衆議院

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第17号 平成18年5月26日(金曜日)

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平成十八年五月二十六日(金曜日)

    午前九時三十六分開議

 出席委員

   委員長 原田 義昭君

   理事 小野寺五典君 理事 谷本 龍哉君

   理事 土屋 品子君 理事 水野 賢一君

   理事 渡辺 博道君 理事 武正 公一君

   理事 山口  壯君 理事 丸谷 佳織君

      愛知 和男君    伊藤 公介君

      伊藤信太郎君    宇野  治君

      遠藤 利明君    高村 正彦君

      篠田 陽介君    新藤 義孝君

      鈴木 馨祐君    中山 泰秀君

      三ッ矢憲生君    山内 康一君

      山中あき子君    吉良 州司君

      篠原  孝君    田村 謙治君

      西村智奈美君    松木 謙公君

      松原  仁君    谷口 和史君

      笠井  亮君    照屋 寛徳君

    …………………………………

   外務大臣         麻生 太郎君

   外務副大臣        塩崎 恭久君

   外務大臣政務官      伊藤信太郎君

   外務大臣政務官      山中あき子君

   農林水産大臣政務官    金子 恭之君

   政府参考人

   (防衛施設庁長官)    北原 巖男君

   政府参考人

   (防衛施設庁施設部長)  渡部  厚君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 長嶺 安政君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 梅田 邦夫君

   政府参考人

   (外務省大臣官房国際社会協力部長)        神余 隆博君

   政府参考人

   (外務省北米局長)    河相 周夫君

   政府参考人

   (外務省経済局長)    石川  薫君

   政府参考人

   (水産庁資源管理部長)  五十嵐太乙君

   政府参考人

   (海上保安庁警備救難監) 冨賀見栄一君

   外務委員会専門員     前田 光政君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月二十六日

 辞任         補欠選任

  逢沢 一郎君     遠藤 利明君

  田中眞紀子君     松木 謙公君

  津村 啓介君     田村 謙治君

同日

 辞任         補欠選任

  遠藤 利明君     逢沢 一郎君

  田村 謙治君     西村智奈美君

  松木 謙公君     田中眞紀子君

同日

 辞任         補欠選任

  西村智奈美君     津村 啓介君

    ―――――――――――――

五月二十四日

 原子力の平和的利用に関する協力のための日本国政府と欧州原子力共同体との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第一四号)(参議院送付)

同日

 在日米軍基地の再編と日米軍事同盟の強化に反対し、基地の縮小・撤去に関する請願(川内博史君紹介)(第二二一一号)

 同(近藤昭一君紹介)(第二二一二号)

 同(重野安正君紹介)(第二二一三号)

 同(辻元清美君紹介)(第二二一四号)

 同(照屋寛徳君紹介)(第二二一五号)

 同(保坂展人君紹介)(第二二一六号)

 同(菅野哲雄君紹介)(第二二三八号)

 同(鉢呂吉雄君紹介)(第二二三九号)

 核兵器廃絶に関する請願(笠井亮君紹介)(第二二七〇号)

 女子差別撤廃条約選択議定書の批准を求めることに関する請願(佐々木憲昭君紹介)(第二三二一号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 分布範囲が排他的経済水域の内外に存在する魚類資源(ストラドリング魚類資源)及び高度回遊性魚類資源の保存及び管理に関する千九百八十二年十二月十日の海洋法に関する国際連合条約の規定の実施のための協定の締結について承認を求めるの件(条約第一二号)(参議院送付)

 二千年の危険物質及び有害物質による汚染事件に係る準備、対応及び協力に関する議定書の締結について承認を求めるの件(条約第一三号)(参議院送付)


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     ――――◇―――――

原田委員長 これより会議を開きます。

 委員各位におかれましては、政務に連日御精励いただいておりますことに心から感謝を申し上げますとともに、また、麻生外務大臣におかれましては、外務大臣会議、昨日夕方に御帰国ということでございます。御活躍に心から感謝を申し上げますとともに、また、お体に気をつけて、今後ともよろしくお願いをいたします。

     ――――◇―――――

原田委員長 分布範囲が排他的経済水域の内外に存在する魚類資源(ストラドリング魚類資源)及び高度回遊性魚類資源の保存及び管理に関する千九百八十二年十二月十日の海洋法に関する国際連合条約の規定の実施のための協定の締結について承認を求めるの件及び二千年の危険物質及び有害物質による汚染事件に係る準備、対応及び協力に関する議定書の締結について承認を求めるの件の両件を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 両件審査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房審議官長嶺安政君、大臣官房参事官梅田邦夫君、大臣官房国際社会協力部長神余隆博君、北米局長河相周夫君、経済局長石川薫君、防衛施設庁長官北原巖男君、施設部長渡部厚君、水産庁資源管理部長五十嵐太乙君、海上保安庁警備救難監冨賀見栄一君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

原田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

原田委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がございますので、順次これを許します。小野寺五典君。

小野寺委員 自由民主党の小野寺五典です。

 初めに、きょうはこの漁業の方についてお話を進めたいと思っております。

 この協定、大変長いので、これを読んでいると、これで質問の時間が終わってしまいますので、ここでは公海漁業協定と略させていただきたいと思います。

 まず初めに、日本の漁業者、今まで累次のこのような漁業協定あるいは国際的な漁業の取り決めについて参加してきましたが、その都度、もしかしたら自分たちの漁業の制約が多くなるのではないか、かえって私たちにとっては不利ではないかという不安がございます。初めに、今回の協定に加盟することが日本にとってプラスになるのか、日本の漁業にとって不利にならないのか、お伺いしたいと思っています。

塩崎副大臣 公海漁業協定につきまして、日本の漁業にとって不利にならないか、こういう話でありますが、この協定というのは、今の長たらしい名前にあるように、我が国が加盟しているストラドリング魚類資源、カレイとかタラとか、こういうもので、EEZと公海をまたがって泳いでいる魚と、それから高度回遊性魚類資源、マグロとかカツオでありますね、これの保存、それから持続可能な利用を目的とする地域漁業管理機関の機能の強化、補完を図って、これらの管理機関の実効性を高めるものだ、こういうことだと思います。

 これを協定することが、これらの漁業資源の持続可能な利用の促進を通じて、我が国の漁業の安定的な操業に資するものだというふうに私ども考えていて、特に、我が国が責任のある漁業国として、公海における漁業資源の保存、それから持続可能な利用というこの協定の目的の実現に一層積極的に取り組む姿勢を打ち出すという、これにきちっと対応することによって、そういう姿勢を打ち出すことが、公海漁業のあり方について我が国の発言力がこれによって増すのではないのか、こういうことで、我が国の漁業に資するものであるというふうに考えているところでございます。

小野寺委員 この中で、特に高度回遊性魚類というのがあります。これはいわゆるマグロ類というふうに考えていいと思うんですが、現実的に、ではこのマグロ類をとっている国はどこかといいますと、もちろん日本は昔からの伝統国でありますが、ほかに、今、日本を上回るかなりの量をとっているのは実は台湾です。それから、韓国、中国も今相当の漁船数を持っていまして、日本に迫る、あるいは超える勢いを持っています。

 では、台湾はこの協定に入ってくれるのか、あるいは、現在、日本は署名をしておりまして、批准という手続を行う最中でありますが、韓国、中国は批准してくれるのか。もしこの主要国が入らなければ全くこの協定というのは意味のないものになると思うんですが、その見通しについてお伺いしたいと思います。

石川政府参考人 お答え申し上げます。

 中国と韓国につきましては、いまだ本協定締結の見通しは立っていないと承知しております。他方、中国、韓国、双方ともこの協定の起草会議に参加をして署名を行った、こういうことから、両国が責任ある漁業国としての期待にこたえ、早期にこの協定を締結するよう我が国としても積極的に働きかけていきたい、かように考えております。

 なお、我が国にとって最も重要な漁場でございます中西部太平洋のマグロ類を対象とする中西部太平洋まぐろ類委員会、この委員会には、我が国に加え中国、韓国も参加しており、また、台湾も漁業主体という資格で参加しております。そのため、これらの国、地域に対しては、中西部太平洋まぐろ類委員会を通じても、資源の適切な保存管理のための措置の遵守を求めてまいります。

小野寺委員 韓国、中国にぜひ入っていただくよう、ともに圧力をかけていただければと思っています。

 今ちょっと局長の方からお話がありましたが、中西部太平洋まぐろ条約について、実は、私ども、今回のこの協定の内容を見ていまして、不安なことが幾つかあります。これは大変心配なことです。

 例えば本協定十七条ですが、この協定の加盟国は、地域的漁業管理機関に加入していなくても、ストラドリング漁業資源、それから高度回遊性魚類資源の保存管理に関して、それらの機関に対して協力する義務を免除されないというふうになっています。つまり、この協定に加盟している限り、今言った各地域機関に関しては、加盟の有無にかかわらず協力しなければならないということになっています。

 私どもも今、漁業の歴史を見て、非常につらい経験をしています。それは例えば鯨。IWCという会議があります。これは、当初は漁業国が入っておりました。ところが、いつの間にか非漁業国が多くなっていって、結局、本来は鯨の資源を確保するための委員会だったのが、今は鯨をとらせないための委員会になってしまった。こういう形で、どんどん実はいろいろな国が入ってくる可能性が高いんです。

 例えば、中西部太平洋まぐろ条約の加盟の要件にしても、あるいは、この今回の公海漁業協定の加盟の要件についても、これは例えば漁業国でなければいけないとか、入るためにはこういう制限があるとか、そういう制約はあるんでしょうか。もし自由に入れるのであれば、あるいは海がない国でも自由に入れるのであれば、鯨と同じことにならないのか、それをちょっとお伺いしたいと思います。

石川政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、協定の締結に至る経緯を、念のために一言、冒頭申し上げたいと存じますが、我が国は、この協定の対象となっている我が国にとって重要な漁業資源の保存管理に責任を有する地域漁業管理機関への加盟をすべて了した上で、この協定を締結することといたしました。これらの地域漁業管理機関において保存管理措置を採択する場合、全会一致ないしコンセンサスを原則としております。仮に多数決で決定する場合であっても、異議を申し出た加盟国については適用が除外される、こういうことになっております。

 我が国といたしましては、これらの地域漁業管理機関において不当な保存管理措置が採択されないよう、漁業資源の持続可能な保存及び利用に関して、利害を共有する国々と連携しながら適切に対処し、我が国が地域漁業管理機関を脱退しなければならない、仮にもそんなような事態が生じないよう最大限努めていく、このような所存でございます。

小野寺委員 質問を再度言いますが、この協定については、加盟することに関して、これは例えば内陸国であるとか漁業をしていない国とか、そういうことだって自由に入れるんですか。

石川政府参考人 この協定でございますけれども、基本的には、漁業の沿岸、いわゆる排他的経済水域それから排他的経済水域以外の公海部分でございますね、それについての……(小野寺委員「いや、入れるかどうかだけ。要件としては入れるでしょう、国連条約に」と呼ぶ)はい。これは、入りたい国は入れます。

小野寺委員 ということは、自由に入れるわけです。ということで、どんどんいろいろな国が入ってきて、鯨と同じようなことにならないのか、とても心配です。

 さらに、もう一つ大きな心配があります。それは、この条約の内容のたしか二十一条だったと思いますが、ここの中に書いてある内容を見ますと、実は、検査、調査をすることができる、この協定の締約国、当該機関の加盟国等であるか否かを問わない、を旗国とする漁船に乗船し、これを検査すること等ができるという要件があります。

 ということは、この加盟に入っている国であれば、日本の漁船、もしかしてちょっとこれは危ないのじゃないか、おかしいのじゃないかということで、それに臨検して、その中の積み荷あるいは魚種を検査する、そういうことができるという規定になっています。ということは、この協定に入っていると、どの国であっても、自分のところで取り締まり船をつくって、では日本の漁船をねらい打ちで検査します、こういうことだってできるわけです。

 なぜこの心配を言うかというと、鯨がそうだったんです。鯨は、あるかなり狂信的な自然保護団体、ここが自分たちで船をチャーターして、日本の捕鯨船にほぼぶつかるような形で行って一生懸命阻止をしました。

 しかも今は、ちょっと危ないと言って失礼しました、かなり強力な自然保護団体は国際的にいろいろな国にネットワークを張っていますので、例えばIWCの会議に行きますと、明らかにその自然保護団体がサポートしている、あるいはもしかしたら代表で出てきている国があるわけです。中位層の小さい国に関しては、むしろこの問題は、自然保護団体がそこまで言うんだったら全部任せるからということで、その国の調査船、検査船ということで、自然保護団体が運営するそういう船が、堂々とこの協定に入って、日本の船あるいは漁業をやっている船に対して検査を行って、内容どうだ、内容どうだ、こういうことができる。

 こんな危ない要件がここに入っているんですが、このことに関して想定をし、またどのような形で排除していくか、その考えをお伺いしたいと思います。

石川政府参考人 御指摘の二十一条でございますけれども、この協定に基づく乗船検査では、検査官は、漁獲操業の妨げとなったり、船上の漁獲物の品質に悪影響を与えるような行動を避け、また、漁船に対する不当な妨げとならないような方法で検査を行うことが義務づけられております。これは二十一条の十項でございます。

 このように、公海上にある他の締約国の漁船を検査する場合には、本協定の定める厳格な条件に従うことが義務づけられているため、他の締約国が根拠なく不当な乗船検査を行うことは考えにくく、また、我が国としても、本協定に基づく乗船検査が適切に実施されるよう十分に留意しつつ、対処していく考えでおります。

 しかしながら、万が一、本協定の定める義務に違反する形で我が国漁船の操業を妨害するような乗船検査が他国によって行われた場合には、検査を行った国に対し直ちに厳重に抗議し、再発防止等適切な措置を求める考えでおります。

小野寺委員 今までそのような答弁をずっと外交の協定の中でされてきて、結局、鯨があんな状況になっているという現状をぜひお考えいただきたいと思います。

 また、この二十三条では、寄港国、いわゆる船が港に着いた、その国についても同じく、漁具、漁獲物を検査することができるという協定になっています。ですから、港に着いて、その港の国が、ちょっと日本の船おかしいねと、あるいはそこの、ちょっとうがった見方ですが、日本の漁業に反対する団体がその国の中で主要なポストを占めている場合には、もうその港にも寄港できない、そんなことも考えられます。

 なぜこんなことを何回も言うかといいますと、実は世界のこういう海の資源を利用している国というのはそんなに数は多くないんです。特に一番多いのは、日本もそうですし、台湾、韓国、中国、これらの国です。ほかの国にとっては、公海上の漁業というのはある面では関係のないことなので、この問題について、まあ自分たちが知らないところで勝手に魚をとっている分にはいいかなというのと、いや、余りそれをとらせちゃまずいんじゃない、特に自然保護団体、あるいは鯨の問題、ある団体に関しては、海の魚は鯨の大切なえさであるから、食料であるから、それを人間が食べることはけしからぬということを堂々と言う国の代表もいます。このような国を相手に交渉する場合に、この協定が危なくないのか、常にそういうことを危機感を持って、ぜひこれからの交渉あるいは内容について対応していただきたいと思うんですが、その心構えについて、大臣から一言お伺いしたいと思います。

麻生国務大臣 条約をつくったときの状況がいつの間にか別のものに変わっていくという話は、これは小野寺先生、何もこの漁業協定に限らずいろいろあるんだと思っております。したがいまして、本来の趣旨、目的というものから逸脱しないようにするという心構え、また気遣い、また予測等々は常に気にしておかねばならぬ。漁業関係者にとりましては非常に大きなところだと思いますし、また、入っているところと入っていないところ、差がつくなんというのは、約束を守った方が割を食うのではちょっといかがなものかということになろうと思いますので、御趣旨を踏まえて対応してまいりたいと存じます。

小野寺委員 今大臣からすばらしいお答えがあったんですが、本当に正直者がばかを見るような資源管理ではいけないというふうに思っています。特に、今マグロの問題、お話がありましたが、日本がいろいろな漁業協定、漁業規制で自分たちを守れば守るほど、逆にその漁場にほかの国、この協定を守らないほかの国がどんどん進出していって、結局その魚はみんな日本に入ってきます。ということは、値段が下がる。日本の漁業者が一生懸命自分たちで規制をしているんですが、結局規制を受けない外国の船がマグロをとって、それを日本が輸入する。これは日本は妨げられませんから、どんどん魚価が下がってしまう。それで、自分たちの日本の漁業者の首が絞まり、日本の漁業者が経営できないから船を売る。その売った船は、実は外国の資本が買い取って、どんどん日本の国益が外国に流れている。私は、こういう不安を持っています。

 ぜひ水産庁にお伺いしたいんですが、こういうマグロ漁業を含めて、今こういう公海で行う漁業にとっては非常に経営が厳しくなっています。燃油高の問題もあります。ぜひこういうものに積極的に対応していただくよう、強いお言葉をいただきたいと思います。

五十嵐政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま先生からお話ございましたように、我が国のマグロ漁業は、輸入品との競合、それから魚価の低迷、あるいは燃油高騰等を抱えまして、大変経営状況が厳しいものとなっておるところでございます。

 したがいまして、今後、世界的なマグロの資源の状況あるいは市場の動向を踏まえまして、国際競争力のある漁業を確立していきますためには、まず業界の自助努力を基本としながらも、経営の柔軟性を確保するための規制の見直しですとか、あるいは省エネ、あるいは生産体制の合理化によるコストの削減ですとか、あるいは付加価値の向上、漁業関係者の販売力の強化等の視点に立った施策を講じていくことが必要不可欠だと考えております。

