衆議院

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第1号 平成17年10月7日(金曜日)

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本委員は平成十七年九月二十二日(木曜日)議長の指名で、次のとおり選任された。

      愛知 和男君    猪口 邦子君

      宇野  治君    小野寺五典君

      越智 隆雄君    河井 克行君

      高村 正彦君    鈴木 馨祐君

      谷本 龍哉君    土屋 品子君

      中谷  元君    中野  清君

      西銘恒三郎君    原田 義昭君

      藤田 幹雄君    三ッ矢憲生君

      宮下 一郎君    山中あき子君

      渡辺 博道君    吉良 州司君

      篠原  孝君    田中眞紀子君

      武正 公一君    津村 啓介君

      松原  仁君    山口  壯君

      赤羽 一嘉君    丸谷 佳織君

      赤嶺 政賢君    照屋 寛徳君

九月二十二日

 原田義昭君が議院において、委員長に選任された。

平成十七年十月七日(金曜日)

    午前九時三十四分開議

 出席委員

   委員長 原田 義昭君

   理事 谷本 龍哉君 理事 土屋 品子君

   理事 中谷  元君 理事 西銘恒三郎君

   理事 渡辺 博道君 理事 武正 公一君

   理事 山口  壯君 理事 丸谷 佳織君

      愛知 和男君    猪口 邦子君

      宇野  治君    小野寺五典君

      岡部 英明君    河井 克行君

      高村 正彦君    菅原 一秀君

      鈴木 馨祐君    鈴木 淳司君

      藤田 幹雄君    三ッ矢憲生君

      山中あき子君    吉良 州司君

      篠原  孝君    田中眞紀子君

      津村 啓介君    松原  仁君

      赤羽 一嘉君    赤嶺 政賢君

      照屋 寛徳君

    …………………………………

   外務大臣         町村 信孝君

   外務副大臣        逢沢 一郎君

   外務副大臣        谷川 秀善君

   外務大臣政務官      小野寺五典君

   外務大臣政務官      河井 克行君

   外務大臣政務官      福島啓史郎君

   政府参考人

   (防衛庁防衛局長)    大古 和雄君

   政府参考人

   (防衛施設庁業務部長)  長岡 憲宗君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 遠藤 善久君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 高田 稔久君

   政府参考人

   (外務省大臣官房国際社会協力部長)        神余 隆博君

   政府参考人

   (外務省北米局長)    河相 周夫君

   政府参考人

   (外務省経済局長)    石川  薫君

   政府参考人

   (外務省経済協力局長)  佐藤 重和君

   政府参考人

   (外務省領事局長)    谷崎 泰明君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁資源・燃料部長)        近藤 賢二君

   外務委員会専門員     前田 光政君

    ―――――――――――――

委員の異動

九月二十二日

 辞任         補欠選任

  中野  清君     鈴木 淳司君

十月七日

 辞任         補欠選任

  越智 隆雄君     岡部 英明君

  宮下 一郎君     菅原 一秀君

同日

 辞任         補欠選任

  岡部 英明君     越智 隆雄君

  菅原 一秀君     宮下 一郎君

    ―――――――――――――

十月七日

      谷本 龍哉君    土屋 品子君

      中谷  元君    西銘恒三郎君

      渡辺 博道君    武正 公一君

      山口  壯君    丸谷 佳織君

 が理事に当選した。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 理事の互選

 国政調査承認要求に関する件

 政府参考人出頭要求に関する件

 国際情勢に関する件


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     ――――◇―――――

原田委員長 これより会議を開きます。

 この際、一言ごあいさつを申し上げます。

 このたび、外務委員長の役を務めることになりました自由民主党の原田義昭でございます。大変浅学非才でありますけれども、お役をいただいた以上はしっかりとその任務に励みたい、こう思っております。

 現在、言うまでもありませんが、我が国を取り巻く国際状況は大変厳しいものがございます。近隣のアジア諸国、特に中国、北朝鮮との関係について等々、解決しなければならない多くの課題を抱えております。また、在日米軍再編問題、国連改革、またイラクのその後、もう大変な問題が引き続いておるところでございます。

 私は、この委員会に与えられた任務、国民の期待、これはもう極めて大きいものがある。行政をしっかり監視しながら、また議会として言うべきことは言う、こういうことに徹しなければならない、こう思っておるところでございます。

 委員各位におかれましては、みずから政治家として堂々と所見を発表し、またこの委員会の運営に当たりましては、私も中立公正、こういう観点からこの運営に取り組みたいと思っておるところでございます。何分、委員各位の御指導、御協力を心からお願いを申し上げます。

 以上で、私のごあいさつとさせていただきます。よろしくお願いします。(拍手)

     ――――◇―――――

原田委員長 これより理事の互選を行います。

 理事の員数は、九月二十一日の議院運営委員会決定の基準に従いましてその数を八名とし、先例により、委員長において指名するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

原田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 それでは、

      谷本 龍哉君    土屋 品子君

      中谷  元君    西銘恒三郎君

      渡辺 博道君    武正 公一君

      山口  壯君    丸谷 佳織君

それぞれを理事に指名いたします。

     ――――◇―――――

原田委員長 次に、国政調査承認要求に関する件についてお諮りいたします。

 国際情勢に関する事項について、本会期中国政に関する調査を行うため、衆議院規則第九十四条の規定により、議長に対し、承認を求めたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

原田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

     ――――◇―――――

原田委員長 この際、町村外務大臣、逢沢外務副大臣、谷川外務副大臣、河井外務大臣政務官、小野寺外務大臣政務官及び福島外務大臣政務官から、それぞれ発言を求められておりますので、順次これを許します。外務大臣町村信孝君。

町村国務大臣 引き続き外務大臣を務めることになりました町村信孝でございます。

 外務委員会の開催に当たりまして、原田委員長を初め委員の皆様にごあいさつを申し上げます。

 まず初めに、先般のバリ島における爆発事件で犠牲となった方々に謹んでお悔やみを申し上げます。

 このような残虐なテロ行為は、いかなる理由をもってしても正当化できないものであります。政府としては、引き続き在外邦人の安全確保に努めていく一方、テロとの闘いを継続してまいります。

 政府は、こうした国際社会が一体となった取り組みに主体的かつ積極的に寄与すべく、我が国が進めてきたインド洋における自衛隊艦船の活動等を継続するため、先般、テロ特措法を一年間延長する方針を決定し、そのための法案を本国会に提出したところでございます。

 このほかにも、大量破壊兵器等の拡散、貧困削減を初めとするミレニアム開発目標、地球環境問題といったグローバルな課題、イラク、アフガニスタン、中東和平問題など国際社会の平和と安定、さらには国際経済にも影響を与え得る課題は一刻も早い解決が待たれています。我が国は、国際社会の責任ある一員として、これらの問題に指導力を持って取り組んでまいります。

 また、安保理改革を含む国連改革についても、先般の国連首脳会合で採択された成果文書でその機運が維持され、また首脳会合及び一般討論演説を通じ百三十九カ国が安保理改革の必要性に言及しました。我が国は、過去一年を通じてかつてなく高まった改革への機運を生かし、各国の理解と協力を得ながら、改革に向けさらなる外交努力を行っていく考えです。

 さらに、我が国外交のかなめでもあります良好かつ強固な日米関係を今後とも一層強化してまいります。在日米軍の兵力構成見直しについても、引き続き速やかな、具体的な成果を出すべく政府一体となって協議してまいります。

 北朝鮮問題に関しては、六者会合の合意を迅速かつ着実に実行に移すべく引き続き関係各国と緊密に協力するとともに、北朝鮮との政府間対話を通じて日朝平壌宣言に基づいた拉致問題等の諸懸案の解決に取り組みます。

 中国や韓国を初めとする近隣諸国との関係においては、引き続き国民間の交流を深め、相互の理解と信頼に基づく未来志向の関係の強化に努めます。我が国は、アジアの一員として、この地域を平和と豊穣の地とするための責任を有しています。引き続き、経済連携の強化を含め、地域協力の拡充のための努力を傾注してまいります。

 この関連で、十二月にマレーシアにおいて初めて開催される東アジア首脳会議は、将来の東アジア共同体の形成も視野に入れて、アジア地域をさらに発展させるための大きな機会であり、会議の成功に向け我が国として積極的な役割を果たしてまいります。

 日ロ関係においては、北方領土問題が最大の課題です。政府としては、領土問題を解決して平和条約を締結すべく粘り強く交渉を続け、十一月のプーチン大統領訪日及びその後の交渉につなげていく考えです。

 最後になりましたが、外務省としては、以上申し述べた外交政策を積極的に推進していくに当たって必要となる足腰予算及びODA予算の確保、並びに人員体制の強化、対外情報収集、分析能力の拡充強化にも努めてまいります。その上で、日米同盟と国際協調を外交の基本として、今後とも国益に立脚した志の高い外交を展開していくとの決意を改めて申し上げて、私のあいさつを終わらせていただきます。どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 ありがとうございました。(拍手)

原田委員長 次に、外務副大臣逢沢一郎君。

逢沢副大臣 引き続き外務副大臣を務めさせていただきます逢沢一郎です。どうぞよろしくお願いをいたします。

 原田委員長初め委員各位、先生方の御指導と御協力を心からお願い申し上げます。

 今、大臣からもごあいさつがございましたが、今後、APEC首脳会議、ロシアのプーチン大統領の訪日、東アジア首脳会議など重要な外交行事が連続をいたしております。それぞれに対ししっかりと対応してまいりたいと考えております。

 また、北朝鮮やイラクをめぐる諸懸案、国連改革、FTAやWTOを初めとする国際経済面の課題、外交、安全保障上の諸課題についても、従来どおり積極的に取り組んでまいりますとともに、我が国の国益の追求に最善を尽くすとの決意を新たにいたしております。

 委員長初め本委員会の皆様方の御指導と御協力を心からお願い申し上げます。

 ありがとうございました。(拍手)

原田委員長 次に、外務副大臣谷川秀善君。

谷川副大臣 どうも皆さん、おはようございます。このたび、再度外務副大臣を仰せつかりました参議院議員の谷川秀善でございます。

 もとより微力ではございますが、町村大臣を補佐して積極的な外交を進めてまいりたいというふうに考えております。

 原田委員長初め理事、委員の皆さん方の御指導、御鞭撻を心よりお願い申し上げまして、ごあいさつといたします。どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 ありがとうございました。(拍手)

原田委員長 次に、外務大臣政務官河井克行君。

河井大臣政務官 皆様、おはようございます。外務大臣政務官、再任をいただきました河井克行です。

 日本の平和を守り、さらなる繁栄を築くため、町村外務大臣の指導のもと、大臣政務官としての責任を果たし、日本の外交政策の推進に全力で力を尽くしてまいります。

 また、三人の政務官の中では、私が特にこの委員会を担当することになっております。原田義昭委員長様を初め皆様の御指導と御協力、心からお願いをいたします。(拍手)

原田委員長 次に、外務大臣政務官小野寺五典君。

小野寺大臣政務官 大臣政務官、再任いたしました小野寺五典と申します。

 国民の生命財産を守るため、町村大臣を補佐して頑張ってまいります。

 原田委員長初め皆様の御指導をよろしくお願いします。(拍手)

原田委員長 次に、外務大臣政務官福島啓史郎君。

福島大臣政務官 外務大臣政務官を再度拝命いたしました福島啓史郎であります。

 変化し多様化する国際情勢の中で、我が国の国益、また国民の利益を実現するため、外交上の諸問題に全力を尽くしてまいりたいと思っております。

 原田委員長初め委員の皆さん、どうぞよろしく御指導、御鞭撻をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。(拍手)

     ――――◇―――――

原田委員長 国際情勢に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房審議官遠藤善久君、外務省大臣官房審議官高田稔久君、外務省大臣官房国際社会協力部長神余隆博君、外務省北米局長河相周夫君、外務省経済局長石川薫君、外務省経済協力局長佐藤重和君、外務省領事局長谷崎泰明君、防衛庁防衛局長大古和雄君、防衛施設庁業務部長長岡憲宗君、資源エネルギー庁資源・燃料部長近藤賢二君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

原田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

原田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山中あき子君。

山中委員 山中あき子でございます。

 アメリカの戦略問題研究所、オックスフォード大学などでしばらく上席研究員をしまして、それから国連大学の客員教授などの立場で、アメリカ、英国、あるいは中東、アジア各国で講演、研修、研究活動をしておりましたところ、日本が少しずつ、だんだん新聞やメディアに見えなくなってきて、アジアでは中国あるいはインドがどんどん紙面を非常に占有しているという状況が見えてまいりました。皆様の外交の努力がもう少し世界各国にわかるように、もし私が少しでもお役に立てれば幸いという気持ちで今回国政の場に戻ってまいりましたので、どうぞよろしくお願い申し上げます。

 早速でございますが、まず一番最初に、イラクに関してちょっと御質問させていただきたいと思います。

 ことしの三月も、国連大学と日本イラク議員連盟との主催でイラクの復興支援に関する円卓会議をいたしたりしておりましたけれども、二〇〇四年の一月二十九日のイラク特別委員会で私は参考人として招致されまして、そのときにも、ステージからステージへ、イラクの状態が変わりつつあることに対応できるような政策をということを申し上げたんです。現在の状況は、多分、十月十五日の憲法制定に関する国民投票と、それから十二月の総選挙ができるのかどうか、そしてまた、しかしながら治安は回復していないところが非常にある、全部ではないですけれども、というような認識があると思います。

 こういう状況におきましても、日本に対するイラクの期待は大変高いと私は認識しております。一つには、自衛隊が非常に努力をしていい活動をしてくれていること。そして、信頼をかち得ていること。さらには、実は、五十億ドルの日本のイラクの復興支援を決めるのはだれか。日本か、米国か、国連かという質問を、これは英国でもイランでもカタールでも、会ったイラク人の学者やそれから大臣、あるいはビジネスマンの人たちが異口同音に私に聞いた点でございます。

 その点を踏まえまして、これから三十五億ドルの有償支援を実施していくわけですけれども、例えばウンムカスルの港湾の話ですとか、あるいはムサンナ県の電力の発電所とか、そういうことを日本がやろうとしていることをもっとPRしてわかってもらう、そういう努力をもっと強めていただきたいというふうに思っております。

 もう一点は、同時に、十二月で期限が切れる自衛隊のイラク派遣をもし延長するということがあるのであれば、どういうミッションでいくのかというミッションを明確化することと、六カ月ぐらいを視野にして、その後自衛隊をどうするのかというのは、あの国が引く、この国が引く、そういう消極的な方法で撤退を考えるのではなくて、次のステージとして、日本の復興支援の中で、例えば、いつどういう形で民間が出ていけるのか、NGOはどういうふうにするのか、間接的にするのか直接的にするのか。

 そういったことをきちんと説明できるような論理構成を与党のプロジェクトチームなりなんなりできちんとやっておいていただいて、これもまた公の場にいろいろな形でPRするという、つまり日本のプレゼンスを高める努力をさらにしていただきたいということを強く思っておりますが、この点に関して大臣の所感を伺いたいと思います。

町村国務大臣 今、山中委員の方から五十億ドルの話がまず出ました。十五億ドルの無償資金協力につきましては、既にその使い道を含めて実行済みということでございまして、これはムサンナ県にかなり投入しておりますが、全土にわたる、全国にわたる無償資金協力ということで、大変にイラクの復興に役立っている、こういう認識を持っているところでございます。

 先般、国連総会の折、イラクの外務大臣ともお目にかかってお話をいたしましたが、先方外務大臣からは、大変な協力をしていただいているということについての感謝の言葉が真っ先にありました。また同時に、自衛隊の人道復興支援活動につきましても、大変にありがたいという感謝の言葉とあわせて、引き続きかの地にとどまって活動していただきたい、こういう要請があったところでございました。

