衆議院

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第4号 平成14年11月13日(水曜日)

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平成十四年十一月十三日(水曜日)
    午前九時十四分開議
 出席委員
   委員長 池田 元久君
   理事 今村 雅弘君 理事 嘉数 知賢君
   理事 河野 太郎君 理事 水野 賢一君
   理事 首藤 信彦君 理事 中川 正春君
   理事 上田  勇君 理事 藤島 正之君
      伊藤 公介君    植竹 繁雄君
      小西  理君    高村 正彦君
      新藤 義孝君    武部  勤君
      土屋 品子君    松宮  勲君
      宮澤 洋一君    伊藤 英成君
      金子善次郎君    桑原  豊君
      前田 雄吉君    吉田 公一君
      丸谷 佳織君    松本 善明君
      保坂 展人君    松浪健四郎君
      鹿野 道彦君    柿澤 弘治君
    …………………………………
   外務大臣         川口 順子君
   内閣官房副長官      安倍 晋三君
   防衛庁副長官       赤城 徳彦君
   外務副大臣        茂木 敏充君
   外務大臣政務官      新藤 義孝君
   外務大臣政務官      土屋 品子君
   会計検査院事務総局第一局
   長            石野 秀世君
   政府参考人
   (内閣官房内閣参事官)  小熊  博君
   政府参考人
   (防衛庁防衛局長)    守屋 武昌君
   政府参考人
   (外務省大臣官房長)   北島 信一君
   政府参考人
   (外務省大臣官房参事官) 齋木 昭隆君
   政府参考人
   (外務省総合外交政策局長
   )            西田 恒夫君
   政府参考人
   (外務省アジア大洋州局長
   )            田中  均君
   政府参考人
   (外務省北米局長)    海老原 紳君
   政府参考人
   (外務省欧州局長)    齋藤 泰雄君
   政府参考人
   (外務省中東アフリカ局長
   )            安藤 裕康君
   政府参考人
   (外務省経済協力局長)  古田  肇君
   政府参考人
   (外務省条約局長)    林  景一君
   政府参考人
   (国際協力銀行総裁)   篠沢 恭助君
   外務委員会専門員     辻本  甫君
    ―――――――――――――
委員の異動
十一月十三日
 辞任         補欠選任
  中本 太衛君     小西  理君
  東門美津子君     保坂 展人君
同日
 辞任         補欠選任
  小西  理君     中本 太衛君
  保坂 展人君     東門美津子君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 会計検査院当局者出頭要求に関する件
 政府参考人出頭要求に関する件
 参考人出頭要求に関する件
 国際情勢に関する件


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     ――――◇―――――
池田委員長 これより会議を開きます。
 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。
 国際情勢に関する件調査のため、来る十五日金曜日、参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、その人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議はございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
池田委員長 御異議はないと認めます。よって、そのように決定いたしました。
     ――――◇―――――
池田委員長 国際情勢に関する件について調査を進めます。
 この際、お諮りいたします。
 本件調査のため、本日、会計検査院事務総局第一局長石野秀世君の出席を求め、説明を聴取し、また、政府参考人として外務省大臣官房長北島信一君、大臣官房参事官齋木昭隆君、総合外交政策局長西田恒夫君、アジア大洋州局長田中均君、北米局長海老原紳君、欧州局長齋藤泰雄君、中東アフリカ局長安藤裕康君、経済協力局長古田肇君、条約局長林景一君、また、内閣官房内閣参事官小熊博君、防衛庁防衛局長守屋武昌君、国際協力銀行総裁篠沢恭助君、それぞれの出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議はございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
池田委員長 御異議はないと認めます。よって、そのように決定いたしました。
    ―――――――――――――
池田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。前田雄吉君。
前田委員 おはようございます。民主党の前田雄吉でございます。
 昨晩、イラク議会が国連決議の受け入れを否決いたしました。しかし、フセイン大統領の最終決断にゆだねるという含みを持たせたものでありました。小泉総理も、この決議受け入れを外交的手段で促すということを言われております。
 これに関して、外務大臣、具体的にどのような外交手段で臨まれるのか、また、受け入れの可能性についてお教えいただければと思います。
川口国務大臣 今般、国連安保理で決議が全会一致で採択をされたということについては、これは、国際社会が一致をした態度で、イラクの大量破壊兵器問題、イラクがこれを廃棄する、あるいはほかの今までの国連決議を遵守することが大事であるという態度を示したという意味で、日本としても歓迎をいたしております。
 委員がおっしゃられたような、イラクでそのような決議があり、かつ、最後フセイン大統領にこれを任せるということでございますけれども、我が国としては、イラクがこの関連の安保理決議を履行するということをずっと強く求めてきたわけでございまして、今回の一四四一が全会一致で採択をされた後、十一日ですけれども、新藤政務官及び安藤中東アフリカ局長から、カーシム・シャーキル在京イラク大使館臨時代理大使に対して、この決議を履行することを強く申し入れました。また、バグダッドにおきましても、イラクに出張中の館員から十一日にこの旨の申し入れを行いました。
 今後とも、引き続き可能な限りの外交努力を尽くしていきたいと考えております。
前田委員 受け入れの可能性についてはどのようにお考えですか。
川口国務大臣 我が国としては、イラクがこれを受け入れて、関連の決議をすべて履行をするということを強く望んでおります。
前田委員 次に、北朝鮮の関連の問題でございますけれども、外務大臣は、金大中大統領との会談を含め、日朝協議をされてこられました。この十二月、一月の事実上の米国の重油の供給の代金二十三億円の肩がわりの問題もございますけれども、北朝鮮の核開発を阻止するために、KEDOの枠組みを維持することは非常に大切なことだと考えます。これに対して外務大臣は、本当に具体的な手段として、どのようなことをお考えなのでございますか。
川口国務大臣 KEDOの枠組みというのは、北朝鮮のプルトニウムを使った核兵器の開発をとめる、阻止するという意味で非常に重要な役割を持った枠組みであると考えております。
 これにつきまして、十四日にKEDOの理事会がニューヨークでございまして、ここで今後のKEDOについて話し合いがなされるということでございますけれども、我が国としては、北朝鮮が、この核の問題について、国際社会の要望にこたえて、即時かつ検証可能な形で撤廃をしていくということを行うよう、引き続き日米韓三カ国が連携をして圧力をかけるということが大事であると思っています。KEDOの理事会で、こういった問題について三カ国で、三カ国を含み、ほかの理事国もいますけれども、話し合っていくということになります。
前田委員 ヨーロッパで拉致されました松木さんの遺骨が別人のものであったということが判明いたしております。これに関して、昨晩、再調査を要請するということが上がっておりますけれども、私は、これは北朝鮮が拉致家族及び日本を冒涜することであると思っております。もっと強い姿勢で臨むべきではないかと思っております。例えば、北京で行われています非公式の協議を一時中断するとか、このような強い態度で臨むべきであると考えますが、外務大臣はどのようにお考えでございますか。
川口国務大臣 委員がおっしゃるように、この問題について、最初から北朝鮮側は一〇〇%本人のものであると言ったわけでは必ずしもございませんけれども、別人のものである可能性が非常に強いという科学的な証拠が示されたことについては、これは非常に問題であると思いますし、我が国として、この問題については北朝鮮側に対して強く遺憾の意を表明するべきだと考えております。
 ただ、おっしゃっていらっしゃるような中断云々ということでございますけれども、最終的に重要なのは、この拉致の問題も含め、それから核の問題も含め、国際社会が重要だと思っていること、我が国が懸案であると考えていること、さまざまな問題が解決の方向に向かっていくということが重要であると考えています。
前田委員 さて、これから、税金のむだ遣い、チャイナスクール、そしてODAの問題についてお伺いしていこうかと思っております。
 せんだって、石井紘基代議士が刺殺されました。その葬儀の日に私も暴漢に襲われた次第ですけれども、幸い、けがはしましたが命はこうしてありますので、これから石井紘基代議士の遺志を継ぎまして、税金のむだ遣い、これと向かっていきたいと思っております。
 そこで、外務省、会計検査院が調査をされた、在外公館百九十八のうちの二十一カ所で、何と、在外公館が取得しました土地の六万平方メートル、約十億円以上、これが未使用のままである。これは明らかに税金のむだ遣いではありませんか。この件が十一月の末に会計検査院の報告でしっかり上がってくると思いますけれども、やはりこうしたむだ遣いがある以上、これに対して厳しく対処していく必要があると思います。
 我々国会議員の給料も一〇%カットされ、それを何百人と集めても十七億円であります。この十億円というのは、非常に国民が苦しい生活をしている中で重いものであると思いますけれども、まず会計検査院、この報道がなされておりますけれども、これは事実でございますか。
石野会計検査院当局者 お答えします。
 検査院では、毎年、十数カ所の在外公館に実地に赴くなどいたしまして、会計実地検査を行ってきているところでございます。一般的に申し上げまして、在外公館におきまする会計実地検査におきましては、物品や役務の調達が会計法令等に基づいて適切に行われているか、あるいは在外公館で管理しております国有財産や物品が適切に管理されているかなどに着目して検査を実施してきているところでございます。
 今委員御指摘のありました報道があったということについては十分承知はしておりますけれども、現在、その検査結果につきましては十三年度検査報告として取りまとめ中ということでございますので、現段階では言及することは差し控えたいというふうに思います。
前田委員 では、この報道の中に、美術品百四十点が、これはロシア、フランスの大使館にあったものでございますけれども、この購入経費がわからないものがある。ここにロシア大使館の所有の美術品リストがありますけれども、ここに載っていないものがあるわけでございますね。百四十点もある。これは全くずさんな管理でしかあり得ない。
 そこで、会計検査院は、これまでの過去の検査において美術品に関してどのような検査をされてきたのか、また、何か外務省に対して指摘された事態があったのかどうか、伺いたいと思います。
石野会計検査院当局者 ことしの検査については今申し上げた状況でございますが、これまでの検査でどういう状況であったのかということにつきましては、美術品を含みます物品の管理につきましては、やはり法令等に従って適切な管理が行われておるのかという観点から検査を実施してきております。
 ただ、過去の検査報告の中で指摘したという事態はございません。ただ、実際に実地検査に赴きました際に、そういった物品の管理を適切に行うようにということで、その場で注意を喚起した例はございます。
前田委員 こうした、過去においても適切な管理を行うようにという指摘があったわけでございます。
 モスクワの大使館にしても、百億円、これは七月の委員会で取り上げておりますけれども、各委員がいろいろな意見を述べ、それにもかかわらず五億円の削減でしかない。全く、外務省のこうした金銭感覚がどんなものであるかを疑わざるを得ません。
 外務大臣、この土地の十億円のむだ遣い、そしてモスクワ大使館にしてもまだ五億円の削減でしかない、この現状に対してどのようにお考えでございますか。
茂木副大臣 前田委員の方から、まず、ロシア大使館の方、五億円の削減という御指摘でありましたが、我々の理解としては六億円という形でございます。
 それから、冒頭委員の方からお話のありました、石井前議員の遺志を継いで税金のむだ遣いと徹底的に闘っていくと。我々も思いは一緒でありまして、国民の税金を使わせていただいて外交をする、そういう姿勢をいつも忘れてはいけないな、こんなふうに考えております。
 ただ、委員御案内のとおり、在外公館の維持管理、そしていろいろな情報の収集活動等々、一定の経費はかかる、そのバランスということに当然なってくるのではないかなと。また、国によりましていろいろな世情の変化等々がございます。
 会計検査院の方から最終的な報告、しかるべきタイミングで承り、必要な改善措置はとってまいりたい、こういうふうに考えておりますが、例えば、その国の政情が変化したことによって、実際はつくろうと思ったものがつくれなくなっているとか、こういうものがございます。そういう中で、今後の状況を見た上で、施設建設を行うことが可能なものについてはできるだけ早く建設をする、それで当面不可能なものについては売却をするとか、そういう手続をとっていきたい、こんなふうに考えている次第であります。
 また、在ロシア大使館の建設につきましても、モスクワの場合、御案内のとおり、ほかの先進国と若干違った状況等々ございまして、どうしてもこの特殊性から全体的に高額になる、こういうところはあるわけでありますが、しかしその一方で経費の節減は必要でありますから、冒頭申し上げましたように、建材、そして外装、また福利厚生施設、こういうところの見直しを行うことによりまして、六億円の経費節減措置、これをとらせていただいた次第であります。
前田委員 次に、私は、日本外交に暗い影を落としている外務省の官僚の皆さんの集団、いわゆるチャイナスクールがあると思うんですね。
 九月の三日に、日本大使の公邸のそばで脱北者の事件が発生しております。これは隣接するドイツ人学校に逃げ込むという事件であったと思いますけれども、これについて詳しく御説明していただきたい。
 また、瀋陽事件以来、公邸にも政治部のスタッフが泊まり込み、ローテーションをしていた。これが拡大されて、全館員のローテーションになったということでございますけれども、外は御案内のとおり中国の武装警官が警備をしているわけでございまして、これは明らかに、阿南大使が自分で直接かかわりたくない、この姿勢があるんではないでしょうか。
 大使公邸におけるローテーションも含め、九月三日の脱北者事件について御説明いただきたいと思います。
田中政府参考人 お尋ねの九月の三日の事件でございますけれども、大使公邸とドイツ人学校というのは約二百メートル程度の距離がある場所でございますけれども、九月の三日に北京のドイツ人学校に脱北者十五名が駆け込み、亡命を要請したということでございます。この十五名は、九月の十二日朝、韓国に入国をしたということでございます。
 それから、お尋ねの、瀋陽事件以降、公邸に館員が泊まり込んでいるのではないかということでございますけれども、御案内のとおり、相次ぐ北朝鮮からの脱出者の駆け込み事件、とりわけ瀋陽総領事館事件の発生を契機に、在中国日本大使館では、事務所や公邸の警備体制の見直しを図り、所要の措置を講じてきたということでございます。
 委員御指摘の、館員による泊まり込み体制でございますけれども、大使公邸には夜間、大使夫妻と中国人警備員のみとなるということで、緊急事態が十分予想されることであったものですから、連絡体制に万全を期すという観点から、本年の五月の十一日から八月四日までの期間に限ってとられた措置であると。五月の十一日から六月の中旬までは政治部の館員が一名、六月の中旬から八月の四日までにつきましては総務部と中国語ができる館員いずれも一名が泊まり込んで、万が一の事態における連絡体制をつくったということでございます。
前田委員 では、瀋陽事件の折の岡崎元総領事、現在、いつからどこに勤務しておられますか、官房長。
北島政府参考人 岡崎前瀋陽総領事でございますけれども、本年九月一日付で、外務省を休職の上、財団法人交流協会において技術協力部長としての業務に従事しております。
前田委員 今官房長がおっしゃったように、岡崎総領事は、日本台湾交流協会、ここに勤務されているわけであります。
 我が党の中川委員が七月の二十六日に阿南中国大使に対して質問した中に、これはもちろん阿南大使が大連に戻れと岡崎さんに対して指示をしたということを認めた上での質問でございますけれども、その中川議員の質問で、大使がこうやって戻れと言ったことを、その指示を隠すために、大使は直接電話で、自分は竹内次官と同期だから君のことは悪いようにしないということを岡崎総領事に言って、それで、本省の明白な合意もないままに、在台湾の交流協会のある地域の事務所の所長、これは総領事のポストに準じるものでありますが、これを内々に考えてやる、このポストと引きかえに、これまでの大使が関与したことを隠してほしい、こういうことを取引しようとしたという内部告発のことを質問されております。
