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第1号 平成16年8月4日(水曜日)

会議録本文へ
本国会召集日(平成十六年七月三十日)(金曜日)(午前零時現在)における本委員は、次のとおりである。

   委員長 米澤  隆君

   理事 岩永 峯一君 理事 谷本 龍哉君

   理事 中谷  元君 理事 渡辺 博道君

   理事 末松 義規君 理事 武正 公一君

   理事 増子 輝彦君 理事 丸谷 佳織君

      遠藤 武彦君    小野寺五典君

      河井 克行君    木村  勉君

      高村 正彦君    鈴木 淳司君

      田中 和徳君    土屋 品子君

      西銘恒三郎君    松宮  勲君

      宮下 一郎君    阿久津幸彦君

      加藤 尚彦君    今野  東君

      田中眞紀子君    中野  譲君

      前原 誠司君    松原  仁君

      漆原 良夫君    赤嶺 政賢君

      東門美津子君

平成十六年八月四日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 米澤  隆君

   理事 岩永 峯一君 理事 谷本 龍哉君

   理事 中谷  元君 理事 渡辺 博道君

   理事 末松 義規君 理事 武正 公一君

   理事 増子 輝彦君 理事 丸谷 佳織君

      遠藤 武彦君    小野寺五典君

      木村  勉君    高村 正彦君

      鈴木 淳司君    田中 和徳君

      土屋 品子君    西銘恒三郎君

      古川 禎久君    松宮  勲君

      宮下 一郎君    阿久津幸彦君

      加藤 尚彦君    今野  東君

      田中眞紀子君    中野  譲君

      前原 誠司君    松原  仁君

      上田  勇君    赤嶺 政賢君

      東門美津子君

    …………………………………

   外務大臣         川口 順子君

   内閣官房副長官      杉浦 正健君

   防衛庁副長官       浜田 靖一君

   外務副大臣        逢沢 一郎君

   外務大臣政務官      田中 和徳君

   外務大臣政務官      松宮  勲君

   環境大臣政務官      砂田 圭佑君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  島崎 有平君

   政府参考人

   (内閣官房内閣参事官)  猪俣 弘司君

   政府参考人

   (内閣官房拉致被害者・家族支援室副室長)     岡田  隆君

   政府参考人

   (人事院事務総局職員福祉局長)          関戸 秀明君

   政府参考人

   (内閣府拉致被害者等支援担当室長)        小熊  博君

   政府参考人

   (内閣府政策統括官)   武田 宗高君

   政府参考人

   (警察庁警備局長)    瀬川 勝久君

   政府参考人

   (防衛庁防衛局長)    飯原 一樹君

   政府参考人

   (防衛施設庁建設部長)  河野 孝義君

   政府参考人

   (防衛施設庁業務部長)  土屋 龍司君

   政府参考人

   (総務省郵政行政局長)  清水 英雄君

   政府参考人

   (外務省大臣官房長)   北島 信一君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 佐藤  悟君

   政府参考人

   (外務省総合外交政策局長)            西田 恒夫君

   政府参考人

   (外務省アジア大洋州局長)            薮中三十二君

   政府参考人

   (外務省北米局長)    海老原 紳君

   政府参考人

   (外務省領事局長)    鹿取 克章君

   政府参考人

   (水産庁資源管理部長)  竹谷 廣之君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁資源・燃料部長)        近藤 賢二君

   政府参考人

   (海上保安庁長官)    石川 裕己君

   政府参考人

   (環境省大臣官房審議官) 桜井 康好君

   政府参考人

   (環境省自然環境局長)  小野寺 浩君

   外務委員会専門員     原   聰君

    ―――――――――――――

委員の異動

八月四日

 辞任         補欠選任

  河井 克行君     古川 禎久君

  漆原 良夫君     上田  勇君

同日

 辞任         補欠選任

  古川 禎久君     河井 克行君

  上田  勇君     漆原 良夫君

    ―――――――――――――

八月四日

 女子差別撤廃条約選択議定書の批准に関する請願(今野東君紹介)(第一号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 国政調査承認要求に関する件

 政府参考人出頭要求に関する件

 国際情勢に関する件


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     ――――◇―――――

米澤委員長 これより会議を開きます。

 国政調査承認要求に関する件についてお諮りいたします。

 国際情勢に関する事項について、本会期中国政に関する調査を行うため、衆議院規則第九十四条の規定により、議長に対し、承認を求めたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

米澤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

     ――――◇―――――

米澤委員長 次に、国際情勢に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房長北島信一君、外務省大臣官房参事官佐藤悟君、外務省総合外交政策局長西田恒夫君、外務省アジア大洋州局長薮中三十二君、外務省北米局長海老原紳君、外務省領事局長鹿取克章君、内閣官房内閣審議官島崎有平君、内閣官房内閣参事官猪俣弘司君、内閣官房拉致被害者・家族支援室副室長岡田隆君、人事院事務総局職員福祉局長関戸秀明君、内閣府拉致被害者等支援担当室長小熊博君、内閣府政策統括官武田宗高君、警察庁警備局長瀬川勝久君、防衛庁防衛局長飯原一樹君、防衛施設庁建設部長河野孝義君、防衛施設庁業務部長土屋龍司君、総務省郵政行政局長清水英雄君、水産庁資源管理部長竹谷廣之君、資源エネルギー庁資源・燃料部長近藤賢二君、海上保安庁長官石川裕己君、環境省大臣官房審議官桜井康好君、環境省自然環境局長小野寺浩君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

米澤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

米澤委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。宮下一郎君。

宮下委員 おはようございます。自由民主党の宮下一郎でございます。

 本日は、国連改革を中心として質問させていただきたいと考えておりますが、その前に、北朝鮮問題について二点ほどお伺いしたいと思います。

 一昨日、脱北者の方が持っていた写真が川口市で失踪した藤田進さんと同一人物ではないかという報道がなされるなど、拉致問題はいまだ全容がわからない状況にございます。

 そんな中で、五月二十二日の日朝首脳会談におきまして金総書記が約束した安否不明者十人の方々の再調査がきちんと行われるかどうかは、これからの拉致問題解決に向けて大きな意味を持つものであると考えております。そこで、このフォローがどうなっているのか、今後の見通しについてお聞かせをいただきたいことが第一点でございます。

 第二点は、食糧支援、医療支援についてであります。

 我が国は、さまざまな状況を勘案し、食糧支援については二〇〇〇年十月以来停止をしてまいりました。医療物資支援については、この四月に列車爆破事故に関連して行われた十万ドル相当の緊急支援を除くと、一九九七年以来実施されておりません。他方、アメリカ、韓国、EUなどは、人道的な観点から、これまでも、いずれも毎年数万トンから数十万トンの規模で食糧や肥料などの支援を続けてきております。

 今回の日本の援助も、いまだ五十万トン以上の食糧不足が指摘されている現状を踏まえて、WFPやユニセフ、WHOなどの国際機関を通じて行われる人道支援であると考えておりまして、拉致問題進展の見返りということには当たらないと私は考えております。

 したがいまして、今回の支援は早急にきちんと実施すべきだと考えておりますが、政府としての取り組みの状況をお聞かせいただきたいと思います。

川口国務大臣 北朝鮮につきまして、再調査の件と食糧等の支援の二つの御質問でございますけれども、まず安否不明の方の再調査につきましては、これは御案内のように、ことしの五月二十二日の日朝首脳会談、二回目の会談の折に、金正日国防委員長から総理に対しまして、改めて白紙の状態から直ちに本格的な再調査を行うという発言があったわけでございます。

 私は、七月一日に北朝鮮の白南淳外務大臣とジャカルタで会談をいたしましたが、その際にも、外務大臣から、既に関係機関によって新たな調査を進めている、結果が出次第日本側に回答するという発言がございました。さらに、ことしの七月九日に、ジェンキンスさん出迎えということでピョンヤンを訪れました政府関係者に対しまして、北朝鮮の外務省の関係者から、この再調査については地方機関も含め一生懸命に行っているという発言がございました。

 このように、北朝鮮側は、本件、この再調査につきましては進めているというふうに承知をいたしております。

 政府としては、早期に回答が得られるように、引き続き北朝鮮に対して働きかけを行っているところでございます。今後とも行っていきます。

 拉致被害者、藤田さんについてのお話ございましたけれども、私も写真を報道で見ましたけれども、これまでに政府が認定をしている拉致被害者以外にも北朝鮮による拉致の可能性を排除できない事案があるというふうに見まして、関係省庁で鋭意所要の捜査、調査を進めてきているわけでございます。

 今後、このような捜査、調査の結果、北朝鮮による拉致行為があったということを確認するに足りる情報が整理をされた場合には、総理大臣が関係行政機関の長と協議の上、この事案を拉致事案として認定をすることになります。新たに認定をされました拉致被害者につきましては、これは当然北朝鮮側に対して安否の確認等を求めていく考えでおります。この方針につきましては、今まで累次の折に、先般の日朝首脳会談も含めですが、北朝鮮側に伝えてきております。

 この藤田さんの問題につきましては、そういった前提のもとで、今後関係省庁による捜査、調査の結果を踏まえまして対応していくということになるわけでございます。

 二番目の御質問の食糧支援等でございますけれども、総理は、二十五万トンの食糧支援、そして一千万ドル相当の医薬品の支援というお話を日朝首脳会談に際して表明をしております。この実施に向けまして、現在、所要の調整を進めてきているところでございます。これが近々整う見通しでございまして、整い次第早期にその内容等を決定いたしたいと考えております。

宮下委員 次に、国連改革について何点かお伺いしたいと思います。

 国連は、来年発足六十周年を迎えるわけでございますけれども、現在もイラクにおける復興支援が国連決議に基づいて行われているということを見ても明らかでありますように、国連の役割そして存在感は、国際社会の中で、以前にも増して大きなものとなっております。

 しかしながら、例えば、安全保障理事会の状況を見ますと、冷戦の終えんによって拒否権の発動が減って、機能が実質的に回復されたということは喜ぶべきことでございますけれども、国連加盟国数が当初の五十一カ国から百九十一カ国に増加して、政治的、経済的な勢力図が大きく変わったにもかかわらず、それを反映した構成になっていない点や、理事国でない国に対して情報開示が十分でないために、例えば現在日本も情報収集に大変苦労しているというような現状を見ますと、やはり改善が必要な点は多いのではないかなと考えております。

 また、原則としてGDPに基づいて算定されている分担金のあり方も、上限、シーリングの存在がありますために、アメリカの二二%に対して日本は一九・五%程度と、その差がわずかしかないという状況はバランスを欠いているのではないかという指摘もありますし、また、こうした大きな財政的支出に比して日本人職員の数が少な過ぎるんではないかというような指摘もされているところでございます。

 これまで国連独自の取り組みとしては、安保理改革作業部会という場があり、十年にわたる議論がされてまいりましたけれども、コンセンサス方式をとっているために具体的な進展がないという事態がずっと続いてまいりました。そんな中で、昨年、アナン事務総長の提唱によりまして、日本から緒方貞子国際協力機構理事長を含みまして、世界各国十六人のメンバーによる、有識者から成るハイレベル委員会が設置されたというのは、改革に向けた大きな前進であるというふうに評価すべきだと思います。

 こうしたことを踏まえまして、日本政府として、国連改革、とりわけ安保理改革の現状とその必要についてどのように認識をされているのか、お伺いをしたいと思います。

川口国務大臣 イラク問題を契機として、特に、今の国連が二十一世紀に世界が直面をしているさまざまな脅威に対応することができるような組織かどうかということについて、実効性という観点から、あるいは信頼性という観点から、大きな問題となって一層クローズアップされたということであるかと思います。したがいまして、日本としては今が非常に大事な機会であるというふうに考えております。

 国連も取り組みを今行っておりまして、アナン国連事務総長が、国連がテロ等の新たな脅威に有効に対処をしていくためにはどのように取り組んだらいいかという問題意識を持たれてハイレベル委員会を設立なさって、今その会合が行われております。この委員会で十二月に報告書が出されるということになっていまして、この報告書を受けて、安保理改革を含む国連改革に弾みをつける、そして、二〇〇五年の秋にミレニアム宣言のレビューをする首脳レベルの会合というのが予定をされておりますけれども、その場において国連改革についての政治的な意思決定を行うというふうに考えているわけでございます。

 日本としては、このような安保理の改革をめぐる議論、これを、この機会を具体的な成果にぜひとも結びつけたい、今それができなければ、今が絶好のチャンスであるというふうに考えているわけでございます。

 国連との関連では、おっしゃった分担金の問題がございますし、職員の問題もあると思います。分担金の問題については、二〇〇六年に分担金の分担率、それの算定方式を見直すということになっておりまして、その際には、分担率が加盟国の経済実勢に即している、かつ国連における地位、責任も反映をした、よりバランスのとれたものになるということにする必要があると考えております。

 また、邦人職員数というのは、いまだ、まだ大変に少ないわけでございまして、日本としても、日本にいる、日本人である優秀な人材を発掘していくということが重要であると考えておりますし、またその人たちが国際機関で働くということについて国際機関に働きかけるということも重要であると考えております。この問題についても、いろいろな関係の方々とお話をしながら積極的に動いていきたいと考えております。

宮下委員 これまで日本は、特に国連におきまして、人間の安全保障でありますとか平和の定着というコンセプトを掲げて活動に取り組んできております。中でも、一九九八年に当時の小渕総理が設立を発表いたしました人間の安全保障基金は、毎年の拠出を経まして、二〇〇三年には累計二百五十九億円の大きな基金になっておりまして、国連に設置された信託基金の中では最大のものということになっております。

 この基金は、国際社会が直面する貧困や環境破壊、紛争、地雷、難民問題、さらに麻薬や感染症など、人間の生存、生活、尊厳に対する脅威に対して取り組む国連関連国際機関のプロジェクトを支援しているということでございまして、この基金の存在というのは高く評価されるべきものであると考えております。

 また、一九八九年から導入されております草の根・人間の安全保障無償資金協力も、金額は原則として一件当たり上限一千万円と少額でございますけれども、通常のODAが二、三年かかるところを、要請から実施まで、早いもので数週間、長くても数カ月以内に実現するという機動力のある援助として、保健医療でありますとか、教育、環境などの分野で活用されているところでございます。

 もちろん、カンボジアでの活動を皮切りとしまして現在も世界各国で展開している国連平和維持活動も、日本の人的貢献として忘れることができない重要なものであると考えます。

 今大臣のお話にございましたように、今は非常に絶好の機会ということだと思います。ちょうど来年一月から二年間は、日本が再び安保理の非常任理事国入りする見通しであるという旨伺っておりますし、そうしますと、その二年間は日本の存在感を国際社会においてアピールしていく上でまたとない好機であると考えます。安保理改革が実現する際に、多くの加盟国の賛同を得て日本の常任理事国入りを実現するためにも、人間の安全保障や平和の定着を重視した活動をさらに充実強化していくことが必要であると考えますが、御所見をお聞かせください。

川口国務大臣 人間の安全保障についての日本の取り組みについて、いろいろおっしゃっていただきました。

 今、脅威の中で、例えば今、スーダン・ダルフールでも、人間についてのまさに安全保障が問題になるようなことが起こっていますけれども、テロ、貧困、環境破壊等々さまざまな問題がある中で、この取り組みは非常に重要であると考えております。

 国連のその人間安全保障基金、これも、シエラレオネあるいはアフガニスタンといった分野でこれが使われているわけでございますし、また、おっしゃっていただいた草の根・人間の安全保障無償資金協力、これもまさにきめ細かく対応できるということで、このような取り組みも積極的に今後とも進めていきたいと思っています。

 また、平和のプロセスから国内の安定そして兵士の帰還といった、紛争から平和に向けての間をシームレスに続けていくという取り組み、これはスリランカや東ティモールで日本は取り組んでいるわけでございます。日本としては、こういった取り組みを通じて、国際社会の中で、平和の定着、安定、国々の発展に向けて、今までも積極的に取り組んできたというふうに思いますし、国際社会の中でそれについての認識が十分にあるというふうに考えております。

 日本がこの問題につき積極的に今まで取り組んできたこと、引き続き取り組もうとしていること、これが、安保理の理事国と日本がなった際に、その日本の役割についての関係国からの認識をさらに深めていく、日本の役割についての認識を深め、強化するということについて大きな柱になるものだというふうに考えております。

 来年、安保理非常任理事国に日本はなるというふうに、選挙の結果、そうなるであろうというふうに思っておりますけれども、その際にも、その取り組み、人間の安全保障についての取り組みを積極的に行っていきたいと考えております。

宮下委員 大臣は、昨年の国連総会一般討論演説におきまして、先ほどお話しのように、二〇〇五年に首脳会合を開催して、安保理改革を含む国連改革について政治的意思決定を行うことを提唱されました。また、この七月には、ハイレベル委員会の方々に対して、京都において行われた地域会合、この場で国連改革に関する日本の考え方をアピールされたということでございますし、また報道によりますと、ちょうど一昨日、川口大臣を本部長とする国連強化対策本部という新たな組織の立ち上げを行って初会合を開かれたということでございます。こうした一連のことを見ますと、大臣の国連改革に対する熱意が大変強いということを感じるところでございます。

 タイミング的にも、ちょうどハイレベル委員会の報告書が年内にまとまる、また来年から日本が安保理の非常任理事国入りすること、また、先の話になりますが、アナン事務総長の任期が二〇〇六年十二月までと伺っておりますので、そうしますと、いろいろなことを考えますと、国連改革はまさにこの一、二年が勝負のときであるというふうに考えます。

 そこで、この大切な時期を迎えて、日本政府として安保理改革を含む国連改革に対してどのように臨まれるのか、今後の戦略といったようなものをお聞かせいただければと思います。

川口国務大臣 今が絶好の機会であって、これを逃さないようにするためには、きちんとした考え方に基づいてこの改革に向けてのステップを具体化していかなければいけないというふうに考えております。おっしゃるように、時間は制約をされていると思います。

 それで、これもおっしゃられた、まず外務省としての取り組み、国内における取り組みですけれども、有識者会合というのをずっと開いてやってきまして、これは私の諮問の委員会といいますかそういう場でございましたけれども、国内の有識者に集まっていただいて国連の改革についての報告書を出していただきました。そして、その報告書の提言を踏まえまして、二日に外務省の中に国連強化対策本部を発足させた、そこで国連改革を通じた国際的な国連強化をどうやって行っていったらいいかということについても議論をいたしました。

 ハイレベル委員会ですけれども、このハイレベル委員会が国連安保理改革の実現に資するような報告書になる、そこでそのような提言が出ることが重要でございますので、我が国としても働きかけを行ってきているということで、先般七月に京都で、この何人かに集まっていただいて会議をいたしました。二〇〇五年にミレニアムサミット首脳会談というのが国連で行われるわけでございまして、その首脳レベル会合で国連改革についての意思決定をするということが大事である、政治的な意思決定をするということが重要であると考えております。そういう方向に持っていくというために取り組みを行っているということです。

 日本国内に加えて、ほかの国々を巻き込んだ形にするということが重要でありまして、米国を初めとする関係国というそういった国々、それから潜在的な常任理事国になり得る国、例えばブラジルとかインドとか、そういった国々との協議ということも重要であると考えております。そのような関係する国々との協議、これを通じまして、具体的な安保理改革、国連改革への具体策、これを練り上げていきたいと考えております。そして、安保理改革実現を目指していくという考え方でおります。

宮下委員 国連改革の実現と、日本がその中でさらに存在感のある貢献ができるように、政府の一層の御努力をお願いして質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

米澤委員長 次に、西銘恒三郎君。

西銘委員 自由民主党の西銘恒三郎でございます。

 私は、ことしの五月の連休に、我が党の政調会長のお供をしましてワシントンを訪問する機会がありました。そこでラムズフェルド国防長官との会議の場に直接参加をさせていただきました。そこで我が党の政調会長からは、いわゆるトランスフォーメーションについて国防長官に質問がされました。ラムズフェルド国防長官は沖縄の普天間基地も上空から視察をしておりますし、また、県知事との会談で、私はテレビを見ておったのですが、親しく会談をする中で、国防長官が帰ろうとするときに、県知事が、県民の過重な米軍基地の負担に対する思いを伝えるような形で、引きとめるような形で、ちょっと表敬という感じではないな、険悪な感じもしたのですが、そういう場面も見させていただきました。

 政調会長と国防長官の会談の中で、いわゆるトランスフォーメーションというのが、米軍、全地球的な規模で再編をしている、一地域のための米軍再編ではないというお話もありました。

 非常に気になりましたことは、沖縄側で米軍の基地の過重な負担という県民の総意みたいなものがありまして、国防長官の発言の中で、歓迎されない地域には米軍を配置したくない、歓迎される地域に米軍を配置したいというような趣旨の発言がございまして、私は、それをそばでじっと聞いておりまして、この歓迎されない地域というのはひょっとしたら沖縄のこと、県知事と国防長官のテレビのやりとりを見ておりましても少し険悪な感じがあったものですから、沖縄のことが国防長官の念頭にあるのかなという思いが強かったわけであります。

 これを直接国防長官に聞く機会は私ども一回生議員にはありませんでしたので、日ごろ何かと外務大臣として国防長官と親しくお話しする機会もたくさんある川口大臣に、この国防長官の発言の趣旨といいますか、沖縄が念頭にあるのかなという県民の素朴な疑問に、ぜひ冒頭、答えていただきたいなと思います。よろしくお願いします。

川口国務大臣 額賀政調会長が、国防長官とお会いになったときにその趣旨の御発言があったということを記者団に対して説明をしたというふうに聞いておりますけれども、国防長官とは必ずしも以心伝心ということでもございませんで、どのようなことを念頭に置かれてどのような趣旨でそのことをおっしゃられたか、私としては推測をしかねるところでございます。