 これらの点につきましては、小野寺先生からも常々御指導いただいているところでございますが、私どもといたしましても、業界団体等々、十分意見交換をしながら、経営の改善、それからマグロ業界全体の構造改革を図るための具体的な対策について、ただいま検討を進めておるところでございます。

 また、今お話ございましたように、地域漁業管理機関における資源管理の適正化ということがマグロ漁業を取り巻く環境の改善に大きく資することもまた事実でございます。これについても十分頑張ってまいりたいというふうに考えております。

小野寺委員 ぜひこの地域漁業管理機関の結束というのをお願いしたいと思います。

 そういう中で、たしか二〇〇七年ですが、まぐろ類地域漁業管理機関の合同会議というのが日本で開かれるというふうに伺っています。今ようやくマグロ資源、少しずついろいろな規制を日本が頑張りながら行っているために、魚価も少しずつ上がってまいりました。また、資源回復も大変必要だと思います。この合同会議の見通しについてお伺いしたいと思います。

五十嵐政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいまお話にございました地域漁業管理機関の合同会議でございますが、昨年三月、FAOの水産委員会におきまして、我が国から開催を提案し、各国から強い支持を得たところでございます。来年の一月、これを開くこととしておりまして、この手の会議としては初めてのものということでございます。

 この会議はいわゆるIUU漁業の廃絶や漁獲能力の抑制等の問題に対処するために、各機関の横の連携をまず強化する、それから各機関及び加盟国が取り組むべき行動についての共通認識を形成するということを目的としております。全部来ていただきますと七十六カ国ということになりますが、できるだけ多くの国に参加していただきますよう、働きかけを強めてまいりたいというふうに考えております。

小野寺委員 ぜひ、それだけ世界の方がいらっしゃるので、日本のマグロの漁業従事者、あるいは長年の日本のマグロの伝統についても、日本の現状を見ていただければというふうに思っています。

 漁業、本当に今危機的状況にあります。ただ、この公海漁業というのは日本がずっと築き上げてきた大切な産業です。世界のこの産業を築き上げたパイオニアが日本だと言っても間違いありません。この国益の問題になりますので、ぜひ公海の漁業、私は石油資源と変わらないと思っています。漁業を守ることが実は私どもの将来の子孫につながる、たんぱく資源の確保にもつながると思いますので、この問題、しっかりと取り組んでいただければと思っています。

 時間が少しありますので、最後に、ちょっとこの協定とは違いますが、つい先般行われました日中外相会談の成果、特に、きのうでしょうか、中国の外務報道官でしょうか、日本の外務大臣が行かれた成果は大変なものがあるという評価を、久しぶりに中国から日本に対して評価をいただいた、そういう報道も一部されておりました。この成果と、それから、私ども期待しているのは、今後の首脳会談、この見通しについてお伺いしたいと思っています。

麻生国務大臣 ドーハの悲劇じゃありませんが、二十三日にカタールのドーハにおいて、ACD、エーシアン・コオペレーション・ダイアログという会議で、李肇星外交部長との間で、かなり率直な意見交換であったし、とげとげしさはなかったと思っておりますが、会談をやった結果、少なくとも日中関係改善の流れができつつあるということは確信した、そんな印象を受けたところです。

 二国間の重要性やら何やら、いろいろ話をさせていただいて、東シナ海の資源開発につきましても局長級の会議をやりますというので、この話を加速させるという話やら、また不測の事態というのも十分にあり得ますので、そういったときに対応するためのメカニズム、システムをつくっておく必要があるのではないかということで、これの設置の必要性につきましても一致をいたしております。

 また、その他いわゆる北朝鮮の話とか、いろいろ地域協力の話などありましたので、共通の利益というものを拡大することで一致しておりますので、やはり双方利益がないと長続きしませんよという話で、その話でも一致をしております。

 最後の日中首脳会談のお話につきまして、特に話題が出たわけではありませんけれども、問題があるから会わないというのは話の筋としてはおかしいじゃないですか、問題があるから会うのが普通なんじゃないのという話をして、何もこんな遠く十一時間半もかけてカタールまで来なきゃ会えないというのも話としてはおかしいんじゃないか、近いんだからという話をして、にこにこ笑いながら話が終わったのが最後です。

小野寺委員 ありがとうございました。

 ぜひ、今言った、遠くで近い国が会うというのではなくて、近くで近くの国が会うような、そんな二国間関係にしていただければと思います。ありがとうございました。

原田委員長 次に、篠田陽介君。

篠田委員 自民党の篠田陽介でございます。

 私は、きょう、二千年の危険物質及び有害物質による汚染事件に係る準備、対応及び協力に関する議定書についての質問をさせていただきますが、まずその前に、日中外相会談が行われたと存じますが、私の方から、私は実は衆議院で環境委員会と外務委員会に所属させていただいておりまして、何回か質問に立たせていただきましたとき、麻生外務大臣に対しましては、中国に対して環境面でODAの一元化を図っていただきたいというふうな発言をさせていただきました。

 先般、たしか四月二十五日だと思いますが、大臣が広島で御講演された際に、今後、中国に対しては環境面一本に絞ってODAを活用していくというふうな発言をされたということを私非常にうれしく思っておりまして、これからさらにぜひ頑張っていただいて、特に今中国は環境汚染が深刻でありますので、環境面でしっかりとODA一元化を図っていただいて、さらに推進していただけることを私からもお願いさせていただきながら、御礼と言っては変ですが、そういった取り組みをされることをこれからも頑張っていただきたいというエールを送らせていただきます。

 まず、私、きょう、二〇〇〇年危険有害物質汚染事件議定書ということについて質問をさせていただきます。

 今回の議定書は油以外のものについての議定書だということを承知しておりますが、その前提となります油についての汚染事故、この辺について、どのような取り決めがあるのかということをまずお尋ねさせていただきます。

神余政府参考人 お答え申し上げます。

 油によります汚染事故に関する条約といたしましては、国際海事機関、すなわちIMOで採択されました幾つかの条約がございます。

 汚染事故を防止するための船舶の構造等につきましては、一九七八年に採択され、その後数多くの改正が重ねられてまいりました海洋汚染防止条約、いわゆるMARPOL条約と言われておりますけれども、これがございます。また、事件発生後の責任の範囲あるいは補償のあり方に関連いたしまして、一九九二年に採択されました民事責任条約や、あるいは国際基金条約、さらに二〇〇三年に採択されました追加基金議定書が存在いたします。

 加えて、ただいま御審議いただいております議定書と同様に、汚染事故に対する準備、対応及び協力に関するものとしては、千九百九十年の油による汚染に係る準備、対応及び協力に関する国際条約、いわゆるOPRC条約でございますけれども、これがございます。我が国は、この条約を一九九五年に締結をしております。

 我が国は、今申し上げたような油による汚染事故関連の諸条約をすべて締結いたしておりまして、また誠実に履行をしております。また、IMOの場におきましても、他の国々にこれらの条約の締結と遵守を呼びかけているところでございます。

篠田委員 ありがとうございます。

 それで、私、この油による流出事故に関する議定書、OPRC条約について調べましたが、これはロシアが入っていないという事実があるんです。今、ロシアはいろいろと資源開発がありまして、日本の北の方、サハリン・プロジェクトも今進められております。

 ぜひロシアに入っていただくように働きかけをお願いしたいのですが、それについて、外務大臣の今後の決意をお尋ねさせていただきます。

麻生国務大臣 御指摘のありましたとおり、この議定書を締結するためには、いわゆる油による汚染事故に対する準備、対応に関する協定、いわゆるオイル・ポリューション・プリペアドネス・レスポンス・アンド・コオペレーションの一九九〇年という、OPRC条約を締結することが必要ということになります。

 御指摘のありましたように、この条約と議定書には、いずれもロシアは締結をしておらぬのであります。

 これは御記憶かと思いますが、一九九七年の一月だったと思いますが、島根県沖でナホトカ号というのが沈没をいたしまして、日本海の石川県とか島根県とか秋田県とか、大量の油が流出して、えらい騒ぎになったんですが、この事件からも明らかなように、これを締結することが私ども日本にとって望ましいことははっきりしております。

 ただ、日本としては、この条約の締結を含めまして、いわゆる海洋汚染防止を目的として条約された諸条約というものを締結して、厳格に遵守してもらわないと、おたくだけじゃなくこっちも迷惑するんだからという話を強く申し入れしてきたところですが、今御指摘のありましたように、あのときも、ナホトカ号の、たしか二百五十億だか二百六十億だか損害が発生したと記憶しますけれども、そういったことが今後とも起きる可能性がありますので、私どもとしては、ロシアに対して引き続きこの条約に加入するように強く求めていかねばならぬところで、強く求めていく決意でおります。

篠田委員 ありがとうございます。ぜひ強い決意で臨んでいかれることを希望いたします。

 また、平成二年にIMOにおいてOPRC条約が採択された際に、同条約の規定の範囲を油以外の危険物質及び有害物質に拡大するという検討をするという決議がなされ、それで今回のこの議定書に至るわけでございますが、この議定書採択までに実は十年時間がかかっております。また、平成十二年の採択から、我が国が本議定書を、これまで時間がかかってしまった理由について、どうしてこんなに時間がかかるのかなというのが資料を読み込ませていただいての正直な感想であるんですが、この辺について、外務省のこれまでの取り組みと、これまでこんなに時間がかかったということについての見解をお尋ねさせていただきたいと思っています。

神余政府参考人 お答えを申し上げます。

 ただいま委員御指摘のとおり、国際海事機関、IMOにおきまして、このOPRC条約、油に関する条約でございますけれども、が採択された際に、この条約の対象物質の範囲を油のみならず油以外の危険物質あるいは有害物質に拡大するということについての附帯決議が行われました。そのとおりでございます。これを受けまして、IMOにおいて危険有害物質の規制のための作業が開始されました。

 しかしながら、規制の単位、対象となる対象物質あるいは有害物質、この範囲が非常に広うございます。それから規制対象となる取扱施設の範囲、これも大変広いものがございます。それからまた、ほかの条約との関連、これについても整理をしなくちゃいけないといったようなことがございまして、IMOにおきましていろいろな議論が行われた結果、さまざまな面で関係の諸国間の利害の調整を慎重に行う必要があったというのがその理由でございます。

 このようなプロセスを経まして、一九九〇年の附帯決議から十年後の二〇〇〇年三月にこの議定書が採択された次第でございます。

 次の御質問でございますが、日本がなぜこの議定書をそれならば早く締結してこなかったのかということでございますけれども、まず、この議定書で規定いたします危険有害物質が、既に述べましたとおり、油と異なって、その種類及び物理的、化学的性質が多岐にわたるということでございまして、例えば、硫酸、コールタール、ベンゼン、キシレン、メタノール、あるいは核物質にまで場合によっては及ぶということでございますので、これらの多様な物質に対応した国家的な緊急計画を定めるためには、関係省庁を中心として調査研究を重ねる必要があったということでございます。

 加えて、我が国としましては、海事分野におきます条約の締結に当たっては、一般にこの条約が実効性のあるものとなっていることが重要であるというふうに考えておりまして、そういう観点から、他の主要な海運国の締結状況をも見ながら、それを踏まえて検討することとしております。

 今般、我が国においても、これら危険有害物質に対応した国家的緊急計画を策定するめどがつきました。また、議定書も近い将来発効する見通しであるということでございますので、締結につき今回御承認を求めることとしたものでございます。

篠田委員 御説明ありがとうございました。

 私も資料を読み込ませていただきまして、油以外のケミカル、何があるのかということを調べたら、実に百五十ぐらいのさまざまな物質があるものですから、一つ一つこれについて調べたり、それぞれ会議を持ちながら進めていかれるのは大変かと思いますが、やはりちょっと十年といいますと、お役所の仕事であれば二、三年でかわっていくのが常でありますから、そんな中、十年かかるということは、これは連続性の意味においてもちゃんとできるのかなというのがありますので、逆に十年かかってしまったのはそういうところにも問題があるんじゃないかと思う変な危惧までしてしまうものですから、今後ともできるだけこういったことは速やかにやられることを私からも希望させていただきます。

 また、この議定書について調べましたら、十五カ国が批准をしますと発効になるということでございますが、今たしか日本が十四番目と承知をしておりまして、間もなく十五カ国目になる。今まで入りました国を見ましたら、シンガポールが入られている。あそこは日本と産油国等とを結ぶ重要なシーレーンでありますから、そのシンガポールが入られているということでありますので、今後、シンガポールと日本、連携をとりながら、アジアの各国について働きかけをしていただきたいと思っています。

 その中で、先ほどの魚についての条約もそうなんですが、これについてもまだやはり中国と韓国が入っていないというような現状があります。これについて、また麻生外務大臣に対しまして、中国及び韓国、日本の隣国でありますので、ぜひ入っていただきたいと私は思っております。これについて、この議定書を締結するような働きかけ、これからどのようにされるおつもりなのかというのを、これは副大臣でありますかにお答えいただきたいと思っています。

塩崎副大臣 この議定書についての重要性の点は、今るるお話があったとおりでございますし、それから、今何カ国入っているのかというお話、先生の方からございましたけれども、IMOに問い合わせ、昨日の段階、五月二十五日段階で締約国数を確認いたしますと、現在で十四カ国となっております。この条約は、先生御案内のように、十五カ国が締結した後に、一年後に発効するということになっておりますので、あと一カ国が締結すれば発効要件が満たされるということになるわけでありまして、日本の意味合いというのは大変重要だ、こういうことであります。

 そこで、中国、韓国でありますけれども、中国、韓国が危険有害物質による汚染事件に対応するための体制をきちっと整備してもらって、国際協力の枠組みに参加するということは極めて望ましいという先生の御指摘は、全くそのとおりだと思います。この両国が本議定書の締結を検討しているというふうに我々は聞いているわけでありますけれども、できるだけ早くこの議定書に締結をするように、我が国としても外務省からしっかりと働きかけてまいりたい、このように思っております。

篠田委員 ありがとうございました。

 日本海、今いろいろ、対馬沖にいろんな物質が、廃棄物質というのが届いたり、エチゼンクラゲが発生した、これもひょっとして何か原因があるんじゃないか等々言われておりますので、日本の隣国、中国、韓国について、毅然とした態度で、こういった条約についても早く批准していただいてということの働きかけをぜひお願いしたいと思っています。

 また、こういった海洋に関するさまざまな条約について、国連の国際機関であります国際海事機関、IMOについて、この役割についてお尋ねをしたいと思っています。

 この議定書、IMOについて策定されたということなんですが、このIMOは、海上航行のルールづくりや海洋環境保護のためのさまざまな取り組みをこれまで行っている機関だということを承知しています。このIMOについて、これまで我が国においてどのような取り組みをされてきたのか。恐らく日本人の方もこの組織の中に入られて活躍されていると思うんですが、これまでの取り組みについて外務省に質問したいと思います。

神余政府参考人 お答え申し上げます。

 日本は、一九五八年にこのIMOに加入をしておりますけれども、この加入以来、主要造船国あるいは主要海運国ということで理事国に選出され続けてきております。また、IMOの活動に積極的に参加し、大きな貢献を行ってきております。

 今御審議いただいている条約の採択が行われたわけでございますけれども、これに見られるとおり、IMOの主要な任務は、海上の安全確保、あるいは船舶からの海洋汚染の防止等、海事問題に関する幅広い分野での国際的な規則を議論し、採択するところでございます。

 我が国は、新たな規則の作成において有意義な実験データや技術的な提案を数多くこのIMOにおいて行っておりまして、こういう我が国の貢献は、IMOにおきまして高い評価を受けているだけでなく、日本の基準を世界の基準として普及させる上でも大変有意義であります。

 一例を申し上げますと、我が国は、船舶への有害な塗料の使用を規制することについて条約を作成することを提案いたしました。そして、二〇〇一年に、我が国の原案におおむね沿った形で条約テキストが採択されました。

 こういうことでございまして、海運に関する基準の策定において、ルールメーキングにおいて、我が国の考えを反映させるべく積極的に活動をしてきたところでございます。

 日本人につきましては三名勤務しておりまして、海上安全部長という高いポストに日本人がついております。

 以上であります。

篠田委員 質問時間がそろそろでございますので終わらせていただきますが、私は、日本というのは、これまでの発展を見て、歴史を振り返ってまいりますと、やはり無資源国であったということ、それと島国であったということ、このデメリットと思われるようなところが逆に日本の繁栄の基礎となったと考えています。

 それはなぜかと申しますと、御案内のとおり、海運というのは一番運送コストが安いわけでありまして、そのときの価格で一番安いものを世界各国から輸入してきて、そこに日本人の独特の勤勉性、さらにはいろいろなことに対する粘り強さ、これで物づくりをしながら付加価値をつけて、世界各国に高付加価値のものを輸出しながら外貨を獲得してきたということであります。その中での海運、海洋の占める割合、重みというのは非常に大きいものだと私は思っておりますので、ぜひ、IMOを通じて、国際機関を通じて、日本がもっと積極的に、世界に対して海運、さらにはその中での安全性の必要性というものをこれからも外務省に積極的に訴えを続けていただきたいという願いを込めまして、私の質問とさせていただきます。

 どうもありがとうございました。

原田委員長 次に、丸谷佳織君。

丸谷委員 おはようございます。公明党の丸谷佳織でございます。

 本日は、国連公海漁業協定及び危険有害物質議定書につきまして、賛成の立場から幾つか質問をさせていただきます。

 まず、国連公海漁業協定についてでございますけれども、本日の審議の中で、既に小野寺委員の方から我が国漁業に与える影響についての懸念が示されました。私も同様の懸念を持っているところでございます。質問通告している部分と小野寺委員の質問が重なっている部分がありますので、そこは省かせていただきまして質問をしたいと思います。

