衆議院

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第8号 平成14年11月27日(水曜日)

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平成十四年十一月二十七日(水曜日)
    午前九時開議
 出席委員
   委員長 池田 元久君
   理事 今村 雅弘君 理事 嘉数 知賢君
   理事 河野 太郎君 理事 水野 賢一君
   理事 首藤 信彦君 理事 中川 正春君
   理事 上田  勇君 理事 藤島 正之君
      伊藤 公介君    植竹 繁雄君
      倉田 雅年君    高村 正彦君
      下地 幹郎君    竹下  亘君
      武部  勤君    土屋 品子君
      松宮  勲君    宮澤 洋一君
      伊藤 英成君    金子善次郎君
      桑原  豊君    前田 雄吉君
      吉田 公一君    丸谷 佳織君
      松本 善明君    東門美津子君
      松浪健四郎君    鹿野 道彦君
      柿澤 弘治君
    …………………………………
   外務大臣         川口 順子君
   外務副大臣        矢野 哲朗君
   外務大臣政務官      土屋 品子君
   政府参考人
   (内閣法制局第二部長)  山本 庸幸君
   政府参考人
   (防衛庁防衛参事官)   野津 研二君
   政府参考人
   (防衛庁防衛局長)    守屋 武昌君
   政府参考人
   (防衛庁運用局長)    西川 徹矢君
   政府参考人
   (外務省大臣官房長)   北島 信一君
   政府参考人
   (外務省総合外交政策局国
   際社会協力部長)     石川  薫君
   政府参考人
   (外務省アジア大洋州局長
   )            田中  均君
   政府参考人
   (外務省北米局長)    海老原 紳君
   政府参考人
   (外務省中南米局長)   島内  憲君
   政府参考人
   (外務省中東アフリカ局長
   )            安藤 裕康君
   政府参考人
   (外務省中東アフリカ局ア
   フリカ審議官)      堂道 秀明君
   政府参考人
   (外務省条約局長)    林  景一君
   政府参考人
   (食糧庁長官)      石原  葵君
   外務委員会専門員     辻本  甫君
    ―――――――――――――
委員の異動
十一月二十七日
 辞任         補欠選任
  新藤 義孝君     倉田 雅年君
  中本 太衛君     竹下  亘君
同日
 辞任         補欠選任
  倉田 雅年君     新藤 義孝君
  竹下  亘君     中本 太衛君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 国際情勢に関する件


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     ――――◇―――――
池田委員長 これより会議を開きます。
 国際情勢に関する件について調査を進めます。
 この際、お諮りいたします。
 本件調査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房長北島信一君、同じく総合外交政策局国際社会協力部長石川薫君、同じくアジア大洋州局長田中均君、同じく北米局長海老原紳君、同じく中南米局長島内憲君、同じく中東アフリカ局長安藤裕康君、中東アフリカ局アフリカ審議官堂道秀明君、同じく条約局長林景一君、内閣法制局第二部長山本庸幸君、防衛庁防衛参事官野津研二君、同じく防衛局長守屋武昌君、同じく運用局長西川徹矢君、食糧庁長官石原葵君、それぞれの出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議はございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
池田委員長 御異議はないと認めます。よって、そのように決定いたしました。
    ―――――――――――――
池田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。嘉数知賢君。
嘉数委員 おはようございます。自民党の嘉数でございます。
 質問に入ります前に、先ごろ亡くなられた高円宮殿下の御冥福をお祈りしたいと思っています。
 きょうは主に外務大臣に質問したいと思うのですが、わずかな時間で済むような質問だと私は思っていますけれども、ただ、特にヒアリングはしておりません。レクもしておりません。役人が書いた答弁は余り好きじゃなかったものですから、大臣の生の声をお伺いしたいなと思って、特にレクもしていなかった。御理解いただきたいと思うのです。
 去った十一月の十七日に沖縄県知事選挙、私の予想以上に、本当にびっくりするような結果が出ました。ある意味で地すべり的な結果だ、そういうふうに思っておりますけれども、それに対して、まずは大臣の感想をお伺いしたい。
川口国務大臣 選挙の結果についてはよく承知をいたしております。政府の立場として、選挙の結果についてコメントを申し上げるというのは控えさせていただきたいと思いますけれども、稲嶺知事とは、私は環境庁長官になりまして以来、環境庁と沖縄県もさまざまな関係といいますか、共通に、一緒に努力をして解決をしていかなければいけない課題があるわけでございますけれども、それ以来、さまざまな問題について、もちろん外務大臣になりまして当然でございますけれども、稲嶺知事とはお話をさせていただき、連携をしながら、さまざまな問題についてどういうふうに解決をしたらいいだろうかということをお話をさせていただいたということをやってまいりました。
 今後とも、外務大臣として、沖縄県民の方が、特に米軍施設・区域の関連において非常に多くの負担を担っていらっしゃる、しょっていらっしゃるわけでございまして、そうした沖縄県民の御負担を少しでも軽くするためにどうしたらいいだろうかということについて、引き続き稲嶺知事とお話をさせていただき、連携をし、連絡をし、問題を一歩でも前に進めるために一緒にお仕事をさせていただけるということをやりたいと私としては考えております。
嘉数委員 これから聞きたいことを答弁していただきましたけれども、次に行きます。
 沖縄県内、あの選挙の結果、ある意味で本当によかったのかなという空気が相当あるんです。それは何かといいますと、余りにも勝利し過ぎたために、逆に政府と沖縄県の間に緊張感がなくなるんじゃないか。これは、これまで沖縄県政というのは常に与野党が緊張感を持ってやっていたんです。保守系の知事のときには議会は革新が強い、野党が強かった。革新系の知事の場合には、逆の意味で野党の保守系の議会が強かった。ということは、お互い緊張感を持ちながらやってきた。したがって、いろいろな形で取り組みが、政府に対して相当強い態度で臨めた部分があります。
 ところが、去った一昨年六月の県議会選挙で与党が圧倒的多数になった。加えて今度の知事選挙で、それこそ投票者の約六十何%の支持が稲嶺知事に集まった。そうすると、このことをもって政府が沖縄問題に対して緊張感がなくなるんじゃないか。これは地元のマスコミも、それから、私ども今盛んに会合を持っていますけれども、その中で必ず出るのは、余りにも勝ち過ぎたので、政府が本当にこれまでどおり緊張感を持って沖縄問題と取り組んでもらえるのかどうかという不安があちらこちらで聞かれるんです。それはもちろん政府全体もあるし、特に外務省、基地問題を抱えて常に沖縄県民と相対している役所なんです。その外務省が、一体どういう態度で、どういう形でこれから沖縄の基地問題に対応していくのか。
 特に、御承知のように、きょうからイラクの査察が始まる。その結果、あるいは米国の武力行使があるんじゃないか。これは米国は両面作戦でやっているわけですから、今沖縄基地ではそれに向けての訓練も盛んにやっていますし、特に炭疽菌に関しての予防注射も既に接種をされているということで、いつでも沖縄の基地から出撃できるような態勢をつくっている。
 そういうことを考えた場合に、沖縄の基地というのはますます、ある意味で重要性を増してくる。しかも、アメリカがイラクにかかわり合っている間、隣の北朝鮮が何をするかわからないということを考えた場合に、沖縄県民の不安というのは相当あるんです。その中で、選挙の結果を見て、いささかも国が、特に外務省が手を緩めることがあったら困るという意味で、実は大臣に選挙の結果をどう評価するんですかというお伺いをしたんです。改めて御答弁いただきたいと思います。
川口国務大臣 結論から先に申し上げますと、その選挙の結果がどうであれ、外務省として、外務省の今までやってきた姿勢が変わることはない、選挙の結果が稲嶺知事の圧勝であったがゆえに手を緩めるということは全くないということでございます。
 在日米軍が日本及びこの極東の地域で果たしている安全保障上の役割、これは変わらないと思います。そして、そのために米軍が使用している施設・区域が日本に存在をし、その七五%が沖縄県にあるということも変わらないわけでございます。そして、その沖縄県の県民の御負担が少しでも軽くなるように、政府として努力をしていくということも変わらない。
 選挙の結果がどうであれ、それについて外務省として、したがってどうであるということは考えておりませんで、先ほど申しましたように、稲嶺知事と引き続き連携協力をさせていただきながら、できるだけ沖縄県民の御負担が少しでも軽くなるように、SACOの実施等々、最大限の努力をしてまいりたいと考えております。
嘉数委員 私は地方議員を経験してまいりました。およそ十六カ年間県会議員をやっておりましたけれども、その十六カ年間、常に米軍と対峙してきたと言ってもいいぐらい、沖縄の負う基地問題というのは大変な課題。しかも、その間、私の体験から言いますと、外務省はほとんど何にもしてくれなかったという感想を持っておりまして、私ども、いろいろな事件、事故に抗議をして外務省へ参りましても、大抵対応するのは係長クラス、大きくても課長クラスということで、後で気づいたらほとんど居留守を食わされたんじゃないかという思いをするぐらい、実は外務省の対応が悪かった。ですから、沖縄県民の中には、外務省に対する不信感が相当ある。
 今、いろいろな問題で外務省は全国民から不信感を持たれておりますけれども、それ以前から、沖縄問題について外務省は一体何をしているんだろう、どこを向いて政策をやっているんだろうという声が相当強かった。その結果が、実はあの七年前の不幸な事件のときの大きな騒動になったと思います。二十七カ年間、米国の施政権のもとに相当つらい思いをしている、苦しい思いをしている、人権も踏みにじられてきた。復帰をしてやっとよくなるだろうという期待でずうっと我慢をしてきたけれども、いざ肝心なところでは何にもしてくれない。
 したがって、沖縄県民が、我々の人権はどうするんだという思いで立ち上がったのが、実はあの七年前の一〇・二一の大会だった。私も、あの当時議長をしていましたから、実行委員長をやりました。そのときに、抗議文を持って外務省へ参りました。そのときの対応、これはあのときの大田知事もそういう話をしていましたけれども、全く話にならなかった。まずあるのは、地位協定がありますからどうにもなりませんという一点張りだった。一緒に抗議に来た私ども超党派の議員が、どうしようかという話し合いを後でしました。戻りましてから、すぐ県民総決起大会を開いて、徹底して政府と対峙をしようと。その政府というときには、あのころの政府というのは外務省のことなんです、日本政府じゃなくて。県民が言う政府というのは外務省だ。その外務省、政府と対峙しようということで実は相談をした。
 あのときに、もうこの際だから、安保反対、基地全面撤去ということを打ち出そうじゃないか、県民総決起大会でそれをやろうじゃないかという話も実は出たんです。いろいろな団体が参加をして、うちの政党は共産党から自民党まで全員が参加して、しかもそれに経済界、教育界、労働界全部参加して、その中でいろいろ討議をした中で、改めてもう一度だけ政府を信頼して、政府にかけてみようという形で、実は反安保も全基地撤去も言わなかった。そのかわり、沖縄県民の人権をどのようにして守ってくれるか。その一番障害になっているのが地位協定だ。事件、事故を起こし、特に、凶悪犯人も米軍の基地に逃げ込めば手も足も出ません。みずからのことで裁きもできないということに対しての憤り、それが一つの大きな輪になって大会を開いたんです。
 私ども主催する側としては、正直言いますと、三万五千、多くても五万人の方が来てくれたら大成功だなと思って実は開いた。あに図らんや、八万五千の県民が自発的に参加をした。そしてその大会をやったんです。内容は既に御承知とは思うんですけれども、一番真っ先は地位協定の改定だった。それは地位協定を変えろということではなくて、沖縄県民の人権をきちっと守ってくれということの要求が一番強かった。したがって、私どもがその大会を持って、抗議に来たときも、真っ先に外務省へ行った。外務省の前で抗議をする、大会をするぐらい実はやった。沖縄のあのときの一番の大きなことは、外務省の壁をぶち破れということが第一のスローガンだった。
 なぜあれだけの人が集まったかというと、これはいろいろの話があろうかと思うんですが、ただ一つ、復帰して二十何カ年かたってもなおかつ沖縄県民の人権が守れないというマグマ、憤り、それが自発的に結集してああいう大会になったと思っています。ですから、その轍を踏んじゃいかぬと思っています。
 それ以後、正直申しますと、沖縄問題に対する政府の対応は全く変わりました。改めて思ったんですが、やはり政府は手抜きをしていたんだなというのが、あのときの大会実行委員長としての私の実感だったんですよ。その縁あって私は国政に出てまいりましたけれども、国政で、今考えると隔世の感がするんです。
 ですから、そういう経緯を踏まえてきた沖縄問題、基地問題、その結果として、SACOが出てきたし、政府としても真剣に沖縄振興策もいろいろな形で取り上げていただいたということから考えて、改めて、いささかでも政府が、外務省が手抜きをするようだったらこれは困るという実感が今沖縄県民の中にあって、また再びああいう形になったら困るんです。
 ですから、大臣としてしっかりと、沖縄の基地問題を初め、そこから派生するさまざまな問題に対して、責任を持って全面的に、正面から取り組んでいただきたいという気持ちが、実はあの集会の中で、あるいはマスコミの中で、手抜きをされたら困るなという話になっているんです。
 そこで、お伺いしたいんです。
 そういうことでいろいろ頑張っていただきたいと思いますけれども、今稲嶺知事がどうしても頑張っていただきたいのが十五年問題なんです。これまで四カ年間、知事は、十五年期限の問題を常に政府に働きかけたと思うんです。しかしながら、正直申しますと、政府が本当に真剣に十五年問題に取り組んできたのかなという疑問を私はずうっと持っておるんです。
 私も、防衛庁の政務官もしておりましたし、内閣府の政務官もやりました。そのときに、この十五年問題をあなたはどうするかと聞かれて私も答弁の席に立ったことはあるんですが、正直申しますと、こんな答弁でいいのかなと思いつつ、政府の一員として、これまで外務大臣が繰り返してきた、沖縄県民の思いを重く受けとめてという形の答弁をしました。しかし、これから後四年間、また同じ答弁をされたら困るな、とんでもない話だということも実感として持っています。
 稲嶺知事は、当初は、十五年問題を言い続ける、主張し続けると言っております。この十五年問題については、最終的に稲嶺知事が決断をして政府に提示する前に、約三時間ほど私と話し合いをした。この問題、どういう形がいいのか。
 基地を初めて県民の合意のもとに移設をする、受け入れる、それが普天間の移設なんです。過去の基地というのは、すべて米軍が武力で奪い取って、無理やりつくった基地なんです。それを、初めて県民の合意のもとに基地を受け入れようといったのがあの普天間の移設なんです。したがって、そこに無制限な基地の使用を認めるわけにいかないだろう。今ある基地というのはすべて、米軍が要らなくなったら返しましょうという形の方が多いです。そうじゃなくて、県民の意思で提供する土地に期限のつかない提供のあり方があるのか、しっかりと期限をつけるべきじゃないかというのが一つ。
 もう一つ、十五年というのはどこから来たのかといいますと、これは正直申しますと、受け入れを表明して、完成をして、そして使用をする、そうすると、恐らく使用するまでに十年、二十年かかるでしょう。それから十五年というと三十年近くかかっちゃう。そうすると、知事を初め、私ども今いる政治家は、すべて現役から引退しているかあるいは死んでいるかどっちかです。そこまで県民に対して、それ以後の保障をやれるわけがないじゃないか、十五年たったときには改めて、そのときの知事、そのときの県民の判断で話し合いができる権利を留保するべきだということで、実は十五年という期限が出てきた。
 したがって、これは知事にとってあるいは県民にとって一番大事なことだ。単に十五年で返してくれということではなくて、みずからの意思で提供する基地に期限をつけるということ自体が、実は沖縄県民がみずからの人権を確立するという意味でも一番大事なことなんです。そのことをもって基地問題、十五年問題に取り組んでいただかなきゃいかぬ。
 しかも、今度の選挙で知事ははっきりと明言している。今まではそう言っていませんけれども、主張し続けるということだったけれども、今回は、十五年問題が解決しないと基地の着工をさせないと、かたい決意で、これは当選した決意の中にも入っているんです。ということからすると、今までの外務大臣の答弁、今までの取り組み、果たしてそれでいいのかなと実は思っています。
 私も、政務官時代に日米防衛首脳会議に、中谷長官に陪席をして出席しました。そのときに長官から、十五年問題をラムズフェルド国防長官あるいはまたジョーンズ海兵隊総司令官に申し入れをした。そのわきに座って、私も、ある意味で強く申し入れをした。それに対して全くナシのつぶて、返事は一切しませんでした。無視された。