西銘委員 2プラス2等でお聞きする機会はありますか。

川口国務大臣 2プラス2は、私が外務大臣になりまして二年前に一回開催をさせていただきまして、そのときにも沖縄県民の負担の軽減の必要性ということについては私も申し上げたという漠然とした記憶が残っております。

 今後いつ2プラス2が開かれるかということについては、今、具体的に決まっていないということですが、沖縄県民の負担の軽減の必要性については、私は大体、アメリカの国務長官が多いですけれども、お会いしたときには常に申し上げるということにいたしておりまして、先般七月にパウエル国務長官と二国間の会談をやる折にもやりましたけれども、その折にもそのことについては申し上げさせていただきました。

西銘委員 私は、国防長官ですから、全地球的な規模で米軍の再編、能力を高めながらという点もあって、そういう話の中で、よもや、我が国として、我が日米同盟は強固になっておりますので、沖縄は入っていないだろうなと思っておるのであります。今後、2プラス2がいつどのような形で行われるかわかりませんが、外務大臣、もし機会がありましたらぜひ国防長官に、その辺の地域は沖縄も念頭にあったのかどうか確認をしていただけたらなという思いで、要望にとどめておきたいと思います。

 それから、ことしの七月の下旬に韓国のソウルを訪ねる機会がございました。在韓の米国大使館の関係者との意見交換、そして韓国の若手の研究者との意見交換の場を持つことができました。その後、DMZの非武装地帯、あるいはJSA、共同警備地域等々の見学、そして第三トンネル等の見学等々、二十六日から二十八日まで三日間ではあったんですけれども、韓国の若手研究者との意見交換あるいは在韓米国大使館との意見交換を通して、日本にいて、我が国にいて感じなかった点が、ちょっと違うな、ソウルに来て違うなと感じた点があります。

 それは何かといいますと、余り北朝鮮に対する脅威といいますか、の感覚が我が日本にいるときと違うな、意外と平和的なムードといいましょうか、余り北朝鮮の脅威に対するぴりぴりしたものはないなというのが印象でございます。若手研究者によりますと、むしろ、もう北は国として経済状態も大変な状態で、よもや韓国に攻めてくることはないと。金大中大統領が訪朝をして金正日主席と会談等々をやっている形から、太陽政策が効果を出しているのかわかりませんが、そういう印象を受けました。

 そういう中で、在韓米軍が一万二千五百名撤退、それも来年の末までに撤退されるという話がもう現実味を帯びて、合意に至ったという報道がありますが、そのことによって、この北東アジア地域あるいは在日米軍等々が逆に強化をされていくのかなという印象も持ちました。実はメンバーの中からは具体的にその質問も出まして、米国大使館の米軍関係者は、在沖の米軍基地については強化は即座にノーという返事をもらいましたが、在日米軍あるいは太平洋地域等々を踏まえると強化があるかもしれないというような趣旨の発言もありました。

 外務大臣として、この在韓米軍の削減と、在日米軍あるいは太平洋地域の米軍を含めて強化はあるのかないのか、大臣の率直なお考えを聞かせていただきたいと思います。

川口国務大臣 在韓米軍の削減ですけれども、これは三万七千五百人のうちの三分の一が来年末までに削減をされることになったということのようでございますけれども、韓国政府の発表によりますと、この在韓米軍の削減は新たな武器システムの導入等によって可能になるものであって、これによって在韓米軍の主たる任務である韓国の防衛、これを行う能力、これにいかなる影響もないということを言っているわけでございます。これは、米政府が、米軍のグローバルな体制の見直しに当たって、兵力の数ではなくて能力を重視するということを今まで言ってきたわけですけれども、これとも合致をしているということであると思います。

 したがいまして、在韓米軍が削減をされた結果、能力が減少するわけではないということでございますので、その部分を在日の米軍の増強によって補うということが想定されているわけではないということでございます。

 御質問はもう一つございましたですよね。(西銘委員「太平洋地域を含めて」と呼ぶ)太平洋地域、これは米軍がグローバルな観点から米軍の体制の見直しを今行っているということでございまして、我々も、どちらかといえばフリーディスカッション的に、いろいろなディスカッションをいたしておりますけれども、今、全体として具体的な構想が見えてきているということではございませんで、いろいろなことを米軍はあるいは米国政府は考えているということであろうと思います。日本に対して具体的な提案があったということではないということでございますので、これはまだしばし時間を、少し先にならないとそれが見えてこないということだと思います。

西銘委員 わずか三日間の意見交換の場ではあったんですけれども、私は、総体としまして、在韓米軍の撤退、米軍もGPR等でトランスフォーメーション、全地球規模で考える中で、ひょっとすると米軍の側に、米国の側に朝鮮半島の統一といいますか、が視野に入ってきて、安全保障の環境としては朝鮮半島が緊張度がもう低くなっていくという世界史の大きな歴史の流れの中での判断が少しあるのかなという直観といいますか、肌身で感じたわけであります。

 この在韓米軍が削減をしていく、朝鮮半島の南の側に寄ってくる。韓国の若手研究者等の話では、私は、もしも将来朝鮮半島が統一をされた場合、皆さんは米軍の駐留を希望するかという趣旨のことをちょっと聞いてみたのでありますが、とにかく縮小をして、空軍と海軍の港ぐらいはというのが研究者としての自分の感じ方ではあるけれども、庶民レベルの感覚ではちょっとどうなるかわからないと。

 と申しますのは、若い十代、二十代の盧武鉉大統領を支持するグループではどちらかといいますと反米感情が高いというような話も聞こえますし、またこの反米感情は、八〇年代の組織的な反米感情、あるいは反政府的な組織的な行動とは少し違うというような説明もありましたが、直観として、何年何十年先になるかわかりませんけれども、朝鮮半島が統一をされていく、そういう中で、この北東アジアの安全保障の環境が朝鮮半島から東シナ海の中間線、あるいは尖閣、あるいは台湾海峡、この辺に少しずつシフトしてくるのかなというのが私が受けた印象でございます。

 非常に雑然とした質問にはなりますが、この辺のところ、外務大臣、どのように感じておられますか。朝鮮半島の統一、あるいは朝鮮半島が安全保障環境として緊張度が低くなっていく、私はむしろ、東シナ海、この辺から尖閣、台湾海峡の方が少しこれから緊張度が強まっていかないのかなという印象を受けましたが、率直に外務大臣の所見といいますか、お考え、感じていることをお聞かせいただきたいと思います。

川口国務大臣 まず、韓国における体制の見直し、これは韓国を防衛する米軍の能力に何ら影響を与えるものではない、能力的には変わらないということがまず第一点、再度申し上げたいと思います。

 それから、韓国あるいは北東アジア、これをめぐる国際的な平和と安定ということは、この関係国、周りにある国々にとって非常に大きなテーマでありますし、それが満たされる、そのようになるということは非常に重要であります。これは地域の問題だけではなくて、この地域が平和になって安定するということは国際的にも重要なテーマであるというふうに考えております。

 そういった中で、韓国と北朝鮮は南北の対話を行っておりますし、そういった形を通じて相互の信頼関係が醸成をされて、そして朝鮮半島が平和的に統一をされるということにつながるような、そういう環境がつくられていくということについては、我が国としても望ましいことであるというふうに考え、期待をしているわけでございます。それがどれぐらいの将来そういうことになるかということについては、今の時点では何とも申し上げられないというふうに思います。

 韓国政府、盧武鉉政権は、平和と繁栄政策、これを実施しているわけでして、日本としてもこれを支持している、高く評価をしているということでございます。

 また、南北間で信頼醸成が形成をされるためには、北朝鮮が核等の問題、これについて建設的な対応をしていくということが重要であるというふうに考えております。国際社会の責任ある一員として行動をとってほしいということで、日本としては、韓国や関係の国々と一緒に、六者会談においてこの問題についても取り組みを行っているということでございます。

 したがって、いろいろな政策はとられておりますけれども、今の段階で、ではいつごろこの地域の平和と安定が現実のものになるかということについては、まだまだ申し上げられる段階ではないというふうに考えております。

西銘委員 国連安保理の問題は省略をしたいと思います。

 次に、海洋権益についてであります。

 私は、今申し上げましたように、少し東シナ海の中間線あたりが緊張度が高まるのではないかなという印象を持っているわけでありますが、国家としてエネルギーの確保は最重要の課題でありますし、先般、我が党の海洋権益に関するワーキングチームが政府に対して提言をまとめております。その中で、内閣府の中に海洋権益を所管する担当大臣を置いてテーブルをつくるべきだという趣旨の提言がありますけれども、この点について、これから概算要求等も始まっていきますし、内閣府のお考え、政府の対応がどうなっているのか、説明をしていただきたいと思います。

猪俣政府参考人 お答えいたします。

 海洋権益をめぐる問題が我が国の国益に直結するということは十分認識しております。

 政府としてどのように取り組むべきかという御質問でございます。関係省庁ともなお一層密接に協議、調整を図りながら、内閣官房が中心となって、政府として一体となった取り組みが必要と考えておりますし、それが適当であるというふうに考えております。

西銘委員 外務大臣、中国との東シナ海の中間線の問題ですけれども、我が国は中間線を主張する、中国は大陸棚説を主張する、この平行線がいつまで続くのか、どういう形で決着を見るのか。私は、我が国は、この中間線、一歩も引くべきではないという考えに立っておりますが、どういう決着の方法があるのか、外務大臣のお考えを聞かせてください。

川口国務大臣 おっしゃったように、この海洋の境界画定について、日本は中間線を引くべきだという等距離基準というのを使っておりますし、中国側はこれに対して衡平原則ということでして、両者の間には大きな隔たりがあるというのが現実でございます。そして、おっしゃられましたように、日本はその中間線ということについて一歩も引くべきではないというのがまさに政府の考えでございます。

 そういったことで、現在、海洋法の問題に関する日中協議というのを平成十年から毎年開催いたしまして、話し合いをさまざまな角度から、東シナ海における海洋の境界画定に向けて行っているということでございます。この隔たりをどうやって埋めていくかということは非常に難しい問題でありますけれども、日本としては、我が国の立場にのっとってこの協議に取り組んでいくという考えでおります。

西銘委員 ありがとうございました。

米澤委員長 次に、丸谷佳織君。

丸谷委員 おはようございます。公明党の丸谷佳織です。

 まず、イラクについてお伺いをさせていただきます。

 六月の二十八日、CPAからイラク暫定政府に対しまして統治移譲がなされ、我が国とイラク暫定政府は通常の政府間関係に入り、復興支援のあり方としては、国連の要請に基づいて、多国籍軍の一員としてイラク南部にて支援活動を継続しております。

 しかしながら、報道にもあるとおり、統治権限移譲後も、暫定政府ですとか、あるいは外国人を対象にしたテロが発生、また先日は、解放されてよかったものの、アラブ諸国でありますエジプトの外交官が拉致されるなど、現地の治安は予断を許さない状況にあるように思われます。

 そこでまず、我が国がイラク支援特別措置法にのっとって支援活動を継続できる状況であるのかどうか、現在のサマワの治安状況も含めて、政府の見解をお伺いします。

川口国務大臣 イラクでございますが、まずその政治プロセス、これについては順調に動いているというふうに思います。六月二十八日の移譲後、今のところ順調に動いていて、国民会議が開かれることにつきまして二週間程度延期をするというふうに発表されましたけれども、基本的にはスムーズであると考えています。

 治安でございますが、これは、統治権限移譲後も、イラク政府の高官をねらった襲撃事件、あるいは車載簡易爆弾の爆発、民間人を対象とした誘拐、殺人といった事件が起こっておりまして、脅威の度合いは地域によって異なると考えておりますけれども、全般としては予断を許さない状況が継続をしているという認識を持っております。

 サマワについてもお尋ねがございましたけれども、サマワがイラクの他の地域と比べて比較的安定をしているという状況に変化はございません。ですが、今後もテロ等の可能性を否定することはできないと思います。

 六月三十日の県警本部付近での車載簡易爆弾の爆発がございまして、これまでにサマワで生じている一連の事案も踏まえながら、現地の情勢については、予断することなく引き続き十分に注意を払っていきたいと考えております。

丸谷委員 現在イラクでは、米英も含めて約三十カ国が復興支援活動あるいは治安活動に当たっておりますけれども、南部にて我が国とともに治安維持活動あるいは支援活動を行っていますオランダ軍が来春にも撤退をするとの報道もあります。

 我が国としましては、これまで非常に友好な信頼関係を築き、また、ともに活動を行ってきましたオランダ軍と今後もともに活動できることが望ましいとも考えておりますけれども、この点についてはいかがお考えになっていらっしゃるのでしょうか。

 また、実際にオランダ軍が撤退をした場合、撤退をするという前提で議論をすることはできないのかもしれませんけれども、やはり幾つかシミュレーションというものがあるというふうにも思っております。我が国の自衛隊が支障なく活動を展開できるように新たに他国との協力体制が必要とも思えますが、どのような見通しを持っていらっしゃるのか、この点についてお伺いをします。

川口国務大臣 六月の十一日にオランダ政府が、イラクの駐留部隊の派遣期間延長の決定を行いましたが、それに際しましてバルケネンデ首相が、派遣期間延長は八カ月で終わりであるという発言をいたしました。また、その後の議会審議の中で、ボット外務大臣ですが、今後の情勢によっては短期間の再延長も排除されないという発言もしているわけでございます。

 オランダ軍ですけれども、これはムサンナ県で治安維持活動、人道復興支援活動を行っているわけですけれども、このオランダ軍が属す南東部国際師団の各国部隊の活動につきましては、英国軍が全体の調整を行っているとともに、英国軍自体もムサンナ県の隣のバスラ県等において治安維持活動を行っているわけでございます。

 したがって、仮にオランダ軍が撤退をするということになりましても、引き続きムサンナ県の治安維持がしかるべく確保されるように、米英等による調整が行われるものと考えております。オランダ軍の撤退によって、ムサンナ県における多国籍軍による治安維持活動が自動的になくなるとは考えておりません。

 実際に、スペインが撤退をいたしましたけれども、スペインが治安維持に当たっていたカーディシーヤ県、ナジャフ県、これについては米軍がその後治安維持活動を行っているということでございます。

 いずれにしても、政府としましては、オランダ政府が派遣の期間の延長を決定したということを歓迎いたしております。また、主権国家であるイラクの国家再建、イラク人による国家再建を支援するために、引き続きともに努力をしていきたいというふうに考えております。

丸谷委員 今御答弁をいただきました。実際には、南部はイギリス軍の指揮の中というか、中で治安維持活動が行われている。今後、オランダ軍の撤退いかんによっては、そういったイギリスとも連携をとりながら、自衛隊の方、あるいは今後派遣されるであろう文民の方が支障なく活動をしていただけるような状況をつくるために、ふだんからの外交の中での働きかけというのも今もされているというふうに理解をされますし、また我が国のイラク支援においては、人的貢献とそしてODAが車の両輪であると常日ごろ大臣もおっしゃっておりますけれども、実際には予定されていた国民会議が八月の十五日ぐらいまで延期されるなど、また民主化の道がそう簡単ではないということを私どももしっかりと念頭に置きながら、在イラク大使館を初めとしまして、外交努力をまた今後も重ねていただきたいというふうにお願いを申し上げます。

 続きまして、先月の十九日からイタリアのソレントで五十六カ国が参加して行われましたIWC会合についてお伺いをさせていただきます。

 私自身も、以前、下関で行われましたIWCの会合に出席をしたことがございますが、委員会そのものの存在価値にもかかわるほど、毎年、捕鯨支持国とまた反捕鯨国でなされる激しい議論とともに、捕鯨自体を政治問題化させるような向きもあるように感じております。

 海洋国家であります我が国にとっては魚類等の資源を維持させることが大変に重要であり、また捕鯨と食文化が密接にかかわってきた立場から、鯨の科学的調査と資源の持続的利用について発言を続けてきているわけでございますが、理解を得られつつあるのかどうか。

 まず、今回の総会の副議長に、暫定であったとはいえ日本代表が初めて選出されたことなどからも、状況はよい方向に変わってきたというふうにも考えられますが、政府の本会合の評価についてお伺いをします。

川口国務大臣 おっしゃったように、今回の会議ですが、これは、我が国と立場を同じくする持続的な利用国が前回の会議に比べまして四カ国増加をした、ふえたということでして、反捕鯨国と持続的利用国の数がかなり近くなってきた、拮抗している中で、激しい議論が行われた会議であったというふうに承知をしています。この数がふえた、持続的利用国の数がふえたということについては、今までの日本のさまざまな外交的な働きかけ、これが奏功したものであると考えております。

 こういった中で、今回の会議では、改訂管理制度完成についての、次期会議前に作業部会を開催する決議、もう一つ、我が国の沿岸捕鯨地域の救済をIWCが取り上げることについての決議、これが米等の共同によりまして、協力によってコンセンサスで採択をされるといった、日本の考え方に反捕鯨国の建設的な対応を引き出すことができた、我が国の主張が反映されるということになったということについては、一定の評価を我が国として下しているわけでございます。

 ただ、状況は引き続き大変に厳しいということに変わりはないと思っております。南氷洋の鯨の禁漁区、これを撤回して商業枠、商業捕獲枠を設定するということにつきましては、捕鯨再開に向けて必要な四分の三の得票ということからいきますと大きく及ばなかったということでございます。また、日本の沿岸のミンククジラ等の商業捕獲枠の設定についても、残念ながら採択には至らなかったということでございます。

 日本といたしまして、これからも引き続き外交の場を通じまして、持続的な利用を支持する国々の新規加盟を促進したいと考えております。また、それと同時に、反捕鯨国についても、我が国の立場を粘り強く説明をしていきたいと考えております。そういったような、まさに科学的な知見にのっとった鯨類の持続的な利用への支持を得るべく努力を積み重ねていきたいと考えております。

丸谷委員 それから、ことしで十八年の計画が終了します南氷洋調査の継続を今会合で表明されておりますけれども、この調査の見通しについて、例えば実施する期間、あるいは頭数、種類等、これからの計画ですのでお答えできる範囲で結構ですけれども、どのような見通しになっているのか、この点についてお伺いをします。

竹谷政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま先生からお尋ねのございました南氷洋における鯨類の捕獲調査でございますけれども、これは、現在行っております調査は、御案内のように、鯨類資源の管理に必要な生物学的データでありますとか、あるいは鯨の群れの分布状況、あるいは南氷洋の生態系全体におきます鯨の位置づけといったものを解明するために現在行っているところでございまして、その中で、南氷洋におきまして最も多く分布いたしておりますミンククジラに対しまして捕獲調査を行っておる、七十六万頭もおるというふうに言われておりますミンククジラを対象として、一九八七年から続けておるところでございます。

 この結果、いろいろなデータがわかってきたわけでございますが、群れの年齢構成でありますとか、あるいは死亡率でありますとか、あるいは分布の範囲、分布の境界といったようなもの等がわかってまいりまして、この点につきましては、毎年毎年行われますIWCの科学委員会におきまして、反捕鯨国も含めまして高い評価を得ているところでございます。

 しかしながら、この調査は、当初の計画に従いまして、御指摘にもございましたように十八年の計画ということで進めてまいっておりますので、ことしの秋から行います調査、来年の春にかけての調査におきまして一応一区切りという形になっております。

 この次のステップということをにらみまして、今回の七月のIWCの年次会合におきまして、二つの点を申し上げたわけでございます。一つの点は、南氷洋の鯨資源につきましては、まだまだ解明すべき点がたくさんございます。データも集めなければならない点が多々ございますので、来年の会合に次の調査計画を出すということを日本として表明をさせていただいた。また、二点目といたしまして、これに関連いたしますけれども、現在行っております調査の内容、成果を次期計画にきちっと反映していきたいというふうに考えておるわけでございますが、そういったこともございますので、来年の初めに、日本が主催いたしまして、各国から科学者を集めまして、その各国の科学者に御議論いただいてデータをレビューする、そういう会合を開かせていただくということも表明させていただいた次第でございます。

 そうしたような経緯で今進めておりますが、現時点で次期計画の具体的な内容ということでございますけれども、現在、鯨類研究所の研究者を中心に検討を進めております。その検討結果を待ってという状況でございますので、調査の期間をどの程度にするか、また、ミンククジラが当然多いわけでございますが、どういった種類の鯨にしていくかということを今後詰めていきたいと思っておる次第でございますし、また来年初頭の、今申し上げましたレビュー会合の議論なども反映していきたいと思っておりますので、そういったものも踏まえながらというふうに思っております。

 いずれにいたしましても、先生から御指摘いただきました、鯨は、他の生物と同様に、何よりも科学的な根拠に基づいてきちっと持続的に利用していくことが大事だというふうに考えておりますので、その考えに必要不可欠なデータをきちっと集められるような調査を設計していきたいということで、科学者の議論を優先させて、先行させて、今検討を進めているという状況でございます。よろしくお願いいたします。

丸谷委員 あくまでも、海の中の資源において、鯨という位置づけにおいては、しっかりと、鯨という食文化があるのかないのかという問題では決してなく、日本の立場としては、持続可能な資源の位置づけとして科学的に論じていこうという立場をずっととってきているわけであります。

 こういった私たちの主張というのは次第に支持を得てきているというふうにも考えるわけなんですが、一方で、報道によりますと、捕鯨反対の諸外国の新聞の社説などでも、日本を名指しで非難されている。これは表現の自由でありますので、これ自体がとんでもないという話でもないのかもしれませんけれども、実際には、反捕鯨国は日本に対して、日本が小国へのわいろ戦術を使っているというようなことも、これは事実に反するようなことも実際には報道に載っていたり、あるいは捕鯨国に対しては、道義的な圧力をもっとかけなければいけない等の社説等も出ているというふうに承知をしております。

