衆議院

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第15号 平成17年8月3日(水曜日)

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平成十七年八月三日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 赤松 広隆君

   理事 谷本 龍哉君 理事 中谷  元君

   理事 大谷 信盛君 理事 首藤 信彦君

   理事 増子 輝彦君 理事 丸谷 佳織君

      植竹 繁雄君    江崎 鐵磨君

      小野寺五典君    奥野 信亮君

      河井 克行君    高村 正彦君

      柴山 昌彦君    土屋 品子君

      平沢 勝栄君    三ッ矢憲生君

      宮下 一郎君    市村浩一郎君

      武正 公一君    鳩山由紀夫君

      藤村  修君    古本伸一郎君

      松原  仁君    三日月大造君

      山花 郁夫君    若泉 征三君

      赤羽 一嘉君    赤嶺 政賢君

      東門美津子君

    …………………………………

   外務大臣         町村 信孝君

   外務副大臣        逢沢 一郎君

   外務副大臣        谷川 秀善君

   外務大臣政務官      小野寺五典君

   外務大臣政務官      河井 克行君

   外務大臣政務官      福島啓史郎君

   政府参考人

   (警察庁警備局長)    瀬川 勝久君

   政府参考人

   (防衛施設庁施設部長)  戸田 量弘君

   政府参考人

   (防衛施設庁業務部長)  土屋 龍司君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 深田 博史君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 梅田 邦夫君

   政府参考人

   (外務省大臣官房国際社会協力部長)        神余 隆博君

   政府参考人

   (外務省北米局長)    河相 周夫君

   政府参考人

   (外務省経済局長)    石川  薫君

   政府参考人

   (外務省経済協力局長)  佐藤 重和君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           大槻 勝啓君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           桑山 信也君

   外務委員会専門員     原   聰君

    ―――――――――――――

委員の異動

八月三日

 辞任         補欠選任

  宇野  治君     江崎 鐵磨君

  鈴木 淳司君     奥野 信亮君

  西銘恒三郎君     柴山 昌彦君

  永田 寿康君     若泉 征三君

  古本伸一郎君     市村浩一郎君

同日

 辞任         補欠選任

  江崎 鐵磨君     宇野  治君

  奥野 信亮君     鈴木 淳司君

  柴山 昌彦君     西銘恒三郎君

  市村浩一郎君     古本伸一郎君

  若泉 征三君     三日月大造君

同日

 辞任         補欠選任

  三日月大造君     山花 郁夫君

同日

 辞任         補欠選任

  山花 郁夫君     永田 寿康君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 国際情勢に関する件


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     ――――◇―――――

赤松委員長 これより会議を開きます。

 国際情勢に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房参事官深田博史君、外務省大臣官房参事官梅田邦夫君、外務省大臣官房国際社会協力部長神余隆博君、外務省北米局長河相周夫君、外務省経済局長石川薫君、外務省経済協力局長佐藤重和君、警察庁警備局長瀬川勝久君、防衛施設庁施設部長戸田量弘君、防衛施設庁業務部長土屋龍司君、厚生労働省大臣官房審議官大槻勝啓君、経済産業省大臣官房審議官桑山信也君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

赤松委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

赤松委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。宮下一郎君。

宮下委員 自由民主党の宮下一郎でございます。

 町村大臣、逢沢副大臣におかれましては、日夜を問わず、さまざまな課題に対応するため世界を飛び回りながらの激務、本当に御苦労さまでございます。御活躍に心から敬意を表したいと存じます。

 本日は、国連安保理改革と北朝鮮の核問題をめぐる六者協議を中心にお伺いをしたいと考えております。

 まず、国連安保理改革に向けた取り組みについてお伺いしたいと存じます。

 本年は、戦後六十年という節目の年でもあり、国連改革の面でも大変重要な年でございます。特に、今の時期は、九月に予定されておりますミレニアム宣言のための首脳会合の前に、安保理改革の枠組みについて決議案を取りまとめ、さらにその採択のために各国と連携をとっていかなければならない重要なときを迎えていると考えております。

 これまでも、町村大臣御自身が主催者として国連改革会合を開催されたり、各国首脳を日本に招かれたり、各国に対しODAプロジェクトとも連携をとりながらさまざまな働きかけを行うなど、我が国が推す枠組み決議案に対する賛同の国をふやす努力を非常に鋭意続けてこられたわけでございます。

 特に、枠組み決議案の成立には、国連加盟国百九十一カ国の三分の二、すなわち百二十八カ国の賛成が必要であるということから、五十三カ国を擁するAU諸国と連携を図ることが重要であるということで、政府を挙げて取り組んでこられたわけでございます。

 こうした経緯がありますだけに、七月二十五日にロンドンで行われましたG4・AU外相会合の結果、G4案とAU案のすり合わせが行われまして、安保理改革の枠組みや採決について合意に達したという報道をお聞きして、これは大きな進展があったなと喜んだわけでございます。

 そこで、まず、この会合で行われた基本的合意というのは具体的にどのようなものであったのか、改めてお伺いをしたいと存じます。

町村国務大臣 七月二十五日のG4とアフリカ・ユニオン、AUの外相会合がロンドンで開かれたわけでございますけれども、そこで、G4も決議案を出す、AUも決議案を出すということで、ばらばらに出していたのではこれは共倒れになることは必至であろうということで、共同の決議案をつくろうではないか、そういうことで、まず基本的な合意の一致があったということでございます。

 その中身につきましても、アフリカ側は拒否権は現在の常任理事国同様持つべきであるという主張ではございましたが、この点については、G4の決議案のとおりでいい、すなわち、憲章改正後十五年間は、保有はするけれども行使をしないという方向でAUの方も考える。

 他方、アフリカに対して非常任理事国をさらに一議席追加すべきである、トータル二十五ではなくて二十六にすべきであるというのがアフリカの主張でございましたが、これを言いますと、アジアあるいはラテンアメリカ、こういう国々からもまた一議席追加ということになって、際限なくふえていってしまうではないかというような議論をした結果、さらに追加一議席することは賛成するが、これはアフリカとアジアとラテンアメリカでいわば順繰りに持ち回りでやっていったらどうかというようなことで、アフリカ側も納得をしたということでございました。

 そういう案で基本的な方向が確認をできたわけでございますが、そのロンドンの会合の後、AU内部で、これは大変重要な話なので首脳会合で再確認をすべきではないかという主張が出されたようでございます。

 それを受けて、改めてその再確認の場としてのアフリカ首脳会合を八月四日エチオピアでやろうということが決まったということで、私どもとしては、今その八月四日のAU臨時首脳会合というものについて最大の関心を払いながら、またさまざまな働きかけを外交チャンネルを通じて行っているというのが現在の姿でございます。

宮下委員 この首脳会合で、決議案の先送りとか、一たん合意された外相レベル合意の破棄をねらっている国々もあるのではないかという観測も出されているところでございまして、日本政府としてもしっかり、あらゆるチャンネルを通じてこの合意を固めるべく御努力をいただきたいと存じます。

 次に、最終的に日本が安保理常任理事国入りを果たすためには、国連憲章を改正した新憲章を常任理事国すべてが批准するということが必要条件ということを伺っておりまして、そうしたことを考えますと、中国の同意もどうしても必要ということになるかと存じます。

 中国との関係につきましては、七月三十日に中国外務省の孔泉報道局長が、町村大臣がさきに行った発言を批判したという報道がございました。

 具体的には、大臣が、日本など四カ国が国連安全保障理事会拡大に向け提出した決議案について、中国も最後は反対しないと発言したということで、この発言は何ら根拠がなく、ほかの思惑があってのことだと強く批判、採決が強行されれば中国は反対票を投じると明言したという報道でございました。

 私は、こうしたことは、大臣が話されたことの一部を殊さらに取り上げて問題にする行為であると思いますけれども、ここで問題となっております大臣の御発言の真意と、またあわせて、今後の中国への対応などをお聞かせいただきたいと存じます。

町村国務大臣 このころ、私、ロンドンからニューヨークに移りまして、ニューヨークのアナン事務総長あるいはピン総会議長、あるいは共同提案国の各国代表の皆さん、あるいは日本を支持してくださる、日本というかG4を支持してくださる関係国の皆さん方との会合等々をずっとやっているさなかで、記者会見がありまして、その際に、中国が反対しているのでどうするんだというような質問があったものですから、それにお答えをするという形で考え方を述べたわけでございます。

 中国は確かに、総会審議等の場でこれまでも、人為的なタイムフレームを課すということには反対である、また、加盟国間で大きな違いがある中で、どういう決議案が出されても投票を強要することは反対であるということはかねてより述べてきているところでございます。

 他方、中国も、これは日中外相会談等でもこのことを話題にしているわけでございますが、安保理改革、また国連改革全体、これについては当然やらなければならないもの、こう考えているということを先方も述べておりまして、一切の改革に反対するという立場では基本的にないという点について、私は、基本的には同じ方向を向いているんだろう、こう考えているわけでございます。

 そして、中国は、特に中小の国とか発展途上国の声がもっと安保理等で反映されるべきである、こういう発言もしているわけでありまして、そういう意味から、例えば、今回のG4の決議案の中でも、六カ国の常任理事国の追加という案でございますが、そのうち、日本、ドイツ以外の四つは発展途上国である、そういう意味で、基本的に中国の考え方とも合っているのではないか。

 また、非常任理事国の配分をふやすということについても、これも発展途上国に裨益するところが大であるというようなことを考えたときに、国連の三分の二以上の非常に多数の国々が賛同したこうした枠組み決議、あるいはその後順調にいけば行われるであろう投票によって選ばれた六つの国々に対して、基本的な方向が中国の考えと一致しているわけでありますから、これに対して反対をするということは論理的に考えづらいのではないかということを申し上げ、また同時に、しかし、そうはいっても、何といっても拒否権を持っているのは現在の常任理事国五カ国でございますから、この五カ国の賛同を得るためにさらに外交的な努力を傾注する必要があるということを申し上げたわけでございまして、黙っていても中国は賛成するであろうみたいな、私はそんな傲慢な物言いをしたつもりはございません。誠実に中国に対しても引き続き働きかけを行い、理解を得る努力をしてまいりたい、かように考えているところでございます。

宮下委員 ありがとうございました。

 また、この枠組み決議案につきましては、アメリカも、常任理事国を二カ国程度ふやして、非常任理事国の数はふやさないというような独自案も明らかにしておりまして、G4案は支持できないと表明があったわけでございますけれども、やはりアメリカについても最終的な支持をとりつけることがどうしても必要だと存じます。

 この八月一日には、これまで空席となっておりました国連大使にボルトン前国務次官が任命されたわけでございますけれども、ボルトン氏は任命発表後、ホワイトハウスで、国連改革について、国連はより効率的で強い組織であるべきだと主張されまして、日本などが求める安全保障理事会常任理事国枠拡大に反対する意向を改めて示したという報道もございました。

 こういうことを考えますと、今の時点でアメリカの同意を得ることも大変難しい状況にあるのではないかなという感じがするわけでございますけれども、アメリカへの働きかけを含めまして、今後の安保理改革に関する日本政府の方針について伺いたいと存じます。

町村国務大臣 中国同様、アメリカも、言うまでもなく現在の常任理事国の一つということで、その理解を得ながら安保理改革そして国連改革全体を進めていく必要があるということは委員の御指摘のとおりであろうと思っております。

 先般、私も、ニューヨークを訪問した折、ワシントンに半日出向きまして、ライス国務長官と話し合いを行ってきたところでございます。

 その会談の中では、一つは、安保理ばかりが議論になっているけれども、例えば国連の事務局の合理化、行革でありますとか、あるいは人権問題の取り組みの強化、あるいは開発問題についての取り組みなどなど、幅広い国連改革が必要であり、その重要な一環として安保理があるという認識において日本とアメリカは全く一致をするということで、今後さらに、今国連総会議長のもとで首脳会議に向けての成果文書の取りまとめが行われている最中でございますが、そこでは日米協力してよりよい成果を上げるように努力をしようということで一致をしたわけでございます。

 また、安保理改革自体について、確かに委員御指摘のように違いがあります。ライス長官も、二十五あるいは二十六というのは余りにも会議の規模としては大き過ぎる。現在の十五でもなかなか運営するのが大変なのに、それをあと十カ国も十一カ国もふやすのは会議の効率性からいっていかがなものでしょうかというような御意見。さらに、常任理事国については、一定の基準を設けて、それをクリアした国にもう少し絞るべきではないだろうかというような意見。また、全体が進む中で安保理を取り上げるべきであって、安保理だけが余りにも先に進むことについて、少し先行し過ぎているのではないかというタイミングのずれといいましょうか認識の問題、この辺が日米で違いがあるところかなと思います。

 ただ、基本的にアメリカも、日本が常任理事国になることについては、かねてよりそれは賛成だということを言っておられるわけであります。

 したがって、私の方からは、日本の常任理事国入り賛成であるとおっしゃるのならば、ではアメリカとして、それをどうやって実現するというプログラムをお持ちなのか、それをやはりこの段階でそろそろ具体的にお示しいただかないと単なるリップサービスに終わってしまうのではないかというような話であるとか、今後いろいろな機会に、投票で可決をされる場合、それは場合によっては否決されるかもしれない、投票に至らないかもしれない、いろいろなケースがあり得る。それぞれのケースに基づいて日米間で協議をしていくことというのは、今後のどこかの地点でソフトランディングをしなければいけない性格のものだろう、こう思いますので、日米間で今後話し合いを密接に続けていこうではないかということで、その点についての意見が一致したところでございます。

 いずれにしましても、九月の国連の首脳会合の成果文書、さっき申し上げた幅広いものがあるわけでありまして、その中でこの安保理改革が適切に位置づけられますように、私どもとしては、基本的に、G4、AUの一本化を図りながら、まず三分の二の多数をとるということを基本にして考えているわけでございますが、それだけが唯一の道であるかどうかということについては、よくアフリカの動向あるいは世界各国の動向なども冷静にかつ現実的に分析をしながら、現実的な前進が図れるような、そういうアプローチをしていきたい、かように考えているところであります。

宮下委員 次に、六者協議についてお伺いしたいと存じます。

 言うまでもなく、今回の六者協議は北朝鮮の核問題の解決を主たる議題として開催されまして、既に本日で九日目ということでございます。これだけ長期間にわたるというのもこれまでにないことですし、また、これまでの協議では議長総括という形の取りまとめだけが行われてきたのに対しまして、今回は共同文書をまとめるということで、各国ともこの協議を実効性のあるものにしたいと考えているのだということを感じております。

 報道によりますと、米朝協議も頻繁に行われまして、核計画の全面的な廃棄を求めるアメリカに対しまして、核の平和利用については認められるべきだとする北朝鮮の主張があるなど、まだ隔たりはあるものの、第四次の草案も出されまして、共同文書作成の山場を迎えていると報道されているところでございます。

 そこで、これまでどのような議論が行われ、各国はどのような思惑で議論に参加し、どのような点が争点となっているのか、また、今後の協議の見通しについて、総括的に御見解を伺いたいと存じます。

町村国務大臣 昨日の二日までの状況でございますが、だんだん大詰めに近づいているのかなというような印象を持っております。昨日も首席代表レベルで昼過ぎから五時過ぎまで長時間の協議を行ったということでございますし、これまでもそうした代表者レベルの会合、あるいは副代表レベルの会合、さらには二国間の協議というものが頻繁に開かれているわけでございます。

 そして、今回の会合では一定の合意文書を作成しよう、その必要性については六カ国すべてが共通の認識に立っているということで、議長国であります中国が議論を踏まえながら文書をつくり、またそれを改定し、それを議論しているということで、かなり厳しく、激しく、真剣な議論が行われているというふうに聞いているところでございます。

 今委員からお話しのとおり、まだまだ基本的な問題について対立が残されているようでございますが、特に、核の問題につきましては、北朝鮮の核の廃棄、これをどこまでを対象にするのかといったような問題、あるいはその平和利用の扱い、これが中心的な論点でございまして、この点について、まだ一致を見ていないわけでございます。

 日本といたしましては、北朝鮮がすべての核兵器及び核計画の廃棄、これをコミットメントする、約束するということが最大の目標であるということで、関係国と協調しながらその方向に着地するように今努力をしているという段階でございます。

 また、国交正常化の問題についても議論がされております。日朝間あるいは米朝間ということになるわけでございますが、特に日朝間では、基本的な課題でございます核の問題もそうでございますが、加えてミサイルの問題、それから人権、人道問題、拉致の問題、こうした包括的な解決が必要であるということを累次にわたって代表者会議等で述べて、強く主張しているところでございまして、こうした主張が文書に反映できるように今最後の努力を行っているということでございます。

 なお、今後の日程につきましては、かなりの程度、北朝鮮の対応いかんということもございますけれども、現時点で、ではいつ終結するのかということについて、必ずしもきちんとした合意が今できているというわけではない、まさに議論の大詰めの段階だというふうに私どもは理解しているところであります。

宮下委員 今大臣からも御発言ございましたけれども、拉致問題に絞ってお伺いをしたいと思います。

 お話しのように、我が国にとりましては、核の問題に加えまして、拉致の問題またミサイルの問題についても進展をさせることが重要なことでございます。

 ところが、今回の六者協議の場においては、拉致問題やミサイル問題についても議題にすることにつきましては、会合開始前の時点で一部の国から難色が示されて、今回の協議はあくまで核問題を中心とすべきであるという意向が強いとも伺っております。特に、拉致問題につきましては、アメリカは北朝鮮における人権問題ということで日本をサポートしてくれているものの、他の国に関してはかなり認識が違うのではないかということを感じております。

 私は、先週、自由民主党の青年局主催によります研修会で、ここにいらっしゃいます谷本龍哉議員を含めまして国会議員十三名、また地方議員や地方組織幹部の若手の皆様方と総勢百名以上で韓国を訪問してまいりました。

 その中で、韓国も四百人を超える拉致被害者の方々がおられるわけですけれども、北朝鮮に対しては、大きな脅威というよりはむしろ同じ民族であるという意識の方が強いのではないかなということを感じてまいりました。

