衆議院

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第13号 平成18年5月10日(水曜日)

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平成十八年五月十日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 原田 義昭君

   理事 小野寺五典君 理事 土屋 品子君

   理事 松野 博一君 理事 水野 賢一君

   理事 渡辺 博道君 理事 武正 公一君

   理事 山口  壯君 理事 谷口 和史君

      逢沢 一郎君    愛知 和男君

      伊藤 公介君    伊藤信太郎君

      宇野  治君    高村 正彦君

      篠田 陽介君    新藤 義孝君

      鈴木 馨祐君    中山 泰秀君

      松浪健四郎君    三ッ矢憲生君

      武藤 容治君    山内 康一君

      山中あき子君   山本ともひろ君

      吉良 州司君    篠原  孝君

      田島 一成君    田中眞紀子君

      津村 啓介君    松原  仁君

      富田 茂之君    笠井  亮君

      照屋 寛徳君

    …………………………………

   外務大臣         麻生 太郎君

   防衛庁副長官       木村 太郎君

   外務大臣政務官      伊藤信太郎君

   外務大臣政務官      山中あき子君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房遺棄化学兵器処理担当室長)    高松  明君

   政府参考人

   (防衛庁防衛局長)    大古 和雄君

   政府参考人

   (防衛施設庁長官)    北原 巖男君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 遠藤 善久君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 高田 稔久君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 佐渡島志郎君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 長嶺 安政君

   政府参考人

   (外務省欧州局長)    原田 親仁君

   政府参考人

   (外務省経済局長)    石川  薫君

   政府参考人

   (外務省経済協力局長)  佐藤 重和君

   政府参考人

   (財務省大臣官房審議官) 加藤 治彦君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           川原田信市君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           長谷川榮一君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           江嵜 正邦君

   外務委員会専門員     前田 光政君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月九日

 辞任         補欠選任

  谷本 龍哉君     松野 博一君

同月十日

 辞任         補欠選任

  愛知 和男君     松浪健四郎君

  新藤 義孝君     武藤 容治君

  中山 泰秀君     山本ともひろ君

  津村 啓介君     田島 一成君

  丸谷 佳織君     富田 茂之君

同日

 辞任         補欠選任

  松浪健四郎君     愛知 和男君

  武藤 容治君     新藤 義孝君

  山本ともひろ君    中山 泰秀君

  田島 一成君     津村 啓介君

  富田 茂之君     丸谷 佳織君

同日

 理事谷本龍哉君同月九日委員辞任につき、その補欠として松野博一君が理事に当選した。

同日

 理事丸谷佳織君同日理事辞任につき、その補欠として谷口和史君が理事に当選した。

    ―――――――――――――

五月九日

 社会保障に関する日本国とカナダとの間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第一一号)(参議院送付)

同月八日

 ILOパートタイム労働条約に関する請願(穀田恵二君紹介)(第一八六〇号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 理事の辞任及び補欠選任

 政府参考人出頭要求に関する件

 所得及び譲渡収益に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とグレートブリテン及び北アイルランド連合王国との間の条約の締結について承認を求めるの件(条約第九号)(参議院送付)

 所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とインド共和国政府との間の条約を改正する議定書の締結について承認を求めるの件(条約第一〇号)(参議院送付)


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     ――――◇―――――

原田委員長 これより会議を開きます。

 理事の辞任についてお諮りいたします。

 理事丸谷佳織君から、理事辞任の申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

原田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 引き続き、理事の補欠選任についてお諮りいたします。

 ただいまの理事の辞任及び委員の異動に伴い、現在理事が二名欠員となっております。この際、その補欠選任を行いたいと存じますが、先例によりまして、委員長において指名するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

原田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 それでは、理事に

      松野 博一君 及び 谷口 和史君

を指名いたします。

     ――――◇―――――

原田委員長 次に、所得及び譲渡収益に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とグレートブリテン及び北アイルランド連合王国との間の条約の締結について承認を求めるの件及び所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とインド共和国政府との間の条約を改正する議定書の締結について承認を求めるの件の両件を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 両件審査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房審議官遠藤善久君、大臣官房審議官高田稔久君、大臣官房審議官佐渡島志郎君、大臣官房審議官長嶺安政君、欧州局長原田親仁君、経済局長石川薫君、経済協力局長佐藤重和君、内閣府大臣官房遺棄化学兵器処理担当室長高松明君、防衛庁防衛局長大古和雄君、防衛施設庁長官北原巖男君、財務省大臣官房審議官加藤治彦君、経済産業省大臣官房審議官川原田信市君、大臣官房審議官長谷川榮一君、大臣官房審議官江嵜正邦君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

原田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

原田委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。松原仁君。

松原委員 今回、日本政府は、二〇一〇年末までにイギリスからの対日投資倍増計画、こんなものを目指しているそうでありますが、日英租税条約はイギリスの対日投資額の増加にどれぐらい貢献するものかという見通しについてお伺いいたします。

原田政府参考人 お答えいたします。

 企業の投資先選定に当たりましては、投資先国の税制度だけでなくて、物価水準や企業を取り巻く環境などを総合的に勘案して判断するものと理解しております。したがいまして、本条約による投資促進効果のみを取り出して具体的な数字で御説明することは困難でございますけれども、本条約は、配当、利子及び使用料の支払いに対する源泉地国課税を大幅に軽減することによって積極的に投資交流の促進を図るものであります。

 本条約が締結されることによりまして、両国間の二重課税の排除、相手国における課税関係の明確化、両国の税務当局間の協力体制の整備等を通じて、日英双方の企業にとっての負担が軽減して、その結果、日英両国間の投資交流が促進され、両国の経済関係が一層緊密なものとなることが期待されております。

松原委員 本年三月に英国・日本経済フォーラムというものが行われたわけでありますが、イギリスのジョンソン貿易産業大臣が、イギリスは日本の十五倍もの直接投資を受け入れているという現状を考えると、逆に、イギリス側から日本に投資をする場合についてのジョンソンさんのコメントでありますが、日本の貿易の障壁の撤廃はぜひとも実現しなければなりません、こういうことを言っているわけであります。

 今、局長がお答えになったように、そういった意味で密接な日英の経済的な相互の関係をつくるというのは、これはいろいろな意味で重要でありますが、とりわけ、イギリス側の貿易産業大臣がこういう発言をしているということを踏まえ、政府として、イギリス側の対日投資にとってどんな障壁があるのか、恐らくそういった障壁というものは、イギリスからだけではなくて、他国からの場合にも一つの障壁となると思われますが、これはどういうものがあるのか、そういったものについて認識をお伺いいたします。

石川政府参考人 お答え申し上げます。

 ジョンソン貿易産業大臣の、ただいま御指摘の、英国は日本の十五倍もの直接投資を受けているとの指摘に関しまして、英国への対内直接投資の約四五%はEU域内からの投資であるということもございまして、日本の対内投資と必ずしも同列には論じられない、かように考えております。また、同大臣の貿易障壁に関する指摘に関しては、何を意味するのかは必ずしも明らかでないと存じますが、ただ、同じスピーチの中で、日本の対日投資倍増目標を歓迎し、また、会社法の改正等を評価したと承知しております。

 この対日投資額を倍増するという目標を実現するために、政府といたしましては、総理を議長とする対日投資会議を中心に、五点、一つは内外への情報発信、二つは企業事業環境の整備、三つは行政手続の見直し、四つは雇用生活環境の整備、五つ目が地方と国の体制制度の整備、こういう五つの重点分野における具体的施策で構成された対日投資促進プログラムを、鋭意実施また実行していくところでございます。

松原委員 この問題は、それぞれ、例えば労使の関係とか大分違うわけですね。そういうふうなさまざまな部分で、どちらがグローバルスタンダードかと言われれば、今、世界の主流は彼らの規格の方で進んでいる。日本が強い規格でいっても、それを例えば突然BIS規制をつくって打ち砕いてみたり、日本が土俵際まで勝ちそうになると、ルールを変えて相撲の土俵を広げるとか四角にするとか、そういったことがしばしば行われるわけで、そういった意味では、彼らが自分の方でそうやって規格を変えながらこういうことを言えるのかという節も率直に言ってあるんですが、それはそうとして、対日投資を倍加させようということだから、そういったことについて、やはり戦略として、今言った総理を中心としての会合があるのは理解しましたが、頑張ってほしいと思います。

 次の質問に参ります。

 日本の対印進出企業は自動車、石油化学等の大手のみで、中小企業は進出を余りしていないというふうに聞いております。中小企業に対する政府の対インドの投資進出支援策としてどういうものがあるのかということをお伺いしたいと思います。

佐渡島政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のとおり、インドに関しましては、中小企業の進出というのは今の段階ではまだ少のうございます。

 私どもといたしましては、高い専門性あるいは豊富な経験を有する日本の中小企業がインドに進出するということは、日印の経済関係のすそ野を広げて、さらに緊密な経済関係を構築する観点から非常に重要だと考えます。インド側も、日本の中小企業の一層のインド進出というのを強く希望しております。最近、日本の中小企業もインドの高い経済成長率とか経済規模に非常に高い関心を有しておりまして、ことしになって、もう既に三つほど中小企業を主体とするミッションがインドを訪問しております。

 私どもといたしましては、海外における日本企業の利益の確保と増進を図る、あるいは一層の民間企業進出を促進するという意味から、まず、中小企業を含む個別企業から要望をいただいて、その要望に対応していくことを強化するという必要性を認識しております。中小企業を含む民間ビジネスに対する積極的な支援、関係の省庁、経産省さんとか、いろいろなところと相談をして、支援策を推進していきたいと考えております。

松原委員 今や経済がグローバル化しておりまして、例えば昔は、ケインズが、公共投資をするとそれは乗数効果ではね返る、こういう議論があったわけでありますが、物の考え方だと、乗数効果というのは、国境がきちっとしているとピンポン球がはね返るようにそこではね返りをするわけでありますが、国境が非常に低くなってどんどん海外の安い資材を買ったり部材を買ったりするようになると、乗数効果の効果というのが、例えば日本国内で公共投資をしても、その公共投資の乗数効果の効果が世界レベルの経済の中での効果になるから、極めて薄まってしまってなかなか実効性がない、こういう時代に今入っているんだと思うんですね。それが、公共事業投資がかつてのような伝家の宝刀でなくなった理由だと私は思っております。翻って考えると、やはりこれは、貿易と経済というのは逆に完全に一体化している。そういった意味では、経済産業省と外務省の連携というのは非常に期待をするところであります。

 とりわけ、きょうはそれは質問いたしませんが、中国のガス田の問題等も、本来であれば、まさに国益と経済の相互の関係の中できちっとした戦略を練らなければいけない部分で、なかなか、我々国会にいても、その戦略が明快に一貫性を持って対中国に対してのものが見えてこないような感じがしておりますので、こういった部分も含め、ぜひ、外務省と経済産業省の強い連携を期待を申し上げるところであります。

 さて、日本は国連の安保理の常任理事国入りというものをかねてから目指してきたわけでありますが、これは現在も目指している、こういう認識でよろしいですよね。

麻生国務大臣 今、松原先生御指摘のありましたように、昨年、ドイツ、ブラジル、インドと日本、四つのG4というのを結成して、国連安全保障理事会、常任理事国等々いろいろ改革論議を引き起こして、これまで、でき上がってからかれこれ六十年の間でこれほど改革の論議が盛り上がったことはないというところまでいったと思いましたけれども、採択までは結びつかなかったというのが結果です。

 今年も、同様にということで、特にドイツから、前回の案と同じ案で一緒にG4という案が提出をされておりますが、昨年の案と同じ案を出してまた否決なんといったら、これは余り知恵がなさ過ぎると思いますので、うちはそんな全く同じ案に乗るのはいかがなものか、これは、反対したところの中の一つにアメリカ等々いろいろありますので、このアメリカやら何やらと話をした方がいいのではないかというところから、日米間で協議を継続いたしております。

 日本の案も向こうに渡してありますし、向こうからその対応も聞き、また、それに対してこちらの対応もし、かつ、その内容につきましてはインド等々にもきちんと連絡もいたした上でやっておりますので、目下まだいろいろな細目、過日のライス国務長官にも同様の話をしてこちらの案というのを示して、継続中と御理解いただければと思います。

松原委員 ライスさんとこのゴールデンウイーク中前後に大臣がお会いした件は後でお伺いしようと思ったんですが、今ちょっと御答弁で出ましたので、この中で、今の国連改革に関する日本の案として、もしこの場で御披露いただけるんだったら、どういうことをおっしゃったのか。さらに、ほかにどんな話がライスさんとの間で出たのか。時間的に後で質問しようと思ったんですが、せっかく大臣がおっしゃったので、興が冷めないうちにということでお伺いいたします。

麻生国務大臣 内容を全部つまびらかにするわけにはいかないところもありますが、基本的には、いわゆる常任理事国、非常任理事国が急激に拡大するのは好まないというのが、現常任理事国の意見というように御理解いただければと存じます。

 したがいまして、今のP5のところをいきなり十にするとかいうような案ではなくて、もう少し、こちらの方が三十と言えば、向こうは二十と言えば、間をとって二十五とか、大体そういうように今いろいろな形での案というものを、現常任理事国もこれならと言えるような話、こちら側もこちら側としてというようなところの折り合える案というのを今いろいろ模索中というように御理解いただければと存じます。少なくとも急激な拡大ではとてもできませんから、そこらのところの中間を模索しているというように御理解いただければと存じます。

松原委員 既得権というのはそれぞれ守ろうとするわけですから、現在の五つのP5というんですか、この国々が、常任理事国、ほかを入れない方が本音は彼らはいいんですよ。それは、ほかをどんどん入れろと言うほど、そんなことはこの現実の厳しい国際生存競争の中であり得ないので、やむを得ず入れるならどれぐらいか、こういう話です。

 ちょっとそこでお伺いしたいのは、このG4で、ドイツ、ブラジル、インド、日本、大変な大国であります。アメリカはもう世界のスーパー大国でありますから別にしても、他の例えばフランス、イギリス、こういった常任安保理事国に比べて遜色のないレベルまで、それはもうインドだって、そして、ブラジルだってドイツだって日本だって来ているわけであります。そこで、この四つのG4の連携というものはどんなふうに今強化をしつつあるのか。やはりこれは一つの強固な連合体を組むべきだと思うんですが、それについては具体的に、このことを含め、何か具体的なものを恒常的になさっているのかどうか、お伺いしたいと思います。

麻生国務大臣 大臣に就任してからかれこれ六カ月の間に、ドイツの外務大臣を呼び、ブラジルも同じく、それからインドは、御存じのように、これは今外務大臣、現職がおりませんので、マンモハン・シンという総理大臣が兼務。実質、同じ系列の人が次官でおられる。この方とも何回会いましたか、来てもらいもしましたし、こっちがインドに一月行きもしましたし、いろいろな形で、ことしに入ってからの四カ月少々の間でも、内容の細目詰めというのを個別の大臣レベルでもいたしましたし、審議官クラス、いずれもいたしておりますので、結構緊密に連絡をとり合って、この話をどの辺のところでということはそのまま継続して交渉いたしております。

松原委員 麻生大臣も政治の世界におられてわかると思いますが、個別のバイの議論も大事だけれども、やはり、対外的なインパクトも含めると、派閥だったら派閥で集まる、一人一人が会うんじゃなくて、集まることによってエネルギーと情熱とパワーを誇示するというのは、これは政治の世界では、極めて原始的ではあるけれども、どこでもあることなんですよ。

 私は、やはりバイでやっているというのは、それは当然のことだと思うんです。しかし、四つの国が、ドイツとブラジルとインドと日本、本気でG4をやろう、しかも、我々をないがしろにするな、我々のこの存在をないがしろにしたら国連は成り立たないぞ、こういう姿勢を見せない限りにおいて、私は、国連の常任理事国に入る、また、この改革なんというのは、既得権の壁というのは大きいわけですから、P5は極めて大きいわけですから、できないと。

 そこで、例えば、ある年はドイツでやる、ある年はインドでやる、ある年はブラジルでやる、ある年は日本でやるというふうな、今G8とかそういうのをやっていますが、それと別にこの四カ国の枠組みで会議をやる、それぐらいのことをしなかったら、政治的なプレゼンス、政治的な力をあらわすことはできないと私は思うんですが、そういうのをする御予定というのは、普通は本気でやろうとするならあると思うんだけれども、いかがでしょうか。

麻生国務大臣 これは、地域が極端に南米、ヨーロッパ、アジア、南西アジアと分かれておりますので、なかなか適当な場所がないんです。結果的には国連ということになるんですが、国連の場におきましては、大使級はもちろんのこと、いろいろな会議はかなり継続してやっております。それで、結構ほかにも知られておりますから、うちは、やる前にやりますからと言いますので。

 そういうこともやっておりますけれども、今言われたように、大臣が四人で全部会うという、それは大臣が一ついないせいもあるんですけれども、そこが一つちょっと問題ではあるんですが、インドの場合、大臣がまだできておりませんので、その後、四カ国大臣会合という名前が使えないところも、ちょっと面倒くさいところではあります。

 しかし、結果として、おっしゃるとおり、今のようなプレゼンスを見せるというのは大変大事ではないかという御指摘は確かだろうと存じます。

松原委員 ぜひ行っていただきたいと思いますし、これは本気でやるならば、それぞれの国のリーダー、そこまでではないんだという議論があっても、インドの外務大臣がいないというのを、逆にピンチはチャンスと、一つの大義名分を立てる理由で、通常は外務大臣だけれども、インドは外務大臣が不在で総理が兼任しているんだから、総理でG4サミットをやりましょうと。それぐらいに、インドで外務大臣がいないことをむしろプラスに使うぐらいのしたたかさが外交にあっても構わないだろうと私は思う。