 これに対して阿南中国大使は、「岡崎総領事の人事のことでございますが、」中略、「確かに竹内次官は私の同期でございますけれども、そういう人事を取引材料にというようなことはあり得ないことでございますし、毛頭ございません。」と答えております。
 これは一体どういうことですか。結局、舌の根も乾かぬうちに、もう全くそのところに入っているわけですね。これは、私どもの調査ですと、八月から岡崎元総領事は現職にあられるということですけれども、一体どういうことですか、官房長。
北島政府参考人 本件人事は、岡崎前総領事のこれまでの経験等を勘案した上で、適材適所の観点から決定されたものでございます。日付は、九月一日付ということでございます。
 さらに、本件人事につきまして阿南中国大使の働きかけ云々という、そういう事実はございません。
前田委員 私の友人が電話で当協会に確かめました。これはテープがとってあります。そこで、問い合わせに対して、そこの職員がどう答えたかというと、外務省の内示により八月から働かれています、そういうお答えをいただいております。
 この外務省の内示というのは何ですか、官房長。
北島政府参考人 九月一日付で、休職の上、財団法人交流協会において技術協力部長としての業務に従事しているということでございます。
前田委員 それでは全く答えになっていませんよ。この内示というのは何ですか、だれが出したんですか、官房長。
北島政府参考人 内示といいますのは、実際の発令に先駆けて、いつ付でこういう仕事をしてほしいということを人事当局が本人に告げるわけです。それが内示でございます。
 お尋ねの、いつから交流協会において技術協力部長としての業務に従事しているかという点につきましては、先ほど申し上げたとおり、九月一日付ということでございます。
前田委員 これは全く答えになっていませんよ。だれが出したかということですよ。
 やはり、こうしたことがある以上、この阿南大使をトップとするチャイナスクールは外務省の人事にも深くかかわっている。しかし、七月の末の委員会で指摘して、毛頭ございませんと言っておきながら、そして八月から勤めているというのは、これは委員会軽視じゃありませんか。私は、こうしたことは絶対にあっちゃいけない、外務省、外務大臣に対して、強くこの点をお願いしてまいります。
 次の問題が重なっておりますので、先に進みますが、脱北者の支援のNGOが拘束された問題でございますけれども、加藤博さんですね。
 問題は、七日間、中国当局が事情を知るためにということで、こちらに連絡してこなかった。これは明らかに、加藤さん本人も三回も連絡してくれという意思を示している以上、ウィーン条約の三十六条一項の(b)、「当該国民の要請があるときは、その旨を遅滞なく当該領事機関に通報する。」これに違反しているんじゃありませんか。外務省は、日本人、我が邦人のことを守らずに、中国の側に立っているじゃありませんか。それで中立的な立場なんて言っている。そんな余裕はありませんよ。邦人を保護することが第一の役目じゃありませんか。
 これは、昨日、中国課長に私が尋ねたところ、中国当局がテープとビデオを持っているということでございますので、私は、このテープ、ビデオを日本側に渡してもらいまして、この点は明らかにして、中国側に厳しく抗議すべきだと考えますが、いかがでしょうか。
田中政府参考人 外務省といたしましても、加藤さんが帰られてすぐ、外務省において加藤さんの中国滞在中の事実関係等について照会を行いました。その際、加藤さんからは、中国当局に拘束されていた期間中、中国側に対して、日本大使館への連絡を求めていたという旨の説明がございました。
 一方、委員御指摘のとおり、中国の外交部のスポークスマンは、同日七日の記者会見において、取り調べの期間中、加藤氏からは大使館または総領事館への通報要請は一貫してなかったということを述べているということでございます。
 私どもは、加藤さんの行方がわからなくなって以降、関係の大使館、総領事館を通じて照会をいたしましたし、それから、中国側に拘束がされているという際には、かなり高いレベルで釈放を申し入れた。中国側は、国内法には違反をしているけれども刑事訴追をしないということで、国外に退去という措置をとったということでございました。
 こういう、先ほど申し上げた説明、加藤さん御本人から聞いたことと中国側の説明が食い違っているということでございます。現在、中国側に対して、その事実関係の解明をしようということで申し入れを行っているということでございます。事実関係についてより確認が行われた場合に、政府としてもきちんとした対応をしたいというふうに考えております。
前田委員 中国側がテープ、ビデオを撮っていると言っているんだから、それを要求すればいいじゃないですか。どうですか。
田中政府参考人 これは我が国も同じでございましょうが、まさに中国は、中国サイドに立ちますれば、中国の国内法に基づく措置としてやっておるわけでございますので、我々としては、外交的に中国に対して事実関係の照会をするということをしているということでございます。
前田委員 これは、明らかにそうやって向こうで実際の取り調べの風景を撮って、テープ、ビデオがあるんだったら、本当にそんな逃げ腰じゃなくて、しっかりとそれを要求すればいいじゃないですか。重ねて。
田中政府参考人 私どもとして、中国側がそういうテープを持っている、あるいはビデオを撮っているということを公式に聞いているわけではありません。ですから、まずは中国側に事実関係を確認する。それがどういう答えかというのは、やはり外交ルートで公式にそういう措置をとるということが重要であろうというふうに考えております。
前田委員 では、このテープ、ビデオの存在をしっかり向こうで確かめて究明してくださいよ。我が国の、邦人の利益がかかっていると思いますから。
 そして、脱北者の日本人妻とその家族二十名が、九四年ごろから外務省から極秘に渡航書の発行を受けて帰国しているということでございますけれども、やはり今後これは増加していくんではないか、また、極秘の帰国者は公的な支援を受けられない、そんな問題を抱えていると私は思います。日本政府として明確な対応が必要かと考えますけれども、いかがですか。
田中政府参考人 私ども、確かに北朝鮮から脱北をしておられる人々の中に日本人の配偶者の方々がおられるということは事実だろうというふうに思います。私どもとしても、邦人保護という観点からできる限りのことをするというのが責務であろうというふうに考えております。
 ただ、個々の、どういう形でどういう方を支援しているかということについては、これが明らかになりますと、いろいろな意味で、本人の問題もございましょうし、中国政府との関係もございますので明らかにすることはできないと思いますが、私どもとしては、今後ともこういう邦人の支援ということに対しては全力をもって取り組んでまいりたいというふうに考えております。
前田委員 ぜひ、今後増加すると思われますので、我が国の邦人のために、外務省、しっかりと働いてください。決してチャイナスクールにゆがめられるようなことがなく、日本の外交を適切に行っていただきたいと思います。
 今度は、開発援助の関係の質問に移らせていただきます。
 まず私は、国際協力銀行さんが二〇〇二年の四月につくられました環境ガイドラインは、十分な透明性を確保したプロセスの上で幅広い意見を集めて、環境アセスメントの当該国での公開と影響住民との協議の義務づけなどを示した、国際的にも非常に評価の高いガイドラインができたなというふうに思っております。
 そこで、この十月の外務省を変える会の提言の中に、このJBICのガイドラインを踏まえて、JICAの、国際協力事業団のガイドラインを検討するということが含まれておりました。無償の資金協力をめぐっては、いわゆる2KR、農薬がモザンビークの港に三年も積み残されているとか、あるいはミャンマーのバルーチャン第二水力発電所の問題等々さまざまな影響を懸念する、これは環境を破壊するのではないかという影響を懸念する声が新聞、雑誌等で取りざたされております。
 このJBICのガイドラインを踏まえた、国際協力銀行のガイドラインを踏まえたJICAのガイドラインづくり、これに無償資金協力全体を含むべきだと私は考えますけれども、外務大臣、いかがお考えでしょうか。
川口国務大臣 無償資金協力におきましては、個々の案件ごとにJICAが実施をする調査においてJICAの環境ガイドラインを適用いたしまして、環境配慮を行うということにいたしております。委員がおっしゃられましたように、変える会を受けてことしの八月に発表した外務省の改革についての行動計画にのっとりまして、JICAにおいてその改革の作業を進めているところでございます。
前田委員 国際協力事業団の環境ガイドラインの策定に当たっても、やはり検討会の公開性、ホームページで紹介する等、十分な透明性を確保したプロセスで幅広いステークホルダーの意見を取り入れ、十分な時間をかけてやっていただきたいと私は思いますけれども、何か十二月ぐらいから始める予定であると伺っております。ぜひ、関係省庁はもちろんのこと、NGOまで含めた幅広さが、あるいは透明性が必要であると考えますけれども、外務大臣はいかがお考えですか。
川口国務大臣 委員がおっしゃるとおりだと思います。環境ガイドラインの改定の作業においても、こうした透明性を確保していくということをきちんと考えて実施する、そういうことだと思っています。
前田委員 今度は、国際協力銀行さんの異議申し立ての手続についての質問に移らせていただきます。
 本年の八月二十九日の参議院の決算委員会で、尾辻財務副大臣は、「異議申立制度が世界銀行のような、」中略、「国際機関と同水準の公平性、透明性、説明責任を確保したものになることが重要と認識」しているというお話がございました。また、国際協力銀行の副総裁の神氏も、「国際機関あるいは他国の政府機関の例を十分に参照しながら、幅広い議論を積み重ねた上で質の高い仕組みを構築していきたい」、こういう御答弁をいただいております。
 しかし、国際協力銀行は、異議申し立てを受け付ける時期に関して、世界銀行などの国際機関と全く異なる主張をされてきております。何かと申し上げますと、融資契約調印前の異議申し立ては受け付けないということを言われております。私が前に御紹介しました国際機関の例を十分に参照しながらということと全く逆ではありませんか。
 融資契約調印前に異議申し立てを受け付けないという制度は、国際的な機関の水準を満たしたものとは言えないと私は思いますけれども、外務大臣はいかがお考えですか。また、協力銀行総裁はこの件に関していかがお考えですか。お二方に意見をお願いします。
茂木副大臣 御指摘の点につきまして、異議申し立ての受け付け期間が今現在主要な論点になっている、このように我々も承知をしております。
 そこの中で、この点につきまして、世銀というお話がございました。多分、MIGAも含んでということだと思うんですが、こういった国際機関の例も参考にしながら、どのような時点から受け付けを行うかについて検討すべきだ、そのように我々も考えておりますし、何にしても、先ほどNGOという話もございましたが、関係者が納得するような結論を出していただきたい、そういうことを外務省としても期待をいたしております。
篠沢政府参考人 お答え申し上げます。
 異議申し立ては、もう御承知のことでございますが、本行のガイドラインの遵守あるいは不遵守というものについて異議申し立てが行われるということでございます。その遵守とか不遵守ということになりますと、これは本行としての融資の意思決定時点でございます融資契約の調印時に確定をするということに論理的にはなってくるわけでございます。そこで、私どもとしては、調印時点というものが異議申し立ての受け付け開始時点、こう考えるのが適切であると考えてきているところでございます。
 例えば、国の類似する制度につきましても、行政不服審査法あるいは国税通則法等での不服申し立て制度でも、行政機関による処分行為というものが対象であるので、処分があったところから不服申し立てというものが動き始めるということでございますが、それと同様の考え方で今まで整理をしてきておるところでございます。
 さらに、早い時期からいろいろ案件についての御意見が出てくるということはもちろん予想しているところでございまして、私どものガイドラインにおきましても、今申しました融資の意思決定前の段階から、案件についてのいろいろな情報提供というものを幅広く申し上げる。例えば、カテゴリー分類でありますとかあるいは環境影響評価書の入手状況などについても広く情報公開していこうと思っておりますし、また、異議申し立てに類する御意見というものが出てまいりました場合には、その御意見は投融資を扱っております部門にきちんと移送いたしまして、総裁が最終的な案件の意思決定をする際に十分これを参酌して、投融資することが適切か否かを確認するということまで考えているところでございます。
 今後とも、パブリックコンサルテーションの機会もございます。恐らく、今先生からおっしゃられました問題は、今後とも集中的に議論がされるかと思いますが、なお私どもは、それらの御意見も十分注意深く伺いながら考えてまいりたいというふうに考えております。
前田委員 融資契約の調印前の異議申し立て、今総裁からお話を伺いましたら、法律的には、異議申し立ては契約時点から発生するということでございますけれども、実態は、その前に環境調査等をしっかりと公開していただけるということなものですから、その実態に即してよろしくお願いいたしたいと思います。
 また、情報の公開性でありますけれども、現在の国際協力銀行の異議申し立て手続の案は、公開される情報が、環境担当審査役の報告書、それから投融資部署の意見、年次活動報告書、これに限られていますね。この現在の案では、ほとんど情報が公開になっていないのと同じではありませんか。私は、異議申し立てを受け付けた時点から最終報告が出るまで、もっと節目節目で情報公開を徹底すべきではないかと考えますけれども、外務大臣、いかがですか。そしてまた総裁、お話を伺わせてください。
茂木副大臣 情報公開に関しまして、個人情報であったりとか法人情報であったりとか、法律に基づきまして不開示とすべき項目が含まれているかどうか、そういう検証は当然必要でありますが、基本的には、委員御指摘のとおり可能な限り情報公開していく、こういうことであると思っております。
 それから、先ほど異議申し立ての受け付け期間のところでも申し上げましたが、今の議論の中で関係者の皆さんが御納得いただけるような結論を出していく、そういうことを期待したいと思っております。
篠沢政府参考人 情報公開につきましては、先生おっしゃいましたとおり、私どもといたしましても、この制度の透明性を高めるために可能な限りこれを進めていくということは重要なことだと思っております。
 そこで、異議申し立て受け付け担当部門、いわゆる審査役と今おっしゃいましたが、この独立的な存在であります審査役の作成する最終報告書の原則公開ということを決めているところでございます。
 他方、最終報告書に至ります前、一つの異議申し立てが行われまして、それが審査のプロセスにかかっております間に、その過程をずっと公開していくということになりますと、これは借入人の競争上の地位、そのほか正当な利益、あるいは私どもと借入人との間の信頼関係を阻害するといったような問題が出てくる。あるいは、審査をしております審査役という中立的な部門自身の中立性にいろいろ影響が出てくるといったようなことにかんがみまして、私どもとしては、調査結果が判明していない時点で情報公開を一つ一つしていくということには不適切な部分があるかなと考えてきたわけでございます。
 ただ、そういうことでいつまでも情報が公開されないということではいけませんので、申し立ての受理から最終報告書作成までの期間を三カ月というふうに区切る、そういうことで情報公開、最終報告書の早期公開というものを考えているところでございます。
 なお、情報公開のあり方につきましては、これは大事な論点であると思いますので、これもパブリックコンサルテーションでの御議論等も踏まえながら引き続き、先ほど外務副大臣からお話がございましたような姿勢も入れまして検討してまいりたいと思っております。
前田委員 時間が来まして、最後の質問ですけれども、前委員会のときに私が阿南中国大使に、いわゆる二千二百年の歴史を持っているユネスコの世界遺産の都江堰、これが日本の資金協力による紫坪鋪ダムの建設により影響を受けるのではないかといったことを質問しまして、中国側の史跡への影響調査、これを阿南大使が調べると言われましたけれども、いまだに私の手元にその調査の結果が来ておりません。ぜひ、この影響についてどうなっているのか、いち早くお教えいただきたいと思います。
古田政府参考人 御答弁申し上げます。
 御指摘の本年七月の外務委員会で質疑のありました後に、私どもといたしましては、本件にかかわる中国側の対応状況につきまして、改めて先方の関係機関に確認をしてまいったところでございますが、現時点で判明していることについて、この場をおかりしまして御報告申し上げます。
 第一に、ダム建設サイトそのもの及びその周辺の住民の移転は既に完了しております。これまでのところ、この移転に関して具体的な住民の反対というものは見られないというふうに承知しておりますし、移転した住民の方々の移転後の生活についても、収入の増加等の改善があったというふうに聞いております。
 また、水没予定地につきましては、現在、詳細移転計画を策定中でございまして、来年の上半期には担当当局の承認を得る方向でやっているというふうに承知しております。
 第二に、環境影響評価報告書において、都江堰への影響を防ぐための対策が提案されておるわけでございますが、中国側では、この提案に基づいた対策の具体化に向けた作業を開始しておりまして、引き続き、都江堰を保護し活用するべく必要な対応を行っていくというふうに見られるわけでございます。
 第三に、都江堰から三百メートルの地点に建設が予定されておりましたダム、いわゆる魚嘴ダムでございますが、これにつきましては、建設する予定にないということを確認いたしております。
 いずれにいたしましても、本件につきましては、今後とも、中国側の対応を注視しながら慎重に対応していくこととしたいと考えております。
前田委員 時間が来ました。ありがとうございました。
池田委員長 次に、首藤信彦君。
