衆議院

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第16号 平成16年5月12日(水曜日)

会議録本文へ
平成十六年五月十二日(水曜日)

    午前九時三分開議

 出席委員

   委員長 米澤  隆君

   理事 岩永 峯一君 理事 谷本 龍哉君

   理事 中谷  元君 理事 渡辺 博道君

   理事 末松 義規君 理事 武正 公一君

   理事 増子 輝彦君 理事 丸谷 佳織君

      江渡 聡徳君    小野寺五典君

      河井 克行君    木村  勉君

      鈴木 淳司君    田中 和徳君

      土屋 品子君    西銘恒三郎君

      松宮  勲君    宮下 一郎君

      阿久津幸彦君    加藤 尚彦君

      川内 博史君    今野  東君

      中野  譲君    前原 誠司君

      松原  仁君    漆原 良夫君

      赤嶺 政賢君    東門美津子君

    …………………………………

   外務大臣         川口 順子君

   外務副大臣        逢沢 一郎君

   外務大臣政務官      田中 和徳君

   外務大臣政務官      松宮  勲君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  堀内 文隆君

   政府参考人

   (内閣官房内閣参事官)  猪俣 弘司君

   政府参考人

   (内閣府政策統括官)   武田 宗高君

   政府参考人

   (防衛施設庁長官)    山中 昭栄君

   政府参考人

   (防衛施設庁建設部長)  河野 孝義君

   政府参考人

   (総務省大臣官房技術総括審議官)  鬼頭 達男君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 三輪  昭君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 門司健次郎君

   政府参考人

   (外務省大臣官房領事移住部長)  鹿取 克章君

   政府参考人

   (外務省総合外交政策局軍備管理・科学審議官)   天野 之弥君

   政府参考人

   (外務省総合外交政策局国際社会協力部長)  石川  薫君

   政府参考人

   (外務省アジア大洋州局長)  薮中三十二君

   政府参考人

   (外務省北米局長)    海老原 紳君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)  塚本  修君

   政府参考人

   (経済産業省商務情報政策局長)  豊田 正和君

   政府参考人

   (海上保安庁次長)    金子賢太郎君

   外務委員会専門員     原   聰君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月十二日

 辞任         補欠選任

  高村 正彦君     江渡 聡徳君

  松原  仁君     川内 博史君

同日

 辞任         補欠選任

  江渡 聡徳君     高村 正彦君

  川内 博史君     松原  仁君

    ―――――――――――――

五月十一日

 航空業務に関する日本国とウズベキスタン共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第九号)(参議院送付)

同月七日

 核兵器廃絶条約の締結に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第一九二九号)

 同(穀田恵二君紹介)(第一九三〇号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 国際原子力機関憲章第十四条の改正の受諾について承認を求めるの件(条約第六号)

 全権委員会議(千九百九十四年京都及び千九百九十八年ミネアポリス)において改正された国際電気通信連合憲章(千九百九十二年ジュネーブ)を改正する文書(全権委員会議(二千二年マラケシュ)において採択された改正)及び全権委員会議(千九百九十四年京都及び千九百九十八年ミネアポリス)において改正された国際電気通信連合条約(千九百九十二年ジュネーブ)を改正する文書(全権委員会議(二千二年マラケシュ)において採択された改正)の締結について承認を求めるの件(条約第七号)

 航空業務に関する日本国とウズベキスタン共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第九号)(参議院送付)


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     ――――◇―――――

米澤委員長 これより会議を開きます。

 国際原子力機関憲章第十四条の改正の受諾について承認を求めるの件及び全権委員会議(千九百九十四年京都及び千九百九十八年ミネアポリス)において改正された国際電気通信連合憲章(千九百九十二年ジュネーブ)を改正する文書(全権委員会議(二千二年マラケシュ)において採択された改正)及び全権委員会議(千九百九十四年京都及び千九百九十八年ミネアポリス)において改正された国際電気通信連合条約(千九百九十二年ジュネーブ)を改正する文書(全権委員会議(二千二年マラケシュ)において採択された改正)の締結について承認を求めるの件の両件を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 両件審査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房審議官三輪昭君、外務省大臣官房審議官門司健次郎君、外務省大臣官房領事移住部長鹿取克章君、外務省総合外交政策局軍備管理・科学審議官天野之弥君、外務省総合外交政策局国際社会協力部長石川薫君、外務省アジア大洋州局長薮中三十二君、外務省北米局長海老原紳君、内閣官房内閣審議官堀内文隆君、内閣官房内閣参事官猪俣弘司君、内閣府政策統括官武田宗高君、防衛施設庁長官山中昭栄君、防衛施設庁建設部長河野孝義君、総務省大臣官房技術総括審議官鬼頭達男君、経済産業省大臣官房審議官塚本修君、経済産業省商務情報政策局長豊田正和君、海上保安庁次長金子賢太郎君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

米澤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

米澤委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。松原仁君。

松原委員 民主党の松原仁でございます。

 まず、条約関係ということでありまして、本日案件になっております国際原子力機関憲章第十四条の改正の受諾についてのことであります。

 我が国は、この設立当初からこの機関の理事国でありまして、IAEAの主要な理事国として、また、IAEAの通常予算の約二割を拠出する主要加盟国として、活動に対し積極的な協力を行ってきております。今般、この憲章第十四条の改正、二年間ということでありますが、これはIAEAの活動にとってどのような意義があると考えているか、御答弁をお願いいたします。

天野政府参考人 お答えいたします。

 IAEAの事業は、現行では二年ごとの事業計画に基づいて運営されておりますが、事業計画の執行を裏づける予算は単年ごとに作成されている状況となっております。

 本件の改正によりまして、事業計画と周期を合わせた形で二年ごとの予算見積もりを作成することになりますと、IAEAとしては、予算計画にある諸事業を最初から予算の裏づけを持った形でより着実に実施することができるようになると考えられます。また、本件改正により、予算見積もりの作成が二年ごとでよいことになりますので、予算の作成のための作業が相当程度軽減されることになるのではないかと考えます。

松原委員 次に、国際電気通信連合についてでありますが、これまで同機関は、周波数の国際分配や通信の標準化などにおいて大きな役割を果たしてきております。今般、同機関の基本文書である国際電気通信連合憲章及び条約を改正するわけでありますが、その背景となった国際電気通信をめぐる変化、改正経緯についてお伺いいたします。

石川政府参考人 お答えいたします。

 近年、インターネットを初めとした通信関連技術の急激な進展、また電気通信の民営化の進展等の環境の変化に迅速に対応できるよう、国際電気通信連合の業務も一層の効率化を進めていくことが課題となってまいりました。このような背景を踏まえまして、二〇〇二年、モロッコのマラケシュで開かれました全権委員会議におきまして、ITUの活動のより一層の効率化を図る観点から、本件憲章及び条約の改正文書が採択されました。

 今次改正文書は、ITUの活動の効率性を高め、機動的な運営を確保することを通じて国際電気通信の一層の発展を図ることを目的とするものだ、かように考えております。

松原委員 続きまして、拉致問題についてお伺いしたいと思うわけであります。

 この拉致の問題は、日本の主権にかかわる極めて重要な問題であると同時に、時間の経過とともにこの問題の解決、その解決の意義がだんだんと失われていくことも想定されるわけであります。人の命というのは有限であります。そういった意味において、早期の解決が従来から求められていたわけであります。

 ここで、冒頭、もう一回、この拉致問題の解決とは何かという基本的な原理原則についてお伺いいたします。

川口国務大臣 この拉致問題でございますけれども、これは、既に帰国された五名の被害者の方々の家族、この家族の方の帰国ということがまず大事でございます。また同時に、安否が不明である拉致の被害者の方々に関する事実関係の解明、これが重要であるというふうに考えております。

 先般、北京において日朝の協議が行われたわけでございまして、これは今継続協議という形になっておりますけれども、これらの諸点に関して、引き続き北朝鮮の前向きな対応を求めていく所存でおります。

松原委員 拉致問題の解決は、今大臣がおっしゃったように、五人の御家族の皆さん、十人の行方不明者、こういうことでありまして、今の大臣の御発言は、その全員が日本に帰国する、これは一つの、当然、拉致問題解決の必要条件である、こういう御認識でよろしいですか。

川口国務大臣 全員とおっしゃるのは……(松原委員「それは、だから、不明者の十人を含む」と呼ぶ)五人の方の家族の方の帰国、これは実現をしなければいけないということでございます。それから、安否不明の方、これについてその安否をまず、何が起こったか、どういうことになっているかということを確認するということでございます。そして、安否、安全が確認をできた方については当然そういうことになると考えます。

松原委員 私の記憶であれば、かつて外務委員会のどこかで、この問題の解決ということに関して外務大臣がお答えになったのか、要するに、それは家族の皆様のすべてのこの問題が解決したという同意があってこの問題の解決であるといったような御発言があったという記憶、私の記憶違いかもしれませんが、それについていかがですか。

川口国務大臣 そういった解決については、家族の方々、関係をしていらっしゃる家族の方々がそれでいいというふうに感じられるということは重要であると考えております。

松原委員 これは重要であるけれども、それは解決の条件ではない、こういう理解でよろしいですか。

川口国務大臣 重要であるということを申し上げたということは、何をもってこれが条件であって条件でないというふうに、これははっきり色分けができるという事柄ではないと思います。そのような形でそういったことが、将来、これはできるだけ早く、近い将来の方がいいと思いますけれども、実現をしていったときに、家族の方々がそれでいいと思われるかどうかということが重要な要素であるということを申し上げているということでございます。

松原委員 それは最低限の、当然、重要なというか、条件の一つだと思いますが、私が申し上げたのは、拉致問題の解決とは何かという根本的な考え方というのが、どこが大臣の頭の中で拉致問題の解決と見ているのか。例えば、その他にも特定失踪者の問題もあるわけですが、これについてはどういうコメントになりますか、特定失踪者。これは、だから、この問題については拉致問題とどういうふうな関係でとらえているのか。この問題について、全く、今議論がされているものに対して、それがなされないまま解決ということがあり得るのかどうか、外務省の判断として。

川口国務大臣 これにつきましては、最近の取り組みといたしましては、警察庁と密接に連携を図っております。そして、海外の関係機関との情報交換の強化、これも行ってきておりますし、脱北者の方々からの情報収集も行ってきております。その際に、これは、北朝鮮当局によって拉致された被害者等の支援に関する法律、これに基づきまして被害者と認定をされた十五名の方々、この方々に限定をすることなく、広く、北朝鮮による日本人拉致という観点から情報の交換及び収集を行ってきているわけでございます。

 今後、新たに拉致の認定をされるという事案がある場合には、これは、北朝鮮に対しましては、しかるべく取り上げていく考えであるということを既に伝えてあります。

松原委員 私が聞いているのは、どこが、どういう状況を解決とみなすかと。調査をしているとか、北朝鮮に申し入れをするとかというのは、それは当然、日本の国としてやるべきことですが、どういう状況を解決と外務大臣としては考えているのかと聞いているんです。

川口国務大臣 これにつきまして、冒頭で申しましたように、拉致の被害者の方々の家族の方、この方の帰国、そして、安否がわからない方、これについての事実解明、そして、先ほどおっしゃられた特定失踪者のことについて申し上げれば、その中で拉致ということが認定をされるかどうかということが一つあるわけでございまして、その認定がなされた場合、その方々については、それも含めて真相の究明の対象にしていくということを北朝鮮側には伝えてあるということでございます。

