衆議院

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第5号 平成16年11月18日(木曜日)

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平成十六年十一月十八日(木曜日)

    午前九時一分開議

 出席委員

   委員長 赤松 広隆君

   理事 谷本 龍哉君 理事 中谷  元君

   理事 原田 義昭君 理事 渡辺 博道君

   理事 大谷 信盛君 理事 首藤 信彦君

   理事 増子 輝彦君 理事 丸谷 佳織君

      宇野  治君    植竹 繁雄君

      小野寺五典君    河井 克行君

      高村 正彦君    鈴木 淳司君

      土屋 品子君    西銘恒三郎君

      平沢 勝栄君    三ッ矢憲生君

      宮下 一郎君    今野  東君

      近藤 昭一君    田島 一成君

      武正 公一君    中川 正春君

      鳩山由紀夫君    藤村  修君

      古本伸一郎君    松原  仁君

      赤羽 一嘉君    赤嶺 政賢君

      照屋 寛徳君

    …………………………………

   内閣官房副長官      杉浦 正健君

   外務副大臣        逢沢 一郎君

   外務大臣政務官      小野寺五典君

   外務大臣政務官      河井 克行君

   政府参考人

   (防衛施設庁建設部長)  河野 孝義君

   政府参考人

   (外務省アジア大洋州局長)            薮中三十二君

   政府参考人

   (外務省欧州局長)    小松 一郎君

   外務委員会専門員     原   聰君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月十八日

 辞任         補欠選任

  今野  東君     近藤 昭一君

  古本伸一郎君     中川 正春君

  東門美津子君     照屋 寛徳君

同日

 辞任         補欠選任

  近藤 昭一君     田島 一成君

  中川 正春君     古本伸一郎君

  照屋 寛徳君     東門美津子君

同日

 辞任         補欠選任

  田島 一成君     今野  東君

    ―――――――――――――

十一月十六日

 沖縄の新基地建設中止、基地の全面撤去に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第二四五号)

 同(石井郁子君紹介)(第二四六号)

 同(穀田恵二君紹介)(第二四七号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第二四八号)

 同(志位和夫君紹介)(第二四九号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第二五〇号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第二五一号)

 同(山口富男君紹介)(第二五二号)

 同(吉井英勝君紹介)(第二五三号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 国際情勢に関する件


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     ――――◇―――――

赤松委員長 これより会議を開きます。

 国際情勢に関する件について調査を進めます。

 この際、第三回日朝実務者協議について政府から説明を聴取いたします。外務副大臣逢沢一郎君。

逢沢副大臣 十一月九日から十四日まで平壌において行われた第三回日朝実務者協議について御報告いたします。

 日朝実務者協議は、これまで八月及び九月と過去二回行われてきました。五月の日朝首脳会談時に、金正日国防委員長は白紙に戻して安否不明の拉致被害者に関する再調査を実施することを約束したにもかかわらず、これまでの実務者協議における北朝鮮側の回答は極めて不十分なものでありました。

 そのため、今回の協議においては、その進め方にも工夫を凝らしました。我が方から、外務省のほか警察の専門家や拉致被害者・家族支援室職員の同行も得て平壌に赴き、北朝鮮側における調査委員会の責任者との間で集中的に協議を行いました。また、当初は十二日までの日程でありましたが、真相究明へ向けて協議等を徹底的に行うことが必要と判断し、十四日まで協議日程を延長いたしました。

 今回の協議においては、我が方から、拉致、核、ミサイル問題の解決なくして日朝国交正常化はないこと、安否不明の拉致被害者に関する真相究明が進まない場合、日本国内では北朝鮮に対して極めて厳しい状況になることを改めて指摘し、北朝鮮側の積極的な対応を求めました。これに対し、北朝鮮側も、金正日国防委員長が小泉総理に約束した再調査であるので、調査委員会としては全力を挙げてきた旨述べていました。

 協議には、北朝鮮側から、調査委員会の責任者である陳日宝人民保安省捜査担当局長が出席し、実務担当者とともに説明を行いました。協議の冒頭、陳局長から、安否不明の拉致被害者に関する再調査に際しての基本方針として、白紙から新たに調査を始め、具体的かつ徹底的な調査を行い、安否不明者おのおのに関する生死を確認することとしたこと、調査委員会は、政府から与えられた権限に基づき、特殊機関を含むすべての関連する中央機関、地方行政組織など関連団体に対し調査を実施した旨説明がありました。

 そして、北朝鮮側からは、このような再調査の結果、遺憾ながら安否不明者八名の方々は全員亡くなっており、残る二名の方々は北朝鮮への入境を確認できなかった旨の説明がありました。その後、北朝鮮側より、各事案について、北朝鮮内での生活状況、亡くなった際の詳しい状況、証人からの証言の概要、遺品などの物的証拠の有無について説明がありました。

 北朝鮮側の説明に対し、我が方からは、我が方が有する種々の情報を踏まえつつ、余りにも不自然な内容が多いとし、詳細に疑問点を突きつけ、さらなる説明を求めました。

 これに対し、北朝鮮側は、そもそも日本人拉致問題は相当時間の経過した事案であり、関係者が既に死亡したりしていること、また特殊機関の関与した事案であり、関係文書が当事者により焼却、処分されてしまっていることなど、調査を進める上での問題を説明しつつ、我が方の質問に対する追加的説明を行いました。また、我が方の求めに対し、証人との面会の設定や物的証拠の提出に同意しました。

 具体的には、横田めぐみさんの夫であったとされるキム・チョルジュン氏との面談も行いました。その際、先方から、結婚当時の家族写真が提示され、当時の生活状況等に関する説明がありました。このほか、各被害者の北朝鮮での生活状況や、亡くなったとされるときの状況について、医師や招待所の職員等計十四名の証人からの聴取を行いました。物的証拠としては、横田めぐみさんのものとされる遺骨、当時の交通事故調書、その他の関係資料が北朝鮮側より提供されました。

 拉致事案の責任者については、二年前の説明と同じチャン・ボンリム及びキム・ソンチョルの二名が処罰されたこと、さらに他の実行犯や関係者も降格や除隊などの措置がとられたことの説明があり、我が方の求めに対し、当時の裁判記録の写しが提供されました。

 我が方からは、よど号グループの拉致への明らかな関与を改めて指摘しました。さらには、これまでも身柄の引き渡しを求めている三名の拉致容疑者、すなわち原敕晁さんの拉致の容疑者である辛光洙、久米裕さんの拉致の容疑者である金世鎬、有本恵子さんの拉致の容疑者である魚本公博について、改めてその引き渡しを北朝鮮側に求めました。

 次に、いわゆる特定失踪者の問題について申し上げます。

 今回の協議では、これまで北朝鮮側に対し関連情報の提供を求めていた四名に加え、加瀬テル子さんの氏名にも言及した上で、北朝鮮側に対し、日本側からの指摘の有無にかかわらず、日本人拉致問題に関しさらなる情報がある場合には速やかに提供するよう重ねて申し入れました。これに対し、北朝鮮側からは、五名の方々について調査委員会として確認作業を行ったが、北朝鮮への入境は確認できなかったとの回答がありました。

 今回の協議における調査委員会とのやりとり、関係者との面会、現地視察等を含め、北朝鮮側との会合は合計五十時間近くに及ぶものでした。既に申し上げましたように、北朝鮮側は、証人との面会を設定し、また物的証拠を提示するなど、これまでの実務者協議と比べて異なった対応を示し、彼らなりの努力はうかがえました。

 しかしながら、北朝鮮側の説明には、依然、不自然な点、疑問点が数多く残されています。まずは、今次協議を通じて得られた情報、物証を政府を挙げて十分に精査していく必要があると考え、現在、その作業を鋭意進めているところでございます。

 拉致問題の解決に向け、委員各位の一層の御理解、御支持を今後ともよろしくお願い申し上げます。

赤松委員長 以上で説明は終わりました。

    ―――――――――――――

赤松委員長 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として外務省アジア大洋州局長薮中三十二君、外務省欧州局長小松一郎君、防衛施設庁建設部長河野孝義君の出席を求め、説明を聴取したいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

赤松委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

赤松委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。渡辺博道君。

渡辺(博)委員 おはようございます。自由民主党の渡辺博道でございます。

 きょうは、今、逢沢副大臣の報告のあった第三回日朝実務者協議に関する報告について、具体的にお伺いをしたいというふうに思います。

 その前に、この問題が発生してから大変時間がたっているということは、もう既に御案内であります。多くの人たちが安否の状態がいつまでもはっきりしない、こんな不安な状態を家族の皆さん方がいまだに持ち続けている、この状態を我々は真剣に受けとめていかなければならない、そのように思うわけであります。

 とりわけ、二〇〇二年の九月に総理が初めて訪朝し、その結果、この拉致の問題については国家的犯罪である、そして謝罪も相手方の金正日総書記からいただいたわけでありますけれども、そのときに彼が言っていたのは、五人生存、八名死亡、二人入境の証拠はないというような話でありまして、結果として、今回、第三回目の実務者協議の結果においてもまさに同じものの内容であったというのが私の素直な印象なんですね。

 ということは、北朝鮮という国を考えますと、当然のことながら金正日独裁国家である、彼が最初に言った言葉を翻すことができないんではないか、そのように思っているわけでありまして、この問題については白紙から再調査をするといっても、現実的には金正日が発言したあの内容を超えることはできなかったんではないか、できるすべがないんじゃないかというのが私の印象なんですね。

 そこで、私は、この今回の実務者協議、三回目でありまして、普通は、言葉で言いますと三度目の正直、いよいよ三回目であれば何らかの形でいい結論が、結果が得られるのかなという、一つの報告ですね。二度あることは三度あるということもあります。したがって、二度あったことも同じような状態で今の結果が出てきている、そんなことも言われるわけでありまして、この問題についてはしっかりとした政府の姿勢が必要ではないかということを私は思っております。

 そこで、具体的にお話を聞かせていただきたいわけでありますけれども、今回の第三回目日朝実務者協議に当たり、政府としてはどのような姿勢で臨まれた、その決意のほどはどうだったのか、それをまずお聞かせいただきたいと思います。

逢沢副大臣 渡辺先生御指摘のように、ことしの八月、九月、過去二回、日朝実務者協議を行ったわけでございますけれども、いわゆる安否不明者の方々に関する北朝鮮側からの説明、対応は全く不十分なものであったという事実がございます。

 今回、三回目に臨むに当たりましては、過去二回、北京で行いました実務者協議の結果、やりとりを踏まえ、平壌にこのたびは赴く。そして、外務省の省員だけではなくて、警察庁、支援室の職員とともに合同のチームで平壌に行く。

 そして、過去二回の経験、また当初の段階の百五十項目の調査票、調査項目を北朝鮮側に手渡していたわけでありますが、事前にこういったことについて十二分に調査をする、あるいは調べておいてほしい等々の情報も、またこちらの意向も外交ルートを通じて平壌側に伝えていた。

 いわば、そういった準備を行い、北朝鮮側の積極的な対応を促す、求める、そういった状況を整え、平壌に第三回目の協議に赴いたわけであります。

 当然、拉致の事案に対して、日本国内にあっては北朝鮮に対する非常に厳しい世論がある、国会の中も同様だ、そういった状況についても的確に北側には伝えていたわけであります。拉致問題の真相の究明、そして加えて核、ミサイル問題の解決、こういった問題が解決されない限り日朝関係は前進をしない。当然のことでありますが、そのことも北朝鮮側に伝えつつ、厳しい態度で今回の協議に臨んだわけであります。

渡辺(博)委員 そういった厳しい態度で臨んだということでありますが、結果としてはほとんど変わりがなかったということであります。

 ただ、若干の変化があるという話でありまして、物証についても、また証人についてもいろいろな形で手配をしたということでありますが、まず証人はどういった人に証人として実際に面談をしたのか、この内容について具体的にちょっとお話を聞かせていただきたいと思います。

薮中政府参考人 お答え申し上げます。

 証人ということで我々が面談いたしましたのは、横田めぐみさんの夫であったとされるキム・チョルジュン氏、そして横田めぐみさんが入院していたとされる平壌市郊外の病院の主治医、そして田口さん、原さんが生活していたとされる招待所の職員、石岡さん、有本さんが生活していたとされる招待所の職員、石岡さん、有本さんの事故があった場所とされる招待所の職員、松木さんが生活していたとされる招待所の職員、横田さん、原さんを診察したとされる歯医者、歯科医師、原さんを診察したとされる内科医、増元さんを検視したとされる内科医、そしてその病院の副院長、市川さんが訪れたとされる海水浴場の会計担当者、これはその現場を見ていたということでございますけれども、市川さんを検視したとされる医師、同じく市川さんの検視に立ち会ったとされる看護師、田口さんの事故現場とされる道路、これを目撃していた管理人の道路管理員、こうした人たちと面談をいたしました。

渡辺(博)委員 大変多くの方と面談したということでございますが、それぞれの個別に聞いたら時間が幾らあっても足らなくなってしまいますが、その中で、やはり私は、横田めぐみさんの御主人というふうに評されているキム・チョルジュンという人についてちょっとお伺いしたいと思います。

 この方は、当初は会社員であったというふうに言われておりましたけれども、今回の調査では諜報関係に従事しているというようなことが言われております。実際にこの方はどのような人物であったのか、まず最初に会ったときの印象とか、それから話した内容についてお話をしていただきたいと思います。

薮中政府参考人 お答え申し上げます。

 このキム・チョルジュン氏でございますけれども、本人の立場ということで、工作関係に携わっている人間であるということは、向こうの、我々がもともとこれを、面会、聞き取りを要求しましたときに調査委員会の方からも説明がございましたし、また本人からもそうした趣旨のことは話がございました。

 当初、ですから、割と短時間に限って、その立場もあるので、聞き取りをしてほしいということでございましたけれども、三十分と言われておりましたけれども、実際には一時間半まず行いました。冒頭、キム・ヘギョンさんも同席されました。これはごく短時間おられただけで退席されましたけれども、そうした中で、結婚当時の家族写真も提示し、そして結婚当時の生活、その後の横田めぐみさんの病状のような話等々を詳しく本人から聞き取ったわけでございます。割と淡々とした、あるいは時には感情を込めて、横田めぐみさんの思い出あるいは非常に苦しかったときの状況等々を言っておりました。

 なかなかに、我々今その話を、聞いてきた内容を精査しておりますし、そして今までの我々が持っている情報と突き合わせて、そのときも問いただしましたし、これからさらに精査をしてまいりたいというふうに考えております。

渡辺(博)委員 このキム・チョルジュンさんという方は、そういうことで工作関係に従事しているという話でありますけれども、この方が横田めぐみさんの遺骨を持っていたんですか。お願いします。

薮中政府参考人 お答え申し上げます。

 この方がまさに最終的には遺骨を持って、彼の発言によりますと、非常に大事にもちろん保管をしていたということでございまして、その方から、横田めぐみさんの御家族、御両親に最終的には渡してほしいということで受け取ったわけでございます。

渡辺(博)委員 一番最初の二〇〇二年のときには遺骨の場所がわからなかったという話でありましたけれども、その後、病院の裏山に埋葬された、二年六カ月たってそれを掘り起こして火葬した、そしてそれを持ってきたというような話でありますけれども、極めて不自然なことでありまして、日本の常識からいったらほとんど信じられないというふうに思うんですね。

 これについて、じゃ、薮中さんは、何らかの形の、相手に対して問い詰めたことはありますか。

薮中政府参考人 まさに我々も、どうしてそういう形で埋葬がされるかということについては、いろいろと問いただしました。

 その経過は今委員御指摘のとおりでございますけれども、まず最初に病院の裏にある裏山、そこに墓地がございまして、墓地といっても、我々は実際に調査団員全員でそこを視察いたしました。非常に広い場所でございまして、日本のお墓のようにまとまってあるということではございませんでしたけれども、そこの、実際にあったとされる墓地のところまで参りました。そこには石だけが残っていまして、その跡形というか、そこの下に土葬で埋めたんだという経緯。

 それから、今御指摘のとおり、キム・チョルジュン氏が二年余り後にそこへ、彼に問いただしましたら、毎回そこへ行くというのが、お墓を守るというのは非常に大変な作業で、確かに遠いところではございます。平壌から我々もそこへ行ったわけでございますけれども、そこできっちりと自分で、その御遺体を守るためには自分で管理する、そのためには火葬して移骨する、そういう説明はございました。

