衆議院

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第5号 平成18年11月8日(水曜日)

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平成十八年十一月八日(水曜日)

    午前九時三分開議

 出席委員

   委員長 山口 泰明君

   理事 小野寺五典君 理事 三ッ矢憲生君

   理事 三原 朝彦君 理事 やまぎわ大志郎君

   理事 山中あき子君 理事 長島 昭久君

   理事 山口  壯君 理事 丸谷 佳織君

      愛知 和男君    伊藤 公介君

      宇野  治君    小野 次郎君

      河野 太郎君    高村 正彦君

      篠田 陽介君    新藤 義孝君

      鈴木 馨祐君    原田 憲治君

      松島みどり君    盛山 正仁君

      山内 康一君   山本ともひろ君

      田中眞紀子君    長妻  昭君

      前原 誠司君    三日月大造君

      山井 和則君    柚木 道義君

      笠  浩史君    高木 陽介君

      笠井  亮君    日森 文尋君

    …………………………………

   外務大臣         麻生 太郎君

   法務副大臣        水野 賢一君

   外務副大臣        岩屋  毅君

   厚生労働副大臣      石田 祝稔君

   外務大臣政務官      松島みどり君

   政府参考人

   (内閣府沖縄振興局長)  原田 正司君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 猪俣 弘司君

   政府参考人

   (外務省中南米局長)   三輪  昭君

   政府参考人

   (外務省経済局長)    石川  薫君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           白石 順一君

   政府参考人

   (厚生労働省職業安定局高齢・障害者雇用対策部長) 岡崎 淳一君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局長)           中村 秀一君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房審議官)           佐久間 隆君

   政府参考人

   (水産庁漁政部長)    竹谷 廣之君

   政府参考人

   (水産庁資源管理部審議官)            五十嵐太乙君

   政府参考人

   (経済産業省通商政策局通商機構部長)       小川 恒弘君

   外務委員会専門員     前田 光政君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月八日

 辞任         補欠選任

  猪口 邦子君     山本ともひろ君

  嘉数 知賢君     原田 憲治君

  笹木 竜三君     山井 和則君

  長妻  昭君     柚木 道義君

  笠  浩史君     三日月大造君

  照屋 寛徳君     日森 文尋君

同日

 辞任         補欠選任

  原田 憲治君     嘉数 知賢君

  山本ともひろ君    盛山 正仁君

  三日月大造君     笠  浩史君

  山井 和則君     笹木 竜三君

  柚木 道義君     長妻  昭君

  日森 文尋君     照屋 寛徳君

同日

 辞任         補欠選任

  盛山 正仁君     猪口 邦子君

    ―――――――――――――

十一月七日

 ドミニカ移住者に対する特別一時金の支給等に関する法律案(外交防衛委員長提出、参法第一号)(予)

同月八日

 ドミニカ移住者に対する特別一時金の支給等に関する法律案(参議院提出、参法第一号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 経済上の連携の強化に関する日本国とメキシコ合衆国との間の協定第五条3及び5の規定に基づく市場アクセスの条件の改善に関する日本国とメキシコ合衆国との間の議定書の締結について承認を求めるの件(条約第一号)

 経済上の連携に関する日本国とフィリピン共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第二号)


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     ――――◇―――――

山口委員長 これより会議を開きます。

 経済上の連携の強化に関する日本国とメキシコ合衆国との間の協定第五条3及び5の規定に基づく市場アクセスの条件の改善に関する日本国とメキシコ合衆国との間の議定書の締結について承認を求めるの件及び経済上の連携に関する日本国とフィリピン共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件の両件を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 両件審査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房審議官猪俣弘司君、中南米局長三輪昭君、経済局長石川薫君、内閣府沖縄振興局長原田正司君、厚生労働省大臣官房審議官白石順一君、職業安定局高齢・障害者雇用対策部長岡崎淳一君、社会・援護局長中村秀一君、農林水産省大臣官房審議官佐久間隆君、水産庁漁政部長竹谷廣之君、資源管理部審議官五十嵐太乙君、経済産業省通商政策局通商機構部長小川恒弘君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

山口委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

山口委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。柚木道義君。

柚木委員 失礼いたします。民主党の柚木道義でございます。

 本日は、所属委員会は厚生労働、経済産業ではございますが、今回の議案が外国人労働の受け入れ等を含むものであるということで、こちらの委員会での発言の機会を与えていただきまして、感謝を申し上げます。

 まず冒頭、外務委員会、きょうは麻生大臣初め副大臣等お越しいただいているわけですが、特に麻生大臣には初めてこういった形で御質問させていただくということで、実は、私と大臣とは日本青年会議所の先輩、後輩という間柄でもございまして、きょう国会が終わった後も地元に帰りまして、岡山県倉敷市の青年会議所の委員会に出席をする、そういった状況にあるわけですが、そういった政治家としても大変尊敬をする政治家である麻生大臣にこういった形で質問させていただけるということで、大変に感激をしております。

 そういった中、そういう私の個人的な思いはあるんですが、現状としては、御承知のとおり、核武装論の発言、その是非あるいはその議論そのものの必要性等、さまざまな反響を現在呼んでいる状況にございます。本日もちょっと資料にも一枚目におつけしておりますが、これまでの主な核武装論の発言ということで、幾つかこちらにコメントをまとめさせていただきました。

 冒頭少し、これまでの当委員会での我が党委員と大臣とのかなり専門的な、踏み込んだ、ある意味では大変生産的なやりとりもあったように承知しておりますので、私としては、そういった議論を踏まえて、幾つかポイントを絞って、今回の核武装論に対して改めて麻生大臣の方にお伺いをさせていただきたいと思います。

 これまで核武装論に対して当委員会でも質疑が行われてきたということは申し上げたとおりですが、それを踏まえた上で私からまず質問させていただきたいと思うんです。

 それは、私は、大臣御自身もあり得ないというふうに発言もされているように承知はしていますが、仮に万が一我が国が核武装をするという場合の、あるいは現状で核武装を議論することというふうにニアイコールでおっしゃっていただいてもいいんですが、そのメリットとデメリットは何であるというふうにお考えになられるか、大臣の御見解を伺いたいと思います。

麻生国務大臣 今いろいろ、核論議の話というのがこの間の話からずっと出ていますが、おたくの党の中ではきっと縦割りになっていてなかなか横の話ができないから、これまで歴代答弁をした隣にいる人の話なんかはきっと聞かせていただいていないからまた同じ話をするようになるので、山口さんあたりからちゃんと教えておいてもらうとこんな質問をしなくて済むのに、本当に済みませんね。大変でしょう。

 同じ話をずっと何回もするようになりますので、私の考えるのは、一般的な話として、国の安全保障のあり方というものは国際情勢によっていろいろ違います。特に、二極と言われたあの冷戦構造の時代、昭和四十年代の佐藤内閣のときにつくられた、持たず、つくらず、持ち込ませずという三つの原則というものができたんですが、そのころと違って、今隣に、核弾頭かはともかく、核実験をやり、少なくともそれを搬送するミサイルという技術を持った国が隣に出てきて、かなり勇ましいことを言っておられるという国が出てきたという状況を踏まえて、こういった国民的な議論というのはあり得るのではないか、それを封殺するかのごとき話は私はしません。

 ただし、日本という国は、核兵器をつくらず、持たず等々の三原則というものにつきましては、これまで歴代内閣がずっと累次にわたって発言してきたとおりでもありますので、少なくとも私どもが今後ともこれを堅持していくという立場については全く変わってはおりません。

 加えて、この原則の話以上に、原子力基本法という法律もあります。これによって、日本の原子力に関するいろいろな活動というものは平和目的に限定をされていると法律で決められております。加えて条約もありまして、NPT、核不拡散条約か核兵器不拡散条約かという、通称ノンプロリファレーション・トリーティーというんですが、NPTというあれもありますので、核というものに関しては兵器の製造というようなものはできないという義務を条約でも負っておりますので、原則、法律、条約と三つかかっておりますので、このようなことを考えてみますときに、日本が核兵器を保有することはないということははっきりしております。

 いろいろな国からこのことに関して御意見があるかと言われると、私どものところに直接、この種の話を面と向かって聞かれるというようなことも、これは各国みんな知っておられますから、そういったしかるべき立場におられる方々から公式の場でこういったことを質問を受けたことはありません。

柚木委員 大臣、私、今回の議論、あるいは仮に万が一そういうことになる場合のメリット、デメリットというふうにお尋ねして、説明をいただいたんですが、若干そこの部分、十分にお触れいただけなかったような気がするんです。

 私自身は、大臣、これは実は大臣御自身も質疑の中で触れられていることであるようには思うんですが、やはりメリットとしては、核の抑止力というか、これはアナウンス効果ということも含めて言っていいかもしれません。逆に、デメリットは、核の拡散につながってしまうというふうに考えるわけですね。

 そうである場合、実は当委員会で先日、十月の二十七日、我が党の前原委員との質疑の中で、私も議事録を拝読いたしましたが、北朝鮮側の状況が今変化をしているということが前提にあるとおっしゃいましたが、その中で、仮に一つのシミュレーションとして、北朝鮮が追い詰められて暴発をするということについて少し質疑があったように承知をしております。その場合には、実際、核の抑止効果がないというか極めて限定されるというふうなことは、大臣も質疑のやりとり中でこれはお認めになられています。

 つまり、現状として、今回、大臣以外にも、中川政調会長であったり、きょうまた笹川自民党党紀委員長ですか、新聞等にも載っておりますが、さまざまな議論を喚起している状況にあるにもかかわらず、その喚起した核武装の議論をこういった場で既に行っているわけですが、それによって結果的に、例えば今、北の暴発の事例を申し上げました。当初、核武装論の一つのメリットである抑止効果と考えられていたはずにもかかわらず、実は、議論していくと、そういったことに対応できないじゃないかということが判明もしてきているわけであります。

 そういったことを考えると、私としては、むしろデメリットである、つまり、核の拡散あるいはひょっとしたら核武装、ドミノというふうに私はこちらの資料にもお書きしましたが、そういった方を心配しなければいけない状況がむしろこの議論によって加速をしてきているんじゃないかと思うわけです。

 ですから私は、そういう中で、今大臣に対してメリット、デメリットということでお伺いをさせていただいたんですが、実はこの質疑の中で、私が少し気になる大臣の御答弁がございました。それは、同じく前原委員との質疑の中で、日本が現状のような経済繁栄をかち取った結果、今度は逆に、アメリカの中で別の意見がまた出てくるというのも、これは自由な国ですから、いろいろな意見が出てくるという状況になっているんだと思いますというふうに大臣はおっしゃっているんです。

 私は、この中の、これはきょう資料にも二枚目にこの議事録を一枚おつけしておりますが、別の意見であったりあるいはいろいろな意見というのは、この文脈からいたしますと、恐らく我が国の核保有あるいは核武装を含んでいるという意味合いで大臣はおっしゃられたんだというふうに思うわけです。といたしますと、仮にアメリカが、いろいろな議論がある、日本の核保有、核武装に反対しなければとか、あるいは核武装を求めてきたらとか、そういった場合に、我が国の核保有あるいは核武装はあり得るのかあり得ないのか、そういったことが大変私としては、今回のこの答弁の中から、やはりここでひとつ大臣から説明をいただきたいというふうに思うわけでございます。大臣、いかがでしょうか。

麻生国務大臣 柚木先生、重ねて言いますが、私の方からこの議論をしたことなどないのです。ないのです。その話を否定しても、山口さん、また連絡が悪いから、また別の方、そしてきょうは柚木さん、参議院に行ったら参議院に行ったでまた別の方が延々と、理事の方が仕事をしていないのかなとか、いろいろなことを考えないわけじゃありませんけれども、きちんとその話を言うと、多分私の前の答弁と同じことを読まれることになるんだと思いますが、議論というものは、質問がない限り、私はお答えしたり自分の方から発言しておるわけではない、ここだけは重ねて申し上げておきますので。こちらから議論を吹っかけているのではない、そちらからの質問に答えている、ここはよく間違えないようにしていただかないと、また質問を受けて、またすると、おまえ、また議論したじゃないかと言われると、これはマッチポンプじゃなくてマッチマッチみたいな話になってくると、ちょっと私の方としては少し違うんじゃないかなと思っております。

 それから、このアメリカの話の中で、金をかけろという話やら何やらというのは、日本の場合は、軽武装で、経済に特化して戦後の復興というのをなし遂げている。これは非常に成功して、一時期、一人当たりのGDPでアメリカをというような時代が八〇年代後半に起きるまでに行って、御存じのように、円はいきなり暴騰した形になりましたので、あの段階で非常な勢いで日本というものは、経済的には一時期しんどいような話がありましたけれども、自国の通貨が高くなって破産した国なんというのは世界じゅうありませんから、そういった意味では、自国の通貨が高くなったら高くなったような経済につくりかえて日本というものがまたのし上がってきたのが八〇年代後半だったと思っております。

 したがって、そうなってくれば、いろいろな意味で、アメリカというのは自由な国ですから、日本に対して世界の平和のためにもっとこういうのをしてもらうべきではないかといって、例えば通常兵器というものの中にもそういったものは考えられるというのであって、今いろいろな意味で、この極東というところにおいては、御存じのように、いわゆる一党独裁の国はまだそこに存在しておるわけですから、そういった状況では、ユーラシア大陸の西半分とこの東半分とはかなり違った状況にある。朝鮮半島、台湾海峡、いずれもそういった状況というものを我々は考えて、そこらの状況が不安定になりますと、日本の通商に影響を与えるということも御存じのとおりですので、そういったものを考えた上で我々は対応していかねばならぬということになろうと存じます。

 いずれにしても、自分の国のことですから、自分の国は基本的に自分で守るというのが基本だと思いますので、そういった防衛論議というものは、いろいろな状況に合わせて、いろいろな方々が論議をされておかれるという必要はあろうかと存じます。

柚木委員 この議論ばかりやっているわけにもいきませんが、大臣御自身から議論したことはないとおっしゃられたわけですが、やはり、その議論の必要性があるという認識をお示しになられること自体がこういった議論を呼ぶということは、当然、大臣でいらっしゃいますから、想定内のことでないかと私は考えるわけです。

 そういった中で、今、私の質問に対してそういった御答弁をいただいたわけですが、やはりこれは、きょうも笹川さんのこの記事、繰り返すわけではありませんが、非核三原則をしっかりと守って、アジア地域の非核化、こういったものに外務大臣として我が国の先頭に立って取り組んでいく、仮にアメリカがそういったいろいろなことを求めてきたとしても、日本としてはそういったことをしっかりと堅持していくんだというメッセージをしっかりと諸外国に対してあるいは世界に対して発信していきたいということをお願い申し上げて、次の質問に入らせていただきたいと思います。

