衆議院

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第7号 平成14年11月22日(金曜日)

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平成十四年十一月二十二日(金曜日)
    午前九時三十一分開議
 出席委員
   委員長 池田 元久君
   理事 今村 雅弘君 理事 嘉数 知賢君
   理事 河野 太郎君 理事 水野 賢一君
   理事 首藤 信彦君 理事 中川 正春君
   理事 上田  勇君 理事 藤島 正之君
      伊藤 公介君    植竹 繁雄君
      小西  理君    高村 正彦君
      下地 幹郎君    武部  勤君
      土屋 品子君    菱田 嘉明君
      松宮  勲君    宮澤 洋一君
      伊藤 英成君    金子善次郎君
      桑原  豊君    前田 雄吉君
      丸谷 佳織君    松本 善明君
      東門美津子君    松浪健四郎君
      鹿野 道彦君    柿澤 弘治君
    …………………………………
   外務大臣         川口 順子君
   内閣府副大臣       米田 建三君
   外務副大臣        茂木 敏充君
   外務大臣政務官      土屋 品子君
   会計検査院事務総局第一局
   長            石野 秀世君
   政府参考人
   (警察庁警備局長)    奥村萬壽雄君
   政府参考人
   (防衛庁防衛局長)    守屋 武昌君
   政府参考人
   (法務省入国管理局長)  増田 暢也君
   政府参考人
   (外務省大臣官房長)   北島 信一君
   政府参考人
   (外務省大臣官房領事移住
   部長)          小野 正昭君
   政府参考人
   (外務省アジア大洋州局長
   )            田中  均君
   政府参考人
   (外務省北米局長)    海老原 紳君
   政府参考人
   (外務省中東アフリカ局長
   )            安藤 裕康君
   政府参考人
   (外務省条約局長)    林  景一君
   政府参考人
   (海上保安庁長官)    深谷 憲一君
   外務委員会専門員     辻本  甫君
    ―――――――――――――
委員の異動
十一月二十二日
 辞任         補欠選任
  新藤 義孝君     小西  理君
  中本 太衛君     菱田 嘉明君
同日
 辞任         補欠選任
  小西  理君     新藤 義孝君
  菱田 嘉明君     中本 太衛君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 会計検査院当局者出頭要求に関する件
 政府参考人出頭要求に関する件
 国際情勢に関する件


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     ――――◇―――――
池田委員長 これより会議を開きます。
 国際情勢に関する件について調査を進めます。
 この際、お諮りいたします。
 本件調査のため、本日、会計検査院事務総局第一局長石野秀世君の出席を求め、説明を聴取し、また、政府参考人として外務省大臣官房長北島信一君、同じく大臣官房領事移住部長小野正昭君、同じくアジア大洋州局長田中均君、同じく北米局長海老原紳君、同じく中東アフリカ局長安藤裕康君、同じく条約局長林景一君、さらに、警察庁警備局長奥村萬壽雄君、防衛庁防衛局長守屋武昌君、法務省入国管理局長増田暢也君、海上保安庁長官深谷憲一君、それぞれの出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議はありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
池田委員長 御異議はないと認めます。よって、そのように決定いたしました。
    ―――――――――――――
池田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。水野賢一君。
水野委員 おはようございます。自由民主党の水野賢一でございます。
 きょうは、中国、台湾の問題について幾つか質問をしたいと考えております。
 ことしは日中国交正常化三十周年の年ということでありますし、これは逆に言えば、日本と台湾にとっては断交三十年ということになるわけですけれども、節目のときというのはこういう問題を考えるいいきっかけでもあると思うわけでございます。この地域というのは、日本にとって近隣でもあり、最重要な地域でもあるわけですし、さらに、ことしも瀋陽総領事館のような大きい事件も起きた。そういうことから、この地域の問題について集中的に質問をさせていただきたいと思うわけでございます。
 まず、直近のニュースについて取り上げたいわけですけれども、台湾の李登輝前総統の訪日問題について触れたいと思います。
 まず最初に土屋政務官にお伺いをしたいわけですが、年間に日本を訪問する台湾の方の数、また、日本が台湾の人に発給するビザの数というのはどのぐらいになるのか、その数を教えていただきたいと思います。
土屋大臣政務官 法務省の入国者数統計によりますと、平成十三年の台湾から日本への新規入国者数は七十七万七千六百七十三人となっております。また、台湾にある交流協会台北事務所及び高雄の事務所における査証発給総数は、平成十三年では四十六万八千八百四十二件となっております。
水野委員 さて、それだけの人を日本は受け入れているわけですし、現にビザも発給をしているということになるわけですが、そうであれば、李登輝氏の場合は、今は総統をやめて、民間人として私人としてあるわけですから、そういう何十万という方と同様に、淡々とビザ発給の手続をとるべきだというふうに私は考えるわけでございます。
 いろいろな経緯の中で、外務省の答弁などを聞いていると、今回私人による私的な訪問と評価することは困難というふうに李登輝氏側に伝えたようでございますけれども、それで質問ですけれども、それでは、純然たる私人による私的な訪問だというふうに判断されればビザ発給はしたわけですね。例えば、全くの私的な観光などの場合であれば発給の問題はないというふうに理解してよろしいわけでしょうか。
茂木副大臣 水野委員御指摘のように、日本と台湾の間、経済的には大変に交流が盛んなわけであります。そして、ビザの発給でありますが、基本的には、その申請があった時点で適時適切に判断をしていく、これが政府の方針であります。
 今回の李登輝氏に関するビザでありますけれども、簡単に事実関係を申し上げますと、委員も御案内のとおり、十一日に李登輝氏側から、慶応の三田祭における講演のため、訪日に係るビザの申請がなされた。申請を受けまして、慶応大学側にも事実関係等々を確認させていただいたわけでありますが、同講演は三田祭の行事としては行われない、こういう慶応大学側からの答えを受けまして、李登輝氏側にその立場を伝達するとともに、事実関係を確認したところ、李登輝氏側が査証申請を取り下げた。その上で、十三日になりまして改めて、今度は違う場所で講演をしたい、こういう旨のお話がございました。
 我が方といたしましては、今回の講演に関します一連の混乱を踏まえまして、改めて査証申請がある場合、今般の李登輝氏の訪日を私人による私的な目的のための訪日と評価することは極めて困難ではないか、こういう基本的な考え方を伝えさせていただいた。ただ、実際にビザの申請があった場合にそれを受け付けるかどうか、これは適時その場で決めていく、これが政府の方針であります。
水野委員 適時適切に判断というふうにおっしゃいましたけれども、何らかの判断基準に照らして判断をするはずなわけですね。まさか勝手に裁量行政を行ったり、勝手に恣意的に判断をするということがあってはいけないわけですから、どういう場合に私人であり私的な訪問だというふうに考えるのか、その判断基準をちょっと示していただきたいと思います。
茂木副大臣 今申し上げましたように、ケース・バイ・ケースで判断をさせていただく、こういうことであります。しかし、李登輝氏であるから例えばビザを出さない、こういう判断をすることはございません。
水野委員 例えば、台湾の要人であった方というのでいうと、連戦さんという、これは国民党の主席でもあり、なおかつ、かつては副総統を務めていたことがある行政院長、日本でいえば首相です、行政院長を務めていた方、この方なんかは昨年の十二月には来日しているわけですね。
 ですから、なぜ連戦氏の場合はよくて李登輝氏の場合は悪いのかとか、これは判断基準というものが、ケース・バイ・ケースだというふうにおっしゃいますけれども、そこは明確なものを示していただきたい。そうじゃないと、私にとっても、わかりにくいというふうに思うわけですね。
 私は、これは結局のところ、李登輝氏の場合は中国が怒るから、中国が反発するからだめだということが本音の部分であるんじゃないかと思うんですけれども、中国の反発ということは考慮に入れているんでしょうか。
茂木副大臣 今回の李登輝氏のビザ申請に関しまして、中国側から何らかの働きかけ、圧力があって我が方として判断したということではもちろんございません。御案内のとおり、ビザの発給業務、これは外務省の設置法にも定められました外務省として判断をすべき事項でありますから、当然外務省として主体的な判断をさせていただくという立場であります。
水野委員 お伺いをしたいわけですが、台湾からの要人が日本に訪日するときに、先ほどから判断基準のことをお伺いしているんですが、外には出さないけれども、何らかの内規というか内部的な取り決めというか、そういうガイドラインみたいなものというのはあるんでしょうか。
田中政府参考人 ガイドラインという形では存在をいたしておりません。
水野委員 これは大臣にお伺いをしたいんですけれども、先ほど茂木副大臣の方から、李登輝氏だからだめということはないという御答弁をいただいて、その点私は評価するんですけれども、大臣にもちょっとその同じ質問を、つまり李登輝氏だからだめということはないわけですねということを確認していただきたいと思います。
川口国務大臣 今回、李登輝氏のビザの申請があって御存じのような結果であったということの理由は先ほど茂木副大臣が御説明をしたと思いますけれども、大学側の正式な理由でなかったとか、そういうことでございまして、それのみに基づいて判断をしているということでございます。
水野委員 であれば、だめだという結論先にありきではなくて、今後、もし申請があった場合には、私人、私目的ということであれば、私は別に李登輝氏は政治活動しても何でも構わないと思いますけれども、外務省としてもきちっと、法治国家として粛々と入国、査証の発給手続というものをしていただきたいというふうに思うわけでございます。
 きょうは内閣府の米田建三副大臣もお招きさせていただいたんですけれども、というのは、この問題は政府の中でもいろいろな意見というもの、見解というものがあると思うわけでございます。報道によると、米田副大臣、十五日の衆議院内閣委員会で、外務省もビザ発給の判断についてわかりやすい説明をする努力をしてほしい、そういう旨の発言をしていらっしゃるわけですね。今のやりとりの中で、そこでお聞きになっていらっしゃいまして、副大臣、わかりやすい説明があったというふうに思えるのかどうか、感想をお聞かせいただきたいと思うわけでございます。
米田副大臣 御指摘の私の内閣委員会での答弁におきましては、詳しく知る立場にはないが報道で知ったところによると、ビザ発給がなぜ拒否されたのかわかりにくいという趣旨の答弁を行ったわけであります。
 今の議論を聞いておりましても、やはりどうやら経緯ということが問題になっているようでございますので、私は、その招こうとした側の慶応大学の経済新人会の学生諸君が整理した時系列の経過書を入手いたしました。
 それをざっと見ますと、十月の冒頭から大学の常任理事から、自粛をしないか、中国との学術交流が断絶するおそれがある云々、あるいは、もし拒否をするというような流れになったとしてもという意味なんでしょうが、マスコミなんて三カ月過ぎれば忘れるものだから、三カ月くらいの世論からの批判は受け入れる覚悟はある等々、学生諸君にそういう大学側からのプレッシャーがあったというふうに、このレポートには記載をされております。また、正式にお断りするときが来たら大学が李登輝氏へ特使を派遣する、こんなことも大学側は言っているようであります。
 加えて、そういうやりとりがあったにもかかわらず、十一月の頭には三田祭の参加分担金を徴収しておるわけでありますから、学生諸君は、若干のやりとりがあったものの、参加分担金も納めている経緯もあり、まあ実現するんだろうというふうに思っていたようであります。その後、七日に口頭で中止を宣告され、その後、さらにやりとりが続いていたわけでありますが、三田祭の実行委員会側から正式に文書をもって、中止を通告する、そういう封書が届いたのは十三日だったそうであります。
 したがって、届く前に、十一日に、そういうごたごたしているのを知らずに李登輝氏は申請を出された。したがって、三田祭の講演が難しい状況になっていたということを知らずに出したわけでありますから、その十一日のビザ申請を行ったことは李登輝氏の瑕疵ではないと思います。それからまた、その後、学生諸君が別な形でお招きをしたいというふうに申請を出した。それについて外務省はノーであるというふうにお答えになった、経緯からしてと。
 私は、その経緯は、学生諸君と大学側あるいは三田祭実行委員会との間でいろいろ、今一端を申し上げましたが、あったようでありますが、いずれも李登輝氏の瑕疵ではない。御本人の瑕疵によるところがいささかもないにもかかわらず、経緯によって発給せずというのはよくわかりませんが、この間も答弁を申し上げましたが、よくわからないにもかかわらず、この民主主義国家においてそういう決断をされるのにはよほどの高度な御判断がおありになったのかなと、私の立場では、所管事項でありませんので、想像するしかありません。
水野委員 今の米田副大臣のお調べになった経緯などはちょっと外務省の御説明と微妙な違いというのもあると思うんですが、そこら辺、外務省としてもきちっと、重要な問題ですから、調べ直していただくということは、これは要望をしていただきたいと思いますが、答弁は結構です。――答弁しますか。
茂木副大臣 まず、慶応大学の内部の決定につきましては、我々はもちろんコメントする立場にはないわけであります。
 そして、実際にビザの申請が行われましたのは十一日でありますので、我々としては、十一日前に慶応大学側に、こんなことがありそうだということで打診するという話ではありません。ビザの申請を受けまして、慶応大学の方に事実確認、当然、これは通常のプロセスでありますが、やらさせていただいた結果、その慶応大学では講演が予定をされていない。そうすると、ビザの中に書いてあります同大学における講演、これは事実と違いますので、事実と違っております、こういう照会をさせていただき、その照会を踏まえて李登輝氏側の方がビザの申請を取り下げたということでありますから、調査といいましても、それ以上の事実はございません。
水野委員 米田副大臣、内閣府で青少年健全育成を担当していらっしゃるということでございますけれども、李登輝氏は、先ほど来の話にあるように、学生の招きで来日するという予定になっておった。そして、学生たちに日本のすばらしい先人であるところの八田與一さんという方の話をされる予定になっていたというふうに報道もされていますが、そういう中で、学生たちの気持ちが今回つぶされるようなことになってしまったということについて、何か所管事項としての御意見があればお聞かせいただきたいと思います。
米田副大臣 李登輝氏は、今回、慶応の経済新人会の学生諸君の招請にこたえられなかったわけでありますが、一部新聞でも報道されているとおりに、講演の予定を立て、そして草稿を用意されていたわけであります。
 今水野先生御指摘の八田與一氏、東京帝大土木工学科を卒業した後、日本統治時代の台湾で、李氏によれば、まさに公に奉ずる精神を実践し、十年の歳月をかけて、今も台湾の人々のために大変役に立っておりますかんがい土木施設の、嘉南タイシュウのかんがい土木プロジェクト、これを実現した、そういう人物であります。この方を李登輝さんは、まさに日本精神のあらわれであるということで評価をされ、この公に奉ずる八田與一氏のような日本精神こそが国際化時代を生きる日本人に欠かせぬアイデンティティーであるというふうに学生諸君に説く御予定だったようであります。
 その原稿を拝見すると、御自身を招いたのは若い学生であり、そして日本精神について知りたいということは、日本の現状と将来について考えに考えたあげく、この問題を私に求めたものと思います。こんな立派な若者が日本にたくさんいることを知り、すっかり私の心を打つものがありましたというふうにも述べられております。
