衆議院

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第16号 平成18年5月19日(金曜日)

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平成十八年五月十九日(金曜日)

    午前九時二分開議

 出席委員

   委員長 原田 義昭君

   理事 小野寺五典君 理事 谷本 龍哉君

   理事 土屋 品子君 理事 水野 賢一君

   理事 渡辺 博道君 理事 武正 公一君

   理事 山口  壯君 理事 丸谷 佳織君

      愛知 和男君    伊藤 公介君

      伊藤信太郎君    宇野  治君

      高村 正彦君    篠田 陽介君

      新藤 義孝君    鈴木 馨祐君

      中山 泰秀君    三ッ矢憲生君

      山内 康一君    山中あき子君

      吉良 州司君    篠原  孝君

      津村 啓介君    松原  仁君

      谷口 和史君    赤嶺 政賢君

      笠井  亮君    照屋 寛徳君

    …………………………………

   外務大臣         麻生 太郎君

   外務副大臣        塩崎 恭久君

   外務大臣政務官      伊藤信太郎君

   外務大臣政務官      山中あき子君

   国土交通大臣政務官    石田 真敏君

   政府参考人

   (防衛庁防衛局長)    大古 和雄君

   政府参考人

   (防衛庁運用局長)    山崎信之郎君

   政府参考人

   (防衛施設庁長官)    北原 巖男君

   政府参考人

   (外務省大臣官房長)   塩尻孝二郎君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 鶴岡 公二君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 長嶺 安政君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 梅田 邦夫君

   政府参考人

   (外務省大臣官房国際社会協力部長)        神余 隆博君

   政府参考人

   (外務省北米局長)    河相 周夫君

   政府参考人

   (外務省経済局長)    石川  薫君

   政府参考人

   (外務省経済協力局長)  佐藤 重和君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁資源・燃料部長)        近藤 賢二君

   政府参考人

   (海上保安庁海洋情報部長)            陶  正史君

   外務委員会専門員     前田 光政君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月十九日

 辞任         補欠選任

  笠井  亮君     赤嶺 政賢君

同日

 辞任         補欠選任

  赤嶺 政賢君     笠井  亮君

    ―――――――――――――

五月十八日

 分布範囲が排他的経済水域の内外に存在する魚類資源(ストラドリング魚類資源)及び高度回遊性魚類資源の保存及び管理に関する千九百八十二年十二月十日の海洋法に関する国際連合条約の規定の実施のための協定の締結について承認を求めるの件(条約第一二号)(参議院送付)

 二千年の危険物質及び有害物質による汚染事件に係る準備、対応及び協力に関する議定書の締結について承認を求めるの件(条約第一三号)(参議院送付)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 分布範囲が排他的経済水域の内外に存在する魚類資源(ストラドリング魚類資源)及び高度回遊性魚類資源の保存及び管理に関する千九百八十二年十二月十日の海洋法に関する国際連合条約の規定の実施のための協定の締結について承認を求めるの件(条約第一二号)(参議院送付)

 二千年の危険物質及び有害物質による汚染事件に係る準備、対応及び協力に関する議定書の締結について承認を求めるの件(条約第一三号)(参議院送付)

 国際情勢に関する件


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     ――――◇―――――

原田委員長 これより会議を開きます。

 国際情勢に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房長塩尻孝二郎君、大臣官房審議官鶴岡公二君、大臣官房審議官長嶺安政君、大臣官房参事官梅田邦夫君、大臣官房国際社会協力部長神余隆博君、北米局長河相周夫君、経済局長石川薫君、経済協力局長佐藤重和君、防衛庁防衛局長大古和雄君、運用局長山崎信之郎君、防衛施設庁長官北原巖男君、資源エネルギー庁資源・燃料部長近藤賢二君、海上保安庁海洋情報部長陶正史君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

原田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

原田委員長 質疑の申し出がございますので、順次これを許します。丸谷佳織君。

丸谷委員 おはようございます。公明党の丸谷佳織でございます。

 質問の時間、一般質疑ということで三十分をいただきました。通告をさせていただいているもののほかに、けさの報道から一つ、北朝鮮について質問をさせていただきたいと思います。

 けさの報道によりますと、韓国政府筋などによって、今月初めから、北朝鮮の北東部のミサイル基地の方で大型のトレーラーなどが活発に活動を始め、全長およそ三十五メートルのミサイルが発射施設の近くに持ち出されているのが衛星写真などから確認されたという報道がなされております。このミサイルは、大きさなどから、北朝鮮の弾道ミサイルのうち、最も射程が長いテポドン二号と見られているという報道がございましたけれども、この件につきまして、現在、外務省ではどのような情報をお持ちになっているのか、この点からお伺いをいたします。

麻生国務大臣 この北朝鮮のミサイルのことに関しましては、あれは一九九八年でしたか、八月の三十日のテポドンの話というのが、日本の頭を越えて太平洋上に撃ち込んだという話があった以来、その関心というものを最大に持ち続けてきておりました。

 今回も、このテポドンの一連の動きというのを私どもも知っております。いつごろから知っていたか、それは内容がどれぐらいかというと、日本側の情報収集能力が全部明らかになることになりますので、かなり前から知っておったとだけ申し上げておきます。

丸谷委員 これは、そうしますと、実験にしろ、発射をされる可能性が高いという状況でとらえていらっしゃるのでしょうか。

麻生国務大臣 使われている燃料が固形じゃなくて液体燃料ということになりますと、注入開始が直ちに発射ということを意味しますので、液体であれば、それは注入が開始されていない段階で何とも申し上げられぬということになろうかと存じます。

丸谷委員 そうしますと、現状の情報ということではわかりましたけれども、もし発射をされた場合、平壌宣言の中では、ミサイル発射の凍結期間というのを延長したというモラトリアムが合意をされております。発射をされた場合には、この平壌宣言というのは無効になるのでしょうか。この点についての認識をお伺いします。

麻生国務大臣 日朝平壌宣言で二カ所、双方は、互いに安全を脅かす行動をとらないことを確認した、二つ、朝鮮民主主義共和国側は、この宣言の精神に従い、ミサイル発射モラトリアムを二〇〇三年以降もさらに延長していく意向を表明したという表現が使われております。いわゆるこの発射モラトリアムというものは、日本の安全に直接かかわるという弾道ミサイルを対象とするものということになりますので、したがいまして、ミサイルが発射されるということになれば、この宣言との関係で問題になるのは当然です。

丸谷委員 質問通告していないものもございまして、この件に関しては、万全の情報収集に今後も努めていただくとともに、北朝鮮に対する政策に関しても、外交、安保関係でしっかりと政府として対応をしていただきたいということを申し上げまして、質問通告をした分について移らせていただきたいと思います。

 先日、外務委員会にもお許しをいただきまして、IPU会議の方に参加をさせていただきました。今回はケニアのナイロビで開かれまして、参加国も非常に多く、有意義な議員外交ができたものと考えております。在ケニア大使館の皆様にも、ロジの分も含めまして、あるいは、現地での日本企業の経済動向あるいは日・ケニア両国間の関係促進のための方法等いろいろなレクを受けるとともに、大変に在外の皆様にお世話になりましたことを、ここで改めて感謝申し上げておきたいと思います。

 今回のこのIPU会議の主題の中の一つでございます、民主主義の促進と民主的機関の構築支援というものがございまして、その中で私は発言させていただく機会をちょうだいいたしました。民主主義の促進と民主的機関の構築支援と一言で申し上げましても、当然ながら、社会主義国家があるいは共産主義国家が民主主義国家に移行していく際にまず真っ先に行われるであろうことは、イラクを見ていてもそうでございますけれども、行政、立法、そして司法の独立という国の形から入ってまいります。

 しかしながら、では、その後のその国家が本当に民主主義国家として国民一人一人が民主主義という恩恵を受けることができるかどうかということに関しては、国の統治機関のあり方のみではなく、やはりそこに教育という問題が非常に大きく関係してくるのではないか、だからこそ、民主主義の促進のためには草の根民主主義の教育が重要であるという発言をさせていただきました。

 日本も、アフリカに対しましては、国づくりは人づくりからという視点で支援をされていることと承知しておりますけれども、例えば内戦ですとかあるいは貧困にあえぐ国においてはすぐれた人材も枯渇している状況にございますし、独立独歩で、国際社会の援助に頼らなくても国を運営していくためには、やはり子供に十分な教育を受けさせることが非常に重要であるというふうに考えております。

 我が国としましては、例えば昨年度、リベリアにおける元児童兵の社会復帰プログラムのために、ユニセフですか、三百六十四万ドルを拠出しておりますし、あるいはユネスコの人的資源開発信託基金に四百万ドルの拠出をするなど、大変大きな実績を提供してまいりました。

 時あたかも、現在国会では我が国における教育基本法というものが審議をされる中におきまして、改めて外務大臣に、途上国における教育あるいは子供の問題についてどのような認識をお持ちになっていらっしゃるのか、この点からお伺いをさせていただきます。

麻生国務大臣 これは日本の場合も、丸谷先生、明治政府が当時、教育勅語をつくり、イギリスに先立つこと三年早く義務教育を確立し、国費による海外留学生を世界で最初につくり等々、日本の場合は非常に、国家予算の約三割ぐらいを教育費に突っ込んでいたというのが明治前半のころの日本の歴史でもありますので、教育というものに対する重要性というのは、長い間、江戸時代にさかのぼれば寺子屋に至るまで、義務教育のもとになるようなものをずっとつくり上げてきた。加えて、資源のない国がこれだけ短期間で経済的には非常に大きなものになり得たという最大の背景は、人をよく育てた。これは多分我々の先輩方の偉大な決断であったし、先見の明としては大したものだったんだ、私自身はそう思っております。

 したがって、日本のODAというのを見ましてもこういったものが綿々と引き継がれていきまして、今丸谷先生がおっしゃいましたように、国づくりを支えるのが人材育成という観点から、ODAの大綱にも教育分野支援を重視と明記しております。具体的には、基礎教育におきましては、学校という建物のないところもいっぱいありますので、そういった学校施設といったような建設のハードの面もたしかやらねばなりませんが、いわゆる教える先生がいないとどうしようもありませんので、教員訓練というところもきちんと、教員を育てないとどうにもなりませんから、教員訓練というようなもののソフト面というのと、両方こういったものを組み合わせてやってきておると思っております。そのほかにも、それによって義務教育ができ、職業訓練が始まり、そして高等教育にだんだん進んでいくことになるんだと思います。

 発展途上国というものを育成していくためには、これはどう考えても、一番遠回りなようですけれども、人材育成というのが一番だというのは日本のこれまでの方策でもありました、方針でもありましたし、ODAの政策にも教育分野というものを非常に重視して積極的に取り組んでいくというのがきちんと明記してありますし、今後とも、その方向で進んでいきたいものだと思っております。

丸谷委員 ありがとうございました。

 今大臣おっしゃっていただきましたとおり、確かにハード、学校がなければ集まるところもない、地域のハブとなる建物がないということでは困りますので、そこをまずやっていただくと同時に、大臣の御指摘の、しかしながらソフト面、教える側の教員も重要であるということが、本当に、今回のケニアにおけるIPUにおいてお会いしましたNGOの方からも御指摘を受けたところでございます。

 特にアフリカの現状、ケニアはアフリカの中ではまだ経済的にも前進している国でありますけれども、それでもやはり貧困、飢餓、あるいは感染症による非常に困難な面は、特に女性と子供に多く悪影響を与えている。しかしながら、その女性、子供が例えば教育を受けようとしたときに、どうしても、ジェンダーイクオリティーという視点からの教育が非常に重要であるというお話をお伺いしました。しかしながら、ジェンダーイクオリティーのための教育をしようと思っても、何せ女性の先生がいなければ、なかなか男性の先生だけではジェンダーイクオリティーという視点で教育を受けさせることもできないということで、女性の教師を急速に育てていく必要性があるというお話もお伺いをしてまいりました。

 こういったことも踏まえまして、ぜひ今後も、日本として、人を育てることを重視してきた日本の経験と知識を生かして国際貢献をしていただきたいと思いますので、どうかよろしくお願いいたします。

 そこで、教育に関してもう一点お伺いをさせていただきたいと思います。

 先日報道されたばかりでございましたけれども、今回、ユニセフとイラク政府がイラクの子供たちについて調査をしたという報道がございました。その調査によりますと、イラク戦争やフセイン政権崩壊後の治安の悪化により、深刻な栄養失調状態にあるイラクの子供が戦争前と比べ倍増しているという結果が出ております。

 具体的に申し上げますと、調査対象の一五%が、月十五ドルですから約千七百円ですか、千七百円以下で生活をする極めて貧しい状態にあり、長期間にわたって後遺症を患う可能性がある深刻な栄養失調の子供は全体の九%でございまして、この数字は二〇〇二年のイラク戦争前の四%であった二倍以上に相当するということでございます。さらに、二歳未満の栄養失調率は一二%から一三%に達したということでございます。

 戦争自体は非常に短い期間で終わりました。今現在、イラクでは国際社会の支援あるいは我が国の貢献もございまして着々と国づくりが進められているところでございますけれども、残念ながら、やはり、弱者という言葉は余り好きではございませんが、子供たちの健康状態にはこのような悪影響が出ていると申し上げざるを得ない調査結果を見るにつけ、今後、このイラクの子供たちの支援はどうあるべきなのか、我が国として何か力を注ぐことができないのだろうか、このような思いがするわけでございますけれども、こういったこと受けて、外務省はどのようにお考えになるでしょうか。

塩崎副大臣 イラクでは、二〇〇五年の七月に、国家開発戦略というのを出しております。四本柱ございまして、経済成長の基盤強化、民間セクターの活性化、国民生活向上、そしてガバナンスの強化と治安の改善、こういう四つの柱に基づく国家開発戦略というのをみずから立てているわけであります。

 我が国としては、やはりイラクの人たちが自分たちで立ち上がるということが一番大事で、それをどうやって支援するのか、こういうことだろうと思うんです。先ほど大臣にも御質問がございましたが、教育というのも、それから今の栄養失調を含めた衛生あるいは保健、こういったものについては今の四本柱のうちの三本目の国民生活向上という中に入ってくるわけであります。

 したがいまして、我が国は今まで無償資金十五億ドルを実施してまいりましたし、これからそれ以外の円借も始まりますけれども、この無償資金の中で教育にもやってまいりましたが、特にユネスコとの連携とか、それから学校の場合には例えばハビタットとの連携とか、いろいろありますけれども、今御指摘の栄養失調あるいは保健衛生については特にユニセフ、WHOあたりとしっかりと連携しながら、日本政府としては、イラクがみずからの手で立ち上がれるための支援というものをやっていかなければならない、このように考えております。

丸谷委員 イラクは途上国でもございませんし、国の運営、統治機構がしっかりしていくことによって子供あるいは教育という視点が徐々に生まれ、状況が改善していくことを望むばかりでございます。

 副大臣がおっしゃるとおり、イラクの未来はイラク人みずからが切り開いていかなければいけないということは当然で、そのために我が国として万全の支援をするということになるんだと思うんですけれども、やはり、先ほど大臣がおっしゃっていただきましたとおり、国家予算における教育費の割合というのは国によって当然違いますし、それが民主化の度合いをはかる一つの私はメルクマールにもなるのではないかと思っています。

 そのために、子供という視点で、子供みずから自分の運命を開いていくというのはイラクのような国においては非常に現在困難なわけでございますので、ぜひ、みずから切り開くことができない人のために、我が国として、子供、教育という視点で、さらにイラクにおきましても支援をしていただきたいというお願いを申し上げておきます。

 続きまして、あと一カ月ちょっとになりましたサミットに関連しましてお伺いをさせていただきます。

 今回のサミット、七月にロシアのサンクトペテルブルクで開催をされるという運びになっております。今回のサミットは、我が国にとっても非常に重要なサミットになるであろうというふうに考えます。なぜならば、北朝鮮の拉致問題というのを議題の一つとして取り上げることができるのかどうかという視点があるからでございます。

 先月の二十七日に、拉致被害者の横田めぐみさんのお母様であられます横田早紀江さんが、米国議会におきまして証言をされていらっしゃいました。その実績としまして、米国議会下院の国際関係委員会のクリス・スミス委員長が非常に同感をされまして、今回のサミットにおいて拉致問題を主要議題として取り上げてはいかがかということをブッシュ大統領に提案されたということでございます。また、二十八日には、横田早紀江さんと会見をされましたブッシュ大統領も、拉致問題解決への働きかけを強めていきたいというふうにおっしゃられているようでございます。この拉致問題ということが国際社会の共通課題として非常に認知をされる時代の流れになってまいりました。

 こういった動きを受けまして、我が国としては、米国に対してさらにフォローアップをするとともに、サミットにおいて、拉致問題解決へ向けたG8主要国の強い姿勢を何らかの文書で示していきたいという考えをお持ちかと考えておりますけれども、今回のサミットにおいて、この拉致問題、グレンイーグルズよりも強い声明を出せるような働きかけを外務省は今されているのでしょうか。こういった動きについて御説明を願いたいと思います。

麻生国務大臣 今御指摘がありましたように、拉致被害者家族の訪米のときに、アメリカ下院における公聴会で、横田早紀江証言というか、人権小委員会でそういった証言の機会を得、それにこたえて、スミスという下院の小委員長が、今一連の話を取り上げるべきだと発言をしたということは承知をいたしております。

 また、昨年でしたか、G8のグレンイーグルズ・サミットというイギリスで行われたときにおきましても、拉致を含む、安全保障問題等々、北朝鮮における人権侵害について議論というものがこのG8サミットの外相会合で行われております。また、首脳会合の議長総括において、北朝鮮は、人権並びに拉致問題への国際社会の懸念に対応する行動をという非難というのがなされております。

 したがって、今回も、この拉致というのは、これはもう人間の尊厳とか、またいわゆる基本的人権とか、そういったようなものの侵害であることは明らかでもありますので、これは国際的な社会で取り上げというので、まずブッシュさんのところから、その前は国連の全体総会でアブダクションという言葉を正式に使わせるところまでスタートをしたんです。

 今後、これに取り組んでいくということにして、外務省として、このG8でという話をアメリカと組んでいろいろやっておりますが、これは議長国が議題を決めることになりますので、今回の場合は、開かれるのがサンクトペテルブルクということになりますと、ロシアが議長をやることになりますので、その議長国ロシアというものの働きかけというのが一番しんどくなってくるところだと思います。今あちらはエネルギーに非常にこだわっておられるところだとも思いますので、取り上げられるように私どもとして今最大限努力をしている最中であって、必ずそれがなるという確約が今ここの段階でできておるかといえば、そこまではいっていないというように御理解いただいておいた方がいいと思います。

丸谷委員 今、大臣、議長国であるロシアも当然重要であるというお話がございました。このロシアは、私は報道で知っているところだけでございますけれども、五月十六日の記者会見ですか、プーチン大統領の個人代表を務められていますシュワロフ大統領顧問が、北朝鮮の拉致問題については、各首脳は自由に問題を提起することはできるとしつつも、サミットに適した問題だとは思わないというふうに述べていられるようでございます。議論は公表されない可能性もあり、サミットで我々はより差し迫った問題に注意を払うべきだということを語っているという報道に触れますと、これはなかなか、ロシアは議長国としてこの拉致問題をまとめていこうという気があるのかというと、非常に厳しいなという実感がしております。

 また、もう一つ重要な国としては、G8のオブザーバーの参加国でございますけれども、中国の対応というのも非常に難しいところだと思います。中国は、北朝鮮の核問題を話し合う六者協議の議長国としましては、核開発問題優先の立場をとってまいりましたし、拉致問題は日朝間の枠組みで話し合っていくべきだという姿勢をとってきたからでございます。この中国に対する働きかけ、またロシアに対する働きかけ、どのように行っていらっしゃるのでしょうか。見通しはかなり厳しそうでしょうか。

