衆議院

メインへスキップ



第1号 平成18年10月18日(水曜日)

会議録本文へ
本国会召集日(平成十八年九月二十六日)(火曜日)(午前零時現在)における本委員は、次のとおりである。

   委員長 原田 義昭君

   理事 小野寺五典君 理事 谷本 龍哉君

   理事 土屋 品子君 理事 水野 賢一君

   理事 渡辺 博道君 理事 武正 公一君

   理事 山口  壯君 理事 丸谷 佳織君

      逢沢 一郎君    愛知 和男君

      伊藤 公介君    伊藤信太郎君

      宇野  治君    高村 正彦君

      篠田 陽介君    新藤 義孝君

      鈴木 馨祐君    中山 泰秀君

      三ッ矢憲生君    山内 康一君

      山中あき子君    吉良 州司君

      篠原  孝君    田中眞紀子君

      津村 啓介君    松原  仁君

      谷口 和史君    笠井  亮君

      照屋 寛徳君

    ―――――――――――――

九月二十七日

 原田義昭君が委員長を辞任した。

同月二十八日

 山口泰明君が議院において、委員長に補欠選任された。

平成十八年十月十八日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 山口 泰明君

   理事 小野寺五典君 理事 嘉数 知賢君

   理事 三原 朝彦君 理事 やまぎわ大志郎君

   理事 山中あき子君 理事 長島 昭久君

   理事 山口  壯君 理事 丸谷 佳織君

      愛知 和男君    伊藤 公介君

      猪口 邦子君    宇野  治君

      小野 次郎君    高村 正彦君

      篠田 陽介君    新藤 義孝君

      鈴木 馨祐君    松島みどり君

      三ッ矢憲生君    山内 康一君

      笹木 竜三君    田中眞紀子君

      長妻  昭君    前原 誠司君

      笠  浩史君    高木 陽介君

      笠井  亮君    照屋 寛徳君

    …………………………………

   外務大臣         麻生 太郎君

   防衛庁副長官       木村 隆秀君

   外務副大臣        岩屋  毅君

   外務副大臣        浅野 勝人君

   外務大臣政務官      松島みどり君

   外務大臣政務官      関口 昌一君

   外務大臣政務官      浜田 昌良君

   経済産業大臣政務官    高木美智代君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  山浦 耕志君

   政府参考人

   (内閣法制局第一部長)  山本 庸幸君

   政府参考人

   (防衛庁防衛政策局長)  大古 和雄君

   政府参考人

   (防衛庁運用企画局長)  山崎信之郎君

   政府参考人

   (防衛施設庁長官)    北原 巖男君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 木寺 昌人君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 佐渡島志郎君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 梅本 和義君

   政府参考人

   (外務省総合外交政策局軍縮不拡散・科学部長)   中根  猛君

   政府参考人

   (外務省アジア大洋州局長)           佐々江賢一郎君

   政府参考人

   (外務省中東アフリカ局長)            奥田 紀宏君

   政府参考人

   (外務省経済局長)    石川  薫君

   政府参考人

   (外務省国際法局長)   小松 一郎君

   外務委員会専門員     前田 光政君

    ―――――――――――――

委員の異動

九月二十六日

 辞任         補欠選任

  逢沢 一郎君     佐田玄一郎君

同日

 辞任         補欠選任

  佐田玄一郎君     猪口 邦子君

同月二十七日

 辞任         補欠選任

  谷本 龍哉君     松島みどり君

  土屋 品子君     河野 太郎君

  水野 賢一君     松浪 健太君

  渡辺 博道君     山口 泰明君

  谷口 和史君     高木 陽介君

同月二十八日

 辞任         補欠選任

  吉良 州司君     笹木 竜三君

  篠原  孝君     長妻  昭君

  武正 公一君     長島 昭久君

  津村 啓介君     前原 誠司君

  松原  仁君     笠  浩史君

十月三日

 辞任         補欠選任

  伊藤信太郎君     三原 朝彦君

  中山 泰秀君     嘉数 知賢君

  原田 義昭君     やまぎわ大志郎君

  松浪 健太君     小野 次郎君

同月十八日

 理事谷本龍哉君、土屋品子君、水野賢一君及び渡辺博道君九月二十七日委員辞任につき、その補欠として嘉数知賢君、山中あき子君、やまぎわ大志郎君及び三原朝彦君が理事に当選した。

同日

 理事武正公一君九月二十八日委員辞任につき、その補欠として長島昭久君が理事に当選した。

    ―――――――――――――

十月十八日

 独立行政法人国際協力機構法の一部を改正する法律案(内閣提出第三号)

同月十六日

 核兵器の廃絶に関する請願(吉井英勝君紹介)(第四号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 理事の補欠選任

 国政調査承認要求に関する件

 政府参考人出頭要求に関する件

 国際情勢に関する件


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

山口委員長 これより会議を開きます。

 まず最初に、一言ごあいさつを申し上げたいと思います。

 このたび、外務委員長の重責を担うことになりました山口泰明でございます。

 委員会、もう喫緊、いろいろな北朝鮮の問題から、さまざまな問題が山積をしているわけでありますけれども、ぜひ皆様方のすばらしいいろいろな角度の意見をいただいて、立派にやっていきたいと思っております。

 特に、麻生大臣は実力大臣でございますので、いろいろな面でまた御指導いただければと、また、委員の皆様も、高村元外務大臣を筆頭に、また私が政務官として支えた田中眞紀子元外務大臣もいらっしゃいますので、大いに活発な論議をお願いしたいと思っております。

 また、委員会については公正中立にやっていきたいと思いますので、皆様方の御指導、よろしくお願いいたします。(拍手)

     ――――◇―――――

山口委員長 理事の補欠選任についてお諮りいたします。

 委員の異動に伴い、現在理事が五名欠員となっております。この際、その補欠選任を行いたいと存じますが、先例によりまして、委員長において指名するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

山口委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 それでは、理事に

      嘉数 知賢君    三原 朝彦君

    やまぎわ大志郎君   山中あき子さん

   及び 長島 昭久君

を指名いたします。

     ――――◇―――――

山口委員長 次に、国政調査承認要求に関する件についてお諮りいたします。

 国際情勢に関する事項について、本会期中国政に関する調査を行うため、衆議院規則第九十四条の規定により、議長に対し、承認を求めたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

山口委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

     ――――◇―――――

山口委員長 この際、麻生外務大臣、岩屋外務副大臣、浅野外務副大臣、松島外務大臣政務官、関口外務大臣政務官及び浜田外務大臣政務官から、それぞれ発言を求められておりますので、順次これを許します。外務大臣麻生太郎君。

麻生国務大臣 外務委員会の開催に当たり、山口泰明委員長初め委員各位に謹んでごあいさつをさせていただきます。

 北朝鮮の弾道ミサイル発射と核実験実施発表は、我が国及び国際社会の平和と安全に対する重大な脅威です。十五日に採択された安保理決議第千七百十八号が確実に履行されるよう、国際社会と連携し、毅然とした態度で対応させていただきます。

 拉致問題につきましても、すべての被害者の生還を実現すべく、全力で取り組みます。

 我が国の安全と繁栄の確保のため、普遍的価値観と戦略的利益を共有する米国との関係はその基盤であり、一層揺るぎないものとしてまいります。

 安倍総理の訪問された中国との関係では、政治と経済の車輪を力強く作動させ、戦略的互恵関係を築きます。

 韓国との間でも、未来志向の関係を確立してまいります。

 また、ASEAN諸国への協力を強化するとともに、透明で開かれた東アジア共同体の形成に向けて努力をしてまいります。

 ロシアとの領土問題では、これまでの諸合意及び諸文書を踏まえ、両国がともに受け入れられる解決策を見出します。

 また、政府は、普遍的価値観や利益を共有する欧州との関係を強化し、豪州、インドと戦略的な関係を構築します。

 中東地域の安定は、我が国の国益に直結する問題です。イラクの復興支援に積極的に参画し、イランの核問題の解決にも努めます。

 さらに、政府は、懸案となっている国連改革に取り組み、安保理常任理事国入りを目指します。

 また、平和構築分野では、アジア諸国と連携して、人材を育成する事業を来年度から推進いたします。

 ODAにつきましては、海外経済協力会議で審議される戦略のもと、人間の安全保障の観点も踏まえつつ、戦略的、効率的に活用してまいります。

 さらに、TICADプロセスを基軸としたアフリカ外交を強力に推進し、ODA増額を目指すとの国際公約を着実に実施します。

 国際貿易・投資分野では、WTOとEPA、FTAを車の両輪として、多角的貿易体制の強化に努めます。

 最後に、山積する外交問題に対処していくのに不可欠な定員、機構、予算等の外交実施体制の強化が必要であり、そのための努力をしてまいります。

 山口委員長初め委員各位の御支援と御協力を心よりお願い申し上げます。

山口委員長 次に、外務副大臣岩屋毅君。

岩屋副大臣 今般、副大臣を拝命いたしました岩屋毅でございます。

 山口委員長初め委員の先生方に謹んでごあいさつを申し上げたいと思います。

 外交の目的は、何よりも我が国の安全と繁栄を確保することにございます。今月九日の北朝鮮による核実験の宣言は、我が国のみならず、東アジア及び国際社会の平和と安全に対する重大な脅威でございました。我が国は、この機会に際し、麻生大臣主導のもとに、厳しい措置を盛り込んだ国連安保理決議の採択に向け、安保理議長国として主導的な役割を果たしたところでございます。

 引き続き、我が国として十分なる外交力を発揮することができますよう、浅野副大臣並びにお三方の政務官ともども、麻生外務大臣を補佐し、直面する諸課題に全力を尽くしてまいる所存でございます。

 山口委員長初め委員の先生方の今後の御指導と御鞭撻をよろしくお願い申し上げまして、ごあいさつとさせていただきます。

 よろしくお願いします。(拍手)

山口委員長 次に、外務副大臣浅野勝人君。

浅野副大臣 外務副大臣の浅野勝人でございます。

 我が国の繁栄と安全を確保するため、麻生大臣を補佐して、外交の諸課題と懸命に取り組んでまいります。

 山口委員長初め委員の先生方の厳しい御叱責と温かい御指導を賜りますようお願い申し上げて、就任のごあいさつといたします。

 ありがとうございました。(拍手)

山口委員長 次に、外務大臣政務官松島みどりさん。

松島大臣政務官 外務大臣政務官に就任いたしました松島みどりでございます。

 山口泰明委員長を初め委員の皆様に一言ごあいさつさせていただきます。

 外務大臣政務官として、国民の皆様の理解を得ることができる外交をしっかりと推進していくために、麻生太郎外務大臣を補佐し、一生懸命に努力していく所存でございます。

 なお、三人の政務官の中で、特に私がこの委員会の担当となっております。どうか、山口委員長を初め委員の皆様方の御指導、御協力のほど、よろしくお願いいたします。(拍手)

山口委員長 次に、外務大臣政務官関口昌一君。

関口大臣政務官 このたび、外務大臣政務官に就任いたしました関口昌一です。

 山口委員長初め委員の皆様方に謹んでごあいさつを申し上げます。

 麻生大臣御指導のもと、外務大臣政務官として、世界の平和と繁栄に向けて、時代に適した国際貢献のあり方を追求しながら、外交努力に全力で取り組んでいく所存でございます。

 山口委員長初め本委員会の皆様方の御指導、御協力をよろしくお願い申し上げます。

 ありがとうございました。(拍手)

山口委員長 次に、外務大臣政務官浜田昌良君。

浜田大臣政務官 今般、外務大臣政務官を拝命しました浜田昌良でございます。

 山口委員長初め外務委員会の委員の皆様方に一言ごあいさつを申し上げたいと思います。

 我が国及び我が国民の安全と繁栄を確保することは、外交の最優先課題であると考えております。麻生大臣の指導のもと、我が国の外交上の諸課題に全力で取り組み、外務大臣政務官としての職務を全うする決意でございます。

 委員長初め委員各位の御指導、御鞭撻をよろしくお願いします。(拍手)

     ――――◇―――――

山口委員長 国際情勢に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房審議官木寺昌人君、大臣官房審議官佐渡島志郎君、大臣官房審議官梅本和義君、総合外交政策局軍縮不拡散・科学部長中根猛君、アジア大洋州局長佐々江賢一郎君、中東アフリカ局長奥田紀宏君、経済局長石川薫君、国際法局長小松一郎君、内閣官房内閣審議官山浦耕志君、内閣法制局第一部長山本庸幸君、防衛庁防衛政策局長大古和雄君、運用企画局長山崎信之郎君、防衛施設庁長官北原巖男君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

山口委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

山口委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。愛知和男君。

愛知委員 自民党の愛知和男でございます。

 このたびの安倍政権発足に当たりまして、麻生大臣が引き続き外務大臣を務められることになりました。まことに御苦労さまと申し上げたいと思いますが、ぜひ頑張っていただきたいと思います。

 また、新任の二人の副大臣それからお三人の政務官、御退席になりましたけれども、松島政務官はおいででございますが、どうぞひとつ頑張っていただきたいと思います。

 私は、日本の外務大臣はどうも、過去、くるくるかわり過ぎる、やはり国際社会の中で顔となる外務大臣というのはそうそうかわってはいけないと思うんですね。したがって、大臣御本人の心中はいろいろおありかもしれませんけれども、外務大臣を引き続きおやりになるということは日本の国にとって物すごく意味のあることだったと思うのでございます。

 特に、北朝鮮でああいうことが起きました。その関連で、きょう、あしたですか、ライス国務長官が日本に来られて、これから外務大臣ともいろいろ協議をされるんだろうと思います。もし新しい人が外務大臣だったら、ライス国務長官とお会いをしまして、初めましてから始まるわけですよ。これでは話にならないわけで、そういう点からいいましても、いろいろな場面でライス国務長官と御縁の深い大臣が留任されたというのは、これは証明するのは難しいですけれども、非常に意味のあったことだと私は思うんですね。

 ぜひひとつ、これから引き続き外務大臣としての重責を担う、頑張っていただきたいと思いますが、御決意のほどをまず一言お願いいたします。

麻生国務大臣 おっしゃるように、国と国同士のつき合い、その基本となりますのは、人と人とのつき合い、その総合体の結果みたいなものですから、そういった意味で外務大臣というのは、同じ人がフィリピンのようにやめてはまた出てくる、イタリアのようにやめてまた同じのが出てくるというふうに、いろいろなやり方はあるんだと思いますけれども、連続でやったら、大概疲れて皆体を壊すでしょうから、適当にやめてまたもとへ戻ってくると、また向こうももとのが戻ったりする。イタリア、フィリピン、いずれもそんなところがいたしますけれども、昔から知っているのも何人かおりますので、そういった意味ではお役に立てればと思っております。

愛知委員 ぜひ頑張っていただきたいと思います。

 きょう、最初、トップバッターを仰せつかりまして、外交の問題、いろいろございますけれども、やはり当面の北朝鮮の問題、限られた時間でございますので、そこに絞って幾つかの点を確認していきたい、こういうふうに思います。

 今回、北朝鮮があのように核実験をやった。これが成功だったか失敗だったか、規模が大きかったか小さかったか、いろいろありますけれども、とにかくやったことは間違いないんでしょうし、核武装しようという意思はこれではっきりわかったということでもございますから、実験が成功だったかとか規模がどうだったかとかというようなことはそれほど大きな問題ではなかろうか、こう思うんですが、それはともかくとしまして、私は、今回北朝鮮が核実験をあえて強行したという伏線が実はあったんだろうと思うのでございます。

 それは何かといいますと、かつてアメリカのクリントン政権の時代に、クリントン政権が北朝鮮の要求に応じまして、米朝の直接交渉に応じた。カーター元大統領が特使で北朝鮮に行っていろいろな交渉をして、原子力発電所を建設するとか重油を出すとか、言ってみれば北朝鮮の相当の部分の要求を受け入れたような形で決着をして、それで進んできたわけですが、途中で約束を北朝鮮が破ってしまったようなことになり、その一方、二国間協議ではだめだ、やはり国際社会の中に北朝鮮を取り込んで、核を持たないようにするということが大事だということから六カ国協議というような仕組みができて、そして、進んでいるうちに北朝鮮が来なくなっちゃった。

 こういうような経緯があり、北朝鮮は何を言い続けたかというと、アメリカと直接交渉をしたいんだということを言い続けて、その延長線上で今回あえて核実験に踏み切った、至っちゃった、こういうことがあると思うんです。

 私は、そういうことを振り返ってみますと、あのクリントン政権の、北朝鮮の要求に応じて米朝二国間の交渉をやっちゃったというのが大失敗だったと思うんですね。あのときにアメリカが頑張ってそれに応じなかったら、また随分シナリオが変わってきたんじゃないか、こんなふうに思うんですが、このような認識についていかがでしょうか、大臣。

麻生国務大臣 おっしゃるとおり、あのとき、米朝直接交渉をやって、マドリン・オルブライトという国務長官を北朝鮮に送り、数々の約束をして、それに基づいて、少なくとも核に関するいわゆる実験、研究等々はしないという約束は、間違いなくその裏ではずっと研究をし続けていた、簡単に言えばアメリカははめられたという思いを民主党政権は強くし、そこを共和党ブッシュ政権はついて選挙に勝った、間違いない六年前の事実だと存じます。

 したがって、今、改めて六者協議、それ以後の話を見ましても、米朝直接対話というのを要求するのに対して、アメリカは応じる気は全くありません。少なくとも十一月の七日に行われますアメリカの中間選挙を考えてみますと、つついて勝った方が向こうの要求に応じてというのはちょっと常識的には考えられない、事実、そこで核実験もしておりますから。

 しかし、傍ら、どうでしょう。イランの人質事件のとき、二十六年前になりますが、あのときはアメリカは以後イランとは交渉はしないと言って、今度のときになって交渉をするということになって、今チャンネルを三つあけて交渉を再開しているというのは事実だと思います。

 こういったようなことを考えますと、やはり直接交渉をどこかでやりたい、体制を保証してくれとかいろいろなことを多分言ってくると思っておりますが、それをさせるために、核実験を強行すれば対話に応じてくるという発想がそもそも間違いのもとである、私自身はそう思っております。ああいうところ、あの国は大体、その種の恫喝に屈して何々を再開するというのは国民の受けは最も悪い国だと思いますので、その点からいきますと、今回の核実験を強行したことによって二国間協議というのはさらに難しくなったかな、私自身はそんな感じがいたします。

