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第9号 平成16年3月26日(金曜日)

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平成十六年三月二十六日(金曜日)

    午後零時十四分開議

 出席委員

   委員長 米澤  隆君

   理事 岩永 峯一君 理事 谷本 龍哉君

   理事 中谷  元君 理事 渡辺 博道君

   理事 末松 義規君 理事 武正 公一君

   理事 増子 輝彦君 理事 丸谷 佳織君

      遠藤 武彦君    木村  勉君

      倉田 雅年君    高村 正彦君

      鈴木 淳司君    田中 和徳君

      土屋 品子君    西村 明宏君

      西銘恒三郎君    松宮  勲君

      宮下 一郎君    阿久津幸彦君

      市村浩一郎君    加藤 尚彦君

      今野  東君    中野  譲君

      松原  仁君    山名 靖英君

      赤嶺 政賢君    東門美津子君

    …………………………………

   外務大臣         川口 順子君

   外務副大臣        逢沢 一郎君

   外務大臣政務官      田中 和徳君

   外務大臣政務官      松宮  勲君

   外務委員会専門員     原   聰君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月二十六日

 辞任         補欠選任

  小野寺五典君     西村 明宏君

  河井 克行君     倉田 雅年君

  前原 誠司君     市村浩一郎君

  漆原 良夫君     山名 靖英君

同日

 辞任         補欠選任

  倉田 雅年君     河井 克行君

  西村 明宏君     小野寺五典君

  市村浩一郎君     前原 誠司君

  山名 靖英君     漆原 良夫君

    ―――――――――――――

三月二十五日

 刑事に関する共助に関する日本国とアメリカ合衆国との間の条約の締結について承認を求めるの件(条約第三号)

 無形文化遺産の保護に関する条約の締結について承認を求めるの件(条約第五号)

 たばこの規制に関する世界保健機関枠組条約の締結について承認を求めるの件(条約第一七号)

同月二十四日

 核兵器廃絶条約の締結に関する請願(松本大輔君紹介)(第一一七七号)

 同(和田隆志君紹介)(第一一七八号)

 ILO百七十五号条約の批准に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第一二五〇号)

 同(石井郁子君紹介)(第一二五一号)

 同(穀田恵二君紹介)(第一二五二号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第一二五三号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 サイバー犯罪に関する条約の締結について承認を求めるの件(条約第四号)

 児童の売買、児童買春及び児童ポルノに関する児童の権利に関する条約の選択議定書の締結について承認を求めるの件(条約第一三号)

 武力紛争における児童の関与に関する児童の権利に関する条約の選択議定書の締結について承認を求めるの件(条約第一四号)

 刑事に関する共助に関する日本国とアメリカ合衆国との間の条約の締結について承認を求めるの件(条約第三号)

 無形文化遺産の保護に関する条約の締結について承認を求めるの件(条約第五号)

 たばこの規制に関する世界保健機関枠組条約の締結について承認を求めるの件(条約第一七号)


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     ――――◇―――――

米澤委員長 これより会議を開きます。

 サイバー犯罪に関する条約の締結について承認を求めるの件、児童の売買、児童買春及び児童ポルノに関する児童の権利に関する条約の選択議定書の締結について承認を求めるの件、武力紛争における児童の関与に関する児童の権利に関する条約の選択議定書の締結について承認を求めるの件の各件を議題といたします。

 各件に対する質疑は、去る十八日に終局いたしております。

 ただいま議題となっております各件中、まず、サイバー犯罪に関する条約の締結について承認を求めるの件について議事を進めます。

 これより討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、順次これを許します。武正公一君。

武正委員 民主党・無所属クラブ、武正公一でございます。

 サイバー犯罪条約に関し、民主党・無所属クラブを代表して、賛成の立場から討論を行います。

 民主党が本条約への賛成を表明するに至った理由は、コンピューターシステム攻撃、あるいはコンピューターシステムを利用して行われるサイバー犯罪が出現する中、コンピューターシステムに対する違法なアクセス等一定の行為の犯罪化等を図ると同時に、コンピューターを利用した児童ポルノの規制も内容としており、そこに積極的な意義を見出したからであります。

 しかし、日本国憲法二十一条、通信の秘密を侵すことなどがあってはならないことは申すまでもありません。

 また、条約の趣旨に賛成したからといって、これまで人権関係の諸条約の締結について政府のとってきた姿勢を手放しで認めるわけでないことを改めて強調したいと思います。

 以下、具体的に理由を申し述べます。

 まず、民主党としては、マニフェストにおいて「盗聴法、住基ネット法、個人情報保護法を見直します。政権獲得後直ちに、盗聴法の運用を凍結し、二年以内に抜本改正の法律案を国会に提出します。」と宣言し、過去、通信傍受法の廃止法案を提出した経緯もあることから、本条約に関連する国内法のあり方やその実施主体たる警察等の実施機関の実態についてはかなり強い疑問を持っています。その趣旨を認めて条約に賛成したという一事をもって、関連の国内法や運用実態等について別の観点から厳しく監視していく姿勢に関しては、いささかの変化がないことを改めて表明したいと思います。