 この鯨の議論というのは、やはり、道義的な問題で議論をしてしまっては、人それぞれ、また国もいろいろあるように、違う部分が出てきますので、あくまでも科学的な理論にのっとって議論をしていくべきだというふうに考えておりますので、今御答弁にありましたような科学的なデータというのはしっかりと集めた上で、また各国の支持が得られるような努力をしていただきたいというふうに思っております。

 そこで、来年のIWC会合については、韓国の蔚山市で開催をされることが決まったこと自体は我が国としても歓迎すべき結果になったと考えておりますし、また、次の会合に向けて各国の理解を求める外交努力が必要であろうというふうに考えます。

 在外公館などにおいても、その外交の努力の中で、常日ごろ、この捕鯨という問題に対する日本の立場というのは、そこの現地の皆さんに、あるいは重要な方々に伝えるような努力もしていただいているというふうに思いますけれども、今後どのような働きかけをしていかれるおつもりなのかを最後にお伺いします。

川口国務大臣 まさに持続的利用の考え方、これがどういう考え方であるか、そして、そのベースには科学的な知見があって、持続的な利用ということが重要であるということをきちんと反捕鯨国に説明していくということであると思います。

 また同時に、先ほども申し上げたかと思いますけれども、資源の利用について我が国と同じ考え方をする国々にIWCのメンバーになるように加盟を働きかけていくということも、我が国として外交努力をすべきことであるというふうに考えております。

 これらに積極的に取り組んでいきたいと考えています。

丸谷委員 以上で終わります。ありがとうございました。

米澤委員長 次に、前原誠司君。

前原委員 民主党の前原でございます。

 それでは、おとつい本会議で質問をさせていただいたことを中心に、より掘り下げてお伺いをしたいと思います。

 まず、東シナ海、そして太平洋における中国の海洋調査について質問をさせていただきたいと思います。経済産業省の方、お越しでございますね。

 一九六〇年代の終わりごろから、日本企業、四社と言われておりますけれども、この東シナ海における鉱業権の申請をされていて、いまだにその許可に至っていない。その経緯について、まず説明をしていただきたいと思います。

近藤政府参考人 お答えを申し上げます。

 御指摘の、排他的経済水域及び大陸棚の日中間の境界画定がいまだなされておりません東シナ海の海域における鉱業権の付与につきましては、国連海洋法条約の七十四条及び八十三条におきまして、「最終的な合意への到達を危うくし又は妨げないためにあらゆる努力を払う。」ということが決まってございます。そういったことも踏まえつつ、これまで、鉱業権の出願の許可または不許可の処分を留保するという方針で対応をしてきているところでございます。

前原委員 しかしながら、中国側は、日中の中間線というものは認めていない、今お話しのとおりでありますが、にもかかわらず、中国側は海洋調査をし、そして中間線の、まあ一応中国側ではございますけれども、四、五キロメートルのところで実際に採掘を始めて操業を開始する予定である、そして地下構造がつながっているのではないか、今のままでは日本の資源、本来日本が権益として持つ資源を吸い上げられてしまう、そういう状況に至ったわけですね。

 つまりは、前の通産省、今の経済産業省の御答弁はそうなのかもしれませんが、じゃ、もう一度経済産業省にお尋ねをいたしますが、当時の通産省、今の経済産業省だけでは判断できる問題ではありませんよね。ということは、どういうレベルでそういう高度な政治的判断をしたのか。それとも、今おっしゃったように、当時の通産省だけで今の国連海洋法条約の解釈に基づいて自粛をしてきたのか。どちらですか。

近藤政府参考人 お答えを申し上げます。

 もちろん、これは国際的な関係もたくさん絡んでくる問題でございますので、私どもだけで判断できることでもございません。外務省を初めとする関係省庁とも協議をしながら判断をしてきているところでございます。

前原委員 外務大臣にお伺いをいたしますが、今お話のあったように、関係省庁とも相談をしてきた、もちろん川口大臣が任に当たられていた大分以前の話だと思いますけれども。当時の外務省としては、多分今お話をされたような判断に政府として結論を出したということなんだと思いますけれども、しかし、中国側は、今私が申し上げたように、また大臣も御存じのように、中間線の中国側だとはいえ、もう実際に採掘を始めて生産態勢に入っているわけですね。そういうまさに既成事実を積み重ねてきている中国。

 この国連海洋法条約というのは、それほど私は、文字どおり解釈をしてしまえば、つまりはもっと裏返して言えば、それぞれの国の解釈に基づいてこの国連海洋法条約を運用していく、まあ日本の国内法とは違って、そもそもの国際法の論議になってしまうかもしれませんが、自国の解釈に基づいてその運用をやっていく、そしてみずからの、中国にあらわれているような、解釈に基づいて国連海洋法条約というものを運用していくということは、私は当然国際社会ではあってしかるべきだろうというふうに思うんですね。

 そういう意味では、今まで日本がとってきた態度が本当によかったのかどうなのか、相談を受けた外務省としては、今の経済産業省の答弁でいいと考えておられるのか、まずその点をお聞かせいただきたいと思います。

川口国務大臣 過去どのような御相談を外務省と当時の通産省として、どのような経緯を経てそのような結論に至ったかということについて、詳細を私は把握しているわけではございませんけれども、いずれにしても、この海洋法条約については、我が国としてはこれを批准、締結しているわけでございます。そして、委員がおっしゃられるように、一般的に言って、条約の解釈については、国の間でかなり似通っている場合もございますし、また国によって立場が違うものもあるということもそのとおりであるわけでございます。

 我が国のこの問題についての考え方、これについては、国連海洋法条約にのっとって、我が国の主権的な権利、これが侵害をされないように適切に対応していく、そういうことであるかと思います。そういった考え方にのっとって今まで、先ほど経済産業省からお話のありましたような判断を政府として行ったということであるかと思います。

前原委員 それでは、今の外務大臣の御答弁に基づいて質問いたしますが、地下構造が春暁とかあるいはほかの四カ所ぐらいの、ほかというかトータルで四カ所ぐらいの油田、ガス田があるのではないかというふうに言われておりますけれども、特に春暁鉱区については、地下構造がつながっているのではないか。そして、日本の権益、今まさに大臣がおっしゃった主権が侵害されないようにしなくてはいけないという御答弁からすれば、これについて、大変ゆゆしき問題である。この間の日中外相会談でも、外務大臣はそういうお話をされたということを伺っておりますが、しかし向こうは、どういう状況であるかという話は全くこちらにはしてこずに、あげくの果てには共同開発を言い出す、こういう始末であります。

 そういう意味では、地下構造がつながっているとすれば、今大臣がおっしゃったような主権というものが侵害をされてそのまま操業に至るというゆゆしき事態を迎えるわけでありますが、では、それを侵害されないように防ぐために日本政府としてどのように対応されていくおつもりなのか、外務大臣にお伺いしたいと思います。

川口国務大臣 この問題につきましては、いわゆる春暁のガス田、油とガス両方でしょうか、これについて、その設定された鉱区及び地下構造が中間線の日本側の水域にはみ出しているおそれがあるということで、私も、先ほど委員がおっしゃってくださいましたように、李肇星外務大臣との会談ではこれを提起いたしておりますし、また、中川経済産業大臣におかれても、この問題について、中国に対して我が国の懸念は伝えているわけでございます。そして、その鉱区及び地下の構造についての情報を我が国に提供するということで、中国側に回答を求めているということでございます。

 また同時に、我が国としても中間線の日本側の水域において必要な調査を行っております。そういったことを現在行っている、これに対しまして、これも先ほど委員が質問の中でおっしゃったように、中国側としては、共同開発という提案が、先般、李肇星外務大臣からございました。これについても内容は定かでございませんけれども、我が国としては、まず関連の、今まで要求をしている情報の提供があるということが必要であるということを言っているわけでございます。この情報の提供について、今まだなされているということではございませんけれども、これについては引き続き強く働きかけていきたいと考えております。

前原委員 要は、中国からは、今大臣がおっしゃったように情報の提供もない、そして、数年前に取り決めを約束した事前通告制度、これも形骸化をしている、無視されている。まさに、日本からの中国への抗議というか申し入れというものは無視され続けているわけですね。このことについて、私は、どういうふうに最終的な結論というか落としどころを見つけていくのかということは、極めて政治的には重要な判断だと思うんです。

 私もそれほど中国の専門家でもありませんけれども、しかし今までの中国のやり方を見ていると、どこまでやればほかの国が文句を言ってこないかといったところをどんどんどんどんやってきて、そして自分のやれる範囲というものをどんどん広げていく、既得権益化していくというのが私は中国のやり方だろうなんというふうに思うんですね。後で沖ノ鳥島のことなんかも質問いたしますけれども。

 それを考えたときに、情報提供を求めても、向こうからまだ返ってきていない。そしてまた、事前通告制度は形骸化をしてきている。尖閣のあたり、あるいは後で質問する沖ノ鳥島のあたりでも、日本に通告がなく海洋調査を行っている、無通告で海洋調査をやっている。なし崩し的にやられ放題ということなんですね。

 このままでいいのか。いいと思っておられるわけではありませんが、では、どうするんだ。ここは私は大事なポイントだというふうに思います。情報提供してくれと言っているんだ、そして事前に通告してくれと言っている、それを守っていないわけですね、中国は。では、どうするんですか、そのことについては。外務大臣、お答えください。

川口国務大臣 まず、事前通報制度でございますけれども、これは、東シナ海の我が国の排他的な経済水域内における中国の海洋調査船による海洋調査活動、これにつきましては、おっしゃった相互事前通報の枠組みというのが平成十三年に成立をしております。そして、東シナ海においては、平成十四年の九月以降はこの枠組みに違反する事例は確認をされていないということでございまして、基本的にこの枠組みは東シナ海においては有効に機能をしてきたということであるかと思います。

 一方で、ことしの五月になりまして、この水域で中国の海洋調査船「奮闘七号」という船ですが、これによって事前通報を行わない調査活動が行われたという事実がございます。これにつきましては、日本から直ちに、現場水域において、そして外交ルートを通じて活動の即時中止を申し入れたということでございます。

 枠組みの有効性について、東シナ海においては今申し上げたような状況でありますけれども、それ以外の海域についてどうであるかということで申し上げますと、国連海洋法条約に基づく事前申請を行わない、または我が国が同意を与えた水域とは異なる水域で海洋調査活動を行う事例というのが増加をしているわけです。この事例につきましても、日本から現場の水域及び外交ルート、これを通じまして、その都度、調査、これについては調査活動の即時中止を厳重に申し入れているということでございます。

 例えば、私も李肇星外交部長に対しましてこれを言いましたし、それから四月二十二日に事務レベルで海洋調査船に関する日中協議、これを開催いたしまして、日本から中国に対して、中国海洋調査船への指導監督及び違反事例の再発防止、これをさらに徹底していくということを強く要請したわけであります。

 そこで、中国側の反応はどうかということでありますけれども、外交ルートから申し入れるということについて、中国側からは、中国側はこれを真剣に受けとめている、そういう旨の反応もあったわけでございます。このような事態が重なるということについては非常に遺憾であるというふうに考えておりまして、引き続き中国側に対して、海洋調査船への指導監督、そして類似の事態の再発防止、これを徹底するように要請をしていきたいと考えています。

 それでは何ができるかということになるわけですけれども、通常この中国の海洋調査船というのは公船である、通常これは政府機関に所属をするということでございまして、公船であるということですので、関連の海洋法条約上、基本的には、旗国である中国以外の国の管轄権からは免除をされているということになっています。それで、国連の海洋法条約上、この政府の船舶に対して管轄権を行使しない形で調査活動の停止、終了、これを促すということについてまでは、禁止をされているということを言うというのは言いがたい。もう一度申し上げますと、管轄権を行使しない形でこれに対して調査活動の停止、終了を促すことまでも禁止をされているとは言いがたいだろうというふうに思っております。

 こういう考え方でございますけれども、具体的にどういうような対応が可能であるかということについては、日本として真剣に検討をしておりますし、今後とも検討していくということでございます。

前原委員 中国政府が国連海洋法条約を解釈しているような、そんな答弁にしか聞こえないんですね。つまりは、日本としてはどういう日本の権益を守るのか、そのためには国連海洋法条約をどう解釈して、そして実効支配をしていくのかということが私は大切だと思うんです。その意思というのが全く感じられない。

 きょうは官房副長官が来ておられますから、官房副長官にお伺いします。

 これは各省庁にまたがる話なんです。つまりは、官邸が責任を持って調整を行い、そして領土、領海、排他的経済水域、大陸棚、日本の権益を守るというのは、これは主権国家としてのイロハのイ、一番大切なことなんですね。そして、最も大切なことは、実効支配をすること、それに対して。その実効支配をいかにしていくかということについて、私はやはり内閣が、政府が、官邸がそういった指示をしっかりと出す、各省に対して。

 外務省は中国をえらい気にしている。そして、通産省は、外交関係があるのでそこら辺は自分たちの判断ではなかなか政治的な判断まではできない。それはそうでしょう。また、実効支配についても、海上保安庁だって、後で聞きたいと思いますけれども、政治的な意思がなければ、実効支配をどこまでやっていいのか。あるいはその能力があるのか。なければ、海上保安庁だけではなくて自衛隊にもその役割をお願いするのか。そういう政治的な判断、指令を各省庁は待っていると私は思うんですね。

 したがって、先ほど申し上げたように、この中国との問題については、私は、毅然と、日本の権益は守るという姿勢をまず日本の政府が示すことが大切なんだろうと。そのためには実効支配をきっちり行うということが大切だというふうに思っておりますが、官房副長官の御見解をお聞かせいただきたいと思います。

杉浦内閣官房副長官 委員のおっしゃるとおりだと思います。外交にとっては国益を確保することが主要な目的でございますし、領土の保全、領海の保全、領土問題の解決、排他的経済水域、大陸棚等、権益を確保することは国益のかなめでございますから、非常に重要なことだと思います。

 正直に申して、今までの官邸の取り組みは少しおっとりし過ぎておったかなという感じがしないわけでもございませんが、ここのところは積極的に取り組んでおります。例えば調査船を日本海側のところに派遣することもそうですし、大陸棚の調査も、国連への申請に備えてこれから大々的に取り組んでまいります。

 関係省庁一体となって、国益の確保のために、しかも国際法に従って、毅然として対応していくということが大事だというふうに思っております。

前原委員 海上保安庁長官もお越しをいただいているので、質問をさせていただきたいと思います。

 今官房副長官から答弁がありましたように、しっかりと日本の権益を守ることというのは必要だと思いますし、その上で海上保安庁が果たされる役割というのは、私は極めて大きいんだろうと思います。私も海上保安庁の視察を何度かさせていただいたことがありますけれども、非常に現場の皆さん方は一生懸命に頑張っていただいて、日本の国土というのは土地の面積でいうと世界で五十九番、しかし排他的経済水域を含めると世界で六番目という非常に大きな海洋国家であります。

 その意味では、沖ノ鳥島も含めて排他的経済水域というものを実効支配していく、あるいはパトロールをしていくということは必要だと思いますけれども、今官房副長官の答弁にありましたように、それをやっていかなきゃいけないということであれば、今の海上保安庁の能力で、持てる力で、人員あるいは艦船、そういったもので、すべてのその世界第六位という非常に広い海洋面積というものをカバーできるのかどうなのか、あるいは現状について御答弁をいただきたいと思います。

石川政府参考人 ただいま海上保安庁につきまして大変強い御期待をいただいたわけでございますけれども、今お話がありましたように、私ども、大変広い沿岸域の警備等を行っているわけでございまして、そういう中でいえば、海上保安庁の人員が一万二千人でございます、船艇も、ある意味では限られております。ただ、そういう中で限られた船艇をいかに有効に使っていくかということが大変一つポイントだと思っております。

 ただ、今、最近、事柄としては、今もお話のありましたような南西海域の問題であるとか、沖ノ鳥島の問題であるとか、さらには北の方の問題であるとか、つまり日本の国境というものがすべて海にあるということで、私どもとしても、この問題については重点的に、あるいはしっかりとやっていかなければいけないと思っていますし、現場の職員もそういう意味では心を込めて対応しているところでございます。

前原委員 もう一度官房副長官にお尋ねするんですが、沖ノ鳥島について、中国は四月に突如、あれは島ではない、岩だということを言い出して、領有権は認めるけれども岩は排他的経済水域とか大陸棚はないんだ、こういうことを言って、そして先ほど外務大臣は、東シナ海だけは事前通報制度はある、通告制度はあるということをおっしゃいましたけれども、私は、その枠を決めているところと決めていないところの違いということではなくて、この沖ノ鳥島も、我々は島というふうに主張して、当然ながら排他的経済水域、そして大陸棚というものの権益を主張しているわけですよね。そして、今の海上保安庁長官の答弁にも見られますように、なかなかやはり限界があるのも事実だと思うんですね。

 では、こういった沖ノ鳥島に対する考え方、我々の考え方は従来からもちろん変わっていないと思いますけれども、もう一度その確認をしていただくことと、やはりそういう広い海域についてどのように実効支配をしていくのか。今の海上保安庁だけで十分なのか、あるいは海上保安庁の能力をさらに拡充しなきゃいけないのか、あるいは海上自衛隊との連携等も含めて考えていかなくてはいけないと思っておられるのか。その点について、まさにその調整、指令をしていただく立場として、責任ある御答弁をいただきたいと思います。

杉浦内閣官房副長官 先生御案内のとおり、我が国としては、沖ノ鳥島を中心として経済水域を設定いたしております。そして、大陸棚の調査も、沖ノ鳥島を含めまして、公海も含めて、国連に対する申請が来年に迫っておりますので、大々的にやるように計画を進めておるところでございます。

 海上保安庁について御指摘がございましたが、確かに海上保安庁は一生懸命やっております。例えば尖閣列島の実効支配の点についてもよくやってくれておりますし、能力いっぱいといいますか、やってくれると思います。ただ、この点については、これは国会でも御議論賜りたいと思いますが、一層これから拡充して機能を強化していく必要があるというふうに考えております。

前原委員 私も、今副長官がおっしゃったように、尖閣、これは海上保安庁の飛行機に乗せていただいて、尖閣諸島の上を視察いたしました。たまたま台湾の漁船が不法に操業していて、一生懸命それを追いかけてやっておられる。あるいは、与那国の、台湾の国境線付近まで、本当に端から端まで、日本、世界第六位の海洋国家として一生懸命やっていただいていると思うんですが、私は、なかなかやはり能力的にも、現状の能力というものはその広さと果たしてうまく対応できるのかというのがありますので、その能力の拡充、まあ、お金もかかる話でありますけれども、それを本当に真剣に考えていただかなくてはいけないし、もし、それが前提という話で私はしているわけじゃありませんが、情報の共有とかあるいはP3Cなどの哨戒能力を考えると、やはりそういった海上自衛隊の持っている能力も補完させながら、もちろん主体的には海上保安庁が一義的にはそういう実効支配というものをしっかりやっていただいて、そしてそういう事前通報のない調査船であるとか、あるいは今までもやっていただいているような違法操業の漁船については排除していくということを毅然としてやっていただきたいというふうに思っております。

 そのために、もう一度、自衛隊との協力についても、先ほどつけた前提条件であります。私は、もちろん警察機能が前面に出なきゃいけないので、海上自衛隊がそれをやるということは海上自衛隊も困るかもしれない、能力的にも、国土防衛というのが本筋でありますので。しかし、補完する部分は私は多々あるんじゃないかというふうに思いますが、その点の検討もしていただきたいということをお願いします。その点について御答弁いただきたいと思います。

杉浦内閣官房副長官 海保と自衛隊との関係等、検討すべき大きな課題だというふうに私は認識しております。アメリカはコーストガード、警察的機能を持っておる。軍ですね。海上保安庁のあり方、これは国のあり方の根幹にかかわる問題ですので、国会でも御検討賜りたいと思います。政府としてどうこうと申し上げているわけではございません。一政治家として申し上げておるわけですが、そう思っております。

前原委員 いや、副長官というお立場におられるわけですから、まさに総合調整というのは内閣の仕事、官邸の仕事ですから、ぜひそれは問題意識を持ってやっていただきたいということはお願いしておきたいと思います。

 あと、最後にもう一つだけ、官房副長官、今の問題に関して。試掘ですね。

 今、七月七日から、日本は中間線の東側でいわゆる海洋調査、ボーリング、海洋調査を行っておられると思うんですけれども、それはもし、まあ、中国がやっているわけですから、あると思うんですけれども、海底資源があるということになったときには、私は、試掘をしてみるのが、調査してそれで終わりというのは余りにも不健全だと思いますし、あるいは、中国に対して情報提供を求めて、情報を出してこない。出してこなくていきなり共同開発だと言ってきている。これはやはり、みずからがちゃんと試掘をしてその存在を確かめて、あるいは地下鉱区もつながっているということをみずから確認した上で中国との交渉に当たるべきだと思いますが、その試掘についての見解を聞かせていただきたいと思います。

杉浦内閣官房副長官 現在は、地下構造といいますか、調査を音波を使ってやるという、大々的にやっております。年内いっぱいかかるというふうに聞いておりますが、その調査の結果を踏まえて検討すべきことだと思います。

前原委員 それでは、この中国の問題については引き続き私どもフォローしていきますので、とにかく実効支配をしっかりやっていただく、そのための政府としての意思というものをしっかり見せていただきたい。先ほど申し上げたように、向こうはどこまでやったら日本はどういうリアクションをしてくるかということをやってきますので、ここは毅然と日本の態度を示していただくことが私は大切なんだろうというふうに思います。

 次に、トランスフォーメーションについて、余り時間がございませんが、質問させていただきたいと思います。

 この間の本会議でも質問させていただいて、私どももいろいろ調べているんですが、総理の答弁でびっくりしましたのは、アメリカ側から正式な提案はない、こういう話でございましたが、そんなことはないわけであって、かなり議論が進んでいる、向こうからの提案もあるというふうに聞いております。