麻生国務大臣 ロシアのシュワロフ大統領補佐官の発言の内容というのは承知をしておりますが、その真意についてはちょっと不明で、何とも答えようがないんです。

 適した問題ではないと言われるけれども、グレンイーグルズではもうこれは事実取り上げられた話でもありますので、議長総括でもこれは言及されてきております。したがって、適していないというのであれば、前回が適していなかったということにもなります。

 そういった意味では、この拉致問題というのは国際社会に対して非常に力強いメッセージということになろうと思いますので、外務省としては、議長国のロシアに対する働きかけを含めて、今引き続き外交努力をしている最中であるというように御理解いただければと存じます。

丸谷委員 大臣、中国に対してはいかがでしょう。

麻生国務大臣 中国に関しましても同様で、何となくこの人権の話等々は余り好む話題ではないというのはよくわかっておりますけれども、好き嫌いの話ではやっておられませんので。

丸谷委員 今回のサンクトペテルブルク・サミットにおきまして、この拉致問題というものがより強い声明文としてまとまるように、ぜひ、日本外交、大臣を先頭に頑張っていただきたいと思いますので、応援させていただきますので、よろしくお願いいたします。

 では、時間がなくなりましたので、最後になりますけれども、五月の下旬からカタールでアジア協力対話が開かれることになっております。この外相会談が、やはり非常に重要な時期であり、サミット前の外相会談ということで、日本としてはどうしても、私自身は麻生外務大臣に、国会、いろいろ大変な時期でございますけれども、外務大臣にしかできない仕事であるというふうに確信しますので、ぜひカタールの方に行っていただいて、国会のお許しがあればということだと思いますけれども、国会としてもぜひ私は行っていただきたいということを申し上げておきたいと思います。

 このアジア協力対話のためにカタールに行くことができたらという想定になってしまうわけでございますけれども、日中会談そして日韓の外相会談という非常に重要な会談をこなしていただきたいものだと思います。この件につきましては、カタールに行くことができるかどうかというのは国会が決めることかと思いますけれども、この点について今、外務大臣、どのようにお考えになっていらっしゃるでしょうか。日中、日韓外相会談ができたら、どのような形で、竹島の問題もございますし、いろいろな関係修復のためにどのような思いでお臨みになるのか。この点だけ最後にお伺いさせていただきます。

麻生国務大臣 今、これは、タクシンというタイの人が言い始めてでき上がったアジア・コオペレーション・ダイアログ、通称ACDと称する、とにかくアジアの定義が物すごく広くなっておる会議に参加して、これで自由な問題を討議するという場を提供して、今何回か行われておるんですけれども、月曜日から始まりますので、まさに会議としてはいろいろ重なって、国会の最中でもありますので、調整中という、今丸谷先生がおっしゃったとおり、現時点で正式に決定しているわけではないという前提で、そういった前提の上に立って、まず会えればという、このたらればの話ぐらい危ない話はないんですけれども、行ければ、外相会談に向こうが応じればという、そのたらればの話をずっと二つも三つも重ねた上での話はなかなか答えにくいところなんですけれども、仮に外相会談が実現すればという前提に立ってお答えをさせていただきます。

 内容につきましては、これはいろいろ前から、この間、武正先生からの御質問を受けたときにお答えをしたとは思いますけれども、少なくとも、一部で、二人の間で一つ話が合わなくても、ではそれで全然会わなくなるかという話と同じような話で、日本と中国、日本と韓国の間に、これだけ大きな経済なり年間四百万人からの人が行き来し、お互いにこれだけ大きな経済関係、文化関係というのを持つようになれば、それは全然問題がない方がおかしいのであって、たくさんあればあるだけ、人間関係、問題もいろいろ出てくるのは当然のことだと思っております。

 しかし、一部に問題があったからといって、その他全部が問題というのとは全然違うのであって、そういった意味では、それだから会わないというのはいかがなものかというのをずっと申し上げてきておりますし、総理も同じようなトーンで話をしておられると思います。

 したがって、私どもとしては、この外相会談というのは、私自身は、昨年の十一月か十二月の香港が最後だったかな、それ以来、こっちも国会が始まっておりますから出られないんですけれども、少なくとも、そういったものを考えますと、今抱えております問題、いろいろありますので、率直に話し合いということができればいいと思っています。

 加えて、こういう話は二国間だけの話じゃなくて、この地域全体に与える影響もいろいろあろうと思いますので、北朝鮮の問題等々共通の関心事項というのも幾つもありますので、率直に意見を交換したいと思いますが、ACDの会合自体は、二十三日の火曜日ぐらいに行われる可能性があるというように思っております。

丸谷委員 ありがとうございました。

 ぜひ大臣が出席をされて、アジア協力対話、日本外交として実績を上げていただくことを御期待申し上げまして、質問を終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。

原田委員長 次に、愛知和男君。

愛知委員 私も質問に立たせていただくのは何年かぶりでございまして、年がいもなく少々緊張いたしておりますが、どうぞよろしくお願いいたします。

 日本が抱える外交課題というのは山ほどありまして、ますますふえる傾向にあると思いますし、また、世界の中での日本の立場からいいますと、日本の外交姿勢などが非常に注目されておりまして、大変大事な時期で、これから、日本の外交、それを担当する外務省の役割というのはますます大きくなっていくだろうと思います。

 きょうは、限られた時間でもございますので、多くある外交課題の中で何かを取り上げて質疑をするということではなくて、こういう、非常にこれから日本の外交大変だろう、その大変な外交に取り組む外務省の姿勢といいましょうか体制ということについて、若干の質問をさせていただきたいと思っております。

 ところで、外交の先端に立っているのは各国にいる大使でございますが、日本の特命全権大使というのは世界で何人いますか。

塩尻政府参考人 お答え申し上げます。

 全世界で百二十四名の大使が現在おります。二国間関係の大使が百十七名、国際機関の大使が七名ということで、合計百二十四名の大使がおります。

愛知委員 この大使の役割というのは、簡単に言うとどういうことでしょうか。

麻生国務大臣 これはもう御存じのように、赴任いたします任地において駐箚を命じられた場合、少なくとも日本の政府を代表して、そして、日本の国益の増進、もちろんのことですけれども、そこにおります在留邦人を含めまして、日本国国民の財産、生命等々いろいろ保護に努める役割を基本的には担っておるということになろうと存じます。

 また、人脈を構築するという任務は一つ忘れちゃいかぬところだと思います。その地域において日本の一番代表者は全権大使になるということになれば、人間関係を構築すると同時に、その地域、場所にもよりましょうけれども、情報収集というのは非常に大きな仕事になってくると思います。

 いろいろその他あろうと思いますが、今、経済関係ということが多くなってくると、日本の企業というのは随分出ておりますので、その企業というものがその国において活動がしやすいようにしてやるということも、在留邦人の保護と同時に企業の支援ということも、これは回り回って日本の国益に資することでもあろうと存じますので、これも忘れちゃいかぬ大事なところです。

 加えて最近、あの危なっかしいところにも随分多くの日本人が、仕事柄行く人もいらっしゃるし、巻き込まれる方もいらっしゃるし、いろいろな方々がいらっしゃいますので、そういった邦人渡航者に関する保護とか、キルギスタンみたいな話もありますので、そういった意味では、実に幅広い任務というのがあろうと存じます。

 最後になりますけれども、加えて、広報活動というのを随分やり始める必要のあるところ、日本という国のブランド、イメージ、そういったものを売り出していく必要があろうと思います。今、こちらからも人を出したり送ったりしていますけれども、文化交流というところも、これは何も能とか歌舞伎とか狂言とかいうものばかり以外、音楽もスポーツも、また、いわゆるサブカルチャーと言われる分野に至るまで、いろいろなところで交流の推進ということが必要になってきておりますので、大使の任務というのは、私らが子供のときに知っているころの大使に比べて、今の方がよほど幅広く活躍を要求されているというようなことになってきておるのではないか、そのような感じは持っております。

愛知委員 大臣言われるとおり、大使の役割というのは、まことに多岐にわたって、大変大きな役割をますます担うということでございますが、細かい具体的な内容はともかくとしまして、大使というのは日本の国を代表している日本の顔ですよね。この大使が日本の国の代表ということは、つまり言いかえるとどういうことかというと、私は、日本というのは民主主義国家ですから、日本の国の代表というのは、日本のだれか特定の人の代表ではなくて、言ってみれば、日本の国民の代表だと言ってもいいと思うんです。

 日本の大使の選び方というのは、総理大臣が指名をして、そして天皇陛下が辞令を出すというプロセスで大使になりますね。こういうプロセスの中で、日本の国民の代表だというお墨つきを与えるプロセスは実はありませんよね。僕はこれが大問題だと実は思っているわけでございます。

 アメリカは、大臣よく御承知のとおり、大統領が大使の指名をいたしましても、アメリカの上院がこれを承認しなければ大使になれませんね。なぜこういうプロセスが入っているか。いろいろ理由があるんでしょうけれども、そのうちの一つとして、アメリカの大使というのはアメリカ国民を代表する大使だ、したがって、国民の代表としてふさわしいかどうかというのは、国会で審議をして、いろいろな角度から適格性というものを審査して、そして、アメリカの国民として、これは代表として活躍をしてもらうのにふさわしくないと思えば国会がそれを否認する、それにふさわしいと思えばそれを承認するというプロセスがきちっと入っていますね。大統領が指名をしましても、アメリカの、これは上院ですけれども、上院で否決をされて大使になれなかったという例は幾つもあるわけです。

 それに対して、日本は、日本の国民の代表だというお墨つきを与える仕組みがありませんね。この点についてどう思いますか。

塩尻政府参考人 私の方から事実関係についてお答えさせていただきたいと思います。

 今先生がおっしゃっていただいたとおり、アメリカについては議会の承認が要るということでございます。ほかの主要国、G7の国でございますけれども、いずれの国についても、日本と同様に、行政府限りの手続で大使の任免を行っているということでございます。

 それから、あとは、日本の場合には、外交関係の処理は内閣の事務だということが憲法で書かれている。それに基づいて大使人事は内閣が任免するという体制になっているということでございます。

愛知委員 アメリカの方がむしろ例外だということなのかもしれませんけれども、それはともかくとしまして、日本がこれからますます世界で大きな外交的な役割を果たしていかなきゃならないということからいいますと、日本もそのような仕組みをきちっと導入して、そして、外国に駐在をする日本の大使は、自分たちは日本の国民の代表なんだという自覚を持って活躍してもらう、あるいはその責任を自覚しながら職責に当たるということは非常に大事なことではないか、このように思うんですが、大臣、いかがですか。

麻生国務大臣 今、アメリカの場合は総じて、日本の大使の例を引きましても、今のシーファーは全くビジネスマンから来ていますし、その前のハワード・ベーカーは、あれは議員でしたかね。マクダネル・ダグラス社でしたか、ロッキードでしたかダグラス社か忘れましたけれども、あそこの社長経験者とかいうのが大使をしておったというのが駐日大使の場合ですけれども、アメリカの場合のシステムを例に引かれましたけれども、イギリス等々を見ていますと、プロの外交官ということになっていると記憶します。

 問題は、その指名、どんな形であれ、大使になった人のいわゆる姿勢というか対応というか心構え、そういったものが、日本の国益というものを考えて、きちんと代表としてという意識を持っていないのが問題と言われるのは、私は愛知先生の意見と全く同じであります。

 少なくとも、そういった意識を官僚としてきちんと持っておくというのは、これは何も外交官に限らない話なんであって、官僚全般に要求されてしかるべき意識なんだと思いますけれども、今言われましたように、ましてや大使ともなれば、日本国内ではなくて海外で、日本の全権大使として行っているという自覚の上に成り立つものは国民の代表、その意識は持ってしかるべき、当然だと思います。

愛知委員 大使というのは、外務省という一役所の中の人事で決められるべきものではないと私は思うんですね。外務省の人事じゃないですよ、これは。それはむしろ、国民全体の話だし、国会で承認をするということにふさわしいものだと私は思えるわけです。

 今の日本の体制ですと、一番大もとには憲法があるんでしょうけれども、大使の任命に対して国会の承認を得るというプロセスが組み込まれていませんから、今の状態ではしようがないんでしょうけれども、僕は、その辺を変えた方がいいんじゃないか、そんな気がしてなりません。

 それに関連するんですが、ちょっとこれは、何年か前の話ですが、駐英大使の問題が問題になったことがあります。

 今のイギリス大使はだれですか。

塩尻政府参考人 お答え申し上げます。

 野上大使でございます。

愛知委員 この野上氏をイギリス大使に任命するということに関して一悶着あったのは御承知かと思います。この野上大使の人事をめぐって、当時の外務委員長、米沢隆先生ですが、民主党の委員長でございましたが、このイギリス大使の任命に対して委員長が特別に声明を出して、野上氏をイギリス大使に任命することに反対である、こういう委員長の声明を出しました。そして、この委員長の声明は、民主党の委員長の声明ではありましたけれども、自民党の中谷当時の理事等々の話によりますと、これは事実上の外務委員会の総意だと考えてもらってもいい、こういうことだった。

 なぜそういうことが出たかというと、外務省の中でいろいろな出来事があったりなんかしたことがあるわけでありますが、その理由はともかくとしまして、外務委員会で委員長がこの人事は不適格だというようなことを公式に言っているにもかかわらず、強引にそれを大使に任命してしまった。これは、国民の代表である、そしてしかも、外交を担当している外務委員会で、その委員長が反対だというのを押し切るというのは、先ほど言いましたように、国民の代表だとは言えませんよね、こういうことで大使になっても。

 私は、これは非常に遺憾なことだったと思いますが、いかがですか。

塩尻政府参考人 これも事実関係でございますので、私の方から答弁させていただきたいと思います。

 先ほど先生も述べられたとおり、大使の任免に当たっては、これは外務公務員法第八条第一項の規定によって、外務大臣の申し出により内閣が任免を行い、天皇が認証するということになっております。野上大使の任命についても、その手続を踏まえて行われたものだということでございます。

愛知委員 いや、手続の話をしているんじゃないんですよ。手続では、それは瑕疵がないようにちゃんと手続を踏んでいるでしょうけれども、大使というものはそもそもそんなような役人のレベルでの、事務手続にちゃんとのっとっていればいいというものじゃないということを指摘しているわけで、例としてこれを言っているわけであります。

 私は、大使というものを、主要国、全部じゃなくてもいいんですけれども、主要国の大使の任命に当たっては、今の制度ですと、国会の了承をとる、承認をとるということはできませんけれども、少なくとも、外務委員会に大使に任命された者を参考人として呼んで、大使としてこれからその国に赴任するに当たって、どういう心構えでやろうとしているのかということを委員会で意見を聞く。そこでそれを否認するという権限はないんでしょうけれども、しかし少なくとも、この人物は大使として、国民の代表として赴任をするのにふさわしいかどうかというのを外務委員会でやったっていいんじゃないか、そういう慣習をつくったらどうかと思うんですが、委員長、どうですか。

原田委員長 理事会も含めまして、また、私もいずれ政治家としても判断したいと思います。

愛知委員 ぜひ、そういう幾つかの前例をつくっていけばいいんですから。それで、そういうことをやるということになれば、大使になっていく人も自覚が変わってきますよ。そして、この大使という仕事のあり方が変わってくる。外務省という役所の中での人事ではなくなる。国民の人事になりますね。そういうことで、ぜひひとつこれを真剣に取り上げていただきたい、こんなふうに思います。

 ところで、大使の話ばかりやっていてもしようがないんですが、先ほどちょっと大臣言われましたけれども、アメリカの駐日大使ですね。今シーファーさんですが、その前は、しばらく前ですけれども、マンスフィールドさんだったり、それからモンデールさんだったり、あるいはフォーリー下院議長だったり、それからハワード・ベーカーもそうですが、いずれもアメリカの政治家の大物ですよね。アメリカの日本の大使というのが、マンスフィールドさんは院内総務だし、モンデールは副大統領だし、大統領候補にもなりましたし、そういったクラスの人が日本の大使になっています。

 それに対して、駐米の日本の大使というのは、今加藤大使ですが、加藤さんを個人的にどうこう言うわけじゃありませんが、これは外務官僚ですよ。政治家ではありませんね。僕はこれは全然だめだと思うんです。日本にいるアメリカの大使が政治家の大物であれば、アメリカにいる日本の大使といったらもっと大物じゃなくちゃいけない、日本の政治家として。僕はそう思うんです。

 そこで、麻生大臣、これからいろいろ身辺がにぎやかになろうと思いますが、麻生大臣がもし総理大臣におなりになったら、今の小泉総理を駐米大使にしたらどうか。そういう気持ちはありますか。

麻生国務大臣 これはたしか昭和三十五年のときだったと思いますが、岸内閣のときにもう今のような案は出ております。政治家をして駐米大使に充てるべきではないかというのは、たしか岸内閣の答弁だったか、岸内閣のどこかの講演だったかで出ております。

 私は、宮澤内閣が終わって小選挙区になりましたときに、あのときたまたま、解散になってから、クエールというアメリカの副大統領が日本に来て、その人と選挙の真っ最中に、約束どおり議員代表でゴルフせいと宮澤内閣に振られた。自分で解散しておいて、あなた、ゴルフだけおれにしろって、そんないいかげんな話はないでしょうと断りに行ったんですけれども、いや、これは約束だから何としても行ってくれと言われて、中選挙区最後の選挙だったんですが、行った記憶があります。

 そのときに、終わりまして報告に行って、ところで、これで宮澤内閣は終わるんでしょうから、この後駐米大使をやられたらどうですと直接申し上げたことがあるんです。うんと言われたので、これは受けるかなと思ったら、また電話がかかってきて、来いと言われて、今選挙やっているんですから、票にもならない官邸なんか行きませんよと言ってお断りしたんですが、いやというのでまた行った。この間のお申し出の件だけれどもとか言うけれども、お申し出の件も何も、選挙になって、もうすっかり忘れていましたので、お申し出の件て何でしたっけと言ったら、駐米大使の件ですがと言われて、ああ、受けられるんですかと言ったら、いや、いろいろ考えたけれども、僕はよく考えてみたら運転免許証を持っていないということに気がついて、やめさせていただきますと。初めて、この人、冗談の通じる人なんだなと、僕はそのとき一瞬そう思ったんです。

 この種の話は、過去に現実問題として幾つかあったんだと思いますけれども、実務をやる大使と、その種の何とか大使というんですか、そういったものと二つ大使を置いたっておかしくありませんし、いろいろなやり方はあろうと思いますが、ただ、私は、そういった方が話が早い、日米関係の間を円滑にやっていくのにいいからという面においては賛成、その点からは賛成しますけれども、アメリカが置いているから賛成なんて思う気は全くありません。

 イギリスは、フライという日本語のやたらうまいのが今大使に来ていまして、その前がスティーブン・ゴマソール、これも日本語のうまいのが大使で来ていました。そういった意味で、極めて事務能力にすぐれた上に外交能力もあるという外交官をしてイギリスは充ててきておりますので、国によってやり方が違うので、アメリカがやっているからといって、やるという気はありません。

愛知委員 外交というのはそもそも、そもそも論ですけれども、外交というのは行政じゃなくて政治なんですね。これは全く政治マターですよ、外交というのは。その言ってみれば頂点というか先端に立つ人が大使。大使の役割というのは政治なんですね。行政ではありません。行政の部分もあるでしょうけれども、メーンは政治なんです。そういうようなことが外務省には、非常に基本的には欠けている。外務省の役人はこの霞が関かいわいでも最も政治音痴だと言われていますが、これは全くおかしいんでして、最も政治的なセンスのある人間が外務省の役人でなくちゃいけない。

 そういうことで、今象徴的に言いましたけれども、もっともっと政治的なセンスのある人を積極的に大使に登用していくとかなんとかというようなことが求められていると私は思います。

 結構時間がなくなりましたが、最後になっちゃいましたけれども、一つ、マルチ外交のことをちょっと申し上げたいと思います。

 バイの外交とマルチの外交があるわけですが、マルチの外交というのは、その典型は国連ですけれども、国連というところは、私は日本の国会に非常に似ていると思っているんですが、理由はわかりますか。

