衆議院

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第15号 平成16年4月28日(水曜日)

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平成十六年四月二十八日(水曜日)

    午前九時十三分開議

 出席委員

   委員長 米澤  隆君

   理事 岩永 峯一君 理事 谷本 龍哉君

   理事 中谷  元君 理事 渡辺 博道君

   理事 末松 義規君 理事 武正 公一君

   理事 増子 輝彦君 理事 丸谷 佳織君

      遠藤 武彦君    小野寺五典君

      河井 克行君    木村  勉君

      高村 正彦君    鈴木 淳司君

      田中 和徳君    土屋 品子君

      西銘恒三郎君    松宮  勲君

      宮下 一郎君    阿久津幸彦君

      加藤 尚彦君    今野  東君

      中野  譲君    松原  仁君

      漆原 良夫君    赤嶺 政賢君

      東門美津子君



    …………………………………

   外務大臣         川口 順子君

   外務副大臣        逢沢 一郎君

   外務大臣政務官      田中 和徳君

   外務大臣政務官      松宮  勲君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 知念 良博君

   政府参考人

   (警察庁警備局長)    瀬川 勝久君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 齋木 昭隆君

   政府参考人

   (外務省大臣官房文化交流部長)          近藤 誠一君

   政府参考人

   (外務省大臣官房領事移住部長)          鹿取 克章君

   政府参考人

   (外務省北米局長)    海老原 紳君

   政府参考人

   (外務省中東アフリカ局長)            堂道 秀明君

   政府参考人

   (外務省経済協力局長)  古田  肇君

   外務委員会専門員     原   聰君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 国際情勢に関する件


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     ――――◇―――――

米澤委員長 これより会議を開きます。

 国際情勢に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房審議官齋木昭隆君、外務省大臣官房領事移住部長鹿取克章君、外務省北米局長海老原紳君、外務省中東アフリカ局長堂道秀明君、外務省経済協力局長古田肇君、警察庁長官官房審議官知念良博君、警察庁警備局長瀬川勝久君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

米澤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

米澤委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。木村勉君。

木村(勉)委員 自由民主党の木村勉でございます。

 川口外務大臣におかれましては、お元気を回復されて何よりでございます。イラクの人質の問題や北朝鮮の問題、いろいろ心労が重なってのことだと思いますけれども、ひとつ、健康でばりばり日本の顔として頑張っていただきたいな、こう思っております。

 外交というのは、それぞれの国の国益を背負って世界の国々で渡り合うわけでございますけれども、外交を進めていく上で何が一番大事な要素なのか。三つ挙げるとしたら何でしょうか。

川口国務大臣 三つということで整理がきちんとできるかどうかわかりませんけれども、やはり、日本として一番考えるべきことというのは、我が国の国益というのは何かということを、きちんとそれをベースに据えて考えていくということであると思います。それは、外交の目的というなり、あるいはそこで獲得をしよう、それぞれの外交の個別個別の案件について何をねらうか、何を我が国としてそれを獲得するかということを考えるというときに必要な視点であるというふうに思います。

 それからもう一つ、今度は、実際にそれをいかなるやり方で獲得をしていくかという観点で考えますと、私は、大事なことは、相手国の利益、相手国の国益であると思います。それが何かということを常に視野に入れて考えるということだと思います。両方がうまくプラスサムになるような、そういう形が一番うまくいくというふうに思っています。

 それから三番目に、実際に外交に携わるという立場からいうと、私は、大事なのは人間と人間の関係であると思っています。それは、日本の外交当局、それを構成する人々、そしてその相手にある国々、これの人間の関係、これは私は、円滑に外交を進めていく上での一つの大きなかぎであるというふうに思っております。

木村(勉)委員 わかりました。私は、もっと、日本の国益というものはもちろん何であるかということははっきりとさせておいて、それで、どういう時代、どういう社会になってもそれを追求できるための外交として力を発揮できる要素ということでお聞きしたかったので、確かに、人間的な関係や相手の国の利害を考えて、それに合致し合うような形で模索し合うというのは、これは基本ですから大事なんですけれども、私は、軍事力、そして経済力、政治力、こういうものが、やはり、それぞれの時代にそれぞれの国の国益を追求していくためにはとても大事な要素だろうと思っているんです。

 そういう中で、日本は軍事力は余りないし、経済力はありますけれども。もう一つの政治力ということをどうお考えになっているか、その辺をお聞きしたいなと思うんです。

川口国務大臣 木村先生がおっしゃるように、軍事力、経済力は、日本の力を形づくるものとして非常に重要な要素であると思います。それから、全く違う意味で、日本国内の支持ということも重要であるというふうに思います。

 それで、政治力の意味というのが何かということでありますけれども、これは、世界を動かす、国際社会を動かすことを形づくっていくことを構想する力、そしてその構想を実施していく力、その二つに分けることができるんだろうというふうに思います。

 それぞれ、前者について言えば、私は、総合的な、戦略的な外交ということをずっと言ってきているわけですけれども、それは、まさにそういった秩序をつくっていくところを考えていくという意味で重要であるというふうに思っています。

 それから、それを実施していく力、これは、おっしゃった経済力それから軍事力、そういったことと相まって、日本の、それから、先ほど私が申し上げた、相手国の国益は何か、ほかの国の国益は何か、そしてそれを動かせる人間の関係というのは十分にあるか、そういうことを考えた上で、踏まえた上で、それを実施していく力、総合的なものであると思います。

 我が国がそれが十分にあるかということで言えば、私は世界の中でそれを持っている国の一つであるというふうに思っています。

木村(勉)委員 確かに日本も政治力を持っておりますけれども、私は、三つの要素の中で政治力をもっともっと強めて、高めていかなくちゃならないな、こう思っておるわけです。

 やはり、アメリカは軍事力も経済力も政治力もぬきんでておりまして、超大国としてありますけれども、そういう三つの要素を持っていないけれども、イギリスやフランスはそれなりの国際的な発言権、また外交の巧みさを持っているわけで、そういうものを考えると、やはり政治力といいますか、国際社会における関係をしっかりと各国と結んでいて、いざといったときに多数派工作も可能になるというような形で外交力を高めていっているんだろうと思いますので、ぜひ日本もこれから、軍事面では制約があるし、経済面はもっと伸ばしながら、またもう一つの政治力というものを培いながら、しっかりとした、日本の国益を追求できる、そして世界の平和実現に貢献できる要素を高めていっていただきたい、こう思うわけであります。

 それで、最近起きた北朝鮮の列車爆発事故、これについてお尋ねしたいんですけれども、これの真相ははっきりしておりませんけれども、外務省としてはどうつかんでおられるのか、お答えいただきたいと思います。

逢沢副大臣 大変大きな爆発事故が起こりました。その真相について、また事実について、的確に私どもとしても情報を収集し、認識をする必要性がある、そのように思っております。

 まず、事故の原因についてでございますけれども、二十四日付の国連等の合同調査団による報告によりますと、北朝鮮政府から確認されたこととして、列車の路線変更の際に、硝酸アンモニウムを積んだ貨物列車が燃料油を積載した車両と接触したことによって爆発が発生したとされておるわけでございます。

 北朝鮮政府から確認をして、以上のことが国連等の合同調査団によって報告をされておるということでございます。

木村(勉)委員 そういう物理的な事故だという国連の方の発表を外務省は真に受けているんだろうと思いますけれども、中には、金正日が北京で中国との首脳会談をやって帰ったその数時間後、六、七時間後だということで、そういう陰謀説もあったわけでございますけれども、そういうことはないということですね。

逢沢副大臣 北京を訪問された金正日総書記が列車によって平壌に戻られる、事故が発生をした現場を、今委員は六、七時間という時間を挙げられました。一部報道によれば、八時間ないし九時間前にそこを通過した、そういう報道には接しているわけでございますけれども、今回のこの列車爆発事故が、例えば金正日体制の動揺をねらったものである、あるいは彼をねらったテロそのものであるといったような見方を裏づける情報に私どもは接しておりません。

木村(勉)委員 この事故に対して日本も支援をしようということで、金銭的な支援を決めたようでございます。十万ドルということです。アメリカも十万ドルの支援を決めたということでございますけれども、私はこの金額はなかなか興味のある金額だなと思っているわけなんですね。日本円で約一千百万円ですね。世界の経済超大国のアメリカと日本が十万ドルずつ支援するよということ、これは意味があるんですけれども、額もなかなか興味深い額だと思うんです。

 その根拠というのは、どういうところから十万ドルというのを算定したんでしょうか。

川口国務大臣 これが明確な根拠ですというふうに申し上げるということは難しいんですけれども、我が国としては、この支援をいち早く発表するということが重要であるというふうに考えておりました。

 そして、国連の報告を得て、我が国としてはまさに主体的に十万ドルということを決めたわけでございまして、これについて引き続き国連が、合同調査団が詳細な調査をいたしております。そして、この調査の報告を見た上で、また追加的な支援が必要であるということであれば、さらに考えていきたいという考え方をしております。

 それから、人的に援助をするということが必要ではないかということも考えなかったわけではないのですけれども、これについては北朝鮮の方が望んでいないということで、どの国も送っていないということです。

木村(勉)委員 その十万ドルの根拠といいますか、まだ追加支援があれば増額するんだという話でありますけれども、十万ドルに、まず第一回の支援をやったというのはどういう要素を考えて決めたのか。

 それで、また、人的支援は要らないというのは、やはり実情がわかるのを防ぎたいとかそういう思惑があるのかと思いますけれども、やはり普通の国じゃないな、ちょっとやはり変わっているなということを感ぜざるを得ないわけであります。

 それで、六者協議も六月ごろ開かれるということでございますけれども、その前の作業部会の段取りはどう進められておるのか、ひとつお聞きしたいと思います。

川口国務大臣 先ほど援助の話で一点言い忘れましたけれども、この我が国の十万ドルの支援については、北朝鮮から感謝の言葉が伝えられておりますということを申し添えておきます。

 それから、六者の会合の作業部会の件でございますけれども、前回の会合で作業部会を開くということが決定されて、その後、どういうようなことを議論するかとか幾つかの議論を関係国の間で調整してきております。そして、日米韓の三カ国の会合を、先般、四月の七日、八日にやりましたけれども、そこでもできるだけ早期にこれを開催するということで合意がございます。

 今、日取りにつきましては、現在は、関係六者の間で五月の中旬に作業部会を開くということに向けて調整を行っているわけでございます。

木村(勉)委員 時間ですから終わりますけれども、北朝鮮、やはりその体制そのものを変えていくように、日本は外交上、ひとつ考えていくべきではなかろうかなと思っております。

 終わります。

米澤委員長 次に、丸谷佳織君。

丸谷委員 おはようございます。公明党の丸谷佳織でございます。

 きょうは、中東情勢について幾つかお伺いをさせていただきたいと思います。

 イラクにおきます邦人人質事件、無事に解決を見まして本当によかったと思っております。外務大臣を初め、外務省、あるいはイラク大使館員を初めとしまして、解決に向けて尽力をしていただきましたイラクの人、また隣国のアラブ社会の皆様にも心から感謝を申し上げなければいけないというふうに考えております。

 イラクの復興に関しましては、我が国の中東におけるエネルギーの依存度を考えても、また日米同盟の中での我が国の役割を考え、また国連決議を考えていく中で、我が国がイラクの復興に関与しないという選択肢はないというふうにも思いますが、その反面、イラクにおけるリスク回避という視点も大事だろうというふうに考えております。

 自衛隊はともかく、現在イラクの復興に関与している民間人、また報道陣のこのリスク回避という視点におきまして、我が国として、今後、人質事件を契機にして考えていかなければいけない点も数多くあるのではないかというふうに思います。

 そこで、まずお伺いしますけれども、現在このイラクの復興に関与している邦人、いわゆるNGOである民間人、また報道の人たち、イラクからは一たん退避をしているというふうにもお伺いしておりますけれども、隣国でいわゆる待機をしている邦人数というのは把握されているのでしょうか。この点をお伺いします。

逢沢副大臣 まず、在留届の提出もしくは外務省在外公館への通報によりまして私どもとして承知をしている限りの数字という前提でお聞きをいただきたいわけでありますが、四月二十七日現在、報道陣、取材関係でございますけれども、イラク取材のために滞在する報道関係者は、ヨルダンには滞在されておりません。そのように承知をしております。クウェートには約二十名の報道関係者がイラク取材ということで滞在をしておられます。また、復興支援のために滞在する邦人は、ヨルダンに十名、クウェートに三名いらっしゃるということでございます。

丸谷委員 今、報道陣ではヨルダンがゼロ、またクウェートは二十名という数字をおっしゃっていただきましたけれども、やはり、報道する側あるいは民間人の側にも、自己管理の中でのリスク回避という視点も持っていただかなければいけないと思います。

 ですから、みずから、みずからの居場所、あるいは滞在の目的等を大使館等に連絡するぐらいの自己管理の視点を持っていただきたいということも、国内の中ではこういった声を高めていかなければいけないのではないかというふうに思うわけですけれども、イラクの安定にまだ不安を残す中において、滞在しています、隣国において待機をしている民間あるいは報道陣に対しての注意喚起というのはどのような形で現在行われているのか、この点をお伺いします。

逢沢副大臣 まず、旅券法第十六条の規定でございますけれども、外国に住所または居住を定めて三カ月以上滞在をする日本人は、住所または居場所を、管轄する日本の大使館または総領事館に在留届を提出するよう義務づけられているということを確認させていただきたいと思います。

 報道関係の方になりますと、しばしば移動される。必ずしも、三カ月以上同じ場所に滞在をする、あるいは同じ国に滞在ということにはなりにくい部分もあろうかと思いますが、在留届の提出の義務づけ、これを正しく国民の皆様にも理解をいただかなくてはならないということでございます。

 そして、累次この場でも申し上げてまいりましたけれども、渡航情報、とりわけ危険情報、スポット情報を、たび重ねて、とりわけイラクについては発出をさせていただいております。報道関係の方、あるいはまたNGO関係の方々にも、こういった危険情報、特に現在のイラクについては、退避勧告という四つのカテゴリーの中ではいわば一番重い勧告を出させていただいているわけでありまして、そのことをしっかり受けとめていただき、適切な判断と行動をお願いいたしておるところでございます。

丸谷委員 ありがとうございました。

 では、続きまして、中東和平の点に移らせていただきます。

 昨年の四月にロードマップが提案をされまして対話による和平交渉の行程表が発表されたものの、最近のイスラエルまたパレスチナ現状を見てみますと、ことしに入りましてからも、三月の二十二日にヤシン師が殺害をされておりますし、その前にはヨルダン川西岸に分離壁が建設をされ、そして四月十四日にはブッシュ、シャロン首相が会談をしたものの、この会談の内容そのものがアラブ社会に対しては非常に大きなアメリカに対する不安の種を植えつけた、残念な結果になったと私は考えております。また、四月十八日にはヤシン師の後継者でありますランティシ氏が暗殺をされる。

 まさに、日本の政府の考え方としては、今まではイスラエル、パレスチナ、暴力の悪循環を断ち切るために、対話の促進あるいは経済的な支援ということで努力をし続けてはいるものの、本当に、暴力の悪循環というよりは、最悪の状況に陥ってきているというふうに考えるのが妥当であろうと思われる中東情勢。

 外務大臣も大変厳しいお言葉をお使いになってこの情勢に対してはお考えを述べたというふうに承知をしておりますけれども、改めまして外務大臣に、現在のこのイスラエル、パレスチナにおける中東情勢をどのようにごらんになっているのか、この点をお伺いします。

川口国務大臣 今、イスラエル、パレスチナで起こっていることというのは、大変に懸念すべきことであると思います。大事なことというのは、イスラエル、パレスチナが対話を再開してロードマップに戻るということであり、それを関係国が、国際社会が慫慂していくということが大事であると思います。

 イスラエルがハマスのリーダーの人たちを次々と殺害している、二人殺害をしたということがあるわけで、これは、そういった中東和平を達成するために必要なことが何かという観点からいうと、全く効果を持たないといいますか、プラスの意味を持たない、非常にマイナスの影響を与える事柄で、今後及ぼす影響について思いをいたさない、非常に無謀な行動であるということを考えております。そういう意味で、イスラエルのその行動というのは非難さるべきことであるというふうに思っています。

 イスラエルが、今回の中で、一つ、アラファト議長について、これを殺害しないということを取り消したということがございまして、それに対しては、中東局長から日本にいる在京の大使に対して、またイスラエルにおいても、今井大使から、そういった行動は無謀な行動であるということを、日本としてそう考えるということも伝えておりますし、同じような趣旨を竹内次官がプレス、記者会見でも話をいたしておりますけれども、そういった、イスラエルが自制をし、そしてまたパレスチナサイドも暴力をやめて、両方が対話に戻っていくということが大事であると思います。

