衆議院

メインへスキップ



第10号 平成18年4月12日(水曜日)

会議録本文へ
平成十八年四月十二日(水曜日)

    午前九時三分開議

 出席委員

   委員長 原田 義昭君

   理事 小野寺五典君 理事 谷本 龍哉君

   理事 土屋 品子君 理事 水野 賢一君

   理事 渡辺 博道君 理事 武正 公一君

   理事 山口  壯君 理事 丸谷 佳織君

      愛知 和男君    伊藤 公介君

      伊藤信太郎君    宇野  治君

      大塚  拓君    高村 正彦君

      篠田 陽介君    新藤 義孝君

      鈴木 馨祐君    寺田  稔君

      中山 泰秀君    三ッ矢憲生君

      やまぎわ大志郎君    山内 康一君

      逢坂 誠二君    吉良 州司君

      田中眞紀子君    津村 啓介君

      松原  仁君    谷口 和史君

      赤嶺 政賢君    笠井  亮君

      照屋 寛徳君

    …………………………………

   外務大臣         麻生 太郎君

   内閣官房副長官      長勢 甚遠君

   外務副大臣        塩崎 恭久君

   防衛庁長官政務官     高木  毅君

   外務大臣政務官      伊藤信太郎君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  伊佐敷眞一君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房遺棄化学兵器処理担当室長)    高松  明君

   政府参考人

   (防衛庁防衛局長)    大古 和雄君

   政府参考人

   (防衛施設庁長官)    北原 巖男君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 辻   優君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 佐渡島志郎君

   政府参考人

   (外務省経済協力局長)  佐藤 重和君

   政府参考人

   (環境省大臣官房審議官) 笹谷 秀光君

   外務委員会専門員     前田 光政君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月十二日

 辞任         補欠選任

  山中あき子君     やまぎわ大志郎君

  篠原  孝君     逢坂 誠二君

  笠井  亮君     赤嶺 政賢君

同日

 辞任         補欠選任

  やまぎわ大志郎君   大塚  拓君

  逢坂 誠二君     篠原  孝君

  赤嶺 政賢君     笠井  亮君

同日

 辞任         補欠選任

  大塚  拓君     寺田  稔君

同日

 辞任         補欠選任

  寺田  稔君     山中あき子君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 刑事に関する共助に関する日本国と大韓民国との間の条約の締結について承認を求めるの件(条約第七号)

 国際情勢に関する件


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

原田委員長 これより会議を開きます。

 国際情勢に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房参事官辻優君、大臣官房参事官佐渡島志郎君、経済協力局長佐藤重和君、内閣官房内閣審議官伊佐敷眞一君、内閣府大臣官房遺棄化学兵器処理担当室長高松明君、防衛庁防衛局長大古和雄君、防衛施設庁長官北原巖男君、環境省大臣官房審議官笹谷秀光君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

原田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

原田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。武正公一君。

武正委員 おはようございます。民主党の武正でございます。

 きょうは、一般質疑ということでございますが、まず、官房副長官にもお見えをいただいておりますので、昨日、読売新聞の一面で出ました、「内調「機密流出の恐れ」 報告、首相に届かず 官房副長官は把握 上海領事館員の自殺 二か月後、現地調査」、この記事について伺わせていただきたいと思います。

 この記事によりますと、二〇〇四年五月、上海領事館員の自殺、二カ月後に内閣情報調査室が現地に調査に入りまして、そのきっかけも、報道によれば、外務省の職員から政府関係者に、どうも口頭で中国側に文句を言っただけで不問に付すようだ、これはとんでもないことだということで、そういった連絡があり、内調が現地に調査に入り、やはり機密情報が漏れたおそれがあるという報告を二橋正弘副長官に上げた。

 しかしながら、この一年半、首相にもそしてまた当時の官房長官にも伝わっていない。このことが昨年暮れに明らかになって、そして、ようやく官房長官は、官邸にはこの間報告がなかったということでありますが、この報道の真偽について、本来であれば当事者の二橋正弘副長官にお見えいただくのが筋だと思うんですが、今まで国会では事務次官級の政府参考人は余り例がない。例がないことはないということでありますので、私は、当外務委員会へぜひ出席をいただかなければなりませんが、まず官房副長官からこの記事の真偽についてお答えをいただきたいと思います。

長勢内閣官房副長官 おはようございます。

 今御指摘のような報道があったことは承知をいたしております。ただ、内閣情報調査室は、御案内のとおり、内閣の重要政策に関する情報の調査、分析を所掌しておるわけで、その対象は、外交、安全保障関係を中心に広範にわたっております。

 そういう仕事でありますので、個別の調査内容とかあるいはどういう事実があったといったようなことを明らかにするということになりますと、我が国がどういうところの情報に関心を持っているか、また、どういうところに重点を持って情報収集に当たっているかということが明らかになるわけで、そうしますと、国の安全にもかかわりますし、他国との信頼関係にも支障を来す、以後の情報調査活動ができなくなるというおそれがありますので、この情報調査室にかかわります個別の調査事実の有無については、その内容いかんにかかわらず、一切お答えをしないということでやっておりますので、今の点についてどうかと言われました場合には、申しわけありませんが、お答えは差し控えさせていただきたいと思います。

武正委員 以前、中国の潜水艦の領海侵犯事案、あのときも、私ども、この国会、与野党議員は官邸の危機管理についてただしたんですね。

 あのときの官房副長官は今法務大臣になられておりますが、午前九時十分でしたでしょうか、たしか四時半にもう領海侵犯始まっていたんでしょうか、その事案を官邸に行って初めて政務担当の官房副長官は知ったと聞いて驚きまして、いかに官邸の危機管理が今の仕組みでも内閣危機管理監あるいは内閣官房副長官補、ここがグリップをする仕組みになっていて、総理大臣や官房長官あるいは政務担当官房副長官に、その第一報が行きながら、実際に報告が行っていなかった、あるいは遅かった。官房副長官に至っては、官邸に出勤して初めて知った。やはり、その官邸の危機管理のずさんさ、これを指摘して、それについては改めますということが、この委員会でもあるいは安保委員会でもそうしたやりとりがあったばかりでございます。

 そうしましたら、今回の事案、個別事案には答えられないということですが、結局この一年半、首相や官房長官あるいは官房副長官に報告がなかった、官邸に報告がなかったと安倍官房長官が言っていますが、官房副長官にも当然報告がなかったということだと思います。

 こうしたこと、また同じことを繰り返しているということなんですが、改めてやはり個別事案には答えられないということでしょうか。国会で、官邸の危機管理を改めますとこの潜水艦の領海侵犯事案をもってお答えになられた官房副長官、当時も御出席いただきましたが、個別事案には答えられないということでしょうか。

長勢内閣官房副長官 情報が的確にしかるべき方に伝達されて、国が正確な判断をしていくということが大変大事でありますので、その伝達のあり方については、きちんとやれるように随時見直しをして問題のないようにしていかなきゃならぬということはおっしゃるとおりでありまして、その努力をやっておるわけで、そういう形で危機管理体制はきちんと進めておると思っております。

 ただ、個別の事案につきましては、先ほど申し上げましたとおりでございますので、答弁は差し控えさせていただきたいと思います。

武正委員 外務大臣、鹿取報道官は、昨年の報道に接して、官邸には報告しなかったということを記者会見で述べておられますが、官邸は官邸でこうやってちゃんと調査をしていたという報道、しかしながら、それが政治家には報告が上がっていなかったということでありまして、やはり国会としては、政治家がきちっと国の安全保障、危機管理をグリップしなきゃいけないということを改めて今回のこの報道が、個別事案に答えられないといっても、その真偽、私は、やはりこれが事実だとすれば大変ゆゆしきことであり、国会での政府の答弁、結局は変わっていなかったんじゃないのかというふうに思うわけです。

 政治家として、日本の危機管理に関して、これは外務省も大変今回の事案については反省をしなければならないことが多々あると思うんですが、この政府の危機管理のあり方ということでも今回これは警鐘を鳴らしていると思うんです。この報道に接して、今のやりとりもお聞きになって、外相としての御所見を伺いたいと思います。

麻生国務大臣 今、官房副長官から答弁もあっておりましたけれども、少なくとも、この個別の事案の調査には、内調、内閣情報調査室によります調査事実の有無、個別の話の有無については、その内容のいかんにかかわらずお答えすることは差し控えさせていただくということになろうと思います。

 今言われましたように、全体として、この種の話、そうしょっちゅう起きる話ではありませんけれども、そういう話が起きたときに、直ちに最終決断をおろされる立場にある総理なり官房長官なりに情報が速やかに上がるというシステムというものにどこか遺漏があるのではないか、どこか漏れがあるのではないか、何となくベクトルがかかるのではないかというような心配をされておられるんだと思いますけれども、その種のことについては、これはシステムの問題なんだと思いますので、いろいろな意味でこの数年間、確かに昔に比べて随分また変わってきたとは、私自身もそう思いますけれども、さらにスピードなりその精度なりというものを上げていく努力というのは、今後ともされてしかるべきだと存じます。

武正委員 個別事案には答えられないというお答えでありましたが、やはり、中国の潜水艦の領海侵犯の事案での政府から危機管理体制を改めると、今外相が言われたように、きちっと首相、官房長官あるいは官房副長官に上がる仕組みをとりますよ、こういうふうに言われたにもかかわらず、もしこれがなされていないとすれば、相変わらず日本の危機管理が大変ゆゆしき事態にあるということになります。

 個別事案については答えられないということでありますが、やはり当事者の二橋さんに来ていただかないと何とも詳細はわかりませんので、改めて、当委員会として、二橋官房副長官に参考人として本委員会に御出席いただくことをお願いしたいと思います。

原田委員長 本件につきましては、別途、理事会でも協議させていただきます。

武正委員 続いて、日米審議官級協議について伺います。

 官房副長官、どうぞお引き取りください。

 四日、五日の両日、日米審議官級協議が行われましたが、この中で、特に米軍施設移転経費、日本側負担割合などがどのような形で協議をされたのか、あるいは、日米審議官級協議、四日、五日の内容全般を含めて、外務大臣からお答えいただけますでしょうか。

麻生国務大臣 御存じのように、昨年の十月に行われました2プラス2以降、協議が断続的に行われております。その一環として、三月の四日、五日、日米外務、防衛担当者の間において審議官レベルの協議が行われておりますが、引き続き、十三、十四、今度は東京で行う予定にされております。したがいまして、今、協議の最中でありますので、細目はお答えを差し控えさせていただきます。

 いずれにいたしましても、沖縄の海兵隊の司令部の要員及びその軍属を含めまして、グアムへの移転ということにつきましては、この委員会でも何回もお話があっておりましたように、沖縄にとりましては大きな負担の軽減ということになりますので、これをなるべく早く実現するために、資金的な措置を含めていろいろ今検討させていただいておるというのが実情であります。

 三月四日じゃない、四月の四日、済みません、月を間違えました。四月の四日、五日、話をさせていただいておるというのが現状です。

武正委員 私は、四日、五日の内容もつまびらかにできるところをしていただきたいというふうに申し上げたわけですので、なかなか一番肝のところはお話しになれないのかもしれませんが、累次審議官級協議をやってこられているわけですから、四日、五日で、こういった点が合意を得たとかこういった点について協議をしたということで、明らかにしていただけるところをお願いしたいと思います。

麻生国務大臣 よく言われておりますように、いわゆるグアムに移転するに当たりましての資金的な話等々、いずれもまだ協議中であって、その問題の中で、普天間の移転というものが、一応辺野古、いわゆるキャンプ・シュワブというところが合意をされましたので、これで大きく前に進む可能性が出てまいりました。すなわち、嘉手納以南のところやら何やらをどうするかこうするかという話が現実にできるような形になりつつあるというのは確かです。しかし、今、では具体的にといったところまではまだ進んでいないのが事実。

 キャンプ座間の総合補給廠の話につきましても、これは今、返還をするというところまで来ておりますが、どれぐらい、何ヘクタール返ってくるのかにつきましては、我々はさらに要求をしておるところでもありますので、向こう側との最終的な詰めはまだできておりません。

 横田の飛行場につきましても、これは羽田の空域との話もありますので、うちは第四滑走路ができるまでにこれはどうしてもしてもらわないと困るというところでこれも継続させていただいておりますけれども、最終的にこれは何とか間に合わせないと、現実問題、えらいことになりますので、そこのところはやりますということになってはおりますけれども、ではどこまでかというところの詰めはまだ最終的なところはでき上がっておりません。

 空母の艦載機の厚木の話につきましても、岩国への移駐につきまして、これは今、岩国以外、鹿屋、岩国、いろいろ話が出ておりますので、ここのところもまだ詰めが最終的にでき上がっておりませんので、押したり引いたりしながらやっておるという途中経過だけが申し上げられるところであって、これで決まりましたというものは、完全に固まったというものがこの段階であるわけではございません。

武正委員 まだ四日、五日の段階では辺野古案が合意をしたという段階ではなかったわけでありますので、ちょっと今そごがあったというふうに思います。

 そうすると、今、審議は、十三、十四、行うわけですが、どういう段階に来ているというふうに外務大臣として認識されていますか。

 それこそ、頂上が合意点だとすれば、今、何合目ぐらいまで来ているのか。まだ一合目なんでしょうか、二合目なんでしょうか。今のお話ですと、これもあれもすべて協議中でつぶさにできない。新聞はとにかくグアムへの移転経費が最大の関心ですが、そのほか、いろいろなことがこの米軍再編に伴い費用負担も発生するわけですが、いかがでしょうか。

麻生国務大臣 何合目かと言われると、なかなかちょっと難しい。武正先生、なかなか答弁の仕方が難しいんですけれども、横田の空域の話が一番頂上に近いかなと思わないでもありません。

 その他のことに関しましては、今おっしゃいましたように、確かに、これ、十三、十四のときになりますと、いわゆる二本の滑走路のおかげで、問題はあの点が解決するという、これは、埋め立て等々、知事の話がありますので、武正先生、そこのところはまだちょっと何とも言えないところではありますけれども、一応、島袋市長と防衛庁長官との間の合意がそのままいくという前提に立って、初めて、その他の嘉手納以南の話やら何やらが動き始めることになります。

 そういたしますと、これ、調査に数年かかって、建設に何年かかかってという話になるんだと思いますけれども、最終的なところで、金額の話やら何やらがまた、そこの段階で別な問題として検討しなくちゃいかぬところだと思っていますが、今の段階でいけば、横田のところが一番、何合目、八合目、まあ、とにかくそれぐらいのところまで、横田の空域の話が一番進んでいるかなという感じがしますけれども、その他のところはちょっとそれ以下だと思っておいていただいた方がよろしいんだと思います。

 ただ、最終的なところでは、やはりどこかで決断を、両方で譲り合って決断をおろさなきゃどうしようもありませんし、なるべく早く決断をおろさないと、このままずっと引っ張っておいても何の意味もありませんから、私どもとしては、どこかで決断をして、すぱっといかなければいかぬところだと思っております。

 そこのところは、防衛庁長官とよくこの話をするところですけれども、段階として、今申し上げた四つ、五つのところでどれが何合目かと、なかなかちょっと表現は難しいとは思いますが、横田が一番進んでいるかなという感じがいたします。

武正委員 報道では、十日、政府がグアム移転経費の負担問題について、税金を財源とする一般会計からのいわゆる拠出そして融資、これを合わせて七割弱を日本側として負担するんだ、こういうような報道が出ておりますけれども、こういった方針を既に政府として固め、そして、十三、十四日に臨むとすれば、今の外相の発言から、横田は八合目だけれどもということでありますが、かなり、十三、十四で大方決着になってくる。

 そして、あとは、当初、五月訪米を予定していた外相、防衛庁長官と一緒に2プラス2で決着、これが、今言ったいつまでも引っ張れないという外相の真意ではないかなというふうにおもんぱかるわけでございますが、この七割弱、政府方針決定という報道、これについては、外務省としてお答えをいただけますでしょうか。

塩崎副大臣 そういった報道があったことは我々ももちろん承知しているわけでありますけれども、先ほど来お話がありましたように、争点はかなり絞られつつあって、言ってみれば最後の詰めをやっているというところでありますが、その最後の詰めが極めて大事であります。

 この問題につきましては、資金的にどう負担するのかというのは、目的である抑止力の維持と、それから沖縄の皆さん方の負担の軽減ということで、それをなるべく早くやろうということで資金の負担をやろうということで、さまざまな議論が出ておりますけれども、こういった問題について、まだ具体的な決定はなされていないということで、議論が続いているというところでございます。当然、各省庁と相談をしながら検討をさらに深めていかなければならない、こう思っております。

武正委員 そうすると、各省庁と検討した中の案の一つとしてこれが今あるということでよろしいですか。

塩崎副大臣 協議をしているところでありますので、内容については差し控えさせていただきたいと思います。

武正委員 いや、案の一つとしてあるのかどうかでありますから、それはお答えをいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

塩崎副大臣 それは、相手のあることでありますし、協議を続けておりますので、具体的な内容については差し控えさせていただきたいと思います。

武正委員 かなり煮詰まってきているという認識を得るわけでありますので、私は、外務、安保、そして財務金融、合同での連合審査、これを改めて求めていきたいと思いますし、あるいは予算委員会の開催も必要ではないかとも思いますし、そして何よりも、予算措置だけでこれを済ませようということは、私は、説明責任として、小泉内閣としてあってはならない。

 なぜならば、グアムへの移転経費だけではない。これから高木政務官にお伺いをする普天間の整備、それこそ滑走路を二つつくるわけですし、今までよりも余計経費もふえるわけですし、そしてまた、外務大臣が言ったように、普天間移設はいいけれども、移設した後の普天間はどうするんだ、これについても多額のお金。あるいは、国内での移転経費、訓練移転も含めて多額のお金が予想されますので、これは法案できちっと内閣の姿勢を国会に示し、そして国会での議論を通じて国民に対しての説明責任を果たすということが私はやはり改めて必要だと思います。

