衆議院

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第11号 平成18年4月21日(金曜日)

会議録本文へ
平成十八年四月二十一日(金曜日)

    午前九時二分開議

 出席委員

   委員長 原田 義昭君

   理事 小野寺五典君 理事 谷本 龍哉君

   理事 土屋 品子君 理事 水野 賢一君

   理事 渡辺 博道君 理事 武正 公一君

   理事 山口  壯君 理事 丸谷 佳織君

      愛知 和男君    伊藤 公介君

      伊藤信太郎君    宇野  治君

      木挽  司君    高村 正彦君

      塩谷  立君    篠田 陽介君

      新藤 義孝君    鈴木 馨祐君

      中山 泰秀君    三ッ矢憲生君

      山内 康一君    山中あき子君

      山本ともひろ君    市村浩一郎君

      吉良 州司君    篠原  孝君

      田中眞紀子君    仲野 博子君

      松原  仁君    谷口 和史君

      笠井  亮君    重野 安正君

    …………………………………

   外務大臣         麻生 太郎君

   外務副大臣        塩崎 恭久君

   外務大臣政務官      伊藤信太郎君

   外務大臣政務官      山中あき子君

   政府参考人

   (警察庁刑事局組織犯罪対策部長)         米田  壯君

   政府参考人

   (警察庁警備局長)    小林 武仁君

   政府参考人

   (警察庁情報通信局長)  武市 一幸君

   政府参考人

   (防衛庁防衛局次長)   金澤 博範君

   政府参考人

   (防衛施設庁長官)    北原 巖男君

   政府参考人

   (防衛施設庁施設部長)  渡部  厚君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 三浦  守君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 鶴岡 公二君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 長嶺 安政君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 辻   優君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 佐渡島志郎君

   政府参考人

   (外務省北米局長)    河相 周夫君

   政府参考人

   (外務省国際法局長)   小松 一郎君

   政府参考人

   (海上保安庁海洋情報部長)            陶  正史君

   外務委員会専門員     前田 光政君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月二十一日

 辞任         補欠選任

  逢沢 一郎君     塩谷  立君

  宇野  治君     山本ともひろ君

  山内 康一君     木挽  司君

  田中眞紀子君     市村浩一郎君

  津村 啓介君     仲野 博子君

  照屋 寛徳君     重野 安正君

同日

 辞任         補欠選任

  木挽  司君     山内 康一君

  塩谷  立君     逢沢 一郎君

  山本ともひろ君    宇野  治君

  市村浩一郎君     田中眞紀子君

  仲野 博子君     津村 啓介君

  重野 安正君     照屋 寛徳君

    ―――――――――――――

四月二十日

 腐敗の防止に関する国際連合条約の締結について承認を求めるの件(条約第八号)

同月十八日

 米軍基地の再編・強化に反対し、中間報告の撤回、基地撤去を求めることに関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第一五五九号)

 同(石井郁子君紹介)(第一五六〇号)

 同(笠井亮君紹介)(第一五六一号)

 同(穀田恵二君紹介)(第一五六二号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第一五六三号)

 同(志位和夫君紹介)(第一五六四号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第一五六五号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第一五六六号)

 同(吉井英勝君紹介)(第一五六七号)

 ILOパートタイム労働条約に関する請願(高橋千鶴子君紹介)(第一五六八号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 刑事に関する共助に関する日本国と大韓民国との間の条約の締結について承認を求めるの件(条約第七号)

 腐敗の防止に関する国際連合条約の締結について承認を求めるの件(条約第八号)

 国際情勢に関する件


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     ――――◇―――――

原田委員長 これより会議を開きます。

 刑事に関する共助に関する日本国と大韓民国との間の条約の締結について承認を求めるの件を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本件審査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房審議官長嶺安政君、大臣官房参事官佐渡島志郎君、北米局長河相周夫君、警察庁刑事局組織犯罪対策部長米田壯君、警備局長小林武仁君、情報通信局長武市一幸君、法務省大臣官房審議官三浦守君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

原田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

原田委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。谷本龍哉君。

谷本委員 自由民主党の谷本龍哉でございます。

 きょうは、日韓の刑事共助条約について質問をさせていただきます。日韓の友好に努力していると自負している者の一人として、質問に立たせていただきました。

 本来、大臣、いられないということを初め聞いていたものですから、いらっしゃるので、通告はないんですけれども、簡単に一点だけ。

 ここのところ、竹島の海洋調査の件で、本日、外務事務次官が韓国の方へ行かれるということで伺っておりますが、この問題についての大臣の御見解を簡単に言っていただければと思います。

麻生国務大臣 御存じのように、海洋調査船の話で今韓国側と、領海の話、いわゆるEEZという排他的経済水域の線引き、境界線の話がもめておりますのは御存じのとおりであります。

 そこで、海洋調査船を派遣いたしますいわゆる国土交通省の保安庁といたしましては、この問題をなぜこの時期にやるかというのが一番理解を得にくいところだと存じます。

 基本的には、この六月に、いわゆる国際会議で、この地域の海底名の地名を決定するという案を、韓国案を出されるということになっているそうです。向こう側の話です。そういたしますと、それがそのまま通りますとそこは自動的にということになりますので、いやそれは、私どもとしては、日本の案としてはこうですという対案を示さざるを得ないことになりますので、時期的にいいますと、日本としても海底探査船を送らざるを得ないということになっておるのがこの時期に重なったということと御理解ください、調査いたしますときに時間がかかりますので。

 そういった意味では、調査する時間、二隻出して両方ともやる、速くスピードを上げてその水域にいる時間を短くする等いろいろ考えてはおりますけれども、基本的には今申し上げたような形になっておりますので、それに対して双方意見が食い違っておりますので、特に韓国のメディア等々はかなり激しく話が出てきておると思います。

 そこで、日本としては、外務事務次官を送って向こうとの間で交渉して、少なくとも、この話を六月のいわゆる会議に出さなければ別に今のこの時期じゃなくてもよろしいので、そういった意味では、交渉としては、今事務次官のレベルで内容等々を詰めて、どうしても出すというんだったらこっちもやらざるを得ないしという話やら何やらを今から交渉することになろうと思います。

 いずれにいたしましても、この種の話で事が激しくなるのも全く両方の国益に沿うところではありませんので、冷静に対応させるよう、私どもとしては、海上保安庁長官に対して、国土交通大臣並びに官房長官の方から、また私どもの方からも同様の話をし、外務事務次官に対しましては冷静に対応するように指示をいたしております。

谷本委員 少しいろいろと報道の方も過熱をしているようでございますけれども、冷静にしっかりと、当然日本の国益に沿った解決をできるよう頑張っていただきたいというふうに思います。

 それでは、本筋に戻りまして、日韓の刑事共助条約についての御質問をさせていただきます。

 冒頭の質問ということで何点か質問させていただくんですが、最初にこの刑事共助という言葉なんですが、余り耳なれない、なじまない、一般には聞かない言葉だというふうに思っております。原文というか英語の方では、ミューチュアル・リーガル・アシスタンス・イン・クリミナル・マターズと表現されていますけれども、直訳をいたしますと刑事における法的な相互援助となるのですが、この言葉の定義につきましてわかりやすく御説明をいただきたいと思います。

長嶺政府参考人 お答え申し上げます。

 刑事共助ということでございますけれども、これは一般に、外国の刑事事件の捜査、訴追等に必要な証拠、これは証言ですとか供述ですとか物件等ございますが、これら必要な証拠が自国の領域内にある場合に、当該外国の要請によりまして、当該外国の捜査当局にかわってこれらの証拠を取得し、提供すること等、刑事分野における国家間の協力のことを指す概念でございます。

谷本委員 そうしますと、捜査の共助という意味では、今まで、現状においても外交ルートを使った捜査共助などが行われていると理解をしておりますし、特に韓国とは、日本にとっては、外交ルートを使った捜査共助が米国に次いで二番目に多い国だと伺っております。そしてまた、それとは別に、両国の警察間で国際刑事警察機構の枠組みを利用したICPOルートの捜査共助というのも存在するというふうに伺っておりますが、これらの外交ルート及びICPOルートの捜査共助の方の現状を御説明いただきたいと思います。

米田政府参考人 まず、警察におきます外交ルートを通じての捜査共助でございますが、過去五年間に韓国の方から要請を受けた件数は四件でございます。他方、同じ期間にこちらから、日本の警察から韓国に対して要請を行った件数は十六件ということになっております。先ほど御指摘のように、アメリカに次いで韓国との関係が二番目に多い。

 これ以外に、ICPOのルートを通じまして、これは活発にやっておりますので大変数は多いのでございますが、捜査上有益な資料を捜査の各段階に応じて提供し、また提供を受けるということにしております。

三浦政府参考人 法務省の関係で申し上げます。

 外交ルートによります捜査共助の関係でございますが、法務省の方で把握しております過去十年間の日韓間の共助でございますが、検察庁におきまして日本から韓国へ要請した件数は二十二件、それから韓国から我が国への要請分というものは十八件あるというふうに承知しております。

谷本委員 今御説明をいただいたとおり、今までも捜査共助という形では日本と韓国の間、実績があるということでございますが、その上で今回この日韓共助条約を締結する、このことについて、説明の中では、韓国が外交ルートを通して行われる捜査共助の実績が、先ほど言ったように、米国に次いで二番目に多いということ、日韓両国間の共助の内容がこれによりより充実すること、それから、両国間の共助が一層確実に行われるようになること、捜査共助に係る事務処理の軽減及び迅速化が期待できること、こういった説明をいただいているのですが、この中で、日韓両国間の共助の内容が充実する、あるいは共助が一層確実に行われる、この部分について、一体どの点をもってどういう理由でこの効果が得られるのかということをまず御説明いただきたいと思います。

佐渡島政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員御指摘のとおり、本条約を締結する意義として、内容が充実すること、その具体的な中身は何か、こういうことでございます。

 第一に、韓国との間で行い得る共助の類型がふえるということがございます。具体的に申し上げますと、本条約の締結に伴って我が国として韓国との間で、例えば第十四条をごらんいただきたいと思いますけれども、そこに規定されます被拘禁者移送という類型の共助を新たにできることになります。

 それから、被拘禁者移送に係る共助の実施につきまして、従来であれば、我が国の国際共助法が共助国との間に条約があることを前提としております。したがいまして、この条約締結に従いましてこのような共助の実施が可能になる、こういう構造になっております。したがって、例えば、我が国の受刑者が一時的に韓国に身柄を移されて韓国における刑事裁判において証言ができるとか、そういう具体的な効果が出てまいります。

 それからさらに、加えて申し上げると、これまでも行っていた共助の類型につきましても、この条約の締結に従いまして範囲が広がるものがございます。具体的に申しますと、請求国において捜査の対象となっている行為が被請求国の法令によれば犯罪を構成しないという、いわゆる双罰性が満たされていない場合について、従来の国内法によりますと、条約を締結していない国との間ではこれまで共助ができませんでした。しかし、今回は、裁量ということではございますけれども、この条約が締結をされることによってこれができるというようなこともございます。

谷本委員 わかりました。カバーできる範囲、類型もふえるということだと伺いました。

 それではもう一点、先ほど言いましたが、事務処理の軽減及び迅速化という点についてなんですが、これは現状の何と比べての迅速化で、どの部分が軽減、迅速化されるのかという点をまずお教えください。

佐渡島政府参考人 お答え申し上げます。

 事務処理の軽減、迅速化ということでございますけれども、これは、この条約のもとでは、それぞれの政府が中央当局というものを指定いたしまして、そのための連絡を直接当局間で行う、こういう仕組みが導入されます。したがいまして、お役所の数が、一つ通過するところが減るということでございますので、関連する事務処理の軽減、迅速化が期待できる、こういうことでございます。

谷本委員 ということは、今のお話の中で、最後、確認しますが、まず、そういう事務処理の軽減、迅速化が行われる、あるいは内容が充実される、確実性が上がるということですが、では、今までの捜査共助との関係におきまして本条約を締結することによってどのような影響ができるのか、従来の外交ルートの捜査共助との関係はどうなのか、あるいはICPOの捜査共助との関係性はどのようになってくるのかという点をお教えください。

長嶺政府参考人 まず最初に、従来の外交ルートを通じた共助との関係につきましては、先ほど御答弁がございましたが、その範囲、確実性等がございますのとともに、今の迅速性という観点からいたしまして、中央当局間で直接の情報のやりとりができるということによる迅速性を確保するということでございます。

 なお、二番目のICPOルートとの関係でございますけれども、このICPOを通じての捜査協力、これは刑事事件の捜査に必要な情報及び資料を提供するというものでございますけれども、これは、先ほど述べました刑事共助、すなわち証拠として使用することを目的として提供するものとは性質を異にするものでございます。この今回の条約に定める共助は、ICPOを通じた捜査協力とは相互に補完し合うものということで、どちらか一方ということではなくて、両方相まって行っていくということになろうと思います。

谷本委員 わかりました。

 今の御答弁の中でも中央当局の指定というお話が出てまいりました。本条約の第二条です。共助の請求等を行う中央当局の指定について、日本側は「法務大臣若しくは国家公安委員会又はこれらがそれぞれ指定する者」、韓国側は「法務部長官又は同長官が指定する者」というふうに規定をされております。

 実際にこの規定があるわけですけれども、この指定についてちょっとお伺いしたいんですが、韓国側は中央当局は法務部長官というふうに一つでありますが、日本側は二つ明記をされております。共助に関するさまざまな請求が出てきた場合に、いずれの当局が日本側の中央当局というふうになるのか、明確な理解がなければ本条約の効率的な実施が妨げられることになるのではないかというふうに考えております。

 同じような、同様の日米共助条約では、交換公文によって我が国の中央当局のあり方が明確に書かれております。ここに持ってまいりましたが、アメリカ合衆国による請求については法務大臣、日本国による請求については検察官、司法警察職員というふうに書かれているわけなんですけれども、韓国との共助の場合にはこういう取り決めがあるのかないのか、あるいは今後それを取り決める予定があるのかどうか、そのことを御説明いただきたいと思います。

佐渡島政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のとおり、日米の共助条約と韓国との場合と差異がございます。日米の場合にあって韓国の方になぜないのか、こういうことでございますけれども、日韓の刑事条約におきましても法務大臣と国家公安委員会というのが一応中央当局として指定されておって、韓国との交渉の過程におきまして、日本側の中央当局におきましては、日米刑事条約と同じように、同様の事務分担をやってこの条約を実施していくという考え方を説明しております。

 向こうもこれを了承しておりまして、したがって、双方の間での意思にそごはないということでございますので、文書で改めて確認する必要はないということで韓国側とも一致をしております。したがいまして、今後も特段の文書を交わすという予定はございません。

谷本委員 確認ですが、明文上はないけれども、実務上はしっかり決まっているということでよろしいでしょうか。

佐渡島政府参考人 さようでございます。

谷本委員 わかりました。

 では、次の質問に移らせていただきますが、この共助の請求のための書面の送達方法とその秘匿性について質問をさせていただきます。

 本条約の第四条の一で、中央当局の共助の請求は原則書面で行うということになっております。外交ルートの場合は外交行のう等により書面及び添付される書状の秘匿性を確保できるというふうに考えますが、本条約ルートの場合はいかにしてこの書面送達についての秘匿性を確保するのか、その点を伺いたいと思います。

三浦政府参考人 書面の送付方法の詳細につきましては、今後韓国側とも協議してまいりたいというふうに考えております。

 御指摘のように、秘匿性、秘密性は大変重要でございますので、既に刑事共助条約が運用されております各国の中央当局間の送付方法も参考にしながら、確実に秘密が保持される送付手段を採用して、秘匿性の確保に万全を期する所存でございます。

谷本委員 ということは、現状まだ確定はされていないということで、協議中という理解でよろしいんでしょうか。

三浦政府参考人 そのとおりでございます。

谷本委員 さらに、同じ条項に、両国の中央当局が合意した場合、「書面以外の信頼し得る通信の方法により共助の請求を行うことができる。」というふうになっておりますが、これは具体的にはどのような方法を想定されているのか、お伺いしたいと思います。

三浦政府参考人 この点につきましても、詳細まだ決まっておりませんので、今後韓国側とも協議してまいる予定でございますが、一般的にはファクシミリとか電子メールなどが考えられるわけでございます。

 ただ、その場合にも、当然、秘密性、秘匿性が十分確保されるような措置について詰めてまいりたいというふうに考えております。

谷本委員 この点について現状まだ確定していないということでございますので、しっかりと秘匿性を守れる状態をつくれるように鋭意早急に協議をしていっていただきたいというふうに思います。

 次に、この共助に関して得られた証言の証拠能力について質問をさせていただきたいと思います。

 刑事共助条約に基づいた韓国あるいは米国による共助により得られた証言、あるいは現状もやっております外交ルート等による捜査共助により得られた証言について、我が国での裁判においてそのままそれが証拠として採用され得るのかどうか、御説明をいただきたいと思います。

