衆議院

メインへスキップ



第7号 平成18年3月29日(水曜日)

会議録本文へ
平成十八年三月二十九日(水曜日)

    午前八時五十分開議

 出席委員

   委員長 原田 義昭君

   理事 小野寺五典君 理事 谷本 龍哉君

   理事 土屋 品子君 理事 水野 賢一君

   理事 渡辺 博道君 理事 武正 公一君

   理事 山口  壯君 理事 丸谷 佳織君

      逢沢 一郎君    愛知 和男君

      伊藤 公介君    伊藤信太郎君

      宇野  治君    高村 正彦君

      篠田 陽介君    新藤 義孝君

      鈴木 馨祐君    中山 泰秀君

      三ッ矢憲生君    山内 康一君

      山中あき子君    吉良 州司君

      篠原  孝君    津村 啓介君

      松木 謙公君    松原  仁君

      谷口 和史君    赤嶺 政賢君

      笠井  亮君    照屋 寛徳君

    …………………………………

   外務大臣         麻生 太郎君

   防衛庁副長官       木村 太郎君

   外務副大臣        塩崎 恭久君

   財務副大臣        赤羽 一嘉君

   外務大臣政務官      伊藤信太郎君

   外務大臣政務官      山中あき子君

   政府参考人

   (防衛庁防衛局長)    大古 和雄君

   政府参考人

   (防衛施設庁施設部長)  渡部  厚君

   政府参考人

   (防衛施設庁建設部長)  山内 正和君

   政府参考人

   (防衛施設庁業務部長)  長岡 憲宗君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 長嶺 安政君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 梅田 邦夫君

   政府参考人

   (外務省北米局長)    河相 周夫君

   政府参考人

   (外務省中東アフリカ局長)            吉川 元偉君

   政府参考人

   (外務省経済局長)    石川  薫君

   政府参考人

   (外務省経済協力局長)  佐藤 重和君

   政府参考人

   (財務省主計局次長)   鈴木 正規君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房審議官)           吉田 岳志君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           江嵜 正邦君

   政府参考人

   (環境省大臣官房審議官) 黒田大三郎君

   外務委員会専門員     前田 光政君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月二十九日

 辞任         補欠選任

  田中眞紀子君     松木 謙公君

  笠井  亮君     赤嶺 政賢君

同日

 辞任         補欠選任

  松木 謙公君     田中眞紀子君

  赤嶺 政賢君     笠井  亮君

    ―――――――――――――

三月二十九日

 ILOパートタイム労働条約に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第九八七号)

 同(石井郁子君紹介)(第九八八号)

 同(笠井亮君紹介)(第九八九号)

 同(穀田恵二君紹介)(第九九〇号)

 同(吉井英勝君紹介)(第九九一号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 経済上の連携に関する日本国政府とマレーシア政府との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第二号)

 マルチチップ集積回路に対する無税待遇の付与に関する協定の締結について承認を求めるの件(条約第三号)

 国際情勢に関する件


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

原田委員長 これより会議を開きます。

 経済上の連携に関する日本国政府とマレーシア政府との間の協定の締結について承認を求めるの件及びマルチチップ集積回路に対する無税待遇の付与に関する協定の締結について承認を求めるの件の両件を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 両件審査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房審議官長嶺安政君、大臣官房参事官梅田邦夫君、北米局長河相周夫君、経済局長石川薫君、経済協力局長佐藤重和君、防衛庁防衛局長大古和雄君、防衛施設庁施設部長渡部厚君、財務省主計局次長鈴木正規君、農林水産省大臣官房審議官吉田岳志君、経済産業省大臣官房審議官江嵜正邦君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

原田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

原田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。篠原孝君。

篠原委員 おはようございます。民主党の篠原孝でございます。

 きょうは、EPAに関連いたしまして、日本の将来の国づくりがいかにあるべきかということ、これは、こんなこと言っては失礼かもしれませんが、前の外務大臣にはこういうことはお聞きいたしません。麻生大臣はポスト小泉の一人としていろいろ取りざたされておられます。国づくりについていろいろお考えになっておられるはずだと思います。

 私の記憶が正しければ、麻生政調会長時代、小泉総理が総理になられたばかりのころに、構造改革、構造改革と言っておられるけれども、ではその先の日本の姿は一体どうなんだということを麻生政調会長がお聞きになったはずです、私の記憶が正しければでございますが。

 私もずっと常々それは考えておりまして、ところが今、民主党の代表も含め、日本の国の将来の姿を明確に示して、こういうふうに持っていくんだということを言っておられる人がなかなかいない。我が党も、高速道路の無料化とか、こんなこと言ってまた怒られるかもしれません、取ってつけたような手段しか言っていないんです。

 構造改革、構造改革と言っても、構造改革の先にどういう日本社会を描くのかというのはさっぱりわからないわけですね、郵政民営化、民営化と言っても。これじゃやはり国民はついていかないんじゃないかと思います。

 EPAも同じなんですね。EPAだ、FTAだ、自由貿易だ、ではその先、一体日本はどういう国になっていくのかというのをなかなか明確に示されていないんです。

 EPAとかFTA、シンガポール、これも私は、取ってつけたような、何であの国と一番最初にしなくちゃならないのか。そういうのはやはり近隣諸国とやっていくというのが理屈に合っているんだろうと思いますけれども、そうしたら今度は、跳びはねてというか、海の向こうのメキシコだ、チリだ。マレーシアは真ん中にあって、そこそこの国だからいいんだろうと思いますけれども、私は、EPA一つとっても、戦略がなさ過ぎると思うんですが、これは外交上の戦略というのは何かおありになるんでしょうか。

麻生国務大臣 江戸、二百七十年間続きました幕藩体制を壊すのに、西郷隆盛は極めて貢献があったというところだと思いますが、それこそ今お話しした渡部先生の側の方は、会津としてはとてもじゃないけれども認めがたいところだとは存じますけれども、長州閥、薩長閥というのが貢献をしたことは確かです。しかし、その後の明治というのを、新しい国をつくっていくというのをやったのは、やはり岩倉使節団に随行していった人たちがつくったということに、多分歴史の評価はそうなるんだと思います。

 この四、五年間、いろいろな意味でこれまでの旧既得権益というものが壊されていったという形で、今がまさにそうなんだろうと存じますが、これから後を考えますときに、私どもとしてやはり考えておかないかぬことは、基本的には少子高齢化というのだけは絶対に避けて通れない、ここしばらくの流れだと存じます。

 それをあわせて考えますと、やはりいろいろな意味で、私どもとしては、人口が減っていくという前提に合わせて生活水準をある程度維持していこうと思えば、生産性を上げる、かつ、今までつくっていたものを買ってくれる国内需要の絶対量が減る分だけは海外でということになりますと、EPAとかFTAというものは非常に大きなそのうちの手段の一つとして考えてしかるべきものだと思います。

 シンガポールにつきましては、これは農産物がなかったから、一番最初、いろいろな意味で、まずは練習としてはこんなところかというのが多分シンガポールを選ばれた理由と存じます。

 メキシコにつきましては、メキシコは、アメリカのNAFTAという、ノース・アメリカ・フリー・トレードというあれに入っていくための手段として、まずはメキシコというところが、多分当時の戦略として目をつけたところだと思います。

 マレーシアは御指摘のとおりだと存じます。

 いろいろな意味で、この方法というものは、これからの時代、国境というものが、FTAだと残りますけれども、EPAですと、人ごと、いわゆる知的財産含めて入ってまいりますので、日本という国は、今後、少子高齢化、人口減という中にあって、生産性を維持し、かつ、できたものを海外に売っていくという前提に立ちますと、このEPAというのは、その一つの手段として大きなものだと考えております。

篠原委員 それでは、ちょっと大臣と、ここら辺に関連して哲学論争のようなものをさせていただきたいと思っております。

 国づくりの将来ビジョンを持って一番熱心に取り組んだのは、戦後すぐのころじゃなかったかと思います。それは、めちゃめちゃになってしまった。それで、よくここでも出されて、余りおじいさん、おじいさんと言われると、立派な人を先祖に持った人はかわいそうで、いつも比べられるのでそこは同情いたしますけれども、やはり立派な方は立派な方で、しようがないんだろうと思います。

 吉田内閣、非常に、戦後の国づくりで、私はこれほどビジョンをきちんと持ってやられた内閣というのは、その後、例えば日本列島改造論とか、順序が逆になりましたが、所得倍増計画とか、家庭基盤の充実とかふるさと創生論とかありましたけれども、やはり戦後の一時期が一番すごかったんじゃないかと思います。

 吉田総理は、一民間人であった石橋湛山さんを大蔵大臣に任命いたしました。二人は共通の意識があったんだろうと思います。

 私、吉田茂物というのも読みました、石橋湛山物というのも読みました。戸川猪佐武さんの「小説吉田茂」、目からうろこは高坂正堯さんの「宰相吉田茂」ですね。石橋湛山物は松尾さんという方がいろいろまとめておられます。

 二人の偉大な政治家、吉田茂、石橋湛山、もちろん反軍で共通していました。小日本主義というのを石橋湛山さんは唱えました。それは、軍的大日本主義に対して、そんな、外へ出ていくのはいけないんだと。それで、野党でさえ、あるいは内村鑑三さんすら是認した、満州に進出していくようなこと、それを石橋湛山さんは、そんなばかなことをするんじゃない、人の国の土地をとって日本人がどんどん出ていくというのはおかしいんだと。今は小学校三年生でもそれは正しいというのはわかっていると思います。しかし、そのころは、植民地に出ていくのはだれも疑問を感じなかった。

 私の地元の長野県なんかまじめですから、満蒙開拓というのに行きました。今出ました薩摩の人なんか寒くてあんなところ行きませんから、一番北の端に行きまして、中国残留孤児の問題が起こりますと、私の近辺にいっぱい関係者がいるので、私の親族にもおります。そういった感じで国の方向を誤ったわけですね。

 それに対して、そうじゃないんだと言っておられた同志が結束したのが、戦後すぐの内閣だと思います。

 それで、石橋さんはケインズ流の積極財政で国づくりをされました。私は、これは本人は言っておられませんけれども、軍的大日本主義に対して小日本主義を唱えられたんですが、それで経済重視でやられていたんですが、気がついてみたら、経済大国主義、軍的に対して工的大日本主義に陥って、ますますひどくなってきてしまったんじゃないか。軍的大日本主義に対して工的日本主義になった。しかし、ここで、いろいろ思想、哲学の葛藤があったんだろうと思います、そんなことは何も今申し上げた本の中には書いてありませんけれども。

 吉田茂首相の方は、一たんはそう思うんだけれども、余り経済重視というのも本当は思っておられなかったんだろうと思います。ちゃんとして日本がアメリカから独立していくということを考えて、一たんは軍備を捨てて経済に走るけれども、やはり品格ある国でなければいけない、経済ばかり、金、金ばかりするのはいけない。そういったことが、後の吉田茂、石橋湛山の離反につながったんじゃないか。そういう意味では、本当の石橋湛山の小日本主義を引き継いでいるのは、実は、石橋湛山本人じゃなくて、吉田茂的な面もあったんじゃないかと私は思います。

 今の私が申し上げました点、聞いていただいて、ここで述べていただきたいんですが、私は、今や、今やというか一九八〇年代以降ですけれども、貿易黒字がたまり出した、二十億ドルぐらいだ、それがいつの間にか五百億ドルになる、一千億ドルになると、ひんしゅくを買うということ。これは、軍事進出はやめたけれども、今度は経済進出でもって工的大日本主義になり過ぎてしまったんじゃないか。気がつかれておりませんけれども、大国主義の点では同じで、近隣諸国からも非常に警戒されつつあるんじゃないかというふうに思うんですが、大臣、いかがでしょうか。

麻生国務大臣 軍事的ではなくて工業的大国、確かにおっしゃるとおり、篠原先生、どうですかね、一九八〇年代前半で、多分、日本の明治以来この方目指した近代工業化社会というのは、ほぼピークに達するところまで行ったと思いますね、近代工業化社会という名前を目指したという点においては。

 そして、八五年のプラザ合意で一ドル二百四十円が百二十円まで暴騰するということになって、また別のステップになってくるんですが、御存じのように、円はさらに上がって、一九九四年四月の二十何日には一ドル七十九円九十八銭まで上がりますので、その意味では、円というものは猛烈な勢いで力を持った。その背景はもう間違いなく工業力という名の経済力だということは、私もそうだと思います。

 問題は、それから時代がごろっと一個変わりまして、多分、情報化社会というものになって、いわゆる工業製品から、情報というものがすごく価値があるものになっていったのがこの十数年、ここで完全に日本は乗りおくれて、もう一回、また今始めて、ざっとまたこの数年で追いついてきているんですけれども。

 いずれにしても、日本という国が、そういった形のもので、やはりある程度バランスをとっていかないかぬところに関しましては、かなり戦前は軍事力、戦後は工業力とか経済力というものにえらい勢いで全力を集中した。そのおかげで、たった十年間で、昭和三十年には、「もはや戦後ではない」という経済白書が初めて出たときですけれども、そういったところまで成功したんだと思いますが、これを今うまくバランスをやっていかないかぬという点に関しましては大きな課題だと存じます。

 そこのところは、経済に偏り過ぎて、教育はどうだ、道徳はどうだ、いろいろ言われているところはもう御存じのとおりなので、私どもとしては、そういったところを含めて、戦後何となく、戦争に負けたものですから、いろいろな意味で、これまでの価値観やら何やらは、古いものは皆悪い、新しいものは皆いい、極端な言い方をすれば、そういった形で随分突っ走ったんだと思います。

 六十年たって、今改めていろいろなものの反省の上に立って、いろいろなところで石橋先生のお話が出てみたり、あの当時は高橋亀吉先生という方もいらっしゃいましたけれども、そういった方々の話が改めて読み直されてみたり見直されたりするという一つの流れができつつあるんだと思っておりまして、私どもは、新しいものの中にいいものもありますし、また古いものの中でも大事にすべきものはいっぱいあろうと思いますので、今の御意見等々は、すごく貴重な御意見として拝聴されてしかるべきものだと思っております。

篠原委員 それでは、ちょっと聞いていただきたいので、私の資料を見ていただきたいんですが、きょうは、我が党の渡部恒三国対委員長にもおいでいただいております。それはなぜかといいますと、渡部恒三国対委員長と私は共通の趣味がありまして、石橋湛山さんの思想にほれぼれいたしておるわけでございます。

 三枚目、めくっていただきますと出てきますけれども、「新・小日本主義の勧め」という東洋経済新報の今から二十年ぐらい前に書いた私の雑文ですけれども、これがございます。

 今大臣がおっしゃった、一九八〇年代にはもうピークに達した、工的大日本主義がピークになっている。このころは、まだ浮かれていたときです。大国主義に陥っていました。金融大国とか言っていました、イギリスと同じようになるんだと。それから、宮沢内閣は、その後、生活大国とか言います。

 何しろ日本は大国が好きなようでして、私はそれに対して、大国意識は持つべきじゃない。小国と言うと私はちょっと卑下し過ぎたりするんじゃないかという気がしますので、中日本主義、中進国、ミドルパワーというのがいいと思いますけれども、あえて、石橋湛山さんが小日本主義とおっしゃっているので、小日本主義というふうにしました。

 それで、その一番後ろのページ、百三十八ページに、青っぽい理想論かと思いましたけれども、戦前は軍事大国を目指した、一番下の表ですね。それで、現在は、現在というのは一九八五年現在ですね。八五年にこれを書きました。経済大国だ。だから、二十一世紀、今です、二十年前に私が書いたんですが、大国主義を放棄していくべきだと。生物資源大国なんて、資源大国なんて、これは意味がおわかりにならないかと思いますが、緑資源とかリサイクル循環社会にしていった方がいいんだということを二十年前に私は主張しているわけです。

 これは後でちょっと見ていただきたいんですが、一番下を見ていただきたいんですが、大国主義は植民地拡大だ、軍備拡大だ、大東亜共栄圏だ。

 石橋湛山さんの小日本主義は、海外の植民地を放棄しろと言っていた。みんなが浮かれていたころに、満州から帰ってこい、日本人は勤勉なんだから、必要なものは食糧だって資源だって外国から輸入すればいいんだ、そして、製品をつくって輸出して、必要なものをまた買えばいいんだ。

 ところが、行き過ぎの例の一つが食糧ですね。満州で食糧をつくる必要はないんだ、稼いだ金で食糧を買えばいいんだと言っているのが、工業製品を輸出し過ぎて、農産物を輸入せざるを得なくなっているんです。これはいびつなんです。

 そして、私がここでなぜ、きょうこの問題を指摘しているかというと、FTA、EPAは、石橋さんが、軍的大日本主義をやめて小日本主義と、そのときに経済でというふうに言われたんですが、先ほどから申し上げておりますように、経済大国、私の言葉で言えば工的大日本主義に走り過ぎちゃっている、それをさらに助長するのがFTA、EPAじゃないかと思うんです。何でも自分の得意なものを輸出して、不得意なものを輸入する、これはやはり国としてのバランスを欠くのではないかというふうに思っているわけです。

 ですから、これがちょっとややこし過ぎるので、現代風にアレンジいたしましてつくったのが、一枚目の、日本軍のアジア進出とアジア諸国とのFTA、EPA。EPAとFTAを悪者にして済みませんけれども、これをちょっと見ていただいて、頭の体操をしていただきたいんです。

 領土は拡大していませんけれども、日本製品の販路を拡大するんだ。投資も拡大する、金も余っているので。大東亜共栄圏に対して、今や東アジア経済共同体という、経済は抜けてもいいわけですけれども。