松原委員 私は、ちょっと今の外務大臣の御答弁では不満でありまして、真相の究明は当然必要なわけであります。しかし、真相の究明というところで終わってしまってはしようがないんであって、それに含まれて、真相が、例えば十人の行方不明者が生存しているなら当然それは戻すという作業が出てくるだろうし、もしそうでないことが、仮にですよ、万が一あった場合は、謝罪をどういうふうにとるかという議論になってくるだろうし、そういうふうなところまでいかないと拉致問題の解決にならぬ、犯人を出せということも含めて、本来的には犯罪ですから。

 真相究明とか、要望していますという、それを、日本のこの問題に関して、外務省のトップである大臣がその程度の認識でやっていたら、つまり、解決とは何だと私は聞いているんですよ。もう一回答えてください。薮中さんでいいですよ。

薮中政府参考人 お答え申し上げます。

 今、先ほどまでの外務大臣の御答弁と同様の内容でございますけれども、これはもう委員重々御承知のとおりでございまして、我々はまさに、いろいろな関係者、家族会の方々ともに、政府は、外務省として、政府全体の取り組みとして、この問題の全体の解決、このために徹底的な努力をするということでやってきておるわけでございまして、まさに今大事なことは何かということをずっと我々は委員とも御一緒にやってきたつもりでございます。

 そのまず第一は、今引き離されている家族、その方々の一刻も早い帰国を実現するということ、これはまず当然でございますし、それから、真相究明と言っておりますのは、まさにその十名の方々の安否について、今まで言われているような、北朝鮮側から来ているような説明では全く納得ができないということ、これも委員御承知のとおりでございます。

 したがって、まずは、なすべきは徹底した真相の究明であるということでございまして、当然のことながら、今委員御指摘のとおり、真相究明する中で、もちろん、生存されておられる方がある、そうしたときには、その方々の帰国というのは当然でございます。そしてまた、全体の徹底した真相究明の中でしかるべき対応がなされるべきだということも当然でございます。

 また、特定失踪者の方の件についても御指摘がございましたけれども、これもまさに、我々としてはいろいろな情報収集活動、これは警察当局とも連携をとりながらやってきているわけでございますけれども、そうした中で、これが拉致被害者であるという認定がされたら、当然のことながら、十名の方々と同様、真相の究明に当たって、先方に強く求めていく、そして全体の解決を図っていくということでございますけれども、物事には当然、その中で今なすべきこと、その順序があるということも委員御承知のとおりでございます。

松原委員 私は、その順番があるということは承知をしておりますが、少なくとも、原理原則として、この問題の解決というのは、そういう全体の包括的な中で議論されるべきであるということを常に頭の中に置いていただきたい。やはりそれは、私は、外務大臣としての目的意識として持っていただきたいということを言いたいわけであります。

 そういう中におきまして、ちょうど今薮中さんから御答弁がありましたが、五月四日に北京で二日間にわたり鄭泰和氏と会談が持たれたということであります。その内容をなかなかおっしゃれないというふうに言われておりますが、これは公式な外務委員会でありますから、あえて、どういう議論があったか、ここで語れることを語ってください。

薮中政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員御指摘のとおり、五月の四日と五日に、北京におきまして北朝鮮側と協議を行いました。これは、まさに政府間の協議ということで、ことしになりましては二月に行いました日朝の間での政府間の協議、それに継続するものということで位置づけてございます。

 そして、その二月の協議のときから、我々はもちろん一貫して言ってきていることがございます。それはまさに、全体として日朝の平壌宣言というのがあった、それをきっちりと履行していくということ、そのためには拉致問題、そしてまた核、ミサイル問題の包括的解決が必要であって、それの包括的な解決の上に立って国交正常化を図っていく、そしてこの地域の平和と安定に向けて日本としても努力していきたい、これがまさに総理がかねて言っておられる強い御意向でございます。そうした基本方針に基づいて、私どもとしては、二月のときにも議論をいたしました。

 そして、それで具体的にまずなすべきことということでいえば、もちろん拉致問題の解決でございます。核問題については、あわせて六者協議の場で推進していくという一つの場の設定がございますが、拉致問題、これはまさに基本的には日朝の間で解決を図らなければいけない。もちろん国際的な支援、協力ということも必要でございますので、そういう意味での努力は行っておりますが、基本的には日朝の間での話し合いで解決を図らなければいけない。

 二月のときには残念ながら相当に原則論で終始したということはかねて御説明したとおりでございますけれども、今回はやはり具体的な解決を図る、そのためには北朝鮮側が今までの原則論、あるいは日本として同意が全くできないようなことを言い続けるようでは解決にはならないということで、お互いに真剣な議論、解決を目指しての真剣な議論を行ったということでございまして、そういう意味では、二月のときと相当雰囲気は違ってきている。

 非常に解決に向けての、お互い、北朝鮮側からも真剣な姿勢というのは見られたわけでございますけれども、まさに今委員御指摘のとおり、具体的な解決を図るために、これは今具体的な話し合いの内容を残念ながらここで申し上げることは控えさせていただくしかないわけでございますけれども、我々としては、家族会の方々、あるいは委員の今御指摘のさまざまな問題を踏まえて、まずはこの拉致問題の解決を図る。

 そして、核問題についても議論をいたしました。これはもちろん六者協議を通じてでございますけれども、北朝鮮側の積極的な対応を促す、そうしたことを含めて全体として日朝関係を前へ進めていきたい、そういう思いで話し合いをし、また真剣に先方も話し合いに応じてきた、今後この話し合いを継続していきたい、こういう状況でございます。

松原委員 今回、五月四日の会議で、その中身は今明らかにされていないわけでありますが、巷間、小泉総理大臣の北朝鮮訪問という問題がさまざまなメディアでも流れているわけでありますが、この小泉訪朝ということに関しては、この五月四日の会議では議論されたんでしょうか。

薮中政府参考人 先ほど御説明いたしましたとおり、まさに、小泉総理として、全体としてこの日朝関係、これを平壌宣言に沿って包括的な解決を目指してやっていく、そういう非常に強い御意向はお持ちでございますけれども、具体的に、五月の四日、五日の協議におきましては、まさにそのために必要な実質の問題についての話し合いを行っているということでございます。

 そして、今お問い合わせのございました総理御自身の訪朝があるのかどうかということについては、まさにさまざまの報道がございますけれども、総理御自身が言っておられます、あるいは官房長官も対外的に御説明になったと思いますけれども、何も決まっていない、まだ白紙である、そういう状況であるというふうに私どもは承知しております。

松原委員 そうすると、今の薮中さんのお話では、総理訪朝のためのというか総理訪朝の環境づくりの議論というのはこの四日の議論でなされた、しかし行くかどうかは決まっていない、こういう認識でよろしいですか。

薮中政府参考人 申し上げましたとおり、さまざまの報道がございますけれども、総理が訪朝されるかどうかというのはこれは全く決まっていないことでございまして、我々がやっておりますのは、そういうことよりは、むしろ実質の問題についてどうやって解決が図り得るのかということについての話し合いをやっているということでございます。

松原委員 総理訪朝がされる場合は、恐らく、この拉致問題、特に五人の御家族の八名という方々の日本に対する帰国ということが最大の焦点になっていくだろうと思っております。私は、総理の訪朝というのは極めて慎重にあるべきだというふうに個人的に思っております。

 冒頭申し上げたように、この拉致問題というのは非常に広く深く、どこまで広がるかわからない状況にある。例えば、特定失踪者の問題についても、それは拉致と認められていなくても、拉致の可能性は排除できない案件というのは私は多く存在していると思っております。そういう、日本から、少なくとも人道的にも許されない犯罪であります、誘拐行為であります。そしてまた、日本の国家主権を踏みにじる行為であります。

 こういった拉致された人たちに対しては、無条件の原状復帰、それは二十年たってしまっているケースもありますが、無条件の原状復帰をするというのは、これは日本の国の主権から見ても当然でありますし、人道的な、いわゆる情合いから見ても当たり前のことだというふうに思っております。そういったもの全体を解決することが拉致問題の解決であるということを私は冒頭申し上げた。恐らく川口外務大臣もそのことについては同じ認識だと思っております。同じ認識ですよね。ちょっと、では答弁してください。

川口国務大臣 今先生がお話しになられた点というのは、私もそうですし、恐らく日本の多くの人たちが共有をしている考え方であるというふうに思います。そして、この日本と北朝鮮の間の問題というのは、二国間という意味で拉致は非常に大きな問題でありますし、また国際社会全体にとって核の問題というのも非常に大きな問題であるということであると思います。

 ずっと我が国の政府として言っておりますように、この核の問題、拉致の問題、ミサイルの問題、そういったさまざまな問題を包括的に解決するということが重要であるというのが我が国の基本的な考え方であり、総理ももちろんそういった考え方を持っていらっしゃるということであります。

松原委員 私は、拉致の根本的解決は原状復帰だと。ただ、解決はできないんですよ、ある意味で。二十年前に時計の針は戻らないんだから。そのことは認識をしながら、もう今外務大臣はそう言ったんだから、そういうことですよ。それをきちっとやってもらう、これが解決であります。

 私は、日本の内閣総理大臣というのは、これは日本の外交上における恐らく最後の切り札になるはずであります、総理大臣より上の立場のリーダーシップを持つ行政の人間はいないわけでありますから。そういった意味では、総理大臣が行った段階というのは、すべてのこういった、もちろんそれはミサイルも核もありますよ、ミサイルも核もありますが、すべての、この拉致に関してもすべての問題の解決というのが当然なされる段階であるというのは、これは当然の認識だと思うんですが、これについていかがですか。

川口国務大臣 世界を眺め渡したときに、首脳外交というのは非常にしょっちゅう頻繁に行われているというふうに思っております。この北朝鮮とのかかわりの問題ということではなくて、一般論ということでまず申し上げたいと思いますけれども、総理大臣同士あるいは首脳同士の会談ということは、非常にどの国にとっても大きな意味を持つものでございますけれども、問題を最終的に解決した、するときに行われる首脳会談もございますし、あるいは問題の端緒、問題を掘り起こしてその第一歩を踏み出すときの首脳会談もある、あるいは途中で、それを前に進めるための首脳会談もある。一般論として、いろいろな形の首脳会談があるということは申し上げられると思います。

 北朝鮮との関係で、総理がどのようにこれをお考えかということについて、先ほど申しましたように、総理は、この問題については包括的な形で解決をしていくことが重要であるというお考えは持っていらっしゃるということでございますけれども、今、総理の訪朝につきまして、何か具体的に決定をされていることではないということでございます。

松原委員 ただいまの私の言っている質問に答えていただきたいわけでありますが、首脳外交ということでいうなら、次は、それは北朝鮮のトップが今度は日本に来る番ですよ。小泉さんはこの間行ったんだから。少なくとも、この外交上のさまざまな問題を包括的に解決するという見通しがない限りにおいて、私は行くなと言っているんじゃないんですよ。それは、そうはいっても時間との闘いだということは言っているんですよ。しかし、一つの積み荷があるとしたら、積み荷の一部だけ持っていくわけにはいきませんよ、全部を包括的にやるべきだということを私は申し上げているわけであります。

