衆議院

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第13号 平成15年6月13日(金曜日)

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平成十五年六月十三日(金曜日)
    午前九時三十一分開議
 出席委員
   委員長 池田 元久君
   理事 今村 雅弘君 理事 蓮実  進君
   理事 水野 賢一君 理事 森  英介君
   理事 首藤 信彦君 理事 土肥 隆一君
   理事 丸谷 佳織君 理事 藤島 正之君
      伊藤 公介君    植竹 繁雄君
      小池百合子君    高村 正彦君
      下地 幹郎君    新藤 義孝君
      武部  勤君    土屋 品子君
      中本 太衛君    松宮  勲君
      宮澤 洋一君    伊藤 英成君
      木下  厚君    今野  東君
      鳩山由紀夫君    白保 台一君
      東  順治君    松本 善明君
      東門美津子君    鹿野 道彦君
      柿澤 弘治君
    …………………………………
   外務大臣         川口 順子君
   内閣官房副長官      安倍 晋三君
   外務副大臣        茂木 敏充君
   外務大臣政務官      新藤 義孝君
   外務大臣政務官      土屋 品子君
   政府参考人
   (内閣官房内閣審議官)  村田 保史君
   政府参考人
   (内閣法制局第二部長)  山本 庸幸君
   政府参考人
   (警察庁生活安全局長)  瀬川 勝久君
   政府参考人
   (外務省大臣官房長)   北島 信一君
   政府参考人
   (外務省大臣官房参事官) 齋木 昭隆君
   政府参考人
   (外務省総合外交政策局長
   )            西田 恒夫君
   政府参考人
   (外務省北米局長)    海老原 紳君
   政府参考人
   (外務省中東アフリカ局長
   )            安藤 裕康君
   政府参考人
   (外務省経済協力局長)  古田  肇君
   政府参考人
   (外務省条約局長)    林  景一君
   政府参考人
   (海上保安庁長官)    深谷 憲一君
   外務委員会専門員     辻本  甫君
    ―――――――――――――
委員の異動
六月十三日
 辞任         補欠選任
  白保 台一君     東  順治君
同日
 辞任         補欠選任
  東  順治君     白保 台一君
    ―――――――――――――
六月二日
 ILO百七十五号条約の批准に関する請願(小沢和秋君紹介)(第二八三三号)
同月六日
 イラクへの武力攻撃反対に関する請願(川田悦子君紹介)(第二九八一号)
同月十日
 子ども売買、子ども買春及び児童ポルノに関する子どもの権利条約の選択議定書の批准に関する請願(石毛えい子君紹介)(第三三六五号)
同月十一日
 ILOパートタイム労働条約の批准に関する請願(田並胤明君紹介)(第三五四九号)
同月十二日
 女子差別撤廃条約選択議定書のすみやかな批准に関する請願(山内惠子君紹介)(第三七九八号)
 同(川田悦子君紹介)(第三九二一号)
 同(石井郁子君紹介)(第四〇二二号)
 同(瀬古由起子君紹介)(第四〇二三号)
 同(中林よし子君紹介)(第四〇二四号)
 同(藤木洋子君紹介)(第四〇二五号)
 同(松本善明君紹介)(第四〇二六号)
 ILOパートタイム労働条約の批准に関する請願(高木義明君紹介)(第三九二〇号)
 同(水島広子君紹介)(第四〇二〇号)
 ILO百七十五号条約の批准に関する請願(瀬古由起子君紹介)(第四〇一六号)
 同(中林よし子君紹介)(第四〇一七号)
 同(藤木洋子君紹介)(第四〇一八号)
 同(松本善明君紹介)(第四〇一九号)
 子ども売買、子ども買春及び児童ポルノに関する子どもの権利条約の選択議定書の批准に関する請願(石井郁子君紹介)(第四〇二一号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 国際情勢に関する件


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     ――――◇―――――
池田委員長 これより会議を開きます。
 国際情勢に関する件について調査を進めます。
 この際、お諮りいたします。
 本件調査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房長北島信一君、同じく大臣官房参事官齋木昭隆君、同じく総合外交政策局長西田恒夫君、同じく北米局長海老原紳君、同じく中東アフリカ局長安藤裕康君、同じく経済協力局長古田肇君、同じく条約局長林景一君、内閣官房内閣審議官村田保史君、内閣法制局第二部長山本庸幸君、警察庁生活安全局長瀬川勝久君、海上保安庁長官深谷憲一君、それぞれの出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
池田委員長 御異議はないと認めます。よって、そのように決定いたしました。
    ―――――――――――――
池田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。東順治君。
東(順)委員 大臣、副大臣、委員長、おはようございます。若干の質問をさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 最初に、イラク、北朝鮮の基本的なところを伺いたいと思います。
 イラクにつきましては、イラク新法がまさに閣議決定、提出されるか否か、そういうところでございますので、考えられている法案の中身だとかというところにまでは言及はいたしませんが、基本的なところを一点だけ伺わせていただきたいと思います。
 それは、現在イラクで治安維持に当たっている米、英、ポーランド軍、これがフランクス連合軍司令官が引き続き指揮をとっている、こう考えるんですが、この治安維持活動に当たっている占領軍、この一四八三のどの箇所が占領軍の治安維持活動を裏づけているのか、ここについて伺いたいと思います。
 と申しますのは、我が国の自衛隊、これは治安維持活動に当たっている部隊の後方支援にという考え方がございます。そういうことから考えますと、現在の治安維持に当たっている占領軍の一四八三上の位置づけ、この関係性というところをより明確にするということが私は国民に対する説明責任として一つ大事なポイントなんだろうと思います。したがって、この点についてまずお伺いをいたします。
川口国務大臣 おっしゃるようにきちんと御説明をすることは大事だと考えます。
 それで、御質問についてですが、安保理決議の一四八三の前文におきまして、まず、統合された司令部、当局でございますが、のもとにある占領国としての米英の関係国際法のもとでの特定の権限、責任及び義務を認識いたしております。
 そして、その上で主文パラ四におきまして、当局に対し、国連憲章及びその他の関連国際法に従い、特に、安全で安定した状態の回復及びイラク国民がみずからの政治的将来を自由に決定できる状態の創出に向けて努力することを含む、領土の実効的な施政を通じてイラク国民の福祉を増進することを要請いたしております。
 したがいまして、安保理決議一四八三は、米英軍がイラクに展開をし、治安維持等の活動を行うことを要請しているというふうに考えられます。
東(順)委員 続きまして、北朝鮮問題でございます。
 日を追って中国という国の、北朝鮮問題に対する対処のこの国の重要性というものが増してきておりますけれども、両国のこれまでの歴史的な経緯、関係、そういうことから考えれば私も当然のことだろう、こう思います。非常に重要なかぎを握っている国がこの中国という国だろうと思います。
 そこで、例えば、この二月に中国は、北東部から北朝鮮につながる重油の供給パイプラインというものをとめて北朝鮮に核開発を断念するように翻意を促しただとか、あるいはまたこの三月ですか、センキシン副首相が金正日総書記に直接に会いまして多国間協議への参加を説得した。そのことでもって、四月下旬の米中朝三カ国会談を実現させるための汗をかいた等々の報道というものが出ておりますけれども、外務省当局は、これらの中国の動きというものを通して、北朝鮮問題の打開のために中国という国が今積極的なイニシアチブをとっていると見ておられるのかどうなのか、まずこの点を伺いたいと思います。
川口国務大臣 北朝鮮が国際社会に責任ある国家として行動するようにするために、中国の役割は大変に重大だと思います。中国が具体的に北朝鮮にどのようなことをやっているかについていろいろな報道がございますけれども、中国は努力を今している、御質問にお答えをすれば、働きかけを一生懸命行っているというふうに私は考えています。日本も中国が北朝鮮に働きかけるのは非常に重要だと考えておりますので、その観点から、中国が北朝鮮に対しての行動を促すように中国に対しての働きかけを今までやってきております。
 中国はこの点については、北朝鮮に核があるということについては反対であるという立場を明確にしておりますし、それから、平和的に解決をするということについてもはっきり言っておりまして、日本、韓国、アメリカと利害を共有している国であると思います。
 それから、私が中国に対して、先般中国を訪問しましたときに李肇星さんとこのお話をいたしましたし、また今月の十七日から二十日までASEANの会議がカンボジアでございまして、その折に李肇星外務大臣と二国間の会談をすることになっております。そこの席上におきましても、日本から北朝鮮の問題について中国が引き続き協力をしていくようにということを求めたいと思っております。
 最新の状況を踏まえて、中国の外務大臣とこの点について議論をしたいと思います。
東(順)委員 よくわかります。
 そこで、中国という国としっかり日本も連携をとりながら、なおかつ北朝鮮に対する影響力ということを考えると、中国の位置は非常に大きい、役割が大きい。イニシアという言葉までは大臣は言及されませんでしたけれども、言外にそういうところを望んでおられるというふうに私は理解します。
 今お話が出ましたASEANの国際会議、早くも北朝鮮の白南淳さん、外務大臣が出席をしないというようなことを表明されましたが、やはりここは、例えば中国を通して出てきなさい、出てこい、出てこいというか出てきなさい、参加をすべきであるというようなことを中国に働きかけてもらう日本側の働きかけ、あるいは今もお話がございましたけれども、重ねてこのバイの、日中の協議、これをさらにこの国際会議以後も、日本としては、積極的にこうやって開いていきたい、中国に対して呼びかけていきたい、そういう具体的な中国への働きかけ、そういう計画が今後もおありかどうか。
 特に、この国際会議へ北朝鮮の外相が出てくるように中国を通して呼びかけてもらう、翻意してもらう、そういうところまで踏み込んだ積極的な中国への呼びかけというものを考えておられるかどうか、この辺はいかがでしょうか。
川口国務大臣 一連の会議の中で、北朝鮮は、ARFについてはメンバーでございます。ほかの会議はメンバーではないわけですが、そのARFの議長国であるカンボジアに対して、北朝鮮の白南淳外務大臣が出席をしないという連絡があったということは聞いております。私も、昨年、ARFの場に出席をした白南淳外務大臣と外務大臣会談というのを初めてやったわけでございまして、ことし、それが望めないということになっております。これは大変に残念でございます。
 北朝鮮が、こういったASEANの国や、あるいはほかの、アメリカですとか幾つかの国が集まる場でみずから自分の見解を述べ、そして、ほかの国の意見を聞くということは意味がある、また対話の促進につながっていくと思います。
 今後、白南淳外務大臣が出席をしないということになって、だれか代理を送るということを言っております。これがだれになるかというようなことについて情報をとり、諸般の状況を勘案しながら、北朝鮮の出席をどのような形で慫慂するかということについては検討をしたいと思っております。
 議長国のカンボジアは、今まで北朝鮮とは比較的近い関係を持っている国で、議長国としても相当に働きかけは既に行っているというふうに承知しております。今後については、意見交換をしながら検討したいと思っております。
東(順)委員 どうか積極的な働きかけをよろしくお願い申し上げます。
 さて、続きまして、私は、在外公館について何点か御質問をさせていただきたい、こう思います。
 ことしの三月の二十五日ですか、公表された外務省の行動計画によりますと、公館の設置状況の見直しについて、日本の在外公館の水準はG8で最低水準、こういう見方をなさっておられるようですが、ODAなんかは世界でも、世界一を誇るといいますか、大変な実績があるんですが、なぜ在外公館がG8で最低水準ということなのか、このところを簡単に、具体的にどういうことなのかお聞きしたいと思います。
北島政府参考人 お答え申し上げたいと思います。
 先進国の中で最低水準ということを書きましたのは、実際の在外公館の数でございます。これを先進国の間で比較しまして、日本の場合ですと、大使館、総領事館、領事館、国際機関代表部は、すべて含めまして百八十八でございますけれども、これが例えばG8の中では、カナダを除くと、それ以外の国との関係で少ないということに着目しまして、そういう記載をしたということでございます。
東(順)委員 例えば、アメリカというのは、今御報告ありましたように日本が百八十八に対して、二百五十八。あるいはまた、イギリスも二百四十八。フランスも二百七十二。ドイツも二百十二。イタリアも二百三十。やはり大変に大きな開きがあるんですね。
 これは、数だけで国際社会に対するプレゼンスというか、国際社会とのかかわりというものははかれないかもしれませんけれども、やはり在外公館というのはその国の外交の出城ですから、出城の数が少ないということは、外交戦略はやはり劣ってしまうということにもなりかねないわけで、私はこれは、みずからG8で最低水準というふうに言わざるを得ない外務省の苦衷というものを感じます。
 これは、財務当局との関係とか、いろいろなことがあるんだろうと思いますが、ここはやはり日本は、世界はますます小さくなっていっているわけですから、総理も、この国の国力に見合った外交、あるいはイラク支援にしても、国力に見合った力を、貢献を、こういう発言をしておりますし、当然のことだろうと思います。そういうことから考えたらば、このG8の最低水準という、こういうところをやはり早く脱していかなければおくれをとるなということを率直に思います。
 例えば、大臣、目を中国に転じてみると、重慶というところがございます。この重慶市というのは、御案内のように、人口が三千万の世界一の市ですよ。巨大都市です。しかも、内陸部最大の工業都市。それで、こういう言葉があるんですね。重慶の高速成長という言葉がある。高速に成長している町。重慶の高速成長、こういう言葉が冠せられるような、非常に発展を続ける巨大な工業都市でございます。
 私は、例えば三峡ダムということが今クローズアップされてきていますが、そういうこと一つ見ても、中国という国がこの重慶というところを、今後の中国発展の最重要拠点の一つとして大変大きい位置づけをしていると思います。重慶に行ってみて、そのことをもう痛いほど感じました。
 こういうことから見て、さて、この重慶での諸外国の在外公館と我が国という関係を比べてみますと、例えば、重慶市でイギリスが総領事館というものを持っている。あるいはカナダも持っている。そして、この重慶市の左隣、四川省の成都市、ここでアメリカが総領事館を持っている。十八年前にもう既に総領事館をアメリカはつくっているんですね。それから、右隣の湖北省の武漢市、ここではフランスが総領事館というものを持っている。
 やはり先進国は、この重慶という地の、要衝というか、これは非常に重要なところだ、この中国の南西部開発のために中国がいかに力を入れているかということをよく見抜いた、その視点の上でここを、大事なところだな、押さえようということでの総領事館、こういうことだと思うんです。
 しかし、まことに残念なのは我が国でございます。我が国は、この重慶市に実はまだ、北京大使館管轄下の出張駐在官事務所、こういうものしかない。当然、その職員の数も少ない。出城としては非常に小ぶりな話で、やはり総領事館と出張事務所じゃ、これは格が違いますよね。そうすると、日本というのは重慶というところにこういう見方しかないのかと中国はやはり思われるでしょう。あるいは、諸外国もしめしめと思うかもしれない。
 そういうことから考えたときに、どうして出張駐在官事務所ということでよしとしておるのか、そこをまず伺いたい。これは大臣、いかがでしょうか。
川口国務大臣 委員がおっしゃられますように、重慶というのは中国の内陸部にあって、大変に重要な、また大きな町でございます。情報収集という観点からも重要ですし、経済協力という観点からも重要ですし、そして、我が国の企業が進出をしているという意味でも重要でございます。さまざまな点で我が国にとって重要性が高まっているというふうに認識をいたしております。
 それで、この場所を含めて、どのような場所に在外公館を設置するのかということが一つの大きな問題であるわけですけれども、予算、定員、この効率的な運用を図らなければいけない、そういう中でこれは動いている話でございます。そういったことを総合的に考えるということで判断をする必要があるということでございます。