 海外に進出しているのは、満州へ行って、とうとう国までつくる。国際連盟から脱退するというような、こういうこともしていたんです、狂っていたわけです。しかし、今は、自由貿易の原則のもと、輸出していいんだ、工場も日本の企業が建てたっていいんだ。昔は軍がやりましたけれども、今は世界共通のルール、自由貿易の原則、WTO、ガットのルールにのっとったFTA、EPA。今は自由貿易だ。

 今は、では、かつての満州に行ったりしたことは、皆さん、あれは間違っていたんだというふうに思っているはずです。五族協和とか、美名がいっぱい飛び交いました。しかし、悲惨なことになった。

 しかし、それに対して、EPAの方は、もう行け行けどんどんです。国際分業論、競争原理だ。これが、小泉、竹中、ホリエモン路線の流れの中にあります。私は、これはよくないと、この前、郵政民営化特別委員会のときに、大臣がおられるところで申し上げました、あの繰り返しになりますからやめますけれども。

 では、今の右側の方を見ていただきます。

 今、競争原理でもっていっている、これが将来もずっと、これはよかったと言われるでしょうかという、ここが問題なんです。石橋湛山さんが生きておられたら、吉田茂さんが生きておられたら、やはりこの国の姿はおかしいんじゃないかとおっしゃるんじゃないかと僕は思います。

 また左に移っていただきまして、では戦前のそれはどうだったかというのは、すぐ満州はだめになりました。しかし、その後の日本の姿は正解だったわけですね。石橋湛山さんは、一九四五年八月二十五日の東洋経済新報のところに、敗戦がよかった、領土を失ってよかった、これで日本は救われて成長できると言っておられるんです。こんな先を見越している人はそんなにいなかったんだろうと思うんです。

 ですから、それをちゃんと知っていた吉田茂さん、第一次吉田茂内閣で大蔵大臣に抜てきする。ところが、アメリカの言うことを聞かないから、なぜかしら公職追放になる。その後、どういう思想、哲学の変遷があったのかわかりませんけれども、公職追放解除になった後は、鳩山自由党の方に参加されて、反吉田になっていくわけですけれども、しかし意思は通じていたんじゃないかと思います。

 それで、では今度、右に移ります。

 こんなことを言うと皆さん笑われるかもしれませんけれども、私は、自由貿易の論理にのっとって、日本は工業製品をつくる国ということで外国から資源を輸入して、この姿はやはりおかしいんだと何十年後言われているような気がします。

 それはどうしてかというと、逆の立場になったらいいんだろうと思います。マレーシアを挙げてみます。

 マレーシアのすず、マレーシアのゴムは、まず第一義的にはマレーシア人が豊かになるために使われるべきであって、日本は、ちょっと技術力がすぐれている、金がある、人材もいる。だからといって、原材料を輸入して、加工して、輸出して、マレーシアに製品をつくって輸出し返すだけじゃなくて、世界じゅうにそれでもってやるというのは、これはやはり、領土はとっていないけれども、資源はとってしまっている。これは、中東諸国なんかで、油をめぐって起きていることなんです。それは油だけじゃなくて、ほかのことについても言える。これはやはり、余りにも美しくない生き方である。

 だから、その証拠に、みんな日本と同じようにして、工業国になって、東南アジアや中国が軽工業品からして工業化していく、日本の後追いをしているわけです。そうすると、みんな自立する。そうすると、最終的な姿は見えてくるんじゃないかと私は思います。

 今、石橋湛山さんが生きておられたら、新たな小日本主義をおっしゃるだろうと思うんです、行き過ぎたと。それで、これは、歳を召されていたので文章にはあらわされておりませんけれども、私は確実にそういうふうに考え方の違いがあったと思います。

 中国とのLT貿易とかいうのが始まりました。あれは石橋湛山さんが中国に思いをはせて、行けと言ってやっておられたんです。それで、日本がでかくなり過ぎて、ほかの国に迷惑をかけている。軍事大国が今度は経済大国になって、押しやり過ぎているのではないか。やはり東洋経済、東洋ということを石橋さんは意識されておりました。だから、これは間違いだ、もう一回もとの小日本主義に戻るべきではないかというふうに言われるんじゃないかと思います。

 しかし、先ほど申し上げましたように、このことにもっと先に気がついておられたのは、実は吉田茂さんじゃなかったかと思うんです。ですから、政治的ないろいろなことで、権力闘争みたいなもので別れたというのもありますけれども、二人の反軍、反戦思想家がたもとを分かったのはこの路線の違い、しかし、究極的には、お二人とも、もっと品格あるバランスのとれた美しい国にしようというふうに思われたんじゃないかという気がするんですが、その血筋を引いておられる外務大臣、いかがお考えでしょうか。

麻生国務大臣 石橋湛山先生、吉田茂ともに、当時の軍閥にかなりやられていますし、吉田茂は、たしか陸軍の刑務所にかなり入っていて、陸軍の刑務所が焼けなければあそこで死んでいるはずだったんでしょうけれども、なかなか人間の運命というのは難しいものだなと思います。

 今のお話の中で、どういう国というのは、篠原先生、これはなかなか難しいところなんだと思いますけれども、今、日本として、軍にかわって工業力じゃないかということだったんだと思いますが、幸いにして、これは日本が考えたのではなくて、他動的、ほかのところからのあれで違ってきた、いい方向で違ってきたなという感じもないわけではないんです。

 例えば、工業製品というと、昔は消費製品というものをずっと売ってきたというんですけれども、今は、御存じのように、日本からの消費財の輸出というのが激減をしております。かわって世界に輸出されておりますのは、いわゆるマザーマシンと言われる消費財をつくる機械をつくる機械、これが今、日本から主に輸出されておる資本財と言われるものですけれども、いわゆる金型初めそういったものがいい例だと思いますが、そういったものに変わってきております。

 日本のものは、商品を直接現地で買ってもらうのではなくて、現地の人たちが工業化をしていくのに当たって必要な資本財を提供しているという形に、技術力の違いもあって、そういう方向に形を変えておりますので、直接向こうから、侵略だ何だと言われているようなことにはならなくなったというのは、この数年間の大きな変化であろうと思います。

 もう一つは、金の面でいきますと、やはり一九九七年のアジアの通貨危機が起きましたときに、IMF等々で、インドネシア、韓国、タイ、皆壊滅的な痛手を受けるんですけれども、そのとき最後まで金を出し続けて、韓国もしくはインドネシア、タイ等々のいろいろな経済金融危機というものに関して、手を直接つけたのは日本ということになっておりますので、そういった意味では、アジアの中における日本の一種のスタビライザー、バランサーとしての力というのはそれなりに発揮されたのではないかという感じがします。

 いずれにしても、今おっしゃいましたように、そろそろ、六十年もたちましたので、経済復興というので、とにかく経済がめちゃくちゃになっておりましたあの時代から、今、時代が少し変わってきておりまして、改めてもう一回、インフレもやった、デフレもやった、そういった経験を踏まえて、ここらで、有史始まって以来、人口減という状況に突っ込みましたので、この段階で、今後の日本のあり方等々については、落ちついて考える、見直す、そういった大事な時期に来ているという感じは率直に私もいたします。

篠原委員 今、大臣のお言葉の中に、人口減少というのがありました。さっきの横長の紙のところを見てください。二千何年、二千百何年を僕は恐れているわけです。

 このまま行きますと環境が悪化する。どうして悪化するかというと、今、大臣は資本財、しかし、もう一つ中間財というのがあるんですね。他律的に、そのとおりだと思います。日本は人件費が高くなっている。だから、消費財をつくっているのに手間暇がかかるから、それは東南アジアの低賃金の国に任せた方がいい。だから、資本財、中間財が行くわけで、行かざるを得なくなってくる。だんだんそうやって移行していくはずなんです。

 日米繊維交渉をやったときも、アメリカの繊維担当者は、日本はいずれアメリカの立場がわかるようになる、何十年か後は東南アジアや中国から同じように繊維製品で追い詰められる、そのとおりになっているわけです。歴史は繰り返しているわけです。だから、そこのところを考えなくちゃならない。

 人口も減少している。国民の質も、私の子供なんか見ていると明らかに低下しています。私よりもできが悪いです。できというのは精神的にですね、悪い。忍耐心がない、勤勉じゃない。

 ですから、二千百何年の日本は一体どうやって記述されているかと僕は心配なんです。東洋の島国があった、イギリスのまねをして、工業立国をちょっとおくれてやった、世界じゅうの資源の枯渇に多大な貢献をして、今はうたかたのごとく消え去ったとかいう記述があるかもしれないんです。それは、バランスを欠いた国づくりをした結果、そうなってしまうんじゃないかということを私は心配しているわけです。

 ですから、先を見越した石橋湛山さん、吉田茂さんが今おられたら、絶対違う方にかじをとるはずなんです。そういう点では、私は、EPA、FTAというのは、後でちゃんと賛成討論しますけれども、やはり問題があるんだろうと思う。どこか配慮が欠けているわけです。

 それは、どういうところに配慮が欠けているかというと、日本の山間僻地で田んぼや畑が何もつくられなくなっている、こんなところぐらいに思いをはせられなかったら、政治家と言う資格は私はないと思います、これをちゃんとつくるすべを講じられなかったら。

 それで、もう一つだけ言わせていただきますと、価値観が違ってきているわけです。植民地主義から国際分業論になって、世界じゅうが仲よくしておこうというのがありますけれども、もう一つ環境問題というのができてきたんです。

 では、地球環境に優しい生き方はどうしたらいいのかというときに、そうすると、一つの解決方法は、なるべく無駄な輸送をしないようにというのがあるんです。無駄なものをつくらない。だけれども、無駄なものをつくらないというのはなかなか難しい。どれが無駄か無駄じゃないか、ある人には大事で、ある人には無駄だというのがありますから。

 だから、輸送量をなるべく少なくしていきましょうというのがある。特に食べ物の世界では、これは私がつくった言葉ですけれども、フードマイレージ、食べ物の総輸送距離は少なくしたらいいんじゃないか。

 これは、やはり安全性というのから、身近でできた、牛肉もアメリカから買わずに日本でちゃんとつくったり、野菜なんかは特にそうですね、信用の置ける人につくってもらうというのがあるんですが、これが実は木にも言える。だから、ウッズマイレージ、大臣は英語がお得意ですけれども、韻を踏んでいるわけです。木は、カナダ材でつくったら、そうしたらいっぱいCO2を出す。では、川越市は秩父材でつくったらCO2を出す必要はないわけですね。ところが、これはグッズにも、物にも言える。物を大量に他国から持ってくると、輸送でもってCO2を出す、だからなるべく少なく。

 だから、EPA、FTAの概念にこれを当てはめると、近隣諸国とFTA、EPAというのは、私は丸だろうと思う。それはどうしてかというと、北海道から福岡に野菜を持ってくるよりも、山東半島から船で持ってきた方がずっと環境に優しい食べ物になるわけですね。こういったことも考えていかなくちゃいけないんじゃないかと思うんです。

 そういう点では、入れ食いEPA、ダボハゼFTA、どことも結ぶ、何でも、どことでも結んでいく、これはチリがそうやってやっているみたいですけれども、日本も何かそんな感じがするわけです。先進国の中で一番FTA、EPAがおくれているのは日本だ、だからどことでもいいから、スイスととか何とか、思想、哲学が全然ないんですね。

 こういうことをやめていただいて、日本をもっとまともな社会に持っていっていただきたいんですが、最後に、私の今の提言に対してどうお考えか、お聞かせいただいて、私の質問を終わらせていただきます。

麻生国務大臣 今のEPA、FTAに関して、これはおっしゃるとおり、他国がやっているからうちもやらないかぬという話は、ちょっとそれは見識としてはいかがなものかというのであって、これは回り回って日本の国益ですから、しかも相手の国益にもならなきゃ、だから、ともに、共益でないと、この種の話は長い目でもちません。

 そういった意味では、私どもも、これをやった結果、次どうなるかという話を見た上で、やってみたら結論、なかなかこれは難しいという話になったら、その段階でまたもう一回考えないかぬという気持ちは持っておかないと、これが絶対の善だ、これが正義だということで強引に押し切るというのは、それは篠原先生、なかなかさようなわけにはいかないだろうと思っております。

 御存じのように、自由貿易なんというのを強烈に推し進めたら、これは弱肉強食になるのに決まっていまして、それに、神の見えざる手など、そんな手はありませんから、だから、そういった意味では、極端なことになるというのは過去の歴史が示しております。

 私どもは、規制すべきは規制する、それで規制を緩めるべきときは緩める。それをどう選ぶかというのが一番これから問われる見識なんだと思いますので、御指摘のありました点、頭に入れて、腹に据えて、こういった国の国柄、国柄とか国体とかいろいろな表現はあると思いますが、そういう点を考えていかないと、EPAがすべてだといって、どんどん行くというのは極めて危険ではないかという御指摘は大事な点だと存じます。

篠原委員 どうもありがとうございました。

原田委員長 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢でございます。前国会までは外務委員会に大変お世話になりました。きょうもよろしくお願いいたします。

 それで、最初に、日本・マレーシアの連携協定について伺います。

 今回の協定案の中には、マンゴーなどの熱帯果実、これは前回のメキシコとの協定においても関税撤廃品目でありましたが、今回もそのようになっております。

 御承知のとおり、日本のマンゴーの生産地というのは沖縄県、宮崎県、鹿児島県になっているわけですが、国産マンゴーに与える影響、今後関税撤廃をしたことによってどのぐらいの輸入量がふえていくのか。

 それをお伺いいたしますのは、熱帯果実というのは、沖縄では、花やパインの自由化によって大変な打撃を受けた、その中で生産者の活路としてマンゴーが発展をしてきた経過があります。ここで関税が撤廃されて、また同じようなことを繰り返すという点についての懸念もありますし、今後フィリピンやタイとの連携協定が進んでいけばどうなるだろうという不安もあります。

 熱帯果実は離島の農業を支える大変大事な産業でありますし、離島を荒廃させない上でも、こういう連携協定をやっていく上で留意すべきじゃないか、今後の方向も持つべきじゃないかと思いますが、この点いかがですか。

吉田政府参考人 マレーシアとのEPA締結によりまして、沖縄産のマンゴーに影響があるのではないかというお尋ねでございます。

 マレーシアとのEPA締結に当たりましては、果実につきまして、国内果樹農業への影響を極力回避するということを念頭に置いて交渉を進めてまいったところでございます。

 お尋ねのマンゴーでございますけれども、これにつきましては、御指摘のように、EPA協定におきまして即時関税撤廃を行ったところでございますが、マレーシア産の生鮮マンゴーにつきましては、現在でも特恵関税ということで、実質上関税はゼロの状態でございます。一方、植物検疫上の理由から輸入が禁止されておるという状態でございます。そういう状態でございますので、EPA協定後も、今のところは直ちにマレーシア産のマンゴーが入ってくるという状態にはございません。

 また、沖縄産のマンゴーにつきましては、御存じのように、樹上完熟等の高品質果樹生産を行っておりまして、贈答用等、もう既に自由化されておりますフィリピン産のマンゴーなどと違いまして、完全に差別化された販売を行っております。

 以上のことから、このEPA締結によりまして、沖縄産のマンゴーに特段の影響があるというふうには考えておりません。

 以上でございます。

赤嶺委員 そういう沖縄やあるいは南九州の農業を支える熱帯果実について、今後連携協定が進んでいく、そういう中でも十分留意して取り組んでいっていただきたいと思います。

 それでは次に、米軍再編について伺っていきます。

 よく沖縄には、キャンプ・シュワブ沿岸地区の沿岸案と同時に、七千人の海兵隊をグアムに移転するんだ、そして嘉手納基地以南の土地は返還するんだということがたびたび政府から繰り返されております。負担の軽減だということを言われているわけですが、この点について、ちょっと、いろいろ聞いてみたいと思います。

 前回の安保委員会で、私は、嘉手納以南の土地が返還をされる、そのときに、返還された基地から海兵隊のグアム移転、何名移転するんだというようなことを聞きました。答えられなくて、調査をして後で報告するということでしたが、今報告していただきたいと思います。

大古政府参考人 お答えいたします。

 今回の日米協議の過程で、米側から、沖縄のアメリカの海兵隊のアサインされている定数といいますか、これについては約一万八千人ということで聞いております。ただ、現在米軍は個別の施設・区域ごとの人数は公表していない状況にございますので、御指摘の基地ごとの人数については明らかにできないということで御理解を賜りたいと思います。

    〔委員長退席、土屋(品)委員長代理着席〕

赤嶺委員 嘉手納以南の土地の返還にかかわって、どうなんですか、そことの関係はあるんですか、ないんですか。

大古政府参考人 お答えいたします。

 沖縄の海兵隊の定数については七千名を削減する、この数字につきましては、現在八千名にふやす可能性についても日米間で議論しているところでございます。

 ただ、この削減につきましては、現在おります第三海兵機動展開部隊、3MEFと申しておりますけれども、これについて、部隊の規模として海兵機動展開旅団、MEBと申しますけれども、規模に縮小されるということでございまして、必ずしも嘉手納以南に所在をする施設・区域から削減するものではございませんので、いわゆる嘉手納以南の土地の返還とこの兵力の削減は直接関係ないということで承知しております。

赤嶺委員 そうすると、七千人、海兵隊はグアムに移動する。しかし、3MEFが旅団化されるのであって、どの基地から何名というのはわからない。したがって、返還される土地とこの海兵隊の削減とは関連性がないということになるわけですが、七千人も削減して、嘉手納以南の土地は関係ないとすれば、土地は返還されないんですか、七千人もいなくなるんですから。

