衆議院

メインへスキップ



第6号 平成17年4月22日(金曜日)

会議録本文へ
平成十七年四月二十二日(金曜日)

    午前九時三十六分開議

 出席委員

   委員長 赤松 広隆君

   理事 谷本 龍哉君 理事 中谷  元君

   理事 大谷 信盛君 理事 首藤 信彦君

   理事 増子 輝彦君 理事 丸谷 佳織君

      宇野  治君    植竹 繁雄君

      小野寺五典君    河井 克行君

      高村 正彦君    鈴木 淳司君

      土屋 品子君    西銘恒三郎君

      平沢 勝栄君    三ッ矢憲生君

      宮下 一郎君    山下 貴史君

      今野  東君    武正 公一君

      鳩山由紀夫君    藤村  修君

      古本伸一郎君    松原  仁君

      赤羽 一嘉君    赤嶺 政賢君

      東門美津子君

    …………………………………

   外務大臣         町村 信孝君

   外務副大臣        逢沢 一郎君

   外務大臣政務官      小野寺五典君

   外務大臣政務官      河井 克行君

   政府参考人

   (防衛施設庁建設部長)  河野 孝義君

   政府参考人

   (外務省大臣官房外務報道官)           高島 肇久君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 遠藤 善久君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 齋木 昭隆君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 兒玉 和夫君

   政府参考人

   (外務省北米局長)    河相 周夫君

   政府参考人

   (外務省領事局長)    鹿取 克章君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           大槻 勝啓君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁資源・燃料部長)        近藤 賢二君

   外務委員会専門員     原   聰君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月二十二日

 辞任         補欠選任

  小野寺五典君     山下 貴史君

同日

 辞任         補欠選任

  山下 貴史君     小野寺五典君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約を補足する人(特に女性及び児童)の取引を防止し、抑止し及び処罰するための議定書の締結について承認を求めるの件(条約第一号)

 国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約を補足する陸路、海路及び空路により移民を密入国させることの防止に関する議定書の締結について承認を求めるの件(条約第二号)

 国際情勢に関する件


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

赤松委員長 これより会議を開きます。

 国際情勢に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房外務報道官高島肇久君、外務省大臣官房審議官遠藤善久君、外務省大臣官房審議官齋木昭隆君、外務省大臣官房審議官兒玉和夫君、外務省北米局長河相周夫君、外務省領事局長鹿取克章君、防衛施設庁建設部長河野孝義君、厚生労働省大臣官房審議官大槻勝啓君、資源エネルギー庁資源・燃料部長近藤賢二君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

赤松委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

赤松委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。西銘恒三郎君。

西銘委員 自由民主党の西銘恒三郎でございます。

 今般の町村外務大臣の訪中について質疑をしたいと思います。

 去る四月の十七日、外務大臣の訪中、今般の日中外相会談は、双方が極めて重要だという認識では一致しておるものの、お互いに国益を背負っての主張、私は報道を見ておりまして、双方の主張が平行線をたどったのかなという印象を受けました。

 まず、今般の反日デモの状況等、いろいろな視点がありますけれども、事態が起こってしまった、まず現象としての被害の側面から私は質疑を始めたいと思います。

 御案内のように、予想以上に中国における反日デモが拡大をしております。在外公館、北京の大使館や上海の総領事館の具体的な被害状況がどうなっているのか、御説明を賜りたいと思います。

兒玉政府参考人 お答え申し上げます。

 今先生お尋ねの、在外公館、中国にあります大使館及び総領事館あるいは大使公邸の損害状況でございますが、まず北京の中国大使館の事務所につきましては、九日の事件でございますが、ガラスの破損が二十六枚、ほか、卵の投げつけ等による汚損及び大使館事務所敷地内の外灯の破損というものが確認されております。

 また、北京の中国大使公邸でございますけれども、九日の日の損害でございますが、物が投げ込まれたことによってガラスが三十八枚破損しております。また、敷地内の外灯ほかの外部施設が破損をしておるということが確認されております。

 それから上海の総領事館の事務所、これは十六日の抗議行動の際の被害でございますが、ガラス窓の破損が四十一枚、それから外壁パネル、特にインク等の投げ込みによる汚損及び傷というものが無数確認をされております。また、敷地内の掲示板あるいは事務所内のカーペットあるいはパソコンなどの設備も破損をして、また敷地内には多数のペットボトルや石が投げ込まれたものが散乱している、以上のようなことでございます。

西銘委員 私は、町村外務大臣が指摘をしておりますように、デモの行為そのものを否定するつもりはない、そのデモの参加者が破壊行為をしていることが許されないのだ。外務大臣のお考えに全く賛同するものであります。

 今般の反日デモ行為によりまして、在外公館、北京の大使館、上海の総領事館、ただいま御説明がありましたように具体的な被害が出ております。これらの被害はウィーン条約あるいは国際法上どこに責任があると考えますか。そして、これらの被害を受けた具体的な損壊の状況を修繕する費用はどこが負担すべきであると考えますか。お答えいただきたいと思います。

兒玉政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま先生御指摘の外交関係に関するウィーン条約、及び領事関係に関するウィーン条約というものは領事館の関係を規定するものでございますが、これらによって、国際法上、中国政府は、大使館や総領事館を損壊から保護し、公館の安寧の妨害といったことを防止するために適当なすべての措置をとる特別の責務を有しております。

 今般、中国において、投石等の暴力的行為によって北京の日本大使館さらには上海の総領事館に損害が生じたことにつきましては、日本政府として、中国政府はこの特別の責務を果たしていないと認識しております。

 したがいまして、日本政府としては、中国政府に対し、このような法的根拠に基づいて我が国大使館や総領事館に生じた物的損害の賠償を求めているところでございます。

西銘委員 こういう状況の中で、町村外務大臣と李肇星外交部長の日中の外相会談が展開されたわけであります。状況を考えますと、町村外務大臣も中国の外交部長も、国益を背負っての大変厳しい状況下での会談であったと思います。

 町村大臣にお伺いをしたいと思いますが、これらの在外公館の被害について謝罪を求めたとの報道がありますが、実際に町村大臣、現場で日中の外相会談を経験して、李外交部長がどのような表現を使って言及されたのか、御説明をいただきたいと思います。

町村国務大臣 十七日の午後、夕方から約三時間半にわたりまして李肇星外交部長との話し合いをしたわけでございます。冒頭、この会談の重要性を指摘した後に、この過激なデモ活動についてこちらの方から触れたわけでございます。

 我が方からは、これは既に四月十日の日に、私から王毅駐日大使に陳謝、損害の賠償、再発防止というものを申し入れておりましたので、デモは否定しているわけではないが、それに伴うこうした破壊行為というものはいかなる理由があっても認めることができないんだということを明確に申し上げたわけでございます。中国側は国際ルールに基づいて誠実かつ迅速に対応すべきであるということも申し上げたところであります。

 これに対しまして、李部長は、まあこれは外交官のやりとりですから余り一言一句という形ですべてを申し上げるわけにはいかない部分もございますけれども、まず現下の問題については日本政府が台湾の問題とか歴史の問題等々で中国国民の感情を傷つけたということが一番の根っこの問題である、デモについては中国政府はいかなることも法律に基づいて処理をするということであるけれども、この根本原因が日本側にあるということを認識すべきである、こういう主張でありました。

 そして、法律に基づいて措置しているので過激な行為は認めないし、さらに日本企業、日本の公館の安全を確保し、拡大防止に努力をしているし、今後これからもそのような措置を講じていきたい。冒頭二、三十分程度でしたでしょうか、この問題についてのこういうやりとりがあり、結論はといえば、残念ながらこの部分についてはすれ違いに終わったということになるわけでございます。

 その後、三時間以上これ以外のさまざまな両国間にある問題につきまして、特に私は、日中でこれから共同作業計画というものをつくってよりよい日中関係を築いていきたい、こういう積極的な、前向きな日中友好のさまざまな工夫、努力というものをお互いにやっていこうというような話をし、それは大筋で先方と合意を見たということであります。

 したがいまして、何か対立点ばかりが余りにも強調されるのは、率直に言って、今回の日中外相会談の全貌を必ずしも正確に反映していないと思うのでありますが、どうしてもメディアの皆さん方は対立点のみにニュースバリューがあるとお考えになるのか、そこばかりが報道されているというのは少々バランスを欠いた報道ではないか、そんな印象を持ちましたけれども、冒頭にかなり厳しいやりとりがあったというのは事実でございました。

西銘委員 今般の日中外相会談、全般的な評価としては、両方とも今回の会談を極めて重視していたという一点がまずあるかと思います。そして、率直な意見交換を行う中で、関係改善に向けた日中双方の強い意思を確認したという説明があります。

 この強い意思の確認の成果かどうかはわかりませんけれども、最近の動きが出てまいりました。具体的な被害に関しましても、この被害を修繕したいという申し出があった企業、会社が出てきたという報道が出てきております。この点は、外務大臣は中国側に何らかの変化の兆しが出てきたと考えますか。どのようにお考えでしょうか。

町村国務大臣 日本大使館そのものは、これは借り家でございまして、大家さんがいるわけでございます。他方、北京にある大使公邸とか上海の総領事館は日本国の国有財産。性格が違うということを実は私も今回の一連の動きの中で知ったわけでございます。

 今、先方が言ってまいりましたのは北京の在中国日本大使館に関する被害について、いわば家主であります外交部の関連機関から無償で原状を回復する旨のお申し出があったわけでございまして、どういう対応をしたらいいのかということを今検討しているところでございます。

 他方、大使公邸あるいは上海の総領事館、これらはさっき申し上げたように日本の国有財産なものですから、これについての先方からのお申し出は何もないというのが現在の姿でございます。

 いずれにしても、こういう動きが出てきたということは、ある種の先方の誠意のあらわれと受けとれないわけでもないのかなというふうに見ておりまして、今後の彼らの対応をよく見きわめて私どもの対応も考えていかなければいけない、こう思っております。

西銘委員 政府としましては、大家さんが申し出た修理と、大使公邸あるいは総領事館等の日本が所有しているこれらを一括して包括的に被害の補償を当然求めていくべきだと私は考えますが、外務大臣の所見を伺いたいと思います。

町村国務大臣 そういう考え方で臨んでいるわけでございます。

西銘委員 ぜひその方針を強く貫いてもらいたいと思います。

 さて、今回の日中外相会談、町村外務大臣もその後、インドネシアのバンドン、アジア・アフリカ会議のバンドンに飛んだと聞いておりますが、今回の日中外相会談が来るべき日中首脳会談へとつながらなければならないと考えております。

 小泉総理と胡錦濤主席の日中の首脳会談が、インドネシアのアジア・アフリカ会議、バンドン会議五十周年のこの会議で実現するかどうか、極めて重要なポイントだと思っております。日中首脳会談の実現の見通しについて、外務大臣にお伺いをいたします。

町村国務大臣 昨日夜、空港に飛び立つ前に、李肇星外交部長から、ちょうど今ジャカルタに着いたということで電話がかかってまいりました。具体の日程の調整は担当局長同士にやらせようという電話でございました。したがって、私の方からは、ではそういうことにいたしましょうということで、話し合っているようでございますけれども、つい今し方、この委員会がございますので直前の状況を確認したところ、まだきちんとした連絡がとれていないというか調整がとれていないという状況で、まだ確定はしていないということのようでございます。

 私といたしましては、当然開かれるものだ、こう思っておりますが、何しろ、それぞれ両国首脳の日程が大変立て込んでいるということもございます。ただ、きょう、あす、あさってと三日間、ジャカルタあるいはバンドンに両国首脳がいるという状況でございますから、その三日間のうちのどこかでそういう時間がやりくりしてとれるのではないのかな、こういうふうに思っているところでございます。

 両国首脳が現状打開に向けての率直な話し合いをする機会をつくるということは大切なことだ、こう思っておりますので、ぜひ会談は実現させたい、かように考えております。

西銘委員 町村大臣が、李外交部長との三時間に余る会談を通じて、包括的な話題の中でいろいろなやりとりがあったと思いますが、それらを総括的に判断するという条件のもとで、大臣の感覚的なものとして、この日中の首脳会談は実現するというふうに見てよろしいでしょうか。非常に感覚的な発言ではありますが、外務大臣の日中外相会談を通じての総括として、首脳会談が実現するかどうか、いま一度お伺いしたいと思います。

町村国務大臣 十七日の外相会談の中でも、日中共同作業計画というものを順次固めていって、それを実行していこうと。その第一のポイントが、あらゆるレベルの交流を拡大していこうではないか。首相レベル、外相レベル、いろいろな閣僚レベル、あるいは民間レベル、いろいろな形の交流があるということで、それらを可能な限り実現をしていきたいということについて、両国側それぞれ意見の一致を見たわけでございます。

 その一番早い機会としての、このアジア・アフリカ首脳会議の際における胡錦濤国家主席との話し合いの場をつくるということが必要であるということについても、また認識の一致があったわけでございまして、先方外交部長も、実現を重視している、胡錦濤国家主席に早急に報告して作業を進めたい、こういう発言があり、そういう形で先方の調整も進んでいる、こう思っておりますので、私は実現するだろう、こう考えているわけでございます。

西銘委員 小泉総理の訪中は、調べてみますと、二〇〇一年の十月の八日に訪中をしておりますが、それは日帰りの訪中であった。その間の訪中はない。

 それで、今般、インドネシアのアジア・アフリカ会議での日中の首脳の会談も、これは状況からしますと、総理は、敵対関係をあおるよりも友好関係を発展させることが両国にとって重要だというこの認識は私も全く同じでありますが、首脳間の交流としましては、いつもどこかの国際会議ですれ違う形での対話、本筋論としてはやはり首脳同士が両国を互いに訪問するというのが私は原理原則だろうと思います。

 小泉総理がこれから、今般の会議は別にいたしまして、いつの日か電撃的に中国を訪問する、こういう可能性を私は探るべきではないかと思いますが、外務大臣、実際に首脳間の交流を実現させるためにはさまざまな多くのハードルがあろうかと思いますけれども、とにかく首脳同士が交流をするという一点に絞って、電撃的にでもいいから訪中をすべきではないか、そのことによって、今の日中間の、私はある意味危機的な状況のようにも感じられますが、打開をしていくべきではないかと思います。

 外務大臣の御所見を賜りたいと思います。

町村国務大臣 先般の外相会談でも、アジア・アフリカ首脳会議以外にも、五月十九日に愛・地球博のチャイナ・デーがございまして、そこで呉儀副総理が訪日をされるという予定が立っております。愛知でか、あるいは東京でか、呉儀副総理と小泉首相との会談はまず実現できるもの、こう思っております。

 また、万博期間中に温家宝総理の訪日を招請するという総理の親書を渡しておきましたので、これについても先方は、真剣に受けとめる、こういう反応でございました。こういう形で、先方の総理の訪日というものを実現できればいいな、こう思っております。

 当然、日本の小泉総理が北京を訪れるということも必要なことであろう、こう思っておりますし、それが電撃的であるかどうかは別にいたしまして、しっかりと準備もしながら、そういうことが可能になるように、外務省としても最大限の条件の整備等々必要な外交努力をやっていかなければいけない、かように考えております。

西銘委員 今の日中関係、この状況をぜひとも首脳間の訪問という形で打開をしていただきたいと思います。

 外務大臣、外相会談が、どうぞできるところから頻繁にでも開いて結構だと思います。ぜひとも総理と主席の相互の両国の訪問が実現しますように、最大限の努力をしていただきたいと思います。

 さて、残された時間で沖縄の米軍基地の問題について質疑をしたいと思います。

 最近地元では、マスコミ報道、また政府の関係者がいろいろな発言をされております。例の普天間の飛行場の移設先の問題でありますが、いろいろな可能性を探るという発言がある中で、私が知る限り、政府の正式な答弁は、SACOの合意の着実な実施、すなわち普天間飛行場を辺野古へ移設していくという答弁以外には全く出ておりません。

 マスコミ報道はさまざま出てくるのでありますが、どれも政府として、閣議決定、確定をした案にはなっておりません。地元では、もう辺野古への移設はなくなっている、あるいは不可能だという期待感ばかりが膨れ上がっております。現実に私が国会の場で聞くことは、SACO合意の着実な実施という答弁に終始をしております。

 この辺のところ、小泉総理御自身も、毎日新聞によりますと、進まぬ辺野古ならやめてしまえというような報道がなされました。この報道については、去る三月十七日の参議院の予算委員会で総理みずからが事実はございませんと否定をしております。想像するに、普天間の移設がなかなか進展をしない、米軍側のフラストレーションがたまる、また我が国としてはSACOの合意で確定した辺野古の案以外にさまざまな案は出てきますけれども確定したものがない、こういう状況で進展をしているものと理解をしております。