 つまり、台湾統治時代に、今でもなおかつ銅像が建てられ、そして台湾のために生涯を尽くし、そして八田與一氏の奥様は御主人が戦死された後、御主人のその仕事のまさに結果でもあったそのダムに身を投じて亡くなられた、そういうすさまじい御夫妻の台湾に対する献身というものが今も台湾の民衆に語り継がれている。そういう公に奉ずる精神を持った日本人の先輩がいたのだ、そのことを学生諸君に語って、これからの日本人の生き方についても考えてもらうつもりであった、そういう思いが李氏にあったのだろうと思います。
 私は、ぜひ、こういうすばらしいお話を慶応の学生の諸君に聞いていただきたかったし、私も聞きたかったし、学生諸君だけでなく、できるだけ多くの日本国民が聞くべき話であったというふうに、原稿を見て思っております。
水野委員 日本と台湾の交流という場合、今まで台湾から日本への訪日の話の部分をちょっとお聞きしておったわけですけれども、逆に日本から台湾に向けての人の流れというのもあるわけです。
 土屋政務官にお伺いしたいのですが、報道等によると、外務省は国家公務員の台湾訪問に対して課長以上は認めないというような内部取り決めがあるとのことですけれども、そういうような内規というか内部取り決めはあるんでしょうか。
土屋大臣政務官 おっしゃるとおり、課長以上の出張を認めないという内規があります。
水野委員 いつできたものでしょうか。
土屋大臣政務官 これは昭和五十五年に省内決議で定められたものであります。
水野委員 昭和五十五年ということは、もう二十何年も前なわけですね。時代は大きく変わっているわけでございます。これについて見直していくというような姿勢はございますでしょうか。どなたでも結構です。
土屋大臣政務官 おっしゃるとおり大変年数がたっておりまして、最近の傾向では日台間の実務交流が大変拡大しておりますので、省内でも現在見直しを行っているところでございます。
水野委員 続きまして、台湾の国際機関加盟についての設問を幾つかさせていただきたいと思います。
 私個人は、国連加盟というものがあってもいいのじゃないかと思っているわけですし、それは決してとっぴな考え方ではない。例えば分裂国家の場合でも、中国と台湾が分裂国家というものに当てはまるかどうかいろいろな議論がありますけれども、仮にそうだとしても、ほかの例を見ても、では東西ドイツ、かつて両方とも国連に加盟しておったわけでございます。南北朝鮮、北はいろいろ問題のある国でありますけれども、しかし、国連の一員であることは事実であります。
 国連加盟というものについて、私は推進をすべきだと思いますが、これは何も中国を追放せよと言っているわけじゃありませんよ、中国も台湾も仲よく国連の一員として入るということは、私はそれは日本政府として支持してもいいと思うんですけれども、いかがでしょうか。
川口国務大臣 台湾の国際機関との関係については、委員のような御意見もあるし、そうでない御意見もあると思います。政府の考え方としては、委員がおっしゃった国連の加盟の問題も含めまして、日中共同声明、この立場を踏まえつつ個別に対応していく、そういうものでございます。
水野委員 米田副大臣、お忙しければよろしいですよ。
 では、国連はともかくWHOのオブザーバー参加はいかがでしょうか。これは、ことしの五月の時点で、福田官房長官が台湾のWHOオブザーバー参加は望ましいというような発言を記者会見でしていらっしゃいますけれども、この方針に政府として変わりはございませんか。
川口国務大臣 政府の方針に変わりはございません。政府の立場というのは、関係国が満足をするような形で台湾がオブザーバー参加をしていくということが望ましい、そういうふうに考えているということです。
水野委員 望ましいというのであれば、それに向けて積極的に努力をしていくことが求められると思うんですけれども、努力をしていくという決意については、いかがでしょうか。
川口国務大臣 関係国のコンセンサスといいますか、満足をするような形で物事が進んでいくということが大事だと思っています。
水野委員 今度は条約局長に、国際法の観点からお伺いをしたいのですけれども、よく、日本と台湾の間というのは、これは政府間の協定とか条約というのを結ぶわけにいかないというふうに言われるわけです。しかし、台湾は、政府として、国として今WTOに加盟しているというのではなくて、独立関税地域という形でWTOに加盟しているわけですね。
 そうすると、日台間でも、いわゆる普通の、国と国としてのFTAというものは無理かもしれないけれども、日本国と独立関税地域としての台湾、そういう資格での台湾とのFTAというのは法理論上はあり得るんじゃないかと思います。これは、私は推進すべきと言っているわけじゃないですよ。すべきとかすべきじゃないとか、結ぶべきだとか結ぶべきじゃないということとは別に、法理論上は可能なのか、可能じゃないのか。可能だからといって別にやらなきゃいけないということはないわけですけれども、その辺、条約局長はいかがでしょうか。
林政府参考人 若干法律的な側面で御説明申し上げますけれども、WTO協定におきましては、御指摘のとおり、国ということではなくて、独立関税地域がWTO協定に加入できるという旨が規定されておるわけでございます。
 このWTO協定と不可分の一部を構成しておりますガットあるいはGATS、これはそれぞれ物品とサービスについての一般協定でございますけれども、この中におきまして、こうして加入したWTOメンバーの間の自由貿易地域ないし関税同盟の設定、それに伴います自由貿易協定の締結ということについて言及されておるということがございます。
 ただ、念のために申し上げますけれども、これらの規定は、WTOのメンバーが自由貿易協定を締結するのであれば、その締結する際に遵守すべき内容を定めたものでございまして、WTOメンバーであるという独立関税地域が他のWTOメンバー、これは締約国であって差し支えないのですが、その間で自由貿易協定を締結する権能を有するということをWTO協定上定めたものではございません。
 ただ、そういう自由貿易協定の締結がWTOのメンバー間でなされるということがあるということを踏まえまして、私どもとしての立場として申し上げますと、先般、これは十月だったと思いますが、国民の皆様によりますFTAにつきましての議論の参考としていただくための素案として、我が国のFTA戦略というものを公表させていただきました。
 その中におきまして、各国、いろいろな地域との間のFTAの締結につきまして一応の考え方を示しておるわけでございますが、その中に、WTO協定上の独立関税地域である台湾と他の加盟国との間でWTO協定に規定される純粋な物品・サービスの貿易障壁撤廃、これはさっきのガット、GATSを受けてのことでございますけれども、そういう形のFTAを締結することの可能性につきましては理論的、法技術的には検討の対象となり得るというふうにここで述べております。
 ただ、いずれにせよ、基本的な立場としては、日中共同声明に従った日台関係に関する我が国の基本的立場というものがございますので、台湾との間で国際約束を締結することは考えておらないというのがただいまの政府の立場でございます。
水野委員 そうすると、やる、やらないということは別として、できる、できないということは、私は、できる道というのはあるんじゃないかというふうに思いました。
 さて、時間が短いですけれども、安全保障の問題に少し入りたいと思います。
 私は、東アジアの大きい不安定要素というのは、北朝鮮という国の存在と、やはり中台の両岸関係だと思うわけですけれども、これは特に両岸関係において中国が武力行使をほのめかしていることがあるわけですね。ほのめかしているだけじゃなくて、九六年にはミサイルを撃ち込んだこともある。
 ところで、武力行使について、ではどう思うのかというと、もうこれは政府の答えはわかっているんです。日本政府は常々、両岸関係は平和的に対話を通じて解決されることが大切というふうに言ってきたわけですが、これはこれで間違いじゃないと思いますよ。間違いじゃないと思うけれども、平和的な解決を望むということは、裏を返せば武力行使は困るということなわけでしょうから、中国による武力行使は反対だということをここで鮮明に打ち出されるお考えはないでしょうか。
川口国務大臣 我が国は、中国に対して、台湾との関係については平和的解決を望むということを言っておりますし、私としても、今まで中国の方にお会いをしたときにそういうことを言っているわけでございます。その趣旨は、まさに平和的に解決をしてほしい、武力の行使をしないで平和的に解決をしてほしい、そういう意味でございます。
水野委員 武力行使が話題になるという点では、最近話題の対イラクの場合とある意味では似ているのかもしれませんけれども、ただ、イラクというのは、ここで武力行使の是非は私は論じませんけれども、大量破壊兵器開発疑惑もあれば国連の査察を受け入れないとか、さまざまな国際社会に対する挑戦ということをイラクは多くやっているわけですね。
 それに対して、台湾の場合、何か国際社会に対してそういう挑戦的なことというのがあったかどうか、その辺の認識を聞かせていただきたいと思います。
川口国務大臣 具体的にいろいろなケースについて、我が国の立場としてそれがどうであったかということを判断することは適切ではないと思いますが、我が国の立場としては、先ほど申しましたように、これは双方で平和的に解決をしてほしい、そういうことを強く希望しているということでございます。
水野委員 この両岸関係を不安定にしている一つの要素というのは、台湾海峡沿いにたくさんの中国のミサイルが配備をされている、アメリカの国防省の報告書によると、台湾を攻撃可能な短距離弾道ミサイルだけで三百基以上配備されているということがあるわけですね。
 こういう軍事的な緊張を和らげるためにも、今、平和的な解決を望むというような大臣の強い御決意もあるわけですから、私はやはりミサイルの撤去要求というのも日中交渉の中で中国に対して言っていくことというのは必要なんじゃないかと思いますけれども、日中交渉の中でこういうミサイル撤去というようなことを取り上げたことがあるかどうか、その辺をお聞かせいただきたいと思います。
田中政府参考人 水野先生お尋ねの点でございますが、実は、ミサイルにつきましては、日本も当然のことながら非常に強い関心を持っているということでございますし、日中間では日中の安保対話というものがございますけれども、特に中国のミサイルの急速な開発、配備について非常に強い懸念を有しているという日本の懸念は、累次の安保対話あるいは外交当局間協議で伝えているところでございます。
水野委員 質疑時間が来ましたので終了いたします。
池田委員長 次に、金子善次郎君。
金子(善)委員 民主党の金子善次郎でございます。
 最初に、去る二十日の外務委員会におきまして、通称でございますが、青山健熙氏の参考人招致の問題が発生したわけでございますが、それにつきまして、まず冒頭、関連することにつきまして質問いたしたいと思います。
 この青山健熙氏の参考人招致につきましては、去る十一月十五日の外務委員会の理事懇談会で二十日の招致が決まっていた、それが実現できなかったということは極めて遺憾なことであったというふうに思います。脱北者等の人道問題あるいは外務省の対応等を明らかにするためにも、この青山健熙氏の早期の当委員会における参考人招致の実現をまずもって求めたいというふうに思います。
 ところで、これはあくまでも報道でございますけれども、その際、これは委員部の……(発言する者あり)もちろんわかっておりますので。当日、委員部の幹部の発言もあったようでございますけれども、国籍不明の人物は国会に呼べないというような趣旨の報道がございましたし、委員部の発言もあったというふうに聞いております。
 ところで、一九九九年三月二十五日に日本上陸が許可をされているわけでございますが、そこで法務省にお伺いしたいと思いますけれども、法務省は国籍不明の人物に上陸許可を与えたのかどうか、これにつきましてまずお聞きしたいと思います。
    〔委員長退席、中川(正)委員長代理着席〕
増田政府参考人 我が国への出入国等に関します個別のケースについてのお尋ねにつきましては、本人及び関係者の身の安全に大きく関係すること、及びプライバシーに配慮する等の観点から、お答えは差し控えさせていただきます。
金子(善)委員 今、プライバシーの観点等から答弁できないという答弁だったわけですが、これは個別案件として考えて、一般論として、法務省、どういうふうにお考えですか。
増田政府参考人 一般論としてどうかというお尋ねでございますが、一般論としてであれ、我が国に入ってくる人物についての入国関係のいきさつにつきましては、入ってくる人物あるいはそれに関係する関係者の身の安全などもございますので、お答えは差し控えさせていただきます。
金子(善)委員 一般論としても答弁できないと。
 国籍不明の人間を上陸させるんですか。一般論としてですよ。
増田政府参考人 御質問の趣旨をあるいは私よく理解していないのかもしれませんが、国籍不明の人物が我が国に入ってくるなどということは考えられないと思います。
金子(善)委員 法務省の答弁、そのとおり、一般論からいえば、国籍不明の人間を入管を通って上陸させるということは本来あり得ないことであることは当然のことであります。
 ところで、この青山健熙氏、民主党におきまして、記者会見等も開いて、いろいろな話をお伺いしました。
 これは外務省にお伺いしていきますけれども、一九九八年十一月二十五日から二〇〇二年の六月二十日までの間、九回にわたって、外務省の北京大使館、あえて担当官の固有名詞は省略したいと思いますが、外務省北京大使館の担当官それから北東アジア課の担当三名の方にレポートを提出したと証言をしているわけですが、こういう事実はあったんでしょうか。
田中政府参考人 お尋ねの件でございますけれども、政府が一体どういう人物とどういう形で情報収集をしているかということについては、これは政府の情報収集にかかわる活動でございますので、お答えは差し控えさせていただきたいというふうに思います。
金子(善)委員 さらに、この青山健熙氏は、生活費の補助として、これも北京大使館担当官から一万元、それから日本に来まして毎月北東アジア課の担当官から十八万円、それから別の担当官から引き続いて十万円を、領収書に本名で署名して受け取っていた、こういうことを言っているわけであります。
 価値ある情報であれば、当然のこととして、諸謝金あるいは報償費、まさに報償費の分野だと思いますが、お金を出すということについては理解は当然できるわけでありますけれども、問題なのは、その際に、こういう証言があったわけです。金額の書かれていない領収書にサインをさせられたことがあると。既に外務省の方にもいわゆる記者会見での情報は入っていると思いますが、この点について、大臣、調査なさいましたか。
田中政府参考人 この点につきましても、政府の情報収集活動の態様にかかわることでございますし、仮に資金が使われたとすれば、当然のことながら、きちんとした内部手続で行われているということでございます。
金子(善)委員 私が質問しているのは、こういうような金額を書いていない領収書にサインをさせられたということを証言されているわけですが、手続が行われたとか、そういうことを聞いてない。そういう、金額を書いていないような白紙の領収書にサインをさせるというようなことが通常行われているのか。少なくともこのケースでは、本人がそういうことをさせられたと言っている。これについてお聞きしているんですよ。手続が行われたとかなんかという、そういう一般的な話ではなくて。
 既にこれにつきましては、昨日午前中に私どもの方から、質問通告として、こういうようなことがあったのかどうか調べてもらいたいということを言ってあるんですよ。もう一度答弁をお願いします。
田中政府参考人 まさに政府の情報収集活動の態様にかかわることでございますので、個別の問題について、お答えは差し控えたいと思います。
金子(善)委員 こういうものもいずれ、いろいろな形でこれから出てくると思いますから。
 それと、青山氏によれば、九八年の十一月二十五日に北朝鮮のミサイル危機について、九九年の一月十二日に核開発問題のレポートを、北京大使館の担当官に提出したということを言っておりますけれども、この点は確認されていますか。
田中政府参考人 政府として、いろいろな方からいろいろな情報を入手すべく努力をしておりますけれども、個々の具体的な情報の態様については、お答えを差し控えさせていただきます。
金子(善)委員 この青山氏の証言がどの程度正しいか正しくないかは、それは具体的な検証というものが当然必要ではございますけれども、これまでの一連の、昨今の拉致問題から発展してきた核開発疑惑の問題等々があって、日本として北朝鮮にどういう対応をこれからとっていくのかということが、国民的な話題と申しますか課題になっている。
 こういう中で、拉致問題が解決しなければ、あるいは核疑惑の問題が解決しなければどうなるのかと、これから、日本にとっての大きな政策課題になっているわけでございますが、外務省が、この青山氏のレポートによりまして、どの程度の信憑性を感じたかどうかはそれは別としまして、そういうものが外務省の中で十分検証されていたかどうか、これは大きな問題であると私は思っております。