東(順)委員 私もそのとおりだと思うんですよという大臣の思いというものがにじみ出て、しかし、そこは総合的に判断しなきゃいけないという言葉の中に、財務当局との関係みたいなところが当然あるんでしょうね。
 しかし、ドメスティックな視点だけで在外公館なんというのを見ていると、これはますますおくれをとりますよ。そういう意味で、外務当局は思いは十二分におありかと思いますので、私も全く思いを共有するので、ここは本当に積極的にこういう発言、声を大きくしていかないと、私は、二十一世紀という時代は、日本はますます取り残されていくということになろうかと思います。
 こういう重慶ということに対する私のこだわり、もう一つ実はこだわりがございます。それは、発展する工業都市はいいんですけれども、そこから惹起しているところの大気汚染、公害という大変大きな問題がここにはございます。
 私も、重慶に行ったときに、もう飛行場におりたら途端に大変なにおいがする。どうしてこれなんだ。
 しかし、これはまた懐かしいにおいだったんです。なぜかというと、私は北九州工業地帯で生まれ育ちました。「この天の虹」というような映画ができるぐらいに、八幡製鉄所を中心に大変に高度成長の時代を担った一大工業都市です。
 だけれども、何でも光と影があるように、影の部分は大変でした。公害病というものに悩んで、仕事もろくにできずに、ずっといわゆる補助金をもらいながら生活を細々としていく人をたくさん私は知っています。随分おられました。あるいは、公害によって小学校が一つぽっくりとよそに移転をしなければならないというような悲惨な状況も私はこの目で見てきております。
 四日市というようなところも大変でした。しかし、重慶に行ってみて、やはり規模がはるかに日本とまた違うんですね。あの四日市公害なんかの三、四倍の公害だというんだからびっくり仰天です。これは、工場から吐き出されるばい煙だとか、あるいはまだまだ民生面で石炭を主に使っているものですから、そこから出てくるものとかが掛け合わされて大変な状況です。
 先ほど申し上げたように、在外公館というのは、日本が本丸とすれば出城なわけですから、しかも、こういう要衝の地で働く人たちの働き、仕事ぶりというのは、やはり日本の外交に直結する非常に大きな比重というものを持つわけです。
 そういうことから考えますと、そういう大変な公害に悩まされて、私も行ってみて、医療費が随分かかっている、のどなんかは本当に荒れている、そういう中で必死になって悪戦苦闘している。何でこういう人たちの体、健康あるいは悪い住環境に対する配慮というのをもっとしないんだろうかな。確かに、法律でいろいろな決めごとがございます。だけれども、その中からもっとフレキシブルに、柔軟性を持って、その地域の状況、実情というものに合わせたきめ細かなことができないのかな。
 具体的に言えば、例えば、同じ中国でも、北京なんかで働いている人たちよりも医療費がかかるわけですよ、実際そういう厳しい住環境なんですから。しかし、その手当が北京と一緒というんでしょう。それはなぜかというと、北京大使館の出張所だからということだけですね。これはいかに何でもというふうに私は率直に思いました。
 現地の大使館で勤務する人たちの悲痛な訴えも私はこの耳で聞いてまいりまして、これは何とかしなきゃいけないんじゃないか、もっとそこは柔軟性を持たなきゃいけないんじゃないか、こう思いました。この辺に関しては、大臣、いかがでしょうか。
北島政府参考人 委員の御指摘、ありがたく受けとめさせていただきました。
 実は、重慶の出張駐在官事務所につきましては、大気汚染等の問題から北京の在中国大使館よりも勤務、生活環境が劣悪である、委員の御指摘のとおり認識しておりまして、従来から、空気清浄機を館員住居に配備する、そういった不健康地対策を北京よりも手厚く行ってきているところでございます。
 他方、在勤基本手当でございますけれども、在勤基本手当につきましては、在外公館所在地の勤務、生活環境の厳しさの度合いに応じて加算が行われているわけでございますけれども、まさに委員が御指摘されましたとおり、現行法令上、重慶の出張駐在官事務所、これは北京の在中国大使館の一部という位置づけから、在勤基本手当は在中国大使館と同一水準になっているということでございます。
 今後、この出張駐在官事務所が総領事館に格上げされる場合には、館員に支給される在勤基本手当が重慶の勤務、生活環境に応じたものとなるよう設定される、そういうふうに考えております。
東(順)委員 非常に重要なことを今おっしゃったなと私は認識をいたしました。総領事館に格上げになれば、その在勤基本手当というものがもう一度見直されて、その中で、劣悪な環境の中で働く皆さんに支障があるならば、そこで例えば医療費なんかを加算することもできる、こうおっしゃいましたね。これは私は非常に重要な視点だと思います。まさに、私も本当にそう思うんです。
 つまり、一つは、重慶という都市の持つこれからの重要度、三千万人の世界一の市なんですから、しかも、中国は大変に力をここに入れようとしているんですから、ここにはどうしても総領事館というものをぴしっと配置しなければ、諸外国にもう既にはるかなるおくれをとっているという一つの視点。もう一つは、働く人たちの健康状態ということ、その視点から見ても、総領事館に昇格すればその辺の問題がすべてクリアできるのであれば、ぜひ昇格すべきだと思う。
 この二つの視点、私は非常に大事だと思います。そういうことから考えて、ぜひ総領事館というものがここに設置されなければならない、こう思います。その計画はおありですか。どなたがお答えになるんでしょうか。
茂木副大臣 総領事館の改廃問題につきましては、委員おっしゃるように、まず、その地域の重要性、こういうことから考えるべきだと思っております。同時に、在外に勤務する方の健康状況であったりとか、そういうものは、できるだけ現行法の中でもフレキシブルに対応したいと思いますし、副次的にそういった形で状況が改善するというのは好ましいことだ、こんなふうに考えております。
 委員の方からも御指摘いただきましたように、財務当局との関係等々あるわけでありますが、外務省として申し上げると、たくさんございます、これから総領事館に格上げをしたいところ、また機能を充実したいところ。国際社会の中で、今テロの問題とかいろいろありますので、警備も充実しなきゃならない、領事機能も充実していかなきゃならない。こういう中で、また委員等々の御指導であったりとか御支援もいただきながら検討してまいりたいと思っております。
東(順)委員 ワン・オブ・ゼムなんですよという言い方ですね。だから、重慶だけじゃありませんよ、その他たくさんございますから、そういうことから勘案して考えたいと思いますと。
 ワン・オブ・ゼムということはよくわかるんですが、その中でもという実感も、私もいろいろな国々を回っていますので、ひときわこの重慶では大変なインパクトだった。ぜひそのことを念頭に置いていただきたい。
 そして、二〇〇三年度が無理であれば、二〇〇四年度にも総領事館格上げというものがぜひ実現できるように、これはやはり日本国の国益の問題ですから、特に中国ですよ、非常に大事な国ですよ。二十一世紀にとって非常に大事な国、中国、その中でも極めて力を入れている重慶ですよ。その中で、先進国はもう領事館を出しているんですよ。
 これは単なるワン・オブ・ゼムという横並びじゃなくて、ワン・オブ・ゼムの中でもベストワンだというぐらいに思って僕はしかるべきだ、こういうふうに思うわけでございまして、お答えは求めませんが、どうかその認識に立たれてひとつ、財政の問題等もありますけれども、全力を挙げてこの問題に取り組んでいただきたい、こう思います。
 何かございますか。
川口国務大臣 重慶のほかにもあるということですけれども、先ほど申しましたように、重慶の重要性は増してきているというふうに外務省としては認識をいたしております。
東(順)委員 以上で終わります。ありがとうございました。
池田委員長 次に、伊藤英成君。
伊藤(英)委員 民主党の伊藤英成でございます。
 まず、外務大臣に、ミャンマーの今の軍政並びにアウン・サン・スー・チー女史の拘束の問題について伺います。
 先月の三十日に、ミャンマーの軍事政権が民主化運動指導者のアウン・サン・スー・チー女史を拘束いたしました。さらに、この軍事政権側は、反政府運動を事前に阻止するために全国の大学を閉鎖するなど、一層の締めつけを行っている、そして民主化勢力との対立はさらに深まっている、こういうふうに思います。
 それで、アメリカ政府の方も、この問題について政府としてもいろいろと制裁措置を検討しているというような話も伝わってきたりするわけでありますが、それで先般、国連のラザリ特使もミャンマーを訪問してスー・チー女史の釈放を要請するなど、こうした活動をいろいろしたりしているんですね。
 我が日本政府として、外務大臣の談話なども私は読ませていただいておりますが、政府として、このスー・チー女史の釈放の問題などについて具体的にはどういうふうに活動あるいは働きかけを行っているんでしょうか。
川口国務大臣 実はたくさんのことをやっておりますので、今ここで全部申し上げることができるかどうかちょっとわかりませんけれども、基本的に、ミャンマーにございます日本の大使館を中心にミャンマーの政府に対してさまざまな働きかけを、これはほかの国に先駆けて行っております。そしてその中で、私の談話にもありますように、今回の事態というのは極めて遺憾であって、スー・チー女史が即時に解放されて、そして政治的な活動ができる自由が、NLDの政治的な活動ができるようにすべきであるということを言っております。
 そして、ラザリ特使がミャンマーに入ってアウン・サン・スー・チー女史とお会いをしたわけですけれども、その前に我が国が、会わせるようにということを中心になって軍政権に働きかけたという経緯もございます。この情勢については、また東京でもいろいろな談話を出してきておりますし、私も、きょう、ウィン・アウン外務大臣と電話でお話をするということを今アレンジ中でございます。
 そういったさまざまなことをいたしまして、ミャンマーの政府がアウン・サン・スー・チー女史を釈放し、そして政治的な自由をNLDが取り戻すということのために働きかけていきたいというふうに考えております。
伊藤(英)委員 そういう働きかけもしておられて、きょうも電話をされるべくアレンジ中、こういうことなんですが、実際に、スー・チー女史の釈放の見通しは何かありますか。
川口国務大臣 今の段階でミャンマーの政府から聞いておりますのは、これはテンポラリーであるということでございまして、これはずっとミャンマー政府が言っていることでありますけれども、それ以上に、具体的に、例えばどれぐらいの期間ということはまだ聞いておりません。この点についても、即時と我が国は言っておりますので、できるだけ……(伊藤(英)委員「即時とは何ですか」と呼ぶ)即時釈放するということを言っておりますので、テンポラリーな期間、要するに、短い期間拘束を続けるとミャンマー政府は言っているということでございますけれども、それではいけないということを我が国からは言っております。
 この点についてはもう何回もミャンマーに働きかけておりますし、また、国際的にも、先般もアーミテージさんと私はミャンマーのお話もちょっといたしましたけれども、ちょうどタイの外務大臣、その他大勢日本にいらっしゃっておりましたので、その方々ともこの件については連携をとりながら進めております。
伊藤(英)委員 ミャンマーに対しては日本がODAを供与しており、しかも最大の援助国ですね。実は、日本はミャンマーとの関係を考えれば、他の国々とは違った大きな役割を果たせる、そういう立場にあるわけですね。私の感じでは、そういうものが生きていないんじゃないかという気がするんですよ。そういう意味で、もっとこのODAも、こうした問題について本当に日本の外交に生きるようにすべきだ、こういうふうに思うんです。
 ちょうど今、ワシントンでこのミャンマーの問題について非常に議論もされているんですね。大臣も御承知かと思いますが、ワシントン・ポスト、私は現物をちょっと見ましたけれども、このワシントン・ポストでも、経済的な利害のためにミャンマーの民主化が進んでいると装う日本のような国、ネーションズと書いてありますから、複数の国でしょう、それは日本とかタイとか何か出たりもしておりましたけれども、日本についてそういうふうに名指しで社説で批判しているんですね。同じような話は、ロサンゼルス・タイムズも日本に対して批判をしている。ODAが逆になっているんじゃないか、逆に作用しているという意味で批判もしたりしているんです。
 そして、報道によりますと、米国の上院本会議において、ミャンマーから米国への輸入を禁止する制裁法案を九十七対一で可決したというのが出ています。アメリカのこういう状況、日本に対する批判並びにこの法案が可決されたことについてはどういうふうに思いますか、外務大臣は。
川口国務大臣 そのような法案が上院で既に可決をされているということでございますけれども、我が国としては、ODAの考え方について、これはODA大綱がございます。その原則に基づきまして、軍事的用途への使用回避をする、民主化を促進する、基本的人権の保障状況に十分に注意を払う、そして相手国の要請、経済社会状況、二国間関係等を総合的に勘案いたしまして、ODAは実施をいたしております。
 それで、我が国として、先ほども申しましたように、今回のミャンマーの状況については、非常に重大なことであるというふうに深刻に受けとめているわけでございます。米国においてさまざまな動きがあるということを承知しておりますけれども、報道にあるような、経済的な利益を優先してミャンマーとの関係を考えているということで全くないことは委員も御案内のとおりでございます。
 現在ミャンマーとの間で、我が国としては、民主化を進めることが重要であるということは三本柱の一つでございます。そして同時に、ミャンマーの人たちの生活が豊かになるように、ミャンマーが経済的に市場化をしていくということの重要性については、これも前から経済調整協議ということをやっておりまして、経済政策の議論もいたしておりますし、それから社会の安定が重要ですから、それも支援をしているということでありますけれども、経済的な利益を中心に我が国のミャンマー政策を考えているということは全く当たっていないと私は思います。
伊藤(英)委員 経済的利益を云々は、当たっているか当たっていないかは別にいたしまして、今ちょうど大臣が言われたODA大綱ですね。今言われたように、ODA大綱で「途上国における民主化の促進、市場指向型経済導入の努力並びに基本的人権及び自由の保障状況に十分注意を払う。」ということになっていますね。非常に重要な原則ですよね。
 では、今のミャンマーへのODAは、本当にこの原則にちゃんと沿っているんでしょうか。
川口国務大臣 ミャンマーへのODAの供与ですけれども、これは、民主化そして人権状況の改善を見守りながら、民衆に直接裨益する基礎生活分野、ベーシック・ヒューマン・ニーズ等の案件を中心に、ケース・バイ・ケースで検討しながら実施しているわけでございまして、現在、無償資金協力と専門家派遣、研修員受け入れ等の技術協力を実施いたしております。
 ODAのあり方については、先ほどのODA大綱の原則を踏まえまして、ミャンマーの情勢の動きを見ながら適切に対応していきたいと考えています。
伊藤(英)委員 ミャンマーの情勢を踏まえて適切に対応していきたいということなんですが、現在の状況で、ではODAはどうするつもりですか。
川口国務大臣 ミャンマーの事態については、我が国としては深刻に受けとめているということでございます。そして先ほど申しましたように、ミャンマーの事態の変化等を十分に注視しながら、ODA大綱の原則にのっとって、これを踏まえまして適切に対応していくという考え方でおります。
伊藤(英)委員 適切、適切は、言葉としては適切かもしれません、でも余り適切じゃないんですね。
 僕は、日本がせっかくODA大綱、今ODA大綱の見直しもしていますが、この原則も非常に重要な原則、もっとその原則を高々と世界に掲げて、本当にその原則にのっとった外交をやれば、日本の外交もどんなにかもっとわかりやすく、意義を持つと思うんですね、日本は何を考えて外交をやるんだろうと。
 きのう、夜でありますが、実は中東の十カ国の大使と私は会いました。これは、本当はイラクの問題であれしたんですが、そのときにある大使から、日本は何を考えて外交をやっているんだろうかという質問がありました。私は、そこでいろいろな議論もしましたけれども、それは横に置きましょう、イラクの、中東の話はちょっと横に置きますが、このミャンマーの話も同じなんですね。
 さっきODA大綱も、外務大臣もそれについて述べられて、そして適切に云々というんですね。では、現在のミャンマーの軍政に対して、あるいはスー・チーさんの拘束の問題について、日本がこういう原則にのっとったODAをやっていながら、どういうふうにその軍政の、あるいは民主化、あるいはスー・チーさんの釈放の問題について役に立っているんだろうかということについて、ああ、やっぱり日本はちゃんとその機能を果たしているな、役割を果たしているなというふうに思えないのが残念ですね。思えないのが残念です。――ありますか。
川口国務大臣 私は、日本とミャンマーの関係というのは今世界の中で、ミャンマーのこの問題に対応するときに、日本がミャンマーとの間で持っているパイプの太さに大いに期待をされているところがあると思っております。