 我々はもちろん、警察の方々、そしてお医者さんもおられますし、いろいろ質問もいたしましたし、今回一番大事なことは、そこでこちらに渡りました遺骨とされるものについて完全な検証を行う、そして精査をするということであろうというふうに思っております。

渡辺(博)委員 横田めぐみさんに関しては、今言ったように、遺骨のほかにいろいろな物証があるというふうに聞いておりますけれども、その中で、カルテがあるというふうに聞いております。そのカルテの内容については、相当膨大なカルテだというふうに聞いておりますけれども、具体的にどの程度のカルテであり、それについては現在どのように把握しているのか。お願いします。

薮中政府参考人 このカルテは百九十枚以上にわたるカルテで、一つの病院にずっと横田めぐみさんが、先方の説明では通院するあるいは入院するということで、北朝鮮に拉致されて以降、割と初期の段階から九三年まででございましたけれども、そのときの記録がございました。

 これは今まさに我々の方で検証、鑑定作業を行っているわけでございますけれども、相当に詳しいものであったということでございます。

渡辺(博)委員 ちょっとしつこく聞きますけれども、九三年までのカルテですか。実際に亡くなられる、入院していたのが九四年の三月ごろから入院しているということになっていますよね。その後、自殺により死亡というふうになっておりますけれども、この九四年の方のカルテはありますか。

薮中政府参考人 このカルテ自身は、六九五病院ということで、そこのカルテでございます。そして、それは九三年の、たしか九月までの記録がございましたけれども、亡くなられたとされる、先方の説明によりますと、これは四九号予防院でございます。そこのカルテはございません。

渡辺(博)委員 やはりどうも疑問でしようがないんですよね。古い方があって、何で新しい方がないのかな。素朴なこれは疑問なんですけれども。

 そういった中で、このキム・チョルジュンさんが本当に横田めぐみさんの御主人であるかということの検証というのは大変重要だというふうに思うんですね。そのために何らかの措置をしたのか。報道によりますと、髪の毛をもらいたいけれども拒否されたとか、また写真を拒否されたとかいう話がありますけれども、何か特定できるようなそのほかの物品は徴取されておりますか。

薮中政府参考人 お答え申し上げます。

 我々もまさに、身元確認というか本人確認ということで、それが重要だというふうに考えておりました。

 それで、実際の話としては、一つは、やりとりの中で、先方の説明、そしてこちらが持っている情報もございます、それをベースに問いただすということもございました。そして、物理的な意味での本人確認ということで、今委員から御指摘ありました、例えば毛髪とかそういうことにつきましては、先方の方が、自分の立場上というか身元の問題ということで、その話が出たときに、それではこれを見てくれということで出したのが二枚の写真でございました。そのうちの一枚というのが、本人、このキム・チョルジュン氏と横田めぐみさんが、結婚直後だというふうに彼は説明しておりましたけれども、平壌市で写っている写真。もう一枚は、キム・ヘギョンさんの一歳の誕生日のお祝いの席だということで、三人で写っている写真でございました。

 また、もちろん、これが本当のものかどうかということはわかりません。ただ、そういう写真があって、その写真だけを見れば確かにその本人であり、かつ横田めぐみさんであるということが、その写真からはうかがえましたけれども、それが果たして真正なものであるかどうかということについては、これはわかりません。

 その他の方法ということで言いますと、我々も少しいろいろと工夫はしておりますけれども、事柄の性格上、それ以上、現在いろいろと精査中でございますので、立ち入ることは、言及は差し控えさせていただきたいというふうに思います。

渡辺(博)委員 何かすごく疑問を逆に抱いちゃうんですけれども、何かあるんですかね。私は、やはりこういった問題についてはきちんとした形で我々に説明をしていただきたいなというふうに思うんですね。これはとりもなおさず拉致被害者の皆様方、そして家族の皆様方がやはりふだん疑問に思っていること、こういったことを少しでも解決してあげるということが我々の役目でもあるわけであります。そういった中で、口を濁してその後が聞かれなかったんですけれども、それは言えないような内容なんですか。

薮中政府参考人 今申し上げましたのは、さらに本人を物理的に確定する方法があるかどうかということで、これはむしろ、私どもは素人でございまして、その道のプロもおられるわけですけれども、そうした中で、果たしてそれがとれたのかどうかを含めて、確認できる方法がとれたかどうかということで、今、作業、精査をしているところでございます。

渡辺(博)委員 横田めぐみさんに関しては物証もそしてまた証人もいろいろな形で出てきているんですが、その他の安否不明者については極めて簡単に、ほとんど前回と変わりのないようなことでありました。これの差は余りにも歴然だというふうに思うんですね。

 こういった対応に対して、政府としてはどのようにお感じになりましたか。

薮中政府参考人 我々は、当然、すべての案件について、ひとしくその真相解明を図る、究明をしていきたいということでございまして、実際のやりとりでは、事情を聴取する中では、調査委員会からの説明、そしてそれに対する我が方からの質問、そしてまた関係する証拠があればそれを出すように、そしてまた証人がいればその人との面会をするということで、おのおのの方について、もちろん人数的にもそれが可能であった人とそうでない人があるものでございますから、実際に今そこにどういう人間がいるかということで、例えば市川さんのケースでございますけれども、元山の海水浴場の話がございました。この不自然さを、不可解さを、九月に入ってから海水浴をするのかどうかということを含めて、かねてからこれは質問をしておりました。

 これに対して、実際にその日、九月四日に元山の海水浴場の気温は何度であったかとか、その場にいた人間ということで、その海水浴場の入り口でチェックをしていた出納の係員、これがいるということでございました。そしてまた、先方の説明による市川さんの、そのときの事故の直後、一キロぐらい離れたところにある病院に運び込まれたということでございまして、そのとき実際に診察したという医師、そこに立ち会っていたという看護師がいるということでございました。

 こうした人たちから具体的に話を我々も直接聞きたい、もちろん調査委員会からその方々から聞き取ったという内容の説明があったわけでございますけれども、我々の方からさまざまな疑問を投げかけたい、そしてまた直接やりとりをすることで少しは真実に迫れるのではないかということで要求いたしまして、元山から平壌にこの三人を呼んでくるということを要求しまして、それは実現したわけでございます。

 おのおの、この市川さんだけではございませんで、やりとりということでいいますと、四、五十分から一時間、おのおのの人について直接の聞き取りでもやっております。

 そういう意味で、残念ながら、本当の真実に迫れたかということになると、私どもも非常に不可解な点が多い。疑問点が残っております。ただ、そうしたやりとりを踏まえて、今までの聞き取りと我々の持っている情報、それを今精査するという作業をしているところでございます。

渡辺(博)委員 代表団の皆さん方は鋭意努力して、それぞれの安否不明者についても積極的に対応してきたというお話ではございますけれども、結果として、相手方が何にも出してきていない。本当に紙っぺらの、だれでも書けるような、配置図とかそんなものが出されたって、こんなのは何の意味もないんですよね。

 そういった中で、なぜそれではほかの人たちの物証というのはないのかなというと、要するに、工作機関というか特殊機関が関与したから、すべて文書については焼却したというようなお話ですよね。そういうことであるならば、当然、横田めぐみさんのことなんかは、まさに特殊機関が関与しているわけですよ、御主人が特殊機関、工作員ということであれば。こういったことが、片っ方ではきちんと残っていまして片っ方では何にもないというのは、余りにも不自然じゃないでしょうか。いかがでしょうか。

薮中政府参考人 まさに委員御指摘のとおり、我々も、ですから、最初の報告書でも私どもも言っております。非常に不自然なところが多い、疑問点が多く残っているというのは、もちろん我々自身も非常に感じているところでございます。

 そうした中で、あえて先方の説明、今委員御指摘のとおりですけれども、大半のケースにおいては、彼らは調べたと。特殊機関にまで入って中を調べたが、当時の担当者が関係書類を焼却していたようだ、したがって彼らから入手ができなかったんだ。そこで、調査委員会としては、次の方法としては、関連の人間がいるはずだということで、目撃者であるとか医師とか、そういう人間を探して話を聞くという手段をとるしかなかったのだという説明でございました。

渡辺(博)委員 個々に問い詰めたら、それぞれ問題点が余りにも多過ぎるなというのが素朴な私の疑問であります。

 ただ、これは時間の関係でなかなか突き詰めることができないわけでありますが、ちょっともう一つ、きのうの報道によると、金正日の肖像画が撤去されているというような報道がありましたけれども、薮中局長が行かれたときには、国家施設みたいなところ、みんな国家施設だと思いますけれども、そこへ行ったときにそんな状況でありましたでしょうか。

薮中政府参考人 全くそういう時間は私どもはありませんで、どこかの施設を見るという時間はございませんで、会議場等それから実際の病院等々の現地視察、招待所の現地視察を行いましたけれども、あとはすべてこの調査、聞き取りを行った場所にずっと朝から晩までいたものでございますから、そういう施設には行っておりませんので、そういう意味では、この目で、何か変化があったかということは見ておりません。

渡辺(博)委員 次に、本委員会では、ファン・ジャンヨプ氏を呼ぼうということで一致して働きかけた経過がございます。残念ながらその願いはかなうことができなかったわけでありますけれども、このファン・ジャンヨプさん、きのうのテレビの報道によりますと、逢沢副大臣はこの人と面談したというような報道がされておりますけれども、この関係についてちょっとお伺いしたいんです。

逢沢副大臣 ファン・ジャンヨプ元朝鮮労働党書記についてでございますが、九七年に脱北、そしてその後、九七年に韓国に入国、亡命をされたというふうに承知をいたしております。

 ファン・ジャンヨプ元書記に対しまして、これまで、我が国政府よりも実は接触を行っております。拉致問題を含む北朝鮮に関する諸問題、北朝鮮情勢等々、いわゆる北朝鮮の中枢におられたこの黄元書記より、その経験、知見、意見、どういった情報を持っていらっしゃるか、そういったことについて政府としてお話をお伺いしてきた、聴取をしてきた、そういった経緯があることは事実でございます。

渡辺(博)委員 具体的に、本当は、拉致問題を解決するためにどのように対応してきたか、そういったものの情報が、許されれば本当は知らせていただきたいというふうに思うわけでありますけれども、それは許されないんでしょうね、結果的に。

 基本的には、今回の実務者協議の結果、いろいろな意味で不自然な点、疑問な点が余りにも多い。これが解明されない。そうしたときに、政府としてはどのように今後対応していくおつもりなんでしょうか。私は、少なくとも、今まで対話と圧力という一つの対応をしてきた中で、そろそろ圧力の部分をしっかりと打ち出す必要があるんではないかな、そのように思います。

 特に、自民党においては、経済制裁に対する一つのプロセスを検討してございます。まずは、さきの国会において外為法の改正がありました。そしてまた、特定船舶の入港禁止法もできました。せっかくそういったカードができたわけですから、ぜひとも政府においても検討をしていただきたい、そのように思いますけれども、いかがでしょうか。

逢沢副大臣 今回、第三回目の日朝実務者協議を終えたわけでございます。その中身の具体的なところについては、委員の質問に答える形で、北朝鮮へ実際に参りました薮中局長の方から累次答弁をさせていただきました。合計五十時間にも及ぶ日朝間のやりとり、そして関係者への面会、また関係する場所の確認、視察。時間をかけ、一回目、二回目に比べますと、かなりの情報を得ることができたのは事実であります。

 しかし、私どもといたしまして、なお不明確な点また疑問点、数多く残されているという現実を直視いたしております。得られた情報、物証、それを十二分に政府を挙げて精査をする、そして何が正しいのか、さらに何を疑問点として先方に突きつけていかなくてはならないのか、できるだけ早くそういった精査の結果を出せるように努力を重ねてまいりたいと思います。

 対話と圧力あるいは圧力と対話。そして、国会からも二つの議員提案をいただきました。既にその法案を発動できる体制にあるということも承知をいたしております。拉致問題の解決に向けて、何が一番適切な手段と方法、またその時期であるのか、そのことについて、政府として真剣にこれからも検討を重ねてまいりたいと存じます。

渡辺(博)委員 それでは、しっかりと頑張っていただきたいと思います。終わります。

 ありがとうございました。

赤松委員長 次に、丸谷佳織君。

丸谷委員 公明党の丸谷佳織でございます。

 きょうは、第三回日朝実務者協議についてお伺いをさせていただきますが、その前に、一つだけ、日ロ関係、特に北方領土についてお伺いをさせていただきたいと思います。

 今月になっていろいろと、この領土問題についてロシア側からのメッセージが伝わってきております。

 十一月十四日には、ロシアのラブロフ外務大臣が、ロシアのテレビ放送の中で、五六年の日ソ共同宣言に基づいて歯舞、色丹の二島のみの返還で領土問題に終止符を打つ立場を示されたというふうにされております。また、翌日十五日には、プーチン大統領が、ロシアの閣議の方で、ロシアは批准された合意文書は守ると述べた上で、パートナー、つまりこれは日本でございますけれども、パートナーと同じ分だけこの領土問題は譲歩をするのだといったことを発言したという旨の報道がされております。

 こういったロシアのメッセージを受けて、日本としては、この領土問題、確かに一九五六年に日ソ共同宣言で平和条約締結後に歯舞、色丹を引き渡すということはされておりますけれども、その後、東京宣言、一九九三年等の中で、これは、四島を未解決の問題として両国間で確認をし合っているということもございます。

 こういったロシア側のメッセージを日本は今どのように受けとめているのかという点をまずお伺いさせていただきます。

逢沢副大臣 委員御指摘の、ロシアとの間の最大の懸案であります領土問題、国境線の画定の問題でございますが、言うまでもなく、日ロ間で現在交渉中の最重要案件でございます。

 立場のある方が、それぞれの場所、また時点で幾つかの発言をしてきた経緯もあるわけでありますけれども、基本的には、対外的な発言の一つ一つについてコメントする、その評価について申し上げるということについては、今日までも差し控えているわけであります。

 しかし、具体的に、今委員がおっしゃられましたように、十四日のロシアのテレビ番組において、ラブロフ外相の発言をとらえ、プーチン大統領がそれを支持するといったような発言をなさった、そういった情報には私どもも接しているわけであります。

 その中を伺いますと、同外相は発言の中で、領土問題の解決による平和条約締結の必要性、このことについて言及をしておられます。また、対日関係の十二分な調整の重要さについても強調しておられると承知をいたしております。

 日本といたしましては、これらをとらえ、ロシアとの間で適切に、また精力的に交渉を続けてまいりたい、そのように考えております。

 なお、チリにおきましてAPECの会合が持たれます。日本時間の本日未明でございますけれども、チリにおいて日ロ外相会談が実現をいたしました。御指摘の、ロシア側との発言の関連で、我が方の外務大臣、町村大臣より、四島の帰属に関する我が国の立場、あくまで四島の一括の返還、択捉島と得撫島との間で国境線が画定をされるべきである、そういった趣旨の我が国の立場を適切に説明をさせていただいた、そういう報告を承っております。

 なお、来年前半にプーチン大統領の訪日が予定をされているわけでありますが、その前に、両外務大臣が相互に訪問をするということについても合意をしたこともあえて御報告を申し上げておきたいと存じます。

丸谷委員 実際に今APECの場所におきまして外務大臣の会談が行われたということでございましたけれども、我が国の姿勢を説明し、またロシア側の考えも表明をされたということであれば、平行線のままであったんだろうというふうに思います。

 そういったことを受けて、来年春にも、一説には二月にもプーチン大統領が来日するという報道もございましたけれども、今十一月ですから、時期的に考えますと、その前に、二月の前に両国の外務大臣が行き来をするということになると、プーチン大統領の来日がちょっとおくれるのかなということも予想できます。

 両外務大臣の相互訪問については、これから日程を詰めていくことというふうに思いますけれども、この日程的なものは、来年の春大統領が訪日ということでよろしいんでしょうか。

小松政府参考人 お答え申し上げます。

 プーチン大統領の訪日の時期につきましては、さきの六月のシーアイランド・サミットにおきまして、両首脳の間で来年初めの訪問ということで一般的な合意がございまして、日程については引き続き外交経路を通じて調整をするということになっておりまして、今回の、今副大臣から御答弁のございました外相会談におきましても、具体的な時期についてはそれ以上の絞り込みというのは行われた状況にはございません。

