衆議院

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第2号 平成16年2月27日(金曜日)

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平成十六年二月二十七日(金曜日)

    午後一時五十四分開議

 出席委員

   委員長 米澤  隆君

   理事 岩永 峯一君 理事 谷本 龍哉君

   理事 中谷  元君 理事 渡辺 博道君

   理事 末松 義規君 理事 武正 公一君

   理事 増子 輝彦君 理事 丸谷 佳織君

      遠藤 武彦君    小野寺五典君

      河井 克行君    木村  勉君

      高村 正彦君    鈴木 淳司君

      田中 和徳君    土屋 品子君

      西銘恒三郎君    松宮  勲君

      宮下 一郎君    加藤 尚彦君

      今野  東君    田中眞紀子君

      中野  譲君    長島 昭久君

      西村智奈美君    前原 誠司君

      松原  仁君    漆原 良夫君

      赤嶺 政賢君    東門美津子君

    …………………………………

   外務大臣         川口 順子君

   外務副大臣        逢沢 一郎君

   外務大臣政務官      田中 和徳君

   外務大臣政務官      松宮  勲君

   会計検査院事務総局第一局長            石野 秀世君

   政府参考人

   (外務省北米局長)    海老原 紳君

   政府参考人

   (気象庁長官)      北出 武夫君

   外務委員会専門員     原   聰君

    ―――――――――――――

委員の異動

二月十八日

 辞任         補欠選任

  木村  勉君     大前 繁雄君

  加藤 尚彦君     渡辺  周君

同日

 辞任         補欠選任

  大前 繁雄君     木村  勉君

  渡辺  周君     加藤 尚彦君

同月二十七日

 辞任         補欠選任

  阿久津幸彦君     西村智奈美君

同日

 辞任         補欠選任

  西村智奈美君     長島 昭久君

同日

 辞任         補欠選任

  長島 昭久君     阿久津幸彦君

    ―――――――――――――

二月二十七日

 所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の条約の締結について承認を求めるの件(条約第一号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 会計検査院当局者出頭要求に関する件

 政府参考人出頭要求に関する件

 国際情勢に関する件


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     ――――◇―――――

米澤委員長 これより会議を開きます。

 国際情勢に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、会計検査院事務総局第一局長石野秀世君の出席を求め、説明を聴取し、また、政府参考人として外務省北米局長海老原紳君、気象庁長官北出武夫君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

米澤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

米澤委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。西銘恒三郎君。

西銘委員 自由民主党の西銘恒三郎でございます。

 冒頭、北京で開催されております六カ国協議は、まだ続いておりますでしょうか。予断を許さないというけさの外務大臣の報告もありましたけれども、今現在まだ続いておりますでしょうか、お伺いをしたいと思います。

川口国務大臣 北京で開かれている六者会合でございますけれども、きょう三日目でございますが、朝、日本時間の午前十一時三十分、これは北京ですと一時間時差がありますが、全体会合が始まりました。それで、お昼過ぎに一度この全体会合が終了したということでございます。それで、また再び、団長のレベルと副団長のレベルと、それぞれ二つのグループに今分かれまして会合が始まっているということでございます。

 それで、会合の内容ですけれども、恐らく、団長のレベルでは、これは全体の今後の進め方等について話をしているというふうに思われます。それから、副団長のレベルでは、文書を作成するという作業に取りかかっているというように思われます。

 それから、私、先ほど、始まりが十一時三十分と申しましたけれども、始まったのは十一時五分でございまして、十二時半ぐらい、日本時間の十二時三十五分までそれが続いた、そしてまた、先ほど申し上げた団長レベルと副団長レベルの会合が始まった、そういうことでございます。

西銘委員 外務大臣、本日中には、この六カ国協議の共同声明というんでしょうか、文案を取りまとめて発表されるであろうというふうに想定してよろしいでしょうか。

川口国務大臣 予断を許さないというふうに申し上げるのが一番正確だろうと思います。一部、これは報道で、韓国の政府のスポークスマンが明日にも続くということを言っているという報道が流れておりますけれども、これは私どもは確認をいたしておりません。

 ということで、作業に今入ったばかりでございまして、きょうじゅうにそれがまとまるとか、あるいはきょうじゅうに会談が終わるとか、あしたまで続くとか、すべての点について予断を許さない、今の時点では確認できないということも多いということでございます。

西銘委員 こういう国家レベルの協議というものが、全く予断を許さない形で、いつ終わるかもわからない、ひょっとするとあしたまで延びるかもしれないというのは、通常のこういう協議のあり方としては普通なのか。あるいは、今回は特に、全く予断を許さない、いつまで続くかも予断を許さない形で緊張した状態で続いているのか、その辺のところをちょっと御説明ください。

川口国務大臣 会議に二通りあるだろうと思います。比較的、例えば二国間の定例的な協議といったようなタイプの協議ですと、いつ始まっていつ終わって、その間の細かい具体的なその時間づけも初めからはっきりしていてやるということが多いと申し上げていいと思いますけれども、そういうときには割にきちんと終わるということでございますし、それから、交渉事の場合、どういうふうに進展するか、本当に生き物のごとくその時々でいろいろ動いていくということであるかと思います。

 私、自分自身が経験した例で言いますと、京都議定書の細目を決める会議というのが、大きな会議が、私は三回出ましたけれども、それぞれの場合において、一日ぐらい延長になったり徹夜になったり、いろいろしておりますので、そういった交渉の場合には、日程等について全く予断を許さないということであると思います。

西銘委員 国民の耳目が非常に集まる中、六カ国協議の行方にみんな国民注目をしております。きょうは、私の同僚議員、次の鈴木委員が拉致問題等をお聞きすることと思いますけれども、この六カ国協議で話し合われております朝鮮半島の情勢、国民が非常に関心を持って今注目をしております。それから、近年、アフガンの戦争あるいは今般のイラクへの自衛隊の派遣等、中東地域への国民の関心も非常に高まっているものと理解をしております。

 私は、広い意味で、この六カ国協議の六カ国のメンバーも含めて、北東アジアの安全保障という視点で、今回は特に、意外と見落とされているんじゃないかと思われます台湾の海峡、台湾の問題について、限られた時間で質疑、質問をしてみたいと思います。

 実は、ことしの一月の十四日、台湾の台北の方で第一回のインターナショナル・パーラメンタリー・フォーラム・フォー・アジア・パシフィック・セキュリティー、安全保障の会議が開かれております。この会議に参加をする機会を得ました。我が国からは、衆参の国会議員十三名が参加をしております。世界の国々からは、五十カ国、地域も含めてですけれども、五十カ国から約百五十名の国会議員が参加をしまして、安全保障についての総会といいますか、あるいは分科会に分かれての議論といいますか、そういう議論をやりました。

 まず、この種の会議、台北で五十カ国、百五十名余りの国会議員が集い、アジア太平洋の安保会議が開催された。この開催意義を外務大臣はどのように考えますか。お考えを聞かせてください。

川口国務大臣 今おっしゃられましたように、私ども一月十三日から十五日というふうに聞いておりますけれども、台北において、国際国会議員アジア太平洋地域安全フォーラム第一回年次総会ということで開催をされて、ここでアジア太平洋地域の安全の問題について討議がなされて、そして共同声明が採択をされたというふうに承知をしております。

 こういったフォーラムですけれども、国会議員の方が集まられて、そしてその地域の安全保障の問題、これについて議論をなさり、対話が深まり、交流が進むということは意義があるというふうに考えております。

西銘委員 この会議は、ヨーロッパ、アフリカ、あるいは中南米、本当にさまざまな地域、国々から国会議員が参加をしておりました。久しぶりに私も台湾、台北を訪問いたしまして、台湾の立法委員、国会議員に相当する方たちの話をじかに聞きまして、非常に緊張感があるんだなというのを体感、実感をいたしました。

 まず、この会議の分会で、海峡を挟んで中国の側に五百基の弾道ミサイルが配備をされているということに対する危機感が非常に台湾の立法委員に強かったのであります。まず第一点、この中国の側に五百基のミサイルが配備されているということが事実かどうか、外務大臣、御説明いただきたいと思います。

川口国務大臣 ミサイルの件でございますけれども、昨年の十一月の三十日ですが、台湾の高雄において陳水扁総統が、中国が、中国東南沿岸地域の台湾から六百キロメートル以内のところに合計四百九十六基のミサイルを配備して随時演習を行い、台湾を攻撃しようとしているというふうに述べられたということが報道をされております。

 それから、別な資料でございますけれども、二〇〇三年の七月三十一日付の米国の国防省発表の中国の軍事力に関する報告書というのがございますけれども、ここでは、おおむね四百五十基のSRBM、すなわち短距離弾道ミサイル、これが既に使用可能な状態にあって、あと数年の間は年に七十五基以上増加をすると予測されているというふうにされています。

 そして、その同じ報告書ですが、中国政府が弾道ミサイルの正確性を増すこと等が西太平洋における米軍や同盟国等に対する深刻な挑戦となっているということを述べています。

 我が国といたしましてですけれども、これはもちろん中国の配備ミサイルについての情報を集めておりますけれども、これは関係国との関係もございまして、詳細なことを公の場で御説明をするということは差し控えさせていただきたいと思います。

 いずれにしても、我が国としては、この問題については関心を有しておりまして、注視をしていっているということでございます。

西銘委員 久しぶりの台北、台湾訪問で、本当に肌で感じたんですけれども、台湾の方は、三月の二十日に行われます総統選挙と住民投票の話題で、本当に危機感募るような緊迫した関係を感じることができました。

 まず最初に、台湾に財団法人交流協会というのがありますが、そこと我が国外務省の関係はどうなっておりますか。説明してください。

川口国務大臣 交流協会、これは財団法人でございますが、一九七二年の日中国交正常化以降、我が国と台湾との関係は、非政府間の実務関係ということで維持をされております。財団法人交流協会は、このような日台間の交流を円滑に維持するということを目的として設立された団体でございまして、外務省とそれから経済産業省の共管ということになっております。

西銘委員 総統選挙と不離一体とも言われております住民投票の件ですけれども、この住民投票で、私が行った当初は、まだ具体的に何を問うかというのがはっきりしていなかったんですけれども、今、現時点で、住民投票で具体的にどういうことを問おうとしているのか、外務大臣、御説明をお願いします。

川口国務大臣 我が国として、公民投票の実施、あるいはその設問の内容についてコメントを、これはよその国でやろうということでございますので、コメントをする立場にはないということでございます。

 それで、ここで言いました先方がやっている設問は、台湾人民は、台湾海峡問題は平和的に解決すべきであることを堅持しており、もし中国が台湾に照準を合わせたミサイルを撤去せず、台湾への武力行使を放棄しなければ、あなたは政府が対ミサイル防衛装備の購入をふやし、台湾の自己防衛能力を強化することに同意しますか、これが一つです。もう一つありまして、政府が中国と協議を行い、両岸の平和と安定の相互メカニズムの構築を推進し、両岸のコンセンサスと人民の福祉を追求することにあなたは同意しますかという、この二点です。

西銘委員 住民投票そのものに対して、それぞれの方がどういう思いを受けようが、それは自由だと思いますが、財団法人交流協会が台湾の当局に対して住民投票の実施を控えるように申し入れた旨の話を聞いたんですけれども、私はこの申し入れは好ましくないと思っております。交流協会と外務省との関係をお聞きしてもそう思いますし、住民投票なんというものは、その国の国民が実施するかしないかも含めて自主的に決めるのが基本だと思いますが、その点に関しては外務大臣の見解はいかがでしょうか。

川口国務大臣 我が国が申し入れた理由でございますけれども、これは、この地域の平和と安定……(西銘委員「我が国がではなくて、交流協会がです」と呼ぶ)失礼しました。交流協会が申し入れた理由ですけれども、これは、この地域の平和と安定が我が国にとって極めて重要であって、現在中台間で高まっている緊張が今後さらに悪化をし、九六年の総統選挙の際のような事態を生じることを回避することが必要である、そういう考えに基づいて行われたものでございます。そういう考えに基づきまして、交流協会の台北事務所長から申し入れたということでございます。

西銘委員 私は、今大臣の御答弁を聞きまして、むしろ外務省の側からアドバイスがあって交流協会が申し入れたのかな、そうであれば問題が少しあるのではないかというふうに感じました。日中関係は極めて大事な二国間関係であることは百も承知で、それは大前提の上で、台湾も大事にしなければならないと私は考えております。

 この会議の分会でのことでありますが、台湾の立法委員が、もしも中国が台湾に武力攻撃をした場合、日本は台湾を助けるかという旨の発言がありました。そこで私は、黙っているのも情けないと思いまして、あえて発言をしたのでありますが、憲法上の制約はありますけれども、中国と台湾の軍事衝突が絶対に起こらないように、ありとあらゆる手段を講じて、全力を傾注して私は阻止したいという発言をいたしました。

 別にこの発言が憲法の制約を超えているとも思いませんけれども、外務大臣として、日中関係は大事でありますけれども、外務大臣ならばこの台湾の立法委員の発言に対してどういう答え方をいたしますか。

 私の趣旨は、日中関係が大事なのは当然の大前提ではありますけれども、台湾という国と我が国との歴史のかかわり、また、私の選挙区の国境の島から百キロ離れた先に台湾が見えるということもありますけれども、何もそういう視点ではなくて、我が国として、二千三百万人の人口を有する台湾というところを、我が国の安全の視点からも、中国との関係を大事にしながら、もっともっと大事にすべきではないかという趣旨の質問であります。

 外務大臣ならばどのような答弁、発言をするかを聞きまして、私の結びの質問にしたいと思います。

川口国務大臣 私も、日本と台湾との関係というのは非常に重要であると思っております。日本から見まして台湾は第四の貿易相手国であります。それから、人の交流ということを見ても二百万人に上るという関係であって、大変重要な関係だと思っています。

 それで、我が国として、私がお答えをしたであろうことというのは、基本的に先生がおっしゃったのと同じようなことでございまして、そういうことが起こらないように、我が国としてはもちろん中国にも働きかけてきておりますし、台湾にも自制を求めてきているということであります。

 それで、実際に今までずっとこれは中国にも言ってきていることでありますけれども、台湾にも言っていることですけれども、台湾をめぐる問題が海峡両岸の直接の当事者の話し合いによって平和的に解決されるということを強く希望するということをずっと言ってきているわけでございます。

 したがいまして、今回の交流協会を通ずる申し入れをしたと同時に、中国に対しましても、中国の武力行使には反対である、我が国としては、台湾をめぐる問題が平和的に解決されること、そのための対話が早期に再開されることを希望しているということを申し入れたということでございます。

西銘委員 ありがとうございました。質問を終わります。

米澤委員長 次に、鈴木淳司君。

鈴木(淳)委員 自由民主党の鈴木淳司と申します。

 私は、今日、国民的関心の極めて高い北朝鮮による拉致問題への取り組みに対する政府の基本姿勢についてお尋ねをしてまいります。

 先ほど外務大臣からお話がありましたとおり、折しも一昨日より六カ国会合が北京で開催されておるタイミングでありまして、今もなお協議の継続中ということで、事務当局は大変かと思いますが、そのあたりの最新情報も含めて、これは外交でありますので微妙な部分があるかもしれませんが、可能な範囲で結構でございますので、お答えを賜れれば幸いに存じます。

川口国務大臣 まず、今現在の動きですけれども、日本時間の午前十一時五分に全体会合が始まって十二時三十五分に終了をし、その後、団長レベル、副団長レベル、二つのグループに分かれてまた協議が始まったということでございます。