 防衛局長、お越しでございますが、もちろん内容については結構ですが、今どういうアメリカとの交渉状況なのか、そして日本としてはそれにどう対応されているのか、もう一度詳しく御答弁いただきたいと思います。

飯原政府参考人 お答え申し上げます。

 米側の、現在、御指摘のとおり、トランスフォーメーションということで、世界的な規模での軍備の再検討といいますか、変革を進めているわけでございます。それにつきまして、私ども防衛庁、外務省及び向こう側の国防省、国務省といろいろな場で協議なり情報提供を受けて、いろいろなフリーディスカッションも含めまして、どういった考えでアメリカがトランスフォーメーションを進める等々の情報は受けているわけでございますが、御指摘のような在日米軍のいわゆる基地にかかわるような問題につきまして、累次御答弁申し上げていますように、具体的な提案なりなんなりを受けているということはございません。

前原委員 それは、もう一度防衛局長に聞きますが、提案というか、話し合いはもちろん具体的な名前がかなり挙がっているし、私も聞いていますよ。アメリカからも話を聞いて、いろいろな具体的な地名が出てきています。それは、要は提案じゃないという意味なんですか。それとも、基地の名前も全然出てきていない、そういうことを本当にこの場でおっしゃるんですか。

飯原政府参考人 そこはあくまで事務ベースの、端的に申し上げれば、日本側の出席者レベルでいえば、全く、具体的な決定権限を持って、事前の、こういったことについて対処方針を持って、こういうことについてまとめてくるといったような形で、マンデートを持って行っているものではございません。

 そこで、フリーディスカッションと申しました意味は、いろいろな形で、例えばトランスフォーメーションについて何とかという話のときに、アメリカ側も場合によっては全く個人的なアイデア、全く上司に上げていないアイデアだけれども、こんなことを考えているんだとか、あるいは日本側からそういう話も担当者がする場合もあると思います。それがまさにそうした情報交換の中でお互いの理解を深めるということが趣旨でございますので、その中で、いろいろなフリーディスカッションがあったと思いますが、具体的に国会の場でこういったようなフリーディスカッションがありましたと申し上げるような形で、いわゆる責任を持った形でこういったことがありましたと申し上げられるような内容ではないということを御理解いただきたいと思います。

前原委員 そういう答弁ならわかるんですよ。つまりは、私も、今具体的な話をしてくださいということは一切申し上げているつもりはありません。本会議でもそういう趣旨のことを言ったわけです。

 しかし、それが漏れている。日本側からもアメリカ側からも漏れて、そしてそれがあたかも双方の方針、あるいはお互いがそれにせめぎ合っている、あるいは何かアメリカから日本が押し込まれているというふうに見えることがまずいのではないか。なぜもう少しそういう議論についてのマネジメントなり、そして国益観を持ったトランスフォーメーションの議論ができていないのかというところに私は非常に懸念を持っているということなんです。

 これはまさに、官房副長官、これも内閣の仕事だと思うんですね。つまりは、防衛庁、外務省、両省にかかわることです。したがって、政府がこの問題については、内閣が責任を持ってこの問題についてはやはりマネジメントしていく。政治家が関与しなきゃだめですよ。

 つまりは、まだ決まっていないということがしかし漏れてきて、そしてそれがあたかもひとり歩きして、そして来るといったところは大反対。そして、例えば厚木なんという名前が本当に具体的に出れば、厚木の人たちは浮き足立ってしまいますよね。そして、議論して、結局、ある程度まとまったものが普天間みたいに日本はそれの統治能力がなかった、決まったものは七年も八年もたなざらし、これはまさに日本の同盟関係のマネジメントが問われているというふうに私は思うんですね。そのことを私は申し上げたかったんです。

 別に、具体的な議論が出たら名前を挙げろなんということを今の段階で申し上げるのは私は国益にかなわないと思っていますので、申し上げているわけではないけれども、それが漏れるということ自体がまさに交渉としてまずいということを私は申し上げているわけです。それはまさに防衛庁、外務省にかかわる問題として内閣がこのトランスフォーメーションについては積極的にかかわりを持つ意思を持たれないと、この問題点というのは私は是正されないと思いますよ。その点について、官房副長官、御答弁をいただきたいと思います。

杉浦内閣官房副長官 御指摘の点をしっかり踏まえまして、内閣官房としても努力してまいりたいと思っております。

飯原政府参考人 一つ補足をさせていただきますが、いわゆる、先生今交渉ということをおっしゃったと思いますが、まずは累次御答弁申し上げておりますとおり、具体的なそういったいわゆる日本の基地問題にかかわります交渉をしたという事実は全くございませんし、また具体的な提案を受けたという事実も全くないということを念のために申し上げさせていただきます。

前原委員 いや、だから、言葉の遊びはいいんですよ。だから、何をもって交渉と言うのか、フリーディスカッションならよくて、例えば、もう終わります、終わりますが、私から申し上げたいのは、アメリカ側からいろいろ話が来ている中で、時系列的に分けて向こうからは出されているのに、それがごっちゃになって出ている。つまりは、例えばカテゴリーワンとかカテゴリーツーとかカテゴリースリーで、まだいつやるかわからないけれどもというところまでが議論として表に出てきている。そのことがまずいんじゃないかという話をしているわけです。

 ですから、フリーディスカッションなのか、交渉していない、まだ一切そういうものは決まっていない、しかし、実際問題、話をして、アメリカ側もそういった具体的な地名を話をしている、そして日本からもそういう、記者を通じて新聞に出る、そのマネジメントができていないんじゃないかということを申し上げているわけですよ。

 だからそこは、私は、まさに防衛局長というお立場におられるのであれば、言葉で逃げるのではなくて、マネジメントについても責任を持ってもらいたい。先ほど官房副長官がトータルとしてそれについては取り組むとおっしゃったので、ぜひやっていただきたい。国益を損ないますよと言っているんですよ、それは。言葉の遊びを言って、今どうのこうの言っているわけじゃない、それについては。だから、それをうまくマネジメントして、トランスフォーメーションを日米の間でうまく合意させてください、それが日米同盟関係をうまくマネジメントすることじゃないですか、そういうことを申し上げているんです。

 以上で質問を終わります。

米澤委員長 次に、増子輝彦君。

増子委員 民主党の増子輝彦でございます。

 きょうは、外務省の機構改革について、そして国連改革と安保理について、中心に質問させていただきたいと思います。時間が限られておりますので、どうぞ簡略にお答えをお願い申し上げたいと思います。

 まず初めに、外務大臣も今回の機構改革については並々ならぬ決意を持って臨んでいる、いつものように決意のときの赤い洋服を着られて看板のかけかえをやられたという報道を伺っております。

 これはあえて聞くまでもないと思いますが、この機構改革によって多くのことが変わってくると思いますが、まず基本的に、大臣、改めて日本外交の基本姿勢をお伺いしたいと思います。

川口国務大臣 外交というのは、我が国の国益を守る、すなわち我が国の平和そして安全、これを守るということで行っていくものであると考えております。外務省がそれにふさわしい組織であるかどうか、それを実行していくのにふさわしい組織であるかどうかという観点から、今回の機構改革はいたしております。

 キーワードとして申し上げるのは、戦略的な、そして能動的な外交ということで、これを目指して機構改革をしたということでございます。

増子委員 そうしますと、今度の機構改革によって、日本外交を進めるに当たり、今回の外務省改革が現実的に行われるのかどうかということを私は非常に心配をいたしているわけであります。一連の不祥事を受けて、今回、この機構改革につながったと思いますが、ある意味では、局レベルの改革は十一年ぶりの機構改革だとも言われておるわけでありますけれども、そのような大臣の基本姿勢をしっかりと持って日本の外交を進めていくために、今回の外務省改革はどんな意味を持って、具体的にどういうふうに進めていくのか、お答えをいただきたいと思います。

川口国務大臣 機構改革、それからその前から手をつけております意識・制度の改革、この二つが相まって、車の両輪と申し上げたらいいかと思いますけれども、いい外交、戦略的な、能動的な外交ができるということであると考えています。

 そのために、機構改革に、現実にどのような問題に取り組んだかということですけれども、一つは、総合政策局、総合外交政策局ですけれども、これを強化いたしまして、外交の戦略をつくっていく策定機能を強化したということでございます。

 次に、国民の、邦人の保護、我が国の国民の保護という観点から、領事局の強化、局にしたということでありまして、これは領事機能の強化、危機管理能力の強化ということを目的にいたしております。

 次に、情報が非常に重要でありまして、今まで局であったわけですけれども、これをよりフラットな、専門性を生かした組織にするということで、国際情報統括官を新設して、情報収集をし、それを分析する能力を強化したということであります。

 次に、戦略的、能動的なということで重要なのは、二国間外交に加えて、マルチの外交で世界の枠組みをつくるということを日本がやっていくということであると考えておりまして、これについて、国際社会協力部、条約局、経済局、この三つを改編いたしまして、枠組みの構築のための組織を強化したということです。

 さらに、広報文化交流部というものに、今まで二つに分かれていた組織をまとめまして、日本のイメージの向上、そして文化交流の強化ということを行っております。

 そういったことを通じて、戦略的な、能動的な外交を追求していきたいと考えます。

増子委員 今、具体的な変更というものを大臣おっしゃられました。結果的には、人はかわっていないわけですから、名称が変わった、あるいは看板のかけかえに終わったというようなことになってはいけないと私は思っているんですね。やはり、同じ人たちがそれぞれの組織・機構改革の中で同じ活動をしていくわけですから、よほど外務省の職員がしっかりとした意識を持っていかないと、これはなかなか変わらないと思っているんです。

 ですから、そういう意味では、一連の不祥事を受けてこのような機構改革につながってきたということでありますけれども、幾つかの点をちょっとお聞きいたしますが、今大臣が特に取り上げられた、領事機能を非常に強化するために領事局に格上げをしたということでありますけれども、人員が全く同じ人員でこの機能が拡充する、業務が拡充するということになっていくわけですが、この同じ職員の数で、それだけ、私は、格上げをした、そして業務が拡充するのに、そういった形のものが実際に職員が同じ数の中で十分な体制がとれるのかどうかということをお聞きしたいと思います。

川口国務大臣 委員が先ほどおっしゃいました問題意識を私は全く共有いたしておりまして、それは、組織をいじっただけで外務省が変わることにならないということであります。

 したがいまして、その前に意識・制度の改革ということを、これは霞が関初めてのいろいろな取り組みも含めまして、例えば職員の公募制、それから民間からの登用、外部からの登用、これは本省の幹部も含めまして、そういうことを二年強にわたって実施してきた。その上に立って、組織の、機構の改革をし、そしてそれらが車の両輪であるという考え方をいたしております。この機構改革あるいは車の両輪を生かすも殺すも外務省の職員次第であると私は思っていまして、そういったことも省内では強く常に言っております。

 そこで、領事についての御質問ですけれども、これについて、人員がふえないということをおっしゃられて、我々としては、人員をこの改革に伴って実はいろいろなところでふやしたいというふうに考えましたけれども、全体としてこれを、どこかをふやせばどこかを減らさなければいけないという中で、今いろいろなほかの手段によって領事機能の強化ということをやっております。

 例えば、これはもう二年前に手をつけたことですけれども、シニアの領事ボランティア制度というのがございます。これは既に十人の方が海外に行っていますけれども、民間の経験の目から見て領事制度をいかに変えていったらどうかということで、海外に十人出ていただいて、これについても引き続き拡充を考えていきたいというふうに考えております。現に、私は、外地、外国に行きましたときに何人かの人とお会いしてお話をしましたけれども、大変にいい仕事をしていただいていると思っています。

 そういうような、直接人数をふやす、これも人数、予算、徐々にふやしていきたいとは考えておりますけれども、それに加えて、できることを、現下の制約の中で最大限のことをやっていく必要があるというふうに思います。

増子委員 それでは、もう一つお聞きいたしたいと思います。

 国際情報局が、いわば格下げのような形の中で、局長級が就任をするといっても、国際情報統括官という形の中でこのように今回変わりました。先ほど大臣もおっしゃったとおり、非常に、国際的なテロやさまざまな問題が今世界にはあり、なおかつ、日本もその外にいるわけにはまいりません。

 ですから、その辺のところを、この国際情報局が、このような形になっていくことによって、戦略的な外交あるいはそういった国際的な大きなテロの問題等々に対応できるに十分なる情報収集を初め対応ができるのかどうか、大臣のお考えをお伺いしたいと思います。

北島政府参考人 委員御指摘のとおり、国際情報局につきましては、今度、国際情報統括官組織という形をとらせていただきました。

 私ども、局ということですと、どうしてもピラミッド型の組織を考えるわけですけれども、今や、情報の収集、分析を図るに当たっては、組織としてより柔軟な体制をとった方がいいのではないか、国際情報統括官のもとで、課長級の国際情報官、これを従来の三つの課ではなくて四つということでふやしますけれども、その下にいろいろな担当官を置いて、いわばフラットな組織体制をとって、その上で、専門性、機動性、効率性それから総合性、そういったものを実現したいということでやっていきたいと思っております。

増子委員 これは私は大変重要な問題だと思っておりますから、国際的な問題を含めて、ぜひこの点には、格下げのようなイメージがあるにしても、実質的には私は最も重要な部門だと思っておりますので、しっかりと対応していただきたいと思っております。

 ところで、大臣、今回のこの機構改革につきましては、田中眞紀子前外相の、実は指摘して、なおかつやろうとしていた機構改革はどのように生かされたのでしょうか。あるいは、全くそれとは関係なく、川口大臣のお考えのもとでこの機構改革がなされたのでしょうか。お答えを願いたいと思います。

川口国務大臣 田中眞紀子前外務大臣は、さまざまな点について問題提起をなさったというふうに私は思っています。例えば報償費の問題というのもございました。あるいは、NGOの人たちの考え方あるいは仕事を外務省の行政にどのように生かしていくのか、かなり幅広い分野においていろいろな御指摘をなさったというふうに私は承知をいたしております。

 それらについて、当時、既に幾つかの改革についての考え方、これを外務省として決めて実行に移しているということもございます。今回の、私が就任をして以来二年半の間の改革において、同じ問題意識を持ち、具体案としてはさらにそれを深めていったというものもございます。

 流れといたしまして、あるいは改革の考え方として、私は基本的に、必要性、あるいは何について改革をすることが重要かという問題意識において、私は同じような意識を持って今までやってきたつもりでございます。

増子委員 そういう延長線の中で、大臣、もう一つ具体的にお聞きしたいと思うんですが、特に問題となりましたいわゆる機密費の問題でありますけれども、二〇〇一年に松尾元室長の機密費流用事件を発端に、公金プール制問題を初め、さまざまな不祥事が発覚をしてきたわけです。これは、一部には、外務官僚の皆さんの特権意識や市民感覚の欠如などがその根底にあるというような指摘もされていた部分があったわけでありますが、特にこの機密費の流用問題等については、具体的にどのような形の中で改善をされてきたのか、さらに、今後このような問題が二度と起こらないようにどういう対策をさらに講じていくつもりなのか、ひとつお答えをお願いいたします。

北島政府参考人 報償費の問題、その厳正かつ適正な使用について私どもの改善努力ということで、若干具体的に御説明をさせていただければと思います。

 外務省としまして、松尾元室長による内閣官房報償費詐欺事件を受けて、報償費の適正な執行を確保するための一層のチェック体制の強化に意を用いてきているということでございます。

 具体的には、その使用に当たりまして、従来より取扱責任者及び官房における事前の決裁を要することとしておりますけれども、さらに平成十三年七月以降、十万円を超える案件について、副大臣以上の決裁を要するとの措置を講じ、報償費の趣旨、目的に沿った適正な使用の一層の確保に努めているということでございます。

 さらに、その使用後には、領収書等の証拠書類を整備して内部部局によるチェックを行うとともに、従来から外部によるチェックとしまして他の科目と同様に会計検査院による検査をきちっと受けるということでございます。

増子委員 この問題は、やはりしっかりとしていただかないとなりません。これは外務省だけの問題かなという私は疑問も持っておるわけでありますが、いずれにしても、外務省としては、非常に重要な問題であったわけでありますから、今後とも十分この点についてはしっかりとした対策を講じていただきたいと思いますし、二度とこのようなことがないように、大臣、ひとつしっかりと決意を持っていただきたいと思っておりますし、職員の皆さんの心構えというものもまた大事だと思っておりますので、ひとつよろしくお願い申し上げたいと思います。

 さまざまな戦略的な外交という形の中でこの機構改革をされてまいりましたが、いわゆる国内におけると同時に、外国におられて一生懸命、実は日本外交を進めている方々がたくさんおられるわけであります。特に、大使という立場の中で、本当に日本のすべてを受けて頑張っておられる方、たくさんおられます。そういう意味で、この大使の問題について幾つかの質問をさせていただきたいと思います。

 現在、外国に赴任している大使は何人いらっしゃるんですか。

北島政府参考人 現在、各国に赴任中の大使の数ですが、百二十名でございます。

増子委員 これもあえてお聞きする必要はないのかもしれませんが、あえて国会の場でもう一度再確認をしておきたいと思います。

 これらの大使の皆さんの役割はどのようなものがあるのか。これも官房長ですか。

北島政府参考人 大使の主な任務としましては、任国において、我が国政府を代表しまして、我が国の国益の増進及び我が国国民の生命財産の保護に努めること、さらに任国において我が国の外交政策の遂行及び交渉の任に当たること、こういったことがあると思います。

増子委員 いわば日本政府を代表して、日本国民を代表しての役割、責任があるわけであります。

 この大使、特命全権大使という、いわゆる拝命をされているんでしょう。そのほかには、大臣、大使という方が別にいらっしゃいますね。国内にもおられるんでしょうし。そういう方々は何人いらっしゃるんですか。

北島政府参考人 特命全権大使の場合ですが、外国に行って、それから一たん東京に帰ってきて、しばらく本省の仕事に従事しております特命全権大使、これが現在八名おります。

 それから、特命全権大使ではないんですが、外務公務員法に基づきまして、名称大使と申し上げていますけれども、仕事を遂行する上で大使の肩書を持っていた方が効果的であるという観点から認めている名称大使、これが現時点では、例えば儀典長、軍縮不拡散・科学部長等、七名ほどおります。

増子委員 その中で、特命全権大使でありますけれども、先ほど申し上げたとおり、日本外交を政府と一体となって進めていく重要な役割を持っておられるわけでありますが、その任期は平均どのぐらいになるんでしょう。

北島政府参考人 事実関係ということで、再度答弁することをお許しいただければと思います。

 我が国の主要国駐在大使の在任期間ですが、おおむね三年間程度となっております。大使が任国情勢に精通しまして、人脈を形成しつつ十分な活動を行うためにはある程度の期間が必要であるということで、外務省改革の行動計画の中でも、大使の任期については三年を一つのめどとするということを決めております。

増子委員 三年をめど、主要国は特にそのようでありますけれども。

 私も何度か外国にお邪魔しまして、また大使の皆さんともお会いをさせていただくことがございます。今回も、イギリスの折田大使ともお会いをさせていただく機会がございました。ようやく任地でそれぞれの任国の方々と交流ができて、ファーストネームで呼び合えるようになったという時点になると、もう実は帰国命令が出てしまうというようなケースが多々あると。今回も、実は、ピーター・ヘイン氏という英国の下院議員で、英国労働党の院内総務をされて、ウェールズ担当大臣がおられたんですが、この方とお会いをさせていただく機会がございましたけれども、英国大使、ファーストネームでようやく呼び合えるようになって、いよいよこれから日本と英国のより親密な重要な関係をさらに築いていけるんだろうなと私は思ったわけでありますが。

 この任期という点からいうと、平均三年、また三年を超えないというようなことがありますから、私は、場合によっては、こういう主要国については、特に三年という任期ということにこだわらずに、やはり、より日本との関係を緊密に、さらに重要な関係をつくっていくためには、この任期という問題については余りこだわる必要はないのではないのかなというような意識を持っているんですが、大臣、この件についてはいかがですか。

川口国務大臣 適材適所な人物をその国に適切な期間いてもらうということが重要であると思っています。短かったという御批判はいろいろいただいておりましたので、この前、意識・制度の改革の一環として三年程度というめどを置いておりますけれども、これにこだわらなければいけないということでもない。逆に、適材でなければもっと早く交代をするということもあるわけでございまして、まさに、その人間がその国にいて日本の国益のためにどれぐらいいい仕事をしているかということが重要な判断の要素であると思います。

増子委員 日本の大臣も本当に一年以内でころころころころかわってしまうということになると、これは全く外国からの信用もありませんし、また本当の意味の大臣としての役割を果たすことができないと思っております。それと同様に、今川口大臣おっしゃったように、やはり特命全権大使ですから、適材適所の中で、大事な国との関係はしっかりと国が築いていかなければならないと思っておりますので、ここのところはやはり柔軟性を持ってお考えをいただきたいと思うわけであります。

 その上で、実は、やはりこの大使の、国会における、いろいろな形で関与していくことは私は極めて重要な問題だと思っておるわけであります。そういう意味で、大使の国会の承認という件について、古くて新しい課題だということにこれはなっているわけですが、アメリカでは上院の承認を得る、メキシコでもそのような形で国会の承認を得るということになっておりますが、私はもっとこの大使の存在、さらに権限あるいは責任、そういったものを持たせる意味でも、私ども、この国においてもやはり国会承認ということが大事な問題になってくるのではないだろうかというふうに思っているわけです。

 ぜひこれは私どもそういうふうに進めていきたいと思っておりますが、国会承認について、大臣、どのような見解をお持ちになっておられますか。

川口国務大臣 我が国はこれは議院内閣制をとっているわけでございまして、憲法のもとで外交関係の処理は内閣の権限となっているわけでございます。これに携わる大使の任命につきましては、外務大臣の申し出によって閣議の手続を経て内閣が行っているということでございます。