 まだ首脳会談も、このAPECの機会に時間づけがまだ最終調整中でございますので決まってございませんけれども、私ども、実現するというふうに期待をしておりますけれども、そのときにも話し合いが行われることになると期待をしております。

 その大統領の訪日との関係で、外務大臣の相互訪問でございますけれども、もちろん、大統領の訪日を準備するわけでございますから、その前のしかるべきタイミングということでございますけれども、今その時期について、具体的にこれも決まっているわけではございませんで、全体の政治日程の中で引き続き調整をしてまいりたいと思っております。

丸谷委員 今回のロシア側からの、十四日、十五日、外務大臣そして大統領から出てきましたメッセージ性につきまして、ロシアの方では緊急世論調査をラジオ局がされたというふうに聞いております。ロシア国民の七〇%はこの二島の返還に反対であるというような報道もされている次第でございますけれども、今、ロシア側から出てきた非常に強いメッセージ、二島だけで決着をするというこのメッセージにつきましては、いろいろな受けとめ方ができるというふうに私自身も考えております。

 七〇%ものロシアの国民の反対を押し切って二島だけでも返還をするのだという、一つ決着を見るということでは前進と見る人もいるというふうにお伺いしておりますし、逆に、二島の問題がずっと一九五六年から引き続き問題として二カ国間にはあるのですよということを、ロシア国民に周知をさせたという意味合いにおいて一つ評価できるという人もいらっしゃいます。あるいは、二島決着論ではなく二島先行返還論なんだというような見方もする人がいるわけでございます。

 我が国としては、大事な領土問題につきまして、今までいろいろ紆余曲折はあったものの、今後も我が国の姿勢をぜひ貫いて、大事な日ロ間の外務大臣会談、そして首脳会談が実現するように、外交面で大いに頑張っていただきたいというふうにお願いを申し上げまして、この日ロ間の領土問題については質問を終わらせていただきたいと思います。

 続きまして、実務者協議についてお伺いをさせていただきたいと思います。

 三回目になります今回のこの実務者協議につきましては、ことしの五月、総理の二回目の訪朝におきまして日朝首脳会談が実現をし、日朝間の諸懸案事項を平壌宣言にのっとって一つ一つ解決をしていくということで合意をし、そして日本人拉致問題については、安否不明者十名の再調査を白紙に戻した上で徹底的に行っていくという約束が履行され、そしてさらに協議を行うという目的があったというふうに私は理解をしております。

 しかし、安否不明者十名については、基本的に二〇〇二年の十月の報告と同じ内容でありまして、白紙に戻って再調査が徹底的に行われたという評価をすることはできないというふうに私は感じました。

 日本政府として、今回の実務者協議の成果は何だというふうに考えているのか、この成果、満足しているのかどうか、この点についてまずお伺いをいたします。

逢沢副大臣 冒頭御報告申し上げましたように、今回第三回目の日朝実務者協議を平壌で行ったわけでございます。当初の帰国の日程を二日間延長し、徹底した聞き取りの調査、そして関係者の面談、また必要に応じて関係する場所の確認、視察等々、累計をいたしますと、延べにいたしますと五十時間にも及ぶ日朝間のやりとりを鋭意積極的に行いました。

 これは、言うまでもないことでありますが、八月、九月、北京で行いました第一回目、第二回目の実務者協議が大変遺憾ながら非常に不十分であった、それを踏まえた非常に強い決意で臨んだ第三回目の協議であったわけでございます。

 北朝鮮側は、幾つかの物証の提供をする、また日本側が求めた必要と思われる方の面談の設定等々につきましては、一回目、二回目に比べますとある意味では積極的な姿勢を示したということも事実でございます。

 しかし、依然として拉致問題の全体の解明、解決に向けては多くの疑問点、不明な点が数多く残されているわけでございまして、政府としては、帰国後、持ち帰りましたさまざまな記録あるいはまた物証等々、総合的に精査を既にスタートさせていただいております。

 できるだけ早くその精査をやり遂げたいということで作業を進めさせていただいたわけでございますけれども、引き続き、精査を通じ、新たに何が疑問として残るのか、あるいは新たに北に対して問いただす必要があるべき問題は何か等々を積極的に整理してまいりたい、そのように承知をいたしております。

丸谷委員 ということで、実際には、それらの持ってきた資料等を精査し、それによって成果等も評価できるということになってくるのだろうというふうに思いますけれども、その中の一つとしまして、今回、十一月の十五日、ちょうど薮中団長一行が帰国をした日でございますけれども、横田めぐみさんの御遺骨だというふうに北朝鮮側が言っている御遺骨を持ち帰ってこられた。

 この日がちょうど十三歳のめぐみさんが工作員に拉致をされた日と同じ日であったということに、御家族のお気持ちを考えますと非常に痛み以上のものを考えますし、またちょうど同じ日に御遺骨を持って帰らせるといった北朝鮮側のやり方というものにも私は憤りを覚えました。

 実際に、この御遺骨を持って帰られたことに対しまして、御両親は記者会見の中で、子供たちはどこかで監禁されている状態で、ここにいるのよ、違うのよと叫んでいるように思うというお言葉がございましたけれども、本当にこのお言葉が真実であることを願ってやまない一人でございます。

 実際に、これから行われるでありましょうこの御遺骨のDNAの鑑定ということについて、この鑑定はどのくらいの時間を要するものなのか、また一たん土葬されてそして火葬された御遺骨だということでDNA鑑定自体が難しいのではないか、あるいは低温の火葬であったのであればかなり確実な鑑定ができるのではないかといった報道もされておりますけれども、この点についてはいかがでしょうか。

逢沢副大臣 横田めぐみさんのものとされる遺骨を日本に持ち帰ったわけでございます。早速DNA鑑定に付して、まさに精査をする必要があるわけでございますけれども、それに要する時間が果たしてどのくらい必要であるか等々のことについて、外務省の立場として正確にお答えを申し上げることができないということを、ぜひ御理解をいただきたいと思います。

 しかし、政府全体としてこのDNA鑑定を正確にやり切るということについて責任を持って進めてまいりたいと存じます。

丸谷委員 めぐみさんが死亡したという日時、またこの御遺骨の信憑性については、非常に疑いが残るところでございます。実際に、報道等、あるいは政府からいただきました今回の北朝鮮側の物証あるいは説明、そして会談した相手、それぞれに信憑性というのはいかがなものなのかというふうに思っている人も多いのではないかと思うんですけれども、めぐみさんが死亡したという日時についても信憑性があるのかどうか、この点について次にちょっとお伺いをさせていただきたいと思うんです。

 当初は、一九九三年の三月に死亡されたというような発表がされておりましたが、二〇〇四年の九月の第二回の実務者協議の中で、一九九三年十月八日までの入院記録が残っていたとして、そして三月には死亡していないということを認めました。

 今回、九四年の三月十日に平壌の四九号予防院に入院をして、そして九四年の四月十三日に亡くなったと説明をしたということで、この死亡の日時については実に二度の訂正がなされております。

 蓮池さんの証言の中で九四年にめぐみさんを目撃したというような発言もありまして、つじつまを合わせたかのような訂正にも思えるわけでございますけれども、このめぐみさんの死亡日時について信憑性はどのように考えているのか、この点についてお伺いをします。

薮中政府参考人 お答え申し上げます。

 我々もまさに委員御指摘のとおりでして、先方が言うところの死亡と、そしてその日付が変わるということは、我々からすると普通はあり得ないことでございます。そういう意味では、非常に不可解であり、疑問が多いところだというのが我々の受けとめ方でございます。

 今回は、まさに先方の説明としては、四九号予防院での記録が残っていなかったのだ、したがって当時の記憶をたどって前回は九三年ではなかったかと、しかしその後いろいろ関係者から聞いて精査した結果が、九四年の三月十日に入院された、そして四月十三日に亡くなられたという説明でございました。

 これは、我々としては、こうした死亡の年月日がその都度変わるということはまさに非常に疑問の多いところだというふうに思っておりますけれども、今回は、そうした中でいろいろな事情を聞き取り、そしてまた今お話しのとおり、先方が言う御遺骨を持ち帰るということでございます。これはきちんと鑑定して、そして精査していく必要があるというふうに考えております。

丸谷委員 先ほど来、それぞれにおいて信憑性というものを疑ってかかる必要がある旨の私は発言をさせていただいているわけでございますけれども、今回の実務者協議におきまして、調査委員長とされる陳日宝氏の人物確認というのはできた上での、信頼に足る人物だと確認できた上での会談だったのかどうか、この点について次はお伺いをさせていただきたいと思います。

 先ほど副大臣から御報告をいただきましたこの実務者協議に関する報告の中でも、この陳日宝人民保安省局長が参加しての調査についての協議であったということが言われておりますけれども、報道の中でございますが、人民保安省というのは日本でいえば例えば一般の警察に当たるもので、いわゆる秘密警察に当たる国家安全保衛部ではないというようなことを言われております。

 本日いただきました報告の中には、調査委員会は、政府から与えられた権限に基づいて、特殊機関を含むすべての関連する中央機関、地方行政組織など関連団体に対し調査を実施した旨説明がありましたというふうに先ほど御発言をいただいているわけでございますけれども、実際に、どう考えても、一般の警察に当たる部署の方がそれ以上の秘密警察あるいは特殊工作にかかわるような人たちを徹底的に調べることができるのかどうか、この点は非常に疑いが残るところでございます。

 実際にお会いをされました陳日宝氏というのはどのような権限を持って捜査をされたのか、そして信頼に足る人物だという人物確認をして会談に臨んだのか、この点についてはいかがでしょうか。

薮中政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほどの副大臣からの冒頭の御報告にもありましたとおり、今回の調査委員会は、政府から与えられた権限ということで調査権限を持っているということでございます。先方からは少なくともそういう説明がございまして、この調査委員会、我々はかねて、したがって、そういう調査委員会があるのであればその責任者を出してほしい、そしてその人間と具体的にやりとりをしたいということでございました。

 といいますのは、今までは、一回、二回目は外務省の担当者だけが出ていて、質問すれば、調査委員会に聞かなければいけない、こういうことでございました。そういう意味では、実際にこの調査委員会の先方が言う責任者と会えて、そして具体的なやりとりができたというのが現実でございます。

 この人間、この方がどれだけの権限があるのか、そしてまたどういう方であるのかということでございますが、権限は、彼らは、繰り返しになりますけれども、そして本人も言っておりましたが、金正日国防委員長が小泉総理に再調査、そして白紙に戻しての再調査ということを約束した、それに基づいて、先方の説明では、共和国の決定として調査委員会を設立した、その調査委員会には調査の権限を与えるということが決定されているということでございますので、先方の説明は、そういうことで共和国としての決定であるということを言っておりました。

 当人でございますけれども、今委員御指摘のとおり、人民保安省の捜査担当局長、一九三六年生まれで、一九六五年から人民保安省に四十年間勤務しているということでございまして、六十八歳という説明がございました。

 この局長、調査委員会の責任者、そしてまた複数名の調査委員会の人間も出ておりまして、その周りに必ず外務省の担当官、責任者も出ていたわけでございます。その全体からの判断ということになりますけれども、結局は、彼らの説明がどれだけ信憑性のあるものかどうか、そして我々とのやりとりの中でどれだけの食い違いがあるか、この辺を精査した上で判断するしかないものであるというふうに考えております。

丸谷委員 日朝首脳会談の後、すべてを白紙に戻して再調査をする、またそれは非常に、金正日体制のもとで、共和国の決定としてリーダーシップを強く表明した中での再調査であるということが北朝鮮側からの説明であるということは理解をいたしましたけれども、実際には、横田めぐみさんの夫であるとされている方も、先ほどの渡辺議員の質問の中での答弁もございましたけれども、なかなか、本人確認をするためのDNA検査をする材料である毛髪ですとか、そういったものはやはり特殊機関であるという理由で持ち帰ることができなかった。こういった経過を見ますと、その白紙に戻してというところがどこまで本当に白紙に戻ったのか、これはなかなか私たち日本側には納得できるものではないであろうというふうに強く思います。

 外務省は、家族会での説明の中で、この横田さんの夫とされているチョルジュン氏については、夫の髪の毛などは持ち帰れなかったけれどもそれにかわるものは収集したというふうに言ったというふうにされておりますが、今後それをもとにDNA鑑定等を行っていくものと思いますけれども、先ほど渡辺議員の質問の中での答弁のように、それはどういったものを持ち帰ったのかということは言及できないということでしょうか、確認をさせていただきます。

薮中政府参考人 今の点でございますけれども、委員御指摘のとおり、我々としての努力、これは団全体でいろいろ、そういう調査、専門の知識のある方々もおられまして、努めたわけでございますけれども、果たしてそれが確認できるものかどうか、今精査しているところでございます。

 事柄の性質上、若干、その具体的な手法についてはここでの答弁は差し控えさせていただきたいと思います。

丸谷委員 今回の実務者協議の中では、北朝鮮の核問題をめぐる六カ国協議についても、日朝双方の首席代表を務めます薮中局長と北朝鮮側の金桂冠外務次官との会談が実現したということを重視しているわけでございますけれども、実際に、我が国がこの年内にも六カ国協議の再開を求めたことに対して、北朝鮮側はその環境にはないというような発言があったというふうにお伺いをしております。

 我が国としましては、拉致も最重要課題でございますけれども、この核の問題あるいは大量破壊兵器、ミサイルの問題というものも真摯に取り組んでいかなければならず、そのためにはこの六カ国協議という場は非常に重要であり、私ども公明党としましても、この六カ国協議の継続、そして定期的に行えるような北東アジア全体の安全保障に寄与する会議になってほしいというふうに政策でも訴えているわけでございますけれども、この六カ国協議の継続に対して、今後北朝鮮の参加をどう促していくのか。

 そして、二期目、当選をされました新ブッシュ政権の、それぞれの閣僚はまだ発表されておりませんけれども、どのようにブッシュ政権の対北朝鮮外交路線をにらんでいくのか、分析も加えて、この点を最後にお伺いいたします。

逢沢副大臣 丸谷先生御指摘のように、六カ国協議の枠組みを維持し、それを活用し、韓半島、朝鮮半島の非核化を実現するということ、大変重要なことでございます。

 六カ国協議、過去三回重ねてまいりました。最初が二〇〇三年の八月、そしてことしになりましてから二月、六月と行われたわけでありますが、その後は、御承知のような状況の中で開かれない事態が続いているわけでございます。

 委員御指摘のように、今回の日朝実務者協議を活用いたしまして、薮中局長は、金桂冠北朝鮮外務省副相と会談を約二時間にわたって行い、北朝鮮の核問題を中心に会談をいたしたわけでございます。

 幾つかのやりとりをいたしたわけでございますけれども、六者会合、六カ国協議を年内にやはり開くべきである、そのことを強く北朝鮮側に申し入れをいたしたわけでございますけれども、北朝鮮側は早期に協議を再開させることについては幾つかの理由を挙げて難色を示したということであります。

 しかし、アメリカの大統領選挙も終わりました。ブッシュ大統領は、大統領選挙キャンペーン中も、そして再選が決定した後も、六カ国協議の枠組みを大切にし、これを早期に再開させる、その重要性について累次にわたり言及をいたしているわけであります。

 もとより、日米韓三カ国でもこのことにつきましては確認済みであり、また中国の適切なリーダーシップにも期待しつつ、北朝鮮を六カ国協議のテーブルに無条件に、できることならば年内につけるということに向けて、国際社会一致をし、またとりわけ関係国が協力をして実現に努力を重ねてまいりたい、そのように申し上げたいと思います。

丸谷委員 ありがとうございました。

 これで質問を終わらせていただきますけれども、今回の実務者協議、さまざまな政府代表団の努力もあり、また日本政府そして国民世論の後押しもあったというふうに思いますけれども、なかなかやはり信憑性あるいは十分に納得できるような結果ではないということから、人道支援とはいえ食糧支援についてはやはり軽々に行われるべきではないというふうに考えておりますし、また経済制裁についても視野に入れ、それぞれシミュレーションをしていく必要があるというふうに私自身の考えを述べさせていただきまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