 それで、日本の国民の方に強い関心をお持ちいただいている拉致の問題でございますけれども、これに関するこれまでのやりとりについて申し上げたいと思いますが、二十五日の午前中に行われた全体会合、この基調発言におきまして薮中団長から、先般日本の代表団が訪朝して拉致問題を含む日朝間の諸問題を解決するために日朝で政府協議を開催したということを言いまして、この問題を含めた諸問題が早期かつ包括的に解決されることを期待するということを言いました。それで、アメリカの団長であるケリー国務次官補も、基調発言の中で拉致問題について明示的に言及をなさったということでございます。

 これらの発言に対しまして、六者会合の中で北朝鮮からは特段の反応はなかったということです。それから、その二十五日の午後に日朝間の直接の協議が行われたわけですけれども、この場でも、日本側が全体会合で拉致について発言をしたことについて、北朝鮮側からは特段の反応はなかったということでございます。

 それで、日朝間の直接協議ですけれども、薮中団長が、先方の代表である金桂冠外務省副相、次官ですが、との間で約八十分間、拉致問題を中心に話をいたしました。この中で我が方からは、改めて拉致問題の一刻も早い解決、そしてこれは、具体的には拉致被害者の八名の御家族の無条件の帰国、十名の安否不明の方々の真相究明、これを強く求めたわけでございます。

 これに対しまして北朝鮮側は、先般の平壌で行われた日朝ハイレベル政府間の協議、そこで述べられたような拉致問題についての原則的な立場を、これを主張したということであります。また、その一方で、拉致問題は核問題の解決とも関係をしているということを言い、日本側の主張の本国への伝達を約束したということであります。

 それで、そういったやりとりがあった後、今後とも引き続き話をしていきましょうということで、日朝間の意見の一致を見たということでございます。

 我々として、この会議、この日朝間の直接の協議というのは、この前平壌で開かれた会議での申し合わせ、政府間で続けてやりましょうという申し合わせがあったわけでして、その申し合わせを踏まえて行われたものだというふうに理解をしていますけれども、重要なことは、拉致問題について実際に前進をさせるということであると思っています。

 それで、今の時点で具体的な成果について、成果が出るという段階にはなってないということですけれども、日朝間では今後引き続き話し合いをしていきましょうということで意見の一致があるわけでございまして、我が国としても、御家族の帰国、そして安否不明者の真相究明、これについて早期に前進するように努力をいたしますし、また、北朝鮮側に努力を求めていくということでございます。

 核についての動きについても……。よろしいですか。

鈴木(淳)委員 大変詳細な御報告をありがとうございました。

 拉致を認めながらも人道的解決に応じない北朝鮮に対するいら立ちが、近年とみに高まっております。そして、その中で、政府は弱腰ではないか、こんな批判も一部国民の中にあるのは事実でございます。

 これは読売新聞の昨日の夕刊でございますが、世論調査が出ておりました。北朝鮮問題への世論調査でありますが、政府の対応に不満、これは七五%。この内訳でございますが、北朝鮮に対し強い姿勢で臨まなかった五二%、拉致被害者家族の要望に適切に対処しなかった四〇%、国民の生命を守るという国家の責務をおろそかにした三二%、等々でございました。

 先日も小委員会で家族会の方の意見を聞く機会がございましたけれども、被害者、御家族の方の心労は、まさに察するに余りあるものがあります。言うまでもなく、拉致は著しい人権侵害であると同時に、国家主権の重大な侵害であります。あるとき突然に家族と引き離され、その後二十五年余にわたり本人の意向を無視してとどめおかれる。まさに人道に対する重大な罪、そして、本人もそうでありますけれども、その御家族の方の心中はいかばかりなものでありましょうか。

 その御心中を思うときに、本当に一刻も早い解決が望まれるわけでございます。国家の最大の責務が国民の生命と財産を守ることであることを思うときに、何としても、拉致被害者とその家族の皆さんを連れ戻すことが最優先に求められます。

 最近におきましては、拉致はテロという認識が国際的にも定着をしてきているように感じられます。先日も、来日されましたアナン国連事務総長が国会演説で触れられましたように、北朝鮮問題は国際的にも広く認識をされるに至っております。しかしながら、相変わらず北朝鮮はかたくなな態度でありまして、なかなかストレートに応じようとはいたしてくれません。

 何といっても、特殊な国家であります。交渉は容易でないと思われますけれども、そして、外務当局の御苦労も本当に理解をできるわけでありますが、国民の強い意向と期待を受けて、交渉窓口たる川口外務大臣を初め外務省の方々にぜひとも頑張っていただきたいと思います。

 先ほど、外務大臣の報告の中で、北朝鮮からは特段の反応はなかった、引き続き交渉を継続する、こういう御報告がございましたけれども、政府は来月にも二国間協議を開くべく交渉に全力を挙げるということでございましたけれども、その見通しについてはいかがでございましょうか。先ほど六カ国協議の概要並びに評価についてお話がございましたけれども、改めてそのあたりについてお触れいただければ幸いに思います。

川口国務大臣 先ほど委員が挙げられた世論調査の数字、これについては政府として重く受けとめなければいけないと思っております。

 それから、先生もおっしゃったように、今日本に帰ってきている被害者の方々及びその御家族等の関係者の方々、このお気持ちというのは本当につらいものがあると私も思っておりまして、政府として、全力をこれのために、最優先課題として投入して、傾注していかなければいけないというふうに思っております。

 それで、次はいつ開催ができるかということでございますけれども、政府としては本当に一日も早くというふうに考えておりますけれども、これもいろいろな、三月だということで決まったとか、いろいろな報道がございましたけれども、我々として、今の時点で、いつ次の政府間の協議をやりましょうということが確定的に決まっているということではないということでございまして、引き続き、申し合わせとしては次やりましょうということでございますので、その日にちの設定をできるだけ早く確実なものにするということで、引き続き努力をしてまいります。

鈴木(淳)委員 それでは、次に、ここで改めて確認をしたいことがございます。

 政府はそもそも、解決を目指すという拉致問題というのは、一体何をもって解決とするのか、その目標について、改めてここで、この場で確認をしたいと思っています。

 政府は、さきに委員会での答弁の中で、帰国者の御家族全員、八名の無条件での帰国と、政府認定の拉致被害者のうち、残る十名の方の一日も早い安否確認と真相究明とされておられますけれども、それでよろしいでございましょうか。

川口国務大臣 そのとおりでございます。

鈴木(淳)委員 まず、それが最優先であることはよく理解ができます。しかし、それ以外にも、拉致による被害者ではないか、こう疑われる方々が百名余にも上る、こういう報道もございます。

 北朝鮮は、ともすれば、八名の拉致被害者の家族の帰国で、ある面、事を済まそうとする、そうした嫌い、そうした節も見受けられるわけでありますけれども、それでは絶対に許されるわけではありません。

 もちろん、外交ルートの交渉なのでしっかりした国内での調査が前提でありますけれども、政府認定の行方不明者以外にも、そうした疑いが極めて濃い方が、そういう事例があるように思いますので、これは警察との協議もしっかりやった上で、ぜひとも我が国として、これもぜひ堂々と主張をし、また問い合わせをしていただきたいと思っています。

 これは、通告にはございませんので、要望とさせていただきます。

川口国務大臣 私どもとして、警察庁と御相談をしながら、いろいろなお名前が挙がっていらっしゃいますけれども、警察庁の方でこの方は拉致であろうということでございましたら、この人についてやはりきちんと北朝鮮に申し入れるということを、先般、平壌で二国間の会合がございましたときに北朝鮮には伝えております。全力を尽くしたいと思います。

鈴木(淳)委員 ぜひ、その姿勢を堅持して、全容解明、疑われる方も含めて、取り組んでいただきたいというふうに思っています。

 それでは、北朝鮮との交渉に臨む政府の姿勢についてお尋ねをしてまいります。多国間連携のあり方並びに基本姿勢たる対話と圧力についてでございます。

 まず、対話と圧力でございますが、政府は常々、機会をとらえて、粘り強く交渉すると表明されまして、対話と圧力をもって北朝鮮に対処していくと言われますけれども、対話はもちろん重要であります、しかし、何せ相手は特殊な国、対話だけでは絶対に解決し得ないのではないか、こういう思いが国民の間には極めて強い。やはり一定の圧力が不可欠ではないか、こういう声が高まっております。

 国会は、さきに北朝鮮への制裁を可能にする外国為替・外国貿易法を改正いたしました。まさに、いわゆる改正外為法は議員立法で行われましたが、昨日発効いたしました。これへの世論も評価が七八%、極めて世論も高く評価をしているわけであります。これに対して北朝鮮が極めて強く反応したことでも、この問題について北朝鮮が気にかけている、これがよくわかるところであります。

 ところが、一部政府の内部でこうした制裁法案については発動しないというような趣旨の発言があったやに聞いたことがございますが、これはせっかく持った宝刀、その刀をみずから封印する、交渉力としてそれがなくなってしまう、私はそういう疑念を持つわけでございます。

 もちろん、決して容易に抜いてはなりません、しかし、いざとなれば抜くぞという構えだけは必ず交渉力として持っていなければこれは意味がなくなりますので、まず、このあたりの覚悟と姿勢についてお尋ねします。

川口国務大臣 改正をされました外為法につきましては、政府として一つのツールをいただいたというふうに思っております。それで、基本的な考え方として、政府は対話と圧力ということをずっと言ってきておりまして、これは変わりがございません。

 それで、まさに今先生がおっしゃられたように、圧力の圧力たるゆえんというのは、一つには、これは対話を前進させる、前向きの行動に引っ張り出す、そのためのツールであるということでありますし、その使い方については、これは先生がおっしゃったとおりであると思います。政府として、北朝鮮が事態を悪化させるというようなことがあった場合には、この法案の趣旨あるいは外交的観点を踏まえて適切にそのときに対応していくということであります。

鈴木(淳)委員 今の外務大臣の御答弁で、ぜひそのようにその姿勢を堅持していただきたいと思っています。しっかり交渉力を持って、伝家の宝刀ではありませんが、そのツールを持って、決して安易に抜いてはいけませんけれども、やはりその姿勢だけは持って交渉に臨んでほしいと思っています。

 最後に、多国間の連携についてお尋ねをいたします。

 北朝鮮との問題の解決には、これは二国間だけではなくて多国間の連携が不可欠だと思われます。やはり北朝鮮は国際的な包囲網というのを強く意識または危惧をするわけでございまして、日本としては、米韓はもとより、北に対して影響力がある中国、ロシアに対する働き、とりわけこれは中国が大きな影響力を持つと思われますけれども、この中国並びにロシア等、多国間の連携に向けての政府の取り組み姿勢について、現状の努力についてお話をしていただければと思います。

川口国務大臣 国際的な連携が重要であるということはもうおっしゃるとおりだと私どもも思っています。この方向に向けてさまざまな取り組みをしてきております。私は、いろいろな国の外務大臣とお話をしていますけれども、多分、拉致のことをお話ししなかった外務大臣との会談あるいは電話会談というのはなかったと申し上げてもいいぐらい、ほとんどの人とお話をしてきております。

 それで、中国が特にこの六者会談についてはいろいろな、間に立って努力をしていますので、中国も大事であるというふうに思います。中国に対しても、例えば総理と胡錦濤国家主席の間の会談、あるいは私が、つい最近は王毅外交副部長が来たときにお話をしていますし、逢沢副大臣が先般訪中をなさったときに直接このお話を李肇星外交部長との間でしていただいております。こういった努力をしていきたいと思います。

 また、国連事務総長についても前々からお話はさせていただいておりまして、それが、この間演説をなさったときにこの拉致の問題について触れられて、両国が、未解決の問題について、これを完全に解決することを希望しますということ、それから、苦痛を受けたすべての人々に同情の意を表しますとおっしゃってくださった、これにつながっているというふうに思います。

鈴木(淳)委員 先ほどの外務大臣のお話の中にありましたように、今回、王毅外務次官、大変に日本に対しても貴重な示唆をいただいておると思いますが、そうした多国間の連携、その努力をぜひ重ねていただきまして、北朝鮮に対する包囲網というものをしっかり構築する中で、対話と圧力で、ぜひ粘り強い交渉をしていただきたいと思っています。

 いずれにせよ、拉致は許されざる人権侵害であり、同時に重大な国家主権の侵害でありますので、我が国として毅然とした態度でこの問題解決に臨まれますように強くお願いをいたしまして、また期待をいたしまして、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

米澤委員長 次に、丸谷佳織君。

丸谷委員 公明党の丸谷佳織でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

 私も、まず六カ国協議についてお伺いをしたいと思います。

 この六カ国協議は、核の問題そして拉致の問題と、非常に日本の国民の皆さんも関心を持って日々の報道を見ていらっしゃるようですし、また報道の方も世論調査を行うなど、外交問題に関してはなかなか国民の理解が進まないのではないかといった声も以前は聞かれましたけれども、最近はこの拉致の問題を本当に我が事のように考える、国民の皆さんの関心というのは非常に高まっているなというふうに感じておりますし、当然それほど重要な協議の場であろうと理解をしております。

 そして、私もこの報道ぶりを見ている中でつくづく感じるんですけれども、この六カ国協議、一つは核の廃棄、核という脅威からの安全を得るための対話の場として一つ重要な役割があり、そしてまた、もう一つの国益を考えますと、日本国民の生命と財産を守るという観点から、拉致問題の解決と、また拉致被害者の関係者の救済というもう一つの国益を考えていかなければいけない、日本の外交にとっては非常に難しい、またそれほど力が発揮できる外交の対話の場であるというふうに思いながら六カ国協議を見ております。

 国内政治を見てみましても、一つが、六カ国協議が対話の場であるとするならば、国内政治の、今与党の中でも議論をしています特定船籍入港禁止法案、あるいはさきに可決を見ました外為法の改正など、圧力のためのカードというのは着々と進んでおりますし、また国内世論の調査を見てみますと、日本の外交はまだまだ生ぬるいといった非常に不満を訴える世論の声というのは高まってきています。

 そこで、対話と圧力、この両方のカードを持って北朝鮮に外交政策をとっている日本の政府としまして、六カ国協議はまだ終了しておりませんので、拉致問題解決に向けた成果はいかがでしたかと聞いてもなかなかお答えは難しいかと思いますけれども、今の時点で、日本が対話と圧力の中で対話の場として臨んだ六カ国協議において、拉致問題解決に向けてどのような手ごたえをつかんでいらっしゃるのか、今の時点でお感じになっているところをお伺いします。

川口国務大臣 委員がみずからおっしゃられましたように、これはまだ今やっているさなかでございまして、今の時点でこれが成果であったとか、こういう評価であったとか、そういうことを言っていくというのは非常に難しいというふうに思います。

 私どもとして思っていますことは、大事なことは前進があることである、そういった観点で、北朝鮮に対しても、今度の会談というのは、政府間協議をやりましょうということを、平壌のこの間の二国間会議で申し合わせをした、それを受けて行われたものであるわけですけれども、前進をすることが大事であるということを私どもは北朝鮮に対して言っております。

 我々としても、前進をするように全力投球をしていくということですけれども、北朝鮮に対しても、前に出て、責任のある態度をとるということを言っております。全体として終わった時点で、評価をさせていただきたいと思っています。

丸谷委員 協議の進捗状況を見ながら、また協議が終了した時点で、この拉致問題解決に向けての日朝間交渉、あるいは日本外交の取り組み方の総括をしていただけるものというふうに思いますけれども、今、大臣がおっしゃいました前進することが重要である、その前進することが重要であるとおっしゃった一つの評価できる点は、二月二十五日に薮中局長と金外務次官が一・二時間にわたって議論を、協議をしていただいた。このことが、六カ国協議の場で言える、拉致問題解決に向けての一つの前進であったのだろうというふうに思います。

 また、今後この前進をしているものをさらに前に進める努力を、外交努力としてやっていただかなければいけないと思いますけれども、次の日朝交渉に向けて、この六カ国協議の場で、さらなる打診なり、あるいは今後の予定というものをこちらの方から働きかけるおつもりなのかどうか、この点についてはいかがでしょうか。

