衆議院

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第7号 平成18年12月13日(水曜日)

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平成十八年十二月十三日(水曜日)

    午後二時一分開議

 出席委員

   委員長 山口 泰明君

   理事 小野寺五典君 理事 嘉数 知賢君

   理事 三ッ矢憲生君 理事 三原 朝彦君

   理事 山中あき子君 理事 長島 昭久君

   理事 山口  壯君 理事 丸谷 佳織君

      伊藤 公介君    猪口 邦子君

      宇野  治君    小野 次郎君

      高村 正彦君    篠田 陽介君

      新藤 義孝君    鈴木 馨祐君

      松島みどり君    矢野 隆司君

      山内 康一君    笹木 竜三君

      田中眞紀子君    長妻  昭君

      前原 誠司君    笠  浩史君

      高木 陽介君    笠井  亮君

      照屋 寛徳君

    …………………………………

   外務大臣         麻生 太郎君

   内閣官房副長官      下村 博文君

   防衛庁副長官       木村 隆秀君

   外務副大臣        岩屋  毅君

   内閣府大臣政務官     岡下 信子君

   外務大臣政務官      松島みどり君

   政府参考人

   (防衛庁防衛政策局長)  大古 和雄君

   政府参考人

   (防衛施設庁長官)    北原 巖男君

   政府参考人

   (外務省大臣官房長)   塩尻孝二郎君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 長嶺 安政君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 佐渡島志郎君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 松富 重夫君

   政府参考人

   (外務省北米局長)    河相 周夫君

   外務委員会専門員     前田 光政君

    ―――――――――――――

委員の異動

十二月十三日

 辞任         補欠選任

  愛知 和男君     矢野 隆司君

同日

 辞任         補欠選任

  矢野 隆司君     愛知 和男君

同日

 理事三ッ矢憲生君同日理事辞任につき、その補欠として嘉数知賢君が理事に当選した。

    ―――――――――――――

十二月五日

 核兵器の廃絶に関する請願(佐々木憲昭君紹介)(第八五四号)

 核兵器禁止条約の早期締結に関する請願(河井克行君紹介)(第八九六号)

同月六日

 核兵器禁止条約の早期締結に関する請願(亀井静香君紹介)(第九一八号)

 同(中川秀直君紹介)(第九一九号)

 同(増原義剛君紹介)(第九二〇号)

 同(松本大輔君紹介)(第九二一号)

 同(三谷光男君紹介)(第一〇〇一号)

同月七日

 核兵器禁止条約の早期締結に関する請願(平口洋君紹介)(第一〇六二号)

 同(岸田文雄君紹介)(第一一五三号)

同月十一日

 核兵器禁止条約の早期締結に関する請願(寺田稔君紹介)(第一三〇〇号)

 女子差別撤廃条約選択議定書の批准に関する請願(石井郁子君紹介)(第一三五三号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第一三五四号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 理事の辞任及び補欠選任

 政府参考人出頭要求に関する件

 国際情勢に関する件


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     ――――◇―――――

山口委員長 これより会議を開きます。

 理事の辞任についてお諮りいたします。

 理事三ッ矢憲生君から、理事辞任の申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

山口委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 引き続き、理事の補欠選任についてお諮りいたします。

 ただいまの理事辞任に伴う補欠選任につきましては、先例によりまして、委員長において指名するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

山口委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 それでは、理事に嘉数知賢君を指名いたします。

     ――――◇―――――

山口委員長 次に、国際情勢に関する件について調査を進めます。

 この際、APEC等について政府から説明を聴取いたします。外務大臣麻生太郎君。

麻生国務大臣 私は、去る十一月十四日から十九日まで、ベトナムのハノイを訪問し、第十八回アジア太平洋経済協力閣僚会議、通称APECに出席をいたしております。また、十二月七日から九日まで、シンガポール及びフィリピンのセブを訪問いたしました。

 APEC閣僚会議では、次の成果を得ております。

 WTOドーハ・ラウンド交渉の再開に向け、首脳が前向きなメッセージを発出すべきことで一致し、首脳会議でのドーハ・ラウンドに関する声明発出につながりました。

 また、アジア太平洋の自由貿易圏を長期的な目標とすることについて、多くの閣僚から支持がありました。

 私より、北朝鮮のミサイル発射及び核実験の問題に言及したほか、拉致問題解決のためにも、国連総会における北朝鮮人権状況決議への支持を呼びかけております。

 会議出席に加え、ベトナム、中国、米国、豪州、タイ及びロシアの各外相と個別に会談したほか、韓国の次期外相の表敬を受けました。さらに、日米豪閣僚級戦略対話を行い、主に次の成果を得ております。

 李中国外交部長とは、歴史共同研究の枠組みについて意見が一致するとともに、北朝鮮問題に関する協力強化を確認しております。

 ライス米国務長官とは、北朝鮮問題に関し、再開後の六者会合で、朝鮮半島の非核化に向けて具体的に動き出すことが重要であることを確認し、また、日米間の防衛協力の強化などで一致しております。

 ラブロフ・ロシア外務大臣とは、外交事務当局間のトップによる戦略対話の立ち上げや、領土問題で双方に受け入れ可能な解決策を見出すべく精力的に努力することなどで一致しております。

 宋韓国次期外交通商部長官とは、北朝鮮の核問題に引き続き緊密に連携していくことなどで一致をしております。

 次に、シンガポールの訪問の成果ですが、同国では、ジョージ・ヨー外務大臣との会談を行い、東アジア地域協力や中国情勢、北朝鮮問題などについて意見交換を行いました。

 また、フィリピンのセブでの開催が予定されていたASEAN関連外相会合などは、現地到着後、御存じのように台風によって延期となりましたが、フィリピン及び中国の外務大臣とそれぞれ個別に会談を行いました。

 日本・フィリピン外相会談では、二カ国間の関係や北朝鮮の問題、ミャンマー情勢のほか、安保理改革や東アジア地域協力についても意見交換を行いました。

 日中外相会談では、日中関係について、歴史共同研究第一回会合の開催など、対話、交流、相互理解の強化について一致したほか、北朝鮮問題につきましても日中間で緊密に協力していくことで一致をしております。

 なお、十八日より、北京にて、第五回六者会合第二セッションが開催されることとなりました。再開される六者会合においては、北朝鮮による核放棄に関し、早期に具体的成果が得られるよう、実質的な議論が行われることを期待しておりまして、日本としても最大限の努力をしていく考えであります。また日本としては、拉致問題についても取り上げ、早期解決の重要性を強調する考えであります。

山口委員長 以上で説明は終わりました。

    ―――――――――――――

山口委員長 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房長塩尻孝二郎君、大臣官房審議官長嶺安政君、大臣官房審議官佐渡島志郎君、大臣官房参事官松富重夫君、北米局長河相周夫君、防衛庁防衛政策局長大古和雄君、防衛施設庁長官北原巖男君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

山口委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

山口委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。三ッ矢憲生君。

三ッ矢委員 自由民主党の三ッ矢憲生でございます。きょうは、御質問の機会を与えていただきましてありがとうございます。

 また大臣、御出張、御苦労さまでございました。

 きょうは、限られた時間でございますので、大きく二つお伺いしたいと思っております。一つは北朝鮮問題、それからもう一つが外交機能の強化、この二点についてお伺いしたいと思います。

 最初に、北朝鮮問題でございます。

 この週末、セブ島で開催される予定でございましたASEAN首脳会談や東アジア・サミットなど、一連の首脳会議が台風ということで延期になったわけでございます。ただ、麻生外相におかれましては、先ほど御報告もございましたが、シンガポールの外務大臣とかフィリピンの外務大臣、さらに李肇星外交部長とそれぞれ個別に会談を持たれたということでございます。

 この中で、日中の外相会談についてお伺いしたいと思います。

 これは私の想像も半分入っておりますが、この会談の中で恐らく大きな議題、話題となったのが北朝鮮問題であろうかというふうに想像しておるわけでございます。

 外務省の資料によりますと、日中外相は、再開後の六者協議で、早期の具体的成果が得られるよう日中間で緊密に協力していくことで一致した、また、麻生大臣からは、日本や多くの関係諸国にとっての拉致問題解決の重要性を改めて強調されたということでございます。

 それに対して李肇星部長からは、日本側の関心を理解する旨の発言があったというふうに聞いておるところでございますが、北朝鮮問題につきまして、より具体的にどのようなやりとりがなされたのか、特に、核問題における具体的成果について、六カ国協議の議長国でもございます中国がどのような認識を持っているのか、差し支えのない範囲でお答えいただければと思います。

麻生国務大臣 御指摘のありましたように、九日に日中外相会談を行っております。この日が台風の限度ということで、この日まで現地におりましたので。

 北朝鮮問題を取り上げておりますが、再開後の六者会合、その当時、六者会合をする予定にしておりましたので、再開後の六者会合で、北朝鮮による核兵器に関する計画並びに核の保有というものの放棄に向けて、今言われましたように具体的な成果というものも出すようにしなきゃならぬということで、それに関しては日中双方で協力してやっていかねばならぬ。

 御存じのように、その後、十八日ということで正式に決まっておりますので、いわゆる核保有国として北朝鮮を認めることはありません、また、核というものの、いわゆる持っておりますものはもうない、いや放棄したといったって、それ本当ですかというものをきちんと証明するというようなことはいろいろなことを考えないけませんので、そういった具体的な努力というものを双方間でやっていかないかぬということで、これは仮にも中国は議長国ですから、そちらの方でまとめてもらわないかぬ。

 日本の方は、被害を受ける確率、極めて高い。一番確率は高いわけなんであって、全然おたくとうちとでは緊張感の度合いも違いますし、加えて、うちは拉致問題を抱えていますので、そういった意味では、核だけ片づいたから、はい、北朝鮮に関してしかるべき援助とか五十万トンとかいろいろな話を言われたって、うちはできませんよ。だから、そういったところはきちんと頭に入れておいてもらわないと、具体的成果の内容がおたくとうちとでは違うということになり得る。

 ただし、核の問題に関しては、これは全く一致をして事に当たっていくということだけは間違いないところであります。

三ッ矢委員 今御答弁いただいたわけでありますが、この六者会合、十八日から予定されておるわけでございます。そこで、北朝鮮の核問題を話し合うこの六者会合について、我が国が臨む基本姿勢といいますか、それについてちょっと、今大臣の御答弁の中にもかなり含まれていた部分があろうかと思いますけれども、改めてお伺いしたいと思います。

 これは私の杞憂にすぎないということかもしれませんが、具体的成果ということが、やはり核の完全な放棄、核計画も含めてこれの完全な放棄ということでなければならないというふうに思うわけでございますが、客観的に見まして、北朝鮮の核兵器が中国やロシアに向けられる可能性というのはほとんどないと思いますし、また韓国も、同じ民族でございますから、直接北朝鮮が韓国に対して核を使う可能性というのは非常に低いんじゃないか。我が国は一番脅威を感じるわけでございますね。

 なお、アメリカについては、核の廃棄がもちろん目的ではございますけれども、どちらかというと、テロリスト等への核の拡散といいますか、そこをどうしても第一に確保したいというようなことがいろいろな報道にもちらちらと見えているような気もして仕方がございません。

 それで、いわば同床異夢にある関係国の中で、これを取りまとめて、何としても核放棄への具体的な流れをつくり出さなければならないというふうに考えるわけでございますが、最近の米朝中の水面下の話し合いを見ておりますと、日米韓が緊密な連携をとっているとはいっても、最後の段階で、下手をすると日本が蚊帳の外に置かれるようなことになって、ほかの国が取引してしまうというようなこともあり得るのではないかということを危惧しておるわけでございます。

 そこでお尋ねいたしますが、十一月以来、米中朝で話し合いをしてきておるわけでございますが、これについて政府はどのように見ているのか。また、再開六者会合で具体的な核廃棄に向けた流れをつくるために、これまで日本政府として、アメリカあるいは韓国などとどのような話し合いを行われてきたのか、お答えいただきたいと思います。

麻生国務大臣 三ッ矢先生、これは十月末から十一月下旬にかけまして、中国の働きかけによって、いわゆる六者会合というものの首席代表レベルでの会合がスタートしたことになるんですが、日本としては、少なくとも、この六者会合が再開されるに当たっては、議長国の中国の努力並びにアメリカの粘り強さというものには敬意を表さねばいかぬところだと思っております。

 日本としては、例えば十一月中旬でしたかのAPECにおいて、日米韓首脳会議、それから米国、中国、韓国、ロシアとの首脳会談並びに外相会談において、北朝鮮という国を核保有国としては認めない、また、北朝鮮の非核化ということについては具体的に動き出さねばならぬということが重要なんだということを日本は主張して、基本的には各国から完全な同意を得ております。

 それから、その後、私どもの佐々江アジア局長と米国、中国、韓国の六者会合の首席代表との間で六者会合の再開に向けて協議をするなど、六者会合の正式会合に向けていわゆる下準備をやって、そして、核放棄に向けた動きを強めないかぬということで、特に中国がその気になってきっちり向こうに言わせるということが一番肝心だと思っておりましたので、それを努力してきたところです。

 結果として、十八日から六者会合の正式会合がスタートすることに、北京で開かれることになりました。北朝鮮の核の放棄というものが早期かつ具体的な成果が得られるということで、これは実質的な議論が行われることが肝心であって、六者会合を開くというのは単なる手段であって、目的ではありません。

 したがって、アメリカやら韓国やらと、このことに関しては、これは目的ではない、これは手段なんだから、ここで何か具体的な成果を出すということが大事なんだということで、五者間で思惑が違っていないように努めないかぬところだというところで、今の段階において、少なくとも朝鮮半島の非核化を実現するということ、また北朝鮮を核保有国としては認めない等々は、完全に五者というかロシアを含めて一致をいたしておりますので、その点で相違があるわけではありません。

三ッ矢委員 ぜひその方向で頑張っていただきたいと思っております。

 次に、先ほど大臣も触れられました拉致の問題なんですが、きょうの新聞報道にもございましたけれども、議題で拉致を取り上げるかどうかということでございます。

 我が国としては、核問題で今お答えいただいたような我が国を無視したような妥協が図られないようにするという部分、これが眼目でございますけれども、もう一つ、やはり拉致の問題の解決なくして、日朝の国交正常化ですとか、あるいは経済支援というようなことはあり得ないというふうに考えておるわけでございますけれども、北朝鮮の方は、いろいろプロパガンダで、どうも日本が拉致問題を前面に出して六カ国協議の足を引っ張っているんじゃないかというような、言ってみれば牽制するようないろいろな動きを出しておるわけでございます。

 この再開六者会合において、拉致問題を核問題と並ぶ議題に位置づけて、北朝鮮の誠意ある対応を引き出す、このために我が国として現在どのような外交努力を尽くされておるのか、これを御説明いただければと思います。

麻生国務大臣 御指摘のとおりに、この再開後の六者会合において、核の問題が優先順位の一番になることは間違いありません。これは、五カ国皆その点に関しては一致をしております。これが最大の問題。

 ただ、日本の場合は特殊な事情がある、拉致です。そのことに関して、この問題が解決しない限りは、日本としては、この六者会合というものに関して、仮にどんな決定がなされるにしても、それに対して日本が、この拉致の問題を無視された場合は、うちとしては、これは正直申し上げて、協力をしてくれとか言われても協力することはできないということだけは日本の事情としてはっきりしておいてもらいたい。