三浦政府参考人 御指摘のような、証言を記録いたしました書面につきましては、我が国の刑事訴訟法三百二十一条一項三号に規定されております要件、その供述が特に信用すべき状況のもとに作成されたことなどの要件が満たされる場合には、証拠として採用され得るものと承知しております。

谷本委員 その部分、刑事訴訟法の三百二十一条一項三号に則したものであればという御答弁だと思いますが、かつてロッキード事件の丸紅ルート裁判でコーチャン氏という方が証言をされた。これは司法取引で米国の方で証言を得た。これに対して、我が国の最高裁判所は、司法取引という方法であったがために証拠能力を否定したというふうに記憶をしておりますが、韓国において、まず一点は、司法取引は現状行われているのかどうか。そしてまた、この司法取引、今後もこういった共助、捜査共助の中では出てくると思うんですが、これについて現在証拠能力を含め法務省はどのように考えられているのか、伺いたいと思います。

三浦政府参考人 まず、韓国の司法取引の制度があるのかないのかという点でございますが、私どもの承知しております限りでは、現在、韓国におきまして司法取引の制度は採用されていないものというふうに理解しております。

 この司法取引という制度につきまして、いろいろな御議論があるわけでございますが、我が国でそういった制度を導入することはどうなのかということにつきまして若干申し上げさせていただきますと、この司法取引という制度は、米国などで、取り調べにより供述を取得するという捜査方法を補完するという面で今意義があるものというふうに考えられているわけでございまして、組織犯罪等への有効な対処方策ともなり得るものであると考えられます。

 しかしながら、他方で、我が国の国民の法感情あるいは公正感に合致するのかといった観点からの検討の必要性も指摘されておりまして、我が国にそういったものを導入するかどうかにつきましては、なお検討に時間を要するというふうに考えているところでございます。

谷本委員 韓国においては現状は司法取引制度はないという御答弁でございましたが、確かに現状ないんだとは思いますが、一部報道によりますと、韓国の方でもその導入を検討しているという報道もございます。この捜査共助、刑事共助をやっていく中で、こういった捜査上の証拠能力の違いといいますか、そこのところをどのように扱っていくのか。先ほど、日本ではなかなかまだ司法取引が国民感情的にいかがかという答弁もございましたけれども、この点、混乱のないように、しっかり刑事共助の中で議論をしていただきたいというふうに思います。

 それでは、次の質問に移らせていただきます。

 我が国と韓国との間には、現状も犯罪人の引き渡し条約がございます。そして今般、この刑事条約を締結することによって、さらに犯罪の摘発や処罰のための日韓間の国際協力体制、これがしっかり強固なものになっていくことを私も願っているところでありますし、そういう意味で、今回この条約を結び両国の捜査当局間の協力や連携が促進されること、これは大いに評価すべきことであると思います。

 こういった両国の連携、この強化をもって当たりたい事件として、その一つとして、当然、我が国にとっては大変大きな問題である北朝鮮による拉致事件というものがあると思います。

 一九七八年に北朝鮮に拉致された韓国人男性、金英男さんが横田めぐみさんの夫ではないか、キム・ヘギョンさんの父親ではないか、このDNA鑑定がほぼ証明されたという報道が十一日にございました。

 今後の北朝鮮の動向、どういうふうな対応に出てくるかということは当然まだわからないわけですけれども、言い方が難しいですけれども、これまで必ずしも韓国側がこの拉致問題に対して余り積極的であるようには思えない部分が多々あったというふうに思いますが、今回のDNA鑑定のことも含め、そしてこの刑事共助条約を結ぶことで連携を深めるということも含めて、今後この拉致問題解決に向けてどのような効果が期待できるのか、あるいは韓国国内に変化があらわれているのかどうかという点について教えていただきたいと思います。

麻生国務大臣 今回の日本側のDNA鑑定の発表を受けまして、韓国政府としても自主的に、こっちの話をそのままうのみにするんじゃなくて、自分たちは自分たちで自主的に事実関係を確認する予定だということで、国家の基本責務と被害者家族たちの意思等を考慮し関連対策を講じていくということを韓国政府として明らかにしておられますので、そういった方向になるんだと思います。また、韓国の統一部の方も今申し上げたのと同じような見解を発表されて、二十一日ですから、きょうから平壌で行われる予定の南北閣僚級会談の場においても、イ・ジョンソク統一部の長官からは、韓国人拉致被害者問題について取り上げる方針と承知をいたしております。

 また、今回の日本の検査報告というのを受けまして、韓国のいわゆるマスコミ、メディア等々においては、この日本人と韓国人拉致問題についてかなり大きく報じ始めたということは事実でありますので、この拉致問題に関する関心とか問題意識は高まってきていると想像いたしております。

 いずれにしても、これは両国で同じような立場にありますので、この問題に関しましては、韓国政府も検査結果をそのうち出されると思いますので、その検査結果を踏まえて、引き続き韓国政府と連携を強めていきたいと考えております。

谷本委員 本日、この日韓の共助条約を議論して、通れば、それをも一つの契機として、しっかりと捜査機関同士等の連携というのを強める中でこの拉致問題にも取り組んでいただきたいなというふうに思います。

 最後の質問になりますが、今言いました金英男氏の拉致につきましては、工作船の船長で、現在ソウル市内に居住している金光賢という名前の男性が、英男氏の拉致を実行したことを以前韓国の捜査当局の取り調べに対して供述していたという報道もあれば、あるいはそうではなかったというような、供述はなかったという報道もあります。

 いずれにしても、警察庁は、北朝鮮の拉致実行組織の実態解明のために、この元北朝鮮工作員に対する事情聴取などの捜査共助について、捜査員の派遣も視野に入れて韓国捜査当局に要請した、こういう報道が四月の十四日に主要各紙に一斉に報道されました。

 またあるいは、原敕晁さんの拉致事件について、警察庁は、辛光洙とともに原さんを拉致した共犯者として、韓国済州島に住む元服役囚を近く国際手配し、その身柄を日韓犯罪人引き渡し条約に基づき韓国政府に引き渡しを求めたいという意向を示した、こういう報道も先月の下旬にございました。

 こういうふうに、拉致事件の捜査にかかわる日韓協力について、これは報道ベースですからどこまで本当か、あるいは捜査中であるのでしゃべれないというところもあるとは思いますが、こういった拉致事件の捜査に関する日韓の協力の現状を、話せる部分、教えていただきたいと思います。

小林政府参考人 お答え申し上げます。

 そもそも、この一連の北朝鮮による日本人拉致事件でありますが、主に対南工作ですね、対韓国工作というか、こういうものをねらいとして敢行された疑いが濃厚であります。そうしたことから、当然、我が国としても、韓国の関係機関との連携が極めて重要である、こういう認識で今まで来ております。

 これまでも、一連の拉致容疑事件にかかわる情報交換を韓国当局と積極的に行ってまいりました。これまでの具体的な内容についてはお答えを差し控えたいと思いますが、昨今の情勢の変化を踏まえまして、引き続き日韓当局間における関係協力を緊密に行うということが何よりも重要だと考えておりまして、御指摘の金英男氏を拉致した被疑者からの事情聴取、さらには、委員御指摘の辛光洙の関係者ですね、これはなお捜査中でありますが、こういった関係者についての警察としての事情聴取ないしは情報収集ということについては、今後、捜査員の派遣を含め、さらなる情報の入手に努めてまいりたい、こう思っております。

谷本委員 時間が来ましたので終わりますが、さらなる連携を深めて、しっかりさまざまな犯罪の解決に努力をしていただきたいと思います。

 終わります。

原田委員長 次に、篠原孝君。

篠原委員 おはようございます。

 きょうは、日韓刑事共助条約について質問させていただきます。

 最初に、前回の外務委員会に突然渡部恒三国対委員長がお見えになりまして、びっくりさせたことをおわびしたいと思います。

 あれは、本人がおられましたので説明いたしませんでしたけれども、石橋湛山さんを非常に信奉されているそうでございまして、私が、小日本主義を盾に、工的大日本主義はだめで、環的あるいは農的小日本主義でいった方がいいといって外務大臣と論争すると言ったら、見てやるということで、お邪魔しまして、それで、効果はありまして、民主党の連中に活を入れてやる、それから大臣にも活を入れてやらなくちゃいけないとかいって、これからいろいろなほかの委員会も行脚されるそうでございます。これが一つの効果でございます。

 もう一つは、私の質問について注意を受けまして、あれは質問じゃなくて講義しているだけだと。講義というのは、プロテクトじゃなくてレクチャーしているだけだと。ちゃんと質問しなきゃだめだ、おれの方がもっとうまくできるということで行革特委の二十六年ぶりの質問につながったようでございまして、御報告をしておきます。

 きょうは、渡部国対委員長の御指摘もありましたので、この条約にのっとって、前回は大臣とだけ議論させていただきましたけれども、主として事務方の皆さんにお答えいただきたいと思います。

 こういった条約が必要になってきている背景には、国際犯罪が非常にふえている。日本人が悪いことをして外国へ逃げていくのもありますし、滞日外国人が犯罪を犯して本国に逃げ帰ったり、逃げやすい国に逃げ帰ったりというのが問題があるんだろうと思います。

 一体、国際犯罪の最近の動向というのはどうなっておるんでしょうか。

米田政府参考人 平成十七年中におきます来日外国人犯罪の総検挙件数・人員、件数で申しますと四万七千八百六十五件、人員で申しますと二万一千百七十八人ということでございまして、人員の方は前年に比べて若干、三%ほど減少しておりますが、件数は前年からさらにプラスになっておりまして、これは過去最多を更新しております。

 この十年間の大体の数の変動を申し上げますと、検挙件数としては約二倍、それから検挙人員としては約一・八倍という大幅な増加となっているということでございます。

篠原委員 国際犯罪とか外国人の犯罪というのがふえている。これは、ひたすら国際化、グローバリゼーションを是とする人たちも、犯罪の国際化なんというのは余り賛成されないんじゃないのかと思います。

 それで、今、十年前と比べて件数は倍、人員は一・八倍ということですけれども、国によって違うんじゃないか、国籍によって違う。中国人が一番多いというのは何となくわかるんですが、国籍別の外国人犯罪の増加というのはどうなっておりますでしょうか。

米田政府参考人 まず直近の、平成十七年中で申し上げますと、検挙人員では、やはり中国が最も多くて四一%、次いで二番目が韓国九・五%、以下、フィリピン、ブラジル、タイ等々となってございます。

 過去との比較でございますけれども、平成七年と比べますと、中国はおよそ一三六%ほど増加をしております。韓国は五九・四%の増加、ブラジルは大変増加しておりまして、もとは数少なかったんですが、二六二・六%というようになってございます。

篠原委員 国際犯罪がふえて、多いのが中国、韓国、ブラジルということですけれども、今回の条約に関係している捜査共助については、どういった国が多くて、それの傾向もそうなんですが、十年前と比べてどういう国がふえてきているんでしょうか。

長嶺政府参考人 最近十年間の捜査共助実績でございますが、まず、外国から我が国への共助の要請につきましては、これは法務省の集計でございますが、件数の多い上位五カ国を並べますと、米国、英国・イギリス、ロシア、ポーランド、韓国であると承知しております。

 次に、我が国から外国への要請の件数の多い上位五カ国を、これは法務省が把握する検察庁の請求分をまず見ますと、米国、韓国、フィリピン、タイ、フランスとなっておりますし、警察庁が把握する警察の請求分につきましては、米国、韓国、中国、タイ、フィリピン、こういうことになっていると承知しております。

篠原委員 今回は、刑事共助条約の関係が中心なんですが、先ほど谷本さんも触れられていましたけれども、逃亡人あるいは犯罪人、被疑者の引き渡し要求というのもいろいろ新聞ざたになるわけです。これも国民の皆さんが非常に関心を持っておると思うんですが、その被疑者あるいは犯罪人の引き渡し要求というのは、一体どうなっておるんでしょうか。

 例えば、最近の新聞では、どこの新聞かちょっと忘れてしまったんですが、群馬県の四、五年前の殺人事件の被疑者が、ペルーでテレビに出て、おれはやっていないとか適当なことを言っている、それはおかしいんじゃないか。これは逃亡人引き渡し条約が締結されたりすると、日本は引き渡しを要求できるし、あるいは、この刑事共助条約ができていれば起訴できるはずだと思うんですけれども、まず、引き渡しについての国際間のやりとり、日本と外国とのやりとり、どんな関係になっておりますでしょうか。

長嶺政府参考人 引き渡しの件数でございますが、法務省及び警察庁によりますと、我が国が外国に対して犯罪人の引き渡しを請求した例は、最近二十年間をとりまして、九件九名であるというふうに承知しております。

篠原委員 私、非常に興味があるんですが、これはまた、九件要求してきちんと身柄が日本に引き渡されたりしておるんでしょうか。

 では、ちょっと済みません、私が素人的に思うに、刑事共助条約と逃亡人の引き渡し条約というのはセットになっているんじゃないかなという感じがするわけです。

 両方とも、二つの条約ともアメリカと韓国、今度この刑事共助条約は韓国とやるわけですけれども、引き渡し条約は、アメリカがうんと早く一九八〇年に結んでいる、韓国はつい最近、二〇〇二年か三年に結んだ。刑事共助条約はアメリカとやり、今度韓国とやるということで、アメリカ、韓国とこの二つの条約があることによって、アメリカ、韓国の間ではうまくスムーズにいき、ほかの国とは余りうまくいっていないというような感じになっているんでしょうかということも、あわせてお答えいただけたらと思います。

長嶺政府参考人 先に、今お尋ねになりました犯罪人引き渡し条約と刑事共助条約、これはセットになっているのではないかという点についてまずお答え申し上げますけれども、犯罪人引き渡し条約、日米、日韓がございます。それから、刑事共助条約、これは日米が既に国会で御承認をいただいておりまして、間もなく締結できるわけでございますが、今回、日韓ということになっております。

 この二つは、いずれも国際性を有する刑事事件の捜査、訴追等に関する国家間の協力について定めるものでございます。そういう意味では、犯罪人引き渡し条約、それから刑事共助条約というのは共通した性格を持っているということはございますが、他方、二つの条約が定める内容ということになりますと、これは、刑事共助条約は、先ほども御答弁申し上げましたけれども、捜査等に必要な証拠が自国の領域内にある場合に外国の要請によってこれを提供するということを中核とするものでございます。他方、犯罪人引き渡し条約は、外国の刑事事件の被疑者、被告人が自国の領域内に所在する場合に外国の要請によって身柄を引き渡す、こういう内容になっておるものでございます。

 そういう意味で、この二つの条約につきまして、内容的に異なった分野ということもございますので、一方の条約を締結することとする場合に、他方の条約についてもあわせてセットでということでは必ずしもございません。これは、相手国との必要性等、基準に照らして交渉を行い、そしてまとまったもので締結していく、こういうことになっておるわけでございます。

 それから、先ほど、引き渡しの実績についての御質問でございましたけれども、まず、アメリカにつきましては、五件五名の犯罪人の引き渡しをアメリカに請求して、すべて引き渡しを受けております。アメリカからは二十四件二十七名の引き渡しの請求を受けて、そのうち二十三件二十六名について引き渡しを行っております。

 それから、韓国につきましては、韓国側に請求しましたのが七件九名、そのうち四件四名につき引き渡しを受けております。韓国側から引き渡しの請求を受けた方につきましては、一件一名、これは引き渡しを実際に行っております。

 それから、米あるいは韓国以外の国につきましては、これまで七件八名が実際に引き渡されたというふうに承知しております。

篠原委員 こらと言ってアキューズしているというか責めているんじゃないんです、僕は。米国とも韓国とも両方、条約がちゃんと結ばれているので、そちらの方がスムーズにいっている、結ばれていない国は犯罪人引き渡しを要求してもなかなか受け入れてもらえない、捜査の協力も受け入れられていないんじゃないかというので、それは差があるんじゃないですかと聞いているんです。

 ですから、もう一つお答えいただきたいのは、米韓以外は七件やって引き渡しを受けているというんですけれども、私は、この条約二つなければうまく捜査協力ができなかったりして、要求したところで引き渡してもらえないケースが多いんじゃないかと思いますけれども、それはどうなっているんでしょうか。すべて要求は認められて、引き渡しをされているんでしょうか。

長嶺政府参考人 これは、まず基本的に、条約がなければ引き渡しですとかあるいは共助ができないということではないという前提でお答え申し上げておるわけでございますけれども、犯罪人の引き渡しに関して申し上げますと、先ほど米国、韓国以外の外国から我が国に引き渡された事例につきまして七件八名というふうに申し上げましたけれども、これは我が方から要請をしたものにつきましてはすべて引き渡されたという実績になっているというふうに承知しております。