大古政府参考人 お答えいたします。

 まず一点目の嘉手納以南の土地の返還につきましては、今、日米間で協議中でございまして、細部も含めて固まっているわけではございません。

 それから、兵力の削減の問題については、沖縄の海兵隊のどの部隊がどの程度削減されるかということについては、米国において今現在検討中でございます。現時点では何ら決定されていないということで承知しております。

赤嶺委員 七千人も削減するけれども、土地の返還は伴わない。今何も決定されていないから何も言えない。しかし、政府は、七千人、こんな大変な負担の軽減はないじゃないか、だれが考えてもと、外務大臣も繰り返しておられる。

 しかし、3MEFの司令部というのがあるのはキャンプ・コートニーなんですよ。だれしも、防衛庁がつくった資料を見ても、矢印でキャンプ・コートニーはグアムに移転されますよ、いわばキャンプ・コートニーにいる部隊がグアムに移転されるんだろうと、矢印で書いている、これにちゃんと書いているんですよ。

 そうなった場合に、キャンプ・コートニーですよ、キャンプ・コートニーは八千人にとても足りませんので、キャンプ・コートニーの部隊や家族が全員グアムに移ったとしても八千人にならない。でも、八千人移すわけですから、七千人移すわけですから、そうなった場合にキャンプ・コートニーの土地や建物、これはどうなるんですか。

大古政府参考人 委員御指摘のとおり、いわゆる3MEFについては、その司令部がキャンプ・コートニーにございます。七千名の削減をいたしますれば、当然、キャンプ・コートニーからも一定の人数がグアムに行くということになると思いますけれども、他方、嘉手納への土地の返還に伴いまして、いろいろ部隊の編成がえもいたしますので、その具体的な状況についてはまだ米側も検討中でございまして、日本政府としてはまだ承知していないという状況でございます。

赤嶺委員 海兵隊がキャンプ・コートニーから移動する。キャンプ・コートニーは全部司令部要員ですから、家族ですから、七千人の中ですっぽりあくということが考えられるわけですよ。嘉手納以南の基地でいいますけれども、キャンプ桑江なんというようなのは、残っているのは兵員の移動はないですよ。キャンプ瑞慶覧は海軍病院で、それがコートニーに行くはずはない。宜野湾に行って、嫌だと言われている。それから、貯油施設なんて兵員はいない。牧港補給基地は、恐らく那覇軍港、浦添の埠頭の横になるだろう、コートニーはすっぽりあくんですよ。遊休化するんじゃないですか。そういうことを政府は念頭に置いていませんか。アメリカの出方を待っているだけですか。

大古政府参考人 一般に、米軍の基地の使用状況につきましては、地位協定にも書いてございますけれども、不断に使用状況を日米で確認して、米国が使わなくなった場合には返還するということに整理されているところでございます。

 いずれにしましても、嘉手納以南についての土地の返還の問題については今鋭意検討中でございまして、そういう全体の中で米軍としても使用計画を考えますし、日本政府としてもその状況を確認した上で全体を整理していくということになるところでございます。

赤嶺委員 全くはっきりいたしません。

 そうすると、施設はあるわけですから、残るわけですから、一たんグアムに移動した海兵隊がまた、沖縄には施設も十分あるということで、戻ってくることはありませんか。

大古政府参考人 今回の米軍再編の問題につきましては、日米間で沖縄の負担軽減という目的のもとにやっているところでございますので、一たんグアムに行った後に、沖縄に基地があるからまた戻ってくるというような事態は考えておりません。

赤嶺委員 負担の軽減というのは中身がしっかりしたものでなければ、負担の軽減という政府の宣伝は大きいけれども、中身が何かよくわからないというんじゃ困るんですよね。

 我々がそれを一番懸念するのは、海兵隊の特徴なんです。三月十六日の安保委員会で、民主党の長島先生が海兵隊について詳しく述べられておりました。

 長島先生はこうおっしゃっているんですね。沖縄の海兵隊というのは、年間で約百回ぐらい海外訓練に出動する、そして、私が海兵隊関係者から直接聞いたところによると、ある月、ある時期は、半分以上の海兵隊員が沖縄から出払うという瞬間がある。半分以上といったら、六千名、七千名、九千名ですよ。二〇〇四年の夏から年末にかけて、イラク戦争の激しい時期、31MEU二千二百人、3MEF、海兵遠征軍三千五百人、計約六千人が出払っている時期があった。出たり入ったり、それも五、六千人規模でやっている。

 こういう実態について、外務省、政府はどんなふうに認識しておられますか、海兵隊について。

河相政府参考人 お答え申し上げます。

 今御指摘のありました、例えばイラクへの海兵隊の部隊の派遣、これは第四海兵連隊、この三個歩兵大隊約三千名が平成十六年、一昨年の初めからイラクに派遣をされている。そして、同年の八月から第三一海兵機動展開隊約二千二百名がイラクにやはり派遣をされている。このうち、後者の二千二百名、これにつきましては昨年の四月に沖縄に戻ってきているということでございます。

 これ以外にも、海兵隊がいろいろな訓練でいろいろなほかの地に移動して訓練をやるという事態はあると思いますが、その詳細をすべて私どもは必ずしも把握しておるわけではございません。

 ただ同時に、これはこの委員会でも御議論がありましたし、政府としてもいろいろなところで、やはり沖縄でだけ訓練をするのではなくて、沖縄以外のところでも訓練をしてもらうということで、それも一つ、沖縄に対する負担の軽減の効果があるものであるというふうには認識しておる次第でございます。

赤嶺委員 今北米局長が御説明のとおりに、海兵隊というのは、常時一万八千人仮に沖縄にいたとしても、六千人、七千人が海外で戦争をしたり訓練を展開したりする。そうすると、グアムに行った海兵隊が、海兵隊の持つその特徴からして、今度はやはり訓練のために沖縄に戻ってくる、そういうこともあるんじゃないですか、あり得るんじゃないですか、ないと言えますか。

河相政府参考人 お答え申し上げます。

 軍隊の特性として、いろいろな必要、所要に応じて移動するということ、それは可能性として排除されないことであろうというふうには考えておる次第でございますけれども、これにつきまして、ただ、今回グアムへの移転を考えている部隊というのは司令部の要員であるということ、それから家族についてもあわせてグアムに移転をするということは、必ずしもいろいろな部隊が訓練でいろいろな地に展開するというのとは若干趣を異にするところはあるのではないのかなというふうには推測しております。

土屋(品)委員長代理 申し合わせの時間が過ぎておりますので、御協力をお願いいたします。

赤嶺委員 はい。

 司令部と実戦部隊が常時遊離して訓練することはあり得ないわけでして、高速輸送船も今度の米軍再編の共同文書の中に書かれている。そうすると、高速輸送船を使ってのグアム―沖縄間、ハワイ間の展開も機動力が出てくる。つまり、海兵隊の削減に伴う土地の返還はない、施設はそのまま残る、いつでも海兵隊が出入り自由。そうなったら、海兵隊はグアムにも拠点を日本の予算でつくり、沖縄にもこれまでの施設が残る、自由に出入りする。

 金武町伊芸区の実弾射撃訓練場を思いやり予算で日本がつくってあげたら、自分たちのものは撤去するかと思ったら撤去しない、二つも持った。そういう拠点を二つ持つことになる、こういうことの繰り返しになるのではないかという懸念を指摘しまして、時間が来ましたので、質問を終わります。

土屋(品)委員長代理 次に、照屋寛徳君。

照屋委員 日本とマレーシア経済連携協定について質問します。

 政府はEPAの推進を図っていくようであります。EPAの推進によって心配されるのは、我が国の農業問題であります。農産品の輸入がさらに拡大されることになれば、我が国の農業は厳しい状況に追い込まれ、壊滅の危機にさらされることになります。

 社民党は、すべての生産者が農業を持続的に維持していけるよう、直接所得補償制度の創設を訴えておりますが、EPAの推進と農業分野への影響及び直接所得補償制度について、政府の考え方を尋ねます。

吉田政府参考人 お答え申し上げます。

 マレーシアとのEPA交渉に当たりましては、農林水産業の多面的機能ですとか、あるいは食料安全保障の確保、我が国の農林水産業の構造改革の努力などに悪影響を与えないよう十分留意をして関税交渉等に取り組んできたところでございます。

 その結果、マレーシアとの協定におきましては、我が国の基幹品目や地域の重要品目などにつきまして、個別品目の事情に応じまして、関税撤廃の例外品目にいたしましたり経過期間を設定する、あわせまして、関税撤廃、削減によりまして輸入が急増し国内で影響が生じた場合に発動できる二国間セーフガード措置を確保するなど、国内農林水産業への悪影響が極力生じないよう措置したところでございます。

 さらに、特に懸念されます熱帯果実の問題につきましては、先ほどもお答え申し上げましたけれども、既に特恵関税で実質上無税または極めて低率の関税になっておりますし、多くのものが植物防疫上の理由から輸入ストップという状態にございます。それから、パイナップルにつきましては関税撤廃の例外品目にしたということでございますので、国内農業生産への影響はないものというふうに考えております。

 以上でございます。

照屋委員 先ほどの答弁で、特にマンゴーについて、沖縄で生産されているマンゴーへの直接的な影響はないということで安心をいたしましたが、マレーシアとのEPA締結によって植物防疫法上の輸入禁止が撤廃をされるということはありませんか。

吉田政府参考人 今輸入を停止しておりますものにつきましては、あくまで植物防疫上の理由でございまして、そこの懸念が解消されない限りは、FTAが結ばれたからといってそれが解除されるということはございません。

照屋委員 それでは次に、マルチチップ集積回路の無税待遇協定についてお伺いをしますが、世界の半導体市場における我が国の置かれている立場、さらにはWTO交渉の結果を待たずに本協定の締結を急ぐ背景について、政府のお考えをお示しください。

石川政府参考人 お答え申し上げます。

 新しい技術として近年広まってまいりましたマルチチップ集積回路につきましては、WTO協定上、我が国及び台湾は既に関税を無税とすることを約束しておりますが、米国、韓国及び欧州共同体は関税を課しております。

 現在、WTOのドーハ開発アジェンダ交渉において、マルチチップ集積回路を含む関税引き下げ交渉が行われておりますけれども、我が国の半導体業界は、国際的なマルチチップ集積回路の無税待遇が早期に実現することを望んでまいりました。

 今回のこの協定の締結によりまして、我が国がマルチチップ集積回路に対する無税待遇の継続を約束する一方、WTOのもとで現在行われております交渉の結果に先がけて、半導体市場において主要な地位を占める他の国及び地域におけるマルチチップ集積回路の関税が無税となります。

 このことは、我が国半導体産業の健全な発展に寄与するとともに、WTOのもとでの交渉のさらなる進展を後押しし、国際的な自由貿易体制の強化に資するという効果も期待される、かように考えておる次第でございます。

照屋委員 それでは、防衛施設庁にお伺いをします。

 那覇防衛施設局は、去る三月十六日、同局が発注していた米軍普天間飛行場の名護市辺野古沖への代替施設建設関連事業で、ボーリング地質調査などの受注業者に対し契約解除を通知したようでございますが、契約解除した事業は何件で、対象会社は何社か。

 これは、関連して午前中にやってくれと言われたから質問したんですが、それでは、質問を変えまして、SACO最終報告で盛り込まれた北部訓練場の問題、これも午後ですか。

 では、外務大臣にお伺いをしますが、三月も残すところあと三日間となりました。米軍再編最終報告へ向けての日米交渉もいよいよ大詰めであります。

 聞くところによりますと、三十、三十一日の両日ワシントンで予定されておった日米審議官級協議が延期をされたようでございますが、これは外務大臣として、いわゆる米軍再編の最終報告が四月に大幅にずれ込んだ、こういう御認識に至っておるんでしょうか。

麻生国務大臣 三十、三十一日に予定をされておりました分に関しましては、先方、ローレスという次官がアメリカの議会に呼び出されているというために、これの延期を向こうから申し込んできたという背景がございますので、明けて四月の四、五、六でたしか予定をさせていただいておりますので、大幅にずれ込むというような意識はございません。

照屋委員 この間、米軍再編問題については、政府は、日米間で交渉中なんだ、したがって、交渉の過程のことについて詳細、明らかにすることはできない、こういう態度に終始をしておりまして、正直言って、沖縄を含めて関係自治体が十分な情報に接していないということがあります。また、沖縄では、米軍再編が、いわゆる頭越しに交渉が進められておるんではないかという強い怒りも県民の中にあります。

 加えて、一昨日、名護市の岸本前市長がお亡くなりになりました。心から御冥福をお祈り申し上げたいと思います。

 岸本前市長は、亡くなる直前にも、米軍再編中間報告の沿岸案には反対であると述べておったようであります。いわば岸本前市長の遺言であります。

 ところで、名護市は三月二十七日、中間報告沿岸案に対する名護市の側からの再修正案、これを政府に提示したようであります。その再修正案の内容は、滑走路を海寄りにずらして角度を時計回りに、反時計回りじゃなくて時計回りに変える、このような内容のようです。

 具体的には、豊原、辺野古、安部、嘉陽など、市内すべての陸域を避けた海上飛行ルートを求めているようでございますが、麻生外務大臣も、このような名護市の再修正案を政府に提示したという情報に接しておるでしょうか。また、外務大臣として、名護市が政府に逆提案というか提示をした再修正案の内容について、外務大臣としての所感をお伺いいたします。

麻生国務大臣 これは、照屋先生、直接は防衛施設庁ということになりますので、私どものところにこの原案をそのままいただいて、こういう案だというように名護市から直接私に提示があったわけではございません。ただ、今、その種の案が提示されたということは情報として知っております。

 その内容につきましては、たしか数百メーター、四百メーターだったかな、海岸に出すというお話だったと記憶をいたしますけれども、その案を含めまして、私どもとしては、政府原案というものとの間が、四百メーター、プラス角度ということになろうかと思いますけれども、今、いろいろな案というものが正直、この地元の方々の案もありますし、別の案も含めて、修正するならこうじゃないか、ああじゃないかというのは、これは本当の飛行機を飛ばすいわゆる技術的な話も含まれております。あそこは、海風はこっちからしか、そちらから見られて岬の先の方からこっちの方向に一定しか吹きませんので、そういったところも含めて、今いろいろな案で検討がなされておるということは私ども知っております。

 したがいまして、今、政府原案というものを基本に据えながら、要は、実現可能性、これができる、実現する可能性というものを求めねばいかぬところなんであって、政府原案にこだわって地元が全く反対でもできませんし、地元の案へいったら、また今度は、これは海に出るからジュゴンが何とかとかいろいろ言われて、環境団体からごちゃごちゃになってもまた別の問題を提起しますし、いろいろなところで落ちつく案というのを考え出さないかぬところで、今いろいろ腐心をいたしておるところが正直なところでございます。

 私どもとしては、政府原案というものを大事にしながらも、地元の納得、理解というものを得る最大限の努力というものは、これは当然だと思いますので、目下いろいろな案が検討されておるというのが正直な段階でありまして、その中の一つに、地元から出されたこの案も当然入っております。

照屋委員 終わります。

土屋(品)委員長代理 次に、鈴木馨祐君。

鈴木(馨)委員 ありがとうございます。自由民主党の鈴木馨祐でございます。当選一回生でございまして、何かと行き届かぬところもあるかと思いますが、よろしくお願いいたします。

 さて、きょうは、案件が日本・マレーシア間のEPAということで、まず最初に日本とマレーシアの間のEPAについて、その後、日本の外交、対アジア外交、そして、その中でのFTAを今後どうしていくか、そういったこれまで現在と将来、その二点について伺っていきたいというふうに思っております。

 きょうは、実は、実はというところはないんですけれども、新年、ことしになりましてちょうど八十八日目という日でございます。逆に、八十八年前どういう状況にあったかといえば、まさに第一次大戦中でございまして、そのころよりマレーシアはイギリスの植民地でありました。そのころから戦略的な重要性というのはあの地にあるわけでございまして、戦後、マレーシアというのは、マハティール氏のもとでルックイースト政策ということで日本を何かと見てきた国であります。

 そういった観点から、今回、マレーシアとの間でEPAというものが締結されたということは非常に喜ばしいことだというふうに個人的に思っておるところでありますけれども、ここで、日本・マレーシア間のEPAについて、いろいろな意味での意義について多面的にお答えをいただければというふうに思います。

麻生国務大臣 基本的には、このマレーシアという国は、多分東南アジアの中で政治的には最も安定した国ということで、たしか、ナショナル・パナソニックが初めて海外拠点をつくって海外に進出するときには、クアラルンプールをいわゆるヘッドクオーターに置いた。その経緯は、政治的に最も安定しているからだというのが、当時、たしか松下幸之助という人の話を聞いたときに、そういう見識で大企業というのは仕事をしているんだと思って、非常に感銘を受けた記憶があります。

 そういった意味で、日本とマレーシアという国の間で、物品に限らず、いわゆるサービスとか投資とかいうものを自由化するというのは、これはFTAとは異なりまして、いわゆる知的財産、よく話題になります知的財産とか、仕事をするビジネス環境の整備とか、よく言われます大企業はともかく中小企業はどうだという話等々、こういったEPAができ上がることによりまして双方の経済活動を強化するという意味において、私どもとしては、これは非常にいいことだと正直思っております。

 特に、マレーシアというのは、今ASEANプラス3だ、APECだ、いろいろなところで、クアラルンプールというところは、ちょうど地理的にもまた政治的にも安定していることもあって、中核という感じが私どももありますし、いろいろな意味で、この国と経済連携が強化されるということは、日本にとりましても非常に大きなメリットがあると思っております。

