衆議院

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第21号 平成16年6月9日(水曜日)

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平成十六年六月九日(水曜日)

    午前九時三十五分開議

 出席委員

   委員長 米澤  隆君

   理事 岩永 峯一君 理事 谷本 龍哉君

   理事 中谷  元君 理事 渡辺 博道君

   理事 末松 義規君 理事 武正 公一君

   理事 増子 輝彦君 理事 丸谷 佳織君

      遠藤 武彦君    小野寺五典君

      木村  勉君    高村 正彦君

      鈴木 淳司君    田中 和徳君

      武田 良太君    津島 恭一君

      土屋 品子君    平田 耕一君

      古川 禎久君    松宮  勲君

      宮下 一郎君    阿久津幸彦君

      加藤 尚彦君    今野  東君

      中野  譲君    前原 誠司君

      松原  仁君    漆原 良夫君

      赤嶺 政賢君    阿部 知子君

      東門美津子君

    …………………………………

   外務大臣         川口 順子君

   外務副大臣        阿部 正俊君

   外務大臣政務官      田中 和徳君

   外務大臣政務官      松宮  勲君

   政府特別補佐人

   (内閣法制局長官)    秋山  收君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  増田 好平君

   政府参考人

   (防衛施設庁施設部長)  戸田 量弘君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 鈴木 庸一君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 門司健次郎君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 角  茂樹君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 長嶺 安政君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 鈴木 敏郎君

   政府参考人

   (外務省大臣官房領事移住部長)          鹿取 克章君

   政府参考人

   (外務省総合外交政策局長)            西田 恒夫君

   政府参考人

   (外務省アジア大洋州局長)            薮中三十二君

   政府参考人

   (外務省経済協力局長)  古田  肇君

   外務委員会専門員     原   聰君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月四日

 辞任         補欠選任

  赤嶺 政賢君     吉井 英勝君

同日

 辞任         補欠選任

  吉井 英勝君     赤嶺 政賢君

同月九日

 辞任         補欠選任

  河井 克行君     津島 恭一君

  西銘恒三郎君     古川 禎久君

  松宮  勲君     武田 良太君

  東門美津子君     阿部 知子君

同日

 辞任         補欠選任

  武田 良太君     松宮  勲君

  津島 恭一君     平田 耕一君

  古川 禎久君     西銘恒三郎君

  阿部 知子君     東門美津子君

同日

 辞任         補欠選任

  平田 耕一君     河井 克行君

    ―――――――――――――

六月八日

 女子差別撤廃条約選択議定書の批准に関する請願(東門美津子君紹介)(第三一七〇号)

 核兵器廃絶条約の締結に関する請願(佐藤公治君紹介)(第三二三九号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 地中海漁業一般委員会に関する協定の改正の受諾について承認を求めるの件(条約第八号)(参議院送付)

 千九百九十二年の油による汚染損害の補償のための国際基金の設立に関する国際条約の二千三年の議定書の締結について承認を求めるの件(条約第二〇号)(参議院送付)

 千九百七十三年の船舶による汚染の防止のための国際条約に関する千九百七十八年の議定書によって修正された同条約を改正する千九百九十七年の議定書の締結について承認を求めるの件(条約第二一号)(参議院送付)


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     ――――◇―――――

米澤委員長 これより会議を開きます。

 地中海漁業一般委員会に関する協定の改正の受諾について承認を求めるの件、千九百九十二年の油による汚染損害の補償のための国際基金の設立に関する国際条約の二千三年の議定書の締結について承認を求めるの件及び千九百七十三年の船舶による汚染の防止のための国際条約に関する千九百七十八年の議定書によって修正された同条約を改正する千九百九十七年の議定書の締結について承認を求めるの件の各件を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 各件審査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房審議官鈴木庸一君、外務省大臣官房審議官門司健次郎君、外務省大臣官房参事官角茂樹君、外務省大臣官房参事官長嶺安政君、外務省大臣官房参事官鈴木敏郎君、外務省大臣官房領事移住部長鹿取克章君、外務省総合外交政策局長西田恒夫君、外務省アジア大洋州局長薮中三十二君、外務省経済協力局長古田肇君、内閣官房内閣審議官増田好平君、防衛施設庁施設部長戸田量弘君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

米澤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

米澤委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。宮下一郎君。

宮下委員 自由民主党の宮下一郎です。

 本日は、議題となっております三つの条約につきまして、それぞれ質問させていただきたいと存じます。

 まず、地中海漁業一般協定の改正についてお伺いいたします。

 言うまでもなく、周囲を海に囲まれた我が国におきましては、漁業が重要な産業として位置づけられてまいりました。かつて一九七〇年代半ばには、我が国は、金額で世界一、量では世界第四位の水産物輸出国でございましたけれども、その後、魚の減少や円高による競争力の低下によって、輸出が金額、量ともに減少してまいりました。

 逆に輸入は、プラザ合意以降の円高の影響を受けて、その後急増いたしております。二〇〇二年の輸入額を見ますと、一兆七千六百億円余りということになっておりまして、これは輸出額の約十倍以上ということで、今や我が国は、金額、数量ともに世界最大の水産物輸入国になっております。

 以上のようなことを考えますと、我が国がどのように水産物を消費するかということと、世界の水産物資源が持続的に利用可能になるかということは密接に関係していると言うことができると思います。また、水産物資源の持続的利用を図るためには多くの国々の協力が必要であり、これまで海域ごとに地域漁業管理機関が設立されて国際的な資源管理が行われてきたことは大変重要なことであると思います。

 今回の地中海漁業一般協定の改正につきましては、地中海周辺諸国とともに遠洋漁業を行っている国として我が国も水産資源の管理を行う一般委員会に加盟しているということをお聞きいたしまして、我が国の遠洋漁業が地中海まで行って行われているのかと、ちょっとびっくりしたところでございます。

 そこで、まず我が国の地中海における漁業の現状はどのようなものなのかお聞かせいただきたいと思いますし、また今回の改正では一般委員会に自主的な予算を導入することが主な目的と伺っておりますが、この場合、我が国は分担金という新たな負担を負うことになります。そこで、本協定の改正を締結する意義がどこにあるのか、あわせてお聞かせをいただきたいと思います。

鈴木(庸)政府参考人 お答えいたします。

 まず、我が国の地中海におけるマグロ操業の現状でございますが、最も新しい統計、二〇〇二年の統計に従えば、我が国は十四隻の漁船が地中海で操業しておりまして、クロマグロにつきましては三百九十トンの漁獲がございます。これを漁獲金額に換算いたしますと、約六億三千万円でございます。

 次でございますが、我が国は、委員御指摘のように世界有数の遠洋漁業国でございまして、マグロ資源を初めとする海洋生物資源を科学的根拠に基づいて持続的に利用するという考えにのっとりまして、地中海漁業一般委員会を初めとする各地域委員会において、資源の保存のために積極的に参画をしてきております。こういった積極的な活動が、我が国漁業の発展及び水産物の安定的供給にも資するという考えでございます。

 本協定の改定でございますが、先ほど委員からも御指摘がございましたように、この一般委員会において自主予算を導入するということが主な内容になっております。自主予算の導入によりまして、その活動をさらに充実あるいは活性化、活発化させるということを目的にしております。我が国の基本方針に従いまして、こういった地域委員会の活動の活発化、活性化に、分担金の拠出を含めた財政的貢献をするということが、我が国が資源の保存の活動に積極的に参加をしていく上で極めて重要であると認識しております。

 ちなみに、改正後の我が国の分担金は約七億六千万ドル、全体の分担率の一〇%と見込まれております。

宮下委員 現在、世界的に見ますと、主要マグロ類の漁獲量は、これ以上とると資源量が減ってしまうという、いわばぎりぎりの水準にあると言われております。したがいまして、地域漁業管理機関によるマグロの資源管理は必要不可欠と言わざるを得ません。その中で、世界のマグロ、カツオの約半分に当たります年間約百五十万トンが漁獲される中西部太平洋地域におきましては、これまで漁業管理機構が存在いたしませんでしたけれども、ようやくこの六月に新たな管理の枠組みができると伺っております。

 そこで、我が国がこの新たな枠組みにどのように対応していくのか、お聞かせいただきたいと思いますし、またあわせて、マグロ以外の魚類の資源管理についての国際的取り組みがどうなっているのか、我が国がそこにどのように関与しているのかをお聞きしたいと思います。

川口国務大臣 おっしゃいましたように、中西部太平洋というのは、世界のマグロ類漁業生産の約半分、そして我が国のマグロ類漁業の約八〇%を占める大きな、大事な漁場でございます。その中西部太平洋におけるマグロ類の保存管理を目的といたしました条約が、六月の十九日に発効することになっております。

 我が国といたしましては、この条約が、我が国を含む少数の漁業国の立場を十分に反映しつつ運用されるように、この手続規則の策定作業に積極的に参画をしてまいりました。この手続規則によりまして我が国の関心事項が実質的に手当てをされたということがございましたので、それを受けまして、おっしゃられましたように、過剰漁獲が懸念されているこの海域の資源の適切な管理、そして我が国の沿岸のマグロ漁業の権益の保全のために、この条約の締結に向けた作業を進めているわけでございます。

 我が国といたしましては、マグロだけではなくて、他の魚類の資源を含む海洋生物資源というのは、科学的な根拠に基づいて適切に管理をされるべきであるという立場に立っております。他の魚類に関します地域漁業管理機関におきましても、保存の管理の取り組みに対しては積極的に対応してきております。

 今後とも、生物資源の持続的な利用の推進、我が国の漁業の発展、そして水産物の供給の安定、こういったことの確保のために、国際的な漁業資源の管理に我が国として積極的に参加をしていくという姿勢を持っております。

宮下委員 次に、油汚染損害補償国際基金設立条約二〇〇三年議定書についてお伺いをいたします。

 サウジアラビアにおけるテロを初めとします中東情勢の悪化に伴いまして、このところ原油価格が急騰しておりまして、先般のOPEC総会におきまして二百万バレルの生産枠拡大が決定されたものの、余り価格引き下げの効果がなく、経済に与える影響も懸念されている状況にございます。

 こうしたことがありますと、改めて、我が国が一次エネルギー供給の約五〇%を石油に頼っているということ、そして、その安定的な輸送や供給がいかに重要であるかということを再認識させられるところでございます。そうした意味におきまして、輸送にかかわる事故などのコスト負担を考えることも非常に大切だと思います。

 これまで、タンカー等による油汚染事故に対しましては、一九九二年の国際基金の設立によりまして、事故の場合は、まず船舶所有者が一定限度まで賠償を行って、それを超える部分を基金によって補償するという仕組みがつくられて対応がなされてまいりましたけれども、今回の議定書は、より規模の大きい事故に対応することを目的として、従来の国際基金の補償限度額を単純に引き上げるのではなくて、新たな国際基金を設立することによって十分な補償が受けられるようにするものであるというふうに伺っております。

 二〇〇二年にスペイン沖で発生しましたプレステージ号のような大規模な汚染事故が今後もいつ起きるとも限らないことを考えますと、本議定書が一日も早く発効することが重要であると考えますけれども、お聞きするところ、まだ締約国の数が少なくて、発効までには時間がかかるのではないかということも伺っております。

 そこで、まず、今回の新たな枠組みによります議定書を締結することの意義をどうとらえていらっしゃるのか、また議定書締結に向けた各国の動向と発効の見通しについてお聞かせいただきたいと思います。

川口国務大臣 まず、意義でございますけれども、先生がおっしゃいましたように、最近、事故が大型化してきている、深刻化してきているという状況がございます。我が国としても、四海、周りは海でございまして、深刻な被害が及ばないとも限らないという状況にあるわけです。

 それで、これは、おっしゃったように補償限度額を引き上げるということでございますけれども、まず被害者としての我が国の立場から考えますと、これは、その保護を一層充実させるという意味で意味があるということです。さらに、我が国は、タンカーの保有台数、それから石油の輸入量、世界で有数の大きな国であるわけです。そういった立場からいって、汚染損害についての国際的な協力を一層推進するということからも、これは有意義であるというふうに考えております。

 それから、発効の見通しですけれども、議定書に要件がございまして、少なくとも八つの国が締結をするということ、そして油の総量でそれが四億五千万トンに達してから三カ月後ということでございます。これまでのところ、デンマークとノルウェー、この二国が締結済みであって、イギリス、スペインなど欧州諸国がことしじゅうに、本年じゅうに締結の考えであるというふうに承知をいたしております。

 日本は非常に油の受取量が多い国でありますので、日本が締結をすれば、これはことしの秋にも発効をする条件が整う可能性があるということでございます。

宮下委員 最後に、船舶汚染防止国際条約一九九七年議定書について質問をさせていただきます。

 これまで野放しでありましたさまざまな有害物質、船舶からの排出を規制するということで、この議定書は、地球環境を保全するという観点からも早期の発効が望まれていたものでございます。お聞きをしますと、発効に必要な十五カ国による締結という条件が、さきの五月十八日、サモアの締結によって満たされて、これによって来年五月に発効することになったということでございまして、これは大変喜ばしいことであると思います。

 ただし、この汚染防止条約は、新規の船舶についての規制を定めたものでございまして、既存の船舶については設備の改修を義務づけたものではございません。したがいまして、現在使っている船を寿命によって新しい船に買いかえるときに初めて規制が適用されるということになります。したがって、船の寿命を考えますと、現在使われているすべての船が大気汚染防止対応型に変わるというのは、今後二十年から三十年ぐらいかかるのではないかということになります。

