衆議院

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第10号 平成17年6月29日(水曜日)

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平成十七年六月二十九日(水曜日)

    午後一時四分開議

 出席委員

   委員長 赤松 広隆君

   理事 谷本 龍哉君 理事 中谷  元君

   理事 原田 義昭君 理事 渡辺 博道君

   理事 大谷 信盛君 理事 首藤 信彦君

   理事 増子 輝彦君 理事 丸谷 佳織君

      秋葉 賢也君    植竹 繁雄君

      小野寺五典君    岡本 芳郎君

      奥野 信亮君    城内  実君

      高村 正彦君    土屋 品子君

      寺田  稔君    中野  清君

      西村 明宏君    西銘恒三郎君

      三ッ矢憲生君    泉  健太君

      小泉 俊明君    近藤 洋介君

      下条 みつ君    武正 公一君

      永田 寿康君    藤村  修君

      松原  仁君    赤羽 一嘉君

      赤嶺 政賢君    東門美津子君

    …………………………………

   外務大臣         町村 信孝君

   総務副大臣        山本 公一君

   外務副大臣        谷川 秀善君

   外務大臣政務官      小野寺五典君

   政府参考人

   (警察庁警備局長)    瀬川 勝久君

   政府参考人

   (防衛施設庁長官)    山中 昭栄君

   政府参考人

   (防衛施設庁業務部長)  土屋 龍司君

   政府参考人

   (総務省大臣官房審議官) 小笠原倫明君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 遠藤 善久君

   政府参考人

   (外務省大臣官房広報文化交流部長)        近藤 誠一君

   政府参考人

   (外務省総合外交政策局軍縮不拡散・科学部長)   天野 之弥君

   政府参考人

   (外務省アジア大洋州局長)           佐々江賢一郎君

   政府参考人

   (外務省北米局長)    河相 周夫君

   政府参考人

   (外務省経済協力局長)  佐藤 重和君

   外務委員会専門員     原   聰君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月二十九日

 辞任         補欠選任

  宇野  治君     岡本 芳郎君

  河井 克行君     寺田  稔君

  鈴木 淳司君     西村 明宏君

  平沢 勝栄君     中野  清君

  宮下 一郎君     秋葉 賢也君

  鳩山由紀夫君     小泉 俊明君

  古本伸一郎君     近藤 洋介君

同日

 辞任         補欠選任

  秋葉 賢也君     奥野 信亮君

  岡本 芳郎君     宇野  治君

  寺田  稔君     河井 克行君

  中野  清君     平沢 勝栄君

  西村 明宏君     城内  実君

  小泉 俊明君     鳩山由紀夫君

  近藤 洋介君     泉  健太君

同日

 辞任         補欠選任

  奥野 信亮君     宮下 一郎君

  城内  実君     鈴木 淳司君

  泉  健太君     下条 みつ君

同日

 辞任         補欠選任

  下条 みつ君     古本伸一郎君

    ―――――――――――――

六月十六日

 専門機関の特権及び免除に関する条約の附属書XVの締結について承認を求めるの件(条約第三号)(参議院送付)

 石綿の使用における安全に関する条約(第百六十二号)の締結について承認を求めるの件(条約第四号)(参議院送付)

 社会保障に関する日本国とベルギー王国との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第八号)(参議院送付)

 社会保障に関する日本国政府とフランス共和国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第九号)(参議院送付)

同月九日

 核兵器廃絶条約の早期締結に関する請願(中川秀直君紹介)(第一七四三号)

 同(松本大輔君紹介)(第一七八七号)

 同(岸田文雄君紹介)(第一八二二号)

 同(斉藤鉄夫君紹介)(第一八八一号)

 ILOパートタイム労働条約に関する請願(田嶋要君紹介)(第一七四四号)

同月十日

 核兵器廃絶条約の早期締結に関する請願(佐藤公治君紹介)(第一九六三号)

 同(寺田稔君紹介)(第二二一一号)

同月十三日

 女子差別撤廃条約選択議定書の批准に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第二三三二号)

 同(石井郁子君紹介)(第二三三三号)

 同(穀田恵二君紹介)(第二三三四号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第二三三五号)

 同(志位和夫君紹介)(第二三三六号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第二三三七号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第二三三八号)

 同(山口富男君紹介)(第二三三九号)

 同(吉井英勝君紹介)(第二三四〇号)

 ILOパートタイム労働条約に関する請願(石井郁子君紹介)(第二三四一号)

 同(吉井英勝君紹介)(第二三四二号)

同月十四日

 女性差別撤廃条約選択議定書の速やかな批准に関する請願(肥田美代子君紹介)(第二六六一号)

 核兵器廃絶条約の早期締結に関する請願(増原義剛君紹介)(第二六六二号)

 同(和田隆志君紹介)(第二八四九号)

 米軍機飛行禁止と基地撤去に関する請願(穀田恵二君紹介)(第二九四九号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第二九五〇号)

 沖縄の新基地建設中止、基地の全面撤去に関する請願(石井郁子君紹介)(第二九五一号)

 ILOパートタイム労働条約に関する請願(塩川鉄也君紹介)(第二九五二号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第二九五三号)

 同(山口富男君紹介)(第二九五四号)

 同(吉井英勝君紹介)(第二九五五号)

 核兵器の廃絶に関する請願(塩川鉄也君紹介)(第二九五六号)

 女子差別撤廃条約選択議定書の批准に関する請願(穀田恵二君紹介)(第二九五七号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 専門機関の特権及び免除に関する条約の附属書XVの締結について承認を求めるの件(条約第三号)(参議院送付)

 石綿の使用における安全に関する条約(第百六十二号)の締結について承認を求めるの件(条約第四号)(参議院送付)

 国際情勢に関する件


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     ――――◇―――――

赤松委員長 これより会議を開きます。

 国際情勢に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房審議官遠藤善久君、外務省大臣官房広報文化交流部長近藤誠一君、外務省総合外交政策局軍縮不拡散・科学部長天野之弥君、外務省アジア大洋州局長佐々江賢一郎君、外務省北米局長河相周夫君、外務省経済協力局長佐藤重和君、警察庁警備局長瀬川勝久君、防衛施設庁長官山中昭栄君、防衛施設庁業務部長土屋龍司君、総務省大臣官房審議官小笠原倫明君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

赤松委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

赤松委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。三ッ矢憲生君。

三ッ矢委員 自由民主党の三ッ矢憲生でございます。

 本日は、久しぶりに外務委員会で質問の機会をお与えいただきまして、ありがとうございます。

 町村大臣には、特にこの春以来、日中あるいは日韓、さらに国連安保理改革等大変重要な外交案件、それもなかなか処理の難しい案件が次々と提起される中、精力的に御尽力いただいておりますことに対しまして、心から敬意を表する次第でございます。

 そこで、まず最初に、現在最もホットといいますか大変な問題になっております国連安保理、安全保障理事会の拡大問題についてお伺いしたいと思います。

 まず最初に、この期に及んで今さらそもそも論などと言われるかもしれませんが、どうもこの問題については、なぜ今、日本が常任理事国入りを目指すのか、常任理事国になって何をどういう形で日本は貢献しようとしているのか。あるいは、常任理事国になることによってどういうメリットがあり、また、逆に責務を伴うことになることもあるわけでございますけれども、我が国と日本国民がそれを引き受けるだけの覚悟があるのかどうかといった基本的な事柄について、十分な意思統一と認識があるのかなという疑問が残るわけであります。

 私自身は、戦後六十年を経過して、日本がその間、国際社会に大きな貢献をしてきたと信じておりますし、現に平和国家として、費用負担も含め、国連の屋台骨を支える存在となり、軍縮、環境、教育から、PKOや人道支援などという人的貢献の分野にまで幅を広げてきて、いわゆる戦勝五大国とは違った形で、国連の場において独自の役割を演ずることができると確信しておるところでございます。

 その意味で、常任理事国になる資格は十分あるというふうに思っておるわけでございますが、ただ、正直申し上げまして、安易な国連幻想や国連信仰は別にしましても、国連改革、即常任理事国入りということなのかなとも思わないでもございません。

 そこで、まず、今申し上げましたようなこれらの点につきまして、大臣からわかりやすく御説明をいただければというふうに思います。

町村国務大臣 三ッ矢委員にお答えを申し上げます。

 安保理、今大変ホットな国際的な話題にもなっているところでございまして、先般ロンドンで、G8外相会談でもそのことがひとしきり話題になったところでもございました。

 考えてみますと、一九四五年に国連ができて六十年たっております。十年前の一九九五年のときも、大分国連改革の議論があったわけでございますが、結果的には、何も変わらないで戦後五十年が終わってしまったということもございました。

 その後、ずっと十年間さまざまな議論が積み重ねられている中で、ことしこそはというようなことで、今相当機運も盛り上がり、昨年来からハイレベルな方々のパネル報告書も出され、また、三月にはアナン事務総長の報告も出されたというような流れになっております。

 何でそうなってくるか、いろいろな理由があろうかと思いますが、一つの大きな背景は、やはり戦後六十年たって国際社会の構造が非常に変わってきたということ。これは、単純に国の数だけで申し上げれば三倍以上にふえているということであろうかと思いますし、その間に、成長する国、日本のように極端に急成長を遂げた国から、余り発展をしない国、さまざまな変化もあるわけでございます。

 その間に、では、国連というものが折に触れて改革はされてはきているものの、例えば常任理事国に関して言うならば、一回、非常任が四つふえただけということでございまして、これでは、やはり国連そのものが世界の変化というものをいろいろな面であらわしていないということが言えるんだろうと思います。そういう意味で、世界のそうしたいろいろなバランスの変化を反映した常任理事国、非常任理事国の姿を求めるべきであろうということもあります。

 また同時に、今委員御指摘のとおり、国連改革、即安保理改革だけではないというのは御指摘のとおりであろうと思っております。

 今、国連の中でも、いろいろな分野の改革というものが議論になっております。例えば、人権委員会というのがありますが、人権理事会というものにそれを大きく格上げしたらどうかであるとか、あるいは、平和構築委員会、これは仮称でございますが、平和を実際につくり、それを維持するためのそういう委員会組織をつくってみたらどうかとか、あるいは、国連の事務局スタッフというものの、日本的言葉で言うなら行政改革ですね、行革が必要ではないかといったような議論、さまざまな分野からの国連改革というものが今取り上げられております。そういう中での、特に安保理常任理事国入りのことについてお話があったわけでございます。

 日本にとってそれがどういう意味があるのかということからまず申し上げますと、やはり安保理というのは国際の平和と安全というものに最も責任を有する国際機関であるのは御承知のとおりでございますが、そこのプロセスに日本が深くかつ恒常的にかかわるということが、常任理事国入りによってそれが可能になりますので、その際に、日本の利益、国益に合った主張をし、日本の国益に合った形での決定というものがより行いやすくなる、こういうことが言えるわけでございます。

 今、日本は非常任理事国、この一月から活動をしておりますけれども、やはりそこで得られる情報というものは大変大きなものがあるわけでございます。逆に、そうでない国々にとっては非常に透明性が低いという逆の問題も出されておりまして、安保理の透明性というものも、今多くの発展途上国から議論として出されていることもあります。

 いずれにしても、そういう意思決定過程に日本が深くかかわれるということは、日本にとって大変大きな意味があるだろうし、また、今委員御指摘のように、日本が戦前の反省の上に立って、そして、戦後はひたすら平和国家として歩んできたということを私どもは自信を持って言えるわけでございます。

 専守防衛でありますとか、あるいは軍事大国にならない、非核三原則あるいは武器輸出三原則等々というような形で、日本は非常に平和国家としての活動を歩んでまいりました。また、そういう中で、世界の平和のために、軍備管理でありますとか軍縮あるいは核の不拡散の問題、こうした問題にも積極的な役割を果たしてきたと自負をしておりますし、また、経済の面でもODA等々を大変やってきたといったようなこともあろうかと思います。

 そのことは、日本にとってのメリットのみならず、国際社会にとっても、GDP世界二位という国がやはり政治の面でもより責任ある役割を持つということは、国連に対する貢献という意味からも大変大きゅうございますし、委員御指摘のように、非核兵器保有国として日本が軍縮の面等々でこれからより一層大きな役割を果たせるということは、安保理の機能を向上する上から見ても大きなことなんだろう。日本にとっても国際社会にとっても、双方にとってこれは意味のあることなんだ、私はかように考えている次第でございます。

 長い答弁で済みませんでした。

三ッ矢委員 安保理も、常任理事国が一種クラブのような形で、メンバー同士で情報を独占するというようなこともあるやに聞いておりますし、だれでもそうでありますけれども、どうせ試合に参加するなら、たまに補欠でベンチに入っているよりはレギュラーになった方がいいというのは当然のことでありまして、今大臣お答えいただきましたように、日本としてのきちんとした理念を持って常任理事国入りを目指すということで、またさらに御尽力をお願いしたいと思っております。

 ただ、現在の状況を報道で知る限りでございますが、大変厳しいものがあるのではないかなというふうに思うわけでございます。

 先般、二十三日でございましたか、大臣がライス国務長官とロンドンで会談されたわけでございますけれども、その前に出されましたアメリカ政府の包括提案、なかんずく安保理の新常任理事国について日本を含む二カ国程度という案につきましては、これは総理も支持しないということを明言されたというふうに伺っております。

 アメリカ提案の背景につきましては、私も憶測で物を言うことは避けたいと思いますけれども、ライス長官は町村大臣との会談で、G4が枠組み決議案を出し、もし採択されたとしても、アメリカ議会は批准しないだろうというふうに述べたとも伝えられております。これが事実であるとしますと、我が国としては大変苦しい立場に立たされたのではないかなという気がするわけでございます。

 もともと、日本は支持するけれども、G4決議案には賛成しないという国もかなりあるやに聞いておりますし、これでアメリカの出方をうかがっていた国の中には、ますますG4離れを起こす国も出てくるのではないかと危惧しておるところでございます。

 アメリカ提案も、日本にとってはありがたいような、正直言って迷惑のような話ではないかという気がいたしますが、この間の事情につきまして、当事者でいらっしゃいます町村大臣から、その間の背景等について事情を御説明いただければと思います。

町村国務大臣 アメリカの提案というものが六月の二十二日、国連の場で、総会非公式審議という場で提案をされたわけでございます。

 このことはもう既にいろいろな報道があるとおりでございまして、常任理事国については一定の基準というものを設けて、人口であるとかGDP、平和に対する貢献等々さまざまな基準を設けて、それに基づいて新しい常任理事国を二カ国程度、それから二ないし三の非常任理事国を追加して、現在十五でございますから、安保理を十九ないし二十議席に拡大をする、エッセンスはそういうことかなと思います。もちろん、先ほど申し上げたような幅広い国連改革ということをアメリカは主張しているわけであります。

 その翌日、ロンドンでG8外相会談が開かれておりまして、その合間を縫いまして日米外相会談を行ったわけでございまして、その場で今申し上げたようなライス長官からの考え方の提示があり、特に、米議会のことを盛んに、二度、三度ライス長官は言っておられました。

 そう詳しい話ではございませんでしたが、今までの知識で申し上げるならば、米議会は国連というものに余り重きを置かないと言うとちょっと語弊があるかもしれませんけれども、どちらかというと、日本と比較でいえば、余り重きを置かない。それで、国連には非常にお金がかかっているというような印象がもともと議会全体にあるということで、現在G4が進めている案、あるいは現在国連が専ら安保理ばかりに焦点を当てているような改革では、なかなか議会はこれを認めないだろう、賛成をしないだろうというようなことで、日本の常任理事国入りについては、今までも累次、それはアメリカは全力で支持するとは言っておられましたけれども、議会にはなかなか慎重論が多いんですよということを強調しておられたのが大変印象的であったわけでございます。

 そういう中で、では今、安保理改革、国連改革、どういうふうになっていくだろうかということであります。ロンドンに行く前に、ブラッセルでいわゆるG4の外務大臣会合というものを開きました。その場で、今G4が出しております国連安保理改革の枠組み決議案というものを出して、そして、七月中には採決しようということで合意をいたしました。それに向けて今、三分の二の多数の賛成が必要だということで、その拡大運動というものを一生懸命やっているところでございまして、着々とそれはふえている。

 細かい票読みを申し上げてもいいのでありますが、票読みは、これは選挙でいうとトップシークレットになりますので、ちょっとこの場で、恐縮ですが、今詳しい票読みを申し上げるわけにはまいりませんけれども、着々と今それがふえている状況にあるかな、こう思っております。

 さはさりながら、現在の常任理事国の中でも、フランスが大変熱心に支持をしてくれる、次いでイギリス、真ん中ら辺にロシアがいて、次いでアメリカ、中国、横一線に並べるとそんなような分布になってきておりまして、三分の二の段階ではまだいいのですけれども、最終的に条約、すなわち国連憲章の批准という段階になると、この五カ国が全部賛成でないと憲章改正はできないということがあるものですから、私どもとしては、まず、とりあえずアメリカとの接点がどこかにないだろうかということで、G4の枠組みと結束は重視しながらも、同時にアメリカの関与も重要だ、こう考えて、引き続き密接な意見交換をやっていきましょうということでライス長官との話を締めくくったわけでございまして、その後も事務レベルで今さまざまな意見交換を行っているという段階でございます。

三ッ矢委員 今大臣からお答えをいただきましたように、この問題に関しては、アメリカは別にしましても、中国が逆根回しといいますか、なりふり構わない猛反対と言った方がいいかもしれません。それからまた韓国も、日本の常任理事国入りに、反対とまで言うのは言い過ぎかもしれませんが、非常に消極的であるというふうに聞いております。

 こういうふうに近隣の諸国が反対する中で、今大臣がおっしゃいましたように、来月中にもG4の決議案を提出するというようなことで、残された時間もそう多くはないと思います。今大臣もほとんどお答えいただいたんですが、今後、この限られた時間の中で、どういう戦略で、例えば、G4の決議案とアメリカの提案、これの折衷案のようなものを我が国として両者に働きかけるというようなお考えはお持ちなのかどうか、その点も含めて、今後の方策と見通しについてお答えいただければと思います。