 この中東地域の和平が軌道に戻るということが、イラクとの関係でも非常に重要なことだと考えております。

丸谷委員 大臣におっしゃっていただきましたように、本当に、今回のイスラエルの行為に関しては、やはり非難されるべきであるというふうに私も考えておりますし、国際法に照らしても、もうこれは犯罪であると言わざるを得ないというふうに私は考えております。

 その中において、シャロン首相が訪米をされた折にブッシュ大統領と会談をされまして、ブッシュ大統領も、アメリカの大統領としては初めて実際に入植地を容認するような判断をされたというふうに報道では承知しております。いわゆるブッシュ大統領における中東政策の方向転換、この点については、一つはロードマップの中の第一段階を促進するものとして評価する声もありますけれども、我が国政府としては、この方向転換に関してはどのようにお考えになっているのか。この点についてはいかがでしょうか。

堂道政府参考人 お答え申し上げます。

 政府の立場でございますけれども、我が国政府といたしましては、イスラエルがガザから撤退するということにつきましては、これがロードマップに沿う形で行われる限り、これについては歓迎すべきということでございます。

 そのほか、米国とイスラエルの間で話された難民の問題、それから入植地の問題等については、これは最終的な交渉により合意が図られるべきであるという考え方でございまして、それは最終的には両当事者が合意をすることが必要だ。したがって、両当事者が合意がないままにそういうアレンジメントを進めるということについては、問題があると考えております。

 我が国としましては、一九六七年のグリーンラインというのは守られるべきであるというふうに考えております。

丸谷委員 ありがとうございました。

 ブッシュ大統領による中東政策の方向転換はともかく、では我が国として一体この中東和平の達成について何ができるのかということも、同時に考えていかなければいけない問題だと思います。

 我が国としては、やはりパレスチナの現状を見たときに、あれだけ経済格差のある国において、自制をせよと言うだけでは説得力を持たないという理由だと思うんですけれども、パレスチナに対する経済支援をずっと続けてまいりました。そのことについては非常に現地では高く評価をされていますし、日本の理解を深めるこれは非常に大きな外交政策であったというふうに考えていますが、残念ながら、現在、この日本の経済状況においてODA自体の総額が減らされていく中で、パレスチナに対する支援額というものも減っております。

 この点については、パレスチナ側から、あるいはパレスチナの人々から、残念だという声も実際には聞かれるわけなんですけれども、今後、我が国がパレスチナまた中東和平を達成していくという目標に向かって経済支援を考えるときにどのような方針で臨まれるのか、この点についてお伺いをします。

逢沢副大臣 今丸谷先生御指摘をいただきましたように、パレスチナ支援を通じてあの地域の安定化を図るということは、中東和平を前進させるという上で大変重要なことであるというふうに承知をいたしております。

 少し数字を御紹介しながら答弁申し上げたいというふうに思うわけでございますが、九三年以降これまでに、パレスチナ支援でございますけれども、総額約六億八千万ドルの支援を行ってまいりました。これはアメリカに次いで、国別で見ますと第二番目の規模であります。まさにパレスチナ支援のドナーの立場からすると、最大規模のものということが言えようかというふうに思います。

 ただ、丸谷先生からもお話がございましたが、二〇〇〇年九月に、民衆蜂起、いわゆるインティファーダが発生をいたしまして、治安の状況が大変悪くなった、そういう現実がございます。我が国の援助関係者を派遣して、援助の直接の実施が困難な状況になったということについても御理解をいただく必要があろうかと思うわけでございますが、しかし、こういった状況にもかかわらず、治安が非常に厳しい状況の中、パレスチナの方々の民政安定の必要性にかんがみて、できるだけのパレスチナ支援を継続する必要があるという考え方から、例えば、昨年度約四千万ドルの支援を実施してきたわけでございます。

 これからも、国連のある意味では要請、アピールにこたえる形で、雇用や医療や衛生や教育等の分野に、例えばUNDPを通じる、あるいは例えばUNRWAを通じる、そういうことを通じまして適切なパレスチナ支援を継続し、中東の安定、ロードマップに両者が立ち戻る、そういう環境条件を整えてまいりたい、そのように承知をいたしております。

丸谷委員 ありがとうございました。

 実際に、大臣、副大臣もおっしゃっていただきましたように、中東の安定化を図っていかなければ。イラクにおける、こういったインティファーダに便乗した国際テロリストにも口実を与えないという観点からも、中東和平の問題、国際社会の関与が必要な以上、我が国としても、経済的な支援も含めて十分に力を発揮していただきたいと思います。

 以上です。ありがとうございました。

米澤委員長 次に、中野譲君。

中野(譲)委員 民主党の中野譲でございます。

 川口大臣におかれましては、体調も回復されたということで、ゴールデンウイークも近いものですから、ゆっくり休んで、週明けからまた頑張って日本の外交の先頭に立っていただきたいと思います。

 きょうは、主にイラク問題で、逢沢副大臣を中心に私お話をお聞きしたいと思っておりますので、その前に、これはお決まり事になっておりまして、外交とはちょっと関係がないんですが、大臣、副大臣そして政務官の皆様に、国民年金の加入状況と、あと、もし未納の期間があるのであれば、どのくらい未納の期間があるかということを、これは各委員会で聞くことに私たちもなっているものですから、ぜひ御答弁をお願いしたいと思います。

川口国務大臣 これはプライバシーの問題であるということは、私はそのとおりであると思いますが、私自身は、あるところで、払いましたという発表を既にいたしておりますので、ここでも同じことを申し上げさせていただきます。払っております。

逢沢副大臣 まさにプライバシーの問題ということでございますが、一国民として適切に対応をさせていただいております。

田中大臣政務官 逢沢副大臣と同様であります。

松宮大臣政務官 私も、国民としての義務を適切に果たさなければいけない、そういう信念で行動しております。

中野(譲)委員 適切というのが、皆様、多分それは非常に相対的なものでございますでしょうから、御自身が適切に払っていると言えば払っているんでしょうけれども、一応、今の御答弁ですと、皆様きっちりと未加入の期間もなしに払っていらっしゃる、国民の代表としての国会議員として、また大臣として、しっかりと払っていただいているというふうに解釈をさせていただきました。

 それでは、イラクでの邦人保護についてきょうは中心にお聞きをしたいと思うんですが、まず、三名の方が無事に日本に帰国をされた。ただ、その期間の非常に強いバッシング、そしてそれを受けてでしょうか、私は非常にユニークな発言というか、これは世代の違いなのか、環境の違いなのかよくわかりませんけれども、良識の府であるべき参議院の国会議員の方が、月曜日に非常に変わった、ユニークな発言をされました。そのことに対しまして、逢沢副大臣はどのように御感想を持っていらっしゃるでしょうか。反日分子ですか、そういう発言をされた方もいらっしゃるみたいでございますが。

逢沢副大臣 大変恐縮でございますが、参議院のどの先生が具体的にどういう発言をなさったのか、ちょっとその詳細について承知をいたしておりませんので、よろしければ御紹介をいただくか明示をしていただければと存じます。

中野(譲)委員 きのうも各新聞で書かれていたことで、多分、副大臣も非常にお忙しいと思いますけれども、要は、柏村議員だと思うんですが、三人の日本人の方々が、自衛隊も反対である、そういう中で反日分子という言葉を使われたと思うんですが、要は、戦中のような言葉を使われて、この三名の方々の行動が言語道断であるというようなことをおっしゃっていたんですが、そのことに対して逢沢副大臣はどのようにお考えをいただけるでしょうか。

逢沢副大臣 今、中野先生の方からその御発言についての要旨といいますか概要についてお教えをいただいたわけでございますが、それぞれ国会議員の発言、みずからの信念あるいはまた考え方等に基づいての御発言であろうかと思います。私の立場で、個々の発言についてどうのこうのコメントする立場にはないかというふうに存じます。

中野(譲)委員 そうしますと、外務副大臣として、あるいは政治家として、今回、三名の方々は、報道目的で行った方もいらっしゃるし、自分の信念としているものを追求するために行った方もいらっしゃる。現状としては退避勧告が出ている中で行かれたわけですけれども、捕まりたくて捕まっているわけでもなくて、多少なりとも、もうちょっと気をつけないといけないところもあったのかもしれないんですが、結果としてああいうことになってしまった。

 イラクで、先ほどヨルダンとクウェートに今退避をしている報道関係者の方、そして民間ということですからNGOの方だと思いますが、そのほかに今イラク国内にとどまっていらっしゃる方というのは、日本人はいらっしゃるのでしょうか。

鹿取政府参考人 今イラクには、大使館員を含め、邦人が滞在していることは事実でございます。そして、今御指摘のどのぐらいの人数という御質問でございますが、本来であれば、もちろん人数を答えることは全く差し支えないわけでございますが、御承知のように、今回二回にわたって拘束事件が起こりました。また、今もイラクの治安状況は非常に悪い。こういうことで、こういう特別な状況でございますので、今イラクに何名邦人がいるかということについては、今の治安情勢にかんがみ、答弁は差し控えたいと考えております。この点、御理解をいただければと思います。

中野(譲)委員 そうしますと、過去のデータとして、四月の八日の時点ではイラクに何名ぐらいの日本人の方がいらっしゃいまして、これは大使館の方は抜いていただいて結構でございます、あと自衛隊も抜いていただいて結構でございます。いわゆる民間ベースで行かれている方は何名ぐらいいらっしゃって、それでどの地域に何人ぐらいいらっしゃったか。大使館として、または本省としてどのくらいの認識を持っていらっしゃるというか、確認をされているのかというのをお聞きしたいと思います。

鹿取政府参考人 四月の初めの時点という御質問でございますが、私が今持っているのは、自衛隊を除いて、大使館員を含め、約七十名イラクにおりました。バグダッド周辺とそれからサマワ周辺でございます。

中野(譲)委員 今回の事件でキーワードになっているのが退避勧告ということでございますが、非常に基本的な質問で恐縮でございますけれども、退避勧告、四月に入ってからも、八日にイラクで人質事件が起こった後も、その後三回ぐらいですかね。スポット情報というのも出ていて、恐らく三十回近いスポット情報と危険情報ということで発信がされていると思うんですが、そもそも、スポット情報という名称と危険情報という名称に分けているんですが、どのように変わるんでしょうか。

鹿取政府参考人 まず危険情報でございますが、渡航情報を出す際に、我々、危険情報というものをある意味では基礎としております。そして、この危険情報については、昨年の二月以来、イラクについては「退避を勧告します」ということで発信しております。

 また、この危険情報に加えまして、その時々の状況あるいはいろいろなきっかけをとらえまして、私たちは短期的な情報としていわゆるスポット情報というのを発出しております。これは危険情報に加えて出しておるものでございます。このスポット情報については、今先生から御指摘がありましたように、本年に入って十四回、イラクについて出しておりまして、そのスポット情報においても退避の勧告というものを行っております。

中野(譲)委員 過去の危険情報とスポット情報というのを見てみますと、最初は二〇〇三年の一月二十三日に危険情報ということで出されまして、その後、五月九日まで、五回連続で危険情報という形で情報が出されております。その後、二〇〇三年の八月の十三日から十数回にわたりましてスポットという形で出されておりまして、二〇〇四年の三月の十九日にまた危険情報という形で一度だけぽつんと出てきて、その後が、六回か七回ですか、またスポット情報というふうになっているんですけれども、これはなぜ三月の十九日のときだけ危険情報というふうに出し方が変わるんでしょうか。

鹿取政府参考人 お答えいたします。

 私どもが渡航情報を出す際には、今、先ほど申し上げましたように、危険情報、これを一つの基礎としております。そして、イラクについて最初に退避勧告を危険情報において行いましたのは昨年の二月でございますが、この危険情報、これが根幹となるものでございますが、これについては大体三カ月ぐらいをめどに内容を見直して発出しております。したがいまして、この危険情報も、昨年の二月以降、数回にわたって、約三カ月程度をめどにしておりますが、更新しております。そして、この危険情報という大きな流れに加えまして、先ほど申し上げましたように、何か特定の事件あるいは情報が入った場合に短期的な情報としてスポット情報を出している、こういう仕組みで情報を発信しております。

中野(譲)委員 外務省のホームページを見ますと、これはずっと過去の履歴で出てくるわけでございますけれども、このスポット情報なり危険情報を更新するのは、これは外務省の省内でやっていらっしゃるんでしょうかね。文章は当然外務省内でつくられると思うんですが、それを例えばホームページに、インターネットにアップデートするというのは、これはどこがやるんでしょうか。

鹿取政府参考人 文章につきましては、私ども在外公館の集めた情報、また本省で集めた情報、これを分析して文章をつくっております。また、ホームページに掲載する作業は外務省で行っております。

中野(譲)委員 イラクに退避勧告が最初に出されてから、ずっと退避勧告のまま、いわゆるアラートが一番高い状態だと思うんですが、一番最初に出されたのはいつですか。

鹿取政府参考人 最近のことでは昨年の二月でございます。

中野(譲)委員 昨年の二月からきょう現在まで、継続して退避勧告は一番高いアラートでかかっているという理解でよろしいんですよね。

鹿取政府参考人 そのとおりでございます。

中野(譲)委員 過去三十回近いスポットなり危険情報の中で、この三十回近いものすべてが退避勧告に基づいて出されているということでございますけれども、私ずっと全部読んでみたんですが、非常にこれは変わっているというんですかね、退避勧告が出ているんですけれども、いろいろな、名称の仕方は大体四つか五つくらいに、いつも同じのを繰り返し使っているんです。

 一番新しい、要は三名の方が拉致をされ解放された後に出されているものだと、「改めて強く勧告します。」というふうにかなり強い口調のものに変わっているんですが、去年から、去年いっぱい、大体十一月ぐらいまでにかけては、例えば、勧告はしています、退避をお勧めをいたしますというふうな非常にやわらかい表現をされているんですよ。そしてその中で、「やむを得ない事情により残留される方は、在イラク日本大使館または在ヨルダン日本大使館と緊密な連絡を維持するとともに、いつでも退避できるよう準備をして下さい。」これは半分いることも認めているような感じにとれる文章が書いてあるんですが、やむを得ない事情というのはどういう事情なんでしょうか。

鹿取政府参考人 私どもが退避勧告を出しますときには、やはり私たちとしては、ぜひ退避していただきたい、もうイラクには滞在していただきたくない、こういうことで勧告しております。したがって、退避勧告というのは一番強い勧告でございます。今、先生が御指摘になりましたように、昨年の十一月に、ただやむを得ない事情で残られる方はぜひ連絡してください、こういうことが書いてあったことは事実でございます。

 その背景といたしましては、私ども二月から継続的に退避勧告をしております。しかし、イラクに残っておられる方がいることは私ども承知しておりました。そういう方々に対して、退避勧告が出ているからといってそれだけで済ませるというのはいかがなものかということで、我々としては、退避勧告は出しておりました、しかしどうしても退避勧告に従うことなく残っている方がおられるとしたら、せめて連絡先は届けていただきたい、そうであれば我々もいざというときに連絡ができる。我々としては、退避勧告が出ている、しかし連絡がとれない、こういうことはぜひ避けたいということで、先ほどのような文章を設けていたときはございます。

中野(譲)委員 質問としては、やむを得ない事情というのは、例えばどういう事情がやむを得ない事情なんでしょうか。

鹿取政府参考人 それは、それぞれの残られた方の立場というものがあって、それも残られた方々の立場によって違うかもしれませんが、いずれにしても、我々としては、やむを得ない事情ということよりも、重点を置いたのは、退避勧告が出ています、ぜひ退避してください、こういう勧告でございますけれども、もしもすぐ退避できないのであれば連絡先はお知らせください、こういう趣旨で書いたものでございます。

中野(譲)委員 昨年の十一月以降が、「やむを得ない事情によりイラクに残留される方は、」という文章が今度は消えているんですが、十一月以降は、じゃ、皆さんいらっしゃらないということですか。いるわけですよね、十一月以降も。ずっと退避勧告は出していて、去年は一年を通して、とにかく危険ですからイラク国外へ出ていただきたい、それでも出られない方がいる場合は、今おっしゃったように、やむを得ずいらっしゃる場合はせめても連絡はしてほしいというところの文章が、どうしてその後消えちゃうんでしょうか。

鹿取政府参考人 これは、まさに昨年の二月に退避勧告を出しまして、そして退避をずっと勧告してきた。しかし、残られる方がいることはある程度承知していたものですから、一時期、昨年の十一月まではそのような表現を入れていたことは事実でございます。

