衆議院

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第2号 平成18年2月24日(金曜日)

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平成十八年二月二十四日(金曜日)

    午前九時一分開議

 出席委員

   委員長 原田 義昭君

   理事 小野寺五典君 理事 谷本 龍哉君

   理事 土屋 品子君 理事 水野 賢一君

   理事 渡辺 博道君 理事 武正 公一君

   理事 山口  壯君 理事 丸谷 佳織君

      逢沢 一郎君    愛知 和男君

      伊藤 公介君    伊藤信太郎君

      宇野  治君    高村 正彦君

      篠田 陽介君    新藤 義孝君

      鈴木 馨祐君    中山 泰秀君

      三ッ矢憲生君    山内 康一君

      山中あき子君    吉良 州司君

      篠原  孝君    田中眞紀子君

      津村 啓介君    松原  仁君

      谷口 和史君    笠井  亮君

      照屋 寛徳君

    …………………………………

   外務大臣         麻生 太郎君

   防衛庁副長官       木村 太郎君

   外務副大臣        塩崎 恭久君

   外務大臣政務官      伊藤信太郎君

   外務大臣政務官      山中あき子君

   財務大臣政務官      野上浩太郎君

   政府参考人

   (内閣官房内閣参事官)  坂井 孝行君

   政府参考人

   (防衛庁運用局長)    山崎信之郎君

   政府参考人

   (防衛施設庁施設部長)  渡部  厚君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 松富 重夫君

   政府参考人

   (外務省アジア大洋州局長)           佐々江賢一郎君

   政府参考人

   (外務省北米局長)    河相 周夫君

   政府参考人

   (外務省中東アフリカ局長)            吉川 元偉君

   政府参考人

   (外務省国際法局長)   小松 一郎君

   外務委員会専門員     前田 光政君

    ―――――――――――――

二月二十三日

 日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定第二十四条についての新たな特別の措置に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第一号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定第二十四条についての新たな特別の措置に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第一号)

 国際情勢に関する件


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     ――――◇―――――

原田委員長 これより会議を開きます。

 この際、塩崎外務副大臣から発言を求められておりますので、これを許します。外務副大臣塩崎恭久君。

塩崎副大臣 昨年十一月より外務副大臣を務めさせていただいております塩崎恭久でございます。原田委員長初め委員各位に謹んでごあいさつを申し上げたいと思います。

 外交の目的は、何よりも我が国及び我が国国民の安全と繁栄を確保することにあります。麻生大臣を補佐し、中国や韓国、東南アジアを初めとする近隣諸国との関係強化を図るとともに、新型インフルエンザ等の新しい課題に対して、国際社会の協力強化に尽力していく考えでございます。

 また、我が国国連加盟五十周年の年に当たりまして、安保理改革や行財政改革を初めとする国連改革にも力を注いでまいりたいと思っております。

 委員長初め本委員会の皆様の御指導と御協力をいただきますよう、よろしくお願いいたしたいと思います。(拍手)

     ――――◇―――――

原田委員長 国際情勢に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房参事官松富重夫君、アジア大洋州局長佐々江賢一郎君、北米局長河相周夫君、中東アフリカ局長吉川元偉君、国際法局長小松一郎君、内閣官房内閣参事官坂井孝行君、防衛庁運用局長山崎信之郎君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

原田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

原田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。渡辺博道君。

渡辺(博)委員 おはようございます。自由民主党の渡辺博道でございます。

 きょうは、通常国会の第一回目の外務委員会としての一般質疑に入りました。

 その前に、きょうは大変私自身も感動したところでありますけれども、トリノのオリンピック、ようやく日本が金メダルを獲得することができました。本当にうれしいわけであります。日本の国民が待ちに待った金メダルでありました。

 そのように、日本外交も国民に大きなプレゼントをしていただけるように、麻生外務大臣にはしっかりと頑張っていただきたいわけでございます。とりわけ麻生外務大臣は、ポスト小泉と言われている一人でございます。これからの日本をどのように考えていくのか、そして日本をどのような方向に進めていくのか、大変重要な役割を担っているわけであります。

 そこで私は、昨年戦後六十周年を迎えたこの日本の姿、過去六十年の歩みをどのように外務大臣は総括しているのか、お聞かせをいただきたい、そのように思っています。

 私たちの日本は、敗戦からさまざまな紆余曲折を経て、世界第二位という大国になったわけであります。その間、国際状況も大いに変わってまいりました。冷戦状況の終結、そしてまた、今は国連の改革も取り組んでいる、そういった状況の中であります。麻生外務大臣は、この過去日本の六十年の姿をどのように総括していらっしゃるか、改めてお伺いをしたいと思います。

麻生国務大臣 六十年の間、今渡辺先生おっしゃるように、紆余曲折があったことは確かです。社会主義をとるか自由主義をとるかでも、講和条約締結までの間は随分もめましたし、いろいろな意味で、この国の国家戦略の選択というのによって国論が二分するようなこともあったわけですけれども、基本的には、講和条約を締結した後、少なくとも日本という国は、経済的繁栄と民主主義を通じて平和と幸せを求めるというのが多分国民的コンセンサスだったんだと思いますが、敗戦した後の日本が、もはや戦後ではないという言葉が出るまで約十年、結果として、今日までの繁栄を築き、資源というものが極めて乏しい国家が世界第二位の経済大国にのし上がったというのは、少なくとも日本として誇るべき結果を出しておる、私どもは基本的にはそう思っております。

 少なくとも、今、海外から見られても、これは最近データがガセじゃないかという話がよくありますけれども、これは米国、BBCがやった世論調査、メリーランド大学との世論調査というのが、世界三十三カ国、約四万人を対象とした世論調査が出ておりますので、日本というのは、大多数の三十一カ国の中で、よい影響を与えているというのと悪い影響を与えるというのは、よい影響を与えているというのが圧倒的に上回って、国別ではトップという印象を与えております。

 この資料によりますと、アジアの中で、インドネシアで八五%、フィリピンで七九%の支持率等々が出ておりますので、そういう意味では、日本という国は、ヨーロッパ、これはEUですから、EUが一番ということでありますが、EUというのは御存じのような状況ですので、国別としては一番ということを占めたというのは、それなりの日本の成果というものは上がってきているのではないかというように分析すべきではないかと思っております。

渡辺(博)委員 今大臣は、過去六十年をわずか三分近くで総括をしていただきました。

 そこで、これからの日本はどのような外交を進めていかなければならないか、これが大変重要な問題であります。とりわけアジアとの関係、どのように取り組むかであります。特に中国、韓国、ロシア。

 実は先日、二日前ですか、ロシアの方で、外務大臣の発言に対して遺憾の意を、内政干渉だというようなお話がありましたけれども、私はちょっと具体的な内容は存じ上げておりません。でも、内政干渉だと言わせる何らかがあったんではないかな、ちょっとそこが気になるんですが、この部分について、ちょっと質問の通告がありませんが、内容についてお聞かせいただきたいと思います。

麻生国務大臣 二十二日でしたか、私どもの在ロシア大使館の臨時代理大使が、先方のアレクセーエフ、ロシアの事務次官に言われて、今一連の話があっておった、私の発言に対していろいろ向こうがあっておりますけれども、いわゆる抗議を受けたというような話ではありません。よく新聞は抗議と書いてありましたけれども、抗議を受けたという事実はありません。

 それに対しまして、私どもの方からロシアのガルージン駐日公使に対して、タウンミーティングの話なんですけれども、タウンミーティングにおける北方四島問題に関する話というのは、これは基本的にまだ平和条約とか国境を画定したという条約ができておりませんから、そういった意味では、こういった平和条約等々を締結する、それに基づいて国境を画定するということにしておりますので、北方四島の、住んでいるロシア人なんですけれども、日ロ間で信頼醸成、信頼関係というのを醸成するということと、相互理解というものを深めるということをやっていくことが重要なんじゃないかという話をしたのであって、内政干渉と解し得る発言は何回読み直してみてもないのではないかということを言って、ガルージン公使より、日本側の申し出は本国にそのまま伝えるという旨の答弁があったというのが今のところの現実であります。

渡辺(博)委員 今、新聞報道と、やはり実態は聞いてみないとわからないという部分がありますので、今大臣からお聞かせいただいたわけでありますが、やはりそれぞれの国の信頼関係、そして相互理解というのがまさに外交の中心的な課題である、そのように思うわけであります。

 そうした中で、例えば中国、韓国、これは一体どのような形で信頼関係を築いていったらいいんだろうか。外務大臣の御所見をお伺いしたいと思います。

麻生国務大臣 中国とは尖閣列島の問題とか、韓国とは竹島の問題とか、ロシアとは北方四島の問題とか等々、領土問題というのがいずれもとげみたいに刺さっている部分である。そういった意味では、なかなか難しい問題がもともとあるというのは確かだと思います。

 ただ、今、私ども、こうやって見ますと、例えば韓国の場合は選挙があって、自由主義で、民主主義でというところですので、これは中国と韓国とは内容がかなり違いますので、皆、日韓、日中が一緒みたいな話をよくされますけれども、韓国と中国とは基本的な国の内容が違いますので、そこらのところは分けて考えるべきだと存じます。

 その上で、韓国の場合は、日韓基本条約が結ばれたとき、年間往来一年間で一万人と言われておりましたけれども、今では一日一万人を超えて、年間で約四百万人ぐらいになっておると思いますし、いろいろな意味で、人的交流、同じく中国とも猛烈な勢いでふえておりますので、少なくとも、今、韓流ブームという向こう側の映画等々が日本に入ってテレビドラマでえらく受けたり、また、韓国の中においてJポップ、ジャパニメーション、Jファッションという、スリーJと言うんですが、韓国の中で、そういう日本のカラオケを通して、いろいろな形で日本のサブカルチャーと言われるものが猛烈な勢いで広まっておりますし、経済関係も言うに及ばず、そういった関係では極めて関係が深まっておる。多分、日韓関係というのは、戦後六十年間で最もいいんじゃないかなと思うぐらいよくなっておると思います。

 それから、中国に関しましても、日中条約ができた、一九七二年この方で見ますと、日本の経済関係というのは、香港を含んでおりますけれども、貿易総量でアメリカを上回るというところまで来ております。そういった意味では、中国の経済というのが大きく伸びておりますのは大変いいことだと私どもは思っております。少なくとも、一国で日本と対等以上の関係ができるというのはアメリカだけでしたから、その意味では、中国が伸びてきているというのは、これは日本のためにとっては極めていいことなのであって、経済というのは競争をして初めて伸びていきますので、そういった意味では、日中双方にお互いに補完し合って、いろいろな形でやっている。

 韓国に関しても同じだと思っておりますので、そういった中では、過去の問題等々いろいろもめているところはありますけれども、その問題だけであとの問題が全部悪いというわけじゃないので、あとの問題はほとんどうまくいっておるように思いますので、今後とも、その種の問題に関しては努力を重ねて、いろいろな意味で、日韓、日中それぞれに、私どもとしては対話の努力を積み重ねていくというのは政治家のレベルだと思いますし、経済に関しましては、政冷経熱と言われるのが、何となく、暴動の騒ぎやら何やらと、経の方も涼しくなってみたり冷たくなってみたりというようなことにならないように、今後とも、その種の努力をしていく必要があるんだと思います。

 全体として見て、日韓は特に、限りなく良好な関係にあると申し上げて、今回もビザというものの査証免除をすることにいたしましたけれども、随分私どものところにはとんでもないという話は幾らでも、電話やらファクスやら来ましたけれども、現実問題として、ワールドカップ以降、査証免除にした三カ月間の間に不法滞在等々の騒ぎが韓国と日本との間に著しくふえたかというと、そんなことは全くありませんから。

 そういった意味では、私どもとしては、基本的にこういった信頼関係というものをさらに継続させていくすべを打っておりますので、そういった個人的な人間関係というのが、さらに信頼関係というのが醸成されていく流れにあるというように理解をいたしております。

渡辺(博)委員 外務大臣、では、ぜひともその信頼関係をつくる環境づくりをしていただきたい。少なくとも、それを破壊するような言動はぜひとも慎んでいただきたいな、そのように思うわけであります。

 さて、ことしの一月に、私ども外務委員会は、一月十一日から十三日にかけまして沖縄に行ってまいりました。

 その目的は、駐留米軍等の基地等の視察と同時に東シナ海のガス田視察、そしてまた石垣島に行ってまいりました。そのときに、まず、日本という国は国境という意識が極めて希薄ではないか、周りが海に囲まれている、したがって、海が国境みたいな意味で、ほとんどその辺の意識が乏しかったんだなということを改めて実感したんです。

 それは、少なくとも、日本の最南端であれば与那国島、この島が日本のまさに国境であります。そしてまた、先ほど外務大臣がおっしゃっておりましたけれども、竹島にしてもそうであります。北方四島についてもしかりであります。

 我が国は、領土というと、大体、臭い物にはふたをしろという感じで、ほとんどその問題について積極的に取り組んできたということはないのではないかという印象を持っているんです。少なくとも、日本という国が成り立つのは、ここの部分は絶対許せない、譲れない、こういう線があってしかるべきなんです。

 竹島の問題にしても、我が国の領土であるよと言っていながら、実効支配は韓国であります。これをどのように解決していくか、大変重要な問題でありますが、でも、これをただ見ているだけでは困ります。しっかりと、それなりの対応をしていかなければならない。これは、大変領土問題は難しい問題であることは私自身も理解をしております。でも、相手のやるがままに何もしないということでは、まさに、この島はどうぞ自由にお使いくださいというのと同じであります。

 もう一つ、尖閣列島も同じであります。我が国の領土でありますよと言っていながら、新たな行動を行うと、中国が何と言ってくるかわからない。要するに、相手の目の色だけをうかがっている外交では困る、私はそのように思うんですね。

 そこで、とりわけ与那国島の実態を現地の人から聞いたことによりますと、実は防空識別圏というものがあります。この防空識別圏が与那国島の真ん中に通っている。これは私も、もちろん稲嶺知事からも陳情として受けているし、現地の町長からも受けております。なぜ、自分たちの国でありながら防空識別圏が自分の島の上に通っている、これはどういうことなんだ、我々は日本国民じゃないのか、そのくらいの意識ぐらい持つような話だと私は思うんですね。

 そこで、この防空識別圏について、もう過去何度となくこの議論はしております。みんな大体、検討することをしないで、もうこのまま継続していくという形の答弁なんですよね。

 実際に与那国の防空識別圏についての陳情の中には、こういうふうに書いてあるんです。要望は、与那国島上空の防空識別圏について、特段の配慮を願います、大変謙虚な要望であります。説明は、我が国の防空識別圏の日本と台湾の境界線は、与那国島を南北に貫く東経百二十三度に設定されており、与那国島の空域の一部が我が国の防空識別圏外にあることは重大な問題である、そのため、過去において、与那国島周辺において、民間の航空便等が台湾軍機にスクランブルをかけられたこともあります、防空識別圏について、政府レベルで解決を図る必要があることから、国の関係機関において適切な対策を講ずる必要がありますという説明であります。

 こういった説明は過去何度となく行われていることは、この国会の質疑の中にも記録されております。ぜひとも、この防空識別圏というものに対して、ここに住んでいる人たちはどういう意識を持っているか、国民の意識というものに目を向けてもらいたいわけです。

 ちなみに、これは台湾との関係でありますから、台湾はどのように理解しているかということも、我が党の西銘議員が直接台湾に行って聞いてきた、そういう話もありまして、そのときには、実は地図上で落としますと、現在、運用上は向こうもこのように与那国島の周りの十二海里を要するに防空識別圏として扱っているということを、相手の台湾の方から聞いているということであります。

 したがって、こういった防空識別圏というのを、もうそろそろしっかりとした形で、日本の国なんだから、日本の国を守るということが当然必要であります。これは訓令で処理できる内容なんですね。ぜひとも今回この訓令を改正して、与那国の国民が安心して生活できる環境をつくっていただけないか、そのように思うわけでありますが、この問題について、まず大臣に、こういった状況についてどのように思われるか、答弁をいただきたいと思います。

麻生国務大臣 日本の場合は、御存じのように、大陸の中にある国と違って、いわゆる領土というものに関して、もうそこは島、それから先は海ということになっていますので、何となく意識としては、今おっしゃったように、同じ一坪でも、千葉県の土地の中だと隣が一坪でも文句を言うところなんですけれども、どうも島全体として見ますと、ここから先は何とかという非常にわかりやすい形になっていますので、考え方としては、よく大陸国家とか海洋国家とか表現がありますけれども、そこらのところは、今おっしゃるように、領土という問題に関しては、大陸国家に比べて海洋国家の方が、そこらのところは余りこだわるというのが、海の上なものですから、何となく甘いのではないかという御指摘は、総じて、日本に限らず言えることだと思っております。

 その上で、今の防空識別圏の話は、もうお詳しいところなので、これを今さら重ねて申し上げてみてもあれだと思っていますが、今、別に、運用上余り支障を来しておりませんので、基本的には防空識別圏というのは領空とか領土とか領域というような性格のものではないものですから、そこらのところは運用が何となくお互いさま、譲り合ってやってきておりますので、今日までそこそこ問題もなく来ているんだと思います。そういった意識が領土問題やら何やらにも関係してくる、影響してくるのではないかという御心配なんだと思っておりますけれども、防空識別圏という話は、今いろいろな形で、飛行機の技術が進歩したせいもこれあり、また、対応するレーダーのシステムとか技術というのが非常に進歩しましたものですから、もう直ちにぱっとわかるというようなことが昔に比べて随分やりやすくなってきているところもありますので、お互いに直ちに、越えていますよとかいうような話が言いやすくなってきておりますので、私どももそういったものは十分に意識しながら、今言われたような問題によって、いわゆるエスカレートして何となくおかしなことにならないように、今後とも努力をしていかねばならぬものだと思っております。