 私ども地元の国会議員としては、決めたことを着実に実施していく、これが危険な普天間飛行場を移設する現実の解決方法ではないかと感じているところであります。万が一に、報道にありますように県外あるいは国外に普天間の飛行場が移設をされるのであれば、県民感情としては素直にこれはありがたいと喜ぶものではありますけれども、我が国の安全保障を責任を持って推進していくには、大切な安全保障、知事の苦渋の決断という表現にも見られますように、決めたことを着実に実施していく以外にないものと考えております。

 総理の発言等が報道されておりますが、外務大臣として、この辺の真意、いろいろな報道がなされている中で、現状についての大臣の認識をお伺いしたいと思います。

町村国務大臣 今の点につきましては、確かにいろいろな報道が舞い込んでおりまして、その一つ一つについて私どももあれこれコメントをしていると、幾ら体があっても身がもたないものですから一々一々は申し上げませんが、特に、今委員が御指摘になった二月十六日の毎日新聞の報道については、三月十七日の参議院予算委員会で小泉総理がその報道は事実ではない、小泉総理自身が名護市辺野古沖への普天間飛行場移設計画の見直しを指示したとの事実はないということをはっきり明言しておられます。

 私どももそういう認識でございまして、SACOの最終報告の着実な実施が必要であるということでございまして、今、そのための必要な手続を順次とっているというふうに理解をいたしております。

 ただ、当初想定したものよりは時間が大分余計にかかっているといったような現実の問題も確かにあるわけでございますが、それはそれとして、全力を挙げて、平成十一年の閣議決定に従って、普天間飛行場の早期移設、返還に向けて全力で取り組むということにいささかも変わりはございません。

 なお、並行して、今委員御承知のように在日米軍の兵力構成の見直しの議論が行われているところでございまして、総論といいましょうか共通戦略目標というものはでき、今、さらにそれに基づいて、具体的な任務、役割をどうするのか、基地のあり方をどうするのかといったようなことについてもさまざまな議論をし始めたところでございますから、その中でSACO最終報告との内容でどこか接点が出てくる可能性は排除されませんということも、これまた累次申し上げているとおりでございますが、現時点で何か具体に決まっていることがあるかと言われれば、それは全く現状ではないということだけをはっきり申し上げておきたいと思います。

西銘委員 このような状況の中で、四月の二十日、地元の新聞報道で工期の短縮案というものが示されたようでありますが、防衛施設庁はこの工期短縮案についてどう考えておられますか、お伺いをします。

河野政府参考人 お答えいたします。

 今般の御提案は、普天間飛行場を早期に移設、返還させたいとの立場からのものと受けとめております。

 当庁としましては、基本計画に従って建設に向け作業を行うとともに、一日も早い普天間飛行場の移設、返還のため、できる限りの努力を行うことが重要な課題という認識のもと、工期短縮の可能性について引き続き検討してまいる所存でございます。

西銘委員 辺野古沖のボーリング調査は難航しているようでありますが、一本ボーリング調査を実施する、この現状について、近々できるのか、あるいはもうちょっと時間がかかるのか、どうなっておりますか。御答弁をお願いします。

河野政府参考人 お答えいたします。

 ボーリング調査につきましては、気象状況や作業が安全に実施できるかなど現地の具体的な状況を見きわめた上で、昨年九月から開始をしております。ボーリング調査を始めるに当たりましては、調査箇所の位置の確認とか海底の状況等、各種の準備作業がありますけれども、昨年十一月よりボーリング足場の設置作業を実施しております。現在までに六十三カ所のうち四カ所はボーリング足場を設置済みで、一カ所は設置中でございます。

 私どもとすれば、足場の設置作業を終えた箇所からボーリング機材による掘削作業に着手したいと考えているところでございますけれども、反対派によりボーリング足場が占拠されるなど、妨害行為も現実にありまして、作業が安全に実施できないような状況が続いております。

 いずれにしても、私どもとすれば、できるだけ早くボーリング作業に着手したいと考えて、日々努力をしているところでございます。

西銘委員 ありがとうございました。

赤松委員長 次に、丸谷佳織君。

丸谷委員 おはようございます。公明党の丸谷佳織でございます。

 大臣におかれましては、中国への訪問、また本日より始まります日ロ、それから各国際会議での御活躍、本当に御苦労さまでございます。きょうは、特に日中関係について質問をさせていただきたいと思いますので、どうかよろしくお願いいたします。

 今回の日中、特に反日のデモから暴徒へ移っていった報道あるいは事実関係を見ていく中で、私が考えていることからまずお話をさせていただきたいというふうに思います。

 今回の反日デモ、そして暴徒化した背景というのは、いろいろな方がいろいろな視点でおっしゃっております。例えば、教科書問題を含めた日中の歴史問題に起因する、あるいは東シナ海のガス田の開発、そして日本の国連安保理常任理事国入りに対する中国側の反対等があって、中国国民の感情が悪化していったのではないか。また、これはどれが一つの原因というわけでもなく、すべてが複合的に反日デモへと駆り立てていったのではないかといったようなことも指摘される方が多くいらっしゃいます。

 こういったことも事実でしょうし、しかしながら私は非常に残念だなというふうに感じますのは、三月の十四日に中国の全人代での会議が終わりまして、その終了後に温家宝首相が、日中関係は中国にとって最も重要な関係の一つであって、その日中関係の発展のために、首脳相互訪問への環境づくりを進めていこう、あるいは友好強化の戦略的な研究を外務レベルでしていこう、そして歴史問題の適切な処理に努めていこうといったことを、中国側から首相の口からメッセージとして発信されていました。

 こういった前向きなメッセージが中国から送られてきていたのにもかかわらず、実際に四月にはこういった形で、日本政府の代表であります在外公館のみならず、民間人あるいは民間の企業に対してこういった暴力行為に至っていったということを非常に残念だと思いますし、暴力行為自体は許されるべきことではないというふうに憤りを持って報道等に接しておりました。また、中国に責任はない等の中国側からの発言、こういった発言に対しては、日本の国民感情の悪化を招いたということも指摘せざるを得ないというふうに感じております。

 しかしながら、日本政府の対応でございますが、デモと破壊行為というものは全く別物としまして、国際法に照らして暴力行為、破壊行為に対してはしかるべき対策と補償を冷静に求めていった、この日本政府の対応というのは評価できるものというふうに思います。

 これだけ日中関係が悪化している中ではあっても、対話が重要との視点から、四月十七日、十八日の両日、町村外務大臣が訪中されまして、李肇星外交部長またトウカセン国務委員と会談をされ、また本日から開かれますジャカルタでのアジア・アフリカ会議五十周年記念首脳会議に向けて、小泉総理そして胡錦濤国家主席との会談の道を開かれるなど、対話の道を閉ざさなかった、この外交姿勢を高く評価するところでございます。

 まず、日本政府が、今回のこの反日デモ、そして破壊行為に至っていった、特に中国国民の動向について、なぜこういった行為に走っていったのか。先ほど、いろいろな要因が複合的にあるものと思いますというふうに申し上げましたけれども、これは特別新しい問題というものは余りございません。歴史問題にしろ、国連安保理常任理事国入りにしろ、我が国は以前から常任理事国入りに対しては強く意思を表明していたものでございますし、歴史問題はずっと抱えている問題でございます。こういったことも踏まえながら、我が国としてこの反日デモの要因というのをどのように分析していらっしゃるのか、この点からまずお伺いをさせていただきます。

町村国務大臣 デモが起きた要因につきましては、李肇星外交部長の言によれば、現下の問題は日本政府が台湾問題、歴史問題、国際人権問題等で一連の中国国民の感情を傷つけたということであるという、先方政府の説明はそういうことでございました。デモをしている方々の様子というのは必ずしも正確にはわかりませんが、テレビの画面等を見ておりますと、確かに、日本の国連安保理常任理事国入りに反対というようなスローガンも何かあったようでございますし、そのほか日貨排斥というんでしょうか、日本の商品のボイコットとでもいうんでしょうか、そういったものをプラカードに掲げるようなものもありました。

 したがいまして、どれが一番大きな原因なのかというのはよくわからないところもありますし、特に、何でこの時期なのかなということ、率直に言って理解しかねる点もあるわけでございます。中には、これは私の意見というよりは、報道されている意見では、これは中国国民の国内的な社会不安とか不公正感とでもいうんでしょうか、そういったもののある種のあらわれなんだという解説をされる方もいらっしゃいます。これは私は、そこのところまではよくわかりませんけれども、そういう面もあるのかもしれません。よくそこはいろいろな識者の分析にまちたい、こう思います。

 いずれにしても、いろいろな要因が複合的に作用してああいうことになったんだろうと思います。しかし、デモはデモとして、中国の国民の動向でございますから、我々もそれは率直に受けとめなきゃならない、考えなきゃならないところもあるんだろうと思いますが、ただ、そのことと今委員言われたような破壊活動あるいは邦人に対する暴行といったようなものを許すということは全くできない。それは全く別の次元の話として、そこは厳しく峻別をして先方にきちんとした対応を求めていくということが必要である、こう考えているところでございます。

丸谷委員 ありがとうございました。

 外務大臣が実際に訪中をされまして、今おっしゃいましたように、破壊行動に対しての日本の考え方、また補償、謝罪等の毅然とした発言をされた、こういったことを受けまして、中国側の方もデモ抑制の努力を見せ始めたというふうに思います。また、対話によって補償の動きも見られてきたということは、これは評価すべきことであろうというふうに考えております。

 今、大臣から御答弁をいただきました、今回会談なさった中で、今回のデモの背景には日本側の一部の歴史観が中国の国民の感情を傷つけている、こういったことの理由によってデモが起きているという発言が中国側からあったということをおっしゃいました。本当にこの日中間の歴史問題というのは非常に難しいセンシティブなことでございますけれども、今回外務大臣が会談をされた中で、日中の共同歴史研究をしていきましょうという提案をされまして、これで意見が一致したというふうにもお伺いをしております。

 しかしながら、この日中の実際に行われるであろう歴史対話あるいは歴史研究というのは本当に非常に難しい。どこから何を手始めにしていって、どこをゴールにしていくのかというのが非常に難しいものでもあろうなというふうに感じております。

 ちょっとその点について私の考えを述べさせていただきたいんですけれども、例えば西ドイツとポーランドの二カ国間におきましては、一九七二年以来、二カ国間によって国際歴史共同研究ということが行われました。これはドイツ側からの働きかけがございまして、この二カ国間は非常に不幸な歴史事実があるわけでございますけれども、ともすれば歴史というのは一国の行動あるいはナショナルヒストリーというのを必要以上に美化してしまう傾向があるということを十分に踏まえまして、進出か侵略かといったようなことにとらわれず、二カ国間、ドイツとポーランド両国の関係史のような全体像を目指していったというようなことが一つ例としてございます。

 また、ドイツとフランスの間では、二カ国間のみならず、お互いの歴史を学び合うことによって相互理解を深めていくための活動というものも行われています。

 今、EUというのは大きな一つのまとまりになって経済、文化の中で非常に深い交流がなされているわけでございますけれども、このEU域内でも共同のEU歴史研究というものがなされています。実際に研究がなされたからといって、すべてが、各国が歴史を一つ共有しているというものでは決してないわけでございますけれども、一つ、こういったドイツ、ポーランドといった取り組み、ドイツ、フランスの取り組みというのは非常に参考になるのかなというふうに考えております。

 特に両国間の歴史、二カ国間の一つの歴史の事実に焦点を当てて日本と中国の見解をともにするということも必要なことでございますけれども、両国関係史というものも日中関係にとっては一つ有効な視点になるのではないかなというふうに考えております。

 というのは、大戦時の日本の行動は、これは否定するものではございませんけれども、その後の日本が中国に対して行ってきた援助も日中間の両国関係史の一つになっているわけでございます。こういった部分はなかなか中国にとっては、特に若い人たちに知られていないのではないかなと、今回のデモに若い人たちが多く参加したということもあってそのように思うことから、ぜひ日中共同歴史研究の中には日中の両国関係史という視点も入れてみてはいかがかというふうに私は考えるわけですが、大臣、もし何か御意見がありましたら、ぜひお伺いをさせていただきたいと思います。

    〔委員長退席、大谷委員長代理着席〕

町村国務大臣 今、丸谷委員から大変貴重な御示唆をいただきました。

 日中の交流の歴史はもう二千年を超える大変長い長いものがあるわけでございまして、その間、さきの大戦の期間、大変不幸な時期があった。しかし、その後、戦後六十年、日本はまさに平和国家としての道をしっかりと歩んできた。そのことに私どもは自信を持っているからこそ、今回、安保理常任理事国入りということを自信を持って今主張しているわけでございます。

 そういう中で、なかなかこれは国と国とで歴史認識を一にする、共有するということは、正直言って容易なことではないわけでございます。今委員がお触れになったドイツとポーランド等のいろいろなやりとりも、私も詳しくは存じ上げませんが、真摯な研究が行われたと聞いております。

 日韓では、御承知のように三年ほど、それぞれの学者、学識経験者が集まりまして、古代史、中世それから近現代と分けて、相当突っ込んだ議論をしていただきました。近々最終報告書がまとまるというふうに聞いております。特に、近現代史の部分については、率直に言ってそれぞれの主張があり、何か千ページを超える膨大な報告書ができ上がってくるというようなことを、先般、ちょっと関係者の方から伺ったところであります。

 一遍に日韓の間でも日韓の共通の歴史認識というものが急にできるものではないにしても、ある部分でも、少しずつでも共通の部分が広がっていくということが大切なんだろう、こう思いまして、先般の日韓外相会談の席で、引き続き、メンバーを入れかえて、また新たな思いでこれをやろうではないですかという提案をし、先方からもそうしましょうという御返事をいただきましたので、日韓の歴史共同研究は引き続きやろうということになりました。

 日中の間でどういう形にしていくのか。余り最初から限定をつけるということは、私、かえって何か一定の結論を導くためだけの研究になってしまってはいけない、こう思いますので、余り一定の限定をつけずに、幅広く日中間のかかわり合いというものを、お互いに共通認識が持てる、そういう努力をしようという気持ちを持ちながら、しっかりと学識経験者の皆さん方で研究ができる場をつくりたいということを申し上げ、先方もこれに対して前向きに検討したいという返事があったわけでございまして、今後この問題はさらに引き続き両国間で検討を詰めていきたい、かように考えているところでございます。

丸谷委員 今回のデモ、今週末もひとつ注意して見守っていかなければいけないと思っておりますけれども、近々中国では、五月一日のメーデーそして五・四運動の記念日など、今後のデモに対してインターネット上でまた呼びかけがある等の報道にも接しております。

 今後のデモの広がりというものが懸念をされる中、中国政府あるいは中国の有識者から、こういったデモと破壊行為というのは別であるといったような抑制を求める声も出てきておりますけれども、今の外務省が何か今後のデモの活動について予測しているもの、情報を入手しているものがあれば、お伺いをしたいと思います。

兒玉政府参考人 お答え申し上げます。

 政府、外務省としましても、現在、先生御指摘の五・四運動の記念日に向けた動きを含めて、中国における今後のデモ活動に関する動向を注視しております。また、政府としては、インターネットその他の方法を通じて、情報の収集には鋭意日々努力をしているところでございます。また、中国では、十九日でございますが、李肇星外交部長が当面の日中関係についての報告を行いました。その中で、許可されていないデモ等の活動に参加しないよう呼びかけを行ったと承知しております。こうした中国側の再発、拡大防止に向けた取り組みが実際に実効的な措置につながるかどうかを今注視しているところでございます。

 いずれにしましても、政府としては、引き続き、中国側に対して再発防止を求めるとともに、中国におきます在留邦人、さらには日本企業の安全と利益が損なわれないよう、必要な対応をとっていく所存でございます。

丸谷委員 民間の企業の皆さんも、営業停止等、非常に経済的なダメージも多くこうむられているというふうに存じております。また、在外公館等の安全対策また注意喚起等も十分に行っていく努力をぜひ引き続きしていただきたいと思います。

 けさ幾つかの新聞に、東シナ海のガス田共同開発協議へというような報道が出ておりました。この点について次にお伺いをしたいと思うんですけれども、まず、日本政府は東シナ海の天然ガス田開発問題で中国が提案する共同開発の協議に応じる方針を固めたというふうに報道ではございます。

 私の今理解しているところでは、さきに、四月の十三日ですか、政府は東シナ海のガス田の試掘権の手続を開始したというふうに理解をしておりますけれども、この共同開発協議の状況、まず事実確認からさせていただきたいと思います。

    〔大谷委員長代理退席、委員長着席〕

近藤政府参考人 お答えを申し上げます。

 まず、試掘権の設定の関係でございますけれども、日中の中間線の東側海域におきまして、影響を及ぼしかねない中国側の探鉱開発に対しまして、我が国の主権的権利が侵害されることのないように適切に対応することが必要でございます。

