衆議院

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第3号 平成19年3月16日(金曜日)

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平成十九年三月十六日(金曜日)

    午前九時三十分開議

 出席委員

   委員長 山口 泰明君

   理事 小野寺五典君 理事 嘉数 知賢君

   理事 三原 朝彦君 理事 やまぎわ大志郎君

   理事 山中あき子君 理事 長島 昭久君

   理事 山口  壯君 理事 丸谷 佳織君

      愛知 和男君    伊藤 公介君

      宇野  治君    小野 次郎君

      木原  稔君    河野 太郎君

      高村 正彦君    篠田 陽介君

      新藤 義孝君    鈴木 馨祐君

      林   潤君    広津 素子君

      松島みどり君    三ッ矢憲生君

      山内 康一君    後藤  斎君

      笹木 竜三君    田中眞紀子君

      長妻  昭君    細野 豪志君

      前原 誠司君    東  順治君

      笠井  亮君    照屋 寛徳君

    …………………………………

   外務大臣         麻生 太郎君

   外務副大臣        岩屋  毅君

   外務大臣政務官      松島みどり君

   政府参考人

   (外務省大臣官房長)   塩尻孝二郎君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 佐渡島志郎君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 菅沼 健一君

   政府参考人

   (外務省北米局長)    西宮 伸一君

   政府参考人

   (外務省国際法局長)   小松 一郎君

   政府参考人

   (財務省理財局次長)   藤岡  博君

   政府参考人

   (防衛施設庁長官)    北原 巖男君

   外務委員会専門員     前田 光政君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月十六日

 辞任         補欠選任

  猪口 邦子君     広津 素子君

  三ッ矢憲生君     林   潤君

  田中眞紀子君     後藤  斎君

  笠  浩史君     細野 豪志君

同日

 辞任         補欠選任

  林   潤君     三ッ矢憲生君

  広津 素子君     木原  稔君

  後藤  斎君     田中眞紀子君

  細野 豪志君     笠  浩史君

同日

 辞任         補欠選任

  木原  稔君     猪口 邦子君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 在外公館の名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員の給与に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第二〇号)


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     ――――◇―――――

山口委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、在外公館の名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員の給与に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房長塩尻孝二郎君、大臣官房審議官佐渡島志郎君、大臣官房参事官菅沼健一君、北米局長西宮伸一君、国際法局長小松一郎君、財務省理財局次長藤岡博君、防衛施設庁長官北原巖男君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

山口委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

山口委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。丸谷佳織さん。

丸谷委員 おはようございます。公明党の丸谷佳織でございます。

 まず、本日の議題になっております在外公館名称位置給与法の改正案について質問をさせていただきます。

 今回の法改正によりまして、在モナコ、在モンテネグロの日本国大使館が新設をされるということになります。大使館の新設とはいっても、当面、モナコの大使館は在フランス大使館の兼館でございまして、また在モンテネグロ大使館に関しては在セルビア大使館の兼館であるということで、すぐさま実館が開設されるというわけではございません。財政的な問題ですとかあるいは人材の確保等、大使館実館としての開設に当たっていろいろとまだ解決しなければいけない問題はあるのかと思いますけれども、基本的には、日・モナコ、日・モンテネグロの関係の強化におきましては非常に有益なことと存じております。

 これに関しまして、兼館になったその理由について御説明をしていただくとともに、将来的に実館ということを考えていく必要もあると思いますけれども、その方向性、方針についてお伺いをいたします。

岩屋副大臣 ただいま丸谷先生から御指摘がありましたように、昨年の十二月に我が国がモナコと新たに外交関係を開設しました。また、昨年の七月には、セルビア・モンテネグロからモンテネグロが独立をしたということで、大使館の新設をお願いしておるところでございますが、正直申し上げまして、財政上の制約等がございまして、直ちに実館として大使館を開設することが難しいという状況にございますので、モナコについては在フランス大使館、モンテネグロにつきましては在セルビア大使館が兼轄をするということでスタートをさせていただきたいと思っているところでございます。

 なお、今後の実館への格上げについてお尋ねがございましたが、これらにつきましては、安全保障を含む二国間関係における政治的な意味ですとか、あるいは資源獲得を含む経済上の国益ですとか、日本企業支援を含む邦人保護の観点、あるいは国際機関での票の獲得を含む国際社会での位置づけ等々を勘案しながら検討してまいりたいというふうに考えているところでございます。

丸谷委員 確かに、国際機関等の選挙、あるいは国連改革の中での我が国の考え方、方針を十分に理解していただくためには、そこに日本国大使館という実館があり、外交官が思う存分活躍をし日本の意思を伝えていく必要性がございますので、やはり実館のないところにおいては新設というものが必要になってくると思います。

 その意味におきまして、今回、この法案とは直接関係はございませんけれども、外交力の強化につながるものとしまして、十九年度予算案において、国家公務員純減に向け着実な取り組みが進められている中、外務省の定員の五十一人の純増、また在外公館スタッフの百人の純増を認めていただきました。また、在外公館につきましても、六大使館と二事務所の新設が認められております。

 この件につきましては、我が公明党の中にも外交力強化チームを設けまして、その必要性について外務省にも考え方を述べてきたところでございますので、この新設また増員については非常に喜ばしいことと考えているところでございますし、まだまだ我が国の方針あるいは進むべき方向を、例えばアフリカの地域をとってみれば、十分に理解をしていただいていない地域もあるのではないかということがいろいろなことから推測をされるわけでございます。

 今回、アフリカに関しては、マラウイ、ボツワナ、マリというところに大使館を新設する予定、予算が組まれているわけでございますが、このほかにも、今後アフリカには大使館を新設していく必要性があるものと考えます。このアフリカにおける大使館の今後の新設について、お考え方としてはいかがなお考え方をお持ちでしょうか。

麻生国務大臣 御存じのように、今、国連加盟国百九十二カ国、そのうちアフリカにあります国は五十三カ国であります。したがって、国際連合におきます約三分の一強がアフリカということになろうと存じます。その中におきまして、日本の大使館というのは二十四カ国だと存じますが、今話題になっております中国が四十六で、アメリカが四十七、フランスが四十五というようなところになっております。

 そういった状況でもありますので、私どもとしては、このアフリカというところは、今後日本としていろいろ援助、もしくはいろいろな形で力を出していくべき地域の一つだと存じますが、その中にあって、アフリカの中におけます大使館もしくは人員の数はかなり問題と思っております。したがって、私ども、今度新しく公館を六つつくっていただくことになりました。与党の関係でいろいろお力添えをいただいたおかげだと感謝しております。そのうちの三つをこのアフリカに充てております。

 今後、私どもとしては、すごく大事なところは、これは先進国に行くのと違って、こういうところでは、私も二年ぐらい住んだことがあるからわかるんですけれども、マラリアの注射を打つというのは、結構熱も出ますし、結構しんどいんです。そういう中にあって、ある程度ローテーションを組んでやっていきませんと、とても二年間は、体力的な問題、いろいろございますし、これからできます大使館のできる場所というのは、状況としてはかなり厳しい状況のところにできるという確率が高くなりますので、その分だけ、よほど人の休暇やらローテーションやら考えてやらぬと、簡単に言えば過労みたいなことになろうと思いますので、そこらのところも考えてやるというのが今後すごく大事なところになってこようと考えております。

丸谷委員 ありがとうございます。

 大臣、アフリカの地域でもお仕事に従事されていたということで、非常にそこの現場感覚というか、それを皮膚感覚でお持ちですので、単に大使館が新設をされたからといって、それでまた赤飯が炊ける話でもないというふうにお考えになっていらっしゃるということで、現場で働く外交官も非常に力強く思っていると思います。

 実際にマリ、ボツワナ、マラウイは、新聞報道でございますけれども、邦人数、マリが十七名、マラウイが百十五名、ボツワナが四十一名という数を見ると、在外公館で担うべき役割が、大きな国の大使館のいわゆる領事業務とはまた若干違って、現場で、何の援助が必要なのか、日本としてこの国に何ができるのかというのを、歩いて、より多くのそこの国の人たちと、行政、政治側とも接して、足で情報を集め、それを実現化していく能力が求められるんだろうと思います。

 ただ、小さな公館になるんだろうと思われる、実際にもアフリカの公館は十五人以上いる公館というのは非常に少ないわけでございまして、外交力の強化、大使館の新設とともにやはり急がなければいけないのが、人材の育成ということになってくると思います。

 今回、外務省員あるいは在外公館の人数が純増が認められたわけでございますけれども、定員数と実員数というのは違うんだと思うんですね。ですから、本当に、特に小さな公館で、現場で、ODA案件等で頑張れるような、経済案件で頑張れるような人材の育成に外務省として力を注いでいっていただきたいと思いますが、この人材の育成という観点では、今後、純増していった人たちに対して、どのような外交官の育成を目指していこうとお考えになっているのでしょうか。

麻生国務大臣 人材育成というところに関しまして、よく語学の話が出ますけれども、それは、フランス語圏、英語圏、スペイン語圏、いろいろありますので、それなりに語学も確かだと存じます。

 しかし、今アフリカの話が出ましたけれども、現場である程度歩いて状況を見るというのは、これは丸谷先生、やはり体力は絶対ですよ、アフリカでは。能力よりは体力です。私は自分で行ってつくづくそう思いました。私は三十幾つで行ったんですけれども、正直言って、あれが五十で行かされたらやはりしんどいだろうなと自分でそう思いました。そういった意味では、体力はかなり大きなものが要ろうと存じます。

 それから、やはり人間、同じ役人、同じ外務省の役人とはいえ、国際機関とかいう、国連とかああいう機関に向いている人、それからまた、大使館等々の現場に向いている者、また、国内で国会議員やら大蔵省の役人を相手にするのに向いているやつ、これはやはりいろいろいると思いますよ、私は。ここらをみんな回してやるから、何かおよそ、ちょっとちぐはぐなことになるのであって、やはりもっときちんと、その分野に向いた者はその分野で、そっちでやった方がいいというのがいますから、それはそちらの方に向かした方がいい。先進国よりは発展途上国向きな人もいますし、そういうのは実に向き向きがあると思います。

 そういう人たちが、私にはよく、十年も十五年もやればそこそこ見えてきますから、そこらのところをうまく配置してやるというのがすごく大切で、また、そういう先輩が、おまえ、そこに行くんだったらと言って、こういうことが観点だというのを教えてやるとか経験を積ませてやるとか、そういったようなことをかなり時間をかけてやっていかないと、ただただ一律にやるというようなことじゃないんじゃないかなと私は正直にそう思って、その線で人事配置は考え直すという話を一応いたしてはおります。

丸谷委員 大臣のおっしゃるとおりだと思います。その大臣の御意向を酌んで、外務省の方も、人事も含めまして、適材適所の配置をできるような弾力性を持ってというか、型にはまったような人事でない部分での外務省の特徴性と機能性をぜひ発揮していただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 引き続きまして、外交力強化というところでは、実館の新設、開設、プラスそこで働く人たちの外交官としての人材育成、また、それにどうしても必要になってくる費用面での環境整備という問題があると思います。

 この件につきまして次に質問させていただくわけでございますけれども、昨年の報道にございました、人脈構築関連経費というものがございまして、在勤基本手当の中に項目というものを立てずに盛り込まれているという報道がございました。まず、これがどういった種類のもので、どういった考え方をして在勤基本手当の中に反映をされているものか、御説明いただけますでしょうか。

麻生国務大臣 これは新聞にも出ておりましたけれども、まず、丸谷先生、人脈構築関連経費という勘定科目は役所の中に存在しておりません。これは、新聞には書いてありますが、こういうものは、勘定科目という、名目は立っているわけではありません。

 その上で、外務省で情報収集やら何やらするに当たって、やはり現地に行って、日本と違って、自宅に呼んだり、自宅で御飯をとか夫婦で一緒にとか、家族づき合いというものはすごく大きな要素になろうと存じます。そういったもので人間関係を築いていくということが大切なんだと思います。また、これはどこでもそうですが、一回一緒に飯を食うとか、お酒の飲めない国ならともかく、酒の飲めるところだったら一緒に一杯行くとかいうところから話し合って、やはり机に向かって両方で向かい合って、ではこれ教えてなんて言ったって、なかなかそれは話が進まないのと同じだと思っておりますので、そういった形でのインフォーマルな形というのは大事だと思っております。そういったところのものができないというのはいかがなものか、私自身は基本的にそう思っております。

 今、日本食なんというものがえらくあちこちでブームになっていまして、各国の外務大臣が日本に来るときに接待を我々はするんですが、今、九割以上の方々は、正式な日本飯を食べてみたいというのがほとんどの要望なんです。それに合わせて我々は割りばしでしょっちゅう飯食うことになるんですが。そういうような話を聞いていると、日本飯を食べて、どこで食べましたかというと、大使公邸に呼んでもらって食べて、そのてんぷらがうまかった、何とかがうまかったという話がほとんどなんです、どの外務大臣も。そういうものに関しまして、では、大使の料理人、公邸の料理人というのはどんな扱いになっているかというと、これまた給料が物すごい低い形になっていますので、この給料ではとても日本から行く人はおりません。

 そういったようなことやら何やらきちんと対応してやらぬと、今後なかなかこの種のことが進まなくなろうと思いますので、私どもとしては、交流諸経費というんですけれども、こういったものに関しましては増額ということで考えております。

丸谷委員 今お伺いしたお話を、ちょっと私が理解できなかった部分もありますので、整理をさせていただきたいのですけれども、この在勤基本手当の中には、いわゆる人脈構築関連経費というものは科目としてはないということでよろしいですか。財務省から指摘を受けた旨報道ではございますけれども、それでは、この件に関して、どの内容が財務省との中での協議になっていたのか、これは教えていただけますか。

塩尻政府参考人 在勤手当につきましては、法律に基づきまして、在外職員が在外公館で勤務する、そのために必要な経費ということでやらせていただいております。

 今先生が御指摘になられたように、人脈構築関連経費という項目は存在いたしませんけれども、先ほど大臣の方からお話がありましたように、インフォーマルな交際というのが外交活動を実施していく上で非常に重要だという中で、かつ効果的だということで、そのために在勤手当を用いるということは手当の趣旨から合致しているということで対応させていただいているということでございます。