渡辺(博)委員 本当はもう少しこの防空識別圏の議論をしたいんですけれども、ちょっと時間がないのでほかの質問に入ります。

 同じように、東シナ海ガス田開発、上空からしっかりと見てまいりました。火が上がっておりました。もう着実にガス田が開発されているということをこの目で見てきたわけであります。

 そこで、このガス田開発について、二階経済産業大臣は昨日日本に帰ってまいりましたけれども、温家宝首相とかさまざまな中国の要人とお話しした中で、この東シナ海の問題について解決に向けてどのように対応してきたか、この内容を、ホットなニュースをぜひともお聞かせいただきたいというふうに思います。

佐々江政府参考人 ただいまの、二階経済産業大臣の訪中でこの東シナ海の件がどうなったかということでございますが、訪中の際に、トウカセン国務委員と会談が行われまして、その際にこの問題について取り上げられたということで、私どもが聞いておりますところでは、基本的に両国でこの問題というのは対話を通じて迅速な解決を目指す、そしてこの東シナ海を協力の海とすべきだ、こういうことで意見の一致があったというふうに聞いております。

 そして、この会談の中で、次回の東シナ海等に関する日中協議について言及がありまして、この協議につきましては、行うことにはなっておりましたけれども、いつやるかということについては日中間で決まっておらなかったということでございますが、経産大臣の訪中、この会談の結果として、三月上旬に北京で開催するという方向で一致したというふうに聞いております。

 したがいまして、これを踏まえて、具体的日程について、今後外交ルートを通じて中国側と日程を調整したいというふうに考えております。

渡辺(博)委員 もう時間が参りましたけれども、最後に大臣、中国とは二〇〇四年四月以来の、二階経済産業大臣の訪問だということなんです。本来であれば外務大臣、しっかりと中国に出向いていって、日中関係のより進展を図っていただきたいな、そんなことを希望して、質問を終わらさせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

原田委員長 次に、谷本龍哉君。

谷本委員 自由民主党の谷本龍哉でございます。渡辺理事に引き続き、質問をさせていただきたいと思います。

 渡辺理事も質問されましたけれども、与那国島の防空識別圏の話、少しつけ足しで二、三、質問をしたいと思います。

 まず一点目、確認なんですが、先ほど渡辺理事の質問の中にもありました、我が党の西銘恒三郎議員が昨年末に台湾総統府を訪れられて、そして国家安全会議の方々と意見交換をされた中で、台湾側からこの防空識別圏について、与那国島の周りは十二海里のところで円を描くようにしてあるというような話があったということですが、先日、台北駐日経済文化代表部の方々とお話をする機会がありまして、そこでもう一度確認をいたしましたら、それは運用の線だ、防空識別圏自体は東経百二十三度、そのまま真っすぐ島の上にある、運用的に円を描く形で台湾側としては運用しているんだというような話がございました。

 このあたりの認識について、政府側の見解をお伺いしたいと思います。

山崎政府参考人 今先生が御質問あったとおりでございまして、台湾側は、防空識別圏につきましては従来と同様の見解を抱いておりますけれども、運用上、当然、日本の領域については配慮をして運用している、台湾側もそういう認識を持っているというふうに承知をしております。

谷本委員 それでは、半円を描くように十二海里、運用で台湾側がしている、それに対して日本側はどういう対応をしているのか、お伺いしたいと思います。

山崎政府参考人 日本側としましても、当然、防空識別圏というのは、先ほど外務大臣の方からも答弁がございましたように、領域ないしは領土を画するものではないということでございまして、あくまで対領空侵犯、航空機の識別を容易にするために設けている区域でございます。

 そういう意味におきましても、防空識別圏の運用そのものにつきましては、当然、従来同様やっておるわけでございますけれども、与那国島の領空につきましても、実行上の運用としまして、我が方としても、防空識別圏の外を出て我が国の領空に対して適切な対領空侵犯措置をとっているところでございます。

谷本委員 この防空識別圏の問題につきましては、一昨年十一月のこの外務委員会でも、当時は町村外務大臣でございましたけれども、質問をさせていただきました。一昨年、与那国島にも私自身行ってまいりまして、そして、ことしもまた一月に沖縄を外務委員会で視察させてもらった。その際にもまた与那国島の方々からこの要望を受けたということで、この問題について非常に問題意識を持ってこれまでかかわってまいりました。

 そういう中で、今の答弁もそうですし、実は一昨年の答弁の中でも、あるいは政府見解の中でも、この問題については、この防空識別圏は、これにより我が国の領空とかあるいは領土の限界などを定める性格のものではない、与那国島の上空の領空においても、防空識別圏の外の空域を含めて対領空侵犯措置というものを適切に実施している、これが大体答弁のあり方なんですね。

 したがって、防空識別圏自体を見直すということに対しては非常に消極的な答弁が多いというふうに思うんですけれども、これは、説明としては一応理解はできるんです。しかしながら、実際、では自分がそこに住んでいたらどうなのかということをやはり我々政治家は考えなきゃいけないと思うんですね。

 例えばですけれども、例えば九州、福岡でもいいです。半分が韓国の防空識別圏に入っている、空の部分が。あるいは、北海道が半分ロシアの防空識別圏に空の部分が入っている。もしこういう事態があったとしたならそこに住んでいる方々がどういうふうに思うかということを考えたときに、一番西の端の小さい、二千人未満の島だから構わないのかというようなことを考えてみたときに、やはりそうではないんじゃないかというふうに私は思うんですね。

 そういう立場から見たときに、この防空識別圏は、それぞれの国の防空のために必要と認める範囲において独自に決める、相互間あるいは第三国を入れて相手国と話し合う必要はないというふうに政府答弁でもされているわけでありますから、政府としては、我が国の主権を明確に主張する意味から、そしてまた、同時に与那国の住民の方々の気持ち、感情あるいは不安を取り除く、そういう意味からも、しっかりと考えていく、取り組んでいく問題だと思いますが、その点について、政府見解あるいは大臣の所見を伺いたいと思います。

麻生国務大臣 全くごもっともな御意見だと思いますが、谷本先生、例えばベルギー、上はオランダ、こっちはフランスに取り囲まれて、ここで戦闘機の訓練をしようと思えば、オランダに入るか、フランスに入るか、必ず入らなきゃ飛行機は飛べませんからということになると、領空はどこまで、防空識別圏はここまでやるけれどもというような話で、隣国とそれぞれ話をつけてEUの中で、ベルギー国としてやっているんだと思いますので。私どもは、その点、島なものですから、周りを海に囲まれていますので、領海とか領空とかいうようなことになると、下に人のいないところでふだんできるところがちょっとほかのところと違うと思っております。

 したがって、今のお話で重ねて申し上げますが、これは、技術が進歩すれば、つい昔、前は飛行機のスピードが遅かったから十分でここまでしか来なかった、今は一分でばあっと来るというような話になりますと、防空識別圏の範囲は延ばさないと安心して見ておられぬとか、いろいろな技術的な話もきっと出てくるんだと思います。

 今言われましたように、私どもも、領空、領土の話と防空識別圏とはちょっと区別して考えねばならぬと思っておりますけれども、基本的に、今おっしゃるように、そこにいる人たちの気持ちとしては何となくというところは、私ども、努めて説明をしていって、対応していかねばならぬ問題だと思っております。

谷本委員 どうか住民の気持ちになって考えていただきたいなと思います。

 さらにもう一点、この防空識別圏、今度は、台湾側の防空識別圏について、先ほど冒頭に確認をさせていただきましたが、少し伺いたいと思います。

 台湾側の防空識別圏は、当然台湾が自由に設定をできるものでありますから、我が国からどうこうしろと言えるものじゃないということは、これはもう国際慣例上もよくわかっておりますし、そんなことは難しいということはよくわかっております。

 ただ、先ほども言いました中で、政府の見解の中では、今あそこに引いてあるから実害は別にそんなにない、原則上は島の上に線が引いてあるけれども、運用上はお互いにうまくやっているんだという話がありました。政府答弁の中でも、台湾側の航空機が日本の許可を得ずに入ってくるなんということは領空であるからあり得ないし、そして、今までもそういう問題は起こっていないという答弁、見解がございました。

 しかしながら、先ほど渡辺理事の方からも話があったように、非常に国境問題等いろいろ議論がされる中で、あの場所に防空識別圏がある、そして与那国島の方々が何を不安がられているかという中には、例えば今、中国の方が、台湾は中国の領土であるという主張をずっとされております。だとした場合に、これは可能性の話ですけれども、将来的にその線がそのまま例えば中国の防空識別圏になってしまう、そこに防空識別圏があることをもとに、領土問題、例えば与那国はどちらのものだ、そういう問題に全く発展しないとも私は言い切れないと思うんですね。

 だとするならば、そういった国の国益、日本の国益というものをしっかり考えた場合に、この与那国の島の上にある線を、領空とか領海とは違うんだ、それはよくわかります。違うのであれば、そして、なおかつ防衛庁の訓令だけで変えられるのであれば、だったら逆に、ちょっとずらせばいいのではないかと私は思うんですね。

 同時に、幾ら他の国と相談しなくてできるといえども、台湾側もそこに防空識別圏を同じように引いているのであれば、与那国側が申し入れを行っているように、台湾側に対してもそこの配慮を、やれとはそれは言えませんけれども、そういう問題があってそこを配慮してほしいというような申し入れをできないのかどうか。それに対する御見解を伺いたいと思います。

佐々江政府参考人 本件につきましては、先生が今いろいろ経緯も含めましておっしゃられた事実関係でございます。

 最近もこの問題の提起がございまして、台湾側に改めて防空識別圏というものについての確認を行ったわけでございます。その際に、これまでと同様の防空識別圏というものが先方から確認があると同時に、実際上の運用についても配慮しているという実態であることが確認されているわけでございます。

 この防空識別圏というのは、この近海では日本、韓国というものは持っておりますが、かつ、これを明らかにしておるわけでございますが、中国、ロシアというのは明らかにしておりません。いろいろ隣国の関係というのは難しい状況にもあるわけでございますけれども、我が方は基本的には、識別圏というものは、領土とは関係のないと言うとあれでございますが、定めるものじゃない、そういうことで一貫した対応をとっておりますので、これを変えることがいささかでも領土との関係にあるんだというようなことになりますとぐあいが悪いというふうに思っておりまして、そういう意味におきまして、実態上、防空上の問題が生じていないということから、我が方としては、見直しの要請は承知しておりますけれども、こういういろいろなことを考えながら慎重に検討していく必要があるというふうに思っております。

谷本委員 今お答えをいただいたわけですけれども、先ほども言いましたが、この防空識別圏、これは領土、領空と関係ないとはいいながら、やはり国土、領土の防衛、あるいは領空、領海の防衛というものと密接に関連しているわけでありますから、全く関係ないというわけにはいかないと私は思います。ですから、そこは、なかなか一歩前進というところまでいかないにしても、やはり与那国の人たちの気持ちも配慮しながら、半歩ずつでも前進できるような対応を政府にお願いをしたいと思います。

 大臣、もし何か一言ございましたら。

麻生国務大臣 この種の話が国会で出てきて、防空識別圏、領土、領海等々の話がこういった形で出てくるというのはすごく大事なところだと思っております。

 何となく、余り防空識別圏と領海の区別がついていない方の方が、世の中、圧倒的に多いと思いますので、そういった意味では、今申し上げたような実務的な例を見てこういったものに関して意識を涵養しておく、常に意識をしておくというのは、私ども、どうも何となく島国におりますと忘れがちな問題ではありますけれども、非常に大事なところ。沖ノ鳥島を初めいろいろ問題になっているところがいっぱいありますので、そういったところは海洋資源等々考えましても非常に重要な問題だと思っておりますので、御提起をいただきましたことに感謝申し上げると同時に、この種の問題についてはきちんと対応していかねばならぬ問題だと思っております。

谷本委員 では、防空識別圏はそれぐらいにいたしまして、次に日中関係についてお伺いをしたいと思います。

 私は、我が国にとって、アジアの外交、特に北東アジア、中国や韓国あるいは台湾、こういった国々の外交というのは、多くの方が言われていますけれども、大変重要な外交関係だというふうに思っております。私自身も、この外務委員会でずっと委員をさせていただいている中で、中国や韓国や台湾へはできるだけ機会があるたびに足を運ぶようにしておりますし、また、特に若手の政治家や経済人あるいは学者の方々と交流を深めるように努力をしている者の一人でございます。

 しかしながら、今、現状の日中関係を見てみますと、先ほど話がありましたけれども、首脳会談あるいは外務大臣同士の外相会談、これが途絶えた状態が続いておりますし、これに対して、国内のあるいは国内外の多くの識者から、憂慮する声やあるいは改善すべきだという声が出ていることも事実であります。

 しかし、また一方で、これは私の考えではありませんが、いろいろな論調がある中では、いや、これはやはり中国が、今経済的にも政治的にも台頭してくる中で、政治戦略として日中の対立をつくっているところもあるんじゃないか、こういう論調も一方にはあります。ですから、たとえ、今問題になっているいろいろな歴史問題、こういったものをもし何らかの形で解決をしたとしても、やはりまた別の争点が出てくるんじゃないか、こういうような論調も一方にはあります。

 そういう中で、まず麻生大臣に伺いたいんですが、この日中関係の現在の状況をどう把握されているか、そして将来をどのように見ていられるのか、政冷と言われているこの日中関係の現状に対する対処というものをどう考えられているか、お伺いしたいと思います。

麻生国務大臣 日中関係に関しては今さまざまな論調が出ておりますけれども、簡単に言って、靖国問題が解決したら日中関係はすべて解決するかといえば、そんなことはないのではないか。私どもは、尖閣列島の話にしてもいろいろ抱えておりますので、そういった意味では、あれは象徴的に一つになっておる、まずそう思っております。

 また、先ほど申し上げましたように、中国のGDPが伸びておりますので、今、ちょっとあそこは数字が余り正確によくわかりませんので、この数字が本当かどうかと言われると、ちょっと私ども、それほど正確な統計数字が理解できないところなんです。理解できないというのは、鉄の生産量はこんな伸びて、セメントの生産量はこんな伸びているのにGDPはこれだけというのは、私らの常識からは考えられないので、どこか数字が間違っているか。何か、普通そういうのは必ずパラレルになることになっているんですが、そこは随分違ったりしますので、何となくいま一つ意味がわからぬところもあるんですが。

 仮に発表どおりという前提に立って答弁をさせていただければというかなり前提をつけないと、これはなかなか、後で、おまえ、こんなこと言ったじゃないかと言われると、数字がなかなか難しいことになりますので。そういう前提で言わせていただければ、GDPが三分の一か四分の一まで大きくなってきているというのは、僕は何回も申し上げておりますとおりいいことなんだと思いますが、同時に、拮抗するような経済力というのになってくると、隣国にあって拮抗するような経済が出てくるということは、それは二国間関係にいろいろな勢いでぎくしゃくさせるものが出てくるというのは、これは日中に限った話ではなくて、どこでも同じようなものだと思っております。

 したがって、そういうようなものはある程度時間をかけていくところなのであって、今までは全然格差がありましたものが今はそうじゃなくなってきておりますので、お互いさま、何となく今までは、経済力も十分の一じゃないか、人口からいったらそのさらにまた十倍じゃないかというような話になりますので、いろいろなものをいいですよ、いいですよと言っていたものが、おいおい、ちょっと待て、そうなってくるとこっちもという話になってきて、何となく双方に、競争とかいうのは同時に緊張感を生みますので、そこらのところが、いい意味であれば競争になりますのでさらに発展していくことになるんですが、何となくお互いに経済力の覇権を争うというようなことになるといかがなものかという感じがしております。

 今回、東アジア共同体というのを十二月に立ち上げるときに、インド、インドネシア、オーストラリア等々、民主主義というものとか自由主義経済という価値観を共有している国々と一緒になって、今こういうものを立ち上げるということで成功したんです。

 この間、戴秉国という、中国の元中連部の部長をやって、今、李肇星という外交部長の下にいますので副部長をやっている戴秉国というのが日本に来たときに、少なくともこの問題に関して、日本と中国はこの東アジアの地域において覇権を争うということはしない、そういったヘゲモニーを求めないというのを共通の理解にしようではないかという話を言ったんです。

 私どもとしては、そういったところをある程度しっかりしておかないと、両方で覇権を争うということになってきますと、周りの周辺国家にとりましては、それはかなり新たな別な緊張を生んで、なかなか難しいことになっていくと思います。この地域が経済的に発展するということと覇権を求めるということは、これは全然違う話なので、そういった点を基本として双方でやっていくというのは、水平分業とか垂直分業とか、いろいろな経済用語がありますれども、いろいろな形で両国というのは手を携え得る部分というのは非常に大きいんだと思っております。

 私どもとしては、中国との関係というのは、今むしろ、私どもの世代よりも、もっと若い世代の方が、サブカルチャーの面、文化の面、いろいろな面で友好関係が確実に今広がってきつつあるということは、えらいいいことなんだな、基本的にそう思っております。

谷本委員 日中についてもう少し聞きたかったんですけれども、ちょっと時間がなくなりましたので、最後に一問だけ、日米のことを簡単に伺います。

 ことしの三月までに、「日米同盟 未来のための変革と再編」、これを取りまとめるということになっておりますが、どうも聞いておりますと、出てくる話は、在日米軍基地の地元負担をどういうふうに減らすか、その再編の部分ばかりの話が出てきたような気がします。でも本来、この協議の一番の肝は、日本の自衛隊と米軍の役割分担、あるいは任務、能力の分担、これをどう変えるのかというところが実際の中心であるはずだと思います。

 当然、基地問題は重要ですけれども、この部分がなかなか聞こえてこない。この部分、もし現状わかっている部分、言える部分があれば教えていただきたいですし、それに対する見解をお伺いしたいと思います。