 今、アメリカの例もございましたけれども、アメリカについては確かにそういうことでやっているわけですけれども、イギリスあるいは大統領制をとるフランスにおいても、そのような国会で承認という制度はとられていないということであると考えています。

 これを仮に国会の承認が大使の任命に必要であるというふうに制度を変えるとした場合に、私は幾つかの問題があると思っていまして、それは例えば、国会の日程次第では、これは国際関係は非常に速く動いていくというのが現状でございますから、必要なときに必要な大使を国会の日程いかんでは送ることが難しくなるという問題もあるかと思います。また、任免に要する手続が非常に長くかかってしまう、そういうことについても問題があり得るということであるかと思います。

 そういった観点から考えますと、国会承認にする、先ほど申しました、憲法のもとにおける外交と内閣の、内閣が外交を行うということに加えて、実際的にはそのような問題もあり得るかというふうに考えます。

増子委員 私は必ずしもそうではないと思っているんですね。その時間的な問題は幾らでも私は解消できると思っているんです。

 ですから、これはやはり日本外交を進めていく特命全権大使ですから、政府と一体となって、国会とある意味では一体となってしっかりやっていく必要があると思いますから、やはり国会の承認というものの権威づけがあれば、さらに特命全権大使としての責任、役割を果たすことができると思います。

 これは、ぜひ私ども今後この問題についてはしっかりと国会承認ということに進めていきたいと思っておりますし、大臣おっしゃるとおり、時間的な問題は幾らでも、私ども何もすべてノーなんて言う気はありませんし、こういう大使という役割からすれば、スムーズにこういった承認ということは私はどの政党も問題なくやっていけると思いますから、ぜひこの問題について積極的にこれはかかわっていただきたいと思います。全部が最初から無理であれば、少なくとも主要国と思われるその国についての大使から順次進めていくというような形に変えていくことも一つの方法だと私は思っておりますので、ぜひこれは今後とも私どももしっかりこの問題に取り組んでいきます。外務省としても、大臣、そういう意識を持っていていただきたいと私は思っております。

 と同時に、先ほどもちょっと申し上げましたが、やはり大使のその仕事、活動内容あるいは各国とのいろいろな関係の中で、民間大使も含めまして、最近は民間大使を多く登用されているということは大変いいことだと思っておりますが、やはり民間大使も、せっかく大使になった、国民の皆さんに私たちのそういった仕事、あるいはそれぞれの各国の事情、あるいは日本とのかかわり合いについて、いろいろ説明をしたいというふうにおっしゃられる方もおられるわけですから、私は、やはり今後の大事な課題、問題として、大使の国会での報告、外務委員会、それでなくとも最近非常に、何か条約だけを処理するような委員会になってしまっているというような、形骸化しているようなことを私は大変心配しているわけですが、やはり国会の中における大使の報告ということも当然今後重要な課題になってくると思いますが、この件について大臣の所見を伺いたいと思います。

川口国務大臣 いろいろな考え方があると思いますけれども、大使につきましては、これは日本とその国の、任地国の関係につきまして、その時に触れ、本省に対して報告をしているわけでございます。

 国会への二国間関係等についての、どういうことがあるかということについてのお話、これは非常に重要なことであると思いますけれども、それはその大使がするということではなくて、今まで同様に大臣あるいは副大臣、そういった人間を通じてやっていくのが適切であると私は考えております。

増子委員 大臣、百二十の特命全権大使が各国に派遣されているわけですから、百二十名の大使の皆さんの代弁者として、大変優秀であられる大臣あるいは副大臣、そういう方がすべて代弁するということに私は、幾ら万能であってもそれはなかなか難しいのではないかと思っておりますし、むしろ、国民に開かれた外務省、国民に開かれた日本政府、あるいは国際社会の中において、やはり私は大使がそれぞれ国会の中できちっとした報告をすることはむしろ国民との距離を埋めていくということ、縮めてより近くするということについては極めて重要だと私は思っているんです。

 ですから、この件も非常に重要な課題だと思っておりますから、きょうは問題提起だけをさせていただきますけれども、この件についてはしっかり取り組んでまいりたいと思いますので、外務省の方としてもこの問題についてはやはり検討をしていただきたいと思います。

 それからもう一つ、この大使問題について、実は、昨日だったですか、新聞の報道によりますと、野上さんでしたか、前の事務次官、今英国の公使か何かでいらっしゃっておられるんですね。この方が、実は例の不祥事の問題のときにずっと継続して、外務省の一連の動きの中で事務次官に野上さんがなられてさらに更迭をされたということがあって、現在はイギリス公使としておられる。その方が何かイギリス大使に就任するということが具体的に外務省の中で検討されているというように報道されておりますが、そのような事実はあるんでしょうか。

川口国務大臣 人事にかかわる問題、個別人事にかかわる問題については、恐縮でございますけれども、公の場でお話をするということではないというふうに思っております。

増子委員 公の場で触れることではないとおっしゃいますが、やはりこれが、公のところでなくとも、そういう新聞情報等が早く出てきてしまって、私たちは全く知らない、先ほどの国会承認ということにも実はつながってくるわけでありますけれども。

 私は野上さんという方はよく存じ上げませんが、やはり一連の外務省のいろいろな問題のときに、一応は田中外務大臣と野上さんがともに小泉さんから更迭をされたというような事実の中で、イギリスという主要国の、英国大使ということの話がもし現実化するということになれば、これは現時点では英国公使であることは間違いないという事実なんでしょうから、それがいきなり英国大使ということについては果たしていかがなものかなと個人的な感情、考え方を持っておりますので、公の場で触れられないということであれば、この件についても私は自分の考え方をとりあえず申し述べておきたいと思っております。

 時間が本当に余りございませんので、それでは国連改革に若干触れさせていただきたいと思います。

 先ほども宮下委員から国連改革等に触れられましたが、では私の方はちょっと絞って申し上げます。国連改革をする中で、日本の国は安保理常任理事国入りを求めていくことが大事な国連改革の柱だということでありますが、私はこの安保理理事国に入ることによってさまざまな、私どもの国が仮に安保理事国になるということになれば、いろいろな責務を負わなければならないという問題が当然出てくると思うんですね。それは全く日本独自のような動きをしていくというわけにはまいらないと思うんですが、理事国が仮に拡大となって、その枠がふえて、日本がその中に入るということになれば、国際貢献は現在とどのように変わるんでしょうか。

川口国務大臣 我が国は既に日本といたしまして世界の中で重要な役割を果たしてきているというふうに考えております。国連の改革が必要である、その中で我が国が安保理の理事国になることが必要だと思いますのは、今二十一世紀の世界が直面しているさまざまな問題について、国連がこの問題について具体的に対応を強化していくということが必要であるということを考えておりまして、その中で、我が国の、安保理の理事国でない場合には、意向が反映されない形でいろいろな形で物事が決まっていくということは、世界のためにも、そして我が国のためにとっても望ましいことではないというふうに考えているわけでございます。

 我が国は既に国際の平和そして繁栄ということについては十分な貢献をしてきておりますけれども、理事国になった場合には、より適切な形で、より早い段階から国連の対応の仕方について影響を与えることができるという意味で非常に重要なことである、より大きな貢献になるというふうに考えております。

 国際的な貢献は引き続ききちんと果たしていきたいと考えています。

増子委員 時間が参りましたので、最後に一つだけこの問題について。

 国際貢献の中で、さらに具体的に申し上げますが、常任理事国になれば、国連の軍事的措置への参加が義務づけられていくんでしょうか。多国籍軍の参加の問題も含めてでございますが、ここの国連平和維持活動、あるいはこれも当然日本は今既にやっているわけですが、安保理事国になれば、当然、軍事的義務というものがこれはついてくるんでしょうから、その辺の大きな問題点ということについて、外務大臣はどのように軍事的義務ということについてお考えになっているのか。

川口国務大臣 結論を申し上げれば、常任理事国入りをした場合ですけれども、例えば多国籍軍への参加といったような法的義務が新たに生じるということはないということでございます。

 より丁寧に申し上げますと、常任理事国については、今の国連憲章上、安保理において選挙を経ずに議席を有すること、あるいは表決に当たっていわゆる拒否権を有しているという、そういった点において、他の加盟国と異なった扱いを受けているということはございます。ですが、常任理事国とその他の加盟国との間で法的な義務について違いはないというふうに考えているわけでございます。したがって、先ほど申し上げたような新たな法的義務が常任理事国入りをしたことによって生ずるということではないということです。

増子委員 安保理事国になれば、多国籍軍への参加の義務はないというふうにおっしゃられましたが、本当にそうなんでしょうか。

 これは小泉総理の言われている、指揮権は全く、今回の多国籍軍の問題についても我が国へは及ばないというようなことに類似するんでしょうが、私は、安保理事国に入れば、当然その問題というのは避けて通れないということになってくるんではないのかなというふうに思っているんですが、これは時間がございませんので、また次回、いろいろ細かく詰めていきたいと思っております。

 理事国入りすることは、当然私も重要なことだと思っておりますので、軍事的な問題も含めながら、日本がどういう形の中でやっていけるかということをさらにしっかりと踏まえながら、ぜひ安保理事国入りを目指していっていただきたいと思いますし、私もそういう意味では、ぜひサポートさせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

米澤委員長 次に、松原仁君。

松原委員 今大変に、テレビできのうも放送されておりましたが、サッカーが盛り上がっているわけであります。アジアカップが行われておりまして、日本チームは準決勝できのうもバーレーンに勝っていよいよ決勝戦、こういうふうなことであります。

 今回のこのサッカーアジアカップにおける印象で、大臣、どんなことが印象に残っているか、簡潔にお話しいただきたい。

川口国務大臣 私は実は、大変に申しわけないんですが、サッカーの試合の実況は見ておりませんけれども、いろいろ報道によりますと、一つの特色として、中国において行われた、特に重慶等で日本のプレーについてのブーイング、あるいは君が代のときのブーイング等が起こったということは聞いております。

 日本が勝ち進んできたということは非常に日本人としてうれしいことですけれども、そういった雰囲気の中で試合が行われなければならなかったということについては、これはスポーツという観点からもっと考えるべき点があるというふうに思っておりますし、こういう場で反日的な行動が行われたということについて、中国のサッカーファンの方々にもう少し考えていただきたいことである、遺憾であるというふうに思います。

松原委員 先にそこまで大臣がおっしゃったわけでありますが、ブーイングに関しては遺憾である。ブーイングだけではなくて、ごらんのようにテレビでも報道されておりましたが、日本のサポーターに対して物が投げられるとか、こういうふうな事態が起こっているわけであって、しかも日の丸の曲が流れているときのブーイング、私は大変に遺憾というよりは失礼千万というふうな気もするわけでありますが、もう一回御答弁をお願いします。

川口国務大臣 こういった状況におけるマナー、これについて中国人が知らない、あるいは知っていたかどうかよくわかりませんけれども、そういうことについては非常に私は残念なことであるというふうに考えております。あとは先ほど申し上げたとおりです。

松原委員 それで、そこまでは一人の日本の国民としての感情だと思うんですが、外務大臣でありますし、今ここは外務委員会でありますから、なぜそういったブーイングが起こったり、日本の選手がいいプレーをするとブーイングが起こる、日本の君が代が流れるとブーイングが起こる、日本のサポーターにさまざまな物が投げつけられる、そして日本は横断幕をかけることすらできなかったという報道もある。なぜそこまで反日的な行動を彼らがとったのか、その分析について、原因について大臣どんなふうにお考えでしょうか。

川口国務大臣 昨夜行われましたバーレーンとの試合においては、中国当局が国際試合における観客のあり方等について事前に十分に広報を行い、またさまざまな規制についても行った結果として大きな問題は生じなかった、これは場所は重慶ではございませんでしたけれども、ということも聞いております。

 そういうことからすれば、一つは、まさに国際試合を見るときのマナーについて周知をせしめることによって物事が改善したという部分もあると思いますし、それからさらに、その背後の問題として、あるいはより深い問題として、中国の人の心の中に日本に対しての感情というものが存在をしている、そのような行動をとらせるような感情というものがあるということも否めないというふうに思います。

松原委員 今、中国も当局が、そういったことで重慶のようなことがまたあってはいけないという指導があったという話で、きのうの試合においては、それでもブーイングは聞こえておりましたが、それほど大きなブーイング、重慶に比べれば、そういうふうな話であります。

 私は、多くの日本の国民があのテレビを見ていて、中国の多くのあのサポーターというんですか、その聴衆が日本の国歌のときにブーイングをする、日本のサポーターに物を投げつける、日本の選手がファインプレーをしたときにブーイングをする、これを見て、多くの日本国民は中国に対して好意を持つと思われるかどうか、大臣の御答弁をいただきたい。

川口国務大臣 それを見た日本人の心の中の感情はさまざまにあったというふうに思います。先ほど委員がおっしゃったように、失礼なと思った人もいるでしょうし、遺憾だと思った人もいるでしょうし、中国人がもっとそういうことになれて国際化をして、しかるべき行動がとれるようになるということがいいと思った人もいるでしょうし、さまざまな人がいたと思いますけれども、日中関係、友好関係の増進という観点からは、決してプラスにはならない行動であったと私は思っています。

松原委員 おっしゃるとおりで、これは日中関係の健全な将来を考えると、物すごい目に見えるマイナスだと。私も、私の知り合いの地域の女性の皆さんや、女性が特に怒っていましたね、今回。女性の皆さんなんかと話をすると、もうとんでもないと、みんな口をそろえて。だから、恐らく重慶はやり過ぎだという反省があったから、きのうはまた違う対応をしたんではないかとすら私は思うわけでありますが、例えば、さっき大臣は今までの感情があったというふうなことをおっしゃった。もうちょっと、当局がサッカースタジアムにおけるさまざまな指導をする云々ではなくて、なぜ彼らはあれだけ反日的な行動をとるのか、その理由についてどうお考えか、教えていただきたい。

川口国務大臣 中国人の心の中、お一人お一人いろいろな経験、あるいはいろいろな感情が渦巻いている、それが当然そういう行動になって結果としてあらわれたということであると思いますけれども、過去、特に重慶等で日本が戦争、日中戦争時代のことを考えた人もいたかもしれない、あるいはそういうことによって、そういうことを教育された人々、それの結果かもしれない、あるいは全くそういったことと関係なく、周りがやるからやったという人もいるかもしれない。これは、さまざまな人たちが、こういった大勢の人間が集まって行動をとる場においては、いろいろな原因が、要因があるというふうに考えます。

松原委員 日本が、例えばアメリカの選手団が日本に来たときに、日本に原子爆弾を落とした国だからといって、今ブーイングはしないわけであります。そこには一つの友好関係が成立をしているからであります。私は、今の大臣の答弁で、その後の教育によってとおっしゃった、極めて重要なことだと思っております。私は、教育の効果というものが今日の反日のブーイングの根本にあるんじゃないかと思っております。

 今大臣は、幾つかの理由の中で、教育によってなされた人がいるだろうということをおっしゃった。もうちょっと詳しく教えてください。

川口国務大臣 私は、これは推測をせよということでございましたので、幾つかの要因を推測したということでございまして、具体的に、この人たちに対して世論調査をし、分析を科学的に行って、そういうことであるという判断、断定をしているというわけではございません。そういった断定はかなり学術的に調べてみないとわからないということであると思っております。

 ただ、いろいろな仄聞をすること、そして、日本も中国との間でいろいろな過去の経験を持っているわけでございまして、そういうことを中国の人たちも当然学んでいる、日本の人も学んでいる、そういうことも一因ではないかということを申し上げたということです。

松原委員 どういうことを学んでいるんですか。その一因の、いろいろなことを学んでいるとおっしゃったけれども、そのいろいろなことの中身をおっしゃっていただきたい。

川口国務大臣 今、日本政府と中国政府とも話し合った結果として、教科書についての研究ということも一緒にやっているわけでございます。そういった問題意識の背景に、一つとして、お互いに歴史の学び方が違うのではないかということもあるわけでございまして、まさに問題意識としてはそういう部分があるということで、具体的に、ある問題についてどのように教科書に書かれているかということについて、私が今ここで承知をしているということではございません。

松原委員 今の大臣の御答弁ですと、教育によってああいった反日のブーイングが起こっている可能性も否定できないというか、可能性も一つの理由の中にある、こういうふうな御認識を示されたということでよろしいですね。

川口国務大臣 そういうことを問題意識として持っているということでございます。

松原委員 この問題意識は極めて重要ですから、私は、珍しく大臣が本音を言ったんじゃないかと思っているんですよ。

 つまり、中国における教育の結果として、あのサッカー場で、君が代のときもブーイング、そして日本人サポーターには物を投げる、そして日本人のファインプレーにはブーイング、そういうすさまじい、見ていてもう画面を見たくなくなってしまう、そういう日本人もいました。そういうサッカーの試合が行われるぐらいの、いわゆる教育的効果がそこにあらわれてしまっている。これは私は、日本の外交として極めて問題とするべき、サッカーそのものではないですよ、こういう流れそのものは問題とするべきだと思うんです。

 ちょっと確認なんですが、私は、やはり外務省としては、こういうふうなブーイングが起こった経緯とかそういうものを、日本の国の外交をつかさどる部署として、さっき学術的な専門研究はまだしておりませんからということですが、今の大臣の問題意識に沿って、何でこんなすさまじいブーイングがあの大観衆で起こって、今言ったように日本人サポーターに物を投げたり君が代のときにブーイングをしたりしたのかという、その原因を分析するべきだと思うんですが、そういう分析をする用意はありますか。

川口国務大臣 かつて日本とアメリカの間で嫌米と言われた時期がございました。それは、貿易摩擦の激しかった時期に、日本のマスコミ等で嫌米という言葉が躍ったわけでございます。そういった時期に、日米両国は、マスコミにあらわれる報道、それが日本とアメリカとの間でどのように異なっているかということについて客観的な研究をしたことがございます。そういうことをやることによって相互の理解が深まった。これは政府間でやったということではなかったのではないかという記憶がございますけれども、そういうことがあったということでございます。

 両国の国民の間の感情というのは、さまざまなことによって動いていくというものであると思います。そういった問題が起こったときに、どのような要因によってそれが起こってきたのかということを客観的に考えてみる、客観的にお互いに分析をしていくということは、私は重要なことである、大事なことだと思っています。

松原委員 日米のときにという話があったけれども、私は、日本のアメリカに対するもし嫌米があったとしても、これほどいわゆる礼を失したところまで行っていなかったんじゃないかと思うんですよ。それは、サポーターに物を投げ、日本の君が代のときにブーイングをする。日本が嫌米のときに、どこかのオリンピックの大会でも何でも、アメリカの選手が優勝してアメリカの国歌が流れるときに、ブーイングをした日本人がいるというふうに私は承知しておりません。そういった意味では、かなりこれは私は日本の外交として考えなきゃいけない要素がある。

 従来、中国に対して、我々は、過去はODAとか含めて、さまざまな経済的な援助をしてきた。それは一体、この反日ブーイングとどういう関係になっているのか。我々はそういうことをしてきたにもかかわらず、それは全く日中関係の良好に寄与していなかったのか、そういう錯覚すら起こすようなこの現象なんです。

 私は、日中関係の特にこの部分、やはり一九九三年以来の中国で行われてきた、マスコミの人が言うところの反日キャンペーンなるものが行われてきたというふうな議論がなされておりますが、そのことについて大臣、御所見をお伺いします。

川口国務大臣 日米間でもさまざまなことが過去にあったと思います。アメリカにおいて日系人に対していろいろな嫌がらせ等があったということも現に過去においてはあったわけでございます。ですから、それはいろいろな国、二国間の間で起こるということをまず申し上げたいと思います。

 それから、中国と日本の間で、日本と中国、非常に近い国であって、かつお互いに必要としている国であって、そういう中で、国民のレベルでいろいろなわだかまりがあり、それがまた行動にあらわれていくということは望ましいことでは全くない。これをいろいろな形で解消していくための外交努力をしなければいけないというふうに考えますけれども、中国もそういう意味では非常に多様であって、そのような反日的なキャンペーンが例えばインターネットで躍っている、躍っているという言葉は適切ではないと思いますけれども、インターネットでそういうようなチャットが行われているということも仄聞をしておりますし、また同時に、日本との関係を強化することが非常に大事であるという論文を書いている人たちもいるわけでございます。中国、これだけの多くの国民がいるわけでして、非常に多様であるというふうに私は考えております。

松原委員 今外務大臣が、アメリカにおいて日系人が大分排撃をされていたことが戦前あったというふうなことをおっしゃいましたが、でも、今の話でいくと、大臣も本音では、第二次世界大戦前の日系人がアメリカ社会において排撃をされていたのと同じぐらいの今回はある種の遺憾の意を持っている、私はこういうふうな認識に立つわけでありますが、私は、こういう問題の、チャットの中で反日キャンペーンがどんどん行われていると今大臣御本人がおっしゃったわけですが、そういうのはたくさんある。もちろん、中には日本と中国との経済が必要だという人もいる。当たり前であります。中国から見て、日本との経済の関係というのは、これは国益上極めて重要だから、それは必要だという人は当然いるわけであります。

 しかし、一般の感情として、常に日本というのはそういう国だ、日本というのはこれはもう許せない国だ、きょうのテレビ、十チャンネルか何かの放送を見たら、こんななめられてたまるかと彼らが言っているんですよ。何を我々がなめているのかと。

 先ほど前原委員の質問でもありましたが、例えば春暁の天然ガスの開発だって、彼らがそういうことをやってきている。我々はまさに、みずからの方の試掘に関してもこれからだ。今までやってこなかった。先ほど出ました国連海洋法条約の何条でしたか、幾つかある中で、いわゆる将来的な阻害要因になるようなことはしないということでやってきた。そういうふうに我々はやってきたのに、それに対してそういうふうなチャットが行われているということ自体、極めてこれは遺憾でありますけれども、こういうふうな状況は、結局、領土問題を含め、大きな問題、日本に対しての中国のさまざまな行動に対して、我々の意識と全く違う意識に彼らはなっているということになるわけであります。