 多分、交渉の場でその話が出たらきちっとした返事は出てこないだろう。これまでも大臣も恐らく何回もやられたと思っているけれども、イエスともノーとも言ってもらえなかったんじゃないかと思います。これからもそれが続くようだったら、改めて県民がどういう対応をするか。知事は常に、沖縄県民の中にはマグマがあると言っています。私にもマグマがあります。気がついたときに米軍支配にいて、ずっとその中で暮らしてきた。そういう意味で、県民はほとんど、そのマグマを持っています。何かあったら恐らくそれが爆発するでしょう。
 ということを考えたときに、今外務大臣が答弁したような気持ちでやれるのか、十五年問題というのは本当に真剣に取り組む意思があるのかということを改めて私は確認をしておきたいと思っています。御答弁をお願いします。
川口国務大臣 嘉数委員の過去の、今までのいろいろな御経験、あるいは我が国の歴史を踏まえたお話をしみじみと聞かせていただきました。
 いろいろな我が国をめぐる状況があった中で、外務省としてはその時々でベストを尽くして問題の処理に当たってきたと思いますけれども、沖縄県民の方に、外務省は信じることができないというふうに思っていただいているということについては、外務省として常にそれを心の中に入れて、反省をしながら仕事をしていくべきことであろうと思います。戦後の歴史の中のこの地域をめぐる国際情勢、政治情勢、そして広く冷戦のもとにあったという状況が非常に長く続いておりましたので、また現在とは違った安全保障をめぐる情勢があったと思いますけれども、外務省として今後仕事をしていくに当たって、やはりこのことはきちんと考えてやっていく必要があると思っております。
 それで、委員がおっしゃったマグマについてのお話も、私は稲嶺知事を初め沖縄の県民の方から、これについては何度もお伺いをしています。この問題について、その認識は私もきちんと持っているつもりでおります。
 十五年使用期限問題についてですけれども、先ほどラムズフェルド国防長官と中谷前防衛庁長官のお話を取り上げられて、返事がなかったというお話がございました。私は、国務省、パウエル国務長官との間ではこの問題を取り上げさせていただいておりまして、例えば、一番最近ですと九月の十七日に、これはワシントンで二十分ぐらいだったと思いますけれども、時間をいただいてお会いをいたしました。
 これは、国連総会のただ中にありまして、この間採択された安保理の決議の採択をめぐって、パウエル国務長官はずっとその前一週間ぐらいでしょうか、ニューヨークにいて、ワシントンに帰ってきたばかりのときで、私がまた日本に帰る直前でございまして、どうしても時間がないというところを二十分時間をいただいたわけです。そして、そのときは九月十七日でございまして、九月十七日というのは総理が北朝鮮に行った日でございまして、この結果がどうであったか、時差がありましたので結果がわかっておりましたので、そういうお話をするという用があったんですけれども、その中で私はこの問題については取り上げさせていただいて、そのときパウエル国務長官からはお返事をいただいております。
 そのときに私が申し上げましたのは、沖縄県民の負担軽減、事故、事件の防止を図ることが重要であって、使用期限問題については、日米双方の立場はあるが、引き続き普天間飛行場の移設、返還を含むSACOの着実な実施に向けて協力をしたいということをパウエル国務長官に言いました。パウエル長官からは、そのとおりであって、普天間飛行場の移設、返還を含めたSACOの最終報告の着実な実施に向け協力をしたいという発言がございました。
 これで十分であるとお考えになられるかどうか、これはいろいろあると思いますけれども、国務長官との間では、その問題を取り上げ、そして、全くナシのつぶてということではなくて、お返事もアメリカの立場からいただいているということでございます。
 十五年使用期限の問題につきましては、これは平成十一年の閣議決定がございますので、それに沿って政府としては進めていくということでございまして……
池田委員長 答弁は簡潔にお願いします。
川口国務大臣 お気持ちはよくわかっておりますので、外務省としては、重要な外務省としての課題としてこれについて取り組んでいきたいと考えております。
嘉数委員 今の答弁では、とてもじゃない、進みません。ラムズフェルドと相談をしました、申し入れをした、SACOの関連の中で普天間移設に協力するのは当たり前の話です。その中で、では十五年の期限という問題、そのことはどうなんだということなんです。恐らく、それは何の返事もなかったと思う。
 政府が常に何かをやっていきますと言ったって、その一番のポイントになる――SACOそのものをやるというのは、それは当たり前の話ですから、日米間で協力するはずなんです。普天間移設も当然やるはず、協力しましょうと。普天間の移設の中で一番ネックになっているのはこの十五年問題ですよ、その問題をどうするんですか、どういう取り組み方をするんですかと私は聞いている。今までどおりに、単に話し合いをして、申し入れをするだけではもう済みませんよ、実現できませんよと。知事ははっきり、その問題が解決しない限り着工させないと言っているんですから、幾ら協力するとやっても無理なんです。ならばどうするんですかということが一つの大きな課題だと思う。
 私は、知事といろいろな相談をしたときも話をしたんですけれども、日米間の話し合いと、沖縄県と政府との話し合い、両方あるんです。はっきり申しますと、基地を提供しているのは日本政府。私ども沖縄県民は、単に日本政府に貸しているんです。日本政府だ、米軍に提供しているんじゃない。政府が沖縄県民のを借り上げて、それを米軍に提供しているんです。ということなら、あくまでも日本政府の責任で処理しなきゃいけない。
 ですから、はっきり言いますと、日本政府が十五年たったらどうしますという方針さえ出せば用は済むことだ。米国政府のいわゆる沖縄にいる四軍調整官とか、あるいはハワイに行っていろいろな高官に会います。すると、あくまでも彼らは言うのです、これは日本政府がどうするかということであって、私どもの問題じゃありませんと。そういうことなんです。もう当たり前の話なんです。あくまでも国内問題として処理するべきところはしなきゃいけない。
 例えば、十五年たったら、政府が責任を持って米国と話し合いをして、別の場所を見つけますとか、あるいは返してもらいますからという返事を稲嶺知事にやるんならそれで仕事は終わっちゃうんです。あとは政府と米国政府で話し合いをすればいい。そのぐらい、政府がどういう形で出るかがこの問題の大きなポイントなんです。米国と話し合いして米国がなかなかうまくいかないから進みませんという話じゃなくて、日本政府がどういう形でそれに対応するかというのが一番大きな問題。それからすると、単に、今までやってきましたけれども進みませんというわけにいかないだろう。
 外務省の中に、あるいは日本政府の中に、移設に関する十五年問題だけを取り上げてどう対応するかのプロジェクトチームか何かできているんじゃないかというと、それもつくっていない。だれがやっているんだという話を考えた場合に、決して今の大臣の答弁で事が済むはずはない。ですから、私は答弁を求めません。しかしながら、そういうことできっちりやってもらわなければ解決しないということだけははっきりしている。そのための、例えばチームをつくるなりあるいは何らかの対応をしっかり政府で考えてやって、県民に提示をしていただきたい。
 私どもはもう四カ年間お題目を聞かされましたから、あと四カ年間実行しなきゃいけない。相当野党的な申し入れになるかもしれませんが、事沖縄問題に対しては私は野党だと思っています。しっかりと解決してもらわなきゃいけないことですから、そういう意味で全力を挙げてしっかり取り組んでいただきたいと改めてお願いしたいと思うんですが、チームをつくるなりなんなり、積極的に取り組んでいるという姿勢を目に見える形で示していただきたい。ひとつ御決意をお願いします。
池田委員長 時間も余りありません。問題を絞って簡潔に答弁をお願いします。
川口国務大臣 国際情勢もいろいろあって、難しい点、多々あると思います。その中で、一歩でも二歩でも沖縄県民の方のお気持ちにとっていい、理想の姿に近づけるように努力をしたいと考えています。
嘉数委員 困ったなと思っていますけれども、もうこれ以上私は追及しません。しかしながら、何らかの形が出なきゃ改めてもう一度質問に立たせていただいてやってみたいと思っています。今の取り組みでは決して県民が納得するような形は出ないし、普天間の移設も実現しないということだけは私は断言しておきたい。ですから、それを思いつつ、しっかり取り組んでいただきたいと思っています。
 北米局長それから防衛庁も来ていただきましたけれども、防衛庁に一言だけ。
 沖縄県内の自衛隊基地にあるPCB処理がなかなか進まない。もう一つは、基地内にどれだけのPCBがあるのかも、この間呼んで聞いたらなかなかうまく説明していただけない、納得できない。改めて、基地内にあるPCBの調査とその処理、特に恩納通信基地から出てきたPCB、そのまま処理もされずに保管されているだけなんです。その処理を加速するように要望しておきたい。後で、その調査結果、どのぐらいあるのか。
 実は、米軍基地にあるのはこの間調査をされて、しかも米国に移送して米国で処理する、これは国内産も米国産も含めて全部処理するという方向が出されて私もほっとしているんですけれども、ただ、沖縄にある自衛隊基地内のPCB、どの程度あるのか。それは汚泥として残っている部分もあるし、あるいはまた固体として残っているのもあるだろう、例えばトランスの中に入っているとかいろいろあると思うんです。それを全部調査して改めて御報告いただきたい。もう一つは、処理もしっかりとやっていただきたいと要望して、終わります。
池田委員長 次に、河野太郎君。
河野(太)委員 おはようございます。自由民主党の河野太郎でございます。
 まず内閣法制局にお伺いをいたしますが、アメリカがイラクに対して戦争を始めた場合、今のテロ特措法を適用してアメリカの対イラク戦争の後方支援を日本がしようとしたときに、最低限の必要条件として、イラクとアルカイダがつながっている、あるいはイラクと去年の九月十一日のテロ事件がつながっている、それを明らかにするような何らかの証拠がなければまずこの特措法の適用ができない、そういう認識でテロ特措法を解釈してよろしいかどうか、まず内閣法制局に確認を求めたいと思います。
山本政府参考人 お答え申し上げます。
 その前に、現段階でアメリカがイラク攻撃を決定したというわけではありませんし、むしろそれを回避するためにいろいろな努力がされているというふうに承知しております。
 そういう前提のもとで御説明申し上げるわけですが、テロ対策特別措置法の法目的によりますと、平成十三年九月十一日にアメリカ合衆国において発生したテロリストによる攻撃によってもたらされている脅威の除去に努めることにより国際連合憲章の目的の達成に寄与する諸外国の軍隊等の活動とございますので、我が国が支援するに当たりましては、当該諸外国の軍隊等の活動がこの要件に該当するということが必要でございます。
 そこで、現在はといいますと、このテロリストに対して深くかかわっているアルカイダに対する諸外国の軍隊等による攻撃がその脅威の除去になるということで、我が国がこれを支援しているわけであります。
 したがいまして、今後テロ対策特別措置法を適用するに際しましては、いずれの国に対する諸外国の軍隊等の活動への支援でありましても、そのような昨年九月十一日のこの事件を引き起こしたテロリストやアルカイダとの密接な関連性が認められるということが最低限必要になるというふうに考えております。
河野(太)委員 今の、答弁になっていません。きちんと私の質問に答えさせてください。
池田委員長 再度正確に答弁をしてください。
山本政府参考人 先ほど申し上げましたとおり、現段階でアメリカがイラク攻撃を決定したというわけでもないことでありますので、それを前提としてお答えするのは、今の時点ではちょっと不適当かと思いますけれども……
河野(太)委員 委員長、速記とめてください。速記とめてください。
池田委員長 速記をとめてください。
    〔速記中止〕
池田委員長 速記を起こして。
 質問者は、法の解釈を聞いているわけでありまして、現実に生起している政治問題についてあなたに聞いているわけではありませんので、あなたの職務どおり答弁をしてください。
山本政府参考人 それでは、例えばイラクがそういうことでアメリカによる攻撃の対象になったということであるといたしますと、いずれにせよ、イラクと、そのような昨年九月十一日のこの事件を引き起こしたテロリスト、アルカイダ、こういうものとの密接な関連性が認められるということがこの法律を適用する前提条件だと思います。
河野(太)委員 そうすると、イラクと去年のテロを引き起こしたアルカイダとがつながっているという証拠がある、それがテロ特措法を適用する前提条件となる、そういうことでよろしいですね。
山本政府参考人 そういうわけでございます。
河野(太)委員 それでは、外務大臣にお伺いをいたします。
 きょう、この時点で、イラクとアルカイダがつながっている、そういう証拠を我が国政府は直接あるいは間接的に入手しているでしょうか。
川口国務大臣 結論から申し上げれば、きょう、この時点で、イラクがアルカイダを組織的に支援しているといったことについて、我が国が主体的に収集をいたしました情報を総合いたしても、そういうことはないわけでございます。
 ただ、イラクの北部等にアルカイダの分子といいますか人たちがいるということは、ずっと言われてきているということです。
河野(太)委員 そのイラクの北部にいるアルカイダでございますが、サダム・フセインが実効支配している地域にいるということでしょうか。それとも、サダム・フセインの実効支配が及んでいない地域にいるのでしょうか。
川口国務大臣 おっしゃっていらっしゃるのは、クルドの地域ということだと思いますけれども、クルドの地域のみに限定をしているかどうかということについては、はっきりしたことは把握しておりません。
河野(太)委員 そうしますと、アメリカが、イラクの査察に対する協力が不完全である、あるいはイラクがうそをついている、そのような判断をして対イラク戦争を始める、そういう事態になった場合に、日本としてこのアメリカの対イラク戦争の後方支援をする、そういう決断をした場合には、今の現状で、さらにイラクとアルカイダがつながっているという証拠がない限り、新しい法の枠組みが必要になってくる、そういう解釈でよろしいでしょうか。
川口国務大臣 いろいろな前提がありましたものですから、全部の前提をきちんと今頭の中に把握しているかどうかということでございますけれども、まず、国連の安保理の採択された決議によれば、イラクが今の査察団に対して重大なる決議違反をした場合、あるいは、これは査察の問題以外のところも決議は含んでいるのでございますけれども、そういったことをした場合には、この間の一四四一であれば、まず国連安保理が再び集まる、そういうことになっているわけでございます。その結果どういうことになるかということについては、これは未知数であるわけです。それから、アメリカが武力行使をしたという形になるのかどうかということについても未知数、仮に武力行使をするということがあったとして、未知数でございます。
 そういったさまざまな問題が前提要件ということでございますし、また、その時点でアルカイダとイラクの関係についても、これもはっきりわからない。そういうことで、委員は、そういうことが全部なかったとして、あるいはあったとしてという仮定をおっしゃっていらっしゃるわけですけれども、何分にも非常にいろいろな前提があってということでございますので、今の時点ではっきりこうなりますということを申し上げるのは難しいわけです。
 ただ、我が国としては、これはまさに大量破壊兵器を持っているイラクと国際社会の間の問題である、アメリカとイラクの問題ではない、二国間の問題ではないという認識を持っておりまして、この大量破壊兵器の問題というのは、したがって我が国みずからの問題であるということでございます。
 そして、こういったことを踏まえて、まず現在、イラクが決議違反をしないように最大限の働きかけをするということが大事であるということで、茂木副大臣や中山、高村両議員にも回っていただき、あるいはこれから御出発なさる方もいらっしゃいますけれども、ということで今考えているということです。
 その上で、それにもかかわらず、そういった努力にもかかわらず武力の行使があった、そういうような事態であった場合には、これは我が国として、これが我が国みずからの問題であるという認識に立って対応を考えていく必要があるということでございまして、今さまざまな国際社会との関係で、我が国が我が国の役割に照らして何をすべきかということについては議論をいたしているわけでございます。そしてまた、現地には邦人の方も大勢いらっしゃいますので、その方々に無事に現地を離れていただくためのことも考えなければいけませんので、そういうことについても検討をいたしておりますけれども、今の時点で何かが決まったということでは全くないということでございます。
河野(太)委員 前提条件を絞ってお聞きいたしますが、一四四一が言っているように、イラクが査察あるいは一四四一の決議違反をしているときに、まず安保理が集まる、そこで結論が出る以前にアメリカが対イラク戦争を始めた場合は、これはアメリカの戦争であって日本がそれについて行動を起こす必要はない、そういう認識でよろしいですね。
川口国務大臣 これはどういう状況で、あるいはイラクがどのような国連決議の守り方、あるいはその不遵守をしてという事態になるかということは、これはさまざまな可能性があると思います。したがいまして、イラクが守らなくて国連で安保理で集まる前にアメリカが武力を行使するということも、それほど単純に一つのケースだけということではないと思いますので、そういった前提に基づいてお話を……(河野(太)委員「その一つのケースをまずお伺いしているんです。その一つのケースについてお答えください」と呼ぶ)
池田委員長 ちょっと待ってください。
 今、答弁者に申し上げますが、質問自体といいますか、問題一つ一つについてお答えをいただきたいと思います。(発言する者あり)静粛に願います。