 しかし、もとをたどれば、愛知先生おっしゃるように、あのクリントンの判断というのが非常に大きな間違いを、向こうに何となく二国間協議でだませると思わせたかもしれないという点に関しましては、私もその点は十分に可能性があろうかと存じます。

愛知委員 今後、北朝鮮はアメリカに対して、二国間協議に応じるようにいろいろな形でやってくると思うんですね。これは絶対応じてはだめだと思いますね。また応じてしまったら、また大失敗の繰り返しになりますし、私はブッシュ政権については、いろいろ批判する気持ちもあるんですけれども、少なくともこの点に関しましては、きちっとした姿勢を持ち続けているということで評価するわけであります。

 ライス長官にも、きょうですか、あしたですか、お会いになると思いますが、そのことを、余計なことかもしれませんけれども、念を押していただきたい。

 国際社会でも、あるいは日本の国内でもそうですが、アメリカは応じたらいいじゃないか、そういう声が出てくる可能性というのはあるんですね、この危険がどんどん高まっていきますと。だから、その辺はよほど注意をして、二国間協議に応じないようにするということが非常に大事だ、このように思うんです。

 今回の国連決議も、いろいろ中身は書いてありますけれども、最後の方に六カ国協議に応ずるようにというのがあるんですけれども、私はこれがまず第一のこの決議の意味だと思うんですね。

 決議の中で、核を全部中止しろとかなんとかというようなこと、それを一遍にのむわけがありませんよ。だけれども、六カ国協議に来るということについては、やり方によっては可能性が出てくる。そこに引っ張り出すことが、まずとりあえずのこの国連の決議を実効あらしめる第一歩だと思うんですよ。いかがでしょうか。

麻生国務大臣 今おっしゃるように、今回の決議文を受けて、北朝鮮の国連代表は直ちにこの案文を拒否いたしております。朴吉淵が直ちにこの問題については拒否をしております。しかし、同時に、対話と対決、いずれの道も選ぶ用意があるという話をこの国連大使がしておるというのも事実です。

 また、中国、きのうの扇参議院議長との対話において、胡錦濤国家主席の対話はかなり激しいものになっております。現実、もっと激しい口調になっておりますけれども、そういった状況を考えてみますと、私どもはまずは北朝鮮に、愛知先生おっしゃるには、一連のことは書いてありますが、最終目的は基本的には核の放棄ですから、それに至るまでのプロセスとしての第一のあれは六者協議への無条件復帰ということになっております。

 したがって、その無条件復帰をさせるためにどうするかというので、圧力がざっと強まってきたというので、六者協議に復帰をして、そこで何を話してくるかというところが一番の問題になろうと存じます。その意味で、今まずは六者協議に復帰。ただ、復帰して、例によって黙ってずっと座っているだけじゃだめなので、その上でいろいろ交渉に応じてということが今からの第二段階になろうと思いますが、それをして少し前に進めば、いわゆる圧力が少し緩まる、少し緩まるということになっていって、結果的に向こうも、とにかく相互不信ですから、世界じゅうも不信、向こうも世界に対して不信というところの窓口をどうにかしないとなりませんので、圧力とやはり同時に対話は、きちんと両方あけておかなければいかぬところだと思っております。

愛知委員 ぜひ、まず当面の目標としてそこをきちっと明確にして、いろいろな国と関係者と協力して取り組んでいただきたいと思います。

 ところで、この国連決議を受けて、北朝鮮の国連大使が幾つか言ったけれども、その中で非常に印象的なのは、宣戦布告とこれを受けとめる、それで席を立っちゃいましたね。それから、きのう何か北朝鮮の、きょうでしたか、テレビで北朝鮮の放送をやっていましたけれども、そこでも宣戦布告だ、こう言っていましたね。

 この宣戦布告ということについて、どのように受けとめておられますか。

麻生国務大臣 北朝鮮のこの種の話は、ばんという部分とぱらっというのと大体二つ、両方を意味する言葉が多い国だと思っておりますが、今回の場合も、安保理制裁決議について、決議は宣戦布告としか考えられない、おっしゃるとおりのことを言っておりますが、しかし、後で、我が方は今後米国の動向を注意するとか、注意するであろうし、それに応じて措置をとっていくと。

 何となく、宣戦布告だったらすぐこっちもというのが、我々日本人は極めて単純にすぽっとそっちへ行くんですけれども、宣戦布告と同時にという言い方をしておりますので、ここがこの種の交渉を北朝鮮とやるときの一番肝心なところで、押さえておかなきゃいかぬ部分だと思っております。どのような措置をとっていこうとするのかは全く私どもの方で見えてきておりませんので、ここは交渉になろうかと存じます。

愛知委員 真意がどこにあるかというのはよくわからない、また、こういうのは常套手段であるということも事実かもしれませんけれども、しかし、日本にとりましては、やはり危機が高まった、危険が高まったということは間違いないことだと思います。ですから、こういう状況の中で、これから日本の安全をどう確保していくかということは、過去もずっとそれなりにそういう議論が検討されてきましたけれども、非常に現実の問題になってきているということでございまして、そういう中で核の話なんかも出てきたりするわけでございます。

 私は、こういう状況の中で日本の安全を確保するというのは、やはり一番大事なのは日米同盟、日米同盟の強化だ、これに揺るぎのないようにするということが一番大事なことだと思うんですね。

 別にこれは異議のあることではないと思いますが、日米同盟関係をどういう事態があっても揺るぎないようなものにするというのは、細かく言いますと、幾つか問題点がないわけではない。例えば、核の問題、非核三原則、この問題が話題になっておりますけれども、ちょっとその問題を申し上げたいと思うんですが、非核三原則というのは、つくらず、持たず、持ち込ませずですね。つくらず、持たずというのは割にこれははっきりしていますけれども、持ち込ませずというのは、大臣、どういう概念だとお考えですか。

麻生国務大臣 これは、もう愛知先生御存じのように、日米安全保障条約上、核兵器が持ち込まれる場合においてはすべて事前通告ということになって、事前通告の対象としてきたというのがこれまでの経緯であります。したがって、政府としては、これはもう一貫してこれでずっとこれまでやってきたという長い経緯がありますので、協議が行われる場合には、持ち込ませずの原則に沿って拒否ということにしております。日本として、この非核三原則というのを引き続き継続するという考えでありますので、今それを急に変えるというわけではありません。

 ただ、今おっしゃいましたように、今回のこういう事態になったときに、やはり一番の問題は、愛知先生が御心配になられたように、日米安全保障条約の中にあります核のディターランス、核の抑止力がきちんと作動するか否か、これが最大の関心事であります。だから、契約ではあるけれども、契約はその事実どおり行われるかどうかというのは、普通の商行為においてもなかなかそう行われなかったのと同じように、これは条約でも、国と国との条約がきちんと作動するかどうかは、その時々に応じて、条約が履行されなかった例というのは過去の歴史を見ましても幾らもございます。

 したがって、私も最大の関心事はここでしたので、一番最初に九日の日に電話したのがライス国務長官であり、最初に確認したのが、今回の一連の状況を受け、もし次の段階に進む、少なくとも核の搬送手段を北朝鮮は持っておりますから、それに対して、アメリカの安全保障条約上日本と履行する義務の一つであります日本を守る、この点についての確認、これが私がやりました最初の仕事でありまして、ここが一番の関心事だと思います。

 したがいまして、ここはいつもそのとおり履行してもらうように、お互いの信頼関係というのは常につくっておかねばならぬ、日米安保があるからすべて何でもいいというわけではない、私はそう思っております。

愛知委員 時間がなくなってしまいましたけれども、この日米安全保障体制、日米同盟関係が何よりも大事だ。今、核の話をずっと申し上げましたけれども、そういう点でいいますと、集団的自衛権の行使の話というのも、これもいつまでも行使はしないということを言い続けることができるのか、その点が何かアキレス腱になってしまって、日米同盟に亀裂が生ずるということも、私はなきにしもあらずだと心配するわけです。ですから、その辺の詳しいお話は、きょうは時間がなくなりましたけれども、頭に置いておく必要があるんではないか、私どもも頭に置きながらそれなりの議論をしていきたいと思っております。

 いずれにいたしましても、日本の外交力が問われる、まさに正念場だと思います。その先頭に立たれる外務大臣ですから、重ねて御健闘をお祈りいたしまして、私の質疑を終わります。

 ありがとうございました。

山口委員長 次に、山中あき子さん。

山中委員 山中あき子でございます。

 きょうは、大まかに三つに分けて外務大臣の外交に対する姿勢を伺えればと思っております。

 まず最初に、先般の安倍総理の中国訪問の件でございますけれども、これは三つの点で大変大きく評価されると思っております。特に、一番初めには戦略的な互恵の関係の構築ということがありまして、そして、首脳同士の信頼関係の醸成ということで、中韓の、果たされたわけでございますけれども、この背景には、五月にカタールで外務大臣が中国の外務大臣と久しぶりにお会いになった、ここから始まったその外交努力と、また党といたしましても、日中の与党交流協議会というのが二月に発足した、こういう背景があって今回に至ったというふうに思っております。

 そして、今後、胡錦濤国家主席それから温家宝首相と総理が再会していくと思いますし、ブッシュ大統領も遅くともAPECということになっておりますが、一つだけちょっと懸念されますのが、プーチン・ロシア大統領との会談というのが今のところまだどのような形になっているのか。

 これは、銃撃拿捕事件がございましたけれども、もう一つ、サハリン2という大変大きなエネルギーの問題、これは、逆に言えば、欧州とロシアとの関係が微妙になってきているということの反映でもありますので、その点も踏まえて、ラブロフ外務大臣と大変胸襟を開いてお話のできる外務大臣から、その点についても総理の今後の方向に対して御意見を言っていただければというのが一点。

 それから次に、九八年以来の文書であります日中共同プレス発表の中で、日本が平和国家であるということに対して中国が積極的に評価したという点がございます。

 この点に関しまして、外務大臣がイニシアチブをとってくださっております平和構築のための人材育成に関する活動、こういう協力は、今ASEANを中心にスタートさせようということでございますけれども、文民警察で先行しております中国、それからそのはざまにあります韓国も含めて、ぜひ、スケールの大きい政策としてイニシアチブをとっていただきたいというふうに思っております。

 もう一点、一昨日の日中与党交流協議会の席で王家瑞党中央対外推進部長が強調なさっていましたけれども、三つの基本文書、これに常に戻ろう、これを基本にしようということで、七二年の日中共同声明、七八年の日中平和友好条約、そして九八年の日中共同宣言、これに基づいて、何かが起こったときにここに基本的なスタンスをお互いに求めようというこの姿勢に対して、私は、大変大事な点であり、特に中国というのは非常に原則論を大事にする国ですので、日本もここのところに戻るということをもう一度確認したいと思っています。

 安倍総理は、さっき非核の三原則の話が出ましたけれども、それと少しスタンスを異にして、日本というのは技術的にも、あるいは材料の面でも資金力でも、核兵器をつくる能力がありながらその意思を持たないという意味で非常にユニークな国である、その点が実は余り国際的にわかってもらっていなくて、七月に日本と英国の安全保障会議でロンドンに行きましたときにBBCのインタビューを受けましたときにも、どうして日本は核武装という論議が起こらないのかということの質問がございました。この点もぜひ、外交の面で、さまざまな形で海外のメディアに対してもPRといいますか、日本の立場を宣伝していただくような政策のイニシアチブをとっていただきたいと思います。

 というようなイニシアチブをぜひ外務大臣に御期待申し上げますが、コメントをお願いできますでしょうか。

麻生国務大臣 ロシアの件に関しましては、これは今、中国、韓国等々が先行しておりますので、優先順位からいきますと、今回の一連の流れとしてはよかったんだと思っております。

 ただ、ロシアというのは、北方四島を含めていろいろ、のどにひっかかったとげみたいなものがありますので、そういった意味では、感情論的にはすんなりいかないところではあるんですが、少なくとも潜在的な可能性は極めて大きい。加えて、エネルギーの話がありますので、そういった点に関しましては、日ロ行動計画というのがありますので、あれに基づきまして、今、平和条約締結に至っていない等々、重なってずっと長い問題が幾つもありますので、こういった意味に関しましてはきちんとやっていかねばならぬと思っております。

 最大の懸案であります北方領土問題というのをどうするかというと、この五年間、やはりソ連のプーチンの方がむしろ努力しているかなという感じがあるぐらい、ずっと過去五年間ぐらい文書をさかのぼりますと、これは実によくいろいろ直接間接的に努力をしてきているなという感じがしますので、その点に関しましては、我々もちょっと別の角度からアプローチをしてみなくてはならぬかなと思っております。

 二つ目の話で人道支援の話ですけれども、平和構築分野というのは、これは、日本はPKOとかPKFになりますと、何となく日本のマスコミというのはドンパチの話しか出てきませんけれども、現実問題、イラクがいい例ですけれども、イラクに戦争で勝って、後のいわゆる統治をするときにはまことにうまくいかなかった最大の背景は何だったのかといえば、作戦のそもそもの間違いだった、これはアメリカ人ならだれでも知っていると思います。そういうような状況になって、その後の統治をするに当たっては行政能力というものが欠けていた。

 すなわち、行政というのは、徴税の方法から、統治の方法から、議会の運営から地方財政に至るまで、ありとあらゆるものがございます。日本の場合は、そのことに関しては、地方自治大学などを見ますと、ベトナムから学生をとったりしていろいろやっておる経験もあります。いろいろな意味で日本というのは、行政技術というものをアジアでかなり教えて、今積極的に取り入れて毎年自治大学に学生を送っているのはベトナムが一番でしょうか、そういった意味では、いろいろな形で学生を送ってきております。学生というのは行政官になったのを学生として送ってくるという意味ですが、そこに関しては自治省、今総務省としてはそれにずっと対応しておりますので、この意味をもう少し広げてやっていかねばならぬと思っております。

 三つ目の王家瑞のことに関しましては、日中間の三つの基本文書に関してというのは、王家瑞とはきのう会いましたけれども、基本的には、考えている方向としては、向こうも、今、向こうと日本とトップ同士が合わなかった、合わなかったというのは、面会しなかった意味じゃなくて、波長が合わなかったというのが正しいと思っていますけれども、それが何となく変わった。今以外、タイミングないよ、これ、後に延ばしたら当然無理ですよという話をずっと、李肇星外務大臣等々、電話で言っておりましたので、そういった意味ではロシアのプーチンという人との面会も、これは、会って話をするというのはすごく大事だと思いますので、今回の話は、まずは、王家瑞の話を含めまして、抱えております問題は幾つもありますけれども、一つ一つきちんと対応していきたいと思っております。

山中委員 続いて、安倍総理が韓国を御訪問なさったときに、韓国が靖国、歴史教科書問題、従軍慰安婦問題、竹島問題について述べたという点がございます。

 先ほど外務大臣もおっしゃったように、日本側としては未来志向でやっていくということですので、この点はぜひ戦略的に、地味でも継続的なキャンペーンの中で、日本の立場を理解してもらうというか納得してもらうという国民に対するキャンペーンを展開していただきたいと思っています。その意味でも、対北朝鮮に対する今回の協力というのが日韓の関係のてこになるのではないかということで、大変期待申し上げております。

 その意味で、北朝鮮の核実験に関することなんですけれども、核、ミサイル、拉致、この拉致の問題はブッシュ大統領も触れられましたけれども、特に、日本にとっては、どの問題が起こっても、この三点セットということを常に、総理、外務大臣も、私どももみんなで伝えていくという、ここのところが今回、拉致の問題もきちっと言及されていたということで大変評価できると思っています。

 独自の制裁については、これは実効性についてはいろいろな議論がございますけれども、毅然とした日本の政治的なメッセージとしては大変評価できると私は思っておりますけれども、実は、今国会で今審議をしようとしているのは万景峰号の方のことでございまして、ですから、今回のことはまだ出てこないというのが少し混乱というか時差があります。これは告示の日から二十日以内ということで、およそ数えますと十一月の二日になりますが、ぜひ、そこまでいかずにできるだけ早く法案をお出しいただいて、今のこの議論の中で法的根拠というものを迅速に確立する努力をお願いしたいと思っています。

 それから、国連決議の内容と実行に関しては、非常に素早い国際的な連携は多分、外務大臣、九日、外相会議で、私もミサイルのときに夜中に同席させていただきましたので、もう昼夜分かたずさまざまな電話会談を含めた御活動があったというふうに思っておりますし、御努力があってこそ、大変早い時期にこういう決議が国連で出たと思いますが、ラッキーだったのはというか幸いだったのは日本が安保理の議長国であったということで、安保理のメンバーであるかないかということは、多分、今回のことを考えてみますと非常に大きな意味があったのではないか、そこのところも私どもは考えておかなければいけないというふうに思っています。

 そして、一七一八の決議の中で、臨検と船舶検査ということが実はマスコミも混同しています。これは、防衛庁の問題でもあるとはいえ、国際場裏においては外務省が主導権を持ってやっているわけですから、ぜひ、外務省の一つの仕事として、例えば、船舶検査の交戦権としての行使の戦時の臨検であるとか、あるいは国際海洋法条約上の臨検と安保理決議に基づく船舶検査、これに対して、国内法の場合には、国内法として今私どもが可能な措置としては、通常の海保の活動のほかに、船舶検査法に基づく船舶検査、これは周辺事態法のものでございますけれども、これは実は、船長の許可が要るとか範囲が限定されているとか補給活動は米軍のみとか、そういう制約があるわけでございます。

 ですから今、政府としては、日本にできること、できないことの整理、検討を行っていると思いますけれども、もうちょっと時代が変わってまいりましたので、中長期的な視点で船舶検査、臨検に関する検討のプロジェクトチームを、私は党の方にも提案するつもりですけれども、立ち上げていく、そして、そういう中で外務省がイニシアチブをとって、国際場裏における日本の立場と、そしてどのような方向にいるかということを大きくPRしていただきたいというふうに思っています。

 その理由は、九八年のガイドラインのときに、私は、修正案の提案者として衆議院、参議院の答弁に当たりましたと同時に、この船舶検査のプロジェクトチームのメンバーで、今の憲法の中でどこまでいけるかという議論がかなり詰められたのですが、あるインシデントがあって、結局それが全部御破算になってしまって、残ったのは旗国主義、これはプラスでしたが、そういう状況になっておりますので、そういう点についても、もっと今の時代を見据えて中長期的な検討が必要であろうというふうに私は思っております。