 きょうは、実はこの資料をめくっていただくと、三ページ目、これもきのうの読売新聞の朝刊のトップで、私がきょうこうやって質疑をさせていただく直前にこういった記事が出たことに対して、私は大変に憤りというか、あるいはあきれているような状況があるわけでございます。

 ちょっとパネルにして、ちょっと小さくて、大臣もあるいは関係副大臣の皆さんも見づらいかもしれませんが、資料もおつけしておりますのでごらんいただきたいと思いますが、天下り同士が独占契約を結んで、しかも対象は研修外国人向け保険、手数料、年間三億円。記事を読んでいただければわかるんですが、この国際研修協力機構には数々の天下りの役員がいる。しかも、そこからさらに国際研修サービス社にも二重三重の天下りがあるような、そういう状況があるわけでございます。

 この新聞に載っているこの図を多少整理したものをこちらにお示ししているわけですが、これだけ天下りが批判を受けている中で、またしても今回こういった独占契約といったような事例が明らかになったわけであります。

 これは、私としましては、日本とフィリピンとの経済連携協定はもとより、今後、アジア諸国を初め世界各国との連携協定を積極的に推進していくべきと考えておりますし、政府としてもそういった取り組みを現在行っている中で、今回のような労働力不足に悩む中小企業、ひいては、これが結果的にこの研修外国人自体をも、これ、記事をちょっと読んでいただければおわかりになりますが、まさに食い物にするような、こうした時代錯誤な天下り厚遇、これが実際に起こっていることに対して、これはここに、記事にも出ておりますとおり、五省の所管であって、特にこれは法務、厚生労働が重立った所管でありますから、後ほどおのおのの副大臣、法務副大臣はこの後になるんでしょうが、御答弁いただきますが、きょうはせっかく麻生外務大臣がいらっしゃいますし、しかも、この五省の中には外務省も所管省庁の一つでございますので、今回のこうしたあきれた実態に対して、麻生大臣、これは所管大臣として、この二点、お伺いしたいと思うんです。

 この天下りの実態、記事にもあります。機構も天下り役員を厚遇しており、元名古屋高検検事長の理事長の場合、年間報酬は少なくとも一千七百万円、前年に退任した前理事長は六年間務めて約二千五百万円の退職金が支払われていた、あるいは、省庁退職者の常勤理事のうち、厚労省出身の一人はここが既に二つ目、経産省に至ってはもう三つ目の天下り先、こういった天下りの実態、そして、この一社十五年間、いわゆるもたれ合い、特定企業による契約独占が行われている、この二点です。

 天下りの実態、そして特定企業による独占、この二点について、今後、麻生大臣、所管大臣のお一人といたしまして、どう対処すべきと思われるか、御答弁をいただきたいと思います。

岩屋副大臣 ちょっと事実関係もございますので、その点、私の方からお答えをさせていただきたいと思います。

 まず、先生御指摘になったJITCOへ向けてのいわゆる先生がおっしゃる天下りですが、JITCOの理事数は非常勤を含んで二十九名でございまして、そのうち行政OBは九名、これは公益法人の指導監督基準、すなわち理事に占める行政OBの割合は三分の一以下とするというのはクリアしているというふうに考えております。外務省の方は神谷武氏が常務理事兼国際部長、この方は退職出向の形になっておりまして、また外務省に戻ってくるという予定でございます。また、畠中篤氏、非常勤理事としておりますが、理事以外に顧問一名、評議員二名出ているということでございます。

 これはそれぞれの法人がそれぞれの責任に応じて必要な人材を選任しているものと考えておりますが、先生御指摘のように、いわゆる天下りを押しつけるということがないように外務省としても適切に対処していきたい。そして、五省共管でございますが、外務省も責任がございますので、いわゆる独占的な仕事の割り振りをしているのではないかということについても適切に指導監督していきたい、こう思っております。

柚木委員 今御答弁で適切に対処していくとあるんですが、まず、基準をクリアしていればこういった実態があるのは構わないのかということは、しかも、この国際研修協力機構と国際研修サービス、この間の天下りも起こっていて、一般の損保会社からしてみれば、この国際研修サービスのようなほとんど営業活動をしていないような形態における独占契約は、はっきり言って民業圧迫だというようなことも出ているわけですよね。まず、こういう実態があることに対してどう改善をしていくのか、これは当然精査をしてもらわなきゃ困ります。天下りのことはもちろんです。

 また、これは総収入二十八億円中十一億円ですから、四〇パーぐらいですか、この企業の賛助会員収入で実際にこの収益が賄われている。四割もの収益がこの賛助会員からの会費で賄われているような状況で、実際にこの研修生に対する、さまざまな企業との雇用関係等も含めて、指導がどこまできっちり行われるのか。これはだれが考えても本当に大丈夫なのと思うわけですよ。

 そのことに対して、実は、五月の十一日だったと思いますが、参議院の厚生労働委員会で、当時の川崎厚生労働大臣は、JITCOはしっかりしてもらわなきゃ困るというような答弁もされているわけです。これは、しっかりしろというのは、天下りも含めて、やはりこういったことだときっちりとした指導あるいはこういった契約関係が結べないから、ちゃんとやってもらわなきゃ困ると答弁されているんだと思うんですよ。

 ですから、きょうは厚生労働副大臣もいらっしゃいますから、外務副大臣に今御答弁いただきましたので、今度は厚生労働副大臣に、そういったことも含めて、これをどうやってきっちりと対処していくのか、御答弁をいただきたいと思います。

石田副大臣 今回の件につきましては、報道では承知をいたしております。

 それから、厚生労働省としては、財団法人国際研修協力機構には、二十九名の理事のうち三名、こういう方が行っております。この役員については、事業運営にふさわしい人材が行かれている、こういうふうには認識をいたしております。

 それで、これからのことにつきましては、この制度自体というんでしょうか、この研修・技能実習制度自体についてもやはり見直していかなくてはいけない、こういうことも言われておりますので、これから制度の適正な運営に努めてまいりたい、このように考えております。

柚木委員 ふさわしい人材であっても、ふさわしい天下りというのがあるのかどうなのかわかりませんよ。

 こんな実態があるわけですから、これは当然、今後、基準の見直しも含めて、そして独占契約、この業務形態そのものの見直し、さらには、今副大臣もいらっしゃらないので、またこの後、二十九分までですから、続きはやりますが、実際にその指導監督、この三つをしっかりとやってもらわないと、これから、これはJITCOの事例ですが、今度は新しく国際厚生事業団という枠組みで、締結されれば、フィリピンから今後二年間で看護師が四百名、介護福祉士が六百名入ってきて、現在国際研修協力機構で行っているようなさまざまな受け入れ業務や、あるいは受け入れ先である病院や介護施設における指導監督も行っていくような立場になるわけですから。

 つまり、これはきのう厚生労働省の方からも伺いましたが、同じようなスキームで今後行われることになる国際厚生事業団、その運営費については、今後、例えば、ここは企業とあるわけですが、ここが今度のJICWELSの場合には病院であったり介護施設になるわけですよ。一定の手数料をいただいてというふうなことも今後は考えていかなければならないというふうなことも言われているんです。

 同じような構図になりかねないわけですよ。それを、同じようなことになるということを是正するということがなければ、今回の受け入れも大変心配な状況が想定されますので、まだこの後、私の時間、十五分残されているみたいなので、とりあえずここまで質疑させていただいて、あとは後ほどまた質疑をさせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

山口委員長 次に、三原朝彦君。

三原委員 久しぶりに質問しますので、どうぞよろしくお願いします。

 今回のFTAは、フィリピンとメキシコとのことですけれども、ちょっと私は視点をもうちょっと広い面から見て何個か質問したいと思っております。

 もちろん、私たちは、特に我が国はGNPの二割ぐらいが貿易による利益を得ておるんですかね。日本は何といったって資源小国ですから、貿易立国でなければこれほどの繁栄はなかったわけでありまして、なおかつ、自由な貿易こそが、世界の経済、どこに対してもあまねく繁栄を与えるということは、これはもう論をまたないわけでもあります。

 我が国もWTOを通じて多国籍間の協議を基本に貿易の自由化を図ってきましたけれども、WTOというのは、いろいろなラウンドが開かれるたびごとに、どうもうまくいかない。お互いの国家間のエゴの出し合いで、お互いが譲り合うという場面は、なかなか簡単にいかない。特にそれが自国の具体的な経済的な利益、不利益に関することなものですから、もろに欲が出てくるという感じになってきておること。いいのか悪いのか難しいところではありますが、それは我が国だけじゃありません、世界じゅうどこでもですから、お互いが反省しなきゃいけない面があると思います。

 このWTOに、きょうの朝、テレビを見ていましたら、ベトナムが百十三カ国目になったのかな、入ったという……(発言する者あり)百五十、ちょっと間違えましたね。七日を期して入りましたと書いてあって、それはつまり、世界での円滑な貿易にほとんどの国が今加入してやっておるということなんですね。

 そういう中で、なかなか前に進まないものですから、アイデアとして起こってきたのが、地域性の高い関係といいますか貿易協定とか、隣同士の二国間の貿易協定とか、そういう工夫をしてきた。

 例えばアメリカあたりは、北米自由貿易協定、NAFTA、そしてまた、その後に、もうちょっといろいろなことを円滑にやりたいというので貿易促進時限法などというのもつくって、アメリカにとってはバイで組みやすいところなんでしょう、シンガポールとかチリとかオーストラリアとFTAを締結した経緯があって、そういう組みやすいところからどんどんやっていくという方向性を、世界で一番大きな経済を持つアメリカはやっています。

 また、EU。EUといえば、ヨーロッパ・ユニオンですから、EUの中では、お互いが、物もお金も人も、みんな本当に自由化して、協力し合うといいますか垣根を取り外してやっていますし、また、周りにある近隣諸国とも、FTAの交渉をEUが一つになって進めていることは御承知のことだと思います。

 アジアでは、我が国を追い越したような形で実は中国がASEANとFTAで基本合意したりしまして、あのときびっくりしましたけれども、それほどまでの経済力があるのかどうか疑問とするところもありますけれども、中国はそういうことに積極的である。陰にはもちろん資源外交などというものもあるんでしょうけれども。そういうことで、アジアの地域でも、二国間とか地域間の貿易協定みたいなものは積極的にやる、各国ともバスには乗りおくれまい、こんな雰囲気があるわけでありまして、もちろん我が国もその一国であります。

 これは、基本的には理想論のWTO、みんなが、世界が一緒になって同じ約束のもとでやりましょうというのから外れて、相対による、気分の合うところだけ一緒になってやり始めようという方に軸足を移した感があることは否めない事実だと思います。

 そういう中で、最初に申し上げたように、世界経済の発展とか拡張とかいう理想からどんどん外れていって、地域囲い込み型というか二国間型のFTAがどんどんできてきた。こういうことに関して、理想と現実のはざまで我が国は、二つの、両々相まっているというのか、それとも相対するものをうまくこなしていくというのか、その点に関してはどういうふうに考えておられるんでしょう。

 実は、経済連携促進関係閣僚会議の中では、これを見ていましたら、今後の経済連携協定の推進についての基本方針というのがあって、日本にとり有益な国際環境の形成が一番、二番は日本全体としての経済利益の確保、三番、相手国・地域の状況、EPA、FTAの実現可能性を見ながらやっていきましょう、こういうふうなことを二〇〇四年に掲げておるわけです。

 前回の質問で近藤議員の提出されたペーパーがあるんです。東アジアEPAの経済効果という、我が方から見た東アジアEPAが成立した場合の日本経済にもたらす効果を経済分析モデルで試算、こう書いてあるものを先週もらったんです。これを見ていますと、理論的な面からいうと、明らかに日本にとってすごい有益だ、こういうことになっていますけれども、どうでしょう。その点に関してお聞きしたいと思います。

岩屋副大臣 敬愛する三原先生が久々に質問をされるというのに、大臣がおりませんで大変恐縮ですが、参議院の本会議に大臣は出ておりますので、私ごときで大変恐縮ですが、お許しをいただいて、よろしく御指導をいただきたいと思います。

 ただいま先生から、大局的な観点からの問題提起をしていただきましたが、ある意味では、外務省としてもそういう問題意識は共有しております。と申しますのも、我が国は一九五五年にガットに加盟をしたわけですけれども、その後しばらくの間、どちらかというと差別的な待遇を受けてきて、非常に厳しい中を頑張ってきたということも事実でございます。

 したがって、日本の方針としては、やはり、WTOという大きな舞台で合意が得られて、世界が共通のルールに基づいて貿易を行うということが一番いいと思っておるんですが、先生おっしゃったように、なかなかこれが決着をしない、今も中断されて非常に厳しい状況にあるわけでございます。

 その間、世界各国で、先生御指摘の地域貿易協定、個別のものがどんどん出てきておりまして、九〇年に三十一件であったものが、本年九月時点で百九十九件に及んでいる。中国もやっている、韓国もやっている、アメリカもやっている、EUも頑張っている。

 こういうことでございますので、そういう中において、日本としても、我が方の国益を考えて、本当はWTOで早く決着をすべきだけれども、その間、日本としてできる努力をしようということで、FTA、EPA、こういうものを進めてきているわけでございます。

 しかし、あくまでも基本はWTOでございまして、WTOを中心とする多角的自由貿易体制を何としても実現すべく頑張っていきたい。先生、どっちがどうだというお話がありましたが、あえて言うと、車の両輪で頑張っていきたい、努力していきたい、こう思っているところでございます。

三原委員 岩屋先生はばしっと意見を言う方だけれども、やはりお役人の方になると、理想論を言う。余りおもしろくない答えでもあるような感じ。むしろ、石川さんあたりがにこにこして、同じですよみたいな顔をしているから、猪俣さんや石川さんを見ていると、余り意地悪な質問をするのもかわいそうで、まして同志岩屋君ですと、さらにその気持ちが起こるわけで、と言いながら、やはり持ち上げ質問ばかりではおもしろくないんですね。だからちょっと……。

 私は、確かに岩屋先生が言われたように、一九五五年に日本がWTOに入ったんですか、それ以来、理想論は常に掲げなきゃいけないけれども、一番我が国がネックになるのは、競争力のない農業問題なんですよね。今度でも、去年ですか、香港でWTOの閣僚会議があったときでも、最終的なところで、私もあのときにほかの用事で香港へ行っていましたら、我が国の農林族と言われる人たちが大挙して来ていましたよ。結論は、つまりは、我が国にとってWTOで問題になるのは、一番競争力のない農業の問題なんですね。しかし、各国とも、それは農業でないところもあるでしょう。ほかの工業の弱いところは工業を何とかプロテクトしたいと思うし。