 そういう中で、今委員のお尋ねの、それでは、五十億ドルのうち十五億ドルについては活用してきたわけだが、三十五億ドルはどうするのかと。有償資金協力の分でございます。まずこのお尋ねでございました。

 イラクについては、中期的な復興需要というのは大変大きなものがあるだろう、こう私どもも思っております。基本的には円借款でということで、対象分野といたしましては、電力、教育、保健医療、水・衛生といった分野に加えまして、電気通信とか港湾運輸といったようなインフラ整備を視野に入れているところでございます。

 特に、JBICによる調査が九月から始まっておりまして、ことしの十一月には最終報告書の案が完成をするということでございます。特にこの中では、三つの大きな案件、港湾、それからカルク下水処理場の拡張、それからかんがいセクターローン、この三つにつきまして、案件形成促進調査というものの最終報告書案が出てくるのかな、こう思っております。

 それから、別途、JICAによる調査も行われておりまして、これについては個々約百件ほどの調査を幅広くやってきておりまして、これらもいずれこうした円借款に結びついてくるのだろうと思いますが、直接今結びつくという段階にはまだ至っておりません。

 そんなようなことで、今後、現地の情勢を見ながら、無償資金協力それから有償というふうに、継ぎ目のない協力ができるようにやっていきたい。

 ただ、イラク政府の希望はあるのでありますけれども、では、いざイラク政府が具体にどういうような要請ができてくるかというと、別途、政治プロセスも大変忙しいのでありましょうし、なかなか政府部内でのいろいろな議論とか意思決定というものが必ずしも十分に円滑に機能しているというところにまで、彼らの政府、統治能力といいましょうか、それが十分高まっているとは言えない状況にあるわけであります。

 既にイラク政府と円借款について五回ほど協議をやっておりますけれども、その間、先方の希望も聞いてはおるんですけれども、イラク政府内部の調整といいましょうか、手続がかなり時間がかかっておりまして、いまだに正式な要請という形では出てきておりません。今後、そうしたイラク政府の正式な要請等も踏まえながら、しっかりと対応していきたい、こう思っております。

 また、十二月の半ばで自衛隊の派遣期限が一たん切れるわけでございますが、これの延長問題についてのお尋ねが今もう一つございました。

 これにつきましては、今の段階でどうするということを判断するのにはいささか時期が早過ぎるのではないかな、こう思っているところでありまして、かねてより申し上げておりますが、一つは、やはり国際社会の要請というものが那辺にあるのかということ、それからイラク側の要請、先ほど申し上げましたが、イラク側からのどういう要請があるのかといったようなこと、あるいは政治プロセスがどのように進んでいくのか、さらには治安状況がどういうことなのか、こうしたことを総合的に、かつ、日本が常にそうでありますが、自主的に判断をしていくということになろうか、こう思っております。

 その際に、自衛隊だけかという御指摘、先ほどの例えばODAをとっても、やはり通常であれば民間のコンサルタント等々が出ていって、しっかり調査をしてやっていくということなんですが、現実に現場に入れないという状況であります。したがって、ヨルダンでそうした調査を遠隔操作するということをやっております。NGOの方々も若干名いるのかいないのか、いずれにしても、治安状況から見てフルに活動できるという状況には依然としてございません。

 そういったことを考えると、この自衛隊から、でき得べくんば、いずれかの時点で民間の活動に移行させていきたいとは思っておりますが、なかなかそういう状況が整っていないということも踏まえなければならない。

 そんな諸要素を勘案しながら、今後の対応について、いずれにしても、基本はイラクの民主的な国づくりに日本が協力をするんだということが大切なわけでございますので、その基本を踏まえながらしっかりと対処をしていきたい、かように考えております。

山中委員 ありがとうございます。

 一般質疑ですので、ちょっと急ぎますが、日中問題に関して一つ御質問させていただきます。

 日中問題は、いろいろ靖国の問題などがあって、大変デッドロックに乗り上げているという状況に見えますけれども、実は、先日の九月三日の胡錦濤国家主席の演説をよく読みますと、非常に反日というか、ファシズムに対してというようなことの批判の最後の方で、実は日本の一部の人たちが非常に右翼的な発言をすることで、これは日本政府の意図にも反しているということ。

 もう一つ、一番最後のくだりで胡錦濤国家主席自身が、自分は、日中共同声明、それから日中平和友好条約、日中共同宣言の三つを基本にして、きちんとした対話をしていきたいということを述べているということを考えますと、中国の事情の中でこれだけの発言をしたということは、これは、小泉総理が八月十五日に大変遺憾の意を表して、日本の侵略それから戦争責任について言及したことに対して、分析をした結果、評価しているというふうにも見られるわけでございます。

 さらに、九月二十一日にアメリカのゼーリック国務副長官が、アメリカと日本と中国の三カ国の歴史に関する討議をしてもいいかもしれない、それによって日中の誤解が解けるのであれば、アメリカはそういうことも考えているということをアメリカで発言しております。

 このような状況にかんがみますと、日中友好議連の重鎮でもあります町村外務大臣におきましては、この機をとらえて、今ちょっと、トップとトップの間がなかなかすぐにいかない場合は外務大臣同士で、このような基本的なところで、中国というのはある意味で原則論の国でございますので、そこでスタートをする。そして、その環境づくりの一端として、私は若い人たちの大量の交流というものをぜひ促進していただきたい。それは、九・一一のときからアメリカのビザの発給が非常に中国に対しても厳しくなりましたので。

 これは、文科省その他OECDの調べによりますと、実は二〇〇三年、二〇〇四年度になりまして、日本への留学生の数が大変ふえておりまして、アメリカへの留学生の数を超している。しかし、もちろん留学生が来れば来るほどいろいろな摩擦はあるわけですが、それを乗り越えて、中国と日本との、もっと若い人たちの、学生の留学をふやす、あるいはこちらからも行く、これが一点。

 もう一つは、GLAYとかそういうポップスの人たちが非常に中国でも人気がありますし、東南アジアでも人気がありますから、いわゆるJポップスとかJファッションとかJアニメと言われているような若者文化の交流、これも促進していただきたい。

 そして最後、三つ目は、若者といいましても、例えば、日本と中国が国際平和構築において、紛争予防であるとか交渉論であるとか、あるいはその他のノウハウを持った若者、停戦監視員、日本はそういう人材の育成を全くしておりません。中国は文民警察は始めましたけれども、ほかのことはしておりません。

 そういうことで、中国へのODAを減少させるその分を使ってでも、これから日本と中国の人材育成の分野を拡大していくということを一つの柱にしていただけたら、その上で最終的にトップ同士の握手ができるのではないかというふうに考えておりますが、その点についての大臣の御所見を伺えれば幸いでございます。

町村国務大臣 山中委員から貴重な御指摘をいただきまして、どうもありがとうございます。

 日中間、たしかにぎくしゃくしている面のみが盛んに報道されますけれども、実際には人的往来が年間四百万人を超えるという大変な数に上っておりますし、昨年一年間の貿易は、香港を含めてでございますけれども、初めて日米貿易を超える規模になってきたということでございますから、私は、人的交流、経済関係を含めて、非常に日中間の関係は深化をしているし、拡大をしている、こういう認識を持っております。

 日中関係は、これは大変重要な二国間関係であると同時に、国際的に見てもこの二国間関係がうまくいっているということも大変重要なことであるというふうに考え、そうした認識は日中両国首脳の共通の認識である。これは、一番最近の時点でいいますと、四月の下旬、インドネシアで開かれましたバンドン五十周年会議において、小泉・胡錦濤会談においてもそのことが確認をされているところでございます。

 その折にも、小泉総理が、戦前の反省に触れながら、戦後の日本の平和の歩みというものを強調し、これからも日本はその道を歩んでいくんだということを強調された。同じ趣旨の総理大臣談話が委員御指摘の八月十五日にあった。それを受けたんだろうと思いますけれども、九月三日の胡錦濤主席の演説、今委員がお触れになったような形で、未来志向の日中関係を築いていこうということでありますから、確かに靖国という一つの個別問題はございますけれども、それを超えて日中関係全体の発展を図っていくということは十分可能である、私は実はこう考えているところでございます。

 実は、ことしの初めから日中間でいろいろなプロジェクトがあるわけだけれども、それらを一つの体系にまとめていったらどうだろうかということで、日中共同作業計画というものをつくろうという提案を日本がいたしまして、四月、私が中国を訪問した折に先方外交部長とこれを詰めていこうではないかということで、今その作業の最終段階にかかっているところであります。

 その中身を今詳しく申し上げているとちょっと時間がかかり過ぎますが、委員が御指摘になった、特に青年留学生の若者レベルの交流、今、日中交流基金という構想がございまして、これをぜひ実現しようということで、この具体化を今図りつつあるという状況でございます。

 また、今言われたJポップ、Jアニメ等若者文化、これは日本がある意味では最も得意としている分野ですが、この分野は中国も韓国もまた急速に伸びているという分野でございます。こうした若者文化の交流も大切でございましょうし、また国際的な課題に対応するための人材育成、環境問題とか紛争とかテロとか、いろいろなそういう新しい問題があります。こうした問題点で共通する課題にこたえられる人材をともに育成しようではないかという御指摘は、私は大変ユニークでありますし貴重な御提言だと今受けとめさせてもらいました。

 そういうあらゆるレベルでの交流、対話を推進すること、それから具体的な共通利益の拡大をすること、それから、日中間には、ODAであるとか海洋問題であるとか遺棄化学兵器であるとか、こうした問題もあります。こうした懸案事項の解決、それらもしっかりとやっていこうというようなことで、今後日中関係をよりよいものにしていくために努力をしていこう、かように考えているところでございます。

山中委員 大臣のお考えを伺いまして、大変心強く思っております。御期待申し上げます。

 もう時間が迫ってまいりましたが、今の国際平和協力で、国連で十二月に平和構築の委員会を設立するということが決まっておりますが、そのことに関しましてちょっと一言申し上げたいと思っております。

 日本が二〇〇二年、福田官房長官のときに、国際平和協力懇談会、私も委員をさせていただいておりましたが、そこで基本法の制定とそれからもう一つ人材の育成、そういったことを自衛隊、文民警察、それから行政官、民間、NGO、そういった広い範囲で推進してはどうかということを出しまして、その英語のレポートも外務省の方で急いでやっていただきました。

 これは米国で国務省の中でも討議されて、大変いいということになっておりますし、アジアの各国も、ぜひそういった人材の育成を日本が主導してアジアのためにもやってほしい、このことが先ほど申し上げた中国とのことにもつながっていくわけです。

 ぜひ、国連の中で十一月の初旬までに委員が決まるようでございますが、日本はODA、国連の拠出金が大変あるということで、ドナー国の方として参加することになるかもしれませんが、むしろこういうアイデアがあるということを、この英語はちょっと粗いので、もう少しきれいに精査していただいて、そしてぜひ日本の発想が二〇〇二年の時点でできていたということをPRしていただいて、メンバー国に入っていただきたいというふうに思っておりますので、その点、どうぞよろしくお願いいたします。

町村国務大臣 委員には国際平和協力懇、主要なメンバーとして御参加をいただき、貴重な御提言もいただき、それが一部既に実施に移されているということでございます。御努力に大変感謝をしているところであります。

 国連の平和構築委員会、これから具体化していくことになるわけでありますが、日本は既に紛争後の平和構築と復旧のための活動、例えばアフガンにおけるDDR等、大変活発な活動をした経験がございます。そうしたものを生かしながら、この平和構築委員会の形成に当たって、またできた後の活動に当たって、積極的な役割を果たしてまいりたいと思っております。

山中委員 これで質問を終わります。

原田委員長 次に、鈴木淳司君。

鈴木(淳)委員 おはようございます。自由民主党の鈴木淳司でございます。

 選挙を経て久方ぶりの外務委員会で大変感慨深いものがありますけれども、冒頭、まずもって、さきのインドネシア・バリ島におきましてのテロ事件、犠牲になられた方の御冥福を心からお祈りしながら、改めてテロ根絶への誓いを新たにしたいと思う次第でございます。

 さて、私はまず冒頭、先般、百八十五日間の会期を終えて閉幕をいたしました愛・地球博について、地元でもありますので、少し触れてみたいと思います。

 当初心配されました入場者も、千五百万という想定を大きく超えて二千二百四万九千五百四十四名と、大変たくさんの方々に御来場いただきました。また、とてもテーマに忠実で内容も充実した博覧会だったな、こう思うわけでありますが、私も誘致段階から地元で地方議員としてかかわっておりましたので大変感慨深いものがございます。博覧会の成功は、まずもって外務省を初めとする多くの関係の方々の深い御理解と御尽力のおかげと、心から感謝を申し上げる次第でございます。

 また、当初は心配されました一国一自治体フレンドシップ事業というものも、結果的には大変に好評でありまして、自治体と相手国との間の具体的な交流というものが博覧会後に始まっていく、交流が継続していく、こういう可能性が非常に大きく高まっておりまして、とてもよかったな、こう思う次第でございます。

 一昨日取りまとめられました公式記録によりますと、最多入場者は何と二百七十回という方があるようでありまして、これはパスポート券、全期間券でありますけれども。同じく二百回を超えて入場したある御婦人は、親しくなった外国のパビリオンのスタッフを訪ねて世界じゅうへこれから行くんだ、こんな報道も実はありました。市民レベルでも、本当に民間レベルでも着実な交流が始まったのかな、こういう思いがいたしました。

 余談でありますけれども、開催地元の長久手町というところでは、何とこの期間に、お年寄りの方々が毎日のように行かれますから大変に元気になっちゃいまして、それで期間中の老人医療費が激減をした、こういう報告もあるようでございまして、思わぬ博覧会の副次効果ということもあったようでありますが、それはともかくとして。

 博覧会の期間を通して、この間、外交的には、元首が十七名、それから副大統領が八名、首相が十六名という方がお見えになったようでありますが、それを含んだ百九十五名もの外国政府要人の方が来日された、こういうことであります。

 今回、博覧会を振り返って、外務省として今どのような御評価をされているのかということをまずお伺いしたいと思います。

町村国務大臣 鈴木委員、当初からこの愛・地球博にかかわりをお持ちになり、当初、私の記憶でも相当な反対運動等々があったわけでございますが、開いてみればむしろ大成功ということで、案ずるより産むがやすしというのはこういうことなんだなということをしみじみと感じたところでございます。実際、大変多くの来場者もあり、また内容も非常に充実していたということで、私どもも、大成功ではなかったか、こう高い評価をしているところでございます。

 今委員お触れになった、非常に多くの外国の賓客もお見えになられまして、それを通じて、私どもも各国政府要人といろいろな課題について討議をすることができました。こういう機会でもないとなかなか来られないような国々の首脳あるいは外務大臣等もお見えになり、私も、数多くの方々とお目にかかり率直な意見交換をすることができて、大変に有意義だったと感謝をしているところでございます。

 また、その一市町村一国ですか、フレンドシップ事業というんでしょうか、非常に成功しているということを聞いて喜んでおります。こういう草の根レベルの交流が深まるということが、まさにこれからの日本の国際社会の中で重要な意味を持ってくるんだろう、こう思っております。

 そういう意味で、この期間が終わった後も、この成果が今後とも長く生き続けるように、そうした努力を我々もしていきたいし、また地元の皆様方も今後さまざまな形で御協力、御努力をいただければありがたい、こう思っているところでございます。

鈴木(淳)委員 せっかく始まった草の根の国際交流でありますので、ぜひこれからも定着をしていきますように、ぜひまた外務省の方からも御尽力、またはお力添えをよろしくお願いしたいと思います。