 旗国以外による乗船、そして検査が可能になっているこの協定でございますけれども、漁業関係の皆様から寄せられている不安の一つに、例えば、我が国の遠洋漁業船の乗員の方というのは、英語等の外国語を習得している方というのはなかなか少ないのであるという現実が示されました。また、そういった場合、こちら側が日本語しか話さない乗組員の方々がいらっしゃって、その船に対して他国の、例えば英語なりほかの言語なりの検査員が乗り組んできた、そのときに当然考えられるのが、言語の壁による不要な摩擦とか誤解がいとも簡単に生じてしまうのではないかという懸念がございます。

 こういった言語の壁とかあるいは文化の違いを原因としたコミュニケーション不足で不必要な衝突を起こさないための措置というものが必要になってくるものと考えておりますけれども、こういった問題を回避するためにどのような対策を講じる必要があるというふうに政府はお考えになるのか、この点からお伺いいたします。

石川政府参考人 お答えさせていただきます。

 御指摘のこの協定に基づく乗船検査でございますけれども、検査官は協定上の義務として、漁獲操業の妨げとなったり、船上の漁獲物の品質に悪影響を与えるような行動を避け、また、漁船に対する不当な妨げとならないような方法で検査を行うということとされております。したがって、検査官は、このような義務を遵守しながら乗船検査を実施する必要がございます。

 こうしたことから、乗船検査を行う検査官の側におきましては、円滑に乗船検査を実施するため、言語の問題を含めて必要な努力を行うことが求められます。ただ、御指摘のような言語や文化の問題が存在する可能性は否定できませんけれども、この協定に基づく乗船検査は、本協定が定める厳格な条件、手続に従うことが義務づけられておりますため、言語の問題のみをもって我が国漁船が不利益をこうむることは想定しがたいと考えております。

 万が一、本協定の定める義務に違反する形で我が国漁船の操業を妨害するような乗船検査が他国によって行われた場合には、検査を行った国に対し直ちに厳重に抗議し、再発防止等適切な対応を求める考えでおります。

丸谷委員 石川部長に今お答えいただきました。

 そうしますと、こういった言語ですとか文化の違いによる不必要なコミュニケーション不足、摩擦を防ぐためには検査官の側に努力義務が課せられるというふうな御答弁だったと思います。ということは、例えば、細かいことを詰めて大変恐縮でございますけれども、我が国の漁船に対する検査官の側からすれば、当然日本語の習得というものも視野に入っているという状況なんでしょうか、それとも、そういったことに関してはこれから詰めていっていただけるんでしょうか。

石川政府参考人 お答え申し上げます。

 現時点において第三国の検査官に日本語教育を行っているかどうか、大変恐縮でございますけれども、現在、情報を持ち合わせておらないことをお許しいただきたいと存じます。

 ただ、先ほど、一般的な協定上の運用の義務としてそういうことが考えられるのではないかということをお答えさせていただいた次第でございます。

    〔委員長退席、小野寺委員長代理着席〕

丸谷委員 わかりました。こういった非常に有意義な協定であることは認めておりますし、賛成の立場でございますので問題ないのですけれども、やはり、協定を締結し、そして現場という本当に小さな、また細かな心配りをしていかなければいけないということを考えますと、さまざまな現場の御苦労、不安があると思いますので、外務省のみならず、水産庁あるいは海上保安庁等、政府一体となって現場の不安を取り除くような諸手段をとっていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。

 そして、もう一点でございますけれども、本協定は各地域漁業機関の管轄水域内におきます第三国による乗船検査について包括的に定められていますけれども、各海域においては管理魚種あるいは漁獲制限方法等のいろいろな面でそれぞれ特殊な事情を有していることも否めません。そのため、乗船そして検査の実施方法に関する詳細は各地域の漁業管理機関において各海域それぞれの事情を考慮して議論そして決定されるべきでありまして、本協定のみに基づいて全地域について画一的に定められるべきではないと考えております。

 各地域の特殊性に応じた乗船検査の実施を確保するために、本協定の規定に縛られないで各地域漁業機関における乗船検査の実施要領に関する議論を進めていただきたいと思いますが、この点について政府の見解をお伺いいたします。

石川政府参考人 お答え申し上げます。

 この協定二十一条の2でございますけれども、そこでは、各地域漁業管理機関において乗船及び検査の手続を定めること、また同二十一条の3では、各地域漁業管理機関がそのような手続を定めない場合にはこの協定の乗船検査の基本的な手続が適用されるというふうに定められております。さらに、この協定の二十一条15では、各地域漁業管理機関が、保存管理措置の遵守を確保する実効的手段として、乗船検査以外の仕組みを定め乗船検査を行うことを合意、決定できるとしています。

 御指摘いただきましたとおり、乗船検査は地域の特殊性を考慮して実施することが望ましく、我が国としても、本協定上の規定を踏まえつつ、それぞれの地域漁業管理機関において漁業資源の保存管理措置の実効性を確保するための最適な遵守措置がとられるよう適切に対処してまいりたい、かように考えております。

丸谷委員 では、続きまして、危険有害物質議定書についてお伺いをさせていただきます。

 本議定書は、一九九〇年に、千九百九十年の油による汚染に係る準備、対応及び協力に関する国際条約、いわゆるOPRC条約が採択をされた際に、この条約の規定の範囲を油以外の危険有害物質に拡大することを検討する旨の決議がなされ、そしてIMOで検討され、十年後の二〇〇〇年に採択するに至ったと承知をしております。

 先ほどの篠田委員の御発言もありましたけれども、OPRC条約が採択されるまで一年間という期間であったのに対しまして、本議定書の方は十年というのは、先ほど国社部長の方から御説明がございましたけれども、余りにも長いなという気がしてなりません。範囲が広いということでございましたけれども、十年というのは非常にかかり過ぎではないかという思いが改めてするわけでございますけれども、この点、もう一度説明していただけますか。

神余政府参考人 先ほど篠田委員に対してお答えしたところでありますけれども、さらに敷衍してお答え申し上げます。

 一九八九年に、たしかアメリカのアラスカ沖で大型タンカー、エクソン・バルディーズ号が座礁いたしまして、大変多量の油が流出をした。これを契機に、委員御指摘のとおり、一九九〇年にはOPRC条約ができたわけでありますけれども、油に対応すると同じように、化学物質、油以外の有害物質に対応する条約をつくるべきだという決議が採択されたのが一九九〇年でございます。

 他方で、既に申しましたように、この規制の対象となる化学物質、危険物質、これは大変広いということでございまして、硫酸、コールタール、ベンゼン、キシレン、メタノールということ以外に、本当に百種に上るような物質もあるというふうに言われております。

 それからまた、規制の対象となる取扱施設の範囲でございますけれども、船だけではだめだということで、海港、港湾施設、それから、その他の、ハザーダス、ノキサス、危険物質ですけれども、HNS取扱施設にも拡大しなくちゃいけない。範囲が非常に広い。

 それから、ほかの条約との関係を整理しなくちゃいけない。まさに、海洋汚染の防止に関する条約は大変いろいろなものがございます。海洋汚染防止条約もあれば、あるいは一九九二年の民事責任条約もあれば、一九九二年の国際基金条約もあれば、いろいろな条約があって、そういう条約との関係をきちっと整理した上でないと、損害賠償の点にも発展するということでございますので、そういうことを全部踏まえて、委員からごらんになれば時間が大変かかり過ぎということなんですけれども、IMOにおいて議論が慎重に行われてきたということでございまして、我々もそれに参加をして、IMOの場でそういう議論を行ってまいりました。

 実は、議論が行われたのは一九九四年以降でございます。準備に少しかかったわけです。ですから、十年と言っておりますけれども、確かにそうなんですが、九四年から議論が行われて六年かかって採択されたということでございますので、その点、御理解いただきたいと思います。

丸谷委員 次に、実際に我が国の近隣国でありますロシアでございますけれども、我が国周辺海域における外国船舶による海洋汚染の上位、二〇〇五年では第三位がロシアでございまして、やはり、ロシアに対しても、まずOPRC条約を早く締結するように働きかけていただきたいというふうにお願いをしておきたいと思います。

 また、一方、今月の十日から十二日にかけましてサハリンのアニワ湾において日ロ合同油防除総合訓練が実施をされました。この訓練は、日本海及び黄海の環境保全を目的にしまして、日中韓ロ四カ国で構成をされました北西太平洋地域海行動計画の初めての訓練としても位置づけることが決められておりまして、極めて重要なものであったと考えております。しかしながら、残念なことに、今回の訓練におきましては、十一日に海中の転落者を救助するという想定の訓練中にヘリの回転翼が大破をしまして、機体が転覆し、ロシア人の方が一名死亡するという事故が発生したというふうにも聞いております。

 非常に残念なことだと思いますけれども、今回の油防除総合訓練の概要及び訓練の評価をお伺いいたします。

冨賀見政府参考人 お答えします。

 先生御案内のとおり、サハリン・プロジェクトの推進に伴って大規模な油汚染事故が発生することが懸念されています。

 そのため、海上保安庁では、先生先ほど御説明のとおり、日ロ間における油流出事故に対する連携を強化することを目的として、本年の五月十一日、サハリン南部のアニワ湾においてロシアとの連携訓練を実施しました。我が国からは、海上保安庁の巡視船二隻と国土交通省の大型しゅんせつ船兼油回収船一隻、計三隻、それと加えて海上保安庁の航空機一機が参加しております。

 訓練では、船舶火災の発生、船舶からの油の流出という想定のもとに、海上保安庁の巡視船並びに国土交通省の油回収船、それと加えてロシアの回収船による流出油の回収訓練を実施しました。それと、油の海岸への漂着防止訓練も実施しました。加えて、航空機等を活用した洋上からの人命救助訓練を実施したところでございますけれども、先生御指摘のとおり、不幸にも、人命救助訓練中、ロシア側のヘリコプターの事故が発生しましたが、今回の訓練そのものは、大半の訓練が行われたということで、所期の目的は達成されたというふうに考えています。それと、ヘリコプター事故に対しましても、実際のアクチュアルな人命救助訓練になったわけですけれども、迅速な救助活動を行うことができたというふうに考えています。

 今回の訓練で、日ロ間の連携体制がさらに強化されたことが確認できましたし、極めて有意義であったというふうに考えております。

 以上でございます。

丸谷委員 ありがとうございました。

 今回、油防除総合訓練というものが行われたわけでございますけれども、例えば、今後、危険有害物質防除総合訓練、どのような枠組みかはまた別の話でございますけれども、行う予定というのはあるでしょうか。計画があれば教えていただきたいと思います。

冨賀見政府参考人 お答えします。

 これまで、海上保安庁では、日ロの油防除の総合訓練、それと、東南アジアでございますけれども、インドネシア、フィリピン、日本国も加えた合同油流出総合訓練など、積極的に諸外国と油防除に関する連携訓練の強化を目的として実施しております。

 一方、先生御指摘のとおり、危険有害物質の防除に関する合同訓練については、これまで実施した実績は残念ながらございません。

 だがしかし、今回のOPRC・HNS議定書の中にも国際的な協力の必要性が盛り込まれたことから、当該議定書の締結を一つの契機としまして、海上保安庁としましては、危険有害物質の防除に関する訓練を隣接国と積極的に実施するということを積極的に検討してまいりたい、このように考えております。

丸谷委員 どうもありがとうございました。

 本議定書の締結を機に、ぜひ、今御答弁いただきましたように、油防除も総合訓練がロシアとはモデルケースとして始まったばかりでございますけれども、危険有害物質につきましても、海洋国日本として、バイなりマルチなり、さまざまな形で総合訓練ができるようにまたお取り組みいただきたいと思います。

 時間が少々余りましたので、大臣に最後お伺いいたします。

 アジア協力対話会合の御出席、本当に御苦労さまでございました。また、大変大きな実績をつくって結果を出してきていただきまして、私としましても、毎日新聞報道に接して、本当に行っていただいてよかったなと、日中、日ロ、日韓、さまざま、アジア協力対話会合での実績は当然でございますけれども、バイの会談におきます麻生外交の結果を出していただけたことを本当に心からうれしく新聞報道に接しておりました。

 時間も短いわけでございますけれども、特に日韓、日中について、バイの会談の成果、先ほど日中はいかがかという質問もございましたけれども、改めて大臣の口から聞かせていただきたいと思います。

麻生国務大臣 五年前に始まったこのACD、アジア・コオペレーション・ダイアログでしたか、東は日本、一番西はサウジアラビア、北が中央アジア、南はスリランカやインドといった、えらく幅広い、アジアと言っておる全域から出てくる会議なんですけれども、その中で、御指摘のありました日韓、日中、それぞれ行わせていただきました。

 日韓としては、竹島を初めいろいろ問題がありますけれども、とにかく大局的な見地から対話というものをきちんと開いて、交流を促進して、未来志向の日韓関係というのをきちんとやっていく必要があるのではないかと。

 特に排他的水域というもの、いわゆるEEZに関しましては、この境界画定交渉というものをきちんとしないといけませんので、やろうやろうと言って全然話が進みませんので、日程を決めようということで、来る六月の十二、十三に交渉を開くことで一致をいたしております。

 それから、北朝鮮の核の話やら拉致の話やらというのは、これは、そちらはまだDNAの鑑定が出ていないけれどもいつ出るんですか、出た上でないと、日本の資料だけを信用してやるという立場にないのはよくわかりますので、いつそちらのが出るのかということで、五月いっぱいぐらいには出したいという希望が出ていましたので、それが出た上でもう一回改めてということで、いずれにいたしましても、拉致の問題についても日韓で連携していくということを確認し合っております。

 日中会談におきましては、先ほど小野寺先生からの御質問にも一部答えておりますけれども、ぎすぎすした、とげとげしい雰囲気ではなくて、何となく流れができつつあるのかなという感じが率直なところです。終わった後、通訳なしの一対一の会合をしばらくやらせていただきましたし、いろいろな意味で流れができつつあるのかなという感じで、少なくとも、二国間というのは極めて重要な関係であるというのは両方認識しているところでもありますので、経済とか文化交流とか、いろいろそういったようなことを一層深めていこうということで一致をしております。

 これは、北はロシアも入っていますね。ロシアまで入れている会議でした。

 したがって、少なくとも、何か問題があるから会わないというような話はそもそもおかしいので、基本的に、問題があるから会う、問題があればあるほど会うという以外には解決はしないのではないかという話をいたしたりしてもおります。

丸谷委員 ありがとうございました。

 今大臣おっしゃいました通訳なしでの一対一での日中間の対話という内容の方が非常に興味があるわけでございます。恐らくおっしゃれないこともあるのかなとは思いますが。

 例えば日韓に関しましては、EEZの交渉というのをまた始めることができるということもございます。大変大きな結果だと思いますけれども、実際には、科学的海洋調査をする場合に事前通報制度というのを日本側がどのような形で主張していけるのかどうか。

 あるいは日中に関して、新聞報道によりますと、東シナ海ガス田の開発についての協議は当然なんですが、国連改革に関する日中間の課題を話し合う局長級協議も開催することが決まったというお話に、少し明るい展望が見えてきたのかなとも思いながら報道を読みました。

 というのは、安全保障理事国入りの際に、日本の安保理入りに対して中国は賛成の立場ではなかったと私は承知をしておりますけれども、こういった安保理改革、常任理事国改革も含めたことに関する日中の協議の場ができたということは、日本の安保理入りに対して一つ前進というふうに見てよろしいのでしょうか。最後にこの点をお伺いいたします。

麻生国務大臣 少なくとも、全く没交渉みたいな形で、日中間の外務大臣会合というのは、バイの会談というのは、APECとかいろいろございますよ、左が韓国、右が中国、大体どの席でもそうなっていますので、そういうときはよくあるんですけれども、少なくとも一対一の会談ができるようになったというのは、率直に話ができるようになるという環境づくりがないと全く前に進まないわけですから、そういった意味では一つの前進にはなったかと思います。ただ、それが直ちに結びついていくかどうかというのは、そこは丸谷先生、そこから先はちょっとまだ疑問です。

丸谷委員 では、我が国としてもぜひ、安保理というのは外交の悲願だというふうに思っておりますので、これを契機に大きく外交を前進させていただきたいというふうにお願いをいたしまして、質問を終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。

小野寺委員長代理 これにて丸谷佳織君の質疑は終局しました。

 次に、篠原孝君。

篠原委員 民主党の篠原でございます。

 きょうは、国連公海漁業協定の関連で質問をさせていただきます。

 資料を例によって、というかほとんど出しておりますけれども、またきょうもお配りしてありますので、それをちょっとごらんいただきたいと思います。

 私、協定というようなもの、条約というふうになると、英語も多少わかりますもので両方を比べるんですが、今回のこの条約は、ストラドリング・フィッシュ・ストックというので片仮名の名前がそのまま使われているわけです。

 条約の訳を見ましたら、いろいろなものが使われていました。「アジェンダ」「プログラムエリア」「データ」「オブザーバー」それから「船舶監視システム」。システムとかオブザーバー、データ、プログラムエリア。アジェンダになると一般の人たちが一体おわかりになるのかどうか。皆さん、おわかりになりますか。外務委員会の皆さんは全部おわかりになるんだろうと思いますけれども。