川口国務大臣 我々として、引き続き協議をしましょうということに、その八十分間の会談でなったわけですけれども、それだけでは十分じゃないわけでございまして、次の会合を具体的にどのようにやっていくかということを話をすることが重要だと思っております。そういう働きかけは引き続きやっております。

 北朝鮮は、これについて恐らく本国と相談をしているのではないかと思われますが、今の時点では、具体的にいつやりましょうということが確定をしているということではありません。

丸谷委員 そうしますと、確認をさせていただきますけれども、この交渉が終結するころには、次の二カ国間交渉のめどが立っているというふうに理解をしてよろしいのでしょうか。

川口国務大臣 我々としては、そのような方向に向けての努力を今やっているということでございます。ボールは先方のコートにあるということです。

丸谷委員 ありがとうございました。

 そしてもう一つ、我が国は戦争による唯一の被爆国として、核の脅威というのを痛いほど思い知らされております。その面において、核兵器あるいは核に関する軍事力の完全なる廃棄というのは非常に重要なテーマであり、また発言力も持っているものと私は理解をしておりますけれども、北朝鮮に関する核の完全な廃棄、これをどのような形で、共同声明なり成果という形で盛り込んでいけるのか。この点については、今現場では大詰めをしているところだろうというふうに理解をいたします。

 六カ国協議の中で、私の一つの見方を申させていただければ、今までは日米韓という形で足並みをそろえてきたものが、この核の廃棄に関しては、中国、ロシア、韓国が、北朝鮮に対しまして、核の廃棄をするならばエネルギー支援をする用意があるというメッセージを出している。

 また、日米ではこの核の廃棄というハードルがもう少し高くて、濃縮ウランも含めて廃棄をしなければいけないというようなハードルの高さを持ってきて、六カ国協議の性質そのもの自体が、北朝鮮一に対して五カ国という、一対五から少しずつ変化をしていくのではないかなという危惧もしているわけでございますけれども、日本政府が今認識をしています核の完全な廃棄を求めていくということに関して、この核は、やはりウラン濃縮も含めた核の廃棄というところの認識でよろしいのか、この点を確認させてください。

川口国務大臣 二十五日の全体会合がございましたときに、我が国として基調の発言を団長から行っております。その中で我が国が言いましたことは、北朝鮮は、朝鮮半島の非核化のため、ウラン濃縮計画を含め、あらゆる核計画・活動を速やかに廃棄するとのコミットメントを行い、核計画について完全な開示を行う必要があるということを強調しているわけです。

 それから、同時にといいますかそのときに、北朝鮮は、完全かつ不可逆的な核廃棄のために、国際社会による十分効果的な検証が必要であるということをまた言っております。ということでございますので、基本的な考え方、基本的な立場として、我が国の立場は、おっしゃったその濃縮ウランも含まれるということでございます。

 各国からは、きのうの午前の協議でも、核廃棄に関する目標、それと原則、それから核凍結提案というのを北朝鮮がやったわけですけれども、それとエネルギー支援ということについては立場の表明があったわけでございます。

 我が国としては、北朝鮮が、先ほど申し上げたような、完全な、検証可能な不可逆的な核の廃棄、これにコミットすることの重要性や、このような核の廃棄がもたらされることによって、核廃棄が実現することによってもたらされる将来の展望といったようなことについても話をいたしております。

丸谷委員 韓国が示しましたエネルギー支援と核の廃棄というこの段階的な解決方法を、中国、そしてロシアが参加を申し出、また我が国としては理解と支持をしたというふうに報道されておりますけれども、これは段階的な解決方法として、我が国として、完全にウラン濃縮も含めた核の廃棄には至らないものの、理解と支持をしたということになるのかと思いますが、この背景をお伺いしたいと思います。

 というのは、このまま、ウラン濃縮の問題を残したままエネルギー支援に踏み込んでいけば、将来にやはり課題を残していってしまうことにもつながらないだろうかという懸念をするわけなんですけれども、この点についてはいかがでしょうか。

川口国務大臣 我が国の考え方ですけれども、北朝鮮の核の凍結の提案、これについては完全検証可能かつ不可逆的な核廃棄の実現に向けた第一歩という位置づけのもとで、幾つかの前提条件を置きまして、この前提条件というのは、例えば、検証をきちんとする、あるいは凍結の期間はできるだけ短い、次につながっていくと、いろいろなことを言っているわけですが、そういった前提条件を満たした上で、各国の北朝鮮へのエネルギーの支援について、これを理解して支持するということを言っているわけです。

 したがいまして、そういった前提条件をつけている、これはあくまで第一歩という位置づけで考えております。

丸谷委員 ありがとうございました。

 では、最後に一問だけ。イラクの暫定統治機構受け皿と、また新政権樹立までについてお伺いをしたいと思います。

 さきに来日もされました、国連事務総長としては初めて我が国の国会で演説を行っていただきましたアナン事務総長、非常に私たち、自分も含めるのはいかがなものかと思いながら、日本女性に対して非常にすばらしい演説をいただきまして、またさらに仕事を頑張らなければいけないなという思いに私もさせていただいたわけなんですけれども、そのアナン事務総長と川口外務大臣が会談をされた際に、国連の改革については、外務大臣の方から、日本の姿勢あるいは考えているということをしっかりと言っていただきましたし、その点についてはアナン事務総長も非常によく理解をしていただいて、本格的にやらなければいけない国連改革の中で反映をしていただけるものというふうに思います。

 その一方、一つまだはっきり見えてこないなと思いますのが、この国連もイラクの復興にかかわっていくものの、では、そのかかわり方、あるいはイラク人によるイラク人の政権をどのような形でつくっていくのか、またいつまでにつくっていくのか、その方法はどうするのかというところがなかなか見えてこないような気がします。

 そこでお伺いをさせていただきたいわけですけれども、さきにブラヒミ特別顧問が、実際にイラクに行って、どのような形で選挙ができるのかどうか、これを調査なされました。その報告によりますと、やはり六月の主権移譲までの直接選挙は無理であるという結果が出ました。

 さきにイラク支援問題特別委員会の方で逢沢副大臣にも御答弁をいただいたように、日本政府としても、まずプライオリティーとしては六月の末までにイラク人に主権を移譲することが非常に重要である、また、その方法については適宜考えていかなければいけないといったような御答弁もいただいたわけですけれども、この六月末までに主権を移譲することは国連の方も重要だとおっしゃっているものの、その受け皿についてはいろいろな案が出てきているようです。

 一番治安がいい形で、そして一番イラク人の皆さんが望むような形で受け皿をつくるのがいいということは当然なんですけれども、その探し方が難しい。国連がその受け皿を見つけ出すのか、あるいは今までかかわってきたCPA、そして統治評議会、ここがリードをして受け皿を決めていったらいいのか、あるいは我が国が受け皿づくりの中でどのようにかかわっていくことができるのか。

 これを考えたときに、重要なターニングポイントでもあるなというふうに思いますけれども、六月末までに行われます主権移譲の受け皿づくりについて、どのような、アナン事務総長とお話があって、日本政府としてはどのように認識をしているのか、この点を最後にお伺いします。

川口国務大臣 アナン事務総長と、国連の改革やそれからイラクについていろいろなお話をいたしました。そして、これは、お会いした日はまだ国連の報告書が出る前であったわけですけれども、その内容については相当に詳しく伺わせていただきました。それからまた、一昨日でしたでしょうか、ブラヒミさんとも逢沢副大臣も詳しくお話をしていただきましたし、私も話をする機会がございました。

 それで、全部を総合して、基本的に今国連の報告書に出ているような内容のことが今考えられているということです。おっしゃるように、選挙の後どのような暫定政権というか選挙管理内閣というかそれをつくっていくかというのが、二つの最大の課題のうちの一つというふうに申し上げていいと思います。

 それで、いろいろなその可能性についてお話をさせていただきました。これは公的に申し上げることではないと思いますけれども、いろいろ報道等ございますので、皆さんが御案内のような、例えば今のガバニング、統治評議会を、代表性を高めるためにもっと拡大をしてやるとか、あるいは、拡大しないで今のままでやるとか、あといろいろな案がほかにあり得ると思います。

 それで、これはブラヒミさんもアナン事務総長もおっしゃっていたことですけれども、とりあえずこういったことについてイラク人にまず考えてもらう、それで物事を進めていく。もしもイラク人が支援を必要とするということであれば、それは、国連は、選挙ですか、そういった状況における政権づくりとかさまざまな今までの知見がありますから、それをもって支援をしていくということが基本的なことであろうかというふうに思います。

 そういったイラク人による新しい政権づくりをだれがイラクの中で担っていくのかということも、私にとっては一つの知りたいことでありましたけれども、それについても、イラクの中に十分な人材はいるという感想を聞いたということをつけ加えておきたいと思います。

丸谷委員 以上で質問を終わります。ありがとうございました。

米澤委員長 次に、前原誠司君。

前原委員 前原でございます。民主党を代表して質問させていただきたいと思います。

 まず冒頭、今まで同僚委員からも六者協議についての話がございましたけれども、もう少し突っ込んで話を聞かせていただきたいというふうに思います。

 私が質問したい点は何かといいますと、もちろん、薮中局長が代表として議論の場に出ておられるわけで、ある程度の裁量というものを与えられているのではないかというふうに思いますけれども、しかし、日本政府として譲れない一線というものはもちろん理解をされて六者協議に薮中さんも出ておられるというふうに思うんですね。では、その譲れない一線というのは一体何なのかといったところをちょっとお聞きしたいと思います。

 冒頭発言は私も読ませていただきました。先ほど大臣がお答えになりましたように、非核化のために北朝鮮はウラン濃縮計画も含めてあらゆる核開発、核活動を速やかに廃棄するとのコミットメントを行い、核計画についての完全な開示を行う必要がある、完全かつ不可逆的な廃棄のために国際社会による十分効果的な検証が必要であると。まあ、これができれば百点満点だ、核問題については、そういうことだと思います。

 しかし、交渉事ですので、向こう側もいろいろ言ってきている。そして、先ほど、王毅外交次官とお会いになられたということで、我が党も菅代表が王毅次官と会われて、私も同席させてもらいましたけれども、一回で、この二回目の六者協議ですべて解決するというのはなかなか難しい、段階的にステップを踏んでいく必要がある、しかし進めていくことが大切なんだ、こういう話をされておりまして、その点については、先ほど質疑をお伺いしていると、多分同じ認識なのではないかというふうに思いました。

 そこで私が伺いたいのは、まず、濃縮ウランの存在を認めていませんね、今の六者協議の段階では。この六者協議の段階でウランの濃縮の計画を認めていない状況の中で、例えば核凍結という言い方をしていますけれども、そこで、ウランの濃縮計画を認めていない状況の中でファーストステップをとることが日本の選択肢としてあり得るのかどうか、その点について答弁をいただきたいと思います。

川口国務大臣 北朝鮮が何をどの段階で言うかということについて、一つの段階で言ったことですべてということでもないというふうに考えております。

 濃縮ウランについて、これはいろいろな情報を総合的に考えますと、我々としては、北朝鮮が濃縮ウランをやっているであろうという感触を持っているということでございます。ですから、王毅副部長も言われたように、それで国民の皆さんにこの点は理解をいただいていると思いますけれども、一回で百点満点の回答が出るということではないわけでございまして、したがいまして、我々は、基本的な方針にのっとって、粘り強く朝鮮半島の非核化ということを進めていくということでございます。

前原委員 要は、この六者協議では、少しでも話が進めば、エネルギー支援なんかの話も韓国案を軸に行うという話がなされているわけですよね。

 つまりは、今私がお聞きしているのは、そういうファーストステップというのは、濃縮ウランの核開発計画を北朝鮮が認めない段階でも、そのファーストステップということで評価して前進することがあり得るのかどうなのかということをお伺いしているわけです。

川口国務大臣 よその国の提案したことについて、日本の立場として余り細かく申し上げるべきではないかという気もいたしますけれども、韓国が提案をしているということについては、これは相当にきちんと条件をつけてやっているわけでございます。そして、我が国としては、そういった条件のもとで、要するに第一段階として、それを他国がやることについて理解をし、支持をするということを言っているということであります。

 それで、物事の第一段階として、おっしゃっているのは、濃縮ウランを認める、あるいは認めないということがこの第一段階の実施に影響を及ぼすかどうかということですけれども、これについては、今まさにいろいろな議論をやっているわけでございまして、最終的にどういう形でまとまっていくのかということは、今回の会議一つとっても、非常に不透明であります。ですから、まさに交渉中のことですから、今の段階でこうならばこうと申し上げるということは差し控えたいと思います。

 ただ、我々として、先ほど来申し上げているように、濃縮ウランも含めた形での核の廃棄、朝鮮半島の非核化、これは基本的な線である、これは譲ることができない線であるということに変わりはないということです。

前原委員 最終ゴールはよくわかっているわけです。それは理解しているわけですが、私が伺っているのは、例えば私が薮中局長、代表だとしますよ。そうすると、どれだけ権限を与えられて交渉に臨めばいいんだということだと思うんです。

 つまりは、先ほど韓国の案についての話で、それは韓国の案だという話をされましたけれども、しかし、事前準備においては、日米韓、特にアメリカとはかなり協力をして、密接に事前の打ち合わせもしながらこの会議に臨まれているわけですね。もちろん、日米韓だけじゃなくて、中国やロシアとも話をされているわけです。

 それで、もし私が薮中局長だとしたときに、どこまで裁量権を与えられるのかということを伺っているわけです。もちろん、交渉中のことですから、どうなるかわからない。したがって、凝り固まった、固定したお答えを聞いているわけじゃないんですね。つまりは、濃縮ウランというものの存在を棚上げしても進むことはあり得るのかどうなのか、例えば私が薮中さんだったら、そういう点を、与えられて行くのかどうなのか。

 では、時間もありませんので、もう一つ伺いますよ。もう二つ伺いましょう、同じパッケージの問題として。

 北朝鮮は、いわゆる核兵器開発という言い方をしていますね。核開発という言い方をしていない。ということは、軍事目的だけはやめる、しかし平和利用については言及しない、それはらち外だ、こういう話をしているわけですね。軍事利用の話だけしているわけです。ということは、完全な核開発の廃棄ということは、当然、軍事利用のみならず平和利用も含むはずなんですね。だけれども、北朝鮮は軍事利用だけを言及してきている。これも切り離すことはファーストステップとしてあり得るのかどうなのか。濃縮ウラン、それから、いわゆる平和利用というものを認めるかどうか。

 それからもう一つ、これは大事なことですけれども、我々は拉致問題というものを持っています。仮に話が進んで、そしてエネルギー支援をという話になっている。これは薮中さんもおっしゃっている。しかし、日本として、拉致の問題が解決していないのに、核の問題が解決したから、拉致の問題を切り離してそういうエネルギー支援をするということがあり得るのかどうなのか。その三点について明確にお答えをしていただきたいと思います。

川口国務大臣 どれぐらいのマンデートを持って交渉に行くかということが全般にかかわりがある御質問でありますけれども、それは、基本的な考え方については合意をした上で、それをベースにして行っているわけです。

 それで、今、前原先生がおっしゃったような、例えば濃縮ウランはどうかとか、平和利用はどうかとか、これまた細かく後で申しますけれども、それについて、今の時点で直ちに、これを含みます、含みませんということが決定をされるような状況になるかどうかということについては、恐らく、これはもう一番の実はコアの問題であるわけでして、これが最初にすんなりと決まってしまうということであれば、一回で決まってしまうということになるわけであります。

 したがいまして、もちろん予断はできませんけれども、通常の予測でいえば、この問題がまさに中心になっていろいろ議論をしていくという過程がしばらく続くというふうに申し上げてもいいんじゃないかというふうに思います。