赤松委員長 次に、中川正春君。

中川(正)委員 民主党の中川正春でございます。

 今回の実務者協議を中心にして質疑を進めていきたいというふうに思います。

 まず冒頭に申し上げておきたいんですが、今回外務大臣、外へ出られてこの委員会に出席できなかったということなんですが、そのことと同時に、それだけに官房長官の出席、当然そうした意味ではあるべきだというふうに思うんですが、それも拒否をされたということです。肝心の与党の筆頭がここに今いないんですけれども、改めてこういう委員会の運営について厳重に抗議をしておきたいというふうに思うんです。

 もう一つ、後ほど申し上げますが、参考人に出てもらう話についても、本当に国会の私たちの調査権というのをみずから自分たちで首を絞めていくような、そういう運営をしておりまして、そのことに対して、まず冒頭、強く反省を促したい。もう一回しっかりと運営について議論をしていただきたいというふうに思います。

 さて、薮中さん、御苦労さんでした。まず事実関係について質問をさせていただいて、その上でこれからの方針について議論を進めていきたいというふうに思っています。

 最初に、今回の実務者協議を私たち見ていて、政府も公式に不十分であった、いろいろ疑問も残った、憤りを感じる、そういうコメントをしておられますが、私たちもそういうことなんですね。

 同時にもう一つ、私たちの気持ちの中にもう一つ整理ができないところがありまして、それは、その不十分であったということは、今回どこまで情報開示をする気持ちがあるのかということ、これについてもう一つすっきりとしないところがあるんですね。さっきからの答弁を聞いておりましてもそういうことだと思うんです。

 まず冒頭聞きたいんですが、報道管制といいますか、今回特徴的だったのは、この交渉の経過というのが報道機関に対して非常にクローズであった。限定された、それこそ頭撮りだけしかなくて、交渉の内容、どこまで日本側が要求をしていて、それがどこまで答えられているのか、そういう意味での中身の報道がこれまでの協議に比べても非常になかったということがあると思います。これはどうしてだったんですか。

    〔委員長退席、増子委員長代理着席〕

薮中政府参考人 お答え申し上げます。

 報道の関係でございますけれども、今回日本から報道関係者が現地に行くということについての話がございました。私どもはその希望を先方に伝えたわけでございますけれども、時間的にかなり切迫された状況の中での話でございましたけれども、今回は静かな雰囲気の中で徹底した話し合いをしたいということが先方からあり、実際に日本から報道陣が現地に行かれるということはなかったわけでございます。

 後は、我々としては、しかし今回聞き取り五十時間というのは相当長い話し合いがございます。それについてはきっちりと今全体の取りまとめをしておりまして、記録をつくっておりまして、また今まで集めてまいりました物証等もございます。

 そうした精査の作業を行っておりますけれども、そうした中で、当然その結果というのはもちろんまずは家族、御家族の関係者、家族会への御説明ということで、今回も個別に今までの概要は御説明申し上げましたが、その際にも言っておりますけれども、きちんと今までの聞き取りをまとめて整理して、そしてそれをお伝えすることにしております。

中川(正)委員 どうして日本の報道機関が参加をしないということに同意をされたのか、一番交渉の頭で、それがわからない。静かな雰囲気でという話は理由にならないでしょう。本来は、私たちはかたずをのんでこの経過を見ているわけでありますし、国民の理解を得るためにもあるいは国民の応援を得るためにも、これは一番大事な手だてなんですね。それに対して簡単に同意をしてしまうというのは、これはどういうことですか。改めて聞かせてください。

薮中政府参考人 今申し上げましたように、実際に我々が報道陣の方々から直接の要請を受けたのが数日前でございました。そうした中で先方に伝えたわけでございますけれども、今申し上げましたように、物理的な面等々も含めて先方は言っておりました。そして、私どもがそれに軽々に同意するとか同意しないということではなくて、現実の問題としてそういう形で行われたということでございます。

 繰り返しになりますけれども、私としては、その内容についてはきちんと今後とも御報告をしていくということでございまして、それを、決して外にオープンにするためのものでないことだけは申し上げておきたいと思います。

中川(正)委員 例えば、めぐみさんの遺体が埋まっていたお墓の状況であるとか、あるいはそれぞれ入院をした病院であるとか、こういうところへ向いてちゃんとした報道機関が入って、そうした報道も兼ね合わせながら私たちに説明があるということ。また、報道機関が入るということによって、公式のルートではないいろいろな情報というのがまたそのルートで入ってくるという可能性がある。

 そういうことから考えていくと、今回の報道機関を規制したという外務省の判断あるいは薮中さんの判断というのは、私は間違いだったというふうに思います。そのことをまず冒頭指摘をしておきたいというふうに思うんです。

 その上に立って、ここではっきりしなきゃいけないのは、こうして報告書、レポートというのを出していただいて、先ほども報告の読み上げがあったわけでありますが、私たちが知りたいのは、どこまで、具体的に何を北朝鮮側に要求をして、それがどこまで満たされたかということですよね。それがはっきりしていて初めて、回答が不十分であったあるいは信憑性がない等々、その議論ができていくんだろうと思うんです。

 ところが、この報告書を見ていると、そこのところがはっきりしないんですよ。どこまで要求していたのか、何を具体的に要求していたのかということがはっきりしないんですよ。そういう意味で、改めて、順番に、この十人について具体的に何を要求したのか、述べてください。

    〔増子委員長代理退席、委員長着席〕

薮中政府参考人 先ほどから申し上げておりますように、五十時間にわたるやりとりでございます。ですから、その一々の中でいろいろなやりとりがございました。基本的には、もちろん先方からのまず説明を聞き取るということをいたしたわけでございまして、その上で、我々が持っている、今回の調査団というのは警察の方々もおられます。

 そしてまた、今まで、日本に帰ってこられた拉致被害者、その方々からの聞き取りというのがいろいろな形で行われています。例えば支援室においてもさまざまの聞き取りは行っておりますし、警察においても行っている。警察は、当然のことながら、今までの拉致事件の捜査ということで大変ないろいろな資料がございます。

 そうしたことを突き合わせながら先方に問いただしていくという作業でございましたので、一つ一つ、今委員から御指摘の一件一件について、それで何を指摘し、あるいは何を要求したのかということで申し上げますと相当時間がかかる話になるわけでございますけれども、主に、申し上げますと、先方の説明と我々が持っている情報、そこのまず違いということで指摘していくということがございます。

 さらには、先方が言う、まずは先方の説明というのは、おのおののケースについて、事案について調査をした、特殊機関に入って調査をしたと言うわけですけれども、大半のケースについてその当時の資料が焼却されていたということで、彼らが言うのは、したがって関係者を探し出すという努力をした。それが、例えば事故死というのであれば、実際に検視をした医師であるとか、あるいはその他の目撃者がいるかどうかということで探したということでございました。

 我々としては、全体として、その人たちからの話の聞き取りを行いましたけれども、そうした中でもできるだけ、彼らが言っている中で言いますと、実際に指導員という人間が必ず出てきます。その名前が、おのおのの拉致被害者について、おります。その指導員、それが一番、それがまだ生きているのであればその人から聞くのが一番確実ではなかろうかということで、そういう要求はもちろんいたしました。

 その中では、現役の指導員ということでそれが会えないという結果もございましたし、あるいは、かなりの人はそれで一緒に死んでいるケースもございました。交通事故の場合に一緒に死んでいる指導員というのもいましたけれども、そうしたこと等々を具体的に、面談をしたという中でも、特殊機関を含めての我々からの直接の聞き取りということを要求いたしましたし、そしてまた、物証ということであっても、あるものはすべて出せということでの要求をしていたということでございます。

 したがって、今申し上げましたようなことでございますけれども、それを一件一件ということでやっていくということでございましたら可能な範囲で私は申し上げますけれども、そういう一件一件の話で何がこちらから要求してということになりますと、今申し上げましたように、どういう話があって、それに対して我々の疑問はどういうことで、それをどう問いかけてきたかということでございまして、これはまさに今整理をしているところでございます。

 一口で五十時間といいましても大変なやりとりのものでございますから、今それを整理した上で精査をしていく。当然、その中には警察の捜査情報もございます。そうした中で、精査をしていく、そして可能な範囲で私どもは公表していきたいというふうに考えております。

中川(正)委員 それでは、その一件一件を、さっきの、こちらが要求したこと、それからそれが満たされた部分、満たされなかった部分、あるいは満たされても疑問が残った部分、これについて公表していただくということでありますので、それの確認を改めてしておきたいと思います。

薮中政府参考人 今申し上げましたように、まさに相当膨大な作業をこれからやるところでございまして、そしてその中で、私申し上げましたように、捜査情報等々にかかわる問題についてはこれはまたございますが、私どもとしては、できるだけ可能な範囲で公表もしたいというふうに考えております。

中川(正)委員 それでは、ここでは、特にこの報告書の中で、ここの部分、気になった部分といいますか、そこを象徴的に聞いていきたいというふうに思っております。

 余りにも不自然な内容が多い、こうあるわけですが、さっき事実はそれぞれ述べられましたけれども、具体的に象徴的に、不自然な内容というのをどのように理解した上でこれは言っておられるんですか。具体的な事象ですね。

薮中政府参考人 お答え申し上げます。

 いろいろの事案につきまして、我々が考える疑問点あるいは非常に不自然な点というのはございます。例えばということで例示をせよということでございますのであえて申し上げますけれども、例えば、市川修一さんのケースでございます。彼らの説明は、一九七九年の九月四日に元山の海水浴場で心臓麻痺で死亡したという説明でございました。

 これは委員御承知のとおり、まさに日本国内でもいろいろと疑問点が当初から言われていました。九月にあの北朝鮮の海水浴場で泳ぐのかなということ、そしてまたこの市川さんは実は泳ぎが好きでないだけでなくてほとんど泳げなかったということ。それは、我々のまさにやりとりの中でも、まず相手に説明をさせました。その上でこちらから疑問を投げつけるというのは、そうしたことも含めてでございます。これは、やはり非常に不自然ではなかろうか、不可解ではなかろうかと。

 先方の説明は、そのときの気温等々も調べてきたということで、午後三時ごろという、午後に泳いでいたということで、実際に持ってきた、たしか気温は最高気温が二十二・五度であったとかいろいろ説明はしておりましたけれども、そうした中で若い市川さんが心臓麻痺で亡くなる、本当にあるのかと。これは一つの例でございますけれども、不自然な例。

 そしてまた、石岡さんのケースでございますけれども、石岡さん、有本さんが一九八八年の十一月の三日に、静かなところへ行きたいという理由で、熙川という、これは相当不便なところでございます。平壌にいて、平壌の郊外でも十分に静かではなかろうかと私ども思います。そういう問題提起をいろいろいたしました。そうした中で、どうして、どういう理由でそういうことになったのかと。着いた日の夜に、そして明け方までのことでございましょうけれども、起きてみるとガスが充満していて、ガス中毒で死亡された。極めて我々としては不自然だと思う。

 具体的に、おのおののケースでございますけれども、市川さんについて言えば、先方は、そうした中で、当時のその海水浴場の係員、実際に見ていたという人、そして医師でございますね、医師から看護婦ということ、そしてまた石岡さん、有本さんについては、そのときの、彼らが言う熙川の招待所、そこで実際に料理人をしていた人というのがいるということで、その人たちから話を聞く、そういうことをやりましたけれども、我々としては、非常にまだ疑問が残っている、非常に大きな疑問が残っている、そういうのが我々の正直な感想ではございます。

 ただ、全体として、繰り返しになりますけれども、いろいろ今まで聞き取ってきた相当の材料がございますので、よく精査をしていきたいというふうに考えております。

中川(正)委員 めぐみさんについての疑問点というのはどこですか。

薮中政府参考人 横田めぐみさんについての疑問点というのも当然ございます。

 まず、先ほどからの質疑でもございました死亡したという先方の説明、その日が前の説明では九三年であった、今度は九四年であるということで、そうした向こうが言うその説明であれば、そういう簡単に大事な日が変わるはずがないのではないかというような点とか、そのときの当時の死亡台帳が、実はそれはそのときに、ある意味で調査の過程で日本側が問いただしたのでそれを記入したということで、間違いでしたと。

 この辺は非常におかしな、不可解な、そして疑問の多いところでございますし、それから今回の説明においても、そういう中での予防院、我々はその四九号予防院を見て回ったわけでございますけれども、そうした中で、実際にどういう状況であったのかについては、これはまさにみんなで聞き取り、そして現場を見てまいりましたので、精査しているところでございますけれども、決して疑問が簡単に解けるものではないというのが現状でございます。

中川(正)委員 次に、拉致事件の責任者について、これは二名が処罰された、これは二年前の説明と同じであった、それについての裁判記録を持って帰った、こういうことですね。そして、もう一つ、他の実行犯や関係者、これの降格や除隊という処分があったということなんですが、具体的にはどういう人物がどういう形で処罰をされたということですか。

薮中政府参考人 今まさに整理し精査中でございますけれども、したがって幾つかの例だけで、これがすべてではございませんが、例えばということで申し上げますと、石岡さんの今のことでございますが、熙川での招待所でガス中毒で亡くなった。その際に、これは、この招待所というのは当然特殊機関が運営している招待所だったわけでございますけれども、先方の説明では、その招待所の管理人、これが管理不行き届きということで実際にその招待所から除隊されたというようなことを言っておりましたし、またその他のケースでも幾つか、そうした招待所の人の管理不行き届きがある場合とか、あるいは指導員において問題があった場合等々で、除隊なりあるいは何らかの降格処分があったということが、幾つか具体的には説明があった次第でございます。

中川(正)委員 さっきの話ですと、直接に拉致の犯罪にかかわっている人じゃなくて、指導員とか招待所で彼らを管理する立場にいた人の名前を列挙されました。直接の拉致の実行犯、あるいは拉致というものがどの指令系統で実行されて、だれに責任が最終的にあったのかということについてはどうだったんですか。

薮中政府参考人 お答え申し上げます。

 まさに委員御指摘のとおり、そこが我々としても非常に大事なところであるというふうに考えておりまして、この拉致事案、具体的な実行犯、そして責任体系、どういうふうな処罰があったのか、このやりとりを相当したわけでございますけれども、先方の説明は、この責任者というのが、二年前にまさに説明があったのと同じでございますけれども、チャン・ボンリム及びキム・ソンチョルという二人が責任者であったということでございまして、まずは先方が我々に提示してまいりました裁判記録をきっちりと我々の方で精査してまいりたいというふうに考えておりますけれども、それ以上に、彼らの説明としては、基本的にはこれが責任者であるので、したがって北朝鮮においては責任者を罰するんだという説明がございました。したがって、この裁判記録でどこまでその辺のところが明確になるのか、現在作業を急いでいるところでございます。

中川(正)委員 これは二年前に提示された名前ですよね。外務省なりに、それぞれ調査をして、これが本来そのポストにいた人たちなのかどうかというのは、それなりの考え方を固めた上での交渉だったと思うんですが、それはどう考えていますか。

薮中政府参考人 まさに、どういう形で拉致が行われたのかということでは、日本の警察の方でも当然いろいろと捜査をしてきているわけでございまして、実行犯については、当然のことながら、今までの捜査の結果、辛光洙であるとか、先ほどからお話ありました金世鎬であるとか、あるいは魚本公博であるとか、こうした拉致容疑者というのが固まっているわけでございます。そうしたことを含めて先方に追及をいたしました。

 ただ、この二名がどういう人間で、そして具体的に何を責任を持ってやったのか、これについては今までのところは必ずしもよくわかっておりません。そこで、今回、それを明確にしろということで、先方から提示がようやくあったのがこの裁判記録でございますので、ここをよく精査してまいりたいというふうに考えております。

中川(正)委員 ここに表現されている他の実行犯というのは、どういう新たな実行犯がここで名前が出てきたわけですか。

薮中政府参考人 実際に、拉致について具体的な実行犯の名前という格好では挙がっておりませんで、説明の中で、実行犯ということでいたじゃないかと。例えば我々が承知していますのは、具体的な拉致のケースにおいて、北朝鮮から指導員が来ていたということが我々の捜査の中でもいろいろと出てきていますけれども、そういうのを問いただした中で、降格であるとかそういう処分があったということはございましたが、やはり具体的な工作員の名前で、はっきりとした名前を向こうから挙げることはございませんでした。