 その中でこれまで、御承知のとおり、二〇〇〇年三月には十万トン、十二月には五十万トン、これは食管会計負担分でいいますと千二百七十億円という米の支援を行ってきているわけです。
 こういうようなことが外務省の中でどの程度、少なくとも、アメリカ政府から教えられたというようなことだけではなくて、いろいろな情報活動というものを外務省は当然やる義務があるわけだし、やってきているものだと思います。こういう情報に基づいて、わかっていながら、これまでの外務省の政策というものが、今国民に明らかになっているようなことが進められてきたのかどうか、それについて、私は強く指摘をしていきたいと思います。
 大臣、その点について、感想を答弁願いたいと思います。
川口国務大臣 外務省が、あるいは一国の外交当局が、外交政策を企画立案し実施をしていく過程でどういうような情報を持っているかということは、委員も御指摘なさっていらっしゃるように、非常に重要なことであると思います。
 この点について、外務省としては当然に、意味のある情報については今までも政策の企画立案、実施の過程で使ってきているわけでございまして、そういった意味では、今後とも外務省の持つ情報が、これは国民の税金を使って集めている情報でございますから、きちんと政策の中で使われるという努力は不断に積み重ねていきたいと考えております。
金子(善)委員 大臣の答弁は当然の答弁だと思いますけれども、これから、この青山健熙氏の方からいろいろなことがもっともっと明らかになってくる面もあろうかと私は思っております。いずれにいたしましても、今後、青山氏の証言の真偽と申しますか信憑性というか、そういうものも含めて検証もしていかなければならない。
 さらに、これからの北朝鮮政策、あるいは脱北者三十万人とも言われておりますけれども、こうした難民問題、こういうものについても日本としての対応を検討する上でも、そこで委員長に、当委員会における参考人招致の実現に向けてお願い申し上げたいと思いますけれども、委員長、いかがでございますか。
中川(正)委員長代理 その都度理事会で協議をして決定していきたいというふうに思っております。
金子(善)委員 次に、拉致問題に移らせていただきたいと思います。
 救う会でございますけれども、従来から、日本国内あるいはヨーロッパルートを合わせまして、七十人あるいは八十人以上の日本人が拉致されたのではないかと言っておられるわけでございますけれども、その後も続々、自分の家族の一員が拉致されたのではないかというようなことで名乗り出てこられるケースも非常に多いと聞いております。
 今回、外務省では、十件十五人以外の拉致被害、田中実さん、松本京子さん、そして小住健蔵さんについては、先月のクアラルンプールの交渉におきまして、安否確認を北朝鮮に要求したというようなことでございます。
 そこで、ひところと言うと表現がちょっと問題かもしれませんが、福留貴美子さんでございますけれども、この方は一九七六年に行方不明になりまして、八〇年に一時帰国、そして同年六月に出国して現在まで行方不明になっているという方でございますけれども、外務省として、北朝鮮に対して、この福留貴美子さんについては安否の確認はなされたかどうか、お聞きしたいと思います。
田中政府参考人 御指摘の福留貴美子さんにつきましては、委員御指摘のとおり、昭和五十五年に日本を出国された後、現在まで行方不明になっているということでございます。
 情報として、北朝鮮に渡航されて、よど号ハイジャック犯の一人の妻になったという情報もあるというふうに承知しておりますけれども、捜査当局におけるこれまでの情報収集の結果、現在までのところ、北朝鮮に拉致されたと判断するには至っていないというふうに承知をしております。
金子(善)委員 そうしますと、今の答弁によりますと、北朝鮮に対して安否の確認はしていない、そういうふうに理解してよろしいわけですね。
田中政府参考人 私ども、拉致問題として話をしておるわけでございまして、そういう観点から申し上げると、この福留貴美子さんについては、拉致されたと判断するには至っていないということでございます。
 ただ、安否確認とか邦人保護の観点からどういうことを考えるかというのは別の観点からあり得ることだと思いますので、今後、引き続きこの問題については検討をしていきたいというふうに思っております。
金子(善)委員 今の局長答弁は極めて意外な答弁だと私は思います。
 少なくとも、曽我さんという方は、日本の警察では拉致されたというような認定をしていない方が突然拉致された被害者としてあらわれたケースであります。この福留さんにつきましては、日本の警察において証拠を握っているかどうか等、確定できない部分があるのかもしれませんけれども、少なくともこの福留貴美子さんにつきましては、救う会として、拉致された可能性が大であるというようなことで、長年にわたりまして名前の出てきていた方でございます。それが、最近になりまして若干この福留貴美子さんの名前が出なくなっているなというようなことに私はちょっと注目をいたしまして、それで質問を申し上げているわけであります。
 要は、外務省の姿勢として、日本の警察が確認している分だけ北朝鮮に安否を確認したり、そういうやり方をしている。私は、これは極めておかしい姿勢であると思います。
 北朝鮮の金正日総書記と申しますか委員長というのか、犯罪として日本人は拉致しましたよということを言っているわけなんです。とすれば、だれだれを拉致しましたということ、北朝鮮のリストを出させるのが本来の外務省の要求ではないかと私は思うんです。こういう方も疑いがありますよ、こういう方も疑いがありますよと。確かに、証拠がない以上、この人を拉致したでしょう、そういう言い方はできないかもしれませんけれども、御承知の救う会でございますが、長年にわたりまして福留貴美子さんについては心配だということを言っていたわけですから。安否ですからね、これは照会するというか、それは当然の外務省としての姿勢ではないかというふうに思います。これは強くその安否確認を要求するよう、私の方からも要請を申し上げたいと思います。
 そこで、警察庁にお願いしますが、福留さんが八〇年の一時帰国に際し、いつ、どこで入国をしたと認識されているか、そして、いつ、どこからどこに向けて出国したと認識されているか、さらに、今後どうされるのかの点につきまして、お伺いしたいと思います。
奥村政府参考人 御指摘の方は、北朝鮮に渡りまして、よど号犯人の一人の岡本武の妻となった女性でございます。昭和五十一年七月に日本を初出国されまして、五十五年の三月に一たん帰国をされましたけれども、同じ年の六月に再び出国をされまして、帰国をされないままになっておるものと承知しております。
 なお、北朝鮮におりますよど号グループは、御指摘の女性が、夫の岡本武とともに昭和六十三年の夏に土砂崩れのために亡くなったというふうに説明をしているところでございます。
 この事案につきましては、私ども、これまでもあらゆる事態を想定いたしまして、関係者からの事情聴取等を行ってきたところでありますけれども、今後とも、引き続き捜査を徹底してまいりたいと思っております。
金子(善)委員 そこで大臣に、決意と申しますか、先ほども私ちょっと申し上げました。あくまでも北朝鮮サイドは、拉致というものを行ったということを国家のトップが言っている。それに対して、拉致されたかどうかというのは本当に証拠というものが残らないケースが当然のこととして予想されるわけです。ところが、拉致されたかもしれないという日本人の家族の方々が今たくさんいらっしゃるという中で、北朝鮮サイドにそのリストをむしろ強く要請する、そういう姿勢で臨んでもらいたいと私は思っているわけです。こっちから、この人どうですかという程度の話じゃないんじゃないか。もう七十人、八十人という方がそういうようなことで心配されているという状態にあるわけでございますので、今後の外務省の外交、北朝鮮に対する姿勢として、その辺、どうお考えになるか、御答弁をお願いしたいと思います。
川口国務大臣 御家族に行方不明になっていらっしゃる方がいらっしゃるという御家族が、いろいろな報道に接して、あるいは自分の家族の一員が北朝鮮に拉致をされたんではないだろうかというふうに御心配になっていらっしゃるというお気持ちはよくわかります。
 そういったことについて、拉致をされた可能性、あるいはほかの理由で行方不明になっている可能性、さまざまなことがあると思いますけれども、こういった点の捜査はまさに警察庁においてこれをなさっていらっしゃるということでございますので、外務省としては警察庁と、今までも行っておりますが、緊密に連携をした上で、拉致をされている可能性が強い人については、外務省として、事情をきちんと北朝鮮に出してもらうということは必要でございますので、連携の上、そういうことをやっていきたいと考えております。
金子(善)委員 とにかくこの点につきましては、北朝鮮に強い姿勢で、毅然とした姿勢で臨んでいっていただきたい、このように強く要請を申し上げたいと思います。
 それと、次に移らせていただきますけれども、国連の人権委員会の決議に基づきまして設置されているわけですが、強制的失踪作業部会への拉致被害者家族による調査依頼に関連してですが、これは既に、今月でございますけれども、ジュネーブで開かれました同作業部会に齋木アジア大洋州参事官が再審査を要請している。また、原口国連大使も十一日、国連の第三委員会、これは人権委員会ということだと思いますが、ここでもこの点について触れられているわけでございますけれども、今後の審議の見通し、あるいは国連中心主義をとっているという我が国としてさらにどのように取り組んでいかれるのか、これについてお伺いしたいと思います。
茂木副大臣 この外務委員会でも何度か御答弁申し上げておりますように、拉致問題の解決にはさまざまなチャネル、マルチのチャネルでのアプローチが必要だと。我々は、この委員会に対しましても、その一環だと考えておりまして、委員御指摘のとおり、七日、ジュネーブにおきまして、拉致被害者の御家族等の代理人として国連人権委員会の強制的失踪作業部会に対しまして、被害者の所在確認依頼の再申し立てを行わせていただいたわけであります。
 同作業部会においては、今回の申し立てを踏まえて、今後、対応ぶりにつきまして検討が行われることになる、このように承知をしておりまして、政府としては、拉致問題について、先ほど申し上げたようなマルチのチャネルの一環として働きかけをしていく、これが事実解明の一つのてこになっていく、こういうことも期待したいと思っております。
金子(善)委員 今副大臣言われましたとおり、この場を積極的に活用されまして、一日も早い解決に向かうということをぜひ御努力いただきたいと思います。
 次に、日朝の平壌宣言についてお伺いしたいと思います。
 実は、田中局長おいでになっていらっしゃるわけですけれども、外交フォーラムという雑誌があるわけですが、この十二月号ですが、鼎談が掲載されております。「朝鮮半島の平和と安定は日本にとっての死活問題だ」と題する鼎談でございますが、その中で田中局長は、「日朝には戦後処理の問題もあるので、国交が正常化され一定の信頼に基づく関係ができれば、大規模な経済協力も想定されます。」すなわち、日朝間には戦後処理の問題があって、その結果として大規模な経済協力を行うというような発言をされているわけでございますけれども、外務省の見解として、これでよろしいのか。
 田中局長が言われる戦後処理の問題というのは、これは一般的に読まれている外交フォーラムという、外務省が編集協力もしているというふうに聞いているわけでございますけれども、半ば公式、準公式の雑誌と考えてよろしいかと思いますが、ここで言われている戦後処理の問題、したがって、それがあるので「大規模な経済協力も想定されます。」ということを言っておられるわけです。
 これにつきまして、これが外務省の見解であるのかということを、まず大臣にお伺いしたいと思います。それで、田中局長さんには、戦後処理の問題とはどういうことであると認識をされているか、それをお伺いしたいと思います。
川口国務大臣 戦後処理の問題というのは、我が国と北朝鮮との間に存在をすると私も考えております。
田中政府参考人 外交フォーラムにおけるいろいろな、たしか私の場合には座談会であろうかと思いますけれども、それはあくまで個人の見解ということであります。
 それから、戦後処理につきましては、御案内のとおり、日本は、サンフランシスコ平和条約等に基づいて二国間で処理をした場合、あるいは、サンフランシスコ平和条約そのもので処理をした場合がございます。北朝鮮との関係においては、その処理が済んでいないということでございます。
 私どもの基本的な考え方でございますけれども、日韓でつくられた一九六五年の基本条約というのも戦後処理の一つの形でございますし、日本の場合に、補償という形で応じていくのはなかなか難しい、したがって、正常化がされた後に経済協力という形で行っていく、これが韓国と同じような一括経済協力方式と言われているものなので、それが一つの参考になるわけでございますし、それが平壌宣言に示された考え方であるというふうに考えています。
金子(善)委員 外交の処理については、いろいろな方策と申しますか、形を経てやることがあるということは、私も理解するわけでございますけれども、今度の宣言には、こういう表現もあるわけでございます。「国交正常化を実現するにあたっては、一九四五年八月十五日以前に生じた事由に基づく両国及びその国民のすべての財産及び請求権を相互に放棄するとの基本原則に従い、」云々、こういうふうな表現があるわけでございます。
 そうしますと、この経済協力というのは、これは戦後処理、大臣も、戦後処理というものがあるということを言われたわけでございますけれども、あくまでも賠償に近いものであるというようなお考えなんですか。
茂木副大臣 日朝平壌宣言の二の四行目以降からその表現が始まるわけでありますが、まず、財産及び請求権は相互に放棄をする、その前の段落の四行目から九行目のところで書いてありますこと、委員もお読みいただきますと、基本的に補償という形はとらない、経済協力という形をとる、こういうことが国交正常化の後に行われるということでありまして、その具体的な規模とか内容につきましては両国間で誠実に協議をする、こういう解釈であると思います。
金子(善)委員 そういうことで、私が質問いたしたことについて、そういう形を変えた何かである。つまり、戦後処理の問題として経済協力というのはどうしても、平壌宣言というものがもう既に制定というか取り交わしを行ったわけですから、それはそれとして、国と国とのトップ同士の約束をした。具体的な内容については、また国会審議等々、いろいろ出てくることは当然のことでございます。
 そうすると、物の考え方として整理をするためにお聞きしているわけであって、あくまでも、形を変えた戦後処理というのは、北朝鮮に対して何か経済協力をしなきゃならない何かがあるんだというふうに外務省は認識をなさっていると。戦後処理の問題はあるというのは、そういう経済的な、戦後処理の問題という抽象的なことで、大臣はそれがあるということを言われたわけですが、経済協力をする義務があるんだ、こういうふうな認識でいらっしゃるわけですか。
田中政府参考人 北朝鮮は、彼らの言い分というのは、植民地支配において日本が行った種々の行動、そういうものに対して補償をするべきだという議論でございます。かつ、朝鮮半島の場合には、戦争をしたわけではございませんから、賠償という概念はないんだと思いますが、北朝鮮はそういうことも言っている。日本側は、そういうことには応じられないという立場であります。
 しかしながら、請求権というのは双方にあるわけで、その請求権を相互に放棄するという形がこれまでの戦後処理の中で行われてきたわけでございますから、北朝鮮に対してもそういう形で戦後処理をするというのは、日本がこれまでとってきた方針の一つの延長であるということでございます。
 経済協力というのは、これは韓国との関係でもそうでございますけれども、そういう基本的な関係ができたときに、それぞれの国との信頼関係ということをベースにして経済協力を行う。要するに、貧しい国の場合には、当然、その民生の安定という観点から、近隣国でもあるし、正常化の後は、そういう経済協力の形があるだろうということでございますので、これは基本的に、日韓の基本条約とか経済協力協定とか、そういう考え方と相反したものではないということでございます。
金子(善)委員 それでは、次に移らせていただきたいと思います。
 世界食糧計画、WFPでございますけれども、モリス事務局長さんという方がいらっしゃるわけですが、この方が、十八日、韓国統一省の金炯基次官と会談されまして、北朝鮮に必要な食糧支援、年内に七万二千トン、来年の第一・四半期には十三万トン必要になると述べられた、それで韓国に食糧支援を要請したというようなことが言われているわけでございますけれども、このWFP、世界食糧計画ですが、日本政府に対しては何らかの要請が来ているのでしょうか。
茂木副大臣 WFPのモリス事務局長、今週、私がお会いをいたしました。そこの中で、政府に対しまして具体的な要請というものは来ておりません。
金子(善)委員 そこで、私からぜひ要請を申し上げたい点がございます。