首藤委員 まず最初に、朝鮮問題、北朝鮮と日本との国交正常化、そうした問題について、日本の外交姿勢について、外務大臣にいろいろお話を聞かせていただきたい、そういうふうに思っております。
 言うまでもなく、この問題の大きな問題の一つは核開発疑惑ということでありまして、この問題を解決せずに日朝の正常化というのはないんだ、それは当然我々の理解するところであります。
 そこで、それを進めるために、核開発をやめてもらうということでKEDOという機構をつくり出したということでありますが、これに関しまして、アメリカは、北朝鮮がKEDOの合意を裏切って極秘にウランの濃縮プロセスを進めていたというその証拠を北朝鮮側に突きつけて、そして、このKEDOの枠組みそのものを慎重に再検討しなきゃいけないということを言い始めたわけであります。
 そこで、問題となるのは、北朝鮮側にとっても、それはもう驚天動地の世界であると思いますけれども、それは我が国にとっても全く同じだと思うんですね。そういうことになりますと、今まで我々が進めてきた対北朝鮮への政策というものは、もう根本的に見直しせざるを得ないと思うわけです。
 このきっかけとなったウランの濃縮プロセスの計画を北朝鮮が進めていた。アメリカは、それに証拠があると言っているわけですけれども、では、日本側はそれをどのように認識しているのか。例えば、アメリカの証拠が正しいと言っているのか、あるいは、アメリカの証拠はガセネタであると言うのか、そして、そういう日本の政策判断に何らかの根拠をお持ちなのか、それをまず外務大臣にお聞きしたいと思います。
川口国務大臣 北朝鮮が行っていると米国が言っております核兵器の開発のためのウラン濃縮プログラム、これについては、日本政府として米国側から話は聞いております。
 これについて、委員の御質問にある、これが本当なのかどうなのかということでございますけれども、これは、その情報の性格上、具体的に我々がどこまで聞いているかということについてお話を申し上げるのは差し控えさせていただきたいと思いますけれども、我が国の政府といたしましても、この問題に対しては重大な懸念を持っているわけでございます。
首藤委員 外務大臣、ちょっと話が違うんですよ。我が国は独立国でありまして、アメリカの属国でも、その支店でもないわけですね。
 要するに、私がお聞きしているのは、アメリカが証拠を出してきた、それを正しいかどうか我々が判断できなかったら、それは、これからの対北朝鮮政策に対しても、目隠しして走れと言うに等しいわけですね。ですから、アメリカがそういう証拠を出してきたなら、アメリカの証拠が正しいのか間違っているのかを我々がはっきり判断できないといけないんですが、それが判断できないというわけですね、外務大臣。
川口国務大臣 判断をできないと申し上げているのではなくて、我々としてこの問題について重大な懸念を持っている、そう申し上げているわけです。
首藤委員 いや、外務大臣、これは大変なことなんですよ。
 アメリカは、これからイラクに関してもいろいろなことを言ってくるわけですね。イラクはこんなことをやっています、こんな兵器を開発していました、こんなミサイルを今つくろうとしています、どこかの地下倉庫にこんなものが眠っています。我々は、何もそれを検証できないまま、アメリカさんが言ってきたら、はあそうですか、じゃ、あなたさんと一緒に悪いやつをやっつけましょうということになってしまうわけですね。
 これは、独立国家として、情報、諜報の持てる能力を全部使って日本なりに判断しなければいけないと思うんですけれども、そういう判断をする能力は全く日本にはない。要するに、アメリカに情報は依存していて、そのアメリカの言っていることが本当かどうかは、ちょっと検討してみようというのが外務省の現状だということですね。それは御確認をお願いしたいんです。
川口国務大臣 そういうことはちっとも申し上げておりませんで、我々としてアメリカの情報を聞き、そして我々としても重大な懸念を持っている、そういうことを申し上げているわけです。
首藤委員 外務大臣、私も重大な懸念を持っていますよ。あるいは、日本国のすべての人も重大な懸念を持っていますよ。
 しかし、私たちは、そしてまた外務省は、アメリカが言っていることは本当なのかどうか、アメリカが言っているのは本当かな、うそかな、それでは外交にならないではないですか。今、本当に日本がKEDO問題あるいは日朝交渉、日朝正常化の岐路に立って、どっちを選ぶべきなのか、本当に信用してやるべきなのか、あるいはアメリカの言うなりに、やはりこれはもうだめなのか。この岐路に立っているときに、アメリカさんの言っていることは間違いないだろう、あとは、これが本当かどうかは慎重に考えているではだめなんですよ。
 一体、日本は、このアメリカが提示した証拠、例えばウランの濃縮プロセスの機器をパキスタンから購入している、こういった証拠に対して、それを確認するどういう努力をされておるんでしょうか。外務大臣、いかがでしょうか。
茂木副大臣 アメリカ側から提供されております情報、我々としても検証して、それが根拠がないということであれば、当然、重大な懸念というのは抱かないわけであります。そして、我々として、北朝鮮が核開発のためのウランの濃縮プログラム、これをやっていない、そういう証拠は全く持ち合わせていない。
 ですから、今強く北朝鮮側に主張しておりますのは、目に見える形で、検証できるような形でこれを見せてくれ、こういう主張をさせていただいている次第です。
首藤委員 これは交渉しているのは外務大臣だと思うんですけれども、今、副大臣がおっしゃったような、北朝鮮に対してこの濃縮プロセスの実態を明らかにしろと迫っている。どこの交渉でやっておられますか。どの機会にこの問題を提起されましたか。
川口国務大臣 我が国は、クアラルンプールにおいて、先月の二十九日、三十日、北朝鮮側と会合を持っております。交渉をいたしております。
首藤委員 北朝鮮が、例えば、ウランの濃縮プロセスを、ここにありますよと見せてくれたら、それはもう大変立派なことですけれども、そういうことはないわけですね。
 アメリカ側は、一方では、北朝鮮はKEDOの合意を裏切っている、もうこれは慎重だ、簡単に言えば破棄だ、こういう方向に少しずつ少しずつ動いてくる。我が国は必死になって、韓国と一緒になって、ともかくKEDOの枠組みを守ろう、こういう立場だと思うんですけれども、このままだったら結局、実態がわからないままの北朝鮮、それから、これはもう裏切っているというアメリカの立場、そうしたら、日本はいつまでたっても、何にもわからないままアメリカに盲従していくしかないじゃないですか。どのような手を外務大臣はお考えでしょうか。
川口国務大臣 この問題について、何よりも北朝鮮自身がアメリカに対してそういうプログラムを持っていると自分で言っているわけですね。ですから、我々としては、この問題について北朝鮮側との日朝国交正常化交渉の折に取り上げて、国際社会の懸念を晴らすべく、これは全部の国がそう思っているわけですから、検証可能な方法で、そういうことをやめることが大事であるということを言っているわけです。
首藤委員 いや、外務大臣、はっきり言っていただいてありがとうございました。おっしゃるとおりですよ。
 ですから、アメリカは、これはもう濃縮プロセスをやっていますと。北朝鮮も、いや、実はやっていました、こう言ってきたわけですよ。そこで、我が国の立場なんですよ。だから、要するに、やっているんだろという側と、いや、やっていましたという側がいて、何で、私たちはKEDOの合意をこのまま守っていこうということを言えるわけですか。アメリカは裏切っていると言い、北朝鮮自身が裏切っていましたと言いながら、どうして我々が、KEDOの合意、KEDOの合意と言い、重油を送ろう、KEDOを守ろう、軽水炉を建設していこう、こういうことをこれからもまだ続けようとしているのか。その根拠は一体何なんですか。外務大臣、いかがですか。
川口国務大臣 我が国は、北朝鮮との間で、日朝平壌宣言に従って、これを守りながら、日朝の国交の正常化をやっていく、そのための交渉を始めているわけです。それをやるに際して、日朝間の拉致問題を筆頭とするさまざまな問題を解決していく。同時に、国際社会の懸念をしている核の問題を初めとする安全保障の問題、これを解決して、この地域の平和と安定に資するような形でこれを行っていく、これが大事であるということを言っておりまして、このスタンスについては、国際社会全体の支持を得ているわけでございます。
 したがいまして、これをやるのにどういうアプローチが最も適切であるか。まさにその核の開発をとめる、阻止をするという意味で、KEDOの枠組みというのは、プルトニウムを使って核兵器を開発することをとめるというのに大きな意義を持っているというふうに我々としては考えているということでございます。したがって、KEDOの枠組みについて時間をかけて議論していくことが大事で、今の時点ですぐ壊してしまうとかこれをやめるとか、そういうことは、先ほど申し上げたような方向におけるこの問題の解決に資さない、そういうふうに考えている、そういうことでございます。
首藤委員 今、外務大臣は大変重要なことをおっしゃったわけですよね。一つは、平壌宣言に基づいて粛々とやっておられるということですけれども、平壌宣言が署名された、小泉総理が署名されたわけですが、そのときには、今までもう既に明らかになってきたように、もう既に核開発をやっているということも、小泉さんにケリーさんから伝えられている、アメリカ側からも伝えられている。そういうような状況の中で署名した平壌宣言ですよ。それを外務大臣は、守っていこう、こういうふうにおっしゃるわけです。
 そうすると結局、もうこの状態を見れば、二つのことしかないわけです。一つは錯誤です。要するに、北朝鮮が既にこんなことを密かにやっていることは知らなかったから、ついつい平壌宣言にサインしちゃった。これは錯誤ですから、平壌宣言は無効ですよ。そうでなくて、もう明らかにこのKEDOの合意を裏切っているということを知りながら、国際合意をやっていきますという平壌宣言にサインした。これは国民に対する裏切りじゃないですか。この平壌宣言というのはどっちなんですか。錯誤なんですか、それとも国民に対する裏切りなんですか。この問題は本当に大きな問題だと思うんですよ。
 こうした状況の中で、さらに今問題になっているのが、原油の北朝鮮への搬入ということなんですね。原油の搬入に関しては、アメリカはもうこれは慎重姿勢、十二月以降はこれをやめるということですよね。それに対して日本は、一生懸命原油も送ろう、送ろうとしているわけですね。原油も非常に高価なものでありまして、一月当たりどれぐらい、十一億、十二億ぐらいするんじゃないですか。それがこれから入っていくわけですね。こういう、アメリカがこれからやめようと言っているときに、日本はこれを続けていこうとしている。
 では、これを続けていけばどうなるのか。例えば、KEDOの合意というのが既に前提条件が崩れているのに、何をしようとしているのか。向こうはもう崩した、崩そうとしている。みんなが、周りの直接の関係者が、アメリカも北朝鮮も崩そうと言っているのに、何で日本が、一生懸命、一生懸命、高価な石油を、重油を北朝鮮に送ろうとしているのか。一体、どういう戦略がおありになって、さらに石油を来年以降も続けようとしているのか。その戦略はいかがですか。
茂木副大臣 恐らく、意見の一致を見ないというか、議論が若干かみ合わないところというのは、平壌宣言に関して、ここにありますような、「双方は、朝鮮半島の核問題の包括的な解決のため、関連するすべての国際的合意を遵守することを確認した。」この中には当然、IAEAの保障措置協定であったりとか、朝鮮半島の非核化に関する南北の合意であったりとか、さらには今御指摘の枠組み合意等々も入ってくるわけであります。
 首藤委員が御指摘されているのは、それを破ったのか破っていないのか、こういう事実認識の話であって、我々が申し上げているのは、例えばこの北朝鮮の核開発の停止、そして核廃棄、これは必要なんだ、今後守らせていかなけりゃいけない、こういう主張をさせていただいている、こういう形であります。
 それから、KEDOに関して申し上げますと、アメリカ側が現在、KEDOがもうだめですよ、これはもう無効ですよ、こういう公式の発言をしている、こういう決定をしたとは我々は承知をいたしておりません。
首藤委員 副大臣は今そういうふうにおっしゃるわけですが、私は別に平壌宣言のことを言っているわけじゃないんです。平壌宣言の条文の解釈を言っているんではないんですよ。日本の安全をどう守るか、北朝鮮の核開発をどうやってとめていくかというのに関心があるわけですね。
 先ほど外務大臣がおっしゃったのは、このKEDOの合意というのは、プルトニウムをつくらせない。プルトニウムは非常に簡単に核兵器に転用しやすいということで、プルトニウムをつくらせないために何があってもKEDOを守っていくんだという発言をされたわけですが、我々は、プルトニウムのためにこんな苦しいことをやっているわけじゃないんですよ。プルトニウムのために、我々は重油を送り出しているのでもなければ、妥協したり、軽水炉をつくったりしようとしているのでもないんですよ。何か。核兵器をつくらせないためにやっているわけですよね。
 ですから、プルトニウムは確かにできないけれども、ウランの濃縮プロセスがどんどん進行していって、そして核兵器をつくれるようになれば、これは結局全く同じなんですよ。日本は、しゃくし定規に、KEDOの合意は、プルトニウムをつくらせない、プルトニウムをつくらせないと。結局、最後までプルトニウムはできませんでした、しかし、ウランの濃縮プロセスは進んで、北朝鮮が核兵器をつくるようになってしまいましたと。日本は、合意が守られました、外務省はしっかりやりました、こうおっしゃるのかもしれないけれども、この肝心の核兵器をつくるのをとめることに関しては、一体どういう戦略をお持ちで、どういう対応をされているか、それをさっきからお聞きしているんですが、それはいかがですか、外務大臣。
川口国務大臣 プルトニウム型もそれから濃縮ウランタイプも両方含めて、北朝鮮の、あるいは朝鮮半島に核兵器が存在をしない、そういうことを国際社会は求めているわけでございまして、我が国も、当然のことながらそれを求めている。それを全部含めて、まさに日朝平壌宣言にこれが書いてあるわけですから、先ほど副大臣が言いましたように、日朝平壌宣言を実現させる、そういう過程を通してこの問題の解決を図っていく、これが我が国の考え方であるわけです。
首藤委員 外務大臣は本当に安全保障のことをおわかりですか。核兵器とかそういう問題は大丈夫ですか。話していることが余りにもアバウトで、こんなことでは日本の安全は守れないですよ。この問題に関してはこれからも毎週、恐らく問題になってくるので、また別にお聞きする機会があると思いますけれども。
 もっと技術的な問題に関して言えば、例えばアメリカが、もうこれ以上重油の供給に関しては責任を持たない、それは費用は払わないと言っております。そうすると、例えば一月当たり十二億円ぐらい、十一億円、十二億円、もちろん石油の価格が上昇しますから、イラクで戦争になって石油価格が三倍になれば、それこそ三十億、四十億となっていくわけですから、これをどう支払われるのか。
 例えば、アメリカは、払わない、やりたきゃ日本でやりな、こういうのがアメリカの言葉でしょうね。それを日本が負担していくということになりますよね。そうすると、KEDOの合意を守るといって、アメリカは、いや、我々はその路線からおりますよといって、ただひたすら日本は、幾らになっていくかもしれない重油を日本の負担で払い続けるのか。あるいは、それに関して韓国との間に合意があるなら、折半という約束はあるのか。
 この石油に関しては、外務大臣、どういうような決定を日本政府はされているわけですか。
茂木副大臣 この北朝鮮に対します重油の供給、これは、御指摘のように、毎年五十万トンという形でありまして、合意された枠組みのもとでやっているわけでありますけれども、これは、委員御案内のとおり、アメリカが勝手に決めるとか、アメリカが勝手にとめるという問題ではなくて、KEDOの中で、KEDOの理事会によって決定をされる、こういうことだ、こういうふうにアメリカの方も従来から明らかにしているところであります。
 恐らく、その十一月分の重油の供給につきましては、十一月の中旬に開かれる、十四日になると思いますが、そこの理事会で話がされる、こういうふうに理解をいたしております。
首藤委員 それは伝えられている報道とちょっと違うと思うんですけれども、十一月分に関してはもうシンガポールを出ているので、それはもうそのままやって、あとは十二月以降の問題があるなというふうに理解しておりますけれども。
 それは技術的な問題なんですけれども、私がお聞きしているのは、それはもちろんKEDOでやっていますよ。それはアメリカがやるのではなくて、日本がやるのではなくて、KEDOというところで日米韓がやっているので、その基本認識を教えていただいて、どうもありがとうございます。勉強になりました。副大臣からいろいろ教えていただいて、本当に助かっています。
 先ほどの質問は、だから、KEDOで、アメリカはもう事実上おりるわけですよ。KEDOに参加しているけれども、この問題はおれは知らないよと。ではアメリカは出ていけというわけにいかないでしょう。だから、この問題に関しては、日本と韓国の問題です。日本と韓国は、何とかこれは続けていきたい、今ここですぱっと終わりになっちゃうともう先が、展望がないから続けていきたいと言うんですけれども、韓国は、そんなもの、お金を負担しないというふうに一般的に言われている。そうすると、これからは、本来はアメリカが負担していた一月分、十二億円ぐらいをずっと日本が負担し続けていくことになる。そういうふうにもう既に日本としては腹をくくっておられるのかどうか、外務大臣にお聞きしたい。
川口国務大臣 首藤委員には、今いろいろシナリオをお書きいただいたわけでございますけれども、この問題は、先ほど副大臣が言いましたように、理事会で決めていく話、米国は今の時点で何ら決定をしているわけでもございませんし、問題は理事会で決定をされる、あるいは議論をしていく話になるというふうに思います。
 大事なことは、核兵器の開発を北朝鮮が行わないということでございまして、国際社会が一致結束をしてこれをどうやってとめていくか、それを考えていくということが大事であると私は思っています。