丸谷委員 インフォーマルな形で人脈を築く際に、外交官として当然の活動でございますけれども、例えば食事に招待をしたりとか、あるいはどこかに食事に行ったり飲食等を一緒にする場合が多い、そこに機動的に使える予算というものを在勤基本手当の中で盛り込んでいるという理解でよろしいんですか。

麻生国務大臣 公式に食事なんかする場合のところにつきましては、これは在外公館に対しましての交流費というのがありますので、基本的にはそこで出します。それから、個人的なつき合いやら何やらする分に関しては、これはいろいろありますので、小さなふろしきを上げたり、いろいろ上げたり、いっぱい出てきますので、そういったものに関しましては、これはとても大使館でやれないから、それは在勤手当の中でやってくれという話をしております。分けているというように御理解いただければと存じます。

丸谷委員 私の申し上げたいのは、日本の予算のあり方というのは、特に在外公館においては、為替の変動等に機動的に対応していない部分もございまして、いろいろと不便はあるんだと思うんです。その中で予算を弾力的に使っていく必要性というのは十分に認めております。ただ、その中で、やはり必要なものは項目を立てて、決算においても透明性を持たせるべきだというふうに私は考えておりまして、その観点から質問させていただいているわけでございます。

 例えば、在勤諸手当の改定に関する外務人事審議会勧告というものが毎年出されるわけでございますけれども、この中にも、民間企業で広く手当てされているような光熱水料の海外増加分ですとか語学学習費等の経費を在勤基本手当の内訳に加えることが検討されていくことが適切である等の御進言があるわけですね。

 こういったものを加える加えないという検討をしていただいて、人脈構築に必要なものであれば項目化して、あるいは、語学の習得、ブラッシュアップに必要なものがあれば項目を立てて在勤手当の中に盛り込み、透明化を図っていくべきと考えますけれども、この点について、外務省はどのようにお考えになるでしょうか。

塩尻政府参考人 今委員御指摘のとおり、我々としても、予算化をちゃんとして、外交力を強化するために対応させていただくということでやっておりますし、今後ともやっていきたいというふうに思っております。

丸谷委員 実質、ハード面それからソフト面と環境整備面、それぞれ本当の意味で日本の外交力が強化できるように、私どもとしても全力でサポートさせていただきますので、また国民に説明責任も同時に果たすように外務省にはお願いをさせていただきたいと思います。

 次の北朝鮮問題について、若干質問をさせていただきます。

 十四日、米国財務省の方から、実際にマカオのバンコ・デルタ・アジア、BDAに関する調査結果というのが発表されまして、一つには、資金洗浄などの違法行為を容認していたとして米国の金融機関との取引全面禁止を決定するという一方で、北朝鮮関連口座の扱いについてはマカオ当局の判断にゆだねるという方針が出されました。

 このマネーロンダリングしたかしていないかという調査結果の発表については中国側から若干不快感も出ているようでございますけれども、実際には、六カ国協議の一つの大きなキープレーヤーである中国との、米中間のやりとりも必要でございましょうし、また日中間のやりとりも今後非常に求められてくるものと思いますが、基本的に、米国の金融制裁の実質的な解除、この件について大臣の見解をお伺いいたします。

麻生国務大臣 これは丸谷先生、少々長くなりますけれども、十四日に、国務省じゃありません、財務省が、米国傘下の金融機関すべてですけれども、バンコ・デルタ・アジアのためのいわゆるコルレス口座、為替等々であります、口座を維持することは禁止。これはすべての銀行がバンコ・デルタ・アジアとの取引禁止と同じことです。バンコ・デルタ・アジアが米国の金融システム、インターネット等々を含めて、システムに直接または間接的にアクセスすることも阻止するという規則を確定しております。この決定に至る調査の結果をマカオ当局に多分今週中に渡すという旨を発表したというのがこの内容であります。

 これは米国が、マカオの協力を得まして、約一年、一年半ぐらいかけて調査をした厳密な内容の結果なのでして、バンコ・デルタ・アジアにおいては、大量破壊兵器やその他いろいろな問題のあるものを促進するものに関連する取引をやっておるというので、不法な金融活動が行われていることを明らかにしたものだと私どもも受けとめております。膨大な資料だったそうですけれども、私どもはその内容を全部知っているわけではありません。ただ、いろいろ不法な取引に金を優遇していた、もしくはマネーロンダリングに参加していたということだと思います。

 この種の措置につきましては、これは国務省ではなくて財務省によります法の一環でして、基本的には、六者会談とは全然別に、アメリカの国内法の金融によって執行されている話なのであって、これと直接は関係していないというところが今回一番問題なんです。ここが六者協議と、いつも、我々もよく頭を整理しておかないといけないんですが、北朝鮮はこれが一番大きな問題なものですから六者協議に絡めてくるということでして、国務省と財務省の立場はかなりここのところで意見が違っていると思いますが、少なくとも、アメリカ政府としては、最終的にBDAに関してはこれが結論という形で出しております。

 今後これをどういうぐあいに扱うかというのは、これはマカオに渡していますから、マカオ政府イコール中国ということになろうと思いますので、中国はこの問題を引き取って、二千五百万ドルの金をそこに凍結させておりますから、それを解除するかしないか、それはおたくの方の責任でやってくださいということを言っているというように御理解いただいた方がよろしいのではないか。

 重ねて申し上げますが、これは六カ国協議と直接関係するわけではないというのがアメリカの立場であります。

丸谷委員 アメリカの立場として理解をさせていただきまして、ではその中で日本の立場をどのように反映していくか、考え方をどのように反映していくかというのが今度は非常に重要になってくるわけでございます。

 日本は拉致問題という問題も抱えておりますので、ぜひ、それぞれの各国の立場、考え方を理解した上で、日本の考え方、リーダーシップを求める場として六カ国外相会議というものも一つ考えられるわけでございますし、報道によるとこれは大臣も前向きなお考えがあるようでございますが、この六カ国外相会議の見通しあるいはお考え方についてお伺いさせていただきます。

麻生国務大臣 これは最初の段階から、アメリカ等々は、六者の外相会議というものの開催にかなり積極的でありました。

 二月の六者会合のときにおきましては、成果文書に書いてありますとおりに、安全保障面での協力を促進するための方法及び手段を探求することを目的とした速やかな閣僚会議を開催するということに関しては一致したということになっているんですが、日本としては、まず寧辺の核施設の活動停止や封印など初期段階の措置というのを完全に実施してもらうのが条件ですよと。そういうのをやらないと六者協議なんといったって意味が全くありませんから。

 そこらのところが私どもの立場で、向こうが六者協議というのを開かれるもともとは、北朝鮮を核保有国にしないというのを目的にこの六者会談というのはスタートしております。それが、核の実験をしたということを一応言っておりますから、したがって、今回は、核の計画を含めて、寧辺はまだだめ、続けてIAEAはそれを監視もしくは視察等々は実施というようなことをきちっとやってもらったのが初期段階。

 そこらのところまでは最低やってもらって、その後、核計画、プルトニウム等々の話はそれから次の段階としてという話をきちんとするまでに、六者協議の閣僚会議をそこで一回やりましょうというのは、六十日後というのは大体四月十九日以降になるということで、今から約四十日ぐらいありますけれども、そこまで行けるかどうかというのは、正直、丸谷先生、ちょっとどれくらい行けるかどうか、私ども、今の段階で希望的でもなければ楽観的でもないというのが率直な気持ちです。

丸谷委員 では、日朝の国交正常化作業部会、今月の七、八日と開催されたわけですけれども、報道あるいは外務省からの説明のとおり、双方の立場をお互いに言い合ったというところが基本的な結果だったのかと思います。

 アメリカにしても、日本と北朝鮮が二カ国間協議を行うことを望みたいと日朝作業部会の早期開催をまた求めているのに対しまして、なかなか我が国の戦略として、どのような形で、米朝協議が進展していく中で日朝国交正常化作業部会というものを引っ張っていこうとするのか。今後の日朝間の協議を進めていく方針について最後に御質問をさせていただきます。

麻生国務大臣 日本の場合は、もう御存じのように、日朝平壌宣言というものにのっとって、拉致、核、ミサイルというものに関しまして、これをきちんと処理してもらった上で国交正常化というのは、これはもうきちんと、終始一貫変わっておりませんので、こういったものを実現するというもので、七日、八日、今言われたようにベトナムでやらせていただきましたけれども、我々としては、拉致問題についても、いわゆる不幸な過去の清算というものについての議論につきましても、日朝間の隔たりはかなり大きかった、今までどおりで。

 ただ、一年半ぶりぐらいでやっておりますけれども、少なくとも、我々は一年半たっても全く変わらぬ意見を言ったし、北朝鮮側も同じように、向こう側の言い分というものはこの一年半の間全く変わらないということを再確認できたことは一つの進歩だったとは存じます。

 ただ、この問題に関して、いろいろ、六者というのでやっておりますので、バイでやっているようですが、これは六者の中の五作業部会のうちの一つですから、そういった意味では、ほかの四カ国も、日本側の立場に立って、この問題にそちらも対応すべきだという話を北に対して言い続けているというのはこれまでのところでもありますので、そこらのところは、我々にとりましては、国際世論というものをバックに、これが少し今までとは状況が違ってきていると思っております。

丸谷委員 以上で質問を終わります。どうもありがとうございました。

山口委員長 次に、前原誠司君。

前原委員 おはようございます。民主党の前原です。

 おとついの与野党国対委員長会談で、委員長が職権において委員会を開くということはしないという合意がなされた直後に、衆議院の憲法調査会で職権によって調査会が立てられ、そしてまた公聴会の議決が行われたということで、我々はそれに対して抗議をしているということでございます。

 その観点から、本来であれば、質問項目のみならず質問内容について通告をして、実り多き議論を行うべきだというふうに私は思っておりますけれども、我が党の国対方針において、項目だけを通告して、しかしながらしっかりとした議論をしていきたいというふうに思いますので、その点、御理解をいただきたいと思います。

 一番初めは在外公館関連の法律案について議論しますが、事務方の方、後でいわゆる従軍慰安婦の問題について議論をさせていただきたいというふうに思っておりますので、河野談話、それから米下院で出されようとしている決議案を大臣の手元にお渡しいただいて、後ほどそれを参照しながら議論させていただきたいと思いますので、その点の用意だけ事前にお願いをしたいというふうに思います。

 それでは、在外公館等にかかわる給与法改正案について、丸谷委員とかぶらない形で議論をさせていただきたいというふうに思います。

 まず、今回の法律改正案で、幾つかの大使館ができ、また総領事館を廃止する、また出張駐在官事務所というものを置く、こういうことでございまして、法律に関係するものとそうでないものがあるということでございますが、まずお伺いをしたいのは、総領事館と出張駐在官事務所の位置づけの違い、例えば人数的なものなのか、あるいは中身的に位置づけとしてどう違うのかも含めて、総領事館と出張駐在官事務所の違いというものを御説明いただけますでしょうか。

麻生国務大臣 出張駐在官事務所というのは、既設の在外公館の館員が、大使館もしくは領事館ということになろうと思いますが、その管轄区域内の一つの都市に出張もしくは常駐する形をとるということで、所要の事務処理を行うために設けられる事務所というのが定義になっております。

前原委員 例えば、インドで今度バンガロールというところにいわゆる出張駐在官事務所ができることになっておりますけれども、当初、外務省の概算要求では、バンガロールには総領事館を新設したい、こういう要望をされておりましたけれども、結果的には今申し上げたように出張駐在官事務所ということになっているわけでありまして、その点、規模、予算、人員、そういった点でかなりの違いがあるんだろうと思いますが、その違いを教えていただきたい、こういうことであります。

麻生国務大臣 何で出張駐在官事務所になったかという理由ですね。(前原委員「それも含めて」と呼ぶ)

 御存じのように、バンガロールに今日本企業がとにかくわあっとふえてきておりまして、在留邦人でも約三百十人ということになっておりますので、在留邦人数が過去五年間で四割以上ふえておるというのがバンガロールの実態であります。

 そういったことを含めまして、私どもとしては、ここに総領事館の開設というのを目指してやらせていただいたのですが、ここは一言に財政上の理由です。財政上の理由などから、平成十九年度においては、まずは出張駐在官事務所を開設することになったというのが背景で、基本的には財政上の理由が一番大きな理由だと御理解いただければと存じます。

前原委員 今外務大臣がおっしゃったように、バンガロールにおいては、デリーに次ぐ、二番目に多い日系企業五十七社が進出をしている、そして三百十名程度がそこに在住をされているということでありまして、それを考えると、総領事館というもので設置をすべきだというふうに私は思いますし、入口は出張駐在官事務所にまずはしておいて、そして将来的には、減ったところ、あるいは重要性が減じたところ、例えばニューオーリンズなんかは総領事館を廃止されて、ナッシュビルに今度は出張駐在官事務所というのを置かれるわけでありまして、そういう機動的な外交執行体制というもの、在外公館体制というものをとるものだというふうに私は思っております。

 財務省とのいろいろな話し合いの中でこういうことに決まったということでありますが、例えばバンガロール一つとりましても、先ほどのアフリカの話もそうでありますけれども、真に重要なところ、あるいは重要性が高まっているところについては、やはり外務省は意思を持って、そういう総領事館あるいは大使館創設に向けてしっかりとした考え方を打ち出すべきだというふうに私は思っております。

 その点について、そういう意思はおありだと思いますけれども、今後の、今すぐには、質問通告もしておりませんのでお答えにくいとは思いますけれども、この通常国会の間でも、恐らく六月にまた概算要求等があって、将来的な見通しも含めて外務省の中で検討されると思いますので、どういうスケジュールで、アフリカ、あるいはこういった、当面は出張駐在官事務所になったけれども総領事館にしたいんだというような全体像をぜひ我々外務委員に示していただきたい。それが、必要があれば与野党関係なく外務省を応援するということになると私は思います。