篠原委員 そうすると、誘導尋問の方に、誘導というか、条約があるからきちんとスムーズに引き渡しされたり捜査協力が行われているので、だからこの条約を結んだ方がいいですよというのに結びついていかないんです。なくてもうまくいっているんだというふうになってしまうんですけれども、そこのところはどうなっているんでしょうか。

 私は、米韓はスムーズにいっていて、ほかの国はやはりだめなんでしょうね、だから刑事共助条約も必要だし、犯罪人引き渡し条約も必要じゃないんでしょうかというふうに、結論でこの条約の締結を賛成したいと思っているんですけれども、そのようにお答えいただけませんでしょうか。

佐渡島政府参考人 必ずしも全世界にわたってということではございません。

 私はアジア局を所掌しておりますので、私の所掌している範囲の中では、こちらからやってくれと言っても、向こう側が、やはり条約の存在がないとそういうことはできないということを言っておるところが若干ございます。

 したがって、その意味では、今委員御指摘のとおり、きちんとあれば、それは向こうも喜んで協力をしたい、こういうことでございますので、それから類推申し上げますに、差はかなり歴然としているのではないかと思います。

篠原委員 想定どおりの答弁をいただきましてありがとうございます。これで私もまだ続けられるんですけれども、やはり私は、こういう条約をきちんと進めていかなくちゃならないんじゃないかと思います。

 この間はEPA、FTAといったたぐいですけれども、どうも経済問題とかになると、何かほかの国がやっているからといってしゃかりきになってやって、この前は、入れ食いEPA、ダボハゼFTAとかいって何でもやろうとするというのがあるわけですが、それに対して刑事事件、国際犯罪に対処していくのはどうもおくれているような気がするんです。アメリカと韓国ばかり進んでいる。よくよく聞いてみますと、どうもアメリカとの関係、韓国との関係も、我が国から言い出したんじゃない、アメリカから言われ、韓国から言われというふうに伺っておるんですが、それは事実なんでしょうかということ。

 それで、ついでに、ほかの国とやる気があるのかどうか。今どのような状況か。例えばEPA、FTAだと、タイとやっておる、タイが政治的に重要法がごちゃごちゃになって進んでいないとか、マレーシア、それからどこでも、国がだあっと羅列されて、この次はこの国と、この次はこの国と、だあっと出ているわけです。この関係ではさっぱりそんな資料もない。どの国とどうやっているかというのがないわけです。非常にこちらの方が冷遇されておって、経済関係の条約ばかり先行しているような気がするんですけれども、ほかの国との関係は一体どうなっているんでしょうか。

河相政府参考人 私の方から、まず、アメリカとの刑事共助条約の締結に至る過程ということで御説明申し上げますが、御指摘のとおり、本件、米側との刑事共助条約につきましては、米側からの申し入れというのがあって、それを踏まえて平成十年十一月の日米首脳会談の場で、日米両政府で捜査・司法共助条約の締結交渉を開始しようということで意見が一致しまして、平成十一年以降交渉を行ってきまして、平成十五年八月に署名に至ったというのが経緯でございます。

佐渡島政府参考人 韓国との関係でございますけれども、韓国に関しましては、平成十六年の五月に、韓国側から我が国に交渉を開始しましょうという申し入れがございました。十六年、同年の七月ですけれども、日韓の首脳会談におきまして、小泉総理と盧武鉉大統領との間で開始しましょうということで意見の一致を見たということでございます。その後、同じ年の十一月のソウルにおける第一回交渉以降、交渉を重ねまして、四回だと記憶しておりますけれども、本年の一月に署名を見たということでございます。

 確かに申し入れは向こうの方からあったということでございますけれども、経緯にかかわりませず、米国と韓国、それぞれとの間で、確かに刑事共助条約を締結することというのは我が国にとって有益であるという判断を下しまして、積極的に交渉に当たってきた。

 確かに合計の件数は少のうございます。それから、いろいろな手続に関しますことでございますので、場合によっては非常に詳細な詰め、お互いの制度の理解ということで時間がかかるということもございますが、今後できれば積極的に展開をしていきたいと思います。

麻生国務大臣 今のお尋ねの、他の国、韓国、アメリカ以外の国との締結を働きかけていかないのかという御指摘なんですが、これは篠原さん御存じのように、こっちが向こうに要請する権利があれば、向こうもこっちに要請する権利を持ちますので、こちらはだれも向こうで犯罪を犯さないなんという、そんな保証はありませんので、拷問等々、待遇の条件をある程度きちんとしておかないとかなり難しいことになる等々のことで、これはよほどよくよく条件を詰めておかないと難しい。

 刑務所の環境状況やら何やら、余りいらしたことないからおわかりにならぬと思いますけれども、これは現実問題としてかなり差があるんです。そういったところを考えますと、日本の方はかなりきれいになっております、正直なところを申し上げて。これはかなり国によって差があるという大前提が一つ。

 二つ目は、例えば、今問題になっておりましたブラジルの話をされまして、私どももかなり、過日、ブラジルのアモリンという外務大臣が来ましたときに、最近ブラジルの犯罪がふえておるという話からこの話を持ち出したんですけれども、ここは憲法の問題で、外国には犯罪者は引き渡さないと憲法第五条にきちんと書いてあるわけです。例外はただ一つで、麻薬に関係した者以外はだめというルールにたしかなっておると記憶をいたします。

 したがいまして、ここのところは憲法上の問題というのが向こうにくっついてきますので、また全然別の話をしなきゃいかぬというので、これまた難しい等々というのが今私どもの抱えている問題で、多いところから手をつけようとしているんですけれども、日本人が捕まったときの向こうの状況やら何やらを考えるとちょっと簡単にはなかなかできないというところも、自国民をかばう立場を考えますとそこらのところが難しいというところで、とっとっとっと簡単にいきにくいというのが背景と御理解いただければと存じます。

篠原委員 いろいろな事情はよくわかると思うんですけれども、今出ましたけれども、アメリカなんかは積極的になる理由はよくわかるんですね。軍事大国として、経済大国として、あらゆる意味で大国で、図抜けて大国なのは犯罪大国じゃないかと思います。ですから、マフィアがいて、それからマネーロンダリングだとかいうのがあるので、刑事共助条約も、一番最初にスイスと結ばれたと聞いています。マネーロンダリング、スイスが非常に預金者を保護したりしてさっぱりわからないので、これじゃとてもじゃないが捜査できないんだと。それで五十カ国にわたっておると思いますね。やはり国策として、犯罪を少なくしよう、国際犯罪を少なくしよう、悪いことをしたやつはほっておかないぞという姿勢をきちんと持っているんじゃないかと思います。

 隣の韓国も、聞きましたら既に十三カ国で、きのう電話をいただきまして、十四カ国、十四カ国目がブラジルだそうです。憲法上の制約とかいうのもあるわけですけれども、やはりEPA、FTA並みに、今やっている国、これこれどういう事情で、憲法の問題がある、ブラジルは憲法五条の問題があって犯罪人引き渡し条約は無理だと。ですけれども、捜査共助条約は、私はいいんじゃないか。中国だって身柄を引き渡さないという憲法があるはずで、だから渡せないと。

 それぞれの国にネックはあるんでしょうけれども、私がぜひお願いしたいのは、この外務委員会の冒頭で申し上げましたけれども、やはり日本はいろいろなところで国際的なプレゼンスというのがあるわけでありまして、経済だけじゃなくて、ほかのところでも発揮していっていただかなくちゃいけない。

 いい例では、京都議定書ですね。環境関係のところでは、愛知環境庁長官のころ、獅子奮迅の活躍をされたのもあるんだろうと思います。そういったので、京都議定書なんかで、地球環境問題については日本が一定の役割を果たしているわけです。

 では犯罪捜査の面ではどうかというと、やはり、日本の交番が世界に輸出されたりしているわけですね。それから犯罪が少ない。日本の警察力というのは世界に冠たるものなんじゃないかと思います。しかし、それは国内までのことであって、海外に、国際的に日本の警察の力、こういったもので、国際協力、犯罪捜査、それから国際犯罪に対する対策について、余りリードしていく気概が見受けられないんですね。

 ですから、私が具体的に申し上げますと、さっきちょっと言いましたけれども、EPA、FTAについては世界がこうだと表ができているわけです。今交渉中なのはこれだ、交渉進展中がここで、ここがネックになると表に盛っては持ってきて、説明して、早くやりたい、早くやりたいとやっているわけです。これも同じように同等に扱っていただきたいと思うんですけれども、外務大臣、いかがでしょうか。

塩崎副大臣 おっしゃるように、ボーダーレス化した世界にあって、犯罪も国際化をしているということは間違いないわけでありまして、日本が環境分野と同じようにリードせい、こういうお話がございました。

 お気持ち、全くそのとおりだと私も思いますが、今、二国間の条約についてはまだまだ数が少ない、韓国におくれをとっているじゃないか、こういうお話がありました。

 それもおっしゃるとおりではありますけれども、一方で、国際的な場において、日本が犯罪分野における調査とかあるいは技術支援をやっていないかというと決してそんなことはなくて、例えば国連の犯罪防止刑事司法委員会というのがありますが、これはウィーンにたしかあったと思いますが、それとか国連薬物犯罪事務所、これも同じようにウィーンで行われるものでありますけれども、こういったところで犯罪分野における今申し上げたような技術支援等々、それから刑事司法の取り組みについても、我が国は国際的な組織にも参加、そして協力をしているわけであります。

 ですから、二国間の取り決めについて推進することももちろん重要でありますし、一方で、今のような国際的な場での多国間の協力についても積極的にやっていかなければならないということで、私たちも今やりつつあるわけでありますので、引き続き御指摘のようなことで進めてまいりたい、このように思っております。

篠原委員 それでは、抽象的には、やっていくというのはわかるんですけれども、具体的に、例えばブラジル、今大臣から触れていただきましたけれども、アメリカも平成十一年から平成十五年まで四年もかかっておる、そして、まだ発効されていないはずですよね。アメリカの議会でまだ承認を得られていないようでして、韓国のはこれはスムーズに多分いくんだろうと思いますけれども、具体的にどうなっているかというのをちょっとお聞きしたいんですが、まず中国です。

 中国はもう犯罪大国で、犯罪大国というか、一番関係が深いというか、いろいろなことでごちゃごちゃしておる。近い国ですし、国際犯罪も中国人が一番多い。それから、隣の大国ロシア、これもワーストテンになるんですかね、名を連ねてくるんですね。余り多くはないんですけれども、出てくる。隣国二つ、それから、今出ましたブラジルです。そしてペルー、タイ、こういった関係の深い国との刑事共助条約の作業の進展ぐあいはどうなっているんでしょうか。具体的にお答えいただきたいと思います。

塩崎副大臣 幾つかの国をお触れいただきましたけれども、まず中国でありますが、来日中国人によります犯罪の捜査に関する中国側との連携強化に関しましては、日中治安当局間協議というのがありますが、こういったところの協議の枠組み等を活用いたしまして、今、実務者の協議を進めているところでございます。

 刑事分野の国際約束の締結につきましては、平成十七年、昨年の六月に中国側との間で予備的な協議をこの刑事分野の国際約束の締結について行ったところでございまして、これを受けて今、まずは日中間の刑事共助条約の締結交渉の開始に向けて、今、調整を進めているところでございます。

 それから、犯罪引き渡し条約の締結については、引き渡しの具体的な必要性の有無、先ほど来大臣からもお話がありましたが、そういった必要性の有無とか中国の刑事司法制度等諸般の事情を総合的に勘案しながら検討をしていく必要があると考えているところでございます。

 それから、先ほど御指摘をいただきましたブラジルがございました。これは先ほどお話が大臣からあったとおり、アモリン外務大臣に対して、両国が一致して取り組んでいくことの重要性がある旨申し入れたところでございます。

 それから、ペルーについては、今のところいかなる対応が可能か、先ほど、いろいろな条件が双方あるわけでありますので、情報交換を今ペルーとは行っているという段階でございます。

 チリについては、我が国に在留するチリ人の方々は約七百人ということで、大変少ないわけであります。そういったことから、同国との刑事共助条約や犯罪引き渡し条約の必要性は相対的には低いのかなというふうに考えております。

 それから、フィリピンにつきましては、今のところ刑事共助条約の締結については、同国との条約の意義というか、締結をすることの意義、必要性、それから司法制度上の実施可能性について総合的に勘案して検討しつつあるということでありまして、引き渡し条約につきましても、フィリピンとの具体的な必要性が本当にあるのかということ、それから刑事司法制度が適切に運用されて、我が国から引き渡された者が戻ってから不当な扱いを受けることがないのかとか、そういったことをいろいろやっているところでございまして、今実績を見ると、我が国からフィリピンに対して共助要請を行った件数というのは過去四年間で四件ということであります。それから、同じように、我が国がフィリピンから共助要請を受けた件数は二件ということでございます。

 タイでありますが、この点については、我が国で罪を犯して母国その他の外国に逃亡する来日外国人の問題、タイの問題については当然やらなきゃいけないわけでありますけれども、刑事共助、それから引き渡しの分野の条約をタイと締結するかどうかについては、これも先ほど来申し上げているように、相手国の司法制度、それからいろいろな条件を勘案しながら検討する必要があるということで、各省庁と今協議をしているということでございます。

篠原委員 皆さん、聞いていておわかりいただけると思いますけれども、EPA、FTAについては、物の貿易だけじゃなくて人も移動しようとしているわけですね。人が移動したりすると、これは犯罪とかいうのもあるわけです。ですから、パラレルに進めなくちゃいけないのにもかかわらず、EPA、FTAについては、障害があっても、いや、それを乗り越えてやっていこう、やっていこう、やっていこうと。こちらは、こういう問題がある、こういう問題がある、こういう問題があるというので後回しになっているんじゃないかと私は思います。

 だから、今ちょっと調べてみましたら、逃亡先なんかも同じなんですね。中国が一番多くて、ブラジル、韓国、それから何でこんなのが出てくるのかわからないんですが、イランが逃亡先として、逃げていっているところとして出てくるわけです。あと、タイ、ペルーとか、これは同じですけれども、こういった国はやはり必要性が高いんじゃないかと思います。

 ですから、経済関係、物と人との交流もある。例えば、中南米は日本人移民が行って、その関係の人たちが来ているというのがある。そういった状況がありますので、私は、FTAやEPAなどよりも、こちらの方がむしろ、先んずるとまでは言いませんけれども、少なくとも一緒に進めていかなければいけないんじゃないかなと思っております。ですから、同じように扱って、やっていっていただきたいと思います。

 それから、アメリカはいつも勝手な振る舞いをするんですが、例えば京都議定書にも入っていない。それから、信じられないんですけれども、海洋法条約なんかも、さんざん自分の国、ニューヨークでとかやっておきながら、まだ入っていないというわけですね。それは国際条約ですけれども、二国間の条約で、アメリカからせっつかれて、四年の歳月を費やして日本はさっさとやったのに、いまだ批准がされておらず、未発効ということになっているようですが、何か障害があるんでしょうか、ただ手続に手間取っているだけなんでしょうか。

河相政府参考人 日米の刑事共助条約、この発効がおくれているということについては御指摘のとおりでございまして、問題点は非常に手続的なところで時間がかかってしまっているというところに尽きるわけでございますけれども、この条約については、米側においても上院の承認が必要だということで、日米間での交渉終了後、米行政府としては、平成十五年に既に議会に承認を求めて提出をしていたわけですけれども、それ以来いろいろな手続がおくれて、ようやく本年四月七日に上院本会議で承認を受けたということでございます。

 ですので、これで米側の国内手続は了しておりますので、現在、その批准書の交換をできるだけ早急に行うということで最終的な調整をやっておりますので、そう遠からずうちに発効できるものというふうに思っておる次第でございます。

 なぜ承認にそんな時間がかかったかということにつきましては、内容についていろいろ議論、反対があったということよりも、手続的に、選挙があったり等々で時間がかかってしまったということで、我々、これについては再三にわたって、米側に対して早く上院の承認をとってくれということを言ってきたわけでございますけれども、これだけの時間がかかったということでございます。

篠原委員 この条約が締結された後、具体的に一体どういうふうなメリットがあって動いていくかというのでいえば、最近の事件でいえば、めぐみさんの拉致事件で金英男さんも同じように拉致されてというので韓国に捜査協力をお願いしているというのがこれにぴったりの事例だと思うんですが、先ほど谷本さんも聞かれましたし、余りその点については今動いているところなんでやめますけれども、過去の例で、一体これがどうなっていくかというので、具体的にこの条約ができたとしたらどう動くかというので教えていただきたいんです。

