衆議院

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第22号 平成16年6月11日(金曜日)

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平成十六年六月十一日(金曜日)

    午前九時三十七分開議

 出席委員

   委員長 米澤  隆君

   理事 岩永 峯一君 理事 谷本 龍哉君

   理事 中谷  元君 理事 渡辺 博道君

   理事 武正 公一君 理事 増子 輝彦君

   理事 丸谷 佳織君

      小野寺五典君    河井 克行君

      木村  勉君    高村 正彦君

      鈴木 淳司君    田中 和徳君

      土屋 品子君    西銘恒三郎君

      松宮  勲君    宮下 一郎君

      阿久津幸彦君    加藤 尚彦君

      今野  東君    前原 誠司君

      松原  仁君    松本 大輔君

      漆原 良夫君    赤嶺 政賢君

      東門美津子君

    …………………………………

   外務大臣         川口 順子君

   外務副大臣        阿部 正俊君

   外務大臣政務官      田中 和徳君

   外務大臣政務官      松宮  勲君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  増田 好平君

   政府参考人

   (警察庁警備局長)    瀬川 勝久君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 鶴岡 公二君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 鈴木 庸一君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 長嶺 安政君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 鈴木 敏郎君

   政府参考人

   (外務省総合外交政策局長)   西田 恒夫君

   政府参考人

   (外務省総合外交政策局国際社会協力部長)     石川  薫君

   政府参考人

   (海上保安庁次長)    金子賢太郎君

   外務委員会専門員     原   聰君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月十一日

 辞任         補欠選任

  中野  譲君     松本 大輔君

同日

 辞任         補欠選任

  松本 大輔君     中野  譲君

    ―――――――――――――

六月十日

 女子差別撤廃条約選択議定書の批准に関する請願(水島広子君紹介)(第三四五〇号)

 同(石井郁子君紹介)(第三七一九号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第三七二〇号)

 同(東門美津子君紹介)(第三七二一号)

 同(赤嶺政賢君紹介)(第三八三五号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第三八三六号)

 核兵器廃絶条約の締結に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第三七一八号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 国際情勢に関する件


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     ――――◇―――――

米澤委員長 これより会議を開きます。

 国際情勢に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房審議官鶴岡公二君、外務省大臣官房審議官鈴木庸一君、外務省大臣官房参事官長嶺安政君、外務省大臣官房参事官鈴木敏郎君、外務省総合外交政策局長西田恒夫君、外務省総合外交政策局国際社会協力部長石川薫君、内閣官房内閣審議官増田好平君、警察庁警備局長瀬川勝久君、海上保安庁次長金子賢太郎君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

米澤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

米澤委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。岩永峯一君。

岩永委員 大臣、御苦労さんでございます。ひとつ積極的な、いい御答弁を期待して質問をいたします。

 大臣は、アジアの子供たちに学校をつくる議員の会という組織を御存じですか。

川口国務大臣 聞いたことはございますけれども、具体的に、どういう方がやっていらっしゃるとか、そういうことまでは承知しません。

岩永委員 大変残念なことでございます。

 約三十一名の国会議員が、私ども、ちょうど敗戦後に生まれた方が多いわけでございますが、日本が大変困窮をしていたことを思い、今のカンボジアだとかラオスだとかミャンマーだとか、ああいう戦時下にあって厳しい環境の中で勉学を続けている子供たちにすばらしい施設を提供していこうじゃないか、これが、平成九年の十月七日に、そういう趣旨で実は議員の会ができたわけでございます。そして、月に約一万円ずつポケットマネーを拠出しようじゃないかということで、それからだんだん人がふえまして、年間五、六百万集まるわけですね。そして、五、六百万集まったお金でもって各地域に学校を建設している。そういうことでございます。

 第一回は、カンボジアのプノンペン市で、二棟六教室、ダムコー小学校というんですが、それを寄贈しました。そしてその次には、ラオスのカムアン県に、ポンサワン小学校というのを一棟五教室寄贈しました。それから次に、カンボジアのプレイベン県というところに、これはプレイキー小学校というのを一棟五教室で寄贈しました。それから、カンボジアのコンポンチュナン県というところに、チュロロミエッタ分校小学校を寄贈したわけでございます。それから次に、カンボジアのコンポンスプー県に、アンロントン分校小学校というのを寄贈して、そして最後に、ラオスのビエンチャン市に、もくれん小学校というのを寄贈したわけでございます。

 それのすべての学校に、ともだち小学校という形で学校名をつけて、そしてそこへ日本の日の丸をつけて寄贈したわけでございますけれども、それまでは本当にトタンぶきの、雨が漏る、そしてむしろに子供たちが百人ぐらい座って、そして机もない状況の中で勉強している子供たちに、日本で五、六百万といいますと、やはり向こうへ行くとすごい学校でございまして、民間でもこういうことをやっておられるところがたくさんあるわけでございますが、議員の活動としてこういうことをやっておるわけでございます。

 今回、ミャンマーで学校を一つ寄贈しようじゃないかということで、私ども、先般、ミャンマーへ四月の二十九日から五月の四日に、もう建設されておりますので、行ってその状況を見てまいりました。今度、七月の十八日から二十三日に、竣工、引き渡し、贈呈式をやるわけでございますが、キン・ニュン総理自身がここでつくってやってほしいというようなことでその場所も提案されまして、総理自身の出身地でもあったというようなことで、約三百名程度を収容して、小学校、中学校に相当する子供たちが通う予定になっておるわけでございます。すばらしいのは便所でございまして、本当に水洗の便所を提供しているわけでございまして、そういう活動を、我々当選してから約八年たつわけですが、ずっと毎年毎年やっているということの御認識をいただきたい。

 これは、大臣がまだその状況をお知りおきいただかなかったというのは、大変、私も情報提供不足だと思いますし、あなたの方からいいますと情報収集不足だった、このように思いますので、ひとつ、各外務省の官僚の皆さん方にはその間大変なお世話になっております。また、日本にいるそれぞれの外交官にも大変お世話になって、そして、みずからこういうものが生まれてきたということでございますので、最初にその話を申し上げておきたいと思います。そのことが私がミャンマー問題を今回質問するきっかけになったわけでございますので、ひとつそういう面で……。

 この間も、その途中の視察に行ったときには、文部大臣も我々に対して大変な歓迎をされたわけでございますし、総理は当時会うとおっしゃっておられたんですが、会えなかったんですが、総理大臣の特別秘書官という方がみずから来られた。そして、子供たちが入る御父兄の皆さん方も皆、我々の視察に拍手喝采でお迎えいただいた。そして、学校の先生方も本当に礼儀正しくお迎えいただいて、大変な御期待をしておられる部分を見たわけでございます。

 そうした状況の中で、ずっとミャンマーの地域を視察してまいりました。しかし、御承知のとおり、カンボジアとラオスとミャンマーが年三百ドルの所得で生活しているというように、本当に貧しい国家なんですね。そして、私どもも現地の服装でずっとミャンマーにいる間過ごしたわけです。そして、住民の皆さん方、特に貧民街あたりにもずっと視察をしながらミャンマーという国を知りました。

 御承知のように、インパール作戦のときに、三十万、戦線に参加している。そして、十八万、亡くなって、十二万、日本の兵隊が生きて帰国した。ただ、その中で、「ビルマの竪琴」の映画にあるように、イギリス軍から日本兵をかくまってくれたり、いろいろな状況の中で、日本に対してはすごい親日的な国家でございまして、今でも、行くと、日本は大好きだ、日本と深い交流をやりたい、こういう話を至るところで聞くわけですね。

 ちなみに、この周りにある中国だとかタイだとかインドなんかはミャンマーとしては嫌いな国でございますので、遠くにあるけれども、日本ともっと友好を結べたら、そういう話を聞くにつけ、私どもも同じ仏教国でございますし、なおかつ信心深い、そして純真な国民の姿を見るにつけ、私は、日本が積極的にその応援をし、そして友好を深めていく国家ではないかというようなことを、伝統的な部分からもそのように思ったわけでございます。

 そういう状況の中で、大臣も願っておられるような、開放的な国になってほしい、そして国が民主化されてほしい、そういう部分はあるわけでございますが、今、ミャンマーを見ておりますと、どうも、スー・チーに代表されるように、なかなか、そこらあたりの部分が大きなネックになっている、こういうことでございます。

 それで、私は、二〇〇三年の五月三十日に起きたスー・チー女史襲撃事件を原因として政府側が彼女を軟禁してきた、そして、以来、日本政府は人道援助も含めてすべての援助を停止することなどを通告してきた、しかし経済制裁を科しているEUや米国すら医療支援などの人道援助を現在も続けている、こういうような状況の中で、こういう部分だけでも何とか再開できないか。

 そして、国民から見ると逆に、ほかの国は、東南アジアなんかどんどん経済成長している、しかし、我が国は生活レベルが低く、そして純粋なものは純粋なものとして残したいけれども、やはりできるだけ文化的な高い情報化社会の中に入っていきたいという気持ちがあるわけでございますが、最近、むしろスー・チーが経済制裁を世界に訴えている部分が逆に国民の怒りになっている部分もあるのではないかというのを私はずっと訪問団の皆さん方とお話しして感じてきたわけでございますが、このことについてどのようにお思いでございますか。

川口国務大臣 お話を伺っていまして、岩永先生のミャンマーに対して抱いていらっしゃる温かい愛情といいますか親近感といいますか、そういったものを感じさせていただきましたし、そういう意味では、私も、ミャンマーやミャンマーの人々に対して同じような感じ、感情を持っております。

 二年前にミャンマーに行きまして、そのときにいろいろなことを感じましたけれども、ミャンマーは中国とインドの間にあって地政学的に非常に重要な国ですし、おっしゃったように、今、メコンのサブリージョンといいますか、そこは非常にASEANの中でも貧しい。日本として、ミャンマーが経済的にも発展し、そして民主的な国家、いわゆる強い国家になってくれるということが、ASEANの安定のためにも、中国とインドの間にある重要な国であるという観点からも重要なことだと思っております。

 それで、日本として、そういった方向にミャンマーが進むためにどのように支援できるかというのが一番大きな観点であるというふうに思っております。

 それで、民生支援ということでございますけれども、おっしゃるように非常に貧しい国でありまして、日本として、この間の五月三十日の事件の発生後につきましては原則として新規案件の実施というのは見合わせてきていますけれども、他方で、ミャンマーが非常に貧しい、劣悪な生活環境を持っている国である、そして真に緊急性が高くて真に人道的な案件、これをやっていく必要性、そして民主化、経済構造改革を進めてもらいたいわけですから、そういった改革に資する人材を育てていく必要性、そういった観点から、ミャンマーの情勢を注意深く見守りつつ、個別案件ごとにそういった観点から考えまして、検討した上で実施をするということをやってきているわけでございます。

 特には保健医療分野、そういったことは非常に重要であるというふうに考えております。

岩永委員 日本が戦後賠償でミャンマーに建設したバルーチャン水力発電所の発電機が、設置後四十年近く経過しているわけですね。そして、大変な老朽化をしてきている。この取りかえが喫緊の課題であると私は思っているわけでございます。外務省は予算を既にとり実行の予定であるとされているわけでございますが、いまだに実行がされていない。

 電力事情の大変悪化なときに、国民生活のひずみをもたらしてきているし、経済的な発展を妨げられてきているという状況を考えますと、電力事情の悪化の解決が人道援助の最大の課題であると考えるわけでございますが、このバルーチャン水力発電所の改修に対してどのようにお考えなのか、お願いいたします。ちょっと時間がなくなっちゃいましたので、よろしく。

川口国務大臣 簡単にお答えをさせていただきます。

 電力事情が非常に悪いということは認識をいたしております。

 それで、先ほど申しましたように、個別案件ごとに具体的に検討するという方針で今やっておりますけれども、この案件につきましても、ミャンマー側が、この案件を実施するということが可能になるような条件を早く整えてくれる、その客観的な条件が整うということを我が国として非常に期待をしているということでございます。

 繰り返しますが、緊急性が高くて人道的な案件、それから生活の支援になるようなこと、そういうことは支援をしてきている、個別ごとに審査をしているということでございます。

岩永委員 やはり国民の生活向上の中で電力というのは欠かせないわけでございますし、ましてや日本が提供し、そしてそれが老朽化している、それを直してもう一度国民に電力を与えながら豊かな生活の基盤をつくってやるというのは、これは人道上的な問題でございますし、もともとは日本が手をつけていたことでございますので、このことだけは何とかひとつ積極的に御対応いただきたい、このように思います。

 次に、中国とインドという大国のはざまにあるわけでございますが、かつての英領インド帝国から独立したミャンマーは、今、中国から毎年援助を受けているわけでございます。中国の意図はインド洋への進出、こういうことを考えられているんですが、アンダマン海にあるミャンマー領の島には中国海軍の観測基地もある。このままではミャンマーは中国の属国と化してしまうのではないかという危機感があるわけでございますし、私どもは、中国が入り込む前にやはり日本が経済援助、そしてミャンマーとの関係をきちっと修復して、日本に期待している部分というのを今即刻対応してやりたいと思うんですが、この点についてはいかがでございますか。