麻生国務大臣 幾つかあろうと思いますが、一人一票。

愛知委員 日本の国会に似ていると私が言うのは、日本の国会では、最近多少は変わりましたけれども、当選回数が物を言います。

 それから、委員会の審議、特に本会議の審議などというのは言ってみれば最後のセレモニーで、物事はどこかで決まっていくわけですが、国連はまさにそうで、国連で物を言う、大きな存在感のある人というのは、長くそこにいる人なんです。

 ところが、日本の場合、日本の国連の代表というのはどんどんどんどんかわります。存在感がないわけです。バイの外交ですと、国というものを背負って相手の国とやるから、これはかわったって、まあいいんです。ところが、マルチの外交というのは人が問題なんです。国もさることながら人の問題で、したがって、そういう意味で私は、当選回数が物を言う国会と似ているところがあるということを言っている。

 それから、物事の決め方ですが、国連というのもあるいはマルチの外交というのも、いろいろなところでごやごやごやごやと、どこでどう決まっていくかよくわからない。最後に総会を開くときは、これは言ってみればセレモニーだ。それも国会と似ているところがある。そういうことで申し上げているのであります。

 私は、日本はもっともっとマルチの外交を重要視するという時代にならなくちゃいけない。その最もいいやり方として、具体的には、マルチを担当する外交官、大使を先頭としてですが、その下の人たちも、そうそう簡単にかえてはいけないということです。長い間そこにいて、人間として、その人物としての存在感を示すようにならないとマルチの外交はうまくいかない。そういう発想が、今のところの外務省の人事その他見ておりましても、全然ありませんね。そのことを痛感するんですが、そう思いませんか。

塩崎副大臣 今、マルチの大使というのは何人か日本にもおるわけでありますが、例えば地球環境の大使とかですね、先ほどの政府代表部はまた別、国連でございますけれども。

 大体、今の政府代表部の大使の在任期間はおおむね三年前後でありまして、役所の論理でいけばそう短いというほどではないということなんでしょうが、今お話ありましたように、国連の場合なんかは特に、この間、たまたま私は安保理に行ってまいりましたけれども、ロシアの外務大臣のラブロフは、代表部の大使を、国連の大使をやっていたんですね。これは何度もやっていて、先生おっしゃるように、裏の決め方というのを全部わかっていて、今イランの問題で非常に国際的にも心配していますが、こういった問題についてもかなり長い間の経験を持って今ロシアの代表で交渉している。むしろ我々と少し立場が違ったりして、何とか協力してもらわなきゃいけないということで苦労していますが、おっしゃるように、長い経験というものが物を言うという側面は確かにあるというふうに思います。

愛知委員 ぜひマルチ外交に取り組む姿勢、体制を一つ再検討していただきたい、このように思います。

 時間がなくなりましたので、最後に、外交というのはいろいろな意味で国益を追求するパワーゲームというところがあるわけです。そのパワーゲームのパワーとして一番簡単なのは軍事力ですが、日本は軍事力をもとにして外交を展開するという国ではありませんが、これから、特に今いろいろな意味で言われているのは、ソフトパワーというものが非常に大きな役割を果たす時代だと言われております。私は、日本の外交を推進していく上でも、日本のソフトパワーを使って外交を推進するということが大事だと思うんですが、日本のソフトパワーというのは何だと思われますか。大臣に伺いたいと思います。

麻生国務大臣 今、随分いろいろソフトパワーというものは出てきたと思っております。

 その中の一つに、今まで、三年前の五月でしたか、タイムマガジンの表紙に椎名林檎という人が載りました。椎名林檎と言われてわかっている国会議員は、その当時ゼロでした。国会議員に聞いて、あ、椎名林檎だと言うのは、やはり若い国会議員だけ。やはり椎名林檎がタイムマガジンの表紙になるというのは、多分、私の記憶ではソニーの盛田さん以外知らないんですけれども、それだけ日本のいわゆる影響というのが出てきて、日本という国の持っているイメージというものがアジアの中においてはこんなになっているんだという例が書いてあって、ソフトパワーのきわみみたいな形で、エクストリームソフトパワー何とかかんとかと書いてあったような記憶があります。

 その意味では、私どもの見えているところではない部分で非常な勢いで出てきていると思いますが、日本という国の持っているブランドのイメージ、日本という国のブランド、そういったイメージというものが、明らかに今までの金の部分とか、また技術の部分とか、そういう目に見える部分以外で自然と浸透していっている国の部分。また、この国に来た人たちの持つ、この国に来る前に持っていたイメージと来てからのイメージの違い、そういったようなものはいずれもみんなソフトパワーとしてなってきていると思います。

 その中でも、私は、一番この国が他の国に誇れる部分というのは、やはり他の国が今発展途上国として悩んでいる、例えば環境の問題とか公害の問題とか、その他いろいろありますけれども、そういう問題は、いずれも日本はかつて三十年前、四十年前に経験して、それをほぼ全部クリアして今日になっているというこの経験則というものは非常に大きなもの、魅力として、他の国から見ていると、あんなに資源のない国がというイメージになっている。そういった国家のイメージというのが、次第に今大きなソフトパワーとしての力を持ちつつあるのかな。

 ほかにもソフトパワーというのはいろいろありますけれども、私の今感じている、ぱっと言われたところのイメージで言わせていただくと、そういうところかなと思っております。

愛知委員 時間が来ましたので終わりにいたしますが、外務省にとってはいささか厳しいようなことを申し上げましたけれども、日本の外交、これからが本当の正念場でございます。その先頭に立つ外務省あるいは外交というのは、国民全体が挙げてやらなきゃならない課題でございますから、ぜひ外交に取り組む体制をこの機会に再検討というか、発想を変えるというか、いろいろな意味で新しい時代に対応できるような体制を整えていただきたい。お願いを申し上げて、終わります。

 ありがとうございました。

原田委員長 次に、伊藤公介君。

伊藤(公)委員 自由民主党の伊藤公介でございます。

 今、愛知先生の質疑を聞いておりまして、さすがに外務大臣経験者、大変いい提案だ、私もかねがね日本の外交あるいは大使というものはどうあるべきかなんということを考えている一人として、大変いい提案だなというふうに思います。麻生総理大臣が実現したら、どこがいいんですかね、愛知国連大使ですか、アメリカ大使か国連大使に……(発言する者あり)代議士を十分やり終えたら、ぜひ私からも推薦をしたいと思います。

 ところで、麻生外務大臣は、今、日本の皆さんが注目されるポスト小泉の一人、強力な候補者の一人であると思います。そういう、あすは日本のトップリーダーになる可能性のある大臣と質疑ができることは大変意味あることだ、やりがいもあることだと思っているわけです。そういう前提で、限られた時間ですから、数点質問をさせていただきたい。

 まず、麻生外務大臣は、もう数カ月後でありますが、総裁選に出馬する決意があるかどうか、伺っておきたいと思います。

麻生国務大臣 外務委員会でお尋ねいただくのに、外務大臣として答弁するという立場にあるということをまずお忘れないようにしていていただかないかぬところだと思いますが、今の御質問というのは、これは外務大臣に対する質問ではなくて、麻生太郎に対する御質問というように考えた上でお答えをさせていただくことになろうと存じます。

 十月三十一日に、前職の総務大臣から外務大臣に引き継ぎをしたときに、記者会見で同様の御質問をちょうだいしました。そのときに申し上げて、かれこれ六カ月少々がたちます。申し上げていることは、今同じことしか申し上げようがないんですが、私は伊藤先生のような大派閥に属しているわけではありません。私の場合は、自由民主党の党則によりますと、最低二十人の推薦がなければ総裁選挙に立候補する資格を得ません。私のところは最小派閥をもって理解しておりますので、その最小派閥で、二十人いないのに出るなどということは僣越のきわみ、まずこれが第一点です。

 もし、仮に二十人集まればという前提をつけた上でと申し上げて、もし二十人、出ろという方が集まれば、私としては総裁選挙に立候補する意欲はあります。そうお答え申し上げて、六カ月間ほぼ同じことを答弁していると思います。

伊藤(公)委員 私たちは、実際に同じ時代に政治に携わっているものとして、同世代の方が国際的に大きな影響力のある日本のリーダーになっていくというのは、世界にも影響力があるわけですから、ぜひ検討していただきたい。

 特に、麻生外務大臣、私は外務大臣になってからじっくりと講演を聞いたということはございませんが、大臣になる前に、数回麻生代議士の講演を聞いたことがございます。私の印象では、さすがに、会社経営をしてきた、そういう企業人として、非常に強い個人、あるいは国家に対する、非常に強い国家、そういう思想が底辺にあるなと。これまで日本の、特に戦後政治をずっと考えると、どうも個人も国家も寄り添っている。この国は泣けば助けてくれる。税制の上を見ても、これを、税をまけろと言うと、そうですかと言う。

 私も、ほんの一年ですけれども、アメリカで生活をして、アメリカと日本の違いは何かということを考えると、アメリカは、どちらかというと勇気ある者は非常に応援する、そのかわり泣いても余り助けてくれない。日本は、どちらかというと突出していくと非常にたたかれる、けれども、大きな声を出したり、泣けば、みんなが弱者救済で助ける、そういう部分がある。もちろん本当に救済しなければならない人は、これは政治で支えなければならないことは当然ですけれども、小さな親切大きな迷惑ということが最近言われましたけれども、結果として国は大きな赤字財政を抱えるということになった。

 私は、麻生外務大臣への政治家としてのみんなの期待というのは、やはり、一人一人の日本人が非常に独立をして個性で生きていく、限りなく自分の力で生きていく、そして、国家もやはり独立国家として、国際社会の中で日本が堂々と物を言う、そしてその責任も負っていく、そういう強い国家、そういうものを今時代は求めているし、リーダーの中で麻生外務大臣の、ある意味では期待をかけられているところではないかというふうに思います。

 若いころ、経営者として全国の青年会議所の会頭として、大変皆さんの、ファンもいる、麻生ファンも全国にいる。そういう中で、きょうは外務委員会ですから、外務大臣として質問しなければなりませんが、もし麻生外務大臣があすの総理になったとしたら、これはこの前の総裁選挙でも小泉総理と競ったわけですから、自分の外交はどうするのかということは、当然もうきちっとあると思います。もちろん、今、小泉内閣における外務大臣ですから、その範囲の中でやらなきゃならないということはもう承知の上ですけれども、もし私がこの国のトップリーダーになったらこんな外交をやる、麻生内閣の外交はこうだということを一言聞いておきたいと思います。

麻生国務大臣 伊藤先生、同業者として、当選九回、年も同じ、まあ似たようなところを我々は歩いてきた、似たような時代を我々はともに歩いてきたんだと思います。

 今その中にあって、私ども、同じ衆議院議員とか代議士とか閣僚とかいうのをやりますと、これは閣僚になると宮仕えみたいなものですから、上に社長がいて、下の課長や取締役クラスじゃなかなか物も言いにくいし、それは会社と一緒にやらないかぬ。ましてや外務大臣なんということになると、これは総理大臣と全然違う話はなかなか、これは言うと、途端に野党の方から待ってましたとばかりに閣内不一致という話を持ち出されるというのはもう目に見えている話ですから、そういった意味では、私どもとして、今の私の立場として言える範囲は極めて限られているという前提にして、まあちょっと国会が終わってからか立候補が決まってからか何かしないと、なかなか申し上げられないところです。

 ただ、今御質問のあった中で、今言っている中で、経営者の感覚からいえば、やはり政府は小さきゃいいというものじゃだめだと思います。小さくても強い政府です。それじゃなければ意味がない、私は基本的にそう思います、小さくても強い政府。

 そしてもう一つは、これは戦後日本が、結果としてですけれども、一貫してやってきたのは、やはり、経済的繁栄と民主主義を通して平和と幸福というのを達成してきた。これはよく英語でも講演するのが、ピース・アンド・ハピネス・スルー・エコノミック・プロスペリティーというのが、多分日本のナショナルコンセンサスみたいなものとしてずっと底流にこの数十年間あり続け、日本はそのとおり実行してきて今日の繁栄を築いた、私はそう思います。

 プロスペリティーとデモクラシー、繁栄と民主主義を両方といいますのは、多くの国々で、民主主義を早くに達成した国々の中で、今日に至るも全く繁栄の面からは遠く離れた国々というのは、吉良委員なんかよく御存じの中南米の中の国々には結構多く見られます。民主主義は達成している、だけれども、全然混乱、繁栄とはほど遠いという最貧国になっているというのは、デモクラシーだけじゃだめ、両方要るんだと思いますので、そういった意味ではこれが基本なんであって、日本はそのために、よく言われるように、魚を与えるんじゃなくて、釣り道具と釣り方を教えます、えさは自分持ちよというような感じでやってきたのが、今日、日本とのつき合いの多い国がアジアの中に多くありますけれども、それらの国々は間違いなく離陸していったというのは事実だと思っています。

 そういった意味では、単に資本を投下し、単に技術を移転し、単に金をというだけじゃうまくいかないのは他の大陸を見れば明らかだと思いますので、そういった意味では、アジアの中でやってきた日本の仕事というのは、それなりに、一歩下がって見てみると、多くの国々が評価をし、それが結果として、アジアといえば最貧国の代名詞のごとく言われた三十年、四十年前とは全く違ったものになってきたというのは、もっと日本として誇りに思っていいところではないか、私自身としてはそう思っております。

伊藤(公)委員 総裁を目指して頑張ってもらいたいと激励をします。

 なかなか麻生外務大臣は、答弁を聞いていても、時々はらはらするけれどもユーモアもあって、やはり日本の政治家の新しいタイプのリーダーだなと。ヨーロッパ、アメリカで、やはりトップリーダーの条件の一つはユーモアがあることだと言われていますけれども、そういう意味で、麻生外務大臣はあすのリーダーになる、非常に楽しみな、重要な要素を持っている候補者だというふうに思います。激励を送っておきます。

 そこで、これから日本はどういう外交を展開していくかという、やはり長期的な日本の戦略がなければならないというふうに思います。小泉内閣の外交は、日米関係というものもかなり緊密になった、あるいは北朝鮮問題でも一つの前進をした、これはもう小泉内閣でなければ、あるいは総理でなければできなかったかもしれない、もちろん解決しているわけではありませんが。しかし、そういうことと同時に、やはりぎくしゃくしているところも現実にあります。それは、日本には日本の主張がありますけれども、日本と中国、日本と韓国、アジア外交についてやはり私はこれから考えなければならない点があるんじゃないか、率直にそう思います。

 なぜそんなことを申し上げるかというと、もうこの世界にいる者ならだれでも当たり前のことでございますけれども、おわかりいただいているところでありますが、これから世界の舞台がどこになっていくか。

 例えば、アメリカ、カナダ、メキシコ、NAFTA、ここは今GDPが九百兆円ちょっとです。一年ほど前だと九百三十九兆円。それからEU二十五カ国、ここは一千兆円ちょっとであります。それからアジア三十九カ国、ここは九百二十九兆円。ですから、一千兆円前後、NAFTAもEUも、そしてアジアも、大体GDPはそう大きく違わないんですね。

 NAFTAの人口が四億九千万人、EUが大体四億五百万ぐらい。しかし、決定的に違うのは、アジアが三十六億八千万人。これはもう、経済も政治も文化も、アジアがこれからの世界の舞台になっていくことは間違いがありません。

 そのときに、日米は大事です。しかし、アジア外交も、ここにしっかりと日本がシフトしていかないと、やはり問題が残る。

 一九七二年、私が政治をそろそろやろうと思った時期のことでございますが、あのときに大変ショックを受けました。それはニクソンの訪中です。日本の政治家も日本人も、特に日本の普通の人たちはだれも考えていなかった。中国は敵だ、中共だと言っていたときに、一番頼りにしていたアメリカが全く日本に相談なしに、ある日突然、あれは二月、訪中をされました。米中関係が新しい時代を迎えた。日本は大慌てで、約半年後、田中角栄総理大臣が訪中をするということになりました。

 私は、外交というのはそういうものだ。自分の国の国益、そして中長期的に自分たちの国がどう世界の中で生きていくかということを考えて決断していく。だから、日米関係は大事です、けれども、アジアにもう少ししっかりとシフトをしていく必要が絶対にある。

 そうはいいながら、じゃ具体的にどうしていくのか。私は、麻生大臣が大変影響力のある日本の政治家ですから、そして、あした総理になるかもしれないという期待をかけられている人ですから、非常に具体的に申し上げたいんです。

 小泉総理は、日本に観光客一千万人と言いました。確かにふえましたよ、五百万から六百万に。しかし、観光客は、日本に来て、帰っていってしまうわけです。そこで、今、日本に次の時代の主役になっていく若い人たちが学んでいるのは、留学生で十万人です。そのほかに就学生、日本語を勉強して自分の人生に生かしていこうという人たちが、多いときには四万ぐらい、入管が厳しくすると二万ぐらいに一万、二万変わる。私は、日本の国家戦略としてこのことを考えなければならないときが来ていると思います。

 つまり、次の時代、その国に帰ってリーダーになっていく、日本で今学んでいる十万人を超える留学生や、そして、自分の限りなく大切なお金を費やして、日本に日本語を学んで人生に役立てようと思う人たちが何万といるわけですね。二万から四万ぐらいの間、前後しているわけです。しかし、その方たちが、日本に来て、日本に失望していく人たちもかなりいる。

 私は、例えば就学生を入管に任せておく時代ではない。外務省、文部科学省、経済産業省、厚生労働省まで含めて、国家戦略として、若い人たちが一人でも多く日本に来て学んで、そして日本に理解をしていただいて、将来とも日本とのかかわり合いを持って生きていくという若い人たちを、私は、この国が具体的にいろいろな面で支援していく必要があると思います。

 たまたま、ODAが官邸主導だということになりました。私はODAだけでできるとは思いませんが、ODAの国家戦略の中に、日本語を学んでいる人たち、学びに来る人たちをもっと政府を挙げて支援すべきだ。

 例えば、就学生は学割もききません。今、アジア、主要な国の人たちは、留学生とか就学生なんかを分けている時代ではありません。学びに来る人たちは全力で支援をする。むしろ、ぜひ学びに来てくださいということを大変どこの国もやっています。特にヨーロッパはそうですね。

 今、中国の北京大学に一番留学に来ているのは韓国ですよ。私は、韓国という国はこれからますます強い国になっていくと思います。

 私は、国内のことだけではなくて、例えば外務省もかかわっている、あるいは文部科学省が先生を送っている世界の日本人学校あるいは補習学校、今世界に百八十五校、これは補習校です。それから、日本人学校が八十五校あります。ここは細々と、日本の外交官や商社の方たちの子供さんたちが学ぶための、本当に小さな、拠点地しかありません。私はむしろ、ここを、現地の人たちも日本語を学んでいただけるような拠点にしていくべきだと思っています。

 こういうことを、国内あるいは世界の窓口を考えて、ちょっとこれは私は質問通告していなかったかもしれませんが、麻生外務大臣の決意を聞いたら、これはぜひ国家戦略としてこういうことを支援してもらいたいということをお願いしておきたいと思いますが、現在の外務大臣としてどうお考えか、簡潔にお答えください。

麻生国務大臣 基本的には、伊藤先生、日本の場合は、重商主義の時代を経ないでいきなり資本主義に突入していますので、資本の蓄積が足りない、加えて戦争にも負けた等々いろいろな例もあって、日本人がたくさん行ってから、じゃ学校をつくってやろうか、大体、金がないから、そういう発想なんだと存じます。

 しかし、例えば植民地でいけば、イギリスの例を引きますと、とにかくまず学校をつくり、病院をつくり、競馬場をつくり、ゴルフ場をつくり、政府をつくって、はい、いらっしゃいといって、どっとイギリスからシンガポールに、マレーシアに呼ぶのと全く違う。