 そういう意味で外交上の観点からの調整役としての活動を特に期待しておりますが、その点についてはいかがでいらっしゃいますか。

麻生国務大臣 幾つか御質問いただきましたが、安保理メンバーに関しましてはもうおっしゃるとおり、前回のテポドンの騒ぎの七月のときにも、これは安保理のメンバーであったから、少なくともあれを決議文にしようと思った国は十五カ国中、日本以外はゼロです。それが結果的には決議文を全会一致で採択までいけたのは、安保理メンバーであったから根回し等々できたので、それでなければできなかった、もうはっきりしていると思います。今回も、議長国であったがゆえに極めてリーダーシップを発揮できたと思っておりますので、これは安保理改革とあわせて、この問題最も重要と思っております。

 万景峰号の話が出ましたけれども、過日の日本の閣議決定に基づいて、あの翌日午前零時から今日まで、少なくとも今、日本に滞在をしております北朝鮮籍の船はゼロです。日本じゅうに今どこにもおりませんので、そういった意味では、これはきちんと作動しておると思います。

 それから、今、臨検、いわゆるライト・オブ・ボーディングというのとインスペクションとインスペクション・オブ・カーゴと三つ分かれておりますが、これは日本の場合は何かみんなごちゃごちゃになって、大体今ごろ臨検なんという言葉は若い人に通じるはずがないと思いますけれども、別の意味にとらえる我々の世代もいますけれども。いろいろ、この言葉だけを聞くと多々問題の言葉なので、これはきちんとインスペクション・オブ・カーゴ、貨物検査と書いてあるところが一番大事なところだと思っておりますので、それに基づいてどうするかという話をきちんとしていかねばならぬと思っております。

 何だか勇ましい話ばかりが、えらく先走ったような話が出ますけれども、これは具体論として、つくられるであろう核もしくは核の製造技術、もしくはそれに関する部品等々が北朝鮮から他国に輸出されるのが問題なんだ、そこのところをいかに抑えるかというのが一番の問題だと思っております。そこの点が何となく、食べ物とかなんとかいう話とは全然別の話なのであって、あそこにずっと書いてあります内容というものをよく見ていただかないと、話が非常に混線をしているような感じがしておりますので、対応を間違えないようにしてまいりたいと思います。

山中委員 ぜひ整理したものを広報活動で、マスコミ初め国民にもわかるようにしていただければというふうに思いますし、中長期的にどうするかという視点でまた私どもも努力していきたいと思っています。

 最後に、きょうライス国務長官がおいでになるということで、あす、日韓そして米ということで外務大臣の会議が行われるはずでございますけれども、聞くところによりますと、まだ外務大臣がお出になれるかどうかという瀬戸際ということで、私ども外交にかかわる者としては、ぜひこの際外務大臣に韓国に行っていただいて、そしてこの三カ国の会談を成功させていただきたい。特に六カ国会議の問題もありますし、それから、今の国連決議のカーゴインスペクションというところをどのように実行していくかという点もあると思います。

 もう一つ、ぜひその三カ国でお話ししていただきたいことの中に、アメリカがこれは核実験であるというふうに認定いたしましたけれども、ちょっと残念ながらアメリカの諜報というものは、この間のイラクの場合もそうですけれども、少し日本の国内では信頼度が揺らいでいる面もございますので、日本としてやはり、アメリカが言ったからということではなく、日本としてどのような条件を満たしたのでこれは核実験と認めるというようなところの外交的な形でのお互いの情報交換、それからその共同ということもこの際お話しいただきたい。

 そして、ぜひ、せっかく韓国に行かれますから、潘基文、韓国の外務大臣ともお話しいただきたい。それは、彼が国連の事務総長になるからというだけではなく、非常に日本と韓国の関係にもこれから影響しますし、六月に人権理事会に参りまして私がスピーチしたときに、わざわざ日本の代表の話ということで聞きに来てくれまして、翌日、軍縮会議のときに私がわざわざ聞きに行きましたら、その間に麻生外務大臣に今電話をした、ライス国務長官にも電話をしたということで、大変、麻生外務大臣との御縁とアメリカのライス国務長官の御縁を同時のように重きを置いていただいていましたから、このことも含めて、ぜひ日韓の外務大臣会議もやっていただきたいと思います。

 その意味で、今回の日米韓の三カ国の外相会議への期待と、総合的な、発信する外交のかじ取りの外務大臣に御期待を申し上げて、私の質問を終わらせていただきます。

山口委員長 次に、丸谷佳織さん。

丸谷委員 大臣、公明党の丸谷佳織でございます。引き続き外務委員会で頑張らせていただきますので、どうかよろしくお願いを申し上げます。

 本日は、特に国際情勢の中で北朝鮮情勢に絡んでまず質問をさせていただきます。

 これはちょっと、最初に質問通告をしているものと若干違うものでございますけれども、質問をさせていただきたいと思います。

 というのは、けさの報道の中で、日米両国が国連安全保障理事会の北朝鮮制裁決議に基づく船舶検査を行う場合に、海上自衛隊の方で、米軍などの後方支援に加えて、不審な貨物船に対する警戒監視や追尾などを基本活動とする方向で政府は検討に入ったといった報道もなされておりまして、周辺事態法を適用するかしないか、あるいは現行法で何ができるかという議論を今一生懸命政府内でしていただいているんだと思うんですけれども、この報道ベースのことについてちょっと確認をさせていただきたいと思います。

 政府内でこういったことを今検討されているという理解でよろしいでしょうか。

麻生国務大臣 丸谷先生最初におっしゃいましたように、この問題は初めてのケースでもありますし、アメリカもかなり慎重な態度であることもはっきりいたしておると思います。

 今、特に日本にあります在日米軍もしくは在日米海軍に動きが極めて慌ただしいという風景もありませんし、そういった意味では直ちにどうのこうのという話になっているというわけではありません。少なくとも日本の場合は日本独自の制裁決議を行っておりますし、それは間違いなく、船に限らず人に限らず、いずれも実行にもう既に移っておりますので、それから出てくる影響を見た上で、今後どのような対応をさらに進めていくかということになろうと存じます。

 また、国連の今回の決議の中で、武器の輸出やらミサイルやらいろいろ書いてありますが、あれはいずれも、日本はすべて、全部、一切これまでもやっておりませんので、改めてという話でもありません。最後のところが、要請を受けておりますインスペクション・オブ・カーゴという貨物検査というのは最後に出てくるところだと思います。

 この点に関しましては、今も申し上げましたように、これはあらゆる面からその検討をしているところでありまして、今の段階で後方とかいう話は、それは従来でも怪しい船でありましたら同じことをしておりましたので、特にこれでしているというようなことにはならぬということだと存じます。

丸谷委員 現在の北朝鮮が行ったと発表して、あるいは、我が国は現在では違いますけれども、核実験を行ったと確信している国が多い中で、国連決議一七一八が決定をされたという中で、それではこの一七一八を履行するために我が国が何をするべきなのかということに関して、現行法で何ができるのか、あるいは、一七一八を実効性のあるものにするために、これから、何が足りなくて、どこまでするべきなのかという議論を冷静にしなければいけないというふうに考えております。

 我が党の考え方としまして、今回の事態に対応するために、周辺事態法の適用ということが与党内でも政府内でも議論をされている。その中においては、核実験の一点だけで周辺事態というのは少し慎重でなくてはならないと我が党の太田代表も発言をしておりました。しかしながら、事態は一刻一刻と変化をしていき、一七一八をどのように履行するのかという観点で物事も考えなければいけないというのも事実でございます。

 ただ、今議論になっておりましたけれども、周辺事態法で米軍に関して後方支援ができるケース、あるいは周辺事態法じゃなくても海洋法にのっとって何ができるのかというケース、それぞれに対して、やはりどの法律にのっとって何をするのかというのは明確にしなければいけませんし、何のためにその行動をするのかというのも明確にしていかなければいけないと思います。

 どうしても今のアジアの状況の中では、各国のナショナリズムの高揚というものが非常に懸念される中で、単なる感情論とかあるいは漠然とした脅威論だけで対応しては逆に我が国は危険になるという思いがありますので、改めて、いま一度確認をさせていただきたいと思います。

 今、我が国が着々と毅然とした対応を北朝鮮にとっている、この政策判断、核実験をしたという確証を我が国はまだつかんでいないようでございますけれども、このすべての政策判断あるいは行動の目的というものを、よって立つところというのは日本は今どこに置いているのか。この点について、再度、改めて確認をさせていただきたいと思います。

麻生国務大臣 これは、丸谷先生、基本的には、核実験もしくは核の拡散というものは、日本に限らず東アジア、しかも搬送技術はかなりのものを持ったと思われますので、東アジアに限らず世界に対してこの搬送技術が輸出されていく場合のことを考えますと、世界にとって最大の脅威になります。それをいかに抑えるか、これがすべてです。あとはそれをいかに抑えるかというための手段でありまして、目的は、核並びに核技術の拡散、いわゆるプロリファレーションをいかにとめるかというのがすべての焦点になろうと存じます。

丸谷委員 及び、国連決議一七一八に対して我が国がどのような形で履行していくのかというところで、我が国の国内法の議論もこれから慎重かつスピーディーにしていかなければいけない状況だというふうに理解をしました。

 その中で、これも報道ベースなんですけれども、なかなかお答えしていただきにくい部分があるのかもしれませんが、北朝鮮の二度目の核実験について、情報は入っているけれども、内容は申し上げられないというふうに麻生大臣も記者会見でおっしゃっております。

 内容はおっしゃることができないまでも、二度目の実験というのはかなりの高い確率であるというふうに理解をしていいのかどうか。この点についてはいかがでしょうか。

麻生国務大臣 御存じのように、例えば、九八年でしたか、インドで核実験を行いました、あのときには、同日で核実験を五回、二日後に三回。それから、パキスタンの場合も、同日に三、四回、二日あけまして三回だったかな、ちょっと正確じゃありませんけれども、大体そんなものだったと思います。通常ですと、核実験が成功すると今みたいな形になるというのは、他の例を見ましてもほぼ同じような形になります。

 北朝鮮の場合はその点が全然違っておりますので、近々核実験を再開するであろうという情報というのはかなりもう、実験直後からずっとあっておりましたし、きのうするであろう、いや、何日にするであろうとずっとこれまでも、この数日間、いろいろな話が錯綜しておりますことは事実です。

 しかし、現実問題として、この種の話は、ミサイルですと一応外に立ちますのでまだまだ見えるところですけれども、地下核実験というのはなかなか外から見える部分が少ないこともありますし、そういった意味では、今の状況、どのような状況になっているかということに関しましては、私どもとして今見えるところではないというのが正直なところです。

 済みません、インドは合計五回、パキスタンが合計六回です。

 したがいまして、今、情報がその他にいろいろ決してないわけではございませんけれども、事の性質上、これ以上ちょっと申し上げるわけにはまいりません。

丸谷委員 今までの例を見ながらいろいろなシミュレーションもされていらっしゃることというふうに思います。

 再実験をした場合という仮定の話で恐縮でございますけれども、我が国は現在安保理の議長国でもあります。再実験であれば安保理を招集といったことも今外交の中で考えていらっしゃるのかどうか、この点はいかがでしょうか。

麻生国務大臣 一七一八を受けて、なおかつ再実験ということになったら、それは直ちに安保理は再招集ということになろうと予想されます。

丸谷委員 では、例えば安保理を再招集した際に、このように厳しい決議案を全会一致でまとめて、かなりの強いメッセージを北朝鮮に送った、それでもなかなか北朝鮮はそれを真っ向から受けとめないということで再招集をした際に、より強いメッセージをまた北朝鮮に送る必要性が出てくるのであろうと私は推測をいたします。

 その際に、経済制裁等の強化をするのか、あるいは各国に要請した部分を強制にするのか、あるいは、すぐ軍事ということはなかなか考えづらいわけでございますけれども、どういった方針でより強いメッセージを出そうということを、今の時点でもし考えていらっしゃることがあれば、ぜひ教えていただきたいと思います。

麻生国務大臣 この一七一八が出ましたときにも、一番最後のところの条文を読みますと、北朝鮮の活動を絶えず検討し、必要とされる場合はというのは、多分第二回の実験を行う等々の状況になった場合はというように読んでいただければいいと思いますが、制裁措置の強化、修正、停止または解除を含む当該措置の適切性について検討する準備があることを確認しておくとしておりますので、今言われたような、たらればの話ですけれども、そういったことになりました場合は、安保理を再開して、この一七一八に基づいて、いわゆる制裁措置の強化という話につながっていくと存じます。

丸谷委員 さて、外務大臣、ライス長官とともに訪韓という形の中で、実効性のある核関連物質の流出の防止も含めて協力体制の構築にぜひ努めていただきたいというふうに考えているところでございます。

 やはり一七一八を実効性のあるものにするためにも、特に陸続きである中国あるいはロシアといった協力というのは不可欠でございます。当然、韓国も不可欠でございます。

 これも報道ベースで読んでいる限り、今回、中国、ロシアというのは国際協調の中で随分厳しい態度で臨んでいるのかなという思いもしているわけでございますけれども、ぜひ、このロシア、中国、韓国に対して、実質的な協力体制というか枠組みを構築していただきたい、そういった交渉をライス長官とともにしていただきたいと思います。

 この各国との、特に物のやりとり、人のやりとりを防ぐための協力体制について、現在、各国との協力について大臣が今感じていらっしゃるところ、あるいは訪韓前に臨んでの御決意があれば、お聞かせ願いたいと思います。

松島大臣政務官 ただいま大臣の御決意ということでございましたが、韓国、中国、ロシアについての懸念を示されましたので、御説明させていただきたいと思います。

 今回採択されました国連安保理決議一七一八号は、すべての加盟国に対して、軍関連及び核関連の特定品目などの北朝鮮に対する供給などの防止を求めております。中国、韓国、ロシアを初め各加盟国は、当然、同決議を誠実に履行するものと考えます。実際、この決議の採択を受けまして、中国や韓国などは、ともに同決議の実施に前向きな反応を示しております。

 中国におきましては、十六日、王光亜国連大使が、この決議で求められている貨物検査を中国は実施する旨言及したと承知しております。また、昨日、中国訪問中の扇参議院議長に対し、胡錦濤国家主席から北朝鮮の核実験実施発表につき厳しい見解が示される等、中国政府要人から北朝鮮に対し厳しい態度で臨む旨の発言が相次いでいることでございます。

 またさらに、ロシアについてのお尋ねもございましたが、ロシアに関しましては、既にロシアも、六者会合首席代表を務めるアレクセーエフ外務次官が平壌を訪問し、金桂冠北朝鮮外務副相と会談し、その直後にソウルにおきまして韓国の千英宇六者会合首席代表などと会談を進めているところでございます。

 中国は、御存じのとおり、胡錦濤国家主席の特別代表としてトウカセン国務委員をアメリカ、ロシアに派遣し、ブッシュ大統領、プーチン大統領と会談させるなど、事態打開に向け努力しているものと承知をしておりまして、これらを踏まえて麻生大臣がこれから会談を重ねていかれるものだと思います。

麻生国務大臣 基本的には、丸谷先生、今回は前回のテポドンのときと状況が全然違っております。

 テポドンのときは、日本以外、決議文を出そうと言った国はゼロです。思い返せば、九三年、ノドンのときは安保理は何もしておりません。九八年のテポドン1のときには、1とか2とか、あのときのテポドン騒ぎのときには、少なくともプレスステートメントだったか議長声明だったかで終わったというのが経緯です。したがって、今回も議長声明ぐらいだといったら、いや絶対違うといって、日本は断固主張して、結果としては決議文になった。しかし、七章は外れた。

 今回の核実験、地下核実験に関しましては、これは日本はもちろん議長国ですからちょっと立場が少し一理事国とは違いますが、日本として言わずも、とにかく各国一斉に制裁決議、全くこの点に関しては、あとは内容の中だけの話でして、七章を含む制裁決議、極めてすっとこの話に関しましては、日本が前回のようにかける手間暇、時間等々はほとんどかかる必要はありませんでした。それは、やはり核実験に関しましては、各国の合意があるんだと思います。

 そういう意味から考えますと、今回の中で、七章を含む決議文が採択されております以上、これが実効あらしめるためにどうするかという話は、やはり一番近くにおります、貨物というのは船舶と違いますので、陸上輸送も含みますので、韓国、北朝鮮というのはつながっておりますし、中国もつながっているし、ロシアもつながっているところは、いわゆるインスペクション・オブ・カーゴというのはトラックの検査を含みます。そういった意味では、これはかなりしんどいものであることだけは間違いないと思いますので、そこが主に反対した理由であって、いろいろごたごたした理由の一番大きな背景であって、北朝鮮の核実験をいいじゃないかと言った国は、その三国を含めて全くございません。

丸谷委員 ありがとうございます。

 先ほど愛知先生の御質問の御答弁の中で、大臣が御答弁になったことの中で、核の抑止力というものがどう作用していくのかということも重要だという御答弁がございました。全くそのとおりだと思うんですね。

 二十一世紀に入って、核の不拡散あるいはそれを運搬する手段をどう根絶していくか、あるいはどう拡散させないかといった枠組みはあるものの、実際にはP5のほかには、核保有疑惑国から実質的な保有国になっている国も、着実にというと変なんですけれども、ふえている。インド、パキスタンもそうでございますし、イスラエルといったこともございます。そういった国がふえているということで、本当に、核の抑止力というのがどう作用しているのが今の国際情勢なんだろう、こういったこともしっかりと考えていかなければいけません。

 NPT体制の再構築というところを我が国の最大の眼目に置くのかというふうにも考えますし、あるいは新たな枠組みで実行可能なものを考えていくのかとか、本当に、核の抑止力あるいは不拡散といった問題に今こそ真剣に、中長期的かもしれませんが、取り組まなければいけないというふうに思っておりますけれども、大臣、この点についての御見解はいかがでしょうか。