 七月のWTOのドーハ・ラウンドは中断となりまして、これがもうことし末まで絶望的だと言われていますけれども、それをちょっといろいろ勘案してみると、対立点を見てみますと、各国とも、やはり今さっき言いましたように、自国の産業の保護とか比較優位の産品を輸出促進の主張をして、ついに対立のままで結論を得ずという、何だか初めからわかっているような結論に相変わらずなるわけですね。例えば、農産品の関税引き下げを一定にとどめて、例外品目はいつも確保する。日本の場合はお米、もう大体決まっていますね、最大の確保をするところは。国内農業保護のためにアメリカあたりは補助金なんか出しているのを、ブラジルとかEUだったら、そんなのずるいじゃないか、やめてちょうだい、こういう言い方もやる。いま一つは、先進国と開発途上国の間の鉱工業の関税に関して対立するという問題。

 やはり国と国のエゴとエゴのぶつかり合い、それは当然なことですよね。自国民の生活、経済を考えれば、自国の利益を主張することは当然のことなんだけれども、それをやっていたのではWTOの理想にはいつまでたっても届かない、こういうことになるわけであります。

 今回の、例えば日本とメキシコの問題でも、今度出されるあれでは、鶏肉とオレンジの問題で最後までなかなか決着がつかぬというのも、まあこんなことを言うと我が国の養鶏業者の人に怒られちゃいますけれども、そういうことで国家間のより円滑な貿易が半年も一年も数年もおくれるというのも、なかなかこれも、国民全体の意識からすると、ううんと思っちゃう場面はあることはあるんですね。

 もちろん、そういうことを解決するためには、今度は国内の農業政策で、例えば、今よく言われている、野党の諸君も言われていますけれども、所得補償のこととかいろいろありますけれども、相変わらず我が国では必ず農業問題というのが出てくるし、今度の日本とフィリピンの問題でも、人的流通の場面と、もう一つは、この前、照屋先生が質問された、沖縄の離島あたりではサトウキビが主産業じゃないか、それに対して関税なしでばっと入ってこられたんじゃ、もうこれで、では何を食べて生きていくんだというような悲痛な叫びも我々は聞いてもおりますね。それはやはり農業、比較優位では、我が国では競争力のない農業、サトウキビ、こういう問題なんですよね。こういうことは、当然、個別に見ていると問題点はあるんだけれども、それでもやはり理想論からいえば凍結のままにするというわけにはいかぬですよ、そのWTOの。

 それに対して岩屋先生なら、どうすれば少しずつでも理想へ向かっての一歩一歩が開けるか、そのことを、少しでも光が見えるような方向性みたいなことを示唆いただきたい、こういうことで、ちょっと意見をお願いしたいと思います。

岩屋副大臣 なかなか私個人だけの意見を申し上げるのはいけないと思っておりますが、先生も福岡県ですし、私も大分県ですし、やはり田舎ですよね、農山村、漁村がございますし。

 今沖縄の話がありましたが、サトウキビだと沖縄に壊滅的な打撃でしょう。酪農製品だと北海道とか。やはりそういう地域の抱える問題がございますし、私ども、そこを代表して国会に出てきているので、本当に私も気になります。

 ただ、何とかこのWTOの交渉妥結に向けて日本も、攻めるところは攻める、守るところは守る、譲るところは譲るということで、やはりめり張りをしっかりつけていかなくてはいけないのではないかなと思っております。

 先生も御指摘ありましたように、農業の関税を引き下げろというグループと、補助金を下げろというグループと、途上国などは鉱工業製品の関税の削減、その三すくみ状態で交渉がとまっているわけでございますが、先生が今御指摘になった農業の分野が、我が国においては一番アキレス腱といいますか、一番難しい問題になってきているわけですが、前の中川農林大臣も、現在の松岡大臣も、またあるいは安倍総理も、攻める農業ということを言っておりまして、輸出ができる分野はあるんじゃないか、農業製品で攻めていくということもできるんじゃないかという方向にだんだん日本の農業も変わりつつありますから、その努力をしっかりするということも大事だと思っております。

 したがって、抽象的な言い方で恐縮ですが、攻めと守りとある意味の譲歩というものを絡み合わせて、そういった交渉が妥結するような方向に向かって努力をしていくべきではないかな、こう思っております。

三原委員 今の農業のことでもうちょっと話をしたいんですけれども、具体的にEPA交渉で議論すると、必ず我が国では突っ込まれると弱いのは農産品ですよね、農業。

 あと、昔だったら工業だって、今一番、きのうかおとといかの新聞では、とうとう我が国のトヨタが何か利益二兆円以上上げたとか言っていますけれども、あの自動車だって、昭和三十年代あたりはもう幼稚産業でやってきて、壊滅的な打撃をほっておいたらやられるだろうと思っていたら、やはり努力してみたら、三十年、四十年たったら、世界で冠たる、トヨタだけじゃない、今、日産もホンダもみんなそうですね、立派なものになっちゃった。世界のどこに出しても売れるようになった、安くもないけれども。そういう工業的なものは日本は得意という面もあるんでしょうが、初めは保護しておっても、それで成長していって、世界の中で堂々とやれる。

 しかし、農業ばかりは、地理的なものがあるし、集約的に一生懸命やってはきているんだけれども、粗放型のものにはもう太刀打ちできない。小麦だソバだ、穀類はみんなそうですね。お米だけはまだまだ絶対だめだというのでやっています。それでも、今七十万トン、八十万トン入れているんじゃないですかね。そういう状況があります。

 しかし、そんなことを言っていたんじゃ、特に開発途上の国とのEPAといったって進められませんよ。今、シンガポールとマレーシアとメキシコとやったんだけれども、メキシコあたりからは、入れるものは今言った豚肉と鶏肉とオレンジぐらいだから、日本と余り競合するのは少ないから、それでもいろいろ一生懸命議論し合って、とうとう最終的な決着に至ったんだけれども、シンガポールなんかは農業はありませんからいい。マレーシアも、マレーシアにある農業、入れるものは何だろうね。パームオイルと生ゴムと、まあもしかしたらパイナップルか何か、ああいうのがあるかもわからぬが、それも日本と競合しないからやれることでありまして、日本にとって何も損しないような感じ。

 ところが、今度やるフィリピンは、今言いましたように、サトウキビはあるでしょう。沖縄は、少しだけれども、ちっちゃなパイナップルをつくっていますが、パイナップルあたりも、やはり関税を一生懸命で、ちょうちょうはっしやっている場面がありますよね。そういうところの国と今から広げていってEPAやろう、WTOの場じゃなくてもやろうとしたら、それは簡単にいきません。いかないんだけれども、実は、農水省さんも心が広いようになってきたね。みどりのアジアEPA推進戦略と銘打った農水省が出したあれは方向性があるんですね。

 その中で、六つのポイントがあったんだけれども、その五番というところに、「EPAを通じた、アジアの農山漁村地域の貧困等の解消。」とあって、「アジア諸国の国民の多くが居住する農山漁村に依然存在する飢餓・貧困、過酷な労働実態の解消・改善に貢献するため、EPAを通じ、相手国の農林漁業者の所得向上につながる市場アクセスの改善や」、それからこう続いて、「農山漁村地域の生活水準や福祉の向上、農林漁業労働者の権利の増進に努める。」こう書いているんです。

 全く、これはすばらしいでしょう。これを本当にアジアの他の国々とのEPAの交渉の中でやったとしたら、日本は本当に尊敬、崇拝おくあたわざるような国家になるね。しかし、なかなかそうは現実はいかない。今度のフィリピンのサトウキビ一つとってもそうでしょう。

 ですから、私は、そういうのを見たら、確かに政府援助で、無償援助、借款もある、技術援助もある、いろいろやっていますが、そういう援助もODAの一環として大切なんだけれども、よく言われるように、相手に魚を与えるのでなく魚の釣り方を教えるというような言い方をよくするでしょう。それと同じで、向こうに経済を伸ばして、それで生活が上がるようにしていって、それでこっちが、それもちゃんと堂々と売買しますよ、こういうところまでやって初めて真の意味でのODAだと思うし、美しい国日本になりたい、そう言うと、美しい国日本、石川さんに聞いたらわかるけれども、ユーアー・ソー・ビューティフルと言ったときには美的に美しいだけじゃないものね。所作振る舞いから心の中まで美しいときに、ユーアー・ソー・ビューティフルとやはり言うんですよ。山中さん、そうでしょう。

 だから、私は、今度の総理の言う美しい国日本というのはそういうことだと思うね。何も、春は花、夏ホトトギス、秋は月、冬雪さえて涼しかりけりばかりじゃない。心の中までがそういうあれだということになると、農水省の言っていることを一歩でも二歩でも具現化すること、このことが実は究極的には、ロングランでは我が国が必ずや得になる、こういうふうに思うんだけれども、どうでしょう。そんな、余りにも理想論過ぎるかな、それは。どうですかね。

五十嵐政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま三原先生から御質問の点でございましたEPA交渉につきまして、農水省としては、攻めるところは攻める、譲るところは譲る、守るところは守る、こういう基本原則でございます。ただいま岩屋副大臣からお言葉のあったとおりでございます。すなわち、我が国と相手国の農林水産業なり食品産業の共存共栄を図るという一つの要請がございます。また一方で、我が国の食料安全保障なり、あるいは農業の構造改革なりに悪影響を与えないという要請もございます。これらの要請をきめ細かく組み合わせて、EPAの締結に結びつけていきたいということでございます。

 ただいま三原先生からお話のありました協力の関係でございます。例えば、今回のEPAの内容としましては、フィリピンの貧困の解消という観点から、主に小規模農家が生産するバナナ、パイナップル等についての市場アクセスの改善というのを一つのポイントにしております。

 また、今大筋合意をしておりますタイとの交渉の中では、タイから、市場アクセスにあわせまして、食品の衛生水準の向上ですとか高付加価値化あるいは農山漁村の貧困解消ということについての日本の協力が求められております。これについて、我が国として積極的に協力するということで対応してまいりたいということで、ソフトの面を強力に推進してまいりたいということでございます。

三原委員 私、この夏、フィリピンに行ってきたんです。フィリピンのネグロス島という最も貧困な地域の島でもあるんですが、そこに行くと、植民地時代からのまだ荘園領主みたいなのと小作人のサトウキビ畑があって、持つ者、持たざる者の差というのはすごいものがありますよね。

 そういうのを見ていると、やはり砂糖を今の倍食えなんて、それは無理かもしらぬが、何とかやはりあらゆる面で、貿易を通してでも、何かいろいろな形での彼らの生活を上げるようなことを、やはり我々は、何といったってGNPパーキャピタが今もう三万六、七千ドルになったんでしょう。フィリピン、千ドルになったのかな。なっていない。そんなの、フィリピンだって本当は、戦後すぐ民主主義の国家だったから、東南アジアで一番早く前に行くだろうと思ったら、なかなか行かないね。それは国内構造もあるでしょうけれども。だからこそ、私は、こういう貿易を通して大いに頑張ってもらうことを、前に行っている人、前に行っている国がそれをやらないと、いつまでたってもうまくいかないということはしみじみとああいうところに行くと感じますよね。

 ところで、ちょっと話をかえますけれども、今度は貿易と資源エネルギー、我が国の資源エネルギーの安定供給とFTA、EPAの関係についてちょっと質問したいと思うんですが、何といったって、資源とかエネルギーで一番重要なのは、輸入するのはオイルですね。もうほとんど一〇〇%、九九・九か八かぐらいは日本はオイルを入れていますから。それだけじゃない。石炭だって、今、北海道ももうほとんどみんなとっていないし、日本で輸入していない資源は石灰岩だけかな。もうそれぐらいのものでしょう。石灰岩だけは輸入しなくても日本でありますけれども、それ以外はもうみんな輸入しなきゃ何もやっていけない、こういうことなんですよね。

 それから、その点は、我が国の、資源小国日本ということを考えると、やはり資源のある国と大いに経済的な連携をして、お互いに足らざるを補い合って、そして共存共栄でやれる、こういう点は、これは農業とまた違って大いにやれる可能性たくさんあると思うね。

 そうしたら、今回は、今チリと日本は議論しているんでしょう。今、見ていたら、去年かおととし、二〇〇四年、おととしだね、チリから我が国への輸入額が五千六百五十億円、その半分が銅とか銀とか鉄なんですね。今度は、我が国からチリへ出すのはその五分の一ぐらい、一千億円強で、六割が乗用車とかを中心とする自動車なんだそうですよ、統計的に見ると。チリとの関係でちょっとだけネックはシャケかな。チリで何か日本の人が行って、シャケの養殖の仕方を教えたらしいね。それを今度日本に向こうは入れたいというので、それだけはちょっとあつれきがあるらしい。それ以外のところでは本当に補完し合う仲なんですよ。

 だから、そういうことを考えたら、そういう点も視点を置いて、どんどんFTA、EPAを広げるということが大切。チリの例にかかわらず、それ以外でも、地下資源のあるところ、エネルギーのあるところをやっていきたい、やってもらいたいというのがある。

 それと関連して、今我が国がやっているのは、石油を出す湾岸諸国ですね、GCC、こことのFTAも今議論されているといいますけれども、これは積極的にやってもらって、向こうが百出したら自分は百とるぐらいの気持ちじゃ、やはりなかなかできないかわからぬ。向こうが百くれと言われたら、こちらは九十でいいですぐらいにやっておいて、いずれロングランではちゃんと損をしないようにする、このぐらいの駆け引き、取引は外交のプロたちにやってもらいたいね。そんな気がします。

 だって、これも調べてみると、GCCで見たら、日本への輸出の九八%がオイル、原油とか石油製品、五兆六千五百億円。そんなにお金を使ってオイルを入れているわけでしょう。ですから、この点で、私はもうちょっと積極的にやってもらいたいと思う。

山口委員長 三原委員、質問時間が過ぎておりますので、簡潔にお願いいたします。

三原委員 はい、わかりました。もうすぐに終わりますから。

 十一月四日に中国で、アフリカの人を集めて会議をやったのね、日本のTICADのまねみたいなことを。その中でやっていたら、向こうはどんどんカードを使って、協力、協力とやり出したんですね。こういうところでみんな見ていると、オイルを入れているところは、中国はオイル全体の三割はアフリカから入れているんですよ。日本は九割が中東ですからね。そういう状況になっちゃった。中東からのオイルはそれでも五割ぐらいありますけれどもね。