町村国務大臣 今、国連の国々の中にはいろいろな動きがあります。確かに、委員御指摘のように、中国あるいは韓国を初めとする、特に韓国あるいはメキシコ、アルゼンチン、パキスタン、イタリア等々の、コーヒークラブと呼んでおりますが、要するに常任理事国の拡大には反対というグループもあります。

 それから、例えば、今アフリカは、七月の四日、五日にアフリカン・ユニオン、アフリカ首脳会合というのがございまして、そこまでは余り態度をはっきりしないということで、数が何しろ五十数カ国ある中で、大部分の国がいわば態度未定というような国もあります。あるいは、カリブ海諸国も、十数カ国ありますが、これも七月四日、六日に首脳会合があるので態度を表明しないということがあるものですから、したがって、先ほどちょっと票読みなどという言葉を使ってしまいましたけれども、なかなかそこのところが、まだ態度未定という国が非常に多いということもまた現在の時点では言えるんだろうと思います。

 そういう中でG4が余り走り過ぎると、おれたちの意向も聞かずにどんどん決める気かという反発も大変ありまして、国連総会議長あるいはアナン事務総長から、余り急ぐのはいかがなものですかといったようなアドバイスもいただいているところでございます。

 そんなこともあって、日本は、当初G4のほかの国々は、七月早々に出して、そして半ばまでには採択をして、七月末までにはもうどの国を常任理事国にするかという投票まで全部やってしまえという意見があります。その意見が今でも言われているんですけれども、それはちょっと急ぎ過ぎじゃありませんかということで、今いろいろG4の中でも議論をやっております。

 しかし、いずれにしても、さっき申し上げた三分の二の多数というものを確保するというのが最重要課題でありますので、今それに向けて全力を挙げているという段階であります。

 そして同時に、枠組み決議案は、やはりそうはいっても七月中にはできるようにして、さらにそこから先、常任理事国の選挙はいつやるかということについてはよく関係国と議論をしていきたい。同時に、さっき申し上げましたような、アメリカを初めとする枢要な国々があります、中国もそうであります、そういう国々の理解を得る努力というものはやはりやらなければいけないんだろうと思います。

 再提案というようなお話もございましたが、今私どもはそれを考える立場にはないのかなと思っておりますが、実際このままいくと国連が分裂してしまうということを懸念する向きもいろいろございます。それは、総会の議長さんでありますとか事務総長さんとか、あるいは事務総長を補佐する立場の方々もいらっしゃいます。そういう方々が今水面下でいろいろな案を練っているという情報も得ておりまして、そういったものの動きというのもいずれ表面化をしてくる可能性はあるのかな、こう思っております。

 しかし、私どもとしては、今運動を進めている母体でございますから、運動を進めている母体がはなから、こちらでこういう案もある、こういう案もあるということを表立って言うことはやはり大変まずいんだろう、こう思っておりまして、まず基本は、賛同してくださる国々の数を一カ国でもふやすということに今全力を挙げているところでございます。

三ッ矢委員 ありがとうございます。

 総理も、昨日ですか、アフリカの各国の大使と会談をされたようでございますし、必要な百二十八カ国の賛成を取りつけるべく、今鋭意御努力されているところだと思いますが、限られた時間の中でできる限りの働きかけ、あるいは、大臣そうおっしゃいましたが、日本として水面下で、それこそ折衷案のようなことも私は考えてもいいんじゃないかなというふうに思っておりまして、その点も含めて、引き続き御努力をいただければというふうに思っております。

 国連改革についてはこの程度にいたしまして、次に、最近の東アジア関係についてお伺いしたいと思います。

 最初に、いわゆる東アジア共同体構想についてお伺いしたいと思います。

 地域共同体の先駆けでございますEUで、最近、憲法条約の批准をめぐって混乱が起きておりますが、それはともかく、EUは、政治、文化あるいは宗教といった面で共通の基盤がある程度あるわけでございます。しかし、そのEUでも、最初は石炭、鉄鋼という個別分野での協力からスタートしたわけでございます。

 他方、アジアは、最近でこそ一定程度、経済的な利害が一致するようになってきたとはいえ、宗教、文化はもちろん、政治体制の違いあるいは経済発展の進捗の度合いの違いもございまして、極めて多様な形になっております。

 これは私の勉強不足かもしれませんが、EUが地域共同体の一つの理念型といいますか、イデアルティプスであるとしますと、もう一つ東アジア共同体というものについて具体的なイメージがわかないといいますか、一体何を目指して、どういうものを想定しているのかはっきりしないような気がいたすわけでございます。

 そこで、この点について、無知な人間もおるわけでございますので、ぜひ大臣から御啓蒙をいただいて、どういうことを目指しているのか、また現在の進捗状況についてもあわせてお答えいただければと思います。

町村国務大臣 東アジア共同体という言葉が大変に流布をしておりまして、今委員御指摘のように、これと比べて、EUとの対比というものがどうしても頭に浮かぶわけでございます。

 御承知のように、EU、昔はECとか、今でもECはありますけれども、欧州石炭鉄鋼共同体という、主として関税同盟、それから原子力協定という二つのところから出発をしておりました。そして、それがたしか一九五〇年代前半でございますから、やや五十年かかって、今日の共通の憲法までつくるかというところまで進化を遂げてきたんだろうと思います。それと比べると、日本はまだその一九五〇年代のヨーロッパの姿と言えなくもないと思います。

 ただ、現実は随分進んできておりまして、例えば域内貿易依存度などは、この東アジア地域内ではもう五割を超えております。EUが今ようやく六割程度でございますから、実質がかなり進んできているということはあろうと思います。

 それから、制度的にも、ASEANを中心として、ASEANプラス3でありますとか、それにインド等々も加わりまして、かなりいろいろな形での機能面での共通性といいましょうか協定といいましょうか、そういったものができ上がりつつあるというふうに言えるかと思います。

 日本も、あるいはその他の国々も、今、例えば貿易面でいえば、EPA、FTAというものを一生懸命進めたりとか、あるいは海賊協定といったような、これは経済外の面での結びつきも深まっていったりとかいうようなことがありまして、主として機能的な結合というものを深めていこうではないか。

 ただ、先ほど委員御指摘のように、特に政治体制の面でいえば、中国あるいはベトナムというのは、何といってもこれは共産主義体制であります。その他の国々も、自由と民主主義とはいうものの、相当ばらつきといいましょうか違いもありましょう。したがって、政治面あるいは安全保障面でこれらがどんどん今のEUの姿に一遍になっていくかというと、私は、現状、一足飛びにそこまでは行かないんだろう。したがって、経済面、社会面を中心とした機能的結束力といいましょうか、これを高めていくということによってまたいろいろなものが生まれてくるのではないだろうか。

 その出発点として、ことしの十二月、マレーシアで東アジア・サミットというものが行われるというのは、そういう意味では画期的なものなのではないだろうかと思いますが、しかし、一挙にEUスタイルに行くだろうか、これにはまだまだ相当な時間とエネルギーがかかるテーマであろう、かように思っております。

三ッ矢委員 ありがとうございます。

 実は、東アジア共同体についてもう一つ御質問をと思ったんですが、あと時間が五分しかないものですから、一つだけ。

 アメリカが東アジア共同体について、自分たちが排除されるのではないかという強い懸念を持っているというようなことを私も聞いておりまして、大臣がおっしゃったように、経済以外の分野で、例えば環境ですとか医療ですとか防災ですとかあるいは治安ですとか、そういう面での協力、個別の分野での協力をどんどん推し進めていっていただきたいと思うんですけれども、アメリカに対する配慮もぜひお忘れないようにいただきたい。これは、アメリカを排除してしまいますと、言葉は適切でないかもしれませんが、下手をすると中華帝国になってしまう可能性もあるものですから、そこだけは気をつけていただきたいなというふうに思っております。

 最後に、日中関係について一つだけお尋ねしたいと思います。

 私は、個人的には、外から眺めておりまして、中国の外交が最近非常に活発化しているなというふうに思います。特に、近隣諸国との間では、ロシアとは長年の懸案でありました国境線の画定を果たしましたし、インドとも、昔は仲が悪かったんですけれども、最近非常にうまくやっている。それから、中央アジアの国々にも非常に接近しておるというようなことも聞いておりまして、これはエネルギー確保戦略の一環かなとも思うわけでございますけれども、いずれにしても、近隣でぎくしゃくしているのは日本とだけかなという気がしております。

 四月の反日デモにつきましては、私も含めて多くの日本人にとってみますと、寝耳に水といいますか、どうして今ごろ突然反日デモがこんな形で起こったのか、キツネにつままれたような感じだったと思うんです。

 ここでは総理の靖国参拝の問題を申し上げるつもりはございません。靖国問題が何らかの形で決着したからといって、日中関係が劇的に改善するとも思えませんので、それはさておきまして、ただ、問題は、それぞれ難しい国内事情を抱えていると思うんです。中国だけじゃなくて韓国もそうだと思います。あるいは場合によっては日本もそうかもしれませんが、各国におけるナショナリズムの高まりだと思うんですね。これは大変危険だ。

 日本にしましても、多分、外から見ますと、最近の一連の動き、自衛隊の海外への派遣でございますとか、あるいは憲法論議、それから2プラス2の共通戦略目標、あるいは先ほど話題になりました国連の常任理事国入りも含めて、また外から見ると見方が違っているのかなという気がしないでもございません。

 つまり、ゴルフでいいますと、我々は今までフックボールを打っていたのが、ちょっとストレートボールを打とうかなということでスタンスを変えたら、向こうから見ると、どうもえらいスライスを打っているじゃないか、右に曲がっているぞというふうに見えているのかなという気がしないでもございません。

 歴史認識の問題につきましても、どうも彼らに言わせると、戦前、戦中の五十年間の話ばかりするわけでございますけれども、これは先ほども申し上げましたが、戦後の日本の歴史、この六十年間の歴史をきちんと見てもらえば、我が国が平和国家として復興を果たして、いろいろな分野でアジアの平和と経済発展のために努力してきたことは明らかでありますし、戦後も含めた我が国の歴史もきちんと評価されるべきだと私は考えておるわけでございます。

 いずれにしましても、政冷経熱などと言われておりますけれども、このままの状態が続くと、現にそういう動きも出てきているようでありますけれども、経済の面でも悪影響が出てくるということは間違いございませんし、これは両国にとって決してプラスにならないというふうに思うわけでございます。

 これからの東アジアの安定を考えますと、日本も含めまして、各国におけるナショナリズムのコントロールといいますか、マネジメントが極めて重要ではないかと思っております。そのために、誤解、錯誤あるいは思い込みをできる限り排除することが必要でございまして、それが外交の大きな役割ではないかと思っています。

 今後の日中関係について、非常に漠然としたことでございますが、大臣から一言お考えを聞かせていただければと思います。

町村国務大臣 時間の制約もあると思うので、一言だけにさせていただきます。

 日中関係というのは、委員御指摘のとおり、日中だけにとって意味のある大きな二国間関係ではなくて、これはアジアにとって、世界にとっても重要だ、こういう認識を持っております。そういう意味で、日中友好というものは非常に重要であるという認識のもとに、今いろいろな対策を打っているところであります。

 確かに、個々の分野で意見の違いがあることは率直に言って認めなければなりませんけれども、しかし、そのことがすべて日中関係を悪化させるということであってはならないだろう、こう思っております。

 日中両国で共同作業計画というものを今つくっておりまして、これで日中関係をよりよい方向に前進させていきたい、こう考えておりまして、引き続き努力をしてまいりたいと考えております。

三ッ矢委員 終わります。ありがとうございました。

赤松委員長 次に、丸谷佳織君。

丸谷委員 公明党の丸谷佳織でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

 本日は、一般質疑の中で、日韓関係、またグレンイーグルズ・サミット等、お伺いをさせていただきたいと思いますので、どうかよろしくお願い申し上げます。

 まず、日韓関係についてお伺いをさせていただきます。

 本年で国交正常化四十周年を迎えました日韓関係でございますが、さきにソウルで行われました首脳会談でも多くの時間を費やして議論されました歴史認識問題を初めとして、小泉総理の靖国神社参拝問題、また竹島問題等、両国における意見の相違や対立が両国民の感情にも少なからず反映されている状況にあると考えております。

 しかしながら、意見の相違はあるとはいえ、そこに執着するのではなく、日韓の友好関係を発展させるために、両国が何をするべきかという知恵を出していかなければいけないという年を迎えているというようにも思います。

 その観点から、朝鮮半島出身者の遺骨の調査及び返還について幾つかお伺いをさせていただきたいと思います。

 昨年九月より、第二次世界大戦中に日本企業に徴用され死亡しました朝鮮半島出身者の調査のために、日本企業百八社に対しまして、遺骨がある場合の保管場所あるいは資料そのものの有無等について実態調査を行うとともに、今月からは、遺骨が安置されています可能性のある寺院や、資料を保存してあります自治体の協力を得ながら、実態解明に努めていると承知をしております。

 まず、昨年来行われています企業への調査状況がどうなっているのか、その進捗状況についてお伺いをさせていただきます。

町村国務大臣 政府は、平成三年及び四年に、韓国政府に対しまして、いわゆる朝鮮人徴用者等の名簿調査というものを提出しておりまして、この中には、朝鮮半島出身者を雇用していた約四百強の当時の企業名が掲載をされております。外務省は、それら四百強の企業のうち、現存する企業及び合併等により名称を変更して存続している企業が百八社ございましたので、昨年九月からこの実態を調査しているところであります。

 今その調査結果を回収中でございまして、必ずしもすべての企業から回収しているわけではございませんので、まだ正確なお答えにはならないわけでございますけれども、現時点で百柱を超える遺骨の所在に関する情報が寄せられているということでございます。

 政府としては、今後とも、当時朝鮮半島出身の民間徴用者を雇用していた企業が新たに判明した場合には実態調査をお願いするということにしておりますし、また、六月の二十日に、これは総務省にお願いをして、総務省の方から各都道府県及び各指定都市に対して、地方公共団体の中でこうした情報がどういう形になっているだろうかという調査依頼をいたしました。

 また、全日本仏教会を通じて、ここには主要な仏教団体がすべて加盟をしているわけでございまして、この全日本仏教会の方にもあわせて調査をお願いするということにいたしておりまして、できるだけ早くこの実態の解明に努力をしていきたいと全力を挙げているところでございます。

丸谷委員 実態解明調査の一つのめどとしまして、ことしの夏ぐらいまでにはという御発言も以前あったかというふうに思いますけれども、実態調査、企業への協力を要請するにしても、なかなか、これは強制力のある要請というわけではございませんでしょうし、いろいろな状況がある中で、実態がどれだけ解明されるのかなというような思いもございます。

 一つのめどでございましたことしの夏をというここのラインというのは、今後、一つのめどとして終了というふうに考えればいいんでしょうか、それとも、まだ継続して行われるというふうにお考えになっているのか、お伺いします。

佐々江政府参考人 お答えします。

 今先生がことし夏をめどとおっしゃいましたけれども、確かに我々もこの夏をめどに、とりあえず判明しているものをまず解明しようということで、先ほど大臣が申し上げましたとおり百柱余りあるわけでございますので、韓国政府と近く第二回目の協議を行いまして、その部分についてとりあえずどういうふうにするのかということについて協議を行いたいと思いますし、そして、それは先ほど大臣からもお答えしましたとおり、これで終わりということではなくて、地方公共団体あるいは全国のお寺の方々の協力を得て、さらにないかということを発掘していくということでございますので、この作業は続いていくということでございます。

丸谷委員 ありがとうございました。

 この実態解明調査をしていく中で、かなり数も多いでしょうし、遺族の方が判明しないケースというのもあると思います。また、北朝鮮出身者の遺骨の扱い等遺族への遺骨返還に対する基本的な考え方というのをここでお伺いさせていただきたいと思います。

町村国務大臣 確かに、身元不明の遺骨というものもあるだろうと思いますし、また、必ずしも詳細にわかりませんが、北朝鮮地域出身の方の遺骨というものが判明することもあろうかと思います。

 現状は、こういう場合どうしようかということについて、遺骨返還のあり方について、韓国側の意向をまず踏まえていこうということで議論をしているところでございまして、特に北朝鮮の場合も、直接、今、北と話をする状況にないものですから、まず韓国側との話し合いをして、その後どうしようかということを決めていきたい、かように考えているところでございます。

丸谷委員 遺骨収集と返還のほかにも、韓国に住む在外被爆者の在外公館での手続を可能にする、また、サハリン残留を余儀なくされていた人に一時帰国、永住帰国のための渡航を支援するなど検討中というふうにもお伺いをしております。こうした日本政府の姿勢というのは、やはり韓国国民にもしっかり理解をしていただきたいと願うところでございます。

 昨日、天皇、皇后両陛下がサイパンで、中部太平洋戦没者の碑で献花をされ、また、バンザイクリフ等各地で拝礼をされました。遺族の方々の万感の思いを伝えております報道に触れるにつけ、戦争で亡くなった方が亡くなったその地に赴き慰霊をするという行為には、また特別な意味があるのだなというふうに痛感しながら報道を見ておりました。

 そこで、例えば、韓国人遺族が海外であっても墓参を望んだ場合、今はこれは行われていないというふうに承知しておりますが、渡航費用の一部支援などそういった形で支援ができないものなのか、この点について政府のお考えをお伺いします。

佐々江政府参考人 お答えします。

 今先生がおっしゃられましたとおり、韓国政府との協議におきまして、韓国政府の方から、日本が行っている海外激戦地での追悼の巡拝に関する日本政府の支援を検討してもらえないだろうかということがあったのは事実でございます。これに対して、何ができるか検討してみたいということを韓国側に答えているわけでございます。

 その中で、今政府の内部で、特にこれは厚生労働省の御所管でございますので、厚生労働省と何ができるかということについて話し合いを行っているということでございます。しかしながら、今の制度が日本人以外は対象としておらないということでございますので、これがどのようにできるかについて、また引き続き検討をしているという状況でございます。