麻生国務大臣 これは、丸谷先生、ちょっと技術的な話にもなりますので、これは決意とかいう話ではなくて、いわゆる技術的な話がかなり出てくるんだと思います。一番肝心のところは、昨年の五月のNPT、ノンプロリファレーション・トリーティーというものですけれども、これの運用検討協議会というのが開かれておりますが、これの協議会の参加国全員で、とにかく重要性を否定する国はゼロ、まずこれが大前提であります。問題は、このNPTの体制を弱体化させちゃならぬ、むしろ維持もしくは強化すべきだというのが参加国というかメンバーの中で、あとはさまざまな外交努力を払っていくということです。

 具体的な話を申し上げると、これは結構技術的な話ですけれども、国連総会への核軍縮決議案を提出する。それから、CTBTの早期発効に向けた働きかけを行う。北朝鮮、イランの核問題の解決に向けた取り組み、これは内容はまたいっぱいあるんですけれども。四、IAEAの追加議定書の普遍化に向けた取り組み。五番、原子力供給国、例のNSGです、を初めとする国際的な輸出管理の枠組みをどうするか。それから、PSI、例のプロリファレーション・セキュリティーという拡散に対する安全保障構想に見られますように、不拡散に向けたイニシアチブをどうするか。それから、不拡散に関する安保理決議一五〇四というのに関して、これを履行などなど、後にもいろいろありますけれども、今後ともこういった問題をどうやって取り組んでいくか。これは積極的にやっていく以外はCTBTは意味がなくなるではないかというのが大勢であります。

丸谷委員 実質的にはNPT会合も何ら結果を出せなかったというふうに私は感じておりますし、逆に、その中で、御答弁いただいた中で、PSIに関しては、やはりこれは、我が国も含め、米国主導で七十五カ国が参加をしているという中で、この構想の拡大、参加国の拡大というのを働きかけていくことも一つの重要な手段であろうと思います。

 その際に、訪韓される御予定でいらっしゃいますが、韓国はいろいろな事情からオブザーバーでこのPSIには参加をしていると思います。この際、正式加盟というものを韓国に働きかける必要があるのではないかと思いますが、この点はいかがでしょうか。

麻生国務大臣 最初に、さっき一五〇四と申し上げましたが、一五四〇、ちょっと間違えました。済みません。

 今の韓国の話ですけれども、これは、日本の場合は、このPSIがスタートしました、発足しました最初から日本というのはかなり積極的に参加をしてきて、アジアの安全保障の向上のためにもぜひ入った方がいい、やった方がいいということで、いろいろやってきております。

 こうした中で、韓国に対しても、日本としては、日本が主催したのは第三回のアジアのいわゆる不拡散協議やら二国間協議を通じて、これはもうこれまでもぜひという話を言っておりますので、今後とも、この点に関しましては、韓国に限らず、ほかのアジアの国々で入っていないところ等々に関しましては積極的に働きかけていきたいと思っております。

丸谷委員 それでは、この北朝鮮に対する国際社会の取り組みあるいはメッセージというものを当然いろいろな国が注視をしていると思います。国連の中で経済制裁、制裁議論が検討されているイラン、核開発疑惑といった問題もまだ払拭をされていませんし、イランもこの北朝鮮問題の対応に関しては注視をしていると思いますので、次に、このイランについて、特にエネルギーの観点から質問をさせていただきたいと思います。

 イランに関しましては、我が国も決して譲ることができない核開発をさせないという観点から、エネルギー問題とは両にらみで非常に難しい対応を今迫られているところだというふうに認識をしております。

 その中で、この国際石油開発というのはアザデガン油田の開発権益の七五%を持っておりましたけれども、日本側の早期着工の見通しが立たないということを理由に、一〇%へと引き下げられることになりました。このことに関しまして、我が国のエネルギー安全保障の観点からは、リスク分散あるいはエネルギー確保の多角化を図っていたということから、この一〇%への引き下げというのは我が国のエネルギー安全保障政策の観点から十分に影響が大きいというふうに考えております。

 今後、我が国として、自主開発比率を二〇三〇年までには四〇%に引き上げていこうといった目標を掲げる中で、今回、アザデガン、六五%の自主開発権益を喪失したわけですけれども、これが我が国に与える影響についてどのように政府は見解を持っているのか、この点をお伺いいたします。

麻生国務大臣 エネルギーの後段の部分を政務官の方から答弁させますが、最初の部分に関しては、これは、丸谷先生、一番肝心なものは、エネルギーの話と核の話と二つがあります場合、日本は、核を認めてエネルギーをとるなどということはできません。基本的には、優先順位は核不拡散、これが優先順位の一番であろうと存じます。

高木大臣政務官 丸谷委員の御質問にお答えいたします。

 アザデガン油田開発につきましては、平成十二年十一月にハタミ大統領が来日した際に我が国に優先交渉権が付与されることになり、平成十六年二月に日本とイランの事業者の間で開発契約が署名されました。その後、イラン側の地雷除去作業がおくれていることなどから、契約当事者である国際石油開発とイラン側との間で商業ベースの話し合いが続けられてきております。そうした中で、現在、国際石油開発の出資比率を七五%から一〇%程度に大幅に引き下げることを前提として交渉が継続していると承知しております。

 政府としては、今後とも国際石油開発の対応を見守りつつ、適切に対応してまいりたいと存じます。

 いずれにしましても、丸谷委員御指摘のとおり、石油の安定供給を確保する上で自主開発の推進は重要でございます。政府は、新・国家エネルギー戦略におきまして、二〇三〇年に石油の自主開発比率を四〇%程度とするとの目標を掲げております。この目標の達成に向けて、より一層努力をしてまいります。

丸谷委員 政務官、どうもありがとうございました。

 それで、我が国のエネルギー安全保障政策というものを、経済産業省、あるいは当然外務省、あるいは環境の面からは環境省になるんでしょうか、いろいろな観点から今議論をされています。資源小国と言われる我が国にとって、このエネルギーの安全保障、非常に重要な観点だと思っております。

 ただ、このエネルギーの安全保障を議論する際に、我が国がいかに持続可能な形で安定的に供給されるかという観点だけではやはり議論は足りないんだろうというふうに考えております。資源をめぐっては、国家間の戦争、紛争が起きるという観点から、我が国の需要、供給面だけではなく、各地域における平和の構築であったり安定であったり、あるいはエネルギーの確保というのが非常に重要であり、その点から、テロとの闘いへの支援あるいは紛争解決、教育支援、貧困支援等々も外交手段で行っていただいております。

 このエネルギーの安全保障の観点は、単なる資源の国家間のやりとりだけではなく、ビジネスだけではないという観点から、どうしても、このサハリン2も含め、あるいはアザデガンも含め、どうも私が見るところ、政府としての関与が若干薄いのではないかなという気がしてなりません。

 これは民間交渉ですからというところからまずいろいろな御答弁も今までいただいてきたところでございますけれども、こういったエネルギーの安全保障問題に関しては、国家、官民一体となって、文字どおり官民一体となって、国家の関与というのが非常に重要ではないか、このように考えるわけでございます。

 この点について、いかがお考えになるでしょうか。

高木大臣政務官 資源小国であります我が国にとりまして、石油、天然ガス、石炭、ウラン、レアメタル等のエネルギーや鉱物資源の安定供給の確保は経済社会の存立の前提であり、重要な課題でございます。他方、アジアを中心とするエネルギー需要の急速な拡大や原油価格高騰等、最近のエネルギーをめぐる国際情勢は大変厳しい状況にあります。

 このため、経済産業省としては、本年五月に新・国家エネルギー戦略を策定いたしました。国際的なエネルギー戦略としては、総合的な資源確保及びアジアエネルギー・環境協力の二つを柱に施策を展開してまいります。

 具体的には、資源国との総合的な関係強化や資源開発企業に対する支援の強化、供給源の多様化等、資源の安定供給の確保に向け、官民一体となって取り組みを進めてまいります。

 省庁間につきましては、特に外務省とは、現時点でも、局長、課長クラスは現在も連携をとっておりますが、今後とも、御指摘を踏まえ、さらに連携強化をしてまいりたいと思います。

 また、我が国が蓄積してきました省エネルギーや石炭のクリーン利用、原子力発電等の世界最先端の技術経験を活用し、中国やインドを初めとするアジア諸国との協力を強化してまいります。

 今後とも、本戦略に基づき、エネルギー安全保障の確保に向けまして、全力で取り組ませていただきます。

松島大臣政務官 ただいま丸谷委員から非常に正しい指摘をいただきまして、さらに高木経済産業政務官から経済、外務両省での連携というお話がございましたので、一言答弁させていただきます。

 エネルギー資源のほとんどを海外に依存する我が国にとりまして、国民の安定的な経済生活を維持する上で、エネルギー安全保障の強化は、外交政策上も極めて重要な課題でございます。

 そのため、我が国としましては、安定供給の確保、エネルギー効率の向上の我が国の技術を世界へ伝えていくということ、そして国際対話の強化に努めている次第でございます。

 このために、ハイレベルで要人の往来、そしてFTA、EPAの経済連携強化などを通じたエネルギー生産国との関係強化、さらに、海外における自主開発への取り組み支援、外務省としても支援、さらに供給源の多様化に努めているところであります。

 また、我が国が世界に誇るエネルギー効率技術、この民間の技術を外交上も、外交としても活用し、特に需要増加が著しい大消費国、アジアに幾つかございますので、こういった国のエネルギー効率を高め、世界的な需要の伸びを抑制するさまざまな取り組みを行っているところでございます。

 そして、国際対話の強化として、ことしのG8サミットでは、世界のエネルギー安全保障について共通の理解を深め、今後の協力のあり方について合意いたしました。

 よろしくお願いいたします。

丸谷委員 どうもありがとうございました。

 両政務官から御答弁いただきまして、性差別ではございませんけれども、非常に優秀な女性の政務官のお二方の御活躍を今後も期待しながら、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

山口委員長 次に、山口壯君。

山口(壯)委員 民主党の山口壯です。引き続き麻生大臣とこうやって相まみえさせていただくこと、非常に光栄に思います。

 最初に、おとといですか、アメリカから国務次官補のヒルさんが来て、佐々江局長とお話をされたように伺っています。

 私は、きょう、北朝鮮の問題を中心に話をさせていただきますけれども、やはり日本が、これからどういうふうに日本の安全のみならずアジア、あるいは場合によっては世界の安全とか平和をどう考えるかということをきょうはお聞きしたいと思いますので、最初は、まずヒルさんが佐々江局長とどういう話をされたのか、新聞報道にとどまらず、しっかり教えていただきたいと思います。

佐々江政府参考人 一昨日、ヒル国務次官補が来日して協議を行ったわけでございますが、これは基本的に、ライス長官が訪日して麻生大臣とまず協議を行われるということで、その下準備を兼ねた協議という性格のものでございました。

 この協議では、基本的に、この間の北朝鮮の核実験を受けた国連安保理決議の速やかな実施が重要であるということで、そのために日米で協力、協調して物事を進めていくということが第一点でございます。

 それから第二点に、その関係で、特に関係諸国、とりわけ中国、韓国、ロシア、そして豪州でございますけれども、こういったような国々を含めて、国連決議の実施で協調、協力を求めることが重要だということで、日米が一体となって、こういう国々との間で協調、協力を確保していくように努力しようではないかということが第二点でございます。

 それから第三点目に、今後、全体的に北朝鮮問題を取り進めていく上では、国連決議の中にも書かれておりますけれども、圧力と同時に対話も開けておくことが重要であるということで、無条件に北朝鮮が六者協議に復帰するということを求めていく必要がある。そして、その中で、この一連の懸案、すなわち核、ミサイル、そして我が国にとっては特に拉致問題でございますけれども、そういう問題について、単に北朝鮮が六者会合に復帰するということだけでなくて、その中で実際上、北朝鮮が具体的に目に見える形で行動をとっていくことが重要で、そのために日米間で努力をしていこう、こういう点が主たる点でございました。

 そして最後に、日米が対応していくに当たって、やはり安保体制に基づく抑止力が重要であるということで、この点についての確認も行われたということでございます。

山口(壯)委員 佐々江局長、船舶検査ということは具体的に話題になりましたですか。

佐々江政府参考人 この件については、国連決議の中にも言及されておりますが、米側の方では、まだ米側内部で検討中であるということで、立ち入った話は行いませんでした。

山口(壯)委員 ヒル国務次官補との会談を踏まえ、あるいはきょうのライス国務長官との会談を踏まえ、アメリカが何を考えているかをまず把握するという話ですけれども、この船舶検査が可能になるためにはどうしたらいいのか。

 一つには、周辺事態という話が出ています。しかし、この周辺事態というのは、周辺事態法のことを指すわけですね。周辺事態法というのは、どういうための法律だったでしょうか。大臣、どうお考えですか。

小松政府参考人 事実関係でございますので、御説明をさせていただきます。

 周辺事態法でございますが、平成十一年の政府統一見解において、周辺事態とは、我が国周辺の地域における我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態であり、「我が国の平和及び安全」の意味するところは、その性質上、軍事的な観点を初めとする種々の観点から見た概念であると。こういう事態に対応いたしまして、我が国が日米安保体制に基づいて協力をするというための法律でございます。

山口(壯)委員 今小松局長、技術的なことだというふうにおっしゃった。それは、その面もありますけれども、やはり大臣、これは一番の根幹の、どういうふうに今の事態を見ているかということにもかかわるわけですから、大臣として、この周辺事態法というのが、今の答弁を受けられて、平和と安全にかかわる、あるいは場合によっては軍事的、そして種々のという話、こういう法律であるわけです。そのことを今ここに当てはめることの、ある意味で適切かどうかという議論が私はあると思います。大臣、そこはどうお考えですか。

麻生国務大臣 今、周辺事態法の話で、あの当時、きのうの防衛庁長官の答弁がすべてだと思いますが、防衛庁長官があの文案を作成するときの当事者でもあったということもあって、一番詳しいというのはそういう意味ですが、今回、この周辺事態法が、地下核実験が直ちに周辺事態法の適用に値するか値しないか、当たるか当たらないかについては意見の分かれるところだというのは、今いろいろなところで議論がなされているのはもう御存じのとおりです。したがって、今この段階で、政府としてはあらゆる面から検討しておるというのが一つ。

 もう一点は、北朝鮮が再度核実験をすると通告するとか再度核実験を実行したとか、いろいろな話が今から、どうでしょう、しばらくの間、我々は、日本でやった、もしくはオーストラリア等々でやっている、そういったものに対応して、北朝鮮がどのように反応してくるか、また、ヨーロッパも今度決めておりますから、そういったものにどういった反応をしてくるかというのを見た上で、我々としては、それが周辺事態法での対応をしてでもやるべきか、またさらに法律を新たにつくるべきか等々、あらゆる面から検討していく必要がある、今私どもとしてはそのように考えております。

山口(壯)委員 大臣、ということは、周辺事態ということを認定して船舶検査が可能になるようにという枠組みは、まだ決めておられないということですか。

麻生国務大臣 今この段階で決定していることはありません。

山口(壯)委員 大臣、この枠組みでなければ、あとは特別措置法という枠組みがまた理論的にあり得るわけですね。大臣としてはこれからどういうふうに進めるか。特にアメリカとの関係を考えた場合に、どちらが望ましいとお考えですか。

麻生国務大臣 どちらの方が望ましいかというのはそれこそ今から検討する話ですから、したがって、先ほどの佐々江の話からも出ておりましたように、アメリカとしてこれを今後どう対応していくかについては今検討中ということになっております。

 少なくとも私どもが見た範囲で、特に第七艦隊が急激にいろいろな動きをしているというふうにも見えませんし、今の状況として、直ちにインスペクション・オブ・カーゴというものに関してどういった対応をアメリカがとろうとしているのかという点につきましては、これは事務レベルの話も当然でしょうけれども、政治家レベルにおいて双方で話し合いをしていかないかぬところ。

 そして同時に、インスペクション・オブ・カーゴですから、これは陸上輸送もありますから、この陸上輸送について韓国はどういうぐあいにしようとしているのかというようなところは、我々としては最も関心のあるところでもあります。

山口(壯)委員 周辺事態という、ある意味で苦肉の策でしょう。そういうものはできれば避けたいというお考えでしょうか。

麻生国務大臣 私どもは、一番の目的は、先ほども申し上げましたように、この周辺事態法というのが適用されるという前提に立って考えた場合において、実施をいたします、いわゆる最前線に行く自衛隊員にしても、海上自衛隊員にしても、その人たちに実効あらしめる、一つ。

 二つ目、その人たちが無用な、法の不備のために、もしくは適切な法の整備ができていないがために撃たれる等々の状況は、政治家として断固避けねばならぬと思っております。

山口(壯)委員 今の大臣の答弁の中には、ある意味で冷静に急ぐことなく対応することも必要だというふうなニュアンスも私は感じましたので、この件に関しては、周辺事態法というものはある意味で苦肉の策ですから、しかも、もともとの、元来の由来というのは、これは有事を想定している法律ですから、ほかに仕組みがないからといって、それを安易に今されることがないように、私はそうあるべきだと思います。それに関して、大臣、再度答弁を願います。

麻生国務大臣 その点に関しましては、昨日からずっと答弁申し上げておりますように、これはあらゆることを検討すると申し上げておるので、周辺事態法というのは、有事か有事じゃないかというのは、これから先、さらに二回目の核実験、それを弾頭に載せ得るほどの小さなものになっている等々、いろいろなものを考えておかねばなりませんので、今から起こり得る可能性というのをある程度予測し、我々はそれに対する備えもしておかないとならぬということであります。この段階で、そういった法律が不備でないから、事を焦ってやるつもりは全くありませんけれども、そういった事態というものも十分に考えられる。とにかく、普通の国ではないと私ども思っていますので。

山口(壯)委員 確かに、大臣の今の感覚というのは非常に大事なものですから、そこは私も再度念を押しておきたいと思います。

 というのは、これはもう六十年前ですけれども、我々は真珠湾という、ある意味で余り思い出したくない話があるわけですね。当初、例の一九四一年の真珠湾に至るまで、アメリカの議会は、日本が中国にばんばん出ているから、スタンドファーム、断固として対応すれば、日本はバックダウンするだろう、おじけづくだろうと。だから、日本に石油をとめて、アメリカにある日本の資産を凍結して、要するに経済制裁ですね。それで日本はどうなったか。この日本ですら窮鼠猫をかんでしまった。「ニイタカヤマノボレ」となってしまったわけですね。