 そういうことから考えると、私は、日本にとって足りなくて、向こうにとってバーゲンしやすいところがあったらどんどんやってもらいたい。特に資源とエネルギーでの投資というのをEPA、FTAは積極的にやるべきだということを私は申し上げたいと思います。それについての意向をお聞きして、私の質問を終わりたいと思います。

岩屋副大臣 簡潔に申し上げたいと思います。

 先生御指摘の、資源エネルギー確保の観点からもEPA、FTAをしっかりやれということでございますが、GCCとのFTA交渉が始まっておりますけれども、しっかりやり遂げたいというふうに思っております。

 それから、チリあるいはインドネシア、ブルネイ等もそうでございますが、資源確保の観点からということで、外務省としても積極的に進めていきたいと思っておりますし、アフリカもTICADという取り組みがありまして、来年外相会議がありますが、大臣は行けないので私が行く予定ですが、アフリカに対しましても、中国といい競争関係を保って、負けないように頑張りたいと思います。

三原委員 では、終わります。

山口委員長 この際、暫時休憩いたします。

    午前十時二分休憩

     ――――◇―――――

    午前十時二十三分開議

山口委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。笠井亮君。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 EPAによる経済連携というのは、前回の委員会でも議論がありましたように、地域的な協力の利点を生かしてそれぞれの利益を増進しようというものでありますが、その促進に関しては、対象とされる農産品の競合による農家の経営の不安とか、さらには日比のEPAで新たに盛り込まれております人の移動などをめぐって、国内でもさまざまな懸念が関係者から出されております。

 そこで、冒頭に麻生大臣に伺います。

 外務省が行った経済外交に関する意識調査というのがございますけれども、それを拝見しますと、FTAと国内産業への影響について、これは平成十五年ということになっておりますが、結果的に一部の国内産業が厳しい競争にさらされてもやむを得ない、こういう選択肢に近いということで含めた回答者が三五・〇%、他方で、一部の国内産業が激しい競争にさらされるのならFTAが締結できなくてもやむを得ない、こういう選択肢に近いとこの調査でも言っている、合わせた数が三一・一%ということでありまして、そういう数字です。

 外国人の労働者の受け入れについても同様に、容認、反対というのがともに三割台と拮抗しているとこの意識調査の結果が書いております。

 このような国民世論の複雑な状況について、大臣はどのようにお考えでしょうか。大臣の認識を伺いたいと思います。

岩屋副大臣 済みません、事実関係を含むところがございますので、最初に私の方から。

 先生御指摘の意見が拮抗しているということもございますけれども、ほかにも設問がございまして、日本が世界各国、地域とのFTA締結を積極的に推進すべきと思うか、そういう問いに対しましては、そう思う、それから、どちらかといえばそう思うという回答が全体の四一%、どちらかといえばそう思わない、あるいは、そう思わないという回答が全体の一四・一%、こういう回答もございますので、FTAの推進自体については肯定的な意見が強いという結果が得られたところでございまして、先生御指摘の国内産業の状況等にも我々十分配意をしながら交渉に取り組んでまいりたいと思っているところでございます。

笠井委員 大臣、どうぞ。

麻生国務大臣 今岩屋副大臣の方から数字の上での説明がありましたけれども、FTA、いろいろ今自由貿易というのをやってきておりますけれども、御存じのように、いろいろな国と、これまでFTAを結んだ国との貿易の結果を見ましても、間違いなく日本の場合は、前年度比で二割三割伸びているところが結果としては多いという、貿易総量がふえてきたり、チリとの間等々、いろいろふえてきておりますことを見ましても、結果としてはそういったことになります。

 したがって、不安感があるというのはもう事実だと思いますので、そこらのところは、いろいろ丁寧に説明をしていくところも必要であろうとは存じますけれども、自由貿易というものの量を拡大していくというためには、このEPAとかFTAといういわゆる条約というか仕組みというものは、私は肯定的に考えております。

笠井委員 今不安感については丁寧に説明ということもありましたが、国民の意識、現状との関係では、やはり具体的かつ慎重な検討と対応が必要だということだと思います。

 そこで、まず、日本とメキシコのEPAの議定書に関して伺っておきたいと思います。

 ジェトロが日本メキシコEPA発効一年目の効果というレポートを出していて、これを見ますと、このEPAによって、日本の対メキシコ輸入量が増加している品目、すなわち関税撤廃効果があらわれている品目として、バナナ、冷凍オレンジジュース、そしてグレープフルーツジュースなどが列挙されております。効果があらわれているということで出ているレポートなんですけれども、政府としてもそういう認識なのかどうか、そしてまた、今後の輸入の予測についてどのように見ているか、お答えをいただきたいと思います。

佐久間政府参考人 お答えいたします。

 お尋ねのうちオレンジジュースとグレープフルーツでございますけれども、日墨EPAが発効しました前後、二〇〇四年度と二〇〇五年度を比較いたしますと、オレンジジュースにつきましては一千六百トンから三千トン、グレープフルーツジュースにつきましては四百トンから一千三百トンというふうに増加をいたしております。ただ、この時期、いずれも二〇〇四年のハリケーン被害によりまして主要生産国であります米国からの輸入が大幅に減少しておりまして、これを補うためにメキシコからの輸入が増加したものという要素がございます。

 申しわけございませんが、バナナについては手元にちょっと数字がございませんが、二〇〇七年度以降、これらのうち、オレンジジュースにつきましては、現行税率五〇%まで削減する関税割り当てを設けて、域内数量を六千五百トンまで拡大するということといたしております。これは、我が国のオレンジジュースと国内かんきつ果汁の需要量に対して五%ということでございますので、国内生産に影響を及ぼすほどにふえていくということはないものと考えてございます。

 また、グレープフルーツジュースにつきましては、関税を八年で撤廃するということにいたしておりますけれども、各年にならせば三%ずつという削減幅でございますので、輸入が大幅に増加するというようなことはないと考えてございます。

笠井委員 今いろいろありましたが、日本を直接の仕向け地とした輸入量というのは、重量ベースで私も計算してみましたが、オレンジジュースでいうと前年比で八八・八%、グレープフルーツジュースでは二二五・九%増、いろいろな条件があったというお話もありましたが、牛肉の場合は、BSEのことがありましたが、その影響もあるんでしょうが二倍増ということになっております。

 品目によっては前年の輸入量を上回る勢いになっているということで、我が党が昨年指摘したように、今後の輸入量の推移というのが日本の生産農家にさらなる打撃を与えかねないということは明らかではないかと私は思います。

 次に、日比のEPAの問題でありますが、前回に引き続き幾つか質問したいと思います。

 本協定では、例えば、パイナップルの生鮮、小型の九百グラム未満ということでありますが、これについて、将来的な関税撤廃を目指して当面は関税割り当てを一千トン、五年後には千八百トンに順次増加させていくことになっております。

 言うまでもなく、我が国におけるパイナップルの生産地は沖縄であります。そして沖縄は、米軍基地があるがゆえに県民の基地による負担は重くて、さまざまな被害も絶えることがない。私も、かつて参議院の沖縄北方特別委員長をやって、現地もたびたび行きまして痛感しておりますけれども、膨大な基地の存在によって土地の有効利用も制限されている状況のもとで沖縄の自立的発展を推進させるために、沖縄の農業というのは重要な産業として位置づけられております。

 そこで、改めて内閣府と農水省に伺いたいんですが、政府は、こうした沖縄農業の発展の中でパイナップルというのをどのように位置づけているか、また、生産の現状、生産量と県内外への出荷量についてはどうなっているか、振興策についてを含めて、端的にお答え願いたいと思います。

原田政府参考人 沖縄の農業振興についてお答え申し上げます。

 平成十四年に策定されました沖縄振興計画におきましては、沖縄の農業につきまして、沖縄ブランドの確立、あるいは流通、販売、加工対策の強化、そして亜熱帯、島嶼性に適合した農業の基盤整備、赤土対策などを含めまして、環境と調和した農業の促進といったことで、農業政策全般につきまして、農林水産省を初め関係省庁あるいは地元県、市町村ともども沖縄の特色ある農業振興に努めているところでございますが、本島の北部圏域あるいは石垣地方につきましては強い酸性土壌でございまして、その中で、パイナップルにつきましてはその土壌に適合するということで生産振興品目に位置づけられておるわけでございます。

 そうしたことから、沖縄県あるいは関係省庁と連携いたしまして、パイナップルにつきましての優良種苗の導入あるいは生産性、品質の向上を推進する等、その振興対策に鋭意努めているところでございます。

佐久間政府参考人 沖縄県のパイナップルの生産、出荷状況でございますけれども、平成十六年産におきましては、収穫量が一万一千五百トンございまして、出荷量が一万一千トンとなっております。仕向け先でございますが、加工仕向けが五千百五十トン、県外の出荷が四千四百三十三トン、県内の出荷が千四百七十八トンとなってございます。

 生産振興の対策といたしましては、生産体制の強化を図るため、強い農業づくり交付金及び沖縄北部特別振興対策事業によりまして低コスト耐候性ハウス等の施設整備を、また、中央果実基金事業によりまして優良種苗の増殖によります新品種の普及等の事業を実施しているところでございます。

笠井委員 今答弁ありました、重視している、そして振興のために努力しているという話ですが、まさにパイナップルというのは、本土の消費者にとっても魅力的な農産物として注目をされているし、沖縄の観光産業の発展の上でも、政府の適切な支援策がとられれば前進するという可能性を持っていると思うんです。酸性土壌の地域で栽培されていて、サトウキビとも違って他作物への転換が容易でない作物だ。

 復帰直後の収穫量、最大六万四千五百トンあったわけですが、今ありましたように、それが一万一千五百トン、うち県外出荷が四千四百三十三トンということでありまして、前回の委員会の中での答弁で、生鮮の小さいパイナップルについては輸入量が限定されていてほとんど影響がないというお話もあったわけですが、やはりこういう現状の中で、一千トン、それから五年後には一千八百ということになりますと、フィリピンから輸入されれば、実際には県外に出ているパインに大きな影響が出るということは明らかだと思うんです。この点で、やはり、実際にこういうことになりますと、沖縄のパイナップル産業がやがては市場競争とのかかわりで立ち行かなくなる時期が来るということは否めないと言わざるを得ないと思います。

 次に、人の移動にかかわって厚労省に伺います。

 フィリピンの研修生でありますが、この中で、前回も議論があったわけですけれども、雇用条件をめぐって改善を求める、あるいはさまざまな問題が起こってきたときに労働にかかわる相談を受けつける窓口というのが国際厚生事業団になるということであります。

 新しい制度が始まりますと、雇用労働問題や生活のさまざまな問題が持ち込まれる可能性があって、予期しない問題も出てくる可能性もあります。現に、外国人実習生の受け入れ問題では受け入れ機関の国際研修協力機構に相談が殺到をし、実際に、ある研修生から、相談したけれどもいつになっても解決できないという声も聞いております。

 国際厚生事業団、今回の場合、これは法的地位が与えられた仲裁機関ではないようでありますけれども、今の体制では、寄せられた相談を機敏に解決することが難しくて、結局フィリピン人研修生の権利や労働条件をきちっと保障することにならないんじゃないかと思うんですけれども、この点はいかがでしょうか。

岡崎政府参考人 フィリピンから入ってこられる看護師あるいは介護福祉士の候補者の方々、これらの方々の相談、苦情の受付、これについては、御指摘のように国際厚生事業団が行います。法的地位というのはございませんが、厚生労働省の方からも予算措置といたしまして必要な体制はとっていきたいというふうに思っているのが一つ。

 やはり、法律的な問題、例えば、労働者として労働契約のもとで研修を受けるわけでございますので、労働法上の問題等があれば、労働基準監督署等々、JICWELSからも、必要な連携をとりながら、必要なものについては権限がある機関が対応する、こういうことで適切な対応をしていきたい、こういうふうに考えております。

笠井委員 予算措置といっても、前回もありましたが、人的な措置ということで十分かというとこれははるかに及ばないという問題があります。

 そして、労働法上という点ですが、これも前回も触れましたけれども、外国人研修制度のもとにある実習生の現状で見れば、例えば、現に労基法違反とか賃金の未払い等の問題が各地で起こっているというのを政府は認めました。今回のフィリピン人研修生の受け入れに当たっても、そうした状況を起こさないという保障がないというのが現実だと思います。

 もう一つ、フィリピン人研修生が日本の看護師資格を取得した後の問題なんですけれども、日本の労働市場の中で雇用契約が結ばれていることになるわけであります。この点でいうと、国際看護協会、ICNが、雇用された外国人看護師について、自国の看護師と同等の賃金と雇用の条件の保障、安全確保、受け入れがたい労働条件の禁止、差別の禁止などの厳格な保障を求めております。

 資格取得後の看護師の権利や労働条件が日本人の有資格者と同様に保障されるのかどうか、そのためにどのような措置をとるのか、これはいかがでしょうか。

白石政府参考人 お尋ねの、今回の日比EPAの協定上、我が国の看護師資格を取得したフィリピン人の資格取得後の雇用計画の条件でございますけれども、我が国政府がフィリピン政府に通報した条件を満たすものとされておるわけでございますが、そこにおいては、日本人が従事する場合と同等以上の報酬を受けることを要件にする予定でございますし、また労働基準法上は、労働条件に関しまして、国籍を理由とした差別的取り扱いは禁止されておりますので、今回の仕組みで我が国の看護師資格を取得したフィリピン人に対しましても、差別的な取り扱いがないようにということでやってまいりたいと考えております。

笠井委員 前回もあったんですが、私は、そういう意味では、新たに受け入れるという点でいうと、やはり特別の措置というのが考えられなければいけないと思うんですが、そういうものが今の御答弁では聞こえてこない。そして、日本人でさえ、労働問題でいうと、偽装請負などの問題が大きな問題になっておりますけれども、さまざまな深刻な労働問題が発生しているのになかなかそれが解決しない中で、まして、海外から受け入れるということになった場合に、やはり特別の措置というか、きちんと見なきゃいけないということでは、全く心もとないと言わざるを得ないと思うんです。

 最後に麻生大臣に伺いますけれども、冒頭の質問との関連もありますが、今回のようなEPAによる経済連携の促進と日本の国内の諸問題、沖縄でいえば農業の問題、それから受け入れるフィリピン人研修生の権利と労働条件の確保もありますが、それとのかかわりについて、どういうふうに考えて対応されていくのかということについて、そのお考えを伺いたいと思います。