 そういう意味では、ぜひ、現時点のお考え方も示していただくと同時に、後日で結構ですので、今どういう将来的な、大使館をふやす、あるいは今の領事館、出張駐在官事務所、こういうものを考えているかということを示していただきたいと思いますが、その点についてお答えをいただきたいと思います。

麻生国務大臣 基本的には、今、日本の大使館は百十何公館だと存じますけれども、これをせめてフランス、中国並みに百五十ぐらいのものにはしたい。また、人員も、フランスが約七千五百人ぐらいだと存じますので、そういう意味では、中国、フランスはほぼ同じだと思いますが、七千五百人ぐらいのものまでにはしたい。基本的には、今現状は五千五百人ぐらいだと思いますので、それが数字的なことでいえば大まかな数字であります。

 ただ、今前原先生おっしゃいましたように、このところ、ITの発達また資源等々、いろいろなことから、日本人の出ていくところというのが、バンガロールとかいうのがよく例に出ますけれども、そういうところを含めまして、今まで余り日本人のいなかったところにわっと人が出ていっている。インドでいいますれば、とにかく、十二月時点で三百四十八社、うち、今言われましたように五十九社がバンガロールに行っております。そういった形になっておりますので、人の行く先が、昔はアメリカということだったんでしょうけれども、なかなかそういったようなところばかりではなくなってきているというのが実態であります。

 したがいまして、邦人保護の関係から何から考えたって、企業に対する応援やら何やら考えましたときには、そういったところに私どもは人を、もしくは大使館をつくるのが当然のことなんだと思いますので、そこらのところは機動的に考えていかねばならぬというのは全くそうだと思います。私ども、あらかじめ、こうこうこうと順番を決めても、五年たったら全く状況が変わるということは十分にありますので、柔軟に対応せねばいかぬという御指摘は全くそのとおりだと思っています。

 基本は、先ほど申し上げたように、全体のものとしては、数からいったら七千五百の百五十というのが、私どもとしては基本的にそこを念頭に置いて考えております。

前原委員 ぜひ、先ほどお話ししましたように、今おっしゃった全体像をどのぐらいのタイムスパンで実現をしていくのか、また優先順位はどうなのかということをこの委員会にできるだけ早く私は提示していただきたいと思うんですが、いかがですか。

麻生国務大臣 これは、今ちょっと言われましてもすぐ出せるわけではありませんので、検討した上で出させていただきます。

前原委員 この通常国会の中でのこの外務委員会で、ぜひ資料提出をしていただきたいというふうに思います。

 先ほど申し上げたように、我々、与野党関係なく、日本の外交執行体制ということでありますので、必要なものについては協力をするのは当然だというふうに思っておりますので、そういう観点であるということを付言しておきたいというふうに思います。

 もう一点、先ほど在外勤務手当等のお話がございました。これを透明化を図っていくということ、人脈構築関連経費もそうでありますが、外務省の皆様方にとっては余り愉快な、あるいは心地よいお名前ではないかもしれませんが、この間、我が党で佐藤優さんをお呼びしてお話を伺いました。それはいろいろな評価があるんだと思いますけれども、彼が言っていたことで一つ私は非常に気になったことがありました。

 それは、外交官の語学能力が極めて低いということを彼は言っていたわけであります。彼はロシア語の専門家で、私は専門家ではありませんからどのぐらいできるかということもよくわかりませんが、恐らく、あれだけいろいろな人脈を持って、そして入り込んでいたというからには、ネーティブに近いようなそういった語学能力を持っていたのではないかというふうに思いますけれども、外務省の中で語学力のチェックをどのようにされているのか。つまりは、外交執行体制、情報収集能力というものは、言ってみれば語学能力にかなりパラレルになる部分があるわけでありますが、その点、しっかりとチェックする仕組みに今外務省としてなっているのかどうなのか、その点についてお答えをいただきたいと思います。

麻生国務大臣 これは、前原先生、物すごくおもしろい指摘だと思うんですが、日本で、あなた、英語、フランス語、何やるんですとどうやって決めているか。希望を聞くんですよ、二十人なら二十人入ったら。その希望で大体そこそこみんなはめていくという形になっているんだと思います。

 では、ほかの国はどうしているのか。私はすごく興味があったので、イギリスの外務省で選んでいるのは、今フライというんですけれども、これは日本語がやたらうまいでしょう、御存じのように。その前のスティーブン・ゴマソールというのも、これもうまかったですよね。こういうのは、奥さんが日本人とかいう者は別ですよ、シアソンみたいに。シアソンというのはフィリピンですけれども、こういうのは別にして、そういうのをどうやって選ぶんだと聞きましたら、入省したときに、こういう部屋に入れられて、全員リンガホンを乗っけるんですって。聞いたこともない言葉を流すんだそうです。それを一番よく書き取れた者、総じてモンゴル語をやるんだそうですけれども、モンゴル語とわかるとみんなモンゴルをやるものですから、わからない言葉を持ってきて、それをリンガホンで書き取らせて、一番書き取れた者が、はいといって出される先が日本なんです。ということは、日本語が一番難しいわけですよ。その次にできた者が韓国、その次が中国、一番能力のなかった者がフランス語、ドイツ語といってはめるんですって。これがイギリスのやり方だというんです。

 それを、では日本に置きかえましたら、我々にとって一番難しいのは英語ということですから、そうすると、やはり英語のうまい者は確かにそんなにはいないというのはこれはむべなるかなと、まず自分なりに納得したわけです。

 そこで、次に、では、本当か、それはイギリス人だけかと思って、海外青年協力隊で調べてみたら、三カ月の研修で、いわゆるインドネシア語がべらべらになる者は毎年一人ぐらい出てくるんだそうです。そういう意味では、似ている言語というのと似ていない言語というのがありますので、ここのところはちょっと選び方に、一番指先の器用じゃない者が歯医者になってもらったら困るのと同じで、やはり語学の感性のある程度ある者がきちんとやるようにしてもらわないかぬなというのは、我々、これはある程度反省点として覚えておかないかぬのじゃないのかな。日本人は語学の才能がないという話は違っているというのが、青年協力隊からはっきりしていると思っております。それが一点です。

 二つ目は、今言われましたように、どれぐらい研修しているか。二年とか出したり、アラビア語だと三年ぐらいの研修になっていると思いますが、そういったのを出して、終わった後、研修の試験というのをやっておりますけれども、あとは時々、出すまでに一律、検査、試験なんかをやっている。

 あと、どれぐらい磨き上げているかといえば、同通なんかやらされるところは、結構、これは現場がそういうことになりますので、彼らは自分たちでリンガホンを聞いてやったりなんかしている場面はよく見かけますので、自分なりにそれは磨いているんだと思いますが、研修から帰ってきて、もうずっと条約のあればかりで会話なし、とにかく文書だけなんというところに長くいると、それはヒアリングの、聞く能力は落ちてくるんだというような感じがいたしますので、そこらのところは、どうやって刺激をさせていくかというのは、海外に出したりなんかするということでやっているというのであって、特にその段階ごとに試験をやっているというようなことではないと存じます。

前原委員 これは恐らく、今質疑を聞いていただいた委員の皆さん方も同意していただけると思うんですが、レベルが高いのかもしれません、低いのかもしれません、それは私はつぶさによくわかりません。しかしながら、やはり教師の質を高めていくために、ですから、今、いわゆる教師の評価制度みたいなものを導入しようということをまさに安倍内閣がやっておられるわけですよね。そしてまた、議員も、選挙だけじゃなくて、筆記試験を一遍やらせてみて、どんな状況なのかということで、本当に国政を任すのにたえ得るかどうかという議論もあるぐらいであります。

 そういう意味では、外交官というのは、もちろん能力の高い人が外交官になっておられるのでありますが、たまたまそういう話を聞いた、それが本当かどうかはわかりませんが、しかし、仕組みとして、語学のレベルが常に一定以上、そして特に、英語とかフランス語、ドイツ語、中国語というのはたくさんの方がおられると思いますけれども、かなり特殊言語というのがあるじゃないですか、そういう方々のスキルもちゃんと上げておかなくてはいけない。やはり、そういう評価の仕組みを外務省としては持たれるべきなのだろう、定期的にそういった外交官の言語能力をチェックする仕組み、評価する仕組みというのがやはり必要じゃないかと私は思うんですが、いかが思われますか。

麻生国務大臣 語学能力につきましては、今、基本的には外務省は、たしか四十一カ国語、いわゆるウルドゥー語とかタガログとか、いろいろみんなあわせてやっていくんですが、研修期間が終わったときにいわゆる試験があるのと、在外にいる場合は年に一遍試験があるというのは、たしか今でもそうなっていると存じます。

 そのほかに、若手に関しては、試験がもちろんあるんですが、やたらうまいのがいますので、そういった者は同通のいわゆる資格というか、そういった研修で通訳研修というのがありますので、そういったことも今しているところであります。

 そういった意味では、今言われましたように、語学力だけを見た場合につきましては、その部署の上司が語学力のテスト、試験をやっているというのが今の状況であります。

 おっしゃるように、語学能力というのは、機会を与えないとなかなかだめなものですから、何となくそういった機会に恵まれる部署と恵まれない部署と分かれるところでもありますので、そこらのところは不断の努力が必要だというのは確かだと存じます。

 私も、変な話ですけれども、外務大臣になってからというものは、少なくとも、聞いたこともないような英語をいっぱい聞く機会がふえましたものですから、ヒアリングの能力だけはちょっと上がったなと自分でもそう思います。

前原委員 ちょっと委員長、ぜひこれは理事の皆さん方でお話をしていただいて、これは委員会として、外務省の中での語学能力を一定以上に保つためのチェックの仕組みというものをどのように立法府の立場として求めていくかということを、やはりしっかりと提言した方がいいと私は思うんですね。

 もちろん、外務省の中でも、そういった自助努力の中でそういう仕組みを担保していただくということは重要だと思いますけれども、特に、野党の筆頭理事は外交官でいらっしゃいましたので、建設的な提案もしていただけると思いますので、ぜひ理事会で少しお取り計らいいただいて、そういうものをしっかりと我々委員としても外務省に対して求めていくということを御議論いただきたいと思いますが、いかがでございましょうか。

山口委員長 後日、理事会で協議をさせていただきます。

前原委員 ぜひ、外交力、情報収集能力、これを高めるということで、皆さん方が優秀だということはわかっておりますので、ただ、そういうものを常に一定レベル以上に高めるための仕組みというものは組織として必要だという観点からお話をしたということであります。

 さて、次に、いわゆる従軍慰安婦の問題についてお話をさせていただきたいというふうに思っております。

 たびたび国会でもいわゆる従軍慰安婦の問題については議論がなされてきているわけでありますけれども、この問題というのは、アメリカの下院で決議案が出される、こういうところから問題の発端が起きているわけであります。大臣は、この外務委員会だったと思いますけれども、過般の外務委員会で、この米下院で出されている決議案には事実誤認が多いということをおっしゃいました。私も実はそう思っております。どこが事実誤認なのかということは、やはりしっかりと指摘をしておかなくてはいけないんだろうというふうに私は思います。

 ただ、私の立場を少しお話しさせていただきたいというふうに思いますけれども、私の立場というよりは民主党の立場でありますが、慰安所あるいは慰安婦というものが存在をしたということは、防衛研究所の中から膨大に出てきた資料等を調査した政府の調査結果からも明らかだろうというふうに私は思っております。そしてまた、戦争でありますので、さまざまな、口ではあらわせないような行為があって、そういったものを防ぐために慰安所、慰安婦というものを設けるべきだという軍の指令というものも文書として残っているのも事実であろうというふうに思います。

 そういう意味では、強制性という言葉の意味というものが国会で議論されておりますが、これについては私自身は余り大きな意義を見出すことはありません。つまりは、慰安婦というものが存在をし、慰安所というものがあり、そしてまた甘言とか、あるいは連れてこられた場所で強制下に置かれた、監視下に置かれた、そしてひどい仕打ちを受けたというのは事実でありますし、数の問題でもないし、そして、強制連行のみ一つとって、それはなかったということを言うことが、この問題の解決、あるいは被害に遭われた方々に対する謝罪の意を表することにはならないというふうに私は思っています。

 私はそういう立場で話をしていますし、また、そういう意味では、河野談話というものは当然ながら踏襲をされるべきであるし、官房長官談話というものが、逆に言えば、なぜ総理ではないんだと。アジア女性平和基金からいわゆるお見舞金を出すときには、総理のお手紙が出されていて、それに対しては、総理大臣、小泉さんだったら小泉純一郎という名前でお手紙が出されているということもよく存じ上げております。しかし、談話として発表されたことが官房長官だったということも、何かダイレクトでない、つまりは総理が言っていないというふうなイメージを持たれているというのもこれまた事実だというふうに私は思います。

 そういう意味では、歴史のいわゆる狭義か広義かの強制性というところで議論をするのではなくて、実際に慰安所があって、慰安婦がいて、被害を受けられた方々がおられる、そして意に反して来て、そして違う仕事だった、そしてまた強制下、管理下に置かれてひどい仕打ちをされたような方々がおられるというのが事実でありますので、そういった観点に基づいて、真摯にやはり河野談話を踏襲して、被害に遭われた方々に対するおわびの気持ちというものを持ち続けることが大事だというふうに私は思っております。

 それが私どもの基本的な認識でありますが、しかしながら、言うべきことは言わなきゃいけない。だから、決議案については事実誤認がある、この点は事実誤認であるけれども、しかし、バット何々というところも必要だと思うんですが、この決議案を見られて、どのところ、余り言葉にしたくないような言葉もありますので、どのパラグラフだということでも結構でございますので、どの点がやはり事実誤認であって、それはしっかりと言わなきゃいけないけれどもというところをお話しいただければと思います。