 皆さんの記憶に残っているのは、国民の記憶に残っているのは、アニータさんというあのチリのおねえさんですけれども、青森県の住宅公社の十四億円の横領事件、それであちらのテレビに出たりしている。これは同じなんですが、例えば、チリと刑事共助条約ができる、それから逃亡人あるいは犯罪人引き渡し条約ができているとすれば、日本がアニータさんの取り調べをしに行けるというか、あちらにやっていただける、あるいは日本に連れてくるというようなこと、その点は引き渡し条約と刑事共助条約と分けていただいてもいいんですが、刑事共助条約ができるとどういうことができるか、それから引き渡し条約ができればどういうことができるかというのを具体的な事例に沿ってちょっと教えていただきたいんです。

三浦政府参考人 個別の案件を前提といたしましてお答えすることは非常に難しいということを御理解いただきたいと思います。

 あくまでも一般論ということで申し上げさせていただきますと、まず、重要事件の関係者が自国に帰国をしている場合に、日本国にその方に来てもらって事情聴取を行うということがどうなのかという点でございますが、基本的には、刑事共助条約の有無を問わず、外国にいる者でありましても、外国の当局を通じまして日本の捜査機関等への出頭を求めて、これに応じて任意に出頭した場合には日本国内でその取り調べを行うということが可能になるものでございます。

 刑事共助条約におきましては、この日韓刑事共助条約十三条の規定に見られますように、請求国における出頭要請の伝達というものが義務とされるなど、外国にいる者の取り調べを実現するための外国当局との協力が強化されることになるというふうに考えております。

 それから、引き渡しの関係でございますが、これも一般論として申し上げますと、我が国の法制度を前提に申し上げますと、我が国で犯罪を犯した外国人が自国に帰国したという場合でございますが、我が国とその国との間の犯罪人引き渡し条約が締結されており、かつ当該条約に自国民の引き渡しを認める規定が置かれている場合には、その条約に基づいてその者の引き渡しを請求することができることになるというふうに考えております。

篠原委員 またもう一つ、皆さんの御記憶にもあると思うんですが、過去の事件で、福岡市の一家四人が惨殺された事件がありました。あれはひどい事件だったんですけれども、中国当局が中国に逃げ帰っていた二人を逮捕して、一人は死刑にして、一人は無期懲役にしているんですね。一人は日本に残っていて日本で今裁判中というふうに聞いていますけれども、これも、中国の事情を先ほどちょっと触れましたけれども、身柄の引き渡しはしない、日本で起こした犯罪なのにもかかわらず、中国当局が捕らえて裁判して処罰をしている。

 これは、仮に中国との刑事共助条約ができて、犯罪人引き渡し条約は憲法上できないんだろうと思いますけれども、この点、ケーススタディーとして、中国がなぜこんなことをしたのかというのを、それから刑事共助条約があったりしたら一体どうなったのかというのを、一般論でも結構ですから、また教えていただきたいのでお願いします。

三浦政府参考人 これも一般論として御説明させていただきますが、我が国と中国との間におきます捜査共助というものは、これまでも事案の解決に大きな役割を果たしているということでございまして、今後、中国との間で刑事共助条約が締結されるということになりますれば、日中間の捜査共助がより迅速かつ確実に実施されることになるというふうに期待しているところでございます。

篠原委員 今ちょっと抽象的でわからないんですけれども、では、中国人の二人は日本で取り調べたいと言ったら、それは可能になるんですか、だめなんですか。これは犯罪人引き渡し条約がなかったらできないことなんですか、あるいは日本から中国に行って取り調べることができるのかどうか、それをお聞きしたいんです。

三浦政府参考人 先ほども申し上げましたけれども、自国に帰った関係者につきまして我が国に来てそこで事情聴取を行うという場合には、基本的にはその者が日本に来るということに同意をすることが前提になりますので、そういうことについて同意が期待できないような状況では、その手段はなかなか使えないということになろうかと思います。

 ただ、別の手段といたしまして、外国の当局にその関係者の取り調べを要請し、日本の当局の者がその取り調べに立ち会うということも場合によっては可能になるということでございますので、そういった協力が緊密化するということだろうというふうに考えております。

篠原委員 大体ちょっとわかってきました。

 それで、最後に一つ、先ほど日本の警察は大したものだということを申し上げまして、私はそのとおりだと思います。本当に犯罪は少ないですし、これは地域社会が安定しているからにほかならないと思いますけれども、そういった中でたった一つ最近よくないことが起きている。何かというと、情報が漏れる、岡山県警と愛媛県警のところで、ウィニーを使って、個人のパソコンがあって、外に持ち出してというような事件が起きているんですね。

 これは、こういった刑事共助条約を結んでいく上において、日本の警察はしっかりしているからちゃんと結んでやってもらうと言っているときに、大事な情報が漏れたりしてしまう、こういうのはネックになるんじゃないかと思いますけれども、警察はこれをどのように対処しておられますでしょうか。

武市政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員御指摘の岡山、愛媛両県警で発生いたしました捜査資料等の流出事案につきましては、現在、各県警においてその流出したファイルの内容、あるいは流出に至った原因、こういったことを、詳細を調査中でございます。

 これまでに判明いたしているところでは、いずれの事案も、捜査資料等を無断で自宅に持ち帰り、それで自宅で使っているパソコンで保存したところ、当該パソコンがファイル共有ソフト、ウィニーを使用していたことがあって、これがウイルスに感染した結果インターネット上に捜査資料等が流出してしまった、こういうものでございます。

 警察におきましては、従来より、ウィニー等のファイル共有ソフトについてその使用を禁止するとともに、公務使用するパソコンあるいは外部記録媒体につきましては庁舎外への持ち出しを制限するという指導をしてきたところでありますけれども、今回の流出事案を踏まえまして緊急対策を実施、その徹底をさらに強めているところでございます。

篠原委員 これはかわいそうなところがあるんだろうと思うんですよ。防衛庁の事件と同じでして、二十万人、二十数万人いる警察官全員にパソコンを持ってもらうわけにいかないので、個人でパソコンを持ってきて、それで持って帰ってというようなことが起きているということで、過渡的な問題かもしれませんけれども、日本社会全般に情報をちゃんと外に漏らさないという意識が欠けるんじゃないかと思います。

 古い話でいいますと、古い古い話ですよ、キッシンジャーが中国に接近しているときでも、ほかの国にはみんな知らせたのに、日本に言うとすぐ漏れてしまうからといって日本だけがのけものにされたという話がキッシンジャーの回顧録の中にもたしか書いてあったような気がいたします。そういった意味で、情報の管理というのは非常に大事なんじゃないかと思います。

 最後に、外務省においても、やはり情報の管理というのは非常に大事で、最近、上海領事館の方が自殺された、かわいそうなことだと思いますが、それの遺書が出てしまったりするということで、やはり情報管理というのにはきちんとしていただきたいと思うんです。これは、刑事条約とか何かを結んで外交ルートでこういうのはやったりするときもあるわけですし、その点で、日本の信頼を損ねることになりかねないので、外務省の方も情報管理をきちんとしていただきたいということをお願いいたしまして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

原田委員長 次に、笠井亮君。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 協定の質疑に先立って、竹島周辺海域の海洋調査について一問ただしておきたいと思います。

 昨日、我が党の志位委員長が、この問題で次の二つの基本的な見解を明らかにいたしました。

 第一に、当然のことですが、事態を憂慮している。物理的な衝突は絶対に避けるべきだ。冷静な外交交渉による解決を両国政府に強く求めたいということであります。

 第二に、日本は、アジア諸国との関係で、竹島問題と尖閣列島問題という領土にかかわる二つの紛争課題を抱えているが、その一方では相手側に実効支配がされ、他方では日本側が実効支配をしているという、両方の立場を体験している国だ。そういう国として、この二つの問題に対して、どちらにも通用する外交的解決のルールをもって臨むことが大切と思う。今度の問題でも、そういう外交的解決のイニシアチブがとれる立場にあることを自覚して、政府は積極的な対応を行ってほしい。この二点であります。

 私たちがこういう立場を重視しているのは、一つには、一方で無理を通せば他方で無理を通されるし、一方で無原則に譲歩すれば他方に響いてくることになるということがあります。もう一つは、日本、韓国、中国、三カ国のうち、一方で相手側に実効支配され、もう一方でみずからが実効支配しているという国は日本だけであります。そういう体験を持つ国だからこそ、この問題に公正な立場で臨んで、そして物が言えるポジションを持ち、積極的に対応し得る、これが日本だということだと思うんです。

 今度の問題でも、そういう国、日本ならではの知恵を出して、外交的解決のイニシアチブをとって積極的な対応を行ってほしいと思うんですけれども、外務省に見解を伺いたいと思います。いかがでしょうか。

佐渡島政府参考人 私どもといたしましても、この問題に関しましては、円満解決というのがもちろん最上の策だと心得ます。それを目指しまして、引き続き外交的努力を行っていきたいと思います。具体的にどういうことかと申し上げると、例えば、事前の相互通報措置をきちんとやれないだろうかとか、そういうようなアイデアを出しながら外交的な解決の努力を図っていきたいと思います。

 実際に、それでは日韓間で具体的にどういう話をしているのかという詳細にわたっての御紹介は、ちょっとまだ進行中の話でございますので、申し上げることは差し控えさせていただきたいと思いますけれども、日本政府としては、韓国政府に対しまして、冷静に、かつ国際法にのっとった対処ということを強く求めていきたいと思っております。

笠井委員 具体的な外交交渉の中身は政府自身が大いに具体的にやることだ思うんですが、先ほど申し上げたように、やはり日本ならではのやれること、知恵を出せることがあると思うんです。イニシアチブを発揮できる、そういう点を大いにきちっとやってもらいたいというふうに思います。重ねて積極的な対応を求めておきたいと思います。

 そこで、本日の案件となっている協定についてでありますが、近年の国際犯罪の増加に伴って、捜査、訴追その他の刑事手続に関する国際的な協力の必要性が高まっている、こういう認識は共通のものであります。国際犯罪の捜査を進めるに当たって、要請の都度ごとに相互主義の保証を取りつける必要性や、捜査の迅速性を高めるという点では、従来の外交ルートだけではなかなかこれは限りがあるという点で、二国間の刑事共助条約は有効だと考えます。

 そこで、麻生大臣に伺いたいんですが、外務省の重点外交政策を拝見しますと、「国民に対する新たな脅威への対応」という項目の中で、「テロとの闘い」「軍縮・不拡散への取組」「国際犯罪対策の強化」ということがあって、「国際犯罪対策の強化」の中で「刑事共助条約の実施・締結」というふうになっておりますけれども、この刑事共助条約をどのように位置づけて、協定を締結する、この意義についてはどういうふうに考えていらっしゃるか、お答えをいただきたいと思います。

麻生国務大臣 御存じのように、このところグローバル化もありました。こっちの円の価格がいきなり二百四十円から百二十円に、一年ぐらいで倍になりましたので、そういった意味では、国際的に見れば日本は倍の金持ちになったということになるんですが、そういったこともあって、猛烈な勢いで外国人の日本への入国というのがふえるのに伴って、それ以後不法滞在者もふえる等々、結果として、外国人によります日本国内における犯罪、軽犯罪から重犯罪に至るまで、いろいろなものが急激にふえたことは確かです。

 とにかく、新宿歌舞伎町のお巡りさんは、二十三カ国語をしゃべれないとお巡りは務まらないとか、そんなやつがお巡りさんなんかやるわけないじゃないかといった話があるぐらい、いや、本当にこんな厚い辞書が置いてありましたし、ちょっと正直、当時現場に行ってその話を見たときに、それぐらい国際的になっておるということなんだと思います。

 私どもとしては、こういったのはいろいろ避けがたいところだとは思いますけれども、それに伴っていわゆる治安というものが悪化するのは非常にマイナス面が大きい。特に、世界の大都市の中で夜間に女性が一人で歩ける唯一の先進国と言われた日本でもありますので、これは日本の大きな国益でもあろうと思いますので、こういったものを維持するという意味ではやはりきちんと対応できるようにしなくちゃいかぬという中で、国民の安全の確保というところが、やはり今一連言われた中で最も重きを置かねばならぬところだと思っております。

 私どもとしては、今回、この協定を結ばせていただくに当たりまして、いろいろ向こう側と一致しなきゃいかぬところというのは、犯罪人の扱いというところが非常に難しいところになりますので、そこらのところを考えて、かなり時間をかけてここまでやらせていただいたんだと思います。

 いろいろな意味で、今後、まだ犯罪発生件数が大したことがないのでずっと後になっておりますが、多いところから順番に少しやっていかないかぬところだと思いますが、逆に、多いところほどなかなか、刑務所の事情やら調べ方の事情やらがかなり異なる部分もありますので、当局としては極めて腐心をしておるというのが実態でもあります。

 しかし、これは国民の安全にとりましても非常に大きな問題だと思いますので、御指摘のとおりに、迅速にやっていくということを考えますと、今回のこれは一つの大きな一歩だと思って、今後とも進めさせていただきたいと思っております。

笠井委員 終わります。

原田委員長 次に、重野安正君。

重野委員 社会民主党の重野安正です。

 質問時間がごくごく限られておりますので、簡潔にやらせていただきます。

 日韓刑事共助条約でありますが、今、国際化という時代であります。当然、今こういうふうなものが時代の要請としてあるんだろうと理解をいたしております。この条約を締結する意義については、私も十分理解をいたしております。

 捜査当局同士が、実際上、直接、共助を請求するというシステムでありまして、従来の外務省を経由する外交ルートを通しての対処に比べて、事務処理の軽減であるとかあるいは迅速化が図られる、このように聞いておりますが、この迅速化という点に絞った場合、外交ルートと比較した場合、どの程度の迅速化がなされるのかという点について、まず聞いておきたい。

麻生国務大臣 これは重野先生、従来三カ月かかったところが三日になったとか、具体的な、定量的なところを申し上げられるわけではありません。

 ただ、外交当局を通していわゆる共助というのを向こうに対して依頼しておりました部分が、これから後は、いわゆる警察庁なら警察庁と向こうとの中央当局自身同士で直接やり合うことができるようになりますので、これは事務処理やら何やら、手間暇が大分迅速化されるというのはわかるところなんですが、どれぐらいと言われて、ちょっと定量的にはなかなかお答えは一概には申し上げられないところだと思いますけれども、少なくとも、話が来てから外務省に行き、外務省から向こうの外務省に、向こうの外務省がまた下におろしてというよりは、よほど早くなるというような感じがいたしております。

重野委員 次に、外国との間で捜査員の相互派遣、これは必要性に応じてこれまでも実施されてきたと理解をいたしております。

 昨今、国際化ということがよく言われますし、同時に、比例するように外国にかかわりのある事件というものが急増している、そういう状況が一方にあります。そのような事件の解決促進ということが時代の要請としてあるわけで、捜査現場においては、捜査員の外国への派遣あるいは外国の捜査員の受け入れをもっとふやすというか迅速にというか、そういうふうなものが求められていると聞いております。

 日韓刑事共助条約九条二に、日韓各国は相手側捜査員の受け入れについて最善の努力を払うとして努力規定が置かれておりますが、両国間の捜査員の相互派遣あるいは相互受け入れ、これは今後この法律に基づいて具体的にどういうふうに推進していかれるんだろうか、こういう思いがありますが、この点について大臣の答弁を求めます。

塩崎副大臣 今御指摘のように、第九条の二項というところで捜査員の派遣、受け入れについて規定をしているわけでございますが、例えば、こちらから、日本から韓国に行って、日本の捜査官が韓国における共助の実施に立ち会うということによって証拠の信用性が高まるというようなことが考えられるような場合には、捜査官の立ち会いを認めるように、被請求国、つまり相手方、韓国に対して求めることが可能になるということでありますから、当然、この条約の締結後は、先生今御指摘のように、捜査官の立ち会い等に関する規定がうまく機能することによって、犯罪捜査がより円滑に行われることになるということでございます。

 細かなことについては政府参考人からまた答弁をさせたいと思いますが、枠組みとしてそういったことが努力規定として定められるということは、捜査の進展にとって大変重要だというふうに考えております。

佐渡島政府参考人 ただいまの委員の御指摘にありました条項にあります「共助の請求に示された特定の者」、こういうことでございますが、条約上は抽象的に書いてございますけれども、例えば、請求国の捜査官というのが一番、今副大臣の方からも御答弁申し上げましたように、典型的な例でございますけれども、これが立ち会いをしたいというときに、従来であればなかなかきちんとあらかじめメカニズムができていなかったところに、やってくださいと、少なくとも最低限、請求はできる、こういうことになりますので、今までよりは協力が、共助がやりやすいということになります。

 他方、結果として必ずしも保証がされるわけではございません。それぞれ捜査というものは主権に属するということでございまして、非常に敏感になっている国が多うございます。