 と申しますのは、北朝鮮は今大変食糧難だというようなことが、いろいろな報道を通じて我々承知しているわけでございますけれども、一つ不思議なのは、それだけ食糧難の国が、一方においてはミサイル開発あるいは核兵器の開発と、大変なお金を使っている。いわゆる国民の食糧を調達するというのは、最低限の国家としての、政権の義務であると私は思います。
 その食糧計画、機能としては、確かに食糧問題を扱う国際機関だというふうには思いますけれども、北朝鮮当局に対して、まず米の問題を何とかしなさいと。その上で、つまり、そのほかのむだな国家の経費というものを使わないで国民の食糧を確保した上で、それでもできないということであれば初めて世界各国に協力を要請するというのが筋だと我々は思うんですが、日本はこの世界食糧計画に拠出金は出していないんでしょうか。
田中政府参考人 任意拠出金として拠出をしております。
金子(善)委員 幾らしていますか。
田中政府参考人 我が国の平成十四年度予算における拠出金額は、総額で十億円強でございます。
金子(善)委員 私は、今申し上げましたように、日本も拠出をして、この食糧計画という機関が各国に米を要請する、日本にはまだ来ていないということで幸いな状態だと思いますけれども、少なくとも、日本政府として世界食糧計画に対して、まず、北朝鮮の当局に米を調達するための努力をすべきだというようなことを言うべきではないか、そういうふうに私は考えるんですが、これは大臣としてどうお考えでいらっしゃいますか。
川口国務大臣 このWFPというプログラムでございますけれども、これは、北朝鮮だけではなくて、アフリカ等のやはり人道上の食糧支援が必要な国に対しても活動している機関であります。
 こういった国々が食糧が足りなくて、それで人道上ほかの国の支援を必要としているということの原因には、これはさまざまな理由があると思います。干ばつもあるでしょうし、あるいは干ばつになったときの備えを十分にしていなかったという人為的な問題もあるかもしれません。さまざまな理由があるだろうと思います。
 特定の国が食糧が足りないということになったときに、私は、この理由についてはさまざまな理由があると思います。当然に、日本として、各国政府が自分の国の国民に食糧を十分に与えるように、そういう政策をとるべきであるというふうには思っていますけれども、それをしなければ何をやらないというような言い方をしていくというのは、食糧が足りないということが人道上の問題であるということからいって、一般的な形でこれを言うというのは非常に難しいと思います。
金子(善)委員 時間が来ましたので質問は終わらせていただきますけれども、私は、大臣の考え方はおかしいと思います。
 日本が拠出金を出している国際機関が、それぐらいの状況、つまり、各国に依存する前に、核兵器の開発とか、いわゆる予算というものは北朝鮮にもあるんでしょうから、そういうものでできるだけ食糧というものを確保することを努力してほしいということをまさに国際機関として要請するのは当然の姿ではないかということを私は主張しまして、質問を終わらせていただきます。
 ありがとうございました。
中川(正)委員長代理 次に、首藤信彦君。
首藤委員 民主党の首藤信彦です。
 まず、大臣にお聞きしたいんですけれども、大臣、本当に連日連夜、二十四時間世界じゅうのことを、大変御苦労さまです。本当に、ギリシャ神話に登場するヘラクレスのように地球をぐっと背負って日本のために御努力されている姿勢は、細腕でがっと世界を支えている川口大臣の姿勢は、大変評価しております。
 今、本当に懸案の問題がたくさんありまして、もちろんイラクへの攻撃がいつ行われるかなんということもありますけれども、やはり、我が国の一番近いところにある北朝鮮の問題というのが本当に深刻な問題で、早くこの問題を一つ一つ片づけていかなければいけない、そういうふうに思うわけです。
 今懸案となっている問題でも、拉致の問題、それからミサイル、工作船の問題、それから、今同僚議員からの質問もありましたように、過去の清算や経済援助の問題、そして、最近非常に重要な問題として、日本と北朝鮮だけではなく、あるいは日朝韓だけでもなく、アメリカの安全保障、それから世界の安全保障という意味で、原子力開発、核開発の問題というのが非常に重要な問題として私たちに突きつけられているわけですね。ですから、今、例えば拉致の問題だけでも、拉致された被害者の方も御家族の方も皆さん大変な苦労をされていて、本当に心を痛めているわけですが、本当にデッドロックになっているわけですね。なかなか解決できない。
 そうすると、死んだかぎは、今まで日朝間の問題に関してはその死んだかぎが幾つあるかわからなかったんですが、まさにこの拉致の問題も今はもう死んだかぎになりつつあり、それから工作船の問題もあり、それからいろいろな過去の清算もあり、さらに核開発の問題というのが出てきたわけですね。核開発の問題に関しては、今我々の心を悩ませているイラクの国連査察の問題とも非常に密接な関係を持っている。こういう状況の中で、日本政府としてどう対応しなければいけないかということを最初にお聞きしたいわけですね。
 この間、私も前回のこの外務委員会で質問をさせていただきましたけれども、一体、KEDOの理事会で重油の拠出はどうするのか、それから、今、KEDOのフレームワーク、その枠組みが崩れつつあるときに、どういう形でこれをもう一度立て直していくのかというような視点について質問させていただいたわけですね。
 今、外務省の立場としては、KEDOの枠組みを何とか維持していこう、何とか維持していこう、そういうお話をずっとされていて、さらに、理事会があっても恐らくそういう立場でされると思うんですけれども、現実にはアメリカは、自分たちが獲得した情報に基づいてどんどん独自行動をとっている。ですから、日本が、重油の拠出は何とか続けようとかこのKEDOの枠組みを壊さないようにやっていこうと言っているのに、アメリカはどんどんどんどん自分の情報に基づいて自分の主導でこの問題を解決しようとしている。それに我が政府は引きずられるばかりじゃないですか。
 外務大臣、どのようにこのKEDOの枠組みを維持していこうとしているのか、あるいは、アメリカと一緒になってこれをまた別な形で組み直していこうとしているのか。日本政府の独自の考え方はどういうものですか。いかがですか、外務大臣。
川口国務大臣 北朝鮮の問題の把握といいますか、どういう問題であるかということについては、まさに委員が冒頭でおっしゃったとおりだと思います。拉致問題もあれば安全保障問題もあって、それぞれの含意があるということだと思います。
 我が国の基本的な立場といたしましては、これは、日朝平壌宣言を遵守して進めていくということでございます。これについて北朝鮮側が、拉致の問題についてもあるいは安全保障の問題についても前向きに対応するということが重要でございまして、それを強く働きかけている、そういう立場でございます。
 KEDOについて特に御質問がございましたけれども、KEDOでは、これも委員が御案内のように、十二月以降の重油供給を停止して、そして将来の重油供給は、北朝鮮がウラン濃縮プログラムを完全に撤廃するための具体的かつ信頼できる行動をとることにかかっている、そういうことを明らかにしたわけでございまして、北朝鮮側に前向きの行動をとることの必要性を強いメッセージとして発したということでございます。これは、日本、アメリカ、韓国、そして他の理事会のメンバーであるEU、これも全く同じ考えでいるということでございます。
 KEDOにつきましては、この声明にございますように、「同様に、その他のKEDOの北朝鮮との活動は見直されることになる。」「理事会は、KEDOの将来の活動に関する今後の対応を、引き続き協議する。」というふうに書いてございまして、日本とアメリカと韓国とそしてEUも含めて理事国が、これが一枚岩として協議をし、今後の方向を考え、そして北朝鮮側にメッセージとして伝えていくということが必要だと思います。これは、大事なことは今北朝鮮側に対応をとらせることでございまして、そのために一枚岩である、これが非常に大事なことだと思います。
首藤委員 よく言っていただきました。北朝鮮側にきちっとした正しい道へ戻るように強く言って、その対応を迫るということでございますが、それに対してもう回答は出てきましたね。御存じでしょう、外務大臣。
 きのうのニューヨーク・タイムズでもきちっと書いてありますよ。北朝鮮はアメリカのこうしたやり方に対して反発をして、KEDOの合意はもう崩壊したと言っているわけですね。それに対してもうきちっと反応は出ているわけですよ。それに対してはどうですか。日本はどういう態度をとりますか。日朝間じゃなくて、アメリカと北朝鮮の間でお互いにボールを投げ合って、もうそれで話は進んでいるわけですね。そのボールを投げ合っている真ん中にいる我が国は、これに対してどういう反応をされるんですか。外務大臣、いかがですか。
川口国務大臣 おっしゃった北朝鮮のスポークスマンの談話というのは、KEDOの理事会の決定に関連して、米朝枠組み合意への完全な違反だということを厳しく非難をしたということであると思います。
 これにつきましては、まず、先ほど申しましたように、関係国が一致して、北朝鮮側に核の開発プログラムを検証可能な形で廃棄をするということを求めているということは、そういうことでございます。これにつきまして、引き続き一枚岩、関係国が一丸となって北朝鮮に強い態度でこれを求めていくということが大事であるということだと思います。
 合意された枠組みそのものというのはアメリカと北朝鮮の間の合意でございまして、これ自体については日本はそれの当事者ではないということでございますので、これは両国の間で話がされることになる話だと思います。
 KEDOの将来については、声明にありますとおり、これから話をしていくということでございますので、その一員として、日本は共通した結論が出るように、そして北朝鮮に強いメッセージが出せるように努力をしていくということです。
首藤委員 いや、外務大臣、それは考え方が余りにも甘いと言わざるを得ないですよ。この核施設の問題、原子力施設の問題は、何か南アフリカで起こっている問題じゃないんですよね。目の前の問題なんですよ。これは北朝鮮とアメリカの問題でなくて、例えば途中で稼働をやめた黒鉛型の古いものだってそうなんですよ。そこで事故が起こっただけで、何もわざわざ核弾頭をつくってミサイルに搭載しなくたって、事故が起こっただけで、この隣にある我が国は大規模な影響を受けるわけですよ。チェルノブイリの事故を思い出してください。これは核攻撃でも何でもなくて、ただの火災があれだけの、もう数百キロにわたって大きな影響を与えて、そして何世代にもわたってその影響は残ると言われているんですよね。
 ですから、日本と目と鼻の先にある北朝鮮の核問題というのは、北朝鮮とアメリカが勝手に話し合うという問題じゃなくて、また、アメリカは北朝鮮に対して、例えばウランの供給停止を世界じゅうからやっていくとか、いろいろな手段があるわけですが、我が国はそうした世界じゅうのウラン市場を押さえているわけでも何でもありませんから、もう本当に手が少ない。
 そういう中で、そういう傍観者的なことを言われると困るんですよ。我が国の国民の安全を守るのが政府の役割じゃないですか。それが何かアメリカと朝鮮とで話し合っているから、それは一枚板でみんな一緒にやっていくものじゃなくて、まさにこの問題こそすべての、今までと同じように、拉致の問題も、日本にやってくる工作船の問題も、日本に飛んでくるかもしれないテポドン、ノドンの問題も、同じレベルで考えていかなきゃいけないんじゃないですか。いかがですか。
川口国務大臣 まさに委員がおっしゃるとおりでして、そのように我が国としては考え、取り組んでいるということでございます。
 米朝の枠組み条約については、これはアメリカと北朝鮮が合意をした枠組み、そしてそれぞれがまだそれを終了させたと言っているとは私は承知をいたしておりません。
首藤委員 ですから、外務大臣、この問題はやはりアメリカと北朝鮮の問題じゃなくて、KEDOの問題というのは日本がイニシアチブをとってどんどんやっていっていただきたいんですよ。
 原油の問題も、アメリカは供給停止と言っていて、日本はいやまだやろう、それから軽水炉に関しても、アメリカはもうこれは中止と言っても、日本がまあ何とか続けてください、こういう問題じゃないんですよ。一枚板というなら本当にアメリカと協議して、アメリカが勝手に打ち上げて、それを日本がおたおたしてどっちにするかというんじゃなくて、最初からアメリカと打ち合わせして、一枚板となって北朝鮮にどうやって圧力をかけていくかということを真剣にやっていただきたいんですよ。それをぜひお願いしたいと思います。
 先ほどから問題になっている北朝鮮の反応ですね。ここでまた北朝鮮はこういうことを言っているわけですよ。ともかく、この問題を進めるにはアメリカとの間の不可侵条約といいますか、アメリカはもう北朝鮮を攻めない、この約束が重要だというふうになっているわけですね。
 要するに、北朝鮮としては、各個撃破、一つ一つの国が抱えている問題は違うわけですから、一つ一つの国にボールを投げて、そこで解決していこうという高等外交手段ですよ。ある意味では、日本の外交よりもはるかに高等な外交手段を展開しているわけですけれども、日本に対しては経済協力というものを投げている。アメリカに対しては不可侵ということを投げているわけですね。
 では、日本に対しては不可侵というのはどういう関係を持っていますか。不可侵は日本にとっては余り重要でないんですか。外務大臣、いかがですか。後ろからいろいろ回ってきますけれども、そんなのは気にしないで答弁してください。
川口国務大臣 北朝鮮が不可侵という提案をアメリカに対してやったということですけれども、これは、基本的に従来の北朝鮮の立場を述べたにすぎないということだと私は思います。
 北朝鮮に対しては、まず北朝鮮側がこの核兵器のための濃縮ウラン開発計画などの核の問題についての国際社会の疑念を晴らすための行動をとることが大事であるということは、さまざまな場でやっているわけでございまして、我が国としても、まず日朝平壌宣言の中でもこういうことがちゃんと書かれているわけでございます。ですから、これを守っていくことが非常に大事、そのために、国際社会が一丸となって同じメッセージを今出している、我が国もこのためのリーダーシップを委員がおっしゃっていただいたように既にとっている、そういうことでございます。
    〔中川(正)委員長代理退席、委員長着席〕
首藤委員 では確認させていただきたいと思いますが、そういう方向ですべてがいけばいいわけですが、日本の外務省あるいは日本の政府は、平壌宣言をもって日朝間に不可侵が成立している、そういうふうに考えておられますか。あるいは、さらに一歩進めて、不可侵条約やその他安全保障に関する明確な規定が必要だと考えておられますか。いかがですか。
川口国務大臣 日朝間の不可侵条約というのをどういう意味合いでおっしゃっていらっしゃるかでございますけれども、平和憲法を持っている我が国として、北朝鮮を侵略しようなどということを考えている人はだれもいないと思います。
 北朝鮮の側との関係におきましては、きちんと平壌宣言に、国際法を遵守し、互いの安全を脅かす行動をとらないということを確認しているわけです。我が国は、この平壌宣言を遵守して、正常化交渉を進めていきますし、当然に北朝鮮もそうであるべきであると考えております。
首藤委員 私は、外務大臣、ぜひ私のアドバイスも千に一個ぐらい聞いていただきたいと思うんですが、ぜひこの問題は、単に平壌宣言だけではなく、平壌宣言に関しては、その成立に関しても本当にこれが正統なものであるか、国際社会で権威を持つものかというのは疑義がございますから、この不可侵、安全保障の問題に関してもより一歩進めて話を展開させていただきたい、そういうふうに思うわけですね。
 また、朝鮮問題に関しては、もうだんだん時間がなくなっておりますけれども、一点だけ外務省に対してお聞きしたいわけです。
 拉致家族五人の方が日本に戻られまして、定住、永住ということでございますが、同時にパスポートも、当然ですよね、日本人ですからパスポートも発給されております。日本の政府の方針としては、それは我々の感情も全くそうだと思うんですけれども、早く家族を呼び寄せて、そして本当にこちらにみんなが定住できるような環境をつくっていかなければいけないと思うんですが、それがなかなか難しいという現実もまた出てきているわけですね。
 このような状況の中で、五人の方の北朝鮮への一時帰国は、政府として、それはない、それは禁止しているというわけでありますけれども、一方で、パスポートを持たれた方が個人の意思で戻りたいというときに、日本政府としてはそれも阻止しますか。それとも、日本人の当然の、憲法に保障された移転の自由ということで、それは個人の意思であるというふうにお考えになりますか。いかがでしょうか、外務大臣。
川口国務大臣 先般の政府の決定は、拉致の被害者の御家族の方に日本に来ていただいて自由な意思決定ができる環境の中で自由意思決定をしていただく、そういうことで考えられているということでございます。したがいまして、そういう環境の中で行われた意思決定というのは、まさにその本人の自由な意思決定である、そういうふうに思います。