 以前、外務大臣は、検討したいというふうに言いましたが、もう煮詰まってきているようでありますので、私は、急ぎ、国会に対して政府の説明責任、国民に対して果たすべきだと思いますが、外務大臣、いかがでしょうか。

麻生国務大臣 これは武正さん、たびたび答弁を申し上げているとおり、相手のある話なので何とも言えないんですが、多額の税金を使う話でもありますので、これで決まりました、はい、お願いしますという種類のものではなくて、もう少しきちんと説明をすべきではないかという御意見というのは、私どももよくわかっておるところでもあろうと思います。

 ただ、最終的にどうなるかというのはちょっとよくわからぬ。先ほどおっしゃいましたように、確かに一本が二本にふえたら、そこでどれぐらい違うのかというのは、陸上の中だけでやると随分違うんだそうですけれども、ちょっとまだ、今、新たに計算をし直すということになっておりますので、そこらのところを詰めまして、もう少し詰めた上での答弁ということになろうかと存じます。

武正委員 ぜひ内閣の各閣僚での御協議をいただいて、やはり大変多額のお金を派生する、しかしながら、日米同盟の重要性、こうした両面。しかも、今、行革委員会で、いかに政府の支出を減らす、あるいは、それこそ国家公務員の純減、こういったものに切り込んでいる内閣でありますので、片や外交、安全保障で無原則にお金が出ていくということがあってはならない。国民の誤解を招かないように説明責任を果たしていただきたい。お願いしたいと思います。

 そこで、政務官お見えでございますので、今回名護市と合意をした普天間飛行場シュワブ移転施設、この合意案、これについて、XがV字になったとか、いろいろな報道もあるわけですが、その内容について御説明をいただけますでしょうか。

高木長官政務官 先ほど来話も出ておりますし、今、武正委員の方からも御指摘いただいたところでございますけれども、四月七日に、防衛庁長官と名護市長、そして宜野座村長との間で、いわゆる普天間飛行場代替施設の建設に係る基本合意書を交わしたところでございます。

 その内容につきましては、いわゆる昨年十月の2プラス2の基本案、これをベースにいたしまして、一つには、住民の安全を図るために、あるいはまた環境の保全、そしてまた実行可能性に留意をするという観点から、名護市及び宜野座村の要請を受けて、メーン、いわゆるこれまでの案に似たようなものでございますが、その滑走路と、もう一本、離陸専用のサブ滑走路を設置する、いわゆるV字型で滑走路を建設するというものでございます。

武正委員 それに伴って費用はどのぐらい増額をすると防衛庁、防衛施設庁としては見込んでおられますか。

高木長官政務官 今も麻生大臣からお話もあったかと思いますが、今御指摘の見積もりにつきましては、今後具体的な計画を練っていくということでございますので、現時点でどれぐらいということは申し上げられる状態ではないというふうに考えております。

武正委員 これから計画を練っていくから額がわからないのか、詳細については申し上げられないのか、いずれでしょうか。

高木長官政務官 これから練っていくということでございまして、現段階では申し上げることはできないということでございます。

武正委員 そうすると、現段階ではわからないということだと思うんですが、よろしいですか、現段階ではその額がわからないというお答えで。政務官。

高木長官政務官 これはまさに四月七日に合意したばかりのものでもございますので、詳細にはそれは現時点ではわからないというふうに認識をいたしております。

武正委員 これが本当なのか。幾ら名護市の地元の皆さんを何としても説得しなきゃいけないということで、いろいろな案を出されて、もしかして、その場で思いついて出されたんだとすればそういったこともあるかもしれませんが、事前からさまざまなことを考えて、想定して交渉されているわけですから、当然、それこそコストパフォーマンスを考えて政府は事に当たっているというふうに私は認識いたしますので、もし額がわからずに交渉している、額についてはこれからということであるならば、これはやはり政府として、国民に対して本当に説明責任を果たし得ないなというふうに思わざるを得ないわけであります。

 そこで、実はこのV字案でありますが、これは報道でありますけれども、三月十三日、切り札がある、絶対に口外しないでくれ、額賀長官は、都内でひそかに集まった安倍晋三官房長官、麻生太郎外相に、滑走路をX字に交差させる構想を初めて披露した。ただ、滑走路の増設で、工期や建設費の増大は確実。このため、三月十六日に小池百合子沖縄担当相、谷垣財務相も交えた五閣僚で協議。その上で、額賀長官が休日の二十一日、首相はこの二十一日は一日休みであった、珍しいなというような話もありましたけれども、この二十一日、首相公邸に訪ねて内諾を得た。

 こういった報道でありますけれども、この報道からすると、実は、このX字あるいはV字、もう事前事前から政府内、閣僚内では協議をしていた、そしてこれを切り札に名護市を説得しよう、こういったことを実ははかっていたんだ。

 こういった報道で、外務大臣の名前も二回出てくるわけですが、こういった事実の有無について、外務大臣、いかがでしょうか。

麻生国務大臣 この話がここまで漏れなかったのはほかに人がいなかったからだというぐあいに御理解いただけるのは、そこの推測までは合っていると思います、全然、最後の島袋さんの交渉まで一切出ませんでしたから。

 だから、話し合われた人数は極めて限られていたというように御理解をいただかないと、大体この種の話は、下手なことをすると翌日はもう既に出るなんということになりますから、これはもうきちんと最後まで出なかったというのは、話をされた人数は極めて限られていたということが一点。

 もう一点は、それで、では計算してみろというようなことになったらまた外に出ますから、そういった意味では、先ほど高木政務官のお話のように、まだそこの段階が詰めていないというように御理解をいただければよろしいのではないかと存じます。

武正委員 ということは、三月十三日からこのX字案ということで協議をしていたということだというふうに理解をいたします。

 そこで、最後、もう時間になりますので、イラクの話に移らせていただきます。

 外務大臣が、既に報道で伝えられるように、イラク自衛隊撤退は秋以降、こういうふうに発言をされておりますが、当初、この外務委員会では、イラクの夏の暑さを考えると、もう六月でも三十度を超えていくから、その前ですね、この撤退をというようなことを前提に、防衛庁ともここでやりとりがあったというふうに記憶をしております。

 ここで外相が秋以降というふうに発言をした真意、あるいは政府として自衛隊の撤退についての方針の何らかの変更があったのかどうか、お答えをいただけますでしょうか。

麻生国務大臣 武正先生御存じのように、選挙が終わりましたのは昨年十二月。普通、日本ですと大体ひとつきぐらいで組閣ということになるんですが、一月もない、二月もない、三月もない。

 もういいかげんにしてもらいたいと思って、二度ほど、イラクの外務大臣に日本に来てもらい、電話を三度ぐらいしたかな、いろいろ話をさせていただいて、そのたびごとにずれてくるものですから、私どもとしては、基本的には、ここの場合は、いわゆる政治のプロセス、選挙が終わった、政権に移転されますその政治のプロセスの話と、それといわゆる治安状況というので、これは治安部隊が確かに十三万人から二十四万人ぐらいにふえているんですけれども、治安状況というものが必ず、統制がきちんといっているようにとても思えないようなところもあります。

 また、多国籍軍というのは、豪州軍、英国軍との連携やら何やら考えて、これは常識的には三月にはできるだろうかというので当時予想しておりましたのに比べて、今、四月になりましても、いつ政権が新しく発足するかが不明という段階が今の状況です。

 したがって、豪州、アメリカとの外務大臣協議をさせてもらったときにも、まあ三月だろうと、その当時は三月に交渉した真っ最中だったんですけれども、三月いっぱいぐらいにはと言っていたんですけれども、それもだめになりましたので、正直に申し上げて、これでいきますと、なかなか四月にできるという保証もないので、そこで、五月、六月ということになって、だんだんちょっとおくれてくるというのが今の正直な現状です。

 したがって、御存じのように、あそこはむちゃくちゃ六月から暑くなりますので、その意味で、撤退というのはこの種の作戦をやる上で最も難しい作戦でありますので、不慮の事故とかいろいろなことを考えて、私どもは慎重の上にも慎重にやらないかぬ。

 ここまで事故なしで来たんだから、事故なしでうまいこといきたいなと思っておりますので、私どもとしてはさまざまな可能性というのを調査しているというように御理解いただいて、秋以降と、別にそれまでに決着がつけば夏でも、ことしはそれほどでもないぞというのであれば夏でいくこともありますし、そこのところは柔軟に考えて、きちんとしたスケジュールを固めているというわけではございません。

武正委員 これで終わらせていただきますが、イギリスも夏には七千人に減らすという防衛大臣の発言もありましたが、あくまでイギリス、オーストラリア、アメリカと足並みをそろえて日本は撤退の時期を選ぶのか、あるいは、やはり日本が主体的に選ぶのか、これはいずれでございましょうか。

麻生国務大臣 これはいろいろな連係プレーでここまで来ておりますので、日本が、はい抜けたというわけにはなかなか、今度はディフェンスの話も考えなければいけませんので、そういった意味では、日本は、ほかの国とよく詰めた上で、最終的に日本が主体的に決めます。主体的に決めますが、自分たちの状況をよく考えて主体的に決めないといかぬというところだと存じます。

武正委員 以上で終わります。ありがとうございました。

原田委員長 次に、篠田陽介君。

篠田委員 自民党の篠田陽介でございます。

 初当選の一回生でございます。半年が経過しましたが、外務委員会では初めて質問の場に立たせていただきます。

 先月は、予算委員会の分科会で、麻生大臣に対しまして、私は、中国の環境問題、環境汚染の状況と、さらには、ODAの一元化、効果的な、戦略的なODAの使い方をしていただきたいというようなことを質問させていただきました。

 それに関連をさせていただきますが、今、環境省が先導となりながら行っております排出権の取引制度について、あるいは外交と地球温暖化対策について、また、時間がありましたらODAのあり方について等々お尋ねを申し上げたいと思っております。

 資料もお配りをさせていただいておりますが、外務大臣、余り時間がないと承知をしておりますので、まず先に質問をさせていただきます。

 排出権の取引事業、今、各企業また国が先導役となりながら、中心となりながら、一生懸命各諸外国に対しまして、主にCDM、クリーン開発メカニズムというものを活用しまして、積極的に展開中で、欧米諸国と競い合っているというような状況であります。

 このことについて、私は選挙区が名古屋というところでありまして、非常に、物づくり、あるいは省エネ、環境技術が日本一だと思っていますので、あるいは世界一なのかもしれませんが、そういったところから、これから日本から世界に対して、このCDMをもっと活用しながら、これはビジネスチャンスだというふうにとらえて、もっと積極的に取り組んでもらいたいとまた思っております。

 しかしながら、この資料の新聞をお配りさせていただきましたが、例えば中国については、発展途上国だというような解釈のもと、温暖化排出ガス、これはお金になるんだというような記事もお配りをさせていただきました。この辺につきまして、大臣の見解をまずお尋ねさせていただきたいと思っております。

 具体的には、中国に対しては、エネルギー効率が悪いという中で、世界第二位の二酸化炭素排出国で、また、メタンガスは世界の三分の一を排出しているというような現状があります。

 また、例えば日本は、そのメタンガス再利用について言いますと最先端の技術を持っておりまして、炭鉱から発生する濃度の一定しないメタンガスを使った発電技術は世界トップクラスの技術を持っています。

 それについて、逆にこれは中国が、ではこのままでいいんだ、僕らが自分で努力しなくても諸外国がまたやってくれる、それをやることによってまたお金が入ってくるんだ、これはまた金脈になるんだというような解釈がどうも中国の中で起こっているような状況にあります。

 このことについて、麻生外務大臣の見解をお尋ねしたいと思います。

麻生国務大臣 これは、篠田先生おっしゃいますように、昔マスキー法という法律が出まして、車の排気ガスの規制の法律ができたときに、ほとんどの国は皆あきらめたんですが、日本だけはこれを断固やるということで押し切って、一時期随分出力も落ちたりスピードも落ちた車で、ぶつぶつ不満もあったんですけれども、それも解消して、今、ハイブリットを初め、いわゆる燃費効率世界一なんという車ができて、都内だったらリッターで三十キロも走る車をつくられたら、それはリッターで四、五キロしか走れない車ができるのが精いっぱいの国じゃとても勝ち目がないような車ができるようになって、今猛烈な勢いで日本の車が世界に伍しておるというのが現実、これが歴史的な事実として私どもの記憶に残るところです。

 したがって、今回のこの省エネに関するいわゆる環境技術の話におきましても同じようなことが十分に考えられる、そういった技術も我々にはあると存じます。

 ちなみに、名古屋におられますという前提で、詳しいという前提でいけば、サスペンションプレヒーターという大きな機械がありますが、簡単に言えば掃除機です。どでかい掃除機と思っていただいたらよろしいんですが、例えばセメントとか鉄のサイロの後ろ側にこれをくっつけますと、粉じんというものをほとんど吸収して、いわゆる汚れた、汚染された空気は外に出ないことになっているんですが、電気を食うわけです。それは、つけたはいいけれども回さない、何のためにつけたんだかわからぬじゃないかと言うと、電気代がもったいないというような話になっておる現状もあります。

 私どもとしては、技術的には十分にそういったものがあるのは確かでもあり、こういったものは、かつて我々は、高度経済成長のときに似たような話でいろいろ公害という問題を引き起こしたのも御存じのとおりですので、こういったような技術なり経験というものを、今工業化が急激に進んだために起きている国々、そういった国々に対して、この技術、この経験というものをぜひ利用してもらいたいという話は私どもとして積極的に言っていくべき大事なところだと思って、努力をさせていただいております。

篠田委員 ありがとうございました。

 他方、私は今、衆議院の環境委員会と外務委員会、二つに所属をさせていただいています。日本の持っている環境技術、省エネ技術、リサイクル技術、これはこれからビジネスチャンスになるんだ、あるいは国益につながっていくんだということで、積極的に世界に対して発信していく必要があるのではないかということで、また私は、これから地球温暖化対策というものを自分のライフワークとしながら、やっていきたいと思っています。

 また、たまたま先週名古屋におりましたが、非常に黄砂が吹いておりました。本当にこれは中国から物すごい黄砂が吹いておりまして、黄砂だけならいいんですが、いろいろなほかの物質も飛んでくるじゃないかというような心配が実際にありますので、こういった面、環境省のみならず経産省あるいは外務省がこれからしっかり連携をされることが私は本当に重要なのかなとまた思っております。

 それで、たまたま今回、環境問題、外務省がどのような取り組みをされているかということで勉強するに当たり、外務省のこのような地球温暖化問題に対する日本の取り組みというようなパンフレットをいただきまして、ちょっといろいろ見ておりました。

 その中で特に気になったのは、中国の話をさせていただきますが、中国は実は環境排出、CO2等排出が非常に大きい国であります。他方、森林の植林に関してはかなり、世界の一位である、年平均四百六万ヘクタール植林をされているというようなことが、これはFAOの出典なんですが、これが本当に実際そうなのか、あるいはその内容について、どのような事業をされているのかというようなことを外務省にお尋ねしたいと思います。

塩崎副大臣 中国の御指摘の点でございますけれども、森林の増加がどうなっているかということでありますけれども、二〇〇一年に、天然林の保護、それから盲目的な土地開墾の禁止、それから防護林の植林、それから野生動植物の保護等を内容とする六大林業重点プロジェクトの実施を決定し、二〇一〇年までに森林被覆率を一九%以上とすることを目標として掲げているというふうに私どもは承知をしているところでございます。

 二〇〇五年には森林被覆率が一八・二%に達しておりまして、第十一次五カ年計画では二〇一〇年までにこれを二〇%とする新たな目標を掲げていると我々は承知をしているわけでありまして、中国が森林の年間増加面積をかなりふやそうとしているということが見てとれるということだと思います。

篠田委員 ありがとうございました。

 それで、ちょっと外務省の組織の中の質問等々をさせていただきたいと考えております。

 環境省、経済産業省あるいは外務省、それぞれ地球温暖化対策に向けてさまざまな省庁間の取り組みをされていると私は承知をしておりますが、外務省の中には、西村大使、地球温暖化担当大使という方がおられます。

 私は、どのような仕事を実際にされているのか、どこに常駐されて、アメリカにいるのか、あるいはヨーロッパにいらっしゃるのか、日本にいらっしゃるのか、それもちょっと承知しておりませんので、どこに常駐されて、具体的にどんな業務をされているのか、あるいは、国際会議等々、年間どのぐらいの会議に参加されているのか、そういうような活動の取り組み状況を外務省にお尋ね申し上げます。

塩崎副大臣 基本的には、外務省の本省に常駐をしております。

 この名のとおり、地球環境問題担当大使でありますから、地球環境に係る外交政策全般を担当するということでありまして、特に地球環境にとって重要かつ喫緊の課題でございます気候変動、昨年のグレンイーグルズ・サミットでもテーマになっておりましたが、水と衛生、森林保全と違法伐採対策、こんなものを中心的な業務としております。

 どういう会合に出ているのかという御質問でございましたが、例えば二〇〇五年十一月、去年の十一月にモントリオールで気候変動枠組み条約・京都議定書締結国会合というのがありまして、こういった交渉、将来の枠組みの交渉をやったりしているわけであります。

 それと、これはメキシコでついこの間ございました、三月に第四回の水フォーラムというのがございました。二〇〇三年に京都で世界水フォーラムが開催されまして、この担当大使が議長を務めるというような役割を果たしております。

 もう一つ具体例を言いますと、昨年の十一月、横浜でアジアでの持続可能な森林経営促進を目的とする第五回アジア森林パートナーシップというのがありまして、これもこの大使が議長を務めるということで、常駐はするけれども、海外でこういった活動を活発にやっているということでございます。