 こうしたことを考えますと、これからも有害物質排出抑制についての技術革新を目指した努力を続けると同時に、新たな技術や新たな規制すべき有害物質が出てきたときには、そうした新しい技術を踏まえて新たな規制を行うなど、これからも逐次規制を見直して、常にその時々に最も環境負荷の少ない船舶への切りかえが進むようにしていくことが必要であると思います。

 我が国は、環境技術先進国として、こうした技術開発を進めるとともに、これからも各国に対し逐次規制についての見直し提案を積極的に行っていくべきだと考えますが、政府としてのお考えをお聞かせいただきたいと思います。

門司政府参考人 お答えいたします。

 特に大気汚染の分野については、新しい技術革新等に応じて規制を見直すことは、本当に御指摘のとおりだと思います。この議定書に規定されている大気汚染物質の規制値等については、議定書の発効後も必要に応じ、逐次、国際海事機関、IMOの海洋環境保護委員会などにおいて見直し等の技術的な検討が行われていくものと考えております。

 特に、この議定書の窒素酸化物に係る基準値については、既に採択の際に、議定書発効後五年ごとに見直していくことが決議されております。今後導入される規制値について、同委員会において定期的に見直しが行われることとなっております。我が国としましては、IMOの主要な国として、今後の規制値の見直しにつきましても議論に積極的に参加していきたいと思っております。

 以上でございます。

宮下委員 これら議定書の締結によりまして、世界の海洋資源の利用や船舶による輸送などが環境と調和した持続可能なものとなっていくことを期待し、質問を終わります。ありがとうございました。

米澤委員長 次に、丸谷佳織君。

丸谷委員 おはようございます。公明党の丸谷でございます。

 一九九二年の油による汚染損害の補償のための国際基金の設立に関する国際条約二〇〇三年の議定書、この議定書は、近年のタンカーによります油汚染事故が大規模化し、被害が深刻化するに伴い、現行の国際基金の補償限度額を超える場合に補償する追加基金を創設するものであり、海洋国家である我が国として本議定書を批准することは重要と考え、賛成の立場から質問をさせていただきます。

 まず、例えば、北朝鮮のような未加盟国が事故を起こした場合に、この補償についても基金から被害者に補償がされると思いますが、最終的に、基金は当該未加盟国から立てかえ費用を徴収する必要があると考えますが、その求償可能性についていかがか、これをお伺いします。

門司政府参考人 お答えいたします。

 この議定書の適用は、油の汚染損害がどこで生じたかという場所によって決まってまいります。したがいまして、船舶の国籍などの基準は採用されておりません。したがって、未締結国の船が事故を起こした場合も、それが締約国、例えば日本の領域あるいは排他的経済水域内であれば、この議定書あるいは九二年の議定書が適用されて、追加基金あるいは基金によって補償が行われるということになっております。

 その後に実際に被害について支払われるわけですけれども、そこで船舶所有者に対しても条約の適用がございます。しかし、その場合には賠償責任の限度額がございますので、船舶の所有者に対しても、限度額、百四十四億円の範囲内での請求というものはできるというふうに考えております。

丸谷委員 先ほど宮下委員の質問にもございましたけれども、九二年の責任条約及び基金条約締約国は、それぞれ九十四カ国、八十六カ国と承知しておりますが、本議定書につきましては、締約国はデンマークとノルウェーの二カ国でございます。

 本議定書発効のためにも各国に批准を求めていくべきだというふうに考えますけれども、例えばアメリカの場合、本議定書よりもより厳しいと言えるかもしれませんが、独自の油濁補償制度を持っております。米国におきます本議定書の批准の見通しについてはいかがかという質問が一点と、また、補償体制充実のため、米国の油濁補償の国際体制への参加を促していくべきというふうにも考えますが、この点についてはいかがでしょうか。

門司政府参考人 先生御指摘のとおり、米国は、油による汚染損害についての責任及び賠償等についての連邦法という独自の法律を持っております。OPA九〇という、九〇年に制定した法律でございまして、輸入油それから国内産出油への課税によって賄われる油濁責任信託基金というものを設立し、この基金によって、一事故あたりの補償の限度額を十億ドル、約千百億円とする独自の制度を有しておると承知しております。

 こういった制度を持っておるアメリカがこの油濁の基金の議定書についてどういう態度をとっているかということは、必ずしも省内承知しておりませんけれども、現在、この新しい議定書を締結するためには九二年の枠組みに入らないといけないということになっておりまして、アメリカはまだその九二年の枠組みの当事国でもございません。

 しかし、まさに御指摘のとおり、米国に限らず一般的にできるだけ多くの国が九二年の条約あるいはこの議定書という形で非常に統一された国際的な規則のもとで適用が行われるということ、そして多くの国が参加することによって基金への拠出の負担が軽減されることが望ましいと考えております。

 したがいまして、我が国としては、まず、みずからがこの議定書を締結し、そしてこの議定書を発効させた上で、EU諸国等ほかの締約国とも連携して、IMO等の場を通じて、アメリカを含む非締約国に対してその早期締結を呼びかけてまいりたいと考えております。

丸谷委員 一九九七年のナホトカ号の事故は、六千二百トンの重油が流出しまして、島根県から秋田県にかけて海岸に甚大な被害を与えました。こちらの事故の被害者も、漁業者、そして観光業者、電力会社、地方自治体、国、また海上災害防止センター等、大変広範にわたりましたが、被害が広範になった際の補償配分のあり方について、これはどのように考えていくのか、この点をお伺いします。

門司政府参考人 被害が起きました場合には、まず船舶所有者が一定部分を負担し、それから足りない部分を基金が補てんいたします。そして、その被害の総額がこの全体の枠組みの範囲内におさまっているのであれば、各申請をした人に対してそれぞれ費用が償還されるということになりますけれども、しかしながら、それを超える額の損害が生じた場合、これはその限度額の中で、各被害者の被害額が被害総額に占める割合に従って配分されるということになってしまいます。

 しかしながら、ナホトカ号の場合にはたしか二百六十一億円でしたけれども、今回この議定書が成立いたしますと、約千二百億円ということになりますので、それはかなりの額の被害に対して対応可能ではないかというふうに考えております。

丸谷委員 ありがとうございました。

 次に、大臣にお伺いをさせていただきたいんですけれども、質問通告では、イラクに関します安保理の新決議について、日本国としてどのような内容が望ましいかという質問通告をさせていただきましたけれども、六月の八日、本日、日本時間九日朝、新決議の方が採択をされましたので、その評価について、質問通告はしておりませんけれども、お伺いをさせていただきたいと思います。

 それで、私も、この安保理決議一五四六の内容をダイジェスト版ですが見ました。この内容を見るところ、国連の役割というものが、イラクの新政権の設立に向けて、選挙のあり方ですとか移行国民議会に対する支援のあり方、あるいは憲法の起草、そしてまた復興開発、人道支援というところを国連がしっかりと担い、そこに至るまでの治安維持の部分を多国籍軍とイラクの治安部隊が担うということと、また最後まで米英そして仏独が、報道では意見が合わないとされておりましたけれども、多国籍軍の駐留期間、また多国籍軍の活動に対する拒否権を決議に書き込むか否かというところの対立点も、このパラグラフ十二の部分ではイラク政府の要請がある場合には多国籍軍の権限がより早く終了することを宣言するという、ここの書き込みによって、全会一致に持ち込むための努力がなされ、それがまた認められたということを私は評価しながらこの新決議文一五四六を読んだわけなんですけれども、大臣のこの一五四六に対します評価、この点をお伺いします。

川口国務大臣 内容については、今委員がおっしゃられましたので改めて繰り返しませんけれども、これにつきましては、けさ、私の談話を出させていただいております。

 この決議ですけれども、これは、六月三十日を境にして、イラクの完全な主権の回復という、イラクが重要な局面に入ったということを示すわけでして、今まで安保理の決議というのは数多く出ていますけれども、その中でも最も重要なものの一つであるというふうに考えております。それから、これにつきましては、まさにイラク人がこれから国家を改めて再建していくということであって、国際社会がこれに対して十分に支援をしていく、国際社会が結束をするという意味で、それに資するというふうに考えております。

 日本として、談話でも申し上げましたけれども、この決議の採択を歓迎しまして、この共同提案国である米、英、ルーマニアの努力に感謝をして、この努力を今評価しております。

 日本といたしまして、今後、この決議の採択を受けまして、イラクの暫定政府のもとでイラクの政治プロセスや国家再建が行われていく、きちんと行われていくということを期待しているわけでして、そのためには国連の主導的な役割が重要でありますし、イラクの復興における国際社会が一致をした取り組み、これが不可欠であるというふうに考えております。日本としても最大限の協力をしていきたいと考えています。

丸谷委員 ありがとうございました。

 国際社会のイラクに対する支援のあり方の中で我が国がどのようなかかわり方をしていくのか、この点についてまた次回に質問をさせていただきたいと思いますので、どうかよろしくお願いいたします。

 以上で終わります。

米澤委員長 次に、阿久津幸彦君。

阿久津委員 民主党・無所属クラブの阿久津幸彦でございます。

 本日は、三条約の承認案件についてまずお伺いをしたいと思います。

 初めに、千九百九十二年の油による汚染損害の補償のための国際基金の設立に関する国際条約の二千三年の議定書について伺いたいと思います。

 私の印象では、我が国はついこの前、一九九二年基金による三百二十五億円、二億三百万SDRですかへの補償引き上げの国内法整備を終えたばかりです。しかも、これまでのタンカー事故で最大級と言われるロシアのタンカー、一九九七年のナホトカ号事件でもその補償額は約二百六十一億円、フランスのブルターニュ沖の一九九九年のエリカ号事件でも二百五十億円程度で、三百二十五億円の範囲でカバーされるものでございます。

 この国際条約を超える唯一の例外が、スペイン沖のプレステージ号事件で、補償額は一千億円ともそれ以上とも言われております。ただ、このプレステージ号事件は、IMO外交会議でも指摘されたとおり、船齢、船の年齢が二十六年のシングルハルタンカーであったことが原因と見られる、極めて例外的なケースでもあります。だからといって、私がこの議定書に反対しているわけではないんですけれども、果たして費用対効果の点で我が国の国益にかなうものかどうかは厳しくチェックする必要があると考えます。

 そこで、本議定書の発効により、日本の荷主にとってどの程度の財政的な負担増と見込めるのか、また、その影響はどうなのか、お伺いしたいと思います。

門司政府参考人 お答えいたします。

 この議定書の締結によって限度額を引き上げますけれども、それに伴いまして、当然に、関係者の負担がふえるということではございません。この追加基金への拠出は、管理費用等への比較的少額の拠出を除けば、油を受け取る荷主、石油輸入会社あるいは電力会社、そういったところが、実際に油の汚染事故が発生し被害額が確定した後に、事後的に徴収される仕組みとなっております。したがいまして、拠出する金額の多寡というものも、実際の油損害事故の程度などによって異なりまして、どの程度財政的な負担増となるかについて、あらかじめ予想することは困難でございます。

 それから、負担の関係につきましては、締約国が少ない間には、特定の国に負担がかかってはいけないということで、一定の期間、上限を設けております。したがって、そういうことも各国の負担の軽減にはつながるということになっております。

 プレステージ号というのは、確かに未曾有の事故ではございますけれども、この議定書はそういった事態にあらかじめ備えるということでございまして、仮に、今回言われておりますような、千二百億円、上限に近い事故が起こりますと、理論的には、今日本が払っている金額が四倍近くになるということも考えられますけれども、これまで過去三年間を見ますと、十四億、二十三億、二十九億と、日本の関係企業の負担は年平均で二十二億円になっておりますので、まだ実際にそういった事故が発生しない限りにおいては、我が国の関係企業の負担が大幅に増額するということはないと思っております。

 それから、これは事故が発生したときへの対応でございますけれども、そもそもそういう事故を発生させないようにするという対応も、国際的に非常に大きく行っております。

 いずれにせよ、こういった仕組みについては、国土交通省の方から我が国の石油輸入業界等にも十分説明して、理解を得た上でこの締結を行いたいということでございます。

阿久津委員 私も、プレステージ号事件以来、日本でいえば国土交通省を中心にさまざまな対策がとられているということを存じ上げております。先ほどの条約の説明であれば、事後的かつ実害に基づいてということでございましたので、安心いたしました。

 続いて、米国は国際油濁補償基金条約には加盟していないということでございますが、米国は独自の補償制度を採用しているわけで、その米国の独自の補償制度と本議定書の制度と、具体的にどこが違うのか。また、なぜ米国は独自の制度を採用し、本議定書の制度に加わらないのか。お答えいただきたいと思います。

門司政府参考人 米国は、一九九〇年に制定されました連邦法によりまして、自国の輸入油及び国内算出油への課税によって賄われる油濁責任信託基金を設立し、一事故当たりの補償の限度額を十億ドルとする制度を有しております。つまり、国際的な枠組み、関係国との共同による枠組みではなくて、自国独自の制度で対応しているということでございます。

 あと、違いでございますけれども、財源の確保の点が国内的なものであるということと、船舶所有者に重過失があった場合には、アメリカの制度のもとでは責任制限を主張できなくなります。ただ、一九九二年の責任条約のもとでは、汚染損害が船舶所有者の悪意、故意等によって引き起こされたことが証明された場合に限って責任制限を主張できないとされており、そこに若干の違いがあると思っております。

 それから、国際的な枠組みとの違いですけれども、アメリカの制度のもとでは、州法によって連邦法よりも厳しい規定を置くことができるとされておりまして、州によっては船舶所有者の責任制限自体を認めていない場合もあるというふうに理解をしております。アメリカが独自の制度をとっているということは、十年以上前に、今我々がこの議定書によって行おうとしております限度額の大幅引き上げというものが、実は実現されていたわけでございます。