 もう一点は、やる場所は国連でやってはいかぬと思うんですね。それは、国連で集まるときについででやったという印象を、やはり我々一般の日本の国民や政治家もそう思う。あえて大変なことをやるからこそ、そのプレゼンスは高まるわけであって、その意味では、最初は、例えば一番人口が多いのはインドだから、インドでいいですよ、インドが総理大臣がホストでやるということでインドでやりましょう、二回目は、ではブラジルでやりましょう、三回目はそれはドイツでもいいですよ、四回目は日本でもいいですよと。そういうふうに、あえて国連ではない場所でやることの大変さがあるがゆえに、このG4の迫力、そこまでやる気なのかというのが、P5や、この問題に対してどちらかというとへそを曲げて足を引っ張ろうとしている国々に対しても強烈な影響と効果を持つと私は思っておりますので、既に麻生大臣の思いの中では同じ考えだと思いますので、ぜひお取り組みをいただければというふうに思います。

 以上です。

 それで、実際、このG4案に関しての共同提案国というのは何カ国あったのか、その国名を早口でおっしゃっていただきたい。

遠藤政府参考人 お答え申し上げます。

 昨年のG4枠組み決議案、この共同提案国でございますが、全体で三十二カ国ということで、これは個別に全部申し上げますか。

松原委員 ちょっと長いね。そうすると、アジア地域で何カ国か、その国名を。

遠藤政府参考人 お答え申し上げます。

 アジアグループといたしまして十二カ国、国名といたしましては、アフガニスタン、ブータン、フィジー、それからもちろんG4の推進国でございますインド、我が国、またマーシャル、モルディブ、ナウル、パラオ、ソロモン、ツバル、バヌアツ、この十二カ国でございます。

松原委員 私は、日本の近隣の国々がこれに対して極めて否定的だったというのを、こういった共同提案の国々の名称からも感ずるわけであります。なかなか近くの国というのは、隣の家とこっちの家というのは、境界線でもけんかしたり、隣が二階を建てたら太陽光線が当たらないじゃないかとか、こういう常に、逆に近いがゆえのいさかいというのは起こりやすくて、昔から、外交は遠交近攻政策なんというのが言われていたわけであります。遠交近攻というのは、遠くと仲よく交わって近くを攻めるという、今は攻めるわけじゃありませんが、そういうふうなやり方が外交の中にあるわけでありますが、それにしても、日本というのは大変に、ODAを含め経済的援助を世界各国に展開している国で、なぜこの国においてこういったものの効用というのが十分に発揮されていないのか。

 お伺いしますが、日本のODAを供与している国で、例えば共同提案に乗らなかった国というのはどれぐらいあるのか。それは、アフリカの場合一括して動くとか、そういう話は私も聞いておりますけれども、もしくは、明らかに、その提案が表立ったところまで行って、提案というか、表立って採決まで行っていないと聞いておりますので、そうですよね。ですから、これに関して、実際賛否まで行っていないんだけれども、恐らく、日本のODAをもらっていながら、いざ採決になったら反対の青票といいますか否定票を入れる予定だった国というのはあるのか、その辺をお伺いしたい。

伊藤大臣政務官 松原議員の熱情にはいつも敬服しているところでございますけれども、これは大変難しい、またセンシティブなイシューでございます。先生御存じのように、ODAというのは単なる施しでもありませんし、日本の国益を戦略的に、究極的に実現するための最も有効な外交手段だというふうに認識しております。

 そういった観点から、今回そのODAの供与国でG4提案はどうかという御質問でございますけれども、そもそもODAというのは、そういう短期的な外交課題の実現のみならず、良好な二国間の関係の形成や国際社会における我が国の信頼の評価という中長期的な観点ということもあわせて行っております。

 今回のことに関しても、アジア太平洋州、アフリカ、中南米、多くの途上国が我が国の安全保障常任理事国入りを支持したのは、こういうODAの一つの、長年のODAの結果だというふうに考えておりますが、残念ながら、今回のG4の決議案に対する各国の態度については、これは外交といいますか相手国との信頼関係上、つまびらかにできないということでございます。

松原委員 そういう答弁しかできないと思うのでありますが、その中で、私、中国というのは日本からのODAをかねてはかなりの額拠出をしている国でありますが、中国は今回の日本のことに対して反対をしていたというのは報道でもなされておりますが、それは彼らはどういうふうな行動をとったのか、お伺いしたい。

伊藤大臣政務官 中国が、安保理の改革の具体的モデルや、また取り進め方等に関しては我が国と意見を異にしているということは事実でございます。また、二〇〇四年度の支出の純額ベースで最大の二国間の援助供与国は中国でございます。

 一方、中国は従来より、安保理における途上国の代表性の拡大をうたう等、まず安保理改革の必要性自体については我が国と認識を共有しており、我が国としても今後とも改革実現に向けて中国との積極的対話をさらに積み重ね、相互の立場の理解に努めるということが重要であるというふうに考えております。

松原委員 中国が日本の常任理事国入りに対してはかなりさまざまな、これはだれに聞いたとは言えませんが、外務省関係者に聞いても、インフォーマルには、かなり中国がこの問題に対しては広範に反対の行動をしたというふうな話も聞いているわけでありまして、おっしゃったように、日本の今最大のこういった経済援助の供与国であるところが最も日本の常任理事国入りに関して否定的な立場で動いたというのは、こういったODAのあり方、もちろん国連常任安保理事国入りのためにやったというふうなことではありませんが、そういった意味では、私は中国の対応というものは極めて遺憾だというふうに思っているわけであります。

 なお、アジアでG4案に賛成した国は、今幾つか挙がりましたが、ブータンとモルディブのみというふうに私は聞いていて、しかもこれはインドに気を使って入ったんだ、こういうふうになっていて、日本に対してこの共同提案国に気を使って入ったという国は、もしかしたら、日本の側では、共同提案国で日本に気を使って入った国があると、それは例えば中国に、おまえ、提案国をやめろ、こう直接言われるとかわいそうだから入れなかったのかどうかわからないけれども、少なくとも共同提案国に入っているアジアのブータン、モルディブだけというのは、これはインドに気を使っている、こういうことなんですが、判断はどうですか、その辺。あと、事実関係。

遠藤政府参考人 お答え申し上げます。

 先生から、私が申し上げましたアジアのグループの十二カ国、この中から二カ国取り上げてインドとの関係ということを御指摘ございましたけれども、御案内のとおり、昨年、我々、G4として連携しながら、関係各国にこのG4決議案について説明し、また理解、支持取りつけを行ったということでございまして、せっかくの御指摘でございますけれども、必ずしもこの二カ国がインドとの関係のみにおいてこのG4決議案の共同提案国になったというふうには我々は考えておりません。

松原委員 日本としてはそう言わないと面目ないわけでありますから、これはこれ以上質問を続けません。

 次に、竹島を含む問題に関して、時間もありますので移ってまいりますが、今、韓国が四十一億円を投入して竹島に関する基本計画を策定しようとしている。その内容についての把握をどのようにしているのか、さらに、そのことに対して日本の国として正式にどのような抗議をしているのか、これをお伺いしたい。

伊藤大臣政務官 お答えいたします。

 四日、委員御指摘のように、韓国は、二〇一〇年までの五年間で約四十一億円を投入することを含む竹島の持続可能な利用のための基本計画というのを発表したところでございます。この四十一億円には、竹島及び竹島周辺海域の生態系及び自然環境保全のための経費や竹島周辺海域海洋水産資源の合理的利用のための経費等が含まれているというふうに承知しております。

 この計画の発表は、竹島の領有権に関する我が国の立場と相入れるものではございません。また、これから排他的経済水域、EEZの境界画定等の話し合いを行うときに、全く建設的な対応ではございません。よって、即日、我が方より韓国政府に対して抗議を行い、遺憾の意を表明したところでございます。

松原委員 遺憾の意を表明したと。遺憾の意を表明して、その後は行動がないや、こういうことじゃ困るわけですよ。

 そこで、では、この竹島問題に対して日本というのは従来どれぐらいの予算を投入してきたのか。どれぐらい、それはどういうことに予算を投入してきたのか、お伺いしたい。

伊藤大臣政務官 お答えいたします。

 竹島問題及び竹島周辺の海域に対して、我が国も種々の予算措置を外務省初め各省行っているところでございますが、十八年度分の予算の中で、我が方が承知している例を若干列挙させていただきたいと思います。

 外務省においては、竹島問題に関し、領土問題特別調査費として約一千百六十万円の予算措置を行っております。一方、水産庁においては、我が国周辺水域資源調査推進事業費(委託費)でございますが、約十七億円を計上しており、この一部が日本海における調査に用いられるものと承知しております。また、海上保安庁においても、海洋測量関係経費として約二・七億円を計上しておりまして、日本海で調査を行うことになればその中から支出されることになるというふうに理解しております。

 いずれにしても、今列挙申し上げましたけれども、我が国の政府としては、竹島に関する我が国の立場を主張していく上でより有効な方法について不断の検討を行いつつ、予算措置も含めて、竹島問題の解決のために全力を挙げ、また粘り強く交渉していくという努力を重ねていく覚悟でございます。

松原委員 一千百六十億円かと思ったら一千百六十万円、大分違うわけですね。これは一千百六十万円だと、政務官の歳入を上回るかどうか、こういう話になってくる。千百六十万円でいいのか。それから、水産庁が十七億円。これは全部が日本海じゃなくて、その一部が使われるんでしょう。

 竹島というくくりでの予算計上はあるんですか。

佐渡島政府参考人 少なくとも、私どもが承知しておる限りにおいて、竹島ということに特定したくくりでの予算措置はございません。

松原委員 竹島を韓国が不法占拠して、取り返さなきゃいかぬという認識を持ちながら、竹島というくくりでの予算措置がないというのはどういうことですか。

佐渡島政府参考人 委員御高承のとおり、北方四島を含めまして領土問題というものは、私ども、他にも抱えているということがございますので、まとめて予算措置をしている。それから、周辺海域の調査費等々も、同じようなくくりで、目的に合わせて予算措置が講じられていると認識をしております。

松原委員 これが問題なんですよ。竹島に関しても北方四島に対しても、こういったところの予算措置が個別に行われていない。日本政府がそういうふうな、このことは、やってきたら、おれらは白旗掲げるから安心してくださいよみたいなシグナルをイメージ的に送っているからいかぬわけですよ。

 韓国が四十一億円計上した。日本はどうするんですか、この竹島問題。特別な予算を組むのか、組まないのか。向こうが四十一億組んだから、日本は組むのか、組まないのか。例えば、向こうが四十一億円だから、四十二億円ぐらい組むのかどうか。お答えいただきたい。

佐渡島政府参考人 少なくとも今年度については、もう既に始まっておりますので、予算措置というのはございません。

 来年度につきましては、今後政府の中でいろいろと議論をしていきたいと思いますが、この時点で、必ずそういうふうなものを組みますというお答えはちょっといたしかねます。

松原委員 私は、今年度組んでいないから組みません、そういう話では、政治は生き物ですから、この状況で、韓国が四十一億を計上してやってきた、日本が本気で日本の領有権を主張し、韓国の不法占拠を違うと国際社会に訴え、国内の国民に対してもそのことを極めて重要にアピールするならば、今予算措置を竹島の問題で計上するべきだと思うんですが、大臣、御所見をお伺いしたい。

麻生国務大臣 松原先生の御主張というのは大体わからぬわけじゃありませんけれども、向こうが四十ならこっちは四十一、向こうが四十二になったらこっちは四十三というような感じになっていっても余り解決の方向ではないので、余りあおってもいかがなものかと思いますので、私どもとしては、国際法に基づいて、冷静な判断ということでこれまで対応してきたんだと思っております。

 したがいまして、今、四十一億というのをやると言われましたので、他日、次官を送って、一応、EEZの話やら何やらを五月の中ごろからしようとやっている真っ最中にいきなり四十一億と来るから、そういう対応をされると、こちらとしても話が非常に感情論として高ぶってくるからいかがなものかという話を向こうにしているのであって、向こうの対応を見て今後決めていかなきゃいかぬところだろうと存じます。

松原委員 向こうの対応は、これで四十一億で出ているわけですよ。もう行け行けで来ているわけですよね。左手で握手をしながら右手でぼこぼこぶん殴るみたいな、右手で握手をしながら左でぶん殴ると言ってもいいですよ、似たようなものですよ、そういうことを彼らはやってきている。

 私は別に、四十一億だから四十二億、これはそういうことを言っているんじゃなくて、私が言いたいのは、向こうがそういうふうにやってきているときに、さっきの審議官の答弁のように、我々の年度内予算はもう執行中でありますから、新規にはこんな段階ではつくれません、来年のことは来年にならなきゃわかりませんと。それは、審議官は本当はもっと強く、踏み越えて言いたいけれども、役人の立場があるから言えない。

 だから私は、ここで麻生大臣が、乃公出ずんばで、わしが首をかけて、例えば竹島対策室をつくり、きちっと予算も、一千万とか二千万じゃない、しかるべく計上して、この問題に対してやはり日本は国際社会の中で当然独立国として毅然たる立場をとるんだということを、きょうはこれは何としても大臣に首をかけて答弁をしていただきたいということで聞いているわけであります。御答弁をお願いします。

麻生国務大臣 竹島の領有権につきましては、日本の立場というのはこれまで全く一貫していると思うんですね、歴史問題でもない、これは領有権の話ですから。ということで、こういった立場に立ってこれまでもずっと主張し続けてきましたし、引き続きこれは努力をしていきたいと思っております。

 したがいまして、この立場というものにつきましてこれまでも主張してきておりますので、今ここに竹島対策室というようなものを新たに立てるかどうかについて今検討しているわけではありません。ありませんけれども、竹島の問題につきましては、今後とも主張し、私どものあれは、国際法に基づいて、極めて冷静に主張をし続けてきましたし、今後とも主張し続けていかねばならぬ問題だと思っております。

松原委員 最後は小泉総理の考え方だと思うんですよ。拉致の場合もそうでしたが、拉致対策室がいまだに内閣にはできていない。こういった領土問題に対して本気で取り組むなら、それは領土問題の、例えば竹島の対策室をつくるのは当たり前であります。韓国はそれを激しくやってきている。激しくやろうがやるまいが、冷静に対策室をつくるぐらいは最低、それは国の防衛、外交は国の専権事項ですから、当然やってしかるべきなんですよ。

 竹島の問題で、島根県とかあちらで竹島の日を設定して、これは県が設定するんじゃなくて、本来は国がやる仕事なんですよ。しかも、前回御質問申し上げましたが、大臣は残念ながらその竹島の日に参加できなかった、外務省からもほとんどどなたも行かれていない。こういうふうなことを見たら、韓国はどんな強く出ていっても日本は最後は黙ってしまう、遺憾という言葉を言うぐらいで終わるからというふうなことに恐らくなってしまうと私は思うんですね。

 そういった意味で、私はやはり、ここはきょうは委員会の場でありますから、閣議において外務大臣から小泉さんに、対策室ぐらい、まあ拉致の対策室をつくれというのは安倍さんが言うせりふかもしれないけれども、竹島対策室ぐらい最低つくって対応するべきだ、こういうふうに言ってほしいと思うんですが、これを含めて御所見をお伺いしたい。

麻生国務大臣 先ほど、竹島の日の話が出ていましたけれども、これは御存じのように国会開会中だったと記憶いたします。それで、大臣としては欠席するという旨を申し上げたんだと記憶をいたします。

 今言われましたように、韓国政府に対して、私どもの主張というのは、これは李承晩ラインにさかのぼる話ですから随分長い話ではあるんですけれども、一貫した主張というのを明確に伝えてきた。これは領有権の問題であって歴史問題ではないということも今回も言っておりますので、そういった意味で、日韓双方に立場の違いがあるのは前々からですけれども、日本としては、これを妙にあおるというような感じではなくてこの問題の解決を図っていく必要があるであろうと思っておりますので、引き続き、この問題につきましては最大限の努力をしてまいりたいと思っております。

松原委員 日本は自衛のために、戦うために自衛隊というのを持っているわけでありますが、例えば竹島は不法占拠されてしまった、どこかの地域が不法占拠される、例えば東京が、中国が来て不法占拠する、中国軍が来て。そういう場合は、これは大臣、当然自衛隊は自衛のために戦いますよね。いかがですか。

麻生国務大臣 今、仮定の問題にはなかなかお答えしにくいところでありますけれども、日本の、例えば今東京のどこでしたか、領土を中国軍が占拠という前提というのはなかなかおもしろい設定だと思いましたけれども、そういう状況になった場合は、それは極めて厳しい状況になりまして、戦闘状況になり得るというのは可能性としては十分考えられると思います。

松原委員 可能性というよりは、当然自衛隊は守るために戦いますよ。竹島も同じように領土なんだということですよ。竹島と例えば北海道と九州と関東、日本の領土という点では同じなのか違うのか、お答えいただきたい。

麻生国務大臣 日本の領土という意味に関しましては、これは日本が領有権を主張しております領土という点につきましては、北方四島、尖閣列島、いずれも皆同じであります。

松原委員 ということは、今言ったように、それを守るために、究極の選択としては自衛のための自衛隊が出て戦って守る、こういうことになるはずなんですよ。それができない場合には、それは平和的に解決すべきだというのは九条の解釈の中にあるわけですが、そのときに、ほかのとり得る手段があるときはそのとり得る手段を考えようということでありますが、そのとり得る手段というのは遺憾であるという言辞しかないんでしょうか。