麻生国務大臣 これは随分長い間の協議が行われたんですが、少なくともこの交渉に当たって、フィリピン側からの要望として関税の撤廃、引き下げというのがありましたし、看護師、介護福祉士の受け入れ等々に関する要望が出されてきております。

 これを受けた日本側におきましては、いわゆる国内農業と今笠井先生御指摘になりましたが、温度差が大分ありますので、国内農業というもの、中でも沖縄の話が出ておりましたけれども、こういったものに対して、健全な発展というものが急に阻害されるということのないように配慮せないかぬとか、看護師並びに介護福祉士につきましては、これは大量に移入するのではなくて、ばっと入ってこられるのではなくて、段階を追う必要があるのではないか、またその千人以上は絶対だめだとか、実にいろいろな御意見が出されたところでありまして、その適正な受け入れというものに関しては十分に留意をする必要があるということで、これは外務省に限らず、厚生労働省、法務省、いろいろなところでアイデアを重ねた上今回のことになったという経緯があります。

 したがいまして、私ども、やってみた結果、どういうところをもっと詰めねばならぬのか、やった結果我々の想像を超えていたところがあって、こっちはうまくいったところ、うまくいかなかったところ、何というのかしら、試行期間というものの間にいろいろなところを、いわゆる笠井先生のところにもいろいろ入ってこられるでしょうから、そういった話を聞いた上で、こういったものをもっとこういう改善が必要というようなことはしていく必要があるんだろうと思っております。

 いずれにしても、こういった例というのは、日本としては公式な形でやるというのは過去に余り例がありませんので、そういった意味では、十分配慮していく必要があるというのは当然のことと存じます。

笠井委員 終わりますが、過去になかなか例がない、一方で、促進という面となかなか難しい問題への対応ということでの現実があるということであります。

 我が党は、早い機会に我が国としてのどのような基本的見地で二国間経済協定に臨むべきかの見解を明らかにするということで我が党としても検討中でありますけれども、今回の日本・フィリピン協定案についていえば、質疑でも前回以降ただしてきましたが、以下二つの問題を含んでいて賛成できないということであります。

 第一に、米国基地の存在で重大な被害をこうむっている沖縄の農民、農業に新たな困難を与える内容を含んでいるにもかかわらず、政府はそれに対する援助策を持っていないということ、第二に、来日するフィリピン人労働者の権利、労働条件の確保が確実に行われるという保障がないということであります。このことを表明して、質問を終わります。

山口委員長 次に、柚木道義君。

柚木委員 民主党の柚木道義でございます。休憩前に引き続き質疑を行わせていただきたいと思います。

 先ほど、国際研修協力機構の問題と、そして今度の日本とフィリピンとの経済協定締結後はこの国際研修協力機構に当たる役回りを担っていくのが国際厚生事業団になるといったお話をさせていただきました。

 そういった中で、資料の四ページ、そして七ページをそれぞれごらんいただければ、それぞれ協力機構とそれから厚生事業団、JITCOあるいはJICWELSというみたいですが、これについての役割、概要等がこちらの方に触れておりますので、御参照いただければと思います。

 先ほど、天下りあるいは独占契約、さらには今後のそういった指導体制の見直し等触れさせていただいたんですが、これは皆さん、一応確認ですが、国際研修協力機構は一般の外国人就労者、研修生の方の窓口になって、今回のフィリピンとの経済連携において受け入れる看護師、介護福祉士、今後二年間千人想定していますが、それについては国際厚生事業団ということになるわけです。

 それで、資料八ページ目をちょっとごらんいただきたいんですね。ここにずらっと、国際厚生事業団、今回受け入れ先になるわけですが、この理事の方々が出ているわけです。これを見ていただくと、理事長の北川さん、元厚生事務次官、その他元社保庁長官や社会・援護局長といった面々が理事にずらりと顔をそろえているわけですよね。

 やはりこれは、厚労副大臣もいらっしゃいますから、私が伺った話では、今回このJICWELS、現在職員十六名で、このままだと当然とてもこの業務拡大に対応できないから増員、専門官の配置等を検討されるということなんですが、まさかこういったところからの天下りで今度JICWELSに就任するようなことにはならないとは思うんですが、そこも念を押させていただきたいと思いますし、というのも、当時の厚生省さんから、この図を見ても、既に国際研修協力機構に天下って、その七名の正式な従業員の中からこちらの国際研修サービスに天下っている人が既にいるわけですから、そういう労働力不足で悩んでいる、今回のフィリピンとの協定の場合には病院あるいは介護施設、さらには日本に来て頑張ろうという研修生の皆さんを、言葉は悪いですが、食い物にするような、そういうことだけは絶対に避けていただかなければならないと思います。

 それを念を押した上で、ちょっと具体的に、この国際厚生事業団の実効性をどういった形で担保していくのか。先ほど笠井委員から、そういった相談窓口のことであったり御質問があったわけですが、このJICWELS、実は都道府県の労働局の場合には、例えば是正勧告に従わない場合には業務停止命令が発動したり、あるいは入管の場合には、不正行為を認定した場合には退去強制といった権限、つまり強制力があるわけですが、先ほどの研修協力機構の限界の一つもやはりそういった権限がないというようなことがあって、なかなかそういう指導等が徹底していないという背景があったわけですね。

 そこで、この資料の中の六ページをごらんいただきたいんですが、朝日新聞の報道、「外国人実習生の受け入れ企業、指導強化へ 厚労省」ということで、九月四日の記事ですね。これは国際研修協力機構に対して受け入れ指導の強化をさせるということで決めたというふうに書いてあるわけです。予算要求に、〇七年、四億円盛り込んで、全国十七カ所の地方事務所の駐在員が受け入れ企業を回り、不法行為のチェックなどを行うという形であるわけです。

 そこで、今回まだはっきりと枠組みが決まっていないということですが、国際厚生事業団、JICWELS、これにもやはり最初から、受け入れするに当たってそういった指導体制を今回、今の報道のような指導強化体制をとっているわけですから、そういう指導体制をとっていただいた上で、例えば、規定の中には日本人と同等以上の報酬という雇用契約が入国要件になっているわけですから、これを遵守しない病院やあるいは介護施設には以後何年か受け入れ禁止措置をとるとかいったようなこと、つまり罰則規定といいますか、本当にその実効性を担保するような、そういった制度をきっちりと整備していただくことが、ひいては外国人研修者、さらには国内労働市場の悪化を防ぐ意味でも大変重要と思うわけです。

 ですから、これは厚労副大臣、国際厚生事業団においてもこういった制度をきっちりと、受け皿を整備した上で受け入れるということをやっていただけるかどうか、お答えをいただきたいと思います。

石田副大臣 委員の御質問は、現在の国際厚生事業団の体制が十六人である、そういう中で十二分にできるのか、こういうことがお問い合わせの、質問の趣旨だと思います。

 現在十六名でやっているということはそのとおりでありますけれども、これからフィリピン人看護師、介護福祉士の受け入れに関する業務を行うわけですので、国際厚生事業団においても必要な体制の確保に努めていく、このように理解をいたしております。また、厚生労働省としても、受け入れに関する業務が円滑に行われるよう、しっかりと国際厚生事業団に対して必要な指導は行ってまいりたい、このように思っております。

柚木委員 ぜひ、その点は本当にきっちりとした受け皿を整備した上での今回の締結という流れにしていただきたいと思います。

 さらに、今研修生の立場ということで申し上げたわけですが、一方、例えば研修生を受け入れる受け入れ側である病院あるいは介護施設、そういったところの患者さんやあるいは入居者の皆さんへのサービスの質の確保、これもしっかりやっていただかなきゃならないわけです。しかし、年に一回巡回、あるいはそういう報告書、そういったことだけで本当にそのサービスの質を確保できるかどうか、これも大変不安な面だと思いますが、これについては今後どういった形で受け皿整備をされるか、お答えいただけますか。

石田副大臣 この問題も大変重要な問題だろうというふうに私は思っております。

 しっかり研修をしていただいて、その上で日本のそれぞれの国家資格も取得をしていただくわけでございますので、その点につきましては、そういう方が試験に通るともちょっと考えにくいわけですので、試験に通った後は、しっかり当該の病院なりまた福祉施設、そういうところの指導もしっかりしていただきたい、こういうことは私も同感でございます。ですから、この問題につきましては、年一回程度の巡回指導を行う、こういうことでありますけれども、しっかりとその際には確認もさせていただき、指導も怠りなくやってまいりたい、このように考えております。

柚木委員 指導を行っていくということで、サービスの質が確保されていないと認められた場合はどう対処されるんですか。

石田副大臣 そういうことはないと思いますけれども、万々が一そういうことがありましたら適切な指導をしていく、こういうことでございます。

柚木委員 適切な指導というのでは全く具体性がないわけですよね。この問題、後ほど山井委員もこの後質問させていただくと思いますから、私、これはしっかりと、具体的な中身のある措置、これをしっかりと整備していただくことをお願いして、次の質問に入らせていただきたいと思います。

 今回、こういった労働力受け入れが行われる、しかしその大前提として、やはり国内市場、看護師あるいは介護福祉士、そういった現場で働かれている皆さんの労働環境の整備、これは大前提だと思います。

 そこでお伺いをするんですが、こういった労働市場の整備、活用の必要性を認め、例えば看護師の確保のために中央ナースセンター事業など、こういった施策を積極的に推進されてきていると思うんですね。その事業について少し伺いたいんですが、退職した看護師さんの再就職支援としての中央ナースセンター事業、これは各地で行われている。ところが、このセンター事業、これがまだまだ決して十分に、例えば再就労の実績を上げるというところまで行っていない部分もある。だから、この事業を今後さらに拡充させることによって、まずは全国五十五万人と言われるいわゆるスリーピングナース、こういう方々が現場で活躍をしていただける、そういう素地をつくっていく、その拡充の取り組みの必要性があると思うんですが、これについて、副大臣、いかがお考えでしょうか。どう取り組まれるか、お答えください。

石田副大臣 看護職員の確保対策予算につきましては、本年も約八十四億五千万を計上しておりまして、明年度につきましても八十六億七千万、これを、予算をいただこう、こういうことで要求をしているところでございます。

 先生おっしゃるように、看護職員の確保対策を推進するということで中央にナースセンターを一つ設けておりまして、また、それぞれ各県におきましても都道府県のナースセンターについてしっかりと取り組んでいただいているところだ、このように承知しております。

 いわゆる潜在看護師さんにつきましては、やはりその能力をもう一度社会で発揮していただく、こういうことは、看護師対策ということも当然でありますけれども、御本人にとっても学んできたこと、培ってきた能力を社会で発揮していただく、こういう観点からは大変に大事なことだろうというふうに私は思っております。

 ですから、この問題につきましては、引き続き、今回のEPAとは切り離して、看護師が足りないからということではなくて、それはそれとして、また看護師対策についてはしっかりと取り組んでいかなきゃいけない、こういうふうに考えております。

柚木委員 大変前向きな御答弁をいただけたというふうに思うんですが、その上で、今、再就職のためにというお話があったんですが、看護力再開発講習会というのを各都道府県で開いていますよね。ところが、これは全国に普及していると思いきや、例えば秋田県、兵庫県、高知、熊本、そういった県においてはまだ実施されていない状況にあるわけです。先ほど予算の概算要求の話がありましたが、やはりこういうところまで含めて、つまり看護力再開発講習会実施のための例えば予算補助、こういったものまで含めて厚労省としてしっかり取り組む、そのつもりがあるかどうか、それについてもお答えいただけますか。

石田副大臣 今高知県の名前も出てまいりまして、私も高知の出身ですので、地元、自分の足元のところがまだまだ不十分だった、こういうことで、改めて反省しているところであります。

 看護師さんの問題につきましては、やはり一つは潜在の看護師さんにどのように復帰していただくかということ、これにはいろいろ研修等ももちろん必要だろうと思いますし、それとともに現在お勤めいただいている看護師さんにも、これは離職をしないように、そういうことも私は改めて必要だろうというふうに思います。そういうことで、院内保育園とかいろいろなことについても今しっかりと取り組んでいるところでございますので、看護師さんの必要性については委員と私は問題意識は同じだ、こう思います。

柚木委員 その四県についての整備について取り組んでいただけるんですか、いただけないんですか。

石田副大臣 これは、四十七都道府県で四つだけやっていないというのは、やはり四県は取り組みがおくれている、こういうことだろうと思いますので、そこのところは四県の事情もよくお聞きをして、看護師さん対策はどこでも必要でありますからしっかり取り組んでいただけるように、これはよく当該の県とも御相談をして進めてまいりたいと思います。

柚木委員 取り組んでいただけるように厚労省としてもしっかりとサポートしていくというふうな御答弁だと受け取らせていただきたいと思います。

 時間も迫ってまいりました。最後の質問にしたいと思いますが、離職を防ぐ、今そういった御発言もあったんですが、この資料十一からずっと、十二、十三、十四、十五と見ていただくと、実際に看護師さんの労働状況、これは年々悪化しているわけですね。残業あるいは給与、さまざまな面において他業種と比べても大変悪化している。

 そういう中で、この十五ページを見ていただくと、看護職員の需給見通しとあるわけですね。これは、私申し上げましたように、国内市場整備、あるいは労働条件向上について、その必要性を認識し、そして整備に努めていただく、今御答弁の中で前向きにいただいたと思いますが、これをやっていかないと、いわんや、今回受け入れようとしている看護師さんのみならず、介護福祉士さんも含めて、その労働条件全体の悪化が大変懸念されるわけです。

 そこで、最後に伺いますが、この看護職員の需給見通し、概算要求では前年比一〇二・六%と伺っていますが、この表自体は、実はせんだっての診療報酬三・一六%引き下げ等が反映されていない段階での需給見通しあるいは概算要求。ですから、当然、今後、看護師確保対策としてさらに上乗せした予算確保、これに取り組んでいただく必要があると思うんです。ぜひ、副大臣、前向きな御答弁を最後にいただいて、私からの質問を終わらせていただきたいと思います。よろしくお願いします。

山口委員長 時間が過ぎておりますので、簡潔に。

石田副大臣 看護職の需給見通しを拝見いたしまして、やはり若干のギャップがある、こういうことでございますので、このギャップを埋める努力はしていかなきゃいけない、このように思っております。

柚木委員 ぜひよろしくお願いいたします。

 ありがとうございました。

山口委員長 次に、日森文尋君。

日森委員 基本的な問題について、最初に改めて、確認の意味も含めてお伺いしたいと思います。

 シンガポール、メキシコ、マレーシア等々とEPAあるいはFTAを締結してきまして、さらにタイ、チリとは既に大筋合意されたということになっているようです。今後は、ASEAN全体やインドネシア、韓国とこの交渉を進めていこうという流れになると思うんです。