麻生国務大臣 まことに御指摘のとおりだと思っております。

 基本的には二つ問題がありまして、いわゆる抑止力の維持、少なくとも冷戦が終わったとはいえ、この地域においては、この地域というのは北東アジアの地域においては、朝鮮半島の問題とか台湾海峡の問題とかいろいろ問題を抱えておりますので、その地域が不安定になるということは、それは日本の通商上、極めて問題を起こしますので、私どもとしては、その地域にまさにおりますので、地域の安定というのは極めて重要な問題だと思っております。

 そういった意味で、米軍の抑止力というのは非常に大きい。傍ら、その負担をしておられる沖縄初め神奈川、岩国、いろいろございますけれども、そういった地域の方々の負担、基地の負担というのはこれまた大きいのであって、この負担の話は、やはり政治としては、どうしても国内ではその話になりますけれども、国防上から考えたら、今、谷本先生御指摘の点というのは非常に大きな問題だと思っておりますので、私どもとしては、軍事技術の進歩というものに合わせて、いわゆる兵力の構成、また構造改正、改革というようなものはもう避けて通れない。常にそういうものだと思いますので、私どもとしては、常にそれは効果あらしめる、最小の投資で、投資でというか費用で最大の効果を生み出すためにいかにするかというのは、常に考えておかねばならぬところだと思っております。

 私どもとしては、今、米軍という非常に大きな抑止力というものを利用して、そして北朝鮮の問題等々、いろいろ、何となくミサイルを持って核をという国が隣におりますので、断りなく、いきなり日本の上空に飛ばして、ミサイルを撃っちゃうなんていうのが隣にいるとなれば、それはこちらとしても、日米安全保障条約を使って日本の国家の安全を図ろうとするのは当然と思います。

 私どもとしては、今御指摘のように、非常に効率よくするためにどうするかという点は、今回の2プラス2でも非常に大きな論議を呼んだところでもありますので、御指摘の点を踏まえて対応していかねばならぬものだと思っております。

谷本委員 どうもありがとうございました。

原田委員長 次に、谷口和史君。

谷口(和)委員 公明党の谷口和史でございます。

 先ほどからお話が出ておりますけれども、改めて日中、日韓関係についてお伺いをしたいと思います。

 最近、麻生大臣の歴史認識、そして天皇陛下による靖国神社参拝発言等々、国内はもとより、海外のマスコミにおいても大きく取り上げられております。

 御承知のとおり、今日、小泉総理の靖国神社参拝をめぐり、中国、韓国が強く反発し、日中、日韓間の首脳会談の見通しさえ立たない状況にあります。また、そうした政治レベルでの関係の冷え込みが、日中、日韓間の経済協議などの実務面にも影響しており、昨年中の合意を目指しておりました日韓の経済連携協定をめぐる交渉の停滞にも影響があらわれてきている、こういうふうにも言われております。こういった状況のもとで、日本の外交のトップであられる麻生大臣が、中韓両国の反発が予想できる問題について、問題提起という観点もあったかと思いますけれども、大臣の個人的な見解とはいえ、あえて、なぜ今言及をこの時期にされるのか、理解に正直苦しむところであります。

 現在、アジア地域においては、地域協力の枠組みとして東アジア共同体構想、先ほどもお話がありましたけれども、この構想が始動し始め、共同体の実現に向けてはASEAN諸国の努力はもちろんのこと、日本や中国が協力し、主導的な役割を果たすことが不可欠であり、かつ、そうであることが関係諸国からも強く期待されていることは麻生大臣も重々承知のことと思います。

 大臣がさきの外交演説で述べられたように、日中関係の発展が外交の基本方針の一つである、こういうことでしたけれども、そうであるとするならば、むしろ中国側の感情を逆なでするような発言をされるのではなく、日中両国が、アジアはもとより、国際社会の重要なパートナーとして責任ある役割が果たせるように、その関係構築に向けて、より未来志向の呼びかけを行っていくべきである、こういうふうに考えるわけですけれども、麻生大臣の見解を伺いたいと思います。

麻生国務大臣 これは外交方針でも申し上げましたし、それから記者との、あれは外国人記者クラブでしたか、何とか記者クラブでもやらせていただいた。しゃべっていることは、同じことしかしゃべっておりません。

 今申し上げましたように、中国との関係、先ほどの答弁でも申し上げましたが、韓国と中国とを一緒に扱うつもりはありません。少なくとも片っ方は民主主義、自由主義経済という国でありますので、そこと外交上は少し違うと思いますけれども、私どもとしては、韓国に関しても中国に関しましても、少なくとも隣国として大事な国だということを申し上げてきております。

 事実、いろいろな意味で二国間というものは、上の方が靖国の問題でうまくいかない中にありながら、その下のレベルにおいては間違いなくこの十年、二十年、急激に深まってきておりますし、広まってきております。いろいろな意味で、私どもから見た範囲に、日中間、日韓間というのは、経済問題、人的問題、文化面でも拡大していますから、そういった意味では、別に、いろいろな意味で、上はいいけれどもほかは全部悪いのに比べれば、上が悪くてほかが全部いい方がよほどよろしい、極端な例を引かせていただければ、そういうことになると思っております。

 少なくとも、今いろいろな形で靖国の問題が出てまいりますけれども、靖国の問題だけで首脳会談ができないという国は多分中国だけかなと思っておりますけれども、そういった形になっておりますのは、その背景にありますのは、これだけが問題なのではなくて、私どもは、先ほどの谷本先生の答弁にも申し上げましたように、基本的には両方で経済がわあっと大きくなってきていますので、何となくそこで、両方で同じような経済力になってくれば、しかも隣にあって、やっていることも同じような経済ということになりますと、そこのところはある程度摩擦が起きるというのは、ある程度避けて通れないところだと思っています。

 しかし、だからといって、両国間で結構補完し合っている部分というのはいっぱいありますので、今後ともアジアの中において、今、中国が抱えております問題、例えば地域間格差とか貧富の格差とかナショナリズムの問題とか、これは、我々はみんな一九六〇年代、七〇年代、三十年前、四十年前に、安保反対の話にしても公害の問題にしても、裏日本、表日本の話にしても、都市と田舎の格差の問題にしても、これはみんな日本が過去三十年、苦労して解消してきた問題ですから、こういった問題というのはお互いさま、そちらが抱えている問題はうちはこうやって解決してきたんですということは率直に向こう側に伝えられるところでもあろうと思いますので、私どもとしては、日中間、お互いにそこらのところは、協力し合えるところは実はいっぱいあるのではないか。これは、この間も、いろいろなときに私どもも向こうに申し上げておりますので、こっちはこの間お見えになった方、次官を初め皆、私どもお目にかかってきていますので、そういった意見はきちんと伝えておりますので、そこらのところは今後とも努力をしていく以外にほかに方法はないと思っております。

谷口(和)委員 ありがとうございます。

 今の御発言、上がよくて下が全部悪いよりも、下が全部よくて上が悪いのはという御発言がありましたけれども……(麻生国務大臣「極端な例です」と呼ぶ)極端な例ですね。

 ただ、先日、十四日の衆議院の予算委員会において大臣は、友好のために国益を損なうのは愚かです、国益のための友好というのは成り立つというふうに御発言をされているかと思いますけれども、国益を考えた場合、正直言って私は、下もいい、上もいい、全部がいいというのがやはりあるべき姿だというふうに思っておりまして、国益のために友好というのは成り立つというこの御発言を踏まえつつ、今後、ちょっと先ほどの御発言と重なるかもしれませんけれども、どのような形で現状を打開し、日本の外交を推し進めていくお考えなのか、再度ちょっとお伺いをしたいと思います。

麻生国務大臣 この間の予算委員会のときの質問の話を言っておられる、民主党の方だったかの御質問にお答えしたんだと思いますが、友好のために、何々友好、よく友好という言葉が出るんですが、友好という言葉のために国益を損なうというのは優先順位が違うのではないかということを申し上げたので、国益のために友好を利用するというのが筋なんじゃないんですかと申し上げたと記憶しますが。

 今、双方とも、国益からいったら、こちらのマザーマシン、マザーマシンというのは産業機械のもとです。機械をつくる機械を私どもはマザーマシンというんですが、このマザーマシンを日本から輸出する、それを向こうは買って、その機械で物をつくって輸出するということになりますので、メード・イン・チャイナは、もとのもとはメード・イン・ジャパンじゃないかといって、これは両方ともわかった上でやっておるわけですけれども、そういったような関係で、かなり両国関係というのはお互い役回りというのを踏まえて、そこそこみんな商売を、私ども商売の世界からこっちに入ってきた者からいうと、きちんとそこらのところは、そこそこの役割分担はお互いに認識してでき上がっている部分というのはかなりな部分あるんだと思っております。

 そういった意味で、それを利用してお互いに繁栄しておるわけですから、別に、経済摩擦というより、お互いに利用し合ってここまでのし上がってきた。こっちは人件費が高くなった、向こうは人件費が安い、こっちは技術力はあれだけれども、そんな高い技術は必要のないものは世の中にいっぱいありますので、そこらのところは向こうにというような、いろいろな使い分けをしてここまでお互いにやってきたんだと思いますので、さまざまな分野におけます協力というのは、これは向こうの国益にも資して、結果として経済は伸びているわけですから。

 こっちもこっちで、その分は、一九八六年の、ドルが御存じのように二百四十円から百二十円まで暴落したあのときに、日本は海外に出ていく機会に恵まれたというか、出ていかざるを得なくなったとかいろいろな表現はあると思いますけれども、それを境に、この約二十年間にわたって間違いなく日本はその努力をしてきて、その中の主たるところとして中国というところになったんだと思いますけれども、その結果、中国の経済というのは間違いなく大きなものになってきました。

 そういった意味では、経済関係というのは、中国というのは極めて利にさといところは本質としてお持ちの国民性でもありますので、そういった意味においてはお互い利用し合って、それが結果として国益になり、そして商売を通じて友好が深まっていると思います。

 ただ、商売だけみたいなぎすぎすした話じゃなくて、ほかに文化の面とかなんとか、いろいろ今、御存じのように、先ほど引きましたように、今、中国人の中において、特に上海とか北京とかシンセンとかああいうところにおける子供の日本語習熟熱という熱が結構高くなっている大きな理由は、テレビゲームの解説本を読むためとか、我々なんか全然気がついていない部分でうわっとそういった日本語熱が広まっていっているのは、政治家の気がついていないそういったところでできておる。

 音楽も同じように、Jポップなんというのは、椎名林檎、あなたの世代ならおわかりと思いますが、あそこらがタイムマガジンの表紙になる。少なくとも、私らの意識ですと、ソニーの盛田昭夫がタイムの表紙になるのはわかりますが、椎名林檎というのは多分日本人で二人目かなと思いますけれども、タイムの表紙になるというようなのは、やはり我々には、ふだん仕事をしたりこの永田町周辺なんかにいるととても理解できないところができてきて、それがわあっと広まっているという実態というのは、これはアジアと日本との関係を見たときに、そういったものも含めて、私どもは意外と、音楽とかそういったものがお互いのコミュニケーションとか人間関係を向上させるのに役立っている、すなわち友好に役立っている。そういった面はもっと我々積極的に応援してやった方がいいのではないかなというような感じを、外交を担当するようになってから特にそのような感じがいたしております。

谷口(和)委員 ありがとうございます。

 もう一点だけ、個人の信条と国益ということに関して確認をさせていただきたいと思います。

 今、日中、日韓では、小泉総理の信念に基づく靖国参拝により、首脳会談が開催できない状況にあります。一国の総理のこの個人的信条と国益の関係についてはいかにあるべきと麻生大臣はお考えなのか、お伺いをしたいと思います。

麻生国務大臣 個人の信条として、靖国の例を多分引いておられるんだと思いますけれども、基本的には、靖国神社に限りませんけれども、少なくとも、自国の総理が他国の総理もしくは代表から、おまえ、ここは行っていいけれども、こっちは行っちゃいかぬとかいうような話を他国から指示されて、さようでございますかと言ってそれに従うということはなかなかできないんじゃないでしょうかね。僕は基本的にはそう思いますよ。それが非常に大きな論点として出てくるところなんだと思っております。

 それからもう一点、自分の国のためにとうとい命を投げ出してくれた、そういった人たちを国家が最高の栄誉をもって祭るということを禁ずるということは、国としてはいかがなものかという、多分この二点なんだと思うんですね。

 したがいまして、そういったことに関して、小泉総理の方としては、A級戦犯よりはむしろ、戊辰の役にさかのぼってずっといろいろな方がいらっしゃるわけですから、昔は招魂社といって靖国神社とは言わなかった時代から含めまして、戊辰の役にさかのぼってこの話はずっと続いてきた話ですから、そういった意味では、個人としてはそういった気持ちで、横須賀が御出身ですから、多分横須賀の海軍の婦人というか、海上自衛隊の婦人部等々でしょっちゅう行っておられたんだと思いますが、そういうこれまでの気持ちを大切にしていきたいというのは、総理としてはよくわかるところだと思っております。

 したがって、そういった点を考えますと、今、個人の信条として、私どもとしては、そこを大事にしておられるところなのであって、その立場においてどうされるか、それはかつて、適切に判断されると御自分で言っておられるとおりなのであって、何もA級戦犯の人におじぎをしに行っているというお気持ちではないというように理解をしております。

谷口(和)委員 ありがとうございます。いずれにしましても、とにかく日中、日韓の友好のためにぜひ最善を尽くしていただきたいというふうに思います。

 それから次に、イランとの関係、イランの核問題についてでありますけれども、今日、目を国際社会に転じますと、解決を急がれる課題が数多くあります。その一つがこのイランの核開発の問題でありますけれども、御承知のとおり、イランの核開発の問題に関しましては、今月初めにIAEAが国連安保理への付託を決めておりまして、早ければ来月にも議長声明なり安保理決議等が出されることが予想され、イランがこのままウラン濃縮活動を続けるようであれば、イランに対する経済制裁も、より現実性を増してくるものと推察されます。報道によりますと、米国では、とり得る制裁案を幅広く検討中であるというふうにも伝えられております。

 核不拡散体制の維持を強く主張してきた日本としましては、核兵器の開発のおそれが完全に否定できないイランの核開発を思いとどまらせるため、麻生大臣がさきの外交演説において示されたように、平和的解決へ向け努めるということは言うまでもありません。

 しかし、今週行われたイランとロシアによる仲介案をめぐる交渉は難航しており、交渉の継続では合意したものの、イランがウラン濃縮をロシアで行うというロシアの提案、この提案を受け入れる可能性については、どちらかというと悲観的な見方が広がっております。核の平和利用の権利行使を盾に強硬姿勢を示すイランが、今後、果たして軟着陸を選択し得る余地があるのか疑問であります。

 麻生大臣は十四日の衆議院予算委員会で、日本とイランの友好関係を強調した上で、イラクが終わったら次はまたイランというのではこっちも忙しいので、そのところはうまく落ちつかせるようにしたいというふうに述べられて、イランの核問題を軟着陸させるべく外交努力する考えを強調されております。

 折しも、今月二十七日にイランのモッタキ外相が来日する予定でありますけれども、今のイランに果たして核開発停止を求める我々の声に耳を傾ける余裕が、また余地というのは残されているのか、この辺について政府の状況分析を伺いたいと思います。

麻生国務大臣 御指摘のように、過日、モッタキという人に電話をして、この人はもともと駐日大使を五年ぐらいやっていますので、おたくらに入っている今の国際情勢というのは、いわゆる公平なものが入っているか、そういう保証はないでしょうが、だから一回話を聞きに来たらどうと言ったら、即来ることになりました。向こうとしても、耳を傾ける気がなけりゃ来る必要はないので、その意味では、耳を傾ける気は一応あると理解をすべきだと思っています。それが一点です。

 それから、アメリカの場合はイランとのつき合いは全くありませんから、接点がありませんので、そういった意味では、アメリカ等々はイランと直接交渉はなかなかできないという立場にありますので、日本におけるモッタキとの対話というのは極めて関心の高いところになっております。

 そこで、こちらの話というのは、EU3というんですけれども、いわゆるドイツ、フランス。ロシアでやっております、あの話に関してどれぐらい、現実問題として、濃縮の過程をソ連に出してまたもとへ戻すというのは、一つの提案としては私どもとしてはいいと思っております。

 少なくともIAEAの査察という問題に関しては、この十八年間、こんなことはやっていないと言いながら実はやっていたという話は、これは信頼関係が極めてなくなった形になってきているのは事実だと思います。そういうところは、向こうが信頼をなくしたわけですから、自分で信頼関係を醸成する責任はかかってイラン側にありますので、そういった意味では、少なくとも、日本の場合と違って全然公開していないというところが不信感をさらに大きくしているということになっています。

 加えて、石油は二番、三番を争うぐらいの極めて埋蔵量の大きいところですから、したがって、埋蔵の大きいところは、今すぐ核を、原子力を平和に何とかという必要性にそれだけ迫られていますかというと、我々みたいに石油のない国から見たら全然違うわけなので、何となくそういったのも説得力をなかなか持ちにくいところでもあろうと思っていますし、いろいろな意味で、イランの支援によって、いわゆるパレスチナで、いわゆるシリアで、いろいろな形で応援をしているではないか、国際的にはそう言われている部分もありますので、それも何となく不信のもと。

 そういったものがずっと重なって今みたいな形になって、何となくあの地域が不安定という状況は、中近東の地域が不安定というものは、私ども日本にとりましては、石油の輸入の依存度の約九割を中近東によっておりますので、あの地域、パレスチナに限らず、イラクに限らず、イランに限らず、石油産出国周辺の社会情勢、治安情勢が不安定になるというのは、これは日本の国益を非常に損なう。石油の安定輸入がしにくくなりますので、そういった意味では、これはちょっと、ほかの国がパイプがないのであれば、日本としては最大限の努力を図るべき一つのものであって、私どもとしては、国際世論というのをぜひ頭に入れておかないと、一人で頑張ってやってもそれはなかなか違いますよという話をきちんとしていく必要があるだろうと思っております。