 これは日本だけの問題じゃない、多くの国で、レバノンを含め、タイを含め、いろいろ最近出てきています。そういった意味では、国連の北朝鮮の人権の話もあれだけの圧倒的多数で通ってきておりますので、そういったものを含めて、日本としては、多くの問題を抱えているのは何も日本だけじゃないのであって、これはそういったことも頭に入れておいてもらいたい。

 この点に関しては、アメリカ、ロシア、韓国、いずれも皆その意味は十分に納得しておるという話を、外相レベルでの話ですけれども、その問題はAPECの会合においても同じ発言を安倍総理の方からしておられます。

三ッ矢委員 ありがとうございます。ぜひ強い決意を持って臨んでいただきますようにお願い申し上げたいと思います。

 北朝鮮の問題はこの程度にいたしまして、次に、外交機能の強化についてお伺いしたいと思います。

 我が国の外交機能を強化すべきだというふうに言われて久しいわけでございますが、外務省では、これは予算委員会ではございませんので、来年度予算の話をこの場でするのもどうかと思いますけれども、十九年度の概算要求において、在外公館の新設十、それから定員増三百十二、さらに向こう十年間で定員二千名増を目指すという要求をされておるわけでございます。

 他方、自民党の方でも外交力強化に関する特命委員会を設置いたしまして、そちらの方でも十二の提言を盛り込んだ中間報告を公表しております。この中でも、特に、現在百十七カ所にすぎない大使館を英仏並みの百五十に増強するといったような体制強化、さらに、外務省が打ち出している二千名増員に加えまして、商社や海外協力隊OBなど民間人の活用ということを提言しておるわけでございます。

 外交機能の強化の必要性については言うまでもありませんし、共通の認識はあろうかと思っておりますが、ここで一つお伺いしたいのは、外務省の外交機能強化のための、特にこの十九年度の予算概算要求の内容を見てみますと、政府が進めている行財政改革との関係で若干相入れない部分もあるのじゃないかなという気がするわけでございます。

 外務省としては、この概算要求を決定するに際して、これまでの外務省の人事方針ですとかあるいは在外公館のあり方について、掘り下げた見直しあるいは検討を行われたのかどうか。

 つまり、各省庁とも、ほかの省庁はみんな人員削減ということで苦しい中を削減に取り組んでいる状況でございますけれども、外務省も、二千名増員しようというのであれば、人件費の増大に見合った合理化努力といいますか、これは私も不可欠だと思っておりまして、あれもやります、これもやりますという増強策ばかりが目について、こういう合理化をしますよという話が余り見えてきていないような気もするものですから、当然その裏には、合理化もされるという前提のもとでこの要求をされているんだと思いますけれども、どういう配慮をされたのか、お答えいただければと思います。

麻生国務大臣 先般、三ッ矢先生御指摘のありましたとおり、自由民主党から、外交力強化に関する特命委員会からいわゆる中間報告というのを私どもちょうだいいたしております。

 外務省としては、この報告に書いてあります内容、今言われた内容のことが書いてあるんですが、現在、来年度の機構・定員等々につきまして、また在外公館の新設、その定員についてコンパクト化する等々、いろいろなところが出されておりまして、私どももその線に沿って今いろいろやらせていただいております。

 また、今御指摘のありましたように、この中間報告の中においても、総領事館のいわゆる改廃、十五人ではなくて、コンパクトなところではできる、先進国ではできるのではないか等々、いろいろな可能性の検討、また、いわゆる外部人材の登用、中間採用等々、いろいろ御指摘をいただいております。

 外務省としては、定員合理化計画というのが政府全体として出されておりますので、これに協力すると同時に、やはり相対的に必要性が低下した、例えば在留邦人の数がそこの地区は減っている、昔は何百人、何千人いたけれども、今は何百人、何十人に減っておるというようなところもありますので、総領事館を統廃合しますとか、いろいろ合理化を行ってきておりますので、この特命委員会からの御提案というものを含めて、合理化計画というものを進めねばならぬと思っております。

 また今、随分、地方において光ファイバー等々が発達した状況の中において、そういった機械、いわゆるITに関する機械というものを使えばもっと合理化できるのではないか等々、いろいろ日本全体で取り組んでいかないかぬ問題、外務省全体で取り組んでいかねばならぬ問題もあろうという観点から、民間人を採用ということで、過日、ニューヨークの総領事に三菱商事から人をいただいたりしておるというので、任用の拡大というものを今後とも図ってまいりたい。

 ただ、民間から採用しますと、大体、ほぼ同じ年齢ですと、給料は半分ということになりますので、それでも行ってくれるという人は、よほど奇特な方か、変わった方か、よほど志の高い方か、なかなかいらっしゃらぬというのも、これは現実なんです。だから、そういった意味では、私どもとしては、ちょっと正直、この点は、いろいろお願いをするに当たって、給与を聞いた途端にちょっとということになりますのは、これまで何回かやった経験から、そういうことであります。

 いずれにいたしましても、そういった意味でも、外部登用ということで、例えば海外青年協力隊とかJICAとか、いろいろな形での問題は十分にあり得るものだと思っておりますので、外部の人材を登用するというのは積極的に考えてしかるべき問題だと思っております。

 また、コンパクトな大使館ということの話もいただいておりますので、この点につきましては、九名以下等々、これはセキュリティーのところをもっと科学的に、機械化するとか、いろいろなやり方があろうと思いますので、そういった意味で、どういったやり方があるのかについて、いろいろ省全体で、どういうところをやればいいのか、合理化につきましても検討させております。

三ッ矢委員 大臣、御丁寧な御答弁をいただいたものですから、時間がなくなってしまいましたが、私から一つ要望といいますか、ぜひ職員の中で、例えば若手、中堅の方を比較的小規模の公館の大使に任用して、別に給料を上げる必要はないわけでございます、名前だけ大使というふうに上げていただければいいと思うんですが、本当にやる気のある、意欲のある若手の方をそういうところに大使として起用していただくというようなことも考えていただければと思います。人件費の節減にもなりますし、仕事本位の外交体制の強化ということで大いに役立つ面があるんじゃないかと思いますので、ぜひよろしくお願い申し上げたいと思います。

 要は、大使館の数をふやしましたよ、人員をふやしましたよということじゃなくて、それだけでは外交機能の強化に本当につながるとは思いません。私も実は大使館に三年間勤務したことがございますけれども、やはり職員の意欲といいますか、やる気の問題だと思うんですね。飯だけ食って、あとは調査訓令を年に数回こなしている、大使館の中へ後は閉じこもっていますよ、これでは幾ら数をふやしても機能の強化になりません。

 ぜひ、外務省職員の意識の改革というと失礼な話になるかもしれませんが、よろしくお願い申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

山口委員長 次に、鈴木馨祐君。

鈴木(馨)委員 自由民主党の鈴木馨祐でございます。本日は質問のお時間をいただきまして、まことにありがとうございました。

 これは若干私ごとになりますけれども、私、実は二〇〇一年の九月十一日、あのときにはペンタゴンの真横に住んでおりまして、そういった経験からも、非常に国の安全保障、だれが国民を守るのか、だれが国を守るのか、そういったことをひたすら考えてきた、そういった経緯がございます。

 そういった中で今、来週開催されます六者会合、一つ懸念されるのは、やはり、もしかしたら、まかり間違うとこれが北朝鮮の核の黙認の場となってしまうかもしれない、そういうおそれがある中で、一度、きょうの質疑の時間で、日本の安全保障環境というものをざっと見返させていただければというふうに思っております。

 やはり現実を見てみますと、今の日本の状況というのは非常に厳しい。すなわち、自分の力で自分を守れる、恐らく現実問題、そういった状況ではないのだというふうに私は認識をしております。

 日本が国際環境、特に東アジアの国際環境の中で、どうやって生き抜くことができるのか。そのことを考えるときに、幾つかのファクターがあると思うんですけれども、事安全保障に限ってみれば、アメリカのしっかりとしたコミットメント、そして中国の、これは能力と意図と両方あると思うんですが、ここはその両方で、恐らくそれは中国が日本に対してどういう意図を持っているのか、そして彼らが日本に対してどういうことができる能力があるのか、そういった状況、その結果から来る周辺地域のバランスというもの、そういったものに非常に強くよってしまっている、そんな不安定な状況にあるのかなということを私自身は感じております。

 そういった中で、やはりここは、これまでの日本の安全保障体制というのは、アメリカは日本を守ってくれるだろう、そして中国は日本を攻めてこないだろう、そういうある意味で仮定の上に成り立っていた、それは決して否定できない事実なんじゃないかなというふうに私は思っております。

 そこで、今、現時点で構いませんけれども、これは日米安保の検証をやはりしなくてはいけない時期なのかなというふうに思っております。果たしてアメリカが日本をしっかり守ってくれるのかどうか。

 特に、今お配りしております資料の一番上のページになりますけれども、去年の七月、朱成虎氏の発言がありまして、要は、これは台湾の有事の際ですけれども、核の先制攻撃も辞さない。朱成虎氏は非常に強硬派というふうに知られておるわけですけれども、ただ、アメリカの、この下にあります議会への毎年のペンタゴンからのレポート、この中でもやはり、そういう核の先制使用に関する議論というものはある程度の広がりがあるのだろう、そういうことが書かれているわけであります。当然日本としても、これはリスクとして考えなくてはいけないのではないかというふうに思っております。

 そういう中で、アメリカが別に、アメリカの最終的な究極の目的は恐らくアメリカ人の人命を守ることでしかないはずですから、そういう観点から考えても、アメリカが何のために同盟国を守るのか、そしてそもそもアメリカというものが何のために同盟を結んでいるのか、そういった観点を踏まえて、今の日米の状況というものにつきまして外務大臣の御見解をいただければと思います。

麻生国務大臣 御存じのように、日米安全保障条約によりまして、日本に対する武力攻撃があった場合には日本を防衛する義務をアメリカが負うということになっております。

 また、日本としても、アメリカがこの義務を履行するということに関して疑問を持っているかといったら、持っておりません。

 核抑止力というものを含めまして、米国の持っておりますいわゆる抑止力というものは、これは日本の安全を保障する上で極めて重要であります。日本一国で日本をディフェンス、防衛できないという点はそのとおりだと存じますが、今世界じゅうで、一国で自国を完全に防衛し切る力を持っている国はそんなに数があるわけではありません。

 この点についてはいろいろ疑問を出されるところでありますが、北朝鮮の核実験が行われた三日後、日本を訪問したライス国務長官と私との会談が終わった後の記者会見において、日本の防衛に関するアメリカ政府としてのいわゆる確固たるコミットメント、誓約を確認しておりますし、先般の日米首脳会談において、安倍・ブッシュ会談というものが行われておりますが、ブッシュ大統領は安倍総理に対して、この問題に関して、米国のいわゆるコミットメントを再確認というのをブッシュ大統領と安倍総理との間でなされております。

 さまざまな機会でこういったものを揺るぎないものにしていくようにしておかないと、いわゆる契約どおりに履行するかどうかというのは、商売をしていても、そのとおり物は買ったけれども金は払わない人もいっぱいいますから、そういった意味ではきちんと振り込んでもらえるような形にしておくためには、契約の紙だけではなくて、それがきちんと履行されるようなふだんからの人間関係、つき合いというものをしておかねばならぬのは、これは普通の商売と同じことだと思って、日本は少なくともこの五年、六年の間、そういったものを確実なものにしてきていると思っております。

 また、いわゆる価値観というものに関して、自由とか人権とか民主主義とか市場経済とか、そういった価値観というものの多くを日米間で共有しております。これはすべてを共有しているわけではありませんけれども、そういった、国として、この条約上のコミットメントというものを、きちんと約束というものを履行するためのふだんからのつき合いというには、そういったある程度共通の価値観の上に成り立つというのが大事なところだとも思っております。

 いずれにいたしましても、在日米軍の再編等々、今、二極構造、冷戦構造崩壊後の世界が大きく変わっていく中にあって、この地域の安全保障、またいわゆる兵器の技術の進歩、いろいろなことを考えて対応していかねばならぬと思っておりますが、日米同盟の間によって成り立っている抑止力というものがきちんと作動するかしないか、大事なところだと思います。

 抑止力には力が要ります。そして、それを使用するという意思が要ります。そして、それを使用するという意思を相手に知らせる。この三つがあって初めて抑止力として成り立つと思っております。

鈴木(馨)委員 どうもありがとうございます。

 まさに今おっしゃいましたように、同盟というのは恐らく紙の上に書いてあることにすぎない。実際にそれを履行するかどうかというのは、恐らくそれは国際環境ですとか、日本側の努力ですとか、いろいろそういったものの信頼関係、また価値観というものも含めてあるんだとは存じます。

 しかしながら、やはり日米同盟、また国家の安全保障というものは、決して静的なものではないわけであります。状況というものは常に変わっていくわけでありまして、やはりその都度その都度、果たして今の状況に今の安全保障体制が、そして双方のコミットメントというものが確固たるものなのか、そしてそれがしっかりと日本を守るに値するというかそういうものなのかというものは、常に検証していかなくてはいけないというふうに私も思っておりますし、そういった方向で日々努力されている大臣以下外務省の皆様には本当に敬意を表するところでございます。

 次に、もう一つの不確定要因になるのかもしれませんけれども、やはりこれは中国との関係というものがどうしても避けては通れないものなのかなというふうに思っております。

 もちろん、これはアメリカと違って決して情報が開示されている国ではありません。ですから、本当に何を考えているのか、それはアメリカ以上にわからないところは多いのだと思います。そういう中で、やはりそこは情況証拠、これを見て、彼らが何を考えているのか、そういったところを類推していくしか恐らくないわけであります。

 そこで、資料の二枚目をごらんいただければというふうに思っております。

 これは日本側の資料ではなくて、先ほど言及いたしましたけれども、ペンタゴンの二〇〇六年の年次報告の紙であります。

 これは何かというと、中国が意識をしている、防衛ラインとは言いませんけれども、一つのライン。この最初にあるのが、ファーストアイランドチェーンというのが日本のちょうど琉球列島のところから台湾、フィリピンの間の海峡を経てというラインでございます。次にありますのが第二列島線、セカンドアイランドチェーンという、これは伊豆、小笠原を経て南に行っているライン。これが何を意味するか。

 ここに書いてあるだけだとただのラインなんですけれども、一枚おめくりいただければ、ここに「最近における中国の海洋調査活動」という紙があります。

 ちょっとこれは白黒になってしまいましたので、ここは非常に大きなミスで恐縮なんですけれども、実は、この紙を見ますと、平成十一年と平成十二年のものはこの第一列島線というものの内側に固まっているわけです。それ以降の平成十五年、十六年、また十四年もありますけれども、そこら辺の調査活動というものは、その先、第一列島線と第二列島線の間に進出してきているわけであります。もちろん、資源調査とかいろいろな点はあるんだというふうなことも言えますけれども、このことが意味するものは果たして何なのか。

 よく、アメリカに対する中国の長期目標というものは、台湾海峡有事に際して、アメリカがなかなか介入をしにくいような安全保障環境をこの地域につくることだということも言われます。そういったことを踏まえまして、この意味するもの、中国というものが、これはもちろん、厳密に、本当に何を考えているかわからないわけですから、断固とは言えませんけれども、どういった可能性がこれからわかるのかという点について伺えればと存じます。