 それで、今度、「ストラドリング魚類資源」となっているわけですね。これは、こういう訳をされるとき、外務省の皆さんは非常に苦労されると思うんです。一体どこまで日本語に訳し、どこから原語を使うかというのを悩まれると思うんですが、今回、具体的な事例で、ストラドリング・フィッシュ・ストックを「ストラドリング」というふうにして括弧で、あちこち境界をまたいで行き来する、魚は国境がわかりませんから、二百海里もわかりませんから、当然ですけれども、そういうのを解説しておられる。

 なかなか苦労をされたと思うんですが、こういう訳をするときの、原語を片仮名で使うか日本語にするかというものの基準があるんだろうと思うんですけれども、我々にはよくわからないんですが、その基準をちょっと教えていただきたいんですが、お願いします。

長嶺政府参考人 お答え申し上げます。

 まず最初にお尋ねのストラドリング魚類資源の点についてでございますが、これは、英語の正文にございます「ストラドリング・フィッシュ・ストックス」という英文の訳といたしまして、これは英語の片仮名表記を単独で用いたわけではございませんで、この内容を、平明さを心がけるという観点から、「分布範囲が排他的経済水域の内外に存在する魚類資源」という日本語訳を当てまして、その上で、英語表現に近い訳出を括弧書きの中で(ストラドリング魚類資源)と併記したものでございます。これはフランス語の正文も同様の形になってございます。

 これは今、御苦労があったのではないかというお話がございましたけれども、交渉の過程におきましてこのストラドリング・フィッシュ・ストックスという用語が出てまいりましたが、これは、日本語においてもこれに該当する専門用語はございませんでしたために、その併記におきましては、保存、管理の対象となる魚類資源が排他的経済水域の内外にまたがっているという趣旨を伝えるために、片仮名のストラドリングというそのままの形の表記を適切と判断したものでございます。

 以上がストラドリングの件でございますが、ただいまの御質問で、一般的に片仮名文字をどういうふうに当てるかということでございます。

 まず、一般論でございますけれども、日本語の訳文を作成するに当たりましては、条約の解釈について規定しております一般国際法を法典化した条約法条約というのがございますが、その三十一条に定められておりますように、文脈によりかつその趣旨及び目的に照らして与えられる用語の意味に従って、条約正文テキストを誠実に解釈し、このような解釈により明らかとなった正文テキストの内容を可能な限り忠実に日本語訳に反映するというのが原則でございます。

 したがいまして、日本語の言葉として一定の片仮名で表記される言葉、これがその正文テキストの内容を忠実に示すというときには、そのような片仮名表記が用いられることもあるということでございます。

篠原委員 具体的な部分はわかったんですけれども、一般論の部分は聞いていてもよくわからなかったんです。皆さんはおわかりになったのかどうか。私はよく理解できなかったんですが、多分難しいんだろうと思います。

 しかし、注文をつけておきますけれども、私は、なるべく日本語にするという努力をまずしていただきたいと思います。それなしにでたらめにやってきたから片仮名語がはんらんしていて、アメリカ人なんかともつき合いますけれども、日本語を教えたり英語を教えたりしてもらったときに彼らが一番困るのが片仮名語だそうでして、何だかさっぱりわからない、発音もいいかげんだから変な発音になっていて、辞書を引いても出ていなくて、意味がわからないと。それぐらい外国人から見たって日本語は混乱しているわけです。

 ですから、文部科学省は、片仮名語で使われているのを国民がどれだけ知っているかという調査を毎年したりしていますね。それで、最近でいうと、私の記憶では、農林水産委員会でよく使うトレーサビリティーというのがあって、これが一番下でして、三%の国民しか知らない。しかし、農林水産委員会や厚生労働委員会や食品安全委員会では、さも最もわかっているような雰囲気で、トレーサビリティー、トレーサビリティーと言っている。国民に話すとなると途端に途切れてしまう。

 これは、やはり一番専門家の外務省が考えていただかないといけないんです。農林水産省あたりだと、英語ができるのをひけらかしたがって、すぐ英語を使いたがるんだろうと思いますけれども、外務省はみんな英語のプロなんですから、使わずに、なるべく日本語にしていただきたいと思うんです。

 しかし、そのときに注意を払っているかというと、私は余り注意を払っていないんじゃないかと。それで一ページのところを見ていただきたいんですが、この条約の関連で皆さんに余りなじみのない言葉として、高度回遊性魚類、タイトルにも使われているんですけれども、これは私は完全に誤訳だと思っております。外務大臣も副大臣も、両方とも英語は堪能だそうでして、一緒に考えていただきたいんですが。金子政務官は、英語の能力のほどは知りません、済みません。

 まず、これは、わけのわからないときに、私なんかもそうですけれども、ハイというともうみんなして高いと。中学生でも知っているんです。しかし、よく辞書を引くと、程度が大きいということを言っているんです。ですから、ハイリー・マイグラトリー・フィッシュ・ストックというのは、回遊の程度が広いという広域回遊性魚類なんです。高度なんというと、何か、上に行ったり下に行ったりしているのか、高緯度地方を回遊しているのかと勘違いしちゃうんです。これは絶対、一番最初にやった水産庁だか漁業の学者だか、済みませんね、水産庁も来ておられるのに、つたない英語、余り英語が詳しくない人がそのまま受験英語の延長線で訳しちゃった。

 もう一つあるんですね。調べればすぐ、いっぱい出てくるんです。フィッシング・エフォーツ、漁獲努力量、わかりますか、漁獲努力なんて。一生懸命とろうと努力しているのは何かなと。これは、私が思うに、エフォーツというと、これまた受験英語で努力、一生懸命努力して大学に受かったというイメージがあって、エフォート、努力、エフォート、努力で、それ以外の訳が思いつかないわけです。しかし、これは行動とか成果とかいろいろあるんです。

 ですから、こういうふうに、僕はわからないんですが、漁獲投入量なんですよ。漁船の隻数とか、網がどのぐらい出るか、それから操業期間とか、そういうものなんです。フィッシング・インプットなんですよね、それと同じなんですよ。ところが、一回変なふうに訳されているのをそのまま使っているんですね。これは直してもらわなくちゃいけないと思うんです。

 それで、これはなぜ申し上げているかというと、国内法は結構柔軟になってきて、用語をさっささっさと法律改正のときに改めているんです。ところが、条約関連のものはなぜかしら改まらなくてそのまま、条約があって本訳にした、仮訳じゃなくて本訳にした、国内法もできた、だからびた一文変えられないと。しかし、これはやはりおかしいと思うんです。

 これについては、いかがでしょう、僕はこの二つのものは直していただきたいと思うんです。この条約を今直せとすぐには言いませんけれども、行く行くは。これについて御意見を承りたいんですが。大臣、お願いします。

麻生国務大臣 今、全部が全部調べたわけじゃありませんけれども、先生、昔、考えてみれば、テレホンというのを電話なんというのに直したやつらはやっぱり天才ですよね。これは大したものだと思う。かわら版を、新しく聞く、新聞なんというものをつくったのも、今は新しく聞かないような話もいっぱい入っていますけれども、僕は大したものだと思いますので、今の、少なくとも高度でなくて広域回遊魚の方が正しいというのは、私も全くそう思いますので、こういったものは検討させるべき必要なものだと思います。

篠原委員 大臣にこんなささいなことをお答えいただくつもりじゃなかったんですけれども、大臣に答えていただいたので、皆さん検討してください。

 それで、これは直せと言っているわけじゃないんですけれども、例えばの例で、ストラドリング・フィッシュ・ストックもちょっと見ていただきたいんですね。この漢字、私は実はちゃんと書けませんでしたけれども、読むことは読める、またぐという漢字、跨線橋という、またいだのがあるんです。だから、一般に使われているんです。そして、かたかった文部科学省もいろいろ批判されているうちにだんだん柔軟になってきて、漢字の使っていい量をだんだんふやしてきていますよね。ですから、我々もそういう傾向にのっとって、日本語をちゃんと大事にしなくちゃいけない。

 それで、ちょっと考えると、これは私が考えたんじゃないんです、だれかのどこかの文章にあって、これは何だといったらこのことだったんです。これは、美しい翻訳、さっきの新しく聞く、電話の、電気の話等のたぐいだと思うんです。こういう工夫をされたのかどうか。多分、これをしつこくやっていると時間がなくなりますのでやめますけれども、跨界性魚類資源と言えるんだろうと思います。それで、またぐというので漢字を一つ覚えていただくわけですから、皆さんのためにも、教養を高めるためにもなるんじゃないかと思いますし、こういうふうに考えて、なるべく日本語を使うようにという努力をぜひしていただきたいと思います。

 これはこのぐらいにしまして、これ、条約をちゃんと直すときに、なるべく日本語に、それで工夫してというのをぜひ考えていただきたい。一番簡単なのは、ストラドリング・フィッシュ・ストックみたいに片仮名を使えばいいんです。それで、使われると、ずうっとそれが使われるようになっちゃって、何のことかわからない。今、長嶺審議官がお答えになりましたけれども、分布範囲が排他的経済水域の内外に存在する魚類資源なんてだれも言わないです。それで、ストラドリング・フィッシュ・ストックと業界用語になって、我々しかわからないというふうになってしまうわけです。これはぜひ改めていただきたいと思います。

 それで、もう一つ念を押しておきます。

 さっき聞いていたら、水産庁の五十嵐資源管理部長が、先ほどの答弁の中で漁獲能力と言っていました。あれはフィッシング・エフォートのことなんです。そうでしょう。ちょっとそれを答えて。

五十嵐政府参考人 お答え申し上げます。

 先生おっしゃいましたように、漁船の隻数ですとか操業日数ですとか、操業を、投入部分、要素の投入の観点から見た概念でございます。

篠原委員 水産庁も、資源管理の概念を漁業者にもちゃんと広めていかなくちゃならないと、現場と接しているわけですよ。漁獲努力量なんて言ったって漁業者にわからない。漁獲能力と言うとちゃんとわかるんですよ。そういうふうにしているわけですから、そういうふうに、考慮して訳をしていただきたいと思います。

 内容に入らせていただきます。

 先ほど篠田委員が、危険有害物質の条約に次ぎ、この協定についても聞いておられました。同じなんですが、海洋法条約の批准というのは十年ほど前に済んでいるんですね。それに付随するというか、それとセットのこの国連公海漁業協定ですが、これが、なぜこれだけ日本の批准がおくれていたかというのはよくわからないんですが、これについて、おくれた理由を御説明いただきたいんですが。

塩崎副大臣 この協定を公海上の漁業の包括的なルールを設定するものとして、我が国は、責任ある漁業国ということで、協定の作成に当たって、今御指摘のように、協定採択は平成七年八月で、翌年の十一月には協定に署名をしたわけでありますけれども、その後、我が国として検討を要します中西部太平洋まぐろ類条約、WCPFCというのが成立するなどの状況の変化を踏まえて、この協定の締結を見合わせてきたところでございます。

 それは、WCPFC、今の中西部太平洋まぐろ類条約に加盟していなくても、この協定を締結すれば、このWCPFCに基づく保存管理措置を遵守する義務が発生をする、こういうことで見合わせたということでございますけれども、昨年の八月に、結果としてWCPFCを締結したわけでありまして、我が国は、本協定の対象となる、我が国にとり重要な魚類資源を対象とする、世界に幾つもあります既存の地域漁業管理機関にすべて参加することになったわけであります。

 それに従って、この協定を締結する準備が整った、条件が整ったということで、この協定を締結するというふうに判断をしたわけでありますが、それに十年かかった、こういうことでございます。

篠原委員 同じなんだろうと思います。環境問題でも漁業問題でも、日本がこういったところでリーダーシップを発揮していくべきだと思います。

 環境のところはいろいろ差しさわりがあるんですが、漁業については、今、塩崎副大臣がお答えになったとおり、責任ある漁業というか、きちんとした漁業を、日本は非常にまじめにやっているわけです。かつてはどうだったか知りません。相当いろいろなところに行ってとりまくっていたわけですけれども、今はちゃんと国際条約を守って、資源管理に一番熱心な国になっているんじゃないかと思います。

 それは当然でして、漁業資源に一番頼っている国の一つが日本ですから、日本がその資源管理をちゃんとしなかったら資源は枯渇していってしまうのは当然です。ですから、日本がリーダーシップをとってやればみんな従ってくる、納得してくるというんじゃないかというのは、後でまたちょっと大臣にもこの点をお伺いいたしますけれども、こういうことをどんどんやっていく。

 十年かかったのは、今いろいろ事情があったんだとおっしゃっていますけれども、私はもっと率先してやってきてしかるべきだったんじゃないかと思います。しかし、入ったということで是といたします。

 それで、日本はいろいろな分野でプレゼンスが大きいわけです。軍事的なプレゼンスはそんなに大きくないですけれども、経済的なプレゼンス、済みません、プレゼンスなんと使っちゃいけないんですね。教養をひけらかし過ぎました。済みません。経済的存在感は大きいわけです。漁業の面でも非常に存在感は大きいわけです。

 ですから、漁業は、二つの意味で日本は世界をリードできる立場にあるわけです。大漁業国として、それからもう一つ、大輸入国として。ですから、水産に係るいろいろなルールは、日本がこうしていくべきだと言ったら、いろいろな意味で引っ張っていける。

 その一つは操業のルールがそうなんですよね。今までは、日本が率先してとりまくっていて、何を言っているんだと言われましたけれども、いや、資源管理をちゃんとしなくちゃいけないという方向に転換しましたので、世界もちゃんと言うことを聞くようになってきているんです。

 今度は輸入なんですね。輸入も、この外務委員会では余り議論されていませんけれども、BSEは大問題なわけですね、これは。BSEはまた別途の機会に質問させていただきたいと思いますけれども、これは本当は総理にこそ質問すべきことなんですけれども、BSEについても、日本がきちんとこうでなければならないと言っていたら、世界一の牛肉の輸入国ですから、日本のルールが世界のルールになっていくんですね。アメリカも納得する。

 例えば、ちょっと話をさせていただきますと、全頭検査です。あれは、日本はそんなことまでやる必要ないとか言っていますけれども、四月六日のニューヨーク・タイムズが社説で、全頭検査をしていいんだと。していいんだというのは、アメリカ全体でしろと言っているんじゃないんですが、クリークストーンという中小の食肉加工処理会社が、日本向けに、あるいは台湾向け、韓国向けに全頭検査をしていいと言い出した。それが、農務省がそれを許さない。それを、そんなばかなことがあるかと。お客が、そうしてほしい、それをやると言っているのを、やっちゃいけないなんてあるかと。アメリカの心ある消費者は、日本の厳然たる態度に拍手を送っているわけですね。ですから、アメリカのルーズなBSEについての仕組みも日本が頑張ることによって変わっていく、こういうのがあるんです。

 そして、漁業の部分です。いかがわしい漁業をしている国がいっぱいあるわけです。この条約にも入らず、ルールも守らずというのがあるわけです。ですから、大輸入国として、そういう人たちには、そういう国からは輸入しないという態度をとっても、今やだれからも文句を言われないんです。

 IQでもって、日本の漁業者が困るからこれ以上輸入しない、安くなってしまうからと、これはWTOのルールに反しますけれども、資源管理を守っていない国からはアウトサイダーになります、ルール違反です。また、これ英語で、余り使いたくないですけれども、水産庁で使っているので、外務省も使っているので、IUU漁業とか、イリーガル・アンレポーテッド・アンレギュレーテッド・フィッシャリー、こういうような漁業には、やはり厳然たる態度をとって、輸入してはいけない、輸入すべきじゃないという態度、もうそういう手段が講じられているはずなんですけれども、この現状、いかがでしょうか。

金子大臣政務官 お答え申し上げます。

 今、篠原委員から、世界における我が国の漁業の果たす役割について大変重要な御指摘をいただきました。これまでも、我が国は、今お話がありましたIUU、これは違法、無規則、無報告ということでございますが、IUU漁業の撲滅に向けて、IUU漁業の漁獲物の取引禁止等に関します関係国際機関の取り組みに積極的に参画してきてまいりました。

 具体的には、国際的な資源管理が行われているマグロ類等につきまして、関係地域の漁業管理機関に加盟する国々の許可船による漁獲物のみを国際取引の対象として認めるポジティブリスト対策等を実施いたしまして、国際的な管理措置に反する漁獲物の輸入を防止しております。

 今後とも、ポジティブリスト対策等の的確な実施に努めるとともに、関係国との協力を密にいたしまして、IUU漁獲物の輸入防止に積極的に対応してまいります。

篠原委員 ルールができているのは承知しているんですけれども、これは運用が難しくて、自由貿易、自由貿易というので、それから規制緩和、規制緩和という動きがあるわけです。日本は何でも魚を高い値段をつけて買いますから、日本にさえ売ればもうかるというので、だから、日本が買い過ぎているから世界の漁業資源を枯渇させているということで、問題にされつつもあるわけですね。

 ですから、その日本がきちんとした態度をとればいいわけでして、今ポジティブリストというのがある。ポジティブリストというのは、今農林水産委員会では別の意味で、農薬の話で、政務官が置かれているように問題になって、こっちのポジティブリストはみんなに受け入れられやすいポジティブリストですね。だから、また英語なんですね、ちょっとよくないですが、きちんとルールを守っている国、その船の登録をしてその船からしか買わないという、これは商社なんかがちゃんと守れるかどうかというのが問題なんですが、ちょっとここの細かいことになるんで事務方でもいいですが、これは一体どういうふうに輸入商社には守らせているのか、ちょっとお伺いしたいんです。