川口国務大臣 中国が今、ミャンマーと非常に接近をしつつあるということは、きちんと認識をしておりますし、意識もしております。

 そういった中で、先ほど申しましたように、基本的な考え方として、ミャンマーがあの地政学的に非常に重要なロケーションにあって、中長期的に考えたときにどのように発展をし、そして民主的でという、そういう国にすることができるか、そのために我が国としてどういう時点でどういう支援をできるかということであるというふうに思います。

 おっしゃったようないろいろな支援、それをどんどんやっていくというのも一つの考え方としてはあるというふうに思いますし、同時に、今、ミャンマーの政府に対して間違ったメッセージを送ってもいけないという、そのペダルの踏み方というのが非常に微妙であるということであるというふうに考えております。

 そういった観点で、今、先ほど申し上げたような援助については、具体的な案件を審査しながらやっているということでありますし、日本として、ミャンマーがそういった国際社会あるいは日本の期待にこたえる国になるように動きを見せてほしいということを期待している、働きかけもしております。

米澤委員長 時間が来ておりますから。

岩永委員 余り政治的な配慮ばかりで、結局、国民が期待する大事な部分を忘れてしまうというようなことであってはならぬ、このように思うわけでございます。

 最後になりましたけれども、日本は民間投資額を国別に見ますと九番目になるわけでございますし、上位の五番以内までにイギリス、アメリカが入っているわけでございます。私も、あそこの勤勉な、すばらしい国民に労働の機会を与える、そして国の経済力を高めさす、そういう民間投資というような部分で日本がもっと積極的になるべきではないか、このように思いますが、最後にこのことについてお聞きしたいと思います。

川口国務大臣 ミャンマーは、資源もあって、非常に潜在性を持っている国だと思います。

 それで、投資のためには投資環境の整備が一番大事でございまして、政府としてできることというのは、いろいろ透明でない部分があったりいたしますので、そういった点についてミャンマー政府に申し入れていって、投資環境をよくするようにという働きかけを行っていくということでございまして、それは引き続き積極的に行いたいと考えています。

岩永委員 ありがとうございます。

 最後、私、政策勉強会で堀内先生と一緒にやっているわけですが、今度、ミャンマー議連の会長、古賀先生が会長をしておられまして、堀内派の政策研究勉強会で、大挙、一回みんなが見に行こうじゃないか、そしてその中で、我々が果たすべき役割を模索しようじゃないかと。この学校をつくる会とともに一斉に動き出すわけでございますので、外務省もひとつ積極的な御対応をお願い申し上げて、私の質問並びに意見とさせていただきます。

 ありがとうございました。

米澤委員長 次に、小野寺五典君。

小野寺委員 自由民主党の小野寺五典です。

 きょうは、このような質問の機会を与えていただきましてありがとうございます。

 まず初めに、日ソサケ・マス民間交渉、実は昨日、また妥結をいたしました。この問題に関しては御礼を申したいと思います。

 実は、民間交渉といいますが、この問題、従前にロシアが日本と妥協した入漁料を一方的に引き上げるという非常に大問題になりまして、このことに関しまして、今回、外務省、大臣を初め在モスクワの野村大使、ロシア課の皆さん、そしてまた水産庁の田原水産庁長官初め、大変なお力添えをいただきました。この民間団体の皆さん、心から感謝を申し上げるということでお話をされておりました。

 なお、ことしはどうしてもロシア側の一方的なわがままに引きずられた形になります。来年も同じような交渉がありますので、ぜひお力添えをいただければと思います。

 それでは、初めに、ふだん余り触れられませんが、海洋生物資源のことについて少しお話をさせていただければと思っております。

 まず鯨でございますが、御案内のとおり、日本は、長年の食文化ということで、捕鯨というものを一生懸命進めてまいりました。ところが、この捕鯨の問題、最近は鯨がふえ過ぎて、実は人間の漁獲量の三倍から五倍を鯨が食べているということで、私の地元の三陸沖にも鯨があふれているという状況です。こういう状況をほっぽっておきますと、実は生物資源にとってもよくありません。例えば、あのオーストラリアでさえ、コアラがふえ過ぎた場合には、それを間引きするというか殺害するということも行っております。アメリカでも、実は、ある州ではシカがふえ過ぎて、それを狩猟に許可をして間引きをするということを行っております。実は、この鯨も同じ。

 この捕鯨の会議はことしもまたイタリアのソレントで行われますが、外務省、大変努力していただきまして、従前は日本が非常に悪者だったんですが、現在は、こういう持続的利用を支持する国というのが二十五カ国、そしてまた支持しない国が二十七カ国ということで、非常に僅差になってきております。今後とも、外交面の努力をいただきまして、ぜひ支持をいただく国をたくさんふやしていただければと思っております。

 また、同じように、ワシントン条約におきましても、日本のサメの問題が従前から取り上げられております。ことしも、ドイツがニシネズミザメということで、私ども日本ではモウカザメということで、フカひれに使っている大変な魚なんですが、これを規制しようという動きが一部ありました。

 現在は鎮静化しておりますが、今後、こういうワシントン条約も含めて、海洋生物資源というのは、ともすれば水産庁マターに思われますが、多くのものが実は外交案件でございます。ぜひ、この問題に対してこれからも積極的に取り組まれることを大臣からもお披露目いただければと思います。

川口国務大臣 生物資源、海洋資源はもちろん、ほかの資源もそうですが、資源の持続的な利用という考え方は私は基本だというふうに思っております。

 鯨、その他いろいろございますけれども、例えば鯨については、私は、機会あるごとに、IWCに参加をしていない国は参加をし、資源の持続的な利用という考え方に基づいて参加をするように、この前、ラオスに行きまして、ラオスは海なし圏でありますけれども、モンゴルもそういう考え方で参加をしたと言いながら、ラオスにもその方向で参加を検討するようにというお話をいたしましたし、今後も、そういった努力、これは鯨に限らず、していきたいというふうに考えます。

小野寺委員 ありがとうございます。ぜひ、これからも積極的な御支援をお願いしたいというふうに思っています。

 今、生物資源のお話をしましたが、逆に、海洋にはまた多くの資源があります。例えば日本の大陸棚、現在は大陸棚限界延長ということでいろいろな調査を進めている最中であります。特に、日本近海で中国海洋船の調査というのが頻繁に行われております。これは、とりもなおさず、日本近海の海底資源を調査されているということで、日本の国益にとってゆゆしき問題だと思います。ぜひ、この大陸棚調査、従前も質問させていただきました、大臣からもしっかりと御答弁いただきましたが、今後も積極的に進めていただきたいと思っております。

 その中で、きょう、少し突っ込んだ質問をさせていただければと思います。

 実は、大陸棚の調査ということで既に調査が始まっております。今年度も予算をとりまして調査をしておりますが、その民間への委託のことについての入札について、海上保安庁からお伺いしたいと思います。

金子政府参考人 お答え申し上げます。

 私ども海上保安庁では、大陸棚調査のうち、今年度分でございますが、精密地殻構造調査の一部につきまして民間に外注しての調査を実施しておるところでございます。(小野寺委員「その入札状況」と呼ぶ)入札でございますが、これは公正な競争を確保すべく、一般競争入札によって行いました。

小野寺委員 一般競争入札というお話でしたが、私がちょっと従前聞いた話では、その入札に参加されたところは六社、実際に説明を聞かれたところは五社、最終的に入札を行ったのは一社しかなかったというふうに伺いましたが、それは間違いありませんか。

金子政府参考人 御指摘のとおりでございます。

小野寺委員 約五十億と私伺っておりますが、その金額というのが一社だけの応札ということで決められてしまったということなんですが、この入札過程で、当初の見積もりについて、どのような状況で入札をされましたか。

金子政府参考人 五十四億というのは当庁全体の十六年度、今年度の予算でございまして、この中には、私ども自身が外注することなく、OBSと申しますが、地震計を買ったりするものがございますので、外注分はそのうちの何割かということになります。

 先ほど先生の方からもお話もございましたとおり、会社の数、例えば説明会に参加された会社の数等は御指摘のとおりでございますが、技術的な、資格審査といいますか、入札にたえ得るだけの能力を……(小野寺委員「いや、入札の状況です」と呼ぶ)入札の状況は、まさに先生おっしゃられたとおりでございまして、最終的には一社が応札されたということでございます。(小野寺委員「見積もりのとおりですか、予定価格を下回ったわけですね」)そのとおりでございます。

小野寺委員 今、次長の方から予定価格を下回ったというふうに私伺ったんですが、私のちょっと聞いた話では、入札が不調になって、それで、さらにその仕様を変えて、要するに、より高き見積もりにしてもう一回応札してもらったという話を聞いたんですが、それはうそですか。

金子政府参考人 御指摘のとおりでございまして、二回目の入札で落札されました。

小野寺委員 なぜそれを初めに言ってくれないんですか。おかしいでしょう。隠しているというふうにしか思えません。

 六社が対象になって、五社が一応話を聞きに来て、最終的に応札したのが一社しか応札をしていない。しかも、その一社の応札が不調になったということで、また高い見積もり設定をしてそこで応札をしてもらった。これってあり得るんですか、こういうこと。

金子政府参考人 全く普通の一般競争入札の手順に従って行ったものというふうに私どもとしては考えております。

小野寺委員 多分、皆さん唖然とされたと思うんですが、これが一般的に行われていること。一社しか応札しないで、その応札の会社も、いや、うちはもっと高くないとやらないよということで、海上保安庁はさらに高くして応札をしてもらった。こんなに弱いんですか。

 初めに見積もりした金額から逆に高上がりになったということは、海上保安庁本体のほかの大陸棚の調査に食い込んでいないんですか。

金子政府参考人 それは、十六年度の調査は実は二回に分けてやることになっておることもございまして、確かに一期の調査につきましてはおっしゃられたとおりでございますけれども、私ども自身の、例えば地震計を買うというような予算につきまして影響が及ぶということはございません。

小野寺委員 ということは、むだな見積もりをしていたということですね。予定した見積もりよりも高くなって、高上がりでようやくお願いして引き受けてもらったということは、それでも全然問題がないということは、初めから高目の見積もりを出したので全然問題ないということなんでしょうか。

金子政府参考人 これは、大陸棚の調査自体が我が国では初めてのものでございますので、実際に現場海域に出てみて、例えば天候待機、天候予備というのがございますが、いかに効率的にできるかということで、一応私どもも机上でそれなりの予測を立てて計算をして額を提示するわけでございますけれども、実際に現場海域に出てみてどうかというのは、これはやってみなくちゃわからないというところも残念ながら残るわけでございまして、その辺を配慮して第二回目の、つまりトータルとしての十六年度契約が行われるということになろうかと思っております。

小野寺委員 何かいいかげんじゃないですか、やってみなきゃわからないとか。

 それから、ちょっとお伺いしたいんですが、なぜ一社しか応札しなかったのか、そのことについてちょっとお伺いしたいんです。

金子政府参考人 一社が応札するかどうかは、これは私どもの関知するところではなくて、まさに民間側で、応札するつもりかどうかということになるわけでございます。

小野寺委員 では、具体的に幾らの金額で、幾らで不調になって、もう一度幾らに見積もりを上げて、幾らで落としてもらったんですか。

金子政府参考人 手元の資料で申しますと、最終的に落札された金額は、消費税込みで約十六億四千万円でございます。

小野寺委員 初めの見積もりは幾らの見積もりだったんですか、入札不調になった初めの金額については。

金子政府参考人 初回は入札が不調に終わったわけでございますが、これは今後もこの種の入札行為というのは続きますので、私どもが予定をしておりました価格については公にすることは御容赦願いたい、こういうことでございます。

小野寺委員 そういう部分もあるとは思いますが、もう一つちょっとお伺いしたいのは、まさかこの一社がこれからもずっとこの調査を落札し続けるということは、もし一社しかなかったらおかしいことになると思います。

 それからもう一つ、このような調査というのは、これは日本しかないんでしょうか。どうして、例えば一社しかないということになったら、もうちょっと広げて、入札してもらえるような、そういう努力をしなかったんですか。例えば外国の企業とか。

金子政府参考人 一般競争入札でございますから、海外の企業も、海外の調査能力のある企業も排除されておるわけではございません。

小野寺委員 ですが、海外の企業に声をかけたりしたんですか。

 それから、一社しか応札しなかったら、それも入札不調でしょう。そうしたら普通、もう少し条件を広げて、もう一回変えるからもう少し皆さん参加してくださいねというふうに呼びかけるのが常識的な対応ではないんですか。

金子政府参考人 一回目も二回目も全く通常の手続どおりに、海外の企業も参加しようと思えば参加できるような状態で当方の情報をさらしてございます。

小野寺委員 私の聞いた話では、海外の企業の中でも打診を大分してきた、でも、それに対しては、事実上、乗り越えられないハードルをつくったというふうに私は聞いているんですが、そんな事実はありませんよね。