 いずれにしましても、この点につきまして、韓国側でもう少し具体的に、どういう形のものを望んでいるのかということについて実は必ずしも判然としない面もございまして、その点も含めまして、次回の協議で韓国側からより具体的な話を聞いて、さらに検討をしていきたいというふうに考えておるわけです。

丸谷委員 戦後六十年ということで、実際に遺族の方が墓参ができる機会というものも今後ふえていくということではないでしょう。やはりその世代、一世代一世代が終わっていくというときにあって、今何ができるかということは、日韓の協議の中で、これは予算の問題にもかかわってくると思いますので、しっかりと協議を詰めて、前向きに検討していただきたいと思います。

 それでは、次に、グレンイーグルズ・サミットについてお伺いをさせていただきます。

 七月六日からイギリス・グレンイーグルズでサミットが始まるわけでございますけれども、今回のサミットのテーマは、アフリカと気候変動でございます。

 このサミットが始まる前に準備会合として行われました財務大臣の会合では、アフリカを中心とする最貧国十八カ国が抱える国際金融機関に対する債務約四百億ドルを一〇〇%削減すること、また、汚職追放ですとか政治改革を条件に、最大二十カ国の債権を放棄することで合意をされました。

 私自身の考えでは、債務削減に関しては、借り手のモラルの低下を招いたりとか、あるいは債権国が無力感を抱くようであってはならないというふうにも考えております。また、最貧国の一〇〇%債務削減を行うに当たっては、モラルハザードを招かないような対策が必要であるというふうに思っているところでございます。

 債務削減で、いわゆる借金そのものが減ったとしても、新たな収入の道がなければ、新しい発展というのはどこの地においても望んでいくことはできません。アフリカの経済社会指標というのは下降の一途をたどっておりまして、もう大臣も十分に御存じのことでございますけれども、サハラ以南のアフリカ総人口六億五千九百万人の約四〇%は一日一ドル以下で生活をしている最貧国層でございますし、また、一億四千万人は非識字者でございます。五人に一人が紛争の影響を受けておりますし、エイズで亡くなる数というのは、一年間で約二百万人を超えるペースで亡くなっているという現状。また、平均年齢は世界最低でありまして、寿命が三十歳を下回るという国も出てきております。

 こういった状況を見るにつけ、アフリカへの支援は待ったなしということはわかるんですが、それだけに、将来に有効な手段を講じていかなければ、状況を改善することはできないというふうにも考えます。

 我が国は、アジア各国の安定と発展に今まで有効な援助をしてきた経験がありますけれども、今回、このサミットで、どういったアフリカ支援というものを日本として提言していくおつもりなのか。けさの報道によりますと、総理がアフリカの各国大使と昨日会われ、五年間で五十億ドルを拠出するという発言をされたそうでございますけれども、日本政府としては、独自性を持って有効的な支援策を考えられていると思います。この点について御説明を願いたいと思います。

町村国務大臣 アフリカ、特にサブサハラ地域の大変厳しい現状につきましては、今、丸谷委員が丁寧にお話をいただいた、同様の認識を私どもも持っているところでございます。

 アフリカの問題については、従前、日本は確かにアジア中心ということで、現実に今でもアジアが重点地域であることは間違いないわけでありますけれども、特に九〇年代に入ってから、日本もアフリカというものに大変注目をしております。

 それを具体化したのがアフリカ開発会議、TICAD、トーキョー・インターナショナル・コンファレンス・オン・アフリカン・ディベロプメントでしたか、TICADというものを始めまして、アフリカと日本との関係をより近づけていこう、そして、アジアにおいて、あるいは日本が戦後経験をしてきた、努力をしてきた、そうした復興あるいは発展のためのさまざまなノウハウを資金とともに提供していこうではないかということでこのTICADというプロセスを始め、このことは大変にアフリカ諸国も多としているところでございます。

 四月の下旬にインドネシアで、アジア・アフリカ首脳会議が開かれまして、そこで、小泉総理から、二〇〇八年にTICADIV、第四回目のTICAD、国際会議を開こうということを発表し、あわせて、今後三年間でアフリカ向けのODAを倍増して、その中心を贈与、グラントでやっていこうということを表明したわけでございます。

 さらに、このODA倍増を進めるに当たって、特に五つの分野で取り組みを強化していこうということを、きのうアフリカの大使の皆さん方が総理官邸にお見えになったものですから、総理の方からその方針を明らかにしたところであります。

 余り詳しくはあれでございますが、一つは、人々の健康を守るための支援を拡充していこうということで、保健と開発に関するイニシアチブというものがございまして、これに基づいて今後五年間で五十億ドルを目途として包括協力をしていこうということ。

 それから、アフリカにおける平和の定着ということで、これは人間の安全保障というものを重視しながら、まだまだ紛争地域等々もございますので、難民、避難民の支援でありますとか、地雷の除去等もやっていこうということ。

 三番目に、何といっても、やはりアフリカの農業の発展というものが重要であろうということで、日本もさまざまな農業、農村政策をやってきておりますので、これをぜひアフリカにも伝えていきたい。

 四番目に、援助ばかりではなくて、やはり貿易・投資を通じて彼らの経済的な能力を高めていくということをお手伝いしていこう。

 五番目に、海外青年協力隊というのを日本はやっているわけでありますけれども、アジア青年海外協力隊といったようなものをつくって、四年間で一万人の人材をアフリカの方に送り込むというようなことも考えたらどうだろうかというようなことでございます。

 こうしたことを中心に、グレンイーグルズ・サミットにおきましても、アフリカ支援を日本が積極的にイニシアチブをとってやっていくんだということについて、日本の考え方を明らかにしようと考えているところでございます。

丸谷委員 ありがとうございました。

 アジア各国に対するODAのあり方ですとか、今までの日本の支援によって、随分とその国自体が発展を遂げるために役に立ってきたということは、内外ともに評価されているところだというふうに思います。

 アフリカの貧困が本当に想像を絶するほどにひどいということを考えても、アフリカの自立そして安定的な発展のために日本が考えていらっしゃる方向性、人づくりと国づくりというところは、私はこれは本当に正解の道であるというふうに思っております。ぜひ、こういった支援の面では日本のリーダーシップに対して期待をしておりますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。

 また、サミットで、もう一点お伺いをしたいと思うんですが、前回の委員会でも取り上げさせていただきましたが、NPT再検討会議の件でございます。

 核不拡散、核軍縮問題が非常に今、NPT再検討会議の決裂ですとか、あるいはNSG総会の結果を受けて、本当に滞っていると言えるような状況の中で、今回のこのサミットで核不拡散について言及をしていくべき意義は大きいというふうに思っております。

 我が国にとっては、北朝鮮の核保有と、そして、大統領選挙が終わって体制が変わるイランの核開発疑惑等、国際社会の危惧を明確に示していく好機が今回のサミットではないかというふうにも考えておりますけれども、政府の見解をお伺いしますとともに、この核不拡散について、どのようにリーダーシップをとって、声明文か議長宣言か、そこまで持っていこうとするのか、また目指す内容について、お伺いをさせていただきたいと思います。

町村国務大臣 過去何回かのG8サミットでは、この不拡散問題については独立の文書が出されているところでございまして、今回のグレンイーグルズ・サミットの中でも、不拡散に関するG8首脳声明を発出するべく、今、G8の中でシェルパの皆さん方が汗をかいているという状況でございます。

 先般、ロンドンのG8外相会談でも、若干そのことが議論になりましたけれども、まだその時点で方向性を見出すには至っていなかったというのが実態でございます。

 ただ、やはり日本としては、身近に北朝鮮の問題というのを抱えているわけでございますし、また、国際的にも、北朝鮮もそうですし、また、今イランの核の問題というものが大変大きくスポットライトを浴びているというようなこと、さらには、世界全体で、今委員御指摘のように、五月のNPT運用検討会議が実質的に不成功に終わったということを受けて、このままでいいんだろうかということを日本としても大変危機意識を持っております。

 そういう意味から、このグレンイーグルズ・サミットでは、積極的なメッセージが出せるように、今、諸外国に働きかけをしながら、案文づくりというものに全力を挙げているという状態でございます。

丸谷委員 では、最後の質問になるかというふうに思うんですけれども、今回のグレンイーグルズ・サミットには、G8メンバーのほか、新興経済諸国の代表としまして、中国、インド、ブラジル、南アフリカ、そしてメキシコも参加することになっておりまして、日本の提案する国連安保理改革に反対または賛成、そもそも日本の常任理事国入りに反対の国等、いわば安保理改革問題の当事者が集結すると言ってもいいと思いますが、この機会を日本の安保理常任理事国入りに対する理解拡大、支持拡大に生かしていく外交活動というものを期待しております。

 その中で、先ほども質問にございましたけれども、本当にアメリカの提案があり、また我が国のG4での動きがあり、非常に悩ましい状況にはあると思うのでございますけれども、G4決議案提出の時期の見通しというのを今のところどのように考えていらっしゃるのか、この点についてお伺いをさせていただきます。

町村国務大臣 先般のG8外相会談でも、国連改革のことが若干話題になりました。

 なりましたけれども、日本とかドイツのように積極的に動いている国と、それに猛烈に反対をしている、例えばイタリアの外務大臣がすぐ隣に座っていると、なかなか積極的に話が弾む話題になりづらいんですね。今のままの国連ではだめですよね、何らかの改革をしなければいけませんねという抽象的なレベルの話ですと、それはそうだということにはなるのでありますが、より具体論になればなるほど、その辺がG8の中でも足並みがそろわない。

 まして、今委員御指摘のように、ブラジル等々のいろいろな国が来ると、またそこでも意見が明確に分かれるというようなことで、なかなかグレンイーグルズで一定の方向性を国連改革について見出すことは、大きな流れは正しくとも、具体論になると、またそれは率直に言って難しいテーマなのかなと思っているところであります。

 その中で、今、G4の枠組み決議案の提出時期についてのお尋ねがございました。

 先ほど三ッ矢委員にもちょっとお答え申し上げましたけれども、G4の外相会談をブラッセルでやったときには、七月中には決議案を出して、決議案は出す時期ははっきりしませんけれども、出して、七月中にはそれを採択に持っていこうということが合意をされております。

 したがって、決議案上程の時期が、きょうはもう六月二十九日でございますけれども、今月中なのか来月早々なのか来月半ばなのかということについては、まだ必ずしもG4の中でも意見が固まったわけではございません。もう少し慎重に運んだらどうですかというような識者のアドバイスもあったりするものですから、当初の予定は、できれば六月中に提出をしてというような感じで動いておりましたけれども、若干そこは意図的に少しおくらせぎみにしているというのが現在の姿かなと。

 しかし、いずれにしても、余り時間がたちますと、今度は改革の動きそのものが停滞を起こしては元も子もないというふうにも思われますので、七月中には上程をし、採択というふうに持っていきたいと現時点では考えているところであります。

丸谷委員 以上で質問を終わります。どうもありがとうございました。

赤松委員長 次に、増子輝彦君。

増子委員 民主党の増子輝彦でございます。

 きょうは、一般質疑ということで、質問させていただきたいと思います。

 日本の外交、大変今厳しい状況に置かれているのかなと心配をいたしております。きつい表現で言えば、八方ふさがりの状況なのかな。日中関係、日韓関係、あるいは常任理事国の問題、さらにアメリカとの関係も、BSEを中心として大変今厳しい状況にあるのかな。そして、靖国問題においては、場合によってはこれによって常任理事国という悲願を断念せざるを得ないのかなという心配も多々いたしております。

 そういったことを含めながら、きょうは限られた時間でございますので、薄く広く大臣に所見をお伺いいたしたいと思います。

 実は、大臣、けさの新聞、あるいはきのうの夜のテレビ等の報道も含めて、大変気になることが一つ出てまいりましたので、まずこれから先に質問させていただきたいと思います。

 中国の条例違反の見解ということで、日本人学校の教材が中国の大連で没収されたという問題が実は報道されております。

 中国と台湾の、その地図における色が違っていた。中国の中に、中国の政策を中傷したり、二つの中国や台湾独立を吹聴したりするということになれば、中国の税関は管理規定で、印刷物や音楽、映像製品の持ち込み、輸送についてはこれを禁止し、罰金を科するというようなことがあるというふうになっているそうであります。

 この事実関係について、大臣、間違いないのか、そして、事実であるならば、ほかの学校、これは大連だけではないわけでありますから、ほかのところではこういう事実はなかったのか、まずこれを先にお聞きしたいと思います。

町村国務大臣 四月中旬に大連日本人学校が輸入した副教材百二十八冊が大連の税関にとめ置かれたことについて、二十八日、中国外交部スポークスマンが質問に答えての答弁の中で、このうち十五冊は中国と台湾とを色分けした地図を掲載しており、出版管理条例等の法令に抵触しているので返送処理となる旨を明らかにしたということでございます。

 我が方としては、これまで現地当局に対して事情を照会してきましたけれども、きのうの外交部の説明は、中国政府としての、中国法令の適用関係を明らかにしたもの、こう理解をいたしております。

 この大連日本人学校の関係者の話では、中国の法令を遵守して学校運営に当たっていくという考えであり、本件を争う考えはないと承知をいたしております。

 外務省といたしましては、今後、学校関係者とも協議をした上、かつ、大連の現地当局、それから中国外交部の説明にある関係法令の適用関係につき、さらに詳細を吟味した上で、対応を検討していきたいと考えております。

 また、委員御指摘の、大連以外の学校はどうかということについては、今後調べていかなければいけないと考えております。

増子委員 四月のことのようです。今日までこれが明らかにならなかったということ、これは一体どういうことだったのか。我が国でも、もちろん外務省でこの事実を把握していなかったのかどうか、ここは、大臣、どうなんでしょうか。

佐々江政府参考人 現地の、現場で詳細、どの程度まで聞いておったのかということについては、今すぐにお答えできないわけでございますが、少なくとも、本省において我々の問題として報告があったのは、この問題が起きて最近のことであるというふうに御理解願いたいと思います。

増子委員 今、局長、最後の方がちょっと聞こえなかったんですが、もう一度ちょっと答えてください。

佐々江政府参考人 我々のレベルでこういう問題が生じているというふうに注意があったのはごく最近のことであるということでございます。

増子委員 そうすると、外務省では四月に起きた問題が今日まで全く把握できていなかったということなんですね。これは、ちょっと私、何かおかしいような気がするんですね。

 今、もう六月下旬ですね、間もなく七月になります。それまでの間に全くこういう事実関係が把握されていなかったということ、認識されていなかったということ、これは一体、外務省、何をやっているんでしょうか。これは極めて大事な問題なんですよ。ちょっとお答え願いたいと思います。

町村国務大臣 率直な実情は今局長がお答えをしたとおりだろうと思います。森羅万象すべて外務省が、あるいは出先の大使館、領事館がわかっているわけではない、残念ながら実態はそういうことだろうと思います。

 特に、学校当局の方々が、多分、事実関係、何でかというような問い合わせをしていたり、そして最終的にはこういう処分だということで罰金を払うというところで、これを基本的に争わないということでやってこられたとすれば、彼らがこういう問題があるということで日本の領事館等々に話をしてこないということは十分あり得る話であります。

 そういう意味で、それは知らなかったのは怠慢だと言われれば、それは知っていた方がいいですねとは答えますけれども、しかし、当事者がこの問題について、ある意味では、税関、先方の当局と学校との間で処理し得る問題だと判断をすれば、それはその段階での話で終わってしまうということなのではないのかなと私は思います。

増子委員 そうしますと、この教科書は日本で検定を受けた教科書として大連の学校に送付されたものなんでしょうか。教材ですよね、教材、副読本なんですよね、これは。そういったものについて、それは、事実、日本の方での検定は受けているんですか。

佐々江政府参考人 今の御質問にお答えする前に、その前の段階で、最近になって我々の知るところになったというお答えを申し上げましたけれども、その点につきまして、今担当の者からさらに詳細をちょっとだけ聞いたのでございますが、我々が初めて大連の日本人学校からお伺いしましたのは、五月の下旬に学校の理事会というものがございまして、その時点でそういう話があるという話を学校側から聞いたというふうに報告を受けております。

 それから、先ほどの副読本の件でございますけれども、これは、副読本として送付されたものでございますが、それが日本の検定を受けたものであるかについては、今にわかにはここの場でわかりませんので、お調べしてお答えしたいと思います。

増子委員 そうすると、局長、先ほどの答弁と違いましたね。一カ月前に知っていたということでしょう、外務省は。そうでしょう。そうですよね。大臣の答弁とちょっと違うじゃないですか。大臣は、そんな一々全部知るということはという話をされていたけれども、それは、なぜ外務省で、この問題は大した問題じゃない、あくまでも罰金刑で済ませればそれでいいんだということだけでこれを処理しようとしたのか。

 実は、私がなぜこの質問をするかというと、二つの中国ということの認識が日中関係の中において極めて大きな影を落とすということが過去の例で幾つもあるわけであります。

 前にも実は質問をさせていただきましたが、時間の関係で途中で切れてしまったので、改めて大臣に御質問させていただくということで前回に質問をさせていただきましたけれども、台湾は、中国の領土の一部なのか、独立した国なのか、それによって実は今後のアメリカとの2プラス2の問題にも大きな影響を及ぼしてくるし、日本と中国との関係も大変大きな問題になってくるというところがこの流れにあるんです。

 外務省はそういうことを認識しないんですか。一カ月前に知り得たことを、ただ単に罰金刑で済ませればそれでいいんだということだけで済ませていいんですか、これは。その程度の認識で、台湾問題、中国問題というものの、二つの中国か、一つの中国か、ここの問題意識というものが欠如していれば、私は、そんな外交をやっていたのでは日中関係なんかよくならない、東アジア構想の中の問題もこんな程度ではどうしようもない、そう思うんですが、大臣、いかがですか。