 また、国会議員の方の中には、北朝鮮との関係につきまして、金正日体制の崩壊を必ずしも望んでいない、むしろ中国のように、体制を維持しながらも自由化を進めて、人や物、資本の行き来が自由になれば、いわば中国と台湾のように実質的な統一ということが実現されたことになるのではないかというような意見があることもお聞きしまして、これは日本とのスタンスは随分違うなということを感じたところでございます。

 こうした状況の中では、拉致問題解決を図るためには、アメリカと連携をとりながら、韓国の拉致問題も含めまして、人権問題という形で解決すべき課題であることを主張していくことが重要であると思いますし、やはり、日朝の個別会談の場を持つということも重要なのではないかと考えております。

 しかし、これまでのところ、北朝鮮側は、日本を除く四カ国とは個別に会談を行っておりますが、日本との個別会談には応じていないという状態が続いております。日本として、この六者会談において拉致問題にどう対処していくのかをお伺いしたいと思います。

 また、先ほどもちょっとお話が出ましたけれども、この合意文書の中に拉致問題の解決についても何らかの形で盛り込んで、これを今後の交渉でありますとか、例えば国連における決議、こういったことに結びつけていくことが必要なのではないかと考えますが、こうした点につきましても、見通しをお聞かせいただきたいと存じます。

町村国務大臣 この六者会合の中心課題というのは北朝鮮の核問題であるということについては、この六者会合が開催をされた最初から、ある種のコンセンサスがある、こう思っております。

 ただ、日本政府としては、もちろん核の問題が重要であることは当たり前のことなのでありますが、同時に、北朝鮮をめぐる諸懸案の包括的な解決を図る必要がある、こういう考え方に立って、先ほど申し上げましたミサイルあるいは拉致の問題解決の必要性というのを過去三回の場においても提起してまいりました。

 また、今回、現在行われております第四回目の六者会合におきましても、佐々江代表の方から冒頭の二十六日のあいさつ、それから二十七日に行われました基調演説におきまして、この問題を視野に入れていかなければいけないということを主張しているところでございまして、日朝平壌宣言に基づいて日朝国交正常化を図るという方針に一切変わりがないんだということも述べております。核、ミサイル、拉致、こうした諸懸案が包括的に解決されるべきであるということも明確に述べているところでございます。

 これに対して、それぞれの国が、ニュアンスがそれぞれ確かに御指摘のように違っております。あえてどの国がどうということを申し上げなくても、もう委員御承知のとおりであろうかと思います。

 日朝間のバイの話し合い、ごく短時間の接触は何回かあったようでございますが、きちんとしたいわゆるバイの協議というものは現状まだ行われていないわけでございますが、これについても、主催者である中国あるいはアメリカなどの口添えもありまして、それを持つべく今努力をしているというところでございます。

 どういう形でこれが今回の文書に述べられていくことになるだろうか、その点がまさに今議論の一つのポイントになっているわけでございまして、この時点で、こうなるであろうということを見通すことはちょっと難しいわけでございますけれども、私どもの立場といたしましては、やはり日本国内の国民の皆様方の御理解が得られるような文書でなければならないだろう、そういう思いで懸命の努力をしている最中だということを現時点では申し上げさせていただきたいと存じます。

宮下委員 今回の六者協議の場で、拉致問題に関して具体的な成果がもし得られないという場合には、昨年の通常国会で成立させました改正外国為替外国貿易法でありますとか特定船舶入港禁止法の発動を行うべきだという意見も多くございます。

 先日、七月二十八日に開催されました北朝鮮による拉致問題等に関する特別委員会における参考人質疑におきましても、参考人としてお招きした、救う会副会長の西岡さんでありますとか、元北朝鮮工作員の安明進氏からも同様の意見が出されたところでございます。

 私も、制裁を発動するということは、日本の強い意志を示して北朝鮮の新たな対応を引き出すきっかけをつくるという点では大きな意義があるのではないかと考えておりますけれども、一方で、日本単独では効果が薄いのではないかとか、場合によっては交渉の道を閉ざすことになるのではないかなどというような意見もございます。

 そこで、制裁を発動した場合の効果をどのように考えておられるのか、また、制裁を発動するとすれば、どのような条件のもとで、どのようなタイミングで行うべきとお考えなのか、日本政府としての方針をお聞かせいただきたいと存じます。

町村国務大臣 毎回、何か同じような御答弁を申し上げておりまして、大変恐縮に存じておりますけれども、政府といたしましては、北朝鮮から納得のいく対応を得るため、どういうタイミング、どういう方法で今後対応していったらいいかということを常に考え続けているわけでございます。対話と圧力という考え方の基本は変わっていないわけでございまして、いろいろな要素を総合的に勘案しながら検討しているということでございます。

 ただ、現状、今まさに六者協議が行われている最中でございますし、その結果がどういうことになっていくのかということもよく見きわめた上で、今後の日本政府として、この拉致問題解決のための対応として何が一番適切なのかということについては、真剣に考えながら取り組んでまいりたいと考えております。

宮下委員 ぜひ、さまざまな手段、さまざまな方法を通じてこの拉致問題が早く解決されるよう、政府としての御努力をお願い申し上げまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

赤松委員長 次に、増子輝彦君。

増子委員 おはようございます。民主党の増子輝彦でございます。

 きょうは、本通常国会最後の委員会になるかなと思っております。この通常国会、百五十日間の会期に加えて五十五日の延長になりました。郵政民営化という、国民が本当に望んでいるかどうかわかりませんけれども、小泉首相の改革の本丸だという狂気にも似たような執念の中で、今、国会は揺れ動いているわけであります。

 そういう中で、今国会で、当委員会はきょうで十五回目の委員会になります。きょうの時間を入れますと、延べ四十時間三十分という質疑を行ったわけであります。私どもとしては、できれば、百五十プラス五十五ですから、大変長丁場のこの国会の中でもう少し質疑時間があってもよかったのかな、そういう気持ちも持っているわけであります。

 いずれにしても、この国会最後ということの中で、町村外務大臣にまずお伺いしたいことは、外務大臣就任以来、志のある外交ということで抱負を述べられ、また大きな希望と考えを持って進んでこられましたが、この町村外交がどのような形で行われてきたということを、御自身で採点するのもなかなか大変でございましょうけれども、一つの総括的な意味合いでその考え方をまず述べていただきたいと思います。

町村国務大臣 約十カ月ぐらいたったところでございましょうか、日々、毎日が百メートル競走のような気分でやっておりまして、とてもゆっくりとこの十カ月を振り返り、総括をするというようなことがまだ可能な状態でもございませんし、また、町村外交と言っていただきましたが、そういう名称をつけるにふさわしいことをやってきたかどうか、とても自信があるわけではございません。ただ、私が着任以来、国益に立脚した志の高い、創造的な外交という思いは常に持ちながら、日々取り組んできたつもりでございます。

 この間、いろいろな予期せぬ、例えば地震、津波といったような事件もあったり、あるいは人質事件というものがあったり、本当にいろいろなことが起きる、そういう時代であるなということもひしひしと感じながらいるわけでございますが、そういう中にありまして、日本の外交は日米同盟と国際協調という二本柱でやってきているわけでございます。

 日米同盟につきましては、日米間にもいろいろな課題があります。BSEの問題、今でも続いております。あるいは米軍再編成の問題等もございます。こうした問題などを通じながら、議論を深めるという意味で、確かに個々の問題はあるにしても、私は、日米関係が基本的には引き続きかたい結びつきのもとで国際的な日本の立場というものも位置づけられてきているという意味では、よかったのではないのかなと思っております。もちろん、課題はたくさんございます。

 そのほか、特に北京でのデモ等に見られるような日中関係、あるいは急に厳しくなった日韓関係といった近隣諸国との関係、これも決して私自身がうまく対処し得たと申し上げるつもりもございませんが、厳しい状況が、多少今ちょっと一呼吸ついている状態かもしれませんが、これに甘んずることなく、さらによりよい関係を築くための努力もしなければいけない。

 北朝鮮、拉致の問題、今六者協議がようやっと再開をされたということで、これに期待をしているわけでございます。さらに、イラクの問題、テロの問題などなど、こうした国際的な問題あるいは中東の問題などを含めて、それぞれの問題について懸命の努力をしてきたつもりでございます。

 しかし、まだ、点数をつけたり、総括的なコメントをするにはちょっといささか時期尚早でございましょう。今後とも懸命の努力を続けていくという決意だけを申し上げまして、とりあえず先生の御質問に対するお答えにさせていただきます。

増子委員 ただいま外務大臣からいろいろお話がございました。戦後六十年、まさに我が国を取り巻く環境は大変大きな転換期にあるのかなというふうに私も認識をいたしております。そういう中で、やはり外交の重要さというのは、今まで以上に大きなものがあると思います。

 今大臣が述べられたとおり、この国には本当に多くの課題が山積いたしております。もちろん、日米関係、私もこれが基軸であるという考え方には全く同じ考えであります。しかし、この日米関係も、私は、必ずしもうまくいっていないんじゃないのか。利用されるときだけ利用される、肝心の常任理事国入りのような、まさに町村外務大臣あるいは小泉大臣の悲願であるこの常任理事国入りについても、なかなか厳しい対応が迫られている。

 あるいは、日中、日韓関係、そして先ほどもお話がありましたとおり、今六カ国協議が進んでおりますけれども、この北朝鮮との関係も本当に行き詰まってしまっている。本当に大変な状況が、実は今我が国の状況ではないだろうか。

 そういう中で、悪い表現で大変恐縮でありますけれども、やはり我が国の外交は八方ふさがりでにっちもさっちもいかないというのが現状ではないだろうか。あえて言うならば、大きな災害というものがあれば、日本は、依然としてまだ景気が十分回復はしないといえども、その経済力によって多大なる援助をするということが唯一の今できる外交なのかなというふうに実は心配をいたしております。

 私は、政党は違っても、町村外務大臣には大変期待をいたしておりました。やはり、志の高い、創造力のある外交ですから、まさに安倍先生がやってこられた、それを継承するような形で大いに期待しておりましたけれども、残念ながら、いま一つ私の期待には十分こたえていただいていないのかなというふうに、残念な思いがいたしているわけであります。

 今後、どういう状況に政治状況がなっていくかわかりません。場合によっては、この国会、解散もあるかもしれないというふうに言われております。解散が仮になくとも、内閣改造もあるというときに、町村外務大臣が引き続き日本の外交のかじ取りをするのかどうかわかりませんが、これだけの大きな職責を担った外務大臣におつきになったわけでありますから、継続するにしても、だめになるにせよ、やはり町村外務大臣にはしっかりと今後の日本の外交というものについて取り組んでいただきたいと私はまず御期待を申し上げておきたいと思います。

 そういう中で若干細かい点に触れさせていただきたいと思いますが、まず、我が国にとっても極めて大きな課題の一つでありますイラクの自衛隊駐留の問題であります。

 これは、もう御案内のとおり、十二月末まで延長というのが決められているわけであります。これは、やはりイラクの正統政府がきちっとできるということの前提で、それまでの間ということがその一つの根拠であり、なおかつ、多国籍軍の駐留の根拠である国連安保理決議の解釈をいろいろこれからしていかなければならないと思っております。

 実は、根拠は安保理決議の一五四六で、ことし十二月までに正式な政府を発足させるなどの政治移行プロセスを示す、このプロセス完了で多国籍軍の任務も終わるというふうに定めているわけであります。

 しかし、現状を見ると、イラクは決して安定した状況ではありません。むしろ、アメリカが戦争終了宣言をしても、なおかつ、それ以上に極めて今深刻な状況にあるのか。

 そういう状況の中で、日本も、とりあえず十二月末までの延長を決めたわけでありますが、この再延長というのは遅かれ早かれ決断をしなければなりません。そうしますと、撤退の時期というものをいつごろにしなければならないのか。また、仮に撤退を前提とした場合に、その撤退に要する時間というのも当然必要になってくるわけでありますから、ある程度の時期に方向性を決めなければいけないと思っております。

 小泉総理は、十二月の時点でその状況を見きわめてから決めたいというような発言もされておりますが、私どもが新聞やさまざまな情報の中で得ていることは、もう既に日米両国政府が、この多国籍軍駐留についての根拠である国連安保理決議の解釈をめぐる協議を始めているというような報道がなされているわけでありますが、これは事実でしょうか。

町村国務大臣 イラクの情勢、私どもも最大限の関心を持ち、見守りつつ、またいろいろな情報収集等も行っているところでございます。

 六月にブラッセルで八十を超える国々の国際会議が開かれて、私も参加をしてまいりました。ひとしくすべての国、機関がイラクの政治プロセスの順調なる進展を支援するとともに、その復興も支援していこうということが合意をされ、同趣旨のことが、その後開かれましたロンドンでのG8の外相会合で確認をされたということでございました。そういう意味で、今、世界の国々がイラクの復興支援をやっていこうではないかということで協力をしているところでございます。

 また、特に治安の関係について申し上げるならば、現在二十八の国々が部隊を派遣して、イラク人の取り組みを支援するということでございます。その中で自衛隊は、御承知のように、人道復興支援活動に今懸命の努力をしているという状況であろうかと思います。

 委員御指摘のように、十二月十四日にはイラク特措法の基本計画の期限を迎えるということで、その後どうするかということについては、当たり前のことでございますけれども、イラクのまず復興の状況というものを見きわめる、また、イラクの政治プロセスがどのように進むのか、あるいは治安状況はどうなのかといったようなこと、さらにはそれを取り巻く国連を含む国際社会の動向といったようなものを総合的に検討しながら、日本が独自に、自主的に判断をしていかなければいけない、こういうことでございます。

 ただ、今委員言われた一五四六の解釈について日米間で協議を始めたか始めないかということについては、イラクの問題については常にいろいろなレベルで不断の議論を行っているところでございますから、この一五四六の解釈のみについて日米間で特に議論をしているとかしていないということをあえて申し上げませんが、さまざまな問題について、特に治安情勢等を含めて、米国の考え方あるいは日本の考え方、お互いによく理解できるような密接なコミュニケーションを図るように努力をしている最中でございます。

増子委員 協議をしているとも、あるいは打診があったとも明確な答えはございませんでしたが、いずれにしても、我が国は決断が迫られる時期がやってくるんだと思います。

 そのときに、多国籍軍駐留の根拠というものが当然出てくるわけでありますから、安保理で新たな決議を採択するという場合、あるいは多国籍軍に参加している各国とイラク政府が二国間で話をし、地位協定を個別に結ぶというような方法も考えられるということがありますが、これも極めて難しい状況かなというふうに思っております。いずれにしても、その決断が迫られます。

 そういう状況の中で、きょう大変お忙しいところ、それぞれの副大臣、政務官にもおいでをいただきましたけれども、一政治家としても、あるいは内閣におられる立場としてもそれぞれのお考えがあると思います。

 このイラク自衛隊駐留については、実は、先ほど来申し上げているとおり、我が国にとっても、日米関係あるいは国際的な立場ということから見ても、極めて重要な決断が迫られているわけであります。

 先ほど外務大臣は二十八カ国とおっしゃいましたが、二十八カ国に実は減少してきたという事実もあるわけであります。イギリスも縮小して駐留をするんだという方向も示されております。我が国もどういう状況になっていくのか。我々一人一人の政治家、あるいは国としての方針というものが、大きな決断のときがやってまいります。

 そこで、簡単で結構でございますので、それぞれ大臣、副大臣、政務官、一言ずつ、皆さんがこの駐留についてどのように考えているのか。やはり、もうそろそろいいのではないか、いや、立場上自分の本音はなかなか言えないけれども、やめるべきだ。いやしかし、これは国際的な立場を見ても、日米関係を見ても駐留しなければならない。これは郵政民営化の採決よりももっとある意味では重要なことなのかもしれませんが、簡単で結構でございますので、お一人お一人、そのお考え方を伺いたいと思います。

町村国務大臣 私の考えは先ほど申し上げたつもりでございますけれども、現在自衛隊が大変重要な活動をやっているという認識を持っております。十二月の期限切れまでに、先ほど申し上げましたいろいろな要素を勘案しながら、さらに引き続き活動を続けるか否か、しっかりと自主的な判断をしてまいりたいと思っております。

逢沢副大臣 十二月十四日で基本計画の期限を迎えるわけであります。その後どうするか、大変重い政治判断をしなくてはならない、まさに増子先生おっしゃったとおりでございます。

 イラクの状況は、先生も御承知のように、まさに新しい国づくりの道半ばにあります。治安を確保し、そして先生自身がおっしゃられました政治プロセスを推し進めていく、そして経済の復興、イラクにおける三位一体と言ってもいいのかもしれませんが、そのことを考えたとき、自衛隊は大きな役割を果たしてまいりました。

 現地の情勢や国際社会全体の状況等々を勘案しながら、最終的には政治が責任を持ってその後のことについては判断をすべきであろうか、そのように思います。

谷川副大臣 ただいま先生おっしゃったとおりでございまして、イラクの復興は今道半ばでございます。そういう意味で、自衛隊の派遣を延長するかどうかということにつきましては、大臣また逢沢副大臣がお答えをいたしましたとおりでございまして、我々としても、その時期になりましたら真剣に考えたいというふうに思っております。

河井大臣政務官 六月の下旬にクウェートに出張に行ってきまして、航空自衛隊のアリ・アルサレム基地、それから陸上自衛隊のキャンプ・バージニアの視察、そして激励をさせていただきました。摂氏四十五度から五十度の気温でありまして、ほとんどヘアドライヤーの中を歩いているような、それぐらいの厳しい状況です。恐らくイラクの国内にある自衛隊の基地はもっと厳しい状況だ、そのように認識をいたしております。

 派遣の延長につきましては、大変重い政治的、そして私たちを含めて、やはり道義的な高潔さということを、その派遣命令を出される立場の自衛隊員からすると、しっかりと持っていなくてはいけないということを肝に銘じると同時に、国益のために誇りを持って一生懸命仕事をしていただいている自衛隊員の皆様方に本当に心から敬意を表した次第であります。