首藤委員 五人の方、大変いろいろな苦しい状況があると思うんですね。
 これは有名なトルストイの話でありますけれども、「戦争と平和」のトルストイですけれども、トルストイの有名な言葉として、すべての幸福な家庭はみんな同じに見える、しかし、すべてのいろいろな問題を抱えた家庭は、それぞれの家庭がすべてそれぞれの背景を持っているという有名なトルストイの言葉があるわけです。
 例えば、曽我さんは、配偶者の方がアメリカ人であって、しかもアメリカ政府の見解によれば、それは脱走兵だというふうに考えられているんですね。だから、曽我さんの御家族が日本に本当に来られるようにするには、日本で、ジェンキンスさんという方に対して恩赦とか、それから一種の司法取引とかそういう形で、本当に安全に、逮捕されることなく日本に定住される可能性がある、そのことが必要だと思うんですね。
 当然、そういう枠組みを日本政府がやっておると思うんですけれども、最近、これも事実かどうかわかりませんが、報道によれば、曽我さん自身がアメリカ大使館に行ってそれを訴えるというような話を聞いているんですが、それが事実かどうか。そして、それは個人の責任ではなくて、まさに政府がやることであって、個人にそういうことを押しつけるのは私は問題だと思うんですが、その辺はいかがですか。
茂木副大臣 首藤委員が、先ほどトルストイの「アンナ・カレーニナ」の最初の部分を引いて、それぞれの家庭で、家族によって違いがある、こういうお話をされたわけでありますけれども、曽我さんの場合、我が国の旅券を有しているか否かに関係なく、曽我ひとみさんは日本国民でありまして、政府としては曽我ひとみさんを含む被害者の方々、御家族の意向を踏まえながら、北朝鮮側に対しまして事実解明を引き続き強く求めていくとともに、被害者の御家族の帰国についても早期に実現をしていきたい。
 もちろん、曽我さんに押しつけて、自分でやってください、こういう思いを我々は持っておりません。ただ、委員御案内のとおり、ジェンキンスさんの場合、脱走兵、こういうふうに言われているわけでありまして、極めて難しい問題も正直言いましてあるわけでありますけれども、米国との間でも意見交換を引き続き行っていきたいと思っております。
首藤委員 それでは次に、イラク問題について移らせていただきます。
 最近これも報道され、そして福田官房長官その他の政府要人の発言からも明らかなように、一方ではもちろん国連査察というものが進められています。しかし、アメリカの態度は国連査察の結果が出るまで待っていようというんじゃなくて、国連査察のスケジュールが進行している一方、自分たちの攻撃スケジュールというのももう着々と積み上げているわけですね。そして、その一環として、イラクに対して攻撃を行ったときに各国はどう対応するのか、どう支援してくれるのか。それは言葉での声援、それから態度での支援、国際社会での協力、そして具体的に兵を送る、こういうところまで、いろいろな可能性に対して、各国に対して何をしてくれるのかということをもう具体的に外交ルートを通じて正式に要請している。
 アフガニスタンの場合は、日本に対しても正式ではなかったというふうに聞いておりますけれども、今回は正式に日本に支持表明と、それから具体的に何ができるかという要請をしている。それに対して、日本は一体何ができるのか。また、どのようにアメリカに態度表明を現時点ではされておられますでしょうか。外務大臣、いかがですか。
川口国務大臣 まず、ブッシュ大統領があるいは米国がイラクに対して武力行使をするということを決めたわけではない、だれも決めていないということを申し上げたいと思います。
 国際社会として、今イラクが国連安保理の決議に従って、この決議を実行していくということが大事で、そのために国際社会としてイラクに最大限の圧力をかけていくことが重要である、そういう認識を国際社会としては持っていると思います。
 ブッシュ大統領は、安保理決議の一四四一の採択を受けた演説の中で、イラクの脅威に立ち向かうに当たって、米国は世界の支持を求める、サポートを求めるというふうに述べていまして、同盟国や友好国と協議をする方針を示しているわけでございます。
 これについて、日米の両国というのは日ごろから本当に日常ベースで、イラク問題についてあるいは他の問題についてもそうですけれども、意見の交換をやってきているということでございますけれども、そして協議をしてきているわけですけれども、イラクのこの問題について具体的な支持要請は受けておりません。
首藤委員 川口大臣、そんなことを言っていいんですか。もう既に福田長官も、そういうものに対して日本にも要請があった、どういうふうにしていいかといろいろ要請があったと言われているのに、それを否定されるんですか。外務大臣、いかがですか。
川口国務大臣 福田長官のそういう発言については、私は承知をいたしておりません。
首藤委員 それは異なことをおっしゃりますよね。政府の内部不一致じゃないですか。しかもこんな、それがささいな点じゃなくて日本の命運がかかることに関して、同盟国であるアメリカが、太平洋における最大の同盟国である、パートナーである日本に対して、こういうことをやっていい、こういうことをやっていいという要請が、では、来ていないんですか。それをはっきり言ってください。そういうものは一切来ていないということですね、外務大臣。
川口国務大臣 私が理解しておりますところでは、福田長官も昨日の記者会見で、米国から具体的な支援の要請があったわけではないとお答えになっていらっしゃると思います。
首藤委員 では、この各国の、アメリカのニュースメディアで報道されているそういうのはうそだと言うわけですね。では、日本にはもう一切来ていない、何の同盟国としてこうやれ、ああやれということは言っていない、そういうふうにおっしゃるわけですね。
 一方また、これもこの外務委員会の大臣の常套表現でありますけれども、ブッシュ大統領は、実際に攻撃するとはまだだれも決めていない、そうも言っていないと。実際起こったらどうするんですか。外務委員会というのは何のためにあるんですか。外交で起こることはすべて仮定の話ですよ、過去の話以外は。過去の話以外はみんな将来の話ですから仮定の話なんですよ。
 しかし、そうしたものに関して、私たちの国家を守る、国民を守るために、近い将来起こるかもしれないことに対して、我々はどのような政策オプションがあるのか。それは我々の憲法あるいは国民の生命、安全にとってどういう手段がとり得るのかということを論議するのがこの外務委員会の場じゃないですか。外務大臣、そうでしょう。だから、そういうところで外務大臣が、まだ決めていないとかそういうことを言い続けるということは、もう我々をだましているのと同じじゃないですか。もう明らかにそれは一歩一歩戦争の方へ近づいているわけですよ。
 では、それは近づいていないと言うのなら、どうやってとめようとしているんですか。どうやって挑発をやめさせたり、ほかに解決手段があるというなら、こういう解決手段があるとどういう形でアメリカに提言しているんですか。すべてがアメリカのシナリオで動いていて、北朝鮮の問題も、KEDOの問題も、イラクの問題も、私たちの国民の安全に関することは全部アメリカが主導権をとっていて、では私たちは一体どうやって国民を守ればいいんですか。どういう政策手段があるんですか。私たちの、国民の安全を守るために、外務大臣、アメリカに対してどういうことを言っているんですか。いかがですか、外務大臣。
川口国務大臣 先ほどの繰り返しになりますけれども、日米の両国は、イラクの問題その他の問題につきまして、日ごろから緊密に協議をし、連絡をとって、情報の交換もいたしております。そういうことではございますけれども、米国から具体的な支援の要請があったということではないということでございます。
 それで、委員が、この問題、アメリカがリーダーシップをとって、アメリカの言うなりではないかというふうにおっしゃっていらっしゃいますけれども、イラクに対応するに当たっては、国際社会が、先ほどと同じ言葉になりますが、一丸となってイラクに国連の安保理の決議を守るように圧力をかけていくということが非常に大事であります。そして、イラクが申告を十二月八日までにしなければいけないということですけれども、この時期、そういった一丸となって圧力をかけるということが非常に必要でありますし、ブッシュ大統領も平和的に問題は解決をしたいということを言っていらっしゃって、武力行使をするということが決まったわけではない、それを決めていない、今はそういう状況であるということです。
 したがって、これについて、その圧力をかけ続けることの重要性ということは、繰り返しても繰り返しても十分ではないぐらい重要だと思っています。
 他方で、それではイラクに対して具体的に軍事行動が、あるいは武力行使が行われるようなことがあったときに、そのことを全く考えないで、用意をしないでいいかということであれば、それについては、例えば十八日に、邦人の引き揚げをするときにどういうことが大事なことであるかといったことを考え、模擬訓練も行っている、そういう準備はいたしておりますし、政府として、何が、どういうことが日本として適切な役割であるかということを考えながら、情報の収集は行っているということでございます。
 ですから、そういった軍事行動が開始をされたときの我が国の対応ということで申し上げますと、イラク問題についての我が国の基本的な立場を踏まえて、先ほど申しましたように、我が国として、国際社会の一員としてどういう役割を果たすべきかということ、そういう観点から種々の検討を行っているということでございますけれども、現時点で何かを具体的に決めた、そういうことではないということです。
首藤委員 いや、何言っているかさっぱりわからないんですけれどもね。もうそれは後ろから回ってくる紙を幾つか継ぎ合わせていろいろお答えになっているのですけれども、これはもう焦眉の急というか、本当に炎は迫っているわけですよ。国際社会が一致とか、確かにそうですよ、だから国連でやって、安保理でやって、一四四一があってという話でしょう。しかし、一方では、アメリカはどんどん積み重ねていって、それはもう如実にわかるわけですよ。それから、例えば安全保障委員会だってもうこの問題は論議されているわけですし、本当にもう目前まで来ているわけですよ。
 それで、中東の地理的な特殊事情を考えると、三月にはもう戦争はやめなきゃいけない、戦闘はやめなきゃいけない、もう暑くなってしまうということを考えると、年末から年初というのが実際に戦闘を始められる本当の短い期間なんですよ。ですから、もう目の前まで迫ってきているのに、情報収集をどうのこうのとか、日常的な打ち合わせはどうのこうのと言っているのは、国民をだましているのと全く同じですよ。もう目の前までリスクは迫っているのに、いや、日常的に見ていますとかそういう話をして、これはもう本当に国民をだましているのと同じじゃないですか。
 私は、やはりこれからは、インフォームド・コンセントといって、医療の面でもそうですけれども、透明性もそうですけれども、我々も覚悟しなきゃいけない。本当にこの社会において――いや、いいですよ、副大臣の話は。そういうような状況の中でどのように考えていかなきゃいけないかということを外務大臣がきちっと公の場で言う、そういう時期になっているんですよ。これをやらないと、私は、政府は日本の国民の安全を守っていくその立場が全うできない、そんな政府はもう日本にとって要らない、本当にそう思いますよ。(発言する者あり)
 私は、そういう批判が、今同僚議員からもいろいろありましたけれども、それは本当に国民の声だ。いや、笑い事じゃないですよ。本当に国民の声ですよ。私は国民を代表している。私も横浜の八万人の市民から選ばれて、首藤信彦と書いてくれた人がいるから今こうやって大臣に言っているわけですよ。ですから、これは本当に国民の声なんですよ。こんな外務省だったら要らない、それだったら、もう内閣が全部やればいい、条約局もみんな内閣官房でやればいいという意見もあるし。だから、そんなのおかしいじゃないですか。
 これは笑い事じゃなくて、もう本当に私たちの国の運命がかかっているんですよ。ですから、そこのところをしっかり答えて、国民が、ああ、外務省もしっかりやっているんだなということがわかるようにしていただきたい。内部ではしっかりやっていると思いますよ。もう外務省は二十四時間灯がついて、僕らも十二時に議員会館を帰るときに、外務省の灯がついていて、ああ、まだやっているんだな、本当にそう思いますよ。だけれども、それが国民に見えるようにしなかったらだめじゃないですか。そこを、外務大臣、やはり答弁きちっと考えてくださいよ。
 もう時間がほぼなくなりましたので、最後にちょっと質問したいんですけれども、最近、我が国におられるフジモリ元ペルー大統領が二〇〇六年のペルー選挙に出馬するというメッセージが流されているわけですね。これもおかしなことですね。
 フジモリさんに関しては、かつて起こった日本大使公邸でのテロ、トゥパク・アマルというテログループがあったわけですが、それをせん滅したときの人権侵害とか、いろいろな形で訴訟が行われたり、あるいは資金に対して何か黒いうわさもあったりする、そういうような状況であったわけですが、その訴追をいつの間にか免れて、いつの間にか日本国民になっているというふうに言われているわけです。今度は日本国民がペルーの大統領選に出馬するという何かおかしな話になっているわけですが、今一体いかなるステータスでこのフジモリさんは日本に滞在されておられるのでしょうか。
茂木副大臣 フジモリ元大統領でありますが、日本政府といたしましては、平成十二年の十二月に、同氏が日本国籍を有することを確認いたしました。現在、同氏は日本国民として我が国に居住をいたしております。
 なお、フジモリ元大統領が次のペルーの大統領選挙に出る、このことにつきましては、フジモリ元大統領のホームページでもそのような意思表明があるということは承知をいたしておりますけれども、ペルーの大統領選挙に出るかどうか、その問題につきましてはまさにペルーの国内問題でありますので、我が国政府としてコメントする立場にない、このように考えております。
 それから、首藤委員、もう一点なんですが、イラク問題に関して先ほど来貴重な御意見を聞かせていただきましたが、では、日本政府として何もしていないか。例えば邦人保護という問題があります。これにつきましては既に省内でも模擬演習も行っておりますし、もし事があった場合に、どういった体制で邦人保護を徹底できるか、このことに関しましては連日議論をし、シミュレーションし、そういうことも行っております。
 また、イラクに対して国際社会が一般的に働きかけるだけではなくて、特に周辺諸国、アラブ諸国の影響は大きい、こういうことで、大臣とも相談をさせていただきまして、私も来週の月曜日から中東諸国、ヨルダン、シリア、トルコと回らせていただきまして、そういった国々も一緒になって、イラクが無条件で、そして即時、無制限に査察を受け入れるように、こういうことを働きかけてまいります。
首藤委員 もう時間もなくなりましたので、私の質問は終わりたいと思いますが、今の最後のフジモリ元大統領の話に関しても、日本国籍を有しているからと言うんですけれども、では、日本国籍を有していた人がペルーの大統領になっていた、これは二重国籍じゃないですか。その点に関してはどうかということはまた別途質問させていただきます。
 それから、最後のコメントでおっしゃった、これに対してもう質問時間はありませんけれども、あなたはそういうふうにおっしゃるけれども、私の見方からするとそれは十分ではない。今の外務省の体制は、こんな小さな領事移住部だけで十分に対応することはできない。
 それから、おっしゃるように、イラクには五人しかいない、周辺にはたくさんいるから周辺の国を守ろう、それだけでは十分ではありません。もう、イラクの問題、中東の問題というのはヨーロッパと直結していて、さらにバンコクや、そういうアジアとも直結しているんですよ。ですから、全世界レベルでやらなきゃいけないので、私は、それは十分でない、そういうふうに思っております。
 以上で私の質問を終わります。
池田委員長 次に、松本善明君。
松本(善)委員 今、イラク問題についても、大変切実な問題としての同僚の委員の質問もありました。日本政府としても、邦人の避難というようなことまで考えているということでございます。これはやはり、アメリカのイラク攻撃ということが行われますと、たびたび申し上げてもおりますが、二十一世紀がどういう世紀になるかというような本当に国際的にも重大な問題で、我々としても真剣に取り組まなければならぬ問題だと思います。
 この問題に最後は行くんですが、やはりこれは、アメリカのアフガン攻撃、これの延長線上で、広い意味で考えられることであります。そこからお聞きをしたいと思います。
 政府は、十九日に、テロ特別措置法に基づいて定められた米軍等支援の基本計画に輸送任務を追加して、期間を半年延長する閣議決定をいたしました。昨年の十月八日に米英両軍の武力攻撃が始まって、十二月二十二日には、タリバン政権が崩壊をし、暫定政権が発足をいたしました。ことしの六月には、ボン合意に基づいて、カルザイ暫定政権議長を大統領とする移行政権が発足をした。