 このために、我が国の主権的権利を確保すべき緊要性の高い海域につきまして、御指摘のとおり四月十三日でございますけれども、試掘権設定の出願の処理手続を開始したところでございます。恐らくこの手続には二、三カ月ぐらいかかる、こういうように考えておるところでございます。

 また、ほかに、今御指摘の中で中国側との共同開発の点につきましては、私ども従来からこの共同開発は、一般論ではございますけれども、境界が画定していない水域において採用され得る国際的な解決方法の一つだというように考えておるわけでございます。

 ただ、これまでの東シナ海での資源の共同開発につきましては、幾つか、中間線の例えば日本側のみを開発対象とすることなどを前提として、中国側からの提案が行われております。我が方との考え方と相入れないところがございます。そういう意味で、私どもは、まず中国側から春暁油ガス田等に対する情報の提供と開発作業の中止ということをしていただくのが前提、こんなふうに考えてきてございます。我が方の考え方と相入れる、イコールフッティングな内容のものであれば、もちろん議論をすることはこれからしっかりとしていきたい、こんなふうに考えておるところでございます。

丸谷委員 実際には、このガス田の開発につきましては、日本単独でやるよりも日中で共同でした方が、輸送コストなどを考慮すると日本にとっては国益にかなうという点も指摘をされています。

 今後のタイムスケジュールというか、この試掘権の手続は日本としてこのまま粛々と進めていく中で、そして五月ぐらいに日中実務者協議でこの共同開発というのが煮詰められるという理解でよろしいんでしょうか。

近藤政府参考人 まず、私ども政府としての試掘権の設定の手続は、今、既に大臣の指示を受けまして作業を始めました。これは鉱区が非常に細かく分かれておりまして、ちょうど私どもが鉱区設定をしようとしておりますエリアが約一万ほどの鉱区になります。その一万ほどの鉱区の中のどこを優先的にやるかといったことの調整をした上で鉱区設定をいたします。また、関係都道府県との協議といったこともございますので、手続的には二、三カ月を要する、こんなふうに考えておるわけでございます。

 もちろん、それと並行いたしまして、中国側から具体的な提案、五月に実務者協議ということでございますので、そういう機会をとらえて、我々にとって受け入れ可能な具体的な提案をいただいてじっくりとよく相談をしていきたい、こういうふうに考えておるところでございます。

丸谷委員 わかりました。

 五月の実務者協議、日中で、お互いの国益にかなうことであれば共同してこれは開発していくことも可能になるわけでございますけれども、その協議の中で、お互いの国益にかなわない現実に向き合うことになる可能性もあるわけでございます。例えば海域をどこに設定するかですとか、あるいは利益の配分をどうするか、こういったことに関しては、もし協議が決裂をして共同で開発をできなくなった場合は、日本単独で開発をするに当たって安全面の確保というのが非常に重要になってくると思います。

 実際に、この試掘権の手続の終了まで二、三カ月かかって、その終了後からすぐ開発が始まるわけではないと思います。今から事前の安全対策というものを十分に政府として考慮し、方策を考えるべきだというふうに思いますけれども、この点についてはいかがでしょうか。

近藤政府参考人 まず、現時点で私ども試掘の計画を具体的に有しておるわけではございません。あくまでも仮定のお話といたしまして、将来、民間企業が試掘をしようとする場合には、今先生御指摘のような問題点が多々ございます。その時点での諸情勢を踏まえながら、民間企業とよく相談し、それから外務省、防衛庁、海上保安庁といった関係省庁間で連絡を密にとりながら適切に対応したい、このように考えておるところでございます。

丸谷委員 ありがとうございました。

 では、最後に大臣に、昨日ロシアから、私にはようやくといった気がするんですけれども、フリステンコ・エネルギー相が来日をしていただきまして、本日から貿易経済日ロ政府間委員会第七回会合が開かれるものというふうに思っております。

 この会合では、大臣が以前に訪ロされたときにもうロシア側に投げております日ロ貿易投資促進機構のロシア側の設立ですとか、あるいは、ロシアに対して技術支援等を行っている日本センター邦人職員に対する労働許可手続の停滞等の回答も得られるといいなというふうに思っているわけなんです。ロシアのWTO加盟の問題もございますが、今回のこの第七回会合についてどのような達成目標を立てていらっしゃるのか、この点について最後にお伺いをさせていただきたいと思います。

町村国務大臣 本日の午後から、貿易経済日ロ政府間委員会というものが開かれます。先方からフリステンコ大臣がお見えになるということでございまして、プーチン大統領の訪日に向けた経済分野におきます準備を進めるために大変重要な会議である、かように認識をしておるところであります。

 いろいろなテーマを議論することになろうと思います。エネルギーの問題、あるいはロシアのWTO加盟の問題、先端技術の交流、漁業、運輸、観光、いろいろなテーマがございます。今委員がお触れになったようなさまざまな問題も積極的に前向きに議論をしていきたいと考えております。特に、ロシア側に対しましては、日本の民間企業が直面をいたします対ロ投資というものが幾つかトラブっているようなことも実は起きておりまして、こうした具体の問題につきましてもより積極的な働きかけをしていきたいと考えております。

 なお、たしか昨日は中川経済産業大臣も、特にエネルギー問題を中心としてフリステンコ大臣との話し合いも行われたとも聞いております。そういったものの積み重ねの中から、今後、日ロ関係を大きく改善するために重要なステップとしてこの会合を成功に導きたいと考えているところでございます。

丸谷委員 以上で終わらせていただきます。どうもありがとうございました。

赤松委員長 次に、増子輝彦君。

増子委員 民主党の増子輝彦でございます。

 町村外務大臣、大変お疲れのところ、御苦労さまでございました。

 大変厳しい日中関係の中にあって、外務大臣としてはやはり町村外交の腕の見せどころではないのかなと。我が国のしっかりとした外交方針を進めていかなければならない。そういう意味では、災いを転じて福となすという言葉もございますが、日中関係の長い歴史の中で、今回の反日行動につきましては、これを一つの教訓として、私どもはしっかりと主張すべきところは主張しながら、私どもの外交を進めていきながら、国益というものを損なわないようにしっかりとした外交を進めていくことがやはり肝要かと思っております。

 そういう意味では、外務大臣、いつも申し上げますが、創造的な志の高い外交というものを目指す町村外務大臣としては、本当にここは腕の見せどころということで私は期待をいたしておりますので、一連の今回のこの反日行動についてのしっかりとした対応をしていただきたいと思います。

 そこで、実は町村外務大臣、今回のこの中国の反日行動につきまして、率直に、中国とは一体どのような国家だという認識をお持ちになっているんでしょうか。例えば、同じ小泉内閣の中で中川経済産業大臣は、中国は怖い国だという発言もされておるわけであります。あるいは中山文科大臣は、教科書検定の問題を初めとして大変勇ましい発言もされているわけでありますが、一体いつまで謝ればいいのだろうかという疑問も文科大臣として発言をされております。

 外務大臣として、日中関係を大事な町村外交の柱、それは我が国の大事な外交方針でもあります。その国が一体どういう国なんだという認識をしっかりと持って当たらなければ、この日中関係の改善はなかなか容易ではないのだろうという考えを私は持っておりますが、町村外務大臣として率直に、中国とは一体どういう国なんだと、一連の今回の反日行動を含めながら、大臣のお考えをお伺いしたいと思います。

町村国務大臣 この委員会において、いつも増子議員から大所高所から大変難しい御質問をいただき、その都度いつも適切なお答えができていなくて申しわけなく思っておりますが、中国がどういう国であると認識をするのかというお尋ねでございます。

 私は、すべての国、どんなに人口があろうとも小さかろうとも、それぞれの国というものが、今、世界全体に百九十一あるわけでございます。それぞれの国に文化があり伝統があり歴史があり、そこに住む人がおり、それぞれ重要なパートナーであり、またそれぞれの国とできるだけ友好関係を保ちながら世界の中でそれぞれ一緒に生きていくということが、このグローバル化した社会の中で求められていると思います。

 特に、中国というまさに地理的に隣の国であります。そこには二千年を超える長い交流の歴史がある。しかも、さきの大戦中に日本が中国に対して侵略を行い中国の国民に多大な損害を与えたということについて、これは遠いどこかの国ではない、まさに隣国として大変重要な歴史的なかかわりを持つ国である。そして、その後、戦後六十年、日本は平和国家として中国とよりよい関係を結ぶべくいろいろな努力をし、日中国交正常化が行われ、そして今、今日があるんだろう、こう思っております。

 そういう意味で、私は、日本にとりまして中国というのは非常に重要な国。日本にとって幾つも重要な国があります。アメリカも重要、韓国も重要、ロシアも重要、それぞれ重要でございますが、やはり中国というのは日本にとってお隣組であることをやめることができない国である。しかも、その国が今急速に発展を遂げているという事実も見過ごすことができない大きな要素であろうと思います。

 そういう意味で、私は、この日中関係をよりよい関係にしていくこと、これは、時として中国が、日本国民の立場から見まして、何でこんなに何度も謝罪を要求するんであろうかとか、随分高圧的ではないかとか、例えばこういう事件が起きたときに何で素直にやはり悪かったと言わないんだろうか、そういうような、時として理解しがたい部分があることもあります。

 しかし、それはなかなか、国と国との理解というのは本当に難しい。彼らも、日本のいろいろな発言というものを、何でここで日本の枢要な人がこういうことを言うのかといって不思議に思うこともきっとあるんだろうと思います。だから、そういう意味で、まずお互いの無用の摩擦、誤解というものを取り除くためのより活発な交流に基づく相互理解というものを今まで以上に深めていくということが大切なんだろう、こう思います。

 したがいまして、私は、この中国という大切な国、重要な国とより一層、やはり基本は友好的な関係を築く、しかしただ友好、友好と言っていれば友好な関係が築けるわけではないわけでありまして、具体的な取り組み、具体的な発言というものをやはり積み重ねる中からしっかりとした真の友好関係を築いていくということが大切なんだろうと思います。

 委員の御質問に対する何分の一の答えにしかなっていないと思いますけれども、そんな思いを持ちながら、外務大臣として日中関係をより少しでもいいものにしていく最大限の努力をしていきたいと考えているところでございます。

増子委員 大臣の発言から、例えば中川経済産業大臣のように怖い国だとか、そういう発言は当然できないということは私は承知をいたしておりますので、そういうイメージといいますか考え方というのを求めるつもりはございません。

 ただ、率直に申し上げて、長い歴史の中で、先ほど大臣がおっしゃったとおり、二千年の歴史の中で、この中国との関係というものは、まさに日本にとってはやはり欠かすことのできない国家であることは間違いありません。特に、戦後、日本がずっと反省を繰り返しながら、時には謝罪もしながら、そして一九七二年に田中元首相が訪中をされて、日中共同声明によって国交正常化という道筋をつくった後の日中関係というのは、新たな段階に入ったということは申し上げるまでもございません。

 そういう中で、本当に、今回の一連の動き、あるいは、かつて天安門事件初め幾つかの問題点がこの中国にも起きているわけでありますけれども、率直に言って、大臣、この国は信頼ができる国家なんでしょうか。そのことをひとつ所見を伺いたいと思います。

町村国務大臣 結論的に言うならば、私は、信頼できる国だ、こう認識をいたしております。

 確かに、日本と中国では国家の成り立ちも違いますし、また国の基本的な価値観ともいうべき部分で、日本は自由と民主主義、市場経済、基本的人権、そういうもので構成をされている国だ、こう思います。中国は基本的には共産党一党独裁体制という意味で、彼らは彼らなりの民主主義の感覚というのはあるんだろうけれども、普通の諸外国が持っている民主主義の国家という意味ではやはり違う部分がある。社会主義、共産主義の中での市場経済という、トウショウヘイ氏がまことにたぐいまれな国家運営をし始め、それはそれである意味では成功をおさめているからこそ今日の姿があるんだろう、こう思います。しかし、なかなか、基本的な価値観において日本と完全に共有できるものがあるかというと、時として違和感を覚えるのは、そうした国家の基本をつくっている価値観というんでしょうか、それがやはり違うんだなということを折に触れて感ずることがございます。

 しかし、だからといって、では信頼できないかといえば、私はそんなことはない。やはり、中国というあの面積的にもまた人口的にも大きな国を統括して、一つの組織として、国家として運営をしていくためには、ああいう中国共産党というものの存在が歴史的にもあり、そしてそういう形をとらないと国家を統制できないという、我々にはなかなか理解しがたい、そういう国家の成り立ちというのもあるんだろうと思いますので、それは向こうは共産主義で日本は自由主義なんだからといってその違いだけを簡単に述べてしまうことも余りにも割り切り過ぎなんだろう、こう思います。

 しかし、だからといって、国家体制が違うからといって信頼できないかといえば、そんなことはない。私は、信頼に足る国だと思って、今後とも友好関係を体制は違っても確立していく、そういう努力をすることが大切なんだろうと思っております。

増子委員 そういう町村外務大臣のお考えにある意味で私は反して、小泉外交というものについての危うさを実は大変感じているわけです。

 小泉首相は、いつもテレビのぶら下がりで、友好的にやる、率直に話し合えばわかるということをお話しするだけであって、それ以外は何も実は話をされない。毎日毎日、冷静に対処すべきだ、友好関係が重要だ、そういう発言だけを実はされているわけでありますけれども、それに対して、では具体的にどういうことをやっていくんだということがなかなか小泉首相の発言から出てまいりません。

 例えば、先ほども大臣からのお話のとおり、バンドンでの会議で胡錦濤主席と会えるという前提での、今調整中なんでしょうけれども、これは以前から再三外務大臣にも私は申し上げておりますが、三年半も両国首脳がお互い訪問できないという状態はやはり異常ではないのだろうか。外務大臣は時々、そういう私の質問に対して、いや海外の国際会議のときに会っているからという話をされますが、それは私は、外で会うことの重要さと相互訪問するということの重要さというのは、やはり全く質が違うと思うんですね。

 それは、はっきり申し上げて、表現は悪いかもしれませんが、ついでに海外で首脳会談をセットする。それは大臣、例えば二時間も三時間も時間がとれるんでしょうか。率直に、信頼できる国同士という関係をつくるときに、それで国益を最も重視する大事な外交の中で、海外でのついでの首脳会談で、本当にこの国のことを私たちは総理大臣に一任していいのだろうかという疑問は常に実はつきまとうわけであります。

 そういう意味では、小泉外交はある意味ではもう八方ふさがりだ、全く小泉外交というのは機能していない。もちろん、今回の中国の問題、韓国も、これも御質問申し上げましたけれども、ことしから大きな政策転換になってしまって、これも大変重要な課題になってきた。北朝鮮も同じように拉致問題が一向に進まない、もう行き詰まってしまって、これは小泉首相の二度の訪朝によっても何ら進まない。あるいは、アメリカとの関係でも、これはまさに牛肉問題を初めとしてさまざまな問題が表面化をしてきた。ロシアの問題についても、やはりプーチン大統領の訪日も延期になって、北方領土の問題も大きなネックになっている。

 そういう意味で、小泉外交というものがやはり八方ふさがりだ、私は、それは町村外交と全く相反するような、国益を損なうというような方向になってしまっているのではないだろうかというように実は危惧をしているわけであります。この八方ふさがりの小泉外交と町村外交とのずれ、あるいはまさに閣内不一致的なものがないのか。その件についての御所見を伺いたいと思います。

町村国務大臣 常日ごろ、外交関係の重要な問題につきましては、私は小泉総理といつも意見を交わし調整をしながらやっておりまして、総理と外務大臣が東と西を向いて歩いていくというような姿になっているわけではない、こう私は受けとめております。

 確かに、委員御指摘のように、両国首脳が相互訪問、それは私は、できないのとできるのとどっちがいいかと言われれば、それはできた方がいいことはもう論をまたない。先ほど西銘委員からも同じようなお尋ねがございましたが、それは相互訪問できた方がいいんだろう、こう思います。

 そういう意味で、私は今回の訪中の際に、総理の親書という形で温家宝首相の訪日をお勧めするという手紙を渡してまいりましたけれども、先方も、これは大切な手紙だ、早速温家宝首相にお渡しをし検討するというような反応があったところでございまして、そういったことをいろいろ積み重ねながら、今度は小泉首相が北京を訪問するという環境をつくるような、そういう外交努力はやはり今後とも一生懸命やっていかなければいけないだろう。

 ただ、それはそれとしてやはり、昨年も二回、ラオスとチリで会った。今回まずインドネシアで会うということは、僕はそれはそれとして大変意味のあることだし、日程調整がつけばぜひお会いになって、また率直な話し合いをすることは大切なんだろうと思います。