首藤委員 外務大臣、もう本当に、我々は誤解してはいけないんですけれども、我々はKEDOを守る必要はないわけですよ。一番重要なことは、北朝鮮に実態的に核兵器を開発させないということなんです。
 今、KEDOの合意がある意味で片肺になってくるわけですね。アメリカがそこからぐっと引いてくる。KEDO自体も問題となってくる。一方、ウランの濃縮プロセスがある。こういうような状況の中で、我が国の安全保障にとっては最も重要な問題、この核兵器に関しては、一体日本はどうやって北朝鮮の核開発をとめていけるのか、どういう戦略で北朝鮮に対して外交交渉を展開していくのか、そのグランドデザインを外務大臣にお聞きしたいと思いますが、いかがでしょうか。
茂木副大臣 我々が申し上げているのも、KEDOそのものをどうしても守りたい、これが目的なんだ、こういうことは全く申し上げておりません。北朝鮮の核開発の停止、そして核の廃棄、これが目的であるのは間違いない事実でありまして、この点に関しては、日本だけではなくて、韓国、アメリカ、さらに申し上げれば中国、ロシア、国際社会が同じような認識を持っている、こういうふうに私は考えております。
 そこの中で我が国としては、このKEDOの枠組み、これも北朝鮮の核開発の停止をさせるために有効な枠組みであると考えております。もちろんこれだけではない。今の日朝国交正常化交渉、さらに安保協議の中におけるいろいろなやりとり、そしてまた我々としてもいろいろなカードも持っております。そういうことも使いながら停止をさせ、そして廃棄をさせる、この努力をしていく。そこの中で、我々の考えというのは、使えるチャネル、有効なチャネルはすべて使っていく、こういう姿勢はこれからもとっていきたいと思っております。
首藤委員 私は、日本の外交姿勢、グランドデザインを聞いたんですが、そうすると副大臣が答えるというのもおかしな政府なんですけれども。
 この問題に関しては、私は非常に悲観的なのは、一つは、パキスタンから機器が北朝鮮に流れていた、これをブロックできなかったということにあると思うんですね。例えば、この問題に関しては、ウランの濃縮プロセスに関する機器を輸出したパキスタンに大きな責任があるわけですよ。これはもうパキスタンの背任行為なわけですね。
 この国に関しては、もともと軍事政権でありますね、まだ軍事政権であります。それから核実験をしている。ミサイル開発もどんどんやっている。選挙をしようとしたら、その選挙に景気づけでミサイルを二発も打ち上げて、こんなに強いぞということを示そうとしたりしている。それからタリバンを今まで援助している。これもみんな明らかなんですね。極めて国家としては問題がある。
 これに対して、パキスタンに対する投資協定、日本との投資協定をさっさと締結してしまったんですね。これに対して、こんな裏切りが明らかになって、我が国の安全保障にとっては最も危険だということを平気でやっている国に対して、例えば投資協定の破棄とか制裁とか、そのようなことは当然あってしかるべきだと思いますけれども、外務大臣、御意見いかがでしょうか。
    〔委員長退席、中川(正)委員長代理着席〕
川口国務大臣 パキスタンが、責任ある国際社会の一員として、今、経済改革を初めさまざまな改革を国内で進めている、そういう状況にあるわけです。我が国としてこのパキスタンの改革を支援していくということは、非常に重要な我が国の果たすべき役割であると私は考えています。
 この改革への支援というのは、今後とも引き続き続けていくべきであり、投資については、これは民間ベースの経済の交流を活発にしていくための手段でありますし、それは、その社会がそういうことでそれを受け入れ、それを進めることになれば、社会の改革あるいは考え方の改革にもつながっていくわけで、そういう意味で、我が国の役割としてやるべきことをやった、そういうことだと考えています。
首藤委員 大変性善説に立った外交施策でございまして、世界の現状を考えて、果たしてそうした性善説でやっていけるのかどうかというのを我々は危惧しているんですけれども、おっしゃることはそういうことだということに理解しましょう。
 この北朝鮮の問題に関しては、当然のことながら、もう一つの大きな大きな正常化への障害がございます。それは拉致の問題なんですけれども、この一連の外務省の対応、これはもう本当に一貫性がない、右に振れ、左に振れ、大変大きな失策であった、そういうふうに私は考えているんですが、ともあれ、現状を何とかしなきゃいけない。
 こういうような状況の中で、例えば、拉致された方は日本におられる。しかし、残された家族は北朝鮮にいる。そして、公式なチャンネルが、この間がうまく機能しなくなってきている。さらに、赤十字との間で、これはもう、北朝鮮赤十字は本当の赤十字じゃないとか、そういう批判もございますが、一応赤十字は赤十字なんですね。それとの関係も、信頼醸成もない。結果的に、どういうようなチャンネルがあるのか。
 それからもう一つ、この問題というのは、金正日総書記・軍事委員長と小泉首相との間で、二人の間で交わされたわけです。例えば、その二人で話したときに、ホットラインというものをつくっていないのか、あるいはホットラインでそういうことは話してもらえないのか、それは当然期待するわけですね。それでなかったら二人で会う必要はないわけですから、二人で会うということは、ホットラインをつくっていくということなんですね。なぜホットラインが機能しないか、非常に不思議なんですね。
 ですから、この二点に関して、外務大臣の御意見を、御意見というか御回答をお願いしたい。
茂木副大臣 まず、ホットラインについて申し上げますと、私もホットラインがあるかどうかということを承知しているわけではありませんが、先日、安倍副長官の答弁では、現段階で小泉総理と金委員長の間のホットラインはない、このような答弁をされたかと思います。
 それから、外交ルートでのチャネル、これは、さまざまなチャネルは持っているわけであります。そこの中には、例えば北京の大使館ルートもあったり、さまざまなチャネルがあると思います。
 それから、現在、赤十字の方がお帰りになった、日本にお残りをいただいております拉致家族の方と向こうに残っていらっしゃるお子さんの間のチャネルがない、これは確かでありまして、ですから、我々としては、一日も早く御家族の皆さんに日本に来ていただいて、そこで被害者の方と直接会う、このことがどうしても必要なんだ、こういう主張をさせていただいております。
首藤委員 外交としては、それはとても茂木副大臣が主張するとは思えないような、あり得ないことでありまして、国際関係でそういうことをやろうとすれば、それなりの対価を支払ってやらなきゃいけないですね。そうすると、その対価は何かということで問題になるわけで、確かに、そういうことはやろうとすればいつでも可能なわけですけれども、それによって、また外交の本体がどれだけ傷つくかということを我々は考えなければいけないというような状況だと思うんです。
 齋木参事官が行かれたわけですが、国連の人権委員会の反応は一体どうだったのか。それから、せっかくジュネーブへ行くわけですから、当然ICRC、ICRCは、私はどうしてこのチャンネルがうまく機能しないのかわかりませんけれども、本当に軍事政権の中でも、外国人が入っていくだけでそれが殺されてしまうような山の中の監獄とか、そういうところに入っても、一生懸命行方不明者なんかを見つけてくるわけですね。ですから、ICRCとのチャンネルはどういう形でつくられたのか、それはいかがでしょうか。
茂木副大臣 齋木参事官は、七日の日にジュネーブにおきまして、拉致被害者の御家族の代理人としまして、国連人権委員会の強制的失踪作業部会に対し、被害者の所在確認依頼の申し立てを行ったと。
 齋木参事官からどういうことを言ったかといいますと、作業部会に対しまして、九月十七日の日朝首脳会談を初めとする最近の日朝関係等につき言及しつつ、今回再申し立てを行うに至った理由につき説明し、本件の審議について作業部会の理解を求めた。これについて作業部会との間で質疑応答が行われ、最後に、作業部会の議長ガルシア・サイヤン委員、ペルーの方だそうでありますが、この作業部会の部長よりは、明快な説明と新たな詳細情報の提供により問題の全体像がよく理解できるようになった、こういうコメントがあったと。
 これは報告を受けている範囲でありますから、いつも棒読みすると怒られるわけでありますけれども、作業部会においては、今回の再申し立てを踏まえ、今後、対応方につき検討が行われることになると承知しておりますが、政府としては、拉致問題については引き続き、先ほどから申し上げておりますように、さまざまなチャネルを通じて、北朝鮮側の前向きな対応を引き出していきたい、こう考えているわけでありまして、作業部会におきます手続も一つのチャネルである、こんなふうには考えております。
 それから、ICRC、赤十字委員会の方でありますが、赤十字国際委員会においては、ケレンベルガー総裁及びベリスウィル東アジア太平洋部長との間で意見交換を行いまして、赤十字国際委員会が人道的観点から拉致問題の解決に向けて協力してほしい、こういう要請をさせていただいております。
首藤委員 国連というのは、我々は役所感覚になれていて、役所があって、そこにお願いするというような感覚でありますが、違うんですよ。国連というのはクラブ財なんですよ。我々がお金を出してやっているクラブなんですね。
 ですから、こんな訴えるというのじゃなくて、我々が動かしていかなきゃいけないんです。お願いしますと申請するんじゃないんです。国連というのは我々が動かしていくものなんですよ。ですから、そんな、お願いに行って、こういう発言ではなくて、もうその前に動かしていって、こちらが申請書を出せば、待ってましたと動いてくれないといけないんですよ。ですから、これは日本外交全体の問題であって、外務省改革の一環だと思いますけれども、ぜひそういうことで国連自体をもっと積極的に動かしていただきたいと思うんです。
 それから、先ほど私の同僚委員の質問の中で、やはり北朝鮮の問題に関しては、そこに渡った日本人配偶者が問題となっていまして、その脱北者が日本に帰ってくる。外交関係、中国との関係で非常に機微に触れる問題があると思うわけですが、これは間違いなく今後すごく広がっていく問題だと思うんですね。
 ですから、これに対して日本政府も真剣に考えていって対応していかなければいけないと思うんですけれども、これは何を聞いているかというと、やはりこれも外務省改革の一環で取り組まれている領事問題、領事移住部との関係なんですね。
 ですから、この領事移住部というものは、今までのように、世界各地で起こる、時々日本人が強盗にあったりするとかそういう問題でなくて、日本の近辺で、こうした我が国の人間、国籍を持った人間が絡んでくる非常に大きな問題が、巨大な問題が出てくる可能性があるということを考えると、やはり領事移住部というのは、領事移住部という、もう昭和三十年代の枠組みではなくて、前から、それは茂木副大臣も主張されておられるように、まず領事局にしていくとか、あるいは私たちが言っているように、日本人が国際化しているわけですから、国際市民サービス、そういうような一つの庁というぐらいの形で大きく対応していかなければいけないと思うんです。この問題に関しては、もう毎週毎週出てくるんですよ。嫌になるぐらい毎週毎週新しい問題が出てくるんですよ。古い問題を何回も言っているんじゃなくて、毎週新しい局面が出てくるんですよ。
 ですから、この領事業務も抜本的な対応というのを考えなければいけないと思うんですけれども、そうした時局の展開を見て、外務大臣、いかに組織的な対応を考えておられるでしょうか。
    〔中川(正)委員長代理退席、委員長着席〕
川口国務大臣 外務省の改革の中で、領事の関係の仕事ということは、まさに委員もおっしゃったように、海外に出ている日本人の数が昔と比べて数倍、数十倍、数百倍にふえているわけですから、それにきちんと対応するように業務の拡充をする。人員の確保も含め、あるいはその他外務省以外の方の手を煩わせることも含め、非常に抜本的に考えていかなければいけないと思っています。
 これは今、外務省の改革について根本的にどう考えるべきかということで、中で議論をしているということで、年末ぐらいに中間報告を考えておりますし、年度末に最終報告をということで考えております。
 この過程で、どういうような領事業務について改革をするかということについては、中できちんと考えていきたいと思いますけれども、まず人員の確保、これは非常に重要なことでございますし、外務省は今五千人ぐらいの人間で回しているわけですけれども、すべてのところで人員が必要であるということでございまして、業務をどうやって効率化しながら必要な人員を確保していくかということが、大きな、横ぐしを刺したところの課題であると思っています。
首藤委員 それでは、次の問題として、やはりイラク問題について質問したいわけですが、これがいい方向に行けば、査察が完全に行われて、イラクが民主化されていく、そういうようなバラ色のシナリオも描けないことはないわけですが、現実の政治というのはリアリズムの世界ですから、そういうのは起こらないだろう、そういうふうに考えるわけです。
 そうすると、最悪の状況の中で、このイラク、産油国でありましたし、日本が長い間つき合っているイラクにおける日本の債権は一体どれぐらいあって、それを保全するために日本はどういう態度をとろうとしているのか。それはいかがでしょうか、外務大臣。
川口国務大臣 債権がどれぐらいあるかということですけれども、日本政府、政府関係機関はイラクに対しまして、九〇年八月のイラクのクウェート侵攻以前の経済協力あるいは民間の経済活動に伴う債権といたしまして、これは民間債権も含まれますので、必ずしもその全額をきちんと把握するということは容易ではないわけでございますけれども、約六千億円を超える多額の債権を持っていると推察いたしております。
 それで、これにつきまして、安保理決議の六八七におきまして、イラクが対外債務を返済する義務、そしてクウェート侵攻、占領の結果生じました外国政府等の損害に対する賠償義務を負っているということを定めております。我が国といたしまして、この決議に定める方法に基づきまして、これまでもイラクに対しまして債務の履行を求めてきているわけでございます。政府として債権の保全に努めておりますけれども、これを引き続きやっていきたい、そういうことでございます。
首藤委員 外務大臣、私の質問を恐らくわかっていてお答えになってないんだと思うんですが、それは、イラクのフセイン政権というのはそのまま残るという前提なんですよ。しかし、アメリカがねらっているのは、レジームチェンジ、レジームチェンジと言っているわけですね、政権そのものを変えてしまおうと。イラクの政権だけではなくて、場合によっては三分割、北部のクルド地域、キルクークなんかを中心とする石油地域、南部のバスラ地域に分かれる三つにしてしまおうと。要するに、ここにおいて政権の断絶が行われるかもしれないわけですね。
 そういう状況において、今おっしゃった六千億円をどうやって保全していくのか、それはどういうふうに担保されるのか、その点はいかがでしょうか。
川口国務大臣 イラクの政権が三つに分断をされることになるかというのはまさに仮定の話でございまして、こういったことについて予断をするということについては控えさせていただきたいと思います。
 いずれにしても、これは国連安保理の決議にのっとりまして、我が国としてもイラクに対して債務の履行を強く求めていく、そういうことでございます。
首藤委員 これは外務大臣、異なことをおっしゃる。未来予測者じゃないんだからそれは予断できない、将来のことを勝手に考えられない、それはそうです。しかし、政府には国民の財産を守る義務がある。したがって、可能性A、B、C、D、仮説A、B、C、Dに基づいて、しかもすごく可能性のあるものに関して、要するにレジームチェンジが起こったときにどうやって保全するか。例えば、この六千億に関して、国連の担保をとる、どこかに供託する、イラク現政府に、極端なことを言えば銀行保証させる、いろいろな手段があるじゃないですか、それは今単なる思いつきで言ったわけですけれども。
 どういう形で、今起こり得る、極めて可能性が高いんですよ、極めて可能性が高い政権の交代に関して、どうやって六千億を日本は守ろうとしているのか。このことに関しては、例えばアメリカ政府との間である程度の合意があるのかどうか。その辺はいかがでしょうか。
川口国務大臣 先ほど申しましたように、これは我が国としてその履行を求めていくということですけれども、イラクということではございませんで、一般的にこういう政権の継承ということはよくあるわけでございます。そういったときに、当然のことながら債務についても新しい政権によって継承されるということを考えていく、そういうことでございます。
首藤委員 これはもう、どういう根拠でそういうふうにおっしゃるかがわからないけれども、今の世界においては一般的に継承されてないですよ。今までのことを見れば、それは継承されてないわけですよ。ですから、今目前にして、我々、イラク問題というと爆撃の問題だけを考えるだけではなくて、やはり私たちの財産もこれは真剣に考えて対応をやっていかなければいけないわけですよ。ですから、その点に関しても、ぜひ外務省としても真剣に対応していただきたいと思うんですね。
 私は、このイラクの問題というのは、まだまだ日本が真剣に取り組んでいない。例えば北朝鮮に関しては、もちろん日本の近くにあるというところから、また、日本が直接の拉致被害者の方を出されている、いろいろもう苦しい問題もたくさんありますというところから、やはり日本国じゅうが非常に関心を持ってやっているわけですが、このイラクの問題というのは、経済的なインパクトという点では、これまた物すごく巨大なインパクトになってくるわけですね。
 そして、これに関して大変な軍費を払っていくかもしれない。そうすると、それが物すごく負担となってくるわけですよ。前回の湾岸戦争においても、大変な軍費を我々は負担していたんですね。先ほどの安保理決議の六八七で、イラクが起こした損害に対して賠償、我々もその軍費だって返してほしい、そういうふうに思うわけですよ。ですから、こういう問題に関しては、イラクの問題というのは本当に大きな対応をしていかなきゃいけないんです。