 こういう経過は、対テロ戦争でアルカイダの掃討とタリバン政権が崩壊をするという状況になって、なお日本政府が支援を継続する、これはどういう理由でしょうか。改めて外務大臣の見解を聞きたいと思います。
茂木副大臣 松本委員の質問、やはり二つの側面から考える必要があると私は思うんです。一つは、アフガンにおける和平プロセスが進んでいるか否か、そしてもう一つは、テロとの闘いが終わったか否か。
 前者の和平プロセスにつきまして申し上げますと、委員御指摘のあった部分とも若干重なりますが、アフガニスタンではタリバン政権が崩壊いたしまして、また、昨年十二月のボン合意及び暫定政権の設立、そして、先ほど委員からございました六月の緊急ロヤ・ジルガの開催及び移行政権の設立を経まして、ボン合意に基づく和平プロセスは着実に進みつつある、このように考えております。
 その一方で、テロとの闘い、これ自体は終わっていない、こういう認識であります。オサマ・ビンラディンそしてオマル等の行方は依然つかめておりません。そして、アフガニスタンとその周辺地域にも残存するアルカイダ、タリバンのメンバーも、依然として国際社会の脅威となっており、アフガニスタンにおけるテロとの闘いは終わっていない、このように承知をいたしております。
 米国からの説明、さらに我が国として収集した情報によれば、アフガニスタン国内における米軍等の投入兵力、これは、昨年の十二月段階でたしか三千人であったものが九月末では九千人以上にふえている、こうなっておりますし、掃討作戦につきましては依然続いている、このように承知をいたしております。
 また、海上におきましても、アラビア海を中心といたしまして、アルカイダ、タリバンの残党が海上を経て逃亡し、国際テロの脅威が拡散する可能性が高まっているため、海上で逃亡を阻止するための活動も続いており、その実施される海域は拡大をいたしております。
 このような状況下で、今後ともアフガニスタンとその周辺における粘り強い作戦が必要であり、テロとの闘いは長期にわたって継続する見通しである。
 和平プロセスにつきましても、さまざまな形で日本はアフガニスタンに対して復興の支援等々を行っておりますし、また、テロとの闘いにおきます日本の役割、これも変わっていないと思っております。
松本(善)委員 政府の答弁に要望しておきますが、茂木さんは同じ委員会でも一緒にやったことがあり、頭の回転の速いことも承知をしていますけれども、やはり、質問にちゃんと答える、直接答えると。書いたものを読む、これはわかっていて聞いているんですから、かみ合うような答弁をするということをやはり先頭に立ってやってもらわないと、国会は変わらないと思います。
 要するに、テロがなくなっていない、だから支援をするんだということ、一言で言えば、それだけ言えばいいんですよ。そういうことの趣旨を長々と述べられたわけでありますけれども、私は、そこにやはり根本問題があるんだと。
 昨年のテロ特措法の審議の際に、我が党は、今世界に問われているのは、テロを根絶する手段として、どのような手段が法と道理にかなっているか、また真に有効であるかという問題だということで、テロ根絶のためには、軍事力による報復でなくて、国際社会の共同の努力によって法に基づく裁きを図ることこそが必要だと提唱をいたしました。
 しかも、何よりも、テロ犯罪に対して軍事力で報復するならば、罪のない多数の市民が新たな犠牲者になることは避けられない。あのニューヨークの犠牲者よりももっと多くの市民がアフガニスタンでは犠牲になっております。無差別に多数の市民を殺害したテロは到底許されないものでありますけれども、それへの報復として、罪のない多数の市民、子供たちを新たな犠牲者にすることも許されない。これは新たな憎しみを生み、テロと報復の悪循環をつくり出し、テロ根絶に向けた世界の団結を壊し、テロ根絶にも効果がないばかりか、事態を一層泥沼に導くということを私どもは主張したわけであります。
 今までの経過を見ますと、アフガニスタンでの少なくも新しい政府ができて、テロの問題は国内の犯罪の問題になってきているというふうに私は思うんです。しかし、それが世界に拡散していることはそのとおり。すると、やはりテロの問題は軍事力や戦争によっては解決できなかった、少なくもこの間の経過は失敗しているというふうに識者も指摘をしているし、私どももこれはそうではないかと思います。外務大臣、どう思いますか。
川口国務大臣 テロの脅威にどういうように対応していくかということは、委員が冒頭おっしゃったような二十一世紀の世界が直面をする脅威の問題として、きちんと考えなければいけない問題であると思います。そして、これに対応していくためには、さまざまな手段が必要であると私は思います。一つだけで十分ではないと思います。
 アフガニスタンのアルカイダのテロとの関係でいえば、これは委員も、あるいはみんなが知っているように、国際社会として一丸となってこれに対応することが必要であるということで、国連の安保理で決議も行いまして、一三六八だったと思いますけれども行いまして、それで、訓練場を閉鎖すべきであるとか、あるいはビンラディンを引き渡すべきであるとか、そういうことを言ってきたわけです。
 そしてまた、このアルカイダの脅威が引き続き続いているということでございまして、米軍、英軍等でアフガニスタンに対して軍事力の行使をして、その結果として、アルカイダの捕虜というのは、二千名を超える人間が捕虜となった。その部分について、まさにアルカイダの脅威は減ったという判断を私はしております。
 これだけではもちろん十分ではございませんで、そもそもの基本的な部分であります、例えばテロが広がっていくということをどうやって抑えるかということで、資金面でこれを抑えるための努力、これも必要でございますし、入出国の管理の強化ですとかあるいは各国間での情報面での連携を強化していくとか、ありとあらゆる手段を各国が一致団結してやらなければいけないと思います。
 そして、発展途上国等でテロに対応する法的な枠組みなりあるいは政治の仕組みが十分にない国に対しては先進国がこれを支援していく、そういったことも必要でございますし、テロリストに安住の地を与えないということの観点からいいますと、テロリストの厳正な処罰と引き渡しを求める条約、テロ防止関連条約の締結を促進していくということも重要でございますし、こういったことを我が国としては二国間の場でも多国間の場でも、さまざまな機会をとらえてこれを働きかけている、そういうことでございます。
松本(善)委員 このテロ問題が国際的な重要な問題だということについて長々お話がありまして、その点については、重要問題であるということについての認識は同じなんですけれども、問題は、軍事力や戦争ではなくならないじゃないか、失敗しているじゃないかという問題を提起しているわけです。その点については一言もお答えにならなかった。(川口国務大臣「答えましたよ」と呼ぶ)ああ、そうですか。それでは非常に弱いと思います。
 川口外務大臣とラムズフェルド国防長官の会議の概要について外務省の報告を見ましても、この問題では長官は、アフガニスタンにおいては軍事活動から人道的な活動に少しずつ比重が移ってきている旨を述べたというふうにあります。事実上それは軍事活動が非常に少なくなってきていることは、もうだれが見ても明白であります。
 それだけではなくて、テロ事件の頻発は、改めて申し上げますと、四月十一日にチュニジアでドイツ人観光客を含む二十人以上が死傷した自爆テロ事件。五月八日には、パキスタンのカラチで、フランス人十一名を含む十四人が死亡した自動車爆弾テロ事件。いずれもアルカイダ関係者による犯行とされている。五月には、モロッコ政府が、アルカイダメンバーと見られる三人をジブラルタル海峡で米英艦船に対するテロ行為を計画していた容疑で逮捕した。六月十日には、アシュクロフト・アメリカ司法長官が、放射性物質を利用する汚い爆弾を使って反米テロ計画に関与した容疑で、アルカイダのメンバーと見られる米国市民を逮捕したと発表。フィリピンでは、十月二日から二十日までの間に、米兵一人とフィリピン人一人死亡、米兵一名とフィリピン人二十二名重傷の爆弾テロ事件に続きまして、四件で死亡者十六人、二百十一人の負傷というテロ事件が起こった。十月六日にはイエメン沖のフランス船籍のタンカー爆破事件。十月八日にはクウェートの米海兵隊員狙撃事件。十月十二日にはインドネシア・バリ島で百九十人以上の犠牲者を出した爆弾テロ事件、アルカイダが犯行声明を出した。十月二十三日、モスクワの劇場占拠事件。
 テロはなくなっていないどころか、アメリカのFBIは、アルカイダが目をむくほどのテロ攻撃を計画していると、さらに拡大する可能性を警告している。
 私は、タリバン政権は崩壊をしたけれども、戦争でテロが根絶できない、していない、そういう点でいえば、目的を達成していないということは明白だ。その前途がこのままでは、私どもが警告しておりましたような報復戦争とテロの悪循環ということになりかねないと大変憂慮をしているわけです。
 その根本認識について、先ほど外務大臣は触れたと言うけれども、これは失敗をしたとは考えていないとはどういう点ですか。そんなに難しい問題じゃない、簡潔にお答えいただきたい。
川口国務大臣 先ほど申しましたように、テロの脅威に対応するためにはさまざまな手段を使っていく必要があるということを申し上げているわけでございまして、米軍、英軍が行使をした軍事力は、例えば何人の捕虜がその結果として生じたかということを考えてみていただいても、そういった抑止の効果があった。訓練所を破壊することができた、そういった効果があるわけです。
 もちろん、それだけで一〇〇%であるかというとそうではなくて、先ほど長いとおっしゃいましたので繰り返しませんけれども、国連の安保理の決議の結果としてのいろいろな行動、あるいはその資金の流れをとめる、あるいはテロリストの引き渡し等の条約、そういった国際的な枠組み、発展途上国の、そういった力を持っていない、法的な枠組み、政治的な枠組みを持っていないところへの支援、さまざまなことが必要である、そういうことを申し上げたということです。
松本(善)委員 私は、軍事作戦が行われた後のテロが拡大しているということを皆さんに知っていただこうと思って詳しくお話をしたわけでございますけれども、これは私だけの見解ではなくて、例えば、幾つも申し上げませんけれども、シェリー・ノースウエスタン大学の教授は、オサマ・ビンラディンの捕捉ないし殺害という当初の戦争目的からすれば、作戦の失敗は明白だというふうに言っておられます。私は、もう幾つもたくさんは引用いたしませんけれども、そのように述べておる世界の識者は本当にたくさんあります、例示をすれば時間が足りなくなりますので申し上げませんけれども。
 私は、第四回の日米のテロ対策特措法のもとでの日米の調整委員会の中でも、アメリカ側が、アフガニスタンでは部族的、民族的問題が生じている地域もあり、我々は活動を継続しなければならない、これは米軍自身がそういう問題に移っているということを言っていることだと思うんですね。そういう状況になっている。ですから、私どもは、このテロ対策の支援のために、アメリカのアフガン戦争支援のために延長するということではなくて、米軍支援の基本計画を半年延長するという閣議決定は、そういうことじゃなくて撤退すべきだというふうに考えているわけです。
 先ほど同僚委員の質問もありましたが、アメリカ側から支持を要請してきたということが、昨日、読売新聞の夕刊で、アメリカ政府は二十日までに、日本政府に対して、米国が対イラク武力行使に踏み切った場合の日本の支持と協力を書簡で要請した、複数の日米両政府筋が明らかにしたと。これは一面トップでやっていますから、読売新聞もかなりの根拠を持って言っているんだと思いますが、これは全くの誤報でありますか。外務大臣に伺いたいと思います。
川口国務大臣 ブッシュ大統領は、これは先ほどの繰り返しになりますけれども、国連の決議が採択されたときの演説の中で、同盟国、そして関係の国々と協議をし、支持を求めているんだということを言っているわけでございまして、日本は米国の同盟国でございますから、今までもこのイラク問題についてさまざまな情報交換や協議ということを行っております。
 読売新聞に、書簡で米国から支持の要請があったという記事があったようでございますけれども、具体的な支持の要請があったということではございません。ただ、米国との間では頻繁に協議をしているということは、申し上げたとおりです。
松本(善)委員 このテロ特措法で出動している日本の支援がイラク攻撃に適用されるということは、これは福田官房長官も、イラクとアルカイダとの関係が緊密であるという知見はないということを答弁しておられて、今までの政府の立場でいけば特措法の延長としてイラク支援はできない、こういうふうに理解をしていますが、それでよろしいですか。時間も余りありませんので簡潔にお答えいただきたい。
川口国務大臣 特措法は、特措法の目的に従って、すなわち九月十一日の脅威に対して行動をとっている外国の軍隊を支援する、きちんと全部を申し上げていませんけれども、そういう法律の目的に沿って使われる、そういうことでございます。
松本(善)委員 福田長官の答弁とあわせれば、そういうことはできないはずでございます。
 防衛庁が来ていると思いますが、アフガンの作戦の支援を継続して、今延長して自衛艦が出動をしておりますが、この地域はイラク攻撃のときに予想されるアメリカの艦船の戦闘海域と重なります。イラクへの米軍の攻撃が始まれば、米軍は、イラクに軍事行動は集中するということになると思います。そうすると、これはそのままでいきますと、アフガン支援が事実上イラク支援になるということにならないか。これは仮定の問題としてではなくて、先ほど外務省の答弁にもあったように、邦人の避難の問題まで訓練している、現実の問題です。これがそういうふうにならないか。
 特に、米軍はアフガンについての任務を持たせている艦船にいつでもイラク攻撃に任務を変更することができる。それは区別ができません。ですから、今日本政府が出している自衛艦がそのままでいれば、アメリカがイラク戦争を始めれば、これは自動的にイラク戦争に協力をするということになるんではないかと思いますが、防衛庁はその点はどう考えていますか。
守屋政府参考人 お答えいたします。
 私どもの活動でございますが、現在、私どもは、米軍、イギリスの艦船に対しまして、インド洋で油を補給するという活動を行っておりますけれども、この地域は、パキスタンの沖合でございまして、バグダッドから大体二千キロ離れております。二千キロといいますと、稚内から奄美大島ぐらいの距離でございまして、そういうところで私どもは米軍とイギリスの艦船に油を補給しているということでございまして、仮にそのイラク攻撃が行われた場合でも、そのぐらいの、イラク攻撃の場合は、米軍の艦船はペルシャ湾に入って行うことになると思いますけれども、私どもの方の現在活動している区域というのは、そこから約二千キロ近く、千五百から二千キロ離れているというところで行われているということをまず御理解いただきたいと思っております。
 それで、私どもの活動はあくまでテロ対策特措法に基づく活動でございまして、九月十一日のテロ攻撃によってもたらされている脅威の除去に努めることにより国連憲章の目的の達成に寄与する諸外国の軍隊の活動を支援するためのものでございます。そういう、目的が限定された活動でありますことをぜひ御理解いただきたいと思います。
松本(善)委員 先ほど引用しましたテロ特措法のもとでの日米間の第四回調整委員会の概要では、海上自衛隊の補給艦及び航空自衛隊の輸送機による支援、これは引き続き存在するということも述べております。二千キロというのは航空機にすれば何でもないんですよ、そんなものは。それから、艦船に補給して、その後ペルシャ湾へ移動するということもあり得る。これは幾らでも考えられる。作戦上はそういうこともある。
 そういうことを考えますと、やはり、非常に危険なイラク戦争について、政府が避難まで考えているという問題になっているときにこれを延長するということは、イラク戦争に連動するという極めて危険なもので、私どもは絶対これは撤退すべきだ、延長ではなくて撤退すべきだ、特にイラク問題を考えたときには非常に危険なことになるんではないかというふうに思っております。そのことを厳しく指摘をして、質問を終わります。
池田委員長 次に、東門美津子さん。
東門委員 社会民主党の東門美津子です。
 また沖縄が来たかと思われているかもしれませんが、おつき合いよろしくお願いいたします。(発言する者あり)はい、そうです、選挙の話からスタートさせていただきます。
 去る十七日の沖縄県知事選で、現職の稲嶺知事が再選されました。稲嶺知事は今回の選挙でも、前回と同様、普天間飛行場代替施設の十五年使用期限の設定を公約に掲げて、十五年使用期限問題が解決しなければ着工はあり得ないと強調しています。稲嶺知事は、与党三党の推薦を受けています。その掲げる政策については、与党にも相応の責任があり、議院内閣制のもとでは当然政府もこれを尊重しなければならないはずです。しかし、政府は、平成十一年の閣議決定に従って米国と協議していくと繰り返すのみで、問題を解決しようという意欲が全く感じられません。