 これと関係の深いWTOの関係なんですが、これがなかなかうまく進んでいなくて、非常に困難な状態にあるということも一方では事実だと思うんです。WTO機能をいわば補強する形で、この地域間協定とか、あるいは二国間、多国間の協定があるというふうに一般的に言われているんですが、今後、我が国として、このWTO交渉、あるいは二国間、多国間の経済協定、これはどのようにそれぞれ位置づけて進めていかれるのか。基本的な問題なんですが、お聞かせいただきたいと思います。

麻生国務大臣 日森先生御存じのように、これは、ガット・ウルグアイ・ラウンドというのができて、その後、いわゆるカタールのドーハ・ラウンドで始まって、このドーハのところで途中で、内容は説明すると物すごく複雑なので、とにかく、簡単に言えば、とまったという形になって、今中断をしておるというところにあります。

 これは御存じのとおりなんですが、日本としては、世界貿易機構というこのWTO体制というのは、日本にとりまして非常に大きなメリットがあったということは間違いありませんので、基本的には、このWTOの条約、組織をもとにして、世界的な多角貿易というものの体制をより前に進めるというのは基本です、日本として。これは日本にとって国益に沿いますので。これはお互いさま、やったところもそうなっておりますので。

 ただ、一方、うまくいっていないというところもありますので、それを補う意味で、FTAとか、それからいわゆるEPAというものを始めて、バイで、二国間でずっといろいろ交渉をやってきておりますけれども、そういったものはやはり、多角貿易というものが中断したりなんかして先行き不安のところもありますので、まずこの地域はこの地域だけでもきちんとしようとか、この国とこの国だけでも、これはWTOもあるけれども、こっちもこっちできちんとしていこうと両方やっていかないと、ちょっと、何が起きるかわからぬというところもあります。

 そういった意味では、私どもとしては、これは、簡単に言えば車の両輪みたいな形で引き続ききちんと進めていかねばならぬもので、こっちをやるからこっちをやらないでいいというような種類のものではないのではないかと思っております。

日森委員 大臣がおっしゃるとおりだと思うんです。しかし、我が国も含めて、現実には世界の国々の中で、二国間あるいは多国間、これは先行して進めていくような傾向が非常に目立っているということが一点あると思うんですよ。そういう意味から考えると、どうも、WTOがとまっちゃっていて、こっちはどんどん先行していくということになると、これは少しバランスが崩れてくるような、そういう心配もあるんですよ。

 それの見通しについて、もしお持ちでしたらお聞かせいただきたいと思います。

麻生国務大臣 これは、日森先生、見通しと言われると、今年度中にドーハ・ラウンドが再開できますとか締結できますと言うほど、アメリカ対EUとか、オーストラリア等々、BRICs対何とかとか、いろいろ入り乱れておりますので、ちょっと何とも申し上げられません。

 ただ、EPAやら何やらでやってみて、その国とやった結果、ひっかかっていた農業問題がそこのところだけうまくいって、ほら、うまくいったじゃないか、だからWTOをやっても大丈夫よというようになればしめたものだと思って、ここのところは、まずは小規模で実験させてみて、大きなところでというのにいければいいがなというように考えてはおります。

日森委員 大分御苦労されると思うんですが、ぜひしっかりとお願いをしたいと思います。

 それから、資料でいいますと、産学官研究会というのが試算を出して、今回のフィリピンのEPA協定を結ぶと日本のGDPが〇・〇三%押し上げられるという結果が出ているようなんです。これは、メキシコとの関係などでも、車を通じて大分売り上げが伸びているとかいうことがあって、確かに、我が国の経済に対してプラスの面が大変大きいということがあると思うんですが、このGDPが〇・〇三%伸びますよというのは、一体どういう根拠で出されたんでしょうか。

小川政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のとおり、日比の経済連携協定の本交渉が行われる前、具体的には二〇〇三年の十二月に、産官学の研究会の報告書が出ております。その中で、日本側は、日本とフィリピンの経済連携のマクロ経済に対する効果分析を行っておりまして、結果として、日本とフィリピンの経済連携は、長期的には日本の実質GDPを〇・〇一%から〇・〇三%引き上げる効果があるというふうに分析をしております。

 御質問の分析の根拠についてでございますが、この試算に当たりましては、一九九二年に、世界貿易分析プロジェクトにより確立されました通称GTAPモデル、これはグローバル・トレード・アナリシス・プロジェクトの略でございますけれども、通称GTAPモデルと呼ばれる分析手法を使用しております。

 なお、このGTAPモデルにつきましては、WTOや世界銀行などの国際機関において経済分析に利用されておりまして、国際貿易の自由化の影響を評価する目的で数多く使用されているところでございます。

 また、日本とフィリピンの経済連携協定の分析、試算につきましては、経済連携協定の経済効果といたしまして、関税撤廃の効果、資本蓄積の効果、資本移動の自由化の効果、それから生産性の向上の効果の四つを含んで計算をしているところでございます。

 以上でございます。

日森委員 大変難しい計算で、私もよく、そうすると、〇・〇三%ぐらいGDPが伸びることになるそうなんですよ、大臣。

 ということなんですが、そのEPAによって、両国の貿易関係が拡大したり、日本の経済に好影響を与えるということは大変いいことだというふうに思うんですが、そのことが、ある意味では、日本国内の日本企業と在フィリピンの日系企業間が中心のやりとりなどになっていくと、フィリピン企業の技術力が育っていくとかいうことにつながっていかない可能性もあるというふうに思っているんです。

 この協定は、当然、平等互恵の原則ですから、そういう意味から考えると、日本企業によるフィリピンへの技術移転等々は具体的にどのように進められていくのか。これをお聞きしておきたいと思います。

小川政府参考人 お答え申し上げます。

 御審議いただいている日本とフィリピンの経済連携協定でございますが、この連携協定が締結されますと、両国間の貿易が拡大することになります。この貿易が拡大することになれば、貿易の相手方が日系企業であったとしても、フィリピン側の経済発展に資するものであるという効果はあるわけでございます。具体的には、日系企業が海外に進出いたしますと、現地の人材が雇用される、部品産業などのすそ野産業が発展する、それから先生御指摘ございました技術移転が進む、さらには税収が上がるといったような効果が期待されるわけでございます。

 一方、先生御指摘のとおり、日本企業と純粋なフィリピン現地企業との貿易が活性化されるということも大変重要でございまして、両国政府にとっての重要な課題であるというふうに認識しております。

 そのためにも、純粋なフィリピン現地企業を育成するとの観点から、この経済連携協定の中では協力のための章を設けておりまして、その中で、とりわけ先生御指摘の技術移転を強力に推進することにいたしております。

 具体的には、この協力章でございますが、両国の経済連携の強化、技術移転に資するべく、人材育成、金融サービス、情報通信技術など、全体で十の分野において両国政府が協力する約束をしているところでございます。とりわけこの章の中で、人材育成、情報通信技術、それから中小企業などの分野におきまして、専門家派遣、研修生受け入れなどによりまして、フィリピンへの技術移転を支援していきたいというふうに考えているところでございます。

 以上でございます。

日森委員 平等互恵という立場ですから、ぜひそこは力を入れて進めていただきたいと思うんですが、しかし一方では、フィリピンでは、日本の自動車産業が大分進出をしております。その中の一社、これはリーディングカンパニーと言っていいと思うんですが、きょうの新聞によりますと、二兆円の利益を目指す、世界最大の売り上げを目指すと言われている企業なんですが、そこの企業で労使紛争があった。これはもう長い間続いているんですが、この紛争に関して二〇〇三年十一月以来三回にわたってILOがフィリピン政府へ勧告をして、百五十名も解雇されたり、団体交渉はやらないとか、こう言っているわけですね、これはだめだということを勧告していますし、フィリピンの最高裁も、団体交渉をやらないなんというのは認められませんという決定をしているわけです。しかし、そういうことを言うならば資本を引き揚げてしまうぞという、まあ一説ですね、そういうふうにおどしをかけたりしているんじゃないかという話もあったりして、非常に混乱した状態になっている。

 もちろん日本政府としては、フィリピンの中の民間の関係ですから、直接指導したり介入したりすることはできない、フィリピンの内政問題だという立場かもしれませんが、先ほどお答えあったんですが、本当に平等互恵で、お互いに信頼関係を持ってお互いの経済を発展させようという立場でこの協定を結び、進めていこうとすると、こういう問題は非常にネックになるんじゃないかというふうな心配をしているんです。もうちょっと突っ込んで言うと、日本の国益を損ねかねないような事態にもなるんじゃないかという心配をしているんですよ。

 そこで、日本の政府として、外務省として、外務省だけではないというお話も伺ったんですが、具体的な対応を何か考えるべきではないのか。一日も早く解決していくようなことをしないと、これが広がっていけば日本の企業に対する不信感が高まってしまうということにもなりかねないと思うんですよ。これについて御見解をお聞かせいただきたいと思います。

石川政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の日系企業の件につきまして、OECDの場では、こういった多国籍企業の行動につきましてガイドラインというのを設けております。私どもは、まさにOECDのメンバーといたしまして、OECD多国籍企業ガイドラインに沿って動くということが大事だと思っております。

 実は、このガイドラインの中には、各国が、そのガイドラインの言葉を使いますと、ナショナル・コンタクト・ポイント、具体的には関係省庁の課長級でございますけれども、そういった窓口と言ったらよろしゅうございましょうか、そういうものを設けなさい、それで企業側、労働組合及び関連のNGO等と意見交換を行う、こういうことをやってきております。

 御質問のフィリピンにおける日系企業の労使紛争につきましては、現在、委員御案内と存じますけれども、フィリピンにおいて司法手続がとられている。高裁と最高裁、それぞれで別の案、似て非なる案件について係争中であると承知しておりますけれども、それはそれといたしまして、私どもとしましては、関係省庁の課長級から成ります、今申しましたナショナル・コンタクト・ポイントを通じて関係者との意見交換等をこれまでも実施してきたところであります。

 委員御指摘の点、重々踏まえたいと実は思っておりまして、今後も、ナショナル・コンタクト・ポイントを通じて、産業界また労働組合等とも意見交換をしながら、この労使紛争が速やかに解決されるよう対応していきたい、かように考えております。

日森委員 まさにそのとおりであって、ぜひ積極的な取り組みをお願いして、時間ですので終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

山口委員長 次に、山井和則君。

山井委員 これから四十五分間、麻生大臣、そして石田副大臣に質問をさせていただきます。

 フィリピンとの看護師、介護職員の受け入れのことがメーンでありますが、また最初に麻生大臣には核武装論議について御質問をしたいと思っております。これは御存じのように、同盟国アメリカからも懸念が今出てきております。

 最初に一言お聞きしますが、麻生大臣は核保有に賛成なんですか、反対なんですか。

麻生国務大臣 重ねて申し上げますが、私から議論をしているわけではない。そちら様の議論の答弁にお答えしているという立場だけは重ねて申し上げておきますので、理事の方、よくそこのところだけはお踏まえください。

 何回も申し上げておりますが、日本の……(山井委員「賛成か反対かを聞いているんですよ」と呼ぶ)これまでの話をよく聞いていただかないと、何回も聞かれますから。何回も答えておりますので、あなたの御要望にこたえて。もう一回聞かれるとまた大変ですので、こちらも。

 だから、私どもの歴代の内閣によって、累次にわたって明確に表明をされております。御存じかと思いますけれども、今、内閣の一員をやっているんだから。政府としては、今後ともこれを堅持していく立場に変わりはありませんとも答えておりますので、極めて明確だと存じます。

山井委員 いや、念のため、賛成か反対か、それを一言でお答えください。

麻生国務大臣 内閣の一員をしておりますので、今申し上げたとおりでありますので、この内閣ではこれまでの堅持していく立場には変わりはないということは、反対ということになろうかと存じます。大体、そう書いてありますから。これまでも言ってきましたから。

山井委員 私がよくわからないのは、反対であるにもかかわらず、なぜ議論することが大事だということをずっと言い続けてこられているのかということなんですね。

 それでお聞きしますが、唯一の被爆国として日本の外務大臣の非常に重要な任務の一つが、悲惨な原爆の被害を世界で唯一体験した国の外務大臣として、核廃絶のリーダーとして先頭に立つことだと私は考えますが、麻生大臣は、核廃絶のリーダーとして先頭に立って日本の外務大臣としてお仕事をされるつもりはありますか。

麻生国務大臣 日本の立場といたしましては、核不拡散条約体制、通称NPTのメンバーの一人でもありまして、今回も国連におきまして百六十何カ国という話をきちんとやっておりますので……(発言する者あり)毎年。でも、毎年ふえておりますから。ことしもふえております。前よりふえたということを忘れぬでください。努力をしなきゃふえませんから。アメリカも反対、日本は賛成でやっておりますから。

 そういった点をきちんと踏まえておいた上で御理解をいただけると思いますが、国際的な軍縮、核不拡散体制というものの強化のために、我々は外務省を引っ張る立場の者として、引き続きこの方面で努力をしておりますし、事実、しておるから百六十何カ国にふえたという事実も御理解いただければと存じます。

山井委員 今の答弁を聞いていて、私、腑に落ちないのは、そういう努力をされていたら、ブッシュ大統領や次期国連事務総長の潘氏が、日本の核保有論議に憂慮とか心配とか、そういうことになりますか。結局、誤ったメッセージを発しているんじゃないですか。先日も申し上げましたように、フィンランドの議長団が日本の国会に来た、話の三分の二は日本は核武装をするんですかという話になっている。明らかに海外はそういう目で見ているじゃないですか。

 ブッシュ大統領も、極東で核武装が少なくなればなるほど世界はよくなると述べて、日本が核兵器についての立場を再考するという発言について、中国が懸念を抱いているのを知っているとブッシュ大統領は言っている。また大統領は、中国は朝鮮半島の核兵器を懸念しているし、北朝鮮から身を守るために近隣諸国が軍備拡張を検討することを深く心配している、彼らは極東での軍拡競争の結果がどうなるか理解しているともブッシュ大統領は言っているわけですね。それで、十一月六日には、次期国連事務総長に決まっている潘外交通商相は、有力政治家により核保有論議が続くことを憂慮する、国連有力加盟国である日本の未来にとっても望ましくない、地域の非核化のため日本も六者協議参加国として努力してほしいと。

