衆議院

メインへスキップ



第10号 平成16年3月31日(水曜日)

会議録本文へ
平成十六年三月三十一日(水曜日)

    午前九時十九分開議

 出席委員

   委員長 米澤  隆君

   理事 岩永 峯一君 理事 谷本 龍哉君

   理事 中谷  元君 理事 渡辺 博道君

   理事 末松 義規君 理事 武正 公一君

   理事 増子 輝彦君 理事 丸谷 佳織君

      小野寺五典君    河井 克行君

      木村  勉君    高村 正彦君

      鈴木 淳司君    田中 和徳君

      土屋 品子君    西銘恒三郎君

      松宮  勲君    宮下 一郎君

      阿久津幸彦君    生方 幸夫君

      加藤 尚彦君    川内 博史君

      田中眞紀子君    中野  譲君

      楢崎 欣弥君    前原 誠司君

      松原  仁君    漆原 良夫君

      赤嶺 政賢君    東門美津子君

    …………………………………

   外務大臣         川口 順子君

   外務副大臣        逢沢 一郎君

   外務大臣政務官      田中 和徳君

   外務大臣政務官      松宮  勲君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  堀内 文隆君

   政府参考人

   (内閣官房内閣参事官)  加藤由起夫君

   政府参考人

   (人事官)        小澤 治文君

   政府参考人

   (人事院事務総局人材局長)            佐久間健一君

   政府参考人

   (警察庁警備局長)    瀬川 勝久君

   政府参考人

   (防衛庁防衛局長)    飯原 一樹君

   政府参考人

   (防衛庁運用局長)    西川 徹矢君

   政府参考人

   (防衛施設庁建設部長)  河野 孝義君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    樋渡 利秋君

   政府参考人

   (外務省大臣官房長)   北島 信一君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 門司健次郎君

   政府参考人

   (外務省大臣官房文化交流部長)          近藤 誠一君

   政府参考人

   (外務省大臣官房領事移住部長)          鹿取 克章君

   政府参考人

   (外務省総合外交政策局国際社会協力部長)     石川  薫君

   政府参考人

   (外務省北米局長)    海老原 紳君

   政府参考人

   (外務省中東アフリカ局長)            堂道 秀明君

   政府参考人

   (財務省大臣官房審議官) 大前  忠君

   政府参考人

   (文化庁次長)      素川 富司君

   政府参考人

   (海上保安庁長官)    深谷 憲一君

   政府参考人

   (海上保安庁次長)    金子賢太郎君

   外務委員会専門員     原   聰君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月三十一日

 辞任         補欠選任

  今野  東君     楢崎 欣弥君

同日

 辞任         補欠選任

  楢崎 欣弥君     川内 博史君

同日

 辞任         補欠選任

  川内 博史君     生方 幸夫君

同日

 辞任         補欠選任

  生方 幸夫君     今野  東君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 刑事に関する共助に関する日本国とアメリカ合衆国との間の条約の締結について承認を求めるの件(条約第三号)

 無形文化遺産の保護に関する条約の締結について承認を求めるの件(条約第五号)

 たばこの規制に関する世界保健機関枠組条約の締結について承認を求めるの件(条約第一七号)

 国際情勢に関する件


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

米澤委員長 これより会議を開きます。

 国際情勢に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房長北島信一君、外務省大臣官房審議官門司健次郎君、外務省大臣官房文化交流部長近藤誠一君、外務省大臣官房領事移住部長鹿取克章君、外務省総合外交政策局国際社会協力部長石川薫君、外務省北米局長海老原紳君、外務省中東アフリカ局長堂道秀明君、内閣官房内閣審議官堀内文隆君、内閣官房内閣参事官加藤由起夫君、人事官小澤治文君、人事院事務総局人材局長佐久間健一君、警察庁警備局長瀬川勝久君、防衛庁防衛局長飯原一樹君、防衛庁運用局長西川徹矢君、防衛施設庁建設部長河野孝義君、法務省刑事局長樋渡利秋君、海上保安庁長官深谷憲一君、海上保安庁次長金子賢太郎君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

米澤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

米澤委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。前原誠司君。

前原委員 おはようございます。民主党の前原でございます。

 大臣が参議院の本会議でございますね。九時五十分ぐらいになったらお出をいただいて結構でございますので。それから海上保安庁長官も、国土交通委員会がおありだということでございますので、十時前になったら出ていただいて結構でございますので。そのかわり、それぞれ、副大臣と次長に御答弁をいただければというふうに思います。

 まず、尖閣の魚釣島への中国活動家不法上陸につきまして、質問をさせていただきたいと思います。

 まず、警察にお尋ねをいたします。新聞報道等、まだどういう対応をとるかということが決まっていないときには、検察送致が妥当である、そういう方向性を持っておられたと思うんですが、そういった当時の方向性についてはその点で間違いないかどうか、その点について御答弁いただきたいと思います。

瀬川政府参考人 お答えいたします。

 魚釣島への中国人による不法事案につきましては、二十四日中に沖縄県警により七名の中国人全員を逮捕したわけでございますが、その時点といいますか、その後、この事件についてどのように措置するかという点につきましては、今御指摘ありましたいわゆる検察官送致という処理の仕方と、それから、入管法には刑事訴訟法の特例ということで六十五条による引き渡しという措置もございます。どのような措置をとるか、その時点では、直ちに決定したということではなくて、その後の状況を見て判断をしていこうということでございました。

前原委員 いろいろな報道やあるいは警察関係者の方のいろいろな場面での証言も含めますと、勘案して考えますならば、やはり当初は、検察送致というものが望ましい、こういうふうに考えられていたというふうに伺っております。

 では、もう一度警察にお伺いしますが、今御指摘をいただいた出入国管理及び難民認定法の刑事訴訟法の特例、この場合には、「司法警察員は、」省略いたしますが、「その者が他に犯罪を犯した嫌疑のないときに限り、」ということが書いてありますよね。魚釣島に後ほど行かれて実況見分もされていますよね。そうすると、器物損壊あるいは建物の損壊というものの嫌疑があったわけでありますし、また、主犯格の人間は、靖国神社の狛犬に対してペンキを塗ったことで、今執行猶予期間中だというふうなことでありますけれども、ではなぜ、六十五条の「その者が他に罪を犯した嫌疑のないとき」というものが当てはまらなきゃいけないのに、この六十五条でいわゆる強制退去ということになったのか、もう少しそれは説明をしていただかなきゃいけないと思います。

瀬川政府参考人 お答えいたします。

 まず、現場の状況でございますけれども、御指摘にありますとおり、一部いわゆる顕彰碑というものが傷つけられていたり、それから、いわゆる尖閣神社と言われているものが倒されている、こういう状況がございました。しかし、これがだれによって行われたものであるのかという状況は判明をしていないという状況でございます。

 一方、その六十五条の適用でございますが、これは、私どもにおきまして、法務当局とも十分協議をいたしました。一般論としてということでございますけれども、この六十五条に言う他の犯罪を犯した容疑云々ということにつきましては、検察官に送致するまでの間に特定の者について特定の犯罪の公訴を提起するに足りる嫌疑があることを明らかにし得る可能性が著しく乏しいという場合もこの場合に当たるという一般的な解釈をいただきまして、その解釈を沖縄県警に伝達といいますか、伝えました。

 沖縄県警におきまして、このいわゆる不法滞在外国人の処理という問題につきましては、これは、最近、不法入国、不法滞在の外国人が大変増加をしてきているという状況の中で、この入管法の六十五条を活用してできるだけ早期に国外退去等の措置をとることが望ましいという、これは警察全体の考えでもあり、また、昨年十二月の犯罪対策閣僚会議の方針でもございます。

 そういった方針に基づきまして、本件につきまして、このような本件の状況から判断をしまして、この六十五条による強制退去が可能であるということで、その六十五条の手続を選んだ、こういうことでございます。

前原委員 僕は警察を責めるつもりは全くないんですよ。もともと、今おっしゃっていることは、国会ではそういう御答弁になるかもしれませんが、警察としては検察に送致したかった、送検したかったというふうに私は思っています。

 そういう観点でもう一度お尋ねしますけれども、今の警備局長の御答弁でも、いろいろありますけれども、時間がありませんので二つだけ指摘をしたいんですけれども、だれによってなされたかわからないという、だれによって、例えばさっきおっしゃった神社等の鳥居を倒したりとか、器物損壊をやったかわからないというふうなことでありますけれども、ということになれば、その七名が上陸した以外にも、ほかに上陸していた人間がいるかもしれないとか、そういうことになってしまう。

 そうすると、これは警察のみならず、今あそこの魚釣島は民有地でありますけれども、国が管理していますよね。ということは、そういうことをみすみす見逃したということになるわけですし、そういう件は多分確認されていないと思うんですよ、これは海上保安庁に伺ってもいいですけれども。

 ということは、だれによって行われたかということは、これは明らかだと思うんですね。そんなことは言いわけにしかならない。だれによってやられた、そんなものは調べたらいいし、そういうことを調べられないんだったら警察の威信に傷がつきますよ。

 それから、不法滞在の増加によってこの六十五条を使うというのは、それは一般論としてはいいけれども、これはまさにお互いが、日中が主権を主張し合っている国に対する、そして実効支配をしている地域に対しての不法入国ですから、一般の不法入国とは全然話が、重みが違う話なんですよね。それを同じような六十五条の、例えば東京で働いて不法滞在している人と同じような扱いをするなんということは、それは全くもって筋が通らない話だと私は思いますよ。

 もう一度、その点二点、特に前の方は、だれによってかわからないということは、これは警察が自分が捜査能力がないということを白日のもとにさらすことになりますよ。

瀬川政府参考人 お答えいたします。

 先ほど申し上げましたのは、この六十五条の適用についてでございますけれども、他の犯罪の容疑があるかどうかということにつきましては、法務御当局に照会をしました結果、一般論としてではありますが、検察官に送致するまでの間に、といいますのは逮捕後四十八時間ということでございます、その間に特定の者について特定の犯罪の公訴を提起するに足りる嫌疑があることを明らかにし得る可能性が著しく乏しいという場合も含まれる、こういう解釈をいただきました。

 まさにこの場合は、魚釣島における例えば碑の倒壊でありますとか、そういった状況につきまして、これが犯罪によるものであることをまず立証し、それが特定の者によって行われたということを、公訴を提起するに足りるまでの嫌疑があるということを明らかにし得る可能性が著しく乏しい、こういうふうに判断をしたものでございます。

 それから、後段のお尋ねでございますけれども、私どもとしては、これは、入管法その他法令の定めるところに従って、その手続に従って処理をしたということでございます。

前原委員 何度も申しますが、警察を責めるつもりは全くなかったんですけれども、ボタンのかけ違いが始まっているわけですよ。要は、警察は送検したかったんでしょう。送検したかったけれども、法務省との話し合いの中で結局こういう形になったんでしょう。そこは事実をちゃんと言ってから話をしてください。

瀬川政府参考人 お答えいたします。

 検察官に送致をするという処理になるのか、六十五条による入管引き渡しの手続ということになるのか、それは両方の手続の方法といいますか、処理の方法があるわけでございまして、そこについて沖縄県警において判断をした結果、六十五条による引き渡し手続ということになったものでございます。

前原委員 そんなものは県警が判断できない。沖縄県警がかわいそうです、そんなこと言ったら。

 だから、警察を責めるつもりはないけれども、事実関係について、これ、国会ですよ、国政調査権の負託を受けて我々はやっているわけですから、送検をしたかったかどうかということを聞いているわけですから、そんな、沖縄県警の責任にしたってしようがないんですよ、沖縄県警はそんな判断、国家の大きな問題ですから。そこの点がはっきりならないと、この問題のスタートにならないんです。スタートの話をしているんですから、まだ。入り口の話をしているんです。

瀬川政府参考人 繰り返しになって恐縮でございますけれども、六十五条が適用になるのかどうかという点については、私どもとして法務省に照会をしまして、先ほど来申し上げておりますような解釈をいただいたということでございます。その上に立って、この種の不法入国・不法滞在外国人の処理についてはできる限り六十五条を活用していこうという基本方針がございます。その方針に従って沖縄県警において判断をしたということでございます。

前原委員 この種のって、これは普通に東京で不法滞在をしているものと違うでしょう。この種のということの言葉が当てはまらないと言っているわけですよ。

 だから、そこで、沖縄県警というのは、形式的には最後は沖縄県警が決めることですよ。決めることだけれども、そうじゃないでしょう。そこのことを明らかにしないと、この事件の真相というものはすべて明らかにならないじゃないですか。調べないとわからないじゃないですか。

 後で質問したいと思っていましたけれども、中国の活動家というのは、これは再犯の可能性がありますよ。だって、靖国の問題でもやっているんですから再犯でしょう、一人は。だから、そういう意味では全く不法滞在の問題とかと違うわけですよ。そうしたら、取り調べて再犯防止をするのは警察の仕事じゃないんですか。

 だから、そこはちゃんと事実を、警察としてはどうしたかったんだということをおっしゃって、そこから、どういう判断が下されたかという大局的な議論ができるんじゃないですか。

瀬川政府参考人 お答えいたします。

 東京も尖閣諸島も、これは同じ日本の領土でございますので、日本の国内法の適用という点については、私ども、同じように考えているところでございますし、再犯のおそれというお話がございましたけれども、再びこのような事案があれば、私どもとしても、再び、法にのっとって適正、的確に対処してまいりたいというふうに考えております。

前原委員 警察を責めるつもりは私は全くなかったんですが、この件は東京と全く違うんですよ。つまりは、東京は別に中国は領有権を主張していないから、領有権を主張したいから不法入国しているわけですから、これは東京の件とは全く違うんです。

 もちろん、国内法に基づいてということですけれども、極めて政治的な判断を加えなきゃいけないわけですよ。逆に言えば、皆さん方の立場に立てば、政治的な判断で、送検したかったのが送検できなかったんでしょう、結局は。

 だから、そこがポイントなのに、そこを言わないと、私は、警察の捜査が不十分、あるいは、法務省との関連の中で余りにも決意というか意志が弱過ぎるというふうに断じざるを得なくなりますよ。そういう判断のされ方でいいんですか、警察としては、この問題については。まあ同じ答弁なんでしょう、結局は。

 では、ちょっと違う質問をします。

 いろいろ捜査をされたと思いますけれども、中国の民間活動家ということですが、そのバックグラウンドについてはちゃんと調べたんですか。これはありていに申し上げますと、はっきり申し上げると、中国で民間活動家ということが本当に成り立ち得るのかどうなのか、特にこういう極めて政治的な色彩の強いものについては。バックに公的なものがあるかもしれない、そういうことを考えるのは当たり前のことだと思うんですね、当然のこととして。そういうところまでしっかりと、二時間というそれは短い間かもしれないけれども、調べたんですか、どうなんですか。

瀬川政府参考人 取り調べの具体的な内容については、まことに申しわけありませんけれども、答弁は差し控えさせていただきたいというふうに思います。

 ただ、本件の七名が我が国に不法入国をしたという事実は明確でございまして、これは現行犯人として逮捕をしたということで、入管法違反の犯罪事実については明確でございます。

前原委員 委員長、ちょっと要望させていただきたいんですが、金正男氏と目される人が日本に入ってきて、そして慌てて送り返したという事例があって、いまだに政府はそれが金正男であったかどうかということを明らかにしていない。今回も、捜査の内容は明らかにできないという筋論はわかりますけれども、しかし、極めて日本の外交に関して重要な議論をするときに何ら材料が示されない、そして国会での議論というのが深まらないということは、私は、この外務委員会の形骸化、国政調査権の侵害に当たると思うんですね。

 したがって、こういう問題については、例えば秘密会でもいいですから、ある程度その内容を示してもらった上で、そして国会議員がその捜査内容も共有して、そして議論できることでないと、金正男の問題しかり、今回の問題しかり、まさに日本の外交の大事なものについて、国民の負託を受けた国会議員がその中身についてしっかりとした議論ができない。したがって、国の方向性についてしっかりとした提起ができない。これは私は大きな問題だと思うんですね。

 ここはぜひ、委員長のリーダーシップで理事会で諮っていただいて、こういう問題について国会議員がしっかりと関与できるような仕組みというものを、これは与党とか野党とかどの政党がという問題ではなくて、国の主権にかかわる問題ですから、そういうことをこの委員会のリーダーシップで議論できるような体制を整備していただきたいということを要望いたします。

米澤委員長 理事会で相談の上、対応いたします。

前原委員 それでは、この魚釣島の問題について、関連して質問したいと思います。外務大臣もう出られる時間ですので、もし出られたら、逢沢副大臣、お願いいたします。

 まず一つは、この魚釣島というもの、あるいは尖閣諸島というものが日米安保条約第五条の適用範囲になるのかどうなのか、その日本政府の公式の見解をお聞かせいただきたい。

川口国務大臣 尖閣諸島というのは、歴史的にもそして国際法上も我が国固有の領土であるということでございます。我が国の施政下にあるということでございまして、安保条約の適用になるということでございます。

 このことについては、ちょっと具体的な日にちは忘れましたけれども、米国の報道官であったか副報道官であったかもこの趣旨のことを言っていらっしゃるということを承知しております。

前原委員 私は、アメリカの政権がどのようなことになったとしてもその確認をぜひしっかりしていただきたいという意味で、今の質問をさせていただきました。

 外務大臣がおっしゃったように、国務省のエレリ副報道官が、明確に、日米安保条約は尖閣諸島にも適用される、こういうふうに言ったと言われています。しかし、他方で、クリントン政権時はどうだったかというと、モンデールさん、当時の大使は、尖閣諸島には安保条約は適用されないという言い方をしたわけですね。

 つまりは、その政権の対中政策あるいは対日政策あるいはそのプライオリティーによって条約の適用範囲がころころ変わるというのは、私は、これはおかしい、これは日本がしっかりと安保条約の適用範囲ということをアメリカに確認する問題であると。つまりは、第五条において施政下というのは実効支配をしているところだというふうなことをしっかり詰めるべきだと私は思うんです。

 先ほどおっしゃった答弁でいいんですけれども、では、アメリカとの関係で、政権交代があったとしても、そういうしっかりとした言質をとるための担保をどのようにこれから外務省、外務大臣はとっていかれるのか、その点について御答弁をいただきたいと思います。

川口国務大臣 これにつきましては、アメリカとの沖縄返還協定、この第二条におきまして、日米安保条約は「琉球諸島及び大東諸島に適用されることが確認される。」というふうに規定をされているわけです。そして、この二条に言う「琉球諸島及び大東諸島」の範囲につきましては、米国との沖縄返還協定の合意された議事録において、経度、緯度、これをもって明示されているわけでございまして、尖閣諸島は明確に含まれている、したがって、国際約束においてそういうことが明確になっているということでございます。

前原委員 先ほど私が御披露しましたように、クリントン政権はそういうところをあいまいにしていたわけですよね。しかし、両国間の取り決めによってそれはもうきっちり担保されているんだ、政権がかわることによってその解釈が変わることはないんだという日本の立場というものを、常に、外務大臣としては事あるごとに提起をしていただきたいというふうに思いますので、その点、要望させていただきたいというふうに思います。

 さて、今後の問題として、少し、海上保安庁、防衛庁あるいは外務省を含めて質問させていただきたいんですが、私、一度、海上保安庁のYS11に乗せていただいて、那覇からずっと尖閣を回らせていただきまして、また、海上保安庁の石垣あるいはほかの拠点にも行かせていただいて、広い海域なんですね。物すごく広い海域で、そして、我々がYS11で見させていただいたときには、領海で不法操業している台湾の漁船を追いかけている。そういう意味では、海上保安庁の方々の仕事も極めて大変なことをやっていただいているんだというふうに、私は現場を見させていただいて非常に敬服をした思いがございます。

 したがって、議論の中に、なぜその上陸を許してしまったのかということは、それは議論としては言えますけれども、あの広い範囲で、そして情報が錯綜をしている状況、つまりは、入手していた日にちと違ったということになれば、なかなか難しいのではないかというふうに思いました。

 そういう意味で、しかし、再犯のおそれあり、またチャレンジをしてくる可能性は十分にあるわけで、国内の世論としても、それをどういうふうに阻止していくのかということは極めて重要な点だと私は思います。

 海上保安庁長官に伺いますが、これをどのように今後上陸を阻止していくのか、その決意というか、その体制の整備、改めて強化しなきゃいけないところがあるのであれば、その点について答弁をしていただきたいと思います。

深谷政府参考人 御説明を申し上げます。

 尖閣諸島の警備につきましては、特段の具体的な情報がなくとも、常時、二十四時間、三百六十五日、巡視船を一隻配備して警備に、監視警戒に当たってきていた、状況に応じてはこれに対しまして船艇を集結して上陸をこれまでも実際阻止をしてきたという経緯があるわけでございます。

 しかしながら、残念ながら、今回、事前の情報が具体的になかったということ、それから、配備しておりますのが一千トンクラスの大型巡視船、これに対しまして、今回参りました中国の船は百トンほどの小型のものでございましたが、それにさらに小型搭載艇を二隻おろしまして小回りを利用して上陸をしたということで、残念な結果になったと私どもとしては認識をしております。

 今委員御指摘の今後のお話につきましては、現時点におきましては、いろいろな情報も踏まえながら、事案を踏まえて勢力を増強して今警戒監視中でございますけれども、今回のケースのような事前の情報がない場合における今後の対応、これにつきましては、今回の事案の状況、これをよく検証、分析いたしまして、事前の情報の収集のあり方あるいは警備手法、警備のあり方を再点検したいというふうに思っていまして、そして、改善すべき点については速やかに改善を図って今後の事態に対応してまいりたい、かように思っているところでございます。

前原委員 総論を言ってもらっても困るのですが、具体的にどのようにしていくのか。それはもちろん努力をしていただかなきゃいけないのはそのとおりなんですが、私、ポイントは二つだと思うんですね。

 一つは、情報収集能力をどのように高めていくのかということだと思います。これは一海上保安庁だけでできるものでは多分ないと僕は思うんですね。そういう意味では、二つ目にかかわりますけれども、自衛隊との連携あるいは内閣の情報、内閣に上がる情報、これをいかに共有していくのかといった、やはり政府のリソースというか資源というものを最大限に活用するという統合的な感覚、考え方というのが私は必要だと思います。

 私は、海の安全というのは一義的に海上保安庁がやられるべきだというふうに思いますし、また、その努力はされていると思いますが、こういうケースが出てくると、よくあるパターンとして、それに対応するための装備が必要だということになってくる。

 しかし、海上自衛隊にしても、そういったものに対応するために、例えば海上警備行動が発令されたことは一回だけでありましたけれども、逆に小型化していかなきゃいけないということになると、そこら辺がオーバーラップしてくるというところで、国民の側からすれば、それは極めてむだな二重投資に見えてくるし、国民からすると、日本の主権あるいは安全を守るために、別に海上保安庁でも海上自衛隊でも何でもいい、とにかくうまく連携をとってしっかりとした活用をしてもらえれば、そして効率的な運用をしてもらえばいいということなんですが、情報収集能力をどのように強化していくのかということも含めて、私は、自衛隊との連携というのが極めて重要になってくるというふうに思っております。

 そういう意味で、まず防衛庁から、運用局長なのか防衛局長なのかわかりませんが、現在、海上保安庁とどういう連携をされていて、さらに、これは情報、二十四時間、P3Cとか飛ばしておられるわけでしょう。それから、海上保安庁も、それは哨戒の航空機があるといってもやはり数にも限りがありますし、また、自衛隊もそれはやられているわけですが、そういった情報の共有とかあるいは共同対処、そういうことをどのようにやっていくのかという、現状と、改善点があるのかないのかどうか、その点について御答弁をしていただきたいと思います。

西川政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘のように、従来のリソースを十二分に活用した形ということが現在も非常に要求されております。とりわけ十一年の三月の不審船事案から、今回、尖閣という形でございますが、不審船のときから、海上自衛隊とそれから海上保安庁との連携を特に密にしろという話がございますし、先生御指摘のような、ダブるような形のものよりもいかに現在あるリソースを有効に活用できるかということを検討しなさい、こういうことで、我々、いろいろな課題をいただいております。