岩屋副大臣 先生御指摘のように、中国の意図を私どもが断定的に申し上げるというわけにはいかないわけですけれども、私どもも、先生おっしゃるように、中国、軍の動向についてはまさに注意深く注視をしているところでございまして、中国の発表によれば、十八年連続で中国の国防予算は伸びておりますし、総兵員数二百二十五万というのは世界最大規模でもございますし、大陸間弾道弾、中距離、短距離、SLBM、そういうミサイルも持っておりますし、さらにその近代化を図っていると承知をしております。また、先生が資料で指摘をしていただいた海洋における活動範囲の拡大を図っているというふうに認識しております。

 問題は、中国の軍事力は透明性が非常にないというところが問題だと思っておりまして、累次の機会を通じて中国側に申し入れをしておりますし、また、麻生大臣と李肇星外交部長との間でもそのことを大臣の方から申し上げ、また、安全保障分野における相互信頼を醸成するために各種の対話をしっかり行っていこうということを申し合わせたところでございます。

 なお、先ほど先生が指摘されました朱成虎中国人民解放軍少将の発言ですけれども、中国政府は九月一日に、秦剛外交報道官の発言として、これは個人としての考え方にすぎず、政府の立場を代表するものではないということを明確に言っているということを申し添えたいと思います。

鈴木(馨)委員 どうもありがとうございます。

 恐らく、今、麻生外務大臣、岩屋副大臣からも申されましたように、今の段階では、アメリカも明確に日本に対してはコミットメントをしている。日本との関係も非常に良好である。また、中国についても、まだ、能力という意味でも、意図という意味でも、明確に日本に対して脅威となる状況では恐らくないんだろうというふうに、そこは私も共感をするところではあります。

 しかしながら、常に国際環境というものは変わるわけでありまして、事安全保障の話については、やはりだめでしたでは、まずこれは済まない話だと思います。そういう中で、しっかりとその状況というものを判断されて臨機応変に対応していく、そのことこそまさに肝要だというふうに存じますけれども、そういう中で、仮に米中のいろいろな意味でのコミットメントですとか意図、能力その他、これが日本の国益、要は日本の安全保障に合致しなくなるようなケースというものも、これは想定には入れておかなくてはいけないんだというふうに思います。

 これは仮定の話ではありますけれども、逆に、ある意味現実の話にもなり得る話でございまして、やはり、頭の体操とは言いませんけれども、そのときに何をするべきなのか、何ができるのか、その検討というものは常々するべきであるというふうに私は考えております。

 そういう中で、これはもちろん、外交当局のお立場ですから、言えること、言えないこと、言わない方がいいこと、言った方がいいこと、いろいろあるんだというふうに思いますけれども、そういったことを踏まえまして、仮に国際状況が変化した場合に日本としてどうするべきなのか、そのことについて一言御発言をいただければと思います。

麻生国務大臣 御指摘のありましたように、日米、日中含めまして、いろいろ、二国間はもちろんのことですけれども、国際情勢の変化というのはなかなか予想しがたい。少なくとも、二十年先のことはほとんどだれも予想できない。二十世紀が人類に教えた最大の教訓の一つだと思いますが、ちなみに、一九七九年、ソ連のアフガニスタン侵攻のときに、十年後、ソ連がなくなるなどと言った人は世界じゅう一人もおりませんから、そういった意味では、国際情勢というのは激しく変化し得る可能性というのは常に持っておるということを思っておかねばならぬところだと思っております。

 少なくとも、この日本の周辺においては、朝鮮半島並びに台湾海峡というところにおいては極めて不安定な要素が今そこにあるわけですから、そういったことも考えて、いざというときにどういった対応をすべきかというのは常々頭に入れて対応しておかねばならぬ大事なところだと存じます。

 その意味で、先ほど、最初に御指摘のありましたように、日米安全保障条約、この同盟条約というものを日本は非常に大きな支えにしておりますけれども、こういったものが実質その種の地域において、先ほどの海洋調査の話やら何やら、不安定な状況になったときに、少なくともその地域が不安定になることは日本の国益に著しく影響を与える、通行不能になったりするというのは、日本の貿易にとりましても、いろいろな意味におきまして非常に大きな影響を与えます。

 したがって、そういったことが起きないように常日ごろからいろいろ努力をするのはもちろんのこと、一たん有事が起きたときには、それに対応できるような形で、少なくとも、日米安全保障条約が速やかに作動して、日本の国益を害さないようにするような努力というものはふだんから常に心がけておくべき問題だ、御指摘のとおりだと存じます。

鈴木(馨)委員 どうもありがとうございます。

 当面一番大きな脅威になり得る、今は脅威ではない、潜在的脅威ですらないかもしれませんが、そういう国というのは恐らく中国なのかなという気もいたします。

 その中国に関する国防省のレポートで非常におもしろい記述がありまして、この一ページ目の左側のものです。

 ここで、トウショウヘイがよく安全保障であるとか外交という話をするときに用いた、ある意味鉄則の一つというところで、特に注目していただきたいのはこのアンダーラインのところです。要すれば、能力を隠して時間を稼げ、そういう話もございますから、そこは今見えている能力だけではなくて、そこの裏に何があるのかというところをしっかりと見守って、適切な対策をとらなくてはいけないのだというふうに思っております。

 プラス、ちょうど六者協議が来週始まります。その中で、恐らく、先ほど情況証拠ということを申し上げましたけれども、この六者協議において、アメリカの立場、これは先ほど三ッ矢先生もおっしゃいましたけれども、拡散なのか非核化なのか、その比重の問題。また、中国の出方、そういったものが一つ。その両国がどういった意図を持っているのか、そういったリトマス紙というと表現は悪いですけれども、その情況証拠の一つにはなるのかというふうに思うところでございます。

 そういった中で、これは、ある意味客観的な立場になってしまって、参加者の日本として言うべきことではないのかもしれませんが、その六者協議のうちの二カ国、アメリカと中国のどういうところに外務省として注目をされているのか。

 これは、もしかしたら、この会議をオープンにされていますから、見ているかもしれない米国の当局ですとか中国の当局、そういったところへのメッセージとも言えないかもしれませんけれども、そういうお含みもあってもいいのかもしれません。一言いただければというふうに存じます。

麻生国務大臣 アメリカと中国の利害の一致するところ、しないところ、いろいろあろうと存じます。

 少なくとも、今、核を保有している北朝鮮を認めない。また、核というものを持っている、いわゆる実験場等々を含めまして、いろいろな核施設、また核の実験をするための施設、いわば核保有国として認めないので、したがって、核を実際持っていないということを確認するのに第三者機関等々は、これはいずれも、中国もアメリカも両方とも一致をいたしておるというところははっきりしておると存じます。

 ここが今、当面、六カ国の中で、これはロシアを含めて皆、新たな核保有国を望んでおりませんし、日本も当然です。したがって、その点につきましては、五カ国皆、話は一致しておると存じます。

 したがって、まず、そこの具体的な成果を得るための手段というものが一番問題なのであって、その手段として、例えば、さらなる圧力という立場に立ちます日本とアメリカ、また、それよりもっとえさで、むちよりあめだというのと、いろいろ意見の分かれるところであろうと存じますけれども、主たる目的については、核というものを放棄して、したがって、核保有国としては認めない、この点だけはきっちり一致しておると思いますし、これが今後もちょっとずれることはないような感じがいたしますので、その点が一番肝心なところだろうと思いますので、日本としては、その点は、両国に関して言えば一番見ておかねばならぬところだと存じます。

 加えて、それにとって、では、放棄するに当たってはという話で、いろいろ意見が、また要望が出されたときに関しては、日本は、その要望にこたえるためには、もう一点、日本には拉致という問題があるという点、これが他の四カ国とまた違うところだろうと存じますが、いずれにしても、この核につきましてははっきりしておると思いますので、その点だけは、ぶれることがないとは存じますけれども、御指摘のありましたように、そこらのところが何となく談合っぽくならないようにきちんと見守っていかねばならぬと思っております。

鈴木(馨)委員 時間となりましたので、これで終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。

山口委員長 次に、長島昭久君。

長島(昭)委員 民主党の長島昭久です。

 きょうは、麻生外務大臣の二大外交演説について、限られた時間なんですけれども、少し突っ込んでお話を伺いたいというふうに思います。

 一つは、ちょうど一年前になりますが、一年前の東アジア・サミットの直前、恐らく前日だったと思いますけれども、日本記者クラブで講演をされた、今手元にあるんですけれども、「わたくしのアジア戦略 日本はアジアの実践的先駆者、ソートリーダーたるべし」という演説であります。

 それからもう一本は、ちょうど先月の末、これは国際問題研究所で行った「「自由と繁栄の弧」をつくる」、きょう皆さんのお手元に、そのチャートといいますか図を外務省のホームページからダウンロードしてお配りをさせていただきました。

 私は、非常に新鮮さを感じました。一つは、やはり、官僚の作文ではなくて、まさに政治家らしいビジョンを示されたな、こういうふうに思っています。

 私、ことしの一月に代表質問をさせていただいたときに、小泉総理に対して、福田ドクトリン以来のアジアのドクトリン、小泉ドクトリンみたいなものを打ち立てたらどうですか、こう質問させていただきましたが、答えは全くありませんでした。

 恐らく、今回の二つのアジアに対する外交演説というのは、言ってみれば麻生ドクトリンというか、外務大臣も中で引用されておりますけれども、七七年の福田ドクトリンをもう一度思い起こして、そして、さらにそれに新しい意味づけを加える、そういう印象を私は持ちましたし、一番私が気に入ったのは、受動的でないということですね。

 引用しますと、情勢の推移にただ受動的に対していくだけではだめなんだ、こういうことで、私も常々、日本の外交というのはパッシブというか、状況リアクティブというか、状況に反応していくような、まあ、六カ国協議というか、北朝鮮の問題一つとってもそうですけれども、この演説の目指すところは、恐らくプロアクティブな外交を目指していきたい、こういうことなんだと思います。

 最初、いい点だけ言います、後でクリティカルにやりたいと思いますので。

 それと、もう一つは、麻生大臣らしい、非常にポジティブなメッセージ、これは恐らく聴衆として聞いていたら何か元気づけられるような、そんなところだったというふうに拝察しますが、そういう意味では、本当に前向きなメッセージが出ているなという感じを持ちました。

 それからもう一つは、これも外務省批判になってしまうのかもしれませんが、これまではどちらかというと場当たり的な、その場その場での外交のビジョンだったというふうに思うんですけれども、それに対して、ある一定の方向で意味づけを与えるということになった。

 例えば、九七年に橋本総理がユーラシア外交というのを展開して、それで中央アジアを非常に支援を始めたわけですけれども、今十年たって、ユーラシア外交という言葉を覚えている方はほとんどいらっしゃらないんじゃないかと思うんですね。しかし、今回の麻生ビジョンの中では、そういうものも評価しつつ、継承しつつ、そこに一定の役割というか意味をつけ加えた、こういうことなんだろうと思うんですね。

 それからもう一点は、中国との関係において再定義をした。これは実は、私、一番、読んでいて、私はその聴衆として参加することはできませんでしたが、読むだけなんですけれども、これは非常に感銘を受けました。

 というのは、中国が大きくなって、恐ろしい国だ、さっきも少しお話がありましたけれども、日本にとって脅威だ、こういう議論、私も、ある意味で、あの軍事的な拡張というのは脅威だと思いますけれども、それを、我が日本が待ち望んでいた事態だ、こういうことを言って、どうしてもライバル関係、これから多分、二十年、三十年、五十年、百年、どちらかの経済がポシャらない限りはずっとライバルでいくんだろうと思うんですけれども、そのライバル関係に対して、足を引っ張り合うライバル関係ではなくて、お互い競争して高め合うライバル関係だ、そういう定義づけを与えて、しかも、日本人としてすかっとしたのは、経済による競争だけじゃなくて、望むらくは、今後、より広く、政治、社会、こういう面にも、トータルな面で競争していこう、そういう呼びかけを中国に行ったという点で、私は、ある意味、画期的な外交ビジョンだったな、こう思うのであります。

 そこで、そのことを申し上げた前提で、幾つかお話を伺いたいのでありますが、一つは、この二つのメッセージの戦略的な意味というのは何かということなんですね。

 というのは、これをまた読んでみると、もちろん、例えば最近の「「自由と繁栄の弧」をつくる」というところには、「価値の外交」、民主主義、自由、人権、法の支配、そして市場経済、こういう普遍的価値を外交の主眼としていくんだという話、それから、この地図にもあるように、こういうユーラシア大陸の外周、外縁の部分にいろいろな日本としての投資を行っていって安定化を図っていく、こういう自由と繁栄の弧をつくるんだという姿勢はよくわかるのでありますが、これをやっていくことによって、例えば、わかりやすく申し上げますと、ロシアと中国というのがユーラシアの、ハートランドと地政学では言いますけれども、ハートランドであるこの二つの国に対して、この麻生ビジョンというものが成功していくと、どういう戦略的な意味が出てくるのかということ、ねらいと、ぜひ、その背景になるような情勢分析、最初に伺いたいと思います。

麻生国務大臣 お褒めを賜りまして恐縮です、こういうところで評価をされると、ちょっと正直、へっと思うんですけれども。

 確かに去年の十二月に、当時、EAS、東アジア共同体というものを日本が提案したときには、これは中国を初め反対をする国も多かったのが当時の状況でありました。

 したがって、EASの、我々の意図しているところをというところから、先ほど言われたような、いわゆるソートリーダー、これは英語の方が先にあるんですけれども、この実践的先駆者というのは、これはこっちが勝手に訳した訳になっているんですが、そういう意味で、日本というのは、今例えば中国を例に引かれましたけれども、中国が悩んでいるような、例えば格差の問題とか公害の問題とか水の問題とか環境、これは日本は、一九六〇年代、七〇年代、みんなやった。だから、そういった意味で、我々は、そういったことをみんな実践的にかつてやってきたんです、そういった経験をぜひ分かち合うということの方がより双方で発展できるのではないかという意味で、ソートリーダーという言葉を使わせていただいたんですが、日本のアジアに対する基本的な考え方としてあれを申し上げております。

 その後に、今申し上げた自由と繁栄の弧という話がここに出てくるんですけれども、これは日本の外交の基軸として、今配付されておりますその地図によると、たまたま半月状の弧になるから繁栄の弧と申し上げているんであって、それらの国々のほとんどは、カンボジア、ラオス、ミャンマー、ベトナムというようなCLMVとか、GUAMと言われます、グルジア、ウクライナ、アゼルバイジャンとか、Mはモルドバ、そういったようなところが、たまたまみんな新たにいわゆる社会主義国から自由主義国に、この十年、十五年の間に大きく変化していきつつある国であります。まだそこまで行き着いていない国もあります。

 したがって、民主主義とかいわゆる選挙とか自由市場経済とかいうものが最初に導入されますと、これはどうしたって未熟、まだ未成熟なところにおいては、競争の意味が妙に取り違えられてみたり、弱者強者の差がつき過ぎてみたり、また、税の不公平が起きたり、何せ税を取ったことがない国が多いわけですから、税を取るのが初めての国々等々においては税の話ですら極めて不公平ということになっておるという現実、したがって、そういうものがあるために発展ができない。