 アメリカがこの油汚染損害の関連の国際的な条約をどうして締結しないかについて、この場で私どもが云々することは必ずしも適当ではないと考えますけれども、引き続き、我が方としては、国際的に統一された制度が望ましいということ、それが各国の負担を下げるということ、それから国際的な限度額もアメリカが十年前に持っておったものに近づいた、あるいはそれを超えるということを踏まえまして、今後、積極的に参加を働きかけていきたいと思っております。

阿久津委員 米国油濁法が一九九〇年にできたのも、被害総額千四百億円に上る一九八九年のアラスカ沖エクソン・バルディーズ号事故による広範囲の汚染がきっかけと聞いております。ほぼ同額を補償できる国際条約が整ったわけですから、先ほどそんなニュアンスのお答えも門司さんの方からいただいたんですけれども、国際条約が整った上ですから、一元化の道も開かれたというふうに考えております。

 今後、米国を含めた一元化された制度構築のため、日本が何らかの働きかけを具体的に行っていく用意があるのかどうか。意気込みだけで結構です、確認したいと思います。

門司政府参考人 まず、日本みずからがこの議定書を締結し、その発効に貢献するとともに、既にこの条約の推進を決定していますEU諸国、彼らも本年じゅうには相当の国が締結いたしますけれども、そういったほかの締約国とも連携して、国際海事機関等の場を通じて、アメリカを含む非締約国に対して早期締結を呼びかけていきたいと考えております。

阿久津委員 海運はもともと、海は世界どこでも一つということで、十九世紀ぐらいから非常に国際性が富んでいる分野だと聞いております。ぜひ、より安定に向けて、一元化への努力を行っていただきたいということをお願いしたいと思います。

 次の条約の方に移りたいと思います。

 千九百七十三年の船舶による汚染の防止のための国際条約に関する千九百七十八年の議定書によって修正された同条約を改正する千九百九十七年の議定書について伺いたいと存じます。

 まず、船舶を発生源とする大気汚染の実態の概要と、本議定書の発効によってどのぐらいの大気汚染が防止される見込みなのかを伺いたいと思います。

角政府参考人 お答えいたします。

 国土交通省によります平成十二年の推計では、我が国の領土、領海及び排他的経済水域における窒素酸化物及び硫黄酸化物の総排出量のうち船舶によりますものは、窒素酸化物で約三〇%、それから硫黄酸化物で約二五%になるというふうに承知しております。本議定書が発効いたしまして大気汚染防止規制が導入されますと、窒素酸化物の排出量がおよそ三割削減された原動機が船舶の更新に従って普及していくことになりますので、それがそれなりの効果があると思います。

 また、硫黄酸化物に関しては、燃料の油として使用される重油のうち、高濃度の硫黄分を含むものは使用ができなくなりますので、日本に来る外国船舶にも規制が及ぶことになることを考えますと、中長期的に大気汚染の改善効果が十分期待されるというふうに考えております。

阿久津委員 私の知るところでは、一九九二年に当時の環境庁が船舶排出大気汚染物質削減手法検討委員会を発足させ、国レベルでの検討を始めてから十年以上たっているわけですけれども、これまで我が国は船舶に対する一律の排出規制を行ってきませんでした。

 一九九七年の国際海事機関、IMOで本議定書が採択されてから今まで、締結に至らなかった理由を伺いたいと思います。

門司政府参考人 我が国は、この議定書の作成過程において、エンジンの構造あるいは窒素酸化物の排出に関する知見や技術的な情報、我が国が有しておりましたものを積極的に提供する等して、窒素酸化物の排出規制値やその確認方法を提案し、IMOにおける議論を主導してまいりました。

 IMOでは、この議定書の採択後に、規制の具体的な方法や基準の細則について検討が進められておりました。我が国がこの議定書を締結するに当たりましては、そういった技術的詳細について、議定書の国内的実施を確保する観点から、細則等についても十分検討する必要がありました。また、他の締約国の動向を見きわめると同時に、国内の関連産業、関連業界の受け入れ体制についても検討を行ってまいりました。

 九七年以降、現在までにIMOの場において順次、技術的詳細を定める国際的な関連決議文書が採択されております。それを受けまして、我が国としてもこれらについて技術的検討を行いまして、同時にこれと並行して、関連業界を初め関係各方面と国内実施体制の整備等を進めてまいったところでございます。

 今般、そういった準備状況を経て、この議定書の国内的実施を確保できる見通しとなったことから、国会にこの条約の締結について御承認をお願いするに至った次第でございます。

阿久津委員 ちょっと費用の点について伺いたいと思うんですけれども、本議定書に基づく規制の実施に伴う費用増はどのぐらいのもので、国内的にどのような影響が予想されるのか、伺いたいと思います。

角政府参考人 お答えいたします。

 国際航海に従事する船舶については、二〇〇〇年一月一日以後に建造された船舶に設置されるディーゼル機関が規制の対象になります。我が国におきましては、既にこの規制の導入を見越して規制値を満たす原動機を搭載しておりますので、船主に対して必ずしも新たな負担を課すものとはならないというふうに承知しております。

 また、内航船、自国の港それから沖合の係留施設へ航海する船でございますが、それに関しましては、この議定書の効力が生じる日以後に建造された船舶の原動機に適用されるということでございまして、今まで、それ以前につくられた既存の船舶に設置されている原動機には適用されません。

 それから、我が国が現在出荷しておりますディーゼル機関は、既に本議定書に定める規制値を満たしているというふうに承知しておりますので、この関連からも、船主に新たな負担を課すものになるというふうには承知しておりません。

阿久津委員 海の国際的なおきては冷酷なまでの自己責任原則だそうなんですが、シーマンシップというのは、みずから進んでさまざまなことをやっていく上で、できるだけ外から規制されないでみんなの海を守ろうという意味も入っているというふうに聞いているんですけれども、もちろん、このような社会的な規制は国際条約でも必要だと思っておりますが、運用面において、余りぎすぎすとした形で、シーマンシップ、ボランティア精神みたいなものを縛るような形で運用されないことを願っております。

 条約承認案件の最後に、地中海漁業一般委員会に関する協定の改正について、先ほど宮下委員の方から詳しく質問がございましたので、ごく簡単に一点だけ伺いたいと思うんです。ずばり、日本が分担金を拠出することのメリットを伺いたいと思います。

鈴木(庸)政府参考人 お答えいたします。

 まず、我が国が拠出することになると見込まれている分担金の額でございますが、先ほど宮下委員に対して七億六千万ドルと申し上げましたが、訂正させていただきます。約七万六千米ドルでございまして、日本円にいたしますと約八百万円でございます。これは、地中海漁業一般委員会の予算額約七十五万米ドルの一割に相当する額でございます。

 日本がこの額を拠出いたしますメリットでございますが、まずは、日本が地中海においてもクロマグロ漁獲のための操業をしているということでございまして、二〇〇二年の統計に従えば、三百六十トンの漁獲、約六億三千万円の漁獲金額を上げております。このような活動をしておりますということで、日本政府としましては、地中海におけるクロマグロを含めた海洋生物資源の保存及びその持続的利用のための活動に貢献する、そのために地中海漁業一般委員会の機能の強化に取り組むということが重要であると考えております。

 したがいまして、その一環として、このたび協定改正によりまして自主的予算の確保ができることになったわけでございますが、これに対して財政的貢献をしていくということによって、この委員会の活動に貢献をしていくということが重要であると考えている次第でございます。

阿久津委員 先ほど七億六千万ドルと聞いて実はびっくりしまして、実は先ほど自席で一生懸命計算していたんですけれども、七万六千ドルが正しい数字と伺って安心しました。この程度の分担金であれば、おつき合いとしても許される範囲ではないかと考えております。

 それでは、一通り条約の関連の質問をさせていただきまして、少し時間が残りましたので、子供をテーマに何点かお伺いをしたいと思います。

 といいますのは、青少年による凶悪犯罪の増加、頻発する児童虐待など、子供を取り巻く環境の悪化は甚だしいものがあると認識しております。子供受難の時代というのでしょうか、戦争の世紀と化した二十一世紀に、子供たちを守るための努力を各国協調してもっと早急に取り組むべきであるし、そうしないと、せっかくの未来の宝であります子供が本当に将来心配な状況になるのではないかというふうに考えております。

 そこで、三月三十日、本衆院で可決され、四月二十一日に参院で可決されました、児童の売買、児童買春及び児童ポルノに関する児童の権利に関する条約の選択議定書のその後の状況について伺いたいと思います。

 ユニセフを初め国際機関やNGO、NPO、内外の人権ボランティア団体、さらに多くの一般市民からも、この議定書をいつ締結するのか、日本の取り組みが注目を集めています。そこで、同議定書の締結に向けた進捗状況を教えていただきたいと思います。

門司政府参考人 四月二十一日に国会の承認を受けまして、本当にありがとうございます。この議定書の締結に当たりましては、刑法などの既存の各法律による担保に加えまして、児童買春、児童ポルノ禁止法、それから児童福祉法の改正が必要となっております。これらは、それぞれこの国会に提出されております。

 このうち、児童買春、児童ポルノ禁止法改正案につきましては、六月の三日、衆議院本会議において可決されたと承知しております。また、児童福祉法改正案につきましては、現在、衆議院厚生労働委員会に付託されていると承知しております。

 政府といたしましては、これらの法改正がなされ次第速やかに、所要の手続を経て、この議定書の締結を行う所存でございます。

阿久津委員 児童福祉法の改正の方がなかなか時間ぎりぎりなのかなというふうに思っているんですけれども、この問題については、与党も野党もないと私は考えております。こうしている今も、世界じゅうで一年間に人身売買される子供たちの数は百二十万人、また、戦争に駆り出される十八歳以下の子供たち、少年兵の数は八十万人、どちらも貧しい国の子供たちばかりです。とにかく、一日も早い締結を望みたいと思っております。

 続いて、この議定書には、児童の性的搾取などを目的とする不適切な養子縁組を犯罪とする条項が入っていたというふうに認識しているんですが、ところが我が国が養子縁組に関するハーグ条約に入っていないために、この条項が効力を持ちません。そこで伺いたいと思うんですが、養子縁組に関するハーグ条約に我が国が加入しない理由は何でしょうか。

門司政府参考人 お答えいたします。

 この条約は、国家間にまたがる養子縁組に関しまして、子供の基本的権利を尊重し、人身売買等を防止するための保障措置を定め、その措置の実効性を確保するために国際的な協力体制を確立すること等を目的としております。

 そして、そのために締約国が中央当局を指定することとしております。その中央当局は、養子縁組を行う当事者に関する情報の交換、縁組手続遂行の援助あるいはこの受け入れ国への入国や永住のために必要な措置等を行う義務を有すると規定しております。したがいまして、非常に具体的な義務がかかってくるわけでございます。

 このような中央当局による国際的な協力体制に我が国として参加するためには、養子縁組に関する国内法の整備を含めまして、関係省庁等の協力による適切な体制を整えることが必要でございますが、現時点ではまだそのような体制を構築するめどが立っていないと承知しております。したがって、まだ条約を締結する段階には至っておりません。

 なお、我が国において、この条約が適用されるような国際的な養子縁組というものの実態について、外務省として必ずしも十分に把握しているわけではございませんけれども、欧米に比べますと、その件数がどのくらいになるだろうかということが、個人的にはちょっとそういう感じがしております。

阿久津委員 欧米では、この不適切な養子縁組はかなり問題になっているというふうに聞いています。それで、ひどい例を挙げると、養子縁組の形をとりながら子供を買い上げて、朝から晩までずっと働きづめでその子供を扱って、女の子であれば少し年齢になると性的搾取に至るという、今の私たちの常識では考えられないようなことも起こっております。

 では、日本が加害国になり得ないかというと、私はそうは思っておりませんで、児童の売買、児童買春及び児童ポルノに関する児童の権利に関する条約についても、日本が加害国になっているという報告も出ております。そこで私は、どんどんどんどん犯罪が国際化しているということを考えれば、早く先に手を打っておかなければ大変なことになるというふうに考えています。

 先ほど御説明いただいたんですけれども、もう少し具体的に、どこをどうすれば国内法の整備ができてハーグ条約に入れるのか、ちょっと伺わせていただければというふうに思います。

門司政府参考人 お答えいたします。

 現時点で、必ずしも関係省庁とその詳細について検討が具体的な形で進んでいるというわけではございませんけれども、例えばこの条約の中で、国家間にまたがる養子縁組を行うに当たりましては、子の出身国の権限のある当局が縁組が子の最善の利益に合致する旨の決定を行う等、そういった措置がある、もちろんこれは送り出す側の方でございます。そして、受け入れる側もどういう形で具体的な養子縁組の実施を進めていくかということについて、送り出す国と受け入れる側との当局間の合意が必要であるというふうなことも規定されてございます。これは、これまで我が国においてはなかなかこういった制度はございませんでした。

 確かに、委員御指摘のとおり、この条約の中には、養子縁組についての同意がいかなる種類の金銭の支払いまたは対価をも誘因とするものであってはならないといった規定もございまして、そういった養子縁組に名をかりた児童に対する虐待、差別、搾取の防止に役立つものであろうとは思いますけれども、我が国の制度に照らしてどういった問題点があるかにつきましては、今後さらに検討を進めていく必要があろうかと思っております。