 これは、アウン・サン・スー・チー女史がこのような事態に遭遇をすることになったときから、ほかの国からは、日本のパイプを使って働きかけてほしいという期待はたくさん寄せられているわけでして、日本もそれにこたえて、宮本大使がほかの国に率先してミャンマーに働きかけ、そしてラザリ特使の面会ということにもこぎつけたわけでございます。
 そういう意味で、先ほど申し上げました民主化の促進、そして経済の市場化、社会の安定、こういったことを考えて我が国はODAをやってきているわけでございますし、その結果として、ミャンマーとの間ではいろいろな意思の疎通ができる国になっているということでございます。そういう意味で、ODAの今までの効果というのは非常にあるというふうに考えております。
 それから、今度は逆に、こういう事態をさらにその先に進めるための外交努力、進めるといいますか、解放をしたり、その他の外交努力が必要でございます。今日本はその外交努力を、全力投球をしてやっている状況にあります。
 そこで、我が国の持っているODAをどのように使っていくかということをお聞きになりたいのかと思いますけれども、これについては、その事態、まさに今外交努力をやっている状況ですから、今後の事態の進展、いろいろあろうかと思います。そういうことを見ながら我が国として、ODAの大綱を踏まえて、その状況に合わせて適切に対応していくということを申し上げたわけで、その考え方は適切であると私は思っております。
伊藤(英)委員 今のお話は、日本は他の国に比べましてずっと太いパイプを持っている、そしてODAもやっている、したがって、今後のミャンマー政権のやり方次第でODAについても考えますという話をされたんだと思うんですね。それは、私は、もしもそういうふうにするならば一つの見識だと思います。
 きょうも、ミャンマーの外務大臣でしょうか、コンタクトをとるべく計画中だそうでありますが、では、外務大臣として、目の前のアウン・サン・スー・チーさんの釈放の問題について、どういう決意でコンタクトをとられるんですか。
川口国務大臣 この釈放が行われることが、国際社会にとっても、そしてまず何よりもミャンマーのために必要なことであるということをはっきり申し上げたいと思っております。
 それから今、電話のアレンジ中でございますけれども、電話のアレンジがうまくいかなかったとしても、プノンペンでミャンマーの外務大臣とは会談をすることになっておりますので、そこではっきり、その場合にはというか、いずれにしても、そこではっきり言いたいというふうに考えております。
伊藤(英)委員 日本も本当に、せっかく民主化のためにも、あるいはミャンマーの将来のためにもということで大変な額のODAもやっているわけですから、今の外務大臣のお気持ちのように、必ずその成果が上がるようにやっていただきたいと思います。
 次に、北朝鮮の問題について伺います。
 まず、先般、盧武鉉大統領が来られました。そして日韓首脳会談等も行われたんですが、私も、この間の合意等を見ますと、日米韓それぞれの温度差、北朝鮮に対するまた温度差をやはり感じます。ある意味では、北朝鮮に対して日米韓がどういうふうに考えているかという共通のメッセージをちゃんと与えることが、今の状況が解決の方向に向かうために非常に重要だと思うんです。そういう意味では、今回のはなかなかちょっとわかりにくいなというふうに私は思うんです。
 それで、北朝鮮が事態をさらに悪化させた場合の措置について、共同声明ではもうちょっと具体的に書けてたらよかったと思うんですが、それができなかったのはなぜなんでしょうか。
川口国務大臣 なぜかということについてお答えするのはなかなか難しいかもしれませんが、考え方がずれているわけではないということをまず申し上げたいと思います。
 日韓首脳共同声明にある文言、これは、五月十四日及び五月二十三日にそれぞれ行われた韓米首脳会談及び日米首脳会談で合意をした原則を再確認したというふうに書いてあるわけです。
 それで、ここに書いてある合意した原則といいますのは、これは、まさに北朝鮮がこれ以上事態を悪化させた行動をとらないように強く求めるということに関連をしたものでございます。北朝鮮がそのような行動、すなわち事態を悪化させるような行動をとった場合の対応も含めて、各首脳会談で合意された内容というものを指しているわけでございます。我が国としては、北朝鮮がそういったメッセージを強く受けとめて、真摯に受けとめて、国際社会の一員としてきちんと行動してくれるということを望んでいるわけでございます。
 原則が確認をされている、それから、万が一具体的にそういうことがあった時点で、原則に従って行動するわけですし、その中身としては、そこにまた同時に、連携を強化するということも書いてあるわけでございまして、連携を強化して、一緒にやる部分もあるでしょうし、それぞれの国が対応をしていくという部分もあるかと思います。何ら差があるということではないと思います。
伊藤(英)委員 今外務大臣が言われた、一緒に連携をして協力して対処するとは、具体的にはどういうことをやることを想定しているんでしょうか。
川口国務大臣 これは、具体的にどのような状況があるかということに係りますので、今の時点でこういうことをするということは申し上げにくい、申し上げることはできないと思いますが、いずれにしても、日ごろベースで、TCOGもありますし、その他の場もございます、連携は密に行っております。そういう事態においては、連携を強化して対応を日米韓でやっていくということです。
伊藤(英)委員 連携を強化して日米韓で対応する、こう言うんですが、先ほどの言葉をかりますと、本当に連携をしてみんなで一緒にやるものもあるよ、それから独自にそれぞれの国がやるものもありますという話ですよね。
 実は、対話と圧力、対話と圧力、こう言うんですね。私は、北朝鮮の立場に立ってみたときに、圧力といったときに、どういうようなものかなということが想像できなければ、あるいは想定できなければ、本当は意味をなしませんよね、そうでなければ。その具体的な圧力というのはどういうことなのかなと。これはどういうふうに考えたらいいんですか。
茂木副大臣 対話と圧力の中の圧力の部分でありますが、これは軍事的な圧力ではありません。外交的な圧力であり、国際的な圧力である。そして、何のための圧力であるか、これは交渉を進めるための圧力である。
 そして、そういう圧力の中にはどういう項目が含まれてくるかということでありますが、大きく分けまして三つぐらいあると思うんです。一つは、国際社会が一致して、核兵器開発は容認できない、こういう強いメッセージをまず与えること。それから、北朝鮮によりますさまざまな違法行為に対しましては、現行法の中で厳しく取り締まりを行う。そして、北朝鮮がさらに事態を悪化させた場合には一層厳しい対応。
 一層厳しい対応の中にはさまざまな項目が含まれてきますが、どういうエスカレーションをするか、これによりまして対応策というのは当然変わってくるわけでありまして、まさにこれは交渉を進めるという観点でありますから、こういうことをしたらこれをやります、これを現時点で想定することは必ずしも適切ではありませんし、当然、そういう問題につきましては、日米韓で連携をとりながら、関係国とも相談をしながら決めていきたいと思っております。
伊藤(英)委員 十分に検討をされて、即に公表はしないけれども、ちゃんと考えておりますということなんだろうと思います。そのことについては、また改めて別の機会にでも伺います。
 先般、万景峰号が九日に入港するという話が当初ありました。そして、そのときに伝えられていることですと、各関係省庁、非常に努力されて、千八百人態勢で監視、検査に臨んだ、あるいは臨む予定だったということかもしれません。そういうふうに伝えられたりしております。
 この万景峰号は、先回は、九日の日は入港はされなかったんですが、次回、二十三日に予定するという話もあったりしたと思うんですが、いずれにしても、次回、日本に入港するという場合はどういうふうにされるんですか。
茂木副大臣 まさに今回と同様でありまして、関係省庁の緊密な連携のもとで厳格な審査、検査等を十分な態勢で行っていきたい、このように考えております。
伊藤(英)委員 実はきょう、海上保安庁やらあるいは内閣の方にも来ていただいているんですが、時間もありませんので、結論的にそれぞれの関係者に伺いたいと思うんです。
 実は今回、あるいはこの万景峰号でもそうだし、他の北朝鮮籍の船についても、今いろいろ監視等を厳しくやったりしていますが、従来はなぜもっと厳しくできなかったんでしょうか。なぜできなかったんでしょうか。なぜしなかったんだろうか。この辺はどういうふうに考えたらいいんでしょうか。
池田委員長 答弁者を指定してください。海上保安庁と警察庁と内閣を呼んでいますが。順次聞いてください。
伊藤(英)委員 では、内閣の方にお願いします。
村田政府参考人 お答えいたします。
 我が国に出入りします北朝鮮の船舶、これを通じての人、物、金の出入りがございます。これに対しては、それぞれ所管する各省庁、機関が、それぞれの法律に基づいて厳正な審査あるいは検査を行ってまいりました。水際での厳重な取り締まりを行ってきたところであります。今後とも、これらの各省庁の連携のもとに一層強化して対応していかなければいけないというふうに考えております。
伊藤(英)委員 今までも厳正にやってきたという意味だと私は思うんですけれども、しかし、今回のような態勢では全然ありませんよね。
 現実に、最近では、この間のワシントンでの北朝鮮関係者の発言なんかも、例えばミサイル部品も九〇%は日本から云々だとか、いろいろなことを伝えられたりしています。その信憑性はよく私はわかりませんが、しかし、最近いろいろなことが出たりしていますよね。
 昨日、きょうの報道でも、工学機械メーカーのセイシン企業がミサイル関連機器を、これはイランに、そしてまたかつては北朝鮮にということが報道されたりしています。
 では、まず、この問題についてどういうふうに思いますか。これは外務大臣。
川口国務大臣 セイシン企業の行為ですけれども、これは、我が国の輸出管理に対する内外の不信感、これを醸成しかねないということで、遺憾だと考えております。そして、この事案の違法性、故意性、これが明らかになりました場合には、関係当局が厳正に対処すると承知をいたしております。
 いずれにいたしましても、我が国としては、今後、関係省庁間で緊密に連携をとり、そして国際的に協調をしながら、厳格な輸出管理の堅持、そして不拡散体制の一層の強化に努めてまいりたいと考えております。
伊藤(英)委員 私は、実は、いろいろな側面が最近あるなと非常に思うんですね。
 一つは、外からの、今は具体的には北朝鮮の船なり工作船なり不審船なり、あるいは拉致問題も同じなんですが、外からの力に対して、あるいは行動に対して、日本がしっかりとそれについてチェックすべきものはチェックするとか、守るべきものは守るということをやっていなかった。やっていなかったと思う。
 それと、もう一つは中です。日本の国内の中の問題で、例えば今申し上げましたセイシン企業など、こういう企業が外に出すことについての中でのチェックができていないということもあるかもしれません。それから、あるいは覚せい剤の話が、麻薬、覚せい剤という話がよくあります。北朝鮮から、この間の工作船なんかも麻薬等の取引が云々、こう言われたりしますね。では、そのときに、日本で買う人があるからああいうことも起こるというんですね、日本の国内の。日本の国内のそうした対策が極めて不十分だからということだと私は思うんですね。そういうのが本当にやられていないんじゃないか、そもそも。あるいは、非常に不十分だからということですよね。
 一体、こうしたことごとについて、これから本当にどうするんだろうか。どうするんだというよりは、これから本当にしっかりしなきゃ日本という国は成り立ちませんねというぐらいのことを思うんです。今後どうしますか。初めに外務大臣、それから内閣の方も。
茂木副大臣 委員の御指摘と全く同じ考えであります。
 経済がグローバル化をしている、その一方で、例えば大量破壊兵器の拡散の問題、国際犯罪、新しい状況が生まれているのは明らかでありますから、それに合ったような形で、外為法であったりとか関係法律を厳しく適用する。同時に、さまざまな省庁にまたがる問題でありますから、緊密な連携のもとでしっかりした対応を今まで以上にとっていく、こういうことが重要な時代に入っている、こういう認識を持っております。
伊藤(英)委員 では、内閣の方に聞きます。
 今ちょっと話の出た、例えば外為法などそれぞれの関係法令等、見直しをする、あるいはそれを改正する意思はありますか。これからどういうふうにされますか。
池田委員長 速記をとめて。
    〔速記中止〕
池田委員長 では、速記を起こしてください。
 村田内閣官房内閣審議官。
村田政府参考人 お答えします。
 先ほど申し上げましたとおり、我が国に対する人、物、金の出入りに対しては、各省庁が現在の法律に基づいて、それぞれ厳重な審査、検査を行っています。
 政府としては、それぞれの省庁が、現在の法律にのっとって、まずそれをしっかり運用していく。そういう状況を十分に見きわめた上で、さらに立法的な観点の対応が必要かどうかということがあるならば、それは、それを踏まえてそれぞれの省庁で考えて対処すべきものと考えております。
伊藤(英)委員 私は、もっと積極的にそれに取り組む姿勢が必要だと思うんですね。実際、やらなきゃいけない。何だか今の話は、それぞれに任せますということだと私は思うんですが、それはいかぬ、こういうふうに思います。
 時間もありませんので、最後に、東京都が今回朝鮮総連に固定資産税の課税をするという話なんですが、これについて、朝鮮総連は、朝鮮と日本の間の交流窓口としての、外交機関に準ずる機関というふうにしていると思うんですが、これは外交機関に準ずる機関かどうかというのは、外務大臣、どうですか。
川口国務大臣 日本は北朝鮮を国家承認していないわけでございます。したがいまして、また、北朝鮮と外交関係を持っていないということです。
 朝鮮総連の関連施設、これは外交関係に関するウィーン条約に規定をする外交使節団の公館ではない、また、この条約による租税等の免除を享有するものでもないということでございます。
伊藤(英)委員 そうすると、従来、都に固定資産税を納めていなかった、現象的には。いなかったのは、外務省としては、それは適当ということではなかった。それで、今回固定資産税がかかるようになるという話は、それは妥当なことであるというふうに外務省としては考えているというふうに思っていいんですか。
茂木副大臣 固定資産税の問題につきましては、あくまでこれは東京都の判断でこれまでは課税をしなかった、そして、今回は課税をされる、そういう判断だと思っておりますが、先ほど委員の方から御指摘ございました外交団に準ずる機関、こういう区分につきましては、ウィーン条約上はございません。
伊藤(英)委員 そんなことを言っているんじゃなくて、私が最後に質問しましたのは、従来、固定資産税がかかっていなかったのは、それが外交機関に準ずるものだということでかかっていなかったとするならば、それは妥当ではなかったですねというふうに思っているんですねと。そして、今回課税されるようになるという話は、その外交機関に準ずるものであるかどうかの観点からすれば、今回の措置は妥当であろうというふうに外務省としては考えているということなんですねということです。
茂木副大臣 朝鮮総連の関連施設は、ウィーン条約上のそういった特権を持つものではありません。これが外務省の判断であります。その上で、固定資産税をどうするか、これはまさに東京都が御判断をされる問題だと思っております。
伊藤(英)委員 時間が来ましたので、終わります。ありがとうございました。
池田委員長 次に、首藤信彦君。
首藤委員 民主党の首藤信彦です。
 イラクへのアメリカの攻撃が終了しまして、アメリカが勝利宣言をしてから約一月半、時間が経過したわけですが、そうした状況においてもイラクの状況はなかなか安定しないということが連日の報道で伝えられているわけです。
 民主党は、何よりも真実はどうなのかということで、ファクトファインディングといいますか、事実調査の派遣団を構成し、末松衆議院議員、若林参議院議員、そして私がその派遣団の一員としてイラクを現地調査してまいりました。私は、そのうち先遣隊としてイラクに六月の三日に入りまして、そして、バグダッドだけではなく、最も激しい戦闘が行われたナジャフ、カルバラに南下して、そこでシーア派の指導者のアヤトラ、ハキーム師とも会って、現状を調査したわけであります。
 さて、そうしたイラクの情勢ですが、それに対して、日本もその復興に貢献しなきゃいけないということで、今、イラク新法というものが国会に提出されようとしているわけですが、果たして今のイラクというものを政府はどのように把握しているのか、それをお聞きしたいと思います。
 私がバグダッドに滞在している間も、さまざまなグループが政府から派遣されて、そこへ行っていました。中には自衛隊から派遣された方もおられるというふうに聞いております。
 そうしたさまざまな分野の専門家が行かれて、今のイラクの情勢、そして、最近のアメリカ兵に対しての攻撃が行われて、そしてきのうはヘリコプターが撃墜され、そしてF16も、これは故障だと言われておりますけれども、F16となりますと一機百億円を優に超える航空機でありますから、そう簡単に故障することもないんですが、それも墜落したと言われています。
 こうしたイラクの状況、それに関して政府のさまざまな派遣団はどのようにイラクの現状を把握し、その将来展望を描いているか、ぜひ外務大臣、お聞かせ願いたいと思います。
茂木副大臣 首藤委員も先日イラクの方に調査に行かれたということでありますが、私も、五月の上旬から中旬にかけまして、直接イラクの方に行っております。また、イラクの関係者ともさまざまなレベルで意見交換をいたしております。