 いずれにしても、そのマンデートとの関係でいいますと、かなり具体的に何かについて合意をする、今委員がおっしゃったような第一段階の合意というようなことであれば、それは合意の内容は恐らく文書になるでありましょうし、そういった文書に合意をしていいかどうかということは、通常の仕事のやり方でいえば、合意をしていいかどうかということは聞いてくるということになるというふうに考えております。

 ということで、先ほど濃縮ウランのお話は申し上げましたけれども、平和的な利用についてですけれども、これについて、我々としては、そこも含めてと、基本的な考え方としてはそういう立場を持っております。

 ただ、北朝鮮について言いますと、先ほど反対であるというふうにおっしゃいましたけれども、これも濃縮ウランの話と同じで、例えば、一月六日の段階で、北朝鮮の外務省スポークスマンは、談話において、凍結の対象には平和的核原動力も含まれるというふうに述べているということもあるわけでございます。

 ですから、北朝鮮はいろいろなことで交渉をしていく国でありますから、一つ、一回どこかで言ったということが北朝鮮の最終的なポジションで、あるいはあるかもしれませんけれども、そうでない可能性もいろいろある。交渉というのは、そういうことで、お互いに粘り強くやっていって、我が国として望む結末を、そこで結論に到達するように努力をしていくということであったと思います。

 それから、三つ目に何かおっしゃったんですけれども、何でしたかしら。(前原委員「エネルギー支援の話、拉致の問題を切り離すのかどうか」と呼ぶ)そうですね。エネルギー支援について言えば、韓国自体もそういう提案をしていますけれども、今すぐにエネルギー支援をしているということを必ずしも言っているわけではないということだと思います。

 それで、我が国の立場として、他国がやることについて、そういった、先ほど申し上げましたような……(前原委員「韓国の支援じゃなくて日本の支援の話を聞いているんです」と呼ぶ)ええ。それを今申し上げるんですけれども、韓国としても、その提案については、先ほど申し上げたような前提条件をつけて言っているわけでして、したがって、我が国としても、そういった前提条件で、他国がやることについて理解と支持ということは言いましたけれども、我が国として、今それができる状況であるというふうには考えていないということであります。

前原委員 前者の話でいいますと、要は濃縮ウランの問題も、核の軍事のみか、あるいは平和利用も含むのかという話については、そこはいわゆる原則というか、アローアンスを残して交渉に臨ませている、こういうことですね。

 つまりは、ちょっと、私の質問がわかりにくければ私が悪いんですけれども、申し上げていることにダイレクトにお答えになっていないわけですよ。私が伺いたいのは、つまりは、濃縮ウランの存在を認めなかったら絶対にファーストステップも踏めないのか踏めるのか、あるいは、軍事利用のみなのか、平和利用まで含めてファーストステップというのは進み得るのかどうなのかということを聞いているわけです。

 だから、そういう意味で、今の御答弁というのは、簡潔にわかりやすくお答えをいただきたいんですけれども、それは状況を見て、それが入っているかどうかということも含めてまだ今断定できるものではないとおっしゃるんだったら、そういうふうな言い方をしてもらったらいいんです。つまりは、そこは、それが大前提じゃないんだなということがそれでわかるわけですから。

川口国務大臣 委員の御質問は非常にわかりやすくて、誤解をしているわけではないと思います。

 ただ、異なるのは、問題の立て方が違うということであるわけです。

 どのように問題の立て方が違うかというと、交渉において、一つの条件だけで何かが決まっていくということではない、これは一般論として申し上げましてですけれども。もちろん、それについてどうか。これはもう全体の、総合的に考えなければいけない局面というのは必ずあるというふうに思っております。

 ですから、そういったそれぞれの局面で、申し上げましたように、合意があるということであれば、それは文書という形の合意になるというのが通常でしょうから、そういった場合には、それについては、もちろん聞いてくるということだと思っています。これは官邸も含めて議論をしていくということでありますから、やはり、その文書で日本がこの段階で合意できるかどうかというのは、薮中局長が一人で現地で判断をするということではないだろうというふうに思っています。

 ただ、一つ、一対一対応で結論が決まってくることばかりではないというふうに我々は問題を立てているということで、イエスかノーかという御質問ですけれども、そういう意味で、問題の立て方が、構造のつくり方が、そこに違いがあるということを申し上げているわけです。

前原委員 いや、立て方の違いじゃないんですよ、それは。全然そういう話じゃないんですよ。つまりは、これはもういいです、まさに進んでいることで、この議論というのはもうちょっとしたらはっきりすることですから、今動いているところでこれ以上詰めても仕方がないと私は思いますので。立て方が違うんじゃない。

 つまりは、どこまで原則が与えられているかということの聞き方をしていて、だから、今の川口大臣の答えは、要は、そこの原則についてもほかの問題とトレードオフの対象になり得るということなんですよ。つまりは、そこは絶対譲っちゃいけない原則だということで薮中さんは行かせていないということなんですよ。立て方は一緒なんです。つまり、私が聞いていることについては、それについてはトータルで判断しなきゃわからないということなんですよ、結局は、お答えは。それで、まあいいです、それは。

 それで、でもこれだけ確認したい。

 拉致の問題が解決していない中で、核の問題が進展をして、例えば、アメリカも含めて、エネルギー支援をしようとなったときに、拉致の問題を切り離してそういった支援を日本も行うのかどうなのか、これは明確に答えてくださいよ。これは食い下がりますよ。これは明確に答えてください。

川口国務大臣 先ほど来申し上げていますように、今、日本はエネルギーの支援をするような状況ではないというのが我々の判断であります。

 それで、直接に今の御質問にお答えする前に若干申し上げておきたいのは、核の問題と拉致の問題、これは、北朝鮮の金桂冠副相がどういう観点でおっしゃったかわかりませんが、核の問題が進むということが拉致の問題が進むということのためには重要であるということを言った。この意味というのはよくわかりませんが、一般論として、核が進めば、これは拉致にいい影響を与えるということもあり得るし、逆に、拉致の問題が前に進めば、我が国として核の問題でもっと主体的なイニシアチブをこの交渉においてとることができるようになる、そういう意味で、核を進めるということに資するという面もあるわけです。全体としてトータルであるということであります。

 我が国としては、拉致の問題、これの解決というのは最優先事項だというふうに考えているわけです。そして、その拉致の問題が進まなければ、要するに解決しなければ、これは帰国及び真相究明と両側面ありますけれども、進まなければ、これは平壌宣言にのっとってやっているということでありますから、これは国交正常化がなされない、国交正常化がなければ経済協力はしない、そういった基本的な考え方で進んでいっているということであります。

前原委員 いや、国交正常化まで飛んでいないわけですよ。私が今申し上げたのは、今行われている六者協議の中で、先ほど、薮中さんが一番初めにおっしゃった大前提というのは百点満点、だけれども進まない可能性がある、しかし、一歩一歩前進をしていく解決策があって、要は、状況の中でエネルギー支援もあり得るという話をしているわけですよ、韓国もアメリカも含めて。

 だから、そういう拉致の問題が解決していないのに、核の問題がある程度進展した、さっきの中身はもう詰めませんよ、トータルパッケージで進展した、そのときに、いわゆるエネルギー支援も含めた何らかの支援を日本も行うということはあり得るのかどうかということを聞いているわけです。簡単な質問ですよ。

川口国務大臣 いろいろな前提を置いて御質問をなさっていらっしゃいますけれども、先ほど申しましたように、全部をぴったりとこの場で決める、交渉の始まる前に決めて代表団を送り出すということは非常に難しいということです。

 細かいことでいろいろ、例えば、今回の交渉で核、全部片づいてしまったというようなことがあって、その結果として、ではエネルギー支援どうするかとか、そういうことであれば、それは当然に日本だけがそれができないと言うかどうかというような極端な状況、これは我々は必ずしも想定をして送り出しているわけではありませんので、そういう想定、極端なことが起こった場合の御質問というのは、それぞれその時々の全体の状況を見て考えていくということになると思いますけれども、はっきり申し上げているのは、我が国として、今エネルギーの支援をするということは考えていませんし、拉致の問題、これが先ほど申し上げたような意味で解決をするということでなければ国交正常化はない、国交正常化がなければ経済協力はしないということを、これはずっと申し上げているわけです。

前原委員 ということは、確認、イエスかノーだけで結構です。そうすれば、今、一歩進んで、ほかの国が、アメリカや韓国が経済支援、エネルギー支援を行うとしても、今のお話だと、我々はしないということですね。イエスかノーかで結構です。

川口国務大臣 現時点で我が国がエネルギー支援をするということは考えていません。(前原委員「現時点でではなくて」と呼ぶ)現時点で考えていないということです。

前原委員 質問に答えていないですよ。私の質問に答えていない。現時点での話なんか聞いていないんです。そういう話が進んでいって、ほかの国がやるときにということで、答えていないです。答えさせてください。

川口国務大臣 こういったことというのは、先ほど申しましたように、現実に交渉しているわけです。ですから、そういった問題について、仮想の極端な例を一つ仮定にして置いてあるということではなくて、それは現実に即して考えていく。

 大事なことは、これは非常に大事なことだと思いますけれども、問題が解決をするということが我が国にとってメリットであり、北朝鮮にとってのメリットであるということであります。

 この問題の解決というのは、先ほど申しましたように、拉致の問題は今最優先に考えていますし、それから、核の問題も、朝鮮半島が非核化するという観点で非常に重要なことであるわけです。ですから、大事なのは、そういった観点にとって何がプラスかということで総合的に考えるということでありますから、核の問題が全部今片づいちゃったときにエネルギーどうするのかという極端なケースを想定しての御質問は、先ほど来申し上げているように、これはそういったときには総合的に考える、請訓は必要だと私は思うということを申し上げているわけです。

米澤委員長 前原君、わかりましたか。(前原委員「わかりません」と呼ぶ)

 川口大臣、再度わかりやすく答弁してください。

前原委員 では、ちょっといいですか。

 大臣、極端な例を言っているんじゃないんです。まさに現実に進んでいこうとしている中で、そういう話に今収れんしているんでしょう。先ほど答弁されたじゃないですか。団長会議と副団長会議があって、副団長会議では文書化の話まで行っているという話でしょう。

 ということは、全部のトータルの解決なんというのは僕はないと思っていますよ。さっき申し上げたように、濃縮ウランの存在を認めていないんですから。しかもまた、軍事のみか平和利用かということも片づいていないわけですから。全部トータルパッケージするなんて極端なことを僕は何も言っていないです。

 しかし、ある程度核凍結ということの条件の中で、お互いがそれこそ、さっき詰めて聞かなかったのは、トータルパッケージで判断させてくれと、それはわかりましたと。しかし、トータルパッケージで前進があったと判断をしたときに、ほかの国、特に韓国やアメリカが経済支援をします、エネルギー支援をします、向こうは求めてきているわけですから、支援をするときに、日本も拉致の問題が片づいていないのにやるんですかということを聞いているんです。

川口国務大臣 原則ははっきりしているわけです。これは繰り返しませんが、先ほど申し上げたということです。我が国がその原則に立って問題を解決するということが重要であると考えている。それは、核の問題も拉致の問題も、あるいはその他の問題も含みます。そういった問題を解決することが大事である。

 原則の上に立って、この原則は原則ですから、経済協力は正常化しない限りはしないということを言っているわけですけれども、その上に立って、どうやったら一番早く問題が解決をするかという視点は常に現実的に持っていなければいけないということを言っているわけです。

 ですから、全部初めにこれありき、今、特に最終の姿の話をしているのではなくて途中の過程の話をしているわけですよね、第一段階の終わりの話をしているわけでして、その時点で初めに全部ありきということで条件を決めて、これ以上ここについてはびた一文動きませんということで議論をしているということでは、目的を達するような交渉は私はできないというふうに考えています。

 これは、問題の立て方というふうにさっき言いましたけれども、まさに交渉というものをどういうふうに考えていくかという姿勢、あるいは考え方の違いであるということだと思います。

 それから、もう一つつけ加えますと、恐らく副団長のレベルで文書化をやっているんであろうというふうに申しました。この文書化の内容がどれぐらい総合的な、どれぐらい包括的なそういったものになっていくかということについては、これはまさに予断を許さないわけでして、文書が全く成立をしないということから、文書の範囲がもう非常に狭い、あるいは次のプロセスをいつどうするかということしかカバーしないという可能性もありますし、それについては我々は予断を持っていないということです。

 繰り返しますが、原則、これは拉致の問題が解決をしなければ国交正常化交渉はないし、国交正常化交渉がなければ経済協力はないということであります。その上に立って、じゃ、第一段階の終わりに何を、非常に物事がうまく動いたとして、最終的に日本がある状況になったときにイエスかノーかということを言うかということは、これは請訓をしてくる話であるということで申し上げているわけです。

前原委員 矛盾したことを二つおっしゃっていると私は思うんですね。

 おっしゃっていることはわかるんです。つまりは、物事を進めるということが大事である。その前提に立てば、すべての手のうちを明かさないことが重要であるという意味でおっしゃっていると思う。その意味はわかるんです。わかるんですけれども、そのおっしゃっていることと、拉致の問題の解決がなければ国交正常化交渉に入らない、国交正常化交渉がなければ経済支援はしないということは、でも、やらないということですよね、今のこの流れでいうと。その二つを答弁されているわけですよ。だから、私は、こんがらかっているんです。

 つまりは、フルオープンでやって手のうちは明かしませんよ、今まさにそれは物事を進めようとしているんだから手のうちは明かさないとおっしゃった部分は、そういう答弁だったらわかります。だけれども、拉致の問題が片づかなきゃ国交正常化交渉もしない、国交正常化もしなければ経済支援はしないという今の原則ということは、私の質問には、どんなにステップが進んだとしても何ら支援はできないということですね、今の論理だったら。

川口国務大臣 原則を申し上げている、この原則は平壌宣言に書いてありますし、北朝鮮はよく知っています。

 それで、実際の現実、現場の交渉、これはいろいろな可能性があるわけで、我々が今見えていない可能性、その他いろいろなことがあり得ると思います。そういった我々が考えていない可能性だっていろいろあるわけでして、これは、そこは現実的に、原則を踏まえてやっているということで申し上げているわけで、ちっともそこは矛盾はないと私は思っています。

前原委員 原則ということは例外もあると。それも踏まえてやるということですね、要は。そういうことですね。

川口国務大臣 今、交渉をしているさなかでございます。あえてそこも今は申し上げたくないということを申し上げたいと思います。

前原委員 では、ちょっと長引いてしまいましたけれども、この問題はこれぐらいにしておきましょう。

 六者協議をやっていく中で、中国が今回、議長国ということで非常に大きな役割を果たしています。ただ、靖国問題で、日中間がうまくいっているかというと、いっていないわけです。これは非常に悩ましい問題だと私は思っていまして、ためにする議論ではなくてまさに建設的な議論として、この靖国問題を外交問題の見地からどう解決していくのかということを少し大臣と議論させていただきたいというふうに思います。

 まず、簡単にお答えいただきたいと思います、簡単に。小泉総理大臣が毎年靖国に参拝をされていることを外務大臣としてはどう思っておられるのかということがまず一つと、御自身はなぜ参拝されないのか、この二つ、お答えいただきたいと思います。

川口国務大臣 私自身が、小泉総理が参拝をなさることについて何を思っているかということを御質問ですけれども、これは、私は閣僚でございます。それで、小泉総理がおっしゃっていらっしゃるように、これは過去の戦没者に対する敬意と感謝をささげる、それと同時に、日本は今後二度と戦争を起こしてはいけない、そういった思いを込めて参拝をしていると小泉総理はずっとおっしゃっていらっしゃいまして、私もそういうことだと考えております。