篠田委員 ありがとうございました。

 同様に、外務省大臣官房内ですが、地球環境課あるいは気候変動室というのがあると承知していますが、そのスタッフ、例えば人員がどのぐらいなのか、あるいはどのような業務統計、どのようにされているのか。特に地球温暖化対策についてなんですが、具体的にどのような取り組みをされているのか、各省との連携状況等、教えていただきたいと思っております。

辻政府参考人 お答え申し上げます。

 今、最初に御質問のございました地球環境課には十三名の人員がございます。地球環境に係ります外交政策等に関する業務を行っておりまして、具体的には、種の保存やオゾン層保護、廃棄物、化学物質の管理等に関します多数国間条約、いわゆるモントリオール条約、バーゼル条約等でございますが、その条約のもとでの取り組みや、水と衛生や、森林保全等の持続可能な開発を目指す国際的取り組みに参加し、交渉、協議を行っております。

 二番目に御質問のございました気候変動室でございますが、こちらは五名でございます。気候変動枠組み条約及び京都議定書、それから砂漠化対処条約の実施等に関します業務を行っております。

 特に地球温暖化対策という御質問でございましたけれども、京都議定書やそれ以降の将来の枠組みについての各国との交渉、協議、それからクリーン開発と気候に関しますアジア太平洋パートナーシップへの参加などの取り組みについて業務を行っているところでございます。

 以上でございます。

篠田委員 ありがとうございました。

 地球温暖化対策、これの対策につきましては、外務省、環境省、経済産業省それぞれが緊密な連携をとりながら、常に会議を持ちながら、緊密な連携のもと取り組んでいくことが私は重要だと思っています。

 それで、具体的にお尋ねをしますが、地球温暖化対策に限っていいますと、どの役所、どの省庁が具体的に音頭をとるといいますか、例えば、皆さん集まってくれ、こんな会議をしたいんだ、こういうことがしたいんだというようなことについて、どの省庁が具体的に音頭をとってやられているのか、あるいはその会議はどの程度の頻度で開かれているのかというようなことをお尋ねしたいと思います。

笹谷政府参考人 お答え申し上げます。

 地球温暖化対策は、先生おっしゃるとおり、国際交渉から国内の削減対策まで非常に幅広い課題であります。政府におきましては、関係省庁の連携の密接な形をとりながら推進しているところでございます。

 具体的には、総理を本部長とし、官房長官、環境大臣、経済産業大臣を副本部長としまして、全閣僚を構成員とする地球温暖化対策推進本部というものを設けて、おおむね年に一、二回行っております。

 また、そのもとに局長級の幹事会というのがありまして、これも年に数回、節目節目で開催をしておりますし、関係省庁の施策の総合調整を図っているわけでございます。

 また、さらに個々の課題になりますと、課長級の関係省庁の連絡会議というものも設けて随時開催しているところでございます。

 これらの会合の事務は内閣官房が行うこととされております。

 以上の公式の会議のほか、国際的な取り組みにつきましては、特に、主要な国際会議に先立ちまして、先ほど外務省の方から御説明がありましたが、外務省を中心といたしました関係省庁の連絡、意見交換を行うことはもちろんのこと、また関係省庁のイニシアチブのもとで、海外の関係者を招きましたフォーラムなども、連携を図りながら対応している。

 以上のような緊密な連携のもとで対応している状況でございます。

篠田委員 どうもありがとうございます。

 私、ですから、この外務省のパンフレットを見まして、後ろに、いわゆる地球環境問題に対する取り組みではこれだけいろいろなところがリンクをされてやっている。でも、実際どこがポータルサイトになるのかということは、これはこのリンクと同様だと私は思っているんですね。

 各省が、やはり取りまとめ先の内閣官房がやられているというところであれば、例えばその情報を取りまとめるようなポータルサイト的なものが一つ地球温暖化対策についてあっていいんじゃないかというようなことを私はちょっと提案させていただきたいと考えておりますので、その辺についての御見解は、質問通告しておりませんが、お考えを、御検討いただきたいと考えております。

 また、排出権の取引事業についてなんですが、今、CDMの関係で、CDMの取得に関する二〇〇六年度の予算、これは五十四億円がCDMの取得のために計上されたと聞いております。

 これも同様に、どこの省のお金なのかということも私はちょっとわからないものですから、また、この五十四億円、これをどうやって具体的に使っていくのか。そのまま排出権を買うために使うのか、あるいはどこかの機関が諸外国に対して省エネに係るところの補助金として出していくのか、その辺のセルが、ちょっと使い道がわからないものですから、この使い道についてお尋ねをさせていただきます。

    〔委員長退席、小野寺委員長代理着席〕

笹谷政府参考人 我が国の京都議定書目標達成計画におきまして、その約束達成のためには、国内における温室効果ガスの排出削減対策、それから森林吸収源対策の実施に最大限展開をするということを基本として、それに不足する部分と見込まれる一億トン、一・六%分に該当いたしますが、これについて京都メカニズムを活用するということになっているわけでございます。

 お尋ねの予算につきましては、二〇〇六年度予算におきまして、京都メカニズムを活用してクレジットを取得するということを基本としますが、それに要する費用といたしまして、環境省から約二十六億円、経済産業省から約二十八億円を計上し、先生御指摘の五十四億円を計上したところでございます。

 また、クレジットを形成する、いわゆるクリーン開発メカニズム、CDMなどのプロジェクトは、その立ち上げに時間を要する部分がありまして、おおむね三年から七年間くらいの長時間を要するということもありますので、このクレジットの取得契約を締結するという観点から、二〇〇六年度予算におきましては、八年間にわたる国庫債務負担行為の枠としまして、これも環境省と経済産業省の中で計百二十二億円を計上させていただいているという状況にございます。

篠田委員 ありがとうございました。

 これは、この新聞もお配りをさせていただきましたが、排出権の取引について、今、世界各国がしのぎを削っている状況であります。また、その排出権の取引価格というのがこれから高騰していくんじゃないかというようなことが予想されております。

 日本においては、何か聞いたところによりますと、やはり京都議定書の発効が正式に決まっていない段階では、財務省がその予算措置に対してイエスと言わなかったということによりまして、いわゆる予算計上がおくれて、ヨーロッパ、オランダ等々に比べておくれをとってしまったというようなことも聞いております。

 ですから、これから排出権取引制度が、どんどん価格が上がっていくのであれば、これからますますお金がかかってしまうというようなことも予想されますので、私は、早い段階でもっと予算措置をしながら、早いうちに確保しておいて、それで、変な話ですけれども、高騰したら他国に対して高いお金で売ることが逆に国益につながっていく、さらには、日本の製造業あるいは企業のさらなる発展につながっていくというふうに考えておりますので、ぜひ、これについてどのような見解を持たれているのか、これからどのように、排出権取引制度、CDMに係る予算計上の考え方、方針のあり方、そのようなことをお尋ねしたいと思っております。

笹谷政府参考人 今御指摘のとおり、諸外国におきまして、例えばオランダですとかスペインですとかイタリアなどヨーロッパの諸国も、政府のクレジット調達を開始するという展開をしているわけでありまして、我が国も含めまして、現在各国で表明しているクレジットの需要量というものをとらえてみますと、第一約束期間の中で約四億五千万トン・CO2という単位になっている。また、これに加えて民間からの需要もあるという状況であります。

 一方におきまして、本年三月中旬現在ぐらいで調べてみますと、いわゆるCDMの理事会で正式登録されたCDMプロジェクトというのが約百四十件あります。また、クレジットの総量は約三億三千万トン・CO2でありまして、これ以外にも約五百件のプロジェクトが登録申請中でございます。

 これらがすべて認められるとした場合、もちろん、プロジェクトの熟度等によりまして予定より実際にクレジットが発行されることが少なくなる、そういうこともありますが、クレジットの総量の見込み値としましては、約八億五千五百万トンという数字もあるわけでございます。

 このように、クレジットの需給につきましては、予測が難しい状態でありますが、必ずしも逼迫するということはないとは考えておるところでございますが、世界銀行等の調査によりますと、クレジットの将来価格が上がるという予測もあることは承知をしているところでございます。

 以上の状況を踏まえまして、我が国といたしましては、政府によるクレジットの取得制度を早急に立ち上げて、速やかに必要量のクレジットの取得に対応するという努力をするとともに、公募による応札者間での応札クレジット価格の競争促進ですとか、それからクレジット購入計画を締結する際におきますクレジット引き渡しに先立ってのクレジット代金の一部の支払いを行うなどによりまして、確実かつ費用効果的なクレジットの取得ができるよう、今後とも最大限努力してまいりたいと思っております。

篠田委員 ありがとうございました。

 この温暖化対策と外交政策というのは、これからぜひ一元化をしてもらいたいと私は思っているんです。

 ですから、先月、予算委員会の分科会の場でも質問に立たせていただきましたが、その際、やはりODAの一元化、しっかりと一元化を図りながら、それぞれの諸外国に対して戦略的かつ効果的なODAの使い方をしてもらいたいというようなことを、先月の予算委員会の分科会の場で質問に立たせていただきました。

 ですから、これから、一元化、政府系金融機関の統合含めて議論を進めていかれると思いますが、これも外務省さんもしっかりと頑張っていただきながら、その努力に努めていただきたいと考えております。

 次の質問項目に移らせていただきます。ODAのあり方であります。

 先月、ODAの一元化の話をさせていただきましたが、私は実は秘書を務めておりまして、その間、インドネシア及びベトナムについて何度か訪問をさせていただいたことがありまして、今もその議員連盟の事務局を仰せつかっております。その中で、特に訪問する中で感じたこと、また、さまざまな御意見等々聞かせていただきましたので、多少その事例を踏まえながら話をさせていただきたいなと思っております。

 ODAなんですが、特に不透明だ等々の話が言われております。また、私の得意でありますベトナムの関係なんですが、一九九二年からODA投資が始まりまして、円借款、技術協力、無償資金協力、三分野あるかと思いますが、そういった感じで一九九二年から始まってまいりまして、現在、借款の合計が、九千九百六十億円を今まで投資してきております。

 ベトナムは非常に親日的な国でありまして、大変感謝をされております。ですから、対日感情が非常にいいところでありまして、親日国として、これから、例えば名古屋等々、日本の企業が、今、中国が環境問題あるいは政情悪化で、そのリスク回避策として、ベトナムあるいはインドネシアというところが新しい投資環境先ということで注目を浴びて、また実際に、トヨタさん初めさまざまな企業がベトナムにも進出しておるというのが現状であります。

 また、さまざまなODAの中で、ベトナムで供与してきて、ただ、ハードの事業だけじゃなくて、道路をつくる、橋をつくるという事業だけじゃなくて、やはり同時に、人材交流の面、これからODAのあり方とともに大変重要な部分になってくるのかな。

 例えば、ある方に話を聞きましたら、これはベトナムの中核都市ダナンという港町なんですが、今、ベトナム政府側も環境投資に非常に積極的に努めております。港の開発をしたり、日本の企業さん、どんどん来てくださいよというようなことで、環境投資をしておりまして、非常に整備をされつつあります。

 非常に魅力的な立地でありますが、しかしながら、日本企業が、では、そこに視察に行ってみようかということで、投資環境がどんな感じなのか視察に行ってみようかといって行ってみたら、通訳さんがいないということでありまして、またハノイの方から、例えばホーチミンの方から通訳を連れてくると、それだけで一日三万円から五万円取られてしまうような状況もあります。

 ですから、私が申し上げたいのは、投資環境の整備、港の整備や道路の整備、それも当然重要でありますが、それと同時に、やはり人材面での育成、例えば現地に日本語の教室をつくるとか、そういったことは余り費用、お金をかけなくてもできる分野なのかな。これはNGOさんともいろいろ連携をとりながらやっていただきながら、インフラ整備とともに、ソフトの面で、特に人材開発、人材の面、通訳さんであるとか日本のことが大変詳しい方とか、そういった方々の教育も同時に進めていただきたいというのが私の考え方であります。

 また他方、ODAに関して、一般的によく言われている問題点でありますが、ODA案件決定までの仕組みの不明瞭さということを言われています。また、ODAによる環境破壊や公害の発生ということもあります。また、一般民衆に届かない開発の利益というのが特定の階層の特権となっておる。また、貧困層や少数民族を無視するような開発もされている。あるいは、日本企業がさらに現地で活躍するためのODAの使われ方が私はあるべき姿だと思いますが、それがうまくなされていないというようなことがあります。

 ですから、私は、ODAの個別案件の決定までの仕組みの透明化というのも同時に必要であると考えております。そこが逆に、日本の企業さんからすれば、積極的な営業がしやすいとかいろいろな面があると思います。また、決定までの仕組みを明瞭化することによりまして無駄なお金を使わなくて済むようなことにもなると思います。

 ですから、私は、今回お尋ねしたいのが、ODAの案件決定まで、どんな仕組みになっているのか。具体的には、どの段階でこの案件をやりますよ、例えば、それはどの段階で公表するようにしているのか、どこが最終的にこの案件をやろうかということで、どこで吸い上げて、どこで公表するとかいう、その取り組みの案件決定までの流れといいますか、それを、ちょっと概略を御説明いただきたいと思っております。

塩崎副大臣 先生御指摘のように、ODAは国民の大事な税金を使うことが大半でありまして、今年度も予算ベースでも約七千五百億強あるわけであります。

 したがって、それを、今御指摘のように、透明性を持って案件形成がなされ、公平に使われていくということが極めて大事なことでありますので、この案件決定までの仕組みというのは極めて重要だと思います。今回の政府系金融機関の見直しの中でも、やはり戦略的にODAの中身を決めていく、大きな方針を決めていくということが大変大事であったわけでございます。

 仕組み自体につきましては、政策協議を相手国と当然やりながら、その国の開発政策とか、あるいは援助需要が一体どういうものがあるのかということを把握する。その把握をする際に、だれから話を聞くのかというのも極めて大事であって、今NGOのお話もありましたが、やはり草の根レベルの話も含めてやらなければいけない。

 一方で、日本としては、ODA大綱があり、それから中期政策もあり、それから国別の援助計画を決めているところもあるわけでありますから、そういったものを踏まえながら、相手国の経済社会状況や二国間関係という外交上の関係を総合的に判断するということで、国益を実現ができるような、相手にとってもプラスになるODAの案件形成をしていこう、こういうことではないかと思っております。

 その中身については、判断基準はなかなか一概には言えないわけでありますけれども、できる限り情報公開をし、透明性を高めて、そしていろいろな方々にまた御意見をちょうだいするという意味において、外務省のホームページでもこれを明らかにしながら、情報開示をし、それから、外務大臣のもとにODAの総合戦略会議というのがありますが、これは民間の方も入って、及びNGOの方も入っていますが、そこで議論をし、そして、先ほど申し上げたような大綱や国別援助政策、中期政策などについて、公聴会を含めて国民の意見の反映をさせていこうということでやっているところでございます。

 もちろん、いろいろな点で不行き届きな点もあるわけでありましょうから、その点は不断の改革をしながら透明性を高めていく努力をしていくということではないかと思っております。

篠田委員 副大臣、どうもありがとうございました。

 ODAの中身、さまざまな事業がありますが、よくハードだソフトだと言われるようなことで区分されることがあるんです。

 例えば、個別案件になりますが、個別案件で具体的な名前は出しませんが、日本のODAの予算で国内において病院を建てる。それは建てるのはいいんですが、箱物だけをつくって、実際に重要なのは、建ててからどうやって運営をされるか、その運営のノウハウあるいは経営のノウハウとか、そういったことまで面倒を見て、それで初めてODAというのが効果的になるというように私は思っているんです。

 しかしながら、箱物だけを建ててしまって、それでもうおしまいよ、それでもう違う事業に移りますよというようなことがあっては、これは、お金を使って感謝されないというか、逆に非難をされるんじゃないかというようなことにもつながりかねないと思っています。

 ですから、例えば病院を建てるのであれば、病院を建ててから、しばらくその経営だとか、あるいは人材の開発だとか、あるいは医療の分野での日本からの医師、あるいはベトナム人の医師に日本に来てもらうとか、そういった人材交流をしながら、きちんとそこの病院が最終的に稼働して、経営がうまく安定して、それで初めて完遂するのかなというように思っています。

 例えば、そういった病院が運営のソフトを持っていないがために、医療廃棄物というのが社会問題化しているという事例があると聞いています。

 ですから、私は、お尋ねと同時に御意見を申し上げたいのは、ソフトを伴うハードのODAの案件について、完成後のフォローアップについてどこまで、例えば何年まで面倒を見ますよとか、そういったことが規定されているのか、それはどこのどなたが最終的な判断をして、これで終わりだという判断をされているのか、そういったものがどういうふうになっているのか、例えば国によって違うのかとか、そういったことについてお尋ねをさせていただきたいと思っています。

佐藤政府参考人 ただいまお話がございましたとおり、ODAにおいて施設の建設といったことでハード面での支援を行う際に、その維持管理、運営面、そういった点について十分考慮を行っていく、あるいは必要な場合にはそのフォローアップの支援を行っていく、これはODAの実施に当たって非常に重要な要素でございます。

 実際にこのハード面の支援を行う、例えば病院なら病院の建設を行うということ、これは、実施を決定するに当たっても、当然ながら、その後の運営管理がどうなるのか、あるいは医療技術の面でどういう体制にあるのかというようなことを十分踏まえながら、ではこの病院の建設に支援を行いましょうということを決めていくわけでございますが、その上でさらに、建設なら建設を、施設を建設した後に、必要な場合には、例えばJICAによる技術協力を通じて医療の専門家を派遣するとか、あるいは医療従事者に研修でいろいろ技術を習得させるといった形でその医療サービスの質を改善させる、あるいはその病院の維持、運営についてのノウハウを教えていく、そういった形で支援をするということは、できるだけこれを行っていくというふうに努めてきているところでございます。