 しかし、我々として、そういう一つの経過を経て、やはりどんどんどんどんイラクの事情が厳しくなる、また今先生が御指摘がありましたように、退避勧告が出ているのであればむしろ退避勧告ということをきちっと出した方がいい。いろいろ議論もございまして、もしもおられる方は、イラクに滞在される方は大使館に連絡する、そういうような要望を我々が数カ月にわたって出していたことはもう既に事実としてございましたので、昨年の十一月以降は、それを取りまして強く退避を勧告する、こういう形に変えたわけでございます。

中野(譲)委員 ヨルダンとかバグダッドのホテルにも、退避勧告を掲示していただきたいというふうにお願いをしているということでございますが、これはスポット情報とか危険情報が出るたびにどなたかがお持ちをするんでしょうか、ホテルに。どういうふうなコミュニケーションをとってやっていらっしゃるんでしょうか。

鹿取政府参考人 具体的に、例えばファクスで送っているか、あるいは人が出ているかというのはその日の状況によると思いますけれども、我々のスポット情報ないし危険情報の内容をホテルに掲示していただくということで、一部のホテルに協力を求めているということでございます。

中野(譲)委員 求めているのはわかるのですが、実際に掲示をしていただくのに、文章なりなんなりというのは、どういうふうにホテル側にお渡しをして、またそれがきちっとホテルで、毎回このスポット情報なりが更新をされるたびにホテルに掲示をされているという確認はどなたが行われるんでしょうか。

鹿取政府参考人 ヨルダンにおきましては、相当程度館員が直接確認していると思います。バグダッドにつきましては、館員の移動も、テロの脅威があるものですから非常に注意をしなくてはいけないということでございますので、例えば、直接館員が行かない方法でホテルに依頼するということもあるかと思います。

中野(譲)委員 先ほど、この情報自体を外務省がつくって、外務省省内でそれを例えばホームページにアップするなり、あとはインターネットなんかでメールなんかで配信をされるというのもお聞きをしておりますが、これは、情報が入ってきたら瞬時に更新ができるような体制にはなっているわけですよね。

鹿取政府参考人 私ども、情報を整理しましたら、できるだけ早く作業するということでやっております。

中野(譲)委員 ことしの三月の十九日、そして三月の二十四日、四月の三日、これが日本人の人質事件が起こる前の近々のスポットないし危険情報の発信履歴なんですが、この中に、これもテレビやニュースやいろんなメディアを見てみますと、ファルージャがとにかく危ないと。三月の三十一日にまず米国の民間人が四名殺害をされて、ロープかなんかでつるされたり。それから、ファルージャで、事件が四月の初旬から始まりまして、最初の数日で何百人という方が亡くなっている。その後五日に英国人が誘拐され、六日に韓国人が二名誘拐され、それでラマディ、ラマディというのはヨルダンからバグダッドに入るときの、今は陸路で皆さん入られるわけですから、その通過点としてのラマディで米兵が十二名死亡したとか、同じ六日には米国が自国民に対し渡航延期を勧告、七日には英国人が誘拐、カナダ人、ドイツ人、イスラエル人。そういった異常に、アンマンからバグダッドに関して非常に危険であるよと。

 これはテロというのか、または武装勢力というふうに政府の方も途中から言葉をお変えになりましたが、どちらにしても陸路で入るしかバグダッドに行く道がない中で、その陸路の中継点のところが非常に危ないという情報がこのスポット情報なり危険情報で入っていないのですが、それはどうしてですか。

鹿取政府参考人 私どもとしては、基本的にはイラク全土について治安状況が悪い、もちろんイラクの中には濃淡はございますけれども、基本的には、特にバグダッド周辺その他については治安状況が悪い、またテロ等の危険はあるということで、イラク全体について退避勧告を出しているところでございます。

中野(譲)委員 そんなことはわかっているわけで、先ほどのお話でもあれですけれども、サマワとバグダッドにほとんど日本人の方がいらっしゃるわけですよ。退避勧告をしていても入ってくる。入ってくるルートは一つしかないわけですよね。そのルート上で非常にたくさんの事件が起きてきていて、その事件というのも、テロではなくて誘拐とか民間人をねらった事件が特にその数日間に非常に多く起きている。

 そのことを何でスポット情報に入れないのかということを私は聞いているわけでございまして、そういうものを読んだら、このルートは危ないな、そうしたら行かないというふうに思う方も出てくるのではないかなというふうな、もうちょっと本当の危ない情報というのを親切に書いてあげることも政府としての役割ではないかと思うのですが、いかがでしょうか。

鹿取政府参考人 御指摘のとおり、私どもとしては、いろいろな事件が起こったり、あるいは各国政府が一定の渡航情報、危険情報を出した場合には、できるだけそれに対応するようにスポット情報等を出そうと思っておりますし、またこれからもその努力を続けていきたいと考えております。

 しかしながら、私どもの基本的な立場というのは、特定のルートだけが危ないとかそういうことではなくて、基本的に、邦人の方々におかれては、民間人の方々を含め、イラク全土からぜひ退避してください、イラク全土に入らないでください、こういう立場でございます。また、我々は、今のイラクの治安情勢はそういう状況であると考えておりまして、特定のルートだけが危ないというふうに必ずしも考えておりません。

中野(譲)委員 特定のルートだけが危ないというんじゃなくて、日本人が退避勧告をしていても入ってくる、入ってくるルートはどこなのかというところを、とめるということを私は言っているわけですよ。

 それで、過去の日本の外務省のスポット情報、一枚紙でぺらぺらといつも同じような文章が書いてある。それでは、例えばアメリカのトラベル情報なんかを見ますと、どこがどういう状況になっているとかなり細かく書いてあるわけですよ。その辺の情報がまず日本政府がとれていない。ここを読んでいるところは、みんな新聞に書いてあるようなことですよ。委員の方もぜひこれはごらんをいただきたいんですが、外務省のホームページで見れますから。みんな私たちが知っているような、新聞で出ているような情報を書いて、下に、危ないですから行かないでくださいと。これでは、情報収集能力があるのかないのか疑われると私は思うんですが、これは逢沢副大臣、どう思われますか。

逢沢副大臣 渡航情報、その中で、今、領事移住部長が累次申し上げましたように、危険情報がベースになる大変重要なものであるというふうに承知をいたしております。

 国民の皆様に適切に判断をしていただき、行動していただくための基礎になる情報でございますので、それがより的確なものであるということ。そしてもう一つ大切なことは、ホームページに掲載をする、そしてさまざまな形で国民の皆様方に必要に応じてそれを受け取っていただく、そのことの工夫は重ねてまいりましたけれども、より一層そういった情報をしっかり受けとめていただけるためのノウハウ、そういう部分についても、より改善のための努力が必要であるというふうに承知をいたしております。

中野(譲)委員 逢沢副大臣は、こういうシチュエーションで海外に出られたのはこれが初めてでいらっしゃいますか。ヨルダンの対策本部に行かれましたけれども、政治生活というか、人生においても含めて、こういうような状況で対応を迫られたのは初めてでいらっしゃいますでしょうか。

逢沢副大臣 今回、重い責任を負い、また緊張感ある仕事を経験させていただいたわけでありますが、若干種類は違うかもしれませんけれども、一九九一年一月十七日に、いわゆる湾岸戦争がスタートいたしました。当時、私は二回生議員であったというふうに記憶をいたしておりますけれども、中東湾岸地域で出稼ぎ労働者として働いておられるアジア人、主にフィリピンやベトナムの方が多かったと記憶をいたしておりますが、そういった方々の、被災民としてイラクあるいは湾岸地域からエジプトやヨルダンに出国をされる、そういったアジアの方々を無事本国に送り届ける、そのための調査団が自由民主党から出されたわけであります。その一員として、戦渦の中東を約二週間にわたり訪問させていただき、当時は、PKO法も、あるいはそれぞれの特措法も何もない時代でございましたけれども、そういった業務につかさせていただいた経験はございます。

中野(譲)委員 そうしますと、まさに中心になって、ヨルダンの対策本部で、情報が錯綜する中、日本政府がどれほどまでに情報がとれているのか、逆に言うと、どれほどまで情報がとれないのかということを、多分、今回初めて身にしみてお感じになったと思うんです。

 先ほど、四月八日時点で七十名ぐらいバグダッドにいらっしゃる。大使館の方を含めてこの七十名の方々が、例えば、それこそきのうまでは非戦闘地域だったものが急に戦闘地域になる。私は、九七年にカンボジアにいたとき、きのうまでは普通だったんですが、翌日朝、大砲の音で起こされまして、いきなり内戦状態に入った。

 そういうような状態がいつ起こるかわからないときに、この七十名と日本政府として確認をされている方々の、例えば有事のときに、どのようにその人たちに情報をお送りして、例えば、まず避難をする場所はどこであるとか、電話なんかが使えない場合にはほかはどういう通信手段を使うとか、それから、もっと言ってしまえば、本当に退避をしないといけないとか、民間機でも自衛隊機でも結構でございますけれども、入ってきたときには、どこに緊急に集まって、どういうふうに退避をしないといけないとか、そういうマニュアルというのは、当然、イラクで皆さんにお配りはされているわけですよね。

鹿取政府参考人 イラクにつきましては、先ほども御答弁いたしましたけれども、退避勧告が出ておりまして、我々としては、もうイラクにおいてはぜひ滞在しないで、直ちに安全に出ていただきたい、こういう状況はずっと続いていたわけでございます。

 他方、まだ退避されていなくて、我々が把握している邦人の方々については、連絡体制がとれるようにということで、電話であるとかあるいはEメールであるとか、そういう形の連絡体制、そういうものは維持しておりました。

中野(譲)委員 例えば、多少国の情勢が不安定な地域で働いている方々のところには、カンボジアなんかもそうでしたけれども、いわゆる危機管理マニュアルみたいなものを皆さんにお出ししていると思うんですよ。そういうものはイラクにおいては出されていないということですか。

 今の答弁をお伺いしますと、日本政府は、とにかく行くな、行くなと言っているのにいる、それはやむを得ないからしようがないよね、でも何か起こったときには対応はしないということですか。Eメールとかで連絡はするといっても、実際に、例えば、Eメール、電話の機能が使えなくなったときにどういうふうに連絡をとるとか、Eメールとか電話が使えないところでそういう有事が起こったときに、どこに避難をするとか、どういうふうに助けを求めていいかとかという、要は、そういう基本的なマニュアルみたいなものというのは普通あるのが常識だと思うんですが、イラクではないんでしょうか。

鹿取政府参考人 例えば、一年前にイラクで武力衝突、武力対立というものがありまして、その際に、邦人の方々がイラクから避難をされました。そのときにも一定のマニュアルに基づいて退避したわけでございます。その後、今、イラクの状況というのは、一切、本来邦人の方がいたら危ない、こういう状況の中での今の御質問であると思います。

 私どもとしては、今のイラクの状況というのは、本当に治安が予断を許さない、そして邦人の方が滞在していた場合に非常に危険があるということで、一刻も早く可能な手段で退避、したがって、今の段階では、本来退避しているという状況として我々は観念しておるわけでございます。

中野(譲)委員 退避しているといったって、現実に七十名、これは大使館の方を抜いても六十名強の方々がいらっしゃるわけですよ。では、邦人保護の感覚はどういうふうになるんですか。逢沢副大臣、これはおかしいと思いませんか。

鹿取政府参考人 邦人保護については、私どもも、その状況を踏まえ、常に全力を尽くしてまいりたいと思っておりますが、今の状況というものは、まさに、イラクにおいては警察制度も未整備でございます。また、通信、移動にも大きな制約があります。また、テロ等の危険が存在するために、館員の移動も大きな制約を受けております。

 したがって、こういう中での邦人保護活動というのは、極めて大きな制約を受けます。だからこそ、私どもとしては、一刻も早くイラクから退避していただきたい、こういうことを重ねてお願いしているわけでございます。もちろん、あらゆる状況において、可能な範囲で邦人保護に全力を尽くすという姿勢は変わりません。

中野(譲)委員 だから、それでも出ない方がいらっしゃるわけですよ。ただ、日本政府は、これは法律的なものもあるし、個人の渡航の自由を含めてあるから、出られない方を強制的に出すことはできないというふうに、そういう法律もできないということは皆さん承知をしているわけですよ。それであっても、日本人ですよね。今、三名の方々、全力を尽くして救出をしようというふうに日本政府はやられた。この七十名、六十名でも結構ですけれども、六十名の方々が、何か起こったときに、ではマニュアルも何もなしでどうやって助けるんですか。

 例えば、四月の八日に三名の方々が拉致をされた。その後、確認をされている七十名近い方々に対して連絡はみんなとったんですか。連絡をとれていた方は何人いて、連絡をとれなかった方は何人いて、なぜ連絡をとれないか、連絡をとれない先にどういうふうなトラッキングをしたのか、その辺を含めて対応をぜひお聞きしたいんですが。これは邦人保護ですから。

鹿取政府参考人 今、私、詳細な事実関係を全部お答えする自信はございませんが、随時、そういうような危機的な状況、ある危機が起きたときは、我々の把握している邦人の方々に対しては常に連絡をとるようにしておりますし、四月の……(中野(譲)委員「とったんですか、要は。とったのかとっていないのか」と呼ぶ)とったものと考えております。

中野(譲)委員 考えているじゃなくて、何人にとったんですか。

鹿取政府参考人 今、申しわけございません、私、今の段階で具体的にどういうふうに、何人直ちに連絡がとれたかは承知しておりませんけれども、私どもの常日ごろからの対応としては、そういう節目節目の状況におきましては、連絡のとれる方に対しては連絡をとるように心がけているところでございます。

中野(譲)委員 要はとっていないということだと思いますね。とったんだったらとったでいいですから、その資料をちゃんと理事会に出してください。何名の方に対して連絡をとって、委員長に、委員長、済みません、何名の方に連絡をとって、何名の方が連絡がついたのか、何名の方が連絡つかなくて、つかない方に対してはどこまで、それは退避勧告だから、出ろと言っているのにいるのはこれは問題かもしれないけれども、日本人の邦人保護に対しては全力を尽くすというのが政府の姿勢だと思いますから、連絡がつかなかった人に対してはどういうふうなその後連絡をとっていったのか、どこまでトレーシングをしたのかということを資料として、ぜひ委員長、お出しをいただくようによろしくお願いしたいと思います。

米澤委員長 理事会で相談します。

中野(譲)委員 あと、今、私これは答弁できませんというふうにおっしゃいましたけれども、例えばイラクのスポット情報を含めて、問い合わせ先ということで、領事移住部、邦人特別対策室とあとは邦人保護課と二つあって、私はきのう、どなたを政府参考人でお呼びしますかということに、こういう危機的なときには対応は当然特別対策室の方であるというふうにお伺いをしていたものですから、では、そちらの方で特にイラクの問題をわかる方をお願いしますと言いましたら、邦人保護課の方に今みんな統合しているんだ、縮小していて、きょう参考人として出られる方がお答えをできますからそれは問題ありませんというふうに言われたんですよね。

 お答えできない人をお呼びいただいても私困るので、ぜひともその辺のところは、何とか委員長、お願いをしたいと思います。(発言する者あり)通告はしていますから、なぜ答えられないのですか。全部答えられると言うから、私はそうですかと。

 私、これは確認したんですよ。特別対策室と二つあるんだから、特別対策室の代表の方なり何なり、わかる方とお二人呼んでいただいた方がいいと思うんですがとお願いをしましたら、統合している、邦人保護課に今統合していますから邦人保護課の方で全部対応ができますというふうに伺ったものですから、私はその辺のことがよくわかりませんと言われても、非常にこれは残念でございます。

鹿取政府参考人 私の答弁が至らなくて、大変恐縮でございます。

 先ほどの組織の話でございますけれども、邦人保護課というものがございまして、その中に特別対策室があるものでございますから、担当の方からそのように先生にお答えしたのであると考えております。

中野(譲)委員 要は、だから、数はわからないわけですよね、今、どういう対応をしたのか。わからないならわからないで結構ですけれども。邦人の方々の身の安否の確認をしたかしていないかということも含めて、していないのならしていないでもう結構ですよ。していないというお答えをいただいて結構ですから。

鹿取政府参考人 申しわけございません。

 四月八日の段階で何人の方に連絡をとったか、そのうち何人に連絡が確かにとることができたのかという御質問について、具体的な人数を申し上げられなくて恐縮でございますが、この点についてはまた追って御説明いたします。済みません。