 それから、私自身がなぜ靖国に行かないかということですけれども、年がばれてしまいますが、といってもう既にばれておりますけれども、私の世代というのは父親が戦争に行って死んだという世代でございます。私の友人、小学校のときからの友人を見たときに、お父様が戦争で、あるいは戦病死をなさったという方は何人かいます。そういう人と子供のときからずっと一緒に育ってきているわけです。ですから、戦争で死者、亡くなった方、これを悼む気持ちというのは、私は、体のうちにこれはもう持って育ってきています。

 ですから、そういうことではありますけれども、私は靖国神社に行くという形でそれを表現するということを今まで単にしてこなかったということであります。

前原委員 日中関係を踏まえて考えた場合に、総理が行かれることについては過去の戦没者への敬意と感謝、また不戦の誓いということですけれども、御自身は行かれないと。しかし、結果論として、総理が毎年靖国に参られることによって日中関係、日韓関係はぎくしゃくして、そしてスムーズな意思疎通ができていないということは紛れもない事実だと思うんですね。それはそう感じておられますか。いや、全然そんなことはないよというふうに思っておられますか。

川口国務大臣 ぎくしゃくして意思疎通が十分にできていないということの意味をどれぐらいに前原先生が思っていらっしゃるかということがよくわかりませんけれども、総理はいろいろな場で、例えば胡錦濤国家主席とか温家宝総理とか、お話をしていらっしゃるわけですね。意思疎通をしていないわけでは全くないと私は思っております。

 そういう意味では何が問題であるかというと、これが、例えば中国がこの問題を取り上げる、靖国神社について、参拝について取り上げる、これを例えばカードとして使っていくというような状況があるということについて、これはそういうことは、あえて何が問題かということですからそういうことはあるというふうに思いますけれども、それによって総理が中国と意思疎通ができていないとか、日本と中国の関係がぎくしゃくしているとか、そういう状況ではないと思っています。

 例えば中国との間で人と人の交流、日中交流年、そういったことをずっとやってきているわけですね。経済的にもこれは両方の経済関係は非常に強くなっていて、お互いに相互依存関係が強まっていて、お互いに本当に相手がいなければ困る関係、そういうふうになってきているわけです。いろいろなベースのところを見ますと、日本と中国はお互いが必要としている関係になっている、そういうことであると思います。

 ですから、委員が何をもってぎくしゃくとしているというふうに言われる、そのレベル、それをどの辺に考えていらっしゃるのかということですけれども、私の認識はそういうことであります。

前原委員 今の答弁は、私は、外務大臣としてやはり失格だなというふうにはっきり思います。

 今の状況がぎくしゃくしている。レベルの問題とかじゃないんですよね。これはいろいろな分野で交流をすれば当然わかっておられる話でありますし、私もいろいろな中国の方とお会いしますけれども、日中関係は経済の問題はうまくいっている、しかし、政治では非常に、まさにぎくしゃくしているという言い方を向こうがされるわけですね。どうやって解決していくのか、政治の部分でもスムーズに意思疎通が図れるようにしていきたいと。

 さっき、総理が会われたということをおっしゃいましたけれども、行っておられないじゃないですか。つまりは、どこか国際会議の場で会って、たまたまそれで握手しているぐらいの話でしょう。それでは本当のトップ同士の意思疎通にはなっていないと私は思うんですね。

 こういう問題をどうしていくのか。ぎくしゃくしていないと言う大臣に質問をこれ以上してもしようがないのかもしれませんが、つまりは、自分で外交をつかさどっているという意識と、そしてまたそれをどのように変えていくかということがなければ、靖国問題を外務大臣がしっかりととらえるという意識は出てこないと思うんですよ。

 つまりは、この問題については、私は外務大臣がリーダーシップをとってもらいたい。もちろん、総理がそういう自覚があればいいですけれども、正月に行って戦没者慰霊と初もうでをごちゃごちゃにするような人は、私はけしからぬと逆に思うわけですよね。堂々と八月十五日に靖国に行かれるような形に私は環境整備をすべきだというふうに思うんです。

 では、どうするか。これは、A級戦犯の合祀の前は天皇陛下も行かれていたわけです、靖国に対して。総理大臣が行っても何も問題がなかった。そして、ましてや、天皇陛下が行かれても、隣国からそういうような話はなかったわけですね。やはりA級戦犯の合祀というものが非常に、それはもちろん、A級戦犯自体がどうなんだ、正当かどうか、東京裁判自体が本当に正しい裁判だったのかどうなのか、そういう議論はありますよ。しかし、客観的な事実としてのA級戦犯の合祀というものが非常に大きな靖国問題のネックになっていることは間違いないと私は思う。

 この間、超党派の議連で中曽根元総理にお越しをいただいたときに、憲法改正の議論を伺ったんですが、そのときに非常に私は、ためになるというか、あるいは参考になるお話を伺ったなと思ったんですけれども、A級戦犯の分祀をすべきだと。つまりは、八月十五日に総理として参拝をして、そしてそれから大変だと、中国からの批判が強かった。それから、中曽根さんは総理として行けなかったんですね、靖国に対して。それを何とかしなきゃいけないということを今でも考え続けておられる。僕、これは本当の政治の姿じゃないかと思うんです。

 いろいろな、のどに刺さったとげを抜いて、そして隣国との関係をうまくしていくためにどうするのかということを、これは外務大臣が考えなくてだれがやるんですか。しかも、前提としてぎくしゃくしていないというような認識を持っているとしたら、私はそれは失格だよというふうに思いますよ。

 そういう意味で、私は、ぜひ、ぎくしゃくしていない人に言ってもそれこそ禅問答に終わるかもしれませんが、やはりもう一度主体的に自分自身がこういった問題もやらなきゃいけないという意識を持っていただいて、いろいろな先人の方にお話も伺う、そして御自身も努力される。遺族会の会長である、今、古賀誠議員が会長でいらっしゃいますけれども、内々に動かれたよという話も聞いています。しかし、なかなか、A級戦犯の御遺族の同意も得られなかった、あるいは靖国神社の宮司の同意も得られていない。

 しかし、そういうところをしっかりと自分自身の責任なんだという自覚を持って動かすのが、一つ外務大臣の私は役割じゃないかと思いますが、どうお考えですか。全くぎくしゃくしていないから、いいですか。

川口国務大臣 委員がおっしゃるように、A級戦犯の合祀、これがあるところに総理大臣が参拝に行くということが問題であるというのは、中国側の方々、リーダーの人たちが今言っていることであるということは事実であります。

 それから、私、先ほども言いましたように、中国側が靖国神社への参拝について問題にしているということについて、我々として、先ほど申し上げたように、これはきちんと理解を求め続けていかなければいけない、理解を求めるというのはちょっと言葉が悪いと思いますが、説明をしていかないといけないというふうに私は思っております。それで、それは外務大臣としては今までも説明をしているし、今後も引き続き説明をしていくということであると思います。どういうふうに、中国がこの靖国神社について言っていく、これが日中間でカードとして使われるようなことを抑えていくか、これは日本として一つのテーマであるということは間違いないと私は思っております。

 それで、日本として中国に言っている考え方、これは、先ほど一部について触れましたけれども、共通の利益、これを拡大していきましょうということを言っているわけです。日本と中国はさまざまな共通の利益を持っている。今後、もっともっとこの共通の利益というのは膨らませていかなければいけないというふうに思っています。

 これはいろいろな分野で既に実行していますし、例えば六者会談もその一つでありますし、ASEANとの協力、あるいはASEANの中の地域格差の是正、それから世界全体の、例えばイラクの問題その他、いろいろな問題について日本と中国が協調していろいろやっていくということもそうですし、それから経済関係でも、先ほど言いましたように、お互いになくてはならない国にもはやなっている。そういった関係をますます強化していくということが私は大事であろうというふうに思っております。

 それを強めていく、ASEANの場でも日中韓三カ国の外相会談をやったり、それから、もちろん二国間の外相会談をやったり、私もまた国会のお許しがいただければ四月に中国に行きたいと思っていますけれども、そういった努力をして、中国と日本との間で靖国問題がカードとして使われない、そういうような関係にしていくということが大事であると思います。

 総理の参拝の理由については、これは説明をして、さらに説明をして、粘り強く説明を続けていくということであると思います。

前原委員 これ以上は議論してもしようがないと思います。

 ただ、カードとして使いたくないんですよ、中国は。これは私、いろいろな方と話し合いましたけれども、この問題で向こうがいろいろ言ってきたいというふうな思いは、少なくとも今の執行部にはないですよ。

 とにかくこの問題は早く片づけてもらいたい、もう少し違うところで建設的な政治の関係というものも話をしたいというふうに、私は、私のいろいろな経験あるいは交流ではそういう思いを持っていますので、カードとして使われているというような意識を持たれているのでは、私は日中関係が本当に深い関係になるというふうなことにはならないと思いますし、川口大臣がそういう御答弁なら、私は、尊敬すべき先輩である逢沢副大臣には、やはりそれは、御答弁は結構です、言いにくいと思いますので。こういう問題を政治家がみずからの責任として解決しなくてどうするんだというふうに私は本当に思いますので、また、御答弁は結構ですので、ぜひそういう意識を持っていただければと思います。

 我々も、これはしっかりやっていきたいというふうに思います。

 時間が余りなくなってまいりましたけれども、きょう一番実はやりたかった問題、北朝鮮の問題も大切、そして中国との関係、靖国問題も大切ですけれども、日本の外交の基軸、きょうは、この国会が始まって、通常国会が始まっての初めての一般質疑でありますので、大きな話をしたい、あるいは将来の話をしたいと思っておりました。あと十分もないので、中途半端にならざるを得ません。また機会をいただいてさせていただきたいと思いますが。

 日本外交の基軸である日米関係をこれからどうしていくのか、やはりそういうビジョンなり、また日本の国としての意思を私は持たなきゃいけないんだろうというふうに思うんです。

 やはり冷戦時代というのは、アメリカから日本がどうあるべきかということを御用聞きをして、そしてそれに合わせることによって日米関係をうまくマネジメントしてきた嫌いはあったと思います。しかし、曲がりなりにも戦略対話というものが行われて、そして、まあ完全なイコールというのは難しい、よりイコールのパートナーシップというものをいかに築き上げていくかということについては、日本がどういう日米関係の将来像を描くのかということが極めて私は大事だと思うんですね。

 そこで、時間のある限り外務大臣に伺っていきたいと思うんですが、橋本・クリントン会談のときに、ガイドラインというのがありました。日米防衛協力の指針、ガイドラインというのがありました。これは三つあって、日本有事、それから極東有事、これは周辺事態に名前が変わりましたけれども、周辺事態有事、そして平素の協力、こういうことで三つの分野においてまず防衛協力をやっていきましょうということで、そして、橋本政権のときには周辺事態ということでの防衛協力の話ができたわけです。昨年、有事法制が第一歩を踏み出して、そして関連法案が出されるというのがこの国会であろうというふうに思います。

 したがって、周辺事態それから日本有事、これが、ガイドラインという項目立ったものが、周辺事態についてはある程度の法整備ができた。日本有事の協力については、この国会である程度のものができる、よりいいものにしていかなきゃいけませんけれども。

 では、平素の協力ということでどうしていくのかなというところが、私は大きなポイントとしてあると思うんですね、平素の協力をどうしていくんですかと。これはまさに、特措法の世界ではだめだと思うんです。

 つまりは、アフガニスタンの問題にしても、あるいはイラクの問題にしても、要望されて、法律がなかった、しかし、日米関係、何とかしなきゃいけないということで、特措法としてできてきた。しかし、私は、そこはやはり、まあ百歩譲って、アフガニスタン、イラクの場合は仕方がなかったという議論でも、今後日本としては、ではこの平素の協力のあり方というものについてどうしていくのか。もちろん訓練とか、災害とか、そういうものもあると思います。後で時間があればACSAの話もしたいと思いますけれども。

 ACSAが、私は少し文句を言いたいのは、有事だけではなくて、そういったものも使えるようにということで、門戸を広げてあるんですね、間口を広げてある。しかし、実際にどういう協力が生まれるかということはそのときになって考えるというような仕組みになっていて、これは将棋でいえば待ちごまのようなもので、余り望ましいものではないと私は思っています。

 つまりは、政府として、どういう平素からの協力というものを行う意思があって、そしてまた、その部分においてどれだけの日米防衛協力、日米協力というものが行われるかというようなものを持っていて間口を広げているんだったらまだいいけれども、今から何かするかわからないけれども、一応、これからまた協定を一々一々やり直すのは面倒くさいから間口を広げていますよということでしょう、このACSAのものというのは。私、これは、一つちょっと大きな問題だと実は思っています。

 さて、そこで、質問をしますが、この平素の協力というものを、ではPKOという今の法律でいいと思っておられるのか、あるいは、アフガニスタンやイラクの問題のように、物事が起きれば特措法でいいというふうに思っておられるのか、あるいは、もう少し違った形で、ピースキーピングではなくて、ピースメーキングとか、ピースビルディングとか、そういうことまで日本としては行うべきで、そしてその中で日米防衛協力ができるものについてはやるということを考えておられるのか。その点、外務大臣はどういう絵姿を描いておられるか、もし描いておられたら御答弁いただきたいと思います。

川口国務大臣 これは委員は、ガイドラインに即しての御質問か、あるいはもっと広く、それを離れての日米間の協力ということでおっしゃっていらっしゃるのか、ちょっとその辺、余り明確によくわかりませんが、日本とアメリカの関係というのは、もちろん、安全保障条約というのがあって、それをコアとして同盟関係があるわけであります。それで、そこにも一部書かれていますけれども、安保条約にも書かれていますけれども、いろいろな考え方を共通にしている国であるという観点でいろいろな協力をやっているということであるわけです。

 それは、自由とか民主主義とかいろいろ、市場メカニズムですとか、法のルールですとか、いろいろなことが本当によく似ている、考え方が同じで、だからこそ協力ができる、あるいは、だからこそ同盟関係であるということも逆に言えると思いますけれども、そういった安保条約に書かれた権利義務関係、それを超えて、広い、世界の中の日米同盟という言葉が使われますけれども、日本とアメリカの間の関係があるわけです。それで、それは非常に広い関係だと私は思っております。

 例えば、国連で今、ミレニアム開発計画というのがあります。これは世界を……(前原委員「時間がないので、私の質問だけに答えてください」と呼ぶ)ええ。ですから、世界を、どうやって世界の貧困をなくす、これはそのものが、世界の安全、平和と安定、これにもろに関係があるということであると思います。ですから、国連の場で、例えばミレニアム開発計画、これについて日米は協力をしますけれども、それも広い枠内での日米の関係である。

 私は、日米関係というのは、そういった安全保障条約を核とし、そこから、そういった安保体制から出てくる同盟関係、それを持ち、さらに安保体制の線上とは違った線上でより広く関係を持っていく世界第一と世界第二の経済大国であるというふうに思います。両方が一緒になって世界の平和と安定のためにやっていくということが重要だ、これはもうずっと変わらないと、私は日米関係について思っています。

前原委員 質問通告してあるように、時間があれば一番初めに、まさに大臣が触れられたように、同盟関係と安保条約の関係、どう違うのか、同盟関係を拡大していくために安保条約今のままでいいのかという観点から議論したかったんですが、時間がないために各論から行きました。これはもう一度、仕切り直しをしてやらせていただきたいと思います。

 時間が来ましたのでこれで終わりますけれども、一つだけ要望して終わりたいと思うんですが、きょうもう一つ質問通告したFTAの問題も、まさにメキシコとの協議が大詰めを迎えています。いわゆる農産物五品目の問題で、なかなか難しい交渉だというふうに思いますけれども、これは私、さっきの靖国の問題と同じように、外務大臣がリーダーシップを持ってやられるべき問題だと思いますよ。まさに、経済外交、いかに外交力を駆使して日本の産業競争力を強化するか、日本の強い分野を進めていけるか、これはまさに、このメキシコとのFTAの中であらわれてくると私は思います。