町村国務大臣 基本的な問題は別として、今局長の答弁で一カ月前に知り得たということなのでありますから、しかし、私自身は、率直に言うと、つい先般この事実を知ったということでございます。それは、内部の連絡が悪いではないかと言われればそれまでですが、残念ながら、膨大な公電がすべて私の手元に届くわけでもございませんから、そこまでは私は目を通していなかったというのが事実でございます。

 この問題についての認識、それは、一つの中国、二つの中国論というのは大変大きな基本的な課題であるということは、それはもう委員御指摘のとおりでありますし、外務省もそういう認識を持ってこの問題に取り組んでいるところでございます。

 その副読本における表現の仕方ということが、それが副読本として適切かどうかという判断を、では、日本の出版社がまずそこをどこまで認識しているのかという問題と、そうしたたくさんある副読本のうち、どれを採用するかという判断をする、大連の日本人小学校の場合ですと、それは独自の、原則として僕は多分それぞれの学校の経営者なり理事会なりの判断なんだろうと思うんですけれども、それらの人たちがどこまで判断をしていたのか、こういう幾つかの段階ごとの判断があろうかと思います。

 したがいまして、外務省全体がそうしたことにむとんちゃくなのではないか、神経が行き届いていないのではないかという御批判は、それは直ちにそのとおりでございますということを私は今言うつもりはございません。しかし、では、五月下旬から六月まで一カ月間、何をやっていたんだという御指摘に対しては、それは、いろいろ理由はあるのかもしれませんけれども、もっと早く、きちんとしたわかりやすい処理があった方がよかったのかな。その点は、この一カ月間の動きの中で、もう一度ちょっと詳細に、何がその間にやりとりがあったのか確認をした上で、改めて必要があればお答えをいたしますが、一カ月というものは時間がかかり過ぎたように思える感じも確かにするわけでございます。

増子委員 大臣、私は、情報量が多いからということの視点ではなくて、日中関係というのは、今、日本にとっては極めてデリケートな関係にあるわけですね。ですから、そういう意味で、外務省全体が、この問題についてやはり注意深く、それこそ配慮をしながらしっかりと認識して行動していかなければいけないのではないだろうか。一カ月間というこのタイムラグ、これをどう評価するのかわかりませんが、大臣、そこをやはりきちっとしなければ、これからの日中関係あるいは常任理事国の問題、私はそんな簡単にいかないと思っています。

 それからもう一つだけ、この問題、最後にちょっとお聞きしますが、今回の罰金はどちらが払ったんですか、日本人学校ですか、出版社ですか、そこのところだけを確認しておきたいと思います。局長でいいですよ。

佐々江政府参考人 現実的には、現時点では払われていないというふうに承知をしておりますが、日本人学校の方は、自分で払うことにつき検討中であるというふうに承知しております。

増子委員 いや、この罰金をだれが払うかによっても、実は大変大きな問題にも波及してくるわけです。後でこの件についてはさらに確認をしていきたいと思っております。

 さて、問題をかえます。

 大臣、先週あの暑い炎天下のもと、北朝鮮に拉致をされた拉致家族の皆さんが、国会前で、本当に三日間、座り込みをして政府に抗議をした。経済制裁の発動、この一日も早い問題解決、本当に私どももある意味ではつらい思いをしながら、何かできないのかな、我々ができるのは今、ただ言葉だけで頑張ってくださいと言うこと以外ないのかなと私も実はじくじたる思いを持って、激励にちょっと顔を出してまいりました。

 大分時間が経過してまいりました。五人の方はお戻りになった、その御家族八人もお帰りになった、それはそれとして一つの成果だと思います。しかし、それ以上に、横田めぐみさんを初めとして、北朝鮮側から出された十名の安否、まだ明らかでありません。ましてや、にせの遺骨まで送られてくる。この御家族の皆さん、特定失踪者まで入れたら四百名にも上ると言われているこの拉致問題が、第二回目の小泉訪朝以来もう一年が過ぎましたけれども、何か遠いかなたに行ってしまったような雰囲気がこの国にあるのかなと大変私は憂慮いたしているわけであります。

 大臣、率直に、家族の皆さんが三日間、あの炎天下のもと座り込みをされていた、そのことについて、大臣として、その行動、その思いをどのようにお感じになっているか、お答えをいただきたいと思います。

町村国務大臣 私も委員と同じ思いを持ち、横田さん初め御家族の皆さん方が、あの議員会館の前ですか、暑い中座っておられる姿を拝見し、胸が締めつけられる思いでございました。六月二十四日に出されました家族会、救う会の声明も拝見をいたして、これに対して私どもも深い理解をしているところでございます。

 北朝鮮との対応につきましては、委員御承知のとおり、生存する被害者がいる場合には直ちに帰国させるよう、また真実を明らかにさせるようにということで北朝鮮側に働きかけをしているわけでございますけれども、いまだに誠意ある回答は得られていないという状態でございます。

 したがいまして、私ども、今の状態が決していい状態だともとより思っているわけではございません。家族の皆様方には、政府全体としては拉致問題連絡調整室というものを窓口にして対応してきているわけでございます。外務省とも、その調整室と連絡をとりながら問題解決に向けて全力を挙げて取り組むということにしておりますし、私も、公式には昨年の十月、一度お目にかかったきりでございます。近日中にまたお目にかかりまして、お話を伺う機会を設けたい、こう思っております。

 ただ、いずれにしても、皆さん方の求めておられます経済制裁の発動をという御要求、よく私どもも理解をしているところでございますけれども、現下、ちょうど六者協議がこれから再開されるかどうかというまことに国際政治的には微妙な時期にあるというときでございますので、対話と圧力という基本方針は何ら変わっていないわけでございますけれども、今これを発動するタイミングであるかどうか、さらによく検討を深めてまいりたい、かように考えているところでございます。

増子委員 大臣、この問題は、今の大臣の最後の御答弁の中にあったように、六カ国協議が何か優先されていくような実は私は心配を持っております。確かにこれも大事です、核の問題を初めとして。その中に拉致問題もということもありますけれども、これはやはり、国家の主権が侵されて、国民の人権が侵されているわけですから、いわば国家犯罪という形の中からすれば、我々のこの日本という国が国民の生命や財産を守ることがある意味ではできなかったということについて、非常に大きな責任を感じなければいけないわけであります。と同時に、一日も早い解決をしなければなりません。

 なかなかこの交渉がうまくいかない。事務方としてはいろいろやっているんでしょうけれども、私は、この状況を、今時間がありませんのできょうは詳しく聞きませんが、一つの打開策として、大臣、小泉さんがまさか三度目の訪朝ということはできないでしょう、外務大臣が訪朝されてこの打開策をするというようなお考えはございませんか。

町村国務大臣 拉致問題と核あるいはミサイル問題、それぞれが重要な問題で、どちらがより重要でどちらかがより重要でないという比較考量をするつもりはございません。ただ、今の、現下置かれた国際状況がそういう微妙な時期にあるということだけを申し上げたつもりでございまして、どちらが優先するとかしないということを申し上げたつもりはございません。

 今の事態を打開するために、それは核、ミサイルと拉致、両方でございますが、何をやったらいいのかということについては、それはいろいろな可能性、オプションがあろうかと思います。しかるべき高官が訪問をする、あるいはどこかで会う等々、いろいろな選択肢はあろうかと思いますけれども、今この場で、どの手段が適切であるかないかということについて申し上げるのは差し控えさせていただきます。

増子委員 大臣、ここは、将来自民党政権が続くならば、総理大臣をねらわれる町村外務大臣なんでしょうから、政治決断というもの、それは小泉総理に次ぐ外交の最高責任者の一人として、この拉致問題解決というには、小泉総理が二度行かれたんですから、私は、大臣がその意思を持っていると言っても、何らこの交渉に不利になることはない、むしろ打開策が見つかる可能性があるのじゃないかというふうに思っているんです。

 そういう意味でも、拉致をされた方々あるいは家族の皆さんにとっての思いは、一日も早く、三十年も待たされた、大変な年月ですよ、大臣、三十年というのは。これは、自分の身に降りかかったことと考えれば大変な年月、歳月なんです。

 ですから、この時間の空白を埋めるためにも、あるいはさまざまな問題を解決するためにも、ここはやはり大臣が決断をして、小泉総理ともよく御相談をなさって、私が行くというぐらいの決意、それがなければ、このままずるずるこの問題が解決しないまま、家族の皆さんはもう大分お年になってまいりました。いつになったら解決するんだろうというその思いにはせるときに、本当に我々政治にかかわる者がこのままでいいのだろうか、非常に私は悲しい気持ちになるわけです。

 ぜひ大臣には、もうはっきりと、自分はそのぐらいの意思があるんだ、自分が行ってどのぐらいの糸口を見つけるかはわからないけれども、そのぐらいの気持ちを持って私は交渉に当たりたいんだということは、経済制裁というものについて、すぐに日本も発動できないさまざまな問題もあり、しかし、大臣のそういう決断や行動が必ず解決の糸口になるだろうし、そして何よりも、御家族の皆さんや被害を受けた方々についても、私は本当に大きな励みになると思いますので、どうぞ考慮をしていただきたいというふうに思っております。

 そこで、一つ最後にお伺いいたしますが、お帰りになった方々については拉致被害者支援法というものが、議員立法で、二〇〇三年の一月一日施行で実は実施されているわけであります。

 この根拠というもの、さまざまあるわけでありますが、これは議員立法ですから、北朝鮮の国家機関による犯罪行為による被害である、そして原状回復義務及び損害賠償責任は北朝鮮当局にある、これは実は目的の中にうたってあるものなんですね。

 今回、この議員立法の中では、国交がなく個人賠償請求が不可能な中で、外交保護権を持つ国が、北朝鮮にかわってとりあえず原状回復をとるという形の中でこの拉致被害者に対する支援というものが基本的にはなされているわけです。

 私は、それに加えて、やはり本来であれば慰謝料の損害賠償というものをするべきである、北朝鮮にその請求をすることは何ら間違っていることではない。逆に北朝鮮から過去の日本の戦争におけるさまざまな損害賠償の請求云々ということもあるのかもしれませんが、それとは全く別に、今、年老いて、皆さん御高齢になってまいりました。この運動を展開する上においても、大変な経済的な負担も長年にわたって多いものがあると思うんです。

 帰ってこられた方々に対する支援というものも行われているけれども、帰ってこられない、今、安否不明という形で全く糸口の見つからない横田めぐみさん初め多くの方々の御家族に対する支援というものを、やはり国家として何かすべきではないのだろうかというふうに私は思っているんですが、いかがでしょうか。

佐々江政府参考人 既に帰国された方々に対しましては、先生御承知のとおり、この法律に基づきまして、内閣の支援室の方で御支援を行っているわけでございます。

 他方で、いまだ帰国されていない方々、我々として北朝鮮との間で納得していない方々の問題については、引き続き北朝鮮との間で話し合いをして解決をしていく必要があるというふうに思っているわけでございます。ですから、この問題は依然としてまだ決着を見ていない問題である、そういう前提の上に立って、北朝鮮に対して全体としてどういう要求を今後していくのがいいのかということをあわせながら考えていく必要があるというふうに思っております。

増子委員 実は、大臣、私は今の局長の答弁を期待しているのではなくて、北朝鮮に請求するということではなくて、日本が、被害者の、いわゆる帰ってこられた方々については議員立法で支援をされている。しかし、北朝鮮には請求できないならば、今回議員立法で帰ってこられた方々に支援したと同じような形をこの家族の皆さんにできないのかということをお聞きしているんです。北朝鮮にどうのこうのじゃないんですよ、局長。よく理解してくださいね。

 大臣、その件について大臣としてどのようにお考えになっているか、大臣からお聞きをしたいと思いますので、お願いします。

町村国務大臣 突然のお尋ねでございますから、余り考えもまとまっていないわけでございますが、せっかくのお尋ねですから。

 ここで書いてあります被害者というのは、現に帰ってこられた方々は当然なんですけれども、向こうにとどめ置かれているであろう人たちも、これの対象には、被害者という定義の中には入ってくるんでしょうね、きっと。そういう方々にもちゃんと情報提供もしなきゃいけない等々、国の責務というものも書いてあるわけでございます。

 したがって、国の責務の中にどこまでのことが含まれるのかということなんだろうと思います。今のこの法律の中には、今委員がおっしゃったようなことまでのことは書いていないでしょうかね、今の損害賠償というふうな部分ですね。そういうことについては、「国等の責務」の中には、帰国、入国のための努力、それから……(増子委員「大臣、それ、読まなくていいです」と呼ぶ)だから、余りそこには書いてありませんから、そういうものを考えてみたらどうかとおっしゃるんですから、考えてみます。

増子委員 大臣、何でそういう投げやりな答弁をされるんですか。失礼じゃないですか。家族の方に対しても失礼じゃないですか。だから私は冒頭にあなたにお聞きしたでしょう、御家族の皆さんに対する思いはどういう思いですかと。

 書いていないから、やっていないだろう、検討します、そういう失礼な話は、大臣、ないですよ、私に対してのものだけじゃなくて。だから私は、基本的に一番最初にあなたの思いを、考えをお聞きした。あなたはちゃんと言葉の中では、心はわかりませんけれども、私と同じ思いだという言葉を発せられたじゃないですか。

 大臣、もうちょっと誠実、誠意ある答弁をされたらどうですか。外交交渉もそういうことで、自分の考え方と違う場合にはそういう捨てぜりふ的な答弁をされたり交渉をされるんですか。(発言する者あり)あなたはそう感じないですか、今の答弁。

 そういうことを、大臣、誠意を持ってやらなければ、百二十八カ国の支持を集めるなんということもできませんよ。

 時間がありません。問題をかえます。

 一つだけお聞きしますが、かねてより、大臣には、靖国神社参拝が日中関係の大変大きな懸案だということは明確であるということを何度も私の質問にお答えをいただいております。ますます日中関係がおかしくなってきたような気がいたします。もう一度だけ大臣にお聞きいたします。靖国神社参拝が日中関係にとって最大の問題であるということは明白であるというお考えには変わりございませんか。お答えを願いたいと思います。

町村国務大臣 表現が悪かったのならおわびをいたしますが、別に私は投げやりなつもりで言ったわけじゃなくて、いろいろ頭の中で考えて、今この場で答えが出ないので、考えてみますと申し上げただけでありまして、別に私は、拉致被害者の方々を冒涜しようとか、ばかにしようとか、そんな思いで今ああいう表現をとったわけではないので、そこはぜひ誤解のないようにしていただきたいと思います。(増子委員「誤解されないようにした方がいいですよ」と呼ぶ)誤解のされないように注意はしたいと思います。どうも御指摘ありがとうございます。

 靖国問題が今の日中関係で大変大きな問題であるということは、それは累次この委員会、増子委員に対してのみならず、いろいろな場で、これは客観的な事実としてもそう認識をしているし、今、現にそうである。私も、日中外相会談で話し合いをすれば、それは当然そのことが話題になってくるわけでございますから、唯一最大の問題かどうか、それはよくわかりません。しかし、一つの大きな課題になっているということは、それは率直に認めているところでございまして、そういう認識かと問われれば、私が今申し上げたとおりであります。

増子委員 終わります。また次回に御質問させていただきます。ありがとうございます。

赤松委員長 次に、首藤信彦君。

首藤委員 民主党の首藤信彦です。

 まず最初に、イラク情勢について質問させていただきます。

 イラクの政権が、アメリカを中心とする暫定統治当局といいますか施政当局、CPAから主権移譲を受けて、ちょうど一年たつわけですね。しかし、その間に、世界各地からといいますか、中東全域からといいますか、さまざまなテロリストがイラクに入ってきて、アメリカ兵あるいは多国籍軍を攻撃したり、あるいはまたイラクの中においても、ある場合においてはフセイン政権の残党かもしれません、しかし、ある場合においては地域的な反発、あるいは宗教的な団体の過激化したものから米軍に対する攻撃などが行われ、現時点で千七百四十一名のアメリカ兵が死亡しているということであります。

 また、ようやく最近になって選挙も行われて、移行政権というものが発足したわけですが、移行政権発足後も、今度はイラクの移行政権に対する攻撃というものがにわかにエスカレートしてきて、従来はターゲットとならなかったような人たちも含めて、イラク人の死者も最近だけでも一千名を超えて、最近では国会議員もまた、先日ですか、暗殺されるというようなことが発生しているわけです。

 一方、アメリカ軍への攻撃も非常に高度化してきているということが内外の専門家の一致した見解であります。先日は、攻撃ヘリのアパッチがミサイルの攻撃を受けて墜落したというふうに言われています。

 また、日本の自衛隊が行っているサマワでも、自衛隊の車列をねらったと見られる攻撃が行われた。これに関しても、赤外線の遠距離からの誘導装置を使った爆撃というふうに考えられておりまして、いずれにしても、非常に高度化した攻撃が量、質ともに増加傾向にあって、これはとまる様子が見られないというような状況であります。

 しかしながら、国連の設定したスケジュールによると、八月には新憲法の草案づくりが行われ、年末までには選挙が行われ、そしてイラクは新生政権といいますか、本格的な政権が来年の年初からスタートするということになっております。

 しかし、現実に、もう憲法草案の期限に一カ月程度しかない現状において、これからイラクの情勢がどういうふうに変化していくのか、日本政府としての厳しい認識を含めた展望をお聞かせ願いたいと思います。

 それは、よく配られるような、イラクはこんなことでございますというんじゃなくて、私たちは国民を代表して、イラクはどういうふうになっているんですか、日本はどういうふうにこれから行動するのかということを聞いておるわけですから、厳しい判断、厳しい分析を含めて、イラクの現在六月末の状況から十二月末あるいはそれ以後に向けて、一体どういう状況があるのかということを政府の公式見解としてお述べいただきたいと思います。町村大臣、よろしくお願いします。

    〔委員長退席、大谷委員長代理着席〕

町村国務大臣 昨日でちょうど、委員御指摘のように、イラク暫定政府に統治権限が移譲されて一年ということになったわけであります。その間の政治プロセスは、委員御指摘のとおり、一月に国民議会選挙が行われ、四月末に移行政府が発足をして、イラクの民主化に向けてのプロセスというものが着実に進展をしてきている、こう思っております。八月には憲法の草案づくりが行われ、それからそれの信任投票というか投票が行われ、それに基づく議会選挙が行われて、本格政権が年末年始に発足をするということであろうと思います。