 そういった意味で、ちょっとお伺いしたいんですが、私は、恐らく今回のすさまじい、日本人サポーターに物を投げるとか君が代のときブーイングをするとか、こういうふうな流れというのは、一九九三年かどうかは別にしても、ベースにある種のキャンペーンがあったんだろう。その後もそういうものは脈絡もなく続いている部分もあるかもしれない。

 教科書なんかもそうだと思うんだよね。私の知っている日本人のある方が中国の大学に二年間留学した、子供は小学生だった、中国の学校に通っていて石を投げられた、そのことについてその学校の校長が、あの人の子供には責任はないんだからと言ったと。何も知らない無辜の子供が石を投げるというのは、教育の現場においてそういうふうな一つの何か、あるんですよ、そういう一つの意識を植えつける要素が学校教育の小学校の現場とかにおいて。恐らくそうだと思う。

 私は、そういった意味で、教科書について、中国の教科書とか、特に国語、算数、社会ではなくて、そういう教科書について外務省は研究をしているのかどうか。これは当然、外務省は莫大な国家の予算を使ってやっているんだから、そういうものの研究をしなければいけないわけであります。そういうものに予算を使っているのかどうか、大臣、お答えください。

薮中政府参考人 お答え申し上げます。

 まさに委員御指摘のとおり、教育の問題というのが外交の中でも、やはり国民が相手の国についてどういう考え方を持つのかということに非常に大事なことであるということは、委員御指摘のとおりだと思います。そうした中で、我々は、アジアの各国の中で、特に中国あるいはその他の国々においての教科書あるいは教育の中で、日本についてどういう言及がなされているのか、あるいは今までの過去の問題についてどういう記述がなされているのかということについての調査というのは従来からしてきております。

松原委員 従来からしてきて、それに関してどういうふうな結論を出しているのか教えてください。

薮中政府参考人 これはさまざまの国々との関係、そしてまた……(松原委員「いや、中国の教科書について」と呼ぶ)おのおの、中国との場合においても、日本との間でいろいろの協議の場がございます。そうした中で、一方的に偏ったような記述がある場合、こういうことについては、やはりこれはいかがなものかということでの指摘をしてきている経緯はございます。

松原委員 薮中さん、中国の国語、算数、社会、理科があるかどうかわからない、そういう教科書でどういう点が、今ここで答えられなかったら次の委員会でやってもいいけれども、どういう点が問題で、どういう指摘をして、どこを改善してくれと頼んだのか。そこまで踏み込んでやっているのかどうかですよ。

 我々は、日本の方の教育というのは近隣諸国条項とかいうものがあって、いろいろと向こうはちょっとしたことで言ってくるわけですよ。向こうの国の教科書について、最終的に、サポーターが物は投げるわ、日本の国歌のときブーイングをするとか、何万人いるかわからないけれども、そういうふうな状況になっている、このもとにもしかして教育があると思うならば、きちっとそこをやらなきゃいけないんです。

 それをもう一回答えてください。どういうふうにやっているのか、そこまできちっとやっているのか、そして国語や算数やそういった教科書も読んでいるのか。

薮中政府参考人 お答え申し上げます。

 今までの経緯の中で、申し上げましたように、日中のさまざまの協議のやりとりの場で、この教育の問題あるいは教科書の問題についても議論はなされてきた経緯がある。現在この場で具体的に細かく、どういう格好でのやりとりがあったのかについての資料はございませんので、また改めて御説明に上がりたいと思いますが、基本的に、今委員御指摘のとおり、今回のこと、これは極めて遺憾なことであります。

 我々、今大臣が申し上げましたとおり、大きく言って、これはスポーツでございますから、当然フェアなスポーツ精神にのっとって、その中には当然、相手の国歌の斉唱については敬意を表するというのも当然でございますし、そしてまた安全の確保ということもございます。

 これについても、当然そうした安全の確保がなされるべきであるということで、やはり相当に熱がこもっていた、我々から見ると極めて遺憾でございますけれども、中国側にいろいろと我々からこれについて申し入れをいたしました。安全の確保、そしてまたフェアプレーということでスポーツにおいてのフェアプレー、これをきちんとやってほしいということを申し入れておりますけれども、先方がいわくは、前回の覇者である日本ということで日本が強い、そういう意識とか、いろいろなその間の意識があったということ、これは一つ一つ我々にとってみれば言いわけにしかなくて、何の説得力のある説明ではございませんけれども、いろいろなことを言っておりました。

 そうした中で、申し上げましたように、基本はフェアなスポーツ精神にのっとった行動をしてほしい、そしてまた、日本の選手そしてまた観客についての安全の確保というのは当然してほしいということで、この一、二試合を見ておりますと、中国側も相当それについては、指摘があったということで、当局の方は、きのうの試合でも相当の警備を強化し、また試合の直前には国際試合の観戦についてのマナーを呼びかける。結果的には、国歌斉唱においても大多数の人がきちんと起立して行った。若干の改善はあったようでございますけれども、土曜日にまだ決勝戦がございますし、我々としては、引き続き中国側に対してそうした基本的なことについての考え方を改めて申し入れる予定にしております。

松原委員 とにかく、外務省はさまざまなことをやってきて、もちろんODAも出してきてやっているわけであります。今やっているかどうかは別にしても、長い過去の歴史を考えれば。それはやはりこういうことをなくするためにやってきているんだ、簡単に言えば。何を今までやってきたんだ。しかも、サッカー場はサッカー場でこの感じで、一方では、春暁を含め、何やら、まさに日本という国は何か自分の意思を持たない国じゃないかという話になってくるわけであります、結論的に言うと。

 僕は、その辺は外務省は、とにかく中国の教科書がどういう教科書か徹底的に調査してもらわなきゃいけないし、きちっと、それは大臣、大臣は最初にそれは教育的なものもあったんじゃないかということを選択肢の一つで言ったんだから、きちっと対応してもらいたいというふうに申し上げます。

 次に、尖閣の議論であります。

 尖閣に関して、これは私も何回もこの委員会で質問しております。もう一回ここで大臣の所感をお伺いしたいのは、中国の七人の不法上陸者を強制送還しましたよね、この処理について、その処理が正しかったかどうか、これについて大臣、御認識をもう一回聞かせてください。

    〔委員長退席、増子委員長代理着席〕

川口国務大臣 今まで何回かこの外務委員会の場でも申し上げたかと思いますけれども、この処理については適切であったというふうに考えております。

松原委員 適切でなかったと私は思っているわけでありますが、なぜ適切なんですか。

川口国務大臣 これは、政府の中でつかさであるところの法務省あるいは警察といったところが御相談をなさった上での判断をなさったということでございまして、私としては、それは適切であったというふうに思っております。

松原委員 法務省やそういったところが判断したから適切であったと。では、外務省のつかさとしてはどうなんですか。

川口国務大臣 尖閣諸島は我が国の領土であるわけでございます。そこに対して不当な入国があったということで、この問題の所管は、先ほど申し上げた法務省そして警察であるというふうに考えております。

松原委員 適切の処理であった理由というのは、要するに、所管の法務省が判断したから適切だと思っています、こういうふうな理解でいいんですね。

川口国務大臣 入国管理法違反ということでございますから、そういった措置、強制的に送還をしたということは適切であったと私も考えます。

松原委員 水かけ論をしてもしようがないんだけれども、例えば、中には再犯している人もいるわけですよ、一回既にそういったことをやって。私は適切だったと思っておりません。

 実は私は、今、超党派で、日本の領土を守るために行動する議員連盟というのができまして、そこで六月二十一日に、自民党の国会の議員、先生方六人と民主党七人で、空中から尖閣諸島を見てまいりました。上空からの視察ということで、私が肉眼で見る限りにおいても、尖閣諸島の幾つかの島は、特に魚釣もそうでありますが、人が住めるんじゃないか、こういう印象を持ったわけであります。もちろん、かつおぶし工場があったとかというデータもあるわけでありますが。

 聞くところによりますと、これは中曽根さんが総理のときですか、日本の尖閣諸島の実効支配のあかしとしてという本音の思いを持ちながら、表向きはいわゆる尖閣周辺における資源調査をするということでヘリポートを整備したわけであります。そのヘリポートは今は使えなくなってしまっているわけであります。私は、この経緯については多くを今言おうと思いません。私は、このヘリポートは基本的に、メンテナンスをして、本音の部分の日本の尖閣における実効支配をやはり内外に喧伝する一つのツールとして使うべきだっただろうと思っておりますが、今これはもう整備されていない、使えないわけであります。

 しかしながら、今我々が尖閣において必要なことは、中国人の不法上陸者も七人あったことも含め、尖閣の警備を見直す。今までの警備でいいという議論は、入ってきてしまった以上あり得ないと思うので、どのように警備を見直すのか。そして、その警備を見直す一環としてヘリポートの整備はぜひやるべきだと思うんですが、前にもこの点は質問しておりますが、この点について御答弁いただきたい。

    〔増子委員長代理退席、委員長着席〕

猪俣政府参考人 松原委員から先国会でも御指摘あったと思います。先ほど外務大臣の方から御答弁がございましたように、当然のことながら、尖閣諸島は我が国固有の領土であるということが歴史上も国際法上も疑いのないところでございまして、現に我が国はこれを有効に支配しております。ただ、先ほど御指摘がありました三月末の中国人の不法上陸事件というのが発生したことにつきまして、政府としても、遺憾という観点から、再発防止策について警戒警備を強化してきているところでございます。

 さらに、ヘリポートの整備という点でございますが、関係省庁とよく調整して検討を行っておるところでございます。

松原委員 ヘリポートの整備は、関係省庁と相談しているということは基本的にもうやる方向だ、こういう認識でいいと思うのでありますが、尖閣の実効支配ということですよね。我々は実効支配しているという、尖閣の実効支配、今の段階でできているというふうにお考えかどうか、お伺いします。

薮中政府参考人 お答え申し上げます。

 まさに政府としては、当然のごとく、尖閣については実効支配をしているという認識でございます。まさに先般の事件におきましても、日本の法律が執行されたということは、これは何よりも日本がきちんとした実効支配をしているということの国際的にはあかしになるというふうに思っております。

松原委員 しかしながら、尖閣諸島に、例えば日本の警察やしかるべきだれかが常駐しているわけではないわけであって、再び、この間のように七人上陸のようなことが起こらないとも限らない。起こった場合、どういうふうにそれを処置するのか、どうだれが責任をとるのか、だれがどう責任をとってそれをどう処置するのか、答弁いただきたい。

猪俣政府参考人 先ほども少し簡単に御答弁差し上げましたけれども、具体的に、警戒警備、まさに再度、再発防止するためにどうするかということだろうと思います。詳細につきましては、こういう場でございますので申し上げられませんけれども、我が国の領土、領海への不法な侵入に際しましては、当然可及的速やかにこれを排除する、違法行為があれば速やかに、身柄確保も含め我が国法令に基づいて適切に処理するというのが基本的な対応方針でございます。当然、そういうことをするためには、平素からの情報収集、分析、事態対処に当たっての関係機関の連携等について強化したところでございます。

松原委員 川口さん、川口大臣、さっき強制送還は正しかったと言っていますが、もし万が一また上陸があった場合、これはやはり強制送還、正しいんですか。

川口国務大臣 そういうことが二度と起こらないということが望ましいということであると思いますけれども、仮に起こった場合、それはどのような状況においてそういうことがあったかという事実関係に基づいて、関係の当局で適切に判断をなされるというふうに思います。

松原委員 関係の当局といったって、一番外務をつかさどっているのは大臣なんだから、関係の当局で判断をするということではなくて外務大臣としてはどういう思いなのかというのを言ってもらわないと、私はリーダーシップも自律したものもそこにはないということになると思うんだよね。

 ほかにもきょうは、実は、竹島の切手の問題、プリクラ切手の問題、時間がなくて済みません、郵政公社の方、お越しになっていると思いますが、これは次回きちっとまた質問しますからきちっとした答弁をお願いしたいと思いますし、その他、本当に山のように、日本がそういった、言うべきことを言わない外交を展開している。

 私は、さっき言ったように、日本と中国が仲よくなるべきなんですよ。仲よくなるためには、毅然として、お互い言うことを言って、そして仲よくならなければいかぬのですよ。自分が言うべきこと、自分の主張するべきこと、国益を全くオミットしておいて、仲よくなれるはずがないんですよ。

 私はそのことを、外務大臣を含め外務省の皆さんに強く申し上げて、たくさん質問、きょうできなかったのでお越しいただいた方には申しわけないんですが、以上で私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

米澤委員長 次に、武正公一君。

武正委員 民主党の武正公一でございます。まず、拉致問題についてお伺いさせていただきます。

 小泉首相が、参議院選挙中並びに日韓首脳会談後の記者会見でも、二度、一年以内の国交正常化ということに触れたのを、私は大変遺憾に思っております。一年以内に国交正常化ということは、すなわち拉致事件の問題の解決、これを放棄したも等しい発言ではないかというふうに思うわけでございます。もちろん、十名の行方不明あるいは死亡とされた方の確認、これをしっかりやっていく、これが今政府が最大力を上げていくところとは聞いておりますが、あわせて四百名に上る特定失踪者、この問題がもうほとんど幕引きという宣言にも似たもの、これが首相の一年以内の国交正常化発言ではないかと認識するからでございます。

 きょうは、お手元の方にも資料を配付させていただいておりますが、これは、この委員会で要望をし、そして理事会の方に外務省から出していただいた、そしてきょうは委員会の方にまた配らせていただいております百五十項目の概要についてでございます。

 このことも見ていただきますと、この二年間に、北朝鮮側に対して、いわゆる特定失踪者問題について日本側からきちっとそのことの調査なり指摘なりどれだけやってきたのか。少なくともこの百五十項目の中にはそれが触れられていないということでございますが、この二年間の取り組み、特定失踪者問題について、北朝鮮側への投げかけ、指摘、調査依頼、これがされているのかどうか、されているとすれば何を指摘したのか、お答えをいただきたいと思います。

薮中政府参考人 お答え申し上げます。

 まさに、この二年間という御指摘でございますけれども、この百五十項目を中心に、今までまさに拉致問題として認定された、そして先方も拉致問題として認めて謝罪をした事案についての全面的な解決ということをまず優先してまいったのは、委員御承知のとおりでございます。

 そして、その中には、まだ十名の安否不明の方々の調査というのが、これから大きな問題として、課題としてございます。これについて、全力を挙げて徹底した調査、それを我々としても、調査結果をきちんと得たいと思っておりますし、そのための北朝鮮への働きかけをしていくということでございます。

 そしてまた、特定失踪者の問題でございますけれども、この問題につきましても、北朝鮮側に対し日本側においていろいろと作業が行われている。そして、これが拉致被害者と認定されたときには、当然今までの拉致被害者と同様の真相究明を求めるんだということで先方に話をし、また具体的にいろいろのケースにつきましては、国内官庁、特に警察と協力をしながら、外務省としても外国でのさまざまの情報収集等々も行って、そしてこの解明に努力してきているところでございます。

武正委員 外務大臣、これは百五十項目の内容でございますが、いわゆる拉致被害者以外の件については調査依頼をしていない、こういう書類になるわけなんですけれども、この二年間は、そうした、被害者として認定されていないけれども特定失踪者とされた方々について、北朝鮮に対して調査依頼や指摘、こうしたことをしてきているんでしょうか。お答えをいただきたいと思います。外務大臣、お願いします。

 私は、政府委員は参考委員として後ろに控えていただきたいとは言いましたけれども、質疑はすべて政治家にお願いしております。

川口国務大臣 事実関係についての御質問ですので、参考人からお答えをさせます。

薮中政府参考人 お答え申し上げます。

 今申し上げましたように、まさに特定失踪者のケースにつきましても、日本側できちんとした調査が行われ、これが拉致被害者であると認定された場合には、当然北朝鮮側に対してそのおのおののケースについての真相究明を求めるということは繰り返し話をしてきております。

 そしてまた、この百五十項目というのは、まさに委員御承知のとおり、向こう側から出てきた拉致問題についての報告書、これにさまざまの矛盾があった、そのときに我々として持っている情報をまとめて、それで先方に突きつけた、そういう経緯でございます。

武正委員 質問したことにちっとも答えてくれないので。事実関係どうたらこうたらではないですよ。

 外務大臣、つまり、この二年間に、被害者以外の件については北朝鮮側に投げかけていないんですね。外務大臣としてお答えをいただきたいと思うんですね。

川口国務大臣 認定をされているかどうか。されたということで、これは北朝鮮に対して再開の調査をする対象としていろいろなことを今までも言ってきている、調査の対象として言ってきているということでございます。全くそれ以外のことについて一言も言っていないかどうかということについては私ははっきり記憶をいたしておりませんけれども、それ以外のことについては全く言わないということで厳しく考えているということでもないですけれども、ただ、この認定をされた人、これについて北朝鮮側が調査をしてくるということがまず非常に重要なことであるというふうに認識をいたしております。

武正委員 全く触れていないことはない、一言も言っていないことはないということですけれども、百五十項目の中にはお一人も触れられていない、これが事実でございます。

 それでは、昨年十月、クアラルンプールで、田中実さん、小住健蔵さん、松本京子さんの拉致確認をしたのかどうか、これは、事実ということで、お答えいただけますか。

薮中政府参考人 お答え申し上げます、というか、クアラルンプールというのはあれでございますか、確認でございますけれども、申しわけございません、日朝間での話し合いの場というか、日朝の国交正常化の協議ということ、一昨年に行ったものでございますか。(武正委員「はい」と呼ぶ)

 この件につきましては、一昨年の日朝国交正常化交渉が、協議が再開いたしました折に、さまざまな問題について取り上げました。そうした中で、具体的な拉致案件についてはもちろん具体的に相手に解明を求めておりますし、その他我々が持っている幾つかの新しい情報についても先方にただしているということはございます。

 そしてまた、先ほどの御質問でございますけれども、特定失踪者について、いろいろの日朝の協議の場で、この問題についても、これがある、問題があるということは指摘しておりますし、御承知のとおり、先般の日朝首脳会談においてもこの問題を取り上げ、これが拉致被害者として日本側で認定が行われたら当然拉致問題としてその真相究明を求めるということを先方に伝えてございます。

武正委員 それでは、月曜、火曜と報道が、きょうもされております。また、同僚委員からも質問がありました、脱北者が藤田進さんとそっくりな写真を持ってきた件、ピョンヤンの工作員養成機関で日本語教官をしていたと聞いたという証言、これについて、八月二日には、内閣官房拉致被害者・家族支援室に、特定失踪者問題調査会、荒木和博代表が、拉致濃厚とした三十二人を拉致被害者として認定するよう、この中にも藤田進さんが含まれているということでありますが、この藤田進さんの拉致被害者としての認定、これについて、内閣官房副長官、どのようにお取り組みをされますでしょうか。

杉浦内閣官房副長官 仰せのとおり、二日、特定失踪者問題調査会ほか二団体から、藤田進さんを含む特定失踪者の認定等を求める御要請が内閣官房に対してございました。

 私どもとしては、調査会から提供された資料、藤田さんの場合は生存しておられる可能性が高いという資料でございますので、これは重要な参考資料として受けとめております。直ちに、警察庁、海上保安庁、公安調査庁を初めとする捜査、調査機関及び外務省に対して連絡を行ったところでございます。

 今後引き続き、関係機関による捜査、調査、御要請のあった方々については今までも行われておりましたし、今後も行われるものと承知しておりますけれども、その結果、北朝鮮当局による拉致行為があったことを確認するに足る情報が集約、整理された場合には、その情報を踏まえまして、北朝鮮当局によって拉致された被害者等の支援に関する法律第二条の規定に基づきまして、内閣総理大臣が、関係行政機関の長と協議の上、拉致被害者に該当すると判断された場合には、政府としての認定を行うことになります。

武正委員 警察庁もお見えですけれども、この藤田進さんの拉致被害者としての認定について、警察庁としてどのように取り組まれるのか、お答えいただけますでしょうか。

瀬川政府参考人 お答えいたします。

 御指摘の藤田進さんにつきましては、警察として、これは事案の真相解明に向けて努力してまいりたいというふうに思います。こういった、北朝鮮へ拉致されたのではないかということで届け出をいただいたり、あるいは告発をいただいたりしておられる方、大勢ございますけれども、いずれにつきましても、警察といたしましては、当時の関係者の事情聴取あるいは国内外の関係機関との情報交換等々、鋭意調査、捜査に努めているところでございます。

 特に、本件の場合につきましては、北朝鮮を脱出した男性が所持していたとされる写真、この入手経路ということが非常に重要なポイントだろうというふうに考えておりまして、そういった点を含めまして、真相解明に向けまして鋭意解明に努めてまいりたいというふうに考えております。

武正委員 外務大臣、これまでも、被害者が特定されれば、認定されれば、しっかりとそれは日朝間の交渉で上げていくんだということを言ってこられましたけれども、この藤田進さんについて、拉致被害者の認定ということが、さまざま政府の取り組みで、これが近づいてくる、そういったことが今それぞれの関係機関から言われているわけですけれども、外務省として、この藤田進さんの拉致被害者認定について、引き続き、これまでも一言ぐらいは取り上げた特定失踪者のお一人ではありますが、来週にも日朝実務者協議もありますし、六者協議も控えている。さまざまな外務省と北朝鮮側のやりとりも、首相の第二回目の訪朝以来、電話協議も続いている。

 この中で、この藤田進さんの問題をここでも取り上げている、伝えているという、そういった話もあるんですが、もう伝えているんでしょうか。あるいは、伝えていなかったとすれば、しっかりとそれを取り上げて伝えて、この拉致被害者としての認定に外務省として全力を挙げる、そういったことを、御決意もあわせて外務大臣にお答えをいただきたいと思います。