川口国務大臣 アメリカが武力を行使するといったこと一つだけですべてのことを判断することはできないということを申し上げているわけです。
河野(太)委員 今の外務大臣の答弁を論理的に解釈しますと、一四四一の決議違反だということで安保理が集まる以前にアメリカがイラクを攻撃した場合に、日本としてもこれを支援する可能性がある、そういうことですね。
川口国務大臣 申し上げているのは、アメリカが仮に武力を行使するということがあったとして、それ自体、そういうことがあるかどうかというのも、これは全く仮定の話という前提でお話をさせていただいているわけですけれども、あったとしても、そのときの武力の行使に至るような状況というのはさまざまなことがあるということを申し上げているわけです。
河野(太)委員 質問に答えてください。
池田委員長 川口外務大臣、お願いします。(発言する者あり)ちょっと待ってください。静粛に願います。
川口国務大臣 何度も申し上げていますように、一四四一の決議にイラクが不遵守であるといって安保理が集まる前にアメリカが武力を行使するということが仮にあったとして、それがそういうことになる事態というのは、さまざまなそのときのイラクの決議の違反の状況があるわけでございまして、アメリカがその前に、一四四一の前に、武力の行使をするようなことが仮にあったとして、それは唯一のアメリカの一方的な武力行使であると必ず言えるということを言うだけの具体的な状況が今ない、わかっていない。これはもういろいろなケースがあり得ると思います。
 したがいまして、そういった現実的な可能性、これを捨象して論理的に、その場合にはこうであるということを申し上げることが非常に難しいということを申し上げているわけです。
河野(太)委員 この委員会で与党の理事が苦労しているのは、一体今外務大臣に当事者能力があるんだろうかということでございます。イラク問題を議論するときに、外務委員会は官房長官なり総理大臣を呼んでこなければこれを議論することができないのかという問題になっているわけで、今の御答弁を聞いている限り、これからの与党理事の理事会の運営は極めて難しいものになると言わざるを得ません。一体、外務大臣はイラクの政策決定にきちんと関与されているのかと疑わざるを得ないような状況でございます。
 なぜ、議院内閣制で、連立政権が国会の過半数を持っている議会でもこうしてきちっと審議をしなければいかぬのかというのは、政府の政策をここできちんと政府側に述べていただいて、それに反対する意見が反対の議論を闘わせる、それを国民に聞いていただいて、政府の政策を支持していただく、あるいは反対側の意見の支持がふえるかもわかりません。この外務委員会には、例えば、個人名を挙げていいかどうかわかりませんけれども、松本善明さんのように日米安保そのものについても恐らく懐疑的な方もいらっしゃる。そういう方と今の自由民主党の我が政権が安保政策で必ず一致するかといえば、恐らくそうならない蓋然性の方が高いわけです。何も我々は全会一致で政策の遂行をやろうと思っているわけではなくて、しかし政権の政策をなるべく多くの人に理解をしていただいて、支持をしていただく、特に国民の皆様には、我が小泉政権が何をやろうとしているのかをきっちり伝え、御理解をいただく、そのためにもこういう場を使って審議をしているわけです。
 この外務委員会は、この臨時国会が始まって以来、必ず定例日には委員会を立ててきました。毎週水曜日の午前中には、大臣のお出ましをいただいて質疑をやってまいりました。それはなぜかといえば、イラク問題あるいは北朝鮮の問題、日本にとって非常に関連性のある問題が今動いている。何がどう起きても、政権側がどういう政策でこれに臨むのか、政権側の意見をきちんと表明する場を的確にこの外務委員会でつくっておかなければいかぬ、そう理事全員が判断をしているから確実に委員会を立ててきた、そういう努力をしてきているわけです。
 しかも、野党側の理事の御協力をいただいて、水曜日の午前中三時間、大臣の日程もつくりやすいように我々は努力をしてきたつもりでございます。しかし、今の川口大臣の答弁を聞いていれば、全くこんなことをやっても意味がないとしか言いようがございません。
 外務大臣のようなポストにバッジを持った議員を充てるべきだ、そういう議論がございました。私は、そうではないんだ、憲法も議員でない人間が大臣をやることを保障しているではないか、そう言って今まで議論をしてまいりましたが、きょうの外務大臣の御答弁を聞いている限り、私はこれ以上、川口外務大臣を擁護する論陣を張る自信がありません。
 一体全体、我が国の政権のイラク政策について、外務大臣は国民にどのように説明をするつもりなんですか。一体いつ国民に小泉政権のイラク政策を説明をするおつもりなんですか。この外務委員会でそのような答弁をいつまでやるつもりなのか、お伺いをしたい。
川口国務大臣 さまざまなことをおっしゃられたわけですけれども、先ほど委員が御質問をなさったことについてのお答えとしては、仮に官房長官がここにいらっしゃったとしても、私がお答えしたことと同じにならざるを得ないと私は考えております。
 それから、いろいろおっしゃったことのうち、この委員会の委員の方、特に理事の方がこの委員会の議論をいいものにするためにいろいろ御努力をしていただいているということは私どももよくわかっておりますし、それから外務省としても、この御議論をいいものにするように努めさせていただくというつもりでやらせていただいております。そういう意味で、今委員が私をもう擁護することができないとおっしゃられたのは、私としては非常に残念でございますけれども、私としてはこれは最大限の努力をしてお答えを申し上げているつもりでございます。
 それから、バッジ云々というお話がございましたけれども、これは憲法で閣僚の半分までは議員以外からということが書かれているわけでございまして、私がたまたまここに座っているということについては、これは総理がお決めになられたことでございますので、私は総理の任命を受けて最大限の努力を私としてはやらせていただいているつもりでおります。
 日程上、外務大臣の仕事がうまくいくようにさまざまな御配慮をいただいているということについては、私としては非常にありがたく思っておりますし、そのためにかなり多くの外国の方にもお会いできたということで、非常にありがたいと思っているわけでございます。
河野(太)委員 委員長、質問に答えさせてください。
池田委員長 委員長から一言申し上げます。
 先ほどからたびたびありますが、質問した問題についてお答えをいただきたい。
 委員長としては、今の質問の最後の趣旨は、小泉内閣のイラク政策はいつ明らかになるのかという趣旨だったと思うんです。それについてお答えをいただきたいと思います。
川口国務大臣 イラク政策について我が国がどう思っているかということはまた別途申し上げたいと思いますけれども、いつ明らかになるかという御質問でございますので、これは、現時点ではまさに外交努力を一生懸命にやる段階であるということでございまして、そのための努力をしているということを申し上げているわけでございます。
 そして、仮に武力行使が起こった場合、これについて現時点で申し上げられることというのは、先ほど申し上げましたように、大量破壊兵器の問題というのは我が国みずからの問題であるということでございまして、そうした認識に立って、国際社会の一員として我が国がどのような役割を果たすべきかということをさまざま検討を行っているということを申し上げている、そういう段階であるということです。そして、何も決まっていない。そして、他方で、邦人保護については一生懸命やっております。そういうことでございます。
河野(太)委員 そこにたまたま川口外務大臣が座っているのは、それは別に私にとってはもうどうでもいいことになりました。
 しかし、問題は、川口外務大臣を任命したのが小泉総理である。我々は小泉総理を守っていかなければならないわけであって、任命権者の責任にもなりかねないわけです。それならば、そろそろ外務大臣にはみずから辞表を出していただく、そして総理大臣にきちんと、何も決まっていないなどとこの期に及んで外務委員会で平然と答えられるような外務大臣ではない方を任命をしていただく必要がある。これは私のひとり言でございます。
 そして、矢野副大臣にお聞きいたします。
 先ほど内閣法制局の御答弁では、日本がテロ特措法の適用をするためには、少なくとも、イラクとアルカイダのつながりを示す証拠がなければならぬという答弁でございました。そうすると、小泉内閣は、少なくとも、テロ特措法を使おうとするならば、イラクとアルカイダはこれこれこういうことでつながっているんだという証拠を国民に開示されますね。
矢野副大臣 御指摘のとおりだと思います。
河野(太)委員 大変明快にありがとうございます。
 それでは、このテロ特措法が仮に適用できないという場合に、アメリカのイラク戦争を後方支援しようとしたときには、小泉内閣は新しい法律の枠組みをつくる、そういう理解で、副大臣、よろしいでしょうか。
矢野副大臣 先ほど大臣がるる答えたと思うんです。
 当然のことながら、最悪の事態を想定しつつ水面下では検討されつつあるということは御理解いただいていると思うんですね。ですから、そういうふうなことが、いつ、どの段階で国の姿勢として公になるか、その辺はもう少し我々に十分検討させていただきたいと思います。
河野(太)委員 検討は幾らやっていただいても結構なんですが、少なくとも我が国がアメリカのイラク戦争の後方支援をしようとするならば方法は二つしかない。今までのテロ特措法を使うか、この場合は、矢野副大臣が明快に、小泉内閣は国民にイラクとアルカイダのつながりを示す証拠を提示する、そうおっしゃっていただきました。それでは、この証拠の提示がない場合には、新しい法律の枠組みをつくる以外に我が国がアメリカの対イラク戦争を直接後方支援する方法はない、これは極めて論理的な結論だと思いますが、それでよろしゅうございますね。矢野副大臣に御確認したいと思います。
矢野副大臣 ですから、先ほどから大臣が申し上げているように、国際社会の中で責任ある日本として何ができるんだろう、何をすべきだ、その辺をひとつ十分に検討させていただきたいと思います。
河野(太)委員 委員長、質問に答えさせてください。
池田委員長 もう一度答弁をお願いします。(河野(太)委員「では、もう一回質問します」と呼ぶ)
 では、もう一回お願いします。河野君。
河野(太)委員 わかりやすく説明をさせていただきます。
 我が国は法治国家でございますから、政府は法律の枠組みがなければ行動を起こすことができません。ここまではよろしゅうございますね。今我が国に、アメリカがイラクとの戦争を始めた場合に、政府がこのアメリカのイラク戦争を後方支援するための枠組みはテロ特措法しかない。これもよろしゅうございますね。それで、このテロ特措法を政府が適用して後方支援をしようとした場合には、イラクとアルカイダがつながっているという証拠をきちんとお示しをいただく。これは先ほど矢野副大臣から御答弁をいただいたとおりでございます。
 それでは、仮にこうした証拠を政府が提示することができなければ、このイラクに対する後方支援はテロ特措法ではできないわけです。しかし、アメリカが、日本の同盟国でございますから、イラクと戦争をしようというときに、日本が後方支援をした方がいい、仮にそう小泉内閣が御判断された場合には、テロ特措法が使えなければ、ほかの法律をつくって新たな法律の枠組みのもとで後方支援をする、これ以外に方法はございませんね。
矢野副大臣 ですから、支援のあり方として、人の協力をする、金の協力をする等々、難民支援も含めていろいろなことが、我々としてやるべきプログラムがあると思うんですよ。その結果、まだ残念ながら、これをやろう、あれをやろうというふうな結論には至っていない、今検討中だということで御理解ください。
河野(太)委員 それでは、自衛隊がアメリカ軍を後方支援をする、そのような軍事的な支援をしようと仮に内閣が決定をした場合に、テロ特措法を適用するか、テロ特措法が適用できなければ新たな法律の枠組みをつくる、そういうことでよろしゅうございますね。
矢野副大臣 繰り返すようでありますけれども、自衛隊が直接後方支援をすべきなのかどうなのか、その辺もまだ世論自体としても一つの方向性はついていないと思うんです。ですから、我々としては、そういう世論を十分確認もしながら、何をすべきかということを慎重に検討していきます。
河野(太)委員 質問に答えていません。もしそういう決断を内閣がした場合にどうするかという質問でございます。
池田委員長 法律の適用問題についてお答えをいただきたいと思います。
矢野副大臣 ですから、委員は、後方支援が必要だということを前提として……(河野(太)委員「違います。内閣がそういう決断をしたときに法律が必要なのかと聞いています」と呼ぶ)ですから、内閣が決定をする、しないというふうな前の段階だということを御理解いただきたいと思います。
河野(太)委員 委員長、速記とめてください。
池田委員長 速記をとめて。
    〔速記中止〕
池田委員長 速記を起こして。
 質問者は、テロ特措法及び新法の必要性について聞いておりますので、その点、明快な答弁をお願いしたいと思います。
矢野副大臣 もし内閣が決定されるというふうな仮定でありますよね。ですから、内閣がどういう決定をなされるか、しかも、それは内閣として決定されるというふうな話だと思います。
河野(太)委員 速記とめていただけますか。済みません、速記とめてください。
 論理的な問題を聞いているわけですから、論理的に答えができなければ、この委員会は成立しません。
池田委員長 ちょっと待ってください。矢野外務副大臣、もう一度答弁をお願いします。
矢野副大臣 ですから、繰り返して恐縮なんでありますけれども、要するに内閣が決定をしたときには、その法整備が必要かどうかという御質問ですよね。
 ですから、内閣の意思決定がまだ至っていないというふうな一つの前提だと思うのであります。そのときに内閣がどういう判断をされるか、それは内閣としての判断だと思います。
河野(太)委員 委員長、答弁になりません。速記とめてください。
池田委員長 速記をとめて。
    〔速記中止〕
池田委員長 速記を起こして。
 ただいまのテロ特措法及び新法との関係等について、再度、河野委員の質問を行い、それに対して答弁をしていただきたいと思います。河野君。
河野(太)委員 済みません。それでは、もう一度質問をさせていただきます。
 我が国は法治国家だということは矢野副大臣も合意されると思います。法治国家の政府が何か行動を起こそうとした場合には、法律の枠組みが当然必要でございます。今、アメリカがイラクと戦争を行ったときに、軍事的な方面で日本がアメリカを後方支援する、例えば今アフガニスタンとの問題で自衛隊が補給に出ている、そのような場合を想定したときに、我が国がアメリカ軍の後方支援をしようとした場合には、方法が二つしかない。一つは今までのテロ特措法を適用する、あるいはもう一つの法律の枠組みをつくる、このどちらかでやらざるを得ないというところは、先ほど矢野副大臣も御同意をいただいております。
 先ほどの矢野副大臣の答弁を伺いますと、現行のテロ特措法を適用するためには、小泉内閣はイラクとアルカイダを結ぶ明確な証拠を国民に提示をした上で特措法の適用をするという御答弁をいただいております。もしイラクとアルカイダを結ぶ証拠を小泉内閣が提示できなければテロ特措法を適用することができないわけですから、当然に選択肢としては、二つ目の新たな法律の枠組みをつくって、この法律の枠組みのもと後方支援をする、そういうことでよろしゅうございますね。
矢野副大臣 河野委員の今の御質問でありますけれども、アルカイーダとの関係があればテロ特措法の運用が可能だ、もしその事実関係が証明できなければ新たなる一つの法律の作成だ、この二つの道しかありませんね、それは同意されたというふうな先ほどの御指摘だったんでありますけれども、私は、その前の段階にまだありますというふうな答弁をさせていただいたつもりであります。
 ですから、二つの道をどちらを選択するかというよりも、国際的に責任ある我が国として何ができるんだろう、何をすべきなんだというふうな、今まさにその点の検討中でありますから、その前の段階であるということで御理解をいただきたいと思います。
河野(太)委員 二つ以外の選択肢があるというならば、二つ以外の選択肢、何があるのかを答弁をいただきたいと思います。
 少なくとも、自衛隊が補給なりなんなりの、今アフガニスタンで、アフガニスタン戦線に対してやっているのと同じような後方支援をやるという場合に、恐らく、私は、テロ特措法を適用するか新法をつくるかという枠組みしかないと思うわけですが、副大臣はどうもそれ以外の方法もあるとおっしゃっております。
 私は、それ以前の場合というならば、少なくとも、自衛隊その他が出ていって軍の後方支援をやるか、あるいは湾岸戦争のときのように資金援助をするか、あるいは難民支援をやるんだ、そういうときの選択肢はあると思いますが、いざ後方支援を自衛隊が出ていってやるんだ、そういう決断を内閣がした場合には、テロ特措法を適用するか新法をつくるか、その二つの選択肢しかないと私は思いますが、どうなんですか。その前の段階の選択肢はこれはいろいろありますが、いざ内閣がそういう形で後方支援をやるんだと決めた場合の選択肢に三番目が、副大臣、あるというならば、どういう選択肢があるのか、お答えください。
矢野副大臣 私の先ほどからの答弁は、まさに今河野委員がおっしゃられるように、後方支援を自衛隊がやるという以前の話だと思うんですね。(河野(太)委員「違います。後方支援をやるときの法律の解釈です」と呼ぶ)いや、ですから、もしそのお話でしたら、私は、個人的にということになりますれば幾らでもお話し申し上げたいと思いますけれども、あくまでも副大臣という立場でどういう答弁をすべきか、これは限界があろうと思うんです。御理解をいただきます。
河野(太)委員 限界はないんじゃないですか。要するに、自衛隊がアフガニスタンに対して、アフガニスタン戦線に対してアメリカに補給をしている、これと同じことをイラクにもやるんだ、そう内閣が決断をしたときに、テロ特措法を適用するか新法をつくるか、それ以外に選択肢があるんですか。
矢野副大臣 たびたびお答えを申し上げますけれども、私は、私の答弁でもってそういうふうな方向性をつけるということは私の立場ではないと思うのであります。