 それでは次に、先ごろ閣議決定されました国家公務員の定員合理化計画について少しお尋ねをしてみたいと思います。

 政府は、さきに閣議決定されました定員合理化計画の中で、今年度分と合わせて五年間で定員の一割に相当する三万三千二百三十人の合理化を行うということになりました。この中で各省庁ごとの削減目標も定められまして、外務省は、本年度定員の五千四百二十八人に対して四百四十九人の削減目標が示されたということであります。

 もちろんこれは、計画は削減分のみでありまして、各省庁が要求する増員分は含まれておりません。結果的には、定員純減の目標は今後五年間で五%以上とすることを経済財政諮問会議は提案している、こういうことでありますけれども、いずれにしても減員は避けられない、こういうことであります。

 今回の総選挙の中で、小泉総理は遊説の機会ごとに、郵政公社の公務員が二十六万人いるぞ、これに対して外務省はたかだか六千人に満たない五千数百人だ、こういう話をよく出された。改めて、ああ、そうなんだな、この我が国の外務省というのは本当に限られた人員の中で懸命に頑張っているんだなということの認識が改めて国民の中にも深まったような気もいたします。

 諸外国と比べても、人口比当たりの外務公務員数で見て決して多くはない、相対的には少ない人員で頑張っているということも、これは事実であると私も思います。

 しかしながら、やはりますます複雑化をする国際社会の諸問題に対して、これまで以上に能動的かつ迅速な対応が求められるということでありますけれども、在外公館を数多く抱えて、またその性格上これはやはりマンパワーに依拠する部分が大きい、そうした部門であろうと思うのでありますが、外務省にあって本来どの程度の人員が本当は必要なのかという、本当は積算が必要なんだろうなと思うわけであります。

 ただ、行革に際しては、やはりどうしても始まりが既に減定員からということになるのはやむを得ぬことでありますし、また数値目標を掲げなければ実際の行革というのはなかなか進まないのも事実でありますから、これはある面でやむを得ぬところもありましょうけれども、やはり本来外務省としてはどのぐらいの人員が必要かという具体的な積み上げ算も必要であろうと思うわけであります。

 いずれにしましても、外務省はこれまでとても厳しい予算の中で、また定員事情の中で、在外公館の活動強化のために懸命の努力を続けてこられたということは私も承知をしますけれども、今回の削減が果たしてこれは本当に対処可能なんだろうかと一部やはり心配もするわけであります。

 私は、国家公務員の削減に反対するものではありませんし、総論賛成、各論反対、こういう議論をするつもりはありませんけれども、国際社会における我が国の国益を守る、こういう観点から、この機会にぜひ、外務省の体制整備を新たにするためにも、増員が不可欠な部分もあるであろうし、また合理化が避けられない部分もあるというふうに思いますけれども、今回の削減計画、閣議決定を受けて、この中で外交実施体制の整備強化にどのように取り組むのかということについて、大臣の見解をお尋ねしてみたいと思います。

逢沢副大臣 大変重要な点について御指摘をいただいたわけであります。

 もちろん、外務省といたしましても、去る四日の閣議において新たな定員合理化計画が決定をされた、その決定には最大限努力をし、政府全体の意向に沿っていかなくてはならない、生産性を上げていく、合理化あるいはまた効率性を上げていく努力をしていきたいというふうに思います。

 しかし同時に、今鈴木先生御指摘のように、我が国が力強く外交を進めていくにつきましては、やはりマンパワーは率直に言って必要である。そのことは、国会議員の皆様方また国民の方々にもひとしく正しく御理解をいただきたいと強くそのように考えているところであります。

 本省及び世界全体に展開をいたしております在外公館の数は百八十九でありますが、委員御指摘のように、現在五千五百名足らずの少員で努力をさせていただいております。米国の国務省の職員は約二万一千人。アメリカの四分の一でございます。フランス、英国は人口的には日本の約半分でございますが、フランス外務省職員九千人、また英国そしてドイツはそれぞれ約八千人というふうに承っております。そういった諸外国の外交実施体制、マンパワーの状況を考えましても、我が国は人口比におきましても非常に少ない数で外交を行っているということが、相対的には明確になっているところであります。

 御承知のように、平和と繁栄を確保していく、安心、安全の確保、テロ対策等々を中心に大変大きなニーズがあるわけでございまして、国連改革あるいは対北朝鮮外交、そして日本の経済基盤強化を念頭に置いた経済連携協定等々経済外交の要請、非常に幅広く外交には重要課題があるわけでございます。そういったことを考えますと、外務省の人員体制は限界に来ているということを率直に申し上げさせていただきたいというふうに思います。

 政府全体として定員の純減を確保するに当たりましては、府省を超えた定員の大胆な再配置、こういうことが非常に必要ではないか、そのように考えているところでございますが、在外公館の定員を含めた外交実施体制を強化する中で、国会また国民の皆様方の御理解を求めていきたい、そのように考えております。

鈴木(淳)委員 今副大臣おっしゃいました、府省を超えた定員の再配置ということも現実的にはやはり必要だろうと思いますので、これは、先ほど申し上げましたように、積算をする中で、本当にどの程度のマンパワーが必要かということも、ぜひ一度改めて検討もお願いしたいなというふうに思います。

 それでは次に、国連改革、安保理改革についてお尋ねしてみたいと思います。

 我が国がこれまで懸命に取り組んできました国連安保理常任理事国入りについて、さきの国連総会では、G4の枠組み拡大決議案は残念ながら採択されずに廃案となってしまいました。G4の一連の働きかけによって安保理改革の機運がかつてないほど高まったという一定の評価はもちろんあるわけでありますけれども、他方、事実として、結果だけ見れば、常任理事国入りという我が国の当初の目的を果たし得なかったということも、これまた冷厳な事実であります。

 首脳会議の成果文書においては、安保理改革は国連改革の不可欠の要素とされまして、その実現に向けて努力を継続しつつ、本年末までに国連総会に対して進捗状況をレビューすることとされましたけれども、現在、今まさに安保理改革は第二の出発点にあると言えるかもしれません。そして、再挑戦に向けてのこの機会に、我が国にとって、今回なぜ当初目的を果たし得なかったのか、その原因は何なのかということを、やはり冷静な分析が必要であって、それに基づく戦略の再構築が今とても大事な課題であるというふうに思います。

 自分なりに考えてみると、今回の一連の経緯におきまして、一つは頼みにしていたアフリカ諸国の足並みがそろわなかった。これはいろいろな背景があると思います。アフリカ諸国だけの問題もあるでしょうし、中の問題があるのでしょうし、あるいは中国の影というものもあるかもしれません。

 そしてまた、我が国を含めたG4諸国のそれぞれの安保理常任理事国入りを歓迎しない勢力が、それぞれ近郊にどうしてもこれは存在する。我が国にとっては、これは中国あるいは韓国、特に中国でありましょうが、こうした存在もある。また、我が国に対して明確な支持を打ち出してはくれたものの、G4提案には結果として消極的な対応に終始したというアメリカの存在も、これはもちろん無視はできない。

 こうしたさまざまな要素があると思われますけれども、またさらに話を進めれば、G4という枠組みそのものが果たして最適であったのかという議論も実は成り立つのかもしれないというふうにも思います。

 思えば、外交交渉というのは国益をかけた熾烈な戦いでありまして、まさに思惑と思惑のぶつかり合いでありまして、表向きの言葉と違って、本当にその実、激しい対立の中での調整であろうと思いますので、まさに武器を用いない戦いであろうと思います。

 このあたり、今回の一連の流れを受けて、我が国の従来戦略の検証について、政府は果たしてそのあたりの分析と検討をいかに進めているのか。そしてまた、分析に基づいて、我が国の国連改革、安保理常任理事国入りに向けて、今後いかなる形で再挑戦をしていくのか。その基本について、外務省の現時点における分析並びに今後の展開、基本方針をお尋ねしてみたいと思います。

町村国務大臣 安保理改革は、先般の成果文書の中でも、幅広い国連改革の中の重要な一つの柱であるという位置づけになりました。

 一年前、小泉総理が国連総会でこの安保理改革の話を述べたとき、ほとんど反応がないような状態でございました。それから一年かけて、日本がいわば主導した形でこのG4をつくり、運動をやってきた。また、昨年の十二月、十一月末でしたか、有識者の提言が出され、また三月にはアナン事務総長の報告書も出されるという形で、どんどん機運が高まっていったと思います。

 したがって、今回の国連総会の中でも、首脳会合、一般討論演説を通じて、百九十一カ国のうち百三十九カ国までが、形は多少違ってはいますけれども、安保理改革の必要性に言及するようになってきた。これはまさに大きな変化だ、こう私は受けとめておりまして、今委員が言われたように、私もある方から、それは一九四五年に戦争の結果でき上がった戦後のパラダイムを変えるには戦争をやるしかないよ、話し合いで変えられっこないではないか、そういうことを言われる方までいたことを、私はよく記憶に残っております。

 しかし、もとより戦争を通じてということはあり得ない選択でありますから、外交活動を通じてその活動をやってきたということでありまして、もとより難しい仕事であるということはよく承知をした上で始めました。しかし、結果、委員御指摘のように廃案になったということでありますから、いわば第一ステージはこれで終了し、今の総会あるいは首脳会合から第二ステージに移っていったと言っていいんだろうと思います。

 では、過去一年あるいは実はその前からやってはきているわけですが、それをどう評価、総括をするのかということでございます。

 確かに、一つはアフリカという要素が大きかったことは事実だろうと思います。何しろ五十三カ国という、派閥と言ってはなんですが、わかりやすく言えばそういう最大グループでございますから、これらがどう動くかというのは大変大きな要素であったわけであります。AUというものが存在をし、AUの一体性ということを彼らは口を開けば言っておられました。

 ですから、AUが一体的に行動するのであろうということを、どうしても彼らと話をするときにはそれを前提とせざるを得ないわけでございますが、現実にはそう簡単なものではない。どこかの国が可能性が高くなればほかの国がそれに反対をするといったような、複雑な、やはり日本的な言葉で言えば足を引っ張るというんでしょうか、そういうようなことも働きます。また、拒否権をどうするかということについて、これは理念的な面で大変な相克があったとも聞いております。

 結果、アフリカ首脳会議というものが八月に最終的に開かれて、何らの結論も得ないまま先送りにされてしまったというところは正直言って大変大きかったかな、こう思います。

 それから、二番目の要素として、確かに委員言われた反対グループ、いわゆるコンセンサスグループと言っている方々、中国は必ずしもコンセンサスグループではないにしても、反対グループというこれらの活動も確かに活発であり、彼らもまた決議案を出してきたということであります。

 しかし、それらの人たちが安保理改革そのものに反対かといえば決してそうではないという意味では、私は共通の認識があると思います。あとはどうこれを具体論でやっていくのかということでありまして、そういう意味で、中国との対話をより一層強化していきたい。私と李肇星外交部長と、随分話し合いをしましたが、さらにこれも強化していかなきゃいけないと思います。

 アメリカのことにもお触れになりました。

 アメリカも、正直言うと取り組みが立ちおくれていたと私は思います。何しろボルトン国連大使が発令されたのは八月でございますからね。そういう中でありますから、彼らが安保理についての意見を議論し始めたのが春以降でございますから、なかなか彼らの意見が固まらなかった。いずれにしても、関心事項は、安保理改革もあるけれども、それ以上に人権問題とかあるいは国連事務局の改革といった方に、当面、アメリカ議会との関係で、米政府はそちらに重点を置かざるを得なかったという面もあろうかと思います。

 ただ、ライス国務長官は、先般の国連総会一般討論演説の中で、安保理改革の必要性、またそれの拡大を支持する、日本の常任理事国入りも支持するという発言もしておりますから、今後、米国とはより一層緊密な協議を行っていこうかなと思います。

 そして、G4の戦略、これがいけなかったんではないかという意見も確かにあります。では、逆に言うと、日本一国だけでどこまでこの運動を展開できたかというと、やはりそこには一定の制約もあったんだろうと思いますので、当面、私は、G4という組み合わせといいましょうかグループでやってきたことは別に間違っていなかったとは思います。

 しかし、最適、ベストであったかと言われれば、それは結果がこういうことだったんですから、そこは今いろいろ考えなければなりません。しかし、一年を通じてともに戦ってきたというか、活動してきた連帯感もありますので、第二ステージに移ったからはいさようならと、それほど人情のないことはできようはずもありません。

 今後G4諸国ともやはりよく話し合いを続けながら、中国、アメリカあるいはアフリカ、そういう国々とも話し合いをし、新たな運動を構築するような方向で、今さまざまな話し合いを国連の場あるいは個別の場で行い始めているというのが現在の状況でございます。

鈴木(淳)委員 時間が参りましたので終わりますけれども、まさに今第一ステージが終わってセカンドステージに移る段階でありますので、その初期設定というのは非常に大事だと思いますので、しっかりした分析と戦略再構築をぜひお願いしたいと思います。

 以上で終わります。

原田委員長 次に、赤羽一嘉君。

赤羽委員 公明党の赤羽一嘉でございます。

 きょうは二十分間という限られた時間でございますが、私は、過去何回か質問してまいりました国連安保理改革につきましての御質問をさせていただきたいと思います。

 まず、大臣におかれましては、大変激しい衆議院選挙戦終了直後また国連総会に御参加をいただき、大変にお疲れさまでございます。また、結果も、私たち日本という立場から見れば残念な結果になってしまった、こういった国連安保理改革でございましたが、私は、安保理改革のような世界の基本の形にかかわる問題について、こうしようという具体的な提案を日本が行い、そして具体的に行動を起こしたといったことは、評価されるべきものだというふうに思っておりますし、町村大臣のこれまでの答弁にもありますように、安保理改革を実現するというのは大変難しい大きな課題だ、楽観視というのは到底できないということは何回も御答弁をいただいているところでございます。

 また、先日、ある新聞での西田さんのインタビューか何かにもありましたが、ボクシングでいうと十五ラウンドの戦いで三回ぐらいが終わったところであって、ここで投げ出すような敗北主義で終わってはいけないと思う、これはまさにそのとおりだな、このように思うわけでございます。

 このことについて、まず幾つか具体的な、前回選挙前に質問をさせていただいた続きのようなことで確認をさせていただきたいと思います。

 実は、まずG4の共同案、これはAUとの共同提案を行おうと。私、前回の質問は八月の三日でございまして、この八月の三日というのは、実は、七月二十五日、ロンドンでのG4とAUの外相で合意されたことを確認するという八月四日のAUの臨時首脳会議が行われる前日でございました。

 ここでは、御答弁の中では、このロンドンでの合意を正式なものとして決定する場だ、このような認識をしている、こういった御答弁もあったわけでございますが、ここについてはどうだったのか、そういう合意が確認されなかった理由というのに何があったと分析をされているのかということをまずお答えいただきたいと思います。

町村国務大臣 今、赤羽委員が八月上旬の質疑のことにお触れをいただきました。

 いろいろな会合、会議等があったものですから、ちょっと私、もしかしたら正確でないかもしれない、誤った部分があったら後刻訂正をさせていただきたいと思いますけれども、ロンドンでAUの代表、ナイジェリアの外務大臣等と話し合って、それを確認するんだ、それをAUのコンセンサスにするんだ、そういう臨時の首脳会議であるという位置づけだということを、AUのコナレ委員長あるいはナイジェリアのアデニジ外務大臣等と話の中でそういう連絡を受けておりました。

 ただ、現実はなかなかそう簡単にいくのかなという懸念も持っていたわけでございますが、実際に会議が開かれてみると、むしろ拒否権問題、これはもう絶対拒否権を得なければいけないんだという原理原則論が噴出したり、あるいは非常任理事国の数をアフリカは四ではなくて五にしなければいけないといったような強い要求でありますとか、正直言って、今のAU以外の国々の動きとは相当違う話の方に議論が行ってしまいました。