 それにつきまして、とりわけ運用サイドという形で、恐縮でございますけれども、先ほど先生御指摘ございましたように、平素からの監視活動という形ではP3Cを使っての哨戒をやっておりますが、これを、その後、例の能登の不審船騒ぎ後はさらに一部強化いたしましたし、それから、実は海上保安庁の船と飛んでいる飛行機との間で連絡がとれることになっておりますので、こういうことで、不審なものが発見されれば情報を提供する、特に不審船騒ぎ等がございまして、それから情報のやりとりというのをなるべく早い段階でやろうという格好の意識を非常に高めておる。

 そしてまた、我々といたしましても、まず、幾ら口で言っても実際にできなきゃならないということで、訓練をしっかりやろうという格好でございまして、今のところ、ほぼ定着、通信訓練については出動のたびだとかいろいろな機会を見つけてやっておりますが、年間でほぼ二百回以上やっております。

 それから、その後も、実動訓練というような、機会を見つけまして追跡とかそういうこともやっておりますが、今回、尖閣、こういうような話もございましたので、これはある意味では一般論的かもわかりませんが、そういういろいろな機会のいろいろな情報を相互に早い段階から共有するようなことは、我々としては訓練の中で意識を変えながら進めていきたい、こういうふうな考えでおります。

前原委員 同じ質問を海上保安庁長官、実態はそういうことだと思いますけれども、もちろん海上保安庁の機能強化も大切だと思いますけれども、資源を有効活用という面から考えると、今防衛庁の運用局長がおっしゃったような連携強化というのは、さらにこの問題を契機に必要だと私は思いますが、御認識を承りたいと思います。

深谷政府参考人 ただいま防衛庁さんの方からも御答弁ございましたけれども、私どもといたしましても、これまでも実際の話としまして、平成十一年の能登半島沖の不審船事案、それから十三年十二月の九州南西海域の工作船の銃撃戦のあったケースもございまして、日ごろから防衛庁さんとの協力連携につきましては、自来、相当密接に構築してきたというふうに考えております。

 今回、また御指摘のような尖閣のケースもございまして、先ほど防衛庁さんの方からもお話ございましたように、いろいろな共同訓練、通信訓練、これまでもやってきておるところでございますけれども、今後も情報の交換、現場での密接な連携、国民から見ればまさに国全体として連携してやることが大事であろうというふうに認識しておりますので、今後ともそういうことに努めたいというふうに思っております。

前原委員 ぜひその努力をしていただきたい。大変なお仕事を今もやっておられることは改めて高く敬意を表しますけれども、ぜひ努力をしていただきたいというふうに思います。長官、もう結構でございますよ。

 逢沢副大臣に、最後にこの尖閣の問題で御答弁をいただきたいんですが、あのときは御一緒したと思いますけれども、中国に行かせていただいたときに、当時の朱鎔基首相との話の中で、中国の日本近海における海洋調査の議論をさせていただいたことがあったと思います。

 そのときに、朱鎔基さんは、余りよく御存じなくて、そういう領海侵犯とかあるいは事前通告なしでやっているということについては運用を変えなきゃいけないという問題点を我々の指摘で披瀝されて、それ以降、事前の連絡というものが日中間の中で約束として取り交わされたという話を聞いておりますが、それが今また形骸化してきているという話を聞いております。

 つまりは、これは事前に政府からいろいろレクチャーをしていただいたんですけれども、以前は東シナ海が中心だった海洋調査というものがどんどんどんどん今度は東に移ってきて、そして太平洋に移ってきているということで、二〇〇九年の大陸棚の画定の問題もあり、海洋調査の海域というものがどんどんどんどん移動してきている、それについて事前の通告がまた欠落をし始めている、こういうことを伺いました。

 この点も含めて、あとは、主権を向こうも、尖閣は極めて不当だと僕は思うんですが、そういう問題も含めて、中国に対して再発防止の申し入れと、この海洋調査の事前通告制度の徹底というものを特にもう一度しっかりと中国に伝えるということが必要だというふうに私は思いますが、外務副大臣としての決意をお聞かせいただきたいと思います。

逢沢副大臣 委員御指摘のように、中国の調査船が日本の近海を、国際海洋法のルールをいわば無視する形でさまざまな活動を過去に繰り広げていた、大変遺憾なことでありまして、累次、このことについては、我が国政府から中国側に厳重に抗議を申し入れ、また、改善の要請をしてきたところであります。

 前原先生、お話をいただきましたように、東シナ海につきましては、日中双方の一応の合意、ルールが成り立ち、そのルールがワークをしているわけでございますけれども、日本の南側、太平洋部分につきましては、この調査船が引き続き事前の通報等々なくさまざまな活動を行っているというゆゆしき実態があるわけであります。

 既に私も、ことしになりまして二度訪中をいたしておりますけれども、王毅外交副部長等々中国側に、こういった実態は看過することができないということについては、その都度、抗議をいたしておりまして、問題の解決をお互いの話し合いによってもたらしていくということの重要性について訴えているところであります。

 また、川口外務大臣は、御承知のように、今週末、土曜日、日曜日、訪中をされます。今、大きく問題になりました魚釣島への不法上陸・入国について、あってはならないことが起こったということについては、改めて川口大臣から李肇星外務大臣に対して強く抗議をし、再発防止について申し入れを行うことは当然のことでありますが、あわせて、この調査船の活動についても、これは看過することができないということについては、外務大臣から直接強く抗議を申し入れるということは当然のことというふうに承知をいたしております。

 いずれにいたしましても、日中双方とも話し合いによってこのことについては解決をしていかなくてはならないわけでありまして、政府内でよく協議をしながら実効を上げてまいりたい、そのように承知をいたしております。

前原委員 尖閣あるいは中国の関係で、最後に一つだけ外務副大臣にお願いをしたい、また、可能であれば御答弁をいただきたいんですが、先ほど申し上げたように、中国における民間活動家ということが、果たして本当に純粋な民間活動家なのかどうなのか。もちろん、それは直接言えませんよ。根拠なしにそういう想像に基づいたことは言えませんけれども、何らかの形でやはりそういう、もし、協力が暗にあるいは陰に陽に、あるいは間接的にも行われているのであればこれは大問題でありますし、そういう懸念を持っている日本人というのは私はかなりいると思うんですね。

 だから、そういうことも、まさかないとは思うけれどもというような状況の中でやはりくぎを刺すということも私は外交の上では極めて必要なことではないかというふうに思いますが、その活動に対する、中国がニュートラルであるべきだということを私は主張すべきだと思いますけれども、その点について答弁をいただきたいと思います。

逢沢副大臣 中国におけるいわゆる活動家グループの実態について、これは、我が国といたしましても最大限の努力をして、その実像あるいは実態、これを解明していかなくてはならない、あらゆる努力が必要であろうかというふうに思います。

 中国側の発表によりますと、中国インターネット情報センターの発表でありますけれども、二〇〇三年度末時点で、いわゆる中国のインターネット利用者数、七千九百五十万人に達したという発表がございます。恐らく今日では八千万人を超えているだろうということでございますが、そのインターネットを利用されるグループの方々の一部が、一部の活動家が尖閣諸島に対する領有権を声高に主張する、あるいは同諸島への渡航上陸計画について宣伝を行う等々の実態は確認をされているわけでありますけれども、さまざまなネット上のやりとりあるいは書き込み等々があるわけでありまして、注意深くそのことについては調査を続けていかなくてはなりません。

 もちろん、政府対政府のやりとりの中で、この問題については政府の立場で厳しく抗議をする、申し入れをする、当然のことでありますが、中国にはさまざまな研究機関あるいは民間のいろいろなグループ等々がございます。あらゆる角度からこの問題については問題提起を行っていく。そして注意深く、いやしくも、政府が背景にあってこういうことがなされているのかどうか、助長されているのか、そんなことは国家としてないとは思うわけでありますが、しかし、中国という国をあらゆる角度から、ある意味では疑いを持ってこれを見ていかなくてはならないということも我々は忘れるべきではなかろうというふうに思います。

 委員等々の御指導あるいはまた御協力もいただきながら最大限の努力をさせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

前原委員 あらゆる角度から見ていただいて、そして、そういうことも、いろいろな角度から見ているということはまた外交の一つの交渉の術というかすべになると思いますので、御努力をいただきたいと思います。

 最後に、ちょっとイラクの問題について、二点ほど、時間もちょっとなくなってきましたので、ポイントを質問させていただきたいんです。

 これは、外務省のいろいろな担当の方にお話を伺っていても、六月三十日まで、あるいはそれ以降も、イラクの統治のあり方については暗中模索、なかなか見えないなというのが私は実態だと思います、現実だと思います。したがって、それを、我々はあのイラク攻撃というのには大義なき戦争で反対、また、占領統治に対する協力も反対ということでありましたけれども、実際にイラクがまさにもう六月三十日主権移譲に向けて動いているわけで、それをうまくテークオフさせるというのは、これは今までの経緯は関係なく、日本としてどう取り組んでいくのかという観点からお互いがやはり建設的な考え方を述べ合うということは必要なんだろう、そういう意味で質問させていただきたいんです。

 一つは、スペイン、テロによって政権交代が起きた。このことによって、サパテロ次期首相が、いろいろな条件をつけて、それが実現できなければ六月三十日以降は撤退する、こういうことを言っている。これは、私は、イラクの今後の統治においては非常に難しい状況になってくるのではないかというふうに思っております。

 立場は我々と一緒だとしても、では、そういう国がどんどんどんどん引いていって、そしてイラクが全くだれも協力するような国がなくなるような状況でいいのかというと、そうではないと思っているわけです。そういう観点からして、国際社会が協力できるようなとっかかりというものがやはり私は必要なんだろうというふうに思います。

 そういう意味では、この間、ある番組で副大臣とも議論させていただきましたけれども、新たな国連決議、つまりは、六月三十日以降、イラクの主権移譲というものに対して国際社会が改めて協力をしよう。一五一一というのはありますけれども、それでも、あれはドイツやフランス、ロシアというのは協力していないわけですね。だから、あれがあるからいいということではないと思います。つまりは、文言ができ上がっているからそれで終わりということではなくて、まさにお互いが政治的なメッセージを持って、国連決議なりを一つのきっかけとして、イラクの復興支援に多くの国が参加をしてもらうということが私は必要だと思うんです。そのイニシアチブを日本も私はとるべきだというふうに考えております。

 その点について、外務副大臣はそういう国連決議というものを取り結ぶべきだというお立場だというふうに私は認識をしておりますが、御本人、副大臣としての御認識と、また、それを実現していくための外交努力をどのようにやっていくか。特にアメリカだと思うんです。ポイントはアメリカだと思うんですが、それに対して外務省としてどういう努力をされているのか、その点、答弁をいただきたいと思います。

逢沢副大臣 イラクの新しい国づくりを国際社会が一致して支援していく、これはまさに国連安保理が加盟国に要請をしているわけであります。そしてまさに、三月八日、基本法が、さまざまな経緯がございました、また、重要な問題は先送りをされているではないか、そういった一部の批判等もあるわけでありますが、しかし、CPA、統治評議会、そして統治評議会はイラクのあらゆる宗教、部族等々を一応代表している評議会でございますが、そのCPA、統治評議会が合意をして基本法が採択された。政治プロセスが大きく前進をするまず最初の土台が築かれたというふうに認識をしてよろしいのではなかろうかと思います。

 そして、物理的に六月三十日まで正統性が認められる直接選挙をやるのは無理だ、そのことはもう国際的な合意になっているわけでありますが、しかし、六月三十日までには暫定政府、暫定政権をつくろう、そしてCPAも統治評議会も解散をして、文字どおり統治権限がイラクに移譲、移管をされる、そういったことであります。

 基本法を細かく見ますと、いわゆる移行政権に移った段階で新たな国際約束を取り結ぶことができる等々がございます。それまでは、いわゆるCPA指令あるいは国連決議一五一一、一四八三で決められたこと、認識をされたことが一応続くんだということが確認をされているわけでありますが、しかし、委員御指摘のように、新たにこの暫定政府ができ上がった段階で国連決議というものがなされるということは、まさに国際社会が一致をして、そして一度引いた国連がまた戻ってくる、正しい選挙を行うことに責任を負っていく、そのことは政治プロセスを正しく前進させていく上で非常に重要なことでありますが、この国連決議は、それを非常に有効に支えるという意味では大変大きな意味を持つというふうに私も承知をいたしております。

 前原先生おっしゃったように、まさに、正直申し上げればアメリカがそのかぎを握っている。当然のことと思いますが、アメリカもその新たな国連決議のことにつきましては、パウエル国務長官もいろいろな発言をなさっておられますが、これまでの国連決議を更新するよい機会かもしれない等々の発言もございます。エレリ副報道官の発言、マクラレン報道官の発言等々、アメリカの主要な立場にあられる方がこの国連決議を前向きに考えるということについて発言をしている。決議を物にしていく条件といいますか、土壌は決して悪くない方向に動いているというふうに承知をいたしております。

 日本も、積極的に人的貢献そして経済的な支援、両方でやっていこう、こういう立場を考えましても、有効にこの国連決議が採択をされる、そのことに適切にまた積極的に行動しなくてはならない。特にアメリカとの会話、対話、そして今までは積極的な関与が行動としてあらわれなかった特にフランス等をこのイラクの復興支援に直接ある意味では登場させる、そういう意味を込めれば、なおさら決議というものは大切に思わせていただいております。国際社会、とりわけアメリカとの積極的な対話に努めてまいりたい、そのように思います。

前原委員 今答弁されたように、日本が、内容については我が党との考え方の違いはありますけれども、しかし、金、人等で局地的なイラクへの関与をして、アメリカに物を言える立場は確保しているわけですね。それを、私は、よく小外交から大外交、つまり、それをてこにして国際的な風向きをどう変えていくのか、そういう主体的な役割を日本が果たすべきだというふうに思っていますので、ぜひリーダーシップを発揮していただきたい。総理なり外務大臣なりがアメリカに行かれて首脳会議をされることがやはり重要だろうというふうに私は思います。

 最後に、今、外務副大臣がおっしゃった中で、基本法のプロセスというのはそうなんですが、しかし、基本法というもの、二十六条で、暫定政権ができてもCPA等が引き続き云々というのが、先ほど披瀝があったとおりでありますけれども、しかし、六割のシーア派の中でかなりの支持を受けているシスターニ師が率いるグループというのは、この基本法、いわゆる基本法については反対の立場を明確にしているわけでありまして、つまりは、六月三十日以降、本当にこの基本法でイラクがまとまるのかどうなのかといったところが、実はその根本の、ベースのところで大きな疑問というか問題が生じているというのは、これは副大臣も御承知のとおりだと思うんですね。

 では、それをどのように問題解決をしていくのかという、違う取り組みというのが私はやはり必要なんだろうと。つまりは、金を出すこと、人を出すこと、あるいはいろいろなODAをやること、そういうことと同時に、イラクの環境整備というもの、つまりは、基本法というものを是とするのであれば、それを全体が、仕方がないという中でも認めるような環境整備をするということが私は必要なんだろうと思いますが、それについて、日本がどういう役割を果たしていくべきなのか、いくべきとすればどのような働きかけがいいのか、そのことについて御答弁をいただきたいと思います。

逢沢副大臣 前原先生、今発言をされましたように、基本法が採択をされた後も、シーア派の指導者であられるシスターニ師等々がこの基本法について否定的な発言をしている、その現実については承知をいたしております。

 しかし、先ほども申し上げましたように、基本法の署名に至るいろいろなプロセスがございます。粘り強い交渉の結果、ぎりぎりの妥協点を見出し、とにもかくにも署名をした、責任ある立場の方々が署名をしてこの基本法が採択をされた、現実のものになった、この事実をやはり重く受けとめなくてはならないと思います。

 アナン事務総長が来日をされました。時を同じゅうして、ブラヒミ特別代表、特別顧問も東京におられたわけでありまして、機会を得て私も会談をいたしました。その当時は、自分も年をとったし、もうしっかり仕事をした等々の発言をなさっておられましたが、しかし、事務総長の、あるいはまた国際社会の要請を受ける形で再びイラクに赴く、このことが確認をされているわけであります。国連の立場から、シーア派に対して、あるいはシスターニ師に対して、適切な発言、会話がもたらされるということは非常に意味のあることというふうに思います。

 また、日本も、五十億ドルまでの復興支援、お金を充てようということは国際社会に約束をし、初年度、無償の十五億ドル分については、その半分以上、八億ドル以上が既に実行に移されている、あるいは何に使うかが決定をされております。そして、そういった努力もあって、例えば、二十五ある省庁のうち、保健福祉省であったと思いますが、既にCPAからイラク政府に主権が移譲されたということについても承知をいたしております。

 そういったさまざまな活動を通じて、とにもかくにも政治プロセスを大切にしていく、これを着実に実行に移していく、そのベースになる基本法をやはり尊重していこうではないか、そういった働きかけをさまざまな角度から強めてまいりたい、そのように承知をいたしております。

前原委員 時間が来ましたので終わりますが、とにかく、立場のある方が行動するということが何よりも必要だというふうに私は思いますので、行動する外務省、また、副大臣もそういう立場で御努力をいただきたいということをお願いして、私の質問を終わります。

米澤委員長 次に、河井克行君。

河井委員 おはようございます。自由民主党の河井克行です。

 きょう私は、外務委員会で初めて質問の機会をいただきました。本当にありがとうございます。

 きょうの外務委員会は、先日発生しました中国人活動家による尖閣列島上陸事件、日本の領土侵犯事件が恐らく話の中心になっていくと思います。先ほどは民主党の論客の前原議員が質問をされましたし、私の後には地元沖縄選出の西銘恒三郎議員が質問をされる予定になっておりますので、熱い議論はそのあたりにお譲りをさせていただきまして、私は、長い間ずっと疑問でありました事柄、全く時事的ではないんです、こういう御時世からすると少し浮世離れしたことかもしれませんが、ある意味外交の本質的なことだと感じております、日本の外務省の職員選抜のあり方、公務員試験のあり方について質問をいたします。

 ちょうど川口外務大臣が御退室でございますので、きょうは、逢沢一郎副大臣、そして田中和徳大臣政務官、政治家がお座りをいただいておりますので、できれば、御用意された原稿ではなくて、日ごろお感じになっていらっしゃる事柄について、政治家としての肉声同士をお互いにやりとりしていきたいと存じます。

 私は、外務省は、ほかの霞が関の省庁と比べて、職員の個人の力量によるところが多いと思います。外務省という組織の力だけではなくて、少し難しい言葉ですが、属人性、人によるところが多い。報道の影響もあるかもしれませんが、個人名で世間に知られている幹部職員がいるのは、外務省のほかは、余りほかでは聞きません。そのあらわれだと思います。外交は人なりと考えております。日本の国益を代表したり、崇高な外交の理念を実現していく、あるいは外国政府と難しい交渉を行う、これらはすべて人が行っています。

 そこで大切なことは、どのような試験を経て、外務省の職員、新しい、意欲に満ちた、元気のある職員が入ってきているのか。試験を見れば、その組織がどういった人材を欲しているかということは大変明らかにわかってきます。

 そこで、副大臣と政務官にお尋ねをいたします。

 まず初めに、大きな話から言いますと、外交官に求められる資質、能力はどのようなものなんでしょうか。私なりにもよく考えましたところ、政治家に求められるそれらと似通っているところもあると考えておりますが、いかがでしょうか。

逢沢副大臣 いわゆる外交官試験が廃止をされまして、実は三年目を迎えたわけであります。十五年度採用二十六名の方が、あす四月一日に入省されます。私も、副大臣の立場で、あす、そのフレッシュマンを外務省にあって迎えたいと思うわけでありますが、さぞかし選び抜かれた、人格的にもあるいは能力的にも、また明るさにおいても、リーダーシップ発揮の面においても、すばらしい人材が新たに我々の仲間に入ってくれるものと心から確信をいたしておりますし、また、そのように期待をいたしているところであります。

 さて、外務省の職員、外交官にどういう能力、資質が必要であるか、それはいささか我々政治家にも共通する面があるんではないか、そういう指摘があったわけでありますが、私も、委員と同様の思いを率直に言って持たせていただいております。

 まず、何といっても、責任感、使命感、これにあふれた人間、人材でなくてはならない、そのことが最も大切な要件の一つではないか、そのように思います。

 もちろん、外交の局面を切り開いていくためには、個人の能力ということは非常に大切なことでありますが、しかし同時に、チームとして外交を機能させていかなくてはならない。そういうことからいたしますと、仲間をまとめていく、総合力を発揮して一つの物事を実現していく、そういう意味では、やはりリーダーシップも非常に大切な要件であると言わざるを得ないかというふうに思います。

 そして、やはり何といっても、外交は人対人ですね、人間対人間。優秀で立派なことを言っても、何か弱々しかったり、こういう表現は適当でないかもしれませんが、何かちょっと暗い感じがしたりということでは、説得力や押し込んでいく力に欠けるということがあるかもしれない。平たい言葉になるかもしれませんけれども、明るくて元気があるということは、これは何も外交官だけに求められる素養、素質ということではないと思いますが、とりわけ、話し合いで物事をつくり上げていく、局面を切り開いていくという外交の仕事からいたしますと、大変重要なことではなかろうかと思います。

 そのほかにも求められる素養というものは幾つもあろうかと思いますが、私が政治家としてお答え申し上げるとすれば、以上のようなことかというふうに存じます。

田中大臣政務官 せっかくの御質問でございますので、お答えを申し上げたいと存じます。

 今、逢沢副大臣からるるお話ございましたように、人としての心を持っているのか、また、国のために、世界のために大変な重要な責任を担って行う仕事でございますので、当然、常識的にそれにふさわしい知見や能力を有しているかということを各面から確認をし、採用していくことが大切だと思っております。

 もう一つは、わかりやすい言葉で言えば、やはり日本の外交をなしていくわけでありますから、日本国民に対してどのような思いを持っているのか、また、国をどのように愛しているのかということも、当然のことながら、一番大切なことではないかと思っております。

 もう既に河井委員も御存じだと思いますけれども、外交官の採用に当たっては、その国々によっていろいろな方法があります。例えば、アメリカのように、外交官試験を特別にやって採用している国もございますし、イギリスのように、公務員を採用した後に、また別途外交官としての試験をやっていく、選考するというような国もございますし、フランスのように、一定の資格を持っている人の中から、公務員として採用し、成績順に採っていくというような国家もあるわけでございます。

 我が国は、今、こういうふうな形で、公務員試験の中から採用するわけでありますけれども、特に、外務省の職員としてふわさしい人材をよりすぐって採用していくということで努力をしていきたい、こういう思いを持っております。もちろん、外交官の大切さを十分わきまえて我々も仕事をしてまいりたいと思っております。

河井委員 副大臣、政務官からすばらしい御答弁をいただきました。責任感、使命感、協調性、指導性、明るさ、押しの強さ、人としての心、日本人の心、いずれも、お二人が御自分のことをおっしゃっていらっしゃるのかな、そのように感じた次第であります。

 今ちょうど、私、自分の手元に、昨年、平成十五年度の、統合された後の国家公務員採用1種試験の試験問題を持ってきました。第一次試験は、五つの選択肢から選ぶ選択式、俗に択一と言われているそうです。それは教養試験と専門の試験に分かれております。それに合格した方が初めて第二次試験に進むことになります。例えば、この第一次試験の教養の問題を解かせることによって、どのような能力や資質を国全体として試すつもりなんでしょうか。

 一問、これを見ますと、「必須」の中で、去年の問十八、「図のように、正六角形ABCDEFとその各辺の中点を結んだ正六角形……があり、」というふうな問題があります。先ほどお二人の御答弁からいただきましたような責任感、使命感、協調性、指導性、果たしてこれで、最初の一次試験とはいえ、評価をすることができるんだろうか。

 私は、今の公務員試験は中学校の入学試験問題と同じだと思います。昨日、人事院からこの問題集をいただきまして、少し拝見しました。かつて受験勉強にいそしんだときと同じにおいがこの問題集から漂ってきました。それは物理的なことで言っているのではありません。なぜそのように感じたか。理由は、結局、公務員試験への対策は中学校の入試と同じだからです。

 公務員を志望する大学生は、大学三年生の夏ごろから、公務員予備校に通って、暗記のポイント、時間内に解く問題と捨てる問題の見分け方を学びます。暗記をして、過去問をたくさん演習して、問題を解くコツを会得した学生が合格点をとる。今、日本で優秀だと言われている人材は、そういう勉強をして勝ち残ってきた人たちのことであります。