 薮中さん、現場の声をちょっと教えてください。

薮中政府参考人 お答え申し上げます。

 我々としても、拉致問題、それの全般的な解決に向けての道筋、そしてまた核問題、ミサイル問題、全体を含めて、どういう形で今この時点で物事を前へ進めるべきなのか、あるいは進めることが可能なのかということ、これはもちろん徹底した、そして最終的な解決ということも必要でございますし、また、委員御指摘のとおり、時間の問題もございます。そうした中で、今、現実に最大限行えることをやる、そういう努力をすべく、実質問題について引き続き努力していきたい、前へ進めるための努力を今積み重ねているというところでございます。

松原委員 これでこの拉致に関しての質問をきょうは終わりますが、大事なことは、総理大臣が、総理が北朝鮮に行くということは、そういう全体の解決の見通し、これを立てて行く、もしくは行ってそのことの結論をきちっと立てるということであって、極めてそれは慎重かつ積極的にやるべきだと私は思うんですよ、時間との闘いだから。このことを強く、ここには総理大臣はおられませんが、内閣の一員である、特に所管の川口外務大臣を通して申し上げたいと思います。

 次に、領土問題であります。

 領土問題については、昨今大変に、特に中国の船が日本の領海内に出没をしている、こういうふうな状況が伝わっているわけであります。

 五月の七日には、「中国船、「事前通報」なしに海洋調査 尖閣諸島沖」と。これは、沖縄県の尖閣諸島魚釣島北北西約六十三キロ、日本の排他的経済水域ですよね、ここで早朝、中国の海洋調査船「奮闘七号」というんですね、調査しているのを、これが第十一管区海上保安本部が見つけた。事前申請がないから、これに中止と退去を呼びかけた。外務省は同日、在京の中国大使館幹部を呼んで抗議し、操業の即時中止と再発防止を求めた。これは、先月下旬にも日中協議で中国側に再発防止を求めたばかりである。

 ところが、この無線の呼びかけに対し、この船、中国船が、調査船は、海洋調査活動をしていると答えた。これは、調査船が上海にある中国政府の地質鉱産部に所属している。調査船は一たん北上したが、午後三時ごろ南東に針路をとり、午後七時を過ぎて排他的経済水域内にとどまっている。これは、五月七日の夜の二十二時十七分のニュースに入っているわけであります。

 これは通告していないのでありますが、これについての何か説明できる方がおられたら、お願いいたします。

薮中政府参考人 お答え申し上げます。

 今まさに委員御指摘のとおり、五月の七日でございますけれども、中国の海洋調査船「奮闘七号」、これが七日の朝から八日にかけまして東シナ海の我が国の排他的経済水域内において、事前通報を行わずに海洋調査と思われる活動を継続しているということが確認された、これは事実でございます。

 まさに委員御指摘のとおり、あるいは御承知のとおり、この東シナ海の我が国排他的経済水域内でのこういう調査ということは、当然のことながら、相互事前通報の枠組みということを申し合わせてございまして、これに沿って事前通報が行われなければならないわけでございます。そしてまた、この制度ができまして以降は、今までこうした形でのことというのはほとんどなくなっておりましたけれども、今回改めて、事前通報をすべきにかかわらず、それをなくしてこうして入ってきたということが現実の問題としてございました。

 私、七日の朝でございますけれども、直ちに在京中国大使館の公使を招致いたしまして、強くこれについての抗議をし、かつ、直ちに是正措置、出ていくということの措置をとるように、そして当然、今委員御指摘のとおり、まさにこうしたことのないようにということで海洋協議を行ってきているわけでございますけれども、極めてそういう中で遺憾なことであるということの強い抗議をいたしました。

 結果的には、九日の未明に日中中間線の西側、中国側水域に出ていったというふうに承知しておりますけれども、今後こういう再発が起こらないよう、引き続き中国側に強く求めていく考えでございます。

松原委員 そういう薮中さんのお話でありますが、今これ、七日で九日ですから、悠々と日本の調査をして出ていった、こういうふうにも見えるわけであります。予定どおりの仕事を終えて、日本から退去しろと言われたけれども、一たん退去して再び戻ってきて、悠々とやって九日に出ていったんじゃないか、こういうふうに見ようによっては見られるわけであります。

 しかも、それを裏づけるように、御案内のとおり、五月の十日、同じく尖閣諸島魚釣島北西約二十キロ、中国漁船「ミンレンリョウ〇二五七」、これが海上保安本部の巡視船「りゅうきゅう」と接触した。これは案件は違いますけれども、同じように中国の船が平然と入ってきた。このときに、巡視船に近づいた。巡視船が接触を避けようと後退したのに間に合わず、巡視船の右船首と漁船の左船尾がこすれ、双方に十数本の筋状の傷ができたという。こういうものの損害賠償なんかどうなるのかわかりませんけれども、こういったことも含め、どうも本当に申し入れをしていることに対して中国がきちっとした対応をとっているのか。

 さらに、五月十一日、きょうの朝のニュースでもやっておりましたが、沖ノ鳥島、この沖ノ鳥島は、前にもここで私、薮中さんの答弁がありましたが、中国側は岩礁であると言って、大きな抗議を申し入れたということでありますが、沖ノ鳥島について、これはきょうの新聞ですよね。海上自衛隊第五航空群の対潜哨戒機P3Cは同日午前五時五十分、日本最南端の沖ノ鳥島北約六十キロの排他的経済水域の中で活動中の中国海洋調査船「向陽紅十四号」を発見。海自によると、これも事前通告なしに活動して、日本の排他的経済水域内で事前通告なしに活動した調査船はことし十二件目、こういうことで、これまた一つあったと。

 相次いで強い抗議をしたというのは、それは当然やるべきことでありますが、その抗議が、現実にこういう状況というのは、これはどういうふうに我々は考えればいいのか、ちょっと御答弁いただきたい。

薮中政府参考人 まさに委員御指摘のとおりだと思います。こうして、こういうことが繰り返される、そのたびに抗議をしている。実際に効果が上がっているのかどうか、そういう思いは私どもも非常に強く持っているところでございます。

 まさに、そのためにどうしたらいいのかということで、日中間できちんとした海洋協議の場を設けて、それでそこで徹底した議論も行う。さらには機会あるごとに、もちろん、一件一件、こういうことがあってはならないわけでございますけれども、時を置かず瞬発的に相手に、もちろん高いレベルでの抗議を申し込む。そしてさらには、やはり閣僚レベルでの会合等々におきましても必ずこの問題を取り上げる。この繰り返しの、我々としての一貫した非常に強い姿勢というのをとって、先方にこの是正措置を求めていく。

 まさに、先ほど申し上げましたように、そうした結果として、東シナ海においての我が国の排他的経済水域、あのときにはこうした相互事前通報の枠組みというのが、あのときもその前に随分違反操業がございました。それに対して我が方から強く働きかけて、こうした事前通報の枠組みができたわけでございますけれども、それ以降は、ここにおいては、東シナ海においては基本的に違反がなかった。それ以外の水域についてさまざまな問題が今もあるわけでございますけれども、これについてもきちんとした枠組みをつくることを含めて、これから引き続き中国側に強く当たっていく。これは、非常に強い一貫した姿勢が必要だろうというふうに考えております。

松原委員 例えば、沖ノ鳥島を岩礁であるというふうに言う中国の主張、そしてそこにこういうふうな調査船が入ってくる、こういう流れというのは、実はもう一つの一連の流れの中の非常に戦略的な動きがあるような気もしないではない。これは岩礁だと言ってその周辺をやる、ほかのところもこれはジャブみたいなものを出してくる。それに対して抗議をする。それは抗議をするということだけではなくて、やはりそれなりの、日本の領海内ということを考えるならば、私は、しかるべき実力行使というか、措置をとるべきだというふうなことを申し上げておきたいと思います。

 時間がないので、それと関連して言いますが、尖閣諸島周辺の海域で、油田の試掘が、これが帝国石油、うるま資源開発などに試掘権があるのに認められていない、こういうふうな話があるわけであります。

 この試掘権の話を申し上げますと、東シナ海に眠る石油は推定七十二億トン、こういうふうに言われている。これは欧州の北海油田に匹敵する。大半が日中間の日本側にあるともされている。しかしながら、ここにおいて中国の船が資源調査を一九九五年以来本格化させ、三十そうが日本側に入ったりしている。しかも、日本側は両国合意に沿った科学的調査であればということを言っているわけでありますが、実態としては事実上資源調査である。外務省は科学的調査か資源調査かの区別は困難と黙認を続けている。こういうふうな報道もなされているわけであります。

 そして、杏林大学の平松茂雄教授は、中国は日本側での石油資源を確認し、日中共同開発を提案する腹づもりで、日本が拒否すれば独自開発に乗り出すのではないかと言っている。つまり、日本の資源が、日本のいわゆる領海内のこういった資源に関して、こういうふうな状況も今起こっている。

 どうも、憶測ですが、今言った日本の帝国石油やうるま資源開発に試掘を認めないというのは、中国側に対して刺激してはいけないから認めないのではないかという議論もあるんですが、これについてちょっと答弁をいただけますか。簡単にお願いします、時間がありませんから。

塚本政府参考人 お答え申し上げます。

 先生今御質問のございました、尖閣諸島周辺の東シナ海域におきまして、石油、天然ガス等開発のための鉱業権の出願がなされておりますが、この海域におきましては、我が国と中国との間で排他的経済水域及び大陸棚における境界画定がいまだなされておりません。海洋法の問題に関する日中協議等の場におきまして、境界線を画定するための協議が継続している、御案内のところでございます。

 このような場合、国連海洋法条約第七十四条の第三項及び八十三条第三項によれば、境界画定が行われるまでの経過的期間においては、関係国は、「最終的な合意への到達を危うくし又は妨げないためにあらゆる努力を払う。」こととされております。

 したがいまして、我が国といたしましては、条約を遵守する観点から、日中双方が自国の排他的経済水域及び大陸棚として主張している東シナ海の当該海域におきまして、日中いずれかが一方的に資源開発を行うことは適当ではないと判断し、鉱業権出願の許可または不許可の処分を留保しているというところでございます。

松原委員 日本が留保しても、中国が事実上それをどんどん進める方向で動いているというふうな状況に今なっているんじゃないかと思うんですよ。では、これに関して、日本は留保しているから、あんたも少しやめなさいよという議論をしているんですか。

塚本政府参考人 まず、今お答え申し上げましたように、日中間の協議を通じまして、まず境界画定を行い、その上で対応していくということが基本であろうかと思っております。

 以上でございます。

松原委員 ちょっと、これもとにかく、何か中国が出てくると、どちらかというと弱腰になってしまう、すべてのものが。こういうことでは私はもうどうしようもないと思うんですよ、日本の国益を考えても、主権を考えても。その辺はきちっと、もう時間がないからこれ以上これは言いませんが、やっていただかないと困る。もう一回、次の質問のときに私はこれを取り上げますから、よろしくお願いします。