 それは、これは新聞用語というんでしょうか、スポイラーズ、スポイルする、こういう言葉がありますけれども、スポイラーズという国々が大変な、予期せざる活躍をしたそうでありまして、結果的にはAUとして統一歩調をとるに至らずということになってしまったわけでございまして、正直言って、内心懸念をしたことが現実化してしまったということが八月上旬のAU首脳会議の結果であったということでございました。

 そういう中で、これではG4の枠組み決議案を採択に持っていっても可決する見込みがないという見きわめをしたものですから、採決に至らずということになったわけでございまして、そういう意味では、私どもも残念な思いもしております。

 アフリカの外務大臣とは、先般、九月、国連総会の場でガーナの外務大臣とも話し合いをしたりいたしまして、今後アフリカとはやはり緊密な連携を保っていくこと、特にこの安保理改革というのはアフリカの皆さん方の利益に合致することを我々もやろうとしているんだから、そこの大局的な観点を持ってもらいたいという話をしたわけでありますが、わかる国はわかるんだけれども、わからない国はわかっていてもわからないふうに振る舞うからどうしようもないんだというようなことも発言の中にありまして、なかなか難しいテーマでございます。

 しかし、いずれにしても、アフリカ諸国との協力は不可欠という認識に基づいて、今後彼らとの一層の緊密化を図っていきたい、かように考えております。

赤羽委員 AUの今大臣がおっしゃられたスポイラーズの出現の背景というのは、拒否権ですとか非常任理事国の国の数というのが、そういったことをきっかけにスポイラーズというのが出現したのか。私は、そうではなくて、僕は中国に対して悪く言うつもりはありませんけれども、中国のアフリカに対するプレゼンスの、日本とは決定的に違うこれまでの歴史とか経済的な援助、そういったものに対して、やはり中国側が相当この安保理改革について反対に回ったという、こういった働きかけがそのスポイラーズなるものの出現の大きな背景にあったのではないかというふうに、推測です。これは全然私の場合は推測にすぎないんですが、そこの点についてはどのような御認識を持たれているんでしょうか。

町村国務大臣 それぞれの国がそれぞれの国といろいろなかかわり合いを持っているわけでございまして、それは、実際、今回我々もいろいろな活動をやる中で、なぜこの国とこの国がそんなに近いんだろうかとか、今まで知り得なかったようなことが結構わかってきたりしまして、参考になると言っては語弊があるかもしれませんが、大変貴重な情報もいろいろ我々は得ることができたわけでございます。

 中国の御指摘がありました。どの国に対してどうということは申し上げませんが、中国がG4の決議案の採択に大変強力な反対運動を展開したということは、これは事実である、こう私どもも認識をしております。幾つかのアフリカの国に影響があったことも多分あるんであろう、こう言い得ると思います。

 ただ、その要素ばかりではなくて、実はアメリカもそういう活動を最終局面でやったという情報にも接しております。また、それ以上に、なぜそういう国々の説得がきいてしまったかというと、自分は安保理常任理事国になれる、なる資格があるとみずから思っている国があるんでありますが、客観的に見るとそれはとてもあり得ない国までもが我こそはと、我こそはと思うのはそれはどの国も自由なんでありますけれども、大変我こそはと思うんですね。

 しかし、どう見ても、客観的に見てそれはあり得ない。となると、おれがだめならあいつもだめにしてしまえという、ちょっと俗な平たい言い方で大変恐縮でありますが、そういう発想に見る見るうちに陥っていく。その心情にうまくアピールして反対運動が功を奏していくという面も見受けられたと私は思っております。

 したがいまして、個別の国名を挙げるともっとわかりやすいのでありますが、さすがに私の立場でそれ以上個別国名を挙げることは差し控えますけれども、そんなような要素もかなりありまして、AUの団結というのは表面上言うわけでありますが、現実はなかなか統一した見解を持つということがまことに難しい国々であるなというのが率直な今の印象でございます。

赤羽委員 ちょっと後で触れようと思ったんですが、この問題を、中国やアメリカの賛成を得られずこのG4の安保理改革を採決、可決するというのは大変至難のわざであると思いますし、その点についてはやはり今のまま次のチャンス、次の機会にしてもまた同じような結果になってしまうと思います。また、中国やアメリカとの外交力の差というのがやはり出たというふうに、私はそういう認識に立ちながら、ぜひ次の機会にトライをしていただきたいと強く思うわけであります。

 もう一つ、コンセンサスグループとの距離感についてでありますが、確かにコンセンサスグループの方たちはG4とは安保理改革については大変利害が相反している立場であるということは理解しますが、例えば韓国にしてもイタリアにしても、日本とのバイの関係ではそれなりの日本が言うべき余地というのは残っているわけでありまして、この安保理改革だけで全く立場が違うということで切り崩しができないということは私はないのではないかと。

 そんなことをやれば何のための日本の外交なのかというふうに思うわけでありまして、今後ネクストチャンスのときに、このコンセンサスグループについての取り組みというのをどのように考えていらっしゃるのか。先ほどの別の方の御質問の御答弁にもあったとは思いますが、繰り返しになって恐縮でございますが、その点について御答弁いただきます。

町村国務大臣 コンセンサスグループの国々の中でも、アルゼンチン、イタリア、コスタリカ、パキスタン、韓国、これらの国々は先般の国連総会の中でも、安保理改革は必要だ、しかし非常任理事国だけだよという主張をしているわけでございまして、だから彼らともう全く相反するということではなくて、やはり安保理改革は必要だということの認識は、例えば韓国とも、私は何度も潘基文外交通商部長官と話をしまして、そこは同じなんだということなんですね。

 実際、例えばイタリアの外務大臣とも国連総会の場で話し合いましたが、いや日本がなることにはもう自分らは全く異議はないんだ、しかしそれ以上は言いませんということで、あとは御想像のとおりでございます。同じようなことをパキスタンの外務大臣もおっしゃいますしというようなことなんですね。したがって、そこらあたりがなかなか難しいところであります。

 イタリア、ドイツの関係はもう明白だから、わかりやすい例で言うならば、ドイツの入らないG3でやればよかったかというと、では今度東欧諸国がどういう反応を示すだろうかというような問題もありますので、ここのところはなかなかそのバランスというのは難しいものがあるんだろう、こう思っております。

 いずれにしても、これらのグループとも緊密に協議をしていかなければいけない、こう思っておりまして、既にことしの六月ごろ、総会議長のあっせんで、これらのグループの代表とG4の代表と話し合いを行った実績もあるのであります。合意に至らずということで終わっておりますが、今後はさらにコンセンサスグループとも緊密に協議をして、やはり理解を得ていく必要があるというふうに思っております。

 今、韓国ということを特にお触れになられました。日本と韓国の間には対立する点もあるし、しかしむしろ圧倒的に数多くの共通点、共通の利益というものをお互いに持っているわけでございますので、今後、韓国の外務大臣も早晩日本にお見えになるという話も内々来ておりますので、そんな場を通じながら、あるいは日韓首脳会談でもそんなことを話し合いながら理解を得る努力をしていかなければいけない、こう思っております。

赤羽委員 次のテーマで、国連の分担金の分担率を引き下げるというようなことを日本として主張される、こういった報道もありました。

 分担率は、二〇〇四年から二〇〇六年、三年ごとに決まっていて、次の三年の分担率を近々決める場がある。このことについて、日本の分担率を引き下げるということを主張されるのかどうかということをまず第一点御確認させていただきながら、私は、言わんとすることは、それが本当にそうであるならば言わんとすることもよくわかるのだけれども、しかし発言権が与えられないから分担率を下げるということは、やはり国連そのものに私は日本は後ろ向きな方向に行ってしまうのではないかと。

 もちろん、だから、分担率をこれだけ支えているのだから当然発言権を与えろという、そういった根拠としてはよくわかりますが、安保理改革がうまくいかなかったから分担金を出すことはできないよというような形にとらわれる危険性というか心配があるのではないか、こういった思いの中でこの質問をさせていただきたいと思います。

町村国務大臣 この分担金、分担率の引き下げの問題、急にこの安保理改革が出てきたから言っているというわけではございません。

 実は、既にもう数年前、河野外務大臣であったと記憶をしておりますが、二〇〇〇年ごろでございましょうか、国連総会の場でやはり適正な分担率ということを発言し、当時、二〇〇〇年の日本の国連分担率は二〇・五七三%という過去最高点に達しておりました。日本が加盟した当初は、もちろんGNPも小さかったわけでありますけれども、一・九七%でありますから、大変な勢いでふえていった。

 しかし、これは余りにも高過ぎるのではないかという主張を当時の河野外務大臣がなさいまして、その後一九%台に下がっていったという経緯もありまして、別に、今回枠組み決議が通らなかったから、すぐこういうことを言っているというふうに結びつけて報道するのはまことにおもしろい話なんでありますが、決してそうではないということであります。

 やはり日本の置かれた立場、より衡平かつ公正な分担率の構造に関して合意をつくっていく必要があるという主張を、私は九月十七日の国連総会で発言をしてきたわけでございまして、安保理改革と直接関係づけているわけではございません。

 ただ、どう見ても、日本の今の一九・五%の分担率というものは、イギリス、フランス、中国、ロシアの分担率を全部合わせても一五・三%でございますから、それをさらに四%も上回るというのは、これは余りにも過大ではないかという認識は多分多くの国々が持っているんだろう、こう思います。

 報道によりますと、ロシアの国連代表部大使も、日本のこれまでの負担に大変感謝をしながら、引き下げ要求というのは、バランスをとることを求めるのは極めて自然だという発言までしているようでございまして、そういう感覚は次第次第に共有されていくんだろうと思います。

 ただ、これはゼロサムゲームでございまして、日本の分担率が下がるということは、ほかのどこかが上がるということを意味するわけでありますから、そう簡単にこれまたうまく結論に到達するかわかりませんが、来年いっぱいかけてこの議論はしっかりとやっていかなければいけない、こう考えているところであります。

赤羽委員 私は、国連の安保理改革というものを日本の外交として今後も大きなテーマとして追うということを定めるのであるならば、分担率ということでマイナス要因をつくることはどうなのかということの配慮もしていただきたい、そういう思いが一つあるということ。

 それとあと、この国連安保理改革というのは、それはやはり二年、三年でできるような話じゃないと思います。まだまだ時間がかかる。それだけの大きなテーマと腰を据えて、安保理改革をなし遂げるために逆算して日本の外交の体制はどうあるべきか、そのような取り組みをなされていく決意があるのかどうかということをお聞きしたい。

 そのためには、先ほど御質問にありました、やはり、外務省の要員が五千五百名ですか。私のいた三井物産ですら一万人いますので、そういう民間企業より少ないところで外務省がやるということ自体、私は本当に理解もできないし、行財政改革というのは、今をスタートに、今が適正規模かどうかということを見直しされないで常にマイナスをしていくというのは、私はいかがなものかという意見であります。

 加えて、これは何回も質問でも取り上げておりますが、他の役所から来ているアタッシェをやはり外様扱いする限りはだめだ。随分改善しているというふうな御報告もいただいておりますけれども、フルスタッフとして、例えば何かあったときに外務省のプロパーだけを引き戻すみたいな話じゃなくて、それは、そこに任官している間はすべて一緒なんだという、建前だけじゃなくて、実態としてもそういったことをやっていかないと、人数が少ない、少ないと言っていることが通らないというふうにも思います。

 当然ながら、対中国、対韓国といったことについても、いま一歩、いま一段の関係良好化を進めることが、私は、やはり安保理改革、今回の一つの区切り、反省であるべきだというふうに思っておりますので、そういったことのもろもろも含めて、安保理改革は三ラウンドじゃなくて残り十二ラウンド戦い切って判定勝ちをする、その決意で日本の外交に取り組んでいくのかどうかということに、最後、大臣の御答弁をいただきたいと思います。

町村国務大臣 委員からいつも貴重な御指摘をいただいております。

 一朝一夕でできる仕事ではない、そのとおりだと思いますから、腰を据えてこの安保理改革を進めていきたい、こう思っております。

 そのために必要な人員の問題、先ほど逢沢副大臣お答えをしたとおりでございまして、総理も全部減らすと言っているわけじゃない、めり張りをつけよう、こう言っているわけでありますから。当然、外務省は張りの方ですか、めりの方になっちゃいけません、張りの方だ、こう思ってしっかりと取り組んでまいりたいし、アタッシェの問題、いつも御指摘をいただいております。せっかく来ていただいた他省庁の方は、当然これは外交官の資格で行くわけでありますから、同じかまの飯という感覚で一緒に仕事をしていく、それが基本であることは当然だと思います。

 一生懸命、今後とも安保理改革を進めてまいりたいと思いますので、御支援のほど、よろしくお願いいたします。

赤羽委員 ぜひ町村外務大臣のときにこの大きな道筋をつくっていただきますよう強くお願いをしたいと思います。

 またきょうは、実はバリ島の連続テロ爆破事件をめぐっての渡航についての危険情報についてちょっと質問をしたかったのですが、時間がなくなったので御質問は次回にさせていただきますので、よろしくお願いします。

 どうもありがとうございました。

原田委員長 次に、篠原孝君。

篠原委員 民主党の篠原孝でございます。外務委員会に初めて所属させていただきまして、質問させていただきたいと思います。

 この席に立ちますと、ついつい米とか農地とかという言葉が出てきちゃいそうなんですが、農林水産委員会もここで開いておりましたけれども。皆さん御存じのとおり、この間の解散で都市部の議員はほとんど失いまして、農村部の議員が非常に残っておりまして、農林水産委員会はめでたく追い出されまして、私、希望いたしましてこの外務委員会に所属させていただいております。

 今回の解散、いろいろな問題があったと思います。郵政一本でやりましたけれども、私は、景気はよくならない、農村地域は疲弊したままだ、年金問題もある、それから橋梁談合とか、そんな問題がありました。そういうのをみんな隠しているような気がいたしました。

 しかし、その陰に隠れて、一番問題になってしかるべきなのは、私は山積みの外交問題だったんじゃないかと思います。既に皆さん触れられました。鈴木議員それから山中議員、赤羽議員。国連改革それからイラク問題、中国問題、もうメジロ押しです。BSEの問題という農林水産委員会と重なるような問題もあります。

 私、この外交問題は非常に大事じゃないかと思います。こんなに問題が山積みの委員会は、私はないんじゃないかと思います。それにもかかわらずテレビカメラが一台というのは非常に寂しいので、何かマドンナさんがいっぱい行っているどこかの委員会にばかり行っているんだろうと思いますけれども、片がついたような問題よりも、この外交問題こそ国運を左右する大問題ではないかと思います。幸いこの委員会にも、おられませんけれども、猪口さん、山中さんという新しいマドンナもおられますし、経験を積み過ぎておられる田中さんとか土屋さん、丸谷さんのマドンナもおられます。

 私、民主党の一員として、闘う民主党などと言っておりますが、何のために闘うか、どうも政権をとるために闘うみたいにとられておるようなんですが、私は違うと思います。国民、日本国国家のためにいろいろなただすべきところをただすというような形でやっていくべきじゃないかと思っております。ですから、建設的な御意見を申し上げて、それをそんたくしていただきたいと思っております。

 いろいろな問題があります。米軍再編問題とかいろいろありますけれども、私は、イラク問題一点に絞りまして、ちょっと質問させていただきたいと思います。

 今新聞報道がいろいろあります。撤退という言葉が非常に出てくるわけですね。我が国の部分もありますけれども、どちらかというと他の国、サマワでイラクの自衛隊を守ってくれているイギリス軍、オーストラリア軍が撤退するのではないかというようなことが盛んに報じられておりますけれども、ほかにもこのような国が一体あるんでしょうか。外務省はどのように把握しておられますか。