 十九日の朝日新聞では、外務省幹部の発言として、稲嶺知事が基地問題を訴え続けなければならない事情は米国もよく知っている、みんなでにせ歌舞伎を演じるしかないとまで言い切ったと報道しています。発言の真偽を確認しても本当のことは答えていただけないでしょうから答弁は求めませんが、外務省がこのような不誠実な姿勢をとっているとしたら許しがたいことです。与党の推薦する知事が二期にわたって県民に対して公約した事実を、政府は重く受けとめるべきです。
 政府は、十五年使用期限問題が解決しなければ着工はあり得ないとずっと言い続けている稲嶺知事の発言、その重み、二期目になりましたその重みをどのように受けとめておられるか、まず川口外務大臣の御見解から伺いたいと思います。
川口国務大臣 稲嶺知事が再選をなさったわけでございますけれども、私としては、今までと同様に、例えば普天間飛行場の移設、返還の問題も含めまして、沖縄に基地が集中をしているということから来ているさまざまな沖縄の県民の方におかけをしている御負担の問題について、稲嶺知事と引き続き緊密に連携をとってお話をさせていただきたいと思っております。そして、県民の方の御負担を少しでも軽減できるように努力をしていきたいと思っています。
 御質問の十五年の使用期限問題でございますけれども、これについては、平成十一年末の閣議決定にございますように、政府としては、国際情勢もありまして厳しい問題であるという認識はもちろん持っておりますけれども、沖縄県知事、稲嶺知事や名護市長の御要請を重く受けとめまして、これを米国との間で取り上げてきているところでございます。
 この前、九月十七日でございましたか、ワシントンで私がパウエル国務長官と話し合いをいたしましたときにも、これは総理の北朝鮮への訪問があった日で、パウエル国務長官も国連の安保理の決議の議論の中で非常に忙しかった寸時を、ワシントンに戻っていらしたという時間、二十分間ぐらいだったかと思いますけれども、時間をいただいて、その中で北朝鮮の話もしましたけれども、そういった中で、北朝鮮の問題と、もう一つ、沖縄の問題については取り上げて話をさせていただいたということでございます。この点については、引き続きそういうことは当然にやっていきたいと思っています。
 それから、先ほどの引用なさった新聞記事でございますけれども、そういうことを言う外務省の幹部というのはいるはずがないと私は考えます。
東門委員 大臣の今の最後の御答弁を聞いていますと、では、新聞がまるっきりでたらめを書いたということになるのかなとちょっと思っています。しかし、もう時間がありませんので、それは飛ばします。
 沖縄の問題というふうに今大臣はおっしゃいました。それとそっくり同じことを小泉総理もおっしゃったんですね。総理は十八日に、稲嶺知事の再選について記者からの質問を受ける中で、十五年使用期限問題について問われた際に、沖縄の問題として受けとめながらアメリカ側と交渉していきたいと思いますと述べたと報道されています。これがもし事実であるとすれば、大変遺憾なことであるということを申し上げなければなりません。
 この普天間代替施設の問題、十五年使用期限問題は、沖縄の問題ではなく日本の問題であり、日米間の重要な外交上の問題です。それを単に沖縄だけの問題としか感じていない小泉総理、今の大臣の御答弁の中にも出てきたんですが、その理解の浅さ、無責任さには本当にあきれてしまいます。
 では大臣、やはり総理の発言を誤りであるとは思われないわけですね。私は、誤りであると認めますかと本当は聞きたかったんです。大臣の発言とそっくり同じなので、これが政府の姿勢なのかなというふうに今感じたところですが、本当に沖縄の問題なのでしょうか。お答えください。
川口国務大臣 私、今意識的に沖縄の問題と使ったつもりはなかったんですけれども、もしそういう言葉を使ったとすれば、これは沖縄の県民の御負担の問題ということを、私、そういう言葉を使ったと思いますけれども、それを繰り返すことを時間的に省いてしまったというだけのことでございまして、沖縄の問題であるというふうに思ってそれを言ったということでは全くございません。読んでいたわけではございませんので、そういった言葉になっていたとしたら、気持ちが先に走って言ったということだと受け取っていただきたいと思います。
 当然のことながら、沖縄の県民の方が基地の集中によってしょっていらっしゃる問題、これは日米安全保障条約で、米軍が日本で基地施設を使って日本及びこの地域の平和と安全を保障する、安全保障をするということの問題、それの負担が、七五%の施設・区域が沖縄に集中をしているということによって沖縄県民の方に多大な御負担をおかけしている、そういうことが問題であるということを認識しているということでして、その御負担を少しでも少なくするということのために努力をしていきたいということを申し上げたわけでして、小泉総理も当然にそういうお気持ち、そういうおつもりでおっしゃったんだと私は思います。
東門委員 はい、了解しました。
 七月末の代替施設協議会で基本計画が了承されたことに伴って、間もなく環境アセスメントが始まります。このアセスメントが終了し、着工に問題なしとの結論が出た場合は、知事が着工に同意しなくても、手続的にはそれですべてが完了して、着工が可能となるのでしょうか。着工に至るまでの手続についてお伺いしたいと思います。
海老原政府参考人 今まさに委員がおっしゃいましたように、環境アセスメントが終わった後に着工ということになると思いますけれども、その場合、知事がどういう形で関係してくるのかということにつきまして、今ちょっと私、資料がなくて存じておりません。申しわけありません。
東門委員 では、ぜひその資料をいただきたいと思います。よろしくお願いします。
 次に、いわゆるアメラジアンの問題についてお伺いいたします。
 アメラジアンとは、アメリカンとアジアンとを結びつけた言葉であり、アメリカ人とアジア人の両親を持つ子供のことです。沖縄の場合、戦後五十七年間、巨大な米軍基地が存在してきたという特殊な歴史的事情のもとで、米国人男性と日本人女性の婚姻数の割合は全国平均の十五倍となっており、離婚の割合も全国平均の十四倍となっています。一九八七年から一九九八年の十二年間に、国際結婚により生まれた沖縄のアメラジアンの子供の数は約三千人と推定されています。
 彼らは、沖縄が米軍に占領されたがゆえに生まれた基地の落とし子というレッテルを張られ、時として、アメリカの象徴としていじめや差別の対象とされました。沖縄は二十七年間米軍に占領され、現在も在日米軍基地の七五%が集中し、数多くの米軍や軍人軍属の事件、事故に悩まされ、虐げられてきました。このような事情があるので、県民感情として、米軍に対する不満、反感があるのはやむを得ませんが、その感情が何の罪もないアメラジアンに向けられるのは本当に悲しく、やりきれない思いでいっぱいです。さらに、国籍の問題、教育の問題、経済的な問題など、アメラジアンは多くの困難を背負わされています。
 沖縄のアメラジアンの問題は、戦後の歴史の積み重ねにより生み出された問題であり、現在も存在する米軍基地、日米地位協定、ひいては日米間の外交政策に起因する問題であり、また、我が国の法制度上の問題でもあります。そして、マイノリティーの人権の尊重という、国民の基本的人権に対する意識が問われているのであり、これは政府だけではなく、沖縄県民も含めて、すべての日本国民が重く受けとめなければならないと思います。
 まず、このアメラジアンの問題についての大臣の基本的な認識をお伺いいたします。
川口国務大臣 アメラジアンの問題については、私がことしの三月に沖縄を訪問させていただいたときにもこれについてのお話をさせていただいたわけでございまして、沖縄に今、人数的にいいますと、かなりのといいますか、千人とも二千人とも言われていますけれども、余り数字もはっきり把握されない形で、アメラジアンと言われる方が沖縄にいらっしゃるということだと思います。
 この問題については、森前総理が沖縄にいらしたときに、この問題についての対応を、窓口をつくるというようなことをお話しになられて、その後、外務省として、関係の部署と御相談をさせていただきながら、私が三月に行ったときにこの相談の窓口を設置するということで発表させていただいた、そういう経緯がございます。
東門委員 確かに大臣が行かれたときに相談窓口の話が出て、そして設置したということは私もよく理解しております。そういうところから、まずアメラジアンの養育費についてお伺いしたいと思います。
 最初にも申し上げましたけれども、戦後五十七年間、巨大な米軍基地が存在するという特殊な事情のもとで、婚姻率が全国平均の十五倍、あるいは離婚の割合も全国平均の十四倍となっています。両親が離婚した場合、母親である日本人女性が子供を引き取るケースが大部分でありますが、その際に問題になるのが、父親が支払うべき養育費のことです。
 日米地位協定には、米軍人等に支払う給料等の債権に対する差し押さえ等に関する規定がないため、裁判で養育費支払いを求める判決が下されても、父親である米軍人等が基地内に逃げ込んでしまえば、給料等に対する差し押さえなどの強制執行ができません。
 また、アメラジアンの父親の米軍人軍属が、退役して本国に帰国したり、別の任地に転属した場合、連絡が途絶え、養育費が支払われないケースが多々あります。離婚の手続をとらないまま帰国し、消息不明になる者もいます。
 先ほど大臣からもありましたが、ことし三月に沖縄を訪問された際に、地位協定の見直しではなくて、在沖縄米軍に相談窓口を設置、そして、父親の居所確認、親子関係の確認、養育費の請求について支援するという体制の整備を行うことを明らかになさいました。
 しかし、ことし四月にこの新たな窓口の運用が開始されて既に半年以上経過したにもかかわらず、利用者がほとんどいないというのが現状です。その原因として、最も要望が多い退役軍人軍属がこの相談の対象外となっていることが挙げられています。
 養育費の問題を十分認識しているからこそ、政府もこのような相談窓口を設置したはずです。報道によりますと、政府は、退役軍人を対象とすることはプライバシー保護の観点から難しいとの見解を示しているようですが、アメラジアンの養育費の確保という問題の本質を考えれば、退役軍人軍属についても何らかの対策が必要であるということは明白です。
 政府は、この相談窓口、大臣が沖縄に行かれたことによって出てきた相談窓口の設置、その現状をどのように認識されており、また、退役軍人軍属について何らかの手を打っていかれるのかどうか、そこをお聞かせください。
    〔委員長退席、中川(正)委員長代理着席〕
川口国務大臣 この窓口の実際の使われ方について聞きましたら、委員が今御指摘になられたように、利用されている件数、利用頻度が非常に低いということでございまして、私としては、それがどういうことに起因をするのかということをきちんと調べてみる必要があると考えておりまして、まずそこからきちんと把握するようにということの指示をいたしました。
 それで、いろいろな理由が考えられると思いますし、知られていないということがあるのかどうか、そして、窓口的には県等を経て行くことになりますので、その過程で問題が片づいたりしているかどうか、さまざまな観点、角度から調べてみないといけないと思っております。
 まずそれをやり、その上で、委員がおっしゃっていらっしゃる退役軍人、ここについては、米軍という相手がございますし、また、米軍の方でどれぐらい情報の把握ができているかというような問題もあるだろうと思います。
 いずれにしても、その利用度が少ないということの理由をまずきちんとしてみるということから始めたいと思います。
東門委員 米国には、扶養義務を怠った父親から政府が養育費を強制的に徴収する制度があって、州によっては、養育費支払い義務違反を犯罪として、刑罰によって養育費の支払いを強制していることも多いとのことです。そして、ドイツなど約二十カ国は、米国の連邦政府または州政府と養育費請求についての協定を締結しており、この協定によって、たとえ父親が米国に帰ってしまっても、また軍隊を退役してしまっても、養育費の取り立てを容易に行えるようになっています。このような協定があれば、退役軍人軍属に対しても養育費を取り立てることができます。しかし、政府の協定締結に対する姿勢は非常に消極的です。
 かつて、我が国に対しても、米国側からこの協定締結の申し入れがあったようです。一九九一年、バージニア州から、九五年か九六年にテキサス州から打診があったとのことですが、政府はこれを断っています。その理由として過去に政府が国会で答弁したのは、「米国とこのような相互主義を満たすことができるような国内法、法制度というものが存在しない」というものでした。これは余りにも情けない話です。
 これはアメラジアンだけの問題ではありません。父親が日本人の母子家庭の保護も十分ではないということになります。養育費不払いがあったとき、その都度強制執行のために裁判に訴えなければならないのでは、請求側の負担が余りにも大き過ぎます。我が国は、子供を遺棄した父親に甘い、人権意識の低い国だと思われてしまうおそれもあります。
 この問題は、法務省など国内法制を所管している省庁に働きかけねばならず、外務省だけでは解決できないことは十分承知しております。しかし、このような国内整備が必要な問題に関して、外務省の動きはいつも鈍過ぎます。子どもの権利条約を批准している我が国としては、このような子供の人権にかかわる問題は看過できないものであり、外務省は事の重要性を十分理解しなければならないと思います。さらに、これは、我が国が人権問題にどう取り組んでいるかという国際社会からの評価にかかわる問題であり、我が国の国益の問題でもあります。
 米国との養育費請求についての協定締結のため、外務省は積極的に関係省庁との国内調整を進めるべきだと思いますが、大臣、いかがでしょうか。
川口国務大臣 委員がまさに今おっしゃられたような問題があるわけでございます。細かいことは省きますけれども、国内で公的機関が養育費等の徴収を行うという、扶養義務の執行を容易にする国内の法制が整備をされているということが、米国との間で双務的な協定を結ぶために不可欠であるということでございます。
 国内でこういう制度をつくることが可能かどうかというのは、まさに国内の非常に根本的な制度にかかわる問題でございまして、今の現状では、このような整備は国内では行われていない、簡単にこの整備が行われることが可能な話でもないということでございますので、米国との間で双務的な協定を結ぶということは困難であると申し上げざるを得ないと思います。
東門委員 質疑の中で感じたことを、最後に申し上げさせていただきます。
 大臣は、アメラジアンの数、いわゆるその子供たちの数も定かではありませんとおっしゃいました。そうですね、確かにそういう御答弁をなさいましたね。そして、退役軍人軍属の、帰国された方々からの養育費の問題、それもアメリカ側がどのぐらい把握しているかわからないからという御答弁でした。とても残念に思います。そうであれば、外務省、大きな責任ですよね。基地の提供者ですよ、国は。沖縄を見てください、七五%ですよ。
 外務省として、私は前向きの答弁が欲しかった。外務省として実態調査をして、そこから何ができるか見ていきたいというんだったら別です。米軍がどれぐらい把握しているか、国は何もしないのでしょうか。責任はだれにあるんでしょう。済みません、この点は茂木副大臣にお答えいただきたいと思います。
 私は、外務省は大きな責任があると思います。これは沖縄だけではないんです。最大の数は沖縄にいます。しかし、日本全国、基地所在県は同じような問題を抱えているはずなんです。それに対して政府として積極的に実態調査をする、そこから何ができるか見ていくということをぜひやっていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
茂木副大臣 先ほど大臣の方から、米側の方の調査を見ないとわからないというのを私なりに聞いておりましたら、退役軍人との連絡等々につきましては、アメリカ側の方に問い合わせをしないとわからない、それは当然のことである、私はそのように考えております。
 そこの中で、大臣の答弁にもありましたように、森前総理のイニシアチブでこのアメラジアンの問題が動き出したのは確かであります。そしてまた、川口大臣の方も、この相談窓口をつくっていく。ただ、そこの中で相談窓口にいらっしゃる方の件数が少ない、そこには問題があるんであろう、どういう問題があるのか、そこについてまずきちんと調査をした上で必要な改善策をとっていく、そのように大臣も答弁をさせていただいておりまして、私もそのことにつきましては全く同じ考えであります。
東門委員 その件はぜひやっていただきたい。やはり問題があるから利用者が少ないというのは事実だと思います。では、どう改善するかということが次のステップだと思いますね。
 それと同時に、私がお願いしたいのは、やはりアメラジアンのその人、アメラジアンという言葉は私自身どうなのかよくわからないんですが、そういう人たちがどれくらいいて、どういう問題を持っているか、相談窓口とは別に国として実態調査をする。これだけの基地を提供しているわけです。基地があるからこそ出てきた問題なんです。それに対して国として何らかの手を打つべきだと私は思うんです。実態調査などをするということはいかがでしょうか。