 それから最後に、魚釣島のヘリポート問題でありますが、これはかつて沖縄開発庁がつくったということでありますが、これが今、実質上、使用不可能になっているということであります。その現状の御説明をいただきたいことと、いわゆる、本来、魚釣島にヘリポートをつくったというのは魚釣島の実効支配を確保するべくつくったんだと思うので、なぜつくったかの目的、これもお話しいただきたい。

 そして、今後この魚釣島に、特にこういう尖閣諸島の不法侵入者七人の上陸等を受けて、やはり日本の領土であるということをはっきりさせるためにも、最低限、先般の議論で私は自衛隊を駐屯させるべきだと言いましたが、この魚釣島にヘリポートぐらいつくらなきゃしようがないだろうと思うんですが、この三点をお答えいただいて、私の質問を終わります。

武田政府参考人 私の方から、現状とそれから設置目的についてお答えを申し上げます。

 御指摘の施設でございますが、昭和五十四年に旧沖縄開発庁が尖閣諸島の利用開発可能調査という調査を実施した際に、魚釣島にヘリコプター等の仮発着施設をつくったということでございまして、目的といたしましては、あくまでも調査目的でございます。

 なお、現状については、現在内閣府として使用しておりませんので把握しておりませんが、公式の情報ではございませんけれども、海上保安庁が過去に上空から見た印象としては相当傷んでおるという状況だというふうに聞いております。

猪俣政府参考人 お答えいたします。

 警備のためにという趣旨だろうと思いますけれども、ヘリポートを構築すべきじゃないかという御指摘だと思います。

 この御指摘につきましては、先般の中国人の不正上陸事件というのが背景にあろうかと思いますが、この事案につきましては、政府としても非常に遺憾だと考えてございます。ただ、尖閣諸島は我が国の固有の領土であることというのは歴史上も国際法上も疑いのないところでございまして、先般の事例におきましても、当然のことながら、我が国の法令違反ということで処理したわけでございます。

 ただ、今ヘリポートを再建すべきとの御指摘がございましたが、再発防止策につきましては、先般起きました不法上陸事案の状況をよく検証しまして、どういう形で警戒警備をしていくべきかということを再検討しているところでございます。

松原委員 時間ですから終わりますが、こういうことに受け身だけではなくて、積極的に領土問題を含め国益をどうするのか、主権をどうするのかということで、今言ったヘリポートの問題もそうですよ、それからいわゆる試掘権の問題もそうですよ、日本だけが自重していてもしようがないわけですよ。それから、何度抗議してもどんどんやってくる、こういったさまざまな事前合意のない船の問題もそうですよ。拉致問題も同じですよ。こういった問題について、きちっとやはり日本の国益を代弁して対応していただきたい。そのために全力で取り組むことをお願い申し上げて、私の質問を終わります。

 以上です。

米澤委員長 次に、武正公一君。

武正委員 民主党の武正公一です。二条約についての質疑を行わせていただきます。

 今、松原委員とのやりとりの中で、また拉致問題の定義について外務大臣から御発言があったんですが、再度確認をしたいんですが、私もこの委員会で大臣と何度か拉致問題の定義というか、やりとりがあったと思うんですが、拉致問題には、当然八名の方の帰国、そして十名の生存の確認、そしてそのほか三百名とも言われる特定失踪者、こういった方々のやはり生存の確認等ということで、ここまで含まれるんだというやりとりがあったと思うんですが、再度その点を確認したいと思います。

川口国務大臣 これは、先ほど申し上げたとおりでございますけれども、まず既に帰国された五名の方、五名の被害者の方の北朝鮮にいる御家族の帰国、これを実現すること、そして安否が不明の拉致の被害者の方々、これについての事実、真相の確認ということが非常に重要であると考えております。それで、先ほど御質問がありましたけれども、その安否あるいはその真相の確認の結果、生存をしていらっしゃる方々については、もちろんこれは御帰国をいただくということであるということは当然であります。

 それから、特定失踪者のことでございますけれども、これについてはいろいろな情報交換等をやっておりますが、十五名の方々に限定をすることなく、広くいろいろな情報を集めております。そして、今後、新たなその中から拉致の認定というのがある場合、これについては、その方々も取り上げていきます、真相究明及び生存が確認をされた方々について帰ってきていただくということも含めましてですけれども、ということはもう既に北朝鮮側に言ってある、そういうことでございます。

武正委員 ということは、今御答弁いただいたことを含めて拉致問題というふうにとらえているということでよろしいでしょうか。

川口国務大臣 ということで結構でございます。ですから、特定失踪者については、その中で拉致ということが認定をされた場合にはその中に含まれる、そういうことでございます。

武正委員 含まれないと拉致問題には含まれないんですか。認定されないと拉致問題に含まれないということですか。

川口国務大臣 これは、警察庁におかれて拉致の認定をやっていらっしゃるということであるわけでございまして、拉致という認定がなされれば当然にその中に含めて考えていくということでございますし、それ以前の問題として、情報の交換等々を今やっているわけでございます。これは関係の国ともやっておりますし、それから脱北者の方々から情報をとるということもやっているわけでして、そういった努力ということは、もちろん拉致の認定につながる重要なことでございますから、それはやっているということでございます。

武正委員 私は、認定をされる前の、今御答弁いただいた最初の御答弁を含めて拉致問題というふうに考えるべきだということを、やりとりをこの外務委員会でさせていただいていたと思います。そして、そういった旨の答弁が外務大臣からあったというふうに私は認識していたので、ちょっと前言とまた違う御答弁なのかなというふうに今受けとめたところでございます。

 私は、認定をされなくても、当然、その認定のためのいろいろな作業中、あるいは、この間も特定失踪者の家族の方のお話も伺いました。田口八重子さんが川口でという、その近辺に居住された方々が多数やはり失踪されている、こういったことも御家族の方から聞いたわけでございまして、特定失踪者、認定されなくても拉致問題に含まれている、含まれていくべきであるというふうに思います。再度この点はいかがでしょうか。

川口国務大臣 今、これは外務省の方でお答えをすることが適切かどうかわかりませんけれども、外務省としては、いろいろな、脱北者の方ですとか関係の方に働きかけて情報の収集をやっているわけでございまして、そういったことについて警察とも連携を密にとっております。

 そういった中で拉致ということの認定があるということであれば、それは、今まで十五名の方について行っているのと同様に、拉致の被害者の方であるということで対応をしていくということを申し上げているわけでございまして、拉致の定義いかんということになるのかもしれませんが、そういったことにつながる情報の交換なり、情報を求めるなり、収集なり、それを警察庁とシェアをするということであり、それはそれぞれ非常に重要な仕事であるというふうに思っているということでございます。

武正委員 ともすると、拉致問題の解決が日朝国交正常化交渉の前提である、こういった御答弁があったと思いますが、そうすると、この拉致問題が、要は拉致の認定がふえていくことによって日朝国交正常化交渉に入れない、ハードルが高くなってしまう、こういったことが特定失踪者問題の解決をおくらす懸念というものがやはりあるというふうに思うんですが、私は、そういったことはあってはならない。

 広く拉致問題ということであれば、これだけ特定失踪者がいて、しかも北朝鮮との間に国交がない中に拉致の認定をしていくという大変困難な作業を警察庁と外務省が協力しながら進めていくといっても、お相手の国が国交がない国であります。そういった国との間での拉致されたという認定、これが大変極めて困難な状況にあるといった中で、私は、拉致問題については特定失踪者まで含めて考えるべきであるというふうに思うところでございます。

 さて、条約の方に移らせていただきますが、まず、KEDOの現状、これについて御答弁をいただけますでしょうか。

川口国務大臣 KEDOの現状でございますけれども、これは、KEDOの軽水炉事業が、北朝鮮がとってきた一連の言動によりまして、当時の状況下において継続をするということが適当ではないというふうな判断がございました。したがいまして、KEDOの理事会の決定によりまして、昨年の十二月の一日から、これについては一年間の停止の措置がとられております。

 政府として、この事業の将来につきましては、今後とも引き続き他の理事会のメンバー、これは韓国であったり、韓国、日本、EU、そしてアメリカということでございますが、緊密に連携をいたしまして協議をしていく、そのような考えでおります。

武正委員 KEDOについては、一年間停止というんですか、再開について停止をしようということになっていますよね。この見通しというのは、報道では、米国が当然応じないということが言われているわけですけれども、これは、そうすると、KEDO、軽水炉の工事再開というのは不可能というふうに、現状、見てよろしいんでしょうか。

川口国務大臣 今後のことにつきまして、これは一年の期間が終了する前に他の理事国のメンバーの方々と御相談をして決めるということになっているわけでございまして、その結果がどのようなことになるかということについては、今必ずしもわかっていないということでございます。

 政府としての考え方ということで申し上げれば、これは、そのときに他の国々と十分に意見の交換をした上で決定をしていくということであると思います。

武正委員 次に、ITUの条約でありますけれども、これは総務省に聞くのがいいのかもしれませんけれども、今、政府は電子政府化ということを進めておられます。

 たしか、このITUの事務局長ですか、内海さんも日本から出ておられると。これは、国際的な電波の、それこそ電波帯あるいはそういった調整なども行われる大変大事な機関というふうに認識しておりますが、このITUの条約に関連をしてということになりましょうが、政府は電子政府化を進めておられます。ただ、それが、国連あるいはアクセンチュア等の評価では、国連で十五位、アクセンチュアでは十七位といった評価がされているわけでございます。私は、やはり日本の今の電子政府化が、どうしてもサプライサイド、供給側の論理に立っている懸念というものを感じておりまして、ユーザーサイド、国民サイドの視点というものがやはり必要である。これが、順位が、評価が低い理由ではないかというふうに思っております。

 このITUの条約に関連をして、この点、日本の電子政府化、国民サイド、ユーザーサイドの視点というものが必要と考えますが、この点、外務大臣、いかがでしょうか。

川口国務大臣 私が、必ずしもこの分野の担当ではございませんので、お答えするのが適切かどうかよくわかりませんけれども、これは、政府としては、今、日本が電子政府化に非常に力を入れているという現状があるわけでございまして、かなりそれなりに進んでいる、一定の成果を上げているというふうに思っております。

 例えば、外務省として進めていることで申し上げますと、在留届については、これはインターネットで届けられるということでございまして、これは、既に昨年の四月から全部の在外公館で始めております。また、国内での旅券発給申請、これのオンライン化をするということで、システムの開発や実証実験等に現在着手をしているという状況であります。また、在留邦人の方にいろいろなメールを、安全情報も含めてお届けをするということは必要ですので、そういった配信サービスということも、現在、六十公館以上で既に実施をしているということでございます。

 あるいは、そういった予算の執行という意味で、インターネットを使った電子入札ということも、これはことしの二月から開始をしているということでございます。

 あと、外務省のタウンミーティングをやるときにも、海外と結んで内容を充実化させるというようなこともやっておりまして、外務省としても、さまざまな取り組みをやっているということでございます。

 今、日本の電子政府化が、急速な勢いで変わっていて、変化をしているという状況でございますので、おっしゃった十五位あるいは十八位という評価がどの時点での現状に基づいての評価かということについて私はよく存じませんけれども、基本的な考え方としては、ユーザーあっての電子政府ですから、これは、できるだけユーザーの立場に立って、やりやすい、使いやすい、意味のあるものにしていかなければいけないということは当然であると思います。先ほど申しました外務省における電子政府化、これを進める中で、私どもとしては、そういったユーザーサイドの視点、これを非常に重要視いたしております。