麻生国務大臣 国連憲章第二条第三項という、例のせりふが出てくるところの部分なんですけれども、「すべての加盟国は、その国際紛争を平和的手段によつて国際の平和及び安全並びに正義を危くしないように解決しなければならない。」という規定が国連憲章第二条第三項にあります。よく使われるせりふですけれども。したがいまして、一般国際法上、いわゆる不正の侵害とかそういったものに対しましては、他に適当な方法がない場合には、当該国家は自衛権を行使して必要最小限度の実力を行使することが認められる。これがやはり国際法上に言われているところであります。

 したがって、自衛隊を出動させるか否か等々につきましては、今申し上げましたように慎重に検討する必要があろうと思いますが、どのような場合には出動させ、どのような場合には出動させないかというのを一般化して申し上げるというのはなかなか難しいことだと存じます。

松原委員 結論からいえば、やはりその部分の決意がない限り、外交交渉において、竹島においてもそうだし、他のガス田においてもそうだし、じりじりと日本の主張は後退をさせられてしまうんだ、大変情けないことだと思います。

 私のある知人が言っておりましたが、戦後、負けて一番悲しいのはそういう部分だ、最終的なところで、普通踏ん張るところも踏ん張らないと周りが思っているがゆえにどんどんと後退させられるのが悔しいということを言っておりました。この悔しさをなくすようなことをしていかない限り、国家の尊厳というのは守れないと私は思うので、ぜひとも外務大臣はそのことに取り組んでいただきたいと思います。御所見があればお伺いしましょう。

麻生国務大臣 通常、国を守るという話になった場合、三つのことを前提にしておかなければならぬと思います。一つ、守れるだけの実力、能力。二つ、その持っている実力を使うという意思。そして、その意思を相手に伝えている。この三つです。これが国というものを守るときの基本の三点だと思っていますけれども、今言われましたように、能力というものを、今自衛隊というものを持ち、日米安全保障条約でカバーし、いろいろな形で日本というものの国土を守るという体制ができ、有事法制をつくり、国民保護法制をつくり、いろいろな形でこの五年間、これまで五十五年間懸案だったものがかなりなものにでき上がりつつあるというのは確かだと思っております。

 問題は、それを使ってのけるという意思につきましても、不審船撃沈等々、使う意思を示したということも確かだと思います。したがいまして、この国土を守るというのは当然のことですから、自分の国の国土の安全、国民の安全を考えて能力を持ち、それを使うという意思を持ち、そしてそれを相手に知らしめる、この三つは基本的に今後とも守らねばならぬ大事なところだと思っております。

松原委員 終わりますけれども、不審艦のことが一回あったと。しかし、今までの経緯があるから、それ一回だけではまだそういったものの伝搬というのは十分じゃないと私は思います。その後のさまざまな案件において、やはりまだ日本がそういうふうな姿勢になり切ったというふうには周りも思っていないと私は思うので、それが今も続いていると思うんですよ、韓国の竹島に関するこういった行動に関しても。どちらにしても、毅然たる外交を目指して頑張っていただきたいと思います。

 以上であります。ありがとうございました。

原田委員長 次に、篠原孝君。

篠原委員 おはようございます。民主党の篠原でございます。

 松原委員の質問に続きまして、私も竹島問題をしたいなと思うんですが、ちょっと余計なことを最初に申し上げさせていただきますと、私、一九九四年から三年間ほど水産庁企画課長というのをやりました。内閣に海洋法対策室ができましたが、内閣は法律を通したり、やったり、実行部隊がないということで、私、水産庁の海洋法対策室長という全体を取り仕切るのを兼任いたしまして、EEZ、排他的経済水域法、それから何と不思議なんですが、領海法まで私が担当課長として法案を通すということをやりましたので、竹島問題については言いたいことが山ほどあるんですが、きょうは日英、日印租税条約が議題になっておりまして、私に課せられた使命はそれでございますので、そちらの方の質問をさせていただきたいと思います。

 ただ、半分は、最後、この前のEPA、FTA、マレーシアとの関係で議論させていただいたその延長線上の哲学論争というのを大臣とさせていただきたいと思いますので、前半戦はさっさとお答えいただきたいと思います。

 まず、この条約ですけれども、前々から租税条約があって、現状にそぐわなくなったので改正し始めた。平成十六年に日米で改正した。源泉地国課税の軽減を行う、そういう方針のもとに、まずアメリカを手始めにした。次に、今、イギリスとインドが対象国になりまして条約を締結しようとしているわけですけれども、過去にも何回もこのような改正というのは行われたんだろうと思います。その効果があったのかどうか。効果というのはどういうことかというと、もちろん当初の目的の二重課税の回避とか濫用の防止は当然ですけれども、この条約を締結することによって、直接投資、投資交流が盛んになったのかどうかということと、今後これでもって促進されるのかどうかということについてお答えいただきたいと思います。

加藤政府参考人 お答え申し上げます。

 今先生御指摘のございました投資交流の促進の効果でございます。私ども、相互の投資交流の要素というのはいろいろな要素がございます。そのうち一つが、税の二重課税がいかに軽減されるかということも一つの重要な要素だとは思っております。ただ、それはあくまでもインフラの一つでございますので、これは経済状況とか人件費等々、そういういろいろな要因がございます。

 したがいまして、私ども、税の効果だけを取り出して、これがどのぐらいあったかというのはなかなか難しい。ただ、率直に申し上げまして、我が国と関係諸外国との絶対的な投資交流というのは年々盛んになっておりますので、そういう意味ではいささかの貢献はしておるのじゃないかと思っております。

篠原委員 二度三度質問しますことはやめますけれども、経年的な数字を見ていると、今お答えになったようにほかの要素もあるということでしょうけれども、減ってきているんですね、投資額自体は。ですから、どれだけの効果があるのかなという疑問を感じましたので質問させていただきました。

 それから、本来の目的の二重課税の防止とか租税回避とか、まあインチキですね、濫用防止とか、聞きなれない名前の匿名組合を利用した租税回避とかいうのが入ってきているわけです。それから、第三国の人たちが、条約が締結されて軽減されたんだと偽って、その国の人のようなふりして濫用したりするんじゃないかというのがすぐ疑問としてわいてくるんですが、その点の監視というのは十分この条約でできるようになっておるんでしょうか。

加藤政府参考人 濫用防止の問題につきましては、これはかねてからいろいろな項目において問題意識がございました。

 今回、特に、今御指摘のございました匿名組合を利用した租税回避、これは、結局、租税条約を締結することによって、匿名組合の分配金がいわゆる特定の国において非課税になってしまう、それを利用するということで租税回避が行われることが過去においてずっと言われてきたわけです。したがいまして、今回、そういうことを日英の関係において防止するという見地から、あえてこういう条項を入れさせて、これによって匿名組合を利用する方法という道はふさがれたと思います。

 もう一つは、いわゆる第三国の居住者がこの租税条約の恩典を受けないようにするというのも、これも結局は、どんどんこうやって二重課税の防止をするために源泉地課税を軽減するということが、逆に言えば利用の価値を高めるということで、我が国はこれまで、日米の租税条約を締結するまではこの問題については余り直接的な対応をしてこなかったわけですが、アメリカを中心に、やはり条約の濫用をきちっとしていかなきゃいけないという非常に強い声がございまして、我が国もこれに沿って対応していくという方針をとっております。

 一〇〇%これによってできるかということについては、これはいろいろな方の協力が必要でございます。特に、源泉徴収義務者、これは民間の方にお願いしているものですから、その方々にも協力をお願いするということで、そういうことをきちっと我々もお願いしつつ万全を期していく、その方向は正しいものだと考えております。

篠原委員 それからまた技術的なことですけれども、イギリスとインドと両方一緒になっていますので、大体同じなんですが、違うところも結構あるわけですね。軽減率が違ったり、免税というか、免除になっているところが免除になっていないところがあるわけですけれども、商標権とか著作権の使用料、これがイギリスの方では免税となっているのに、インドがなっていない。こういった大きな違いがあるところもあるんですが、こんなのはどういう理由でこういうふうになっているんでしょうか。

 この前の審議のところを見ますと、OECDの条約がモデルの一つになっていると。それから、川口外務大臣、当時ですけれども、日米のを締結したときに、もう基本的に日米の租税条約を見本として、ほかのものもどんどん軽減していくんだというふうに言っておられるんですが、その点は、どういうことでここはイギリスとインドは違っておるんでしょうか。

高田政府参考人 先生御指摘のとおり、日英では使用料、源泉地免税でございますけれども、インドについては一〇%という改正でございます。

 これは、私ども、我が国といたしましても、このインドとの改正交渉におきまして、原則的には、両国間の投資交流を促進するという観点から、使用料に対します源泉地国課税を免除するということが妥当であるという考えで臨みました。

 交渉の過程におきまして、インド側は、使用料に対する限度税率を引き下げるということについては同意をしておりまして、それをどのくらいにするかということだったんですけれども、他方、インドが締結をしておりますほかの租税条約において、使用料については一〇%未満の限度税率を定めたものはない、また、インドの税収を確保するというような観点などもございまして、一〇%より低い税率への引き下げには応じられないといたしました。種々ございましたが、最終的に、この限度税率を一〇%とするということで合意に達したものでございます。

    〔委員長退席、土屋(品)委員長代理着席〕

篠原委員 その点については、後の問題でもありますので、ちょっとまたお伺いします。

 それから、投資の問題でいくと、すぐ気がつくところがあるんですけれども、中国とインド、二大人口大国で、アジアで経済成長が著しいということなんですが、WTOなんかでもBRICsとして、インドなんか特に、今も松原さんの質問の中にもありましたけれども、重きをなしてきている。それにもかかわらず、我が国は、中国に対しては何かやたら進出してというか、もう三千社で、工場なんというのは数知れず、後で資料をお示しいたしますけれども。私の知る限りというか、あちこちにある数字で見ますと、中国には三千社、それに対してインドには三百社ぐらいしか進出していない。理由があるわけです。インフラの整備が中国の方がましだろう、インドは遠いだろうと。しかし、メリットとして、英語が通ずるというのもあったりするんですが、なぜこんなにインドへの投資が少ないんでしょうか。

長谷川政府参考人 お答え申し上げます。

 私どもとして見ておりますのは、やはり中国とインド、両方とも大変、今御指摘ございましたように、伸びる市場といたしまして世界的にも注目を受けておりますし、日本政府及び国会の先生方も含めまして、国家を挙げてインドへの関心を高めるべくやっておりますけれども、大きく申し上げますと、二つ大きい違いがあるのかなというふうに思っております。

 一つは、歴史的な流れでございまして、先生御案内のとおり、中国は、もう既に七〇年代の後半から、改革・開放ということでございました。インドの場合は、八〇年代までは基幹産業は公共部門が担う、それから、スワデシという国内製品の愛用運動というのがございまして、東西冷戦の流れの中で、率直に申し上げまして、西側に対する門戸の開き方というものにつきましては、かなりインドの方が時間的にこれは後発になったというのがあると思います。

 その中で、九〇年代の初めに、インドは外貨資金が大変底をつきまして、従来の経済構造を根本的に変える。たまたま現在のシン首相が大蔵大臣でございましたけれども、我が国もそのときに緊急商品借款をする等でインドとの関係が大きく変わったというふうに思っております。

 そういう意味で、その後、国家としましても、民を励ます、あるいは円借款をふやす、あるいは、インドの主催しますフェアに元総理も御参加いただく、こういうようなことでやってきております。こういった時系列の違いがありますので、その意味では一つ差があると思います。

 二つ目は、中国の場合は、やはり国内の非常に大きいマーケットと、それから、中国での生産が世界へ輸出基地になっていく、こういう点があると思います。

 それに比べますとインドの場合は、国内のマーケット、どんどん今発展しておりますし、それを我が国も支援しているわけでございますけれども、地理的な環境からしますと、インドから世界への市場ということになりますと、どうしてもその輸送面あるいは運搬面、こういったようなもろもろのコストの面で多少のハンディがあるということは否めないと思っております。

 いずれにしましても、インドの持っております魅力に比べますと、日本のインドに対する投資というものはまだまだもっと伸びる余地があると思っておりますので、いろいろと関係省庁一体となりまして、国会の御指導も得まして努めていきたいと思っております。

篠原委員 インドの関係で有望なのは、よく言われているんですが、英語ができるということで欧米の大学にどんどん留学し、もともと数字に強いんですかね、インド商人というのは商売上手で絶対もうけるというので、数字が強いのか理科系人間が多いのか、ITの技術者が多い。アメリカのIT産業もインドの技術者がたくさんいて、三十万人近くいる、それでもってアメリカのIT産業を支えている。それから比べると、日本でインド人をそういうところで見受けるかというと、そんなに多くない。それで聞きましたら、三千人ほどということで非常に少ないわけですね。お金の流れと人の流れというのも結構同じなんじゃないかと思いますけれども、これで、今度のこういった条約の締結がIT技術者の交流拡大にもつながっていくんでしょうか。

高田政府参考人 この改正議定書におきまして、投資所得に対する源泉地国課税の限度税率を引き下げるということになります。これによりまして、インドに対する我が国の投資の一層の増大、それから、インドから我が国への投資を呼び込む効果もあると考えております。したがって、日印間の双方向の投資交流を促進するということが期待されるところでございます。

 それで、先生御指摘のとおり、インド、IT分野を中心として今は目覚ましい発展を遂げております。今回の改正議定書によって期待をされる投資交流の促進、これに伴いまして、IT分野における技術交流あるいは技術者の交流、より活発になることも期待をされるところでございます。

篠原委員 それから、この条約が二つあるからおもしろいんですけれども、両方あるので比べられるんですが、イギリスとインド、さっきの使用料、免除と一〇%というので違っていますけれども、国によって違いますが、日本とインド、日本とイギリスでみんな完全に同じなんですよね。関税の世界に合わせると、日本が一〇%の関税だったらイギリスでも一〇%の関税、同じなんだろうと思います、所得税率も同じにすると。

 そういうふうになっていくと、おかしいなという気がするんです。いろいろな世界で交渉しますと、今WTOでもめていますけれども、発展途上国に有利な条件でもってWTOをまとめなければいけないと言っているのに、それは関税もあるわけです。関税も税です。税は国の主権だというのにもかかわらず、国際的なルールにのっとって決めるというのを、それを、租税、所得税や法人税、この細かい税をどうやって徴収するかということについて、何で二国間でやり、かつ完全な相互主義、僕はイギリスとは対等でもいいかなと思いますけれども、日本とインドがやった場合はインドの方が有利になるように条約を締結しなければいけないような気がするんですが、そうしなくてもいいんでしょうか。不思議だなと思っているので、ちょっとお聞きしたいんです。

長嶺政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま先生御指摘ありましたように、課税権といいますか、これは主権の権能の基本的なところにかかわる問題でございます。

 この租税条約は、各国が有している内国課税権につきまして、言ってみれば、一定の、譲るという形で調整を行っていく、こういう機能を果たす条約でございますので、相手国の国の大小あるいは経済発展の度合い等を問わず、やはり基本的には相互主義で行っていくということで、これはOECDモデル条約等もそういうことになっておるわけでございます。

 そうは申し上げた上で、ただいま先生御指摘になりましたように、途上国の場合、少し違う面があるのではないかという点でございます。確かに、自国の税収確保ということに非常に力点を置くというような点、源泉地国課税の大幅な軽減には慎重であるというような点が途上国の場合には往々にして指摘することができると思います。

 したがいまして、相手が途上国であるような場合の租税条約の締結につきましては、我が国としては、これら途上国側の事情にも配慮しながら、合意できる範囲で租税条約の締結を進めていく、こういう考えでございます。

篠原委員 今のを伺っているとますます疑問が募るんですけれども、発展途上国、LDCを特別扱いしなくちゃいけないと思う。そうすると、二国間でぐちゃぐちゃやっていたら各国とも時間の無駄のような気がするんですよ。関税の世界では、SアンドDというか発展途上国の特別扱いが認められて、譲許表でもってぱっと世界じゅう一緒に決めているんだから、基本的なルールは、WTOじゃないにしても、何かそういった形でまとめて、ちょっとした例外を各国でやるというような形にした方が世界全体の行政改革になるような気がするんですけれども、日本が一番経済経済で、アメリカは超大国で別として、世界じゅうとかかわっていると思うんです。日本が率先してそういう基本的なルールを提案してやっていくというようなことも考えてもいいような気がするんですけれども、いかがでしょうか。

加藤政府参考人 今御指摘の多国間でというお話、確かに、関税、これは貨物に対する課税でございますので、これについては、世界で共通のルールをつくるということは比較的容易でありまして、現にそう行われております。

 ただ一方で、課税といいますのは、これは極めて観念的な、抽象的な概念を用いております。かつ、例えば所得といいましても、所得の中身については各国でそれぞれ租税の体系の中で決める。所得以外の消費、資産、いろいろな課税、それぞれ各国がいろいろな形で独自のルールで歴史的な背景を持ってやっておる。

 したがいまして、こういうものについて、もし全世界的に国内課税自体が総合的な統一ができていれば、これはもちろん先生おっしゃるようなことは可能でございますが、あのEUですら課税権については独自の税体系で行っておるということで、この問題は、現状においては、やはり二国間でそれぞれの実情に応じた対応をせざるを得ない、これが現状だと思っております。