米澤委員長 先ほどの中野さんの御要請に応じて、理事会で議論して、外務省からその資料をとるようにさせたいと思います。

中野(譲)委員 そうしますと、理事会でぜひ御協議いただいて、資料をお願いしたいと思います。

米澤委員長 はい。

中野(譲)委員 そうしますと、これは連絡をとったとらないは別として、有事のときに、まあ危険情報なり退避勧告が出ている国というのは世界じゅうでかなりの数、今、日本で出しているところもありますよね。そういうときに、有事が起きたときにどういうふうな対応をしていくのか、そこにいらっしゃる日本人の方をどういうふうに保護していくかということは、これは対策マニュアルみたいなのは当然外務省であるわけですよね。

鹿取政府参考人 在留邦人とそれから大使館との間では、その地域地域によって状況はございますけれども、安全対策のための連絡会議というのは常に開いておりまして、その中で、例えば連絡網をどうするかとか、そういう問題についても常に議論をしております。

中野(譲)委員 それは平時のときの話であって、平時のシステムをどうするかということがありまして、今度それが有事になったときに、実際に連絡をしてどういうふうに邦人を保護していくかというところの緊急対策マニュアルみたいなものというのは当然つくっているわけですよね、外務省としては。

鹿取政府参考人 いろいろな緊急事態におけるマニュアルというものは大使館ごとに用意してございます。

中野(譲)委員 いろいろなじゃなくて、これは退避勧告じゃなくて、例えば、先ほど申し上げたようにカンボジアの件ですよね。カンボジアで急にぼんと内戦が起こった、あのときだって日本人が三百名ぐらいいるわけですよ。その日本人たちをどういうふうに保護していくかというときに、それは当然、そういう対応マニュアルみたいなものは外務省であるわけですよね、有事のときのですよ。

鹿取政府参考人 これまでも、いろいろな有事に際しまして、例えばチャーター機で避難する等やっておりますし、またそのための準備も外務省の中では常日ごろからやっております。

中野(譲)委員 そうしましたら、基本的な、いわゆる有事の対策マニュアルみたいなものというのは、これは私たちは見ることができるんでしょうか。

鹿取政府参考人 それはもう一度、今の御質問については検討させていただきます。

中野(譲)委員 これは、邦人保護がどういうふうにやられているかというときに、有事のときにその対策がされているかどうかということですから、その資料をぜひともお出しいただきたいというふうに委員長にお願いを申し上げたいと思います。そのマニュアルをですよね。

米澤委員長 この点についても理事会で協議し、出せるものは出してもらいます。

中野(譲)委員 時間もなくなってきてしまいましたので、逢沢副大臣にちょっとお伺いをしたいのですが、ちょうど逢沢副大臣がヨルダンに行かれているときに我が党の藤田幸久議員もヨルダンの方に行かれまして、何度か副大臣ともお話をさせていただいているということでございますが、十四日だと思うんですが、二名の日本人の方がまたどうやら行方不明になったと、この情報は、大使館なり逢沢副大臣はどこから入手をされましたか。

逢沢副大臣 ちょうどアンマンにございます我が国の大使館内に現地緊急対策本部を設けておりまして、私もそこに滞在をいたしておったときに、さらに二名の方がイラク国内にあって連絡がとれない状況になった、どうやら名前は安田さんという方、渡辺さんという方らしいという第一報がもたらされたわけでございます。

 ちょっと記憶が正確ではございませんが、これは東京の本省であったか、あるいは場合によってはバグダッドの日本大使館であったかと思いますが、念のためにそれはもう一度調べてみます。

中野(譲)委員 藤田議員からお話を伺いますと、ちょっと時間もないのできょうはこれ以上質問は難しいと思いますが、逢沢副大臣ないし大使館の方も、この二名の方々が今ちょっと行方不明になっているらしい、名前もだれだれであるということ、これは実は情報がなくて、藤田議員が逢沢副大臣ないし大使館の方に申し上げて、それからそうなのかというふうに動き出したと私は伺っておりまして、では、これはちょっと認識が違うということですか。本省とかどこかの大使館からということでございますが、全然情報がなかったというふうに私はお聞きをしておりますが、この点いかがでしょうか。

逢沢副大臣 現地緊急対策本部にその第一報が届きましたのは先ほど申し上げた答弁のとおりでありまして、東京の本省であったか、あるいはバグダッドの日本隊からの連絡でございました。その後、現地にちょうどおられました藤田先生が、NGO関係者の方々が持っていらっしゃる情報についてぜひお知らせをしたいということで、大使館にお越しになった経緯は事実としてございますが、その段階で既に二人の、渡辺さん、そして安田さんという方らしい日本人が消息を絶っているという事実については、私どもとしては承知をいたしておりました。

中野(譲)委員 きょうは時間が来ましたので質疑を終わらせていただきますが、当然のことながら、逢沢副大臣も政府の側の答弁者でございますから、それを認めることができないのは私も重々承知してあえて質問させていただきました。これは、別に与党とか野党とか政府とか関係なくて、日本人をどのようにして守っていくのかということ一点に絞って、ぜひとも建設的にこれから省内改革を進めていただきたいと思います。

 私、先ほど申し上げましたけれども、九七年に内戦に巻き込まれたときに、大使館に電話をしました。フランス大使館は今どういうふうに動いているとか、アメリカ大使館は今どう動いている、タイはどの日にちに、何時に飛行機が来る、こういうことになっているけれども、日本はどうしているんですかと言ったら、一つも情報が大使館に届いていませんで、ああそうなんですか、ああそうなんですかと。それで、余りにも情報が出てこないものですから、私、もう結構ですと。電話を切るときに私の所在の一つも大使館は確認をしないということですよ。

 私は、自分の身を自分で守れということだとそのとき理解をしまして、先ほどの答弁にしますと、結局は自分たちで自分たちの身を守れと。政府は邦人保護をしっかりとしているのかということは、非常に大きな疑問を持っております。

 最後、電話を切るときに、また何かあったらぜひ教えてください、そういう一言をいただいて私は電話を切りましたから、いかに政府が、大使館が、これは私は何度も言っておりますけれども、情報がとれない、そういう省庁なのかということを、ぜひとも政治家である逢沢副大臣に改革をよろしくお願いを申し上げまして、きょうの質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

米澤委員長 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。

 きょうのこの時間は、民主党の加藤先生のお時間でありましたが、私の都合上、加藤先生の御理解、そして理事会の合意を得て質問に立たせていただきます。どうもありがとうございました。

 それで、きょうは、今月上旬に合意された日米地位協定の合意の問題について外務大臣に伺っていきたいと思います。

 今回、地位協定の合意がされたとはいっても、犯罪を犯した米兵の犯人の身柄引き渡しはアメリカ当局の好意的配慮にゆだねる、身柄を引き渡すかどうかはアメリカの好意的配慮を払うという、ここにゆだねられているという点では、枠組みは全く変わりません。これに加えて新たに出てきたのが、被疑者の取り調べの際に、合衆国軍司令部の代表者がその被疑者の取り調べに同席するという問題であります。

 そもそも、我々が問題にしてきました地位協定十七条(c)項の規定が設けられた背景には、米兵の犯罪を犯した者であってもアメリカの側は守りたいし、保護したい、こういう要求に屈して入れられたものであるということは、私は外務委員会で何度も取り上げてまいりました。今回の合意は、すべての事件で容疑者の身柄を引き渡すという地位協定の改定要求とはかけ離れたものであります。そのことをまず指摘した上で、具体的な質問に移ります。

 今回の合意で、合衆国軍司令部の代表者が同席するということで、日本の犯罪捜査に外国軍隊が同席するという、いわば日本の司法の歴史上いまだかつてなかったことがとられた措置になっているわけです。同席者が合衆国軍司令部の代表者に限定をされたのは、アメリカからの提案ですか、それとも日本側からの提案ですか。

海老原政府参考人 今回の合意は、一九九五年の合同委員会合意、これに基づきまして、米軍の被疑者の起訴前の拘禁の移転が日本側から要請されると認められるような場合、あるいは要請された場合につきまして、日本側が行う被疑者の取り調べに今先生がおっしゃいました捜査権限を有する米軍司令部の代表者の同席を認めるということでございます。

 これによりまして、米側は、捜査についての必要な情報を迅速に得ることができるということで、日本側が行う要請についての判断を迅速かつ円滑に行い得るということで、この九五年合同委員会合意の円滑な運用が確保されるという意味において、日米地位協定の大きな運用の改善だろうというふうに考えております。

 そこで、今のお尋ねの米軍司令部の代表者の同席ということでございますが、今申し上げましたように、今回の合意の目的というのは、そもそも日米捜査当局間の協力の強化ということが目的でございまして、そういう観点からすると、米軍司令部の代表者、それも当該事案について捜査権限を有する者というふうにするのが当然でございまして、これはどちらからということではなくて、今の合意からして当然に導き得る結論であったということでございます。

赤嶺委員 おのずから出てきた結論だと言いたいはずですが、去年の七月にこの問題で日米間の話し合いが始まったときに、第一回目が七月二日ですが、当時の報道だと、米軍はアメリカ政府関係者や通訳の立ち会いを要求していた、このように報道されておりました。同席者に対する米軍の要求というのは、今回の結論よりももっと広い範囲だったわけですね。

 ですから、今回、合衆国軍司令部の代表者に限定されたというのは、日本側がいわば法務省と相談をした上で提起したのではないか、このように考えますけれども、いかがですか。

海老原政府参考人 これは、先ほど申し上げましたように、捜査協力の強化という今回の合意の観点から、日米で協議をいたしまして得た結論でございます。

 今、昨年の七月からの交渉の過程についてのいろいろな報道を引用されましたけれども、これは日米間の交渉の内容にかかわることでございますので、そのことについてはコメントすることを差し控えさせていただきたいと思います。

赤嶺委員 本当に日本の司法史上、犯罪の取り調べに第三者が立ち会う、しかも米兵の場合はそういう米国の権限を持った代表者が立ち会うということになっているわけです。これに対して、沖縄では、沖縄のみならず基地所在県では、米軍に対して特権を与えたというような批判が非常に強くあります。

 それで、警察庁もいらしていると思うんですが、今回の合意、どのように受けとめておりますか。いわば米軍犯罪者に新たな特権を与えたという批判に対して、警察庁はどのように説明いたしますか。

知念政府参考人 警察庁としましては、今回の合意により日米地位協定のもとでの日米間の捜査協力が強化されることになるものと受けとめているところであります。今後、都道府県警察におきましては、今回の合意の対象となる事件の捜査に際し、合意にのっとった対応がなされるものと考えております。警察庁としても必要な指導を行ってまいりたいと考えております。

 日米間の捜査協力を強化する措置というふうに受けとめておるところでございます。

赤嶺委員 警察庁の今の答弁、現場で現に米軍犯罪を根絶するために一生懸命頑張っている警察官の感覚とも大きなギャップがあるものと言わざるを得ません。

 この問題が協議されたときの直後の沖縄県議会で、沖縄県警がこのように答弁しています。立会人を認めると、信頼関係構築が困難になるほか、関係者のプライバシーや名誉、捜査の秘密が害される懸念がある、こう答弁しているんですね。県議会の答弁です。

 今回の合意についても、沖縄で現に捜査を担当する関係者が何と言っているか。第三者が入れば取り調べに影響が出る、事案の細部が外部に漏れてしまうことも否定できない、このように現場の警察官、取り調べに当たって毎日苦労している方々はおっしゃっているんですよ。

 こういうような声についてどう思うんですか、警察庁。

知念政府参考人 御指摘の同席は、平成七年合意の対象となる事件において、日米捜査当局間の捜査協力の強化を目的として、捜査権限を有する米軍司令部の代表により行われるものであります。でありますことからしまして、捜査の目的を達成することができないような事態が生じることのないよう適切な形で行われるものと考えております。

赤嶺委員 こういうやり方が、現場の警察官のそういう取り調べに支障が出るという、こういうやり方が本当に米兵の犯罪の根絶につながるかどうか、この点でちょっと資料を見ていただきたいと思いますから、資料を配付していただきたいと思います。

 この資料にも出ておりますが、全国における米軍人の刑法犯の検挙件数、一九九八年に四十八件、二〇〇三年には百十八件と急増しています。沖縄は全国の四七%、約半分です。そして、少女暴行事件、これが起きたのが一九九五年ですから、それ以前の九〇年から九四年までは、全国は七百四十件に対して沖縄三百二件で、約四割。そして、少女暴行事件以後も増加しているのが実態であります。

 警察庁にもう一度聞きますけれども、少女暴行事件が起きた年、九五年から去年までの米軍人の刑法犯の検挙数について、全国の件数、そしてそのうち沖縄は何件か、これも報告してください。

知念政府参考人 平成七年から昨年までの全国における米軍人による刑法犯の検挙件数の総数は七百四十件であります。そのうち沖縄県における検挙件数の総数は三百五十四件であります。

 最近の傾向でありますが、委員御指摘のとおり、全国においても、また沖縄県においても増加しておるところでございます。大変遺憾なことだと思っております。

赤嶺委員 米軍犯罪が増加している中で、今回の地位協定上の運用改善見直し合意があったわけですね。

 そこで、もう一つ聞きますけれども、この間の日米地位協定で問題になっていたのは、殺人、強姦その他凶悪犯罪について、その他の特定の場合、これがあったと思います。日本政府が重大な関心を有するいかなる犯罪も排除するものでなく、日本政府が個別の事件に重大な関心がある場合は同文に基づき拘禁の移転を要請することができ、米軍はそのような要請を十分に考慮することとなる旨が確認できたと、これが地位協定室の報告の中に書かれております。

 地位協定室の報告の中にはあるんですが、その他の特定の場合を、犯罪を特定して明確な身柄引き渡しが要求できるようにしてくれということについて、今度は、いや、いかなる事件についても排除するものではないんだという、地位協定室のこの報告はありながら、なぜ日米間の合意文書にはそのことが書かれていないんですか。

海老原政府参考人 今委員がおっしゃいましたように、一九九五年の合同委員会合意のいわゆる第二パラグラフでございますけれども、その他特定の場合についても日本側が拘禁の移転を要請することができるというパラグラフに関連をいたしまして、その他特定の場合というのを明確化すべきであるという議論がございまして、これを受けまして、日米間で刑事裁判手続に関する専門家会合を開きまして議論をしてきたところでございます。

 今回、この九五年合同委合意につきまして日米で協議をいたしました機会に、この問題につきましても日米で協議をした結果、その他特定の場合については、いかなる特別の犯罪類型も排除されるものではない、すなわち日本側が重大な関心を有する場合にはいかなる犯罪についても拘禁の移転を要請することができるということが日米間で確認をされたわけでございます。

 ただ、この確認というのは、いわば九五年合同委員会合意の解釈ということでございますので、これは日米間でその解釈につきまして明確に確認をしておけば十分であるという観点から、特に文書の中には書き込まなかったことでございますけれども、この確認について、日米間には完全な意見の一致がございます。

赤嶺委員 合意文書には書かれていないということであります。

 それじゃ、先ほどから出ている立会人の問題について改めて聞きますが、外務省は、これは捜査協力の強化である、尋問などの取り調べには加わらず、捜査状況の把握や情報収集にとどめる、捜査を妨げる場合は同席の可否を日本側が最終的に判断できる、こう言っております。ところが、今回の合意文書には、捜査状況の把握や情報収集にとどめる、そして同席の可否については日本側が最終的に判断できるという規定もないわけですね。

 合意にもない内容について、外務省は一生懸命捜査への協力だと説明しているんですよ。なぜこんな説明をするんですか。

海老原政府参考人 今の同席についてでございますけれども、これはそもそも、今回、九五年合意に基づきまして、拘禁の移転が行われるような事案につきまして同席を認めたというのは、これは、日米間の捜査を強化することによって、迅速な拘禁の移転、あるいは米側による犯罪防止対策の強化というようなものに資するという観点から行われたものでございます。

 これは、九五年合同委員会合意に基づきまして、起訴前の拘禁の移転が行われますと、米側におきましては、日米地位協定上、本来予定をされておりません捜査上の支障が生ずるということから、米側に同席を認めることによって捜査上必要な情報を得るようにしようということでございます。

 これが今回の合意の目的でございますから、当然のことながら、先ほど警察庁の審議官からも御答弁がありましたけれども、捜査の目的を達成できないような事態は生じないような形で同席を認めるということで、逆に申せば、万一、我々はそういう事態、想定はいたしておりませんけれども、万一捜査に、日本側の捜査に支障が生ずるというような事態になれば、これは同席を認めないということは、捜査協力という本来の目的から当然のことでございまして、当然であるがゆえに文書の中には書いていない、しかし日米間での認識は一致しているということでございます。

赤嶺委員 外務大臣、外務省というのは、この問題での基地所在県ないし沖縄県の怒りの大もとにあるものを理解できないから、米軍の犯罪取り調べに米軍当局の立ち会いを認めても平気でこんな答弁をしているわけですよ。