武正委員 既に同僚委員から、九月十一日テロのときに、日本の在米大使館に問い合わせても、例えば、名前を聞かなかった、あるいは電話番号を聞かなかった、こういった指摘も既にされております。電子政府化の前提が、今言ったユーザーサイド、すなわち国民サイドの視点ということが大事であるということは、ぜひ外務省としてのお取り組みを忘れないでいただきたいというふうに思います。

 さて、先ほど理事会で実は米澤委員長から指摘があったことをここで御紹介させていただきたいと思うんですが、すなわち、全権委員会議からの条約名でございますが、この条約名、何でこんなに長いんだ、これは大変だよと、読むのも、あるいは我々も理解するのも。今回の二条約のうちのもう一つの条約は七行にわたっているわけでございまして、私は、欧米の議会等で、果たして、このようにそのまま条約名を訳して、それぞれの母国語に訳して、そしてそれを議会でも同じようにやっているのかどうか、これはぜひまたお聞きをしたいというふうに思っておりますが、ここで、先ほども松原委員の質疑の中でも出てきました、留保という言葉でございます。

 外交は、政府、内閣の専権事項、七十三条二号。そして、七十三条三号、「条約を締結すること。但し、事前に、時宜によつては事後に、国会の承認を経ることを必要とする。」この国会と条約との関係ということで、私は、条約の審議というものが、それこそ明治期にあっては、不平等条約の解消ということで、政府を挙げて取り組んできた経緯がある。

 ただ、私も外務委員会にこの通常国会から所属していますが、ともすると、条約の審議というものが非常におざなりになる懸念がある。というのは、条約というのは非常に多分野にまたがっていますし、非常に複雑な内容があるわけで、それをこの外務委員会で短時間で審議が、果たして本当にいいのかどうか。

 というのは、条約を締結することによって国内法の整備をしなきゃいけない。そうすると、国内の立法に大変な影響がある条約の審議が、その審議時間いかに、あるいは審議の体制いかに、そしてなおかつ留保ということが、実は、この国会の中で、留保を削ったり、あるいは留保について問題があるんではないかということをたとえ言ったとしても、それは影響を与えないんだ、こういったことは既に外務省からお聞きをしているところでございます。

 先ほど触れましたような、条約の審議に当たっての、条約の案件の長さも含めて、我が国国会における条約の審議のあり方、そしてまた外務省あるいは政府と国会との関係における条約というもの、今、大変大事な視点を先ほど理事会でも委員長から提起があったのかなというふうに私は思っておりまして、この点、外務大臣、名前のことも含めてお答えいただければ結構でございますが、私は、この留保ということに限って言えば、やはり国会で留保について影響を与えることができるべきではないかというふうに思うんですが、いかがでしょうか。

川口国務大臣 まず、条約の名前の長さでございますけれども、長いだけではなくて括弧がたくさんついておりまして、委員長もお読みになるのが大変でいらっしゃると思いますし、私も、提案理由説明、趣旨説明等をさせていただきますときに、どうしてこう長いんだろうか、括弧はどこまでかかるんだろうかとしょっちゅう考えながら読んでいるということがございまして、なかなかわかりにくいということは全くおっしゃるとおりだろうと思います。

 それで、ただ、そういった形であらわしている条約の名前というのは、これは正式の名前、国際的にも正式の名前であるということでございまして、それは残念ながら変わらないということですが、ほかの国が例えば条約を呼ぶときの名前を簡略化して国会等にお諮りをしているかどうか、それについてはちょっと調べておりませんのでわかりませんが、今後調べてみたいと思います、一つの工夫ができる余地があるのかもしれませんし。ただ、正式な名前は正式な名前としてどこかにきちんと書いておく必要はあるだろうというふうに思っております。

 それから、条約審議のあり方についてお話ございまして、これも、むしろ政府の立場として申し上げるということよりは、条約の審議をどのようになさるかという国会の中のお考えということがまず第一であろうかというふうに思います。

 条約の締結というのは内閣がやるということでございまして、国会においては、その内閣の締結した条約について御承認をいただくということであるわけでございまして、そういった、どのような形で承認の作業を行うかということをどう考えるかということにまさにかかってくるということで、いろいろな御意見はおありになろうかというふうに思います。

武正委員 先ほど取り上げたように、七十三条三号は、「条約を締結すること。」は内閣に与えられていると。「但し、事前に、時宜によつては事後に、国会の承認を経ることを必要とする。」と、「事前に、」というところが先に書かれておりますので、私は、条約の留保について国会がやはり影響を与えることができるということが、この憲法からいっても正しいのではないかというふうに思っておりますが、この点はいかがでしょうか。

川口国務大臣 先ほど申しましたように、条約の締結というのは行政府が行う、行政府の権限であるということで、その承認が事前あるいは事後ということであるわけですけれども、どういう条約を結ぶかということについて、留保があるかどうかということも含めて、これは行政府が決めるということであると思います。それで、国会は、その条約の締結について承認をするか、あるいはしないかということを判断するということが国会の役割であるというふうに思います。

 それで、その留保についてでございますけれども、留保をつける場合に二つの考え方をしております。手続として二つのケースがありまして、一つは、条約の規定に基づかないで留保を付する場合というのと、それからもう一つ、条約の規定に基づいて留保を行うという二つの場合があります。この二つについて、異なる扱いをしているということでございます。

 まず、条約の留保に関する規定に基づかないで留保を行う場合につきまして、これは政府は従来から留保を付してその条約を締結することについて国会から御承認をいただくということにいたしております。これはなぜかといいますと、留保を付する結果、条約の特定の適用関係が影響を受けるということになる、適用関係が変更される、あるいは排除をされるということになるわけでございまして、そのような留保を付して条約全体を締結することについて、国会の御承認をいただくということが適切であるというふうに考えるということが理由でございます。

 それから、もう一つのケース、ある条約について、その条約の規定によって留保を行うということでございますけれども、その場合には、その理由、内容についてできる限り審議の際に国会に説明をさせていただくということにいたしておりますけれども、そのことについて国会から御承認をいただくということは、そういう手続はとっていないわけです。

 これはなぜかということですけれども、国会に対しまして、その条約について、留保に関する規定があるということを前提に御承認をいただくということであって、その上で留保を付すということであるわけですから、国会の御承認をいただいた条約の全体の枠組みの範囲内で政府が留保を付すということは、言ってみますと条約の実施の態様であって、これは行政府の権限に属する事項であるということでございますので、行政府限りで行うことができるということです。

 したがって、考え方として整理をしますと、そもそも条約に留保を付することができるという事項がついていて、それに基づいて留保を付する場合と、そういうことがなくて、条約の規定に基づかないで留保を行う場合と、ケースが違うということでして、留保の条項がなくて留保を行う場合には、全部を国会の承認の対象といたしますし、留保ということが条約自体に入っている場合、それは、留保をする内容についてはもちろん御説明をできるだけいただきますけれども、それは御承認の対象ではない、行政府の権限である、そういうことで考えております。

武正委員 この間、サイバー条約のとき、条約の中に留保、留保がいっぱいあったんですよ。私が、条約局長ですか、これはそれぞれ一つずつ国会で、日本が留保するか、認めるかどうか、できないんですかと。今外務大臣の御答弁のように、いや、これは留保すべきだ、あるいはこれは留保すべきでないとか、そういったことは国会で幾ら言われても、それは我々の仕事でありますからといったことがあったものですから、今回このことを取り上げたわけでございます。

 四月二十二日に憲法調査会で齊藤参考人という方が最高法規に関する小委員会に来られて、このときに条約と国内法あるいは条約と憲法、どっちが優越なのか、こういった議論をいたしました。

 私は、条約の審議で、過日のサイバー条約のときの賛成討論の中でも指摘したように、サイバー条約の国会での承認によって、同時並行ですが、関係の法案がたくさん出ている。条約を署名、批准して、そして国会の承認と同時にいろいろな法律を変えなければならない。ですから、条約の影響というのは、非常に国内法、ある面、ですから条約は国内法に優越なのかもしれないけれども、そのときには条件があると。

 すなわち、政府が国内法を整備したいものは条約を署名、批准する。あるいは、国内法、まだ整備は早いな、あるいはしたくないな、特に、これはILO関係八十三本あるいは人権関係三十本といったものが実は未署名であるといったことも含めて、政府の恣意的な形で条約の署名、批准がなされて、それによって国内法が影響を受ける。ということは、私はやはり立法権の制約をかなり条約の署名、批准というものは課してくるということがあるというふうに思います。

 そういった意味で、齊藤参考人からこういった指摘に対してこのような答弁があります。ちょっと長いですが、読みます。

 ただいまの、条約の承認の際に留保を国会で新たにつける、あるいは政府の原案にある留保を削るといったようなことが可能かということでございますけれども、従来は確かに御指摘のように、政府見解としては、国会が留保を付したり、留保を外したり、あるいは修正をつけ加えることはできないという立場をとっておりましたが、これは、国会の立法府としての権限を考えますと、必ずしも正しくないというふうに考えられます。

  かつての二国間条約のように、政府が相手国と交渉してきまして条文を詰めてきて、それで国会に承認を諮っているという場合は、国会で留保を新たにふやしましたり修正をいたしましたりしますと、相手国とまた一から交渉をし直すということになってしまいますので、こういった場合に留保や修正ができないということは一つ理由があり得ますけれども、例えば、既に国際会議等で文書がつくられている多国間条約の場合、これは、日本国が留保をつけるとかなんとかということによって条約の本文自体が変更されるということではありませんので、実際にその留保を付すことによって、まさに国内で法律に優位する効力を持って適用される規範の範囲、あるいは適用される規範の内容といったものが変化を来たすわけで、実質的には立法にかかわる問題かと考えられます。

  こういったことについて、つまり、御指摘のような、留保をふやす、あるいは、政府が留保しようと提案しているところについて、留保せずに国内法の整備を図るべきではないかというふうに提案するというようなことは、国会の権限の範囲内として考えられるというふうに思います。

こういった参考人の答弁も憲法調査会の小委員会であったんです。

 この齊藤参考人の意見、私はやはり、バイの条約と多国間の条約は全くケースが違う、この参考人の指摘、先ほどのサイバー条約がまさにそれに当たるわけなんですが、そういった意味では、この留保について国会が影響を与えられないといった政府の見解は、私は、少なくとも多国間条約、しかもその中に留保がいっぱい込められた条約を政府が国会に提出する場合には、どの留保を認めるべきであり、あるいはどの留保を認めるべきではない、こういったことが国会が影響を与えられてしかるべきというふうに考えますが、この齊藤参考人の答弁を経て、外務大臣はどのようにお考えになりますか、御所見を伺います。

川口国務大臣 大変に難しい御質問でございまして、失礼をいたしました。

 申し上げることは実は同じことでございますけれども、政府として、行政府として国会にお願いをするということは、こういった種類の条約を結びたいということをお願いするという、その承認をお願いするということであるわけです。