篠原委員 それにちょっと反論しておきますと、ガット、WTOで一番遅れているのが農業分野だったはずなんです。ところが、農業分野は次々関税化とかやってきて、今や、国内補助金までどうこうというルール化されて、これが信号と同じようにしているわけです、赤だ、黄色だ、緑だと。赤はすぐやめろ、黄色は減らせ、緑はふやしてもいい補助金だというようなことまでルール化しているわけですから、もっときちんとしなければいけない税金の世界でもできないことはないと私は思うんです。細かいことまで全部決める必要はないですけれども、世界のルールというのをきちんとしていってもいいんじゃないかと思います。

 次に、今なぜインドとイギリスなのかわかりませんけれども、ほかにオランダとフランスともやろうとしている。フィリピンとは始めたんですかね。これはEPAとかFTAと同じで、タイムスケジュールはほかの国はどうなっているんでしょうか。次々にこの二国間条約をやらなくちゃいけないはずなんですね。

長嶺政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま委員御指摘のとおり、現在、我が国は、オランダ、フランス、それからフィリピンとの間で租税条約の改正交渉を行っているところでございます。これら三カ国との交渉の現時点における具体的な見通し、スケジュールを述べることはなかなか難しい面がございますけれども、我が方といたしましては、できるだけ早い交渉妥結を目指して努力しておるところでございます。

 一般論として、租税条約を締結するに当たりましての基本的な考え方として、経済関係を中心とする我が国と相手国との二国間関係がどうであるか、それから相手国の税制がどのようなものであるか、相手国が租税条約をどういうふうに締結しているか等を総合的に勘案した上で、交渉相手国を決めていくということで臨んでおりますので、こういった方針に基づきまして今後も対応していくということでございます。

篠原委員 ここから、ちょっと技術的な問題を提起させていただきたいと思います。

 私は、この前のこの委員会では、刑事共助条約を質問したわけです。これも、アメリカが一番、韓国二番。こっちは、アメリカが一番、イギリス、インドが二番ということですね。前からあるんです、これは改正していくので。これは次から次にやっていくと、二国間条約がわんさかあって、こうやって貴重な委員会の審議を、こう言うと失礼かもしれませんが、大してそんな時間をかける必要もない定型的な条約に時間をかけなくちゃならない。これはもっと審議を簡略化していいような気がするんですね。

 ところが、条約は、だれでも知っていることですけれども外務省の専権事項だ。衆議院規則の九十二条にも、あらゆる条約は外務委員会で議論するんだ、そこで採決するんだと。しかし、ここの内容は、私は財政金融委員会の内容だと思うんです。これはちょっと考えていただきたいんですね。

 各省のレベルの、三十年前、二十年前は、英語ができる者がいないから、インターナショナルなのはみんな外務省の人にやってもらっていたでしょう。しかし、各省は、それじゃいけないということで、おられませんけれども、原田委員長なども人事院で留学させていただいているんです。私もそうです。どの程度ちゃんと役に立ったかというのはじくじたるものがありますけれども、それなりにやって、各省が外交交渉をやるようになってきているんですよ。外務省ももちろん当然一緒にやっていたわけです。ところが、委員会になると外務委員会に丸投げで、こういうことがわかる議員が育成されているかというと、そんなに育成されていないような気がするんですけれども、英語云々だけじゃないです。

 私の例で言いますと、FTA、EPA、マレーシア、これは経済産業委員会マターです。この間の刑事共助条約は、法務委員会なり内閣委員会。これは財政金融委員会。松原さんのように、条約云々なんといったって大所高所の質問を堂々とされる方もいっぱいおられて、それは大事で、そういうふうになるのは当然だと思うんです。そうすると、こういうのに時間を割いているというのはいかがなものか。この委員会の審議の仕方を絶対考えてもらわなくちゃいけない。理事会で、土屋委員長代理に答えていただきたいんですが、本当に、これは考えていただかなくちゃならないと思うんです。

 まず財務省の幹部が出席してきちんと答えるべきだと思う。私は、今なぜ外務大臣と政務官に答弁しろと言わなかったかというと、もし政治家が答えるんだとしたら、これは挙げて財務省マターだと答えるべきだと思っているんですけれども、財務省、いかがでしょうか。

加藤政府参考人 御指名でございますので。

 私ども、ちょっと今のお話に対しては私どもがお答えするというお話じゃないと思いますので、差し控えさせていただきます。

篠原委員 わかっていますよ。今ルールで、では、谷垣財務大臣が出てくるべきだと言って私が要求すると、応じられるかというと、だめなんです。多分、副大臣には出ていただきたいと言えば応じられるんでしょうね、理事の皆さんに議論していただかなくちゃならないんですけれども。僕は、そういうルールを確定すべきじゃないかと思います。

 それで、せっかくつくったのでちょっと資料を見ていただきたいんですが、一ページ目の資料、私、過去の十年間の条約、法律案の質疑時間と一般国際情勢の質疑時間を合計してみました。これは結構手間がかかるんですけれども。臨時国会、特別国会も含めてこれだけです。これはほかの委員会と比べたら、ずっと一般質疑が多いと思います。ほかの委員会は、所信表明をやった後一般質疑をやって、法案がメジロ押しですから、法案を通すだけで終わってしまう。一般質疑なんというのはほとんどないんですよ。

 それはある程度仕方がないと思いますけれども、しかし、外務委員会は別で、アンブレラ委員会ですし、一つ上になって議論をすべきだと思うんですよ。例えば、今、松原委員が指摘したような竹島問題なんて、二日、三日は議論したって僕はいいことだと思います。また、米軍再編問題もそうだと思います。外務大臣は大変だろうと思いますけれども。それが一番大事なのに、そういうふうになっていないのが僕はおかしいんじゃないかと思います。

 こういう外交問題について時間をうんと割く。だからといって、この条約や何かをないがしろにしていいというわけじゃないんですけれども、それは各マザーミニストリー、マザー委員会の、母親の委員会の皆さんと一緒になって議論する、そちらの人たちも議論していただく。それを、各省、各委員会のマターであるにもかかわらず、条約の議論は全部外務委員会に丸投げしてやるというのはちょっとおかしいので、そこは、連合審査とまでするかどうかわかりませんけれども、そういう形で議論していかなければいけないような気がするんです。

 これも外務省に答えていただきたいと言っても、またさっきと同じような、何を答えているのかわからない答えしかないかもしれませんけれども、一応答えてください。

長嶺政府参考人 お答えいたします。

 まさに、行政府の立場から国会での御審議のあり方について御意見を述べるのは、ちょっと適切ではないと思っております。

 政府といたしまして、締結に当たり国会の承認を得るべき条約につきましては、国会において御審議いただく際に、内容が専門的であるか、あるいはその内容が以前に結んだ他国との条約と同じような定型的なものであるかということもありますけれども、私どもといたしましては、その内容につきましてよく御説明をし、審議が効率的、効果的に行われるように対応してきておりますし、今後ともそういうふうにしていきたいというふうに考えております。

 連合審査というお話もございましたけれども、これもやはり先ほど申し上げましたように、国会における審議のあり方の問題でございますので、私どもの方から意見を申し述べることは差し控えさせていただきます。

篠原委員 わかりますけれども、海洋法条約という大きな条約で、そのときは私は政府の一員でしたので、ちょっと申し上げておきたいんですが、自民党の部会で八部会にかかわってというのもありまして、連合審査というのでやりました。総理も出席してというのをやりました。

 それは大きな条約だからやったんですけれども、小さなのも、少なくとも関連する委員会との連携というのを考えて、そこでも議論していただかなければ、外務委員会がこういったことにばかり時間を費やされて、それは分野が物すごく違うわけで、大変なんだろうと思います。差しかえでやるとかいうのを、我々がルールの中で対応するということもできるんだろうと思いますけれども、そうじゃないやり方というのも考えていただきたいと思います。

 それから次に、せっかくつくりましたので、ちょっと次の表を見ていただきたいんですが、投資の促進というのがそれほど大事かどうかというのにちょっと疑問を呈したいんです。

 二ページですけれども、この産業の空洞化の動きというのをちょっと見ていただきたいんです。いろいろなのがあったんでしょう、いろいろな理由があるんでしょうけれども、円高とかいうのがあります。人件費、私の知る限り、私がつくったので大した表じゃないんですが、私が携わっていたのでは、漁船員が一番最初に外国人になっていきました。次が船員。それで、円高になって、安い人件費を求めて出ていった。もうめちゃめちゃです。

 その一方で、次のページ、三ページを見ていただきたいんですが、全国と地方の、疲弊している、最近、格差社会、格差社会と言われますけれども、工場の立地推移。本当はこれは私は、倒産したというか地方から撤退した企業の数字が欲しかったんですが、いい方の数字だけは持っていて、悪い方のは集めていないんですね、それぞれ何々県から撤退した、工場を閉鎖したというのを。ですから、逆のもので。

 工場立地が減っている。この二番目の表のところを見ていただきたいんですが、地方圏の割合がだんだん減っている。都市圏の割合がふえている。しかし、地方圏といっても、後で出てきますけれども、宮城とか茨城とか栃木、群馬、福岡まで地方圏なんです。これらの都市圏と同じようなのを除くと、本当に地方はほとんど工場立地なんてなくなっているんです。下を見ていただくとわかります、地域別立地件数の年次比較ですね。

 そして、その次のページ、これは日本経済新聞の、ちょっと探したんですが二〇〇一年の数字しかなかったんですが、工場立地件数が折れ線グラフです。それで、棒が、どの程度の用地を使ったか。もちろん東京なんて高くてもうないんですが、見ていただくとおわかりいただけると思います。件数も一けた、それからヘクタールも一けた。青森なんかはめちゃめちゃです。

 こういうのを見ていきますと、さっき言いました茨城なんかは、隣接県で非常に多い面積を使い、件数も多い。もう十件未満の立地件数ばかりなんです。

 次に五ページ、私の地元の長野県の主な企業閉鎖、リストラというのを調べたんです。ここにもう一つ、企業の海外進出というのも書けばよかったんですが、済みません、その時間がなかったもので。ただ、朝ちょっと調べてみました、東洋経済の海外進出企業総覧という厚いのを。政府は統計を持っていないんです。これも不思議なんですが、貿易統計なんかみんな持っているのに、企業の進出云々、投資の促進なんて言いながら、一体どれだけの企業がどれだけ出ているかというちゃんとした数字というのは政府が持っていなくて、昔からそうなんですが、東洋経済新報社の総覧しかないんです。

 そこで見ますと、三菱電機の長野工場が行った、これを調べてみました、三菱電機の海外進出状況は。厚い中で七ページに及びました。二十六カ国、イギリスに三カ所、インドには一カ所、一番多いのは中国で十七カ所、アメリカが十カ所。カネボウも二ページ、十一カ国。それから、東洋紡も二ページ分、八カ国。富士通も三菱電機と同じように七ページ。これは言っていると切りがないんですが、一番下の横河電機なんかびっくりしました。二十四カ国、五ページ分、中国に八工場、インドに一工場、イギリスに二工場。それから、下からで恐縮ですけれども、住友電装も四ページ分もありまして、十八カ国、インドに四工場、これは多かったですね、イギリスに二工場。

 それで、ではというので、ちょっと大臣の地元の企業がどうかというのもしつこく見てみました。そうしたら、アイム電機工業というのが一つだけ海外進出企業であります。御存じですかね。福岡県遠賀郡水巻町というんですか、そこの一つだけが海外へ進出しておりました。

 しかし、国内で増税をしようとしている、さっき、発展途上国はいっぱい税金を納めたいのに、税金を下げるなんというのは嫌なんだというのがありました。しかし、日本だって同じで、税収が問題になっているときに、地方経済がこんなに停滞しているときに、海外投資を促進するんだ、税金をまけるというのは、私は何か国民感情に合わないような気がするし、時代にそぐわないような気がするんですが、いかがでしょうか。

川原田政府参考人 経済産業省の考え方を申し上げさせていただきますと、我が国の企業は、国内外で最適な立地を行うということで国際競争力を発揮しているというふうに認識をしております。

 それから、国内の立地でございますけれども、市場との近接性、それから関連の工場あるいは研究所の存在とか、あるいは高度部材の入手のしやすさなどを考慮いたしまして、国内立地に積極的に取り組んでいるというふうに考えております。

 この結果、先生の資料にもございました国内の立地件数でございますけれども、平成十五年度から三年連続で、パーセンテージにいたしまして二けたの伸び率を示しているということでございます。

 また、対日の直接投資につきましては、地域の経済を活性化する有効な手段というふうに考えておりまして、その促進が強く求められるというところでございます。こうしたことから、海外との投資交流を行うことによって地域の経済の停滞が生じるということにはならないんじゃないかというふうに考えております。

 いずれにいたしましても、御指摘のように、地方経済の活性化というのは極めて重要な政策課題というふうに認識しております。

 このために、経済産業省では、地域の活性化というのを大きな一つの柱といたしまして、今、新経済成長戦略の最終取りまとめをやっております。作業中でございまして、この戦略の実行を通じまして、今後とも地域の活性化に取り組んでまいりたいと思っております。

麻生国務大臣 これは、多分、一九八五年の十一月の例のプラザ合意以降、一ドル百二十円に暴騰しましたので、日本の経済は輸出に頼っていると思い込んでいる企業というのは多いわけですから、そういった人たちが海外に出ていったのに伴って、この二十年間、空洞化というのがやたら言われた話の続きの話なんだと思っております。背景はドル安・円高だと思います。

 ただ、この二十年間、どんなことになったかという経緯をよく見てみると、出ていった企業は数多くありますが、時間をかけてやってみた結果、なかなかうまくいったところとうまくいかないところと分かれたと思いますね。そういった意味では、中国に出ていった企業も、続々撤退をしていった企業もいっぱいありますし、出た企業も三千百何十社今現在登録されておりますけれども、その間、撤退した会社というのも実は結構多くて、そちらの方の統計の方はまたない、そういう形になっておると思うんです。

 その結果として、日本の方に戻ってきて付加価値を高くつけるようなものにしたところもあれば、かつ、いわゆるロボット、ITというような技術によって、結果的に、こちらでつくったものの方が安いという結果になったところもあるし、出ていった企業がつくったものの部品をまたこちらで供給するという形でこちらで仕事がふえた部分もありますので、内容は企業また産業によってそれぞれいろいろ違っているんだと思います。

 ただ、今、この二十年間かけてグローバル化される、グローバライゼーションという言葉が言われた流れではありますけれども、今、逆に、ローカライズされなければならぬという話がまた戻ってきつつある。行ったり来たり、昔から、グローバル化が進むときもあればローカル化が進むときもあるという一つの流れなんだとは思いますが、その中で、自分の企業なりなんなりに適したものは何かというのは、これは自分の企業が自分で、経営者の責任で探していかなしようがないんです、こんなものは。私どもは基本的に、元経営者としてはそう思っております。

 ただ、そういったものを促進していくに当たって、その国に出ていっていいもの、悪いものというのは、これは、出た先の国によってうまくいったものもあれば、うまくいっていないものもありますので、調べてみると実にいろいろあるとは思いますけれども、政府として、一概に何でもみんな出ていった方がいいぞというようなわけでもありません。

 少なくとも、中小企業の保護等々、中小企業庁いろいろやっているように思いますけれども、今度いろいろ地方の方で自由に税制やら何やらできるようにもなりますので、その地域において、この中小企業はおれたちで育てるというような意識をその地域で持ち切るか持ち切らないかというところも、ひとつあわせて今後考えていかないかぬ大事な問題かなという感じがいたしております。

篠原委員 最後にもう一つだけ聞かせていただきたいと思います。

 これは前のマレーシアのときのEPA、FTAのときに質問した延長線上でございますけれども、いろいろあるというのはそのとおりだと思います。しかし、ここで考える場合、日本でいろいろやっている、日本の田舎の工場も畳まない、一生懸命やっている、ただ、企業活動が拡大しているので、それでインドにもイギリスにも、中国でもいいんですけれども、出ていく、こういう企業にはいろいろ特典を与えてもいいですけれども、あっちの国の人件費が安いからといって、これは長野県の例で出しましたけれども、五百人、二千人を突如解雇して、工場を閉鎖して、地方経済を疲弊させて、そして出ていって、投資だと言っている企業というのは、やはり差をつけてもいいような気がするんですね。

 大臣はいろいろこれからおありの方で、そういうことを考えていっていただかなくちゃならないと思うんです。僕はこれを見ていますと、小泉、竹中、ホリエモン路線の延長線上で、マネーゲームでもうければいいんだ、やはりそうじゃないので、日本で汗水垂らして働いてとやっている人たちのために政治はあるべきで、そのような方向でこの条約ができているわけですよ、運用していくべきだと思うんですが、御決意をぜひお願いして、私の質問を終わらせていただきたいと思います。

麻生国務大臣 もう大分前になりますけれども、たしかピーター・ドラッカーという人が最初に言ったんだと。昔の資本主義では、資本と土地と労働力、この三つがないところには資本主義は発展しないということを言ったんですが、最近、これだけグローバル化してくると、要は組織をつくる人がすべてだと。

 これを最初に言ったのは多分、私の記憶ではピーター・ドラッカーという人だと思ったんですが、読んだときには余りぴんときませんでしたが、今、それから二十年近くたって、こうやって振り返ってこれまでの時代を見ますと、やはり勤勉で向学心があり、かつ公徳心の高い、そういった人材を持っている国が組織をつくり、金、資本、いろいろなものは外からということになってきますので、そういったような人材をきっちり育て上げている国には投資がふえる。勤勉で、いわゆる頭がよくて向学心だけだと、エンロン、AOL、いろいろありましたから、そういった意味では三つ目、公徳心というところが、余り人が言われないところだけれども最も大事なところだ、私にはそう思えます。