 今回のODA改革の中でも、JICAのもとにいろいろな資金協力と技術協力というものを統合していこうという方向が打ち出されておりますが、これはまさに、そういったハード面とソフト面というものをうまく組み合わせていくということの重要性が認識をされたということによるわけでございます。

 今御質問の点でございますけれども、具体的にこのハードを支援した場合に何年以内にどうこうとか、あるいはこの国については具体的にハードと支援、どういうルールでという明確な何か決まったものがあるわけではないんですが、これは当然、相手国のニーズに応じて、あるいはその施設の状況に応じてということで、きちっとそうしたフォローアップを行っていって、必要な場合には支援を行っていく。

 例えば、ただいま病院で医療廃棄物の問題があるのではないかというようなお話がございましたが、仮にそういったような問題が生じたという場合には、これは当然、相手国政府とも協議をして、日本側としてできる協力があればきちっと協力を行っていく、そういった姿勢で臨んでいるところでございます。

篠田委員 ありがとうございました。

 明確な規定はないというのも確かにそうかもしれません。ですが、ODA、多分そのODAを受ける側からすれば、お金はくれ、でも余計な口は出すなというのが本音なのかもしれません。しかしながら、やはりお金を出すのであれば同時に口も出したい、出さなきゃいけないと私は思っています。

 ですから、きちんとやられていないのであれば、それは積極的に日本からも口を出して、せっかく建ててあげたのにちゃんとやっていないじゃないか、どうなっているんだというような姿勢も、やはり日本がしっかりとした外交の中で示していく道であると私は考えております。

 また、先ほどもちょっと申し上げましたが、投資環境を促進させるためには、同時に人材教育が必要だと思っております。

 日本からの直接投資、これから中国から東南アジア諸国にシフトをしていくという動きが今あります。しかしながら、現地で通訳がいないとか、あるいは、単純労働だけであればいいんですが、これからどんどん物づくりにしても高度化していきますし、ハイテクな分野にどんどんシフトをしていっておりますので、労働もだんだん高度化してきております。

 ですから、現地の国においてそういった労働研修をしてもらうような、そういった施設も同時に必要ではないか。語学と同時に、難しい技術を習得するための施設、これなどについてもやはり積極的に同時並行でやっていくことが、長い目で見たとき、日本の国益につながるのではないかというふうに私は考えております。

 ですから、ODAの一元化の中で、これからそういった分野も同時にやっていただきたい。道路や橋の整備も、それはその国にとっては必要かもしれませんが、しかしながら、日本から投資環境を整備させるための取り組みとしてそういったこともやっていただきたいと考えておりますが、この辺について、副大臣、御見解を聞かせてください。

塩崎副大臣 ただいま先生の方からODAに対するみずからのお考えをつぶさに聞かせていただきました。

 冒頭申し上げましたように、大事な血税を使ってODAを実施するからには、相手国の貧困削減とか、あるいは持続的成長の達成ということを実現するために、いかにこの我々の税金を有効に使いながら効果的な結果を出していくのかということが大事なんだろうと思うんです。

 そういう意味において、今お話しのように、当然、相手国の経済が持続的に成長するためには、民間セクターというものがちゃんとしなければいけない。ですから、インフラだけ整えたところで、民間が元気になっていかなければいけないわけでありますから、そういう面で人材の育成というのは必要不可欠な部分であるわけであります。

 今でももちろん技術協力、JICAを通じてやったりしておりますけれども、関連法制の整備であるとか、それから、今人材育成の施設みたいなものも要るんじゃないかというお話があったと思いますが、そういうことも含めて一体として、やはりトータルで考えていく。日本語教育の問題もお話がありました。技術の問題もあります。そういうことを合わせて有機的なODA経済援助というものをやっていくということが大事だと思いますので、なお不断の見直しをしながら、そういった方向に向かっていって、有効で、かつ効率的な、結果の出るODAを実現していきたいなというふうに考えております。

篠田委員 済みません、時間となりましたので終わらせていただきますが、また私はこれから、例えば今、日本国内においてなんですが、私の地元名古屋においては、有効求人倍率が一・七二になりました。非常に、単純労働作業が中心なんですが、やはりちょっと人手が足りないというような状況にもなってきています。これから外国人を労働力として受け入れるかどうかというようなことを日本が考えていかなきゃならない時期に来ていると私は思います。

 しかしながら、今、外国人犯罪がふえていったり、不法滞在の外国人がふえていったり、今国会で出入国管理法案が改正されまして、指紋の提供が義務づけられるような方向になっていくと思います。ですから、そういったものを、まず不法滞在、外国人犯罪を減らしながら、次のステップとして、外国人の労働力を日本が受け入れるかどうかというような議論にこれから進んでいくべきだと私は考えております。

 その中で、ですから、特に、日本と諸外国、東アジアを中心に人材交流をこれから活発化させていくための制度づくり、どういった道があるのかというようなことを私は、これから一生懸命頑張って勉強させていただきながら、いろいろな取り組みを進めさせていただきたいと考えておりますので、今後ともどうぞよろしくお願い申し上げ、私の質問とさせていただきます。

 どうもありがとうございました。

小野寺委員長代理 これにて篠田陽介君の質問を終わります。

 次に、谷口和史君。

谷口(和)委員 おはようございます。公明党の谷口和史でございます。

 冒頭、質問通告をしておらないんですけれども、一問だけちょっとお伺いをしたいと思います。

 それは、拉致問題についてきょうのニュースで各紙とも大きく取り上げておるわけですけれども、きのう、北朝鮮に拉致された横田めぐみさんの娘のキム・ヘギョンさんとそれから韓国の金英男さんが父親と子供の関係にある可能性が高いというDNAでの鑑定結果が出たということがございます。

 本当に通告をしておりませんので大変恐縮なんですけれども、直後の委員会でございますので、お答えできる範囲で結構ですので、御答弁いただければと思います。

 お伺いしたいのは三点。一つは今後の北朝鮮の出方について、それからもう一つは韓国との連携について、そして三点目が今後の六カ国協議への影響について、この三点について、お答えできる範囲で結構でございますので、見解をお伺いしておきたいと思います。

塩崎副大臣 北朝鮮の出方という最初の御質問でございますが、昨日、こちらの方から北朝鮮の代表に対しては、こういった事実が判明したということを伝えたわけでありまして、どういう出方をするかというのは、これは北朝鮮の出てくる出方そのものでありますので、まだ何とも言えないというところだろうと思っております。ただ、事実はきちんと伝えたということでございます。

 それから、韓国との連携でありますが、既に報道などもありますけれども、韓国での拉致被害者がどうもヘギョンさんのお父様ではないのかという確率が極めて高いという事実がわかったわけでありますから、当然、拉致問題においても連携をしながら、最終的なゴールである朝鮮半島の非核化、そして国交正常化というところも考えながら連携を深めていくということで、我が国にとって重大な問題であります拉致問題、これは国交正常化のためにはまず片づけなければいけない問題でありますから、これについて韓国と連携をするというのは、これからの当然の道だと思っております。

 それから、六カ国協議につきましても、当然、代表がおおむねそろっておりましたから、この点についても伝えてあるわけでありまして、日本の特に問題視してまいりました拉致問題というものにさらに日が、焦点が当てられるというか、そういう意味において、六カ国の議論の中でも、こういったものが韓国と日本と両方同じように抱えている問題ということが明らかになっているわけでありますので、そういったことでさらに連携を深めていくことだろうと思います。

 ただ、六カ国協議というのは、私どもとしては、無条件で北朝鮮が戻ってきてもらって議論をする中で、いろいろな問題が話し合われるべきだと思っておりますから、何しろ、北朝鮮が無条件で六者協議に復帰をしてもらうということが一番大事なことだと思っております。

谷口(和)委員 突然の質問にお答えいただきまして、ありがとうございます。

 では、きょうの私の質問に移りたいと思います。

 きょうは、先ほどもありましたけれども、ODAについて何点かお伺いをしております。

 我が党では、人間の安全保障を確実に進めるためにODAを積極的に活用していく、こういう公約をマニフェストに盛り込んでおります。

 日本のODAは海外からも高い評価を得ている、こういう認識でおりますし、四日にOECDが発表した二〇〇五年のODA実績でも、日本のODAは前年比四六・八%増の百三十一億ドルと二年連続して増加しており、額においても米国に次いで二位ということで、我が党の議員の方からもお話を伺うと、海外の要人、政府の関係者と会うと、必ず冒頭、日本のODAに対する御礼から話が始まる、こういう話も聞いておりますし、貢献という意味ではかなり成果を上げておる、こういうふうに思っております。

 その反面、ODAにまつわる不祥事や問題も起きている、こういうことも事実でありますし、また、しっかりとした外交政策、戦略としてのODAのあり方について議論されていないという見方もあります。私は、もう一度しっかりと見直していく時期ではないか、こういうふうに思っております。

 そういう中で、ODAについて、海外経済協力に関する検討会が九回行われて、二月末に報告書がまとまったわけでありますけれども、検討会では、一つは海外経済協力の政府内体制のあり方、二つ目が海外経済協力の実施機関のあり方、大きくこの二つについて議論をしてきたわけであります。

 政府内体制については、首相と、官房長官、外務大臣、財務大臣、経済産業大臣、この四閣僚、首相と四閣僚による海外経済協力会議の新設がなされ、司令塔機能が強化をされるということであります。

 少数の閣僚で機動的、戦略的に審議する司令塔が設置されることは評価するところでありますけれども、この四閣僚の司令塔を支える体制が非常に重要だというふうに思います。ODAや国際金融などについての情報を収集、分析して助言をする機能が十分に伴ってこそ、的確で素早い援助が可能になるのではないか、こういうふうに考えております。

 また、世界各国の災害や紛争後の人道支援などで実績を積むNGOや、また企業などの民間を通じて現場からの視点を援助に反映させる、こういう手だてももっと検討される必要があるのではないかというふうに思うわけですけれども、今後どのような体制づくりをされていく方針なのか、お伺いをしたいと思います。

塩崎副大臣 今回、政府系金融機関の見直しというところから、ODAのあり方そのもの、あるいは政府での意思決定のあり方、こういったものがあわせて検討されたというのは、大変ある意味でよかったのではないかと私は思っております。

 特に、今お話がありました政府内での意思の決定のあり方、あるいは実施機関の役割等々ありましたが、検討会で報告書が出てまいりましたけれども、この中で、海外経済協力会議、仮称でございますけれども、これを新設しよう、言ってみれば司令塔として、大きな方針を決める場としてこれを活用していくべきではないのか。

 今まで、少し多目の関係閣僚会議がございまして、大臣がたしか十三人もいて、十三人もいるとなかなか細かな議論や十分な議論がなされないということで、今回は人数を限って、総理、そして外務、それから経産、財務、官房長官、こういうような少ない人数で、機動的かつ実質的な物事を決める、大きな方針を決める場としてこれを活用しよう。

 そして大事なことは、やはり事務局があるということが大事でありまして、今お話がありましたように、情報を上げるところがなければ判断ができませんので、そういう意味で、少数精鋭の事務体制を内閣官房の中に設けて、そして総理以下の、司令塔の役割を果たせる閣僚の皆さんに判断をしてもらおうということでございます。

 失礼、さっき、十三省庁で十五人の大臣がいるということでございました。

 ということでありますが、その際に大事なことは、では、どこから情報を集めてくるんだということでありますが、一つは、やはり在外公館から上がってくるというのが現地のことであります。

 もちろん、在外公館での収集のあり方というときに、現地のNGOや日本のNGOや、あるいは日本の実施機関JICA等々が大きな役割を果たす機関として情報提供をするわけでありまして、そういったものを戦略的に判断するために、今度はこの日本において、今お話があったように、NGO、民間企業、そういったところの国民のグラスルーツの声を生かしながら、経済協力に反映していこうということではないかというふうに考えております。

 ODAタスクフォースというのが在外公館にもう既にできているところでありますけれども、これをさらにパワーアップするということでありますし、それから外務大臣のもとにODA総合戦略会議というのが既にあって、NGO等々入っておりますけれども、これについてももっとパワーアップをしていくべきではないか。

 そういうことで、重層的な情報と判断した情報を司令塔に上げて大きな方向を決めるとともに、各省庁間での議論がきちんとなされるようにし、それからもう一つは、やはりまとめの中心は外務省でありますから、外務省の中の機構も改革をして、総合的な外交との連携等々、今までにない有機的かつ有効なODAの判断ができるような体制を外務省の中でもやっていこうということで、今組織改革を検討中でございます。

谷口(和)委員 ぜひ万全のサポート体制をお願いいたしたいと思います。

 一方、先ほどのポイントの二点目の実施機関の一元化ということですけれども、これについてはいろいろなメディアでちょっと批判めいたコメントが出ておりますけれども、例えばこういうのがあります。

 実施機関がJICAに一元化されることも確かに大きな改革に見える、しかし、円借款については、財務の健全性の確保を名目にして、外務、財務両省などの協議、連携体制が続く、省庁側の関与がしっかり温存された格好である。

 もう一つは、円借款部門の長の格も現在のJBIC総裁と同等とする、JICAの中に事実上、二つの組織が存在することになる、こんなわかりにくいことになったのは、各省の権益保持争いの結果にほかならない。

 こういった批判がメディアで出ているわけですけれども、このような批判に対して、外務省としての見解を伺っておきたいと思います。

塩崎副大臣 今回、改革の対象になりましたJBICにつきましては、御案内のように、旧輸銀と旧経済協力基金が一緒になったものであるわけでありますが、そもそも、そのときにもさまざまな議論が実はありました。

 今回、ポイントになったのは、円借款と無償と技協のシナジー効果が大きいのか、それとも、いわゆるOOFというか旧輸銀部分と円借のシナジー効果の方が大きいのかという議論が本質だったと思います。

 結果としては、ODAの三つの主なツールである円借と技協とそれから無償、やはりこれを一体化してやる方がODAとしてのシナジー効果が大きいだろう、こういう結論になったわけであります。

 新聞、マスコミ等々は、権限争いのようなことでおもしろおかしく書いていただいておりますけれども、私どもとしては、まず第一に、この体制は今まだ制度設計中ということでありますので、何とも言えないところでありますけれども、はっきりしていることは、新しいJICAは外務省が所管をする、外務大臣が所管をするということがまず第一点であります。

 そして、円借款につきましては、現在は、外務省が所管をし、財務省と経済産業省と相談しながら三省体制で実施しているわけでありまして、これは基本的には変わらないということでございます。

 それから、今申し上げたように、JICAに三つの手法を一緒にすることに当たっては、各手法間の連携強化がこれまで以上になされなければ、そのシナジー効果は期待するものが出てこないのじゃないかということで、その点については大いに意を尽くしてまいりたいと思っておりますけれども、今御指摘のような、円借款部門の長がJBIC総裁と同格となってJICA内部に事実上二つの組織が混在するというようなことはあり得ないし、考えてもいないということでございます。

 実施機関に任せるところは任せ、そして司令塔が明確な方向性を示しながら、小さな政府の流れに沿った改革を行いながら国民が納得できるODAを実施していくということではないかなというふうに思っております。

谷口(和)委員 ぜひ国民に納得していただけるODAの改革を進めていただきたいと思います。

 ちょっと論点を変えまして、ODAに関する法律という観点からちょっと質問していきたいと思います。

 そもそも、日本にはODAに関する法律がございません。しかしながら、私は、しっかりとした枠組み、法律をつくっていく必要があるのではないか、こういうふうに思っておりますし、我が党も一貫してODA基本法ということを訴えてまいりました。

 今月二十日に、先ほどもお話がありました海外経済協力会議が恐らく初めて開かれるかと思うんですけれども、まず、ODAを供与する相手国を選別する基本的な考え方を明確にここで決めるべきであり、世論がそれを納得し、了承してから、援助組織の見直しや予算の配分に進むべきではないかというふうに考えます。

 核開発を進め、核を保有する国、それから軍事費をふやしている国、こういった国になぜODAを出すのだ、こういう批判もありますし、また、ODA大綱の中の四原則、これを遵守する必要もあるのではないかというふうに思います。

 十五年八月の政府開発援助大綱、ODA大綱の骨子の中には、一つは環境と開発の両立、二つ目に軍事的用途の回避、それから三つ目に軍事支出、大量破壊兵器等に十分注意をする、四つ目に民主化、人権等に十分注意をする、こういった援助実施原則があるわけですけれども、これがあいまいになってきているのではないかというふうに思います。

 このあいまいな部分をなくしていくためにも、ODAの基本的な方針、ODA基本法なるものをつくっていく必要があるのではないか、こういうふうに考えるわけですけれども、見解をお伺いしたいと思います。

塩崎副大臣 今御指摘のように、これといった明快な法律に基づいて相手国を決めているわけではないわけでありまして、今お話がございましたように、ODA大綱の中の援助実施の原則というものがあって、それに照らしながら、開発途上国の援助需要であるとか、経済あるいは社会の情勢を考慮に入れ、なおかつ、先ほどもちょっとお話が出ましたけれども、二国間で外交関係を総合的に判断するという中で相手を決めていくということが今までのやり方だったと思います。

 核実験をやった国に対してどうするのかというのは悩ましいところで、それを再開する際に何の原則でもってやるのかということがいつも議論になるわけでありまして、そういう意味では、やはり総合的に判断をするとしか言いようがないところがあるのかなということで、機動的かつ柔軟に対応するということが必要なわけでありますけれども、ODA大綱の四原則、御指摘のとおり、これを十分に踏まえながら戦略的に決めていくことだろうと思います。