 公務員の皆さんが、国民生活を左右する大変大切な政策をつくるという役割を果たしていないならば、今のような試験の中身でもよいと考えられますが、政策をつくる過程に大きくかかわっているということを考えたときに、予備校に行けば合格できるような試験問題で人材を選抜し続けることが、果たしてこの国の将来に向かって本当に正しいことなんだろうか、私は、日本の将来に大きな危惧を抱いております。

 そこで、きょうは人事院にもお見えをいただいておりますので、お尋ねをいたします。

 今の国家公務員採用1種試験の問題の中身について、どのような問題意識をお持ちでしょうか。そして、もし問題意識をお持ちだとすれば、どのような改革を行おうと今していらっしゃるか。あわせて、法律職の採用が多いんですね。あしたから新年度の受け付けが始まりますけれども、今年度は、法律職が百七十名、行政が十五名、経済が八十名、おおむね予定をされております。法律職の採用が多いということの是非も含めて、お答えをください。

小澤政府参考人 先ほど先生の方から一次試験の話がございましたけれども、一次試験合格者に対しまして、現在の試験では、筆記による専門試験、それから総合試験、それから面接による人物試験、これを実施いたしまして、最終合格者を決定しておるということでございます。

 現在の試験につきましては、御指摘のように、知識偏重なんではないかというような意見も大分ございます。

 さらに、本年四月から、法科大学院あるいは公共政策系の大学院、そういうところで学生を受け入れるというような、人材を供給する側の変化というのも起きてございます。したがいまして、こういう変化に対応いたしまして、国家公務員の試験を現在どうするか、内容については検討しているところでございます。

 その方向ですが、公務に必要な基礎知識、基礎的な素養、これはもちろんでございますが、専門知識、さらに応用能力、これに加えまして、問題設定能力、あるいは多角的考察力というような点も、どういうふうに検証するかということを目指しまして、内容を検討しているということでございます。昨年暮れに有識者を中心に研究会を発足させまして、現在、試験の内容については検討中ということでございます。ことしじゅうには、試験内容をどうするかという結論を出したいというふうに考えております。

 それから、法律職の問題でありますが、行政、法律、それから経済と区分はありますけれども、法律が結果的には非常に多くなっておる。これにつきましても、できるだけほかの分野もバランスよく受かるように、行政職が非常に少ないわけですが、これは、希望者はかなり多いんですが、結果的には合格者が少ないというようなことでありますので、この辺も、検討する過程で考慮に入れて結論を出していきたいというふうに考えております。

河井委員 次に、外務省の官房長にお見えをいただいておりますので、今、人事院の人事官から総合的なお答えをいただきました。三年前までは外務公務員採用1種試験がありました。その試験問題もちょうだいして拝見していたんですけれども、私は、別に外交官試験の復活を進めるべきだという意見ではございませんが、試験問題を見てみて、昔の方が何となくよかったんじゃないかなというふうな感じも率直に抱きました。

 かつての外務公務員採用1種試験と比較して、今の新しい方法に変わってから、新しい若い職員をごらんになっていてどのような違いがあるんでしょうか。比較された御実感がもしありましたらお聞かせいただきたいのと、それともう一つは、諸外国、主要国で結構ですが、外務省に相当する役所の試験はどういった試験なのか、試験の問題の中身も含めて、もし情報がありましたら教えてください。

北島政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、外交官試験をやめた経緯でございますけれども、要するに、外交と内政がますます不可分なものとなっているという時代の流れで、そういう中で、外交にも内政にも目配りのきくすぐれた人材を採用するという観点が大事ではないかということで、外交官試験を廃しまして1種試験の合格者から採用することとしたということですけれども、私の実感としまして、採用対象者の幅が非常にふえたということで、結果としては、実は、従来以上に優秀な人材を獲得することがある程度できているのではないかという気がしています。

 ただ、同時に、非常に気をつけていますのは、先ほどから委員が御指摘のあった、外交官にはどういう資質が重要かというようなことがございますので、単に試験の成績のみによって決めるということではもちろんありませんし、まして、出身大学にとらわれることもなしに、従来以上に面接を重視している。面接を四回から五回やっていまして、人物本位、それから人間性、そうしたことを重視した選考を行うことによって必要な人材の採用に努めているということで、繰り返しになりますが、結果としてはいい人材を獲得できているのではないかという気がしています。

 諸外国の例ですけれども、先ほど政務官からアメリカ、イギリス、フランスの例を挙げられましたけれども、私が承知していますのはそういうことで、実際の試験の内容とか、そこまでは、申しわけございません、今ちょっと手元にないものですから、承知しておりません。

河井委員 今、官房長の御答弁で、主要国の試験の中身を承知していないとおっしゃいました。ぜひ、またお調べをいただいて、後で結構ですから教えていただきたいと存じます。

 といいますのは、恐らく、外国政府は、どんな人を日本の政府は職員として選抜をし、養成するんだろうかと。同盟国といえども、外国です。まして、日本について好意を持ってくれていない国家、地域もこの周辺にはあります。先ほどから申し上げておりますように、その試験の中身を見れば、どういう人材に育っているんだろうか、あるいは期待している像というのはおのずから明らかになってくるわけですね。きょうの段階ですけれども、それを日本政府が承知していらっしゃらないということは私は残念なことだと思っておりますので、ぜひ、それはしっかりと研究をしていただきたいと思います。

 記憶力や判断の素早さだけが、公務員として、人間として評価されるべき基準ではありません。結局、選ぶ側の意識が私は本当に問われている。これは公務員試験だけではありませんが、手間暇、お金がかかりますけれども、落とすための試験ではなくて必要な人材を選び出すための試験を始めていかないと、私は、先ほども言いましたように、日本はこれから本当に大丈夫だろうかと考えております。

 私は、これは人事院の方々にもかかわることですけれども、そういった事柄を見きわめるためにも、選択の問題ではなくて論文の問題、先ほど論文、面接を重視してきているとお二人がおっしゃいましたけれども、言葉は適当ではありませんが、あくまでそれは一次試験でふるいにかけた後での話です。一次試験においても、私は、論文を読めば、大体、皆様方ぐらいの経験と識見をお持ちでしたら、どういう若い人たちかということは判断できるんじゃないかなと。論文だけに公務員試験はするべきだと、極論かもしれませんが、私はそれぐらい今考えております。

 また、もう一つ、外務公務員の試験のことだけで言いますと、外国の大学で学問を修めた、専門的な法律外交大学院などで学士号を取った、修士号を取った人たち、もちろん、先ほど田中政務官がおっしゃいましたように、日本人としての心を、日本人の外交官ですから持つことは大切なことですけれども、そういった人が、そういった外国の学校を出た後、一度公務員予備校に通わないと合格することができない、あるいは一度日本の大学に学士入学をしないと公務員試験に合格をすることができない今の現実は、本当にいいのだろうかという疑問を抱いております。

 さいころの目の数を当てさせたり、じゃんけんでグーの出る確率を勉強させる試験が、日本以外のどこの公務員の、特に外交に関するところであるんでしょうか。私は、公務員、特に外交官はしっかりとした人生哲学や歴史観、そういったものを本当に若いうちから抱いていただきたいんです。まず外交官である前に、一人の人間としての器の大きさや、そして魅力をぜひお持ちいただきたい。

 そこで、副大臣や政務官にお尋ねをしたいと思いますけれども、そういったことをずっと考えていますと、冒頭にも言いましたけれども、結局、政治家に求められる資質と外務省の職員の方に求められる資質というのは本当に似通ってきている。私も、今自分で質問をしながら、内心じくじたる思いをしながら、おまえはどうなんだと田中政務官から逆質問されないことを祈りながら質問をしておりますけれども、それらを含めて、政治家を外国に駐在する大使にもっと任命するべきではないかと考えております。今、南米のチリに元衆議院議員の小川元先生が赴任をしていらっしゃいますけれども、お一人なんですね。そのあたりを含めていかがお考えでしょうか、お答えをいただきたいと思います。

逢沢副大臣 大変本質的な重要な問題について御指摘をいただいたと思います。

 実は、一つ御紹介をさせていただきたいことがあるんですが、いわゆる外務省改革の一環といたしまして、すべての外務省の省員が「外務省員行動規範」、実は、私も副大臣に就任をいたしましたときにこれを官房からちょうだいをいたしまして、役所の一員として常に携帯をいたしているわけでありますが、幾つかのことがここに書かれているわけでありますが、「信頼される外務省員として」、これは四番目に書いてあることなんですが、「常に国益を考え、歴史的視点と世界的視野に立って外交を行う。」、国益を考え、歴史的視点、そして世界的視野に立って外交を行う、このことが明記をされているわけであります。まさに、外交官として、人間としての幅を広げ、また魅力をつける、そのことが、もちろん個別具体的な外交交渉、あるいは日本の国益全体を前進させるための状況づくり、大変必要なことであるというふうに承知をいたしております。

 もとより、一人一人の職員が、常にこの精神を体しみずからを高める、そういった努力をすることは当然のことでありますが、例えば、外務省の研修所におきますさまざまな研修等を通じて、こういったことについて、一つのチャンス、きっかけを与えていく、そういったプログラムも実行に移させていただいております。今後もこういったことについてぜひ力を尽くしてまいりたい、そのように思います。

 また、大使任命のあり方についても御言及をいただきました。実は私にとりましても同期当選の仲間でございます小川大使、現在チリ・サンティアゴで活躍をいただいているわけでありますが、その小川大使を含め、いわゆる外務省員以外から今現在十七名の大使が任命をされ、それぞれの任国あるいは国際機関にあって大使としての務めを果たさせていただいております。

 これも、川口大臣が中心となって取りまとめましたいわゆる外務省改革の一環でございますけれども、有能な人材を適材適所にこれからも任命をしながら、全体として日本外交の幅を広げていく、機動性を高めていく、そして評価を受ける、そういった状況にさらに努めてまいりたい、委員の御指導と御鞭撻も引き続きどうぞよろしくお願いをいたします。

田中大臣政務官 時間の関係もございますので、簡潔に御答弁をさせていただきたいと思います。

 外務省に求められる人材というのは、まさしく委員がおっしゃったとおりだと思います。ただ、一方においては、司法改革が行われておりますように、時の流れとともに、やはりいろいろな専門性もあわせて持ち合わせるということも大切でございまして、河井先生のおっしゃったことにあわせて、そういう部分も加味して私たちも考えていかなければならないと思います。外務大臣も、特に今は科学技術の進展著しい時代でございますから、そういう専門分野の人材も必要ではないか、こういうふうにおっしゃっておられるところでございます。

 また、大使の件につきましても、私はわずかな政務官の任期中でございますけれども、軍縮を担当し、猪口邦子大使ともお仕事をともにさせていただいておりますし、また先般ガーナに出張いたしましたときには、浅井和子大使の活躍ぶりを目の当たりにいたしました。また、外務省の中ではありますけれども、高島報道官の活躍ぶりも大変私たち接しておるところでございまして、政治家も含めて、有能な人材を外務省の職員以外から、あるいは外交官の経験のない人から、それでも国のために世界のために何ができるか、こういう視点に立って任命をしていくということは、国のために極めて重要なことだと思っております。

 以上でございます。

河井委員 もう質疑の持ち時間が終了いたしました。時間がありましたらもっともっといろいろな角度から質問をさせていただきたいところでございますが、終わらせていただきたいと思います。

 ちょうどあすから新しい霞が関の職員の方が希望に胸膨らませて入ってきます。また、先ほど言いましたように、試験の受け付けもあすから始まるということでございます。外交は人なり、そのように実感をしています。ぜひ、真の意味でのよき人材を選んでいただくための選抜方法については、絶えず改革に次ぐ改革を進めていってください。

 終わります。ありがとうございます。

米澤委員長 次に、西銘恒三郎君。

西銘委員 尖閣諸島の問題で質疑を行いたいと思います。

 まず、周辺の状況、北東アジアの状況を眺めてみますと、ロシアの方では大統領選挙が終わりました。そして、朝鮮半島、六カ国協議に見られますように、朝鮮半島の非核化の問題、あるいは我が国との拉致問題の問題等を抱えております。お隣の韓国の方では大統領の弾劾裁判が行われておる。ちょっと南の方へ行きまして、台湾の方では、総統選挙が行われまして、その結果をめぐって国民世論を二分するような状況がある。また、我が国は今イラクへの自衛隊の派遣、また在日米軍もイラクへのかかわり、こういう事実関係がある中で、どう判断するかは別にして、そういう事実関係の中で尖閣諸島、魚釣島への上陸という事件が起こりました。

 我が国固有の領土であり、また実効支配をしているという点から、実効支配というのをより具体的にイメージをする意味で、まず第一点、質問をしてみたいと思います。

 尖閣諸島、たくさんありますけれども、今回上陸を許した魚釣島の所有権者はだれになっておりますか。お伺いします。

加藤政府参考人 御説明申し上げます。

 当該島の所有者は、埼玉県在住の個人の方でございます。

西銘委員 この魚釣島につきまして、国が借り上げていると聞いております。恐らく、先日通りました予算の中にもこの賃借料が計上されていると思いますけれども、年間幾らの賃借料で借り上げをしておりますか。伺います。

加藤政府参考人 御説明申し上げます。

 賃借料、年間約二千三百万でございます。

西銘委員 そうしますと、この魚釣島の所有権者は、沖縄県の石垣市の登野城という地番になっておりますから、地方税を払っていると思いますが、この所有権者は地方税を払っておりますか。伺います。

加藤政府参考人 御説明を申し上げます。

 先ほど申し上げました所有者の方は、正当に所有権を有しておられまして、石垣市に地方税をちゃんとお支払いになっておると伺っております。

西銘委員 実効支配という言葉を聞くときに、海上保安庁の巡視船が二十四時間、三百六十五日、尖閣諸島の周辺を巡視しているという状況、また魚釣島に関しては、所有権者がちゃんといて、国から賃借料をもらい、地方税を、税金を払っている、こういう具体的なイメージができるかと思います。

 少し視点を変えてみますけれども、この尖閣諸島で在日米軍が訓練をしたということがありますか、この訓練の内容及び時期等について御説明をいただきたいと思います。

海老原政府参考人 尖閣諸島の中には、沖縄の復帰時より米側に提供されております施設・区域がございます。これらは、沖縄が米国の施政下にあった時代より米軍が射爆撃場として使用してきたものを、昭和四十七年の沖縄復帰時に、日米安保条約、地位協定に基づきまして、施設・区域として提供したものでございます。

 この施設・区域におきます訓練は、射爆撃ということでございまして、沖縄復帰時も米軍によりほぼ恒常的に使用をされてまいりましたけれども、我々が承知している限りでは、昭和五十三年の五月の使用、これは通報があるわけでございますので、実際に行ったかどうかはちょっと確認ができておりませんが、この五十三年五月の使用の通報以来、演習の通報はなされておらず、使用はされていないというふうに承知をいたしております。

西銘委員 お手元に資料、地図を配付しておりますけれども、この島の位置関係、状況もイメージしながら聞いてほしいんですけれども、在日米軍が、復帰前二十七年間の軍政下に沖縄があったときにも尖閣諸島で米軍の演習を行っている。当時は、米軍の施政権下ですから自由に行われたと思いますけれども、また、復帰をしてからでも行われている。このように考えてみますと、我が国の固有の領土、あるいは実効支配をしている、また、同盟関係にある米国にとりましても、自分たちが米軍の訓練で使用していたということからしましても、安保条約を適用する範囲に入っているというアメリカ側の副報道官のコメントは全く正当、正常なものと私は認識をしております。

 しかし、我が国は、尖閣諸島に関しては領土問題は存在をしないという立場でありますけれども、同盟国のアメリカ合衆国は、安保条約の適用下にはあるけれども日中両国間で話し合いをすべきだ、そこら辺のところが、いま一度アメリカが、米軍が使った経緯からしますと、我が国と同じ立場で、尖閣諸島に関しては同盟国の米国も領土問題そのものが存在しないと言うべきではないかと私は考えるんですけれども、外務省の立場、お考えはどうでしょうか。大臣でも副大臣でもよろしいんですが、お考えのほどをお聞かせ願いたいと思います。

海老原政府参考人 ちょっと私の立場からお答えするのが適当かどうかわかりませんけれども、私の理解でも、日本としては、そもそも尖閣諸島につきましては、領土問題自体が存在しないという立場でございますけれども、この前副報道官が領土問題については中立であるというような趣旨のことを言われましたので、これは、正直言いまして、我々としては必ずしも米側が正確に理解をしていないのではないかというふうに思っておりまして、今後とも米側に対しては、我が国の立場はそもそも領有権の問題は存在しない、我が国の領土であるということを引き続き米側には説明をしていきたいというふうに考えております。

西銘委員 外務省としては、これはぜひともこれまでの歴史的な経緯、また極めて重要な日米関係、また、対中国との関係も日本にとりましては重要でありますけれども、アメリカ側にぜひとも我が国と同じような立場で、尖閣諸島については安保条約の適用下にある、さらにもう一歩踏み込んで、領土問題は存在しないという立場まで同盟関係にある米国の理解を求めるように、ぜひとも頑張っていただきたいと思います。決意表明をお願いします。

川口国務大臣 尖閣諸島が我が国の領土であるというのは、これは歴史上も国際法上も固有の領土であって、これは当然のことであります。そういった事実に、アメリカとの間の国際取り決めもそういうことを言っているわけでございまして、当然のことながら、我が国としては、そういった我が国の立場をアメリカ側がきちんと再認識をするということを求めていくということでございます。

西銘委員 ぜひ同じような認識に立てるように頑張っていただきたいと思います。

 さて、参考資料を見ていただきたいんですが、この魚釣島ですけれども、石垣島の漁民等に聞きますと、漁船で五時間から六時間、五時間半ぐらいで尖閣の諸島に、漁場に着くということであります。波が高いときには六時間以上あるいは七時間ぐらいかかったりするそうでありますが、一方、与那国島、我が国の最西端の与那国島、千八百人ぐらいの人口の島ですけれども、西の方に見える台湾、百キロ、晴れた日には台湾が見えるぐらいの与那国島であります。この与那国島からは、漁民によりますと尖閣諸島までは四時間ぐらいで漁場に到達できる、こういうような位置関係にあります。

 与那国島、また石垣市、この辺の八重山諸島を含めますとおおよそ五万人近い国民が住んでおります。地図を見ておわかりのように、この魚釣島が、中国が領有権を、中国の国土だと主張することは、この八重山諸島圏域に住んでいる国民にとっては、尖閣が中国であれば、与那国なんかはもうもっともっと中国に領有権を主張されるんではないかというような感じで今回の事件を受けとめております。

 今回の事件は、なぜ領海内にこの漁船、百トン余りの漁船が入ったのかな、なぜ領海に入る前に防げなかったのかなというのが一番の私の関心事であります。

 そこでお伺いをいたしますけれども、今回の上陸事件で、この百トンの漁船を領海に入る前になぜ確認できなかったのか、教えてください。

金子政府参考人 お答え申し上げます。

 尖閣諸島の警備でございますが、昭和四十七年の沖縄返還以来、不法入域に関する特段の情報がなくても、常時、周辺海域に巡視船を一隻配備して所要の警戒監視に当たってまいりました。

 今回、三月二十四日の事案でございますが、これはこれまでの事例と異なりまして、事前の情報がなかったことから、通常配備中の大型巡視船一隻が目視やレーダーを活用して警戒に当たっていたわけでございますけれども、当日、日出といいますか、日の出前の時間帯に魚釣島に接近する船影をレーダー映像にて発見し、引き続き当該船舶の動静確認を行った結果、尖閣の領有権を主張する活動家を乗せた中国船であるということが判明したのが午前六時二十四分となったものでございます。

 当日の気象、海象などを考え合わせますと、当該配備巡視船としては最善の努力を払っていたものと考えておりますけれども、御指摘のように、先方の手法といいますか、手口の一部に変化があるようにも思われますので、私どもといたしましても、今回の事案の状況をよく検証して、事前の情報収集でありますとか、事案に応じた警備手法などにつきまして、警戒警備のあり方全般について再点検をしまして、改善すべき点が明らかになり次第速やかに改善を図ってまいりたいというふうに考えてございます。

西銘委員 今回の事件、このような領海内に入ることが今後二度と起こらないように、全力で政府として取り組んでいただきたいと思います。

 今回の上陸事件を見ますと、上陸をして県警が逮捕したんですけれども、同時に、北京の我が国の大使館の前では日章旗が、日の丸が焼かれる、逮捕に対して抗議をする、逮捕と同時期にこのような事件が北京で起こるということを見ますと、かなり組織的に行われているのかな。

 あるいは、我が党の部会でもよく話に出るんですけれども、東シナ海の二百海里内の海洋調査船の通告なしの件数が、去年一年間で八件であったものが、ことしはもう既に三カ月で十一件から十二件になっているという事実関係、あるいは海洋調査船のみならず中国海軍の航行等も我が国近海で頻繁に見られるようになってきている等々を見ますと、何か連携をとりながら、非常に組織的な行動だと認識をできます。

 ですから、今後の対応として、二度と領海内にこういう、抗議船という言葉がありますけれども、私は、明確な確信犯、領土を主張して入ってくる船ですから、不審船という言葉を使ってもいいのではないかと思っております。

 かつて私はP3Cで尖閣諸島の上空を視察したことがあります。そのときに、魚釣島の周辺で海上保安庁の巡視船をP3Cから目視することができました。P3Cに乗っていて感じたんですけれども、この魚釣島周辺、尖閣の現場海域で、先ほど前原委員の質問にもあったんですけれども、現場の海域でP3Cと海上保安庁の巡視船が連絡をとれるようになっているのか、教えていただきたいと思います。

西川政府参考人 お答え申し上げます。

 当方で、P3C等の哨戒中の飛行機と海上保安庁の巡視船等との間では、無線で連絡はとれるという形にしております。双方からとれるという形にしております。

西銘委員 素朴な質問ですけれども、そうしますと、例えば石垣島から尖閣諸島の漁場周辺に漁に行く、あるいは与那国島から漁に行く、この漁船同士もこの周辺で、携帯電話というんですか無線というんですか、安全確認しながら、情報が、連絡がとれる体制になっていると理解してよろしいんでしょうか。

金子政府参考人 ちょっと現時点でわかっておる範囲でお答えをさせていただきたいのでありますが、漁船同士がそれぞれ無線を持っておられますので、それで、例えば同一漁協等に所属しておられるような場合には、事前にその周波数について情報交換をし合っておれば、現場海域での交信は可能かと存じます。

西銘委員 携帯電話同士ではどうですか。ちょっと通告していないので、わかったら教えてください。あの尖閣の周域、我が国の固有の領土と言われているこの地域での、船に乗って携帯電話のやりとりはできるんでしょうか。

金子政府参考人 携帯電話の場合ですと、海岸局というんでしょうか、中継の無線施設の設置がどこか陸域にないと通話がうまくつながらないということだと思いますので、そうでありますと、魚釣島等々にはそういった施設はございませんので、携帯電話による漁船同士の会話というか通話は難しいのではなかろうかというふうに思います。

西銘委員 尖閣の海域は、確かに、漁民の話を聞いておりましても、深海魚といいますか、県民にとっては高級な魚、アカマチとかアカジンミーバイとか、マチ類というんですか、尾っぽの長いマチ類とかメバル類とか、いい魚が一本釣りでとれるところというふうに聞いております。

 漁民の立場からしますと、安心して操業できるような体制をとってくれということもありますけれども、今回の事件に関しましては、とにかく二度とこういう不審船が領海内に入ってくることを防がなければならない。私は、特に与那国島やこの八重山諸島の圏域の五万人の国民の生命と財産を守る立場からも、このような上陸の事例、上陸よりも前に、十二海里内に入ることをぜひとも食いとめなければならない、また、食いとめることが、我が国政府が主張をしておりますように、歴史的にも国際法上も我が国固有の領土である、領土問題そのものも存在しないという立場に合致するものだと考えております。

 あの海域を見ますと、巡視船一隻で三百六十五日、巡視の体制をとっていても、あるいは海上自衛隊のP3Cが一日一回飛んでくるのかわかりませんけれども、連携をとっていても、海域の状況を考えると、十二海里内に不審船が入ることを阻止するのは厳しいのかなという感じもいたします。