谷口(和)委員 ありがとうございます。モッタキ外相との会談におきましては、そういった日本としての忌憚のない意見をぜひ伝えていただきたい、こういうふうに思います。

 今、原油のお話がありましたけれども、イランの核開発問題への国際的社会の対応は現在交渉が停滞している北朝鮮による核開発問題に大きく影響するため、我が国にとっては、単にイランの核開発問題にとどまらない重要な問題であるというふうに思います。

 イランの核開発問題への対応が国連安保理に移った今、イランが核開発を継続するような場合、国連安保理において、議長声明は先ほど申しましたけれども、経済制裁措置等の発動が情勢の変化に応じ順次検討されるということが予想されるわけであります。また、その一方において、米国が、イランに対する経済制裁もさることながら、軍事的措置さえ講ずる可能性を残していることも注視し、我が国としては平和的解決による事態収拾に最善を尽くしていかなければならない、こういうふうに考えるわけであります。

 日本は現在、先ほども若干触れられておりましたけれども、イランからの原油の総輸入量は日本の輸入量の一六%を占めるということで、また、我が国の自主開発油田としては最大のアザデガン油田の開発にもかかわっておる。我が国のエネルギー安定確保という意味において、イランの存在は非常に大きいわけであります。仮に、今後安保理において経済制裁が発動されるようになった場合に、我が国は、国際協調の観点からイラン制裁に踏み出すのか、また、エネルギー輸入状況を考えて独自の路線を行くのか、この辺が難しい選択を迫られることになるかと思うんです。

 イランからの原油の輸入量が日本の輸入量の一六%を占めるということで、これは推定ですけれども、もし輸入がとまってしまった場合には、恐らく国民生活への影響も大きいだろう、また、現在高どまりしております原油価格、世界の原油市場への影響も大きいだろう、こういうふうに思います。ですので、先ほどの質問とちょっとダブる部分がありますけれども、外務省としては、あらゆる機会を見つけて、こうした事態の回避に向けていろいろな形で訴えをしていくべきだというふうに考えるんですけれども、大臣の見解を伺いたいと思います。

塩崎副大臣 先ほど来、大臣から外交努力についてお話をさせていただいておりますけれども、基本的には、やはりイランを孤立させないということが大事なんだろうと思うんです。

 アザデガンを含めて、我が国にとっても極めて重要だということは大臣がさっきおっしゃったとおりでありまして、今、谷口委員からお話がありましたように、基本的に外交的な努力で平和的に解決をしていくことがまず最優先であり、ロシア、そして一月には、EU三カ国、イギリス、フランス、ドイツに加えてロシア、アメリカ、中国という六カ国のフレームワークでも話し合いが行われているわけであります。

 先般も、私もミュンヘンに行ったときにドイツの副大臣などともお話をいたしましたけれども、次のIAEAの理事会までに若干の時間があるので、ここの間にやはり外交的な解決方法を徹底的に探るということでありました。

 したがって、私どもとしても、制裁のことをまず考えるのではなくて、まず平和的に外交でどう答えを出していくのかということに最大の努力を重ねていくということが大事ではないかなということで、今回、来週にもモッタキ外務大臣も来られますし、一月には、金田副大臣がロンドンでモッタキ外務大臣と話し合いもいたしました。あらゆる手を使って、外交的に、何とか平和的に解決をし、イランを孤立させない、そのことによってまた、ひいては日本がエネルギーの安全保障を守れるというふうにしていかなければいけない、こんなふうに考えております。

谷口(和)委員 時間が参りましたので、これで終わります。ありがとうございました。

原田委員長 次に、武正公一君。

武正委員 おはようございます。民主党の武正公一でございます。

 きょうは一般質疑ということで、以下、質問をさせていただきます。

 先ほど来、日本の領土、領海を守る、あるいは防空識別圏についての変更ということで、大変大事な課題についても質疑が行われております。

 外務大臣からは、どうしても島国ゆえ、そうした意識が薄いという嫌いがある旨の発言もありましたが、私は、それはやはり政府として、領土、領海を守るという責任をこれまでしっかりと果たしてこなかったということであって、決して島国ゆえの言いわけは許されないというふうに考えております。

 既に当外務委員会では、例えば日本海の呼称、これを、韓国のソウル大使館、日本のですね、ソウル大使館のホームページで、韓国の主張の東の海と、日本側のホームページでそうしたことを、外務省在韓ソウル大使館のホームページで表記をしたり、あるいは、日本政府の関連のそうした出版物に、日本海(東海)と、日本側でわざわざそうした表記をしたりというような意味では、非常にやはり領土、領海に対する意識が政府に根本的に薄いのではないか、欠如しているのではないかという問題があるというふうに考えております。

 この点は、改めて当外務委員会は、この領土、領海を守る、あるいは防空識別圏のことも含めて、委員会としての決議なりなんなり、やはり国会としてそれを改めて示していくべきであろうということを提起させていただきたいと思います。

 さて、過日、外務委員会の沖縄への視察においては、実は尖閣諸島も上空から海上自衛隊機で視察をいたしまして、私の目からは雲間に隠れてちっちゃな岩が二つほど見えまして、これはまた後で同僚の松原委員からも指摘があるかもしれませんが、そうした尖閣諸島の一部も確認をしたわけです。その後、石垣市長からは、自分の市の市域である島になぜ上陸できないのか、日本政府にそういう要請をしているんだがだめだと言われている、こういうことも率直に陳情を受けました。このことも冒頭、改めて申し述べておきたいと思います。

 さて、外務大臣におかれましては、既に昨年、沖縄北方特別委員会で、私から、日本外交として何を大事にするかという質疑に対しては、やはり、国益を損じることのないように、先ほど副大臣の冒頭のあいさつでもございましたように、近隣諸国、アジアとの関係を大事にする、こういったことを述べられたわけです。

 そろそろ小泉内閣、五年となる中で、この小泉外交の評価、総括を外務大臣としてどのようにされているのか。ちょうど秋で首相も交代をされるわけでありますので、やはり今そういった時期を迎えているのではないかなと私は思うんですが、これを例えば地域的に分けまして、対米、対アジア、あるいは対アフリカ、対ヨーロッパ、こういった観点から、この小泉外交の評価、総括を外務大臣なりにどうされているのか、お聞かせをいただきたいと思います。

麻生国務大臣 全般にわたりますので、少々時間をいただくことになろうと思いますが、日本の国の外交目標というのは、先ほど申し上げましたように、経済的繁栄を通じて、経済的繁栄と民主主義を通じてが正確だと思いますが、いわゆる平和と幸せ、幸福をというのが国民のコンセンサスでこの六十年間やってきたんだと思いますが、それを、基本的にはそんなに外れたところではなくて、少なくとも日米同盟を基本として、いわゆる国際協調というようなことをベースにしてずっとやってこられたというのが、この五年間のほぼ実態なんだと思っております。

 その間、有事法制、国民保護法、いろいろありましたし、いろいろな関係で日本という国の安全と防衛というところもきちんと、戦後五十数年かかってできなかったものが、一応の形としてでき上がりつつありますし、やはり日本としては、小国のときは、でき上がった国際秩序にどうやって自分を合わせるかというのが小国の生き方なんでしょうけれども、それなりに大きくなってきたら自分の都合のいいような国際情勢をつくろうとするのが、大体、大国というものと小国の一番の違いなんでしょうが、少なくとも、日本にとって、通商で成り立っておりますこの国として見ますと、やはり自由に貿易ができるという状況は望ましいというのは当たり前の話なんであって、そういった意味では、基本として経済的にはそういったところをやってこられたんだと思っております。

 今、国際情勢というのを見ましても、先ほど自民党の議員の方に資料をお見せしましたように、BBCの資料やらメリーランド大学の話を出しましたけれども、そういった評価もいただいているというのであって、これは日本がやったんじゃない、日本政府がやったんじゃなく、他国が他国の学生を使ってやっておりますので、そういったものが出てくるというのはまことに結構なことだったんだと思っております、評価が高いということは。

 ただ、この間、何が起きているかというと、やはり、北朝鮮の話に限らず、ミサイルとか核の拡散とかそういったような話とか、テロがあちらこちらで頻発する等々の、いわゆる今までの冷戦構造の時代に余りなかったような地域紛争とか宗教紛争とかいろいろな問題が出てきて、そこらのところが結果として日本に回り回って出てくるということは、これは日本にとっては極めて難しい問題なんであって、私どもとしては、その点に関しては、少なくとも世界の秩序を、何となく金さえ払ってそっちでやってという話じゃなくて、少なくとも自分もある程度そこに参加をして、PKOだ、ODAだ、いろいろな表現がありますでしょうけれども、そういったものを通じて日本としてはやっていこうという努力をしてきたというところが今のイラクであり、アフガニスタンであり、その前に東ティモールであり、いろいろなところなんだと思っております。

 少なくとも、新しい国際協力のあり方というものにつきましても、いろいろ民主党と議論をさせていただいたおかげで、こういった形が高く評価されるような形に出てきたあのグラフの背景かなと思っておりますので、ただ何となくお金だけ払うからあとはそっちでやってというような態度ではなくなってきたのは少し評価できるところかな、全体として言わせていただければ、そんな感じだと存じます。

    〔委員長退席、渡辺(博)委員長代理着席〕

武正委員 先ほど、インドネシアが八七%でしたか、非常に高い日本への支持という、今のその統計を先ほども示されておりますが、ただ、残念ながら、昨年、国連安保理常任理事国入りに対して、ASEANは反対を表明したわけですね。これだけ東南アジアに対して日本が援助をしてきた国でありながら、反対をしたわけです。アフリカに対しても、ODA倍増ということでしょうか、これを示しながら、やはり同じでありました。

 そういった意味で、この五年間の小泉外交の総括が、必ずしも意図したとおりに行っていない。やはりその問題点、先ほど来、総理の靖国参拝についても質疑があったわけでありますが、いずれにせよ、外交は、言うべきことを、先ほどの領土、領海に関しても国益に関しても、主張しながらも、しかしやはり対話のさまざまなチャネルをつくっていく、この駆け引き。あるいは、時には言葉のけんか。でも、それをにこにこしながら言葉のけんかをするというか、そういう大変すさまじい、そういう国際社会でのやりとりだというふうに思うんですね。それが、残念ながらこの五年間、どこまで成果を上げてきたのかなというところをやはり検証、総括が必要だと思っております。

 中国については、先ほど、覇権争いをしないということを戴秉国外交副部長と意見交換したと言われておりますが、私は、あわせて、この北東アジアで軍拡競争が起きてはいけないということを大変懸念しております。昨年十二月に、私も、訪中をした折にも、中国共産党の中連部ですか、あちらの幹部の方にもそういうことを申し上げました。ある面、そうした意味では、軍事面、防衛面の透明性、これをやはり確保していくということなども含めて必要であろうというふうに考えております。

 そこで、対米についてもう少し深めていきたいと思うんです。

 外務大臣は年次改革要望書をどう評価されておられるでしょうか。これは、九三年七月に宮沢・クリントン会談で合意をして、九四年から、年次はつきませんが、改革要望書ということで両国が交わしてきたもの。

 有名なところでは、郵政民営化については九六年十一月十五日付、要望が出た。昨年、法案を一年延期をいたしましたいわゆる三角合併解禁については、二〇〇二年十月二十三日付の要望であった。しかも、年次改革要望書には「二〇〇四年度までに国会に提出すること」と。こういったところまでなぜアメリカに言われなければならないのかということなんですね。

 これまで、企業会計、CEO、社外取締役、法科大学院などなど含めて、たくさん日本が今取り入れているグローバルスタンダードと呼ばれるようなことが、すべてこの年次改革要望書に盛られているわけなんですが、年次改革要望書を毎年交わし、そして、それである面、この五年間、構造改革も進んでいるということについて、どのように評価をされますでしょうか。

麻生国務大臣 最初に中連部の話をさせていただいて、今の年次改革要望書の方については塩崎副大臣の方から答弁させていただきます。

 今、中連部の話が出ておりましたけれども、武正先生、単純計算して、日本の国防予算は四兆八千億。四兆八千億が、ダブルディジットというんだから、仮に一〇%として、二けたというのは最低の一〇%として、十七年いったら二十三兆円ですよ。これだけ二十三兆円のものになっちゃったら、それは隣にいる人は、えっということになるのが普通なんだと私は思うんです。普通じゃない人の方が普通じゃないんじゃないかなと思うぐらい。だって、二十兆を超すんですよ、二十三兆円ぐらいなんですから。

 そうすると、うちは全部中はこれですよと出してあるから、これが人件費、これが戦車、これが何とかでと全部出してあってやるのと、全くそこのところがよくわからぬというのでは、隣の人に対する不安感を与えるというのはいかがなものかというところがこの間申し上げたところなのであって、今言ったような形で、中連部にその点は問題だということを言っていただいたというのは、私どもとしても大変ありがたく、感謝を申し上げます。

塩崎副大臣 武正議員の今のいわゆる年次改革要望書と言われているものについての御質問にお答えいたしたいと思います。

 そもそもマスコミ等々で取り上げられ方が、どうも片一方からだけの、アメリカからだけの要求というふうにとられているわけでございますけれども、これは、もともとキャンプ・デービッドで二〇〇一年にブッシュ・小泉会談の中で、成長のための日米経済パートナーシップというものの中の一つのフォーラムということでスタートをしているわけですね。

 御案内のように、これは双方向で要望をお互いに議論して、言い合っているということでありまして、決してアメリカから言われたことを唯々諾々とのんでいるというようなことではないわけでありまして、今取り上げられたテーマについて、私も自民党の中で小委員長などで扱ってきたものもたくさんございますけれども、一方で、日本からアメリカに対して要望をして、それが実現しているものもかなりございます。

 例えば、この二月にバード修正条項というのが廃止をされました。これはダンピング防止税等の収入を米国内業者に分配するというもので、かねてから、これをやめろやめろ、こういうふうに言ってきたわけでありますけれども、これがWTO協定違反じゃないかということで、向こうの方も認めて、廃止をいたしました。

 それから、一九一六年ダンピング防止法についても、二〇〇四年の十二月に廃止されたりしておりますし、また米国の入国管理の厳格化等々についても、こちらからの要望が向こうに受け入れられたということだと思います。

 したがって、我々は向こうから言われたからやる、あるいは向こうもこっちから言われたからやるということじゃなくて、お互いに議論の中で、いいものをやはりやっていった方が、自分のためになるものはやっていく、そういう判断をしてやってきていることだろうと思いますし、多くのものは法律として出てくるわけでありまして、これは国会で与野党を問わず一緒に議論してやってきていることでありますから、決して言われたままのものをやってきているというふうなことではないんじゃないかと私は思っております。

武正委員 日本への年次改革要望書は五十ページ以上あるということなんですが、日本からの年次改革要望書というのは何ページぐらいなんですか。そう言われて、いっぱい要望しているというお話ですよね。どうも余りそういう話が聞こえないので、今幾つか挙げられていますが、大変米国から日本への要望というのは大部に映るんですけれども、これは何ページぐらいあるんですか。

塩崎副大臣 日本国政府の要望事項というのが手元にありますけれども、五十一ページにわたってございます。

武正委員 ちょっとまたその中身を精査させていただきたいと思います。

 よく日本の改革が外圧を利用してやるというようなことが言われるわけでありまして、この五年間の小泉内閣の外交の一つの評価、総括として、この年次改革要望書は、先ほど言ったように、九四年から始まっているわけでありますし、あるいは、やはり八五年のプラザ合意から二十年間、日本の内需拡大も含めた、そうした要求も含めて、やはり私は検証、総括というものが今必要なのではないかなというふうに思っております。

 もちろんこれは、米国債を日本が大量に保有をしていることによって米国内の長期金利が引き上がるのを抑えている、こういった指摘もあるわけですので、総合的にこの対米関係というものを、日米安全保障条約が基軸ではありますが、やはり小泉外交の総括として、その構造改革の総括も含めて見ていかなければならないというふうに私は思っています。

 そこで、日米関係にとって今大変懸案事項ということで、2プラス2合意ということで、中間報告、三月末には最終報告ということで、既に日米の審議官級協議も今月あったやに伺っております。報道では、特にグアムへの米海兵隊の移転費用七十六億ドル、うち四十七億ドル、六割は住宅関連、七千人プラス九千人の家族の移転ということで、こうした額も提示があったという報道もあるわけですが、実際のところ、この米軍再編の協議、日米審議官級協議の内容、これも含めて、どのようになっているのか、お答えいただけますでしょうか。

塩崎副大臣 今、武正議員御指摘のとおり、審議官級の協議は繰り返しやっておりますし、御案内のように、三月末までにまとめなければいけないということにデッドラインも決まっているわけであります。したがって、精力的にお互いに意見交換をしながらこの内容を今詰めているところでありますけれども、具体的な細かなことはまだ詳細に明らかにするわけにはいかないということで、差し控えさせていただきたいと思います。

 グアムへの移転の問題については、趣旨は、御案内のように、沖縄の海兵隊の司令部の要員並びに家族をグアムに移すということで、七千人ということで話が進んでいるわけでありますけれども、まだ具体的な中身については、措置については何ら固まっているところまでにはいっておりません。

 さまざまな報道はなされておりますけれども、議論が今行われているというところで、具体的な措置を含めて、さらに議論を深めて結論を出していかなければいけない、こんなふうに考えておりますので、三月末に向けて努力を続けてまいりたいと思います。

武正委員 大臣もトイレから戻ってこられましたので、今のこの日米審議官級協議、米海兵隊の七千人のグアムへの移転ということを、合意を中間報告して、最終報告に向けて、もう三月ですから、協議をしているわけですから、今の副大臣のように、額もまだ決まっていない、しかし新聞では七十六億ドルと出ている。もう来月末が最終報告ですよ。本当にそれでいいんですか。国会に対してそういう説明でよろしいんでしょうか、外務大臣。