 ただ、この証言を求める場合に、実際に立ち会って、それで自分で報告書というものを日本の捜査官が書けるということになりますので、あるいは請求国側の刑事手続で日本に帰ってきて証言をするとか、そういうことで非常に物件、供述の証拠としての信用性が高められるということが可能になるという判断が前提になっておりますけれども、そういうことを、せっかくの枠組みができたということでございますので、大いに活用をしていきたい、こういうことでございます。

重野委員 ありがとうございました。終わります。

原田委員長 これにて本件に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

原田委員長 これより本件に対する討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 刑事に関する共助に関する日本国と大韓民国との間の条約の締結について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

原田委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました本件に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

原田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

     ――――◇―――――

原田委員長 次に、国際情勢に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房審議官鶴岡公二君、大臣官房参事官辻優君、大臣官房参事官佐渡島志郎君、北米局長河相周夫君、国際法局長小松一郎君、防衛庁防衛局次長金澤博範君、防衛施設庁長官北原巖男君、施設部長渡部厚君、海上保安庁海洋情報部長陶正史君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

原田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

原田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。谷口和史君。

谷口(和)委員 おはようございます。公明党の谷口和史でございます。

 きょう朝から何回か質問が出ておりますけれども、まず竹島周辺の海洋調査についてお伺いをしたいと思います。

 新聞等の報道を見ますと、竹島問題という形で取り上げられていることも多いかと思いますけれども、当然竹島に絡む問題ではありますが、今回の問題は海洋調査、ここが大きな焦点でありまして、そういう意味でも、ちょっと冷静に議論をしていく上でも、まず海上保安庁に今回の調査の目的また背景について確認をさせていただきたいと思います。

陶政府参考人 お答えいたします。

 海上保安庁におきましては、今般、日本海南西部において当庁の測量船により調査を実施することとしております。

 日本海南西部で行います海洋調査は、海図の編集に必要な資料を収集するとともに、本年六月に行われます海底地形名称に関する国際会議、海底地形名称に関する小委員会におきまして、当該水域にある海底地形に韓国側で名称をつけよう、そのような提案しようという動きがありますために、我が国といたしましても、その対案を提出するということも念頭に置きまして調査を実施するものでございます。

谷口(和)委員 それで、きょう次官が韓国に行って交渉されるということで、メディアの報道を見ておりますと、円満解決というお話が先ほどからもありましたけれども、かなりハードルは高いのではないかという報道が見受けられます。

 そこで、先ほどから大臣の御答弁もありましたけれども、今の韓国との交渉の状況がどうなっているのか、円満解決に向けてどういった方針で臨んでいかれるのか、改めてお伺いをしたいと思います。

    〔委員長退席、水野委員長代理着席〕

麻生国務大臣 今、保安庁の方から説明があっておりましたとおりに、今回の調査に関しましては、これは、国際法上にのっとって、日本としては冷静に粛々と事を進めていきたいと思っております。

 一方、御存じのように、立場の違いがありますので、日韓の友好関係等々を不必要に損なわないようにすることも大切だと思っておりますので、今御指摘がありましたように、円満解決の方が望ましいんだと思っておりまして、このことは韓国政府に対しても何回も繰り返して説明をいたしております。

 急遽、韓国のメディア等々を見ていますと、えらくにぎやかな話になってきておりますので、私どもとしては、これは冷静に対応していく必要があるということで、この際、外務事務次官を送って、向こうの柳という人と話し合いをさせて、話し合いの継続中という形をきちんとした上でという話をしないと、いきなり両方とも国際法にのっとってといっても、向こうは違うと言い、いや、おたくは過去四回、国際法にのっとってちゃんとされて、こちらもそれを認めていたじゃありませんかというような言い合いをし始めても、これはなかなからちがあきませんので、したがって、外務事務次官同士で話をというところでスタートを切ろうとしつつあるというのが、今、現状というように御理解いただければと存じます。

谷口(和)委員 我が党の神崎代表も、できる限り韓国側との無用の接触、接触というのは交渉ではなくて、接触をしないことが望ましいということで、無用の衝突は避けてほしい、私も全く同感でありますし、大変な交渉になるかと思いますけれども、円満な解決に向けて御努力をお願いしたいと思います。

 続きまして、在日米軍の再編の問題についてお伺いをしたいと思います。

 政府と名護市との間で普天間の飛行場の移設に関して合意をされて、米国側も基本的に歓迎する姿勢を示されておりますけれども、修正した内容に基づく飛行の安全性とか運用上の問題点などについては、これから検討する、できるだけ早く作業を進めるなどと、結論が出るまでには時間がかかるのかなというふうに思っております。

 一方、日本としても、名護市が求める安全性の確保をするために、アメリカ側に飛行ルートを遵守させられるかとか、そういったことをさらにアメリカ側と協議をする必要があると思います。

 先日、十三、十四と日米協議が開催されたわけでありますけれども、現段階において、修正案について米側とどの程度まで合意をしているのか、また、今度二十四日に次回の審議官級協議が開かれるかと思うんですけれども、その二十四日、そして報道では五月二日とも言われている2プラス2に向けて、その展望についてお伺いをしたいと思います。十三、十四については、普天間も含めて、全体の交渉状況についてお伺いしておきたいと思います。

麻生国務大臣 まず、十三、十四の方のいわゆる審議官協議の方から説明をさせていただきたいと存じますが、いわゆる最終取りまとめに向けての協議というのをさせていただいておるんですが、結論が出ませんでしたので、二十四日からということで、ワシントンで次回行う予定になって、引き続き具体的な内容を詰めさせていただきたいと思っております。

 これは、沖縄とかキャンプ座間とか、いろいろ幾つかありますので、飛び飛びで恐縮ですけれども、普天間の代替飛行場につきましては、今、島袋市長との間で一応の合意を見て、事が進みつつあるというところでありますので、これに合わせまして、沖縄の海兵隊の司令部の移転等々というものをグアムにやるにつきましての経費の問題、また、嘉手納飛行場以南の施設の返還等々の話をまだ今協議している最中であります。

 それから、いわゆる陸軍司令部の改編等につきましては、相模の総合補給廠の話とキャンプ座間の話と、二つが主なところですけれども、これは、効率的に運用するために一部返還してもらったり等々、これも今少しずつ煮詰まりつつあります。

 横田の飛行場につきましては、これは、航空自衛隊の航空総隊司令部、府中にありますが、移駐する話やら何やらというものと、横田の飛行場というものと羽田の第四滑走路との空域調整という話がございますので、この話と、もう一個、横田の飛行場を軍民共用させてくれという話等々の検討がまだ継続中ということであります。

 それから、空母の艦載機の厚木の飛行場から岩国飛行場ということに関しましても、これは、とにかくオペレーションを、グアムと鹿屋と岩国とで、十二機ありますので四機ずつで回すとか、いろいろアイデアを出していただいたり、また、そこにありますヘリコプター、一番うるさいのはグアムに移しますとか、それはできないかとかいう話を今しているというように御理解ください。

 それから、滑走路というものにつきましては、沖合に出しますので、約三キロぐらい出ますので、こっちのできたところに、岩国の飛行場に民間の飛行機がおりられるようにして、かつ、そこに、いわゆるターミナルを基地の中に建てさせろという話等々をさせておるのが今の実態というように御理解いただければと存じます。

 それから、今の名護の話に関しましては、いわゆるV字形というのが出ましたけれども、そこらのところは、今、宜野座村と名護市との間に一応の合意ができたことは喜ばしいことだと思っておりますが、さらに地元の住民の方々との交渉等々を通じて、理解というものを得られるように、今後ともさらに一層努力をしていかねばならぬところだと思っております。

谷口(和)委員 今、地元との交渉とのお話もありましたけれども、昨年十月の中間報告を実行に移していくには、先ほどもお話ありましたように、米空母の艦載機の岩国への移転とか、普天間の空中給油機の移転問題等々、新たに基地を受け入れる地方自治体の理解を得る作業が残されております。あと、普天間につきましても、沖縄県との話し合いも残されておりまして、日米間の最終合意に向けて政府が取り組むべき課題は大きいと思います。

 私自身も、厚木基地、座間キャンプの近くに住んでおりまして、地方自治体との話し合いの現状について、ちょっと防衛施設庁の方にお伺いをしておきたいと思います。

渡部政府参考人 お答えをいたします。

 日米間におきましては、昨年十月二十九日に開催されました2プラス2で発出された共同文書で示されました兵力態勢の再編に関する案につきまして、できる限り早く最終取りまとめを行っていくための協議を現在精力的に行っているところでございます。

 また、今御指摘の地元に対する説明ということでございますが、関係地方公共団体は全国にわたっております。それぞれの地方公共団体に対しまして、日米協議の進展を踏まえまして、その状況につきまして、逐次、それぞれ関係する事項を中心に、その内容について御説明してきているところでございます。

 それで、こうした中、現状でございますが、容認あるいはやむを得ないというようなことで一定の御理解をいただいている関係地方公共団体は、現在のところ十七地方公共団体という状況でございます。

 例えば、今先生御指摘になりました普天間代替施設関係につきましては、四月七日に名護市と宜野座村と防衛庁長官との間で基本合意書を締結しておりまして、周辺の町村、東村、金武町、恩納村でございますが、この三つの地方公共団体からも基本的な御理解をいただいているところであります。

 それから、Xバンドレーダーに関しましては、これは航空自衛隊の車力分屯基地というところに展開するという計画でございますが、これにつきましても、三月三十日、地元のつがる市及び青森県の方から容認の表明をいただいているところでございます。

 まだ残された点、多々ございますので、いずれにしましても、兵力態勢の再編に関する最終取りまとめに向けまして、審議官級協議の結果等を踏まえ、引き続き地元の御理解、御協力を得られるよう努力してまいりたいと考えております。

谷口(和)委員 私、地元でいろいろな方とお話をしていますと、今回の中間報告については、唐突だという印象がかなり強いというお話をよくお伺いします。

 当然、交渉事ですので、お話しできない部分はたくさんあるかと思いますし、事前に説明できない部分もたくさんあるかと思うのですけれども、やはりできるだけ、基地を抱える自治体と意見交換等をなるべく頻繁にしていただきたいというふうに思っているわけです。例えば、基地を抱える地方自治体と外務大臣、そして防衛庁長官が、地元の理解を得るためにも定期的に協議を行っていってはどうかというふうに考えるんですけれども、大臣の見解をお伺いしたいと思います。

麻生国務大臣 兵力再編の話がそんなしょっちゅうある話ではありませんけれども、いずれにいたしましても、私どもとしては、いわゆる抑止力というものを維持しつつ、地元の負担の軽減というもの、この二つを主たる目的として、このとおりいろいろさせていただいているんですけれども、御指摘のありましたように、地元との調整というのは避けて通れないところでもあります。

 私どもとしては、こういったようなものというのは、できたはいいけれども、後の運用が全然うまくいかないということにもなりかねないと思っておりますので、地元との意見の調整というのは非常に大事なものだと思いますので、関係省庁ともこれはよく相談をしなきゃいかぬところだと思いますけれども、検討させていただきたいと存じます。

谷口(和)委員 ありがとうございます。ぜひ前向きに検討を進めていただきたいというふうに思います。

 それで、先ほどもちょっとお話をさせていただきましたけれども、普天間の代替飛行場のV字形の滑走路であります。

 滑走路をV字形に二本つくるということで、離陸用と着陸用を使い分けて、そして住居の上をなるべく飛ばないようにするということだと思うんですが、資料なんかを読ませていただきますと、基本的に風向きが北から吹いてくる風を想定して、それに向かって離陸、着陸をするということ、南の方から入っていく、そういうルートを想定されているかというふうに思います。

 北側からの風が大体七〇%ぐらいというふうにお伺いをしておりますけれども、例えば南側から風が吹いた場合、危険を避けるためにも、入ってくる、離陸、着陸の方向を変えなければいけないというような見方もありまして、実際のそのところの運用は、想定外だった場合にどういうふうにしていくのかということをまず一点、お伺いしたいと思います。

 それから、あと、環境への影響についても懸念をされておりますので、ここのところ、具体的にどういうふうに取り組んでいかれるのか、見解をお伺いしたいと思います。

渡部政府参考人 まず、運用につきましてお答えいたします。

 代替施設におきます米軍の具体的な運用に関しましては現在米側と協議中でございますが、先般、名護市と合意いたしましたV字形滑走路案につきましては、米側からおおむね理解を得ているところでございます。それで、基本的な運用方法につきましては、大体次のようなものになるのではないかと考えております。

 現在の普天間飛行場の機能のうちキャンプ・シュワブに移設されます機能というのは、海兵隊の陸上部隊の輸送機能でございまして、代替施設における運用は、基本的にはヘリの運用ということになろうかと考えております。ヘリコプターは、メーンの滑走路を風向きに応じて使用いたしまして、台形形のコースを基本として有視界飛行を行うということになろうかと考えております。また、サブの滑走路を使用した離着陸、今先生おっしゃいましたように、北側、北東からの風の場合には離陸専用というような使い方をし、南側、南西からの風の場合には着陸にも使用するということになろうかと考えております。

 それから、天候が悪いときなどに行われますいわゆる計器飛行でございますが、これは固定翼連絡機あるいはヘリコプター、両方ございますけれども、北東からの風の場合にはメーンの滑走路を使用し、南西方面から着陸する。それから、南西からの風の場合には、サブの滑走路を使用して、北東方面から着陸が行われるというような形になろうかと考えております。

 いずれにしましても、周辺地域の上空の飛行を回避するという方向で対応するというのが地元との合意でございますので、その合意に従って運用していくことになると考えております。

谷口(和)委員 済みません、環境面への影響について。

渡部政府参考人 今回の案をつくる際には、環境の保全というのが一つの大きなポイントでございました。

 それで、藻場への影響を最小限にとどめるということで計画させていただいておりますし、あるいは、サンゴ礁が近くにございますけれども、これにつきましても、サンゴの分布区域というのは、今計画されております代替施設の地域からは比較的沖合にございますので、今回合意されましたV字形滑走路案の海面にかかる部分につきましては、サンゴの区域には及ばないのではないかということで見込んでおります。

谷口(和)委員 ぜひ、安全性の確保と環境面への配慮をしっかりとお願いしたいと思います。

 続きまして、先ほどもお話ありましたけれども、グアムへの移転について、移転の経費の負担についてお伺いをしたいと思います。

 きょうは防衛庁長官もアメリカに行かれるということでありますけれども、まずお伺いしたいのは、日本の負担についてですね。七五%という数字がひとり歩きしているような感じもあるわけですけれども、まず、経費の総額の日本の負担分というのは、割合で決めていくのか、それとも、具体的にかかる費用を積み上げていって、日本側はこれだけ負担しますよということで、積み上げで算出するのか、どちらの方針なのかというのをまずお伺いしたいことと、それから、この七五%が、きょうの報道なんかでも出ておりますけれども、一体どこからこの七五パーという数字が出てきたのか。この点をちょっとお伺いしておきたいと思います。

伊藤大臣政務官 谷口議員の御疑問、もっともだと思いますけれども、この問題、いろいろただいま協議中でもございますし、要は、やはり沖縄の負担というものを一日も早く減らしたい、そういう観点から今回進めているわけでございまして、今回の兵力態勢の再編に関する日米の外務、防衛当局間の協議の真っただ中でございますので、在沖の海兵隊のグアム移転に関して必要となる経費の詳細について今詰めている最中ということもありまして、この詳細について今つまびらかにすることはなかなか困難であると思います。

 いずれにしても、我が国としていかなる措置をとるべきかについて、今真剣に検討しているということでありまして、協議の進展その他を勘案しながら、お答えできるときにお答えしていくということになると思いますが、現時点では何ら決定なされていないということでございます。

谷口(和)委員 済みません、七五%については。どこから出てきたのかですね。

伊藤大臣政務官 これは、日本政府側の承知する数字ではございません。

谷口(和)委員 ありがとうございます。

 最後の質問になります。グアムへの移転の負担でありますけれども、私も基本的には、家族も含めると移っていかれる方が一万数千人になるということで、かなりの人数の方が移転されるということで、これは当然、沖縄の負担軽減になるのは間違いないと思います。それから、嘉手納基地から南の土地は全部返還するということで、米軍の軍事施設用地の供与に伴う地代の支払いとか、また駐留経費負担、いわゆる思いやり予算など、日本側の負担の軽減につながるということは間違いないし、応分の負担を日本がやるということは、私もそう思っております。

 ただ、在日米軍の再編ということで、在日米軍ということで取り上げられることが多いわけですけれども、そもそもは、テロの後を受けた地球規模の米軍の再編の中にこのグアムの移転、グアムの基地機能強化がある、こういう観点からしますと、この点は、グアムの基地強化ということが目的であるという点から考えても、この辺をきちっと意義を明確にし、日米双方が応分の負担となるように、憶することなく交渉していくべきである、こういうふうに考えるわけですけれども、麻生大臣の見解をお伺いしたい。