金子政府参考人 そのようなことはございません。全く内外無差別でございます。

小野寺委員 この問題、決して私は海洋調査をやめてほしいというわけではなくて、本当に貴重な税金で調査をするわけですから、最大限有効活用していただくように、ぜひ。一社しか応札しなかったというか、札を一社しか入れないということ、これはかなり異常な出来事だと思います。今後ともこういうことが続くようであればゆゆしき問題かと思います。

 また、海洋調査については、実は、これからいろいろな議論があると思うんですが、外国の企業に門戸を開放している国が大多数になっています。そういう中で、国内だけしかないから一社で決めたということではなくて、ぜひ有効にこの費用が使われるように今後とも努力していただきたいということを最後にお伺いしたいと思います。

金子政府参考人 確かに御指摘のとおり、予算といいますか、国民の皆様方からいただきましたお金でもって調査をするということは、私どもも十分に認識をしておりますので、御指摘のような点を踏まえて今後とも契約に当たりたいと思っております。

小野寺委員 時間が本当にきょうはないので、最後に、多国籍軍参加ということを今回のシーアイランド・サミットで首相が表明をされたというふうに報道されました。これは……(発言する者あり)あっ、そうですか。表明したんですか。

 この多国籍軍への参加ということ、実は私、イラクの委員もしておりまして、通常、かなりこれは踏み込んだことだと思います。

 正直、私、与党でありますが、議会でも本来であればこのことに関してはかなり議論をすべきじゃないかと。特に、いろいろな状況がありますが、多国籍軍という軍に入る、実際に後方支援をするということになっても、その多国籍軍の中の一部に入って、その中の、まだその内容、指揮の問題もはっきりしない。こういう状況の中で、この多国籍軍への参加ということが一体どういう影響を及ぼすか、あるいは、どうして私ども国会で議論する前にこういうことが行われたかということについて、外務大臣にお伺いしたいと思います。

川口国務大臣 先ほど記者会見が、総理が現地でおやりになられたわけですけれども、そのときにおっしゃられたことは、多国籍軍が形成され、その中で日本としてできること、いわゆる人道復興支援を継続していく方向で検討していきたいと思う、この問題は、国内に、日本に帰国してから与党を初め皆さんと相談していきたい、どのような、日本としてふさわしい支援、協力ができるのか検討していきたい、そういうことをおっしゃられたということでございます。

 そういうことでございますので、この総理の考え方に基づいて、あるいは総理の御発言を踏まえまして、自衛隊、多国籍軍の関係については、総理の帰国後、皆さんのいろいろな意見を踏まえながら検討を政府として行っていくということになると思います。

小野寺委員 本当に、恐らく外務省の皆さん、大臣も含めて、十分な協議があったかどうか、それは今後、話を伺いたいと思うんですが、私ども、この報道をとって、一般の市民の方から話を伺うと、一番の反応というのは、ついに多国籍軍まで日本は足を踏み入れるのかと。多国籍軍という言葉のイメージからすると、やはりこれは軍隊である。その軍隊の中に自衛隊が参加し、やる行動については復興支援かもしれません、給水活動かもしれません。ですが、その内容、あるいは世間に与えるイメージというのは大変大きなものがある。

 少なくともこのことに関しては、国会内で十分な議論をして、国民世論のいろいろな同意を得て、それで初めてこの多国籍軍の議論ができるかと思います。ぜひ、これからそういう議論をする場というのを、小泉総理にもしっかり伝えていただきたいと思います。

川口国務大臣 総理が日米首脳会談で今おっしゃったようなことを言われたという事実は全くないわけです。これは過去のことになりますので先ほど申しませんでしたけれども、日米首脳会談では、先ほど記者会見に言われたようなこともおっしゃっていらっしゃらない、これは事実としてそういうことでございます。

 いずれにしても、今、小野寺委員が言われたことについては、今後、先ほどの総理の記者会見における発言を踏まえて、政府としていろいろな方の御意見を踏まえながら検討していくということになると思いますし、総理にもそのことについては、総理自身がおっしゃっていらっしゃいますから、総理はきちんとそれはそういうふうにお考えであると私は思っております。

小野寺委員 ぜひこのことに関しては、総理帰国後、きちっと対応し、また国民、国会の中での議論ということがとても重要な案件かと思います。ぜひそのことについて御努力いただきますようお願いしまして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

米澤委員長 次に、丸谷佳織君。

丸谷委員 おはようございます。公明党の丸谷佳織でございます。

 私は、日本時間けさ閉幕いたしましたシーアイランド・サミットにおきまして、小泉総理が日本のイラク人道復興支援の継続を表明したことをテーマにお伺いをさせていただきたいと思います。

 現在のイラク復興支援特別措置法は、自衛隊のイラク派遣の根拠に、米英主導のイラク統治を承認した国連安保理決議一四八三などを挙げています。しかし、六月三十日には、米国が主導しますCPAが消滅し、イラク統治主体はイラク暫定政権に移行されることから、南部サマワでの活動を継続するためには、多国籍軍の役割に人道復興支援を盛り込んだ今回の安保理決議一五四六をつけ加える必要があると考えます。

 これが、政令改正という報道も出ておりますけれども、政令改正でよいのかどうか、こういった議論も当然ございますし、万が一政令改正だとしましても、先ほど小野寺議員もおっしゃいましたが、国会の承認をしない政令改正であったとしても国会での審議は必要であり、当然国民のコンセンサスを得る必要があると考えておりますけれども、この点について政府はどのような見解を持っているのか、この点をお伺いします。

川口国務大臣 まず、お尋ねのことでございますけれども、先ほど総理がおっしゃられたように、これは今後、議論を、政府として検討していくということになるわけでございます。そして、政府としてその判断をするに際しましては国会の御議論、これを十分に踏まえるということは当然のことであるというふうに考えます。

 それで、自衛隊をどのように位置づけていくかということを、今後そういうことで、特に多国籍軍との関係での位置づけを議論していくということでありますけれども、これは、安保理決議一五四六の内容を検討する、そしてサミットにおける首脳の発言ですとか各国との協議とか、そういったことを踏まえた上で政府として判断をするということでございますし、多国籍軍との関係については、これも今まで政府として申し上げていますように、決議の内容や多国籍軍の目的ですとか任務ですとか編成ですとか、そういったことを踏まえて議論をしていくことになるというふうに考えております。

増田政府参考人 今の外務大臣の御答弁を若干補足させていただきます。

 今、先生の御質問の中に、国会との関係があったかと存じます。イラク特別措置法は、国会との関係について二点を定めているところでございます。既に御承知のことと存じますけれども、一つが基本計画の国会への報告という点と、それから自衛隊の実施する対応措置、具体的には、人道復興支援活動及び安全確保支援活動というものを実施する場合については国会の承認を得る必要があるという仕組みを定めておるところでございます。

 現実問題といたしましては、いわゆる基本計画の国会報告というものについては、昨年の十二月の九日、基本計画を閣議決定した当日に国会に御報告をさせていただいているところでございます。また、国会の承認につきましては、ことしの一月十九日、今国会の冒頭に承認を求めさせていただき、衆参で、最終的には参議院で、二月の九日に国会に御承認をいただいておるという関係にございます。

 私どもとしては、まさに今、こういう手続を踏んだ中で、イラク特措法に基づいて現地で自衛隊が活動しておる、そしてまた、今後ともこのような活動を継続していく必要があり、継続していきたいというふうに考えているところでございます。

丸谷委員 今の増田審議官の御答弁を聞いている限り、今回どのような形で参加をしていくのか、あるいは活動を継続していくのかということは、今後の審議ではあるけれども特に国会の審議を必要としないというような政府の方針に聞こえてしまうわけです。おっしゃった意味が、法律の中に沿ってお話しになったと思うんですけれども、その点もう一回、国会の関与のあり方、当然、国民のコンセンサスあるいは国会の議論というのは必要なのではないかというふうに私は思うんですが、この点についてもう一度お伺いします。

増田政府参考人 失礼いたしました。

 事務方でございますので、法律に則して答えさせていただきましたが、今先生御指摘のように、国会の御議論を十分に踏まえて政府が対応していくのは当然のことと存じておりまして、いろいろ御議論があれば、我々としてもそれを胸にとめて政策を進めていきたいというふうに思います。

丸谷委員 ありがとうございます。

 事務方の方にこのような質問をするのは適当ではないのかもしれませんけれども、できれば事務方ではない方に来ていただきたいというお願いも実はしていたわけでございまして、都合がつかないということは残念で、また別の機会を見つけて質問させていただきたいというふうに思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 では、続きまして、イラクに自衛隊を派遣する法的根拠についてお伺いをしたいと思うんですけれども、現在の自衛隊をイラクに派遣しています法的根拠は、当然、イラク復興支援特別措置法にのっとって行われております。また、イラクにおける自衛隊の法的根拠というのは、現在はCPAから連合国の要員としての法的地位が保障をされておりますけれども、実際には、CPAが六月三十日に解散をするということに伴いイラク暫定政府が樹立をすること、また今後、多国籍軍が駐留する状況においてイラクにおける自衛隊の法的位置づけとはどのようになってくるのか。例えば、暫定政府との間で地位協定を締結するのか、あるいは国連決議で法的地位の保障されています多国籍軍に参加するのか。この点についてはどのようにお考えになっているのか、お伺いします。

川口国務大臣 御案内のように、今どのように自衛隊の地位を確保しているかといいますと、CPAの十七号ということになるわけでして、自衛隊が引き続きイラクで活動をしていくということに当たっては、これはイラク特措法に従いまして適切な法的地位を確保する必要があるということでございます。

 先ほど申しましたように、自衛隊の位置づけにつきまして、今後、政府として適切な判断を行っていくということになりますけれども、したがいまして、これをその場合にどのような形で法的な地位を確保するかということについては、その判断に伴ってまいる話でございますので、今の時点で確定的に申し上げることはできないということでございます。

丸谷委員 では、例えば多国籍軍に参加をするといった場合に、先ほど小野寺委員の御質問の中にもありましたけれども、どうしても、我が国の多国籍軍に対する、活動内容に対する印象というのは、軍事制圧ということが強調されます。

 実際に多国籍軍は、九一年の湾岸戦争時に安保理決議に基づいて結成されて以来、その後各地に派遣をされているわけでございますけれども、多国籍軍の活動の内容が変化をしてきているというのも事実であろうと思います。

 例えば、アフガニスタンにおきます国際治安支援部隊あるいはコソボにおきます国際部隊を初めとしまして、最近では東ティモールあるいはハイチなどでの活動例もあるというふうに認識をしておりますが、我が国として例えば多国籍軍に参加をし、憲法の枠内で人道復興支援を行えるような活動が実際にあるのかどうか、この点をお伺いします。

鶴岡政府参考人 まず初めに、これまでの多国籍軍の任務との関係におきまして、最近の事例の御説明を申し上げたいと思います。

 御質問の中にもございましたとおり、例えば東ティモールなどでございますが、いわゆる多国籍軍に関する国連安保理決議において人道支援に言及されております最近の例といたしましては、本年二月二十九日に採択されましたハイチの暫定多国籍軍の展開の承認に関する安保理決議一五二九号及び一九九九年九月十五日に採択されました東ティモールにおける多国籍軍の設立の承認に関する安保理決議一二六四が挙げられます。

 安保理決議一五二九におきましては、主文のパラ二において、人道援助の提供及びハイチ国民への国際人道援助者のアクセスを促進することなどのために、暫定多国籍軍の即時展開を行う権限を与えています。

 また、安保理決議一二六四は、主文パラ三において、可能な範囲で人道支援活動を円滑にすることなどを任務とする多国籍軍の設立を認めております。

 今般採択されましたイラクに関する安保理決議一五四六号につきましては、その主文パラ十におきまして、国連がイラク国民を支援するという役割を実現することができるよう、またイラク国民が政治プロセスのためのタイムテーブル、計画を自由にかつ脅迫なしに履行することができ、復興及び復旧の活動から利益を得ることができるよう、多国籍軍はイラクにおける安全及び安定の維持に貢献するためにすべての必要な手段をとる権限を有することを決定しております。

 また、主文パラ十五においては、安全と安定及び人道復興支援に関するイラク国民の必要性を満たすことを支援するために、またUNAMI、国連イラク支援ミッションの略称ですが、その努力を支持するために、イラク政府との合意のとおり、多国籍軍に軍隊を含む支援を提供するよう要請しております。

 このように、多国籍軍の役割は、従前のものから、いろいろな任務を含む形で変遷をしてきておるということがまず一点でございます。

 したがいまして、いずれにいたしましても、先ほど大臣からも御答弁申し上げましたとおり、今後のイラクの主権回復後の自衛隊の位置づけにつきましては、新たに採択されましたこの安保理決議一五四六号の内容を検討し、G8サミットにおける各国首脳の議論や関係国との協議も踏まえた上で、政府として適切に判断をいたす考えでございます。