 国際法上、犯罪が起きたら、その被害者の国で裁くというのが原則でしょう。それを地位協定というのは、自国の米兵や米軍を裁かれたくない、保護したい、これが地位協定に当たっての米側の要求じゃないですか。ですから、米軍当局というのは、米兵が事件を犯してもとがめ立ては何もしていないですよ。

 今度警察庁から資料を出していただいたんですが、例えば米兵が犯罪を犯した、米軍には軍事裁判があります。平成七年以降の軍事裁判というのは、ゼロですよ。一件もないんですよ。しかも、懲戒処分を受けたのが、平成十一年以降でも全国で四十四件、うち那覇で十五件。

 犯罪をできるだけかばいたい、犯罪をできるだけ保護したい、こういう米軍当局が日本の捜査に立ち会った場合にどういう効果をもたらすかは明らかじゃありませんか。そういう経過に照らして、外務大臣、どのように考えているんですか。

川口国務大臣 今の御議論、これは起訴前の拘禁の移転にかかわることであるわけでございますけれども、そういったことを円滑にしかも早くそのような判断がある場合には拘禁をさせるという意味で、これはプラスの効果を持つと私どもは考えております。これは先ほど北米局長から申し上げたとおりでありまして、捜査協力をする、その結果として、米軍当局としても起訴前の拘禁の移転の対象になるような事件について米軍が速やかに捜査をする、そしてその結果として、捜査の内容について迅速に把握できるわけですから、移転についての判断が早くできるということであり、それは米軍の問題である犯罪の、ふえている、これについての抑止力も持つというふうに私どもとしては考えているわけでございます。

 おっしゃるような問題、犯罪がふえているということについては、我々も非常に大きな問題だと思っております。これへの対応が必要であるということで、先般、逢沢副大臣も沖縄に行かれたときにいろいろお話をしていただいていますけれども、このこと、この決定、この合意については、これはそういった観点からも資するものであるというふうに考えております。

赤嶺委員 今の外務省の姿勢では犯罪の増加も防げないし、身柄の拘禁移転もアメリカ側の好意的配慮を払うというところに依拠し、なお捜査も米軍当局の立ち会いを認めるものなど、二重、三重に米軍を、加害者である米軍を保護する仕組みを新たにつくり上げた。こういう歴史的な汚点は一刻も早く一掃されなければいけないし、この解決は県民や基地所在県が求めている日米地位協定の抜本的改定以外にはないということを指摘して、私の質問を終わります。(発言する者あり)

米澤委員長 自民党の委員の方、緊急手配をお願いします。

    ―――――――――――――

米澤委員長 本件調査のため、政府参考人として外務省大臣官房文化交流部長近藤誠一君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

米澤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

米澤委員長 次に、加藤尚彦君。

 自民党の委員の方、早目に御出席方を要請してください。(発言する者あり)

 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

米澤委員長 速記を起こしてください。

 加藤尚彦君。

加藤(尚)委員 民主党の加藤でございます。

 気がそがれた感じがしたけれども、気を引き締めて質問させていただきたいと思います。

 まず冒頭、WHOの条約提案省として一つだけ、簡単に伝えたり、そしてお願いしたりしたいというふうに思います。

 大臣、副大臣、これは御存じですか。これは、こっちはファイヤーブレイクというんですよ。こっちはニコレット・ミントというんですよ。見たことありますか。――ない。これはもう既にキヨスクで売っています。こっちは薬屋さんで売っているんですよ。しかも、キヨスクで売っているこのファイヤーブレイク。これはなぜこんな質問を国際情勢の問題で言うかというと、やはり国際情勢を議論する場合、柱は世界の子供たちをどうするんだ、日本の子供たちをどうするんだということの観点から、条約提唱国、提案省として、質問するんです。

 これはガムなんですけれども、しかもここに、見えないでしょうから後でお渡ししますけれども、「あなたの健康を損なうおそれがありますので吸いすぎに注意しましょう」それから「喫煙マナーをまもりましょう」、こう御丁寧に書いてあるんです。これはガムなんです、たばこガムというんですけれども。しかも、これは十個入っているんですけれども、二百八十円もするんですけれども、ガム一個当たり、一センチ四方ですけれども、これにたばこ一本分のニコチンが入っているんです。ちゃんと表示されているんです、一本について一ミリグラムと。

 しかも、こっちは武田薬品だから、名前を言っちゃいかぬかもしらぬけれども、日本を代表するメーカーですね。そこが、ニコレットといってテレビでもどんどん宣伝しているんですけれども、このガムをかむとだんだんたばこがやめられるようになるよというんだけれども、こちらのガムの方は一個についてたばこ二本分のニコチンが入っている。

 なぜ大きな声を出すかというと、この二つがキヨスクとか薬屋さんに売っていて、そして、やはりいわゆる副流煙といいますか、そういう問題については減煙されるからいいかもしれないけれども、実は子供が目をつけちゃっているんです、子供が。この前財務省に来てもらって質疑したんですけれども、青少年がたばこを、年間の売り上げの一一%を協力しているというわけです。その額は四千億とも五千億とも言われている。この国は異常なんです、異常なほど子供を守っていないという意味で。

 それでこのことを申し上げるんですけれども、これは、こちらは厚労省、こちらは財務省ということになるんですけれども、うそ八百の広告も出しているわけですね。いわゆるたばこ規制の広告の問題について一番大きな問題ということを、議論をこの外務委員会でも私はした経緯がありますから、その意味で、でき得るならば厚労大臣とか財務大臣とか、あるいは関係者も呼んでとか、あるいは総理そのものにも意見も聞きたいぐらいなんですけれども、閣僚会議で機会があったら、こんなたばこが出ていますけれども知っていますかということで、機会があったら、外務大臣、お見せしていただきたいというふうに思います。これは見解を望みません。

 質問に入りたいと思います。

 私は、きょうはASEAN、日本とASEAN、これについて中心に御質問をさせてもらいたいというふうに思います。

 東京宣言、日本とASEAN、そして域外での開催ということで、さきの条約審議のときにもそれぞれ各党派で評価をしていました。私も高い高い評価をしている一人なんですけれども、問題は、どう生かすかなんです。この経緯を少しだけ、これは大臣に答えていただかざるを得ないんですけれども、昨年の六月、カンボジアでASEANプラス日本の外務大臣の首脳会議があった。

 そのときに、外務省の事務方の努力で、何とか東京における首脳会議については憲章にしよう、憲章に持ち込みたいと。このいわゆる首脳会議の結論を、いわば条約に匹敵する憲章まで持ち上げたいということであったんだけれども、結局、宣言になってしまった、つまり政治的発言のみになってしまったということなんですけれども、この辺の経緯はちょっとお知らせいただきたいと思うんです。

 つまり、日本の事務方は東京での首脳会議を憲章まで持ち込もうとしたんだけれども、結局宣言どまりになってしまったという経緯について、ちょっと御説明をしていただけるならばお願いします。

川口国務大臣 ASEANと日本との間で、共同の何らかの種類の文書を出そうという話はずっとございました。そして、おっしゃったカンボジアでの会合、会議の際にもその話は出ましたし、それ以降、十二月に向けての準備の過程で、もうずっとその話をいたしました。

 それで、その内容に何を盛り込むかということについて、これは、それはそれで議論をいたしましたけれども、それと別途、いかなる名前で呼ぶかということがもう一つのテーマとしてあったわけです。そして、その名前については、いろいろな国がいろいろなアイデアを持ち込み、それについて、最終的に宣言ということになった。我が国として一時期憲章という言葉を考えた時期もございましたし、ASEANの国の中には、それでいいではないかというふうに言った国もございました。

 いろいろな国のいろいろな立場というのがあって、落ちつくところに落ちついたということで、その名称が何であるかということは、そこに盛り込まれた内容に何ら影響を与えていないというふうに私は考えております。

加藤(尚)委員 その御説明で理解をしようと努力はいたしますけれども、当時、ASEAN諸国は全方位外交をやっているわけですね。しかも、一九六七年は、オーストラリア、ニュージーランド、日本、いわゆるASEANプラスということで全方位外交をやっているわけですね。その中の一つに日本があるということなんですよ。

 だから、その意味で、域外で、日本でやるということについては、結構ASEAN諸国は、中国のことを頭に置いたり、アメリカのことを頭に置いたり、その他の国々のことを頭に置きながら、東京での首脳会議の価値を余り大きく、各国の批判、非難が出るからということで、そういうおそれもあって、特に中国に気兼ねして、いわゆる東京宣言、つまり政治的判断、つまり憲章まではいかなかったという経緯を聞いていましたので、それで御指摘だけしておくわけです。

 いずれにしても、私自身、二十一世紀はアジアの時代という持論の一人なんです。一九七〇年代、つまり福田ドクトリン、あれは物すごく大きな意味があって、市会議員当時の私もすごく刺激を受けて、それ以来、特にアジア政治、アジア外交について興味を持ちながら、アジア歴訪も数々これまでやってきたつもりなんですけれども、今申し上げましたように、ASEANの方では全方位外交なんですよ。ところが、ASEANに、福田ドクトリンでは十億ドル、当時で十億ドルですから、一九七七年ですから、今からいえばその数倍のお金をつぎ込んだわけです。

 そのつぎ込んだお金の意味について後でちょっと触れたいと思うんですけれども、いずれにしても、福田ドクトリンを契機として、日本とASEANという関係がさらに大きく発展したと思います。その中で東京で首脳会議ができたということ、そして、これから事務的な会議があって、外相会議があって、また首脳会議がことしじゅうにある、そういうスケジュールの中で、ASEANと日本とのことについて、殊さら東京宣言、つまり東京首脳会議での意味合いを大きく評価しているんです。

 とはいえ、ASEANの方では、全方位外交の中で、ASEANプラス日本だけを意識したいわば関係をつくろう、あるいは構築しよう、あるいはそれを最も大事にしようという空気を感じられませんので、その意味で、もう一回、本当は大臣に冒頭お大事にしてくださいということを言うつもりだったんですけれども、それを承知の上で答えていただければと思います。

川口国務大臣 ASEANと日本の関係というのは、特殊なといいますか特別な関係であるということを、我が国もそしてASEANもそう思っているということをまず申し上げたいと思います。

 委員が、全方位外交あるいはASEANが中国に気兼ねをしてというふうにおっしゃられましたけれども、そういうことではなくて、ASEANも日本とASEANの関係はほかの関係にない特別な関係であるということを認識しているということを我々は強く感じておりますし、またASEANからも聞いております。

 先ほどのチャーターとの関係でいえば、それは中国に気兼ねをしてそういうことをやめようということでは全くなくて、私が自分の耳でASEANの国々の人と話をして聞いておりますことは、チャーターという言葉、これは、行動計画の中を見ていただくと、あるいは宣言の中を見ていただくとおわかりになられると思いますけれども、決して強制色のないものである。それは、チャーターという言葉は、一部の国々においては、非常に強制色といいますか、やらなければならないということの色彩を帯びている言葉であるということからむしろきているということで、中国の存在ということについてはこれとは全く関係がないというふうに私は理解をいたしております。

 それで、ASEANがなぜ日本と特別な関係にあるかということを彼我双方認識しているかということですけれども、これは委員がおっしゃられた、まさに福田ドクトリンから始まる長い三十年にわたる日本とASEANの関係があります。

 それで、この中で日本がASEANの中に築いてきた資産ということでいいますと、まず、ASEANにとって日本は米国と並ぶ最大の貿易相手国でございます。二〇〇一年の数字でちょっと古いですが、米国二一、日本二〇%、中国はまだまだ低いということであります。

 それから、投資ということを考えたといたしますと、日本は最大の投資国であって、これは累計ベースでいって、日本が二割、そしてEUが一六%、中国の投資というのは本当に一%に満たないという数字であります、中国からの投資ですね。

 それから、ODAの供与ということでいいますと、日本はASEANが受けているODAの八割を実に供給している国であります。アメリカといえども、けたが一つ違うということであります。

 旅行者の数、日本は、ASEANとの関係でいうと、これも最大の域外からの旅行者数であります。

 ということであって、日本が三十年間かけてASEANとの間で築いてきたこと、そして今後ASEANとの間で築いていくこと、これをASEANはきちんと認識をしていて、日本との関係は特別な関係だと思っている。であればこそ、初めての域外の首脳国の会合が東京でできたということであります。

 それで、ASEANとの関係についてももう一つちょっと申し上げたいんですけれども、福田ドクトリン、これは非常にASEANと日本との間の関係をつくるという意味で大きな意味を持ったというのは先生の御指摘のとおりだと思います。ここで心と心の触れ合いということを福田総理がおっしゃられて、ASEANの工業プロジェクトに対して総額十億ドル、当時出したということでございます。

 こういったことを通して日本はASEANの非常にいいパートナーとなってきたということですし、最近では、小泉総理が東アジア・コミュニティーということを言われて、さらに一歩進めて、ともに進む関係、ともに行動する関係、そしてともに進歩する関係、これは、もはや発想として日本はASEANと一体である、ともに東アジア・コミュニティーをつくっていくんだという考え方であって、福田ドクトリンのときのよき隣人ということからさらに一歩進んで、日本はASEANの一部である、日本とASEANは一体であるということを言っている。

 そういう意味で、日本とASEANは特別な関係である、日本とASEANは一緒であるということを日本はASEANにきちんとメッセージを送り、そしてASEANもそのように思っているということであると私は考えております。

    〔委員長退席、増子委員長代理着席〕

加藤(尚)委員 きょうは、ASEAN関係で十二項目の質問を予定しているんですけれども、四十分ということだから、全部が全部質疑できないかもしれない。でも、今のお話の中で、やはり福田ドクトリンの意味は、いわゆるフィリピンでの、マニラでの発言は大変歴史的に大きいというふうに思っています。しかも、今大臣がおっしゃられたように、要は心と心の触れ合いなんだと、ピープル・ツー・ピープル、つまり市民対市民とか、この辺を重点的に置いたんですよね。

 先ほど議論の中で、政治、軍事力とか経済力とかというお話がありましたけれども、福田ドクトリンでは、日本は政治や軍事力というものを一切持ち込まないということをドクトリンで明快に明言したことが、アジア各国に拍手喝采を受けたわけですよ。そのとおりの方向で私も今後見ていきたいというふうに思っています。

 そしてさらに、本当は時間があれば、福田元総理の十億ドルについての検証を、これもしなくちゃいけないんだけれども、それはまた別の機会に求めていくんだけれども。要は、ASEANにとって日本はかけがえのない国、そういう解釈が日本側にあるんです。でも、ASEANにとって日本がどこの国よりもかけがえがあるかどうかということについての議論は割とない、ないとは言わないまでも、そんなにストレートに耳に入らない嫌いがあるんです。

 というのは、私の知る限り、今ASEANの中で、日本人を評してということで、質問を結構することがあるんですよ。そうすると、大体お世辞を言ってくれるんだけれども、中には辛らつに、世界で最も下品な国だ、国民だということを言っているのがいるんですよ。これは許されない。こんなに親しい気持ちを持っていて、こんなにたびたびアジアに来て何か仕事をしようとしているのに、下品な国民とは何事だとそこで物すごい議論をするんですけれども、議論倒れで、議論で終わっちゃうんですけれども。

 いずれにしても、ASEANの人たちにとって日本はかけがえがあるかどうか。日本にとってASEANはかけがえがないと言っているんだけれども、ASEANにとって日本はかけがえがあるかどうかについての印象を、もう一回、再度お願いします。

川口国務大臣 私見を申し上げるということでございますけれども、私は、ASEANの国々というのは、地政学的に、アジアのあの場所にあって、中国という大きな国をすぐそばに持ち、ずっといろいろな意味でバランス感覚ということを非常に研ぎ澄まし、大事にしてきた国々であるというふうに思っております。

 それで、そういう国でありますから、常に、いわば、ちょっと言葉は不適切かもしれませんけれども、できるだけ大勢の恋人を持っている。そして、日本はその中で一番古く、一番頼りになり、一番自分のことも考えてくれる相手であるということをきちんと思っている。ただ、同時に、新しい恋人、もしかしたら何かやってくれそうな人もいる、この人にも冷たくできない、そういう感じがあるのではないかというふうに思っております。

 ただ、ASEANの心の中で、これは表にどのような出し方をするかということは、いろいろ複雑に出てくるということであると思いますけれども、基本的に、日本が一番ASEANのために今までやってきた国であって、頼るという意味で、一番頼れる国と自信を持ってASEANが考えているというか、それしかないと思っているのは日本である。