 この辺の今後の成り行きにつきまして、まず政治プロセスにつきましては、ちょうど六月二十一、二十二日、ブラッセルで、アメリカとEUが共同主催する形でイラク国際会議というものが開かれまして、これについては、すべての国々がこのイラクの政治プロセスを支持し、今後の順調な推移というものをさらに支持していこう、こういうことになりました。テーマは、今言った政治プロセスの進展と、それから委員がお触れになった治安の回復の問題、それから三番目が経済発展と復興、この三つが大きなテーマでございました。

 治安の状況については、もとより予断を許さない状況がこれまでも続いてきておりますし、これから先、極端な楽観論を言う人もおりませんし、また極端な悲観論を言う人もいないだろう、こういう感じで私は議論を聞いておりました。

 しかし、その間、着々とイラク国内の治安維持勢力というものも整備をされつつあります。今ちょっと手元に正確な数字はありませんけれども、彼らの自前で持っている警察あるいは国境警備隊、軍隊等の整備も、他の先進国の支援もありましてその辺は整備が進んでいるのかな、こう思っております。ただ、現実に、いろいろな、死者等が発生しているではないかという御指摘があれば、それは事実として、そういうものが起きているのは事実でございましょう。

 したがいまして、そういう意味で、現時点で、今、首藤委員が十二月までどうなっていくのか、政府の確定的な答えを言いなさいというお話でございましたが、私どもとしては、期待を込めて言うならば、それは治安状況が改善をしていくということを期待いたします。しかし、それをただ期待を込めて言うだけではなくて、そういう方向に進むように国際社会が一致して協力をしていくということが大切なんだろうというその姿勢の問題として、そのことはみんなで支援をしていこうではないかということが先般のイラク国際会議でも述べられたところでございます。

 また、経済復興の方については、それぞれがプレッジした、約束したことをしっかり実行していこうではないかということで、これも国際社会が一致して協力をするということで、今回の意味は、私は、武力行使が始まる前のアメリカとEUの幾つかの国の決定的な意見の相違があったわけでございますが、事これからの復興あるいは治安回復については、すべての国際社会が一致して協力していこうではないかということを確認されることには大変意味があったんだ、かように受けとめております。

首藤委員 大臣、それはちょっと私はがっかりしました。もうお疲れかもしれないので、そういう表現になるのかもしれませんが。

 極端な楽観論もないかわりに極端な悲観論もないという話ですが、アメリカの議会を見てくださいよ。これはもうアメリカ軍も総撤退の可能性がある、いつまでに兵を引くんだということを厳しく大統領に迫っている。それに対して、大統領が必死の防戦を試みているというのが現状じゃないですか。ですから、今専門家の多くで楽観的な見方をする者はほとんど皆無に等しい。本当に厳しい見方をしていると思うんですよね。

 私は、なぜこれを質問して、なおかつ町村大臣の回答に落胆したかというと、私は、世界は、イラクがどうなろうが、人道的な面、人権的な配慮、経済復興に対する配慮、それはあると同時に、世界最大の産油国、一応今は世界第二位となっていますけれども、ひょっとしたら世界第一位になるかもしれない。サウジアラビアがもっと問題を抱えればもっと早く世界一位になってしまうかもしれないこの世界最大の石油産出国であるイラクにおいて、どういう形でエネルギー供給を確保するかということで、先進各国、アメリカを含めヨーロッパあるいは中国、韓国、すべての国が、必死の思いで情報を探り、先に手を打っているというのが現状じゃないでしょうか。

 そこにおいて先ほど質問したのは、なぜ憲法について質問したかというと、当然のことながら憲法において、果たしてイラクの新生憲法が連邦制をとっていくのか、あるいは地域的な、連邦制のレベルも地域的な分割を強めていくのか、あるいは宗教的な色彩が強まっていくのか。こういうことによって、例えばキルクークの所属はどこになっていくのか、バスラの所属はどこになっていくのか、東バクダッドの油田開発の責任をだれが握ることになるのか、そういうことを含めて、世界各国は必死の思いで、今情報を探り、人を出し、それから犠牲を恐れず先行活動をしているわけですよ。

 ですから、私は、その点において、日本は、九九・九%の石油を海外に依存している日本の将来のために、外務省としては、イラクの将来、この一番大事な六月から十二月までの間にどのような考えでイラクを考え、どのように手を打とうとしているのか、もう一度御回答をお願いいたします。

町村国務大臣 今私どもは、一つはイラクの憲法制定というのが非常に重要であるということで、先般六月でございますけれども、東京でイラクの国会議長さんを初め十名近い議員さん方をお招きし、そこで、インドネシアやあるいはマレーシアの法学者を呼んで、イスラム法の中における憲法というものはどういう形があり得るのか、どういう点が問題になってくるのかというようなことを含めて、真剣な議論、セミナーと呼んでおりますけれども、勉強会というんでしょうか、議論をしていただきました。

 それに参加された議長さんに私はイラクでお目にかかりましたけれども、大変に有意義な会を開いていただいたというお話をいただいたところでございます。いずれにしても、イラクの憲法制定プロセス以降の政治プロセスがまずしっかりと進むということ、それについてできる限りの支援をすることということがまず大切なことなんだろう、こう思っております。

 また、私どもは、今まで主として無償資金協力という形でイラクの民生の安定に努力をしてまいりました。十五億ドルはほぼ使い切った状態に今ございます。もちろん、あわせて、自衛隊の皆さん方による復興支援活動と人道支援活動というものも今やってきております。これも、これからさらにしっかりとやっていく必要があるんだろう、こう思っております。

 日本としてはある意味では限られた分野のことかもしれませんけれども、そうしたことをしっかりやっていくということがイラクの国民に対する重要な貢献ではないだろうか。あわせて、国際社会の国々とともに協調して日本も取り組んでいく姿勢をあらわすということは非常に重要なことであり、そういう日本の活動というものは国際社会の中でも正当な評価を得ている、私はかように理解をしております。

 ただ、問題は、今委員が言われたような、さまざまな経済的な問題あるいはその基本にある治安維持の状況というものがどうなるかということであります。

 私ども日本は直接治安維持活動に参画をすることができないわけでございまして、アメリカにおける議会の議論というものが厳しくなるのは、彼らのまさに家族、子供たちがイラクで命を落としているわけですから、彼らが必死の議論をするというのはある意味では十二分に理解できるところであります。

 日本においても、直接戦闘によって命を落とす人がいるわけではございません。しかし、あの地域の、イラクの重要性あるいは中東全体の重要性ということを考えたときに、イラクの一刻も早い治安の回復と安定というものが日本にとっては非常に重要な意味があるのだということは言うまでもないことでございます。だからこそ、私どもは、国内にいろいろな意見があったとしても自衛隊を送り続けてきたというのは、その重要性が基本的にあるからであるということはぜひ御理解を賜りたいと存じます。

首藤委員 町村大臣、もう精神訓話は結構ですよ。また文部大臣をおやりになったときに言っていただけばいいと思います。

 今、本当に私たちが直面しているのは、今おっしゃった自衛隊の問題ですよね。自衛隊の派遣ということに関しては、国連の決議によれば、ことしの十二月十四日をもって切れるということです。そのときにはいてはいけないということですから、当然のことながら九月ぐらいからもう撤退を始めなきゃいけないということですよね。

 そうなりますと、これもまた目前まで、延長するのかしないのか、いつ撤退するのか、撤退した後には何を残していくのかというのを現地社会と調整していかなければいけないわけですが、そこでアメリカなんかが、いや、そんなに簡単に撤退しない、自分たちはイラクが完全に安全な、平和な国になるまで頑張る、こういうふうに言っている節もあります。それから、イラクの首相が、二年多国籍軍にはいてほしい、そうすればイラクの治安も安定するから、こういう話をしております。日本政府に対しては、アメリカ側から内々で、自衛隊の十二月十四日以降の派遣延長ということが申し入れられ、政府内でこれを検討中、こういうことが言われているわけですね。

 しかし、ちょっと待ってくださいよ。アメリカ軍、これは治安維持のためにいるんですよ。ですから、治安維持のために残ってください、残りましょうかという話になっているんですけれども、自衛隊は治安維持のために行っているんじゃないんですよ、これは経済復興のために行っているんですよ。

 経済復興というのは、町村大臣が今くしくもおっしゃったように、日本は十五億ドルを出して、そして十四億ドルを大体消化しました。最後の一億ドル、これは何か。最後の一億ドルは、言うまでもなく、今政府がここでやっておられるサマワの大型発電所ということなんですよ、サマワの大型発電所。本来ならば、日本は従来はこういうものは有償で、円クレなどでやっておりました。しかし、今度、こういうインフラの電力発電所に、六十メガワットですか、巨大な火力発電所に無償で、要するに上げてしまおうということによって十五億ドルすべて消化しよう、こういう話になっております。これは、予算年度もありますから、そういう形で進めるんだと思います。

 そこで問題となるのは二つですよ。

 一つは、もしそういうことであれば、もうイラクの復興段階が、自衛隊の治安維持や攻撃に対処する行動を必要とするのではなくて、純粋に経済復興に移った。これからは、JICAの皆さん頑張ってください、三菱電機の人も頑張ってください、東芝の人も頑張ってくださいという時代になったということですよ。これは来年からすぐスタートしなければとても間に合わない。フィージビリティースタディーその他を含めて、今もう動き出しています。となると、自衛隊がイラクに残る根拠というのは全くなくなります。これについてどうお考えなのか。

 第二点。最近、自衛隊の車列に対して遠隔操作で爆発が起こりました。これは何かというと、イラクの抵抗勢力といいますか、いろいろなテロリストといいますか、旧フセイン政権の残党といいますか、そういう人たちが外国の軍隊を追い出そうということでやっているわけです。それは何を言わんとするかというと、こうした発電所、経済復興をしようという一面、自衛隊がまだ残るということは、まさに攻撃を呼び寄せているわけですよ。ですから、こうした状況というのはまさに矛盾していて、日本は大型の復興、本格的復興をしていこう、年度内にやっていこうという動きと、自衛隊がまだ残り続けて頑張ってもらいたいみたいな話とは全く矛盾する話で、自衛隊がいるがゆえに危機を呼び寄せている。

 この二点について、外務省ではどういう責任ある回答をされるのか、お聞かせ願いたい。

町村国務大臣 自衛隊の活動は、委員御承知のとおり、昨年ぐらいまでは主として給水というものを中心にやってまいりました。それについては一定の設備等も整備をされたということで、今はその活動はやっておりません。従前からやっております道路の整備でありますとか公園の整備でありますとか、あるいは学校の修復、医療支援活動等々をやっておるわけでありまして、これらについて全く意味がなくなったという委員の御指摘は当たらないと思います。意味のある活動を自衛隊は今やっている、私はこう思っております。

 それから、自衛隊の派遣の延長問題についてでございますけれども、これにつきましては、十二月十四日に基本計画の期限を迎えるということでありまして、政府の中でこれからどうするかということについて逐次議論をしていくということにいたしておりまして、自衛隊の果たすべき役割あるいは現地の情勢等々、いつも防衛庁長官が言っております四つの視点でしたか、それを基準にして、今後この問題については検討していこうということでございます。

 自衛隊がいるから危険だというのは論理の逆転だと私は考えております。

首藤委員 しっかり私の質問を聞いてお答え願えていないようですけれども、時間がないので次のテーマに行きます。

 日本は、アメリカの戦略の一部に従って、アメリカの要請があれば残る、そういう形をとっているわけですが、そのアメリカの世界戦略というのは、いろいろな面で日本の基本的なものに非常に抵触する状況がふえてきているわけですね。

 これは外務委員会において何回も何回も何回も質問していることですが、アメリカが今、世界戦略、軍事戦略、基地再編というものをやっています。私たちは、基地再編、沖縄の基地の負担を軽減しよう、こういう話だ、最初はそういうふうに思っていました。そして、そういうところが、普天間基地の問題とかいろいろ削減していって、その一部は逆に本州側のいろいろなところで負担することもふえるかもしれないなという考え方はありました。

 そこで出てきたのが、シアトルの第一軍団の司令部が座間へ移動するということですね。そんなこともあり得るかな、これからどうしようかなという話を我々もしていました。しかし、それに関しては、2プラス2で行き、それから毎日のようにアメリカと局長、課長レベルでは話し合っていながら何一つ情報が出てこない。一方、座間に来るのは当たり前だのような話が出て、座間の米軍は一生懸命座間のアパートを探しているわけですよ。一体これはどういうことなんだということですよね。

 それで、さらに驚くべきなのは、そうした第一軍団が来る、そういう話ではなくて、結局世界で行われているのは、RMA、要するに軍事の革命に対応する組織変更だということが明らかになりました。そこで、実際に戦争することを管理するUA、それから世界戦略をつくるUEY、そして実際にそれを管理していく、執行するコマンドセンターみたいなUEX、これがあるわけですよ。そのUEXがまさに座間に来るということなわけですね。そして、そのUEXというものを世界各地でつくって、それをちょうどインターネットのように、どこからどこをというんじゃなくて、いろいろなところから集めて、ストライカー旅団をつくって直接介入しようというアメリカの戦略なんですよ。

 それはアメリカの戦略としてはよくわかる。しかし、それは当然のことながら日米安保の極東条項、第六条に反するし、何よりも我々自体が、そして我々の国土にある基地、そして我々の軍隊も、我々のファシリティーも、そういうものがそうしたアメリカの世界戦略に巻き込まれるということは、まさしく日本国憲法に違反する行為じゃないですか。

 今、その話はどこまで進んでおるのか。九月には具体的な名前が挙がると言われているんですけれども、そんなことは許しがたいことですよ。一体この話はどこまで進んでいるのかを、政府の立場としてしっかりと国民の前に提示していただきたいと思います。

    〔大谷委員長代理退席、委員長着席〕

町村国務大臣 きょう午前中にも参議院の本会議で御質問がございましたので、その折にもお答えをしたとおりでございますけれども、二月に2プラス2が行われて以降、二つのテーマ、すなわち一つは役割、任務についての議論、もう一つは具体の再編成の問題ということで議論をしております。さまざまな具体的な案、お互いに提案をしながら議論しているところでございますけれども、現時点で日米両方で合意をしたという点についてはまだございません。二十八、九でしたか、日米の審議官級の協議も行われ、また引き続き、今後この作業を加速化させていこう、こう思っております。

 何カ月も何年も議論をしているつもりもございません。できるだけ早い時点で一定の中間的な結論を得て、それをまた自治体の皆さん方にもお話をし、そうしたプロセスを経た上で最終的な日米間の合意にたどり着きたい、こう思っておりまして、座間の点を含めて、もう一度申し上げますけれども、現時点で日米双方で合意に達した点はございません。

首藤委員 外務大臣、その日米合意がないのは当たり前ですよね。合意した結果が出たら、では、それを拒否できますか。それを日本で本当に拒否できますか。それを地域で拒否できますか。そんなことはないでしょう。大変な問題でしょう。それは日米関係そのものに対する大変な影響力があるわけですよ。ですから、それにはいろいろな意見をやはり反映させないと、政策プロセスとしては間違っているんじゃないんですか、これだけの問題を。

 今おっしゃったのは、地域の方にも説明して、結論が出たら地域の人が納得して、そういうことなんでしょう。そうじゃないでしょう。今問題となっているのは、もし第一軍団が来て、日本がUEXとなって、これがまさに戦略拠点であるとなれば、真っ先に最初のミサイルは座間に飛んできますよ。だから、それは座間市の問題ではなくて、その近隣の東京という、皆さん御存じですか、今選挙をやっていますよ、東京というところの人たちも大変な影響を受けるでしょう、静岡というところの人も影響を受けるでしょう、日本国全体で影響を受けるでしょう。

 ですから、それは基地がある周辺の地域の問題ではなくて日本国全体の問題じゃないですか。それを日本国民に説明しないで、合意が出ていないというのは当たり前じゃないですか。一体どういう方向に行っているのかを国民は知りたがっているんですよ。それをやはり言っていただかないと、私は、この問題は、どんな結論が出ても、その結論は国民によって否定されるということを今の段階でも申しておきます。

 さて、そうした日本を取り巻く緊張は非常に強いわけですけれども、先ほど同僚議員からも質問がありました六カ国協議、これは本当に重要なことです。この六カ国協議の席において、日本が拉致問題を、核の問題と同じように、同価値を持って取り上げるというのは本当に重要なことだと思います。

 しかし、そのときにも、やはり今問題となっているのは、日本と北朝鮮の間で、対話と圧力といいますけれども、対話すらない。対話どころか、全然連絡もないという、表面で争っているものと水面下でやっているものといろいろあるわけですが、何の関係も、何の連絡もないというこの悲しい悲しい外交の現状があるじゃないですか。

 そして、なぜそれが生じたかというと、それは十一月の外務省の担当者会議から、日本が受け取ってきた横田めぐみさんの遺骨が、これはにせものだ、けしからぬということで突き返した、このことが最大の障害となっているわけですよ。

 そのことに関しては、私は何度もこの委員会で指摘させていただきましたけれども、世界を代表する科学雑誌の、専門雑誌のネイチャーによって否定され、その後、タイムに出て、そして、今ヘラルド・トリビューンにもこの記事が載りました。

 要するに、一部の科学者だけが知っているんじゃなくて、世界のかなり多くの人たちが、もうこの問題は、ひょっとしたら日本の言っているのは科学的な鑑定ではなくて実は政治的に鑑定をしたんじゃないか、日本が窮地に追い込まれてもそれは日本の責任ではないかというふうに世界の人がだんだんと考え始めているわけですよ。ですから、そのことに関して早く、日本は鑑定結果に誤りがないということを世界にきちっと科学的に示さなきゃいけないわけですよね。