中川(正)委員 それは、ございませんでしたというんじゃなくて、要求したんですか。それと同時に、この実行犯というのは、よくそれぞれ脱北者やあるいはその周辺の人たちからも証言があるように、この日本にも協力者がいて、その関係の中でこの犯行が行われたという前提ですから、これはその辺もすべて解明する必要があるんですよね。そういう聞き取り、そういう質問をしたのかどうか。

薮中政府参考人 当然しております。

中川(正)委員 それから、その他関係資料、いわゆる物的証拠を持ち帰ったという話で、遺骨や交通事故の調書、あるいは二名のさっきの裁判記録の一部の写しとなっていますが、それ以外にカルテが先般から話題になっています。そのほかの関係資料というのはどういうものなんですか。

薮中政府参考人 先ほどの石岡さんと有本さんの事故があったとされる熙川の招待所がございますけれども、そこについての例えば略図とか、当時の天候の資料であるとか、市川さんについての当時の天候の資料、そして今お話しのような、これは二件交通事故がございましたけれども、交通事故についてのおのおのの、当時の公安のつくった交通事故の記録というもの、その他では写真であるとか書籍であるとか、そういうものでございました。

中川(正)委員 次に、特定失踪者の問題でありますが、これは、特に五名については北朝鮮内に入ったということが確認できなかったという回答があったということなんですが、これはどういう調査をした上で確認ができなかったということだったんですか。

薮中政府参考人 特定失踪者の問題につきましても今回取り上げまして、そして調査委員会としても調査をするように、そして情報があればこちらへ提供するようにということをこちらから主張したわけでございます。

 先方は、調査委員会として確認作業は行ったということでございます。具体的に、おのおののケースについてどういう確認作業を行ったのか求めましたけれども、それ以上の説明はございませんで、入境したことは確認できなかったのだということでございます。

 我々としてはこれでは満足しておりませんので、当然のことながら、引き続き先方に情報の提供、調査を求めていきたいというふうに考えております。

中川(正)委員 最近、新しい資料として、向こうでいわゆる拉致された日本人が収容されていたところの名簿と、それから写真というのが持ち出されてきておりまして、それが恐らくそちらにも届いていると思うんですよね。そういう資料も含めて提示をした上で求めたんですか。

薮中政府参考人 各種の資料については、我々の方でもいろいろと、今当然捜査当局を含めて、そして政府全体として調べているというところでございまして、我々としてもいろいろな情報があるぞということの上で先方に迫ったということでございます。

中川(正)委員 その辺の内容も、さっきの個々のレポートの中で詳しく報告をしていただきたいというふうに思います。そうすることによって、周辺の、これに対して一緒に活動をしている協力者あるいは当事者が、さまざまな情報をまた持ち寄りながら次のステップに行けるということ、そのことも含めて、いつごろになりますか。

薮中政府参考人 いつごろということでございますけれども、我々としては、できるだけ早くこの作業を行いたいということで、今鋭意開始しておりますけれども、何分にも相当の膨大な、五十時間全部をその中でまとめて、そしてまた照らし合わせて、我々の持っている情報とのさらなる突き合わせもございますので、相当大変な作業ではございますけれども、できるだけ早くやっていきたいというふうに考えております。

中川(正)委員 次の交渉はいつやるというふうに想定されていますか。

薮中政府参考人 我々としては、日本政府全体として、今回政府を挙げての取り組みで、警察、拉致支援室そして外務省ということで調査を行ってまいったわけでございますが、繰り返しになって恐縮でございますけれども、今回相当我々の持てる資料も含めて、材料も含めて先方に疑問点を突きつけるということをやってまいりまして、それが今精査の途中でございます。まずはこの精査の作業、これを全力を挙げてやる、その上で今後の対応についても判断していくことになるというふうに思います。

 そういう意味では、今全力を挙げるのは、今回の結果についての精査の作業であるというふうに考えております。

中川(正)委員 官房副長官にお尋ねをしたいというふうに思うんですが、総理は経済制裁あるいは船の、いわゆる万景峰号の制御については否定的な考え方を持っていられるというふうに党首討論なり記者会見なりで受け取っているんですが、もう一方で、自民党の方はやるべしということで盛り上がっているということですね。

 この総理の否定的な考え方、これについて、政府全体として協議をした上での話なのか、それともあれは総理の個人的な思いなのか、どちらですか。

杉浦内閣官房副長官 私ども、きのう党首討論を聞いておりましたが、必ずしも否定的だと私は受け取りませんでしたが。

 つまり、まず経済制裁ありきということではないんだ、拉致問題を解決する、核、ミサイル等を包括的に解決していく、そういうプロセスを着実に進めることが大事なんだという趣旨で、私は、総理は言っておられたというふうに受け取っております。

 政府としては、先生御案内のとおり、拉致に関する閣僚会議があり、そのもとで専門幹事会というのがございます。私議長を務めさせていただいておりますが。そこで今薮中局長が申されたような、政府を挙げて精査を始めております。その結果が出るのを待って幹事会を開きまして、もちろん経済制裁というのも視野に入っておりますけれども、政府としての対応を協議する考えでございます。

中川(正)委員 もう一つ、国交正常化議論がはっきりしなかったんですけれども。

 私たちは、この問題と同時に六者協議の核問題もありますが、この辺がしっかりと解決をしなければ国交正常化交渉自体にも入るべきでないというふうに思っています。それは、あの党首討論でも、小泉総理の頭の中はちょっと違った構造で進んでいるように感じたんですけれども、これも政府としての見解なのか、それとも小泉総理が国交正常化について自分なりの思い入れといいますか、思い込みだと思うんですが、それでやっているのか、これはどちらですか。

杉浦内閣官房副長官 総理のことについて私から御答弁申し上げるのはちょっと僣越かもしれないんですが。

 先生が二国間政府交渉とおっしゃっておるのは、政府代表を双方が選んで国交正常化について交渉する、何年か前ですが立ち上げて拉致問題でとんざした、あの交渉のことをおっしゃっているんだと思いますが、今のところそれを政府として、これは外務大臣からお答えした方がいいと思いますが、その点についてやるということは、予定はございません。

 ただ、きのう総理が言われたのは、この実務者協議も、ともかく拉致問題について真相を解明する、生きている方があれば取り戻すというのが政府の基本方針でございまして、それを徹底的に進めるということが日朝国交正常化に向けての一つの段階だと。六カ国協議も、これも停滞といいますか北朝鮮が拒否しておりますから今のところいつ開かれるかはっきりいたしておりませんが、六カ国協議も一つの段階だと。手順を一つ一つ追ってやっていくんだという趣旨で申されたんだというふうに私は聞いておりましたが。

中川(正)委員 私も、経済制裁あるいは船の入港禁止法案については、提出をした、一緒に法案をつくった一人として、それこそ有効に、それこそ効果的に、政府の意思としてこの外交カードを使っていくということ、これは今一番大事な局面だろうと思うんです。

 同時に、私たちの党は、もう一つ、北朝鮮に対するカードとして人権という考え方があるんじゃないかと。

 アメリカの方で北朝鮮の人権推進法というのが通過をしました。この中身は、日本の拉致問題も含めて、人権侵害に対してしっかりとしたアメリカの態度を示していこう。その中で、脱北者の受け入れ、これを難民として認定をしていく。中国に対しても抗議をしていく。そして、もちろん北朝鮮に対してはしっかりとした人権侵害に対するメッセージを出していく。同時に、NGOに対してはっきりとした補助金も流すという中身なんですね。

 イメージとしては、武力行使で、武力でもってイラクのように対応するということが北朝鮮ではされない、しないというアメリカの意思があるとすれば、あと平和裏にというと、イメージとしては、東ドイツが合併をしていった、戦争あるいは武力というものを伴わないで合併をしていった、そういう過程というものを想定しながらこうした法案が出てきているんだろうと思うんです。

 ある意味ではレジームチェンジですから、いわゆる難民、大量難民を引っ張り出すような、そういう想定をした中身が入っているわけですから、なかなかきつい法案だと思うんですよね。北朝鮮も、それに対してそれなりの反応をしてきているということだと思うんです。

 こういう流れを片方は見ながら、日本にとっても、この拉致問題というのは人権ということですよね。特にレジーム、金正日体制というものに対しては厳しく迫っていくということでありますが、もう一方の国民はどちらかというとこれは犠牲者だという考え方に立っているわけでありまして、そういう意味では、国民をイラクのように敵に回してしまうということになると泥沼なんですよ。

 そうじゃなくて、国民をしっかりと周辺に取り込みながら、あるいは情報を流して覚せいをしていく、内部からの民主化を起こしていく、そういう流れをつくっていくという意思表示を、日本としても、アメリカの人権法案に連動する形で日本なりの仕組みをつくっていきたいというふうに思っておるんです。

 それについて、政府としてどうですか。この拉致の問題も含めた、あるいは特定失踪者、これはもちろんです。同時に、向こうへ渡った、もとの在日の九万五千人の人たち、そして日本人妻等々、こうした人たちの人権というものにしっかりと焦点を当てた仕組み、日本の意思表示、これをつくっていくということについてどうですか。どういうお考えをお持ちですか。

逢沢副大臣 中川先生から大変重要な点について御指摘をいただいたというふうに思います。

 米国で成立をいたしました北朝鮮人権法でありますが、言うまでもなく米国国民また米国議会の北朝鮮に対する強い関心、とりわけ北朝鮮の人権の状況について大変疑念を持っている、憂慮をしている、そのあらわれであるというふうに私どもは理解をいたしております。特に、その人権法案の中に日本人の拉致事件、拉致事案について二カ所について具体的に記述もあるという点について、前向きに私どもも評価をいたしているところでございます。

 それを踏まえて、では我が国でどういった対北朝鮮人権政策、人権外交を進めていくか、その観点から、委員より示唆に富む御発言、御指摘をいただきました。

 今直ちにこの拉致問題の解決のための新たなツールをつくるという観点ということになりますと、いささかいかがかという感もいたすわけでございますが、しかし中長期的な将来を展望し、韓半島の非核化、そして新しい安定したこのアジア太平洋、極東をつくっていく、そういう大きな視野からの北朝鮮問題、北朝鮮の人権ということについて日本としてどう対応したらいいか。委員の御指摘も踏まえ、政府内でもいろいろと勉強をいたしてまいりたい、そのように思います。

中川(正)委員 韓国あるいはアメリカ、ヨーロッパもそうなんですが、この拉致問題について一緒にやってもらう、いわゆる共通のテーブル、具体的には六者協議の中にこの拉致問題という枠組みを入れ込んでいって同時に解決をしていくということ、これが大事なんだろうと思うんですよ。

 それをやっていこうと思うと、やっぱり共通項でくくるのは人権なんですね。彼らがこの拉致を見るときに、その人権という共通項の中で一緒にやろうという枠組みをつくっていくことができるんだという、これをそれぞれの国の国会議員あるいは関係者と議論をしているうちに私自身にもよくわかりました。そういう意味合いで、私たちがそうした仕組みをつくっていくというのは、国内で仕組みをつくっていくということは非常に大切なことだというふうに思っております。

 そのことを申し上げて、具体的にまた法案作成の中で、ぜひ与党の方もその流れに加わっていただいて、これを国際的なネットワークの中で、これは日本独自のものじゃない、国際的なネットワークの中で解決をしていくんだという枠組みづくりに尽力をいただきたいということ、このことを申し上げて、時間が来たようでありますので私の質問を終わります。

 以上です。

赤松委員長 次に、松原仁君。

松原委員 きょうは、この拉致の問題が三回目の実務者の協議によって大幅に前進するのではないかという期待感も、日本の国民は持っていたわけであります。その期待感があっただけに、落差というものが、やはり大変に大きく落胆というものが出てきていると思っております。

 まず冒頭お伺いしたいのは、この拉致問題がなぜこんなにまで解決が長引いているのか、その理由について、杉浦官房副長官、これは一般論というか所感で結構でございますから、お答えいただきたいと思います。

杉浦内閣官房副長官 このたびの第三回実務者協議、薮中団長、齋木副団長初め、平壌に乗り込んでいって、よく頑張ったと思います。与えられた条件、限られた時間、精いっぱい努力してくれたと思います。

 あの一連のあれを見ても、先生、拉致議連の幹部としてこの問題にお取り組みになっておられて、表も裏もよく御承知のお立場ですから、そんな簡単な問題ではないというふうにお察しいただけると思いますが、問題は、これは国際的な犯罪行為であるし、一応金正日委員長は謝罪したわけですけれども、長い経過がある問題でもあります。

 今度はやっと調査委員会の委員長が協議に出てまいりましたが、いろいろ特殊機関とかそういうものが絡んだことのようでございますから、先生御案内のとおり、我々は拉致問題については真相の解明、被害者がいる場合には日本に取り戻すという目標でやっておるわけですけれども、そういった時間の壁、組織の壁等さまざまあって、難航しているというのが実情だと思っております。

 さらに、我々は、今度の実務者会議によって得られた資料を十分に精査いたしまして、その上で政府としての対応を考えてまいりたいというふうに思っております。

松原委員 今官房副長官のお話でありますが、この拉致問題がなぜ解決しないか、さまざまな理由を考えることは可能だと思います。

 実は、それは、硬軟使い分けと言いながら、その硬の部分、対話と圧力と言いながら、その圧力の部分が、極めて向こうに対してメッセージとしても伝わっていないということも私はあろうかと思っておりますが、一つお伺いしたいことは、この拉致問題の解決というのは、拉致被害者の方々、被害者家族の方々にしてみれば、そのお父さん、お母さん、おじいちゃん、おばあちゃん、そういった方々が生きている間に解決をするというのは、当然この拉致問題を考える上で基本的な考え方としてあると思うんですが、これはいかがですか、副長官。

杉浦内閣官房副長官 仰せのとおりでございます。そのために我々は頑張っている次第でございます。

松原委員 残された時間は極めて少ないということは御認識をしておられますか。答えてください。

杉浦内閣官房副長官 残された時間というよりも、一刻も早く解決しなきゃならないという決意で臨んでおります。

松原委員 そういう決意で臨むとすれば、悠長な解決、時間をかけてじっくり解決というふうなことで解決が仮にできたとしても、素早い解決を目指すということは、もう今どんどんと本当に被害者家族の皆さんも年老いている。スピーディーな、もう北朝鮮のペースではなくて、それなりに日本側が新たなカードを切りながらスピーディーな解決をするべき時期に来ているという認識はお持ちですか。もう一回答えてください。

杉浦内閣官房副長官 そういう時期が近づきつつあるという感じを受けております。

 一言申し上げれば、先生方の御努力で二つの議員立法を通していただいて、制裁に関するいわばツールも、武器も政府にお与えいただいたわけでありますから、そういう制裁も視野に入れながら、今度の交渉でも、薮中団長初め、先方には厳しく日本の国内世論、家族の御意向等を伝えてあるわけですが、今後の交渉にも臨んでまいりたいと思っております。

松原委員 極めて大事な発言だと思うので、北朝鮮側にメッセージが伝わるように、もう一回確認したいんですが、つまり、この時間的な切迫感の中で、経済制裁も選択肢としてあり得る、こういうことを官房副長官はおっしゃっている、こういうことでよろしいですか。もう一回答えてください。

杉浦内閣官房副長官 視野に入れております。

松原委員 私は、今回のこの拉致問題がなかなか解決をしない理由というのは幾つかあると思っております。今までそういった外交上の基本的なカード、通常国会の予算審議入り前に成立した外為法を含むこういったものについて、それを稼働するというメッセージが向こうに伝わっていないこともこれあるだろうし、私は根本的な問題としてお伺いしたいわけでありますが、今回のこの報告書で、拉致の事案にかかわった首謀者として二人の人間の名前が挙がっております。一人は既に処刑をされている、こういうふうな話でありますが、これだけ大規模な、日本近海に来て拉致をし、戻るということを、その二人だけで行ったというふうに認識できるのかどうか、このことをお伺いしたい。