 ちょっと例が不適切であったかもしれませんが、そういうことだと思っております。

加藤(尚)委員 不適切じゃないと思います。要するに、恋人同士のような、そんな心と心の触れ合いのある日本とASEANだという考え方でいいと思うんです。福田ドクトリンでは、僕がもっと若いときに感銘を受けたのは、やはり軍事や政治じゃないんだ、むしろ文化とか教育とかそういうことを特に力点に置いて、そして人と人ということを言ったわけですね。小泉総理が今度の東京宣言で発言をしているのは、やはり同じような表現を、素直な関係ということで言っております。

 そういう意味でいいんですけれども、要は、かつての日本はアジアの父親役なんてことを言ったことで誤解されたり、結果もよかったり悪かったりいろいろありますけれども、今は総括しませんけれども、でも、少なくとも、福田ドクトリン以来ASEANとの関係がうんと広く広がったということは、間違いなくそういう評価でいいと思うんです。

 その中で、私は、日本というのは、恋人もいいけれども、母親役というか、マザーズマインドスピリットという言葉を僕はよく使うんですけれども、つまり、アジアに対して、ASEANに対して母親役、その中で何が重要か、何が大事で、何がアジア、ASEAN諸国に受け入れられるかということの議論が、当然外務省にもありながら、特に、後でちょっと触れますけれども、在外公館の役割というのは物すごく大きくなるというふうに私は強く思っているところであります。

 それで、このたびの行動計画、何回も何回も目を通しましたし、そのいきさつ、流れについても説明をいただきました。その中で、特に、今も御指摘申し上げました教育、文化の項でも、四番ですけれども、人材交流、育成、社会文化協力、こういったことを大きく大きく取り上げております。マレーシアとの国際工科大学の設置であるとか、あるいは特に、留学生支援で一万人受け入れましょうということなんですけれども、これも、これは質問にしたいと思うんですけれども、一万人留学生を受け入れますよ、あるいはかつての総理が十万人受け入れると、それは実施されたということも評価しますけれども、むしろ、ASEANとの関係については、日本の青年たち、日本の学生がASEANに留学する、そちらの方に力を入れてくれることをASEAN諸国は願っているわけであります。

 その意味で、行動計画の中で、留学生促進という意味で、ASEANから日本に今後一万人をということなんですけれども、ですから、日本からASEANへの留学生の派遣についての考え方についてお聞かせください。

近藤政府参考人 お答えいたします。

 日本とASEANとの交流をもっと進めるべきである、特に留学生をより多く受け入れ、かつ日本からもより多く派遣をしていくべきであるということは、委員御指摘のとおりでございます。

 政府といたしましても、数年前から日本人の留学生をASEANに送るためのシステムをつくりまして、今後ともますます留学生レベルの交流が質量ともに拡大していくように努力をしているところでございます。

加藤(尚)委員 引き続き努力してください。

 と同時に、やはりASEANに、ロータリークラブとかライオンズクラブとかソロプチミストクラブとか、あるいは民間のNPOとかNGOとか、前回の質疑でも、こちらの委員から、私たち議員で学校をプレゼントしているという話もあったけれども、結構民間レベルでASEANに協力しているわけですよ。外務省は、大きな予算で、経済中心にということで、しかも、それをさらに深めて、人的交流とか人材育成とかいうことにだんだん広がり出した。非常にいい傾向だと思うんです。

 この際ですからお聞きしておくんですけれども、ASEAN諸国に、民間レベルで学校とか病院とかあるいは文化施設とか、もう数々の実績があるんですけれども、おわかりになったら、ちょっと教えてください。

近藤政府参考人 お答えいたします。

 日本とASEANとの交流を進める上での民間レベルでのいろいろな交流が進んでいることは、御指摘のとおりでございます。

 特に最近は、NGO、NPOといった民間のレベル、あるいは地方の自治体のレベルでいろいろな仕組みがふえております。

 政府といたしましては、こういった交流の担い手と緊密な連絡をとりながら、それぞれ共通の目標に向かって、そしてそれぞれがそれぞれの特性を生かしながら日・ASEANの交流を進めていく、そういうことができるように連絡を密にし、連携を密にしていくということを行っているところでございます。

 具体的に、いろいろなシステム、施設、メカニズムはございます。そういったものをできるだけ正確に把握をしながら、お互いに連携をとっていきたいと思っております。

加藤(尚)委員 把握するのが大変なぐらいたくさんの民間レベルでの実績があります。そのことはすごく評価されておる。

 一方で、これから政府が、外務省がASEANとの関係で、ASEANにとって日本がかけがえのない国かどうかという、そういう実績評価がこれからますます必要だということをさっきから申し上げているんですが、それは、やはり中国の南下政策ですね。

 この前もこの委員会で議論したんですけれども、タイ、ミャンマー、ベトナム、カンボジア、ラオス、この五カ国が所在している半島については、いまだに日本ではインドシナ半島と言っている。それは間違っていますよと私は申し上げました。これはまだ消えていないところでありますけれども。というのは、私が知る、ベトナムでもあるいはタイ国でも、そしてミャンマーでも、インドシナ半島などと言ってくれるなと言うんですよ、インドシナ半島と。では、ASEAN半島はどうだと僕の方で言ったら、それはいいというふうに、これは政府の関係者ですよ、そういう発言もあるわけです。

 つまり、このインドシナ、インド、中国という、それで中国は南下政策をやっている。インドも、かつての歴史的な経緯から見ても、やはりいわゆるインドシナ半島に対して相当政治的野心があったわけですし、また、今後も、今のバジパイ首相が、今までインドは欧米に力を入れ過ぎた、これからASEANに力を入れよう、東進しよう、こういった発言をしながら、現実問題として、ニューデリーからプノンペンまで、あるいはホーチミンまでかな、鉄道をつくる構想があるわけですよ。そうすると、鉄道というのは大量輸送できることだから、これを本気で取り組むと言っているんです、インドの力で。

 そうすると、日本にとってASEANはかけがえのない国と思っているんです。でも、ASEANにとって日本はかけがえがあるかどうかということについては、例えば、先ほど大臣もおっしゃったように、経済的な意味からいっても、あるいは観光的な意味からいっても、いろいろな意味からいってもアメリカの後塵を拝していることが多過ぎるんです。

 つまり、アメリカも内々にASEANに対して物すごいエネルギーを使っているんです。そして、あらゆる順位で、おつき合いの中で一位を占めている。日本はたまに一位を占めているところがありますけれども、大概アメリカであるということから見ても、やはり世界のリーダー国、あるいは中国、インドも含めて、ASEANに対しての思い入れが物すごいんです。だから、ASEANにとってだんだん強気になってきたというのは私はやむを得ないというふうに思います。

 その意味で、中国の南下政策あるいはインドの鉄道を初めとした東進政策、そういったことが現実に、しかも、これから発展もし、そしてさらに物すごい発展の予測ができる大国が、アメリカも含めてだけれども、ASEANに集中してくる。そうすると、日本が三十年営々と培ってきた投資にしろあるいは関係にしろ、吹っ飛ぶおそれがあるんです。

 だから、要は、この国の政府、外務省、そして私たち国民一人一人の心構えというか気持ちが、もっと強くASEAN政治、ASEAN外交、そういったものを意識しなくちゃならないというふうに思うわけであります。

 その意味で、再度、私たちが思うASEAN、ASEANが思う日本との関係にずれがあるかどうか、ずれが出始めたんじゃないかと大変心配しているんですけれども、いま一度御答弁をお願いしたいと思います。

    〔増子委員長代理退席、委員長着席〕

逢沢副大臣 今加藤先生御指摘のように、ASEANの立場から見ますと、北に、巨大な人口を擁し、そして経済発展も著しい中国、そして西側には、これまた大きな人口を擁し、昨今ではインドにおいても大変経済的にも明るい展望が開けつつある。そしてインド側からも、ASEANに対してさまざまな形で積極的なアプローチが行われている。そして、ASEANの立場からいたしますと、東に向かっては太平洋が広がり、そして日本が位置をしている。

 そんな環境の中で、先ほど大臣も答弁をされましたように、歴史的にも大変研ぎ澄まされたバランス感覚をASEANの各国自体が持っている、そのように私どもも認識をいたしているわけであります。そんな中で、日本とASEANは、まさにお互いがお互いを必要としている特別な関係である、そのように思います。

 日本にとりまして、先ほど委員の方から、どうも、対ASEANを展望したときに、アメリカがいろいろな意味でナンバーワンの立場だというふうにおっしゃられたわけでありますが、先ほど若干大臣の方からもお話ございましたように、例えば、ASEANにとって日本は最大の域外投資国、つまりASEANに対してどの国が一番たくさん投資をしてくれたか、その実績ではやはり日本が一番でございますし、またODAにつきましても、日本からASEANに対するODAが一番大きな実績を持っているわけであります。そのことを恐らくASEAN側も正しく認識をしている。

 その結果が、委員もまさに御指摘をなさいましたように、去年の十二月、いわゆるASEAN域外では初めてASEANの首脳が全員集合する東京会議が開かれました。特別首脳会議が開かれたわけであります。そして、東京宣言が発出され、実に百二十もの項目を擁する行動計画が合意をされ、まさに特別な関係の日・ASEAN関係をさらに加速していこうということで、首脳間同士の合意がなされ、それぞれの分野で大きく既に動きができてきている、そのように私たちは高く評価をいたしたいというふうに思っております。

 ASEANが大変研ぎ澄まされたバランス感覚を持っている、そのことを理解しつつ、より積極的に日・ASEAN関係を展開するということは、アジア太平洋地域の安定、繁栄にまことに大切である、そのような認識を恐らく委員とともに共有ができるものと承知をいたしております。

加藤(尚)委員 そういう評価、または、いわば認識でいいと私も思っているんです、実は。

 ところが、中国にしろインドにしろ、またその他の国々にしても、日本が時間をかけて投資をして投資をして、そしてやっとASEANが、国によっては二けた、あるいはどんな発展途上で数字が悪いところだって四%、五%の経済発展がある。これは日本の努力だと思っているんです、僕は。ところが、だんだん発展してくると、世界じゅうから、これはASEANは商売になるということであの手この手なんですよ。そのことを言っているんですよ。

 その意味で、やはりASEANあっての日本という理解の中で、私は、アジア全部を考えて国際政治を考えていきたいという考え方を持っているものですから、せっかくのASEANが、その他の中の日本ということでワン・オブ・ゼムじゃ、とてもじゃないがたまったものじゃない。今まで何十年間も一生懸命やってきたことはどうなっちゃうんだろうと。虎視たんたんとねらっている周りの国があるということをこの際ぜひ意識していただきたいと思います。

 それからもう一つ、民間も物すごい努力している。最近でも、イラク問題でいわば反日分子なんという表現があったけれども、それはレベルの低い話で、さっきの中野議員じゃないですけれども、体を張ってカンボジアのボランティアをやっている、つまり、政府の意図、外務省の意図とは違う形で、その国のためなら命も要らぬ、私は命を捨ててもいいと言う日本人も結構いるんです。それを反日分子なんて言い方はもってのほかであって、やはりよくその中身を我々は知っていなくちゃいかぬ。

 そして、そういう人たちの力が国際社会にとってどうしてもいつでも必要だ、特にアジアでは必要だというふうに強く思っていますので、今の副大臣の認識の中で、私が今申し上げましたように、いわば上前をはねる国々がいっぱい出始めているから、これから注意していただきたいと思います。

 それで、在外公館についてたびたび私は発言いたしております。やはり在外公館の役割は物すごい大きいんです。特に、ASEAN地区もそうですけれども、いわば、ASEANの大使をやる、そしてそれが二年か三年でかわってしまうということを大変僕は心配しているんですよ。やはり、せっかく実情がわかってきてなれてきて、いろいろ外務省から資料をもらうと、一人の大使が二度同じ国の大使を繰り返したことがないということだけれども、これでは本当のつき合いが私はできないと思うんです。

 だからその意味で、むしろ、外交官試験もなくなったんだから、大使の存在について、例えば、私の知る限りの大使の人たちは嘆くんだけれども、もういっぱいやりたいことがある、その国にとって、あれもこれも、あれもこれもという気持ちがあるんだけれども、一々外務省の担当課長にお伺いを立てなければならぬ。大使というと、やはり、課長もやって、部長もやってという人たちだから、その方々が課長の指示で判断せざるを得ないということをすごく嘆いている人が多いんです。それではだめなんです。

 やはり、大使が国情の中で、わずかな年数だけれども一番わかっていて、そして職員からもいろいろな情報を得て、その国の事情を全部わかって、その上で進言することは、ストレートにやはり大臣、副大臣、政務官に伝わるようにしないと、課長の判断でとめられてしまったのではという気持ちを結構持っているという人が、たくさん私は聞いているんです。

 その意味で、今後の取り組みとしては、大使がその国で、懸案事項について、あるいはこれからのことについて考えて発言したときについては、きちっと対応する。どういう方法でもいいから、どこそこの大使が進言したことについて外務大臣は知っている。だから、そのことについては、外務大臣の耳まで届いたかということを知るような方法をぜひこの際求めたいということと、もう一つは、外交官試験もせっかく超えたわけですから、その意味で、外務官僚だけじゃなくて、大使という存在について、極端なことを言うと、その国に骨も埋めて、そしてその国のためなら自分の人生をかけてもいい、そういう人たちをいろいろな方法で選ぶ。民間からでもいいし、あるいは、各省庁でもいいんです、他の省庁からでもいいし、あるいは国会議員経験者でもいいし、あるいは総理大臣、外務大臣経験者でもいいし。

 要するに、日本は在外公館について並々ならぬ意欲がある、つまり、通り一遍で二年、三年で交代してしまうような在外公館なんて日本は考えていないよ、在外公館そのものは日本を代表する施設なんだから、その長たる者は総理大臣だし外務大臣だという意識を持とうとしても持たされないという嘆き節が聞かれますので、これも御意見があったら伺わせていただきたいと思います。

川口国務大臣 在外にある大使館というのは、その地で日本を代表する非常に重要な組織であると私は考えております。おっしゃられましたように、大使館あるいは大使を初めとする大使館員が、現地の事情は一番よくわかっているということであります。

 私は今まで、新しい大使の方をお送りするたびに、それから、大使会議というのも定期的に開いていますけれども、そういった折に、外務省の政策、すなわち日本の外交政策というのは現地でつくられるものであるということを、私は常に申し上げています。それは、現地で、現地を見、そして日本を見、日本にとって何がその国との関係で一番いい外交政策かという発想は、現地から一番最初に出てくるべきであるということを言っているわけです。

 担当の課長の決裁というお話ありましたけれども、外務省として、総合性のある形で、そして責任の明確な形でということであることを実施するという段階には、当然に本省で決裁が必要でありますから、そういう意味では、そのときの課長等の意見ということは、そういった立場からもちろん言うということであります。

 そのバランスをどこにとるかということですけれども、私は、現地の大使の判断というのは重要だと思っていますし、意見具申が現地から来た場合、これは私はほとんど読んでおります。そういった形で、我が国の大使館あるいは大使の仕事というのは十分に後押しをされなければいけない。外務省はそういうふうに思って仕事をしているということです。

 それから、外務省の省員だけではなくて、ほかの人たちを大使にするべきであるというのは、これも全くおっしゃるとおりで、二年前に外務省の改革を私が外務大臣になっていたしましたときに、外からの登用ということを一つの大きな柱にしております。約二割程度と。これは厳密な数値目標ではありませんけれども、適材適所である限り、できるだけふやそうということで考えておりまして、今、一二、三%にたしかなっているかと思いますけれども、相当な数の外部の大使がいます。

 一二、三%、ちょっと数字は、もし今の時点で違いがあったら訂正は後でさせていただきますが、それぐらいは十分に出ているということです。

加藤(尚)委員 時間が来てしまったので、あと二つ三つ、大変、極めて質疑したいという項目を残してしまって、これはまた次でもいいんですけれども、次のためにも一言だけ申し上げておきたいんですけれども、今の大使問題についても、大分努力されているということについて評価いたします。それから、今後も努力してくださいというふうに申し上げさせていただきます。

 国連大学のことも、せっかくきょう来ていただいて詳しく聞こうと思ったんですけれども、国連大学というのは、国連において日本が誘致合戦でとった大学である。でも、現実は大学ではない。だから、オランダの学長ほか、どういうスタッフで、どういう運営をして、そしてその大学からどれだけの国連職員とか国際機関の職員を輩出したかについても聞きたいんですけれども、これも宿題に置いておきたいというふうに思います。

 さらに、ASEAN問題できょう議論しましたけれども、日本とASEAN、もう緊密で、かつ、そこからアジア全体、国際社会全体が私は展開するというふうに思っています。その意味で、さきの委員会でも、北朝鮮問題も、ASEANが一致して日本に味方してくれれば解決する近道になりますよということも申し上げました。その意味で、そのことも留意していただきたいというふうに思っています。