 私は、基本的には、今、テロリズムというのは宗教の話とよく言われるけれども、一番の根幹には貧困があると思っております。

 したがって、その貧困というものから脱却させるということをするためには、やはり、日本というのはこの六十年間、間違いなく六十年前の貧しさに比べれば今は圧倒的に我々は経済的には豊かになりました。その豊かになったために起きてきている問題はまた別にありますが、その豊かになってきたことを、少なくとも、日本は六十年間世界に示してきておりますので、ぜひ、こういったようなことをやっていけば、日本はこれを押しつけるつもりは全くない、しかし、日本がやってきた経験をともに分かち合うということによって理解できるのではないか。

 中国とロシアについても言及されましたけれども、ロシアも、今選挙というものが初めて導入をされております。したがいまして、こういったところでも明らかに、今、少しずつではありますけれども、確実な変化が出てきます。

 したがって、周辺国が同じような自由とか民主主義とか市場経済とかいうものを採用したために、それらの国の方が栄えるということになってくると、やはりあのシステムの方がいいなというようなことをそこらの国々の人々が思ってくれれば、それで実際にそれが成功すれば、結果として、中国とかロシアとかそういった国々においても、同じような価値観、そういったものが出てくるのではないか。

 私どもは、価値を全く共有しているわけでは、アメリカとですら全く共有しているわけではないのであって、それぞれの国にはそれぞれ文化、歴史がありますので、全く共有しているわけではありませんけれども、多くの部分で共有することができますと、いろいろな意味で相互信頼というものにもつながっていく、私は基本的にそう思ってこの案を考えました。

長島(昭)委員 よくわかります。

 おっしゃるように、日本の場合は、大臣は、ピア・ツー・ピアというお話もされながら、価値の外交なんだけれども、自由と民主主義をアメリカのようにある意味で押しつけるような意味ではなくて、マラソンの伴走というお話もされていますけれども、一緒に支援をしていくんだ、こういうやり方は私も非常に日本らしいなと思うんですが、ただ、込められた意味を実は探りたいと思っているんです。

 この図を見たときに私は一番最初に頭にぽんと浮かんできたのは、さっきハートランドという言い方をしましたけれども、このハートランドを取り囲むところ、ニコラス・スパイクマンというエール大学の地政学の教授がリムランドという概念を持ち出して、当時のアメリカの話ですけれども、リムランドにアメリカが関与していくことによってこのハートランドを制するんだ、これが地政学の現代的な考え方の一つだと思うんです。

 まさにそういう国に、大臣は名前をさっきGUAMというふうにおっしゃいました、グルジア、ウクライナ、アゼルバイジャン、モルドバという国々、こういう国々に対して、確かにピア・ツー・ピアの目線でやるんだけれども、やはり価値を中心として投資をしていこう、そしてこういう国を安定化させていこう、その意味というのは非常に戦略的に重いものがあると私は思うんです。

 逆の言い方をすると、では、ロシアから見てどうかという話なんですね。特にGUAMの四カ国というのは、ロシアからとにかく離れよう離れよう、ロシアのくびきから逃れて、いろいろなカラー革命というのが起こって、こういう国ですよ。ですから、グルジアなんかは郵便とか道路もとめられてひいひい言っている。

 こういう国々に対して日本が投資をしたり支援をしていくときに、ロシアがいろいろな意味で干渉してきたりいろいろしてくる。そういうロシアの姿勢に対しても、外務大臣として、毅然としてこういう支援をし続けていかれる、そういう腹づもりというか覚悟がおありなのかどうか、伺いたいと思います。

麻生国務大臣 これをやります場合に、日本と中央アジア、いわゆるカザフスタン、キルギスタン、ウズベキスタン、タジキスタン、トルクメニスタン等々、アフガニスタンを含めましたけれども、そういった国々と日本・中央アジア外相会議というものを開かせていただきました。このときも、何で日本が中央アジアという意見は、ロシアからいろいろ話が来たことは確かです。

 しかし、御存じのように、多分GDPからいきましたら、六カ国足しまして三ッ矢先生の三重県と同じぐらいです。それぐらいの経済の規模しかない、いかに日本が巨大かということなんですが。そういうようなところなんですけれども、私どもは、ここはまさに今、新しい方向を見せて、それぞれ独立をしてやっていこうというときに関して、ロシアにしてみれば、今アメリカにおける中南米が何となくどんどん離反するような感じかなと思わないでもありませんが、ロシアと日本で両方で手を差し伸べて、それらの国々がいい方を採用していくという形の方が望ましいのであって、サービス競争に陥るつもりは全くありませんけれども、おたくの今の発展の段階においては日本のやり方よりロシアのいわゆる開発先行型の方がいいとか、日本のように地道にやっていった方がいいとか、これはいろいろその国々によって、とらえ方は違うと存じます。

 しかし、両方で、いろいろな意味で、それらの国々に対していろいろなアイデアを出し合い、手を差し伸べ合うということが結果としてそれらの国々の水準を上げていくことになる。そういった方向にロシアと話をしなくちゃいかぬのであって、この地域をとり合ってどうのこうのというつもりは日本にはありませんので、そういったところが発展してもらうことによって、結果として日本のものが売れるようになってみたり、また向こうのものがこっちに入ってきたりというようなことになれば、それらの国々の発展につながっていく。結果としてそれがあの地域でよく起きますテロやら何やらの話を防ぐことにも貢献すれば、それでよろしいのではないか、基本的にはそのように思っております。

長島(昭)委員 中央アジアをめぐっては、既に中国とロシアが上海協力機構というものをつくって、上海ファイブと言われた会合からもう十年たっているわけで、実は中ロの方が先行して、あの辺をある種、資源共同体みたいな形にしておりますので、今外務大臣がおっしゃったように、そこで資源競争をしたりとかあるいは縄張り争いをしたり、そういう意図ではなく、最終的には、それぞれの国が自分たちの発展段階に応じて、どちらのやり方を選択するか彼らにゆだねる、こういうことで、ある種、こちら側からは、南側から自由と民主主義の風を送り込んでいくというような、そういうイメージかなというふうに思いました。

 そういう中で、私はこの地図を見てあれっと思ったことが幾つかありまして、一つは、価値の外交、自由と民主主義、市場経済ということであれば、これは中国との関係で厄介な問題もあるんですが、台湾をどう見るか。

 例えば、去年の十一月にブッシュ大統領は京都に来られて演説をして、自由と民主主義という観点から、抑圧を脱して民主主義に移行した社会として台湾を高く評価しているんです。

 恐らく、台湾を評価する点では外務大臣も人後に落ちるものではないと思うのでありますが、どうもこの地図を見ると、台湾が日・CLV首脳会議のラベルの陰に隠れちゃっているんですね。

 中国との関係もあり、なかなかおっしゃりにくいところもあるのかもしれませんが、価値の外交というのであれば、台湾の今まで努力してきた経緯なんかもやはり評価をされるべきだと思うんですが、いかがでしょうか。

麻生国務大臣 この台湾という問題に関しましては、これは長く日本でも、一九七二年の日中国交以来、いろいろ多く話題になっているところだと思いますけれども、日本の立場というのは極めてはっきりしておりまして、台湾また台湾当局というのをいわゆる国とか政府として扱っているわけではありません。いわゆる地域と言われておりますが、御存じのように、APECの代表の一つである、中国とは別に台湾というのが代表を送っているというのも確かでありまして、日本としては、少なくとも貿易総額で今六百億ドルを超えたかな、それぐらいあろうと存じます。

 そういった地域として、小さな一島ではありますけれども、教育水準は極めて高く、今言われましたように、資源は日本と同様にほとんどなく、それにもかかわらず生活水準は極めて高いという国であって、これは日本として、いわゆる資源のない国、全く島国でありながら、少なくとも、人材を育成して、結果として経済的な大きなものにつくり上げたという点に関しては、日本とほぼ同じようなことをやってのけた国だということになります。

 それが国と言うからまた問題なんでしょうけれども、地域と言わにゃいかぬところなんでしょう。そこらのところが大事なところで、冷やっとさせるところも、なかなか答弁としては難しいんですけれども、ここのところは、台湾というこの地域というものがそれだけ発展していることは事実ですから、それを私どもとしては十分に認めた上でやっていかないといかぬというような御説は全く正しいと思います。

長島(昭)委員 外務大臣の思いがこもった答弁だというふうに受けとめました。

 もう一つは、せっかく、自由と繁栄の弧を形成する、「拡がる外交の地平」、こう言っているんですが、この図には、「イラク復興支援」「アフガニスタンの安定」と書いてあるんですけれども、外務大臣のスピーチの中ではその部分が欠落しているように感じたんです。

 特にイラク、アメリカが政策の見直しを今一生懸命している、このアメリカの動きをにらんで一つと、それから、アフガニスタンは実は極めて深刻な状況に今あるわけでありまして、日本としてみると、これは欧米ではグッドウオー、バッドウオーと言われているそうです、イラクの方はバッドウオーで、アフガニスタンの方はグッドウオー、とにかく今のカルザイの政権をバックアップしてあげないといけないということで、NATO、ヨーロッパ諸国は非常に真剣に、かなり人的な支援を含めてやっている。日本の場合は、たしかお金は十億ドルぐらい出しているようですが、人の支援というのは、もちろんインド洋ではやっていますけれども、なかなかISAFにも入れないし、入っていないし、少し足りないところが実はあるんじゃないかと私は思っているんです。

 この辺を、この自由と繁栄の弧を形成するという観点から、イラク、アフガニスタンをどんなふうにこれからやっていこうとされているのか、伺いたいと思います。

麻生国務大臣 基本的には、戦闘状況とかいわゆる内乱が極めて激しい状況にあるところというものに関しては、日本としては、現実問題として、なかなかそういったところには手を出してこなかったというのがこれまでの歴史だと存じます。

 今、御存じのように、アフガニスタンも、北部の方はともかくとして、南部のカンダハルとか、また東アフガニスタン、パキスタンとの国境、いわゆるパシュトゥン族の地域においては、これはとてもではありませんけれども、カルザイ政権のいわゆる統治がきいているとは言いがたいという状況にあろうと存じます。

 また、今のイラクにおきましても極めて激しい状況が続いておりまして、特にバグダッド周辺においては治安状況は極めて悪く、私が行きました八月より今の方が悪くなっているというような感じが、正直、BBCやらCNNの放送を見てもそういった感じがいたしております。

 したがって、それらの地域が安定をしてきた後においては、少なくとも、そういった治安が安定した後に関しましては、私どもとしては、こういったところに関しましても、当然のこととして、一緒に自由と繁栄の弧として、カルザイ政権のもと、中央アジアの中においても、このアフガニスタンというのは、中央アジアと日本との会合の中にもアフガニスタンの代表を招聘しておりますし、いろいろな形でアフガニスタンの人たちとも一緒にやっていける部分が多いのではないか。私もそう思っておるので、戦闘状態とか言われるような、いわゆるアフガニスタン、また治安が余りよろしくない状況が続いております北部の、クルド地域は安定しています、南も安定している、真ん中のところが問題とか、いろいろな表現があるんですけれども、ここらの地域に関して、少し、もうちょっと安定してきた段階でないと、日本としてはなかなかやれることもやれないというのが今の現実ではないかなというのが率直な実感です。

長島(昭)委員 憲法上の制約もありますので、外務大臣としては慎重な言い回しになるんだろうと思うんですが、外務大臣はことしの五月にNATOに行かれて、外務大臣としては初めて演説をされて、NATOとの協力、そのNATOとの協力のポイントは、国際平和協力活動、PKOとかあるいは国際的選挙監視活動とか、こういうことで平和を定着させる活動だ、こういうふうにおっしゃっているので、やはりこの二つの演説、そして今の外務大臣の御説明を伺って、確かに、価値の外交、こうおっしゃっているんですけれども、その価値を最終的に貫徹するために地域を安定化させなきゃいけない、その安定化のために日本が積極的に汗を流すという部分が、ちょっとちゅうちょがあるような気がするんです。

 ずばり言えば、憲法の制約はあるんですけれども、安全保障上の一定の役割を果たしていくという、その部分の踏み込みが少しないので、どうも最終的には気迫というか迫力がないような部分があるのではないか。もちろん、勇ましいことばかり言って国民の生命を犠牲にするアメリカみたいなやり方が果たしていいかというふうには思いますので、そこは両方あるんだろうと思いますが、できれば、国連の安保理の常任理事国入りを目指す日本として、そういう方面でも一定の役割を果たせるような、ひとつぜひ踏み込みのある御提言を期待したいというふうに思います。

 最後に一つ、日本の独自性という点で伺いたいんです。

 恐らく、同盟国ですから、アメリカとの親和性というか協調性もやはり念頭に置いて、こういう自由と繁栄の弧を形成するという概念を生み出しておられるんだろうと思うんですけれども、イランとミャンマー、この二つについて、外交的なアプローチでは、日本は一定のアメリカとの差をつけて今までやってきたと思うんです。

 今回のイラクの政策見直しの中に、何とイランとシリアと協力をしたらどうか、こういうものが入っていて、それは、今回のベーカー・ハミルトン報告だけではなくて、その前から、もともとブッシュ政権にいた高官なんかが、イランとの協力、シリアとの協力が必要じゃないか。例えばリチャード・ハースなんという人は、場合によってはイランに厳格な監察をきちんと施した上でウラン濃縮のプログラムを認めてもいいんじゃないかということを提案するぐらいまで、これから政策転換を図っていく上でいろいろな多様な意見がある。

 そうすると、昔からイランとの特別な関係を日本は持っていた。もしかすると、アメリカ追随ではなくて先回りして、アメリカが政策転換したところに、いや、実は我々はイランとこんなパイプがあるんだよということで、アメリカに対しても同盟国としてそういう立場から協力できるんじゃないかと僕は思ったんですけれども、価値という問題を非常に強く言うと、ミャンマーとの関係も独自の関係を日本は持っていた、そういうものを生かし切れなくなってしまうのではないかという懸念を私は持っているんです。

 アメリカと協調していく部分が一つと、そういう中でも日本の独自性という観点で、何かイラン政策、ミャンマー政策で外務大臣の御見識を承りたいと思います。

麻生国務大臣 イランとミャンマーという二つの国の名が出ましたので、ちょっと分けてお答えをしなくちゃいかぬところだと存じますが、イランというのは、これは今、モッタキという外務大臣と私は三回ぐらい会いましたか、電話で何回かというような関係は、アメリカとイランの間にはありません。そういった意味では、日本とイランの間はかなり、今でも関係は続いておりますし、あそこにおります次官やら何やらも、何回か日本に来ましたし、そういった感じで、外国でも、ASEANでしたかAPECでしたかで会いますし、現実問題として、いろいろな形でこの人たちとも話をしております。

 正直申し上げて、ここのところに関して、何となく、アフマディネジャドという少なくとも選挙で選ばれた大統領をもってして、今ああいった形になってきておりますので、これはなかなか状況としては、軍事政権というのとは違いますので、我々としては、少々飛んじゃっているんじゃないかなという感じがなきにしもあらずですけれども、しかし、こういったような人が選ばれている以上は、それを前提にしてどうかせぬとどうにもなりませんから、正直申し上げて、対応にいろいろ困りながらも、この人たちと粘り強くやっていかぬと、ここらのところはなかなか、何回会っても答えはまたもとへ戻ってきますので、また同じことを言われるとちょっと正直というのが、このモッタキなんかという人とつき合った感じなんです。しかし、何か答えを出さぬとこのままじゃ行き詰まるなと向こうも思っていることは確かだというのはわかります。