 あと、委員、それぞれの国について、八方ふさがりという表現を最近は使われますが、確かにそれぞれの国にそれぞれの問題があります。しかし、それは何も今に始まったことではございませんで、ある意味では一番重要な国であるアメリカとの間にもっともっと厳しい、貿易戦争というような言葉まで使われて、数多くの問題で対立したこともありました。しかし、それらをみんなそれぞれの努力で乗り越えて、それぞれの国との関係を築いてきております。

 例えば、日ロだって、確かにそれは北方領土問題は一刻も早く解決したいと思います。しかし、日ロ間での貿易・投資も、レベルは低いながらも、最近はかなりふえてきていたりするというような実情もあります。

 日中間においても、御承知のとおり貿易・投資あるいは人の往来は大変ふえてきているというような状況を、やはりしっかりとつくっていくということが外交の役割だろう、こう思っておりまして、確かにそれぞれの国との関係で問題がもちろんあるわけでございますが、一つ一つ着実にそれらを解決していく努力というものを、今後とも全力を挙げて取り組んでいきたいと思っているところであります。

増子委員 大臣、小泉首相は常々、靖国神社参拝をやめたら日中関係はうまくいくのか、ほかにも懸案はいっぱいあるというふうに発言されているんですね。

 では、例えば日中関係で靖国神社以外の懸案事項というのはどういうものがあるんでしょうか。

 それは、小泉首相の認識と町村外務大臣との認識が、そこで常々外交問題についてはしっかりと打ち合わせをしながら同じ方向で動いているというような発言を先ほどされたと私は認識しておりますが、仮に、靖国神社参拝以外に日中間の懸案事項、教科書問題あるいは先ほどの油田の問題等々ありますが、それはもうとっくに以前からわかっている問題でありますが、ほかに何があるんでしょうか。お考えを伺いたいと思います。

町村国務大臣 項目だけを挙げるならば、今委員御指摘のあった教科書問題。先方からの指摘です。私どもは別に問題があるとは率直に言って思っておりませんけれども、教科書の問題。あるいは、これも御指摘のあった東シナ海における資源開発の問題、さらには海洋調査船の問題といったようなこともございます。あるいは、これは円満に今落着しつつございますけれども、対中ODAの円満な終了といったようなこともあると思われます。

 そのほか、例えば遺棄化学兵器問題というような問題もあります。これは別に懸案というよりは、主として先方の事情でなかなかこれが進んでいないというようなこともあるものですから、先般の外相会談の中でも、中国側でもう少しこの作業は加速化するようにやってくださいというような話もいたしました。

 あるいは、これは大変大きな問題として今ホットな問題になっているとは私ども思っておりませんけれども、台湾の問題。あるいは、台湾にかかわる先方の、法律をつくりましたけれども、こうした問題。あるいは、幅広い意味での、これは防衛交流の中で解決されるべきと思いますけれども、中国の軍事費の急増が長い間続いている、そこに透明性が足りないという問題がある。その問題にかかわって、実はEUの対中武器輸出の禁輸を解除するという問題もある。

 そうやって挙げていくと、確かにいろいろあってこれは大変だということになりますが、私はそれぞれ一つ一つまたしっかり、これは中国との間で先般この問題はこういう形で合意をし処理をしていこうということについて、かなり前向きの合意も幾つもつくることができた、このように考えておりますので、数はたくさんありますけれども、もうそれぞれ、どうしようもない、お手上げだという状態では決してない。一つ一つしっかりと解決をするために、日中で共同作業計画というものを着実に積み上げていって、それをちゃんと実行していこうということで、先方外務大臣との合意をつくったわけでございます。

増子委員 今、大臣、幾つか懸案事項を挙げられました。しかし、外務大臣同士の話し合いが何度か行われております。それから、さまざまなルートで日本にも中国側からメッセージが発信されておると思います。

 大臣は、何度か私の質問に対して、靖国神社参拝が日中間の最大の懸案事項であることは明確である、相互訪問もできないことの最大の問題であるという発言をされております。今回のこの反日行動に対して、破壊活動、これは大変なゆゆしき問題であります。我が国はこういうものを許すわけにはまいりません。当然しっかりとこれについては主張すべきことは主張しながら、日中関係をよりよいものにしていかなければなりません。

 そういう中で、今回の日中外相会談の中で、今回のこういう問題については、中国の外相からこういうことが最大の問題なんですよ、ここをはっきりとしていただかなければ困りますよということを言われたことはないんでしょうか。それは、靖国神社参拝問題はいつも言われているはずですが、今回もさらにこの靖国神社参拝問題が当然言われたと思っておりますが、それ以外にさまざまな懸案事項、それは靖国神社問題等に比較すれば、懸案事項であってもプライオリティーから考えれば、それはまさに違う問題になってくるんだろうというふうに思えるわけであります。

 それともう一つ、大臣が今おっしゃいましたけれども、やはり台湾問題、これが今回の日中が深刻な状況になってきた大きな問題ではないかというふうに私は認識をしているわけであります。2プラス2、これは以前、一月だったと思いますが、首藤議員もこの件についてははっきりと問題提起をしております。そのとき外務大臣はそれは大した問題ではないというような実は御答弁をされておりますが、私は、この一連の流れから見てまいりますと、やはり靖国神社参拝と同時に、今回新たに2プラス2における台湾問題が、中国政府から見れば大きな日中間の問題として顕在化をしてきた原因があるのではないかというふうに思っているわけであります。

 そういう意味で、今回の外相会談の中で、一つは靖国神社問題が大きな課題であるということが明確に出されたのかどうかということ、それにあわせて、改めて大臣の、この台湾問題が日中関係に大きな影を落としているのではないか、今後この問題が中国にとっては私は最大の懸案事項の一つに当然なってくるのではないかというふうに思いますが、その件もあわせて御答弁をお願いしたいと思います。

町村国務大臣 今ちょっと手元に正確なメモがあるわけではないので、もしかしたらちょっと違っているかもしれませんが、李肇星外交部長との話の中で歴史認識という言葉は二度、三度使われたわけでございますけれども、特に靖国という形で言及はなかったと私は記憶をいたしております。トウカセン氏との間では靖国ということがはっきり話題になったことは事実でございます。ただ、幅広い歴史認識を含むという意味での問題提起があったことはそれは事実でございます。

 台湾の問題につきましては、日中関係の全般という中の問題の一つとして先方から問題提起がありました。しかし、この点については、これは日中共同声明で私はもう何度も触れているとおりだ、二つの中国であるとか、あるいは一つの中国一つの台湾という立場は日本はとりませんというこれまで累次申し上げているラインを説明し、それについては、日本側の、三つの文書と彼らはいつも言いますが、原則を遵守してほしいという言い方で、この問題が非常に両国間で大いに議論になったのではないということだと私は受けとめております。

 ただ、彼らが、台湾の問題は非常に大きな問題である、これは日中間のみならず、例えば中米間においても、あるいは国際的な場裏において台湾の問題が非常に大きな問題だというのは、これはかねてよりの中国の主張であることを私どもはよく承知をしておりますが、特に今回の中国外交部長との間で台湾問題で何か物すごく大きな議論になったということでは必ずしもございませんでした。

増子委員 靖国神社問題はトウカセンさんから話が出たということでございますが、大臣、率直にもう一度お聞きいたしますが、やはり日本の総理大臣が任期中の間、もう間もなく小泉総理の任期もやってくるわけでありますけれども、これは四年間の任期中一度も日本の総理大臣が中国に行かない、中国からも首脳が来ない、こういう不正常な関係というものがあってよろしいんでしょうか。海外で会っていればいいんでしょうか。

 ですから、靖国神社問題だけではなくてさまざまな懸案がある、しかしそれはやはり二千年の歴史の中で、特に戦後の日中関係の中でずっと日本が築いてきた関係をよりよいものにしていくためには、この四年間という空白は、仮に今後も任期中に行けなかったということになれば、私は、大きな、逆の意味で歴史に名を残す総理大臣になると思うんですね。ですから、未来志向だとか、それは平和的な問題だとか含めて、これがこのままであっていいのかという問題を私は大変危惧しているわけであります。

 靖国神社参拝問題、これは一政治家としての考え方だと、しかし一国を代表する総理大臣としてとの使い分けをある意味ではしていかないと、目的のためには手段を選ばず、それは結局は独裁政治ということにつながっていくことは歴史が示しているわけでありますけれども、そういう意味でこの問題はどうしても、やはり相互訪問できるようなあらゆる努力をすべきではないか。

 それともう一つ、台湾問題も、大臣、私はやはり今後日中関係にかなり大きな問題として出てくるんだと思うんです。これは日中関係のみならず、中国から見れば台湾問題というのは大変重要な問題であります。ですから、2プラス2の中でこの問題が明確にされたということについて中国側もかなりの反発をしているわけでありますけれども、これについては余り簡単に判断をされないで、今後の日中関係のみならず、やはり対北朝鮮、あるいは韓国、さまざまな問題にこれは必ず連動してくると思います。

 これらの問題について、やはり外務大臣としてしっかり小泉首相と話し合いをしながら、やはり小泉外交、すなわちそれはイコール町村外交と同じだというような形で修正をしていかなければ、日本の国益という問題からすれば大変な問題になってくると思いますので、ぜひここのところは率直に小泉首相と意見交換をされて、日本の国益のためにぜひ私はやっていただきたいと思っております。

 最後に、靖国神社参拝問題、率直に総理大臣に進言するお気持ちはございませんか。と同時に、今こじれている、そして破壊活動につながってしまった日中関係、これはどうしても、日本も主張すべきことはきちっと主張して、この関係をもう一度正常にしていかなければならないと思います。

 今後どういう努力をされていくのか、この二つを最後にお答えいただいて、私の質問を終わりたいと思います。

町村国務大臣 靖国の問題につきまして、小泉総理がどういう思いで靖国に行っておられるのかということについてはもう累次お話をしているので、あえてそれを繰り返すことは避けたいと思います。私は、そういう小泉総理の平和を思う気持ち、二度と戦争をしない、そういう思いで総理が靖国参拝をされるということについて、それをやめなさいとか、あるいは行きなさいというようなことを私は言うつもりはございません。

 ただ、それによっていろいろな、今委員御指摘のようなさまざまな問題が確かに日中間で起きてくるということはきちんと総理にはお話をし、その上で今後どう対処するのかということについては折に触れて総理とも話をしているということをまず御報告させていただきたいと思います。

 それから、今後、日中関係をどうするのかというお話であります。

 私は、確かに靖国の問題について、日中両国首脳が異なる考えを持っているということは事実としてあるにしても、これは外交の用語でアグリー・ツー・ディスアグリーという言葉があるそうであります。ある意味ではまことに都合のいいというかうまい表現なのかなと思ったりもします。意見の違いは違いとしてその存在を認めた上で、しかし、だからといって、一つの問題でディスアグリーなのだからトータルの日中関係が全部合意できない状態であるというのはやはりそれはおかしなことでありまして、私は、この靖国の問題があるなしにかかわらず、日中関係全般がもっと健全な形でよりよく発展をしていく、こうした過激な行動というものが起きないような関係をつくっていくために努力をしていきたい。

 そんなこともありまして、先般の外相会談では、温家宝首相の日中関係を重視するという意欲は日本としても高く評価をいたします、その上で例えば日中両国はともに国際の平和と繁栄の道を歩む、お互いの経済発展はお互いにとって好機であってこれは脅威とみなさない、日中間の共通利益の拡大を図っていく、こういう共通認識を持って今後日中間の関係の改善に取り組んでいったらどうだろうかということを私の方からお話をし、先方もそれについては同意をするということでございました。

 そういうことで、私はこういう基本的な考え方で今後臨んでいきたいと思います。

 今ちょっとメモが入りまして、先方は、外相会談の中で中国側から靖国について言及があったのかということであったわけですが、確かに中国国民の感情を傷つけたものとして靖国というものがあったというふうに外交部長は述べている。私さっき記憶が定かでないと申し上げましたが、そういう発言があったことを、ちょっと先ほどの点だけ修正をさせていただきます。

増子委員 終わります。ありがとうございました。

赤松委員長 次に、今野東君。

今野委員 今野東でございます。

 ここのところの日中あるいは日ロ、日韓、いずれの関係についても外交関係が非常にぎくしゃくしておりまして、心を痛めているわけなんですけれども、私も、この日中関係については、やはり首脳外交が目に見えるという意味での、何かの会議のついでに立ち話のように会うということではなくて、目に見える形での首脳外交というものがないということがまず第一に挙げられると思います。

 今の増子さんとの議論の中でもいろいろありましたけれども、私も、やはり小泉首相がブッシュ大統領とはキャッチボールをするというような関係であるのならば、胡錦濤さんとも、胡錦濤さんは何がお好きかわかりませんけれども、ピンポンとか、この間、去年の夏に中国に行って、政治協商会議のメンバーのある方にお伺いしましたら、何か民族舞踊が胡錦濤さんはお好きなんだというような話をしていらっしゃいました。この間、リチャード・ギアとダンスをして、小泉総理、喜んでいらっしゃいましたが、胡錦濤さんともぜひそういうシーンを見たいものだ。また、そういうことが両国民の間で見られていれば、お互いの国の間にはさまざま問題はあるけれども、しかし、首脳同士でこうやって交流しているんだから、いつか解決の糸口が見出せて、いい外交関係ができるに違いないと、国民はそういう姿を見て安心するのではないかと思います。

 私も日中関係についていろいろお尋ねしたいと思いましたけれども、時間の関係で、一つだけお尋ねをします。

 四月十七日、日中外相会談、町村大臣がいらっしゃいまして、なさいました。大変御苦労さまでございます。

 このときに、遺棄化学兵器処理事業についても話し合われたようでした。これについて事業が進んでいることは承知しておりますが、この遺棄化学兵器そのものの処理ではなくて、さまざまな中国国内での工事等で被害者が出ております。この遺棄化学兵器による被害者への賠償ということについてはどのようにお考えでしょうか。

齋木政府参考人 お答え申し上げます。

 事実関係でございますので、私の方からお答え申し上げたいと思います。

 御案内のように、遺棄化学兵器の処理につきましては、日本政府として一日も早くこれを完了しなきゃいけないということで、中国の国内におきます処理施設の建設を目指しておるわけでございます。

 いろいろと中国側の国内の手続もございまして、なかなか進捗が思うように図られていない状況でございましたけれども、日中外相会談に際しまして、外務大臣の方から先方の李肇星外交部長に対しまして、ぜひこの事業を早く進めていくということで、ことしじゅうにはこの処理施設の建設に着手したいということで中国側の協力を求めたわけでございます。

 これに対して先方からは、中国側としてもこの事業を非常に重視しておるために、関連する中国の国内法、それからまた国際法、こういったことに基づきながら、日本側とよく協力して早期に解決していきたい、そういう趣旨の御発言があったわけでございます。

 事故によって今後被害が生じないようにするためにも、ぜひ私どもとしては、危険な状態にある遺棄化学兵器、できるだけ早く処理しなきゃいけないと思っておりますので、そういう意味では中国側と緊密に協力して対応していく所存でございます。

 御案内のように、さきの第二次世界大戦でございますけれども、そのときに起因して生じております請求権の問題、これは委員も御承知のとおり、一九七二年の日中共同声明を出して、それ以降、請求権というものは実は法的には存在しておらないわけでございます。したがって、被害者の個人の方々に対する日本政府からの補償ということを私どもとして行う立場にはないということでございます。

今野委員 これは、それ以降に起きている被害なんですよ。それについてどう考えているかということをお尋ねしたんです。もう一度お尋ねします。それ以降です。

齋木政府参考人 お答え申し上げます。

 幾つか、中国の国内で、毒ガス事故が起きたりすることによりまして何人かの方々が犠牲になられているという事案がございます。これに関しましては、私どもとしては、そのたびごとに、中国側とも十分に協議しながら、遺棄化学兵器の処理事業にかかわる費用として、例えばあるケースにおきましては、その費用としての金額をきちっとお支払いして、これを中国政府の方がそれぞれの被害者の御家族に対して支払う、そういう処理をすることによって、両政府の間で例えば文書で確認した事例もございます。

今野委員 そういう件もあります。しかし、日本国内でも遺棄毒ガス兵器の被害者の方々が多くの訴訟を起こしておりまして、こういう方々をそれぞれの裁判でそれぞれ対処して、政府は知らぬふりというのではなくて、何かどこかで一つのファンドのようなものをつくって、そして救済をしていく、補償していくということが必要なのではないかと思いますけれども、そういうことはお考えですか。