 いずれにしても、今、東アジア共同体等々いろいろな意味で活動範囲を広めておりますし、その中にあってマレーシアはちょうどそこの中核にも位置するところでもありますので、将来の東アジア共同体の繁栄という意味を考えましても、今回の日本・マレーシアのEPAの協定というものは極めて有意義なものだと思っております。

鈴木(馨)委員 どうもありがとうございます。

 日本とマレーシア、非常に重要な国同士でありまして、しっかりとその二国間関係を今後とも深めていければというふうに思っております。

 日本という国の今までの戦後のあり方を考えますと、国とのかかわりとして非常に大きなツールとしてあるのが、恐らく経済的な連携であるとか結びつきであるというふうには考えておるところでありますけれども、特に東南アジア諸国との関係ですと、これまでは、どちらかというとODAというか、そういう援助対象国としてのあり方というのもあったのかなというふうに思っております。

 ただ、今回EPAを締結してということで、今後は、ビジネスパートナーとしての意味合いというのもしっかりと出てくるのかなと。そういった意味で、今回のEPAというのは、画期的というと変ですけれども、一つの分水嶺になり得る非常にエポックメーキングなことなのかなというふうに思っております。

 ただ、さはさりながら、これまでの政策の継続もありますし、中進国になりつつあるとはいっても、やはりまだまだ、ノウハウを提供したりとか、いろいろな提供も含めて協力をしていくべきであるというふうには思っておるんです。

 そこで、援助と今回のEPAのような形のものとの連携というか、そういうものを効果的に、相乗的に使っていく必要というのは非常に高いのかなというふうには思っております。

 そういった観点から、今後のマレーシアという国と日本とのつき合い方というかそういうところで、これまで、ODAということでありますと、ODA大綱の下に国別援助計画というものがありまして、それに基づいてODAをやってきたわけでありますけれども、今後、そういうフェーズが変わったということで、対マレーシアのODAのあり方、そういったものが何らか変わってくることがあり得るのか、もしくはそういったことをお考えなのかということを伺えればと思います。

塩崎副大臣 マレーシアにつきましては、今大臣からお話がございましたとおり、順調に経済発展を続けて、今、一人当たりのGDPが大体四千ドルを超えているという水準に来ている国でございます。

 したがいまして、いわゆる無償というのは卒業しているというのが原則で、文化無償とか草の根人間安全保障、こういったものは別ですけれども、基本的には無償資金協力は卒業しているという国でありますので、現在は円借款と技術協力を中心にやっていて、その根本的な考え方は、今御指摘の国別援助計画の中で、経済の競争力強化のための支援、そして将来のマレーシアを担う人材育成、この二つを柱に援助をしているわけであります。

 今回、EPAが成立をいたしますと、協力に関する小委員会などができまして、経済連携の強化に資するODAを含めた両国の協力のあり方について幅広くこれから議論が行われるということに相なるわけでございます。

 したがって、今お話がございましたように、経済連携強化に資するようなODAというのは一体どういうものなのかということでありますが、基本的には、今の二本柱の、経済競争力強化のための支援とそれから人材育成、この柱でいくと思いますけれども、当然、経済連携協定ができることによって、さらに、言ってみれば国別援助計画の高度化というか、そういうような形で検討を続けていくということであろうと思いますが、いずれにしても、お互いの対話の中で決めていくということだと思います。

    〔土屋(品)委員長代理退席、委員長着席〕

鈴木(馨)委員 どうもありがとうございます。

 やはり、マレーシアのような中進国の形になってきますと、今おっしゃっていたように、人のつながりだとか人材育成に加えて、今ちょうどチェンマイ・イニシアチブだとか、あとアジアの共通債券市場とか、そういった取り組みも行われているわけでありまして、そういう援助ではない形の、もっと間接的な保障的な支援というのもどんどんと役割が増していくのかなというふうに思っております。

 次に、もうちょっと視野を広げまして、対マレーシアということではなくて、今後のEPA、FTAの展開、戦略について話を移したいというふうに思います。

 私、思いますに、FTA、EPAというのは、単にFTA、EPAではない。こう言うと非常にわかりにくいんですけれども、恐らくそのものというのは外交上の一つの手段でありまして、それだけが目的になってはいけないというふうに思います。そういった中で、FTAというものを外交戦略上いかに使っていくかという意味で、戦略性とスピードというものが恐らく今後非常に大事になっていくのではないかというふうに思っております。

 その点で一つ気になるのは、やはり近隣諸国、例えば中国だとか韓国だとか、そういうところのFTAの交渉のスピードとかいろいろ見ていますと、首脳間での合意から署名に至るまで、そのプロセスというのが日本と比べてややスピーディーなのかな、それで多少そのスピードに押されてしまっている面もあるのかなというような印象を受けてはいるんです。

 まず、事実関係の確認といたしまして、マレーシア単体ではないですけれども、ASEANとの関係で、例えば中国だとか韓国の交渉スピードが、例えば署名の日だとか、そういったことがどのぐらいかかっているかというところで事実関係を確認したいと思います。

梅田政府参考人 お答えいたします。

 中国を例に御説明させていただきたいと思いますけれども、中国は、ASEANとチリとの間で既にFTAを締結しております。

 ASEANとの関係で申し上げますと、二〇〇一年の十一月の首脳会談でFTAを結ぼうという合意がございました。それを受けまして、二〇〇二年の五月から交渉を開始し、同年の十一月に中国・ASEAN包括的経済協力枠組み協定というものを作成いたしました。

 その枠組み協定の中では、物品貿易、サービス、投資それから紛争解決などについて、個別協定を締結する方式をとることについて合意いたしました。その合意に基づきまして、二〇〇四年の十一月に、物品貿易の自由化を定める協定が署名されました。それで、昨年の七月から、まさしく関税の引き下げが始まっております。

 ただ、サービス、投資分野につきましては、引き続き交渉中であるということで、実際に首脳間の合意があってから、今御説明したとおり、相当期間を要しているのも事実でございます。

 それから、チリにつきましては、二〇〇三年の十二月に中国側が提案をし、二〇〇四年の十一月に胡錦濤主席がチリを訪問された際に交渉開始が合意されまして、二〇〇五年の十一月に署名に至っております。このケースにつきましても、やはり合意があってから二年近くを要しておるということでございます。

 それ以外に、今中国は、豪州、ニュージーランド、湾岸等々、交渉しておりますけれども、例えば豪州との間では二〇〇三年に、先ほど申し上げました枠組み合意でございます、ああいうものも署名し、共同研究を経て、ようやく二〇〇五年の五月から交渉を開始して現在も続いておるというようなことで、ニュージーランド、湾岸協力理事会との関係においても、いわゆる交渉を合意してから枠組み文書を署名し、それから共同研究を経て交渉をしておるというような状況でございます。

 以上でございます。

鈴木(馨)委員 ありがとうございます。

 今のお話を伺っていまして、中国においてもそれなりに時間はかかっているということではありますけれども、そうはいっても、やはり日本の、今回マレーシアに限らないんですけれども、例えばフィリピンだとかいろいろありますけれども、そういうところでスピードを見ていますと、どうも多少、ややスピード感というところでおくれをとっているのかなというイメージは持ってしまうわけであります。

 そういった差が、日本のスピードと、一つの国を言うのはいけませんけれども、例えば中国との差が何で出てくるのか、そういったところについて、もし何らかの御見解があれば、大臣に伺いたいと思います。

麻生国務大臣 これは鈴木先生、基本的には、中国の場合はFTAなんです。日本の場合は基本的にはEPA、ここが一番大きな違いで、多分時間がかかる。いわゆる人の話とか、物に限らず、人とかサービスとか金融とか、全部くっついてきますので、私どもとしては、EPAでいこうと思いますので、そこのところが非常に大きな差だと思います。

 ただ、私どもも、これをやっておりまして、この間、チリをやらせていただきましたけれども、両国で署名といいますと、資料で、日本語でこれぐらい、英語でこれぐらい、スペイン語でこれぐらい、大体、大統領と総理大臣の間に一メーター近くの書類がずらっと積まれているというようなことになります。

 これは、現実問題としてそういうことになりますので、これをやるための手間がとてもたまらぬので、この際、同じようなものだったら、これがおれたちのひな形、そっちは検討、こっちは世界じゅうとやらないかぬから、そっちはちょっとといって、ごそっとそれを向こうに渡して、ここで違うところだけそっちで調べてこっちへ出せということをやろうと思っております。

 今、チリじゃなくてメキシコ、ごめんなさい、メキシコの大統領と小泉総理の間でやらせていただいたんです。

 そういった意味で、言葉が違うからこうなることはありますが、それにかかりますうちの職員は、もうえらい勢いで能力と労力をとられることになりますので、ちょっとひな形をつくってこれでやろうというのが一つ、スピードを上げるために。

 もう一つは、EPAに行かなくてFTAだけでやろうというと、少しまた時間がかかりますので、そういった相手国によって変えよう。

 もう一点は、フィージビリティースタディーみたいなものをいっぱいやるんですが、例えば今、湾岸諸国、いろいろいいお話が来ていますので、あそこと農業なんて余り考えられませんから、そういったフィージビリティースタディーなしで最初から実交渉に入れるのではないかというようなことを、段階を考えて、相手国を考えて、スピードを上げるための手段としていろいろなことを考えられるとは思っております。

 いずれにしても、そういったものが両国にとっていい結果を生まないと意味がありませんので、そこらのところをやって、私ども、柔軟に対応していきたいと思っております。

鈴木(馨)委員 どうもありがとうございます。

 今後の取り組みというところで伺いまして、非常に心強く感じた次第であります。最初におっしゃっていたEPAとFTAの違い、これは恐らく深さだとか精度、幅広さの違いというところはあると思うんですけれども、私、かねがね思いますのは、EPAだとかFTAの意味合いというのは、その内容だけではないと思うんですね。

 と申しますのは、EPA、FTAを結んだ、そういったニュースというのは、当然、現地の新聞にも出るわけであります。そういったヘッドライン効果、すなわちどういうことを言っているかというと、例えばある国の大きな会社の社長さんがそういう新聞を見て、おう、日本はどうもうちの国としっかりやろうとしているんだ、それで、それはこっちもちゃんとやらなきゃいけないな、積極的に経済連携していかなきゃいけない、そういったようなムードを醸成していくという意味も恐らくあるんじゃないかなと思うわけであります。

 というのは、日本の、私ももともと官僚の出身でありまして、官僚の仕事というのは重々承知しておるわけでありますけれども、恐らく、どうも非常に精度は高いんです。よくおっしゃっているガッチャマンという話もありますけれども、高い資料をしっかり相当詰めてつくられているというふうには思うんですけれども、一つそれで逃しているものもあるんじゃないか。

 よく言うのが、日本の役所仕事は詰めて詰めて非常に精度が高いものをつくっているんだけれども、つくり上げたときにはもう既に時代が変わってしまっていて、意味がなくなってしまっている。そういうことが本当に起こっている状況も、もしかしたらあるのじゃないかと思いますので、そこは本体のスピードをもっと意識していっていただければというふうに思います。

 昨日もちょっと投資関係の人とお話をしていたんですが、例えば中東の方のオイルマネーがありますけれども、今、ちょうど中東のマーケットへ割り振ったお金がじゃぶじゃぶになっている状況で、新しい投資先を求めるときに、彼らがまず最初にふと次の市場としてアジアで思いつくのは、日本じゃなくて中国なんですね。ですから、そういったところで、彼らの、彼らというといけないですが、中国の積極果敢な外交攻勢というところを多少やはり意識して、そこは、精度を落としてはいけませんけれども、先ほどおっしゃっていたようなEPAではなくてFTAである部分はやるとか、そういった取り組みというのは非常に重要なのではないかというふうに思っております。

 また同時に、今インドというのが非常に台頭してきております。これは、対ASEANのことで申し上げますけれども、今までもASEAN諸国と日本との関係といいますと、彼らとしては中国がどんどん進出してきて、これはちょっとやっていられないな、一カ国だけの独占はよくないな。それでバランサーとして、カウンターパートとして日本というのが求められている、そういった面も恐らくあったのではないかと思いますけれども、最近は、インドはこの地域に非常にコミットしてきているわけであります。例えば、昨年の津波にしても、最初に救援隊を送ったのは日本とインド、あの地域に同時に、即座に着いているわけですね。また、インドとASEANの間で、FTAというのもまた取り組みは検討されております。

 そういう状況ですと、ASEAN諸国の立場に立ってみますと、中国のこれまで欲しかったカウンターバランスというか、カウンターパートというのが、必ずしも日本じゃなくてもよくなってくる状況、インドでいいじゃないか、インドと中国で競わせればいいんじゃないかというようなことになってきてしまうかもしれないんですね。そうすると、確かに産業構造は違いますけれども、彼らにとっての日本の価値というのが相対的にどんどん下がっていってしまうのではないかというふうな懸念も一つ持っているところでありまして、そこで、先ほどからスピードをぜひということで申し上げている次第であります。

 麻生大臣も、あちらこちらで、そういうスピードということで非常に力強いことをおっしゃっておられますので、そこは本当に我が意を強くしている部分もあるところでありますけれども、今申し上げたようなそういった面が実際あるのかどうか、そういったところについて、ざっとの御見解を伺えればというふうに思います。

麻生国務大臣 アジア情勢が急激に変化していっているんだと思っております。その中の一つに、やはりインド、中国という二つの国というのは無視できないところだと思います。片方が十三億、片方が十一億という人口ですから、簡単に一、二割が中産階級化したとか言われたって、あなた、二億ですからね。それは、二億人が中産階級化するということは日本一国を上回るということになりますので、私どもから見ますと、これは大きな意味で変化が急激に起きておるんですけれども、少なくともそれらの国々はODAの対象ではなくて、EPAやFTAの対象国というような形になっていくというのは歓迎すべきことなんであって、私どもとしては、いろいろな意味で、インド、中国というような国の台頭というのは喜ぶべきことだと思っております。

 今、インド、この間の東アジア共同体の中で、昨年十二月にサインをして、インド、オーストラリア、ニュージーランド、プラスASEANプラス3ということになった形で、今新しく発足をしたこの中にあって、やはり共通の民主主義とか法治主義とか、また民主主義、自由主義経済等々、いろいろなものを、共通の価値観も出ていて、世界最大の民主主義国家というインドの存在というのは、私はもっと重要視されてしかるべきだと思っております。

 加えて、今ITの発達がすさまじいことになってきておりますので、日本としては、御存じのように、ハードの方は強いけれども、ソフトの方はいまいちというところがよく言われるところで、私どもとしてはソフトの部分を、向こうはハードが弱いというのであれば、両方補い合えるというところとしてはインドというのは非常に大きいと思っております。去年の夏にも行きましたし、ことしの初めにもインドへ行きましたけれども、いろいろな形でこの国との閣僚級の会議というのを正式にスタートさせていただいて、今ここまで来ておるというところだと思っております。

 いずれにしても、日本とASEANというものの関係は今後とも大事にしていくべきものだと思います。その中には、プラス・インド等々の関係というのは、これまでのASEANプラス3にほかに新しい国が入ってきた状況の中で、インド、オーストラリア、ニュージーランドという中で、人口面からいきますとインドでしょうし、資源面からいったら多分オーストラリアなんという国にもなるんだと思います。

 いずれにしても、地域の大きな要素として、私どもとしては、非常にインドという国の台頭というものは歓迎すべきものなんだと思っておりますので、両国間の関係、極めて親日的な国家でもありますし、日印関係というのはさらに幅なり奥行きなりを広げていく、いってしかるべき国だと思っております。

鈴木(馨)委員 ありがとうございます。

 先ほどから、私、申し上げているように、東アジア地域に日本がいるのは事実でありまして、これは多分動かせない事実なんであります。ハワイがたしか一年に二センチずつ近づいてきているみたいな話がありますけれども、逆に日本というのはそこに固定しているわけでして、どうしても、今後とも、中国との関係というのは意識していかなきゃいけないというふうに思っています。

 それで、多少気になるのは、中国が対東南アジアだとか対中央アジア、そういったところに割と積極的に関係を強化していこうというふうに試みている節がありまして、それがまさに今回のASEANとのFTAであったり、もう一つは一九九六年から設立されました上海ファイブ、もともとの上海ファイブですね、それが今上海協力機構という形になっているんですけれども、そういった形で、自分の裏の方についても積極的にアプローチをしている。最近カザフスタンなんかは、ガスの会社を中国の国営企業が買収したりだとか、そういうふうな形で、積極的にどんどん進出している状況があるわけであります。

 日本、ここに東アジア一国だけであるんだったらいいんですけれども、中国との対抗関係というのはどうしてもあるわけでありまして、そこは地域の大国として二つあるということを常に念頭に置いておかなくてはいけないというふうに思っております。

 そういった意味で、中国はそういう東南アジアだとか中央アジアというものを、もしくは湾岸諸国、そういったところを非常に念頭に置いて積極的な外交をしている中で、日本として、今後の対アジア外交、その戦略をどうやって立てていくのか。さらには、その中で、例えば、FTAというのをどういうふうに活用していくのか、もしくは対話というのをどういう形で担保していくのか、そういったことを大まかな戦略的な観点から伺えればというふうに思います。

 具体的に言いますと、日本として今後、例えば、先ほどインドの話がありましたけれども、GCC諸国だとか、中央アジア、コーカサス、そういったところに対してどういったアプローチをしていって、どういう戦略を立てていって、FTAというのをその中でどういう形で活用していくお考えなのか、そういった哲学というか、方向性を伺えればというふうに思います。