 ODA基本法については国会の中でもさまざまな御意見があって、御党でもあるいは自民党でも意見はさまざまでございます。

 したがって、大事なことは、ODAの透明性を確保しながら、国民の理解と支持を得られるようなODAを出す指針になるようなものをどう考えるかということであろうと思いますので、このODA基本法についても、やはり将来的に検討し得る課題というふうに考えるべきで、その場合でも、ODAの機動性と柔軟性を損なうようなことがないようなものになることを念頭に入れながら引き続き議論をしていくべきではないのかなというふうに考えております。

谷口(和)委員 将来的に検討し得る課題というお話でしたけれども、ぜひ検討していっていただきたい、こうお願いをしたいわけでございます。

 続きまして、これまでのODAの問題の一つとして、援助の現場において、先ほどもお話がありましたけれども、現地ODAタスクフォースが設置され、援助効果の向上に成果を上げつつ、その一方で、その上流にあります国内の対外経済協力関係閣僚会議を初めとする現行の政府内システムの機能が十分に発揮をされていないのではないか、こういった指摘もあります。

 それから、ODAの総合的な戦略というものが国民の目からよく見えないという声もよく聞きます。

 ちょっと冒頭の質問とも関連をいたしますけれども、戦略の具体的な中身について、常に公にできないということは当然のことでありますけれども、だれが、いつ、どこで、どのような戦略的な判断を行い、責任を負う体制になっているのか、このことを明確にしておく必要があるのではないかというふうに思っているわけです。その点について見解をお伺いしたいと思います。

塩崎副大臣 先ほども若干触れたところでございますけれども、この対外経済協力関係閣僚会議というのは十三省庁で十五人の閣僚が参加するということで、やや機動性に欠けていたわけですね。ということで、総合的に対外戦略としてODAを決めるという場がやはり司令塔として必要だろうというのが、今回の官房長官のもとにできた検討会の報告書のコアだろうと思うんですね。

 そういうことで、今後は、やはり今御指摘のような、国民にも説明可能な、重大な、重要な司令塔的な役割を果たす頭脳部分というものがODAにも必要だということで、この検討会で提案をされました海外経済協力会議、まだ仮称でございますが、ここでもって機動的に判断をしていくということで、総理、官房長官、外務大臣、財務大臣、経産大臣、これらの方々に決めていってもらおうということであります。

 さっきもちょっと申し上げましたが、大事なことは、いつも事務局というのがきちっとした材料を上に上げて、判断材料として十分なものを上げられるかどうかということが大事でありますので、少人数ではあっても有効な事務局をきっちりと備えていく。そのためにも、外務省が一番のこのODAの中心でありますので、ここもやはり有機的な役割を果たせるだけのパワーアップをしていかないといけないということで、今、組織改革を含めて検討し直しているというところでございます。

    〔小野寺委員長代理退席、委員長着席〕

谷口(和)委員 次に、中国、対中のODAについてちょっとお伺いをしたいと思います。

 先月三月二十三日に、二〇〇五年度、平成十七年度の中国向けの新規円借款について年度内の供与決定を見送る、こういうことを先般決めたわけでありますけれども、メディアでは、小泉総理の靖国参拝をめぐる非難の応酬や東シナ海のガス田開発協議の難航など日中関係が悪化していることから、ODAの供与に対する理解が得られない、こういったことが背景にあるのではないかという報道もなされております。

 我が党の神崎代表も、あらゆる手段を尽くして日中関係改善の努力をしなければならない、先送りして何の意味があるのかというふうに述べておりますし、私も同感であります。今回のODAの先送りというのは日中関係をさらに悪化させてしまうのではないかというふうに懸念をしております。

 これまでの中国に対するODAは、従来のインフラ整備ではなくて、大気や水質の汚染、それから温暖化防止の環境対策、こういったところにシフトしてきておるわけでありますし、お隣の、お隣というか、中国の深刻化する環境問題とかエネルギー消費問題を一刻も早く改善することは、我が国の国益にとっても大きな意味を持っている、こういうものだというふうに思います。

 その意味で、今回、対中ODAを、新規の円借款の供与の決定を見送ったということは理解しがたいものがありますし、この決定が今後の日中関係にどのような影響をもたらしていくのか、それから今後の対中ODAのあり方についてはどうお考えなのか、そして円借款の供与決定の見通し、今回延期をした、先送りをした決定の見通しというのはいつごろになるのか、この点についてお伺いしたいと思います。

塩崎副大臣 まず第一に、特定の問題と今回の決定をリンクさせているわけではないということは明確にしておきたいと思っております。

 それからもう一つは、先生御指摘のように、環境であるとか、感染症であるとか、そういった日本国民の皆さんにも十分納得のできる内容でないとなかなか難しいねということについても、それは十分認識をした上で内容については決めていくという方針であることを明確にしておきたいとまず思っております。

 そこで、今回、二〇〇五年度、平成十七年度の対中円借款の決定についてでございますけれども、さまざまな日中関係を取り巻く情勢というのがあって、その中で、政府部内の調整、そしてまた与党といっても特に自民党でございますが、この中で結論を得るには少しまだ時間が要るなということで年度内の供与の見送りを決定したということでございます。

 しかし、御案内のように、北京のオリンピック、二〇〇八年にございますけれども、そこまでに新規の円借款の供与は円満に終了させるというのが昨年の中国と日本との外務省の間でできた了解事項だろうと思っておりますので、これまでの日中間の協議内容に基づいて進めていくという政府の方針は何も変わらない。そして、日中関係の今後の状況を踏まえながら、早期の供与が可能になるように政府部内の調整を鋭意進めていくという考えでおるところでございます。

 そして、もとより、この問題によって日中関係全体に影響を与えることがあってはならないというふうに考えていることは明確にしておきたいと思うわけでございますので、そうした観点から、今後鋭意調整を進めてまいりたい、このように考えております。

谷口(和)委員 ぜひ日中関係の改善に向けて慎重に判断をお願いしたいと思います。

 もう時間がありませんので、最後に一点、イラクについてお伺いをしたいと思います。

 我が国はイラク現地の復興活動に深くかかわっておるわけでありますけれども、自衛隊の復興支援活動に係る日本の支援活動を示さないまま、まだ時期ははっきりしませんけれども、自衛隊の撤退を決めることは無責任であり、我が国に対するイラク国民の感情が悪化するおそれがあるかというふうに思います。

 三月二十七日に、イラクに対して、自衛隊が駐留するサマワやムサンナ県を中心に、火力発電、港湾整備、かんがいの三分野に約七百六十五億円の円借款を供与することを決定したことはその一環であるというふうに思うわけであります。

 しかしながら、前の質問でもありましたように、イラクの治安は一向に改善の兆しが見られない。自衛隊の撤退後も直ちに政府要員や民間団体が現地で活動できるという状況であるというふうには思えないんですけれども、この円借款事業の実施時期についてお伺いをしておきたいと思います。

塩崎副大臣 今回の円借款につきましては、二〇〇三年の十月のマドリッド会合で、円借については三十五億ドルを最大で支援するということをお約束したもので、その中の三つの案件ということでございます。

 先ほどイラクの質問の中で大臣からもお答え申し上げましたように、さまざまなプロセスが進む中で、今イラク人による新たな国づくりが進みつつあるわけでありますけれども、このイラク人による復興と国づくりの努力を後押しするために我々は支援をするということであるわけであります。

 したがって、円借款を供与するにつきましても、イラクの新政府が発足をして、その後円借款の供与に関する交換公文を署名してこれらの案件を速やかに実施していきたい、こう考えているわけでございまして、また、今後のさらなる支援案件をできるだけ早期に決定できるようにイラク側との協議や調査を続けてまいりたい、こう思っているわけであります。

 やはり何といっても、新しい政府がきちっとできるということが前提でございますので、我々としてもその政府が早くできることをまたバックアップしていきたい、このように考えております。

谷口(和)委員 時間が参りました。

 財政難の中、国民の願いは、本当に役に立つ援助であってほしい、こういう思いであるかというふうに思います。ODAが国民の血税によって成り立っているというこの原点に立ち返って、姿の見える援助に向けて国民の理解と支持が一層得られるようにしていきたい、私もこういう思いであります。この思いを最後にお伝えして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

原田委員長 次に、松原仁君。

松原委員 これは既に、ことしの二月でありますが、日中両政府は、旧日本軍が戦時中に中国に残した遺棄化学兵器を処理するための共同事業主体、日中連合機構、仮称を近く設立する方針で合意したと。従来から、この遺棄化学兵器の問題については、日本政府はこれを解決するために取り組んでいるということでありますが、現状、簡単に、どうなっているか、お伺いいたします。

高松政府参考人 お答え申し上げます。

 遺棄化学兵器は、現在中国各地で発見されております。その中でも特に大量に発見されておりますのは、吉林省のハルバ嶺という場所でございますが、その吉林省のハルバ嶺におきまして、私どもの推定しております三十万発から四十万発といった旧軍の遺棄化学兵器を、環境と安全に十分配慮しつつ、中国の法律にのっとって迅速に発掘回収し廃棄する、こういった全体としての処理事業を進めております。具体的には、ハルバ嶺に大規模な発掘回収施設及び実処理施設を建設する予定でございます。

 他方、このハルバ嶺事業を中国国内で実施するためには、中国政府によりますハルバ嶺事業に対する事業承認、こういったものが必要でございます。私どもとしては、早急にこれを得て事業を開始するため、現在日中間で事業主体を設立することについて種々調整協議を行っております。

 事業主体の具体的な役割、業務等についてはまさに現在交渉中でございまして、具体的な内容についてはここで言及させていただくことは控えたいと思います。

松原委員 この遺棄化学兵器の問題を日本で取り組むということでありますが、既にこれは行われてきたわけでありますが、どれぐらいの予算というかそれが使われたか、教えてください。

高松政府参考人 お答え申し上げます。

 現在まで内閣府が実施しております処理事業につきまして申し上げれば、実際の執行額は約三百十五億円でございます。

 他方、外務省が現地調査といった側面で執行している部分もございます。

松原委員 これは、外務省の方は、数字出たら教えてください。出ませんか。出なければ結構ですが。

 それでは、今後、このことでどれぐらいの予算が必要となるだろうか。大体の数字で結構でありますが、教えていただきたい。

高松政府参考人 ただいま御説明申し上げましたとおり、ハルバ嶺に大規模な発掘回収施設及び実処理施設を建設する予定でございます。このうち、発掘回収施設の建設に要する費用は、内閣府におきまして約九百七十三億円と現在見積もっております。

 他方、実処理施設につきましては、その発掘回収施設の北方四キロメートルぐらいのところに建設する予定でございますが、現在、具体的な技術あるいは設計につきまして作業を進めております段階でございまして、具体的に、最終的にどのような施設整備とするか、非常にまだ不確定要因が多く、確たることは申し上げられない状況でございます。

 いずれにしても、そういった状況で現在日中間で交渉が行われているということを御承知いただければと思います。

松原委員 平成十年の外務委員会の松沢委員の質問の中で、当時一兆円を超すだろうというふうなことを質問しているわけであります。これに対して当時の小渕国務大臣は、具体的にそのことについて、それを超えるとか超えないとかという答弁はしていないわけでありますが、かなりの金額がかかるだろうと思っております。

 これに関しては、金額のかかる理由も幾つかありまして、例えば十七年、昨年の十一月の産経新聞では、「例えば施設建設に伴う森林伐採では、国際価格の数十倍という法外な代償を認め、要員宿舎はプール付きの豪華版としている。」と。例えば、「用地造成に伴う森林伐採で中国が要求した代償は「シラカバ一本百ドル」。しかし、シラカバは一般に製紙用以外に用途がなく「樹齢にもよるが二、三ドルが国際相場」とされ、日本は常識はずれの費用負担を強いられている。」とか、プールの問題も今言いましたが、こういう極めてめちゃくちゃな、吹っかけられた数値のお金が払わされているんではないかということが、これは産経新聞にも記述があるわけでありまして、この辺はきょう時間があればさらにチェックをしていきたいと思っておりますが、とりあえず、この遺棄化学兵器というのはどういうものを指すのか教えてください。

佐渡島政府参考人 お答え申し上げます。

 化学兵器禁止条約によりますと、遺棄化学兵器とは、一九二五年一月一日以降に、ある国が他の国の領域において当該他の国の同意を得ることなく遺棄した化学兵器というふうに定義をされております。

松原委員 今回のこの遺棄化学兵器の問題は、私は三つのポイントがあるというふうに思っております。

 一つは、これが遺棄化学兵器というふうに我々は認めて、実際それだけの金額を出しているわけでありますし、これからも大きな金額を出すことになるかもしれない。これが遺棄化学兵器という中に当てはまるのかどうか、これが第一の問題であります。

 これからさまざまな文献を皆様に御紹介いたしますが、明らかに、武装解除したときに、遺棄をしたのではなくて、中国の当時の国民党軍に渡している、ソ連軍に渡しているということが文書でたくさん残っているわけでありますし、そのことはもうほぼ実際証明されているというふうに私は思っております。中には、この後でも触れますが、報道によれば、中国軍が化学兵器をみずから埋めたこともあるというふうな報道もなされているわけであります。

 二つ目に、遺棄化学兵器と称されて地中に埋まっているものがすべて日本製のものかどうかということに対して、我々は極めて疑いの目を持っているわけでありまして、このことに対しては、過日、東京の高等裁判所で議論がありました。その中において、この遺棄化学兵器と言われるものの中に日本製でないものが発見されたというふうな記事がきちっと載っているわけでありまして、それも後で触れていきたいと思っております。

 そして、三つ目には、今私が申し上げましたように、通常二ドルから三ドルのシラカバを百ドルで伐採し、その補償を日本政府がするというような、こういうばかげたお金を、日本は金満国家ということで垂れ流している。

 この三つのポイント、どれをとっても、私は日本の国が余りにも誇りを失った行動をしていると言わざるを得ないというふうに思っております。

 そこで、お伺いいたしますが、なぜ日本において、このさまざまな化学兵器を遺棄化学兵器として認定したのか、理由を教えていただきたい。

麻生国務大臣 これは松原先生、これまで現地に調査団を派遣して、専門家による砲弾の鑑定、いわゆる旧日本軍がつくった砲弾の形態とその他の形態は違っておりますので、砲弾の形態等々、実施しておりますが、その際に、サンプル調査を行った砲弾、いっぱいありますね。そのサンプル調査を行った砲弾、外形上の形態から、旧日本軍の化学兵器が遺棄されたものということは確認されているというのが背景であります。

松原委員 今の大臣のお話は、遺棄されているというか、埋められているというのは事実かもしれないけれども、それを日本軍が遺棄したのかどうかという議論には当然至っていないわけであります。

 では、ここでちょっと政府の方にお伺いしたいんですが、当時、中国もソ連もさまざまな化学兵器をつくっていたというふうに日本政府が裁判で争っているんですが、このことについて、中国もソ連も当時化学兵器をつくっていたということでよろしいんですね。

佐渡島政府参考人 お答え申し上げます。

 私ども、資料から承知する限りはそのようなこともあったと承知をしております。

松原委員 つまり、中国もソ連も化学兵器をつくっていたということを、いや、承知しているに決まっているんですよ。だって、政府が裁判でそう言って主張しているんだから。逆のことを本当は言いたいかもしれないけれども、裁判で言っている以上、それは認めざるを得ないわけです。

 では、中国国内に当時の国民党軍がつくった化学兵器はどういう処理をされたと考えているのか。私は、当然、それだったら最終的にどこかで遺棄をされたと思うけれども、どれぐらいの中国製の化学兵器が中国に遺棄されているのか、どれぐらいの数のロシア製の化学兵器が中国国内に遺棄されているのか、教えてください。

佐渡島政府参考人 私ども、それに関しての数字は持ち合わせておりません。

松原委員 これは異なことをおっしゃるけれども、中国が最初に二百万発とかなんとかと言ってきた。これは、いろいろな資料を見ると、例えばある資料によりますと、五十二発の砲弾が回収され、このうち十発が旧日本軍のものと確認されたと。これは、時事通信が二〇〇四年六月二十五日に言っている。十発が旧日本軍のものと確認されたということは、残りの四十二発は確認されなかった。これは細かいことを言っても恐らく今はわからないでしょうが。

 そうすると、この四十二発も日本がお金を出して当然処理しているんじゃないかと思うんですけれども、何かおっしゃいますか。言えるんだったら何か言ってください。

高松政府参考人 中国各地で日本の遺棄化学兵器が多数発見されているわけでございますが、そのときには、化学兵器だけではなくて、通常兵器も同時に埋設等されていることが多々ございます。その場合には、中国側が日本の化学兵器以外の部分はすぐにその場で引き取る、こういうことで今まで対応しております。

松原委員 言っていることと違うことを答えてもしようがないんだよ。五十二発の遺棄化学兵器の発掘が行われて、では、五十二発というこの報道は、これは化学兵器じゃない五十二発、こういうふうに理解した方がいいんですか。

佐渡島政府参考人 お答え申し上げます。

 その今委員の御指摘にありました個々の事例については承知しておりませんが、私も現場に行って参加をしたことがございますけれども、掘り出したうち、私どもが調査の対象にしておりますのは、日本軍、旧軍の残しました遺棄化学兵器がどれぐらいあるか、こういうことでございます。

 したがって、五十二発中十発というのは恐らく、これは推測で大変恐縮でございますけれども、砲弾が出てきたうちの十発が旧軍の遺棄した化学兵器ということで認定をされたということだと思います。したがって、逆に申し上げますと、それ以外についてはほかのものもまじっていた可能性はもちろんございますけれども、遺棄化学兵器が五十二分の十であった、こういうことでございます。