杉浦内閣官房副長官 もちろん、二人だけでやったとは到底思われません。

 今回の実務者協議で、先方から、二名の首謀者、一人については死刑、一人については十五年の長期教化刑が施行されたということでございますが、裁判記録が手に入ったわけでございます。それをまず十分精査する。そのほか処罰を受けた者についてもさまざま説明があったようでございますから、そういうものを精査いたしまして、全貌の解明、真相の解明に努めてまいりたいと思っております。

松原委員 ああいった独裁国家でありますから、いわゆる拉致事案に関して、巷間、我々は、当然それは金正日自身が関与していたのではないかと思っているわけでありますが、金正日自体が関与していなかったというふうにお考えでしょうか。

杉浦内閣官房副長官 何とも申すことができない状況だと思います。

松原委員 何とも申すことができないということは、関与した可能性を否定しない、こういうことでよろしゅうございますか。

杉浦内閣官房副長官 警察流に言いますと、関与したことを示す証拠が現時点ではないと申し上げているわけでございます。

松原委員 つまりは、関与した証拠はない、こういうことであって、ああいった独裁国家であれば十分、関与した可能性は恐らく否定できないというふうに私は思うわけであります。

 冒頭、なぜこの拉致問題が、今言った拉致被害者の御家族の皆様の切迫した時間との闘い、この時間との闘いということを厳しく認識するべきだと思うんですよ。半世紀もたって解決してもしようがないわけであって、今、現在進行形で生きている方々が命のある間にやはり取り返す、これが国家としての責任だろうというふうに思っておりますから。

 ただ、では、なぜそれがいかないのか。私は、今官房副長官が経済制裁も視野に入れてということを、この正式な外務委員会でおっしゃった。北朝鮮がそれを見て、ちょっとこれは気合いを入れなきゃいかぬな、まじめに対応しなきゃいけないなと思っているかもしれない。私が思うことは、ただ、この案件が、彼らがもしかしたら解決したいと思っていても、解決というのは、突き詰めていくと、だれがそれを指示したのか。だれが関与して、だれが了解を与えたのか。金正日自体、自身がこの拉致の問題を、みずからが行っていた可能性を私は否定できないと思うんです。これについて官房副長官、所見を。

杉浦内閣官房副長官 その点について申し上げる資料はございません。

 ただし、先ほど申し上げましたとおり、今回は裁判記録が手に入りましたので、これを十分精査するのが当面大事なことだと思っております。

松原委員 この議論はもうこれで終わりにしますが、結論は、もしそうであるとするならば、そうしたらこの問題の解決というのは実際できるのかということになるわけであります。首謀者がその二人で本当におしまいなのか。いや、その後ろにもっと大物がいるのか。最後にその一番後ろに国家のトップがいるのか。もしそうだとしたら、この問題が本当の意味で解決できるということは、私は極めて厳しいだろうと。その場合には国家として何をするかというのは、これは真剣に考えていただかなければいけないと思うんです。

 私はきょうの質問の最後の段階で、杉浦さんには前に官邸に行ったときにお話ししましたけれども、拉致問題というのは二つの側面から解決を考えなければいけないということを申し上げました。一つは、拉致被害者家族の方々のこの肉親が離れ離れになっている極めて不自然な状況を解決するために取り返す、拉致被害者を取り返す。これは当然、この案件として極めて重要な部分である。

 しかし、それは一つの側面である。もう一つの側面は、明らかに北朝鮮による拉致問題というのは日本の主権を侵害した事案である。日本の主権を侵害した事案に対して、日本が一つの意思ある国家として主権侵害に対してなおざりにして、自分自身でそれをいいかげんな解決というか、毅然としてめり張りをつけた解決をしないならば、日本の国の主権自体が、国内に対しても、そして国際社会に対しても、そういう主権を重んじない国だということに日本はなってしまう。

 その主権を取り戻すためにどうすればいいのか。拉致問題で被害者家族を取り返すことと同時にこの主権を取り戻すためにどうすればいいのか。このことは最後にお伺いしたいと思いますので、議論をしながらさらに進めていきたいと思います。

 実に今回、薮中局長、大変にお疲れさまでした。私は、今回の薮中さんや齋木さんやいらっしゃった皆様の御労苦というのは、本当に心よりねぎらいたいと思っております。

 なぜか。私は、今回の交渉において、薮中さんが北と交渉するときにおいてカードを持っていかなかった。北朝鮮が何か言ってきたとき、だったら我々はこういうことをするぞという、そういったバーゲニングパワーというんですか、切るべきカードを持たずに丸腰で行かせてしまった。丸腰で交渉に行かせるというようなことを本来国家はしてはいけないというふうに私は思っております。

 薮中さんの責任というよりは、それは小泉総理を含む今の内閣の拉致問題解決に対する責任がそこにあると私は思う。丸腰で行かせてしまった。丸腰で行きながら、五十時間、粘りに粘るしかない。自分の方から、あなた方のいいかげんな答弁だったら我々は経済制裁するぞとか、我々はまず万景峰をとめるぞとか、例えば万景峰の入港を十回を五回に規制するとか、具体的なそういうカードを薮中さんや齋木さんに渡さずに我々は北朝鮮に皆さんを送り出した。大変に申しわけないという気持ちでいっぱいであります。

 しかし、そこでお伺いしたいわけでありますが、そのときに、実際行く日ですか、我々は家族会や救う会と一緒になって薮中さんにお会いして、北朝鮮に交渉に行くに当たって我々多くの国民や世論が支持しているということを、それを一つのバーゲニングパワーにして行ってください、こういうことを申し上げたわけであります。

 そこでお伺いしたいわけでありますが、今回の北の交渉において、薮中さんは経済制裁を科する可能性について言及をなさいましたか。

薮中政府参考人 お答え申し上げます。

 私ども、今回の調査団でございますけれども、政府を挙げての調査団ということで、真相の究明、御承知のとおり、委員一番御承知でございましょうが、拉致被害者、安否不明者十名の方々のまずは真相の究明を行うということを我々の責務、目的としておりました。

 ただ、その際に、真相究明を行う際に当たって先方との厳しいやりとりがございました。その中で、当然のことながら、我々の方からは、これが進展をしないと当然日本の厳しい国内の世論、状況があるということについてはそういう形で言及いたしましたし、それは十分に先方も、こうした国会での質疑等々については十分にフォローしているようでございましたので、わかっているとは思います。

松原委員 質問は、経済制裁という言葉を使ったかということをお伺いしております。

薮中政府参考人 お答え申し上げます。

 直接に経済制裁という言葉は使っておりませんで、国内での非常に厳しい状況、これについての説明をしたということでございます。

松原委員 国内において厳しい世論がある、経済制裁を求める世論がある、こういうふうな議論が当然あっただろうというふうに思っております。

 また後でこれも政府、官房副長官にお伺いするわけでありますが、今回の交渉において、国内で、例えばマスコミのアンケート調査においては六割、七割が、こういった状況の中において北朝鮮に対する人道支援を凍結するべきだという世論調査、凍結するべきだというそういった声があるということについては北朝鮮にお伝えになったかどうか。お伝えになったかどうか、お伺いいたします。

薮中政府参考人 さまざまの北朝鮮側とのやりとりにおいては、いろいろに日本の中での国内での世論、声があるという形での言及はいたしました。

松原委員 それはお立場が政府の立場で行っておりますから、私は、十分にあめとむちのむちを外交交渉において使ってこられなかったんじゃないかと思っております。その結果として切り込むところが十分に切り込み切れていない。日本に戻ってきても、先ほどの資料がありますが、極めて不自然な部分が残ったままのそういった報告書が先ほど読まれたわけでありますが、そういった内容になってしまっている。

 官房副長官にお伺いいたしますが、やはり今回の交渉で、あめとむちというのは外交の基本であります。そのむちの部分、攻めと守りの部分、硬軟の硬の部分に関して、薮中さんが硬の部分を十分持って交渉に臨んだという印象を官房副長官はお持ちでしょうか。

杉浦内閣官房副長官 局長は交渉の当事者でしたから、ここで言っていいことと悪いことがあるとわきまえながらおっしゃっていると思いますが、薮中団長たちを送り出すときには、国内にそういう世論があるということをきっちり伝えてしっかり頑張ってきてほしいということで送り出しておりますので、いろいろなやりとりはあったものと推察しております。

松原委員 それで、質問に入るわけでありますが、今回の実務者協議で物証がもたらされた、こういうことであります。ただ、物証が幾つかあって、実際は、チャーター機が飛んでコンテナが七箱ですか、大変な多くのそういった物証が出たかのような印象を持ったわけでありますが、実態としては、コンテナ七つに満載の資料が乗っていたということではありません。まあ、何でコンテナが七つなんだというような疑問は、これはここで議論にはいたしませんが。

 この中で私が言えることは、薮中さんにお伺いしたいのは、直接物証が出てきたわけでありますが、今回の物証の中で北朝鮮に拉致された事実を証明する物証というのはいろいろと出てきたわけでありますが、今日拉致被害者が生存しているのかどうかという安否につながる物証というのは、今回もたらされた中でどういうものがこの安否に直接かかわる物証というふうに御認識か、お伺いいたします。

薮中政府参考人 お答え申し上げます。

 直接に安否にかかわる物証かどうかということで、持ち帰った物証の中でどういうのがあるかということでございますけれども、そういう意味でいいますと、もちろん、先方の主張する横田めぐみさんのものとされる遺骨ということについて、これは政府を挙げて精査、検証することになって、今しておりますけれども、そういう点からいえば、これが一つでございます。

 そして、交通事故で亡くなられたというのが、先方の説明で二件ございます。これについて、おのおの交通事故についての当時の資料というのを出してまいりました。後のお話としては、先ほどから話に出ております裁判記録というのが、どういう形で、実際に何が行われてどうしたということの、どこまで詳細な裁判があって、それについての精査がなされているのかどうかということでございますけれども、これは今その内容について精査をしている、こういうことでございます。

松原委員 今回の物証をどう評価するかということでありますが、安否情報にかかわる物証としては、三点になるだろうというふうに思っております。そうすると、前回に比べると、提供された物証の安否にかかわる物証は減っている、こういうふうなことでよろしいですか。

薮中政府参考人 前回と比較してということでございますけれども、数でどれだけの意味があるかわかりませんが、前回死亡証明書というのがあった、それを八件と数えて、それと比較してということで、そのときに、そしてまた松木さんの遺骨かもしれないと先方が言った、そういうものがございました。あのときに既に先方が言っておりましたのは、これはよくわからないと。

 というのは、幾つかの墓の中が流出して、そして、その中から出てきたものであるけれどもという前提があったようでございますけれども、そういう遺骨があったということと、そして今回の物証とを比較するというのは、必ずしも適切、適当に我々として判断はできるものではございませんので、あのときは何であったか、今回はどうであったか、質的な評価は避けたいとは思いますが、前回のは今回はっきりいたしましたけれども、八枚の死亡証明書というのは、実際はそういう死亡証明書は当時からなくて、しかし日本側が主張して要求したものだからつくった、それが間違っていた部分がある、こういうことでございました。

松原委員 実は、今回の実務者協議で、間違いなく明らかになったものは何か。デカルトの「我思う、ゆえに我あり」ではありませんが、何が間違いないものかという議論であります。出されてきた横田めぐみさんの遺骨とされる骨が本当かどうかというのは、これからの調査であります。私は、これはまた後でどこかで質問しよう思っておりますが、DNA鑑定等で横田めぐみさんのものだということが証明されない限り、私は信頼に値しないと思っています。

 通常、怪しいものは罰さずというのは、これは刑法にあるそうでありますが、北朝鮮の場合は、怪しいものは罰さずではなくて、怪しいものは罰だというふうにしないと、これは明らかに彼らが出してきているものが極めていいかげんなものが多いわけだから、仕方がないわけであります。あとの、例えば今回の松木さんの交通事故資料や田口さんのものを含め、これが本当にそうなのかどうかというのは、またわからないと。

 だから、前回の協議と今回の協議で、私は、私もこの立場にいて、間違いなく言えるのは一つだなと思うんですよ。それは何かといえば、北朝鮮側が前回八人の死亡診断書と称するものをにせものであったと認めた、北朝鮮側がにせの死亡診断書を前回出してきたというふうなこと、これは私は、今回の訪朝における間違いない事実なんですよ。彼らが認めたわけです。今薮中さんが言ったように、日本政府が、日本の行政がおかしい、おかしいと言うから、じゃ、とりあえずつくった、こういうことですね。

 私は、結局、うそを平気でつくというこの部分、今回の訪朝によって一番間違いなくわかったことは、北朝鮮が死亡診断書をうそのものを出してきた、この部分だけは間違いないと思うんですが、官房副長官、この部分だけは間違いないですね。

薮中政府参考人 前回日本側の調査団に提出になった、八人の方の向こうが言う死亡確認書というのは、当時存在していなくて、そしてそのときにつくったということを言っていた。これは事実でございます。

松原委員 しかも、これはどう言ったらいいんでしょうか、かなり、うそをつくために彼らなりに用意周到に前回つくってきている。

 例えば、ここに書いてありますが、死亡確認書八点、前回のときに出てきた死亡確認書、それは例えば、増元るみ子さんの死亡確認書、この場合に、死亡日が一九八一年八月十七日と記載されている。死亡診断名は心臓麻痺による死亡とあり、その下に死亡医師名として、手書きの署名で、チョン・ギョンイプと書いてある。そして、その下に発行機関として第六九五号病棟とゴム印が押されている。

 そして、一番下に年月日が入っていて、ここでは一九八一年八月十八日と数字のみで手書きで書いてある。これは発行年月日であるが、死亡日が一九八一年八月十七日で死亡確認書の発行が八月十八日、一日おくれ。そして、この確認書は、遺体を検視した医師が死亡翌日に作成したものだということで報道されたわけであります。極めて具体的な内容であります。

 薮中さん、これは違ったということを北朝鮮は認めたんですか。

薮中政府参考人 お答え申し上げます。

 前回の死亡確認書というのは当時存在をしていなくて、そしてそのときに、その当時につくったものである。当時というのは、日本側に渡したそのときにつくったものであるということで、今回は、おのおののケースについて、一件一件、どういう事情でどういうふうになったか、これは一からの、白紙からの調査をしたのだということで、実際に具体的にあった内容について説明があった、こういうことでございます。

松原委員 日本の法律でいきますと、これは公文書偽造ではないかと思うんですね。公文書偽造を明らかに北朝鮮はやってきた。

 このことに関して北側は、前回のあれだけの、実務者協議で真っ赤な偽り、証拠隠滅ともとれるようなことも含む偽証をしてきた。このことに対して彼らはどんなふうに言ったんですか。申しわけないと言ったのかどうか。

薮中政府参考人 先方の発言の中に、遺憾ながらという表現はございました。

 いずれにしましても、先方が言っておりますのは、今回新たに調査委員会というのが立ち上げられた。これは、ことしの五月の日朝首脳会談に基づいて金正日国防委員長が安否不明の方々の再調査を約束された。したがって、新たに今回調査委員会が設けられて、そして彼らが調査をした。その結果は次のとおりである。こういう説明がございました。

松原委員 北朝鮮側が遺憾ながらと言って話したので、わかりました、じゃ、遺憾ながらということをおっしゃったので了解しましょう、こういう議論だったんでしょうか。

薮中政府参考人 お答え申し上げます。

 我々のミッションは、何度も繰り返しておりますように、安否不明の方々のまさに真相の調査でございます。したがって、そのために全力を尽くすということでございまして、それじゃ、遺憾だったと発言があって、それでどうだこうだということでの話というよりは、我々が全力を挙げてやったことというのは、実際に本当に何があったのか、そのことの真相調査に迫ったわけでございます。

松原委員 私は冒頭、薮中さんが努力なさったことを多とすると申し上げました、丸腰で行かれて努力したことは尊重し、また本当に御苦労さまとねぎらいたいと。ただ、私は、北朝鮮のこの実務者協議に対応する対応の中身というものを、きちっとその真実を見きわめるということは、安否不明をはっきりさせるために、どうしても通っていかなければいけない。

 彼らはもともと、長い間、拉致問題はないと言っていた。認めた、そして死亡したと言った、死亡診断書を出してきた、にせものだった。私はさっき言ったように、今回の日朝協議で間違いなく一つの事実があるとすれば、北朝鮮が偽証した、前回の実務者協議において偽証したということのみが、これだけは間違いない。ほかはわからないんですよ。