齋木政府参考人 事故が起きること自体大変に不幸なことでございますし、できるだけ事故が起きないように、私どもとしても、中国側の当局あるいは日本から派遣する専門家の協力を得ながら処理の事案を進めてきておるわけでございますけれども、そういう事故が不幸にして起きて、犠牲になられる方が出ましたときには、私ども誠意を持って、どういう形でそれぞれの御家族また犠牲者の方々に対して報いることができるかということを真剣に検討し、そのたびごとにしかるべき方法で中国側とも御相談しながら決着を図っていく、そういう方法で取り組んでおるわけでございます。

今野委員 この段階ではこの質問はこれぐらいにしておきたいと思いますが、ぜひ外務省としても、どれぐらいの訴訟件数が起きていて、どういう被害が広がっているかというのも、化学兵器処理そのものだけではなくて、被害者の方々への補償関係をどのようにするかということも真剣に取り組んでいただきたいと思います。

 さて、きょうは日韓関係を中心にお伺いしたいと思うんですが、日韓関係もどうもうまくいっておりません。芸能関係はさまざまな交流があって、ヨン様に出かけたくて旅行に行くという方も多いようですけれども、しかし、残念ながら政治の関係はうまくいっていない。

 三月一日の韓国の大統領の演説以降、対日関係を大きく変更してまいりました。この変化を大臣はどのように受けとめておいででしょうか。

町村国務大臣 ことし、二〇〇五年、これは日韓国交正常化の四十周年、また戦争が終わって六十年、それからさらに、日本によります韓国を保護国化するという条約のようなものを結んで百年、大変いろいろな意味で節目の年であるという認識を持っております。

 そういうこともあるものですから、日韓の関係をこの一年大切なものとしてよりよいものにしていきたいということで、ことしを日韓友情年という位置づけをして、さまざまな活動が始まってきている中で、直接的なきっかけは島根県議会の竹島の日の条例制定ということにあったようでございます。その後、教科書問題等々もこれありまして、私は韓国側の教科書問題に対する主張が正しいとは思っておりませんけれども、しかし、今委員御指摘の三月一日の談話、その後に続くNSCの声明、さらには国民への手紙という形で、中国側が急速に対日姿勢というものが本当に変わったのかどうか、まだ定かな確認をすることはなかなか難しいのでありますけれども、少なくとも、彼らの表現ぶりというものが大分従前とは変わってきたのかなという印象は確かに私も持っております。

 そういう中で、私どもといたしましては、先般、日韓外相会談を行いまして、その中で、問題点はまたこれあるけれども、しかし、シャトル首脳会談は引き続きやりましょうというようなこと、あるいは、この友情年関連行事等は粛々としてやっていきましょう、大局的な観点から、日韓関係は未来志向で今後ともやっていこうではないかというような基本的な方向については、それぞれ確認ができたのかな、こう思っているところでございます。

 率直に申し上げれば、確かにそれは竹島の日ということで彼らの国民感情に急に火がついたということはあるにしても、何で急に日韓関係が特に韓国側の国内の動きによってここまで変わっていくのかということについて、戸惑いもあるわけでございます。

 しかし、私は、その際に、日本側の外務大臣声明というものを出して、声明ではなかったな、談話でしたか、そういうものを三月十七日に出しましたけれども、その中でも、韓国の皆さん方の気持ちというものはやはりしっかりと重く受けとめなければならないということを申し上げ、その上に立って、課題があれば解決をしていくという姿勢を述べたところでございます。

 そういう意味で、確かに日韓関係、このままほっておけば何とかなるという、そう簡単なものではないと思いますが、日中関係と同様に、これからさまざまな努力をして、よりよい関係にまた戻れるように、さらに新しい発展ができるように努力をしていかなければいけないと考えているところであります。

今野委員 韓国の方々の気持ちを重く受けとめるということであれば、なぜこういうふうになってしまったのかなということを、戦後処理の問題も含めて、本当に誠実なつき合いをしてきたんだろうかということをここで立ちどまって考えてみる必要もあるのではないかと思います。

 韓国政府では、非公開だった日韓会談の関連文書の一部が公開されて、そうしたことから、国内的にとる戦後処理の問題については、日本として可能な限り韓国側に協力するということでいいと思うんですけれども、しかし、やはりそこからこぼれてくる、やり残している問題があると思うんです。今大臣がおっしゃったように、竹島あるいは教科書、靖国の問題以外、どのような戦後処理の問題があると認識していらっしゃいますか。

町村国務大臣 これまで日韓間でいろいろ議論になってきたこと、これにつきましては、まず基本的な関係は、一九六五年の日韓基本条約で法的な解決、整理がなされている、私どもはこういう認識でございまして、特に日韓間の財産・請求権の問題につきましては、日韓請求権・経済協力協定で完全かつ最終的に解決が済んでいる、こう考えているわけであります。

 ただ、こうした法的な枠組みの外で、人道的な観点ということから、例えば朝鮮半島出身者の旧民間徴用者等の遺骨の返還にかかわる問題、これについては、先般の日韓外相会談でもこちらの方から取り上げまして、この調査を今、日本国内でやっておりまして、夏ごろまでには完了を目指していきたい。そして、遺骨の返還につきましては日韓で協議をして、旧軍人軍属の遺骨の返還を含めて具体的に検討しようということになってきております。

 それから、サハリンの韓国人の問題につきましても、これも日韓外相会談で触れまして、支援を継続して、永住帰国等、さらなる支援を検討しようということにしております。

 それから、在韓被爆者支援の問題、これにつきましては、健康管理手当の支給申請に当たり、在外公館でもそれができるようにしよう、在外公館の活用を検討するということで、先般、日韓の外相会談で合意を見たところでございます。

 そのほか、どういう問題があるかというお問い合わせであれば、例えば従軍慰安婦の問題というものもあろうかと思います。これについては、アジア女性基金という形で、これが一番最適な方法であろうという判断をしてこれまで対応をしてきたところでございます。

今野委員 今大臣がおっしゃったさまざまなこと、それぞれの問題について、両国のまたそれぞれの当事者が納得して、きちんとした形で処理されているというふうにはなかなかいっていないと思うんですが、一つ確認だけしておきたいんです。こういう問題に対処するについて、誠意を持って対処するということが最重要であると思うんですが、そこのところの確認だけしておきたいと思います。大臣、誠意を持って対処するということが大事ですよね。

町村国務大臣 当たり前のことだと思います。

今野委員 韓国にシベリア朔風会というのがあります。この会は、日本植民地統治下で強制的に徴兵をされて、終戦と同時にソビエト軍の捕虜となって、三年半から四年半もの間過酷な強制労働を強いられ、シベリア抑留元日本軍韓国人の方々がこうした会をつくっている、それがこのシベリア朔風会であります。帰還者五百名のうち九〇%が既に亡くなっていらっしゃいまして、一時五十二名だった会員も、今は二十八名と聞きました。

 この方々が、一九九九年十月一日、当時の小渕首相に対して、被害者補償要請をいたしました。この件について、二〇〇一年の一月二十九日、外務省北東アジア課が回答をしております。

 一九九九年の十月一日に要請をして、回答が二〇〇一年の一月二十九日です。一年四カ月も過ぎております。これは誠意ある対処の仕方でしょうか。

齋木政府参考人 お答えを申し上げます。

 今委員が御指摘になられました案件につきましては、確かに朔風会という韓国人の団体から一九九九年の十月に私どもの手元に要請書が届いたわけでございますけれども、これに対しまして、外務省の担当課、外務省北東アジア課というところから、二〇〇一年、平成十三年でございますけれども、一月の二十九日付で回答を差し上げたわけでございます。

 文書の中では、私どもは、過去における日本の行為によって近隣諸国の方々に耐えがたい苦しみと悲しみをもたらしたことを深く反省して、二度とこういった不幸な歴史を繰り返さないということを決意している、そしてまた、そういったことを累次の機会に表明してきておるということ、それからまた、軍人の俸給の支払い、被害補償の問題については、一九六五年のいわゆる日韓請求権協定、また関連の国内法によって解決済みであるということ、それからまた、多くの方々が耐えがたい苦しみと悲しみを経験されたということは否定できないという事実でもあり、戦争という異常な条件下であったとはいえ、これらの方々が筆舌に尽くしがたい辛酸をなめられたということ、なめることを余儀なくされたということにつきましては、本当に心の痛む思いであるということ等をこの回答文の中でお示ししたわけでございます。

 文章自体は、先ほど申し上げましたように、担当の北東アジア課というところで起草いたしまして、これを外務省の中の関係部局等々との協議を経て回答を差し上げたわけでございます。

 内容的には政府としての基本的な考え方を適切に説明したものだというふうに考えておりますけれども、ただ、このタイミング、また差出人の名義、これがいかがなものであったかということにつきまして、今となって考えれば配慮に欠ける面があったということは私どもとしても反省しておる次第でございます。

今野委員 私は、こういう要請について一年四カ月もほっておいたことが誠意あることかどうかということを大臣にお尋ねしました。大臣、お答えください。

町村国務大臣 今齋木審議官がお答えしたとおりでございまして、一年四カ月というのはいかにも、回答する文章にいろいろ検討を加えたかもしれませんが、それは幾ら何でも時間がかかり過ぎであり、そういう意味で誠意が欠けていたという批判は率直に受けなければならない、こう思います。

今野委員 これを反省として、やはりこういう案件について戦後処理がきちんと行われていないだけに、こういうところはよくあるわけでありまして、少なくとも日本国としての誠意というのをこういうところでぜひ示さなければならないのではないかと思います。

 それで、内容ですが、これは日韓請求権協定の対象外ですよね。確認です。

齋木政府参考人 お答えいたします。

 請求権の問題は完全に日韓の請求権協定によって解決済みでございます。

今野委員 この日韓請求権というのは一九四五年の八月までのこと、それ以外は対象外であります。

 これは戦後シベリアに抑留された方々です。そこのところをもう一度確認したいんですが、そういうところからすると、これは日韓請求権協定からは外れる、そうじゃないですか。

齋木政府参考人 お答えいたします。

 戦争に起因する問題ということで、私どもとしては、入っているというふうに考えております。

今野委員 戦争に起因することで入っているという答えですね。大臣、これでいいんですか。期限をもっときちんと確定しなきゃいけないと思いますよ。そんなあいまいなことじゃないでしょう。

齋木政府参考人 改めてお答えいたします。

 先ほど私申し上げましたように、日韓のこの戦争に起因する問題につきましては、一九六五年の日韓請求権協定、それからまた関連の国内法によって完全に法的に解決済みである、そういう認識でこれまで対処してきております。

今野委員 ですから、私は再度申し上げますが、これは一九四五年八月までのことであります、対象になるのは。それ以降のことですから、これは対象になるのかならないのか、きちんと検討をする必要があります。もう一度検討をしてください。では、その答えをください。

齋木政府参考人 お答えいたします。

 繰り返しの答弁で恐縮でございますけれども、私どもの立場といたしましては、既に戦争にかかわる問題につきましては、すべて請求権問題は法的に決着済みである、そういう立場でございます。

今野委員 これはそうすると、戦争にかかわることというのはどこまで行きますか。今もって続いているわけです、さまざまな被害は。どこまで行きますか。今起きていることも全部含まれちゃうんですか、この日韓請求権協定の中に。そんな線の引き方はできないでしょう。

齋木政府参考人 お答え申し上げます。

 繰り返しで恐縮でございますけれども、さきの大戦に起因するさまざまな問題、請求権にかかわる問題について、私どもとしては、法的には決着済みである、こういう立場でございます。

今野委員 これは、さきの戦争に起因することはすべて日韓請求権協定の中に入っているんだということが書かれていますか。

齋木政府参考人 お答え申し上げます。

 日韓請求権協定、先ほど来私が申し上げております六五年の協定でございますけれども、その第二条でございますが、「両締約国は、両締約国及びその国民(法人を含む。)の財産、権利及び利益並びに両締約国及びその国民の間の請求権に関する問題が、千九百五十一年九月八日にサン・フランシスコ市で署名された日本国との平和条約第四条(a)に規定されたものを含めて、完全かつ最終的に解決されたこととなることを確認する。」こういう条文がございます。

今野委員 ですから、それは何度も同じことをお尋ねしますが、今もって起きている問題についてもこれは日韓請求権協定の中に入るんですかということを聞いているんです。

齋木政府参考人 お答え申し上げます。

 そういう立場でございます。

今野委員 それはおかしい。一九四五年の八月で終戦をしている。それ以降日本人の国籍を持ってシベリアに送られた人たちに対して何の手当てもしていない。それで、ここで、日韓請求権協定の中に入っているんだと言い切ってしまう。こういうことをしているから日韓の関係というのはうまくいかないんです。

 今このことについてやりとりをしていても時間がないから、しようがないからほかの質問に行きますけれども、これについてはもう一度検討をしていただいて、しっかりその期限を示していただきたい。ぜひ説明をしていただきたいと思います。

 この件について、ぜひこの委員会で、それではこの日韓請求権協定の対象というのはどこまでなのかということをきちんと示していただきたいと思います。

赤松委員長 申し出のありました件につきましては、後日理事会で協議いたします。

今野委員 朝鮮人元シベリア抑留者の方々が、こういう形で極寒の地シベリアで亡くなった同胞への思いを深くして、八十を過ぎた方々が一度墓参をしたいという思い、これは痛いほどわかります。

 けさの毎日新聞の一面でもありました。これは、多くは日本人の方々だろうと思いますけれども、今も、北朝鮮国内に連れていかれて、そしてそこで亡くなった、日本人の遺骨がたくさんそこに埋葬されているという記事でありました。恐らくその関係者の方々は、そこに行って、少なくとも墓参をしたい、遺骨を持って帰ってきたいというふうにきっと思っているに違いないと思いますけれども、厚生労働省でしょうか、シベリアへの墓参事業を行っております。この墓参事業の対象となる方々はどういう方々でしょうか。

大槻政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のいわゆる慰霊巡拝というふうに申しておりますけれども、この慰霊巡拝に参加する遺族の範囲につきましては、原則として、過去に戦没者と生活をともにしていた身近な家族による追悼という考え方からいたしまして、日本人である戦没者の配偶者、父母、子供及び兄弟姉妹として実施をしております。

今野委員 大臣、このように墓参事業というのがあるんですが、あくまでも国内の事業なんですよ。国外に対しては、我が国は、例えば日豪草の根交流計画、これは「第二次大戦時の経験から、依然として従軍関係者を中心に根強く残る反日感情を払拭し、日豪両国間の相互理解及び友好関係を強化するために、」云々ということでこういう事業を行っているんですよ。十七年度予算で五百万円ついています。日本とイギリスに関しても、元戦争捕虜、民間人抑留者関係者を対象として行う事業というのを行っています。これは十七年度三千五百万ついています。日本とオランダについても同じようにこういう事業を行っております。日韓についてはなぜこういう事業が行われないんでしょうか。大臣、お答えください。

町村国務大臣 なぜ今まで行われなかったかということについて私は正確な知識を持っておりませんが、日本人の御遺族については、シベリア抑留されたその御遺族について毎年慰霊巡拝が行われているわけでございます。韓国人の御遺族の慰霊巡拝の可能性、私はあってもいいんじゃないかな、こう思いますから、よく関係省庁と相談をして考えてみたい、こう思います。

今野委員 私たちのこの国は、相手がこだわっていることに余りにもこたえていない、特にアジアとの関係については、そう思います。相手がこだわっていることに誠意を持ってどのようにこたえるかということが大事で、そういう蓄積が日韓、日中あるいは日ロの関係になっていって、そして友好関係が築かれていくのではないかと思います。

 ぜひ、日韓の友情年の記念事業として、外務省としても、墓参事業等考えていただきたいと思います。

 ぜひ、このことについてもう一度外務大臣の明確なお答えをいただいて、質問を終わりにしたいと思います。

町村国務大臣 日韓友情年という形をとるのがいいのかどうか、そこもよく考えてみたいと思いますが、何らかの対応が多分必要なんだろうと思います。

 今委員、日本が誠実に対応してこなかったではないかというお話がありました。確かに、個々のケースを見れば不十分な点もあったろうと思います。

 ただ、基本的に日本は国と国との関係で、戦後の賠償でありますとか、あるいは日韓間の協定でありますとか、日中間の協定という形で、まず国と国との関係でやってきた。よくドイツとの比較をされる方がありますけれども、ドイツはそういう国と国との賠償というのは一切やっていない、その分、個人というものに注目してやってくるという、それは戦後の処理の仕方がそれぞれの国によって違ったということも、委員御承知のこととは思いますが、まずお認めをいただき、私は、日本が、私どもの諸先輩が、こうした問題について等閑視し、かつ粗略に扱ってきたということはないと思っております。それぞれの条約において、あるいは戦後の賠償という形において、誠実に日本としての、国家としての対応をしてきた。

