げましたように、日米安保体制の円滑な運用ということで、日本の安全という観点からもこのような訓練は、もちろん安全に万全を期した上で、必要なものであるというふうに考えておりますので、御理解をいただきたいと思います。
東門委員 理解はできませんけれども、次に進みます。
 事件、事故が起こるたびに米軍は、再発防止に努める、そう言っていますが、一向に事件、事故は減る兆しがないどころか、増加しているというのが現状です。特にこの予防着陸については、米軍側は、問題があるとすら思ってもいない様子です。予防着陸を減らそうという意思も感じられません。
 政府は、米軍の予防着陸であるとの説明で納得をしているのでしょうか。現状のまま整備が不十分な米軍機が飛び続けることを容認するつもりなのか。どうなんでしょうか。大臣、そこをお答えいただきたいと思います。
川口国務大臣 予防着陸というふうに今委員がおっしゃられた、そのもとになっているのはスターズ・アンド・ストライプスの記事であるということで、私自身はその記事を読んでおりませんので、その記事についてコメントをするということは、ちょっと申しわけないんですが、できないということを申し上げたいと思います。
東門委員 ぜひ読んでいただきたいと思います。では、またこの次にそのことを続けさせていただきます。
 連日、緊急着陸、米国流に言えば予防着陸を繰り返しているF15戦闘機は我が国の自衛隊も保有していますが、自衛隊機がこのような予防着陸を行ったというニュースは、私、ほとんど聞いたことがありません。
 自衛隊では、一年間に何回ぐらい予防着陸を行ったことがあるのでしょうか、まずお尋ねしたい。そして、ここ数年のデータを教えてもらいたいと思います。そして、自衛隊機と比較した場合、米軍機の予防着陸の頻度はかなり多いのか、あるいは同じぐらいあるのか、そのことも示していただきたいと思います。防衛庁からお願いします。
西川政府参考人 先生今お尋ねの、F15機の予防着陸を自衛隊の方でやっているのかどうかということでございますが、F15戦闘機を含めまして航空自衛隊の飛行機、固定翼機でございますが、いわゆる事故防止等のため、あらかじめ決められておるスケジュールを変更して着陸する、こういう場合かと思いますが、これについては、航空自衛隊では予防着陸という言葉は使っておりません。ですので、予防着陸についての数字は何件かと言われると、そういうものはとっておりません。
 ただ、他方で、こういう固定翼機が、飛行機が、訓練中等に機長等が計器に異常を感じるとか、そういうことで着陸する場合がございます。これは緊急状態であるかまたはそのおそれがあるという判断をした場合に行いますが、これは国土交通省が定めます基準等がございまして、この基準に従って近傍の飛行場に優先的に着陸が許可されております。
 こういう、優先的に許可、管制上の措置がとられるという、この数字はございますので、この数字でございますれば、F15戦闘機につきましては、優先的に着陸した回数は平成十二年度で約三十件ございます。それから、十三年度で約四十件。本年、十四年度は、九月一日現在でございますが、約二十件。こういう数字がございます。
 なお、御質問の、米軍のF15戦闘機による訓練中の予防着陸回数はということでございますが、ちょっと数字は承知しておりませんので、そこは答弁しかねます。
 以上でございます。
東門委員 済みません。防衛庁、西川運用局長、これはF15戦闘機の優先着陸、いわゆる緊急着陸みたいなものがその数字、平成十三年で四十件、ことし九月一日現在で二十件というのはF15のことですね。確認だけ。
西川政府参考人 そうでございます。
東門委員 そうしますと、私が最後の方で聞きました、米軍機の予防着陸の頻度と自衛隊と比較した場合と私申し上げたんですが、その件は、外務省の方では把握しておられるんでしょうか。
海老原政府参考人 先ほど御答弁申し上げましたように、予防着陸というのは米側の分類ということになるわけでございまして、それでは米側として予防着陸がどのくらいあるのかということにつきましては、現在、当方から在日米軍に対しまして統計の有無につきまして照会中でございまして、回答を待っているところでございまして、回答があり次第御答弁を申し上げたいというふうに考えております。
 なお、自衛隊との比較ということでございますが、今の防衛庁の方の御答弁を聞いておりますと、そもそも予防着陸という概念がないということのようでございますので、これは、当然のことながら、ちょっと比較を申し上げるのは困難であるということになると思います。
東門委員 予防着陸、緊急着陸、どっちであっても私は構わないんですが、それが本当に実際に飛び交っているところの住民にすごい不安を与えている、恐怖感を与えているという事実だけはわかっていていただきたいと思うんです。
 日本の自衛隊機も、九月一日現在で、ことし二十件ある。結構あるんだなということを今感じましたけれども、米軍機は、実を言うと、九月、十月だけでも十五回ぐらいあるんですよ。九月、十月両月でです。一月からすると私はどれくらいになるかわかりません。ぜひ数字を早目にお知らせいただきたいと思います、何件あったかということですね。