丸谷委員 変化をしてきている多国籍軍の活動において、例えば東ティモール、ハイチにおいて、さらにお伺いをさせていただければ、人道復興支援のみを主な活動として参加をした国というのは過去にありますでしょうか。

鶴岡政府参考人 お答え申し上げます。

 私の現時点で承知していることで申し上げますが、東ティモールにつきましては、例えばですが、まさしく我が国自衛隊が東ティモールにおいて展開いたしました活動は、施設大隊の展開による現地における復興支援及び人道支援でございます。それに限定された活動でございました。これを我が方自衛隊は、東ティモールに展開するPKO活動の一環として行ってきております。

 また、現在のイラクにおいて展開されておりますいわゆるイラクの決議一五一一に基づく多国籍軍の中に、我が国のほかにも、ニュージーランドなどの国が、韓国もその一部に挙げられますけれども、人道及び復興支援を専任として活動しております。

丸谷委員 では、大臣にお伺いをさせていただきます。

 六月三十日にイラク暫定政府が樹立をされます。そして、今回の安保理決議一五四六の中にも示されておりますけれども、今後の直接選挙、それから本格的な政権の樹立に向けてのタイムテーブルというのが示されております。その中で、今までとは確かに、イラクの状況というのは、政権の樹立から始めて前進をしているという中において、我が国としてこのイラクに対する二国間関係というのをどのように樹立をしていこうというふうにお考えになっているのかをお伺いしたいと思います。

 例えば、暫定であっても政権が樹立したことによって、本当にイラクの国民が我が国に求めているような経済的な支援、例えばODAであったり、こういったことを行うことが、自衛隊の皆さんも大変に現地で頑張っていただいて、現地では高い評価をいただいているという報道も目にするわけでございますし、実際にそういったお話もお伺いしているわけですが、実際に我が国ができ得るODAの支援、経済支援、こういったことをしていくことが二国間関係にとっては、あるいはイラクの国民にとっては非常に喜ばれることになるというふうに思いますし、また、アメリカですと、元国連大使をお務めになりましたネグロポンテ氏をイラクの大使に任命するなど、非常に着実に関係樹立に向けて前進をしているように見受けられます。

 我が国、まだ大使の正式任命というところまではいってないというふうに思うんですけれども、六月三十日に暫定政権が樹立をする今だからこそ、外交が非常に前に出ていって活躍をできる舞台が整っているという状況になっている中で、我が国の外交姿勢、二国間の樹立に向けてどのように取り組んでいかれるのか、これを最後にお伺いします。

川口国務大臣 ODAですけれども、我が国は、自衛隊の派遣と並んで車の両輪ということで、今まで積極的に実施をしてきているわけでございまして、今後、暫定政権が、政府ができました後、この支援については、これはODAによる資金協力を引き続き積極的にやっていきたいというふうに考えています。

 それから、大使の交換等についてお触れになられましたけれども、これについて、どのような形で通常の政府間の関係をイラクとの間でつくっていくかということにつきましては、これはさまざまな、現地の情勢というのもございますし、それから諸外国の対応等の諸般の事情、こういったことを勘案いたしまして、適切な時期に適切に判断をしていきたいというふうに思っております。

丸谷委員 イラクにおいて、六月三十日に暫定政権が樹立をするという中にありまして、イラク特措法に基づく我が国の貢献のみならず、積極的な外交の展開というものができる状況になっている以上、ぜひ、外務省としても、対イラク外交戦略というのはもう一度しっかりと練り直していただいて、積極的な攻めの姿勢で二国間関係を樹立していただきますようにお願いを申し上げまして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

米澤委員長 次に、前原誠司君。

前原委員 民主党の前原でございます。

 きょう、質問通告に、外務大臣と官房長官ということでお願いをしておりました。官房長官が来られておりません。

 臨時代理総理をされているということでございますが、しかしこのイラクの問題については官房長官に対し質問をしたいということで我々の理事からもお話をしていたわけでございますし、官房長官が来られないのであれば、少なくとも副官房長官が来られてその任に当たられるということがあるべき姿だと私は思いますが、そういった誠意もないということでございますので、私は、官房長官もしくは副官房長官が来られるまで質問を留保させていただきたいというふうに思います。

米澤委員長 速記をちょっととめてください。

    〔速記中止〕

米澤委員長 速記を起こしてください。

 ただいまの、官房長官の出席を求めてきましたが、それぞれのお忙しい日程等でこちらにはおいでにならないということのようでございます。しかし、外務委員会でも再々こういう問題が起こっておりまして、委員の要請に応じて、内閣官房もまじめに対応する、そういう姿勢をぜひ堅持し、これからはこのようなことが起こらないように、特に注意を喚起しておきたいと存じます。

 それでは、質疑を続行します。前原君。

前原委員 それでは、委員長の今の御発言どおり、これからは、与党の理事さんも含めて、政府にしっかり対応していただきたいというふうに思います。

 では、どなたがお答えをいただくんですか、内閣官房は。増田さんが――はい。

 それでは、政治的な発言はできないでしょうから、少しイラク特措法の中身について話を聞きたいと思います。

 一条に目的が書いてありますが、法律の中に、「国家の速やかな再建を図るためにイラクにおいて行われている国民生活の安定と向上、民主的な手段による統治組織の設立等に向けたイラクの国民による自主的な努力を支援し、及び促進しようとする国際社会の取組に関し、」とありますね。この「民主的な手段による統治組織」というのは、これは何を指すんですか、この「統治組織」というのは。言葉の定義です。

増田政府参考人 今の先生のお尋ねが法文の言葉の定義ということであれば、「民主的な」「統治組織の設立」ということでございますので、それはまさに、「民主的な」という意味では、基本的には選挙を通じた正統な、代議制のようなものが行われ、それとの関係において、要するに行政をつかさどる正統的な政府というものが設立されるということを念頭に置いている表現でございます。

前原委員 ということは、今の答弁だと、六月三十日からできる暫定政権というものはこの「統治組織」には入らない、そういう定義でいいんですか。

増田政府参考人 言葉の定義という意味で、民主的な統治組織に六月三十日に生ずるであろう暫定政府というものが入る入らないということを断じるということは、正直難しいと思います。

 ただ、まさに安保理決議一五四六の中でも政治プロセスというものが記述されており、例えば、正確な記述はちょっとあれですが、来年にまた選挙も行われるというようなプロセスもあり、憲法ができるというようなプロセスも書かれておるわけでございます。そういったものが順次行われているという過程がまさに「民主的な」「統治組織の設立等に向けた」ということではなかろうかと思っております。

 今の先生の御下問の、六月三十日にできる暫定政府というものがこれに当たらないということを断じることは、簡単にはできないんじゃないかと思います。

前原委員 しかし、一つ目の答弁と二つ目の答弁は食い違うんじゃないですか。つまりは、まさにその「統治組織」の前に、「民主的な手段による」ということをとらまえてだと思いますけれども、一番初めの答弁は、選挙の後の手続によってということを言われましたよね。しかし、暫定政権というのは選挙ではないわけですね。これは、形の上ではいかなるものだったか、実質はどうであったかは別にして、ブラヒミ特別顧問の指名によって行われたということであって、民主的な手続は経ていないわけですよ。

 ということは、この「統治組織」というものに暫定政権が入るかどうかということは、これはかなり私は大きな問題だと思うんです。ですから、そこはしっかり答えていただかないと、一概に言えないとかじゃなくて、この「統治組織」の定義についてまさにしっかり言ってもらわないと。

 なぜこの話をするかというと、この法律でいいのかどうかというところの大きな根幹にかかわる問題なんですよ、六月三十日以降も。ですから、そこはちゃんと答えてください。

増田政府参考人 この法律が念頭に置いている一条の目的で書かれておるものは、まさに「民主的な」「統治組織の設立等に向けた」というところでございます。そのプロセスというものはこれまでもいろいろ国際社会でも議論が行われてきたと承知しておりますし、安保理決議一五四六の中でも政治プロセスというような形でそういうプロセスが記述されていると思っております。

 そういった意味で、そういうものに向けたプロセス、また最終的にはかなり理想的な形でといいますか、そういう民主的な統治組織の設立というものがなされるのではないか、それに向けた動きというものでとらえるべきではないかと思います。

 先生は今、その六月三十日にできるものがこれに当たるのか否かということを厳密に答えるべきであるという御下問ですが、それを、民主的な統治組織の設立という意味での「民主的な」という部分が、では今回、六月三十日に生ずるであろう暫定政府に全く欠如しておるかというようなことを私どもから申し上げることは適当ではないんではないかと思っております。

前原委員 申し上げるのは適当でないからって、法律の目的ですよ。目的に書いてある「統治組織」というものの定義、しっかりしなきゃだめじゃないですか。

 それで、今おっしゃったのは、一五四六ということは、この法律がつくられた後につくられた国連決議ですよ。つまりは、その前にこの法律がつくられていて、いわゆる「統治組織」というものについての定義はしっかりとしていなきゃいけないわけですよ。この法律をつくったときの「統治組織」という意味はどういう意味なのか。もう一遍原点に返って答弁してください。

増田政府参考人 今先生から原点に返ってというお話でございました。ですから、私が申し上げておりますのは、法律の第一条に言う、その文言というものの意味するところを問われるとすれば、それはまさに選挙を通じて、例えば日本のように国会の先生方が選ばれる、またそれによって、例えば議院内閣制であればその議院内閣制のもとで、両議院なりなんなりからその行政府の首長が選ばれるというようなしっかりとした手続、そういうものが、完全な形でといいますか、それなりにきちっとした形で仕組みができるということがその「民主的な」「統治組織」という意味であろうと思います。

 ただ、先生から、では、六月三十日にできるものはこれに当たらないではないかという、その事実の当てはめを言われますと、それを今直ちに入りませんと言うわけにはいかないということを申し上げておるだけでございます。

前原委員 ということは、今おっしゃったことで言うと、判断ができないということであれば、この法律を六月三十日以降に援用するということはできませんよ。つまりは、「統治組織の設立等に向けたイラクの国民による自主的な努力を支援し、」というのが目的ですよね。ということは、統治組織ができたのか、あるいはまだできていないのかというところは極めて大きなポイントなんですよ。意味わかりますか。

 つまりは、統治組織ができているか、できていないかによって、この法律が援用できるかどうかの大きな違いができるということなんです。だからこそ統治組織の中に、もちろん一五四六の決まる前ですよ、この法律ができたのは。しかし、もしこれをそのまま六月三十日以降も使おうとすれば、その判断というのをしなきゃいけないわけですよ、今申し上げたように。

 ですから、暫定政権というものがこれに入るか入らないかというところは、この法律が使えるかどうか、目的ですからね、第一条の、大事な要件になるわけですよ。その点についてお答えください。

増田政府参考人 私、先生の御指摘を正しくとらえておるのかどうかちょっとあれでございますけれども、まさに民主的な統治組織の設立等に向けたイラクの人々の動きというものを支援しということでございます。ですから、まさにそういう動きが今イラクで起こっておるということだろうと思います。この動きを支援するという、まさに私どもの活動はこの法律の目的にかなっているのではないかと存じております。

 「向けた」ということでございますので、これから先、それをまさにイラクの人々がつくろうとされておられるわけでございますので、それを支援するということだろうと思っております。

前原委員 いや、つくったときはそうなんですよ。だって、CPAの統治下においてこれをつくっているわけですから、それを賛成するどうのこうのは別にして。

 つまりは、私が聞きたいのは、六月三十日以降もこの法律が適用されるかどうか、目的のところで妥当なのかどうかということを聞いているわけですよ。

 つまりは、六月三十日以降というのは、これは国連決議でも認められているように、完全な主権移譲ですね。「完全な」というのがフランスやドイツなどの主張によって入りましたよね。ということは、それが暫定政権でありながらも、やはりイラク人による政府ができるわけですよ。暫定政権でありながらも完全な主権を持つということが認められているわけですよね。そのときに、統治組織というものの設立に向けた努力をするのがこの法の趣旨であれば、できたのであればこの文言を変えないと、「向けた」努力ですから。そういうことを、ですから、この法律の分水嶺と私が申し上げたのはそういう意味ですよ。もう一度お答えください。

 だから、暫定政権は入るか入らないか、それが今答えられないんだったら、明確に政府としての統一見解を出してください。そうじゃないと、この法律が援用できるかどうかというのが判断できませんから。

増田政府参考人 要するに、この法律の一条に書いてございますことは、再々申し上げておりますように、民主的な統治組織というものの設立等に向けた動きを支援するということを一つのポイントにしておると思います。そういった意味で、そこにまさに向かっていく動きが今行われておるということだろうと思います。