 延長の是非につきましては、大臣が先ほどおっしゃったとおりだと私は考えております。

 以上です。

小野寺大臣政務官 イラク復興支援に対する自衛隊の役割というのは大変重要かと思っております。ただ、私個人、政治家として言わせていただければ、仕事といいますのは、一つの成果、年限があって初めてやる気も起きますし、また、現在頑張っている自衛隊の皆さんもしっかりと仕事ができるというふうに思っております。年限を定めるということは重要かと思います。そしてまた、現在のイラクの状況を考えますと、そろそろこの年限ということを真剣に検討する時期になっていると思っております。

福島大臣政務官 私もクウェートに行ってまいりまして、空自の活動または交代をした自衛隊の要員の活動、よく話を聞き、また激励をしたところでございます。

 十二月十四日以降の活動をどうするかにつきましては、大臣答弁ありましたように、イラクの復興状況あるいは現地の状況、国際社会の動向等、我が国として果たすべき責務というものを十分踏まえて検討していかなきゃならない、我が国が自主的に判断すべき問題だというふうに思っております。

増子委員 残念ながら時間が参ってしまいましたが、それぞれ、その時点に判断をするということでございます。その答えしかないことはわかっておりましたが、あえてお聞きをさせていただきました。

 大変恐縮ですが、最後にもう一点だけ、常任理事国入り、もう少し詳しく質問させていただきたかったんですが、時間がありませんので、外務大臣、一つだけ私は大変気になることがございます。

 これは、大臣は一生懸命やっておられるんですが、なかなか厳しい状況かなというふうに私は思っております。足元のアジアの支持が全く得られている状況ではない、アメリカの賛同も得られていないというような状況があります。しかし、最後まで努力をするということ、大変重要だと思います。そのとき、ぜひ大臣、頑張っていただきたいと思うんです。

 そこでちょっと気になることは、ODA絡みで、やはり日本が何か小国に対して、いかにもODAをばらまくことによって票の獲得をしようという言動がどうも感じられます。これは、私ども、日本にいてもそう感じるわけでありますから、ましてや、それぞれの相手国はなおさら感じているんではないのかなというふうに思っているわけであります。

 大臣が七月二十七日の記者会見の中で、常任理事国入りがどうもうまくいかない場合は国連の分担金を削減せよという世論が広がることは容易に想像できる、これは何かタウンミーティングのときの言葉を引用されてそういうことを話したというような報道もなされておりますが、私は、やはりこういうことは国民は決して思っていないと思うんですね。

 ですから、ここのところの言葉の使い方とか、あるいはODAという大事な経済協力というものに対する使い方を誤ってはいけないのではないんだろうかというふうに思っているわけであります。

 それでなくても、日本は、かつて高度経済成長時代に、お金で世界じゅうを席巻しようというようなことも大変批判をされてまいりました。それを常任理事国入りの際に、まさに同じようなことを、国の外交の中でそういう言動が感じられるということは、外務大臣にとっても決してプラスではないし、日本にとってもプラスではないと私は思っております。

 ですから、こういうことについては十分気をつけていただきたいと思っておりますし、なおかつ、常任理事国入りが残念ながらだめだったというようなことになれば大変なことになります。その可能性もないとは言えません。

 最後に一つだけお伺いいたします。

 もし常任理事国入り、これだけ頑張ってこられた、さまざまな問題点もあったにせよ、結果的にはだめになったときの政治的責任はどういうふうになるんでしょうか。そのことをお伺いしたいと思います。

町村国務大臣 先ほどアジア諸国の支持がないというお話がありましたが、そんなことはございません。アジア諸国の圧倒的多数の国々から、日本の常任理事国入りに賛成である、あるいは枠組み決議案に賛成であるというような話をいただいているということは、まず事実関係として申し上げておきたいと思います。

 その上で、ニューヨークの記者会見の折に、記者の方からの質問がありまして、常任理事国入りできなければ国連への協力というのはどうなるんですか、分担金を減らすんですかという端的なお問い合わせが外国の記者の方からあったものですから、それに対して、私どもはそのこととODAとを直接リンクさせるようなことは全くない。ただ、たまたま私が出発直前に大阪で開かれたタウンミーティングに出た折に、若い会社員か学生の方から、もし常任理事国入りできなければ国連への分担等はやめたらとか減らしたらどうかというような御趣旨の話が出たものですから、そういう意見も日本国内にはあるということを参考までに御紹介しておきます、しかし、そのことは日本国政府の方針ではないということもあわせて明確に申し上げておきますという記者団とのやりとりをしたという事実がございます。

 いずれにしても、ODAはODAとしての大変重要な意味があるというのは委員御指摘のとおりだろうと思います。ただ、他方、ODAの戦略的活用をしろというような御意見も、この国会の場においてもさまざまな方々からいただいていることもまた事実でございましょう。

 したがいまして、私どもは、それを直接にすべて結びつけているわけではなくて、ODAはODA大綱に従って、それぞれの基準に基づいて必要な支援、協力をするということでやっているわけでございまして、すべてのODAを常任理事国入りと密接にリンクさせて考えているということでは決してないということも、この際ですから申し上げておきたいと思います。(増子委員「大臣、政治的責任は」と呼ぶ)

 政治責任のお話でございますが、これは今、私ども、マラソンに例えればようやっと今スタジアムに戻ってきて、入ってきたところでございまして、あと一周、二周、トラックを走らなければいけない、その折におまえはゴールインしなかったらどうするのかと言われても困るのでありまして、今はただひたすらにゴールインに向けて努力をしている最中でございます。

増子委員 終わりますが、大臣、安保理拡大の枠組み決議案の共同提案国に残念ながらアジアはほぼ全滅、賛同を得られなかったという事実は重いと私は思います。と同時に、戦略的なODAの使い方ということになればなおのこと、やはり言動に注意をすべきだと思っております。

 一部の、一人の方のタウンミーティングの話があのアメリカでの記者会見という形で出されることは、必ずしも大臣の常日ごろの慎重かつ大胆な発言とは少し違うような気がいたしますので、これから志ある外交をされる場合には十分その点をお考えになって立派な外交をお進めいただきたいということをお願い、御期待申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございます。

赤松委員長 次に、赤羽一嘉君。

赤羽委員 公明党の赤羽一嘉でございます。

 まず、質疑に先立ちまして、本日ちょっと私の都合から、質疑時間を快く変更をしていただきました増子輝彦理事に、その友情に感謝を申し上げたいと思います。ありがとうございました。

 きょうは、恐らくこの通常国会では、私、当委員会での質疑、最終の質問になると思いますので、これまで三度にわたりまして町村大臣に対しまして御質問したことが現在どういう進捗状況になっているかということも含めまして質問させていただきたいと思いますので、どうかよろしくお願いいたしたいと思います。

 まず、先ほどテーマにもなりました国連安保理改革についてでございます。

 私、前回の質問で、日本は当然常任理事国入りする資格がある、また、するべきである。これまでの国連に対する貢献、平和維持活動に対する実績等々、当然しかるべきであるし、ぜひ頑張っていただきたい。さはさりながら、これまでのP5という既得権を覆す、先日大臣の御答弁で、戦勝国がつくった枠組みの中で日本がその経営者の仲間入りすることは大変難しい闘いだ、これは私もそう承知をしているわけでございます。

 いろいろな戦略が組まれ、G4という形で枠組み決議案を七月六日に提出され、その多数形成に努力されている。その中で、もちろんこれも大臣のお言葉だったと思いますが、ブロック単位で安保理改革を求めているというのはアフリカが唯一の地域であって、そのアフリカ各国は五十三カ国という、悪い言葉であるかもしれませんが、大票田であるわけであって、そのAU諸国とどのように意見を一にしていくかということは大変大事な戦略であるという御発言、これは私も全くそのとおりであるというふうに認識をしておるところでございます。

 その中で、AUも独自案、決議案を七月十三日に国連総会に提出され、それを受けて七月十七日ニューヨークで、また二十五日ロンドンで、G4とアフリカの外相会談が行われた。

 この七月二十五日のロンドンでの会談において、AU諸国とG4グループが非常任理事国を五カ国増ということを受け入れて一本化で合意された、こういった報道もありますが、一方で、実は合意はされていないんだ、アルジェリアですか、各国AUの代表からは、あれは合意ではないんだという報道もございますし、ライス国務長官も、私のところにアフリカ諸国のある国から電話がかかってきて、あれは合意ではないといったような発言もあったという報道もございます。

 そんな中で、明日八月四日、AUの臨時首脳会議が開かれる。こういった動きの中で、当事者として事実関係という形で確認をさせていただきたいのは、AU諸国とG4の中で合意はなされたのかどうかということをまず確認させていただき、そして、あすのAU臨時首脳会議の意味合い、なぜあした臨時会議が開かれるのかということについての政府としての御見解を聞かせていただきたいと思います。

町村国務大臣 七月二十五日のG4、AUの外相会合、ロンドンにおいて開かれたわけでございます。アフリカからは数カ国の外務大臣及びそれにかわる大使クラスの方々がお集まりでございました。

 そこで私どもは共通の理解に達したのは、一つは、G4、AUそれぞれが決議を出していてもこれは共倒れになるので、共同決議案というものをつくろう、非常に大部分の点では一致しているからということで共同の決議をつくろうということ。それから、アフリカがかなりこだわっておりました拒否権については、これはG4の考え方にのっとっていこうということ。それから最後に、非常任理事国を追加四ではなくて追加五にする。これについて私どもが理解を示し、ただ、その追加された一議席については、これはアフリカの割り当てということではなくて、アフリカ、アジア、ラテンアメリカの発展途上国の中で持ち回りをするということでどうだろうかという提案をし、その場で合意を見た、こういうことでございます。

 アルジェリア等、合意がないという国々も確かに記者会見等であったことは事実でございますけれども、少なくともその場の会合の席で、それは合意ではないとか反対であるとかいう発言は全くなかったということをお話ししたいし、また、その後ニューヨークに移りましてAUのコナレ委員長とも私は話をしたわけでございますが、コナレ委員長からの発言も、八月四日の会合の目的というのはロンドンでの合意をアフリカが全会一致で確認し直すことである、再確認することであるということを申しているわけでございまして、ということは、確認があったということをAUのコナレ委員長も認めているんだ、こういうことだろうと思います。

 ただ、よそ様の国のグループの中身のことをあれこれ言うのもいかがかとも思いますけれども、なかなか表面上のアフリカ諸国の一致結束とは裏腹に、それぞれの国にはまたそれぞれの思惑、考え方というのがあるものですから、この辺がまことに複雑でございます。

 したがって、願わくは、私どもはAUが一致して全体でG4、AUの共同決議に乗ってもらうことを期待しているわけでございますが、これまでのいろいろな発言等から見て、すべての国がというのはなかなか難しい面もあるのかなというような見方もあるわけでございます。しかし、大多数の国々が一致できてもらえたらありがたい、こう期待をしているところであります。

 いずれにしても、明日の会合がどういうものになるのか、先ほど、まさにロンドンでの合意を再確認するということが目的であるというふうに私どもは聞いておりますので、それが再確認されることを期待しているところでございます。

赤羽委員 あすのAU臨時首脳会議は、ロンドンでの全会一致を再確認する場だということは、今御答弁いただき、よくわかりました。

 さはさりながら、会議ですし、五十三カ国もの多くの国の中にいろいろな思惑があり、結果がどう出るかというのは一〇〇%保証されているわけではないという見通しも、大変シビアに見られているということもよくわかりました。

 これは、万が一、全会一致での確認がとれなかった、最悪のケースというか、そういったケース設定もされていると思うのですが、その場合について、私は、やはり心配しているのは、八月六日以降国連も夏休みに入るというようなスケジュール的にも非常にタイトな状況の中で、このアフリカの臨時首脳会議の成否によって日本政府の大願である今回の常任理事国入りというか安保理改革がとんざしてしまうというのは大変残念にも思うわけでありますが、この二の矢、三の矢というか、そういったことについて御準備はできているのかどうか。内容を披瀝できなければ構いませんけれども、そういった見通しというか御準備について言及をしていただければと思います。

町村国務大臣 私ども、もとよりAUのすべての国あるいは圧倒的多数の国々が共同決議案に賛成をしてもらうということを心から期待しているわけでございます。

 そして、確かに委員御指摘のとおり、来週から二週間ほどは、事実上の夏休みと言っては変かもしれませんが、それぞれ各国代表あるいは事務局の方々がニューヨークを離れてしまうというような状況も現実にはあるようでございます。ピン総会議長そのものもガボンの国に帰られる予定もあるというような話も聞いておりますので、なかなか八月前半、中盤での総会での投票というのは物理的に難しい面が確かにあるようでございます。

 そうなると、下旬に投票が行われる。そうなりますと、ある意味では勢いがそがれるという面も出てくるし、また、巻き返しを許してしまうという面もある。そういう意味では早く採決された方がいい、私どもはこう思っておりましたが、ただ、国連における、ニューヨーク代表部における現実というものもやはり踏まえなければならないだろう、こう思っております。その辺は現実を見据えながら、現実的に対応していかなければいけないだろうと思います。

 また、委員から、うまくいかなかった場合のいろいろな対応をどう考えているのかということでございますが、具体のことは別といたしまして、私どもオール・オア・ナッシングというようなアプローチをとるつもりはございません。現実的に今ここまで、せっかく日本がイニシアチブをとって二年間運動を主導してまいりました。昨年の九月にG4というものも日本のイニシアチブでつくって、ここまで一年近く進めてまいりました。ここで最後、オール・オア・ナッシングで、一か八か、あるいは何の成果もない、何の変更もないままで、また向こう十年、二十年、特に安保理が今のままでいっていいとは、それは日本が思わないのみならず、世界じゅうの国々がそれはおかしいと思うであろう、こう思います。

 したがって、よしんば百点満点ではないにしても、一定の前進が図られるように、いろいろなケースを想定しながら現実的な回答というものを模索していくということが大切なんであろうと私は考えております。

赤羽委員 よく了解いたしました。

 あと、中国とロシア、これはもう七月三日の段階で、G4の枠組み決議案については反対というか賛成できないというような表明がありました。

 アジア諸国について、先ほど増子委員の質疑に対しまして、アジアは全般に賛成をしていただいているという御答弁がありましたが、先日のASEANプラス3で、逢沢副大臣が御出席だった会議だと思いますが、このASEAN諸国がG4の枠組み決議案に対して不満を表明した。これは報道ですよ、報道では不満を表明した。それに対して中国の李肇星外相は、その不満に対して支持を表明したというような報道があり、中国の影響によるASEAN諸国のこういった態度というような報道も先日あったばかりでありますけれども、このことについて実際の状況というか認識はどうなのか、御答弁をいただければというふうに思います。

逢沢副大臣 先般、ラオスの首都ビエンチャンでASEANプラス3外相会合初め一連の会議がございまして、私が出席をさせていただいたわけでありますが、それに先立ってASEAN10の集まりがございまして、ASEAN10としての一つの考え方と申しますか、国連改革、なかんずく安保理の改革についての声明という形でペーパーが出されたわけでございます。

 右を選ぶか左を選ぶか、そういうことを事実上強要されるのは大変つらいものがある、そういった趣旨のこともございました。あるいは、国連をあえて分断するような、そういった結果を招くことについてはいかがなものか、そういった趣旨のことも声明の中にたしか記述があったと思うわけであります。

 私、現地で確認をいたしますと、これがASEAN10すべての安保理改革についての公式な立場であるかといえば、それはそうではない。それはあくまで、それぞれの国の最終的な自主的な判断によって行動するということを確認させていただいたわけでございます。

 それぞれの国の置かれた状況、考える国益、また政治状況等もございます。引き続き、アジアの一員としてアジアの強い支持を得るということは大変重要なことでございまして、努力を重ねてまいりたい、そのように考えております。

赤羽委員 アジアも、私の認識では、五十三カ国のアフリカと並んで多い加盟国があるわけでありまして、もちろん日本とASEAN諸国の経済も含めてコミットメントも深いものがあるわけであって、またアジアの代表として常任理事国入りするという大義名分からも、ぜひ、対アジアへの働きかけ、ギブアップせずに頑張っていただきたいと思うわけであります。

 アメリカについてなんですが、先日、七月二十八日ですか、ワシントンでライス国務長官と外務大臣が対談をされたということで、このことについても、率直に、アメリカは、私の知る限りでは、日本の常任理事国入りは賛成だ、しかしそのG4の枠組みはいかがなものか、早期採択は余り賛成できないというような、これも報道ぶりでありますが、当事者の外務大臣に確認をしたいわけであります。

 しかし、日本の常任理事国入りだけを賛成だと言われても、今の日本政府の大きな方針でいけば、それは結果としては反対、G4の決議案に対する反対を表明されている結果になるというふうに私は理解せざるを得ないわけでありまして、やはり、アメリカにぜひ理解を求めることが必要だというふうに思いますし、そういった思いで外務大臣もライス国務長官との対談をなされたというふうに思いますが、現状、アメリカの認識について、七月二十八日の対談ではどのようなことが話され、どういった感触を持たれたのか、御答弁をいただければと思います。

町村国務大臣 ライス長官とは、今まで何度となくこの問題について話し合っておりますが、せっかくニューヨークに行ったものですから、ワシントンに私が参りましてお話をしたわけでございます。

 アメリカの主張というのは、まず、国連改革は幅広い改革でなければならない。安保理のみならず、事務局の改革でありますとか、平和の構築の問題、人権の問題、開発の問題、幅広い問題がある。その一環としての安保理改革ということであろう。安保理改革だけが余りにも先に突出するのはいかがなものかという考え方があります。

 日本も、多少でこぼこは、早い遅いはあっても、そこの幅広いアプローチという点については、日米は考えを共通にしておりますので、さらに今申し上げた幾つかのテーマについて、日米の考え方が一致する点も多々ございますので、よりよい成果文書ができ上がるように、今、共同作業も含めてやっているところでございます。

 その中での安保理改革についてのアメリカ側の考え方は、一つは、今の十五カ国という数も多過ぎると考えている上に、さらに二十五、二十六ということでは適正規模を超えてしまうという考え方が一つあります。ここは日本となかなか意見が一致しない点でありましょう。