麻生国務大臣 前原先生、この話は、こういうところでやりますと、また往復になってきて、何となく話をさらに広げるのは、我々としては余り望むところではありません。

 したがって、問題点を一つ一つ言っていくというのは、これはちょっと正直申し上げて私どもとしては避けたいと思っておりますが、全体として言えるところで思っていましたのは、歴史的な責任を明確であいまいでない形で何とかかんとか公式に認め、これはもう既に十分にやっておると思っております。それから、公的な謝罪を日本の首相が声明をすべき、これもしておるわけでありまして、国会でもありましたし、答弁でもありましたので、こういったところはいかにも違うなと思いましたし、いかにも強制的で、ただでみたいな話で、ちょっとそれは、強姦とか奴隷とか、何かいろいろな表現がありましたけれども、そういったものとは少し違うんじゃありませんかというようなことは、一つ一つ挙げていけばいろいろあろうかと存じますけれども、私どもは基本として、今申し上げたようなところでは、この文書の内容に関してはいろいろ疑義があるのは率直なところであります。

前原委員 アメリカ社会、すべて私は存じているわけではありませんが、やはり日本人以上に、日本人という言い方をすると、おまえはそうなんだというふうにおしかりを受けるかもしれませんが、私なんかよりはやはりアメリカの方々というのは人権意識というのが非常に強いんだと思います。また、いろいろな人種の方々がおられて、それで国家を構成しているという意味で、またそういう意識を持たなければいけない国であるというところも非常に大きな意味を持つんだろうと私は思います。

 あるアメリカの友人が言っていたのは、拉致の問題に対して極めて日本に対してシンパシーを持っているというのは、やはり人権問題である、拉致というのは人権侵害、主権侵害の最たるものであって、許すことができない、ですから、アメリカ、特にブッシュ政権は日本の拉致問題に対する態度を支持しているんだと。

 しかし、大臣御承知のとおり、この下院決議案の共同提案者というのは、拉致問題で日本に対してバックアップをする発言をされている方がかぶっている人もいるわけですよ。そういう意味では、こういう人権問題というものは、拉致の問題で我々に対して理解をしてくれている人たちが、同時に、我々は今国内で、先ほど外務大臣が、余り言い過ぎるとまたそれがハレーションを起こすという趣旨のことをおっしゃいましたが、私もそうだというふうに思いますが、ただし、事実誤認だけはやはりしっかり言っておいて、その上で、先ほど申し上げた、バット何々というところもしっかりとあわせて話をすべきではないかというふうに思います。

 したがって、二つのことをお聞きし、御答弁いただきたいわけであります。

 一つは、今具体例を挙げられましたけれども、やはり政府として、この決議案については、どこが事実誤認ではないかというふうに考えるかということをしっかり示すべきだと私は思うんです。しかしながら、河野談話については政府として踏襲するということをおっしゃっているわけでありますから、そのことをまた強いメッセージとしてアメリカ側に出していくということ、それが私は、知日派、親日派、そしてまた人権派と言われる人たちの理解を広げていくのではないかというふうに思います。

 確かに、いわゆる従軍慰安婦の決議の問題、マイケル・ホンダ議員というのが中心的にやられていて、彼はカリフォルニアの州議会議員のときからこの問題についてずっとやっている。彼の選挙区事情というのが非常に色濃くあって、支持者もそういった方々が多いというのは事実でありますけれども、それを言っても仕方がありません。

 したがって、今申し上げたように、決議案の内容について事実誤認があることはしっかり言う。それについて政府として、ぜひ私は、どこが違うのかということをまとめていただきたいということが一点と、あとは、やはりもう一度大臣からも、河野談話というものは踏襲するんだ、そして強制性の議論については、私は余り意味を持たないと思っておりますが、大臣はどうお考えなのか、その点についてお答えをいただきたいと思います。

麻生国務大臣 慰安婦問題で女性の尊厳を傷つけたというところは、これはもう間違いない事実なんだと思います。したがって、それに伴って河野談話であり総理の書簡というのがこれまでの経緯だったと存じます。

 それから、今言われましたように、河野談話に関して、事実誤認のところ等々、お話しの点については、いろいろ今やっております。正直なところ、大使館また大使等々でいろいろやっておりますので、どの人にやっているかまでは、ちょっとそこらのところまで申し上げるわけにいきませんけれども、やらせていただいております。

 それから、この問題で国内的に見て一番反論の多かったのは、多分、従軍という言葉だったと記憶をします。従軍は、医者とか従軍記者とか従軍看護婦と従軍慰安婦と一緒かと言われると、従軍というと軍属になりますので、そこで、この話にはすべて、いわゆる従軍慰安婦といって、いわゆるという言葉がたしか河野談話にはつけられておったと私は記憶いたします。そういった意味では、当時の御年配の方々はここが一番ひっかかられるところだったと記憶をいたしますので、その方たちと、当時、私、副幹事長か何かしていたんだと思いますが、そのころいろいろ対応させていただいたのがそれだったと記憶をします。

 したがって、きちんと言うべきことは言う、しかし認めるところは認めないと、これは事実だったという点は確かですから、そこの点は、傷を受けられた方々の痛みというものを十分に知った上で話をしないと、その点だけ取り上げていくとちょっとまた話がおかしなことになりかねぬというところは、私ども同様に危惧するところでもありますので、今言われた点は十分に踏まえて対応したいと思います。

前原委員 しかるべきルートを通じて、決議案における事実誤認の点については伝わるようにしてあるということでございますが、ぜひこれも、委員長、理事会でお話をいただいて、それを表に出すかどうかは別にして、やはり外務委員会のメンバーぐらいはそういったものを、どこが事実誤認と政府が考えて相手側に伝えているのかということがわかるようなお取り計らいをいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

山口委員長 これも理事会で後日協議をさせていただきます。

前原委員 その上で、先ほど申し上げたように、河野談話を踏襲するという政府の姿勢というものは、これからもしっかりと大臣も発信をし続けていただきたい。こういうことで無用の外交問題、そして労力を使わなきゃいけないというのは、私は本当に不毛だと思うんです。建設的ではないと思っておりまして、そういう意味では、やはり我々が責任を負っているものですから、加害者という言い方をしていいのかどうかわかりませんが、加害者の立場としてのやはり遠慮深さ、慎重さ、思慮深さ、謙虚さというものが必要なんだろう、そういうものを踏まえて、これからも議論をしていくべきではないかということを申し上げたいと思います。

 次に、六者協議のことについてお話をさせていただきたいというふうに思います。

 先ほど丸谷委員からもお話がございましたが、バンコ・デルタ・アジアの金融制裁の解除の方向性が示された。しかしながら、アメリカ政府、財務省は、大量破壊兵器関連の取引、そしてまた覚せい剤、麻薬類、そしてまたにせ札、こういったビジネスを北朝鮮が行っていて、その取引の関連口座があったということを認めているわけですね。認めた上で、最終的にはマカオ当局に、凍結解除については、その情報をアメリカ側がマカオに渡して、後はマカオで決めてくれということと、あともう一つ大事なところは、バンコ・デルタ・アジアとのアメリカ金融機関のいわゆる取引を禁止する。

 これはかなり厳しい措置だというふうに私は思っておりまして、私もまだ消化不良でございますけれども、あとは、先ほど大臣が御答弁されたように、中国はそうじゃないと言うかもしれませんが、特別区ではありますけれども、マカオはやはり中国の影響下に置かれているわけでありますので、中国がどう判断をするかというところが大きいわけでございますけれども、これが果たして金融制裁解除になるのかどうなのか。むしろ、あめとむちという報道の観点がありますが、どうも、あめというよりは、後の判断はおまえたちに任せるよ、しかし、我々はその不法取引は認定するし、しかもバンコ・デルタ・アジアとのアメリカの金融機関の取引は禁止するということで、むちというのがかなり強いような感じがするんですが、大臣の感想として、これが金融制裁解除につながると考えられるのかどうなのか、その点についてお答えをいただきたいと思います。

麻生国務大臣 基本的に、私どもの立場としては、これはアメリカとマカオ特別区というか政府との関係であって、我々が直接関与する話でもないし、コメントも差し控えたいと思いますが、この話が出たときから、外務省アジア局というか我々としては、大体必ずこうなるであろうと予想した想定内の範疇です。

 少なくともお金というものは、ちょっと前原さんの前職を知りませんけれども、商売しておられたとするとわかるんですが、商売をしていますと、基本的には預金の出しおろしなんて大した話じゃないんです、こんなものは。どこか安全なところの金庫にやって、出したりおろしたりするのと同じことですから。

 問題は、送金とか決済というのが銀行業務の一番大きいところでして、そこが押さえられたら何のあれだか全然意味がわかりませんので、アサリを売ったはいいけれども金の回収はできないわけです、振り込みが使えませんから。そうすると、わざわざ現金決済で取りに行かないかぬなんて話では、とてもじゃないけれども不便を来しますので、そこのところをついてこやせぬか、凍結だけを解除しても、その後の決済をさせないようにすると言われたらどうにもならないんじゃないのという話は、これはもうこの数カ月間よく話をしたとおりになっておりますので、我々としては、そうなるであろうという予想の範疇でした。

 ただ、これは財務省と国務省というところが、これまたうまく使い分けてきているところだと思いますので、これを今後、最終的に、北朝鮮の態度を見て、アメリカ政府としては結論をこうするとかああするとかいうことも別のルートとして考えられると思います。これはアメリカ政府のなさることなのであって、こっちのかかわりのあるところではありません。

 二つ目は、手口としては、このバンコ・デルタ・アジアをどこかの銀行に吸収合併というのも、別の方法としては、元商売人の方の感覚からいけば、それは一つの方法だな。別に何も手口を教えてやるほどの立場に、それほど人もよくもないんですが、そういったようなことも考えられるかなというように思いますし、それをどういうぐあいにやろうとしているのかというのは、私は正直わかりません。

 わかりませんけれども、ただ、これによって北朝鮮は、ちょっとこれは話が違うじゃないかということになって、いわゆる核に関する方の交渉に支障を来したり、また後ろに下がったりするというのは余り他が望んでいるところではないと思いますので、そこをアメリカとしては、ちゃんとやったらこの話も解除するというのか、そこらのところが、交渉のやり方として、これは財務省のやっているところなので国務省も読めていないと思いますが、なかなかいま一つ読めないというのが正直な実感ですが、やられている北朝鮮側としたら、前よりきつくなったじゃないかと言われかねないほどというのが今の現状だと存じます。

前原委員 六者協議の作業部会が五つですか、つくられて、そして、日朝はこの間やられたわけでありますけれども、きょうからですか……(麻生国務大臣「エネルギーがきのう」と呼ぶ)きのうから。作業部会がいろいろと動き始めているということでございます。

 六者協議のそもそもの目的は、先ほど大臣が御答弁をされていたように、北朝鮮の核開発の放棄そして朝鮮半島の非核化というもの、これがもう大前提であったわけでありますが、北朝鮮としては、ミサイルを持ち、そして核開発を行って核実験もやった。そして、どこまで定かなのか、どのぐらいの量なのかわかりませんけれども、核関連物質を持っていて、それとミサイルが結びつくと、近隣諸国、特に日本には相当な脅威になるというのは間違いないわけであります。そういったものを六者協議の中で解決していくということがメーンだったというふうに私は思います。

 ただ、これは政府の方針としてもうおっしゃっていることですので、ある意味水かけ論になるかもしれませんが、私は、大きな外交的ないわゆるカードというか幅というものを考えたときに、これは先般の予算委員会でも申し上げましたけれども、拉致問題は大切な問題です、非常に重要な問題、主権侵害の問題。我が党も、拉致問題の解決なくして日朝国交正常化はあり得ない、そして、大々的なバイでの、つまりは二国間における支援というものはすべきではない、これは私も同じ考え方であります。

 ただ、いつの日にか、政府も、拉致の問題解決なくしては日朝国交正常化はあり得ないという、日朝平壌宣言の精神もそこだったと思うんですが、知らない間に、拉致の問題の進展がなければ六者協議の中で決まったことについての支援も行わないというふうにハードルは上がったような気がするんですが、いつの時点でそれは上がったのか、その点については非常に私は不可解なんですね。

 いや、それは方針で上げたんだと、それは総理の一存かもしれません。しかし、私、事外交ということに関して言えば、これからどういう経緯で推移していくかわかりませんけれども、最初の日朝平壌宣言からすると、今回の日本のとっているスタンスというのはかなりハードルを上げた、ハードルを上げたということは、すなわち日本の選択肢は少なくなった、日本の外交カードは少なくなったというふうに思うわけですが、その点についてどうお考えなのか。そして、いつそれが上がったのか。

麻生国務大臣 全くごもっともな御指摘だと思います。

 前原先生、ここのところはぜひ、日朝平壌宣言によって、あれは基本的には、我々の言っているのは、拉致問題の解決なくして正常化はありませんよと言っておるのと、こちらは拉致問題の進展なくしてと言って、解決と進展と言葉を二つ使い分けているところが、これは結構外務省の知恵を使っているというように御理解をいただける方は、ちょっといろいろ表現は難しいんですけれども、ただ、我々もアメリカに言っておりますのは、この問題がどれをもって解決とするのかと言われると、これはなかなか、いろいろ人によって御意見が違うところだということも我々はわかっております。しかし、今のように誠意を全く見せない態度では我々は対応のしようがありませんよということに関しては、ほかの四者もそれは全くと言っていい、これは中国に至るもみんなのんでおります。

 世界じゅうでこの拉致の話というのは、韓国に限らずいろいろあちらこちらであるんだそうですが、この問題を正面切って政府が取り上げてやっている国というのは世界じゅうで日本だけですから、ほかの国から見ると何となく日本だけがという感じがあるというのは我々もわからぬわけではありません。しかし、ほかの国にしてみれば、例えば、核、ミサイルによる仮想被害国としては日本が一番確率が高いんじゃないの、その日本の役に立つおれたちのやっている仕事におまえは一銭も出さないで、何にもしないで、そしておれたちだけにというのはちょっと都合がよ過ぎやせぬかという話がおなかの中にあるというのは、我々としては十分にそういう雰囲気があるのも理解をしております。