 それで、もちろん、どの条項を留保する留保しないということによって、これはマルチの条約を考えましたときに、それの及ぶ影響あるいはその適用されることというのは変わってくるということはそのとおりであるわけですけれども、それについては、それは国内法で、例えば、その条約の結果として、国内法での議論が、変更が必要になるということであれば、それはまた国会で国内法の議論をしていただくわけですから、そこで国会の御議論というのはあるわけでございますね。そこで、そういうことについてできるかできないかという御議論が当然にあるわけで、それが担保ができなければ当然にその承認はできないということにつながっていくことになるであろうというふうに思います。

 どのような、そもそも、留保をするということが考えられている、要するに留保条項が条約の中についている、そういう条約であれば、それはどの部分について留保をするかしないかということは、これはその政府が判断をするということでございますが、その結果として国内法に何らかの影響が及ぶということであれば、それは国内法の世界で国会が議論をなさっていただく、そういうことであるかと思います。

武正委員 私が言ったのは、条約に留保がついて、この国会が条約の審議に影響を与えられないと国内法はそれでそのままもう法律が整備されていってしまうんですよ。ですから、条約がやはり国会、国内法に優越的な地位があるんですね。ですから、私は、国内法の審議の中でやってくださいという今大臣の御答弁でしたが、条約の審議の中で、特にこの間のサイバー条約のように、あれだけたくさんの留保条項が条約にちりばめられている。それを、では国内、この国会で、この条約は、ああ、この留保は認めよう、認めない、それが全体のサイバー条約には影響を与えないわけです。

 サイバー条約には既にもう全部留保がつけられていて、それをやるかやらないかは各国にその判断がゆだねられているわけです。それが国内法に対して影響を与えるわけですから、私は、この条約の審議の中で、その留保について、ではこれは日本としてやるべきだ、やらないべきだ、まず条約の審議でしっかりと国会が影響を与えられる、これがやはり国会の、先ほどの齊藤参考人のように、立法府としてのやはり権限であるということを指摘をさせていただきたいと思います。

 これは先ほども指摘をした、この条約名の国会での審議のあり方、これは各国の状況も大臣から調べてみたいと。これは、ぜひ委員会に御報告をお願いしたい、これは委員長にお願いしたいと思います。

米澤委員長 後刻協議して、それなりに処置します。

武正委員 ありがとうございます。

 それでは、もう時間も限られておりますので次に移らせていただきますが、この四月二十二日、内閣記者会とのインタビューで首相が、イラク復興支援について、より国連の関与を強め、国際社会が協力できる形に米国が努力するよう働きかけていくと強調した。いわゆるブッシュ発言から、米国主導色を薄めるというブッシュさんの姿勢を受けてこのような発言が出てきたというふうに思うわけではございますが、やはりこれまで米国中心あるいは日米同盟、国際協調といったことでは日米同盟重視といった首相の姿勢がここで変わったのかなというふうに思うわけでございます。

 川口外務大臣からも同様の発言が出ていたように記憶をしておりますが、この点、私は、路線の変更なのかなと。たしかこの場でも、川口大臣の外交姿勢を聞かれたときに、日米同盟そして国際協調、そういった順番で答えられたというふうに記憶もしておりますが、この小泉首相の発言はそういったことであるのかどうか、川口外務大臣の御所見を伺います。

川口国務大臣 これは決して路線の変更という形でとらえられる話ではないと私は思います。国連の役割が重要であるということについては、これは我が国は、武力行使が昨年行われる前から、一昨年の時点からそういうことは既に行ってきております。いろいろな働きかけを一昨年の十一月、秋ぐらいもやったわけでございます。

 したがって、国連決議についても、あればあった方がいい、あることが望ましい、あれば一番いいというような、いろいろなことも申し上げてきているわけでして、それは同じ考え方をしてきているということであって、小泉総理が言われたことも、そういった考え方をあらわされたということであります。

 また、そういうことについて国連の関与が大きいことが大事であるということについても、小泉総理も、あるいは私も、あるいはほかの人間も、ありとあらゆる機会といいますかいろいろな機会をとらえて米国にも国際社会にも伝えてきているわけでございまして、基本的に同じ流れの話と御理解をいただきたいと思います。

武正委員 そこで、最後になりますが、平成十六年度予算案、これは外務省の提出資料でございますが、国連の機能強化、ちょっと、項目はもうちょっと長い言葉だったと思いますが、の予算が、前年度比約三〇%減といった予算が出されております。

 私は、この予算一つをとっても、国連軽視といったことを裏づけるものではないかなというふうに思っておりまして、やはりこれまでの日米同盟重視からこの四月の二十二日の内閣記者会をもって、急遽、国連重視といったことを、暫定、イラクへの政権移譲に関して国連中心でといったところに出てきているのかなというふうに思いますが。

 この予算が削減されていること、そしてまたこれが、毎年同じような項目があればこれも比較のしようがあるんですが、毎年外務省さんが提出される資料は、予算のくくり方、グルーピングが変わってしまうので比較ができないといったこともあります。私は、国会に対する説明責任からいっても、経年でその変化が読めるようなそんな資料もぜひ出していただきたい、このことを、要望も含めて、外務大臣、今年度予算が三〇%弱減ったことも含めて、この二点、いかがでしょうか。

川口国務大臣 国連の予算をもっとふやしていきたいというのは私どもの思いでございまして、可能な限りそうしたいというふうに思いますが、なかなか全体、財政状況の中で難しいということも一つありますが、二七%減ったというのは、そういった一般的な話と若干異なる話でございまして、この項目、これは国連等国際機関の機能強化と意思決定過程への積極的な関与という項目の中で二七%これが減っているということですが、これの大部分というのは国際機関職員派遣信託基金拠出金、すなわち若い日本人を国際機関に派遣するというそのための費用であります。これが十六年度において二九%減額をいたしました。

 それがなぜかということですが、これは、円高がございまして、円高に起因をしたもの。それから、一部の若手の職員が正規の職員になったということでここから外れたということがありまして減額要求をしたということでありまして、そういう非常に特殊な、具体的な要因に基づくものでございます。

 実際、この基金への拠出を重視しているということについては、これは全く変わりはございませんし、邦人の職員もふやしていきたいというふうに思っております。

 それから、項目がわかりにくいじゃないかと。これも一つおっしゃることも理解できますけれども、同時に、我々がなぜそういうことをしているかということを申し上げたいんですが、やはり外交の予算というのは、どういう外交政策が中心にあって今我々は考えているんだということをまずお示しして、その外交目的、それを達成するためにこういった予算という形で予算を御理解いただきたいというふうに考えているわけでございます。

 何が外交の重点的なことなのかというのは、時の流れによってそれは変わってくるわけで、したがって、予算を要求するときに、我々の認識としてこれが重要であって、これにこれぐらいという形でお出しをしているということで、そういう意味では外交政策と予算の関連は非常にわかりよくなっていると思いますけれども、その反面で、おっしゃるように継続性について難しいということもあるかと思います。

 ということがございますので、その継続性の部分については、例えばODAですとか、それから外交実施体制というもう決まったものでございますね、そういうことについては、各年ごとに比較ができるような形で別途資料もおつくりをして、お出しをしているということでございます。

武正委員 以上で終わります。ありがとうございました。

米澤委員長 次に、川内博史君。

川内委員 民主党の川内でございます。委員長や各党の理事の先生方のお許しをいただいて、この外務委員会で質疑をさせていただきます。心から感謝を申し上げます。

 本日、条約の審議ということでございますので、まず条約のことを少しだけ聞かせていただきたいというふうに思います。

 IAEAの方を聞かせていただきたいんですけれども、このIAEAの体制、全体像。本部のウィーンに二千二百人ぐらいの職員の方がいらっしゃるということなんですけれども、二千二百人の中に査察官が何人いらっしゃるのか、また、その査察官のうち日本担当の人が何人いるのか、そしてまた日本に常駐する査察官の方が何人いらっしゃるのか。そしてまた、根本的な疑問で、日本はなぜIAEAの査察の対象になっているんだろうと私は思ったりしたんですけれども、手短にお答えください。

天野政府参考人 お答えいたします。

 IAEAの職員二千二百名中、IAEAの査察官の総数は三百二十六名でございます。そのうち、日本に駐在しているIAEAの査察官は十一名でございます。

 ただ、この十一名の査察官は、日本を専門に査察しているわけではございませんで、周辺の国を査察することもございます。また、日本に駐在している以外の査察官、本部に駐在している査察官が日本に来て査察することもございます。

 次に、なぜ日本はIAEAの査察を受けているかという御質問でございますけれども、我が国は、非核兵器国として、核兵器不拡散条約、NPTを一九七六年に締結いたしました。この条約上、非核兵器国である締約国は、原子力が平和的利用から核兵器その他の核爆発装置に転用されることを防止するために、IAEAと保障措置協定を締結し、保障措置を受ける義務を負っております。この義務に従いまして、我が国はIAEAとの間で一九七七年に保障措置協定を締結し、保障措置協定に基づいて保障措置を受け入れ、査察を受けているわけでございます。

川内委員 ちょっと一点確認をさせていただきたいんですが、私が読んだ物の本によれば、このIAEAの対日査察官は百人ぐらいいるというふうに書いてあったんですけれども、今、御答弁では常駐は十一名。それで、この人たちは、別に日本だけを査察するわけではなくて、周辺国も査察をすることもある、そしてまた、ジュネーブから査察官が来て日本を査察することもあるという御答弁だったというふうに思いますが、そうすると、ジュネーブから日本に来て日本を査察している査察官というのは、別に何人が日本担当査察官という形で人数が決まっているわけではないということでしょうか。

天野政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のとおり、日本担当が何名という形で具体的に決まっているわけではございません。

川内委員 わかりました。

 では、続いて、条約について若干聞かせていただきましたので、前回の委員会で、尊敬する米澤委員長から次の機会にまた質問せよというお許しをいただいておりますので、ドミニカの移民の件について聞かせていただきたいというふうに思います。

 前回、三月三十一日の当外務委員会での質疑で私が聞かせていただきましたけれども、もう一度確認をさせていただきたいというふうに思います。

 外務省の主張では、昭和三十一年三月二十七日付のドミニカ共和国からの、文書番号三二六六、この日本政府にあてた文書によって移住の条件の合意に至ったと主張をされていらっしゃいます。

 しかし、この文書番号三二六六の中には、両国政府の移住条件のための合意の基準は「本書簡に対する返簡との交換によって確定されるものとする」というふうに書かれています。そして、そのとおり政府は、外務省は、昭和三十一年の四月二十四日付でこの文書番号三二六六に対する返簡を出しているわけであります。

 移住の条件の合意というものが、国際約束が交換公文によってなされたということであろうと思いますが、それではお伺いをいたします。

 文書番号三二六六に対する四月二十四日の返簡を日本政府が出さなかったとすれば、この移住条件の合意という国際約束というものはなかったということになりますよね。

鹿取政府参考人 御答弁申し上げます。

 今先生御指摘のとおり、メルカード書簡には今先生が指摘された文章が書いてあります。仮に我が国政府が返簡を出していなければ、この基準は形式的には確定されなかったと言うことができると思います。

 政府が今まで申し上げているのは、メルカード書簡に先立ち、移住者の受け入れ条件については日本側とドミニカ側との間で鋭意交渉、協議が行われてきておりまして、このような背景を踏まえて発出された三月二十七日付のメルカード書簡において、日本側が確認を求めていた移住者の受け入れの意思及び受け入れ条件は基本的には満たされていました。したがって、同書簡の接到により、すなわち三月二十七日の同書簡の接到によりドミニカ政府の意向が正式に確認され、基本的な受け入れ条件につき実質的な合意が達成されたと当時政府は判断した次第でございます。