 その中にあって、今学校の話をされましたけれども、私も全く今の話には異論はありません。異論ありません、その前提で。

 メキシコに学校があります。かなり貧しい学校なので、愛知先生と一緒にお供したので、今思い出したんですけれども、今からもう二十何年も前の話ですが、その学校には、実は日本人の学生よりメキシコ人の金持ちの子供が多いわけなんです。メキシコ人の金持ちが多い。何でメキシコ人の金持ちが多いのかといえば、日本人の学校に行けば、金持ち、貧乏人関係なく、全く関係なく、はい食事当番、はい炊事当番、はい何とかかんとかと、全部仕事を割り振ってくるんですよ。だから、子供たちは自分のうちにいたら女中さんやら何やらで全然しつけができないけれども、日本人の学校に行ったら必ずなるから、とにかく入れてくれ、入れてくれというのがすごく多い。全部日本語ですよ。それで出てきたやつがまた日本に来た。この間来ていましたので思い出したんですけれども。

 そういった意味で、私たちが思っている、単に日本語を学習すると同時に、その裏にくっついているいろいろなものを学んで帰るというのは非常に大きいんだと思いますので、私も基本的に今のお考えには賛成です。

伊藤(公)委員 時間が少なくなりましたので、ちょっと淡々と質問をさせてもらいます。

 日中問題をと申し上げましたけれども、今、日中、日韓の関係がいろいろ指摘をされているわけでありますが、たまたまきのう、遺族会の古賀会長さんが、外国人も含めてより多くの人々が我が祖国に殉じた英霊に参拝されるようにするには、戦没者ではない一部の英霊を分祀することも検討の対象となろうということを公の場で発言をされました。これは私は大変注目をすべきことだと思います。

 日本には日本の主張があることはよくわかります。そして、だれでもがどこに参拝するかは個人の自由です。しかし、そのことが日中や日韓の外交問題になっていることも現実です。

 私は、麻生外務大臣がこの靖国問題についてどうお考えになっているのか、そして、当然、好むと好まざるとにかかわらず、これはもう、あすの総裁選挙になれば、マスコミからはどういう対応をしますかということを言われると思います。私は、言われて答えるというのではなくて、今、外交問題にもなっている現実の問題をどうするかということをリーダーは考えなければならないと思いますが、外務大臣の御見解を伺っておきます。

麻生国務大臣 靖国神社にお祭りしてあるA級戦犯、B級戦犯含めまして分祀の話をよく政治家の方がされますけれども、一宗教法人に対して政治が介入するということはできません。したがって、靖国神社が言わない限り、こちらから介入して言うということは憲法違反になろうと存じます。古賀誠先生のお話も、それは遺族会の会長として言っておられるお話なんであって、衆議院議員古賀誠の話として考えると話をおかしなことにする、まず基本的にそう思います。

 したがって、靖国神社の分祀の話というのは、靖国神社ができないと言う限りはできないのでありまして、私ども政治家として考えるべきことは、少なくともこの靖国神社に祭られている英霊、また残された遺族の方々の立場を考えれば、静かにお参りができるようにしてくれるのが政治家の仕事だというのが、多分英霊側の言い分でもありましょうし、また遺族の言い分だと思います。

 したがって、そういったような環境をいかにしてつくり上げるかというのが政治家に与えられている仕事、そのように理解しております。

伊藤(公)委員 外務大臣がかつて同様の発言をされたことは私も承知しておりますが、もちろん宗教に対して政治が介入することはできません。しかし、日本のリーダーとしてこの靖国問題を何とか解決しなければ、現実に、それは我々がどう考えようと、隣国のアジアの国々がいろいろな発言をしてきているわけですから、知恵を出す必要があると私は思っております。

 ぜひ、来週カタールで開催される、日韓あるいは日中の外相会談も予定されているようでありますが、しっかりした心構えで、ぜひ麻生外相との会談が一つの大きなステップになることを私は期待しておきます。

 時間がなくなりましたので、せっかく防衛庁においでいただいておりますので、ちょっと質問を幾つか残しましたが、今度の日米協議の中で、東京、神奈川なんかも十万ぐらいのところが新しい騒音の対象になりました。私は、今度の日米の協議なんかをいろいろな基地問題とか何かに余り矮小化することもどうかと思いますが、しかし、現実に皆さんは協力をしていこうということでありますから。

 これは騒音に対して、いろいろ報告を聞きますと、住宅に対してだけ対応していくんですね。しかし、住宅ではない、病院や学校については配慮されるわけですけれども、例えば、道路が買収になるというときには営業補償は非常に大きいんですよ、個人の住宅よりは。ですから、そういう意味からすると、住宅だけの補償でいいのか。

 今これだけ環境が非常に問われている時代です。この基準ができたのは昭和四十九年です。その後、もちろん、今申し上げたような病院だとかあるいは弱者のような老人ホームだとか学校だとかいうところは対象になりましたけれども、そうではなくても、業務でも騒音で大変営業ができないというところも数々あるわけですね。そろそろ日本も、環境問題がこれだけ時代のテーマになっているときに、住宅だけだという時代でいいんだろうか。私は、きょうすぐどうしてくれとは申し上げませんけれども、我が国が国際的な役割を担っていくときに、国民の皆さんにもそういう思いでやはり政府が対応していく必要があるんじゃないかというふうに思います。

 質問をもう一つだけ。多摩サービス補助施設、これは多摩弾薬庫です。

原田委員長 予定の時間が過ぎておりますので、簡潔に質問をよろしくお願いします。

伊藤(公)委員 これは、東京都は知事も挙げてぜひ返還をすべきだということをかねてから言っておりますけれども、今度は協議の対象になったのか、それから、今後どう対応するのかを、大変恐縮ですが、結論的に伺っておきたいと思います。

北原政府参考人 伊藤公介先生に御答弁申し上げます。

 最初の住宅防音の関係でございますが、先生御指摘のとおり、私ども、現在、関係法令に基づきまして、特に静穏を要する学校などの教育施設あるいは病院などの医療福祉施設、そして日常の住民の皆さんの生活拠点である住宅を対象に防音工事をやっているところでございます。

 その状況について、一例として、厚木飛行場についてちょっと触れさせていただきますと、実は、現在の厚木飛行場についての助成対象区域の最終の指定日というのは昭和六十一年の九月でございまして、既に約二十年が経過しております。その間、航空機の騒音の状況にこれまた変化が見られたこと等踏まえまして、私ども、ことしの一月に助成対象見直しをいたしました。その結果、助成対象区域が大変拡大いたしました。

 具体的に申しますと、助成対象の世帯数も約九万七千世帯増加いたしました。さらに、私ども、先ほど先生、環境問題の御指摘もいただきましたが、この見直しにあわせまして、新たな施策といたしまして、いわゆる告示後住宅の一部につきましても、これを助成の対象といたしました。この数が約二千五百世帯ございます。そうしますと、合わせまして全部で、現在対象となっております十四万七千世帯が、約十万ふえまして、二十四万七千世帯になりました。

 この点につきまして、私ども、今日まで八十回にわたりまして住民の皆さんに説明会を実施してまいりました。大変関心が高うございます。我々といたしましては、こうした状況、また、厳しい財政事情の中でございますので、まずは住宅の防音工事、これを最優先で取り組ませていただきたいと思っております。

 そうした中で、今伊藤先生御指摘のように、環境問題が大変強く問われておりますので、先生御指摘の点につきましては、将来の大切な検討課題、そのように扱わせていただければと思います。御理解を賜りますようお願いいたします。

大古政府参考人 多摩サービス補助施設の関係についてお答えいたします。

 今般の在日米軍再編におきましては、東京都からの累次の要望もございますので、この施設の返還または共同使用にする可能性について、これについては米側と協議した経緯がございます。

 ただ、今後のお尋ねでございますが、今後につきましては、安保体制の目的達成という観点を踏まえまして、あと、日米合同委員会の枠組みを通じまして、この施設の実情を踏まえて適切な対応を行っていきたいというふうに考えてございます。

伊藤(公)委員 時間が参りましたので終わりますが、新しい時代の環境問題を含めた対応をぜひお願いしたいと思っています。北原長官も大変今度の問題で頑張ってこられたことに敬意を表しております。

 麻生外務大臣の御健闘をお祈り申し上げて、私の質問を終わります。

原田委員長 次に、篠原孝君。

篠原委員 民主党の篠原孝です。

 きょうは、排他的経済水域それから竹島問題について集中して質問させていただきたいと思います。

 その前に、今お二人の与党自民党の愛知委員それから伊藤委員の質問あるいは質疑応答を聞いておりましたが、非常に、やはり内容が違う、さすが重みがあるということをつくづく関心いたしました。こういう議論が外務委員会で続けば、ちょっと外務大臣は大変だろうと思いますけれども、非常にいいことではないかと思っております。

 それで、この前の委員会で、ちょっと私、どじをいたしまして、委員長不在のときに申し上げたことを委員長にぜひ繰り返してお願いしておきたいことがございまして、言わせていただきたいんですが、今このような議論をするのが外務委員会の役割じゃないかと私は思っているわけです。

 しかし、もう一つ、条約の審議というのがあるわけですけれども、ところが、条約の審議、海洋法条約というような大きな条約をここで一日、二日とかけるのは当然なんですが、私がこの委員会に所属させていただきまして担当いたしましたマレーシアとのEPA、これがだあっとほかの国とも続くわけですね。それから、刑事共助条約、日米に引き続いて日韓でしたけれども、それからいろいろな国と続いていく。それから、この間は、日印、日英の租税条約、これもずっと定型的なものが続いていく。

 このような条約も同じようにやるというのはやはり問題じゃないか。これは少なくして、手を抜くと言っては悪いんですけれども、定型的なのは時間を少なくして、やはり国際情勢一般について、きょうの今までの方々のような議論をここでしていくのが大切なのじゃないかと思っておりまして、外務委員会の審議のあり方についてぜひ御検討いただけたらということをお願いしておきたいと思います。一言お願いします。

原田委員長 大事な御指摘でございますので、しっかり委員の御意見、御主張も踏まえて、これからこの委員会の運営の誤りなきよう努めていきたい、こう思っております。どうぞよろしくお願いします。

篠原委員 それでは、本題に入らせていただきます。

 竹島問題、日韓関係に関連いたしまして、今の靖国神社の問題に関係しているわけですけれども、いろいろごちゃごちゃしております。しかし、私は、きちんとしている部分もいっぱいあるんじゃないかと思っております。

 どういうところかといいますと、歴史的認識だとかそういうややこしい問題じゃなくて、漁業、もう動いているわけですね。そういったところではきちんとしているんじゃないかと思っておりますけれども、竹島周辺にあります日韓暫定水域については、漁業の秩序というのはきちんと守られていて、竹島がどっちに所属するかというような、あれと同じようなごたごたはなくて、スムーズに動いているんでしょうか。

    〔委員長退席、土屋(品)委員長代理着席〕

塩崎副大臣 先生御案内のように、一九九九年に日韓漁業協定を締結いたしまして、そのときの北部暫定水域の中に今御指摘の水域が入っているわけでございます。

 今、日韓の漁業秩序は守られているのか、こういうことだろうと思いますけれども、韓国の漁船が主な漁場をいわば占拠する形になっているというのが実態でありまして、ズワイガニであるとかベニズワイガニを漁獲する我が国の漁船が思うように操業できていないというのが実態であると承知をしているところでございます。

 当然このことについてはいろいろ、外務大臣レベルでも何度も取り上げて、政府間協議を開催するように韓国に申し入れて、昨年の五月から日韓水産資源協議を始めました。これまで、部長・局長級協議を二回、それから課長級の実務会議を二回行って、今月の十六日から三日間、済州島においても課長級会議が開かれたということで、このときには、ベニズワイガニ、ズワイガニ、それからマサバ、マアジの資源管理に向けた両国の協力について協議をいたしました。引き続き協議をしていこうということになって、六月から七月にかけて、また、部長・局長級の会議を行うということになっております。

 いずれにしても、秩序をきちっと打ち立てて、資源管理を早期に確立できるようにしなければならない、こう考えております。

篠原委員 やはり、余りきちんとしていない面があるわけですね。

 それで、こんなことを言っては悪いんですが、哲学論争的なものでわあわあ言っている部分では余り実害はないんでしょうけれども、漁業者のところには直接被害が及ぶわけです。こういったところをやはり考えていただかなくちゃならないんですが、新聞報道に、漁業者が困っているようなことはほとんど書かれないわけですね。ですから、我々はそこを慎重にやっていかなければいけないんじゃないかと思います。そういう点では、竹島問題の解決に向けて外務省が真剣に取り組んできたのかどうかというのはちょっと疑問なんですが、真剣に取り組んでいただきたいということで質問させていただきます。

 海洋法条約第八部「島の制度」というところに百二十一条がございます。その第三項に、島というのはどういうのかという定義があるわけですね。その大事なのがありまして、人間の居住または独自の経済的生活を維持することのできない岩は排他的経済水域や大陸棚が持てないと書いてあるわけです。こういうことからしますと、これを厳密に読みますと、だれも住んでいない、今は韓国人の漁民夫婦が住んでいると聞いております、それから尖閣列島とか、これを言うと余りよくないのかもしれませんけれども沖ノ鳥島とか、これは海洋法条約上、この島の制度の、この条約を厳密に解釈すると島とは言えないような気がするんですが、その点については、外務省はどのように解釈されておられるんでしょうか。

塩崎副大臣 今、海洋法条約の百二十一条の三項について御指摘でありますけれども、その前に百二十一条の一項及び二項というのがございまして、自然に形成された陸地であって、水に囲まれ、高潮時においても水面上にあるものを島と定義する、このような島を基点として、排他的経済水域及び大陸棚を設定することを認めているというこの百二十一条の一項と二項、これがまずあるわけであります。

 今、三項の御指摘でありますけれども、これは今お話しのとおり、「人間の居住又は独自の経済的生活を維持することのできない岩は、排他的経済水域又は大陸棚を有しない。」こう書いてあるわけでありますけれども、これは、現実に経済活動が行われていなくても排他的経済水域や大陸棚を有することを排除するものではないというふうに考えておりまして、この一項と二項の方からEEZと大陸棚を設定するということだろうと思っています。

篠原委員 今私もその条文を持っているんですけれども、海洋法条約というのは、実は妥協の産物で、日本の法律のようにきちっとできていないんですね。寄せ集めでできていまして、第三項は後からくっつけられたものなんです。ですから、それぞれに解釈していっていいんですけれども、やはりこういった条文等をもとにしながら、日韓関係をスムーズにしていく、その上から手を打っていく。

 片方では、私は、一つの考え方として、島とは認めなくて境界を画定していくということも考えられる、ある島については。もう一つの島については、きちんと日本が経済活動を営んでいるということを明確にするためには、韓国が今漁民夫婦を住まわせている、この条文のことを気にしているんです。それと同じように日本もいろいろ手を打っていくべきじゃないかと思うんですけれども、外務大臣、いかがでしょうか。

塩崎副大臣 竹島に韓国の方が住んでいるというお話はもちろん承知しているところでありますけれども、我々は、やはりあくまでもこれは島というふうに理解をしているわけであって、そこに住んでいようと住んでいまいと、島という認識は変わらないというふうに考えているわけです。

 さっき沖ノ鳥島のお話がございましたけれども、これも、日本としては、いろいろな措置をとりながら、我が国の領土の一部として有効活用すべきだということでいろいろやっているわけでありまして、住む住まないに関係なく、島は島ということで私たちは政府として理解をしているというふうに考えております。

篠原委員 私も別に島じゃないと言い切れと言っているわけじゃないんです。島でいいんだろうと思います。そのかわり、領有権をちゃんと主張していくには、韓国は第三項も気にしながら、そこでクレームをつけられないように自国の漁民夫婦を住まわせているわけですね。そういうことを考えたら、同じ手を打っておくべきだ。例えば具体的なことでいいますと、尖閣列島にはかつてサバの缶詰工場があった。今はだれも住んでいないわけです。しかし、それはちょっと気を使って、人を住まわせるとかいうようなことも考えるべきだと思います。

 それから、その延長線上でなんですが、日本はそういう配慮が足りないわけですけれども、ヨーロッパでは中山間地域に対する直接支払いというのが大分前から行われているわけです、条件不利地域において。これはもちろん、農業をやりづらい、そういうことにはお金を出していいんだというコンセンサスが得られているんですが、日本はそれがないので、あちこちの山村はずたずたになっているわけですね。

 それで、都市と農村の格差、都市と山村の格差というふうになっているわけですけれども、ヨーロッパではもう一つ大事な観点があって、直接支払いが行われているんです。それはどういうことかというと、国境紛争があった場合、その国の人たちがその山の中、国境のところに住んでいる、それが大事な主張の根拠になるわけです。ですから、住んでいていただくというために、住んでいられるように、みんな引き払っちゃうことのないように、お金を出して住んでいてもらっているという感じになっているんです。それは、あからさまには言いませんけれども、根底にはそういった考え方があるから、国民もそれを認めている。

 それを日本に当てはめたら、山の中の国境は日本にはありませんけれども、離島はまさにみんなそういう役割を持っているわけです。そこに住んで生活していただいている。サトウキビしかない、漁業しかない、なかなか住みにくい、だけれどもそこにお金を出して住んでいていただく、それが我が国の領海を主張する根拠にもなるわけです。そういった政策手段をとっていくべきだと思いますけれども、これは外務大臣に答えていただきたい。外務大臣、いかがでしょうか。

麻生国務大臣 今の百二十一条の件につきましては、今答えがあっておりますとおりなんで、篠原先生よく御存じのように、こういうのは妥協の産物でつくり上げていく、国際法は皆何らかの形でそれぞれの利害がぶつかりますので、そういうことになっていくんだと存じます。

 今、中山間地を例に引かれて、島に人が住んでもらう必要性というのは、これは基本的に正しいと私は思っております。したがって、離島というものに関して、今一番小さいのはどこですかね、青ケ島の百二十一人かな、これが多分行政体で一番小さい、東京都下青ケ島村、あれが百二十一人だと思いますけれども、あれに住んでもらうというのは、やはりそれなりにいろいろ努力をしているんだと思います。

 今言われましたように、日本の場合は国境線が海、したがって島ということになろうと思いますので、そういった島に、不便であろうとも、そこに住んでいてもらうことによって国境線ということがきちんと言えるという観点というのは、忘れちゃならぬ大事なところだと存じます。

篠原委員 こういうのは金額でどうこうというのではないんですけれども、同僚の松原委員が五月十日の外務委員会で、千百六十万円ですか、それと四十一億円の論争がありました。やはりそういったことをきちんとしていかなければいけないんじゃないか。あのときは調査だとかなんとかいうのでしたけれども、その前に、住んで生活していただくときのことを考えていただきたいと私は思います。

 それで、今皆さんのお手元にお配りしています表を見ていただきたいんです。いつも篠原孝と名前が書いてあるんですが、きょうは書いていないので恐縮でございますけれども、海洋法条約に基づく国内法整備というのを、一体どういうふうに行われたかというのをちょっと整理いたしました。例によって私がつくりまして、役所の方にチェックしてもらったりしていないもので、ちょっと抜けたりしているのがあるかもしれませんけれども。

 海洋法条約は一九九六年に締結されました。国会で承認されて、七月二十日が海の日にというので一斉に施行されました。やはり漁業の方が切実なんで、というか気のきいた課長がいたせいかもしれませんけれども、きちんと整備がされているんですね。

 ところが、経済産業省のところを見ていただきたいんですが、深海底鉱業暫定措置法というのができて、これはマンガン団塊とかもやれるというのをちょっと前に同じようにつくっているんですね。しかし、何も法的な整備をしていないんですね。

 それで、国土交通省の関係でいいますと、海洋汚染等の防止、この法律を直さなければならないというので直しているんです。

 せっかく二百海里を引いて、我々少ない領土ですよ、しかし領海は日本の国土の十倍以上あるわけです。資源が眠っていると思う。しかし、日本の産業界、特に経済産業省、目ざとい役所なんですけれども、だめなところがありまして、金さえ出せば何でも手に入ると思っているわけです。だから自前の資源を開発しようなんて全然考えなかったんですね。これがこの法律のところにあらわれているんだろうと思います。ですから、おくれおくれで来てしまって、中国にちょっかいを出されて今困っているというふうになっているわけです。