 麻生大臣は先頭に立って核廃絶の努力をしていると先ほどおっしゃったけれども、周りは全然そう見てないじゃないですか。逆に核の保有論議を拡散させているのがあなたじゃないですか。麻生大臣、唯一の被爆国の外務大臣として、世界の核廃絶のトップに立つのが日本の外務大臣の仕事なんですよ。にもかかわらず、この間、麻生外務大臣の発言は、日本が核武装するのではないかという誤ったメッセージを与え続けております。このことは国益に反する。外務大臣として正反対のメッセージを発したのではないですか。

 政治は結果責任です。日本の外務大臣たるものは、唯一の被爆国の外務大臣として世界の核廃絶の先頭に立つ使命があるにもかかわらず、核武装するかのような疑念を世界にまき散らし、同盟国からも心配されている。私は、非核三原則を国是とする日本の外務大臣としてふさわしくないと思います。私は、責任をとって外務大臣をやめるべきだと思います。いかがですか。

麻生国務大臣 まず最初に、よく議論をされる前に、私の言った発言の中で、核武装をすると言ったことは一回もありませんから。そこのところは、するかのような話とおっしゃいますけれども、私はすると言ったことは一回もありません。持たない、つくらない、持ち込まないという非核三原則というものにつきましては、この話は韓国もアメリカも両方とも、日本の非核三原則についてはブッシュ大統領も潘基文も両方とも十分に理解をしております。

山井委員 政治は結果責任なんですよ。自分はどういうつもりで発言したという言いわけは通らないんですよ。現に諸外国が心配しているという事実を私は言っているわけです。外務大臣として余りにも言葉が軽過ぎるんですよ、こういう日本の平和国家の根幹にかかわる問題に対して。ですから、一議員として発言されたらいいじゃないですか。外務大臣としてじゃなくて一議員としてだったら、核保有の論議が大事だとか言ったらいいんですよ。そういう意味では、外務大臣として私は全くふさわしくないというふうに思っております。

 それでは、本題の質問に移らせていただきます。

 先ほど柚木議員からも、看護師、介護職員の労働条件の向上がフィリピン人を受け入れる前に先決である、セットで看護師や介護職員の資質向上、労働条件向上が不可欠である、こういう答弁を石田副大臣からもいただきました。ですから、このことについては改めて触れません。

 次の通告した質問に行きますが、これだけ多くの新人看護師が今やめているわけですね。一年目に九・三%やめておるわけです。ここに資料もございますが、お配りした資料の一ページ。なぜこれだけ多くの新人看護師がやめていると認識されていますか。

石田副大臣 新人の看護職員の九・三%が一年以内に離職している、こういうふうに承知をいたしております。その中で、どうして一年以内に離職をするか。高い志を持って看護職につかれたと思いますけれども、やはりその原因の第一は、基礎教育終了時点の能力と看護現場で求められる能力とのギャップ、このことが一番大きい、いろいろな調査ではそういう実態が出ております。

山井委員 まさにそのとおりであります。ですから、看護師の基礎教育の見直しということが重要でありまして、前回の質疑でも白石審議官から、それを踏まえて、ことしの三月から看護基礎教育を充実すべきだという観点から検討会が行われているということでありました。

 前回、麻生大臣に質問しましたが、きょう石田副大臣にお越しいただいたので、改めて質問をさせていただきます。

 今回受け入れるもとの国であるフィリピンの看護師の基礎教育課程は何年ですか。

石田副大臣 四年と承知しております。

山井委員 前回と多少重なるかもしれませんが、石田副大臣がお見えになっておりますので、大事なことですから改めて申し上げますが、今回受け入れるもとのフィリピンの方は四年みっちり看護基礎教育をやっているわけですね。実習時間も二千百四十二時間。それに対して、日本の方は千三十五時間と非常に少ないわけです。

 そこで、検討会がやっているということですが、今の三年の中でカリキュラムをいじるというのではなくて、ここはやはり日本も四年制に延長するという方向で検討すべきではないかと思っております。これについては、五月十日の質疑で川崎大臣からも、その方向で検討しなきゃならぬといって答弁をされましたし、また、公明党の坂口元厚生労働大臣も平成十五年の質疑の中でこう答弁されているんですね。まずは看護師さんのお仕事というものがどういう範囲に拡大をしていくかということが大事でございまして、一層この範囲を拡大していただいて、医療供給体制の中での中心的な役割を果たしていただくという体制をつくることが私は先決と思っておりますということを、坂口元厚生労働大臣も答弁をされています。

 これからはチーム医療の視点も必要となっておりますし、医師不足の中で、ただ単に医師をふやすだけではなく、看護師でできることはもっと看護師がやっていくべきだ、そういう議論も高まっております。

 そこで改めてお伺いしますが、やはりこの検討会の中で、看護師の基礎教育を四年制に延長する、それを目指して検討すべきだと考えますが、いかがでしょうか。

石田副大臣 この問題につきましては、前厚生労働大臣もお答えになったと思いますけれども、現在の看護職の教育、これについてはやはりもっと充実させていかなくてはならない。これは先ほどの御質問の、新人の看護職の方が一年以内で九・三%離職される、それが、現実の受けてきた看護教育と現場に行ったときのギャップ、こういうことで悩んで、こういう方が一番多いということも先ほど御答弁させていただきました。

 これにつきましては、委員も御承知のとおり、検討会をつくって今検討させていただいているところでございますし、そういう十二分ではないという前提で今検討している。ですから、ここのところを、三年を四年に延ばすのか、それとも三年の中で濃密にやっていくのか、これはある意味では、時間経過を横軸として内容の深さを縦としますと、教育内容は縦掛ける横の面積という考え方もできますので、深く掘り下げて時間をたくさんやっていくのか、それとも四年に延ばすのか、これにつきましては今検討しておりますけれども、少なくとも、四年についてのそういう議論も排除はしておらない、こういうことでございます。

山井委員 前回の答弁も聞いたんですけれども、四年の議論は排除はしていないというのは、正直言って、極めて何か後ろ向きな答弁なんですよね。四年制というものを目指して検討する、やはり四年制の移行というものを視野に入れて検討する、そういうことじゃないと、排除はしませんと言ったら、やる気、感じられますか、そういうので。

 これは繰り返しになりますが、九・三%もやめたら、一年間に百四十校分の養成学校の看護師さんが一年以内にやめる、何のために多くの税金を使って養成しているのかわからないわけなんですよね。

 そういう意味では、こういう、フィリピン人を受け入れる、かつ、そのフィリピン人の方が四年制なんだという紛れもない重い現実もあるわけですから、そこは、この看護教育、基礎教育の四年への延長というものを目指して、視野に入れて検討していくという方向性をぜひ出していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

石田副大臣 これは四年、五年という年数が最初にあるということではなくて、やはり、どういう内容の教育をするか、このことが私はまず一番先にあると思うんですね。

 そういう中で、現在の三年の中で、では、できるのか、どうしてもこれは、物理的な時間等を考えて、より充実した教育をするためには三年では足りない、こういう結論が出るか、今検討していただいているところでございますし、最初に年数ありきではない、このように私は思っておりますけれども、白紙から考えて一つ一つ積み上げていって、その中でどういう結論になるか、これは、山井先生、首をかしげておられますけれども、まずそこから検討するのが大事ではないか、こういうふうに思います。

山井委員 改めて、四年制を目指して検討していただきたいという要望をしておきます。これはちなみにいつまでに方向性を出されますか。

石田副大臣 これは年度内にというふうに考えております。

山井委員 この看護師の離職の問題、労働条件の問題、医療は今、インフォームド・コンセントあるいは医療事故の増加、チーム医療、本当に激動の時代を迎えておりますし、看護師さんは、まさに人の命を守る、ある意味で社会の宝物でありますから、そういう意味では、ぜひ、その年度内の結論のときに、四年制に延ばしていくという方向で結論を出していただきたいと要望をいたします。

 次の質問に入ります。

 このフィリピン人千人を受け入れる施設、病院の場所は教えていただけるのか。もう非常に具体的な言い方をしますと、その受け入れる施設、病院が決まったときに、国会議員である者が連絡をして教えてほしいということを言えば、教えてもらえるんでしょうか。

石田副大臣 照会がありました場合には、御回答をしたいと考えております。

山井委員 前回はそこが答弁が不明確でしたので、前向きな答弁をしていただいて感謝しております。ぜひ、それは教えていただいて、やはりその方々がきっちり、何というんですか、いい労働条件で働き、より質のよいサービスができていることを確認していく、オープンな形でというふうにしていくべきだと思っております。

 次の質問に移らせていただきますが、これも前回の質問の続きであります。

 来年の通常国会では、介護福祉士法の改正が法案として審議される予定になっております。その中で、このパネルにもございますが、今回のこの条約の中で三つのパターンがありますが、一つのパターンが、養成校に二年程度行けば無試験で介護福祉士の資格を取得できるということになっております。しかし、来年の介護福祉士法の改正で、恐らくこれが無試験ではなくなるんではないか、養成校を出てからも介護福祉士の国家試験を受けることになるんではないだろうかというふうに今聞いております。

 そこでなんですが、そのように日本の介護福祉士制度が改正された際に、今のこの条約の内容はどうなるのかということであります。私の意見を申し上げますと、当然、日本人と同等の試験を受けて介護福祉士になる、この条約自体が日本人と同等の試験を通るというのが大前提であると理解しておりますから、その介護福祉士法改正が実現したら、フィリピン人も日本人と同じ試験を受けなければ介護福祉士になれないというふうに私は理解をしておりますが、石田副大臣、この件について御答弁をお願いいたします。

石田副大臣 来年の通常国会に法案を提出するということも、これはまだ決めたわけではございませんし、現在の状況は、もう委員も御承知のとおり、本年七月に取りまとめられた検討会報告書において、介護福祉士資格の取得方法については一元化を図る、こういうふうな検討会の結論も出たわけです。

 これにつきましては、その後、現在、審議会で御審議をいただいている状況でございますので、いただいている状況の中でいろいろと先取りをした発言は私は差し控えたいというふうに思いますけれども、EPAでフィリピンとの約束をしたいろいろな問題につきましては、これは現時点を前提にする以外ないわけですので、現時点におきましては、今委員が資料でお示しをいただいた図のとおりだ、こう思っております。

 ですから、その後のことにつきましては、審議会の御結論をいただきまして、どういう形にするのか、そこはまだ出ておりませんので、現在の段階では将来の仮定の話を前提にしてお答えはしにくいということは、ぜひ御了解いただきたいと思います。

山井委員 前回の答弁より後退していますね。それはやはりおかしいんじゃないですか。やはり日本で働いてもらう以上は、日本人と同じ介護福祉士の試験を、日本人が全員受けるのならば、養成学校を出た人が受けるのなら、フィリピン人にも受けてもらう、それが筋じゃないですか。

 今回、これ、一応、法案の審議をやっているんですから、方向性はきっちり出してもらわないと、今わからないということじゃ、そうしたら、わかってからもう一回出してくださいということになるわけですから、やはりそこは方向性は出していただきたいと思います。

石田副大臣 先ほど申し上げましたように、法案についてはまだ何も決まっていないということは申し上げたとおりであります。

 ですから、現時点においては、介護福祉士と、それから資格の取得方法の見直しの具体的内容については、現在検討中の段階でありますから、具体的な議論については、見直しにかかわる法律案の審議のときにぜひお願いをしたいと思いますが、見直しが行われた場合、これは仮定の話でありますけれども、対応については、日本人と外国人について同様の扱いをする、こういうことを基本としながらも、日比経済連携協定との関係で問題が生じないように、これは関係省庁で緊密に協議をしていきたい、こういうことでございます。

山井委員 それは、今の答弁には納得できないですね。今の答弁を聞いていたら、日本人と同等を原則にしながらもフィリピンに配慮する。そうしたら、日本人は全員試験を受けて通っているのに、フィリピン人だけは養成学校で試験なしで日本のこの介護現場で働ける、そういうのを認めるかのごとくの答弁は私は納得できません。そこはやはり大原則は、日本人よりも冷遇するのはよくないけれども優遇するのもこれはおかしいわけですから、原則として、厚生労働副大臣は、日本人と同等の試験を受けて日本人と同等の条件で働いてもらう、そのことはびしっと答弁してもらわないと、この条約そのものの趣旨が変わってきてしまいます。

石田副大臣 先ほども御答弁しましたけれども、日本人と外国人について同様な扱いをすることを基本としつつと、こういうふうに申し上げております。

山井委員 ぜひ、それでやっていただきたいと思います。

 これは深刻な問題で、私、今週日曜日、介護福祉士養成講座の授業がありまして、そこに呼ばれて一言あいさつしまして、こういう議論が行われている、もしかしたらフィリピン人だけが特例で試験がないという可能性があるかもしれませんよと言ったら、みんなひっくり返ってびっくりしていましたよ、それは。日本人でも試験を受けるのはお金もかかって大変なんですから。これは後になってやはりそういうことになってしまったということじゃ済みませんから。だから、ぜひともそこは、同じ条件でやるという鉄則は貫いていただきたいと思います。

 それでは、二年後に人数枠を見直しする、二年間は千人なわけですね。これは前回も麻生大臣に質問しましたが、今回もお答えいただきたいと思いますが、やはり千人受け入れて、その後気がついたら一万人、二万人にふえていたというのでは、これは当然困ります。

 ですから、要望でありますが、人数枠を見直す際には、きっちりその二年間の報告を国会にして、やはり国会に審議にかけて、労働条件は悪くなっていないか、労働市場に悪影響を与えていないか、サービスの質が悪くないか、そういうことをきっちりチェックしていかないと、これは日本の介護現場の労働条件に非常に大きな影響を与えますよ、野方図に万が一やってしまったら。

 ですから、最初の二年間はやってみないとわからない部分があるわけですから、その二年後のときにはぜひ国会に報告して、人数枠の拡大について審議をする、そのことを要望したいと思いますが、麻生大臣、いかがですか。

麻生国務大臣 今、我々として、とりあえず二年間のスタートということを申し上げて、千人の枠を四百、六百で割った、その背景というのは理解しておられるんでしょうね。その前提で話をさせていただかぬと話がちょっと込み入りますので。そういった意味では、まずは円滑なスタートを切るというのが我々としては大事なところだと思っております。

 先ほどいただいた資料が正しいとするならば、少なくとも需要と供給のところは、そちらの資料では足りていない、役所の方の資料は足りるという答弁をしているので、そこに差があるという現実に立って、どうするかという話を多分しておられるんだと思いますので、私どもとしては、これはまずは円滑なスタートを切るということが大事なんだと思っております。