河野(太)委員 内閣の決断とか内閣の判断なんか聞いているんじゃないんです。論理的に、これかこれ以外の選択肢があるのかどうかということをお聞きしているので、内閣の判断なんか全然私は今お伺いをしていません。テロ特措法を適用するのか、テロ特措法が適用できなければ新たな法律の枠組みをつくるか、それ以外の選択肢はないねということを確認しているわけであって、どうするのかということは聞いていません。
池田委員長 速記とめて。
    〔速記中止〕
池田委員長 速記を起こしてください。
 河野君の質問は、たびたび今されておりますが、もう政府側も問題の所在はおわかりだと思います。改めて、矢野外務副大臣の簡潔な答弁をいただきたいと思います。
矢野副大臣 改めてお答えを申し上げますけれども、国際間の中で責任ある日本の使命というものを十分検討させていただく、そして、しかるべき時点で責任あるお答えを申し上げたいと思います。
河野(太)委員 大幅に質疑時間を超過しておりますからやめますが……
池田委員長 河野さん、ちょっと待ってください。座ってください。
 ただいま矢野外務副大臣の答弁にありましたように、現時点では答えられないということでありますので。しかし、これを放置しておくわけにはいきません。せっかくここまで審議を詰めてきたわけでありますので、改めて政府の見解を理事会に出していただくということで、この問題についてはここまでにしたいと思います。そのように取り運びをさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いをいたします。
 では、河野君。
河野(太)委員 全く論理的な問題を聞いているにもかかわらず、何を血迷っているのかわかりませんが、そうしたものにも答えられないという今の外務省の情けなさ。先ほど矢野副大臣は世論の動向云々と言いましたが、世論にきちんと政府の政策を納得してもらうためにも、まず政府は何をしたいのかという意図をはっきり世論に訴えなければ世論は納得などするわけがないわけであって、政府が何か物を言う前にマスコミなりなんなりがいろいろなうわさを流して、むしろ逆に世論がそれに流されているのが今の現状だと思います。
 極めて、きょうの大臣、副大臣の答弁は情けない、がっかりした。これが任命権者である小泉総理に影響を及ぼさないことをひたすら願うばかりでございます。
 以上、終わります。
池田委員長 次に、上田勇君。
上田(勇)委員 随分熱い議論の後で大変やりにくいわけでございますけれども、きょうは時間をいただきましたので何点か質問させていただきます。
 まず、今我が国の外交にとりまして最大の関心事であります北朝鮮との正常化交渉につきましてお伺いをしたいんですが、小泉総理の訪朝に始まりまして、この交渉が一時は随分進展するのではないかということが期待された時期もあったんですけれども、現状は非常に膠着状態に陥っております。最初から、そういう期待があった反面、この日朝間にはたくさんの課題があるので、そう一筋縄にはいかないということは予想もされたわけでありますけれども、打開の道を開く見込みがなかなか見つけられないというのが現状ではないかというふうに思います。先週末には、日朝の局長級で非公式の会議が行われて、今後の交渉の進め方等についても協議したものだというふうには理解をしておりますが。
 そうしたことを踏まえて、もちろん、今これは協議の途中のことであるので、どこまでお答えしていただけるかという限界はあるのかというふうには思いますが、ただ、今後どうなっていくんだろうということは国民の最大の関心事でありますので、ぜひ外務省に、今の交渉の現状をどういうふうに認識をしているのか、また、今後の見通しあるいは対処方針等について、できるだけ見解をお伺いしたいというふうに思います。
川口国務大臣 日朝の国交の正常化につきましては、拉致問題、そして核の問題を含む安全保障問題について、委員御案内のように、我が国と北朝鮮との間では非常に大きな意見の隔たりがあるというのが現状でございます。
 政府としては、この前の正常化交渉の後、次の正常化交渉の日程、あるいは、十一月中にということで一応合意をいたしております安全保障協議をいつやるかといったことを含めまして、北朝鮮との間でコンタクトを重ねてきたわけでございます。
 ただ、何分にも意見の違いは大きいということでございまして、北朝鮮側としては、今そういう状況のもとで国交の正常化交渉を行う雰囲気にないということを言ってきた。また、安全保障協議についても、現在はその協議をすべき段階ではないということを言ってきているわけでございまして、ここは、例えば今月中に正常化交渉を再度やるとか、安全保障協議をやるとかいったことについては、もう月末でございますので、まず不可能であると思います。
 政府といたしまして、我が国といたしましては、近い将来、できるだけ早くそういった交渉を再開できるように粘り強く北朝鮮側に働きかけていく、そういうことが必要であると認識をしております。
    〔委員長退席、中川(正)委員長代理着席〕
上田(勇)委員 もちろん、日朝間にはたくさんの幅広い問題がありますし、その交渉においては、我が国の立場もしっかりと、ポジションを提示しなければいけないということで、そう簡単に進むものだというふうには思いません。ただ、きょうの一部の報道などを見ると、もうことしじゅうはこの交渉の再開のめどが立たないのではないかというふうなことも言われております。
 拉致事件の被害者の方々のこともありますし、また、核開発の問題を初めとする安全保障上の問題というのは国民の安全にとって非常に喫緊の課題でありますし、また、この委員会でも私の方からも、いわゆる日本人妻の帰国の問題、北朝鮮の国内における人道、人権上の問題など、たくさんの問題があるわけであります。
 これは、隣の国との関係のことでありますので、この委員会だけではなくて国民全部が非常に注視をしている、関心が高い課題でありますので、現時点でなかなか、言えるところ、言えないところというのはあろうかというふうに思いますが、ぜひ外務省として、この交渉の経過、これは多分長期化する可能性が高いんだというふうに思いますので、国民にもその過程、プロセスがよりわかるように、情報をしっかりと伝えていただくような努力を今後お願いしたいというふうに思います。
 もう一つ、ちょっと次の話に移らせていただくんですが、これは非常に残念な話でございますけれども、新聞各紙の報道によると、会計検査院と外務省の調査によりまして、いわゆるプール金の総額が四億五千万にまで増加している、そのうち、新たに五百万とか六百万の私的流用も判明しているというふうなことが各紙で言われております。
 これについて、外務省として事実関係をどのように認識されているのか、また、今後の対応についてお考えを伺います。
矢野副大臣 この件は私から答弁をさせていただきたいと思います。
 会計検査院の発表は、十一月の二十九日になろうと思います。ですから、最終的な具体的な数値については言及は控えさせていただきたいと思いますけれども、この問題については我が省挙げて深く反省をしなければいけないな、かように感じております。
 なお、会計検査院の検査結果を踏まえて、国庫返納、そして関係者に対する処分等々、国民の御理解をいただけるべく、速やかに最大限の措置をさせていただきたいと思います。
上田(勇)委員 これは外務省の信頼の回復という意味でも非常に大きな問題でございますので、ぜひそれは、国民から理解の得られる、納得のいくような対応をしていただきたいというふうに思います。
 何か一部の新聞だと、外務省の中には、例えば職員同士の歓送迎会とか忘年会みたいなことも、これは組織的流用だというような言い方をしているとか、あるいは、前回の処分に対して、このプール金というのは公金をあらかじめ手当てしたものであるから、そういうような処分だとかその返済とかといったことは不当なんだというようなことを、そういう不満が出ているというようなことも報道されておりますが、これはやはり私はとんでもない勘違いであるんじゃないかなというふうに思います。
 そういう意味では、大臣も副大臣も、外務省の改革についてはこれまで並み並みならぬ意欲を示していただいているところでございますので、ぜひこれは納得のいく御判断をいただきたいというふうにお願い申し上げます。
 ちょっと本題の方に移らせていただくんですが、きょうは、私は、自由貿易協定の問題について何点か伺いたいというふうに思っております。
 外務省では、先月の十六日に、「日本のFTA戦略」といって、自由貿易協定についての基本的な考えを発表されました。ここでは、FTAに経済活性化の効果、貿易創出効果があるという位置づけで、FTAの締結をこれから推進していくんだという方針を打ち出しております。
 しかし、これまでの我が国の対応を見ていますと、我が国は、こうしたFTA、地域統合とか地域協力という動きについては、むしろ、排他的な経済ブロック化を生み出すんじゃないかということから消極的なスタンスだったのではないかというふうに感じております。むしろ、ガット、WTOによる多角的貿易体制を重視する姿勢だったというふうに理解をいたしております。
 もちろん、これは必ずしも二つが完全に相反するものではありませんが、その理論は必ずしも一致するものではないんですけれども、外務省として、この辺の、FTAを推進していくという今回の戦略、「日本のFTA戦略」に示されている方針と、それから従来の多角的貿易体制重視という立場との整合性についてはどのように考えているのか、基本的な認識を伺いたいというふうに思います。
川口国務大臣 FTAとWTOとの間の関係については、疑問に思っていらっしゃる方が多いと思います。
 委員がおっしゃられましたように、FTAとWTOは相矛盾するものではない、整合性はあるということでございます。我が国としては、委員がおっしゃられたように、今までは、多角的な自由なWTOの体制を強化し、それを進めていこうという立場であったわけですけれども、同時に、ASEAN等の地域の間の連携を高めるという意味において、FTAというのが有益であるというふうに考えているということでございます。
 何でその整合性かということについてですけれども、これは、WTOの多角的な自由なルールのもとに、特に一部の部分について深掘りをする、その自由度を深掘りする、そういう意味で、WTOのほかの国に対して貿易障壁をつくるものではない、戦前等で問題になりました経済のブロック化ではない、そういう認識でおります。
上田(勇)委員 FTAで今議論されているというか、一つは、日本とシンガポールとの間のFTAが締結をされました。そのほか、今議論に上がっているFTAというと、メキシコとの交渉が行われている、もう一方ではASEANとの交渉も開始をされましたし、また、韓国とのそういうような自由経済圏についての研究も行われております。さらには、中国や台湾の中からもそういうようなさまざまな提案もあるというふうに承知をいたしておりますが、これらを見てみますと、地域としても、世界じゅう、かなり広範な範囲に及んでいて、我が国との経済関係もそれぞれ随分違う状況であります。
 政府として、これらの、今幾つか並行して議論されているFTA交渉の関係性を戦略的にどういうふうにとらえられているのか、そしてまた、今後、交渉を進めていく優先順位についてはどのように考えているのか、基本的な御認識を伺いたいというふうに思います。
    〔中川(正)委員長代理退席、委員長着席〕
川口国務大臣 FTAの締結について、ほかの国は我が国よりもかなり前から取り組んでいるところもあるわけでございまして、例えばNAFTAというのもそうですけれども、これの結果として、経済的に利益を受けるとか、あるいは特定地域と経済、政治的に親しくなるとか、あるいは我が国の産業界が望んでいるとか、そういった要素があって、今委員がおっしゃったような地域、ASEANあるいは韓国、メキシコといった地域を最優先的なFTAを締結していく先であるというふうに考えているわけです。
 その理由でございますけれども、まず韓国についてですけれども、これは我が国として非常に近い国でございますし、考え方も非常に似ている、政治的にも重要であって、幅広い国民的な接触がある、既に深い経済面での相互依存関係があるといったようなことでございまして、それから産業界からも要望が強いということで、今、産官学集まった研究会を設置して、取り組んでおります。
 それからASEANについては、総理がシンガポールで、ことしの初めにも、緊密な経済関係をどうやって深めることができるかということをおっしゃっていらっしゃいましたけれども、ASEANとの間では、緊密な経済関係を持っているけれども、依然として貿易の障壁は高い状況にある、ASEANの方が閉めている状況にあるということでございまして、この意味で、我が国との間で政治的にも経済的にも連携を深めて安定性を確保するということが大事だと考えております。そして、総理がおっしゃった日・ASEAN包括的経済連携構想、この実現に向けまして、フィリピンとの間では、既に二国間の作業部会をつくっておりまして、これを進めていきたい。
 それからメキシコについては、米国、カナダとの間では既にNAFTAがございますし、また、メキシコとEUもFTAを結んでいるという状況にございまして、我が国企業が、メキシコについて、欧米企業との関係では不利な立場にあるということになっております。したがいまして、先月、日墨の首脳会談がありました際に、この協定交渉を始めるということで合意をした。既に、第一回の政府間交渉が行われた。
 したがいまして、経済的に連携を深めることが重要である、あるいは、我が国の産業がよその国が行ったFTAによって不利な立場に置かれている、そういうようなことに着目をして、この三つの地域を戦略的に重要な地域ということで、交渉あるいは勉強を始めているということでございます。
上田(勇)委員 それぞれの協定の必要性というのは、今御説明いただいたことでよくわかりますし、私も、それぞれ重要な日本の経済パートナーだという意味においては、非常にその必要性というのは理解するものなんです。
 ただ、今お話しいただいた内容ですと、いわゆる世界経済の中にあって日本がどういう戦略でそういうルールづくりだとか、あるいは具体的な貿易や投資を行っていくのかというのは、なかなか見えてこないところがあるんじゃないかというふうに思うのですね。一つ一つはそれぞれ重要なんだけれども、何か、その都度、必要性が生じてきたときに場当たり的に考えているというような感じもするので、むしろ日本が、日本の国内の経済産業のあり方も含めて、世界経済の中でどうあるべきなのかということをしっかりと戦略を立ててこの交渉に臨んでいただかなければいけないというふうに思います。
 それで、今お話の中にあったメキシコとの協定についてちょっとお伺いしたいのですけれども、メキシコとアメリカとの間でNAFTAの協定が結ばれて、それ以来、我が国は随分と不利益をこうむってきました。
 メキシコの現地に進出した日本の企業が、部品を輸入してメキシコで組み立ててアメリカに輸出しようとするときに、非常に関税上の不利益をこうむってきた。ある推計によると、日系の現地メーカーは平均一六%の関税を負担している。このために、メキシコの輸入全体に占める日本のシェアというのは、九四年、これはNAFTAが締結されたときなんですが、六・一%であったのが、二〇〇〇年には三・七%にまで低下をしてしまったというような統計があるわけであります。
 メキシコというのは、日本とメキシコという二国間関係ということだけではなくて、やはり北米地域全体の経済拠点として重要であるということ、そこにこの日墨協定の重要性があるというふうに私は考えているんですけれども、その交渉が開始されるまでに随分と時間がたって、遅きに失したという感じがいたします。
 これはどうも、こうした自由貿易協定に我が国としてどういうように対処していくのか、その方針がなかなか定まらなかったというようなところに一つの大きな原因があるんじゃないかというふうに思うのですけれども、その辺の御見解を伺いたいというふうに思います。
川口国務大臣 我が国は、貿易立国だというふうに言われてきまして、戦後ずうっと、多角的に自由な貿易体制、これによって輸出入を行い、そして経済成長を果たしてきたという実績があるわけでございます。そういった全世界的に同じ自由なということに、ずうっとそれをメリットとしてきたということであったがゆえに、委員が御指摘のように、一部分、それをさらに深掘りをしよう、みずから進んで取り組むということに、そこまで政策を変えるのにほかの国に比べて少し時間がかかったというところはあったかもしれません。それからもう一つ、我が国の経済、産業の実情からいって、難しい幾つかの課題というのもあると思います。
 メキシコについては、そういう意味では、平均関税率一六%という中で、NAFTAあるいはEU、ほかの国がメキシコとFTAを結んで我が国が不利に置かれたということが問題であったということでございます。
 我が国としてこのFTAに今後どのように取り組んでいくかということについては、これは既に外務省としては勉強もいたしておりまして、ホームページでも発表させていただいておりますけれども、関係の各府省とも連携をしながら、これについては、とりあえず今の重点と申し上げた三つを行い、そして、それらの成果も見ながらまた引き続き考えていきたいと思っています。
上田(勇)委員 今大臣からもお話があったように、国内的にもいろいろと難しい産業分野がある。これは端的に言えば、農産物の貿易のところが非常にセンシティブな部分なんだというふうに思います。
 確かに、ことし締結をしましたシンガポールとの協定においては、シンガポールは農産物に対して関心がないということから、比較的順調に進んだんだと思うんですけれども、これがメキシコとの関係になってくると、貿易量の二割ぐらいが農産品だということでありますので、ここの問題をどういうふうに解決していくかというのが非常に大きな課題ではないかというふうに思います。さらに、ASEANや韓国との間でもこの問題というのは常に提起をされるんだろうというふうに思います。