麻生国務大臣 幾つか質問されましたので、まず最初に、ASEANとの会議に関しましては、二〇〇五年四月にいわゆるASEANとの間の交渉を開始して、二年以内にまとめるということを昨年末の日本・ASEAN会議で決めておりますので、スピード感を持って取り組んでまいりたいと思っております。

 また、その他FTA、EPAのことにつきましても、その他の地域との関係につきましても、一昨年十二月に決めた基本方針がありますので、それに沿って前向きに取り組んでまいります。

 また、今、基本的には資源の安定輸入というところを考えないとなかなかいかぬところなので、私どもはそういった意味から、交渉するときの相手を選ぶときの優先順位はどうやってつけているんだとよく聞かれますけれども、資源の安定輸入という面と、やはり人道とか民主主義とか、そういった点を考えていかないといかぬところで、ちょっとこっちの都合だけでやるわけにいかぬところだと思っております。

 それから、そういった意味では、インドというのは市場としてはこれから、日本人がこのところまで余り目にかけてきていなかったところだと思いますけれども、昨年の八月に日印の閣僚級会議をさせていただいたのを最初にして、今いろいろな形で、日印共同研究会というのができて、これにつきましても、EPAについても積極的にやろうじゃないかということでスタートをさせていただいております。

 それから、資源でいえば湾岸諸国、いわゆるGCCというところがございますけれども、ここもエネルギーの安全保障の観点から極めて重要なパートナーということで、これもスタートをさせていただきます。

 最後に言われましたアジア、コーカサスの点につきましては、これはまさにエネルギーの生産地域としても、カザフスタンに限らず、いろいろ重要なところでもあります。今これらの地域はWTOには未加盟という点もありますので、そこらのところはちょっと簡単にはいかないところなんだと思いますけれども、我が国の投資関係としてはまだまだ希薄なところだと思っておりますが、いずれにいたしましても、経済関係強化の方向につきましては、私どもとしては、幅広く検討されるべきということで指示をいたしております。

鈴木(馨)委員 時間も参りましたので、一言申し述べさせていただいて終わりたいと思います。

 今回のEPA、FTAでございますけれども、やはり、先ほどから私が申し上げておりますように、これはEPA、FTA単体ではなくて、恐らく日本として今後、いろいろ動いている状況がある中で、外交戦略を立てていく中で、どうそれをうまく使っていくか、戦略のストーリーの中の一つとしてEPAというのをどう活用していくかという視点が非常に大事なんだと思います。

 ですから、個々、切り離して考えるのではなくて、全体のストーリーとしてしっかり、日本の将来、二十年後、三十年後、日本がベストな状況になるような形の戦略の中で今後考えていっていただきたいというふうに思っております。

 以上で質問を終わらせていただきます。

原田委員長 これにて両件に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

原田委員長 これより両件に対する討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、これを許します。篠原孝君。

篠原委員 私は、民主党・無所属クラブを代表し、いわゆる日本・マレーシア経済連携協定及びマルチチップ集積回路無税待遇協定について、賛成の立場から討論を行います。

 今般、マレーシアとの経済連携協定を結ぶに当たり、林産品の合板については、協定全体の見直しの際に、再協議することになりました。我が国の合板は、大幅な輸入超過となっており、その大半はマレーシアとインドネシアです。今後の交渉に当たっては、循環社会に向けて国産材の有効利用を図る観点からも外材の大量輸入については見直していく必要があります。

 また、マルチチップ集積回路無税待遇協定については、世界の半導体市場の約二割を占める中国に対しても、本協定への参加を働きかける必要があります。

 民主党は、アジア地域における相互協力と信頼醸成を進め、アジア各国・地域とのFTA、EPA締結を積極的に推進すべきだと考えています。今回、マレーシアとの間で経済上の連携を図る本協定は、二国間関係をより強固にするとともに、アジア地域との連携強化への大きな推進力となり、東アジア共同体実現への布石にもなることから、有意義であると考えます。

 しかしながら、自由貿易はやはり強者の論理であり、行き過ぎには注意を要します。我が国における食の安全、安定供給への配慮が必要です。民主党は現在、食料の国内生産及び安全性の確保等のための農政等の改革に関する基本法案を提案しており、一兆円の直接支払いにより、食料自給率を十年間で五〇%、将来は六〇%にすることとしています。食料の安全保障は、国内生産と輸入と備蓄がうまくかみ合ってこそ確保されるものであり、FTA、EPAの推進に当たっては、耕作放棄地やそのおそれのある農地保全に対しても思いをはせるべきだと考えます。

 また、地球環境時代を迎えた今、CO2の排出を抑え、なるべく環境に優しい生き方をするためには、物の輸送をなるべく少なくすべしという考え方もあり、食料の世界ではフードマイレージの削減が叫ばれております。輸入障壁は取り除くべきですが、将来に向かってそれぞれの国がそれぞれの国民に必要なものをつくるという考え方こそ理想とすべきではないでしょうか。

 また、各国でFTA、EPA締結が加速化する中、WTOにおける自由化交渉は、先が見えない状況に陥っています。先般ロンドンで行われた主要六カ国閣僚会議でも、合意へ至る道筋すら立たないのが現状です。とかく先進国と途上国が対立するWTO交渉においては、我が国こそが、合意に向け、積極的にリーダーシップを果たすよう努力すべきです。

 中国や韓国といった周辺諸国に比べて、我が国の経済連携は遅々として進まないように見受けられている面もあり、また、WTOへの取り組みの意義、位置づけも、FTA、EPA戦略の中で、不明確になりつつあるように思います。今後、政府においては、諸問題へのより一層の取り組みを強く求め、賛成討論といたします。(拍手)

原田委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

原田委員長 これより採決に入ります。

 まず、経済上の連携に関する日本国政府とマレーシア政府との間の協定の締結について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

原田委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 次に、マルチチップ集積回路に対する無税待遇の付与に関する協定の締結について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

原田委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました両件に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

原田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

原田委員長 この際、暫時休憩いたします。

    午前十時三十三分休憩

     ――――◇―――――

    午前十一時十三分開議

原田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 国際情勢に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房参事官梅田邦夫君、北米局長河相周夫君、中東アフリカ局長吉川元偉君、経済協力局長佐藤重和君、防衛庁防衛局長大古和雄君、防衛施設庁施設部長渡部厚君、建設部長山内正和君、業務部長長岡憲宗君、財務省主計局次長鈴木正規君、環境省大臣官房審議官黒田大三郎君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

原田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

原田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。丸谷佳織君。

丸谷委員 公明党の丸谷佳織でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

 本委員会、けさほどから条約の審議が開かれまして、今の若干の時間、休憩に入りました。休憩の間、小学低学年のお子さんたちが国会見学にいらっしゃっていまして、当外務委員会の委員会室も見学をされていまして、引率をされていました担当の方が小学生の低学年の皆さんに、みんな、この委員会は海外と仲よくしようという委員会なんだよという説明をされていまして、心温まるとともに、改めて、国益という観点とまた国際協調の観点から、将来外交官になる子もいるかもしれませんし、本当に外交問題、大事に審議をしていかなければいけないなというふうに思うのと同時に、ちょっと野党の皆様の当委員会の出席率が低いということを残念に思うことをお伝えさせていただきまして、質問に入らせていただきます。

 まず、普天間基地の移設問題について若干質問をさせていただきます。

 先週の二十二日より、防衛庁長官と名護市長との会談がスタートをいたしました。政府案の辺野古崎案、そして名護市から提案をされています辺野古沖案、それぞれ主張、なかなか歩み寄ることが今できていない状況でございますけれども、今までの、中間報告に至るまでの合意、そして中間報告で出された案への地元の皆さんの反応、反発、それぞれございますけれども、現在名護市長の方から提案をされております辺野古沖案につきましては、以前、辺野古沖にこれを設置するということで環境調査ですとかしたところ、環境団体の皆さんの反対あるいは地元の皆様の反対があってなかなか着工すらできなかったという現状がございます。

 それを踏まえた上で、今回名護市より提案をされています辺野古沖案について、どのような内容と意図を持ってこの案が出てきたというふうに政府が認識をして取り組んでいらっしゃるのか、この点からお伺いをいたします。

渡部政府参考人 お答えいたします。

 三月八日の名護市議会におきまして、市当局、助役さんの方から、いわゆる基本計画のバリエーションの範囲ということで、平成十四年の基本計画を基本といたしまして、私どもが提案いたしておりますいわゆる2プラス2合意案よりも沖側、南側でございますが、平島、長島の二つの島を含まない範囲で、バリエーションの範囲で政府から提案があれば、これについては協議をしていきたい旨の答弁がなされたと承知をいたしております。

 この案につきましては、名護市の示す基本計画のバリエーションの範囲ということでございますが、私どもといたしましては、環境への影響あるいは施工上の観点から、政府案であります2プラス2合意案に比べて望ましい選択とは言いがたいというふうに考えておりましたけれども、今先生御指摘のように、先週から、防衛庁長官を筆頭にいたしまして、普天間飛行場の移設問題につきまして名護市側と精力的かつ集中的に協議を続けているところでございます。

 現状について申し上げますと、防衛庁からは、代替施設の建設場所につきまして、昨年十月の2プラス2において承認されました政府案を基本といたしまして、周辺住民の生活の安全というのが一つ、それから自然環境の保全というのが二つ、それから事業の実行可能性というのが三つでございますが、この三点につきまして留意していくという考え方を御提案しているところでございます。

 これに対しまして、名護市の方からは、辺野古、豊原、安部の地区がございますが、ここの上空の飛行ルートを回避してもらいたいという要請がされておりまして、したがいまして、こうした地区の上空を飛ばないように、すなわち沖の方にずらしてほしいというのが名護市側の考え方であるというふうに受けとめております。

丸谷委員 そもそも今回2プラス2中間報告で出てきました案というのがいわゆる辺野古崎案というふうに申し上げますけれども、この案に関しては、政府は、今答弁がありましたとおり、工期が短く短縮できるということ、そして環境面の配慮という御説明でございましたけれども、地元から出てきている辺野古沖案というのは、さはさりながら生活の安心と安全という面においてぜひ沖に出してほしいという案でございまして、やはりこの論点が重なっていないことからしますと、なかなか妥結あるいは地元の皆様に理解をしていただくというのは今難しい状況なのかというふうに感じられます。

 その中で、報道でございますけれども、小泉総理大臣は、基本的な考え方については修正する気はないとしながらも、一センチたりとも動かさないではないとして、政府側に若干の歩み寄りの余地があることを示唆されておりますけれども、今、微修正も視野に入れた最終段階の話し合いに入っているというふうに理解をしていていいのか、確認をいたします。

大古政府参考人 お答えいたします。

 防衛施設庁の方から御説明ありましたように、今この問題につきましては、名護市側と最終的な取りまとめに向けまして話し合っているところでございます。

 その具体的な内容の詳細については、ちょっとこの場で申し述べることは差し控えさせていただきたいと思いますけれども、普天間飛行場の早期移設に向け、2プラス2共同文書の考え方を基本といたしまして、先ほど申しました周辺の住民の安全、それから自然環境、実行可能性の三つの観点を重視いたしまして、名護市側とはこうした点を踏まえながら話し合いを鋭意進めているという状況でございます。

丸谷委員 きょうの報道によりますと、三十、三十一日、外務・防衛審議官級協議、ワシントンにおきまして予定をされておりましたけれども、これはあちら側の都合で延期をされ、四月の四そして五日という報道がございました。これによって結局は三月中の合意は無理ということで、この合意の時期あるいは合意の仕方についてお伺いをしたいと思います。

 合意ができるところまで三月中にするのか、あるいはパッケージとして、四月のしかるべき時期に最終合意という形で発表されるのか、この点を確認いたします。

麻生国務大臣 今、丸谷先生御指摘のありましたとおり、三十、三十一に予定しておりました分は、ローレス担当官の方がアメリカ議会に呼び出されるということになりましたものですから、向こうの方から時期を翌週にという話がありましたので、四、五、六で今予定をいたしております。三十、三十一で議論をしようとした分が四、五、六に延びた形になっておりますが、その四、五、六中に決着をつけたい、私どもも基本的にそう思っております。

 ただ、それがつくかどうかということにつきましては、私ども、三十、三十一でやりたいというのを申し上げたと同じように、四、五、六で終えたい、基本的にはそう思っておりますが、終わらなかったらどうするんだということになるんだと思います。そのときは、なるべく早い時期に、四月の次の週なりなんなり、しかるべきときに早急にこれをまとめないと、だらだらだらだらいくような話ではない、合意はこれだけやるというんじゃなくて、まず基本的に、普天間の話やら辺野古の話やらグアムの移転の話、これはみんなかなりつながっているものでもありますので、細目まで行けるかどうかはともかくとして、大筋合意を得たい、基本的にはそのように思っております。

丸谷委員 ありがとうございました。

 今回、この米軍の再編という問題に当たりまして、当然、関連して、在日米軍の再編のあり方も、当外務委員会であり、また安全保障委員会であり、沖縄北方委員会であり、それぞれ真剣に議論をしております。この米軍再編というもの自体が、冷戦構造の崩壊後、いわゆる不安定の弧にアメリカの世界戦略の中でどう対応していくのかということを踏まえての再編という一面もございます。

 まさに今、その不安定の弧におきまして、イランの核開発問題というのが非常に重要な問題に上がってきておりまして、日本政府が米軍の再編に対して適切に対処をしていく、判断をしていくということに加えまして、このイランの核開発問題に関しても同時に適切に判断をし、対処をしていくということが非常に重要な局面であると考えることから、続きまして、イランの問題について質問をさせていただきます。

 アメリカの議会の話でございますけれども、今月の十五日、下院の外交委員会の方で、イランに投資する企業への制裁発動を義務づけますイランの自由支援法案が可決をされたという報道がございました。

 この法案自体が今後どのような形で米議会で対処をされ、そして大統領が拒否権を行使するのかしないのか、これは私たちに知るすべもございませんけれども、このイランの自由支援法案が施行された場合、発動された場合と申しましょうか、イランに投資をしている日本の企業に非常に大きなダメージを与える懸念を覚えるわけでございますけれども、この日本企業に与える影響について、今の時点で、お答えいただきたいと思います。

麻生国務大臣 今御指摘がありましたように、去る三月の十五日の日に、アメリカの下院の国際関係委員会においてイラン自由支援法の法案を可決したと承知をいたしております。

 御存じのように、この法案は、今までありましたイラン・リビア制裁法というものを改正して制裁の適用対象を拡大しているという法律なんですが、イラン関連の制裁を強化するというのが基本的な内容ということに承知しております。この法案によりまして、日本企業に限りませんけれども、外国企業は活動に影響を受けるというのは極めて高いと思いますので、これは、WTO、世界貿易機構の協定との整合性の上から見て問題が生じるんじゃないかという可能性があると思っておりますので、日本としては受け入れることはできないというように考えております。

 したがいまして、どういう形でこの改正法案が最終的に、本会議なり大統領のビートー、拒否権等々いろいろな問題があろうと思いますけれども、いずれにいたしましても、引き続き審議中の段階ですので、日本としては今後審議を注意深く見守っていきたいと思っておりますが、基本的に影響を受けるということになろうと思いますので、アメリカ一国だけのこの法案に同調するという立場にはございません。

丸谷委員 ありがとうございました。

 今大臣の方から、イラン自由支援法案に対しては、日本企業が受ける影響について懸念を示していただきました。

 実際にこれが、大臣が御説明をしていただきました、九六年に制定をされたイラン・リビア制裁法によって既に、制裁をしようと思えば、日本がイランに既に投資をしている企業に対して制裁が行われていてもいいわけですけれども、今までは制裁というものはなかったというふうに承知をしております。こういった日本側の懸念というものが米側にも理解をされているのかなと思いながら、では、次の段階も同じように楽観視をして、例えば制定をされても、日本の企業が制裁を受けないという保証は何もございません。

 一つ大きな懸念というのは、アザデガン油田の開発。これは、日の丸油田とも言われるほど、もう日本が悲願としてきた油田の開発でございますけれども、この継続が可能になっていくのかどうかも、アメリカ議会で今審議をしていますイランの自由支援法の成立そして施行いかんにかかってくると言ってもよろしいかと思います。

 先月の段階では、二階経済産業大臣の方からは、開発を継続していきたいとの決意が表明をされておりますけれども、エネルギー、安全保障問題も含めた外交政策全般から、現時点で、外務大臣として、アザデガン油田をどうしていくべきだというふうにお考えになっているのか、この点についてお伺いをいたします。

塩崎副大臣 ただいま米国の動きにつきましては大臣から答弁申し上げたとおりでございますけれども、今のアザデガンの油田でございますが、御案内のように、イラン南部の大規模油田ということで、日本としては、大変重要な油田、エネルギー安定確保の面から、大事なプロジェクトだというふうに認識しております。

 一方で、我が国の外交の柱の一つであります核に対する政策、NPT体制堅持等々、核問題に関する我が国政府の姿勢というものも揺るぎないものがあって、ですから、このアザデガンについては、エネルギーの安定確保という観点からはやはり粛々とプロジェクトを進めていくべくやる。一方で、核問題に対する我が国の姿勢については、変わらず、これまでの姿勢を通していくということだと思っております。

丸谷委員 前回の委員会でもこのイランの問題について質問させていただきまして、そのときにちょうど塩崎副大臣の方から御答弁をいただきました。

 日本とイランの距離感、当然、アメリカとイランの距離感とは違いますので、日本として、モッタキ外相を日本に呼んで外務大臣が会談をしていただくなど、非常に大きな努力を払っていただいているけれども、だけれども、この間の会談においては、残念ながら、成果というのはなかなか申し上げることが難しいといった御答弁もありました。