 イラクの人から聞きますと、必ずしも、治安の状況につきましても見解が一致している、こういうことではないと思っております。ただ、私の訪問、その後の政府の調査団の訪問、現地からのさまざまな報告、こういったものを総合いたしますと、イラクの国内におきます戦闘というのは基本的に終了したわけでありますけれども、治安の確保が現地の最大の課題の一つ、これは間違いないと思っております。
 また、今回の戦闘を通じまして、一般市民にも小火器が入手できる、こういう形から発砲事件も起こっておりますし、また、女性なんかの場合は男性の近親者が一緒でないと外出が夜間の場合できないとか、児童の登校、これも非常に難しい。私も学校を二つほど訪れたわけですけれども、非常に、何というか、登校率が悪い。原因の一番大きなところは治安の問題なんだ、こういうことを学校の校長先生であったりとかその他の先生もおっしゃっていたわけであります。
 また、地域的にどの地域の治安状況がと、これにつきましても今後さらに細かい分析なりが必要だと思っておりますけれども、例えば西部であったりとか、クルド人地域を除きます北部、ここにおきましては依然として治安の状況は不安定だ、このような認識を持っております。
 その一方で、バグダッド市内及びバグダッド以南におきましては、現地警察と米軍等の協力によりまして、治安は一時と比べますと改善されつつあり、中には、例えばお店なんかでも店舗を再開する、こういうふうに市民生活が正常に戻りつつある、大幅な改善が見られる部分もある、このような認識を持っております。
首藤委員 それでは、副大臣――その前にちょっと一点御忠告申し上げますが、先ほど、小火器を市民が持っていると言っておりますが、外務省の用語としては小火器をやめて小型武器という言葉にかえたはずなので、御注意申し上げます。
 ピストルとかカラシニコフとか、そういう小型武器の話なんですけれども、それもみんな持っているわけですが、そうした治安上の問題じゃなくて、最近米軍に対する攻撃が頻繁に起こっている。それはいろいろな形で報道されておりますけれども、外務省は、一体何名の米兵がそれによって死んだということを把握しておられるでしょうか。外務大臣、いかがでしょうか。
茂木副大臣 事前にちょっとお聞きをしていなかった質問でありますので、正確を期すためには、この後調べさせていただきまして、できる限り報告をさせていただきたいと思います。
首藤委員 それで結構ですけれども、やはりイラクの現状を把握するのに、一体どれぐらいか、例えば三十九人か四十人か、そういう数字ならそれはそういうこともあるかもしれないけれども、それをある程度答えていただかないと、イラクの現状がどうなっているかということは全く言えないと思うんです。
 いろいろ報道されているところによりますと、約四十名のアメリカ兵士が殺害されたと聞いています。これは、治安の問題じゃなくて攻撃なんです。最近は組織的な攻撃が行われ、使われる武器も、さっきおっしゃったような小型武器から、ロケットランチャーや、そして昨日ではついに対空砲火まで出てきまして、そしてヘリコプターが撃墜されるという状況になっています。これは、要するに戦闘が続行しているということを意味しているんですね。
 アメリカ軍の戦闘というのは、約百四十名ぐらいが戦闘行為によって死亡したわけですが、現在のこの一月半で四十名の米兵が死んでいるということは、ほぼ一日一人のペースであります。そうすると、これはもう、夏を過ぎてしまいますと、このペースでそのまま進めば、戦闘による死者よりも勝利宣言後のアメリカ軍の死者の方が多くなってしまうというような異常事態すらあり得るわけであります。そうした厳しい状況にあるということをやはり御認識いただきたい、正確な数字はぜひ把握して、いつでもぱっと取り出せるようにしていただきたい、それこそが外務省の責務である、そういうふうに私は思っております。
 さて、そうした状況の中に日本の自衛隊を派遣しよう、そういう考え方もございます。自衛隊を派遣することに関しては、これはPKOの論争でもうさんざんやった話ですね。かつては、そうしたことをさせないために、国会の中でも牛歩戦術が行われたり、いろいろなことが行われたという経緯もございます。それぐらい難しい。そして、その定義は一体どこにあるのか、国連憲章上のどこにあるか。これは御存じのとおり、外務大臣、どこにもありませんよね。ですから、国連憲章の第六章と第七章の間にある六章半の軍隊などという言葉が使われたというのは記憶に新しいところなんです。
 さて、今回、イラクに対してアメリカの自衛権に基づく単独主義的な行動が行われたわけです。それはアメリカが主張していることですが、それに対して、その結果としての占領に対して日本が自衛隊を派遣するという可能性が一応論議されているわけです。しかし、一体その法的な根拠というのはどこにあるでしょうか。外務大臣、いかがでしょうか。
川口国務大臣 法的な根拠はどこにあるか、それがまさに今議論をしていただいているイラク新法でございます。
 その新法については、これは国連決議一四八三で、主文パラ一におきまして、国連加盟国及び関係機関に対して、制度を改革し国家を再建する努力について、イラク国民を援助するとともに、この決議に従いイラクにおける安定及び安全の状態に貢献することを訴えていますということ。
 それから、主文のパラ二におきまして、加盟国に対して、人道上、国連及びその他の国際機関のイラクのための人道アピールに直ちにこたえ、食糧、医療及びイラクの経済インフラの復興復旧に必要な資源を提供することによってイラク国民の人道上その他の要請を満たすように支援をするということを要請しているということでございまして、復興支援のために日本が自衛隊を派遣することになれば、安保理の決議との関係では、一四八三のこれらの規定の要請にこたえてのものであるということでございます。
首藤委員 外務大臣、今説明をされましたが、前文とパラグラフ四を逆に説明されたと思うんです。それは逆だというふうに私は解します。もうちょっと、そこのところを後でよく読んでおいていただきたいと思うんです。
 私も当然、今まで政府が、国連決議は要る、国連決議がなければ自衛隊は送れない、だから国連決議が要るということをずっと主張しておりましたから、私もそうだろうと思っておりました。
 そこで、一四八三の内容を知ろうと思ったんですが、日本語の訳文がなかなかないんですね。どこを探してもないんですね。国会図書館に聞いても、何か新聞の抄訳しか出てこない。それで、一体どういうことが本当に書いてあるのかと思って、国連のセキュリティーカウンシルのホームページから落としてみました。
 そうしたら、どこを探しても平和活動のための部隊を要請していないんですね。これは読み方が悪いのかもしれないと思って、私もそろそろ年ですから、老眼鏡を取りかえまして、それでまた最初から最後までじっくり読んだ。どこにもこれは要求されていないんですよ。
 ここの内容は、何のための国連決議であるかというと、PKOの派遣決議でもなければ、イラク懲罰のための国連決議でもなければ、要するにイラクにおいて、復興しなきゃいけない、そのためには、一つは経済制裁を解除しますよ、それからイラクは、例えば石油なんかを輸出したお金を、これは開発基金を設けますよ、これはこの二つが内容となっている国連決議なんですよ。ですから、これに基づいて自衛隊を送るとかというのは、もう全くその根拠がないわけなんですね。
 おっしゃった、引用された主文の中のパラグラフ四でも、それはあくまでもイラクの人々の福祉のためにこれを送るということになっているわけですね。ですから……(川口国務大臣「一と二」と呼ぶ)一と二になったんですか、今度は。(川口国務大臣「いや、さっきは一と二を」と呼ぶ)それは後で聞きますが。だから、そういうことを考えますと、これはどこにもPKO派遣の法的な根拠はないということなんですね。どうですか。このパラグラフのどこが自衛隊を、あるいはPKO部隊あるいは平和維持活動、そういうものへの部隊派遣を求めていますか。外務大臣、いかがですか。
川口国務大臣 先ほど申しましたように、先ほどは、私は四とは言っていませんで、主文のパラ一とそしてパラ二と申し上げたわけですけれども、その主文の一、もう一回、必要なら読みますが、パラ一とパラ二、そこで国連加盟国及び関係機関に対して要請をしているわけでございます。したがいまして、自衛隊を派遣するということになれば、安保理決議との関係では、この一四八三のこれらの規定、この要請にこたえてということでございます。
首藤委員 いや、外務大臣、それはおかしいじゃないですか。先ほどの与党の委員からは、どこに根拠があるかといったら、それは前文とそれから主文のパラグラフ四というふうにおっしゃったわけですね。主文のパラグラフ四というのは、ここにある文章なんですけれども、それは全く違うということをきちっと把握していただきたいんです。
 今まで日本は、第二次大戦の惨禍を経験し、またアジアの諸国に対して多大な苦しみを与えたという反省から、やはり武器を持った集団の海外派遣というものに対しては大変慎重であった。ですから、PKO五原則とかがありまして、現地側の要請とか、さまざまな枠組みがきちっとしていたわけですが、一体この一四八三のどこで自衛隊派遣が要請されているのか。いかがですか。
茂木副大臣 私も先ほど大臣の答弁を聞いておりましたが、いわゆる治安等々の要請につきまして、当局に対する要請が主文のパラ四であります。そしてまた、関係国に対します、加盟国に対します要請が前文のパラの十五とそして主文のパラ一という形でありまして、主文のパラ一を見ますと、「アピールズ ツー メンバー ステーツ」の後に「ツー コントリビュート ツー コンディションズ オブ スタビリティー アンド セキュリティー」と明確に書かれていると思っております。
首藤委員 いや、だから、それは貢献しろということですね、部隊を送れとは言っていないわけですよ。だから、それは貢献してもいいということを言っているんで、要請しているわけじゃないんですよ、部隊派遣を。
 ですから、そういう意味では、それはしょっちゅう、例えばパキスタンであるとかアフリカの国であるかのように、あるいはヨルダンのように、いつも何かがあるたびに送っている国は、それは当然のことながら、そういうふうに言われたら送れる。しかし、私たちの経験から、日本においては、PKOの派遣というものに関して非常に慎重に扱っているわけですから、国連決議で明確な形で要請されないと、それは行けないというのは当然だと思いますが、外務大臣、いかがですか。
川口国務大臣 先ほど私や茂木副大臣からお話をしましたように、パラ一そしてパラ二、これで安保理が要請をしているわけですね。それで、その要請にこたえて各国がどのようなことをするかというのは、これは各国が主体的に決めることであります。
 そういう意味で、我が国として、今いろいろ御議論をいただいているわけですけれども、そういった形で、政府としては党に御相談をしている、そういうことでございます。
首藤委員 そのとおりです。ですから、それは要請しているんであって、要請しているんであるから、来いと言っているんではないから、それは非常にこちらも慎重に対応せざるを得ない。今までの原則に基づいて、現地の受け入れ国から要請がなければ、イラクの人たちが自衛隊さん来てくださいと言ってくれないと、それはなかなか行けないということが、今おっしゃったことからも明らかだと思うんですね。
 さて、その辺は大変クリアになりましたけれども、今イラクの中において、私はもう本当に、着いた途端に愕然として、こうなっているのかと思って愕然としたんですが、ついこの間まで、イラクの復興というと、私たちはORHA、ORHAと言っていました。人道復興、人道復興、そのための人道復興局というのがあって、そこへ日本も貢献しなきゃいけないということで、そして日本の公務員を送ろうということになりました。
 しかし、それも占領行政ではないかとか、米軍への貢献ではないかということで厳しい批判がありまして、そして結局、ORHAに関しては、やはりそれは出張という形で、まあ連絡将校的な、リエゾンオフィサー、連絡要員として、調整要員として送るということが決まっていたんですね。
 ところが、現地へ行ってみますと、やはり日本の方は優秀な方なんでしょうが、ちゃんとアメリカの上司がいて、アメリカの部下がいて、もうORHAの機構の中でがっちりと、これは主体的に行動されているということなんですよ。
 これは違うんじゃないですか。大使館か何かにいて、時々行ってみるというんじゃなくて、もうORHAというビルの中に部屋があって、机があって、きちっとその一員となっている。これは国民に対する裏切り行為じゃないですか。連絡要員とか調整要員といいながら、実際はそこで働いている。それならちゃんと国民に、納得するように、どうしても必要なんだと説得されたらどうですか。今そういう位置関係にあるということは御認識されておられますね、外務大臣。
茂木副大臣 私も現地に行ってまいりまして、奥参事官、井ノ上書記官初め、実際に、外務大臣のもとで現地に長期出張している人間と二日間にわたりましてさまざまな議論もしてまいりました。まさに彼らは外務大臣の命令のもとで行動しております。ただ、そこの中での行動に必要なことが、現地の、ORHAといいますか、OCPAですね、今そことの連携が必要である、こういうことで、緊密な連携をとるために、場所的にもそのORHAの事務所であったり、そういうところで仕事をする機会が多い。もちろん大使館に戻って仕事をすることもございます。私がいる間でも何度もそういうことはございました。
首藤委員 この行動に関しては、そうおっしゃるなら、やはりこれから各党が派遣団を送って、現地が実際どうなっているのか、本当にどういう行動、私たちが期待したとおりの活動になっているのかということをチェックさせていただければと思うんですね。
 今、図らずも茂木副大臣がOCPAとおっしゃいました。ORHA、ちょっと違うな、こういうふうに思うんですが、私は、バグダッドに入って愕然としたことは、今までORHA、ORHAと言っていたものが、いわゆる人道復興のためのオフィス、アメリカのNSCの下にあって、そして国防省のラムズフェルド長官に報告するところの人道復興のためのオフィス、こういうふうに考えていたんです。
 ところが、あっと驚くことは、ポール・ブレマー大使が行って、これはCPAとなりました。今、茂木副大臣は、OCPAと言って、あたかもORHAと同じようなものだと思われておりますけれども、普通の新聞を見てください、Oなんかついていないですよ。CPA。CPAというのは何かというと、コアリション・プロビジョナル・オーソリティー。GHQですよ、これは。連合軍の暫定的な統治当局なんですよ。ORHAというような人道復興のための小さなオフィスからCPAという連合国による統治機構にあっという間に変質していたわけですよ。
 このORHAからCPAの変化というのを外務大臣はどのように把握しておられるでしょうか。いかがでしょうか。外務大臣にお願いします。外務大臣、お願いします。一番重要なところです。
池田委員長 質問者の要求に従い、外務大臣。
川口国務大臣 復興人道支援局、これが六月の一日付でOCPA、連合暫定統治機構、オフィス・オブ・ザ・コアリション・プロビジョナル・オーソリティーというふうに改組をされたという報告を受けております。
 そして、国連決議一四八三、これによりますと、安保理は、占領軍として米英の特別な権限を認識、これは前文パラ十三ですが、しまして、当局は、国際的に承認をされた代表政府が、イラク国民により樹立をされ当局の責任を引き継ぐまでの間、権限を行使するというふうに書かれているわけでございます。
首藤委員 おっしゃるとおりですよね。ということは、人道と復興、人道面だから、復興だから、それはやはり日本もやらなきゃと言っているものから、イラクの占領行政に移ってきたということなんですよ。
 ですから、私たちが合意して、また外務省の意図がどうであろうが一応御説明を聞いて、一応合意して送り出していった日本の官僚、CPAになったら、要するに派遣先の性格が変わったら、これはもう一度精査して、呼び戻して話を聞く以外ないじゃないですか。そして、新たに派遣して、あるいは国民的な合意を得てやらなければ、それは当然行けないと思いますが、外務大臣、いかがでしょうか。外務大臣です。外務大臣。
川口国務大臣 いずれにいたしましても、出張している三名、これにつきましては、外務省の職員として外務大臣の命を受けて、イラクの復興を通ずる、通ずるといいますか、イラクの復興に対して協力をしている、そういうことで出張をしているということでございます。そのために必要な仕事をやっているということでございます。
首藤委員 いや、これは、私は長年民間にいましたから、そういうことを、組織の名前が変わるなんてしょっちゅうだと思いますよ。しかし、これは官庁ですからね、官僚機構ですからね。組織の名前が変わるということは、その内容も変わっているわけですね。ですから、その派遣している人たちが、これが人道復興の支援局であったのが、これはもう、統治機構に移っていったら、当然のことながらマンデートが違ってきているわけですよ。そうじゃないですか。どうしてそれが自動的になるんですか。
 では、外務大臣にお聞きしますが、ORHAとCPAとの関係はどういう関係ですか。ORHAはなくなりましたか。CPAとの関係はどういう関係になっておりますか。いかがですか、外務大臣。
茂木副大臣 ORHAにつきましては六月一日付でCPAに改組をされた、こういう形であります。