 そうしますと、さらなる警備体制の強化、情報収集能力を高めるという意味でお伺いをしたいんですけれども、これだけ科学技術が、通信、情報技術が非常に発達している時代です。私自身はそういう情報技術等に関しての知識は乏しいんですけれども、素朴な質問として、今回のような上陸事件を二度と起こさないようにするためには、この尖閣諸島に、先ほど話をしました中継用のアンテナとか、あるいは人がいなくても作動するような無人のレーダーとか、あるいは海底のソナーとか、こういうもろもろの科学技術を使った形で警備を強化する、そして情報収集能力をさらにさらに高めていく、そして、実効支配をしているという我が国の主張を裏づけるような形での情報収集能力をもっともっと高めていく必要があるのではないかと考えますが、政府の方はどう考えますか。お聞かせください。

堀内政府参考人 お答えをいたします。

 政府といたしましては、今般の中国人活動家による尖閣諸島への不法上陸事案の状況を検証し、情報収集体制等も含めて警戒警備のあり方等について検討し、再発防止を図ってまいりたいというふうに考えております。

西銘委員 我が国の安全保障上のこともあろうかとは思いますが、科学技術の、この技術の進歩した時代で、そういう機械等も、あらゆる可能性を探りながら情報収集能力を強化していく、ひいては、二度と領海侵犯の起こらない情報収集体制をとっていくというふうに理解をしてよろしいですか。いま一度御答弁をお願いします。

堀内政府参考人 今回、結果として不法上陸されたという事実を踏まえまして、今後、関係機関において再点検いたしまして、改善すべき点等が明らかになれば、速やかに改善を図ってまいりたいというふうに考えております。

西銘委員 ぜひとも、あらゆる設備等も含めた考えで、情報収集能力をさらに強化していくという方向で努めていただきたいと思います。

 さて、先ほど申し上げましたように、最西端の与那国島あるいは八重山諸島、この圏域で五万人、あるいはお隣の宮古島、この辺の島々まで含めますと、この辺も五万人を超えておりますから、もう十万人以上の国民がこの南西諸島の海域で生活を営んでいることになります。尖閣諸島の問題、この尖閣諸島が中国の領有権を主張されるということは、この十万人に及ぶ国民にとっても大変な危機感になってまいります。

 どうぞ外務大臣、このような上陸事件を二度と起こさないためにも、あるいはまたこの海域、宮古諸島、八重山諸島、十万人以上の国民の生命と財産を守るという立場、この島々、本当に我が国は我が国政府としてこの国境の与那国あるいは八重山諸島あるいは宮古諸島の国民を守る意思があるのかな、尖閣諸島を守れないのであれば我々もどうなるのかわからないというような形にもなりかねませんので、外務省として、毅然たる態度で我が国固有の領土をしっかり守っていくという意味で、決意表明をお聞かせ願いたいと思います。

川口国務大臣 先ほども申しましたように、これは我が国固有の領土であることは疑いがないわけでございます。そういった観点で、おっしゃった与那国島等の近くにお住まいの方等が本当に無用な御心配をなさらぬように、尖閣につきましては、我が国としても、これは我が国の固有の領土であるということについては、今回の事件に関し中国政府に対してきちんと申し入れをしたところでもございますし、今後そういうことがないように外交当局間でも話をしていきたいと思っております。

 再発防止については、既に中国政府に対して申し入れを行っております。それから、政府の中の連携ということが非常に重要でございますので、政府全体として再発を防止できるように、外務省としてもできることをやっていきたいと思っております。

西銘委員 外務大臣は近々訪中をされると聞いております。こういう問題で再発防止を申し入れましても、相手は相手の立場で我が国の領土だという主張をしてくることが十分に想定をされますが、外務大臣の立場としては、今御答弁のありましたように我が国固有の領土であること、そして領土問題そのものも存在をしないというところまで、中国の外交部長が対応すると思いますが、堂々と発言をしていく決意でしょうか。聞かせてください。

川口国務大臣 そのような決意を持っております。

西銘委員 ぜひ大きな声で堂々と我が国固有の領土を守るんだと、またその圏域の十万人の国民の生命と財産を守る立場からも力強く主張をしていただきたいと思います。

 結びになりますが、委員長、我が国の国土を保全する、国土を防衛するというのは国政の根幹だと考えております。委員長にお願いでございますが、この外務委員会として、尖閣諸島上陸とまでは言いませんけれども、我が国固有の国土である尖閣諸島の視察をぜひ外務委員会でできますようにお願いをして、終わりたいと思います。

米澤委員長 その件は、理事会で皆さんと相談したいと存じます。

西銘委員 よろしくお願いします。ありがとうございました。

米澤委員長 次に、阿久津幸彦君。

阿久津委員 民主党の阿久津幸彦でございます。

 質問に先立ちまして、先ほどの私どもの同僚議員でございます前原委員の質疑の中で、三月三十日、安保委員会で、我が国の領土保全に関する件ということで、我が国の領土保全上に大変遺憾な事件があった、万全の対策をとるべきであるという決議がされたということでございました。

 それで、こういう決議こそ、私は外務委員会で行うべきだというふうに考えております。外務委員会でもぜひこの決議を行っていただきたいという決議要求を委員長に申し上げたいと思います。よろしくお願いいたします。

米澤委員長 今の件は、筆頭理事の間で今協議が進んでおります。

阿久津委員 ぜひよろしくお願いいたします。

 それでは、私の方からは、三月十六日の外務委員会での私の質疑に続いて、平成十五年十一月二十九日に起こりましたイラクでの日本人外交官の襲撃事件について伺いたいと思います。

 この事件については、今なお米軍による誤射説が払拭されていないと私は認識しております。例えば、最近でも、三月二十一日の「サンデープロジェクト」で取り上げられましたし、昨日の東京新聞朝刊でも特集記事が組まれています。こうした誤射説が払拭されない原因というのは、私は、真相究明のおくれと資料の公開が不十分であるからだというふうに認識しております。

 そこで、先日の私の委員会質疑の中で資料請求をさせていただいて、奥大使、井ノ上一等書記官の殺害事件について理事会協議となった資料請求事項、四点があります。今、資料としてお配りしていると思うんですけれども、この四点について再確認をまずさせていただきたいと思うんです。

 まず一番初めの、被害車両写真の未公開分八枚についてなんですけれども、現時点では公開しないという決定がなされていると思うんですけれども、この決定は外務省の判断でしょうか。この決定についての最終的な責任の所在は外務大臣に帰するということでございますでしょうか。それをまず確認させていただきたいと思います。

堂道政府参考人 お答え申し上げます。

 この写真の件につきましては、御遺族の御意向とか、それから、捜査のための必要な資料という観点もございますし、また、国民の皆様の御理解を得ることも必要であるということから、とりあえず、その三枚について、必要かつ十分なものとして公表した次第であります。公表につきましては、警察当局の方とも十分、捜査資料ということでございますので、打ち合わせをさせていただいた上で公表しておるわけでございます。

 なお、四月の上旬をめどに警察当局による被害車両の検証結果が公表される予定であることを受けまして、御遺族の意向にも配慮した上で、車両の写真等の公表に向けて検討を進めたい、今こういうふうに考えている次第であります。

阿久津委員 いや、三枚は公開されましたね、八枚の未公開について、その決定の責任の所在はどこにあるのかということを聞いているんです。これは、今のお答えでは、外務大臣というふうにお伺いしていいんでしょうか。

川口国務大臣 外務大臣であります。

阿久津委員 当初、被害車両が戻ってこない心配があり、これらの写真が唯一の情況証拠となる可能性があるため、警察庁の方から外務省へ写真の公開を控えるよう要請したとの話も聞いているんですけれども、これは事実でございますか。警察庁の方から。

瀬川政府参考人 お答えいたします。

 この写真といいますのは、事件発生から比較的近接した時期に撮影されたものでございますことから、被害車両が発生直後にどのような状態にあったのかということを知る上で、数少ない、いわば大変貴重な資料であります。そういうことで、警察としては、捜査上の観点から、これはできるだけ公表は控えるべきであるというふうに考えておりまして、外務省にもその旨お話はさせていただいております。

 ただ、今回の事件の重大性ということにかんがみまして、また、国民の皆様にも理解をしていただく、見ていただく必要があるというようなことを考慮いたしまして、外務省として可能な範囲のものを公表したということだと承知をしております。

阿久津委員 警察の方も、車両本体が戻っておりますので、間もなく、四月上旬くらいまでにその分析結果も出るというふうに聞いております。御遺体の司法解剖結果とも突き合わせて、そういう何らかの報告が出ると聞いておりますので、ぜひ、その後については、御遺族の心境にも十分に配慮した上で、すべての未公開写真八枚についても公開していただきたいというふうに思うんですが、大臣、いかがでしょうか。

川口国務大臣 四月の上旬に警察庁からこの検証の結果について御報告があるという御答弁を伺っております。そういうことが行われた後で、これは先生もおっしゃっていただいたように、御遺族の御心境、お気持ち、これには十分に配慮をしなければいけないと思っております。そして、そういうことを配慮し、また、配慮をした上ででございますけれども、どのような形で公表が可能かどうかということについて検討をさせていただきたいと思っております。

阿久津委員 御遺族の意向にも配慮した上で公開する方法が幾つでもあると思いますので、ぜひ公開の実行をお願いしたいというふうに思います。

 続いて、私の資料請求の事項の二点目の、CPA報告書について伺いたいと思うんですが、これも、警察庁から車両の検査、分析結果が出る四月上旬なら出せるのではないかというふうに思うんですが、いかがでしょうか。

堂道政府参考人 お答え申し上げます。

 委員、CPAからの報告書というお尋ねでございますが、このような報告書、いわば取りまとめた……(阿久津委員「ばらばらなのはわかっています」と呼ぶ)があるわけではございません。

 この事件につきましては、随時CPA及び現地米軍から情報の提供を受けておりまして、これらを含めた情報につき、現在でも真相解明に向けた捜査が継続しているということでございますので、現時点でこれらの情報を公開することは、関係者の協力を行っております捜査を含む真相究明のための努力に支障を来すおそれがありますので、その取り扱いについては慎重を期す必要があるという点について御理解をお願いしたいと思います。

阿久津委員 ちょっとこの資料にこだわる理由の一つが、事件当日、在イラク日本大使館に事件の第一報が入ったと思うんですけれども、それがCPAからなのか米軍からなのか、ちょっと今までのいろいろな答弁とか資料を突き合わせてみたんですけれども、二説存在しているように思うんですけれども、これはどっちなんでしょうか。米軍からなのでしょうか、それとも、CPAからなのでしょうか。

堂道政府参考人 第一報は、バグダッドにあります我が方の大使館にCPAからなされておりますが、現地の米軍よりCPAが連絡を受け、その結果をCPAから大使館に連絡があった、こういう次第でございます。

阿久津委員 日本大使館が第一報を受けたのはあくまでCPAということだと思うんですけれども、だとすると、逢沢外務副大臣が、三月二十一日、テレビ朝日の「サンデープロジェクト」でおっしゃっているんですけれども、CPAから日本へとおっしゃいましたけれども、日本政府には米軍から、米軍から上村臨時代理大使に電話があった、これが正確な経路なんですね、その時間は当日の夕刻でありますというふうにおっしゃっているんですけれども、これはどういうことなんでしょうか。違うんではないでしょうか。逢沢副大臣、お答えできないですか、これ。

堂道政府参考人 事実関係でございますので私どもの方からお答え申し上げますが、現地で直接この事件をハンドルしましたのは現地の米軍でございます。現地の米軍から大使館への連絡経路としてバグダッドのCPAを通してなされたということでございまして、逢沢副大臣がおっしゃった趣旨も、現地の米軍からというのは事実関係として間違っているわけでございません。経路としてそういう経路をたどったということでございます。

米澤委員長 逢沢副大臣、答弁しますか。

逢沢副大臣 今、堂道局長が答弁したのが正確な事実関係というふうに御理解をいただきたいと思います。

阿久津委員 これはテレビでの口頭でのやりとりなのでなかなか難しい部分があるんですが、私は、逢沢副大臣のおっしゃり方というのは、むしろ本当に近いのかなというふうに、正直なのかなというふうに印象を持っております。

 これは、田原さんが、ただ、さっきの事件が起きてから例の空白の六時間、長過ぎますよというふうにおっしゃったのに対して、逢沢副大臣が、いや、だから第一報の、第一報の発見者がだれなのか、これはね、特定がされてないんです、そこからイラクの地方の警察、そこからCPAから日本とおっしゃいましたけれども、日本政府には米軍から、米軍から上村臨時代理大使に電話があった、これが正確な経路なんですねというふうにおっしゃっている。どうなんですか、これ、本当のところは。

逢沢副大臣 最初の発見者は特定をされていないわけでありますが、いずれにいたしましても、現地の警察を通じて米軍、CPA、その経路を通じて我が方の大使館に連絡があった。先ほど堂道局長が整理をして申し上げたのが正確な経路であるというふうに御理解をいただきたいと存じます。

阿久津委員 この件については、国民の皆様に今の質疑の内容を御判断いただくしかないと思うんですが、ナンバープレートの問題についても伺いたいと思うんです。

 ナンバープレートのいろいろな事情について、外されていた事情について、理事会に提出された三月二十六日付の外務省資料では、車両から外され、車内に保管されていたということが明らかにされているんですけれども、三月十六日、外務委員会での私の質問に対する堂道政府参考人の御答弁では、私の理解する限り、「どこで発見されたかということについては必ずしも今申し上げることができない」とおっしゃっていたんですけれども、これは誤りですか、堂道政府参考人。

堂道政府参考人 改めてお答え申し上げます。

 このナンバープレートにつきましては、安全対策上、車両より外されておりまして、車内に保管されていたということで承知しております。

 先般の御質問の際、突然の御質問でありましたので的確にお答えできなかったと思いますけれども、事実関係は、車内に保管されていたということでございます。

阿久津委員 これは、議事録を見ると、

  このナンバープレートは発見されておりますが、どこで発見されたかということについては必ずしも今申し上げることができないと思いますが、この点は、遺留品と申しますか、車の中で私ども回収しておりますけれども、その回収場所について、当初その身元が判明することがなかったという事情がございますので、回収場所がどこであったかということについて、現在、その地点まで特定することはできない、こういう状況でございます。

 川口外務大臣、この答弁を聞いて、何を言っているのかおわかりになりますでしょうか。

川口国務大臣 私が承知していますのは、ナンバープレート、これは回収されたときに車の中にあったということであって、車の中で発見をされたということでございます。

 堂道局長がそのときにどういう意図で言ったかということについては、先ほど堂道局長が言いましたように、車の中で発見をされたということであるという説明があったと思います。

阿久津委員 私は、堂道局長が、突然の質問であったとはいえ、何かよくわからない、恐縮ですが、支離滅裂とも言える答弁をされたことを、あえてちょっと推察すれば、ナンバープレートは車両から外されて車内に保管されていたんだと思うんですね、確かに。それを米軍が現地でいち早く回収して、それでその後米軍からナンバープレートは返還されたというふうに考えるのが一番自然な流れではないかなと。

 だから、レバノン・ナンバーであったため、米軍は当初、イラク人ドライバーをレバノン人と誤認したんだと思うんです。イラク人であるイラク警察や部族長等、現地人がイラク人ドライバーの死体を見てレバノン人と誤認することは考えられないと思うんですけれども、堂道局長いかがでしょうか。

堂道政府参考人 お答え申し上げます。

 先般の私の答弁が不明瞭であったということについては、おわびいたしたいと思いますけれども、私ども、この事件が起きたときに、身元が確認できないという問題に直面いたしました。私ども、両名がティクリートに向かっていたというのは承知しておりましたけれども、最初のその一報が、日本人ものらしきということでございますし、運転手についてはレバノン人というのが当初の第一報であったわけでございます。

 そこで、私どもとしましては、身元を確認するものを必死になって捜索したわけでございまして、その結果パスポートで身元が判明できたわけでございます。

 その過程で、ナンバープレートについてはどこにあったかは必ずしもよくわからなかったという事情がございます。後で、ナンバープレートは車の中に保管されていたということが判明した次第でございまして、そういうことについてそういう事情があったということでございます。

阿久津委員 納得はいかないんですね。納得がいかない同じ理由で、パスポートについても私は納得がいっていないんです。

 米軍が部族長から回収したが、部族長の名前は安全上言えないということなんですけれども、部族長の名前が言えないのは、ここに偽りがあるからではないかというふうに考えてしまう、それを払拭することができないんですね。ナンバープレート同様、被害車両をいち早く確認した米軍が、奥大使と井ノ上書記官のパスポートを回収した。だから、イラク人ドライバーをレバノン人と誤認する一方で、奥大使と井ノ上書記官については日本人と確認していたのではないかと思うんですが、いかがでしょうか。

堂道政府参考人 お答え申し上げます。

 パスポートについては、先ほども御答弁申しましたとおり、私どもの要請に基づいて米軍が捜索をし、現地の地元部族長から回収したというのが事実でございます。その間、かなりの時間がかかった、もう真夜中でございましたけれども、米軍も捜索をして、地元の部族長から回収したということでございます。

阿久津委員 この事件が仮に、万が一と言った方がいいんでしょうか、仮に米軍による誤射だとしても、米国にとってその事実を隠す国益上の理由というのはほとんどないというふうに私は思っているんです。もちろん、米軍の誤射説が現時点で正しいというふうに言えるわけではないんですけれども、むしろ米軍の誤射説を払拭するためにも、一日も早い真相究明を望みたいと思っております。

 小泉総理も、政府を挙げて真相究明を国民に約束するというふうにおっしゃっておりますので、ぜひこの真相究明、いち早い真相究明それから情報の公開も含めてお願いいたしまして、私の質問を終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。

米澤委員長 次に、川内博史君。

川内委員 民主党の川内でございます。

 十五分しか時間がございませんので、若干早口で質疑をさせていただきますが、ドミニカのことについてお尋ねをさせていただきたいというふうに思います。

 先日の平成十六年三月二十四日、参議院の外交防衛委員会、尾辻秀久委員より質疑がございまして、政府の解釈をお聞きいたしました。ドミニカのこの移住者、移民について、ドミニカ政府と外務省との合意が成立したのは、外務省側の主張では、昭和三十一年三月二十七日付のドミニカからの文書、ナンバー三二六六、日本政府にあてたこの文書によって実質的な合意に至ったと考えていらっしゃるということでよろしいですか。

鹿取政府参考人 今御指摘の一九五六年三月二十七日付のメルカード書簡により、日本からの移住者の受け入れの意思及び受け入れ条件に関し、ドミニカ政府の意向が正式に表明された、そういうことで、我々は、ここで実質的合意が達したものと考えております。

川内委員 それでは、そのドミニカから来た文書ナンバー三二六六には、本書簡に対する返簡との交換によって移住の基準が確定するとの文言が入っています。

 したがって、文書三二六六に対する返簡をもし日本政府が出さなかったとすれば、この文書三二六六、いわゆる移住条件の確定ということはなかったということになりますね。

鹿取政府参考人 このドミニカの移住問題については、三月二十七日の御指摘の文書の前に、日本政府とドミニカとの間でいろいろな交渉、協議がございまして、ドミニカ政府の意思それから条件が確認されたのが三月二十七日のメルカード書簡によってと我々は考えております。(川内委員「聞いたことに答えろ」と呼ぶ)

 ドミニカ政府との間におきましては、四月二十四日付の返簡によって……(発言する者あり)

米澤委員長 静かに。

鹿取政府参考人 ドミニカ政府との間におきましては、今……(川内委員「委員長、聞いたことに答えさせてくださいよ」と呼ぶ)ドミニカ政府との間におきましては、四月二十四日の書簡において確認しております。

川内委員 私が聞いたのは、三二六六に返簡を出さなければ確定しないと書いてあるから、もし日本の政府がこの文書を出さなければ、この移住の条件というのは確定しなかったんですねということを聞いたんです。きのうの外務省の説明では、そうですと言ったじゃないですか。なぜ答弁を変えるんですか。

鹿取政府参考人 今先生が御指摘のように、ドミニカ政府との間で基本的な受け入れ条件が形式的に確定しましたのは、四月二十四日の文書によってでございます。

川内委員 外務省の解釈では、形式的に確定をしたのが昭和三十一年四月二十四日の日本政府からの返簡によってであるということをお認めになられました。

 しかし、私が聞いたのは、もしこの日本政府からの返簡がなかったら、交換公文による移住の合意というものはなかったんですかということを聞いたんです。

鹿取政府参考人 この四月二十四日の返簡によって、ドミニカ政府との間では合意が確認された次第でございます。

川内委員 逆に解釈すれば、この返簡がなければ移住の合意はなかったと言っているのと同じことであるというふうに確認をさせていただきたいというふうに思います。

 さらに、昭和三十一年七月五日付で、吉田ドミニカ公使から当時の重光外務大臣にあてて電報が打たれております。その電報には、ドミニカ第一次移住者に関する件として、七月五日付の往信返簡をもって第一次移住に関する公文を終わったという記述がありますが、これはどのような解釈をすればいいのかということをお教えいただきたいと思います。

鹿取政府参考人 御指摘の文書は、非常に短い文書で、かつ古い文書でありますので、私もこの解釈は確定的な解釈を、完全な自信を持って申し上げることはできませんけれども、そのときの経緯それからこの時期を見まして、これはコンスタンサ及びペピーリョ・サルセド地区に入植する問題についての文書であると考えております。

川内委員 移住の合意が成立をしたのは、外務省の解釈では、形式的に成立をしたのは昭和三十一年四月二十四日である、しかし、実質的な移住の条件が固まったと解釈をしているのが昭和三十一年の三月二十七日である、文書ナンバー三二六六であるというふうな言い方をされていらっしゃいます。

 それでは、文書ナンバー三二六六によって合意をしたと解釈されている土地の面積あるいは所有の形態というのは、どういう合意があったというふうにとらえていらっしゃるのか。

鹿取政府参考人 土地の面積及び所有形態につきましては、これまでの日本とドミニカ間の交渉経緯にかんがみ、また、メルカード書簡にある、一家族当たり三百タレアまでの土地を供与するとの表現において、我々としてはドミニカ政府との間の実質的合意が達成されたものと理解し、募集要項において、一世帯当たり三百タレアの土地が無償譲渡される、その旨記載いたしました。

川内委員 聞いたことに答えろよ。なぜだますんですか。

 募集要項に何と書いたかと聞いていないよ。移住の条件として土地の面積と所有の形態はどういうふうに合意したかということを聞いているんですよ。

鹿取政府参考人 メルカード書簡には、一家族当たり三百タレアまでの土地を供与する、こういう表現がございます。

 これが根本にある合意で、確認事項であると考えております。

川内委員 移住の条件として合意に達したのが、土地は三百タレアまで、十八ヘクタールまで、そしてそれは供与だということが移住の条件ということで合意されたということでありますね。

 では、募集要項には、三百タレア、十八ヘクタールの土地を無償譲渡と書いたということは今お答えになりました。いいですか、言いかえることはありますか。

鹿取政府参考人 募集要項において、あるいは募集要領において、一世帯当たり三百タレアの土地が無償譲渡される、その旨の記載はございます。

川内委員 募集要項には、十八ヘクタールの土地が無償譲渡、いわゆる所有権つきの土地が十八ヘクタール与えられるというふうに書いたにもかかわらず、しかし、移住の合意は十八ヘクタールまで、しかもそれは所有権ではない、土地を耕作する権利だ。なぜその乖離が起こったのか。そしてまた、であれば、募集要項に三百タレアまでの土地を耕作権として与えるということをなぜ正直に書かなかったのかということをお尋ねいたします。

鹿取政府参考人 まず、募集要領において、一世帯当たり三百タレアの土地が無償譲渡されると記載したことについて御説明いたします。

 既に申し上げましたとおり、メルカード書簡が接到するまでの間、日本とドミニカ政府との間では、移住条件等についていろいろ議論それから交渉がございました。

 例えば、昭和二十九年十一月一日、ドミニカを訪問中の上塚衆議院外務委員長はトルヒーリョ元帥と会見しました。その際、元帥は、積極的に移住問題に触れ、自国民と同等の地位を有する自由農業移民を招致せんとするものであること、及び日本人移住者に対して土地家屋を無償提供するつもりである旨述べました。そこで、まず土地家屋の無償提供という話がございました。

 次に、例えば、トルヒーリョ元帥は、昭和三十年九月、ドミニカを訪問した吉岡調査団長に対し……(川内委員「委員長、簡潔にさせてください」と呼ぶ)