 しかしながら、副大臣の方の御答弁は、同時に、IAEAの議長国でもありますので、そういった点でも日本の影響力の行使に努めていくといった御答弁もありました。本当にそのように頑張っていただきたいと思うんですね。しかしながら、日本の走り回る姿がこのイランの問題に関してはまだなかなか見えていないというのが私の感想でございます。

 今、実際には、イランの核開発問題は国連の安保理に付託をされ、また、イランを悪魔というような位置づけをしている米国でさえイラクの問題についてイランと対話を始めようとしていますし、また、中国、ロシアがイランの問題にかかわる度合いの深さはまた日本のそれとは全く違う。日本がどうしようとしているのか、イラン問題解決のために何をしようとしているのか、これがなかなか見えてこないというのが実感でございます。ぜひ、安保理の枠外での二国間協議また多国間協議という場で日本の外務大臣の活躍を強く強く期待するところでございます。

 麻生外務大臣、このイランの核開発問題の解決に向けまして、イランに行ってイランを説得していただくなり、あるいは、多国間の場で日本麻生外交の顔をぜひ強く打ち出していただきたいというふうに思いますけれども、イラン訪問あるいは特使をイランに送るなど、そういったお考えはおありでしょうか。お伺いいたします。

麻生国務大臣 これは、丸谷先生御存じのように、日本の場合は、イランとの関係は、アメリカ・イランというような関係と違って、アメリカ・イランはほとんど今接点がゼロになっていると思いますが、日本の場合は幸いにして接点を維持し続けた。

 町村外務大臣のときにもそうでしたけれども、私になりましてから、電話でしたのと、それから、本人を呼んで、こちらに来てもらって三時間ぐらいやりましたか、その後二人きりでまたやりましたり、その後総理にも会ってもらって、こっちは六十年前孤立した経験が一回あって痛い目に遭っておるから、同じようなことになったら、結論が日本と同じようなことになり得る、このままいくと、世界で孤立することになるのはいかがなものかというので、友人としては非常に心配をしているというような話もして、かなり話をし、その後の話は、ロシアともこの話をやっておりますので、ロシアの外務大臣等々とも話をして、いろいろ私どもとしてはやらせていただいているところなんです。

 少なくとも、国連のIAEAから国連の理事会に上がりましたので、そうすると、私どもも理事国として、安保理の理事国で議長でもありますので、そこの場で、今いろいろな形で交渉、説得、いろいろしているというところなんです。

 私どもが見た感じでは、外務大臣じゃなくて、あそこは大統領という方がなかなか難しいのかなという感じがして、外務大臣レベルで話がついたところが、その先のところがなかなか進まないような感じがしないでもありません。

 いずれにしても、行くだけでは意味がありませんので、きちんとした結果を出していくためにどういうのが一番いいのか、ちょっと今のところまだ結論が出ていないところですが、少なくとも、国連の安全保障理事会の経緯というのをもう少し見た上で、もう少しほかの手口を考えるなり、結論を考えたいと思っております。

丸谷委員 ありがとうございます。

 以前、ある有識者の方とお話をしておりまして、イラクの問題のときに米英によるイラクの攻撃に対しまして日本のとった行動というのは正しかったけれども、あえて言うならば、そこに至るまでに、例えばイラクに行ってフセインを説得するとか、もっと日本としての外交パフォーマンスというものがあった方が日本にとってはよかったのではないかといったお考えを持っている方もいらっしゃったりします。

 確かに、日本は、結果を出して、本当にまじめにまじめに結果を追求していくというところが非常に誇れるところでもあり、その面、外で大立ち回りをしない部分もございますけれども、本当に、努力をしているという姿を各国の方あるいは日本国内で理解していただくためには、外務大臣あるいは特使という形で、どのレベルの方がいいのかも含めて、しかるべきときに日本の考え方というのをアピールできるような形でぜひ取り組んでいただきたいと思いますし、また、麻生外務大臣は次期総理候補とも言われている方なので、本当にその意味では、先ほどおっしゃいましたレベルということではもう十分だというふうに考えておりますので、ぜひ頑張っていただきたいというふうに思います。

 では、時間がなくなってまいりましたので、最後に一題だけ、ちょっと地元にもかかわることなので、環境省にお伺いをさせていただきたいんです。

 先月中旬ごろから、北海道、昨年、世界遺産に指定をしていただきました知床半島の方で海鳥の死骸が今大量に打ち上げられているということが判明をいたしました。

 それで、この数、この一カ月間で約四千羽を超える海鳥が今知床の方に流れ着いています。原因自体は不明だというふうに言われているんですけれども、北海道などが行っています調査によれば、サハリン海域で、例えば大型の船舶の燃料として使われているC重油の付着による鳥の体温の低下や水死で死んだ海鳥というものが、サハリンの東の岸を南下する東サハリン海流によってこの知床に運ばれてきたという可能性があるのではないかということも言われております。

 しかしながら、日ロ両国とも船舶による油の流出事故は確認されていませんことから、カニやあるいはウニなどの密漁船が洋上で油を流出させているのではないかといったような地元の見方もございます。このままでいけば、漁業にも、あるいは世界遺産に登録されました自然環境にも大きな影響が出ることが懸念をされています。

 今の段階では、まだ北海道は雪解けを迎えておりませんので、調査自体が知床に足を踏み入れるということが非常に難しい状況でございますけれども、今の時点で、この原因、死因等について判明していることがあれば、御報告願います。

黒田政府参考人 お答えいたします。

 知床のオホーツク海沿岸において二月二十七日以降見つかりました海鳥の死骸につきまして、現在、環境省が、北海道それから斜里町などと協力いたしまして、海岸の巡視であるとか回収であるとかを行っておりまして、これまで、先ほどお話しいただきましたが、約四千羽の死骸を回収し、二十四種類の海鳥を確認しておるところでございます。

 直接の死因につきましては、専門家の調査によりまして、油付着に起因する溺死あるいは窒息、こういうふうに推測されるということでございます。

 現在漂着しておりますのは知床半島のもとの方ということでございまして、この後、雪解けを見ながら、先端部の調査あるいは回収を随時行うとともに、関係省庁あるいは関係機関と連携を密にして、ロシア側の情報も含めて情報収集に当たっていきたい、このように考えておるところでございます。

丸谷委員 ありがとうございました。

 時間が来たので終了させていただきますけれども、この問題は、油の付着によって海鳥が大量に死んでいるというところまではわかったようでございますけれども、では、その油が一体どこでどの原因によってこの海鳥に付着をし、自然を破壊するに至るのかといったところの原因追及は今後のことになると思いますので、また次回に質問をさせていただきたいと思います。

 以上で終わります。ありがとうございました。

原田委員長 次に、松原仁君。

松原委員 これは、ワシントン、二十三日ですね、共同通信で、国土交通省と東京都が計画していた超高速旅客船テクノスーパーライナー、略称TSLでありますが、小笠原航路、これは東京から父島ですね。今でも小笠原に行くのには二十時間以上かかるという、飛行場がありませんから大変に、この時代に、地球の反対側に行くのと同じぐらいの時間がかかるわけでありますが、その小笠原航路に高速船を入れたい、飛行場が自然の希少種を保つというためにつくれないならば、何としても高速船、高速旅客船を入れたいという要望もあって、小渕内閣のミレニアム計画で計画されたテクノスーパーライナー、しかし、これが就航が中止が決まった。そのことを受けて、日米両政府が合意した在日米軍再編の中間報告で、何かこの導入に関するようなことが書かれているのではないかということで質問するわけでありますが、まず、日米間における高速輸送船、HSVについての合意が載っている文書が存在するかどうかをお伺いします。

塩崎副大臣 ただいま松原議員からお話がございました、高速輸送艦、HSVについての記述がある文書があるのかどうかということでございますが、昨年十月のいわゆる2プラス2で発表されました共同文書の中に、「二国間の安全保障・防衛協力において向上すべき活動の例」として、高速輸送艦を含む海上輸送の拡大について記述をされているわけでございます。二国間協力を強化するべき分野が十幾つか書かれておりますが、その中に輸送協力というのがありまして、そこの中で、「航空輸送及び高速輸送艦(HSV)の能力によるものを含めた海上輸送を拡大し、共に実施することが含まれる。」と書いてございます。

松原委員 今の2プラス2の合意文書の中にあるのが、恐らくこの共同通信が配信した、国土交通省と東京都が計画していたテクノスーパーライナー、TSLが、小笠原航路、これが何が理由かというと重油が値上げしたとかいろいろなことを言うんですが、これは百十五億円かけてつくったTSLでありまして、百十五億円かけてつくったTSLがとにかく就航が中止になった、それがどうもここの合意文書の中で扱われているのではないかというのが共同通信の報道の中にあったわけであります。

 これについて防衛庁にお伺いしますが、このTSLはこの合意文書の中にあるHSVとして活用ができるかどうか、お伺いいたします。

大古政府参考人 お答えいたします。

 高速輸送艦の活用を含めまして、海上輸送面での具体的な協力内容については今後さらに日米間で検討していくこととしております。現時点では、防衛庁として、高速輸送艦の導入につきまして具体的にどういうものを導入するかというようなことは、検討している段階にはございません。

 そういう意味で、御指摘のテクノスーパーライナーにつきましても、高速輸送艦に転用するようなことを今具体的に検討しているわけではございません。

松原委員 既に報道で、こういった報道がワシントンで二十三日に行われている中で、この報道の信憑性にもかかわってまいりますが、このTSLがHSVとして使われる可能性が非常にあるのではないかと。結局、東京都と国土交通省が中心になって百十五億円のTSLをつくって小笠原航路の高速化を図ろうとしたけれども、諸般の理由でそれがポシャって、そしてその百十五億円の、これはスクラップになってはいけないので、これを結果として今回の日米合意の中でうまくさばこうということではないかというふうに、小笠原の島民の方も思っている方がおられる。

 しかし、そのことによって、このTSLが来るんだから飛行場計画はとりあえず少し待とうよと、どんどんどんどん先延ばしになって、小笠原島民の生活の質の向上というのがなかなか進まない状況の中で、結局、その船が別のところに転用されるとなると、小笠原の人たちとしては非常に複雑な心境であるということは、この場、外務委員会でありますが、議事録として申し上げておきたいと思います。

 続きまして、東シナ海の資源開発問題についてであります。

 三月六日、七日に五カ月ぶりに第四回の局長協議が行われました。その結果について、既に大臣がさまざまなところでコメントは出しておりますが、改めて、大臣、どのようにお考えになっておられるか、お伺いいたします。

麻生国務大臣 三月の六日、七日にいわゆる北京で行われた東シナ海に関する日中協議におきまして、内容についていろいろ取りざたされておりますけれども、共同開発の提案がなされております。交渉中のことでもありますので、内容が言えるところではないんですが、簡単に言って、我が国の立場とは相入れない提案が出されたということであって、また中国側も日本側の提案には問題があるということだろうと想像いたします。

 いずれにいたしましても、これは日中双方で相手方の提案を引き続き持ち帰って検討せなしようがないということで、次回協議において互いの考え方を示そうじゃないかということになっておりますので、引き続き、日本としては、対話を通じて、ただただいがみ合うだけではなくて、協力の海としてやっていきたいという基本的な考え方に基づいて協議を継続したいと思っております。

松原委員 私は、この中国側の提案に対して、麻生外務大臣また安倍官房長官は、その中国側の提案には乗らないという発言を既に他の場所においてなさっておられる、それをむしろ私は支持する立場の者として質問しているわけであります。

 過日、経済産業委員会において、三月十七日でありますが、私が二階経済産業大臣に対して、一月に二階さんが試掘を行わないという発言をしたというふうなことに関して、何でそんな発言をするんだと。試掘はしない、試掘をするような勇ましい人もいるようだがということで二階さんは言っているわけでありますが、それは国益に反するのではないかというふうに私は言ったわけであります。

 このときに二階さんが言った言葉は、要するに、この試掘するということは刺激的な言葉だ、日中がこういったものに対して共同のテーブルにのろうとしているときに、あえて刺激的な言葉を取り下げるということが、こういった日中が共通のテーブルに着くための条件づくりだ、こう言ったわけでありますが、私は、これはいささか行き過ぎではないか。帝国石油が試掘権を持っているわけでありますが、その帝国石油は、計画は経済産業省の九州の管区の某所に出す、しかしその前に経済産業省に御相談をする。御相談をする経済産業大臣が、試掘はやらない、今はやらない、こう言ったら、どうやって帝国石油が試掘をしますなんて言えるだろうか。私は、それを二階さんに激しく言ったわけであります。

 私は、少なくとも、中国を交渉のテーブルに出すために試掘はしませんと言うのは卑屈ではないかと思うわけでありますが、麻生大臣の御所感をお伺いしたい。

麻生国務大臣 ちょっとその場におりませんし、この種の話を伺った範囲というのは、新聞等々の報道によっているところが多いので、この発言自体についてのコメントは差し控えさせていただきますけれども、少なくとも、二階産業大臣としては、日中協議再開のために払われた努力というものに関しては敬意を表しているところです。

 東シナ海の資源開発の問題に関しては、いつでしたか、二〇〇四年の十一月だったと思いますけれども、日中間で東シナ海を協力の海にすべきなんだということでたしか話がスタートしたんだと思いますので、少なくとも、対話を通じて日本の主権というものを確保していくというのは当然のことなのであって、共同開発の可能性も含めて、間違いなく領土としての立場もありましょうし、向こうは向こうとしていろいろ言い分もあろうかとは思います。私どもとしては、いろいろな形で今後とも協議を継続していく以外に方法がありませんので、どうするこうするというような立場で今のこの段階でまだ言える立場にないというのが正直なところです。

松原委員 この問題は、やはり今言った二階さんの試掘は今しないというこの発言、波紋に波紋を呼んでいる発言でありまして、これは私は国益に合致するんだろうかと。これをやはり麻生大臣に、国益を重んずる麻生大臣として、できたら、ぜひともお答えいただきたいので、もう一度御答弁いただけますか。

麻生国務大臣 お答えするたびに問題を提起していますので、なかなか難しいところなんだと思いますけれども、ちょっと他の閣僚のコメントに対して、私どもとして今、どうのこうの、それはというようなことを申し上げる立場にないし、控えさせていただきたいと思います。

 少なくとも、六日と七日に行われた第四回の日中協議を開催するために日本側から何らかの譲歩を行ったのではないかというようなうわさがありますけれども、そのようなことはありません。

松原委員 それでは、二階大臣の言葉に対して麻生大臣は、やはり同じ閣内でありますから、本当はここまで言いたいことがあっても言えない、それもよくわかります。

 そこで、麻生大臣に別の角度から質問しましょう。麻生大臣は、この試掘を当面中止するべきだと思いますか。

麻生国務大臣 今この話についていろいろ議論をやっている真っ最中でありますから、なかなか、まだ六日、七日終わった段階ですので、少なくとも基本的には双方持ち帰って協議をしようということでありますので、私どもとしては今の段階で何とも申し上げませんが、今言われているように、生産活動を開始した場合にどうするかという話で、これは関係省庁とそれこそいろいろ相談をしなくちゃいかぬところだと思います。

 その場合どのような措置をとるべきかということが松原先生一番御関心なところだと思いますけれども、この種の話を今の段階で、では、こうしますという手のうちを言うことはありませんし、私どもとしては、しかるべきということしかほかに答弁のしようがないんだと思います。少なくとも、日本の領土の中ということに関しましては、その情報なりいろいろなことを私どもは求めておりますけれども、その情報は全然返ってきていないというのが今の現状であります。

松原委員 この質問は、今のは最後にしようと思ったんですが、ちょっと角度を変えた質問がその質問というふうに思われたようであります。

 しからば、私は申し上げますが、麻生大臣は、中国が試掘というよりは実際の量産態勢に入ったらば対抗措置をとるとこの間の外務委員会で御発言をしている。非常に大事な発言で、私はこれを評価しています。そうしたときに、二階大臣が試掘をしないと言うのは、日本の手のうちを明らかにするのはメリットがないとおっしゃったけれども、まさにそのとおり。手のうちの我々の選択肢を狭める発言が二階さんのこの発言ではないかと思うんですが、お答えいただきたい。

麻生国務大臣 先ほども何回も申し上げておりますように、二階経済産業大臣の発言された内容、その真意を直接伺ったこともありませんので、ちょっと二階経済産業大臣の発言に関してのコメントはこの場では差し控えさせていただきたいと存じます。

松原委員 なかなか苦しい御答弁で、本音が言えないその気持ちもわかります。しかし、これは国益にあることですから、やはり私は、麻生大臣、二階さんに対して、誤解があっちゃいけないから、どういうことだと直接これは話をしてほしいと思うんですね。

 二階さんはこういうことも言っているんです、私に対する質疑で。これに対して、中国側のこの提案に対して、共同開発に対して、麻生大臣はこれはもうけしからぬというニュアンスで言い、安倍さんもけしからぬと言い、麻生大臣が中国側が生産態勢に入った場合は日本も対抗措置をとる、こういうことを言っているということを言ったら、二階さんは、そういうばらばらの発言が敵につけ入るすきを与えるんだとかなり色をなして私をにらみながら発言をしたわけであります。