 横田めぐみさんの骨と言われるものも本当にそうかどうか。私は、さっき言ったとおり、DNA鑑定でそうであるということが判明しない限りそれを信じることはできない、なぜなら偽証を国家的にやってきて何とも思わない国だから、そういうことになるわけであります。

 今回の、例えば、自動車の事故死、診断書が出てきて、また次のときは、いや、あれは間違えました。そんなことをやっているうちに時間がたってしまって、家族の方が亡くなってしまうことがあったら、これは取り返しがつかないということを私は言っているわけであります。

 だから、私は、薮中さんが、安否不明を確認するというのはそれは大事なことだと思います。しかし、相手の言っている偽証を暴いていく作業というのは、これは苦しいけれどもやっていかなきゃいけない作業であるということを申し上げたいわけであって、私は、くどいようでありますが、今回の日朝実務者協議で明らかになった点は、北朝鮮が、死亡診断書というものも平然として改ざんをするというか、つくっていく。

 つまり、うそを、偽証を平気でする国家である。北朝鮮が偽証国家であるということが明らかになったということを、私は、お立場上薮中さんが言えないだろうから、本当はそれを思っているはずなんですよ。薮中さんは恐らくそこでそれを言いたいんでしょう、それを相手にカードなしでおれはやっているんだと。それを私がかわりに言っているんですよ。

 途中で、横田めぐみさんのお嬢さんということがDNAで明らかになっているキム・ヘギョンちゃんが短時間同席したというふうな話が伝わっております。このことについてお伺いしますが、そのとき、だんなさんと言われているキム・チョルジュンさんがいて、お父さんなんという感じで言葉をかけることはあったんですか。どのぐらいいたのか、どういう会話があったのか、ちょっと、できる範囲で教えてください。

薮中政府参考人 私どもがその部屋に入ったときですけれども、キム・チョルジュン氏とキム・ヘギョンさんが二人でソファーに座ってもう既におられました。そして、もちろん、我々は数人で入りましたが、若干緊張ぎみで、特に話を交わされることはなかった。しかし、隣り合わせて二人で座っておられた。たしか三、四分、最初のあいさつをし、やりとりをした中で、最初に、私ども、もちろんキム・ヘギョンさんがおられることを初めてそのとき知りましたけれども、あいさつはいたしましたけれども、三、四分でその席を出ていかれた、こういう状況でございました。

松原委員 キム・ヘギョンちゃんは、かつて横田早紀江さんがキム・ヘギョンちゃんの発言ということで伝わっていることは、骨がどこにあるかわからないとかそういう発言をしたということを聞いているわけでありますが、キム・ヘギョンちゃんが出ていった後、そういった具体的な遺骨の話とかになったんですね。ちょっと教えてください。

薮中政府参考人 そのとおりでございますし、相当に話を何度も何度もした上で、ようやくその話が出てきたということでございます。

松原委員 これだけうそと偽証と証拠隠滅の国でありますから、私は、申し上げたいのは、この人が本当にお父さんかどうかということを考えたときに、キム・ヘギョンちゃんは、お父さんとか、じゃ、お父さん、先に帰るわとか、一切なしで、すっとよそよそしく帰っていった、こういうことですね。答えてください。

薮中政府参考人 具体的な話になるという状況の中で、つまり横田めぐみさんがどういう生活をされていたのか等々、私どもが聞き始めるというところで、キム・チョルジュンさんが、そのときの感じでキム・ヘギョンさんが少しそういう話について神経質になられたという感じがちょっとありまして、それで二人で、キム・チョルジュン氏が彼女を連れて外へ行って、そして彼だけがもう一度戻ってきた、こういうことでございます。

松原委員 いろいろと、これがどういうことなのかというのは、想像力をたくましくするとさまざまなケースが出てくるわけでありますが、少なくとも、これだけで親子関係が明らかになったとは思えない。

 それで、私は、通告の中にもあるんですが、ああいった独裁国家においてトップが、日本の小泉さんが北朝鮮を訪朝して、ゼロからやりましょう、こう言ったわけであります。トップの威令というのは、極めて強烈に、それはもうだれが見たって北朝鮮の国はトップの威信というのはすごいわけですよ。にもかかわらず、このキム・チョルジュンさんの髪の毛すら手に入れることができなかった。

 私は、これは本当に北朝鮮は単に時間延ばしをしているんじゃないかなという気がしてならないんですが、髪の毛をください、日本側の人がこう言ったときに、いや、それは特殊工作機関で働いているからだめですよという話があって、いやしかし金正日さんはすべてを明らかにすると言っているんですが、どうなんですか、こういう会話があったんですか。ちょっと教えてください。

薮中政府参考人 お答え申し上げます。

 会話というよりは、いろいろと疑問点を突きつけ、そして真実に迫りたいということで、いろいろなやりとりをいたしました。

 そうした中で、横田めぐみさんの、このキム・チョルジュンさんに会う前に私どもは病院に行ったわけであります。そして、病院の当時の主治医から話を聞き、そしてその中で、先方が言った説明、これはもともとの調査委員会の冒頭の説明をなぞりながら、しかしそれを具体的に詳しく、その病院における状況等々は説明があって、そして向こうでの説明はそこで亡くなられた、そしてあの墓に埋めた、土葬した。

 土葬した後にキム・チョルジュン氏が二年後に来て、そしてその御遺体を持ち帰ったのだという話がありましたので、我々として、一番まず確かめるべきは、その御遺体をどうされたのかというところで、そのやりとりを随分いたしました。

 当初の予定が三十分というふうに切られていましたけれども、実際には一時間半にわたって、そのかなりの部分というのはそうしたところについて、先方は、それは御両親に直接話をしたいんだ、説明したいんだという中でいろいろの話をしたということ、そこが随分と大きなやりとりでございます。

 そうした中で、さらに最後に、あなたのところでということで、身元というか本人証明ということでの毛髪の話を要求したわけでございますけれども、先方は、自分の置かれた立場上、というのは仕事の立場上それはできない、しかしこれを見てくださいということで出したのがその二枚の写真で、それは一枚が本人と横田めぐみさんが写っている写真、これは結婚直後だと言っていましたけれども、もう一枚が三人、キム・ヘギョンさんを真ん中にして一歳のときの誕生日の写真だと。

 当然、我々は彼がどういう顔つき云々というのはいろいろな情報を持っておりましたので、そういうことを含めて照らし合わせながら、さらにいろいろ、先ほどから申し上げましたような工夫をいたしたわけでございますけれども、残念ながら毛髪についてはそういう経緯であった、こういうことでございます。

松原委員 ちょっと時間がなくなってきたのでまとめて質問を逢沢外務副大臣にしようと思うんですが、十一月八日の産経新聞によると、八〇%近い国民が北朝鮮に対して、この拉致問題が、交渉が、これは十一月の八日でありますから今回の結果がわかる前であります、経済制裁をするべきだということを言っているわけであります。そして、先ほど申し上げましたように、七割近い国民が、人道支援と称する、これはやはり凍結をするべきだというふうに言っているわけであります。

 これを踏まえて判断したときに、経済制裁は、今官房副長官も視野に入れてとおっしゃいましたが、外務省としても当然それは視野に入っていると思うんですが、そこについて。

 それから、経済制裁をやるとなると人道支援というところとの平仄の問題もあるわけですよ。人道支援の凍結に対して国民の多くが望んでいる、この状況の中で。恐らく、今アンケートをしたらもっと数は上がっていると思うんですよ。このことについてどうなのか。

 それから、あとは、通告してありましたところの、松木さんの骨がなぜ違うと判断したのか。この三点を簡潔にお答えください。恐縮です。

逢沢副大臣 何度も申し上げておりますけれども、対北朝鮮外交の基本姿勢、対話と圧力、あえて私は圧力と対話というふうに申し上げてまいりました。常にあらゆる選択肢を念頭に置き、視野に入れて、適切にこの事案の解決を図っていくという立場であることを申し上げておきたいと思います。

 また、人道支援でございますけれども、二十五万トンの食糧支援、また一千万ドル相当の医薬品でございますが、一部北朝鮮のそれぞれの地域にそれぞれの人道支援物資が届きつつある、そういう状況でございます。詳しくは申し上げませんけれども、適切なモニタリングを行い、人道支援がまさに人道支援の本来の目的に資しているかどうかということは、これまでも調査をしてまいりましたし、今後も引き続き厳しくモニタリングを続けてまいりたいと思います。

 人道支援といわゆる圧力の展開の整合性ということについて御指摘をいただきました。

 まさにこの人道支援につきましては、国連が国際機関を通じまして、北朝鮮の必要な食糧あるいは医療事情、それに国際社会全体として支えてほしい、そういう呼びかけにこたえる形での人道支援でございます。既に配給が行われつつあるものについてはモニタリングをしっかりやっていく、そして残りの部分について、これは国際機関からいつどんなタイミングで要請が来るのかということになるわけでございますけれども、適切にこの問題についても処理をしていかなくてはならない、そのように考えております。

 松木さんの遺骨とされる、火葬された人骨でございます。

 前回、その可能性があるということで提供された人骨につきましては、科学的な鑑定の結果、当人、御本人のものではないということが確認をされているわけであります。

 今回提供されましたものについてでございますけれども、詳しくは薮中局長の方から答弁をいたさせたいというふうに存じておりますが、松木さんのものであるかどうか、先方として確認済みではない、あるいはまた相当高い可能性があるという状況では必ずしもないという、いわば附帯条件つきと申しますか、そういった状況の中で提供されたというふうに承知をいたしております。

松原委員 時間がないので、最後に申し上げたいのは、国民の八割がこういった、さっき冒頭にすべて問題意識は申し上げました、官房副長官にも私は時間との闘いだと。官房副長官は、経済制裁はそれは一つのツールとして出てきている、現実的に視野に入っているということをおっしゃった。

 私はもうそれで結構だと思うんですが、大事なことは、八割の国民が同意している、そして一方において、人道支援に対しては七割が凍結してほしいと言っている。今回の日朝実務者協議で明らかになったことは、北がうそをついていたということが明らかになった。ほかはまだ明らかになっていないんです。これからなんです。

 こういった一つ一つの事象を考えて、そして私がさっき言った拉致の問題は被害者の問題だけにとどまらない、日本の主権を国内外に回復することを認めさせる行動である。どのようにして国は毅然としてこういった行動をとるかといえば、それはさっき官房副長官が言ったように、経済制裁も辞さず、こういうことであります。

 ただ、問題なのは、その場合に、経済制裁法案をどのように実務的に行っていくのか、段階的にどの段階でやるのか。私は、時間的なものが発動の手続にあってもいいと思うんですよ。人の命はだんだん年とともに過ぎ去っていくわけでありますから、そんなもの、二年も三年もかけるわけにはいかない。いつの段階で第一弾の経済制裁を発動するのか。具体的な話を日本が議論していくことが、私は北側に対するメッセージになると思う。

 これだけ平然と死亡診断書がにせものですと言った国ですから、それは死んだ人だって十分生き返ることはあると私は思っている。これを実行させるためには、我々は経済制裁が必要である、そのためには、そのことを具体的にどう詰めていくかというための、内閣に拉致対策の部屋を設けなきゃいけない。

 今年の二月、三月の予算委員会でも、自民党の議員も公明党の方も、私もこれは言ったんです。みんなが言っている。今も言い続けている。中山恭子さんも言っていた。この拉致の対策室、戦略的にそれを統括する部署がなくて、どうやってこの膠着した問題を解決できるのか。私は、それは非常に不思議でならない。今回も薮中さんを行かせるのに、そういったものがあれば戦略的な発想はできたはずなんですよ。

 私がそこで申し上げたいのは、この拉致問題への経済制裁を行うということも前提にしながら、このための対策室をつくるべきだと思うけれども、官房副長官、答弁してください。

杉浦内閣官房副長官 何回もいろいろな委員会で答弁させていただいておりますが、拉致関係閣僚会議のもとに専門幹事会がございます。そこで関係省庁、政府一体となって取り組む体制ができておりますので、現時点では、先生のお考えはお考えとして承りますが、現在の体制で進めてまいる方針でございます。

松原委員 以上で終わりますが、拉致対策室と専門家会議は違うんですよ。それは言葉の違いだけじゃなくて実態が違うということを十分承知していると思いますからお願いしたいのと、経済制裁を一刻の猶予もなく段階的に行うことを強く要望して、私の質問を終わります。

 以上です。ありがとうございました。

赤松委員長 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢でございます。

 きょうは拉致問題について、特に今回の協議、安否不明者十名の再調査を白紙に戻した上で徹底的に行う旨の北朝鮮側の約束があって始まった実務者協議、これについて聞いていきたいと思います。

 協議の後の外務省は、今回の協議では北朝鮮側においても彼らなりに努力している、しかし依然として疑問な点が多い、政府を挙げていろいろと精査をする必要があると述べておられます。

 協議を終えて、北朝鮮側が努力したとしている点はどういう点を指しているのか、また依然として疑問な点が多いというその疑問な点とは何か、そして今後これらの問題を解決していくためにどんな体制でどんな精査を行っていくのか、これについてまず最初に説明をしていただきたいと思います。

逢沢副大臣 過去二回の実務者協議は、場所は御承知のように北京でございました。非常に不満足な結果であったことを受け、今回は平壌でその会議を持ったところであります。外務省、警察庁そして支援室、総勢十九名のチームを組み、真相究明を徹底して図る、事前の準備も含めて強い決意で臨んだところであります。

 協議に先立って幾つかのことについて北朝鮮側に準備を整えておくように、そういった趣旨の申し入れをいたしていたわけでございます。

 今、委員御指摘のように、そういった全体の状況は、彼らなりの努力はしていたということは認められるというふうに思いますが、具体的には、私どもの要請にこたえる形で、例えば地方から我々が面談を希望していた関係者を平壌に集め、我が方との面談を設定したというふうなこと、あるいは物的な証拠についても調査委員会を通じて提出をする姿勢があり、またその一部については実現をした。そして、何度も答弁をいたしましたが、合計五十時間近くにわたるやりとりが実現をし、かなり私どもがあらゆる角度から質問をするあるいは疑問を突きつける、そういったことについても答えたということでありました。

 当初、百五十項目のいわゆる調査票、調査項目を提示いたしておりましたが、その百五十項目のうち何らかの形で北朝鮮が言及をしたのは、八割以上、九割近くに上るといったような、一定の、前進と申し上げるのが適当かどうかはあれでありますが、彼らなりの努力の跡はうかがえる、そのように承知をいたしております。

 詳細は、局長から答弁をいたさせます。

薮中政府参考人 お答え申し上げます。

 今、副大臣の答弁のとおりでございますけれども、そうした中で、我々として、実際に調査委員会からの説明の聞き取り、我々から疑問をぶつけました。同様に、関係者、十五名になりますけれども、直接に我々の方からまた会って、そして我々の方からその人たちにも疑問をぶつけた。

 結局、そうした中で、今まさにこれから精査するところがございますそのやりとり、我々の持っているさらなる情報との点検を行う必要がございますけれども、やはり非常に難しいのは、先方が言う、亡くなったとされる際の先方の説明では、具体的な証拠、具体的な書類というのが当時焼却されていたというところが非常に大きな問題として残っているわけで、したがって、我々の疑問点、さまざまな問題点についての解明が容易ではないという状況はございます。

 しかしながら、今御説明申し上げましたように、さまざまの聞き取りを行いました、物証もございます。そうしたことの精査を踏まえて今後の対応を、さらなる真実の究明を図る方途を考える必要がございますけれども、まずは今、その精査の作業に全力を挙げるということでございます。

赤嶺委員 さっき逢沢副大臣も触れられたわけですが、過去二回の日朝の実務者協議とかかわって、今回のどこが努力されて、どういうことが疑問な点として今後解明を続けていくという問題があるだろうと思います。

 そこで、逢沢副大臣がその協議の始まる前に、横田めぐみさんの夫キム・チョルジュンさん、この方に直接面会するということは、拉致問題の解決のためには避けて通ることのできない一つのプロセスということを述べておられました。今回、そのキム・チョルジュンさんに面会して、前進はあったのか、あるいはどういう問題が残されているのか、これについて説明してください。