 それから、常任理事国というものについても、一定の基準というものを設けて考えるべきだ。今六カ国を追加すると想定されている国々が本当にその資格があるのかどうか。この国がいい悪いと、日本は資格はあるけれども、他の国についてはいろいろ議論が分かれるのではないかという感じを持っているということでございました。したがいまして、その点については今後また議論をしていかなければいけないのだろう、こう思っております。

 しかし、いずれにしても、中国もそうですしアメリカもそうですが、拒否権のある常任理事国という立場もあるわけでありまして、彼らの最終的な理解が得られなければ、それは拒否権の事実上の発動ということになってしまいます。

 そうならないようにするために、日米関係でさらに、より具体的な、また現実的な着地点を探す努力というものもしていかなければならないだろうということについてライス長官と意見が一致したところでございまして、今後も、間断なく意見交換をしながら、現実的にどうやったらこの安保理改革が進むのかということについて話し合いを続け、よりよい答えを見出す努力をしてまいりたいと考えております。

赤羽委員 状況はなかなか、まだまだ明るい見通しが立っているような状況じゃないというふうに私は思いますが、もとより、この問題は、冒頭申し上げましたように、そもそも解決というか実現するのは大変難しい課題であるわけでありまして、その課題をやるからには、それを乗り越えるハードルも幾つもあるし、それも高いハードルがある。

 ですから、先日もこの委員会で提案をいたしましたが、外務省だけではなくて、外務省が総力を挙げるというのは当然でありますが、全省庁を挙げて、あらゆるチャンネルで、時間も限られておりますけれども、ぜひ総力を挙げて、やはりこのチャンスを逃すと国連安保理改革というのは、また次のタイミングというのはいつあるかわからないわけでありまして、ぜひ町村大臣のときに決着をつけていただきたいと強くお願いをする、希望する次第でございます。

 次に、日本とタイの二カ国経済連携について、質問を移らせていただきたいと思います。

 この問題につきましても、実は私、我が党内のFTA推進プロジェクトチームの事務局長ということで、実際、昨年の秋、タイとフィリピンに、この問題のディスカッションで向こうに行ってまいりまして、当時のタイ側の交渉責任者であったピサン次官とも何回も議論をしてまいりました。

 当時は、率直に言って、大変タイの要求も大きなものがあるというか、非常に夢がある話をされておりまして、このFTAというのを非常にオールマイティーな制度であって、その中ですべて、これを締結することによって日タイのよりよい、より大きな交流が進んでいくというような中で、なかなか現実の話では難しい問題が多かった。

 タイからの要求をこなすには、物すごい時間もかかるだろうし、日本側からしても、アメリカとタイの関係との比較の中で、アメリカ並みに、そのレベルをとりたいというようなことで、なかなか時間がかかるのではないかという予想をしておりましたが、この段に来て、それぞれ両国のトップリーダーの決断によって、今回、タイとの大枠合意がなされたということは、私も大変喜ばしいことだというふうに思っております。

 さはさりながら、この八月二日の日経新聞ですとか読売新聞のタイとの合意についての評価というか記事は大変厳しいものがあって、FTA、果実より合意、貿易自由化にはほど遠い合意だというような日経の社説も出ておりまして、その理由は、日本が積極的に市場開放の姿勢を示さなければいけないというような論調も書かれております。

 私自身も、予算委員会で小泉総理に、このFTAについてタクシン首相とどういった話をされたのかというような話のときに、大臣が答弁で、米以外は全部自由だ、米はセンシティブな品目だから守らなければいけないけれども、それ以外は自由だといった御答弁があって、この日タイの交渉が前進したというふうに理解をしております。

 結局は、農林水産産品、米以外にも砂糖やセンシティブの品目が指定されて、非関税化は実現しなかった。その農林水産分野が先行合意をした。その先行合意をしたがゆえに、人質となって、最後の最後、自動車ですとか機械のところで随分妥協せざるを得なかった、結局、小粒の合意を繰り返すおそれがあるのではないかというような指摘もあります。

 そういったことについて、交渉当事者としていろいろな御苦労があったことは承知しておりますが、今回のタイとの大枠合意についての評価とか、それに対する反省、総括について、簡単にお答えをいただければというふうに思います。

石川政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、おかげさまで、タイとの交渉におきまして、残された課題でございました鉄鋼あるいは自動車・自動車部品等につきまして解決が図られ、ほぼ大筋合意に達した状況でございます。引き続き、事務的な作業を継続し、今後、両国首脳間で大筋合意が正式に確認されるように努力してまいります。

 御指摘の社説等を私も拝見させていただきましたが、今回の合意の内容は、日本とタイの双方に利益をもたらすものになったと考えております。特に市場アクセスにつきましては、全体として見れば、フィリピンやマレーシアといった、これまで大筋合意に達した諸国との合意と比較しましても遜色のない合意内容となっております。

 二、三、補足させていただきますと、全体の自由化のいわゆるカバレッジでございますけれども、貿易額で申し上げますと、タイ、日本双方とも九〇%以上のオファーをしておりまして、農産品につきましても、タイ側の関心が大変高うございました鶏肉につきまして、農水省さんのお計らいもあり、検疫についていろいろお手伝いを申し上げる。技術協力も申し上げる。日本の検査官が先方の加工工場に行って、お手伝いもいろいろさせていただくということで、タイ側も満足されたもの、かように理解しております。

 このように、私どもといたしましては、この日タイのEPAは、物の貿易、そこにおきましても双方のメリットもございましたが、そのことに加えまして、サービス、投資、人の移動、知的財産保護、競争政策といったものを含む幅広いものだった、こういったことで、包括的な経済連携の進展に資するものだ、かように考えておる次第でございます。

赤羽委員 今、御答弁で少し気になるのは、タイも満足したというくだりがありましたが、恐らく妥協できる範囲で満足したという、満足というか、合意できる範囲だったということではないかというふうに思います。

 やはり、FTAというのはある意味では画期的なことなはずなわけであって、その画期的なことをやるからには、相当体力も必要ですし、相当血を流すことも覚悟しなければいけない、新しいことをやるわけですから。それが、タイとかフィリピンから言わせると、日本はフィリピンやタイよりも何十倍の経済力がある、そこに対して、同じ土俵に上げること自体が大変なことなんだ、なぜ日本はそれを理解してもらえないのかというような話もあるわけです。

 そういったことを乗り越えて、FTA、これからも恐らくインドネシアですとか韓国、中国とも進めていくような状況になっていくと思いますが、その段において、農水省も、大臣もかわられて、すごく積極的になられているということは私も評価をしているところでありますけれども、相手にもメリットを出し、結局はそれが我が国のメリットにつながるんだということを踏まえて、ぜひ特段の交渉を進めていただきたい。

 この個別交渉についても、農水省は農水省、経産省は経産省、厚生労働省は厚生労働省という形で具体的な交渉をされているわけでありますけれども、ぜひ、外務省のより一層強いリーダーシップを発揮していただいて、大局に立って、ある意味では各論として、ある役所に泣いてもらうようなことも、外務大臣のもとに指揮権を集めていただきたい。こういうふうに強く要望していきたいと思います。

 最後に、限られた時間でありますが、全然違う話になりますけれども、昨日、産経新聞の一面で、「戦後六十年 歴史の自縛」という大きなニュースが出まして、「内閣改造直後に突然「村山談話」」この村山談話は「少数で決めた「侵略」の謝罪」というような結構刺激的な話が出ていまして、このことについて、ある学者のコメントを引いて、これは明らかに東京裁判史観に基づくものだ、東京裁判史観は、戦前の日本の歴史を抹殺しようとしたGHQとマルクス主義歴史学者たちの合作で、その延長線上に村山談話があると。

 相当偏った学者だというふうに私は思いますが、こういった見解を持つ風潮が、最近の日本はやはり以前に比べて強くなっているのではないか。東京裁判史観自体がおかしいんだ、戦勝国の裁きなんだというような意見があるのは、私はもちろん認識をしておりますが、この委員会の場で改めて、こういった批判に対して外務大臣としてどのような見解を持たれているのかというのが一つと、こういったことにちょっと関係しますが、八月十五日、個人的なことかもしれませんが、大臣は靖国参拝をされるのかどうか、その理由についても含めて御答弁をいただければと思います。よろしくお願いいたします。

町村国務大臣 十年前の内閣総理大臣談話は、戦後五十年という節目のときに当たりまして、日本が過去の一時期に、植民地支配と侵略によって多くの国々に多大な損害と苦痛を与えた事実を謙虚に受けとめて、痛切な反省の意をあらわし、心からのおわびの気持ちを表明するとともに、今後、我が国が歩むべき道について、政府としての考え方を述べたものでございます。

 この談話は、細かいやりとりは私も承知をしているわけではございません、新聞を見て知ったわけでございますが、いずれにしても、きちんとした閣議決定を経ているということでございますし、十年たった今日も、この談話に関する歴史認識というものは変わっていない、私はこう考えております。

 したがいまして、現に小泉内閣総理大臣も、四月下旬のジャカルタにおけるアジア・アフリカ首脳会議でその趣旨も重ねて述べ、その反省の上に立って、今日の日本の平和な国づくり、平和主義というものがあるんだということを申し上げているわけでございまして、今日に至るまで、この十年前の村山総理大臣談話というものは当然しっかりと生きているんだ、こう考えております。

 八月十五日に外務大臣として靖国参拝をするのかどうかというお尋ねでございました。

 私は、外務大臣になる前は、折に触れて靖国神社にお参りをし、また、亡くなられた戦没者の方々に慰霊の誠をささげるということはやってきたわけでございますが、外務大臣に着任して以降は、そういうことは差し控えて、今日まで至っております。したがいまして、八月十五日、私は靖国神社に参拝をする考えは持っておりません。

赤羽委員 どうもありがとうございました。終わります。

赤松委員長 次に、首藤信彦君。

首藤委員 民主党の首藤信彦です。

 きょうは八月三日。もうあと二週間足らずで、さきの大戦終戦後六十周年の記念日が目の前まで迫ってきているわけです。そこで、戦争の記憶というものがだんだんと風化しつつあるというおそれがあって、戦争を体験された方、もう多くはお亡くなりになりつつある。そこで、いろいろな追悼番組が組まれたり、あるいは第二次世界大戦のさまざまなドキュメンタリーがテレビで放映されているということを私たちは見るわけです。

 しかし、そのように戦争の影響というものは決して過去の問題ではなくて、過去の記憶どころか、戦争の惨禍というものは現実となって私たちの社会そして世界を揺るがしている局面があります。

 旧日本軍が中国各地に遺棄した化学兵器、毒ガスですけれども、特に毒ガス弾は、中国側の主張では二百万発、日本側の主張はそれよりかなり少なくて七十万発、そのうち約九割が吉林省のハルバ嶺に埋蔵されていると言われています。しかし、現実にその埋蔵した場所というのは、中国最北の黒竜江省から南の広東省まで中国全土に広がっておりまして、現実にことしの六月二十三日、ほんの一カ月ぐらい前になりますが、日本人も多く訪れる広州市で旧日本軍のガス弾事故が発生し、三名が被害を受けるという事件が発生しています。

 このような事件が起こるのは、一つは中国の建設ブームといいますか、日本軍が放置したあるいは埋蔵したガス弾を、中国の建設ブームで、例えばシャベルカーなどで掘り返したりしてさわってしまうということがあると思うわけですが、そう考えると、今の中国の経済発展のペース、都市部の再開発とか市街地の再開発とかを考えると、これからもこうした被害が続々と出てくる可能性があるのではないかと思うんですね。それがもし住宅地域で発生すると、それは我々の想像を絶する被害になってくる可能性が毒ガスの場合はあります。

 現実に、黒竜江省のチチハル市では、二〇〇三年八月に遺棄毒ガスにより一名が死亡、四十三名が重軽傷を負いました。そして、そのチチハル市から被害者六名が今来日しておりまして、ぜひ町村大臣にも、会って実際の話を聞いていただきたいと思っています。

 今やはり問題となっているのは、特にイペリットガスというもので、一種の昔のマスタードガスといいますか、びらん性の、皮膚に触れたりあるいは呼吸で吸ったりするとそれで大変な障害を起こすというガスなんです。非常に揮発性も低くて、ちょっと破壊された廃棄弾から漏れ出しますと、それが土などにしみ込んで、土に触れた人間、例えば子供たちに非常に大きな悪影響を与えるという深刻な問題が出てきているわけであります。

 日本は、化学兵器禁止条約を九五年に批准、そして二〇〇七年までにこのガス弾を無害化して廃棄する義務を負っているはずであります。しかし、日本の少ない推定でも七十万発、中国側の予想によると二百万発と言われるガス弾を二〇〇七年までに無害化するなんということはとてもできないと思うんですね。

 そこで、今まで述べました中国における残留毒ガスの広がり、それに対する対策費はどうなっているのかを最初にお聞きしたいと思います。

 これに対して日本政府は既に二千億円以上拠出する枠組みを決めたと報道されています。それは、やはりこんな七十万発、二百万発といえばそれぐらいの経費がかかる。また、広い中国ですから、それを移送する、あるいは移送できなければサブプラントといって小さいプラントをつくってそこで処理する、それはもう大変な問題だと思うんです。日本側で予想しているだけでも二千億円、中国側の主張によりますと約一兆円と言われておるのですけれども、一体処理費用はどれぐらいの可能性があるのか。無害化そして廃棄の処理費用の上限と下限を、政府の予測値を教えていただきたいと思います。

町村国務大臣 この問題は、今委員御指摘のように、中国の方々に折に触れて大変な被害を発生させたり、また、そのおそれがあるということで、私どもとしては大変重大な問題であると考え、これまでも真剣に取り組んできたつもりでございます。

 九一年から中国国内において実施しております現地調査の結果、これまでのところ北は黒竜江省から南は広東省まで幅広く発見をされているということでございまして、数量は、今委員御指摘のとおり、九六年の調査に基づくと七十万発ぐらいという推定になって、このことを化学兵器禁止条約機関に申告をしているところでございます。

 もっとも、これは現実に発掘をしてみると、予想よりも多かったり少なかったりというようなことも現実にはあるようでございまして、絶対に七十万程度かどうか、これは必ずしもはっきりしない点はございますが、このくらいかな、こういうふうに思っております。

 このハルバ嶺関連施設整備費につきましては、まず発掘回収施設整備費ということで、平成十七年から二十年度までの四年間で約七百八十億円、内閣府において予算措置をするということになっております。また、それとは別の処理施設につきまして、今、中国側と基本設計に関する協議を行っている最中でございまして、予算的にどれほどになるのかということについて今委員からお尋ねでございましたけれども、現時点では確定をできる状態にはまだなっていないところでございまして、今後この協議をさらに煮詰めてまいりたいと考えているところであります。

首藤委員 ありがとうございました。

 しかし、大臣、この処理費用というものは、我々の想像を絶する金額に達していると思います。

 例えば、一兆円といいますと、我々の全ODAをはるかに超える金額です。最小で見積もっても現行のODA水準の三分の一とか四分の一を消費してしまうことになります。そう考えますとこれは本当に深刻だと思うのですが、一方、この問題に関して、国民の理解、日本国民の理解というのは必ずしも進んでいない。さらにまた、これだけの巨大な投資になるわけですから、それに対してまたぞろ利権の問題などがささやかれているわけであります。

 この問題をしっかりしないと、私は、日本国民にとっても本当に、ODAといえば一億円あるいは一千万円のODAの病院の投資でも多くの問題が出てきたりするような状況の中で、例えば一兆円に達するかもしれないODAを、やはり国民みんなが理解して、こういう問題が本当に私たちの税金を使うのに値する費用なんだということを理解していただくには、やはりもっと国民にこの問題を知っていただかなければいけない。

 それから、中国の人たちにも、政府だけではなくて、日本が本当に半世紀以上前のことを一生懸命解決しようとして取り組んでいるという姿勢をやはり見ていただかないと、やはりこのことがいつの日か日本の企業あるいは日本の市民に対する不満、反発ということではね返ってこないとも限らないわけですね。

 ですから、この問題には、早くそうした日本国民へのきちっとした説明責任を果たしていただいて、また同時に、このことがまたさらに疑惑などを、あるいは中国側の反発などを生まないような手段をぜひ講じていただきたいと思うのですね。

 一方、この毒ガス被害というものの対処には、これは実は専門家もいないのですね。医学、福祉的側面。特に遺棄化学兵器の無力化処理に関しては、今で言えば経産省、防衛庁、あるいはその他、厚労省とか、広範な担当部署や膨大な人材を必要とするはずなんです。当然ですよね、一兆円プロジェクトですから。

 また、平成十一年三月十九日の閣議によって、政府全体としてこの問題に効率的に取り組むために、関係省庁と連絡をとりながら包括的に取り組むという目的で、内閣官房で統合調整をするということであったわけですが、現実にこの問題で、私、どこに問題があるのかなといろいろ聞いてみたら、なかなかわからないんですよ、どういう問題があるのか。

 行き着くところは結局どこかというと、いつしかこの問題というのは、外務省のアジア大洋州局中国課という一地方課の担当になっているのですね。しかし、それは規模が小さいだけではなくて、中国というのは大変いろいろな問題を抱えて、経済から政治から大変な問題を抱えて今苦しんでいる中国課が、こんな巨大なリスクをまたさらにやらなければいけない。しかもまた、外交という局面と、被害者の福祉の問題とかあるいは将来の子供の問題とか、そうした問題を外務省の一地方課でやるのはとても無理なんですね。

 ですから、そう考えると、対策がおくれて中国との信頼醸成もまた難しくなってきたりするわけですが、そうした問題に関してはやはり内閣官房でしっかりとした統合組織をつくって、この問題に関しては多くの方が関心を持つわけですから、例えば、中国の被害を受けられた方も日本側にきちっと伝えたい、あるいは、日本で、そうした被害者の中には子供さんなんかもたくさんいるわけですから、そうした問題、心のケアも含めてきちっと対応できるような窓口というものをこれからしっかりつくっていかなければいけないと思うのですが、そうした組織づくりの窓口の問題ですね。統合的な窓口あるいは統合的な組織については、外務省は今いかにお考えでしょうか。