 まず、偏見もある程度ありますから、はっきり言って。そういった意味では、私どもはセメント会社で、フィリピン、マレーシア、シンガポール、いろいろな国からの人を預かって我々はやってきた経験がありますので、そこらあたりでも最初はやはりみんななかなか受け入れないものなんですけれども、しばらくやっていくとうまくいってきたという例を、自分なりに経験がありますので申し上げているんです。

 したがいまして、まずやらせていただきまして、去る十一月一日の答弁でも申し上げましたように、現時点では正直何ら決まっているわけではありません。それは確かにそのとおりなんで、受け入れの実績とか受け入れる施設によってもまた、いろいろ病院、御存じのように違いますから、そういった病院によって差が出てくるところだと思いますので、これはだめだというところは、厚生労働省も先ほど適切に指導すると言うておりますので、そういったところにはちゃんときちんとこういうことをするべきだと。ほかの病院と比べてこうじゃないかというような話は、きちんとした実績が二年間すると出てくると思いますので、そういった意味では、責任を持って判断をしていかねばならぬところだろうと思っております。

 いずれにしても、こういったものに対して、これは、かかる、介護される側の人の話もよく聞かないかぬところでもありますので、そこらのところの話がなしで事がどんどん進んでいくというのは断固避けねばならぬと思っております。

山井委員 確かに、麻生大臣おっしゃるように、主人公は介護される側の高齢者ですから、その方々にも、当然言葉が不自由なわけですから、意思疎通がちゃんとできるかということもチェックしないとだめだと思いますし、ぜひ二年後には、きっちり説明責任を国会に対して果たしていただいて、やはりきっちり審議をするという形でやっていただきたいと思っております。

 きょうの資料にも入っておりますが、この五枚目、「介護福祉士養成 学生募集やめた 専門学校相次ぐ定員割れ…」「若い人は定着せず、募集をしても一人も来ない。景気が良くなると、きつくて大変な介護職ではなく、別の仕事に流れてしまう」というコメントも載っております。

 また、次の六ページを見ておりますと、東京や愛知、香川などでは有効求人倍率も二を上回っております。

 それで、さらっと介護職員の状況を言いますと、七ページ目にもありますように、直接介護に当たる介護職員は離職率が二一・四%。それで、平均賃金月額、税込みも、十代では十四万七千円、二十代では十八万五千五百円、三十代になっても二十一万円。

 八ページに行きますと、こういう施設で働く介護職員が一番悩んでいる悩み、不安、不満はというと、やはり賃金が安いというのが五四・七%なんですよね。

 しかし一方、介護施設の施設長さんから私も話を多少聞いてみると、もう人が集まらぬ、山井さん、フィリピン人をぜひ受け入れてくれ、そういう要望も正直言いまして聞くわけです。でも、その心は何かというと、このままでは賃金を上げないと人が集まらない、そこで賃金を上げなくてもフィリピン人が五人、十人と入ってくれるんならば経営上は非常に助かるなと。これは、背に腹はかえられないからかもしれません。こういうことになるんですね。

 ですから、二年間受け入れて、麻生大臣が今答弁してくださいましたように、きっちりとした質のチェック、高齢者はどう思っているのかとか、そういうことなしに、隣の施設は受け入れて人手不足が解消できてよかったな、うちもぜひちょうだい、うちもちょうだいと。最初それは、全国で千人ぐらいだったらもうごく一部ですからね。今、人手不足、足りないのに、どんどんどんどん入れてということになっていって、二年後、そのまま拡大していったら、アメリカやイギリスでも実際そういうケースはあったわけですけれども、結局、その国の若い人が介護士や介護職員に魅力をなくして職につかなくなって、人手不足が外国人を安易に受け入れることによってますます加速していくという悪循環に、泥沼にはまりかねないわけであります。

 そこで、お伺いしたいと思います。

 二年後にはどのような項目をチェックしていかれるんですか。私としては、ほかの施設や病院よりもフィリピン人を受け入れた施設や病院の労働条件が悪化していないか、またサービスの質を保たれているか、また、ほかの病院やほかの施設との比較ではなくて、過去と比べて、フィリピン人を受け入れることによって賃金や労働条件が悪化したり上がらなくなったということがないのか、そのあたりを十分チェックする必要があると思います。この点について、いかがでしょうか。

石田副大臣 このEPA協定の署名に当たりましては、受け入れ二年間にかけて当初の人数の上限を千名、こういうことにして、二年間の実績を見ていろいろこれから決定をしていく、こういうことになっております。

 厚生労働省としては、病院、介護施設における適切な就労、研修が確保されるよう取り組んでいきたいと思っておりますし、御指摘の点も含めまして、受け入れに伴う問題が生じないように注視をしてまいりたいと思います。

山井委員 そういう漠然とした答弁ではちょっと困るわけで、サービスの質はちゃんとチェックする、その施設、病院において、フィリピン人を受け入れて労働条件が悪化していないかちゃんとチェックする、この二点を約束してください。

石田副大臣 これは、受け入れをして、そういうところで問題があれば、フィリピンの方にも不満が出るだろうし、また、お世話をされている方からも当然不満が出てくるだろうというふうに思います。ですから、双方から不満が出ているかどうか、そういうことも私は大事な観点だろうと思いますので、そういう点も含めまして、先生のおっしゃる点もよく承りまして、問題が生じないようにやっていきたい、こう思っております。

山井委員 何かちょっと答弁が不十分なんですよね。簡単なことですよ。受け入れた施設、病院でサービスの質が悪化していないか、そして労働条件が悪化していないか、そのことはチェックしますね。

石田副大臣 先ほども御答弁させてもらいましたけれども、先生のおっしゃることも含めてしっかりと注視をしていきたい、こういうふうに申し上げました。

山井委員 ぜひともやっていただきたいと思います。

 そこで、ちょっと個別の話に移ります。

 今回、このスキームの中で、例えば看護師の場合、ずっと上限三年いて試験に落ちた、あるいは介護職員が四年間、試験を受けて落ちた、その人が一たんフィリピンに帰った。同じその人がもう一回、またゼロからスタートして、三年、四年、看護師、介護職員として、まあリピーターとして、落ちた人が戻って研修、就労することは可能ですか。

石田副大臣 協定上は、看護師候補者については三年、介護福祉士候補者については四年の在留の間に資格を取得していただく、こういうことになっております。

 残念ながら、資格を取得できずにお帰りいただいた場合は、同じスキームでは再度入国してやることは考えておりません。試験を受けるためだけに短期に入ってくる、これについては認められております。

山井委員 わかりました。そうしたら、再試験のためにしか戻ってこられないということで、その次行きます。

 これも具体的な話です。例えば、九人ぐらいの規模の認知症の、痴呆症の高齢者のグループホームというのがあります。これは夜間、夜勤は一人でやっているわけですね。こういう一人夜勤のときにフィリピン人の研修生が一人でやる、そういうケースは起こり得るのでしょうか。

石田副大臣 認知症の高齢者グループホームの指定基準については、夜間及び深夜の時間帯を通じて一人以上の介護従事者に夜勤を行わせなければならない、こういうふうになっております。

 今回の経済協定につきましては、入国したフィリピン人介護福祉士候補者については、介護福祉士監督のもとで、施設で就労しつつ国家試験の受験に向けての研修を受ける、こういう形になっております。ですから、受け入れ施設の人員基準に定める人員数としては含めない、こういう方向でございますので、認知症の高齢者グループホームの夜勤をフィリピン人介護福祉士候補者が一人で行うことは認めない方針であります。

山井委員 今のは非常に重要な答弁であると思います。

 要は、今回の研修、就労のフィリピン人はあくまで実習、試験のためということであるから、施設の人員配置基準の数としてはカウントしないということですね。これをきっちりやらないと、配置基準が満たせないからフィリピン人を雇って数合わせをしようということになったら大変であります。

 それで、次に移りますが、先ほど柚木議員の答弁も聞いておりましたが、この二年間の最後だけではなくて、今後フィリピン人を受け入れた病院や施設のサービスの質は具体的にどのようにしてチェックしていくんですか。

石田副大臣 受け入れに当たってのサービスをどういうふうに確認していくか、こういうことでありますけれども、受け入れ施設においては、フィリピン人看護師、介護福祉士候補者を除いて受け入れ施設の人員基準に定める看護師、介護福祉士が確保されることとなります。

 また、フィリピン人看護師、介護福祉士候補者は、看護師や介護福祉士の監督下で就労、研修していく、こういう仕組みになっておりますので、その人たちを入れたからといってその人たちを人数に含めてやるというわけではありませんので、監督下でいろいろと研修をしていく、こういうことでございますので、水準については確保される、このように思っております。

山井委員 いや、それはわからないんですよね。要は、施設の人員配置基準というのは、すべての施設がすれすれでやっているわけではないですが、もう一人でも人員が多ければ多い方がいいわけですよ、最低限はクリアしていても。

 そこで、その中の人手として、フィリピン人に来てもらったことによってサービスの質がよくなったのか、悪くなったのか。ちょっともとに戻るかもしれない。まず、この検証はだれがするんですか。

石田副大臣 今回のこの経済連携協定で来られた方に対しては二年後に検証する、こういうことにはなっております。ですから、現状、受け入れ施設に対して国際厚生事業団が巡回指導を行って就労や研修の状況を確認していく、こういうことになっております。

山井委員 二年後に検証ももちろん必要なんですけれども、受け入れて一カ月後どうなっているか、三カ月後どうなっているか、半年後どうなっているかというのも非常に重要だと思うんですね。

 それで、前回もお聞きしましたが、この国際厚生事業団というのはたった十六人しかいないわけですね。総務の方とかいろいろ入れたら、動き回れるのが数人かもしれない。もちろん前回の答弁の中で、それをふやしていって体制を強化するという答弁はいただいていますけれども、やはりそれぐらいで介護サービスの質のチェックというのができるとは思えないんですね。先ほど麻生大臣も答弁されましたが、やはり受け入れた側の高齢者が喜んでいるのか、あるいは喜んでおられないのかということは非常に重要だと思います。

 そのあたり、やはり高齢者の声をきっちり定期的に聞いていただきたいと思うんですが、そこはいかがでしょうか。

石田副大臣 今回フィリピンの方を受け入れるのは、介護職では六百人、こういうことになっております。現在、国際厚生事業団は十六人でやっておりますけれども、やはりこれでは十二分にできるかという御疑問はそのとおりだと思いますので、適切に指導ができる体制はぜひ組んでいただきたい、こういうふうに思っております。

 ですから、六百人ということでありましたら、全員が一つの施設に散らばったとしても六百カ所、こういうことですから、一年三百六十五日、何名かの方がしっかり巡回指導していってもそれなりの指導をできる、私はこう思います。

山井委員 これも要望でありますが、高齢者の声を聞く、高齢者というか、介護されている側の声を聞く、それとともに、やはり同僚の職員の方々の声を聞く。

 例えば、夜勤が晩二人だったとしますよね。二人で夜勤していて、片一方側がフィリピン人だった。そうしたら、二人いるけれども、実質これは一人みたいなものですよね。夜間に認知症の高齢者がトイレに行きたいとか何だと言って、緊急事態なことを言ってもなかなか対応できなかったりして、その同僚の方が、フィリピン人の方は心は優しいけれどもやはり能力的には非常に困るというようなことが、もしかしたらそういう声も出てくるかもしれないんです。

 そういう、高齢者の声、それと同僚の介護職員やまた看護師の声もきっちり聞いていくということをお約束いただければと思います。

石田副大臣 今回初めてこちらに来ていただくわけですから、フィリピンの方も、いろいろな、たくさんいらっしゃる中でも、ぜひ日本に来たいとか、優秀な方が来られるのではないか、こういうふうに私は期待もしておりますし、フィリピンの方の能力が劣っているとも思いません。

 巡回指導の中で調べていくということでありますから、これは勤めていらっしゃる方、またお世話をしていただく方、両方が満足のいくような体制になっていくようにしていくのは当然でありますから、巡回指導についてはしっかりとやっていきたいと思います。

山井委員 今回お配りした資料の最後の十一ページに「外国人研修見直し 劣悪な環境、失跡が問題化」ということがあります。先ほど柚木議員の質問でも、どこがどうやってチェックするのか、それでもし待遇が悪かったり、その施設、受け入れ病院側に問題があったらどうするのかという質問がありました。

 このことについてお伺いしたいと思いますが、その前に、今もしかしたらちょっと誤解を招いたかもしれませんが、私は決してフィリピン人が介護がよくないと言っているわけではありません。私は、シンガポールの老人ホームで一カ月ぐらいフィリピンとスリランカの介護職員とボランティアで介護のお手伝いをさせてもらったこともあって、本当に心優しくて、日本以上にもしかしたら敬老の心があるぐらいの、お年寄りを大切にする国民です。しかし、言葉というのは非常に大事なんですね。

 わかっていただきたいのは、今の介護施設に入居している高齢者の七割が認知症です。ということは、御飯食べましたかと言っても、食べていないと言われるわけですよね。日本人でも、えっ、食べていないのかな、こう思ってしまうぐらい。ところが、そうじゃないでしょう、さっき食べたでしょうというようなことを言いながらコミュニケーションをとる。

 例えば、家に帰りたいと言って、夕方になったら認知症のお年寄りは、ふろしきを抱えて帰ろうとする方がいるわけですよ。そうしたら、本当の家じゃなくて、その認知症の高齢者が帰りたがっているのは二十ぐらいのころの古い家だったりするわけで、こういうことに対応するためには、今の国内でさえ介護職員は高いスキルが必要だということで、だからこそ介護福祉士法の改正も今考えられていると思うんですよね。

 そういう中で、日本の伝統文化がわからない、また言葉がわからないということで、幾ら優しい気持ちがあっても不十分な面が出てくるかもしれないということで私は先ほど言わせていただきました。

 それで、もし施設や病院が劣悪な労働条件であったりして、例えば、もう外出もさせずに閉じ込めたとか、腰痛で苦しんでいるのに病院にも行かせなかったとか、万が一こういうふうなことが見つかった場合には、私はもう厳しく取り締まるべきだと思いますが、その点についてはどう思われますか。

石田副大臣 その問題は極端なお話だと思いますけれども、それはもう指導するとかいう次元の話ではなくて、これは一種の犯罪ではないかと思います。ですから、当然そういうことはあってはならないと思いますので、そういうことにならないためにも、巡回指導についてはしっかりとやっていきたいと思っております。

山井委員 ぜひ、そういう苦情が多かった施設、病院は次回からは指定しないというふうなことでやっていただきたいと思います。

 それでは、時間が来ましたので、質疑を終わります。ありがとうございました。

山口委員長 これにて両件に対する質疑は終局いたしました。

 次回は、来る十日金曜日午前九時二十分理事会、午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時一分散会


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