川口国務大臣 今、再開した調査、これに北朝鮮側は取り組んでいるということでございますけれども、藤田進さんの件について今警察庁からお話ございましたけれども、認定をされるということであれば、当然のことながら、これは、再開をされた調査の中で一人加えて、藤田さんも対象にして取り組むように北朝鮮側に対して言っていくということでございます。

武正委員 認定されたであればではなくて、外務省が率先して、この事実解明を果たしていくために北朝鮮に対して調査をしっかりと申し入れていく。残念ながら、警察庁が主導して認定したのは、いわゆる宇出津事件の久米さんお一人というような指摘もあるんですね。そこまで言ったら言い過ぎかもしれませんが、つまり、いろいろマスコミや、あるいは関係機関、関係者が大変な努力をされて、これまで十五名の被害者の認定がされてきた経緯もありますので、私は、ここでやはり外務省が率先をして認定のために全力を挙げて取り組む、そういう決意をお聞かせいただきたいと思います。

川口国務大臣 外務省としても、認定のために、認定の調査がはかどっていくようにするために、可能な資料を集める等の努力もいたしております。例えば、関係国において情報を集めるというような努力もいたしてきております。我が国として、あるいは外務省といたしまして、こういったまだ認定をされていない人たちで実際に拉致をされた可能性というのはあるわけでございますから、そういった観点から引き続き最大限の努力をしていきたいと思っています。

武正委員 それでは、官房副長官、お忙しいところおいでいただいているようでありますが、五月二十六日、決算行政監視委員会、官房長官発言、例の米二十五万トン、日テレ報道に対しての指摘でありますが、「振り返ってみますと、」そういった米二十五万トンということが日朝間の協議で事前に「あった面もあることだけは申し上げておきたいと思います。」こういった発言が決算行政監視委員会でありました。

 私は、やはり官房長官にこの場においでいただきたいということもこの委員会で申し上げたんですが、なかなか国会のルール等では難しいということでございますけれども、ここで、官房副長官お見えいただいておりますので、官房長官のこの発言は、やはり事前に日朝間の協議で米二十五万トンを日本が供与する、そういった話し合いがあったということで理解してよろしいんでしょうか。

杉浦内閣官房副長官 御指摘の細田官房長官の答弁を議事録によって確認いたしましたが、それを拝読いたしますと、長官は、日本テレビの報道について、首脳会談の発表の中身が結果的にはそのとおりでない面もあった、また片っ方でちょうちょうはっしと協議を行っているときに実は決まったかのごとき報道がなされることは、結果として交渉に支障や影響を与えることにもなりかねない、差し控えていただきたいという趣旨で述べられているように議事録を見て思いました。

 二十五万トンという数字は、結果として、日朝首脳会談に際して総理が表明した対北朝鮮食糧支援、人道支援の数量と一致しておりますけれども、日本テレビの当時の報道では、米で支援を行う、金額にしておよそ十一億円といった点について報道されたと記憶しておりますが、日朝首脳会談でそのようなことが決められたという事実はございません。したがって、報道全体で見るとそのとおりでない面もあったということだと思います。

 いずれにしても、まだ政府として決定していない、しかも、結果として決定した事実と異なる内容について、あたかも既に決まったかのように報道することは交渉に差しさわるので差し控えていただきたいというのが官房長官の趣旨であったと承知いたしております。

武正委員 いや、私が聞いているのは、二十五万トンということが、実際、事前の協議であったというようなことを、「振り返ってみますと、あった面もあることだけは申し上げておきたいと思います。」という答弁でしたから、その事実確認をしたんですが、ちょっとお答えいただけなかったのは大変残念であります。

 私は、やはり官房長官にこの場においでいただかないと真相はわからないということでございますので、官房長官の当委員会への出席をお願いしたいと思います。

米澤委員長 引き続き理事会で協議しましょう。

武正委員 では、官房副長官、どうぞお帰りいただいて結構でございます。

 ちょっと先ほどの話に戻りますが、私は、国交正常化一年以内にという首相の発言は到底容認できない。十名の行方不明、死亡の調査の結果も出ない、まだ出ていないわけですね。もう来週には、きょう閣議決定するんですか、閣議了解ですか、五十二億円の対北朝鮮食糧医療支援を閣議了解、閣議決定するんですよね。先にこちらから、支援します、支援します、その十名の情報をくださいよと。本当にカードがなくなってしまうという指摘もあるぐらい。ましてや今、藤田進さんのこの件も出てきました。四百名に及ぶ特定失踪者問題を幕引きしかねない。私は、一年以内の国交正常化発言、断じてこれは容認ができないというふうに思うんですが、外務大臣の御所見はいかがでしょうか、首相発言に対して。

川口国務大臣 総理がおっしゃられたことは、日朝平壌宣言にのっとっていけばということをおっしゃっていらっしゃるわけでございます。私は、その日朝平壌宣言にのっとって北朝鮮が行動をとることの重要性、これを総理として御指摘なさっていらっしゃるというふうに思います。

武正委員 その日朝平壌宣言がこれまで過去二年のうちにやはりほごにされてきた、こういった指摘がされてきている中であえて首相が二度連続訪朝した、こういったことの大変不正常な状況の中で今日朝間の協議が行われている。その中での一年以内の国交正常化ということは断じて容認できない、このことを重ねて申し上げたいと思います。

 米軍のトランスフォーメーションについてですが、昨年十一月、ことし二月あるいは五月、七月と新聞で報道されておりますが、既に首相は、提案はなかった、協議はあると。先ほど外務大臣からもフリーディスカッションという段階というような発言があったんですが、日本と米国の間のミニSSCと呼ばれる非公式協議、審議官級協議の日程、そして出席者、名前、内容、これを簡単に、昨年十一月、ことし二月、そして七月、まあ五月はちょっと省きますが、お答えをいただけますでしょうか。外務大臣、いかがでしょうか。

海老原政府参考人 お答えさせていただきます。

 今委員がおっしゃいました協議でございますけれども、一昨年のいわゆる2プラス2におきまして、米軍の世界的な再編、これに伴います日米間の安全保障問題についての協議というものもこれを強化していくという合意がなされたわけでございます。そこでは兵力構成等につきまして協議を行うということが書かれているわけでございまして、これを受けまして、日米間の外務、防衛当局間でさまざまなレベルにおきまして米側との協議を行ってまいりました。

 この協議すべてについてその日程等を申し上げるということは差し控えたいと思いますけれども、主なところを申させていただければ、昨年の十一月に、日米の外務、防衛の当局間、これは事務レベルでございますけれども、協議を行いました。また、ことしの一月には、私が米国に行きました際に、ロドマン国防次官補、これは私のいわばカウンターパートになるわけでございますが、国防次官補との間で協議を行いました。また、本年の二月には、当時の長嶺北米局参事官、山内防衛庁防衛局次長、それから先方はローレス国防次官補代理、ラフルーア国務省特使との間で協議を行いました。また、本年の七月の、これは十五から十七日でございますけれども、同じく当方からは長嶺、山内、それから先方からはローレス国防、これはタイトルが変わりまして副次官になっております。それから、国務省の方からはリビア日本部長との間で協議を行ってきております。

武正委員 これまで国会でこの種の質問をしても、具体的な日時、人名すら、これまで約半年間、通常国会で報告がなかったわけでございます。

 外務大臣にあっては、三月に予算委員会、二月十七日、今言われたラフルーア東アジア太平洋特使、ローレス米国防副次官補、日本側は長嶺さんと山内さん。アメリカがだれですかと、承知していない、調べたい、こういった発言が出る始末でございます。

 これは、米韓あるいは米豪でもこうしたトランスフォーメーションの一環の協議が行われている中で、韓国の場合は、その都度韓国側の代表である車栄九国防部政策室長が毎回記者会見をする、これとえらい、日本外務省のいわゆる説明責任を果たさない対応、これがこのトランスフォーメーションについて半年間、あるいはもっと、言ってしまえば一昨年からでありますが、続いてまいりました。

 話に聞くと、十一月、米大統領選の前にまとめたいとか、そういった、大変おしりがもう差し迫っているような、そういった報道もあるんですね。これが新聞に盛んに報道されるものですから、我々も国会に籍を置き、外務委員会に籍を置く者として、このことはやはり説明責任を政府には果たしてほしい。それが、日米安全保障条約、そしてその体制の維持にも大変健全な役割を果たすのではないか。こうして隠そう隠そうということは、かえってさまざまな危惧を生じかねない、招きかねないというふうに考えるわけでございます。

 外務大臣は、共同通信配信、七月二十七日、正式提案でなく事務レベルでフリーディスカッションをしている段階というような記者会見をされました。一方、二十三日、自民党の部会に出席したときは、大変御迷惑をおかけした、非公式な議論の中で米側から具体的なアイデアは出ているというふうに、これは新聞報道ですが言っておりますので、正式な提案ではない。

 こういったことで終始しているんですが、外務大臣、いかがなのでしょうか、この米軍のトランスフォーメーションは我が国の安全保障にとっても大変重要な影響を与えることなんですけれども、この点について、やはり真摯に国会にあるいは国民に説明責任を果たしていくことが求められているのではないでしょうか。御所見を伺いたいと思います。

川口国務大臣 トランスフォーメーションは、御案内のように、変化をしていく国際的な安全保障環境の中で、米軍がどのようにそれに適切に対応していくかという観点から行われていると考えられているわけでございますけれども、委員御指摘のように、我が国にとっては、これは我が国の安全保障に対してどのような変化を生じ得るか、あるいは生じないようにできるかという意味で重要な問題であるわけです。

 我が国が一貫して言ってきておりますことは、米軍の持っている抑止、これが維持されるということが重要であるということを言っております。それからもう一つ、沖縄などいわゆる基地、施設・区域がある地域というのが我が国の中にあるわけですけれども、そういった地元の住民の方々の御負担、これを軽減していくことが大事だ、この二点から、米軍との間で、先ほど来申し上げておりますようなフリーディスカッションということを行ってきているということでございます。

 御案内のような、おっしゃったような、政府としての説明責任、これは常にこのことも含め重要であると私は思っております。このトランスフォーメーションについては、先ほど来申し上げましたように、具体的に提案が米軍から出ているわけではないということでございますから、今まさにフリーな形で、いろいろなアイデアといいますか議論といいますか、協議をしているということでございます。

武正委員 こうしたことで国会を乗り切ろうというか答弁をし続けるというのは、大変日本あるいは日米関係にとっても不幸なことであるというふうに指摘をしたいと思います。

 きょうは防衛庁からも浜田防衛庁副長官がお見えでございます。お待たせをいたしました。航空自衛隊の統合ということで、このトランスフォーメーションの中で航空自衛隊の統合についても議論が出ている、こういった報道があるんですが、このことについて、こうした事実はあるのか、あるいは防衛庁としてどのように認識をされているのか、お答えいただけますか。

浜田副長官 多分、府中の基地の関係のお話だと思います、横田への移転ということだと思うんですが、我々も今、防衛庁・自衛隊として防衛力のあり方の検討も行っておりますし、各自衛隊の将来の体制とか、当然のごとくこれは将来の日米協力の方向についても検討を行っているところでありますが、御指摘の報道にあるような、航空自衛隊航空総隊司令部を横田基地へ移転するといったような内容に関しては、全く我々は議論しておりません。ましてや、計画もしておらないところであります。

武正委員 議論していない、計画していないではなくて、米軍からそういった投げかけはあるのかということをお聞きしたんですが。

浜田副長官 それはございません。

武正委員 こうしたさまざまな新聞報道が次々に出ている。これは一切ないんだ、具体的な提案はないんだということで政府が突っ張っていると言ったら怒られますが、そういったことなんですが、やはり、米軍あるいは米国政府、特にラムズフェルド国防長官の構想、こういったものが着々と進んでいる、これに対して大変危惧を覚える一方、それに対しての日本側の考え方、これが見えないということが大変残念であります。

 さて、最後になりますが、東海の記載について、これはもう六月に、在韓、在タイ日本大使館の文化広報部長あるいは大使厳重訓戒処分が行われましたが、これは、いわゆる内規処分ということで公表もされていないといったことになりました。

 きょうは人事院もお見えでありますので、こうした外務省とか各省庁のガイドライン、内規ということでやってしまうことが果たしてどうなのかということが私自身思うわけでありますが、こういったものを公開する必要があるのではないかということを人事院にお伺いするとともに、外務大臣、最後に、またいわゆる処分ということでありますけれども、先ほども野上前外務次官の大使就任という報道もありましたが、私は、もともと今回の内規での処分も、あるいは懲戒処分も、国家公務員法に規定されておりますように、任命権者に対してそうしたものが与えられている。内規も、外務省でつくって、それも公開もしないで任命権者がその処分をする。任命権者に対してかなり強い権限が与えられているわけです。その任命権者が更迭をした野上さんがここでまた大使に復権というか、するというのはやはりおかしい、今の国家公務員法なりの解釈からしてもおかしいというふうに思うわけであります。

 まず、人事院に、内規はやはり公開すべきではないのかということ、あるいは人事院がそれを把握すべきではないかということと、外務大臣には、こうした中で、任命権者が下した処分、それがひっくり返るということは、やはり国家公務員法の懲戒処分、あるいは内規での処分ということから見てもおかしいのではないか、以上二点、続けてお伺いしたいと思います。

関戸政府参考人 お答えいたします。

 訓告、訓戒とか厳重注意というような形で各府省で内規に基づく措置がとられております。これは、国家公務員法の懲戒処分に当たらないということで、公務部内において監督の地位にある人が、部下職員の義務違反等に対しまして、指導監督上の措置として、その責任を確認して将来を戒めるために行われているものというふうに理解をしております。

 したがって、公開すべきではないか、オープンにすべきではないかというような話もございましたけれども、これは内規を決めている各府省において判断をされるべきものというふうに考えております。

川口国務大臣 先ほど別な委員に申し上げましたけれども、個別人事の問題については、これは任命権者の責任で行うということでございまして、その前に公の場でそれについてコメントをしないという方針を持っております。

 したがって、この件について、それを、大使になるであろうということを前提にの御質問でございますので、これについてはコメントを差し控えさせていただきたいというふうに考えております。

武正委員 先ほどの東海の記載ですけれども、結局、内規での処分でありました。これまで三年間の外務省の懲戒処分で、公金とあとロシアの問題、プライバシー、プライベートなもの以外では、瀋陽の総領事館事件、あれで減給一カ月というものがあった以外は、すべて公金の横領と、そしていわゆる四島支援のみでございまして、私は、この東海という記載をしたことが、そこにも懲戒処分にものってこない、ほとんどお金についてということも含めておかしいと思いますし、そうした点もまたこれからも指摘をしていきたいと思います。

 以上で終わります。ありがとうございました。

米澤委員長 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢でございます。私も冒頭、在日米軍基地の再編問題について聞いていきます。

 これまでの答弁からしても、全く内容が明らかにならないわけですが、アメリカ政府は、在沖海兵隊の一部移転の問題や、あるいは取りざたされておりました厚木基地のNLPの移転など、これまでの提示、まあ、提案ではない、アイデアだというお話ですが、これらについて白紙化を日本政府に伝達してきたという報道があります。白紙化の理由として、アメリカ側は、移転先自治体の強い反発のほか、日本政府の基本姿勢が定まっていないということを挙げております。

 まず、報道の確認になりますが、アメリカがこれまで日米間のさまざまな段階で出されてきたいろいろなアイデア、これについて白紙化を日本政府に伝達してきたのですか。

海老原政府参考人 米軍の再編問題につきましては、先ほども御答弁申し上げましたけれども、さまざまなレベルで日米両政府間で協議は行ってきているわけでございます。

 しかしながら、今、赤嶺委員がおっしゃいましたような具体的な提案というものが、米国政府からその間において出されたという事実は一切ございません。したがいまして、その提案の白紙化というようなことも、その事実は一切ございません。

赤嶺委員 提案がなかったというのは、これまでのいろいろな皆さんの答弁でも聞いているわけですが、いろいろなアイデアが出された、そういうことはおっしゃっているわけですね。そういうアイデアまで含めて白紙化という伝達があったのかということなんです。

海老原政府参考人 先ほども外務大臣からお答え申し上げたわけでございますけれども、この安全保障問題についての協議というのは、非常に自由な意見交換を行ってきております。そういう中で最も適切な米軍の軍事体制、日本におけるその兵力構成というものはどういうものなのかということが導き出されてくるという考えに基づいているわけでございます。

 その議論を自由に行う中でいろいろなアイデアといいますか、考え方、それは個人的なものも含めて相当自由に意見交換をしているわけでございますけれども、このような考え方あるいはアイデアというようなものは、今申し上げましたような性格からして、そもそも何らかの時点で白紙化する、あるいは取り下げるというような性格のものではないということを御理解いただきたいと思います。

赤嶺委員 あなた方政府はそれでいいかもしれません。しかし、いろいろ漏れ聞こえてくる問題で基地所在自治体が本当に不安を募らせている、これが現実であります。

 そこで、アメリカの方は、年末の2プラス2までにはこの問題について決着をつけたいとか、あるいは八月下旬か九月上旬にかけて再びもう一度日米間の政府の協議の場を設けたいとか、いろいろな報道があります。政府としては、どんな段階でいつごろ国民の前にそういう交渉の内容を必要な範囲で報告するおつもりなのか、一切情報公開はしないで進んでいくつもりなのか、この辺について答弁していただけますか。

    〔委員長退席、増子委員長代理着席〕

海老原政府参考人 まず、いつごろまでにその結論が出るのかという御質問でございますけれども、これは、いついつごろまでにというようなめども含めて、見通しが立っているということはございません。したがいまして、国民に対する説明というか説明責任ということの見通しについても、確固たることは申し上げられないわけでございますけれども、説明責任の必要性ということについては、先ほども外務大臣が御答弁されましたように、我々も強く認識を持っておりまして、それは、例えば、個々の施設・区域について何らかの変更を加えるというようなもし結論になった場合には、当然その地元の皆様の御理解がなくしてこれを実行するということはできないわけでございますので、そういう面も含めまして、しかるべきときに説明責任は当然果たすべきであるというのは、先ほど外務大臣が答弁されたとおりでございます。

赤嶺委員 日米関係、とりわけ在日米軍基地の問題というのは地元自治体の意向もよく聞いてというのは皆さんの決まり文句ですが、沖縄でも頭越しには絶対に基地の負担は押しつけないんだと言いながら、今日までずっと押しつけ続けられている、その押しつけはいきなり持ち込まれてくる、こういう経験に立って、情報公開の必要性、国民に対する説明責任というものを強く求めていくものです。

 アメリカの側というのは、割とあけすけにこの問題を語っております。アメリカの議会で、六月二十三日のアメリカの下院軍事委員会でのダグラス・ファイス国防次官の発言ですが、今度の在日米軍基地の再編あるいはトランスフォーメーションに臨むアメリカ政府の基本的スタンスとして述べておりますが、その中にこういうくだりがあります。地球規模及び地球的規模の行動を可能にするために、日本と韓国にある施設、司令部を強化することを展望している。いわば司令部強化の機能を展望しているということを国防次官が現にアメリカの議会で述べているんですが、これについては政府はどのようにアメリカから話が持ち込まれ、そして政府としてはどういう協議を進めようとしているんでしょうか。

海老原政府参考人 今お尋ねの六月二十三日、下院軍事委員会のファイス国防次官の証言でございますけれども、これは、いろいろとファイス次官の考え方ということを相当自由に言っておられるものでございまして、例えば、タイミングなどにつきましても、米軍再編の一部として、米国に戻る部隊の大まかな規模について七月に議会に対して情報提供ができると思うというようなことも述べられているわけでございます。

 ただ、これは、この時点におきますファイス国防次官の考え方というものを割と自由に述べられたというふうに理解をいたしております。実際に、このとおりにも、今私が申し上げたようなとおりにもなっていないわけでございまして、今司令部の件について委員がおっしゃいましたけれども、そういうものにつきましても、ファイス次官の考えではあるのかもしれませんが、我々がそういう考え方を安全保障協議の中でアメリカ側の具体的な提案として受けたということがないというのは、これは従来から申し上げているとおりでございます。

赤嶺委員 ファイス国防次官の発言は、議会で行われていることはお認めになりましたけれども、それについても何の提案もないと言いますが、そういうことが言われる一方で、この間の報道では、米軍の座間基地への第一軍団司令部の移転だとか、あるいは横田基地へのグアムの空軍司令部統合の実現というような情報が流されているわけです。

 私は、一体いつまで国民に対して真実を知らせないで、しかし、アメリカの意図ばかりが駆けめぐっている、アメリカの情報ばかりが駆けめぐっている、それに対して政府の姿勢を示さないという態度は間違っているということも指摘しておきたいと思うんです。

 ところで、もう一つ、この問題にかかわって質問したいんですが、昨年の九月に横浜市の上瀬谷通信施設から三沢基地に第一哨戒偵察航空団が移転したということになっています。ところが、移転した第一哨戒偵察航空団が廃止をされて、今度は、三沢の方では、第七、第五艦隊哨戒偵察航空軍司令部として、海軍少将を司令官として新設されたという報道がありました。そういう、第一哨戒偵察航空団が上瀬谷通信基地から三沢基地に移転し、さらにそれが第七、第五艦隊哨戒偵察航空軍司令部として新設されたという経緯について説明をしていただけますか。

海老原政府参考人 そのような米軍の動きがあったということは記憶をいたしておりますけれども、突然の御質問ですので、ちょっと手元に資料がございませんので、これ以上の事実関係につきましては、外務省に帰りまして、調査の上、委員に御報告いたしたいと思います。