遠藤政府参考人 お答え申し上げます。

 現在、イラクに部隊を派遣している国のうち、派遣部隊の撤退につきまして、政府として公式な場で撤退を表明した国としては、ブルガリア、ウクライナがあると承知しております。

 まず、ブルガリアにつきましては、五月五日、この国の議会でイラク派遣部隊の期限を本年末までとするという決議が可決されまして、二〇〇五年末までに撤退を完了する予定であると承知しております。次に、ウクライナでございますが、先般選挙で選ばれました新大統領、これが本年三月に撤収計画に署名し、二〇〇五年の末までに撤退する方針であると承知しております。

 一方、委員御指摘のございました英、豪でございますが、英、豪を初めとしてその他の国、現在イラクに派遣している国は二十八カ国ございますが、それらの国でイラクから派遣部隊を撤退させることについて、政府として撤退を公に表明した国があるとは承知しておりません。

篠原委員 イラクのプロセスはいろいろ進んでおるわけです。十二月中に本格的な政権が発足する、日本の方も期限切れが参っております。ですから、こういったことを着実に考えていかなくちゃいけないんじゃないかと思います。

 これはあくまで新聞報道ですけれども、イギリスとオーストラリアも五月ぐらいの撤退を決めつつあるというふうに伺っておりますけれども、我々も撤退のプロセスというのをきちんと勉強していかなくちゃいけないんじゃないかと思います。

 今ブルガリア、ウクライナというお答えがありました。ほかにももっと前に撤退した国があるわけですけれども、そういった国々の撤退のプロセスというのは、日本が撤退するに当たって非常に参考になるんだと思われます。どのような国がどのようなきっかけで、そして端的に言いますと、国会とかいうのでどのようなプロセスで撤退していったのか教えていただきたいんですが、お願いいたします。

遠藤政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、イラクへの部隊派遣国につきましては、この二年ほどの間に新しく派遣したり、またその間撤退をしたりといろいろございますが、これまで撤退した国につきましては、サウジアラビア、ニカラグア、スペインそれからホンジュラス、ドミニカそれからオランダ等と十三カ国あるということでございます。

 このうち、イラクからの撤退の理由を政府の議会報告という形ですが公式に明確にしたのはオランダと承知しておりまして、その理由として、オランダ軍は、従来よりイラク治安組織の訓練を行っており、イラク治安部隊の自立化に応じ多国籍軍の規模が縮小されるという説明を行ったと承知しております。

 その他の国々につきましては、必ずしもイラクからの撤退の理由を明らかにしてございませんから、我が国としてこれらの国々の活動終了理由についてコメントする立場にはございませんが、あえて報道等で承知しているところを申し上げれば、例えばスペインにつきましては、二〇〇四年にこれは撤退を行いましたが、その年の三月にマドリードで御案内のとおり爆弾テロ事件がございまして、その直後に行われた選挙で政権が交代したこと。それから、フィリピンにつきましては、二〇〇四年の八月に撤退を行いましたが、その前月のフィリピン人の人質事件、この発生を受け、アラブ諸国で多数の出稼ぎフィリピン人が活動している同国の事情等が影響しているのではないかと考えます。

篠原委員 今伺いますと、スペインの場合は、爆破事件があって政権交代があったと。多分、私はよく承知しておりませんけれども、マニフェストとまでは言いませんけれども、野党の立場で反対したりしていて政権をとった、だから当然のこととして撤退という感じになったのじゃないかなと思います。

 フィリピンの場合は、暗黙の了解というか、人質が殺されたというようなことがあった、国民も納得する、それから国際世論も納得するというようなことがあったのじゃないかと思います。

 オランダの場合は、日本がお世話になっているわけですけれども、よくわからないのですが、それでも今伺ったところによると、非常にきちんとしたプロセスを踏んでいるということなんです。

 そういったときに、国際的に何か問題にされて、例えば、端的に言いますとアメリカ等からぐじゃぐじゃ言われたというようなことはないのでしょうか。

遠藤政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘のようなアメリカからの云々ということがあったというふうには承知しておりません。

篠原委員 日本の場合はアメリカへの配慮というのが非常にあるわけです。これが一つあるわけです。それは世界じゅう皆同じような感じかもしれません。

 もう一つ違うのは、日本の場合は治安維持に手をかさず復興支援だけをしている。復興支援はこれからますます必要になっていくわけですね。プロセスとして見たら、治安が回復された、だから復興支援がもっと必要になってくるというときに帰ってくるというのは、なかなか難しいのじゃないか、理屈は。

 だから、ゴールがないわけですね。今までのように、PKOとかいうのを出していましたけれども、そのときは国連が撤退というか終わりの期限を大体決めていてくれたわけです。そうすると、日本の場合は非常に難しい、給水はもう大体終わった、あとは学校だとか道路だとか、公共施設の建設だの医療の支援だの、こんなのはいつまでだって続くわけですね。

 そういったことを考えるとなかなか難しいと思うんですが、今までの撤退した国々のプロセスの中で日本の参考になるような国はあるんでしょうか。

遠藤政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど先生からの御質問に対して御答弁申し上げさせていただきましたが、これまでにイラクから派遣部隊を撤退した各国につきましては、そのときのイラクの情勢や、それぞれこれらの国が抱える種々の事情により活動の終了を決定したものと承知しておりまして、今後の我が国の活動を検討するに当たり同列に論じることは必ずしも適切ではないのではないかというふうに考えております。

 御案内のとおり、我が国の自衛隊の今後の活動、これにつきましては、これまで大臣等より国会等で累次申し上げておりますとおり、国際協調の中で日本の果たす責任、それからイラク復興支援の現状、諸外国の支援状況等を踏まえまして、日本の国益を十分に勘案して判断していくものと考えております。

篠原委員 余り明確な答弁のようには思えないのですが、要するに、私がなぜこれをしつこく聞いているかというと、日本もそろそろ撤退の準備をしなければいけない、少なくとも理屈づけというのは考えていかなければいけないのじゃないかというふうに心配しているからです。

 先ほど申し上げましたように、復興支援という特殊な任務でもって駐留している、なかなか撤退の理屈が難しいわけですね。犠牲者が出るとか、出てほしくないですけれども、そういった取っかかりとか、何かあったりする。

 それが、だんだん治安がよくなっているというので、それでイラクの治安組織にいろいろなことが移行されているという報道もあったりします。事実そうなんだろうと思いますけれども、逆の報道もあります。だんだんサマワでも悪化していると。日本との友好協会の会長さんの宝石店にデモ隊が押しかけたりして、爆破されたりしているというようなこともあるわけですね。反感も出ているような気がいたします。

 そういった中で、日本は余り世論が動いておりませんけれども、本家本元のアメリカやイギリスで世論が動き始めているんじゃないでしょうか。新聞報道にありまして、私も現物を取り寄せました。ごらんになっているんでしょうけれども、見開きの二ページ、全米の重立った十五紙にゼイ・ライド、ゼイ・ダイドと。こっち側には千九百人の死亡者の名前を入れて、こういう広告を出して、アメリカ軍もイラクから撤退すべきだと。

 イラクにばかり人を派遣して何だ、カトリーナという台風が来た、それへの準備もできていないというようなことが重なりまして、アメリカでも大問題になっているわけですね。アメリカ国民さえ疑問を呈し始めている。こういったときに我々はのほほんとしておられるのかという気がいたします。

 私がちょっといろいろ調べたところで見ますと、アメリカの場合も、世論調査をこういうことについてちゃんとやっているわけです。約二年前、当然ですけれども、全面撤退なんという人はほとんどいませんでした。一七%。それが今は三三%。倍の人が全面撤退すべきだと。それから、二三%がそんなにいなくたっていいのじゃないか、大半はもう帰ってきてもいいのじゃないか。つまり、撤退を支持する人たちが五六%。駐留した方がいいという人たちよりもずっと上回るようになった。これはCNNの調査ですけれども。

 ニューズウイークの調査もそういった傾向をあらわしています。ブッシュ大統領を支持するか支持しないか。支持というのは大事です。今や不支持が六一%になっている。アメリカの世論さえも大きく動いているわけです。シンディ・シーハンさんという反戦の、息子が亡くなった女性の方がデモに参加されたりしておる。

 アメリカというのは、日本より悔い改めるのが早い国ではないかと思います。ですから、悔い改めたらさっさと撤退してしまう。イギリス、オーストラリア、日本にそれなりに通告をしてきてくれているようですけれども、アメリカさえもそういうことをしかねない。私は、日本は早急に撤退の準備、そういうアナウンスメントをして、何か突然戻っていったというような批判を受けないように準備をすべきだと思いますけれども、そういった準備はされているのでしょうか。外務大臣からお答えいただきたいと思います。

町村国務大臣 まず、事実関係から申し上げておきますけれども、イギリスあるいはオーストラリアが撤退を決めたというお話、あるいはその種の報道の引用を今委員がなされたわけでございますけれども、かかる事実はまずないということを申し上げておきます。

 九月の二十九日から十月三日までロンドンで、これは日、英、米、豪の四カ国協議、これは現実に現場でいろいろな部隊を出したり活動をしている、いわば軍隊関係を中心とする外交官たちが折に触れて集まっている会議があるわけでありまして、従来からもやっているわけであります。

 その場でイラクの政治プロセスの進展状況でありますとか、治安の状況、あるいは各国がどんな活動をしているのか、それに伴ってどんな問題があるのかなどなど、実務レベルで一般的な意見交換をやる会議があったことは事実でございまして、これは従来からもこの種の意見交換はやっております。いずれにしても、この会議の場で何か新しい決定が行われたかどうかと言われれば、かかる事実はないということであります。

 ただ、それは常にそうでありますけれども、現場のレベルでは、こうなったらどうしよう、こうなったらどうしようといろいろ考えることはそれは当然のことだろうと思いますが、最終的な政治決断がどうかと言われれば、イギリスもまたオーストラリアもかかる決定はしておりません。

 九月の半ば、ニューヨークで私はイギリスの外務大臣とも話し合いをいたしましたけれども、イギリスはしっかり今後ともイラクで活動をし続けるということを明確に私に述べておりましたということをまず事実として申し上げておきたいと思います。

 それから、アメリカでのお話がありました。日本とアメリカはそれは全然違います。彼らは、今お話しのとおり、二千人近い亡くなられた方々がいる、これは大変なことだと思います。日本であれば、もし仮に一人でもそういう事故があれば、もう猛烈な撤退論が出てくるんだろうなと想像いたしますけれども、彼らは二千人近い方々が犠牲に遭われているというその重みというものを日本に置きかえて考えても、それは大変なものがあるでしょうし、したがって、撤退したらどうだという意見が出てくることも、それは容易に想像できるわけでございます。

 しかし、ブッシュ大統領は、累次、いろいろな場面において、今イラクの民主化プロセスが着々と進んでいる状況の中で、ここでもし撤退をするということになればテロリストたちに誤ったメッセージを与えることになる、テロリストに屈するということはできない、こういうことをはっきり何度も発言しておられるわけでございますから、私は、アメリカの方針が今直ちに変わるという状況ではない。ただ、未来永劫いつまでもいるかというと、それはそういうことはないわけでありまして、しかるべきタイミングで撤退をするということも、それは当然あるわけでありましょう。

 今、日本では、十二月十四日が基本計画の期限でございますので、これに向けていろいろな要素を考えなければならない。これも従来から申し上げておるとおり、一つは、イラクにおける民主化のプロセスがどう進んでいくであろうかということの判断、それから、イラク国内の治安状況がどういうことになるのか、もう一つは、自衛隊の人道復興支援活動がどこまでの成果を上げてきているかということ、それからもう一つは、国際社会の状況というものがどういうことなのかといったさまざまな要素を考えた上で、日本は日本で独自の判断をしていく。その際に、もちろん関係国といろいろ話し合いをしていきます。しかし、最終的には日本独自で判断をすることになるだろう、こう思いますけれども、今この時点でどうかと問われれば、その判断をするには余りにも時期が早過ぎる、こう私は現状考えているところでございます。

篠原委員 外務大臣のお答え、わからないでもないんですけれども、新聞報道で、新聞報道はしようがないんだろうと思いますけれども、きのうの朝日新聞の夕刊は、英軍の司令官のブラックマン大佐が「サマワ英軍 撤退を示唆」、こういうのは、ですけれども新聞に書いてあるからどうだというのは私は申し上げません。しかし、これだけいろいろ状況がせっぱ詰まってきたりしているので、ゆめゆめ、これだけ日本も貢献してきたんだから、去るときに何か文句を言われて去ったんじゃたまらないという気持ちが日本の関係者にはあるんだろうと思います。ですから、そういったことを、準備を着々としなければならないんじゃないかということで、こういうことを質問させていただいております。

 そこで問題になるのは、もちろんイラクは、あるいはイラク国民の立場からすれば、もっとずっといてほしいというのは、これは私は当然だろうと思います。いろいろ援助をしている、援助は幾らあったっていいわけですから。

 しかし、問題は国際世論だろうと思います、特にアメリカ。今、日本が主体的に判断すればいい、先ほど外務省の事務方の答えの中でも、余りアメリカからぐちゃぐちゃ言われていることはないということがありましたけれども、今現在において、日本に対して、どうしてもいてくれといったような明示的な要請はあるんでしょうか。

町村国務大臣 お答えいたします。

 イラクの外務大臣と九月、国連総会で会いました。その折、イラクの外務大臣からは、日本の自衛隊の活動に感謝するとともに、引き続き活動してもらいたいという要請があったことは事実でございます。

 その他の特定の国からということでございますけれども、まず、そもそも、日本の自衛隊のイラク派遣というのは、これは御承知のとおり、二〇〇三年五月の国連安保理決議一四八三、これが全会一致で採択をされた。イラク国民の人道上の要請を満たすことが要請されたことを踏まえて、日本なりにできることは何かということを考えてこの派遣を行っているということでございまして、国際的な圧力というか、圧力という言葉は不適当だ、国際的な世論という意味では、まずこれが一番わかりやすい出発点になっているということでございます。

 その後、いろいろな会議等がございます。例えば、私も参加をいたしましたが、ことしの六月、ブラッセルでイラクに関する国際会議が行われまして、八十を超える国、機関がイラクの政治プロセス、復興を支援しようということで一致を見ておりますし、また、G8外相会合、これも私、ロンドンで開かれたときに出ましたが、このイラク国際会議の結論を歓迎するということがうたわれております。また、G8首脳においてもそうしたことがうたわれております。

 そういうようなことでございまして、国際社会がいろいろな場面において、ともにそれぞれの持ち分を果たしていこう、役割を果たしていこうという国際的な一致したコンセンサスがあることは、これは事実だろうと私は思っております。

篠原委員 それはよくわかります、いろいろなところで日本の駐留というのは評価されておるのは。

 私は、問題としてこれを取り上げているのは、それはわかっておるのです、しかし、そうだからこそ、去るときに、去るときの理由の方が難しい。これはちょっと例が悪いかもしれませんが、恋愛が始まるときより別れるときの方が難しいのと同じように、恋愛に例えるのは不謹慎かもしれませんけれども、なかなか難しいんじゃないかと私は思います。そういったことを考えると、まだ全然判断の時期ではないというふうに外務大臣はおっしゃいますけれども、客観情勢を見ますと、そうじゃなくなってきているんじゃないかなという気がします。

 いろいろ内紛があるようです。九十人の死亡するテロがあった、それからクルドとスンニとシーア派、三つに分裂するんじゃないかというおそれもあります。わかりません、そういう情報は。外務省もすべてこういったものを把握されているのじゃないと思います。

 それから、不穏な動きが、十二月の最後のプロセス、これは今、憲法草案の問題もあります、そういったプロセスを邪魔しようという勢力がいっぱいある。そういった中でどうやって日本が撤退するかというのをよく考えなくちゃいけない。そうすると、治安維持の方は、ナジャフや何か、ああいったところでもって、もう治安体制が整った、治安がよくなったというわけじゃないんだろうと思いますけれども、イラクが自立できる体制が整ったということで、そういう大義名分があるわけです、移行できると。