川内委員 鹿取部長、もう一回確認させてください。四月二十四日の返簡がなければ国際約束は成立をしませんよね。

鹿取政府参考人 形式的な確定につきましては、そのとおりでございます。

川内委員 今、形式的なというお言葉をおつけになられたんですが、私がお聞きしたのは、四月二十四日の返簡がなければ国際約束は成立をしていませんねと。成立したのかしていないのかということをお聞きしているんですけれども、成立はしませんよね。

鹿取政府参考人 正確に申し上げます。

 先ほど先生御指摘のとおり、メルカード書簡には、「日本人移住者定着のための基準は、本書簡に対する返簡との交換によって確定される」と書いてあります。したがって、我が国政府が返簡を出していなければこの基準は確定されなかったと言うことができます。

川内委員 外交上の、あるいは二国間の約束というものは、書面に書かれた文言によってのみ判断をされるべきであると私は思います。これは当然のことだというふうに思いますけれども、行間を読むとか、あるいは事前にこんな交渉があったとか、それは言いわけとしては一定程度聞いてもらえるかもしれませんが、いやしくも国対国で交渉をする場合に、紙に書かれたもの以外は何らの効力を持たないということになろうかと思います。

 そうすると、当時の日本国政府、外務省は、昭和三十一年の四月二十四日の日本とドミニカとの国際約束が正式に成立する、約束をする前に、それより以前の三月二十九日、約束をする前に、その前月の三月二十九日に移民の募集を開始したということでよろしいでしょうか。

鹿取政府参考人 移民の募集を開始しましたのは、今御指摘のとおり三月二十九日でございます。

川内委員 国際間の約束が成立する前に移民の募集を開始したとお認めになられました。

 さて、もう一つ、三月三十一日の質疑のときに確認できなかった点をもう一度確認させていただきます。

 両国で合意をされた交換公文ですよ。交換公文によって合意をされた移住の条件は、十八ヘクタールまで、土地の所有の形態は耕作をする権利である。しかし、その移民を募集した、移住者を募集した募集要項には、土地が十八ヘクタール無償譲渡されると。無償譲渡というのは、所有権があるという、その土地をどうしようがあなたの勝手ですという意味でしょう。そういうふうに書いてあります。

 なぜ、移住の条件の合意事項、要するに国際間の約束と募集要項が違っていたんでしょうかということについて、もう一度御答弁をいただきたいと思います。

鹿取政府参考人 今先生が御指摘のとおり、募集要項には一世帯当たり三百タレアの土地が無償譲渡されると書いてあります。それで、この募集要項については、いつ、その土地の所有権、そのお話をされているんだと思いますが、その所有権が移転されるかという時間的な要素については書いておりません。これは、ダハボンの第一次の募集要項については今私が申し上げたような表現になっております。

 私どもとしても、本来であれば、時間的要素を募集要項に記載した方が親切であったとも考えております。すなわち、ダハボンの第一次以外の募集要項につきましては、例えば土地に関しては、無償で使用を許され、将来、ドミニカ国法律の諸条件を充足の上は無償譲渡される見込みであるということで時間的な要素が入っております。

 それでは、ダハボンの第一次の募集要項においてなぜ時間的要素が入っていなかったということでございますけれども、当時、募集要項をごらんになっていただければ、募集要項からもわかりますとおり、日本の移住者というのはある程度長期間農業に従事する、そういうことが前提になっておりました。

 したがいまして、募集要項においては、移民の資格ということが書いてありますけれども、その中で、開拓意欲が旺盛であること、純農業者であること、あるいはドミニカ国に永住の目的で渡航すること等と記載されております。すなわち、移住者の方々は、入植後相当長期にわたって入植地を開墾、耕作するということが予定されていたわけでございます。

 したがいまして、我々、これは裁判でも議論されておりますけれども、裁判の準備書面でも述べておりますが、所有権取得の時期が記載されていなかったとしても、それが不当だということとは必ずしも考えていないということでございます。

川内委員 きょうは十五分しか時間がありませんでしたので、この辺で終わらせていただいて、また質疑を次の機会に譲らせていただきますけれども、私が聞いたのは、両国で合意をした合意事項と募集要項がなぜ違うのかということをお聞きしたわけで、この募集要項あるいは募集要領については、外務省はその作成に中心的に携わったということは過去の質疑の中でお認めになられていらっしゃいます。

 その自分たちがつくった募集要項に、自分たちが交渉をしたドミニカ政府との移住条件と違うことを書く、あるいは不十分な情報しか与えていないということに関しては、私はそれをなぜですかと聞いたわけで、それを不親切だと思いますというような政府の解釈を聞いているわけではないということを最後に申し上げさせていただいて、次の機会にまたさらに突っ込んで質疑をさせていただきたいというふうに思います。

 委員長、どうもありがとうございました。

米澤委員長 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢でございます。

 きょうは、後でIAEA十四条の改正の受諾について承認を求めるの件、この質問を行いますけれども、その質問の前に、施設庁長官もお越しでありますので、沖縄・辺野古の問題について伺いたいと思います。

 米軍普天間飛行場の代替施設建設に伴って、護岸構造の検討ということで、今、名護市辺野古でボーリング調査が始められようとしておりますが、二月二十六日の沖縄北方特別委員会で山中施設庁長官は、私の問いに答えまして、「埋め立てられる部分と一体不可分のものとして護岸が必要である」「環境影響評価の対象になる」と答えました。

 それで、今また環境アセスの方法書の作成中で、環境影響評価の実施方法案を広く県民の中に意見を求めております。その環境影響評価の実施方法の結論も得ない段階から、皆さんは今ボーリング調査を始めようとしているわけですね。一体、アセス法のどこに根拠があるからそういうボーリング調査が始められるんですか。その根拠を示してください。

山中政府参考人 委員御指摘になりましたように、別の委員会だったと存じますが、護岸と本体とは一体不可分だというふうな考えを申し上げたところでございます。

 ただ、普天間の代替施設の建設事業に当たりましては、代替施設本体のみならず、当然のことながら、その周囲に建設をされます護岸につきましても一体のものとして環境影響評価を行うということにいたしております。この点は、先月の二十八日に公告をし、縦覧を開始いたしました方法書においても明記をしているところでございます。

 ただ、いわゆる護岸構造をどういう形にするかという前提となります地質等の知見を得るためのボーリング調査につきましては、建設場所が非常に複雑な地形であるということで、代替施設の設計に先立ちまして必要な地盤強度等のデータを収集するという目的で行うものでございまして、そもそも環境影響評価法においてはそういった事業は対象とされていないということでございまして、環境影響評価の一連の手続と、私どもが地盤の強度等の知見を得るために行おうとしておりますボーリング調査とは、その趣旨、目的を異にするものであるという点について御理解をいただきたいと存じます。

赤嶺委員 あなた方は、護岸構造の検討、それを意識的に切り離してアセス法で規制されないかのように言っておりますが、五十ヘクタールを超える埋め立てについてはすべてアセス法の対象であります。護岸構造と本体は一体のものである。一体のものであるのになぜ、ボーリング調査というのはそこの環境に手を加えることになります。まさに環境アセス法が意識的に定めている、制限していることじゃないですか。それを破って、やろうとしている。実際上の事業着工じゃないですか。

 アセス法のどこにそんなことが許されているんですか。条文上の根拠を示してください。

山中政府参考人 これは環境影響評価法におきまして、その三十一条でございますが、対象事業を実施する制限に関する規定がございます。「第二十七条の規定による公告を行うまでは、対象事業を実施してはならない。」ということでございますが、この規定の趣旨は、環境影響評価の対象となる環境を改変するような行為をしてはならないということでございます。

 他方で、試掘調査のためのボーリング、あるいは試験盛り土等の事前調査の一環として調査に必要な範囲で行われる行為、こういったものは方法書の公告前に行っても差し支えないというような解釈をなされているわけでございまして、先ほども申し上げましたように、環境影響評価法において対象としている事業を、実際に工事を施工する過程でいろいろな環境に影響を及ぼします、それをどう予測評価するか。さらに、でき上がった施設が、これまた環境に一定の負荷を与える、それをどう予測評価するかという観点から規定されているのが環境影響評価法であるというふうに私ども承知しております。

 今回行いますボーリング調査というものは、外見的に見れば、確かに六十三カ所、海底にボーリングをいたします。しかし、あくまでもその趣旨、目的は法に規定されているものとは別のものであるという点の御理解をちょうだいしたいと思います。

赤嶺委員 環境に改変を与える場合には、加える場合には、アセスの適用だという説明であったわけです。ボーリング調査はその対象にならないということを言い張りますが、ボーリング調査そのものがもう埋立工事の事業の実施であります。だから、事業の実施であるからアセス法の適用を受けるんですよ。

 そのボーリング調査によってどんな環境の激変が起こるか、沖縄県が意見を聴取した専門家はこう言っています。防衛施設局の作業計画では、ジュゴンの聴覚器官に回復不能な障害を与える可能性があり、それにより死亡に至る可能性も否定できない。これはジュゴンの専門家、粕谷先生の御意見です。

 那覇防衛施設局が行った事前調査について、報告書に、あなた方の報告書にですよ、沖縄に生息しないフトモズクが繰り返し出てくる、これは間違い。これは当真武さんという、県の元海洋深層水の研究所長です。

 藻場の専門家、サンゴの専門家の琉大の山里先生は、ボーリング調査は、心臓を刺してその影響を評価しようとするもの、サンゴが死滅する、ジュゴンが死滅する。

 こういうことを専門家から言われて、環境に手を加えるものではないからできるんだ、できるんだというものが、皆さんのやっていることはアセス法に明確に違反している、絶対に環境を守る上でやってはならない乱暴な行為だということを指摘して、条約の質問に移ります。

 それで、この条約の、今回の場合にはIAEAの予算見積もり、これを一年ごとから二年ごとのものに変更するという改正になるわけですが、私たちとしても、二年間単位で予算を組めるようになるということは合理性があると判断できますので、賛成という立場であります。

 そこで、IAEAについて若干お伺いしたいんですが、ブッシュ大統領は二月十一日に核に対する新提案、これを行いました。このアメリカの提案どおりに進んだら、将来にわたって燃料を供給できる国は限られることになる。しかし、一方でIAEAというのは原子力の平和利用を進めていくというような面もあるわけですから、ブッシュ提案のとおりにいくと平和利用の技術の独占につながるんじゃないか。このような技術の独占と平和利用の権利に対する制限は認められていないのではないかというぐあいに思いますが、これはいかがですか。

天野政府参考人 お答えいたします。

 ブッシュ大統領は、二月十一日の演説において、核不拡散体制の抜け穴をふさぐための方法として、ウラン濃縮及び再処理を放棄する国に対して核燃料の供給を保証するとともに、原子力供給国グループ、NSG諸国は、ウラン濃縮、再処理の機材、技術を、既にそれらを所有している国以外に対しては売却すべきでないという提案を行いました。