 ただ、それで法的には解決したけれども、道義的その他の面から見てなかなか救われない方々もいるということで、例えば一番いい例がいわゆる従軍慰安婦と言われる方々への助成基金というような、まさに主として民間の発意という形で対応するという工夫をそれぞれしてこられたわけでございます。

 したがって、今委員御指摘の、例えば朔風会ですか、一年何カ月もおいておいた、そういう一つ一つをとると、確かに至らぬ点があったこともそれは率直に認めた上で、しかし、私は、それぞれの国、それぞれの関係者に対して、日本政府はきちんとやってきたということは総体としては言えるんだろう、こう受けとめているわけでございます。

今野委員 例えばその朔風会の方々ですが、先ほども申し上げましたけれども、もう八十を過ぎている方々、二十八名になってきています。時間はありません。誠意を持って対応していただきたいと思います。

 ありがとうございました。

赤松委員長 次に、松原仁君。

松原委員 民主党の松原仁であります。

 昨今、大変に中国において反日暴動が発生をしているわけであります。マスコミの報道では反日デモというふうな表現も使っておりますが、あれは明らかに、私は、デモというのを超えて暴動というふうに言うべきだろうと思っております。

 そこで、まずお伺いいたしますが、中国において今般発生いたしましたこの反日の暴動、ある種の大衆的なテロ、これに対しまして、日本政府はどのように中国に対してこの暴動を抑えなかったという点において陳謝を求めていくのか、また日本の公館が破損したりしたことに対してどのような賠償請求を行うのか、その見通しをお伺いいたします。

齋木政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のように、中国の各地で発生いたしましたデモ活動に伴う暴力的行為、これにつきましては、これまで中国政府に対しまして、我が方からは、陳謝、損害の賠償、加害者の処罰及び再発防止等を要求しておりまして、外務大臣が先般、先方の李肇星外交部長と会談されました十七日の会談でも、改めてこの点については強く申し入れたわけでございます。

 残念ながら、その際に先方の外交部長の方からは、陳謝、損害の賠償について明確な御発言はなかったわけでございますが、この点は大変に私どもとしては残念に思っているわけでございます。

 引き続いて、この問題につきましては今後とも、ASEMの外相会合が近く開かれますけれども、そういった外相会合の機会も含めて、さまざまな機会を使って日中政府間で引き続き議論をしていく方針でございますし、引き続き中国側の善処を要求していく、そういう方針でございます。

松原委員 ウィーン条約の第二十二条の二項に、接受国は、侵入または破損に対し使節団の公館を保護するため及び公館の安寧の妨害または公館の威厳の侵害を防止するために適当なすべての措置をとる特別の責務を有する、こう書いてあるわけであります。

 また同時に、ウィーン条約の三十一条の三項には、接受国は、二の規定に従うことを条件とし、領事機関の公館を侵入または損壊から保護するため及び領事機関の安寧の妨害または領事機関の威厳の侵害を防止するためすべての適当な措置をとる特別の責務を有すると書いてあります。

 これは明らかに、こういったウィーン条約を照らし合わせるならば、中国政府がこの暴動を暗黙の了解というか抑止をしなかったことは重大な責任があると思っておりますが、この点もお伺いいたします。

齋木政府参考人 お答え申し上げます。

 確かに、今委員が御指摘になりましたウィーン条約の義務、特別な責務を中国政府、接受国として負っているわけでございますけれども、そのような責務を負っているにもかかわらず、このような事態について効果的な対応をとれなかったということにつきまして、我々としてはこの点について中国政府の責任を果たすように強く要求しているわけでございます。

松原委員 この問題に対しては、いわゆる海外のメディアも押しなべて中国に対して批判的な記事が出ているわけであります。

 例えば、アメリカのワシントン・ポストにおいてはこういった記事が載っております。

 評論は、中国の都合のいい物忘れ、こういう見出しでありまして、日本の教科書における南京虐殺の扱いが問題なら、毛沢東の狂気の大躍進で起きた飢饉で三千万人が犠牲になったとされることや、一九七九年のベトナム侵攻、このことによって南沙諸島等を中国は領有をしたわけでありますが、こういったことを教科書に記載しない中国に問題はないのか。

 さらに、このワシントン・ポストでは、日本では歴史認識問題で延々と開かれた論議がなされ、さまざまな議論、そして教科書も選択可能と指摘、中国では歴史は一種類しか許されず、こういったことが書いてあるわけであります。

 さらには、これはイギリスのインディペンデント紙によりますと、ここにあるのは、中国はアヘンを持ち込むため戦争をしたイギリスなどに対して余り不平を言わない、こういう記事が載っておったりするわけでありまして、さまざまな国際世論も、今回の中国のこの暴徒に対する対応に対しては、極めて不十分である、こういった認識を持っているんだろうというふうに私は思っております。

 この点について、実際に報道官、どうですか、お伺いいたします。簡単にお願いします。

高島政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま委員が御指摘になりましたとおり、欧米のメディアは今回の事態について大変強い関心を寄せております。

 この伝え方でございますけれども、もちろん日本の歴史認識の問題といった中国側の主張も伝えておりますけれども、やはり、今回の暴力的な行為をめぐって、なぜ中国がここまでやるのかといったところから、次第次第に、日中関係の深層を、奥のところを探ろうという報道が目立つようになってきていると思います。

 先ほど委員が御指摘になりました二つの報道に加えまして、欧米各国で、例えばフランスでもイギリスでも、もしくはカナダでも、今回の出来事をベースにしながら、特に中国がみずからの歴史についてどのようなことを今まで表に出してきているのかといったようなことを比較する記事も出ております。

 こうした点を我々としては注目をして、さまざまな形でもって情報を入手しておりますけれども、時には事実関係を誤って認識したり、また誤解に基づく記事などが出ておりますので、そうしたものが見つかったときには、在外公館を通じて抗議なり、もしくは訂正の申し入れなりをしているところでございます。

松原委員 まさにそういった意味において、今回の中国のこの暴動に関しては、国際世論も、どちらかというと中国に対して批判的な立場になっていると思うわけであります。

 今お話があった、メディアの報道等で誤ったものが公開されたり、報道されたりしているものについては、都度、今、公館を通してこれを指摘している、こういうことであります。

 これは、きょうは時間がないので余り深く触れることはできませんが、欧米のマスメディアは、いわゆる三十万人を超すたくさんの死者が発生したと言われる南京大虐殺もしくは従軍慰安婦問題、今、中国もしくは韓国が言うところの従軍慰安婦問題等が存在しているという前提で議論をし、その上でも、中国はやり過ぎだ、おかしい、こういう論調が多いわけでありますが、私は、この南京大虐殺についても従軍慰安婦問題についても、本来は、そろそろ日本の政府もきちっと検証する必要があるだろうというふうに思っております。

 たまたま今、私のところに、この「南京事件「証拠写真」を検証する」という書物が出ているわけであります。この書物は既に発行されて十万部出ているわけでありますが、この中では非常に精査なチェックが行われ、例えば、この虐殺事件が行われたのは冬であったにもかかわらず、その被害者が半そでを着ているとか、さまざまなこともあって、写真に関して言っても、実際どれだけ信憑性があるのか、この書物の中では、証拠として通用する写真は一枚もなかったということが、この東中野先生の本では紹介されているわけであります。

 これについてコメントがあれば、一言いただきたいと思います。

齋木政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員がお手元でお示しになられた本、「南京事件「証拠写真」を検証する」という書物、ことしの二月にたしか発行されたというふうに理解しております。

 私も、実はその本を入手いたしまして、今まさに読んでいる最中でございます。非常に多くの写真を非常に詳細にわたって検証して、南京事件について、東中野修道さんを含む二名の方々が検証の努力をされているわけでございます。

 政府の立場としてこの本についてどうかということをお尋ねになられますと、その点については、コメントするというのは若干いかがなものかと思いますけれども、ただ、南京大虐殺の問題につきましては、事実関係をめぐっていろいろな議論が存在しているということは、まさに今回の本も示すとおりでございまして、私は、この本については非常に注目して、さらに読み進めたいと思っております。

松原委員 今、齋木さんがこの「「証拠写真」を検証する」、証拠として通用する写真が一枚もなかったという本を見ている、こういう話でした。

 私は、こういったものをきちっと議論して、今、間違った情報が海外へ流れているときはそれを正すというお話が高島報道官からもあったわけですが、これに関して我々は、少なくとも確定的な事実じゃない、例えばアメリカでは四万人と言っている、例えばなかったという議論もある、そういったことも含め、一方的に、日本がやった、そしてそれが流布されている状況に対しては、きちっと反論をしなければいけないと思っております。

 ただ、私がきょう申し上げたいのは、こういったものを事実であるというふうに、誤解というか、日本がそれに対して異議を申していないわけだからこれが通ってしまうわけでありますが、それにしても、中国のこの暴徒は問題であるということが国際的にも出てきているわけであります。

 こうした中で、先般、外務大臣は中国に行って、李肇星さんとも議論をしてきたわけでありますが、もちろんこういった陳謝の要求をしたわけであります。この陳謝の要求をしたとき、そして相手の反応を簡潔に、外務大臣、お話しいただきたい。

 それで、報道官、この町村外務大臣が陳謝を求め、賠償を求めたことについて中国の報道機関が報道したかどうか、これは後で報道官にお伺いいたします。

町村国務大臣 四月十七日の日中外相会談冒頭で、この問題を私の方から提起をしたわけでございます。既に王毅大使に求めているがということで、陳謝、損害賠償、再発防止ということで先方に話をいたしました。デモはデモとして、しかし、それに伴う破壊行為はどういう背景、どういう理由があったとしても認められるものではないということを私は申し上げ、中国側は国際ルールに基づいて誠実かつ迅速に対応すべきであるということを申し上げました。

 先方からは、中国政府はこれまで日本国民に対して申しわけないことをしたことは一度もないんです、現下の問題は、日本政府が台湾問題、歴史問題、国際人権問題等で一連の中国国民の感情を傷つけたということにあるのだと。

 ただ、中国政府は、いろいろな行為というのは法律に基づいて処置している、過激な行為は認めない、法に基づいて処理をしている、中国の公安当局は中国の日本人、日本企業、日本の公館の安全を確保し、拡大防止に努力をしている、これからもそうやっていくんだ、こういう回答があり、そういう意味では、陳謝、損害賠償という話については先方の触れるところはなかったというところでございます。

高島政府参考人 委員の御質問の後段についてお答え申し上げます。

 私は、町村外務大臣に随行いたしまして、中国そしてインドネシアを回ってまいりました。その間、すべての中国の報道に接することはできませんでしたけれども、私が見た限りでは、日本側から陳謝の要求もしくは賠償の要求をしたということを伝えた中国の報道機関はございませんでした。

 ただ、私自身も含めて中国において何人かの報道関係者と話をし、その中では、日本側がこういうことを求めているということを伝えましたし、彼らはそのことを承知しておりました。したがって、記者の段階では知っていても、報道にはあらわれないということが現実なのかなというふうに見ております。

松原委員 そうすると、町村外務大臣と李肇星さんのこの会談についてはどういうコメントが入っていたか、報道官、簡単にお願いします。

高島政府参考人 お答え申し上げます。

 私が読んだりもしくは目にしたりした中国側の報道は、双方の外務大臣、また、その後のトウカセン国務委員との会談について事実関係を報道するとともに、日中関係についての重要性といったようなところには触れたところはございましたけれども、今回のデモに伴う暴力的な出来事、これについて言及をしたようなことはございませんでした。

松原委員 こういう中で、この反日デモ、反日暴動がこのように拡大をした原因というのはさまざまあると思っております。

 この理由の一つに、既に外務大臣もどこかで指摘されたという話も伝わっておりますが、中国の反日教育があるというふうに私は認識しておりますが、これについての見解をお伺いいたします。

町村国務大臣 中国における青少年に対する教育が今回のデモとどういう形で結びついたのかということを立証することは、これはなかなか難しいものがあろうか、こう思います。

 今回の会談の中で、特にトウカセン国務委員との話の中で中国の教育問題ということが話題になったことは事実でございます。

 この点につきまして、私の方からは、日本の教科書の内容というのは、すべてこれは、戦争を美化したり、侵略を正当化したり、そういう内容の教科書というのはありません、平和な日本をつくっていく、そういう内容で検定が行われているということを申し上げた上で、教科書の内容というのは、基本的には、これは各国それぞれの国内の内政問題であるという前提の上に立って、なおかつ、中国における愛国教育というものが結果として反日教育ということになっていないかという声が日本国内にはあるんだということを指摘し、さらに、抗日記念館には多くの子供たちが訪れるわけですけれども、その記念館の展示物の内容が日中友好に資するものかどうかという議論があるので、ぜひこの点についてはしっかりとした検討をしていただきたいということを申し上げたところでございます。

松原委員 そういった記念館のさまざまな展示物の中に事実をねじ曲げているものが仮にあるとするならば、これは日本の外務省としてきちっと対応していただきたいというふうに私は思うわけであります。

 中国の教科書の問題になってくるわけでありますが、大変に我々の教科書については議論があるわけですが、今私の手元に中国の歴史の教師用教学用書というものがあるわけであります。

 これは、言ってみればティーチャーズマニュアル、学校の先生が子供たちに教えるときに、この教え方をしなさいという学校の先生に対するティーチャーズマニュアルであります。中学生であります。中国の中学校の子供たちに対するティーチャーズマニュアルであります。

 きょうは、理事会の御了解もいただいて、皆さんのお手元にも中国語の原文が配ってあるわけでありますが、これを翻訳したもので御説明をしていきたいと思います。

 この六十九ページというのがあると思いますが、六十九ページのところに、ここのページでありますが、この真ん中の六番目に書いてあります。

 これはどういうふうに日本語に訳すかといえば、南京大虐殺の項目では、鮮血滴る事実をもって日本帝国主義が行った中国侵略戦争の残虐性と野蛮性を暴露すること。鮮血滴るというこの表現は、極めて扇情的なアジテーティングな表現であります。教師は教室において、日本軍の南京における暴行を記した本文を真剣に熟読させ、生徒をして、日本帝国主義に対する深い恨みを心に植えつけるようにしなければならない。

 日本帝国主義に対する深い恨みを心に植えつけるようにしなければならない、原文は牢記という言葉です。これはその下の記憶と違って、牢記というのは、胸に刻み込む、牢屋に入って何があっても忘れないぐらい強烈にというすさまじいテンションの表現であります。牢記として深い恨みを心に植えつけるようにしなければならない、これは、深い恨みを心に持たせろという指導を書いてあるわけであります。

 その次の文章は、そのまま南京大虐殺の時期と日本軍によって殺害された中国軍民の人数を記憶させなければいけない、これは通常の記憶であります。片方は、強烈に記憶させる。先般の週刊文春がこの部分を書いてありましたが、あの訳は胸に刻み込むと書いてありましたが、かなり強烈な表現であります。

 それから、八十八ページから八十九ページですか、この部分もあるわけでありますが、これはかなり、事実を客観的に教えるというよりは、扇情的に教えている部分がたくさんあるわけであります。きょうは時間の都合で、この八十九ページの三の終わりの部分になりますが、三というか最後のパラグラフ、七のちょっと手前ぐらいになりますか、三の終わりですね、そこの文章は、いろいろと書いてあるんですが、生徒の思いを刺激して、日本帝国主義の中国侵略の罪状に対し、強い恨みを抱くようにしむけるべきである。これが中国の学校の先生、ティーチャーズマニュアルとしてそれが載っているわけであります。

 私は、これは日本帝国主義というか今の日本じゃないというふうに言うかもしれないけれども、こういう文章が実は、この教師用のティーチャーズマニュアルの中に、こういった日本に対して強い恨みを、深い恨みを心に植えつけるようにしなければならない、牢記として記憶させる、もしくは、罪状に対して強い恨みを抱くようにしむけるべきである、こういう表現が十回、恨みを持つべきだ、牢記として胸に日本帝国に対する怒りを記すべきだ、二十回、こういった強い恨みを抱け、三十回、例えば心にこういった日本に対する深い恨みを植えつけろ、四十回、五十回、六十回と、何度もこのティーチャーズマニュアルの中でこういうふうな文章が出されたとして、それを、あちらはもう国の教科書は一つですから、それに沿って教師が教える、そうしたときに、私は、これが反日教育の事実ではないかというふうに思うわけであります。