 ただ、この問題に関しては、少なくとも進展なくしてとてもということを申しておりますので、少なからぬ進展があれば、今ちょっとドルが下がったり、約百万トンの値段が当時は三百五、六十億円であったんですけれども、今ちょっと、大分下がったり上がったりしていますので、三百億ちょいぐらいのもののうち、少なくとも、我々として払わないということではありませんと。ただ、全く進展しないというままで出せというのはそれはとても通らぬよという話でみんな納得しておるというのが今の段階です。

 したがって、これは北朝鮮の態度にかかってくると思いますが、ほかの四者がいよいよずっと進展していったということになったときに北朝鮮に関して日本一国が言ったって、なかなか限度が知れておりますので、ほかの国も、これはおまえ、きちんとやってもらった方がいいという声がアメリカから出、ロシアから出、中国から出、韓国から出るというのが我々がこの六者協議でやっているものの最も大きな意義だと思って、そこのところのさじかげんが難しいというのは全くおっしゃるとおりだと思って、心してかかりたいと思っております。

前原委員 先ほど、解決と進展は使い分けているんだとおっしゃいました。確かに使い分けておられるんだと思いますが、ただ、この間の日朝の作業部会において原口大使が、進展の意味は何かということにおいて、拉致の問題があるということを向こう側が認めて、そして新たな情報提供も含めて何か前向きな姿勢を行ったときに進展ということだったと思います。

 ただ、彼らは、けしからぬことに、一切それについては認めない、問題もないんだということで席を立ってきていて、六者協議のいわゆる相場観からすると、先ほどお話をしたバンコ・デルタ・アジアの問題も含めて、ひょっとしたら金融制裁解除になっていないかもしれないという問題になるかもしれないと私は思っているんですね。実は、アメリカのより強硬な財務省の原則論が知れ渡ったときに、バンコ・デルタ・アジアだけではなくて、ほかの銀行もびびって北朝鮮の口座というものを言ってみれば自主的に凍結してくる、そしてもっともっと北朝鮮包囲網が強まる、それはそれで私はいいと思うんです。だって不法行為をしているんですから、それに対しては罰せられるというものを彼らに見せしめるということは当たり前。

 ただし、繰り返し申し上げますけれども、六者協議というのは核開発をとめて非核化にしていくということになったときに、平壌宣言はいわゆる拉致の問題解決なくして国交正常化はなしだったのに、解決から進展だとおっしゃいましたけれども、進展も向こうは認めていないという中で、なぜ日本の外交カードが狭まるようなことになっているのかということについては、私は、拉致問題も解決しなきゃいけない、そしてまた一番核の脅威を感じなきゃいけないのは日本であるがゆえに、今の立場については懸念を持っているということを申し上げているわけです。

 その上で、私は最後に大臣には、原理原則で固まって外交が柔軟にできないということは国益に反することでありますので、これは考え方を柔軟に見直すこともあり得るということを言うことがまた日本の外交の幅を広げることになっていく。原則論を曲げるわけじゃない、拉致問題は極めて重要な問題だ、平壌宣言には拉致問題の解決なくして国交正常化はあり得ないということ、これはもう絶対なんだ。しかしながら、日本のいわゆる外交プレーヤーとしての幅を広げる、カードを持つためのゆとりを持つために、方向、方針転換が私はあってしかるべきだというふうに思いますが、いかがですか。

麻生国務大臣 今、六者で協議をしております段階ですから、今の段階ではまだ圧力を上げていく段階だと思っております。

 ただ、最終的に、四月の十九日になりますかそれ以後になりますか、ちょっと今の段階ではわかりませんけれども、どこかの段階で、これはおっしゃるように核の問題がもともとの話ですから、その核の問題が進展をする、核を非核化させるというのが究極の目的ですから、そこのところが六者協議の優先順位の一番というのははっきりしておりますので、その点については態度としては幅を持つべきだという御指摘は当然なことだと存じます。

前原委員 時間が来ましたので終わりにいたしますが、とにかく、核の問題を解決する。そして拉致の問題を解決する。拉致被害者の方々にとっては、一分一秒でも早く我が子を、そして身内を帰してもらいたいという気持ちはわかりますけれども、相手のある問題でもありますし、特に核の問題については、これはかなり腰を落ちつけて、十年、二十年でも粘ってでもやってやるぞというぐらいの腹構えを持って、完全廃棄に向けて、この外交的な枠組みをしっかりとキープしながら、そして粘り強くやっていくということが必要だと思いますので、そういう観点から、今おっしゃったようなフレキシビリティーを持って臨んでいただきたいということを申し上げて、私の質問を終わります。

山口委員長 次に、細野豪志君。

細野委員 民主党の細野でございます。久しぶりの外務委員会の質問でございます。よろしくお願いいたします。

 まず、在外公館の問題なんですが、先ほど丸谷委員そして前原委員から、私が考えていたのとかなり重なる質問がございましたので、視点を変えて一つだけ。

 特に、安保理入りを考えると、アフリカに最大限の支援が必要であるという意味で、アフリカへの関与をできるだけ深めるというのは、これは確かに中国との関係なんかも考えると大変重要だというふうに思います。ただ、それだけではちょっと余りに、若干浅ましいというか、票欲しさにと言われる部分もあろうかと思いますし、私は、むしろそのことよりは、アフリカのことを考えると、やはり資源の問題をしっかり視野に入れるべきではないかというふうに思うんですね。

 これは優先順位の問題になるんですが、例えば、今度新しく公館をつくると言っているマリなんかはウランの鉱山があって、そこを我が国がほぼ権益を独占しているというふうに言われています。そのほかにも、ニジェールなんかもそういう国でありますし、ウラン以外にも希少な鉱物が埋まっている国というのはアフリカにたくさんあるわけですよね。そういう国に対するアクセスをできる限り深めていくという視点から、在外公館をこれからふやしていくということでございますので、取り組んでいただきたいというふうに思うんですが、外務大臣、御見解はいかがでしょうか。

    〔委員長退席、やまぎわ委員長代理着席〕

麻生国務大臣 確かに、国連安保理のためだけなんというのは、ちょっと見え見えでさもしいというのはごもっとも、その種のことを言ったことは私ども役所としてはないんですけれども、その種のものが見え見えに見られてはとてもじゃないけれどもこれはだめだと思います。ただ、資源だけに見え見えになったような中国もちょっとぐあい悪いかなと思ったりもしないでもありませんけれども。

 いずれにいたしましても、この種の話というのは、TICADというのを来年日本で開くことにしておりますけれども、アフリカの中で、今、シエラレオネなんというところも、その隣のリベリアというところも、大使館がないところで、資源もダイヤモンドがばらばら出るぐらいのところなんですが、ここらのところの大統領というのは、リベリアの大統領、初めて選挙で選ばれたアフリカ初の女性の大統領というのはこの人なんですけれども、しっかりした女性ですけれども、この人たちの話を聞きましても、やはりアフリカにおける日本のいろいろ支援、貢献というのは、ちょっとヨーロッパの人たちのやり方とおよそ違いますものですから、現地に入ってかなり一緒に現場で働くといういわゆる日本人独特の、現場で現地の人と同じ目線でしゃべるというようなところがあります。

 今言われましたように、ニジェールにしてもナミビアにしてもモーリタニアにしても、いずれも資源が多い割には大使館がないというところですが、そういったところに入っていくに当たっても、民間の企業がそこで鉱山をやって、今コンゴなんというところは、昔は日本鉱業がありましたけれども、その日本鉱業は今騒ぎになってコンゴから引き揚げてしまっておりますが、そういったところでも、治安がある程度回復しないと日本は支援しませんよ、ODAもだめですよ、日本の技協もありませんよ、そういうので、まず治安の回復、そうすれば大使館も出られます、民間も行けます、ODAもいろいろやれますという話にしてやれば、ほかの国をごらんなさい、こんなうまくいくじゃありませんか、おたくよりもっと貧しい、資源のない国がうまくアフリカでいっているじゃないですかというような形にしてやるというところがいきますと回り始めるかなと思っておりますので、今言われましたところの御指摘も十分に踏まえてやってまいりたいと存じます。

細野委員 もう一つちょっと申し上げたいのは、予算の制約、そういう話なんですね。これは、当然予算は有限ですし、外務省としてもさまざまな施策がありますから、制約があるのはわかるんです。

 実は、ちょっと調べてみたんですけれども、日本が在外公館を置いていない、兼ねているところですね、兼館をしているところで、一方でその国が日本に大使館を置いている国が幾つあるか調べてみたら、全部で二十九置いていない国があるんですが、そのうち二十一は日本には在外公館を置いているんですね。これは、どちらが経済的に豊かかといえば、どう考えてもアフリカ諸国の方が経済的に厳しい中で、苦労して日本に在外公館を置いているわけですね。そういう大使館へ行くと、マンションの一室だったりビルの一室だったり、ここは家賃幾らかなと思うようなところに大使館があったりするわけですよね。

 日本も同じようにしろとは言わないけれども、我々もよく海外に行ったときに大使館にお招きいただくし、そこでおいしいものもいただいて、私から見ると御殿みたいなところへ行くわけですが、もちろん、そういう迎賓館的社交の位置づけが大使館にあるのは存じ上げていますけれども、もう少し、場合によっては、小国においては小さいものにして、安全だけは確保して実質的な役割を出していくということも含めて検討していただきたいというふうに思います。これは御答弁いただかなくて結構ですので、私の意見ということで御理解をください。

 これから、ちょっと外交のいろいろな問題について、法案審議で恐縮ですが、私が関心を持っている分野についてお話を伺いたいと思っているんですが、まず外務大臣に、戦後レジームということについてどういうふうにお考えになるかというのをお伺いしたいと思います。

 安倍総理が所信表明演説の中でこういうふうにおっしゃっているんですね。「行政システム、教育、経済、雇用、国と地方の関係、外交、安全保障などの基本的枠組みの多くが、二十一世紀の時代の大きな変化についていけなくなっている」、「今こそ、これらの戦後レジームを原点にさかのぼって大胆に見直し、新たな船出をすべきときが来ています。」こういうふうに高らかに宣言をされました。私も印象深く拝聴いたしました。

 外交、安全保障は外務大臣が所管をされるわけですが、では、我が国における戦後レジームというのは一体何なのか、外交、安全保障においてですよ。外務大臣はどのようにお考えになっているか、御意見を賜りたいと思います。

麻生国務大臣 これは非常に大きな話だと存じますけれども、細野先生、基本的には日本というところは多分昭和十六年から変わっていないんだと思いますが、昭和十六年、国民学校令というのができた。あれ以来、いわゆるフォルクスシューレをそのまま直訳して国民学校という名前に変えて、尋常小学校をやめて国民学校に変えていった、あの昭和十六年から、基本的には官僚主導、業界協調、このやり方で間違いなく五、六十年やって成功したんだと私は思いますね。間違いなく成功したから、これだけ豊かな国になったんだと思います。

 傍ら、外交の方は、とにかく日本は戦争をやって負けたんだから、少なくとも負けた相手というのは、主にアメリカとやって負けたわけですから、そのアメリカと日米安全保障条約で手を組む、そして国際連合というのに一九五一年、正確には一九五二年に日本が独立しておりますので、正式に加盟をしておりますので、昭和二十七年ですけれども、五二年の四月二十八日に独立したのを境に、国連と関係をよくする。そして、三つ目は、アジアの諸国にいろいろあったので、アジア諸国との友好関係を維持。この三つを基本として、日本は戦後というものをやってきたんだと思います。

 対外的には、とにかくいろいろ迷惑をかけたんだから、先ほど使われましたように謙虚に、控え目にという態度でずうっとやってきたのがこれまでだと思っております。その結果、どんな批判が出てくるかというと、何となく戦争に負けたアメリカ人には妙にぺこぺこしてみたりして、何か卑屈じゃないかとか言われてみたりするようなことになった、これはみんなそういう意識だったと思っております。

 それが今どんなことになってきているかといえば、その裏返しで、ほかの国に対して妙に居丈高に威張ってみたりするという、何となく自然じゃない、普通にいかないというところが我々には多く感じられる。私、大分世代が違うので、僕は昭和十五年生まれですから、少なくとも戦争の前に生まれていますので、我々の世代からいったら英語なんか敵国語でしゃべっちゃいかぬ言葉でしたから、そういった世代に育ってきている我々というのは大分感覚は違うと思いますが、細野さんたちぐらい若くなってくると、何でそんなにというのが、いろいろ感覚的にも違ってきておられると思います。

 また、その当時は二極構造で、冷戦構造でしたけれども、今はもう明らかに違いますので、そこらのところの構造も大きく変わりつつあるというのにあわせて、どうするかということが今の問題だと存じます。

細野委員 ありがとうございました。

 戦後レジームということに関して、私は麻生大臣と大分重なるなと思います。これは多分共通認識だと思うんですが、戦争に負けて国際社会に復帰するに当たってはアメリカにはいろいろお世話になった、アジア諸国にも迷惑をかけたので、謝って回らなきゃならない、こういう中で戦後六十年来たわけですよね。

 では、その戦後レジームを脱却するということを高らかに宣言した安倍政権が、そういう過去をどう考えて、それをどう脱却しようとしているのかという姿が私には正直余り見えなくて、具体的にそろそろ、政権が誕生して半年たったわけですから、一つ一つアクションとして、戦後いろいろあったけれども今こういうスタートを切るんだというような国際交渉を始めていただきたい、そういう視点から幾つか質問したいと思います。

 まず一つ、地位協定なんですが、麻生大臣もおっしゃったとおり、やはりアメリカに占領されて、一九五一年にサンフランシスコ平和条約が締結をされて、同時に締結をしたのが日米安全保障条約ということですね。十年後、六〇年に改定をされていますが、基本的には、日本がアメリカに守ってもらうという構図は当時から大きく変わったわけではない。そういう中で、一九六〇年に締結をされたのが地位協定というものです。

 我々民主党は、何度もこの地位協定の改定を言っておりまして、当然ですが、日本は独立国でありますから、独立国としてふさわしい地位協定のあり方というのはあるのではないか。

 典型的な例でいうと、地位協定の三条でありますけれども、合衆国は、施設及び区域において、それらの設定、運営、警護及び管理のために必要なすべての措置をとることができる、こうあるわけですね。日本側がこういう基地内のさまざまな取り組みについてどういう関与をできるのかということについては、日本の地位協定は書いていません。