麻生国務大臣 数字はいろいろ出ているのは、私ども知らないわけではありませんけれども、そこらのところは、移転するというところは、確かに私どもにとっては負担の軽減になりますので、これをどれくらい金がかかるかという話は、五十台、四十台、いろいろ話があったのはこれも新聞に出ていたところですけれども、基本的には、これはある程度、出ていってもらうのに対して、向こうが例えば朝鮮から、朝鮮国境ですから、あれは三十八度線から以南、りゅう弾砲の届かないところへばんと下げてきた。あのときはアメリカの都合で下げておりますが、今度の場合はこちらも向こうに立ち退きを要求している。簡単に言えば、普通の民間用語ではそういうことになるんだと思います。簡単に言えばそういうことでしょう。だから、下がってくれと。だから、そこらのところを我々は頼んでいるわけです。立ち退きという言葉でなければ、少なくとも、この部分が兵隊が減るということは我々にとってはすごく大きいところですから。

 したがって、東ドイツにいたソ連軍が撤退するときも西ドイツは多額の金を払っておりますけれども、少なくとも私どもとした場合は、今このままいつ果てるともわからないで、二十年かけて七千人減らされるのと直ちに減るのとでは沖縄住民に対する負担は全然違うんじゃありませんか。違いますか。いやいや、何か一生懸命向こうから場外発言をやたらされる方がいらっしゃいますので、そちらに対して一応サービスとしてお答えしているんですけれども。

 私どもとしては、そういった点を考えますと、いろいろな意味で、今の話の額までは正直言ってまだ精細に詰まっているわけではないというのが正直なところですけれども、いろいろな形での話として、それをどういう形でやるのかというのに関しましては、これはちょっといろいろ、真水でやるのかどこでやるのかいろいろな話が出てくるんだと思いますし、ちょっと正直、いまだ詰めができ上がっているわけではございません。

武正委員 外務大臣に伺いたいんですが、思いやり予算、在日米軍駐留経費の負担を改定というか、二年延長を今国会に出されております。きのう、衆議院本会議でも我が党の山口議員が質疑に立ったわけですが、この協定の三条に、国内の訓練の移転経費を思いやり予算、二十四条の改定で見るという項目があるんですね。これは、どの国でもこういったことをやっていないという外務省のそういう答弁をいただいているんですよ。そのとおりでしょうか。

麻生国務大臣 今他国に、きのう本会議の答弁で申し上げましたように、アメリカに対してやったことはないかと言われれば、私の知っている範疇ではございません。ただ、今ソ連の例を引きましたのは、東西ドイツ合併に伴って東ドイツ駐留のソ連軍が撤退するに当たっては、当時の統一ドイツ政府と記憶しますけれども、統一ドイツ政府がソ連軍に対して、何兆だか忘れましたけれども、そういう額を払ったという例はございます。したがって、きのうの国会答弁で申し上げた、米軍が払った例はないというのが私どもの調査で知っている範疇であります。

武正委員 私が聞いたのは、思いやり予算の三条で、日本国内で日本国の要請で訓練を移転したときの経費は日本側が払うと、もう三条で平成八年に改定したんですよ。このことは諸外国で例がありますかということを聞いたんです。

塩崎副大臣 今、諸外国で例があるのか、こういうお問い合わせでございまして、ちょっと今手元で正確なところを調べておりませんので、改めて調べてお答えをいたしたいと思います。

武正委員 私が聞くと、これは民主党の外防の部門会議で来ていただいて聞いたら、諸外国で例がないそうです。今、これから正確にお答えいただきたいと思いますが。

 つまり、平成八年の改定、改正のときに、国内でのそういう移転経費についても日本側が面倒を見ますよ、こういうことをやっているんですね。日米の地位協定は、二十四条で、施設は日本側が提供します、ただ、維持については米軍が負担しますよと。ただ、維持管理については思いやり予算で労務費などを見てきた、そういった経緯があるわけですね。

 この二十四条の一項に「この協定の存続期間中日本国に負担をかけないで合衆国が負担することが合意される。」こういうような項目もあるわけで、先ほど、出ていってもらうんだというようなことで、何かそれがもう当たり前というような感じの外務大臣のお答えが、やはり今の日米協議の中で日本側の負担をいたずらにふやす、そういった背景になっていると思うんですね。

 そもそも今回の2プラス2の合意、そして最終報告は那辺にあるかというと、あくまでも米軍の再編成、米軍再編に伴って、こうした合意が今加速して三月末を迎えようとしているわけであって、本当は沖縄の負担軽減という話は十年前のSACO2なんですよ。そのときに合意をしているはずなんですね。そっちの沖縄の負担軽減がずっと十年間先延ばし先延ばしになって、今回米軍再編に合流しちゃって、そして今回、グアムへの移転経費で、じゃ負担してくれみたいな話になっている。

 ここはやはり交渉で切り分けていくべきだと私は思うんですね。あくまでも今回の合意というのは、米軍再編に端を発しているんだ。SACO2のものがずっと日米がなかなかうまく合意できずに十年もたっている。これはやはり切り分けていかなきゃいけないということですから、私は、この三条の改定などに端を発して、これまで日本が諸外国に例のないような形で負担をしてきた。そして、今回も日本から、米国に戻るに関して、その施設まで費用を負担するということは断じてあってはならないというふうに思うわけでございますが、いかがでしょうか、御所見を。

麻生国務大臣 今SACO2の話が出たんですけれども、正しいと思います。あのSACO2のときにこの種の話が出た。もう間違いない、私の記憶でもそうであります。

 今おっしゃったとおりなんですが、それが十年間全く動かなかったというところがこれまた非常に大きな問題でして、その間に普天間で事故が起きる、ヘリコプターの墜落事故が起きるということになって、これは事は急ぐということになったのが動き始めた大きな背景だと思っております。

 そして、それは同時に、沖縄にやはり日本じゅうの基地のほぼ七五%、四%が集中しているという話がよく出ますように、この部分に関しては、沖縄に過重にかかっている部分を何とかすべきではないかというのは、これは沖縄の方に限らず、いろいろ言われるところでありまして、そういった意味では、ぜひこういった問題を考えていくときに当たっては、沖縄の部分の中でも、これはジオポリティクス、地政学上どうしても動かせないところがある。沖縄の北部とか人口密集地帯からもう少し密集していないところとか、いろいろな表現がありますけれども、鹿児島とか岩国でしたか、いろいろなところに移そうとしているということになっていますので、私どもとしては、少なくとも沖縄の住民の負担軽減を早くやろうというところが今申し上げたような経費の負担と補充とかいう形につながっていっているというのが大きな背景で、やはり、これまで沖縄にということに関してはなかなか動かなかったのに、今このチャンスに早くというのを考えておりますのが今言われる背景なんだと思いますので、御意見が少し違うんだと思います。

 私どもとしては、少なくとも、一日も早く負担軽減につながるという部分も、沖縄のことを考えれば、やはりこの五十年間考えておかないかぬ大事なところだったのではないかという感じはしますので、このときに一緒にという感じで非常にスピードアップしたいというのが、今回の移転費に関してもという話につながっていった背景なんだと存じます。

武正委員 外務省、まだ先ほどのわかりませんか。

塩崎副大臣 思いやり予算と一般的に言われているもので、移転経費を日本政府、ホスト国が見ているというのは、今武正議員がおっしゃっているものは、国道を越えて訓練をしていたものについて北海道に持っていった、その経費を持っているということだけだというふうに認識をしております。

 今武正議員がおっしゃっている話は、今度グアムに持っていく際の移転経費についてどうなんだという話も言っているんだとするならば、それは今大臣が申し上げているようなことで、これは新たな、国外への移転の話でありますから、その経費の持ち方というのはまだこれからの話ということだと思います。

    〔渡辺(博)委員長代理退席、委員長着席〕

武正委員 先ほど聞いたので、ちゃんと答えていただきたいんですが、他国に駐留する米軍が、他国の国内で、他国の要請に伴って訓練地を移転するに関する費用をホストネーションがサポートした例はありますかと。これは、ないというふうに私は外務省から聞いているんですが、どうですかということです。ちょっと整理して、後でまたお答えをいただきたいと思います。

 今の話に絡むんですけれども、ちょうど今、沖縄密約、吉野元局長、きょうも新聞に出ています。〇〇年に米公文書が公開されて、沖縄返還協定のときの四百万ドルの土地の原状回復補償費、これを、密約があって、日本側が負担したと。公文書が二〇〇〇年に公開されたときに、このことは、当時の河野外相が当時の元アメリカ局長、吉野さんに密約の存在を否定するよう要請された、こういったことが新聞に出ているわけですね。

 これについて、その真偽について外務大臣に伺いたいんですが、もともとこういったところにすべてその根があるのではないかなということがあるわけですね。やはり、協定をしながら密約をして日本側が負担をするという、最初からボタンのかけ違いがあったということが、今もって、例えばグアムへの移転という、諸外国でもないこの経費をどうやって負担するのか。日米地位協定の改定なのか。よくわかりません。あるいは交換公文を結ぶのか。

 まず、この密約については、外務大臣、どう認められますか。

麻生国務大臣 これは、前に川口外務大臣の方から答弁があったんだと私どもは聞いておりますけれども、少なくとも、河野元外務大臣、当時の外務大臣が吉野局長の方に対して、密約は存在したかという話を確認したところ、御指摘のような、そういうような要請を行うなどということはあり得ないというような話で、いわゆる四百万ドルの話はなかったと当時の吉野局長から答弁が河野外務大臣にあったということを川口外務大臣の方からお答えがあったと存じますけれども、そのとおりで、それ以後の、今、何年たつか、大分たちましたけれども、今八十七ぐらいになっておられると思いますけれども、なられてから、今、最近になって言われているという話は私どもも漏れ承ってはおりますけれども、そのあれによれば、なかったことにしてくれと河野外務大臣が頼んだというような話になっていますけれども、そのようなことはなかったということであります。

武正委員 事ほどさように、こうしたことが出てくるのは、後で、金大中事件の韓国の文書公開、当時の田中元首相が金鍾泌首相に、その日韓の捜査継続についての四条件、これを示したときに、これは建前ですかと言われて、建前だと。この問題はパアにしようというようなことも、日韓の間でそうしたやりとりがあった。ところが、対日の、日本国内での説明は違う。こういったことが出てくるということは、私はやはり三十年ルールに基づいて外交文書は公開していくべきだと思うんですね。

 やはり、そのときそのときの政治状況で、時の政府の外交担当者が、いろいろと、いろいろな状況をかんがみて決断をし判断をした。それはそれで、やはり三十年たったら、我々は国会でそれを検証、評価する必要がある。なぜこれが必要かというと、このことをオープンにしないがために、日本の対外的な外交で、その交渉相手国に私は弱みを握られていると思うんですね。

 つまり、向こうは公開している、あるいは公開していないと。日本が、それは公開したくない、公開しないでくれと。わかった、公開しないよと。そのかわりというようなことで、外交上の不利益をこうむるので、私は、やはり三十年ルールを原則に、国益を損じないということがまず第一とは理解しておりますが、やはりすべからく公開、ましてや相手国が公開していたら公開をするという原則を貫くべきと思いますが、この点、外務大臣いかがでしょう。

麻生国務大臣 かつての文書を公開文書という意義は非常に大きいと。これはマッカーサーの一九五一年の上院外交委員会の証言というものが、少なくとも五十年たって、二〇〇一年のときに公開された、あれは非常に大きかったと思っております。

 そういった意味で、こういった、十年一昔と言いますけれども、まだ存命の方がいっぱいいらっしゃいますので、したがって三十年、五十年と、一つの区切りでそういったものが公開されるというのは、私は、確かに痛いところもあるんだとは思います。しかし、基本的にそういったようなものが公開されていくというのは、私は、他国、相手国にとりましても、こちら側にとりましても、双方のために、その当時の状況としての責任判断、政治判断、そういったものが検証されていくというのは非常に大事なプロセスの一つだと思いますので、原則としてそういったものが出てくる、出されてくるということに関して、私は反対ではありません。

武正委員 ぜひ、麻生外相のもと、積極的に、特に他国が公開した外交文書の公開を進めていただけるよう、お願いを申し上げます。

 お手元に資料として、きょう理事会のお許しを得て配っておりますのは、昨年の特別国会で、町村外相との間のやりとりで、ちょっとこれは指摘だけさせていただきます、質疑はちょっと後の予定だったんですが。

 大平三原則に基づいて、日本が他国と結んだ条約と、その後、取り決め、交換公文、これは重要なものは外務委員会に提出します、こういったことが大平三原則で示されて、そしてその後外務省からも示されてきた。ところが、平成六年以降、約八千本の交換公文が日本と他国と交わされながら、一本たりとも外務委員会に提出されていない。では、この八千本の中に重要な交換公文はなかったのかという認識であります。そうだというふうに外務省は答えます。とてもそのようには私は思えません。重要な交換公文はたくさんあったわけです。ということで、昨年の町村外相、これから重要な交換公文は委員会に提出しますと。その間、百二件交換公文は結ばれているんですが、相変わらず一本も外務委員会には提出がないわけでございます。

 そういった意味で、私は、引き続きこの交換公文、重要な交換公文を当然結んでおられる、それだけ外務省、外交努力をされているはずでありますから、国会に対する説明責任として、重要な交換公文を外務委員会に提出するよう、改めてお願いをしておきます。

 防衛庁もお見えでございますが、今、先ほどの沖縄の普天間、地元の議員からも沿岸案ということで要請もあったようでありますが、状況を簡単にちょっとお答えいただけますでしょうか。

木村副長官 昨年の十月の2プラス2の合同文書を受けて、私たちの考え方を、発表直後、施設庁長官、またその後、額賀長官等が現地に赴いて、誠意を持って御説明、御協力をお願いしているところであります。

 先ほど来、外務大臣や副大臣からもお話があったとおり、随時、日米間の協議を続けていく中で、三月の最終取りまとめに我々一層努力していきたいと思っております。

 いろいろ地元関係の方々から御意見等いただいておりますので、その意見を踏まえながら協議はしておりますが、基本的には、私どもが示しております考え方を誠心誠意御説明をしていきながら、御理解いただく努力をしていきたいと思っております。

武正委員 防衛庁副長官、ありがとうございました。もう結構でございます。

 外務大臣、ちょっとお伺いしたいんですが、ちょうど今ODA改革、政府で検討中でございます。間もなくその最終的な取りまとめということを聞いておりますが、毎日新聞で、「外務、財務省が裏合意 JICA所管めぐり」というようなことが出ております。

 きょう財務省の政務官もお見えでございますが、こうした事実、あったのかどうか、まず外務大臣、そして財務省、それぞれお答えいただけますでしょうか。

麻生国務大臣 その毎日新聞でしたか、毎日だけが多分出ていたんだと思いますけれども、きのうの経済財政諮問会議において、私どもとしては今回のあれに関しておおむね、裏合意という話になっているといかにもいかがわしいようなイメージ、裏日本というイメージで、裏合意とか、裏とかというと何となく、日本海沿岸が裏日本と言われると何となくよろしくないというので裏日本という言葉がなくなったのと同じように、やはり公式的には裏合意というようなものではないんだと思っております。

 そこで、私どもとしては、昨日の経済財政諮問会議、そのまた前はこれの審議会というのは法務省の原田さんのもとでずっとやってきたところでもありますので、今この種の話をやらせていただくに当たって、少なくともJBICをやめて、やめては正確じゃありませんね、JBICを解体して、そしてこれを政府の統一のものにしよう、傍ら、OECFという昔で言う円借の話ですけれども、この部分はJICAと一緒にしようと。

 武正先生御存じのように、JBICというようなもの、国際協力銀行、輸銀等々でやっていました部分は、年間約一兆一千億ぐらいあると思いますけれども、この一兆一千億のうちの約一兆円は借りている人は日本の企業です。傍ら、相手国が借りておりますのはその約一割、一千億。一兆対一千億ぐらいの比率だと思います。

 傍ら、OECFの方は、約六千五百億ぐらいだと思いますが、これはもう一〇〇%相手国が借りていますので全然全く異質でしょうがというのは合併のときからあった話でもありますので、そういった意味では、このOECFの部分を、いわゆる円借と言われる部分をJICAの方につけるというのは、少なくとも金融をやっていて、十年据え置き、二十五年の返済なんというのは、ちょっとそれは金融かというような種類の話でもありますので、私どもとしては、これをやはり国策としてODAというのを外交の一環としてやるのが正しいというので、今回これを分けようと。

 私どもとしては、そこの主幹の部分に、そこに育っている人というのが私どももおりますので、これはこれまでも財務省がいろいろやってきておられたところでもありますので、そこらの人はある程度こっちも利用せないかぬということなんだというように思っておりますので、今そういう形になっていますから、そのままこっちにくださいと。ただ、人はこっちももらわぬとできませんので、そういったようなことを申し上げたので、裏でどうのこうのというような意識ではございません。

野上大臣政務官 ただいま大臣からも御答弁がございましたとおり、先週、官房長官から関係大臣に対しまして、ODAの新たな実施機関をどのような形にしていくかということを事務的に詰めるように、こう指示があったところでありまして、これを受けて、事務的な準備作業として関係省庁間で現在検討を行っているところということでございます。

武正委員 もう時間が来ましたので、最後、指摘にとどめますが、今、お手元の資料の四ページ、五ページ目、ごらんをいただきたいと思いますが、民主党では、独立行政法人に対する予備的調査を昨年十月行って、ことし一月、資料を得ております。こちらが、JICAのそれぞれ十五年度、十六年度の収入支出の上位十の取引先、そしてまた、他の法人への財務上の関与、人事交流などについてということでございます。

 ごらんのように、支出についても、財団あるいは社団、そして株式会社もいわゆるコンサルなどの額も大変多額であります。また、収入についても、経産省からの三十五億なども含めて、このお金の入りと出、そしてまた関連の公益法人との関係、こういったところのやはり透明性というものをしっかりと担保していかないと、これから額が約一兆円になる、その独立行政法人の運営というものは大変大事になってくるということを申し上げるとともに、この裏合意がないとしても、私は、これから円借款をJICAに統合したときに、勘定を別にするべきじゃない。多分勘定を別にしようということを考えておられる向きが報じられておりますが、やはり独法の性格上、勘定が幾つにも分かれるとそれぞれでまた無駄がダブりで発生しますので、私は、あくまでも外務省が主体でJICAの監督官庁、所管庁として、円借款も含めて勘定は一本にして、それでODAを担っていくべきだと思いますが、この点、ちょっと外務大臣、最後いかがでしょうか。