 これでもって、それでも私は反日ではないという子供が果たして生まれるんだろうかというふうに思うわけでありますが、大臣の見解をお伺いいたします。

町村国務大臣 今、委員に中国語の解説をしていただきまして、私は正確に理解をしたかどうかよくわかりませんが、かなりの記述だなというふうに受けとめました。

 こういうこともあるものですから、先ほど申し上げましたトウカセン国務委員との話の中で、愛国教育の結果が反日教育になってはいませんかという指摘をいたしました。

 今、この教師用の手引ですか、こういったものなどを含めて、本当にこういう姿でいいのかどうかということについて、しかるべき場でしかるべき形でやはり先方に伝えなければいけない、こう思いますし、また、なかなか歴史認識を日中間で共有するのは難しい面もございますが、日中で歴史共同研究の可能性を検討しようということで先方と合意をしたというのも、そうした面について是正ができるのではないかという期待感があるからそういう問題提起、委員会設置の提起をしたわけでございます。

 いずれにしても、それぞれの国の国民感情というものも確かにあろうかと思いますけれども、私どもとしては、やはり、中国側に改善すべき点は改善するように求めていくことが大切だし、また、逆に日本側においても日本の過去をすべて美化するということではなくて、反省すべきは反省し、ちゃんと自信を持って言うべき点は自信を持って言うというような態度というものがそれぞれの国において必要なのではないのかな、かように考えているところでございます。

松原委員 しかるべく先方に伝えていくということで、私は大事なことだと思うんですね。こういったものに対して、外務省として、私は恐らく今まで研究してこなかったんじゃないかと思うんですよ。ティーチャーズマニュアルのこういったものに、今みたいな強烈な鮮血滴るとか、客観的記述とは違う、客観的というよりはむしろ扇情的にあおるような記述、深く胸に恨みを抱かせろとか、こういうものがあったということを外務省は認識していますか。ちょっとお伺いしたい。

高島政府参考人 お答え申し上げます。

 文化交流部の、最近、総合計画課という名前に変わりましたけれども、これまで海外広報課というセクションがございました。海外広報課の時代は外務報道官組織の中に入っておりましたので、その間のことについて申し上げますけれども、やはり中国側の教科書がどのような内容になっているかということについては、実は、外務省の助成を受けておりました民間団体が調査研究をしてくださっておりました。その調査研究の内容は外務省に連絡をいただいていて、ある程度は把握をしておりましたけれども、ただ、個々の教科書なり、それからそうした教師用のマニュアルに果たしてどこまで研究が及んでいたかについては、今私は詳しくは存じ上げませんので、調べてみます。

松原委員 本当に友好を高めるには、これは実は、いわゆる中国の愛国心教育というのが十何年か前から起こって、その中心テーマは反日教育ですから、それで使われ始めた。それ以前はこういうものではなかったというふうに私は聞いております。

 つまり、この段階でやり過ぎじゃないか。それは近隣の諸国が共存共栄するのは大事ですよ。我々日本も、別に戦争を美化する教科書を使う必要はないんです。事実は確認する必要はありますよ、南京の問題、南京大虐殺が本当に三十万規模だったのかどうか、その写真がどうか、検証するべきだと思います。これはお願いしたいと思うんです。

 しかし、少なくとも、問われるのは、むしろこういった中国のティーチャーズマニュアルも含める、こういったもので無垢な子供たちがずっとこれを教わってきたら、最後はそう思ってしまう、このことの問題点が今日の反日暴動の一番の中心にあると私は思うんですよ。

 ですから、ぜひとも外務省で、こういった中国の教科書についてどういう記述がなされているのか、中国の教師用マニュアルはどういう記述がなされているのか。聞くところによると、歴史教科書よりも算数と国語の方がもっと厳しいという話を私は聞いたことがあります。これをぜひとも検討していただきたいと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

町村国務大臣 まずよく調査をしてみたいと思います。

松原委員 そういう中で、私は、くどいようでありますが、例えばアメリカが日本に、広島に原子爆弾を落とした。我々は、アメリカが広島に原子爆弾を落下したことについて、アメリカのこの罪状に対して強く恨みを抱くようにしむけるべきであるとか、深い恨みを心に植えつけなければいけないと、教師は教えていないんですよ。

 明らかにこれは、しかも愛国主義教育の名のもとで始まったこれは、日本はそんなことは、いや、原子爆弾の記述だってそれは、ほかの国々は日本がもっと糾弾しているだろうと思っているんですよ、教科書のいろいろな比較研究すると。ほかの国の教科書の方が原子爆弾のことを文句言っているんですよ。ところが、日本というのはそうやってさらりとやる国民なんですが、これではしようがない。事実の確認と教師の指導の仕方とか、この辺についてきちっと検証していただきたいと思います。

 時間がありませんので、そういう中で、最後の質問になりますが、今、大変に今回の中国の暴動は多くの悲惨な状況を与えているわけであります。日本の企業が看板を隠すような状況、日本車に乗っていれば、その人間が日本人でなくても暴徒に襲われるような状況、そういった状況が今起こっているわけであります。

 こういうことで、私が申し上げたいのは、仮に今回のようなことがもう一回エスカレートして発生した場合、日本政府として、邦人企業に対して、それは一番強烈なのは引き揚げとかそういう警告があるわけでありますが、こういうことがあった場合にどういうふうな行動をするつもりか、また中国に対してどういうペナルティーを与えるつもりか、お伺いしたい。

鹿取政府参考人 邦人企業との関係でございますけれども、私どもが今鋭意やっていることは、できるだけ情報収集するのと、それから邦人企業との間ではできるだけ連携を緊密にして、お互いに最新の状況、それからお互いに注意すべきことの確認、そういうことで対応しておりますし、これからも最新の中国の動向をお互いに情報交換し、要すれば会議等を開いて留意事項等を確認してまいりたいと考えております。

松原委員 私は、本当にスポーツを愛好する人間であります。よく泳いでいるんですよ、私は。それはいいとして、日本の企業が看板を隠さなければいけないとか、邦人が厳しい環境になるとか、日本人の身の安全が図れない状況が仮に到来した場合に、私はスポーツといえども検討する必要があるだろうというふうに思っているわけであります。

 中国は二〇〇八年に北京オリンピックを開催する、こういうふうなことになっておりますが、私は、オリンピックは大事だ、スポーツは大事だと思っておりますが、果たしてこういうウィーン条約にも全くもって抵触する、ウィーン条約の在外公館を守るということにも全く抵触する中国のこういった暴徒がこれだけ野放しになっていた。インターネットを使ってどんどんとまだやってくる。こういうふうな状況の中において、再発をし、エスカレートした場合は、北京オリンピックの開催地を、IOCに言ってほかの地域にするべきだということすら私は提訴をするべきだと思うんですが、外務大臣、答弁をいただきます。

町村国務大臣 先般のトウカセン国務委員との話の中で、日本国内に北京オリンピックボイコットという話が……(松原委員「ボイコットじゃない、場所を変えろと」と呼ぶ)場所かどうか知りませんが、そういう意見があるやに聞いている、先方からそういう日本政府の考えなんですかという発言がありました。ありましたので、私は直ちに、そういう考えは日本政府にはありませんと申し上げておきました。

 ただ、こうした激しい破壊活動が相次ぐようでありますと、先般、昨年でしたか、サッカーのアジアカップの際の騒動もありました。こういうことが続くと、国際社会の中では、果たしてオリンピックが平穏に開催できるか、大変これは皆さん心配になるんですよ、そこをよくお考えくださいねということを私はトウカセンさんには申し上げておいたところであります。

 したがって、オリンピックの開催地を変えるとかボイコットというお話が今委員からございましたけれども、今、日本政府にはそういう考え方はございません。

松原委員 私は、外交はみずからのカードというものを持っていかなければいけないと思っているわけでありまして、再発防止というのは極めて重要です。このことによって、五・四運動もやがてやってきます、五月四日もやってくる。ことしはさまざまな、日本に勝ったという六十周年記念だと中国は言っているわけであります。

 国が抑えようが抑えまいが、これ以上の中国の暴徒が発生し邦人に対して危害を加える、もしくは邦人関係の企業に対して危害を加える、こういう状況があった場合は、オリンピック開催地の問題も国内の大きな議論が出てきてわかりませんというぐらいのことを中国のトウカセンさんに、私は外務大臣がそこで政府はそういうことを考えていませんと即答する必然性はなかったと思っておりまして、まあ、言ってしまった言葉は戻ってきませんから。しかし、私は、そういうふうなことをきちっと外交上担保しておかなかったら、次に起こったときに我々は何もまた言えないことになってしまう。

 今言った、もうこれは十何年かのすさまじい反日教育の成果としてこういうものが出てきている以上、それはいつどこでどうなるかわからない。中国政府というのは共産主義の国ですから、あの法輪功取り締まりのときはすごかったんですから、あそこは。法輪功の取り締まりのときは暴徒じゃない者もどんどん捕まえて、今回は暴徒を捕まえない、これは完全にダブルスタンダードですよ。

 私は、そういった意味において、今回のこういったことの再発防止も含め、我々はきちっと強い立場で言わなければ、国際社会だって、日本というのは争訟能力のない国だという話になってしまうと私は思う。

 そういった意味では、既に言ってしまったということでありますが、私は、この辺もやはりひとつ頭の片隅に置いておかなければ、外交は日本にとって成功しないだろうと思っておりますし、さらには、国際世論、既にさまざまなワシントン・ポストにしてもヘラルド・トリビューンにしても、さまざまなイギリスの報道にしても、ドイツ、フランスの報道ですら、当初と違って、事件の状況の中で、中国に対して批判的になってきているというこの状況の中で、我々はきちっと、やったことはひどいことですから、ウィーン条約に違反していることをやったのに対してなし崩し的に終わってしまって、あの中国の原子力潜水艦のときじゃないですが、終わってしまって、それでは私はいかぬだろうと思っております。ぜひともその辺、厳しい、鋼鉄のような毅然とした外交を心よりお願い申し上げまして、私の質問といたします。

 以上です。ありがとうございました。

赤松委員長 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。

 きょうは、航空機墜落事故に関する日米地位協定、そして今度新しく四月一日にガイドラインを発表いたしましたが、その問題について質問いたします。

 昨年のあの普天間のヘリ墜落のときに、一番国民の強い批判を受けたのが事故現場での統制の問題です。その後、日米間で協議をして、四月一日に日米合同委員会で合意をされたということになっています。

 私は、今回合意されたガイドラインにはさまざまな問題が含まれている、このように考えています。きょうは、墜落などが起きた場合の米軍の公有地、私有地への立ち入りの問題について聞いていきます。

 今回のガイドラインによると、米軍は、「事前の承認を受ける暇がないときは、」公有地、私有地に立ち入りが許される、このようになっています。ところが、外務省がそのガイドラインにつけてきました英文の方を見ますと、ウイズアウト・プライアー・オーソリティー、つまり、事前の承認なくして立ち入りが許される、こういうことになっているわけですね。

 政府の訳では、事前の承認を受けるのが原則であり、その承認を受けるいとまがないときに限って立ち入りが許される、こういうことになるわけです。ところが、英文によると、そもそも原則として事前の承認を得なくてもいいということになるわけです。日米間の合意というのは一体どっちなんですか、外務大臣。

河相政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のありました四月一日、日米合同委員会で合意をいたしました航空機事故に関するガイドラインでございます。

 その中におきまして、公有地または私有地への立ち入りの件でございますが、そこの合意のところ、もう御存じかと思いますけれども、改めて読ませていただきますと、「日本国政府の職員又は他の権限ある者から事前の承認を受ける暇がないときは、合衆国軍隊の然るべき代表者は、必要な救助・復旧作業を行う又は合衆国財産を保護するために、」当該公有地または私有地の財産に立ち入ることが許されるという規定でございます。

 これで、私ども、これは米側とのそごはないわけでございますけれども、「事前の承認を受ける暇がないとき」、こういう状況に限定をして、その場合には立ち入ることができるという規定になっておるわけでございます。

赤嶺委員 いや、そごはないといっても、実際に英文の訳では、事前の承認なくして、これ以外に訳のしようがないわけですよ。しかし、日本文で、日本で皆さんがやったものは「事前の承認を受ける暇がないとき」、これは明らかにそごじゃないですか。そごがあるから、どっちなんだということを聞いているわけですよ。

河相政府参考人 日米間で合意をしていることは、原則としては事前の同意を得る、しかしそういうことができない場合には事前の同意を得ることなく立ち入ることができるという理解でございます。

赤嶺委員 その事前の同意を得るいとまがないときというのは、先ほど私が読み上げました英文の部分、そこにどんな言葉として出てくるんですか。

河相政府参考人 お答え申し上げます。

 英文としては、ウイズアウト・プライアー・オーソリティーということで書いてございます。

赤嶺委員 ですから、どこに「事前の承認を受ける暇がないとき」、つまり「受ける暇がないとき」という時間的な問題を指す言葉が英語で出てきますか。それを聞いているんですよ。

河相政府参考人 英語の単語一語一語としては明示的な単語はないかもしれませんけれども、考え方としては、原則としては事前の同意を得る、しかし、その時間が、いとまがない場合には事前の同意なくして立ち入ることができるという考え方でございます。

赤嶺委員 英語の単語には出てこないけれども、意味としてはそうなんだ、これはもうあきれた話ですよ。これはもうだれでもわかりますよ。

 では、この合意の正文は英文ですか、それとも皆さんが出した日本語ですか。どうなんですか。

河相政府参考人 正文自身は英語で書かれてございます。

赤嶺委員 正文が英語であれば、英語のとおり、読んで字のごとく「暇がないとき」というのは英語にはないということをあなたは認められた。やはり合意というのは、いわゆる事前の承認なくして事故現場に米軍が立ち入ることができる、そのとおりじゃないですか。それが合意じゃないですか。

河相政府参考人 繰り返しの答弁になりまして申しわけございませんが、この件につきましては、日米間で種々議論をした上で紙にしてまとめておるわけでございますけれども、その種々の議論の経過も踏まえて御説明を申し上げれば、原則としては、それは同意を得た上で行うのが原則ではある。ただ、時と場合によって、そういう時間がない、しかし人命の救助もしくは現場の保護、もしくはその他の人たちが現場に近づくことによる危険をできる限り除去しなくてはいけないという中で、そのいとまがないときには、許可を待つことなく立ち入ることができるという規定を設けたものでございます。

赤嶺委員 北米局長はこの間から、答弁に詰まると同じ答弁を繰り返しやって、それで何か事が済むかのように続けておりますけれども、正文が英文で、英文には「受ける暇がないとき」という単語は一切出てこない、しかし、日米間のさまざまな協議で、意味はそういうことなんです、そんな意味のわからない話なんかないですよ。外務大臣どうですか、それは。外務大臣。

町村国務大臣 恐縮ですが、英文が今私の手元にございませんから、ここで御答弁をすることはあれですが、局長が答弁をしているんだから、私は局長の答弁どおりだと理解をしております。

赤嶺委員 私、英文も外務省からもらったもので言って、局長も同じようなことを言っているんですよ。

 手元に英文がないそうですので、それでは次に、私、これは、この航空機事故に関する日米間の合意の問題は、地位協定十七条、行政協定十七条の改正の段階からずっと続いているわけですね。それで、私、ここに昭和二十九年二月発行、最高裁判所事務総局が出した本を持ってまいりました。日米行政協定第十七条の改正および国連軍に対する刑事裁判権の行使に関する協定です。

 この四十六ページに、これはその合意を解説しているわけです。「合衆国軍用機の事故現場における措置」ということになっています。この「合衆国軍用機が合衆国軍隊の使用する施設又は区域外にある公有若しくは私有の財産に墜落又は不時着した場合には、適当な合衆国軍隊の代表者は、必要な救助作業又は合衆国財産の保護をなすため事前の承認なくして公有又は私有の財産に立ち入ることが許されるものとする。」これは、最高裁判所のいわば事務総局が地裁や高裁にあてた、地位協定というのはこのように解釈するんだよという解説書です。その本であります。

 ここには、いわゆる事前の承認を得ることなくとはっきり書いているんですよ。行政協定が見直されていた時期の政府の文書にはそうなっているんです。英語もそうなんです。英文もそうなんです。表現を変えたのはどこか。外務省の文章だけじゃないですか。

 皆さん、事前の承認を受けるいとまがないなんて国民向け、国会向けの表現であって、実際には、そういう事前の承認を得ることなく米軍は事故現場に立ち入ることができる、このような合意を結んでいたということをあらわしているんじゃないですか、この本なんかを見ても。日本語でもそう書いてあるんですよ。大臣、どうですか。

河相政府参考人 今の委員が御指摘されました昭和二十九年の文書、これはちょっと私手元に持っておりませんので、それについて確たることをここで御説明することは差し控えたいと思いますが、日米合同委員会の合意で、刑事裁判管轄権に関する事項第十項(b)の4というのがございます。これについて読ませていただきますと、「合衆国軍用機が合衆国軍隊の使用する施設又は区域外にある公有若しくは私有の財産に墜落又は不時着した場合において事前の承認を受ける暇がないときは、適当な合衆国軍隊の代表者は、必要な救助作業又は合衆国財産の保護をなすため当該公有又は私有の財産に立ち入ることが許される。」こういうふうな規定になっておるわけでございます。