 そこで、国内的にも我が国の農業というのは、いろいろ地理的な条件だとか農業経営の問題だとかで確かに非常に困難な問題があるんですけれども、この問題をどういうふうに解決していくかというのが、多分、これからのFTAの協議が成功に終わるかどうか、また実効のあるものにできるかどうかという非常に大きなかぎになってくるんじゃないかというふうに思います。
 この農業、農産品について、まずは一番最初に協議が進むと思われますメキシコを事例にしていただいても結構なんですけれども、この農業、農産品をFTAの中でどのように位置づけられていくのか、その戦略についてお伺いしたいというように思います。
川口国務大臣 メキシコにつきましては、十一月の十八日に交渉がされたわけでございますけれども、これについては、それぞれのセンシティブな分野への考慮を指摘いたしました共同研究会というのがございまして、その報告書を踏まえて行うこととしております。
 そして、メキシコに限らず、ほかの国との間でもそうですけれども、自由貿易協定の交渉を行う場合には農業分野についてもあらかじめこれを外す、議論の対象から除外をするということは考えていないということでございます。農業分野について、国内への影響を配慮しながら、そしてWTOの協定との整合性を十分に踏まえまして、我が国と相手国の両方にメリットがある形でこの交渉を行っていくことが必要だと考えております。
上田(勇)委員 私も、国内の事情とかを考えて、この問題をどうするべきかというのは、確かな考えは非常に難しいというように思っているんですけれども、ただ、この問題が解決できない、あるいはその協定の中で位置づけられていかないと、広い地域との自由貿易圏、自由経済圏というのは形成が非常に難しいんではないかというふうに思います。ここは最重要な課題であろうかというように思います。このメキシコとの協定というのは、そういう意味で、ここの部分がモデルケースになってくるんじゃないかというふうに思いますので、またこれはぜひ御検討していただいて、交渉の中で建設的な方向を見つけ出していただきたいというふうに思います。
 もう一つは、先ほど大臣のお話にもあったんですが、メキシコの協定と同時に、アジア地域、我が国と地理的にも近接しているし、経済的な関係もより密接なこのアジア地域でのFTAというのが我々にとって重要な問題だろうというふうに思います。これは多分、メキシコとはちょっと性格が違って、我が国だけではありませんが、我が国がこのアジア地域の中の最大の経済大国でありますので、そのリーダーシップをとっていかなければいけない構想なんだというふうに思います。
 ASEANとの関係でいえば、一つには、従来我が国は、ASEAN全体との包括的な経済連携ということを志向していて、その中で二国間というのは余り、逆に妨げになるので二国間での交渉には消極的な立場をとってまいりましたけれども、先ほど大臣からも御答弁があったんですが、小泉総理が、包括的な経済連携構想と並行して個別に各国とのFTA協議も推進するというような考えを提示されましたし、また大臣御自身も、ASEANの外相会議の際にもその趣旨の御発言をされているわけでございます。
 ただ、このアプローチについては両方の見方があるんじゃないかというふうに思いますし、政府部内でも、例えば経済産業省などは、二国間優先というのは地域を分断するということになって日本企業にとってもマイナスではないかというような意見も述べているというようなことを承知いたしております。また、経済界からも両方の意見が出ているというふうに承知をしておりますが、政府として、そういう意味で、どちらの方針で臨むのか、また、省庁間あるいは経済界との意見調整というのはうまくできるのかどうか、見通しをお伺いしたいというふうに思います。
田中政府参考人 委員御指摘の二つのアプローチでございますが、私どもとしては、これは完全に両立し得るものだというふうに考えております。
 ちなみに、ことしの十一月に日本とASEANの首脳会議がございましたが、そこで、包括的経済連携構想についての共同宣言というものが発出されました。その中で、日本とASEAN全体との間の包括的経済連携実現のための枠組みを検討する一方で、いずれのASEAN加盟国とも日本は二国間の経済連携を確立するための作業を始める、こういうことでございます。
 委員御指摘になりましたように、ASEAN十カ国全体と一つの包括的な枠組みをつくる必要性というのはあると思います。それは、ASEANを分断してはいけない、十カ国全部を対象にして枠組みをつくるというのは必要である。それと同時に、ASEANの中で例えばシンガポールとミャンマーというのを見ますと、百五十倍のGDPの差がある。ASEANのオリジナルファイブと言われる国々の貿易量というのは既にASEANの中でも九五%ということがございますし、私どもとしては、できるだけ深いものをつくっていきたいという要求もございます。
 したがって、二国間で経済連携のための協議を進めると同時に包括的な枠組みというのもつくって、最終的にはそれが一体のものとなっていく、これを十年以内のできるだけ早い時期に完成させたいということで、政府の中も意見調整がされているということでございます。
上田(勇)委員 今局長がおっしゃったことというのはわからなくはないんですが、これは同じスピードで進んでいけばうまくいくことなんでしょうけれども、例えば二国間の方だけが突出するというようなことになるとどういう影響があるのか、その辺は十分慎重に対応していただかなければいけないというふうに思います。
 このFTAの問題をきょうちょっと取り上げさせていただいたのは、日本としてもようやくこういう戦略を打ち出して取り組んでいるわけですが、他方、中国が非常に積極的に動いております。このままでいくと、東アジア地域のFTAというのが、どうも我が国の利害が余り反映されない、中国の都合のいいようなものになってしまって、最悪の場合には我が国はその中から排斥されてしまうおそれもあるというふうに考えておりまして、そういう意味では対応がちょっと中国に比べると出おくれたという面はありますけれども、やはり我が国の位置するアジアの経済圏において日本がしっかりとした地歩を築いていくという意味で積極的に取り組んでいただきたいというふうに思います。
 以上で終わらせていただきます。
池田委員長 次に、吉田公一君。
吉田(公)委員 外務委員長として一年間大変お世話になりまして、ありがとうございました。今まで、私が外務委員長時代から北朝鮮問題につきましては再三再四にわたりまして論議をされてまいりました。私は今度の質問で、北朝鮮支援と米の問題について主に質問をしたい、そういうふうに思っております。
 まず最初に、日朝国交正常化交渉、これが十二回にわたりまして行われておりますが、安全保障協議の開催もめどが立たない、膠着状態にある。帰国した拉致被害者五人を一たん北朝鮮に戻すという約束を日本が破ったからこれはだめなんだ、こう向こうは主張して今とまっているわけでありますね。
 北朝鮮側が掲げる理由ですけれども、七月三十一日の日朝外相会談、八月二十五、二十六日の外務省局長級協議、九月の十七日の首脳会談、十月二十九、三十両日の国交正常化交渉再開と今のところは順調に協議も続けられてまいりましたが、ここへ来て今までの交渉が行き詰まってしまった。何の理由で先行きが見えなくなったのか。そして、向こうは、五人を返さない、約束を守らないじゃないかというただそれだけの理由で交渉がとまっているのか、それとも何かほかに理由があって向こうが強固な姿勢をとっているのか、本当の理由というのはあるのかないのか、それをまず最初にお伺いしたい、そう思います。
田中政府参考人 正常化交渉の中で日本が平壌宣言に基づきまして非常に強く主張している事項、これは政府としての最優先事項ということでございますが、二つございます。それは、一つは拉致の問題であり、一つは核を中心とする安全保障の問題ということでございます。
 拉致の問題についても、それから核、特に濃縮ウランのプログラムの廃棄という点についても、日本にとっては妥協ができない問題であるというふうに考えているわけでございまして、日本としては日本の立場を追求せざるを得ない、そういう基本的立場を損ねる形で北朝鮮と合意をつくるといったようなことはおよそ考えられないことであるということで、私たちは二つの最優先事項について日本の主張を貫いてきているということでございます。
 一方、北朝鮮側は、日朝の平壌宣言を履行するということについては異存がない、その合意に基づいて進めていくということではあろうかと思いますけれども、この拉致の問題についても、今委員が御指摘がありました五人の被害者の方々の家族の問題、それから核の問題についても、彼らはその原則的な立場を現在のところ変えようとしていないということがございまして、そういう観点から今の状況は膠着した状況に至っているということであろうかと思います。
 先ほど申し上げましたように、日本としてこういう問題について安易に妥協するということはおよそ考えられないものですから、そこは粘り強く北朝鮮といろいろなルートを通じて協議、交渉していくということが必要なのではないか、かように考えているわけでございます。
吉田(公)委員 粘り強く交渉を続けていくということは、それはそれで結構なんですけれども、しかし、いつまでも真っ向から対立して、こちらは、平壌宣言を守らないじゃないか、向こうは、五人を一たん戻す約束だったじゃないか、これで膠着状態になっているわけで、田中局長がつい今週、二十三、二十四日両日にわたって交渉してきた。だけれども、その見通しは今後もない。ぜひ今週中にという総理の要請もあったようでありますが、それもなかなかうまくいかない。こういうことですから、これからは長期戦になってくる、そういうふうに私は思っております。
 日朝交渉が膠着状態となった本当の理由は、北朝鮮と日本政府、これは首相官邸と外務省という意味でございます、一括して政府というわけでございますが、その両者がともに策定した国交正常化までのプロセスが、日本側の方針変更により計画どおりに進まなくなったため、北朝鮮側は、さっき私が申し上げたように、同国に残された拉致被害者の家族も人質として交渉カードに使っているとしか思えないわけですね。
 そこで、政府、外務省も、拉致問題の解決が国交正常化交渉における最優先事項、こう言っていますけれども、中には、たった十一名のために国交正常化がとまっていいのかというかつての外務省の幹部の発言もあり、日朝国交正常化の実現という省益を常に優先してきたんではないかというようなことが考えられると思っています。問題は、その省益を優先した外務省が、国交正常化を早期に実現させることで北朝鮮側と了解をしていたんではないか。
 九月の十七日に小泉総理が突如として行かれた。私は、たまたま北京の全人代の外交部主任を訪ねる車の中で外務省の方から電話で、九月の十七日に小泉さんが訪朝するということを実は聞いたのでありますが、その際に外交部主任に、ピョンヤンへ我が国の小泉総理が交渉に伺うということになりましたと言ったら、その外交部の主任は、それは大変喜ばしいことである、こういう発言がございました。しかし私は、びっくりしたのと同時に、いつの間にかこれはすごい段取りをしたんだなと思ったんですね。いずれにしても舞台は北京になるだろう、こう思ったものですから、全人代の外交部主任に、北京で交渉再開ということになるかもしれませんが、その節はひとつ便宜を図っていただきたいということをお願いして帰ってきた、こういう経過があるんですね。
 そこで、北朝鮮側と既に了解をしていたんではないか。つまり、とにかく早く五名を返してくれれば、それでもう大体の見通しは立つんではないか、今まで拉致問題はないと言ってきた北朝鮮側が五名でも六名でもいいから返すということになれば大変な前進だ、そこらできちっと手を打てるんではないかというようなシナリオのもとで小泉さんをピョンヤンに行かせたというふうに思っていますが、その点はどういうふうなお考えだったんでしょうか、お伺いをしたい、そういうふうに思います。
田中政府参考人 委員御指摘のような点は全くございません。
 これは平壌宣言を見ていただくと御理解いただけることを期待するわけですけれども、平壌宣言に書かれていることというのは、正常化というのは何でも正常化ということではない、平壌宣言の基本的な精神、考え方、原則に従った正常化である。平壌宣言の中に書いてあることは、要するに安全を脅かさないことであるとか、それから、いろいろな地域の安全保障問題についても問題を解決するということでございますし、小泉総理の訪朝に至る過程で私どもが北朝鮮にずっと一貫して言ってきたことは、拉致問題の解決がなくして、果たして国交正常化という信頼関係に基づくような関係はあるだろうかということでございました。
 したがって、その基本的な方針というのは、十七日以前におきましても、十七日においても、十七日以降においても貫かれているというふうに思っていますし、この五名の被害者の方が日本に帰ってこられた、それが、政府の方針として、引き続き日本にとどまっていただいて日本の自由な環境の中で永住の意思を固めていただくということにした、これも日本政府としてはけだし当然の方針であった。
 もちろん、事情が変わってきたということはあると思います。事情が変わったといいますのは、五人の方が帰られて、日本の雰囲気の中で、日本でやはり意思を決めたいということですから、そういう事情の変化はあったと思いますけれども、そこの日本政府の立場というのは非常にかたいものがあると思いますし、拉致問題の解決というものも、当然のことながら、御家族の御意向とか、そういうもろもろの事情を反映した拉致問題の解決ということなのであって、こういう問題がきちんと解決されない限り正常化ということは起こり得ない、政府交渉が完結をするということはないということは一貫して北朝鮮側にも示している日本の立場であります。
 したがって、委員が御指摘のような点はございません。
吉田(公)委員 とにもかくにも、最初に日朝国交正常化ありきでありまして、拉致問題は日朝国交正常化交渉の中でどうしても欠かせない問題ですから、五人は日本へ帰国した。しかし、拉致家族の皆様方、拉致被害者家族連絡会、北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会、それから拉致議連、国会にありますね、私も副会長ですけれども。そういう多くの国民から反発が予想以上に強かった。したがって、本来は日朝国交正常化の一つの条件として拉致された五人を日本へ帰国させたけれども、しかし、今は拉致問題を最優先に取り扱っている、その後に日朝国交正常化交渉があるんだ、こういう御説明であります。
 しかし、この拉致問題というのは非常に難しい問題で、もちろん外務省も苦慮していると思うのでありますが、我々も大変苦慮しているところは、一体何人拉致をされて、一説には五十人とも百人とも言われていますね。韓国にも五、六百人いる。そうすると、日本は確認をしているだけでもと、こういう話でありますが、確認以外にもあるとなると、拉致問題というのはなかなか解決をしない。
 問題は、日本語教育を担当した拉致された日本人の人はほとんどが死亡した、こう言われている。どういうわけか、日本語教育をした人が、八人は死亡したと言われている。ここはどうも私には腑に落ちないのですよね。つまり、日本語教育をしながら何かいろいろな秘密を持っているために、要するに亡くなったと称しているのか。だって、現地に行ってないんだからわからないでしょう。ただ向こうの申告どおり受けとめているだけの話ですよ。だから、それは日本政府としては、そんなことを言ったってだめだ、とにかくきちっと、亡くなったら亡くなったように、どこに埋葬されておられるのか、その現地はどこなのかなんということを聞いているわけです、今までは。だけれども、それ以上のことについてはよくわからない。
 こういうことですから、この拉致問題というのはよほど強引に、しかも柔軟に、言っていることが矛盾するようですけれども、やらないと、まさに我が国の主権を侵害されているわけですね。だって、瀋陽事件の大使館の敷地に入っただけで国権の侵害だと言っているぐらいだから、日本人を拉致するなんという、昔の山椒太夫みたいなことをやるなんというのは本当に不届きな話だ、こう思っているのですよね。
 問題は、今は子供さんたちをこちらへ呼び寄せたい、こう言っているんだけれども、そうじゃなくて、逆に向こうが、お父さん、お母さん、北朝鮮へ帰ってきてくださいよ、私たちは大変な思いでお父さんやお母さんが帰ってくるのを待っているんですよ、こう言い始めたら、一体これをどう解決していくのか。そろそろ言い始めるんじゃないかと私は思っている。それは北朝鮮だから、そのぐらいのことはちゃんと言ってきますよ。そのときに、引き裂かれた家族にどう対処することによって平和な生活が送れるかということが私は大きな問題だ、こう思っておりますが、向こうの残された子供たちがそう言ったら、外務省としてはどう対応していくのか、それをお尋ねしたい、こう思います。
田中政府参考人 政府としての基本的な考え方は、五人の被害者の方々に日本にとどまっていただいて、五名の家族の方々には日本に戻ってきてもらう、こういうことでございますし、かつ、今現在におきまして、五人の被害者の方々並びにその家族の方も、ぜひ日本で子供たちに再会をしていろいろ話をして考えを決めたいということを言っておられるということだと思います。
 非常に難しい問題として、果たして、事情を知らない子供たちにどこでだれが説明をするのかといったような問題があることは私は事実だろうと思いますし、その点はきちんと考えていく必要がある問題であるというふうには思いますけれども、だからといって、今の基本的な方針を変えるということではないんだろうというふうに思います。
 ですから、委員御指摘の、向こうにいる家族がどうしても親に帰ってきてもらいたいというようなことを言ったときにどうするかというようなお話がございましたけれども、当然のことながら、その状況を踏まえながら適切な判断をしていくということであると思いますし、私どもとしては、やはり日本で話をしていただくのが自由な環境の中で意思決定を行い得る道であろうというふうに考えているわけでございます。