 さらに、この条約のベースになった欧州評議会においては、条約前文に記されているように、人権及び基本的自由の保護に関する条約や個人情報の自動処理における個人の保護に関する条約の採択など、人権擁護のためのさまざまな条約による歯どめが講じられており、多くの人権関係の条約が未批准のまま放置されている日本とは状況が異なっている中、犯罪捜査に関する条約を先行させる政府の進め方に強い懸念があることです。

 このような条約を締結するのであれば、当然に車の両輪であるはずの人権を擁護する条約の批准も進めるべきであり、ここで改めて、政府に対して、未批准となっている二百を超える諸条約の早期批准を強く促すものであります。

 以上、条約に対する政府の姿勢、国内法との関連、実施体制について懸念を有しており、政府に対してしっかりとした対応を要請いたしますが、一方では、増加する深刻なサイバー犯罪の防止、児童ポルノ規制等の対策が急務であり、日本がこの問題で国際的な責任を果たしていくべきであるとの認識も有しており、このような意義に着眼し、政府に対して徹底的な努力を促すことを表明し、賛成討論といたします。(拍手)

米澤委員長 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。

 サイバー犯罪条約について反対の討論を行います。

 サイバー犯罪は、国境を越え広範囲に影響を及ぼす特質があります。これに国際的に対処する枠組み、条約は必要であると考えます。

 しかしながら、本条約は、捜査当局によるコンピューターデータのリアルタイム収集や通信傍受を行う立法措置を締約国に求めています。これは、いわば盗聴法と同様の法整備を各国に求めるもので、通信の秘密、表現の自由、プライバシーなどが捜査当局に脅かされることになります。

 実際に、政府は、本条約を根拠に、捜査機関がプロバイダー等に将来のログの通信情報の差し押さえまで命令できるようにする法改正を今国会に提出しています。

 また、本条約は、サイバー犯罪に限らず、コンピューターシステムを使って行われるほかの犯罪も捜査、訴追の対象とし、犯罪の構成要件を事実上無制限にしています。この要件に基づいてプロバイダー等にコンピューターデータの迅速保全、提出、捜索・押収等の命令が出されれば、企業活動や市民生活に重大な影響を及ぼしかねません。

 本条約は二〇〇一年に欧州評議会で採択されましたが、今私が指摘したような人権、民主主義にかかわる問題があるため、各国で国内法との調整が難航し、批准は二月六日現在で四カ国にとどまっています。

 例えば米国では、人権擁護団体から、条約の犯罪の対象範囲が広過ぎ、締約国は侵害的な監視手段の採用を締約国が強制されること等に批判の声が出されています。こうした条約を日本が性急に批准するべきではないと考えます。

 我が党は、以上の理由から、本条約の批准に反対します。

米澤委員長 次に、東門美津子君。

東門委員 社会民主党の東門美津子です。

 私は、社会民主党を代表して、サイバー犯罪に関する条約の承認に反対の立場から討論を行います。

 この条約は、サイバー犯罪から社会を保護するために、コンピューターシステムに対する違法なアクセス等一定の行為を犯罪化し、コンピューターデータの迅速な保全等に係る刑事手続を整備して、犯罪人引き渡し等に関する国際協力等について規定するものとされています。コンピューターシステムが社会の隅々まで行き渡った現代社会において、サイバー犯罪を厳格に取り締まりコンピューターの安全を確保することは、極めて重要なことであります。

 しかし、だからといって、行政府の権限を強め、コンピューターネットワークに幅広く規制の網をかけることは、自由につながり広がることで発展してきたコンピューターネットワークの発展を阻害するおそれも強く、慎重でなくてはなりません。

 本条約の批准とこれに基づく国内法の整備によって、捜査段階におけるデータの押収や通信の傍受など、今までのネットワークに関する法規に比較して、強引とも言えるほど強力な手続が導入されます。これまでは有体物に限られていた捜査、差し押さえの対象が電子データという形のないものに広がることによって、場所や物に限定されず、ネットワークで接続されているあらゆる記録媒体までが差し押さえの対象になります。

 通信記録の保全措置は実質的な通信の傍受と同じであり、通信傍受を重要犯罪に限定した盗聴法の範囲すら超えるとも指摘されており、通信傍受の濫用的な運用が行われる疑念も払拭できません。また、こうした捜査への協力を保障するためのIT関連やネットワーク関係事業者の経済的、技術的な負担も極めて過大であります。