 私のところにもしあのとき麻生大臣がいたら、麻生さんをにらみながら発言したのではないかと私は憶測をするぐらいでありますが、ばらばら感があると言ってえんきょくに麻生大臣や安倍官房長官の発言を批判したと私は受け取ったわけであります。それに関して、これはどういうことなんだろうと私は思うんですが、このことに関してはどう思いますか。

麻生国務大臣 たびたび繰り返しになりますけれども、二階経済産業大臣の発言の内容についてのコメントというのは差し控えさせていただきますが、少なくとも日本政府として、いわゆる基本方針というものは、こういったものを協力の海としてやっていくというのは、これは政府部内で共有されておりますので、そういった意味では、これは各省庁と緊密な連絡をとりながら取り組んでいかなしようがないということだと思います。

 いろいろ、ちょっとその場の雰囲気はわかりませんので何ともお答えのしようもありませんけれども、私どもとしては閣内不一致というような感じではなく取り組んでいかないと、いわゆるつけ入られるすきになり得るという御心配なんだと思いますので、一致して対応していきたいと考えております。

松原委員 二階さんは既に、麻生大臣や安倍官房長官の発言に関して質問したときに、そういうばらばら感がつけ入るすきを与える、こう批判をしているわけであります。これに対してどう思うかということをお伺いしているんです。

麻生国務大臣 いずれにしても、閣内不一致と思われるような答弁というものは、それこそ交渉事ですから、交渉している相手側に有利、こちら側には不利になるということは確かだと存じます。

松原委員 この日中のガス田の問題はやはり極めて重要な課題であって、アリの一穴という言葉がありますが、こういうところで突き崩されてしまうととことん言いなりになってしまう可能性がある。私は少なくとも、試掘をしない、そういう試掘をしたいなんという元気のいい人もいるみたいな発言が経済産業大臣から出ること自体が、閣内不一致以前に国益を害する発言だと思っております。

 私は、そういった意味において、これは特に、単なる資源問題ではなくて国境の問題、そういった問題と絡んでくる。その後の産経新聞では、このことで中国側は、北と南、こう言って、南はどうも尖閣諸島あたりだという話が一部ささやかれている、このことによって尖閣が実は日中の領土問題であるということを世界に認知させるための方便として言ってきたんじゃないか、こんなことも産経新聞に載っているわけでありますから、これはやはり私は、経済産業省というよりは外務省がもっとイニシアチブをとって、私は、日中のもちろん政治家同士が交渉することは大事だと思います。しかし、交渉せんがために一方的にこちらが譲歩するということは、これはおかしい。交渉することは双方にとってのメリットであって、一方的に我々のデメリットではないし、そういう間に、こちらは刺激しないと言いながら、中国側は刺激どころの話じゃない。行けばもうガスの火は燃えているわけであります。

 こういったことに対して、やはり国民の多くは麻生大臣に毅然たる外交を望んでいるということなので、これに関する、二階さんの個別の発言に対してはしようがないです、これは閣内不一致ということになったら問題があるでしょうから、やはり麻生大臣の、日本はきちっと譲歩しないで国益を守るんだ、そのためには、試掘権は当然ある、こういう発言をあえてもう一回お願いしたいと思います。

麻生国務大臣 これは、日本としては日本の国益を考えて外交をやっていくのは当然ということだと存じます。

 試掘権につきましては、これは帝国石油が試掘権を持っておるということだと思いますので、この試掘をするしないにつきましては、これは帝国石油の採算とかいろいろなことを考えて持つのであって、一義的には帝国石油が持っているんだと存じます。

 いずれにしても、この種の話というものは、いわゆる領土問題に絡んだりいろいろな形で今話がいろいろなところで噴き出てきているところでもありますので、日中間の関係も十分考慮しつつも、日本の国益というものはきちんと腹に据えて対応していかねばならぬものだと思っております。

松原委員 次に、これは「中国のマスコミとの付き合い方」といって、井出敬二さんという方が書物を出したわけであります。この井出さんというのはどういう方でしょうか。

梅田政府参考人 お答えいたします。

 北京にございます中国大使館の公使で、広報文化を担当しております。

松原委員 彼がこの書物の中で、中国人のインタビュアーに対して答える形で、幾つかあるんですが、私がここで申し上げたいのは、この本の八十八ページですが、「中国人は、日本の全ての教科書が、日本の中国侵略を認めていないと思っているのかもしれない。これは北京の日本人学校で使っている、東京書籍出版の歴史教科書である。この教科書は、文部科学省が検定した八つの中学校歴史教科書の中で、採用率が一番高い教科書である。この教科書には、日中間の主な歴史事実がはっきり書いてある。「日本の中国侵略」、「南京大虐殺」、「盧溝橋事件」と記述されている。日本軍がアジアの国に悲劇と損害をもたらしたことが書いてある。このように実際には日本はこれらの事実を認め、そして真実の歴史を子供たちに教えている。」ということであります。

 私は、この南京大虐殺というものに対して、南京大虐殺と中国は言っているが、日本は南京事件と呼んでいるはずでありまして、南京大虐殺という中国側のこのキャッチフレーズを井出さんがこうやって使って、これが中国のマスコミとつき合う方法ということで書かれている本の中にあるというのは、私は本当に、日本の国益を代弁する外交官としての見識を疑うわけであります。

 私は、きょうも南京大虐殺のいろいろなデータを持ってきております。南京のこの大虐殺というのは、今、中国側の政府は公式にどれぐらいの人間が殺されたと言っているんでしょうか。ちょっとこれ、わかれば。

梅田政府参考人 お答えいたします。

 三十万と存じます。

松原委員 まず、これが大きなうそであります。

 私は、ここに、当時南京において宣教師がいました、西洋、ドイツ人とかアメリカ人とか。そういう西洋の宣教師たちが南京の中に安全区というのをつくりまして、そこは守る、安全区をつくる、そのことに全力を尽くしていた、そのところのデータがあります。

 後にベイツとか、この間申し上げましたティンパーリとか、かなりうそ八百を入れて日本の虐殺を捏造しておりますが、そのときに、南京で、当時の中国人を守るために命がけで活動していたこの外国の人たち、本当に率直に闘っていた人たち、国民党の意思をもって代弁していたティンパーリとかベイツではなくて、そういった人たちは、極めてここに書いてある、安全区をつくろう、日本軍が来る、一般の市民を守らなきゃいけない、安全区をつくろうと。そして、彼らはたくさんの手紙を自分の家族や自分のワイフとかに出しているんですよ。それが、今、エール大学の神学大学校の図書館に置いてある。これはもう時間がないので、私が幾つかポイントを読んでいきます。

 彼らは安全区には爆弾や砲撃をされないと保証する立場にはないが、その地域が軍用目的の支那軍に使用されない限り、日本軍は攻撃をする意思はないと考えているようだった、これがミルズからの手紙です。そこで彼が書いたのが、信仰に基づいて我々は何とか守りたいと。彼らはキリスト教徒でありますから。

 彼らはこのことによって、つまり、大虐殺があったとすれば、彼らの行動は無意味だったんですよ。でも、実際は、彼らは自分たちの行動を褒めているんです。これは、中国側の言うような大虐殺はなかったことをはしなくも証明しているんです。私は、安全区においてそういったことが成功したという彼らの文献をきちっと論証すれば、中国側のうそというかデマというか、これに対してのいわゆる偽証というものが明らかになると思うんですね。

 時間がない中で、幾つかこれを読んでいきたいと思いますが、このミルズさんの手紙。

 実際、日本軍と交渉している。安全区には爆弾を落とすなと言っている。それで、なかなか返事が遅いと書いてあるんですよ。支那軍は市政府が承認したことがはっきりわからないと主張して安全区の東南の境界線を変えるように試みてきた。中国の軍隊も、ここだと西洋人の人たちが決めた安全区の場所をずらそうとしたと。その後、この安全区において、中国の軍隊が中にいたら安全区は攻撃すると当然日本軍は言うわけですよ。だから、彼らの行動は、必死になって中国の軍隊を安全区の外に出す、こういった行動に入ってくるんです。

 そこに書いてあるのが、ここでそのとき、さまざま、ほかの極めて貴重な話もあるんですが、この辺を中心に言いますと、これはスマイスという人の手紙です。

 そのスマイスの手紙で、この唐、唐というのは中国軍の南京の司令官ですね。部下に兵隊を五台山付近から安全区の外に出すように懸命に交渉した、一昨日に安全区から撤去させよという約束は実現しなかった、こういうふうな苦労も書いてある。

 そして、今度はヴォートリンという方の手記ですね。手記というか手紙です。国際委員会のメンバーは、常に支那軍に対して大至急安全区からあらゆる軍事施設を撤去するように求めたと。そこを安全にしよう、こういうようなことをずっと彼らはやってきている。

 そして、マギー。このマギーというのはかなり日本のことを東京裁判で悪く言った人間でありますが、マギーの誤謬というのも大分論証されておりますが、そのマギーの手紙の中にも幾つかあって、例えばマギーの手紙、彼も言っているんですね。中国の兵隊が人々の家を焼いている。人々の家を焼くことは、本当に非常識な無情のことと思えます、もし一カ月も市を持ちこたえられるなら合理的かもしれませんが、今の場合には当てはまりませんとマギーも書いている。つまり、中国軍によって南京に火がつけられているということも証言されているわけであります。非常に興味深い記事がずっとある。

 そして、例えば、今度はフォースターという外国人の手紙であります。このフォースターによると、太平路という道のところで支那兵がソーダ水、フルーツジュースや他の食料品など、彼らが運ぶことができて使うのに便利と思われる品物の略奪をしているのに会ったと。余り多くの兵はそのあたりにいませんでしたが、たくさんの店がこじあけられ、規律がない模様でした。兵隊は負傷者もすべて勝手に徘回しているようでした。これはフォースターの手紙に書いてある。こういう手紙がたくさんエール大学にあったわけであります。

 さらに、これはスマイスからの手紙であります。我々は支那兵が安全区から出るまでだれの安全も与えることはできないと返事をしたと。

 ところが、マギーの手紙に、この前後で、安全区の中だから行うべきではない鼓桜の近くの公園に支那軍は大砲を据えましたと。またこういうふうなこともやっている。この辺のいわれというのは、非常にポイントとしてあるわけですね。

 そして、このスマイスの手紙の中には、タング牧師というのが一団で動いていたとき、支那の敗残兵が彼らの車を略奪しようとした、それから逃げて戻ってきた、敗走して大混乱を起こしている軍はまさに安全区を通って、興奮の極致にあった、こう書いてあるわけであります。

 さらに、これを一九三八年の二月三日のシカゴ・デーリー・ニューズのスティールという記者が言っているのは、十二月十二日午後四時半ごろ、崩壊がやってきた。これは退却する中国の兵隊が百万ドル庁舎に放火した。そこは弾薬庫として使用されていた。まるで地獄に解き放たれたがごとく、爆発と炎上が続き、群衆のパニック、混乱は一層高まったと。

 そして、このところに、例えば譚道平という中国人が書いている文章は、夜になるとパニック状態になり、ある門から脱出しようとする部隊と、これを崩れてくる兵隊とみなして武力で阻止しようとする中国軍との間で銃撃戦が繰り返され、大惨劇が起こった。

 それから、違う蒋公穀という当時の防衛軍の人間が言っているんです。すぐ左手の路地で助けを求める鋭い叫び声、許しがたい禽獣のような漢奸が機に乗じて凶暴性を発揮し、通行人を銃撃している。漢奸というのは中国の裏切り者ということですね。つまり、中国国内における物すごいそういった騒乱があったということであります。

 私は、こういうのを考えたときに、確かに戦争というのは必ず悲惨な状況がある。しかし、その中で、こういうものが起こっているということをやはり我々は認識した上で、彼らのこのうそをはっきりしていく必要があると思うんですね。

 これはスマイスの記事で、日本軍が入ってきたときの記事です。人々を傷つけることはなかったというふうに書いてある。そして、ここにおもしろい、確かに百人の先遣隊が道路の南側に腰をおろし、その反対側でたくさんの支那人の群衆が彼らを眺めていた。人と見れば切り殺したんだったら、こんな状況はないんですよ。彼らを南京にいる人間は見ていたんです。そのとき、このスマイスは、日本兵に対して地図を示し、ここは安全区だからこの地域では日本兵は鉄砲を撃ったりしないようにと指示を与えているんですね。

 これは、中国側が言っている南京大虐殺と全然状況は違っているわけであります。日本軍の司令官が言っているのは、彼らは南京を落とすとき大きな犠牲を払った、そして支那軍が民衆を撃ったとその日本軍の司令官は言っている。これも書いてある。

 そして、時間が来てしまったので多く言えませんが、安全区は理想的ではありませんが間違いなく無数の命を救いました、これはフォースターの手紙。私たちが路上で見た死体は二十五人以下です、安全区の人口は、土曜、日曜、月曜日に急増し、十万人がいますということを書いてあります。

 途中いろいろと極めて重要な記事があるんですが、それはあれしまして、もう時間がないので、最後にちょっとだけ申し上げますと、ここで、一月一日に、これはスマイスの手紙、朝早くから日本軍からもらった爆竹で大喜びの子供たちがいたと。これは、虐殺した後にこういうことがあるのだろうか。

 それで、一月二十四日のミルズの手紙、上海路と寧海路は今や南京の繁華街になっている、以前は太平路や中山路だったと。こういうふうな、虐殺があったところで、半月やそこらでそこまでなるのか。

 つまり、まさにこういう手紙によって、南京大虐殺は、中国側の三十万という数字なんて全くのうそで、そんなのどこにも書いてないんですよ。こういうことを私ははっきり言うべきだと思うんですね。

 私は申し上げたいんですが、このエール大学の文書、このことを把握していますか。

梅田政府参考人 お答えいたします。

 エール大学の神学部の図書館に約三百名の方の、今先生が言われたような資料が存在しているということは承知しております。ただ、外務省としまして、その資料は入手できておりません。

松原委員 時間がないのでこれで終わりにしますが、こういったものを中国政府が、三十万と政府が言ってきている。中国の民間人が言ってきているんだったら、民間対民間で闘えばいいんです。政府が言ってきたら、日本の政府が、我々の先人の誇りと名誉にかけて、こういった資料をきちっと証明して、おかしいじゃないかと。

 確かにそれは戦争ですからいろいろとあります。この中にもいろいろな記事がある。それは、間違って負傷兵を日本の兵隊が縛り上げた、英語のわかる日本人に対して物を言ったらそれは釈放されたとか、そういういろいろなことはありますよ。若干のならず者は存在する、どこにでも。しかし、組織立ったこんな虐殺はなかったということに対して、日本はきちっと言うべきだと私は思うんですよ。

 最後に麻生大臣にお伺いしたいのは、そういった南京大虐殺があると言った井出さん、こういう公使の発言をどう思うか。そして私は、日本の国として、やはり中国政府が三十万と言っているんだったら、冗談じゃないということを言うべきだと思うんですが、この二点、お伺いいたしたいと思います。

麻生国務大臣 今、エール大学の方は、私もちょっと正直申し上げてそれは見たことがありませんので参考にさせていただければなと、今、エール大学の話でしたので、それはそう思いました。

 御指摘の、井出という公使の方の書籍の内容というものは、中国の雑誌に掲載された井出公使に対するインタビュー記事というものを著者自身、井出自身が日本語に翻訳したというようなものだと承知しております。

 その中で、いわゆる歴史教科書の一部を一例として紹介しておりますので、私どもとしては、内閣総理大臣の談話に盛り込まれた日本の立場等々も一応書いてあることも確かで、これは東京出版というのでしょう、たしかそれは。大体、東京出版のほか、教科書会社、六つか七つかあるんだと思いましたけれども、その東京出版関係の記事というものなんだと存じます。済みません、東京書籍、ごめんなさい。

 いずれにいたしましても、この南京の話等々は、今御指摘のありましたとおりに、これはいろいろ極東軍事裁判の中でも数値が大きく分かれたところでもありますので、なかなか今の話につきましては、今後とも、南京の虐殺された人の数値につきましては、いろいろ双方で意見が違っていることは私どもよく知っているところでもありますので、この問題は、一方的に言われ続けるだけで、いつの間にかそれがどんどん固定化されるようなことは避けるべきだという御指摘はまことに正しいと思いますので、注意いたします。

松原委員 以上で終わりますが、この南京虐殺という、虐殺という事実は、そういう意図するものはなかったということも、私はこの外国人の手紙から極めて客観的にわかると思うので、勉強を外務省にはしていただいて、私は、政府として、中国に対して言うべきは言わないといけないと思います。

 以上で終わります。

原田委員長 次に、武正公一君。

武正委員 質問をさせていただきます。

 このたびの日米審議官級協議で、以下三点、お伺いをいたします。

 アメリカ側が、移転経費百億ドルかかる、こういうふうに言っておりますが、この内訳。とりわけ住宅建設ほか訓練施設建設費も含まれているのか、二点目。そして特に、百億ドルのうち七五%を日本側負担とする、その七五%なる数字の根拠の説明は米側からあったのか。

 以上三点、お伺いいたします。

麻生国務大臣 今、武正先生御指摘のありました中で、目下協議をさせていただいておるところなんですが、日本として、今言われました内容につきまして、細目、ちょっとまだ詰めてお答えできる段階には至っていないんです。

 いずれにいたしましても、七十五億ドルの根拠といっても、それは向こうの言い値であって、それは、向こうは交渉するんですから百、こっちはゼロ、だんだんだんだん言い合って、どこか落ちつくというのは、大体交渉というのはそういうものだとは思っております。向こうが七十五を出してきたのは向こうの言い値であって、根拠と言われてもさしたる根拠は、そもそもこの種の話は言い値というように理解をいたしておりますので、私どもとして、それにさしたる根拠があると思って向こうが言っていると感じているわけではございません。