 しかし、そのことに関して共同通信から警察庁に対して質問状が出ました。それの回答を見させていただいた。それを見ると、やはり少なくとも専門家が書いたものじゃないわけですよ。例えば横田めぐみさんのDNA、そうじゃないでしょう、細胞のDNAじゃなくてミトコンドリアのDNAでしょう。

 ですから、こうした回答を見ても、例えば表面を、問題になった遺骨に他人のDNAがもしかしたら混在するんじゃないかということで表面を洗うんですけれども、しかし、行った手法は、表面じゃなくて骨の内部に吸収された可能性のあるDNAについての洗浄の問題でしょう。ですから、こうした問題は科学的評価にたえられないわけですよ。ですから、こうした問題に対してきちっとしたデータを公開して、そしてやはり証明していただかないといけないと私は思います。

 もしそんな、本当に火葬された骨からDNAが発見されるんだったら、今まで警察が行ったすべてのそういう事件はもうすべて再鑑定しなければいけないということになると思います。ですから、今重要なことは科学的な鑑定で、そこをきちっとしないと、この問題は先へ進まないんじゃないか、そういうふうに考えているんですけれども、警察庁の意見をお聞きしたいと思います。

瀬川政府参考人 お答えいたします。

 この横田めぐみさんの遺骨とされたものの鑑定につきましては、これは何度かお答えをさせていただいておりますけれども、刑事訴訟法の定めるところに従いまして、我が国で最も権威のある機関の一つが実施をした科学的な鑑定に基づくものでありまして、これは極めて信頼性が高いものというふうに私どもは考えております。

 この結果につきましては、捜査上のことではありますけれども、公益性にかんがみまして、国会でも国家公安委員長から詳細に報告をさせていただきましたし、それから、今、ネイチャー誌を初め、いろいろ雑誌等のことも挙げられました。内外のマスコミから私どもに対してきちっと質問等があったもの、取材要望等があったものに対しましては、私どもは文書で詳細に回答するなどして、重要な事項でもありますので、できる限りの説明責任をきちっと果たしてきたところであります。

 科学的ではないのではないかということで何点か御指摘がございましたが、申し上げますと、その骨の表面の洗浄した液からはDNAが検出されなかったということについて、それは意味がないというような趣旨のお話がございましたけれども、実はそういうことではなくて、骨の表面が汚染されていないということはその骨の内部だけが汚染をされていた。

 ということは、これは例えば、率直に申し上げますと、横田めぐみさん以外のもののDNAをわざわざ骨の中にしみ込ませて、その上でさらに骨の表面からはDNAが出ないようにきれいに洗浄した、そういうものを渡されたことになるわけでありまして、こういったことは実は非常に考えにくい。そういうことでもない限り、骨の表面が汚染されていないにもかかわらず、骨の内部だけに他人のDNAが入っていたということにはならない、これが論理的な考え方であろうか、こういうふうに思います。

 それから、火葬された骨とDNAの問題というのがございました。

 これは、ネイチャー誌に吉井先生が取材に答えて、一般論的にその困難性を述べたところであるというふうに私どもは聞いておりますけれども、では、その焼かれた人骨からはDNAが絶対出ないのかといいますと、そういうことではないと思います。

 といいますのは、例えば、今回、同じ第三回日朝実務者協議で、北朝鮮側から、松木薫さんの遺骨の可能性があるという骨も提供されているわけでございます。北朝鮮側の説明によりますと、これも火葬したものである、こういうことでありますが、この松木薫さんの可能性があるとされた骨からも松木薫さんとは別人のDNAが検出されているわけであります。

 いわゆる焼かれた人骨からのDNAの検出の可能性というのは一概に否定できないというのは私ども承知しているところでございまして、そのときの状況、その温度、時間等々、具体的な状況によるものだろうと思いますが、客観的に具体的な状況がどうであったのかということは私どもは承知していない、こういう状況でございます。

 したがいまして、私どもとしては、今回の鑑定といいますのは十分に科学的なものでございまして、今後とも可能な限りの説明責任というものは果たしてまいりたい、こう考えております。

首藤委員 時間がなくなったのに、十分時間を使って説明していただいて、ありがとうございました。

 そういうことが科学的に主張できるのであれば、それをぜひ、世界のレベルで、科学者のレベルで、法医学のレベルで、何ら批判を受けないようなレポートとしてきちっと出していただいて、それをもとにして外交交渉にしっかりと臨んで、六カ国協議を成功させていただきたいと思います。

 以上で質問を終わります。

赤松委員長 次に、永田寿康君。

永田委員 民主党の永田寿康でございます。

 きょうは外務委員会で初めての質問ということで、私の過去に得た知識や経験の中で外交というのは最も縁遠いものでありまして、正直言って素人臭い質問になるかもしれませんが、ぜひ、委員長、大臣以下よろしくおつき合いをお願いしたいと思います。

 さて、外務省と総務省が共管で所管している財団法人JAMCO、日本語で言うと財団法人放送番組国際交流センターというところがあります。今、日本の財政は危機に瀕しているわけであって、特殊法人の改革、それから特別会計の改革、あるいは、行く行くは財団法人を初めとする公益法人の改革をして、できるだけ官僚をスリム化して、そして民間でできることは民間に移していく、こういうことが必要とされている今、外務省が所管しているこの財団法人に対しても、問題がないのかきちっと精査する必要があると思いましたので、きょうは、一般質疑の時間を使って、ちょっとこの話をしてみたいと思います。

 きょうは外務省の政府参考人の方もお越しになっていらっしゃると思うので、専門的なことはそちらから御答弁いただくことも私は必要だと思います。そういうようなことも考えながら、このJAMCOというのがいかなる業務をやっている法人なのかということを説明していただかないと、多分周りの人はだれもわからないと思うので、まずそこからお願いしたいと思います。

山本副大臣 JAMCO、放送番組国際交流センターでございますけれども、映像メディアを利用して日本の正しい姿を海外に伝え、そして国際相互理解を促進するために海外へのテレビ放送番組の提供を促進するとともに、開発途上国の放送の普及、発達を図るために放送番組に関する協力、支援を行うことを目的として設立をいたしたものでございます。

永田委員 目的はそれでいいんですが、実際に行っている業務ですね、具体的にどのような業務を行っているのかを御説明いただけますか。

近藤政府参考人 お答えいたします。

 海外に日本が紹介すべき日本のテレビ番組等に関しまして、国際交流基金等から情報を得、そしてそれにふさわしい番組を選び、そしてそれを業者に委託して、英語なら英語、フランス語ならフランス語に翻訳をして海外に提供する。基本的にはそういった形で、通常コマーシャルベースではできないような日本のテレビ番組の海外紹介ということが基本的な業務でございます。

永田委員 その業務にかかる費用はどのようにして賄われているんでしょうか。

近藤政府参考人 このJAMCOと呼ばれております財団法人の年間の予算はほぼ二億六千万程度でございますが、そのうち一部は基本財産からの利子の利益、それから国際交流基金との共同事業、それから総務省からの補助金、基本的にはその三つが収入の柱でございます。

永田委員 役職員の人数、それからその報酬体系について御説明いただけますか。

近藤政府参考人 役員は、理事長が一名、専務理事が一名、理事が全部で十名、それから監事が二名、それからいわゆる事務的なスタッフが六名でございます。このうち理事は基本的には非常勤でございます。実際の財団法人からの給料というのは、理事長、専務理事、それから六名のスタッフに基本的には支給されております。

永田委員 理事長と専務理事の報酬、幾らだかお答えいただけますか。

近藤政府参考人 理事長が二百二万円、専務理事が千二百八十四万円でございます。

永田委員 理事長の勤務日数、大体週に何回ぐらい勤務されているのか、お答えいただけますか。

近藤政府参考人 理事長につきましては、基本的には、平均しますと、大体週に一日勤務をしているということでございます。

永田委員 これだけ聞いただけでも、かなり奇妙な法人だということがおわかりいただると思いますし、また、非常勤とはいえ理事が十数名いて、本当に週に一回働くかどうかわからないような理事長が一人、一方でスタッフが六人という非常に頭でっかちな財団法人であります。

 ところで、番組改編、つまり、先ほど御説明にありました、日本で放送されたテレビ番組の外国語版を制作する。その前に、実はどの番組を外国語版にするのかというのを選ぶ作業がありますね。選んで、それの外国語版を制作して、それをライブラリーに保管し、海外にそういう番組があるよということを紹介して、そして実際に要望があった場合にはその外国語版の番組を無償で提供してあげるというのがこの法人の主な業務内容というふうに聞いていますけれども、実際に番組を、その外国語版を制作するときに費用がかかっているわけですね。

 その前段階から行きましょうか。外国語版を制作するときに、この番組を制作してほしいというふうに依頼をしてくる発注者ですね。その発注者のうち官公庁が占める割合、つまり、国の役所及び国際交流基金などの独立行政法人も含めた政府関係機関が発注してくるものの割合は何%ですか。

近藤政府参考人 具体的な統計を私は手元には持っておりませんけれども、基本的には、独立行政法人国際交流基金、それから総務省からの委託が多いと聞いております。また、それとは別に、例えば外務省が行っております文化無償の中に番組の提供というものがございます。結果的に、その受け取り国からの要請によって、このJAMCOのフィルムライブラリーに蓄えてある英語版等の番組が無償で提供されるということもございます。

永田委員 私が聞いたのは、まず番組を制作するときに、この番組の外国語版を制作すべしといって依頼をしてくる人がいるわけですね。それが官公庁の割合は何%ですかと申し上げたわけです。きのう、きょうと数時間にわたって、関係者の、役所の人あるいは基金の職員、JAMCOの職員の方とお話をしたところでは、それが一〇〇%であるというふうに聞いています。つまり官需だけで成り立っている財団法人なんですね。

 一方で、この財団法人がこの番組を外国語版にしようということを決定した後に、実際に自分のところで手足を動かして外国版を制作する、その割合は何%ですか。

近藤政府参考人 外国に翻訳をして提供すべき日本の番組が決まった場合に実際にその作業を行うのは、この財団法人自身ではなくて、専門の業者にそれを発注しているということでございます。財団法人自身には、そういった技師とかスタジオとかがございません。

永田委員 そうなんです。私もそれは確認をしていまして、お答えをいただいた方がいいと思ったからお聞きをしたわけです。

 日本で放送されているテレビ番組、主にNHKのものと民放のものというふうに二種類に分けているようですが、民放の番組は、民放が指定するプロダクションというか番組制作会社に委託をして外国語版を作成する。NHKが放送した番組については、NHKインターナショナルという、NHKの下にある、これもまた財団法人に対して実際の作業を依頼するということで、この二種類のやり方が占める割合が一〇〇%なんですね。つまり完全に丸投げなんですよ。

 果たしてこういう財団法人に存在意義がどれほどあるのか、あるいはこの財団法人が生み出している付加価値というのは一体何なんだろうという気がするんですね。

 はっきり言えば、補助金が二種類あって、補助金というのは運営交付金ですけれども、総務省から直接おりてくる、総務省からこの財団法人に直接入ってくるものと、それから外務省から国際交流基金を通じてこのJAMCOに入ってくるものと二種類あって、もうはっきり言って番組制作費はこれだけ。これと、あと自己資金が、基本財産は二十七億数千万円あって、それの運用資金のうち一部が最近は番組制作費に充てられるというふうに聞いていますけれども、それとても金額としては本当に微々たるものであって、事実上、国の補助金がなければ成り立たない法人なんですよ。

 根本的な問題としては、やはりこういうことを借金漬けになっている日本の政府が借金をしてまでやらなきゃいけない問題なのかということはあるんですけれども、その前段階の問題として、もう少しほかのやり方があるんじゃないか。

 つまり、官需だけで成り立っているというか官需しかない、ほかに需要がない、外国に日本の番組を紹介しようというニーズが国以外は持っていないということになりますと、それはもうはなから国でやった方がいいんじゃないか。一個、別に独立した法人をつくって、週に一回出勤するかしないかわからないような理事長に二百万円手当を払って、専務理事に千二百八十四万円払ってやっていくという意義がどこにあるのかということなんですよ。

 僕は、国際交流基金とかあるいはNHKが直接やれば、こういう外部の組織を持たずにやっていけるものだというふうに思うんですけれども、そういう形態にしたら何か不都合が起こるんですか。

近藤政府参考人 我が国のテレビ番組を海外に紹介するためには大変なコストがかかります。したがいまして、日本の実情を知ってもらうというために、特に途上国に対してそういったものを提供するためには、いわゆる商業ベースでは採算に合わないということで、何らかの形で国が、広い意味の外交政策の一環としてそれを推進する必要があるわけでございます。

 そういった観点から、独立行政法人国際交流基金に対して、外務省の中期目標の中に、この映像メディアを通じた対外広報、文化交流といったことを重点事項として指定をしてございます。国際交流基金は、外務大臣からの指示を受けて、みずから中期計画をつくり、そしてその中で、独立行政法人としての自主性、自立性の枠の中で最も効率的な運営交付金の行使という観点からいろいろ考えた末に、このJAMCOと共同制作をすることが最も効果的に成果を上げられると考えたというふうに聞いております。

 このJAMCOというのは、ここにいる数人のスタッフは大変なエキスパティーズを蓄えております。国内にさまざまな業界との人脈等もございまして、目的を達成するために最も効率的に作業を進めるという観点から、国際交流基金としては、このJAMCOとの共同制作をすることによって、外務大臣の指示、中期目標の指示であります映像メディアを通じた対外広報あるいは文化交流といったことの実現に努めている、かように考えております。

永田委員 僕は、日本の番組を海外に紹介することの意義をはなから否定しているわけではないんですよ。それは非常に意義深いことで、財布に余裕があるんだったら、やれるんだったらやった方がいいだろうとは思うんですね。

 ちなみに、日本の正しい姿を紹介するために日本の番組を海外に提供しているんだと言いますが、人気があったのは「おしん」だとか「腕におぼえあり」とか「ピタゴラスイッチ」だということを聞くと、果たしてこれで日本の正しい姿をきちんと紹介していることになるのかどうか、多少不安にはなるんです。番組の選定は、日本の姿を誤解されないように、少し考えられた方がいいと思いますよ。真に受けてしまう人たちというのはいるので。

 それはそれでいいんですけれども、問題なのは、外部に組織をつくった方が効率がいいという発想が僕には全く理解できないんですよ。

 つまり、きのうもJAMCOの職員の方と国際交流基金の方にお越しいただいてお話をしたんですけれども、番組制作は、エキスパティーズとおっしゃいましたが、専門性とノウハウとそれから人脈が必要だということでJAMCOを活用しているんだというふうにおっしゃいます。

 しかし、実際には、部長、課長以下のいわゆる普通の職員、スタッフの方々というのは民放あるいはNHKからの出向者が占めているというふうに聞いていますし、出向期間はほぼ二年から三年だと聞いています。ですから、そこに長くとどまって番組制作のノウハウを蓄積しているということにはならないと僕は思うんですね。

 よしんば、一歩譲って番組制作のノウハウがそこに蓄積されたとしても、そのノウハウとか人脈とかというものは人にくっついているものですから、人を動かしたら動いてしまうんですね。つまり、基金とかNHKにこういう組織を人と一緒に持っていったら、何ら支障なく今と同じことがもっと安くできるんじゃないかと僕は思うんです。

 だって、一般管理費だけで年間五千五百万円もかかっているんですね、この法人は。半端な金額じゃないんですよ。だから、わざわざこんなことをするために、専門の事務所を構えて、例えば社屋だって年間五百六十八万円ですか、かけて借りているわけですし、はっきり言ってこの手の仕事は、役所で言ったら課を一個使わないで済むぐらいの小さな仕事なんですよ。

 番組の選定にしても、専門家、無報酬の専門家を十二人集めて番組評価委員会というのをつくって、各民放やNHKから推薦されてくる番組を審査するというだけのことですから、そんなのはもう、役所で言ったら係長級の人が片手間でやる仕事ですよ。何でこれは千二百万円も払っている専務理事を置きながらやらなきゃいけないのか、僕はさっぱり理解ができないんですね。

 むしろ、我々みたいに、公金というか公のお金ができるだけ少なくて済むように政府のスリム化を目指す立場からすると、これは組織があるから補助金が減らせないんじゃないか、そういう見方になっちゃうんですね。だから、組織をなくして補助金のあり方をぐっと変えていく、そういう方向になぜ踏み出すことができないのか。もう少し納得できる、どうしてもこの組織じゃないと困るんだ、外部に組織がないと困るんだという理由をきちっとお話しいただきたいんですけれども。

近藤政府参考人 日本の番組を海外に紹介するというコマーシャルベースに乗らない事業を効果的に行う、これは国自身が行うことは適切ではございませんし、国際交流基金がそういった観点から外務大臣の指示に従って作業をしているわけでございます。

 このJAMCOとの共同作業ということに、基金としてそういう判断をした背景には、先ほど人脈とかエキスパティーズといった一般的な言葉を使いましたけれども、例えば具体的なポイントで言えば、NHKであれ民放であれ既存の日本の番組を翻訳する、その場合には著作権の問題が当然生じます。著作権は大変高うございまして、それがしばしば日本のテレビ番組の海外紹介の障害になっております。

 JAMCOの場合には、提供する各局はあらかじめの取り決めによって著作権をすべて免除する、無料にするということになっております。したがいまして、このJAMCOを通すことによって相当程度経費が節減をされている、そういったことが国際交流基金がJAMCOとの共同作成という判断をした背景の有力なポイントである、かように考えております。

永田委員 それは、きのう私が職員の方々から受けた説明とは違いますね。

 著作権の問題は確かに重要であるとは聞いているんですが、確かに、NHKと民放百二十社余りが基本財産に対して資金を提供しているので、その関係もあって非常に著作権の処理がスムーズにいくとは聞いています。

 しかし、この法人は、外国語版の番組を制作するに当たって、選ばれた番組一本一本に対して個別に著作権を放棄してくれ、いわゆる経済的な見返りを放棄してくれというふうに、一本一本依頼をしてお願いをしているというふうに僕は聞いています。今のお答えは、JAMCOがやる場合には自動的に著作権料が免除されるんだというふうにお答えになりましたけれども、これはどちらが真実なんですか。