米澤委員長 簡略にお願いします。

鹿取政府参考人 どうも失礼しました。

 一家族三百タレアを与えるということを述べました。

 また、昭和三十一年三月十二日、吉田公使はメルカード農務大臣と会談し、日本人移住者の具体的な移住条件等を話し合いました。その段階で大筋で合意に達しております。

 土地面積については、概略、以下のとおりのやりとりがありました。

 さきに吉田公使が、三百タレアのうち差し当たり三分の一ないし二分の一をドミニカ側で整地してほしい旨申し入れた件に関し、差し当たり一戸当たり百五十タレアを整地することが合意されました。

 また、吉田公使が、一時に……

川内委員 いや、そういう、十五分しか時間がないのに、時間切れをねらうような、ごちゃごちゃごちゃごちゃした答弁するから不信感を買うんですよ。

 私が申し上げているのは、移住の合意と募集要項に書かれていることがなぜ違うんですかとお聞きしているんで、そのことを説明してくださいということを申し上げているんですよ。正確に書くべきだったんじゃないですかということを聞いているんです。

鹿取政府参考人 どうも失礼いたしました。

 まず第一点の、一世帯当たり三百タレアの土地が無償譲渡される、この点について、なぜこう書かれたかということを先ほど過去の交渉経緯から御説明しようとしたわけでございます。また……(川内委員「委員長」と呼ぶ)

米澤委員長 まあ、ちょっと答えを聞いてから。(川内委員「だって、違うこと答弁しているんですよ、もういいです。そんなこと聞いても」と呼ぶ)

 今から本当を言うんだろう。鹿取さん。(川内委員「いやいや、だって、さっき、同じことを言うんでしょう」と呼ぶ)だから、今から言うんだよね、また。今から本当のことを言うんだよ。

鹿取政府参考人 それから、先ほど先生が御指摘になりました、なぜ、耕作権というお話だったと思いますが、それについて書いていないというお話でございましたけれども、ダハボンの一次の入植者に配分される土地の面積に関し、募集要項には、一世帯当たり三百タレアの土地が無償譲渡される等、記載されております。これは、昭和三十一年三月十二日の吉田公使とメルカード農務大臣との交渉で合意された内容等を記載したものでございます。

 なぜ、直ちに入植地の所有権が得られないこと、すなわち所有権を取得する時期について記載しなかった、こういう点については、当方としても記載した方がより親切だったのではないかと考えております。

 しかしながら、ダハボンの一次の募集要項においては、移民の資格として、純農業者であること、開拓意欲が旺盛であること、ドミニカ国に永住の目的で渡航する等と記載され……

川内委員 いや、大臣そして部長も、三月二十七日の三二六六で移住の条件が固まったと言っているんですよ。さっき言ったでしょう。それに、三百タレアまで、十八ヘクタールまで、土地は所有権はない、耕作権だ、それが三月二十七日に固まった移住の条件だと。

 そして、三月二十九日に募集が開始されているんですよ、三月二十九日に。三月二十九日の募集が開始された募集要項に、土地が十八ヘクタール無償譲渡されると書いてあるのはなぜですかということを聞いているんですよ。なぜ違うことを書いたのかということを聞いているんです。それは説明できないんですか。できないということでしょう。

 だから、もう長々と答弁されるとこっちも時間がないので、じゃ、こっちもちょっとずるいやり方をしますから。まずそれが一点。もう一回それをちゃんと答弁してください。

 合意したことと、両国政府で合意した土地の面積、あるいは所有の形態、それが募集要項になぜきちんと正確に書かれなかったのかということが一つ。

 それから、事前調査に関して、不十分ではあるが、不十分ではあったと思うけれども、ずさんではないと鹿取部長はお答えになっているけれども、私が前回の質疑の中でお尋ねをしたのは事前調査に関してでありまして、その際に、鹿取部長が、近藤技官、中田技官の五十六ページにわたる調査報告書もあると答弁をされていらっしゃいます。

 では、この近藤技官、中田技官の調査報告書というのは、移民募集の事前になされたものか、事後になされたものか、お答えください。

 さらに、ブラジルとの比較においていろいろなことをおっしゃっていらっしゃいます。ブラジルのアマゾンの調査報告書、このブラジルのアマゾンの事前調査報告書は、何人の人が何年かけて行った調査で字数はどれだけあったか。さらに、一方、ドミニカの吉岡調査団は何名で、どのくらいの時間をかけて行った事前調査であったか。

 ブラジルとの比較において、ドミニカの調査報告書には記載がない項目がたくさんあります。それを一つ一つ挙げてまいります。その項目としての記載があったかどうかをお答えいただきたい。どういう国か、地理、気象の条件、農業構造、農業に関する関係法、あるいは入植者の権利、その国の憲法、これらの項目に、一つ一つドミニカの報告書には記載があったかどうか。

 これらを踏まえた上で、すべてを踏まえた上で、それでもずさんではないというふうにお思いになられるかということをお尋ねさせていただきます。全部答えてください。

米澤委員長 鹿取部長、たくさんの質問ですから簡略に。

鹿取政府参考人 まずは、メルカード書簡にある、一家族当たり三百タレアまでの土地を供与する等の表現と、募集要領において、「一世帯当三百タレアの土地が無償譲渡される。」この表現の関係でございますが、これは、先ほど御答弁申し上げましたように、三月二十七日に至る……(川内委員「募集要項と言っていますよ」と呼ぶ)失礼いたしました。募集要項に、「一世帯当三百タレアの土地が無償譲渡される。」この記載との関係でございますが、この記載との関係につきましては、先ほど御答弁申し上げましたように、三月二十七日のメルカード書簡に至る過程で、日本政府とドミニカ政府との間でいろいろな議論がございましたし、協議がございました。これはもう繰り返しませんが、先ほどのような、節目節目の協議をもとに、我々としては、当時、政府としては、「一世帯当三百タレアの土地が無償譲渡される。」ということを要領に書いた、こういうことであると思います。

 次に、調査の話、先生御指摘になりました。

 調査の話については、昭和三十年九月に、吉岡移住第二課長、林屋当時メキシコ大使館補、農林省の近藤農林技官がダハボン、コンスタンサ等を調査いたしました。これは九月の一日から二十八日、昭和三十年でございますが、一カ月弱でございます。

 次に、先般申し上げましたのは、昭和三十二年九月七日から二十九日、これは農林省の中田技官それから海協連の横田支部長、この二人でネイバ、ドベルヘ、ハラバコア等を調査いたしました。

 そのうち、ネイバ及びドベルヘについての事前調査というものは、移住者の募集の後に行われていることは事実でございます。しかし、そのネイバ及びドベルヘについて、それがなぜ後に行われたか、事前調査の前に募集要項が出されたか、何によって募集要項が書かれたかということを申し上げますと、その段階では、当時、政府は、ドミニカ政府等からネイバ及びドベルヘについての情報を得て、それを踏まえて募集要項をつくったわけでございます。その後、中田技官がネイバ、ドベルヘ等を調査いたしましたけれども、実際の移住の開始というものは中田技官の調査の後でございます。

 次に、先生はブラジルの調査について御指摘になりました。

 このブラジルの御指摘の報告書は、先生より御指摘のあった予算委員会の議論やこれまで裁判における原告とのやりとり等を踏まえて、原告側が提示していた昭和六年のブラジルに関する調査、これを念頭に述べたものでございます。これは、アマゾナス州政府から百万ヘクタールの原始林地域の無償譲渡を受け、日本側でこれを測量し境界を画定する必要があったことなどから、調査団がこの地域を踏査測量して地図を製作しなければならなかった、こういう事情があったものと理解しております。

 ただし、これはもう七十年以上も前の調査であって、現時点で我々としてその調査報告自体を確認することはできませんので、大変恐縮ながら、その詳細については存じておりません。

 しかし、それとの比較で、先生が御質問になりました吉岡調査団につきましては、先ほど申し上げましたように、約一カ月にわたってダハボン等を調査した、こういうことでございます。(川内委員「何人」と呼ぶ)吉岡調査団、これはたしか合計三人で行ったと思います。

 吉岡調査団の項目につきましては、ドミニカ移住適地調査団報告書ということで、概況、政治及び政情、資源及び産業、ドミニカの移民政策、入植候補地の概況、ドミニカ政府との交渉経緯、結論、こういうことで書いてあります。(川内委員「いや、聞いたことに答えてください、一つ一つの項目について記載があるかないかということを」と呼ぶ)先ほど御答弁しましたように、アマゾンの調査については、私ども、詳細は承知しておりません。(川内委員「だから、どういう国か、地理、気象条件、農業構造、全部質問通告しているじゃないですか。なぜ答えられないんですか」と呼ぶ)

 恐縮でございます、ドミニカについてでございますか。(川内委員「全部質問通告してありますよ。何でそんなことを今僕に聞くんですか。答えるまで動きませんから」と呼ぶ)ドミニカについては、その概況、それから政治及び政情、資源及び産業、それからドミニカ国の移民政策、対スペイン政策、対日本政策、入植候補地の概況、ドミニカ政府との交渉経緯、これがドミニカの吉岡調査団の報告書の内容でございます。

米澤委員長 川内君、また時間を改めてやりますか。時間が来ました。

川内委員 最後に、一言だけ。

 私は、きのう、五時間かけて質問通告をさせていただいたんです。すべて詳細にきちんと文章で申し上げてあります。そのことについて誠実にお答えいただけないというのは本当に残念です。

 委員長、もう一度、委員長や理事の先生方にお許しをいただいて、また質疑の機会をお与えいただきたいというふうに思います。

 アマゾナスの調査報告書は知らないということですから申し上げます。十四名の方が四年かけて調査したんです。三十万字です。吉岡調査団は、三人で一カ月、九千字です。これだけ申し上げて、きょうは終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

米澤委員長 はい、御苦労さん。

 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。

 日米地位協定のもとでの日米交渉の第五回交渉が行われました。その中身が報道されているわけですが、三月二十四日及び二十五日に開催された外務省からの報告を見ますと、今回の交渉は充実したものになり、幾つかの点で重要な進展を見ることができた、一方、両国間で調整が必要な点が残されており、引き続き調整を行っていく、このように述べております。

 それで、改めて確認したいと思いますが、重要な進展を見ることができたという内容はどういうことでしょうか。そして、両国間で調整が必要な点が残されている、この内容はどういうことでしょうか。それぞれについて答えていただきたいと思います。

海老原政府参考人 今、赤嶺委員がおっしゃいましたように、今回の交渉は非常に充実したものになったわけでございますが、調整が必要な点も残されているということでございます。

 充実したものということは、幾つかの点で重要な進展を見ることができたということでございまして、他方、調整が必要な点は残されておりまして、今後、早期に合意を達成すべく、引き続き緊密に調整を続けていくということになったということでございます。

 それぞれの中身をということでございますけれども、これはまだ日米間で協議中でございますので、内容等について申し上げるのは差し控えさせていただきたいというふうに思います。

赤嶺委員 全く何も明らかにならないんですね。そういうわけにいかないんじゃないですか。皆さん自身が、重要な進展があった、合意に至らない点があったということで、小分けして問題点を出しているわけですから、少なくとも、基本的な点は国民に明らかにすべきじゃないですか。

海老原政府参考人 この交渉は、昨年四回行われまして、夏に四回集中的に行いましたが、その後中断をいたしまして、今回二十四、二十五と再開したということでございます。

 この交渉の中身につきましては、昨年四回交渉を行いましたときに、米側の、米兵の被疑者を我が方の当局が取り調べますときに、先方の、米国の政府関係者の同席をどう扱うかということを含めまして、米兵容疑者の取り扱いについて協議をするということは明らかにしておりますが、その内容をさらに詳しくということであれば、これはまさに今交渉中でございますので、差し控えさせていただきたいということでございます。

赤嶺委員 去年の夏、確かに四回にわたる、日米間の地位協定のもとでの刑事裁判手続に関する交渉が行われています。それで、皆さんの外務省から出したペーパー、第一回から第四回まで読んでみましたら、今北米局長の答弁にもありましたように、日本の当局が行う取り調べにアメリカの関係者が同席する、この問題について専ら協議した中身になっているわけですね。

 ところが、一九九五年十月二十五日に合意された刑事裁判手続に関する合意についての内容に関して言えば、殺人または強姦という犯罪以外について、これは「その他の特定の場合」、このように表現されているわけですが、この「その他の特定の場合」について、何に当たるか、これは前の私の質問に対しても、これから日米間で詰めていくテーマになっていたわけですよね。

 今回の、去年の夏四回、ことし五回にわたる、そして皆さんが、重要な進展を見ることができた、問題点が残されているという点で言われている、両国間で調整が必要な点が残されているという中にその他の事項というのが入っているんですか。

海老原政府参考人 九五年合同委合意に、我が方が考慮されるべきと考えるその他特定の場合についても身柄の引き渡しが行われるということが書いてあるのは事実でございまして、このその他特定の場合を明確化するということで、これは合同委員会合意のもとに、刑事裁判手続に関します特別専門家会合だったと思いますが、ここで議論をいたしてきております。

 今回の交渉におきましては、主要な議題は先ほど申し上げたとおりでございまして、このその他特定の場合の明確化というのは主要な議題ではございませんけれども、この問題も念頭に置きながら協議は進めております。

 ただ、この問題が、調整を残されたものというふうに入っているかどうかということにつきましては、差し控えさせていただきます。

赤嶺委員 その他特定の場合がどういうときに当たるのか、このことについて、皆さん、運用改善が効果があると言ってきた以上、これについての責任は重大だと思いますし、過去四回、五回にわたる中で、県民が見えるような形でこれが協議されたというものが本当に今の答弁では見えてまいりません。

 そこで、九五年十月二十五日のこの合意、刑事裁判手続に関する合意については、合衆国は、殺人または強姦という凶悪な犯罪について、被疑者の起訴前の拘禁移転、つまり身柄引き渡し、これについて、いかなる要請に対しても好意的配慮を払うとあります。そういう合意があったわけですね、運用改善が。

 にもかかわらず、今回の交渉の中では、アメリカは、日本が行う取り調べにアメリカ政府関係者が同席するということを要求してきているわけです。身柄を引き渡す、好意的配慮を払うといいながら、アメリカの側がこうした条件をつけてきたのはなぜなんですか。あの合意以外にどうしてこんな条件がつけられたのか。しかも、合意したものを後退させるものではないかと考えるんです。そういう議論も起きているんです。

 今回の日米交渉というのはアメリカ側から提起がされたわけですね。提起がされて、日米交渉が行われた。何でそういうアメリカ側の提起に応じて協議を行ったんですか。いかがですか。

海老原政府参考人 九五年合同委合意に基づきまして、身柄の引き渡し、過去三回行われておりますけれども、その引き渡しの協議の中で、今取り上げているようなこの問題につきまして両国間で調整が行われてきたわけでございます。

 したがいまして、その問題につきまして事前に日米間で合意をつくっておけば、この九五年合同委合意に基づきます身柄の引き渡しというものがより円滑に行われることになるだろうという観点から、我々今協議を行っているわけでございまして、これは別に、米側が九五年合同委合意に新たな条件をつけているとか、あるいはこれを後退させようということではございませんで、むしろ九五年合同委合意をさらに改善しようという観点から、日米で協議を行っているものでございます。

赤嶺委員 そうすると、アメリカは、今度の、取り調べに対して立会人を認めたら、身柄の引き渡しについては無条件に行いますよ、こういうことになっているんですか。

海老原政府参考人 九五年合同委員会合意に基づきまして、起訴前の米兵の引き渡し、これが道が開けまして、既に三件、実際に行われている。これは、米国が地位協定を結びまして駐留をいたしております例えばNATO諸国、韓国にも一切例はございません。そういう意味で、我が国は最も改善が行われているというふうに理解をいたしております。

 今回の合意が成立いたせば、先ほど申し上げましたように、さらに起訴前の拘禁移転が円滑に行われるということが期待をされるわけでございまして、これは、今赤嶺委員がおっしゃいましたような無条件というようなことにはならないかもしれませんけれども、私としては、円滑な引き渡しが可能になるという意味において大きな運用の改善であるというふうに考えております。

赤嶺委員 身柄の引き渡しについて、北米局長は極めて認識が足りないと思います。これまでも、事件が起きて、基地の中で米軍の手中にある米兵を、犯人を、身柄引き渡しを要求してもすぐには応じない、時間がかかる、そういうことについて県民がこれまでの歴史的な体験から本当に屈辱的な思いを持っている。したがって、身柄は無条件に引き渡すべき、好意的配慮を払うというような問題ではない、そこに、地位協定を改定せよという中心があるわけです。

 今答弁を聞いていましたら、犯人の引き渡しについて好意的配慮以上の手だてを米側がとるから、捜査について立ち会いを認めるというアメリカの要求を受け入れる方向かと思ったら、それも不明確だと。この問題については全く不明確にし、あいまいにしたまま、一方的にアメリカ側の要求を受け入れている。これは、今まで地位協定の改定と言ってきた問題について何も解決していない。むしろ屈辱的な方向に一歩、日本の側が妥協しているということを指摘しておきたいと思います。

 そこで、ちょっと条約の問題にも移っていきます。一つは、たばこ枠組条約について幾つか聞きたいと思います。

 条約の作成過程では、未成年者がどこでもたばこを購入できないようにするため、自動販売機を段階的に廃止すると規定されていたと思いますが、なぜそれが、十六条にある「自動販売機が未成年者によって利用されない」という抽象的な表現に変えられたのか。日本政府もそういう主張をしたのか。条約の目的を達成するためには、自動販売機を段階的にせよ廃止するよう条約修正を提起すべきではないかと思いますが、いかがですか。

門司政府参考人 条約の規定でございますけれども、十六条の1に、締約国に対し、未成年者に対するたばこ製品の販売を禁止するための効果的な措置をとることを義務づけております。そして、それの上で、これらの措置の一つの例としまして、たばこの自動販売機が未成年者によって利用されないことを確保するということを挙げております。したがいまして、条約自体は、今先生おっしゃいましたとおり、自動販売機の設置の禁止や削減自体、それを義務づけているものではございません。

 我が国におきましては、たばこの自動販売機については、財務省におきまして、屋外の自動販売機について、店舗内の従業員のいる場所から視認できるような店舗併設の措置がとられているかどうかといった実態調査を行いまして、その結果を踏まえて、必要に応じて是正措置を求めるとともに、新規のたばこ小売販売業の許可申請時に、自動販売機での販売を予定している者につきましては、その販売機を十分に管理監督が可能であると認められる場所に設置しない限り許可を行わないこととしていると承知しております。また、現在、たばこ業界等においては、成人識別機能つき自動販売機の導入に向けた実験的試行が行われていると承知しております。

 したがいまして、この条約のもとで、未成年者がたばこの自動販売機に近づけないようにするためにどうしたらいいかという措置を今検討しておりますけれども、この条約自体は、そういうたばこの自動販売機自体を禁じておりません。これは、条約の作成過程において、いかにみんなが参加できて実効的な規制をつくることができるかというその検討の結果、こういった規定でまとまったものと承知しております。

赤嶺委員 未成年者の喫煙を減少させること、これもこの条約が要求しているわけですが、たばこ会社が未成年識別装置を取りつけて、これで本当に実効性があるのかどうか。やはり、たばこ会社に対しても、そこの利益奉仕という立場ではなくて、自動販売機の廃止に向けた取り組みというのを厳密にやっていただきたいということを申し上げておきたいと思います。

 それから、無形文化遺産の保護条約ですが、本条約の目的である、演劇、音楽、舞踊、風俗習慣、儀式、口承伝統、工芸技術などの無形文化遺産を人類共通の遺産としてとらえて、締約国がそのための国際協力援助体制を確立し、必要な措置をとり、保護していくことは意義のあることであり、また、特に開発途上国の無形文化遺産の衰退、消滅、破壊が急速に進んでいるという現状を踏まえると、早期発効は急務を要すると考えております。

 そこで伺いたいわけですが、有形の文化遺産、自然遺産を世界遺産として保護するための世界遺産条約は一九七二年に条約ができているのに、無形文化遺産の保護条約が昨年十月の三十二ユネスコ総会まで採択されなかったというのはなぜなのか。有形と無形の違いということはあるにしても、もう少し早い段階で各国のコンセンサスを得られなかったのか。その辺の事情について聞きたいと思います。

近藤政府参考人 赤嶺議員御指摘のように、世界遺産条約は一九七二年に採択をされましたが、無形に関する条約は昨年と、約三十年の時差がございます。

 この理由としましては、遺跡や建造物のような有形の文化遺産というのは、紛争あるいは自然災害等による破壊が非常に目に見えてわかりやすいということから、国際社会の大きな関心を引きまして、そういうことで、かなり早い段階で条約が採択されたというふうに考えております。これに対しまして、演劇、音楽、伝統工芸等の無形文化遺産というのは、具体的な衰退あるいは消滅といった危機の状況の把握がより難しいということから、国際社会の関心の高まりがややおくれたというふうに考えております。

 こうした中で、我が国は、例えば一九五〇年に策定しました文化財保護法などを含めまして、無形文化遺産の保護制度を他国に先駆けて整備してまいりました。そういった経験を踏まえて、無形文化遺産の保護の重要性を強く訴えるということで、この条約交渉においても常に主導的な立場をとってまいり、役割を果たしてまいりました。その結果、昨年十月にこの無形文化遺産保護条約が採択されたというふうに考えております。

米澤委員長 赤嶺君、質疑時間が満了です。

赤嶺委員 では、最後の質問です。

 二〇〇一年のユネスコの第一回人類の口承及び無形遺産の傑作宣言、二〇〇三年の第二回の同宣言がなされているわけですけれども、宣言にとどめることなく、その条約の必要性、そして採択されるに至った経緯と議論、また、この宣言に基づいて日本は無形文化遺産の保護のためにどのような取り組みをしてきたのか、各国の取り組みの状況はどうだったのか、簡潔にお答えいただきたいと思います。

近藤政府参考人 委員御指摘の傑作宣言につきましては、我が国からは能と文楽がリストに掲げられております。我が国を含め各国とも、それぞれの国内法に基づきまして、これはまだ条約ではございませんが、この宣言に合う趣旨を体現して文化財保護をすべく、それぞれの国内において施策をとってきております。

赤嶺委員 きょうの審議をしてみても感ずることですが、条約審議は条約審議としてしっかり時間をとり、そして定例日においてまた一般質問を行うというのは当外務委員会において本当に必要なことだと思いますので、そういう方向を要望しつつ、私の質問を終わります。

米澤委員長 次に、東門美津子君。

東門委員 私も、午後の条約の時間はありませんので、まとめて午前中にさせていただきます。

 外務大臣が、基地の重圧に苦しんでいる沖縄県民の負担の軽減のためにSACOの最終報告を着実に実施していくと常々繰り返されているSACO合意から七年余が経過しています。そのSACO合意で、五年ないし七年以内に、市街地の真ん中にある普天間飛行場は返還が約束されました。しかし、期限を過ぎても実現していません。

 SACOはなぜ計画どおりに進んでいないのか、その遅滞の原因は何だとお考えでしょうか。お聞かせください。

海老原政府参考人 今、普天間飛行場の問題をお述べになりましたけれども、土地の返還につきましては、詳しくは申しませんけれども、幾つかはもう実現をしておりますが、他方、最初にSACO最終報告で想定をされていた時期よりもおくれているというものはございます。

 他方、SACO最終報告のその他の部分、訓練及び運用の方法の調整、騒音軽減イニシアチブの実施、地位協定の運用の改善に関する各項目につきましては、ほとんど実施済みでございます。

 土地の返還につきましては鋭意取り組んでおるわけでございますけれども、これは、例えば、地元地方公共団体等の御理解、御協力を得るべく十分な調整を行ってきたものの、この調整に予想以上の時間を要しているもの、あるいは、移設先におきます自然環境に与える影響を調査する必要があるというようなことがおくれている原因であるというふうに考えております。

東門委員 移設先の自然環境も出ました、それから地元の皆さんのことも出ましたけれども、やはり、最初からかなり無理があったということじゃないんでしょうか。普天間の飛行場を返還するに当たっては、辺野古に移設をする、そういうことにかなり無理があった。それが期限を過ぎているんですね、七年。五年ないし七年が、もう既に七年が過ぎている、やがて八年になろうとしている。それでもまだ見えない。そういうことは、着々と進んでいるというお考えなのですか。