 ですから、六月三十日にできるものがどうなのかということであれば、それは、例えばその問題についてマルかバツかで答えろというのは、正直難しかろうと思います。今、完全なマルに向けて徐々に動きが行われておる、それを支援しようという意味で、まさにこの法律の目的に沿った動きというものが現にイラクで行われておると理解しており、我々はまさにそれを支援していこうという立場で活動を今後も継続する必要があろうというふうに考えている次第でございます。

前原委員 委員長、ちょっとお取り計らいをいただきたいんですが、ちょっと答弁が混同されている部分があります。なぜかというと、今の話をしているんじゃなくて、六月三十日以降の話をしているわけです。この法律の使い勝手がどうかということです。

 今努力しているのはわかりますよ。だけれども、六月三十日になったら暫定政権ができるわけでしょう、できたときに、目的のこの統治機構の設立等に向けたということが当てはまるのかどうかということを聞いているわけです。だから、この統治機構に暫定政権が入るのかどうかというところが大きなポイントだということです。

 これ以上議論したって水かけ論になりますので、政府の統一見解を求めたいと思いますので、お取り計らいをお願いします。

米澤委員長 理事会で協議して、おっしゃるような統一見解を求める方向で協議します。

前原委員 増田審議官、二条のことについて質問します。

 基本原則、三の一、「外国の領域」とありますね。それで、ここの中に、「ただし、イラクにあっては、国際連合安全保障理事会決議第千四百八十三号その他の政令で定める国際連合の総会又は安全保障理事会の決議に従ってイラクにおいて施政を行う機関の同意によることができる。」と書いてありますね。この「イラクにおいて施政を行う機関」というのは何ですか。

増田政府参考人 先生が今御指摘のただし書きの部分につきましては、一四八三号が条文の中に例示として出ておりまして、政令で一四八三号とそれから一五一一を定めているところでございます。

 その政令、そういうふうに定めておる政令の今の現状からいたしますと、「施政を行う機関」というのは、いわゆるCPAというものがそれに当たります。

前原委員 つまりは、CPAはなくなるわけですよね、六月三十日で。この法律には、今おっしゃったように、CPAの同意によることができるということが書かれるわけですよね。ということになると、CPAがなくなるのにこういう法律が残るということ、しかも、イラクにあってはCPAの同意によることができるということが、六月三十日以降もこれは妥当なんですか。

増田政府参考人 今先生が御指摘の条文は、まず外国の同意というものを本則で掲げ、「ただし、イラクにあっては、」ということで、ただし書きで、ある意味では例外的に記述をしておるという形でございます。

 それはなぜかと申しますと、先生よく御存じのように、まさにこの法律をつくった時点におきまして、イラクにおいては、いわゆる同意を与える政府というものが存在しない、それのかわりに、当時CPAがやっておったということから、そういう仕組みを入れたものでございます。

 ですから、六月三十日以降、それが妥当であるかどうかということになりますと、それは、まさに今これから、いわゆる自衛隊の今後活動していくに当たっての位置づけ等を政府として整理して検討していくわけでございますが、その過程の中で考えていかなければいけない問題かなとは思っております。

 ただ、要するに、そこは正直、何といいますか、直ちに妥当でないとか、そういう問題ではないんではないかと思っております。

前原委員 純法律的に伺いますけれども、六月三十日以降もこの法律で自衛隊を展開しようと思えば、少なくともこの項目は削除しなきゃいけないんじゃないですか、CPAの記述が書いてあるところは。

増田政府参考人 この、今先生から削除すべきではないかという……(前原委員「いやいや、法律的に聞いているんです」と呼ぶ)法律的にどうかという御下問がございました。

 法律的にお答えすれば、何といいますか、必ずしも削除しなくてはならないというものではないというふうに思っております。

前原委員 では、その理由を述べてください。

増田政府参考人 まさにただし書きでございますので、本則が、本来の外国の同意というものが足り、ただし書きが適用の余地がないという状況が仮に生じたといたしまして、そのただし書きの部分が残っておっても、別に法の仕組みとして問題が直ちにあるということにはならないと思っております。

前原委員 いや、それは理屈にならないんですよ。中谷筆頭理事がおっしゃった、僕が政府だったらそういうふうに答弁すると思うんですが、これは政令で読み込むという、すべて政令で読み込む話になっていて、今の段階では、「イラクにおいて施政を行う機関」というものをCPAとおっしゃったんです、御答弁されたんです。だけれども、一五四六というものを政令に読み込んだときに、この「イラクにおいて施政を行う機関」というものを暫定政権と多分読むんでしょう。そのことによって何とかしようという話になるんだと思うんですね。

 ただ、それだったら、でも、暫定政権というのが完全に主権移譲されるのであれば、「外国の領域」で、「当該対応措置が行われることについて当該外国の同意がある場合に限る。」これだけでいいんですよ。だって、イラクもここの中に入っちゃうんだから。イラクだけ特別視する必要はない。暫定政権であっても完全に主権が移譲されるんですから。

 そうすると、「ただし、」以降はやはり削除すべきなんですよ。そのことを申し上げている。

増田政府参考人 今の先生の、法律的にこうなるのではないかという御指摘は、議論について一定の前提を置いておられるように感じます。私どもは、まさに今、今後、一五四六と自衛隊の活動、また自衛隊の位置づけ等についてこれからまさに検討していこうという段階でございますので、今先生が前提を置かれました前提だけをもってどうあるべきかということを直ちに考えるという立場にはないわけでございます。

 私が申し上げておりますのは、では、仮に先生のお立場もしくは前提に立った場合においても、このただし書きが残っていたとしても、法律的に直ちに問題があるということにはならないのではないかというふうに思っております。

前原委員 これも押し問答というか、意見が合わないと思います。

 この文言についても、私は、少なくとも六月三十日以降、こういう文言が残ったままでこの法律でやるということは、やはり法律上おかしいというふうに思いますので、それに対する政府の統一見解も出していただきたいと思います。

米澤委員長 さきの件と同様に、議論して、そのようにしていただきます。

前原委員 私、余りこんな議論したくないんです。外務大臣あるいは阿部副大臣、どちらでも結構なんですが、やはり六月三十日以降のイラクでの活動というのは、自衛隊にとってはまた新たな見地に入るわけですよね。今まで海外で行動しないと言っていたのが、訓練、PKO、そしてテロ特措法、今度はイラク特措法。イラク特措法、でもこれはCPAという占領統治だった。今度は多国籍軍に入るということで、私は、活動内容が仮に一緒だとしても、やはりその意義とか位置づけ、あるいは自衛隊が今まで行ってきたものを、やはり新たな領域に踏み出すことは間違いない、活動の内容が変わらなくても。

 これはやはり政治的には、先ほど与党・自民党の小野寺議員や公明党の丸谷議員がまさしくおっしゃったように、政令に落とし込んで、法律を改正しないで、そしてこういった新たな領域に入ることについて、全く六月三十日以降何の議論もないまま入っていくというのは、私は全くおかしいというふうに思います。

 新法をつくるべきだと思いますし、少なくとも、私は、中身について、政治の、大臣とかあるいは副大臣とか、責任ある立場に立たれる方が新たな領域に入るということの重みというものをしっかり感じて、法律的にはまさに政令で読み込めるかもしれない、そういう手続ができるかもしれないけれども、やはりこれは堂々と新法に基づいて、国民の、国会の議論の判断に付すべきだ、そう考えるのが当たり前じゃないかと私は思うんですが、それに対して御答弁いただきたいと思います。

川口国務大臣 まず、前提のお話といたしまして、これは言わずもがなでございますけれども、先ほど総理が記者会見をなさっておっしゃられたように、多国籍軍、自衛隊の位置づけでございますけれども、そういったことについては今後、総理は、国内に、日本に帰国してから与党を初め皆さんと相談をしていきたいというふうにおっしゃられているわけでございますから、そういったことを今後総理が帰国なさってから行っていく、そして政府として適切に判断をしていくということになろうかというふうに思います。そしてまた、先ほども申しましたけれども、政府として判断をするに際しましては、国会での御議論を十分に踏まえてまいるということは当然のことであろうかというふうに思っております。

 それから、全く新しいフェーズに入るかどうか、これはどういう観点から見るかということであろうかというふうに思います。そこは、自衛隊においては、これは一四八三でずっと議論を、そこで言われているように、人道復興支援を一四八三で要請されている、そしてイラクの安全と安定に貢献するということを要請されているわけでございまして、それを踏まえて我が国としてイラクに自衛隊を派遣しているということであって、その後の決議一五一一、そして今回の一五四六、これについては、その一四八三の趣旨、それをより具体化したものであるということであるかというふうに思います。

前原委員 新たなフェーズに入っていないという認識なんですか。つまりは、活動内容が同じであっても、CPAという占領統治下にあったイラクで国連決議に基づいて参加をすることと、完全に主権が移譲されるイラクにおいて国連決議を前提として多国籍軍の一員として出すことは、違ったフェーズにならないんですか。そういう外務大臣は御認識なんですか。同じだと思っておられるんですか。

川口国務大臣 私だけが政府を代表して答弁をするという立場にはないかと思いますけれども、これはどの観点から考えるかということによって一概には申し上げられないということを申し上げているわけです。主権が回復をしたということをとらえれば、それは確かに主権は回復をしたということは新しいことであるということと思います。

 ただ同時に、これは私が御答弁するということではありませんけれども、立場ではありませんが、イラク特措法、これのよって立つところというのは、主権の回復ということはこれは問うていない、前提としているということではない、あるかないかということがかかわってくるわけではないというふうに私は理解をいたしております。

 ですから、そういったことで、何をとらえて状況が変わったと考えるかということで、先ほど申しましたのは、例えば一四八三、これは国連の加盟国に対してイラクに対する人道復興支援及びイラクの安全と安定に貢献することを要請しているということでありまして、一五一一、一五四六、これはそれを具体化したものであるということであると思います。ですから、そういう観点からいえば、状況が変わったということではないということを申し上げているわけでございます。

前原委員 ひょっとすれば、外務大臣とは最後の質疑になるかもしれません、国会も終わりますので。

 私は、大臣というのはもっと大局的な観点に立ってやはりお答えをされるべきであって、法の中身とかあるいは国連決議、それを前提にして、踏まえられて発言されるのはもちろん大事なことですけれども、先ほど小野寺さんや丸谷さんがおっしゃったように、国民がどうそれに対して見るのかという大きな政治の流れというものをつかんだ上で政治的な発言をされて、そして国民を説得されるというお立場だと僕は思いますので、私が望んでいた答弁とは全く違うということだけは申し上げておきたいと思います。(川口国務大臣「それはさっき答えたでしょう」と呼ぶ)いや、私の意図ではないです、それは。

 もう一つ、時間も差し迫っていますけれども、質問したいと思います。

 日本政府の見解としてお答えいただきたいんですが、この国連決議ですね、多国籍軍と暫定政権の関係なんですが、治安について、この中身を読んでいますと、作戦をめぐっては合意に向けて調整をするということになっていて、完全な主権移譲と書かれているのに、治安については調整ということが書いてあって、果たして最終的に、アメリカが中心になるんでしょうが、アメリカが行う治安活動にノーを言えるのかどうなのかというところが非常に大きなポイントだと思うんです。前、パウエル国務長官とブレア・イギリス首相の間でもその意見の食い違いがありました。表面化をしておりました。

 日本としてはどう考えているのか。つまりは、具体的に言いますと、ファルージャでのアメリカ軍の行動のようなもの、サドル派民兵とアメリカがいわゆる交戦をするというようなことを、例えば、コーディネーションしても調整がつかなかった、しかしアメリカが勝手に、勝手にというか、その調整がつかずにサドル派民兵と交戦をするというようなことがこの国連決議では認められているのかどうなのか、日本としてはどう考えているのか、その点について日本政府の見解をお聞かせいただきたいと思います。

川口国務大臣 国連の一五四六決議ですけれども、これをいろいろ読んでみますと、この中に、二つ手紙がついていて非常にややこしいんですが、調整メカニズムというものをつくりましょう、フォーラムをつくりましょうということが書いてあるわけでございます。それは、その安全保障機構ですけれども、イラク政府及び多国籍軍にとって機微な攻撃作戦も含めて、あらゆる範囲の基本的な安全保障問題及び政策上の問題について合意を達成する、合意に達するためのフォーラムとなるということであると思います。したがいまして、このフォーラム、これが動いていくということで我が国の政府としては考えているわけでございます。

 したがって、おっしゃったようなファルージャのような件、こういったことについては当然にこのフォーラムで議論をされていくということになるわけでございまして、そこできちんと調整が行われるというふうに考えます。

前原委員 いや、私は、調整がつかなくて、そしてアメリカがそれの調整を無視した形でやった場合はどうなるんですか、日本としての判断はどうですかという質問をしたんです。調整をするということは、書いてあるんだからわかりますよ。