 ミャンマーの件に関しては、こっちは軍事政権でもありますので、そういった意味では、選挙で選ばれた方を排除して軍事政権が通っておりますので、ここは状況が全然違います。ただ、何となく、今のように、直ちにどうにかしろこうにかしろ、わんわん言う、対話なしの圧力だけというやり方は、私としては、余り得策ではないのではないか。

 しかし、フィリピンのロムロという人がASEANの代表として向こうに会いに行って、最近の向こうの、ミャンマーのいわゆる執行部と会った人というのは多分フィリピンのロムロだけだと思いますが、このロムロという人の話を聞いても、これはとてもじゃないけれども大変なんだという話をこの間、外相会談のときもしていました。

 しかし、問題は、ここはどんどん圧力をかけていったら、だんだんさらにぐあいが悪くなってきそうな感じがしますので、少なくとも、軍人が金もうけなんかできるわけがありませんから、軍人というのは大体経営能力がほとんどない人がなっておるので、そういう人たちに経済的成長を期待するなんてはなから間違っている。

 そういった人たちはそれじゃないので、もうちょっとまともな方法で、自分たちの身の安全とか、いろいろなことを考えていることは確かなんでしょうけれども、少なくとも工程表を出せ。五年で選挙しますとか三年で選挙します、二年で憲法をつくります、それを選挙にかけますというきちんとした工程表を出した上でやっていくということをやるように考えないと、ただただ、だめだめ、だれにも会いません、首都まで奥に移してなんというようなことをやっているぐらいじゃ、とてもじゃないけれどもどこからも賛成を得られないので、結果としてASEANの中でもはじき者になっていくんじゃないんですかということで、これは、外務大臣やら何やらを通して、ミャンマーと近い、バングラデシュやらいろいろ近い国がありますので、そういった国からの方が、我々が直接より、もちろんアメリカが直接より、はるかに人間関係ができておりますので、そういった意味では、手をかすから、我々と一緒にそういったことをやった方がよりうまくいくんじゃないのかという話を今いろいろやり始めているというのが現状であります。

長島(昭)委員 安倍政権はNSCをつくるということで努力をしているようなんですけれども、器をつくるよりもまず中身をということで、ただ、やはり私は、外交戦略というのをきちんと定めて、それに向かって日本の資源を投入していく、そういう姿勢をぜひ貫いていただきたいということをお願いして、質疑を終えたいと思います。

 ありがとうございました。

山口委員長 次に、前原誠司君。

前原委員 民主党の前原です。

 きょうは、中間選挙の後のアメリカの外交政策の変化、転換というものを、イラクそれからトランスフォーメーションを中心に議論させていただきたいというふうに思いますが、その前に、時間があったらまたロシアに戻りますが、ロシアの話を少しさせていただきたいというふうに思います。

 ある新聞に、これは時評なんですが、安倍内閣発足直後の会見で、麻生外務大臣が、二島ではこっちがだめ、四島では向こうがだめ、間をとって三島返還というのは一つのアイデアとして考えられる、こういうお話をされたということであります。

 これを直ちに私は批判をするつもりはありません。交渉事でありますので、どのぐらいの時間をかけるのか。ことしが日ソ共同宣言五十周年ということでございまして、スペインなんかは二百何年かけて領土問題を解決したという例もありますので、拙速にやって損したということ、タイムスパンをどれだけとるかということは大変重要な問題だというふうに思いますけれども、交渉事には、私はそれはアローアンスがあっていいと思うんです。

 ただ、一つ私が気になりましたのは、例えば二島先行返還のときもそうだったのでありますが、果たして、そういう議論をされている方々というのは、島の大きさというものをちゃんとわかっておられるのかということなんですね。四島あって、半分は二島じゃないんです。

 御存じであればお答えをいただきたいと思いますけれども、歯舞、色丹が四島のうち何%で、では三島、国後まで入れたら何%か、大臣、御存じですか。御存じなければいいですよ、私、お答えしますから。

麻生国務大臣 御指摘は正しいと思いますが、半分にしようじゃないかといいますと、択捉島の二五%を残り三島にくっつけますと、ちょうど五〇、五〇ぐらいの比率になります。大体、アバウトそれぐらいの比率だと存じます。

前原委員 二島が七%、歯舞、色丹で七%、国後を入れて三島で三六%。ですから、おっしゃるように一四%だから、択捉というのは六四%あるわけでして、すごく大きいんです。ですから、今まさに外務大臣がおっしゃったように、半々にしたとしても、択捉はある程度は入れなきゃいけないということで、そこは、三島という言い方をしてしまうと、自民党の議員さんで、モスクワで三島でいいんだなんておっしゃった方が、議長の息子さんでおられるようでありますけれども、これは私はよくない話だと思うんですね。

 繰り返し申し上げますけれども、交渉事ですから、いろいろなアローアンスがあっていい。しかし、中国とロシアが国境線の画定をしたときに、お互い半々にしたんですよ、中ロは。だからそれに倣えということではありません。原則は四島でありますけれども、この問題を本当に解決するんだという意識があれば、今のことも含めて、三島と言い切ってはだめ。つまりは、仮に半分にまけたとしても、私はまけるつもりはありませんが、まけたとしても四島は入るんだというところの認識を持ってこの話はしておかなくてはいけないということであります。

 その点、交渉されるのは外務大臣、当事者ですから、もう時間も三十分しかありませんので、公式見解はわかっています、それは当然あるとして、しかし、御自身の言葉で、では、臨むに当たって、今の私の指摘も含めてどういうふうに考えておられるのか、本音で答弁をいただきたいと思います。

麻生国務大臣 御指摘のありましたとおりだと存じますが、基本的には、いわゆるこの話をこのままずっと二島だ、四島だ、ゼロだ、一だというので引っ張ったまま、かれこれ六十年来たわけですが、こういった状況をこのまま放置していくというのが双方にとっていいかといえば、これは何らかの形で解決する方法を考えるべきではないか。これはプライオリティーの一番です。

 二番目は、そのときには双方が納得するような話でないといかぬのであって、今言われましたように、二島だ、三島だ、四島だという話になると、これはこっちが勝って、こっちが負けだという話みたいになって、双方ともなかなか合意が得られないといって、ダマンスキー、ダマンスキーというのは例の中国とロシアの間の島のことですが、あのダマンスキーのときも、いわゆるあれで話をつけたという例もあります。

 確かに領土の話というのは、先ほどスペイン等の話も出されましたし、ほかにも、世の中いろいろ、世界じゅうありますので、そういうような国は、金で話をつけた例えばアラスカの例もあれば、またニューオーリンズの例もあれば、いろいろ例はいっぱいあります。

 そういった例を引くにつけましても、この種の話をするときに、今言われたように、島の面積も考えないで二島だ、四島だ、三島だというような話の方が、私も全くそうだと思います。

 したがって、半分だった場合というのを頭に入れておりましたので、択捉島の西半分というか、南のところはもらって初めてそれで半分よという話になるんだと存じます。幸いにして、右というか東方、北東の方に人口は集中しておりますので、そこらのところの人口比が圧倒的に多いというのも事実なんですが、いろいろな意味でこれは交渉事ですから、今いろいろ交渉していくに当たって、現実問題を踏まえた上で双方どうするかというところは、十分に腹に含んだ上で交渉に当たらねばならぬと思っております。

前原委員 島の話だけしても、そういうことを言うと怒られる団体の方がおられるかもしれませんが、私は、まさに今大臣がおっしゃったところで一つ大事なことは、ロシアとの関係をどう考えていくのかというところで、こののどに刺さった魚の骨の問題、領土問題、入り口の問題といってもいいと思いますけれども、この問題をどう扱うかということをロシアとの関係の中でどうとらえていくかということが極めて大事です。

 今大臣がお答えをされたように、ロシアとはかなり、後で時間があれば資源の問題等もさせていただきたいと思いますけれども、私は、周辺環境も含めて、日ロ関係というのは相当てこ入れをしなければいけない時期だと思っておりまして、そういう意味においては、もちろん、島の問題プラス、あるいはさまざまな協力関係というものもプラスして、この辺で政治がリーダーシップをとって、そろそろこののどに刺さった魚の骨というものを取る時期、また、それが政治のリーダーシップとしてやる時期、そしてまた、プーチン大統領というのはそういう求心力のある大統領だというふうに思っております。

 こういう席で不謹慎かもしれませんが、エリツィンのときは惜しかったですよね。川奈に来たときに、もうちょっとウオツカを飲ませて、そして判をつかせればよかったなとこれは本気になって思ったことはありましたけれども、これができなかったわけで、今の相手はやはりプーチンでありまして、そして、先ほど申し上げたように、ロシアとの関係というものをこれからどう見ていくかということを考えたときには、私はこの問題を打開する時期に来ているというふうに思っておりまして、そういう意味でのリーダーシップを期待したいと思いますが、そのことも含めて御答弁をいただければと思います。

麻生国務大臣 前原先生言われるように、いい時期に来ているというのは、私もそう思います。少なくとも、これはいわゆる事務レベルで話がつく話とは思いません。これは政治決着以外に方法はないと思っております。

 ロシア側のプーチンという人は、これはどう考えても、かなりの力、圧倒的な力と言ってもいいぐらいのものを今ロシアの中で持った、私ども外から見ていてそう思っております。したがって、この人のいる間に話の決着を試みるべき。少なくとも、過去、小泉内閣のときに多分六、七回、小泉・プーチン会談というのがあったんですが、この問題に関しては、この人はかなり詳しく熟知している人ですし、私も一、二度同席したことがありますけれども、四島に関する知識、領土問題に関する知識はかなり深い、これまでの問題もばっと全部言えるぐらい詳しい。その上で、解決しようという意欲があることは確かです。したがって、何らかの形で解決する方法の時期としてはいい時期に来ているのではないかという御指摘は、私もそのように思います。

 したがって、ラブロフ外務大臣との間でも、この問題については、少なくともいきなり大将同士ではいというような話じゃないんだから、もうちょっと高級事務レベル、課長じゃなくてもっと次官とか大臣とかいうレベルに上げてこの話をしないと、いわゆる両方でこれまでのずっと長い間の歴史を言い合ったってこれはもう話にならぬからという話をして、少しその種の感触を得つつあるとは思っておりますけれども、少なくとも向こうも解決をせねばならぬかなという意識になってきていることは確かです。

 残念なことは、残念と言ってはいかがなものかと思いますが、今まではちょっと貧しかったものですから、これは、そこに全然行政、インフラができなかったのが、このところ石油で大分潤ったものですから、いろいろ警戒艇のレベルが上がりましたり、いわゆる海上警護艇の船のレベルが上がったり、いろいろインフラが少しよくなってきていますので、少し雰囲気的には、東の人たちの、あの辺にいた人の雰囲気がちょっとまた戻ったかなという感じがしないでもありません。

 いずれにいたしましても、プーチン自身にこの問題は解決したい、せねばならぬという意欲というものは、私自身もそう思いますので、時期としてはいい時期になりつつあるのではないかという御指摘は正しいと存じます。

前原委員 周辺環境のパワーバランスも含めて、ぜひリーダーシップを発揮していただきたい、こういう問題については党派は関係ありませんので、しっかり頑張っていただきたいというふうに思います。

 さて、きょうの本題でありますけれども、アメリカで中間選挙が十一月に、先月でありますが行われまして、上下両院で共和党が負けて民主党が勝つ、こういうことになりました。ラムズフェルド国防長官が更迭をされて、ゲーツさんという方が新たに指名をされる、こういうことでありました。

 簡単に一言でお答えいただきたいと思いますが、この中間選挙で共和党が敗北した最大の理由は何だったのか、外務大臣の分析を聞かせていただきたいと思います。

麻生国務大臣 自分の国の選挙を、勝った負けたときの分析もなかなか難しいのに、人様の国の選挙の分析まで、なかなか一言で言うのは、ちょっと前原先生、かなり難しいとは思いますけれども、そうですね、厭戦気分かなという感じがしないでもありません。重ねてお断りしておきますが、これは私の個人的な分析ですから。

前原委員 これは、アメリカの各種世論調査でも、まさに今大臣がおっしゃったように、イラク戦争、これがもう最大の理由だというふうに思います。

 これから申し上げるところで、一つ一つこれも簡潔にお答えをいただきたいと思うわけでありますが、十一月の下旬から、アメリカのメディアのイラク戦争に対するワーディングが変わってきたんですね。内戦という、南北戦争を経験したアメリカでは余り使いたくないようなシビルウオーという言葉を、例えばNBC、三大ネットワークの一つでありますが、使い出している。あるいはニューヨーク・タイムズも、十一月二十八日からはそういったシビルウオーという言葉を使い始めている、こういうことであります。

 十二月の一日には、ライス国務長官が中東の衛星テレビ、アルアラビーヤのインタビューに答えて、イラク政策でアメリカは確かに誤りを犯したということを明確に言っているわけであります。

 二つ簡潔にお答えをいただきたいんですが、内戦だと思われるか、そして、ライス国務長官自身がアメリカのイラク政策に誤りがあったということを率直に認めている中でどう思われるか、アメリカのイラク政策について誤りがあったと思われるかどうか。この二点、お答えをいただきたいと思います。

麻生国務大臣 今の御質問で難しいのは、内乱と内戦の定義というのはなかなか難しいところだと思いますので、シビルウオーになっているのかどうかというのは、単なるターモイルなのかといえば、激しさからいったらシビルウオーに近くなりつつあるから多分そういった言葉になっているんだと思いますが、内戦と内乱の定義というのはなかなか難しいので、ちょっと今一概にお答えすることはできません。

 それから今、ライス長官の話で誤りがあったという話が出ておりましたけれども、この件に関しては、日本としては、これはイラクの人道復興支援というものが日本の立場でありますので、このイラクの国内において、国連がいろいろ治安状況の復活やら何やらに頑張っておるところでもありますし、事実、あそこでは十三万人だった治安部隊というのを三十三万人まで今一生懸命ふやしている、特にバクダッド周辺では。

 幸いにして北の方では、北の方というのはクルド地域においては、この間、NHKだったと思いますが、BSだったかで放送しておりましたけれども、クルド地域においては治安は極めて安定しておって、戦争、どこの話みたいな話がいっぱい出てくる。だから、地域によってかなり差があるというのは、テレビを見ていて私も、私はバグダッドしか行ったことありませんので北の方はよくわかりません。しかし、少なくとも、そういった状況になりつつあるというところを見ておりますので、治安部隊が三十二万三千まで、昨年の一月から比べて約一年間で二十万人近く増強もされておりますので、そういったものが効果が出てくることになればなというのが率直なところです。

前原委員 大臣、私の質問にお答えになっていただいていないんですが、日本がどういう活動をしたとか、今の状況を聞いているんじゃないんですね。

 ライス国務長官自身がイラク政策について誤りがあったと認めているわけです。支持を表明した日本の外務大臣として、この発言について、誤りがあったと思うかどうか、誤りがあったとしたらどこなのか、そういう分析というのは必要だと思うんですよ。それが私は支援をした国の一つの、当然ながら行うべき分析だと思うんですね。その点を伺っているわけです。

麻生国務大臣 今、イラク戦争のことに関していろいろ御意見があっておりましたけれども、誤りがあったというのに関して、戦争を始めたことについて誤りがあったのか、オペレーションに誤りがあったのか、その後、戦争が終わった後の治安に誤りがあったのか、いろいろな考え方があろうと存じます。