五十嵐政府参考人 お答え申し上げます。

 いわゆるポジティブリストの対策でございますが、地域漁業管理機関が認めました漁船または畜養場のリストがございます。このリストに基づきまして、そのリストにある漁船なり畜養場から出荷されたマグロにつきまして、その国が責任を持って統計証明書を発行いたします。この統計証明書が、輸出者から現物と一緒に輸入者の方に手渡されます。この統計証明書を輸入者が水産庁の方に提出をいたしまして、水産庁が統計証明書とリストを再確認いたしまして、水産庁の確認書を発行いたします。そういたしますと、輸入者は、その水産庁の確認書を持って経済産業省に輸入貿管令の事前確認を申請するというシステムになっておるところでございます。

篠原委員 はい、わかりました。抜け穴がないように、ぜひそれをやっていただきたいと思うんです。

 これは、世の中が変わったんですね、この問題については。輸入制限というか、日本のカツオ・マグロ漁業というか、それを守るためじゃなくて、世界の資源をちゃんと守るために、世界一の輸入国として責任持って当たらなければならないということで、大義名分もありますし、実際マグロが食べられなくなったら困るわけでして、その点は一番熱心にやっていかなければいけないんじゃないかと思います。

 そのマグロについてですけれども、やはり問題が多いんですね。環境団体がいっぱい騒ぎ始めているんです。この気持ちもわからないではないんですね。マグロというのは、非常に私は罪深い食べ物だと思います。そうなると食欲が落ちちゃうかもしれませんけれども、環境に優しくない食べ物だと思うんですね。北大西洋でとれても、今はどこでとれても日本が一番の輸入国でして、高く買ってくれるので、すぐ冷凍されて、そして成田漁港に来るわけですね。成田漁港と業界では言われているんですね。それで、一番水揚げ高が高いんですよ。高級魚、エビだとか何かも来ますしね。そうすると、ジェット機の燃料というのは物すごい、一番地球環境を壊すわけです。それから冷凍にもエネルギーを使っている。そうすると、一番罪深い食べ物がマグロなんです。

 これは、僕は、アメリカ人に話したら、日本人は皆そういう気持ちでマグロを食べているのかと聞くので、おれだけだと言って答えましたが、ほかの人もいるかもしれませんけれども。ですから、そういう意識を持ってマグロのことを考えなければ私はいけないんじゃないかと思うんです。

 これは、私が考案している、ちょっと手前みそになりますが、地産地消という、そこでできたものをそこで食べる、遠くからなるべく運ばないようにというのが地球環境に優しい生き方だ。これは、篠田さんはいつも環境委員会でこの御高説を聞かされているので、またかと思っておられるかもしれませんけれども、大事なことでして、こういったことからすると、マグロというのはやはり罪深い食べ物で、だから慎重に対処しなけりゃいけない、世界のマグロの資源が危うくなっていると。

 先ほど五十嵐資源管理部長から畜養というのが出ました。日本はやっていないんですけれども、マグロを豚や牛と同じように、えさをやって飼っているわけですね。養殖ですよ。これも脂身だらけですから、ああいうのは余り外国人は好きじゃなくて、とろなんて日本専用ぐらいになっているわけですね。そうすると、どうなるかというと、もう予想されるんです。世界のマグロ資源がだめになっているのは日本人が食い過ぎているからだと。それから、内湾が、地中海とか何かで汚れてくるわけです。何かそこで安い魚をマグロに食べさせて、えさが下に沈殿してたまって汚れている、大事な海を汚しているのも日本だ、けしからぬ、こういう動きがあちこちで見られるんだろうと思います。

 この点について、どんなぐあいなのか、この状況、そして、これについてちゃんと対処してきているのかどうかというのをお伺いしたいんです。

石川政府参考人 お答え申し上げます。

 委員大変お詳しくいらっしゃると存じますけれども、マグロを漁獲し得る世界の全ての水域においてマグロ等の、済みません、高度回遊性魚種の保存管理を行う地域漁業管理機関が設立されておるわけでございまして、これらの機関には、マグロ類漁業に現実に利害関係を有する国が参加しており、また、各機関においては新規参加に関する条件等が定められておりますために、一般論を申し上げて恐縮でございますけれども、この漁業に利害関係のない国が無制限にこういった機関に参加することは想定されていない、こういう前提で一つお答え申し上げたいと存じますけれども、我が国としましては、仮に今委員御指摘のような諸問題があちこちあったといたしましても、海洋生物資源は科学的根拠に基づいて持続可能な利用を図っていきたい、また図るべきだ、こういうふうに考えておる次第でございます。

 一部には、環境もそうかもしれません、また漁業、魚類資源についての保護といったことかもしれません、そういったことのみを強調する主張が見られることは事実だろうと私どもも認識しておりますけれども、私どもとしましては、このマグロ類の保存管理において、科学的根拠に基づかず、その保護であるとかそういった側面のみを強調する過度な規制、そういうことがないように地域管理機関等においてきちんと対処していきたい、こういうふうに考えております。

五十嵐政府参考人 お答え申し上げます。

 現在、世界に五つございます地域漁業管理機関のうち、新設の中西部太平洋を除きましては、マグロ類につきまして、いわゆる漁獲規制、いろいろな形がございますが、あるところでございます。これは、マグロ類の資源状況が、同種であるカツオと比べましてかなり差がありまして、カツオの状況はまずまずでございますが、マグロ類の資源状況に問題があるという認識に立ちまして、各漁業管理機関がそういう資源管理措置を講じているところでございます。

 このような資源管理措置は、今後の動きといたしましては、徐々にやはり厳しくなる。その中で、先ほど先生からお話ありましたように、一部もう畜養場もその資源管理措置の中に取り入れている機関もございます。その他の機関につきましても、畜養場を取り入れようという動き、取り入れて資源管理をしていこうという動きもございます。

 このような形で、世界全体としてマグロの資源管理を的確にやっていくということで、我が国の市場とのバランスも、それらのことにより改善されていくのではないかというふうに考えております。

篠原委員 先ほどの答弁の中でも明らかになっていますが、五つの地域漁業管理機関に全部参加したと。日本は世界じゅうでとっているから当然なんだろうと思いますけれども、やはり細心の注意を払っていかなくちゃいけないんじゃないかと思います。

 IWCの歴史を見ていただきたいんですが、漁業関係者じゃなくて、環境団体というかそういう人たちがいっぱい入ってきて、環境省なり環境庁、環境庁が悪いというわけじゃないんですが、そういう感じだけで、IWCに出てきて、わあわあわあわあ言って、ペンキ投げたり卵投げたりとか過激なことをされているわけですよね。それは日本も反省しなくちゃならない点があるんだろうと思いますけれども、ちゃんと準備しなくちゃいけない部分があるんじゃないかと思います。

 それで、もう一つ、同じ輸入でいえば、こんなのも誤解されているわけですけれども、ついでに申し上げておきますと、木材ですよ。木材の輸入も物すごいわけですけれども、自給率も本当に二〇%を割っているわけです。日本は、お金にならなくて間伐もできないからほったらかしになっていて、二束三文で、とてもじゃない、切って出す方が金がかかって、しようがないからほったらかしになっているんです。ところが、森林の蓄積量はどんどんどんどんふえている。これは誤解されていまして、日本は汚い、自分のところに緑資源を保存して、ほかの国の山をはげ山にしていると。

 それだけ長期的な戦略でもって動いていればいいんですけれども、全然そうじゃなくて、銭金勘定だけでやっている卑しい国なわけですね。それを、世界は、もっと崇高な国だ、戦略のある国だと勘違いされているわけです。これはもう完全なる誤解ですけれども、林業関係の国際交渉なんかに行くとまじめにそういうことを言われるわけですね。熱帯雨林をだめにしている、あるいはアメリカの北西部の山をはげ山にしているのはみんな日本だと。事実を見れば、日本がいっぱい買っているので、あるんですが、そういう批判を受けないようにしなくちゃいけないので、マグロについてはくれぐれも慎重な対応をしていただきたいと思います。

 その関連で、悲惨な状態になっているIWCですけれども、今度、カリブ海のどこかの小さな島で開かれるんですが、これは、やはりこういうところは私はきちんとしなくちゃいけない。今、石川局長から科学的な根拠が必要だと。BSEのときは違うことを言っているわけですね。アメリカが日本の全頭検査は科学的根拠がないとか、こういうときは、みんな科学的根拠が出てきて悪用されるわけですけれども。

 これは、やはりぴしっとするところはしなくちゃいけない。鯨について、環境団体の言うこともわからないではない。しかし、だからといって野方図にしておくというのは、やはり後々のことを考えるとよくない。有名なグリーンピース、最近はシーシェパードとかいう団体もあって、それで、体当たりしてきたりロープで巻いたりとか、もうめちゃくちゃなことをしている。これは海賊行為じゃないかという話もあるわけですが、環境団体は汚れない団体であるという認識があるわけです、悪いことはしないと。確かに、汚れなくて立派な価値観に基づいて行動されておられるかもしれませんけれども、一生懸命調査捕鯨をしている人たちにだって身の危険が及ぶわけです。

 ですから、こういうのはぴしっと日本が対応していかなくちゃいけないと思うんですが、例えば、これは環境運動が盛んなオランダとかカナダの船籍なんですね。やはり船籍国が責任持つわけですから、こういう国にきちんと、こんなひどいことはしてもらっては困る、あなたの国が取り締まれ、取り締まらなかったら日本もきちんとした対応をするぞというようなことを言っていくべきだと思うんですが、今までそういうことをされてきておるんでしょうか。

石川政府参考人 してきております。

 御報告させていただきますと、一部のNGOの船舶による妨害活動は、公海上において合法的な活動に従事する我が国船舶の安全に不当な危害を加えようとする是認しがたい行為だと認識しております。

 政府といたしましては、国際法上、船舶は公海において船籍国の管轄権に服するため、我が国として直接何らかの措置をとることが困難だったという事情を踏まえまして、船籍国に対して、各国国内法に基づいて適切に対応するよう協力を速やかに要請したところでございます。

 委員御質問のケースにおきましては、オランダ、カナダに対してそのようなことをした、こういうことでございます。

篠原委員 海の問題はすぐ国際問題になります。小野寺委員の質問の中にもありました。韓国、近くて遠い国じゃなくて、近くて近い国にしなくちゃいけない。ところが、やはり我が国は違うんですね。近くていろいろトラブるんで、なるべくさわらないでおこうという態度がありありと見られるわけです。

 漁業についても同じでして、マグロなどになると、五つの地域漁業管理機関をつくってみんな入っていって、国際協定にも入る。その一方で、すぐ近くの日韓の暫定水域が、これはこの表現が適当かどうかわかりませんけれども、何か結構ほったらかしになっている。その犠牲になっているのがまじめな日本の漁業者です。

 これはちょっと御高説で、聞いていただいて、後で外務大臣にお答えいただきたいんですが、日韓関係は非常に大事だと私は思います。マグロについての地域管理機関、これは公海の漁業の管理です。もう一つ進めていいんじゃないかと思うんです。日本海とか東シナ海、ここは世界じゅうで一番後から二百海里が設定されていったんです。日本がこれはよくなかったんですけれども、韓国や中国の沿岸の近くでとっているんで、二百海里は一九七七年に引いたんですが、対ロシア向けに引いただけで、中国漁船、韓国漁船には相互主義で適用しないということで、日本海についても引かなかったんです。

 ところが、だんだんだんだん中国、韓国の漁獲能力が増してきまして、東シナ海でもそうですし、日本海でも、それから、一番は道東ですね、北海道の東、三陸沖にまで来て、日本漁船が休漁しているときにとっているというので、これはいかぬということで二百海里時代になったわけです。それで設定された。それで竹島問題があってぐじゃぐじゃしている。

 この地域漁業管理機関を、公海だけじゃなくて、お互いに境界を接する国同士、二百海里を接する国同士でもやってもいいんじゃないかと思います。

 これは提案で、ぜひ麻生総理大臣になったらやっていただきたいことで、ちょっと提案させていただきますけれども、どういうのかといいますと、日本はやはり漁業界では尊敬されているんです。両方あるんです。自分でもやっているし、輸入しているという両方の強みがあるわけです。

 例えば、日本海について、日本で、韓国でと、お互いに旗国主義で取り締まっているというとだめなわけです。どっちかがルーズになっちゃうわけです。今でいうと、日本は厳しくやっているけれども韓国はルーズだ、韓国漁船ばかりいっぱいズワイガニをとってしまっている。こういう不平等になっているわけです。ですから、これをやめるべきだという議論をきちんと正論として提出していくべきだ。そのときには、お金も出す。

 例えば、僕はよくわからないんですけれども、昔、竹下さんがそういうことを言い出されたというのをちらっと聞いたことがあるんですが、隠岐島でもいいです、済州島でもいいです、そこに地域漁業管理機関を日本が金を出して全部つくる。そこに、漁業関係の学者、これは漁業をやっている人はだめです。例えば何とか県の知事さんのところの、ああいう関係者みたいなのが行くとだめですから。学者がいいんですね。

 どういうことから始めるかというと、資源管理。そして、その点では非常に好ましい土壌があるんです。世界の留学生がどこの国にどう行くかというと、皆さんこれは御存じないと思いますけれども、日本に来ようかという人はいっぱいいるんです。日本の関係のビジネスでというか、日何とか関係で働こうというか、そういう人たちです。それはそれでいいんですけれども、しかし、そうじゃなくて、魚のことを勉強しようという人がどこの国に行くかというと、これは日本が一番なんです。かつての東京水産大学、今、東京海洋大学ですが、ここに一番、水産関係のしにせというか一番きちんとしたところなので、集まるんです。

 それは韓国も中国も同じなんです。漢字という文化は同じ。いつもこういう交渉をするときに、どの魚がどれかという、そこから、名前から始まるんです、突合から。それを日韓中はしなくて済むんです。同じように資源管理を東京水産大学で勉強している御学友だらけなんです。

 この人たちは汚れない高邁な精神をお持ちです。このままいくと資源はどうなるんだ、資源管理をちゃんとしていかなくちゃいけない、一番ちゃんとやっているのが日本だと知っているんです。だから、資源量がこれだけだということであって、こんなでたらめな漁業をしていちゃいかぬ。それでもって資源量をきちんと、アジだったら何トン、サバだったら何トンと出てくるわけです。それを、では三カ国で分けていこうと。

 これは、マグロは公海についてはやっていますけれども、実は、二百海里、きびすを接するというか、境界を接する二百海里のところでもできるはずなんです。そういうところは、今は残念ながらありません。

 EUが、EUは一本になったんで、スペインだ、オランダだともめていたのに、なりつつあるんです。ただ、ノルウェーがEUに加盟しないのは、それでもってスペイン漁船がでたらめに来られちゃ嫌なんで、入っていないんです、漁業の。

 だから、EU、一つの国みたいになろうとしているところでも問題があるんですけれども、そこは日本がリーダーシップを発揮して、率先垂範して、二百海里の排他的経済水域、お互いに行ったり来たりするわけです。そこに、資源は、先ほどちょっと冒頭申し上げましたけれども、魚には国境はないんです。二百海里もないんです。あっち行ったりこっち行ったりして、資源は同じなんです。それを各国別に資源量を把握して、各国別に漁業許可を出している。暫定水域なんてもっとひどくて、韓国と日本が入っていっている。そして、韓国がルーズだから韓国がとってしまう。これはやはり放置しておくべきじゃないんです。正論で押し通すべきで、日本も我慢するから韓国も我慢する、それから中国も一緒に入れて、日中韓の地域漁業管理機関を二百海里の中も含めてやる、当然、十二海里の領海内ぐらいはそれぞれの国で、それより外は、みんな仲よくやっていこうというふうなことをやっていったっていいと思うんですが、大臣、この高邁な提案について、いかがでしょう。

塩崎副大臣 篠原先生、水産庁の魚の資源管理の制度の基礎をつくられた方だというふうに私ども理解をして、今、含蓄のあるお話を聞かせていただいたわけでございますけれども、日韓間の問題については、九九年にできた暫定水域の中で、なかなか日本の漁船が苦労しているという話はよく理解しているところで、これは外務大臣レベルでも、あるいはその他のレベルでも、累次にわたって抗議をしているところであります。

 一方で、日韓の間で、部長・局長級会議を初め、課長級、それから、今月の十六日から三日間、この間もちょっと申し上げましたけれども、済州島において課長級会議が開かれて、先ほど来お話が出ているように、ベニズワイガニそれからズワイガニ等々の資源管理についての話し合いが行われつつあるわけでございます。

 そして、今の御意見のメーンであります日中韓の協力についてのお話でありますけれども、それも御卓見でございまして、日中あるいは日韓だけではなくて、日中韓の三カ国の協力というのが重要じゃないかということで、基本的にはそのとおりだと思っております。

 二〇〇三年に日中韓三国間協力の促進に関する首脳共同宣言というのがあって、その中で十四の協力分野が特定をされていて、その中の一つが漁業資源管理であるわけでございます。それに基づいて、日中韓三カ国の水産当局間のハイレベル協議とか、情報交換等の実務的な協力がなされているというふうに私どもは理解をしているところでございまして、言ってみれば、このような三カ国の間での漁業に対する共通の認識に基づいた協議を深めていく中で、秩序を保ちながら資源管理をし、そしてまた漁業をやっていく、そういう枠組みは極めて有用だというふうに考えております。

篠原委員 ここの外務委員会でも、京都議定書、日本がリーダーシップをとっているんだから、外交は常にそのことを意識してやっていかなければいけないんじゃないかということを申し上げました。私は、漁業については掛け値なしに、先ほどから繰り返し申し上げているとおり、操業の分野でも輸入の分野でも、日本は非常にきちっとした国なので、いろいろ提言していくべきじゃないかというふうに思います。