 そこで、私はお聞きしたいんですけれども、イラクというのは、それこそイラクを代表するような日本の大使もおられない。しかし、この問題というのは、明らかに日本のこの五年間、あるいは十年間かもしれない、日本の経済、政治にとって極めて大きな問題となり、さらにこの問題の対応をめぐって、日本の憲法や日本のさまざまな基本法にとっても影響が出てくる。したがって、日本の国論を二分していくかもしれない。こうした問題に対して余りにも取り組みが小さいと言わざるを得ないんですね。
 ですから、この問題に関しては、例えばイラクの大使館が今機能しないというのであれば、また、イラクだけの問題でなく、国連を動かし、ロシアを動かし、フランスを動かし、アメリカを動かすという点から、イラク問題特命全権大使というものをつくって、外務省の中でタスクフォースをつくって、この問題を集中的に大きな力で支えていく必要があると思うんですけれども、外務大臣の御意見はいかがでしょうか。
川口国務大臣 イラク問題につきましては、外務大臣、副大臣を初めとして省を挙げて取り組んでいるところです。
首藤委員 時間がないので終わりますけれども、外務大臣、もう一度お伺いしたい。
 この問題に関して、イラク問題に関して特命全権大使、新しい大使を設けて集中的に、全省挙げてという抽象的なことではなく、外務大臣はもうこんなにお忙しくて、副大臣もこんなにお忙しくてどうしてできますか。特命全権大使をぜひつくってこれに対処していただきたいと思いますけれども、御意見、いかがですか。
川口国務大臣 イラク問題について、どういうような新しいポストあるいは臨時的なポストあるいは人を任命するかということについては、事態の進展でそういうことが必要になればそれを行うということでございますけれども、現在、先ほど言いましたように、イラクの問題については省を挙げて取り組んでいる、茂木副大臣はその担当としてそれを持っていらっしゃるということでございます。現在の時点は、特にその任命をする必要はないと考えています。
首藤委員 終わります。
池田委員長 次に、藤島正之君。
藤島委員 まず最初に、北朝鮮問題の拉致被害者の支援についてお尋ねしたいと思います。
 前回のこの委員会でもお尋ねしたんですが、拉致被害者が帰ってくるときの費用、それは当然なんですけれども、前回の答弁では、エージェントが払ってあって、まだ国が払ってないんで後から払う予定だ、こういうことなんですが、そのほかに、実家に帰ったときの費用とかあるいはまたいろいろなことで東京へ出てきている費用、そんなのもいろいろあるわけです。これは事務的にでいいんですけれども、これも一応国の方で払うということでよろしいんですね。
小熊政府参考人 拉致被害者・家族支援室が今月の五日に設置されまして以来、被害者の方々、御家族との連絡用務につきましては、従来にも増してきめ細かく綿密にと心がけております。その際には、内容、緊急性を踏まえてふさわしい連絡方法を採用させていただいておりますが、じかにお会いする方が適切な場合には、できる限り御家族に御負担をかけないように、こちらから御家族を訪問させていただくよう考えております。御家族に上京いただくようお願いしなければならない場合には、今後とも、内閣官房の予算から旅費をお支払いいたします。
藤島委員 安倍副長官には、この件で東奔西走で頑張っておられるので本当に感謝しておるわけですけれども、この支援の仕方ですけれども、今内閣官房の方の予算から一部出すと言っているんですが、やはり、すっきりするためには法律を制定してやった方がいい。
 もともとこれは北朝鮮という国がやったことでありますし、これに対して守るべきは、国家としての日本の政府なわけでありますので、結果的にこういうことになったわけでありますので、その責任はすべて国にあるというふうに思うわけです。したがって、はっきり国が法律をつくる、そして支援する、これが一番いいのではないかと思うんですね。その際に、やはり国の責任で取り組むということを明記してきちっとやるのがいいと私は思うんですが、この点について副長官の御見解を賜りたいと思います。
安倍内閣官房副長官 先般、拉致された被害者五名の方々が住んでおられるそれぞれの場所にお伺いをいたしまして、御本人からいろいろとお話を伺いました。そして、改めて認識をさせていただいた次第でございますが、被害者の方々そしてまたその御家族の方々が、再び我が国社会に溶け込んで、そして安心して生活ができる環境をつくっていくということが急務である、政府や関係地方自治体が密接に連携協力をしながら、拉致被害者の方々の自立に向けて一体となって支援を行っていくことが必要である、このように感じた次第でございます。
 こうした認識のもと、政府としては、私が今議長を務めております拉致問題に関する専門幹事会において総合的な支援策を取りまとめることとしております。拉致被害者や御家族の方々の要望や関係地方自治体との連携を踏まえつつ、現在作業を進めているところでございます。できれば今週中にはまとめたい、遅くとも来週の頭ぐらいにはまとめていきたい、こう思っているところでございます。政府といたしましては、総合的かつきめの細かい支援策を早急に取りまとめるべく作業を進めていきたい、このように思っている次第でございます。
 また、今新しい法律が必要ではないか、そういう御指摘ではございますが、それも含めて、どういう手段が一番いいのかということを今検討いたしておる次第でございます。
藤島委員 今検討中ということですが、その中に支援法の制定を含めてということで再度確認をさせていただきたいんですが、よろしゅうございますか。
安倍内閣官房副長官 現在の時点におきまして、拉致被害者の方々のための支援策をどのような形で法令として定めるかの結論にはまだ至っていないところでございます。しかし、いずれにいたしましても、現行法制下で措置できない施策の実現を図る場合には法律上の手当てが必要ということになるわけでございます。
 その際、場合によっては議員立法になるのかあるいはまた政府提案の形になるのか、国会の御協力をいただきながら、私ども、とにかく被害者また家族の皆様方の支援を国の責任として考えていかなければいけない、こう考えております。
藤島委員 やはり、現行の法制の中では間に合わない部分が一部出てくるんじゃないかと思いますので、これはきちっと体系的に、新しい法律にした方がいいと思います。内閣提出であろうと議員立法の形であろうと私は構わないと思うんですが、ぜひそういう方向で御検討いただきたいと思います。
 ありがとうございました。
 それでは次に、防衛庁の方にお伺いしたいと思います。
 イージス艦の派遣の問題なんですけれども、前中谷長官は、これは私の責任で前回派遣しないことにしたとおっしゃっていたわけですね。御承知のように、自民党の方とちょっともめた際にいろいろありまして、結局、最後は自分が自分の責任で判断して今回は行かせない、こう言っておるわけですが、もともと、この装備を何をやるかというのは党がとやかく言う問題でもなし、あるいは官邸がどれを持っていくとか持っていかない、そういったものじゃないと私はそもそも思っておるし、自民党の中にもそういう意見も大変多いわけですね。
 ところで、イージス艦というのはそんなにおどろおどろしいものであるのかどうか、その辺国民に何か誤解を与えるような感じになっているんじゃないかと思うんですけれども、その点について、防衛局長でいいんですけれども、まず説明していただけますか。
赤城副長官 御指摘のイージス艦の件でございますが、まず、テロ特措法に基づく協力支援活動についてどういう状況かということからお話ししたいと思うんです。
 十一月十九日で支援活動の期限が参ります。しかしながら、現在、各国が支援活動をやっておるところでございまして、我が国としても引き続き、この国際社会の取り組みに積極的に主体的に取り組んでいくということが大事だと思っておりまして、まず、自衛隊の部隊等の派遣期間を延長する方向で検討してまいりたいと思います。
 その上で、御指摘のイージス艦についてということでございますけれども、十一月二十日以降、自衛隊の活動や基本計画の変更の可能性については、我が国として主体的にその必要性を判断していくということになりますが、現在、早急にその方向性を出すべく鋭意検討しているという状況で、余り日もないことでありますけれども、そういう状況でありますので、まだ確たる状況を申し上げるのは適当ではないと思います。
 一方、御指摘でもございますので、イージス艦の能力なり、どういうものであるか、これを一般論として申し上げますとということになりますので、ちょっと前段が長くて申しわけございませんけれども。
 現在、インド洋上で協力支援活動を行っておりますが、補給活動における安全性にも考慮して、司令部機能を有する護衛艦を補給艦とあわせて派遣しております。ところが、派遣できる司令部機能を有する艦艇が四隻しかございませんので、ローテーションが非常に厳しい状況になっておりまして、司令部機能を有する艦艇を現場海域に派遣できない、展開できない時期が生ずる、こういうふうな、非常にローテーションが厳しい状況にございます。したがいまして、司令部機能を有する艦艇であるイージス艦を加えますとこのローテーションが緩和される、こういうことがまず一点ございます。
 それからもう一点は、まさにイージス艦そのものの能力にかかわることでございますが、他の艦艇に比べて広範囲のレーダー探知能力がございますので、現在、現場での経験を踏まえて、現場では多数の国籍不明航空機や船舶が認められております。これをきちっと識別し追尾をしていくとか、早い段階でこれを認識するということが大事でございまして、イージス艦はそういう点で非常にすぐれたレーダー探索能力や指揮通信能力を有する、こういうものでございます。仮にの話でございますけれども、このイージス艦が艦艇周辺の安全確保に係る乗員の負担軽減に資する、こういうふうなことも期待できるということでございます。
藤島委員 今二点お話があったわけですが、両方大事なことだと思うんですね。
 一点は、派遣することによって我が国の守りに穴があくような、ローテーションの無理から、そういう問題が出てきていてはやはりまずいということですね。
 それともう一点は、せっかく行くのなら、やはり現場で働いている人が一番安全でなきゃならぬわけですね。そのために何を持っていくのがいいか、これは自衛隊が主体的に判断する、当然それが一番合理的なわけなんですね。そこを周りから、言ってみれば素人がとやかくごちゃごちゃ言う話じゃないと私は思うんですね。
 また同時に、アメリカから要請されたされない、これも問題になっているようですけれども、それはそういう問題じゃないと私は思うんですよ。
 やはり、今副長官がおっしゃったように、これは我が国が主体的に判断する問題で、軍事的な合理性に立脚して、その判断でやるべきだと私は思いますので、この点については現行の基本計画でもいけるわけですね。その点はどうですか。ちょっと確認だけしておきたいと思います。
守屋政府参考人 基本計画に、派遣できる艦種としまして護衛艦という、今インド洋に出ております自衛隊の艦艇は、護衛艦とそれから補給艦ということでございまして、具体的に護衛艦の中でどのようなものを出すかというのは、防衛庁の細部計画である実施要領の中で具体的な船名を出して派遣することになっておりますので、イージスも護衛艦の一種でございますから、そういう意味では基本計画の中で変更という問題は起こりません。
藤島委員 今答弁があったわけですけれども、したがって、今回基本計画を延長するしないの問題とは全然次元の違う問題で、言ってみれば、向こうに行っている船がローテーション上帰ってくるときに出せばいいわけですから、そのタイミングを見計らって防衛庁が主体的に判断をして、さっきの二つの問題があるわけですから、ぜひイージス艦を派遣していただきたい、私はこう思います。これは要望しておきたいと思います。これで結構です。
 それでは、また北朝鮮の問題についてお伺いしたいと思うんですけれども、松木さんの遺骨の問題ですけれども、別人だというふうにはっきり政府は断定したわけですか。
齋木政府参考人 おととい十一日でございますけれども、警察庁の方から、鑑定の結果ということで内閣官房にある拉致被害者・家族支援室の方に対しまして報告がございまして、それによれば、松木薫さんのものと思われる骨に関する鑑定をやった結果ですけれども、これが松木さんの御本人の身体的な特徴と合致する可能性は非常に低いと考えるのが妥当である、そういう結果を支援室の方に警察庁の方からお伝えしたということがあったというふうに私ども聞いております。
藤島委員 結局、断定したということだと思うんですけれども、そうだとしたら、この北朝鮮のやり方というのは本当にふざけたことというか、もう日本政府をばかにし切っておると思うんですよね。恐らくこの背景には、向こうの今のそういう判別の技術というか、そういったことからすれば、どうせ日本はわかりゃしないだろうと。ところが、日本の技術が格段に上で、それを判別できたということなので、大変ばかにし切ったことで、何かまるで信用できないような感じがするんです。
 外務大臣、こういうのを見て、もう一回平壌宣言を見直す、要するに、水面下でこういうことを北朝鮮が考えている、やっているということであれば、平壌宣言そのものをもう一回見直したらどうかという点は、どうでしょうか。
川口国務大臣 松木さんの御遺骨とされるものについては、これは先方から、一〇〇%そうであるということは言えないけれども、そうだろうと思われるということでいただいてきたということでございますけれども、委員がおっしゃったように、科学的な方法によってそれが本人のものでない可能性が非常に高いということがわかったということについて、北朝鮮側のそういった対応というのは我々としては大変に残念なことでございまして、この件については、北京の大使館を通じて、先方に対して誠実に対応してほしいということを言っている、申し入れたということでございます。
 それでは、その平壌宣言をこのあたりで廃棄するのかということについては、まさに日朝間に拉致問題あるいは安全保障問題、その他多くの問題があるわけでございまして、この平壌宣言を相手に守ってもらう。守るということを金正日総書記は言っているわけでございますので、守ってもらう。交渉を通じてこれを守らせるということを通じて問題の解決を図っていくということが大事であると思います。
 この間のクアラルンプールの交渉でも、北朝鮮側は、日朝平壌宣言は金正日総書記が決めたことであるので誠実に守るということを言っているわけです。国交の正常化をしていくということ自体が北朝鮮に対しててこになるということでございますから、このてこを使って、相手にこれを遵守させ、それによって問題の解決をしていくということが我々の基本的な考え方でございます。
藤島委員 川口外務大臣は優しいものですから、北朝鮮が一〇〇%松木さんの遺骨ではないかもしれないけれどもとか、オブラートに包んでおっしゃっていますけれども、そんなものじゃないんだろうと思うんですよね。そんないいかげんなもので送ってきたものじゃないと私は思いますけれども。
 私の言いたいのは、要するに、北朝鮮のやっていることは本当にでたらめ至極なので、余りまともに受けてやり合っていると、これは一体どうなるのかなという感じがするものですから、本当にそういうでたらめな国なんだということをよくよく見据えた上で、これからの交渉に当たってもらわぬといかぬじゃないかなということを申し上げたいわけなんですよ。
 それから、外務省が同行して拉致家族五人を戻してきたらどうかというような北朝鮮側の提案があったというふうに一部報道されているんですけれども、この点と絡め、今北朝鮮にいる被害家族を我が国に送るということについては、従来から反対していないようなんですね、そもそも。本人らの意思がはっきり帰りたいんなら、家族も帰ってもいいと。そもそも、今回、その五人が来るときに家族も一緒でもいいような話もあったと聞いているんですけれども、その二点はどうなんですか。
齋木政府参考人 第一点目のお尋ねでございますけれども、北朝鮮から、外務省の職員が同行して向こうに戻るということについての要求があったということは、私の知る限り、そういう事実はございません。
 それから、被害者の方々が一たん向こうへ戻る話は、そういうことは日本政府としては立場としてとらないということを基本方針としてしっかり定めたわけでございますから、我々としては今、そういう方針に従って、先方との間で、ピョンヤンに残されているお子さんたちを一日も早く日本に戻すべきであるということで強く申し入れておる、そういう状況でございます。
藤島委員 まさに今、我慢比べの状況に入り込んじゃったと思うんですね。今の答弁では、報道は全く誤りで、外務省の同行で帰るということについては北朝鮮側から全く要望はなかったと、これは再度確認します。
齋木政府参考人 そのとおりでございます。
藤島委員 私は、もしあっても、今齋木さんがおっしゃったように、これは断固として拒否し、現在とっている、要するに、家族を向こうからともかく我が国に帰すという、その大方針は変更しないでそのままやった方がいいだろう、こう思います。
 それから、これもまた事実かどうかわかりませんけれども、北朝鮮側から、日朝安保協議は被害家族で今日本に来ている五人を返さなければもう一切進めない、こういうふうな話が現実にあったのかどうか。これはいかがですか。齋木さんじゃなくて外務大臣でもいいんですけれども。
川口国務大臣 日朝安保協議については、我々としては、これを十一月中にということでございますので、そういうことで考えております。北朝鮮側から、返さなければ日朝の安保協議をやらないというようなことがあったとは承知していません。
藤島委員 そうすると、これも事実無根で、向こうからそういう、五人を一たん返さない限りは安保協議にも応じない、そんな話は一切ないというふうに理解してよろしいんですか。
茂木副大臣 安全保障協議につきましては、さきの日朝国交正常化交渉の中で、十一月に行うと合意をしたわけであります。もちろん、この安全保障協議と国交正常化交渉、我々は一体のものとしてとらえておりますが、拉致問題について一方で強く主張しながら、しかし安全保障協議については十一月に立ち上げる、こういうことでお互いが合意しておりますので、向こう側が何か条件をつけている、こういうことではないと理解をいたしております。