伊藤大臣政務官 この問題は、まず一義的に、日本国政府としては、沖縄にとっての負担軽減ということを目的に行っているわけでございまして、昨年十月の2プラス2の共同文書においても、直接引用いたしますと、「日本国政府は、このような兵力の移転が早期に実現されることへの沖縄住民の強い希望を認識しつつ、米国政府と協力して、これらのグアムへの移転を実現可能とするための適切な資金的その他の措置を見出すための検討を行う。」ということが確認されているわけでございまして、在沖海兵隊司令部の要員及びその家族のグアムへの移転は沖縄にとって大きな負担の軽減となるものであり、これを早く実現するために、我が国としても資金的な措置を含め検討しているということでございます。

 そしてまた、今議員御指摘の米軍のグローバル再編におけるグアムの位置づけということに関しては、我が国政府としては申し上げる立場にないということでございます。

谷口(和)委員 これで私の質問を終わります。ありがとうございました。

水野委員長代理 次に、松原仁君。

松原委員 松原仁であります。

 きょうは外交問題の一般ということで質問をさせていただきます。

 まず、今月十六日の報道によって私もそれを承知し、大変に驚いたわけでありますが、中国、日中中間線における船舶航行の禁止というものが一時発表されたわけでありますが、この中身を簡単にお伺いしたい。

 では、先に次に行ってしまいます。これは、後で一緒にお答えいただきたいわけであります。

 三月一日に、中国は日中中間線付近の船舶の航行禁止をホームページで公示したわけであります。これを日本政府が知ったのはいつなのか。そして、このことを、私が承知している限りでは先に海上保安庁や水産庁が気づいたようでもありますが、そういったことは情報収集という点で極めて問題があると思っておりますが、これも含め、この中身を、佐渡島さん、お伺いいたします。

佐渡島政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、事実関係でございますけれども、三月一日、通航公告というのが中国海事局の、中国ホームページにおいて公表されたということでございます。これに関して、我が方への明示的な通知というのはございませんでした。

 当省を中心に申し上げますと、水産庁から外務省に通航公告に関する通知があったのは三月二十八日でございます。それから、大臣に私どもが報告を申し上げたのが四月十五日ということでございます。

 中身でございますけれども、中国は、今ちょっと座標の数字が出てまいりませんけれども、特定の、ほぼ緯度にして二度にわたる直線の距離のところでパイプライン、電線等の敷設をするということで、航行船舶の進入を禁止するというような公告を出しておりました。

松原委員 それは、日本のEEZはそこには含まれていない、こういうことですね。

佐渡島政府参考人 当初の中国側の通告の中身によりますと、私どもの立場から申し上げれば、一部はかかっております。図で申し上げますとこのような感じになりますけれども、ほぼ下半分がかかっておるような状況でございました。

松原委員 そうすると、中国は明らかに日本のEEZ内においても、大体、船舶の航行禁止というのは極めて耳を疑うような話でありますが、そういう極めて異例なことを、しかも、我々が承知している日本のEEZ内にも設定した、こういうふうに認識してよろしいですか。

佐渡島政府参考人 通告上は、そのようにかかっておったことは間違いございません。

松原委員 麻生大臣にお伺いしますが、三月一日に中国はホームページで記載をしたわけでありますが、大臣はいつこのことを御承知になったのか。そして、このことに対して日本はきちっと反論をするべきでありますが、安倍さんの懸念はあったわけでありますが、このことについてどうお考えか、お伺いいたします。

麻生国務大臣 今外務省の方から申し上げましたように、私自身が報告を受けましたのは四月の十五日ということになろうと存じます。

 これを受けまして、私どもとしてどのように対応したかということですけれども、その前に、大使館より中国外交部に対して申し入れを行って情報提供を求める訓令を中国大使館に出しておりますので、それに基づいて、在中国大使館から中国外交部に対して話の内容の報告を、情報提供を求めたというのがまず最初の段階です。

 続いて、今言われましたように、この事実というものが、ちょっと待てという話で、この事実をまず確認することと、事実確認の上、適切に対応するということになったんですが、私どもの方から、三度ぐらいだったか、数度申し入れを受けまして、去る四月の十七日の深夜に中国側から、通航公告の作業範囲に関しては技術的な誤りがあったので、早い話がそういう説明があって、十八日深夜、中国側の説明のとおり、航行通告が修正ということにされていましたというのが、我が方で確認をしたということであります。

 たとえ技術的な間違いであったとはいえ、率直に受け取って技術的な間違いであったとはいえ、こういったような事態が生じるということは日中双方にとって余りいいことじゃありませんので、日本側としては中国側にこのようなミスが二度と起こらないようにということを求めたというのがこれまでの経緯であります。

松原委員 二つありまして、一つは、三月一日に出された、それを日本の国の政府というか、麻生大臣自体が四月十五日、そこに一カ月半の乖離があるわけであって、この中国のホームページの情報は、すぐに発見をし、すぐにそれを少なくとも認識をする。意図的に、実は麻生大臣が、いや、おれは本当は、仁ちゃん、三月三日には知っていたんだけれども、四月十五日ということになっているんだ、こう言うのだったらいいですよ。本当に四月十五日に知っているのでは、これはお粗末であるというふうに私は申し上げざるを得ない。こういう危機管理体制はどうかというのについて一点。

 もう一つは、前に、原子力潜水艦のときも、技術的な理由とかいろいろとあったわけであります。これは、技術的というジャブを出してきて日本の反応を見ながら、何回かやって既成事実化するというのは極めてあり得る話でありまして、我々日本の政府というか、我々というか、麻生さんの立場から、やはり中国は、謝罪はしなくても、遺憾なぐらい言ってもいいんじゃないか、そのぐらいの御発言はやはりあってもいいのかなと思っておりますが、この二点をお伺いいたします。

麻生国務大臣 通常、この種の話をするときには、これは関係諸国に対しましては事前通告等々をする、明示的なことをやるというのが、これはルールではありませんけれども、マナーとしては通常そういうことになっておりますけれども、全然その種の明示的な話は関係諸国には全くなされなかったものですから、海上保安庁は全ホームページを毎日毎日中国語で読んでいるというわけではありませんので、ちょっとそこのところが少し日数がずれたというのが、これはある程度、我々の方はきちんとそういうようなことになれば向こう側に言いますから。そこのところが一つ。

 もう一点は、この間の海軍のあの原子力潜水艦のときの話と今回とは大分情勢、状況が違うとは存じますけれども、いずれにしても、隣のうちとは何となく常に、御近所さんというのは何となく接していればいろいろあるのは世の常でもありますので、そういった意味では、私どもとしては、言うべきことは言う、きちんとした対応を今後ともやっていく、そういったある程度の、なあなあな話じゃなくて、緊張感を持った上で、それが結果として日中の両方の共通の利益、共益ということになるというような形でしていかねばならぬのではないか、私どももそういうぐあいに考えております。

松原委員 巧みに御答弁がちょっとずれているかもしれませんが、私は、それは分量は多くてもこれを読んでいないと、麻生大臣が今の額面どおりのお話で四十五日後に知ったということで、その間に日本の漁船がその辺に行って、それこそ何か痛い目に遭ったということになれば、日本の国は日本の国民の生命、自由、財産その他を守る義務があるというか、それは国家というのはそういうものでありますから、それに対して重大な手落ちになるので、中国語の膨大な文献は読めないからというのでは私は全然お答えになっていない、やはりこれは納得できないということですね。では、それにまずお答えください。

麻生国務大臣 それでは、正確に申し上げますと、一日から二十八日までの間、二十七日間のずれがあった点は事実でありますが、それ以後、いわゆる海事当局の間では双方でいろいろ作業というのを開始しております、日本側としておかしいじゃないかという話で。

 それで、一たんは、作業は行わない、もうやらないという話を向こうは言ってきた。ところが、その後、四月の七日になって、今度、中国海事当局から海上保安庁に対して、この作業は現在中止しているが、期限内であればいつでも再開するという可能性がある旨の連絡があったので、十一日にその旨、海上保安庁から外務省に対して連絡があっております。これを受けて、外務省としては、四月の十三日に作業の詳細について情報提供を出せという話を在中日本大使館に対して訓令を出して、日本大使館から中国外交部に対して申し入れを行ったということであります。

 したがって、そこの二十八日と一日の間のずれの点につきましては、今後とも注意を払わねばならぬという点は確かだと存じます。

松原委員 お認めいただいたということで、情報はきちっと、特に日本国民にさまざまなマイナスというんですか、が発生しないように国として毅然としてやっていただきたいわけであります。

 この中国の船舶航行禁止というのは、海洋法条約に照らして考えた場合はどういうふうに解釈できるのか、事務方にお伺いします。

小松政府参考人 まず、関連の水域でございますが、我が国または中国の排他的経済水域ということになるわけでございまして、先ほど来議論になっておりますように、当初の措置というものが中間線の日本側も含んでいたということであれば、我が方の立場からいたしまして、その部分は日本の排他的経済水域であるわけでございますから、日本が沿岸国として主権的権利を持っているというところでございます。

 それで、そこを技術的な間違いがあったということで訂正をしたということでございますけれども、それでは、仮に中国の排他的経済水域内であれば何をやってもいいかということであろうかと思いますが、これは、国連海洋法条約におきまして、沿岸国は、主権的権利を有しておりますけれども、その行使に当たっては、他の国の権利義務に妥当な考慮を払わなければならないという規定もあるわけでございまして、どうしていれば妥当な考慮を図ったと言えるかということについてはいろいろと具体的な内容を注視する必要があると考えられますけれども、これからどういう運用が行われているかということは私どもとしても注視をしていきたいというふうに考えております。

松原委員 これは、中国側がそういった設定をする、やはりかなりこれは強引といえば強引な話であるというふうに私は思うわけであります。

 先ほどの麻生大臣の話で、一度そういうふうな協議が両国の海事当局で行われた上で、またやるぞという話があったということになると、これはもう確信犯だ。今その話を初めて私はこの委員会で聞きましたが、そういうことであるならば、これはやはりもうちょっと強く向こうには、技術的問題というレベルで納得していいのかどうか、確信犯じゃないかということなんですね。

 ちょっとその前に事務方にお伺いしますが、技術的というものの中身の説明というのはあったんですか。

佐渡島政府参考人 お答え申し上げます。

 詳細な説明はございません。技術的という説明だけでございます。

松原委員 そうすると、何かこういうのがあったらみんな技術的でした、何かあったら技術的でした、これでいいということですか。ちょっとお伺いしたい。

佐渡島政府参考人 私どもの方にかかっておりますことは、技術的ということでございましても、先ほど大臣の方から御答弁を申し上げたところでございますけれども、隣同士でお互い暮らし合っておりますので、今委員の御指摘にありましたように、漁船の活動とか航行船の活動、いろいろなところに影響がございます。

 したがって、少なくともまずこちらにかかっている部分についてはおかしいということを前提に、私どもも、本当にこれでいいのかということで、向こうの発言に出入りがございましたので、どうなんだ、かつ、こちらに入っているのであれば我々としては受け入れられませんよということを前提に強く申し入れをしたということでございます。

松原委員 今回、例えば日韓間で海洋調査の問題が大分クローズアップされていますが、事の内容からいうと、あの海洋調査とこの中国がやろうとした船舶航行禁止ではレベルが違いますよ。レベルが違うでしょう。レベルが違うと思いませんか。

佐渡島政府参考人 レベルが違うという委員の御意図を必ずしも私はつまびらかにはいたしませんけれども、日本側のEEZのところに通航の禁止をしてしまうというのはやはりおかしいと私は思いますので、そこはきちんと事実関係を確かめて、おかしいものはおかしいというつもりでお話をしましたが、その前に向こうの方が訂正をした、こういうことでございます。

松原委員 こんなことを韓国のEEZでやったら今の騒ぎどころじゃないですよ。通航禁止ですから。技術的でおさまっていいのかというのが一つあるわけですよ。私は、これに関しては、技術的という言葉でおさまれば何でもいいという話ではなくて、きちっとやはり、麻生大臣、確信犯だと思いませんか、これは。

 私は、こういうものをこういう状況で、そうすると、中国が技術的だということで今回は一回引いた、これでこの件は一件落着、こういう認識ですか、麻生大臣。

麻生国務大臣 いや、この種の話というものは、こちらが何となくすきを見せればまた出てくるような話というように理解して、こちらも常に緊張感を持って対応していかねばならぬ問題だと思っております。

松原委員 ちょっと時間の都合もあるので、次に参ります。

 外務省は、二〇〇六年外交青書の中で初めて言及している、中国の軍事力は不透明な部分が多いと。これから出る外交青書ですね、初めてそういったことが言及されたと私は承っているわけでありますが、中国の軍事力に対する認識をお伺いしたい。

麻生国務大臣 御存じのように、平成十八年度の外交青書で、中国は、二〇〇六年度の国防費は二千八百七億元、約四兆円強ということになります。これを前年度比で比べますと一四・七%。これは、松原先生、向こうの言った話をそのまま書いておりますので、この国の統計学がそれほどきっちり合っているかというのを前提にすると、また話が時々違いますので、私、これ書いた話をそのまま読んでおりますので。その国防費でいきますと、十八年連続で一〇%、二けた以上ということになります。

 こういうようなことでいきますと、今中国に攻め入ろうという国がどこにあるかちょっと私ども知らないんですが、それにもかかわらず一〇%という伸びでいきますと、仮に四兆が、一番下の一〇%でずっといったとしても、これは十八年間を掛けますと二十兆になりますので、複利で計算しますと四兆は十八年で二十兆ということになると、これはどう考えたって、その内容がよほど透明になっていない限りは、周りの国にとりましては、何となく不信感というものを持つのであって、私どもとしては、今回の防衛白書の中で、この部分に関して、もっときちんと明快にすべきであるというのが、明確にしないと近隣諸国に不安を与えてみたり不信を与えるということを申し上げているというように御理解いただければよろしいのであって、やはり透明性の向上というのは、よほど努めていただかぬと、近代化って何の近代化だかよくわかりませんから、私どもには。そこらのところがきちんと透明性を増されるように努められるべきだと存じます。

松原委員 同時に、外務省は、東シナ海を平和の海にしよう、こういうふうに言っているわけでありますが、そういうふうな今の麻生大臣の御答弁もお伺いすると、どうも中国は、この軍事費の不透明な伸びを含め、東シナ海を平和な海にしようとする我々の思いと裏腹に、それに逆行しているような動きを中国はしているんじゃないか。今回の船舶航行禁止も含め、そういう懸念を私なんかは抱くわけでありますが、麻生大臣、御所見をお伺いしたい。

麻生国務大臣 いわゆるこういった脅威論というものは、基本的には能力と意図です。その二つがあって初めて成り立ちますので、意図に関しては、ないと言われたら、あるというのを証明するのはなかなか難しいので、どうしても能力という目に見える物理的なものの方から話が行くということになります。

 したがって、今私どもとして、外からこの数年間のあれを見ていますと、中国の経済の伸びに合わせて、軍事力の、少なくとも国防費というものの中が急激に伸びてきておるという現状を見て、何のためにそれが使われておるのか。それが主に海軍に大量に充てられているのか、原子力潜水艦に充てられているのか、航空母艦に充てられているのか、何に充てられているのか、よくちょっと明確に出てこないところなものですから、それでいきますと、陸軍に充てられている部分に関しては、いや、協力の海といって、海に別に使っておらぬということにもなりましょうし、いろいろな話はできると思います。だから開かれたものにしてもらいたいという話をしておるというように御理解いただければと思います。

松原委員 しばしば言うわけでありますが、性善説、性悪説という話があって、人間は惻隠の情があるから本当は性善なんだ、人間というのは実は悪いんだ、孟子、荀子という中国の哲学者が、春秋戦国時代、これを言ったわけですね。

 我々は、北朝鮮を見ると、国家というのは、性善説と思っていると裏切られる、拉致問題とか見れば。あのことがあったから、私は持説で前から言っているけれども、日本人は憲法前文の諸国民の平和とか、そういうものに対する思いを信頼してと、信頼していたら拉致されたじゃないか、こういうことになったわけでありますが、大臣、少なくとも政治家は、性善説を基本にしたいと思いながらも、やはり最悪というか、性悪説に立つべきだと思うんですが、一般論としての大臣の、外務大臣としての、その取り組みの思いを聞かせてほしい。