松原委員 遺棄化学兵器が五十二分の十だったということは、その部分に関しては日本の国がさまざまな経費を持ちましょうと。四十二発は違うということですね。

佐渡島政府参考人 お答え申し上げます。

 遺棄化学兵器ではなかった、こういうことでございます。

松原委員 いろいろな議論がある中で、私がここで言いたいのは、例えば四月二十六日第一回口頭弁論で、旧日本軍が中国に遺棄した毒ガス兵器などのため三件の事故の死傷者が出たとして、中国人被害者らが日本政府に損害賠償を求めた。日本政府が訴えられたわけであります。この中で、日本側が訴えられた三つの事故のうち、黒竜江省牡丹江市で四人が死傷する原因となった致死性イペリット、マスタードガス入りドラム缶サイズ、直径五十センチ、高さ八十五センチだった。これに対して、関連資料や国の現地調査などで、旧日本軍のものかその可能性が高いとされた化学剤ドラム缶は直径四十六センチから四十七センチ、高さ七十一から七十四センチ、一回り小さい。また、ドラム缶には過去に旧日本軍製と確認されたものにはないBHの表記があったというふうなことで、十分係争しているわけです。

 私がとりあえず申し上げたいのは、日本の遺棄化学兵器ということでいろいろな議論があって、莫大な数字を中国も言ってきているけれども、その中に日本軍のものではないものがたくさんあるよと。この認識は持っているんですね。

佐渡島政府参考人 お答え申し上げます。

 日本軍のものがたくさんあるよというところまでは、私ども、数字を具体的に持ち合わせておりませんのでわかりません。私どもが対象にしておりますのは、日本が費用負担を負ってやるべきものをきちんと確認して作業するということでございますので、その部分はきちんと確かめている。その余につきましては、正確に申し上げれば、データ的にはわからないということでございます。

松原委員 これは、日本はいわゆる条約に基づきまして、化学兵器禁止条約に基づいて、二の六ですか、やっていると。

 化学兵器禁止条約に基づいてロシアは中国における回収作業をしているんですか。

佐渡島政府参考人 少なくとも、私どもは承知はしておりません。

松原委員 ロシアの化学兵器は私はあると思うんだけれども、ロシアの化学兵器は遺棄されていない、こう確信しているんですか。

佐渡島政府参考人 お答え申し上げます。

 ということではございません。私どもは、ロシア・中国間でどのようになっているかということをつまびらかにしないということを申し上げております。

松原委員 ということは、遺棄化学兵器に関して、金を出して、この遺棄化学兵器をこの化学兵器禁止条約二条六項に則して解決しようとしているのは日本だ、こういうことですね。

 そうすると、日本が遺棄化学兵器を見つけたとき、今までロシア製のもの、いや、そういうものはわからないとあえて外交的に言うならば、日本製のものと日本製じゃなかったものの数値というのは確認していますか。

高松政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま手元に、個別の発掘回収事業におきまして、どの程度旧軍のものであると確認されたものあるいは確認されなかったものがあるかという数字はございませんが、実際、現場では、一発一発、これが旧軍のものかどうかすべて確認して、旧軍のもののみを発掘回収しております。

松原委員 これは、そのロシア製がどれぐらいあるかとか、やはりそれは日本がこの化学兵器禁止条約に基づいてやっているんだから、日本製のものが何発で他のものが何発でというのは次の機会にお伺いしますよ。

 だから、ここまでの部分というのは、我々が百歩譲って、千歩譲って、遺棄したという前提でも、実はそこに旧国民党軍の遺棄化学兵器もありますよ、ロシアのもありますよという話ですよ。それを一緒くたに全部日本が金を出してやるようなばかなことがあっちゃいけない。筋が通らない。金の出し方だって、さっき言ったシラカバ一本二、三ドルを百ドル出すような、これを産経新聞が間違って書いたんだったら産経新聞を訴訟した方がいいんですよ。

 私が次に申し上げたいのは、では、遺棄されたのかどうかです。遺棄されたということの認定に関して、当時、阿南さんが答弁しているけれども、極めてあいまいもことした答弁をしている。

 さまざまな資料を見ると、当時の日本軍は極めて整然として行動してきたということが言われているわけであります。これはコピーでありますが、外務省が昭和三十年の三月一日に発行した日本外交年表並びに主要文書、こういう文書があります。こういう文書ありますよね。

佐渡島政府参考人 大変申しわけございませんが、今ちょっと手元にございませんので、お答え申し上げられません。

松原委員 少なくとも遺棄化学兵器のことで担当でやっているんだったら、既に頭から遺棄されたという前提で取り組むということもそれは大事かもしれぬけれども、大事かもしれぬというか、そうしないと自分が納得できないのかもしれぬけれども、見ればおかしいというのはわかるんですよ。

 この外務省が出している日本外交年表の中に、六百三十九ページから、降伏文書並びに一般命令第一号というのから始まって、そこに書いてある。そこの六百四十一ページに書いてある。「日本国大本営ハ更ニ日本国国内及国外ニ在ル其ノ指揮官ニ対シ何レノ位置ニ在ルヲ問ハス一切ノ日本国軍隊又ハ日本国ノ支配下ニ在ル軍隊ヲ完全ニ武装解除シ且前記連合国指揮官ニ依リ指定セラルル時期及場所ニ於テ一切ノ兵器及装備ヲ現状ノ儘且安全ニシテ良好ナル状態ニ於テ引渡スヘキコトヲ命ス」。これは外務省が出した文書に書いてありますよ、記録で、「引渡スヘキコトヲ命ス」と。これは引き渡したということで理解していいんですよね。ちょっとお伺いしたい。

佐渡島政府参考人 お答え申し上げます。

 ポツダム宣言の第九項に基づきまして、連合国の司令官の一般指令第一号ほかによりましてそういう命令が出されたということは、そのとおりでございます。

松原委員 引き渡しているんですよ。引き渡している。

 いや、資料、これだけじゃないんです、たくさんある。これは、服部卓四郎さんという方が書いた書物の中で、「大東亜戦争全史」という中にある。時間がないので詳しくは読まないけれども、その九百六十三ページに、大陸命特第一号、また別のものですね。「兵器及装備を関係連合国指揮官の指定する時期及場所に於て現状の儘且安全良好なる状態に於て該指揮官又は其の指定者に交付す」。これも命令で出ていますよ。

 こういった日本軍の状況を見て、マッカーサー元帥が十月十六日に、全世界に向け日本軍の武装解除完了について放送演説を行った。「かくも速かにかくも摩擦なく武装解除が行はれたことは史上その例を知らない」とマッカーサーが言っているんですよ。整然と武器が渡されている。

 防衛研究所にも問い合わせました。防衛研究所の中にもさまざまな当時のデータがある。その中で、これは大陸指第二千五百四十四号という中に、全部を言っていたら切りがないですから、「関東軍総司令官ハ戦闘行動ヲ停止スル為「ソ」軍」、ソビエト軍ですね、「ニ対スル局地停戦交渉及武器ノ引渡等ヲ実施スルコトヲ得」。

 もうみんなが聞いてきたんですよ。日本は、玉音放送で、無条件降伏をこの戦争において行った。しからば、当時、ソビエト軍も中国軍も、中国国内ではいわゆる国民党軍と共産党軍が激しい戦いをやっていて、両方とも日本の軍隊の兵器が欲しい。一般兵器も含め、化学兵器も欲しいんですよ。渡せと言ってきたとき、渡していいんですかというふうな問い合わせがあったので、渡すことを得。これは遺棄されたというんでしょうか。

 大陸指第二千五百五十二号、これは別の文書でありますが、「支那、台湾、北緯十六度以北ノ仏領印度支那ニ於テハ蒋介石ニ対シ実施スルモノトス」、引き渡しを実施するものとすということですよ。これは遺棄されたと言えるんですか。

 まだある。これは防衛庁防衛研修所から出された書物でありますが、この中に書いてあるのは、総司令官は九月一日、停戦協定に関する事前稟議事項として左記を中国側に申し入れた。一、武装解除、一度大命を拝した以上は武器を引き渡すが、しかしながら、相当長期にわたる滞留間の自衛上最小限の自衛兵器の携行は認められたい。渡しているんですよ。

 さらに、この本の五百六十一ページには書いてある。今井少将という方が、中国側と戦後に打ち合わせをしている。中国側の代表たる中国陸軍総部参謀長、中将ですよ、その方と同副参謀長、これは冷欣中将というんですかね、中国人の方ですね、及び中国戦区米軍参謀長バトラー准将並びに通訳たる王武上校と会見し、停戦に関する協議をした、今井少将は。そのときに、派遣軍は今や自衛のもの以外戦闘を全部中止した、武器軍需品諸施設は一切破壊焼燼を厳禁し、完全なる状態をもって中国側に交付する準備を整えている、これはアメリカの准将も一緒になってこういうふうな議論がなされている。

 さらに、個別具体的な話がたくさんこの中に書いてある。

 例えば、これは総括としては、「各地区の兵団部隊は、大部分は九月中に、一部は翌十月中に逐次各地区ごとに降伏文書に調印し、かつ、武器を委譲した。」と。委譲した。

 これは包頭部隊、包頭部隊は九月二十四日降伏式、同二十六、二十七日武器引き渡しを終わった。報告が上がっている。これは天津地区、「十月六日降伏調印式を挙行した。中国軍未着のまま米軍は接収を開始し、」どうもこれは米軍に武器を渡しているんだ。では、米軍が遺棄したということになるのか。

 これはたくさんある。武装解除に引き続く兵器等の引き渡しを行った。これは別の場所ですよ、第五戦区司令長官。例えばほかの、西峡口西側山地の軍司令、連隊長は大佐、「この開封で三十余隊計八千余名を併せ指揮して、十月上旬から約二週間にわたって武器を委譲し、」こんなことばかりが書いてあって、これは武器をロシア軍と中国軍に渡しているんですよ。

 埋めたのはだれが埋めたんですか。こういう記述が詳細に残っているのに、我々は、我々のこのかなり厳密な記述を信じないんですか。お答えいただきたい。

佐渡島政府参考人 お答え申し上げます。

 そういうふうな武器の引き渡しということがここに記録に残されていることはあるかとは思いますけれども、他方におきまして、現段階におきまして私どもが把握しているところでは、旧軍によります化学兵器の残置ということが、中国あるいは旧ソ連の同意のもとに組織的に行われたということを裏づける資料が乏しいということで、少なくとも、中国あるいはソ連がこうした化学兵器の残置ということについて同意をしていたということを示す明らかな根拠がない限りにおきまして、現在中国に残されております旧軍の化学兵器は、私どもが条約上の廃棄の義務を負っております遺棄化学兵器に該当すると考えております。

 それで、そのことに関しましては、平成十年の十一月までに各国に、そういうことで記録が残っていないだろうかということを照会いたしましたけれども、そのような同意を与えたという回答はありませんでした。

松原委員 しゃべっている御本人が説得力ないなと思ってしゃべっていると思うんですよ。これだけきちっとした具体的な話がディテールにあって、一カ所じゃないんですよ、たくさんあるんですよ。全部データは残っているでしょう、日本に。

 要するに、中国側に言われたらどんどん金を出したい、我々は謝罪外交を続けますと。だからこういうことをやっているんじゃないですか。既にお金を出しちゃったから、今さらあれは遺棄兵器でありませんと、それは言えないですよね。でも、今言った三つのポイントを考えたときに、私は、こんなことをずっと続けていたら、もうそれは中国側から見たら日本というのは背骨のない国家だという話になると思うんですよ。

 時間が来ましたから、最後に麻生大臣にお伺いいたしますが、大臣も、総理を目指すお立場から、あの遺棄兵器はでっち上げだったと言いたいけれども言えないだろう、しかし精いっぱい答弁いただきたい。

麻生国務大臣 松原さん、私どもとかここにいる伊藤公介先生は、この世代、生きていますので。生きていたんですよ。その時代のことを、引き揚げてきた人たちから実際体験としてみんな聞かされた世代なんですよ、我々は。だから、後の歴史の本だけを読んでいるわけじゃなくて、当時の現場は混乱の極にあったと思いますね。

 だから、そういった意味では、事実、現地の混乱状態で、置いていってくれと言われたこともあったろうし、とてもじゃないからと捨てていったものもあったろうし、いろいろなものがその中にあったんだろうということは想像にかたくないところでありますので、これまでの経緯もこれあり、なかなか答弁の難しいところだとは思いますけれども、おっしゃるような事実もまたあったというのは、私どもとして、そういうことは全くなかった、すべてにおいて、これは全部日本が遺棄していったものだというようなことではないのではないかという点は、私もそれはそう思います。

 だけれども、ただ、そこのところは、証明するということになると、書類やら何やらということになると、向こうが判こを押してないとかあるとか、何とかかんとかいうような、事実だけで争うということになりますと、これまた全然別の次元の話になってくるということなんだと存じます。

松原委員 終了いたしますが、率直に言って、これだけ具体的であれば、しかも、くどいようでありますが、マッカーサーが、「かくも速かにかくも摩擦なく武装解除が行はれたことは史上その例を知らない」と。日本軍はそれなりに規律、きちっとしていたんですよ。私は、このことをはっきり認めることは、我々の先人に対する思いの中できちっとしなければいけないと思いますし、ぜひとも、こういったことを含め、対中関係に関しては、単に自虐的ではない外交を切に外務省には望んで、きょうの質問を終わります。

 以上です。

原田委員長 次に、山口壯君。

山口(壯)委員 民主党の山口壯です。

 きょうは、大臣に、日米安保条約のいわゆる対日防衛義務と言われているもの、ディフェンスコミットメントとよく言われていますけれども、そのことについて、そもそも安保条約が五一年に結ばれたときにどうであったかということを、一度、委員会でも少し短時間で触れましたけれども、あのときはもう本当に短時間で触れただけなので、実際に原典をきょうは全部当たらせていただければと思うわけです。

 まず最初に、このお配りさせていただいた一ページ目と二ページ目は、五一年の旧安保条約と、二ページ目から新安保条約になっているわけです。最初に大臣に確認させていただきたいんですけれども、五一年の旧安保条約ではアメリカのいわゆる対日防衛義務が定められなかった、こういう理解をまず共有させておいてください。

麻生国務大臣 いわゆる旧安保条約、一九五一年に調印された旧安保条約におきまして、米国の日本防衛義務が文言上明確に規定されていなかったという話は事実です。

山口(壯)委員 確かに、旧安保条約では、日本が有事のときにアメリカから守られるということが規定されなかったわけですね。しかし、これが日本にとっては一番実は大事なことだったわけです。

 三ページ目の英文ですけれども、これはもう外交文書が公開されている中のもので、一九五一年の七月の末にアメリカ側から示されてきたものです。アメリカ側は、いかにして日本に対するコミットメントをゼロに近くするか、これに物すごく腐心していたわけです。当時は、次の大戦はヨーロッパで行われるというふうにアメリカはみんな信じていたわけですから、極東、東の端で足をとられてはかなわぬということが、特にペンタゴン、国防省の中には強くあったわけです。

 そのことを踏まえて、例えば、当時、これは実現しなかったけれども、太平洋協定というものまでアメリカは出してきたんです。要するに、みんなで守ることにして、アメリカの日本に対するディフェンスコミットメントをどれだけ減らすかということを物すごく苦心した。

 結局、多国間協定には至らなかったわけですけれども、この二国間協定で最後の最後に出してきたこの案文が、四ページ目のところを見ていただくと、その1に、四行目から五行目にかけて書いていますね、線を引いてあるところ。これは原文に線が引いてあるんです。「サッチ フォーシズ メイ ビー ユーティライズド ツー コントリビュート ツー ザ メンテナンス オブ インターナショナル ピース アンド セキュリティー イン ザ ファー イースト」となっているんですね。メイ・ビー・ユーティライズドとなっている。

 これをどういうふうにとったかということなんですね。それがこの六ページ目からの文書に、これも外交文書ですね。当時、これは五一年の七月三十日に書かれたものですね。午前十時から四十分まで、井口、西村と書いてある。西村さんというのが西村熊雄という当時の条約局長です。井口さんというのが当時の外務次官。二人でフィン書記官に会っている。シーボルト大使に会っているわけですね。

 そのときに先方から説明があって、その一番の焦点が八ページ目から九ページ目に書いてあるんです。何て書いてあるか。これは日本側がとった意図でもあるんですけれども、八ページ目の一番最後から、「この点を明白にしておくため、「この軍隊は、極東における国際の平和と安全の維持並びに外部からの武力攻撃に対する日本の安全に寄与するために使用することができる。」とする。この点のみが、実質上の問題である。」と先方が言ったと記録してあるんですよ。アメリカ側から、この点のみが事実上の問題であるという説明を受けたと西村さんが書いてあるわけですね。

 その九ページ目の最後に、「実質的に、こうなくては動きがとれない。」と向こうは説明したというふうに書いてあるわけです。

 そして、これをずっとめくっていただくと、これはきょうの問題とはちょっと別ですけれども、十二ページ目をちょっと見てください。この案文をいつ公表したらいいかという話の中で、いずれにせよ、国会の後がよいというような話もしているんです。何か今のグアムの話にちょっと、若干、私なんかつい気になってしまうんですね。だから、これは昔から、条約をまとめる立場はこういう発想をどうしてもしがちだとは思うんですけれども、やはりこういう点は改めた方がいいと思うんです。

 それで、このいろいろな流れの中で、アメリカ側からこういうアイデアがずっと出てきて、そしてその真意は、できるだけディフェンスコミットメントをなくすること、こういうことなんです。

 それで、もう少し見ていきますと、日本がこれに対してどういうふうな検討を加えたかということなんですね。これは、日本が、実は七月の三十日に、総理に報告をして、これでいいかというくだりがあるんです。

 十三ページ目をあけていただけますか。十三ページ目の右側にちょっと、西村さんの字で書いていますでしょう。「七月三十一日午前箱根で総理に説明 了承を得 午後次官よりシーボルト大使に渡す」と。大臣が今持っておられるものにも、右側に書いていますね。