 教育基本法、皆関連していると思いますけれども、ここらのところは日本がもう一回きちっと見直さねばならぬところで、日本がこれから世界に対して売るせりふ、売るセールスプロモーションとしては、そういった人材を最も多く持っている国というところが世界の投資を招きやすいんであって、税の話やら何やら、これは技術的な話ですから、いわゆる法律を変えればそれはどうにでもなる話だと思いますが、その今申し上げた三つはなかなか簡単にはできないところなので、日本としては、その三つを今後ともきちんと育てていくという方法で政治というのはやっていかないと、対日投資等々なかなかふえてこない。その中には、公徳心があるから治安がいいとかいろいろ出てくるんだと思いますが、そういったところも含めて国の経営というのは考えねばならぬものではないかと思っております。

篠原委員 終わります。

土屋(品)委員長代理 次に、宇野治君。

宇野委員 自民党の宇野治でございます。

 再び外務大臣がいない席で質問させていただきます。残念でございますけれども、よろしくお願いを申し上げます。

 きょうは、日印、日英の租税条約の審議ということであります。そういう中で、先ほど篠原先生もお話しいただきました、この租税条約の、確かに条約だから外交案件、確かにそうなんだと私も思います。ただ、中身などの話になると、利子などとか配当の税金をどうするぞという話、またそれによって経済がどうなるかという話、財務省また経済産業省等々にかかわる話がいろいろ多くなって、条約の交渉の内容はどうだったという話よりかはもっと中身の深い話になるのかなという思いをしております。

 ですから、こういう条約案件についてのこれからの審議のあり方というのも、これは長年続けてきたんだと思いますけれども、何か考えなければいけないのかなということを、ぜひ理事の皆さん方にもまた御検討いただければなということを冒頭お願いしておきたいと思っております。

 そういう中で、まず、租税条約、二つあわせての話を聞かせていただきたいんですが、この租税条約そのものはもう既に三十カ国近くで締結をされていると聞いておるわけでありますけれども、これは国際間での二重課税を防止しようという非常に関係者にとっては大きなインパクトのある条約だと思います。ただ、二重課税をするということで関係者が喜ぶということもあるんでしょうけれども、それ以上にもっと、経済にとって非常に大きなインパクトを持っているんではないかな。投資をふやしたり進出をふやしたりということがこの大きな目的になるというふうに思っておるんですけれども、この今回の租税条約二つ、日印、日英、インドとイギリスということになるわけでありますけれども、この二つの国にとってということもひっくるめて、まず、租税条約の意義ということ、メリットということについて少しお話をいただきたいと思います。

原田政府参考人 まず、日英租税条約の意義について御説明いたしたいと思います。

 日本にとりましては、英国はEU域内でドイツに次ぐ貿易相手、英国にとっては、日本はEU域外では米国、中国に次ぐ貿易相手となっております。また、日本にとりましては、英国はEU域内でオランダに次ぐ第二位の投資先でありまして、これは直接投資残高でございますが、第二位の投資先であり、英国進出の日本企業数は八百三十九社、EU域内では最大となっております。

 現行の日英租税条約は一九七〇年に発効後、一九八〇年に一部改正されましたけれども、相当の期間が経過しているために、日英両国間の緊密な経済関係の現状にそぐわなくなってきております。また、二〇〇三年には日米新租税条約が署名されたことを受けまして、日英間におきましても一層の経済関係の緊密化を図るため、現行条約の改正を要望する声が高まっておりました。

 本条約は現行条約の内容を全面的に新しくするものでありまして、日英両国間の緊密な経済関係を反映して、積極的に投資交流の促進を図るため、配当、利子及び使用料の支払いに関する源泉地国課税を大幅に軽減することとしております。また、こうした減免措置の拡大とあわせまして、租税回避の防止のための措置もとることにいたしました。

 本条約が締結されることによりまして、両国間の二重課税の排除、相手国における課税関係の明確化、両国の税務当局間の協力体制の整備などを通じまして、日英双方の企業についての負担が軽減し、その結果、両国間の投資交流が促進され、経済関係が一層緊密なものとなることが期待されております。

高田政府参考人 インドでございますけれども、インドもIT分野を中心に目覚ましい発展を遂げております。九一年の経済自由化以降、平均六%の経済成長ということでございます。それから、昨年、二〇〇五年、七・五%の成長率の今見通しということでございまして、潜在的な経済大国として世界経済においてますます重要な地位を占めるに至っている。

 そこで、我が国とインドの関係を見まして、日本からインドへの輸出額、直接の投資額、いずれも拡大をしつつあります。ただ、潜在性にかんがみますと、さらに一層拡大をする余地があろうと思っております。そういう関係のもとで、この改正議定書によりまして、投資所得に対する源泉地国課税の限度税率を引き下げるということによりまして、インドに対する我が国の投資をより一層増大させる、あるいはインドからの我が国への投資を呼び込む効果ということで、日印双方間の投資交流の促進を期待しているところでございます。

宇野委員 ありがとうございました。

 内容的にはそういうことなんだろうと思うんだけれども、私が聞きたかったのは、これによってどれだけこれからまた進展をするのかなと。要は、今例えば低迷しているんだけれども、これをやることによって企業進出がまた二割、三割ふえそうだというような推測もあってもいいのかなという思いを聞きたかったんですけれども、その辺が外務省だとなかなか答えられないのかなということになるわけでありまして、ぜひ、そういうこともひっくるめてこれからお考えいただきたいと思いますし、企業にとって大変歓迎する声があるということを私も聞かせていただきました。特に日本の大企業、インド、イギリスに進出している企業にとりましては、今までの、配当とかそういうことに関しては非常に課税がかかっていたものが少なくなってきてよかったというような声も聞いておりますので、一層また、まだ免税までにはなっていないわけですので、その辺も考えていただきたいなということをお願いしておきたいと思います。

 それで、細かい話でありますけれども、少しお聞かせ願いたいんですけれども、日英の租税条約の中を見ますと、要は利子の関係です。この利子の関係については、金融機関とその他というふうに二つに分かれているわけです。なぜ金融機関だけが優遇されるのかなということが私の質問なんです。

 確かに金融機関というのはお金が商品ですから、お金にかかわる商品としてのものがあるから、それを優遇する、そんな思いなのかなという思いをしておるんですけれども、それはちょっとおかしいな。製造会社でも、預金をして、その利子というものが出てくるわけですけれども、そういうものに対しても当然同じようにしてやらなきゃいけない。一方、日印、インドとの租税条約を見ると、これはもうイコールなんですね。何でイギリスだったら金融機関がよしで、インドだったら横並びで金融機関も製造会社も同じなんだと。

 国によっての話があるんだろうと思いますけれども、なぜイギリスに対しては金融機関を免税にするのか、なぜ製造会社関係その他の会社についても免税にするということを言えなかったのか、その内容をちょっと、それこそ交渉状況を教えてください。

加藤政府参考人 お答えいたします。

 まず、租税条約の考え方は、先ほど先生も御指摘のように、二重課税を排除するということで、絶対的免税を与えるものではございません。したがって、最終的には本国課税に統一をしていくということでございます。そのやり方として、各国でいろいろ議論を重ねまして、アメリカとの関係で、基本的に親子間の配当を免税するとか、利子も基本的には低い方がいいだろう、ただ、しかし投資的なものは配当も含めて一〇%の源泉地課税は残すとか、いろいろな議論をさせていただいて、今の形になっておるわけです。

 それで、一つ目のお話として、金融機関を免税にして、それ以外を免税にしていない趣旨、これは、ちょっと先生もおっしゃいましたけれども、金融機関の場合は、お金を貸すという行為によって利子を得ることがまさに商売なわけでございます。その商売をするに当たっては、当然元手が要る。その元手が預金で、ですから、預金の利子は支払いながら利ざやを稼いでおるわけでございます。

 ところが、源泉地課税を行いますと、利ざやのネットに課税するのではなくて、受取利子のグロスを課税標準といたしますので、非常に負担が大きくなる。もちろん、これは要するに一種の立てかえ、後で本国で外税控除で清算するから、二重課税を排除するということで従来それでやっておったわけですが、やはり、キャッシュフロー経営の時代に、いっときといえども多大な立てかえを企業に行わせるのはなかなか難しいだろうということで、今こういう二重課税を排除している。

 そういう優先順位を考えると、今申し上げたように、余裕資金を金融機関に預けて利子を受け取る投資収益的な一般企業なり個人の利子と、それから利ざやを得るために借り入れ、預金を受け入れて貸し付けをする金融機関は、そこに一つの大きな差があるということで、金融機関を特別に行う。これはアメリカとの租税交渉においても合意したルールでございます。私ども、これは一種の合理的な区別だと思っております。

 ただ、インドの場合ではなぜそういう合意ができなかったのか。これは逆に、私どものポリシーとしてはむしろ金融機関免税というものを強く求める立場でございますが、インド側の考え方からすれば、どちらかというと課税権の留保を優先したい、そのためには、やはり金融機関といえども一定の源泉課税はさせていただきたい、残りについて、日本の本国の方で最終的に調整する今までの考え方を踏襲してほしいと。

 これが、基本的なインドの考え方と、それからアメリカやイギリスの考え方の、やはり国家の考え方の違い。私どもとしては、アメリカ、イギリス型にしたいという非常に強い希望がございましたけれども、やはり相互の合意という前提でこうなったということを御理解いただきたいと思います。

宇野委員 今の話を聞いてもやはり納得いかないんですけれども、やはりそれは財務省が交渉するから、金融機関に対しては何か考えてやろうという思いが強くなるんだと思いますよ。

 金融機関、確かに金が商品です。製造会社は物が商品です。でも、結果として、製造会社も物を売って金を得て、それが利益になる。その利益というものは、確かに、部品があって、コストがあって、売り上げがあって、その差が利益になる。銀行については、金を貸し付けて、貸し付けたものの利息分が私は利益になると思っているんです。自分が持っているお金の利子を利益にするということはこれはおかしい話であって、貸し付けたものの利息が利益になる。要は、製造会社の物と金融機関の金というのは同じなんです。同じという解釈をしなければいけないと私は思うんです。金融機関は金を扱っておるから、金も大事だから、確かにその利子を免税にするというのは、思いがあるかもわからないですけれども、私はちょっと違うなという思いです。

 それで、インドがイコールですよ。その他も全部、企業は一〇%となっておるわけですよ。イギリスは違うよ、アメリカも違うよと言われましたけれども、では、インド方式のように横並びにするのが財務省の考え方なのか、横並びにしない、金融機関を常に優遇するのが財務省の考え方なのか、これを教えてください。

    〔土屋(品)委員長代理退席、委員長着席〕

加藤政府参考人 ちょっと説明が舌足らずで恐縮でございました。

 私ども、まさに金融機関の受け取る利子というのが、普通の一般の製造業にとっては一種の売り上げに当たると思っています。先生の御指摘で、受取利子が利益だということでございますが、実は受取利子は収入でございますので、一方で資金調達をして支払っている預金の利子があるわけです。したがいまして、その差額が利益。私ども、その差額に適正な課税が行われるとすれば、源泉地課税を仮に行ったとしても、いわゆる金融機関の業務運営にさほど支障はないというふうに思います。

 それで、製造業についてはそういう源泉徴収があるかというと、ございません。売り上げに対して源泉徴収する仕組みはございませんので、そういう意味では、源泉徴収が製造業にはなくて金融機関にだけあるという逆の意味での厳しさがあるというのを前提に、今こういう議論が行われておるわけでございます。

 それで、先ほど先生おっしゃいました、インドはイコールじゃないかとおっしゃる、これも事実でございます。私ども、先ほどちょっと御説明しましたが、財務省の租税条約の方針といたしましては、これは一般事業会社かどうかという意味ではなくて、いわゆる余資の運用として、預金にするか株式投資にするかとか、いろいろ資産運用をします。その資産運用の収益というのは、収益そのものが基本的には利益だという認識でございます。金融機関のようによそから借り入れて金を貸し付けて利ざやを稼ぐというのと丸々余資の運用収益が利益になるのとは、これは質的な差がありますので、金融機関という主体を考えるというよりは、私どもとしては、利益の発生の態様の異なり方をとらえまして、今回こういう合理的な区別をする必要があるだろう。

 これがもし、例えばOECDも含めて全世界的に、利子はすべて免税にする、これは金融機関であろうがあらゆる事業主体であろうが、全部免税にするのがグローバルスタンダードになれば、それはまたそれで一つの考え方であります。今OECDのモデルでも、利子は一応基本的にまず一〇%の源泉徴収を源泉地国に認めた上で議論を始めろということになっております。そうした中では、今とっております、金融機関を別の形で考えていくというのは、経済の流れの中では合理的な考え方だと思っております。

宇野委員 理解をしたと言い切れはしないんですけれども、財務省の考え方なんだなということです。

 私は、企業というのは、金融機関であっても製造会社であっても同じである、利益を追求して企業を動かしていかなきゃいけない、その利益を追求する商品が異なるんだ、その商品をまた違うように見られたらおかしいなということを伝えておきたいと思いますので、よろしくお願いします。

 それから次に、日印の、インドの関係のお話ですが、先ほど来のお話の中にも、インドというのは今ITが非常に盛んになっている。私も昨年インドを訪問させていただきまして、ITのところを、現場を見させてもらいました。大変今熱心にやっていますし、インドはインドとして、ITを誘致するがためにインド国内での税金のあり方というものを非常に熱心に考えて、ソフト工場と呼ばれるビルを建てた場合には免税措置にするだとか何かいろいろとやって、これはすごいな、日本ももっと早くそういうことをしなきゃいけないなという思いをしておるんですけれども、そういう中で、日本でもだんだんと、インドの技術者を呼び込んで日本でソフトをつくろうという企業がふえてきております。

 そういう中で、私は、これを読んでも、企業に対しての租税特約みたいなことはいろいろやっているんですけれども、個人に対してというものはほとんど何もないんじゃないかなという思いなんですけれども、個人に対して租税上の優遇措置というものは、この日印の中で何かあるのかどうか。それによって逆に、例えば日本企業の現地駐在員が恩恵を受けるだとかいうことがあるのか。また逆に、インドから来る今のソフトエンジニア、そういうものが日本で働きやすい状況になっているのか。これについて、個人に対する部分を教えていただきたいと思います。

加藤政府参考人 今回、こういう租税条約の場合は、配当所得ですとかいわゆる利子所得、それから事業所得というように、所得の種類によって課税の状態を把握して、それに対する手当てをするというのが原則でございます。個人の場合は、実は、個人が配当所得を受ける、その場合は当然、配当所得のルールで議論になります。

 一方、では、まさに個人としての所得環境をどう見るか。これは私ども、居住者、非居住者という概念で基本的には整理しておりまして、その居住者、非居住者の概念を原則として、租税条約もそれを前提に議論するということで、特に租税条約で個人に大きな恩典を与えるということはない。ただ、普通、居住者というのは、一年以上住んでいる方は居住者とするんです。そうすると、逆に言えばそれ以外の方は非居住者になるわけですけれども、居住者に該当しない非居住者の方でも、さっき言いましたように、国内源泉所得については課税をするというのが原則になる。

 ただ、もう一つ、租税条約によっては、非居住者であっても非常に短期間の滞在の方についてはもう国内源泉所得の課税を免除する、こういうことも一部入れておりますが、非居住者に対してはそれ以外にそれほど大きな恩典というのはございません。あくまでも、日本にいらっしゃる居住者は、外国人であっても日本人であっても平等に扱うというのがいわゆる租税の体系でございます。

宇野委員 私も同僚が海外に勤務しているのが何人かいて、勤務先によって結果として税金が違う。向こうで言う現地の住民税だとかそういうものが日本と大分違う。安ければ喜んでいるし、高ければ何だということを言っているので、こういうことをならしてもらうというものも必要なのかなという思いをしておるんです。また次の改定のことがあるのかもわかりませんけれども、ぜひ、そういう部分、個人に対する部分の条約改定を少し考えてやっていただきたいということを要望しておきますので、お願いいたしたいと思います。

 それで、インドの関係なんですけれども、先ほどの話も、非常に今経済が発展しているということなんですけれども、基本的に私は、去年小泉総理が行かれて八項目の覚書をつくって、これから日本とインドがいろいろと協力していこうではないかという話もして、その中に、私はびっくりしたんですけれども、これからインドにおける日本語の協力を一生懸命やろうという話も出ている。インド側がそれを受け入れたということは、それほど日本に対する思い入れが強いんだというふうに理解をしているわけですけれども、経済として、日印はどういうふうにこれからやっていくのか。いろいろミッションが出たりしているようでありますけれども、その辺の外務省としての考え方、経産省の考え方、これからインドの経済についてどう考えているのか、教えていただきたいと思います。

伊藤大臣政務官 お答えいたします。

 議員御指摘のとおり、小泉総理が昨年四月に訪印いたしまして、今八項目の取り組みをしているわけでございますけれども、アジアの地域が大きく歴史的に変化を遂げつつある中、我が国として、特に発展しておりますインドとの関係強化というものが喫緊の課題だ、重要だというふうに考えております。本年一月は麻生大臣が訪印して、いろいろな成果があったわけでございますけれども、その成果に沿いまして、今後、日本とインドの関係を戦略的な関係から総合的に強化していこうということでございます。