 何度も我々は、この地位協定改定をしっかりテーブルにのっけるべきだということを言っておるんですが、外務大臣どうでしょうか。戦後レジームから脱却する、外交、安全保障面においてはまさにそれが戦後レジームだとおっしゃったんですから、そういう交渉を安倍政権でそろそろ始めるというお考えがないかどうか、お伺いしたいと思います。

麻生国務大臣 この日米地位協定につきましては、細野先生、これはいろいろかなり前から御意見のあるところというのは、私どもも十分に承知をしておるんですが、基本的には、これまで、運用の改善ということでいろいろ問題点を解決してきた。ほかのドイツやら韓国やらに比べても、我々の地位協定の中において、例えば刑事裁判の手続やら何やら、随分いいものをかち取ってきていると思っておりますので、そういった意味におきましては、改善例というのは、被告の引き渡しやら何やら結構進んでおりますし、そういったものが私どもの今の立場としてはそうです。

 もう一点は、これは集団自衛権とかいろいろなものに多分関係してくるんですよ、意識としては。だから、そこらのところまでずっと広がることまで考えてやっていかないかぬことになるのかなと思いますので、これは地位協定だけではなくて、その他もろもろ、日米関係全般にわたっての考え方というのは、戦後レジームという言葉で言えば、そこらの日米関係の中のものというのを全般にわたって考えていかないかぬ、その中の一つにこの地位協定というものもあるという意識は私もあります。

細野委員 もちろん、集団的自衛権の問題であるとか、日本の自衛隊の海外派遣の問題も、恒久法はありませんから、いろいろな限界があって、そういう意味で、日本がアメリカに対してこの問題について意見しにくい、本当に平等な条約かというとどうかというところだと思うんですよね。

 ただ、私、なぜこれほど改定をタブー視するのかよくわからないんですね。私もいろいろな話をしたことがあります。確かにアメリカ側はかたいなという印象は持っているんですけれども、例えば韓国は一九九一年と二〇〇一年に改正していますよね。大臣は、運用でうまくやっているとおっしゃるけれども、例えば、同じような基地内の管理権に関しては、韓国側に事前に協議すると書いてあるんです、米韓の地位協定には。ドイツは、ドイツの法律を守れと書いてある。ドイツも何回も改正をしています。

 なぜ日本は改正をそれほどタブー視するのか、私、そこがちょっと正直言って理解できないんですが、外務大臣、なぜそこまでこだわるのか、かたいのかということについて、どういうふうにお感じになっているか、お伺いしたいと思います。

麻生国務大臣 これはいろいろ前例が幾つも幾つもあるんですが、刑事裁判手続というのが一番よく出てくるところですが、これは、一九九五年の刑事裁判手続に関する日米合同委員会というのが必ず出てくるんだと思いますので、よく御存じのところだと思います。それで、起訴前の拘禁移転というのが一番出てくるところでしょう。そこのところも、米軍が駐留してできているのは日本だけじゃありませんかという点は、事実として認めていただければと思っておるので。

 環境問題というのもありまして、例の騒ぎになりました点におきましても、これは二〇〇〇年の九月だったと思いますが、環境原則に関する共同発表というのをやっておりますけれども、環境保護のために在日米軍というのは、日本と同じ、もしくは、おたくの法律の方が厳しいときはそっち、うちの方が厳しいときはこっち、その厳しい基準に合わせてやるのよという話やら何やらはそこそこやってきているんだと思いますので、これをつけると壮大な手続になるものですから、少なくとも現実的な一番のところは運用の例でかち取ってきているというのが実態なんだと思っております。

細野委員 地位協定単独で私がここで力んでも、米軍再編もやっていますし、さまざまな問題があるのは承知をしておりますので、せんないことだと思います。ただ、地位協定の改定というのは、沖縄はもちろんですが、やはり基地問題を抱えている地域の悲願でもあり、我が国が本当に独立をして国家として運営していく中で、ここは、私はどこかで越えなきゃならない一線だというふうに思っていまして、そのことは強調しておきたいというふうに思います。またやります。

 そのほかにも、日米関係をめぐりましてはいろいろ聞きたいことがあったんですが、きょうはひとつ領海の問題についてもお伺いしたいと思います。

 これは通告をしてあるんですが、よく、米軍をめぐりましては、管制権の問題であるとか空域の問題をめぐりまして、日本は非常に、そういう意味では独立国としてどうなのかという議論があります。ただ、領海の話というのは、実は今まで余り出ていなくて、この数年間、私、海洋上の法律の話をずっとやっていまして、ようやく徐々に成果が出つつあるんですけれども、この領海の規定を見て、ああ、これは何とかせないかぬなというふうに思いましたので、大臣にお伺いをします。

 領海法という法律が一九九六年に改正をされておりまして、どういう改正かというと、従来は領海というのは三海里にとどまっていたのが、国連海洋法条約ができて十二海里になったということで、その十二海里を国内法に規定したのが領海法の改正なんですね。確かに、一条に十二海里にしますというふうに書いてあるんですが、附則がございまして、当分の間、宗谷海峡、津軽海峡、対馬海峡東水道、対馬海峡西水道及び大隅海峡については三海里にとどめます。各国が十二海里に広げているのに、その部分については日本は三海里にとどめるという、本来は、領海というのは領土に準ずる我が国の領域ですから、当然拡大志向にいくべきところ、拡大志向というか、現状においてしっかり国際的に認められるのであれば、それを主張するのは当然だと思うんですが、これは三海里にとどめていまして、当面の間となっているわけですね。

 これは、いろいろな事情があってそうなったのは重々承知をしておりますが、大臣、この問題にそろそろ取り組むおつもりはないかどうか、お伺いをしたいと思います。

麻生国務大臣 細目、小松局長の方から、これは経緯等々ありますので答弁をさせますけれども、この話は、この三海里になった経緯やら何やら、なかなか難しいです。そういった意味で、これを今すぐこの段階で取り組む意欲があるかといえば、今この段階で直ちに取り組むという考えを持っているわけではありません。

 細目につきましては小松局長の方から答弁をさせます。

小松政府参考人 お答え申し上げます。

 我が国は海洋国家でございまして、しかも先進工業国でございますので、このような我が国にとって、国際交通の要衝である海峡において我が国の商船でございますとか大型タンカーなどのなるべく自由な航行を確保するということが、総合的国益の観点からぜひとも必要でございます。

 このため、我が国自身も、諸外国が重要な海峡における自由な航行を維持または強化する政策をとることを促す必要があると考えておりまして、国際交通の要衝として諸外国の船舶の航行の用に供せられていると考えられます特定海峡につきましては、外国船舶の自由な航行を保障することが適切だと考えております。

 そこで、委員の御質問にもありました国連海洋法条約、我が国も、平成八年でございましたか、締結をいたしましたので、そこに通過通航制度ということが書いてあるではないか、したがって、この通航制度でいいではないかという御趣旨かとも思いますけれども、この通過通航制度につきましては、どのような場合にいかなる範囲で適用されるのか、具体的にいかなる形態の通航が許容されるかについて、国連海洋法条約に詳しい規定もございませんし、国家実行の集積が十分でないため、不確定な面があるということから、我が国の安全保障の観点からも慎重に対処をする必要があると当時考えた次第でございまして、ここのところの判断というのは基本的に現時点においても変わっていないというところでございます。

細野委員 私、ちょっとまだ全部は調べ切っていないんですが、今おっしゃった、国際海峡に当たるので三海里に制限しているみたいなところが世界じゅうどこにあるか、ちょっと調べかけたんですね。そうしますと、確かに、例えば韓国であれば、韓国海峡といいまして、朝鮮半島と我が国の対馬、その間が狭いので、そこは十二海里を主張せずに狭めているわけです。これは他国との境界線ですから、当然、そういう配慮がないと公海がなくなっちゃいますから、通れないわけですから、こういう問題がある。

 ただ、日本は島国ですから全部海峡になるわけですよ。要するに、北海道と本州の間も海峡ですから通ってください、対馬と本州の間もあけておきます、大隅海峡というのは種子島と鹿児島ですから、ほとんど、島といっても、それこそ日本の離島ではなくて、本当に近接する島においてこういう規定を設けているんですね。こんなに丁寧に全部あけている国というのは恐らく日本だけだろうというふうに思います。

 ちなみに、大臣、ぜひこれから研究していただきたいんですけれども、こういう規定があるんですね。

 これは三十八条の一項なんですが、海峡が海峡沿岸国の島及び本土から構成されている場合において、その島の海側、つまり、例えば種子島であれば種子島の外側ですね、海側に航行上及び水路上の特性において同様に便利な公海または排他的経済水域の航路が存在する場合には、通過通航権は適用されない。そこは外で通ってくださいということを言えば、これは、そこにそれこそ領海を設定して、通過通航権を設定しませんよと言っても大丈夫だという規定があるんです。

 さらにさかのぼれば、国際海峡というのは何ぞやというのは、これはどこかルールで決めるわけじゃないんですね。国際海峡にしてしまうとそれこそそこをあけなきゃならないという話になりますから、各国はむしろ、これは国際海峡ではなくて、我が国はそういうふうには解釈していませんと十二海里をとっているわけです。日本だけが全部国際海峡と設定をしてあけているわけですね。これは私、主権の放棄だと思います。ですから、海洋法条約をしっかり検討していただいて、領海法にはきちっと「当分の間、」と書いてあります、当時の議論からするとそのことがわかっている。本当に我が国についてこういう議論がいいのかどうかということを研究していただきたい。

 私の危惧は、中国を含めて潜水艦はどんどん日本の周りを回っているわけです。領海に設定されていれば、無害通航ですから、上がって、旗を上げて通らなければだめなんですね。ただ、十二海里を三海里にしてあけておくことによって、それこそ日本の周りは、北海道と九州の、津軽海峡もそうですし、本州の周りをぐるっと簡単に回れるわけですよ。こんなことを許している理由は何なのか。

 かつては、米軍に守ってもらって、北を警備してもらわなきゃならないとか、そういういろいろな問題があったでしょう。ただ、もう時代は変わってきているので、戦後レジームとおっしゃるのであれば、我が国は主権をしっかり主張して、言うべきことは言う、法律も変えていく、これぐらい麻生大臣だからこそぜひやっていただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。(拍手)

麻生国務大臣 今のは、御意見としては、これまでの経緯やら何やらありますし、今、時代が変わってきたので、少しは考え方も変えないかぬところもあるのかもしれませんけれども、ちょっとこれは、細野さん、今までの長い経緯があるから、拍手ぐらいに乗せられてすぐ変えるなんというものでないので、それほど軽々しくもないので、検討させていただきます。

細野委員 確認ですが、御検討いただけるという答弁でよろしいですね。

麻生国務大臣 すぐ結論が出せるわけではないと思いますけれども、この経緯を知らないわけではありませんので、検討させていただきます。

細野委員 今、安保の戦後レジームについて話をしたんですが、もう一つ、経済的なレジームというのが幾つかありまして、それについても一つだけ質問したいと思います。

 日本は、安全保障をある種アメリカに頼ってきて、経済的に成長してきて、一九七〇年、八〇年と一気に駆け上がって、そして一九九〇年前後には日本脅威論というようなことが言われるようになりました。その典型が経済摩擦だというふうに思っています。そのときに出てきた負の遺産ともいうべきものに、日本の宇宙開発における、アメリカの三〇一条に基づいて出てきた調達の自由化の話があると私は思っているんです。大臣、これは御存じですよね。

 日本は非研究開発衛星については調達を自由化していまして、ほとんどアメリカの技術を使って上げています。受託を許しています。これはいろいろ理屈はあるんですが、出てきている文書というのが、きょういただいたんですが、通信の調達を自主的措置として、非研究開発衛星の調達手続、こういう文書がありまして、これは行政通達ですかといったら行政通達でもないんですね、国際約束ですかといったら国際約束でもないわけです。そういうことにしておきましょうという、この衛星の分野に限定をして、ここは自由化をして、自由なので海外の人も入ってくださいという変な文書がありまして、この法的な位置づけも含めて、これもぜひ明確に、もう一回検討していただきたいと思うんです。済みません、時間もないので舌足らずですが、御理解いただけますよね。

 要するに、今衛星の分野というのは、これはそれこそ情報通信衛星ですということで、政府調達で限定をされるので日本でやりますとか、これは研究衛星です、ですからこれは日本でやっていいですということになっているわけですね。一方で、実用衛星については、調達自由なのでアメリカから全部輸入してきてくださいという話になっているんです。

 衛星の分野は完全ボーダーレス化していまして、情報通信衛星もある種そういう偵察的な役割も担うけれども、通信衛星も一部担う。研究開発と銘打っているけれども、そこに安全保障上の措置が入ったりもするわけですよ。実用衛星だけ海外から持ってきますというのは、全体の衛星のいろいろな運営を考えたら不合理です、一つは。

 もう一つは、結局、日本は一年間に数基しか衛星を打ち上げないわけですよ。この技術において、実用衛星の部分を海外に開放しているというのは、我が国の宇宙の競争力においては、やはりこの十年間、十数年間の停滞というのは目に余ります。それをもう一度考えていく意味でも、この衛星の分野については、国内調達を各国やっていますから。日本は、そういう技術を持っている企業もあります。

 ですから、このわけわからぬ文書をちょっと一回見直していただいて、本当に諸外国と比較してどうなのか、我が国もこれから衛星をどんどんやって宇宙の開発をやっていくとおっしゃっているわけだから、そういうことについてぜひ前向きに取り組んでいただきたいというふうに思いますが、いかがでしょうか。

岩屋副大臣 先生は非常にこの分野にお詳しい方でいらっしゃいますから、もう多くは申し上げませんが、御指摘のように、非研究開発衛星の調達手続というのは、平成二年に我が国の自主的措置として政府全体で策定をしたものでございます。