藤島委員 いや、かつてはないんですけれども、最近に至ってもその話は一切ないというふうに理解していいかということなんですけれども。
川口国務大臣 拉致の被害者の御本人たちを北朝鮮に戻さなければ安保協議に応じないと北朝鮮が言った、そういうことはございません。
藤島委員 それはわかりました。
 それでは、あと時間が余りないんですけれども、先ほど首藤委員の方から質問がありましたけれども、ジュネーブの方に行かれた点、副大臣が答えられたんですけれども、行かれた御本人から、実際どういうことを言って、向こうの反応はどうだったのか、あるいは今後の見通しはどんなふうになりそうか、それについてお尋ねしたいと思います。
齋木政府参考人 お答え申し上げます。
 先週十一月七日の木曜日でございましたけれども、ジュネーブの国連人権委員会のもとに強制的失踪作業部会というのがございまして、これが開催されておりましたので、いい機会だと思いましたので、たまたま御家族からの御要望もございましたので、ぜひ被害者の方々の所在確認を改めて申し立てをしてほしいという御家族の御要望を踏まえて、私、出席してまいりました。
 その際、私の方から専門委員の方々に申し上げたのは、九月の十七日の小泉総理大臣のピョンヤン訪問を受けて、拉致の話が初めて先方の認めるところとなり、かつ、謝罪をし、再発防止を約束した、そういう状況の劇的な変化がありましたと。したがって、去年の四月に御家族が同じワーキンググループ、作業部会に申し立てをしたときには、先方からの協力が得られなかったということもあって、作業部会としてはそこで作業をやめておったわけでございますけれども、今回は、そういう状況の変化があったということを踏まえまして、こちらからの再度の申し立てを注意深く委員の方々に聞いていただきました。そして私の方からは、御家族の方から御要望のありました八人の方々の所在の確認について、改めて北朝鮮の方につないでもらいたいということを、お一人お一人ずつについて説明したわけでございます。
 委員の方からは、いろいろと質問がございましたけれども、今回の私どもの主張に対しては、非常に熱心に耳を傾けていただきましたし、また、全体の姿がよくわかったということで、作業部会としてどういうことでこれからは進めていくかをよく検討させてもらいたいということでございました。
藤島委員 大変御苦労さまでした。ただ、私、それで言いっ放しで終わったんじゃいかぬので、きちっとフォローアップだけはやっておいていただきたい、こう思います。
 齋木さん、どうもありがとうございました。それでは、北朝鮮の問題はそれだけにしまして、李登輝さんの訪日の件なんですけれども、これについて外務省はどういうふうに把握しておるんでしょうか。
茂木副大臣 まず、事実関係から申し上げますと、十一日の十二時五十分に、これは日本時間でありますが、李登輝氏から、慶応大学の三田祭における講演のために、交流協会の台北事務所を通じまして査証の申請が行われたわけであります。それを受けまして、通常の査証審査手続の一環といたしまして、外務省として、慶応大学、そして同大学の三田祭の実行委員会に対しまして事実関係の確認を行いましたところ、慶応大学側、そして実行委員会の側から、李登輝氏の講演は三田祭の行事としては行われない旨の返答がございました。この点を踏まえまして、十二日の午後になるわけでありますが、交流協会の台北事務所を通じまして、李登輝氏側に対しまして、上記慶応大学の立場をお伝えするとともに、事実関係の確認をしたところ、李登輝氏側は査証申請を取り下げた、こういうふうに承知をいたしております。
 なお、本件に関しまして、もちろんのことでありますが、外務省側から慶応大学に対して何らかの働きかけを行ったとか、そういう事実は一切ございません。
藤島委員 いや、その点は実は確認しようと思っていたんですけれども、答弁がありましたので。
 この李登輝さんの問題、前回の訪日の問題のときもかなりもめたんですけれども、私もそのとき一生懸命応援した方なんですけれども、そのときは病気だということで、治療ということで、人道上の問題ということだったんです。それで入国ビザを出したわけですけれども、今度は病気じゃないので、そのときの事情とはちょっと違うわけですけれども、中国がいつもこれについては神経質に文句をつけるようですけれども、我が国の政府はやはり主体的に判断しなければいかぬと思います。
 今回、確かに申請を取り下げても、恐らく、また出てくる可能性は多分にあると思うんですよね。そのとき、ひとつ前向きに御検討いただきたいということを要請しておきたいと思います。
 若干時間がありますけれども、終わります。
池田委員長 次に、松本善明君。
松本(善)委員 まず、北朝鮮の問題で外務大臣に伺いたいと思います。
 同僚委員からの質問もありましたが、松木薫さんの遺骨が別人のものであった可能性が高い、こういう鑑定が出ておりますが、この問題並びに日朝交渉全体についての外務省の、我が国政府の方針、それから見通し、相手方の出方についての予測、それらを含めてお話をいただきたいと思います。
茂木副大臣 松木薫さんの遺骨の件でありますが、十一日、警察庁の方より拉致被害者・家族支援室に対しまして、松木薫さんのものと思われる骨に関する鑑定結果につきまして、松木薫さんの身体的特徴と合致する可能性は非常に低いと考えるのが妥当である旨の連絡があった、このように承知をいたしております。
 政府といたしましては、今般の鑑定結果を踏まえまして、昨日十二日に、在中国の我が方の大使館を通じまして、北朝鮮側に対しまして、改めて事実関係を調査するように求めたところでありまして、今後とも北朝鮮側の誠意ある対応を強く求めていきたい。
 この問題はもちろんでありますが、同時に、これまで照会している項目、百項目以上あるわけでありまして、それにつきましても早急な回答を求める、そういう姿勢をとっております。
松本(善)委員 全体の日朝交渉についての方針はどうですか。
川口国務大臣 全体の日朝交渉についての方針は、これはずっと申し上げていることと一切変化はしておりません。日朝平壌宣言を遵守して、この日朝間のさまざまな懸案問題、その中で拉致問題というのは最優先課題だと申し上げておりますけれども、それと核兵器の開発を含む安全保障問題、そういったさまざまな問題を解決して、そして、この地域の平和と安全に資する形で日朝の国交正常化交渉を行っていく、そういうことについては全く変更はございません。
松本(善)委員 イラク問題について伺います。
 国連安全保障理事会は、八日に、対イラク決議一四四一を全会一致で採択いたしました。一昨日、有事法制特別委員会で福田官房長官は、我が党木島議員に対して、この決議について重大な決議違反があれば、即時に安保理事会に報告され、安保理事会で再協議をする、米国代表も決議に武力行使につながる隠れた引き金はないと述べているというふうに答弁をされましたが、外務大臣も同意見ですか。
川口国務大臣 まず、一四四一が全会一致で採択をされたということは、我が国としても大変に喜ばしいことだと考えております。
 そして、この一四四一の中で、イラクによる本決議の不履行により、同国の諸義務のさらなる重大な違反があったとみなされる場合等には、すべての関連する安保理決議の完全な履行の必要性を審議するため、安保理が即時に招集されるということが規定をされているわけでございます。
 そして、アメリカは、この投票の後の投票理由説明で、隠された引き金も自動性も含まれていないということを言っているというふうに考えております。
松本(善)委員 そのことを述べたアメリカの代表はだれですか。
西田政府参考人 ネグロポンテ・アメリカ代表でございます。
松本(善)委員 アメリカの国連大使が述べたことですから、もちろん公式の発言だと思いますが、大使は、武力行使に関して隠された引き金も自動性も含まれていないということを述べたということであります。そういうことをアメリカ国連大使が述べたということですが、そういう決議ができたというのは、この問題を平和的に解決すべきだという大きな国際世論が、アメリカの、国連決議がなくてもイラクを攻撃するという意見を抑えた結果だと私は思います。
 国際的に今重要なことは、一つは、イラクが関連する国連安保理事会決議を完全に実施し、大量破壊兵器を完全に廃棄したことを国際社会の前に明らかにするという、その責任を果たすということである。同時に、もう一つは、戦争を回避して、国連はイラクへの査察を実行するとともに、加盟国による一方的武力行使を許さないで、問題を平和的に解決するという責任があると思うんですが、そういう方向で日本政府は外交活動を行うという考えでしょうか。外務省の見解を聞きたいと思います。
西田政府参考人 お答えをいたします。
 今般、今委員御指摘のとおり、安保理メンバーを中心にし、P5を中心にしまして、安保理決議が一致した形で国際社会のイラクに対する要求をまとめたということは、大臣御答弁のとおり、まことに歓迎すべきことであろうと思っております。
 まさに、決議自身が申しておりますように、今回の決議はイラクに対してみずから武装解除するための最後の機会を与えるものということを申し上げているわけでございますから、イラク側がこれに対して積極的に対応するということが最も今期待されているものであり、日本政府としてもそれを強く希望しているところでございます。
松本(善)委員 同時に、やはり、加盟国による一方的な武力行使を許さないで、問題を平和的に解決するということも日本政府は努力すべきことではないかと思いますが、その点については外務省はどう考えているでしょう。
西田政府参考人 今般の新しい決議が八週間ぐらいの長い時間をかけましてここまでに至ったということ自身が、まさに、イラクがみずから国際社会の意向にこたえまして平和的にこの問題を解決すべく努力すべきだということを国際社会が一致して要求しているものというふうに日本政府としても理解をしております。
松本(善)委員 イラクのことについてはそれでいいんですが、ネグロポンテ国連大使が採決をされた後に述べた発言、先ほども触れられましたけれども、その発言では、もしイラクのさらなる違反があれば、UNMOVIC、IAEAないし国連加盟国によって安保理に報告をされ、その件は、第十二項が求めているように、討論のために安保理に戻されることになると述べる一方、もし安保理事会がイラクのさらなる違反に際して断固として行動しない場合、本決議は、いかなる加盟国がイラクによってもたらされる行為に対して自衛のために行動することも、あるいは国連安保理事会決議を実行して世界の平和と安全のために行動することも制約していない、こういうふうに述べたというふうに私どもは把握しておりますが、その点はそのとおりでしょうか。
西田政府参考人 そのとおりでございます。
松本(善)委員 これは、決議の中にはもちろんそういうことは一言もありません。アメリカの独自の見解ということでいいでしょうか。
西田政府参考人 今般の新しい決議を採決するに当たりまして、それぞれの国は必要に応じまして投票理由の説明をいたしております。先ほど委員から御指摘のアメリカの大使の発言も、そのような意味における発言でございます。
松本(善)委員 アメリカの独自の見解であるということをお認めになったものと思いますが、若干確かめておきたいことがございます。
 アメリカの発言によりますと、国連が断固として行動しない場合は自衛のために行動するということがあります。この自衛というのは武力の行使があった場合に発動されるものであって、決議違反の場合にはこれは全く別の問題ではないか。決議に違反したということがあれば、これは安保理事会で協議をするというのが国連憲章の原則でもあり、また、国連決議一四四一に決められていることではないでしょうか。
西田政府参考人 一四四一ではまさに、繰り返しになりますが、イラクによる新たな義務違反が生じた場合には、早急に安保理事会を開いて、平和と安全の問題を解決するための審議を行うということになっているということでございます。
松本(善)委員 それから、もう一つ確かめておきたいと思いますのは、安保理事会で協議をした場合に、それが不満だからといって、自衛権の行使として武力行使をすることはできないと思います。また、加盟国が安保理事会の決定を不満として、その国だけで国連安保理事会決議を実行するという名目で武力行使をすることもできないと思いますが、どうでしょう。
林政府参考人 一般論としてのお尋ねだろうと思いますが、一般論として申し上げれば、現在、国連憲章のもとにおきまして自衛権の発動が認められますのは、武力攻撃が発生した場合ということでございます。
 安保理決議についての不満とか、その途中の段階においてというお話でございますけれども、安保理あるいは安保理決議の違反を名目にしてというお話がございましたが、これは一般論ということですので申し上げますけれども、安保理決議の決定に至るまでの状況とか、内容とか、違反の状況、態様、そこを見ずして、およそ安保理決議の違反がなされたという場合に、すべからく自衛権の行使というものはあり得ないのだというところまでちょっと断定はいたしかねると思います。その具体的な状況を見た上で判断すべき話ではないかというふうに思います。
 ただ、いずれにせよ、一般論としては、国連憲章上、自衛権の発動につきましては、武力攻撃が発生した場合であるということでございます。
松本(善)委員 確かめておきますが、この一四四一でも、それから国連憲章の立場でも、決議に違反をした場合は安保理事会で協議をするということになっていると思いますが、その点は間違いありませんか。
西田政府参考人 その点はそのとおりでございます。
松本(善)委員 それから、イラクのさらなる違反があれば、UNMOVIC、IAEAないし加盟国によって安保理事会に報告されるというふうにアメリカ国連大使は述べておりますけれども、決議にはそのようなことは書かれていない。UNMOVICとIAEAが報告するというふうに書かれていると思いますが、いかがでしょう。
西田政府参考人 決議自身には、御指摘のとおりの書き方になっております。
松本(善)委員 フランス、ロシア、中国の三国がこの決議について共同声明を発表しておりますが、その内容はどういうものでしょうか。
西田政府参考人 中仏ロは、三国共同声明を発しまして、イラクによる諸義務の違反は、UNMOVIC委員長またはIAEA事務局長により安保理に報告をされる、それから、安保理はその報告に基づき立場を決定するという趣旨の内容の声明を発表しております。
松本(善)委員 ロシアのフェドートフ外務次官は、自動的かつ一方的な武力行使の容認など、受け入れがたい条項を決議から排除することに成功したというふうに語っておりますし、フランスも中国も同様の見解を述べております。アラブ諸国で唯一安保理事会メンバーのシリアは、決議に賛成した理由を、自動的に武力行使に進むわけではないとアメリカ、イギリスが確約したということを説明しておりますが、それらは事実でしょうか。
西田政府参考人 今回の決議自身、委員御指摘のとおり、まさにイラクがみずから国際社会の意向を体して、平和的にこの問題を解決すべく大量破壊兵器を廃棄するということが求められているわけでございますから、そのような内容からして、当然のことながら、そのようなことが行われない中において、一方的な武力行使というものを想定してはいないということだろうと思います。
松本(善)委員 決議の十三項に、イラクに対して、義務違反が続けば、同国は重大な結果に直面するであろうと再三警告したことを想起するということが述べられておりますが、これは、もちろん自動的な武力の行使を認めるということではないと思いますが、どうでしょう。
西田政府参考人 ただいまの文章をもって直ちに自動的な武力行使を認めたというふうには解せないと思います。
松本(善)委員 今、総合外交政策局長及び林条約局長が述べたように、この決議に対する解釈は明快、明確だと思います。日本政府としては、イラクに対してこの決議の全面実行を求めるとともに、このイラク問題が、戦争によってではなくて、平和的に解決をするようにあらゆる外交努力をなすべきものと考えますが、外務大臣はいかがお考えですか。
川口国務大臣 おっしゃるとおりだと思います。我が国としては、この国連の安保理の決議が全会一致で採択されたことを歓迎し、その後、そこにいらっしゃいますが、新藤政務官や、それから安藤中東アフリカ局長が在京のイラク大使館に働きかけていますし、それから現地でも、出張した人間がイラク政府に対して働きかけている、そういう外交努力を行っております。
 この外交努力は今後とも引き続き続けていくということでございますし、もちろん、すべての国の願いは、イラクがこれを直ちにきちんと実行に移していくということにより、問題が平和裏に解決をしていくということが大事であると考えているということだと思います。
松本(善)委員 今までの答弁で見ますと、日本政府の見解はアメリカ政府の見解とは違うというふうに思いますが、そういうふうに見ていいでしょうか。
茂木副大臣 決してアメリカ政府と日本政府の立場が違っているとは思っておりません。
 重要なことは、先ほどから大臣が申し上げておりますように、イラクに対して国際社会が一致して、査察の即時、無条件そして無制限での受け入れ、そして、実際にイラクが大量破壊兵器を廃棄する、このことが一四四一の目的である、このような認識につきましては、アメリカもそして日本も同様である、こう考えております。
松本(善)委員 大きな筋でイラクにこの決議の実行を求めているという点でアメリカ政府とは違うとは思いませんけれども、アメリカ政府が独自の判断で武力行使ができるということは、アメリカ政府高官やあるいは国連大使が述べてはいるけれども、それは決議にはないということがこの質疑の中で明らかになりました。茂木副大臣の見解も、アメリカが独自に武力行使ができるというところまで一致をしているということを述べたものではないと思いますが、どうですか。
茂木副大臣 申し上げましたのは、最終的に一番重要な目標について、日本そしてアメリカの立場は一致しておりますし、それを働きかけていくための手段をそれぞれ今後の話し合いの中でもとっていくということだと私は理解いたしております。
松本(善)委員 おおむね、外務省の答弁が私の思っているとおりでございましたので、時間が若干残りましたけれども、これで終わります。
池田委員長 次に、保坂展人君。
保坂委員 社民党の保坂展人です。