 また、FTAを通して、日本の農業の改革というものもあわせてやっていかなくてはいけない。守ることが、日本のためには、私は二つの意味でならない。これも、農林水産大臣だけではなく、あるいは経済産業大臣だけではなくて、外務大臣こそが一番物を言って、そして、FTAについては川口さん、本当にもうこだわりを持ってがんがんやっておられるなというような姿勢を私は示してもらいたい。(川口国務大臣「やっているんです、それは」と呼ぶ)見えない、全然見えない。

 だから、そういうことも、やっておられるのと見えないのは、それは乖離があるかもしれません、地味な御性格ですから。でも、やはり外交というのは、パブリックディプロマシーというでしょう、見えなきゃだめなんですよ、見えてアピールをしなきゃいけないんだ。だから、その分も……。

 私は、そういうリーダーシップを発揮していただきたいということを申し上げて、質問を終わります。

米澤委員長 次に、武正公一君。

武正委員 民主党の武正公一でございます。

 ちょうど今、六者協議が開会されているわけでございますが、まず、先ほど来外務大臣が、拉致問題の解決というようなことを再三言われておりますが、拉致問題の解決として考えておられる項目、これを述べていただけますでしょうか。

    〔委員長退席、増子委員長代理着席〕

川口国務大臣 拉致問題について、これは前から申し上げていることですけれども、まず、御家族の帰国、無条件の帰国、これはその最優先課題で取り組むべきことだと思っております。

 同様に重要なのが、安否不明であるとされている方々、これについての真相究明、これも同様に重要であるというふうに考えております。

武正委員 拉致問題の解決は、以上二点でございますか。

川口国務大臣 細かく申せばいろいろほかにありますけれども、例えば、今警察の方で、その他行方不明で拉致の可能性があるとされている方々についての調査といいますか、捜査をやっていただいております。我々外務省としては、これはこの前の二国間の会合のときに既に北朝鮮には言ってありますけれども、そういった新たなる拉致の被害者ということが認定をされた場合に、当然この解決をすべき対象としてこの人たちも含めていくということは、もう既に北朝鮮に伝えてあるところでございます。

武正委員 外務大臣の今の細かいことというのは、やはり到底容認できない御答弁なわけですね。

 小委員会では、この二十四日に、横田さん御夫妻、そして蓮池さんということで、参考人質疑を行いました。その中でも、拉致被害者の家族の八人の無条件の帰国、そしてまた、北朝鮮が死亡または入国なしとしている拉致被害者十人に関する徹底した真相究明、そしてまた、特定失踪者とされる方々の真相究明、こうしたことが何よりも大事である、条件である、こういったことを言ってきているわけでございます。

 今のように、細かいことというような形で御答弁があるというのは到底理解できないというふうに考えます。

川口国務大臣 細かいことと申し上げたのは、別にそれが小さいことであるという意味で申し上げたわけではなくて、ずうっと今まで二本の柱のお話をしていましたので、最初その二本の柱のお話をしたということでございますけれども、誤解を受けるといけませんので、それは取り消させていただきます。

武正委員 拉致問題の今回の六カ国協議についての薮中局長の発言でございますが、冒頭、あいさつというところ、世界に報道されている部分と基調発言、基調の部分ですね、これは秘密の会議で行われた、という二つに分けますと、冒頭のあいさつで拉致ということに触れられなかったと。

 先ほど外務大臣は、この拉致問題の解決が最優先課題だというふうにおっしゃられましたけれども、なぜ、冒頭、この拉致について触れられなかったのか、この点、お伺いしたいと思います。

川口国務大臣 これは、冒頭のあいさつは非常に短時間、その後、基調の演説とプレゼンテーションというのがあったわけでして、我が方としては、この二つは一組、セットということで考えて言っているわけでございます。

武正委員 一組、セットというのは、ちょっと具体的にもう一度お答えいただけますか。

川口国務大臣 最初にプレスが入って、短い時間でラウンドをしたというふうに理解をしていますけれども、そのときの発言と、その後プレスが出た後で各国がラウンドをした発言、それが組み合わせられるものである。要するに、それが二つで一体である、そういう意味です。

武正委員 最初のあいさつは世界に放映されるオープンな場で行われた、クローズドな場で発言、それが二つがセットというのは、ちょっと理解できないわけですね。

 オープンな場でなぜ拉致のことを触れないのか、そして、クローズドな場で拉致のことを言及するというのはいかがなものか。最優先課題と言いながら、拉致という言葉を冒頭使えなかった何らかの理由があるのかなというふうに思うんですが、なぜ拉致を冒頭から強く主張しなかったんでしょうか。

川口国務大臣 我々として、それは一組であるということで構成を考えてやっていたということでございまして、それ以外の意味ということは特にないというふうに御理解をいただきたいと思います。

武正委員 我々も政治家として国会でのこうした発言等、やはり多くのメディアの方がそれを取材する、そして、広く国民あるいは全世界にそのことを伝えるこの場というのは、大変大事なそうした場になるわけですね。その場で発言をしないで、そしてクローズドな場で発言をする、それがセットであるというのは理解できないんですけれども、なぜ冒頭のあいさつで拉致を言わなかったのか、お答えをいただきたいと思います。

川口国務大臣 申し上げているところの繰り返しになってしまうんですけれども、これについて、我が方として、ここでの発言とその後の発言、一つの組み合わせ、それで一体であるということで考えて発言をしている、そういうことであります。

武正委員 新聞には、やはり中国からの働きかけがあったんじゃないかというようなことが書かれておりまして、これは日経ですけれども、「結局、全世界に放送されるあいさつ部分では「諸問題」と間接的な表現にとどめ、秘密会合の基調演説で「拉致問題を含む日朝間の諸問題」と言及。」「同じことを言うにも言い方がある。言うべきことは言うが、さわやかな言い方で言う」これは外務省幹部のコメント。「判断の背景には「基調演説が順調に進めば、午後にも日朝協議ができる」とした中国のささやきがあった。」こういった報道もあるわけなんですね。

 これについては、きょう逢沢外務副大臣もお見えですけれども、王毅次官から、余り拉致の問題を六者協議で取り上げるな、そんなことが、月曜日ですか、二十三日、会われたときに言われたような報道がテレビで流れました。こういったことも、その事実、そうしたことがあったのかどうか、やはりこの場で確認をしておきたいと思うんですが、いかがでしょうか。

逢沢副大臣 先般、機会を得まして北京に参りました。二十三日月曜日の午前、現地時間でございますが、午前九時から中国外交部におきまして、約四十五分間、王毅外交部副部長と懇談の機会を得ました。ちょうど二十五日からの六者協議の二日前ということでございますので、当然、六者会談のこと、また日中二国間関係のことについても議論をいたしたわけであります。

 二十五日からの六者協議に際して、我が方が基本的にどんな姿勢で臨むかということについては、明確に私から、議長役でございます中国、王毅さんに申し上げたわけであります。薮中さんの冒頭の発言の中できちんと拉致の問題については言及をする、日本国政府の首尾一貫とした姿勢は、核、ミサイル、拉致、これを包括的に解決する、その姿勢を改めて内外に示すということを申し上げたわけであります。

武正委員 いや、私がお伺いしたのは、王毅次官の方から、拉致問題を余り取り上げないようにという、そうしたサジェスチョンというか申し入れがあったのかどうかということでございます。

逢沢副大臣 私は、率直にそのように申し上げたわけであります。中国は、中国の立場で全体を取りまとめていく、そういった立場で幾つかのことについて発言をされました。そのことについては率直な意見交換をいたしたわけでありますが、特に日本に対して、拉致の問題について、取り上げることは好ましくないとか、あるいは、取り上げるんならこのように取り上げろとか、そういうふうに言われたことはございません。

武正委員 そういうような印象を与えるような報道、実際にそういう私が触れたような形でテレビに流れたわけでございまして、私はやはりそうしたことが流れる背景が、多分、次官と副大臣が会われる前からいろんな形で中国側から、主宰者側から、議長役の中国側から日本政府にあったんじゃないかなというふうに思うわけなんですね。それが、先ほど触れましたような報道として上がっているわけでございます。

 それで、先ほど来外務大臣は、拉致問題の解決なくして国交正常化交渉はない、国交正常化がなければ経済協力はない、そういった三段論法を展開されましたけれども、この拉致問題の解決、先ほど、冒頭いみじくも触れた点ですね、細かい問題という言い方は撤回をされましたけれども、そうした拉致問題の解決なくしてということと国交正常化交渉、これは同時並行ということでよろしいんですか。拉致問題の解決を図ることと交渉は。

川口国務大臣 今委員が三段論法とおっしゃったそのこと、それは、日朝平壌宣言そのものが言っていることであります。日朝平壌宣言にはそのように書いてあって、我が国として、日朝平壌宣言を基本としてやっていくということであります。

 それで、拉致問題で、日朝の間で、五人の御家族の方の八人の方がお帰りになるということはもう最優先課題であるということを申しました。我々としては、これを正常化交渉の始まる前に達成しなければいけないというふうに思っております。

 そして、その上で、先ほど来申し上げているような、安否不明の方、そういう方の安否の確認、真相究明、そして、今後警察庁によって認定をされる可能性のあるほかの人たちの安否、こういったことも含めて真相究明をやっていく。そして、その上で正常化交渉を、正常化を行って、そして経済協力をしてということであります。

武正委員 今もやはり二段階でお話をされているんですけれども、八名の方の無条件の帰国と十名の方の生存の存否の真相究明、そして、その後に、日本が、警察等が拉致されたというふうに認定をされている方々、あるいは特定失踪者の真相究明、これは切り離して今考えているということなんでしょうか。

川口国務大臣 今、安否が不明である十人の方、この方と、今後認定をされる可能性のある方々、これを分けて考えているつもりは全くありません。

 ただ、時間的に言いますと、今、十名の方は既に認定をそういう意味ではされているという現実があるわけですし、警察庁による拉致の認定というのは今後引き続いて行われていく作業であるという意味で、時間的には違いがあるということで考えて、これはそういうことだろうと思います。

武正委員 先ほど来、日朝平壌宣言のお話をされますけれども、私は、日朝平壌宣言というのは、拉致という言葉もやはりこの時点からは記載をされていないんですね。「日本国民の生命と安全にかかわる懸案問題」という記載でありましたので、当然、この日朝平壌宣言の締結時点から問題だというふうに言っております。

 また、しかも、その問題の「懸案問題」については、いわゆる三という段落にございまして、「国交正常化交渉において、経済協力の具体的な規模と内容を誠実に協議することとした。」という、これが前段の二にあるわけなんですね。ですから、私は、この日朝平壌宣言というのは経済協力が前提に立った日朝平壌宣言、経済協力ありきの国交正常化交渉というふうに、このときにこの宣言を読んで思いました。

 ですから、先週ですか、小委員会に参考人として出席されたときの薮中局長の答弁からも、拉致問題の解決と日朝国交正常化交渉は同時並行、同時に動いているんだという、そうした外務省としての答弁を感じたわけなんですが、今のお話では、あくまでも拉致問題の解決が前提、しかも、八名の方の無条件帰国、十名の方の存否プラス特定失踪者の真相究明というものはセットで、これが拉致問題解決、これがまずあって、それが前提で解決されて、日朝国交正常化交渉に入るということでよろしいんでしょうか。

川口国務大臣 先ほど申しましたのは、拉致問題で、五人の方の御家族、この方たちが日本に無条件で帰ってくるということは最優先の、最重要の課題である、これは日朝の国交正常化交渉が行われる前でなければならないというふうに考えております。

 その上で、安否が不明の人、これは今後そうであると認定をされる人も含めてですけれども、その真相究明、これについてはきちんとこれをやっていく、そして正常化を行い、経済協力を行う、そういうことを申し上げているわけでございます。

武正委員 八名の方の無条件帰国、その上で十名の方の存否、そしてまた、これから拉致として認定をされるそうした被害者の真相究明、あるいは特定失踪者の真相究明と。その上でということになりますと、そしてその後、今、日朝国交正常化交渉を言いましたが、八名の方の無条件帰国が国交正常化交渉の条件ということに聞こえるんですけれども、そういったことなんでしょうか。

    〔増子委員長代理退席、委員長着席〕

川口国務大臣 八人の家族の方の帰国、これは正常化交渉が始まる前になされなければいけないというふうに考えています。そして、ですから、逆の言い方をすれば、八人の家族の方の帰国が実現をすれば、これは国交正常化交渉を再開する用意があって、そこで十名の方の真相の究明をしていくということであります。

 それで、それが、全部の懸案、拉致も核も、それからミサイルその他の日朝間のいろいろな懸案、それについて議論が終わって、合意があって、そうしなければ正常化はしないということを言っているわけです。正常化をしなければ経済協力はしない、これは平壌宣言に書いてあるとおりということです。

武正委員 今のお話で、そうすると、八名の方の無条件帰国後、日朝国交正常化交渉に入るということでよろしいんでしょうか。八名の帰国後、日朝国交正常化交渉に入るという御答弁ということで。

川口国務大臣 まあ、そういうことですというのがお答えなんですけれども、繰り返しますと、八名の方、五人の方の御家族、この方々が無条件で日本に帰ってくる、それは国交正常化交渉が始まる前にしなければいけないということを言っているわけでして、そして、ですから、帰らなければ国交正常化交渉というのは始まらないということを言っております。

武正委員 私が言っているのは、拉致問題の解決が、先ほど、冒頭、あるいは先ほどの各委員の質疑に答えておられるように、拉致問題の解決があって、日朝国交正常化交渉があって、そして経済協力という三段階で言われたわけですから、拉致問題の解決がなければ日朝国交正常化交渉に入らないということだと思うんですね。それが、今お話しになったように、八名の方が帰れば日朝国交正常化交渉に入るというのでは、先ほど来言っている三段論法が崩れてくるんじゃないですか。

 しかも、拉致問題の解決は何ですかと聞いたら、冒頭は八名の方の無条件帰国と十名の存否ということでしたが、その後、細かい問題ということを訂正されて、特定失踪者の究明ということもセットですよというふうに言われたんですが、そうした冒頭の発言とこれまでの積み重ねと、変わってきてしまうというふうに思うんですが、いかがでしょうか。

川口国務大臣 先ほど、私自身、紙を見ないで申し上げていたので、あるいは言い間違い、後でちょっと議事録を見てみますけれども。先ほど、注意をして申し上げていたつもりでございますが、国交正常化と交渉と分けて申し上げていたつもりなんです。

 申し上げているのは、拉致の問題も含めていろいろな問題が解決をしなければ国交正常化はしないと言っているわけですね。それで、国交正常化交渉自体、これは、八人の人たちの帰国、これが国交正常化交渉の再開、今一時とまっている状態にあるわけですから、再開の前に八人の方々が帰国を無条件でしなければいけないということを言っているわけです。先ほど来同じことを申し上げているつもりなんですけれども。

武正委員 そうすると、八名の方が無条件に帰国したら国交正常化交渉を始めるということなんですね。

川口国務大臣 再開の用意があるということを申し上げているわけです。

 ですから、八人の人たちが帰ってくるということは、国交正常化交渉の前に帰ってこなければいけない、国交正常化交渉、交渉です、国交正常化交渉の再開前に戻ってこなければいけないということを言っているわけですね。

 それで、全部の問題が、その事実関係の解明、それも含め、ミサイルの問題とかいろいろありますけれども、そういった問題が解決をして、それは国交正常化交渉の中でそういう問題の解明はしていくわけですから、それが全部終わったときに国交正常化をする。ですから、そういう問題が片づく前には国交正常化はしない、国交正常化をしなければ経済協力はしないということを申し上げているつもりです。