 また、政府の重要な一員として、この問題に政府はどのように対処しようとしているのか、お聞かせ願いたいと思います。

町村国務大臣 今数多くのことをお尋ねになったので、ちょっと全部うまく答えられるかどうかわかりませんが。

 まず、国民の理解が必要であるという点は、まさに御指摘のとおりであろうかと思っております。特に、この資金が透明性が高い形で使われなければいけないというのは御指摘のとおりでございまして、私どもも、ただ単に必要な経費を渡すということではなくて、先方から私どもに提示された請求については、その内容を精査し、実際にその作業現場に人が行って働いている人の人数がこのくらいいるということも確認しながら、裏づけをとりながらこの経費が使われるということに心がけているところでございます。

 また、中国の国民の皆さん方の理解というものも必要であるということはまた御指摘のとおりであろうと思っております。一つには、やはり中国政府自身も国民に対する理解を得る努力をしていただきたい、こう思っておりますし、また我々も、在外公館、中国大使館のホームページに中国語で掲載をしたりしておりますが、その広報の仕方、内容のあり方については、さらによりよいものにする努力もしていかなければいけないだろう。

 いずれにしても、日中間の信頼醸成に結びつけていくということの重要性は首藤議員御指摘のとおりでございまして、そういう観点に立って取り組んでいきたいと思います。

 なお、日本国政府の中で、確かにこれは外務省だけで対応し切れるものではないわけでございます。外務省がやっておりますのは日中間の協議の面と、それから中国で発見される化学兵器が旧日本軍のものであるかどうかを判断するための現地調査等はこれは中国がやりますが、これに要するいろいろな業務、幅広い業務がございますが、これは内閣府の遺棄化学兵器処理担当室というものが設けられておりまして、そこが所管をしてきちんとした国内対策、予算要求等もやっております。したがって、予算要求、外務省も一部ありますが、大宗はこれは内閣府の予算ということで計上をされているところでございます。

首藤委員 ありがとうございました。

 では、大臣、やはりこの問題は、窓口としてはその対策室できちっと対応するというふうに考えてよろしいですね。わかりました。ありがとうございました。

 先ほど大臣が言われたことは大変重要で、とかく日中間でいろいろぎくしゃくしているときに、こうした問題に日本が真摯に取り組むという姿勢がやはり日中の良好な外交関係をつなぎとめていくんだと思っています。その意味で、今被害者の方が六名来られていますけれども、ぜひ、外務大臣みずからお会いになるか、あるいは外務省できちっとお会いになって対応していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

町村国務大臣 外務省の方でしっかりと対応させていただきます。

首藤委員 さて、もう時間もほとんどなくなってまいりました。この遺棄化学兵器の問題も実は日本にとっては巨大なリスクであると思いますけれども、もう一つ大きな問題は、米軍の司令部が座間へ移転してくる問題であります。

 この問題は本当に大きな問題である。日本のある意味で戦後の安全保障体制の総決算といいますか分水嶺といいますか、それほど大きな問題であるというふうに考えています。ですから、政府もこの問題をうかつに出してはいけないということで、幾ら質問してもなかなか話を伝えていただけない。しかし、大野防衛長官が、九月には中間報告を出すということを言っておられるわけですね。

 しかし、先日、八月一日ですか、読売新聞で、米陸軍の新司令部の座間移転を政府が受け入れの方向、そして、地元から文句が出てはいけないので、この部分はたくさん来ますけれども、一部、その近くの相模原市にある相模総合補給廠の一部は返還して、これでバランスをとろうという記事が出てくるわけであります。

 この記事、大臣は一々新聞記事には反応しないということを何度もおっしゃっておられますが、ただし、これは出方が全く同じなんですよ。またぞろ読売新聞がこういうタイミングで出してくる。これはやはり外務省が関係していないはずがないというふうに思うんですね。

 ですから、この問題に関して、外務大臣、本当にそうした方針を、政府が受け入れを決めたのかどうか、そのことをまずしっかりと御回答をお願いしたいと思います。

町村国務大臣 本件のお尋ねは首藤委員から再三いただいておりまして、その都度同じ答弁を繰り返しておりましてまことに恐縮に存じておりますけれども、今、日米間で非常に詰めた議論を行っている最中でございます。したがいまして、今この段階で、一つの地域の一つの施設・区域の内容の今後の姿について、まだ現実いかなる決定も行われておりませんし、日米間の合意もできていないところでございまして、その協議の内容について現状まだ申し上げられる段階ではないと申し上げざるを得ないのを、まことに恐縮でございますが、御理解賜りたいと存じます。

首藤委員 いや、よくぞ言っていただきました。そういうことが決まっていないんだったら、ぜひ読売新聞をしかりつけていただきたいですね。こんな日本国民を欺くようなことを平気で流してもらっては困るわけですよ。

 特に問題なのは、私たちも座間へ第一軍団が来るんだ来るんだと思っていました。しかし、途中で話が変わりまして、アメリカのグローバル・ポスチャーあるいはアメリカのRMA、軍事における革命、それの影響を受けて、全く違う新しい広域の米軍の司令部が来るということがわかっています。

 それはUEXという形で言われるわけですが、このUEXは、一つは、コンピューターなどのそういう通信的な、インターネットのような形で世界じゅうを結びつけて軍事行動をしよう。もう一つは、ストライカー旅団というのがありまして、いわゆるSBCTというんですか、非常に攻撃的な、機動性の高い旅団を移動させるということで、今までの前方展開戦略にかわる全く新しい戦略であり、その中核的な基地が実はこのUEXであり、それをまた座間に持ってこようという話であります。これは何度も指摘させていただきましたが、これは明らかに日本国憲法に抵触し、さらに日米安保第六条の極東条項に反するということであります。

 これはまだ仮定の話ですが、これに対して、いや、そういうふうに言われると困るので、座間のUEXは朝鮮半島有事だけに対応しようというふうな、それでしのごうという意見があるわけですが、そういう話は外務省によって行われているのか、政府において行われているのか。いかがでしょうか、外務大臣。

町村国務大臣 いろいろな議論を行っているのは事実でございますけれども、私ども、今回の米軍再編成にかかわる議論の出発点として、憲法及び現行の安保条約、さらにはその関連取り決めの枠内で行うということを基本にしておりますので、どういう形になろうとも、現行憲法なり安保条約を逸脱するような、そういう形のものにはしないという前提で作業を進めている点を御理解賜ればと思います。

首藤委員 もう時間が終わりましたから質問を終わりますが、委員長も委員の皆さんもぜひ聞いていただきたい。

 この座間への新しいUEXというものは一体どういうものであるか、私もずっと研究させていただきましたが、なかなかわからなかった。最近わかってきたのは、一つはNCW、ネットワーク・セントリック・ウオーフェア、ネットワーク中心の戦争という考え方。それから、世界を世界のコアとそれからそれに反しているギャップというもので考えていく、そういう理論。

 例えば、トマス・バーネットという人が「戦争はなぜ必要か」という本を書いています。これに詳しく書いてあるわけですけれども、こういう新しい理論に基づいて実はこのUEXというコンセプトができて、それを最初に座間へ持ってくるということがだんだんわかってきました。

 そして、このトマス・バーネットの上司、これがまさにアーサー・セブロウスキー、これは今の国防総省のフォース・トランスフォーメーション部長。まさにこの考え方が今回の座間へのUEXの、新司令部、新世界司令部の移転となってきているんです。

 ですから、外務大臣あるいは政府の皆さんもよくお聞き願いたい。このことは、一部のところだけ、安保条約に抵触することだけ外れるというのではなくて、まさにインターネットと同じように、すべてをカバーし、どこの世界のどこの地域に関してもこの日本の資源が使われていくということを意味しています。

 ですから、私は、この問題に関しては、今の段階で政府は何も決めていない、何も打ち合わせ、何も討議していないということですから、それを前提としまして、それ以上は何も言いませんが、私は、この問題は日本の本当の分岐点になる、戦後六十年、またぞろ廃棄されたガス弾と同じようなリスクが私たちの社会を襲う可能性があるということを指摘して、質問を終わります。

 どうもありがとうございました。

赤松委員長 次に、武正公一君。

武正委員 民主党の武正公一でございます。

 今通常国会での質疑ということで、この間もいろいろと当委員会でやりとりをさせていただきました。その中でやはりまだやり残したところというのでしょうか、引き続きがございますので、これをまたきょう質問させていただきたいと思います。

 まず、前回の委員会で、ライス・小泉首相会談、この七月十二日のやりとりを取り上げさせていただき、ライス長官、そしてまた小泉首相、抑止力の維持・強化と発言したのではないかと。同席した町村外務大臣は、いや、記憶にない、速記録を精査してみよう、事務方は事務的なミスである、こう言っているのでありますからそういうことなんだろうと思いますがということで、御答弁は、「もう一度、」「速記が多分残っていると思いますから、どういう表現であったかということを確認して、理事会の方にきちんと御報告を申し上げます。」ということで、既に理事会に外務省から御報告いただいたようでありますが、改めて、当委員会で外務大臣から御報告をいただきたいと思います。

    〔委員長退席、大谷委員長代理着席〕

町村国務大臣 先般の委員会で委員の御指摘をいただきました、七月十二日に行われましたライス米国務長官と小泉総理の表敬の際の記録、私ももう一度読み返してみました。国会のこうした完璧な速記録であるかどうかはちょっとあれでございますが、大体通訳の者あるいは事務方がメモをとっておりますのでかなり詳しく出ているわけでございますけれども、ライス国務長官は、沖縄を初めとする地元の負担の軽減と抑止力の維持の二つの点が重要であることはよく認識している、このように述べておられました。これに対して小泉総理は、沖縄を初めとする地元負担軽減と抑止力の維持・確保は引き続き日本にとって非常に重要であるというふうに述べておりました。

 したがいまして、ライス長官、小泉総理が、抑止力の維持・強化という、強化という言葉を使った事実はございませんで、そういう意味で、七月十四日、民主党の部会で配付されました資料は事務的なミスであるということでございます。このことを昨日二日の本委員会理事懇談会の場において御説明を申し上げたと理解をいたしております。

武正委員 それで、昨日、防衛庁が閣議で了承された二〇〇五年版防衛白書について正誤表を配付し、在日米軍再編に関連する表現の中で、「抑止力を維持・強化する」との記述を「抑止力を維持する」に訂正、強化を削除した、こういう報道が流れまして、また大野防衛庁長官も記者会見でこう述べております。

 私自身はどうしてそうなったのか分かりませんが、そういう報告を受けました。我々が何度も何度も繰り返し使っている一番大切な「抑止力の維持、負担の軽減」という言葉について誤りがあったということで、もう少し緊張感を持ってやってくれということは内部に対して厳重に言ってあります。そういう大事なポイントで、そういうようなミスが出てしまったことにお詫びを申し上げます。直ちに正誤表を配った由でございます。

ということで、くしくも、防衛白書でも抑止力の維持・強化と記載をされ、そしてそれは正誤表が配られているわけなんで、事務方の単なるミスという外務大臣の御答弁でありますが、余りにもこれはミスが、外務省も防衛庁もこうも重なり、しかも防衛白書に記載もされている。

 これは、やはり先ほどの外務大臣の御答弁では納得できずに、やはり日米間で、抑止力の維持・強化、こういったことがこれまでも使われ、そして過日の首脳・長官会談でも使われているのではないか、こういうふうに考えるわけですが、改めて、防衛白書にもこうした記載があったことについて、そして私の指摘について、外務大臣はどのようにお考えになりますか。

町村国務大臣 防衛白書は昨日の閣議で防衛庁長官から報告があったわけでございます。大変恐縮でございますが、そうした文言の訂正があったということは、私、今回委員の御指摘で初めて気がついたところであります。また、閣議でそのことが特に話題になった、あるいは長官から閣議の場で発言があったというわけではございませんので、ちょっとそこの経緯のところは、私は正直言ってよくわかりません。

 いずれにいたしましても、民主党の皆様方への御説明の資料にミスがあったことは、単純なミスとはいえ大変申しわけないことでございまして、この点についてはおわびを申し上げたいと存じます。

武正委員 閣議で外務大臣も出席されて了承された防衛白書が、その場でも大臣もわからない、その後防衛庁長官から正誤表が配られる、こういうことは果たしてあっていいのかどうかということなんですね。閣議の参加者として、そしてその閣議の意思決定に参加をされている外務大臣として、こういったことはこれまでもよくあるのかどうか、私は逆にお聞きをしたいんですね。閣議了解された文書が後で訂正をされる、正誤表が配られる。

 閣議決定というのは大変重いものですよね。これまでの当委員会や、あるいは他の委員会でも、閣議決定についてのその重さというものは、過日の自衛隊法改正、ミサイル防衛についても議論があったわけでありますが、その閣議で了承され決定をした文書が後で訂正をされる、こういったことについて、外務大臣はどのようにお考えになりますか。

町村国務大臣 どういう事情があって防衛庁でそういう修正をされたか、私もよく理解ができません。

 防衛白書はこんな厚いものでありますから、その閣議の場で一ページずつ全部精査をするわけでもございません。エッセンスが長官から報告され、みんなで了解を得、了承したということでございますから、その一言一句を精査しながらやる場というのはまた別途あるんだろう、こう思いますけれども、いずれにしても、閣議の場でそこまでの議論をしている時間的なゆとりもございません。

 また、そこまでの議論を、一つ一つ、いろいろな白書がいろいろな省庁から出されるわけでございます。外務省も外交に関するペーパーを出すわけでございます。それらをすべて一言一句精査をしているというわけでは必ずしもないことは御理解を賜ればと思います。

武正委員 ということは、過去も、閣議で了承された文書が後日訂正をされる、こういうことがある、そしてまたそういったことは閣議の性格上やむを得ない、このように大臣はお考えですか。過去そういうことはあったんでしょうか、大臣の御経験で。文部大臣もやられておりますが、閣議で了承された文書、しかも、たしか閣議に諮る前に、前日かわかりませんが、事務次官ですか、それぞれ皆さんが周到に準備をされて閣議に文書をお出しになるわけですよね。それが閣議で了承されたけれども後で訂正します、こういった仕組みが今の政府では行われている、これはやむを得ないというふうな御認識でしょうか。

 過去そういうことがあったかどうか、そしてそれについての御認識をお伺いしたいと思います。

町村国務大臣 私もずっと閣僚でずっと閣議に出ているわけでもございませんので、前例がどうかとお尋ねでございますが、そこまで私もちょっと確信を持って申し上げることはできないわけでありまして、もし調べろということであるならば、そういう前例があったかどうか、改めて調べてお答えしなければいけないのだろうと思います。

武正委員 もう一度、その認識もお伺いをしたいんですね。閣議では精査はできないけれども、それに行く前にそれぞれ各省庁周到な準備をされて閣議に諮っている文書、これが閣議了承後、簡単にというのでしょうか、長官が正誤表を配って記者会見して終わり、こういったことがまかり通っていいのかどうか。

 これは素朴な疑問として外務大臣にお聞きをしたいと思うんですが、そういったことはあってもしかるべきと、しようがないと。先ほど来の大臣の御答弁のように、事務方がミスと言っているのでこれはしようがないですねと、陳謝はされましたが、これは人間だからいたし方ないというような御認識でしょうか。

町村国務大臣 それはその種の訂正等々がないにこしたことはない、できるだけ完璧なものを出すようにする。いい例えだとも決して思いませんが、法案という形で国会にお出ししたものも修正をせざるを得なかったというようなケースさえ、昨今は、何かこの間、いつだったか知りませんが、あったような記憶がございます。

 決して望ましいことではないし、いいことではないと思いますが、人間のやることですから、それはたまにはどこかで間違いがあったりすることも排除し切れないのかなと思ったりもいたします。しかし、決して望ましいことではないと私も考えます。

武正委員 このように指摘をさせていただくのは、外務省もミスをし、防衛庁もミスをしている。しかも、それがちょうど今、米軍再編成で大変大事な局面にあるこの抑止力の維持、そして地元負担の軽減、こうした大変微妙な表現。だからこそ、それをミスであると、外務省もミスをした、防衛庁もミスをしたということは、私は甚だおかしいなと。やはり、日米間でこの抑止力の維持・強化ということが公然のこととしてやりとりをされている、それがはしなくも外務省の文書に、そして防衛白書に出てきたのではないのかな、このように私は思うわけでございます。

 これはもう、外務大臣の御答弁は、あくまでミスである、こういったことでございますが、引き続きこの点、これからの米軍再編の中でも、米側とどのような協議がされているのか、これがまたつぶさに明らかになってくる中で、また御質問あるいは指摘をさせていただきたいと思います。

 そこで、きょうは、理事会、委員長のお許しを得て、また資料を配らせていただいておりまして、先般来やっております行政取り決め、交換公文の外務委員会への提出という案件でございます。

 お手元の一ページは、よく引用される有名な大平三原則、昭和四十九年二月二十日、大平外務大臣の、国会承認を求める条約は、第一、第二、第三、このような三つの原則で国会にその審議を求めるんだ、こういったことが昭和四十九年、大平三原則で述べられておるんです。私が今回もまた取り上げさせていただく行政取り決めについては、一番最後段、最下段の後ろの方から書いてありますので、ちょっと読ませていただきますが、「ところで、」からであります。

 行政取りきめであっても、国会承認条約を締結するに際して補足的に合意された当該条約の実施、運用あるいは細目に関する取りきめについては、政府は、国会の条約審議権尊重のたてまえから、当該条約の国会審議にあたっては、従来から、国会に参考としてこれを提出してきております。

ここからがポイントなんですが、

 政府としては、今後は、この趣旨を一そう徹底させ、条約自体について国会の承認が得られた後に結ばれた同種の行政取りきめについても、当該条約を承認した国会として、その条約がどのように実施あるいは運用されているかを把握しておく上で必要と思われる重要なものは、締結後できる限りすみやかに外務委員会に資料を提出することといたしたいと存じます。

このように当時の大平外務大臣が述べられた、大平三原則に基づく答弁でございます。そうしたことから申しますと、果たしてこの外務委員会に外交公文、取り決めがどれだけ提出をされているのか、報告をされているのかということになろうかと思います。