 ましてや、いろいろわかりにくいところもある国ですから、窮鼠猫をかむことがないように、私は今の大臣の感覚を非常に大事にしていただきたいと思っています。

 さて、このもともとの話というのは、核実験がそもそも確認されたかどうかということもまだ私は確信を持っていません。先ほど山中委員からも言及がありました。イラクのときの、アメリカが、大量破壊兵器があそこにはあるという証拠はもうあるんだと、あそこまではっきり言って、戦争をやった一つの大きな理由になって、ふたをあけてみたら一発もなかったと。しかも、今証言者がどんどん出てきて、あれは実は情報の間違いだったと。

 こういうことがないようにという気持ちもあるものですから、アメリカが確認したと言っていますけれども、それはどういう情報であるのか、大臣は確認されておられますか。

麻生国務大臣 山口先生、イラクのときと一番違うのは、イラクのときはやっていないと言うておるわけです、向こうは。今回の場合はやっておると自分らで言っておるわけですから、これはもう全く前提条件が百八十度違います。

 だから、簡単に言えば、おれは殺したというんだけれども、どこに殺された遺体があるかがさっぱりわからぬので、殺した殺したといっても、これはその人が本当に殺したかどうかをなかなか証明できないのと同じような話で、遺体の確認というのがなかなかできていないんだと思います。

 今回の場合、日本の場合は、まず、向こうが核実験をやったと自己宣言したこと。二つ目、そのときに、いわゆる通常の地震波とは異なる異常波を感知していること。そして三つ目が、今回のネグロポンテが発言をしておりますけれども、いわゆるサンプルをやったときに、そのサンプルにひっかかったものがある、それを調べた結果、間違いないと言ってきたという、この三つの話であります。

 では、日本政府として、例えば、日本海沿岸に並べてあります気象庁やら、また科技庁やらの、いろいろなそういったものを収集したり検索したり検出したりするいわゆる観測所等々において異常な放射能が検知できていたかといえば、今の段階では検知できておりません。したがって、日本政府としてはいまだ結論を出していないというのが我々の立場です。

山口(壯)委員 大臣、最初に、イラクのときにはやっていないと言っていて、今回やっていると言った。それは、大臣、そのとおりですよ。でも、例えば、その議論をしてしまうと、アメリカが戦争したときに、やっていないと言っているやつに戦争して、やっていると言っているやつにはほったらかしにしていた、こういうことになっているわけですよ。

 今回、この核の話が出てきた背景には、アメリカが、例えば六カ国協議という格好で中国に丸投げして、自分はイラクとアフガニスタンで精いっぱいだった、ある意味でほったらかしていた、そのツケもあるわけですよ。もっと言えば、小泉内閣で、こういう問題に対して、例えば中国や韓国と全く話ができない状態が続いていた。そこに、この核・ミサイルが、あるいは核の問題あるいはミサイルの話が手当てできていない、そういうところも大いに関係していると私は思います。だから、そういう意味では、やっていない、やっているという話は余りされない方がいいんです。

 それについて言いますと、今アメリカがどういう情報で言っているかということを余り突き詰めて情報を持っておられないみたいですけれども、この我が国の当面の対応についてといういろいろ紙がありましたね。今大臣がおっしゃった、北朝鮮自身が言っているんだということ、あるいは気象庁が特別の地震波をとったんだということ、あるいは北朝鮮のミサイル開発というものがもともとあったり、あるいは拉致問題がある、あるいは国際社会も厳しい対応をとっている、これは全部情況証拠なんですね。大臣おっしゃったように、推定有罪なんですよ。

 だから、そういう意味で、我々も、今の政府のとっている対応というのは決して反対していません。そういう意味では、我々はそこは対応としては反対していないけれども、でも、考えてみたら、いろいろなアクションをとったときに、核実験をやったということを確認できていないままやっているということはちゃんと押さえておいていただかないとと思うんですよ。現実に確認はできていないんです。その辺については、大臣、いかがですか。

麻生国務大臣 これはもう最初に申し上げたとおりだと思いますが、この場合には、三つ。実際にやった……(山口(壯)委員「と言っているだけです」と呼ぶ)まだ、よく聞いてくださいって、座っているんだから。実際にやった。二つ目、TNTで模擬偽装した。三つ目、ミスファイアした。この三つが最初から考えられております。これはもう最初に発表しましたから。

 一つ目、成功したと言うのであったら、一キロトン以下とかいうような、地震波から逆算してもトン数が低過ぎる。だから、これはちょっと幾ら何でも、成功したのであれば、よほど小さくすることに成功したというのは、アメリカより小さくできる技術があるであろうかといえば、かなり疑わしい。

 二つ目、TNTでこれぐらいのものを演出しようと思えばできないことではない。だったら、もっと成功したと言ってわんわん宣伝してもおかしくないではないか。

 しかし、そのいずれもしていないということを見ると、三つ目、実験したけれどもうまく爆発しないで、この種のやつは圧縮爆発ですから、その圧縮爆発が一部しか成功しなかったという三つが考えられるので、どれが確実だったかというのがはっきりするまではという話を一番最初に申し上げたと思います。

 それから今日まで、情況証拠といえば情況証拠ですが、一番のところは、御本人が自分たちでやったということを最初に言われているところが大きな違いであって、情況証拠というのは自白に基づいておりますので、この際、法律用語を使われるのであれば、そういったようなことになっておるという状況ですから、日本の対応はこれまでずっと、この一週間等と同じことを申し上げていると思いますが。

山口(壯)委員 日本外交があるいは場合によっては軍事力を使う部分が想定されることに関して、大臣、やはりそこは、本当はきちっと確たるものを日本が持った上でやらないと非常に危険だと思いますよ。だから、そこは大臣、ちゃんとわかっておられると思うから私はこれ以上言いませんけれども、しかし、やはりアメリカがこう言っているからということでは、確信を持つには不十分ですね。

 というのは、アメリカは、核実験が行われた場合に自然界に存在しない放射性同位元素が生成されると言うけれども、本当にこれは核実験があったということとして十分だと思いますか。私はそうは思いませんよ。ほかの原因で放射性同位元素が生成されるということも十分あり得ると思います。だから、我々は今まで既にもう経験、レッスンがあるんですから、そこはきっちり言っていかれないといけないと思います。

 それから、先ほどの核不拡散の話。日本が核不拡散に関しては哲学を持ってやはり対応しないといけないと思う。

 インド、パキスタンが核実験をやったとき、日本はどういう対応だったですか。

麻生国務大臣 正確な記憶はありませんけれども、たしか経済制裁等々いろいろなことをしたという記憶はありますが、ちょっとあらかじめ想定問答に入っておりませんでしたので、正確にそのときにどのようなことをやったか、明快に申し上げられませんが、基本的には、九八年に対しましては、国連安保理の場において、日本は、インド、パキスタン両国に対し、最終的に核兵器を放棄、NPTに無条件に参加等を求める国連安保理決議案をスウェーデン案と共同提案して、一九九八年六月六日、安保理決議一一七二号として採択をされるというのに日本は参加をいたしておるというのが背景です。

山口(壯)委員 そのとおりです。

 大臣、それと今の決議と比べられて、どう思われますか。

麻生国務大臣 今回の一七一八と一一七二を比して、厳し過ぎるというようにおっしゃりたいわけですか。(山口(壯)委員「いえいえ、一緒かどうかは御自身の判断で」と呼ぶ)ああ、そういう意味ですか。

 これは、国際状況がかなり異なっておると思いますので、一律に比較するのはいかがかな、私も基本的にはそう思っております。

 大体、北の場合は、これは六者協議というのにコミットしております。日本、アメリカ、中国、ロシア、北朝鮮というので六者協議に北はコミットしておりますが、たしかインドというのはその種の話はありませんでしたし、そういった状況では全くないんだと思っております。

 それから、今、この一七一八というものの場合は、これは国際社会がこの問題に関しては共有しておる一つの認識があります。そういった意味では、日本の場合にとりましては、これは隣国でありまして、かなりインドに比べては身近に感じられるというところも非常に大きいというのが感情論としては起きるところなんであって、そういった点を考えますと、これを単純に比較というのはなかなかできないというようなことが考えられるんじゃないでしょうか。

山口(壯)委員 哲学というものは、場合によってあっち向いたりこっち向いたりしないものですよ。そして、このことは世界でダブルスタンダードという言葉で言われているわけです。だから、日本はそうじゃないように振る舞わなければ私はいけないと思いますよ、哲学が問われているんですから。

 そういう意味では、例えばイスラエルの話もありますね。アメリカはイスラエルには絶対物を言わないですよ。現実にそうですね。今、別にそのことを問い詰める必要はありませんけれども、イスラエルについての安保理での議論はどうなったか。ほとんどないはずですよ。日本はそういう議論を少し越えておかなきゃいけない。アメリカと全く一緒の議論をしていたのでは、アメリカの何とか国だというふうにも言われかねないわけです。

 まして、麻生さんは外務大臣でおられるんでしょう。そういうところをきっちり哲学を持って、日本はダブルスタンダードはないんだ、核不拡散に関してはどこの国についても我々は心配している、どこの国がよくてどこの国がだめだということじゃないんだというふうにしておかないと説得力がないわけですよ。アメリカはもともとイスラムの核というのをとても恐れているわけですから、そういうこととは我々は違うんだ、宗教の違いによって言っているんじゃないんだというふうにおっしゃっていただかないといけないと思います。

 そういう意味では、一律に比較する話じゃないんだとおっしゃいましたけれども、ここは哲学の問題ですから、一律に言わなきゃいけない面が多々あるんです。

 それから、六者協議と言われましたけれども、六者協議というのは現実に機能していないですよ。佐々江さんが一生懸命やっておられるけれども、私も佐々江さんとはつき合いがもう三十年ぐらいになるけれども、一生懸命やっても結局アメリカは、中国に、武大偉さんに丸投げして、そして来ているのは、申しわけない、ヒル程度じゃないですか。全然気合いが入っていない。その六者協議に、インドはそんなものはなかったというのは、何とか理屈というやつですよ。だけれども、我々としてはもっと一律に、きっちり哲学として持っていなければ、日本がアメリカの言いなりになっているんじゃないかというつまらない批判を招きかねない。だから、この核不拡散に関しては、非常に大事な我々の哲学だと思います。

 今お読みになられたパキスタンの話というのは、求めたというだけじゃないですか。あの程度のことじゃなくて、私も実はパキスタンに勤務していましたから、ブットさんには、申しわけないけれども援助をとめざるを得ないぞとか、一生懸命言いに行った方なんです。当時は村岡大使だったですけれども。そういう意味では、きちっとした対応というものが、実はあの後なされなかったというふうに私は非常に強く認識していますから、だから本当は、盟友パキスタンであってもそこはきちっとした物の言い方を日本としてはしておかなければいけなかったんじゃないかと思います。麻生大臣、いかがですか。

麻生国務大臣 パキスタンが盟友であったかどうかはよく知りませんけれども……(山口(壯)委員「その認識は間違っていますよ」と呼ぶ)私どもとしては、少なくとも今、北朝鮮の核問題というものについて、またその他の核の話について、日本はNPTに最初から一貫して参加し、多くの国々をNPTに参加させるように努力をしてきたという実績は、日本という国ははっきりしたこれまでの足跡が残っていると思っております。

 それから、今のお話ですけれども、北朝鮮とインド、パキスタンという話と、イスラエルの話も出ましたが、私はイスラエルが核実験をしたという記憶がないのでよく知りませんけれども。

 インド、パキスタンというのは核実験というものを行っておりますが、そのとき日本は、核実験は五回とか十回とかいう話をあのときしていますが、北朝鮮の場合の今回に関しましては、サンクション、制裁をインドにもパキスタンにも同様に、経済制裁にたしか踏み切ったと思いますが、そういったときに関してODAをとめたりなんかいろいろあったと。正確な記憶じゃありません、そういったことをしたと思います。

 そこにおられたんだったら、そちらの方が御記憶あるんだと思いますが、北朝鮮に対しましては、これは我々はずっと、隣国であるから、それに対して危機感が高いというのは当然なのではないんでしょうか。

 したがって、私どもとしては、今回は特にそれに対して反応をしているんであって、アメリカがどうのこうのではなくて、アメリカより先に我々は自分で経済制裁に踏み切るということをしたということであって、アメリカはそれに追随しているわけで、アメリカはまだそこまで来ておりませんので、経済サンクションというものは日本の方が先行している。オーストラリアと日本だと思いますが、そういうようにしている。いずれもそういったものに対する感覚が極めてはっきりしておりますし、今の場合、核がこのまま広がっていく、拡散していくということに関する危機感が我々の方は極めて強いのであって、核に対する態度というのは終始一貫しているように、私自身はそう思います。

小松政府参考人 北朝鮮の場合とインド、パキスタンとを単純に比較できないんだという御答弁が大臣からございまして、その中でNPTとの関係について御答弁ございましたので、若干補足をさせていただきますと、インド、パキスタンはNPTに一回も入ったことがないわけでございます。

 北朝鮮は、御案内のとおりNPTの締約国で、脱退条項というのがございまして、これに基づいて脱退をしたということを主張しているわけでございます。これも御案内のとおりでございますけれども、このNPTの脱退条項でございますが、脱退をする場合には、他のすべての締約国及び国際連合安全保障理事会に対して三カ月前にその脱退を通知する、その通知には自国の至高の利益を危うくしていると認める異常な事態があるということも記載しなければならない、こういうことになっているわけでございます。

 若干技術的になって恐縮でございますが、北朝鮮の行いましたこの脱退通告、まず、他のすべての締約国に行ったのかという点で疑問がございます。また、少なくとも、ここに書いてございます自国の至高の利益を危うくしていると認める異常な事態というのは何であったのかという記載はなかったというふうに理解をしているところでございます。したがって、私どもといたしましては、NPTからの脱退ということは有効ではないのではないかという立場をとっております。

 したがいまして、NPTに違反をしている国、もちろんインド、パキスタン、これは入れと言っているわけでございますけれども、拘束はされていなかった国というところの違いは一つの点としてあろうかと存じます。

山口(壯)委員 大臣、最初に盟友だったかどうかとか、ああいう茶化した答弁はやめてください、私はきっちり言っているんですから。現実に、当時パキスタンと日本とは非常にいい関係でしたよ。だからそれを盟友と呼ぼうかどうかは、それは大臣の勝手です。だけれども、茶化さないでください。

 それから、今ダブルスタンダードかどうかというのを言っているわけですから、別に、北朝鮮が身近だからとても心配だということで、それはいいんです。それで理屈は通っている。しかし、私が言っているのは、ダブルスタンダードにつき合わないように、これは大臣が大臣になられる前の話ですから、そういう意味では当時のことまで大臣が責任持てない部分は多々あります。そこまで我々は当時多分気がついていなかったんでしょう。そこまで、日本がいろいろ物を言うというようなところまで自分たちのマインドがまだいっていなかったかもしれない。でも、ここからはやはりそういうダブルスタンダードがないようにきちっとやっていかなきゃいけない。

 そうでないと、日本は、例えば平和をつくるとかあるいは秩序をつくっていくとか、日本がこれから目指していっている非常に崇高な議論が、何か知らぬけれども、おまえら自分のことは一生懸命やるし、アメリカに言われたらやるんだけれども、それ以外のことは余りどうのこうのだなと言われかねないわけですよ。だから、私は哲学とかあるいはダブルスタンダードがないようにということを一生懸命申し上げているわけです。大臣、いかがでしょうか。

麻生国務大臣 基本的には、NPTに関しての話は最初から日本というのはずっとやってきたんであって、日本は核不拡散に関しては終始一貫やってきたということに関しましては、他国の中で一番はっきりしてきている国の一つじゃないかな、私自身はそう思っております。

 ダブルスタンダードと言われますけれども、日本が核に関してこっちはいいけれどもこっちはだめといったような例は、多分、私の知っている話では、少なくともNPTができた以降のことに関してはないと思っておりますので、ダブルスタンダードという意識はありません。

 ただ、今後とも、こういった話というのは、そういったふうにとられかねないということに関しては注意をせねばならぬという山口先生の御指摘は大変大事なところだと思いますので、その種の信用をなくさないように、日本としては核の不拡散ということに関しましていろいろこれまで努力をしてきておりますので、そういったものが安易にまた技術が外に輸出されていくとか、また特に、テロリストあたりに売却されるとか渡されるとかいうような形のものはさらに拡散をということになりますので、そこらのところに最も心を砕いて注意を払わねばならぬものだと思っております。

山口(壯)委員 麻生大臣には、今私の申し上げていることが、理解が共有されたと私は思いますので、やはりこれから、少なくともダブルスタンダードと言われることが仮にもないように、これは日本の外交の一つの大きな哲学ですから、そこはきっちりやっていただきたいと思うんです。

 イスラムの核ということでは、アメリカはもうかっかかっかきますから。だから、パキスタンが核を持つかどうかというのは、私の勤務したときにはそのパキスタンの核情報をとることというのが最大の使命だったんです。それほどかっかするわけですよ。でも、イスラエルが核を持っても余りかっかしないですね。もちろんイギリスとかフランスの核については全くかっかかっかしません。

 だから、そういうところを日本としてはきっちり、やはり核というものに対する、唯一の被爆国じゃないですか、だからその辺をきちっとしていただきたいわけです。

 それからもう一つ、北朝鮮が、言ってみれば二国間交渉をアメリカに求めているという話がずっとありますね。外交というのは表も裏もありますよ。表でアメリカは絶対に応じられないと言っていても、事日本国民の生命財産全部かかっているわけですね。抑止力といいますけれども、抑止の理論というのは、核を一発ぶつけられたときに十発にして返すぞ、こういうのも入っていますよね。そんなもの、核一発ぶつけられたら、正直日本はその時点で、それこそが外交の大失敗なわけですよ。だから、場合によっては裏であるいは水面下で、爆発しないような手だても麻生大臣にはきっちり考えておいてもらった方がいいと私は思います。

 これは答弁要りません。表の話で突っ張ることの方が大事だと思うから、それは答弁要りません。だけれども、言ってみれば、余り頑固一徹でやる外交というのはそんなに成功しないですから、やはり硬軟両様使い分け、柔軟にやっていく。そして、最終的に守るべきは日本の国民の生命財産、そこに尽きるんですから、アメリカのプライドを守るために我々は外交をやっているんじゃないんです。だから、そういうところもしっかり認識しておいていただきたいと思います。