 まず、ORHAですけれども、ORHAの中でも、私もブレマー大使ともお会いをしてきましたけれども、結局戦争が終わった後、いわゆるヒューマニタリアン・アシスタンス、人道支援からさらに復興の方に重点を移す、こういう形で、復興を中心にした活動になっていく。まさにこのCPAにつきましてもそのような形になってまいると思います。
 そして、派遣している人間につきましては、派遣というよりもあくまで外務大臣の命で長期出張している形でありますから、そのCPAとどういう連携をとっていくか、これにつきましても外務大臣の指示のもとで行うということでありますから、組織の名前が変わったからすぐに戻しなさい、こういう話にはならないと思っております。
首藤委員 それはとんでもない話ですよ。そんなのがこの官僚社会で通用しますか。しないですよ。しかも、名前が変わっただけじゃなくて、それはCPAという、もう明らかに性格が変わってきているわけですよ。
 それはなぜか。ポール・ブレマーさんが、ポール・ブレマー大使がやっていることを御存じでしょう。今までは、ガーナー退役中将が反フセイン七グループと、ともかく暫定的なイラク人による行政機構をつくっていこう、そして、一方、アメリカなんかは復興とか人道支援なんかを別にやっていこう、こういう形で組んでいたわけですよ。それを、ポール・ブレマーさんが来て、これを全部キャンセルしました。
 ですから、私が会った、人口の六割を超えるというシーア派の指導者であるところのアヤトラ、ハキーム師、彼はもう本当にそれを怒っている。それだけじゃなくてクルドでも、もうもちろんアメリカにべったりのところもありますけれども、クルド民主党、クルドの二大勢力のうちの片方は、やはりそれはおかしいと。それから多くの方が、これはおかしいと。
 今まで、イラク人の暫定政権を、政府を早くつくって、そして、もともとは、数カ月前にはちゃんとした国家だったんですから、早く公務員を職場へ戻して、警察を職場へ戻して、そして警察をして治安を維持していこうと。そういうことにもかかわらず、その暫定的な統治機構は全然進めないで、そして、アメリカの統治機構、連合国による統治機構をつくろう、これがCPAなんですよ。
 どうしてこういうふうに性格が根本的に変わっているのに、人道復興のために送り出した人々が、その公務員が、どうしてこちらの方に、全く性格の違うところに、国民の論議もなければ、国会の論議もなければ、どうしてそんなことが勝手にできるんでしょうか。外務大臣、いかがでしょうか。
川口国務大臣 基本的に、先ほども申しましたように、出張している三人、これは、我が国のイラク人に対する復興、イラクの復興についての協力といいますか貢献、それをするために行っているわけでございます。それをするために何をするかということは、これはさまざまあり得ると思います。
 先ほど来、性格が根本的にORHAからOCPAになって変わったというふうにおっしゃっていらっしゃいますけれども、そういうことではないわけで、我が国として、この機構は引き続き、今、暫定行政機構がない、そこに引き継がれるまで、まさにこれが、国際的に承認された代表政府が、イラク国民により樹立をされて当局の責務を引き継ぐまでの間、権限を行使するというふうになっているわけでして、このやっていることというのは、この中には、イラクの国民のための、治安も含め、石油も含め、民生も含め、経済政策も含め、さまざまなことが入っているわけでございます。したがいまして、ORHAからOCPAになったことによって基本的に性格が変わったというふうには私どもとしては理解をしておりません。
首藤委員 それは理解していないのは結構ですけれども、もう一度だけ確認させていただきたいんですけれども、新聞資料その他、外的な資料を見て、また、現地で聞きますと、みんなCPAと言うんですね。外務省だけがOCPAと言っているんですよね。
 我が民主党の派遣団の中でも、外務省からブリーフィングを受けた方はOCPA、OCPAと言って、ORHAがOCPAになった、両方ともオフィスだ、こういうふうに考えるんですけれども、実際に現地でいろいろなインタビューすると、これはもうOに、すなわちオフィスに力点があるんじゃなくて、最後のCPAのA、オーソリティーに、すなわち当局だ、占領当局だというところに力点があるというふうに皆さん解釈しているんですが、それは茂木副大臣でも結構ですが、それはOCPAで間違いございませんね。
茂木副大臣 名前といたしましてはOCPAで間違いございません。ただ、通称といいますか、いろいろなものにつきましても、ORHAでもオー・アール・エイチ・エーではなくて皆さんがORHAと言う、それに対しましてOCPAについてはOCPAという呼び方をする、またそれをそこの中でCPAと呼ばれる方もある、こんなふうに思っております。
首藤委員 これはやはり私がなぜORHAからCPAの変換に対して言っているかというと、これの変換によってイラクの将来の政治的な状況というのはもうがらりと変わってしまったんです。今までガーナー退役中将のもとで一応まとまってきた反フセイン七派のリーダーというものは、一斉にアメリカの主張というのを離れ始めている、非常に難しい状況にあっているということなんですね。このことは、私は国連のデメロ特別代表とも会っていろいろな話をしました。やはり国連側も非常にアメリカの意図というものに対して慎重な見方をするようになっています。
 日本は国連中心主義と言っておりますけれども、ORHAに人を派遣するなら、どうですかね、国連の代表の方にも人を派遣したらいいと思うんですけれども、外務大臣、いかがでしょうか。
茂木副大臣 日本政府といたしましては、国連の機関ともさまざまな連携をとりながらイラクの復興に取り組んでおります。
 例えば、今後のイラクにおきます学校の復旧であったりとか、学生たちが、子供たちが学校に戻れるように、こういうプログラムにおきましてはユニセフとの間で緊密な連携をとっておりますし、また、大変失業率の状況が高いわけでありますから雇用の創出を行っていく、こういう事業につきましては、UNDPとも関連を持っております、連携をいたしております、さまざまな国連機関との間でも連携をとりながら復興に努めていきたい、こんなふうに考えております。
 そして、首藤委員おっしゃった中で、最終的な目標としてイラン人によるそれが代表された政府をつくりたいと、これは……(首藤委員「イラク人」と呼ぶ)失礼いたしました、イラク人によります正統な政府をつくりたい。恐らくその間にはある程度の時間が必要であろう。そしてそこの中で、例えば、憲法をつくったりとか、民間経済をしっかりさせたりとか、さまざまな準備作業、こういうのが必要でありまして、そこの中でどれを一番先にやっていくとか、そういう順序につきましては今後とも検討されるべき問題だと私は思っております。
首藤委員 私がこう言ったのは、やはりORHAとかCPAに送っている、復興のためだと。しかし、例えば、今ユニセフという話がございました。民主党派遣団の一つの調査の対象は、当然ユニセフにも行ったんですけれども、ユニセフから我が党の末松衆議院議員が聞いてきたことによると、アメリカはユニセフに対してイラクにフセイン後の教科書をつくれというようなことを指示しているという話を聞いたんですね。そうすると、ユニセフの方は、それはできない、それはイラクの人たちがつくっていくんだ、新しい教科書は占領軍がつくるんじゃなくて、イラクの人たちが、自分たちの将来がどういうものであるかということを考えながらつくっていくんだと。
 ですから、何を言わんとしているかというと、私たちは、国連においてアメリカの占領行政に役立つ教科書をつくるんではなくて、やはりイラクの人たちが本当に必要だ、イラクの将来はこうだというコンセンサスのもとで、そしてその専門性を持っているユニセフなんかと協力してつくる、こういう方向なんですよ。
 だから、ORHAとかCPAにだけ人を出していくのではなくて、当然のことながら国連にも人を出し、そして、両方にバランスをとりながらやらないと、これは全然日本の今までの国是、日本の基本精神に合っていない、そういうふうに私は言わざるを得ない。
 大変な問題があるんですが、これはもうこれからも何度も質問させていただきたいし、また、同僚議員からいろいろ同じような質問があると思いますけれども、今私が指摘した、果たして、ここの国連決議一四八三で自衛隊が送れる根拠があるのかという点と、それからORHAがCPAとなったときに、どんなに大きな変化があり、日本が真摯に対応しないととんでもないリスクに見舞われるのかということを御認識いただきたいと思うんです。
 さて、今もう一つ、こういうことが起こっているときに、戦争では両面作戦をやっちゃいけない、両面作戦をやった国は必ずつぶれる、こういうふうによく言われるんですが、今この状況の中で、もともとの中東の最大の火種であるパレスチナ問題というのが再燃しております。そして我々は、ロードマップというのがあって、ああ、このロードマップで行くんだろうと思ったら、おっとどっこい、道を外れてとんでもない沼地や荒れ地に入ろうとしている。
 こういう状況をどういうふうに考えるかですが、この中で重要なのは、そうした問題を起こすグループはたくさんあるんですが、ここでまず、ハマスというものに対してイスラエルがミサイルを発射した。このことからさらに一層このロードマップというものは破壊されていくわけなんです。
 ハマスというのは、御存じのとおり単なるテロ集団ではなくて、一面においてはもともとインティファーダとか、いろいろな形で傷ついた人たちの心をいやしたりあるいは生活を面倒見ていったり、そうした福祉面での活動もあるがゆえに非常に広範な基盤を持って今まで生きてきたわけですが、このハマスというものを外務省としてはテロ集団として定義されますでしょうか。外務大臣、そのことをきっちりお聞きしたいんですが。
川口国務大臣 ハマスというのは、いろいろな過激な、あるいは暴力行動をとっている、そういう集団であると考えます。
首藤委員 いや、外務大臣、これは本当に大変なことなんですよ。ハマスに対しては、イスラエルは全面戦争だ、ハマスとは全面戦争だと言っています。我々も何度も、私もパレスチナもイスラエルも入りましたけれども、ハマスと一度会えば恐らく二度と入国はかなわないだろう、そういうふうに思っています。そうした集団なんですね。
 今回のことに関しては、ブッシュ大統領がハマスをテロ集団と考えて、これに協力する、これに資金を出す者はみんなテロに加担しているんだ、こういうような表現でテレビで叫んでおられますけれども、我々はこの一年、二年の間ずっと、九・一一のテロ以来、テロに資金を流さないようにということを何度も何度も討議し、法律も何本も通しました、条約も通して、そこで重要となったのは、どれがテロ集団かという認定問題なんですよ。
 ですから、ひょっとしたら、例えば近くにイスラム教徒の方がいて、大変苦しんでおられる。そして、その方を面倒見ている福祉団体もある。そういうところへ寄附したということが、それは同じようにめぐりめぐって最後はハマスにお金が流れていくかもしれない。ですから大変な問題なんです。
 ですから、ハマスというものをテロ集団と定義して、ここへお金が流れるようなことは一切あってはならないというふうにされるのか。あるいはまだ調査中なのか、あるいはいろいろな活動をしているからそれはある程度もう認めるというのか、日本とアメリカの立場は違うというのか、そこをはっきりさせていただきたい。外務大臣、お願いします。
川口国務大臣 先ほど申し上げましたように、ハマス、これはイスラム原理主義のグループでございますけれども、今までの幾つかのテロ活動について、例えば八日に、まず一連の事の始めになりました、イスラエルとパレスチナのガザの境界の検問所で、武装したパレスチナ人三人がイスラエル兵を銃撃して四人が射殺されたという事件がございましたけれども、例えばこの事件については、ハマスだけではありませんが、犯行声明を出しております。そういうようなことをやる集団であるという認識を持っています。
首藤委員 いや、全然答えていただけないですよ。答えていただきたいのは、じゃ、二つ、さらに追加しますよ。
 ハマスはテロ集団として考え、そこへ資金が流れるようなことは避けるのか。一点。イスラエルは、ハマスと全面戦争と言っている。したがって、ハマスを交戦団体として把握するのか、要するに、戦争状態として把握するのか。この二点、いかがですか、外務大臣。
川口国務大臣 ハマスについてですけれども、安保理の決議が前にあって、それでテロ組織の資産が凍結をするということになる、そういうことをしているわけですけれども、幾つかを指定していますけれども、我が国として、今の段階ではハマスをこの対象としては指定していないということです。
 ただ、そのハマスの中の軍事部門といいますか、武装部門というのがあるようでございまして、これについてはこの資産が凍結をされている、そういうことになっております。
首藤委員 ハマス全体に対してはテロ集団として把握しないということだ、そういうふうに定義されたというふうに解しております。しかし、この問題というのは本当に深刻な問題で、この定義をきちっとしなければいけない。
 最後に一つだけお聞きします。
 こうした状況を打開するために、日本政府は一体何をされていますか。こんなにも影響力があり、こんなにも私たちの税金をつぎ込んだこの地域に、日本政府は、この状態をとめるために、ロードマップや正常な道へ戻すために、どんな努力をされておられるでしょうか。外務大臣に最後にお聞きして、終わりたいと思います。
川口国務大臣 これについては非常に懸念をしておりまして、今まで同様に談話を出させていただいております。
 それから、それに引き続き、とまる様子がないということでございますので、きょう私は、イスラエルのシャロン首相、それからパレスチナの方のアッバース首相、両方に電話をするということで、失礼しました、シャローム外務大臣と、それからシャース、新しい外務大臣といいますか、パレスチナ・サイドですけれども、その両名に電話をするということを今アレンジしておりまして、多分可能だと思います。
首藤委員 終わります。
池田委員長 次に、藤島正之君。
藤島委員 本日は、イラク復興支援法に絡んで御質問をさせていただきたいと思います。
 十二日に自由民主党の総務会の中で議論があったようですけれども、何かいろいろな議論が出ておりますね。「先に自衛隊派遣ありきという法案を出すのは不見識だ。人道復興支援は民間でもできる」、これは野中さんがおっしゃっていますね。それから野呂田さんも、「大量破壊兵器の処理業務を法律に明記するのは、明らかに行き過ぎだ」と言っておられる。あるいは江藤さんは、アーミテージ国務副長官が、湾岸戦争当時、日本は巨額の金を払ったのに観客席で見ていただけで、今度はグラウンドにおりてプレーすべきだと語ったことを取り上げて、「米国におだてられている。乗り遅れてはいけないと焦る必要は全くない」。あるいは丹羽さんは、「日米同盟がすべてに優先するというのはいかがなものか」。「小泉さんの姿勢はブッシュ大統領へのごますり以外の何物でもない」。
 全く同感のことばかりなんですけれども、この中で、幾つかの点について御質問をしたいと思っています。
 ほかにもあるんです。先ほど首藤委員が質問した国連決議の一四八三、これが本当に根拠として適当かどうかといった問題とか、あるいは、武器使用を見直さないままで自衛隊を派遣していいのかどうかといったような問題、いろいろあるんですけれども、順番にお尋ねしたいと思います。
 かつてブーツ・オン・ザ・グラウンドという言葉を米側から言われたことがあるのかどうか、この点について、まず確認をさせていただきたいと思います。
川口国務大臣 日米の間ではいろいろな会議の場がございます。先般も日米首脳会談がございましたし、それから、今般、アーミテージ国務副長官がいらして、竹内次官との間でも会談を持っておりますし、福田長官や私にも表敬がございました。
 そういったときに、そのような具体的な支援、これの要請は受けてはおりません。
藤島委員 再確認をしますけれども、ブーツ・オン・ザ・グラウンドというのは、政府に対しては全くなかった、そういう米側の要請は全くなかったというふうに理解していいわけですね。これは単にマスコミが勝手に聞いて発表していることであるというのが政府の正式な見解であるというふうに確認していいですか。
川口国務大臣 我が国に対して、自衛隊派遣について具体的な要請があったという事実はございません。
藤島委員 要するに、ブーツ・オン・ザ・グラウンド、そんな言葉もなければ、全く要請はないと本当に言い切ってよろしいわけですね。これは、この後の議論に重大な関係があるものですから、確認しておきたいと思います。
川口国務大臣 何回も繰り返しになりますけれども、我が国に対して、自衛隊の派遣について具体的な支援の要請というのはございません。受けておりません。
藤島委員 ブーツ・オン・ザ・グラウンドという言葉は全くなかったということでいいんですか。言葉は非公式にも聞いていない、これでいいんですね。
海老原政府参考人 事実関係ですので、私から御答弁させていただきたいと思います。
 今大臣がおっしゃいましたように、自衛隊の要請についての発言というのは一切ございません。
 ブーツ・オン・ザ・グラウンドという言葉が、そもそも米政府の関係者の口から出たかどうかというお尋ねであれば、これは私、正直言って記憶はございませんけれども、全くないということも、それはいろいろなやりとりが常に行われておりますから、それを私が今ここで、ないということも言い切れないというところが事実だと思います。
藤島委員 要するに、公式にはなかったということですね。