 本日は、先日、党首討論の席で土井党首と小泉総理大臣との間で、わずかながらの時間ですが、議論されたことを一つ一つ確かめていきたいと思います。
 先日、党首討論の席で、土井党首は国連憲章の五十一条を引きまして、国連憲章の五十一条ができていく前史として、大変な限りない戦争と殺りくの歴史の中で三百五十四年前ウェストファリア条約というのができて、この中では、国家主権の相互尊重と自衛権は認めるけれども、これは顕在化している脅威についてのみ自衛権の発動はなされるんだ、したがって先制攻撃ということを国連憲章の五十一条は認めていなくて、これをもしするとすれば国連に対する否定であって、日本は支持をできないのではないかと。小泉総理大臣は、時間が切迫して、討論時間が迫っていたということもあったんでしょうか、非常に簡単な発言でございまして、「どの国も国際法を守るのは当然だと思います。」こういうふうに発言をされています。
 川口外務大臣に、この発言に間違いはないのか、よもや例外ということを設けるということはないのだということを確かめておきたいと思いますが、いかがでしょうか。
川口国務大臣 まさに小泉総理がおっしゃったとおりのことでございまして、どの国も国際法上の義務と権利、これに合致をする行動をとっていく、そういうことであるべきであると思いますし、米国についていえばそういうことだと考えています。
保坂委員 アメリカといえども例外ではないというふうに思います、そういう趣旨だと理解いたしました。
 条約局長に伺いたいんですが、私が今引用したとおり、国連憲章五十一条は、加盟国が攻撃を受けたときに個別的、集団的自衛権が認められるけれども、先制攻撃はこれを禁じている、こういう内容だというふうに確認してよろしいですか。
林政府参考人 先ほど来も御説明申し上げましたとおり、今日の国連憲章のもとにおきましては、一般的に武力の行使が違法化されておりまして、例外的に自衛権の行使及び安保理決議等によりましてこれが許容される場合を除きまして、一般的に違法化されているということでございます。
 御指摘の先制攻撃ということの確立された定義というものは必ずしも私承知しておりませんですけれども、一般的に自衛権の発動のタイミングということにつきましては、武力攻撃による現実の被害の発生の後でなければならないというものでは必ずしもないということは従来からも我が国も御説明しているとおりでございますが、その点を申し上げた上で、自衛権の発動に当たりましては、基本的に武力攻撃の発生が要件となっている、前提となっているということでございます。
保坂委員 続けて条約局長に伺いますが、一八三七年の十二月二十九日に、大変昔の話ですけれども、カロライン号事件という事件が起きた。アメリカとカナダの国境のナイアガラ川の河口に停泊をしていたカロライン号が攻撃を受けた。これがその後四、五年にわたって、当時、イギリスからのアメリカ国籍のこの船に対する攻撃が大変大きな交渉事になったと聞いていますが、簡潔にこのケースについてお答えいただきたいと思います。
林政府参考人 カロライン号事件と申しますのは、御指摘のように、一八三七年の十二月に発生した事件でございまして、講学上も、自衛が武力行使の正当化事由として認められるということにつきましての古典的な事例として、この事件を通じまして自衛が実定国際法の原則として定式化されたというふうに一般には言われている事件でございます。
 具体的には、英国が、英領カナダの独立のための反乱の状況の中で、米国の港に停泊中のカロライン号を拿捕し、放火した上、ナイアガラ瀑布に落とした。この事件で米国人も殺害されたりしておりました。
 この事件をめぐりまして、米英間で紛議となりまして、その最終的な決着に当たりまして、米英間におきまして、武力の行使に当たっては自衛が必要である、それから、自衛の必要についての要件につきまして、これはアメリカの国務長官が述べておるところでございますけれども、自衛の必要が差し迫った、かつ圧倒的なものであって、他に手段を選ぶ余裕がなく、熟慮する時間がなかったことを証明すべきであるといった主張、これをアメリカがイギリスにぶつけたわけでございますが、イギリスはこれを証明したということで、米英間で自衛の要件につきまして見解の一致が見られ、自衛の概念についての確立に向けての契機となったということでございます。
 ただ、一点申し上げておかねばなりませんのは、これはまさに一八三七年とか、解決されたのは四一年ということでございますと、やはりまだ、今日の国際法のもとでは武力の行使が、先ほど申しましたその例外を除きまして、一般的には違法化されているという状況でございますが、これは、それとはやや異なった時点における事例でございます。
保坂委員 答弁は簡潔にお願いしたいんですが。
 確かにかなり昔の話ですが、しかし、このカロライン条項というものは、ナチスドイツのいわば戦犯法廷でも連合国側が厳しくこれを出してナチスドイツ側の主張を退けたということでも有名だと思いますし、今条約局長の答弁にあった、自衛の手段が差し迫ってほかの手段もなく時間的な余裕もないというような場合にのみ自衛が認められるということだと思います。
 さらに今度は、二十年ほど前、一九八一年に、当時のイラクの郊外に建設をされていた原子炉サイトをイスラエルの空軍が爆撃したということについて、これは非難されなければならないという国連決議がなされています。これに対してアメリカあるいは日本も賛成していると思うんですが、その決議の内容と両国が賛成をした理由、簡潔に答弁いただきたいと思います。
西田政府参考人 この事件は、イスラエルの空軍機がバクダッドから約三十キロメーター離れました地点に建設中でございました原子炉を爆撃し、破壊したものでございます。
 イスラエルは、みずからの行動を、イラクの原子炉施設は核兵器開発のためのものであることが明らかである、イスラエルは原子炉が臨界点に達する前に、やむなく国際法及び国連憲章五十一条に従い自衛権を行使せざるを得なかったものというふうに発言をしております。これに対しまして、イラクの方は、これは明らかに侵略行為である、自衛行為とするイスラエルの主張は根拠を欠くという主張をいたしました。それで、結果的にはこれに対しまする決議が行われまして、各国がこれは自衛権の発動としては認められないという趣旨の発言をしたことは委員御指摘のとおりでございます。
 例えば、アメリカもこれを非難しておりまして、非難しながらも、全体の脈絡の中で、イスラエルはイラクとの過去の歴史から真に防衛目的のために攻撃を行ったと信ずるに足る理由があるという趣旨の発言を付加しております。イギリス、フランスは、イスラエルの行為を非難し、自衛措置という議論は受け入れられないというふうに述べております。当時のソ連でありますが、同様に、イスラエルにこれは認められず制裁を適用すべきということを主張しまして、結果的に、国連憲章及び国際の行動規範に違反するイスラエルの行動を強く非難する決議がコンセンサスで採択をされました。
保坂委員 外務大臣に伺います。
 今、幾つかの例を引いて、国際法上の先制攻撃あるいは予防戦争にかかわる事例を挙げてまいりました。国際法上、武力攻撃が既に発生しているというふうにみなされるのは、一国でもちゅうちょするなら大変な危機、防衛の可能性が危うきに瀕するという場合を除いて、これは切迫している場合には認められているけれども、そうでない場合は侵略である。一九七四年十二月には、国連総会で侵略の定義というものが定められていまして、一国が他国の主権、領土保全者もしくは政治的独立に対して武力を行使すること、または国連憲章と両立しない他のいずれかの方法により武力を行使することを侵略という、こういうふうに議論が積み上がってきている歴史があります。
 これらの国際法上の原則、一番最初の質問と重なるんですが、今後も日本政府として国際社会の中で守り続けていかなければならないと私は思うんですが、いかがですか。
川口国務大臣 我が国が国際法上の権利と義務に沿って行動していくということは当然のことだと思います。
保坂委員 となると、いわゆるブッシュ・ドクトリン、ことしの六月の陸軍士官学校卒業式での演説で出てきて、また九月十九日の国家安全保障戦略に盛り込まれている、脅威の兆候があれば、必要に応じて自衛権を行使して、先制攻撃を行ってこれを撃破し予防することによって抑止効果を強化していくという新たな考え方というのを出したわけですね。この考え方は、やはり原則を著しく崩すものじゃないかというふうに思いますが、いかがですか。
海老原政府参考人 今委員がお述べになりました国家安全保障戦略でございますけれども、ちょっと私の方から事実関係を補足させていただきます。
 この安全保障戦略におきましては、先制攻撃という言葉は実は使われておらないわけでございまして、先制行動というような言葉になっております。それで、それは必ずしも武力の行使ということではなくて、外交それから財政、金融というような措置も含むという広い概念として語られております。したがいまして、そういう脅威に当たりまして常に武力行使を行うということを述べているわけではございません。また、先制的に対応するということに当たりまして、それが侵略の口実とされてはならないということもはっきり述べております。
 こういうことから考えまして、先ほどから条約局長が答弁しましたような国際法上の自衛権の考え方というものに当然沿った形で行動が行われるということが予定されているというふうに考えております。
保坂委員 外務大臣に聞きたいんですね。
 もうアメリカでは、九月十一日のテロ以降、キッシンジャーさんなども、これまでの国際法上のルールというのは変更しなきゃいけないんだということも言っておられるし、アメリカの議会でもこういった議論が相当されていますよね。
 先制攻撃権、自衛のために、テロの脅威あるいは攻撃の脅威が迫る前に先にたたくということをアメリカだけができる、もしこのルールが実行されれば、ではアメリカだけが先制攻撃権、国際法に必ずしも縛られない権利を有していて、他の国は従前の国際法に縛られていますよということは果たして成り立つんだろうか。例えば、インド、パキスタンでカシミールをめぐってにらみ合っている、こういう状況はどうなるんだろうか。大変重大な事態だと思うんですね。外務大臣、お答えいただきたいと思います。
川口国務大臣 アメリカは、非常に自由な言論を尊重する国でありますし、また、さまざまな考え方の人が自由に意見を言う、そういう国であります。したがいまして、キッシンジャーがいろいろ言ったということ、それは別にごく普通の話であると思います。
 しからば、アメリカが政府としてどうかということが問題になってくるということでございますけれども、アメリカの国家安全保障戦略が言っていることについては先ほど海老原局長がお答えをしたとおりでございまして、先制的に対処するために必ず武力を行使すると言っているわけでもないということです。いずれにしても、米国は国際法の権利と義務に従って行動をすると私たちは考えているわけでございます。
 それから、先般国連で八週間にわたる長い時間を使って、国際社会として決議を一致して採択をするための努力をしたということ自体、アメリカとして国際社会の努力、一致した行動を大事に考えている、そういう証左ではないかと思います。
保坂委員 決議については後ほど触れますので、もう少しブッシュ・ドクトリンとイラク攻撃の論拠について外務大臣に伺っていきたいと思います。
 この目的が、大量破壊兵器の開発をしている、これを除去しなければいけない、これを根こそぎ消し去らなければならないというのは、国際社会の完全な同意を得ている問題だと思うんですね。ところが、ここのところはっきりしてきたのは、イラクに新政権を樹立する、つまり、大量破壊兵器の除去のみで終わるものではない、フセイン政権を打倒し新しい政権をつくらなければならないということをはっきり各方面で言われています。これは、国家主権の転覆で、軍事占領を伴って新たな政権を樹立するというところまでやるということを今回アメリカは考えているということは明白であります。
 だとするならば、いわばイラクの危険性あるいは先制攻撃をめぐる議論はありましたけれども、しかし、イラクをたたかなければいけないんだという論拠として、そもそもの九・一一テロ事件以降の、アルカイダが企画、実行したとされるあのテロ事件と、あるいはその後の関連する、バリ島でもありました、さまざまなところでテロは起こっています、ということとイラクとの関係、これをやはり国際社会の前に証明をして、だから必要なんだということは最低限必要な問題だと思いますが、認識を問いたいと思います。外務大臣にお聞きします。
川口国務大臣 アルカイダとイラクの関係ですけれども、従来から、イラクの北部にアルカイダの分子がいるという話はいろいろ聞こえてきているわけですけれども、我が国政府として、さまざまな情報を総合的に考えましても、イラクの政府が組織的にアルカイダを支援してきている、そういった確証は持っていない、そういうことでございます。
保坂委員 それでは中東アフリカ局長に伺いたいと思いますが、イラクのバース党、つまりフセイン政権は、イスラム原理主義の、例えばアルカイダなどのグループや他の原理主義集団とも余り良好な関係ではないはずなんですね。したがって、大量破壊兵器をそれらの危険なグループに渡していくような可能性があるのかどうか、これに答弁してください。
安藤政府参考人 イラクとアルカイーダ等のテロ分子との関係でございますが、先ほど外務大臣からもお答えしたとおりでございまして、イラク北部にテロ分子が存在しているということは一般的には言われておりますし、それから、ブッシュ大統領自身も、九月の二十四日に行いましたスピーチの中で、イラクのフセイン大統領とアルカイーダ・ネットワークが緊密な関係にあり、彼らの連携は脅威であるということは言っておられますけれども、我々日本政府といたしまして把握している情報を総合いたしますと、現時点で、イラク政府が組織的にアルカイーダ等と関係を持ち、組織的に支援をしてきたというところまでの確たる証拠を有しているわけではございません。
保坂委員 続けて局長に伺いますけれども、私たちは、もちろんイラクのフセイン政権がいい政権だとは考えていません。しかし、湾岸戦争のときにクウェートを占領して支配をして、国際社会のイラクに対する一定の世論ができ上がったという状況と今回は違うだろうというふうに思っています。
 いろいろな要素が違うんですが、イスラエルの政権のあり方が違うんじゃないか。ここがポイントだと思うんですね。御存じのように、シャロン政権の内閣からは労働党の閣僚が離脱をしました。伝えられているところによれば、湾岸戦争のときにはアメリカがイスラエルを説得して、スカッドミサイル等のイラクからの攻撃があったけれども、イスラエルは耐えて自制をした。自制をしたことによって、戦火がいわばあの地域全体に拡大することを何とか抑止をしたということがありますが、今回は、必ず報復をするというふうに言っていますよね。
 アラブ各国とイスラエルとの長年の確執もありますし、その点の情勢は今どのように認識されていますか。
安藤政府参考人 ただいまお話のございましたイスラエルの反撃といいますか、そういう可能性ということでございますけれども、これは報道等でいろいろなことが報じられているのは私どもも承知しております。
 万々一、武力攻撃が行われた場合に、イラクがイスラエルに対して攻撃をするのかとか、あるいはそれに対してイスラエルがどう反撃するのかとか、いろいろな話し合いが行われているとか、そういう報道はございますけれども、私ども、イスラエルと直接そういう話をしたわけではございませんし、これはイスラエルの政府の問題でございますので、余り私どもがイスラエルの反応をどうこう申し上げるのはいかがなものかなというふうに思います。
 何よりも大切なことは、今、イラクの大量破壊兵器に対して査察を行い、これを廃棄するという目的を達するということでございまして、そのことに私どもは外交努力を傾注していきたいと思っているわけでございます。
保坂委員 外務大臣に決議のことをお聞きしたいと思います。
 アラブ諸国は、十日にカイロで緊急外相会議を開いて、安保理決議が自動的に対イラク武力行使には結びつかないとの安保理の保証を尊重するとした上で、イラクにこれを受諾するようにと共同声明を発表したというふうに伝えられていますし、また、その共同声明の中には、公平な査察を担保するためにアラブの専門家を含めるように、そのようにアラブ各国はこの決議を受けとめています。
 一方で、先ほどキッシンジャーさんの話を出しましたが、パウエル国務長官は、同じ日の十日、イラクがこの国連決議に従わない場合は、アメリカはすべての必要な手段を使える権限を国連に求めていく。そして、国連が渋るようであれば、アメリカは同じ考えに立つ国と一緒に力ずくでフセインを武装解除する。つまり、国連安保理、国連の態度が定まらなくても、やるときはやりますよということを言われている。
 日本としては、この決議をどのように解釈いたしますか。
茂木副大臣 まず、十日の緊急のアラブ外相理事会の決議でありますが、保坂委員のおっしゃるとおりであります。決議が対イラクの武力行使の根拠とならない。しかし同時に、強調されたように、イラクが査察を無条件に受け入れることをアラブ世界としても歓迎をする。
 こういう中で、アメリカの発言、我々もいろいろな発言を聞いておりますが、基本的に、本決議の採択に当たりまして、御案内のとおり、ネグロポンテ代表の方も、この決議が武力行使に関する隠された引き金も自動性も含まれていない、こういうことは明確に表現をしているわけであります。ただ、同時に、いかなる加盟国もイラクの脅威から身を守ること、または関連安保理決議の履行を確保することを妨げるものではない、こういう旨も発言をしております。
 そこの中で日本の立場はいかにということでありますけれども、今一番必要なことは、即時、無条件、無制限でイラクが大量破壊兵器の査察を受け入れ、実際にこの廃棄を行う、このための働きかけを国際社会とともに、また日本としても独自に、イラクに対しても、国連の場でも行っていく、このことが一番重要なんだ、そう考えております。
保坂委員 今の副大臣の後段の御意見は、私も同感です。それは必要なことだと思います。