川口国務大臣 ですから、調整をして調整がつかないということは想定をされないということを申し上げているわけです。

前原委員 質問時間が終わりましたので、これで終了いたしますが、いずれにしても、私は、多国籍軍に自衛隊を派遣するということは、まさに自衛隊発足後初めての行為であって、活動内容が同じであっても、特別措置法のそういう内容が違うものについての援用というのは絶対にすべきではないし、そういうことを続けていると、本当に政府というか、自衛隊に対する信頼感は失われていく。私はそのことを厳しく申し上げて、私の質問を終わります。

米澤委員長 次に、今野東君。

今野委員 民主党の今野東でございます。

 私も、実は、きょうはぜひ官房長官においでいただいて質問をしたいと思い、通告もそのようにいたしましたが、残念ながら官房長官はおいでになれない。

 この前私が質問をさせていただいたときに、杉浦副長官においでいただいて、そして北朝鮮への同行報道機関の問題についてお尋ねをした折に、一首相秘書官が官房長官の権限を飛び越えて、同行の報道機関についてあれを連れていくなというような指示をするということはいかがなものかということを言いましたら、それは官房長官の責任であるというようなことをおっしゃって、それではその処分はどうなのかとお伺いしましたら、副長官は、私は副長官なのでわからないとおっしゃるから、それではどうするのか、官房長官に出ていただいて、出席していただいてお尋ねしたいと言うと、お出にならない。

 きょうは、サミットで、非常に官房長官自身が総理の代理としてお忙しくしていらっしゃるということで、その点はやむを得ないかもしれないと思うんですけれども、副長官もお出にならないということでは、この委員会での審議というものができない。先ほど前原議員も同様のことを話しましたけれども、私も、この委員会というものをきちんと重視していただいて、必要な方は出ていただく。突然きょう出てきてくださいと申し上げたわけではないわけですから、そういう意味で、質問ができないということはゆゆしい問題だと指摘をさせていただきたいと思います。

 それで、きょうは、質問通告していないんですが、外務省から「北朝鮮に対する照会事項の概要」というのがきょう出されまして、これについてちょっとお尋ねしたいと思います。

 これは一、二、三、四、五項目ありまして、そしてぺらぺらと見てみるんですが、そうすると、政府が認定している十件十五名の方々のことについて何か書かれているんですけれども、特定失踪者、四百名とも言われている方々ですが、この方々についてはこの中には見えないんですが、例の百五十項目の中にはこれは入っているんでしょうか。大臣にお尋ねします。

川口国務大臣 特定失踪者につきましては、この百五十項目の中には入っていないということでございます。

 特定失踪者については、その認定、拉致の被害者であると認定をされれば、もちろんこれは真相究明をしていくということは既に北朝鮮に伝えているところでございます。

今野委員 ということは、この特定失踪者のことはとりあえずいいんだ、それで、そのことは解決がされなくともさまざまなことを進めていくんだということですか。

川口国務大臣 特定失踪者については、これはいろいろな情報を政府としても把握すべく努力をいたしております。警察においてもやっていただいておりますし、外務省としても、これは関係国その他いろいろなところから情報を集めるという努力をいたしております。したがいまして、今委員がおっしゃったようなことを特定失踪者について考えているわけでは全くないということでございます。

 そういった情報を集めて、そして認定を、拉致の被害者であるということであれば、これはもちろん北朝鮮に対して真相究明を言っていくということは当然のことであるということでございます。

今野委員 ぜひ、こうした方々の究明についても積極的に取り組んでいただきたいと思います。

 この特定失踪者の方々についてもう一度お尋ねしますが、北朝鮮に対して今後どのような対応をしていくおつもりですか。

川口国務大臣 特定失踪者につきましては、情報をまず集めるということが非常に重要であると今考えております。そして、これは外務省あるいは警察、あるいは関係のところでいろいろ集めていただいているわけでございまして、そして、拉致の被害者であるという認定がされるということでありましたら、真相究明について北朝鮮に今要求をしていることについて、もちろんその中の一員としてやっていくということは既に北朝鮮にも伝えているところでございます。

今野委員 これは、特定失踪者についてもきちんとした積極的な姿勢をおとりいただきたいというお願いをしておきたいと思います。

 さて、続いて、今度はイラクにおける外務省職員殺害事件についてですが、この間もこれもいろいろお尋ねをしました。

 外務省から出ているペーパーに基づいてこの間はいろいろ質問をしたわけですが、これをもう一度読めば読むほど、また質問をすればするほど疑惑が深まってくるわけでありまして、そのあたりについてもう一度お尋ねをしたいと思うんですが、前回は委員の皆さんにもこの外務省から出ているペーパーをお配りしましたが、これは前回お配りしましたから、今回は、お部屋にお持ちの方もいらっしゃるかもしれませんが、出しておりません。疑問の点があってお尋ねをしたいと思います。

 まず、この外務省から出ている「イラクにおける外務省職員殺害事件(事件の状況・経緯等)」というペーパーの十二ページなんですが、これはこの間も同じような質問をしたんですけれども、「現地米軍が事件の後、事件現場付近の複数の居住者からの聞き取りを行ったところ、奥参事官の乗っていた館用車への襲撃は四台のSUVにより行われ、うち二台が攻撃を行った、襲撃者はRPKを用い、民間人の洋服でケブラータイプのヘルメットを着用していたとの情報が得られている。」というふうにここに書かれているんですね。

 その前にこの外務省のペーパーでは、この館用車は大体百キロから百四十キロで走行したのではないかと想定しているようなんですが、百キロから百四十キロというスピードで走行した場合、四台のSUVが走ってきて、そのうちの二台が攻撃を行ったというふうに果たして見分けることができるんだろうかなと。

 この現場付近の居住者の目撃というんですから、ごく普通の人なわけですよね、現場付近に住んでいる人で。しかも、この事件は予測していて起きたわけではないわけです。大概、大きな物音がしたりしてびっくりして出てきてみるというのが通常考えられる状況なわけですけれども、そうやって慌てて出てきて、何だ何だとびっくりして出てきて、そして、まさにその道路の前を通り過ぎようとしている車の四台のうちの二台から攻撃があったというふうに見分けることというのは、専門的な知識があるわけでもない付近の居住者がわかるもんなんだろうかなと。

 きょうは、警察庁の瀬川警備局長においでいただいて、そのあたりは、さまざまな経験を重ねていらっしゃる部署でいらっしゃいますから、どうなんでしょうかねということをお尋ねしたいと思います。

瀬川政府参考人 お答えいたします。

 外務省の報告書の記載内容につきましては私どもも承知をしておりますけれども、私どもが直接居住者の方々から話を伺ったというようなことではもちろんございませんし、どういった状況で目撃されたのかということも具体的に承知をしておるわけでもございません。

 また、当該犯行といいますか、被害に遭われたときの車の走行速度が、その瞬間といいますか、その時点でどのぐらいであったのかというようなことも承知をしておりませんので、具体的に、その目撃の状況についてどうだったのかということについては、この知り得る材料ではコメントをさせていただくのは非常に難しかろうと思います。

今野委員 いや、百キロで、あるいは百キロから百四十キロで走っている車の中の攻撃したのが二台だというようなことは、通常、そういう、周辺に住んでいる居住者が物音を聞いてびっくりして出てきてわかるもんですかねということを聞いているんです、このことについて、事実関係どうなのかということを聞いているんじゃなくて。

瀬川政府参考人 重ねてのお尋ねでございますけれども、具体的な状況に関することでございますので、具体的な状況にやはり即してお答えをさせていただかないといけないのではないかというふうに思いますので、責任あるコメントをさせていただくというのは控えさせていただきたいと思います。

 ただ、一概に、これは、わからないとかあるいはわかるということは申し上げられない。わかる場合もあるでしょうし、わからない場合もあるのかもしれないというふうにしか申し上げられないのではないかというふうに思います。

今野委員 いや、わからない場合がほとんどだろうなと思うからお尋ねしているんです。

 さて、それで、百キロから百四十キロで走っていると想定される車の中から襲撃している人が民間人の洋服を着ていた、それからケブラータイプのヘルメットをかぶっていた、それから銃がRPKだったと大変詳しく見ているわけです。

 これは外務省の、きょうは堂道局長においでいただきたいんですが堂道さんもサミットに行っていらっしゃるそうで、鈴木さんですか、お尋ねしますが、さて、それだけ詳しく見ているのならば、犯人はそれではどういう顔をしていたのかというのも見えているはずですよね。その点はどうなんでしょうか。

鈴木(敏)政府参考人 お答えいたします。

 この外務省の報告書でございますけれども、この報告書にも書いてございますけれども、この事件自身がいろいろまだ捜査継続中であるということもございますし、それから、やはり現地におけるいろいろな状況の中で、必ずしも日本においていろいろ調べるのと同じような状況下でさまざまな情報が得られるというような状況でもございません。そういった中で、いろいろな制約はあるんですけれども、これだけ大きな事件でございますので、我々がこれまでに把握したものを捜査に支障のない範囲でできる限り御説明しようということで記載したものでございます。

 そういった観点から、個々の状況について必ずしも一々検討できない、あるいはしていないような情報につきましても、対外的に事情を御説明する上で使えるものは報告書に反映させようという観点から記載させていただきました。

 そういうことでございますので、今委員の方から御質問されました諸点につきましても、私どもが得ている情報はまさにここに記載してあるような情報でございますので、まさにどういった状況下でどういうふうに彼らが見たのか、あるいはそれを見たという彼らの、居住者のその発言が本当に正しいのか正しくないのかということを必ずしも検証したものでもございません。あくまでも米側から得た情報としてこういうものがあるということで記載いたしました。

 ですから、それ以上、なかなか、個別の状況について私どもとしても責任あるコメントをできるものではないということで御理解いただければと思います。

今野委員 この間質問をしたときも、そういうことなんですよ。お尋ねすると、これは米軍から出た情報だから私たちにはわからない、米軍から出た情報だから私たちにはわからない。

 それでは、外務省としては、こういう点は疑問には思わなかったんですか。銃がRPKで、ケブラータイプのヘルメットをかぶっていて、そしてこういった細かいことが一つ一つ見えているわけですね、四台のうちの二台から銃撃されてというようなこと。ヘルメットをかぶっていて、民間人の洋服を着ていてというんだから、それじゃ、顔はどんな顔をしていましたかって飛びつきたいじゃないですか、同僚の方が亡くなっているんですから。それはそのままほっておいて、ああ、そうですかと言っているんですか。

鈴木(敏)政府参考人 委員御指摘のように、我が国の外交官が殺害された事件ということで、この事件に対しては私ども相当重大な関心を持っているのは当然でございます。それは単に外務省の同僚ということだけではなくて、やはり日本の国の組織に対する攻撃があったんだという点からしてもやはり見逃せないことである、そういう認識は十分持っております。そういう意味で、我々としても、この事件がどうだったのかということを本当に真相を究明したいという心境は変わっておりません。そういった観点からいろいろな努力はしてきているということでございます。

 ただ、この情報に関する限りは、あくまでもこういった情報があったということを我々が提供を受けたということでございまして、それ以上これを検証するというすべはなく、そういうこともしておりません。こういういろいろな情報がある中での一つの情報としてとらえているということでございます。

今野委員 いろいろな努力をしていると今おっしゃいましたけれども、それが、つまりイラク人専門家を派遣して調査をした、あるいは上村臨時代理大使が行って調査をしたということなんだろうと思うんですけれども、そこの結果が全く何にも出てこないからこうして繰り返しお尋ねをするわけなんです。

 これは米軍の情報だと言うんですけれども、米軍とは、この報告をもらった段階で、後は、それでもういろいろお尋ねするということは外務省としてはできないんですか。

鈴木(敏)政府参考人 米軍との間では、この事件の関係ではさまざまなやりとりをしてきております。ここに出ております情報に関して言えば、先ほどから申し上げましたように、一つの情報として先方から提供があったということでございまして、それ以上のものでもそれ以下のものでもないということでございます。

今野委員 米軍にこの件についていろいろ尋ねることはできるということですか。できるんですか、できないんですか。

鈴木(敏)政府参考人 米軍との間で、あるいはアメリカ側との間でさまざまなやりとりをすることは一般論としては可能でございますが、この情報に関する限りで言えば、一つの完結した情報として我々が後日提供を受けたものということでございますので、まさにそういうステータスのものであるというふうに理解しております。

今野委員 では、こういう疑問の点についてはそのままほっておくんですか。アラブ人だったか西洋人だったかぐらい知りたいじゃないですか、これだけ詳しく見ているのならば。ほっておくんですか。

鈴木(敏)政府参考人 先ほどからも御説明しておりますように、この事件に関する情報というのはさまざまなものがございます。これはその一つの情報であります。その後で書いてありますような、私どもの専門家が行って一応周りの者に聞いたことから得られた情報というのも別途ございます。

 ですから、そういったいろいろな情報がある、そういったものを、情報は情報として受けとめているということでございます。一つ一つの情報の確度とか精度とかいったものを法的に検証するということまではしていないということでございます。

今野委員 外務省はこういうことの専門の捜査機関ではないから、それはそういう面もあるのかもしれません。これは警察庁にぜひ乗り出してもらって調べてもらったらどうなんでしょうか。大臣、どうお考えになりますか。