海老原政府参考人 今、普天間飛行場の問題もお述べになりましたけれども、これは、いつも川口大臣もおっしゃっていますように、いろいろな経緯がございまして、特に代替施設協議会におきまして二年以上にわたりまして地元の公共団体の方々と調整を行って、その過程で、当初予想されていたような整備内容に変更が生じた。例えば、軍民共用にするとかというようなこともありましておくれているということでございまして、それぞれの事案につきまして、おくれている理由はこうこうであるというふうに考えてはおりますけれども、SACOの最終報告、これはなるべく多くのものを早く返還、移設を実現したいということで、その期待を込めて、このころをめどにというようなことをかなり書いてあったということでございまして、これは、無理であったというよりも、それを目標にみんなで頑張ろうということでそういう記載になっていたというふうに私は理解しております。

東門委員 SACOの最終報告の中に、五年ないし七年をみんなで頑張ろうということで入れ込んだということになるんですか。でも、私がお聞きしたのは、何となく局長は広げて、SACO最終報告全体ということを言うけれども、普天間の飛行場、その返還は五年ないし七年だ、はっきり年限が決められていたわけですね、それが計画どおりに進んでいませんよね、なぜこんなにおくれてもまだ進んでいないんですか、それをお聞きしたんです。

 何やかんやおっしゃる中で、土地の返還がどうのこうのというので、私は辺野古に焦点を当てたつもりなんですが、また今度は戻っちゃったので、大臣、いかがでしょうか。なぜ進んでいない。普天間に限ってお尋ねします、最終報告全部ではありません。普天間の飛行場に関しては、なぜ、五年ないし七年という年限がありながらできていないんでしょうかという質問です。

川口国務大臣 これは、委員もよく御案内のいろいろな経緯があったということでございます。例えば、海上ヘリポートがとんざをしたとか、そういったことがあったわけでございまして、そういったことを受けて、また、地元の方々の、軍民共用というようなお考えもあったわけでございます。

 いずれにいたしましても、平成十一年の時点で、閣議決定をして基本方針を政府として決めたということでございます。そして、十二年に至って、八月に代替施設協議会、これを設置して、それから二年間の長さで協議を積み重ねて、そして地元の方々の御意見も聞きながらこの過程をやったわけですけれども、平成十四年の七月、二年後に、普天間飛行場代替施設の基本計画が決定をされたということでございまして、十五年に至って、代替施設建設協議会の設立があったということでございます。

 今、この基本計画を踏まえて、引き続き地元の方々の御意見をきちんと伺いながら、協議をしながら、これを閣議決定にのっとって進めている、そういう過程にあると思います。いろいろな経緯があって、御案内のような形に今なっているということだと思います。

東門委員 ちょっとらちが明かないので、質問を続けていきます。

 昨年四月の宜野湾市の市長選挙で当選した市長の伊波さんは、五年以内の普天間飛行場閉鎖に努めることを公約に掲げて、就任後、その実現方に取り組んでいますが、市長が主張している普天間基地の五年以内の返還あるいは閉鎖は、それはあり得ると考えられますか。今のアメリカの動きの中で、もちろん日本政府は否定しておりますけれども、ひょっとしたら、それはあり得るのかなということもあり得ましょうか。それをお聞きします。大臣、お願いします。

川口国務大臣 これにつきましては、先ほど申しましたように、平成十一年の閣議決定にのっとりまして、そして、基本計画があるわけでございますので、それを踏まえて、地元の地方公共団体の方々と協議を重ねながらこれを進めてまいりたいというふうに考えております。

東門委員 普天間の代替施設の環境影響評価に向けての方法書の作成がおくれているというふうに報じられていますが、なぜおくれているのでしょうか。これは防衛施設庁でしょうか、お聞かせください。

河野政府参考人 お答えいたします。

 普天間飛行場代替施設建設に係る環境影響評価方法書の作成につきましては、当庁において所要の作業を鋭意進めておりますが、民間区域の事業主体の調整などがあったため、当初の予定より作業に長い期間を要しているところであります。

 いずれにせよ、環境影響評価に係る手続につきましては、できる限り速やかに方法書を作成し、所要の手続を経て、公告縦覧を実施したいと考えておるところであります。

東門委員 民間部分が加わったためにおくれているということなんですね、今の御答弁。わかりました。

 方法書作成後、いろいろと手続があるようですね、公告縦覧等とか、意見とか、現況調査等々あるようですが、その一定の手続を経て工事着工というふうになると思うんですが、工事着工までの最短期間をどれくらいで見ておられますか。

河野政府参考人 お答えいたします。

 普天間飛行場が市街地にあることもあり、一日も早く周辺住民の方々の不安を解消したいとの考えから、これまで沖縄県等の地元公共団体と十分協議を行いながら、普天間飛行場の移設、返還の問題に全力で取り組んできたところであります。

 平成十四年七月に決定されました基本計画策定後の代替施設の整備につきましては、環境影響評価を実施した後、公有水面埋立承認に係る手続をとり、これらの手続が終わった後に工事に着手することとなります。工事着手前の環境影響評価等に要する時間につきましては、現時点で正確に見積もることは困難でありますが、環境影響評価には少なくとも三年程度はかかるものと考えております。

東門委員 環境影響評価との関連も出てくると思うんですが、作業ヤードについてもお聞かせください。

 作業ヤードは、私たちには本当に驚きという形で目の前に出たんですが、最初、大浦湾埋め立て案が出されまして、その後、中城湾港が出てきた、そして三番目に辺野古が候補地として浮上してきているという状況ですが、一部報道にあるように、この三カ所に分散して作業ヤードを設置するということがあるのか、あるいは、その三カ所のうちからどこか一カ所に絞っての設置になるのか、そこをお聞かせください。

河野政府参考人 お答え申し上げます。

 普天間飛行場代替施設の建設に当たっては、建設資材の製作や一時的なストックのために陸上ヤードを確保する必要がございます。

 陸上ヤードにつきましては、第二回代替施設建設協議会において、既存の陸域の利用のほか、近傍海域に設置することは一般的に可能であり、具体的な規模、設置方法等は今後検討していくが、仮に近傍海域の埋め立てにより陸上ヤードを設置するとした場合の範囲は大浦湾西岸海域が考えられる旨、説明したところであります。

 現在、既存の港湾施設等の陸域や代替施設の近傍に陸上ヤードとしての適地が存在するかなどの検討を進めているところであり、代替施設の近傍に位置する辺野古地域の状況についても、その一環として情報収集等は行っておりますが、いずれにしても、陸上ヤードの具体的設置場所等につきましては、ケーソンやブロック等が効率的に輸送することができるかなどの技術的な観点や環境保全の観点等も踏まえ、地元地方公共団体とも相談しつつ、幅広く検討を進めていきたいと考えているところであります。

東門委員 それは、部長の考えでは、大体どれくらいの時間を要する、いつごろまでには場所が選定できるというふうにお考えですか。検討中だというのは伺っているんですが。

河野政府参考人 現在のところ、調整をやっているところでありまして、具体的に申し上げることはできない状況であります。

東門委員 時間がないようで、何か条約も、せめて一問だけはさせてください。

 たばこ規制枠組条約について伺います。

 昨年五月二十一日の世界保健総会で採択され、間もなくして各国による本条約への署名が開始されました。しかしながら、我が国が署名したのはことし三月に入ってからであり、九十八番目と大きく出おくれました。

 我が国は、WHOの統計によれば、中国や米国などと並んで紙たばこの生産、貿易、消費の分野における主要国であり、率先して署名することが国際社会への貢献ともなったはずなんです。しかも、本条約による国内措置の実施は新たな立法措置や予算措置を講ずる必要もなく、少なくとも迅速に署名できたのではないかと思われますが、署名が遅くなった理由について伺います。

石川政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま御指摘いただきましたように、この条約は、昨年六月に署名のために開放されまして、我が国は本年三月十日に署名いたしました。

 我が国におきましては、政府として条約に署名を行う場合には、一般に、その条約の目的、意義、内容等の諸要素を踏まえつつ、国内法制との整合性、具体的には、条約の実施のための国内法令の整備の必要性、必要と判断される場合には国内法令整備のめどについて検討し、そのめどが立った段階で署名を行うこととしております。たばこ規制枠組条約につきましては、そのめどが立ったということで署名させていただいたわけでございますけれども、現在、署名国は百一カ国に上っております。

 そこで、条約の発効要件について言及させていただきますと、発効要件は四十カ国の締結と規定されておりまして、これまでに締結済みの国は九カ国にとどまっております。我が国としては、各国に締結も呼びかけながら今作業をしてまいったわけでございますけれども、仮に今国会で御承認をちょうだいでき、そして締結するに至れば、国際的におくれをとるということではない、そのように考えておる次第でございます。

東門委員 もう時間ですので終わりますが、このたばこ、ここは確かに条約を審議する場ではあるんですが、たばこ事業法とかなりずれてくるなというところもあるんですね。たばこ事業法の中には、国民の健康を守るというのが、条約に入っていて、それにないというのもあって、やはり国内法もある意味で整備していかなきゃいけないんじゃないかということを申し上げて、私の質問を終わります。

米澤委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩します。

    午後零時三十四分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時三十二分開議

米澤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 刑事に関する共助に関する日本国とアメリカ合衆国との間の条約の締結について承認を求めるの件、無形文化遺産の保護に関する条約の締結について承認を求めるの件及びたばこの規制に関する世界保健機関枠組条約の締結について承認を求めるの件の各件を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 各件審査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房審議官門司健次郎君、外務省大臣官房文化交流部長近藤誠一君、財務省大臣官房審議官大前忠君、文化庁次長素川富司君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

米澤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

米澤委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。武正公一君。

武正委員 民主党の武正公一でございます。

 三条約についての質疑を行わせていただきます。特に、日米刑事共助条約の質疑を中心で行わせていただきますが、ちょっと順番を変えさせていただきまして、まず、尖閣諸島の点について外務大臣にお話を伺いたいと思います。

 今まで理事会を、三十分以上開会がおくれる形で進んでまいりましたのは、民主党から、本委員会で今回の尖閣諸島不法上陸に関しての案件の決議をすべきである、こういったことを与党側に求めてきた経緯でございます。

 特に、先週金曜日夜八時以降に七名の活動家を強制送還させた。容疑を否認し器物損壊の疑いもある活動家を入管から帰してしまった。我が国の主権を侵されながら、それを容認するということで、断じて許すことはできない。しかしながら、午前中、川口外務大臣から、沖縄県警の決定ですよ、こういった答弁が繰り返される。本外務委員会として、やはりこの事態を見過ごすわけにはいかないということでの決議をすべきということで、理事会で求めてまいりましたが、残念ながら与党側が応じず、本委員会の審議が今始まったところでございます。

 そこで、まず、外務大臣には、今般なぜ入管が強制送還したのか、私はその過程が大変疑問でございます。沖縄県警が決めたことだという御答弁でありますが、外務省も当然相談にあずかっていたはずでありますし、外務省としての意見も、沖縄県警あるいは入管あるいは検察あるいは首相官邸、さまざまな調整があったはずでございますが、外務省としてどのように今回の強制送還にはかかわったのか、あるいは意思を表明したのか、あるいはサジェスチョンを与えたのか、これについて御答弁をいただけますでしょうか。

川口国務大臣 これは、尖閣諸島が我が国にとって、歴史的にも、そして国際法上も我が国固有の領土であるという立場があるわけでございまして、そして、この領土において違法行為が行われれば、それは法治国家でございますから、関係法令に従って対応が行われるというのは当然のことであるというふうに思っております。そして、この件につきましては、関係の御当局におかれまして適切なる御判断をなさった、適切に対処をなさったというふうに承知をいたしております。

 外務省として、そういったことについて、私が今申し上げたこと、これはいろいろな折にその態度の表明はしてきておりますけれども、それを超えて関係の御当局の判断に対しまして何か影響力を行使するというようなことは全くしていないわけでございまして、先ほど委員がおっしゃった沖縄県警云々という答弁は、けさのは私のではございませんで、関係の御当局の警察庁等の御答弁であったかと思います。

武正委員 外務副大臣もお見えでございますので、私は、「サンデープロジェクト」を拝見しておりました折に、たしか副大臣、これは沖縄県警が決めたことですというようにテレビで言っておられましたが、その点、突然でございますが、いかがでしょうか。

逢沢副大臣 だれがこの処理について責任を持つ判断をしたのかということについては、累次政府側から答弁したとおりでありますし、また、外務省の立場については、先ほど川口大臣から答弁があったとおりであります。

 委員御指摘の先般のテレビ出演の件でございますが、同様の質問がアンカーマン、キャスターからございました。たまたまテレビに出ておりまして、私からも、これは最終的に沖縄県警察本部、沖縄県警の判断であるというふうに申し上げました。

 ただ、その判断に至る過程にあっては、警察庁を通じて、必要な法律の解釈の判断、やりとり、そういうことについてはやりとりがあった、そしてそういうものを踏まえて最終的には沖縄県警が適切に判断をし、入管に引き渡すという決定を行った、そのように申し上げたところであります。

武正委員 そうすると、警察庁から照会があったということでございますが、その中で、入管から強制送還をしますということでの報告というか、どうですかという照会はあったんでしょうか。

逢沢副大臣 外務省の立場として、警察庁が自主的にどのようなやりとりをしたかについてお答えを申し上げる立場にはないというふうに思いますが、警察庁からの報告によれば、そのような処理が内部でなされたというふうに承知をいたしております。

武正委員 外務大臣、こうした照会が外務省に警察庁からもあったということなんですけれども、そういったやりとりがある中で、既にこの委員会では三月十六日付で決議をしております。

 これをちょっと読み上げますと、例の外務省設置法等の決議でありますが、「外務省においては、国民の生命財産を守り、領土領海を守り、国益を守るために、日本外交の適切かつ効果的な力強い展開を図り、不祥事の再発を防止し、信頼を回復するために、より一層の情報公開と外交機能強化のための組織・制度の改革に全力で取組むこと。」これを含めた六項目の決議をいたしまして、外務大臣としては、「法律案と同時に可決されました附帯決議については、これを厳粛に受けとめます。」このように御答弁をされているわけなんです。

 今回、不法に上陸をした七名の活動家、これをやはり国内法をもって適切に処理すべし、こういったことを先ほど言われ、そういったことも指示をした、問い合わせについては答えたということでありますが、先ほどの決議も「厳粛に受けとめます。」というふうに言われる中で、容疑を否認したまま帰してしまう、器物損壊の疑いもあるのに。こういったことについては、外務大臣として適切な対応だったというふうに思うわけでございますか。こういった決議を踏まえてのことでございます。

川口国務大臣 先ほど申しましたように、これは我が国の領土内において行われたことでございまして、それに対しては我が国の国内の法令をもって適切に対処をするということが正しいわけでございます。そういったことを関係の御当局において考えられ、適切なる判断をなさったというふうに私どもは承知をしているわけでございます。

 それから、警察庁から外務省に対して問い合わせがあったとか何かがあったとか、それは、外務省の考え方というのはそういうことでございますから、私はずっとそういう考え方で行動するということを指示いたしてきておりますけれども、そういった警察庁とのやりとりについては私は承知をいたしておりません。

武正委員 そうしましたら、では、どこの省庁と問い合わせ、やりとりがあったんですか。沖縄県警が単に入管あるいは検察とやりとりをして強制送還をされた、一切各省庁から外務省に対して照会はなかったということでございますか。

川口国務大臣 そういった事実関係については私は承知をしておりませんので、もしあれでしたら政府参考人をお呼びいただければというふうに存じます。

武正委員 政府参考人じゃなくて外務省のトップである外務大臣に聞いているんですよ。外務省にそうした照会はないんですか、関係各省庁から一切なかったんですかとお聞きしているんです。

逢沢副大臣 先ほど御答弁申し上げました、沖縄県警が警察庁を通じて政府内関係省庁に問い合わせをし、最終的には沖縄県警察の責任において判断を下した、そのように申し上げたわけであります。

 警察庁がどの省庁にどういったことで照会、問い合わせをしたかにつきましては、これは警察庁の方から正式に答弁をするものというふうに思われますが、私どもとしては、出入国管理難民認定法の解釈、扱いについて判断をするための照会ということであれば、恐らく法務省当局と御相談をされたのではなかろうか、そのように推測をいたします。

武正委員 そういった推測のもと、関係省庁との協議が、外務省、行われたわけですよね。今の法務省、そういったことは事実ありますか、法務省とのやりとりは。

逢沢副大臣 先ほど大臣からも答弁をされましたように、警察庁あるいは法務省から、外務省としてこの事案についてどのような意見があるか、あるいはどういったことであるか判断を求めるといったようなことが我が省に対してなされたというふうには承知をいたしておりません。

武正委員 それでは内閣官房はどうですか。

逢沢副大臣 警察庁が、政府内のどの部署に対してあるいはどの省庁に対して、どのような照会あるいは問い合わせ、打ち合わせをされたかの全貌について私どもは承知をする立場にはございません。

武正委員 私が言ったのは、内閣官房から外務省に、協議、問い合わせ、やりとり、そういったものはあったんですかと聞いたんです。

逢沢副大臣 内閣官房から外務省に対して何か意見を求めるといったようなやりとりがあったということも承知をいたしていないと申し上げたいと思います。

武正委員 そうすると、では、この事案に対して外務省はノータッチということなんでしょうか。

逢沢副大臣 外務省は、対外的に日本を代表する役所であり窓口でございます。この事案が起きて間もなく、駐日大使、武大偉大使を我が省に呼び、厳重に抗議をするとともに、遺憾の意を表明いたしました。その後、武大偉大使の方から申し出があり、二度にわたり外務省を訪ねられた、そういう経緯もございますが、その都度、面接をいたしました竹内次官から、尖閣諸島は我が国固有の領土である、これは国際法的にも歴史上も全く疑いの余地がないところである、したがって国内の法令に従って粛々とこの案件については処理がされるということについて御説明を申し上げた。

 そういったやりとりについては外務省が責任を持って行ったところでございますけれども、警察庁からあるいは内閣官房から、外務省としてこの事案をどのように処理したらよいか判断を求められたといったような経緯はなかったというふうに承知をいたしております。

武正委員 私は、強制送還の件ということを、先ほど、この件、ノータッチなんですかというふうに触れたんですね。

 今のように明確に、法務省あるいは内閣官房から強制送還について外務省の意見を正式に求められたということはないと承知をしているという答弁でありますが、そこまでかっちりと聞いているわけではありませんで、外務省として、法務省、入管、強制送還、あるいは沖縄県警とのやりとり、これについて、一切やりとりが外務省とはないまま決められたと。それぞれの関係省庁だけではなくて、内閣として、内閣に所属する各省庁含めた、あるいは首相官邸含めて、強制送還に至る決定で外務省とのやりとりはなかったんですかというふうにお聞きしたんですが、いかがでしょうか。相談です。

川口国務大臣 これは、国内の制度の仕組みといたしまして、つかさつかさが判断をしていくということでございまして、外務省の立場は、そういったことは国内の法令に従ってそれをつかさどるところで御判断をなさるべきことであって、外務省としてそういうことは、私どもは対外関係のところについては責任があるわけでございまして、これはきちんと外務省としてやったつもりでおります。

 意見を求められ、こうしてほしいというようなことは一切なかったと申し上げたいと思います。

武正委員 私は、意見を求められ、こうしてほしいということを言ったことはないということを聞いたわけじゃなくて、相談があったんじゃないですかというふうに聞いているんですね。

 つかさつかさと申しますが、お相手は中国政府もかかわる中国人活動家でございます。外務省がノータッチであろうはずがないというふうに考えますが、相談もなかったというふうにおっしゃるんでしょうか。

川口国務大臣 この七人に対して政府としてどのような対応をするかということについては、御相談はあずかっていません。

武正委員 どうなんですか、同僚委員におかれて、本件で外務省が相談にあずかっていない、今こういう答弁が外務大臣からあって、では本当に我が国の危機管理なりが働くのかどうか。

 私は、ぜひこの委員会での決議が必要である。このような政府の対応、そして、外務省がこうした案件について相談にあずかっていないと外務大臣が言い切ってしまうこと。午前中も前原委員がこのことを再三再四外務大臣に求めましたが、同じような答えでありました。

 私は、委員長にぜひ、やはりこの沖縄県警の捜査の過程、そしてまた、なぜ入管から強制送還をしたのか、送検をする、その決定をする二時間前の決定でございますが、こうしたさまざまな問題点が不明なままこの案件を容認することは到底できないわけでございまして、これはぜひ、例えば秘密会にしてこの委員会を開催して、関係各省庁、担当を呼びまして、その正しいところをただす、これが必要だと思いますが、この点をぜひ理事会にお諮りいただきたいと思います。

米澤委員長 了解しました。

武正委員 それでは、次に移らせていただきます。

 川口外務大臣は、中国の外交部長というんでしょうか、外務大臣に電話会談をされた。電話会談をされた内容をお答えいただけますか。

川口国務大臣 これは、二十六日に中国から、電話会談をしたいという申し入れがあったわけでございます。それで、時間の調整をしまして、結果的には夕方になっていたと思います、六時近かったかもしれませんが。

 それで、そのときにまず李部長の方から、中国人の活動家の尖閣諸島上陸について問題提起があった、中国の立場の開陳があったわけでございます。それで、これに対しまして私の方からは、尖閣諸島に関しての我が国の立場、これは繰り返しませんが、我が国の固有の領土であるということですけれども、それを述べました上で、この時点で強制送還が決まっておりましたので、それについて、我が国の法令に基づいてこれについての対応、処理が行われたということを先方に伝えたということであります。

 それで、その時点で既に現地において発表が行われたということを説明、現地というのは沖縄ですけれども、発表が行われたということを説明いたしまして、この種の類似の事件の再発を防止するべきであるということについて、これを強く求めたということでございます。

 それからさらに、北京の大使館の前で日章旗が焼かれたという事件がございました。それに対して、中国の官憲といいますか、その人たちが制止をしなかったということがあったわけでございまして、これについても私の方から抗議をして、再発防止を求めたということでございます。

 それで、これについて、その後でさらに李部長から、台湾の問題についての先方からの意見の開陳があったということでございます。私の方からは、我が国の立場というのが日中共同声明に従ったものであるということを表明した。

 それから、あとは、北朝鮮に御訪問の直後でございましたので、それについての若干の意見交換をした、そういうことでございました。

武正委員 再発防止を求めた、そして日章旗が焼かれたことを官憲が阻止しなかったことを抗議した。外務大臣の領土、領海を守るということに対しての認識は、この程度の認識なのかというふうに私はやはり疑わざるを得ないわけであります。

 再発防止を求めた、日章旗の件を抗議した。我が国の領土が不法に上陸をされた、この件に対しての徹底抗議、これはされたんですか。

川口国務大臣 一番最初にそれについては申し上げたと思いますけれども、当然のことながら、我が国固有の領土であるという立場を述べたというふうに申し上げました。

武正委員 領土であると述べたのと、抗議をして、とんでもない、遺憾である、許すことができない、なぜこうしたことが起きたのかと、中国政府として徹底した、こうしたことが起きないように再発防止を求めたと言いましたが、こうした点をただすということはされたんですか。

川口国務大臣 先ほど立場を述べましたというふうに申し上げたのは、当然に遺憾であるということを我が国は言ってきているわけでして、それも当然含めて、全部を含めて、細かくは申しませんけれども、述べたというふうに言ったわけで、全部それに入っております。

武正委員 全部入っていますというのは、よくわからないんですね。全部含めて言いましたというのと、しっかりと言ったのかどうか。再発防止を求めたの前にしっかりと抗議をした、このことを確認したいと思います。

川口国務大臣 それではもう一回全部を丁寧に申し上げますと、まず、先方からの意見の開陳があったわけでございます。それは、これは中国の領土であるということであったわけですけれども、それに対して、これは歴史的にも国際法上も我が国固有の領土であるということを言ったわけでございます。そして、今回、七人の人たち、中国人がこれに対して、尖閣諸島に上陸をするということがあったわけでして、これは我が国の立場からして受け入れることができないことである、遺憾であって抗議をするということを言った。

 それに加えて、その後、さっき申しましたように、国旗の話、それを警官が制止しなかったこと、そういったことを言った。それで、先ほど言いましたように、それぞれについて再発防止を求めたということでございます。

 それに加えて、台湾の話があり、北朝鮮の話があったということで全部でございます。

武正委員 先ほどは、そうした抗議をして、再発防止を求めて、日章旗の件も抗議して、それで国内の関係法令に従って処置をいたしました、すなわち強制送還をいたしました。それはありますよね。(川口国務大臣「あります」と呼ぶ)