麻生国務大臣 この種の話は、外交の一元化の観点から考えても、今言われた点なんだと思っておりますけれども、物理的なところもちょっと考えておかないかぬところでもありますので、私どもは、そういった重複するとか無駄な、二元化するとか、そういったことになりますと、現場を預かっておりますJICAの現場の人たちは、こっち相談して、こっち相談して、相談する窓口がいっぱいふえるなんというのはさらなる負担になりますので、そういったことのないように、すっきりした形でいけるように最大限やっていかないかぬと思っております。

武正委員 以上で終わります。ありがとうございました。

    ―――――――――――――

原田委員長 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、政府参考人として防衛施設庁施設部長渡部厚君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

原田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

原田委員長 次に、松原仁君。

松原委員 ことし一月に外務委員会の委員の視察で沖縄、そしてその近海に行ってきたわけであります。大変に有意義な視察でありまして、ちょっと残念なのは、これだけ今話題の日中中間線、天外天、春暁というところまで我々が、今委員長の原田さんも一緒に視察したにもかかわらず、このことを日本のマスメディアが大きく取り上げなかった、どうしてなのか。ある意味では、これは、日本の方の政府のデモンストレーションとして極めて意味があるにもかかわらず、こういったものを本来は取り上げるべきではなかったかというふうに思っているわけであります。このことは、逆に言えば、中国からすれば、日本はこのことに対してマスメディアは反応しない、一つの中国側にとってのメッセージになってしまったのではないかということすら私は危惧をするところであります。

 この我々の視察において幾つかのことが明らかになってまいりました。私は、特に尖閣の問題、領土問題といえば、北方領土もありますし竹島もあります。竹島の日は二月二十二日ということであったわけでありますが、このいわゆる尖閣も極めて重要な日でありまして、この尖閣に対してのことで御質問したいと思っております。

 尖閣諸島が五つの島から成立をすることは御了解いただいていると思いますが、その中に、久場島という島があるというふうに聞いております。この久場島というところにおいて、米軍が射爆場としてこれを使っているかどうかを御質問いたしたいと思います。

渡部政府参考人 お答えいたします。

 久場島、中国名黄尾嶼でございますが、ここにつきましては、米軍は沖縄の復帰前から空対地射爆撃場として使用しておったものでございますけれども、復帰後は日米地位協定第二条第一項(a)の規定に基づく提供施設・区域として、黄尾嶼射爆撃場として昭和四十七年五月の合同委員会合意により米軍に提供しているものでございます。

 この合同委員会合意によりますと、黄尾嶼射爆撃場は、陸上区域、水域及び空域で構成され、米軍がそのうち水域を使用する場合は、原則としてその十五日前に、また、予測しがたい事情がある場合は遅くとも六日前までに防衛施設庁に通告するということとなっておりますが、近年におきましては通告されていないところでございます。

松原委員 つまり、今確認をされたわけでありますが、渡部施設部長がおっしゃるように、米軍の射爆場として使われている、少なくともそういうふうな日米の取り決めになっている、こういうふうなことであろうと思います。

 私は、今は黄尾嶼という名前をおっしゃいましたが、きょうはこのことはあえて本筋の質問ではないのでいたしませんけれども、この久場島は黄尾嶼という中国名で呼ばれ、大正島が赤尾嶼という中国名で呼ばれる。実は、この黄尾嶼、赤尾嶼という名前、今回私たちが視察に行った沖縄における地図にも黄尾嶼、赤尾嶼と載っていて、括弧して久場島、大正島と載っているか、それすら載っていないか、こういうことでありました。

 既にこのことについて調べましたらば、昨年の四月段階か何かに、黄尾嶼、赤尾嶼という名称ではなく久場島、大正島という名称を主に書いたという答弁をいただきましたので、きょうはこの委員会では質問はこの点については差し控えますが、少なくとも、この尖閣の領有権を主張する日本側がその地図において久場島を黄尾嶼と言い、また大正島を赤尾嶼と言う、大変にこういったことは日本の外交上マイナスであって、ここら辺は、国土地理院とも、また日本の領土主権の問題を扱う外務省も一緒になって議論を進めてもらいたいというふうに思うところであります。

 米軍射爆場として、現在、久場島が使われている。久場島というのは五つの尖閣諸島の一つでありますから、尖閣の領有権を日本以外の他国が主張しても、実際、日米のこの取り決めの中において、尖閣諸島の一番大きな島は魚釣島でありますが、その五つの大きな島の一つである久場島、これが米軍の射爆場で使われているということは、結果として、逆説的に言うならば、実はこの地域に対して他国がその領有権を主張できないという論理となり得るだろうというふうに私は思っております。

 その中で、次の質問をしたいわけでありますが、現在の日本の自衛隊、特に沖縄の自衛隊というふうに私はお伺いしたいわけでありますが、射爆場が不足しているというふうな議論が今回の視察で現場からも寄せられたわけでありますが、この点についてはいかがか、お伺いをいたします。

山崎政府参考人 お答えをさせていただきます。

 在沖の自衛隊の航空機のみならず、日本におきます航空自衛隊の航空機につきましては主に島松と三沢で射爆撃訓練をいたしておりまして、必要最小限の訓練というのは充足をされているというふうに私どもは承知をしております。

 沖縄の航空機も、したがいまして、主としてやはり島松それから三沢の天ケ森でございますが、射爆撃場に行って訓練をしているというような状況でございます。

松原委員 何か事前のすり合わせと違う答弁で困ってしまうんですが。

 私は、それは、きょうの委員会の前にも違う話を聞いているし、現地でも違う話を聞いているんですよ、射爆場は足りないと。十分なんてどこを、十分なんて非常に主観的だろうけれども、現場の人たちは射爆場が足りないと言っているんですよ。聞いたでしょう。小野寺議員も聞いたと言っていますよ。私も聞いたし、武正議員だって聞いているんだ。委員長だって聞いていますよ。ほら今、首うなずいている。

 もう一回答弁してください。

山崎政府参考人 沖縄の部隊が沖縄の近辺に射爆撃場がないということは事実であろうかと思いますが、射爆撃訓練の所要ということにつきましては、現在私どもが承知している限りは、島松、三沢、それから最近はグアムで、これは実弾の実爆訓練ができるようになりましたので、そこで行っておりまして、要するに、射撃の訓練に必要な時間数といいますか、訓練のシラバス自体は必要最小限満たされているのではないかというふうに考えております。

松原委員 我々は視察に行ってうそを聞いてきたわけじゃないので、さらに確認したいんですが、では、射爆場は十分というふうに思っているんですか、あなたは。

山崎政府参考人 射爆場が沖縄の近辺にないという意味においては沖縄の部隊に御不満があろうということは想定はしておりますけれども、しかし、航空機、特に戦闘機の場合、非常に足が長くて速いものでございますので、島松、三沢等におきまして射爆撃訓練を行って、必要な訓練そのものは、一応必要最小限はそこで充足されているのではないかというふうに考えております。

松原委員 ちょっと、非常にそういう答弁じゃ困るんだよね。ちゃんと打ち合わせしたことをやってもらわないと困るんだ。射爆場は不足していると言うという話なんだから。それを言わずに、ここで、その後ちょっといろいろと考えたら、そう言うとまずいと思ってそういう答弁にしたのかもしれぬけれども、困るんだよ、そういうのは。

 もう一回言わせてもらうけれども、射爆場が十分に、少なくとも沖縄の自衛隊がやるにおいては、三沢まですぐだってあなたおっしゃるけれども、そういう強弁しちゃいけないよ。現場の声もあるんだから。そういう現場の声を聞いていないんですか。

山崎政府参考人 正直申し上げまして、沖縄の部隊に直接その過不足について私の方から聞いたということはございません。

 ただ、空幕とこの関係について当然やりとりをしておるわけでございますけれども、沖縄の部隊そのものについては、先ほど申し上げましたように、それは近辺に射爆場があるということであればより便利であろうということであろうと思いますけれども、射爆場が日本全体において不足をしているのかといいますと、一応必要最小限の訓練は充足されているというふうに聞いております。

松原委員 時間がなくなっちゃうので、これ以上この議論をしてもしようがないんだけれども、要するに射爆場は不足していると我々は聞いているんだから。原田委員長も、さっきうなずいていましたけれども、今はちょっとうなずいていないけれども、小野寺さんだって聞いていたし、みんな聞いているんだから。それが視察の目的なんだから。それが、ありませんと言われたって困るんです。

 まあいいや、それはおいておいて、おいておかないけれども、もうあなたはそれ以上言わないんだから。

 お伺いしたいのは、私は、射爆場は日本の自衛隊は不足しているともう現地から聞いていますから。であるならば、この黄尾嶼、中国名では黄尾嶼、日本名では久場島、久場島という島に関して、射爆場として、日本の自衛隊はそれを米軍との共用で、どちらにしても、米軍との共用でさまざまなところに申し入れをしていると私は聞きましたから、今回沖縄の視察において。そういう話をしているんだから、書記の人は皆聞いていますよ、それは。だから、それならば、この久場島を射爆場にお願いするということが物理的に可能ではないかというふうに思っているわけですが、今の答弁じゃ全然答えられないでしょう、そういう不足がありませんという話からきちゃうんじゃね。

 ちょっと聞きます。

山崎政府参考人 ちょっと所掌が違いますので、私もどの程度正確にお答えできるかどうかわかりませんけれども、現在、米軍再編等の協議の中において本件が協議をされているというふうには私どもは聞いておりませんが、ただ、一般論として、久場島について日米共同使用が可能かという御質問であれば、論理的には当然、先生よく御承知のように、二4(a)ということをかければ共同使用は論理的には可能だろうと思います。

 もう一つ、久場島を使用することが必要かどうかということはちょっとおきまして、そういう射爆場の過不足につきましては、やはり中長期的な観点から、我々としても兵器技術の進歩等に伴いまして必要性を常に検証していく必要があろうかと思いますので、そういう観点から、場合によりましては、今先生の御指摘のあったような久場島も含めまして、新たな所要というのが起こることは論理的には否定はしていないところでございます。

松原委員 極めて論理的な答弁だったと思います。要するに、久場島を射爆場として使うことは可能であると、結論は。

 さっき言ったのは、最初におっしゃったのは、米軍は久場島を射爆場として使う、そういう協定があると。二つ目の答弁が、ちょっと予定と違って、過不足ありませんみたいな話だけれども、実際、我々は現地で射爆場の不足を聞いている。新しい射爆場も米軍に何とか頼みたいという声もあった、それをみんな聞いているんだから。そして三つ目に、論理的には久場島の射爆場を使うことができると。

 私は、この久場島というのは、明らかに尖閣の五つの島の中の一つの島ですから、ここを我々が日米共同の射爆場として使うことによって、この久場島を使うことによって、我々は尖閣における実質的なエビデンスとしての日本の領有権を米軍とともに、米軍は日米安保の中でそこで射爆場をやっているんだから、これは何よりも、他の尖閣に対する領有権を主張する国々に対しての、言葉で言うまでもなく、一番の強い意思表示になるのではないかというふうに思っておりますが、麻生大臣、御所見をお伺いいたしたいと思います。

麻生国務大臣 尖閣の話につきましては、これは一八二九年でしたか、あれ以来、これは清国の、当時は清ですから、清国のいわゆる影響は全く及んでいないという前提に立って、魚釣島に限らず、尖閣というものを所有するようになってから今日まで、かれこれ百数十年がたっておるんだと思います。

 いずれにしても、こういった所属については極めてはっきりしているんだということを思いますので、今、そのような話が出たのは、これは一考に値するところだと思いますが、松原さん、忘れてもらっちゃ困りますけれども、おたくの盟友の武正さんの方は、おまえの発言で日中関係は非常にこじれておるという御指摘をいただいて、いろいろ言われているのに、これはやるべきだと言ったら、さらにまたこじれる可能性が出てきますので、ちょっとなかなかうかつに発言もできぬところなんですよ、これは。だから、そこらのところもよく考えて、ちょっとうかつな発言は、今、何となく、私もそう思いますなんと言うと、途端にまずあした一面トップみたいな話になりかねぬから、そういった話には極めて慎重に答弁をさせていただかなければいかぬところだと思います。

 射爆場等々の話は、数字的には多分不足していないのかもしれませんけれども、少なくとも、沖縄から三沢まで飛んでいく航空運賃のガソリン代もこれは税金ですから、やはり近いところの方が防衛効率上は極めていいというように考えてしかるべきなんだと思っております。

松原委員 麻生大臣が一考に値するということですから、ぜひ、やはりこの辺で日本は、きちっとこういった問題に対して国としての誇りを持って行動できること、私は、これは行ってみて初めて知ったことなので、どんなにあそこは領有権があるとか云々ということよりも、この一言が一番強いデモンストレーションになると思いますので、一考を熟慮して実行していただきたい。防衛庁はどういうふうにおっしゃるかというのはありますので、そこは国益の観点から、外務省主導で頑張っていただきたいと思います。

 次の質問に移ります。

 日朝の包括並行協議が行われました。大変にこれは結果として落胆をさせられる内容であったわけであります。この日朝包括並行協議の評価について、そして、このようなものを今後も継続するのか、お伺いをいたしたいと思います。

麻生国務大臣 当初から、今回の協議が一年数カ月ぶりで再開されるに当たって、これは楽観的な希望を持っていたわけではありません。それはもう最初からそう思っておりましたけれども、目に見える具体的な進展が見られぬのは甚だ残念という点に関しましては、私どもも全く同じようなところなんですが、少なくとも、この一年半にわたってのいろいろのあれがありましたので、私どももぼそっとみんな伝えておりますし、いろいろな意味で、きのう逮捕状が出た辛光洙の話にしても、私どもとしては、このままいきますと、何にもおたくは情報もしくはだれも出さないというようなことになった場合は、これは日本の世論というものはさらに難しくなりますよというようなところはきちんと伝えて、これは聞きなぐっておけばそのうち忘れるだろうという種類の話とは全く違いますよという点をきちんと伝えられたというところはよかったんだと思っております。その意味では一定の意義はあったと思っております。

 少なくとも、この種の話は、ある程度話し合いは継続しないと進展も何もありませんので、そういった意味においては、今後、対話と圧力とよく言われますけれども、対話だけじゃ事が進展しないのははっきりしていますので、何らかの形で圧力が要るということはもうはっきりしていると思いますが、この圧力というのは、圧力が目的ではなくて、拉致された家族を取り戻す、また、真相を究明する、犯人を引き渡す等々が私どもの要求しているところなので、少なくとも、圧力はそれを達成するための手段ですので、私どもは、効果的なことを考えて、この種の話をいろいろ、どういったものがあるかという点については検討していかねばならぬものだと思っております。

松原委員 この北朝鮮側との話の中の幾つかはまた後でお伺いしたいんですが、まず、こういったことを受けて、二月十六日に専門幹事会が行われたというふうに承知をしておりますが、その内容について簡潔にお伺いいたします。

坂井政府参考人 お答え申し上げます。

 お尋ねの拉致問題に関する専門幹事会につきましては、二月十六日に二十回目となります会合を開催しております。

 本幹事会につきましては、前回の会合から参加メンバーをほぼ全省庁に拡大いたしますとともに、外務省の山中あき子大臣政務官にも御参加いただいたところでございますが、今回の会合からは、新たに帰国された拉致被害者の方々及びその御家族の方々への支援業務を行います内閣府の山谷えり子大臣政務官にも加わっていただいたところでございます。

 この日の会合におきましては、先ほどお話のありました、北京で開催をされました日朝包括並行協議における拉致問題等の協議結果について外務省から報告を受けた後、出席者の間で意見交換を行ったところでございます。

 その際、議長であります鈴木官房副長官からは、一つは、政府一体となって取り組むことをわかりやすくあらわすために、本専門幹事会の通称を拉致問題特命チームとしようというお話がございました。それから二点目として、官邸のホームページの拡充など、拉致問題に関する国内外の広報、これを充実させていくことということが御指示としてありました。それから、各省庁においては拉致問題の解決に向けて有効な対策を不断に探求してほしいという旨の指示もございました。

 そして最後に、拉致問題の解決なくして日朝国交正常化なしとの方針に変わりはないことを改めて確認して、会合を終了したところでございます。

松原委員 そうすると、今回の会合では、経済制裁についての議論は行われなかったんですか。

坂井政府参考人 先ほど申し上げましたように、今回の会合におきましては、基本的には、日朝包括並行協議の結果について報告を受けますとともに、拉致問題の解決に当たって、対話と圧力、この基本的な考え方で進めていくということで、関係者の意見交換を行ったところでございます。

 特に、鈴木官房副長官からは、拉致問題の解決に向けてどのような方策、これは圧力と申し上げてもいいかもしれませんが、これについて、各省庁において十分検討してほしいという要請がありまして、今後は、その検討結果等も踏まえまして、さらに本幹事会において検討がされていくものと認識をしております。

松原委員 経済制裁という言葉が少なくとも早期に議論されることを期待しております。

 今回のこの日朝の協議に関して、北朝鮮側はどういうふうなことを言ってきたのか。特に私は、さまざまな北朝鮮側の発言の中には、我々から見ると到底許しがたいような発言もあるわけであります。北朝鮮側から、日本の国内にいる人間の引き渡しの要求もあったというふうな話もありますが、特にきょうここでお伺いしたいのは、北朝鮮側が、日本に対する向こう側からの圧力として、強制連行や従軍慰安婦問題を提起し、それに関しての補償を日本側に求めたというふうなことが言われているわけであります。