 進みますけれども、米国の議会調査局が今月、米軍機の安全性に関する調査報告書を発表したとのことです。その報告書によりますと、過去二十年間の米軍機の重大事故の発生率は、民間航空機の八十一倍であり、しかも、最近改善傾向にあったものが、二〇〇二会計年度は一転して悪化したとされており、沖縄での状況と符合します。
 事故発生率が悪化した原因として、報告書は、高密度の訓練、軍用機の老朽化、人為的ミスの三点を挙げており、テロとの闘いが訓練の激化を招き、整備などにおいて十分な経験のない人員が重要な任務につき、事故を増加させた可能性があることを指摘しています。
 これが事実だとすれば、沖縄は、現在非常に危険な状況にあると言えます。政府は、人命にかかわる重大な事故が発生する前に、十分な整備要員の確保など、目に見えるような事態の抜本的改善を米国に要求すべきであり、それが担保されるまでは、先ほども申し上げましたけれども、飛行訓練の中止、もしくは大幅な縮小を求めていくべきであると思います。
 大臣の見解、その件に関してお伺いしたいと思います。
川口国務大臣 先ほど局長がお話をしましたように、米軍が事故を起こさないように、我が方としても、そういったことがあるときに、原因究明あるいは再発防止について申し入れ、米軍側にしかるべく対応をとってもらうということがまず大事であると思います。
 その上で、それを超えて、一般的に米軍の飛行をやめてもらうということを言うべきかどうかということについてですけれども、我が国は日米の間で安全保障条約を持っているわけでございまして、これが我が国の安全確保に非常に大きく資しているということであると思います。そういったことを考えたときに、アメリカ軍の飛行機が訓練のために飛ぶ、あるいはほかの必要があって飛ぶということをしないという状況、仮にそういうことがあるといたしますと、我が国の安全確保にも大きな支障となりかねないという問題があると思います。
 したがいまして、この米軍の事故の問題ということは、先ほど私も申しましたように、粘り強く米軍に対して働きかけをしていく、対応をするように働きかけをしていくことが重要であると思います。
東門委員 その件について、何か時間を気にしながらの質問なのでなかなかうまくいかないのですが、最後の質問になるのかな、時間がないようです。
 八月二十一日のF15の墜落事故に際しては、またしても、米軍からの通報が四時間もおくれました。地位協定の運用改善や三者連絡協議会で事件、事故の迅速な情報提供を約束しても、米軍はこの約束を一向に守らない。政府は、守らせることはできない。政府は、運用改善で迅速な対応ができると常々言っていますが、運用改善でどんな取り決めを行っても、守られなければ何の意味もないじゃありませんか。政府は、八月の墜落事故に際しての通報おくれをどのように受けとめているのか。やはり、条約上の義務として、迅速な通報を地位協定に明記する必要があるのではないかと思います。大臣、いかがでしょうか。
川口国務大臣 地位協定について運用の改善をやっていくことが重要であるということは、再三再四申し上げているとおりでございまして、それぞれの件について、もし通報のおくれその他の問題があれば、その都度米側に申し入れていく。地位協定については、その時々の問題に機敏に対応していくということが大事だと思いますので、まさに運用の改善をやっていくということであると思っています。
東門委員 大臣、率直に伺います。
 運用の改善は本当になされていると、御自身、お思いですか。今、私、るる事故の件も申しました。そして、これまでいろいろ、この委員会で質疑をしてきました、質問してきました。その中で、常に同じ答弁が返ってくる。私、とても不思議なんですよ。本当に大臣御自身、心から、運用の改善、それは守られているとお思いですか。運用の改善が守られていて、どうして迅速な対応が返ってこないのか、なぜでしょうか、それをお聞かせください。
川口国務大臣 運用の改善をするための努力、これは相手があるということでございますけれども、話し合いをして運用の改善をしていくということが、問題に機敏に対応するという上で重要であると思いますし、政府としても、そのための努力を今までもしておりますし、今後とも努力を積み重ねていきたいと考えております。
東門委員 時間ですので終わりますが、一言だけ申し上げたいと思います、質問ではありませんが。
 運用の改善は、私は、守られてない。機敏に対応する、果たして外務省、本当に胸を張ってそう言えるのでしょうか。住民には、県民には全然見えないんですよ。ですから、地位協定を抜本的に見直していく、それが大事なんだ、そうしなければ何も変わらないんだということを申し上げて、私の質問を終わります。
 ありがとうございました。
池田委員長 次回は、来る十一月一日金曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後零時七分散会


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