阿久津委員 我が国の制度は、たしか家庭裁判所が責任を持つというか、家庭裁判所が判断をするということで、それ自体、悪い制度だというふうに私は思っていないんですけれども、このハーグ条約を結ぼうとすると、この養子を保証するみたいな、責任の所在を明確に受け合う機関が必要なので、日本の法整備がなかなか難しいと。それで、法務省、厚労省、総務省、警察庁などさまざまな省庁が入り乱れて調整が難しいので、なかなか不適切な養子縁組を取り締まる法整備ができないというふうに聞いているんです。

 大臣に確認をしたいんですけれども、不適切な養子縁組で犠牲になるのも貧しい国の子供たちばかりでございます。ハーグ条約への加入に向けて、政府として、関係省庁を調整し、国内法整備等を行う意思があるのかどうか、確認したいと思います。

川口国務大臣 先ほど来説明がありましたように、これは国内法の整備というところでのめどが必ずしも今立っていないという現状であります。他方で、政府、外務省といたしましては、この条約を作成する段階で、関係省庁と協力をしながら、ハーグ国際私法会議の特別委員会あるいは外交会議における審議等については積極的に参画をしてまいりました。

 今後、これは、まず国内法の、委員もおっしゃったようなさまざまな調整あるいは検討ということが必要で、外務省としては、その進捗状況に応じて、この条約の締結の可能性について緊密に連携をとっていきたいというふうに考えております。関係省庁と緊密に連携をとっていくということでございます。

阿久津委員 ユニセフも、子供に多い養子売買、家事労働者として搾取ということを指摘しておりまして、特に今ヨーロッパでこれが大きな問題になっているんですけれども、必ずアジアの方にも広がってくるということを私は懸念しております。まだまだ私も勉強不足なんですけれども、家庭裁判所での決定の前後に何らかの機関を設置すれば法律を満たすようなことは可能だというふうに思っておりますので、ぜひ引き続きの御検討をお願いいたしまして、この質問を終わらせていただきたいと思います。

 最後に、もうちょっとだけ時間がありますので、アフガニスタン支援について伺いたいと思うんです。

 二〇〇一年の九・一一テロ、十月の米軍のアフガン侵攻、それから十二月にタリバン政権が崩壊してカルザイ政権ができて、ボン合意というアフガニスタンの復興のプログラムができ上がったと思います。その後、二〇〇二年の一月には支援国の国際会議が東京で開かれて、日本もホスト国として拠出金等の部分で積極的な発言をして、国際的な評価も大変高かったというふうに聞いているんですけれども、ボン合意の実現に向けて、アフガニスタンの復興の現状をどのように認識しているのか、お伺いしたいと思います。

鈴木(敏)政府参考人 お答えいたします。

 アフガニスタンにおきましては、昨年末から本年一月にかけまして、憲法制定のためのロヤ・ジルガが開催されております。また、そこで新しいアフガン憲法が採択されました。また、三月三十一日にはベルリンにおいてアフガニスタンに関する国際会議があり、そこでカルザイ大統領が本年九月に大統領選挙及び議会選挙を実施する旨発表されております。

 選挙の実施は予定よりも多少おくれましたけれども、二〇〇一年十二月のボン合意以降、これまでのところ、ボン合意に基づく政治プロセスというものはおおむね着実に進展しているというふうに考えております。九月の大統領選挙と議会選挙は、このボン合意に基づきます政治プロセスの総仕上げと言うべきものでありまして、現在、選挙実施に先立つ有権者登録が進められております。

 地方の治安情勢に対する懸念とか作業の遅延、それから選挙実施費用の調達等の課題もございますけれども、こうした中において、我が国が国連とともに主導的に支援している兵士の武装解除、動員解除、社会復帰のプロジェクトの推進というものが、選挙実施に向けた良好な環境を整備するという意味でも貢献しているのではないかと思っております。

 さらなる復興の進展のためには、麻薬問題とか治安問題の対応が必要でありまして、いろいろ課題は残されておりますけれども、こういった中で、我が国は、地域総合計画等々もやりながら、地雷対策であるとか幹線道路整備等の支援を実施していく。こういったことを通じまして、我が国としては、移行政権を中心とした国家統一が促進されて、それでアフガニスタンに平和が定着するよう、引き続き助けていきたいというふうに考えております。

阿久津委員 イラクの問題ももちろん深刻なんですけれども、世界には本当に貧しい国がありまして、何をもって貧しいかというのはなかなか難しい部分が定義の上ではありますけれども、国際機関のレーティングで言うと、北朝鮮よりもアフガニスタンは貧しい国ということを聞いております。

 特に、アフガニスタンの歴史はほぼ、何というんですか、大国に翻弄された歴史で、もう大臣、うなずいていらっしゃるのでおわかりだと思うんですが、一時的に大国の都合で支援をしてもアフガニスタンは決してよくならない、場合によったら五十年、百年単位で、復興に向けて、継続的に、細くても長い支援が必要だと思うんです。アフガニスタンへの我が国の支援について、引き続き中長期的な見地から継続して行うべきだというふうに考えておりますが、日本政府の見解を伺いたいと思います。

川口国務大臣 日本政府の見解も全く委員の見解と同じでございまして、アフガニスタンというのは、やはり戦争から平和に向かって、平和の定着をやっていくための努力のモデルケースだと思うんですね。ここで失敗をしてはほかの国もうまくいかないというふうに考えております。それは国際社会の考え方でもあると思います。

阿久津委員 戦争から平和に向けて復興させていくモデルケースにアフガニスタンをしたいという力強い表明をいただきまして、本当に感謝申し上げます。

 日本円千円で、アフガニスタンの子供一人が小学校に復帰できるそうです。ただし、一年間だけ寄附していると、また学校に行けなくなってしまう。やはり継続する力というものが、特に教育問題、子供たちの支援に向けて絶対必要と考えておりますので、そこのところを再度強くお願いいたしまして、私の質問を終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。

米澤委員長 次に、末松義規君。

末松委員 まず、審議に入る前に、きょうの理事会でもございましたけれども、日本人の外交官射殺事件に関しまして、外務省が先日報告書を出しましたけれども、どうもその報告書そのものが脚色があるんじゃないかという疑いが持たれておりますし、参議院でも、外務大臣みずから、やや疑問に思ったことがあるという話をされておられたということを若林議員の方から伺っております。

 そういうこともございまして、理事会でも要請をいたしましたけれども、委員会として、イラク人の専門家と言われる二人の専門家の報告書、そして上村臨時代理大使の報告書を改めて求めていきたいということ、さらに岡本氏、それから上村臨代の参考人の招致を改めて求めていくということで、委員長の方にぜひこのお取り扱いの方をよろしくお願い申し上げます。

米澤委員長 引き続き理事会で協議をして結論を出したいと存じます。

末松委員 ありがとうございます。

 本審議の対象となっております条約三本については、私もいろいろと精査をいたしまして、これは、いろいろと若干問題はあるにしても、条約を結んでやった方がいいという結論に達しましたので、私自身、賛成でございます。したがいまして、きょうはこの議論は同僚の議員の質問に譲ることといたします。

 それで、きょう、私の方で非常に関心を持っておりますのがイラクの問題でございます。現地時間で八日ですか、新たな国連決議が出たということでございます。したがいまして、その点から質問を順次させていただきます。

 まず、小泉総理から、多国籍軍に参加をするという話がございました。これは、報道、私もニュースで知ったんですけれども、そこは実際どういうことなんでしょうか。

川口国務大臣 小泉総理がおっしゃられたことですけれども、これは、日米の首脳会談におきまして、日本として、イラク暫定政府にも歓迎される形で、イラク人道復興支援特別措置法に基づく自衛隊の派遣を継続する考えであるということを表明なさったというふうに承知をいたしております。

 それで、自衛隊をどのように位置づけるか、自衛隊の位置づけですね。これにつきましては、一五四六がきょう採択されましたので、その内容を検討いたしまして、G8のサミットにおける各国の首脳の議論ですとか関係各国との協議、こういったことを踏まえた上で、位置づけについては政府として適切に判断をするという考えでおります。

末松委員 ということは、まだ多国籍軍に入る、入らないという判断をしていない、こういう位置づけですか。

川口国務大臣 ということでございます。

末松委員 それではお聞きしたいんですけれども、現在、今のCPAとの関係なんですが、そこの、コアリションフォーシズと言っていますが、コアリション、今の多国籍軍の中に日本の自衛隊はメンバーとして入っているんですか。大臣と言いたいところですが、いいでしょう。

西田政府参考人 お答えをいたします。

 ただいまの御質問ですが、これにつきましては累次当委員会においてもお答えをしておりますが、現在、安保理決議一四八三それから一五一一を踏まえまして、いわゆるイラク特措法に基づきまして人道復興支援を中心とした活動を行っているわけでございますが、このような活動をしている自衛隊は、あくまでも我が国の指揮のもとにあるということでございまして、ただいま御指摘の、安保理決議一五一一でつくられております多国籍軍の統合された司令部の指揮下にはないということでございます。

末松委員 大臣、それに間違いありませんね。

川口国務大臣 間違いはありません。

末松委員 今、指揮下にない、だから多国籍軍に入っていないという話でありました。

 ほかの国は、指揮権は、すべて多国籍軍あるいはCPAのヘッドですか、その指揮下に入っているんですか、日本以外。

西田政府参考人 他の国々の場合にどこまでの議論あるいは法的位置づけをされているかについて、詳細を必ずしも承知する立場にございませんが、私たちの承知している限りにおきまして、例えばニュージーランド、韓国等におきましても、それぞれの国の指揮下において活動しているという理解のもとであるやに承知をしておるところでございます。

末松委員 逆に、それぞれの国、つまり、答えていただきたいのは、その国以外、多国籍軍の何かコマンダーに服している国はないですね。みんな日本と同じですよね。日本も自国の指揮のもとにあるわけであって、それはほかの国と変わりませんよね。

西田政府参考人 私たちの理解では、数と詳細はわかりませんが、かなりの数の軍隊を出している国にあっては、むしろ統一された指揮のもとで治安あるいは安定のための活動をしている国があるやに承知をしております。(末松委員「どこですか」と呼ぶ)いえ、過半の国がそうであろうというふうに理解をしておりますが、詳細は私たちは承知をしておりません。

末松委員 詳細は知らないということでした。

 CPAのオーダーの第十七号に「コアリション パーソネル」というのが書いてあるんですよ。定義のところで、コアリションというから、連合国の人というんですか、人員というか、これの定義が書いてありまして、この定義として、コマンダーの命令に服する、あるいは多国籍軍のコマンド、つまり命令に服するというふうなことがしっかりと書いてあるんです。これは間違いありませんよね。

西田政府参考人 お答えをいたします。

 ただいまの御指摘は、CPA命令第十七号セクション1、定義の「コアリション パーソネル」のところであろうかと思いますが、そこに書いてございますのは、「オール ノン イラキ ミリタリー アンド シビリアン パーソネル アサインド ツー オア アンダー ザ コマンド オブ ザ コマンダー」、それから「コアリション フォーシズ」、それからさらに「オア オール フォーシズ エンプロイド バイ ア コアリション ステート インクルーディング アタッチト シビリアンズ アズ ウエル アズ」ということで、幾つかの国の例が挙がっておりますので、前から御説明をしておりますが、我が国自衛隊等の関係性につきましては、この「オール フォーシズ エンプロイド バイ ア コアリション ステート」、この場合には日本でございますが、というようなものの中の範疇にあるという理解でございます。

末松委員 そうしますと、これもコアリションのこれはメンバーですよね、ここに書いてあるように、該当する国は。ちょっと答えてください。

西田政府参考人 ここに言っておりますところのコアリションのステートということでございます。

末松委員 日本政府は、これに基づいてノートバーバルというのを交換しているわけですよ。そこで、ノートバーバルに何て書いてあるかというと、この一枚紙、上村臨時代理大使あてですね、そしてポール・ブレマーさんが署名をしているわけですけれども、そこで、「ザ セルフ ディフェンス フォーシズ ウイル ビー トリーティド アズ コアリション パーソネル アズ ディファインド イン CPA オーダー ナンバー セブンティーン」、つまり、コアリションパーソネルとしてこれは扱われるんだ、それでいろいろな免責条項とかその辺が定められているんですけれども、このノートバーバルを交わしたということは、まさしくコアリション、多国籍軍の一員ということになるんじゃないですか。

西田政府参考人 この点はこれまでも御説明を行っておりますが、このようなCPAの十七号によるという形で、先ほど申し上げた形で日本の自衛隊は扱われるということと同時に、CPA及びアメリカ側に対しまして、日本の自衛隊は、先ほど申し上げましたが、指令部の指揮下には置かれていない、そういう意味においてコアリションフォーシズではないということで、その了解をとっているところでございます。コアリションステートでございますが、コアリションフォーシズではないというところでございます。

末松委員 では、コアリションステートとコアリションフォーシズの違いを言ってください。

西田政府参考人 コアリションフォーシズというのは、いわゆる統一、統合された指揮のもとで、全体として治安等、いわゆる一五一一等々に規定をされております活動を行っている軍隊ということだと思っております。

末松委員 そのコアリションの中のフォーシズ、つまりさっき言われたフォーシズなんですよね、自衛隊は。「オール フォーシズ エンプロイド バイ ア コアリション ステート」と。要するに、コアリションのフォースということじゃないんですか。

 つまり、コアリションフォーシズという中にも、あなたが今詳細はわからないと言ったけれども、コアリション、要するに多国籍軍と、入っているということを表明して、アメリカも表明している国があるじゃないですか。日本もアメリカがコアリションフォーシズの一員として、たしかホームページか何かで書いていましたよね。それは認めますよね。それはどういうふうに説明されるんですか。