 そこに至った経緯というのは、これも先生も御承知だと思います、米国においてスーパー三〇一条に基づくいろいろな動きがあり、同盟国米国と我が方もいろいろと協議をする必要があったということもその背景にはあったわけでございますが、先生御指摘のように、これから宇宙開発についても、しっかりと基本法をつくってやろうという流れの中にあるわけでございますから、この分野につきましても、先ほど大臣のお話にもありましたように、新しい状況にどう対応するかということも含めて、これから検討をさせていただきたいと思っております。

細野委員 大臣、厳密に言うと、これはアメリカだけに決して該当している項目ではないので、国内措置なんですね。通達でも何でもありませんから、それこそやろうと思えばきょうにでもできます、別に閣議決定も何も要りませんから。

 ただ一方で、やはり経緯からいうと、アメリカとの関係で、こういう分野において日本がある種一歩引いて、自動車を守る一方で衛星を捨てたと言われていたんです、当時は。そのときのことをしっかり踏まえると、やはりこれはアメリカにもきちっと言わないかぬ。

 日本は衛星技術をアメリカに頼ることによって、ある意味、経済上のメリットを与えると同時に、安全保障上アメリカに依存するということが、日本にとってもアメリカにとっても心地よかった。ただ、中国が衛星破壊もやるようになって、アメリカだけで宇宙開発をやっていけるのかといえば、むしろ、日本が独自の技術を持って、独自の構想を持ってやっていった方が相互補完的ですよという議論をそろそろアメリカに対してもすべきなんですよ。これなんかまさに過去の遺産ですからね。

 こういうこと一つ一つを整理することを、あえて安倍政権に存在意義があるとすれば、戦後レジームとおっしゃるのであれば、大事であるということを申し上げているということを御理解いただきたいと思います。

 岩屋副大臣も大変この分野にお詳しいので、期待をしておりますので、最後にお願いをしておきます。

 時間がなくなってきましたので、日中の問題について話を移したいと思います。

 日米の戦後レジームという観点から三つ聞きましたが、私、日中間でもやはりさまざまな意味のレジームがあると思っていまして、私の基本的な認識は、先ほど前原委員がおっしゃったものと極めて重なります。つまり、日本は中国を侵略したことは間違いないし、その意味で謙虚であるべきだし、歴史認識のようなところではそれなりの礼節は当然持つべきだけれども、一方で、事国益に直接かかわることについて中国に物を言わない、こういう戦後のあり方については大いに疑問を持っています。

 ですから、そこの部分をしっかり分けて、国益にかかわることについてはどんどん、しっかり発言をしていくということを日本はやるべきだというふうに思っていまして、その観点から、一番典型的にこれから問題になってくるのが海洋権益の問題ではないかというふうに思っています。

 幾つかちょっと事実関係を指摘しますが、地図を配っておりますので、ちょっとごらんをいただけますでしょうか。大臣、よろしいですか。

 これは、役所がよく配っている資料ですので、皆さん多分おなじみだと思うんですが、左側の線が日本が主張する二百海里、排他的経済水域ですね。右側の線が沖縄トラフという、点々でかいていますが、これが中国が主張する排他的経済水域です。これが重なり合っているもので、真ん中のガス田をどうするかこうするかということが大変議論になる。

 一つだけ、私が極めて憤りを持った例として御紹介をすると、この真ん中のガス田の中に平湖のガス田というのが左上の方にありますけれども、このガス田に、一九九六年、これは外務省の設定をしている係争水域、つまり中国の排他的経済水域なのか日本の排他的経済水域なのか争いがあるこの平湖のガス田において、実は、中国側が採掘を始めたときに、日本は輸銀がパイプラインの融資までしています。要するに、争っているところにおいて、そこで採掘をされたことに対して融資をしたのが当時の日本なんですね。当時の経緯は、こっちは聞いていなかったとかあれの責任だとかいろいろあったようですが、そういう歴史がある。

 もう一つは鉱業権の問題ですが、一九六〇年代に鉱業権の設定、日本側で開発をしたいという要望があったにもかかわらず、一昨年、二〇〇五年までこの鉱業権の設定についても放棄をしてきました。ようやく二〇〇五年、これは中川大臣のときですが、日本も大分変化が出てきまして、日本側も現地を見に行ったり、さまざまなそういうことについての主張をするようになって、大分雰囲気が変わってきたんですが、安倍政権になってどうなのかということについて、まず、外務大臣が基本的にこの問題についてどう認識をされていて、どういう方向性を持っておられるか、簡潔に御答弁いただきたいと思います。

麻生国務大臣 この東シナ海の資源の開発については、たしか過去六回、協議を中国との間にしてきたというのがこれまでの経緯だと思っております。中川大臣、二階大臣、甘利大臣、それをずっとやってきているんだと思いますが、昨年の安倍訪中までの間は、これはもう極めて険悪な雰囲気でずっと終始をしております。私ら外務大臣とやるときもほぼ同じような雰囲気でありました。

 それが、中国訪問がなされた後、とにかくこんなところで争っているのは大体余り意味がない、おたくらも商売を考えたら、こんなところ、共同開発をやらなければ、一国でやったって全然採算は合いませんよという話やら何やらは、結構いろいろなところで出ております。

 そういった意味で、これは、主権はちゃんと確保しながら双方で共同開発をした方がよっぽど採算的にもいいし、プロフィット、利益のことを考えてもいいんじゃないかということで話をして、この間でしたか、李肇星という中国の外交部長が日本に来たときも、この問題で日中の局長会議をやろうということで、このことに関しては三月中にもということで話をしております。

 共同開発をやった方がこっち側も都合がいいし、たしか帝国石油だと思いましたけれども、双方でやった方がいいんじゃないかという話で、何もとんがり合ってやるような話ではないでしょうがという話で、要は石油の話なんだからという話でこの話をさせていただいているというのが今のところです。

細野委員 大臣、私も最終的には共同開発だと思いますよ。ただ、現状認識はちょっと甘いんじゃないかと正直思いました、今のお話を聞いて。

 というのは、日本は、共同開発は大分前から視野に入れているんですね。ただ、話し合いにも応じてこなかったんです。あの六回の協議が始まったのは、中川大臣が、尖閣諸島を見に行って、排他的経済水域を見に行って、これはおかしいと言ったから協議は始まったんです。停滞をする前に若干動き出したときというのは、鉱業権を設定したときに協議がまともに動き出したんです。要するに、日本側がアクションを起こしたときに協議は動くんです、中国側との交渉は。

 そのことをわかった上で、違法なことをやったときはきっちり取り締まる、日本側もやることはやる選択肢を持っているよというカードを持っておかないと、話はうまくいかないと私は思っていまして、そのことは強調しておきたいと思います。

 その上で、日中口上書についてちょっとお聞きをしたいのです。二枚目です。

 この日中の口上書というのは、日本と中国との間で、その海域の開発をする場合にお互いに守りましょうという協定で、外務省が、極めてこれは中国側にとっても日本側にとっても大事で、これを韓国とも結びましょうみたいな話をしているそういう口上書なんですが、私は、この口上書には大きな問題が幾つかあるというふうに思っていまして、それを指摘したいと思います。

 まず一点ですが、二枚目のところですが、これは中国側が日本側に対して通告するペーパーなんですね。二のところですが、日本側が関心を有する水域である日本国の近海云々において調査をする場合は、中国側が日本側の調査をする場合においては、二カ月前までに口上書による通報を行うと書いてあるんですね。これは、実は国連海洋法上も相手国の排他的経済水域において科学的調査をすることは認められてはいるんですが、その海洋法上は、六カ月前に通報しなければならないという規定があるんです。それを中国側には二カ月に短縮をしています。

 もう一つ大きな問題は、国連海洋法条約には、条約はきょうは持ってきませんでしたけれども、そういう調査をして、それが違法な調査になる可能性があるときは同乗者を乗せるという規定があるんですね。日本側が、中国が違法なことをしないように同乗者を乗せろということを主張できる根拠規定が海洋法にはあるんです。

 もう大臣御存じのように、何度も何度も中国は違法な科学的調査をやっています。日本はそれを許してきました、わかっているものだけでもですよ。もちろんそれに対して、違法だから日本が同乗させろというようなことは口上書に書いてありませんから、言ったことはありません。そういう意味で、国連海洋法という国際的なルールと比較をしても、中国に極めて優しいルールになっているということを認識していただきたいということが一つ。

 もう一つ重大な問題があるので、もう一枚めくっていただきたいんです。

 大臣、こちらは、今度は日本側が中国側の排他的経済水域の調査をする場合の口上書です。日本はほとんどやっていないんですけれどもね。ですから、この口上書をほとんど利用していないんですが、一応こういうのがある。

 ここで私が指摘をしたいのは、同様の文章なんですが、一番初めの口上書の文章ですね。「日本国大使館は、中華人民共和国外交部に敬意を表するとともに、東海海域」と書いてあるんですね。東海ですよ。東シナ海と国際的にもきちっと命名されていて、日本も主張している東シナ海という名前を捨てて、ここでは外交文書として東海という言葉が残っているんです。本当は中国側にも東シナ海と書くべしと主張すべきですが、あえて中国側は東海と書く。もう一枚前の口上書において東海と書いているのは百歩譲っていいとしても、日本側の文章に東海と残っているのはいかがなものか。この部分だけでも改定を主張すべきではないか。

 中国に対していろいろそれは悪いことをしたかもしれないけれども、我が国は、国益と主権に基づいて言うことは言う。当たり前のことで、例えばこのあたりでも一つアクションを起こしていただきたい、そう思うんですが、いかがでしょうか。

    〔やまぎわ委員長代理退席、委員長着席〕

麻生国務大臣 この東海はちょっと知らなかったので、ちょっと調べます。

 それから……(細野委員「これは有名な話です」と呼ぶ)いや、あなたには有名なんでしょうけれども、私には余り有名じゃなかったので、正直、この話は今初めて見ましたので、調べます。

 それから、今のこの話の口上書に関しましては、今御指摘のありました二カ月、六カ月、これは事実です。確かに、六カ月ということになっております。それは私も知っているんですが、少なくとも、この口上書の内容をいわゆる資源調査に当てはめてやっていることだけはない。今、中国との間に資源調査に関してはやっていないでしょう。というのが私どもの考え方であります。

 細目は岩屋副大臣から。

岩屋副大臣 済みません。今先生御指摘の件、ちょっと調べたのでございますが、なぜ東海と言ったかということでございますけれども、東海及び東シナ海は同一の水域を指すために用いられる呼称であり、慣用上、双方が用いられてきております。我が国には特に地名に関して法令のごときものがあるわけではございませんが、東海という呼称は、東シナ海と並んで我が国においても従来海図等において用いられていた。

 したがって、外務省においても、慣用に従いまして東海及び東シナ海を同一の水域を指す呼称として双方ともに用いてきている。したがって、本口上書においては東海というものを使用した、こういう経緯であったということでございます。

細野委員 時間が来ていますけれども、副大臣、今のは大変な答弁ですよ。東海という呼称を日本は外務省として正式に認めるんですか、それもいいですと。それが国際的な呼称で、この口上書の中で東海と書いているということは、日本側も東シナ海よりは東海の方が流通をしていると認めることになりますよ。本当にいいんですか。

岩屋副大臣 今お答え申し上げましたように、我が国においても従来海図等において用いられていたということでございますので、何も向こう側の言い分に従ったということではないと御理解をいただきたいと思います。

細野委員 これは、もう時間もないので……

山口委員長 時間が過ぎておりますので、簡潔にお願いします。

細野委員 はい、わかりました。継続でちょっとやりたいと思いますが、副大臣、そういう問題についてはお詳しく、関心を持っていらして問題意識を持っていらっしゃる方だと思いますので、ぜひこの問題はもう一回外務省の中でしっかり検討していただきたいと思います。

麻生国務大臣 細野先生、日本海を東海と言う韓国に対して、とんでもないということを言っていることは間違いありませんが、東シナ海を東海と言う例はこれまでもあった、これは私の記憶ですけれども、そうなっておると思います。調べますけれども。

細野委員 少なくとも、我が国において併用されていた、過去の歴史文書においてそういう例が一回か二回あったかどうかは、それは知りません。そういうのはあったんでしょう、私も調べてちょっと読んだことがありますが。ただ、我が国のさまざまな地図において東シナ海と書いているわけですよね。国際的にもそちらが適切であると我が国は言ってきたわけですよね。その見解をひっくり返すのだとすれば、それは大問題だと私は思います。

 これは継続してやりたいと思いますので、時間が来ましたのでこれで終わりますが、大臣、最後に、デブリの問題、資料だけ配っておきました。

 ちょっと御認識が甘いと思いますので、衛星破壊によってどんな状態になっているのか写真で載っていますから、問題意識をもう少し持っていただいて、これは宇宙開発の大きな問題ですから。中国に情報公開を求めるのではなくて、衛星破壊なんてとんでもないと。アメリカはもう宇宙に関しての協力を破棄していますからね。この部分についての外務省のメッセージは非常に弱いというふうに思っていまして、資料だけお渡ししておきますから、その認識をぜひ持っていただきたい。最後にそのことをお願いして、終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

山口委員長 次に、笠井亮君。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 まず、在外公館に関する法律の改正について麻生大臣に伺います。

 大臣は、去年九月に、安倍内閣が発足したちょうどそのころですけれども、その後ですが、問いに答えられまして、外務省は大幅な定員増と在外公館の増設を要求しているけれども、人員削減を進める政府全体の方針と矛盾しているというようなことを問われて、それに対して、「日本は軍事力がない分、耳を大きくしないといけない。海外への年間旅行者数は一千七百万人いる。今は邦人の世話だけで、情報収集まで手が回らない」ということを述べられたということで、御記憶だと思います。

 そこで、大臣は今日の在外公館の役割についてどのように考えていらっしゃるか伺いたいと思うんですが、いかがでしょうか。

麻生国務大臣 これはいろいろあろうと思います。情報収集、邦人保護、それから関係促進、いろいろあろうと思いますけれども、最近では企業の支援というのも結構ふえてきておる。