 さっきの答弁は要りませんけれども、そのことについて、全体のことについて。

麻生国務大臣 外交というのは、基本的には国家の危機を極小化する、最小化するのをもっていわゆる本来の目的としておりますので、他の国のメンツのためにやっているわけではありません。日本の国の国益のためにやっております。

山口(壯)委員 大臣には前の国会のとき、アメリカが、最初に安保条約をつくったときあるいは改定したとき、特につくったときに、ディフェンスコミットメント、防衛のコミットメントをできるだけ薄めたいという意識を持っていたということを、私、一生懸命外交文書を示しながら言わせてもらいました。それは、この最近の流れを見ても、やはりイラク、アフガニスタンのことで手いっぱいだから、なかなか東アジアのことまで意識も手も回らなかったということにも端的にあらわれています。ライス国務長官が来るもう一つの大きな目的は、日本に、大丈夫、安心して、だから核保有しないで、こういう、言ってみれば確認に来るわけでしょう。

 そういう意味では、この間の中川昭一さん、本当に正直な人ですよね。思ったことをそのままぽんと言っちゃったんでしょう。しかしあれは、日本が核保有するんじゃないかと世界が、言ってみれば物すごく心配している中で非常に不適切な発言だったです。

 麻生大臣、どう思っておられますか。むしろ核は保有するということについてはやはり理論的にも含めて議論をしていかなきゃいけない、こう思っておられるんでしょうか。

麻生国務大臣 ライスがどのような話をしてくるかという話に関して、私たちがやるから持たないでという話をするかどうかについては、私は、全く推測の域を超えませんので、その話にはちょっとどうかなと思うところがあります。

 ただ、私どもとして一番肝心なところは、いざというときには日米安全保障条約というものが条約どおりきちんと作動するようにしておくのが我々の仕事なんであって、基本的には契約とか条約なんというものは単なる一枚の紙っぺらですから、そういったものは何の役にも立たなかった例というのは、これは日華条約を一方的に破棄した日本自身がやっていますので、過去の例もありますので、そういった意味では、私どもとしては、こういったものが作動するようにふだんから人間関係をきちんと確立しておく、そういったものが一番大切なんだと思います。

 日米安全保障条約は、この北朝鮮の核という話が、さらに技術が進歩して、ノドン等々に搭載できるところまで出てくる段階というのは、これは十分に技術的には可能ということも考えた上でやっていかなきゃなりませんので、そのときにどうするかという点が安保条約の上に立った日米関係にとって最も大事なところだと思っておりますので、一番最初にこの点で国務長官と電話をして、これの確約から今回の一連の騒動に対しては対応したと、最初に申し上げたとおりです。

 それから、核の三原則については、今のこの段階で非核三原則を日本政府として直ちに変えるような話が政府内で討議されていることはありません。

山口(壯)委員 これからライスさんに会われるわけだし、日米韓のものも、別に韓国へ行かなくても、こっちにライスさんも来ているし、大臣もこっちにいるんだから、韓国からちょっと来てよと言えば私はいいような気もするんですけれども、何か国会の日程がどうのこうのということで議論になっているみたいです。

 この日米韓のすり合わせというのは非常に大事な話だと思いますし、そういう意味で、日本が原則をしっかり守りながら、大臣が先ほど言われたように、いわゆる軽率という言葉が適切かどうか、早まってというか、いわゆる周辺事態というものしかないから、それじゃ行っちゃおうというような話ではなくて、やはり冷静にかなりきちっと議論した上ですり合わせをしていただきたいと思います。

 質問を終わります。

山口委員長 次に、長島昭久君。

長島(昭)委員 民主党の長島昭久です。

 麻生大臣には、引き続き外務大臣として日本外交の先頭に立っていただくということで、大変御苦労さまでございます。大臣が提唱された、ちょっと発音は難しいんですけれども、ソートリーダーというあの概念で、ぜひ主張する日本外交を切り開いていただきたい、このように思います。

 きょうは、初めての質疑でございますので、北朝鮮の問題に特化して、基本的な外務大臣の御認識をお伺いしたいと思います。

 私も、実はワシントンにおりますころから、朝鮮半島問題はかれこれ十年ぐらいおつき合いをしてまいりましたが、正直申し上げて、今から十年ぐらい前は、北朝鮮という国がこんなに続くとはなかなかワシントンでも思えなかった。だからこそ、九四年のああいう枠組み合意を結んで、へばるのを待つということがそもそもの始まりだったというふうに認識しております。

 アメリカ側は、当然のことながら、よく言われることですけれども、リビア・モデル、リビアのカダフィ大佐が、あのパンナム機の爆破事件があって、約十五年ぐらい核を志向してまいりましたけれども、非常に厳しい制裁を科されて、最後は完全にべた折れをして、今やアメリカとリビアは友好国にならんかというような、そんな状況にまで来ております。

 しかし一方で、北朝鮮は、実はインド・パキスタン・モデル、先ほどから話がありますインド・パキスタン・モデル、持ってしまえばこっちのもの、こういうこと。あるいはイラク・モデル、イラクのサダム・フセインは、持っていないがゆえにたたかれた、そして政権を追われた、こういうことでありまして、アメリカ側の思惑と、つまり私どもの思惑と北朝鮮の思惑がなかなか結びつかない。これは私は、どの政権が担当しても、アメリカだろうが、日本だろうが、韓国だろうが、中国だろうが、この北朝鮮をきちんとマネージするのは非常に大変なことだという前提できょうは御質問させていただきたいんです。

 一方で、さっき山口委員からもお話がありましたように、大日本帝国モデルというのがありまして、余り追い詰め過ぎると最後は暴発する危険もある、こういう非常に厳しいやりとりの中でこれから外交のかじ取りをとっていただくということは、大変御苦労だというふうに思うんですけれども、まず基本的な御認識からお伺いしたいんです。

 我が国の安全保障に対する脅威という観点からいって、三カ月前のミサイル発射と今回の核実験、外務大臣はどのように比較をなさっておられるのか。そのどちらが脅威として重いか軽いか、そういう単純な議論ではなくて、昨日、私も出席をさせていただきましたけれども、安全保障委員会の冒頭の大臣のステートメントの中に、北朝鮮の核実験の実施については、我が国のみならず東アジア及び国際社会の平和及び安全に対する重大な脅威であり、断じて容認することはできません、こういう非常に強いステートメントを発表されておられますけれども、改めて、前回のミサイル、そして今回の核実験、どのように御認識をなさっておられるか、御所見を伺いたいと思います。

麻生国務大臣 ミサイルの場合は、これは長島先生御記憶のように、一九九三年、初めてノドンの発射というのがありました。そのとき、結構騒ぎだと私は思ったんですけれども、余り騒ぐ人もなく、九三年のときは国連でも何のステートメントもなく終わりました。九八年の八月の三十一日でしたか、このときにはテポドンというのが日本の上空というか頭上を越えて太平洋に着弾ということになって、このときも、これは日本では大騒ぎになりましたけれども、国連安保理では、このときは決議案はできず、二週間かかって議長声明だったかで終わったということだと記憶します。

 したがって、こういう例から見てもわかりますように、核がついていない限りはミサイルが飛んだって大した話じゃないというのが通常の意識のように、私にはそう思えます。

 しかし、今回のテポドン2というかテポドンXというか、今回の七月のテポドンの騒ぎのときには、これは少なくとも国連憲章の第七章は外れたとはいえ、決議文というのが十一日間で通っております。

 そういう意味では、間違いなく意識は変わってきたということで、つぶれるはずの国がだんだんだんだん、つぶれるどころか、事ミサイルとか、いわゆる核の搬送技術というのはどんどん進化したという状況に加えて、今回地下核実験というのを行ったと自分たちで宣言するところまで来た。

 そういう状況になってきますと、これは明らかに、これまでの搬送技術プラス、ミサイルに載っける弾頭というものは、核に限らず、BC兵器、いわゆるバイオとかケミカルとかいう生物化学兵器を載せ得ることはもっと安くできる話ですし、そういったものもあり得るということで、それの影響がどれくらい大きいかというのは、我々はサリンで一回十分にテロの恐ろしさを経験しております。あのオウムのサリン事件で大量にサリンをまかれたというのは霞ケ関で起きた話ですから。

 そういうことも考え合わせて、今回のこの話というのは、これは核で、だからうわっと騒ぎになっておりますけれども、私から言わせると、別に核じゃなくても、大量に殺人できる兵器というのは、クルド族に使いましたマスタードガスとかいろいろなものがありますので、そういったものを含めまして、どちらがちょっと気味が悪いかといえば、正直、私は両方気味が悪いです。ただ、核の方が、いわゆる山口さんの言葉をかりれば、被爆国だったということもこれあり、いろいろな意味で核の方には各国の反応が非常に敏感という状況になっておるというのが、情況証拠を分析すればそういうことになりますが、私は、どっちが気持ち悪いかと言われれば、どこでも飛んでくる、核だけあってミサイルがない状況と、ミサイルがあって核がない状況というのを両極端で言った場合は、ミサイルの上に載っけられるものは何も核以外のものもありますので、そういった意味では、気分的には少々ミサイルの方がちょっと正直気持ち悪いかな、これは私の個人的なことを言わせていただければ、正直なところがそんなところです。

長島(昭)委員 大臣、非常に率直に今おっしゃっていただきましたけれども、やはりエスカレートしてきていますから、去年の二月に核保有宣言を初めて公式にして、そしてことしの七月にミサイルを連射して、そして十月の三日に核実験をやると予告をして、そしてやった。やったかやらないか、まだ日本政府はコンファームしていませんけれども。そういう状況の中で、それをただ並列に比べるのではなく、やはりエスカレートしてきている結果としてこういう事象があったということで、私はきのうの外務大臣のステートメントにあるように極めて重大な脅威だと思いますし、ライス国務長官も、重大な一線を越えた、こういう表現を使っております。

 そこで、きょうは皆さんのお手元に資料を配付させていただきました。この二つの、七月のミサイル発射事案、そして今回の核実験事案に対する政府の、同じ日本国政府の対応の違いについて、時系列でわかりやすいようにお示しをいたしました。これは私、一切加工していません。それぞれ、内閣官房からいただいた資料、それから防衛庁からいただいた資料、外務省からいただいた資料を一つの事案ごとにただ一緒にしただけの話でありまして、何も私は手を加えておりません。

 今、私が申し上げたように、より日本の平和と安全にとっては脅威が高まってきている、そういう認識のもとで行われた政府の対応にしては、これはもう数日前からこの点について追及が行われておりますけれども、きのうも報道ステーションですか、「空白の四十分」なんという非常に衝撃的なタイトルになっていましたけれども、その空白の四十分の意味は、十時三十分ごろに中国政府から北京の外務省日本大使館に第一報が入って、十一時ごろやるらしい、やるかもしれない、こういう情報が来た。そして、十時三十五分には、これは気象庁の地震計が通常の波形とは異なる地震波を観測する。そして、十時四十分に北京から外務省本省に、そして本省から官邸に、そして官邸から直ちに、北京からソウルに移動中の政府専用機に乗っておられる安倍総理に第一報がもたらされる。

 当然、私たち考えるに、この瞬間に、外務省からでもいいですし、官邸からでも結構です、防衛庁を初め各関係省庁に連絡が行っているはずですね、対応としては。ところが、ここに書かれているように、何と四十分後に内閣官房から防衛庁に、北朝鮮が核実験を実施した可能性がある、こういう情報伝達がなされているわけです。非常にこれは解せないのであります。

 きょうは木村副長官にお見えいただいておりますので、ちょっと木村長官の前にまず内閣官房の方から、この十時四十分から第一報、防衛庁にもたらされた第一報が十一時二十分、この四十分間の間に官邸でどういう動きがあったのかなかったのか。あわせて、今回鳴り物入りで起用されました首相補佐官、国家安全保障担当の首相補佐官という方がいらっしゃると思うんですが、その方がこの四十分間の間にどんな役割を演じられたのかということも含めて、御説明をいただきたいと思います。

山浦政府参考人 七月五日の北朝鮮による弾道ミサイル発射事案に際しては、発射後短時間のうちに着弾するという弾道ミサイルの特性を踏まえ、早期警戒情報を発令し、直ちに総理、官房長官等へ連絡したところであります。

 他方、十月九日の北朝鮮による核実験実施発表に際しては、午前十時四十分ごろの外務省から官邸への第一報については、北朝鮮が間もなく核実験を行うかもしれない旨の連絡であり、その後、関連情報の収集、当該情報の分析を行った結果、実験を実施した可能性があるとの情報を入手したため、十一時二十分ごろに防衛庁等に連絡をしたものであります。

 このように、御指摘の二つの事案に際しては、弾道ミサイルの発射に関する早期警戒情報と地下核実験に関する行うかもしれないというそれぞれの事案に係る第一報の特性に応じ、政府として迅速かつ適切に初動対応を行ったものというふうに認識をしております。

 それから、内閣総理大臣補佐官、小池補佐官の対応でありますけれども、一連の政府対応に際しては、内閣官房長官はもとより内閣官房副長官や国家安全保障問題担当の小池内閣総理大臣補佐官にも官邸危機管理センターに参集し、政府の対応に関する検討に参加するとともに、安全保障会議にも出席するなど、内閣総理大臣臨時代理である内閣官房長官を中心に政府として機動的かつ適切に初動対応を行ったというふうに考えております。

長島(昭)委員 防衛庁副長官にお伺いしたいんですけれども、今、四十分の間というのは不確かな情報であったがために分析にかなり慎重に時間を要した、こういう御説明だったんですが、総理に防衛庁の職員あるいは自衛官というのが、北京、ソウルへ外遊をされて首脳会談に臨まれた総理にそういう防衛庁の関係者は同行していなかったんでしょうか。

 それから、いれば、そこから当然総理に入った情報が本庁にもたらされるというふうに私どもは想像するんですけれども、あるいは北京の日本大使館に、当然のことながら防衛駐在官はおられるでしょうし、あるいは防衛庁関係者もおられると思うんですが、そういう情報というのはそういう周辺から防衛庁の方に、十一時二十分に内閣官房から初めて情報がもたらされる前に、こういう情報というのはもたらされていないんでしょうか。

山崎政府参考人 ちょっと私自身もきのうテレビを見ておりまして、当然知り得る立場にあるというのは防衛庁から派遣をされております北京大使館の防衛駐在官がまず第一だろうと思いますが、防衛駐在官自体は、ちょうどたまたま訪中をされておりました総理大臣の接遇のためにいろいろな役割を与えられて、その場にいなかったということで、第一報については接する物理的な立場になかったというふうに私もテレビで承知をいたしました。

 それから、政府専用機は当然防衛庁の職員が搭乗しておりますが、皆、運航にかかわる者でございまして、正直、情報運用系統の責任ある立場にある者がいなかったということで、政府専用機に対して多分外務省さんの方から秘匿電話を通じて総理の方に電話があったのではないかというふうに考えております。

長島(昭)委員 今私の背後からどよめきが上がっているんですけれども、防衛庁として万全を期して対応されていると私は信じたいし、私は、今回の国会で防衛庁の省昇格法案というのが出てくるので、これは正面から議論してよりよい国防体制を築いていく、このことについてはだれよりも真剣に考えてきた立場でありますが、申しわけないですけれども、今の局長の御答弁ではとてもとても納得がいかない。

 しかも、十一時半に防衛庁長官が補選の応援に行かれる。別にどの応援に行こうが構いません。構いませんが、政務で立たれるということで、もう少し防衛庁の中にきちんとした情報伝達のシステムができていれば、どなたが防衛庁長官であろうと、防衛庁長官がどういう条件のもとに置かれようと、もう少し早く情報が伝達をされて、ちょうどこの下につけておきましたけれども、七月五日、八分後にきちんと防衛庁長官から指示が出ている。そして、防衛庁に対策本部が設置されている。しかし、今回は、防衛庁長官の指示が出たのが四時間後。そして、防衛庁に対策本部が立ち上がったのが五時間後。副長官、これは副長官として恐らく最初に経験されたいわゆるクライシスだったと思うんですけれども、これで万全だというふうにお考えでしょうか。

木村副長官 北朝鮮のミサイルの発射の事案、そして今回の核実験の表明、どちらも我が国の安全保障にとってはとても深刻な問題だと認識をいたしております。

 その上で、防衛庁として、ミサイル事案と今回の核実験の表明といささか対応が違うということを委員に申し上げるならば、委員の方が北朝鮮の問題等々大変造詣の深い方でありますけれども、ミサイル事案というのは、発射に係る兆候の探知や発射の態様の特定等については、艦艇や航空機、また地上のレーダー等々の手段を通じまして、防衛庁・自衛隊が主要な役割を果たすものでありますし、万が一発射をされますと短時間で我が国に着くということで、即座に運用をすべき問題だ、こう想定をしてかからなきゃいけない問題だと思います。

 一方、この核実験の問題というのは、初期の探知やその事案の発生の判断というのは、防衛庁が政府部内において主要的な役割を果たすことが期待されておりませんで、部隊の運用や対処すべき場面が基本的に想定をされていないということから、それぞれの対応が防衛庁において違っていたということであります。

 いずれにいたしましても、防衛庁といたしましては、各種の情報収集や、また庁内の幹部や関係部局の連携、また情報の共有等々につきましては意を用いて対応をしてきたことは当然でありまして、我が国の安全保障に任ずる防衛庁といたしましては、今後も関係省庁と連携を図りつつ、事態に迅速に、的確に対応できるように取り組んでまいりたいと思っております。

長島(昭)委員 確かに、ミサイルが物理的に飛んだという事案と、それから、地震なのか核実験なのかなかなか確認がとれないという、そこに少しタイムラグが生ずるというのは私も理解できますよ。しかし、それにしても危機感がなさ過ぎるのではないか、恐らく今のやりとりを国民の皆さんもごらんになればそう思われると思います。

 そこで、これは申し上げるのもちょっとはばかりますが、きのう久間長官がこういうふうな御答弁をなさっているんです、安全保障委員会で。ただ、今度の場合は、つまり核実験の場合は、先ほど言ったように事前にいろいろな手は打っておりました、が、はっきり言って、ミサイルの実験をやったときよりも核実験の方が防衛庁長官としては危機感が薄いわけですよね、こうおっしゃっているんですね。