西田政府参考人 今の御質問のいわゆるホームページ等につきましては、これはいわゆる彼らのコアリションの活動というものをいわばPRとして報じているものということでございますので、それぞれの国の、今申し上げているように、今御議論されているような詳細について、立ち入った形ではなくて、どういう国が一緒になって全体としてイラクの復興に取り組んでいるかということを説明するものというふうに私たちは理解をしておりまして、米側からもそのような了解をとっているところでございます。

末松委員 公式サイトに対して、米側に対して、それは抗議をしたんですか。そこは非常に我が国として機微なところですよね。そこの抗議をして、米側はそれを訂正したんですか。

西田政府参考人 抗議はいたしておりません。

末松委員 どうして抗議をしないんですか。それは、あなた、位置づけは違うということを言ったんでしょう、そこは。それをそのまましていないということは、認めているということですね。少なくとも、日本政府はそれを知っていて認めているということなんでしょう。それはおかしいじゃないですか。

西田政府参考人 先ほどお答えしましたように、この点について、米側、例えば国防省等に対して説明を求めております。そのような説明に対しまして、アメリカ側より、報道資料としてのわかりやすさを出すために簡潔な表現をすることは時々あることであるという説明を受けているところでございます。と同時に、我が国の自衛隊があくまでも我が国の指揮のもとにおいて活動しているという理解というものについての米国政府の見解には何ら変更はないという説明を受けているということでございまして、それをあえて抗議をするということはしていないという趣旨でございます。

末松委員 イタリアとかそういったところも含めて、自国の指揮下で動いていると表明している国があったと思うんですけれども、彼らは、では、コアリションのステートであってもコアリションフォーシズではないと言えるんですか。

西田政府参考人 イタリアが先ほど御指摘のCPA司令の中でどういう位置づけをしているかについて、私たちは承知する立場にはございません。

末松委員 では、あなたの定義でいくと、イタリアじゃなくても、承知していない、では逆に、自分の指揮下で動いているという国であれば、それはコアリションフォーシズではないとあなたは解釈しているわけですね。

西田政府参考人 繰り返しになって恐縮でございますが、ほかの国がどういうような理解で、CPAとの間にどのようなアレンジメントをしているかということについては、承知する立場にないということでございます。

 それで、私が申し上げて、御説明しておりますのは、日本側とそれからCPA側の了解ということについても御説明をしているということでございまして、先ほどのCPAの定義の中におきましては、ここにあります「オール フォーシズ エンプロイド バイ ア コアリション ステート」ということの中で日本の自衛隊の活動は規定をされているという理解をCPAとの間でとってあるということでございます。

末松委員 非常に説明がわかりにくいですよね。全く日本は多国籍軍に入っていないと言いながら、アメリカの公式のホームページでは多国籍軍に入っているということを知りながら、そのままにさせている。そして、アメリカの説明を、我が国の憲法上極めて機微であるにもかかわらず、そのままアメリカの説明を了としている。こんなばかな外交があるんですか。非常に重要なことなんですよ、ここは。

 だから、多国籍軍の中に入っていないということをはっきりとるる説明をしてきたと、国会でも審議してきたと言っているじゃないですか。すぐにアメリカのホームページ、変えさせてくださいよ。

西田政府参考人 外務省としましては、ただいま御説明しました措置をもって、今の時点では十分であろうというふうに理解をしております。

末松委員 では、西田局長に聞きます。

 なぜ十分なんですか。僕はわからない。大臣、今の局長答弁、なぜ十分なんですか。説明してください。

川口国務大臣 先ほど来申し上げていますように、我が国の立場というのは、先ほど委員も読み上げられた口上書等ではっきりと整理をされているということであります。

 ホームページというのは、これは広報、わかりやすさ、そういったことを追求して書いているわけでして、一つ一つ、我々としては、我々の立場は明確である、それを明確に伝えているわけですから、そういったこと一つ一つについて明確であればそれでいい、それがわかりやすさの観点から行われているという説明もあるわけです。

末松委員 この前の、あれは東海でしたっけ……(発言する者あり)東海だってそうですよ。自分の立場は一切主張する気がないんですか。だって一番機微な問題でしょう。局長、では、説明してくださいよ。あなたが十分だと思うその根拠を言ってください。

西田政府参考人 根拠という御質問でございますけれども、私たちとしましては、自分たちが、つまり、日本政府として理解をしている自衛隊の位置づけ、それからそれの、今回、今まで、主権が移行する前でございますが、イラクの統治権を行使しておりますところのCPA側とのもとにおいて理解が整っているということで十分だという趣旨でございます。

末松委員 違うよ、理由を言っていないよ。理由を言ってくれ、理由を。アプローチをしない理由を言ってくれよ。

西田政府参考人 理由は、先ほどからるる申し上げておりますけれども、ホームページであるということと、それから先ほど御説明しました、日本と接受国を代表しておりますCPAの間で了解は整っている、そこにそごがないという意味において十分だと申し上げているわけでございます。

末松委員 ならば、一般の人に説明するのが、誤解を与えてもいいということなんですか。それが外務省が言う、では、そういうことを確かに公式に今認めたということですね。つまり、プロがわかればいい、では一般の人は誤解をそのまま持っていていいということなんですねということを聞いているんですよ。もしあったら言ってください。

西田政府参考人 国会でも何回か御質問を受けておりまして、そのたびにこのような政府としての考え方は御説明をしておるということで、御理解をいただいているものというふうに考えております。

末松委員 答弁になっていない。これを続けていると、時間が過ぎていきますから、そこの外務省の姿勢について極めておかしいということを私は指摘しておきます。

 それから、今度の新しい決議の一五四六ですけれども、多国籍軍に入っているんであれば、それは、この決議の中にあるように、この多国籍軍の権限を再確認するという話になっていますけれども、では、多国籍軍に入っていない日本がイラクで活動を続けるということであれば、そうしたら、新たにイラク政府との合意が必要だと思いますよね。その点はいかがですか。

西田政府参考人 今の御質問の決議一五四六は、まさに冒頭、委員御指摘のとおり、けさ、早朝、日本時間でございますが、でき上がったばかりということで、我が国政府としましては、それを踏まえて精査をしているところでございます。

 あくまでも一般論でただいまの御質問にお答えをすれば、今の立て方から申し上げますと、御案内のように、コアリションにつきましては、一五一一のマンデートを再確認するというパラグラフとともに、加盟国政府、各国に対しまして、安定等々を行うことを任務としております多国籍軍に部隊の派遣も含めて貢献するようにという要請もまたなされているという点にも留意する必要があろうかと思っております。

末松委員 ちょっとわからないんだけれども、質問に答えてくださいよ。イラクとの合意を新たにする必要があるんですか、ないんですかということに、ちょっと答えてください。

西田政府参考人 今回の決議、先ほども御説明しましたように、特に附属の書簡等がついておりまして非常に複雑な仕組みになっておりますので、十分精査をする必要があろうと思いますが、今回の安保理決議の主たるメッセージというんでしょうか内容につきましては、まさにイラクの暫定政府の要請に応じまして多国籍軍というものが出ていくんだというのが一つでございます。

 もう一つは、先ほど申し上げましたけれども、そのような多国籍軍の任務というものがこれこれであると書いてあることと、そのような多国籍軍に、各国に対して、支援を行うようにということを組み合わせてあるということでございますので、ただいまの御質問の部分については、さらなる精査が必要であろうというふうに考えております。

末松委員 いや、はっきりわかっているのは、日本が結んだのは、CPAと結んだんでしょう。それで、一五四六に書かれているのは、ここに書いてありますよね、決議一五一一に基づき設立された、統合された司令部のもとの多国籍軍に対する授権を再確認すると書いてあるんですよ。それに含まれていないんだったら、日本がですよ、含まれていないとあなたは言った。ということは、当然、CPAは、合意が終わったら、終わるんですよ。だったら、自衛隊はどこと合意を結ばなきゃいけないかといったら、多国籍軍はまだわかっていない。それで、多国籍軍じゃない、入らないということであれば、イラク政府しかないじゃないですか。あなたは一般論でと言うけれども、そんな大ざっぱな答え方を国会でやらないでくださいよ。

西田政府参考人 イラクの政府、国というものを要するに代表するところの同意を取りつけて自衛隊というものを派遣するということについては、イラク特措法上の、そもそも国内法上の要件でございますので、これまでもたびたび御説明いたしておりますように、新たに主権がイラクに回復をするという状況を踏まえまして、しかるべき形でイラク政府の同意というものを確認するという作業が必要だということは、これまで何回も御説明をしております。

 では、それを、今回できましたばかりの安保理の決議という中で規定をされている規定ぶりと整合あるいはよく精査をしまして、どういう形でそのイラクの新しい暫定政府の同意というものを取りつけるのが適切であるかということについては、これからさらに検討する必要があるということでございます。

末松委員 暫定政権との間で合意を取りつける必要がないかもしれない、あるいは、ほかに何か形があるということですか。ちょっとわかりやすく言ってください、時間がないから。これだけで時間のむだになっちゃうんですから、早く言ってください。

西田政府参考人 必ずしもよく御質問の趣旨がわからないのですが、何回も申し上げておりますのは、イラクの新しい主でありますところのイラクの暫定政府からの同意というものを適切な形で確認するということが必要だということは申し上げているわけでございます。この点はよろしいかと思います。

 次に、今回、イラク暫定政府のそもそもの役割、あるいは、イラク暫定政府と例えば多国籍軍あるいは多国籍軍のマンデート、多国籍軍に対して、その加盟国に対していかなる要請をするのか、しないのかということについて、まさに数時間前に新しい決議ができたわけでございますから、そのような決議ができた中で規定をされておりますイラクの暫定政府との間で、どのような形で、要するに、先ほど申し上げた同意あるいは要請というものを取りつける、あるいは確認するのがふさわしいかということを、今鋭意検討しているというところでございます。

末松委員 では、西田局長の言われるのは、多国籍軍とか、あるいはイラクと多国籍軍との多分調整機関のことも指しているんだと思うんですけれども、そこのところが必要だという話であれば、多国籍軍に入るということも当然検討する、これが前提となっている、そこの中で判断をしたい、こういうことですか。

西田政府参考人 今般でき上がりました安保理決議一五四六に規定をされております多国籍軍に参加するかどうかということにつきましては、先ほど外務大臣から答弁をされたとおりでございまして、同決議の内容、それから、先ほど申し上げましたけれども、そこに具体化されておりますところの多国籍軍の目的、編成等々を考えまして、個別具体的に検討するということになろうかと考えております。

末松委員 そこの多国籍軍に参加するかどうかというのはよく検討したい、つまり、そこは多国籍軍への参加もあるべしだという、検討したいという中での判断の多義性が、今、はっきりと答えられないというのが私もよくわかったんですが。

 法制局の長官おられますよね。この多国籍軍にもし入るという場合、法的に見て、これは、書簡も私も見たんですね。パウエル書簡というのも見たんですね、附属文書ということで。それで見たら、別に、多国籍軍は、治安というのがメーンだけれども、それにいろいろと、人道援助とかそういうこともあり得るよ、用意があるよというふうにだけ書いてあるんですよ。これについて、日本として、武力の威嚇及び武力の一体化という危険性があるかもしれないですね。多国籍軍に参加するということはできるんですか。私は特に武力の威嚇ということについて焦点を当ててお伺いをしたいんです。

秋山政府特別補佐人 具体的には、これまで外務省から御答弁がありましたように、今回の国連決議の内容、それからいわゆる多国籍軍の任務、目的、編成、組織などについて今後検討されるということであろうと思います。

 それで、今のお話でございますが、具体的に我が国が多国籍軍にいかなる関与ができるかということでございますが、仮に、武力の行使、すなわち国際的な武力紛争の一環として行われる戦闘行為に当たる行動が含まれる、あるいは武力の行使をするぞという、まさにそれで相手方に言うことを聞かせる、そういうような活動が含まれるのであれば、それは我が国の九条の禁止するところでございまして、そのようなものにつきまして、このような業務、任務を行うことは、我が国としてはできないわけでございます。

 一方、我が国の行為が武力の行使には該当しない、また他国の行う武力の行使と一体化しないということが法的な仕組みとして確保されるものであれば、お尋ねのような活動に、いわゆる治安維持活動というようなものに、我が国が支援する活動につきましては、イラク特措法の枠組みのような仕組みをつくって行う限りは、憲法との関係で問題が生ずることはございません。

末松委員 最後になりますが、一点だけ。武力の威嚇という点はどうですか。つまり、イラクの国民の方が威嚇という形で考えた、その場合はどうなんですか、憲法上。それは全くあなたはお答えになっていないけれども、どうなんですか。

秋山政府特別補佐人 我が国の支援活動は、いわゆるイラク特措法の枠組みのもとで行うということが、従来から政府として表明しているわけでございまして……(末松委員「威嚇についてお答えください」と呼ぶ)そのイラク特措法の中に、「対応措置の実施は、武力による威嚇又は武力の行使に当たるものであってはならない。」ということが二条二項で明記されているわけでございますから、その辺も十分精査して、我が国の関与が、あるべき姿が決められるべきものだと考えます。

末松委員 どうもありがとうございました。

米澤委員長 次に、中野譲君。

中野(譲)委員 民主党の中野譲でございます。

 きょうは、三条約についての質疑ということでございますけれども、今までのこの外務委員会の委員の方々、そして我が党の委員の質問を通しまして、私も賛成の立場で理解をさせていただきましたので、前回、邦人保護についていろいろとお話をお聞かせいただきましたけれども、ちょっと最後、わからない部分もあったので、きょう、確認の意味も込めて、もう一度質問をさせていただきたいと思います。