 イラクにおいては、フセインという独裁国家の中にあって、その使用された、大量殺りく兵器というものを使って、少なくとも北部において、クルド人に対して使われたということは事実ですから、その事実を素直に認めることはなく、最後まで国連のたび重なる勧告に従わず、それらの大量殺りく兵器というものを完全にIAEAに見せることも途中からは拒否というようなところがそもそものいきさつですから、そういったところの話を国連はずっと決議案としてやってきておりますので、それに基づいて、自分たちはそういうことをやっていないというのを説明する責任は向こう側にあるということははっきりしておると思っております。

 それに基づいて、国連の決議に基づいて出たというのがそもそものいきさつですから、私どもとしては、その国連決議に従ってやられたというように理解をいたしておりますので、その国連の決議に我々は従ったんだというように理解をして、私どもはそう思っております。基本的な考え方としてはそういうことです。

前原委員 私の質問に答えていただきたい。

 先ほど御自身がおっしゃったように、開戦に至ったいきさつ、あるいは軍事の展開も含めた、数がどうだったのか、規模がどうだったのか、あるいはいろいろな国が参加することの条件がどうだったのかということもあるでしょう。そしてまた治安状況の問題もあるでしょう。それはもう大臣がおっしゃったとおりですよ。

 私は別に、何で日本が支持したかというエクスキューズを聞いているんじゃないんです。私が聞いているのは、アメリカのライス国務長官が、イラク政策に誤りがあったということを率直に認めたわけですよ。大量破壊兵器がなかったということは以前に認めていましたけれども、誤りがあったと認めていて、日本の外務大臣としてそれは誤りがあったと考えるかどうか。そして、誤りがあったとすればどこが誤りだと考えるのか。

 だから、別に日本の自己弁護をしてくれと言っているんじゃないんですよ。私は、そういう客観的なところを日本の外務大臣として、だって、自衛隊を出したんでしょう、金も出したんでしょう。それは誤りがあったとアメリカの国務長官が言うんだったら、日本の外務大臣として、それに対して論評をする、分析をする、評価をするということが必要じゃないですか。

麻生国務大臣 少なくとも、今ライス国務長官が、イラク戦争について誤りがあったというのがどういうコンテクスト、内容で言われたかということについては、私どもも承知しているところではありません。それが……(発言する者あり)

山口委員長 答弁中、静かにお願いします。

麻生国務大臣 いろいろ、場外質問に対して無視してよろしいんだと思いますので。そこで、きちんと答弁をさせていただきますので……(発言する者あり)やかましいなとこういうところで言うとまた問題になるので、正直申し上げて、ライス国務長官のコンテクストの内容がわからないので何とも言えない、それが一点です。

 それから、ISG、イラク・スタディー・グループのいわゆる答申みたいなものが出ていますけれども、その中の具体的な見直し作業を進めているという段階になって、今この段階においてコメントをというような段階にまだないというように存じております。

前原委員 私も断片的なものでありますが、ただ、米国がイラクで誤りを犯したかと聞かれれば、確かに犯した、別のやり方ができた分野があるのは間違いないという言い方をしている。そして、その誤りには具体的には言及しない、しかしこれからが大事だということを言っている。

 私は、ここで議論すると、時間もないし、水かけ論になるかもしれませんので、ぜひライスのその発言の内容をしっかりととらまえていただいて、先ほどの、大臣が御答弁をされたいわゆる超党派のイラク研究グループの報告書というのは、これはそれに影響を与えるものではないですよ。つまりは、ライスは、自分が国務長官としてこれにかかわって、今申し上げたように、別のやり方ができた分野があるのは間違いないという言い方をしているわけですね。

 ですから、そういうことも含めて私は、やはり人も出し、自衛隊も出し、多額のお金を使って、しかもこれだけ泥沼になって、今からまた議論をいたしますけれども、泥沼になっている状況に加担をした、あるいはそれに賛成をした日本としては、誤りがあったと当事者のアメリカが認めている以上、それについて日本としてしっかりとやはり政府の見解をまとめるのが大事だと私は思いますよ、検証していく上で。

 これは、委員長、政府の統一見解というか、このライス国務長官の話を受けて、政府としてはどこに誤りがあったと考えるのかというようなことをしっかりと国会に提示をしていただきたいと私は思います。

山口委員長 後日協議させていただきます。

前原委員 ぜひ、麻生大臣、これは真摯に、先ほど申し上げたように、やはりイラクの問題というのはこれから本当にますます抜き差しならない大変なことになっていくと思います。

 クルドが大丈夫だから、別世界でという話ですけれども、バグダッド周辺、真ん中の辺やスンニの地域というのは本当にもう毎日百人以上の人が死んでいるときもある。米兵も累積で二千九百名以上の方がもう亡くなっていて、そして、今まさに大臣がおっしゃったように、アメリカではイラク研究の超党派のグループが報告書を出している、こういうことですよね。つまりは、このイラクの状況は改善し得るのかどうなのかということを考えたときには、まさに私は暗たんたる気分になるわけですね。

 ここは私が繰り返す必要もありませんけれども、先ほど三十三万人とおっしゃいましたけれども、現在、もうイタリアとかが撤退して、現在の部隊数は約十七万人、最高のときが三十三万人ぐらいで今十七万人ぐらいに減っております。もちろんイラクの治安部隊に移譲しているというところもありますけれども。

 このいわゆる研究グループの提言というのは、二〇〇八年三月までにイラク駐留米軍の戦闘部隊を撤退させる。これは、今大体十四万人駐留していて、その半分ですから七万人ぐらい、これを撤退させる。そして、プラス、先ほど同僚の長島議員からも話がありましたけれども、イラン、シリアの直接対話の必要性を訴えかけている。ほかにいろいろな細かなことがありますけれども。

 果たして、では、兵を引き揚げて、この間のマリキ首相との、あれはアンマンでのアメリカとの首脳会談においても、結局は観念論的なことしか合意できなかった。

 つまりは、イラク政府のいわゆる機能強化が必要であるということはマリキ自身が一番わかっていてそれができない。いろいろなところに目配りして大変な状況であるということ。

 それから、イラクにどんどん、イラクの治安部隊を強くしていかなきゃいけない。これも総論としてわかっているけれども、しかし、治安部隊を強力にしていっても、実態は宗派ごとのスパイみたいな形で、どちらを向いているかわからない。イラク全体について仕事をしているというよりは、宗派を向いて、いわゆるシーア、スンニとか、あるいはクルドというのは部族ですけれども、その方を向いて仕事をしていて、では、増強したら本当に統治できるのかという状況じゃないわけですよね。つまりは、ここまで至って、しかも撤退という話になっている、こういうことであります。

 それで、私が質問させていただきたいのは、日本も自衛隊を出した、今でも二百名でしたか、航空自衛隊を出している。こういう状況の中で、果たして、泥沼だからしようがないねという、見過ごすのも一つの考え方かもしれない。しかし、これを放置しないで、どうやったら解決できるのかという処方せんを日本なりにしっかりと提言していくということも大事だというふうに思います。

 この超党派の提言も受けて、日本の外務大臣としてイラクの状況をどう見ておられて、そしてまた、どうすることが、ナローパスかもしれないけれども、何とか一縷の望みというか、光明を見出すように日本もできるんじゃないか。その点、どういうふうに今お考えでしょうか。

麻生国務大臣 先ほどのあれですけれども、基本的にはアメリカ政府もこれは問題として思っているから、いわゆる見直しが必要なのではないかと思っているからイラク・スタディー・グループの話になった、まずこの背景はそれが基本だと思っております。

 したがって、この内容について、内容というかこれからのアメリカの行動については日本としても当然注視をしなきゃならぬし、この間についての双方の意見交換というものはさらに密にしていかねばならぬところだと思っております。

 それから、今どうすれば成るかということに関しては、少なくともアメリカ人の顔が見えなくなるようにするのは大事だということははっきりしていると思っております。少なくとも、何となくアングロサクソンとかそういったのではないのでないと、なかなかあの地域の歴史的な問題からいっても難しい。これはいろいろな識者も言われているとおりだろうと存じます。なかんずく、アメリカというもののイメージがぐあい悪い。少なくとも現地の人たちに、イラク人の警察、イラク人の軍隊、そういったものに変えていかない限りは、治安という点に関して言わせていただければ、なかなか難しいのではないか。

 少なくとも、その言をとって先ほど言われましたけれども、イラク人の治安部隊が今三十三万人、確かに数字が似ていますので、イタリアも何も引いておりますので、そっちの数も減っているんですが、イラク人の治安部隊の数が十二万から三十三万五千までふえたというところであります。

 そういうような状況でもありますので、その方向には沿っているんだと思いますけれども、先ほども言われましたとおり、マリキという総理大臣が言うように、少なくともそれでも足りない、はっきりしているんだと思います。

 加えて、そこに宗教戦争が入ってきて、スンニ、シーアと。これはいろいろな人に聞くんですけれども、あなたは顔を見て、この人はスンニ派、シーア派とわかるんですかと四、五人の人に聞いたことがあるんですが、だれ一人として、そんなことはわかる者はいるわけがない、そんなものは全くわからぬという話だった。ターバンの色でわかるのか、全然違う、関係ないと。これはみんな、大使も言われますし、アラブ人の方、ましてや日本人やアメリカ人はそんなのわかるわけがない、私は基本的にそう思うんです。少なくとも、いずれも外から見たら全く理解できないような話で、合わないんですから。

 前原先生、やはりそこらの現実に立った上で考えないといかぬのであって、そうすると、シーア派の人もスンニ派の人も、両方とも共通の敵は何となくアメリカみたいな話になると、こんな不幸な話はありませんので、私どもとしては、そこらのところはどういう手だてがあるかと言われれば、アメリカ人が大衆の目につくところからいなくなっていくというのはすごく大事なプロセスではないか。それだけはアメリカの大使にも言いましたし、外務大臣にも言ったことがありますけれども、そういったプロセスということの方を大事にして、現地の方に置きかえていくことをしない限りはこの問題は解決しない、私は基本的にそう思っています。

前原委員 時間が来ましたので終わりにいたしますが、それを移行していくプロセスというのも大事だと思います。アングロサクソンの顔が見えなくするというのは大事だと思いますし、ただ、それで本当に今の宗派間の対立というのがなくなるかどうかはなかなかわからない。

 そうなったときに、これは先ほど長島議員も言われておりましたけれども、やはり外交力ですよね。アメリカではなかなかできない外交力。イランとかあるいはシリア、中東和平についても、日本がかかわり得る範囲というのは、アメリカよりよっぽど裁量の余地というか、動ける範囲というのは広いと私は思うんですね。

 ですから、そこはやはり外交力でカバーをしていって、そしてアメリカを助けるというような考え方に立たなくてはいけないし、アメリカを助けるのが目的ではなくて、あの地域がおもちゃ箱をひっくり返したようになったときには、あそこに九割の石油を依存している、これはまさに日本の大きなマイナスになるわけでありますので、そこは反省すべきは反省し、先ほども申し上げたように、こういう結果責任を招いたことはやはり大変重要な誤りであったというふうに私は思いますし、そのことをしっかりと日本も認識した上で、外交力をやはりしっかりと、中東におけるアメリカと違う中立性というものを生かしてしっかりやっていただきたいということを最後に要望いたしまして、質問を終わります。

山口委員長 次に、笠浩史君。

笠委員 民主党の笠浩史でございます。

 大臣、APEC、また二国間のいろいろな会談をされたということで、本当に御苦労さまでございました。その中から、先ほど報告がございました、特に日中外相会談、対中国関係というものについて、きょうは幾つか質問させていただきたいと思っております。

 まず、日中外相会談の中で、今月の二十六日、二十七日、この二日間にわたって日中の共同で歴史研究を、いよいよ第一回の会合を開かれるということで合意をされたと伺っております。

 去年、当時の町村外務大臣が、このときには教科書検定の問題もあって、そして、これは繰り返されてきたわけですけれども、非常に過敏な反応、あるいは去年の四月、北京や上海でいろいろな暴動というか反日行動が起こった中で、共同して歴史研究をしていこうじゃないかという提案をしていて、それが、一年半たちまして、さきの安倍総理の日中首脳会談の中で合意をされて、それを受けてのいよいよ具体的な研究開始というふうに私は認識をしております。

 それで、二〇〇八年中に研究成果を発表するということを目標にこれからこの研究が始まっていくということなんですが、まず外務大臣にお伺いをしたいんです。

 この成果というのは、大臣の中では具体的にどういったものを、その個別の中身ではなくて、想定されているのか。例えば、共有できる何かまとまったものが果たしてできるのかどうか。あるいは、お互いに歴史認識というものは当然ながら難しく、それぞれの独自の歴史観、歴史認識というものがあるわけですから、これはまとまらない場合だってあるわけですよね。そういった中で、報告書的なものをどういう方向でその成果の一つの成果物として出されようという思いで今回の研究が始まるのかということを、ちょっとまず大臣のお話を伺いたいと思います。

    〔委員長退席、嘉数委員長代理着席〕

麻生国務大臣 今、日中歴史共同研究というのが過日のセブ島の日中外務大臣会合で、この二十六、二十七、正式に双方でスタートすることになったということであります。

 少なくとも、戦後六十年はもちろんのことですけれども、その前の古代史にわたって約二千年ぐらいにわたる話をずっとやっていくということなんだと思いますので、双方やはり忌憚のない意見を言い合わないといかぬところだと思っております。正直なところ、こっちはこう思っているというところを示さないと相互理解は進まない。

 しかし、言ったからといって相互理解が進むかと言われれば、それはなかなかそんな簡単にはいかないであろうということも想像がつきます。少なくとも、同じアングロサクソンで、どうでしょう、イギリスの小学校の教科書でアメリカの独立戦争は植民地の反乱と書いてありますし、そういった意味では、なかなか一致しにくいものは、世界の歴史を見ましても、そういうことになるという可能性はそうだと思いますし、アメリカの中でも、南北戦争は北部の侵略と南部の学校の教科書には書いてある。今はどうか知りませんけれども、当時は少なくとも私が学生のときはそう書いてありましたので、なかなか一致しにくいところはある。

 しかし、それはそれとして、双方の意見として両論併記みたいな形になろうかと思いますが、これが日本側の意見なんだということがはっきり出るというのは、これは笠先生、大事なところだと思いますので、何となく、こっちはこう思って、向こうはどう思っているだろうなというんじゃなくて、向こうはこう思っているんだというのがきちんと出されるというのが大事だと思っております。

 成果物につきましては、学者の方々のいろいろな御意見、知識に基づいていろいろ意見が出されてくるところだと思っておりますので、私どもとしては、その都度、それがどんなものなのであろうかということに関しましては、ちょっと私の想像と学識レベルが全然違うと思いますので、そこらのところを踏まえて、成果が出ることを期待しておるという段階でございます。

笠委員 私も、もちろんこれは今から研究していくわけですから、その具体的な中身がこうなるだろうとか、それは本当に今予測できるわけではございませんし、大臣おっしゃるとおりだと思うんですね。

 ただ、私はなぜこうしたことをお伺いしているかというと、来年は日中国交正常化の三十五年ですよね。あるいは、不幸な面でいえば、盧溝橋の事件が起こって七十年という節目が二〇〇七年だと思うんですけれども、そうした中で、確かに歴史認識についてお互いにしっかりと研究をしていこうということは大事なことではあるとは思いますけれども、ともすると、もろ刃の剣というか、お互いが意見をそれぞれ述べ合うことでぶつかり合うことによって、マイナスの方向に行く危険性もあるのではないかと思っているんですね。