 それから、十日にアーミテージ副長官がこちらに来られておって、山崎与党幹事長と会談をしたようですし、あるいは福田長官とも会談をしたようですけれども、この辺については外務省はどういうふうに認識しておりますか。
 先ほどちょっと申し上げたような、球場の中で今回はプレーをすべきじゃないかというような議論が本当にあったのかどうか、政府に対して公式に要請があったのかどうか。これは間接ながらの要請になりますけれども、その辺を確認したい。
海老原政府参考人 アーミテージ国務副長官は、竹内次官との戦略対話、あるいはその機会を利用いたしまして、福田官房長官、川口外務大臣などと会談をされたわけでございますけれども、今の野球場云々ということはなかったというふうに承知をいたしております。
 自衛隊の派遣の要請云々については、先ほど大臣が御答弁されたとおりでございます。
藤島委員 要するに、この発言は政府側に対しては全くなくて、与党に対してだけあったようだというふうなことですか。
海老原政府参考人 政府側についてはございませんでした。与党についてというのは、ちょっと私は承知いたしておりません。
藤島委員 要するに、日本に対して大変圧力的な要請があったということなんじゃないかと思うんです。
 ところで、私は、我が国が今回貢献するに際して、我が国の独自の判断でやるべきであって、それが結果的に米側の思っているところに、何割か、合うか合わないかわかりませんけれども、合えばいいんじゃないかと。まず米側の要請ありきというふうに見えてしようがないし、国民のほとんどがそういうふうに感じているんじゃないかと思うんですね。
 そこで、政府として、イラク調査団というのが行かれたようですね。これはどういう構成で行かれたんですか。これは事務方でもいいですよ。
西田政府参考人 先般、政府は、イラクの復興支援という見地から行っております検討の一環としまして、調査チームを派遣いたしました。チームは、内閣官房を中心にしまして、防衛庁、これは自衛官の方でございますが、それと外務省で構成されまして、四日にイラクに入り、十一日に帰国いたしました。
藤島委員 自衛隊もきちっと入っていたということですけれども、この結果についても後で伺いますけれども、安倍副長官にお見えいただきましたので、一件だけお伺いしておきたい。
 イラク復興支援法、今完全に固まったわけじゃないわけですけれども、こういう法律は、私は本来、自衛隊を派遣する内容であれば、憲法上何らかの規定があった方がいいと思うわけですけれども、そうでないとしても、法律としては、その都度どさくさに紛れて出して、国民にこれをやらなかったら大変になりますよというような形でその都度法律を出して、時間がない、時間がない、派遣するのがもう決まっているので時間がない、こういうやり方は、これは与党においても非常に不満もあるし、批判もあるわけですね。
 私は、こういう法律は、骨格的なものはやはり恒久法としてつくっておくべきだと。今回時間があるかどうかは別にしまして、いずれにしても、こういうケースは今後いつどういうふうに出てくるかわからないわけですから、私は恒久法にすべきだと思うわけです。今度のこれを恒久法にするというんじゃないんですけれども、思うわけですけれども、この点について副長官のお考えをお伺いしておきたいと思います。
安倍内閣官房副長官 現在、法案の中身については、政府・与党で検討中でございます。
 ただいま、一般的に国際平和協力のあり方について、随時法案を提出するというよりも、これは恒久法によってそのときそのときに対処できるようにした方がいいだろうという委員の御指摘がございました。与党の中にもそういう議論があるところでございまして、今後、国会等での御議論も踏まえまして検討してまいりたい、このように考えております。
藤島委員 PKO法はもうあるわけですから、やはりこういうケースもあった方が国民にわかりやすいし、政府としてもその都度、あるいは自衛隊としてもその都度準備じゃなくて、やはりある程度準備できるわけですね。
 法律がないのに勝手に準備すると、また自衛隊の中で勝手に走っている、こういうことになりかねないので、そういうことのないようにするためにも、恒久的な法律があった方がいいと思うわけですけれども、今の答弁は、前向きに検討したいというふうに私としても受けとめさせていただきますので、ぜひそういうふうに検討していただきたいと思います。
 どうもありがとうございました。
 さて、先ほどの続きでございますけれども、調査結果についてごく簡単に説明をしていただきたいと思います。
西田政府参考人 お答えをいたします。
 調査チームにつきましては、先ほどの日程で帰国したばかりということで、現在報告を取りまとめているところでございます。
 結果を、最終的には内閣官房がその報告の内容及び対外的な発表の文面を含めて検討をするということになると思いますが、とりあえずの現時点での報告の骨子あるいは要点を一、二御紹介をしたいと思います。
 基本的には、イラクにおきます行政の体制確立、あるいは戦争ないしはその前に至る、いわゆるサダム時代に行われましたインフラというものが大変に摩耗しておるという状況でございますので、そういうような復興のためには、自己完結的な能力を有する組織、具体的には軍隊だと思いますが、その役割が極めて重要だというところが一つでございます。
 では、具体的にどういうような所要というものが、ニーズというものが軍隊に対する期待としてあるのかということで、米英側等々の関係者からの発言をとりあえず整理をしますと、航空輸送あるいは燃料、水等の補給、それから輸送の調整、さらにいえば、例えば患者等々を航空機で空輸するというようなこと、主にそういうような輸送とか補給ということについては相当のニーズがあるというような説明を聞いておるというところでございます。
藤島委員 どうしても自衛隊が行かなければいけないのかどうか、ここは余りはっきりしていないわけでありまして、先ほどの米側の要請との関係では、私は実はずれがあるんじゃないかという気はするんですけれども。
 時間の都合もありまして、内閣法制局の方に来ていただいていますので、二点確認しておきたいと思います。
 一点については、自衛隊をこういうふうに派遣する場合については、今回のような法律がないといけないのかどうか、そこだけまず一点確認しておきたいと思います。
山本政府参考人 お答え申し上げます。
 やはり自衛隊という職務を持つ機関でございますので、いわば実力組織でございますので、そういうものを派遣するときは、法律に基づいてその職務を与えるということは必要だと思います。
藤島委員 といいますと、今回の法律は主として自衛隊を派遣するための法律だというふうに考えていいわけですね。
山本政府参考人 現在、御指摘のイラク復興支援法につきましては、ただいまちょうど閣議決定の手続中でございますので、案の検討段階ということで申し上げますけれども、もちろん一つの重要な中身は自衛隊を派遣するという部分でございますが、いま一つは、そのほかのいわば文民の方々を派遣するということになっておりまして、いずれも派遣する内容になっております。
藤島委員 それじゃ、自衛隊を派遣する以外のものであれば、この法律はなくても文民等は、あるいは復興支援はやれるのか、あるいは、自衛隊を除いた部分であっても、こういう法律がないと政府としてはやれないのかどうか、そこをもう一回確認しておきたいと思います。
山本政府参考人 その点につきましては、第一に、既存の各省の例えば設置法とか、いろいろ業務を与える法律がございますので、それに基づいてやるということは当然でございますけれども、それ以外にも何か、いわば読めないといいますか、できないといいますか、その範疇に入っていないところを入れるというものについては、やはり新しい法律が必要かと思います。
藤島委員 政府は、北朝鮮の船の入港の問題でも、何もできない、できないとずっと言い続けて、何もできないとはおっしゃらなかったですね、川口さんも。一部できるものがあるというような答弁だったんですけれども、結果的には大変なことがやれて、事実上入港阻止できた。そんなことをやれるわけですね。
 今の答弁ですと、やはり同じようなことが、ある程度はやれるけれども、はっきりさせるには新しい法律の方がいいだろうということで、本当はなくてもやれるような部分であり、今回の法律は要するに自衛隊を送るための法律だ、そういうふうにおっしゃっているというふうに理解をしておきたいと思います。
 それじゃ、もう一点について伺いたいんですが、自衛隊の武器使用の件ですけれども、これは私が現役時代担当して、法制局と随分やり合って、結局、武力行使に該当してもいけないし、あるいはよその国の軍隊とやる場合、一体化してもいけないという二点があって、ぎりぎりのところ、最初に自然権的な権利ということでPKO法に盛り込まれた経緯がありますね。その後、それだけじゃ狭過ぎるということで、実は前回のような、一緒にいる人のところまで防護できるというところにちょっと膨らんだわけです。
 今度は、要するに、いろいろな要請からすれば、業務遂行上、それを阻害される場合に、それを排除するための行為、これができないと意味がない。これができるぐらいでないと、先ほど首藤議員も言いましたけれども、非常に治安状態が危ない状態になって、どこがいいとかどこが悪いという状態じゃないという状態に自衛隊を送った場合に、必ずこの問題が来る。
 この問題を解決しないまま本当に送ったら、自衛隊が本当に犠牲者が大変なものが出る。犠牲者が出てから、やはり武器の使用についてちゃんとしておけばよかった、これじゃ間に合わないんですよね。今まで、確かにルワンダだとかモザンビークだとかカンボジアだとか私も全部行ってきましたし、たまたま自衛隊にそういう事故がなかった。しかし、現場に行ってみればわかりますけれども、大変自衛官は緊張した状態で過ごしているわけですよ、結果的にそういう状態がなかったということなんですけれども。
 今回行かせる行かせないの根拠は別の問題ですけれども、私は非常に問題があると思いますけれども、行かせるからには武器使用はきちっとしてやらないかぬ。今回に関して言えば、もしこれを直さないまま行かせることは非常に危ないと思うんです。
 ただ、これは今まで法制局の、私が先ほど申し上げたような二点の問題があって、なかなか簡単じゃない。これが簡単にクリアできるようであれば、国民世論の関係もあって、武器をもっと大きなものを持たせ、あるいは、使用ももっと国際的なスタンダードに変える。これはもっと早くからできたはずなんですね。ところが、この憲法解釈の問題でなかなか進んでいなかった。ただ、法制局も、今の規定だけでもう目いっぱいであとは全然できないと言っていたわけじゃなくて、大変グレーな部分があるというような表現もしておったわけです。
 この件についてもう一度、法制局の現時点での、法制局も、ある時点で決めたらそれで一歩も進まないというわけじゃないので、先ほどの自然権的なものからだんだん進んできているわけですけれども、このグレーの部分の解釈といいますか、今回の、いわば自衛隊をやるのならそうしてほしいという国民的な要請、こういうのを踏まえて、現時点での考え方を伺いたいと思います。
山本政府参考人 御指摘の点は、従来から相当に検討が進んでおるところでございます。
 現在の考え方でございますけれども、いわゆるPKO法、それからテロ対策特別措置法におきまして、自己または自己とともに現場に所在する他の自衛隊員、もしくはその職務を行うに伴い自己の管理のもとに入った者の生命または身体の防衛のため、その防衛の武器の使用を認めておるわけでございます。
 これは、御指摘のとおり、まさにいわば自己保存のための自然権的権利というべきものでございますので、そのために必要な最小限度の武器の使用というものは、いかなる場合も憲法九条一項の禁ずる武力の行使に当たらないという考え方に基づいてやってきております。
 このように、武器の使用がすべて九条一項の禁ずる武力の行使に当たるとはもとより言えませんけれども、政府は、武力の行使とは、基本的には国家の物的、人的組織体による国際的な武力紛争の一環としての戦闘行為をいうというふうに解してきておりますので、その相手方が国、または国に準ずる組織であった場合でも、憲法上の問題が生じない武器の使用の類型といたしましては、従来の自己等を防衛するためのもの及び自衛隊法九十五条に規定するもの以外にはなかなか考えにくいというふうに考えております。
藤島委員 ということは、どんなに議論しても今の政府の解釈が変わらない限りは、要するに業務遂行を妨げる者に対する、それを阻止するための武器の使用ということはあり得ないということになりますか。
山本政府参考人 一つ考えられますものは、先ほど、武力の行使というのは基本的には国家の物的、人的組織体によるものだということでございますので、仮に相手方が例えば全くの犯罪集団、強盗とか山賊とか、そういったものがはっきりしています場合には、これは、今申し上げたもの以上の武器の使用はあり得るというふうには考えております。例えばそれが一つの例でございます。
藤島委員 ということは、今回、例えば治安の問題として、これは相手は政府でもないし、あるいは準ずるものでもないわけでありますので、全くの暴徒かもしれませんしね。そういうものが相手であれば、そういうものが業務遂行を妨げるようなことであれば、自衛隊が組織体としての反撃をし業務の遂行を遂げる、そういう可能性は十分にある、憲法解釈を変えなくても十分にそういうことは可能であるということですね。
山本政府参考人 ただいま申し上げた点は、かつてPKO法を議論するときに行われた話をもとに、一つの例として申し上げたわけでございますが、少なくとも今検討されておりますイラク復興の支援法といいますものは、案の段階でございますが、その活動地域は、いわゆる非戦闘地域においてするということになっておりますので、現在程度の武器の使用の基準では、それでいいんではないかというふうな考え方でやっております。
藤島委員 それはもう全く妥協の産物として、それを議論にのせたら国会が紛糾してなかなか通らないということからきているのであって、もうだれが考えても、今回のイラクについては、今、非戦闘地域であってもそこで何が起こるかわからない。本当に先ほどの民主党の報告にもあるし、それは皆さんがそう思っているんじゃないですか。だからそこは、私は今回に関しては詭弁だと思うんですね。
 前のテロ対策法のときは、確かにある意味では戦闘地域と非戦闘地域を区分できたかもわかりませんけれども、今度は、戦闘地域と非戦闘地域の区分がそもそも分けられるのかどうかが疑問に思うし、非戦闘地域だからといって自衛隊を派遣したら、そこがテロか何か治安を害するようなことが起こったとき、それは自衛隊は今までと同じような武器使用しかできない、これはやはり全く政府の詭弁だと私は思うんですね。
 延長国会に通るかどうかわかりませんけれども、やはりここはきちっと、派遣をするならば武器使用を一般の標準並みにして派遣すべきだということを強調しておきまして、時間になりましたので、質問を終わります。
池田委員長 次に、松本善明君。
松本(善)委員 外務大臣に伺いたいと思います。
 一昨日の党首討論で問題になりましたイラクの大量破壊兵器の問題、WMD問題は、アメリカの上院が来週公聴会を開くということを決めて、マスコミでも、ウォーターゲート事件をもじってWMDゲート事件などと言われるようになっていて、二〇〇四年の大統領選挙の争点にも急浮上してきているという問題になってきております。
 ほかの党の党首も問題にされましたが、我が党の志位委員長が、小泉首相に、イラクが大量破壊兵器を保有していると断定した根拠を聞いたのに対して、現にいまだにフセイン大統領は見つかっていないんです、フセイン大統領が見つかっていないから大統領が存在しなかったと言えるかと答えた。外務大臣もおいでになったと思いますが、満場爆笑というよりは、嘲笑といったような状況になって騒然となりました。マスコミも新聞もテレビも、しどろもどろだとか意味不明だとか糾弾されてしかるべきだとか詭弁で論外だとか、いろいろな論評があります。
 小泉首相が、断定した根拠を答弁できなかったということと同時に、断定したことを否定しなかったということも非常に重要だと私は思います。川口外務大臣も、三月十九日の外務委員会で、「大量破壊兵器を持つイラク」という表現で、小泉首相同様に、イラクが大量破壊兵器を持っていると断定した答弁をしておられます。
 このイラクが大量破壊兵器を持っているという判断は、小泉内閣としての、政府としての判断なんですか。
    〔委員長退席、土肥委員長代理着席〕
川口国務大臣 今委員がおっしゃった三月十九日に、ここに私はその具体的な速記録を持っておりませんので、どのようなふうに申し上げたか、まだ再精査することができませんけれども。
 いずれにしても、私が申し上げた趣旨というのは、米国等によるイラクに対する武力行使以前、この時点において、イラクに対して、多くの大量破壊兵器に関する疑惑が残されていた。これはもうずっとたび重なる国連の決議があって、また査察団の報告があるわけでございます。これに対する疑惑が残されているということは、まさに国際社会の一致した認識であるということです。
 それで、これについてイラクに対して最後の機会を与えた、一四四一で与えたわけですけれども、イラクは、これに対する疑惑を晴らすということをプロアクティブに、積極的に行わなかったということでございます。そういった、イラクに対して国際社会が一緒になって、最後の機会を活用して懸念を晴らすようにということを働きかけた。そして、平和的に解決をしたいということでやったわけですけれども、平和的に解決をするということが、これはイラク自身がそのような態度をとらなかった、米軍が周りにいるという圧力がかかってさえ、イラクがプロアクティブにそれをやらなかったという状況を踏まえて、武力行使がやむを得ない状況になったということでございます。