吉田(公)委員 田中局長の考え方は、それはそれで筋の通っている話なんだけれども、そう一筋縄でいく相手じゃないので、我が国が望んでいることは、向こうの家族、子供たちも日本へ呼び戻して、そして家庭を持って幸せに暮らしてもらうということが一番最良の方法ですよね。だから、五人の中には、市町村でも臨時職員として使うということまで言っている町長もいるわけですから、当然それを予測してやっているわけで、引き裂かれたまま、半年やそこら程度ならいいけれども、一年も二年もかかるということになれば、帰ってきたために悲劇をまた生むというようなことになってはならないので、ここはぜひ、何が何でも交渉してかち取ってもらいたい。もうかち取ると言うしか、これは言いようがないね、穏やかに話をしていくなんという相手じゃないんだから。
 そこで、初の訪朝団というのは、一九九〇年のいわゆる金丸訪朝団だった。正常化の暁には北朝鮮、金丸議員双方にそれぞれいろいろな約束があった。その直後から国交正常化交渉が七回行われてきたのでありますが、九二年の東京佐川急便事件で金丸議員が失脚をいたしました。その直後に第八回の本交渉が始まったわけですね、十一月に。北朝鮮はこれまで、日本側が提起してきた大韓航空機爆破事件にかかわる李恩恵問題等に強く反発をした。ここで反発をしているわけだ。反発をして、以後長く交渉が途絶える結果になったということの経過があるわけですね。
 次の訪朝団、九五年三月、いわゆる渡辺訪朝団、これは渡辺美智雄元副総理ですね。その直後の六月と十月に、政府は第一回と第二回の米支援を行っているわけです。今まで全部で六回、米の支援を行っている。米の支援が安易に行われてきたという可能性がある、私はそう思っているんですね。
 最後の訪朝団は九九年十二月、いわゆる村山訪朝団。その直後にまた米だ。二〇〇〇年三月と十月に米支援を実施した。この十月の米支援に前後して、九回、十回、十一回と三回の正常化交渉を行った。この第十一回交渉を最後に再び長く交渉が途絶えて、このときの理由がはっきりしない。もらうものをもらったら、もう後は日本と話し合う必要はないというような態度をとってきた。
 この長く交渉が途絶えるというときは理由がはっきりしていないんですよ。何の理由で日朝の国交正常化交渉ができなかったか、向こうが勝手に途絶えさせてしまったのか、その理由がわかれば教えてもらいたい。
田中政府参考人 これはまさに委員御指摘のとおり、今回再開するまでに十一回国交交渉が行われたわけでございますが、実は、いずれの協議においてもその基本的な対立点というのはずっとあって、埋まらなかったわけであります。
 一つは、先ほど先生も御指摘になりました李恩恵それから拉致の問題、それを出した途端に席を立っていくというような状況もございました。それからもう一つは、基本的な正常化の形の問題で、先方は補償ということに非常に強いこだわりがあるわけで、日本は補償ということはできないという形での対立というのは一切埋まらなかったということでございます。
 十一回の日朝国交正常化交渉においても、二日間にわたり、とりわけ北朝鮮側の言う過去の清算、これはまさに補償の問題ということでございますけれども、議論がされた。しかしながら、従来からずっとつながってきた基本的な対立点、先方は補償を要求し、日本は補償に応ずるわけにはいかないという大きな違い、そういうことで議論がまとまらなかった。
 十一回の会談の結果、双方の準備が整ったところで行うということを申し合わせて、二〇〇〇年以降今回まで交渉が行われなかった、かようなことでございます。
吉田(公)委員 我が国の米支援でありますが、順を追って簡単に説明いたしますが、一九九五年の六月に、延べ払い輸出で十五万トン、日本赤十字社から朝鮮赤十字会へ無償で十五万トン、計三十万トンを支援したわけですね。
 九月には、北朝鮮の洪水被害だ、こう言って、これは国連人道問題局というのが国連にありまして、その国連の人道問題局から洪水被害について要請があった。それは総額五十万ドルの資金を拠出してくれ、こういう話で、五十万ドルを拠出したわけですね。医薬品や給水・衛生計画その他もろもろの、家庭用品等も含めて五十万ドルの支援を送った。
 それから次に、一九九五年の同年、米追加支援と称して二十万トンを延べ払い輸出した。これはたまたま経験があるんですけれども、日本の米が凶作でありまして、タイから緊急輸入米を配給した。米屋さんへ行くと、せっかく日本も輸入したものだから、日本米とタイ米をセットにして売り出した。ところが、そんなものはだれも食べない。中には、捨てたりなんかして、もったいないことをした人もたくさんいますけれども、そのタイ米を米支援として二十万トンを延べ払い輸出した、こういうことですね。
 今度は、九五年の夏の豪雨による洪水被害を受けて、これまた国連人道問題局というところに総額六百万ドルの資金を日本は拠出したわけですよ。このうち、人道問題局が日本の出した金で一・五万トンの米を買って調達した。
 今度は九七年に、WFPと称している世界食糧計画、これはたびたび日本に支援を要請してきている国連の機関でありますが、幼児及び医療機関に対する緊急食糧支援に対して二千七百万ドルを日本が出した。この資金を用いて我が国の政府米六・七万トンを調達している。ほかに医療器材だとか、あるいはいろいろな赤十字関係のを調えて、そして九千四百万円を日本赤十字社を通じて拠出した。
 それから二〇〇〇年、国連統一アピールを受けて、いわゆる世界食糧計画に対して約三十八億四千万円の資金を日本は出した。そこは、この資金を用いて我が国の政府米十万トンを調達した。
 それで今度は十月に、緊急支援活動に加えて、同年末に決定される予定であった緊急支援活動の双方に寄与するために、約百七十五億円の資金を出している。この資金を用いて我が国の政府米五十万トンを調達したわけだ。
 その五十万トンを調達するときに、拉致家族が、米支援に我々は殺されるようなものだ、もうこれで拉致疑惑問題は終わりになってしまうといって、実は抗議や陳情をしたという経緯がある。米をどんどん送ることによって拉致問題の解決がだんだん遠のくというのはどういうわけなんだと。普通なら、米をどんどん支援してやって、これだけの米や資金援助をしてやっているのに、何で拉致疑惑問題が逆に進展をしていかないのか。その理由を私は聞きたい、こう思っているんですよ。それは一体どういう意味なのか。
 拉致家族の人たちが、そう言って抗議をした。なぜそんなものを送るんですか、これで拉致疑惑問題は終わりになってしまうじゃないですか、こう言って抗議をしたという経過がある。なぜそうなるのか、その理由を聞きたい、そう思うんです。
田中政府参考人 米の支援と拉致問題の関係についてのお尋ねでございますが、米の支援とか食糧支援というのは、あれだけ強い態度をとっている米国ですら、これまで十年の間にほぼ日本と同量の食糧支援をしてきている。ブッシュ大統領も、北朝鮮に対する政策と社会的弱者に対する人道支援は別だ、こういう考え方を述べておられるし、韓国もそうだし、私は、日本もこれまでそうであったのだろうというふうに考えているわけでございます。ですから、委員が御指摘になった各食糧支援、米の支援というのは、その時々の北朝鮮の人道的な状況を踏まえて支援が行われたものであるというふうに考えております。
 一方、拉致問題の方につきましては、これまで各党の代表団も行っていただきましたし、政府としても最大限の努力をしてきたわけでございますけれども、やはりこういう問題というのは、北朝鮮という国がこの問題を解決する意思を持つか否かということによってすべては決まってしまう。残念ながら、日本が、あるいは国際的に強い働きかけをしても、北朝鮮自身がこの問題を解決するという意思がなければ実は解決ができない問題であった。
 多分、九〇年代の状況というのは、残念ながら、そういう北朝鮮の政権自身が拉致問題を解決するという意図を持たなかったという状況であったんだろうというふうに思いますし、それが今、北朝鮮を取り巻く国際情勢のゆえに、小泉総理の訪朝の際に拉致の事実を認めた。そこに至る過程というのは決して簡単な過程ではなかったんだというふうに私は考えております。
吉田(公)委員 日朝国交正常化交渉、今までの長い交渉を見てまいりますと、訪朝団が行く、そうすると、一見、日朝国交正常化交渉がうまくいくようなことを言って、そのたびに米を支援させられている。だから、その訪朝団の直後に米の支援が行われているところを見ると、いつも、米がなくなったな、何とかしてもらいたいなと思ったときには、何とか理由をつけて訪朝団に来てもらって、苦しいから何とか米を送ってください、ああ、わかったよなんと言って米を送ってきた。そういう安易な気持ちで米を、要するに人道支援という名目のもとに送ってきた、そういう経緯があると私は思うんですよ。
 要するに、経済的な利益がそれで終わってしまうと、後はもう没交渉。また米が欲しくなると、どうぞ訪朝してくれませんかと言ってまた訪朝団を組ませて、そのたびに米をその直後にまた送る。日朝国交正常化交渉をひもとくと、どうもそういう傾向がある。
 大臣に伺いたいんですけれども、この日朝正常化交渉の今までの経過は安易過ぎやしないか、米さえ支援しておけばとにかくつないでおけるというような状況であったのではないか、こう思うんですが、大臣の御認識はどうなのか、お聞きしたいと思います。
川口国務大臣 北朝鮮に対する米の支援を拉致の被害者の人たちを救出することにうまくつなげていない、つなげてこられなかったということについての御批判は、国内にもさまざまあると思います。
 ですけれども、米の支援ということについては、先ほど田中局長がお話をいたしましたように、これは人道的な立場、アメリカもそういうことで考えているわけですけれども、それと我が国としての総合的な判断を加味して行ってきているということでございますし、拉致の問題については、そもそも存在すら認めない、その次には行方不明者としか言わない、今回小泉総理が訪朝なさったときに初めて、拉致が存在をして、おわびをするということになったわけでございまして、北朝鮮側のさまざまな考え方に影響を受けて、ここまで解決することができなかったということだと思います。
 それで、訪朝団については、これはいろいろなことをお考えの方がいらっしゃると思いますけれども、それぞれ非常に難しい状況で中断をしてきた日朝の間の国交正常化との関係でいえば、そういった難しい折に政党の訪朝団が、その局面の打開に若干そういう働きをしていただいた、そういう部分というのはあったと私は思います。
吉田(公)委員 したがって、米支援は本来の人道的支援だけではなくて、要するに国連食糧機構の割り当て以上に気前よく米を支援しているわけね。何か成果があったかといえば、何にもないんです。国民の税金を使ってどんどん米支援をやる、それで結果的には何もない。拉致問題はもちろんのこと、日本人妻里帰りの問題にも何らプラスになっていない。ただ人道的問題だ、人道的な問題だ、こう言っているが、人道的な問題なら、拉致事件なんて全く人道的な問題じゃないですか。ほかにそんな人道的問題はないですよ。
 だから、そういう意味で、またそろそろ在庫米がたまったから、三年間米が豊作になったから、これは渡りに船だというので、また米支援でもやろうじゃないかなんという考え方を起こしていないとも限らない。
 きょう食糧庁長官来ているんだろうと思うんですが、大体、今在庫米というのはどういうふうになっているのか。北朝鮮に支援で在庫米が一掃されるからちょうどいいと思って、チャンスをねらっているのかね。
石原政府参考人 お答え申し上げます。
 今、国内のお米の在庫、約二百万トン抱えております。我々、二百万トン、大量の米、これがありますと国内の価格の低迷にもつながりますので、これは何らかの改善をしなければならないと思っておりますけれども、だからといいまして、我々、北朝鮮にこの米を向けるとか、そういうのは我々が判断する問題ではないと考えております。
吉田(公)委員 聞いているところによると、農林族と称している人たちが、称しているとわざわざ言うが、渡りに船だ、一体在庫米というのはどう処理していくんだと。この処理が大変だよね、保冷庫へ入れておかなければいけないんだから、たまっているのも大変だ。それはちょうどよかった、人道支援という名目ならどんどん出せるじゃないか、こう言って無責任に米支援、何も得られないのに米支援を、人の税金だと思ってどんどん送るなんということは、今後は絶対許されないこと。しかも、米支援を送ることによって、拉致家族の人たちは、これでもう我々は政府から見捨てられているんだと言われちゃうんだから、何のために米支援しているんだか、わけがわからない。
 だから、そういうことも今後は、そろそろまた米支援、今食糧庁長官から話があったけれども、二百万トンも余っているなんというところを見ると、また何か理由をつけて、五十万トンぐらいやっておけばちょうどいいかななんて考えないとも限らないから。豊作というのはいいことだよ、いいことだけれども余ってくる。その余ってくるのをどう処理するかというのが農林省は頭が痛いところだから。だが、これはあくまで内政問題だから、それを人道支援という名目に名をかりてやるなんということはもってのほかだ、そういうふうに思っています。
 それから、先週の水曜日の当委員会で参考人として御出席いただいた鈴木勝也大使の発言なんですけれども、外交交渉とは、軍事とは違ってどちらかが全勝するということはあり得ない、半分譲って手を握るものだということを認識してほしいという御発言があったと伺っております。
 しかし、今度の北朝鮮問題については、通常の外交交渉ではないんだから。交渉事ですから、相手の立場があるしこちらの立場もあるから、譲らなきゃならないところはあるんだけれども、今度の北朝鮮との日朝国交正常化交渉の中では何にもこっちは譲ることはないわけだから。いかに交渉といえども、フィフティー・フィフティーでいいというふうなことになれば、では拉致問題も半分解決すればいいじゃないかという話になってしまうから、この拉致問題だけはフィフティー・フィフティーなんという話では済まされない、完全勝利を目指さなきゃならないわけだから。
 従来の外交判断、外交認識ではこの問題は絶対に納得もできないし、解決もできない、そういうふうに思っていますから、そういう大使の認識であったとすれば、これは北朝鮮に対してはフィフティー・フィフティー、外交問題だから相手の立場があるというようなことは絶対理由にならないということだけはぜひ認識をしていただきたいと思っています。
 それから、今言った世界食糧計画の事務局長という人が来日をしております。そして、来年一年間に約一億九千七百万ドル、日本円にして約二百三十八億円の食糧支援が必要だ、こう言って、日本にまた米支援の要請に来ているわけですよ。
 そこで、このモリスという事務局長は、茂木副大臣と会談をしたそうですけれども、一体、日本の拉致問題について承知の上で北朝鮮に食糧援助をしろなんて日本に言っているのかどうか。知らないで言っているのか、知っていて言っているのか、ここは重大だと思う。だから、モリス事務局長が日本へ来たからといって、はい、待ってました、世界食糧計画からまた援助の話が出てきた、だからやるんだというようなことにまさかならないとは思いますが、どなたか答弁してください。
石川政府参考人 お答え申し上げます。
 モリス事務局長の来日は、実は南部アフリカにつきましての国連アピールのための来日でございました。十九日に、委員御指摘の茂木副大臣との会談が行われましたが、会談におきまして、モリス事務局長からは、WFPの南部アフリカ及びアフガニスタンにおける活動への日本の支援、それから、オール・ジャパンとしての話でございますけれども、WFP議員連盟さんの設立等について日本への御礼が述べられました。
 お尋ねの北朝鮮に関しましては、訪日前に五日間、北朝鮮に滞在したことから、現地のWFPの人員体制についての説明のほか、食糧事情がエネルギー不足や水問題と相まって深刻な窮状に陥っているとの説明がございました。
 モリス事務局長が拉致問題を認識しておられたかということでございますけれども、来日前からその認識をしておるということを私どもに連絡がございました。
 なお、北朝鮮への支援は、私どもの理解では、新聞インタビュー等でお答えになっておられますが、そのための来日ではなかったというふうに理解しております。
吉田(公)委員 そのWFP、世界食糧計画の要請があっても、我が国と北朝鮮の間には、まさに人道上の問題、食糧支援なんという問題以前の問題を抱えているんだ、この問題が外交交渉で解決しない限りは幾ら国連のモリス事務局長が要請されても一切支援することはできませんとはっきり言えるかどうか、お答えいただきたいと思います。
石川政府参考人 お答え申し上げます。
 ただいまの茂木副大臣との会談の席上におきまして、茂木副大臣から、北朝鮮に対する御指摘の援助につきましては国交正常化の後にしか行い得ないんだということを明確に申し上げており、先方もこれを了解したという経緯がございます。
吉田(公)委員 今までの政府見解も外務省の見解も、要するに、日朝国交正常化交渉は拉致問題が解決しない限りはあり得ない、こう言ってまいりました。しかし、もともと日朝国交正常化交渉というのは北朝鮮には当てはまらない。普通の国々と国交回復とか外交交渉というならわかるけれども、日本人を拉致しておいて、そして核開発、ミサイル問題、それから食糧支援、経済支援、そして拉致問題、これだけ問題が分かれちゃうわけだよ、日朝国交正常化ということになれば。その一つに拉致問題が入るということについては、私は反対なんだ。だから、拉致問題が解決しないうちは日朝国交正常化交渉は、そんなに、何もこっちが急ぐことはない。もうこうなったら我慢比べですよ、向こうが崩壊するか。
 しかも、今核査察の問題や核廃絶の問題でもうアメリカは乗り出してきているんだから。今イラクもそうだけれども、もう質問時間がないからイラク問題に移れなくなっちゃいましたが、イラクだっていつ戦争になるかわからないですよ、これは。もうブッシュ大統領は、小泉総理や外務大臣あてに、日本はアメリカがイラクを攻撃したときにはどういう対応をしてくれますかということをきっと聞いてきているはずだと思う。
 だから、そういうように、日朝国交正常化交渉なんというのは、拉致問題を抱えたまま、その項目の中に入れて日朝国交正常化交渉をやるなんということ自体がおかしい。だから、あくまでも拉致問題を解決しない限りは日朝国交正常化交渉はできませんということをはっきり北朝鮮側に再度伝えて、やはりびくともしないという、とかく日本の外交というのは軟弱外交と言われてまいりましたが、今度ばかりはきちっとした日本の外交というもののあり方を見せてもらいたい、そう思いますが、大臣、御決意がありましたら。