 では、あるというふうに今お答えをいただきましたが、全然やはり説得力がないんですね。抗議しておいて、強制送還、お帰しいたします、これじゃ全然抗議になっていないんですよ。

 私は、やはりこの強制送還をなぜこのように早く、容疑の否認のまま、器物損壊の疑いもあるのに帰したか、やはり問題であったと。外務省は一切相談にあずかっていないからわかりませんと。そんな相談にあずかっていない外務省が、中国の外務大臣に抗議をして、私は相談にあずかっていませんけれども七人はお返しいたします、全然これじゃ抗議になっていないじゃないですか。

 なぜ今回の電話会談、十八時間後に新華社電が報じたことによって発表されたんですか。お答えいただきたいと思います。

川口国務大臣 これは、電話会談の後に、この件については発表をしないという中国側からのお話があったわけでございまして、当方はそれを守って発表しなかったということでございます。

 それで、他方で新華社電について、そのことが報道され、そして、これは必ずしも我が国の立場について、こちらが述べたことについては触れられていなかった発表であったわけでして、したがいまして、我が方としてはこれは日本の立場で正確に発言をしていくべきであるということで発表をしたということでございます。

 ちなみに、電話会談をしたときに、我々の立場としてできるだけ公表していくということで考えておりますけれども、これはいろいろな話がございますので、常に一〇〇%公表をするということではないということでございます。

武正委員 中国側から公表しないでくれというふうに言われたんですか。

川口国務大臣 そういうことでございます。

武正委員 我が国の領土に不法に上陸をして、それについて外務大臣が電話で抗議をした。これは初めてですよね、この案件が起こってから。外務大臣が、中国外交部長とのやりとりは。

 抗議をしたことを中国側から発表しないでくれと言われて、はい、そうですかということは到底納得できないんですね。我が国がちゃんと申し入れをして、抗議をしたわけですよね。それを言わないでくれと言われて、はあ、そうですかと。それで、新華社電が抜いて、それが全部の真意を伝えていないから慌てて発表する。これはどういうことなんですか。

 発表しないでくれと言われたって、過去いろいろ発表している。発表しているのが常なんですから。しかも、抗議をしたわけでしょう。それを何で、発表しないでくれと言われて、はい、そうですかとしてしまうんですか。お答えください。

川口国務大臣 これは、向こう側から電話をしたいという申し入れがあって我が方が応じた。その先方が、これについては発表を控えたいというお話があったわけでございまして、我が方としてはそれを尊重したということでございます。

 この時点で強制送還が決定をしていて、私もそれを伝えたということでありますけれども、我が方の抗議、これについてはもう十分に、数回にわたっていろいろなレベルでやっているということであります。

武正委員 外務大臣が直接電話をして抗議をして、しかし、抗議をしながら七名をお帰ししますよと。そして、抗議したことも発表しない。余りにも、外務省は一体何の仕事をやっているんだろうと。相談にもあずかっていない。そんな外務省は、日本の外交を任せることはできないのであります。

 さて、きょうは条約の審査ですので、ちょっと時間が押してまいりますが、もう一点、どうしても聞いておきたいのが北方領土の問題でございます。

 二月に、二十五名の有識者の方、佐瀬昌盛さんや上坂冬子さん、袴田茂樹さん、あるいはまた中曽根康弘元首相などが、首相にアピール文を渡している。すなわち、日ロ行動計画以来、ロシアに誤ったメッセージが伝わっている。すなわち、北方領土を返還するという日本政府としての至上命題、最優先課題をわきに置いて、シベリアの開発を初めとする経済協力、経済優先、こういった形に日本政府は転換をしたという誤ったメッセージが日ロ行動計画以来届いていることは問題である、こういったことが首相官邸に届けられたんですが、それをもってしても外務大臣の国会での答弁は余り以前と変わらない。

 このアピールは当然外務大臣にも届いている、あるいはそのことを承知されていると思うんですが、この点についてどのように理解をされ、そうしたことをどのように受けとめられ、それを受けとめられてどのように今対応を変えられたのか、あるいは国会答弁のように以前と変わりませんということなのか、お答えいただきたいと思います。

川口国務大臣 このアピールですけれども、ことしの二月七日、これは北方領土の日でございましたが、この日に当たって、民間の有識者が北方領土問題についての見識を対外的に明らかにされたということだと存じております。

 そして、そのアピールですけれども、これは、国民世論を啓発する、このことは領土問題に関して非常に重要なことであると考えますが、啓発をし、そして、北方領土返還運動、これの一層の活性化に資するというふうに考えております。

 それで、日ロ行動計画というのを、昨年の一月に総理が訪ロなさったときにプーチン大統領との間で署名をしていただいたわけでございます。これは幾つかの柱から成り立っておりますけれども、その中で、平和条約の締結の問題、これは一つの大きな柱、大変に重要な柱であるわけでございます。そういった位置づけをこの行動計画はしているわけですし、そして、日ロ行動計画の採択に関する共同声明というのが出ておりますけれども、そこで、日ロ両国の首脳は、平和条約を可能な限り早期に締結をするということについての相互の強い決意、これを確認しているわけでございます。

 そういったことで、それがロシアが間違ったメッセージを受けとることになるということではないと私は考えておりますけれども、この有識者の声、こういったことに、政府としてもこれに耳を傾け、そして、これを踏まえ、北方領土問題の早期の解決、四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結するという考え方、これを前に進めていきたいというふうに思っております。

 これも今まで申し上げていますように、ことし前半にも私は訪ロして、ロシアの新しい外務大臣との間で、この平和条約の締結の交渉、これを前に進める努力をしたいと考えております。

武正委員 そうした誤ったメッセージは送られていないんだ、あくまでも領土問題解決なんだというふうにおっしゃいますが、この春発足する日ロ賢人会議、このメンバーを見ても、経済協力ありき、経済協力優先というメンバーですよね。領土問題についての専門家がほとんど入っていない。こういったところも、さらに重ねて誤ったメッセージを送っているんではないですか。外務大臣、いかがですか。

川口国務大臣 これは、こちら側の座長といいますか、トップも、そしてロシア側のトップも、それぞれの首脳に直結をしている人たち、先方であればルシコフ・モスクワ市長、そして、こちらであれば森元総理ということでございますけれども、そういった方々をそれぞれの共同議長に選んで、そこでの議論が首脳に直接反映されるようにという意図を秘めた非常に力のあるグループでございます。

 こういったグループにおかれましても、当然のことながら、平和条約の問題というのは大きな、重要なテーマでございますし、また、このグループにおかれても、平和条約の問題については会合に備えて十分に、この条約の問題について、北方四島の問題について、いろいろ御意見をお聞きになっていらっしゃるというふうに承知をしております。

武正委員 領土問題ということで、私は、やはり誤ったメッセージが今もって届いている。これは日朝平壌宣言でも触れましたが、経済協力ありき、経済も一つのカードにと。外務大臣はこの委員会で、てこにというような言い方をしましたが、私は、日本外交が、経済協力、確かにODAというのは大変大事な外交、あるいは経済協力というのは大変に大事な外交のカードでありますが、それのみを過信することによって過つという危険性が大変今の小泉内閣にはあるということを、北朝鮮、そしてまた今度ロシアについて言わざるを得ないのでございます。

 そうした点も踏まえて、領土問題ということで、今回の尖閣諸島への不法上陸を、そのまま外務省が相談もなく強制送還される。しかも、強制送還したについての報告の前に抗議をした電話についても、公表しないでくださいねと中国から言われて、はい、そうですかと、こういったこと。

 しかも、阿南大使をして、北京大使館の前で国旗を踏みつけられ、焼かれる。先ほども話が同僚委員からもありましたが、官憲が見過ごしている。日本では刑法九十条、九十一条、九十二条で、こうした点、特に九十二条で外国国章損壊等ということで、これは刑罰の対象なんですね。中国の方は、どうやら自国の国旗を焼くについては刑罰の対象なんですが、他国についてはないようでありますが、こうしたことをされて、そしてまた抗議も、電話でしても、強制送還しましたよと。

 こういった中で、この土曜日、訪中をする必要があるんでしょうか。私は、今のこういう状況で外務大臣がなぜ北京に行くのか、理解できません。いかがですか。訪中を取りやめる考えはありませんか。

川口国務大臣 中国訪問につきまして、日程の詳細部分について今調整中でございますけれども、私は、日本と中国の関係というのは、日本にとっても、そして中国にとっても、最も重要な二国間関係の一つとして位置づけられているというふうに思っております。

 重要な二国間関係であればこそ、これは、お互いに問題があると考えるときは言うべきことをきちんと言っていかなければいけない、抗議をするときにはしなければいけない。それと同時に、二国間の関係を、しかも、アジアの中において有力な二国、大きな二国でございます。その二国が、どのようにしてさらに共通の利益を膨らませていくことができるか、未来志向の関係を築いていくことができるか、こういったことについて率直に話し合うということも同時に重要であるというふうに思います。

 これは、日米関係、翻って御想起いただいても同じようなことだと思いますけれども、貿易摩擦等々で非常に日米間に大きな問題があった時期もございます。それはそれで、対応をお互いに厳しく、激しくしながら、日米間のその共通の利益は何かということも常にあわせて考えていた。これはどの二国間の関係をとっても、日本と韓国の関係をとっても同じであるというふうに私は考えております。

 問題は問題であって、それに対してきちんと対応をし、取り組んでいかなければいけない。同時に、二国間の関係をどのようにしたらそういった関係が起こらないような、そういった問題が起こらないような、そういう関係にしていくかということについては、二国のリーダーは常に考えていかなければいけないというふうに思います。

武正委員 言うべきことを言い、公表すべきことを公表すると言われましたが、言うべきことを言っていない、公表すべきことも公表していない、こう言わざるを得ないのが先般の電話会談での外務大臣と外交部長のやりとりでございます。

 中国は最重要な二国間の一つという認識は、私も共有しております。アメリカについてもそうであります。アメリカについても、なぜ、日米地位協定、今般改善ということで、被疑者の取り調べの立ち会いを認めるということもされたようでありますが、やはり、沖縄県民は日米地位協定の改定を求めている、あるいは、2プラス2あるいは日米合同委員会に沖縄県の代表が参加する、オブザーバーでもいい、それが地元の声であります。言うべきことを言っていないと言わざるを得ない日米関係でもございます。

 中国についても、イコールパートナー、重要な相手であるからこそ言うべきことを言わなければならない。それを言わずして、しかも、外務省は一切相談にあずからないまま強制送還をさせ、そうしたことを抗議もしに行く。相談もあずかっていない外務省が北京にのこのこ行って、抗議ができるんでしょうか。

 私は、今この時期に訪中は、日中間の本来の重要な相手、そして信頼すべき関係を構築するためにも、今この時期に、外務省が相談にあずかってもいない、真偽のほども定かでない、そうした中に行くべきではないということを重ねて申し上げたいと思います。

 さて、条約の方に移らせていただきますが、遺伝子スパイ事件、岡本被告の事件、日米犯罪人引き渡し条約、ちょっと時間の関係で飛ばしますが、こちらの方をお伺いします。

 東京高裁で引き渡さないという判断がされましたが、本条約、日米刑事共助条約が批准されますと、いわゆるこれまでの双罰性ということが外れますので、国内法が整備され、この種の事件、この種の事件というのは遺伝子スパイ事件のような事件がアメリカで提起された場合、今回は司法の判断で引き渡さないということができましたが、今後、本条約批准後、国内法整備後、どのようになってまいりますか。これはお答えをいただきたいと思います。

田中大臣政務官 お答えをいたします。

 日米刑事共助条約の締結後、米国が御指摘のような知的財産権に絡む犯罪に関する共助の請求を条約に基づき実際に行うのか、予想することは今の時点では困難でありますけれども、仮にそのような共助の要請が米国より行われた場合は、我が国の中央当局を務める法務大臣が個別のケースにつき十分精査した上で条約及び国内法の関連規定に従って対応するものと認識をいたしております。

 以上でございます。

武正委員 すなわち、双罰性が今回のように適用されずに、司法当局同士で了解ができれば引き渡すことができるということでございますか。お答えください。

田中大臣政務官 双罰性の件につきましても答弁をさせていただきます。

 時間の関係もありますので簡単に申し上げますけれども、本条約は、双罰性がない場合について、また、ある場合について、それぞれにわかりやすい規定になっておるわけでございますが、共助の義務についても、三条において共助を拒否できる場合を、双罰性がない場合は規定しております。

 したがって、中央当局としての法務大臣においてこれらの拒否事由に該当すると認める場合は共助を拒否することができるわけでありますし、また、条約は相互的なものでありまして、この条約を締結することによりまして我が国も同様により充実した共助を米国より受ける、こういうことになりまして、相互関係が確立をすることになるわけでございます。この条約を活用して、より円滑に刑事手続を進めるということになります。

 以上でございます。

武正委員 今回、この岡本被告の件については、経済スパイ法という当時日本になかった法律でございます。アメリカが次々に今のさまざまな法律、特に知的財産権に絡んで立法されていく、こういった中では、私は、双罰性がなくなった場合に、司法当局同士でいくと次々にやはりアメリカからそうした要求が出てくるということで、それに応じる日本、国内法の未整備の状況、人権に関しては未整備の状況では、大変、今回のこの条約、ある面イコールな形ではなくて、日本が非常にいろいろと要求をされる、それについて対応するといったことで、問題がありというふうに考えるわけでございます。

 時間も押しておりますので、もう一つ、この法律が、これまで書面のやりとりが中心だったんですね、国際捜査共助法。条約では、今回、書面以外も可と。書面以外の通信の方法というふうに四条1でありますが、関連情報のやりとりは秘密で行うわけですから、私は要請は文書で行うべきであるというふうに考えております。というのは、後で事後チェックが働くようにしておかないと、さまざまな中央当局のやりとりの中で、問題が露見をした、あるいはさまざまな形で、事後チェックということでかなうと思うんですが、この点はいかがでしょうか。

田中大臣政務官 御指摘のとおり、条約第四条は、共助の請求を書面によって行うことを基本としつつ、被請求国の中央当局が適当と認める場合には、双方で確認された上ででありますけれども、「書面以外の信頼し得る通信の方法により共助の請求を行うことができる。」旨定めておるわけでございます。

 答弁を短くいたしますと、この秘密がしっかりと守られる、こういうことが前提に立つ制度でございまして、私どもも、十分、委員が御指摘された趣旨はこの条約でかなうもの、秘密は守られるもの、このように確信をしておるところでございます。

武正委員 時間が参りましたので終わりにいたしますが、私が今言ったのは、秘密が守られるじゃなくて、今政府が進めておられる各種規制を解く規制緩和、それは事前規制から事後チェック型行政へということでありますので、そういった意味で事後チェックができるような形にするためにも、やはりそのやりとりが残るということが何よりも大事であるということを指摘させていただき、終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

米澤委員長 次に、加藤尚彦君。

加藤(尚)委員 質問は、三条約についての質問に絞らせていただきますけれども、その前に、条約の訳文についてちょっと指摘をしておきたいし、もし意見があれば聞きたいというふうに思います。

 今回の条約を見ても、小学校の先生と中学校の先生にも見ていただいたんです。そうしましたら、何て下手な、訳文そのものを指摘したんじゃなくて、いわば犬や猫を追っ払うわけじゃあるまいし、し、し、し、しと何でもかんでもつながっているんですよ、流れが。いわゆる訳文そのものについて、やはり国民がわかるような訳文を私は求めたいというふうに思うんです。

 さきの常任委員会で特に私も気になったものだから調べさせてもらったんですけれども、児童売買等に関する児童権利条約に関してですけれども、いわゆる「消費需要」という問題。我が党の筆頭理事の増子先生が相当厳しく怒って、そんな訳でいいのかということをおっしゃっていました。私も、英語に強いわけじゃありませんけれども、大変気になりました。

 よって、専門家にも相談したりして、この訳文について、もっと日本らしい、つまり、物はともかくとして、人間ですから、日本らしい表現はないかということで聞きまくったんです。そうしましたら、いい言葉が結構あるんです。つまり、リデュース・コンシューマー・ディマンドの中に、例えば、リデュースという言葉の中にも、制圧するとか制御するとか、強圧的、強権的に抑え込むという言葉もあるし、あるいはコンシューマーの中にも、制圧するとか完全に占有するとか、そういう言葉もありました。あるいはディマンドについても、物は金次第で何でも所有するという意味もありますけれども、全体的に表現するとすれば、占有欲、所有欲を制圧する、そういう訳し方をしても問題ないというふうに僕は聞いたんです。

 だから、その意味で、ポルノ雑誌とかそういうものは物だから構いませんけれども、でも、人権ということになると、子供たちということになると、やはりこの「消費需要」という言葉について物すごい気になりますから、もし直せるものだったら直していただきたいというふうに思います。

 と同時に、その訳文の中で、条約の訳文なんですけれども、先ほども申し上げたように、ずらずらずらずらと流れて、これは小学校、中学校の作文だったらもう点数は上げられませんよというぐらいのことを言っていましたけれども、英文の方を見ると、セミコロンはいわゆるピリオド、そういうふうに訳してもいいんじゃないかというふうに聞いておるんです。いわゆる点、点、点だから、だらだらだらだら長く続いていますけれども、それをピリオドとしてきちっきちっと切って、一何々、二何々、三何々でやった方が、よりだれにもわかりやすいんじゃないかというふうに思うんですけれども、これは意見として言っておきます。

 今後、英文に限らず語学の訳し方については、やはりそれを見るのは日本人ですから、訳されたものを見て判断するのは国民ですから、その意味で、訳文についてちょっと注文をつけておきたいというふうに思います。

 それでは、質問に入りたいと思います。

 三条約について、まず第一番目に、刑事の共助に関する質問に入るんですけれども、この条約に先立って日米交換公文というのがありますけれども、パウエル国務長官と当時加藤駐米全権大使との間に結ばれたものであります。アメリカの方は、いわゆる日本に対して法務大臣という表現でされておりますけれども、日本側の方としては、法務大臣と国家公安委員長というふうになっているんです。両者のいわばやりとりの書面をどう見ても、もっと簡潔に、わかりやすくということを言っております。つまり、アメリカ側は司法長官でいいわけです、あと関係組織の中で議論していけばいいんですけれども、日本側の場合、戻ってきたときに法務大臣にするのか国家公安委員長にするかということを、大変、やはりアメリカ側から見れば、また戻ってくるわけですから、弱ったなということになってしまうと思います。その意味で、日本側の対応について、どうしてこういうふうになったのか、お聞きしたいと思います。

門司政府参考人 お答えいたします。

 ただいまのお尋ねですけれども、この条約は、条約の実施に関連して、中央当局を設けるということになっておりますけれども、この交換公文は中央当局の指定に関するものでございます。

 我が国におきましては、まず警察当局が第一次的な捜査機関として、また検察当局が捜査、訴追機関として任務を果たしておりますけれども、条約交渉の過程で、我が国が外国に対して捜査の共助を要請するに当たって、両者おのおのが果たしている役割、あるいはおのおのの我が国の国家行政組織法上の位置づけ、そういったものも総合的に勘案した上で、国家公安委員会と法務大臣、この両者をともに中央当局に指定することが最も適当であるという判断に至りました。したがって、我が国からの共助の請求については、この両者が中央当局ということになっております。

 他方、条約の交渉中、アメリカにしてみれば、我が国が両者をともに指定するのであれば、個別の請求において、どちらが日本国の中央当局になるのかを明らかにしてほしいという要請がございました。したがって、交換公文におきましては、法務大臣それから国家公安委員会、それぞれが中央当局となる場合、どういう場合であるかということを明らかにしたものでございます。

 明確に、ちょっと長いんですけれども、書いてございますけれども、この内容につきましては米国政府側も十分な理解を得ておりまして、交換公文の中においても、アメリカ側から、日本政府によりなされている指定を歓迎するということが述べられているところでございます。

加藤(尚)委員 それで理解しようと思えば理解するんですけれども、これから、日米だけじゃなくてどんどんほかの国との条約を締結していくだろうと思います。その意味で、この国の事情で相手国に理解させようということは今後無理があるかもしれない。その意味で、これは課題として、一応この場所では理解したという、アメリカが理解したということですから、こちらでとやかく言うことないと思いますけれども、今後の課題として一応指摘をしておきたいと思います。

 それから次に、条約と国内法の見直しについての質問なんですけれども、アメリカは御案内のとおりいわゆる司法取引というのがあります。その司法取引について、恐らく日本側にあれこれ迫られるという、受動的な表現が配付資料の中にもありますけれども、この司法取引を迫られたときに日本はどう対応するか、お尋ねをしたいと思います。

門司政府参考人 お答えいたします。

 司法取引というのは、確かにアメリカにあるということは承知しております。したがって、アメリカの中でそういうことが行われることはあろうかと思いますが、この条約に基づいてアメリカから日本側に請求が参りました場合、これは、中央当局あるいは関係する権限のある当局が、この条約あるいはこれを実施するための国際捜査共助法という国内法に基づいて適切な判断をすると思いますので、アメリカで行われた内部の事情とそれから我が国に来る請求というのは切り離して考えることができると思っております。

加藤(尚)委員 えらい早口ですね。一生懸命努力して聞き取りますけれども、時間の節約にもなるから、まあ、そのまま今の調子で続けてください。

 いわゆるアメリカは司法取引がある、これはもう絶対的なものだと思うんです。この国にはないということ、その意味でいえば、むしろこの国も、未来の課題として、このアメリカの言う司法取引をもっと能動的に、場合によったら積極的にと言ってもいいんですけれども、受け入れることを検討してもいいんじゃないかな、まあ、物によるんですけれども。

 そういった意味で、そういういわば受け入れの検討なんかされてきたか、お答えください。

門司政府参考人 失礼いたしました。

 我が国の司法制度の関連につきまして、私ども外務省の方として、必ずしもお答えするのは適当ではないと思いますけれども、少なくとも、この条約の作成あるいは交渉の過程におきまして、そういった司法取引制度の導入といったことについては話し合われておりません。

加藤(尚)委員 いや、確かにおっしゃるとおりで、外務省にあれこれ、今度の三つの条約とも、どこを読んでも、もちろん提案省ですから当然お聞きするわけですけれども、関係省庁にたくさんまたがる問題ばかり、今度の三条約について。ですから、後でちょっと聞きたいこともあるんですけれども、やはり閣議でどういう議論をしたのかなと。この三条約を出すについて、外務省が預かって、それで我々に提案するときに、どういう閣議論議があったかを後でぜひ聞かせてもらいたいと思うんです。

 いずれにしても、条約をお互いに論議して、それで締結、締約するんですけれども、当然五分五分だと思います。相手がアメリカであろうとどこであろうと、五分五分だというのは基本だというふうに思います。

 その意味で、アメリカの方で司法取引をしてしまったとか、あるいはしようとしているとかということに対する日本の対応もあるんですけれども、逆に、日本の法律でアメリカに迫ることもなくちゃいけないと思います。例えばこの刑事条約の中で、日本がアメリカに迫ることがあるとすればどういうことがあるのか、あればお聞かせください。

門司政府参考人 特定の制度その他、そういったものについて相手国に迫るということではございませんけれども、この条約ができましたら、まさにこれは相互的なものでございます。したがって、アメリカから共助の請求が来ることもございますが、日本からアメリカに対して請求が行われるということもあります。そして、この条約によりまして、その共助の内容がはっきりし、またそれが条約上の義務として確実になり、それから、直接当局間で迅速に行われるというこの制度を利用しまして、これまで以上に共助の協力が進んでいくということになると思われます。

加藤(尚)委員 要するにそうだと思います。

 そういう意味でも、いずれにしても姿勢としては、条約を締結するということは五分五分という強い意識がなくちゃいけない。例えばさきのサイバー条約、民主党は意見書を添付させてもらいましたけれども、サイバー条約は日本で、この委員会で通ったわけですけれども、アメリカは通していないわけです。そういう意味で、アメリカにこのことについて迫っていくのはどうか。これは外務大臣に、副大臣でもいいですけれども、お聞きしたいと思います。質問の意味としては、サイバー条約、アメリカの方では積極的ではないというふうに聞いていますけれども、外務大臣、お願いします。

川口国務大臣 サイバー条約の締結でございますけれども、これにつきまして、我が国は昨日の衆議院の本会議で御承認をいただいたわけでございまして、今後参議院で御審議をお願いするということになるわけでございます。政府としては、国際的なサイバー犯罪の防止及び抑圧の観点から、早期締結を図るべく、引き続き御理解を求めてまいるという所存でございます。