 そこに、1に「オール サジェスティッド チェンジズ アー アグリーアブル ツー ザ ジャパニーズ ガバメント」、もうそれでいいよと。これは、実は七月三十日に渡されて、七月三十一日にはもうアメリカ側に、それでいいよと、1の一番最初の二行です。「オール サジェスティッド チェンジズ アー アグリーアブル ツー ザ ジャパニーズ ガバメント」と書いていますね。信じがたいことなんだけれども、ぽんぽんと返事しちゃっているんです。何でだろう。これは今でもわかりません。

 ただし、西村さんが後で本を書いているんです。その本の中に、十九ページをあけてもらっていいですか、十八ページから十九ページ。十八ページは西村さんが書いた本の題名です。「日本外交史 二十七」という本の内容なんです。十九ページ目に、この二行、百七十四ページに書いてあるんですけれども、いろいろな「などなど――について、」この線は私が引きました、「充分考慮を払わないで「同意あって然るべし」との結論を総理に上申したことは、今日に至ってなお事務当局として汗顔の至りである。」ああ、なるほど、こうだったのかと。「これらすべては一九六〇年一月十九日の日米相互協力及び安全保障条約で是正された。せめてもの慰めである。」と。

 当時、朝鮮戦争も行われていましたから、アメリカ側から、メイ・ビー・ユーティライズド、使うことができるというのだから、使うかもしれないよというつもりで、アメリカはもうディフェンスコミットメントをいかに少なくするかという文言を提出してきたわけです。日本側は、動きがとれないから困るという説明をそのままうのみにして、次の日にはもうアグリーアブルだと返事している。

 ところが、それで、しまったと思ったわけですね。これは多分、吉田総理が気がついたんでしょう。しまったと思ったところが出てくるんですよ。

 二十ページをあけてもらえますか。もう七月三十一日にはアグリーアブルと返事しているわけですね。ところが、その後、追加で文書を出しているんですよ。外交上こういうのはほとんど認められません。しかし、もう必死の思いでやっているんでしょうね。「八月三日午後フィン氏に手渡す 藤崎」。藤崎さんというのは、当時条約課長だったんです。西村さんの下で条約課長をやっていた。ここに書いてあるのは、左横にひゅっと線が引いてあるところをちょっと読みます。

 「サッチ フォーシズ ウイル ビー」、要するにメイビーじゃなくて、「ウイル ビー ユーティライズド ツー コントリビュート ツー ザ セキュリティー オブ ジャパン アゲンスト アームド アタック フロム ウイズアウト」、要するに、日本の本土に攻撃があったときは、これはメイじゃなくてウイルですねというふうに一生懸命言っているわけですね。

 それから、「メイ ビー ユーティライズド ツー コントリビュート ツー ザ メンテナンス オブ インターナショナル ピース アンド セキュリティー イン ザ ファー イースト」、極東のものはメイビー、こういうことなんでしょうと一生懸命日本側からすがっているわけです。

 ノートで書いてある、「イン ザット パート オブ ザ センテンス フイッチ セズ ザット サッチ フォーシズ メイ ビー ユーティライズド」云々とあるのは、この四行目、「ザ ワード メイ イズ コンストルード ツー ミーン ザット ジャパン ウッド ハブ ノー オブジェクション ツー ザ ユナイテッド ステーツ」、要するにメイビーとあるのは、日本が反対しないよということ、そんな意味でのメイなんでしょうと一生懸命言っているんです。使うかもしれないというメイじゃなくて、日本がオブジェクションしないという意味なんですねと一生懸命すがっているんですよ。これをフィン氏に渡しているんです。

 ところが、アメリカはもう聞くわけないですよ。一たんアグリーアブルと来て、もうやったとえらい喜んでいるんです。やったやった、何で日本はこれを認めたんだろうというぐらいに喜んでいるんです。

 それで、二十二ページ目を見てください。二十二ページは、今度はアメリカから返事が来るんです。すぐですよ。もう、こんなの絶対本省にまで上げていないですよ。国務省にもペンタゴンにも絶対上げていない。

 四日の返事が、三行目ですか、このチェンジズが「ハブ ビーン アプルーブド バイ ザ プリンシパリー インタレスティッド デパートメンツ」、もう主な関係省庁には全部認められましたからと、日本側の最後の望みをぽんとけっているわけですよ。これが実は実態だったんですね。

 それで、次の二十三ページをちょっと見ていただければ、これはアメリカ側の文書なんです。フォーリン・リレーションズ・オブ・ザ・ユナイテッド・ステーツというものの一九五一年のボリューム6というものですね。

 これはそれの千二百五十七ページ、私、ちょっと括弧で囲ませてもらったんですけれども、これはロベットという左側に出ています国防長官代理から国務長官あてへの文書の中で、この括弧の中、「アイ テーク ジス オポチュニティー ツー エクステンド ザ アプリシエーション オブ ザ デパートメント オブ ディフェンス フォー ザ ラピッド サクセス」、それはラピッドだった、一日でオーケーをとったんだから。「ラピッド サクセス ウイズ フイッチ アンバサダー シーボルド イン トーキョー ゲインド ザ アセント オブ ザ ジャパニーズ ガバメント ツー ザ チェンジズ イン ザ ドラフト US ジャパン セキュリティー トリーティー アンド フォー ザ コオペレーション オブ ミスター ダレス アンド ザ デパートメント オブ ステート」、よくやってくれた、よくこの合意を取りつけてくれたと感謝しているわけです。アメリカがどういうつもりでこの案文を出してきたかということが余りにも明らかなんですね。

 確認のため、大臣、最後に、この十七ページをもう一回、ちょっとめくってください。十七ページは、同じフォーリン・リレーションズ・オブ・ザ・ユナイテッド・ステーツの五一年のボリューム6の中にある千二百六十一ページなんです。これは、左側の方に書いてあるように、ジョイント・チーフス・オブ・スタッフ、統合参謀本部の意見として出された言葉なんです。

 この四角の中、私が引いたんですけれども、「アコーディングリー イット シュッド ビー メード アンミステーカブリー クリア ザット ザ レスポンシビリティーズ オブ ザ ユナイテッド ステーツ フォーシズ アー ノット リミテッド ツー ザ テリトリー オブ ジャパン」、とにかく日本に縛られるということがないようにしたいんだと一生懸命言っているわけです。

 これを踏まえて、アメリカがメイ・ビー・ユーティライズドと出してきて、日本は、西村局長は本当にかわいそうだ、汗顔の至りであると。だって、アメリカ側の説明で、朝鮮でもやっているんだから、メイ・ビー・ユーティライズドすることができると、これが実質的なポイントなんですと言われたから、ああ、そうだなと思ったと思うんですね。

 ところが、これを総理にも余り考えずに上申してというので、えらくびっくりして、総理がその後どういう指示をしたか、これはわからないんです。外交文書に出てこないんです。だけれども、八月三日には、メイビーは実は日本本土が攻撃されたときはウイルビーのことですよなんて一生懸命すがっている。でも、アメリカは完全に門前払いを食らわせている。そこが、実は五一年の安保条約の最大のポイントだったんですね。

 では、六〇年ではどうなったか。六〇年の文言は、新しいものが一ページ目ですね、今の安保条約というのが一ページ目で、その二段目に書いてある今の第五条ですね。

 第五条に、「各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従つて共通の危険に対処するように行動することを宣言する。」ある意味で、各締約国は勝手に宣言しているわけです。

 一応、これで対日防衛義務が決まったことになっていますけれども、書き方としては、できるだけ薄めようとした努力が私には感じられてしまう。ここまでとるのが精いっぱいだったと思うんですよ。だけれども、一応、これで各締約国が宣言しているんだから、あることになっています。

 さあ、これで大丈夫かということなんです。本当に大丈夫かと。我々はこういう一九五一年の安保条約ができたときの経緯、麻生大臣としてはそれは、アメリカが条約上、対日防衛義務があると答弁せざるを得ないです。それは間違っていません。他方、その答弁をされるときにも、やはりアメリカがどういうつもりでいるかということは一応、心の中でこっそりいろいろ考えた上で答弁してもらいたいわけです。私は、アメリカとの同盟を否定しているものでも何でもありません。だけれども、そういうアメリカであるということを知った上でないと大変なんです。

 そして、きょうはちょっと追加でお配りさせていただいたワシントン・ポストの記事。別に大臣、困るような質問を私はしていませんから大丈夫ですよ。ワシントン・ポスト、これは四月の九日ですね。四月の九日に、この右上の方に記事が出ていますね。「US イズ スタディーング ミリタリー ストライク オプションズ オン イラン」、要するに、イランに軍事攻撃をかけるオプションを考えている。このすぐ後で、いわゆるそれを否定する記事もどんどん出ていますけれども、これは当然、政権側がリークしています。

 ワシントン・ポストというのは、これは私も言い方は非常に気をつけなきゃいけないですけれども、今グラハムさんという人が持っていますね。グラハムというのはいかにもアングロサクソン的な名前ですけれども、お母さんのキャサリン・グラハムさん、そうですね、あの美人だったキャサリン・グラハムさん。旧姓はキャサリン・マイヤーですから、マイヤーというのはドイツ系ユダヤ人の名前です。

 この記事をずっと読んでいただくと、字が小さいから、ただ単につけましたけれども、イスラエルが物すごく心配して頼んでいるということが詳細に書いてあるんです。

 それで、私は言いました、グアムの移転の話の中で。イランは今核兵器を持っていない。だけれども、ブッシュさんはイランのことでもう頭がいっぱいになっている。そして、核兵器を現実に持っていると自分でも言っているし、日本も一応その可能性は否定しない北朝鮮、このことについてアメリカは中国に丸投げをしてしまっている、六カ国協議という格好で。しかも中国は、北朝鮮が問題であればあるほど自分の値打ちが高まるから、本気で解決しようとしているかどうか、私は危ういと思う。北朝鮮の問題を中国に丸投げして、まだ持っていないイランについては頭がいっぱいになっている。そのアメリカから、グアムに移転するから金を出してくれ、半分出してくれなんというのは、これはおこがましいぞというのを私は申し上げたわけです。

 大臣、きょうは私、このことをまず、この歴史の事実を、私は全部これは原典に当たったわけです。原典以外の何物もない。この原典を踏まえた上で、アメリカに対して日本がこれからどう対処すべきか。友達は友達としてずっとつなぎながらも、やはり日本が自分の安全保障をどう考えていくかということは、もう考える時期に来ていると思うわけです。

 残り時間少ないですから、大臣の答弁を哲学的なものも含めていただいて、私の質問を終わります。

麻生国務大臣 正直、あのころを思い出しましたね。こっちはそのころまさにそこの中にいましたので、今、そのころの当時の雰囲気というのを、もう何年になるんですか、がきのころでしたから、あのころ十一歳か十二歳ぐらいでしたので、少々昔の話を思い出しながら聞いていたんです。

 当時、一九五〇年六月二十五日、何の日だか覚えておられる方はほとんどおられないと思うんですが、朝鮮事変が勃発したんです、この日に。それで、情勢が一挙に変わっていくということになった。朝鮮事変というのは非常に大きな、日本という、周辺を変えた大きな要素だったと思うんですが、これをもって、当時仁川まで、アメリカはほぼ完敗する予定だったわけですから、あれは仁川の再上陸がなかったらあの戦争は終わっていますから、そういう極めて非常事態にあったところまでマッカーサーは追い込まれて、原爆を鴨緑江に落とさせてくれという話までいくほどの当時は騒ぎだった、有名な話ですけれども。

 したがいまして、当時の状況等々を考えると、今言われたように、次に日本と来たときにそれに巻き込まれちゃかなわぬ、第三次世界大戦が勃発するであろう、当時はそういう状況ですから。したがって、アメリカの当時の国際情勢の判断としては、とにかくファーイーストから太平洋を渡ってこっちまで来ることはまずないんだからという感じで、ここはなるべく、ようわからぬからというところで、途中までは間違いなく、これ以上かかわり合いたくないというのが状況判断だったというのは想像にかたくありません。したがって、こういったような背景になったというのは、私ども、向こう側の立場に立てば、ようわかるところだと存じます。

 他方、日本としてはこの際、独立をかち取るということが絶対条件でしたから、独立をかち取るためには、当時、全面講和か多数講和かで国論は完全に二分しております。その二分した状況の中で、日本側が選んだ選択は多数講和で、全面講和ではなかった。したがって、中国も、国民党から今の中華人民共和国にかわった後の中国もソ連も、あのサンフランシスコの講和条約にはサインしていないと思うんですね、私の記憶では。そういう状況の中で、このサンフランシスコの講和条約において日米安全保障条約というのも結ばれております。

 したがって、条約はかなりいろいろ問題のある条約であるということも本人自身も知っていたから、サインは一人しかしていないんだと思うんです。吉田茂のサインだけしかないと思いますね。ほかの方、同行者のサインは一つもない。日本人、残りの者に責任は負わせられぬというので、多分吉田茂一人でサインしたと記憶をするんです。

 そういう状況にあったようなもので、同盟というのは常にいろいろなものなので、歴史的に見ても同盟というのは生き物ですから、ある意味で、実際に同盟を結んだ効果というものをきちんと効果あらしめるためには、やはり双方の努力というのは、これはもう今の日米安保条約があるからそれでいいんだという問題ではない。私ども、少なくとも一九七二年まで日華条約というのを結んでいたわけですから。しかし、日中条約を結んだときに、日華条約というのは中華民国側には全く瑕疵がないにもかかわらず一方的に破棄していますので、そういった意味では、歴史というのは幾らでも拾っていけばそういう歴史は出てきますので、私どもとしては、こういった条約、同盟というものは、結んだら、その結んだものを、少なくとも、日本の国益側に立って効果あらしめるためには、やはり向こうにもこれを結んでおいた方がいいですよと思わせる努力というのは双方で要る。アメリカも日本と結んだ方がいい、日本もアメリカと結んだ方がいいと思わせる双方の努力というのが必要なんだと思っております。

山口(壯)委員 最後に一言。

 その双方の努力の中で、やはり日本は何でも言うことを聞くからと向こうに思わせるのではなくて、やはり日本は骨があるぞ、これはやはりきちっと説得しないと国会も大変だし、骨があるぞということを思わせるように努力をしていただければと思います。お願いします。

 終わります。

原田委員長 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。

 政府は、普天間飛行場の移設問題で、名護市のキャンプ・シュワブの沿岸部に滑走路をV字形に二本つくる案をまとめ、名護市長、宜野座村長らと合意をしました。きょうは、その合意した新沿岸案、あるいは滑走路二本案ともいうべき問題について聞きます。

 最初に、守屋事務次官はせんだっての記者会見で、この二つの滑走路の長さは最大千八百メートル、このように言っています。これに間違いありませんね。

北原政府参考人 御答弁申し上げます。

 普天間の代替施設の点につきましては、2プラス2の共同文書におきまして、オーバーランを含む代替施設の長さが千八百メートル、そのようにされているところでございまして、具体的な滑走路長につきましては、今後具体的な計画を策定する中で決定されるものでございます。

 今申しましたように、代替施設の全体として千八百メートル、そのように考えております。

赤嶺委員 オーバーランを含んで千八百メートル。大体、オーバーランというようなのは三百メートルとかいろいろ言われているわけですけれども、そうすると、名護市は滑走路千三百メートルということを要求しておられます。この名護市の案は受け入れないということですね。

北原政府参考人 御答弁申し上げます。

 名護市とそれから防衛庁長官の間のお話し合いにおきましては、まず基本的に、名護市から、地元の辺野古ですとか安部ですとか豊原ですとか、そういった上空は飛ばないようにしてくれといった観点の強い御指摘がございました。そうした観点から、防衛庁長官が先頭になりまして協議をしてきたところでございます。

 今先生御質問の具体的な滑走路長につきましては、私、先ほど申しました共同文書に定められているところでございまして、具体的な滑走路長につきましては、今後、具体的な計画を策定する中で決定されるものでございまして、現時点では確たることは申し上げられないというものでございます。

赤嶺委員 千八百メートルの二つの滑走路を米軍は手に入れたわけであります。米軍が必要であれば、その滑走路は同時に運用することが可能になるわけですよね。

北原政府参考人 御答弁申し上げます。

 今の御指摘の点でございますけれども、私ども、V字形の二本、滑走路を考えたというものにつきましては、あくまでも、先ほど申しました、地元の上空を飛ばないようにしていただきたいといった観点から、どういう案があるだろうかということでぎりぎり考えた、また地元が御理解をいただいたものでございまして、今二本ありますけれども、これは同時並行的に二本の滑走路が独立して運用されるというものではございませんで、あくまで運用といった観点においては一本の滑走路と同様、そのように考えております。

赤嶺委員 二本の滑走路を運用の目的に沿って使うんだ、いわば住宅上空を飛ばないようにということであるわけですが、これはあくまでも日本政府と名護市の側の合意なんですね。運用するのはアメリカなんですよ。そのアメリカとの間で、言ってみれば、二本の滑走路というのはそれぞれの目的のみに使用するんだ、こういう合意を行うわけですね。つまり、サブの滑走路は計器飛行の場合の離陸のみに限定して使用する、そういう合意を米側と行うわけですね。

北原政府参考人 御答弁申し上げます。

 私どもといたしましては、四月七日に名護市また宜野座村と、先生御指摘のような内容の基本合意書を取り交わしております。したがいまして、私どもといたしましては、今後、米軍との関係では、この基本合意書の趣旨にのっとりまして米側と調整をしていきたい、いく必要がある、そのように考えております。

赤嶺委員 米側とは調整が残されたまま名護市、宜野座村と合意をした。それじゃ、米側とどんな合意をしていくのかという問題であります。本当に運用の目的に沿ったものとしていくためにどうなのか。