川口国務大臣 先ほど来お話をしていますように、まず拉致問題、それから核開発問題を含む安全保障問題、これは最優先事項として考えております。この二つについて、委員もおっしゃったように、五分五分の解決というのはないということでございます。したがいまして、我が国としては、北朝鮮に対しては、この問題を解決しなければ正常化交渉は妥結をしない、正常化はあり得ないということを言っているわけです。
 他方で、我が国としては、北朝鮮が責任ある国際社会の一員としてきちんとこの地域の平和、安定を乱さないように行動するということが我が国にとっても重要なことでございまして、正常化ということをてこに北朝鮮がそういう国家になるように、拉致問題そして安全保障問題を最優先課題として取り組んでいきたいと考えています。
吉田(公)委員 質問を終わります。
池田委員長 次に、藤島正之君。
藤島委員 自由党の藤島正之でございます。
 まず、防衛庁に来ていただいていますので、防衛庁の方に最初に質問したいと思います。
 最近、テロだとか不審船、これは北朝鮮の工作船なんですが、こういうものが非常に身近な現実として出てきているわけです。こういうものに対する対策としての自衛隊の訓練ですね、陸海空を含む、現在いろいろやっておられるんでしょうが、海上保安庁あるいは警察、あるいは米軍との共同訓練等々でやっておられるようですが、その概要について御説明いただきたいと思います。
    〔委員長退席、中川(正)委員長代理着席〕
西川政府参考人 お答えいたします。
 国及び国民の安全にとりまして脅威でございますテロあるいは不審船等の事態に対しまして有効に対応するということがまず政府にとって重大な責任である、このように我々考えております。
 このような事態に際しまして、自衛隊と警察機関がそれぞれの機能を最大限に活用し、緊密に連携してすき間なく対処するということが何よりも重要である、このように考えまして、先生御指摘のように、各種の訓練をこれまでしております。
 警察との共同訓練につきましては、実は、本年の五月末までに、全国の全警察と自衛隊の師団レベルとが治安出動に関しましての協定を締結しました。その現地レベルの協定に基づきまして、今後また一層円滑かつ緊密な連携を保つ必要があるという形で、第一弾といたしまして、今月の十八日に、北海道におきまして、北部方面隊と北海道警察との間で共同図上訓練を実施いたしました。この手の訓練につきましては、今後とも準備が整い次第どんどん進めていきたい、このように考えております。
 それからまた、海上保安庁との共同訓練につきましては、平成十一年三月の能登半島沖の不審船事案を契機といたしまして、特に不審船への対処に係ります図上あるいは実動訓練等各種の共同訓練を行ってきたところでございます。とりわけ不審船に係ります共同対処マニュアル、これを平成十一年の十二月に作成いたしましたが、この作成に当たりまして、図上あるいは実動訓練を行った、それから、つくったマニュアルに従ってまた図上演習を行った、そんなこともやっております。それから、ほかに、海上保安庁の観閲式あるいは当方のいろいろ式典等の機会を見つけましても、実動訓練あるいは追跡訓練、射撃訓練等もいろいろこれまでやってきたところでございます。
 このほか、先生御指摘の米軍というようなこともございますが、これにつきましては、今月の二十一日、二十二日の二日間にわたりまして、海上自衛隊、海保、それから米軍、この三者が共同いたしまして、横須賀におきまして、自衛隊ないしは米海軍に対しますテロが発生した、こういう場合を想定して訓練をしたところでございます。
 いずれにしましても、先生が御指摘のとおり、防衛庁といたしましても、自衛隊と警察あるいは海上保安庁との間において、このような共同訓練を引き続き積極的に実施いたしますとともに、必要に応じまして訓練内容の充実改善に努力してまいりたい、このように思っております。
藤島委員 私は新潟県の柏崎の出身なんですけれども、よく帰るんですが、原発の問題と拉致の問題、両方抱えていまして、住民は大変不安がっているんですよ。西川局長も新潟県警本部長を長いことやっておられて、新潟の事情はよく御存じだと思うんです。
 やはり訓練は、単に小銃なんかを扱うだけの基礎的訓練から、本当に実戦向きの訓練が必要なんですね。そういう意味で、私は、北海道でやるのも結構なんですけれども、起こりそうな地域といいますか、そういうのも念頭に置いて訓練をやらないといかぬのではないかな、こう思うんですが、その点はどういうふうに考えていますか。
西川政府参考人 お答えします。
 先生御指摘のとおりでございまして、先ほど御紹介いたしました第一弾の北海道は、あくまでも第一弾でございまして、実は今後、この北海道の訓練を踏まえまして、準備が整い次第、各県警単位でございますが、そこと各師団とが組んで、それぞれの土地の状況に応じた現地レベルでの訓練を重ねる、さらにそれを将来的には統合していく形で、中央の流れ、連携とかそういうものも見直し、いざあった場合に確実な対応をしていくということを現在考えておるところでございます。
藤島委員 その際、今私が申し上げた柏崎は、本当に世界第一の原発と拉致の問題の荒浜海岸といろいろあるわけですから、その辺を十分念頭に置いて計画を練っていただきたいということ。
 それからもう一つ、これは答えづらいかもわかりませんけれども、やはり実戦的な訓練をやる必要があるんですが、その際に相手方がどういうものかというのを念頭に置いて訓練しないといかぬわけです。言葉はよくないんですけれども、仮想敵というか、敵国とまで言ってはぐあいが悪いんでしょうけれども、仮想敵はやはり当然想定しないと、相手がどういう武器で入ってくるのか、どういうのを持って入ってくるのか、これはある仮想敵を想定しないとできないので、私は、もう昔と違うんですから、自衛隊も堂々と、そういう仮想敵を想定しています、こういうことを言って訓練していい時期に来ているんじゃないかなと思うんです。答えづらければ答えなくても結構ですが、もし答えられるようであれば答えてください。
西川政府参考人 お答えいたします。
 先生御指摘のように、今いわゆる脅威がいろいろな形で出てまいりました。従来、警察との治安出動に絡みます協定も、ある意味では大きな暴動とかそういうものをベースにしておりましたが、去年の法律改正等におきまして、いわゆる武装工作員等によるというものが対象になるようなものも法律で認めていただきまして、今回の警察との協定の改正というのも、現場レベルの改正も含めまして、そういうものも含めた形での改正をしておりますので、御指摘のようなそういう武装集団と申しますか、武装工作員を対象にしたものも念頭に置きながらしっかりとやっていきたい、このように思っております。
    〔中川(正)委員長代理退席、委員長着席〕
藤島委員 私が申し上げたいのは、実戦的に、本当にいざとなったときに使える訓練、やはりそういうことを念頭に置いてやってもらう方がいいので、それを聞いた人が何だと言うだろうとか、そういう心配より、むしろ訓練の実効性の観点からはっきりしてやった方がいいだろうと思います。
 いずれにしても、どんどん前向きに検討していただきたいと思います。御苦労さまでした。
 それでは、あと外務省に北朝鮮問題について伺いたいと思いますが、現在九十人ぐらいほかにいるんじゃないかと言われている失踪絡みの件がありますけれども、この点については外務大臣はどういうふうな認識を持っていますか。
 そういうふうな、九十人ぐらいいるんだろうと思っているのか。それは警察の仕事だから、警察が言ってくるまではうちは知らないんだ、外務大臣としては私は知らないんだというのか。あるいは、やはり九十人ぐらいいるだろうという念頭のもとに現在交渉し、今後も交渉していくのか。その点、本当に九十人と外務省は認識しているのかも含め、お答えいただきたいと思います。
川口国務大臣 まず、委員御案内のように、拉致をされた疑いのある人が今どれぐらいいるかというのは、捜査当局で一義的にこれを検討され、把握をなさっているということでございまして、個人的な感想はいろいろございますけれども、外務大臣としては、この十五名の方以外に何人ぐらいの方がいらっしゃるかということについては、これは捜査当局が御判断をなさるということだと考えております。
 そして、国交正常化の交渉をこの前いたしましたときに、警察庁から情報の御提供をいただいて、この十五名の方以外の方についても情報を欲しいということは北朝鮮側に対して伝えてあります。
 いずれにしても、この件については警察当局と連携を密にして事に当たっていきたいと考えております。
藤島委員 先ほどの河野委員の質問とも関係するんですけれども、外務大臣として、警察庁から来ているそういったものを踏まえ、どういう認識のもとに交渉してきているのか、しようとしているのかということなんですよね。警察の方からは十五人ということで、それは確定の部分ですけれども、この九十人というのは、私は現在帰ってきている五人より考え方によってはずっと大きな話だと思うんですよ。それを、今のような外務大臣の答弁では全く納得できないんですけれども。
川口国務大臣 拉致をされた疑いのある方について、これがどれぐらい疑いが濃いケースかということを御判断なさるのは、まさに情報を持っている警察庁の方でなさることでございます。
 したがいまして、そういった御判断を経て私どものところに来た情報について、この前の国交正常化交渉のときに、これは拉致をされたということが断定をされる前の時点で、そういうことについては北朝鮮側に対して情報の提供を求めたということでございまして、先ほど言いましたように、個人的な感想としては、あるいは考えとしてはこれは持っておりますけれども、外務省としては、警察庁を超えて外務省として拉致の疑いのある人がどれぐらいいるということを判断するわけにはまいらない、そういうことでございます。
藤島委員 いると思っているのか、あるいはどれぐらいいると思っているのか、そういう認識が全然ないで、警察の話だ、警察が言ってくるまでは全然そういう認識は持たないんだというのでは、交渉の迫力が全然違うんじゃないですかね。単に調査を依頼しました、こんなことでいいんですか。
川口国務大臣 交渉は十分に迫力を持って、担当をしている者がやっていると私は思っています。
藤島委員 そんなのでは答えにならないんですよね。
 まさに、ある意味では軟弱外交的な一面がそもそも出ているということじゃないですか。口ではきちっとやっている、きちっとやっていると言っても、今の基本的なところが、九十人ぐらいいるんだという認識のもとに相手方とぶつかるのと、まあいるかもしれないがいないかもしれない、警察が言ってくるまでは外務省としては何にも言えないんだ、いるかもしれないから情報だけ下さいよ、そんなことでは、私は本当に交渉をきちっとしていると言えるのかどうかということなんですね。もっと頑張ってもらわなければいかぬ、こういうことなんです。
 その場合に、ですから、そういう認識がきちっとしていないことには頑張るに頑張りようがない、口だけで頑張っていますと、こういうことになるというふうに思うから申し上げているわけです。これは、何回言っても外務大臣はちゃんとした答えをしてくれないと思いますけれども、もう時間なので。
 一つだけ。二十二、二十三日に田中局長が行って協議されたのは、向こうの呼びかけだったのかどうかをはっきりしてもらいたいことと、政府としては、本年じゅうはもう交渉再開はないというふうに判断しているのかどうか。二点だけ伺って終わります。
川口国務大臣 田中局長が大連で先方とコンタクトをしたというのは、政府として、正常化交渉の後、いろいろなルートでコンタクトをしますということを申し上げてきたその一環でございまして、この件については先方から会いたいという話があったというふうに理解をしています。
 それから、もう一つの、ことしじゅうに再開はないと思うかという御質問ですけれども、十一月中はもう、二十七日でございますので、難しいと思っております。ことしじゅうにないかどうかについては、外務省としては、一日も早く正常化交渉あるいは安保協議ができるように最大限の努力をしているところでございます。
藤島委員 終わります。
池田委員長 次に、松本善明君。
松本(善)委員 イラク問題について外務大臣に伺います。
 私は、きょうの質問は、外務大臣の外務大臣としての識見と責任感をお聞きしたい、こういうことでありまして、質問通告でもそのように申し上げました。外務副大臣にお聞きすることもあるかもしれませんけれども、それは私の方から言ったときだけということにしていただきたいと思いますし、委員長にもよろしくお願いをいたします。
 といいますのは、きょうは、外務大臣、勝負服と言われる赤い服は着ておられないけれども、今は毎日赤い服を着てもいいぐらい、外務大臣の仕事というのは本当に重大な、たくさんの人の命にかかわるような、イラクの問題などはそういう問題になってきているんですよ。そういう緊迫感を持って対処しているかどうかということで、立場は違うかもしれないが、先ほどは同僚委員の非常に緊迫した質問も展開をされているんです。
 といいますのは、少しお話をしてから一問一答にしたいんですが、イラクではきょうから査察が始まっているんです。イラクは、十二月八日までに大量破壊兵器計画の全容を申告することになっている。この状況いかんによっては、アメリカは単独攻撃をするかもしれない。その場合には、これはイラクだけじゃなくて、戦火や被害が中東全体に広がって大混乱になるかもしれないという大問題に直面をしているんですよ。その危機感があるかどうかという問題になるんです。
 一四四一決議では、イラクの新たな義務違反が起これば安保理事会を開いて解決することになっていることは、もう繰り返し西田総合政策局長が私の質問でも答えております。しかし、アメリカは、ブッシュ大統領初め政府首脳、ネグロポンテ国連大使は、これは公式の外交発言ですが、安保理事会の決議はアメリカの手を縛るものではないという趣旨のことを公言していることは、これは私はこの委員会で紹介をし、そして外務省当局も認めております。アメリカが安保理事会の決議なしで武力行使を行うならば、先ほど申しましたような極めて緊迫した事態になりますし、これは、戦火の拡大というだけではなくて、国連中心主義の世界秩序が乱れるという問題でもあります。
 この一四四一決議というのは、イラク問題の平和的解決を求める世界の世論が、自動的武力行使を許さない決議を全会一致で決めて、イラクにこれを受諾させたんです。イラク問題は国連中心で解決をしなければならないということは明白であります。
 私は、アメリカが安保理事会の決議なしに武力行使をすることに反対を表明すべきだと。なぜしないのか。もう緊迫をしているんですよ。今までの外務大臣の答弁でいけば、あるいは政府の答弁でいけば、アメリカは武力行使をすると決めているわけではない、この答弁の繰り返しばかりが起こっています。その答弁のとおりだというならばそうだと、違うというならば別ですが、そうだというならばそうだということだけお答えいただきたい。
川口国務大臣 イエス、ノーで答えろということでございますけれども、今の御質問に対してイエスともノーとも、直ちにそういう形でお答えすることが非常に難しいと思います。
 委員がおっしゃられるように、現在、毎日毎日緊迫をした情勢が続いているということであって、それで我が国としてはどう対応すべきかということについては真剣に検討している、そういうことでございます。
松本(善)委員 今申しましたように、十二月八日にも場合によっては始まるかもしれないという事態に直面しているんですよ。だから、矢野副大臣も先ほどは、仮に武力を行使した場合という言葉も使われました。水面下だけで検討しているんだということも答弁をされました。外務大臣は、邦人の引き揚げの模擬訓練も行っているという答弁もしました。これは、十一月二十二日、本委員会です。これはアメリカの攻撃を前提にしている答弁ですよ、すべて。これはもう、そういうアメリカの軍事攻撃を前提にしたことを行動でもやり、答弁でも言っていながら、それはまだ決まっていない、これでは答弁にならないんです。
 私は、率直に言って、決まっていないのではなくて、何らかの形の支援をするということの検討をしている、その支援内容は言えないというのが真相だと思いますが、違いますか。簡潔にお答えをいただきたい。違いますなら違いますだけ言ってください。
川口国務大臣 先ほど来申し上げておりますように、我が国としては、仮に武力の行使があったらということについては先ほど来申し上げているわけですけれども、そういう前提には立ちませんが、仮にそういうことがあった場合には、我が国は、まさにこの問題、大量破壊兵器の問題というのは我が国みずからの問題であるという認識をまず持っている、そういうことでございます。
 そして、国際社会の責任ある一員として、我が国としてどういうような対応をすることが適切なのか、何が可能なのか、そういったことについてさまざまな検討をしているということは、先ほど来申し上げているとおりでございます。
松本(善)委員 今の御答弁は、事実上そういうことがあれば支援をする、その中身を検討しているという御答弁であろうかと思います。
 私は、こういうときになってくれば、これははっきり反対を言うべきである。攻撃を容認するということではなくて、反対を言うべきである。なぜ反対が言えないんですか。そのことを簡潔に、日本政府は反対ということを言う政策判断はしていないならしていないということをまず言っていただいて、そして、それはなぜなのか御答弁をいただきたい。
川口国務大臣 現在、国際社会が一丸となって、イラクに対して、国連の決議を守る、このために最大限の圧力をかけ、そしてそのために努力をしている、我が国としても外交努力をしているということでございます。現在、国際社会にとって一番大事なのは、イラクに対して最大限の圧力をかけるということであると思います。
松本(善)委員 それも繰り返しの答弁なんですよ。
 私ども、イラクに対する態度については変わらないんです。そして、全世界の、アラブ諸国まで含めて、それをイラクに求めて、そして全会一致の安保理事会の決議ができたんですよ。問題は、安保理事会の決議に反してアメリカ、それはもう明白に、この委員会での答弁でも、自動的に武力の発動にはつながらない、そして、何らかのことが起これば安保理事会で決めるんだと、もう何遍も答弁している。にもかかわらずアメリカが武力の行使をするということは、これは国連憲章違反です。それから、アメリカが賛成をした一四四一決議にも違反をしているんです。