 ただ、問題は、パウエル長官自身がここで発言されているように、日々、このところエスカレートしているように見えます報道等を見ると、国連の決議、今もう期限が迫っていますよね、イラクが恐らく受諾をすると思いますけれども。しかし、その後のいわば時間稼ぎというか、いわゆるトラブルが起きたりというようなことで、これはやはりもう一回国連の安保理に戻ってくるという事態が考えられます。しかし、その協議が調わないうちに、アメリカが攻撃行動に着手をしてしまう、これはやはり国連の解体につながってしまうんじゃないかと思います。
 外務大臣の意見はいかがですか。
川口国務大臣 イラクがさらなる違反をした場合には、これは安保理に戻っていくということであると思いますけれども、国連が国際社会でリーダーシップを発揮していくことが期待されているわけでございまして、そういう事態があったときには、国連として一致団結してこの問題に対応ができる存在であると私は考えています。
保坂委員 そういう一致団結して対応すべきなんですが、そうでなくなってしまったときに、先ほどから、前段から触れている国際法秩序も含めまして、大きな悪い意味での変化が起きてしまうんじゃないかということを危惧しています。
 テロ特措法は、あの九月十一日のテロ事件に基づいて、国連決議の一三六八、これを根拠にしてつくられました。我々は反対をしましたけれども、当時の提出理由、法律ができた理由は、九・一一のあのテロについての行動を国際協力でやるということだったと思います。
 今回、外務大臣自身がおっしゃっているように、イラクとアルカイダあるいはテロ事件、あの九・一一テロとそれに関連するような事件とイラク政府の組織的な関連、こういうものが明確に出てきていない以上は、テロ特措法の枠組みというのは使えないんじゃないか。どう考えても私はそう思うんですが、いかがですか。外務大臣に答弁を、もう時間がありませんので。
川口国務大臣 御質問は、軍事行動があるということを予断をした上での御質問でございますので、その場合にはということを直接にお答えすることは難しいわけでございますけれども、いずれにしても、テロ特措法は法律ですから、当然に、その法律の目的に照らして、その目的に沿った形で運用をされる、そういうことであると思います。
保坂委員 ということは、私が指摘をしました、あの去年のテロ特措法を、今回武力攻撃が――私、ちょっと誤解していただいては困るんですが、戦争に必ずなるだろう、もうとめようがないなんということを言っているんじゃないんですよ、これは何とかとめなければいけないと、茂木副大臣のおっしゃるとおりなんです。
 しかし、外交というのは、まさに予想して、最悪のことであっても、あるかもしれないということを議論していくのが外交の場ですから、あえて、このテロ特措法の枠組みが、そういった戦争が起きた場合、イラクに対する攻撃というのが起きた場合に使えないんではないかというふうに言っているんですが、外務大臣の見解をもう一度聞きます。
川口国務大臣 先ほど、法律の目的に沿った形でというふうに申し上げましたけれども、一般論としてより詳しく申し上げますと、このテロ特措法に基づく協力支援活動というのは、昨年の九月十一日のテロ攻撃によってもたらされている脅威の除去に努めることにより国連憲章の目的の達成に寄与する諸外国の軍隊等に対して行うものであるということでございます。
 今後、これに基づいてどういう協力支援活動を行うかということについては、さっき申し上げたような原則にのっとって判断をしていく、そういうことでございます。
保坂委員 答弁はありましたけれども、どのようにもとれる答弁で、もっとはっきり示していただきたいということを御指摘させていただいた上で、本日は時間になりましたので、終わらせていただきます。どうもありがとうございました。
池田委員長 次に、丸谷佳織さん。
丸谷委員 大臣、連日、海外出張も含めて大変精力的に外交活動をされていることに、本当に心から敬意を表します。
 また、十月の十一日―十四日、外務大臣はロシアに訪問されまして、イワノフ外相と会談等を行われました。この成果につきましては、四島の一括返還に向けた新たな日本の外交姿勢の仕切り直しとして、非常に高く評価をさせていただきたいというふうに思います。
 今回の外務大臣のイワノフ外相との会談の結果、外務大臣としまして、近い将来の領土交渉再開に向けて、どのような手ごたえをお感じになって帰られたのか、この点についてまずお伺いをします。
川口国務大臣 十月にロシアを訪問いたしまして、そのときには、イワノフ外務大臣とお話をし、それからプーチン大統領に表敬をいたしました。
 プーチン大統領から、イワノフ外務大臣も同じような趣旨のことをおっしゃいましたけれども、日本とロシアは、過去から引き継いだ問題、領土問題というのは二十世紀の問題を過去から引き継いだ問題であって、これを我々として解決していかなければいけない、日ロ平和条約をつくることについて、日ロ両国で相談をして協力をしていかなければいけない、そういうお話がございました。
丸谷委員 そうしましたら、例えば平和条約締結問題が日ロ関係の重要課題である、当然これは相互理解をされて帰っていらっしゃったわけなんですけれども、プーチン大統領がおっしゃるように、過去から引き継いだ問題のすべてを解決していくという言葉を踏まえますと、平和条約締結の重要性とともに、平和条約の締結に向けては領土問題が重要である、この二つの同時並行的な認識に両国は立ったというふうな理解でよろしいでしょうか。
川口国務大臣 同時に、私が行きましたのは、総理が一月にロシアを訪問なさいますので、その準備ということでもございますけれども、日本とロシアの間で善隣友好に基づく創造的なパートナーシップをつくっていくことが重要であるということでございます。
 これにつきまして、我々として行動計画というものを一緒につくって、幅広い日本とロシアの関係を築いていくということが大事であるというふうに考えておりまして、この行動計画というのは、今後の日本とロシアの間の関係を律する海図のようなものでございますけれども、それを今度総理が行かれたときに、プーチン大統領との間で合意をした上で進めていくということが、日本とロシアの関係を二十一世紀にふさわしい新しい関係としてつくっていくことのために重要であると考えまして、この点については、イワノフ外務大臣と話をし、内容の詰めの議論をさせていただきました。
丸谷委員 領土返還、帰属も含めた議論と、また四島一括返還という問題に関しましては、やはりこれは日ロ間相互、国益もあり、また国民感情もそれぞれあるだろうと思います。また、新たな議論をするに当たって、私もロシアの外交当局の方とお話しするときに、やはり積極的な相互依存関係を築いていかなければ、領土問題の解決というのはなかなか弾みがつかないでしょうというような意見交換をさせていただきました。
 外務大臣も、イワノフ外相に、日本の輸出はロシアに対して四〇%伸びていて、また融資に関しては二倍になっている等の経済協力のお話、経済の重要性もお話をされたというふうに思いますけれども、逆に一部には、ロシアは欧米の方を向いていて、欧米主義であり、なかなかアジアという視点は今のプーチン大統領はお持ちではないのではないかという声があり、また、アジアの中でも今ロシアが目を向けているのは中国である、マーケットとしての中国というところに目が向いていて、日本にはなかなか目が向いていないのではないかという指摘もあります。
 この相互依存関係というものを築いていく上で、経済の協力も必要でしょうし、また、小泉総理大臣が来年の一月に訪ロをされたときに行動計画を発表されるわけですけれども、この六分野における幅広い交流を築いていくということに関しては大賛成なんですけれども、これを例えば具体的にどのような方向性で持っていこうとされるのか、この点についてお伺いをしたいと思います。
川口国務大臣 委員もおっしゃいましたように、近隣の重要な二国間の関係をとったときに、どの二国間関係よりも我が国とロシアとの間の関係は弱いリンクであるということでございまして、この旨を私はイワノフ外務大臣にも、そしてプーチン大統領にも申し上げました。
 先ほど申し上げました行動計画というのは、まさに委員もおっしゃった六つの分野について協力をして進めていきましょうということでございまして、その一つが経済の協力でございます。
 そうしたことを進めながら、そして、日本とロシアとの間の関係を相互に依存するような、相互に重要な関係にしていき、国際舞台における国際的な課題への協調をした対応も含めて、いろいろな分野で協力を進めながら、その六つの分野の一つである平和条約、四島の帰属の問題を解決して平和条約を結んでいきましょう、そういう考え方でございます。この行動計画に具体的な中身をいろいろ書き込んで発表するということになると思いますので、それを進めていくということが大事だと思います。
丸谷委員 積極的な相互依存関係、国対国もあれば、地域対地域もあり、また人対人といった、それぞれのまた細かな分野というのは当然あると思うんですけれども、外務大臣がイワノフ外相との会談の中でテーマにしていただきましたサハリン支援についてちょっとお伺いをしたいと思うんです。
 大臣より、隣接するサハリン州とまた日本の関係の重要性を認識した上で、九三年からサハリン州における改革を支援してきた、ところが、支援委員会を廃止することになったので、サハリン支援というもの自体が従来のような額とかあるいは形態ではすることができないとおっしゃった上で、同時に、北方四島周辺水域における操業枠組み協定の重要性について指摘をされまして、枠組み維持の意向をイワノフ外相に述べられました。
 その答えとしまして、イワノフ外相より、サハリン支援の廃止は枠組み協定の存続に困難な問題をもたらし得るとしたものの、ロシア外務省としては、協定の存続に向けて国内関係者に働きかけていきたい旨、御回答があったというふうに聞いております。
 これは、四島周辺水域で操業をしている漁民ならずとも非常に深刻な問題の一つであり、また、枠組み協定が通常であれば年末に行われるということから、非常に急を要する問題だと思うわけなんです。
 何か事があるたびに、外務大臣からロシア中央に対しては、外務省経由で安全操業についての申し入れをしていただいているものの、現実は、ロシアの方を見ると、ロシア中央からサハリン州、またそこの周辺で漁業をされているロシア側の漁民の皆さんにはなかなか意向が伝わりづらいのかなというような実感をしている、この難しさがある中で、この枠組み協定に向けて日本政府としてどのように取り組んでいかれるのか、この点をお伺いします。
川口国務大臣 この枠組みは、北方領土問題に関する我が国の立場を害さないという大前提のもとで、北方四島周辺水域における我が国漁船による安全操業を実現させるというものでございます。これは、領土問題解決のための環境整備としての意義を持っておりますし、本件の枠組みが確立をされた後、この水域での操業をしているときに拿捕や銃撃といった事例がない、なくなったということで、日ロ間の種々の分野での協力の進展にも貢献をしてきたというものでございます。
 このような意義にかんがみて、この枠組みがまさに日本とロシアの両国の利益に合致をするものであるということについて、私はイワノフ外務大臣にお話を申し上げ、そして、ロスカボスで小泉総理からカシヤノフ首相にもお話をしていただいたということでございます。
 来年の操業について、まさに十一月から、モスクワで今交渉が行われているところでございまして、この妥結に向けて全力を尽くしたいということで考えております。
丸谷委員 全力を尽くしていただきたいというふうに思いますし、両国にとって非常に理にかなった協定であるというふうに理解をしているわけなんですけれども、今回のイワノフ外相の御回答にもありましたが、四島支援とこの枠組み協定というのがある程度一致をしてとらえられていたのかなという反省点もなきにしもあらずかと思うんですが、この点についてはいかがお考えになっているでしょうか。もしこの反省点があるのであれば、来年以降、枠組み協定維持に向けた新たな政策というのが必要になってくると思うんですけれども、この点についてはいかがでしょうか。
齋藤政府参考人 お答え申し上げます。
 先ほど先生、四島支援というふうにおっしゃいましたけれども、恐らくサハリン支援のことをおっしゃっておられるのかなと思いますので、そういう前提でお答えさせていただきます。
 サハリン支援は、先ほど大臣の御答弁にもございましたけれども、九三年以降、ロシアの市場経済への移行をスムーズにするという観点から、ロシアにおいて七つの日本センターを通じて実施してきているものでございますけれども、サハリンにおいても、そのうちの一つのセンターがユジノサハリンスクにございまして、実施してきております。
 それに加えまして、九八年以降、この枠組み協定ができましてから、この枠組み協定と直接の関係はないわけでございますけれども、現実にサハリンがこの操業水域を管轄しているという観点にも着目いたしまして、サハリンとの関係を円滑に進めることが重要であるという観点から、支援委員会を通じる毎年二億四千万円程度の支援を意図表明してきたという実態があるわけでございます。
 それで、今年度末にはこの支援委員会は廃止することにしておりますので、そうなりますと、来年度以降、従来のような形でのサハリン支援はできなくなるということでございまして、今週モスクワで政府間協議、それから民間漁業交渉が行われているところでございますけれども、枠組み協定が維持できるように最大限努力を今払っているところでございますし、また、支援委員会廃止後のサハリンに対する支援のあり方等につきましては、今後、政府部内で水産庁とも御相談しながら鋭意検討してまいりたい、こういうふうに考えているところでございます。
丸谷委員 実際にあそこの地域というのはやはり特殊な地域でありまして、日本が主張している二百海里内、領海という認識と、ところが現実は日本が主張しているような漁業が営めないという、ある程度ダブルスタンダードの中で生活をしているという地域でもありますし、これは極めて、外交力でしか、国と国の間でしか解決できない問題を抱えた地域でありますので、どうかそこの点を酌んでいただいて、国民の目線に立ったというか、生活に立った交渉というものも頑張っていただきたいというふうにお願いをいたします。
 続いて、では、ロシアのエネルギー需要に果たす役割についてお伺いをしたいと思います。
 十五日にも、先ほど来お話が出ていますが、イラクが国連の決議を受け入れるかどうかという日にちが迫ってきていますけれども、イラク攻撃の可能性が高まってくるにつれて、世界のエネルギー需要の不透明感というものも増しつつあると認識をしております。国連安保理がこの八日にイラクの大量破壊兵器査察問題に関する新たな決議を採択したことで、イラク攻撃が万が一にもあった場合の原油の供給混乱の問題についてもあらかじめ予測、対処をしておく必要性があるのだと思います。
 仮にイラク攻撃というものが始まれば、九〇年代のあの湾岸当時のように中東原油の価格が高騰することは避けられないでしょうし、日本の原油輸入量に占めるOPEC依存度というのは二〇〇一年度ベースで約八七・一%の非常に高い水準にあることから、湾岸危機と同様な事態が発生した場合、我が国の体制というのは万全なのかどうか、この点についてお伺いをします。
川口国務大臣 石油についてどうかということですけれども、これは、経済産業省においてそのときの油についての対応は適切に対応していただいていると思いますけれども、私が理解をしておりますのは、我が国はずうっと国家備蓄と民間備蓄というものをやっておりまして、恐らく、全部足しますと百二十日を超えるぐらいの備蓄があると思います。――失礼しました。今、百七十日分あるということでございます。したがいまして、そういった備蓄を適切に使いながら、我が国としてはこの油の価格の高騰問題については対応していける、そういうことだと考えております。
 IEAという国際的な組織がございますけれども、ここにおいても、こういった問題については常日ごろシミュレーションなどをやっておりますので、この問題に対しての対応は適切にできると思います。
丸谷委員 では、大臣、お時間ですので退席していただいても結構でございます。ありがとうございました。
 では、齋藤局長にお伺いをします。
 最後の質問にさせていただきたいと思いますけれども、大臣がこの間訪ロをされたときに、イワノフ外相の方から、天然ガスパイプライン建設に対する日本の協力に強い期待を表明しているという趣旨のお話があったと思いますけれども、政府は、今後これにどのように対応していこうとされているのか、この点について最後にお伺いします。
齋藤政府参考人 サハリンにおきますエネルギープロジェクトでございますが、現在、サハリンの沖合に六つのプロジェクトが進行しておりますけれども、そのうちの二つに日本の企業が参加しております。サハリン1、サハリン2でございます。
 それぞれ生産物分与契約ということでやっておりますけれども、日本の企業が、サハリン1については三〇%、サハリン2については四五%ということでやっておりまして、このパイプラインのお話は、今先生御指摘になったものはサハリン1の方に関連するものでございます。
 大口の顧客を獲得するという課題はございますけれども、やはりエネルギーの確保または地理的な近接性といった観点から、サハリンのプロジェクトも関心を持っているわけでございまして、我々としては、この企業の今後の動向等を見ながら、必要な範囲内において側面から協力できることがあれば検討してまいりたい、こういうふうに考えているところでございます。
丸谷委員 ありがとうございました。
 我が国にとって、多様なエネルギー資源の保有というのは非常に重要な問題でもございますし、ロシアは、今やサウジアラビアを上回る産油国でありながらOPECに加盟していないということで、既に欧米系のメジャーの会社などがロシア投資に拍車がかかっているということも踏まえまして、日本もより積極的な協力体制というものを考えていくべきだというふうに私は主張しまして、質問を終わらせていただきます。
 ありがとうございました。
池田委員長 これにて本日の質疑は終了いたしました。
 次回は、来る十一月十五日金曜日午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後零時三十一分散会


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