 その中で、国連アジア支部とか、あるいはAAU、つまりオールアジア連合。もうヨーロッパ連合もあるし、アフリカ連合もあるわけだから、AAU連合、これこそ今の政府が、そして今の外務省が、制度化するのにどういう取り組み方をするのか。これは今後の質問の課題にしたいというふうに思います。

 ちょっと質問の半ばですけれども、時間ですので終了させていただきます。ありがとうございました。

米澤委員長 次に、阿久津幸彦君。

阿久津委員 民主党・無所属クラブの阿久津幸彦でございます。

 三十分という限られた時間でございますので、私の方からは、前半はパレスチナ問題についてお話をさせていただきたいと思うんです。

 といいますのは、昨年六月、米国、イスラエル、パレスチナ三者首脳会談がございまして、イスラエル、パレスチナ双方が二国家間の平和的共存を目指すという中東和平ロードマップの合意がなされました。少しずついい方向に向かい始めるのかなというふうに思いもしたのですが、その思いが砕かれるまでに時間がそうかかりませんでした。

 三月二十二日だったでしょうか、パレスチナのイスラム原理主義組織ハマスの精神的な指導者でありましたヤシン師の殺害がイスラエルによって行われたからでございます。その後、その後継でありますランティシ氏もイスラエルによって殺害されました。

 これは驚くべき事件だったわけですが、これに対して川口大臣は、無謀な行為で極めて遺憾と直ちに厳しく批判をされました。私は、川口大臣のこの指摘については、率直に評価をさせていただきたいというふうに思っております。なぜなら、米国の反応が鈍かったにもかかわらず、日本の国益に基づいて、平和への希求の強い意志を世界に表明したからです。ちなみに、フランスを初めヨーロッパ諸国、アジアの各国も、イスラエルの行動に対して強い批判をしたことは言うまでもありません。

 そこでお伺いをしたいのですが、イスラエルのシャロン首相が、アラファト議長に危害を加えないという約束を撤回するという発言をされました。これは川口大臣も御存じのことだと思うんですけれども、この発言は、世界を駆けめぐって、すべての世界の人々を震撼させたというふうに思うんですけれども、アラファト議長がもし殺害されればどんなことになるのか。恐らく、中東全体、それだけではおさまらない、火を噴くのは明らかであります。

 そこで、お伺いしたいんですが、イスラエルのシャロン首相が、四月二十三日、テレビインタビューにおいて、四月十四日、ホワイトハウスで行われたブッシュ大統領との会談の際に、アラファト議長に危害を加えないという約束を撤回する旨を同大統領に伝達したと発言しているわけですが、この発言に対して、米国政府はシャロン発言に対し既に反対を表明しています。

 日本政府として、このシャロン発言をどう受けとめ、また、どのような立場をとるのか、川口大臣にお伺いします。

川口国務大臣 これにつきまして、我が国の政府といたしましては、これは非常に問題の発言であるということは言うまでもないわけでして、アラファト議長というのは選挙によって選ばれた議長であります。そして、このアラファト議長を殺害するということは、まさに憎悪の悪循環、これをさらに起こすということになりますし、それから、中東和平のプロセスに本当に壊滅的な影響を与えかねないということだと思います。

 これに対しまして、我が国としては幾つかのことをやっております。

 まず、堂道局長からイスラエル大使、在京のイスラエル大使ですけれども、そのイスラエル大使に対して、次のようなことを伝えているわけです。これは、今申し上げたように、憎悪をさらにあおり、事態を悪化させる、和平プロセス全体を壊滅させるに等しい打撃を与えることになりかねない。イスラエルがそういった措置をとること、さらに、そうした発言を行うことに強く反対をする。この発言を実行に移さないよう求めるとともに、事態鎮静化のために、イスラエル政府が最大限の自制を行うことを要請する。もちろん、我が国は、従来よりやっているように、パレスチナ側に対しても、自制を、暴力を使わない、取り締まりをきちんとするということについて要請をしているということを言いました。

 これと同じようなことを竹内次官は記者会見で言っておりますし、また、イスラエルにおいて、在イスラエル日本国大使からイスラエル政府に直接伝えるということもやっております。

阿久津委員 川口大臣、もう少し踏み込んで御発言いただければありがたいなというふうに思うんですが、今、大まかな趣旨で言えば、堂道中東アフリカ局長及び竹内外務事務次官の方から、政府としての立場については説明させていただいているという答弁だったと思うんですけれども、川口大臣として、どうお考えになっているのか、どうコメントされるのか、そこをもう少しはっきり伺いたいんですが。

川口国務大臣 私、こういう場をいただいておりますので、こういう場で、先ほども別な委員の御質問に対して意見を申し上げさせていただきましたけれども、これは、このことの結果が及ぼす悪影響、まさに中東和平を危殆に瀕せしむるというようなことも含めまして、大変に問題のある行動であって、我が国としては反対を明確にいたしております。当然に、反対をし、かつ非難をする。そういうことをやっては、発言すらもやってはいけないというふうに考えるということであります。

 この問題について言いますと、中東の和平をできるだけ早くロードマップに戻す、それしかないわけですから、そのために各国が努力をするということが大事であって、できるだけ早く対話、これを再開させるということが重要であるというふうに考えています。

 我が国としては、今まで、例えば信頼醸成をつくるということのために努力もしてきております。東京で会議をやったことも、昨年でしたでしょうか、ございます。そういった努力を引き続きしていきたい。パレスチナの改革についての支援も行っております。今までやってきたさまざまな努力、支援、これは続けていく必要があると思っております。

阿久津委員 私は、この局面というのは日本外交の踏ん張りどころというか、世界に向けてしっかりとしたメッセージを送っていく上での大事な局面だというふうに思っております。

 今、大臣の口からも厳しいお言葉をいただけたのは非常にありがたいと思っております。というのは、ランティシ氏の殺害の直前に、四月十四日だったと思うんですが、シャロン首相はブッシュ大統領と会談をしております。テロ組織に対する行動を含め、イスラエルは自衛の権利を持つという書簡を、ブッシュ大統領からシャロン首相は受け取っております。米国としては、恐らく当たり前のメッセージを伝えたと考えていたんだと思うんですけれども、時と場合によっては、伝える相手とそのとられ方によっては大変な事態を引き起こす。

 私は、イスラエルのシャロン首相は、イスラエルはテロ組織の行動にも自衛権を持つという米国表明を受け、ランティシ氏殺害のお墨つきを得たと判断して、その行動に走った可能性がある。少なくとも、そういう形をつくった上で進んでいるんだと思うんです。

 私は、イスラエルは米国しか抑えられないという国際関係の中での常識というものがあると思うんですけれども、そんな中で、米国へ、アメリカに、イスラエルの自制を求めるよう、ヨーロッパ諸国やアジア諸国とも連動して我が国として働きかけるお考えがあるかどうか、ちょっと急なんですが、大臣、お答えいただければと思います。

川口国務大臣 中東和平問題については、これは私、この前、ストロー外務大臣、イギリスの外務大臣と電話で話をいたしましたときにも話をいたしましたし、今度五月に行われるG8の外相会談においても、このことは一つの大きなテーマとなるというふうに思っております。こういった場でいろいろ話し合っていきたいと思います。

 それで、我が国として考えているのは、イスラエル、これが、さっき申し上げたようなことを言わない、やらない、自粛をするということは非常に重要であるということであります。ただ、同時に、パレスチナサイドに対しても、自粛をしてもらわないといけない、過激派の取り締まりをきちんとやってもらわなければいけないということであると思います。

 本当の問題の解決に資するという意味では、イスラエルにおいては非常に自己の安全、存立についての危機感があるわけですから、それについてどういう対応が必要かということも含めた形で対応が行われる必要があって、それがまさにロードマップであって、ロードマップに戻るということが大事であるということをあわせて言っていく必要があると考えております。

阿久津委員 私も、ロードマップのテーブルにぜひイスラエル、パレスチナ双方を再び戻して、日本も、欧米諸国やあるいはアジア諸国とも協力しながら、適切なメッセージを適切なタイミングで発していくことが極めて大事だというふうに思っております。

 といいますのは、中東の紛争、中東問題の解決なくして世界からテロを撲滅することは不可能だというふうに思っております。中東で、もちろん、パレスチナの側への、自制も大事なことなんですけれども、仮にイスラエルの方が完全にパレスチナを抑え込んだとした場合は、まさにそこでストリートチルドレンとか難民があふれるわけですから、その人たちが今度は地下に潜る形で、行き場を失った力がテロになっていくという、まさに悪い循環をつくり出す要因になる可能性がある。私はそこのところを極めて心配しておりまして、引き続きの中東和平への真摯な取り組みをお願いしたいと思います。

 ちょっと次の方に移りたいと思うんですけれども、次は、イラクの外交官殺害事件についてお伺いをしたいというふうに思います。

 四月二十三日に、民主党の今野委員が質疑中に要求して、理事会協議となった事項の確認をまずさせていただきたいというふうに思っているんですけれども、先ほど理事会の方で資料が配られて説明がされたそうなんですが、それを伺いました。

 ティクリート復興会議の案内状及び出席者名簿を出してほしいという要求が今野委員からあったわけですけれども、実はちょっと、これについては私も今拝見をしたんです。それで、正直申し上げまして、丁寧な多くの資料をいただいたんですけれども、ちょっと納得がいかない点もあるんです。ただ、これは英文で書いてある資料ですので、正確に読み合わせも同僚議員といたしまして、相談して、この問題を取り上げるかどうかまた決めたいと考えております。

 それからもう一つ、岡本行夫前首相補佐官の昨年十一月三十日からの出張予定表、これを提出するようにというふうな要求が今野委員からなされたわけですけれども、確かに一枚ぺらのこの予定表が配付されました。三十日に成田発、一日、イラン・テヘラン着、同発、シリア・ダマスカス着、同発、シリア・カミシリ着、そういう形で発着が書いてあるんですけれども、これでは何だかさっぱりわからない。どういう会議に出て、何を目的に行っているのか全くわからない。

 これはどういうことなんですか。後でつくられたようなこういう資料ではなくて、今野委員が要求している資料というのはまさにちゃんとクレジットのついたものであって、例えば出張について便宜供与の公電があるはずなんですけれども、これはないのでしょうか。

堂道政府参考人 お答え申し上げます。

 出張に関しまして公電を発出しております。

阿久津委員 理事会でもその公電を明らかにするようにという要求がなされているようなんですが、この場でも再度要求いたしますので、ぜひこの公電を出していただきたいというふうに委員長にお願いいたします。

米澤委員長 理事会で相談します。

阿久津委員 それから、イラク人専門家の現地調査報告書、上村イラク臨時代理大使の現地調査報告書、これを、結論から言えば出せないということなんですけれども、なぜ出せないのでしょうか。

堂道政府参考人 お答え申し上げます。

 このイラク人専門家によります現地調査の報告書及び二月の二十九日に上村臨代が現地に赴きましてその調査の裏づけ等を行っておるわけでございますけれども、これらにつきましては、現在捜査中の事案について種々の側面から行った調査でございまして、また捜査当局にも提出しているものでありまして、公表することは捜査に影響を及ぼしかねないので行えないということでございます。

 また、その調査の内容は、調査対象者からの公にすることを前提としていない発言や、その事実の認定や確認がしっかり行われていない諸情報から成り立っているので、部分的であっても公開し得るものではないというふうに考えております。

阿久津委員 ちょっと警察庁の方に伺いたいと思うんですけれども、この報告書、お受け取りいただいていると思うんですけれども、これはもちろん、捜査がある程度いった段階では外務省に戻るわけですね。ちょっと確認なんですが。

瀬川政府参考人 捜査の過程で得た証拠品の取り扱い等についてのお尋ねかと思いますが、捜査上、警察において保管している必要がないという段階に至ったものにつきましては、これは、提出された方が返却を希望しておられるというようなものにつきましては、刑事訴訟法上の還付という手続をもちまして、その持ち主の方にお返しをするというのが一般的な取り扱いでございます。

阿久津委員 この両報告書は、国民の税金が使われてつくられた報告書でありまして、しかも、極めて公益性というのか公性が強い報告書だというふうに私は思っております。

 それで、自民党を含む与野党の多くの議員が、衆参さまざまな委員会で繰り返し繰り返しこの問題について、外交官の殺害事件について質問をしているわけです。結果に対して、その説明に対して納得がいかないから再び質問を繰り返している、こういう現状ですから、ぜひ疑問点に答えるという意味でもこの報告書を出させていただきたいのですが、川口大臣、いかがでしょうか。

川口国務大臣 お気持ちはよくわかるんですけれども、これは、とりあえずの上村臨時代理大使のいろいろな方から聞いたレポートでございまして、この人たちの立場、いろいろにかかわる問題も含まれております。

 したがいまして、私がこの前も別な委員会で申し上げましたけれども、外務省として、外務省がわかっていること、そして確認できること、確認できない情報を生のままでお出しするということはかえって混乱をもたらすというふうに考えております。そういった情報の確度についても精査、評価をした上で、こういうことが起こって、ここまでわかっていますということについて、できるだけ早く全体像を、御説明を何らかの形でできるということを考えております。

 今までも既に、御説明できることについては、これはもう最大限申し上げています。ただ、ばらばらに、そのときそのときで申し上げているわけで、そういったことをピースミールであるという御批判はおありになるかというふうに思います。これについて引き続き、わかる、精度について、これを上げる努力をしながら、何らかの形でわかっていることをできるだけ早くお出しをしたいというふうに私は思っています。

阿久津委員 大臣、今までに十分に説明した、できることについては説明したということなんですけれども、この前の今野委員の質疑においても、たかが、たかがと言ったらいけないかもしれないですけれども、無線機がついているかどうかさえ、今野委員がどなり声を上げて二度、三度聞き返さなかったら、無線機がついているかどうかさえ答えないんですよ。これは私は異常で、そういう行動の積み重ねが、これは外務省のことですよ、そういう行動の積み重ねが不信を招いてしまっているんですよ。私だって、この不信を早く払拭できたらと思っているんです。ぜひ出していただきたいのです。そのための努力をしていただきたいのです。

 今の答弁ではとても納得できないですから、委員長、再び資料請求したいと思います。このイラク人専門家の現地調査報告書、上村イラク臨時代理大使の現地調査報告書、出せないわけはないと思いますので、ぜひ委員長、理事会で協議していただいて、出していただきたいと思います。

米澤委員長 今の件は、理事会で継続して審議しておる最中であります。

阿久津委員 それから、今野委員の方から参考人招致要求も出されております。理事会の方ではその理由について説明があったということなんですが、上村イラク臨時代理大使及び岡本前首相補佐官の参考人招致要求、これは現時点ではできないということなんですけれども、それでは、上村イラク臨時代理大使が現地から我が国に戻ってきたら、参考人としてお話しいただけるようにしていただけるんでしょうか。川口大臣、いかがでしょうか。

川口国務大臣 いろいろな御要望はおありになると思いますけれども、外務省として今までずっとやらせていただいていることは、この問題について、堂道局長あるいは他のこの問題についてまとまった形で国会に御説明をする立場にある者がそれをさせていただいているということでございますので、そういった形で、私としても一日も早く御説明を、わかっている限りのことを、これはまだ警察において捜査をしていただいている部分もありますので、全部というわけに今の時点ではいかないかもしれませんが、できるだけ早くわかっていることについてはお話をさせていただきたいというふうに思っているというのは先ほど申し上げたとおりでございます。

阿久津委員 上村イラク臨時代理大使は、奥大使や井ノ上書記官と最後に電話連絡をとった方だと思うんですね。現地にも一番近いところにいて、一番状況もある意味ではわかっていたし、悲しみも一番大きかった方の一人だというふうに思っているんです。

 やはり、この上村イラク臨時代理大使から直接外務委員会として話を聞くということは、公ということを考えても絶対に必要なことだというふうに私は考えておりますので、これも、大臣の今の答弁では私は納得いきませんので、再び理事会で協議していただくよう委員長の方からお願いいたします。

米澤委員長 そのようにいたします。

阿久津委員 それから、続けまして、岡本前首相補佐官の参考人招致要求についても、できないということなんですが、これについてはちょっと理由を改めて聞かせていただきたいんですけれども。

堂道政府参考人 お答え申し上げます。

 岡本前総理補佐官でございますけれども、当時は総理補佐官として官房長官ともお話しになり、出張されたということであります。岡本補佐官の出張について幾つか御質問をいただいておりますけれども、この点につきましては、内閣官房とも諮りまして、岡本補佐官の参考人要求については応じられないというふうに整理をされていると承知をしております。