 まずお聞きをしておきたいのは、過去も何度もこの委員会で質疑をさせていただきましたが、昨年十二月十四日に結ばれましたアメリカとのミサイル防衛の交換公文、これがこの外務委員会に報告されなかった理由というのは、この大平答弁からするとおかしい。そうすると、ではこれは重要ではないというようなことなのかと思うんです。

 まず、なぜこのミサイル防衛構想の交換公文、お手元の資料では七ページ目につけてあります。前もお話ししましたように、官報ではことしの六月三日、半年たってようやく告示をされておりますこのミサイル防衛に関する交換公文、内容はここに書いてありますが、なぜ当委員会に報告がなかったんでしょうか、お聞かせをいただきたいと思います。

町村国務大臣 今の御指摘のあったBMD協力に関する交換公文についてでございますけれども、これはあくまでもBMDに関する日本政府の現在の政策の範囲内で行われるものであります。また、武器輸出三原則等に言います武器を輸出するようなものでもない。こういう考え方に立って、御指摘のような運用等に関して重要である取り決めには該当しない、このように判断をしたわけでございます。

 いずれにいたしましても、この大平三原則、答弁の趣旨を踏まえて、今後とも行政取り決めの国会への報告については適切に対処しなければいけない。特に、「すみやかに」と書いてありますので、この点については、確かに官報告示に六カ月かかったのはいかがなものかという先般委員の御指摘もあったこともよく覚えておりますので、これについては、迅速化に向け、今改善に取り組んでいるところでございます。

武正委員 お手元に、これは国会図書館でおつくりをいただいた資料を二、三、四と用意させていただきましたが、平成六年以降に委員会に提出された交換公文等の事例をお手元につけさせていただきました。

 これを見ると、航空協定が十六、租税条約が五、宇宙関係日米協定が一、地位協定が二、ACSAが二、漁業協定、社会保障協定、刑事共助条約ということで、一体、国会に提出をする重要な交換公文というのは、政府は、外務省はどのようにお考えなのかなと。これを見て、航空協定は確かに重要ですよね。しかし、一兆円もかかるミサイル防衛構想、しかも技術協力、そしてこれからの共同開発、こうしたものを視野に、武器輸出三原則も官房長官談話で見直しのような形もとって、そして防衛大綱の見直しという中でのこのミサイル防衛の交換公文を重要でないというような判断をされて、委員会には提出をしない、報告をしない。

 ことしはまだ一つも報告がない。昨年についてはこの三つであるということは、国会の条約審議の尊重というこの昭和四十九年の大平元外務大臣の発言からすると、今の外務省、政府の姿勢というのは国会軽視も甚だしいんではないか、このように思うんですが、ほかの平成六年からの国会に対して報告されたこれを見て、外務大臣、このミサイル防衛についての交換公文は重要でない、このように、先ほどの答弁のとおりお認めになるんでしょうか。いかがでしょうか。

町村国務大臣 ミサイルディフェンスが重要でないということを言っているつもりもございません。これは、大変日本の防衛政策上重要なことであり、この問題について、先般、自衛隊法の改正ということで、衆参それぞれ慎重な御議論を賜ったところでございます。

 ただ、そのことと今回のこの交換公文につきましては、この交換公文そのものが運用上の重要な取り決めには該当しないということを申し上げただけであって、ミサイルディフェンスそのものについては、これは重要な政策である。まさにこの国会で相当な時間を、それぞれの委員会で、衆参それぞれで御議論をいただき、結果、お認めをいただいたということでありますから、ミサイルディフェンスが重要でないなどということを申し上げるつもりは毛頭ございません。

武正委員 平成二年六月八日、外務委員会の答弁で丹波審議官は、重要なというのがどういうものであるか、どういうものが重要であるか客観的なものが示されていない、だから与野党の理事の先生方に内々御相談あるいは御意見を求めて御指示をいただきそういう処理の仕方をしているということなんですが、私も昨年、理事を務めましたが、こういった交換公文を委員会に報告していいでしょうかとか、どうでしょうかとか、そういったことは記憶する限り理事会で一回もなかったというふうに思うわけであります。

 平成十六年にこの三つが出されておりますが、これはそれぞれの条約の参考資料として出されているわけでありまして、このときの丹波審議官のこともありましたので、私は、やはりこの際、外務省として、この交換公文について、「重要な」というのをどのように考えておられるのか。そして、このときの審議官の答弁もありますので、では理事懇なり理事にどのような形でこれまで諮ってきたのか、また諮ろうとしているのか。これをやはり理事会にしっかりとお示しをいただきたいというふうに思うんですが、委員長、お取り計らいをお願いいたします。

大谷委員長代理 後刻理事会にてこの点について協議させていただきます。

武正委員 時間もございませんので、最後にちょっと日本海呼称問題の調査結果の概要についてお伺いをいたします。

 これは昨年の三月十六日、当委員会、在外公館の法律改正の附帯決議の中の五項目め、決議をいたしております。「日本海呼称問題に関する誤った対応を二度と繰り返さないために、在外公館における訓令に対する履行、履行状況の本省への報告等の確実な実行を確保すると共に、在外公館における日本海呼称履行への取組を徹底すること。」こういったことを決議いたしました結果が、この日本海呼称問題の調査を行うということにつながっているんだというふうに思うんですが、調査結果の概要と、そしてまた昨年の決議後、この調査以外にどんな対応をしてきたのか。そしてまた、今回のこの調査を踏まえて、これからどういう対応をするのかをお聞きしたいと思います。

 申すまでもなく、昨年の決議の「誤った対応」というのは、在ソウル大使館のホームページで、日本海について東海という記載を日本政府みずから行ったこと、在バンコク大使館で、タイ航空など航空会社に対して、機内誌やあるいは表示の中でそうした日本海の呼称を設けていないところの調査あるいは申し入れ、これをタイ大使館、在バンコク大使館が半年間放置をしてきたこと、こうしたことを取り上げてのものでありますが、以上、お伺いをしたいと思います。

町村国務大臣 昨年三月の御決議を受けまして、昨年五月二十八日に全在外公館に対して訓令を出しまして、各国のマスコミ、地図出版社、航空会社、国際機関等々の文書、地図で日本海以外の呼称をしているものがあった場合には、日本海という呼称の正当性を説明するとともに、日本海と表記するように申し入れを行ってきております。今まで三十八件申し入れを行いまして、日本海という単一の表記に修正されたものが二十五件、修正を受け入れない、あるいはもう少し考えさせてくれというのが十三件というのが実情でございます。

 主要国の図書館の古い地図の調査も別途進めまして、例えば、アメリカ議会の図書館が所蔵いたします十四世紀から十九世紀の間に発行された地図の調査をしたところ、千二百八十五枚中、八二・四%に当たる千五十九枚で日本海と表記されていることが明らかになりまして、日本海という呼称が十九世紀初頭にもう国際的に定着をしているということが裏づけられていると思います。

 また、フランスの国立図書館の所蔵の地図を見たとき、十九世紀前半発行の百十枚中九十九枚、全体の九割が日本海という表示。十九世紀後半発行の百五枚中百五枚、これはすべて日本海という表記でございます。大英図書館の地図につきましては、三十七枚中三十二枚、全体の八六%が日本海という表記。ケンブリッジ大学所蔵の地図の二十一枚中十八枚、全体の八六%が日本海という表記。

 こういったことから、国際的にも日本海という表記がまさに確立していたものということでございまして、私ども、改めて、国会からいただいた決議に基づいて、さらにしっかりと取り組んでいかなければいけないと考えております。

武正委員 残念ながら、日本政府の関係機関の資料に、日本海と東海を併記しているような資料を日本政府の関係機関みずから発行していたという事実もあるんですね。やはり、私は、これは外務省が中心となって、そうしたことがないように、改めて政府関係機関に対して日本海のみの記載を徹底していただくと同時に、その調査もしていただいて、ましてそんなことがない、今はもうないと思うんですが、改めて調査もしていただき、また御報告もいただきたいと思うんですが、その点いかがでしょうか。

町村国務大臣 委員の御指摘どおり、しっかり努めたいと思います。

武正委員 以上で終わります。ありがとうございました。

大谷委員長代理 次に、松原仁君。

松原委員 民主党の松原仁であります。

 ことしも暑い夏がやってまいりまして、これで戦後六十年ということになるわけであります。

 まず冒頭、大臣にお伺いしたいわけでありますが、この戦後六十年の節目を迎えるに当たって、また同時に、そうした六十年の戦後の歴史の中で、拉致問題というものの持つ意味の大きさというものを私は極めて重く見ているわけでありますが、戦後六十年と拉致、こういったことに関して、大臣の考えというか所見をお伺いいたしたいと思います。

町村国務大臣 突然に大変難しいお尋ねをいただきましたので、うまく頭が回転をしないわけでございますけれども、この拉致の問題がかなり早い時点からいわば国家による犯罪という形で行われてきた。お気づきの方は随分早く気づいておられたようでございますが、私などは鈍感なものですから、比較的最近までこの問題の存在あるいは重大さというものに認識が至らなかったということを改めて反省もし、また特に外務大臣という職について、この問題の大きさというものを痛感いたしております。

 そもそもなぜこうした犯罪行為に北朝鮮が及んだのかということを考えたときに、その大きな背景には、やはり日本に対する工作を強めるという北朝鮮の国家の意思があり、なぜそこまで日本に対して工作を強める必要があるかといえば、それはやはり一つには南北分断といったような大きな背景、あるいは冷戦下における日本と共産圏との関係というものもあったんだろうと思います。

 しかし、いかなるそういう歴史的背景があったとしても、だからといって拉致の行為を正当化されるものでも全くないことは言うまでもないことでございまして、まさに人権というものが、戦後の国際社会の中で、また日本国内においても、大変大きなテーマといいましょうか、すべての国が共通して取り組まなければならない課題であるという認識が年とともに広がり、高まりを見せている。

 そういう中にあって、この拉致という問題が大きな問題として、これはただ単に日朝間の問題だけではなくて、まさに国際的な広がりを持った問題として私ども受けとめなければならない、戦後六十年という節目の年に立って改めてそういうことを考えさせられているところであります。

松原委員 国家の外務、外交を統括する外務大臣は、私は、この戦後六十年というものに対しての意識は常に明確に持っておられるべきだと思います。そして、私自身は、あえて申し上げるならば、この六十年間、日本は戦後ある意味で、今の日本の国の憲法がそうでありますが、国家の性善説に立っていたのではないかと思っております。

 つまり、一人一人の人間に対して、その人間というのはもともといい者なんだ、これが性善説と言われる。一人一人の人間が悪い者だと言えば性悪説。私は、一人一人の人間が性善、性悪説、これは中国の思想家で孟子であるとか荀子であるとかが説いたわけでありますが、同じように国家についても、国家全体に対して疑似人格としてのイメージがあるんだろうと思っております。

 私は、恐らく、日本国憲法は憲法九条を持っている。武力放棄、それを額面どおり見ればそうなる。これを持っているということは、諸国民の善良さ、正しさに対して期待して、国家性善説に立って今の日本の憲法も成立していたし、私たちの国民の意識も成立をしていたんだろうというふうに思っております。

 しかしながら、この国家性善説を打ち砕いたのが拉致の問題だった。つまり、拉致の問題によって、そんなことを日本の周辺の国は日本に対して、テロリズム、まさに国家ぐるみの誘拐をするはずがない、こういう認識を持って日本の国は平和国家としてやってきたにもかかわらず、我々日本の国民の戦後六十年の期待を裏切る形で北朝鮮の拉致の問題が明らかになった。

 つまり、少なくとも外交において、あえてそういった造語を使うならば、国家性善説の外交ではなくて国家性悪説になろうというわけではありませんが、少なくとも国家性善説の外交をこれ以上、さまざまな法的なものを含め、展開することに対して多くの日本国民は極めて不信感を持っている状況であります。それが戦後六十年と拉致の問題の関係だろうと私は思っております。

 そういう中で、私は、これからの日本国民は、恐らく極めて現実的な判断を、ユートピアみたいな話ではなくて現実的な判断を、国家性善説に立たない、リアリティーのある現実的な判断を外交においても下すことを外務大臣に希望しているのではないかというふうに思っているわけであります。

 それでは、具体的な質問に入っていこうと思います。

 先般、私は、この委員会ではありませんが、拉致特別委員会において、参考人招致で、安明進、かつての北朝鮮の工作員を呼んで議論をしたわけであります。

 その安明進さんとの質疑の中において、事実上、拉致の指示をしたのはだれか。あの日本の拉致を手がけた一人である辛光洙が取り調べに対して自分は金正日から直接拉致の指示を受けた、こういったことも言っているということを踏まえ、私は安明進さんに対して質問をしたら、彼は金正日が拉致の首謀者である、委員会の参考人招致においてこう発言をしたわけであります。

 このことについて町村外務大臣はどんな御所見を抱いたか。この間、委員会があったばかりでありますので、これは一般論としてお答えをいただきたい。

町村国務大臣 大変恐縮でございますが、その一言一句のやりとり、私まだ詳細を聞いておりませんので、ただ、一部のものについては新聞報道等で承知をいたしております。その中で金正日国防委員長についてどういうやりとりがあったのか私もちょっと存じ上げないものですから、不正確な報道をもとにして今コメントすることは差し控えさせていただきます。

松原委員 私は、もし拉致の事実上の指示者が、当時、三号庁舎のすべてを統括していた金正日、今の北朝鮮のトップであるとするならば、これ自体がやはり自己撞着というか、極めて矛盾に満ちた議論に今後なってくるんではないかというふうに思っておりまして、やはりこの辺も頭に入れて外交は展開していただきたいと思うわけであります。

 そういった中で、実は私の手元に、これはコピーでありますが、「見破られた北朝鮮工作員 日本人に成りすました大物スパイ」ということで、「焦点」という雑誌があるわけであります。このことについて瀬川警備局長にお伺いしたいわけでありますが、これは警察の方で出している冊子であるということで、もともとこの雑誌がどういう雑誌なのか、そのことについてお伺いいたします。

瀬川政府参考人 警察庁において、広報用のために作成をしておるものでございます。

松原委員 広報用のためにということで、この当時において、この北朝鮮工作員の朴何がしというこの案件は、極めて大変な問題であったというふうにお見受けするわけであります。

 ここにあるこの雑誌はいつ発行されたものでしょうか、そしてこの書物の具体的なねらいはどこにあったのか、このことを瀬川局長にお伺いしたい。

瀬川政府参考人 お答えいたします。

 まず、発行は昭和六十年でございます。そのねらいとするところは、北朝鮮によります我が国に対します各種の諜報謀略活動の実態というものについて広く国民の皆さんに知っていただきたい、こういう意図で作成をされたものでございます。

松原委員 つまり、北朝鮮の日本における諜報活動、私もこの冊子を、現物がないのでコピーなんですが読まさせていただきまして、極めて彼らの、北朝鮮の日本に入るやり方、北朝鮮スパイが日本の中にいかにしてスパイのアシスタント役を仕立てていくのか、具体的な話が大分細かく載っているわけであります。

 この中にはいろいろとあるわけでありますが、もう冒頭の方で、こういった検挙された者、大変に北朝鮮によるスパイ事件というのはたくさんあって、「我が国を場として暗躍しているスパイが、いかに多いかを物語るものであり、検挙されたものは「氷山の一角」にすぎない。」こういうふうなことが書かれているわけであります。

 その中で、私は局長にお伺いしたいわけでありますが、この中では特に一人の北朝鮮工作員のことを具体的に書いているわけでありますが、この北朝鮮工作員はどういう人物か、わかる範囲でお答えいただきたい。

瀬川政府参考人 この「焦点」にございますお尋ねの北朝鮮工作員は、正確にその氏名等は私ども把握をいたしておりませんが、俗に朴何がしと言われている人物でございまして、昭和四十五年ごろ秋田県の男鹿半島から我が国に侵入、浸透いたしまして、日本国内におきまして、私ども承知している限りで三人の日本人にいわゆる成り済ましておりまして、日本人としての旅券なり自動車免許証なりを取得して、我が国を拠点として各種の諜報活動を展開していた、こういう人物でございます。

松原委員 通告していないので恐縮なんですが、三人のお名前がわかればおっしゃっていただければと思いますが。

瀬川政府参考人 私どもで把握している限りでございますが、昭和四十五年ごろは松田忠雄さん、それから四十七年から五十一年ごろまでは小熊和也さん、そして五十四年以降、小住健蔵さんという方に成り済ましていたものというふうに承知をしております。

 なお、この朴何がしにつきましては、昭和五十八年の二月にマレーシア向け出国というところまでは確認してございますが、その後、この人物の所在について私ども承知をしておりません。

松原委員 この三人の日本人は現在いかがなっているか、把握しておられればお答えいただきたいと思います。

瀬川政府参考人 私ども、把握をしておりますのは、二人目の小熊和也さんにつきましては、昭和五十一年の七月に病気で死亡したというふうに承知をしております。ほかの二名の方についての所在というものは承知をしておりません。

松原委員 現在、その二名は国内で生存している、どこかにいるということに関しては、確認はとれておられないでしょうか。

瀬川政府参考人 残念ながら、確認できておりません。

松原委員 私は、もうこの二名を含め、十分に拉致の可能性があるだろうというふうに思っているわけでありますが、この文章、今おっしゃった「見破られた北朝鮮工作員」という、昭和六十年でありますから今回の小泉訪朝のずっと前でありますが、この中で七ページに書いてあります。「ところで、本物の小住さんの消息はどうなったのだろうか? 小住さんは、昭和三六年までは、東京都板橋区内に住んでいたが、その後は、まったく所在不明となっている。 前述した経緯から推察すると、北朝鮮に送り出された可能性も否定することは出来ない…。」こういうふうに書いてありますが、今警察庁はこれについてどのような御認識をお持ちでしょうか。

瀬川政府参考人 この小住健蔵さんについてのお尋ねでございますが、この方は、実は昭和三十年代から所在が不明となっておられた方でございまして、先ほど御答弁申し上げましたとおり、昭和五十年代に入りまして、朴何がしという北朝鮮工作員に成り済まされたものでございます。

 その目的というのは、朴何がしが日本国を拠点といたしまして、各種の工作活動を展開するためというものだろうと思います。いわゆる西新井事件という諜報事件を摘発することによりまして、この朴何がしのいわゆる補助工作員を検挙しまして、この実態が明らかになったものでございます。