 それで、先ほど小野寺委員の質問に対する答えの中にありました。私は知らなかったんですが、来年の一月に、マグロ関係の五つの地域漁業管理機関を集めて初めて国際会議を神戸で開く、こういったことが私は大事なんじゃないか。こんないいことをしているとは私は知りませんでしたけれども。

 これは、一番最初、所信表明の後の質問で、外務省の体制整備で国際機関に人を送ってというのを申し上げましたけれども、水産関係は国際化が進んでいたわけですね。今、私も一緒に仕事をしたことがあります野村一郎さんという方が、FAOの水産局長についております。水産の世界では、FAOが非常にリーダーシップを発揮しているわけです。好ましい地位に日本人がついている。やはり、日本の意向もちょうど通じやすくて、多分、FAOとの協力のもとにそういった国際会議が開かれるんだろうと私は思います。

 ほかの分野では、なかなか日本がリーダーシップを発揮するというのはできにくいと思う。例えば農業なんて、高保護国ですし、何か言うと、輸入したくないからごねているというふうにとられてしまうんです。幸い、水産についてはそういうことがないので、水産の分野では、積極的に提言をして、資源管理外交をきちんとやっていっていただきたい、見本を示していただきたい。

 かつて、日本近海は、乱獲の海と言われていたんです。これは、国際的な漁業資源学者がです、二百海里がなかったので。それが、二百海里ができたりしたので、先ほど申し上げましたけれども、逆に、資源管理の海という見本をつくっていただきたいということをお願いいたしまして、私の質問を終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。

    〔小野寺委員長代理退席、委員長着席〕

原田委員長 次に、吉良州司君。

吉良委員 民主党の吉良州司でございます。

 今、同僚の篠原議員が、プロらしく、海の資源についての質問を、持論を踏まえながら展開されましたので、私の方は、冒頭、条約十三号の危険物質及び有害物質についての質問をさせていただきたいと思っています。

 まず、現在当該条約を締結しているのはシンガポールだけで、我が国が締結すれば二国目になるということですけれども、このおくれている原因の一つが、対象となる物質というのが非常に種類も多くて、その物質の性状が異なるということもあって、化学的、法的、そしてマンパワー的に、国内の整備をするのに時間がかかっているのではないか、このように認識をしておるんですけれども、その認識が共通のものであるかどうかという点がまず一点。それから、過去日本が、そういう危険物質等の事故が起こった際に、実際に日本の技術力でもって解決した事例がどういうものがあるのか。まずその点についてお伺いをしたいと思います。

神余政府参考人 御質問にお答え申し上げます。

 締約国でございますけれども、現在は十四でございまして、確かにシンガポールも締結をしておりますし、その他、オランダ、スウェーデン、エジプト、スペインなどなど、批准をしてございます。それで、スロベニアが入って十四になったということなんですけれども、このほか、イギリス、アイルランド、ドイツ、フィンランドなどが、締結のための手続を進めているということでございます。したがいまして、日本が締結を進めて十五ということになればこの条約は発効する……(吉良委員「アジアの中では」と呼ぶ)アジアの中でございますか。(吉良委員「そういう意味です」と呼ぶ)はい、わかりました。アジアの中では、確かに、おっしゃるようにシンガポールでございます。大変失礼しました。

 それから、どうして時間がかかっているのかということは、まさに委員御指摘のとおりでございまして、さまざまな国内法の関係、あるいはその他、有害物質の範囲、対象となる施設の広範性、そういったものがございますので、今までかかっている国が多いということでございまして、現在、先ほど申しましたように、イギリス、アイルランド、ドイツ等々が、さまざまな観点から、この条約の締結を検討しているということでございます。

吉良委員 先進国も含めれば十四カ国ということですけれども、ちょっと委員長に発言を求めずに、席について言わせてもらいましたが、アジアの中ではシンガポールと、今ここで審査をしている日本だけということで、今後、先ほど言ったもろもろの整備確立には時間がかかるだろうと思われますけれども、特に日本の技術力、それからもろもろの法整備の経験を生かして、アジア諸国に対してそういう体制整備の支援をしていくことになろうかと思います。もちろん締結してからでありましょうけれども、その辺の、アジアに対する協力についてお伺いできればと思います。

神余政府参考人 お答え申し上げます。

 確かに、四方を海に囲まれ、外国のケミカルタンカーが多く入港する我が国にとりまして、この議定書が普遍的に適用されるということが望ましいと思います。

 既に、このような視点から、東南アジア諸国、これはフィリピン、インドネシア、マレーシア、タイ等に対してでございますけれども、技術協力を実施してございます。今後も、主要国や我が国周辺を初めとするこのようなアジアの国々、あるいはさらに広くその他の国々にも、この議定書の締結を働きかけていく所存でございます。

吉良委員 最初にそのような質問をさせてもらいましたのは、やはり、昨今、テロからどう我が国それから地球環境、また海洋環境を守っていくかという視点が非常に大事だと思っておりますけれども、危険有害物質の多くは引火性というか爆発する可能性も高いし、物質の中には毒性を持ったものもある、こういうことでございますので、こういう危険有害物質からどうやって、テロの攻撃から港湾であるとか船舶であるとかを守っていくのかということが非常に重要な視点だと思います。

 我が国におけるこういう有害物質を使ったテロというか、また、有害物質を貯蔵、保存している施設に対するテロ攻撃からどう守ろうとしているのか、その点についての現時点での体制について、お伺いをしたいと思います。

冨賀見政府参考人 お答え申し上げます。

 海上保安庁では、平成十三年九月、米国同時多発テロを背景として、テロ対策の海上保安庁長官を対策本部長にする本部を設置して、全庁的に港湾セキュリティーの話なり原発警備の話について万全の体制を可能な限りとっているところでございます。

 それと、HNS関係の話につきましても、テロという話もございますけれども、事案が発生した場合におきましては、テロであろうと衝突事故であろうと、局限化を図る対応は同じような対応になるかと思われます。

吉良委員 先ほども言いましたアジア諸国ではシンガポールと日本だけという状況の中で、先ほど言いました技術的な協力と、それからやはりテロとの闘いといいますか、テロから守るということでの国際的な枠組みづくりというのは非常に重要なことだと思っておりますので、いま一度、テロ攻撃に対する体制と、少なくとも我が国の周辺のアジアにおける枠組みづくりについての現在の取り組みについて、教えていただきたいと思います。

冨賀見政府参考人 お答え申し上げます。

 現在、海上保安庁では、JICAなりODAなどで、開発途上国の支援の枠組みを活用しまして、諸外国との海上防災に関する技術支援を実施しているところでございます。

 JICAを活用したものにつきましても、先ほど御説明しましたとおり、発展途上国の海洋環境保全に関する政策立案に対する援助なり、また、ODAを通じましては、開発途上国の現場対応者を研修生として日本に招請しまして、防除能力等の向上に資しているところでございます。

 以上でございます。

吉良委員 どうもありがとうございました。

 先ほどの私自身の発言の中で申し上げましたけれども、こういう危険物質に対する対応、そして特にテロからの安全確保という点について、日本国内のみならず周辺諸国との協調を進めていただきたい、このように思っております。

 さて、先日の連休に麻生外務大臣が2プラス2の会合を持たれたわけでございます。2プラス2の会合は過去何回かございますけれども、そこで確認をされています、米国そして日本の共通の戦略目標ということも掲げておるところでございます。ちょっときょうは、そういう新しい時代における日米関係で、世界の中の日米同盟、そして世界の中の日本の役割ということにつきまして、私のような若輩者が大変恐縮ではあるんですけれども、麻生大臣にある種の哲学論争を、哲学というような大げさなものではないですけれども、挑ませていただきたいというふうに思っています。

 書生論になってしまうことを恐れるんですけれども、三回ほど前のこの外務委員会の場で私が思いやり予算について質問をさせていただいた際に、住宅ローンの例を引きまして、戦後復興、日本がいわゆる発展途上の段階、経済的に非常に弱かった段階では、軽武装そして経済大国化という国家目標は非常に正しかったと思っている、その際の日米同盟の役割というのは非常に大きかったと思う。ただ、やはり日本が経済的に豊かになった今、ある意味では日本の自主防衛路線というものを目指していくべきではないかというような質問をさせてもらった際に、麻生大臣の方から、そのような書生論というのはなかなか公の場ではやらぬのだけれども、あえてそれをこういう場でやったということは非常に評価する、こういうふうに言っていただきまして、私も褒められるとすぐに木に登る性格でありますので。イラクもそうですし、アフガンもそうですし、南米もそうですけれども、昨今の世界の情勢を見る中で、米国が進めている米国の世界戦略というのは果たして問題がないんだろうか、そしてその米国とより深く関係を持っていく日本、果たしてそれでいいのだろうかという問題意識の中での質問でございました。

 お断りしておきますけれども、今申し上げましたように、これから米国の世界戦略が果たして今の世界なりに本当に適したものなのかということについて問題提起はさせてもらいますけれども、私は前のような野党とは違いまして、反米とかいうようなことを持ち出すつもりは毛頭ございませんし、私自身は五年半米国に住んでおりまして、正直アメリカという国は大好きであります。少なくとも私が知る限り、周りにいる人の中で、少なくともアメリカに住んだことのある人の中で、アメリカを悪く言う人を私は聞いたことがございません。

 そういう意味で、アメリカというのはいろいろな意味で人を引きつける魅力のある国だというふうに思っていますし、今、問題意識で申し上げましたけれども、対外戦略には疑問を持っている。ただ、それはアメリカ人の、またアメリカが持つ底抜けにお人よしなその性格がそうさせるんだろう、このように思っております。そのことを前提として、幾つか麻生大臣に質問をさせてもらおうと思っています。

 まず、先ほど言いました思いやり予算のときに私が幾つか質問をさせてもらった際に、麻生外務大臣の方で、安保条約を結んだ直後に、おじいさんであられます吉田茂首相が、先日亡くなられた松野頼三先生が、やはり本当に自分の、自国の安全を他国にゆだねていいのかということで食らいついてきたときに、松野、おまえ犬飼っているか、ある意味では番犬と思えばいいじゃないか、こういう話をされたということでありました。そういう答弁をいただきました。

 ただ、昨今といいますか、最近は、一家の大黒柱のお父さんが二千円または三千円で散髪屋に行くところ、ペットを散髪屋に連れていくと一万円かかる。また、お父さんが出張に行ってビジネスホテルに四千五百円で泊まっているときに、家族で旅行に行ってペットを預ければ一泊一万円かかるというような時代でありまして、そういう意味では、もともと番犬と、今守ってもらっているアメリカには失礼ながら、そういうつもりで一時的な、経済的に弱くて戦争に負けた直後だから仕方ないんだという思いの中で、松野、犬飼っているかという発言だったと思うんです。

 あのときの質問と重複しますけれども、今これだけ経済的に大きくなって、世界に対する影響力が日本独自でも強くなった今も、日米安全保障条約の中で、自主防衛路線というよりも軍事的にはかなり米国に依存をした体制だと私には見えますけれども、それを維持していることについての麻生外務大臣の御所見を承りたいと思います。

麻生国務大臣 一九五一年にいわゆる講和条約が結ばれ日米安全保障条約が結ばれた当時は、朝鮮事変の勃発というのが一番大きな条件、もう先生が生まれる前の話ですけれども、朝鮮事変の勃発というのと同時に、いわゆる冷戦という名の戦争が明らかになった、二極構造も明らかになったというのがあの時代、サインをした時代だと存じます。

 それが、一九八九年、ベルリンの壁の崩壊とともに、いわゆる世界の枠組みというものが大きく変わったのがこの十五、六年間。どう変わったかといえば、それはもう間違いなくソ連という国が崩壊してロシア以下十五の国々に分裂、ユーゴスラビアもそう、チェコもという形で、世界の枠組みが大きく変わっていったという中にあって、日米安全保障条約の持っております役割も随分変わってきたものであることが一つ。

 かつ、その間、日本の経済力はもうすさまじいまでに大きくなりましたので、いわゆる軽武装というので、経済重視というのをやらねばならぬという状況から、経済復興というものを確実なものにして、世界第二の経済大国にのし上がったという事実。

 もう一つやはり忘れてはならぬのは、このユーラシア大陸の西半分では確かに冷戦構造は終わっておりますけれども、東半分では朝鮮半島、台湾海峡等々、幾つかまだ不安定、不確実な要素が残っている。以上三つを考えて、日本という国の防衛というものを考えねばならぬということなんだと存じます。

 その中にあって、やはり日本として自国のみの力で完全に日本の安全保障を確保できるかといえば、なかなかさようなわけにはいかないのではないか。したがって、NATOにいたしましても、何らかの形で皆お互いの安全保障という、集団自衛権というのを結んでやっておるわけで、日本としても、そういった中にあって、今状況の変化に合わせて、少なくとも日本は日本のことぐらい、自分のことは自分でやれるぐらいのものをやるべきではないかというまことに健全な意見が出てきているのはいい傾向だ、私は基本的にはそう思っております。

 その中にあって、今憲法の問題とか集団自衛権の問題とかいうのが、これまでの経緯から見まして一つの枠、足かせみたいな形で残っているのも事実です。そういった中にあって、日本がこういった問題を踏まえつつ、今後どうしていくかというときに、やはり忘れられているのは、プライドとか日本自身の誇りとか、そういったもので、何かにつけおんぶにだっこみたいな形になり過ぎるというのは、極めて国民として、国家として非常に大きな危惧を持たれているというのが多分吉良先生の御質問の背景にあるんだと存じますが、私もその点に関しては多くのところを一にするところであります。

 少なくとも、今の段階の中において、日米安全保障条約という、核という問題は、今の事情においてはまだ核というものは厳然として大量破壊兵器として残っている状況の中にあって、核というものを持たずして安全保障を確保しようと思えば、ある程度核を持っている国と友好を、同盟関係を結んでおくというのは、これは皆似たようなやり方をしていると存じます。

 日本の場合は経済力としてはきちんとしたものを持っておりますので、そういったものを大事にしながら、今までのところ、この六十年間、少なくともアメリカとの関係を極めて密にしてきたがゆえに日本の安全保障は保たれてきたのも事実でしょうし、また、今、日本とアメリカとの関係があるから他国は、日本だけが何となく自主防衛のみでわあっと巨大な経済力を背景に強大な軍事大国にのし上がるということを、近隣諸国でも余り期待をしていないという点もあろうと存じます。

 バランスの問題なんだとは思いますけれども、いずれにいたしましても、基本は、自分の国は自分で守るという気構えというものが大切なんであって、それで足りないところをいわゆる同盟関係でというのであって、基本は自力で自立していくというところが一番肝心な心構えなんだと思います。

 いろいろな意味で、この六十年間、意識が随分変わってきたとは思いますけれども、基本というのは常に、六十年前と同じ、自分でやらねばならぬことはやらねばならぬ、やれる範疇を、足りない分を補ってもらうという発想が基本だと存じます。

吉良委員 今麻生外務大臣の方から何点か、日本が経済大国化した今でも日米関係の必要性ということについてお話をいただきまして、今御指摘いただいた点については、私もある意味ほとんど共有させてもらっています。

 自主防衛路線といいながら、本当に今の日本の国是で核を持たないという中で、現実に核を持っている、核を持っているぞとわいわい自分で宣伝して回ってミサイルをぶっ放すような国がまだある中で、核に対する抑止力という意味で米国が必要なことは十分わかっておるんでありますが、私は、日米関係、日米同盟というのは、本当に日本にとって最も大事で、日本を安定、維持発展させていくために本当に基軸だとは思っています。ただ、どうも国際的なもろもろの事象に対して、日本として、もしアメリカから守られているんではない、仮に日本が自分の国は自分で独自に守れているとすればこういうときにこういう行動をとるのかなというようなことまで、実際アメリカの顔色をうかがいながら、やはりアメリカから嫌われたくないという行動があるような気がします。

 実際、私は、これは個人的に、イラク戦争への参加、自衛隊の派遣についてどういうふうに自分の地元で申し上げているかというと、私は今野党という立場、個人、一国会議員だけれども、本当にこれは大義なき戦争だと思って反対をします、日本が参加すべきではない、国益にも沿わないと。また後でもうちょっとその背景も言わせてもらいます。けれども、仮にこの不肖私が日本の総理大臣になったら、間違いなく派遣をします、これは民主党から石が飛んでくるかもしれませんけれども、そのように答えております。

 というのは、実際、北朝鮮の脅威があり、日本海、台湾、それから潜在的にはロシアという、先ほどおっしゃった、西の方はソ連の消滅で安定し始めても東アジアというのはまだまだ不安定要素が多いという中で、やはり自国の存立をアメリカにゆだねているところで、アメリカからの強い要請にノーと言えるような自由は日本にはない、私はこのように思っていまして、だからこそ、一個人としてどうだと言われれば反対だけれども、一国の首相として、ミサイルが飛んできたら困る立場の、一億二千万人の命を預かる立場からすれば、派遣せざるを得ないんだろう。だけれども、そういう国であり続けちゃいかぬのだ、きちんと、アメリカさんそれは間違っている、日本としては、こういう方針のもと、こういう国益追求の中で、自分としては別行動をとるというようなことを言えるような国になるべきだと思っています。