 今御質問がありました経済面については、現在、日本とインドの共同研究会というものがありまして、この共同研究会において、日本企業のさらなるインドへの進出、また投資拡大のための具体的な措置を含めて、包括的な形で経済関係の強化につき具体的な検討を進めているところでございます。

 政府としても、六月までに提出が予定されております共同研究会の報告書の内容も十分に踏まえて、インドとのさらなる経済関係強化に向け、日本・インド経済連携協定、このことも可能性を視野に入れて積極的に検討し、努力を重ねていく所存でございます。

長谷川政府参考人 お答え申し上げます。

 先生の方から経済産業省の考えという御質問がございましたので、補足させていただきます。

 インドの重要性は、今も御指摘ございましたように言うまでもございません。経済交流をぜひふやしたいということでございますけれども、基本的にはもちろん民間の方々の発意でございますが、政府といたしましても、特にほかの国との比較におきまして、いろいろなインフラの整備でありますとかあるいは機会の設定というようなことについてはしっかりやっていかなければいけないと思っております。

 インフラと申しますときに、ハードのインフラもございますけれども、ソフト面のインフラというようなこともございます。前者の方につきましては、政府を挙げまして、円借款の増額等を中心に輸送網あるいは発電所、そういったようなこと、インドの場合、場所によりますと、いわゆるブラウンアウトという言葉もあるぐらいでございまして、なかなか厳しいということでございます。そういったことをぜひ日本の力でということで、国会の御指導もいただきまして改善をしたい、前へ進みたいということでございます。

 ソフトの方でございます。これは、今政務官の方から御答弁ございましたように、今包括的にその研究をしておりますけれども、実は、投資について申し上げますと、インドとの間では長年、投資条約、投資協定というものは懸案のままになっております。他方で、ほかの国は投資保護協定、さらに自由化協定というのもできております。そういう中で、そういった基本的な制度というものについてまだまだあらがございまして、今回のこの税制面の制度整備で大きく一歩前進するということで、ぜひ御承認をお願いしたいと思っております。

 加えまして、インドの国独自の事情ということで、とりわけ雇用の関係で企業の方から私どもよく耳にいたしますのは、一たん事業所を開きますとなかなか撤退しにくいんだ、撤退について、場合によりますと政府の許可が要る、こういうようなこともございますし、それから連邦政府と地方政府の権限関係、これも実は透明なようであって不透明なところもございます。

 そういったようなことをむしろ改善するのが政府の役割と思っておりますし、そういったことを改善しつつインドの魅力を実際にわかっていただくということで、大企業はもとよりですけれども、中堅、中小に至るまで日本の企業のミッションを組織いたしまして、最近でも、もちろん経団連もございますしジェトロもございますが、中小企業を中心にいたします商工会議所であるとか、あるいは中小企業投資育成会社、中小企業金融公庫、こういったところに幹事役をしていただきまして、多くの企業の方にインドの魅力に接してもらい、そして率直に改善を政府に御批判いただく、こういったようなことを努力しておりますので、引き続き御指導を賜りたいと存じます。

宇野委員 ちょっとまだ時間がございますので、ほかの質問をさせていただきたいと思います。

 きょうも資料として机の上に置いていただいております、2プラス2の関係であります。

 簡単で結構なんですけれども、いろいろと新聞に三兆円とかなんとかという話が出ているわけです。これを見ますと百二億ドルということだそうでありますし、日本側が六十億程度というような話になるわけですけれども、いろいろな内訳があるんです。盛んに今政府がいろいろな話の中で出しているのは、要は財政支出、真水分と、融資だとか投資だとか出資だとかという言い方をするんですけれども、その出資というのはちょっと私もわからないんです。あと効率化というのも入っているんですね。それは資料がないんですけれども、その辺のちょっと説明、具体的にどういうふうにこの百二億というのを分けて、その内訳は、真水分、要は幾らでというような話をちょっと円のベースでお話をいただきたい。ドルのベースだとなかなかわかりにくいので、円のベースでお願いしたいと思います。

大古政府参考人 お答えいたします。

 まず、出資とはどういう意味かということでございますが、これについては、米軍の家族住宅を整備するために今後設立を予定している企業体、これに対する政府からの出資ということでございます。

 それから、効率化ということもお尋ねがございましたけれども、いわゆる効率化につきましては、家族住宅の整備を、アメリカではPPPと言っておりますけれども、日本でいいますとPFIに近いものでございますが、いわゆる民活スキームでございます。こういう民活スキームにいたしますと、政府が直接やる事業よりは効率化が見込まれるということでございまして、過去の米国の実績でも二割弱程度の効率化が見込まれるという説明を受けておりますので、これを参考にして、この程度の節減、効率化が図れるだろうというものでございます。

 それから、日本円で幾らというお尋ねでございますが、これにつきましてはあくまでもドル建てで合意しておりますので円建てではございませんが、御参考までに、十八年度予算の支出官レート、これは一ドル百十一円でございますけれども、これで計算いたしますと次のとおりになります。

 まず、日本の分担額は六十億九千万ドルでございますが、これについては約六千八百億円でございます。それから、このうちのいわゆる財政支出、二十八億ドルでございますけれども、これについては約三千百億円。それから、先ほど御説明した出資につきましては十五億ドルでございますが、これについては約千七百億円。それから、効率化分としては四億二千万ドルでございますが、これについては約五百億円。それから、融資等につきましては十三億七千万ドルでございますが、これについては約千五百億円ということになります。

宇野委員 それともう一つ、この中を見ますと、基地の返還が具体的にうたってあるわけです。普天間等々の話が話題になっているわけですけれども、それ以外の基地も大分出てきているわけです。

 例えば那覇軍港の話、これはもう長年やってきている、返還するぞと言ってきたようでありますけれども、今回、具体的にここに書かれたということは非常に前進があるのかなと思うんだけれども、ただ、軍港の場合だったら、その港の施設をまたどこかへつくらなきゃいけないのかなと思うし、撤退するわけじゃないだろうから、どこかにつくるんだろう、また、つくるのに本当にこの年限でできるのかなという心配もあるんです。要は、そういう全面返還といろいろ書いてある部分について、本当にこの期限までで大丈夫なのかということもちょっと教えていただきたいなということ。

 もう一つは、沖縄の県民の皆さん方の話を聞いていると、返されたら、もともとの地主さん、困っちゃう人が結構いるんだということも言われている。これは陰でですよ、陰で。本当は返してもらいたいんだけれども、返されたら、今まで借地料を一生懸命もらってやっていたのが一切なくなって、土地もらって、さあ、そこへ何したらいいかということがある。そういうこともやはり何か考えなきゃいけないのかなと思うんですけれども、この辺については施設庁の方で何か考えたものがあるのかどうか、それをお答え願います。

北原政府参考人 宇野先生に御答弁申し上げます。

 まず、このロードマップの中に、先生御指摘のように、那覇軍港を含めまして六カ所の基地が挙がっております。那覇軍港等五カ所は全面返還でございますが、瑞慶覧については一部返還。その一部返還のどの程度、どこということはまだ決まっていないわけでございますが、いずれにいたしましても、来年の三月までに統合のための詳細な計画を作成することになっているわけでございまして、そしてまた、嘉手納以南の返還等は今後グアムへの移転完了等にかかっていますといったような、相互に結びついているといった記述もロードマップにあるわけでございます。

 それから、二点目の地主さんの関係でございます。

 これにつきましては、私どもも大変重要視をいたしております。地主さんの関係並びにその跡地、トータルとして跡地利用の関係がございます。これにつきましては、先般、このロードマップの説明に地元へお伺いしたときも、知事さんを初めこの基地等が所在する関係の首長さんからも先生御指摘のような御懸念の話もいただきました。

 我々といたしましては、いずれにいたしましても、この駐留軍跡地利用の推進、円滑化ということが極めて重要でございますので、そういった点を念頭に置きながら、現在、御承知のようなもろもろの法的な枠組みがあるわけでございます。例えば、返還された後、跡地の所有者の皆さん等が土地を利用せず、それからまた収益をしていないといったような場合に、返還の翌日から三年を限度としてその借料相当分を支給するとか、あるいはさらには、沖縄振興特別措置法の規定に基づきますけれども、大規模跡地あるいは特定跡地に指定された場合のまた特例等もございますので、そういった点等々に十分にかんがみながら、関係省庁間で緊密に調整し、遺漏なきを期してまいりたい、そのように考えております。

宇野委員 ありがとうございました。

 それともう一つ、最後に、先般、私、連休に中国に参りまして、遺棄化学兵器の現場を見させてもらったわけであります。私どもとしても、へえという感じで、びっくりをして見させてもらったわけでありますけれども、そこでいろいろと問題点が多いのかなという思いをして帰ってきたわけで、少しその辺のことについて、短時間ですけれども、室長からいろいろお話を聞かせていただきたいと思うんです。

 まず、遺棄化学兵器というものの定義なんですけれども、これはいろいろな見方があるんです。条約でこれを遺棄化学兵器だぞということを中国との間で言っているんですけれども、その前に、私が理解しているのは、化学兵器というものはもともとつくっちゃいけないんだという話があった、それを日本は隠れてつくっていたようでありまして、終戦になったからそれを置いてきちゃった、捨ててきたということじゃないのかなということなんですけれども、その遺棄化学兵器の定義というものをまず教えていただきたいということと、もうまとめてお話をします。

 遺棄化学兵器が今現存しているわけですけれども、せんだって松原議員の質問でも、これを引き渡したんじゃないかとかいうような証明があれば、これはもう遺棄ではないということになるわけですけれども、そういうものがなさそうですから、私は遺棄だと思っているんですけれども、では、遺棄ということになったときに、中国側との話で、今それをきちんと処理をしましょうということまで締結をしたわけです。その条約を締結して、それで今作業をし始めているんですけれども、まだ全然進んでいない。五年間また延ばすというようなことになっている。これは一体どうなっているんだ。中国側からの話を聞いても、なかなか厳しいことを言っている部分があるんですけれども、なぜそういうものが進まないのかということ。

 それから、施設について、今相当大きな敷地を中国側は提供するんだという話をして、そこに早くつくってくれと言われているわけですけれども、まだなかなかつくれない。つくれないのは、日本のそれをつくろうとする機構が、会社というんですか、それが民間だからだめだとかいうような話も言われているようですけれども、そういうもろもろの一連の話、現状をもうちょっと正確にこの委員会として説明してもらいたいと思います。

伊藤大臣政務官 私の方から、まず遺棄化学兵器の条約上の定義についてお答えしたいと思います。

 化学兵器禁止条約、これは一九九七年発効でございますが、日本は原加盟国になっております。この条約によりますと、遺棄化学兵器とは、一九二五年一月一日以降に、ある国が他の国の領域において当該他の国の同意を得ることなく遺棄した化学兵器とされております。

高松政府参考人 お答え申し上げます。

 御承知のとおり、我が国の遺棄化学兵器の大宗、大部分は、吉林省のハルバ嶺に埋設されていると考えられます。その他の中国各地におきましても、現在までに既に三・七万発を発掘、回収しております。ハルバ嶺以外の地域につきましては、今申し上げましたように、十回、規模はそれなりに大きい事業でございますが、今まで行ってきております。

 最大の問題は、ハルバ嶺にある三十万発から四十万発と推定されます遺棄化学兵器をどういう形で回収し、これを最終処理するかという問題でございます。

 まず、安全や環境に十分な配慮を払い、中国の法律を遵守して、廃棄技術及び廃棄施設の立地場所を確定し、それから、施設の基本設計、これは類例を見ない施設でございまして、現在まで同様の施設は世界にまだ存在していないと私どもは考えておりますが、そういう施設の設計、建設、運営を行う。中国の国内で、中国の法律を遵守し、かつ日本政府が責任を持つ、こういう非常に複雑な形の事業になると考えております。

 私ども、現在、そういった基本的な枠組みの中で、具体的な施設を中国吉林省に建設することを目途に、中国側と具体的な条件につきましていろいろ交渉しております。

 最大の問題点の一つは、いろいろ問題点がございまして、あくまで一つでございますが、私どもが、この事業の中核になる専門家、あるいは、中国の特に吉林省は非常に荒涼とした、先生御承知のとおりの人里から離れた場所でございます、そういった場所でいろいろな事業計画を実際に行える人材を結集しました遺棄化学兵器処理機構といったものを平成十六年の四月に内閣府として調達させていただいております。この組織を、この処理事業、特にハルバ嶺事業におきまして、どういう形で私ども日本政府として活用するかということを今中国側といろいろ議論している、こういった状況でございます。

宇野委員 時間もないので終わりますけれども、ぜひまたこの問題については、やはり中国側に対しての問題ということも大きいかと思いますので、しっかり対応して、早期に施設が稼働するようにお願いいたしたいと思います。

 終わります。ありがとうございました。

原田委員長 次に、谷口和史君。

谷口(和)委員 公明党の谷口和史でございます。

 きょうは、日英また日印の租税条約が議題になっておるわけですけれども、私も昨年まで十六年間イギリス系の企業に勤めておったということもあり、また、もう十四、五年前になりますけれども、インドに二週間ほど旅行したこともありまして、非常に親しみを感じる条約であります。

 まず最初に、日英のことについてお伺いをしたいと思います。

 条約そのものに入る前に、ちょっと日英の交流ということでお伺いをしておきたいんですけれども、日英の交流は四百年以上前から、第二次大戦を除いて良好な関係を維持してきた。日本には二万人の英国人がおり、英国には五万二千人ぐらいの日本人が今おるということで、また、先ほどもお話ありましたけれども、貿易関係を見ると、英国はEUの中でドイツに次ぐ日本の貿易相手国、また、英国にとっては、日本はEUの域外では米、中に次ぐ三番目の貿易相手国となっております。また、イラク復興支援では英国軍が自衛隊に協力をしてくださっているということで、日英関係はますます深まっている、こういう感を深くしておるわけであります。

 このこれまで良好だった日英関係、さらにさらに強化をしていくべきであるというふうに考えるわけですけれども、後でまた細かなことはお伺いしたいと思いますけれども、経済的なことも含めて、今後の日英関係の維持、また強化に対して、今回の租税条約以外に何が必要と政府がお考えになっているのか、まずお伺いをしたいと思います。

伊藤大臣政務官 お答え申します。

 議員御指摘のとおり、我が国とイギリス、英国は大変良好な関係を有しておりまして、日英間であらゆるレベルでの緊密な対話、交流、また協力を行っているわけでございます。この両国間の協力も、今申し上げましたように、貿易・投資を含む文化や政治レベル、いろいろなレベルで進展をしておりますけれども、我が国としても、今後ともイギリスとは、基本的な価値を共有するパートナーとして、緊密な対話と交流を通じ、良好な二国関係の、マルチレーヤーなといいますか、さらなる強化を図るとともに、国際的課題についても幅広い分野でパートナーとして協力を図っていくということでございます。

 経済面においては、今回の租税条約をお諮りさせていただいておりますけれども、今後とも、この条約のみでなくて、総合的なビジネス環境の整備等を通じて、経済関係の強化を図るために二国間の緊密な関係をさらに強化して、国際的ないろいろな問題についても協力して解決してまいりたいという考えでございます。

谷口(和)委員 ぜひ、今後ともさらなる努力をお願いしたいと思います。

 イギリスの経済の状況を見ますと、例えばGDPの成長率を見ますと、二〇〇二年が二%、二〇〇三年が二・五、それから二〇〇四年が三・二と好調に成長率が伸びてきているわけですけれども、二〇〇五年にちょっと減速をして一・八%ということで、これと関係あるのかどうかははっきりしませんけれども、日本からの英国への直接投資も、二〇〇二年には大体二千五百億円、二〇〇三年に二千九百億円程度に伸びてきたわけですけれども、二〇〇四年には約一千七百五十億円にちょっとというか少し減少しているということで、今回のこの日英の租税条約の目的の中にもありますけれども、二重課税を回避し、二国間の投資交流を促進するということが目的となっておるわけですけれども、今回の日英の租税条約、投資促進のためにどういった意義があるのか、ちょっと大枠の部分でお伺いしておきたいと思います。

伊藤大臣政務官 お答え申し上げます。

 本条約は、日英両国間の緊密な経済関係を反映して、委員御指摘のように、積極的に投資交流の促進を図るために、配当、利子及び使用料、著作権、特許権等でございますけれども、の支払いに対する源泉地国課税を大幅に軽減するものでございます。

 御存じのように、やはり国が発展していきますと、日本も今知財立国ということを掲げておりますけれども、こういう使用料等の課税を軽減することは非常に投資において効果的になるというふうに承知しております。

 本条約が締結されることによりまして、両国間の二重課税の排除、相手国における課税関係の明確化、両国の税務当局間の協力体制の整備等を通じて日英両国間の投資交流が一層促進され、両国の経済関係が一層緊密なものになるということを期待しているところでございます。

谷口(和)委員 それから、条約の第二十二条を見ますと、この中では、条約上の特典の濫用を防止するための特典条項に関する規定が書かれているわけですけれども、それを見ますと、特典条項の適用を受ける規定は、配当、事業所得、先ほどお話しになりました使用料など六つに限定をされているわけであります。

 特典条項が設けられた租税条約としては日米租税条約に次いで二番目になっているわけですけれども、この特典条項の適用に関して、日米ではすべての所得に対して適用されるということになっているわけですが、今回の日英では六つに限定されているわけです。この辺はどういった理由で限定をされていることになっているのか、お伺いをしたいと思います。

加藤政府参考人 お答え申し上げます。

 今御指摘のとおり、条約の濫用を防止するための特典条項を日米、日英、両租税条約とも具備しておるわけでございますが、先生御指摘のとおり、日英租税条約では免税所得に限る、六種類の免税所得にこの特典条項の適用を限定しております。