麻生国務大臣 十八史略というのはよく読まされた本でもありますので、確かにおっしゃるように、韓非子含め、今言われました荀子、孟子、いずれも性悪説に立っていることはもう間違いない事実だと思っております。傍ら、孔子というのも出てきますけれども、いずれにしても、中国の長い歴史の中を見ますと、裏切ったり裏切られたりという長い歴史の中に培われたものは、ある程度DNAとして残っている。傍ら、こちらの方は島国で、別に外部からさしたる侵略もなく、長いこと一国としてやれていた国としては、埋め込まれているDNAにかなり差はあるなと思っております。

 ただ、少なくとも、ヨーロッパの歴史を見ていれば、戦争のない間が平和というのであって、平和が前提で物を考えてはいないというのは、ヨーロッパに住んでいると、つくづくそれだけはそう思いました。

 そういう意味では、基本的には、やはり人間、希望とか夢とか、最後の希望というのがなくなるとこれは破局的なことになりますので、最終的な希望というのは持ちつつも、最悪なときを前提にしてある程度考えて、実行は楽観的にやっても、発想は悲観的なものに立って考えておかないと、少なくとも戦略としては間違えるということになるんだとおっしゃりたいんだと思いますが、私も基本的には、それを言うか言わないかは別にして、考え方の基本はそれだと思います。

松原委員 であれば、麻生大臣も、この場ではなかなか発言できないかもしれぬけれども、自分は性善説に立ちたいけれども性悪説的な部分で見なきゃいかぬ、こういうことを今言ったわけでありますから、中国が不透明な軍事費の拡大をしている中で、我々は平和の海を望むけれども、もうちょっと中国も考えてくれよ、こういうふうなことが大臣の思いにある、こういう理解でよろしいですね。いや、よろしいという前提で、時間もないですから答弁は結構ですが、もう今うなずいていますから、大臣は中国の軍事費に対して極めて遺憾な思いを持っていると私は認識をいたしました。

 それで、次に、今問題になっている竹島の問題に入っていきたいと思いますが、この竹島の問題、今回、海上保安庁は調査をしようというふうに決意した。これ、質問の順番ばらばらにしていきますので、都度答えていただきたいんですが、この問題に関して、なぜこの段階で海上保安庁はそういう決断をしたのか、その理由をお伺いしたい。いなければ官房でもいいですよ。

佐渡島政府参考人 海上保安庁の方がおられませんので私がかわりに答弁しますが、私どもとしては、今回の調査の背景には、六月にありますドイツでの海底地形の名称に関する国際会議で、今回調査を行います海域にございます海底地形名について韓国側が名称を提案する動きがある。そのことを背景として、対案を提出するために必要なデータを収集するということで、このタイミングで海洋の科学的調査を実施される、こういうふうに承知をしております。

松原委員 意思決定は、これはどこがやったというふうに理解してよろしいですか。

佐渡島政府参考人 調査そのものに関しての一義的な決定は、海保庁さんの方でお決めになったと思います。

松原委員 これだけ重大な決定を、この間、尖閣に不法上陸した中国の不法上陸者に関して、捕まえたけれども強制送還したと質問したときに、あのときの大臣は川口さんだったかな、これは沖縄県警がやったことですと、そんなばかなことがあるはずないじゃないですか。海上保安庁がこれを決定するのにおいて、どこが本当の意思決定をしたのか教えてほしい。

佐渡島政府参考人 調査そのもの、船の運用を含めまして、それは所管の官庁の方でおやりになったと思います。ただ、こういう問題、全体に関しては、もちろん政府全体として、それぞれの所掌の中でチームとして取り組んでいる、こういうことだろうと思います。

松原委員 この問題に関して、海上保安庁は、海上保安庁の例えば上というか何というか、内閣とか外務省とか、そういったところに全くお伺いを立てていない、こう言うんですね。

佐渡島政府参考人 よそのお役所のことでございますので若干はばかられますけれども、どこにも相談もなく全く単独でお決めになったということはないと思います。重複水域とかいろいろなことがございますので、それぞれ情報を得ながら御相談をされて最終的にお決めになった、こういうことだろうと思います。

松原委員 このことを小泉総理大臣が知っているかどうか、小泉さんがいたら聞きたいわけでありますが、おられません。麻生外務大臣はこのことを事前に認識をしておられましたか。

麻生国務大臣 六月の会議に合わせてこのタイミングでやらざるを得ぬという事実を知ったのは後でありまして、先に、船を出す前に知っていたかといえば、この時期にやらねばならぬという話は私どもは知っていました。ただ、準備するのは当然何カ月も前から準備したはずですから、その段階で知っておったかといえば、外務省として知っていたわけではありません。

 ただ、保安庁の立場に立てば、だってこれは国際法上に違反していないし、別に、向こうだってやっているんだから、こっちだって同じようなことをやってどこが悪いのという感じではあったろうとは思います。

松原委員 麻生大臣のおっしゃるのは、法律上はそうでありますが、あの国は法律上どおりに現実にいっていない。そこは後でずらずらと、大分時間が経過しているのでどこまで聞けるかわかりませんが、聞きたいと思っております。

 私は、こういう反応をする国だということを認識してやるならば、拉致問題で一方で金英男さんの件で日韓が共同してやりましょうとかいうときにこれをやるというのは、タイミングはこの時期がよかったのか。こんなぎりぎりでやるべきだったのか、ドイツでやるのはもう六月ですから。もっと早い段階でやるべきだったのか。

 私は、戦略的には、韓国は四年間やっているんですよ、四年間。韓国がやっているときにこっちもやればよかったんですよ、韓国がやっているときに。韓国が四年間一方的に、韓国はこの四年間の調査を日本に事前通告していますか、ちょっとお伺いしたい。

佐渡島政府参考人 お答え申し上げます。

 事前通告はございませんでした。

松原委員 そのときに、日本の国会は、今回の韓国の国会のように、許しがたい、問題がある、暴挙だと騒いだという認識をお持ちかどうかというのは、大臣に聞くのも、では、政務官、そのときに日本の国会ではそれを論議されたかどうか。では、事務方でいいです、このことを論議されましたか。

佐渡島政府参考人 承知しておる限りでは、御論議はなかったと認識しております。

松原委員 つまり、我々は大人の対応をしているけれども、韓国の対応はその対応とは異なって極めて激しいものだということになるわけであります。しかし、そのことは、従来の流れを見れば容易に想像できたことであって、麻生大臣がおっしゃるように、海洋法にのっとれば、向こうもやってきている、こっちもやるのは当たり前だろうと。当たり前ですが、当たり前が通用しないんですよ。通用しないからこんなもめごとになっていて、あり得ないような、日本の国の公の船を拿捕しようかと訓練まで机上でやっている。本当に、こちらは冷静にやっているんだけれども、一方は開戦前夜のような取り組みで非常に盛り上がっている。

 そういう状況でありますが、では、四回の韓国の調査のときに、日本はこれに対して抗議をしたのかどうか、お伺いしたい。

佐渡島政府参考人 私ども、把握する都度に抗議を申し上げました。

松原委員 具体的にどういう抗議をして、どういう反応でしたか。

佐渡島政府参考人 御承知のとおり、海洋法上、相手国の経済水域内での調査をやる場合には沿岸国の同意が必要だ、こういうふうになっております。しかし、事前にあらかじめそういう同意をやって調査をするということではなかったので、そのことに対して抗議をした、こういうことでございますが、先方からは特段の反応がない、こういう状況でございました。

松原委員 日本が抗議をしたときは韓国の外務事務次官がこのことで釈明には来なかったけれども、韓国から言われると我が方の外務次官は行く、こういうふうなことになるわけであります。

 私は、ちょっとお伺いしたいわけでありますが、そうしたら、これは、先ほど海保がやっているという話でしたが、海保に責任を押しつけてトカゲのしっぽ切りみたいなこともできない状況だと私は思っているんですよ。結果として、今回、日本は外務事務次官が韓国に行って協議をして、何とか穏便に日本の国益も主張しながらおさめようとしていますが、どういうふうな目的で外務省、事務次官は行かれているのか、どの辺を落としどころに考えておられるのか、これは外務大臣にお伺いします。

麻生国務大臣 落としどころの手のうちは今の段階で言えるわけではないんですが、少なくとも、大事なところは、双方で交渉をしているということは、EZ、EEZと言われるその地域において、排他的水域において両国で合意がなされていないということがはっきりいたしますので、そうはっきりいたしますと、六月のドイツでの会議で、こういう名前を出しても、いや、これは両方で合意をされていないでしょうがということがきちんと対応できるというためには、この際、きちんと双方で意見が合意に至っていないという客観的事実証明が必要ということになろうと存じます。

松原委員 結局、事務次官が行かれて、しかし韓国側がこの六月に名前を出しますよというふうになったときには、これは当然、国連海洋法に基づいて、我が方も粛々として、韓国が四年間調査をしたように、こちらも一年間というか、一年間になるのかどうかわかりませんが、六月ですから一年というそんな長いことはできませんね、調査をする、こういうふうな御決意は、これは、海上保安庁云々ではなくて、外務大臣としては当然そういう決意を持っておられるという認識でよろしいですよね。

麻生国務大臣 今回、交渉をいたしますけれども、私どもとしては、少なくとも、海洋調査船というものが中に入らせてもらえないという事実は明らかに公平性を欠いておりますので、その意味では、そちらがそういった武力行使に訴えられた以上ということになりますと、こちらの方としても六月の段階においてはこの話はとても対応できないわけですから、だから、そちらが幾ら申告されても認めることはできない、これは国際法上そういうことになろうと存じます。

 したがいまして、ここのところは、私どもとして断固やるとして、武力的に追い出されたとき、向こうは海軍の船が出張ってきているわけですから、では、こちらは海上自衛隊を出すかというような話で冷静さを欠くような対応をするつもりはございません、その段階で。

松原委員 そうすると、日本の海保の調査船が行って、向こうから追い出されるという事実を国際社会に知らしめる、そのためにも出ていくぞ、こういうことでよろしいですか。

麻生国務大臣 基本的にはそういうことになろうと存じます。

 お断りしておきますけれども、次官との交渉の結果を見ない前に何とも言えませんから、そういって全く話にならなかったという前提に立ったということを、ある程度前提をつけておかぬと、松原さんと話をするとだんだん、おまえの言葉だけでと、どんどん先に行かれると話がちょっと忙しくなるから。

松原委員 時間が大分短くなってきたので端的にお答えいただきたいんですが、感想も含めて幾つか私は聞きたい。この国会答弁で、韓国の柳次官が、主権侵害は国内法で処理する、EEZに入ったときは拿捕も辞さない、こう言っていますが、これについてはどうお考えになりますか。

麻生国務大臣 お立場上、いろいろ皆言われますので、実力行使という話はいつの時代でもある話だろうとは思いますけれども、いろいろな方がいろいろなところでコメントされますので、それを全部私どもの方で一々取り上げるつもりはありませんけれども、少なくとも、日本の漁船と違って、測量船というものは公用船、日本の政府に属しております公用船というものを一方的に拿捕ということは、これは国際法上全く認められる話ではありませんので、私どもとしては、そういった冷静さを欠いたような対応になろうとは思いませんけれども、国際法上に違反しているということははっきりしております。

松原委員 つまり、この柳次官の韓国の国会答弁、主権侵害で国内法で処理する、EEZへ入ったときは拿捕も辞さない、この発言はおかしい、今こういうふうな大臣の御発言だったというふうに私は承知をいたしました。その答弁で結構であります。

 次に私はお伺いしたいわけでありますが、韓国は、韓国外務省が言うには、国連海洋法条約に基づく紛争解決手続の適用除外案件とするよう宣言書を十八日付でアナン事務総長に伝えたと。これが認められたときは、日本は測量船を拿捕された場合でも、日本側が韓国の同意なしに一方的に国際裁判所に持ち込むことはできないと韓国の外務省は言っているそうでありますが、これは事務的な話であります、事務方がお答えいただきたい。本当ですか。

    〔水野委員長代理退席、委員長着席〕

小松政府参考人 やや技術的な話でございますのでやや込み入っておりますが、御答弁をさせていただきますと、まず、基本的に、国際社会におきまして、国際裁判所と申しますのは、一方的に管轄権を持っておりませんので、当事国双方の合意がないと管轄権がない、こういう大原則がございます。

 国連海洋法条約におきましては、紛争解決条項におきまして、条約の解釈、適用に関する問題について強制的管轄権が基本的にはあるという条項がございます。それに対して、海洋法条約に別の規定がございまして、一定の紛争について強制管轄の義務から外すことができるという規定もございまして、韓国がそれに基づきまして、今月の十八日でございますが、そういう通告を国連に行ったということは事実でございます。

松原委員 今私が質問した趣旨は、そのことによって、日本が韓国の同意なしに一方的に拿捕等のことについて国際裁判所に持ち込むことができない、これは新聞の記事でありますから正確さを欠いているかもしれませんが、これは事実ですかと聞いているんです。

小松政府参考人 まず、紛争の平和的解決ということが非常に重要な中で、このタイミングでそういう義務的管轄から一方的に除くという宣言をされたということは極めて遺憾であるというふうに考えております。逆に申しますと、国際法上の立場について韓国側の自信のなさのあらわれではないのかなという感じもいたします。

 ところで、この宣言でもって裁判管轄権がなくなるのかということでございますけれども、そこにつきましては最終的には、条約それから宣言との関係を踏まえまして、管轄権があるかどうかということは裁判所が判断をいたしますので、今この時点で断定的なことを申し上げるのは適当ではないと考えております。

松原委員 これだけ韓国側が騒いでいるのは自信のなさのあらわれだろうというふうに私も思っておりまして、今の御答弁で、そのとおりなんじゃないか。こういうものを国連もきちっと受け付けるなんということは、常識あふれる国連がしないだろうというふうに私は思っておりますが、どちらにしても、極めて遺憾なことを、禁じ手ですよ、禁じ手を使ってきている。何というすさまじい過剰反応かと思うわけであります。

 ここで申し上げたいのは、日本大使館の前ですさまじいデモが起こり、またぞろ日章旗を焼かれる。そして、普通、そう一般大衆が激高したら、日本の場合も、これは自民党も民主党も、冷静に対応しようじゃないかと言っているんですよ。私だって、冷静に対応してほしいと言っているからこういう質問をしているわけですよ。冷静ですよ。冷静に対応をするべきだと我々は主張するべきなのに、韓国はちょっと違うわけですね。

 冷静に対応するにしては、例えば、ついにハンナラ党とウリ党が一緒になって、独島守護及び歴史歪曲対策特別委員会設置、国会の中に。大体、竹島のことを直接今回は日本は言っていないのに、独島守護及び歴史歪曲対策特別委員会設置。これはもう時間がないので、あえて感想を麻生さんに求めませんけれども、何でここまでやるのか。普通、日本大使館で日章旗を燃やすのを、いや、こういうときだからそういうのはやめましょうよ、こう言うのが筋なのに、これをやる。

 先ほどもお話がありましたように、韓国の海上保安庁は二十日、日本の海上保安庁の測量船のEEZ内進入に備え、警備艇二十隻を用いて訓練しようと思ったけれども、雨天、波が荒れていたので机上訓練をした、ここまで普通やるのか。それで、今のお話があったように、禁じ手でアナンさんには宣言書を出す。

 ちょっとした、どう考えても異様な反応をしているというふうに思うわけでありますが、その異様な反応の中で、トップである盧武鉉さんも極めて異様な反応をしている。ちょっとここは非常に、私はこの反応自体も遺憾でありますが、二つ言っています。

 過去の侵略戦争で得た占領地に対する権利を主張する人たちがいると。これは事実と合っていますか、合っていないですか。一言でお答えいただきたい。竹島です、竹島に関して。

佐渡島政府参考人 お答え申し上げます。

 そういう事実はございません。

松原委員 極めて明快な答弁でありました。そういう事実はないと。

 私もいろいろな資料を見ますと、竹島の経緯というのはいろいろとあるんですね。いわゆる一九〇五年、明治三十八年以降のことは、彼らは、この段階で竹島を日本がまさに暴力的に乗っ取ったと。しかし、あの時代は、例えばハワイ、アメリカ合衆国に今入っていますが、もともとはカメハメハの時代は違ったわけでありますし、今ハワイはアメリカの州になっているわけであります。これは国際法の一つのならわしですから。しかし、彼らはここから批判しているから、その前の議論。

 その前の議論に行くと、例えば、この竹島問題に関しては、日本は古くから、竹島を松島と当時は認知していた。そして、問題は韓国との間の話でありまして、一六九六年、鬱陵島周辺の漁業をめぐる日韓間の交渉の結果、幕府は鬱陵島への渡航を禁じたが、竹島への渡航を禁じなかった。このことは、日韓において、鬱陵島は韓国だけれども竹島は日本だということの、事実上、文言として文書があるかどうかは別にして、そういうふうな話があったんじゃないかと思うんですが、事前通告していなかったのでありますが、答えられたら答えていただきたい。