 だから、これは長官の、私は、長官をまさに攻撃するために言っているわけではありません。この麻生外相、久間防衛庁長官というのは、私は今の日本の外交安全保障をつかさどるリーダーとしては一級だと思っておりますので。しかし、それにしても、防衛庁長官がこういう危機感、まさにこの委員会でぽろっと、安全保障委員会ですけれども、ぽろっとおっしゃってしまった、こういう危機感がもしかして庁内に伝播していたとすれば、これは大変看過すべからざることであるし、別に自慢するわけではありませんが、私たち立法府も、この七日か八日か九日の週末に、核実験があるかもしれないということで、実は、あったら直ちに衆議院で非難決議を出そうということで、私は、七日、八日と、野党側の非難決議の文案を与党の皆さんとすり合わせをしておったんですね。

 情報が全くと言っていいほどもたらされていない私たちですら、そういう事態に陥ったときの準備はかなりできていた。にもかかわらず、さっき、こういう事案についてはリード官庁ではないというような御説明をされておられましたけれども、しかし、やはり日本の平和と安全にとっては極めて重大な脅威に当たるような事実でありますから、そこから国連の制裁決議にいくロジックが立てられていくわけですから、私は、もうこれでやめておきますけれども、この問題についてはここでやめますが、ぜひ防衛庁の皆さん、もう一度ふんどしを締め直して事に当たっていただきたい、このように思います。

 それでは、外務大臣。今回の国連制裁決議、私も、非常にスピーディーだったし、結果として大変バランスがとれていたというふうに思っています。というのは、前回のミサイル発射のときは十一日間かかっている。今回は六日で、やはり全会一致。

 バランスがとれていたという意味は、七章のもとで行動するということをはっきり原則を立てた。つまり、これからさらにエスカレートした場合についての手当てをきちっとしている。同時に、中国やロシアからの要望も高かった四十一条に限定して非軍事的措置で対応しよう、こういう意味で私は非常にバランスがよかったというふうに思うんですが、一点、先ほど少し質疑ありましたけれども、この決議の最後のところに、北朝鮮に対し、六カ国協議に無条件で即時に復帰することと。丸谷委員はそれが一番のこの決議のポイントだというふうに先ほどおっしゃっておられましたが、私は多少違和感があるんですね。

 つまり、きのうもたしか外務大臣、安全保障委員会での質疑の中で、この六カ国協議のやり方で、この六カ国協議の目的は何かといえば、北朝鮮に核を放棄させるということですから。しかし、この枠組みでかなりだらだらだらだらとやってまいりましたけれども、何年間にもわたってこの枠組みを維持してきましたが、結局核を持たせてしまった、そして核実験までやらせてしまった。これは、もしかしたら、六カ国のマルチの枠組みというのは機能しなくなってしまったのではないだろうかというふうに私は思うんですね。

 外務大臣は、この制裁決議の六カ国協議即時無条件復帰という、ただ復帰をすればいいのかということを考えたときに、外務大臣のお考えとして、この六カ国協議という枠組みが今後も有効に維持されているのか、それとも失敗に終わってしまったのか、この辺の御認識はどういうふうになっておりますか。

麻生国務大臣 これは、長島先生、六カ国協議をつくった本来の目的は北朝鮮に核を持たせないというためにつくったんですから、今回の北朝鮮の核実験というものが実際に核実験であったということを前提にするならば、この六カ国協議の本来の目的は失敗であった、そう考えないといかぬと思います。

 ただ、今後の対応の仕方として、この六カ国協議にかわるしかるべき、これは全然対話が成り立っていませんから、北朝鮮とイギリスとか、北朝鮮とアメリカとか、その他の主要国と。だから、そういった意味では、北朝鮮との間できちんとした対話の窓口というものをあけておく必要がありますので、そこの点に関しては、六カ国協議というのは、本来の目的とは違った意味で、今度はいわゆるつくった核をしかるべく放棄、廃棄等々をしていくという形で、別の目的、それでないと、これが拡散する可能性があるのを、テロに売られるとかテロに渡されるとかいうことを最も恐れるのが世界ですから、そういった意味からいきますと、この六カ国協議という一つの枠組みの中に入った上で今の目的に沿った線で協議していくということであって、従来の、核を持たせないという本来の目的のものではなくて、持ったのを廃棄等々の話に変わっていくんだと思います。ただ、六カ国協議にかわる、何と呼ぶかは別にして、そういった形の協議をする場というものは断固確保しておく必要があろうと存じます。

長島(昭)委員 私も、やはり六カ国協議は、第一の目的は達することができなかった、失敗に終わった、こう思うんですね。しかも、もしかしたら北朝鮮は、先ほど来外務大臣もおっしゃっておられるように、宣戦布告だと言いながら、しかし、アメリカの出方によっては話し合いに応じてもいいような、そういうポーズもとっておりますので、上がるだけ上がって後はおりていく、その辺の道を探っているところだろうと思うんですね。

 そのときに、じゃ六カ国協議に復帰しますと例えばいきなり言った場合に、はい、じゃ歓迎ですと言ってそれで迎え入れて終わるかというと、私、そこは終わらないと思うんですね。

 ですから、一つお考えいただきたいのは、例えば六カ国マイナス北朝鮮、つまりは残る五カ国できちっとした協議の枠組みをつくっていく。その中核は、当然のことながら日米韓ということになるんだろうと思うんですが、日米韓、中ももちろんそうです。後でちょっと中国の役割とか意図については大臣の御所見を伺いたいと思っていますが、日米韓。ちょうどきょうライスさんとお会いになって、そしてあすソウルへ行かれる。野党も、外務大臣がそういうアジアの外交でリーダーシップを発揮されるというのであれば、国会の審議の日程ぐらいうまく融通をきかせてやるべきだと私は思いますけれども、そういうことも含めて、ぜひお考えをいただきたいと思っております。

 それから、これもずっとこの間議論がありましたけれども、国連決議の要請するものについて。まず一つは、私たちにとって耳なれない言葉が今回出てきているんですが、制裁委員会。これは大臣ではなくて政務官、国連決議の中に、制裁委員会を設置する、そして三十日ごとに報告を求める、こういう文言がありますが、これはどういう機能を果たすんでしょうか。

松島大臣政務官 今回の決議に基づきまして設置されます制裁委員会について、御説明させていただきたいと思います。

 この制裁委員会は、すべての安保理理事国で構成されています。決議の適切な履行を確保するために、主に次のような任務を遂行することになっています。

 一つ、制裁措置の効果的実施のためにとられた行動に関する情報などを加盟国から収集する。二つ目、制裁措置の違反に関する情報や免除申請を検討する。三つ、制裁措置の対象品目、個人等を追加的に指定する。四つ、制裁措置の実施促進のために指針を策定する。

 以上でございます。

 また、この制裁委員会は、安全保障理事会に対して、この委員会の作業などについて少なくとも九十日ごとに報告を行うことが今回の決議で決められております。

 このように具体的な内容の定まった制裁委員会であります。

長島(昭)委員 ありがとうございます。

 それで、今回決められた制裁をきちっと実行するために、いわゆるインスペクション、船舶検査、あるいは貨物検査と今回は呼んでいるようでありますが、これは臨検とは違うんだということ、御説明が何度もなされております。

 一番端的に言えば、今アメリカが、特に今回、今国連にいるボルトン国連大使というのは、もともと国務次官で、軍縮・核拡散防止担当の国務次官であったわけですけれども、PSIをまさにリードした方でありまして、今回の国連決議に当たっても、ボルトン氏は、PSIがいよいよ成文化されたんだ、こういう言い方もしておりますし、シーファー大使も、やはり同じようにPSIに日本が参加をするということの期待感を述べておられます。

 アメリカがやはり一番典型的な成功例として頭に描いているのは、二〇〇二年の十二月、あの例のイエメン沖で、イエメンに北朝鮮からスカッドミサイル十五基でしたでしょうか、輸送中、アメリカとスペインの軍艦によって、まさに臨検の対象となり、そしてそれが発見された、こういう事例だと思うんですけれども、これをこれから恐らく日本海で展開をしていくことになるんだろう、こう思うんです。

 先ほど山口委員の御質問にもありました、まだアメリカ側がどういう形式で事に臨もうとしているか把握をしていないんだ、これからまさに決定を受けて日本側として参加の形態について検討するんだ、こういうお話がありましたが、きのうの御答弁でも、そんなすぐ簡単にやれるものじゃない、半月ぐらいはかかるんだという麻生大臣のお話でしたが、これも少しのんびりした話だなと私、客観的に思うんです。

 というのは、十月五日に谷内外務次官がクラウチ大統領副補佐官とホワイトハウスで会っていますね。そして、先ほど話に出ました佐々江局長がヒル次官補と会っています。こういうところで、朝鮮半島の平和をどうやって回復するか、あるいは北朝鮮に核を持たせないために、放棄させるためにどうしたらいいか、こういう大戦略ももちろんですけれども、これからあり得べき船舶検査あるいはPSIについて、アメリカ側はこういうふうに臨んでいる、イギリスが来るかもしれない、オーストラリアが来るかもしれない、こういう話は当然やっているんでしょう。いかがなんですか。

 全くそういう話がされないで今日に至っているとは私はとても考えられない。国会で言えないような事情があるんだったら別ですけれども、恐らくそれはないと思うんですね。これから起こる、後でちょっとエスカレーションの話もしたいと思っていますけれども、これからそういうことに日本が参加をしていく中でいろいろなリスクも当然あるわけですから、しかし、前広に国民の皆さんに対して説明をしていただくということが政府の姿勢としては望ましいと私は思うんですが、いかがでしょうか。

梅本政府参考人 谷内外務次官とクラウチ大統領副補佐官との協議について御質問がございましたので、ちょっと事実関係について御説明をしたいと思います。

 谷内次官とクラウチ副補佐官は、会談をやったときは、北朝鮮は核実験をするぞということは言っておりましたけれどもまだする前であったわけでございまして、核実験を実施したとする発表の前でございましたので、どういうふうに北朝鮮の核実験を阻止すべきかというようなことも議論をいたしましたし、また、仮に北朝鮮が核実験を実施するというようなときに日米がどういうふうに協力をしていくかということについても話をしたわけでございますが、ただ、船舶検査の細部をどうしようとかこうしようとか、そういうようなところの議論には、立ち入った議論はしておりません。

長島(昭)委員 にわかには信じがたいんですが、それはそれで、そういう情報公開のやり方だということで理解をしておきたいというふうに思います。

 いよいよ、じゃ、日本としてどうするか、日本の法的枠組みがどうあるべきか、こういう話に移りたいと思うんですが、麻生外務大臣、私は先ほどの御答弁を伺ってあれっと思ったんですが、例の周辺事態法を適用するかしないかという話。

 これはきのうも、私どもの前田委員が安保委員会で多少閣内不一致をつく質問をさせていただいたのですが、副長官、久間長官は最初から極めて慎重ですね。周辺事態法を適用する状況にはないんだということを再三御答弁なさっておられます。それに対して麻生外務大臣は、これは委員会の場ではないんですが、テレビや記者会見の場で、周辺事態の認定については法的には不可能ではない、あとは政治的決断だ、判断だ、こういうふうに述べておられて、二段階論ということで、つまり、周辺事態でまず対応して、そしてそれでも足りない部分があれば特措法を求めていくんだ、これは非常にリーズナブルなアプローチだと私は思っているんです。

 これは、それぞれのお立場がそう言わしめているのかなと多少推測をするんですが、やはり、外務大臣のお立場からすると、今回の七章決議をリードしたのはまさに日本です。そして、議長国である日本のリードによってこの制裁決議が行われ、それに基づいてまさに制裁を実効化するためのPSIが日本海に展開をするときに、いや、済みません、うちは実は余りきちっと参加できないんです、これは国際社会で、どうなっておるんだと。

 例えば、ちょっと話がずれるかもしれませんが、常任理事国入りを目指している、しかし、常任理事国になったはいいけれども、なった後、常任理事国に求められているいろいろな海外での活動が日本はできません、これでもおかしいわけでありまして、同じような轍を踏みかねない。ここに外務大臣は意を用いておられるのかなと私は推測をするんですが、外務大臣、ここではっきり、この周辺事態認定についての外務大臣としてのお考えを改めて承りたいと思います。

麻生国務大臣 長島先生、そのもう一つ前に、一つだけ確認をしておかないかぬと思いますが、先ほど、六カ国協議に戻るという話のところで、戻ってくればいいというわけじゃないだろうというお話だったんですが、これはもう一個大前提があると思うんですね。それは、だれも言っていないけれども、やはりこれは核保有国として六カ国協議に戻ってくるんですか。僕は、そこのところはきっちり詰めておかないと、核保有国というのを前提として戻すのかそうじゃないのかというのは、これはなかなか難しいところです。私は、そこのところが、どなたもおっしゃらぬけれども、ここのところは考えておかないかぬ大事なところじゃないかと思っております。

 それから二つ目の、今周辺事態法の話が出ましたけれども、久間長官と私との話でいろいろという点が出ていましたけれども、これは基本的には、今どうやって連携してうまくやっていくのかという話のときに当たって、何となく、やったことがないから皆想像の域を超えていないんだと思うんですね、この種のオペレーションを現実問題としてやったことが日本の場合はありませんので。したがって、どこをどういうぐあいにすればいいのかということが一番の問題なんだと思うんです。

 ただ、日本としては、PSIのことに関して言わせていただければ、これは、オペレーションというものがいつかはあり得るかもしらぬということで、これは過去二十回にわたって、いわゆる訓練をずっと、PSIの訓練、世界じゅうでやった訓練に日本はこれまで二十回参加をして、いわゆる核を拡散するということに対して、懸念国と言われるところに対して抑止的効果というものを持たせないかぬということで、そういったものをずっとこれまで訓練してきたことという事実はあるんです。

 そういったのがありますので、あれは昨年五月か、ですから、そういった意味では、イエメンの話を今言われましたけれども、少なくともアメリカはこのイエメンの話のほか十一件の事例を具体的な事例として多分言うと思いますが、そういったものを含めて、こういったものに効果あらしめたことは確かだと思っております。

 したがって、これは、武力をどうするとかいうことを考えるときに、私として一番、現実、時間的な問題が一点。もう一点は、現場をやらされる隊員にとっては非常に危険を伴う話を、自分の身を守るすべは、全部両手両足縛られて、やるだけやれと言われるというのは、これは明らかに法の不備によって前線に立たされる人たちが非常に不利なことになるというのは、国としては断固避けねばならぬ、基本的にはそう思います。

 したがって、そこのところの法律をきちんと整備した上でどうできるか、その法律に時間がかかりますので、それまでの間どうするかという話と二つ考えておく必要があるのではないか。基本的には、普通そう考えられるんだと思っていますが、現実問題として、今言われましたように、それに当たって、周辺事態法がそれに適用されるのか。時間的なものがあって、法律ができた後ぐらいから実際動き始めるのか。事実、日本の場合は完全に締め出ししちゃっておりますので、日本に直接どうのこうのというのは、直接影響するわけではありませんので、そこのところは少し違うかなとは思いますけれども、いずれにしても、ちょっといろいろなことを検討させていただかねばならぬと思っております。

長島(昭)委員 確かにこの問題は、別に閣内不一致云々ではなくて、我が党の中にもいろいろな意見がありますし、連立の中にもいろいろな意見があるし、恐らく自民党の中にもいろいろな意見があるんだろうと思います。

 ただ、一つメルクマールになるのは、いわゆる六類型と言われている、前原さんはもういませんけれども、前原委員が、当時、野呂田防衛庁長官に質問をして、そして周辺事態について政府統一見解をとって、その六番目に、「ある国の行動が、国連安保理によって平和に対する脅威、平和の破壊又は侵略行為と決定され、その国が国連安保理決議に基づく経済制裁の対象となるような場合であって、」ここまでは完全にクリアしているんですね、今回。「それが我が国の平和と安全に重要な影響を与える場合」、まさに重要な影響を与える場合。ですから、これでいけなくもないと。

 今まさに大臣おっしゃったように、限界があるんです。船舶検査法に基づく活動には強制性がないとか、あるいは武器使用にも非常に制限がかかっているとか、あるいはアメリカだけにしか支援ができないとか、こういうところを踏まえた上で、しかし、今ある中でどういう枠組みを使うかというのは、これはぜひ真剣に検討していただきたいし、そうはいいながら、久間長官が危惧をされている、今、日本の防衛法制の枠組みの中では、周辺事態の認定というのは、まさに防衛出動を下令する次の段階ですから、これは日本の側からエスカレーションの引き金を引く可能性もあるわけですから、ここにもやはり配慮していかなければならないというふうに私は思っております。

 それで最後、ちょっと事実関係を確認したいんですけれども、今大臣がPSIの訓練に二十回参加をしたというお話がありましたけれども、これは海上自衛隊はこれまで実戦の訓練には参加したことがあるんでしょうか。私の記憶では、専ら海上保安庁が実戦の訓練に参加をしたというふうに承っているんですが、いかがでしょう。

山崎政府参考人 過去、PSIの訓練は全部で二十四回ございまして、そのうち、我が国は二十回にわたり参加をしておりまして、オブザーバーの参加でございますが、そのほかに、派遣して、二回実動訓練に参加をしております。

長島(昭)委員 その二回は、自衛隊が二回ですか。海上自衛隊が二回。なるほど、わかりました。

 今回の、周辺事態法を適用するかあるいは特措法をつくるかは別にして、まずオペレーションの前線に立つのは恐らく海上自衛官の皆さんだろうというふうに思いますので、政府の皆さんにおかれましては万全の体制をぜひ築いていただきたいのと、野党の立場から言わせていただくと、多少時間がかかってもやはり特別措置法を一緒になってつくっていく、そして万全の体制をつくった上でオペレーションに入っていく、こういう方向をぜひ模索していただきたい、このことをお願い申し上げまして、質疑を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

山口委員長 次に、笠井亮君。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 北朝鮮の核実験に対する国連安保理決議と日本の対応の問題について質問いたします。

 私、先週の予算委員会でも安倍総理にこの問題を質問したときに、我が党は北朝鮮の核実験の暴挙に厳しく抗議するとともに、国際社会が一致協力をして、そして平和的、外交的に問題の解決を図る、つまり二つの原則が非常に大事だ、そしてその立場から問題解決を図ることを求めてきましたと申し上げました。