 この背景でございますが、実は、特典条項の導入は、前回の日米租税条約交渉の過程で、アメリカの強い意向が根底にございます。アメリカは、かねてより、租税条約を各国と締結するに当たってこの特典条項というものを非常に重要視しておりました。我が国も問題意識は持っておりましたけれども、まだ日米条約以前の段階ではこの特典条項について具備した条約締結をしておらなかったわけでございます。

 そのとき非常にいろいろな議論を行いましたが、日米の交渉の過程では、アメリカも従来から、あらゆる所得、免税以外の軽減するようなものも含めて、やはり濫用防止をきちっとすべきだ、アメリカの租税当局の考え方は非常に強固なものがございました。

 一方、我が国の立場といたしましては、この特典条項は、確かに租税の確保という点では非常に意義はあるわけですが、実は、これをきちっと行うには、先ほどもちょっと御説明しましたが、源泉徴収義務者の協力が非常に不可欠です。つまり、現実には第三国の、非居住者の課税ですので、国内で支払う方に課税の代行をお願いしている、源泉徴収をお願いしている。そうすると、その方が最終的に納税義務者になりますので、もし間違った条約の適用をしてしまった責任はその源泉徴収義務者にかかってくるということで、やはりそこには一定の限度を設けないと、その納税義務者、我が国の国内の源泉徴収義務者に余りにも過大な負担がかかるということで、私どもとしては、やはり条約の恩典の大きい免税所得を基本に特典条項の適用は考えるべきではないかというのをかねてから我々のポリシーとして考えております。

 アメリカがそこはもう少し踏み込んで、きちっと全体をやってほしいということで、交渉の過程で源泉徴収義務者の負担軽減の方策も含めながらいろいろ議論した結果、最終的に、日米当局間では全部の所得を対象にしようということで合意しました。

 一方、イギリスとの交渉においては、逆に、ヨーロッパはこの特典条項についてはそれほど、アメリカほど従来から熱心ではなくて、我々が、アメリカとこういう条項を結ぶことによるメリットをむしろ説明して、その過程で、それでは過度な負担にならないように、日本も恩典の度合いの強い免税所得だけに限定するという基本的なポリシーで構わないということを考えておりましたので、イギリス当局もそういう前提のもとに両国間で合意した。

 こういう、やはり二国間の交渉の過程における議論の結果ということでこの違いが出てきたということでございます。

谷口(和)委員 そうすると、今後は、どちらかというとこの日英のがモデルというふうになっていくんでしょうか、今後の条約については。

加藤政府参考人 二国間のこれからの、いろいろな国々と交渉していくということで、結果的にそれぞれの各国の意向も入ってきますので一概には申しませんが、我が国のポリシーとしては、どちらかというと日英型の、恩典度合いの大きい免税所得にこの特典条項を最大限活用していくというのが望ましいと考えております。

谷口(和)委員 次の質問に入らせていただきます。

 今度は配当なんですが、配当に関する免税規定の適用を受ける要件については、日米の租税条約では、配当支払い法人の議決権のある株式の五〇%を超える株式を十二カ月以上所有する法人というふうにあるわけですが、今回の日英では、五〇%以上に相当する株式を六カ月以上所有する法人というふうになっております。要するに、五〇%が今回は入っている。日米では五〇%は入っていない。それから期間も、日米では十二カ月が日英では六カ月というふうになっている。

 また、日英では、免税を受ける場合にのみ特典条項の要件を満たすことが求められているわけですけれども、日米では、免税だけじゃなくて五%や一〇%の軽減の適用を受ける場合にも要件を満たさなければいけない。これだけを見ますと、非常に日英の方は要件を緩和している、こういうふうに見えるわけですけれども、この辺の理由はどういったことなのか。

 また、ちょっと日米と差があることによって、米国法人と英国法人では投資を誘引する効果について差が出てくるのではないか、こういう見方もあるわけですけれども、この辺についてお伺いしたいと思います。

加藤政府参考人 ただいま御指摘いただきました点、非常に租税条約の特性を示している問題だと私ども思っております。

 実は、日米の交渉の中でアメリカの置かれている立場、これは、最大の貿易赤字を、いろいろな形で資金を流入させることによって国の経済を運営している最大の資本受け入れ国でございますので、そういう意味では、そのことによって外国へ流れる収益が多い、だからそれに課税をきちっとしていくということはアメリカの課税当局にとっては非常に大きなメリットがあるという立場でございます。

 したがって、先進国同士の条約交渉ではありますが、この配当免税に対しては、アメリカはどちらかというと、これは率直に申しまして、必ずしも軽減することに全面的賛成の立場だけではない。そういう中で、ですから、他国との条約を見ていただくとわかるんですが、意外と親子間の配当免税は少ないんですね、ほかの国との条約の中身、しかも条件を厳しくしております。日本は条件的にはこれでも一番緩やかにしてくれまして、これはむしろ我が国がどっちかというと積極的に、アメリカに対する投資も多いものですから、二重課税の排除の見地からなるべく要件を緩くした方がいいというポリシーのもとで交渉を行って、しかし最終的な妥結をしたのが今の五〇%超、十二カ月以上所有ということでございます。

 これとは逆に、イギリスの方はアメリカほどこの親子間配当の要件を厳しくしなくて、むしろ相互にこの辺をもう少し緩やかにしても構わないという根底的なものがございまして、そういうのが最終的な合意に若干の差になってあらわれてきているということだと思います。

 ただ、先生おっしゃいました実質的な違いということにつきましては、この程度の要件の差でありますればほとんど実質的な違いはないというふうに、私ども、実効性の問題としてはないのではないかという認識をいたしております。

谷口(和)委員 ちょっと追加で確認をしておきたいんですけれども、日英では五〇%以上ということで、五〇%であれば適用を受けられるということです。

 そうすると、例えば五〇、五〇の折半出資で合弁会社をつくって英国に法人をつくったという場合、それぞれA社、B社でつくったとすると、両方ともその恩恵を受けることができるというふうに理解してよろしいんでしょうか。

加藤政府参考人 そのとおりでございます。

谷口(和)委員 ありがとうございます。

 では、続いて、西欧諸国とは、これまで、租税条約に関しては、イタリア、ドイツ、フランスなど多くの国と条約を結んでおるわけであります。また、英国とは、昭和四十五年に租税条約を結んで、改正がされて、今回新たな条約を締結したということで、日英間では良好な投資環境が整備されることになっていくと思います。

 そこで、麻生大臣にお伺いしたいんですが、今後、EU内のどういった国々と日英租税条約と同様の二国間の租税条約を新たに締結していく方針か、お伺いをしたいと思います。

伊藤大臣政務官 お答え申し上げます。

 現在、我が国としては、EU内においては、オランダ、フランスと、それぞれこういう租税条約の改正につき交渉中でございます。

 どういう国とこれから交渉していくか、どういう選択基準で相手国を選ぶかということでございますけれども、こういう種類の租税条約の性質にかんがみて、やはり相手国の税法、商法、また相手国の産業構造や経済状況、そういったものを我が国のそれと比較考量して、互恵平等の精神に基づき、結果として我が国の国益に資するという判断をする必要がございますので、そういう観点も踏まえながら、我が国との二国間関係等もしっかり考慮に入れて、これから相手国をまた選択していくということになるだろうと思います。

谷口(和)委員 続いて、日印の方についてお伺いをしたいんですけれども、今回、改正議定書ということで、外務省さんからいただいた資料を見ますと、日英の方は源泉地国課税の大幅軽減、それから日印の方は大幅が抜けて軽減ということで、中身を見ましても、日英の方は免税ということが入っているわけですけれども、日印の方は、例えば配当が一五から一〇パー、利子については、銀行一〇パー、その他一五パーを一律一〇パー、こういったことで免税が入っていないわけです。インドとの経済関係の強化、それから投資交流の促進を考えれば、全面改正ということもあり得たのかなというふうに思うわけでありますけれども、日印については部分改正にとどまった理由についてお伺いをしたいと思います。

高田政府参考人 日印につきましては、先生御指摘のとおり、部分改正でございます。

 これは、インドと交渉を昨年一年弱行いましたけれども、当初は、我が国といたしましても、日英と同様に、その前年の二〇〇四年に発効いたしました日米租税条約をベースといたしました全面改正を目指していたものでございます。他方、インド側は自国の税収権、税収確保等といった観点から交渉になりまして、そこで、多数の条項について、日印双方が合意するのはなかなか難しいということが明らかになりました。

 一方、我が国として特に重視をしておりました、配当、利子、それから使用料、技術上の役務に対する料金、そういったものに対する限度税率の引き下げ、あるいはみなし外国税額の控除規定の削除、こういったものについては合意に達することができたということでございますので、時間をかけて全面というよりも、やはり部分改正ということで、現行条約の一部改正ということになった次第でございます。

谷口(和)委員 今後の租税条約の改正は、この資料にもありますように、二〇〇四年に発効した日米租税条約において、投資所得に対する源泉地国課税を大幅に軽減することにより投資交流の促進を図ることを基本方針とし、その後の交渉も、原則としてこの方針に沿っているというふうにもありますし、私も、今後の改正については、源泉地国課税の大幅軽減を目的とするこういった日米や日英をモデルにしていくべきだというふうに考えておるわけですが、現在、オランダとフランスと交渉中ということで、このフランス、オランダについては何をモデルに交渉していくのか。また、フィリピンも交渉予定というふうになっているわけですけれども、フィリピンはインドと同じアジア地域にあるということで、フィリピンについてはどういったモデルに沿って交渉していく方針なのか、確認をさせていただきたいと思います。

長嶺政府参考人 ただいま委員の方から御指摘もございましたように、二〇〇三年に締結されました日米租税条約、これが源泉地国免税を大幅に導入したものとして我が国として初めて締結したもの、今回、日英がそれと同様な形で締結されたものでございます。

 現在交渉しております案件につきまして、具体的にその交渉の中身でどういう形で交渉しているかということにつきましてはちょっと発言を差し控えさせていただきますが、一般的な基本方針といたしましては、この日米租税条約、そして今回、日英租税条約で採用しております源泉地国免税を進めていく、こういう観点から基本的には臨んでいくという方針で臨んでいるところでございます。

谷口(和)委員 日印も日英も、ぜひ、これによってお互いの投資が促進されて、そこからまた、それ以外の分野でも交流が深まっていくことを希望しまして、条約については質問はここまでにしたいと思います。

 最後に、きょうは日印ということなので、インドについて、先月、ちょっと私、用意していて、時間切れで質問できなかったことを一点だけお伺いしたいと思います。

 インドは、地理的に見ても、安全保障上、日本にとって重要な位置にあるというふうに思います。ブッシュ大統領が二〇〇三年に、PSI、拡散に対する安全保障構想というのを発表したわけでありますけれども、このPSIは、大量破壊兵器やミサイル、またそれらの関連物資の移転、輸送を阻止するための国際的取り組みだということであります。これまで世界各国で計十九回の訓練をしてきて、一昨年の十月には相模湾沖で海上阻止訓練が行われている。

 このPSIにインドが参加をすれば、日本と中東地域を結ぶシーレーン上にあるインド洋上での合同洋上演習なども実現が可能になるのではないか、また、エネルギー安全保障上も重要な意味を持ってくるのではないかというふうに考えるわけでありますけれども、PSIへの参加も含め、安保防衛交流でインドと具体的にどういった交流を進めていかれる方針なのか、お伺いをしたいというふうに思います。

麻生国務大臣 今、御質問が谷口先生からあっておりましたように、テロとか大量破壊兵器とか、そういったような新たな脅威に対しましてどうやって対応していくかというのは、世界的な大きな課題だと思っております。

 中でも、その中にあって、話の内容が複雑な民族間の対応だとか、いろいろしたものもありますけれども、いずれにしても、インド洋を含めていろいろ問題があるというのは事実でもありますので、日本とインドの場合は、最大な民主主義国家でもありますし、価値観も共有している部分も多いというような感じがいたしますので、私どもとしては、いわゆるASEAN地域フォーラム、エーシアン・リージョナル・フォーラムといいましたか、通称ARFというのを枠組みとして安全保障分野の関係強化に努めてきたところであります。

 そこで、PSIの話が、プロリファレーション・セキュリティー・イニシアチブ、通称PSIという、大量破壊兵器というか、拡散のための大きなイニシアチブがあるんですが、七十カ国ぐらい今参加していると思います。この参加している国の中に新たにインドというものが参加してくるというのは、これは今言われましたように海岸線を長いこと有しておりますので、そういった意味では、シーレーンに沿っての海岸線等々を考えますと非常に大きな意義がある、私どもはそう思っております。

 関係強化ということに関して言わせていただければ、二〇〇五年だけで、防衛副長官の訪印、統幕長の訪印、向こうからの海軍参謀総長の来日、それから、第三回のインドと日本との間の防衛当局間の会議、海幕長、陸幕長、空幕長それぞれが二〇〇六年にということで、この二〇〇五年から六年の四月にかけまして、そういったところだけでも七回ぐらいの交流が行われております。保安庁との間でも、この二〇〇五年、六年にかけましてずっと訓練等々をいろいろ海保の間でもしておられるというように伺っておりますので、連絡はかなり密接に行われるようになってきておると理解しております。

谷口(和)委員 ありがとうございます。ぜひ日印につきましても関係強化を今後とも図っていただきたいというふうに思います。

 以上で私の質問を終わります。ありがとうございました。

原田委員長 次に、笠井亮君。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 日英租税条約及び日印租税条約改正議定書に関連して、まず幾つか伺いたいと思います。

 一般に、国際的な投資そのものに反対するものじゃありません。当然です。しかし、今回の条約では、米国との条約に続いて配当や利子への源泉地国課税が大幅に軽減される措置がとられるわけでありますけれども、日本における外国人の持ち株比率は、一九九五年の時期から二〇〇四年までの十年間で見ますと、一〇・五%から二三・七%へと倍増しております。このように外国人の持ち株比率が急速に増大している中で配当や利子への課税が大幅に引き下げられれば、日本で発生した利益の海外流出というのがますます進んでしまうんじゃないかというふうに思うんですけれども、この点はどのようにお考えでしょうか。

原田政府参考人 日英の租税条約の締結によりまして、一定の親子間配当につきまして源泉地国の課税が減免することで両国間の投資交流が促進されて、これを通じて両国経済が活性されることが期待されておるわけでございますが、外国企業が配当の受け取りを期待して我が国に子会社を設立して直接投資してくることは、まさにこのような投資交流のあらわれだろうと思っております。

 日英租税条約では配当に対する源泉地国課税を大幅に軽減しておりますが、これは二重課税防止の観点から行われておるわけでございまして、必ずしも企業の海外への配当を誘引する趣旨ではございませんが、いずれにしましても、我が国に進出した外国企業の子会社からの配当は、当該子会社が我が国に納税、これは法人税でございますが、納税した後の課税後所得から分配されるものでございまして、当該子会社そのものに対する我が国の課税ベースが海外に流出するわけではございません。

笠井委員 私は、二重課税回避にとどまらないと思うんです。日本であれほかの国であれ、企業の利益が生まれた国民からの応分の再分配分を取り上げて、国際的な企業の利益をふやすだけになってしまう。

 さらに伺いますが、政府は、定率減税を全廃していわゆるサラリーマン増税ということを進めながら、企業に対しては法人税の減税ということで進めてまいりました。その際に、法人税を重くしたら日本から企業が海外へ出ていってしまうということを繰り返し理屈として言われたわけですが、その一方で、この一連の租税条約を次々と変えて、日本企業がグローバルに資金も生産拠点も移していくという動きを促進して、そして企業の海外進出がますます加速されるというのは、ある意味、日本政府として政策の矛盾じゃないかと私は思うんですが、この点はどのように政府は考えているんでしょうか。

原田政府参考人 法人税そのものについての詳細について外務省としてお答えする立場にはございませんけれども、租税条約は、相手国における課税関係の明確化、二重課税のリスクの軽減、課税上の問題を両国の税務当局間の協議で解決する仕組みの提供などを通じまして、我が国企業が相手国で事業活動をし、相手国に投資することを支援するものでございます。

 このように、経済活動がグローバル化する中で、我が国企業が国際的な事業活動を行うための重要な法的インフラとなる租税条約を締結することは、我が国企業の国際競争力の確保に資するこれまでの法人税率軽減と整合的であると考えております。

笠井委員 今、条約の意義について述べられただけで、私の質問には答えられなかったんですが、外務省としては答える立場にないと言いますが、これは政府として結んだ条約ですから、それはもう財務省ともよくすり合わせして、こういう問題点、矛盾がないのかということで整合性を持って国会に提案する、当然だと思うんですよ。それを答えられないということは、これは矛盾があるということだと私は思うんですね。

 さらに伺いますが、日印の方です。

 日印の租税条約改正議定書に関連してでありますけれども、先ほど来の外務省の説明でも、このたびのインドとの交渉の過程で、政府は、日米の租税条約、日英並みの免税も含めた源泉地国課税の大幅引き下げを目指していたということでありますけれども、インド側が課税権の確保という観点を相当強力に主張してということで、多少の引き下げにとどめることになったということであります。

 私、これを伺っていて、この経過からも、途上国に対する配当、利子、使用料等による所得に対する源泉地国課税の引き下げというのは、これは非常に慎重にやるべきだというふうに考えるんですが、今度のインドとの交渉の経験から踏まえて、その点は外務省として、今後いろいろな国とということでフィリピンの話とか出ていましたけれども、どのように考えていくのか、この点についてどういうふうに見ていらっしゃるのか、答弁いただきたいと思います。