 そういった一連の経緯を「大量破壊兵器を持つイラク」と「国際社会」という表現で、そういう言葉を使って申し上げたとしたならば表現をしたということでございまして、基本的に、一連の国際社会、国連における動き、国際社会全体とこの懸念を持たれているイラクとの関係で、そういうことがあったということを申し上げた、意味としてはそういうことで申し上げたつもりです。
松本(善)委員 これは事前にちゃんと言ってあることですよ。言ったかどうかわからぬけれどもといっても、はっきり議事録にもう既に残っているんですよ、「大量破壊兵器を持つイラク」ということで、これは藤島委員に対する答弁です。
 今おっしゃったことは、それの意味ということを言われて、もし言ったとすればというような話で長々と言われましたけれども、断定したという質問にちゃんと答えてほしいんですよ。あなたも断定した答弁をしている。それから総理も断定された。政府として断定する、イラクが大量破壊兵器を持っているということを断定したというのは、政府の見解ですかということを聞いているんです。いろいろ、これはどういう意味だ、どういう意味だなんて、そういうことを聞いているんじゃないんですよ。
 委員長に申し上げますが、きちっと質問に答えるように大臣に言っていただきたいと思います。
土肥委員長代理 よろしくお願いします。川口外務大臣。
川口国務大臣 この点について、例えば質問主意書等をいただいておりますけれども、政府として申し上げているのは、国連査察団が指摘をしている数々の疑惑にかんがみれば、イラクに大量破壊兵器が存在しなかったとは想定しがたいと考えるというふうに申し上げております。
松本(善)委員 やはり違うことを言うんですね、なかったとは想定しないと。
 これは、持っているイラクというふうに言っているし、総理も、保有していると断定しているんですよ。それについて聞いているのにほかのことを答えるということは、断定しているということが今になったら言えないということじゃないですか。私は、もし同じことならば聞いても仕方がないですよ。断定しているということが政府の見解かどうかということを聞いているんですよ、これは実際に断定しているんだから。
 それで、そうであるかないか、あなたがいろいろ弁解しているのは、そうでないということを言わんとしているんじゃないかと思うんですよ。そのことをお聞きしたい。そして、断定しているのならその根拠を改めて、党首討論というのは短いですから、細かく詰めて聞くことができませんからそれで終わったと思いますが、断定しているならその根拠。そういう根拠がないから今のような弁解をするのか。はっきり、問われたことに答えてほしい。
川口国務大臣 ですから、政府の見解として申し上げていることは、先ほど言いましたように、国連の査察団が指摘している数々の疑惑にかんがみれば、イラクに大量破壊兵器が存在しなかったとは想定しがたいというふうに申し上げている。これは、質問主意書に対する答弁でもこのように申し上げているわけでして、これが政府の見解であります。
 それで、一番最初に申し上げたことは、「大量破壊兵器を持つイラク」と「国際社会」という言葉を私が使った。使ったことをもって断定していると委員は断定をなさっていらっしゃるわけですけれども、この言葉の使い方というのは、英語でずっと、非常に端的にインターナショナルコミュニティーとイラク・ウイズ・WMDという言葉の使い方をずっと国際社会でしてきたということを日本語に直訳して申し上げたということで、その意味は先ほど御説明をしたとおりである、そういうことでございます。
松本(善)委員 やはり聞いたことに答えていないし、そういうことでは国民は絶対納得しないですよ。言うならば、断定したということは間違いだったということを言っているようなものです。
 私は、このことを指摘して、うちの志位委員長も党首討論で指摘をしましたけれども、非常に注目をしているジョン・ディーン氏の論文ですけれども、大臣、これはそんなに時間がかかるものじゃないんですよ、二十分もあれば読めるぐらいのものです。お読みになりましたか。読んでおいていただきたい、こう言っておいたんですけれども。
川口国務大臣 読んではおりませんが、概要については聞きました。
松本(善)委員 この方は、一九七〇年に三十一歳でニクソン大統領の法律顧問になられて、それから約千日ですから、三年近くおやりになった。その前はアメリカ連邦議会の下院の法務委員会の、共和党の首席顧問です。それから米国の司法長官補佐もやった。ニクソン大統領の法律顧問ですから、あのウォーターゲート事件にも精通している。三十一歳でそういう立場におなりになった、それで前の経歴もありますから、私は、もう経歴を見ただけで超一級のアメリカの法律家だというふうに思います。
 これは、その方があえて行った発言なんですね。これは非常に大きな重みがあって、私は、アメリカの政界だけではなくて、アメリカの社会に大きな影響が起こることはもう目に見えていると思います。
 ディーン氏は、結論的にこう言っているわけですね。党首討論でも紹介されましたが、改めて言います。
 ブッシュが、偽造した情報に基づいて議会と国を戦争に引き込んだのであれば、彼は助からない。国家安全保障、諜報データを操作あるいは意図的に不正使用することは、もし証明されれば合衆国憲法の大統領弾劾条項という、重罪ということになるだろう。ウォーターゲート事件後、すべてのアメリカ大統領は、いかなる行政機関を不適切に操作あるいは不正利用するのも大統領権限の深刻な乱用であることを通告されている、こう述べられた。
 既にアメリカでは、今まで協力的だったアメリカのメディアも、一転してこの問題を追及するということになってきました。民主党の大統領候補は一斉に取り上げて、その一人のグラハム上院議員は、国民に対する詐欺だとまで言っています。イギリスではもっと深刻ですよ。きょうは触れません。
 戦争を起こしたアメリカ、イギリスの国内でも、この戦争の大義が、これが本当に正当な戦争だったのかどうかということが大問題になっているということを外務大臣はどういうふうに受けとめていますか。外務大臣にお聞きしたいと思います、これは責任者なんだから。
川口国務大臣 ジョン・ディーン元大統領法律顧問が、先ほど委員がおっしゃったようなことを言っているということは承知をしております。
 これについて、米国のまさに憲法の問題でございまして、これがどのような解釈であるべきかということについては、外国の憲法の解釈のことですので、日本国の外務大臣として、有権的に解釈をするという立場にはないと考えております。
松本(善)委員 それは、北米局長あたりが答えるんならそれでいいんですよ。だけれども、外務大臣に聞いたのは、アメリカでこれだけ大問題になっていることを日本の外務大臣がどう受けとめているかということを聞いているんですよ。
 戦争を起こしたことがアメリカの国内で大問題になって、大統領選挙の争点にまでなろうとしている。その候補者は、国民に対する詐欺だとまで言っている。こういうふうな問題になっているイラク戦争なんですよ。それを、あなたは外務大臣としてどのように受けとめているのかということ。法律解釈を聞いているんじゃないんですよ。
川口国務大臣 これが大問題であり、大統領選挙の争点にまでなっているかどうかということについては、私は判断をする立場にはございません。まさにアメリカでいろいろなことが、自由な国でございますので、言われ、行われ、かつ透明性を持って行われる、そういう制度自体は、一般論といたしまして、私は非常にいい制度であるというふうに思っていますが、この問題について、それが非常に大きな問題であるとかということは、今の時点で申し上げることはできないと思います。
 ただ、日本国として、もちろん米国に起こっているこのこと、今後どのような展開をしていくかということについては注視をしていきたいと考えます。
松本(善)委員 外務大臣として注視をしていくというのは、それは当然のことであります。アメリカの国内でこのイラク攻撃の正当性が問題になっている、このことが大事なんです。
 フランスのシラク大統領は、私、本会議でも指摘をしましたけれども、正当性を欠いた戦争はたとえ勝利をしたとしても正当化することはできないと述べている。当のアメリカ、イギリスで、イラク戦争に大義があるかどうか、この戦争が正当性があるかどうかということが大議論になっている。マスコミでも政界でも議論になっている。あなたも注視すると言っている。その戦争に自衛隊を参加させる、占領に参加をすると。これはもう間違いの上に間違いを続けるとんでもないことだと思うんですけれども、外務大臣、どう思いますか。あなたはこれを注視していると言った。
川口国務大臣 国連の決議の一四八三によりまして、国連は、加盟国そして国際機関に対して、いろいろなイラクの復興人道支援、治安その他に対しての支援を行うということを要請しているわけです。イラクは我が国にとって重要な国であり、また重要な中東という地域にあるわけでございまして、この国連の要請にこたえて、どのように我が国として貢献をしていくかということが考える原点であると思います。
松本(善)委員 先ほども議論があったように、一四八三は、自衛隊を派遣しろなんていう要請はさらさらないですよ。また、この決議は、アメリカ、イギリスのイラク攻撃を正当化したものでも全くありません。だからシラク大統領のような発言が出るんですよ。それをあなたは、やはりこれに真っ正面から答えられない。アメリカでも、正当な戦争かどうかということが大問題になっているのに、それに自衛隊を派遣するのはとんでもないことだと思う。
 さらに、先ほど来皆さんが議論されましたけれども、イラクに、戦闘地域か非戦闘地域か、それはもう区別できない。私は、イラクに自衛隊を派遣するのは、軍事占領を怒っているイラクの国民から敵対者とみなされて、イラク国民が銃口を向けるということが起こり得ると思います。現に、各地で米英軍が、先ほどもお話がありました、アメリカ軍も攻撃をされている。米英軍に対するデモも襲撃も起こっている。連日のように死傷者が発生しているんです。
 バグダッド西方のファルージャで起こった事件を例にとりますと、目撃者は、武器を持たない平和なデモだと声をそろえています。ところが、米軍は、武装したイラク人の襲撃に応戦したんだ、こう言っている。十人以上の人が死亡して、五十人以上が負傷しています。これは署名入りの記事で報道されている。
 それから、アメリカ中央軍のマッキャナン司令官は、まだ戦争は終わっていない、我々は戦闘地域にいるんだと。イタリア軍などの同盟軍にも死傷者が発生している。占領に反対する平和的なデモも多いし、アメリカ軍を襲撃する勢力も一般市民に紛れ込んでいるかもしれない。どこでも戦闘地域になり、戦闘地域と非戦闘地域を画然と区別するのは不可能だと思う。
 外務大臣は、イラクのどこが非戦闘地域だと思っていますか。大臣にお聞きしています。これは、もう責任者なんだから。
    〔土肥委員長代理退席、委員長着席〕
川口国務大臣 どこが非戦闘地域かというような御質問でございますけれども、これは、法案自体、まず今内閣官房を中心に検討をしているということでございまして、与党と相談しながら検討中であるということでございますので、今の時点で、外務省から法案について御説明をするということは適切ではないというふうに思っております。
 したがいまして、一般的な話ということでございますけれども、非戦闘地域要件、これは、活動地域を今の法案では非戦闘地域に限るということで考えられているわけでございます。それで、どの地域がそうかというようなこと、これについては、防衛庁や外務省が収集をした情報、そして米軍や英軍や国際機関等から得た情報を総合的に分析をして、合理的に判断できるというふうに考えております。
松本(善)委員 それは、そういうふうに判断するというんだけれども、私の聞いたのは、今、非戦闘地域というのはイラクにありますか、あったら、あなたはどこだと思っていますかということを聞いているんですよ。もちろん一般論ですよ、法案とは関係なく。非戦闘地域というのはあるんですか、あるというのならどこにありますかということを聞いているんですよ。
 それはやはり外務大臣にお答えいただきたい。責任者なわけです。内閣が責任を持って、今イラクに自衛隊を出そう、出すまいということを言っているんですから。答えられないなら答えられないとまず答えて、それから茂木さんに聞きましょう。
川口国務大臣 先ほど来、責任者だから答弁をせよとおっしゃっていらっしゃいますけれども、そういうことであれば、すべての問題について、外務大臣は外務省の所管については責任者でございまして、外務大臣以外の人間が答弁できなくなるということになるのではないかと私は危惧をしております。
 いずれにいたしましても、非戦闘地域、どこが非戦闘地域かということですけれども、これは法案を通していただいて、実際に指定をする段階で、情報を先ほど申しましたようにきちんととって、その時点で適切に判断をする。今は、この地域がそうであるということを申し上げることは難しいと思います。
松本(善)委員 やはり今言えないということですね。
 私は、外務大臣が責任者だからと何でも答えさせるなんてやっていませんよ。今まで、これは局長がやるべきものだと思ったら聞いている。
 イラクに非戦闘地域があるかどうか、イラクに自衛隊を派遣するかどうかというのが大問題になっているのに、外務大臣が答えられない、そんなばかなことはないんですよ。
 茂木さん、どういうふうに。
茂木副大臣 今回の法案、現在、最終的な詰めの段階でありますけれども、法案において戦闘地域と非戦闘地域を区別することが重要ではなくて、その手続の中で基本計画をつくる。そして、基本計画の中で自衛隊の活動地域というのを決定する。そして、その活動地域というのは非戦闘地域である。その非戦闘地域を基本計画をつくる段階で確定することは可能である。
 こういうことでありますから、現段階におきまして、法案の要請上、戦闘地域と非戦闘地域を分けることが必要とは必ずしも考えておりません。
松本(善)委員 そういう答弁ですよ。
 だから、外務大臣も外務副大臣も、イラクに実際に行ってきていろいろ見ているわけでしょう。それでもどこが非戦闘地域だということが言えないんですよ。それで自衛隊を派遣すると。それで、非戦闘地域だから大丈夫だ、もうとんでもないことが今行われようとしている。お二人の答弁を聞いて、ますますはっきりしたと思います。
 私は、聞きますが、外務大臣、テロ特措法で、アフガニスタンで行動する米軍を支援する、危険性を理由に陸上部隊は派遣から除外をされたんですよ。イラクでは、報道されているところでは、自衛隊は米英軍の武器弾薬、兵士の輸送も行うということになる。アフガニスタンで陸上部隊を送るのは危険だといって除外をして、今イラクの方にはそれをやる。今、アフガニスタンの方が危険なんですか、イラクよりも。外務大臣の判断として聞きましょう。
川口国務大臣 一概に、アフガニスタンという国とイラクという国と、その大きな国土を持つ二つの国を比べてどちらが危険かという御質問をなさっても、それに対してお答えするということは難しいと思います。
松本(善)委員 国民の常識からしたら、これはもうおかしいということはだれでもわかるんです。それを答えられないというのでしょう。
 私は、やはり日本国憲法は、いろいろ改正意見も出ているけれども、はっきり、紛争は平和的に解決をするんだということが明確になっているんです。自衛隊は軍隊とは言えない、戦う力とも言えない。総理大臣は本会議で戦う力ということを言っただけだけれども、戦力は持たないということになっているんですよ。それで、私は、九条というのは、奴隷の平和だなんて、公然とそういう憲法を侮辱するような発言が、あるいは国会議員から、あるいは大臣からなされるというのは、本当に絶対許されないと思うんです。
 今度のイラクへ自衛隊を派遣するというようなことは、これは憲法を真っ正面から否定して、そして日本を戦争する国に変えていく、そういうものだということを厳しく批判して、質問を終わります。
池田委員長 次に、東門美津子さん。
東門委員 社会民主党の東門です。よろしくお願いいたします。
 私がきょう、何を真っ先に質問してくるだろうかということはもう御存じだと思います。外務省にとってよき隣人である米兵による女性への暴行事件がまた発生いたしました。外務大臣がその事件に関して報告を最初に受けられたのはいつで、どのような内容だったのか、まずお知らせください。
川口国務大臣 この事件、非常に遺憾な事件だと思います。
 この事件が発生をしたのが二十五日ということでございます。それで、これについては、警察から事件発生について、事件発生の翌日に第一報を受けております。受けておりますけれども、何時ごろということについては記憶はございません。そのときに聞いたことは、二十五日にアメリカの海兵隊員が日本人女性を強姦するという事件があった、そして県警がこれについて調べているということを聞きました。
東門委員 二十五日に発生したということは受けた。いつ、どの時点で、要するに、何時はいいんです、いつ、何日にまずそれがあったかということ。
 そして、つけ加えさせていただきます、その報告を受けられて、大臣はどのように感じられたのでしょうか。
川口国務大臣 事件の発生の翌日に警察からは連絡がございました。(東門委員「大臣に」と呼ぶ)私が聞いたのは、ほぼ全く同時ぐらいに聞いていると思います。何日かというのはちょっと今ここではっきり日にちを言うことはできないのですが、それがあった日に聞いています。