川口国務大臣 この件につきましては、外務省は警察庁と非常に緊密に連携をしているわけでございます。先ほど来鈴木参事官から申し上げていますように、これは本当にそういう情報があった、それを、あった情報をすべて出していきましょうということで出しているわけでございまして、それ以上のものでもないしそれ以下のものでもない、まさにそういった性格の情報であるということでございます。

今野委員 すべて出ていないから、こうやって何度も聞いているわけなんです。

 それでは、もう少し具体的なことをお尋ねしたいと思いますが、瀬川警備局長にお尋ねしますが、RPKという旧ソビエト製機関銃だというふうにこの中ではなっているんですが、これもやはり相当な専門家でも、これは、銃撃しているときには銃をわきに抱えて、しかもこれは台座のところが見えないとRPKなのかFNMAGなのかわからないはずなんですが、さっきから申し上げておりますように、時速は百キロから百四十キロ、これも一般の居住者の方が見て、この銃の特徴ぐらいは多分おわかりだと思うんですけれども、RPKなのかFNMAGなのか、一般の居住者はわかりますかね。

瀬川政府参考人 お答えいたします。

 先ほど来お尋ねの点は、恐らくこれは一般論的に申し上げますと、犯罪が行われた場合のその目撃者の証言について、その証言の信憑性、信用力というものがどうなのかということなんだろうというふうに思います。結局、これは先ほどから申し上げておりますように、いかなる人物がいかなる状況で目撃したのか、そのときの状況によりまして、具体的な状況によりまして、その目撃証言の内容の信憑性なりということが判定されるということだろうと思いますので、こういった原則は、この事案についても多分といいますか、当然当てはまることだろうというふうに思います。

 したがいまして、RPKとわかるのかどうかというのは、それは目撃した方がどういう状況で、どういう知識なりなんなりを持っていたのかどうか、そういうまさに個別具体的な問題に係ることだろうというふうに考えるところでございます。

今野委員 これは、今の瀬川局長の話の裏を考えると、裏をというか点から推察すると、これは要するにどっちかわからないということなんですよね。しかし、このペーパーではいかにもRPKであるというふうに書いてあるわけなんですけれども、薬きょうも見つかっていないわけですから、これ。それでRPKとなぜ特定できるのか。RPKというのは旧ソ連製自動小銃であるわけなんですが、同じ口径の銃はアメリカ製の機関銃にもあるんですね。ここのところが非常に不思議で、ここからなかなか進んでいってないんですよ。

 それから、前回私が質問したのは五月二十八日でしたけれども、このときも、それでは洋服、民間人の洋服だというから、どんな洋服ですかと聞いたら、堂道局長はウエスタン何とかとおっしゃって、どうも私よく聞こえなかったので、後で議事録を見たらウエスタン・シビリアン・クローゼズと言っている。西洋の民間人の洋服と言っているんですが、鈴木参事官、つまり、これは現地の人ではないということですよね。

鈴木(敏)政府参考人 おっしゃられたとおり、民間人の洋服ということがこの情報の中にあるわけですけれども、それがいかなる洋服、しつらえのものであったのか、あるいは、それを着ていた者が現地人だったのかあるいはそうでなかったのかということについては、はっきりわかりません。

今野委員 大体そういう答えなんでしょうけれども、外務省のこのペーパーでは「テロである可能性が高い」と。米軍の話だから私たち確認しようがないんです、確認しようがないんですと言いながら、それらを構築して「テロである可能性が高い」というふうに書いているんですよ。つまり、情報についてはどうもはっきりよくわからないんです、本当かどうかわからないんですとお尋ねをすると言いながら、それらを重ね合わせて「テロである可能性が高い」という結論を出しているんです。

 テロリストだとすれば、目的はテロなわけですから、目立たない格好をしますよね。わざわざ目立つようにウエスタン・シビリアン・クローゼズ、西洋の民間人の格好、この地域で目立つ格好ですよ、すごく。それから、ケブラータイプのヘルメット。普通、ヘルメットなんかかぶりますか、テロリスト。すぐテロリストだってわかってやられてしまいますよ。こんな目立つ格好をしたテロリストなんか存在しませんよ。

 ということは、これ全部総合していくと、米軍誤射という点から見ると、それぞれのところでクリアしているんです。機関銃を持っている、民間人の洋服。民間人の洋服といったって、上着を脱いでTシャツ一つになっている状態であれば、ああ、民間人の洋服なのかもしれないと、米軍の兵士が。それから、ケブラータイプのヘルメット、これだって、まあケブラータイプのヘルメットというのはいろいろなのがありますけれども、米軍の正式採用のヘルメットもケブラータイプのヘルメットなんです。つまり、クリアしているんですよ、全部、そういう点からいくと。

 それで、そのことについてお尋ねをすると、いや、米軍の調査だからわからない。それでは、外務省側として調査をしたイラク人特別専門家ですか、の調査報告書、調査したと言うから報告書を出してくださいと言うと、出さない。上村臨時代理大使の調査報告書、出さない。だから、この疑問がますます膨らんでいくだけなんです。

 ここで委員長に改めて、イラク人専門家の調査報告書、それから上村臨時代理大使の調査報告書、そして上村臨代の参考人招致を求めたいと思います。

米澤委員長 引き続き理事会で協議します。

今野委員 もう時間ですから、最後に大臣にお伺いします。

 私は、このごろ時の流れが非常に速くて、事件も二、三カ月たつと忘れてしまうというような傾向がありますけれども、これは非常に重大な問題で、自衛隊が派遣されるか派遣されないかというときに、これがその原点となっている非常に大きなポイントがあったはずだと思うんです。小泉総理が多国籍軍に自衛隊を参加させるんだというようなことを言って、後で幾らかぼやかしたようではありますけれども、そういうときに、こういうその過程で起きてきたさまざまな出来事をしっかり解明しておく必要があるということを思うわけです。

 それで、これはやはり第三者委員会をつくっていただいてきちんとこれを解明する必要があるのではないかというふうに思いますが、大臣はいかがお考えでしょうか。

川口国務大臣 この案件ですけれども、これは非常に重要な、重大な案件であって、我々としてぜひ解明をしたいというふうに思っているということでございます。そして、今後何らかの新しい事実が明らかになれば、これはその時点その時点でできるだけ御説明をさせていただきたいというふうに思っております。

 その上で、第三者委員会をつくればよりこの事実関係が明らかになるかというと、それは必ずしもそうではないというふうに我々は考えております。政府として、いろいろな方の、関係者の方々の御協力をいただきながらこれを解明していきたいというふうに考えております。

今野委員 大臣はよく、物事を解決するためにあらゆることをやるとおっしゃるんですけれども、この第三者委員会というのもぜひそのあらゆることの中の一つに含めていただいて、御検討いただきたいと思います。

 ありがとうございました。

米澤委員長 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。

 きょうは、自衛隊のイラクへの派遣の継続、この問題について取り上げたいと思います。

 国連の新決議が上がったとはいえ、その評価はきょうは行いませんが、やはりまだいろいろ複雑な問題を残している。そういう中で、六月三十日にはCPAが消滅する。自衛隊の地位がなくなる。この機会に、私は、憲法違反であり、そしてイラク特措法にも違反している自衛隊は直ちに撤退をすべきだ、このように考えているものです。

 そこで、ずっと多国籍軍への参加、こういう議論が行われているわけですが、私、きょうは最初に、参加という意味について確認をしたいと思うんです。

 平成二年の十月二十六日の中山外務大臣の答弁で、国連軍に対する関与のあり方について次のように述べています。「「参加」とは、当該「国連軍」の司令官の指揮下に入り、その一員として行動することを意味」する、このように答弁しておりますが、外務大臣、これはそのとおりですね。

川口国務大臣 全体の答弁は長いわけですけれども、その一部であるということです。

赤嶺委員 そうすると、自衛隊が多国籍軍に参加するということであれば、その指揮下に入るということになるわけですね。国連軍であろうが多国籍軍であろうが、参加というなら、その指揮下に入り、その一員として行動するということであります。それ以外の解釈は成り立ちません。そうですね。

西田政府参考人 ただいま御指摘の統一見解、俗に言う統一見解の中において「参加」という言葉がそのように使われているということは、そのとおりだと思います。

赤嶺委員 ですから、参加というなら、その指揮下に入り、その一員として行動する、そういうことをお認めになったと思います。

 そうなりますと、自衛隊の多国籍軍への参加、これは、自衛隊は指揮下に入るということですか。

西田政府参考人 ただいまの御質問でございますが、昨日等々法制局長官がお答えしているとおりだと思いますが、いわゆる参加ということの意味が、司令官の指揮のもとに入り、その一員として行動をとるという意味だと、ここのいわゆる統一見解の中で使われているということでございます。

 それで、今の御質問で、では参加するということが指揮のもとに入ることかということについては、必ずしもそういうことではないというふうに理解をしております。

赤嶺委員 これまでの答弁と全く違うじゃないですか。参加とは、指揮下に入り、その一員として行動することだ、そういう答弁がしっかりある。今回、自衛隊が多国籍軍に参加する、それは指揮下に入るということではないんだ、そういうことですか。

西田政府参考人 お答えをいたします。

 まず第一番目に、今回自衛隊が参加するというような御質問がございましたけれども、これは累次お答えしているとおり、政府として、今般できました安保理決議に基づくいわゆる多国籍軍に参加するしないということについては、何ら決定をしていないということでございます。

 第二番目に、一般論として、先ほどの御質問で、いわゆる参加するということの定義ということと、仮に何らかの形で多国籍軍のその一員となるということが直ちにその司令官の指揮のもとに入るということにはならないのではないかということをお答えした次第でございます。

赤嶺委員 全く話にならないじゃないですか。支離滅裂ですよ。何でそんなことが言えるんですか。おかしいじゃないですか。大臣、お答えください。

西田政府参考人 繰り返しになって恐縮でございますが、参加ということと、それから、もちろん一般論でございますけれども、自衛隊が多国籍軍に何らかの形で一員となるということが直ちにいわゆる司令官の指揮のもとに入ることと同じではないということでございますので、特段矛盾しているというふうには思いません。

川口国務大臣 全く同じことを申し上げようと思っていました。

赤嶺委員 これまで、参加とは、指揮下に入り、その一員として行動するということだったんですよ。そういうことですよね。それはお認めになっている。

 では、何で今回それがそうならないんですか。そうならないと言うのは、余りにも皆さん、この過去の答弁との整合性においても全くのへ理屈じゃないですか。参加とは、指揮下に入る、その一員として行動することになるんだ、それ以外にどんな解釈がありますか。

西田政府参考人 私は、参加という言葉の定義が、ただいま先生が御指摘のとおり、おっしゃったとおりだということは何回も認めておるわけでございます。

 他方、私が申し上げておりますのは、自衛隊が仮に何らかの形で、いろいろな判断基準を踏まえまして検討の結果として、いわゆる多国籍軍の一員として活動するということが直ちに司令官の指揮のもとに入ることにはならないということを言っているんですから、これは矛盾しているというふうに私には思えません。

赤嶺委員 多国籍軍の一員としてそこに参加しながら、しかし指揮下に入らない、こんなことが起こり得ますか。全く筋違いの議論ですよ。

 例えば、皆さん、過去の答弁でいえば、この中山答弁ではこう言っているわけですよね。参加に至らない協力、いわば国連軍あるいは多国籍軍の外からの協力、それ以外は参加で、やはり指揮下に入る、そういう答弁以外の答弁は過去に全くないわけですよ。

 ここに来て答弁をすりかえる、すりかえるどころかゆがめてしまう、これは、イラクに自衛隊をただただ派遣したいがためにへ理屈をこねている、そういうことになるんじゃないですか。

西田政府参考人 これにつきましては、今のお話を別途の角度からお答えをしたいと思いますが、いわゆる今御指摘の国連軍への参加に関しましての中山大臣の答弁というのは、これまで法制局長官も言っておりましたけれども、いわゆる湾岸戦争に対しましてできましたいわば第一号の多国籍軍という専ら武力行使を目的とする多国籍軍を前提にして行われているということだというふうにまず理解をしております。

 そして、その後、これもこれまで御説明しておりますが、多国籍軍の内容についてはいろいろな変遷を遂げてきているという事態において、多国籍軍に対して、その一員としてこの活動にいわば加わっていくということというものをどういうふうに整理するかということについては個別具体的に行うべきものと思っておりまして、それは総理の御発言にもありますように、総理の御帰国を待って検討していくということであろうと思っております。

赤嶺委員 やはりへ理屈をこねて、憲法違反の事態を何とかくぐり抜けようとしている。ですから、先ほど与党の議員の皆さんからも指摘があるぐらい非常に拙劣な解釈だと思います。