 正常化交渉と正常化と使い分けたつもりでおります。ちょっと間違って言ったところがあるかどうかは、議事録を後で精査いたしますけれども、そういうことでございます。

武正委員 拉致問題の解決が、冒頭言われたような形、セットというふうに言われながら、八名の方の無条件帰国で国交正常化交渉再開の用意があるということは、八名の方が帰国したら再開するということと同じではないですか。

川口国務大臣 交渉をしていきませんと、要するに、話し合っていきませんと、十人の方、あるいはそれに加える何人の方々、この安否については話し合っていけないわけですね。いろいろな形を、話し合わないと物事は前に進んでいかないということであるわけです。

 それで、その国交正常化交渉の再開をする用意があるというふうに考えているわけでして、用意があるということでございますので、これは向こうもありますから、こちらは用意があるということを申し上げている。そういう話し合いをしなければ諸懸案は片づかないわけです。そういった諸懸案を片づけて、そして正常化をする。逆に申し上げれば、正常化は諸懸案が片づかなければしない、拉致の問題が片づかなければ正常化はしないということを申し上げているわけです。

武正委員 拉致問題の八名の方の無条件帰国で国交正常化交渉を始めて、そして国交正常化交渉の中で十名の方の存否、特定失踪者の方の真相究明、そして核の問題など、包括的に国交正常化交渉の中で協議をしていくんだということでしょうか。

川口国務大臣 もちろん、その真相の究明が早くできればそれにこしたことはないわけでして、我々は、国交正常化交渉の再開の前にも、今も情報の要求はしているわけでございます。この間、薮中局長が行ったときもその話はしているわけです。

 ですから、再開しないとそれを話さないということでは全くありませんけれども、そういったことをきちんと話をしていくということのためには、やはり再開をして、その中で話をしていくということが問題の解決をしていくということのために必要であろうということを、大事であろうということを考えているということです。

武正委員 では、拉致問題の解決がしなくて、日朝国交正常化交渉をするということですね。

 冒頭、大臣は、拉致問題の解決は何ですかと言ったら、八名、十名、そしてその後細かいことは撤回したけれども、徹底究明、真相究明というふうに言われ、これが拉致問題の解決ですというふうに言われたのですが、その中で、八名の方の無条件帰国だけで、拉致問題の解決はしなくても、日朝国交正常化交渉の協議の中で、その残りのいろいろな懸案事項はやっていくということですね。

川口国務大臣 先方が、北朝鮮側が国交正常化交渉の再開に同意をするということであれば、八人の帰国が実現をした後、我が方としては再開をする用意があるということを言っているわけなので、先方が合意をすれば、それは再開をするということになると思います。

 それは、この安否の事実関係の解明ということは、やはり非常に丁寧にやっていく必要があると思っています。それで、それをきちんとした二国間の話し合いにのせて真相究明をやっていくということは大事であると思います。

 正常化は、これがなされない限りは、解明されない限りはしないということはもう北朝鮮に十分に伝えてあって、したがって、解決をしなければ経済協力もないということでありますということを我々は考えているということであります。

武正委員 つまり、拉致問題が解決しないうちに日朝国交正常化交渉を始めるということですね。

川口国務大臣 拉致問題を解決するために日朝国交正常化を再開するということを……(武正委員「交渉」と呼ぶ)いえ、ごめんなさい、今交渉と言いませんでしたでしょうか。(武正委員「言い方が違う」と呼ぶ)失礼しました。拉致問題を解決するために日朝国交正常化交渉を行うということであります。

武正委員 それがやはり、家族会を初め、違うんですね。拉致問題の解決がやはりその前提なんですね、すべての。これは、やはり違うんですね。

 日朝平壌宣言は、これはもう経済協力ありきの宣言なんですね。ですから、日朝国交正常化交渉に入っちゃったら、もうそちらの方でどんどん進んでいっちゃう。真相究明なり特定失踪者なり、それが、それこそ交渉の中で交渉の、まあ言ってはなんですが、カードとして利用される可能性があるわけですよ。経済協力の、この国交正常化交渉の北朝鮮のカードとして、この十名あるいは特定失踪者のさまざまな真相究明、これをカードとして利用される可能性があるので、あくまでも、さっき言った拉致問題の解決というのがあって、国交正常化交渉に入るべきではないかというふうに思うのですが、拉致問題の解決は、八名の帰国で、そして、その後国交正常化交渉の中でということなのでしょうか。

 私は、それはやはりやり方が違うと。だから、この六者協議の中で、北朝鮮との日朝二国間協議の中で、核問題がこの拉致問題に関係をしている、拉致問題の解決は核問題の進展とも関係しているという北朝鮮側からの投げかけに、核問題も含めた包括的な解決と。だから、核の解決を優先させなければ拉致の解決はないといった形に変わってしまう。

 私は、核の解決は拉致の解決と切り離さなければいけない。日本の立場というものはあくまでも拉致問題の解決であって、先ほどのエネルギー支援を含めて、これを拉致と関係してはいけない、結びつけてはいけない。こうした今六者協議の北朝鮮側からの、核と拉致は、核の解決、進展が拉致の解決に関係をしているということに乗ってはいけない。その乗ってはいけないためにも、先ほどの八名の無条件帰国で日朝国交正常化交渉を再開するんだ、その協議の中で十名、そしてまた特定失踪者の究明をやるということは、やはりやり方が違う、それをやっちゃいけないというふうに思うのでございますが、どうでしょうか。

川口国務大臣 拉致被害者の御本人、あるいは御家族の方々がいろいろ御心配をしていらっしゃる気持ちというのは私はよく理解をしております。それから、今武正先生がおっしゃったような考え方、そういった考え方も一つそれはあると思います。

 我々が考えていますのは、経済協力というのは我々にとってのてこであるということであります。逆ではない。その経済協力というのは正常化をしない限りはないわけです。ですから、まとめない限りは経済協力はないわけですから、北朝鮮は、経済協力がてことしてなるということであれば、もちろん、その拉致について我々が必要としている情報を出してくる、ということのために我々はてことして経済協力を使うということで考えているわけです。おっしゃっている、経済協力を逆に使われるではないかということについては、真相究明というのはその正常化交渉の中で出てくる話であります。経済協力は、交渉が終わって、正常化をして、その後でなければないということを言っているわけです。

 我々にとって経済協力はてこである。そして、その拉致の真相の解明ということは非常に大事でありますし、これは丁寧に時間をかけてやっていく必要があるわけですから、あるいはいろいろな調査とかいろいろなやり方をしていくことが必要だろうと思いますけれども、そういったことをその交渉の中でやっていく。経済協力をてこに使うというのが、余りこういうところで、言ってみれば……(発言する者あり)ということをやりたくないんですけれども、御質問ですから、あえてそういうふうに申し上げさせていただきます。

武正委員 経済協力がてこであると。要は、国交正常化交渉の中で日本の、具体的にお金を何にどのぐらい出すか、こういったことをカードとして拉致問題の解決を図るというのは大変危険なやり方だというふうに私は思っています。

 国交正常化交渉に入ってしまうと、先ほど言ったように、逆に北朝鮮側に拉致問題の解決のカードを握られて、それをカードとして、金を幾ら出せ、これをやれ、あれをやれ、そういう交渉に拉致問題の、拉致事件の被害者、あるいはその十名の存否、あるいは特定失踪者、これを使ってくるという土俵に上がるべきでないというふうに思います。

 そして、いや、国交正常化が成らないと経済協力は後なんだよと言われますけれども、交渉の中で約束をしたことが、それがもう一つずつ既成事実として積み重なって、交渉が積み上がっていくわけですね。実際にそれは国交正常化があってから援助がされる、支援がされるとしても、どんどんどんどん交渉の中で日本は支援の約束をしていくわけですよ。その約束を、日本はてこ、大臣が言われたように、カードとしながらこの拉致問題の解決を図るというのは、私はやってはならない手法だというふうに思います。

 あくまでも、先ほど大臣が言われたように、拉致問題の解決というのは、八名の無条件帰国、十名の存否の真相究明、その徹底究明、そして特定失踪者の究明、これがもうセットなんだと。これをやらない限り日朝国交正常化交渉に入らない、こういった強い姿勢がないから、北朝鮮側から、核の問題の解決の進展が拉致問題の解決にリンケージしている、その論理に乗ってしまった。その前提というのは、理由というのは今のところがある。

 私は、日朝国交正常化交渉を急ぐべきでない。読売新聞がアンケートをとって、五一%の人が今急ぐべきでないと言っております。家族会でもそういった意見を中心のメンバーの方も持っておられるやに私は聞いております。これ以上、ちょっと時間の関係もありますが、私は、やはり拉致問題の解決の途中で日朝国交正常化交渉に入るべきでない、これを言って、ちょっと次の質問に移らせていただきます。

 時間が限りがありますので、幾つか予定をしていたものもございますが、ちょっとこれを三つほど飛ばしまして、日本海の呼称問題について触れさせていただきます。

 日本海というこの呼称を、東海と、トンヘということを、韓国は変えるべきだということでさまざまな国際的な運動をしていることは周知のとおりであります。これについて、既に外務省としても、このような「シー・オブ・ジャパン」という冊子をつくって、日本海という呼称、これを徹底しようということでやっていることも承知をしておりますが、そのやさきに、韓国の日本大使館のホームページ、これで、事もあろうに日本の大使館が、自分の日本国大使館の韓国語のホームページに韓国側の主張のとおり東海、トンヘと表記していたことがこの二月十八日、西日本新聞の調べでわかった。

 ちょっとこの事実を確認したいと思います。

川口国務大臣 おっしゃったように、韓国語版のホームページにおきまして、日本海が東海と表記をされたり、あるいは日本海と東海が併記をされるという形で記載をされていた部分があるということは、これは大変に遺憾ながら事実であります。

武正委員 こうした日本海の呼称を、トンヘ、東海と言うのはけしからぬということをやっている外務省が、事もあろうにソウルの大使館の、日本の大使館のホームページでみずから東海と書くということはあってはならないことなんですね。

 これについて、今大臣、こういったことはもうあってはならない、二度とこんなことがあってはならないし、そしてまた、なぜこうしたことが起きたのか、その理由、原因、そして、それを再発防止するためにどういうことをやるのか、これをしっかりと提出していただきたい、発表していただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。

川口国務大臣 これはもう本当にあってはならない、二度とあってはならない、全くどうしてこういうところで手抜かりがあったのか、私も非常に遺憾に思います。

 それで、これについて直ちに全部のホームページを見ましたところ、全部で直したところが五カ所、五件六カ所ですか、ということであったということですけれども、これはなぜこういうことになったのかということも調べました。それで、これは、現地の委託業者、これに韓国語への翻訳を委託した、そのときにチェックをしたんだけれども、必ずしもチェック、チェック漏れがあったということであります。

 こういうことを二度と起こしてはいけないというのはもう当然のことで、これに対して直ちに、二度と起こらないような再発防止策をとるようにという指示をいたしております。それで、このチェック体制、これをさらに強化するということで具体案を今具体的に考えてもらっています。

 本当に残念だと私は思います。

武正委員 実は、この日本海の呼称問題は、平成十四年十一月六日、各国にある日本大使館に各国メディア等への申し入れということで訓令を出しているんですよ。そのときは、例えばタイ航空などの機内誌に日本海と東海が併記されていると。これは、私のやはり地元の方も、機内誌をちぎって持ってきてくれました。併記をされていたり、あるいは空欄だったり。

 それで、これについて、では調査しなさいという訓令がこの十一月六日に出たんですけれども、これについて、タイの大使館、すぐ対応をして、タイ航空に申し入れをしたんでしょうか。お答えをいただきたいと思います。

川口国務大臣 東海の問題については、これは昨年の九月の時点で、飛行機会社に対して調べるようにということを、私から訓令を出しております。それで、その結果、いろいろなやり方をしているということがわかったわけでございまして、日本海単独表記をしていない航空会社、これに対しては、日本海単独表記をするようにという申し入れをやったわけでございます。

 それで、タイ航空ですけれども、これは調査をしました時点で、日本海海域の表記、これを空白にしているということがわかりました。それで、これを受けまして、平成十五年五月の時点で、在タイの大使館の館員がタイ航空の担当者を直接訪問して、空白ではなくて日本海と書いてくれということを申し入れたということでございます。

 それで、その後、ことしの二月になりまして、まだタイ航空が、その機内誌、空白のままであるという状況ですので、さらに申し入れを行ったということをやっております。

武正委員 ちょっともう時間がまいりましたので、最後、私が言っているのは、今言われたように、訓令は十一月六日、平成十四年。それで、今言ったように、申し入れをしたのは五月なんですよ。これは私が、どうなんですかという問い合わせをして、タイ航空、タイ大使館どうですかと言ったら、外務省の方、やっていませんでしたと。訓令を受けてやっていなかったわけですよ。それで慌てて五月になってやっているわけでしょう。さっき、再発防止だ、こんなことあってはならないということを言っていますけれども、訓令についてタイの大使館は半年間そのまま放置していた。こういうことがあるから、ソウルの日本の大使館だって東海なんて記載をするわけですよ。

 外務省は、一体この日本の、この日本海という、これまでの伝統と歴史のある名前を本当に守ることができるんですか、こんな対応で。相次いでいるじゃないですか。

 この点について、タイの大使館が半年間サボタージュしていたこと、それも、私が言うまでわからなかったこと、そしてまた、今回、二回目を起こしている。これは外務省として、やはり根本的な、外務省としての組織のいろいろなやり方、改革したと言っているけれども、できていないんじゃないですか。大臣、お答えください。

川口国務大臣 このタイの大使館のケースというのも、私にとっては非常に残念なケースでありますけれども、これは若干御説明をしますと、東海という単独表記ではなくて、あるいは併記ではなくて、何も書いていなかった、空白になっていた。空白になっていたので、そのままそれを見過ごしていたということがあったようですけれども、いずれにしても、大変に残念なことだと思っています。

武正委員 空白のやつもちゃんとやるようにというふうに訓令を出したんじゃないですか。大臣。

川口国務大臣 それも、そういうこともあわせて言ってあります。

武正委員 終わりますが、空白なこともちゃんと書いて、徹底して調べて申し入れるようにという訓令を、タイの大使館は半年間放置をして、こっちが指摘しなきゃやらない。しかも、また今回、同じことを繰り返している。このことについて、外務省は再発防止をどういうふうにするのか、これを委員会に提出するよう、これは委員長にお願いをしたいと思います。

米澤委員長 理事会で諮って決定します。

武正委員 終わります。ありがとうございました。

米澤委員長 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢でございます。

 私は、きょうは沖縄の基地問題について質問をいたします。

 アメリカ政府から、普天間基地の移設にかかわって、SACO最終報告の見直しの協議をしたい、こういう要請があったことが報道されました。要請があったかどうかについては、政府は今のところ否定しておりますので、これ以上聞いても進展がないと思いますので、あえて聞きません。

 が、昨年の十一月、ラムズフェルド国防長官が来日し、普天間基地を視察し、その深刻な実態を肌で感じて、事故などの危険性を指摘し、解決を急ぐよう指示したとされております。この様子については、私も事情をよく知っている方からじかに聞くことができました。危険な普天間飛行場で事故が起きれば、沖縄における米軍の維持そのものが危うくなる、そういう立場からの指示だと言われています。

 普天間飛行場の実態について、川口外務大臣も視察した際に、密集した市街地の真ん中にそこだけぽかりと空き地がある、そこが飛行場だ、こういう感想を述べておられます。また、宜野湾市の元の市長さんで桃原正賢さんという方がいらっしゃいますが、桃原元市長は、普天間基地というのは、人間でいえば心臓と胃をえぐられているようなものだ、人間なら生きていけない、都市ならば市街地形成が図れず活力が生まれてこない、このように繰り返し述べておられます。