赤嶺委員 きちんと説明をしていただきたいと思います。

 特に、この第五艦隊、第七艦隊の守備範囲というのは湾岸地域であり、あるいは西太平洋からアフリカ東岸までのインド洋ということになっております。これが事実だということになれば、日本の領域防衛あるいは極東の平和と安全の維持という日米安保条約の枠を超えたそういう部隊が日本に配備をされて動き始めているという問題にもつながりますので、きちんとした説明を求めていきたいと思います。

 それで、次に辺野古の問題に移ります。

 名護市辺野古沖での米軍の普天間飛行場の代替施設建設に向けて、ボーリング地質調査に反対する住民らが辺野古の漁港前で座り込みを始めてからきょうで百七日が経過しております。文字どおり座り込みには地元の辺野古のおじい、おばあを先頭に県内外や国内外から延べ八千人以上が参加をしております。今週は国会前での座り込みも沖縄の皆さんが来て行っておりますが、国の内外に、あの辺野古の基地の代替施設が大きな世論となって、反対の世論となって広がっていると同時に、このボーリング調査に対する怒りも激しいものがあります。

 これを反映しまして、ことしの五月に県議選挙が沖縄であったわけですが、その県議選挙を目前に地元新聞社が行った世論調査では、このまま辺野古沖建設を進めていいという声は七%です。県議選挙の結果四十八人の県議が選ばれたわけですが、新しい基地建設に支持が十九人、反対、慎重は二十九人です。党派を超えて名護への新基地建設反対の世論が広がっております。

 ボーリング調査というのは、環境アセス法を厳守していないという問題があります。そして、既成事実を積み重ねて県民にその結果を押しつけるという政府の姿勢に対する怒りでもあります。やむにやまれぬ座り込みまでしてボーリング調査の中止を要求しているわけですが、これに対して政府はどのように対処していくおつもりですか。

河野政府参考人 お答えいたします。

 市街地に所在する普天間飛行場を早期に移設、返還するため、平成十一年の閣議決定に従い、沖縄県を初めとする地元地方公共団体と緊密に協議しつつ、引き続き代替施設の着実な建設に向けて全力で取り組んでいくことが重要であると考えております。

 ただいま先生がおっしゃいました現地技術調査の一環であるボーリング調査につきましては、代替施設の護岸構造の検討のために必要なものでありまして、速やかに調査を実施したいと考えておりますが、作業現場での座り込みがあり、調査を実施できないことは残念であります。

 当庁としましては、ボーリング調査についても、地域住民の生活環境及び自然環境に与える影響を最小限にとどめることが大切であるとの認識のもとで、環境省の助言などを踏まえた作業計画を作成し、さらには沖縄県から示された環境配慮事項につきましても真摯に検討し、必要な措置を講じた上で調査を行うこととしているものでありまして、本調査が円滑に整々と実施できることを願っております。

 これまで那覇防衛施設局におきましては、名護市当局とも協力しつつ、調査の具体的な内容、環境配慮方策等を盛り込んだ作業計画等につきまして、名護市議会議員、地元行政区等の方々に説明してきており、必要な手順を踏んでいると認識しておりますが、今後どのような対応が必要かについて、沖縄県名護市当局ともよく相談、打ち合わせをしながら検討してまいりたいと考えております。

赤嶺委員 整々と進めるわけにはいかないのがこのアセス法無視のボーリング調査であります。皆さんのこういう基本姿勢が改まらない限り、座り込みでの抗議等反対の運動は続くというぐあいに申し上げておきます。

 ことしに入って毎月のように、メディアを通して、いわば普天間基地の代替施設の名護への建設についてアメリカは見直す意向だという情報が伝えられております。なぜこういう報道が繰り返されるか。いわばSACO合意で普天間基地を移設させるというのは、去年の十一月が期限であったわけです。期限が過ぎたにもかかわらず全く見通しがない。そういう名護市への、辺野古への普天間基地の移設は、米軍は、アメリカ政府は見直してもいい、こういう発言が漏れ聞こえてくる。そして、毎月のように、メディアを通して、それが繰り返し繰り返し報道される。そういう報道について、政府は、全く根拠がないことだ、このように一蹴できるんでしょうか。外務大臣、いかがですか。

川口国務大臣 新聞に、報道にいろいろございますけれども、普天間飛行場を辺野古沖に移設、返還をするということにつきまして、この辺野古の代替施設案にかわる案、これについて米側から打診を受けている、そういう事実はございません。

赤嶺委員 本当に現地に行けばたちまちわかる話で、ひどいやり方で基地建設を進めようとしている。しかも、法律さえ遵守していないという問題が言えると思うんです。

 例えば、この間、方法書が出されました。そして、意見書が県民から寄せられました。この方法書に出されたものの中には、配備される航空機の種類が全く明らかになっていないんですね。

 方法書では、米軍の回転翼機と民航中型ジェット機というぐあいになっております。ところが、実際、普天間基地では、配備されているのは、回転翼機CH53大型ヘリコプター以外に、いわば固定翼機KC130、これはCH53ヘリコプターと一体のものです。それから、P3C対潜哨戒機や各種ジェット機、輸送機あるいはFA18ホーネットが日常的に普天間基地を使用しているんです。

 これが名護市に新しい基地ができたときに、本当に飛んでくる航空機というのは、使う航空機というのは米軍の回転翼機にとどまるのか、それとも現に今普天間で使っている別の航空機はもう使わないのか、これによっても環境影響評価が大分違うと思うんですよね。市民に与える騒音被害の程度も大分違う。そのことについて全く明らかにしないで、調べようともしないで、環境影響評価、これから行っていきます、こういう態度は余りにもひど過ぎると思うんです。もっと航空機についても、どういう戦闘機が来るのか、それはアメリカとの関係でどんな使用協定が結ばれているのか、こういうことについても、根拠ある航空機について提示をして、そして環境影響評価調査の方法書にも示していくということが必要じゃないかと思いますが、これはいかがですか。

河野政府参考人 お答えいたします。

 先般、縦覧を行いました方法書につきましては、関係法令、主務省令等の規定に沿って必要な事項を記載したものでございます。

 事業の内容につきましては、既に決定している事項はできる限り記載しておりますけれども、方法書が、環境影響評価の一連の手続の中で、地方公共団体や住民の意見を環境影響評価の方法に柔軟に取り入れるために、事業の早い段階で作成されるものであることから、現時点で確定しているお尋ねのような事項については記載していないところであります。

 さらに、航空機の具体的な機種の記載についてでございますけれども、主務省令におきましては、対象事業である飛行場の使用を予定する航空機の種類を記載することとされており、具体的な機種を記載することとはされておりません。今後、環境影響評価を進める過程におきまして、航空機の機種を具体的に設定した上で騒音等の評価を行うこととしております。

赤嶺委員 終わります。

増子委員長代理 次に、東門美津子君。

東門委員 社会民主党の東門です。

 いつものようにラストバッターです。よろしくお願いいたします。

 まず最初に、サンゴ礁シンポジウムについて、環境省政務官おいでだと思いますので、そこからお尋ねいたします。

 四年に一度、世界のサンゴ礁研究者らが一堂に会して開かれる第十回国際サンゴ礁シンポジウムが、去る六月二十八日から七月の二日まで、八十七カ国の国と地域から千四百人余の参加のもとで沖縄県で開催されました。

 シンポジウムでは、サンゴの白化現象や海水汚染などにより世界的に危機的状況にあるサンゴ礁の保全や管理などについて活発な議論が交わされました。そして、シンポジウムの最終日には、危機にある世界のサンゴ礁の保全と再生に関する沖縄宣言が採択され、サンゴ礁とこれに関する生態系は人類のかけがえのない財産であるとし、サンゴ礁の破壊の原因として埋め立てが明記されました。

 この国際サンゴ礁シンポジウムの開催並びに採択された宣言をどのように受けとめられ、危機的状況にある沖縄を初めとする日本近海のサンゴ礁保護に環境省はどのように取り組んでいかれるのかぜひお聞かせいただきたい。特にサンゴ礁保護に関する立場からの環境省の政務官のお考えをお聞かせください。

砂田大臣政務官 お答えいたします。

 第十回国際サンゴ礁シンポジウムは、六月の二十八日から七月の二日まで、沖縄県宜野湾市において開催をされたところでございます。先生のお話のように、約九十カ国、千四百名の参加を得たところでございます。

 その中では、およそ千四百件の研究、保全活動の発表により、関係者の間の活発な意見や情報の交換が行われ、期間中には一般市民向けの公開シンポジウムも行われました。沖縄のサンゴ礁の重要性について普及啓発が行われたところであります。

 さらに、閉会式においては、危機にある世界のサンゴ礁の保全と再生に関する沖縄宣言が全会一致で採択をされました。その宣言では、世界のサンゴ礁が危機にさらされているとの認識のもと、研究、モニタリングの推進や保全方策の具体化などを求め、幅広い関係者の連携と国際組織の活動推進の必要性を訴えているところでございます。

 私といたしましても、国際サンゴ礁シンポジウムのこうした成果を踏まえ、関係者と協力しながらサンゴ礁の保全と持続的な利用に向け一層努力をしてまいりたいと考えているところでございます。

東門委員 参加者の方々の中には実際に今埋め立てるためのボーリング調査を始めようとしている辺野古、そこに行かれて、実際に現場を視察なさった方々も数多くおられたようです、報道によりますと。その方々は口々に、この美しい海を埋め立てるということは絶対にあってはいけないことだと発言があった。

 砂田政務官もシンポジウムに参加されたということが報道されておりましたのできょうはおいで願ったのですが、きっと辺野古へおいでになっただろうと私は思っております。

 沖縄県民がこれほどまでに関心を持っているこの辺野古の埋め立てに関して、どういうところかということを環境省の担当者としてはきっとおいでになったことと思うんですけれども、サンゴ礁を破壊すると言われるこの埋め立て、そこに対する、そういうことがあっていいのかどうかということをぜひ率直な御意見をお伺いし、そこをごらんになってどういうふうに感じられたか、それで率直な御意見をお伺いしたい。

 といいますのも、辺野古の埋め立てによって死滅してしまうサンゴ礁、それは二度とよみがえってくることはないということは御存じだと思います。そういう意味でも、今シンポジウムの宣言にのっとって、やはりそのような対策をとっていきたいという御答弁もございました。そういうところから、政務官、ぜひ御意見をお聞かせいただきたいと思います。

砂田大臣政務官 お答え申し上げます。

 サンゴ礁に関しましては、私も、六月の二十八日―七月の二日まで沖縄で開催された第十回国際サンゴ礁シンポジウムに参加をいたしました。その保全と持続的な利用の重要性を深く認識したところでございます。

 普天間代替施設の建設に当たっては、平成十一年十二月に閣議決定された政府の方針に基づきまして、政府として、地域の住民生活及び自然環境に著しい影響を及ぼすことのないよう最大限の努力を払う必要があると思っている次第でございます。

 具体的には、今後、事業者である防衛施設庁により環境の影響評価が的確に行われ、御指摘のサンゴも含め、十分な環境配慮がなされることが大変重要なことであるというふうに考えている次第でございます。

 環境省としては、環境影響評価手続の中で審査を行うことに加え、代替の施設建設協議会に出席をし、そして環境保全の観点からの必要な助言を行うことによって環境保全に最大限の配慮を行うよう取り組んでいるところでございます。

東門委員 とても残念な、環境省の答弁としてはすごく落胆、失望ということしか言いようがないんですが、住民の生活と自然環境に著しい影響を及ぼさないように、それはもう確かに閣議決定の中に入っているのは私も知っております。しかし、住民の生活に著しい影響を及ぼす、自然環境に著しい影響を及ぼす。今申し上げました、埋め立てによってサンゴ礁は死滅してしまうんですよ、破壊されるんですよ。そういうことをしっかりとわかっておられる中で、あの座り込みもそうなんですよ。住民生活に著しい影響を与える、だから受け入れられないと言っているんです。

 そういう中で、本当に、政務官、政治家の方が、ただ環境省の書いた、御本人、実際足を運んで見てこられたと思うんです。シンポジウムも参加なさっているわけですよ。もっと踏み込んで、一人の政治家として、沖縄の現状をごらんになって、そして現地に足を運ばれて、あそこで座り込みをしておられるおじい、おばあたちの姿をごらんになって、あのちゅら海をごらんになってこれしか出てこないというのはとても残念なんですが、もう一度、原稿ではなくて、ぜひ政務官御本人の御答弁をお願いします。

砂田大臣政務官 自然の中における人間と自然の共生という中では、時には、自然の破壊とは言いませんけれども、うまく人間と自然が共生をしていくということは、人間の生きていくための重要な行為だというふうに考えております。そういう意味で、これは、自然と人間が、どうやって自然を崩さないで、そして人間がきっちり生きていくかということをやっていかなきゃならない、さように心得ている次第でございます。

東門委員 辺野古を埋め立てることが、そして戦争につながる軍事基地をそこにつくることが自然と人間の共生につながるというふうにお考えなのですか。イエスかノーだけで結構です。

砂田大臣政務官 人間と自然が互いに生きていくということは極めて重要なことであります。自然を破壊しないで、そして人間がきっちりと生きていく、そこのところを見きわめてこれからも行政に生かしていかなきゃならないと考えている次第でございます。

東門委員 これ以上お尋ねしても、多分、これ、何も出てこないと思いますが、自然と人間の共生、とても大事な視点だと私も思います。しかし、辺野古の埋め立ては、自然はしっかり破壊されますよというのがはっきりしている。うなずいておられるからきっと同意だと思います。人間の生活も破壊される。だから、辺野古の方々、多くの県民、あるいは本土からの応援者もああいうふうに座り込みをしておられる。そういうことがはっきりしている中で、いや、それをやっていくんだということはとても残念に思います。これが五十九年と長きにわたって沖縄にあれだけの基地を押しつけてきた政府のすることかなと思うと、とても残念です。やはり、SACOということはもう破綻している、であれば、見直すという方向に行かなければいけないと思いますが、その件は後ほどまた質問させていただきます。

 時間の都合上、一点だけ、防衛施設庁にもおいでいただいていますので、お尋ねいたします。

 基地従業員の労働条件についてですけれども、近年、在日米軍基地に勤務する日本人従業員と米軍の間で、労働条件、労務管理をめぐるトラブルが多発しております。済みません、政務官、もうよろしいです。ありがとうございました。

 去る五月には、嘉手納基地内の大型小売店舗で妊婦を含めた女性従業員二人が相次いで仕事中に倒れ、うち一人は半身麻痺の重体になるなどの異常な事態が起きています。トイレタイムもとれないとか有給休暇もとれないとか、とても厳しい労働条件、管理体制のもとでのこういう事件があったわけですが、全国で二万五千人の在日米軍基地の日本人従業員は、労務提供義務を負う日本政府が雇用主、米軍が使用者であり、本来ならば国内法令、労働三法の適用を受けるはずですが、日米地位協定に基づく基本労務契約では日本人従業員側が使用者である米軍と直接交渉ができず、トラブルの遠因にもなっています。

 地位協定十二条五項は、「賃金及び諸手当に関する条件その他の雇用及び労働の条件、労働者の保護のための条件並びに」ちょっと略しますけれども、「労働者の権利は、日本国の法令で定めるところによらなければならない。」と定めています。しかし、その前段に、「相互間で別段の合意をする場合を除く」としており、これを受けて日米間で締結した基本労務契約では、B側、防衛庁ですね、B側はA側、米軍との協議交渉及び事前の文書による合意なくしては、就業規則、雇用、作業条件を定め、または変更しないものとするとされています。

 つまり、雇用主である防衛施設庁長官は、米軍の同意なしには基地従業員の労働条件について一切決めることはできず、労働者保護のための法改正に基づいた改善措置も米軍の同意なしには実施できません。

 信じられないほどの米軍優位の地位協定と米側の強硬姿勢に手を打てない日本政府の弱腰の陰で日本人基地従業員が苦しんでいるこの現状について、労務費を負担する日本政府が雇用主として主体性を発揮し、改善していくことが求められています。きっと外務大臣も副大臣もその点には私は異論はないと思いますが、かねてから関係団体から求められている年次有給休暇の繰り越し制度の創設について、防衛施設庁の方から現在の進捗状況をお伺いしたい。

 二点目に、米軍の合意なくして労働条件が変更できないとする基本労務契約の改定に向けた協議を米側に働きかけていくつもりがあるのか、伺わせてください。

土屋政府参考人 お答えを申し上げます。

 まず、駐留軍従業員の年次有給休暇制度の繰り越しの問題についての現在の状況でございますが、先生御指摘のとおり、駐留軍等労働者の勤務条件は、日米間で締結されている労務提供契約により規定されております。そして、この年次休暇の繰り越しにつきましては、現在の労務提供契約におきましては、駐留軍等労働者が指定した日に休暇を使用することが米側の任務遂行の妨げとなるような場合において、米側監督者が駐留軍等労働者の同意を得て次の暦年に休暇日を変更するときに繰り越しができることとなっておりまして、それ以外の場合につきましては繰り越しができないこととなっております。

 この問題につきましては、年次有給休暇の繰り越しができるように労務提供契約を改正することにつきまして米側と協議を行っているところでありますが、現在、いまだ米側の理解を得るに至っておりません。当庁としましては、引き続き米側と協議を行い、同意を得るよう努力してまいりたいと考えております。

 それから二点目の、駐留軍等労働者の勤務条件について、米軍との合意がなければ契約を改正できないという点につきまして、米軍との合意なく改定できるよう米側に働きかける考えはないかという御趣旨の御質問でございますが、ただいま御説明しましたように、具体的な勤務条件というものは日米間で締結されている労務提供契約により規定されているわけでございます。そして、この特殊な雇用形態は、基本的に在日米軍の駐留以降とられているものでございます。

 先生御指摘のように、駐留軍等労働者を実際に使用しているのは米側でございまして、具体的な勤務条件等は労務提供契約に定められているということを踏まえれば、米側の同意を得て勤務条件等を変更することが必要であり、使用者である米側の理解を得ず勤務条件を変更することは、必ずしも適当ではないと考えております。

 いずれにしましても、駐留軍等労働者の勤務条件の改善につきましては、従来から米側と鋭意折衝して解決を図るという努力をしており、今後におきましても、このような考えのもと、駐留軍等労働者の勤務条件の改善に努力してまいりたいと考えております。

東門委員 余り長くて、ちょっとあちらこちら抜けちゃったんですけれども、私がお伺いしたのは、最初は繰り越し制度、わかりました。しかし、基本労務契約の改定に向けた協議をこちら側からアメリカ側に働きかけていくつもりはないのかとお伺いしたんですね。

 それは、基本労務契約なんですが、恐らく日米地位協定に戻ってくるのかなと思うんです。ということは、これは合同委員会の場での協議になるのかなと思うんですが、大臣、いかがでしょうか。日米地位協定、そこがやはりネックになっているもので、雇用主である国が何も言えない、そういう状況にあるということ。異常ですよね。

 ですから、二万五千人もの基地従業員の労働条件、そういう働く場の環境、あるいは労働状況、これはやはり日米地位協定との関係が大きいと思いますが、いかがですか。

川口国務大臣 地位協定との関係につきましては、北米局長から御説明をさせます。

海老原政府参考人 ただいま議論を聞いておりまして、基本的には、この問題はいわゆる基本労務契約の担当である防衛施設庁において対処する問題であるというふうに考えております。

東門委員 といいますと、日米地位協定には一切関係ないと。

 基本労務契約が締結されている、日本と米軍の間に。そうすると、それはやはり地位協定にのっとってのことですよね。地位協定を変えない限り、運用の改善とおっしゃるかもしれません、我々は抜本的見直しを要求しているんですが、この際、運用の改善という形でも、そこを変えていかなければ施設庁としてはタッチできない分野なのかなと思うんですが、局長、それは防衛施設庁と米軍の間でできることなんですか、地位協定は関係なく。私は十二条五項を持ち出したんですが、いかがですか。

海老原政府参考人 今申し上げましたように、地位協定の関係につきまして、ちょっと突然お聞きになられたので、私も全部を知っているわけではございませんけれども、今御質問になられたような話ということであれば、地位協定の改定というようなことがなくても、基本労務契約の運用ということで対応できる問題ではないかなということを感じております。

東門委員 ぜひその点については対応していただきたいと思います。

 最後に一点だけ。これまでいろいろ米軍再編との関連で質問がありました。内容については一切答えられない、あるいは一切提案もないという答弁がずっと相次いでいますが、一つだけ質問させてください。

 七月十五日から十七日までサンフランシスコで開催されたあの協議、あれは外務・防衛審議官級の協議があったわけですが、その位置づけ、どういう位置づけなのか。フリーディスカッションをする場で、どういうレベルの人が出ているかわからないんですが、政府としてはどういうふうに位置づけられているかというのをお聞かせ願いたいんです。本当にただ勝手に集まって、では、お話ししましょうという場ではないと思うんですね。そこにはやはりゴールがなければいけないではないですか。

 どういう位置づけの協議だったのか、その点をお伺いして、私の質問を終わります。

海老原政府参考人 これは、一昨年の2プラス2におきまして閣僚間での宣言、声明だったと思いますけれども、が出されておりまして、ここで、米軍の進めている世界的な米軍の再編に関連をいたしまして、日米間においても、例えば両国間における役割、任務の問題、あるいは兵力構成の問題、こういう問題にかかわる安全保障問題につきまして、両国間で協議を強化するということが合意されたわけでございます。

 これを受けまして、この閣僚間の合意を受けました形によりまして、いろいろなレベルで協議を行っている。先ほど御質問になられました七月のサンフランシスコにおける協議というものも、これは局の審議官レベルの協議でございますけれども、この協議もそのフォローアップの一環、閣僚の合意に基づく協議の一環という位置づけでございます。

東門委員 時間ですから、終わります。

増子委員長代理 次回は、明五日木曜日委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後一時十六分散会


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