 私は、この研究を始めること自体はいいことだとは思います。ただ、特に中国との間における歴史認識の問題というのは、これまでも政治的な問題でもあり、あるいは国民の間でもお互いの対国感情というものを、非常に不信感を募らせたり、そういったこともあるわけですから、そもそものこの研究というものが、例えば何かをまとめていこうという方向性を持って臨むのではなくて、まずは、とりあえず史実に基づきしっかりと客観的な事実を積み上げていこう。

 あるいは、後ほどお伺いしますけれども、メンバーの方々、有識者の方々という中でも、私は中国はわかりませんよ、これは有識者は歴史観がみんな一緒かもしれません。しかし、少なくとも日本の場合には、この十人選ばれる有識者の方の中でもいろいろな違いがあるというのは当たり前のことだと思うんですね。

 ですから、そういった点について、この研究成果というものは、事実関係、できる限りいろいろな資料なんかをきちっと出し合いながら積み上げていくレベルでのまずは試みだという理解でよろしいでしょうか。

麻生国務大臣 基本的には、客観的な史実、事実に基づいて、双方の持っている資料というのにも差はありましょうし、いろいろな意味で、そういった持っております認識、事実認識というものを相互にきちんと披瀝し合う、これがステップの第一段階としては、今おっしゃるとおり、そこがまず第一段階だと存じます。

笠委員 もう一度確認しますけれども、その第一段階、これは二〇〇八年で終わる話じゃないので、日韓のときも二年でやろうといったら三年かかりましたよね。ですから、これが、第一段階が早く終わるのか、あるいはもっと長くかかってしまうのか、それは今後の議論の行方でしょうけれども、少なくとも二〇〇八年中ということになっているので、そこで出てくるものは、今大臣がおっしゃったような、その第一段階の報告書的なものが出てくる、そういうことでよろしいですか。

麻生国務大臣 私も、ちょっと最後の詰めまでどうなる予定なのか、その先生方、たしか北岡伸一先生だったと思いますが、最後のどこまで行けるのかという段階、その経過を見ないと、ちょっと今のこの段階で申し上げられる段階にはございません。

 ただ、二〇〇八年度中だか二〇〇八年中だかに何らかの形でしかるべきものがまとまる、全部が全部一致することはないと笠先生言われるとおりだと私も思いますので、違うところは違うところなりに、それなりにきちんとした形で、Aという意見、Bという意見という形で、一応の中間報告というかそういったものができ上がってくることを期待しております。

笠委員 というのが、これ、今人選が行われているとお伺いしていますけれども、ちょっとまた後で戻りますけれども、この人選についてはもう報じられて、十人の方、今座長は北岡先生ということを大臣自身がおっしゃいましたけれども、これは報道で、もう既に十人のメンバーが、それぞれ古代・中近世史、そして近現代史と五人ずつ名前も報じられているんですが、このメンバーは、報じられているとおり、北岡さん座長でということでよろしいでしょうか。

岩屋副大臣 今大臣がおっしゃいましたのは、北岡先生も名前が挙がっているということを承知しているということを大臣はおっしゃったんだと思います。

 今、最終的な調整段階にございまして、今この場で十人がどなたであるということを申し上げられる段階にはないんですが、先生おっしゃったように、近現代史、古代・中近世史の御専門の先生方の中から業績が高く評価されている先生方を、今最終的な確定に向かって選考の途上にあるというふうに申し上げさせていただきたいと思います。

笠委員 ほぼ内定していると思うんですね。これはマスコミで全社書いていますから。これがもし違うとすれば、それと同時に、私はそういう理解をした上であえて質問させていただきます、それを今言えとかいうことをやっている時間はないので。

 ただ、このメンバーを選定する一つの、済みません、外務省がこれは選定をしているということでよろしいですか。それとも、外務省と官邸で一緒になって選考に当たっているのか、ちょっとそこをまず確認させてください。どなたでも結構でございます。

岩屋副大臣 おっしゃるとおりでございまして、外務省だけでやっているわけではございませんで、官邸、外務省、それから、予定をされている有識者等が中心になってやっているということでございます。

笠委員 この有識者の十人の方を選ばれる、先ほど岩屋副大臣が、その道の研究成果いろいろということをおっしゃいましたけれども、例えば、特に近現代史ということになってくると、その先生方の有識者の方の一つの史観というものがございますね、歴史観なり。

 だから、そういったところから、例えばバランスよくいろいろな考えの方を選んでいくのか、今、選ばれたのか、選ばれているのか。あるいは、それともある程度、今の政権、安倍総理なりの一つの歴史観というものに基づき選定をしていこうというものがあるのか。そこあたりの選定の一つの基準というものがあれば、お答えをいただきたいんですけれども、どういうことを基準にして選んでおられるのか。

岩屋副大臣 先ほども申し上げたように、業績がまず高く評価されているということが大事な選考基準の一つだと思いますし、日中の歴史だけではなくて、国際政治それから外交問題等に精通しておられて、幅広い観点からこの問題を議論していただける方、そういう専門家を選考するということを基準に作業が進められていると思っておりまして、特定の歴史観に偏るということがないように、バランスよく選考が進められているものというふうに承知しております。

笠委員 業績はだれが評価をするんですか。外務省ですか。外務省が、この業績がすばらしいということを評価しているということでよろしいですか。

岩屋副大臣 先ほど申し上げたように、委員の人選は、官邸、外務省、それから、恐らく中心になっていただけるであろう予定者といいますか、そういう方で今相談をさせていただいているということでございまして、だれか一人の人が決めていくということではないというふうに御理解いただきたいと思います。

笠委員 この問題は今後もちょっとやっていきたいので、また、顔ぶれ、私も、すべての有識者のほぼメンバーに決まるであろう方々の業績というものも私がまだ知らない方もおられますので、これ以上具体的には聞きませんけれども。

 そこで、大事なことは、今まさにメンバーの方、もう選んでおられると思うんですが、この十人の有識者の方に、最初の話に戻るんですけれども、この日中歴史共同研究というもののメンバーになっていただくに当たって、何をやってくれと。例えば、先ほど言ったように忠実ないろいろな資料やあるいは史実に基づいて客観的な一つの積み上げをやってくれと言うのか、あるいは、中国側と共有できるものについてお互い議論した上でひとつ例えばまとめ上げてくれないかと、まとまるところについては、お互いに共有できる部分については。そういったことをしっかりとやはり指示をしておかないと、これを任された方もたまらないと思うんですね、恐らくは。

 完全に民間同士の研究だったらいいですよ。しかし、これは、首脳会合で首脳同士が、まさに政治の決定を受けて立ち上がったものですから、そこあたりというものは、有識者のメンバーの方には、どういう言い方で具体的に何をやってくれと。細かいこの時代のどうこうとかいうことじゃなく、そのガイドラインというか、何をこれからの中国側との協議の中で、研究の中で積み上げてほしいということをどういう形でお伝えをされているのかな。あるいは、そういうことはまだ全くこれからなのか、その点をちょっとお答えいただければと思います。

岩屋副大臣 この歴史共同研究の目的は、先ほど麻生大臣がおっしゃったように、歴史に対する客観的認識を深めることによって相互の理解を増進するということでございますが、この会合ではさまざまな資料等活用して中国側の委員の皆さんと忌憚のない議論を重ねていただきたい旨、しっかり御説明をすることになるというふうに思います。

 また、今後、委員が正式に決定次第、日本側委員の皆さんに一堂に会していただいて、第一回目の会合に向けて十人の委員の先生方の意思疎通を図っていただく予定でございまして、そのときに会合の目的等を重ねて御説明させていただいて、御理解をいただく予定でございます。

笠委員 相互の理解を深めるというのは、当然ながら、お互いの両国民の相互理解というものが先にはあるわけですね。メンバー同士の、学者同士の相互理解がスタートにはなると思うんです。

 だから、逆に言うと、そこでまとまってきた第一段階のものを当然ながら国民に発表していくということになっていくと思うんですけれども、そのときに、それが果たして本当に、一つは、どこまでこの第一ステージではやるんだよということをやっておかないと、そこをあいまいにしていると、過度な期待をされるような報道でもされたときに、結局は対立点が多かったとか、あるいは過度に何かまとめ上げるんじゃないかというような期待を持って見ていると、どうしてもまとまらなかった部分だけが非常に注目をされ、焦点が当たって、かえって、どういうことだ、やはりこれは相入れないんだということにもなりかねないんじゃないかなという危惧を私は持っているので、逆にこの位置づけというものを、しっかりとスタートするに当たっては、まず第一段階ということで明確にしておいていただきたいと思います。

 そして、もう一点。今、韓国の方、日韓の方は、第一段階を終えて、次は教科書、この歴史教科書の問題にまで研究をというような段階に来ていると思うんですけれども、この日中の歴史共同研究というものについても、将来的にはこの第一段階を終えた後に、私は、はっきり言って、この中国の歴史教科書、きょう岩屋先生や下村副長官もおられますけれども、一緒に勉強したこともございますけれども、やはり明らかに行き過ぎた部分なんかが幾つかあるわけですね。中国から見れば、日本の一部の教科書についてもそういう思いを持っている。そういったところも、ある意味では、将来できれば是正をしていくことができるようなところまでをにらんでこの研究というものを始められるのかどうか、それともとりあえずは研究でいいんだというところでとどめておくのか、この第一段階以降の将来的な研究というもののあり方、それについてちょっとお話を、今の見解をお伺いできればと思います。

    〔嘉数委員長代理退席、委員長着席〕

下村内閣官房副長官 お答えいたします。

 今御答弁がございましたように、基本的に、日中歴史共同研究は、古代から現代に至る二千年余りの日中関係史について日中有識者間で共同研究を行い、歴史に対する客観的認識を深めることによって相互理解を増進することを目的としたものでございまして、両国の歴史教科書それ自体を念頭に置いて行われるものではございません。

 しかし、この研究の成果いかんにも、御指摘が今もお話として笠委員からもございましたけれども、その内容いかんによっては、将来的には我が国の歴史教科書への一方的な批判をなくしていくことなど、その成果が両国の歴史教科書に関する議論によい影響を与えることも期待できるのではないかと考えております。

 また、中国の愛国主義教育に関しては、十月、安倍総理が訪中した際、安倍総理より日本関連の教育や歴史展示物について適切な対処を要請いたしました。また、外務省においても、中国の代表的な歴史教科書の日本関連部分につき専門家に分析を委託し、その結果を踏まえまして、事実関係に疑問のある記述などについて中国政府に指摘してきているところでもございます。

笠委員 これから始まるので私も注視をしていきたいと思っておりますけれども、本当に、お互いに歴史観、歴史認識は違えども、その対立を乗り越えて、これが前向きな、建設的な場になることを期待申し上げたいと思います。

 最後に、済みません、きょうは本当はもう一つ、ちょっと拉致の問題等々で岡下政務官にもおいでをいただいていたんですけれども、ちょっとそこまで行きませんでしたので、そのおわびを申し上げて、私の質問を終わらせていただきたいと思います。

山口委員長 次に、笠井亮君。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 来る十二月十八日から北京で再開される運びとなりました北朝鮮の核問題をめぐる六者会合、いわゆる六カ国協議について質問をいたします。

 まず、この六者会合が再開されることになった意義についてなんですが、麻生大臣に伺います。

 今度の開催は実に一年一カ月ぶりということになるわけですが、昨年の第五回の協議の中断以降、ことし七月には北朝鮮がミサイル発射、そして十月には核実験を強行するという暴挙があって、まさに事態が一層複雑化するという経過でありました。

 このもとで、国連の安保理決議の一七一八が全会一致で採択をされる、そして一連の非軍事の経済措置というのがとられるなど、国際社会が一致協力して、結束して、平和的、外交的努力に全力を挙げてきた。そして、決議十三項という中でも、緊張を激化させる可能性のあるいかなる行動も慎み、六者会合の早期再開を促進する外交努力を強める、こう言ってきて、それをやってきた結果、協議再開につながってきたというふうに経過的に言えると思うんです。

 そこで大臣に、この六者会合という枠組みの重要性、そして今回の再開自体の意義、何が再開をもたらしてきたかということについて改めて確認をしておきたいんですが、いかがでしょうか。

麻生国務大臣 いろいろ分析はできると思うんですが、少なくとも今回これが再開されるに至った背景というのを直接的に言えば、やはり一七一八全会一致というのは、笠井先生、これは大きかったと思います。これによって中国も、この六者会合のいわゆる議長国でもありますので、六者会合を再開させる責任というものをかなり強く感じて、大いなる努力を少なくとも一七一八以後はやったというのはアメリカも我々も認めるところでもあります。

 そして、国連において、この六者会合が北朝鮮問題、核に限りませんけれども、北朝鮮問題というものに関する解決をするのに最もいい枠組みであるという理解はこれは世界の認めるところでもあろうと存じておりますので、私どもとしては今回、いろいろ各国の努力によって一七一八の、直接的には一七一八ということだと思いますが、さらに直接的には中国、アメリカ、いろいろそういったところが努力をした結果、今回の再開に至った直接の背景というのであれば、そこが一番大きかったかなと存じます。

笠井委員 まさに今回の再開自体が、そういう意味では、国際的な努力があり、一致結束してという中で、朝鮮半島の非核化、そして北東アジア地域全体の平和と安定を実現する上で重要な枠組みであり、それがまた動き出すということだと思うんです。

 今お話があって、再開ということなんですけれども、しかし、再開される以上は、大臣も強調されていますが、具体的前進と成果がやはり何より重要だということになります。

 昨年の九月の第四回協議の共同声明、この中で、北朝鮮が核兵器と既存の核計画を放棄すること、そして米国が朝鮮半島に核兵器を有せずに、北朝鮮への攻撃、侵略の意思のないことが確認されているということを初めとして、やはり朝鮮半島の非核化を初めとする諸問題の平和的解決に向けての重要な前進のそういう確認になったということがあったと思います。

 この共同声明の履行計画について協議するということで、その次に、去年十一月にあった第五回の協議が行われて、そして共同声明履行に向けた具体的な計画、手順の問題では作成で合意はしたということで議長声明があったんだけれども、しかし北朝鮮のああいう態度によって中断したというわけでありまして、今回再開ということになれば、当然この到達点からの出発ということになるんだろうと思うんです。

 北朝鮮の核放棄への具体的措置として、今関係国の間で幾つか具体的に言われているということが出されておりますが、一つは寧辺の実験用黒鉛減速炉の稼働停止の問題、それからIAEAの査察受け入れ、さらにはそれ以外にも核実験場の閉鎖とか、あるいはすべての核施設、核計画の申告、こういう要求が出されているということで、今調整中ということでありますけれども、さらには五つの作業部会を設けるという話も伝わってきております。

 こういうもとで大臣に伺うわけですが、去年の九月の共同声明の今日的意義をどう押さえていく必要があるのか。それからまた、具体的前進の課題。これまた交渉の問題なので、これとこれはということで確定的には言えないと思うんですが、何を重視して提起する必要があるというふうに思っていらっしゃるか、いかがでしょうか。

岩屋副大臣 先生御指摘のとおり、昨年九月の第四回六者会合において合意された共同声明というのは、これから十八日からまた始まるわけですが、六者が達成すべき大きな目標を示したものというふうに私どもも考えております。