 先ほどから繰り返し申し上げていますとおり、復興支援については、治安組織がうまくいったからとかそういうものじゃないわけです。そういった理屈づけが行われないわけですね。だから、そういうところが非常に難しくなってくるんじゃないかと私は思います。

 ですから、そろそろ、何をするかというのをちょっとずつ、急にというのじゃなくて、日本もそれなりに発言していく。私の記憶しているところでは、三月に大野防衛庁長官が、年内に撤退ということもあり得るというようなことをちらっとおっしゃったように記憶しております。そういったこともちょっとずつ小出しにしていくというようなことが必要なんじゃないかと私は思います。

 気がつくと日本だけが置いてきぼりになるというようなことにならないように、つまり、イラクにも説明しなければいけない。ほかの国はそれほど日本の駐留について関心ないかもしれませんけれども、アメリカにもちゃんと説明しなければならない。そうじゃないと、日米同盟にも影を落としますし、イラクの復興にも影を落とす。

 ですから、そういったことについては、防衛庁ではなくて町村外務大臣の御判断、小泉総理の御判断を仰がなければいけないわけですけれども、こういった準備を着々と進めていただきたいという気がするわけです。

 ですから、イギリスもオーストラリアも、日本に気を使っているんじゃないかと思います。彼らが、足並みそろえて撤退できるようにと、あちらが言っているわけですから、こちらもこたえて、撤退しやすいように日本も、理屈としては、イギリスとオーストラリアが撤退しそうだ、だから、日本も守ってもらえないから撤退せざるを得ないというのが、私が考えるのには非常にいい理屈じゃないかと思うわけですけれども、いかがでしょうか。

町村国務大臣 確かに、一般論で言うならば、撤退の仕方といいましょうか、理屈づけといいましょうか、委員御指摘のとおり、なかなかそれは難しい面があるんだろうと思います。どう考えても、イラクにおけるテロ活動というものが急速におさまるという状況というのは、今後の政治プロセスいかんにもよりますけれども、なかなか予見しがたいものがあるんだろうと思います。

 そういう状況の中で、今国際社会は一致してテロとの闘いという側面もあるわけでありますね、民主化を助けるという意味は。その戦列から一抜けたということをいわば言うことになるわけですから、仮にイギリスは、ムサンナ県というか、イラクの南部から撤退したとしても、全部イラクから引き揚げることを彼らは考えているわけではもとよりないわけでありまして、より危険なバグダッドとかそういうところには居続けるわけであります。オーストラリアも同様だろうと思います。その存在がイラクから全部なくなるというわけではない。

 日本は、もしムサンナ県から、サマワから引き揚げれば日本の存在そのものがなくなってしまうわけでありますから、そこは、同じサマワからいなくなりますよといっても意味合いが非常に異なるんだという点をひとつぜひ御理解いただきたいなと思います。

 いずれにいたしましても、進むときも大変難しい厳しい判断をした結果、自衛隊の派遣をしたわけであります。同じように、どこかの時点で撤退をするということになれば、それはそれでなかなか難しい判断を迫られるんだろうと予想するわけでございますし、その際に、委員が今御指摘のあったような、地元への理解、あるいは関係諸国への理解というものを得ながら進めていく。何か、より危険が増したので、もうあたふたと逃げ出したといったような印象を万が一にも与えるようなことがあってはならないだろう、こう思います。

 いずれにいたしましても、今急にここで結論を出す状況ではないと思いますけれども、いずれそういう段階が来たときには、今委員が御発言になったようなことも念頭に置きながらそれは考えていかなければならない重要なポイントであろうかな、こう思っております。

篠原委員 私は、今回のイラクの自衛隊の派遣は、国際社会には非常に何か日本のプレゼンスのあり方でいい見本を示したのではないかと思っております。

 どういうことかといいますと、日本が出ていくときは、近隣諸国の中国や韓国、まあ韓国は軍隊を自分も派遣していたのでそれほどわあわあ言わなかったと思いますが、中国とかは心配したはずです。まあ、第二次世界大戦の犠牲になったというのがあって非常にナイーブですね。しかし、日本が出ていって、本当に憲法九条を守り抜いて武器を一切使用しないということ、この点については国際世論は非常に感心したんじゃないかと思っております。

 民主党は反対いたしました、派遣について。しかし、災い転じて福となす、本当に日本は憲法九条を守り通している。核兵器については、核を廃絶しろと言いながら、アメリカの核の傘があるとかいうので、ちょっとゆがんだ目で、ゆがんだという言葉より、いかがわしい目で見られている面があります。しかし、憲法九条についてはこんなに律儀に守り通すとはだれも思っていなかったんじゃないか。

 いろいろ外国の論調、フォーリン・アフェアーズとか見てみました。そうすると、フランシス・フクヤマさんなんかも、従来の父と子のファーザー・チャイルド・リレーションから対等の関係になってよかった。それから、これは日本人なんだろうと思うのですけれども、ニューヨーク・タイムズ、インターナショナル・ヘラルド・トリビューンに載っていましたけれども、イッツ トゥループス ハブ サクシーディド イン ノット ファイアーイング ア シングル ショット、一発も弾を撃たずに成功していると。

 そして、もっと客観的な立場からおもしろい記事があったので紹介しておきますけれども、オシャム・ダウォードという人がフランスの「今日の軍隊」という雑誌の三月号に書いて、セキュリタリアンという防衛関係の雑誌のところに転載されておりましたけれども、日本の存在が異彩を放つ、アメリカ軍は占領という圧しているという空気をなくすために一生懸命になっている、それに対して日本は軍服を着ながらそういうことはせずにためになっている、こういう国際協力というか駐留のやり方もあったんだというふうに大きな評価を得ているわけですね。

 アメリカとの連帯もとることができた、そして、イラク人にもそれなりに評価され、外国からも評価されている、こういった見方があるのですけれども、この点について外務大臣、いかがでしょうか。

町村国務大臣 委員から大変貴重な御指摘、また、それぞれの雑誌等での論文等にお触れをいただいたわけでございます。外務省も全部目を通していないものですから、私も今大変御指摘をいただいてありがたかったと思っております。

 私ども、どうしても先方政府の関係の発言ばかりが目に入ってしまうものですから、イラクの今の移行政府の大統領、首相、外務大臣、そういう方々から累次そうした感謝の言葉があったり、あるいはアメリカ、イギリス、オーストラリア等々の大統領、首相等からもそういう発言があったりということはよくわかるわけでありますが、今のその学者の発言、あるいは、今引用なされたオシャム・ダウォードさんという方ですか、本当に日本が日本独自のやり方で、まさに軍服は着ていくけれども鉄砲を撃たないという形での日本独自の活動にそういう評価を国際的にしていただく方があるというのは、まさに声を大にして日本が今後主張していいポイントなんだろう、こう思っております。

 日本は日本なりのやり方ということでこれまでもやってまいりましたし、これから日本がもう少し普通の国になるのかどうかそれはわかりませんけれども、いずれにいたしましても、今回のイラクにおける自衛隊の活動、私は、そういう意味で国際的な評価も高まっているし、また国内においても、私はたまたま地元、北海道千歳市という第七師団というのがありまして、そこからもイラクに行かれた方々があり、帰国していろいろな場面でスピーチをされておられるのですが、それを聞いた地元の方が、そんなに自衛隊ってすばらしい活動をしているのかということを改めて認識するといった発言が新聞に出ていたり、あるいは私に直接語ってくれる方もいらっしゃいます。

 そういう活動の積み重ねというものが自衛隊の評価になると同時に、それは国際的な日本の評価につながってくるもの、このように考えているところでございます。

篠原委員 最後に申し上げたかったのですが、このノーマルカントリーという、普通の国になりたいという、我が代表を初めとして、ちょっと不穏な、不穏ななんと言ったらあれかな、いろいろな動きがあります。しかし、この自衛隊の派遣、非常によかったんじゃないかと思います。

 せっかく猪口邦子さんにも外務委員会に所属していただいたので、健筆を振るっていただいて、日本のこのいい行動を世界じゅうに広めていただけたらということをお願いいたしまして、私の質問を終わらせていただきます。

原田委員長 次に、山口壯君。

山口(壯)委員 民主党の山口壯です。

 前回町村大臣といろいろ質疑をさせてもらったのは、大臣が文部大臣のときに、私が三十人以下学級法案というものを出して、あのときは相当激しいバトルをやらせてもらったのですけれども、きょうは一般質疑ということで、また違う趣でいろいろ質疑をさせていただければと思います。

 先ほど、私は質問通告はしていないのですけれども、せっかく篠原委員がイラクのことを聞いていましたので、通告をしていないという範囲内でお答えいただければと思います。

 イギリスとオーストラリアが何らかの形で部隊の配置を変えることも議論をしているだろう、そういう場合に、サマワに自衛隊がいて、今の法的な枠組みあるいは仕組みでいえば、自衛隊が自分で守るという仕組みになっていないわけですから、したがって、イギリスなりオーストラリアなりがいて初めてその駐留が成り立つ。どこかに部隊が動く場合には自衛隊の配置も当然影響を受ける可能性があるわけなんで、その辺の情報の収集というのはとても大事だと思うのですけれども、そのことを踏まえて、イギリスとオーストラリアがどういう配置変えをしようとしているのか、この辺について一言お願いできますでしょうか。

町村国務大臣 今、山口委員から、自衛隊は一切みずから守ることができずに、専らイギリス、オーストラリアにそれを依存しているという指摘は不正確だと思います。

 治安維持活動は自衛隊はやっておりませんが、しかし、自衛隊はみずから身を守ることは当然のこととしてそれはやるわけでありまして、仮に日本の自衛隊が攻撃されて撃たれるがままにしているなんて、そんなことはありませんので、みずから守ることは守ります。その点はぜひ御理解をいただきたいと思います。ただ、一般的な警察活動、治安維持活動みたいなものは自衛隊は任務としていないという違いだというふうに御理解いただきたいと思います。

 その上で、イギリス、オーストラリア、先ほど申し上げたようにいろいろなオペレーションの想定をすることは、軍隊というのは常にそういう組織だろう、こう思いますから、こうなったらこうする、こうなったらこうする、いろいろな机上作戦を常に更新していくということはあり得ることだと思います。

 しかし、申し上げたいことは、先ほど篠原委員にも申し上げましたけれども、何か、もう既に撤退という既定方針が決まっておって、それに基づいて具体的な動きがもう始まっているという段階ではないということです。いずれかの機会にそういうことは当然あるだろうとは思いますけれども、今既にそういう方針をイギリス政府が決めて、それに着手をしているという状態ではございません。

 もしそういうことであるならば、当然、ストロー外務大臣から私の方に、今回イギリス政府はこういう方針にしたからひとつ御理解をいただきたいとか御協力いただきたいという連絡があります。しかし、一切そういう政治レベルの話がないわけでありますから、したがって、イギリス政府が何かどこかの地域から撤退するとか、あるいはイラク全体から撤退するとか、そういうような方針を決めている事実はそもそもないんだということを御理解賜りたいと存じます。

山口(壯)委員 イギリス、オーストラリアの移動というのは、どちらにしても日本にとっては大変影響のある話ですから、したがって、外務省としては非常に重要な情報だと思います。特に、今回、一年延長するかどうかという話であれば、その一年の間に動く可能性があるのであれば、そのことの政治的な意味というのも非常に大きいと思いますから、その辺の情報収集というのは万端怠りなくやっていただきたいと思うんです。

 遠藤審議官でも結構です、その辺は今、先ほどは新聞の話は正式には決まっていないというお答えを大臣からも審議官からもいただきました。その辺の情報収集について、九月の会合とかも大臣からもお話がありました。しかし、いわゆる現場の外交官同士で、あるいは現場に当たっている人同士でのそういう情報収集の中で、その辺の動きはどういうふうにとらえられているか、お聞かせください。

町村国務大臣 委員御指摘のこと、非常に重要なところでございます。

 先ほど申し上げました九月末の会議というのも、まさにそういう定期的な情報交換の場として、現地で活動している国が集まってそういういろいろな意見交換をする場でございますから、非常に貴重な場である、こう思っております。

 そのほかにも不断に、例えば我が方の在英大使館がイギリスの国防省なりあるいは外務省なりの人たちと話し合って、今どういうような議論が政府内で行われているのかといったようなことについて率直な意見交換も、これは外交活動の一環としてやることは当然のことでございましょうし、また、イラクに、バグダッドにいる我が方大使館もまた同様の活動をやる。それぞれの、あるいはワシントンにおいても、あるいはオーストラリアにおいても、それは全くそうだろうと思います。

 その辺、問題意識を研ぎ澄ませながらそうした日常的な外交活動をやっていかなきゃなりませんし、また、高いレベルでの意見交換も随時やっていかなければいけない、このように考えております。

山口(壯)委員 イギリス、オーストラリアが動いた場合でも、日本はサマワの駐留をこのまま続けるのかという質問があり得ると思いますけれども、それはまた別途の機会にさせてください。

 通告させていただいていた質問に移らせていただきます。

 先ほど大臣の所信の表明の中にも、この十二月にマレーシアでもって東アジアの首脳会議ということを触れられました。そのことがアジアのいわゆる共同体構想につながるという文脈で、今所信表明があったと思います。

 他方、我々は、この構想というものはとりあえず議論はされているけれども、実際の実務として、これを意識的に、あるいは戦略的に積み重ねるということは果たして十分にされているんだろうか、こういうことを思うわけです。

 まず大臣から、このアジア共同体、この構想についての所見を再度お願いします。

町村国務大臣 釈迦に説法でございますけれども、この東アジア、まさに成長センターと言っても過言ではないような、今巨大な経済的な成長、また潜在力も大きなものがあるということでありまして、人口の約三分の一、GDPの約五分の一、外貨準備高に至っては約半分を占めているというのがこの東アジア地域でございます。

 こういう中で、この共同体形成、これはよくEUとの比較が議論になるわけでございまして、EUも戦後間もなくのときから既に、石炭鉄鋼共同体といったようなものに始まりまして、長い積み重ね、五十年余の積み重ねでようやっと今や政治共同体にまでなってきている、共通憲法を持つかというところまでになってきているわけであります。そのプロセスと比べればまだまだ、例えばECと言っていた時代、一九五〇年代のときにやっと今東アジア共同体があるのかないのかということかなと思っております。

 ただ、現実の姿を見ると、例えばEPA、FTAに見られるような経済連携というものもかなり現実的には進んできておりますし、金融面で言うならば、九八年でしたか、アジア通貨危機の折に、日本がまさにイニシアチブをとって、アジア、お互いに助けていこうということで大変な協力をとり、チェンマイ・イニシアチブというような形で一つのものができ上がっている。

 あるいは、国境を越えるいろいろな問題、テロの問題、麻薬の問題、十分であるかどうかは別にして取り組みが進んでいる、あるいは環境問題、こうしたさまざまな機能的な協力というものが既に相当程度進行しているのも事実でありまして、そういう局面を見ると、ECになぞらえるならば、五〇年代当時よりは今ははるかに進んだ姿にあるんだろう、こう思います。

 そういう中で、この十二月に初めて東アジア首脳会議というものが開催される。実は、必ずしも十分煮詰まっておりませんのは、既存のASEANプラス3という形式が一つあるわけであります。それとこの東アジア・サミットは一体何が違うんだろうか。必ずしも十分なコンセンサスが得られていない部分もあるんですけれども、やや、先にとにかく東アジア・サミットという言葉が走ったようなところもございます。いずれにしても、これも一つの大きなきっかけになってくるんだろうと思います。