 今、沖縄で米軍基地の運用について一番問題になっているのは、どんな協定をアメリカと結んでもアメリカは守ってくれないということですよ。これは皆さんがよく御承知です。夜間飛行、協定の範囲内で守っていますというのが政府の見解です。しかし、夜間飛んでいる。深夜飛んでいる。なぜか。それは、米側の運用が、運用の必要があるときはその限りではないという文言が協定の中に入っているからです。

 今度の場合は、このV字形の二本の滑走路はそれぞれの目的に沿って使うわけですから、言ってみれば、図面だけでこうなりますよと言ったところで説得力ないんですよ。アメリカとの間に、運用の必要がたとえアメリカにある場合であってもこの二本のV字形の滑走路は目的以外には使いませんというようなこういう合意、今まで抜け穴があって、合意を結んだけれども守られなかった、被害は続いた、こういう抜け穴を全部ふさいで今回は合意に至るということですね。

北原政府参考人 今、赤嶺先生からいろいろ御指摘をいただきました。日本政府といたしましても、そういった点を十分踏まえながら、また、先般合意した基本合意書、その趣旨にのっとりまして米側と調整をしてまいりたいと思っております。

 それから、四月七日の名護市長との基本合意書の中には、先生御承知のように、第四項目といたしまして、平成十四年七月二十九日に合意いたしました、いわゆる代替施設の使用協定に係る基本合意書を踏まえた使用協定を締結することも、私ども約束しているところでございまして、いずれにいたしましても、周辺住民の皆様方の基地の負担の軽減、安全の確保といった観点から、先生の御指摘等を十分踏まえ、また基本合意書の考え方を十分踏まえて、私ども、米側と調整をしてまいりたい、そのように考えております。

赤嶺委員 それじゃ、あしたから審議官級協議が始まります。この審議官級協議で、名護市長と防衛庁長官の合意というものは、たとえ米側に運用上の必要があっても両者の合意の目的以外には使っていけない、着陸用、離陸用、運用上の目的という抜け穴をふさいだ形での完璧な政府の案を審議官級協議に提案して合意するんですか、いかがですか。

大古政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、あしたからいわゆる審議官協議が始まりますので、この審議官協議の中ででも、今回名護市等と合意したいわゆるV字案について米側に理解を得る努力をしたい、このように考えてございます。

赤嶺委員 使用協定のお話もありました。使用協定には、早朝、深夜は飛ばないとか入っているんですよね。早朝、深夜は飛ばない。飛行ルートの問題だけじゃないんですよ、名護市が提案してきたものは。

 しかし、今度は、沿岸部につくられる普天間飛行場の近くに北部訓練場があります。ジャングル訓練場でもあり、海兵隊ヘリの訓練場です。向こうは深夜訓練し、夜中訓練し、夜間訓練も普通なんですよ。これもおわかりだと思います。それから、キャンプ・ハンセンに飛んでいきます。キャンプ・ハンセンにシュワブから飛んでいったら、宜野座の上空を通らないでどこから行くのかよくわかりませんが、そういったこともできないようにしていくんですね。

 北部訓練場も夜間使わないとか、その飛行場は早朝、深夜は使わないとか、キャンプ・ハンセンに移動する場合も住宅上空は使わないとか、どうやってそんなことが可能なんですか。どうやってできるんですか。

北原政府参考人 私ども、日米安全保障条約に基づきまして、アメリカ側に基地を提供いたしております。そして、いざといった場合等に対しまして米軍が訓練することは、これは必要なものと考えております。ただ、やはりその周辺の住民の方々の御負担というものは極力少なくしなければいけないという観点から、また、普天間につきましては危険を一刻でも早く除去しなければいけない、早期の移設をしなければいけない、そういった観点から、地元と御調整をしてきたわけでございまして、そして合意に至ったわけでございます。

 したがいまして、私どもといたしましては、そうした住民の皆さんの安心、安全、運用の面等々を十分総合的に踏まえながら、そして基本合意書にのっとりましてアメリカと協議をしてまいりたい、そういうことを申し上げたいと思っております。

赤嶺委員 話をごまかさないでください。私は、二本の滑走路は目的以外に使わないという担保をアメリカからどうとれるんだと言っているんですよ。今のような姿勢では、これまでと同じような使用協定になりますよ。

 例えば、周辺事態のときに、周辺事態が起きてもアメリカはあの二本の滑走路は目的以外に使わないということを要求できますか。

北原政府参考人 御答弁申し上げます。

 私が申し上げておりますのは、今度シュワブの基地の中に新しい滑走路をつくるわけでございます。そして、その滑走路の目的等を十分踏まえて、そしてそれが実行できるように、しかし、他方におきまして、住民の皆さんの安心、安全があるわけでございます。環境の問題もあるわけでございます。こうしたことを総合的に踏まえて我々といたしましては四月七日の合意に至ったわけでございますので、その合意にのっとりまして、アメリカに対しまして我々の考えを述べ、理解を求めていく、そういう考え方でおります。

赤嶺委員 アメリカに理解を求めていくという程度であれば、今までと同じ結果の繰り返しです。協定を結んでも、根本的に、米軍の運用上の必要があっても目的以外には使わないという明確な合意がない限り、普天間基地の危険をシュワブに持っていくだけです。普天間基地の危険の除去は一日も早くと言いますが、八年かかるわけでしょう。八年間、宜野湾市の危険は放置されたままじゃないですか。あすにでもあの飛行機は、閉鎖すれば、その危険は除去できるんですよ。そういう方向に踏み込まない。

 私は、外務大臣、今度の案というのは、いわば整理統合、そして小さな島に基地を効率的につくろうとして二本の滑走路を米側に提供せざるを得なくなった、住民への危険度は拡大していく、埋立面積も増大する巨大な基地を沖縄につくろうとして米側に提供する結果になったと思うんです。

 沖縄県民が望んでいるのは、整理統合じゃないんですよ。整理、縮小、撤去なんですよ。そういう整理、縮小、撤去ということを考えれば、普天間基地の危険の除去は閉鎖で可能だというふうに思いますが、今回の合意について、外務大臣は、新たな大きな負担、そういうものを押しつけたということの認識があるかどうか。

 それと、滑走路を二本持っているのは嘉手納飛行場だけでした。今アメリカが海外で滑走路を二本持っている航空基地がどのぐらいあるか、それも含めて答弁をお願いしたいと思います。

原田委員長 申し合わせの時間が過ぎましたので、赤嶺委員、よろしくお願いします。

麻生国務大臣 今のお話を聞いていると、えらい一方的な話ですが、一万七千人も減っていけば大変なものじゃない……(赤嶺委員「いやいや、それは後でやりましょう」と呼ぶ)ああそう。いや、後でもう時間がないんだから、あきらめてください、その点は。一万七千人減るということの評価は全然ない。全然ない。だって、減るというんだから……(赤嶺委員「どの基地から減るか」と呼ぶ)立って質問して、違反なんだから。

 今の話を聞いていると、少なくとも普天間というところで大問題だ、人口密集地だから大問題だという話からそもそもスタートしたんじゃなかったですかね、これは。私の理解はそういう理解だったんです。その理解が、達成するために北部の方に移転をしてもらう、しかも海上に出して、いろいろな形で騒音やら何やらも少なくするというようなところで島袋市長との間にも合意ができたという点だけでも、少なくとも今までに比べれば物すごく大きな進歩だったし、地元の負担軽減には、少なくとも辺野古周辺の方々の騒音に対する問題点からいったら、物すごくその率は下がったというように私どもは理解をいたしております。

 その点に関して、いろいろ移転の話やら何やら、どこが減るかというその内容、細目については施設庁に聞いていただくなり米軍に聞いていただいた方がいいと思いますが、少なくとも海兵隊員、軍属含めて約一万七、八千人の方々が沖縄という地域から削減されるということにつきましては、沖縄の負担軽減になるんだ、私はそう理解しているんですけれども。

原田委員長 それでは、申し合わせの時間が参りましたが、最後に外務副大臣。

塩崎副大臣 米空軍の基地で二本滑走路があるところがあるのかという話でありますが、日本として他の国のことを答える立場にはありませんけれども、ホームページなどを見ますと、ドイツにラムスタインという空軍基地があります。ここが二本あります。それから、トルコにインジルリッキという空軍基地がありまして、ここも二本あります。

赤嶺委員 終わります。

原田委員長 次に、照屋寛徳君。

照屋委員 それでは、北原長官もお見えですので、四月七日の額賀長官と島袋市長の基本合意に関してお聞きをします。

 中間報告、沿岸案に比べて、今回の基本合意案では、埋立面積は幾ら増大するんでしょうか。

北原政府参考人 照屋先生に御答弁申し上げます。

 私どもは、いわゆる政府案、沿岸案と今先生おっしゃいましたが、それにつきましては、いわゆる施設面積といたしましては約百三十ヘクタールというふうに考えておりました。今度の四月七日の合意に基づきましてそれがどうなるかという御質問でございますが、これにつきましては、これから具体的な計画を策定する中で決定していくものでございますので、現時点では確たることはちょっと申し上げられないということで御理解を賜りたいと思います。

照屋委員 埋立面積の拡大は間違いないと思うんですね。百三十からおおむね幾ら拡大をするのか。

北原政府参考人 先生御指摘のように、約百三十ヘクタールからふえることはそのように考えておりますけれども、繰り返しになりますが、現時点ではまだ確たることは申し上げられませんので、お許しをいただきたいと思います。

照屋委員 二本の滑走路をつくるんですが、その滑走路を固定翼機は三機だけしか使わないと守屋次官がおっしゃっているのは、そのとおりですか。

大古政府参考人 お答えいたします。

 今回のV字案におきまして、二本の滑走路を離陸と着陸で使い分けまして、いわゆる直線的経路で離発着しますのは、固定翼機のほか、天候が悪くて有視界飛行ができなくてヘリコプターが計器飛行せざるを得ないときについてもこの二本の滑走路を使用する予定でございまして、固定翼機に限定されたということではございません。

照屋委員 滑走路が二本新設されることによって費用はどれぐらいふえるんですか。

北原政府参考人 御答弁申し上げます。

 建設の費用でございますが、これにつきましても、これから具体的な計画を策定する中で決定されていくものでございまして、現時点では申し上げられませんので、御理解を賜りたいと思います。

照屋委員 当初X字形、それからV字形になったと言われておりますが、報道では、三月十三日に額賀長官が指示したと言われておりますが、北原長官はいつ知ったんですか。

北原政府参考人 防衛庁の中でのやりとりといった点につきましては、恐縮でございますが、御答弁を差し控えさせていただきたいと思っているところでございます。

照屋委員 北原長官にも教えていなかったんですかね。

 それと、滑走路問題ですが、先ほどから赤嶺委員との議論がありましたが、全長千八百メートルというのは、名護市長との基本合意の過程でもうお互いに了承済みなんですか。そこをはっきり答えてください。

北原政府参考人 四月七日の基本合意の件につきましては、その合意の中には具体的に何メートルということは入っておりません。その大前提は、代替施設の滑走路を含む施設の長さについては変更していない、いわゆるトータルとしての千八百メートルについては変更していないということであります。

照屋委員 では、滑走路の長さについては、今後、政府と名護市との間で協議の上、合意を見るということですか。

北原政府参考人 基本合意書の中には、たしか名護市との関係では第三項にあったと思いますが、これから基本的な考え方に基づいてまた協議をしていくといったくだりが入っております。それから、申すまでもございませんが、この施設は米軍が使用するわけでございますので、アメリカとの協議も引き続き行っていく、そうした中で具体的な長さが決められていく、そのように考えております。

照屋委員 私は原本の写しを持っておりますが、今長官がおっしゃった三項では、沖縄県あるいは関係地方公共団体と継続的に協議をして結論を得るというんですが、滑走路の長さそのものも協議をするんですか。

北原政府参考人 私どもといたしましては、合意書をつくるに当たりまして、政府案を基本に物事を考えていきたい、そして地元の周辺上空等も飛ばないように名護の御意見も伺いながらやっていこうという考え方に立っておりまして、政府案を基本にいたしまして対応してまいりたい、そのように考えております。

照屋委員 政府案をもとにやるというんだが、政府は千八百メートルだと言い、名護市の方はSACOで合意された千三百メートルの範囲だと言っているんですよ。そこら辺はどう調整するんですか。

北原政府参考人 SACOの中では飛行場の長さは千五百メートルになっているのではないかと思っております。

 それから、いろいろな議論がこれまで、長いこの普天間代替施設建設問題についてはございます。そうした中で、それぞれの考え方が披瀝されてきているところでございますが、今般、私ども、名護市、ともに、この合意書の中には「防衛庁と名護市は」ということで、連名といいますか、二つの主体が書かれております。ともに政府案を基本として、そして周辺の住民の皆さんの安全ですとか、そういったものを留意して建設するといったことについて合意をされている次第でございまして、そうした中で考えてまいりたいと思っております。

照屋委員 二本の滑走路を離陸用と着陸用に区別するというんだ。しかし、それを米軍に遵守させることは、私は不可能だと思います。どのような方法で、それを実効ある担保として政府と米軍との間に協定を結びますか。

北原政府参考人 御答弁申し上げます。

 今、照屋先生の御指摘また赤嶺先生の御指摘、共通しているかと思います。私どもといたしましては、基本合意に示された考え方に沿いましてアメリカと協議をしてまいりたい、そのように考えているわけでございます。また、そうした中で、これまでも在沖米軍の運用の実態等は十分我々も承知しておりますので、そうしたことを踏まえながら、アメリカに対しまして新たな普天間代替施設の建設に当たっての調整をしてまいりたい、そのように考えております。

照屋委員 最後に、麻生大臣にお伺いをしますが、この離陸用、着陸用の滑走路の区分け、膨大な費用を使ってつくっても、それが守られないと、そのような運用がなされないと、結局被害は地域住民がこうむるわけです。

 大臣御承知のように、嘉手納基地にも騒音防止協定があります。例外が原則化して、守られぬです。それで、嘉手納では、殺人的な爆音と呼ばれる爆音によって、周辺住民はいまだに苦しんでおるんです。また、大臣御承知のように、普天間においては、住民地域上空をヘリが飛んで、現に普天間の基地を抱える伊波市長は、別々に使うなんということはあり得ない、そんなことはナンセンスだと言っているわけですよね。現実に普天間基地の運用の実態に照らして、そうおっしゃっているんです。宜野湾市の住民もそう言っている。私は、そこら辺が非常に大事で、我が国の費用で、膨大な予算で二本滑走路をつくっても、そういう区分けが守られなければ意味がない。

 そして、そのことを今後の対米交渉で外務省として、麻生大臣としてしっかり取り組んでほしいということと、間違いなく費用もふえる、埋立面積もふえて環境は悪化をする、私たちは基地機能の強化ではないかと危惧をしているわけで、その辺、大臣の今後最終報告へ向けての対米交渉の決意というか意気込みというか、そういう強いアピールをぜひ聞かせてほしいと思います。

麻生国務大臣 基地の機能の強化と言われる点につきましては、抑止力の維持というのが今回のもう一つの目的でありますから、抑止力は維持されるという意味においては極めて結構なことだと思っております、抑止力が維持されるわけですから。

 もう一点、普天間の住民の上を飛ばないようにするために今回考えたのがこの案ですから、したがいまして、辺野古のところで住宅の上に着陸時にかからないようにするために角度を変え、そして、その同じ方向で飛びますと、今度は対岸の方のいわゆるリゾート地にまたかかるから、出発の方はずらして、こちらの方に向けて飛ぶというようなことを考えたわけですから、基本的には、言われたとおり、ここにおりてこない限りこっちにひっかかりますから、ひっかからないようにおりられるようにしたわけですから、ひっかからないようにA滑走路を使い、離陸のときには対岸の方にひっかからない方向に向いたB滑走路で出ていくというようなことが、基本的な合意された大きな背景だと思います。

 それを理解されたから、島袋さんというか市長さん側もそれで納得をされたんだと私どもは思いますし、沖合に出すという向こうの仲裁案というか向こうの案も出ました。それより沖合に出る率は少なくなりましたし、そういった意味では、今言われました点は、オペレーションをする立場からいえば、その方向で、通常だったらそれでオペレーションはできるわけですから、常識的なことを言えば、それで十分に運用は可能ということになるんだと理解しております。

照屋委員 大臣、そんなことをおっしゃっても、要するに、どうそれを基地の運用上もアメリカに守らせる、実効ある担保をどうするかということが大きな問題だということを申し上げて、質問を終わりたいと思います。

     ――――◇―――――

原田委員長 次に、刑事に関する共助に関する日本国と大韓民国との間の条約の締結について承認を求めるの件を議題といたします。

 政府から趣旨の説明を聴取いたします。外務大臣麻生太郎君。

    ―――――――――――――

 刑事に関する共助に関する日本国と大韓民国との間の条約の締結について承認を求めるの件

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

麻生国務大臣 ただいま議題となりました刑事に関する共助に関する日本国と大韓民国との間の条約の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明させていただきます。

 政府は、平成十六年十一月以来、大韓民国との間でこの条約の交渉を行いました。その結果、本年一月二十日に東京において、先方羅鍾一駐日大使との間でこの条約に署名を行った次第であります。

 この条約は、一方の締約国が他方の締約国の請求に基づき、捜査、訴追その他の刑事手続についてこの条約の規定に従って共助を実施すること、そのための枠組みとして中央当局を指定し、相互の連絡を直接行うことなどを定めております。

 この条約の締結によって、我が国から大韓民国に対して請求する共助が大韓民国において一層確実に実施されることを確保できるとともに、共助に関する連絡を中央当局間で直接行うことにより、共助の迅速化が期待されます。

 よって、ここに、この条約の締結について御承認を求める次第であります。

 何とぞ、御審議の上、本件につき速やかに御承認いただきますようお願いを申し上げます。

原田委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時二十五分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.