赤嶺委員 それでは、北米局長、そこまでおっしゃるのであれば、誤解の余地がないように英文を直したらどうですか。英文を直すように米国と交渉したらどうですか。

 こんな二本立ての説明ができるようなものを持って、アメリカは事前の承認を得ないでも現場に入れるという理解をし、日本側は、外務省は国民向けに事前の承認を受けるいとまがないときだけ入るんだという言い方をする、こんなので国民が日本の外交を信じられますか。英文を変えるべきですよ。外務大臣、どうですか。外務大臣答えてくださいよ、これ、外国交渉の問題なんですから、北米局長はまた同じ答弁なんだから。

町村国務大臣 申しわけございません。重ねての答弁になりますけれども、我が国の、我が政府の考え方として、原則として、墜落した場所の管理者の承諾を得た上で立ち入るべきであるというのが、これは当然の原則であるという考え方でございます。

 合同委員会合意において、ウイズアウト・プライアー・オーソリティーという表現が用いられているわけでございますけれども、事前に承諾を得ることができる場合にはそうするべきであるという、その立場には何ら変わりはございません。

赤嶺委員 その単語のどこからも今北米局長が答弁したものについては出てこないのに、いわばもうまさに牽強付会というか我田引水というか、自分たちに都合のいいように解釈してごまかしている。まさにごまかしで、皆さんが合意したのは、事前に承認を受けるいとまがないときではなくて、事前の承認を得ることなく原則として入れるというような合意を結んで国民に隠しているということを強く指摘せざるを得ません。

 それで、ガイドラインはそこだけが問題じゃなくて、ほかにもいろいろあるんですね。現に、これは何だというようなものがあります。その一つが、いわば墜落または不時着という部分であります。

 今回のガイドラインというのは、基本的にはそういう行政協定の時代のものを踏まえております。これまでは、米軍が公有地、私有地への立ち入りを許され得るケースとして「墜落又は不時着した場合」というのを挙げていたわけですね。ところが、今回の規定を見ると、「墜落し又は着陸を余儀なくされた場合」と変えられているわけです。

 「不時着」ではなくて「着陸を余儀なくされた場合」、このようにしたのはなぜですか。

河相政府参考人 御指摘の点でございますが、墜落したというケースははっきりしていると思いますけれども、着陸を余儀なくされた際ということの中には、不時着とあわせて、予防着陸というケースもあり得ようかと考えております。

赤嶺委員 つまり、不時着も入れて予防着陸、非常に広い概念になったような気がするわけですけれども、予防着陸というのはどういうことですか。

河相政府参考人 お答え申し上げます。

 基本的に、予防着陸というのは、私が理解している範囲において御説明をさせていただければ、計器等が示すシグナルによって、事故ではないけれども、仮に事故につながる可能性がある、例えば機器の不備を示すようなシグナルがあって、事故を防ぐために着陸をした方が安全であるというような場合に予防着陸をするというふうに理解しております。

赤嶺委員 今まではそういう事故現場に米軍が勝手に立ち入ることができるのは墜落、不時着だった。ところが、今度は予防着陸まで広げている。この間も横浜でありました。静岡でもありました。沖縄では基地内であったとはいえ頻繁に起こっています。とみに、横田から東富士への演習の往復の中で予防着陸というのが相次いでいる。そういう中で、そういうところにまで、米軍がそれが起きたときには事故現場に勝手に立ち入りすることができるということになるんじゃないですか、いかがですか。

河相政府参考人 お答え申し上げます。

 このガイドラインを米側と協議をするに当たりまして、私どもが考えた基本は、予防着陸のときも含めて、仮にそういう事態が起こったときに現場での安全確保に最大限努めるということが必要である、そしてそのための手続をきちっと決めておくことの方が適当であるということで、このガイドラインには墜落それから予防着陸をあわせて含めてあるという考え方でございまして、これによって、不幸にして事態が発生したときの安全確保がより図られるという基本的な考え方に基づくものでございます。

赤嶺委員 私、このガイドラインについて質問をしてまいりましたけれども、一番国民の批判が強かった、米軍が墜落事故を起こして、その現場を米軍が勝手に封鎖し日本側を排除する。この問題について、今回のガイドラインについて何にも改められていなければ、逆に、英文、日本語、正文である英文とは違うような説明を繰り返して国民の目をごまかそうとしている。それから、その対象についても枠を拡大している。

 これは実質上、普天間のヘリ墜落に学んだガイドラインではなくて、これを契機にさらに一層アメリカ寄りに対米追随を深めたガイドラインになっているということを指摘しまして、質問を終わります。

赤松委員長 ちょっと速記をとめてください。

    〔速記中止〕

赤松委員長 速記を起こしてください。

 次に、東門美津子君。

東門委員 社会民主党の東門です。

 大臣、お疲れのところ本当に大変でしょうけれども、あと十二分間ですから、よろしくお願いいたします。きょうの時間は十二分となっております。

 三月三十日の当外務委員会において、私は、世界じゅうで三つしかない海兵隊機動展開部隊の一つが沖縄に駐留している理由をお尋ねしました。

 その際、町村外務大臣は、なぜ沖縄にだけ一カ所海兵隊があるのか、ほかに、どこでもいいんですけれども、例えばヨーロッパなりアフリカなりになぜないのかと問われても、それに私は今的確にお答えする立場にはないわけでございますとした上で、大変興味深いお尋ねでございますし、重要なお尋ねでございますから、そのうちに機会を得て、その辺はよく米軍に確認したいと思いますと述べられましたけれども、米軍に確認をされたでしょうか。

町村国務大臣 申しわけありませんが、しかるべき米軍の方とまだ、最近会うチャンスもございませんので、聞いておりません。

東門委員 それでは、ぜひなるべく早いうちに確認をしていただきたいとお願いしておきます。

 次にですが、四月十四日の参議院の外交防衛委員会では、海兵隊すべての県外移転が可能とする学者の提言に関連して、大臣は、沖縄の海兵隊の抑止力というものは大変大きなものがあると、私どもはそう理解をいたしておりますので、沖縄海兵隊がすべて海外に行くという事態は、私の知見の範囲でそういう状態というのは、近い将来想定できませんと述べられています。

 稲嶺沖縄県知事を初め、沖縄県民が海兵隊の撤退を要望している中で、外務大臣が海兵隊の海外移転を明確に否定されたのは、それは我が国と米国の間の共通の認識に基づくものであるのかどうか、お聞かせいただきたいと思います。

町村国務大臣 先般の2プラス2を受けまして、沖縄の海兵隊を含む米軍の兵力構成見直しの具体の議論が今さまざまな形で行われているところでございます。したがいまして、海兵隊が、例えば地元の皆さん方が言っておられるように、県外あるいは海外にという可能性が私は全くないと言ったつもりはございません。ただ、たしか御質問の趣旨は、すべて海兵隊が沖縄にいないという事態があり得るのかというような趣旨のお尋ねであったものですから、それはなかなかないんじゃないのかなと思ってお答えをいたしましたが、ただ、現状、今議論をしている最中でございますから、余り予断を持って申し上げるべきではないのだろう、こう思います。

 いずれにいたしましても、先ほどの米軍の確認をも含めて、今いろいろな議論をしている最中でございますから、もう少しこの辺の議論が、両国間で合意ができる段階には、またそうした理由を含めて、きちんと沖縄県民の皆様方には、その必要性等々があればそうしたことを含めて説明責任は果たしていかなければいけない、かように考えております。

東門委員 その説明責任、私は、町村外務大臣にはその点は期待したいと思いますので、ぜひよろしくお願いいたします。

 三月の二十八日に渉外知事会が行われまして、その場で、外務省、防衛庁との意見交換があったようです。その後で、町村外務大臣と稲嶺知事が個別会談を持たれたという報道がございました。

 その際、大臣の御発言として、知事に対して、御要望のとおりにはいきませんよというような御発言があったと報じられておりますが、知事の御要望、大臣が御要望のとおりにはいきませんよと言ったその御要望は何であると大臣はお考えなのでしょうか。知事の要望は何なのかということ。

町村国務大臣 ちょっと申しわけありません、渉外知事会の席に稲嶺知事がお出になり、稲嶺知事の方からいろいろなお話があったことは、文書も残っておりますが、その後二人きりになって話をした記憶というのは、今正直言って定かにございませんし、ましてその場で何か具体のことをできませんよとかできますよとかいうようなお話をした、率直に言って私は記憶が今ございません。

東門委員 そうですか。いや、報道では確かに、その知事会の後でお二人が向かい合ってその話が出た、御要望のとおりにはいきませんよというのが町村外務大臣から言われて、それと続いて、県の姿勢に対しての牽制かもしれませんが、県はオール・オア・ナッシングになっていないかという発言もあったやに報道されているんですが、それも御記憶ございませんか。オール・オア・ナッシング。

町村国務大臣 申しわけございませんが、私もだんだん記憶力が衰えている部分もあるのかもしれませんが、正直言って記憶にございません。

東門委員 きっと今、ど忘れしておられるのであれば、ぜひ思い出していただきたい。ないことが報道に出てくるということはないと思います。

 実は、これは何人かの記者の皆さんから聞いておりますので、ぜひその点はまたお聞きしたいと思いますので、よろしくお願いします。

 米軍兵力構成の見直しと政府が言ってくるときに、必ず出てくるのが抑止力の維持と負担の軽減、その両方の観点から見なけりゃいけないという発言がもうたびたび、毎度のように出てくるわけですが、私は、前外務大臣の川口大臣にも何度もお聞きしました。でも、政府が考えている負担の軽減が何であり、どの負担をどのように軽減しようとしているのか、全然私たちには見えない。これまでも見えてこない。これからいつ見えるのかわからないのですが、その件で、米軍再編の中でどのような負担をどのように軽減していくという議論はなされているのでしょうか。

河相政府参考人 御指摘のとおり、現在の米軍の再編、見直しの協議、これは二つの柱、一つが抑止力の維持、もう一つが沖縄を含む地元の負担軽減。この具体的な負担軽減、これは場所場所によって形がいろいろあろうかと思います。

 ここの場で一概に申し上げることは難しいと思いますし、私どもとしては、個々の施設・区域、基地で、その地元の方が負っておられる負担というものに着目をしつつ、それをどうやって少しでも減らせるかという努力を重ねていく方針でございます。

東門委員 今の北米局長の答弁を聞いていますと、何か何もしていないような感じですね。そういうふうに聞こえるんですが、実際議論はしているんですか。

 こういう負担が、私、よそのところはよくはわかりません、厚木にもあるようなのが沖縄にもある、横須賀にもあるようなのが沖縄にもある、そういうのを知っています。でも、そういうものが個別具体的でなくても、トータルで見たって、はっきり負担というのがどういうものであるかというのは政府は持っているはずなんですね。その軽減を、どの部分をどのようにするかという話ぐらいは出ていると思うんですが、それもないんですか。

河相政府参考人 例えて申し上げれば、厚木等々あれば、飛行機の騒音の問題というのもございます。それから、沖縄でもありますように、航空機が飛ぶことに対して住民の方が持っておられる不安、懸念というものがあると思います。それ以外にも、やはり、基地が非常に大きい区域を占めているがゆえに都市計画等々が進まないという部分もあろうかと思います。いろいろな形で、複合的にあるときもありますし、基地によってそれぞれの負担の性格が違うところもあると思います。

 米側との間では、個々のケースも念頭に置きながら議論はしておりますけれども、その具体的内容は今議論中でございますので、ここで御説明することは差し控えたいと思います。それについては、地元の方々が負っておられる負担、これはいろいろな形があるけれども、これをどうやって少しでも減らすかというので米側と鋭意話しているところでございます。

東門委員 やはり、何も出てこないのかなと思います。

 次に伺います。

 抑止力の維持という言葉もよく出てきます。その抑止力とは何に対する、だれに対するというのか、どこに対するというのか、私もどう言っていいのかわからないけれども、何に対する抑止力でしょうか。

河相政府参考人 抑止力の点でございますけれども、これはどこかの具体的な国なり何かを念頭に置くというよりも、ともかくこの日本の安全をどうやって守るか、そして極東の平和と安定をどうやって守るか、そして、要するに、基本的に概念としてあるものは、日本の安全を脅かそうとするものが仮にどこかで出てきたときに、それがまずもって出てこないようにする、そして仮に出てきたとしても、そういう試みというのが成就しないというか現実化しないというための備えとしてが抑止力というふうに理解をしております。

東門委員 抑止力についてはもう少し時間を得てまたやりたいと思います。

 次に、二月八日付の産経新聞及び三月二十八日付の朝日新聞は、普天間飛行場に駐留する米軍を分散移転した上で、平時は自衛隊が管理をし、有事の際には来援した米軍の使用を確保しようとする案が政府内で検討されていると報道しています。

 しかしながら、沖縄県民が求めているのはあくまで普天間飛行場の全面返還であり、普天間飛行場を自衛隊基地として残すことは、県民の願っていることとは異なります。稲嶺知事も四月十五日の定例記者会見で、これらの報道について、日米の基本合意は返還だ、あくまで返還を主体に考えるべきだと述べておられます。

 このような中で、四月十九日付の地元紙は、防衛庁首脳が普天間飛行場移設問題を、必ず動かし、沖縄に返還させると述べた上で、この報道されている案を検討にも値しないと切り捨てたと報じています。この防衛庁首脳とはどなたのことかはわかりませんが、沖縄県民にとってはまことに心強い発言だと思われます。

 そこで、外務大臣にお尋ねいたしますが、この普天間飛行場の管理権を自衛隊に移管することが沖縄の負担軽減になるとお考えでしょうか。御見解をお伺いします。

町村国務大臣 先ほどほかの方の御質問にもお答えしましたが、一つ一つの、いろいろな報道が出ることについて一々のコメントはもうしないことにしておりますので、仮定に立った御質問にお答えするのはこの際控えさせていただきます。

 いずれにしても、この普天間飛行場の移設、返還、これは、SACO最終合意の着実な実施が在日米軍の安定的な駐留のために重要である旨、これは2プラス2でも確認をしたわけでございまして、この確認の中には普天間飛行場の移設、返還も当然含まれる、こういう認識に立っております。

 私も、この普天間飛行場、事故からしばらくたっておりましたが、現実に拝見をいたしまして、市街地の真ん中にあるということで、一日も早く周辺住民の皆さん方の不安を解消したい、こう考えておるわけでありまして、この普天間飛行場の早期の移設、返還に向けて全力で取り組んでいきたい、かように考えているところであります。

東門委員 ありがとうございました。終わります。

     ――――◇―――――

赤松委員長 次に、国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約を補足する人(特に女性及び児童)の取引を防止し、抑止し及び処罰するための議定書の締結について承認を求めるの件及び国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約を補足する陸路、海路及び空路により移民を密入国させることの防止に関する議定書の締結について承認を求めるの件の両件を議題といたします。

 政府から順次趣旨の説明を聴取いたします。外務大臣町村信孝君。

    ―――――――――――――

 国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約を補足する人(特に女性及び児童)の取引を防止し、抑止し及び処罰するための議定書の締結について承認を求めるの件

 国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約を補足する陸路、海路及び空路により移民を密入国させることの防止に関する議定書の締結について承認を求めるの件

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

町村国務大臣 ただいま議題となりました国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約を補足する人(特に女性及び児童)の取引を防止し、抑止し及び処罰するための議定書の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。

 この議定書は、平成十二年十一月にニューヨークで開催された国際連合総会において採択されたものであります。

 この議定書は、人身取引を防止すること等を目的として、人身取引に係る一定の行為の犯罪化、人身取引の被害者の保護、人身取引の防止措置、国際協力等につき規定するものであります。

 我が国がこの議定書を締結することは、人身取引に効果的に対処するための国際的な取り組みに寄与するとの見地から有意義であると認められます。

 よって、ここに、この議定書の締結について御承認を求める次第であります。

 次に、国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約を補足する陸路、海路及び空路により移民を密入国させることの防止に関する議定書の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。

 この議定書は、平成十二年十一月にニューヨークで開催された国際連合総会において採択されたものであります。

 この議定書は、移民を密入国させることを防止すること等を目的として、移民を密入国させること、移民を密入国させることを可能にする目的で不正な旅行証明書を製造すること等一定の行為の犯罪化、移民を密入国させることの防止措置、国際協力等につき規定するものであります。

 我が国がこの議定書を締結することは、移民を密入国させることに効果的に対処するための国際的な取り組みに寄与するとの見地から有意義であると認められます。

 よって、ここに、この議定書の締結について御承認を求める次第であります。

 以上二件につき、何とぞ、御審議の上、速やかに御承認いただきますようお願いいたします。

赤松委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時五十五分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.