長嶺政府参考人 インドとの交渉の経緯、それからインドがどのような主張をしたか、これについては累次国会でもお示ししてきているとおりで、ただいま委員からかいつまんで御説明もございました。そういうことはございます。

 一般論として申し上げますけれども、相手国が途上国の場合には、自国の税収確保という観点から、源泉地国課税の大幅な軽減には慎重であるということは確かに言うことができます。したがいまして、我が国としましては、これら途上国側の事情にも配慮をしながら、双方で合意できる範囲内で租税条約の締結を進めていくということでやってまいりたいと思っております。

 ただ、一つ指摘させていただきたいのは、租税条約は、もともとは国際的な二重課税の回避ということが目的でございますけれども、この二重課税の排除を通じて投資交流が促進されるということになりますので、両国間の中長期的な経済の活性化ということに資するものでございます。そのような租税条約の利点ということもまた相手国にはよく理解していただけるようにしながら交渉を進めていきたいと考えております。

笠井委員 この際、条約に関連しては以上ということで、先日の日米安全保障協議委員会、2プラス2の結果について、次の機会にまた改めて伺いたいんですが、麻生大臣に一点だけ御質問をしたいと思います。

 政府は、この在日米軍の再編の目的ということで、抑止力の維持ということとともに、負担の軽減ということをとりわけ繰り返し強調されてまいりました。しかし、今度発表された再編実施のための日米のロードマップ、これを拝見しますと、これによって基地の移設を受け入れる側、訓練を受け入れる側、全国で五十五自治体があるということでありましたけれども、この住民にとっては、負担軽減どころか負担増というのがかぶってくるということになるだけだと思うんです。

 しかも、総額三兆円、これをめぐっては、政府はなかなかそういう数字を具体的に出しませんが、政府自身もかなりの額、相当の額と大臣もおっしゃいましたが、日本側が持つ経費の負担も加わって、そういう移設先、移転先の住民にとっては二重、三重の負担増になることは明確だと思うんです。だからこそ、関係自治体や住民から過大な負担だ、基地の恒久化につながるので容認できないという強い批判が上がっております。

 私、このような負担増というのは、政府が説明されてきた米軍再編の目的と、負担軽減ということと、明らかにその地域の皆さんにとっては矛盾するというふうに思うんですけれども、大臣は、こうした移設先の自治体の住民の皆さんに対して一体どういうふうに説明されるのか。昨日、会見の中で、大臣、まさにその点の質問が出て、沖縄に限らず、沖縄以外のところにもいろいろありますので、そういった説明を丁寧にしていく努力が必要だと言われましたが、皆さんに丁寧に説明すれば負担増がなくなるのかといえば、そうならないと思うんですけれども、国全体のためには我慢せよ、こういう話で説明されて、説得しようとなさっているのか、いかがでしょうか。当事者としてお答えいただきたいと思います。

麻生国務大臣 基本的には、米軍の今回の再編というものが実現すれば、全体としては、地元の負担はトータルとして軽減される、はっきりしていると思います。少なくとも沖縄県に日本の基地の七五%が集中しているのが大問題、これはどなたも認識しておられることだと存じますが、その沖縄から、軍属含めて軍人一万八千人、七千人という数が沖縄という県からグアムに移転するというだけでも負担の軽減としては大きい、私どもはそう思っております。

 岩国の基地等々を例に挙げれば幾つも出てくるところだと思いますが、これは、沖合に移転をするというところも、いわゆる騒音の被害等々、いろいろな意味で負担の軽減になることもはっきりしておると思いますし、その他、地域によって負担がふえるところもあろうと思いますが、国全体として見た場合におきましては、いわゆる地元負担の軽減というのは沖縄に限りませんけれども、その他地域で、これまでの負担をしょってこられた方々にとりましては、軽減というのは非常にはっきりしておると私どもは思っております。

 ただ、今言われましたように、例えば福岡県でも築城の基地などいろいろ、輸送などで航空部隊、一部負担がふえるといえば負担がふえることは確かですけれども、それを全体で分かち合おうということなんだと存じますので、そういう地域につきましては、私どもも丁寧に説明をしていく必要があるということを申し上げておるのであって、可能な限り地元の説明というのを得られるべく努力をしていく必要があると思いますけれども、全体として減るかといえば、減ると思います。

笠井委員 私の質問にうまくちょっとそらして答えられているんですが、地元負担といって沖縄の話だけ主に挙げられるわけですよ、全体として負担が軽くなると。沖縄については、この間、大臣とも繰り返しやっていますけれども、例えば、今度の2プラス2の後の共同会見でラムズフェルド国防長官は、負担軽減ということを一切言わないで、それで、米軍の前方展開に基づく同盟の永続的な能力確保が最終報告の目的だと明言されて、しかも、沖縄にとっても、負担軽減というよりも、名護に新基地をつくって実戦部隊は残る。こういう問題、現地でも大問題になっているわけでありまして、私、それはそれで議論が一つある。

 主に私が伺っているのは、それ以外のところで、では、岩国含めて、今、築城の話もされましたが、新しいものが来るところは負担増だと思うんですよ。地元は負担増だと、沖合だから軽くなるなんという話ではなくて、新しく来るわけですから。そういうところで、負担増になることについて、耐えがたいというふうに言われている。丁寧に説明と言われますが、全体で分かち合うということで、私は結局、第二、第三の沖縄、第二、第三どころかいっぱい沖縄を全国につくることになるということだと思うんですけれども、安保賛成だ、抑止力の維持はいいと思うけれどもというふうに言われている方でも、それでも、来るのは、負担増になったらとんでもないといってみんな怒っているわけですから、ますますこれは反発が広がる話になるんです。

 新しく移設先になるところは負担軽減になるんですか。負担軽減になりますよと言って、大臣、自信を持って説明できますか。

麻生国務大臣 国全体の話をしておりますので、厚木の基地の部分が移る先、また、沖縄の部分が移る先におきましては、今までないものがふえますから、その部分に関しては、その面だけ見れば負担の増になるのははっきりしているじゃありませんか、そういうものは。今までないものが来るのですから。ですから、国全体として見ればと申し上げているのであって、ただ、岩国に関して言わせていただければ、岩国は沖合に移転しますよ、厚木の基地から飛行機は岩国に移転しますから、厚木の分は減りますよ。沖縄だけ減るじゃないかと言うけれども、厚木も減りますから。

 だから、そういった意味で、部分的なものを言っていけばいろいろあろうとは存じますが、全体として見れば、少なくとも米軍が軍人含めて一万八千人からの人が減るということは、国全体として見れば減るということははっきりしておると申し上げております。

 また、岩国の基地につきましても、沖合移転プラス、その地域の中においては、かねてから希望があっておりました飛行場、民間航空機の併用が決まって、その中に、いわゆる航空ターミナルも基地内にできる等々、岩国にとってもそれなりのまたメリットもあるというところだと思いますので、プラス・マイナスいろいろあろうかと思いますけれども、負担をそれぞれ分かち合っていただくということになろうかと存じます。

笠井委員 終わりますけれども、結局、沖縄以外のところということでいうと、新しく来れば負担増ですと、それはもうそのとおりなので。住民にとっては、国全体と言われたって、具体的な話なんですよ、自分たちにとって負担増になったらこれは困るとみんな思うわけで。沖縄はそう思って声を上げたから、政府はその問題でそういうことを取り上げてやったというふうにしきりに言われるわけで、また新たな沖縄みたいな形になるところができたら、例えば岩国にしたって、市長だってそうですし、それから、広島の知事もそうです。結局は、説明を求めてきたけれども、沖合に行くことによって負担軽減になるかというと、納得できないということをこの結果を見ても言われているわけです。

 非常にこの問題は、きのう会見で大臣が言われたように、なかなか大変な問題だから丁寧な説明と言われるわけですけれども、では丁寧にすれば納得できるかというと、できる問題じゃないんだということを、私は、そもそものこの合意の中身に問題があるということを申し上げたいと思うんです。

 さらに次回、議論をしたいと思いますが、以上で終わります。

原田委員長 次に、照屋寛徳君。

照屋委員 社民党の照屋寛徳です。

 審議中の両租税条約について、社民党は賛成の立場であります。その上で、一点だけ尋ねます。

 両条約の締結によって両国の投資交流の促進が図られることと信じます。日本から英国、英国から日本への進出企業は、ここ数年、さしたる増減は見られないようですが、進出企業の規模はどうなっているのか、日英のみに限って簡潔にお答えください。

石川政府参考人 お答え申し上げます。

 英国に進出しております日系企業の数は、二〇〇四年には八百三十九社でありまして、EU域内で最大でした。また、日本に進出している英国企業の数は二〇〇四年には二百七十七社で、EU諸国で見ますとドイツに次いで第二位になっております。(照屋委員「規模を聞いているんです」と呼ぶ)はい。恐れ入ります。

 投資の規模を見ますと、我が国の対英直接投資残高については、二〇〇四年末で二兆七千八百六十億円でありまして、イギリスはEU域内でオランダに次ぐ投資先となっております。また、イギリスの対日直接投資残高については、二〇〇四年末で二千三百九十七億円でございまして、イギリスは我が国にとってEU諸国では第四位の投資元となっております。

照屋委員 次に、米軍再編問題について聞きますが、最終報告についてここで大臣と議論するつもりはありませんが、私は、最終報告の内容をつぶさに検討すると、沖縄に米軍基地を半永久的に押しつけるものであって、到底承服できないという考えを持っております。

 きょうは、時間が少のうございますので、具体的な問題を聞きますが、最終報告を受けて、去る五月四日、稲嶺県知事が、シュワブ陸上部に暫定のヘリポート整備を政府に求めると発表しました。この稲嶺知事の提案を外務大臣はどう思っていらっしゃるか、また、日米両政府として検討可能なのか、明確にお答えください。

麻生国務大臣 政府としては、これは長年の懸案でありまして、普天間の話を一日も早く移設、返還というのに向けてこれはもう一貫してやってまいりましたので、十年前にやって、結果的には十年間何もできなかったというのが事実でありますから、実行可能性というのは非常に大きいと思っております。

 したがいまして、今回のあの二本の滑走路、V字形滑走路というものにつきましては、周辺住民の方々に配慮したものだと私どもとして思っておりますし、名護市長やら宜野座村の同意も得られたと思っておりますので、2プラス2におきましても、そういったことを背景にしていわゆるV字形の案がのまれたというように御理解いただくというのをまず大前提にしていただかぬとという感じがいたしております。

 ただ、地元住民の納得というのは非常に重要なところであろうと思いますので、今言われましたように、そういった案もいろいろ、もっといい案が出てくるのかもしれませんけれども、少なくとも、私どもとしては、一日も早い移転が可能、いわゆる移設の可能という方向に向けて、移設が可能になりませんと普天間の返還ができませんので、そういった意味のことを考えていくのが最善の道だと思っております。

照屋委員 私は、この最終報告で合意された新沿岸案でも、十年たっても、二〇一四年でももちろんできないと思う。これは恐らくつくることはできないと私は思っております。

 ところで、このシュワブ陸上部の暫定ヘリポート整備について、木村副長官、防衛庁の考えをお聞かせください。

木村副長官 私どもは、やはり一番大事なことは、現在の普天間飛行場の危険性を早期に除去するということが最も大事なことと考えてまいりましたし、また、先般、沖縄県知事も、移転問題の原点というのは、今の普天間の市街地の中心部にあるこの危険性の除去であるというふうに考え方を示しているようであります。この点が政府と地元沖縄との最も大事で、また共通していることだと思いますので、五月一日、2プラス2の日米のロードマップにおいて最終合意されたことを、これからも誠心誠意、御協力、御説明していきたいと考えております。

照屋委員 木村副長官、そうすると、知事が政府に求めるというヘリポートの暫定整備案は、これは全く検討の余地がないということでしょうか。

木村副長官 確かに知事さん、その考え方を示しているようでありますが、現実的に、先ほど外務大臣もおっしゃっておりましたが、これまでの経緯、そして早期にこの危険な状況を除去するということを考えたときに、私ども、先般、五月一日に最終決定された日米のロードマップにおいて示されたことの方針を大事にしながら、誠心誠意、地元に御協力をお願いしていくということであります。

照屋委員 北原施設庁長官にも尋ねますが、長官は、最終報告後、沖縄に来られて、知事や関係自治体の長とお会いになりました。今の知事が求めているシュワブ陸上部暫定のヘリポート整備について、施設庁長官としてはどう思っていらっしゃるか。加えて、名護市長が求めている滑走路の長さは、あくまでも、千八百メートルではなくて、千五百メートルに変更するよう求めていくんだということについてはどう思いますか。

北原政府参考人 照屋先生に御答弁を申し上げます。

 第一点の、知事の、県外移設ができるまでの間、暫定的なヘリポートをつくって云々、その点につきましては、私どもの木村副長官、また外務大臣が御答弁されたとおりでございます。我々といたしましては、2プラス2で承認されましたロードマップに基づきまして御理解を得ていきたい、そして一刻も早くこの危険な普天間基地を移設してまいりたい、そのように考えているところでございます。

 それから二点目の、滑走路の問題でございます。滑走路の問題につきましては、今回承認されましたロードマップにおきまして、滑走路長は千六百メートル、そして前後に百メートルずつのオーバーランを含む、施設の長さが護岸を除いて千八百メートルという数字が出ているところでございます。この千八百メートルということにつきましては、既に十月二十九日の時点から地元とはお話をしてまいりました。

 そして、私ども、緊密に地元とお話をしているところでございますが、今先生御指摘の、地元の千三百メートル云々というお話があるわけでございますが、これは、さかのぼりまして、いわゆるSACOの最終報告の中にそういうことが書いてございます。

 地元の一番の御懸念は何かということは、新たな代替施設を使って戦闘機等を運用されるのではないかといったことだと思いますが、その点につきましては、今回の五月一日に承認されたロードマップにおきましても、アメリカ政府は明確に、戦闘機は使用しないということを、運用する計画を有していないということを明言しております。

 それからさらに、この2プラス2の承認された合意文書の中におきましては、合意された運用上の能力を確保するとともに、安全性ですとか騒音、環境といった影響という問題にも対処していきましょうということで、去る四月七日に私どもの防衛庁長官と名護の市長さんが基本合意書を締結しておりますが、そういった基本合意書につながる一文も入っているわけでございまして、私どもといたしましては、地元の懸念というものは十分踏まえた、そうした結果がこの2プラス2の最終的な承認の文書にも入れ込んでいる、そのように考えておりまして、引き続き御理解を求め、一刻も早い着手ができるようにやっていきたい、そのように考えているところであります。

照屋委員 ヘリポート暫定整備というのは、あくまでも稲嶺知事が言っていることであって、私自身も何を今さらこんなアリバイづくりの提案をするのかなと思いますし、もとより私は県内移設には反対の立場ですが、長官、一点だけ確認します。そうすると、滑走路の長さは、四月七日、名護市長と額賀長官の基本合意で既に決まっておったものだ、そういうお考えなんでしょうか。

原田委員長 申し合わせの時間が過ぎておりますので、御協力をお願いします。

北原政府参考人 御答弁申し上げます。

 四月の七日の合意書の中には、その千六百メートルという数字は出てきておりません。

 ただ、先ほど申しましたが、十月二十九日以降、その滑走路を含んで千八百メートルという話をしてまいったところでございまして、それから、繰り返しになりますが、地元の御懸念を十分踏まえた考え方がこの最終報告、ロードマップに反映されています。そのようにぜひとも御理解を賜りたいと思います。

照屋委員 終わります。

原田委員長 これにて両件に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

原田委員長 これより両件に対する討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、これを許します。笠井亮君。

笠井委員 私は、日本共産党を代表して、日英租税条約及び日印租税条約改正議定書に反対の討論を行います。

 本条約及び議定書によって、配当、利子、使用料による所得に対する源泉地国課税を大幅に引き下げる措置をとることは、二重課税回避にとどまらないものです。すなわち、双方の企業が相手国での事業や相手国企業との取引によって得た利益に対し、その利益のもととなる事業活動が行われた相手国が持つ課税権を大きく制限するものであります。

 それは、進出先での事業収益について、その国での応分の税負担を損なうことになります。とりわけ、今回のインドとの交渉でも明らかになったように、源泉地国課税の確保は、途上国の場合、なおさらのこと重要であります。

 海外への投資そのものに反対するものではありませんが、企業が海外において事業活動を行って収益を上げた場合、その国において収益に応じた税負担をすることは当然であり、それを過度に軽減してまで企業に便宜を図る必要はありません。

 また、使用料について言えば、日本とイギリスの受け払いの推移を見ても、この間、大幅に増加してきており、近年、海外に展開する代表的な企業の保有資産において、使用料につながる特許権等の無形資産の割合が大きくなっていることから、今後も特許権を活用した国境を越えた事業活動はふえていくことが予測されます。このような中で適切な課税を行うためには、源泉地国課税の仕組みをきちんと確保しておくことがますます必要であり、今回の措置は問題であります。

 以上、反対の理由を述べ、討論といたします。

原田委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

原田委員長 これより採決に入ります。

 まず、所得及び譲渡収益に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とグレートブリテン及び北アイルランド連合王国との間の条約の締結について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

原田委員長 起立多数。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 次に、所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とインド共和国政府との間の条約を改正する議定書の締結について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

原田委員長 起立多数。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました両件に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

原田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

原田委員長 次回は、来る十二日金曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時十六分散会


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