 このことを含んで、どういうふうな議論だったのかを教えていただきたいと思います。

佐々江政府参考人 先般の日朝交渉におきまして、今先生がおっしゃられましたとおり、北朝鮮側は、この平壌宣言で明記しております一括解決、経済協力方式の枠外で、いわゆる彼らの言うところの強制連行あるいは慰安婦に対する対応を求めてきたということでございます。

 我々としては、この平壌宣言の一括解決あるいは経済協力方式の意味については解釈の余地なく明白であるというふうに思っておりますし、その協議の際にもこの点を繰り返し先方に強調したわけでございます。

 すなわち、この一九四五年の八月十五日以前に生じた事由に基づいた日朝双方の相手に対するすべての財産そして請求権をお互いに放棄して、これによって、いわゆる彼らの言うところの強制連行あるいはこの慰安婦の問題等も含めまして、植民地支配に起因するあらゆる金銭的支払いの要求は、いかなる名目あるいは根拠にもかかわらず、すべからく法的に完全かつ最終的に解決されたものとする。そして、これと並行して、我が国から北朝鮮に対して経済協力を行う。そういう方式が日朝平壌宣言において示された方式であるということを、我々が向こうに対して強調し、説明を行ったわけです。

 これに関しまして、北朝鮮側は枠外だという主張でございまして、そういう意味では、彼らはこの平壌宣言の合意したことを正確に正しく認識をしていない。そういう意味では、この問題について一致を見ることが、あるいは北朝鮮の正確な理解を得ることが国交正常化交渉の前進に向けた前提であるというふうに考えておりまして、引き続きこの点については北朝鮮と、我々の立場に対する見解の一致を求めるべく努力していきたいというふうに思っております。

松原委員 概略は今お話をいただきましたが、もう少し細かく、北朝鮮側がどう言ってきたのか、例えば、強制連行については人数を挙げて言ってきたのか、慰安婦問題については従軍慰安婦という名称を使ったのか、こういった部分についてお伺いいたします。

佐々江政府参考人 北朝鮮側は、いわゆるかぎ括弧つきのと申しますか、強制連行八百四十万人、あるいは、これもかぎ括弧つきでございますけれども、従軍慰安婦二十万人の補償を行うべきだといったような、これは何も今回の日朝交渉に限ったことではなくて、ずっと彼らが従来の交渉においても言ってきていることで、この点については何ら新しい主張を北朝鮮が行ったということはございません。

松原委員 物の認識の仕方なんですが、従来からそういう発言があったとしても、交渉の中でそれを挙げてきたというのは、これは国際社会から見ると一つのまた事実だと思うんですね。

 私は、ここで議論したいのは、日本の外交のあり方というか、日本の国際社会におけるあり方の議論に展開されるわけですが、そのときに、それは昭和二十年の八月十五日以前のものはということで切り返して、我々はそれに対しては責任論は発生しません、こういうふうな話を切り返したということですが、その場で、そういった事実についてあったかなかったかという議論はしたのかしていないのか、お伺いします。

佐々江政府参考人 我々は、そもそもこういう北朝鮮の議論そのものに入ることは交渉上好ましくないと思っております。もちろんその数字はでたらめでございますし、そういうものをまさに議論したいのが北朝鮮であるということでございますから、そういう問題に深入りしていけば、それはまさに北朝鮮の交渉上のポジション、立場というものを強めるということになるので、我々はこれを相手にしておりません。

松原委員 日朝協議だけ考えた場合、これは非常に難しい議論だと思うんですよ。

 佐々江さんがおっしゃるのは、それはそういう考え方も戦略上あるかもしれない。しかし、北朝鮮側がこの強制連行なりまた従軍慰安婦の問題を出してきた。従来は、これは、中国であるとかもしくは韓国であるとかでこういった議論はよくなされていたというふうに聞いておりますけれども、北朝鮮側が、日本も、ある意味では世界も注視している会合で、会談で、交渉でこういう話を出してきて、その事実に関しては、触れるのは北朝鮮のポジションを強くすることだから、そのことではなく、それは八月十五日以前のものだから我々は責任論はありませんといって切るのも戦略でしょう。

 しかし、私が憂えるのは、こういったことの積み重ねで、いつの間にか、こういうことは数字の問題はわからない、また、このことに対して賠償や補償を日本はするということに対してはしないというそういった法的な背景もある、しかしながら、強制連行なり、もしくは従軍慰安婦なりという存在があったというふうに世界じゅうが既成事実化をしてしまうということに対して、私は大きな憂いを持っているわけであります。

 そこで、私はお伺いしたいわけでありますが、日本の昭和二十年以前のこと、日本はなかなか反論をしないし、反撃もしない中で今日に来ておりますが、私は、今回北朝鮮側が従軍慰安婦の問題や強制連行の問題を出したというのは極めて重大な問題だというふうに思っております。この点について、強制連行はあったのかなかったのか、このことについて、ではまず事務的にお答えいただきます。

佐々江政府参考人 先生御承知だと思いますけれども、戦前それから戦中の一時期、大戦が終わりに近いころでございますけれども、いわゆる国民徴用令、これは一九三九年の七月に施行されたものでございますが、この徴用令に基づく徴用というものが一部の朝鮮半島の人々に対して実施されたことは事実であろうというふうに思います。しかし、それとこの北朝鮮が言っているこの強制連行八百四十万人云々ということとは、我々は全く数字には根拠がないというふうに思っておりまして、それはそういうものではないという立場でございます。

 それから、慰安婦の問題もお尋ねでございましたか、慰安婦の問題につきましても、いわゆる従軍慰安婦と言うことは適切かどうかというのはいろいろ御議論あると思いますけれども、平成五年の河野官房長官談話を通じまして、慰安婦そして慰安所の存在、あるいは軍を含む官憲等の関与を、その当時、政府の立場として認めておるということでございます。しかし、これも、いわゆるこの北朝鮮が主張するところの二十万人云々ということについて全く根拠を与えるものではないというふうに思っております。

松原委員 強制連行というのは、今言ったように国家総動員法の中で始まった。北朝鮮というか、朝鮮半島においては、ここに書いてあるのは、朝鮮に徴用令が施行されたのは一九四四年、終戦の一年前だということでありまして、実態として、この徴用令自体が内地の通常の国民に対して発動された。徴用令が発動されて、徴用に応じない人間が場合によったら強制連行されて刑務所に入る。つまり、強制連行されたら刑務所に入るんであって、強制労働ではないという、この辺もはっきりと論理的に位置づけるべきだと私は思っております。

 実際は、そういったことで、この強制連行ということは、当時の日本国民のすべてが徴用に従った、しかも、少なくとも朝鮮半島においては、当時の本州、我々の日本の内地よりは五年おくれて発動された、そういった事実があったということを我々はきちっと言うべきであって、また、このことによる強制労働は発生しないんだということも、私はこの際はっきりとしておくべきだと思うんです。

 もう一点、従軍慰安婦の問題で、先ほど河野官房長官の談話の話がありました。非常にこれは、難しい問題というよりは、まさに自虐的な問題と言わざるを得ないと思っております。

 この強制連行に関しては、吉田清治という者の「私の戦争犯罪 朝鮮人強制連行」という本等に書かれておりますが、既に御承知のとおり、このことは、現地に行った秦教授が済州島に渡り、全くのでっち上げであったことを突きとめた。そして、一九九六年、平成八年の五月の週刊新潮で、吉田自身がつくり話であることを語っている。本に真実を書いても何の利益もない、新聞だってやっていることじゃないか、こういう開き直りの発言までしている全くのにせものであったというふうなことであります。

 こういったことで火をつけて、実際、日本のさまざまなところが調べて、例えば、当時の石原官房副長官が、文書による証拠はなかった、本人を強制的に徴用したと言うが、文書はどうしても存在しない、手を尽くしたけれども国内では本人の意思に反して強制という点で確認されなかったと。

 実際、そういうふうな状況の中で、河野洋平当時の官房長官が、客観的証拠はなかった、しかしながら、ここに書いてありますね、これはその河野さんが一九九七年朝日新聞で語った内容というふうなことで記されておりますが、直接強制連行の話はなかった、しかし、総合的に考えると、文書や軍人軍属の証言がなかったからといって強制連行はなかった、集まった人たちはみんな公娼だったということは正しくない、正しい論理の展開ではないという、これまた極めて意味不明な、この本に書いてあるのは、万引きしたという証拠がない、証拠がないからといって万引きしなかったとは言えない、だから総合的に考えると万引きをしたみたいな話だ、これは著者が極めて批判しております。

 こういう河野談話も含め、我々はきちっと、我々の先人の誇りを検証するためにも、物ははっきりしていかなきゃいかぬと思うんですが、この辺について、総合的に、やはり日本の外交というのは誇りの問題とも絡んでいますので、麻生大臣の見解と御所見をいただきたい。

麻生国務大臣 まず、従軍の話ですけれども、従軍看護婦、従軍画家、従軍医者等々、従軍と名がつきゃ軍属ということになるのが当時の常識だったと存じます。したがって、慰安婦が従軍、軍属であったかと言われれば、まさにその従軍という例はなかったのではないかというのは、これは当時いろいろなところに行かれた方々皆共通して証言をしておられるところでもありますし、私どもから見ても従軍という言葉は正しくないだろうと思っております。

 それから、徴用の件につきましては、今松原先生言われたとおりのところでもありますので、国家総動員法等々適用になりましたのは、朝鮮半島で適用になりましたのは、もう戦争も末期になって、四四年以後になっていると思います。その前に、日本の国内では、学徒動員、国家総動員法等々は、昭和十五、六年、私が生まれたときにはもう既に日独伊防共協定が、十五年ですから、十六年ぐらいからもうスタートしているんだと思いますが、いろいろな意味で、そのころは一連の法律が変わって、尋常小学校が国民学校に変わる等々、皆その前後になっておると思いますので、いろいろな意味で歴史が風化していっている部分も多々あろうかと思いますけれども、事実だけはきちんとしておくことというのは、松原先生御指摘のとおり正しい。努力として、風化させないためにも、きちんとしておくということをやっておかないと、言った方が何となく事実のような話になっていくというのは甚だ危険なことだとも思っております。

 幸いにして、今いろいろまた反論の出てくるような話があちらこちらで本で出てきておりますのはもう御存じのとおりなので、そういったものは、こういった国会でこの種の話が取り上げられたりいろいろするというのは非常に大事なプロセスなんだと思っております。

松原委員 極めて重要なことでして、今の麻生大臣の発言も、こういった意味における従軍慰安婦の問題、強制連行はなかったということだろうと思います。

 それは、官房長官談話がかつてどういう形であろうとも、真実を我々ははっきりさせないと、我々の先祖に対しての申しわけも立たないし、そういう状況が続くと、続く我々の仲間、子孫も誇りを持つことができないわけであります。

 そういう中で、私は、もう時間なので簡単に言いますが、一つだけ申し上げれば、やはり、例えば小泉さんが例えばアジア・アフリカ会議においておわびをする、村山談話か何かを出しておわびをする。私は聞いたんですが、その場にいたアフリカから来た代表の一人が、何で謝るんだ、謝る必要ないじゃないか、何で謝ったんだろうと。つまり、あの場で謝る内容ではないということを私ははっきりと申し上げたい。

 もう一点は、私はこの間ベトナムに行って思ったんですが、ベトナムの中に行ったときに、例えば靖国の問題に触れて、中国とか韓国が怒っているという話をしたら、それでアジアの総意を日本人は逆なでしていると中国が言っていると言ったら、我々ベトナム人は逆なでされておりません、それは中国とか韓国が言うことでしょうけれども、我々はそういう認識を持っていませんと。やはり、そういうことも含めて、アジア外交といったら、中国、韓国だけを見るのではなくて、極端な言い方をすれば、もっと巨視的な視野から闘っていただきたい、このことを申し上げまして、私の質問といたします。

 ありがとうございました。

原田委員長 次に、笠井亮君。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 きょうは、外務委員会では初めての質問になりますので、まず、外交の基本姿勢にかかわる歴史認識とそれから靖国参拝の問題について、麻生外務大臣に質問いたします。

 大臣は、昨年十二月七日に日本記者クラブの講演をされました。私も読ませていただきましたが、「わたくしのアジア戦略」ということでお話をされている中で、「過去の歴史において、韓国や中国を始めとするアジアの国々で無辜の民を苦しめたことは、引き続き謙虚な反省の念をもって臨まなくてはならない問題です。」このように言われました。

 そこで伺いますけれども、大臣御自身、過去の歴史について何をどのように反省をされているのか、伺いたいと思います。

麻生国務大臣 これは、さきの大戦にかかわる政府の考え方というのは、昨年の小泉総理の談話で述べられておりましたり、また今、松原さんの御指摘にありました、平成七年でしたかの村山総理のときの談話等々、また、昨年の四月、ジャカルタで行われたアジア・アフリカ首脳会議、今言われたとおりなんですが、これまで表明をされてきておりますので、「痛切な反省と」というふうな一連の文章を、今読み上げられたとおりでありますので、外務大臣であります私の考え方もこれらの考え方と同じということになります。

笠井委員 今言われました、一九九五年の戦争終結五十年に当たっていわゆる村山談話が出て、侵略戦争という言葉は使っていませんが、ともかく、植民地支配と侵略が日本の誤った国策であったことを認めて、アジア諸国の人々に多大な損害と苦痛を与えたことについて反省の意思を表明した。そして、小泉首相も、昨年四月のアジア・アフリカ会議、そして戦後六十年に当たっての見解でも改めてそのことを踏襲した。

 改めて確認しますが、外務大臣も基本的スタンスは同じだということでよろしいわけですね。

麻生国務大臣 今答弁したとおりですが。

笠井委員 そうしますと、同じスタンスと言われますと、最近も大臣の発言、幾つかいろいろ話題になっておりますが、今日の台湾の高い教育水準は植民地時代の教育があったからという、いわば植民地支配を美化するとも言われているような大臣の発言、二月四日にされた。これは日本の犯した誤りを覆い隠す言動として、台湾はもちろんとしてアジアやアメリカから大きな批判を受けているわけですが、明らかに政府の公式な見解、それから大臣が基本的スタンスとされていることとも違うんじゃないでしょうか。

麻生国務大臣 そちらは中国発の電報をそのまま日本文にされたものを読んでおられる。人民日報を読んでおられるのはよくわかりますが……(笠井委員「いや、違いますよ。そういうことじゃないですよ」と呼ぶ)これは共同通信が当時出した話でして、麻生の発言というのは、こういう発言を台湾の偉い人から聞かされたことがある、我々の先輩も教育やら何やらで一生懸命やってきたんだということをもってという話をしたのが、麻生がやったというようにねじ曲げられて伝えられているというのが事実だと思いますので、共同が出しました正式な文章もぜひ読んでおいていただけると助かります。

笠井委員 そういう発言を取り上げて、日本の外務大臣が、あえてこういうふうに引用されてやられるということを含めて、そういう問題が今アジアを初めとしてアメリカの新聞でも大きな問題になって、世界から一体何なんだという非難が広がっているという問題であります。

 先ほど、自民党の渡辺委員からも、今こういう状況の中で、アジア、中国、韓国含めて友好関係をやるという上でも、外務大臣、言動を慎んでいただきたいという話がありました。私も、その点、大事だと思うんですよ。どういう形で何をやられるかというのは、それぞれ今こういう状況の中で大事な問題になっている。

 さらに伺いますけれども、では、小泉首相の靖国参拝についてでありますけれども、総理自身は、国際社会が批判していると言っておりますけれども批判しているのは中国と韓国だけ、「アジア諸国において中国、韓国以外に私の靖国参拝に批判する国はありません。」こう言われて、繰り返し国会でも答弁をされております。大臣御自身ですが、直接間接に中国、韓国以外の国や政府首脳から批判を見聞きしたことはないのかどうか。いかがでしょうか。

麻生国務大臣 私どもは共産主義者と違いますので……(笠井委員「共産主義者とかそういう話じゃないですよ、今議論しているのは」と呼ぶ)いやいや、待って待って、聞いてくださいよ、共産主義者の国もあるわけだから。ちょっとよく落ちついて聞こうや、人が話をしているんだから。共産主義と違うので言論は自由なの。したがって、私どもから見ますと、言論の自由がありますので、いろいろなことを言われるのは僕は全然おかしくないと思っております。ただし、問題は、その種の話をもとにして首脳会談ができないと言っている国は中国ということになるんじゃないでしょうか。

 だから、ほかの国から聞いたことがないかといえば、直接私は聞いたことはありませんけれども、いろいろな方々がいろいろな思いを持っておられる。先ほど、松原先生のベトナムの話もあっておりましたけれども、その意見もある、インドネシアへ行けばまた別、いろいろあるんですって。いろいろあるけれども、そのネタをもってして首脳会談等々をやらないと言っているような国はほかにないと記憶します。

笠井委員 共産主義者という話をしましたけれども、どこの例を言っているのか知りませんが、我々が目指している社会主義、共産主義というのは言論の自由ですから、そこははっきり言っておきますよ。

 それから、今言われまして、首脳会談をやるかどうかということは、それはまた、そこまで言っているのは、中国、韓国は相当の思いだからそういうことを言っているわけです。政府の首脳で、各国で、こういう問題、靖国参拝について批判するということについて、大臣御自身、それ以外に御存じないですかと。ないんですね。

麻生国務大臣 いろいろ風聞やら何やらで入ってくることはありますけれども、直接外務大臣から私に対して言われたことはございません。

笠井委員 外交の席で直接言うというのは相当のことだと思うんですよ、大体、あなたはやめなさい、あなた方という話は。だけれども、相当の思いがある。

 しかも、外務省もよく大臣に情報も入れていただきたいと思うんですが、例えば、シンガポールのゴー・チョクトン上級相、前の首相です。二月の六日にシンガポールで開かれたアジア太平洋円卓会議で、東アジアのルネサンスに向けてという基調演説をして、その中で、靖国問題は日本国内の政治問題であるとともに国際的な外交問題でもあるというふうに述べておりまして、日本の指導者たちは今あるすべての事実に基づいて判断しなきゃいけない、事実というのはこの問題で日本は外交的に孤立しているということだ、ほかのアジアの諸国はすべて、また米国でさえも日本にはくみしていない、こう述べております。日本の指導者たちは靖国への参拝をやめて、靖国神社の政治的メッセージを承認すると見られることなく、ほかの方法を見出すべきだと明確に求めているわけであります。