 例えば、今、湾岸戦争時の多国籍軍だとか、今度の新決議による多国籍軍だとか、いろいろ言われますが、その同じ年の工藤政府委員の答弁というのはこうなっています。

 参加するもとになるいわゆる国連軍がその任務、目的において実力行使を伴うということであれば、いわばそれと一体化するということは、みずからは実力の行使を行わなくともいわば全体としてそういうふうに評価される、それが翻って我が国にとって武力の行使を許さないという憲法から見て問題だ、このように明確に言ってきているわけですよ。

 ですから、多国籍軍の一員になりながらその指揮下には入らないというような議論は、世界の人々が聞いたらあきれる話です。イラクの人から見たら、明らかに多国籍軍の一員であり、そのアメリカの指揮下にある日本の自衛隊です。そういうようなことを、本当にへ理屈をこねて、こねくり回して突破するようなことは、憲法に風穴をあけるようなことは絶対に許されない、多国籍軍への参加は、憲法においてもイラク特措法においても絶対に認められるものではないということを指摘して、質問を終わります。

米澤委員長 次に、東門美津子君。

東門委員 社会民主党の東門美津子です。

 今国会、この外務委員会で最後の、いつも最後なんですが、きょうもまた本当の意味での最後のバッターだと思います。よろしくお願いいたします。

 イラクへの多国籍軍についていろいろ質問がありましたが、私は、やはり沖縄にこだわって質問をしてまいりたいと思います。

 米軍の世界的再編に伴い、在日米軍に関してもさまざまな報道がなされています。沖縄の第三海兵師団砲兵部隊の北海道への移転、米国ワシントン州にある陸軍の第一軍団司令部のキャンプ座間移転、米海軍の厚木基地の移転、返還、普天間基地の代替施設なしの返還等々、我が国における米軍も大きく再編されようとしているように見えます。もちろん、これらの報道に外務省はすべて、米側からの提案はないと否定しています。

 それで、伺いたいのですが、米側からの提案はない、しかし日本側からはこの再編との関連で何か提案をしておられるのかどうか、伺いたいと思います。

長嶺政府参考人 お答えいたします。

 ただいま委員から御指摘がありました最近の報道につきまして、これは今委員もおっしゃられましたけれども、これらについて提案を受けているということはないということでございます。

 そこで、日米の間では、外務、防衛当局間で、さまざまなレベルで協議を行ってきております。その具体的な内容につきましては、米側との関係もあって、詳細を現段階で申し上げることはできませんが、ただ、こういった場におきまして、私どもは、在日米軍の果たしているその抑止力が維持されることと、それから沖縄を含めまして、地元が有しておられるその負担ということを十分念頭に置いてやっていくべきだということを二つの柱として申し上げてきているところでございます。

東門委員 これまでもずっとこれは聞いてまいりました。抑止力の維持と県民の負担の軽減、これをやっていきますということは聞いてきましたけれども、そして、事実、去る八日の日米首脳会談でも、総理は、在日米軍のこの再編問題についてのところで、沖縄の負担軽減と抑止力維持の観点が重要である旨述べられて、米軍の兵力構成については事務的に協議させたいと述べたと外務省は概要の中で発表しています。

 先ほども申し上げましたように、この沖縄の負担軽減というのはこれまでずっと、私たちはもう何千回と聞いてきた言葉ですが、今まだ協議させたいの段階であるというふうに、協議させたいと総理はおっしゃったんですが、それはそういう段階であるという、これから協議に入る、今協議しているとおっしゃったんですが、協議の中で、沖縄県民の声をしっかりと受けとめて提案はなさっているのでしょうか。日本政府としてはこういうことを考えている、ぜひこういうことをしていただきたいとアメリカ側への提案、中身は聞いておりません、それは強く出しているんでしょうか。

長嶺政府参考人 お答えいたします。

 今回、米国は、新たな安全保障環境における課題に対処するためということで、グローバルに軍事体制の見直し作業を行ってきているということでございます。

 そこで、我が国を含め同盟国、友好国等と緊密な協議をしてきているということで、先ほど御答弁申し上げましたが、我が国との関係におきましても、外務、防衛当局間においてさまざまなレベルで協議を行ってきておるということでございます。

 これは、先ほど申し上げましたように、今の段階でまだ詳細に申し上げるような状況ではございませんし、それから米国としましても、今の段階でこのグローバルな見直し作業というものがまとまってきているという段階ではございません。

 したがって、詳細、中身については申し上げることはできませんけれども、そういう提案を出し合ってというようなことを議論しているということではございません。

東門委員 といいますと、日本側もしっかりと、沖縄のあの広大な在日米軍基地についても主張しているというふうに受け取っていいわけですね。はっきりと、沖縄県民の声もお聞きになって、それを強く主張しているということと受けとめていいですね。

長嶺政府参考人 お答えいたします。

 先ほども御答弁申し上げましたけれども、こういった協議の中で、在日米軍が有している抑止力が効果的に維持されるということとともに、沖縄を含む米軍施設・区域が所在する地元の負担が十分念頭に置かれるべきということで対応してきております。

東門委員 政府は、沖縄の米軍基地問題が議論されると、今もおっしゃったんですが、必ずと言っていいほど沖縄県民の負担の軽減という言葉を使用しています。例えば、沖縄の負担軽減の重要性であるとか、沖縄の負担の軽減を考えなければならないとか、沖縄の負担を軽減する努力をするとか、抑止力を維持しつつ沖縄の負担軽減を図る等々、もう本当に繰り返し繰り返し出てきます。

 それでお聞きしますが、政府が考えている沖縄の負担の軽減とは具体的に何を指しているのか。そしてまた、これまでに行われた負担の軽減にはどういうものがあると考えておられるのか。これは大臣にお伺いしたいと思います。

川口国務大臣 具体的に何が負担の軽減かという御質問でありますけれども、幾つか具体的に挙げさせていただきたいと思います。

 まず、SACOの最終報告の着実な実施、これは普天間飛行場の移設、返還も含めまして、この着実な実施については今最大限の努力を傾注しております。

 それから、もう一つ申し上げれば、日米地位協定について、目に見える運用改善を進めるということが、米軍の駐留に伴う問題についての周辺の住民の方々の御負担を軽減することにもつながるというふうに考えております。したがいまして、引き続き運用の改善、これについて進めるように日米間で緊密に協議をいたしてきておりますし、今後もしてまいります。

 先ほど、総理の日米両首脳会談での御発言について触れられましたけれども、これにつきまして、負担の軽減について重要であるということについては、両国の首脳の意見は一致をしているということでございます。引き続き努力をしていきたいと思います。

 それで、さらに具体的に、では何ができたんですかという御質問が先ほどありましたけれども、例えば運用改善で、SACOの協定の実施分については改めて申し上げるということはもう必要ないかもしれませんが、運用改善につきましては、例えば刑事裁判手続、この間合意をいたしました。そういうこと及びその前身となる、これは九五年、これの合同委員会合意というのがございます。この間のはそれを踏まえてということでございますし、さらにつけ加えれば、環境分野で、使用済みPCBを含む物質の搬出、これは着々と行われてきたわけでございます。緊急車両の立ち入り、これについても同じようなこと。それから、そういったSACOの最終報告にありますような立ち入り手続、米軍公用車両の表示あるいは任意自動車保険への加入等といったことも挙げられると思います。

 それからさらに、もう少し先のことになりますけれども、先ほど来申し上げていますように、このトランスフォーメーションの一環として、我が国としては、抑止力の効果的な維持と並んで、地元の住民の方々の負担の軽減ということが重要であるということも考えているわけでございます。

東門委員 私がお尋ねしたのは、沖縄の負担の軽減とは具体的に何を指すのでしょうかと聞きましたら、大臣は、SACOの最終報告と地位協定の運用の改善、二つ挙げられました。これは、これまでに行われた負担の軽減にはどのようなものがあるかというと、地位協定の運用改善の中身を少しずつ述べられました。これで本当に沖縄の県民の負担の軽減につながると思っておられるのかが一つ。

 それで、総理が日米首脳会談でお話しになった沖縄の負担軽減というものは、今大臣がおっしゃった沖縄の負担軽減と同じである、大臣も総理も同じような、それが沖縄の負担軽減だというふうに考えておられる、そういうふうに理解してよろしいのですか。それとも、総理の場合は、もっと大きな、何か政治的なものを指しているということもあり得るのでしょうか。それは、総理の指示を受けて事務的に協議するのは外務省なんですから、その総理がブッシュ大統領との間で、会談の中でおっしゃった負担の軽減は、今大臣がおっしゃったそれとそっくり同じかどうか、聞かせてください。

川口国務大臣 沖縄を含む施設・区域のある地元の方々の負担軽減、これは引き続き最大限の努力をしていかなければいけないというふうに思っております。その努力は今後重ねてまいります。

 それから、総理がおっしゃった抑止力の効果的な維持と負担軽減、これは総理がどのようなコンテクストでおっしゃったかということを総理にかわって申し上げることも難しいわけですけれども、私は、総理は、そういった先ほど私が申し上げたような引き続きの努力、そういうことも含めておっしゃられているというふうに思います。首脳として、これは両国の首脳、両方そうですけれども、沖縄のあるいは他の施設・区域の所在をする地元の方々の負担軽減というのは、常に、非常に強く念頭に持っていらっしゃるというふうに思っております。

東門委員 総理の考えておられる負担の軽減と大臣の負担の軽減が同じであるかどうか定かではないというのは、本当に奇異に感じます。総理の指示を受けて、総理は、大臣とはその件に関してはしっかりとお話し合いをしていると私は思っています。

 ですから、すごく残念だなと思いましたのは、負担の軽減のところでSACOと地位協定だけしか出てこない。何も変わっていかない。正直言いまして、何度も私もこの委員会で申し上げていますが、SACOの最終報告で本当に軽減されたのがありますか。一つ、私の頭の中に、いつも普天間の代替施設の辺野古への移設というのがある。大臣も恐らくそれを考えておられる。これが負担の軽減になるかどうかというのが一つ、機能強化になるということも考えて。

 それから地位協定、いろいろおっしゃいましたけれども、ほとんどが、本当に運用の改善として県民の負担の軽減につながる、喜ばれているかというと、いろいろなものを一つ一つとってやる時間がないから、すごく残念なんですが、それもいずれやりたいと思っていますけれども、これでは何も、政府の言っている負担の軽減、総理がわざわざブッシュ大統領と何回も同じことをお話ししているはずです。大臣も、パウエル長官とも何度も同じことで合意しています、一致していますとおっしゃるんですけれども、そこから何も進んでいない。これは、やはり日本政府の壁なんですよ。

 アメリカに行きましたら、アメリカは日本政府の問題だと言うんです、沖縄の基地の問題に関しても、基地の移設の問題に関しても。アメリカは、これは日本政府が言ってくれば受けると言っているんです、話し合うと言っているんです。ですから、私は最初に聞きました、提案はしているんですかと。提案はしているというお話でしたので、きっと近いうちに何か出てくるんだろうと思いますけれども、とにかく政府の姿勢が全然見えないんですよ、県民には。何の負担の軽減にもなっていない。

 たくさん質問は準備しましたけれども、時間がなさそうですから、大臣に最後にもう一度お伺いして、終わりたいと思います。

川口国務大臣 沖縄の県民の方々の負担の軽減が十分に進んでいないというふうにお感じになられるお気持ちというのは、十分に認識をいたしております。政府として、そういったお気持ちを踏まえて、先ほど申しましたように、引き続きこれについては最大限の努力をしていかなければいけないというふうに思っているわけです。

 先ほど申しましたことをちょっと誤解していただいたようですので、念のために申し上げますが、総理がおっしゃられたことを私は何を言ったかわからないと申し上げたつもりはなくて、そういった最大限の努力、それを含めたことを総理は大きくおっしゃられているということであって、具体的に何か、これとこれということについて、何を心の中におっしゃられたか、それは、私は総理ではございませんから、私の立場としては、そのようにおっしゃられたんだ、そのときにそういうふうにお考えになっておっしゃられたと思いますという推測を申し上げますという意味で申し上げたということです。

 負担の軽減の重要性について総理はきちんと認識をし、したがってお話しになられているわけですし、私もそう思っておりますから、そういう話をしていく、これについては引き続き努力を重ねることが重要であるというふうに私は思っております。

東門委員 大臣に就任されてから、これまでずっと同じような答弁なんですね、認識している、これからもずっと努めてまいりますと。総理も同じだと思うんですが、一向に何も見えてこない。やはりいら立ちもあります。

 そういう中で、やはり担当大臣として、一歩も二歩も踏み込むぐらいの気持ちでやっていただかないと、沖縄は今ひどい状態であるということ、大臣もよくよく御存じだと思います。本当にこのまま放置しておくと、私は、何が起こるかわからない状況であるということ、その思いさえしておりますので、ぜひ何らかの手を打っていただきたい。アメリカにしっかりと物を言っていくこと、これが求められていると思います。

 今がとてもいいチャンスだと思いますので、ぜひやっていただきたいと申し上げまして、私の質問を終わります。

米澤委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時十一分散会


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