 それから、そのときにどう思ったかということですけれども、非常に率直な感想を申し上げますと、また起こったのか、そういうことでございました。それで、県警が捜査をしているということでありましたから、そういった過程で事実関係は明らかになっていくだろうというふうに思いましたけれども、もしそれがそういうことであれば、もう本当に深刻で、遺憾である、非常に問題であるというふうに思い、またアメリカに対して、私はいつも綱紀の粛正ということを言っておりますけれども、そういうことを改めて言っていかなければいけないということを考えました。
東門委員 大臣と同じ考えです。私も、またかというのが私の最初のリアクションでした。こういうことが一体いつまで続くのだろうかというのが本当に最初に出てきた私の感じです。怒りを通り越して、もう何と言っていいのかわからない。
 私が今ここで思い出せるだけでも、二〇〇〇年に沖縄市で、女子中学生が就寝中の自宅に泥酔した米兵が入り込んでくるという事件がありました。そして二〇〇一年、北谷町の美浜で皆さん御存じのあの事件がありました。二〇〇二年、具志川市でありました。これは主に大きなものだけなんですよ。そのほかにもいろいろ起こっているんですね。
 こういうのが後を絶たない、なぜなんでしょうか。今おっしゃいました、アメリカ軍に対しては綱紀の粛正、アメリカ軍はよく言います、外務省もよく言います、教育を徹底させる、遺憾であるという表明をする。でも何にも変わらない。この現実、どのように変えていきますか。
 大臣、私は、大臣であると同時に女性であり母親である、その観点から何かやらなきゃいけないのじゃないかと思うんです。こういうことが起こり続けているんですよ。今までにもずっとあったんです。私は、私が今この場で出せるだけでもと申し上げただけで、これは「沖縄・米兵による女性への性犯罪」というのがあるんです。ごらんになったことがあるかどうかわかりませんが、女性たちは本当に苦労しているんです。こういうのをしっかりと受けとめて、米兵による性犯罪というのが女性たちにどのような苦痛を与えているか、これほど大きな人権侵害があろうかと思うんですね。
 この現実、どのように打開していかれますか。まだまだこれからもずっと続くのでしょうか。この付近で終わりにしたいという思いがあるんですよ。どのように対応されますか。
川口国務大臣 私自身も、委員がおっしゃられるように、もうこの辺でこういうことは終わりにしたいと強く思います。人、特に女の子を持った親であれば、常に心配をしていることであると思います。
 それはそういうことですけれども、これをどうやって終わりにすることができるだろうかということは、非常に、直ちにこれで全部解決がつきますということが申し上げられないのが大変に私は残念ですけれども、今まで何回も繰り返し言い、そして行ってきたこと、これを改めて丁寧に丁寧に、そして強く強くやり続けていくということが必要であると思っています。
 綱紀の粛正とかあるいは見回るとか、いろいろな努力を地元の社会の方々と一緒に努力をしてきたわけでして、これが十分でないというのは本当に残念です。ただ、この努力をし続けていかなければいけない、もっと強くやっていかなければいけないと思っております。
東門委員 強くやっていく、とても大事なことだと思います。でも大臣、これまでもずっと同じことが繰り返されてきたんです。外務省は、そのたびに同じ答弁をしてきたんです、同じ発言をしてきたんです。でも、変わらない。
 でも、変えられると思うんです。何だと思われますか。私は、解答はしっかりあると思います。これは海兵隊なんですね、主に。海兵隊による、しかも本当に若い海兵隊なんですよ、二十から二十二、三歳。その人たちの削減。この間からずっと話は出ております。外務省は、そういうことはありません、話は出ていませんとおっしゃるんですが、それに向けて積極的に取り組んでいただきたい。それしか解決の道はないんです。
 必ず減っていきます。例えばそれが一万人であるか一万五千人であるか、数はわかりません。確実に数が減っていくことによって、若い兵士によるそういう犯罪、本当に女性の人権を踏みにじる、女性の尊厳を傷つける。これから先の人生をどのように生きていくんだろうかということを考えると、本当に悲しくなるだけなんですね。
 それに対して、やはり海兵隊の削減ということをアメリカの方で検討しているという話は事実なんです。いろいろな情報が入ってきます。戦略対話も始められました。それなら、日本の外務省が力強くそこで一歩進めないんでしょうか。海兵隊をぜひ削減してほしい、それがこれにもつながっていくんだと。
 そこで私は思うんですね。いつも大臣がおっしゃる、県民の負担の軽減に努めていくと。大きな負担の軽減になると思います。もちろん、海兵隊の数が減る、基地も減るでしょう、陸地も返還されるでしょう、と同時にこういう事件も減っていく。目に見える解決が出てくると思うんですが、いかがでしょうか。
川口国務大臣 沖縄に七五%の施設・区域があるということが、沖縄県民に多大な御負担をおかけしている。この負担の最たるものの一つが、今回起こったような事件であると思います。委員がおっしゃるように、これは、女性として考えれば、女性の尊厳を傷つけるものである、それを無視するものであるというふうに私も思います。
 それで、他方で、日米の安保体制というのは、我が国の防衛あるいはこの地域の平和と安定のために非常に重要なことでありまして、その安保条約の定めていることに関して、円滑にこれが運用されるということも、もう一つ、我が国の平和と安全を考えるためには重要なことでございます。
 日本とアメリカとの間で、安全保障についての協議というのは日ごろベースで頻繁にやってきております。これは今後ともやり続けていきましょう、協議を強化しましょうということについては、この間、日米の首脳で合意をしていただいたところでございます。
 こういった話し合いをしていくということでございますし、また同時に、米国の方は、現在、安全保障環境の変化、これを見て、踏まえて、どのような兵力構成が重要であるかということについては考えているということであります。我が国に存在をする米軍の兵力構成に大きな影響を与えるような話、これについては、米軍が我が国に相談をしないで決めるということはあり得ないわけでございます。今の段階では、まだ、それについて、沖縄とかフィリピンとかいろいろ報道がございますけれども、そういった具体的な話というのは来ておりません。
 いずれにいたしましても、アメリカとの間では安全保障については協議をずっと続け、そしてそれを強化していきたいと考えています。
東門委員 全然変わらない答弁なんですが、とても残念だなと思うんですね。
 確かに、これまで大臣も何度もおっしゃっています、私も何度も聞きました、日本のこの地域の平和と安全のために云々ということ。それで、沖縄県民の負担にはどうのこうのと出てきますけれども、これで済む話ではないということなんです。
 私は総理にも直接伺いました。あれは予算委員会でしたかね。そうであるならば、全国で、全国民で応分の負担をすべきだと申し上げました。総理は、当然のことですとおっしゃったんです。
 では、今アメリカ側といろいろ協議をしている中で、大臣、外務省は全国で応分に負担をしていこうという話し合いでも始めていますか。当然のこと、総理もおっしゃったんです。そうであれば、当然のことを行うのは政府でしょう。行政の仕事ですよね。一方だけに押しつけておいて、ごめんなさい、あなたたち犠牲になってください、全国のために一県百三十三万人の県民は我慢をしてくださいという話は絶対に通りません。
 であるならば、総理もおっしゃった、今大臣もおっしゃる、日本のあるいはこの地域の平和と安全のために応分の負担をするということを一度でも考えたことがありますか。それについて具体的に動いたことがありますかということです。
川口国務大臣 総理がおっしゃった、その日本国全体として、日本国民全体として負担をしていくべきであるということは、総理のおっしゃったとおりだと思います。それで、それをどうやっていくかということは、日米間の問題ではなくて、日本の国内の問題であるかと思います。
 それから、沖縄県民の方の御負担をどのように減らしていくかということについては、これはまさにSACOをまずやっていくということが大事であると私は考えております。SACOの最終報告の実施、これについては外務省としても全力を挙げてまいる所存です。
東門委員 全国民で負担をするということは国内問題である。国内問題であるならば、たやすいですね、一々アメリカと協議しなくてもいいわけですから。政府としてこの方針を立てて、そしてこれでいくんだということは立てやすいんじゃないんでしょうか。どうでしょう。ぜひそれをやってくださいよ。
 そして、沖縄県民の負担の軽減に関してはアメリカと協議しないといけない、納得いきません。そんな話ってあるんですか。本当に、あらゆる被害が県民にかかってくる。七五%といつもおっしゃるんですけれども、大臣、陸地だけじゃないんですよ。空だって海だって制限されているんです。そして、その上にこういう事件、事故が多発するんです。
 犯罪防止にということで、外務省は米軍士官のオリエンテーションプログラムを設けてやっているんですが、本当はきょう、その件についてお伺いしたかった。もう時間がないので後に回しますが、そういうプログラムを行っている。七回か八回行われている。何にも役立っていないんじゃないですか。税金を投入して、国民の税金を使ってやっているプログラム、役立っていないんじゃないかと思うんです、何も変わっていないんですから。犯罪件数は年々ふえているんです。この四、五年、ずっと増加の傾向。これで、負担の軽減につながっている、そして、これはアメリカとやらないといけないからという話にはならないのではないかと思うんですよ。
 もう本当に、私、どういうふうに表現していいかわかりません。ウィーブ・ハド・イット・イナフ、イナフ・イズ・イナフ。アクションを起こしてください。本当に、お願いします。これでは、沖縄県民は余りにもひどい仕打ちをされています。特に女性たちです。ただ心が痛いとか、遺憾に思うとか、深刻であるとかというだけではないんですよ。
 その子はまだ十九歳なんですね。その子のこれからの人生を考えたときに、どうなるんだろう、心がつぶれそうです。なぜ沖縄県民に多くのそういうのがのしかかってくるんだろうということなんですよ。
 恐らく大臣に答弁してくださいと言っても同じことが返ってくるのかなとは思うんですが、茂木副大臣、いかがでしょうか。この問題、沖縄の基地の整理縮小、いわゆる海兵隊の削減、それは大きな一歩になると思います。アメリカと協議する部分もあるでしょう。国内で処理していける部分もあるでしょう。それに向けて、やはり、副大臣の立場でこういうことはやらなければというのがあろうかと思います。ぜひお聞きしたいと思います。
茂木副大臣 今回の事件を聞きまして、私も委員おっしゃることと全く同じ気持ちでありますし、大臣ともども、こういうことが二度と繰り返されてはいけない。また、委員のお話を伺いまして、胸が痛むどころではなくて、つぶれる、こういう思いを持たれるのも当然である。
 二度と起こさないために何をしていくか。これまでもさまざまな対策をとってきたわけですけれども、それでも事実として起こっているわけでありますから、もう一回その原因等を細かく精査しまして、何がやり得るか、こういうことを考えていく時期だと思っております。
東門委員 もう何が原因かというのははっきりしているんですよ。今までわからないというのがおかしいんですよ。
 若い海兵隊なんです。異国の地で、ふるさとを離れて、文化が違うところで、食事も違う、言葉が全然通じない、基地の中で、軍隊の中で訓練をされている、そういう中で生活している若い人たちのうっぷんの晴らしどころなんですよ。はっきりわかっているはずなんです。ですから、減らしてください、海兵隊の削減を真っ先に考えてくださいとずっと県はお願いしているんです。
 何も手をつけない。本当に、現実に、二度と起こらない、二度と起こらないといって、二度どころじゃないんです、三度も四度も五度も起こっているんです。
 悲しいですよ、これが我が国の政府かと思うと。本当に悲しいです。国民を見ていない。私、いつもこの委員会で申しております。アメリカばかりを見ているんじゃないですかと言っているんですが、本当に、どんなに私がここで大きな声で言っても響かない方たちなのかなと思います。とても残念です。
 時間が迫っていますので移りますけれども、米兵の民間地での銃携帯について伺いたいと思います。私はこれは細かく通告してありましたので、しっかりとした答弁をお願いしたいんですが。
 今月一日の日曜日、米軍憲兵隊の兵士が自動小銃を携帯したまま民間施設である嘉手納町の道の駅の駐車場に入ってきたという問題です。この道の駅「かでな」のすぐ近くには、いわゆる安保の丘があります。そこはだれでも立ち入ることができる場所ですが、名目上は嘉手納基地の施設内となっておりまして、この兵士は、パトロールカーで駐車場に乗りつけ、安保の見える丘の様子をビデオカメラで撮影したとの報道がなされていました。
 しかし、この道の駅は、休日には一千人以上の観光客が訪れる観光施設であり、このときも多くの観光客がいました。そこに自動小銃を肩にかけた米軍兵士があらわれてその近辺を歩き回ったら、観光客や周辺住民が不安に感じるということは、だれにでもわかることなんです。沖縄は怖いところだと思われれば、沖縄の基幹産業である観光にも重大な影響を与えます。無造作に銃を持った兵士を民間施設に出入りさせた米側の認識、余りにも低いと言わざるを得ません。
 大臣は今回のこの事態をどのように受けとめておられるのでしょうか、大臣の御認識を伺います。
川口国務大臣 普通の人が静かに観光を楽しんでいるところに、ライフル銃を肩にかけた人があらわれたら、みんなどきっとするということは、そういうことだと私も思います。そういう住民あるいは観光客に不安を与えるようなことをするべきではない、配慮をすべきであるというふうに思います。
 この件につきましては、沼田沖縄担当大使から、嘉手納の飛行場の司令官代理に対して申し入れを行っていまして、これに対して、先方から、憲兵隊に対して地元住民の懸念に配慮するように指示をして、今後、道の駅の駐車場は使用しないこととしたということを述べております。その旨のプレスリリースも出していたかと承知をしております。
 ただ、そういうことが法的に問題があるかということで申しますと、法的にはこれは可能であるということでございますけれども、ただ、そういった不安、これはもう当然のことだと思います。その観点から、米軍としては、そこには二度と駐車をしないということを決めたということでございます。
東門委員 法的には問題ない、地位協定上問題ないということを沼田大使がおっしゃっているのは新聞で見ました。今大臣もまさしくそうおっしゃったんですが、それでは、政府の解釈によると、米軍の軍事警察が銃携帯を許されないという状況は存在するんでしょうか。今回は、今おっしゃったように、十七条の十項(b)には反しない、地位協定上問題ないということなんですが、時によっては軍事警察が銃携帯を許されないという状況はあるのでしょうか。
海老原政府参考人 これは銃の携行そのものについて、どういう場合に許されて、どういう場合にはそうすべきではないのかということを、なかなか、網羅的に、こういう場合には必ず許されないというようなことを申し上げるのは困難であるというふうに考えております。
 これは、そもそも、銃の携行が逆に言うと認められる場合、これは今大臣が御答弁になった、近傍において施設・区域を警備するような場合というようなことには、その公務の範囲において携行することが認められるというふうに考えますが、その他の場合において、どういうときに認められるのかということについては、これは軍隊の機能に属する活動を一般的に行うということが地位協定上許されているわけでございまして、例えば一例を申し上げると、施設・区域間の移動というようなことがございますので、そういう場合には公務の一環として携行するようなこともあるというふうに思います。
 ただ、必ずこういう場合は携行はできないというようなことを包括的に申し上げるというのは困難であるというふうに考えております。
東門委員 最後にですけれども、こういうときにはとおっしゃったんです。では、今までにそういうことがありましたか。これまでに一度でも、日本側からアメリカ側に対して、これは絶対におかしいというような事例はありましたか。
海老原政府参考人 銃の携行そのものについて、こちら側から米側におかしいということを申し入れたという事例は、私は承知をいたしておりません。
東門委員 恐らくこれからもないんだと思います。要するに、米軍は、日本国どこででもそれは可能だ、特に沖縄の場合は。そういうことだと思うんです。これからも政府が、米軍に対して、銃の携行自体そのものがおかしい、こういうところではいけないんだということを申し出ることはないんだと思います。何でも日米合同委員会で決めちゃったということになるんです。ですから、議事録をしっかり出してください。そうすると、我々もしっかりわかります。どういう場で、どういうことが決められて、できないのか、できるのか。
 今までの政府のやり方を見ていますと、ずっとそうです。恐らくこれからも出てこないんだろうなということを申し上げて、私の質問を終わります。ありがとうございました。
池田委員長 これにて本日の質疑は終了いたしました。
 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後零時三十九分散会


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