 この小住健蔵さんにつきまして、一連の経緯から推察をいたしまして、この「焦点」にも記載してございますように北朝鮮に送り出された可能性も否定することはできないというふうに考えておりまして、その発見に努めるとともに、事案の全容を解明するために、現在もなお鋭意捜査を進めているところでございます。

松原委員 つまり、北朝鮮に送り出された、これは常識的に考えれば拉致をされたというふうに考えるべきだと思います。

 そういった、この小住さんのように、拉致をされた可能性がある、北朝鮮に送り出された可能性があることを否定できない人物というのは、これはかなりの多数にわたっていると思うわけであります。先ほども氷山の一角という言葉が書いてあったわけでありますが、こういった人数というのは今ここでなかなか言えないと思うんですが、どれぐらいのイメージなのか。局長、もしあればおっしゃっていただきたい。

瀬川政府参考人 お答えいたします。

 委員会等でそういった御質問をかなり受けるわけでございますけれども、私どもとして、今、何件何人について拉致の可能性があると見ているというような数字について言及をすることは、事案の究明に当たりまして予断を与えるということにもなりかねないので、差し控えさせていただいているところでございます。

 ただ、三十数名の方だったと思いますけれども、警察に対しまして、北朝鮮に拉致されたのではないかということで告発等をしている方がおられまして、こういった方を含めまして、各種の情報等々を総合いたしまして、可能性があると思われる方につきましては、鋭意、そういった可能性も視野に入れまして捜査に努めているところということで御了解をいただきたいと思います。

松原委員 私は、拉致認定リストというのは、これはあると思うんですよ。拉致認定リストというのは、これはもう一〇〇%、日本の極めて優秀な警察力の結果、一〇〇%。

 私は、その次に、まさにここに書いてあるような文面でありますが、この冊子に書いてあるように、北朝鮮に拉致をされた、北朝鮮に送り出された可能性が否定できない、そう明確に小住さんは書いてあります。小住さんは今認定されている人間の中に入っておりませんが、少なくとも警察の文章で、北朝鮮に送り出された可能性も否定できないと明確に文章で書いてあるわけでありますから、そういう人がどれぐらいいるかということを、ここでも、小住さんは今でも認定をされていないわけですから、北朝鮮に送り出された可能性が否定できない人のリストというのは、いわゆるこの拉致の問題が、のど元過ぎればではないですが、国民の意識の中でさらにきちっと意識づけをしてもらうためにも、こういった、認定ではないけれども、北朝鮮に送り出された可能性が否定できないと書いてある、こういった人の名前をぜひとも明らかにするということを検討していただきたい、私はこのように思うわけであります。

 これは答弁できれば。できなければあれですけれども。

瀬川政府参考人 お答えいたします。

 この「焦点」に、確かに御指摘のように、小住健蔵さんにつきまして、「北朝鮮に送り出された可能性も否定することは出来ない…。」こういう表現になっておりまして、そういう可能性はあるだろうということを当然我々は考えております。しかしながら、累次御答弁を申し上げておりますように、警察といたしまして拉致容疑事案と判断を今までしておりますのは、そのいずれにつきましても、北朝鮮の国家意思が推認される形で、本人の意思に反して北朝鮮に連れていかれたと認められる者であるというふうに我々は考えております。

 御指摘の小住健蔵さんにつきましても、こうした北朝鮮による拉致容疑事案、今申し上げました条件に照らして、そう判断されればその旨適時適切に明らかにしてまいりたい、こういうふうに思います。

 ただ、行方不明になられた方というのは、実は毎年毎年全国的にも相当おられまして、それらについていろいろな可能性が考えられるわけでございまして、そういった可能性も否定できないということが直ちに拉致容疑事案として判断をするということには残念ながらこれはならないし、そういったことではなくて、特にこの要件のうち、本人の意思に反して、そして北朝鮮に連れていかれたということが何らかの証拠といったもので確認といいますか判断できるという状況にならない限り、なかなかそのような判断は難しいのではないかと思います。

 ちなみに、先ほど申し上げました小熊さんという、二人目に成り済まされた方でありますけれども、この方についても、会話の中で、北朝鮮に連れていくべきではないかという議論がこの工作員の中であったということがこの「焦点」にも書いてございますけれども、ただ、この方については、結局、日本国内におきまして病死ということになっているわけでございまして、こういった成り済まされた方等々につきましても、いろいろな事態の経緯といいますか可能性とかというものがあるんだろう、こういうふうに思います。

 そういう前提に立った上で、しっかりとした判断をするための証拠収集のための捜査を継続しているということでございます。

松原委員 私は、おっしゃる意味はわかるんですが、要するに、拉致をされたということではなくて、ここに書いてあるとおり、北朝鮮に送り出された可能性を否定できない人リストというのは、これはこの文章があるとおり可能だと思うんです。文言的にも拉致とは書いていないわけですから。送り出された可能性のあるということで、既に小住さんの名前も書いてありますから、恐らく、氷山の一角と言っている以上、送り出された可能性のある人物というのはかなりいるはずなんです。たまたまこの「焦点」では小住さんの名前を書いたということだと思うんですね。

 ですから、私は、こういった小住さん以外にも送り出された可能性がある人、拉致とは言っていないです、その人を明らかにすることは、それを拉致と思うかどうかというのはそれを聞いた側の認識であって、拉致とは書いていないわけですから。それを明らかにすることは、この問題についてやはり一つのプラスの動きになるだろうと私は思っております。

 次の質問に移りたいと思います。

 今、六カ国協議が進んでおります。六カ国協議において、なかなか拉致の問題を十分に取り扱っていないというふうに私は認識を持っているわけであります。

 もとより、このいわゆるジュネーブにおける国連の人権委員会における北朝鮮人権非難決議に対して、賛成、反対というのがあったわけでありますが、この議案自体は賛成多数で可決をされているわけでありますが、この議案に対して、今回六カ国協議に参加した国々はどういうふうな対応をしたのか、事務方のどなたか教えていただきたい。

神余政府参考人 お答え申し上げます。

 ことしの四月の十四日にジュネーブで開催されました国連人権委員会におきましては、賛成三十票、反対九票、棄権十四票で採択をされております。

 御指摘のとおり、ロシア、中国でございますけれども、この二カ国は決議に対して反対票を投じております。その理由といたしましては、ロシア、中国ともに、国連の人権委員会におきまして、特定の国を取り上げた人権状況に関する決議を採択すること自体に原則として反対をしてきていること、また、こうした決議の採択は北朝鮮を過度に刺激する、そして生産的ではないといった立場をとっているものというふうに承知をしております。(松原委員「韓国は」と呼ぶ)韓国につきましては、韓国はことしは棄権をいたしました。

    〔大谷委員長代理退席、委員長着席〕

松原委員 つまりは、この六カ国の協議に参加している国々は、かつての北朝鮮の人権決議において、三十票が賛成、反対が九、棄権が十四、これは賛成多数なのでありますが、国際社会ではこれが常識であります。しかしながら、ロシア、中国は反対の九の中に入っている。韓国は棄権の十四の中に入っている。こういったことであります。私は、率直に言えば、人権問題というのがそれぞれの国においてアキレス腱を抱えている場合は、こういったものに対して積極的に賛同しないのではないか、こういうふうに思っているわけであります。

 ちょっと時間がなくなってしまったので、細かい議論ができなくなってしまったわけでありますが、外務省としては、中国のチベットや内モンゴル、新疆合併の歴史的経緯、現状についてどんな見解を持っているか、お伺いいたします。

町村国務大臣 それぞれの国、地域に少数民族問題というのが見受けられるわけでございまして、一般論として言うならば、日本政府が諸外国の歴史について一概に見解を述べるというものは差し控えた方がいいんだろうと思います。

 その上で申し上げますと、今御指摘のあった、中国におけるチベット、内モンゴル、新疆ウイグル各自治区の歴史的な経緯及び現状につきましては、中国の長い歴史の中で中央政府と周辺民族との関係の中で、清朝の最盛期にはこれらの地域は清朝の領域に含まれていた時期もございます。

 その後、清朝政府の衰退、崩壊、一九一一年の辛亥革命による中華民国の成立、さらに一九四九年の中華人民共和国の成立を経まして今日の状況に至っているということでございまして、こういう経緯からして、チベット、内モンゴル、新疆ウイグル地区、いずれについても中華人民共和国の自治区であるという認識を持っております。

松原委員 きょうは時間がないので、次の機会には、中国が今の中国大陸、中国の領土を領有するに至ったその過程において、周辺の民族とのさまざまな抗争もあっただろうし、文化的な同化政策もあっただろう。その中において、歴史の中で一つの大国になっていくわけでありますが、その経緯に関しても、例えば今、清朝、清朝というのはきっすいの中国の民族ではない方が、女真族がこれをつくったわけであります。こういった経緯も一回、一つの歴史認識として私は聞いていきたいと思っておりますが、時間がありませんので、今ここでこれ以上触れません。

 そういった中で、最後に、戦後六十年ということで硫黄島に関してお伺いしたいわけでありますが、硫黄島における日米合同慰霊祭の出席者等々につき、従来のこの十年間ぐらいの日米の出席者の数等について、数字を挙げていただきたい。

河相政府参考人 お答えいたします。

 平成七年に初めて日米の戦没者合同慰霊祭が硫黄島で行われまして、その後、平成十二年以降、毎年開かれてきておるわけでございます。

 ちょっと、私、過去十年の出席者の数字というのは手元に持っておらないのでございますけれども、本年三月十二日に行われまして、これは終戦六十周年ということで日米双方とも参加者が多かったわけでございます。日本側参加者百名強、米側参加者約四百五十名が参加されたということで理解しておりますが、例年でございますと、大体、日本側が五十名程度、米側参加者が百五十名程度というふうに承知しております。

松原委員 戦後六十年ということで、大臣に最後にお伺いいたしますが、この硫黄島で大変な激戦があったわけであります。この硫黄島の激戦を踏まえて、ただ、日本人の死者の方がはるかに多かったわけでありますが、明らかにアメリカの参拝といいますか慰霊に行く方の方が、通常で三倍、大体三倍強ぐらいおられる、こういうふうな状況になっている。これは、やはり日本の領土である硫黄島において日本の慰霊をしたいという人が全員、十全に行ける状況を整えるべきであろうというふうに思っているわけであります

 同時に、硫黄島を舞台にして何か映画をつくるという話が一方にあるようでありますが、そういう映画をつくるということが仮に行われるなら、その前に、日本側の硫黄島のこの慰霊の希望者は全員行くように、また遺骨収集も徹底するようにするのが先で、まだ遺骨の収集が十分に終わっていないところの撮影等であるとかそういったものは、やはり厳に慎むべきではないかというふうに思っておりますので、このことについてお伺いしたい。

 それと、最後にもう一点。戦後六十年ということでありますが、中国の残留邦人、残留孤児を含む残留邦人の問題であります。

 それが、孤児で二千五百人戻ってこられて、いわゆる邦人で合計六千五百人。孤児のうちの千六百人、そうではない人の四百人が集団提訴をしているわけであります。これについての判決は、結果として彼らの要望は認められなかったわけでありますが、その判決文の中に、「実態は看過することはできない」「原告ら孤児の多くが生活保護により生活をしている実態は看過することはできない」。彼らもまた戦争の被害者であります。

 こういった裁判の判決がおりたわけでありますが、これについて、外務大臣としての御所見をお伺いしたいと思います。

赤松委員長 質疑時間がオーバーしていますので、簡潔に御答弁願います。

町村国務大臣 硫黄島での慰霊顕彰式、ことしは、例えば十三名の国会議員の方々が参加をし、我が省からは谷川副大臣が参加をしておられます。

 できるだけ多くの方が行けるようにということで、平成十六年度から厚生労働省の方で慰霊巡拝の実施回数をふやしているというようなことで、御希望の方はできるだけ行けるように努力をしているものと理解をしております。

 なお、最後にお尋ねのあった中国残留孤児の問題でございます。ちょっと私、今手元に、どういう判決があったかよく承知をしておりません。またよく調べてお答えしたいと思います。

松原委員 時間がないのでちょっと不十分でしたが、どうもありがとうございました。

赤松委員長 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢でございます。

 これまで繰り返し金武町の都市型戦闘訓練施設レンジ4について聞いてまいりました。きょうは、そのレンジ4が置かれているキャンプ・ハンセンの全体像について聞いていきたいと思います。

 そのキャンプ・ハンセン内にそもそも幾つのレンジが存在するのか、そのうち実弾演習ができるレンジはどこなのか、そして現在使用しているのはどこなのか。また、伊芸区の近隣で使っているレンジはどことどこか。そこで使っている銃器の種類や訓練の内容も含めて説明していただけますか。

戸田政府参考人 お答え申し上げます。

 キャンプ・ハンセンにおきます射撃訓練等の実施の関係でございますけれども、私ども那覇防衛施設局におきまして、沖縄米海兵隊から訓練実施の七日前までに一週間分の演習通報を受け取っておるところでございます。当庁としまして、この演習通報を通じて、キャンプ・ハンセン内のレンジごとに実弾射撃や一般演習などの演習内容について承知しているところでございます。

 これによりますと、現在射撃を行っておりますレンジということで御紹介しますと、レンジ2、3、4、4R、5、5F、7、8、9、16、18及び22の十二カ所と、ライフルレンジ、ピストルレンジにおいて実弾射撃訓練が行われるという通知をいただいております。

 また、レンジ6につきましては、実弾射撃ではない一般演習を行うというふうに通知をいただいております。

 また、このほか、廃弾処理場におきましては、廃弾処理あるいは爆破訓練を行うというふうに承知しているところでございます。

 なお、伊芸区に近いところという御指摘でございます。レンジ4あるいはレンジ5、こういったところは伊芸区に近いところと承知しております。

赤嶺委員 今挙げられました伊芸区というのは、キャンプ・ハンセンというのは全体が実弾射撃訓練場に取り囲まれていて、そして伊芸区の周辺にはレンジ4以外にも実弾射撃訓練場がある。そこで、きょうはちょっと全体像がわかりやすいように写真を持ってまいりました。委員長、この写真を外務大臣に資料としてお渡ししたいんですが、よろしいでしょうか。

赤松委員長 はい。両筆頭の御了解を得ていますので、お渡しください。

赤嶺委員 今三枚の写真をお渡ししましたが、外務大臣、最初の伊芸区とキャンプ・ハンセンの全景がわかる写真です、これは。都市型戦闘訓練施設の射撃訓練と伊芸区の第二監視台。百五十メートル、これが国道との距離です。そして、最も近い住宅が三百メートルで、伊芸地区公民館、こういう位置関係にあるわけですね。

 こういう中で、もっと重要な、きょう取り上げたい問題で、これまで国会の答弁、一九八八年に我が党の中路議員に答弁している、レンジ5Fについて。ここはジャングルレーンと言われているところで訓練をしているわけですが、当時、レンジ4よりも近い場所なんです、そこでの訓練は行われていないという答弁があります。しかし、今の防衛施設庁の説明だと、レンジ5Fも使われているんですね。これは今まで使っていないというのが国会での答弁ですが、このレンジ5Fで実弾射撃訓練を行っている。

 一体どういう経過でここでのレンジを再開するようになったんですか。また、どんな訓練を行っているんですか。

戸田政府参考人 お答え申し上げます。

 先生、レンジ4Fとおっしゃっておりましたけれども、レンジ5Fと考えております。

 昭和六十三年十月の御指摘の委員会におきまして、当時の当庁政府委員が、現地米軍に問い合わせたところ、レンジ5Fは標的を設けて小火器で射撃をする訓練を行う場所であるが、現在は同レンジでこの種の訓練は実施していないといった答弁を行っております。この点については承知しております。

 しかしながら、この答弁でございます。レンジ5Fにおける実弾射撃訓練がその当時実施されていないというようなことを述べたものでございまして、同レンジにおいて実弾射撃訓練が将来ともに行われないといった趣旨で述べたものではないものと承知しておる次第でございます。

 現在、ここでの実弾射撃訓練は、先ほど演習通報でも御紹介させてもらいましたけれども、実弾射撃を行うということで連絡、通知をいただいておるところでございまして、またこれを地元にも通知しているところでございます。

赤嶺委員 あなた方が現在行われていないと言うのは将来にわたって行わないという意味ではなかったという弁解をやる前に、私が聞いたのは、いつから始まったのかと。当時は行われていないと言った。いつから始まったか、どんな訓練かということですよ。それを答えてください。

戸田政府参考人 お答え申し上げます。

 当庁に残されております資料によりますと、平成六年八月でございますけれども、金武町の方から那覇の局に対しまして、レンジ5Fにおける実弾射撃訓練の中止要請がなされました。その際、同局より、米軍に訓練中止を求めることはできないけれども、米軍としては水源涵養林区域の保護あるいは事故防止に十分配慮している旨、お答えした点がございます。したがいまして、私ども、その時点でレンジ5Fが実弾射撃訓練に使用されているということについては承知していたところでございます。

 それ以前のいつの時点で訓練が再開されていたのかという点でございますけれども、この点につきましては、何分、十年以上前のことでございまして、資料が残されていないということを御理解賜りたいと考えております。

赤嶺委員 いつから始まったのか、正確には確認できない、こういう認識であります。

 そもそもレンジ5Fというのは、名前からしてジャングルレーンで、さっき写真も見せましたが、ジャングルの中に人形の標的を置いて、これに実弾をねらって撃ち込みながら沢伝いに登っていく。そうすると、一定の射撃方向ではなくて、どういう射撃方向になるかわからない、こういう、非常に不意の射撃というのもあり得るわけですね。

 それがレンジ4よりも近いところにあるわけですから、そういう場所での訓練については前から怒りがあったわけです。怒りがあって、危険性もあって、現在はやっていないということで世論もおさまっていた。しかし、いつの間にか始まっていた、訓練の内容についてはわからない、これで住民の安全ということについてはどんなふうに皆さん説明なさるんですか。

戸田政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、このレンジ5Fを使用するに当たっての米側の対応でございますけれども、これは周辺地域の状況を考慮した上で、射撃方向につきましては、先生少し触れられましたけれども、住民地域と反対の山側に設定しているところでございます。