近藤政府参考人 JAMCOの場合には著作権の免除がなされるということを申し上げましたが、包括的に自動的になるということではなくて、そもそも提供する局がその都度、つまり特定の「おしん」なら「おしん」、「プロジェクトX」なら「プロジェクトX」、そういった番組の翻訳をしたいというときに提供者に依頼をするわけで、包括的ではございません。

永田委員 そうなんですよ。だから、番組の著作権を持っている人たちが、非常に公益的に意義のあることだから著作権を放棄しよう、そういうような判断をしてくれるケースがあって非常にありがたいという話は聞いています。しかし、それは別にJAMCOだからということではなくて、公益に着目をしてやっているというふうに聞いているので、であるならば、それは別に基金とかNHKが番組改編作業をやって、基金やNHKが一件一件そういうような同じことをやったら、何ら支障はないわけですよ。

 だから、先ほど僕が申し上げたのは、基金やNHKがやって何か問題があるんですか、クルーシャルな、絶対困るようなことがあるんですかと聞いたら、いや、それは著作権の問題がとおっしゃったので、今僕が著作権の問題は多分これは基金やNHKがやっても大丈夫だという話を一応論理立てて主張しましたよね。これが正しいとなったら、もうその法人の存在意義が僕は完全になくなっちゃうんじゃないかというふうに思っているんですけれども、まだほかに、これは独立した法人を維持しなければならない理由があるんですか。

近藤政府参考人 これまでにこの財団法人が培ってまいりましたいろいろなエキスパティーズネットワーク、それから交流基金とか総務省、いろいろな共同制作であるとか、委託といいましょうか補助金を出す、その主体側の要望事項、それから実際にそういった要望に応じる、各局、NHKとか民放とのこれまでの協力の実績、人脈、そういったものが必ずしも数量的にはじき出せるかどうかは別としまして、いわゆる通常企業がアウトソーシングをすると同じように、トータルで見れば非常に効率的な事業の執行につながるという判断を国際交流基金がしているというふうに考えております。

永田委員 大臣にも質問を当てなきゃいけないので、この問題は途中で切ります。

 しかし、今アウトソーシングとおっしゃいましたけれども、民間企業がアウトソーシングするときには、アウトソーシングする業務と似たような業務に対するニーズがほかの会社からもあって、ほかの会社からもいっぱい同じ会社に対して似たような業務を受けるから、そうすると、それぞれの会社が全部内製でその仕事をやる部門を持っている場合に比べて全体として効率が上がる、だからいいんだ、そういう理論なんですよ。

 だけれども、この会社の場合には全部官需なんですね。全部国が発注しているんですよ。だから、ほかに需要が見込めない以上、アウトソーシングした方が効率的だという理屈が全く成り立たないんですね。多分、経営学を勉強していないからそういうことになるんだと思うんですけれども。

 ぜひそれはちゃんと見直して、やはり小さな金額ではありますよ、はっきり言って、国家予算全体に比べれば。しかし、一個一個そういう財団法人のあり方を見直して、もっと効率的に安定的にやっていける方法があるんじゃないかということをやっていかないと、二万何千もあるので大変なんですよ、これは本当に。

 ですから、そういう問題点だけ、ちゃんと一々こういう質問にするかどうかは別問題として、指摘をしますので、そういう視点でもう一度見直して、できたら経営学を勉強した方を、そういうプロジェクトチームを立ち上げるんだったら中に入れた方がいいと思いますよ。

 とりあえずこれはここで一たん切って、外務大臣にせっかくお待ちいただいているので、大臣にもちょっとお伺いしたいんですけれども、済みません、素人臭い質問で。

 端的に言って、日韓首脳会談の話、僕はすごく気になっていて、やはりかなり表情がかたいんですよね。総理と盧武鉉大統領の共同記者会見の表情が非常にかたくて、大分厳しいやりとりがあったんだろうなと思ったんですが、そんな中で、無宗教追悼施設をつくることを検討するということが話題になった。

 検討するということは、約束すると大統領が一たん発表したあとに、いや、約束するというのは私がつけた言葉であって、そういうのは原稿にも書いてありませんとおっしゃっている。その後大統領は、いやいや、事務レベルで約束するということはもう既に確認されているので言うまでもないことであったというような話をしているわけですけれども、これは実際のところはどうなんですか。約束するというところまで行ったんですか。

町村国務大臣 重要な両国首脳の会合でございますから、いろいろなレベルでいろいろな準備をするのは当然のことでございます。

 今回、先方から特に強い要請としてあったのが、この新たな追悼平和祈念施設の問題と、日韓歴史共同研究の委員会を発足させ、そのもとに教科書サブグループですか、これを設置するということ、この二つが先方から事前に大変強い要請として出されてきたテーマでございました。

 それを受けまして、総理訪韓前に政府部内でも議論をし、そして先方外交通商部とも議論をして、そして何度かやりとりをした結果、この新たな追悼平和祈念施設については、細かい文書はちょっと今は手元になくて大変恐縮でございますけれども、私の記憶が正しければですが、常に日本の国内世論等を勘案しながら、追悼平和祈念施設に新たにつくるものについては、日本国民の世論と諸般の事情を考慮して検討していくという文書を、我が方からそれでは発言しますよということを先方と合意をしてあったわけでございまして、そういう意味で、事前の事務的なすり合わせが行われていたということは、それは事実でございます。

永田委員 当然、この無宗教追悼施設は靖国を代替するのかどうかということが非常に大きな問題になるわけですけれども、もう時間もないので、ちょっと一番聞きたいところだけ最後に聞いて、残りの部分は次回以降の質問にしたいと思います。

 総理が靖国に参拝するときに、これは私的な参拝であるということを言うわけですね。中曽根元総理の参拝以来、公式参拝か私的参拝かということが非常に重要な問題になっているんですけれども、僕は、根本的な問題として、公的参拝と私的参拝を分けることは多分できないんじゃないかと思っているんですね。

 最近は、森岡厚生労働政務官がA級戦犯を裁いた東京裁判は根拠がないんだというような発言をなさって、それが私的な発言であるというふうにおっしゃったわけですね。政府の高官がそういう発言をすると、あるいは総理が参拝をすると政治的な効果が発生してしまうのは、それは自分が意図してもしていなくても、当然あることだと思うんですよ。

 そういう政治的な効果が発生してしまったときに、これは私的な発言であるから政治的な効果が発生するのはおかしいというふうに主張するのは、僕は詭弁だとしか思えないんですね。やはり政治家は二十四時間政治家ですから、この瞬間だけは私ごとであるから、そこについては政治的な責任は免除してほしいという言い方はちょっと違和感を感じるというか、むしろ潔くないなという感じがするんですよ。

 大体、森岡氏は、さらにその後、雑誌の中でも東京裁判はおかしいということを言って、最後にこれは議員個人としての発言であるみたいなことを言っているわけですよ。しかし、議員個人の発言であるというふうに言うということは、それは、当然彼も選挙を通っているわけですから、選挙の際には有権者に対してそういうアピールをするんでしょう。自分は個人的にはこう思っているという話をするんでしょう。その後に、いやいや、内閣の一員になったから、内閣の方針に従って東京裁判は受け入れるんだという話にするわけでしょう。これは有権者に対する裏切りですよ、はっきり言って。自分の信条を、本心を語って、それを信じて投票した人に対して、僕は裏切りだとしか思えない。

 だから、こういう公私の使い分けというのは僕は絶対おかしいと思っているんですけれども、そういうことというのは今後も政府というのは当然あり得ることだというふうに、つまり、総理に対しても政務官に対しても公私の使い分けというのは当然あり得るんだというふうに認め続けるつもりなんでしょうか。ぜひお願いします。

町村国務大臣 森岡さんの場合は私もどういう状況かよくわかりませんから、ちょっとコメントは差し控えますが、靖国の公式参拝であるか否かということについては、今まで累次いろいろな議論があり、例えば昭和六十一年八月十四日、後藤田内閣官房長官談話という中にも、これは結論として八月十五日には内閣総理大臣の靖国神社への公式参拝は差し控えることとしたと、ここでも立て分けて使っておるわけですね。繰り返し明らかにしてきたように、公式参拝は制度化されたものではなく、その都度、実施すべきか否かを判断すべきものであり、今回取りやめということが公式参拝自体を否定ないし廃止しようとするものでないことは当然である、こういうことを述べているわけでございます。

 小泉総理の場合は、公式ではないというふうに述べておられますから、そういう意味で公式ではないというふうに政府としては認識をするわけでございます。

永田委員 もう終わりにしますが、そうじゃなくて、私的な行為であっても、それに対して政治的な効果が発生してしまった場合には、本人が公式だと思っていなくても自動的にやはり政治的責任が及ぶんでしょう、それは負うんでしょうという話なんですよ。それは、本人がどう思っているかということは別の話なんだということを理解した方がいいと思いますよ。

 時間ですから、これにて終わりにします。ありがとうございました。

赤松委員長 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。

 六月二十三日は沖縄の慰霊の日でした。戦後六十年を迎えて全県各地で沖縄戦二十万余の全戦没者に対して哀悼の意を表明したわけです。

 ところが、その慰霊の日が過ぎるのを待っていたかのように、六月二十四日になりまして、在沖米軍は外務省沖縄事務所を通じて、金武町伊芸区のキャンプ・ハンセン内レンジ4の都市型戦闘訓練施設の使用を二十七日以降に開始する、このような通告をしてまいりました。まるで慰霊の日が過ぎるのを待っていたかのような対応でありますが、米軍はきょう今の段階でもそのレンジ4にグリーンベレー部隊、小隊規模四十人から五十人を待機させ、実弾射撃訓練を開始しようとしております。

 政府は、これにどんな対応をしてきたんですか。

河相政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のとおり、二十四日、在沖縄米軍四軍調整官事務所より、外務省沖縄事務所に対しまして、二十七日以降レンジ4の陸軍複合射撃訓練場の使用を開始する旨の連絡がございました。

 これに対しまして外務省の沖縄事務所からは、訓練については米側として地元の懸念に十分配慮して、部隊練度維持のための必要最小限なものにとどめてほしい、また安全にはくれぐれも万全を期してほしいということを改めて働きかけたわけでございます。

 これに対して米側からは、部隊の練度維持のための必要最小限のものにとどめるということ、また安全にはくれぐれも万全を期すという回答を得ているところでございます。

赤嶺委員 今まで聞いたことと全く変わらない態度であります。

 地元の懸念といいますけれども、外務大臣、きのう金武町の町議会は改めて抗議決議を上げました。都市型戦闘訓練施設の即時閉鎖と撤去、そしてレンジ4、レンジ5F演習場の廃止、これを求めているわけです。こういう要求を繰り返し地元や、あるいは町長や県知事や県議会が求めているのは、その伊芸区では被弾事故が繰り返されてきているからなんです。米軍の安全対策というのがいかに当てにならないかということは、もう住民の皆さん、県民の皆さんは体験上も体にしみてよく知っています。

 そういう意味でも、住民の声を受けとめて実弾射撃訓練の中止を求める、これが政府のとるべき態度じゃないですか。

河相政府参考人 金武町町議会での決議、また、それに先立ちまして金武町長からも私どもに対していろいろな陳情をいただいておる、それに先立ちましていろいろな働きかけを得ているということは、我々も十分認識をしております。

 ただ、政府といたしましては、この陸軍複合射撃訓練場につきましては、安全、環境等に配慮した内容になっているというのが基本的考え方でございます。ただ、同時に、地元における懸念、御心配というものも我々としては受けとめておるわけでございまして、そういうような懸念を踏まえた上で、キャンプ・ハンセン内の別の地区に日本政府予算で代替施設をつくるということを決定したわけでございます。

 また、先ほども申し上げましたように、その移設施設ができるまでの間、一時的に限定的な形でレンジ4の施設を使うに当たっては十分な安全措置を講ずるということを米側にも重ねて要望しておりますし、米側としてもしかるべく措置をとっているというのが基本的認識でございます。

赤嶺委員 地元はレンジ4に懸念を表明しているが、そしてそのことを地元だけではなくて沖縄県知事初め県議会、いわば県民ぐるみですよ、県民ぐるみで懸念を表明していることを、日本政府は安全だと言っている。県民に対する挑戦じゃないですか。

 金武町の儀武町長はこう言っているんですよ。過去数十件の被弾事故のうち、原因が究明されたのは一件だけだ、それでどうして安全だと言えるのかと。被弾事故は繰り返される、原因は究明されていない、これで安全だ安全だと言っている。信じろと言う方が本当にどうかしているんじゃないでしょうか、そういう政府の見解は。

 今北米局長は代替施設をレンジ16の奥に建設すると言われました。代替施設ですよね。では、代替施設を建設したら、レンジ4に建設した訓練施設はどうか。これは撤去しないと言っている。これはこの間の委員会でそういう答弁でした。移設というのは、レンジ4の移設は、閉鎖して撤去する、これが当然だと思いますよ。それはアメリカ側に申し入れなかったんですか。外務大臣、いかがですか。

河相政府参考人 御指摘のとおり、レンジ4の移設、これはキャンプ・ハンセン内のレンジ16の奥に代替施設をつくるということでございます。

 その代替施設ができた後どういうことになるかにつきましては、基本的に、陸軍の練習はその新しい代替施設で行う、そしてレンジ4につきましては海兵隊の管理下に置かれるということでございますが、そのレンジ4の複合射撃訓練場を使用した実弾射撃訓練は海兵隊の管理下に置かれた後でも実施しないということについては、米側からの表明を得ているところでございます。

赤嶺委員 海兵隊は新たな都市型訓練施設を手に入れ、陸軍グリーンベレーは別の場所に都市型戦闘訓練施設を手に入れる、二つつくってあげることになるわけですよね。負担の軽減だと言いながら、あのキャンプ・ハンセンに二つも都市型訓練施設をつくって、どうやって負担の軽減なんですか。そんなのはだれが聞いても負担の軽減にならないことははっきりしているじゃないですか。

 海兵隊が使うと言っている、しかし実弾射撃はやりませんと。訓練場が残れば、恒久的に海兵隊が実弾射撃をやらないというような保証はないですよ、全く。どこにもないですよ。

 第一、この間私が委員会で取り上げたキャンプ・ハンセンの山火事の消火体制、ヘリ四機を用意するという合意が当時ありながら、いつの間にかその合意も雲散霧消していた。一機しか出なくて大きな山火事になった。そんなことを繰り返しているじゃないですか、キャンプ・ハンセンでは。

 それでは、あえて聞きますけれども、海兵隊はレンジ4で、レンジ4の陸軍の訓練場が移設した後海兵隊が使う、しかし実弾射撃はやらない、これはどことどこが合意してそういう取り決めがあったんですか。

河相政府参考人 移設後のレンジ4において、海兵隊の管理下に置かれるわけではございますけれども、その複合射撃訓練場を使用して実弾射撃訓練は行わないということにつきましては、外務省と米側との会話で確認をしているところでございます。

 また、あわせまして御説明させていただきますと、代替施設完了後のレンジ4の施設の取り扱い、これについては現時点では何ら決定しているという状況にはございませんけれども、米側とは引き続き協議をしていきたいというのが基本的考え方でございます。

赤嶺委員 レンジ4についての使い方は今何ら、何も決定していない、しかし海兵隊が実弾射撃訓練をやらないというのは外務省と米軍の会話で合意している。会話って何ですか。

河相政府参考人 お答え申し上げます。

 これは、より具体的に申し上げれば、いろいろな場で議論はしておりますけれども、二十四日、在沖縄米軍四軍調整官と外務省沖縄事務所の間での協議の中で、我が方からいろいろな働きかけ、会話をしたのに対して、米側からは代替施設が使用可能となった後はレンジ4の複合射撃訓練場の施設を使用した実弾訓練は行わないということを明確に米側は言明をしておるわけでございます。

 これにつきましては、外務省それから防衛庁の方からの紙ではっきり張り出しもさせていただいているところで、明確になっているところでございます。

赤嶺委員 山中長官もおいでですが、キャンプ・ハンセンの山火事のときも、当時もヘリの消火体制を強化する、四機にしますというのも三者協で米軍が発言をした。それで今になって、あれは発言であって合意でなかったから合意を破ったということにはならない、こういう説明になっているわけですね。あなた方の、今、海兵隊が使わないというのも発言したと。働きかけた、発言したという程度で、明確な合意というには余りにもほど遠いような今の答弁であります。

 加えて聞きますけれども、レンジ16の奥に代替施設を建設すると言った、それができ上がるまでの暫定使用だと今おっしゃっている。代替施設の建設については、日米合同委員会で明確な合意ができているんですか。

山中政府参考人 これは米側と、レンジ4における米陸軍の訓練のあり方について種々検討、意見交換を重ねてまいりまして、今委員御指摘のように、私どもは基本的に米軍はできる限りの安全対策を講じていると考えておりますけれども、地元で大きな懸念、不安を抱いておられるということから、レンジ16の奥に代替の施設を建設するという方針を固めて米側と調整を進めてまいりました。

 正式な合同委員会手続はまだそこまでに至っておりませんけれども、実質的な米側との意見調整というのは了しているというふうに理解をいたしております。現に、それを前提に、既に地形図作成等の業務の発注をいたしたところでございます。

赤嶺委員 なぜ、今の段階まで合同委員会の合意ができていないんですか。

河相政府参考人 代替施設の設置につきましては、それに至るまで諸手続が必要になるということでございまして、現在そのための諸手続を進行させている状況である、そういうことで御理解いただければと思います。

赤嶺委員 諸手続とはどんな手続ですか。

河相政府参考人 これにつきましては、先ほど防衛施設庁長官からも御説明したような、いろいろな詳細について調整が必要なところがございまして、今そのための手続を進めているということでございます。