阿久津委員 理由を聞いているんです。もう一回お答えください。今のは理由になっていないです。

堂道政府参考人 岡本補佐官の出張がどういう点で問題なのかということについていろいろ御議論があるんだろうと思いますけれども、私どもも、なぜ参考人として要求されているのかということについて必ずしもよく理解ができておりません。

 先ほども申しましたとおり、出張の目的あるいは日程についてはきちっと御説明をしたいと考えております。

阿久津委員 このほとんど何も書いていない外務省からの岡本行夫首相補佐官の訪問日程予定という配付資料、これだけ見ても、「岡本補佐官はシリアで奥大使と合流し、その後イラクには、奥大使と共に移動する予定であった。」というふうにつけ足しのように書いてあるんです。これだけ見ていても、要するに亡くなる直前まで連絡をとっていた上村臨時代理大使、そして、もしそのままこの事件が起こらなかったら、その直後に会う一番重要人物の岡本首相補佐官というのは、この事件を解明していく上でどうしても必要な内容を知り得る可能性のある方だと思っているんです。参考人として招致して、何もわかりませんでした、私は知りませんと言うなら、それはそれで結構なんです。

 これは、極めて呼ぶ意味があるというふうに思っていますので、私はこれについても全く納得できませんので、委員長、ぜひこの問題についても再度理事会の方で御協議いただきたいというふうに思います。

米澤委員長 理事会にて協議を継続いたします。

阿久津委員 まだまだ残してしまった質問がたくさんあるんですが、もう時間がほとんどなくなってしまいましたので、最後に一点だけお伺いしたいと思うんです。

 被害車両の確認を外務委員会で行うべきだというふうに私は思っているんです。これは、例えば御遺族の方々の御心情とかそういったものを配慮したとしても、一般の方に公開するわけではなくて、外務委員会という立場で、公の立場で、代弁する国民の代表として我々がしっかりと調べるということは意味があることだと思うんですが、被害車両の確認を外務委員会で行うことについて川口大臣にぜひお願いしたいと思うんですが、いかがでしょうか。

川口国務大臣 被害車両の公開については、これは委員も今おっしゃってくださったように、関係者のお気持ち等もございます。ということを踏まえた上で、どのような形で、これはもちろん今捜査中のものになっているわけでございますので、警察庁の捜査が終わるということがまず前提でございますけれども、それの終わった後、関係者の御意向等も踏まえた上でどのような形で公開が可能か、その対応について検討を今行っております。

阿久津委員 警察庁の方は、この捜査の方は大体、もうそろそろ見通しがついていいころだと思うんですけれども、この車に関して、いつぐらいであれば警察庁として捜査のある程度のめどをつけられるでしょうか。この前、中間報告が出たと思うんですけれども。

瀬川政府参考人 お尋ねの車両につきましては、現在なお警視庁におきまして捜査中でございます。できるだけ速やかに捜査を遂げたいというふうに考えておりますけれども、現時点でいつごろということを申し上げる段階にございませんので、御理解を賜りたいと思います。できるだけ速やかに捜査を遂げたいと思っております。

阿久津委員 川口大臣、最後に一言だけで結構なんですけれども。やはり被害車両の確認がどうしても必要なんですよ。もう捜査もほとんど終わっていると私は思うんです。もうちょっとで踏み出しそうな御答弁だったんですけれども。

 ぜひ、これは外務委員会として視察をさせていただきたい。そのことも、委員長、ぜひ御協議をいただきたいというふうに思います。川口大臣の方からもちゃんとしたこの部分についての御指導をお願いいたします。頼みます。

米澤委員長 川口大臣、何か答弁ありますか。

 理事会で協議します。

阿久津委員 以上です。

米澤委員長 次に、東門美津子君。

東門委員 社会民主党の東門美津子です。

 お疲れのところ済みません。あと十五分くらいですからよろしくお願いいたします。

 今まさに、沖縄県名護市辺野古沖において、普天間飛行場の代替施設としてボーリング調査が行われようとしているところなんですが、その件に関して、四月の二十六日、これは、ジュゴン保護キャンペーンセンターとWWFジャパンが同調査の中止を求めて外務省に要請に参りまして、その際、外務省の方からは、代替施設建設を条件としない返還について米側から提案を受けていないと答えたという報道がなされておりますが、その件は本当でしょうか。

海老原政府参考人 普天間飛行場の移設問題につきましては、もう既に閣議決定も平成十一年に行われておりますし、十二年に基本計画も決定をしている。平成十五年には代替施設建設協議会も発足をしております。

 この方針に何ら変わりはございませんし、また米側からもこれにかわる案について打診を受けているというような事実はございません。

東門委員 二十六日、私は総理に対して御質問をいたしました。そのときの総理のお返事、ボーリング調査についてですね、やはり県民の声を聞く、住民の声を聞くというお返事だったと私は思っております。

 そういう中で、とにかく今調査をするのではなくて中止をしてほしい、特にWWFジャパンやジュゴン保護キャンペーンセンターは、そこの環境問題、ジュゴンがすむ、そういう豊かな海、豊かな藻場、それが全部破壊されてしまう、そういう意味でも待ってほしいということに対しての私は申し出だったと思うんです。それは米側から返還について何ら提案を受けていないからということで断られた。

 なぜ、じゃ、日本の側から、沖縄県は、住民はそういう声があると、しかも自然保護団体、WWFジャパンそれからジュゴン保護センター等からの要請に対して日本側からアメリカに協議を提案するということができないのでしょうか。そういうふうにお答えができないのでしょうか。

海老原政府参考人 これは、代替施設を建設するに当たりまして周囲の環境問題に十分配慮をしなければならないということにつきましては、これは当然のことでございまして、環境影響評価も行う、そのために今防衛施設庁がボーリング調査を始めようというふうにしているということだと理解をいたしております。環境に対する影響が重要であるという点につきましては、外務省も防衛施設庁も非常に高い意識を当然持っているわけでございます。

 他方、私が申しましたのは、普天間飛行場の移設というものを一日も早く実現させるということが重要であって、これが沖縄の方々の御負担の軽減にもつながるというふうに考えておりますので、その点につきましては日米が協力して進めていきたいというふうに考えているわけでございまして、決して環境に対する配慮を欠いているということではございません。

東門委員 県民の負担の軽減が、普天間飛行場を辺野古に移設する、そして埋め立てることが県民の負担の軽減につながるというふうに断言できるんですか。今局長、そう答弁なさったと思うんです。負担の軽減になると、だからそうするんだと。

 本当にそう思われる、何を根拠にそう思われるんですか。お答えください。

海老原政府参考人 これは、もちろん、そもそも普天間飛行場が市街地にあるという観点から、非常に周囲の住民の方々にも不安も与え、また危険な可能性もあるということから、これを一日も早く移設をするという考え方で、この考え方自体については沖縄の方々の御理解もいただき、だからこそ、いろいろな経緯はございましたけれども、稲嶺知事の候補地の表明、それを受けた形での岸本名護市長の受け入れ表明もございまして、我々といたしましては、普天間飛行場を早期に移設するということにつきましては、これは知事、市長を初めといたします沖縄の方々の御要望でもあるというふうに考えておるので、沖縄の負担の軽減にもつながるということを申し上げたわけでございます。

東門委員 それがそのまま沖縄県民の負担の軽減につながるということはあり得ない、それは局長、しっかり考えていただきたいと思います。そういうことはありません。

 知事がそう言った、それから市長が受け入れた、じゃ、伺います。市長の受け入れ条件、しっかりとその点も協議をしていますか。それがしっかりと実現できるような形での移設計画ですか。

海老原政府参考人 受け入れ条件とおっしゃっているのがどういうことか、必ずしも私は全部を理解しておりませんけれども、例えば稲嶺知事がおっしゃっている、着工前に十五年の使用期限の問題、この問題についてきちんと決着を見たいということをおっしゃっているわけでございますね。

 このことにつきましては、平成十一年の閣議決定にもありますように、このことを政府としても重く受けとめまして、米国との間で、いろいろと難しい問題はあるとは思いますけれども、取り上げてきている。これは、川口大臣からも再三パウエル国務長官にもお話をしておりますし、その他の場面でもこの話は米側との間で取り上げてきているということでございます。

東門委員 取り上げてきているということは何度もこの委員会でも伺いました。実現可能性はあるんですね。

海老原政府参考人 これは、まだアメリカとの間で取り上げて話をしているということでございますので、今の時点で、実現可能性という意味は十五年の使用期限の設定というようなことかとも思いますが、それがどうなるのかということについて私の方から予断を持って申し上げる段階ではないというふうに考えております。

東門委員 そういう御答弁でしたら、ちゃんとその見通しをつけてから私は計画は進めていくべきだと思います。

 何しろ稲嶺知事は、二期目の選挙の公約は、十五年使用期限問題をしっかりと解決するために私は選挙に臨むんだとおっしゃった。それが公約なんですよ。その実現に向けてまず私は頑張る、そこから次のステップだと思います。

 私が実はきょうこれを申し上げたのは、今アメリカでは、もう私が申し上げるまでもなく、皆さんよく御存じです、アメリカが世界的な軍事体制の見直しを進めているわけですよ。それは連日のように報道されています。そして、その中で、在日米軍にも大きな動きがあると思われるという報道もなされています。

 そういうときだからこそ、政府の方から、日本側からアメリカに対して、沖縄県民の思いを、気持ちをなぜ、それを体してアメリカ側に向かえないんですか。アメリカ側から言っていないからそういうことは考えられない、平成十一年に決まったから、そういうことではないんじゃないかと思うんですが、大臣、いかがでしょうか。日本側からアメリカに提案をしていくということも、私は、対等の立場であるならば政府間でちゃんとやれると思います。大臣からお伺いしたいと思います。

川口国務大臣 トランスフォーメーション一般について申し上げますと、我が国は米国側に対しまして、我が国の基本的な考え方、これについてはきちんと伝えています。それは、一つは、日米安保の持っている抑止力、これに何ら問題を生じるようなことではないということ、それから、沖縄を含む地元地方公共団体の負担、これを軽くするということが重要であるということでございます。これについてはきちんと伝えてきているということでございます。

東門委員 抑止力、沖縄県民の負担軽減、いつも聞く両方のあれですが、じゃ、抑止力について伺います。

 今、報道によりますと、来月タイで開催される東南アジア最大級の合同軍事演習コブラゴールド04に沖縄に駐留する海兵隊が三千人以上参加するとのことです。既に在沖海兵隊からは三千人がイラクに派遣されており、一時的にせよ六千人の海兵隊が沖縄を離れることになるわけです。また、米国はイラクに派遣している米軍のさらなる増強を余儀なくされていることから、沖縄の海兵隊が今後追加派遣される可能性も考えられます。であれば、日米安保条約に基づいて沖縄に駐留する海兵隊の意義は何なのかということが問われる状況になると思います。

 外務大臣は、イラクに三千人派遣された際に、米軍は抑止力が低下することのないように一時的措置をとると以前答弁されております。では、米軍はどのような一時的措置をとったのでしょうか。一点目。

 そしてまた、一時的にせよ六千人の海兵隊が沖縄を離れることをどのように御認識されておられるのでしょうか。海兵隊は在沖米軍でも大きな割合を占めており、海兵隊を削減することができれば、在沖米軍削減に大きく貢献する、そしてこれが県民の負担の軽減にも大きくつながっていくと考えますが、大臣、お考えをお聞かせください。

川口国務大臣 抑止力の低下、これはこの前も申しましたように、そういうことが起こらないように一時的な措置をいろいろとっているという説明を受けているわけです。そして、その一時的な措置について、これは米軍の運用上のことでございますので、日本政府の立場から申し上げるべきことではないというふうに考えております。

 もう一つございましたね。それだけでしたか。(東門委員「六千人、いや、六千人に減っちゃうわけですね」と呼ぶ)ですから、それについての御答弁は今申し上げたとおりであります。

東門委員 一時的な措置、米軍の運用上のことだから日本政府からは言えない、わかりました。

 大臣、しかし、公表はできないけれども、大臣は御存じなんですね。一時的な措置、こういう措置を米軍がとっているということは、大臣は御存じなんですね。外務省は御存じなんですね。それだけお聞かせください。公表はできませんということは結構です。

海老原政府参考人 これは、まさに先ほど大臣が御答弁されましたように、米軍の運用そのものでございまして、私から具体的にどういうことを聞いているかいないのかと、そういうことも含めて申し上げるのは適当ではないというふうに考えておりますけれども、一般論として申し上げれば、軍事体制、兵力構成については、常に日米間で密接な協議は行われております。

東門委員 そうすると、たとえ三千人がイラクに派遣されて、その間沖縄から三千人の兵員数が減る、そしてさらに今度演習のために三千人出る、六千人減っても何ら大した影響はない、抑止力には影響はないというふうに受け取っていいのでしょうか。

海老原政府参考人 少なくとも私が承知している限りでは、先ほど東門委員がおっしゃいました、後半の、三千人タイにという話はちょっと承知しておりませんので、そこはちょっと申し上げさせていただきたいと思いますが、いずれにせよ、三千人イラクに行っている、これは事実でございます。したがいまして、これは、抑止力を維持するというのは大前提でございますので、その大前提が満たされるような形で派遣がされているということを申し上げたいと思います。

東門委員 私、通告は主に地位協定の改定についてということだったのですが、余りにも最初の方で時間を食ってしまいました。でもやはり、一問だけは聞かせていただきます。あと残りは別のときにいたしたいと思いますが。

 今回の合意ですけれども、外務省としては、我が意を得たりというような改定だったんでしょうか。要するに、外務省がこの方向に望んで行ったというような改定、合意の内容でしょうか。

海老原政府参考人 我々といたしましては、当然、交渉でございますので、いろいろな経緯はございましたけれども、今回の合意によりまして、九五年の合同委員会の合意の円滑な運用というのが確保される、その意味におきまして、地位協定の運用の改善につながるということでございますので、この今回の合意が将来円滑に運用されることによって、運用の改善が進むということを強く期待いたしております。

東門委員 本当に今この場であと十分ぐらいいただきたいところなんですが、多分それは無理でしょうから、そこまでは申しませんが、これは国会の中でもかなりの批判があることはもう御存じだと思います。今まで外務省は、地位協定の改定を申し入れるとアメリカ側から絶対にノーだと言われる、それはなぜかというと、改定できない理由として、これについて改定について協議をすると、日本側がのめない取り調べへの同席をアメリカ側が要求してくるからというふうに説明してきたはずなんです。確かにそうですよね。

 もし日本側がそれを持ち出すと、アメリカ側が、我々日本側がのめないそういう条件を出してくるので乗れないと、これは自民党の議員さんがおっしゃっているんです。そういうことなんですね。要するに、立ち会いを求められるからそれはできないということでずっと断っているというはずだったんですが、今回は、すんなりかどうかはわかりませんが、最終的には立ち会いを認めるという形になりました。

 私は、お伺いしたいのは、それが米軍の、米軍による犯罪の削減につながるかどうか、日本にとって本当に捜査をしていく上で有益なのかどうか、本当に役に立つのかどうか、全然問題はないのかどうか、伺いたいと思います。

海老原政府参考人 これは、今回のは捜査協力の強化というのが目的でございまして、したがいまして、協力が強化されることによりまして、米軍側の捜査というのもより強化される。したがいまして、米軍内部での犯罪対策、抑止、そういうことについても積極的な効果があるというふうに考えております。

 他方、我々の捜査に対する影響でございますけれども、これは捜査協力という観点から行うものでございますので、間違っても捜査に支障のあるような形では行わないということには、同席が行われないということにつきましては、日米間で合意があるわけでございますし、実際に、これは当然、警察庁、法務省とも協議をしながら進めてきたわけでございますけれども、警察庁、法務省の方においても、捜査に支障のないような形で同席を認めるということについては、我々と認識が一致しているところでございます。

東門委員 最後に一問だけお聞かせください。

米澤委員長 質疑は終わりました。

東門委員 あと一問だけ。

 今まで、二〇〇一年に私が外務委員会でお尋ねしました、放火をしっかりと明確化するべきだということに対して、これまで全然出ていません。今回も入っていません。なぜなのか。そのことについては合同委員会でしっかりと提案をしたのでしょうか、これにお答えください。

海老原政府参考人 その他特定の場合の明確化につきましては、簡単に申し上げますと、今回、日本側が行う要請の対象はあらゆる犯罪を含み得るということについて日米間の明確な意見の一致が見られたところでございます。これは九五年合意の解釈ということですので文書にはしておりませんけれども、明確な認識の一致というのを合同委員会で確認をいたしております。

東門委員 終わります。

米澤委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会します。

    午後零時三十九分散会


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