 では、日本としてはこの共同体形成というのはどういうふうなものであったらいいのかなという考え方、幾つかの原則といいましょうか、それを私どもは持っておりますし、それをいろいろな機会に申し述べております。

 一つは、これは閉鎖的なものであってはならない、地域に開かれたものであるべきだということでありまして、例えばこれはASEANプラス3と同じ国である可能性もあったわけでありますが、現実にインドとかオーストラリア、ニュージーランド、こういう国々が参加をしたいという強いお話があったものですから、それではASEANプラス3に限ることはないなということで、まさに開かれた地域協力という原則に基づいて、これらの国々にも当初から、十二月の段階から参加をしてもらうということになりました。

 それから二番目は、先ほど申し上げました機能的な協力をまず促進していこうではないか、可能なところでどんどん協力を進めようではないかということが二番目であります。

 三番目は、やはり民主主義とか人権とか、こうした人類にとって普遍的な価値をできるだけ共有するようにしようとか、あるいはWTOのようなグローバルなルールというものに従ってやっていこうではないかというのが三番目の考え方。

 そして四番目は、特に人的な交流とか知的交流の促進というものを重視していったらどうだろうか、こんなことを私どもは言っております。

 逆に言うと、ここに入ってこないのは、いわば伝統的な安全保障の話ですね。これにつきましては、それぞれの国、それぞれの地域によって、何をどう脅威として認識するのかというのは多様でありますので、この辺は既にARFという、ASEAN地域フォーラムというものがありますので、ここの場を使いながら信頼醸成をやっていこうではないか。一挙にNATOタイプのものがこの地域ででき上がるということにはなってこないんだろうと思います。

 いずれにいたしましても、地域、国によって、宗教の面、人口の面、経済発展の度合い等々非常に多様でございますから、そうした多様性を認めながらお互いに繁栄を共有する、そういう開かれた東アジア共同体を構築していこう、こういうビジョンのもとに今後日本も積極的な役割を果たしていこう、こういう考え方でおります。

 ちょっと長くなって済みませんでした。

山口(壯)委員 丁寧に答えていただいたんですけれども、我々は戦後、国際秩序をつくるということを完全に忘れていたわけですね。アメリカと同盟関係を結んでいこう、アメリカとの枠組みの中で動いてきた。その中で今、このアジア共同体というのは、国際秩序を日本がみずからつくっていけるか、そういうチャレンジなわけです。

 今、大臣の方からも進行しているというお言葉がありました。進行しているというのは、ある意味で、もう少し私なんかは自分からつくっているというところの気持ちが欲しいものですから、今いろいろARFの話も込めてありましたけれども、ぜひ、みずから日本が秩序をつくり、この共同体というものに結びつけていけるような、そういうことまで外務省を中心に頑張っていただきたいと思うんです。

 ヨーロッパの場合には、石炭鉄鋼共同体ということで、何か一緒に物をつくろうというところから始めたわけですね。そういう意味では気になるのは、東アジアの中では東シナ海の油田の話もあるわけです。

 油田の話についてというのは、これは中国の話ですけれども、日本がアジア共同体を一生懸命やろうとする場合のポイントは、アメリカとの関係、そしてこの中国との関係でしょう。アメリカとの関係も質問では通告していましたけれども、ちょっとそれは省かせていただいて、中国との関係の方に移らせていただければと思います。

 中国とどういうふうに対話を進めるかということ、このことについて言えば、先ほども質問がありましたけれども、今、日本が中国との間で対話が必ずしもスムーズな形でできる状態ではないと私は思うんです。そういう意味では、町村大臣として、手短にお答えいただければと思いますが、中国との関係のいわゆるおさめどころ、これからどういうふうに持っていかれようとしているのか、ここをまず手短にお答えいただけますか。

町村国務大臣 日中間の対話が、確かに首脳の往来がないという一点を言われれば、それは現実そうだということは認めざるを得ないわけでございますが、それ以外の面で、私は、日中間の、特に政治レベルの対話、あるいは事務レベルの対話が成り立っていないかというと、それはそんなことはない、こう思っております。私自身も李肇星外交部長とはもう何度もお目にかかっておりますし、できれば近々またお目にかかるチャンスがあればいいなとも思っております。

 いずれにいたしましても、先ほどの東アジア共同体の話を含め、あるいは東シナ海の油田開発の問題を含め、日中間でこの問題は議論しないとかいうことではなくて、常に幅広く当面する問題をしっかり議論するということでこれまでもやってきたつもりでありますし、これからもまたそうであるべきだ、こう考えております。

山口(壯)委員 今、中国がむき出しのナショナリズムで向かってきている面があると思うんですね。それは中国の国内事情もあるでしょう。内で大変なことを外に脅威を生み出していくという常套手段も当然あるとは思いますけれども、むき出しのナショナリズムをやってきている。

 その際に、この東シナ海の油田の開発について、日本はどういう対応をしようとしているのか。きょう、せっかくエネ庁の近藤部長にも来ていただいているので、近藤さん、どうでしょうか、まず、日本の試掘権というものが新聞にも話題になっています。これに関連してどういう対応をされようとしているのか、手短にお答えください。

近藤政府参考人 お答えを申し上げます。

 今御質問の東シナ海でございますけれども、現在の状況を少し、まず最初に簡単にお話をいたします。

 東シナ海におきます試掘権の設定をことしの七月に、中間線の東側の我が国の主体的権利を確保すべき緊要性の高い海域のうち、帝国石油から特に希望のあった水域について試掘権設定の許可を行いました。その後、登録免許税の納付が行われまして、八月十三日に試掘権の設定の効力が生じた、こういう状況でございます。

 今、これからどうしていくか、こういうことでございます。今後、試掘に向けてどういうふうにいくかという御質問かと思いますけれども、まず、試掘を実施するかどうかということにつきましては、まずは鉱業権者たる帝国石油の判断によるわけでございます。試掘権の設定の許可を行いました際に、試掘を実施しようとする場合には、前もって政府とよく相談するようにということを帝国石油に求めたところでございます。現時点では帝国石油から試掘の実施に関する具体的計画は出ていないわけでございます。

 ただ、いずれにいたしましても、これは今後、私ども政府といたしましても、国連海洋法条約に基づく我が国の主体的権利その他の権利が侵害されることのないよう万全を期していきたい、こういう基本方針でいきたい、こんなふうに思っているところでございます。

山口(壯)委員 今近藤部長からはっきりしたお答えがあったわけですけれども、帝国石油の動きが今のところないから、とりあえずは見守っていくという答えだったように思います。

 他方、むき出しのナショナリズムで中国が向かってきている、それに対して、いわゆる国民は歯がゆい思いもしていると思います。私は、それをあおれという趣旨では全くありません。

 他方、どういうふうに外交当局としてこれをおさめようとしているのか、あるいは事態をコントロールしようとしているのかということは、とても大事なことだと思うんです。外務省として、この事態を中国との関係でどういうふうに最終的におさめようとされているのか、あるいはできると思われるか、その辺はいかがでしょうか。

町村国務大臣 おさめる姿がはっきり見えているということにはまだなっておりません。基本的な考え方は、これは小泉首相、胡錦濤国家主席との間でも、あるいは日中外相のレベルでも、これは対立の海ではなくて協調の海にしなければいけないという、文学的には美しい表現で締めくくっているわけでございますが、では、それを具体にどうするのかということで、今、事務レベルの協議が先般行われ、また近日中にも行われるということになっております。

 いずれにしても、内容は実は全く違うのでありますけれども、先方からも我が方からも共同開発という提案がそれぞれなされております。ただ、共同開発という言葉は一緒でも、内容が白と黒なものですから、今のところこれの接点を見出すめどが立っているわけではございませんけれども、何らかの方法で、これはやはり共同開発という形で、お互いがお互いの利益を得るということで解決できないだろうか、その可能性を探っていくということが当面大切なのではないだろうか、私はこのように考えております。

 ただ、日本が独自でやれる部分はやるということは、これは今の近藤部長の答弁のとおりでありまして、それは粛々とやっていったらいいんだろう、こう思っております。

山口(壯)委員 確かに、中国側は大陸棚理論を持ち出し、日本側は中間線理論ですから、立場が全く違って、共同開発についても、中国側が出してこられたのは、日本の中間線より日本側について共同開発をしようという提案だったというふうに私は認識しているんですけれども、そういう意味では日本にとっては受け入れられない今のポジションでしょう。

 このことについて、大陸棚を中心とする中国側の立場と、そして日本の中間線を基準とする日本の立場と違うわけですけれども、これは質問には通告していませんけれども、お答えできる範囲でお答えしてください。

 国際海洋法裁判所というのがあって、そして外務省の先輩の柳井俊二さんもそこにかかわっておられる。国際海洋法裁判所に日本がこの件を付託するというふうに持っていくことについて、どうでしょう。今、私は突然に伺っているものですから、大臣からコミットメントを意味するような答弁は期待していませんし、そこまで要求しませんけれども、一つの検討事項として、国際海洋法裁判所にこの件を付託してはどうかという提案について、どうでしょうか、何らかのお考えをお聞かせいただければと思います。

町村国務大臣 今直ちに国連海洋法に基づいてその裁判所の方に持っていくという選択肢を考えているわけではございません。なかなか微妙な問題もあると思います。ただ、今せっかくの山口委員からの御提案でございますから、ちょっと受けとめて考えさせていただきたいと思います。

山口(壯)委員 恐縮です。ぜひ一度、一考に値することだと思いますので、事務方の方でもまた検討いただければと思います。

 あと残り時間わずかなんですけれども、きょうはせっかく経済協力局長佐藤さんにもお越しいただいていますし、中国については援助の話もあります。

 日本は、この援助、私も実は中国で勤務したことがあるわけですけれども、そのときは援助の担当で、天安門事件の直後でした。日本は、天安門事件があって援助をとめて、私のミッションというのはむしろそれをどういうふうに再開するかというようなことだったものですから、むしろ中国側には、そのときの経緯で非常にまた懇意にしてもらっているわけです。

 この中国の援助について、日本がどういうタイミングで今後、特にODAの中でも円借款の部分ですね、無償と技術協力は多分続けていくと思いますけれども、この円借款の部分について、どういうタイミングで卒業しようとしているのか、あるいはどういうふうに考えておられるのか。むしろ、これは懲罰的にとめるべきじゃないと思うんです。日本が、きれいな格好で、お互いに禍根を残さないような卒業の仕方をするべきだと思いますけれども、中国との関係を全般に見た中で、特にこの円借款の関係、どういうふうにお考えでしょうか。

逢沢副大臣 日中関係は、日本側の立場からいたしましても、中国側の立場からいたしましても、大変重要な二国間関係である、そういう認識は一にしていると認識をいたしております。

 対中ODAの大部分を占めておりますのは御承知のように円借款でございますが、この円借款につきましては、町村外務大臣のリーダーシップもございまして、二〇〇八年の北京オリンピック前までにその新規供与を、新規のものですね、新規供与を終了するということで、中国外交部、外交部長との間で話し合いが大筋ついております。

 現在、細部につきましては事務方で協議を行っているということでございますので、二〇〇八年の北京オリンピック前までに新規の円借は中国には供与されない、そのことは事実的には確定をしているというふうに認識をいただいて結構かというふうに思います。

 中国には大きな経済援助をしてまいりました。累積で三兆一千三百三十一億円でございます。現在まで、貸付実行額は二兆二千二百三十四億円でございますので、その差額はこれから実行に移される、こういうことになっているわけでありますが、一方、中国は、外貨準備高も大変豊富でございまして、二〇〇四年度末までには元利計で約一兆四百八十六億円が中国より償還をされている、新たな貸し付けよりも戻りの方が多くなっている、そういう状況を迎えているということは御承知のとおりであります。

 円借以外の技術協力等についてもお触れをいただきましたけれども、技協等々、個別の案件を精査しながら、日中関係全体を考慮しながら進めてまいりたい、そのように考えております。

山口(壯)委員 日本の対中援助というのはある意味では大きなポイントで、隣国を豊かにすべしという外交の考え方があります。エンリッチ・ユア・ネーバーズ・ポリシーという、要するに、隣の国が豊かになれば民主主義が発達して、民主主義が発達すればお母さんの力が強くなって、お母さんの力が強くなると戦争をしにくくなる、こういう一つの考え方ですけれども、日本が中国あるいは近隣諸国に援助をしてきたことの意味というのは、そういう大きな戦略的な意味もあったわけですから、そういう意味で、中国との関係、今必ずしもすべてがスムーズではない中で、援助についても、卒業するということが禍根を残さないように、外務省として、戦略をきちっと練った上でいろいろお考えいただきたいと思います。

 またいろいろ、これからも町村大臣とは大事な話をいっぱいさせていただいて、日本の外交のさらなる発展のために一緒に頑張らせていただきますようにお願いします。

 きょうは、どうもありがとうございました。

原田委員長 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢でございます。

 きょう、私は、米軍再編協議で普天間飛行場が焦点になっておりますが、その普天間飛行場の現状がどうなっているかについて聞いていきたいと思います。

 ヘリ墜落事故の一周年を前にして、地元那覇の防衛施設局の西施設局長が記者会見をしております。このインタビューの紙を全文いただきました。

 この中で、施設局長はこう言っております。SACOの最終報告で普天間基地の危険性の指摘がありながら、移設までの間、危険性に対処する考えが盛られていなかった、その解決が重要なポイントだ、このように述べながら、移設の完了までの間の危険性をどう排除するか、この課題は残っている、こう述べております。

 外務大臣も、普天間飛行場の現状についての認識は同じでしょうか。

町村国務大臣 普天間飛行場、私は、大臣就任前にも現地を見ておりますし、また大臣就任後、実際に、あの事故もあったものですから、事故現場あるいはあの近くの丘の上から、普天間飛行場がどういう形で存在しているのかという現場の状況も見てまいりました。そして、確かに、あれだけ人口密集地帯にある飛行場、ヘリ基地の持っている危うさというものも実感をしてまいりました。

 だからこそ、SACO合意というものがあり、一刻も早くこれを返還するんだということでいろいろな事業が始まっているんだ、かように認識をしております。

赤嶺委員 外務大臣、だからこそSACO合意があるのだということ、政府の立場としてはそのとおりだと思いますが、西施設局長はこう言っているんですね。SACOの最終報告で普天間基地の危険性の指摘がありながら、移設までの間の危険性に対処する考えが盛られていなかった、移設完了までの危険性はどう排除するか、この課題は残っているという。

 その課題について今認識を聞いたんですが、いかがですか。

町村国務大臣 現実に事故が起きてしまったわけでありますけれども、その間、当たり前のことですが、安全な運航というものに最大限配慮しながら、普天間基地がそれでも一刻も早く移設できるように努力をしていくということが、両方あわせて大切なんだろうと思っております。

赤嶺委員 安全な運航に配慮しながらということでありますが、そうしますと、移設までの間の普天間基地の危険性について、今、どのように対処する考えを持っておられるんですか。

河相政府参考人 お答えいたします。

 普天間飛行場については、大臣からも今御答弁申し上げましたし、今までも再三申し上げていますように、普天間飛行場が市街地にあるということ、これを踏まえて、一日も早く住民の方々の不安を解消したいというのが基本的姿勢でございまして、そのもとでの早期の移設、返還ということに全力で取り組んでいるわけでございます。

 片や、移設までの間の安全性ということにつきましては、その安全確保、そしてまた、地元の方々に与える影響を最小限に食いとめる、最小限のものにするようにという働きかけを随時政府から米側にも行ってきているところでございます。