薮中政府参考人 まさに、キム・チョルジュン氏から相当長い時間の話を聞く、そして疑問をぶつけるという形での聞き取りを行いました。その内容についてまさに今精査をしておりますけれども、それに加えて、そのキム・チョルジュン氏から、最後にようやくでございますけれども、御遺体を彼が取り出して以降の話を聞き、そして彼が言うこれが御遺骨であるということを受け取ってまいったわけでございまして、もちろん、それについて現在政府を挙げて検証している。したがって、その検証の結果を待つ必要があるわけでございますけれども、そういうことが行われたということでございます。

赤嶺委員 そのキム・チョルジュンさんの持ってこられた遺骨だとかあるいは本人証明とか、こういうことについて大きな疑問がいまだに残されているわけですね。ですから、そこの全体像が明らかにならないと、それが前進につながっていくプロセスなのかということは今後の精査にまつほかはないと思いますが、政府としては、どうやって彼が本人である、あるいは横田めぐみさんの夫であるということの証明を北朝鮮側に求めていくつもりですか。

薮中政府参考人 お答え申し上げます。

 まさに今御指摘のとおりでございまして、まずは、先方が言うこれがめぐみさんの遺骨であるということについて、それが本当にそうなのかどうかということについて、それがまさに鑑定作業であり、これについてまず政府全体で努力をするということで現在鋭意やっているということは、御承知のとおりでございます。

 そして、それに加えて、それがまさに一つの大きなポイントにはなると思いますけれども、キム・チョルジュン氏自身がまさにめぐみさんの本当の夫であったのかどうかということについての今の御質問でございますけれども、我々としても、できれば、一番いいのは直接髪の毛でももらうということがよかったわけでございますけれども、それが、先方がいわく、彼の置かれている仕事上の立場からいってそれはできないということで、写真の提示があった。これは、先ほど御説明したとおりでございますけれども、彼がめぐみさんと二人だけで写っている写真、そしてまたヘギョンちゃんを間に挟んでの写真がございました。

 当然、我々は、彼の姿、どういう顔つきかというのはいろいろな形の情報で承知をしておりますし、そしてまた、その会ったときにも、実際に少し専門的な捜査の手法での努力はいたしましたが、その鑑定も今行っております。果たしてそれでうまくいくのかどうかわかりません。いずれにいたしましても、全体を含めての精査の作業を行っていくということでございます。

赤嶺委員 今回、そういうまだ一つのプロセスにあると思いますけれども、ぜひ引き続きそういう精査をして、なお協議を継続して真相を解明していくという努力を政府において努力していただきたいと思うんです。

 そこで、今回の実務者協議では、いわゆる核問題をめぐる六者協議の年内開催を求めたという報道もあります。北朝鮮に申し入れた内容と、それから北朝鮮側の反応について、これを説明していただけますか。

薮中政府参考人 お答え申し上げます。

 私と金桂冠外務省副相、これは北朝鮮側の六者協議の代表でございます。そういう意味では、私も何度も会って、直接にいろいろと今までから話をしてきた相手でございますけれども、二時間にわたって会談をいたしました。そして、私の方からは、この六者協議、これがやはり唯一北朝鮮の核問題を解決し得る道であるということ、そしてそれについて、年内の次回の協議の開催というのが非常に大事であると。今までせっかくやってきた作業というのが、このモメンタムを失うことなくやると。

 そしてまた、今アメリカの大統領選挙も終わりました。そうした中で、初めて六者の関係者の間での北朝鮮側との話し合いであったわけでございますけれども、アメリカの考え方も含めて話をしたわけでございます。

 先方は、六者協議自身については、それは引き続きコミットをしていると。しかし、早期に行うかどうかということについては、やはりアメリカの立場が後退していると。第三回の協議に比べて、その後のアメリカのいろいろの方々の発言を見るとアメリカの立場は後退している、したがってすぐに六者協議の再開に応じてもうまくいかないのではないか、こういう話でございました。

 私は、それは間違っていると。きちんと第四回協議で議論をすれば、アメリカの立場もわかるし、そしてこれはまさに六者協議ということで日本もいる中国もいる、そうした中で三回をやってきたわけだから、今ここでそういうことでいろいろな時間稼ぎをする、あるいはちゅうちょをする、あるいは具体的な条件を先にとろうとする、それは間違いであって、やはり大事なことは、第四回の六者協議におのおのが柔軟性を持って、そしてそこで真摯に問題の解決を図るべきではないかと。

 最後は、先方も、それについてよく検討はしたい、しかしなかなか難しい、こういうことでございましたけれども、当然、すぐに答えを言うわけではございません。その後の検討の中でそうした声が少しでも彼らの考え方に影響を与えればよいなというふうに思っておりますし、今後とも努力をしていきたいと思っております。

赤嶺委員 それでは、残った時間で、普天間飛行場の代替施設建設現場におけるボーリング調査について伺います。

 当然、施設庁は、そこの飛行場建設現場、海域ですから、ジュゴンもすんでおり、ジュゴンのえさ場もあり、サンゴ礁も豊かな地域、環境に対する配慮は十分にやったとしてもなお十分な努力が求められる貴重な海域であります。私、環境を守る姿勢がないんじゃないかということをたびたび指摘してまいりましたが、穴を掘る作業を現場で強行し、県民の大きな怒りを買っております。

 このボーリング調査を始めるに当たって、施設庁は、いわば沖縄県に設置されている環境影響評価審査会の専門家の方々がいろいろ御意見を出しておりますが、これらの意見についてどんな配慮をなさったんですか。

河野政府参考人 お答えいたします。

 ボーリング調査につきましては、普天間飛行場の護岸構造の検討等に必要なデータの収集を目的として、沖縄県の同意を得て実施しているものでございますけれども、実施に当たりましては、作業計画書の作成とか、また沖縄県の方から環境配慮事項とかいろいろな御指摘をいただきまして、私どももそれを真摯に検討した上で実施しているものでございます。

赤嶺委員 ですから、真摯に配慮したと言いますけれども、沖縄県環境影響評価審査会の専門家の先生方が、例えば、ボーリング調査については、審査会が県知事に答申する答申案の中でこのように言っているわけですね。現在実施されている護岸構造の詳細の検討のための地質調査及び海象調査により、少なからず環境への影響が生じることも否定できないことから、代替施設建設事業の環境影響評価は、これらの調査の実施によりもたらされる環境への影響も十分に検討させて行わせること。

 つまり、環境に配慮したと言うけれども、今なおあなた方の工事のやり方は環境に重大な影響を与える、したがって、もっと環境に配慮しろと。そういう姿勢が見られないという意見が続出しているわけですね。

 たまたまこの答申案は、求めたのが方法書への意見であって、ボーリング調査そのものが対象になっていないということで、そういう条件のもとでも、あえて専門家の先生方がボーリング調査に触れて、環境への配慮が足りないということを指摘されている。

 この点について、あなた方は、今までのやり方だけで十分だ、もう環境への影響は十分過ぎるほど配慮しているという立場をとられるつもりですか。専門家の先生方の意見をどのように聞かれるんですか。

河野政府参考人 お答えいたします。

 沖縄県環境影響審査会は、沖縄県において普天間飛行場代替施設の環境影響評価方法書においての知事意見を提出するに当たりまして、沖縄県内部の手続として開催されているものと承知しております。

 同審査会の答申案を、私どもとすれば、承知する立場にはまだございませんけれども、今後、沖縄県知事から提出される方法書についての意見などを踏まえ、最終的に環境影響評価の方法を決定するなどしまして、適切に手続を進めてまいりたいと考えております。

赤嶺委員 あなた方の、こういうどんな専門家が環境を懸念して意見を出しても、自分たちはそれを聞く立場にはないような態度ですね。本当に沖縄の環境を破壊するつもりですか、あなたは、防衛施設庁は。破壊されて、取り戻すことはできないんですよ。

 県の審査委員の専門家の先生は、アセス手続を通さずに進められているボーリング調査は、環境アセス法の精神を明らかに踏みにじっている。あなた方は、アセス法の精神を明らかに踏みにじって、そして口では環境に配慮していると言う、こういう言い分は一歩も通らないということを強く申し上げて、ボーリング調査の即時中止も求めて、質問を終わります。

赤松委員長 次に、照屋寛徳君。

照屋委員 社会民主党の照屋寛徳でございます。

 薮中局長、第三回日朝実務者協議、大変御苦労さまでございました。

 それでは、大変短い時間でございますので、きょうの委員会の各委員の先生方との質疑のやりとりを聞いて、私の方から幾つか気づいた点を質問させていただきたいと思います。

 まず、局長にお伺いいたしますが、横田めぐみさんの夫と称するキム・チョルジュン氏について、長時間面談をされたようでありますが、その面談の際の話の内容等を総合して、局長は、横田めぐみさんの夫という確証は持っておられるんでしょうか。

    〔委員長退席、増子委員長代理着席〕

薮中政府参考人 お答え申し上げます。

 まさに我々は今まで、キム・チョルジュン氏といろいろと突っ込んだやりとりをいたしました。彼からの説明があり、そしてまた我々が持っている資料に基づいて、そこに矛盾点がないか、またいろいろと疑問を突きつけて、そしてまた彼がめぐみさんとどういう生活をやってきたのか、いろいろなやりとりをいたしました。そして、最後に、申し上げましたように、先方から、めぐみさんの御遺骨であるというものの提供があったわけでございます。

 全体として必要なことは、こうした総合的なまさに精査の作業が必要でございまして、今ここで具体的にその心証ということを申し上げるような立場にはございませんで、我々としては、全力を挙げてこの精査の作業をやってまいりたいというふうに考えております。

照屋委員 そうすると、現段階では夫であるという確証は得られていない、こういうふうに承りましたが、きょうの当委員会冒頭における逢沢副大臣の報告によりますと、キム・チョルジュン氏から結婚当時の家族写真が提示された、こういうことでございましたが、その家族写真というのは、既にマスコミに公表された三葉の写真以外のものでしょうか。そうであれば、どのような写真であったのか、お教えいただきたいと思います。

薮中政府参考人 お答え申し上げます。

 この写真二枚といいますのは、私どもの方がまさに本人確認を行いたいということで迫ったときに、先方が、ではこれを見てください、持ってきましたということで提示した写真でございます、見せた写真でございます。

 二枚ございまして、一枚は、二人だけが平壌の市内でお二人で写っている写真だ、これは結婚直後の写真であるということで、男性と女性の写真で、これはまさに、女性は横田めぐみさんであろうと容易に推測のつく写真でございまして、隣に写っているのが確かに我々の前にいる人と非常によく似た顔であるということは言えるわけでございますけれども、相当古い写真でございますから、真偽のほどということはそれはわかりません。

 もう一枚は三人で写っている写真で、先方の説明では、ヘギョンちゃんの一歳の誕生日のときに三人で写っている、何かお祝いをしているような、そういうときの写真でございました。

 これについての提供も要求いたしましたけれども、本人が写っているということで、同様の理由からこれだけは差し上げられないんだ、しかしよく見てください、こういうことでございました。

照屋委員 マスコミ報道によりますと、外務省は家族会への説明で、提供を求めた毛髪や血液にかわる物を収集した、それはどのような物だったんでしょうか。

薮中政府参考人 これは先ほどから御説明をしてございますけれども、何かほかに本人確認ができる方法がないのかということでの工夫というのはいたしましたが、これは、具体的なそのやり方、これは今しかも検証中でございますし、果たしてそれでうまくいくのかどうかもわかりません。

 ただ、そういう事柄の性質上、具体的に言及は控えさせていただきたい、こういうことでございます。

    〔増子委員長代理退席、委員長着席〕

照屋委員 キム・ヘギョンさんとの父子関係を証明するための毛髪や血液の提供は断られた、こういうことでしたね。

 断ったときのキム・チョルジュン氏の理由は、自分は工作機関に携わっておって微妙な立場にあるということで断ったとマスコミでは報道されておりますけれども、そうすると、その調査委員会の権限というんでしょうか、調査委員会は政府から与えられた権限に基づいて特殊機関を含むすべての関連団体から調査を実施した、そういう説明と食い違うんじゃないかと思うんですね。

 一体この調査委員会の調査権限というのは、特殊機関というか工作機関には及ばないんですか、及ぶんですか。どっちなんでしょうか。

薮中政府参考人 先方の説明でございますけれども、調査委員会、調査の権限を共和国の中で得てできたものである、したがって特殊機関についても中に入り込んで実際の調査はしたということでございました。

 他方において、先方の説明でございますけれども、実際のまだ特殊機関の工作活動に携わっている者については、あるいはそうした施設については、やはりその特殊性から、公開できるもの、説明できるものには限度がある、こういう説明も向こうはしておりました。

照屋委員 各委員からも指摘をされておるように、拉致事件というのは、私はやはり北朝鮮の国家的な犯罪、日本の主権も侵しているし、被害者や家族の人権も侵害しているわけですね。そうすると、それにかかわったのは特殊機関というか工作機関と思われるわけですが、今度の調査委員会の権限というのは、その強制力を発効する、そういう権限も与えられているというふうに理解していいんでしょうか。

薮中政府参考人 お答え申し上げます。

 先方の説明でございますけれども、この調査委員会の性格として先方が説明いたしましたのは、政府から与えられた権限に基づき、特殊機関を含むすべての関連する中央機関、地方行政組織など関連団体に対し調査を実施したということで、調査権限も有しているということでございました。

照屋委員 局長は拉致被害者を診断した歯科医師やあるいは内科医からも事情を聴取したようでありますが、これらの歯科医師や内科医は、患者というんでしょうか、診断を受けた人が拉致被害者であるという認識は持っておったんでしょうか。それとも、北朝鮮の一般国民だ、こういうふうな認識で診断をしておられたのか。事情聴取をした中でわかったことをお教えいただきたいと思います。

薮中政府参考人 お答え申し上げます。

 十五名の方々からの実際に事情聴取をいたしました。いろいろな聞き取りをいたしました。そのかなりの数というのは、具体的に言えば、招待所の接待員であるとか、あるいは特殊機関の関連の病院の医師であるとかという方がかなりの数でございます。

 したがって、当然それは拉致被害者であるということを、あるいは、少なくとも特殊機関に関係する人である、そういうことは知っていたということだと思います。

照屋委員 それから、今回、横田めぐみさんの作成に係るというメモが明らかになりましたけれども、このメモの作成状況、あるいはだれが保管しておったのか、そういう点については具体的な説明はあったんでしょうか。

薮中政府参考人 お答え申し上げます。

 自筆のメモということでございますけれども、これは具体的には、北朝鮮に拉致された、そして入国をした、そこで書いた、書かれたメモでございます。

 実際にこうしたものがどういう形で保管されていたのかということでございますけれども、これは、先方はいろいろと調査した結果これが出てきたのであるということでございまして、実際に具体的にどこで保管されていたのかということについてのことは、問い合わせてもなかなかよくわからないところがございましたが、物自身としては検証が可能なものであろうというふうに思っております。

照屋委員 最後に一点だけ逢沢副大臣にお伺いいたしますが、ブッシュ大統領が再選されて、パウエル長官がおやめになったわけですが、そのパウエル長官の辞任が北朝鮮問題あるいはイラク問題あるいは日米関係に与える影響についてどのように今お考えなのか、お教えください。

逢沢副大臣 米国において、パウエル国務長官が辞任をされ、ライス新長官が就任をされたということでございます。

 この国務長官の交代が米国の外交、とりわけ北朝鮮あるいはイラク等にどういう影響を与えるか、こういうことでありますが、まず対北朝鮮外交、これはブッシュ大統領は大統領選挙のキャンペーン中また再選を果たしたその後も、一貫して朝鮮半島の非核化、また平和的解決につきましては六カ国協議を大切にすべきだ、その枠組みを活用し問題を前進させる必要がある、そういう趣旨のスピーチを一貫してなさっておられます。

 恐らく新長官のもとでも、正式な就任は来年の一月、新長官の交代は正式には来年の一月というふうに承知をいたしておりますけれども、その対北朝鮮外交の一貫性は変わらないものというふうに理解をいたしております。

 日米韓でとりわけ協調しながら、問題解決に全力を尽くしてまいりたい、そのように存じます。

照屋委員 時間です。終わります。

赤松委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時二十分散会


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