 本条約の締約国は、アルバニア、クロアチア、エストニア、ハンガリーの四カ国のみであり、いまだ未発効となっております。他の先進諸国においても同様の議論が続いている中で、日本が突出して批准を急ぐ必要性があるとは言えません。

 今後さらに十分な議論を重ね、同条約の厳密な解釈と留保によって犯罪化される行為を限定するなど、市民的自由とプライバシーに対する危険と脅威を最小限にとどめなくてはなりません。さらに、産業界に対する法的、経済的な負担を限定するための配慮も必要であります。

 以上の観点から、サイバー犯罪に関する条約の現状での拙速な承認に対して、反対の立場からの討論といたします。

米澤委員長 これにて本件に対する討論は終局いたします。

    ―――――――――――――

米澤委員長 これより採決をいたします。

 サイバー犯罪に関する条約の締結について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

米澤委員長 起立多数。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 次に、児童の売買、児童買春及び児童ポルノに関する児童の権利に関する条約の選択議定書の締結について承認を求めるの件について議事を進めます。

 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 児童の売買、児童買春及び児童ポルノに関する児童の権利に関する条約の選択議定書の締結について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

米澤委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 次に、武力紛争における児童の関与に関する児童の権利に関する条約の選択議定書の締結について承認を求めるの件について議事を進めます。

 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 武力紛争における児童の関与に関する児童の権利に関する条約の選択議定書の締結について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

米澤委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました各件に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

米澤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

     ――――◇―――――

米澤委員長 次に、刑事に関する共助に関する日本国とアメリカ合衆国との間の条約の締結について承認を求めるの件、無形文化遺産の保護に関する条約の締結について承認を求めるの件及びたばこの規制に関する世界保健機関枠組条約の締結について承認を求めるの件の各件を議題といたします。

 政府から順次趣旨の説明を聴取いたします。外務大臣川口順子君。

    ―――――――――――――

 刑事に関する共助に関する日本国とアメリカ合衆国との間の条約の締結について承認を求めるの件

 無形文化遺産の保護に関する条約の締結について承認を求めるの件

 たばこの規制に関する世界保健機関枠組条約の締結について承認を求めるの件

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

川口国務大臣 ただいま議題となりました刑事に関する共助に関する日本国とアメリカ合衆国との間の条約の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。

 政府は、平成十一年二月以来、アメリカ合衆国との間でこの条約の交渉を行いました。その結果、平成十五年八月五日に、ワシントンにおいて、我が方森山法務大臣、谷垣国家公安委員長(いずれも当時)及び加藤特命全権大使と先方アシュクロフト司法長官との間でこの条約の署名が行われた次第であります。

 この条約は、一方の締約国が他方の締約国の請求に基づき、捜査、訴追その他の刑事手続についてこの条約の規定に従って共助を実施すること、そのための枠組みとして中央当局を設置し、相互の連絡を直接行うこと等を定めております。

 この条約の締結により、我が国及びアメリカ合衆国のそれぞれにおける共助が一層確実に実施されることを確保できるとともに、共助に関する連絡を中央当局間で直接行うことにより、共助の迅速化が期待されます。

 よって、ここに、この条約の締結について御承認を求める次第であります。

 次に、無形文化遺産の保護に関する条約の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。

 この条約は、平成十五年十月にパリで開催された国際連合教育科学文化機関の第三十二回総会において採択されたものであります。

 この条約は、無形文化遺産を保護することを目的として、そのための国際的な協力及び援助の確立、締約国がとるべき必要な措置等につき規定するものであります。

 我が国がこの条約を締結することは、無形文化遺産の保護の分野における国際協力に寄与する見地から有意義であると認められます。

 よって、ここに、この条約の締約について御承認を求める次第であります。

 次に、たばこの規制に関する世界保健機関枠組条約の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。

 この条約は、平成十五年五月にジュネーブで開催された世界保健総会において採択されたものであります。

 この条約は、たばこの健康に対する悪影響を減らして人々の健康を改善することを目指し、各国の実情を踏まえ、たばこに関する広告、包装の形容的表示等の規制について定めるものであります。

 我が国がこの条約を締結することは、主要なたばこ製品の生産国かつ消費国としてバランスのとれた、真に実効的なたばこの規制に寄与する上で有意義であると認められます。

 よって、ここに、この条約の締結について御承認を求める次第であります。

 以上三件につき、何とぞ、御審議の上、速やかに御承認いただきますようお願いいたします。

米澤委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、来る三十一日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時三十分散会


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