 先日、連休中に米国ワシントンに行かせてもらったときに、いろいろな方とお会いさせてもらう中で非常に印象的だったのは、共和党系であれ民主党系であれ、イラク戦争を開始するときには非常に強硬論で、やれと、フセイン政権打倒と言っていた人たちまでもが、今、あれは間違いだったという反省をしておられるというような方々に何人かお会いして、それを聞くにつれて私が最近見直しておりますのは、やはりフランスの対応であります。

 今ここに、国連安保理におけるドビルパン・フランス外務大臣の安保理演説というものを、これは日本語訳ですけれども、これを持っておるんですけれども、やはりこの中でにじみ出ているのは、米国が主導するテロとの闘い、これについては一緒に闘っていく意思はある、ただ戦争というのは最後の手段なんだ、まだ査察というものを継続すべきだ、そのためにフランスはいかなる協力も惜しまないと。

 そして、この中にこういう文章があります。

 「一見、戦争は最も手っ取り早い選択肢のように思われる。しかし忘れてならないのは、勝利しても、その後は平和の構築が必要だということだ。現実から目をそらしてはならない。イラクの一体性を維持しつつ、力の侵攻によって深刻な打撃を被った国・地域に持続的な安定を回復させるのは、長い道のりで、困難を極めるだろう。」

 それともう一点。「早まった武力行使は深刻な結果をもたらすリスクがある。」「かかる軍事介入は、すでに傷つき脆弱なこの地域の安定に、計り知れない深刻な結果をもたらすだろう。不正義に対する感情を増幅し、緊張を深刻化させ、さらなる紛争の引き金になりかねない。」中略で、軍事介入こそ、テロを醸成する社会、文化、民族の間の対立をさらに悪化させかねない。

 「国連という殿堂において、我々は理想と良心の守護者である。我々の担う重い責任と多大な名誉が、我々に平和的な武装解除を優先させるはずである。これが、戦争と占領と蛮行を経験したヨーロッパという「古い大陸」の「古い国」、フランスのメッセージだ。アメリカや他の国々からやってきた解放の戦士たちの恩を忘れない国のメッセージだ。フランスは常に歴史を見据え、人類のために立ち上がってきた。自らの価値観に忠実に、国際社会全体と、果敢に行動を起こしていきたいと願っている。我々は共により良い世界を作っていくことができると確信している。」

 ちょうど、この演説のある前には、パウエル当時の国務長官だったと思いますけれども、暗に、古い大陸、古い国と言うことで、反対するフランス、ドイツに対する嫌みを言った直後だったと思いますけれども、あえて古い国、古い大陸のフランスのメッセージだ、こういうことを言われております。

 ちょっとここで、今このことを提示させてもらいましたのは、さっき言いました、国際社会を何とか平和裏というか、このイラク紛争を戦争でない形で解決したい、そして、アメリカが主張するテロとの闘いについては協力する用意がある、だけれども、自分たちは今申し上げたようなことを主張し、アメリカに早まるなということを国連の場で堂々と主張した、このこと。しかも、今の混乱を見ていますと、形上は新たな政府ができましたけれども、まだまだ私は混乱のきわみにあると思っておりまして、そういう意味で、この先見の明と、それを思い切って発言をし、アメリカから多少嫌われるといいますか、いざこざがありながらも堂々と主張したという、このフランスに改めて敬意を表するところでございます。

 ちょっと、これに関連して麻生大臣にお伺いしたいんですが、もう随分古い論文でありますけれども、元国立博物館館長の梅棹忠夫先生が著した「文明の生態史観」というものをお読みでしょうか。また、ここに持っているのですが、最近ベストセラーになっております「国家の品格」、この二つの、一つは論文、一つは書物について、お読みになったかということと、それらの書物、論文に対してどのようなことを思っておられるか。もし読んでおられなければそれで結構でございますが、もし、何十年か前でも読んでおられたのであれば、その辺のコメントをお聞きしたいと思っています。

麻生国務大臣 「文明の生態史観」は、大学を出てすぐぐらいでしたかね、一九七〇年ちょっと前ぐらいに出た本だと思いますが、生態史観という本の中にまた別の論文もいろいろあったので、読んでおります。二つに分けるところにむちゃがあるなと思ったのが一つと、何となくこの人は余り外国を知らないんじゃないかなと思ったりもいろいろしました。その当時は、私は南アメリカやらアフリカやらいろいろなところに住んでいた後だったものですから、特にそういう記憶があります。

 それから、藤原さんという方は、その方は数学者だと思いましたけれども、今まで随分売れない本をいっぱい書いていたようでしたけれども、初めて売れて、当たったというので、大変うれしいという話をこの間テレビで出てしゃべっておられたのが非常に印象的だったので、自分としてはこういう本が売れるのがちょっとよく理解ができぬ、ほかのもっといい本の方がもっと売れなくちゃおかしいのにとか、何かいろいろ自分なりに感想を述べておられたのが、この人は正直な人やなと思って聞いていた記憶があります。

 いずれにしても、両方読ませてもらいましたけれども、数学の話は極めてまともなことが書いてあるんですけれども、まともなことを書く本が売れるというのは、当たり前のことが余り当たり前じゃなくなっているからそういった本が売れるのかなといろいろなことを考えましたけれども、いずれにしても読みやすい本でしたし、品という言葉はすごく大事なところで、品性とか品格というのは人間にとって最も大事なところの一つだと思いますので、国家においても同じようにそのようなものがあるべき。昔、司馬遼太郎の国柄という言葉が出たことがありますが、それと同じように、品格という言葉を使うというのは、非常にいい単語が登場してきたなと思って、それがまた非常に売れているということはいい傾向だ、私自身はそう思っております。

吉良委員 梅棹論文に対しては非常に手厳しい意見ですし、藤原正彦さんの「国家の品格」については非常に好意的なコメントでございました。

 私もいろいろ世界を回ってきたつもりでありますが、梅棹論文、たしか五六年ぐらいの論文だったと思いますし、私はそれ以降読んだんですけれども、ただ、一つあの中で述べられていたことで私が思いますのは、第一地域、第二地域、おっしゃるように二つは乱暴だなと。おっしゃるとおりなんですけれども、ただ、第一地域というのは、封建制があって、結果的には自我が目覚め、地域地域の独立性があって、今、高度な民主主義と高度な文明を謳歌している地域、日本と西ヨーロッパ。特に、中国文明、ロシア文明、インド文明、それからイスラム文明、こう言われるところはもう過去の歴史からしても破壊と建設ということがずっと繰り返されて、結果的にですけれども、ある意味では、独裁または専制政治と、支配者とその他大勢という、これがずっと繰り返されている地域だ、こういうことであります。

 その分け方というのは、今言った四つの文明圏に対しては大変失礼な言い方にもなりますので、私、それ自身を肯定しようとは思わないんですけれども、ただ、言えることは、それらの地域というのは、やはり本当に独自の文化、歴史、文明があって、アメリカ流の民主主義、また自由と民主主義というのは全くなじまない地域だというふうに私は思っております。

 そういう意味で、アメリカの、私、時間がなくなるので最初に結論を言いますと、2プラス2、さっき言った、日米同盟がどんどん深化している、これ自体否定するものではないんですけれども、どんどん米国と一体化して、軍事面、政治面、経済面で何か日本が常にアメリカと一体になって、世界に協力をと言ってもアメリカと一緒、アメリカと一緒。だけれども、さっき言いましたアメリカのお人よしは、もう小さな親切というか大きな親切のつもりで大きな迷惑をこの地域にもたらしている。もうイラクなんかその典型だと私は思っております。

 八〇年代の後半に、ベクテルという、アメリカの政商とも言われる、シュルツ国務長官が会長をやっていた巨大エンジニアリング会社と一緒にトルコの当時オザール首相が、民間の資本とかノウハウを利用した民間活力導入型のインフラ整備プロジェクトというのを発案して、実は、私ども日本、米国、ドイツ、それとトルコ、この四つでコンソーシアムを組んでそのプロジェクトを推進したことがあります。そのときの物すごくおもしろい経験というのは、ベクテルのトップの方というのは、それはもうオザール首相にすぐ話せるし、米国の国務長官などとすぐに話ができて、すぐトップ同士でぽっと話が行くわけです。ところが、トルコの下の官僚たちは全く動かないんですね。当時、電力のプロジェクトだった人も全く動かないで進展しない。

 そういう中で、ドイツの、個別言ってもいいと思うのですが、ジーメンスという巨大な電機会社の人たちが、悪いけれども、アメリカというのはもう全くわかっていないと。彼らの言い方は多少失礼だけれども、自分たちは歴史の中で、アジアそれから中東も含めて、植民地経営も含めてよく彼らのことをわかっている、だから、本当に進めようと思うんだったらおれらに任せろ、アメリカ流でやったら全くうまくいかないんだということで、ドイツが、表じゃない、裏方ですけれども、どんどん前に出たら一挙に進み始めたというのがあって、そういう意味で、ヨーロッパ諸国というのは、植民地経営の是非はともかく、やはり地域のことをよくわかっている、知っている。そして、そこに生きる人間という価値観をきちんと理解した上で、現実を踏まえて物事を進めていこうとしている。

 これに対して、アメリカというのは、理想はぼんと出ていくし、自分の国の仕組みがすべて通じるような感覚で対処していきますので、私は、このアメリカ流のやり方が、さっき言った、軍事的にはイラクでも問題を起こしている。実は、中南米であれだけ今、前も言いました、反米左派政権ができている一つのきっかけは、経済的にまだ発展途上の、十あれば三とか四段階にある国にいきなり九、十のレベルの手法を持ち込んで、もうぐちゃぐちゃにしてしまって、結果的にこんなはずじゃなかったということで、また社会主義といいますか、揺り戻しが起こっているんですね。

 私は、ある意味で、ヨーロッパの経験と勇気に学び、だけれども、「国家の品格」というのを出したのは、我が国というのは、かつてそれほど世界に対して打って出た経験があるわけではございませんけれども、自分の伝統、文化の中でこの国をきちっとマネージしてきた経験がある、そしてそれを世界に訴えていっても十分に今の時代は通用する、そういう我々、文明、文化を持っていると思うんです。

 そういう意味で、繰り返しますけれども、アメリカに自分の生存を依存してしまっているような国であっては、みずからがこれこそ世界のためによかれということをなかなか主張できない。本当に日本として世界に、今こそ日本の文明、伝統でもって世界を平和に、環境に優しい地球をつくっていく。こういうようなことを発信する意味でも、ぜひ、短期的にはともかく、長期的には、対等な関係に近い、上下ではなくて、少なくとも兄弟分ぐらいにはなれる関係にして、日本のそういうよさ、「国家の品格」で書かれたようなことを世界に訴えていけるような、そういう国づくりを、首相になられればもちろん先頭に立ってやっていただきたいと思っておりますし、そのことに対する麻生大臣の見解を承りまして、終わりたいと思います。

麻生国務大臣 最初に、梅棹先生の話が出ていましたので。

 第一地域、第二地域の中で、簡単に言えば、ヨーロッパと日本が第一地域で、真ん中が第二地域で、その他地域は無視というのが、ちょっとむちゃだなという本ではありましたけれども。ただ、あの中で、今言われましたように、第二地域の中において、第一地域、我々の外の辺境の地域にあっては、この真ん中でごちゃごちゃいろいろとったりとられたり、トルコなんて、もとのトルコと今のトルコとは全然別の場所にあるぐらいですから。そういった意味では、日本のように最初から今日まで二〇〇〇年ぐらいの間、同じ地域に同じ文化、文明で一国で成り立っているという国の方が珍しいということになっているのは事実。しかし、その分だけ他国にもまれるという経験には乏しかった。これは結果論としてはそのとおりだと思っております。

 傍ら、第二というその真ん中の地域においては、丸々ひっくり返るような騒ぎをしていますので、そういう歴史にもまれて経験が随分違ってきた、結果としてそれが防衛意識も変えたでしょうし、やはり基本的には大陸国家と海洋国家の違いはあったろうと思いますけれども、いずれにいたしましても、そういったのが一つの考え方としてあるのは事実ですし、私どもは大いに参考にせないかぬところの一つだと思っております。

 それから、日米につきましては、これに丸々おんぶにだっこはいかがなものかという御意見なんだと思いますが、私もその点に関しては全く異論を唱えるものではありません。やはり自前でできるところは自前というのは当然のことだと思います。

 ただ、今の状況というのはもう御存じのとおりの状況でもありますので、今の東アジア、北東アジアの状況がどう変わっていくかによってもっと変わったものになっていくかもしらぬという感じもしますし、いろいろな意味で今までとは少し状況が変わってくる。我々の方も努力をしていかねばならぬところだと思います。

 今の不透明とか不確実な状況というのが続いているという前提でいきますと、きちんとした防衛力というのを自主だけでやれない部分がありますので、そうなってくると、その部分はきちんと同盟関係を結んでおくというのが、安全保障という面におきましてはそういう考え方になると存じます。

 ただ、今言われましたように、随分時代が変わっておりまして、一九七九年、ソ連軍アフガニスタン侵攻、その十年後にはソ連がなくなるなんということを予想した人は日本じゅう、世界じゅう一人もいやしませんから。そういった意味では、十年後のことはわからぬと。これは二十世紀が人類に与えてくれた最大の教訓の一つだと思いますね。僕は、そういった意味では、少なくとも一九四〇年、私が生まれた年ですけれども、十年後に日米安全保障条約なんて考えもしなかったと思いますね。僕はそういうものだと思いますよ。戦争が始まったときと終わって五年して変わったんですから。

 そういった意味では、今の状況というものが、あと十年、二十年したらどう変わっていくかというのはなかなか予想しがたいところだとは思いますけれども、いずれにしても、いつの時代でも変わらないのは、自分のことは自分、それは基本だと思います。

吉良委員 自分の国は自分で守るということと、真の独立のための自主防衛路線を引き続いて検討していただくことをお願いしまして、私の質問を終わります。

原田委員長 次に、笠井亮君。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 まず、HNS、油以外の有害危険物質による汚染事件に係る議定書をめぐってでありますけれども、臨海部に都市機能が集中する、中でも例えば東京湾は船舶のふくそう度が世界一とも言われて、貨物取扱量でも全国の一八%、そして船舶入港数でも一七%を占めるということで、HNSを満載した大型船舶が常時入出港しております。過去、死傷者を伴う重大な船舶事故もあり、航行管制が改善されてまいりました。環境面でも、他の海域に比べても最も閉鎖的で、そして狭い、浅い海域であって、一つの生態系として保全、再生に努力が払われてきたところであります。東京湾を初めとして、伊勢湾、瀬戸内海など、特定海域の持つ特性に基づいて、HNSの事故はもちろんですが、海上汚染をもたらす海難事故は絶対に発生させてはならないと思います。

 海上保安庁が設置した調査研究委員会が昨年十月二十七日にまとめた提言では、「原因者等が講ずべき措置の明確化」の項目として、臨海部に都市機能が集中する一定の海域での対応を特に留意すべきということで強調しております。本議定書が求める緊急時の計画の策定に際して、どのようにこの提言の趣旨が生かされるようにするのか、海上保安庁から見解を求めたいと思いますが、いかがでしょうか。

冨賀見政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘のとおり、東京湾は一日当たり約七百隻の船舶が出入港する状況であります。我が国有数の船舶交通がふくそうする海域であり、また先生御指摘のとおり、都市機能が臨海部に集中するなど、大規模な事故が発生した場合、経済的など著しい影響が生ずる可能性が高いと考えております。また、東京湾は閉鎖性海域であり、海水の循環が悪く、有害液体物質等が排出された場合においては海洋が著しく汚染されるおそれがあるというふうに考えております。

 御指摘の国家的な緊急計画につきましては、現在のOPRC条約の要請を受けて策定しました油の国家緊急時計画を一部改正しまして、その中に対象として有害液体物質等を加えることとしております。その策定に当たりましては、油と同様、関係省庁と十分な調整をした上で、東京湾等の閉鎖海域においての事故が発生した場合、迅速に効果的に対処できるようにしたい、このように考えております。

笠井委員 極めて重要な問題でありますので、きちんとした対応をしていただきたいと思います。

 委員長、大臣に……。

原田委員長 それでは、大臣に質問ですから、ちょっと速記をとめてください。

    〔速記中止〕

原田委員長 それでは、速記を始めてください。

 笠井君。

笠井委員 麻生大臣、アジア協力対話、ACDの閣僚会議に出席をされて帰国をされたばかりということで、お疲れさまです。

 この際、関連して伺っておきたいと思うんですが、今回の会議では、開催国のカタールのカミム首長代理が、アジア大陸を諸国民と諸文明間の協力と理解の生きた模範にしようという趣旨を呼びかけられて、中東地域をその中で安全と安定の地域にしようということで訴えたということで伺っております。

 このように、我が国も参加をして、そしてアジア諸国が諸問題で協力し対話を進めていくという枠組みは、現在例えばどういうものがあって、そして政府としては、それらが持つ今日的意義について、総論で結構ですが、全体としてどのように評価をされているか、大臣の所見を伺いたいと思います。

麻生国務大臣 アジアの枠組みが、先生、これはすごく幅の広いのがACDなんだと思います。東は日本、それから西の一番端が中近東ということになろうと思いますが、南がスリランカ、インド、そして北がロシア、これを全部含めていわゆるアジアというところでダイアログ、対話をやろうじゃないかというので、五年前、タイのバンコクでしたか、たしかあそこでタイがスタートさせたんだと存じます。