 中国、韓国以外からも批判があるというのは明確だと思うんですよ。しかも、そのゴー・チョクトン上級相の話のように、世界じゅうが心配している、憂慮している。アジア外交を進めて、東アジア共同体に向けて、また世界の中の日本がちゃんとした、ふさわしい役割を果たすと大臣はしきりに言われていますよね。大事なことだと思うんですが、それをやろうと思うなら、そういうメッセージ、これを真摯に受けとめて、耳を傾けて、やはりきちっとやるべきじゃないかと思うんですが、いかがですか。

麻生国務大臣 ゴー・チョクトンとはその前にも会っていますので、そのときもゴー・チョクトンから直接言われたことはございません。まずこれだけははっきりしておきます、一対一で言えないという話ですから。

 まず、そういった大前提にした上で、ゴー・チョクトンが、日中関係の文脈の中で、靖国神社をめぐる日中関係について、日中間で決定すべきという話をした上で、いろいろな話、今言われたとおりのことになっているので、これは上級相自身の考え方を示された、それはそれでよろしいのであって、しかし、だからといって、私どもとして、先ほど渡辺先生にお見せしましたように、アジアの中で孤立しているというのをお好きな言葉でよく使われますけれども、少なくとも、私どものそういった主観ではなくて、BBCという公共の機関がアメリカのメリーランドの大学生を使った世論調査、四万人を対象にやった調査を見ましても、いわゆる日本の存在というものはとても孤立しているというような雰囲気ではないのではないかというのが私どもの率直な感想でありますので、見解が違うんだと存じます。

笠井委員 見解が違うとか言われましたが、シンガポールの首相経験者で直接お会いになった方がやはり思い余って言っているわけですよ。

 しかも、この演説というのは、私も今ちょっと原文テキストを読みましたけれども、シンガポール政府のメディアリリースということでレターヘッドがついているもので、シンガポール政府の公式ウエブサイトに掲載されているものであります。これはアジア太平洋の会議で演説されたというだけじゃなくて、世界に発信をされている。そういう場であえてそういうことを言っているわけでありまして、大体、先ほどから言われますけれども、首脳間の話し合いとか外務大臣の話し合いの中で、直接、あなた、やめなさいなんという話をやるのはよっぽどの思いがあるからで、思っていてもなかなか、いろいろな形で言う、あるいは直接でなくても間接でメッセージを発するということがやられることであります。

 しかも、大臣もしょっちゅう行かれているからあれでしょうが、私もシンガポール、東南アジアへ何回も行きましたが、あそこには血債の塔というのがあって、あの日本の侵略戦争と、それからその占領の時期に一体何があったのかと。本当に町の真ん中に塔がそびえ立っていますよね。絶対に許せないという思い、そして忘れないとみんな言うわけです。そして、そういう思いがある。

 それから、アジアだけじゃなくて世界も、いろいろな思いを持ちながら日本にはもっと頑張ってほしいと。しかし、その日本のためにも、それからアメリカはアメリカのためにも、あるいはアジアはアジアのためにも、この問題をどうしても解決しなきゃということだと思うんですよ。

 私も、そういう点で、アメリカやアジア諸国の政府関係者からも、私、日本共産党ですが、直接いろいろな話を聞いてきました。思いを聞いてきました。私は、そういう思いを受けとめることなしにアジアや世界から本当に信頼される日本にはなり得ないと思うんですよ。

 大臣、にやにやされていますけれども、それは笑う話じゃないんですよ。本当に国益を考えたら深刻な話です。そこをしっかり受けとめるということで、前向きな話はできないんですか。

麻生国務大臣 目をつり上げていればもう少しにこやかに笑ってくださいと、にこにこしたらまた言われて、なかなか答弁は大変ですなと今思いながら聞いていたんです。

 共産党もアメリカにパイプがあるというのはすばらしいことだと思って、それも改めて感心しましたし、アメリカの許容量の深さも、非合法の共産党がアメリカでやれるというのはなかなか大したものだなと思って……(笠井委員「非合法の共産党じゃないですよ」と呼ぶ)アメリカではね、アメリカではそうなっておると思う、日本の話じゃない、アメリカの話ですから。だから、共産党というのはたしかそうなっていると。私の記憶が違っているかもしれません。私が学生のときはそうでした。そこらのときは、今はどうなっているか知りませんけれども、少なくとも、私どもの時代はそうだったんですが、そういった意味で、そんなパイプがあるというのはすばらしいことだと思います。

 私どもは、少なくとも、今申し上げたように、日本がアジアの中で孤立しているとも思いませんし、この六十年間、日本がやってきたということは、どういうようなものを示しているかといえば、少なくとも、武力に頼らず、日本は世界第二位の経済大国を実施し、アジアの通貨危機で、いろいろな国が通貨で、あすはリスケジュールを食うかというほどの、パンクするほどの利ざやになったときに、日本からの資金援助によってリスケを食わずに全部助かったという実態は、明らかにアジアの中においてスタビライザーとして非常に大きな効果を上げたということに関しては、これは金融関係者ならだれでも知っている事実だとも思いますし、そういったようなことではきちんと貢献をしているということが、わかっておられる方は十分にわかっていただけるんだと思っております。

 また、その他、経済発展やらいろいろな意味で、経済に限らず、いわゆる利益誘導だけに限らず、音楽とかサブカルチャーと言われる部分においても非常にいろいろな意味で広まっているという事実が、この六十年間の功績を見ておいた上で話していただけるといいのではないかと思っております。

笠井委員 時間になりましたので一言だけで終わりますが、アメリカ共産党は合法的に活動しているという話で私は認識していますし、選挙にも出ているように思いますが、それは別の話です。

 やはり戦後の国際秩序の出発点というのは、かつて日独伊が行った戦争というのが不正不義の犯罪的な侵略戦争であるというところから、その共通認識と反省から成り立っているわけで、日本が正しい戦争をしたと宣伝するような、みずからそれを使命としている靖国神社に首相が参拝するというのが、その土台を根本から否定する行為になる。やはり、言っていることとやっていることが違うじゃないかということをしっかり受けとめて、本当に国益を考えるんだったら、首相の靖国参拝を取りやめる、これを言ってこそ日本の政府ですし、日本の外務大臣だということを申し上げて、また改めて議論させてもらいます。

 終わります。

麻生国務大臣 あえて言わさせていただきたいと思いますが、私どもも基本的に、戦後の一連の話に関しましては、ずっと申し述べてきておりますとおりなので、それに対しては何ら、今申し上げてきたとおりなんですが、今、アメリカの中において一つだけぜひ、御存じのところだとは思いますが、一九五一年のアメリカ上院軍事委員会でのマッカーサー、マッカーサーというのは、日本の駐日司令官をしておられたゼネラル・マッカーサーという、あなたはお若いからおわかりにならないのかと思ってマッカーサーと言ったんですが……(笠井委員「知っています」と呼ぶ)意外と年なんですね。

 それで、彼は、ゼア・パーパス、我々の目的は、ラージリー・ディクテーテッド・バイ・セキュリティーと発言していますでしょう。だから、マッカーサーとして、彼らの戦争目的は、ラージリー、主に、自衛のための戦争だったとマッカーサーが証言しているという事実も、ちょっと我々は言葉の片隅で知っておかにゃいかぬ、事実としてね。占領した側が言っているんだから。これは我々が言っているんじゃない、マッカーサーがアメリカの議院で証言した。これは公開文書になっておりますので、御存じだと思います。

 そういった意味の上に立ちながらも、しかし、それはそうかもしらぬけれども、我々はアジアの地域においていろいろというのは、この前ずっと申し上げてきているとおりなのであって、この戦争に対する見方というのはいろいろありますが、基本的には、総理やらまたこれまでの政府答弁というものと一致しておるということを申し上げております。

笠井委員 一言。もう戦争の性格は明確で、議論は改めてやりますが、余り大臣はいろいろなことを言わない方がいいと思います。また、いろいろなことを言われますので……

原田委員長 質疑時間が超過しておりますので、御協力をお願いします。

笠井委員 終わります。

原田委員長 次に、照屋寛徳君。

照屋委員 きょうは、嘉手納基地使用協定のみに絞って質問をいたします。

 外務大臣は、規定という日本語についてどのように理解をしておりますか。

河相政府参考人 お答え申し上げます。

 地位協定の条文にも関連する事実関係でございますので、私の方から説明をさせていただきます。

 嘉手納基地使用協定に関する町民会議というのがあり、そこから私どもも御要請をいただいているという事実関係がございます。ここで言う、使用協定という言葉を使っておられるわけでございますけれども、この使用協定という言葉自体は、日米地位協定上、特段の規定は存在しておりませんので、その町民会議の方々が使っておられる使用協定というものがどういうものを想定しているのか、地位協定の中でどういう位置づけになるかということにつきまして、政府としてここで御説明することは差し控えたいと思います。

 御承知のとおり、日米地位協定に関しましては、地位協定第二条一項の(a)で、「施設及び区域に関する協定は、第二十五条に定める合同委員会を通じて両政府が締結しなければならない。」という規定がございまして、個々の施設・区域の主な使用目的、使用条件につきましては、この協定によって定められることになっているということでございます。また、嘉手納基地飛行場に関しましては、日米地位協定、先ほど申し上げた合同委員会において、航空機騒音規制措置に関する合意がなされているというのが事実関係でございます。

照屋委員 大臣に聞こうと思ったら、突然局長から的外れの答弁がありましたが、大臣、嘉手納基地周辺の嘉手納町、北谷町、沖縄市などのいわゆる三連協は、日米両政府間で嘉手納基地使用協定を締結してほしいと政府に要請をしておりますが、大臣はそのことを御承知でしょうか。

麻生国務大臣 御指摘の要請につきましては、これは照屋先生、一月の十七日だったと記憶をいたしますけれども、一月の十七日に、今言われましたように、嘉手納基地使用協定に関する町民会議並びに嘉手納飛行場に関する三市連絡協議会、通称三連協から、嘉手納基地使用協定の締結についてという要請書を私どもの方にいただいておりますということを知っております。

照屋委員 大臣は、嘉手納基地の騒音被害や基地公害、嘉手納基地からもたらされる事件、事故について、いかなる認識をお持ちでしょうか。

麻生国務大臣 これは、私も伺ったことがありますし、いわゆる返還前にも伺ったことがありますし、返還後にも何回か伺ったことがあるんですが、今言われましたように、要請書の中に七項目挙げられておると思いますけれども、いわゆる騒音とか飛行ルートの話とか、また事件等々、七項目、これは地元等々において不安を有しておるということに関してはもう十分によくわかっておるところでもありますので、私どもとしては、こういった地元の負担というものをいかに軽減させるかというのが今回出てきた非常に大きな要素でありまして、少なくともなるべく早くというのと、少なくとも負担を下げるという軽減目的というのは非常に大きな要素でありましたので、私どもはこの要請書の内容も知っておりますし、騒音等々、その他飛行ルートの話等々、自分なりにはわかっておるつもりであります。

照屋委員 大臣、嘉手納基地周辺住民の基地被害の負担というのは、本当に我慢の限界なんです。もう受忍限度を私ははるかに超えておると思います。そして、今回、三連協が要請している中でも、町民会議から二百六十二項目の要請があるんですね。それをぜひ負担軽減を図るように、大臣には特段の努力をいただきたい。

 そして、局長に聞きますが、三連協が求めておるのは、日米両政府による実効性のある法的な担保のあるそういう協定なんです。これは、地位協定の二条一項に基づいて、嘉手納基地使用の、あるいは運用の規定をする、そういう協約は締結可能でしょう。

河相政府参考人 お答え申し上げます。

 委員からの御指摘がございますとおり、日米地位協定第二条一項において、日米両政府が日米の合同委員会を通じて個々の施設・区域に関する協定を締結するということになっておるわけでございます。

 その具体的内容、これで一体どういうことが規定されるのか、規定されるべきなのかということにつきまして、個々の施設・区域のいろいろな置かれている状況、それからその環境によって差異があるわけなので、一概にこういうことということで内容を一括して述べることは難しいという状況はございます。

 片や、嘉手納飛行場につきましては、委員からも御指摘のように、周辺住民の方々が負っておられる騒音による影響、負担というものは政府としても大きなものであるという認識は持っておるわけでございまして、そのもとで、この負担をいかにして軽減するかということについては、これまでも米側ともいろいろ協議をして、できる限りの努力は行ってきている状況にございます。

 御承知のとおり、平成八年三月に、騒音規制についての措置というものにつきましては、日米合同委員会で合意に至っているわけでございますが、今後とも、米側といろいろ協議を重ねながら、できるだけ周辺の方々への影響を最小限にするべく努力は続けていきたいというふうに思っております。

照屋委員 私は、麻生大臣の沖縄に対する真摯な、前向きな決意を聞かせていただきたいと思います。

 イタリアでは、アメリカ空軍が使用するアビアノという飛行場があるようですが、そこではリポーゾという昼寝の習慣を確保するために、離発着、飛行高度、飛行コースを規定する米国との基地使用に関する覚書が締結されている。昼寝を確保するためにアメリカの基地の運用を規制する協定すら結んでいる、現に。

 それからすると、今局長答弁にありますように、地位協定上、嘉手納基地の運用を規制する日米両政府間の協定締結は可能なんだから、私は、政府は私の答弁書に対しては三連協が求めているものはいかなるものを指しているか明らかでないと言っておりますが、深刻な住民の声にぜひ大臣耳を傾けて、この野方図な米軍の基地の運用を規制する協定をぜひ結ぶように前向きに取り組んでいただきたいと思います。どうですか、最後に外務大臣の決意をお聞かせください。

塩崎副大臣 今、リポーゾの確保の問題についてお話がございました。

 このイタリアでの取り決め内容については、私どもとしても必ずしも内容を正確に、つぶさに把握しているわけではございませんし、一概に比較するのはなかなか難しいんだろうと思いますけれども、しかしながら一方で、沖縄の皆様方に負担をかけているこの現状を踏まえながら、地元の皆様方の御要望を真摯に受けとめて、地元のさらなる負担軽減というものを実現していくということを、可能性を追求していくということは大事なことだろうというふうに思って、そういったものを念頭に置いて、今後さまざまなことをやっていきたい、このように思っております。

麻生国務大臣 三連協のお話に関しましては、御存じのように、日米の地位協定第二条でしたか、あそこに基づいていろいろなことをしておることになるんですが、これは日米両国政府が日米の合同委員会というものを通じまして個別にいろいろやっておられるというのは御存じのとおりで、その個別の内容については個々の基地とか施設とかによって全部違いますので、一概にちょっとこれとかいうようなものが、ルールがあるわけではないのはもう御存じのとおりであります。

 嘉手納飛行場につきましては、非常に大きな騒音の影響を下げる、できるだけ引き下げるというために、平成八年にこの協定がなされたということを知っておりますけれども、そのときに、騒音規制について日米合同委員会において、いわゆる合意に至っております。

 ただ、至ったからといって、それでもう全部解決したのかというと、事はそんな簡単な話ではないのはもう照屋先生御存じのとおりでありますので、私どもといたしましては、今後とも、今回の一連の交渉の中において、在日米軍というもののいわゆる両国政府間の合意等々、政府間交渉の合意によって、少なくとも周辺住民への影響というものは、これは七千人の削減等々含めまして、私どもとしては、最小限にするような最大限の努力をやっていくというように思っております。

照屋委員 終わります。

     ――――◇―――――

原田委員長 次に、日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定第二十四条についての新たな特別の措置に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定の締結について承認を求めるの件を議題といたします。

 政府から趣旨の説明を聴取いたします。外務大臣麻生太郎君。

    ―――――――――――――

 日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定第二十四条についての新たな特別の措置に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定の締結について承認を求めるの件

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

麻生国務大臣 ただいま議題となりました日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定第二十四条についての新たな特別の措置に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明させていただきます。

 政府は、日本国に合衆国軍隊を維持することに伴う経費の日本側による負担を図り、日本国における合衆国軍隊の効果的な活動を確保するためこの協定を締結することにつき、平成十七年二月以来アメリカ合衆国政府と協議しつつ、検討を行ってまいりました。その結果、最終的合意に達しましたので、平成十八年一月二十三日に東京で、先方ゼーリック国務副長官との間でこの協定に署名を行うことに至った次第であります。

 この協定は、日本国が、日本国に雇用されて合衆国軍隊等のために労務に服する労働者に対する一定の給与の支払い及び合衆国軍隊等が公用のため調達する電気などの支払いに要する経費を負担すること、並びに日本国政府の要請に基づき、アメリカ合衆国が合衆国軍隊の行う訓練を他の施設及び区域を使用するよう変更する場合に、その変更に伴って追加的に必要となる経費を負担することを規定することとともに、アメリカ合衆国がこれらの経費の節約に努めることなどを規定いたしております。この協定は、二〇〇八年三月三十一日まで効力を有するものとされております。また、この協定は、現行の協定が本年三月三十一日まで効力を有することとなっておりますので、本年四月一日に発効する必要があります。

 この協定の締結は、日米安全保障条約の目的達成のため日本国に維持されている合衆国軍隊の効果的な活動に資するものであり、ひいては日米関係全般並びに我が国を含むアジア太平洋地域の平和及び安定に重要な意義を有するものと考えられます。

 よって、ここに、この協定の締結につき御承認を求める次第であります。

 何とぞ、御審議の上、本件につき速やかに御承認をいただきますようよろしくお願いをいたします。

原田委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時二十分散会


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