 それで、海上保安庁ですけれども、今漫画の「海猿」ですか、脚光を浴びているそうですけれども、そこでいろいろ調査しようとされた。しかし、これも、韓国が、海底地形名称に関する国際会議がドイツである、それに韓国名をつけるという情報が入って、それで受け身で調査に行っているわけですね。やはりこれではだめなんだろうと思います。

 事情はそこそこわかっておるんですが、二〇〇九年に予定されておる大陸棚限界委員会にちゃんと報告しなければいけない。ですから、大陸棚の方に専ら関心が行って、そちらの方を中心に調査していたということですけれども、やはりきちんと今何が問題になっているかというのを見据えて、海上保安庁も前広に海底調査をしていただかなきゃならないと思うんですが、そういう態勢になっておるんでしょうか。

石田大臣政務官 お答えさせていただきます。

 御指摘のように、海上保安庁は、今日まで、広大な海域について順次必要な海洋調査を実施いたしておりまして、最近では、特に御指摘のように大陸棚調査のため、太平洋側の調査を推進いたしております。

 今後とも、海図を作成する等のために必要な海洋調査につきましては、関係省庁と緊密な連携をとりながら適切に実施してまいりたいというふうに思っております。

篠原委員 はい、わかりました。広いわけです。範囲が広がったんです。ですから、調査がおくれている理由として調査船が少ないというのがあるわけですから、来年度予算に向けて、今回の事件をてこに、財務省に調査船の数を多くしろという要求をするなりして頑張っていただきたいと思います。

 資源エネルギー庁の関係ですけれども、これはやはり問題だろうと思うんですが、日の丸石油というので石油公団をつくって、金ばかり使っているという批判はありますけれども、私はある程度仕方がないんだろうと思います。食料もそうです。軍事もそうです。そういうものはみんなパラレルに本当は考えなくちゃいけないんですが、どうも違う。

 違うというのはどういうことかというと、軍事的には非常にタカ派の人が、食料なんかどうでもいいということを平気で言うんですね。ヨーロッパ人はこういう非論理的な考えは全くしないんです。自前でやろうとしたら、軍事的にも自前である程度やる、エネルギーも自前で、食料も自前でと。ところが、産業界の人たちは自前という概念がないんですね。他人のふんどしで金さえもうければいい、そういう調子でやっているんですね。

 これがこの法律のところにもあらわれているんじゃないかと思います。全然、国内の鉱物資源、あるいは石油会社、天然ガスの会社をバックアップして開発体制を整えようというようなことをしてきた形跡がないんですけれども、なぜこういうおくれたようなことばかりしてきたんでしょうか。この間、そういうことを念頭に置いて努力されたことがあるんでしょうか。

近藤政府参考人 お答えを申し上げます。

 まず、先ほど、経済産業省は非常に対応がおくれているのではないかという御指摘をいただいたわけでございますけれども、この海洋法に基づく国内法の整備ということで申し上げますと、農林水産省の欄に書いてございます排他的経済水域及び大陸棚に関する法律というのがございます。この法律の中で、次に掲げる事項は我が国の法令を適用するという条文がございまして、その中には天然資源の探査、開発ということが書いてあるわけでございます。

 したがいまして、大陸棚、排他的経済水域、いわゆるEEZ法ができましたときに、これまでも通常の場合に適用していた国内の鉱業法が使えるようになるという形になりましたので、排他的経済水域及び大陸棚に関する法律ができた際に、そこからは鉱業法が直接適用できるということで特段の法律が必要なかったというように理解をしておるわけでございます。

 それから、我が国がいろいろと対応がおくれているのではないかという御指摘につきましては、少し御説明をさせていただきますと、我が国は、平成八年に今御指摘の国連海洋法条約を批准したところでございますけれども、その以前から、排他的経済水域の資源の重要性というものは認識をし、資源探査等の開発をやってきたところでございます。

 具体例を少しだけ申し上げますと、例えばコバルトリッチクラストというものがございます。専門用語なので少し解説をさせていただきますと、海の底に存在する山でございます、海の中の山みたいなところ、これを海山と言うんですけれども、海山の表面に数ミリから十センチメーターぐらいの厚さでアスファルト状に酸化物が付着をいたします。その酸化物がコバルトとかニッケルといった希少金属を含有しておるわけでございまして、こういったものがございます。例えばそのコバルトリッチクラストにつきましては、昭和六十二年度から、南鳥島周辺の海域を中心に賦存状況の調査を行っております。

 それから、石油天然ガスにつきましても、排他的経済水域内におきまして、例えば、昭和四十年代から探査を行いまして、福島県のいわき沖でございますけれども、生産が具体的に八四年からスタートをしておるわけでございまして、現時点で二億四千万立方メーターぐらい、日本の消費量の〇・三%ぐらいの生産ではございますけれども、天然ガスの生産も進んでいるわけでございます。

 こういうところも含めて、いろいろと調査をしているところでございます。

篠原委員 やってきているというお話ですけれども、やはりほかのものと比べたら少ないんじゃないかと私は思います。皆さん、多分そう認識されるんだろうと思います。

 同じような答えも予想できましたので、これをよく見てください。鉱業法がちゃんとあって、適用できるようになっているといいますけれども、それは漁業法が存在しているのと同じで、この表を見ていただければわかりますが、これじゃ、やったことにならないんですね。だから、おくれをとるんです。

 ですから、こういうところをきちんと国内で、そんなに大した資源はないかもしれません。しかし、自前でやるということをある程度考えていただかないとよくないんじゃないかと思います。

 これはお答えいただかなくていいですけれども、今、コバルトリッチクラストというのがありましたけれども、その前に、マンガン団塊もあります。熱水鉱床というのもあります。それから最近は、メタンガスハイドレートという、石油天然ガスなんかの何倍もある資源があるかもしれないと言われているわけです。こういったことをやはり日本こそ真剣に取り組んでいくべきじゃないかと思いますので、その点、しっかりやっていただきたいと思います。

 それで、こういったことをいろいろ考えていきますと、日本は海洋国家と言われています、しかし、それに対する準備態勢がなかなかできていないんですよね。竹島問題に戻りますけれども、こういう問題をほっておくべきではないんだろうと私は思います。

 国際司法裁判所があります。そこに、かつては小田滋さんという世界的権威がいましたし、今は小和田さんが行っておられます。こういったところにきちんと訴えて、決着をつけるというような準備をしていくべきじゃないかと思うんですけれども、外務省はそういった準備をされておられるのでしょうか。

麻生国務大臣 今、篠原先生御指摘の、日本が抱えております領土問題は二つです。竹島、北方四島、この二つがいわゆる領土問題ということになろうと存じます。

 いわゆる国際司法裁判所と言われるところがあります。紛争を起こしておりますのは大体両国ということになろうと思いますので、このところで、当事者が同裁判所において決着を求めるということを双方で合意しない限りは、受け付けてくれぬわけです。

 篠原先生、ここが最も話を難しくしておるところであって、日本はこれまでに、一九七二年、北方四島問題でやろうといたしました。一九七二年なんですが、そのときは大平外務大臣だったと記憶します。そのときに、いわゆるICJ、国際司法裁判所にこの話を持ち出したんですけれども、ソ連のグロムイコという首相が当時外務大臣だったんですが、そのときは拒否しております。

 それから竹島は、同じく、一九五四年の九月二十五日、口上書をもって、竹島問題につき、ICJに付託することということを韓国側に提案しておりますけれども、この際も、韓国受け入れず。それ以後、一九六二年に、日韓外相会談のときにも同じくこれを提案しておりますけれども、韓国側は受け入れず、現在に至っておるというのが、このICJがなかなか使えないところなんです。

 私どもとしては、それはそれとして、この北方領土問題と竹島というのは明らかに領土問題ですから、とにかく、受け入れられないと受け付けてくれない、両方じゃなきゃ受け付けてくれないとはいえ、日本としては、粘り強くやっていくしかほかに方法がないということだと存じます。

篠原委員 努力はされているというのはよくわかりました。

 日本は非常に国際条約には従順ですし、一番守っておるので、多分、日本はそういうことをされておられるのだろうというのは大体予測できます。ですけれども、やはり相手が土俵にのってくれなければだめだ、土俵にのるような努力をぜひしていただきたいと思います。

 この関係なんですが、こういうのは難しいんですが、いろいろな国とやっていかなくちゃならない。外務大臣は大変だろうと思いますけれども、今、大平外相というのが出てきましたけれども、外務大臣をやられた方の半分以上は総理になっておられますので、そういう気持ちでぜひ取り組んでいただきたい。

 もう一つお願いするのは、この後、山口委員が米軍再編問題について質問しますけれども、その関係で、ちょっとそれは伊藤委員にも関連するんですけれども、私は、環境問題というのは非常に大事な問題になっていると思うんですよ。ですから、それを常に念頭に置いて、環境ということを外交でも防衛でも、いろいろなところでやっていただきたい。

 その一つとして京都議定書があるわけです、日本がいろいろやってリーダーシップをとっている。ロシアが突然入って京都議定書は発効したわけです。ロシアが入った理由は、それは完全にはわからないんですが、ロシアはWTOに早く加盟したい、しかし、EUからごちゃごちゃ言われている。EUは、ちゃんと早く京都議定書に入れ、そうしたら、ごちゃごちゃ言わずにWTOも入ってもいい、そういうことが行われたんだろうと言われているんです。こういうことは日米関係でもぜひ考えていただきたいと私は思うんです。

 アメリカは、大統領は何か発音が苦手だそうですけれども、ニュークリア・ノンプロリファレーション・トリーティー、NNTですね、ここら辺のところ、イランの問題でごちゃごちゃ言って、入らなくちゃいけないとか言っている。ところが、NNTのところにおけるわがままを垂れている国と同じなのが、京都議定書でいえばアメリカなわけです。インドと中国が入らないと経済活動が停滞するなんて、そういうへ理屈をこねて、絶対入ろうとしないわけです。

 安全保障問題は何もテロとか核だけじゃないんです。安全の問題は、これは環境問題、特に地球環境問題は時限水爆とか時限爆弾と言われているわけですね、徐々に徐々に地球全体の生命を脅かすと。これは本当に考えてもらわなくちゃいけないわけです。

 ですから、あらゆる交渉の機会をとらえて、アメリカに京都議定書に入るべきだというようなことを言ったりすべきだと思うんです。この前、2プラス2の会合等ではそういうことは念頭になかったんだろうと思いますけれども、ぜひ私は、外務大臣に、いろいろな場でもってアメリカにちゃんと入ってくれというようなことを言ってしかるべきだと思うんですが、大臣はそういうことを常日ごろお考えになっておられるでしょうか。お考えになっておられなかったら、ぜひ、そういうことを念頭に置いて、いろいろな場で言っていただきたいということをお願いしたいと思います。いかがでしょうか。

麻生国務大臣 二〇〇一年に、この京都議定書というのは日本のリーダーシップでスタートしておりますけれども、今御指摘のように、問題物質を一番排出していると言われるインド、中国、アメリカ、ロシア、この四つの国が当時入るのを拒否ということで、発効しない。事実、締結はされても発効しないというような形だったのが、今言われましたように、ロシアの参加で一応発効することになりました。

 しかし、私どもとしては、いろいろな機会をつかまえて、この京都議定書に対するアメリカの参加というのは、歴代外務大臣はみんなやっておられる、まずこれは確かだと存じます。川口大臣の場合、御自分でスタートしておられますから、特にそうだと思いますので、私どももこれは基本的には同じで、当時、アメリカは、いわゆる経済的な影響がやたらでかいということと、地球温暖化に関する科学的知見が不確かという二つの理由だったと思います。

 この間のときは、思い出してみろと。省エネのときに、マスキー法のときに、マスキー法をクリアしたのは日本だけ、おたくは途中でやめた。しかし、マスキー法をクリアした日本は、今、省エネ技術で最も大きな経済を稼ぎ出すに至ったというのを結果として、今回は、環境技術ということで、おれたちがまたいけるかもしらぬことになりはせぬかという話までしたぐらい、結構この話はいろいろ取り組んではきておるということなんだと思っております。この間の2プラス2のときには、私ども、ちょっとほかの方もいらっしゃいましたので意見をそれだけ申し上げられませんでしたけれども、その前のときには、いろいろな機会のときにこの話はしております。

篠原委員 外交は持続性というか、パーシステンシーというか、しつこさが必要です。領土問題もそうですけれども、こういった問題は常に、いろいろな場で、関心があるんだということを言い続けていただきたいと思います。

 時間になりましたので、終わらせていただきたいと思います。

土屋(品)委員長代理 次に、松原仁君。

松原委員 既に、最初の段階で、丸谷委員からも質問があったわけでありますが、報道によりますと、北朝鮮がテポドン二号の発射準備、こういう話になっているわけであります。大臣の答弁で、既にそういった動きを知っていた、こういうことでありますが、北朝鮮の今のこの動きに対して、政府として、これは何もしないで黙認をするのか、抗議をするのか、何らかのアクションをとるというふうなことは大臣はお考えでいらっしゃいますでしょうか。

 通告しておりませんが、ちょうどテポドン二号の話は飛び込んできた話でありますので、外務省のリーダーとしてのこれに対しての、今言った北朝鮮側に対して批判をするのか、抗議をするのか、大臣の御所見をお伺いしたい。

麻生国務大臣 私の場合、先ほどテポドンの開発の状況等々含めて、これまでも情報の収集というのを鋭意行ってきたというのは事実だと思いますけれども、それを一般的な意味で述べたんだというぐあいに御理解いただいた上で、今、実際発射されたらどうなるかという話を聞いておられる……(松原委員「発射する前の、この段階」と呼ぶ)今の段階で。今の、前の段階では、ちょっと正直言って、今の状況というのは、これは残ると話が難しいんですが、どうしても知りたいというんだったら別のときに聞いていただかないと、なかなかちょっと言えぬと思いますね。

 ただ、私どもの持っている情報というのは、今持っております具体的内容というのは、今の情報収集活動の今のものしかありませんので、現実にどれぐらいいっているかという確証がないというのも事実なものですから、今の情報だけでお答えというのはなかなか難しいということだと存じます。

松原委員 発射された後で抗議をするというのは、それはそれで一つの考え方かもしれませんが、発射された後では、後の祭りという日本語がありますが、後の祭りでありますので、やはり向こうも発射するかどうかはわからぬわけですよ、駆け引きでありますから。発射は恐らくしないかもしれない。そういうふうな準備ができて、やりますよと。日本が例えば北朝鮮に、経済制裁法案の具体的準備に入りましたと言うだけでこれは圧力になるわけですよ、そのことが外交的なメッセージになって。

 北朝鮮がこれをして、衛星写真とかで撮られているんでしょう、これに対して日本の政府が看過して何もしないとなれば、やはりこれは、それを認めちゃいないんだけれども、認めたかのように見えるかもしれない。発射されてはいないけれども、この段階で日本政府としては、このテポドン二号、既にこれだけ報道されているわけですから、一般の我々国民も知っている、我々国民も知っていて、ああ、外務省何かするのかなと。何かこれに対して、ちょっとそれはおかしいじゃないかと言うのか。外交ルートの話でどういう表現を使うのか。しかし、もっと言うならば、これは水面下ではなく、目に見える形で日本国の外務省としての何らかの主体的な行動があってしかるべきだと私は思うんですよ、報道されていますから。

 そういった意味で、何らかの行動をこれに対して目に見える形でとらないんですか、こうお伺いしたので、とる、とらないでお答えいただきたい。

麻生国務大臣 今言われましたように、明らかな平壌宣言に関する違反ということになりますと、これは明らかに違反ですから、ちょっと待てということになるんだとは思いますが、今の持っております情報というのは、確かにそこに持ち込まれたまではわかっておるんですけれども、それ以後のところは、実は正確なところがわかっているかというと、いろいろな情報というのを収集していますけれども、今持っております一般情報というのは錯綜している部分もあります。

 したがって、もしされたらという話は私どもとして考えてはおりますけれども、されたらこうしますとまで向こうに既に伝えたかといえば、そこまでは伝えてはおりません。

松原委員 この報道が間違っていれば、報道は間違うこともありますが、しかしながら、どうも今回は間違っていないんではないかという議論の方が、アメリカも含めての議論で出てきているようであります。

 であるならば、今大臣がおっしゃったように、この平壌宣言を誠実に履行するという精神に反する、極めて疑わしい行為であるという不快感ぐらいは、私は、麻生大臣、ここで表明した方がいいと思うんですよ。お答えいただきたい。

麻生国務大臣 今の段階で、いや、これはおれたちは訓練のつもりで一応と言って、別におまえ、まだ液体燃料まで入れていないじゃないかとか、いろいろ言われるとは思いますけれども、確かに、おっしゃるように、そういうような報道があるけれども、まさか平壌宣言に違反することをしようとしているわけじゃないだろうなという程度のメッセージを向こうに伝えるというぐらいのことはやっておいた方がいいのかなという感じはいたします。

松原委員 我々は、拉致問題を通して、国家性善説が北朝鮮には当てはまらないということを明らかに認識をしているわけであります。

 私は率直に言って、今だって北朝鮮の金正日主席がこの拉致事件の恐らく首謀者だろうというふうに思っています。あの国家において、彼が首謀者で動かない限りにおいてあの事件は起こり得ないですよ。アメリカの方のこの小委員会でもいろいろな議論があって、北朝鮮はまさに、ここに書いてありますよ、同国は紙幣偽造などで成り立つ違法体制だという説明がゼーリック米国務副長官からもなされている。これも報道でなされている。そういう国家でありますから、疑わしきはまあ許してやろうというケースと、疑わしきは厳しくいくべきケースとあるけれども、北朝鮮というのは、今回のそれが今言ったテポドン二号のそういうことに使われるものである可能性があるとなれば、黒と思った方がいい国家ですよ、今までの経緯から見たら。

 だから、私は、麻生大臣は今ここで御答弁なさったわけで、極めて北朝鮮の今回のこういった動きは平壌宣言の誠実な履行に反するおそれがある、それは外交ルートで伝えるとしても、この当委員会ではそのことをもう一回確認したい。おっしゃってください。

麻生国務大臣 日朝平壌宣言に違反するというような行動に見られるということを問題視しているんじゃない。見られることまで言えませんから。もし平壌宣言に違反するようなことがあれば、明らかに日本との約束上の違反というのが明確になるのであれば、これはちょっと平壌宣言そのものの不履行になるということで、きちんとした警告を発するというようなことは十分に検討するに値すると存じます。

松原委員 では、今回の事柄が実際どうかというのは政府にどこかで判断してもらう。いや、白でもないし黒でもないというのはそれは許されないことですから、白黒判断してもらって、黒と判断した場合はそういったメッセージを送っていただく、こういうことでよろしいですか。もう一回御答弁いただきたい。

麻生国務大臣 黒と判断が出たら、今申し上げたような対応になろうと存じます。

松原委員 これは白か黒かの判断というのは必ず行わなければいけないと思うんですが、そのこともお約束いただけますか。

麻生国務大臣 これは情報収集にある程度の限度はあろうと思いますけれども、白か黒かはかなり明確にわかり得るものではないのか。いわゆる諜報のプロではありませんので何とも申し上げられませんけれども、かなりわかるのではないかという感じがいたしますので、黒という判断をする情報が確実になった段階で、先ほど申し上げたようなことになろうと存じます。

松原委員 極めて重大な決意だと思って聞いておりました。

 今回、恐らくこれは黒でしょう。あとは、黒という判断をいつするかという問題でしょう。そのときは毅然として、平壌宣言に極めて不誠実であるということの抗議を私は政府として上げるべきだということをまず冒頭申し上げる次第であります。

 さて、そうした中において、民団と総連と通常言われておりますけれども、日本在留の韓国の皆さんの組織と北朝鮮の方々の組織が歴史的な和解をしたというふうに、これも大きく報道されました。

 私はいろいろな思いがあって、なぜこの時期に和解をしたのか、そして、この和解が意味するものはどういうことなのか、こういったことの質疑をしていきたいと思いますが、まず、概観として、このことについて大臣の御所見をお伺いいたします。この和解に関してのコメントです。