赤嶺委員 その安全確保について、具体的にどのような対処をしているんですか。

河相政府参考人 お答え申し上げます。

 例えば、本年四月に海兵隊第三一海兵機動展開隊がイラクから帰還をしてきたわけでございますけれども、その際にも、我が方から米軍に対して、ヘリの運用に対しては万全を期すようにということを申し入れ、また、これに対して米側からは、安全対策は極めて重要視をしている、そして、ヘリの飛行は運用上必要不可欠なものにとどめているという回答を得ているところでございます。

赤嶺委員 防衛庁、防衛施設局はどんな対策をとっておられますか。

長岡政府参考人 ただいま外務省の方からも御答弁がありましたように、私どもも、安全の確保につきましては最大限配慮させて取り組んでいかせていただきたいと思っておるところでございます。

赤嶺委員 一般的、抽象的な答弁に終始しておりますが、現地の外務省の沖縄担当宮本大使は、やはり記者会見を開いておりまして、四月中旬から米軍と飛行経路の見直しについて現地レベルでの協議を進めているということを明らかにしているわけですね。

 これは、事故が起きたときに事故分科委員会が飛行経路を再検討するというような勧告を出した、その勧告に基づいてそういう検討がされていると思うんですが、これの概要について、今までのこと、何回持たれたのか、そしてそれがどんな中身だったのか、答えてくれますか。

長岡政府参考人 本年の二月十七日に日米合同委員会で承認をされました事故分科委員会報告書の勧告の第二項に基づきまして、先ほど先生御指摘のように、普天間飛行場の場周経路の再検討、それから、さらなる可能な安全策について検討をいたしております。

 これは、日米両国の現地と中央の関係者で調整会議を開かせていただいておりまして、これまで四回、事務レベルによる話し合いの会議をさせていただいております。今後、できるだけ早く作業結果を取りまとめるよう努力をいたしていきたいと思っておりますので、よろしくお願い申し上げます。

赤嶺委員 結局、あの事故の調査報告の中で、普天間基地の安全対策で、第一に米軍の整備のマニュアル、第二に飛行経路の問題だったわけですね。この二つがどのように解決されていっているかというのは非常に重要なポイントだと思うんです。

 その飛行経路の問題に絞って聞いていきたいんですが、四回、日米間で協議が行われた。その協議の中で、日本政府の側は、現在普天間飛行場の市街地上空を飛んでいる米軍の飛行経路について見直しを求めているんですか。

長岡政府参考人 御指摘の点でございますけれども、現在、先ほど申し上げましたように、日米の関係者による調整会議を実施いたしております。これは、さまざまな観点から検討をさせていただいておりますが、具体的な内容につきましては、大変申しわけないんですが、日米間での率直かつ自由な対話を継続させていこうということで、双方の合意により、具体的な内容は途中段階では公表をしないということになっておりますので、その点御理解を賜りたいと思います。

赤嶺委員 いや、非常に簡単な問題ですよ。安全対策をとるために、今、市街地上空を飛んでいる飛行経路、これの見直しの検討、そしてさらなる安全対策というわけですから、当然、市街地上空を飛ぶなという見直しを政府の側から求めているわけでしょう。これを答えられないというのはおかしいですよ。

 そうしたら、あれですか、そういう見直しを、結果的には飛行経路の見直しに至らないということもあり得るのですか。

長岡政府参考人 繰り返して恐縮でございますが、さまざまな観点から検討をさせていただいております。現在検討中でございますので、これをどういう形で取りまとめることができるかというのは、今の段階ではお答えすることがなかなか難しいということは御理解を賜りたいと思うところでございます。検討結果が取りまとまり次第、それは御報告させていただきたいと思っております。

赤嶺委員 極めて簡単な問題ですよ。飛行経路の、場周経路の見直しの検討の中には政府の側から当然見直しを求めていくべきじゃないですか。そうじゃないと安全の対策はとれないじゃないですか。

 一切それには答えていないわけですが、実は、那覇の防衛施設局長は、記者会見の中でこの問題に関連して「決定的な答えのない作業であるのかもしれません。」と述べているんですよ。答えは出てこない。答えは出てこないけれども、安全対策をとっていると言わなきゃ県民が納得しないからそういう作業の場を設けているんですよという、そういうような形を見せているにすぎないような、形を見せているだけでないとすれば、その中身をきちんと県民に説明すべきだと私は思うんです。

 ですから、本当に、いわば普天間基地は撤去以外にない、撤去する前にも安全対策をとるというような政府の説明はごまかしだと思います。

 それで、では聞きますけれども、先ほど北米局長は、四月にイラクから米軍の海兵隊が帰ってきた、それで安全な運航を申し入れたというぐあいにありますが、四月にイラクから海兵隊が帰ってきたその後の普天間基地の現状はどうなっていますか。

河相政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほども申し上げましたとおり、その機会に改めて、日本側から米側に対しては、整備マニュアルの徹底等を図り、安全対策を最大限とるようにということを申し入れてあるわけでございまして、それに基づいて米側としては整備の徹底等を図っているというふうに理解をしているわけでございます。

赤嶺委員 安全対策を求めているという内容は漠然としたもので、はっきりしなくてごまかしなんですが、実は、どんな状態になっているかという資料をきょうはつくってまいりました。

 あらかじめ外務大臣の手元にもお渡ししてあると思いますが、普天間基地のヘリが墜落した直後は米軍のヘリの運航というのは少なくなっていました。これは、米軍が自粛したというよりは、むしろイラクに派兵してヘリがいなくなったからと。

 それで、ことし一月に宜野湾市で、私、市民の方との話もしたんですが、本当に久しぶりにこんな静かなお正月を迎えたと言って喜んでいたのもつかの間、四月になったら帰ってきた。帰ってきたら物すごく爆音の被害は拡大しているわけです。それどころか、異常なことに、現在の状態というのは、外務省が安全対策をるる述べるにもかかわらず、ヘリが墜落する以前よりもひどい状態に戻っている。戻っているんですよ。

 米軍は、その数字を見てください、外務大臣にも渡してありますけれども、全部が事故以前に戻っていて、中でも午後の十時から夜の十二時までの間、事故以前は五千二百九十六回の騒音回数が六千四百十三回で、夜間の飛行がさらにふえているわけですね。事故以前よりもふえている。何の安全対策もとっていないということはこの数字ではっきりしていると思うんですよ。

 夜間の飛行については騒音防止協定があります。この騒音防止協定について、いわばこうなっています、米国の運用上の所要のために必要と考えられるものに制限されると。

 外務大臣は、夜間の運用がすべて禁止されているわけではない、運用上の所要のために必要と考えられるものに制限される、こういう答弁を私にしたこともあるわけですが、現在の普天間基地における実態というのは、運用上の所要のために必要と考えられるものに制限された結果なのか、この点について外務大臣はどのように認識していますか。

河相政府参考人 お答え申し上げます。

 我が方と、政府が米側に申し入れをし、米側も承知している状況として、必要最小限の飛行に限るという中で運用が行われているというのが政府としての理解でございます。

 確かに御指摘のとおり、この四月以降飛行回数がふえてきている。これは委員御指摘のとおり、それまでの間かなりの数のヘリコプターが国外に出ていた、イラクに実際行っていたという状況にあったわけで、その結果、昨年の八月以降飛行回数が減っていたわけでございますけれども、これは、ヘリコプターが戻ってきた中で、やはり必要な飛行というものの回数がふえたということで御理解いただければと思う次第でございます。

赤嶺委員 事故以前よりも騒音は激しくなり、飛行回数もふえていく、これが運用の制限を加えた結果なんですか。いかがなんですか。

河相政府参考人 お答え申し上げます。

 お配りいただきました資料で見まして、二〇〇四年度の四月、この回数でいくと、その月の合計回数は九千六百回強という数字でございます。五月、六月というのは六千回を超えるものだったわけでございまして、その後、八月以降確かに飛行回数が減っている。これは、先ほども申し上げたとおり、そもそも米軍のヘリが国外に移動したという状況の中で起こっていて、そして、四月以降そのヘリが戻ってきた中で飛行回数がふえてきているというのが事実関係だと承知しております。

 ただ同時に、安全の面、また騒音等のことからいえば、周辺の住民の方々に対する負担をできる限り軽減するという原則のもとで、必要最小限の飛行に限っているというふうに理解をしております。

赤嶺委員 私、普天間基地の現状というのは、本当に一刻の猶予も許さない事態だと思うんですよ。それで、移設までの安全対策だといっても、皆さんははっきりした安全対策の中身をこの委員会で答えることができない。そうであれば、明確な安全対策をとれない以上、普天間基地の危険性は認めているわけですから、即時閉鎖をする、即時閉鎖をして撤去の作業に移る、これが当然だと思いますが、外務大臣、いかがですか。

町村国務大臣 即時閉鎖という考え方を私ども持っておりません。

赤嶺委員 皆さんが今出している普天間基地の代替案、辺野古沖案が破綻をした、国際社会からも批判をされた、もうつくることができない。そのかわりに出してきたのが陸地に近い浅瀬案、あるいは陸地の陸上案、いずれも県内移設です。県内移設に反対というのが沖縄県民の共通の認識ですよ。それをさらに県内移設を押しつけようとしたら、普天間基地の危険性はなお一層いつまで長期に放置されるかわかりません。

 その意味でも、改めて普天間基地は直ちに閉鎖をして安全対策をとる、そして撤去をする、こういうことを強く求めて、私の質問を終わります。

原田委員長 次に、照屋寛徳君。

照屋委員 十月下旬で調整をしていたラムズフェルド米国防長官の訪日が見送られたとのマスコミ報道がありますが、外務省はその事実を把握しているんでしょうか。

 また、その理由が、普天間飛行場の移設先について日米協議が暗礁に乗り上げていること、日本政府の対応への強い不満、不信感を示しているようでありますが、外務大臣はどのように受けとめておるんでしょうか。

町村国務大臣 これまた、おもしろおかしくいろいろ報道されておりますが、ラムズフェルド国防長官が日本に来るということがもともと決まっておりませんでしたし、したがって、やめたという事実もないわけであります。

照屋委員 先ほど、普天間基地の返還問題がありましたが、私は去る選挙で、私の選挙区は普天間基地を抱えております。それから、嘉手納基地を抱えたところであります。そこで私は、普天間飛行場の即時閉鎖、返還、辺野古への移設反対、嘉手納統合反対を強く訴えて当選をすることができました。

 さて、普天間の即時閉鎖、返還を求める県民の世論は、いろいろな世論調査でも九割近くに達しておりまして、辺野古移設を容認するのはわずか三%にすぎません。大臣は、そのような県民世論をどのように受けとめておられますか。

町村国務大臣 普天間飛行場の早期返還を求める、こういう県民の皆さん方のお声というものを私どもは十分認識をいたしております。

 したがいまして、従来から、この普天間飛行場が市街地にあるということもあって、一日も早く周辺住民の皆さん方の不安を解消したい、こういう思いから、引き続き、普天間飛行場の早期移設、返還、これに向けて全力で取り組んでいかなければいけない、かように考えているところでございます。

 なお、先ほど赤嶺委員も言われましたけれども、代替施設なしで普天間飛行場の即時閉鎖という御提案もあるわけでございますけれども、これにつきましては、アジア太平洋地域には依然として不安定、不確実な要素も現実に存在をしているわけでありまして、日本の平和と安全を守るためには米軍が現在有しております抑止力というものはやはり維持されなければいけない、こういう観点もまた重要な要素としてお考えをいただければ、かように考えております。

照屋委員 小泉総理は昨年十月、沖縄の痛みを全国民で分かち合おうというのなら、国外移転、本土移転の両方を考えてよい、こう発言をしました。

 米軍再編協議において、外務省は普天間基地の海外移転を求めたことがあるのでしょうか。あるならアメリカ側の反応はどうだったでしょうか、ないのならなぜ海外移転を求めないのか、大臣にお聞きをします。

町村国務大臣 在日米軍の兵力構成の見直し、今大詰めの段階に来ているわけでございまして、かねてより申し上げておりますとおり、在日米軍の抑止力の維持、同時に地元負担の軽減、こういうなかなか両立しがたいような二つの命題をどうやって具体的に達成していくのかということで、いろいろなアイデアをお互いに持ち寄り、さまざまな議論をし、それが今大詰めに来ているということでございます。

 普天間飛行場の移設先につきましても、さまざまな議論をやっているところでございますけれども、今、個別の施設・区域につきまして、これをどのような形にするのかということについて中間報告取りまとめに向けて作業は鋭意やっておりますけれども、現状その具体の内容について申し上げられる段階にはございませんので、せっかくの委員のお求めでございますが、そういう状態にあるということは御理解を賜れば、かように考えております。

照屋委員 総理もそれから大臣も、地元の頭越しには進めない、地元の意向を無視するようなことはないとかねがねおっしゃっておるわけですが、先ほど申し上げたように、地元の世論はあくまでも即時閉鎖、あるいは海外、県外への移転が強いと私は思います。

 そこでお伺いをしたいのは、最近になって、普天間基地の代替施設案としてキャンプ・シュワブ陸上案と辺野古沖リーフ内縮小案、これが取りざたをされております。

 そこで、大野防衛庁長官がしきりに、むしろ執着しているかのように、キャンプ・シュワブ内陸案を推進する立場のようでありますが、キャンプ・シュワブ陸上案と辺野古沖リーフ内縮小案、町村大臣はどのような考えを推進しているのか、この点についてお伺いをします。

町村国務大臣 大野大臣がいつどこで何を言ったか、私も全部承知をしているわけではございませんけれども、いずれにいたしましても、今、日本政府内で、あるいは日本政府とアメリカ政府との間でさまざまな具体的なアイデアについて議論をし、煮詰めている段階でございますから、私が特にどこがどうだということを申し上げるのは現状不適切であろうか、こう思っておりますので、具体の内容について申し上げられないのはまことに恐縮でございますが、そういう状況にあることをぜひ御理解いただきたいと思います。

照屋委員 大野防衛庁長官は、事あるたびにマスコミを利用して、キャンプ・シュワブ陸上案というのを明言しているんです。ところが、外務省、外務大臣の考えが地元には伝わってこないんですね。

 大臣は明言を避けましたが、最後にお伺いをしたいのは、中間報告で普天間飛行場移設先の明記を見送る方向で調整に入ったという報道もあります。外務省は十月中に中間報告をまとめる政府の方針は変わらない、こういうふうに受けとめていいんでしょうか。大臣のお考えをお伺いします。

町村国務大臣 この在日米軍の兵力構成見直し、前大臣のときからも継続をして、大分時間もたってきております。いつまでも協議をやっているというわけにもいかないだろう、こう思いまして、できるだけ早く中間的な取りまとめをしたいものだというふうに、今精力的な作業をやっている最中でございます。

 いついつまでということを明示的に申し上げられませんけれども、できるだけ早く作業をまず中間的にまとめたいということで、鋭意大車輪の作業をやっている、議論をやっているということでございまして、そういう状態に今あるということを御理解いただきたい。もし十月中にまとめられるならば、それはそれで大変いいことだと思っているところでございます。

照屋委員 くどいようですが、中間報告で普天間飛行場の移設先を明記しない、見送る方向で調整に入った、そういう報道もありますが、そうすると、そのようなことはないと大臣の言葉として受けとめていいんでしょうか。

町村国務大臣 あるともないとも申し上げられない、申し上げることはなかなか難しいのでありますが、しかし、私はやはり、沖縄県民の皆さん方にできるだけわかりやすい形で、政府としては今こう考えているんだということをお示しした方がいいんだろう、こう思っておりますから、一部報道で、移転先を明示しないで中間報告をやったらどうかという案があるという報道を私も見たことがあるのでありますけれども、それはちょっと、現在の両国の協議状況からすると、いささかそれは反しているのではないのかな、あくまでも移設先をできるだけはっきりさせた形で取りまとめをしたい、そういうことで今鋭意努力をしているということだとあえて申し上げさせていただきます。

照屋委員 終わります。

原田委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時二十七分散会


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