 この提案は、核不拡散体制の強化は国際社会において重要かつ緊急な課題であるということにかんがみまして、ウラン濃縮、再処理の機微な技術や関連する機材の移転先を一定の国には制限するということでございまして、一つの可能性であると考えております。

赤嶺委員 核軍縮の管理というのは非常に大事な課題だと思うんです。

 そこで、核保有国の核軍縮、これが進まないことに対して、先日開催されたNPT再検討会議の準備委員会で、核の非保有国から強い批判が出ております。このアメリカのブッシュ大統領の姿勢に対してですね。

 ニュージーランドのホッブス軍縮軍備管理相は、保有国が廃絶の取り組みを怠ったままでは、ならず者、テロリスト云々といっても根本的な解決は図れない、こういうぐあいに指摘しております。また、メキシコのデアルバ大使は、核保有国の軍縮に向けた発言は責務へのリップサービスにすぎないと述べて、アメリカなどの核保有国の対応を批判しました。

 全面的な核廃絶を進める、こういう立場から、今後の日米協議の場で、アメリカが態度を改め、核軍縮の具体的な措置をとること、そして、きょうは展開できませんでしたが、小型核兵器開発をとめること、強くこれを要求すべきだと思いますが、この点についてはいかがですか。

天野政府参考人 お答えいたします。

 先生御指摘のとおり、先般、四月の二十六日から五月の七日にかけて開催されました二〇〇五年NPT運用検討会議第三回準備会合においては、ニュージーランドそのほかの国から核軍縮の進展がはかばかしくないという指摘がございました。他方、核保有国からは、具体的な数字を挙げまして、核兵器の核軍縮が進展しているという説明もございました。

 我が国といたしましては、この第三回準備会合に対しまして、核軍縮を求める作業文書を提出するなど、積極的に貢献してまいりました。

赤嶺委員 私は、核保有国に対する核の非保有国の不満、懸念というのは非常に高まっている、しかもブッシュ大統領の核政策に対して大きな批判がいろいろな国際会議の場で挙げられている、このことについて、日本政府も外交の場できちんと核廃絶の立場を貫かせるように発言をしていただきたいということを思います。

 そして、最後に、冒頭質問をいたしましたが、普天間代替施設の問題について、ああいう基地があの美しい海につくられた場合には沖縄の自然が本当に死滅してしまうということについても、事業者の防衛施設局のみならず、外務省においてもよく検討して、アメリカにも、つくるな、建設するなという発言を求めて、私の質問を終わります。

米澤委員長 次に、東門美津子君。

東門委員 私も、条約の前に二、三質問させていただきます。

 五月九日付の琉球新報は、「車庫法違反野放し」という見出しで、在日米軍人軍属とその家族が乗る私有車両、Yナンバー車ですね、その車庫証明なしの登録は車庫法違反だと認めた一九九八年の閣議決定から六年経た今日も、米軍関係者の過度の特権を追及できず違法状態は続いていると報じています。

 閣議決定を受けて一定の準備期間後、車庫証明の提出がない場合は車両登録しないとの通達を出したにもかかわらず放置されているということですが、それは事実ですか。時間がありませんので、イエス、ノーでお答えください。

海老原政府参考人 はい、わかりました。

 米側と協議中でございますけれども、いまだ協議が調っておりませんので、そういう事実はございます。

東門委員 米側と協議をしているという今御答弁でしたけれども、その件、米軍と協議をしている、それは、閣議決定を受けてから、いつ協議を開始して、どういう場で、協議の場ですね、協議をし、そして今日まで何回くらい協議をしてこられたのか、お答えください。

海老原政府参考人 今委員がおっしゃいました閣議決定と申しますのは、平成十年の質問主意書のことでございますね。(東門委員「はい」と呼ぶ)その後、それを受けまして、日米間で、これは地位協定の十条三項におきまして、私有車両、軍人軍属、それら家族の私有車両の登録につきましては、日本国民に適用される条件と同一の条件で取得するナンバープレートをつけていなければならないというふうに規定されておりますので、この規定に照らしまして、このような事態は不適切であるということで米側との間で協議を行いまして、このような事態が早急に改善されるようにということで、その間、鋭意協議を重ねているということでございます。

 現在協議中ということもございまして、今委員がお尋ねになりました協議の回数、米側の主張等を含めまして、米側との協議の内容につきましては、先方との関係もございまして、明らかにすることは差し控えさせていただきたいと思います。

東門委員 余計なことは答えないでいいですよ。おっしゃらないで、全然余計なことです。私、そんなこと聞いていません。地位協定十条の三なんて聞いていません。いつ協議を開始したんですか、どういう場で、協議の場はどういうところですか、何回くらいですかとは聞きましたけれども、米側の主張はどうですかというのは、私は、それはレクの段階で言ったことで、今何にも聞いていない。私、北米局長は私の質問を聞いていないと思います。

 その三点について、もう一回お答えください。

海老原政府参考人 先ほど答弁申し上げましたとおりでございまして、米側との関係もありまして、答弁を差し控えさせていただきます。

東門委員 とても残念です。私は、今の答弁を聞きますと、協議はしてきていないと断ぜざるを得ないと思います。

 いつ協議を開始したのかもわからない、答えられない。なぜこれが答えられないんですか。これを答えることは、米側にとってどういう不利な条件が出てくるんでしょうか。どういう場で協議をしているのか、日米合同委員会の場ですかどうですかということをお聞きしているんですよ。そういうことも言えない。六年間も放置をしているというこの姿勢に対して、私は、国民にちゃんと釈明すべきだと思います、そういう点で質問をしているんですよ。なぜそういうことができるんでしょうか。

 では、違法状態をそのまま放置している責任、それはどこにあるんですか。国土交通省ですか、外務省ですか。

海老原政府参考人 米側と協議を行っておりますので、現時点で責任云々ということを申し上げるのは適当ではないと思います。

東門委員 責任逃れです。外務省はやるべき仕事をしていない、そういうことだと思います。

 こういう外務省でいいんでしょうか。大臣、いかがですか、その件について御所見を伺いたいと思います。

川口国務大臣 これはきちんと今協議をしているわけでございまして、この協議をまた引き続き行っていくという所存でございます。

東門委員 大臣、六年という期間は長いですよね。その間、何回ぐらい協議をしたのか、どういう場で協議をしたのか。中身を聞いていません。米軍はどういう反応をしたかと私は聞いていません。どういう主張をしていますかと聞いていないんですよ。何回くらいやったか、正確な数字でなくてもいいんです、どういう場で協議をしているか、それだけでもぜひ教えてください。

川口国務大臣 先ほど北米局長からお答えしたとおりでございます。

東門委員 大臣も何もおわかりになっていないということでしょうか。お認めください。承知していないとぜひお答えください。

川口国務大臣 協議をしているということは申し上げたと思います。

東門委員 なぜ、何回ぐらいとおっしゃらないんですか。一回なのか、二回なのか、十回なのか、それだけでも結構です。

川口国務大臣 そのことについては、先ほど北米局長からお答えしたとおりでございます。

東門委員 情けない答弁です。本当に国民の側を向かない、何でこういう外務省があるんだろう。本当に、外務省は必要ないんじゃないですか。何を聞いても同じような答弁。恐らく協議はしていない。もししているのであれば、早目にこれを解決してください。

 済みません、時間がないので、一点だけIAEAについてお伺いいたします。

 IAEAは、IAEA憲章に基づいて当該国の原子力活動が軍事転用されていないことを検証するための保障措置を実施しています。年々増加する世界の原子力施設に対応してIAEAが保障措置を行うためには、予算の一貫した増大が必要と思われますが、そのための財源確保はどのように行おうとしているのか、お伺いいたします。

天野政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、世界の原子力施設の数はふえておりますし、またその他のさまざまな要因から国際原子力機関の保障措置予算を拡充する必要が高まっております。このため、昨年七月のIAEAの特別理事会におきまして、保障措置予算を今後四年間で約千九百万ドル増額することを内容とする通常予算案が合意されました。これは、昨年開かれましたIAEA総会で承認されております。

 IAEAの主要な拠出国であります我が国といたしましても、保障予算を際限なく増額することを容認するものでは決してございませんが、保障措置活動の効率化等を初めとして、IAEA予算を効率的に運用するよう今後ともIAEAに働きかけていきたい、このように考えております。

東門委員 ITUについても質問したかったのですが、時間がありませんので終わります。

 でも、その前に、終わる前に一言だけ申し上げたいと思います。いや、もう一つだけお聞かせください。

 これは、我が党の照屋寛徳議員が質問主意書を出したのが六年前、それに答弁書として閣議で認めたもの、閣議決定したものの中で、やはり違法状態、違法である、それは是正しますと出てきたことなんですね。大臣、閣議決定というのはどういう重みがあるんですか、それをお聞かせください。

川口国務大臣 閣議決定というのは、当然に非常な重みを持ったものであると思っております。

 したがいまして、我が国としては、この問題の是正、これを目的といたしまして今まで協議を重ねてきている、今後ともそれを続けていくという所存でおります。

米澤委員長 東門君、時間が来ております。

東門委員 あと六年、十年かかるのでしょうか、協議に。私は、非を認めてしっかりと、やっていません、やりませんでした、これからやりますとおっしゃるべきだと思いますが、いかがですか。それを聞いて、終わります。

川口国務大臣 協議は今までもしてきております。

東門委員 終わります。

米澤委員長 これにて両件に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

米澤委員長 これより両件に対する討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 まず、国際原子力機関憲章第十四条の改正の受諾について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

米澤委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 次に、全権委員会議(千九百九十四年京都及び千九百九十八年ミネアポリス)において改正された国際電気通信連合憲章(千九百九十二年ジュネーブ)を改正する文書(全権委員会議(二千二年マラケシュ)において採択された改正)及び全権委員会議(千九百九十四年京都及び千九百九十八年ミネアポリス)において改正された国際電気通信連合条約(千九百九十二年ジュネーブ)を改正する文書(全権委員会議(二千二年マラケシュ)において採択された改正)の締結について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

米澤委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました両件に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

米澤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

     ――――◇―――――

米澤委員長 次に、航空業務に関する日本国とウズベキスタン共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件を議題といたします。

 政府から趣旨の説明を聴取いたします。外務大臣川口順子君。

    ―――――――――――――

 航空業務に関する日本国とウズベキスタン共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

川口国務大臣 ただいま議題となりました航空業務に関する日本国とウズベキスタン共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。

 政府は、ウズベキスタンとの間で航空協定を締結するため、ウズベキスタン政府と交渉を行いました。その結果、平成十五年十二月二十二日に東京において、先方サファエフ外務大臣との間でこの協定に署名を行った次第であります。

 この協定は、両国の指定航空企業が特定路線上において航空業務を運営する権利を相互に許与し、業務の開始及び運営についての手続及び条件等を取り決めるとともに、両国の指定航空企業がそれぞれの業務を行うことができる路線を定めるものであります。また、この協定は、我が国が従来締結した多くの航空協定と形式、内容においてほぼ同様のものであります。

 この協定の締結により、我が国とウズベキスタンとの間の人的交流及び経済的交流が増進され、両国間の友好関係の一層の強化に資することが期待されます。

 よって、ここに、この協定の締結について御承認を求める次第であります。

 何とぞ、御審議の上、本件につき速やかに御承認いただきますようお願いいたします。

米澤委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時十九分散会


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