麻生国務大臣 長い話になりますので、全部はしょってすんなりとれば、よかったな。本当か、何か裏がありはせぬか。両方有しているのが率直なところです。

 その経緯を説明するとすごく長くなりますので、もうちょっと別に時間をいただかぬといかぬということになろうと思いますが、素直に見るところと何か裏があるのかなと思うところと両方、その説明を要求されると、これはすごい長い話になるということです。

松原委員 民団と総連の和解のその裏の部分のさわりだけちょっと聞かせてもらえますか。肝の部分で結構です。もしかしたら認識を共有しているかもしれないから、聞かせてください。

麻生国務大臣 例えば参政権の問題。総連は反対、民団賛成ということになっていると記憶するんですけれども、どうやって話がついたのかな、どうしたかなと正直思います。

松原委員 私がある報道に聞くところによると、民団のトップが、四月十七日に韓国に行って大統領に面会をしてきた。面談して戻ってきたときに発表した内容が、民団が頑張ってやってきた脱北者支援センターをやめましょう、これが一つ。新聞等によっては、今の部分に関しても、従来の総連の主張の方に沿って参政権も検討しましょう、こういうふうなことが書かれている。

 拉致の問題と後で絡んで話したいんだけれども、一言で言えば、なぜ脱北者支援を民団がやめましょうと、盧武鉉さんは何を言ったんだ。盧武鉉さんの話を本当はしたいんだ、これから。盧武鉉さんは何を一体仕込んだんだ、トップに。

 例えば、今回、ブッシュさんに横田さん、奥さんが会いました。脱北者であるハンミちゃん一家は、くどいようでありますが、瀋陽で日本の領事館に駆け込んだところを、中国の警察というんですか、引きずり出されて、これはウィーン条約の抵触であります。しつこいようだが抵触であります、これも後で聞きたい。抵触で引きずり出されて、しかしながら、それがビデオに撮られていたがゆえに、北朝鮮の政治収容所で一家は殺されることなく、アメリカに今行ってブッシュさんに会えた。九死に一生を得て、そこには、中国の人権抑圧の動き、北朝鮮はもとより、そういったものがある。

 ところが、ブッシュさんにハンミちゃん一家が会いに行くときに、私、これも聞いた話でありますが、外務省が確認をしていたらお話をしていただきたい。韓国大使館、サポーターでサポートして来てくれという話をしたら、韓国の大使館はこれに関しては全然動かなかった。

 では、とりあえずこの部分だけ答弁してください。今麻生さんは首を横に振っているから、教えてください。お願いします。つまり、韓国大使館は、アメリカの要望、要求に対して、ホワイトハウスにいわゆるサポートしなかったという事実は把握していますか。

麻生国務大臣 正確に承知しているわけではありません。ただ、日本の大使館やら何人かがついていったのに比べて、ハンミちゃんに同行した韓国側はたしかいなかったと記憶します。

松原委員 要するに、人権問題という新しい切り口で、前回のこの外務委員会でも私は言いましたが、ブッシュさんは、中国の人権問題、ロシアの人権問題、北朝鮮の人権問題、こういったものを切り込んでいく。これは、新しいブッシュ外交のあとの二年間の一つの戦略としてこれをやりますよというメッセージが、あのチェイニーさんのバルト三国における発言であったり、それからブッシュさんの今回のこのホワイトハウスにおける面談だったりしているわけですよ。

 しかし、韓国は、ハンミちゃん一家に対して、ホワイトハウスに行くというのに対して極めて冷ややかに、全く対応しなかった。盧武鉉さんは一体何を考えているかと聞いたところで、麻生さんは、おれは盧武鉉じゃないからわからない、こう言って終わってしまうでしょう。しかし、余りにも盧武鉉さんは北朝鮮に対しての信義といいますか、何かここに握っているんじゃないかなと思うぐらいの信義の何かがある。

 非常に私は理解に苦しむわけでありますが、その盧武鉉さんに民団のトップの方が会いに行って、戻ってきて、脱北者支援センターに関してはちょっと考え直しましょうということを言っている、このことを外務省は把握しておられますか。

梅田政府参考人 答弁させていただきます。

 今先生が指摘されている発言そのものは我々必ずしも明確に承知しているわけではございませんけれども、民団がこれまでやってきました脱北者支援でございますね、これを直ちにやめるという決断をしたというふうには我々は承知しておりません。ただし、今後、民団の動きにつきましては、我々としても引き続き見守っていきたいとは思っております。

松原委員 私の今の発言は、五大紙の記事にきちっと載っている内容なので申し上げたわけでありますが、仮に民団がこの脱北者支援センターをやめましょうというふうにした場合、日本としてはそれに対しては無関心、こういうことでよろしいのですか。

梅田政府参考人 お答えいたします。

 日本に来られている脱北者の方々の支援につきましては、これは非常に重要な点だと思っております。実際に今まで民団がなされてきた支援につきまして我々は評価しておりますし、今後、民団が引き続き、日本のNGOとも協力しつつ、その支援を継続してもらえることを望んでおるのは事実でございます。

松原委員 麻生大臣、この間の経緯の中で、仮に、これは新聞紙上にはそういう報道があった、その条件をのんで和解になった。参政権の件もそうでありますが、今言った脱北者支援センターも基本的に打ち切りましょう、こういう総連側の政策を丸のみするような形で和解ができた、こういうふうな認識が少なくとも日本の報道ではなされておりますが、このあたり、麻生大臣は御認識を持っておられるかどうか。

麻生国務大臣 私は、自民党で北朝鮮というのに渡辺ミッチー訪問団のときに随行員として行かされた数少ない、まだ生きている国会議員の一人なんです、もうかなりな方はいろいろ御年配になられたり引退されたりしていますので。当然、総連の方とも民団の方ともその当時いろいろ接触をする立場にありましたので、両方の言い分というのはかなり当時は激しかったものですけれども、急にぱっと仲よくなったと言われても、なかなか、よほど何か条件が合ったかなと思ったりいろいろなことをするんですけれども。

 今の中で、私どもとして、もともと同じ民族が一緒に仲よくなるのはいいことなんだ、基本的にはそう思います。ただ、これまでの経緯を知らないわけじゃありませんので、そういうものから考えますと、そんな簡単に、これをやめたから、ではというような話にいくかねと思って。いろいろな行事を一緒にしようとかいう話ならまだともかくも、いろいろなところでちょっといま一つよく読めていないところがあります。私どもの情報の収集とか、上の方はそうなっても、では下の方はどうとか、いろいろなことをちょっと正直考えますので、今のお話だけで直ちに、私どもとして知っているところもありますけれども、直ちにこれだけの今の情報をもとにして判断するというにしては少々情報の絶対量が不足しているというのが正直なところです。

松原委員 朝鮮総連というのは、きょうは警察の方は呼んでおりませんが、破防法調査団体。破防法調査団体というと、例えばかつてのオウム真理教、今も調査団体であります。そこに、どういうわけか、かつて小泉総理はメッセージを出した、オウムじゃなくて朝鮮総連の方ですね、こういった経緯があるわけであります。

 私は、この朝鮮総連が民団と歴史的和解をするときに、少なくとも今の条件を見る限りにおいて、要するに、朝鮮総連の意をのんで、その意向に従うという前提で和解をしたような感じがどうもしてならない。これはマスコミ報道による限りにおいて、私も内部にいるわけじゃないですから。

 どういうことが言えるかというと、盧武鉉さんも拉致問題に対してこんなに不熱心、ある統一相は横田さんが行くときに会わないと言ったり、ちょっとそれはないだろうという感じですが、人権問題より北朝鮮だ、こういう認識になっている。

 もっと言えば、この間、拉致特の参考人で安明進という北朝鮮の亡命スパイを呼んで議論したときに、彼ははっきりと、今の盧武鉉政権下において多くの国会議員が北の影響下にある、北朝鮮側の、さまざまな意味において、もともと工作員的な人間も国会議員をやっていた経緯もあったりしていると。だから、安明進さんの表現をそのまま踏襲するならば、北朝鮮によって、金日成の時代から、南をどう併合するか。武力をもってやるか、それともヒトラーが議会で多数をとってやったような、そういう合法的手段をとってやるか、武力でやるのか合法的にやるのか。最初は武力でやろうとしていたけれども、どうもこれはあんばいがよくない、では合法的にやろうかと。

 国家的な組織でどんどんと南進政策をやっていけば、それは、一人一人の個人でやるような地域の民主的な国家よりもある意味では強いんですよ。私は、ある意味で韓国政府も北朝鮮の、どこかで家族会の増元さんがおっしゃっていましたが、かいらい政権のようにおれらは見える、韓国は北朝鮮のかいらい政権のように見えるという発言をたしかどこかでなさっておられたけれども、私はそういう見方はあると思うんですよ。事実、今までの対応を見るとそういうふうな方向に来ている。

 総連と民団の関係も、まだ裏はとれていないけれども、もしかしたら、総連の方の二十年、三十年の極めて深く静かに潜行した戦略によって、言葉は悪いけれども、民団乗っ取り政策、それは表面は和解したといってみんな拍手しますよ。しかし、その実は、北側による南下政策として、盧武鉉政権が事実上北側の意向を見ないでは政策決定ができないようにし、そして、民団という日本国内における総連と対峙していた組織を、総連側の意向を丸のみさせるような方向で、これもどういうふうにしたかわからないけれども、民主的にとる。会館に乱入してとるんじゃなくて、民主的にとる。私は、そういうことになっているんじゃないかと思うんですよ。

 であるならば、今回の和解というのは、拉致問題解決にとって極めて、プラスかマイナスか、深刻な事態を持ち得ると私は思うんですが、大臣の御所見をお伺いしたい。

麻生国務大臣 いろいろな前提条件を置いて物事の分析、解析をするというのはとても大事なところですし、松原先生の出しておられるいろいろな前提条件をもとにして今の現状だけを見るということになりますと、今言われた可能性を秘めている、もしくは可能性を全く否定し得るものではないということは確かだと存じます。

 ただ、御存じのように、今我々が得ております情報というのは極めて限られたものでもありますし、最近の一連の韓国側の行動等々を見ていますと、金大中以降、特に盧武鉉になってからだと思いますけれども、かなり顕著に、いわゆる北側に対しての融和政策というものが前の大統領よりはさらに顕著になってきているという事実は確かだと存じます。

 ただ、それをもってして直ちに北が南をという話になるかどうかというと、例の三八六、二九七という世代の話やら何やらを聞いていましても、そう簡単にいけるものとも思えませんし、次の選挙を控えていろいろ今あちらも、ことしが議員選挙、来年が大統領選挙ですから、そういったものを見ながら、今はそちらの方が選挙としていいという面もああいう国では十分考えないかぬところだと思いますので、今得られた情報だけで直ちに判断なり感想を述べるのはちょっと不適切という感じがします。

松原委員 大臣の発言としては妥当だろうと私も思います。逆に言えば、さっきのテポドン二号をもう少しおっしゃっていただければというふうに思いましたが、この問題はここまでにしましょう。

 次に参ります。

 先般、南京の事案のことで、私はエール大学の神学校における文書、あの膨大な宣教師の手紙のことを言いましたが、では、外務省としてアプローチをして、それを当たりましょう、こういう話だったと思っております。さらに、大体西暦二〇〇〇年以降、この間も麻生大臣がおっしゃったように、マッカーサーの上院公聴会における発言を含めて、機密文書がどんどんと表立って出てきている。

 こういう戦後のさまざまな時期における、もしくは戦中の問題に関して、日本の国家が汚名を着ることは私は許せないと思うのでありまして、それも身に覚えのない汚名であります。そういったものを少なくとも回避するためには、こういった文書を精読することが必要だと思います。このエール大学の神学校の文書とか、それから二〇〇〇年以降出てきているさまざまな外交機密文書、例えばこの間は、スティネッツの「真珠湾の真実」という書物がそういった文献によってなされているということを話しました。その辺では、ルーズベルトのおとり裁判的な真珠湾があったということも申し上げたわけであります。

 こういった文書に関して外務省は把握をして、そして、私の指摘があった後アプローチをしたりしているのか、この事実だけ教えてください、時間がないので。

塩崎副大臣 今のエール大学神学部の件でございますけれども、図書館では、かつて中国に派遣されていた宣教師などに関する資料が保存されているというふうに理解をしております。その中に日本軍の南京入城前後の資料もあり、それを研究している研究者がいることも承知をしております。ただし、この資料につきましてはまだ原文を入手しているわけではありませんけれども、この研究者の研究成果を活用していこうというふうに考えております。

 それから、二〇〇〇年以降に米国が公開した外交機密文書の中で、日本関連のものはどういうものがあるのかということでございますけれども、これは、この法律に基づいて、現在、さきの大戦に係る日本関連の記録公開の作業が行われているということは承知していますけれども、個々の文書についてはまだ承知をしておりません。

松原委員 大臣、これはきちっと精査をするべきだと思うんです。それは、この間も言ったように個人ではできません。国家でやらないと、国家の汚名は晴らすことができない。

 エール大学文書が明らかにしているのは、彼ら宣教師が、南京で十万人の無辜の市民の命を我々は守ったと。この間も私はこの委員会で言いました。国民党軍には、安全区の中には砲台を据えるなと言った。日本軍には、そこには大砲をぶち込むなと言った。努力をした結果、我々は守ったと胸を張って言っているということは、中国が言う南京大虐殺と相矛盾するわけであります。

 そういう資料をきちっと検証するべきだと思うんですが、大臣、その辺の御認識はいかがでしょうか。

麻生国務大臣 私どもとして、政府としてやれることに関しては、これは日本の名誉にかかわる話だと存じます。したがいまして、今御指摘の点に沿って調査させます。

松原委員 そういう政府の努力が従来なかった。今回、麻生大臣は今の決断で非常に、これでこそ日本の外務大臣として本当にすばらしいと、私はこのことは敬意を表していますよ。きちっとやるべきですよ。(麻生国務大臣「あした雪が降る」と呼ぶ)いやいや、この部分はね、この部分は。テポドン二号はもっと言ってほしかった。

 私が言いたいことは、例えば、今回、国連の事務総長のアナンさんが来て、靖国がどうだとか、それから、アメリカのハイド議員がハスタート下院議長に、小泉総理の靖国参拝を批判して、六月の総理の訪米の際に米国議会で演説をさせないようにとの趣旨の書簡を送ったとか、何でこういうことが起こるのかということですよ。

 これは、彼らのロビイスト活動が熱心であり、この人たちも言ってみれば中国の、彼らにとって極めて都合のいい、中国にとって都合のいい歴史認識をいつの間にか洗脳されているんですよ、こちらはロビイスト活動をしないから。今言った、国家的に我々が先人のプライドをよみがえらせるという作業をやっていないがゆえに。だから、アナンさんやハイドさんの話になる。

 この二人の発言、この点はどういう御所見か、ちょっとお伺いしたい。

麻生国務大臣 少なくとも、このハスタート下院議長あての、下院の国際関係委員長ハイドという人のこと、これはちょっと正直言って政府としてコメントする立場にはないんですが、今言われた点について、日本として、別にこちらから演説をしたいと申し出たこともないし、演説する気ありませんかと聞かれたこともないとしか、私どもの知っている範囲ではないんです。

 いずれにしても、こういう話が出てきたのに関して、ロビイストが猛烈に動いているんではないかという御指摘だったんだと思いますが、このロビー活動につきましては、これは確かに、明らかに中国の方がロビー活動に熱心というのはもう間違いないと思っておりますので、日本としてもこれに対する対応は考えていかねばならぬ、大事な問題だと思います。

    〔土屋(品)委員長代理退席、委員長着席〕

松原委員 そうした中で、やはり彼らがそういう発言をするというのだけを一般の国民や世界の人が見れば、そういうふうに引きずられていくんですよ。このために、ロビイスト活動、中国も韓国もアメリカ国内で激しくやっているわけですよ。さすがに北朝鮮はロビイスト活動ができないだろうけれども、これをやっているわけですよ。我々のロビイスト活動は、極めて、そこに向かって比較すると、レベルがまだまだ高くない。

 しかし、ロビイスト活動をする前に、我々は、我々のロジックと我々の論理の構築を、我々が歴史的にどうであったか。マッカーサーがまさに米上院の中で、公聴会で、自衛戦争だったということまで述べている、そういった部分も含め、我々の五十年間温存されてきた機密文書をけみし、エール大学の南京大虐殺の事実を否定できるような文書をけみし、こういったもので我々は一つの、我々の正当性を国家的に主張するプロジェクトを組まなきゃいかぬと思うんですよ。

 私は、そういう部署をどこがつくるのか、内閣の官房につくるべきなのかどこにつくるべきかわからぬけれども、今、麻生さんが、そういうのは必要だ、先人の名誉を汚すことを払拭することが必要だとここで決意を述べられたんだから、その部署をぜひ麻生外務大臣が在任中に外務省の中に、外務省というのは人員不足だという話は私は同僚の山口議員からもよく聞いていますよ、彼も外務省出身です。聞いていますけれども、そこはほかを削ってもと言うと、ほかの部署が怒るかもしれないけれども、そのために何としても人員を確保して、そういう部署をつくり、我々の国家の、まさに国家主権の主権たる中にそれは入ると思うんだ。これを外務省として、ぜひともそういうものをつくる方向で努力していただきたいと思うんですが、御決意を伺いたいと思います。

麻生国務大臣 さきの大戦につきましては、これはそれぞれの国、それぞれの立場によっていろいろ意見がある。これはどの戦争においても、一方的に片っ方が一〇〇で片っ方がゼロなんということはないんであって、そういったものは常に双方に言い分があるというのは、これは当然のことなんだと存じます。

 したがって、そういった秘密文書が公開されるというんであって、それが入手できるというんであれば、それに基づいてこれまでの私たちが知らされていた事実と全然知らない事実が出てきたときにおいて、それが事実だったということになるんであれば、例えば、あの文書の中には、あれは三部でできていて、民主党で二部、共和党で一部、三部構成になっていると思うんですが、その三部構成の共和党の中にさっきのいろいろな話が出てくるんだと記憶しますけれども、ちょっと全部が全部きちんと読んでいるわけじゃありませんので、そういった意味では、こういったものはきちんと精査すべきではないかという御指摘なんだと存じます。精査させます。

松原委員 ぜひ精査する部署をつくっていただきたいと強い要望をいたしまして、私の質問を終わります。

 以上です。ありがとうございました。

原田委員長 次に、山口壯君。

山口(壯)委員 民主党の山口壯です。

 きょうは例の米軍再編の問題について大臣といろいろと議論させてもらいたいわけですけれども、これはやはり大きな考え方のすり合わせということで議論をさせてもらいたいんです。私も松原さんの気持ちと一緒で、本当は推薦人になりたいぐらいの気持ちですけれども、でも、いろいろと壁があるみたいだから。

 ところで、最初に、額賀長官が記者会見で、積み上げ方式のもとで考えていったと言っているわけですね。積み上げ方式というふうに言う以上は、具体的な支出項目というものが土台になければいけない。それで、現実に、数字としても百二億七千とかあるいは六十億九千とか、こんな数字が、要するに、丸っこい数字ではなくて、きちっとした数字で出ているんです。そういう意味から考えると、額とかあるいは日本の例えば五九%とか、こういう数字について根拠が示されなければいけないと思うわけです。

 何でこんなことを言うか。官邸から防衛庁に丸投げされたようなことが言われている。しかも、私が見ている限りも、防衛庁が何かいろいろやっているけれども、外務省としてきっちりコントロールができていないように見受けられる。一番最初に私はシビリアンコントロールということを申し上げて、そのことの重要性にかんがみると、今はどうもそのコントロールがなされていないということを力説していたわけです。