 そういった意味では、今ここには二十八カ国参加しておりますが、これはさらに中央アジア、ウズベキスタンとか等々入ってこようとしていますので、さらにもっとふえていくことは間違いないと思っております。よく言われますのが、いわゆるASEANというところですけれども、ASEANプラス3で十カ国でしょうか、それからアジア首脳会議が十六カ国だと存じます。そういったので、ほかにもアメリカが入りますAPECを入れますと二十一カ国だと思っております。ほかにもいろいろあろうと存じますが、私は基本的にはそれぞれ目的が少しずつ違っているとは思います。

 今回の話にもありましたように、なかなかいきなり中近東をアジアと言われても、ちょっと感じも違うし、随分、アジアと言われてもぴんとこない人もいっぱいいらっしゃるでしょうし、何となく青い目なんというのがアジアと言われると、ちょっと、えっという感じが普通の日本人の意識だと思いますけれども、少なくとも中央アジアを含めまして広大なユーラシア大陸の中にあって、私どもとしては、アジアというのが、六十億人で三十八億人ですから約六割ぐらいの人がアジアという地域に属しておりますので、そういう意味からいきますと、今一番伸びている地域というのは、どう考えてもこれ。

 この間、SARSという病気がはやりましたけれども、やはりあれがわっとあれだけ蔓延するというのは、基本的にそこの地域が停滞したら広がるはずがありませんから、人の行き来が激しいからばっと広まるので、そういった意味では、私は、この地域というものは非常な勢いで、急激な勢いで広まっている分だけ、求心力じゃなくて遠心力も働くことにもなりかねません。そういった意味では、常日ごろから対話やら会話やらいろいろな会議でしょっちゅう顔を合わせておいて、おうと言って何となく話ができる、もし何かあったらぱっと電話する、そういったことができるような人間関係をふだんつくっておくというのはすごく大事なことで、ヨーロッパじゃしょっちゅうやっている話なんでしょうけれども。

 したがいまして、こういった会議も、ヨーロッパじゃ、フランス大統領がイギリスに行ったって別に新聞に載らない、週末の会合じゃないかというようなもので、それが最も望ましい、余り話題にならない会話がふだん続いているから、逆に言えば、くちゃくちゃ難しい話にもならずに予備的に避けられるということになろうと思いますので、この種の会議というのは、私は、いろいろな形の会議というのはできるだけ開かれて、参加をし、人脈というかそういった信頼関係を醸成していくのはすごく大事だ、基本的にはそう思っております。

笠井委員 今大臣が言われたことは私も非常に大事だと思うんです。世界の中でも特にアジアというのは大事な位置を占めている、そしてやはり大きく言えば、紛争についても、戦争じゃなくて平和的な話し合いで解決して、諸問題での協力と対話を促進するということが進んでいる。昨年の東アジア・サミット、首脳会議でも、東アジア共同体ということを展望しながら、この流れをやはり大きく加速していこうということが今世界の平和にとっても大事だということだと思うんです。

 そこで、大臣、そういう流れの中で、日米同盟とか米軍再編というのはどんな位置づけになりますか。

麻生国務大臣 日本とアメリカとの場合の日米関係というのは、先ほども民主党の方の御質問にお答えをしたと存じますが、日本という国の今置かれている地理的な条件は北東アジア、その北東アジアにおきましては、御存じのように、朝鮮半島の問題とか台湾海峡の問題とか極めて見通しがよく見えない、不確実、不透明な部分がまだ残っているという状況の中にあって、日本という国の安全というものを確保していく上にとりましては、日本一国で自主防衛ということができ得るかというと、核の問題やら何やらあってなかなか難しいという状況にあったときには、いわゆる日米安全保障条約に基づいて日本の安全保障を確保するというやり方なんだと思っております。これが一点。

 では、それもやめろ、それで自主防衛だというのであった場合は、それは金もかかるという点もありましょうけれども、もう一つは、日本の経済力に応じて自主防衛ということになっていくと、この大きな経済力のもとで自主防衛ということになっていった場合、今のような状況より違って、隣国においてそれを望むであろうかという問題は、私は、新たな脅威と言われかねぬという問題も含めて、別の面からまた検討せねばならぬ問題だと考えております。

笠井委員 私は、アジアの大きな流れの中での日米同盟、米軍再編のことを伺ったんですが、アジアの協力対話のようなさまざまな枠組みの中で、例えば日米同盟の役割というのを明文的に書いているものはないと私は思うんですよ、そういういろいろな機構、枠組みで。アジアの平和的な話し合いの流れの中で、また、地域の大多数の国々は非同盟の立場ということでいえば、米軍再編、自衛隊との一体化という軍事力強化の方向は明らかに異質のものであって、逆行するものだというふうに言わざるを得ないと思うんです。

 そこで、その米軍再編の問題で、政府はいわゆる抑止力の維持とともに、とりわけ沖縄の負担軽減ということを強調してきました。そこで、防衛施設庁に一点だけ確認しておきたいんですが、今度のロードマップでは、返還される沖縄の米軍基地として嘉手納基地以南の六施設が挙げられていて、一部返還のキャンプ瑞慶覧以外は全面返還ということになっております。本土では、相模の補給廠、座間関連の返還があるということですが、このはっきりしているものだけで、ロードマップが実施された場合に、全国の在日米軍専用施設の中で沖縄が占める比率は現在の何%からおおよそ何%に変化することになるか、端的に数字をお答えいただきたいと思います。いかがでしょうか。

渡部政府参考人 お答えいたします。

 五月一日に2プラス2で承認されましたロードマップにおきましては、沖縄につきましては、今先生御指摘のとおり、キャンプ桑江、キャンプ瑞慶覧、普天間飛行場、牧港補給地区、那覇港湾施設及び陸軍貯油施設第一桑江タンクファームの六施設・区域を返還対象としまして、キャンプ瑞慶覧については部分返還、他の五つにつきましては全面返還を目指すこと、また、本土につきましては、相模総合補給廠及びキャンプ座間の一部を返還するということで合意いたしたところでございます。

 それで、ロードマップが完了した時点での沖縄におきます米軍専用の施設・区域の占める割合につきましては、部分返還が予定されておりますキャンプ瑞慶覧の返還範囲が未確定であること、それから、新たに提供することになると思われます普天間飛行場あるいは那覇港湾施設の代替施設の施設面積が決定されていないということでございまして、現時点におきましては不確定であることから、確たることを申し上げられる状況ではないということを御理解いただきたいと思います。

 他方、昨年十月の2プラス2共同文書におきましては、「双方は、この文書における勧告によって変更されない限りにおいて、SACO最終報告の着実な実施の重要性を確認した。」とされておりますし、また、先般の2プラス2で合意されましたロードマップにおきましても、「SACO最終報告の着実な実施の重要性を強調しつつ、SACOによる移設・返還計画については、再評価が必要となる可能性がある。」というふうな記載がされておりまして、ロードマップに盛り込まれております土地の返還を論ずるに当たりましては、SACOの事案等のかかわりを考慮する必要があるというふうに考えておるところでございます。

 そこで、ロードマップに盛り込まれております返還事案については、先ほど申し上げましたような不確定要素が多々あるわけでございますけれども、そうした不確定要素を除きまして、加えて、今後返還が予定されております神奈川県内の事案でありますとか、あるいは、沖縄県内における二十三事案あるいはSACO事案等すべて予定されております返還事案につきまして計算、あえて試算してみますと、ロードマップが完了する時点でこれらすべてが終了しているという仮定のもとにあえて試算いたしますと、沖縄における在日米軍の専用施設・区域の占める割合というのは、現在の約七五%から約七〇%になると見込まれております。(笠井委員「ごまかしちゃだめですよ」と呼ぶ)追加させていただきます。

 その上で、先ほどの先生の御質問にお答えいたしますと、先ほど申し上げました不確定要素を除きまして、ロードマップにおいて合意されました返還事案、これは九百十三ヘクタールプラスアルファということになるわけでありますけれども、この九百十三という部分のみが完了したという仮定であえて試算したとしますと、沖縄における在日米軍専用施設・区域の占める割合というのは現在の約七五%から約七四%程度になるのではないかというふうに見込まれます。

笠井委員 ごちゃごちゃ説明して、あれこれ言ったんですけれども、結局、七五%から七四%という話ですよ。

 私は、いただいた数字をもとに、不確定だとかいろいろ言われたけれども、計算、防衛庁の数字だと七四・六%が現在で、それが七三・八%ということであります。わずか〇・八%ということです。

 大臣、最後に一言ですが、大臣は、沖縄には日本じゅうの基地のほぼ七五%、七四%が集中しているというふうなことで言われて、この部分に関しては沖縄に過重にかかっている部分で何とかすべきではないか、一日でも早く削減を、負担軽減をということを言われました。そして、繰り返しそのことを言われて、米軍再編による沖縄の負担軽減の意義を強調されましたが、今お聞きのように、これが実施されても、はっきりしているロードマップによる効果というのはわずか〇・八から一%という話ですが、これをどうお考えですか。

麻生国務大臣 土地面積だけでいえばそういうことになろうと思いますけれども、しかし、一番問題だった密集地域の、普天間から北に移るというのは大きな負担軽減じゃないでしょうか。僕は大きいと思いますけれどもね。また、兵隊の数も減る、これも大きいと思いますが。

笠井委員 終わりますが、今、減るところ、集中しているところ、九百とか八百九十五とかいう数がありますが、これはその地域にとってみれば当たり前です、軽減になるといいというのは。しかし、大臣が強調されたのは、いつも、七五%だ、だからこれを減らすんだということで言われたけれども、実際には、やってみたら一%行かないぐらいの話でありまして、そのわずか一%未満ということで、この面積が減るから沖縄の負担軽減のために国民は応分の負担をしてくれ、ほかに移っても我慢してくれ、こういう形で二兆円、三兆円という負担増を求める、こんなやり方でいいのかということが問われると思います。改めてこの問題を追及したいと思います。

 終わります。

原田委員長 次に、照屋寛徳君。

照屋委員 きょうから沖縄で島サミットが開かれております。言うまでもなく、我が国は海洋国家であります。その中にあって、沖縄は周囲を海に囲まれた島嶼県であります。議題となった二条約については、漁業資源の管理、海洋汚染の防止に資するものであり、賛成であります。

 さて、沖縄は、琉球王朝の時代から海と向き合って生き、海によって生かされてきました。沖縄にとって、海は隔ての海ではなく結びの海であります。一方で、その豊饒の海を埋め立てて米軍のために新たな基地をつくるという愚かな計画が進められていることはまことに残念であります。

 二条約と関連して、沖縄近海における台湾漁船の違法操業と取り締まりの実態がどうなっているのか、伺います。

五十嵐政府参考人 お答え申し上げます。

 沖縄周辺海域におきまして、台湾のマグロはえ縄漁船、刺し網漁船などの操業が見られるところでございますが、これらはすべて無許可操業でございます。これらに対して、我が国漁業者から、漁場競合や漁具の被害が発生しているとして取り締まりの要望があるところでございます。

 水産庁といたしましては、沖縄周辺海域を重点取り締まり海域といたしまして、海上保安庁との連携のもとに取り締まりを行っております。昨年は、平成十七年でございますが、九州や小笠原の海域を含めまして、台湾漁船を五隻拿捕いたしますとともに、二百十三隻に警告を発し、退去指導を行っているところでございます。

 今後とも、このような取り組みを通じて、台湾漁船の違法操業の抑止に努めてまいりたいと考えております。

照屋委員 水産庁の五十嵐管理部長にお願いでございますが、私は先週も地元に帰った折、実際に漁船の船長をしている人から、台湾漁船の違法操業は目に余るものがある、アンカーが切られたり網が切られたり、あるいはまた水産資源の乱獲が行われておる、こういう悲痛な訴えを聞きました。

 一方で、水産庁は、沖縄近海に資源保護の目的で大型のパヤオ、浮き魚巣を設置しているんですよね。私はあれは非常によいことだと思っておりますが、この台湾漁船の違法操業の取り締まりを強化していくんだ、そういう決意はあるのでしょうか。

五十嵐政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま申し上げましたように、沖縄周辺海域は、水産庁の重点取り締まり海域として平成十六年から一層取り組みを強化しておるところでございます。加えまして、海上保安庁と連携をいたしまして、先ほど申し上げた数字は水産庁の実績でございますが、海上保安庁としても警告あるいは拿捕をしておられます。

 両省相まちまして、沖縄漁民の方の不安が取り除かれるよう努めてまいりたいというふうに考えております。

照屋委員 きょうの条約審議とも関連しますが、海洋汚染の防止についても、条約は結局国内法令より優先するし、米軍には適用されません。そのことが沖縄では問題でして、北原長官にお聞きしますが、去る五月二十二日、米軍の上陸用ボート四隻が制限水域を外れてモズク養殖場に侵入、通過するという事件が発生しております。その日、養殖場付近では潜水して収穫作業を行っておる漁業者もおり、一歩間違えれば大惨事に発展する悪質な事件であります。事前通報もなく、訓練水域外の侵入、航行に漁民は怒っております。

 防衛施設庁は事実関係をどのように掌握しているのか、また米軍に対して強く強く抗議すべきと考えますが、北原長官に見解を求めます。

北原政府参考人 照屋寛徳先生に御答弁申し上げます。

 ただいま先生御指摘になりました件につきましては、去る五月二十二日でございますが、まず第一報は、午前十一時五十五分ごろでございましたが、宜野座村の漁協から私どもの那覇防衛施設局に対しまして、キャンプ・シュワブの提供水域、これは第三水域でございますが、その外に所在いたしますモズク養殖場の真上を米軍のアルミ製のボート四隻が通過した、特に被害は発生していないけれども、潜水中のダイバーもいるので大変危険であり、至急やめさせてもらいたいといった旨の申し入れがございました。これを受けまして、私ども那覇防衛施設局は、直ちに、在沖米海兵隊基地司令部のG3でございますが、作戦訓練部に対しまして、至急訓練部隊に連絡の上、モズク養殖場海域を航行しないように要請したところでございます。

 しかしながら、同じ日の二十二日の夕刻、午後十六時五十分ころになりまして、再び宜野座の漁協から当局に対しまして、米軍のボートが午前中と同じルートを今度は逆に通過したといった連絡があったところでございます。したがいまして、私ども、直ちに、もう一度その司令部に対しましてモズク養殖海域を航行しないよう要請を申し入れますとともに、事実関係の照会をしたところでございます。

 その結果が、翌日になりまして、二十三日の午前でございますけれども、在沖米海兵隊から、きのう施設間移動を行った、しかし、航路標識や漁船の位置を確認し漁船からは十分な距離をとって通過しており、モズク養殖場の上を通ったという認識はないといった趣旨の回答があったところでございます。

 しかし、これに対しまして、私どもは、その日の午後でございますけれども、同じくまたその司令部に対しまして次のような点を申し上げました。そのうちの一つは、アメリカ軍が活動するに当たりましては、施設・区域の内外を問わず公共の安全に妥当な配慮を払うべきものと考えているといった点が一点。それから、今回のような養殖場の上を航行することは作業をしている漁民の皆さんの安全を脅かす行為であり、これは避けるべきである、二点。それから三点目といたしまして、訓練水域外の養殖場の位置確認や安全管理、そして隊員の指導の徹底といったことを申し入れたところでございます。

 さらに、先ほど先生御指摘になりましたが、演習通報がなかったということでございます。この点については、水域内につきましては確かに通報がございました。ただ、水域外で今回のような施設・区域間の移動といったものにつきましては、先生御承知のように、私ども、好意的通報、いわゆるコーティシー・ノーティフィケーションと呼んでいますけれども、水陸両用車についてはこれまでもいわゆる好意的通報をいただいておりますが、今回のようなボートについてはございませんので、こういったものについても、安全の観点から通報をしてくれといったことを引き続き申し入れたわけでございます。

 長くなりますが、いずれにいたしましても、先生御指摘のように、今回のような件は人命にかかわることでございますので、私ども施設局の幹部から、早急に訓練水域外の養殖場の位置図、それから航路標識の位置を示す図面などを司令部責任者に提示して、具体的な改善策を検討するよう指示したところでございます。

 いずれにいたしましても、米軍、漁協を含めまして、具体的な対策を検討の上で早急に講じてまいりたい、そのように考えているところでございます。

照屋委員 最後に、一点だけ外務大臣にお伺いしますが、米軍再編最終報告を受けて、その実施のための政府方針の閣議決定がいつなされるのか、また、その内容について、普天間の移設先との関連で、ロードマップに明記されたシュワブ沿岸V字形滑走路二本建設方針を、沖縄県の陸上部ヘリポート案が提起されたこととの関連で具体的な記述を避けるとの報道もありますが、麻生大臣は、ロードマップと閣議決定の内容はいかようにあるべきと考えているのか、あわせて所信を伺います。

塩崎副大臣 五月一日に最終取りまとめが行われて、それに沿った形で閣議決定を行う予定でございますけれども、これにつきましては、各省庁とさまざまな調整をし、なおかつ、地元ともお話し合いをしながら閣議決定を決めていかなければならないということで、目下のところ、タイミングを申し上げられる段階ではないということでございます。

照屋委員 終わります。

原田委員長 これにて両件に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

原田委員長 これより両件に対する討論に入るのでありますが、その申し出がございませんので、直ちに採決に入ります。

 まず、分布範囲が排他的経済水域の内外に存在する魚類資源(ストラドリング魚類資源)及び高度回遊性魚類資源の保存及び管理に関する千九百八十二年十二月十日の海洋法に関する国際連合条約の規定の実施のための協定の締結について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

原田委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 次に、二千年の危険物質及び有害物質による汚染事件に係る準備、対応及び協力に関する議定書の締結について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

原田委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました両件に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

原田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

原田委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時四十三分散会


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