赤嶺委員 諸手続のポイントになるようなことをきちんと説明してください。

河相政府参考人 これにつきましては、具体的に、どういう場所にどういう形でどういう作業をしていくかということについての詰めを行っているということでございます。

赤嶺委員 日米合同委員会の合意もまだ得られていないけれども、そしてその手続は詰まっていないが、しかし代替施設ができるまでの間の暫定だといって実弾射撃訓練は開始させる。これはちょっと日米間のいわゆるきちんとした取り決めという点では、あいまいさが残るような暫定使用の承認じゃないですか。外務大臣、いかがですか。

河相政府参考人 お答え申し上げます。

 代替施設をつくるということにつきましては、これは米側と日本側で基本的に既に一致しているところでございまして、その点につきましてあいまいさはございません。

赤嶺委員 その上にさらに暫定使用を認めさせるという点があいまいじゃないかということを言っているわけです。

 それで、ちょっと先ほどの問題にも戻りますが、海兵隊は実弾射撃訓練はやらないということを外務省沖縄事務所と現地米軍で詰めて、そういう会話もあった、そういう会話でやったということなんですが、これは後々、キャンプ・ハンセンの山火事の消火体制のように、あれは会話でした、あれは発言でしたというようなことにならぬようにするためには、明確な合意をとる必要があるんじゃないかと思いますが、いかがですか。

河相政府参考人 先ほど申し上げました代替施設完了後の取り扱いにつきまして、これは会話で行ったものでございますけれども、日米間の信頼関係の上の会話に基づくものでございます。

 これにつきまして、この点については、国会の場でも、私どもから明確に御説明しているとおりでございます。

赤嶺委員 日米関係の信頼に基づいたものが、次々、沖縄の現地では壊されていくので不信感がたまっているんです。

 それで、私は最後に外務大臣に伺いますが、今回沖縄県民が怒っている中心点は、大事な慰霊の日の翌日に、実弾射撃訓練を行うということを通知してくる、そういうやり方についてであります。

 外務大臣、そういうようなやり方を、一方であなた方は認めているんですけれども、外務大臣自身は、沖縄戦、どのように受けとめているんですか。そして、今回のようなやり方、県民感情を逆なでするようなやり方、これについてはどのように考えていらっしゃるんですか。

町村国務大臣 私は、今まで何度も沖縄に参りました。

 一番最初に行ったのは、昭和三十八年のときであったと記憶をいたしております。北海道の数多くの方々が亡くなられた北霊の碑という大変小さな碑がありまして、そこに、当時知事でありました北海道知事町村金五とともにお参りをしに行った記憶がございます。

 それ以降、何度かそうした戦地を訪ねるにつけて、大変悲惨な戦争であった、軍人のみならず一般の方々までを含めて大変な悲惨な経験をされたということに思いをいたし、その犠牲になった方々を弔う気持ちというのはいや増しに増しているところでございます。大田中将の碑というものも拝見をして、大変な感動といいましょうか、悲しみといいましょうかにとらわれたことも今でも私ははっきりと覚えております。

 そういう戦争を二度と繰り返してはいけないという思いで、戦後の日本は平和国家としてやってきた、そのことにまた私どもは自信を持たなければならない。しかし、その平和というものはただでできるものではない。大変なコストがかかる。そのコストの、いろいろな見方、いろいろなコストはかかりますが、米軍との共同によって日本の平和が保たれている。

 その米軍の活動というものを相当数、相当な割合、七五%以上を沖縄の皆さん方の御負担によって賄っていただいているという意味で、私どもは沖縄の皆さん方に対して、占領され、そしてその後も依然として基地を保有していただいているということに対して、私は心からの感謝の気持ちもまた持っているわけであります。

 しかし、できるだけ基地を減らしていくという努力をしなければいけない。これは政治家として、また外務大臣として当然の考えであろう、こう思って、今、日米間でできる限りのそうした努力をしているというところでございます。

 なお、委員御指摘の、慰霊の日の翌日にというお話がございました。慰霊の日の当日であれば、それはもっとひどかったでしょうし、前日であっても同じであったろう。したがって、いつならばいいとか悪いという議論は、なかなかそれは難しいと思います。一週間後であったって、それはいけないといえばいけないんだろう。したがって、私は、たまさかその日に、翌日にぶつかったということなのかもしれません。

 いずれにしても、このレンジ4のあり方については、地元の皆さん方あるいは国会でのさまざまな議論を含めて、私どもは、これだけ地元の皆さん方が強くおっしゃるのであるからということで、いまだかつて私は前例がないと思いますけれども、米軍が既に建設を始めた、相当程度進行しているそのレンジ4にかわる施設というものを、また、ある意味ではお金がかかることではあるけれども、それはかかってもいいということで、奥の方にそれは場所をかえるという極めて異例の決定を米国との間で見出したということでございます。

 しかし、その間、米軍の練度、練度というのはすなわち抑止力だと思います。抑止力を維持するために、一定の期間、また、それは訓練という形で、ある意味では御負担をおかけしますけれども、それは、先々、特に実弾について御心配があるわけですから、それは新たなレンジでやってもらうんだということで、ある一定の期間の暫定的な使用については、ぜひその点についての、沖縄の皆さん方、関連する皆さん方の御理解は賜りたい、かように考えているところでございます。

赤嶺委員 沖縄戦の慰霊の日の翌日に来た通知をこの程度にしかとらえ切れないのかという思いです。

 それから、抑止力の維持のための練度の向上だと言いますが、使うのはグリーンベレーです。グリーンベレーというのは日本の防衛と関係ないですよ。イラク戦用ですよ。それ自身も当たらない。

 同時に、あの伊芸区の座り込みの闘いの中心になっているのは、伊芸区の高齢者の方々です。沖縄戦の砲火をくぐり抜け、沖縄の方言では、艦砲の食(く)ぇー残(ぬく)さーと言いますよ。艦砲射撃の食い残し。そういうみずからの命を六十年間基地に苦しめられてきた、こういう経験はもう子や孫には伝えたくない、自分の残った人生、絶対に射撃訓練をやめさせるんだといって座り込みを続けているんですよ。

 あなた方がやったのは、そういう区民に対して、都市型戦闘訓練施設を二カ所もつくってあげることなんですよ。これは負担の軽減じゃないですよ。負担の強化ですよ。だから、直ちに訓練中止することを強く求めまして、質問を終わりたいと思います。

赤松委員長 次に、東門美津子君。

東門委員 私も、都市型戦闘訓練施設について質問をしたいと思っておりますが、時間がありましたら、そこに入りたいと思います。

 まず最初に、海兵隊についてお伺いいたします。

 昨年八月十三日に発生しました沖縄国際大学構内への米軍ヘリの墜落事故を契機に、沖縄県民は、これまで以上に普天間飛行場の一日も早い閉鎖、返還を求めています。また、普天間飛行場の代替施設として、辺野古に軍民共用空港を建設することを提案した稲嶺沖縄県知事も、現在は、普天間飛行場は県外移設がベストであるとしています。

 さらに、知事は、沖縄に駐留する海兵隊の県外移転を要望していますが、大臣、この知事の海兵隊の県外移転の要望を政府としてどのように受けとめておられるのでしょうか、お伺いいたします。

町村国務大臣 知事のどういう場面でのどういう御発言であるか、私はちょっと詳細が今手元にございませんが、今委員がお話のあったとおりだということを前提にしてお答えをいたします。

 海兵隊が沖縄に存在をすること、先ほど赤嶺議員は、これはイラクのために存在しているんだ、日本の安全保障には役に立っていないんだというお話がありましたが、これは随分ちょっと極端な話であろう。私は、海兵隊がいることが、やはりいろいろな意味で極東の平和と安全に役に立っているし、アジア太平洋地域の平和と安定にも広い意味で役に立っているんだろう、こう認識をしているところでございます。

 そういう海兵隊がすべて沖縄から撤退をするといいましょうか、いなくなるということが望ましいという御意見、それは御意見は御意見として承っておきますが、私ども、今、さまざまな具体論で米側と再編成問題の議論をしているわけでございます。その中で、海兵隊の削減という問題は議論をしておりますけれども、一人もいなくなる事態というところまでの議論は、恐縮ですけれどもしておらないところでございまして、どの程度の削減になるのかなというようなことを中心に今議論をしております。

 それから、普天間の問題については、そもそもSACO合意そして辺野古沖移設というのは、普天間を一刻も早く返還するということを前提にしての話でありますから、方向としては、そこの点について、普天間が一刻も早い返還をするんだという考え方については、私どもも全く同一でございます。

東門委員 ただいまの大臣の御答弁、海兵隊の削減ということについては米側と協議をしているという御答弁だったと思います。丸々いなくなることは考えられないということは、実は二月十六日の予算委員会においても御答弁なさっているので、それは私も記憶しております。

 しかし、海兵隊の削減、数を今何人ですかとは問いません。しかし、やはり沖縄県民が望むのは、かなり大きな削減、大幅の削減を期待している。知事は全面撤退を要望しているわけですよ。それからすると、やはりかなり大きな規模での海兵隊の削減が行われるということが県民のかなり大きな期待値だと思うんですが、いかがでしょうか。かなり大幅な削減は期待できるのでしょうか。

町村国務大臣 大幅の定義にもよるのかな、こう思いますけれども、可能な限り沖縄の皆さんにこたえられるようなことにしたいと思っておりますが、現状、今協議中でございまして、その協議内容をちょっと予断するようなことを今申し上げるのは、恐縮ですが差し控えさせていただきます。

東門委員 海兵隊の削減についてはまた次に回すとしまして、都市型戦闘訓練施設について二、三問お伺いいたします。

 先ほど赤嶺委員からもございましたけれども、今沖縄は、金武町のキャンプ・ハンセン内のレンジ4での訓練開始という通告を受けて本当に緊張が高まっております。これはもう皆さん、外務省御存じのように、政府御存じのように、知事もそうです、町長もそうです、もちろん伊芸区の住民がそうです、県民挙げてと私は言って全然はばからないんですが、そういう中で米軍は訓練を開始するという通告をしてきたわけです。

 日米地位協定三条一項の基地使用権は、確かに米軍が日本政府の同意なしに行使できる権限を認めています。しかし一方、同条三項では「公共の安全に妥当な考慮」を規定しているわけですよ。三項で言う「公共の安全に妥当な考慮」、すなわち県民の安全を守るという立場から、政府として米側に訓練中止の申し入れを行うべきだと本当に心の底から思いますが、いかがでしょうか。(発言する者あり)

赤松委員長 静粛に願います。

河相政府参考人 お答え申し上げます。

 本件陸軍複合射撃訓練場について、沖縄県、特に金武町の住民の方を中心としていろいろな御懸念があるということは、政府としても十分承知をしておるわけでございます。ただ同時に、政府の基本的な考え方としては、この施設については十分な安全、環境等に配慮した内容になっているというのが国会でも従来から御説明をしているところでございます。

 具体的な安全対策というものについて説明をさせていただければ、射撃用建物につきましては流弾、跳弾対策等として弾丸トラップを使用している、それから屋外での射撃訓練という方向については居住区とは違う方向になっているということ、さらに今回、射撃塔から撃つことについての御懸念というものにも特に配慮をいたしまして、射撃用建物の外壁に高密度のゴムを設置しているというような措置を講じておる次第でございます。

東門委員 局長、私の質問にお答えいただきたいんですよ。安全面に配慮しているからということではなくて、本当に県民あるいは地元住民の懸念ということをおっしゃるのであれば、やはりこれだけ心配している人がいるわけだから、まず訓練は中止してほしいと政府として申し込むべきだと思う、申し込んでいただきたいという、そこだけを答えてください。ほかのところは新聞報道あるいは赤嶺さんへの答弁等でも私は知っていますから、その分だけお答えください。

河相政府参考人 県民の方々の御懸念というのは、私どもとしても承り、承知しておるわけでございます。ただ同時に、先ほど大臣からも御説明したとおり、米軍の練度の維持ということがあわせて必要であるという状況の中で、政府としては、必要な安全措置をとった上で訓練を行う、そして米側に対しては重ねて安全には万全を期してほしいということを申し入れている次第でございます。

東門委員 これまで何度も同じような答弁で、安全の確保はできる、安全はしっかり守るように申し入れていると言いながら、事故はどんどん起こってきたんです。決してやまないんですよ。そういう事実に目をつぶらないでください。しっかり見てください。アメリカ側の言うことだけそうだと。軍隊です。実弾射撃訓練です。危険が伴わないはずはないということ、まずそこから出発していただきたい。被害者はだれかということ、そこから出発していただきたいと思うんですよ。アメリカに対してやはりノーはノーと言っていかなければいけない、これが外務省の仕事じゃないですか。

 通報を受けて、通報が二十四日に出された、二十七日からもう始まるだろうと思って警戒感は強めていた地元ですが、きょう現在、訓練は開始されていない。もちろん、そのまま訓練が行われない方が伊芸区民、県民にとっては一番いいわけですが、行われないという保証はないわけです。特に、今の政府の姿勢だとそうだと思います。

 それで、政府は、米軍がいつ訓練を始めるのか、その通告を受けているのでしょうか。また、その訓練の期間、どの期間訓練が行われるという通報を受けているのかどうか、お答えください。

河相政府参考人 お答え申し上げます。

 政府として通報を受けておりますのは、二十七日以降、レンジ4での射撃訓練を開始することがあるという通報でございまして、では具体的にいつからというところにつきましては、米軍の運用に関することでございますので、ここで答弁は差し控えさせていただきたいと思います。

東門委員 何か来ると米軍の運用の問題ですから差し控えさせてくださいとおっしゃいますが、本当に県民の気持ちが全然わかっておらない、とても悲しいなと思います。こういう政府で本当に国民、県民の安心、安全が守れるのかなということを私は強く申し上げておきたいと思います。

 最後の質問になります。

 このような地元の強い反発があるにもかかわらず訓練を強行しようとしているのは、米陸軍特殊部隊、いわゆるグリーンベレーですが、グリーンベレーは一体どのような任務を持ち、我が国の安全保障にどのような役割を担っているのでしょうか。

 私は、この点に関しまして六月三日に質問いたしました。この外務委員会における私の質問に対して北米局長は、「この部隊の任務の詳細、それはその性格上必ずしも細かいところまで明らかにされていない」と答弁するとともに、「日本における抑止力、日米安保条約を効果的に運用するという立場から見て価値がある」と述べておられました。

 しかしながら、私には、任務の詳細がわからないにもかかわらず、どうして我が国の抑止力や安保条約の効果的運用に価値があると言えるのかが理解できないんです。ぜひ理解できるように説明をお願いいたします。

 また、もし仮にグリーンベレーが我が国の抑止力や日米安保体制の効果的運用に必要であるとしても、なぜ本土ではないんですか。なぜ沖縄なんですか。沖縄に駐留する必要がなぜあるのか。この見解はぜひ外務大臣に伺いたい。一番最初のものは局長からお願いします。

河相政府参考人 お答え申し上げます。

 グリーンベレーの具体的な任務ということにつきましては、まさに六月三日、御指摘のとおり、委員会で委員から御質問いただきまして、私から御説明をしたこと以上のものをここで今申し述べることはないわけでございますが、少数精鋭の特殊部隊、これもいろいろな形の中で日本の防衛もしくは極東の平和と安全のための寄与をするということに尽きるかと思います。

東門委員 納得いきません。

 あと、大臣にお願いします。

町村国務大臣 米軍の一つ一つの部隊が、なぜ例えば沖縄のこの地区か、なぜ例えば座間のこの地区かということについて、私は一つ一つの知識がございませんので、なぜ必然的にここでなければならないのかということを私は今お答えすることはできません。

東門委員 ぜひわかっていただきたい。それは、その基地所在県あるいは所在地の人たちの気持ちを思いやったら、私は、やはり外務省としてそれは把握していただきたいし、大臣としてわかっていただきたい。特に、七五%という米軍基地、専用施設が集中している沖縄県、そこのことを、先ほど、お父様である町村知事と一緒に沖縄に行かれたときからの沖縄への思いを語っておられました。それであれば、やはりわかっていただきたい。なぜこんなに沖縄に集中しなければならないのか。

 私は、それは絶対に、これから何度も何度もお伺いしてまいりますので、その都度今のような御答弁ではなくて、外務省としてこうだと、大臣としてこうだという見解がしっかり受けられるように期待したいと思います。それをお願いしまして終わります。

 ありがとうございました。

     ――――◇―――――

赤松委員長 次に、専門機関の特権及び免除に関する条約の附属書XVの締結について承認を求めるの件及び石綿の使用における安全に関する条約(第百六十二号)の締結について承認を求めるの件の両件を議題といたします。

 政府から順次趣旨の説明を聴取いたします。外務大臣町村信孝君。

    ―――――――――――――

 専門機関の特権及び免除に関する条約の附属書XVの締結について承認を求めるの件

 石綿の使用における安全に関する条約(第百六十二号)の締結について承認を求めるの件

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

町村国務大臣 ただいま議題となりました専門機関の特権及び免除に関する条約の附属書XVの締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。

 この附属書は、昭和五十二年十月にジュネーブで開催された世界知的所有権機関の調整委員会第十一回会合において作成されたものであります。

 この附属書は、専門機関の特権及び免除に関する条約の規定を修正した上で世界知的所有権機関に適用することを内容とするものであります。

 我が国がこの附属書を締結することは、同機関及びその職員等の我が国における活動の円滑化に資するものであり、知的財産権の分野における国際協力を促進するとの見地から有意義であると認められます。

 よって、ここに、この附属書の締結について御承認を求める次第であります。

 次に、石綿の使用における安全に関する条約(第百六十二号)の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。

 この条約は、昭和六十一年六月にジュネーブで開催された国際労働機関の総会において採択されたものであります。

 この条約は、石綿にさらされる労働者を保護するため、国内における関係当局、使用者等がとるべき措置について定めたものであります。

 我が国がこの条約を締結することは、我が国の石綿への暴露を防止するための対策を積極的に推進し、石綿の使用における安全を図る見地から有意義であると認められます。

 よって、ここに、この条約の締結について御承認を求める次第であります。

 以上二件につき、何とぞ、御審議の上、速やかに御承認いただきますようお願いいたします。

赤松委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時二十一分散会


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