 グアムというのはアメリカですから、原理原則からいっても、その軍隊が自分の国に帰るときにそのお金を負担するというのは、非常に違和感が強いわけですね。現実にまだ世界にも例はない。そういう意味からいったら、外務大臣として、あるいは政治家として、あるいは歴史の教訓を二代前からもさかのぼっていろいろ考えた場合に、こういうことに対してシビリアンコントロールがまず大事だと。特にシビリアンという場合に、市民ですから、市民の代表は国会ですから、国会のコントロールが非常に大事だということについて、外務大臣の認識を伺わせてください。

麻生国務大臣 シビリアンコントロールというのをどういう意味で使っておられるんだか知りませんけれども、この種の交渉をしておりますのは、政治家が基本的に最終的な決断をするということになっておりまして、その政治家は国民によって選ばれているということなんだと思います。したがって、軍人が防衛庁長官をやっているわけではない。最終的にやっているのは、選挙で選ばれた文民がやっておるということなんだと存じます。そういった意味で、シビリアンコントロールが全然外れているかのような話ではない。まず基本的にそう思っております。

山口(壯)委員 大臣、それは非常に大きな誤解があると私は思いますよ。例えば、アメリカの国務長官、前は軍人出身だったですね。しかし、彼がきちっと、いわゆる国務省としてのコントロールをこの戦争を行うに当たってはやっていったわけです。例えば、ラムズフェルドというおじさんは軍人出身じゃないです。しかし、極めて好戦的ですね。ネオコンに毒されているという話もある。その下にはウォルフォウィッツとか、いろいろドイツ系の名前が並んでいた。それを一生懸命コントロールしようとしていたのが国務省です。

 国務省と国防総省というのは、ある意味で昔から権限意識の中でやり合っているわけですけれども、国務省が国防省に対してきちっとコントロールしていくということが非常に大事なわけです。外務省が防衛庁に対してきちっとそういうコントロールをしようという気概が私には感じられない。どうですか、大臣。

麻生国務大臣 全然見解を異にすると思っておりますが、やはり軍事に対して政治が優先するというのがシビリアンコントロールの基本なんじゃないんですか、私はそう理解しているんですけれども。これが一番の基本。そういった意味で、日本というのはその点はきちんと作動していると思っております。

 少なくとも軍人出身者がそういったような話……(山口(壯)委員「そうは言っていないです」と呼ぶ)いや、軍人出身者が日本ではなったことがないなんて言いませんよ。だって、中谷元、あれは軍人出身者ですからね、防大出身なんですから。しかし、あの人でも選挙で選ばれているから。

 コリン・パウエルの場合は、あれは大統領制ですから議院内閣制と違いますので、あの人は議員ではない。元陸軍参謀総長から来た人なんであって、そういった意味では、アメリカより日本の方が、形の上としてはきちんとシビリアンコントロールの形をしておる。それがまず第一点。これは全然違いますよ。

 それから二つ目に、防衛庁の話というのは、これはいろいろな意味で、交渉をするに当たって防衛庁と外務省との間に意思の疎通が全然なかったかのごとき話をされますけれども、そんなことはないのであって、いろいろな形で防衛庁と外務省との間でいろいろな意見を交換した上でやっておるというのが事実なのであって、防衛庁がフライング気味に全部突っ走っているというような感じは全然ありません。

山口(壯)委員 大臣に私の意図がよく伝わっていないみたいですけれども、軍人であるかどうかというのは関係ないわけです。例えば、防衛庁なら防衛庁の組織として動いてしまっている。その長が軍人出身であるかどうかは関係ありません。軍人出身であってもパウエル氏が国防総省に対してきちっとコントロールしていたということが大事なんです。その身分は関係ないんです。でも、軍人出身でなくても、額賀さんがある意味で防衛庁という組織の中で独走してしまう。現実に安保条約というのは外務大臣の主管ですよ。主務官庁は外務大臣です。その外務大臣ではなくて、ラムズフェルドさんと最後に出てきたのは額賀長官ですよ。

 そして、五九%という数字。バナナのたたき売りじゃない、七五%が五九%になったからといって喜んでいるようじゃ、原理原則がないがしろにされています。現実の問題として、ゼロであるべきというのが本来の姿でしょう。

 三十億ドルの融資であれば認められるというのは、私もそれは納得した。現実には、私も河相局長に、融資であればとりあえず、まあまあ、それも形としてはあるなというのは申し上げた。その中で、三十億ドルの融資、これなら、まあ、それは原理原則から外れてはいないかなと思った。

 しかし、そうじゃなかったですね、現実は。三十億ドルどころか七十五億ドル。七十五億ドルがもうちょっと値が下がったからといって喜んでいるわけですね、六十億九千万ドルですか。だけれども、そういう原理原則が今ないがしろにされているというところが一番問題なんです。

 大臣、もしもこのことに敏感になっておられなければ、非常に私は心配します。歴史の教訓というのはそんなものです。前に大臣と関東軍の話をされたときに、大臣はにこにこ答えられましたけれども、そうじゃない。それだけの重みを今持っているんだと。

 今現実に、この米軍との一体化というのが言われる。このことがいいか悪いかという議論も本来はあるはずなんです。独立自尊の気概は一体この国からどこへ行ってしまったんだ、こういう話でしょう。そこを問われているんですよ。

 現実に、例えば、米軍と日本が座間で、陸軍の第一軍団の司令部が来たとする、そんな中で、日本がアメリカに対して指示ができますか。コントロールじゃなくて、コマンドができますか。どう思われますか、それは。

 順番に行きましょう。一つ目は、米軍と一体化の方向について、大臣はこれをいいことだというふうに認識されていますか。

麻生国務大臣 まず、額賀さんとの話ですけれども、これは2プラス2の枠組みの中でやってきたと思いますので、額賀さんと結構話はできていたと思いますので、フライングで一方的にという話は全く見解が違います。それがまず第一点です。

 それから、ゼロであるべきというのであるならば、ゼロにする場合は、アメリカ軍は沖縄から出ていくのに何十年かかるかわからないという話で沖縄の人たちは納得するだろうか。今すぐという、沖縄の負担軽減を早くするために、私どもはいろいろなことを考えたんだと思いますが、今、私どもとして考えておかねばならぬのは、沖縄県民の負担の話というのを考えずにやることはできないというのが私どもの見解でしたから、したがって、早く出ていくためにある程度私どもの方も支払うべきものを支払わないと、そこから、いわゆる立ち退き料みたいなものじゃないかとたしか答弁したような記憶がありますけれども、そういった話をずっと申し上げ続けてきたということが一つなんだと思うんですね。

 これに対して、払う必要はない、アメリカはそういった例がないじゃないかといえば、私どもとしては、アメリカにそういう、他国の例をそんなに知りませんけれども、少なくとも、大きなところでは、ソ連が東ドイツから撤退するときにはかなりな金を払った記憶があるという話を聞いていますのでという話をした、それも記憶をします。

 それから、今の横田の米軍の話ですけれども、これは指揮権が別なのであって、これは日本とアメリカが一体化しているわけではない、当たり前のことなんだと存じます。

 したがって、日米というものの安全保障条約のもとに、日本とアメリカ軍というのは共同で同盟国を結んでおるという関係ですから、同盟関係に基づいて、日本というのはこれまでも五十数年間日米安全保障条約のもとに国を守ってきたという関係にあるんだと思っておりますので、アメリカは日本というものに一たん事があったときに守るということを契約している唯一の同盟国というものの関係をいかにうまく作動させるか。契約があっても実行されない例は幾らでもありますから、そういった例を確実に担保するためにはどうしておくかというためにいろいろ努力をしているというのがこれまでの経緯だと存じます。

山口(壯)委員 ラムズフェルドさんというのはビジネスマンでもあったわけですから、非常に交渉もタフなネゴシエーターだと思いますけれども、彼が途中で、日本が金を出さないのなら海兵隊のグアム移転計画を全部白紙に戻してもいいんだと、言ってみればブラフをかけてきているわけですね、足元を見て。

 要するに、今大臣が言われた、では、どうするんだ、では、だれが出すんだと。でも、それは融資という形があり得るわけでしょう。でも、多分これは家賃の適用されない司令部とかそういうことについて融資ということが当てはまらないだろうから、ある部分は真水でということの議論があったんだろうとは思いますけれども、しかし、原理原則というのは私はそこだと思いますよ。

 もうラムズフェルドというのは、アメリカ国内の中でもぐちゃぐちゃにやられている。退役将校からも、もうやめろ、おまえ、イラクで間違った戦争をしていて、まだ何をやっているんだと言われているから、日本に対して強い立場に出ざるを得なかった。日本がそのことも余り認識できているかどうか、もうやられっ放しになっていると私は思いますよ。

 しかも、これは本来、額の話じゃないわけですよ。バナナのたたき売りじゃないんだから。本来は、筋からいえばアメリカが持つものです。このことについてはアメリカ人であっても異論がないはずです。

 しかし、一番問題は我々の心の中ですよ。守ってもらって当たり前という心の中に非常に問題がある。今の大臣の答弁の中でも、どうしてもそれは、この約六十年にわたる戦後の歴史の中でどうしても出てきてしまっている。アメリカに守ってもらっているんだから、一たん事があれば彼らが守るんだからと、どうしてもこれが出てきてしまう。我々の刷り込みの中で、アメリカに守ってもらうんだからお金を出して当たり前と。これは私は、正直言って、非常に不健全な発想になっていると思いますよ。

 ここら辺をどういうふうにこれからの日米同盟関係を考えるかということに対しては、もう一度我々は本当は根っこから考えていかなければいけない時期に来ていると思うんです。

 例えば、中国がこれからどう出てくるかに際して、アメリカのいわゆるディフェンスコミットメント、防衛のコミットメント、このことに対しては文面だけから我々は判断すべきじゃないということを、この間、私は時間をかけて大臣に資料を見てもらいました。

 アメリカが絶対守ってくれるだろうということは表面的に、確かに大臣としてはそうおっしゃるべきだ。しかし、我々の気持ちの中では、本当に大丈夫かという気持ちも持っていなければいけない。それを考えたときに、守ってもらって当たり前という気持ちは非常に危ないんですね。そのことを私は申し上げているわけです。

 ですから、例えば、この間のテレビで、ある議員が、どこの議員かとは言わない、うちの議員じゃないんですけれども、おたくは番犬なんだから、その番犬は先に死ぬんだからという、何てことをこの人は言うんだと私は非常に恥ずかしかったですね。そのアメリカ人は黙って聞いていましたけれども。あれは、テレビであんなことを言うことじゃないわなということなんです。

 我々の心の中で独立自尊という気持ちがなければ、守ってもらって当たり前なんだからここでお金を出して当たり前という発想を少し整理し直さなければいけないんじゃないかと思って、一生懸命言っているんです。私は、先ほど申し上げたように、推薦人にすらなりたいと言っているんだから、そこは独立自尊の気持ちとしっかり受けとめていただきたいわけですよ。

 そういうとこら辺を踏まえて、大臣に、これからきっちりそういうことを考えてやっていこうという気持ちでの答弁をいただきたいと思います。

麻生国務大臣 自主独立の話に関しては、山口さん、当たり前の話ですよ、そんなのは。それは、日本の場合、日米安全保障条約を最初に結ぶ一九五一年のときですら、この間亡くなられた松野頼三は断固反対していますから。こんな話おかしいじゃないかと言って、時の内閣総理大臣に、時の自由党、まだ自民党になる前だったと思いますが、自由党松野頼三は断固かみついているので、自主独立の気概が失われるという見識は、僕はそれなりに、両方の見識があったから、あのサインは一人なんですよ。サンフランシスコ講和条約の方は随行員もサインしていますけれども、安全保障条約の場合は一人しかサインしていないでしょう、読まれたと思いますけれども。したがって、そういったことを考えてあれはサインは一人しかしていないというのが歴史です。

 したがって、今、日米安全保障条約というものがあっても自分で自主独立の気概を持っておかねばならぬ、当然です。なぜなら、条約というのは、片っ方に瑕疵がなくても一方的に破棄される可能性が十分にある。それは日本はやったから、一九七二年、日中条約締結のときは、それまであった日華条約を、中華民国の方に瑕疵が一つもなかったけれども一方的に破棄した、事実でしょう。したがって、条約というのは、一方に瑕疵がなくても片方から一方的に破られる可能性があるというのは、我々が破った経験があるから、少なくともそれは、こちらも破られる可能性があるというぐらいのことは常に心しておかねばならない。

 そのために、結んでいる条約をいかにうまく、一たん事あったときに稼働させるようにするかどうかというのは、不断の努力をしておかないと、条約というのは一種の生き物みたいなものですから、そういった努力を常にしているというのがそれなのであって、今回のグアムの移転に関しましては、我々の方は、沖縄県民の負担の軽減というものと抑止力の維持と、二律背反することを二つやらないかぬわけですから、その意味では、この二つの片方の側もある程度大事にしながらやっていくということになると、少なくとも今申し上げたような経緯であって、ゼロでいけるであろうかといえば、さあ、沖縄県から海兵の撤退が進むまであと何十年とかかることになり得るということだったろうと思います。

 その意味では、どの辺が折り合うか、妥協できる点かという点に関しましては、それは大いに悩んだところではありますけれども、私どもとしては、基本的な点でいえば、三分の一のキャッシュ、そして三分の一のローンというところかなというのが大体の相場観として持っている。そちらの場合は、三〇%のローン以外は払う必要はない。これは見解の違いですから。それだけで今回まとまったであろうかといえば、まとまらなかった。アメリカ側もかなりきつい。両方とも、この種の交渉で、一〇〇%で成功ということはありませんから、そういったことからいえば、私どもとしてはなかなか難しい選択だったし、アメリカも結構難しい選択だったろうとは思います。

 いずれにしても、少なくとも、妥協の産物とはいえ、交渉が2プラス2で成立をしたということは事実ですから、それに基づいて、あとはきちんと粛々とやっていく。また前回みたいに、契約はしたけれども十年間何も動かなかったというのではいかぬのではないか、実効性をあらしめるということが重要なのではないかと思っております。

山口(壯)委員 今、自主独立で当たり前だという話がありましたけれども、この部分というのは、最初から吉田茂さんが一番気にした部分なんですよね。

 本会議でも一度申し上げましたけれども、五一年に安保条約を結んで、五二年にその行政協定をつくった際に、ユニファイドコマンドというのをアメリカは言ってきた。NATOのように、例えばアイゼンハワーが全軍を指揮する、米のみならず、英、仏も指揮する、これを日本に言ってきて、吉田さんは、絶対だめだと。そのときに、アメリカは、では講和条約、安保条約、全部上院で批准しないぞと。要するに、講和条約を批准しないということは、ずっと占領国でい続けろ、それでもいいのかと、ダレスはそこまで圧を吉田さんにかけて、でも、それでも断り切ったわけですね。指揮権は日米別途に保ったわけです。だから、今ガイドラインとか、その調整が必要になってきているわけですけれども。

 しかし、ここの気概というのは非常に大事な部分ですから、そういう意味で、今アメリカと日本が、言ってみればアメリカ軍とそれから日本の自衛隊が、指揮系統についても、座間に来たときには、日本側としてはそこに即応集団というのをつくろうとしているわけですね。陸上自衛隊として中央即応集団を創設して、座間に司令部を置いて同居させて、訓練も共同してやって連携を強めていく。こういうことについてはいつも、例えばユニファイドコマンドに対してどういうふうに先人が対応したかということは、私にとってはとても参考になるわけです。

 この気概をしっかり持っていないと、例えば何かがあるときに、アメリカから、おい、行こうぜと言われるけれども、それで言われるがままという感を免れないわけです。この感覚が日本の国民に広まると、同盟自身のいわゆる土台というものが非常にもろくなってしまう。その辺の、我々はいわゆるイコールなんだという気概を持たなければ、そこが大事なんです。

 大臣、多分認識を共有していただいていると思うんです。このことを踏まえて今回のことを見るときに、何か知らないけれども寄り切られっ放しだなという感を私は免れないわけです。

 しかも、これは額が額なんですね。何千万とか何千億じゃなくて兆の単位ですから、しかも、その兆の単位も一ではなくて、どうも二を超えるか超えないかというところまで全体では議論がされているわけですから、このことについて国会に、今のところ、一番最初に私が触れた積算、あるいは、日本が五九%、五九というのはすごい数字ですよ、これについて、なぜ五九かという根拠がまだ明らかにされていないわけです。

 そういうものについて、大臣、積算の割合とか額の資料をこの委員会に提出するように事務方に指示していただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。

 具体的な施設について触れながらの積算の根拠というものがないわけです。若干のアイテマイズされたものはあるわけですね。これこれが二十八でこれこれが幾らだというのはあるんですけれども、こういう施設にこれだけでこういう施設にこれだけだから二十八億でという話が抜けているわけです。

 そこがなければ無駄な出費がないかどうかというチェックができないわけですから、しかも、その数字はもう出ているんですから、その積み上げ方式の土台となる詳細について、資料を当委員会に提出していただけますか。

塩崎副大臣 先ほど、例えばこの財政、真水の部分で二十八億ドルというものですね、これについては、最初は、何割、何割というような話、三分の一、三分の一、三分の一とかいろいろあったわけですけれども、そういう割合ではないと。やはり、事は、私も、外務省の中で交渉する際には、国会で説明するときに、なぜ真水なんだ、なぜ融資なんだ、それをきちっと説明できるようにしないといけないということを繰り返し言ってきました。

 それは、ですから、大体の形で今決まっているというのは先ほど先生御指摘のとおりで、司令部の庁舎とか住宅とかあるいはインフラ部分の経費についての積算というのが大まかに、まとまった形でのジャンル分けをされて出てきているわけですね。ですから、あと、実はきっちりしたものはまだ決まっていないところがたくさんあって、これをジャンルの中でどういうふうにするんだということを今詰めている最中であって、そこのところは、交渉の結果を、やはりさっき申し上げたような原則は、私たちもちゃんと国民に対して説明をできるようにしなければいけないということで、いわゆるジャンル分けをしているわけであって、その中についてはこれから詰めていくということだろうと思います、さらに細かいところは。

山口(壯)委員 委員長、今のは、ジャンル分けはできているけれどもまだこれから詰めると。ちょっと待ってください。積み上げ方式で来てこの数字ができているわけです。全く言っていることは、私は理解できないんじゃなくて、ごまかしているとしか思えない。

 そういう意味では、この資料を、委員長、ぜひ理事会で協議いただいて、当委員会に、この施設で幾ら、この施設で幾らだから、こういう数字、割合になったんだということを提出していただきたいと思うので、お諮りいただけますでしょうか。

原田委員長 本件につきましては、別途理事会で協議させていただきます。

山口(壯)委員 ぜひその協議を、私も含めてやらせていただきたいと思います。

 最後に、どういう感覚かというと、例えば、アメリカに守ってもらうことが当然の結論のように信じて疑わなくなっているというとこら辺に私は不健全さを感じているということをまず申し上げたんです。

 日米同盟が大切だからといって、今、私は、表現的にはアメリカの覇権外交になっていると思う。力で力をねじ伏せようという傾向が非常に強い。そういう……

原田委員長 山口君に申し上げます。

 予定の時間が過ぎておりますので、質問は簡潔にお願いします。

山口(壯)委員 はい。

 でも、アメリカの覇権外交に依存していればいいかというと、日本は自主防衛の努力とかいろいろなことを考えていかなけりゃいけない。そういう意味で、余り頼り過ぎていると我々の政策判断能力が鈍るわけですね。その辺を非常に危惧しているものですから、私はきょうは問題点を指摘させていただきました。

 資料の提出については、ぜひ早急にいただいて、我々の検討の材料とさせてください。よろしくお願いします。

 終わります。

原田委員長 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。

 きょうは、米軍再編の中で訓練移転について聞いていきたいというぐあいに思います。

 まず、訓練の内容について聞きますけれども、いわゆる最終報告では、一般に、共同訓練は、一回につき一から五機の航空機が一日から七日間参加するものから始め、いずれ、六機から十二機の航空機が八日から十四日間参加するものへと発展させる、このように述べております。訓練の機数は、十二機以内に限定されるのですか。