武正委員 二番目の質問で、百億ドルの内訳に訓練施設の建設費も含まれているのかということをお答えいただけなかったんですが、それも詳細は答えられないということでしょうか。

麻生国務大臣 武正先生、訓練施設というものは、私どもは基本的には、今、沖縄の負担軽減を促進するためにというのが主たる理由ですから、少なくとも、おたくの軍事施設のためにというのではなくて、うちは負担の軽減が一番、そして抑止力の維持というのと、基本的に同じことをやっていただきたいんですが、そういった立場で申し上げておりますので、少なくとも住居の移転というところが最も私どもとしては納得しやすいところだと存じます。

 今言われたような、この種の訓練という内容につきましては、これは兵隊だから、訓練するといえば、その訓練の仕方も、運動場だって訓練になりましょうし、いろいろな意味で言い方はあるんだとは思いますけれども、私どもとしては、基本としては、住居等々、いわゆる生活関連施設というものを主たるものとして考えたいということは最初から向こうに申し入れております。向こうの施設が入ったかどうかは、ちょっと正直、記憶にありません。

武正委員 防衛副長官、いかがですか。百億ドル、こちらは住宅建設費を中心に外務大臣としては交渉しているけれども、百億ドル、米側の説明の中には、訓練施設のグアムへの建設費、これは含まれているということでよろしいんでしょうか。

木村副長官 今、麻生大臣からもお答えありましたが、いずれにしましても、最終取りまとめに向けましての調整、協議をしている最中でありますので、詳細の中身については、アメリカ側という相手側もありますので、内容についてはこの時点では差し控えさせていただきたいと思います。

武正委員 たしか、日米審議官級協議が延期になった理由が、ローレスが議会報告のために日程をキャンセルしたという、アメリカ側の議会に対する説明責任を果たそうとする交渉者と今の副長官の御説明は余りにも乖離が甚だしいということで、引き続いて、これは理事会でもお願いをしておりますが、外務、安保、そしてこの後財務省、お答えもいただきますが、財務金融連合審査、これをぜひとも実現させるべきである、このことを改めて委員長にお願いしたいと思います。

原田委員長 理事会で別途協議させていただきます。

武正委員 そこで、この百億ドル、一体これは、積算根拠というものは、さっき言い値だと言いましたが、そうはいっても、百億ドルはこういうことで百億ドルなんだよという話もしないで、ただ百億ドルだと言われているわけはないと思うんですが、百億ドルの積算根拠は明らかなんでしょうか。また、それは日本側が精査できるんでしょうか。

 以上二点、外務大臣、お答えいただきたいと思います。

麻生国務大臣 今の段階で、向こうの言い値等々は、いきなり百と言ってきたというわけはないだろう、まことにごもっともでございます。向こうもこれという理屈はいろいろくっつけて出してきていると思いますけれども、私どもとしては、これはだめ、これは認められないと、目下交渉の真っ最中でありますので、私どもとして細目を今お答えできるところにないということを申し上げているだけなんですが、いずれにいたしましても、引き続き協議をいたします。

 ローレスが議会に呼ばれた、内容はよく知りませんけれども、呼ばれている内容、これは前回と今回でまたさらに違ってきたりいろいろしておりますので、ちょっとなかなか確たるものが申し上げられないというのが、武正さん、正直な私どもの今の立場なんですけれども、そういった意味で、私どもとしては筋の通らぬというところではなかなか難しいということをずっと言い続けておりますので、今の段階で内容が、この内容、この内容という内容につきまして今まだ、向こうの言い値で、ああ、とてもこんなのはというのも含めて、ずらっと出てきたことは確かですけれども、私どもとしては内容につきましていまだ申し上げられるような段階にないというのが正直なところです。

武正委員 ずらっと出てきた内容について、例えば住宅建設なり、幾ら幾らかかる、そういうのがずらっと出てきているんでしょう。それについて、その額について日本側として精査できるのか、あるいは精査できる立場にあるのか、これはいかがでしょうか。

麻生国務大臣 向こうから、例えば住宅建設の内容につきましては、少なくとも、これは高いんじゃないか、一戸当たりがというと、あそこは御存じのようにすべて輸入して持ってこないと建たないところなものですから、あそこにセメント工場があるわけでもありませんし、生コンの工場があるわけでもないので、すべて持ってこないかぬというのがあそこを高くしている大きな理由だとは思いますけれども、その内容につきまして、いろいろ、私どもとしては、これは少々というようなことが言い合える立場にあるかといえば、言い合える立場にございます。

武正委員 精査できるということでありますし、交渉で精査できる立場にあるということでございます。

 では、実際、精査しているんでしょうか。

麻生国務大臣 今まだ大枠の段階でやっておりますので、一戸につき幾ら、平均で何とか、平米当たりが幾らというようなところの精査ができているわけではございません。

武正委員 きょうは財務副大臣がお見えでございますので、二点お伺いをいたしたいと思います。

 今、日米協議、報道で知るところが多いんですが、この協議に上っている百億ドルの負担、日本側の負担は七五%なのかどうなのか。いずれにせよ、予算措置で対応する場合と、給付と融資で対応する場合と、あるいは融資だけで対応する場合、それぞれ、法律、要は立法措置が必要なのかどうか。財政当局としてどのようにお考えでしょうか。個別の事情、この交渉というよりも、一般論でも構いませんので、お答えいただきたいと思います。

赤羽副大臣 あくまで一般論としてお答えさせていただきたいと思いますが、国の予算その他財政の基本に関して定めております財政法上でいいますと、海外に所在する外国政府の施設を我が国の予算で整備することを禁ずるとか、あとは、制限を加えるというような明文の規定はございません。

 ですから、御質問のような予算措置につきまして、一般論として申し上げれば、必ずしも立法措置がなければできないというわけではないということでございます。

武正委員 融資についてもそうでしょうか。

赤羽副大臣 同じでございます。

武正委員 これまで、例えば、ODAなどで海外の他国の軍事施設あるいは軍事関連施設について給付をした例はありますか。財務副大臣、いかがでしょうか。

赤羽副大臣 このことについては、お答えする立場にはないわけでございます。

武正委員 では、外務省はいかがでしょうか。

麻生国務大臣 基本的にはあり得ないと思いますので、ないと思います。

武正委員 今、財務当局としては、法律が必要ないんだというお話でございました。

 では、例えば、財務省として、予算要求が上がってきたときに、その積算根拠が明らかでないまま認めることはあるんでしょうか。これも一般論でお答えください。

赤羽副大臣 財務省として、予算編成に当たっては、何というか、つかみ金みたいなことを認めていることはございません。繰り返しになりますが、相手省庁の予算要求の内容や必要性については、さまざまな角度から検証、精査を行って、必要と認められる額だけを計上しているところでございます。

 ただ、その必要性等を判断するために用いられる資料とか根拠というのは、各省庁の要求するそれぞれの経費の性格によってさまざまなものがあるというふうに考えております。

 以上です。

武正委員 法律が必要ないという今の財務省の御答弁でありますが、今回、百億ドルの内訳、どのような形で日本側が最終的に負担するのかも含めて、海外での軍事施設に対するODAの供与もないし、もちろん、米軍の駐留軍が本国へ戻った、その経費を、施設を負担したことも世界各国どこもないわけでありますので、こうした初めてのことを、もし日本側が、給付か融資か、何らかの形でやる場合は、あくまでも説明責任を特にシビリアンコントロールも含めて果たしていくという意味では、私は、国会に対する事前の説明はもとより、やはり法律として、政府として対応すべきだというふうに考えますが、外務大臣、この点いかがでしょうか。

 それとあわせて、最後に、ちょうど日英二十一世紀委員会が過日ロンドンで開かれまして、私も参加をさせていただきました。財務副大臣が座長として参加をしておりますので、私もブレア、ストロー、首相、外相との面会も含めて同席をさせていただきましたが、今回の日英二十一世紀委員会の座長としての感想、これを副大臣からお答えいただいて、質問を終わらせていただきます。

麻生国務大臣 説明責任は当然のことだと存じますけれども、今言われました法律の話につきましては、これは他の省庁の関係もありますので、よく関係省庁と相談しつつ、整理した上で御報告申し上げます。

塩崎副大臣 今回、三月の十六から十八日にかけてロンドンで日英二十一世紀委員会が開催されまして、武正先生にも御出席をいただきました。この数年、私が座長を務めさせていただいておりますけれども、これはもともと中曽根・サッチャー時代からスタートしたもので、毎年一回開催しているものでございます。

 今回は、特にイラク等々、さまざまな面で、アフリカの問題も含めて、日英関係がいい中で議論が行われて、先生ももう御案内のように、両国の問題はもとより、特にエネルギーの問題、それから人の移動といいましょうか、他民族を受け入れてきたイギリス、人口がだんだん減ってくる日本、これらの問題を共通の課題としてどう考えるか、それから中国、インドの台頭といったことが主なテーマでございました。

 率直な議論をなされ、日英の協力のさらなる発展というものが大事だということはもとよりでありますけれども、一方で、日英の関係がいつも今のようなままでいいというわけでもないということで、次回は日英関係そのものを議題にすべきではないのかというふうにされたところでございます。

 ブレア首相それからストロー外相とさまざまな議論を短時間でありましたが行いまして、特にインド、中国の台頭の問題については、特に価値観を共有するインドとのさらなる連携をもとに日英が協力していくということを合意したというようなことだったかと思います。

 引き続き、先生の御協力をお願いしたいと思います。

武正委員 以上で終わります。ありがとうございました。

原田委員長 次に、照屋寛徳君。

照屋委員 それでは、午前に引き続いて、まず最初に、これは防衛庁来ておられますか。

 先ほどは、麻生外務大臣に、名護市が政府に提示をした、いわゆる中間報告沿岸案に対する微調整案に対して、逆に再修正案を提示したようでございますが、この三月二十七日の名護市の提示した再修正案というのは、防衛庁は検討する用意はあるんですか。それとも、全く検討に値しないという考えでしょうか。

長岡政府参考人 先生、大変恐縮でございます。今、所管の者が来ておりませんので、責任あるお答えができませんので、ちょっとお許しをいただきたいと思います。

照屋委員 あらかじめ、きのうレクもして、これを聞きますよと言ったんですが、とても答弁態度は納得できませんね。

 答えますか。

長岡政府参考人 大変申しわけございません。先生の御質問があったことはよく伝えますので、またの機会にお願いできないかと。

照屋委員 そういうことがないようにしていただきたいと思います。

 それでは、辺野古沖の調査契約解除問題について、防衛施設庁にお伺いをします。

 那覇防衛施設局が三月十六日、同局が発注した米軍普天間飛行場の名護市辺野古沖への代替施設建設関連事業で、ボーリング地質調査等の受注業者に対し契約解除をしたようでありますが、契約解除をした事業は何件で、対象会社は何社か、お答えください。

山内政府参考人 お答え申し上げます。

 去る三月十六日、那覇防衛施設局において契約を解除した先生御指摘の地質調査、いわゆるボーリング調査などにつきましては、地質調査として四件三社、海象調査として一件一社の計五件四社でございまして、その契約金額は合計で約八億四千万円となっております。

 それぞれの業務にかかわります契約金額につきましては、シュワブの地質調査その一が、受託者、これは契約の相手方でございますが、これがサンコーコンサルタント株式会社沖縄事務所で、契約額が約九千八百万円。シュワブの地質調査その二が、パシフィックコンサルタンツ株式会社沖縄支社が受託会社で、契約額が約四千八百万円。シュワブ地質調査その三が、受託会社がパシフィックコンサルタンツ株式会社沖縄支社で、契約額が約九千三百万円。シュワブ地質調査その四が、応用地質株式会社沖縄営業所を受託者としておりまして、契約額が約五億四千万円。それから最後でございますが、シュワブの海象調査が、受託者が株式会社東京久栄で、契約額が約六千二百万円となっております。

照屋委員 それぞれの契約は、あらかじめ契約期間の定めはありましたか。

山内政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど申しました五件の契約につきましては、平成十五年三月三十一日に那覇防衛施設局において契約を締結したものでございますが、これらの業務の履行期間は平成十五年四月一日から平成十六年三月三十一日となっておりました。

照屋委員 途中で契約更新の手続はなされましたか。

山内政府参考人 お答え申し上げます。

 これらの契約につきましては、平成十六年三月三十一日、それから平成十七年三月三十一日に、それぞれ履行期間を一年間延期する契約変更を行っているところでございます。

照屋委員 契約金額が八億四千万に対して、二十八億円余りの超過金額の請求を受けておるというのは事実でしょうか。

山内政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど申しましたとおり、去る三月十六日に那覇防衛施設局におきましては、地質調査等の契約を解除したところでございまして、現在この契約を解除したことに伴いまして、受託者でございます会社との間で既履行部分委託料、すなわち受託者が既に業務を完了した部分に相応する業務委託料につきまして協議を行っているところでございますので、受託者との関係もあることから、協議内容の詳細について現段階でお答えすることは差し控えさせていただきたいと思います。

照屋委員 協議内容のことは言えないと言うんだが、マスコミ報道では既に、八億四千万の契約に対して二十八億円余り請求を受けておると。二十億円も超過した、この責任は一体どうするんですか。この超過分は支払いするんですか。

山内政府参考人 お答え申し上げます。

 私どもも、本件に関しまして、さまざまな新聞報道がなされておることは承知しておりますけれども、先ほど申し上げましたとおり、現在、受託者との間で正式に既履行部分の委託料について協議を行っている段階でございますことから、先生御質問の点も含めまして、現段階で具体的にお答えすることは差し控えさせていただきたいというふうに思っております。

照屋委員 財務省お見えだと思いますが、一般論でも結構ですが、財務省が認めた契約金額を超える、しかもはるかに超えるような費用を支払った場合、支払いを決めた職員は、私は国に対する重大な背任行為の責任を問われなければならないと考えるものでありますが、財務省の御意見をお伺いします。

鈴木政府参考人 あくまでも一般論ということでございますが、予算の執行に当たりましては、会計法に手続が決まっておりますので、そうした手続の中で、予算の範囲であること等を確認した上で契約を行うということになっております。

 こうした手続を経ずに、会計関係職員、具体的には予算執行職員と呼んでおりますけれども、こうした者が国に損害を与えた場合につきましては、予算執行職員等の責任に関する法律第三条第二項で、故意または重大な過失により法令または予算等に違反して支出行為を行ったことにより国に損害を与えた場合には弁償責任が課されるというふうになっております。また、その他、一般的に民法や国家賠償法等による賠償責任ということも考え得るところでございます。

 なお、国家公務員法上の処分として、法令違反または職務上の義務違反等がございましたら懲戒処分が行えるという規定もございます。

 以上でございます。

照屋委員 それでは、今の問題は、八億四千万円が二十八億に膨れ上がるなんというのは、これはもう常識的に考えられない、余りにも異常だということ、このことをしっかり財務省も監視していただきたいと思います。

 次に、SACO最終報告に盛り込まれた北部訓練場の返還について、日米両政府は去る二月九日の合同委員会において返還条件の変更に合意をしたようでありますが、その変更内容、変更理由についてお聞かせください。

河相政府参考人 お答え申し上げます。

 北部訓練場につきましては、御指摘のとおり、SACO最終報告を踏まえまして、平成十一年四月、既に、既存の七カ所のヘリコプターの着陸帯を返還される部分から返還されずに残る部分に移設することを条件に、北部訓練場の半分を返還するということで合意をしていたわけでございます。

 このヘリコプターの着陸帯の移設に関しましては、米軍の運用の所要というのが当然ございますが、同時に北部地区の自然環境の保全というものにできる限り配慮をすることが必要であろうということから、防衛施設庁の自主的判断によりまして環境調査を実施いたしました。

 この環境調査の実施を踏まえて、新たにつくるヘリコプター着陸帯の建設はできるだけ避けるようにするということ、また造成面積をできるだけ小さくするということ、同時に米軍の運用の所要は満たさなくてはいけないということを基本方針として日米間で鋭意検討をしてきた結果、本年二月九日の日米合同委員会におきまして、七カ所のヘリコプター着陸帯を一カ所減らして六カ所にするということ、それから造成規模を直径七十五メーターから追加的な十五メーターの無障害物帯を伴う直径四十五メーター、より小さいものに変更するということで合意したところでございます。

照屋委員 私は、北部訓練場の返還に伴うヘリパッドの東村への建設には反対であります。ヘリパッドの建設は国指定天然記念物ノグチゲラの生息に重大な悪影響を及ぼすものと考えますが、環境省は国際自然保護連合総会で二回にわたって指摘をされたノグチゲラの保護をどのように図っていくのかお尋ねして、私の質問を終わります。

黒田政府参考人 お答え申し上げます。

 ノグチゲラは、天然記念物であるとともに、種の保存法に基づきまして国内希少野生動植物種に指定されておるところでございまして、その生息数は現在約五百羽ぐらいと推定されております。また、分布域等につきまして近年大きな変化はないというふうに認識しておるところでございます。

 御指摘のヘリコプター着陸帯移設事業に伴いますノグチゲラへの影響でございますが、沖縄県の条例に準じまして実施されている環境影響評価の手続の中で事業者において適切に対応されるものというふうに理解をしております。環境省としては、地元の沖縄県を初めとする関係機関と連携を図りながら、必要に応じて事業者に対して助言を行うなど、環境保全の観点から適切に対処してまいりたい、このように考えております。

照屋委員 終わります。

原田委員長 次回は、来る三十一日金曜日午前九時二十分理事会、午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時四十五分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.