 アメリカにつきましては、サイバー犯罪条約を、既に二〇〇一年の十一月に署名をいたしておりまして、現在、その締結に向けて準備を進めているというふうに承知をしております。この条約のもとでのサイバー犯罪の防止及び抑圧に向けた国際協力が実効的なものであるために、そのためにも、米国が早期に締結をしていくということは重要でございます。引き続き、米国に対して鋭意働きかけてまいりたいと存じます。

加藤(尚)委員 ぜひそういうふうに、迫るという姿勢、アメリカにもどんどん物を言っていくよという姿勢を強く求めさせてもらいたいと思います。

 質問の三つ目については、あと二つもありますので、簡単にします。

 アメリカがこの刑事条約について既に四十七カ国と順次条約を締結しているというふうに理解しているんですけれども、さらに国際機関では、いわゆる米州機構、あるいはEUとも結ぼうとしているんですけれども、米州機構についてはもう締結してある、あるいはEUについてはまだ未発効ということなんですけれども、日本も、アメリカが既に結んでいる四十七カ国対応、あるいはOAS、あるいはまだ米国も未発効のEU、このことについて、日本側としては今後どういう働きかけをすることですか。

門司政府参考人 今回この日米刑事共助条約を結びますと、それからまた関連国内法の整備に伴いまして、我が国として、同じような二国間の条約を今後締結していくための土台というものが整うことになります。したがいまして、今後ほかの国との関係でも積極的に進めたいと思っております。

 他方、どこにするかということにつきましては、たくさんありますから、物理的に一度にすることは無理でございますので、共助のニーズというものを踏まえて優先順位をつける必要があろうかと思います。

 今御指摘の関係の機関等でございますけれども、まず、我が国としましては、具体的にどの国ということでありますと、まだ決定しておりません。しかし、米国以外の国の中では、やはりアジア諸国の中に捜査共助に関するニーズが比較的高い国があると思っておりますので、まずそういうところから始めていくということを考えております。

加藤(尚)委員 アメリカが既に結んでいるということですから、日本側としても交渉しやすいし、そのためにも在外公館があるというふうに理解しているんですけれども、さらなる努力をお願い申し上げたいと思います。

 確かに、今おっしゃられたように、日中とか日韓とか日ロとか、あるいはASEAN。それで、ASEANは法人格がないということで結びようがないということなんですけれども、ASEANにも、これは重要な指摘だと個人的には思っていますけれども、法人格を持つように努力する、そんな方向性を私は理解していいかどうか、お聞かせください。

門司政府参考人 ASEANにつきましては、確かに、EUのように、まだ独立して法主体として条約を結んだりするという段階には至っておりません。しかしながら、ASEANをどういう形にするか、あるいは明確な国際法の主体にするかどうかということは、まずASEAN自身が検討されるべき事柄だろうと思っております。

加藤(尚)委員 ちょっと残念な答えだと思うんですけれどもね。やはり日本の方から、むしろ日本人の人命にかかわることもかかるかもわからないし、相手の国の人命にかかわることもあるわけだから。要するに、積極的にこのASEANとの関係について、昨年の日本とASEANとの首脳会議じゃありませんけれども、あるいは百二十五もある行動計画をいかに実行しようという問題もある、その中にもちゃんと人権という問題もあるわけだから、その意味で、今後の課題にしていただきたいというふうに思います。

 続けて委員長、お願いします。

米澤委員長 加藤君。

加藤(尚)委員 たばこの規制に関する世界保健機関枠組条約について入りたいというふうに思います。

 質問の一つは、たばこ産業、たばこ喫煙者との関係について質問するんですけれども、私は、会館も含めて三つの事務所があるんですけれども、もう十年来禁煙ということで、えらくひんしゅくを買っているんですよ。それで、応援しないなんて言われて、それで何回もおっこっちゃったという経緯もあるかもしれないんだけれども、でも頑張っちゃった。頑張っちゃったんですね、僕は。でも、やっと理解が深まってきたと思います。

 川口大臣も、副大臣も、お吸いになるんですか。(逢沢副大臣「少し」と呼ぶ)少し。少し吸っていらっしゃるんですけれども、いわばたばこについて、議員の皆さんの中にも、吸っていらっしゃる方が結構いるんですよ。だから、僕としても質問はしにくい。しにくいけれども、この条約は、個人的には待ちに待った条約だと私は実は思っているんです。だから、同僚議員ほか、ひんしゅくを買うかもしれないけれども、このたばこ条約は非常に重要だと思っていますので、質問をし続けるんです。

 時間もないから、こちらから質問しながら答えちゃっていく部分もあるんですけれども、例えば、葉たばこ生産にかかわる農家が二万七百五十八人ということでございます。その売り上げは、千九十三億。そして、日本たばこ産業株式会社、その関連グループも含めると、社員は三万八千六百二十八名ということであります。そして、その総売り上げは四兆四千九百二十二億円。そしてさらに、卸売にかかわる業者総数は六百社以上、そして、その総売り上げは四兆百八十七億円です。同時に、小売店となると、三十万店舗ということであります。この三十万店舗については、その売り上げについて、なかなかこれは、何度かお願い申し上げたけれども、出てこない。これからの課題になるというふうに思います。

 少なくともこれだけの人たちがかかわっている。ということは、家族関係も含めると、五十万とも六十万とも関係していらっしゃる人がいらっしゃる。ある意味では、政令指定都市一つ分ぐらいにかかわってくるということになります。

 喫煙者についても、あれこれの資料をまとめてみると、三千百八万人ということですから、まあ四人に一人。子供を抜くと、青少年を抜くと二人に一人ということになるんですけれども、減りつつある喫煙者も、依然として物すごく多いわけです。

 ですから、この条約は大変煙たがられることになるかもしれないけれども、待ちに待ったというふうに申し上げましたけれども、これはたくさんの人たちが禁煙運動、あるいはお医者さんとか歯医者さんとか、もうこの国では数え切れない人たちが禁煙活動しております。そのことはよくよく承知しておらなくてはならないと思います。

 その意味で、今申し上げました数字の中に、財務省は当然大きく当てにしている、あるいは地方自治体でも、神奈川県あるいは横浜市にちょっと聞いてみたら、神奈川県は昨年度で百七十三億円のたばこ税収があったというわけです。貴重な財源だと言っていました。でも、禁止の方向に行くだろうと。ですから、神奈川県庁は、公館と言われるものについてはどんどん縮小しているし、吸う場所を少なくしているということを言っていらっしゃいました。減っていくのを覚悟しているということでありました。一方、横浜市の方も、平成十五年だと二百二十三億円の税収があったということで、これも貴重な財源だと。だけれども、だんだん減っていくだろう、減っていく中でどういう対応があるかということを言っていらっしゃいました。

 最近話題になった千代田区ですけれども、ポイ捨て条例を厳しくやっている千代田区も徐々に減っていると。減っているけれども、平成九年が五十億円で、例えば昨年だと三十九億円というから、十億円も減っちゃったというから、一つの区政の中では大きな意味があるけれども、これは別にポイ捨て条例を積極的にやっているから減ったのではないという意気込みがありました、千代田区の方で。これは、だんだん吸う人が少なくなったという受けとめ方をして、それにかわる財源というものをやはり独自に努力しなきゃならないというふうに言っていらっしゃいました。

 そこで、総売り上げ四兆五千億というんですね。その四兆五千億の中に、実は青少年ですね、ここに重要な問題があるんです。

 先ほども、朝の質疑の中で、自動販売機のことが触れられていましたけれども、四兆五千億の中の、一体法律で禁じられている、規制されている子供たちの数を、これはまあデータはいろいろなんですけれども、一〇%を超えるというデータもたくさんあるんです。ということは、四兆五千億のたばこの総売り上げの中で一〇%だけでも物すごいお金なんです。そうすると、財務省は、恐らく青少年がたばこを吸うことを喜んでいるとは思わないけれども、えらい税収の一つということを言わざるを得ないわけですよ。

 その後またいろいろ質疑をしたいと思いますけれども、そこで、川口大臣、急に振って申しわけないんだけれども、例えば、このたばこ条約も外務省が提案したわけですからお聞きするわけですけれども、たばこそのものは、日本の国内において、税収もそうですけれども、あるいは影響もそうですけれども、これは厚生省も、取り締まるという意味では警察庁も、あるいは当然提案省の外務省もそうですけれども、いわゆる多岐にわたっているわけです。物すごく多岐にわたっている。そこで、閣議で、外務省は当然条約ですから当番省ですけれども、閣議でこれは議論されたかどうか、ちょっとお聞かせください。

川口国務大臣 私の記憶ではございません。

加藤(尚)委員 残念なんですけれども、これは関係省庁がたくさんあると思っています。条約を結ぶ、あるいは締結するということは、国家の未来を決めるということなんです。どうも釈迦に説法で恐縮なんですけれども、その意味で、一つ一つの条約は直接かかわりないことが今回の条約は多いんですけれども、でも当番省庁として、その決心、決意というのがどうしても必要なんです。どうしても必要なんです。さきに言った、冒頭に言ったポルノ関係の買春とか、その関連で「消費需要」という言葉のこともそうなんだけれども、やはり条約を結ぶというのは約束事だから、各国間で、国際社会の中で。だから、物すごい熱心さが必要なんです。

 しかも、たばことなると、税収そのものが、財務省はどんどんまだ売りたいんです、本当は。売らないと税収が上がりませんから、ましてや今度の国家予算を見ても、税収の落ち込みが甚だしいものだから。

 だけれども、これは減らざるを得ないということの一方で、それを願いながらも、実は意外に、たばこで、いわゆるたばこの害で、厚生労働省の試算ですからはっきりしたことはわかりませんけれども、約五兆円が医療費として使われているというんです、たばこでね。がんの治療とか、あるいは目とか胃腸とか、いろいろな治療で、総額すると五兆円と言われているんです。

 だから、この国では、EUじゃありませんけれども、もう一切禁止の方向で行っちゃうよということであれば、そのまま医療費が浮いてくるということになるから、決して、損得勘定からすれば、確かにたばこの税収は減るけれども、一方で、医療費、つまり厚生労働省の方の予算というのは大分組み替えることができるというふうに僕は思っています。その意味で、閣議での議論は私は強く必要だと思っています。

 その意味で、外務大臣、話題に出してくれませんか。

川口国務大臣 最近ですと、数十件の案件が閣議を通り過ぎるわけでございまして、なかなか一つ一つについて議論をするというのは難しいかという気が私は個人的にはいたしております。

 いずれにしても、これにつきまして、日本は消費国でもあり、また同時に生産国でもあるということがあるわけでございまして、日本が、外務省といたしましては、これが日本としてこの国際的な取り組みの枠組みをつくっていくということについて、その積極的な姿勢を示していくということは有意義であるというふうに思っています。

加藤(尚)委員 確かに、国家の議論するところですから、優先順位がいろいろとあると思います。意外にたばこのことは大きな大きな問題だというふうに私は理解していますので、外務大臣も、どうか、心の片隅というか頭の片隅にぜひ置きながら、対応の機会をねらっていただきたいというふうに思います。

 続けて、たばこについて質問に入るんですけれども、たばこ事業法に関する質問に入りたいというふうに思います。この条約は、当然、内国法、つまり国内法を整備しなくちゃならないことがたくさんあると思っています。

 このたばこ事業法なんですけれども、これは、国際社会の中でも先駆けて、その法律は昭和五十九年ということでありますけれども、これにかかわって、財務省の方については、たばこ製造、流通、販売、それから、それこそ川上から川下までということで、多岐にわたる、いわゆるかつての得意な護送船団方式で保護をしてきたんですけれども、これから変わらざるを得ないというふうに思っています。

 そんな意味で、このたばこ事業法、この条約に関連して、財務省の方の方針といいますか、何か変わった、対応した政策が出たかどうか、教えてください。

    〔委員長退席、末松委員長代理着席〕

大前政府参考人 お答え申し上げます。

 この条約の内容は、各国の実情を踏まえまして、たばこの包装への健康に関する警告の表示、たばこ広告の規制、受動喫煙の防止、未成年者に対するたばこ製品の販売を禁止するための措置、これらを通じまして、たばこの健康に対する悪影響を減らして、人々の健康を改善することを目指すものでございます。

 財務省といたしましても、これまで関係省庁と意見交換を行いつつ、本条約の規定の対象となっております事項を措置いたしますために、たばこの包装への健康に関する注意表示の義務づけ、たばこ広告の規制等につきまして、たばこ事業法の省令の改正等によりまして対応してきたところでございます。

 このように、財務省といたしましては、現行法のもとで条約に適切に対応してきたと考えておりまして、引き続き条約の趣旨も踏まえまして、たばこ事業に係る行政を行ってまいりたいと存じております。

加藤(尚)委員 今財務省の方から御説明があって、私、たばこ、とうにやめましたので見なかったんだけれども、きのうたばこを買ってきたら、広告の欄に「あなたの健康を損なう」というように、ほんの少々書いてありますよ。

 それで、今度の条約を見ると、三〇%以上ということになるんですけれども、私は、この質問をするに当たって、だれがどう聞いたかわかりませんけれども、反対運動を起こしている人が、いい資料といいますか、見せてくれました。それで、できれば外務委員会の皆さんにお配り申し上げてほしいと言われたんだけれども、手続上、ちょっと間に合いませんでした。

 この写真、当然持っていらっしゃると思いますけれども、各外国の広告規制たるや、後でどうぞ見てください。物すごく驚愕するようなことが、これを見ながらこうやって、例えばこれだと吸っても楽に吸えるんですよ。ところがこっち見ると吸えないですよ。だから、吸う人はポケットにたばこを入れて、ポケットからたばこを出して吸うんだそうです、箱を見ると怖いから。そういうふうに冗談みたいなことを言っている人がいたけれども。

 いずれにしても、広告規制ということが当然大きなテーマになるんです。それで、広告テーマということになると、財務省としてはこれを積極的にたばこ会社に指導しなくちゃならぬ。そういう意味で、そういうスタートを既に切ったかどうか、お聞かせください。

大前政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいまの御質問は、たばこ広告に関する御質問ということでございましょうか。今般、たばこ事業法第四十条に基づきます製造たばこに係る広告を行う際の指針の全部を改正いたしまして、現在も業界の自主規制において規定されております、テレビ、ラジオ、インターネットなどにおきますたばこ広告の禁止、及び新聞、雑誌などについての、主として成人読者を対象としたものへの制限、これらを定めますとともに、新たに、駅や建物上の屋外広告の禁止、電車などの公共交通機関の車両におきます広告の禁止、日刊新聞紙におきます広告の量的制限や掲載面の制限、これなど、幅広い規制を行うこととしたところでございます。

加藤(尚)委員 テレビでここのところちょっと目にしていないんですけれども、いわゆる今のおっしゃられることは理解するんですけれども、そういうふうに全く私も感じているんですけれども、いわゆる喫煙マナーといいますか、このたばこにも「喫煙マナー」と書いてあるんですよ。

 この喫煙マナーというのは、テレビでも今でも流れているような気がするんですけれども、あるいは広告で見ているんですけれども、いわゆる喫煙マナーという表現は、上手に吸ってくださいよ、上手にうまくたくさん吸ってくださいよという意味にもとりかねないんです。ですから、喫煙マナー論も実は規制にならないんです、逆に。むしろ逆に推進しているように僕らには受け取れて仕方がないんだけれども、その辺はどうですか。どう受けとめていいですか。

大前政府参考人 ただいま御質問のございました喫煙マナーの向上を提唱する広告につきましては、一般的に、たばこ製品の販売またはたばこの使用を促進するとは考えにくいために、今般定めました広告に関する指針の対象外としております。ただ、喫煙マナーの広告の名前をかりまして喫煙を促進することを目的とするような広告につきましては、指針の対象となり得るものと考えております。

加藤(尚)委員 その辺が、そういう説明だろうと思いますけれども、よくよく見れば、そういうことなんです。やはり、うまくやってくださいよ、上手にたくさん吸ってくださいよということにとりかねない。

 もう一つ、これは大事なことだから、さすが財務省は直ちに、この条約の発効に合わせて先ほどおっしゃられたように製造たばこに係る広告を行う際の指針というのを出されたわけですよ。この対応は物すごく素早い、さすがに。それはもう評価します。それを出すならもう一つ、製造たばこに係る販売を行う際の指針ということが僕は必要になってくると思うんです。この方向性では検討されていますか。

大前政府参考人 たばこの販売に関する規制といたしましては、現に、未成年者の喫煙を防止する観点から、未成年者喫煙禁止法がございます。ここにおきまして、未成年者の喫煙及び未成年者であることを知ってたばこを販売することが禁じられておりまして、また、販売者に対して年齢確認等が義務づけられているところでございます。

 こうした、未成年者喫煙防止の観点からのたばこ販売の規制は、私ども、たばこ事業にかかわる行政においても重要な課題であると認識しております。

 この点でございますけれども、たばこの小売販売につきましては、たばこ事業法におきまして、「財務大臣の許可を受けなければならない。」とされております。また、許可に際しては、財務大臣は条件を付することができるとされております。

 こうしたことを踏まえまして、自動販売機でのたばこ販売を行おうとする者に対しましては、当該自動販売機を十分に管理監督が可能と認められる場所に設置するよう条件を付した上で小売販売業の許可を行っておりまして、現に適切な対応を行ってきているものというふうに考えております。

加藤(尚)委員 地方自治体も税収が減っていくだろうと予測しているんですよ、実はもう既に。そして、その対応について、私も先ほど申し上げたように、たばこを吸う害、そしてそれが医療費に結びつくということと照らし合わせれば、地方財政の方も頑張れるんじゃないかということを言う、そういう公務員もいまして、えらい前向きな話だなというふうに実感いたしました。

 今、青少年法に関係するんですけれども、例えば、自動販売機のことも先ほどありましたけれども、コンビニの前あたりに夜遅くまで子供たちがたむろしている、これはいろんな人から聞いたから間違いないと思うんですけれども、たむろして、お酒飲んだりたばこ吸ったりしているんです、現実に。例えば神奈川県では、青少年保護条例というのが、立派なものをつくられて、そしてすべての中学生の子供たちに配っているんです。さらにそこで小学校高学年までということを言っておるようであります。県とか市、つまり自治体で子供たちを守ろう、そういう意気込みについて、結構予算も人も使っているんです。

 そういう、そうだけれども、取り締まりということになると、法律だからやはり関係局がやってくれないとどうにもならぬという。ところが実際に、時々新聞とかテレビで、コンビニで未成年者にたばこを売った、そして、売った店を注意したとか、あるいは、いわゆる店を一時期閉めさせたとか、そんな話があるんですけれども、実際に、申し上げましたように、コンビニの前に子供たちがたむろして、お酒は飲むはたばこは吸うはだ。先ほど冒頭言ったように、五千億も使ってくれちゃっている。

 そういうことからすれば、これから、青少年の取り締まりについて、手っ取り早い方法は、もちろんたばこ会社もいろいろなことで努力しているんです、財務省から言われて。あれこれ厳しい指導を言うから、ありとあらゆる知恵を絞っているようだけれども、現実問題として実効が上がらない。そうなると、子供というのは、国の宝だし、私たち一人一人の貴重な、やはり将来を担う人たちですから、その意味で、ありとあらゆる知恵を絞って守らなくちゃいかぬというふうに思います。

 その意味で、お酒やたばこの自動販売機、これは、現に規制とかそんなことじゃとても無理だから、だからやはり販売禁止の方向にということになって、それで先ほど申し上げましたように、販売を行う際の指針というのは、どうしても関係省庁の財務省が、ここまで踏み込んだ決心をしなきゃいけないと思いますけれども、もう一度お伺いします。

    〔末松委員長代理退席、委員長着席〕

大前政府参考人 販売に関する指針でございますけれども、先ほど御答弁申しましたように、法律で小売販売について許可制度があり、その許可の付与に当たっては条件を付することができる、その法律の規定に基づきまして、自動販売機の設置につきまして、設置場所などの条件を付した上で許可を行ってきているところでございます。

 なお、こうした設置の際の条件が守られていないものについては、小売販売許可の取り消しを含めた適正化の指導を行っているところでございまして、これまで私どもが法律に基づいて行ってまいりましたこうした対処の方法、今の現行法を前提とすれば、適切な対応ではないかというふうに思っております。

加藤(尚)委員 厚生労働省はもちろん健康を守る省庁だから、非常に大きく感動したんですけれども、厚生労働省は、すべて自動販売機あるいは吸う場所、全部、撤去、撤廃したんですけれども、外務省の中でたばこの自動販売機ありますか。

 どなたでもいいです。大臣じゃなくていいですよ。どうぞ。

門司政府参考人 私はたばこを吸いませんけれども、自動販売機のコーナーがあるということは承知しております。

加藤(尚)委員 隗より始めよじゃないけれども、これだけの条約を提言するわけですから、検討、これから話し合ってください。

 公官庁も含めてですけれども、我々、国会もそうなんですよね。あるいは議員会館もそうなんです。議員会館の地下食堂なんというのはもうもうとしちゃって、というふうに思うんです。それは我々の問題ですから、我々でこれから議論していかなくちゃいけないと思います。

 委員長、三つ目の無形文化財、これ、一番僕は関心があって、それで一番ラストに持っていって頑張ろうと思ったんだけれども、時間がありゃしない。だから、ある時間内で御質問したいというふうに思います。

 この無形文化財については、当然文科省、文化庁がかかわってくるということでありますけれども、この発効にはまず何カ国必要でしょうか。簡単で結構です。

近藤政府参考人 この条約の発効には三十カ国の締結が必要でございます。

加藤(尚)委員 御説明では、アフリカのアルジェリア、そこが提案国みたいになっているんですけれども、もう残念無念と思ったですね。これは、日本の有形無形、まあ有形というとどっちかというと欧米中心だから、無形こそ日本が率先して国際社会の中でアピールしなきゃいけないというふうに思っていましたから、無念残念だけれども、遅くない。だから日本が率先して、いわば、三十カ国以上どころか世界に、この無形文化財というのはもともとアジアから日本に有史以来伝わってきて、それで日本にも定着して、それがいかに生活文化の中で、いわゆる日本の教養文化に大きな意味があることは、もう説明するまでもありません。

 その意味で積極果敢に条約国をどんどん説得していく、特に近隣、そしてASEANと思いますけれども、いかがでしょうか。

近藤政府参考人 加藤委員御指摘のごとく、我が国は無形文化遺産の先進国でございます。そういうことで、この条約の締結にもずっと主導役を果たしてまいりました。今後は、この条約が一刻も早く発効するように、途上国、特に多くの文化遺産を抱えておりますアジアの近隣国を中心に働きかけを強め、我が国のこの分野における主導力を引き続き発揮していきたいというふうに考えております。

加藤(尚)委員 だからこそ、たびたび私は、この外務委員会に立つたびに在外公館ということを言っているんです。だから、在外公館挙げれば、それらが本当に立ち上がれば、早く実効が出ると思います。

 文化財保護法というのは、僕はこれを見ているんですけれども、昭和二十五年ということになっているけれども、過ぐる明治四年というふうに資料の中にも書いてありますけれども、まさに先達、つまり、日本の文化財保護に対しては大きな過去の歴史がある。それをもってして、それこそ総理の言うODA戦略じゃないけれども、このいわゆる文化戦略こそ日本の最大の武器だし力だと私は思うんです。つまり、武器的な力よりも、むしろ文化的力を一層大きくこの機会にしなくてはいけません。

 その意味で、この発効についてさらに手早く期待するんですけれども、最後に外務大臣、この無形文化財について日本が率先して、世界的な、国際社会の中での、あるいは近隣諸国への役割を担わなくちゃいけない、つまり、歯ぎしりしてやらなくちゃいけないというふうに、それが日本の国力に通じると思いますけれども、大臣のお考えをお聞きして終わりたいと思います。

川口国務大臣 無形文化財の遺産条約が成立する過程に当たっては、我が国としては非常に積極的にイニシアチブをとってきたわけでございます。そして、我が国の無形文化遺産の保護という意味では、我が国は、世界に率先をしていい制度をつくって、それを実際に動かしているということでございます。そういった我が国の知見、これを生かしまして、国際協力を行い、世界において無形文化遺産の保存をしていくということについて貢献をしていきたいと思います。

加藤(尚)委員 どうもありがとうございました。

米澤委員長 これにて各件に対する質疑は終局いたしました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会します。

    午後三時五分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.