 この立場から、非軍事的措置によって事態の解決を目指す国連安保理決議一七一八が全会一致で採択されたことを歓迎して、支持するものであります。北朝鮮がこの安保理決議の要求、さらなる核実験や弾道ミサイル発射の停止、無条件での六カ国協議への復帰、核兵器と核開発計画の放棄、これらを速やかに受け入れるということを強く要求したいと思うんです。

 そこで、まず麻生大臣に伺いたいのは、この決議の持つ意味についてであります。

 今回の安保理決議について、安倍総理も大臣もそして各国の首脳も、それこそ国際社会一致して、北朝鮮に対して強い断固たる明確なメッセージと厳しい措置の決議を出すことができたと評価をしております。大臣は、どういう意味で、強く明確で厳しい決議になったというふうに評価されているのか、今回の決議の持つ政治的意味、重みについてどういうふうに受けとめておられるか、そしてそのことについて、北朝鮮に何を要求するんだということについてまず伺いたいと思います。

麻生国務大臣 何を要求するためのかというまず目的というのがないと何となく、日本のあれを見ていますと、国連決議を通すのが目的みたいな話になりますので。あれは単なる手段ですから。

 目的は北朝鮮の核の廃棄です。これが本来の目的。それをさせるための手段として、いわゆる対話と圧力というので、今回の国連の決議一七一八はその圧力の方になります。

 その圧力を、約六日間、一週間弱の極めて短期間に、いわゆる国連憲章第七章という拘束力を持つ憲章の条項で、かつ経済制裁という四十一条というのを添えて全会一致でこれを通せたということは、北朝鮮に対して、世界じゅうとして、だれもおたくらの核を持つということを望んでいませんというのを極めて迅速にメッセージを伝えたというところが一番大きな意義だった、私自身はそのように思っております。

笠井委員 そうした北朝鮮に対する強い政治的なプレッシャーということでありましたが、実際、この決議の中では第八項の中で具体的に決定された経済制裁の内容がありますが、経済的なと言うとあれですが、重みといいますか、北朝鮮に対して、北朝鮮以外の百九十一カ国の国連加盟国がとっていく措置というのがどういう効果を北朝鮮に影響といいますか、与えていくというふうに大臣はお考えでしょうか。

麻生国務大臣 これは笠井先生御存じのように、一からずっと書いてありますけれども、その中でいわゆる軍事関連とかミサイル関連とか核関連というのは、もともとここは武器輸出の対象の品物ですから日本としては全然関係ない、新しく言われなくてももともとやっていないから、新たにどうのこうのという種類の話ではありません。

 ただ、その中に入っているもので新たに決まったもので一番関係があるのは、奢侈品として、高価なものという意味なんだと思いますが、これを買っているのはあの国は一人ぐらいしかいませんから、だからこれは御本人には関係があるかもしれませんけれども、ほかには余り買う人はいないんじゃないかなという感じがします。

 しかし、いずれにいたしましても、貨物検査というのはいわゆるインスペクション・オブ・カーゴと言われる、臨検、臨検とみんな言っている、この貨物検査を含む実施を求めておるんですが、こういったことを見ますと、私どもとしては、この効果というのはどれぐらいあるのかというのは、これは定量化するというのはなかなか難しいんだと思っております。

 ただ、日本としては、今、貿易量というものはこの十年間のうちに大分激減をしておりますので、そういった意味では、日本が新たにこれに入ったより、日本が独自でやっております北朝鮮籍の船舶の入港禁止、北朝鮮との貿易、こっちの方が経済的な意味としては大きいと思っております。(笠井委員「全体としては」と呼ぶ)全体として。

 したがって、経済としてはその種のものは大きいのですが、やはり一番大きな影響力は、日本が減った分だけふえておりますのが中国ですので、中国も含めてこの制裁に賛成をしたというところが今回一番大きい効果を生むであろうと思っております。

笠井委員 それこそ、そういう決議を国際社会が一致協力して、非軍事的なものに限定する立場に立っている、今回の制裁措置を国際的に協調して行おうということが大事だということだと思うんです。

 この点で、今度の安保理決議の第十三項というのがあるんですが、そこで、国連加盟国、とりわけ六カ国協議の当事国に対して、朝鮮半島の非核化を誓約した昨年九月の共同声明がありますが、その速やかな履行を目指して、緊張を激化させる可能性があるいかなる行動も慎み、六カ国協議の早期再開を促進するという外交努力をさらに強めるということを求めている、私、この点は重視すべきではないかと思うんです。

 大臣は、加盟国、そして六カ国を含めて、緊張を激化させる可能性があるいかなる行動も慎むとみずから決めたことの意味について、どのように受けとめていらっしゃるでしょうか。

麻生国務大臣 この中で、十三項、検証可能な朝鮮半島の非核化の達成というので、ざっと今笠井先生が言われたとおりなんですが、すべての関係国が外交努力を強めること、緊張を高める行動を控えること、結果として六者協議の早期再開を促進することになるということを慫慂すると書いてあるところだと思います。

 基本的には、僕はちょっと正直、金正日という人にどれだけ正確な情報が入っているのかというのがなかなかよくわからぬところなんです、これまでのことを見ると。こんなというときにいきなりぼん、中国がせっかく中に入ってうまくやろうとしているときにいきなりぼんとやってみたり、とにかく、よくこっちとこっちが、日本の役所の方がよっぽど横の連絡がとれているなと思うぐらいひどいなと思いますので……(発言する者あり)本当に嫌みなんですけれども、それぐらいここは連絡が全くとれていないわけです。外交部とやっていてちょっとおかしいんじゃないのと、多分、軍と外交部とか、そういうところが物すごくちぐはぐになっているんだと思います。

 いずれにしても、私どもは、この種の話で軍がとにかく断然強くなってきていることは確かなんだと思うんですね、この数年間の間。拉致の話の後半ぐらいから、とにかく軍が物すごい勢いで影響力を増しつつあるという状況にあると分析されますので、その意味では、今回の一連のものが、とにかく、追い詰められた、わあっというような感じになって、何か世界じゅうおれたちをいじめているというような話に勝手に話をすりかえやら何やら、思い込みの激しいところになりますので、そういったところが私どもとしては最も気になるところがこの十三項というようにぜひ御理解いただければよろしいのじゃないかと存じます。

笠井委員 今大臣が言われましたこの十三項をあえて盛り込んだのは、緊張を激化させる可能性がある行動をとるということになると、軍事的対応はエスカレーションを呼んで相手の暴発を招きかねない、最悪の事態になっちゃいけないんだ、そこを慎んで慎重にやるんだという趣旨で、そうしないと、せっかく決議を上げて六カ国協議に帰ってこいと言っているのに、その道を閉ざすことになったら元も子もないということだと思うんです、大臣も今うなずかれていますが。

 ところが、その点からいうと、先ほど来ありますが、日本の政界の一部に、ある意味世界に突出して、軍事的対応を進めて緊張を激化させる可能性がある行動が目立ってしまっている、これは私は重大だと思うんです。

 先日来、核武装議論の中川発言に続いて、実は大臣も、きのうの安保委員会の会議録を拝見しますと、いろいろなものを検討した上で持たないというのも一つの結論、選択肢だという言い方で核保有の問題を言われたというので、私は率直に言ってちょっと驚いたんですね。

 議論自体否定しないということになると、被爆国としては検討、議論の余地なし、もともとそういう問題でありますし、まして国連で核兵器廃絶を提案している政府の外相ですから言ってほしくない、あるまじきことだと率直に思いました。私はこれを取り消していただきたい、これが一つ。

 もう一つは、大臣がこの間、テレビでのコメントですけれども、周辺事態の認定はあり得るという形で、船舶検査法の発動とか自衛隊が船舶検査に参加する可能性について言及されたというのがありました。

 私、国際社会が一致協力して、非軍事の経済制裁で事態の平和的、外交的解決を目指そうとして、それこそ緊張を激化させるいかなる行動も慎むというふうに決めているときに、その決議を履行して外交の先頭に立つ大臣が周辺事態認定あり得るという話をすると、これは率直に言って安保理決議に反するんじゃないか、そうさえ思うんですが、北朝鮮に対して誤ったメッセージを送るような、そういう軍事的な対応の可能性があり得るというようなことはそれこそ慎むべきじゃないかと思うんですが、いかがでしょうか。

麻生国務大臣 インスペクション・オブ・カーゴという貨物検査というものの中には、これは軍事とは限らず、例えば中国、北朝鮮、ロシアの立場から見れば、陸上でつながっている国につきましては税関の話です。もしくは警察の話、もしくは麻薬検査官の話なのであって、直ちに軍事行動というわけではないという点も、これはインスペクションですと船舶検査になりますが、インスペクション・オブ・カーゴと書いてありますので、これは貨物検査ということになりますと船舶に限らない。したがいまして、必ずしも直ちにそれが軍事という意味ではないというように、ここのところはすごく英語の大事なところかなと思っております。

 それから、もう一点の核の話ですけれども、これは、日本という国が非核三原則を維持することにつきましては、今後ともこれをやっていくということに関しましては、政府としての立場は変わっているわけではありません。

 私が申し上げているのは、とにかく核の話を、これはもう何十年前からキッシンジャーという人がその話をし、いろいろな人がその話をしているのであって、この話を全くしていない、日本の核保有について全くしていないのは多分日本自身であって、ほかの国はみんなしておるというのが現実だと存じます。この政治の世界に足を入れてこの方、ずっといろいろなところで聞かされてきた話ですから、いやいや、ないないないと言っても、とにかく言い続けられてきて二十何年たったということだと思います。

 ただ、そのときに、隣の国が持つというようなことになったときに、一応そのことに関して検討をするというのもだめ、話もできない、何にもしないというのはあれなのであって、いろいろ意見の交換をしておくというのもだめだという、それはまたそれで一つの考え方かとは思いますが、一つの考え方としていろいろな議論もしておくというのは大事なことだ、私はそう思います。

笠井委員 最後に一言ですが、議論もだめ、検討もだめというようなことでという話になりますと、これは国際社会に誤ったメッセージを出しますよ。やはり、国連で核兵器廃絶決議を提案されているけれども、今度賛成を得られなくなるかもしれない、そういう問題につながる、大義を失う問題だということは、きっちりこれは大臣、考えていただきたい。

 それから、周辺事態法の問題は、検査ということだけじゃなくて、つまり、米軍と自衛隊が海外で軍事的な共同をやるという枠組みでありまして、実際に戦闘行為に乗り出して補給とか輸送をするという、兵たんをやっていくということにつながるわけです。だから、軍事の共同の枠組みを今度の安保理決議を根拠にして発動するというのは間違っている。

 私は、この安保理決議、大事なことをきちっと、抑えも含めてやっているんだから、やはりそういう立場で、日本政府は事態の外交的、平和的解決の努力に徹して、いかに前向きに事態を解決させるか、やはりそこに打開するかということに心血注ぐべきだ、まして、緊張を激化させるということは絶対やってはならないということを重ねて述べておきたいと思います。

 今回はこれで終わります。

山口委員長 次に、照屋寛徳君。

照屋委員 社会民主党の照屋寛徳です。

 北朝鮮の核実験は、いかなる理由があれ容認できません。私や社民党は、国連安保理による制裁決議を支持するものであります。

 一方で、北朝鮮の核実験を口実に、日本も核保有議論をすべしとの自民党中川政調会長の発言や、麻生大臣の、周辺事態法に基づいて周辺事態と認定をする可能性の発言については、反対を明確にせざるを得ません。

 さて、多くの沖縄県民が基地機能の強化につながるとして強く反対していた嘉手納基地へのパトリオットミサイル、PAC3配備が強行されました。PAC3の配備は嘉手納基地を守るための配備で、沖縄を守るための配備とは県民のだれ一人も考えておりません。嘉手納基地における演習の削減や沖縄全体の基地負担の軽減が具体的に進められない中でのPAC3配備は、断じて容認できません。

 ところで、米軍再編実施のためのロードマップによると、PAC3は日本における既存の米軍基地に展開されるとの日米合意にすぎません。

 外務大臣に尋ねます。

 どのような日米交渉を経て、嘉手納基地への配備が決まったのでしょうか。何のために嘉手納基地へ配備されるのでしょうか。どうして嘉手納基地でなければいけないのでしょうか。明確にお答えください。

麻生国務大臣 これは、照屋先生、北東アジアにおけますいわゆる弾道ミサイルの開発とか配備とかいう話につきましては、五月でしたか、2プラス2の合意文書というのはお手持ちだと思いますが、あの文書におきまして、「米軍のパトリオットPAC3能力が、日本における既存の米軍施設・区域に展開され、可能な限り早い時期に運用可能となる。」旨記述をされております。これは、もう既に五月の話です。

 これを踏まえまして、既存の米軍施設とか区域の中から、いわゆる地域とか後方支援の容易性とかいろいろなものを考えなきゃいけませんが、地域防衛の必要性とか抑止力の維持というようなものを考えて、総合的に勘案した結果、嘉手納に配備するとの決定に至ったと記憶いたします。

 いずれにしても、このPAC3というのは、弾道ミサイルというものの脅威から日本の、特に沖縄というものを防護するために配備をされる純粋に防御的なシステム、私どもはそう理解をいたしております。

 したがいまして、この防御的システムの配備によりまして、在沖縄米軍の抑止力というものは維持されるということは当然でして、沖縄はもちろんのこと、沖縄を初めとする全国のいわゆる安全に資することになる、私どもはそのように理解をいたしております。

照屋委員 PAC3は嘉手納基地へ配備されますが、キャンプ・ハンセンなど、他の基地にも移動の上、運用されるんでしょうか。

大古政府参考人 米軍のPAC3につきましては、委員御指摘のとおり、嘉手納飛行場等に配備されるということで予定されておりますけれども、PAC3システムそのものにつきましては、重要拠点を防護するため、状況に応じ、最適な場所に機動的に展開するシステムでございます。

 しかしながら、米軍のPAC3につきまして、他の施設・区域への移動、運用の計画につきましては、米軍の運用にもかかわる問題でございますし、そのときの状況にもよると思いますので、この場でのお答えは差し控えたいというように思います。

照屋委員 那覇防衛施設局の佐藤局長が、去る十月四日、配備に反対するいわゆる三連協の代表に、PAC3配備は沖縄の政治経済の機能を守るためだ、このように説明しておりますが、これは防衛庁、防衛施設庁の統一見解でしょうか。

北原政府参考人 照屋寛徳先生に御答弁申し上げます。

 今御指摘の、私どもの佐藤那覇防衛施設局長でございますが、十月四日に三連協の陳情を受けております。そして、その際に私どもの佐藤が申し上げましたのは、PAC3の配備は沖縄の政治経済などを守るためのもので、そしてさらに加えて、言いかえれば、沖縄県民の生命財産を守るものだと理解しているといった趣旨の回答をしている、そのように承知しているところでございます。

 いずれにいたしましても、私ども政府といたしまして、今回のPAC3、これは先ほど外務大臣からもございましたけれども、弾道ミサイルの脅威から我が国、特に今回のPAC3については沖縄を防護し、沖縄県民を含む国民の生命財産を守るために配備される純粋に防御的なシステムである、そのように考えているところでございまして、このシステムの配備というものによりまして、在沖米軍が有する抑止力も一層確実に維持されることになりまして、沖縄を初めとする我が国の安全に資するものである、そのように考えております。

 それから、先生、恐縮でございますが、一点だけつけ足させていただきたいのは、目に見える形での嘉手納等の負担軽減が進まない中でといった御指摘がございました。私が七月二十日に現地に説明に参りましたときも、そのように各首長さんから御指摘を受けました。そして、その七月二十日以降、例えば嘉手納基地の負担軽減のための訓練移転につきましては、本土の関係自治体の方から、かなり多くの自治体から御理解をいただいておりまして、基地が所在する自治体を中心にいたしますと訓練移転の関係では全部で二十二道県市町が関係してまいりますが、そのうちの、きょう今現在まででは二十まで何とか御理解をいただいておりますので、我々、これからも懸命に、目に見える形での負担軽減を得るべく、地元の御理解を得ていきたい、そのように考えております。

照屋委員 防衛庁に伺いますが、PAC3の射程距離は高さが幾らで半径は幾らでしょうか。端的に答えてください。

大古政府参考人 PAC3の性能でございますが、高度につきましては十数キロメートルぐらい、それから防護範囲につきましては一個高射隊につき半径数十キロメートルということでございます。

照屋委員 大臣、軍事専門家によると射程距離は半径十五ないし二十五キロだ、こういう指摘もあります。この場合、嘉手納基地に配備をしても、県都であり沖縄の政治経済機能の中心である那覇市が防衛範囲に入るとは思われないんです。

 そうすると、那覇防衛施設局長の佐藤さんが、沖縄の政治経済の機能を守るためだ、こう言ったって、第一、嘉手納に配備されたPAC3は那覇まで射程距離に入らないんだから守れるはずがない。結局は、沖縄を守るあるいは日本を守るといっても嘉手納基地を守るための配備ではないか、こういうふうに多くの県民は言っているし、現実に嘉手納の宮城篤実町長は、沖縄を守るんだといっても結局は嘉手納基地を守るんだ、これにすぎない、このように批判をしておりますが、大臣もしくは防衛庁に反論がありましたらお聞かせください。本当にこの射程距離で沖縄の政治経済の機能が守れるんですか。

麻生国務大臣 詳細は防衛庁に聞いていただいた方がいいと思いますが、この種の射程距離というのは軍事機密ですから、これしか届きませんよなんてあらかじめ言う人はいますかね。ちょっと私はにわかに信じがたいんですが、細目は聞いてください。

大古政府参考人 先ほども答弁申し上げましたように、PAC3につきましては、その状況に応じて最適な場所に機動的に展開するシステムでございます。

 それから、そのほか、兵器の性能ですので細部は御答弁できないことは御了解いただきたいんですが、レーダーの置き方、それからミサイルのランチャーをどう置くかによって、いろいろその時点に応じた最適な運用ができるというふうに考えているところでございます。

山口委員長 照屋寛徳君、質問時間が終わっておりますので、端的にお願いいたします。

照屋委員 私は、この兵器の性能をきちんと掌握しないで米軍再編に関するロードマップでPAC3の配備を日米両政府が合意すること自体がおかしい、こういう意見を申し上げて、終わります。

山口委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時十五分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.