 私は、一般論で聞きます。普通なら、一般論、条約論であれば条約局長ということになりますけれども、外務大臣がこの問題について、一体、国連憲章や一四四一決議についてどの程度知っているのかということも含めて聞きたい。そういう点で、どこの国であろうと、安保理事会の決議なしに武力行使をするのは国連憲章違反だし、一四四一決議にも違反をしていると思うけれども、外務大臣はそうは思うか思わないか、端的にお答えいただきたい。
川口国務大臣 一般論として言えば、どの国も自衛権を持っていまして、安保理の決議がなくても自衛権を行使できるということであると思います。
 今回の一四四一、あるいはイラクということの関係で申し上げますと、安保理の決議の一四四一は、違反があった場合に、直ちに、即時に会合をするということになっているわけでございます。そして、実際にどういうような状況で仮に、仮定を委員がおっしゃっていらっしゃいますので仮定の話として申し上げて、どういう状況で米国が武力行使をすることになるか。これも、さまざまなケースがあると思います。具体的に、そのケースケースによると考えております。それから、米国は国際法を守って行動する国である、そういうふうに考えております。
松本(善)委員 一四四一で自動的に武力行使はできないということをアメリカの国連大使が認めていながら、しかし、武力行使をすることがあるということを明言しているという事態なんですよ。だから、全世界が心配をしているんですよ。それが起これば、先ほど言ったように、国連中心の国際秩序が壊れるだけではなくて、それは、アフガニスタン問題と比較にならないぐらいの大混乱と、それから多数の人の命が失われるんですよ。その問題について、真っ正面から外務大臣は取り組んでいるとは思えない答弁です。
 総理は、この問題について、戦争によらない解決のために外交努力を行うと。これは、十月三十日の党首討論で、我が党との関係で答弁をされたことであります。もしそれが本当ならば、今、反対だということを明言すべきです。それでなければ、事が起こったらば、そういうことは言えなくなるんですよ。違いますか。武力行使をやった場合には、もはやそのときには何も言えないです。そして、その支援だけを検討しているのと違いますか。事実はそうだと思う。その支援の仕方をどうするかということを検討しているのではないですか。率直にお答えをいただきたい。繰り返しの答弁はお断りします。
川口国務大臣 総理がおっしゃっていらっしゃるのは、今、国際社会がマキシマムの、最大限の圧力をイラクにかけるということが大事であって、その一環として外交努力があるということでございまして、我が国は、これは時間がかかりますから言いませんけれども、ただいま現在、まだそれを行っているところでございます。仮に米国による武力行使があっても、この外交努力というのはずっと引き続き必要であると思います。
 武力行使ということに関連して、最大限の圧力をかけるということは、ありとあらゆる可能な圧力のかけ方、使うことができるものを使って圧力をかける、そういうことであると思います。
松本(善)委員 仮に武力行使があった場合ということを、初めて外務大臣がおっしゃられました。これは、全世界の人が心配している。仮の問題ではないんですよ。これは、マスコミを含めまして、それから各国を含めまして、全部そうです。
 私は、最後に伺いますが、アメリカの安保理事会決議なしの武力行使、これは、自衛権ということをさっき触れられましたけれども、自衛権というのは、国連憲章で認められているのは、安保理事会が関与するまでの話なんですよ。そういう自衛権の行使という理由でアメリカがいつまでもいつまでも武力の行使ができるなんということを認めたら、これは、アメリカが単独で戦争することをできるということを認めるのと同じです。質問は、安保理事会の決議なしにアメリカがイラクに対して武力行使をした場合には、一切の協力を拒否するかどうか、その一点だけお聞きをしたいと思います。
川口国務大臣 イラクが安保理の一四四一の決議に違反した場合に、米国が武力行使をすることができるかどうかということについての御質問ですけれども、まず、今の一四四一の決議ですけれども、これは、大量破壊兵器に関する査察受け入れをイラクが受諾をするということを停戦条件とする六八七、これを含めまして、イラクがこれまでも、また依然として、関連決議の諸義務に違反をしているということを決定しているわけでございます。
 そして、その上でこの決議は、今後さらにイラクが諸義務に違反をした場合には、この決議に基づいて安保理に報告をされて審議をされるということが規定されているわけです。そして、さらにこの決議は、この文脈において、安保理が、イラクはその継続的な義務違反の結果、深刻な結果に直面するということを繰り返し警告してきているということを想起いたしているわけでございます。
 いずれにいたしましても、この決議は、イラクが、即時、無条件、無制限の査察を受け入れて、すべての安保理決議に対してこれを遵守するということを強く求めるということでございまして、我が国としても、これについて必要な外交努力をやっていきたいということを考えております。
松本(善)委員 終わりますけれども、やはり、さっき河野さんが質問をされて、情けないと。これで政権を担当する資格があるのかと心配するという、そういう危機感からの質問ですよ。与党の質問ですよ、野党の質問じゃないです。
 私は今の答弁を聞いて、大変単純な質問なんですよ、安保理事会の決議なしにアメリカが武力行使をした場合に一切の協力を拒否するかどうかということだけ聞いているのに、それについては一言の答弁もない。私は、もう外務大臣やめられた方がいいと思います。
 終わります。
池田委員長 ちょっと待ってください。今の端的だという質問に対して、先ほどの答弁は全く答えをしていないと思うんですよ、委員長として。だから、もう一度、ちょっと答弁をしていただければ。(発言する者あり)いや、委員長の判断ですから。お願いします。
 では、川口外務大臣。
川口国務大臣 先ほどの御質問に関してですけれども、米国は、国際社会の責任ある国家として、国際法にのっとって行動をとる国家であると私は考えております。
松本(善)委員 それはアメリカ信仰ですよ。
 終わります。
池田委員長 次に、東門美津子さん。
東門委員 けさから、ここ外務委員会での質疑を伺っていまして、本当に皆さん、委員の一人一人、ほとんど同じような思いでいるんだろうなということを初めて知ることができました。どの委員の口からも、本当に外務省、これでいいのか、今のような答弁でいいのかということがありましたけれども、私も、ずうっとそれを感じております。
 質問に入りますけれども、きょうは、まず最初に、国際刑事裁判所設立条約についてお伺いいたしたいと思います。
 ことしの七月一日、国際刑事裁判所、いわゆるICCを設立するための条約、いわゆるローマ規程が発効しました。ICCは、集団殺害、いわゆるジェノサイドの罪、人道に対する罪、戦争犯罪など、国際社会にとって最も深刻な罪を犯した個人を国際法に基づき訴追し、処罰するための常設の国際法廷であります。
 冷戦終結によって、世界を二つに分けるような大規模な戦争の可能性は低くなりましたが、民族、人種、宗教などを理由とする地域紛争は、かえって増加する傾向にあります。そして、旧ユーゴスラビアやルワンダ紛争などで見られたように、住民が犠牲になる、そのような残虐な行為が行われることもしばしばありました。
 ICCは、そのような犯罪行為を行った個人の責任を問う初めての国際法廷であり、ICCが存在することにより、これらの犯罪に対する抑止力となり、また、武力による支配から法による支配へと世界を大きく前進させるものとなるはずであります。
 そこで、このような裁判所が発足することの意義について、政府はどのように認識しているのか。また、裁判官の選任、裁判所の組織編成などは今後具体化することになりますが、条約の内容としては公正な裁判を十分確保できるものとなっているのか。ICC設立の意義、そして条約の内容に対する評価についてお伺いいたします。
林政府参考人 お答えいたします。
 国際刑事裁判所、ICCと略称しておりますけれども、東門先生御指摘のとおり、これは、国際社会におきます最も深刻な犯罪の発生を防止し、もって国際の平和と安全を維持するという観点から、国際刑事司法の発展におきまして非常に画期的な制度であるというふうに私どもとしては評価しておりまして、この設立の段階から、最後、ローマにおきまして外交会議がございましたけれども、ここにおきましても非常に積極的に参加いたしまして、この採択のために種々努力をいたした経緯もございまして、この設立というものを一貫して支持し、その実現に向けて努力してきておるということが一点でございます。
 それから、この制度の内容でございますけれども、これにつきましては、先ほども御紹介のありました集団殺害等四つのカテゴリーの犯罪、最も深刻な犯罪と国際社会によって考えられる犯罪でございますけれども、これにつきまして、その個人の刑事責任を追及する常設の裁判所という意味で、極めて新しいものでございます。そのための制度として、外交交渉の結果でございまして、種々の制度を設けておりますけれども、個人の人権といいますか、いわゆる刑法総則的な考え方で遡及効を認めないとか等、いろいろ人権にも基本的に配慮した形の規定ぶりという形でできております。
 御指摘のとおり、ことしの七月一日に発効したわけでございますけれども、現在、まだ稼働しているわけではございません。これは、裁判官それから検察官等の主要な構成員の選出など、具体的な活動開始に向けて今準備を行っているところでございまして、裁判官につきましては、まず締約国が候補を出すわけでございますけれども、これは来年、たしか二月ぐらいに選挙がなされるという方向で今準備が進められている、こういう状況でございます。
東門委員 長い御答弁でしたけれども、高く評価しておられるということでしたけれども、確かに、その条約採択に際しては、日本政府も積極的に貢献しているということは私も存じております。そして大臣も、条約が発効したことに対して心から歓迎するという談話を七月一日に発表されたことも存じております。それにもかかわらず、国内法が未整備であるとして、我が国が現在に至るまで署名も批准も行っていないということは、とても残念なことだと思います。
 ICC設立条約については、欧州諸国が積極的に署名、批准を進める一方、米国は、ブッシュ政権になってから反対の姿勢を強めて、ことし五月には、既に二〇〇〇年末に行っていた条約への署名を撤回しました。中国やロシアもまだ署名していません。このように、G8のメンバー、国連安保理常任理事国のメンバーの間でも対応が分かれている状況ではありますが、我が国としては、ICC設立の意義も踏まえて、国内法整備など条件が整い次第ということになりますか、このICC設立条約を署名、批准すべきだと思うわけですが、ICC設立条約批准に向けての政府の取り組み、その方針を伺いたいと思います。
林政府参考人 若干技術的でございますけれども、この条約につきましては、署名そのものは、二〇〇〇年の十二月三十一日をもちまして署名の期限が来ておりますので、署名というプロセスはもう起こらないということでございます。
 ただ、まさに、いわゆる締結、加入という形になるかと思いますけれども、これにつきましては、先ほど申しました、この設立を一貫して支持しているという基本的な立場に立ちまして、現在、規程の内容、それから各国におきます法整備の状況というものを精査いたしまして、これは国内法令との整合性について相当広範な検討を必要とするところがございますので、このための必要な検討を行っているというのが今の実情でございます。
東門委員 政府は、条約締約国になれない理由として、国内法整備のめどが立っていないことを挙げておられるわけですが、過去の国会答弁において、整備されていない国内法の例として、ジュネーブ諸条約が規定する戦争犯罪について国内法令がないことを挙げ、有事法制とICCを結びつけるような発言をしておられます。
 ことし五月二十九日の衆議院武力攻撃事態対処特別委員会では、当時の植竹外務副大臣が、「ICCが管轄権を行使し得るとされております戦争犯罪につきましては、ジュネーブ諸条約の重大な違反行為が該当すると規定されておりますが、しかし、同条約実施のための国内法令については、これまで未整備であったわけであります。したがいまして、今後、この武力攻撃事態対処法制としまして、ジュネーブ諸条約等の国内実施のための法整備が行われるということになりますれば、我が国によるICC規程締結に向けて大きな前進であると考えるところであります。」と答弁しておられ、七月四日の参議院外交防衛委員会においても、当時の海老原条約局長が同じような趣旨の答弁をしておられます。
 しかし、必ずしも有事法制がなければICC設立条約が批准できないというものではないのではないかと思うんですね。条約では、ICCは各国の刑事管轄権を補完するものであるという補完性の原則をとっています。憲法で戦争を放棄している我が国の国民が戦争犯罪を犯すことは考えにくいわけですが、仮に現在の我が国の法制のように戦争犯罪が規定されていない状態で日本人が戦争犯罪を犯した場合や日本国内で戦争犯罪が行われた場合、日本の裁判所では裁判できないが、補完性の原則に従ってICCにおいて裁判にかけるということになるだけで、そのことの是非についての議論はあるにしましても、法理論上は有事法制がなくてもICC設立条約を批准できるのではないかと思うんです。
 それで、有事法制とICC設立条約の関係について、これは大臣の御見解を伺いたいと思います。大臣にお願いいたします。
川口国務大臣 植竹副大臣がその時点で申し上げたことというのは、そういった諸制度、諸法制の整備を行う必要がありますので、その意味で、有事法制の議論というものがあれば、それがその促進をすることになるだろう、そういう趣旨で申し上げたというふうに思います。
 いずれにしても、国内の規定がありませんと締結できませんので、例えば扇動ということを国内法上どう位置づけるかとか、いろいろな問題がほかにもございますので、そういったことについて国内の法制の枠組みをきちんと精査をいたしまして、そして、必要なことをやっていくということだと考えております。
東門委員 今の御答弁、必ずしも有事法制との関係はないということなんですよね。有事法制が成立しなければこの条約の締結はできないということではないと、それを否定しておられると理解していいですね。
川口国務大臣 そういう意味で申し上げたのではありませんで、有事法制で決めようとしていること、これは必要なことなんですね。ですから、それを有事法制という枠組みで仮にやらないとしても、国内の法制度を調べて、必要である国内の法制はきちんとつくらなければいけない、いかなる名前であれ。それが必要だ、そういうことは変わらない、そういうことでございます。
東門委員 アメリカは、このICCの設立条約に反対しています。それは御存じですよね。その理由として、海外に駐留する米軍兵士がこの条約の対象となる犯罪を犯してICCに起訴されることを懸念しているからであると言われているわけです。沖縄での米兵の犯罪に関する地位協定の問題でも同じことが言えますが、米国は、他国や国際機関の司法機能を全く信用していないように感じられます。他国に対しては人権問題を声高に指摘しながら、自国の兵士が他国民の人権を侵害したときにはその裁判を拒む。米国の身勝手さ、ダブルスタンダードには本当にあきれてしまいます。
 ICC設立条約は、国際法委員会が一九九四年に国連総会に提出した原案に基づき、一九九五年以降、国連において各国の専門家の間で十分に検討されてきたものであります。そして条約では、裁判官の資格、選任、あるいは裁判所の組織に関しても、公正を確保するための措置を数多く盛り込んでいます。国連安保理が決議により、ICCに対し、ある事件の捜査及び訴追を行わないよう要請することもできます。さらに、十七条で補完性の原則が定められており、米国が自国で犯罪を犯した米兵を裁判にかけるなら、ICCで訴追されることはないわけです。米国が懸念するように、米兵が不当に扱われることはないはずなんですね。
 政府は、米国のICCに対する姿勢についてどのように認識しておられるか、我が国が米国の姿勢に影響されることはないと言い切れるか、大臣の見解を、これは大臣にぜひお願いしたいと思います。米国の姿勢に影響されることはないですよねということです。
池田委員長 では、まず林条約局長、簡潔にお願いします。
林政府参考人 一点だけ申し上げておきますけれども、米国につきましても、ICCに反対で、これをつぶさなきゃいかぬとか、そういう態度をとっているわけではございませんで、米国が申しておりますのは、米国自身が、みずからが締約国でないにもかかわらず、自国の国民が犯罪の実行地国等の付託によってこのICCに引き渡されるおそれがあるということについて、米国の憲法上の考え方といいますか、そういうところから懸念を持っているということでございます。
 私、アメリカの代弁をする必要はないかと思いますけれども、いずれにしても、我が国といたしましては、そこは主体的に判断するということでございます。
川口国務大臣 我が国として、今この条約を締結することが可能であるかどうか、それを担保する国内法令があるかどうかということを精査しているということでございまして、それを精査し、必要な法令を用意し、その上で、我が国としてはICC条約を締結することができるようになるということでございまして、この過程を主体的に我が国としては進めていく、そういうことでございます。
東門委員 たくさん質問が残ってしまいました。海老原局長においでいただいたんですが、できれば次の委員会で質問させていただきます。
 ありがとうございました。終わります。
池田委員長 これにて本日の質疑は終了いたしました。
 次回は、来る十二月四日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後零時三十七分散会


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