 どういうメニューが上がっていて何が交渉されているかということは、先生今いろいろお挙げになりましたが、交渉の中身の問題でございますので、それはちょっと申し上げるのは控えさせていただきたいと思いますが、要は、北朝鮮がすべての核兵器及び既存の核計画の検証可能な放棄を約束した、それが昨年九月の原点でございますから、これは重要な基礎になるというふうに考えておるところでございます。

 また、そのときの六者会合の最終的な目標の一つとして、日朝及び米朝の国交正常化ということも明確に位置づけられておるわけでございまして、日朝関係については、懸案事項、もちろん拉致も含む懸案事項を解決することを基礎として国交正常化する旨の文言が盛り込まれている。これらは、先生おっしゃるとおり、これからの協議の基礎になるというふうに考えているところでございます。

笠井委員 去年九月の共同声明というのは、国際約束だ、北朝鮮もやっている。それから、日朝平壌宣言というのは、日朝両国間の、両国の約束だということで、これは安倍総理も強調されているわけですが、この共同声明や平壌宣言が生きているからこそ、その精神それから趣旨に反して行動している北朝鮮が、原点に戻って、核、ミサイル、拉致などやるべきことに正面から取り組む、そして、そういう中で国際社会の一員になっていくということで、米朝間や日朝間の国交正常化にもつながる。こういうことを迫っていくということで、やはり粘り強く協議に当たっていく必要があるんだというふうに思います。

 そこで、そういう中で、この六者会合の協議を具体的に前進させて成果を上げていく上で、関係各国との協議と連携というのが欠かせない。もう言うまでもありません。

 この間、先ほど冒頭にも大臣から報告がありましたが、ハノイで行われたAPECの会合の中でも、六者会合の早期開催を呼びかけるということがありました。その場を初めとして、大臣御自身も、六者会合参加国、関係各国を初めとしてASEAN諸国の外相などとも直接話し合い、会談をされてきたわけですけれども、これまで北朝鮮問題解決のためにどういう連携を重視してきたか、そして、今後どのようにこれを強めていくということが効果的にやっていく上で大事なのかということで、簡潔に所見をお願いしたいと思います。

麻生国務大臣 基本的には、五者の中で、議長国の中国との連携を密にしなければならないということは確かだと存じます。なぜなら、中国が、パイプライン、また食料、エネルギー、いろいろな関係で最も影響力がある国と思われるからでもあります。また、ある意味では隣国でもありますので、中国にとりましては豆満江を越えたところからもう既に中国ということになりますので、いろいろな意味で中国との連絡をかなり密にして我々はやってきたのが第一点です。

 加えて、日本として、他のロシア、韓国、アメリカに対しても中国と同様に言ってきた点は、先ほどにも答弁申し上げましたように、仮に我々の要求どおり北朝鮮が核放棄というものを、九月の平壌宣言で言われたとおりになったとしても、我々にはもう一個拉致という問題が残っていますので、これを北朝鮮が履行した、よかったよかった、めでたしめでたしにはおれのところはならぬのだと。だから、そこのところだけははっきりしておいてもらわないと、その分だけ、また何か、これを放棄してくれたら手助けしましょうという話になって、手助けした分だけ、日本さん、一緒に何かちょっと援助してとか、その分だけちょっとそこそこ払ってと言われたってうちはできないのよと。

 少なくとも、この分だけがあることだけは頭に入れておいてもらわないと、簡単にはうちはその分だけ応じることはできないということだけはたびたびにわたって言っておかないと、何となく、自分たちは直接関係ないものだから、その分だけ、核の話だけになりますので、したがって、我々は、国連の中で北朝鮮の人権問題についても総会で出し、いろいろなところで出してきているという背景、そこらのところがついつい忘れられる、無視されがちになるところをきちんと言い続けるところが、これまでの交渉事の中でいろいろ苦心しているところでございます。

笠井委員 最後になりますが、先日来日したIAEAのエルバラダイ事務局長は、日本は唯一の被爆国であり、広島や長崎に大変な被害を受けた、日本は核の倫理を語る責任があるということで、これは本当の意味の政治の課題だということを述べられました。六者会合において具体的な前進それから成果をかち取る上で、やはり日本は唯一の被爆国です、この外交の役割が今ほど求められているときはないというふうに強調したいと思うんです。

 そこで、今アメリカでは、イラク政策の見直しが迫られるなど軍事的覇権主義の大きな破綻が起きていると思うんですけれども、同時に外交努力で問題解決を図る動きが出ているということで、端的に言えば、この北朝鮮問題の例が言えると思うんですが、六者会合の合意、再開も含めて、この動きに見られるように、米国自身も平和的、外交的方法で問題解決を図る立場をとっているということは注目されると思います。

 大臣自身も直接話をされたと思うんですが、ライス国務長官自身も、アメリカには北朝鮮を攻撃したり侵略したりする意図はない、外交チャネルを通じて半島の核問題を解決するために努力しており情勢のエスカレートを望んでいない、外交努力が成果をおさめて半島の真の非核化が実現することを期待しているということで一貫して言われている。

 北朝鮮問題の解決に当たって、平和的、外交的努力ということで、大臣は、唯一の被爆国ならではのということでどんな役割を発揮しなければいけないというふうにお考えでしょうか。

麻生国務大臣 日本の被爆国としての立場というのは、これは会合のたびに言うところの一つのワードでもあるんですが、基本的にはほかの国に語れない。被爆国というのは、もう一つ言えばチェルノブイリのあったウクライナという国が多分被曝国。おれたちは被曝国なんだと今言うようになりましたので、従来、爆弾とは違った別の意味で被曝したことは確かですので、ウクライナの大統領やら何やらのところへ行くと、おれたちだって被曝しているということを言って、非常に親近感を妙に持たれているところもあるんです。

 いずれにいたしましても、日本としては、その点は申し上げ続けているのは確かですが、アメリカの中にも、笠井先生、実はタカ派、ハト派いろいろあって、同じアメリカ政府の中でも、話し合いでいこうとするのと、わあっといこうとするのといろいろあって、今、少なくとも、コンディ・ライス長官のもとで調整がされていて、話し合い路線の方が勝っているというのが北朝鮮に関する実情だ。

 私ども、アメリカもいろいろな人と話をしますので、その人たちのニュアンスの差を聞いていると、人によってかなりニュアンスの差が違う。しかし、コンディ・ライスから出てくる言葉は今言われたとおりの言葉になっておりますので、アメリカとしては話し合いの路線で北朝鮮問題は決着をつけたい、日本と中国に期待しているというところは、隣国でもありますし、向こうはちょっと太平洋を離れた反対側でもありますので、少し立場は違うのかとも思いますけれども、今言われたように、話し合いでいこうという路線をアメリカが今とっていることだけは間違いないと存じます。

笠井委員 終わりますが、ゲーツ次期国防長官も議会の公聴会の中で、かつては核施設を攻撃すべきだというふうに言っていたけれどもあなたはどうなんだと言ったら、いや、考えを変えた、明らかに外交による対応が最善だということで明言するような流れになっているというふうに思うんです。

 そういう点では、アメリカのそういう動きに照らしても、やはり軍事的覇権主義の対応ということが一方であるわけだけれども、それには追従するけれども、しかし外交的対応にはなかなかついていけないという日本の外交であれば、これはやはり未来がないと思います。そういう点で、核実験の強行を、周辺事態法の発動だとか、あるいは特措法の必要性とか、さらには核保有の議論の問題が出ましたけれども、まさにそういう軍事的対応ばかりが世界から見ると目立つような日本の外交であってはいけない。

 まさに、被爆国としての日本の国民が求める核兵器廃絶という思いがある。この願いがある中で、国際社会の一致した動きを強めるということで、日本ならではの外交努力に徹するべきだということを最後に強調して、終わりたいと思います。

山口委員長 次に、照屋寛徳君。

照屋委員 沖縄の新しい知事に仲井真弘多氏が就任しました。新県知事の仲井真氏は、普天間飛行場の危険性の早期除去のため、三年をめどに閉鎖状態にすると公約しております。

 麻生外務大臣は、米軍再編に関するロードマップとの関連で、仲井真知事の三年をめどに閉鎖状態へという公約は実現可能性があると思うか、大臣の所信を伺います。

麻生国務大臣 普天間飛行場の危険性の除去ということにつきまして、新知事というか仲井真知事の方から今照屋先生言われたような発言があったということは承知をいたしております。

 ただ、私が申し上げたいのは、直接御本人とお目にかかって御本人から伺ったわけではありませんので、私は新聞に出ているような話は大体、余り信用して読んだことはありませんので、ちょっとこの話、そのまま即、本当かねと思ってとりますもので。ちょっと済みません、そういう性癖もありますので。御本人に会った上で直接話を一回聞かせてくださいというお話はしておりますけれども、まだ直接お話を伺ったわけではありませんので。あったということは承知をしております。

 ただ、政府というか我々としては、実行可能性のあるものということで、いわゆる周辺の方々も配慮した上で例のV字形という案に合意したものでありますので、普天間からの一日も早い移設というものとか、また、あいた後の基地というか普天間の返還とかいうもののためには、これを着実にいかに実行していくかというのが一番なので、やはり危険性の除去というのは非常に優先順位の高いところでもありますので、仲井真知事もそのことを考えておられるんだと理解をいたしております。

照屋委員 防衛庁に伺います。

 仲井真知事が普天間飛行場の三年以内の危険性除去を求めていることに関連し、代替施設の建設計画を現在の八年から五年程度に短縮していくことを検討しているとのマスコミ報道がありますが、それは事実でしょうか、また、防衛庁の方針でしょうか。

北原政府参考人 照屋寛徳先生に御答弁を申し上げます。

 ただいま先生御指摘の新聞報道については承知をいたしております。その前に、先ほど外務大臣からもお話がございましたが、先生御承知のように、私ども、本年五月一日の2プラス2で承認されましたロードマップに基づきまして、普天間代替施設については二〇一四年までの完成を目標とされておりまして、その目標に向けて今全力で取り組んでいるところでございます。

 それで、代替施設の建設計画の具体的内容等につきましてはまだ今協議中でございますのでお答えすることはできないわけでございますが、今の先生御指摘の新聞報道、これは去る十二月の十二日に行いました私どもの久間大臣の記者会見を受けての報道と考えております。

 私どもの大臣の発言の趣旨といったものは、例えば環境影響評価の手続にかかる期間につきまして、国側においては、方法書やあるいは準備書、また評価書の作成などをできるだけ早急に行う努力をする、と同時に、今度は沖縄県を初め、地元の方々からも必要な意見の御提出などの面で迅速な御協力が得られれば、そうすれば、より早期の普天間飛行場の移設、返還につながるといった趣旨で、大事なことは、政府と県を含む地元が一体となってこの問題を先に進めていくことが極めて重要であるといった趣旨のお話をされたところでございます。

 政府といたしましては、仲井真弘多知事が十日に御就任になりました、それで現在、きょうからだと認識しておりますが、県議会も二十二日まで開いておりますので、今後、知事さんを初め地元とも協議会等の場を通じまして密接に協議をいたしまして、一日でも早くこの普天間の移設、返還を実現すべく真摯に努力をしてまいりたい、そのように考えております。

照屋委員 仲井真知事は、キャンプ・シュワブ沿岸、V字形の現行新基地建設案に対し、県民の頭越しではなく、日米両政府の責任で代替施設建設にけじめをつけてほしいと発言しております。

 防衛庁は、現行案について、日米両政府が県民の頭越しで決めたとの批判をどのように受けとめておりますか。また、けじめをつけろという仲井真知事の発言をどのように受けとめておるんでしょうか。

木村副長官 照屋先生にお答えをしたいと思います。

 普天間飛行場の移設につきましては、昨年十月の2プラス2共同文書の発表直後から、その内容や方向性につきまして御説明を丁寧にしてきたところでございます。そのような結果、周辺地域の上空の飛行を回避するとの観点から、本年の四月七日に、御案内のように、名護市及び宜野座村との間で基本合意書を交わすことができまして、V字案で対応していくということが合意されたわけであります。

 また、沖縄県との関係におきましても、五月十一日に基本確認書を交わし、それらを踏まえて、沖縄県、名護市等の関係地方公共団体とさまざまなレベルで協議を行い、それらを踏まえて五月三十日に閣議決定をしたところでございます。

 今先生お話しのように、仲井真新知事が誕生されたわけでありますけれども、これからも引き続いて率直な話し合いを行いつつ、協議会の場等々を利用しながら、地元の皆様方の理解をいただけるように緊密に協議を行って、一日も早い普天間飛行場の移設、返還に向けて誠心誠意努力をしていきたいと思っております。

照屋委員 副長官に申し上げますが、私は、恐らく仲井真知事の思いというのは、沖縄県や名護市が意思決定に加わらない形で日米協議が進められた、こういう批判だと思うんです。決まった後でのこの基本合意、そのことを意味しているんじゃないと思うんですが、どうでしょうか。

木村副長官 昨年の十月二十九日の2プラス2の共同文書の内容につきましては、ぎりぎりまで米側と交渉しておりまして、交渉の段階で地元の皆さんに報告をするということがなかなかできる状況ではありませんでした。アメリカとの話がある程度調ったところで今地元の方々に御説明をしながら、また御理解をいただけるべく努力をしているところでございますので、よろしくお願いをしたいと思います。

照屋委員 それでは、普天間飛行場の代替施設である新基地建設の進捗状況に応じて北部振興対策費を出来高払いで支払うというのが防衛庁の基本認識、考え方であると受けとめてよいでしょうか。

北原政府参考人 御答弁申し上げます。

 現在、普天間飛行場代替施設の建設を含みます米軍再編の実施に伴いまして新たな御負担を伴う地方自治体に対しましては、その御要望に配慮をしながら、我が国の平和への大きな貢献にこたえられるようめり張りをつけた地域振興策等が必要であると考えているところでございます。

 それで、私どもといたしましては、新たなる交付金制度を含みます地域振興策につきまして、予算編成過程において検討することといたしまして、現在、事項要求等を盛り込んでいるところでございますが、現時点ではまだ具体的な内容が固まっているわけではございませんので、お答えをできる状況にはございません。

照屋委員 終わりますが、最後に、防衛庁は、一九九六年のSACO合意を十年を経過しても実現できなかった普天間基地の代替施設建設の最大の原因は何だとお考えでしょうか。

山口委員長 時間が経過していますので、簡単にお願いいたします。

木村副長官 平成八年四月の橋本・モンデール会談で合意以降今日まで至っております。その間、地元の自治体と丁寧な協議を重ねてまいりまして、環境影響評価等々の基本計画に従い順次作業を進めておったところでございますけれども、反対の方々の妨害等々もあって今日まで至っていることは残念でございます。

 ただ、先生御案内のように、平成十六年八月に宜野湾市におけるヘリコプターの墜落事故等々もありまして、今普天間の一層の早期返還というのが必要だ、そんな高まりの中で、地元との調整を行った結果、先ほどお話を申し上げましたように、五月一日、2プラス2で承認された二本の滑走路によるV字案というものができたわけであります。

 これから早期に事業が進んでまいりますように努力をしてまいりますので、また先生のお力添えを賜りますようよろしくお願いをしたいと思います。

照屋委員 終わります。

山口委員長 次回は、来る十五日金曜日午前九時理事会、午前九時十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時四十四分散会


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