 まず、川口大臣にお尋ねをしたいんですが、これはもう一回頭を、ブレーンストーミングというか、仕切り直すというか、そういう意味で、邦人保護についてですが、いわゆる一般の概念で言う邦人保護を、外務省として、そして日本政府としてはどのようにとらえていらっしゃるのかということをお聞きしたいと思います。法人保護ということについてですね、大臣。

川口国務大臣 非常に難しい、定義がしにくい御質問ですけれども、我が国として、これは政府といたしまして、海外において我が国の邦人が何らかの理由によって、その安全に危害が及びそうである、あるいは脅威が及ぶ、あるいは非常に困った状況にあるという場合に、邦人を支援するということが邦人保護の業務であるというふうに思っています。

中野(譲)委員 そうしますと、いろいろな状況で、私たち日本人が海外で命の危険、身体的な危険を含めてそういう状況に陥ったときには、日本政府ないし外務省というのは、できる限りの手を尽くして、邦人保護、そういう人たちの生命の安全を確保するということに全力を尽くすということでよろしいわけですよね。

川口国務大臣 できる限りのことをするということが政府としての務めであると思っております。それは、そもそもそういうところに行くべきではないというウオーニング、警告を出すというところも含みということであると考えております。

 それから、やれる保護、それはそのときの状況いろいろありますから、には限界があるということも申し上げたいと思います。

中野(譲)委員 今、恐らくイラクのことを念頭に入れておっしゃったのかと思うんですが、私、前にも一度お話を申し上げましたけれども、例えば、私が九七年にいましたときのカンボジアという国は、退避勧告は特に出ていないわけですよね。ただ一夜にして内戦の状況に陥ったときに、そこには日本人が数百名いる、また、あそこにはアンコールワットという歴史的な遺産があって、随分、最近は日本人の方々も旅行に行かれている。そういう方々は、旅行に行って、一夜たつといきなり内戦状態になって飛行機が飛ばなくなる。そういう中で邦人保護はしないといけないという立場を、日本政府は貫かないといけないと思うんですよね。

 イラクの場合においていえば、確かに大臣おっしゃるように、なるべく行かないでくれというような退避勧告は出すんだけれども、それでも行く方々がいる。私も前回質問しましたけれども、大体六十名ぐらいの、ほとんどが報道関係者の方で、イラクにあの四月の八日の時点でもいらっしゃるという中で、いろいろな状況があって行かれていると、退避勧告は出しているんだけれども行かれている。しかしその中で、自己責任と邦人保護のはざまにあって、日本政府なり外務省は邦人保護をどこまでできるかということが、この国の国民に対する責任をどこまで果たせるかということだと思うんですよね。

 前回私が質問をした中で、メディアと、あとNGOに対して、本省から、こちらのメディアの本部局というかそういうところに連絡をして、派遣をしている人がいるのかいないのか、いるのであれば、そういう方々に対する安否の確認をそのメディアを通してやってくれということでやられたということは前回お聞きをしました。

 その一方で、イラクの大使館では、事前に六十名ほどの方々がメールの登録をしている、そのメール登録をされている方々に対して、注意喚起ということでメールを送られたということは理解をいたしましたが、前回、答弁の中で、大使館においてでも、または本省においても、いわゆる邦人保護の安全対策という観念からいくと、特にそれ以外のことはやっていらっしゃらないという答弁だったと思うんですが、それでよろしいわけですよね。

鹿取政府参考人 今御指摘がありましたように、東京においては本社を通じて安否確認、またバグダッドにおいてはEメールを通じて注意喚起をした、そういうことでございます。

中野(譲)委員 これは、前々回私が質問させていただきました、四月二十八日なんですが、今答弁いただきました鹿取政府参考人が、確認をされている七十名近い方に、これは大使館員も含みますから実際は六十名ぐらいですが、どのような連絡をとったんですかという私の質問に対しては、我々は、把握をしている邦人の方々に対しては常に連絡をとるようにしておって、とったものと考えておりますという答弁をいただきました。

 そして同じ日に、私どもは、常日ごろからの対応としては、そういう節目節目の状況におきましては、連絡のとれる方に対しては連絡をとるように心がけている、四月八日の段階で何人の方に連絡をとったか、今その具体的な人数はわからないけれどもという話をしておりましたが、Eメールを送るということは、連絡をとったということになるんでしょうか。

鹿取政府参考人 当時の時点について御説明させていただきますと、三人の方の誘拐、こういう事件がございました。それで、まず、東京においては、本社を通じて確認をしたわけでございます。また、バグダッドにおいては、Eメールを通じて注意喚起をした。

 私どもとしては、その時点では、その両方の措置がともに有意義である、こう考えてとったわけでございます。

中野(譲)委員 私の質問は、常に邦人に対して連絡をとるという立場をとっているわけですね、連絡をとったのかどうかということを私はお聞きしているわけで、外務省が、それが有意義だとか有意義じゃないとかそういう話じゃなくて、連絡をとったんですかと。Eメールを通して配信をするわけですね、メールを。これは連絡をとるというような概念の中に外務省としては入るのか入らないのかということを、私はお聞きしているわけでございます。

鹿取政府参考人 私どもとしては、本社を通じての安否確認、それから、現場でのEメールを通じての注意喚起、これも一つの情報発信、連絡の態様だ、こう認識して行ったわけでございます。

中野(譲)委員 そうしますと、一般に、連絡をとる。私、一般人の感覚でいくと、私が鹿取さんのところに連絡をとるといえば、電話をするなりEメールをするなりでも結構ですけれども、連絡をするということは、相手からの返答があって初めて連絡をするのかなという気がするのですよ。

 それで、先ほどからずっと注意喚起、注意喚起という話をされておりますけれども、注意喚起と邦人保護、これは違うと思うのですけれども、そこの色分けというのはどのように外務省は理解をされているでしょうか。

鹿取政府参考人 まず最初に、今、先生から御指摘がございました、もし連絡をとるのであれば、相手からの返事を確認すべきではないか、こういう御指摘がございました。

 確かに、Eメールを発出したということの後に、例えば、Eメールにおいて、そのEメールを受け取ったことを確認していただきたい、そういうことをするということは、私どもも有意義ではないかと考えております。

 ただ、Eメールを出しただけではないかという点について一点述べさせていただければ、当時の状況においては、例えば、個別に当該邦人の安否を改めて確認するというのはそれほど容易ではございません。例えば、電話をかけるという方法がございますけれども、電話の場合はなかなか通信が悪い、そういう面がございます。また、例えば、それでは館員が赴いたらいいではないか、こういうこともあるかもしれませんけれども、それもなかなか当時の状況では難しい面がございました。したがいまして、私どもとしては、まずやはりEメールにおいてどういう事件があったかということをお伝えして注意喚起をする、そういうことを考えたわけでございます。

 また、注意喚起は邦人保護とどういう関係であるかという御指摘でございますけれども、我々は、その注意喚起の文書において、イラク国内に滞在されている皆様におかれては、本報道、これは三名の方が誘拐されたという報道でございますけれども、この報道を踏まえ、移動時、宿泊施設での滞在時等、くれぐれも御注意いただきますようお願いいたします、そういうことを呼びかけたわけでございます。

 したがいまして、邦人保護という観点からも、我々はこれは意義があると考えて行ったわけでございますし、また別途、東京からは、先ほど申し上げましたように安否確認を行った、こういう次第でございます。

中野(譲)委員 きょう、逢沢副大臣がいらっしゃらなくて私は大変残念で、もうちょっと逢沢副大臣と論議をさせていただきたかったのですが、前回、最後のところで、逢沢副大臣が、所在の確認、安全の確認、できる限りのことをバグダッドの大使館員、省員はしたと承知をしておりますというお話でございますが、今の話でいえば、例えば、この間お聞きしたように、Eメールのほかに滞在先のホテル名を書いている人もたくさんいらっしゃった。また、電話番号、ファクス番号を書いている方もたくさんいらっしゃった。

 例えば、電話はかけたんですか。ファクスは送ったんですか。その中で、例えば、電話をかけたけれども通信事情が悪くてつながりませんでしたとか、ファクスを送ろうとしたんだけれども通信事情が悪くてファクスが送れませんでしたというのであれば、これは納得がいくのですよ。

 ただ、だろう、だろうで、やっていなくてそういう答弁をいただいても、結局、では何をやったんだというときに、最善の、できる限りのことをやったのかというと、これはやっていないというふうにしか判断ができないと思うのですが、その点、いかがですか。

鹿取政府参考人 当時の私どもが行ったこと、すなわちEメールを通じての注意喚起、それから本社を通じての安否確認、これは今申し上げたとおりでございます。

 また、イラクにおいて通信事情が非常に悪いということは、我々、当時の大使館としても認識しておりましたし、また、別途……(中野(譲)委員「いや、やったんですか」と呼ぶ)いや、それは、私どもは、その段階では今申し上げたことを行った次第でございます。

 また、当時は、大使館の方は、まさに三名の方を早く無事に、それこそ所在確認する、またできるだけ早く解放に向けて努力する、そういう業務を行っておりましたので、そのほかの在留邦人の方々に対してはEメールで注意喚起をした、そういうことでございます。

中野(譲)委員 要は、忙しくて、その六十名近い邦人のことは、なかなかそこまで手が回らなかったということだと思うのですね。

 これは、この間も私お聞きをしましたけれども、そういう中で、現にその数十名の方々がいらっしゃって、そこにメール登録をしていない方が二名、その後、数日後には、またああいうふうに拘束をされるような事件が起きましたけれども、それで、安否確認をせずに、ただ注意勧告のメールを送っただけで、その六十人の所在がよくわからないと。

 外務省としては、これは、僕は、邦人保護の立場からいくと、マンパワーが足りないんであれば、どのようにバックアップの体制をつくるとか、もうちょっと考えられた方がいいのかなという気がするんですね。その点、大臣、いかがですか。

川口国務大臣 邦人保護ということについて、今後、いろいろな経験を踏まえて、改善できるところはどんどん改善をしていかなければいけないという姿勢で我々は常にいます。

 他方で、ただ、非常に現実的にこの事態をお考えいただきたいということもあるわけでございまして、限られた人数で、しかも、今まで何回も注意喚起をしているところで大勢いらっしゃる。どうやってこの安全を確認するかというのは、これは分業して、東京経由でそういうことはやったというわけです。現地で三人の、先ほど部長も言いましたけれども、人質の人たちの安全を確保するための努力、これも非常に重要な仕事であった。

 人数が限られているなら、もっとふやせばいいじゃないか、これもおっしゃるとおりで、我々もふやせるものならふやしたいわけであります。これは、御案内のように、それぞれの地域でそれぞれのニーズがあって、なかなか難しい。そういう難しい現実の中で、我々は、できる最大限のことを今やっているということでございます。資源、マンパワーも含め、予算も含め、もっとあればもっとできることはあるかもしれない。

 ただ、我々は、できる範囲で最大限のことをやっている。少なくともその努力を今やっているわけでございますし、改善ができるところは、常に、不断に改善を今しております。

中野(譲)委員 それでは、改善ができるところはぜひ改善をしてください。

 一つお聞きしたいのですが、外務省が、緊急事態における邦人保護対応マニュアルということで、一般的なマニュアルをつくっておられて、その中で、各大使館に対して、その大使館、大使館の現地の状況に合わせて緊急対応マニュアル的なものをつくれというような指示を出していると思うのですが、イラクにおいて、この緊急対応マニュアルは四月の八日の時点ではありましたか。あるかないかだけで結構ですから、時間がもったいないですから。

鹿取政府参考人 イラクについてはございません。

中野(譲)委員 イラクについては、ない。

 外務省は、最善を尽くすわけですね。ほかの国のように、ついきのうまでは、先ほども私はカンボジアの話もしましたけれども、カンボジアにおいても平時のときにはこういうことがある。もしも有事になった場合には、どういうような通信手段を使えばいいとか、それで、内戦状態のときに、なかなか自分たちの身の安全を保護することが難しい場合はどこに退避をしてとか、緊急避難はどういうふうにした方がいいよというところまでのものはあるわけですね。

 このイラクにおいては、ずっと昨年から非常に危ない状態が続いていて、その中で退避勧告も十数回にわたって出している。そういうときに、何が起こるかわからないときに、大使館が緊急対応のマニュアル一つつくっていない。つくっていないから、当然、こういう有事のときには何をやっていいかわからないから、ただメールを送っただけで終わってしまったということじゃないんですか。これは大臣、いかがですか、大臣。

川口国務大臣 先ほども申しましたように、改善できるところは改善をしていくということでありますけれども、イラクについては、これはもう本来いていただいては困るということを申し上げているわけでございまして、身の安全をみずから図っていただいて、国外に出ていただく、これをまずお願いしたいというふうに考えています。

中野(譲)委員 いていただいては困るという話が先ほどから何度かありますが、それでも邦人保護はしないといけないんですよ、まず一つ目で必ず確認をしていただきたいところは。

 もう一つは、この四月八日の時点で、NGOで日本人の方がイラクに滞在をされていました、一名。団体名は別に特に言うべきことではないので、ある団体ですね。

 今、イラクでは、ジャパン・プラットフォームといういわゆるNGOの連合体の組織に対して、外務省がイラクの人道復興支援に対するプロジェクトを、そのプラットフォームを通して、そこに参加をしているNGOに対して拠出をしていくということになっております。それで、その中で、この現地にいたNGOの方は、その団体は、団体自体がこのジャパン・プラットフォームの評議会の中のメンバーで、主要なポストを務めている方がそのNGOの代表も務めております。この団体に対して大体二億ちょっとの拠出金が外務省から出て、それで活動をしているわけですよね。