 私、ラムズフェルド国防長官の見直し指示というのは、こうした普天間飛行場の実態を何よりも優先的に解決しなくてはならない、そして、そのための障害となっている条件を見直さなくてはならないという考えを示したことではないかと思いますけれども、外務大臣はどのように考えておられますか。

川口国務大臣 ラムズフェルド長官が、沖縄で普天間基地を視察なさった後どのようなコメントをなさったかということについて、直接把握をしているわけではございませんので、それについてコメントをするということは、ちょっと難しいと申し上げざるを得ないんです。

赤嶺委員 普天間基地の深刻な実態、これは川口外務大臣も認識されていらっしゃると思います。一方で、アメリカは世界的な基地の再編成を進めており、日米間でも協議中でありますけれども、当然それには沖縄米軍基地も検討の対象に含まれます。

 その再編協議に当たって、日本政府の基本姿勢として、外務大臣はこの間の予算委員会でこう述べております。在日米軍の態勢見直しが行われる場合、二つの観点でアメリカ側と協議をしていく、具体的には、一、在日米軍が持っている抑止力が効率的に維持されること、二、沖縄を含む米軍基地が所在する自治体の負担軽減を図る、こういう考えを述べているわけですが、この抑止力が効率的に維持されるというのはどういうことですか。

海老原政府参考人 米軍の抑止力のお尋ねでございますけれども、九六年の日米安保共同宣言におきまして、米国の抑止力は我が国の安全保障のよりどころだ、これはギャランティーと言っておりますけれども、よりどころであるというふうに認識をされております。その認識は現在においても変わらないということで、米国の抑止力の維持というものが我が国の平和と安全にとって不可欠であるということだろうと思います。

 そこで、効率的ということでございますけれども、抑止力と申しますのは、そもそも一般的に申せば、侵略を行えば耐えがたいほどの損害をこうむるという明白な認識を持つ、持たせるということによりまして侵略を思いとどまらせるということを言うわけでございまして、このような機能を果たす上で必要かつ最適と思われる戦力、あるいは兵力等を指して効率的な抑止力というふうにに申し上げているわけでございます。

赤嶺委員 その効率的な抑止力、あと一問聞きたいのですが、せんだって、政府は、ミサイル防衛の導入に際して、日本に対する着上陸侵攻の可能性が変化してきているということを指摘しております。そういう意味からいえば、効率的な抑止力というのも変化があり得るという理解でよろしいんでしょうか。

海老原政府参考人 これはブッシュ大統領、あるいはラムズフェルド国防長官なんかもそう述べておられますし、我々もまたそう考えておりますが、ある面、脅威の性格が最近変わってきている。例えば、テロというようなこともございますし、大量破壊兵器、ミサイルの拡散ということもあります。あるいは、いわゆる無法国家と言われるような国家の存在というようなこともあるわけでございます。

 他方、今おっしゃいました着上陸侵攻なども含めまして、あらゆる脅威に対して対応するというために最適な抑止力を維持するということが必要なわけでございまして、脅威そのものを予断するというようなことは適当ではないというふうに考えております。

赤嶺委員 つまり、安全保障環境というのは大いに変化してきているという認識を日米両政府は示してきたわけであります。

 そういう中で、先ほど北米局長の、効率的な抑止力というのは侵略を思いとどまらせることになるんだというお話だと、やはり今の安全保障環境の変化の中で、当然在日米軍基地、在沖米軍基地の整理縮小というのはされなければいけないと思います。

 一方で外務大臣は、抑止力について、日米安保条約に従って日本の安全と平和を保っていくと先ほどの予算委員会で答弁しておりますけれども、この見方というのは、安保条約の目的達成のために必要な米軍基地は維持していく、こういう理解でよろしいでしょうか。

川口国務大臣 まさにその平和、日本と極東の平和と安全、これを維持するために、我が国としては、施設・区域ということを、六条によってそれを米軍に対して使用せしめているということであります。まさに安保条約の目的を達成するために必要なことを六条によって我が国は行っているということだと思います。

赤嶺委員 今、そこで、沖縄の人たち、県民の実態的な体験として、そういう抑止力の維持、安保条約の目的達成のための米軍基地の維持ということと負担の軽減が両立できるかどうかという疑問が大いにあるわけですね。負担の軽減というのをいいながら、SACO合意などでも負担の軽減は中途半端で、結局、抑止力の維持、これだけが強化されているという問題があると思うんです。

 最近、宜野湾市は、普天間飛行場返還アクションプログラムを策定いたしました。これについて外務大臣は御存じですか。

海老原政府参考人 今ちょっと手元に資料がございませんけれども、五年以内に普天間飛行場を移設すべきであるというふうに書いてあるプログラムだというふうに認識しております。

赤嶺委員 五年以内の普天間基地の閉鎖を求めているんですね。SACO合意とは違う方向を宜野湾市民が求め始めたということであります。

 なぜかといいますと、普天間基地の代替施設を移設するためには十八年かかる。あと十八年間も今の普天間基地の現状に宜野湾市民は我慢をしなければいけないのか、本当に負担の軽減をいうのであれば五年以内に普天間基地を閉鎖してほしい、無条件に閉鎖してほしい、SACOでは解決にならないということを改めて政府に要求したという点で大変大事な意味を持っていると思うんです。

 皆さんが負担の軽減とそれから抑止力の維持として沖縄で進めてきたことが、こういう形で県民から、あるいは基地所在の市民から批判を受けている、あるいは新たな要求を突きつけられているというぐあいに思いますけれども、川口外務大臣はどのように考えますか。

川口国務大臣 沖縄の県民の方の御負担、これを少しでも軽減していく、そのために最善の努力をしていくということが重要だと私は思っております。SACOの最終報告を着実に実施していくということに全力投球をしたいと考えております。

赤嶺委員 それではだめだというのが宜野湾市の返還アクションプログラムなんですよ。だって五年以内ですから。皆さんのSACO合意の実施とは明らかに矛盾するわけですよね。つまり、我慢しなさいということですか。

川口国務大臣 普天間飛行場の移設、返還につきましては、これは、これまでも地元の地方公共団体の方々と御相談を十分に行いながら全力で取り組んできたわけでございます。地元の方々の不安、これについては十分に認識をしておりまして、これを一日も早く解消したいと思っております。

 それで、具体的に今までの経緯というのがございまして、平成十一年の閣議決定、そして平成十四年には普天間飛行場の代替施設の基本計画というものができております。そして、これに基づきまして、移設、返還に向けた作業が着実に進んでいるということであります。

 これらの閣議決定ですとか、あるいは基本計画の策定に当たっては、まさに沖縄県等の地元の地方公共団体の方々と御相談をしながら、その考えを十分に踏まえながら進めてきたという経緯があるわけでございます。今後とも、その閣議決定あるいは基本計画に従った形で、政府として全力で取り組んでいきたいと思っています。

赤嶺委員 平成十一年のSACOの最終報告と平成十四年の基本計画の決定の中身は変わっております。平成十一年の際には、撤去可能な海上ヘリポートの建設でした。ところが、今つくられようとしているのは埋め立ての米軍基地の建設であります。

 結局、このSACO合意で米軍基地の機能の維持というところに重点を置いて、そして、その機能の維持が変わらない場合には海上ヘリポートが埋め立てに変化したりすることはあるけれども、実際には負担の軽減にはつながっていない。それがあなた方の沖縄の米軍基地に対する政策なんです。

 こういうことの、いわば、あなた方が今度の米軍基地の再編成の作業に当たって臨もうとしている二つの立場ですね、抑止力の維持それから負担の軽減というのは、実際の沖縄ではこれは両立するものではないし、明確に負担の軽減という立場を貫く主張をしなければ、今度の沖縄米軍基地の再編成の中で一層強化され、一層負担を押しつける結果になりかねないということを指摘しまして、私の質問を終わらせていただきます。

米澤委員長 次に、東門美津子君。

東門委員 社民党の東門美津子です。よろしくお願いいたします。

 私は、きょうは在日米軍オリエンテーションプログラムについて伺います。

 外務省は、在日米軍の若手士官クラスを対象としたオリエンテーションプログラムを一九九五年から毎年実施しています。このプログラムは、一九九五年九月に沖縄本島北部で発生した三人の米海兵隊員による少女レイプ事件をきっかけとして、国内の基地所在地で頻発する在日米軍兵士などによる犯罪や事故の防止を目的とした研修、教育であると外務省は当初説明していました。

 毎回二十人から二十五人程度の士官クラスを対象に行われるオリエンテーションプログラムに要する経費は二百数十万円から三百数十万円で、経費はもちろん日本政府が負担しています。九回目に当たる二〇〇三年度は、去る一月二十日から二十三日にかけての四日間、東京都内で実施されました。

 そこで、このオリエンテーションプログラムについて伺います。

 一九九五年以降毎年行われているオリエンテーションが、沖縄県並びに米軍基地所在都県に具体的にどのような効果をもたらしてきているとの認識をしておられるのか伺いたい。まず、それから伺いたいと思います。外務大臣にお願いします。

川口国務大臣 効果ですけれども、これは米軍に対して幅広い分野で講義をしているということでありまして、これは外務省の関係者と意見交換をしたり、あるいは日本の真髄を日本の文化を通じて触れるということもやっております。そういったことがやはり日本に対する理解を増して、そして日米の安保条約の円滑な運用に資し、ひいては日米関係の円滑な関係、友好的な関係の強化、そして日本の安全の保障をきちんとする、きちんと守るということにつながっていくという意味でプラスであるというふうに思います。

 また同時に、これは、よき隣人としての米軍人のあり方、これをきちんと認識をさせ、促進をさせる、また、日本人が米軍の駐留について持っている不安感、こういったことについても、米軍人に対してきちんと認識をさせる、そういったさまざまな効果があるというふうに考えています。

 それで、これは短期的な、そのときの理解ということでの効果もありますし、また、それがいろいろなことのきっかけになっていって、中長期的に先ほど申し上げたようなことへの理解がますます深まっていくというようなことにつながるということも考えられると思います。

東門委員 九回も行ってくれば、何らかの効果がしっかり目に見える形であらわれてくると思うんですが、それはあらわれていますか。今よき隣人とおっしゃったんですが、その視点から、その観点から効果らしきものが見えていますか。

川口国務大臣 これは、何をもって効果というのをはかるかというのは難しいことであると思いますけれども、この人たちに終わりに当たってアンケートをしたときの結果を私は前に見たことがあるんですけれども、やはり相当に理解が深まったということについて、本人たちも自覚をして書いているということであります。我々もいろいろな外国に行って、ある国について学ぶということを集中的にやった場合に非常によくわかったと思うことがあるわけでして、そういった観点で効果は上がっていると私は考えます。

東門委員 大臣は全然私の質問をお聞きになっていらっしゃらない。繰り返したくはないんですが、よき隣人としての観点から効果は上がっていますかと申し上げました、お答えになられませんでしたけれども。

 では、そのオリエンテーションの参加者選定に当たってですが、所属、階級はどのように考慮されているのか、そこをお聞きしたいと思います。短目にお願いします、簡潔に。

海老原政府参考人 はい。要するに、一番効果が上がるようにということで、アメリカ側ともよく相談をしております。その結果、今回は特に例年よりも参加者のランクを上げることにいたしまして、例年の参加者は大体中尉から少佐クラスが中心でございましたけれども、今回はほとんどが大尉、少佐となっております。参加者の所属につきましては、必ずしも地域的な割り当てというようなことは行ってはおりません。

東門委員 このプログラムがスタートした時点の話は私いたしました。あの少女のレイプ事件に端を発して、これではいけないということで在日米軍のオリエンテーションプログラムが始まった、最初そのような説明でした。ところが、その後、何がどう変わったのかわからないんですが、随分変わってきたなと。本当に最初の目的がそのまま通れば、私は、その階級、所属に関しても、地域に関しても、細心の注意が払われるべきだと思います。

 伺います。米軍人軍属による犯罪の件数はふえているのでしょうか、減っていますか。

海老原政府参考人 最近沖縄県警が公表しました資料では、沖縄県での米軍構成員等の犯罪検挙件数、人数が増加しておりまして、極めて遺憾に思っております。

東門委員 しっかりと減少することを目的としたはずじゃなかったのですか。あの悲惨な事件を受けて、こういう研修をすることによって米軍人による犯罪を減らしていく、それがよき隣人であるということで始まったんじゃなかったんですか。ところが、一、二年は減りました。今本当に、逆に上がってきています。かなりひどい状況です。

 それで、階級は上の方を選んでいますと今おっしゃいました。何のためでしょうか。その人たちは現場へ帰って、指揮官として、若い新兵、新しい、本当にそこに赴任してきたばかりの新兵と接する機会はあるのでしょうか。その人たちに、ここで学んだものを、日本を理解してもらうとか、文化を理解してもらうとか今おっしゃいますけれども、これを若い兵隊たちに、兵士たちにしっかりと伝えていく場にある人ではないのではないかと思うんですが、いかがでしょうか。

海老原政府参考人 このプログラムにつきましては常に見直しをしておりまして、例えば沖縄のプログラムなども、前回が九十分だったのが今回百五十分というふうにふやしていまして、例えば、琉球大の尚名誉教授にも今回初めて講演をしていただいたわけです。

 率直に申し上げて、プログラムの内容も結構高度になっているところもございまして、そういう意味で、ある程度のランクの人の方が理解をしてもらって、それをまた下の者にも伝えやすいというようなこともありまして、今回そういうことをしてみたということでございます。また、これはいつも見直していきたいというふうに考えております。

東門委員 本当に、質問はちゃんと答えてくださいよ。その人たちが現場へ帰って指揮官として若い兵士と接触する機会はありますかと私聞いたんですね。

 なぜならば、もう時間がないので急ぎますけれども、米軍の海兵隊の新兵の教育、二日間やっています、海兵隊。その中で、海兵隊員、海軍兵に対する、勤務と自由時間、勤務外ですね、それにおける沖縄県民に対する心構えと行動についてという講義があるようです、一時間くらい。それを実際に担当するのはバトラーの基地司令官と部隊総長なんです。そのランクの人じゃないんですよ。どうしてこのような、見直しをしていますと言うんですけれども、私は、このプログラムは打ち切るべきだと思います。税金のむだ遣いです。犯罪の減少にはつながらない。ふえていく。本当に何をしているか。

 今、プログラムは高度になっているとおっしゃいました。プログラムを見せていただきました。一度はしっかりと研修をしました。確かに、講義はどうか、ある程度アンケートもよかったと言っています。私は、よかったというのは、この本人によかったかもしれませんが、それが現地に帰って兵隊たちに、兵士たちに、部下たちにしっかりと伝えられるようなそういう講義ではないと思うんです。

 そして、いろいろなものが、もう時間がないのがとても残念ですけれども、本当にどんどん入ってきちゃうんですね。朝食に国会議員の皆さんと意見交換をしましたと。どこの国会議員ですかと言うと、自民党の国会議員を五人選びましたと。それを税金でやっているわけですよ。最初のプログラムには入っていないんですね。後からつけ加えられているわけですよ。こういうのが入ってくる。もう全然わけのわからないプログラムであるということ。

 要するに、役に立たないプログラムであれば、税金のむだ遣いです。すぐやめていただきたいと思います。来年はもう終わりましょうと、大臣、一言お願いします。それで終わります。

米澤委員長 大臣、一言。

川口国務大臣 そのメリットが私どもはあるというふうに考えております。

米澤委員長 質疑時間は終了いたしました。

東門委員 メリットは全然ないということを強く申し上げて、終わります。デメリットばかりです。

米澤委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時四分散会


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