大古政府参考人 防衛庁からお答えさせていただきます。

 今委員御指摘の訓練移転につきましては、米軍の航空機の規模といたしまして二つございまして、タイプ1については一から五機程度、それからタイプ2については六から十二機程度ということで、日米間で調整したところでございます。

赤嶺委員 ですから、タイプを調整したということなんですが、四月十九日付の、千歳市に対して皆さん回答を出しておりますが、お示しした移転訓練の規模については、あくまで典型的な移転訓練の規模のイメージであり、個々の訓練によってはタイプ2の規模を上回ることもあり得るというところである、こういう回答を寄せているわけですね。十二機以上もあるということではないですか。

大古政府参考人 お答えさせていただきます。

 タイプ2につきましては六から十二機程度ということでございまして、実際の機数につきましては個々の訓練の計画によって若干の変更はあり得るかと思いますけれども、あくまで米側との協議では六から十二機程度ということで合意したところでございます。

赤嶺委員 大体のイメージで、個々の訓練の計画によって上回ることもあり得るということになるだろうと思うんです。

 次に、移転元について聞きます。

 最終報告では、当分の間、嘉手納飛行場、三沢飛行場及び岩国飛行場の三つの米軍施設からの航空機が、千歳、三沢、百里、小松、築城及び新田原の自衛隊施設から行われる移転訓練に参加する、このように述べております。在日米軍以外の外来機による訓練、これも行われることになるんですか。

大古政府参考人 お答えいたします。

 今回の訓練移転につきましては、日米共同訓練で効果を上げようという部分と、それから地元の負担軽減という部分もございます。そういう意味では、基本的に、移転元に配備されている米軍の飛行機が訓練移転に参加するというふうに理解しているところでございます。

赤嶺委員 移転元に配備されている訓練機が訓練を移転すると。嘉手納飛行場を使っての訓練というのは外来機が非常に活発にやっているわけですが、この点、いかがですか。

大古政府参考人 外来機が嘉手納に来ることはあるかと思いますけれども、嘉手納に所在する場合には在日米軍の飛行機という扱いになると思っております。

赤嶺委員 嘉手納に来れば外来機であっても在日米軍機の扱いになるということだと、外来機も在日米軍機として訓練移転に参加する、将来は外来機による訓練もあるということになるわけですよね。

大古政府参考人 お答えいたします。

 この訓練移転につきましては、地元負担の軽減ということも一つの目的でございますので、その意味で、地元に配備されている米軍の飛行機が訓練移転に参加することが基本的なあり方だと思っております。

赤嶺委員 配備されている、そして、外来機も嘉手納に来て訓練をするようになれば、配備されているというぐあいに見ることができる、見るわけですよね。いかがですか。

大古政府参考人 お答えいたします。

 基本的に、例えば嘉手納であれば、嘉手納での地元の負担を減らすということも目的といたしまして、ほかの場所で、本土の航空自衛隊の戦闘基地で訓練するわけでございます。そういう意味で、先生お尋ねの、たまたま外来で嘉手納に航空機が、共同訓練に参加するというのは基本的ではないというふうに考えております。

赤嶺委員 大古局長、今どういうことを説明しようとされたんですか。

 あなたはさっき、外来機でも嘉手納に駐留して訓練をすれば在日米軍機だとみなすとおっしゃった。そういう在日米軍機が嘉手納の負担の軽減のために訓練を移転することはあるという理解でいいんですね。

大古政府参考人 お答えいたします。

 御指摘の外来機が訓練移転に参加することは排除されないという意味で私も申し上げました。それが基本的な形態だとは思っていないということでございます。

赤嶺委員 排除されないと。

 嘉手納に飛来している外来機は、これは、一から六機とか、あるいはさっきの六から十二機というタイプどころじゃないんですね。向こうに来ているのは、去年の八月の例でいきますと、アメリカ本土のアイダホ州のF15戦闘機十二機初め約三十機の空軍、海軍、海兵隊の戦闘機による合同演習が行われているんですよ、統合訓練ですよ。大変な爆音でした。十二機以上もあるというのは通常の形態、タイプ分けになっているわけですよね。

 ああいう嘉手納でやっているような外来機による大規模な訓練、これも負担の軽減になり得るということでよろしいですか。

大古政府参考人 嘉手納基地の負担の軽減につきましては、現在米軍が訓練している負担を減らすという意味でございますので、そういう意味では、基本的には配備されている飛行機になりますけれども、結果的に外来機の訓練も減らされることはあり得るというふうに思っております。

赤嶺委員 外来機の訓練形態も、一機から五機とか六機から十二機、そういうタイプ分けにとどまらないものであるということも局長は認識しておられますね。

大古政府参考人 この訓練移転につきましては、規模の大きいタイプ2でございましても、米軍航空機としては六から十二機程度でございますので、個々の訓練によって十二機程度というものは変更はあり得るとしても、大幅にこれによってふえるということはないというふうに理解しております。

赤嶺委員 このタイプの変更は、個々の訓練計画によって変更もあり得るということであります。

 次に、夜間飛行の問題について聞きますけれども、五月十二日付で築城の皆さんに回答しております。訓練の時間帯や飛行経路などについては航空自衛隊と同様の態様となりますと述べているわけですが、築城基地あるいは新田原、二つの基地では、訓練の時間帯についてどのような取り決めあるいは自衛隊自身の内規があるんですか。

山崎政府参考人 お答えいたします。

 今御指摘の基地について、特に取り決めというのは結んではおりません。

赤嶺委員 そうすると、夜間飛行もやっているということでいいんですね。

山崎政府参考人 夜間飛行を行っております。

赤嶺委員 嘉手納で問題になっているのは、夜間の飛行を禁止する協定があるにもかかわらず、外来機が本土に安全に引き揚げるという理由で、夜中の二時か三時ごろからエンジンをふかしてみて、飛び立っていくというようなことが行われているわけですね。

 訓練以外に新田原や築城等で、外来機がやはり米本土に帰るときに、自衛隊のやっている枠内、当然夜間飛行もやっているわけですから、夜間飛行で自衛隊基地を使うこともできるということでいいですか。

山崎政府参考人 米軍の夜間飛行につきましてはまだ私は承知をしておりませんけれども、自衛隊におきます夜間飛行につきましては、おおむね日没後四時間程度を限度として各基地で行っているというふうに承知をしております。

赤嶺委員 今、自衛隊についてのものはあるわけですか。しかし、大規模な訓練の場合には夜間もやるということはあり得るわけですよね。

山崎政府参考人 先生御指摘のとおりでございまして、原則日没後四時間以内ということでございますが、演習及びその他緊急の、例えばスクランブル等につきましては、当然、例外的に、それを超える訓練あるいは離発着というのが原則認められているというふうに理解をしております。

赤嶺委員 米側が訓練移転で、築城、新田原あるいは三沢だとか小松、百里に移転した場合に、米軍が、嘉手納と同じように、本土に安全に帰るという理由で夜間飛び立っていくというのも何ら制約があるわけではないという理解でいいでしょうか。

山崎政府参考人 今申し上げました原則の範囲内で、米軍についても、今後、具体的な飛行のあり方について、恐らく当局において話し合いが行われるものと理解をしております。

赤嶺委員 排除されないということに、ここを夜間飛行させないということがはっきりしているわけではないという答弁になるだろうと思うんです。

 次に、空母艦載機の問題について聞きますが、築城の地元自治体への回答では、空母艦載機によるタッチ・アンド・ゴーを実施するのかどうかという質問に対して、移転訓練として築城基地で行うことは想定しておりません、しかし、慣熟飛行の一環として離発着訓練を実施することは想定されます、このように回答しております。

 確認しますけれども、キティーホークの艦載機が築城、新田原にやってきて慣熟訓練を行うということはあるということですね。

北原政府参考人 築城並びに新田原基地につきましては、緊急時の使用並びに先生今御指摘の移動訓練、移転訓練、両方につきましてロードマップで地元の御理解をいただきたいと思っているところでございます。それで、緊急時の使用といった点につきまして事前に訓練することはあり得るという理解を持っているところでございます。

 具体的に、今御指摘の点について、空母艦載機云々ということについては私ども承知しておりませんが、いずれにいたしましても、今、普天間の飛行場につきまして、機能の一つである緊急時の使用といった機能を築城並びに新田原にお願いしたいと思っておりまして、そのための事前あるいは慣熟のための訓練はあり得る、そのように考えております。

原田委員長 予定の時間が過ぎておりますので、質問は簡潔に願います。

赤嶺委員 きょうも時間が来ましたので、私きょうは、移転元から移転される築城、新田原のところからいろいろ聞きましたが、外務大臣には、結果としてこれは嘉手納基地の負担の軽減にはならないということを最後に質問したかったんですが、次の機会に行うことにいたしまして、きょうはこれで質問を終わります。

原田委員長 次に、照屋寛徳君。

照屋委員 私は、去る十二日の当委員会で、ロードマップで日米間が合意した海兵隊の家族九千人のグアムへの移転問題について、その根拠が不明であることをただしました。

 私の問題指摘のように、現在の家族数は七千九百十人のようであります。しからば、九千人のグアムへの移転が実現しますと、海兵隊の家族は沖縄に一人もいなくなるという計算になります。もちろん、私はいなくなることを望みますが、兵隊は残るのに家族が全くいなくなるというのは不自然であります。さきの委員会でもただしたように、政府は地元負担の軽減を口実に、確たる裏づけもないままに見返りとして多額の移転費用を負担するものであって、到底認められないことを申しておきます。

 ところで、関連して、SACO最終報告に基づくキャンプ瑞慶覧における家族住宅の建設戸数をお教えください。

北原政府参考人 照屋寛徳先生に御答弁申し上げます。

 今御指摘のSACOの最終報告におきまして、私ども、住宅統合につきましては、キャンプ桑江それからキャンプ瑞慶覧の家族住宅をキャンプ瑞慶覧に統合する、そして、これら施設の一部を返還することが合意されているわけでございまして、御質問の総戸数につきましては、全体計画として約千八百戸を予定しているところでございます。

照屋委員 この千八百戸のうち二〇〇五年末で既に完成したのは何戸か、着工済みは何戸か、これから近々着工するのは何戸でしょうか。

北原政府参考人 御答弁申し上げます。

 今申し上げました全体計画千八百戸のうち、完成済みのものにつきましては四百六十六戸でございます。それから現在工事中のものが百六十戸、それから工事の準備中のものがそのほかに百戸ございまして、トータルといたしまして二百六十戸。

 したがって、実績が四百六十六戸でございまして、現在工事中あるいは準備中が二百六十戸でございます。合わせまして七百二十六戸ということになります。

照屋委員 これまでに投じた費用、予算は幾らですか。

北原政府参考人 住宅統合に関します件につきまして、私ども、平成十年度からスタートをいたしております、支出をいたしておりまして、十七年度までに合計約二百五十億円を支出いたしております。

照屋委員 このSACOの最終報告による家族住宅の建設総事業費は幾らですか。

北原政府参考人 今申し上げてまいりました住宅統合に係ります家族住宅の建設につきましては、その性格上、私ども、現に今居住していらっしゃる住宅地域のどの地域から移設するのか、どこへといったこと等を含めまして、米側との調整を踏まえまして、これまで段階的に進めざるを得ない性格を持っているところでございまして、今後、今申しましたこの住宅の統合につきまして、全体としてどのくらいになるかといったことにつきましては、現時点では確たることは申し上げることは難しいということで御理解を賜りたいと思います。

照屋委員 北原長官、私は個人的に北原長官を非常に尊敬しているんですが、SACOで千八百戸をつくる計画があったからといって、もうすぐ家族はいなくなる、これをSACOの計画どおりつくり続けたらどうなるか。国民の税金が無駄になるでしょう。

 ここで、千八百戸のうち既に七百二十六戸はつくった、膨大な経費をかけて。国民の税金ですよ。これを、着工を凍結するとか見直すとかあるいは見送りをするとか、そういうことは考えていないんですか。

北原政府参考人 御答弁申し上げます。

 今先生御指摘のように、五月の一日に2プラス2で承認されましたロードマップの中には、キャンプ瑞慶覧は部分返還とする、それから統合のために、六カ所がいろいろ指摘されているわけでございますが、そうした関連基地の統合のための詳細な計画は来年の三月までに作成することになっております。

 そして、そうした中で、具体的な返還範囲等につきましては、在沖の米海兵隊それからまた家族のグアムへの移転といった点等につきまして、また具体的な内容、さらにはこれら施設の性格、それから今御指摘をいただきました、また御答弁を申し上げておりますSACO最終報告での経緯などを考慮いたしまして、これから日米双方で真剣に協議を行った上でこれは決定されていくもの、そのように考えているところであります。

照屋委員 私は、一たん計画がつくられたからといってそれをつくり続けるというのは、ロードマップでグアムへの移転が決定して、しかも移転費用も出すのに、また無駄な住宅もつくり続ける、現につくっている。これはいかにも国民は納得しませんよ。

 それで、長官、何かおっしゃりたいような雰囲気ですから、どうぞ。

北原政府参考人 政府といたしましても、先生御指摘の点、しっかりと私どもも認識いたしておりますので、先ほど申しましたように、これから統合に関する詳細な計画をつくる、あるいは先生御指摘の海兵隊員のグアムへの移転、家族の移転、こういったものが出てくるわけでございますので、そういったものを総合的に日米で協議をして、現在の住宅統合の取り扱いについても当然のことながら判断していくことになると思います。

 そして、2プラス2で承認されたロードマップの中にも、このSACO最終報告の取り扱いとそれから再編ロードマップの取り扱いについては、必要に応じて見直したりする趣旨のことが盛り込まれているわけでございますので、十分、先生の御指摘、御懸念を踏まえて、政府としてきちんと対応してまいりたい、そのように考えております。

照屋委員 麻生大臣、聞いておったと思いますが、これはロードマップでグアム移転が決まっているわけだから、SACOで千八百戸をつくることになっておったからといってつくり続ける、税金の無駄遣いがあってはいかぬと思いますが、大臣の所感をお伺いします。

麻生国務大臣 総じて役所は、一回決まったら、決めるまでは大変ですけれども、決まったらやり続けないかぬというルールになっていますから、そういった指摘があったのを受けまして、状況が変わっておりますので、それに合わせて直ちに順応してやるというようなのにはなかなか不向きな組織ですから、そういった意味では、今回御指摘のあったのを踏まえて、防衛庁長官の方から指示があるんだと存じます。

照屋委員 キャンプ・シュワブ沿岸部のV字形滑走路の問題について聞きます。

 私は、いわゆる沿岸案、V字形滑走路二本をつくる、長さは千八百メートル、これは認めるわけにはいかないという立場ですが、政府はこのロードマップ合意時において、滑走路の風向きについて、当然季節によって変化をします、この案は北風が吹くだろうという前提だと伺っておりますが、山側との角度や距離、これは事前調査はやりましたか。

北原政府参考人 御答弁申し上げます。

 先生、恐縮でございますが、先ほどの点で私は、2プラス2のロードマップに盛り込まれた言葉を正確な言葉ではなくて申し上げましたが、そこには、正確に申しますと、「SACO最終報告の着実な実施の重要性を強調しつつ、SACOによる移設・返還計画については、再評価が必要となる可能性がある。」そういうこともきちっと入っておりますので、ぜひ御理解を賜りたいと思います。

 それから、今のV字形滑走路の点でございますけれども、風向きを事前に調査したのかという御指摘でございますが、私ども防衛施設庁といたしまして、普天間の代替施設の検討の過程におきまして、平成九年以降、気象調査の一環として風向きの調査は実施してきているところでございます。その結果、おおむね北東寄りの風の割合が約七割だと考えているところでございます。

 なお、今回ロードマップでお示しをさせていただいておりますV字形案の図面、これはあくまでも概念図でございまして、詳細につきましては、今後具体的な計画を策定する中で検討いたしていくことになっているところでございます。したがいまして、そうした中で、現地における調査につきましても必要に応じて実施をしていきたい。

 ただ、いずれにいたしましても、大切なことは、このV字案が出てきた背景は、申すまでもなく周辺地域上空の飛行を回避するといった点でございますので、その基本的な考え方に基づきまして調整をしてまいりたい、そのように考えておるところであります。

照屋委員 最後に一点だけ。

 ロードマップによると、普天間飛行場の代替施設をキャンプ・シュワブ区域に設置するために、水域の再編成などの必要な調整を行う、こう書いてありますが、これは何を意味するのか、簡潔にお答えください。

麻生国務大臣 確認させていただきます。今言われておりますのは、ロードマップにおいて「普天間飛行場代替施設をキャンプ・シュワブ区域に設置するため、」「隣接する水域の再編成などの必要な調整が行われる。」と記述されている、それの話でございますね。

 この記述を行いましたのは、いわゆる普天間の代替施設の建設に伴いまして、移りますので、キャンプ・シュワブというところにヘリコプターの訓練場ができる、離発着場ができるということに伴いまして、いわゆるキャンプ・シュワブの沿岸部、前に出しますので沿岸部の形状が変化をすることになりますので、訓練などの目的のために設定されております水域というものを見直す必要が生じる。これは、変わりますので見直す必要が生じるといういわゆる運用上の理由によるものだということでありまして、いろいろ今御指摘があっておりました御懸念があるところなんだと思いますけれども、そういったようなことを置いたのではなくて、今、運用上の理由というのが主な理由と御理解いただければよろしいんだと思っております。

 また、キャンプ・シュワブの水域をどのように調整するかというのが多分次の御関心なんだと思いますが、これは今後日米間で検討することになっておりますので、今まだこれはきちんと決まったものがあるわけではございません。

照屋委員 終わります。

     ――――◇―――――

原田委員長 次に、分布範囲が排他的経済水域の内外に存在する魚類資源(ストラドリング魚類資源)及び高度回遊性魚類資源の保存及び管理に関する千九百八十二年十二月十日の海洋法に関する国際連合条約の規定の実施のための協定の締結について承認を求めるの件及び二千年の危険物質及び有害物質による汚染事件に係る準備、対応及び協力に関する議定書の締結について承認を求めるの件の両件を議題といたします。

 政府から順次趣旨の説明を聴取いたします。外務大臣麻生太郎君。

    ―――――――――――――

 分布範囲が排他的経済水域の内外に存在する魚類資源(ストラドリング魚類資源)及び高度回遊性魚類資源の保存及び管理に関する千九百八十二年十二月十日の海洋法に関する国際連合条約の規定の実施のための協定の締結について承認を求めるの件

 二千年の危険物質及び有害物質による汚染事件に係る準備、対応及び協力に関する議定書の締結について承認を求めるの件

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

麻生国務大臣 ただいま議題となりました分布範囲が排他的経済水域の内外に存在する魚類資源(ストラドリング魚類資源)及び高度回遊性魚類資源の保存及び管理に関する千九百八十二年十二月十日の海洋法に関する国際連合条約の規定の実施のための協定の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明申し上げます。

 この協定は、平成七年八月にニューヨークで開催された、関連の国際連合会議において採択されたものであります。

 この協定は、排他的経済水域の内外に存在する魚類資源及び高度回遊性魚類資源の長期的な保存及び持続可能な利用を確保することを目的として、そのための一般原則等について定めるものであります。

 我が国がこの協定を締結することは、このような目的に積極的に協力し、及び我が国の漁業の安定した発展を図るとの見地から有意義であると考えます。

 よって、ここに、この協定の締結について御承認を求める次第であります。

 次に、二千年の危険物質及び有害物質による汚染事件に係る準備、対応及び協力に関する議定書の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。

 この議定書は、平成十二年三月十五日に、国際海事機関の主催によりロンドンで開催をされた国際会議において採択されたものであります。

 この議定書は、危険物質及び有害物質による汚染事件への準備及び対応に関し、各締約国がとる措置、国際協力の枠組み等について定めるものであります。

 我が国がこの議定書を締結することは、海洋環境の保全に資するとともに、この分野における国際協力を一層推進するとの見地から有意義であります。

 よって、ここに、この議定書の締結について御承認を求める次第であります。

 以上二件につき、何とぞ、御審議の上、速やかに御承認いただきますようよろしくお願いを申し上げます。

原田委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時四十八分散会


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