 私は、外務省にちょっとお尋ねをしましたら、退避勧告も出ているんだからということで、このジャパン・プラットフォームで現地で活動する際には五つの安全原則というものを守ってほしいという約束をして、ジャパン・プラットフォームとの中の信頼関係を築いているということでございます。

 その一点目が、「紛争地域における緊急人道支援活動の実績のあるNGOが、経験を有するスタッフのみによって行うこと。」第二点目が、「当該地域において、国際人道機関の国際職員が活動しており、当該NGOが国際人道機関と密接な協力体制下にあること。」第三が、「治安情勢が悪化した場合に備え、撤退計画を事前に作成し外務省に提出すること。」第四、「在外公館、本省との連絡体制を構築するとともに、常時通信可能な体制を維持し、必ず毎日最低一回は連絡を入れること。」五番目が、「活動に伴う危険を十分に認識した上で、NGO自らのリスクで活動を行うものであることを再確認すること。」という五つが書いてあるわけですよ。

 また、支援実施契約ということで、ジャパン・プラットフォームと外務省の中で契約書をつくっているわけですが、この中にも、特に日本人の方々に、日本のNGOですけれども、現地でコーディネーションするときに日本人は御遠慮いただきたいということが、これは文章としては書いていないんですが、そういうものは文章として今まで存在はしておりますか。しているか、していないか。

古田政府参考人 御答弁申し上げます。

 特にそういうことは触れておりませんし、そのようなことは議論しておりません。

中野(譲)委員 そうしますと、先ほど、何度も何度も退避勧告を出している、これはもうずっとこの委員会を通して外務省ないし大臣が述べられていることでございますけれども、このジャパン・プラットフォームに在籍を、登録をしているあるNGOが、日本人が、これは外務省のお金ですよ、外務省のお金で二億二千万円でイラク北部地域で活動する、その活動のコーディネーションに、退避勧告が出ているのに日本人が入っているわけですよ。これは、そうすると、大臣、どのように理解したらいいんですか。外務省のお金でこれをやっているんですよ。

川口国務大臣 経協局長から答弁させます。

古田政府参考人 御答弁申し上げます。

 先生御案内のように、NGOによる国際協力活動というのは、いろいろなニーズに応じたきめの細かい援助、あるいは迅速かつ柔軟な緊急人道支援を行っていくという観点から大変重要でございまして、私どもとしては、御指摘のように、イラク及びその周辺で緊急人道支援を行っているジャパン・プラットフォームに支援をしてきておるということでございます。

 それで、退避勧告が出ている地域におけるNGOの活動につきましては、先ほどもお話がありましたいわゆる安全五原則をプラットフォームの評議会で徹底をしていただくということで、これを確保されるように申し入れをしておるというのが第一段階でございます。そして、さらにその退避勧告をした地域の危険度が高まってまいりました場合に、入国を控えるように、あるいは速やかな退避をするようにということで、当該NGOに求めていくということをやっておるわけでございます。

 御指摘の点については、私どもとしても、NGOの本部あるいは評議会を通じて徹底して申し上げておるわけでございます。四月八日の時点以降、私どもはその申し入れの頻度を一日に複数回ということでしまして、そういったやりとりの中で速やかな退避をお願いしたという経緯がございます。

中野(譲)委員 それは、四月八日にああいうことが起こって、その後速やかに退避をお願いしますという話はわかりますよ。

 ただ、その前の段階で、例えばこれは一次、二次、三次というふうに分かれて、期ごとにプロジェクトをやっているわけですよね。この当該の二億数千万使っているNGOは、十二月の段階で外務省から資金の供与を受ける、そういう確約をいただいて、それで四カ月、五カ月ぐらいやっているわけですよね。その間に外務省は、日本人のコーディネーターがイラク国内に入っている、これ、去年の十二月からといったら、もう退避勧告が十数回出ている後の話ですよ、そういう中で、外務省の金を使ってプロジェクトをやっている団体の日本人が入っているということ、これは認識しているわけですよね。認識しているか、していないかだけ。

古田政府参考人 昨年十二月以降、現地の治安情勢が急速に悪化いたしましたので、私どもとしては、単に五原則を守るということだけではなくて、早急の退避あるいは入国を控えるようにということで強く申し上げた次第でございますし、その後も、入国者の具体的な活動につきましては逐次報告を受けておりますので、承知しております。

中野(譲)委員 そうすると、外務省が強く何度か申し入れをしたけれども、このNGOは言うことを聞かなかったということでよろしいわけですよね。

 外務省がお金を出すときには、日本人は入らないでくれ、コーディネーターはなるべく日本人以外の方でやってもらいたいという話はNGOにしていますよね。そして、この安全五原則を含めまして、この中には、邦人がイラクに入らないでくれということは、書面では書いていないけれども、外務省の立場としては当然、退避勧告が出ている国に行くわけですから、プロジェクトをやるときに日本人は入らないでくれということを何度も何度も言っているんだけれども、このNGOはその外務省の言うことを、外務省から二億数千万のお金をもらってイラクで事業をやっているのに、外務省のそういう申し入れを受け入れなかったということでよろしいんですよね、そうすると。言うことを聞かなかったわけでしょう、このNGOは。

古田政府参考人 繰り返しになるかもしれませんが、退避勧告が出ている国・地域におけるNGOの緊急人道支援活動、これは日本人が入る場合も含むわけでございますが、五原則を守っていただくというのを前提にしております。(中野(譲)委員「イラクだよ、イラク」と呼ぶ)イラクにつきましても、昨年の十二月までは同じような考え方で臨んでおったわけでございます。

 昨年の十二月に状況がさらに悪化したということで、同じ退避勧告の状況ではございますが、状況が悪化したということで、先ほど来申し上げましたような、評議会あるいは本部に申し入れをしたということでございます。それに対して、いわばみずからの御判断とリスクによって現地に入られたという事実はございます。

中野(譲)委員 それは、この間、三名の方の中の一人の女性が、自分でお金をためて、イラクで自分のお金で活動されるというのは、話はわかりますけれども、二億数千万、これは外務省から出ているわけですよ。それで、十二月以降、特にまた危険の頻度が高まっている中で、外務省から日本人を送らないでくれと言っているのに、このNGOは言うことを聞かないでやっているわけですよね。

 これは、そのNGOの職員に何かあったときには責任はどこに行くわけですか。責任の所在だけ教えてください。これは自己責任ですから、そのNGOなりそのNGOの法人にあるのか、資金を出している外務省の責任はないのかあるのか、そこだけ教えてください。

古田政府参考人 御答弁申し上げます。

 プラットフォームとの間で支援実施契約というのを結んでおりますが、その中で、そういった事態が生じた場合の責任は当該NGOにあるということを明記いたしております。

中野(譲)委員 そうしますと、先ほど私が述べさせていただきました支援実施契約という契約書がジャパン・プラットフォームとそして外務省との間にあるんですが、これは平成十五年の五月の十六日に契約を結ばれている書面でございます。この中で「支援対象となる初動活動及び経費項目」ということで、要は外務省の資金がどういうところに使われてもいいよというふうに書いてあるところでございますが、その中で、現地の体制の立ち上げというところがありまして、そこに渡航費、そしてあとは本部派遣スタッフの日当というふうに書いてあるんですが、これは五月十六日の時点でいくと、退避勧告を何回も出しているわけですよね。日本人は入ってくれるなと言っているわけですよね。そういう中で、こういう経費項目というのはどういうふうに理解すればいいんですか。日本人は行っていいというふうに書いてあるとしか思えないんですけれども。

古田政府参考人 御答弁申し上げます。

 先ほど来申し上げておりますが、退避勧告が出ている中で我が国としてどのように人道復興支援をしていくか、NGOの方々のきめの細かな対応というものをどう支援していくかということの中で、いわゆる安全五原則というものを提示いたしまして、その安全五原則を守るという前提で日本人が行かれることは認めております。これは平成十三年のアフガン支援以来、このような方針でやってきておるわけでございます。

中野(譲)委員 そうしますと、NGO支援室の方は、特に日本人は行っても構わないよ、安全五原則を守れる範囲はということで、特に邦人が行っちゃいけないという話はしていないわけですよね。ただ、これは五月十六日ですから、もう退避勧告が何度も出ているわけですよね。そうすると、邦人保護派の立場としては、日本人は入らないでくださいと再三再三言っているよ、同じ外務省の中で、片っ方は日本人は入ってもいいですよ、片っ方は日本人は入っちゃいけませんよと言ったら、これは省庁の中できちっとした連携がとれていないんじゃないですか。

 邦人は入っちゃいけないというのが外務省の大前提の姿勢でしょう。その中でこうやってお金も出し、もしも現地立ち上げのときに日本人がイラクに行くのであれば、それも渡航費を含めて構いませんよ、お金を払って行っていいですよというふうに認めているということは、外務省の中で一致した見解としてはとれていないんじゃないですか。短くお願いします。

鹿取政府参考人 外務省としては、イラクの治安情勢にかんがみ、NGOに対しても入国は差し控えてほしいということは申し入れているところでございます。

中野(譲)委員 そうしますと、片っ方では入らないでくれと言っていて、もう片っ方では、お金も出すし、向こうで立ち上げるときには日本人が行って立ち上げの準備をしてもいいよと同じ時期に言っているということ、外務大臣、これはおかしいですよね。邦人保護の立場でいくんだったら、外務省でお金を出してプロジェクトをやらせるのであれば、日本人は入っちゃいけませんよと言っているのであれば、それにのっとって仕事をするNGOにしか金を出しちゃいけないということになると思うんですけれども、二つの課で意見が違うというのはおわかりになりますか。

川口国務大臣 一本の鉛筆でぴっと線を引いて、そこでルール、図ができるという性格のものでは、こういったことというのはないのではないかという気がいたしております。

 一方で、本当に人道復興支援が非常に必要だというニーズがあって、我が国としてはODAをやっている、NGOの人たちもそのために行っている、そういうニーズ、それと安全、しかも、その安全も地域により紙一重ではない。このNGOはプロであるわけでございますから、いろいろな要素を考えて、一つ一ついろいろな経験を踏まえながら、この問題についてはどういう対応がいいかということを常にまた不断に考えていかなければいけない、そういった性格であるかというふうに思います。

中野(譲)委員 外務大臣がどれほどまで海外の外交について、またこういうような活動について御理解をいただいているかということがよくわかりました。そして、きょうは逢沢副大臣がいらっしゃらない、本当に私は残念でなりません。そのことを申し上げまして、私の質問を終わらせていただきたいと思います。

 どうもありがとうございました。

米澤委員長 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢でございます。

 まず最初に、地中海漁業一般委員会に関する協定の改正について質問をいたします。

 海洋生物資源の維持管理は、食料の確保という点でますます重要になってきているわけですが、本地中海漁業委員会協定が対象にしている地中海や黒海、これに接続する水域ではマグロ資源が既に漁獲過剰の状態にあると指摘されております。

 世界自然保護基金、WWFは、地中海ではマグロ資源の保全よりも明らかに目先の利益ばかりに重点を置いていると強く批判しているわけですが、基金の批判内容は、EUがマグロを養殖するのではなく、天然マグロを漁獲してそれを育てるという蓄養の拡大にある、こうしたやり方ではマグロ資源を保全できない、このように批判をしているわけですが、地中海にまで進出して地中海のマグロをとっている日本としては、まずこの批判をどう受けとめているのか、またマグロ資源を保全するために日本政府はどのような積極的施策をとっているか、説明してもらいたいと思います。

鈴木(庸)政府参考人 お答えいたします。

 今委員から御指摘がございました点は、二〇〇二年に地中海漁業一般委員会と大西洋まぐろ類保存国際委員会により設立されました持続可能なマグロ蓄養に関するワーキンググループ、これの専門家の参加を得た会合が昨年の五月と十二月に開かれたわけでございますが、この活動につきまして世界自然保護基金、WWFが異論があるということで参加を取りやめたという発表をことしの三月に行っている件だと承知しております。

 この件につきましては、委員の御指摘のような、特に欧州委員会あるいは欧州連合に対する批判がWWFからあったわけでございますが、他方、大西洋まぐろ類保存委員会におきましては、昨年の十一月の年次会合におきまして、マグロ蓄養活動が資源保存に悪影響を及ぼさないよう、正規に登録された蓄養場以外からのマグロの輸入を禁止する措置というのを採択しております。我が国政府といたしましては、この措置によりマグロ資源の保存が効果的に行われるという考えに立ちまして、この措置の導入について準備をしているところでございます。

 また、同様に、ほかの面におきましても、地域漁業機関を通じた国際的な資源保護に今後とも積極的に参加をしていく所存でございます。

赤嶺委員 次に、きょうは在日米軍基地の問題について聞いていきます。

 まず最初に、けさ日米首脳会談が行われてそれぞれニュースにもなっているわけですが、日米首脳会談で在日米軍の再編あるいは沖縄の基地の負担の軽減について話し合ったという報道がありました。

 在日米軍基地の再編では何を話し合ったのか、また、沖縄の負担の軽減についてどんな問題が話し合われ、そしてどんな合意があったのか、これも説明してください。

長嶺政府参考人 お答えいたします。

 日米首脳会談でございますが、今回の会談におきましては、世界の中の日米同盟という考え方のもとで、イラクの問題、北朝鮮の問題、それからサミット全体で取り上げるべき問題等、さまざまな意見交換が行われたものと理解をしております。

 詳細の内容につきまして、私どもまだ承知していない部分もございますけれども、今委員御質問のございました日米安保、安全保障関係といいますかの関係では、概要、以下のようなお話があったというふうに承知しております。