 また、実施に際しましては安全管理官も配置するなど、訓練の安全確保には努めているものと聞いております。

 もちろん、当庁といたしましても、機会あるごとに米側に対しまして、訓練、また特に射撃訓練の実施に当たりましては、周辺住民の安全確保に十分配慮するように常々注意を喚起してきているところでございます。

赤嶺委員 当時も、我が党の中路議員は、この訓練が沢伝いに沿って行われるもので、沢というのは曲がりくねっているから、山の方向に射撃しているつもりではあっても、その角度というのは十分に民家や住宅地にも向かい得るという危険性を指摘したわけです。そういうものについて一切の説明もないまま、アメリカの言い分をうのみにしている。

 そして、それでなお、これだけの実弾射撃訓練場に取り囲まれている伊芸区で、レンジ4は安全だ、安全だということのみを繰り返す皆さんの姿勢に、本当に抗議をしておきたいと思います。

 きょうはもう一つ問題があります。

 七月の三十日の午前十一時四十五分ごろ、週末の多くの海水浴客でにぎわっていた藤沢市片瀬海岸の片瀬漁港建設地に、アメリカ海軍のヘリコプター一機が不時着をいたしました。一歩間違えば大惨事であります。

 今回の事故について、なぜこのような事故が起きたのか、この点について、外務大臣、どのように見ておられますか。

河相政府参考人 事実関係に関することでございますので、私の方からまず答弁させていただきたいと思いますが、御指摘のとおり、本年七月三十日土曜日午前十一時四十五分ごろ発生したわけでございますけれども、我々が得ている説明では、油圧系統の異常を知らせるランプが点灯したということで予防着陸を行ったというふうに理解しております。

赤嶺委員 この不時着したヘリ、これはどこでどういう訓練をやっていたのか。また、この飛行ルートというのは常時使用しているものですか。

河相政府参考人 お答え申し上げます。

 現在、手持ちの資料に、承知している範囲で言いますと、本件ヘリはUH3Hヘリということで、第七艦隊の所属であり、厚木基地に所属をしているというふうに理解をしております。

 飛行経路につきましては、常時ここを飛行しているのかどうかについては、ちょっと手元の資料では確認がとれない状況でございます。

赤嶺委員 神奈川県内ではヘリの不時着、緊急着陸が相次いでおります。去年の八月は横浜市で横田基地所属のヘリが不時着、ことし二月には成城学園のグラウンドにキャンプ座間所属のヘリコプターが緊急着陸。相次いでいるんですね。

 なぜこういう事故が相次いで起きているのか、そしてそこの政府の認識と、起こった不時着事故について、これまでどんな不時着、緊急着陸があり、米側からその原因について説明されたものはどういう内容であったか、簡潔に報告してくれますか。

河相政府参考人 お答え申し上げます。

 先般七月三十日に発生した事案につきましては、米側、在京米大使館より外務省に対しても通告、連絡がございまして、そのところで得ているのは、先ほど申し上げたように油圧系統の異常を知らせるランプが点灯したという説明を受けております。これに対して、外務省の方から在京米大使館に対しましては、今後十分再発防止のために安全措置をとるようにということ、そしてこういう事案が発生したことについては抗議を申し入れている次第でございます。

赤嶺委員 安全措置をとろうにも、そしてそういう抗議をしようにも、何でそんなことが起きているのか。頻発しているわけですよ。これらについて、今回のものはこれからの原因報告になるとしても、これまでのものは原因報告が米側からありましたか。例えば成城学園のグラウンドに不時着をした、これらについて、アメリカ側は原因報告について、日本側に説明がありましたか。

河相政府参考人 現在、三十日に発生した以外の事案につきましては、ちょっと手持ちの資料がございませんので、また確認の上、御説明させていただきます。

赤嶺委員 これは質問でも通告し、そして外務省にも繰り返し求めてきて、今先ほど私の手元にその一覧表が届いているんですよ。私はこれを質問するからということで、きのうは繰り返し通告をしたんです。

 先ほど外務省から届いたものによりますと、本当に原因報告というのはほとんどないんですね。空欄ですよ。成城学園も、もちろんありません。

 皆さん、そういう事故が、しかも人口密集地域で起きる、起きたときにどんな安全対策を米側と相談しているんですか。そういう安全対策についてきちんとやっているんですか、原因報告ももらわないで。いかがですか。

土屋政府参考人 先生の方に提出しました資料は私どもの方で提出しましたので……(赤嶺委員「防衛施設庁」と呼ぶ)私の方からお答えします。

 先生今御指摘の成城学園第一グラウンドに不時着したもの、これは米側はニュースリリース等で、操縦席の計器パネルのランプが点灯したために予防着陸したということを説明しております。それで、細部の説明を問い合わせておったわけですけれども、これに対してはそれ以上の説明はございませんでした。

 それから、先生が先ほどお触れになった、みなとみらいのヘリポートに、去年の八月でございますが、横田のヘリが予防着陸として不時着してございます。

 これにつきましては、エンジントラブルのためというふうに米側はニュースリリースなどで説明をしておったんですけれども、私どもの方でそれ以上のもっと詳しい説明を求めましたところ、メーンギアボックスが故障したものだ、そしてこれを修理したということと、それからトランスミッターという油圧の異常を知らせる装置などを交換したというような説明を受けております。

 これは、最初のニュースリリースのほかに、私どもの方からいろいろ問い合わせをしたり、それから先生今御指摘のように、最近、東京近辺でヘリの予防着陸、不時着の件数がふえております。私どもの方としては、これに対して、直接横田の方に行って説明を聞いたり、それから私やその他担当者の方から直接いろいろな申し入れをして、とにかく日本側の国民それから住民の不安を伝えるようにしまして、それに対してはできる限りその原因を説明してもらいたいということを申し入れているところでございます。

赤嶺委員 私、この不時着や緊急着陸に対する政府の認識は非常に甘いと思うんですよ。

 私が取り寄せた資料、施設庁ということでありましたけれども、二〇〇二年度、二〇〇三年度で八件起こって、原因報告はゼロですよ。二〇〇四年度が十件起こって、原因報告は三件。

 それで、外務大臣、人口密集地域に軍用機のヘリが不時着する、緊急着陸する、これは住民にとってはやはり重大な事故であり、きちんと米側に全部原因報告を政府として求めて、国民にしっかり説明すべきだと思いますが、いかがですか。

河相政府参考人 米側に対しましては、本件事故を含めまして、予防着陸、これが周辺に住んでおられる方々に対する不安ということ、それから、当然危険性があるわけでございますので、安全管理に徹底を行うようにということを引き続き申し入れていく所存でございます。

赤嶺委員 大臣、安全管理を徹底する上でも、米側からの原因報告というのは最小限必要だと思います。この施設庁から出された空欄が全部埋まるまで報告を求めていくのかどうか、そういう決意を伺いたい。

 もう一つは、このヘリは極めて老朽化したヘリです。退役間近なヘリです。これが民間の市街地上空を飛んでいる。藤沢の市長は、せめて今回の原因究明がなされるまでは同型機は飛ぶなという要求を出しておられます。私は、そもそも軍用機のヘリが市街地上空を飛ぶことが重大な事故につながると思いますが、最小限でも事故原因報告が出るまではその同型機は市街地上空を飛ばさない、このようなことを求めるべきだと思いますが、いかがですか。

町村国務大臣 ヘリコプターの安全運航というのは大変重要なことである、こう認識をいたしております。それは、昨年の沖縄のあの事故を見てもわかるとおりでございます。そういう意味で、常日ごろより米軍に対して安全運航を求めていくことは当然のことでありまして、その事故原因も可能な限り判明するように努力をしていくべきものと考えております。

赤嶺委員 市街地上空で原因解明がなされるまでは飛ぶなということを申し入れる件についてもちゃんと答えてくれますか。

町村国務大臣 委員がそういう御意見であることは承りました。

赤嶺委員 政府の態度というのは本当に明らかになりません。それで、やはり日本政府の甘い態度が米軍のこういう事故が繰り返される大きな要因にもなっているということを厳しく指摘しまして、私の質問を終わります。

赤松委員長 次に、東門美津子君。

東門委員 きょうは在日米軍再編協議についてお伺いしたいと思いますが、まず真っ先に一点だけ、キャンプ・ハンセン内の都市型戦闘訓練施設についてお伺いいたします。

 都市型戦闘訓練施設については、地元を初め沖縄県がレンジ4での建設中止を求めていたにもかかわらず、同施設は残念ながら完成し、地元住民だけではなく沖縄県民のすべてが反対する中で実弾を使用した訓練が開始されました。

 この訓練に対しては超党派の県民集会が開催されたことは、七月二十二日の質疑で述べたとおりです。住宅地に近い場所での訓練に不安を訴える住民の要請など一顧だにせず、米軍に実弾射撃訓練中止を申し入れることもできない外務省には怒りしか覚えません。

 そこで、お伺いいたします。今、同僚委員の質問に対して、レンジ16が現在も使用されているという答弁がございましたが、レンジ16は今どこが使っているのでしょうか、使用しているのでしょうか。ぜひお聞かせいただきたいと思います。

河相政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほどの当委員会での質問に対して、防衛施設庁の方から訓練通告の中にレンジ16が入っているということで答弁を申し上げたところでございますが、現在、私自身、詳細な資料を持っておりませんので、現時点で実際にレンジ16でどういう訓練が行われているのか、それをちょっと事実関係として把握していないということでございまして、御了解いただきたいと思います。

東門委員 北米局長、私の理解しているところでは、レンジ16はこれまで合同でそこで訓練が行われていたはずなんです。海兵隊と陸軍が合同で使用していた。しかし、レンジ4に陸軍の複合射撃訓練場をつくるということで、そこに移ったわけですね。

 そうであるならば、私が申し上げたいのは、これだけ住民が不安を感じている、本当に危険きわまりない場所なんです。そうであるならば、政府が努力をしてくださったといつも強調されますが、それをよしとするということでもいいんでしょうけれども、レンジ16の奥に今度建設が予定されています。それができるまでの暫定使用はレンジ16でもう一回やっていただきたいとなぜお願いできないのか、あくまでレンジ4でなければいけないのか、そこはどうなんでしょうか。

 もともとレンジ16でやっていたんですよ。それをもう一度、しばらくの間レンジ16でしていただきたいと米軍に申し入れるということもできないのでしょうか、お伺いいたします。できましたら、大臣にお伺いしたいと思います。

河相政府参考人 お答え申し上げます。

 事実関係として私が承知しておるところでは、委員御指摘のとおり、レンジ16において陸軍と海兵隊が共同して使用していたというふうに承知しております。

 そして、なぜレンジ4が必要になったかということにつきましては、やはり共同で利用しているということで十分な訓練が行えないということ。また、いろいろな施設をレンジ4に集めた形でやることで訓練の効率を上げるという趣旨で、米側はレンジ4の建設を開始し、それが完成をしたということだと理解しておるわけでございます。

 そういう中で、私どもとしては、今御指摘のあったとおり、レンジ16の奥に移設をする、できる限り早く工事を完成させるということは考えておるわけでございますけれども、それが完成するまでの間、やはりレンジ4の使用というのが米軍の練度維持のために必要とされているということで理解をしておる次第でございます。

東門委員 米軍の練度維持、それだけを強調するのではなくて、やはりそこに住んでいる住民の不安、恐怖心、そういうものを幾らかでも緩和するためにも、レンジ16の奥に建設が完成するまでは済みませんがもとどおりレンジ16で訓練を行っていただきたいということを、日本政府は米軍に申し入れさえできないんですか。大臣、いかがですか。申し入れることはやっていただけますか。

町村国務大臣 先ほど局長が答弁をした方針で、今、私ども、アメリカ側と合意の上、彼らが練度維持のために必要な、それがひいては抑止力の維持にもつながるという観点から認めているわけでございます。

東門委員 政府が本当に沖縄県民の安全を守る意思がないというようにしか受け取れない、そういう思いで本当に残念です。残念です、残念ですと言い続けて時が過ぎていくのを思えば、こんな外務省でいいのかなと思います。

 私は町村外務大臣に期待していました。政治家として、やはりそこのところは一歩も二歩も踏み込んでいただけるのではないか。何にも変わらないこの姿勢は、本当に、やはり残念としか言いようがないですね。

 では、在日米軍再編に関する中間報告について伺います。

 七月十二日、外務大臣と来日中のライス国務長官が会談され、在日米軍の兵力構成の見直しについて、九月ごろにも何らかの成果をまとめていくことで合意したとのことであります。

 大臣は、個別の米軍基地の再編について、地元への説明に関し、六月二十九日の当委員会において「できるだけ早い時点で一定の中間的な結論を得て、それをまた自治体の皆さん方にもお話をし、そうしたプロセスを経た上で最終的な日米間の合意にたどり着きたい、」と述べられるなど、最終合意前に地元に説明し理解を求めることとしていますが、もう八月です。九月ごろには中間的な結果を得るということですので、そろそろ地元に説明をしなければいけない時期だと思いますが、いかがでしょうか。もう説明を始めておられるのか、あるいは、まだならいつごろ始められる予定なのか、予定だけでもお聞かせいただけたらと思います。

町村国務大臣 先ほどお答えを申し上げたところでございますが、今まさに大詰めの協議をやっている最中でございます。九月中に一定のものをまとめたい、そういう前提で議論をしている最中でございまして、今この時点で、いつそれがまとまり、したがって、それをもとに自治体の皆さん方にいつごろ御説明できるかということについて、今、きょうの時点で明確に申し上げることはちょっとまだ難しい状態でございます。

 いずれにしても、一定の合意ができ次第、できるだけ早く地元の皆さん方にも御説明をし、説明責任を果たしていくという姿勢に全く変わりはございません。

東門委員 御答弁は承りました。

 ただ、中間報告とはいいましても、米国との間で一定の方向性について合意すれば、やはり既成事実化する懸念があると思われます。私はそこをすごく危惧しておりまして、地元自治体に説明をしました、はい、それでいきますということではいけないと思うのですね。やはり地元自治体の意見もしっかり取り入れていただきたい、そのためには時間をとるべきだということで質問申し上げているんですが、いかがでしょうか。

 米軍との合意ができました、これでいきますというような形ではないというふうに理解してよろしいでしょうか。

町村国務大臣 アメリカ側と全く合意ができていない日本側の案を地元の皆さん方に御説明をするということは、これはいたずらに混乱を助長することになるのではないでしょうか。

 したがいまして、今議論を煮詰め、やはり米側と相互に理解できる、納得し得るものでなければ、途中のいろいろなそれは案はあります、それを一つ一つ地元の皆さん方にお示しをし、そのことがまた要らざる混乱を招いてもいけないだろう、こう思いますものですから、先ほど申し上げたような手順を踏んではどうか、こう考えているわけであります。

東門委員 その点についてはわかりました。

 それでは次の質問ですが、在日米軍再編協議の中で、政府が約束をしている沖縄の負担軽減に関する協議に関しては、政府は何が沖縄の負担となっていると認識して交渉を進めているのでしょうか。

 沖縄県では、本年三月の稲嶺県知事の訪米に合わせて、政府に対し、在日米軍再編の中で、在沖米海兵隊の県外移転、嘉手納飛行場の運用改善、陸軍複合射撃訓練場、できてしまいましたけれどもその建設中止、日米地位協定の抜本的見直しを強く要望することを決定し、外務省にも三月十一日に要請が行われています。沖縄県が要望しているこれらの項目は、いずれも重要なものであり、県民のすべてが望んでいることです。また、危険きわまりない普天間飛行場の閉鎖、そして早期返還並びに辺野古への代替施設建設の見直しも圧倒的多数の県民の願いです。

 今回の在日米軍再編協議の中で、政府が沖縄の負担軽減を図ろうとしているのならば、これらの要望を実現するほかはないと思われますが、大臣の御見解を賜りたいと思います。

町村国務大臣 今委員が言われました四つの点につきまして、沖縄県知事初め県民の皆さん方に強い要望があるということを私どももよく承知をいたしております。

 いろいろな御負担をおかけしていること、それは一つ一つ言うまでもございませんけれども、米軍の七五%が沖縄に集中している、これを少しでも、可能なところは返還を求める。あるいは、一番典型的には、普天間飛行場をどうやったらあの人口密集地域から外すことができるのかといったようなことについての答えを出すこと。

 また、地位協定につきましては、私どもは今直ちに作業に取りかかるという段階にはちょっとございません。しかし、これにつきましても不断の見直しをやっていく、こういう姿勢でこれまでも取り組んでまいりましたし、この一連の米軍再編成の作業が終わった後に、地位協定の問題、これだけこの委員会におきましても委員の諸先生方の御指摘もあるところでございますから、私は、改めて、この地位協定の再検討ということも、この再編成が終わった次の大きな課題として考えなければならない。それは、運用改善でいくのか、協定の改正でいくのか、その辺を含めて幅広く検討していかなければいけないだろう。

 いずれにいたしましても、沖縄県の皆様方の御協力があって、日本の平和と安全が保たれ、また抑止力が維持されているという現実をしっかりと見据えた上で、できる限り地元の皆様方の御期待にこたえる、そういう観点で最後の詰めを行っているところでございます。

東門委員 もう時間ですので終わります。ただ、その前に、今大臣は知事の要請の四項目は承知をしていますという御答弁でしたけれども、私は、それに加えて二点申し上げました。普天間飛行場の閉鎖そして早期返還、その件については言及があったかと思うんですが、最後にもう一点、辺野古への代替施設建設の見直し、これはぜひ行っていただきたい。

 そこに本当に基地が建設されると、これは負担の軽減にはつながらないんですよ。負担のむしろ強化になると私たちは理解しております。そこのところをぜひお酌み取りいただきまして、再編協議の中で、そこのところもはっきりとアメリカ側と交渉して、ここはもうしないというところに持っていっていただきたいと思いますが、大臣、もう一度その件だけぜひお聞かせください。

町村国務大臣 再編協議の中で、さまざまな論点について議論しているところであります。

東門委員 終わります。ありがとうございました。

赤松委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時二十一分散会


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