茂木副大臣 このアメラジアンという言葉を使うのがいいのかどうかと東門委員もおっしゃったように、その実態調査が実際にそれぞれそういう境遇にある方に対してどういう影響を及ぼすか、こういうことも検討した上で調査をすべきかどうか判断したいと思います。
東門委員 ぜひ、フィリピンの例を参考にしてください。とても勉強になると思います。日本政府は、すごくおくれていると思います。やはり、これだけの基地を提供していながら、こういうところに常に前向きではない、いつも後ろを向いている、いつもスローである。とても残念に思います。ぜひ、フィリピンがどういうふうにその問題に取り組んでいるか見ていただきたいと思います。
 委員長、終わります。
    〔中川(正)委員長代理退席、委員長着席〕
池田委員長 次に、藤島正之君。
藤島委員 自由党の藤島正之でございます。
 まず最初に、会計検査院に来ていただいていますけれども、外務省の予算のむだについて指摘されているようですが、ちょっと詳しくその内容を言っていただきたいと思います。
石野会計検査院当局者 お答えします。
 会計検査院におきましては、支援委員会への拠出金を重点的に検査するとともに、さらに、我が国からの拠出金等でその活動に必要な経費の全額が賄われているという十一の国際機関等に対します拠出金等につきましても、あわせて検査を実施しております。
 検査いたしましたところ、次のとおり、大きく分けて三つの適切ではないと認められる事態があったわけでございます。
 第一は、国際機関等の設置協定等に従った運営が行われていないという事態でございます。
 支援委員会の場合を例に申し上げますと、ロシア連邦政府代表者が空席となったということなどから委員会の会合が開催されず、支援委員会の実質的な構成者が外務省のロシア支援室長のみということになりまして、実質的運営は外務省によって行われ、国際機関としては形骸化していたという事態でございます。
 このため、受益諸国の政府からの支援要請を考慮しないまま支援事業が実施されたり、あるいは構造物の設置等で支援委員会の認定を受けないままに事業が行われたということがございます。また、内部規則等に定めのない最低制限価格が契約ごとに異なる率で設定されていた、あるいは入札参加資格につきましても規則等と異なる取り扱いがなされたりするという事態も見受けられたものでございます。
 二番目は、支出しましたその拠出金等が予定どおりに使われずに、多額の資金が当該国際機関等で滞留しているという事態でございます。
 外務省におきましては、そういった拠出金の額や拠出の時期などについての検討が十分でなかったために、支援委員会あるいは日露核兵器廃棄協力委員会等の九の国際機関等におきまして、繰越金が毎事業年度生じておりまして、多額の資金が滞留しておりまして、その金額は十三事業年度末で計約三百四十一億円ということになっていたものでございます。
 三番目は、国際機関等におきまして、予算管理が適切になされていなかったり、あるいは資金の使用に対しますチェック体制が十分整備されていないという事態でございます。
 これも例で申し上げますと、支援委員会では、資金使用に対するチェック体制が十分に整備されていないというふうなこと、また、監査法人に委嘱していた監査も限定的な手続により実施されていたという事態がございます。
 また、サハリン韓国人支援共同事業体の例で申しますと、外務省に提出された財務報告書には、そういう事業体が拠出金を銀行に預けていたことにより発生したその受取利息、計一億五千六百万円ほどございますが、これが収入として計上されていないままであったという事態がございました。
 以上のような事態が見受けられましたことから、会計検査院では、十一月の二十日付で外務大臣に対しまして、拠出金等の支出先であります国際機関等で適切な事業運営が確保され、拠出金等の効率的使用等が図られるよう、次のような施策を講ずる要があるという旨の意見を表示してございます。
 一点目は、設置協定に沿った運営についてでございますが、これについては、当該国際機関等と十分協議を行い、また、必要に応じて拠出の必要性を検討するなどしまして、資金拠出国として適切な対応策をとるということ、二点目の資金の滞留の問題につきましては、拠出金等の支出に当たって、その額や時期を十分検討の上、資金が滞留しないよう適時適切な支出を行うということ、三点目といたしまして、予算管理の徹底やチェック体制の整備を必要に応じましてその国際機関等に要請するとともに、外務省におきましても、その国際機関等から提出された財務報告書のチェック体制を整備するというふうな、その三点を指摘し、所要の措置をとるということを意見表示したものでございます。
 以上でございます。
藤島委員 外務大臣、お聞きいただけましたか。もう本当にずさんというか、めちゃくちゃというか、ちゃんとした国の機関じゃ考えられないようなことをずっとやっていたわけですね。国際機関としては全く形骸化して、支援要請がないままに支援をしたり、規則と全く異なるような入札参加をやったり、あるいは根拠資料のない事業もある。あるいは、ほとんど利用されていない医療機器もある。また、多額の資金が滞留しているとか、資金の運用方法についてめちゃくちゃなことをやっている。あるいは、事務量が減っているにもかかわらず事務費をこれまでと同じ分担の額でやっているとか、受取利息一億数千万円を報告書に書いていないとか、こんなでたらめがずっとまかり通っていたということなんですよ。こんなことをやっているんじゃ、本当に外務省は信頼をされるわけがないんですよ。外務省は本当に解体した方がいいと思うんですが、大臣、どうですか。
川口国務大臣 今会計検査院からお話のあったような、特に国際機関の拠出金をめぐる御指摘については、外務省として、これを非常に重く受けとめております。
 私は就任をして以来、ことしの二月から、外務省の改革ということが第一の課題であるということで、さまざまな取り組みをやってまいりました。また、私が就任する前から既に取り組んでいることもございます。そういった取り組みをますます強くきちんとやっていくということが大事だろうと思っております。
 特に、この国際機関の拠出の問題につきましては、その事業執行あるいは運営管理をより一層適正なものにするために、国際機関側からの適時適切な報告を求める、拠出金の支出に当たって拠出の時期やその方法を一層精査する、平成十五年度の予算要求に当たって滞留金や事業の執行の状況を十分に踏まえて必要額を予算要求するといった措置をとってきています。
 この問題については、外務省の私、副大臣、政務官といった政務層がかかわって、これについてどのような是正措置がいいか、あるいはそれがきちんと行われているかどうか、そういったことを見ていきたいと考えています。
藤島委員 外務省の改革の問題については後日また質問する機会があると思うんですけれども、これは一部だと思うんですよね。たまたまこの十二の機関について調査したことがこれであって、恐らく外務本省自体の中でも相当ずさんな予算の執行が行われているに違いないんですよ。これは本当に省内の検討では出てこないんじゃないかと私は思うんですね。これは、その点も含めもっと徹底的にやってもらわなければいかぬ。
 と同時に、とりあえず、この三百四十二億円については返すべきだと思うんですよ、執行停止して。これは国民の税金なんですよ。本当に腹立たしいこと。これはもう即刻使用停止して、国に返上すると同時に、今後、こういう関係の予算については、もちろん来年度からの予算要求を含めて全額削除する、こういう措置をとってしかるべきだと私は思うんですが、外務大臣、どうですか。
川口国務大臣 今後の処理の問題に入ります前に、先ほどちょっとおっしゃられた、その他の面についても同じようにめちゃくちゃやっているんではないだろうかということにつきましては、この点は非常に重要な点でございますので、外務省改革の、これは私が来る前からの取り組みも含めまして、この点については非常に注意をして、きちんと枠組みをつくっております。
 例えば調達については、これは一元化をするという措置を既にとっておりまして、これについてやっていることについては、「変える会」への御報告も含めてきちんと、今既にこれへの取り組みは行って、それが軌道に乗った取り組みになっているということを申し上げさせていただきたいと思います。
 国際機関の滞留金の今後の処理でございますけれども、これは拠出金という形で国際機関に既に渡っているお金でありますので、外務省の一存でこれをどうするということはできないということでございますし、また拠出金が、そもそも一定の、多年度にわたる事業計画を実行するために拠出をされているケースもございますし、運用益を用いて事業を実施するということになっているケース、そういったこともございます。それから、相手国政府の事情ですとか予期せぬ事情変更があって、その実施状況に、当初予定をされていたことからの変化が生じているということもあったりいたしまして、一部についてはやむを得ない部分もございますけれども、これの適切な処理については、先ほど申し上げましたように、政務グループもかかわってきちんと見ていきたいと考えております。
 より具体的に申し上げますと、支援委員会の繰越金につきましては、この委員会は基本的に本年度末までに廃止をするということに決めております。そして、この繰越金についても、最終的な残金を国庫に返納する方向で、現在、協定の他の締約国と話が必要ですので、協議を行っております。
 それから、その他の国際機関における繰越金でございますけれども、これは、国際機関の事業目的については引き続き必要性が高いというふうに認識をいたしておりまして、その機関の目的に沿って事業の実施を鋭意取り進めて、繰越金が適正に使用されるように努めてまいりたいと考えております。
藤島委員 大臣、全く反省がなってないですよ、それは。
 まず第一点の、前段の部分ですけれども、田中真紀子さんが外務大臣になって火をつけたわけですけれども、あのころ燃え盛っていた改革がもうしょぼしょぼとなっているんじゃないですか。
 それと後段の部分、先ほど検査院が指摘し、私も話をしましたでしょう。今の説明は、言いわけばかりじゃないですか。そんなの、答弁になっていないですよ。
川口国務大臣 前段の改革の部分でございますけれども、これは田中前大臣及びそのさらに前の河野元大臣のときから取り組んでおりまして、そして今、ことしの八月に全部をまとめた形で行動計画というものをつくって、何をいつまでにやるということもきちんと決めてありまして、行動計画に基づいてそれを実行し、実行できているかどうかということについて「変える会」に、今、一カ月に一回ぐらい集まっていただいて御報告を申し上げて、十分であるかないかというのを意見をいただくということをやっております。
 という意味で、外務省がやったことについて第三者の目をいただいて、それで改革を進めているということでございますので、今、実行段階にあって、それが進んでいる、そういう認識を私は持っております。まだ実行は、今の時点で全部終わったわけではございませんので、引き続き、行動計画に基づいてこの実行をきちんとやっていく、それが必要である。
 その中で、会計については、これは一元化ということを一例として申しましたけれども、そのほかに、報償費につきましては、十万円以上については副大臣以上の決裁をするとか、一々全部挙げませんけれども、そういうことをきちんと既に決めて取り組んでいるということを申し上げさせていただきたいと思います。
 国際機関の滞留金の今後の処理ということにつきましては、これは反省が足りないとおっしゃられましたけれども、先ほど申しましたように、この問題については十分に認識をしていて、そして重く受けとめているということです。先ほど申しましたように、大臣、副大臣、政務官がきちんと見る形でこの処理が進むようにする。
 それで、これの方向については、先ほど申しましたように、廃止をするということになっている支援委員会と、それから、その事業目的が引き続き国際的に必要であって、大事であるほかの国際機関とでは進め方が違うということを申し上げたわけです。
 それについては、基本的には、これも先ほども申しましたので繰り返しになりますけれども、国際機関側から適時適切な報告を求めるとか、それから、拠出金の支出に当たって拠出時期や方法等を一層精査するとか、あるいは、十五年度の予算要求に当たって滞留金や事業執行の状況を十分に踏まえて必要額を予算要求するとか、そういった措置をとってきておりまして、滞留した拠出金についての処理の方針は、先ほど二つのグループに分けて申し上げたということでございます。
藤島委員 前段の部分、もう一回あれしますけれども、河野大臣のときに改革が始まったと今おっしゃっていましたけれども、これは明らかに間違いで、私は、田中真紀子さんになってから始まったと思っています。河野大臣とは議論もしましたけれども、改革が始まったというふうには思っていない。
 それと、十万円以上か幾らか知りませんけれども、大臣、副大臣か政務官が決裁しなきゃいかぬなんという、そんなばかな組織は、そもそも本当におかしいですよ。大臣、忙しいのに、そんな細かいのまで決裁しなきゃいかぬというのはとんでもない話だし、私は、そんな制度を入れること自体が改革になっているとは全く思えない。
 それと、先ほど来の支援関係の組織について、大臣、政務官がいろいろ見てチェックをする、こんなのは、大臣、政務官がチェックする話じゃないですよ。やはり、事務方がきちっとしてやるべきですよ。さっき大臣がおっしゃっていたけれども、向こうへ渡ったものがあるとか、確かに、いろいろ事情はありますよ。ただ、検査院がきちっと指摘しているわけですよね。明らかに、今までのやり方がまずいわけですよ。この予算の中で、ほとんど返しても何ら差し支えないのがある、私はそう思いますよ。
 だから、全額と、私、さっき三百四十二億と申し上げたけれども、それは極端な話ですけれども、大半は必要性がないか何かでいっておるわけで、本当に必要性があればどんどん使われておるはずじゃないですか。そこは、大臣にとは言いませんけれども、外務省がきちっと精査をして、返すべきは返させる。支援の相手方へ渡っていたっていいじゃないですか、それは話をすれば。何も、ただで全部くれてやったわけじゃないんでしょう。国の税金ですよ。目的に沿って使われていなければ、返してもらうのは当たり前じゃないですか。どうなんですか。
茂木副大臣 まず、改革について、どこまで細かいところまで大臣、副大臣、それから政務官が見るか、確かに十万円という基準がどうか、いろいろな御議論あると思いますけれども、今必要なのは、我々もある程度、外務省の業務の細かいところ、そういうところまできちんとチェックをして、今確かに行動計画という形で改革は進んでおりますが、その流れをさらに促進させる。そのためには多少、現段階では細かいところまで政治として踏み込んでいく、こういうことも、私は改革を進める上で必要ではないかな、こんなふうに考えております。
 それから、繰越金の問題でありますけれども、これは先ほど大臣申し上げたように、相手側もあることであります。しかし、もし必要ないものであれば返す、それは私は当然だと思いますし、支援委員会そのものが本年度末をもって廃止をされるわけでありますから、それに関連する部分については国庫に返納させていただく。
 同時に私は、これからまだ、これまでの管理がどうだったかは別にして、重要な事業というのは残っていくんだと思います。例えば、極東におきます原潜の解体。先日、新藤政務官の方に公務出張してもらいまして、その実態等々も見てきてもらいました。これは、官僚ではなくてやはり政治家がその実態を見て、どう解決していくか、こういうことも考えていくというのは必要でありまして、これは単にロシアの問題といいますよりも、日本にも場合によっては影響が及ぶかもしれない、こういう問題でありますから、そういう事業の必要性をきちんと見きわめた上で、必要な事業は続けていく。しかし、そこの中で適正な繰越金の使用が確保されるように今後ともフォローしていく、このことは当然だと思っております。
藤島委員 同じことになりますけれども、大臣、政務官が自分でみずからチェックしたって限界があるんですよ。役所の方から上がってきたものをチェックするしかないので、目が届くわけがないんですよ。だから、決裁をそんなことやったって、私は、改革にも何にもなっていないということをもう一回言っておきます。
 それと、確かにまだやらなきゃいけないのもありますよ、この中で。それはきちっと精査する必要はあるんですけれども、基本的には一たんこういうケースは全部ゼロにして、もう一回、本当に必要なのを新たに予算をつけるような、そんな感じでやらないと、なかなかうまいこといかないんですよ。私は、もう一回厳しくその点をやってほしいということを再度申し上げておきたいと思います。
 海上保安庁、来ていただいたんですけれども、時間になりましたので、次回また質問させていただきます。終わります。
池田委員長 これにて本日の質疑は終了いたしました。
 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後零時三十三分散会


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