 総理からは、日米安保体制につきまして、沖縄の負担軽減の観点及び米軍の抑止力の維持という観点、これが重要であるということを述べられ、米軍の兵力構成の見直しの問題についてはよく事務的に協議させていきたいということを言われたということでございます。ブッシュ大統領からは、韓国の米軍の体制の見直しについて、米軍の能力は上がっておるので、兵力を削減しても抑止力は低下することはない、いずれにしても、引き続き緊密に連絡をしていきたいということを話し合われたというふうに承知しております。

赤嶺委員 では、きょうの首脳会談の中でも話し合われているというこの米軍の再編にかかわる問題について、多くの報道があるわけですね。

 まず初めに確認したいわけですが、いわゆる米軍の再編、基地の再編、トランスフォーメーション、この在日米軍の編成問題について日米が協議する機関あるいは組織、どのようなところでやっておられるんですか。また、そういう協議する組織や機関がこの問題についてこれまで何回ぐらい協議をされているんですか。これについていかがですか。

長嶺政府参考人 お答えいたします。

 委員冒頭に報道についておっしゃられましたけれども、最近出ております報道について、いろいろ在日米軍のトランスフォーメーションについて案があるというようなことが報道されておりますが、米側からそのような提案を受けているという事実はありません。そういうことを最初に申し上げたいと思います。

 それから、今委員御指摘がございました日米間の協議でございますけれども、アメリカは新たな安全保障環境における諸課題に対処するためにグローバルな観点から軍事体制の見直しを行っておるということは、御案内のとおりでございます。そのような観点から、我が国を含めまして、同盟国、友好国等と緊密な協議が行われてきております。ただ、現時点におきまして、米側としても何らかの見通しをつけているということではないというふうに承知しております。

 我が国との間の協議でございますが、これはさまざまなレベルでいろいろな機会を通じて緊密に協議はしてきておりますが、特段、特定の組織ということではございませんで、安全保障面につきまして、諸課題について緊密な協議が日米間で行われているというふうに御理解いただきたいと思います。

 ただ、協議の具体的な内容につきましては、まだそのようなことで見通しが立っていない状況、あるいは米側との関係もございますので、現段階で申し上げることは差し控えさせていただきたいと思います。

赤嶺委員 さまざまなレベルでの協議というのは、具体的に挙げるとどういう協議機関があるんですか。

長嶺政府参考人 ただいま申し上げましたように、これはさまざまなレベル、さまざまな機会にということでございます。例を挙げますと、例えば、昨年十一月にも行われていますけれども、我が国の外務省、防衛庁という当局、そして米側の当局との間で事務レベルの協議を行っている、こういったものもございますし、また局長レベルで、それぞれの往訪、来訪の機会を通じて協議を行うということもございます。そういったものの総称の中で協議が行われるというふうに御理解いただきたいと思います。

赤嶺委員 密接な協議が行われ、そして、在日米軍基地の再編が何らかの形で進められている。それは、日本政府の基本的な姿勢というのは、抑止力の維持、負担の軽減。負担の軽減といっても、現に沖縄で、辺野古で海上を埋め立てて基地をつくるとか、金武町で新たな都市型戦闘訓練施設の建設をめぐって地元住民と対立しているとか、とても負担の軽減などという実態とはおよそかけ離れたものが沖縄では今進行しているわけですが、いずれにしても、密接な協議というのが進められているのはありました。

 それで聞きたいんですが、一部の報道で、沖縄の海兵隊を自衛隊演習場に移転させるという構想があるやにされています。日本政府の基本的な姿勢、いわば沖縄の負担の軽減を求めてきた政府の立場とも合致するのではないか。私は国内の移転には反対ですが、あなた方が常々そういうことを言っているわけですけれども、沖縄の海兵隊を北海道に移転するという点については協議されているんですか、いかがですか。

長嶺政府参考人 先ほどお答え申し上げたことの繰り返しになりますが、委員御指摘のような事案につきましても最近の新聞報道で見られたということは承知しておりますけれども、その報道されているような案について、これを米側から提案を受けて議論しているというような事実はございません。

 先ほど委員の方からも御指摘いただきましたけれども、在日米軍の軍事体制見直しに関する米側との協議におきましては、私どもといたしましては、在日米軍の有している抑止力の効果的な維持という観点とともに、沖縄を含む米軍施設・区域が所在する地元の負担の問題を十分念頭に置くということを基本に据えて考えておりまして、こういう観点から協議を進めておるところでございます。

赤嶺委員 協議の基本的な姿勢だけ繰り返し述べて、それで、実際にその協議が負担の軽減につながるのかどうかというのは、だれ一人として安心はしていないわけですよ。負担の軽減という名目で在日米軍基地の質的強化が一層図られるんじゃないか、世界の中の日米同盟という建前で、米軍の軍事戦略に基づいて日本の基地が再編されていくのではないかという危惧を持っているわけでして、協議の中身を一切明らかにしていない姿勢がずっとこの間続いていることについて、非常に不満を覚えます。

 これも私たち報道でしか知る由はないんですが、例えば、米軍の横田基地に航空自衛隊の航空司令部を移転させるとか、ワシントン州にある陸軍第一軍団司令部をキャンプ座間に移転させるというような報道もしておりますが、この点はいかがですか。

長嶺政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員が御指摘になりましたような案件、これも報道にあらわれたものでございますけれども、もちろん、先ほど申し上げたように、報道については逐一よく承知はしておりますけれども、そのようないずれの案につきましても、米側から提案を受けているという事実はございません。

赤嶺委員 一切わからない、やみの中で在日米軍基地の再編の話し合いが進められ、そして国民も沖縄県民もその結果だけが押しつけられるというようなことは、全く納得がいかない外交姿勢であります。

 米軍は、今回の再編について、在日米軍の単なる再編にとどまらず自衛隊との一体化を志向しているだとか、自衛隊との統合的な運用や緊密な連携によって駐留経費を削減し、新たな軍事的役割を日本に期待するというようなことも言われております。

 きょうの日米首脳会談では、ブッシュ大統領の方から韓国の兵力削減についても話があったとのことですが、それによって在日米軍の機能の強化が一層高まるのではないか。そういうことについて一切明らかにしないまま、こういう協議が進められていることに強く抗議の意を表明して、私の質問を終わります。

米澤委員長 次に、阿部知子君。

阿部委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。

 本日議題となっております三条約につきましては、海が、環境面からも資源の面からも、またいわゆる安全保障の面からも極めて重要な場面がこれからは展開されるだろうということをもって、基本的にこの条約には賛成の立場をとっております。また、質問通告いたしましたことについては既に他の委員がお聞きくださいましたので、一点だけ、通告外のことでお伺いしたいと思います。

 通告をしておりませんので、大まかなところでの御答弁をいただきたいと思います。こうした油による海の汚染等々あるいはタンカーの通航による汚染等を考える場合に、ポートステートコントロール、いわゆる船が寄港した先のポートステートのコントロールということが極めて重要になるかと思います。

 アジア地域でこのポートステートコントロールを扱っております東京MOUの集計によりますと、この間、航行の停止処分、一番強い停止処分を受けた国は、北朝鮮、ホンジュラス、モンゴルとなっておりまして、北朝鮮船籍は約四〇%が航行の停止処分を受けておるということでございます。

 この航行の停止処分に至るまでの検査等々は、これはコストもかかってまいりますし、本来であれば外交面で、相手国に対してきっちりしたいわゆる国際社会のルールを尊重していただくような外交的働きかけが極めて重要と思いますが、せんだって小泉首相は二度目の平壌の訪問をされまして、その場で日朝平壌宣言の履行あるいは核を持たないことによるメリット等を北朝鮮ともお話しされたという報道でございます。こうした航海の安全、環境あるいは資源の共有化、そのために各国が負うべき義務ということについて、特にこの渡航禁止処分が多い北朝鮮に対しての我が国外務省からのこのことに関します働きかけがどうなっておるか、恐縮ですが、川口大臣にお願いいたします。

川口国務大臣 北朝鮮と我が国との関係では、国交の正常化もなされていない状況であるわけでございまして、そういった海の資源あるいは海への環境を守るということは非常に重要なことであると私も思いますけれども、北朝鮮が一日も早く国際社会の責任ある一員となって、そういったことも守っていく国になってほしいというふうに思っております。

阿部委員 一方で、我が国は、特定船舶の入港禁止法案というものも近く参議院を通過する段取りになっておりますが、やはり緊張を高める方向ではなくて、本来、豊穣な海を囲んで平和構築がしていけることのためにも、今の大臣のお答えは国交正常化というプロセスを踏んでのようなお答えでありましたが、これは実は実務者レベルでも実際にやはりそういうことが大きな負荷を来しておりますので、そういう面からも、外務省として率先したお取り組みを願いたいと思います。

 引き続いて、先ほど来赤嶺委員が問題とされております、今、米軍の世界戦略の中での基地のトランスフォーメーション問題、このことは、例えば在韓米軍の撤退、撤退ではありませんが、削減あるいは我が国も関係するところの日本の国内の基地のあり方ということでも極めて大きな変容を来すことだと思いますが、先ほど来の御質疑を伺っておりますと、まだ何にも聞いておりませんというような御答弁が極めて多くて、となると、ある日突然通知されて、そして、その通知がそのまま我が国の方針になってしまいかねない危惧を私は逆に感ずるわけです。

 例えば、米国側と防衛庁と外務省との局長級会談があり、ここまでは物事が我が国の主張も含めてお互い意見交換がされておるとか、これからは以降のことであるとか、やはりそういうプロセスをきっちりと国民にも開示していただかないと、常に外交問題、特に基地の問題は、それを負担として強いられる住民と、そして逆に、やはり国民が納得して安全のため、平和のためにさまざまなことも受け入れていくということにもなかなか賛意が得られないと思います。

 先ほど赤嶺委員が御質疑いたしましたように、沖縄の普天間基地を例えば北海道の根室の方に持っていこう、座間に米軍の第一司令部を置こう、あるいは、新聞報道では厚木基地を、ここは私はいつも問題にさせていただいておりますが、その基地の真下に百万人以上の人たちが暮らす人口密集地にある基地ですから、それを移動させよう等々のいろいろな論議があるのであれば、やはりきちんとそれをリアルタイムで国民にもわかりやすく伝えていただくということが、私は外務省そして防衛庁の役割であろうかと思います。

 きょうは、抽象的なことを聞くと抽象的に逃げられてしまいますので、恐縮ですが、極めて具体的なことで聞かせていただきます。

 実は、昨年の十月の八日に、厚木基地にF18スーパーホーネットという極めてエンジン出力の高い戦闘機が配置されることが通告されて、十月九日には、外務省の方からも、了解というか、まあ通告ですから一方的ですけれども、住民の声を聞くこともなく、十月九日には了解のサインが送られております。

 このこと一つとっても、本当に日本の国が、国民を守る、国民の先ほどの負担の軽減ということをきっちりと外務省としてアメリカに物申しているのかというと、極めて不安になるわけですが、今回、再びF18スーパーホーネットEというのが配属されることが、これも報道で報じられております。前回の轍を踏むことのないような、もしも配属されるのであれば事前にそれなりのリスク評価をしなければ私はさらなる住民負担となると思いますが、一人乗りのF18スーパーホーネットEというのだそうですが、今二人乗りのものが既に配属され、これでも十分うるさいのです。特にこの五月の下旬からはうるさくて住民たちが窓をあけてもいられないという状態が続いていますが、さらにこのF18スーパーホーネットEの配属があるということを御存じかどうか、あるいはお聞きになっているかどうかについてお願いいたします。

長嶺政府参考人 お答えいたします。

 御指摘の報道につきましては、私どもとしても承知しておりますけれども、現時点で報道されているような内容の決定がなされたということを米側から通報を受けているということはございません。なお、仮に米側がそのような決定を行うという場合には、日本政府に対して通報がなされるということだろうというふうに考えております。

 なお、委員から御指摘のありました厚木飛行場の航空騒音問題でございますけれども、先ほど御指摘のありました、昨年の秋の段階でスーパーホーネットFが配属された際に、我が方から米側に対して、厚木飛行場の騒音規制措置の遵守ということを改めて申し入れをしておりまして、米側からも、改めて、周辺住民の方々に配慮するとともに、騒音規制措置については引き続き遵守していくという回答をいただいております。この点については、今後もさらにしっかり申し入れをしていきたいというふうに考えております。

阿部委員 昨年の十一月から、この騒音については騒音のエリアや強度について見直し中でございます。外務省としては、現在見直し中であるということをまず相手側にきっちりと伝えて、騒音が強まらないようなさらなる措置を講ずべきと思いますが、最後に、大臣にこの件について一言お願い申し上げます。

米澤委員長 川口大臣、簡単に。

川口国務大臣 騒音の問題について、この影響が深刻であるということは十分に承知いたしております。そういったことをできるだけ軽減するという観点から、引き続き努力をしていきたいと思います。

阿部委員 必ずよろしくお願いいたします。

米澤委員長 これにて各件に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

米澤委員長 これより各件に対する討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 まず、地中海漁業一般委員会に関する協定の改正の受諾について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

米澤委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 次に、千九百九十二年の油による汚染損害の補償のための国際基金の設立に関する国際条約の二千三年の議定書の締結について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

米澤委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 次に、千九百七十三年の船舶による汚染の防止のための国際条約に関する千九百七十八年の議定書によって修正された同条約を改正する千九百九十七年の議定書の締結について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

米澤委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました各件に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

米澤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

米澤委員長 次回は、来る十一日金曜日午前九時十分理事会、午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時十四分散会


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