佐渡島政府参考人 私どもとして承知していることだけ申し上げます。

 おっしゃったとおり、一六九六年に江戸幕府が鬱陵島への渡海を禁止するという決定があったということは承知をしております。同時に、その際、今の竹島への渡航を禁じるということはなかったということも承知をしております。

松原委員 私の資料、これは外務省からいただいた資料ですよ、日韓間の交渉の結果と。これは事実ですか、そのときの。

佐渡島政府参考人 当時、幕藩体制ということでございまして、対馬を通じた通信使のやりとりその他があったわけでございますけれども、その中の両方の親書のやりとりで、そのように日本側が措置をとったということを向こうに通報した事実はございます。

松原委員 だったらこれは、完全に竹島は日本のものじゃないですか。一六九六年、韓国と日本、一九〇五年という彼らが言っている年の二百年以上前に日韓でそういう話になっているということは、日本領じゃないですか。これはあえてこの外務委員会で私は指摘をしておきたい。

 しかしながら、そうした中で極めて遺憾なことがあって、盧武鉉さんの発言というのはいろいろと問題であります。これに関して、公明党の神崎さんとお会いした韓和甲、韓国の民主党の党首ですか、盧武鉉大統領の支持率は低いので、反日で世論を引きつけたい面がある、こういう発言をしている。

 私は、何かこういった対日たたきというものを、国内状況を、中国もその傾向は、反日教科書、ティーチャーズマニュアルで私は指摘しましたが、それを、目を外にそらし、結局、政権の補充、強度を強くするために何かこういうものを使っているような気がしてならないわけであります。

 私は、もう時間がないので、本当はここをぐっと聞きたかったんですが、そういう中で、盧武鉉さんが言っているのは、今回のこの日本のことを暴挙とし、単なるEEZの境界をめぐる紛争とは理解しがたい、靖国参拝、歴史教科書、独島の挑発行為を総合してみれば、国家主権的傾向を持った日本が侵略を正当化し、未来の極東アジアの秩序に挑発、挑戦をする行為だ、こういうことを言っていますが、これはとんでもない大統領の発言だと思います。

 私は、冷静に今回の海洋調査はやるべきだと言っているけれども、こんなこと、大統領が火をたきつけるようなことを言っていいのかと私は思っておりまして、これは一人の政治家として、麻生さん、麻生大臣、この場で確かめていただきたい。一言御発言をお願いしたい。

麻生国務大臣 基本的には、この竹島問題というのは歴史問題ではなくて領有権の問題だと思っています。一番肝心のところだと思っておりますので、これは領有権問題なんであって、歴史問題ではないという点がまず第一点だろうと存じます。

 その上で、他国の大統領の歴史認識の是非についてとやかく言うつもりもないんですが、少なくとも、この種の話は双方である程度冷静に落ちついていかないと、話が、わんわんあおるだけで余り建設的な話でもありませんから、少なくとも、向こうがわんわんなればなるだけ、こっちは冷めて話を聞いておかないかぬところかなという感じが率直なところです。

 日本のこれまでのことに関しましては、小泉総理の昨年でしたかの談話にもあるとおりでもありますので、この六十年間の歴史を見てもらって、これは世界的にもはっきりしていると思っております。私どもとしては、ここは冷静にというところは一番肝心な対応の仕方だと思っておりますので、谷内次官が向こうに行くに当たってどういった対応を受けるかという点につきましても、私どもとしては最大の関心を持って見ております。

松原委員 質問は以上で終わりますが、国益というのは極めて大事であって、国益というのは冷静に対応して、それぞれの平和を増進し、そして、その経済的なものをすぐれたものにする。しかし、私、この間、経済産業委員会で二階大臣に申し上げたんですが、国益は経済的なものや物質的なものだけではない、マインドの問題である、その国民の名誉やその国民のやる気、情熱を出すようなものも必要だと。だから、私は、今回は大人の対応をしながら、しかし、日本の国益、そういった部分も含め、国益を守るために、先人から受け継いできた、断固として毅然たる態度をおとりいただきたいことを申し上げまして、私の質問といたします。

 ありがとうございました。

原田委員長 次に、笠井亮君。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 米軍再編をめぐる現段階について、時間が限られておりますが、端的に伺いたいと思います。

 配付資料をごらんいただきたいと思います。

 この間の日米協議の内容について、これまでの各委員会の答弁や、外務、防衛両大臣の記者会見等の発言、自治体との合意内容、報道などをもとに、焦点となっている主な問題について、私なりに整理してみました。

 一覧にしてみまして、極めて特徴的だと思いますのは、例えば普天間基地の移設でも、私も先日大浦湾に入って船上から現地調査してまいりましたが、V字形の滑走路を二本建設し、埋立面積も増大するというものでありまして、住民の危険、米軍の有用性が高まるという基地機能強化だと思います。

 岩国、横田、グアム移転や訓練の移転等についても、結局、実施計画の具体化を協議する中で、むしろ、昨年秋の2プラス2の日米合意と比べても、それよりも日本側の負担が新たにふえたり、あるいは先送りになったりしているということが傾向としてあるんじゃないかと思います、全体として。

 麻生大臣は繰り返し負担の軽減という問題と抑止力の維持ということを強調されてまいりましたが、私は、逆に負担の増大と政府の言う抑止力の強化ということになっているんではないか、この半年間の経過で。これを全国の関係自治体の住民は我慢して受け入れてくださいということになるんでしょうか。大臣、いかがでしょうか。

麻生国務大臣 全然見解が違うんだと思いますけれども、少なくとも、沖縄という基地から、米軍の沖縄基地の中から、軍属含めて、一万八千だか一万七千だかの軍属、隊員が減るのは明らかに基地の負担の軽減と思わない沖縄県民はいないと思います。

 また、そこが、軍人が、現役が残るという点はありますけれども、いわゆる司令部にいる人より現役の方が訓練をする機会が多いわけで、その軍人の方の訓練が、沖縄であったりフィリピンであったり、またグアムであったりというようなことにもなりますので、そういった意味では、米軍人軍属の絶対量が、沖縄にいる率はその方が減りますので、その意味でも極めて負担の軽減というものは大きなものだと思っております。

 それから、抑止力の維持ではなくて強化だと言われますけれども、相対的に周りの雰囲気が、日本とアメリカの位置が十だとするなら、抑止力のあれが向こうの方が上がってくればこちらも上げないと抑止力になりませんから、そういった意味では、私どもとしては、これは維持と思っておりますので、そんな急激に強化というような感じを正直持っているわけではありません。

笠井委員 沖縄の負担軽減ということで、これは繰り返し強調されますが、沖縄の世論調査でも、この修正案については容認できない、反対というのが七割という結論が出ております。宜野湾の市長も基地被害や危険の回避にならないという声を上げていますし、やはり基地あるがゆえの負担を強いられる、こういう米軍再編は御免というのが県民の多くの声だと。

 数が減るじゃないかということですけれども、実戦部隊は残るという問題があって、移転についてだって、これは資金的措置を検討と言っていたものが、今度はっきり負担という方向での協議が今進んでいるわけです。再編に伴う各種の移転費ということを合わせると、これは三兆円とも言われるという話も出ている。そして、機能強化ということがあちこちで今この一覧表にしてみると出てくるわけで、これは明らかにそういう問題だろうと私は思います。

 では、伺いますけれども、防衛施設庁お見えですが、今回の米軍再編に関係している自治体、五十五というふうにされておりますけれども、首長や住民の多くがこの基地の強化、固定化になると反対の立場を表明してきました。これまでに政府の説明にそういう首長の方々の容認、理解を得られたと考えている自治体というのが十七という話でありましたが、間違いありませんか。

北原政府参考人 笠井先生に御答弁申し上げます。

 私ども、十月二十九日からいろいろ努力してまいりまして、きょう時点までに、やむを得ない、あるいは御容認をいただけるということで御理解をいただいた関係地方公共団体は、先生おっしゃいました十七地方公共団体でございます。

笠井委員 私は、その自治体がすべて、その自治体にかかわるすべての案件について納得したというふうに解釈すると、もっと少なくなると思うんですよ。

 しかも、伺いたいのは、この間、関係自治体から出された要望とか問い合わせがたくさんありましたね。これについて、米側との協議で提起して、昨年の2プラス2の合意、これよりもさらに住民の地元の皆さんの負担が軽減になったと胸張って言えるものが幾つありますか。

金澤政府参考人 私どもは、この再編協議というものを、抑止力の維持ということと地元負担の軽減、この二本の柱を旗印にしてやっておるわけでございます。

 昨年十月の共同文書におきまして、その大枠といいますか、それはもう決まっておるわけでございます。現在やっておりますのはその細目を詰める作業でございまして、まだ鋭意協議中でございまして、ここで具体的にここはこうなりますということを申し上げることができません。したがいまして、直截にそのお尋ねに答えることができません。お許しいただきたいと思います。

笠井委員 ずっとやってきて、いまだに地元の皆さん、こうやって安心してくださいという話は報告はできないというわけであります。半年もかかって、三分の二以上の自治体の首長の皆さんにも理解、納得が得られなくて、私はさもありなんだと思うんです。

 2プラス2の合意以降、政府は地元住民や国民の要望を反映する交渉と協議というのじゃなくて、米側の意向、それとのすり合わせで軍事優先の協議を進めてきて、地元には、ひたすら説明、そして理解を、受け入れというふうに迫ってきたからだと。私は、政府の顔と耳の向いている方向が逆だと思うんです。

 今、いよいよ大詰めという話がありました。そして、合意に基づいて、全体パッケージでの合意ということでやるんだという話ですが、依然として多くの問題点が残っていると今もお話ありました。昨年の合意からも、大きな変更点も出てきております。改めて自治体への説明、理解、納得が必要なところもあるはずであります。

 私は、2プラス2では、三月末までに閣僚は地元との調整を完了することを確約するというふうにしていたわけで、日米協議の最終合意を取りまとめることになっておりました。ところが、可能な限り早く、もう少しということで、三月末からずるずる来て、もう四月末です。それでもまとまらないというのは、やはりこの合意自体に無理があるんだということで、見直して、一たん白紙に戻すべきだ、このことを強く主張して、質問を終わります。

原田委員長 次に、重野安正君。

重野委員 簡単にやります。

 在沖米軍のいわゆる砲撃訓練、これが本土の五つの演習場に移転をしました。私の地元でも、日出生台演習場というのがありまして、そこに在沖米軍の百五十五ミリりゅう弾砲の射撃訓練が行われております。この問題について、ここのところいろいろな問題が出てきております。

 簡単、簡潔に質問いたしますが、まず第一に、この問題について、関係町村とそれから福岡防衛施設局との間に合意文書がございます。これは、在沖米軍の日出生台演習における前提であります。その問題について、まず第一に、この演習場における演習の協定を米軍に説明していないということを、福岡防衛施設局の局長さん、二月一日にそのことを明らかにしました。同時に、在沖米軍の現地の訓練の大隊長、スタッタードという方が、そんなものがあることを知りません、こんなことを言うんですが、これいかにと聞きたいんですね。

 それからもう一つは、一九九六年十二月、SACO合意、これがもともと日出生台における在沖米軍の砲撃訓練の始まりでありますが、この中でも、そういう、今度問題になりました、単に百五十五ミリりゅう弾砲だけではなしに、機関銃も撃たせろ、小銃も撃たせろ、こう言ってきているわけですけれども、そんな内容というのは全くどこにも書かれていないわけであります。

 同じように、この防衛施設庁の現地の市町村に対する回答も、百五十五ミリりゅう弾砲だけだ、このように回答しておるのにもかかわらず、一度断って、またやってきたんですね。福岡防衛施設局は、県並びに関係町村に対して、もう一度やらせてくれ、こう言ってきたんですが、何でこんなことを繰り返すのか。

 しかも、過去を振り返りますと、衆参両院の安全保障委員会であったり外務委員会におけるこの議論も、当時の防衛庁長官は明確に百五十五ミリりゅう弾砲の実弾射撃訓練のみと答弁をしておる。

 こういう経過を見ると、今起こっている状況というのは、私はやはり防衛施設庁、防衛庁は問題あると思うんですね。関係機関、自治体との約束よりも、米軍がどんどん要求してくるとそれに唯々諾々とついていく、そのかわり、その代弁者として関係市町村を説得する、こういうありようというのは、私はおかしい。

 この協定は、五年に一度改定するわけですから、問題があるならば、協定の改定時期にきっちり話をすべきであって、その協定は今も有効ですから、これが平成十九年までは有効ですから、それ以降にその議論をするならわかるけれども、それ以前にそういうふうなことをやってくるというのは、私はおかしいと思う。

 以上、私は、四点質問しましたので、これに対する答弁をお願いいたします。

北原政府参考人 重野先生に御答弁申し上げます。

 まず、この地元との協定の存在等につきまして米軍の現地の指揮官が知らなかった、聞いていないとか知らないという点でございますが、この点につきまして、その種の報道がなされたことは私もよく承知をいたしております。

 しかし、この点につきましては、昨年の十一月でございますが、米側から、平成十七年度に予定しておりました日出生台演習場におきますこの一〇四、先生御指摘の移転訓練に際しまして、百五十五ミリのりゅう弾砲の実弾射撃訓練と一体のものといたしましての小火器の実弾射撃を伴う砲陣地防御訓練を行いたい、そういった御要請を受けた際に、私どもといたしましては、協定については米側に説明しているところでございます。したがいまして、在日米軍の司令部は御指摘の協定の存在につきましては認識している、そのように考えているところでございます。

 それから、SACOの関係がございますが、御指摘をいただきましたけれども、SACOの中には、「平成九年度中にこの訓練が日本本土の演習場に移転された後に、危機の際に必要な砲兵射撃を除き、県道一〇四号線越え実弾砲兵射撃訓練を取り止める。」といった記述になっているところでございます。

 それで、本土に移転をしましたのは、日出生台にお世話になっておりますが、平成九年からでございますが、その当時につきまして、私ども地元との説明に当たりましては、米軍サイドが、砲撃訓練と一体となっている小火器の実弾訓練というのは引き続きキャンプ・ハンセンで行う、つまり、本土に移転する前の百五十五ミリの砲弾訓練をするときには、今申しました砲陣地防御訓練という小銃訓練も一体でやっていたわけでございますが、それが今度本土へ行く、そのときには、これは小火器の実弾射撃は引き続きキャンプ・ハンセンで行いますということでございましたので、私どもといたしまして、移転される訓練は百五十五ミリのりゅう弾砲の射撃でございますという話をしてまいったわけでございます。

 そこで、SACOとの関係は、先ほど私申し上げましたが、この小銃訓練はこの砲撃訓練と一体のものでございますので、平成九年から今日に至りまして、やはりこれを一体で訓練をしたいということをアメリカ当局が言ってまいりましたので、SACOとの関係では問題は何もない、そのように考えているところでございます。

 ただ、我々といたしましては、やはり、こういった訓練等を含めまして、地元の御理解を得ることが何よりも大事だ、そのように考えておりますので、引き続き、我々といたしましては、ことしの四月に地元に、関係の市町村にお願いを申し上げたわけでございますけれども、引き続き、御理解を賜るべく努力をしていきたい、そのように今考えているところでございます。

重野委員 時間が来ましたからやめますけれども、一つ、今言った一体のものだというのは、これは軍事の専門家はそう言うかもしれませんよ。しかし、シビリアン、町村のあるいは住民というのは、そんなことは途中で解析をして説明しなきゃわかりませんよ。そんなことを押しつけるというのは僕は問題があると思う。だから、これは、この次の改定時期までやはり待って、その中で議論するなら議論する、そういうふうにしないと、協定は一体何なのかと不信が増すばかりですよ。そのことを申し上げて、私の質問を終わります。

     ――――◇―――――

原田委員長 次に、腐敗の防止に関する国際連合条約の締結について承認を求めるの件を議題といたします。

 政府から趣旨の説明を聴取いたします。外務大臣麻生太郎君。

    ―――――――――――――

 腐敗の防止に関する国際連合条約の締結について承認を求めるの件

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

麻生国務大臣 ただいま議題となりました腐敗の防止に関する国際連合条約の締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明させていただきます。

 この条約は、平成十五年十月にニューヨークで開催された国際連合総会において採択されたものであります。

 この条約は、腐敗行為を防止し、及びこれと戦うため、公務員に係る贈収賄、公務員による財産の横領等一定の行為の犯罪化、犯罪収益の没収、財産の返還等に関する国際協力等につき規定するものであります。

 我が国がこの条約を締結することは、腐敗行為に効果的に対処するための国際的な取り組みに寄与するとの見地から有意義であると考えます。

 よって、ここに、この条約の締結について御承認を求める次第であります。

 何とぞ御審議の上、本件につき速やかに御承認いただきますようお願いを申し上げます。

原田委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、来る二十八日金曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時十一分散会


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