 例えば、先ほど民主党の方から御質問のあっておりました、いわゆるエネルギーのことに関して言わせていただければ、資源というものを確保していくに当たりましては、私ども、例えばコンゴの銅山、あれは日本鉱業がやっていたと思いますが、騒ぎになって撤退ということになっておりますけれども、ここは物すごく大きな銅のあれもありますので、そういったものの企業とか工場の保護というものも我々としては大きなところだと思っております。

 実質的なマンパワーというものも含めまして、そういったところを含めまして、我々の仕事はかなり今までよりふえてきているというのが実態で、もうこんなところに日本人がいるのかというところまで日本の方がいらっしゃる時代になっておりますので、私はいいことだと思いますが、それに伴って、何か起きたときは、PHSが使えるわけじゃなし、どこにも連絡ができないというと、現地の兼轄している大使館が行けということになると、隣の国は一番遠いので、一回ロンドンまで上がってまた下がるとか、パリまで上がって下がるというふうな形でなきゃ行けないところがすごく多いというのがこの地域における非常に大きな問題だ、私どもはそんな感じがいたしております。

笠井委員 私も、仕事の中身という点では大いに考えてもらう点がいっぱいありますが、必要なことについてはきちっとやるということでの今回の法案というのは私も理解をしております。

 昨年の十一月二十二日に、財政制度等の審議会で、平成十九年度予算の編成等に関する建議ということで建議が出ておって、その中で、今回のことに関連して三点、私は目についたんです。

 在米大使館以外の在外公館の手当の水準が全体的に高くなっている、在米大使館との較差の適正化を図るべきであるという点。さらには、任国政府関係者との交流等の外交活動に必要な経費、先ほど来ありましたが、この建議の中ではあえて人脈構築関連経費ということで書いてありますけれども、この仕組みについて、必要な経費は実費で支給する仕組みに可能な限り改めるべきだという点。さらには、在勤手当については、公務員人件費の改革の観点から抑制すべきだということも述べられている。

 これを受けて、外務省の方でも、外務人事審議会ということで協議も意見も聞かれているということであると思うんですが、私は、この点で、外務省は、一連の建議や意見をやはりいろいろな形で受けとめながら、今後の検討、改善をぜひやっていただきたいというふうに思っております。これは申し上げておきたいと思います。

 限られた時間ですので、この際、米軍再編に関連して若干の質問をしておきたいと思います。

 まず、外務省に伺いますけれども、昨年五月に日米が合意をした、再編実施のための日米のロードマップに基づく具体化について、これまでどのレベルでどんなような協議を日米間でどの程度、何回ぐらいやってきたのか。テーマは何を協議してきたか、進展状況はどうか、それから今後の見通しについて、簡潔で結構ですが、お答えをいただきたいと思います。

岩屋副大臣 日米の外務、防衛当局間におきまして随時緊密に協議を行っておりますが、先生お尋ねの協議の日程、回数の一々については、米側との関係もございまして、お答えは差し控えさせていただきたいと思います。

 その上で申し上げますと、審議官級での協議につきましては、直近では本年二月に開催をしております。この二月の審議官級の協議におきまして、在日米軍の兵力態勢の再編の実施、日米の役割、任務、能力及び弾道ミサイル防衛協力等につきまして、これまでの成果及び進捗状況について意見交換を行ったところでございます。

 また、協議の具体的な詳細につきましては、お答えを差し控えさせていただければと存じます。

笠井委員 私は、さきの予算委員会で総理にも質問をしたんですが、米軍再編全体に係る日本側の経費負担という点について言うと、総額については、議論が始まってから一年もたちましたが、まだ言えないということで、いまだに具体的に申し上げる段階ではない、所要の経費は精査をして、鋭意検討を進めて、できるだけ早い段階で、早期に明らかにしていきたいということで答弁がされました。

 これから幾らかかるかも、全体像も明らかにならないままに、お金は出します、仕組みはつくりますということで今度も法案が出ているわけですが、これでは国民は納得しないということだと思うんです。

 他方で、米軍再編については、負担軽減ということがさんざん、大きなテーマになるということで、大きな目的と言われながら、新たな基地強化ということも実際に起こっている。そして、依然、基地による負担が沖縄でも全国でも負わされているという現実があると思います。

 そこで、防衛施設庁に伺いますけれども、米軍にかかわる事件、事故、被害のことなんですが、最近の五年間でとって、二〇〇一年、平成十三年からの五年間で一体どれぐらいのそういう事柄が起こっているのか。それから、平成十八年ということではまだ終わっておりませんけれども、現時点、最新の時点で、総件数で結構ですが、今年度については全国で何件ぐらい起こっているのか、お答えいただきたいと思います。

北原政府参考人 笠井先生にお答えを申し上げます。

 私ども防衛施設庁が補償業務を所掌する上で知り得ております御指摘の米軍の事件、事故でございますが、平成十三年度は千七百三十三件、十四年度が千九百四十四件、それから平成十五年度が二千七十九件、これが最近ではピークになっておりますが、十六年度が千八百六十六件、十七年度が千七百五十五件となっております。そして、十八年度につきましては、本年一月末現在の数字でございますが、千二百七十件となっております。

 ちなみに、これらの約九割が交通事故になっております。

笠井委員 交通事故も含めて毎年千七百件から二千件ということで、一定のでこぼこはありますが、高い水準が続いている。しかも、その中には、私もいろいろ調べてみましたが、そして報道でもされておりますが、米兵、軍属による横須賀での女性の殺害、それから傷害致死の事件、女性への暴行未遂。それから、八王子では小学生に対するひき逃げという事件がありました。それから、佐世保では殺人未遂やひき逃げ、沖縄でも強盗とか、まさに人命にもかかわるような事件、事故もたくさん起こっている。

 さらに、沖縄での米軍戦闘機の墜落、全国各地での米軍機からの照明弾の発射とか模擬弾の落下とか、それから米艦船の油漏れの問題という形で、重大な問題がたくさん含まれていると思います。

 これらは、今、掌握する項目があるということで、それは地位協定の関係だと思うんですが、それ以外にも、米軍の訓練に伴っていえば、基地周辺の住民生活にかかわるさまざまな被害が発生をしていると思います。

 例えば沖縄では、ことしに入ってからも、キャンプ・シュワブでの早朝からの射撃訓練で爆発音がとどろく。それから、入試中にC5ギャラクシーが、大学側の自粛要請があったんだけれども騒音をまき散らすということがありました。それから、米兵が国道に銃口を向けたり、ダムから一万六千発という米軍の弾薬類が回収をされるということが起こっているわけです。

 これは、防衛施設庁か外務省、いずれかで結構ですけれども、こうした米軍基地に伴うさまざまな事件、事故、被害について、米側に対してどういう場で問題にして、そしてどのような提起をしているのか、これを伺いたいと思うんですが、いかがでしょうか。

西宮政府参考人 お答え申し上げます。

 在日米軍は、我が国の防衛を初めとする日米安保条約の目的達成のために我が国に駐留しておりますが、その活動に関連し、または米軍関係者により事件、事故が発生していることは遺憾に考えております。

 このような事件、事故が発生した場合の対応につきお尋ねでございますが、外務省より米側に対し、累次の機会をとらえ、遺憾の意とともに、関係者の綱紀粛正、事件、事故の原因究明、再発防止の徹底などについて申し入れているわけでございます。

笠井委員 遺憾である、当然大変なことですから、遺憾なのは当然なんですが、そして必要な申し入れをその都度やっていて、綱紀粛正と再発防止ということを言われているわけですが、しかし実際は、なくなるどころか、先ほどもありましたが、高い水準で続いて繰り返されているということであります。

 そういう点でいいますと、今、安保の目的達成ということで言われまして、それが前提だと言われたんですが、これは、そうなると、達成するためには運用だ、運用のことでは、やはり訓練とかそういうことはまた別問題だということをよく政府は議論を言われます。しかし、実際には、被害を受ける住民にとっては同じことになるわけですね。

 低空飛行も、本土でもふえております。そして、住宅地の上空でもそういうことが行われるという是認できない状況があちこちであるということでありまして、私もいろいろ最近の事態も見てみましたが、ことし起きた沖縄における米軍の事故あるいは被害などを見ても、やはり政府自身が被害を受ける住民の声を本当に受けとめて、真剣にどこまでやっているのかという点でいうと、誠実さが問われる問題が起こっていると思うんです。

 米軍ヘリが空中輸送していた廃車を落下する、これに対しては、これは安保の目的達成のために必要だということを施設庁の次長が言われる。それから、パラシュート降下訓練があると、基地使用目的としての形態に反しない限りは訓練の実施は排除しないんだ、住民に銃口を向けると、反射的に周りを警戒する軍人の習性だというようなことで、防衛大臣は習性という問題とされる。

 そこで、大臣に伺いたいんですが、安保ということでいうと、我々は、安保は破棄だ、基地撤去ということを主張していますが、今問題になっているのは、そういう中でも、実際に安保が必要だ、あるいは基地が必要だと言われる中でも、こういうことが多発をし、運用という中でこういうことが起こっているということでありまして、一体これでいいのかということですね。

 F15の訓練移転がされました築城で、三月五日から始まったということですけれども、しかし、沖縄でいうと、では騒音が下がるかというと激化していて、そして最悪レベルで、移転効果がないじゃないか、F22がまたやっているという話が出てくるわけでありまして、やはり、沖縄でもそういう新たな被害、あるいはこれが依然としてある。そして、米軍再編が進めばこれが全国にもさらに展開をするということで、被害が当然広がってくるというわけです。

 大臣御自身も、これは負担軽減ということが大きな問題なんだと言われてきたわけですので、実際に、こういう被害の問題、事件、事故、被害の問題についても、やはり米側に対して、直接抜本的な対策がここらで必要なんじゃないか。これまでも個々には言ってきたけれども、なかなか直らない、綱紀粛正というけれども繰り返されている、どうするんだということで、やはり問題提起をされるべきじゃないか。

 今後2プラス2もあるやにも聞きますが、そういう場も含めてきちっとやはり物を言うべきじゃないかと思うんですが、大臣、いかがでしょうか。

岩屋副大臣 後から大臣からも一言いただきたいと思いますが、先生おっしゃるように、私どもも、こうやって事件、事故が多発するということは非常に遺憾に思っておるところでございまして、外務省といたしましては、例えば沖縄におきましては、外務省が事務局を務めまして、国、米軍、沖縄県、関係市町村等の関係者で構成する事件・事故防止のためのワーキングチーム、これを開催して、米軍人等による公務外の事件、事故を未然に防止するための具体的な措置を議論する等の取り組みを行っておりますが、さらにこういう取り組みを強化していきたい、こう思っているところでございます。

麻生国務大臣 笠井議員の御指摘のあったとおり、何となく、この種の事故があるがために、抑止力に頼っている日本として、そちらの方に対する不満が起き上がるというのは、結果として抑止力を下げることにもなりかねませんので、私どもとしては、この種の事故が起きないようにということに関しましては、関心が非常に高いところでもありますので、住民の意識もさることながら、全体として、これによって全体の理解なりまた協力なりというのが減る方向になっていくというのは、これはいいことになりませんので、住民の気持ちは当然のこととして、その点も含めて、あわせて、この種のことに対しましては米軍とさらに詰めていかねばならぬと思っております。

笠井委員 大臣御自身もしかるべきところできちっと物を言われるということでよろしいですか。

麻生国務大臣 そのように御理解いただいて結構です。

笠井委員 副大臣、沖縄で三者でやられているというのは私も承知しています。しかし、そういうことを努力していても、なかなかやはり実際には事態が打開されていないということでありまして、大臣、抑止力のためということで、その点からもと言われましたが、私は、それで抑止力ということを一方で言われて説明されても、大臣も言われましたけれども、やはり国民に対してはそれじゃ説明がつかないという事態が実際あるわけです。

 その点はやはり、米軍の運用ということで優先するというような姿勢、運用だから仕方がないとかというんじゃなくて、ここはきちっとそこにも切り込んで、やはり米側に対してもきちっと物を言う、これをきちっとやはり解決する。人命の問題がかかわっていますし、日々の生活ですから、安保の是非とかということは別にしても、ここはきちっとやるべきだということを重ねて申し上げて、質問を終わります。

山口委員長 次に、照屋寛徳君。

照屋委員 社民党の照屋寛徳です。

 ただいま議題となり、審議中の法案については、社民党は賛成の立場であります。

 法案に関して、二、三質問をいたします。

 外務省の資料によると、平成十八年十二月現在の在外公館数は百八十九、そのうち国有事務所は七十となっております。当然のことながら、国有以外の在外公館については賃貸借だ、こう理解してよろしいでしょうか。

岩屋副大臣 照屋先生には、まず、法案に御賛同いただきまして、心から御礼を申し上げたいと思います。

 今お尋ねの在外公館施設の数でございますが、平成十九年三月現在で、在外公館の総数は百八十九ございます。このうち国有施設は、在外の場合はその事務所、大使館と大使公邸と二種類あるわけでございますが、国有の事務所が七十一カ所、それから公邸の方は百十七カ所、これが国有施設ということになっております。

 したがって、先生お尋ねの、それ以外は借り上げ物件と理解してよいかというお尋ねでございますが、そのとおりでございます。

照屋委員 私は、平成十七年九月二十一日に在日米国大使館敷地等の賃料に関する質問主意書、同年十月十三日に再質問主意書を提出しました。私の質問主意書及び再質問主意書に対する政府の答弁書で明らかになったことと関連して尋ねます。

 米国は平成十年分以降の国有地である大使館敷地の賃借料を支払っていないという答弁でしたが、その後、大使館の敷地賃借料は支払われたのでしょうか。支払われたのであれば、その年月日を明らかにしてください。

藤岡政府参考人 お答え申し上げます。

 平成十年分以降の貸付料につきましては、現在、日米間で鋭意交渉中でございますが、合意に至っておらず、したがって支払っておられません。

照屋委員 在日米国大使館敷地の敷地として国が賃貸しているのは約一万三千平米、およそ四千坪であります。賃借料は現在、年間幾らでしょうか。

藤岡政府参考人 お答え申し上げます。

 在日米国大使館敷地に係ります貸付料につきまして、昭和五十八年分から平成九年までの賃借料は年額約二百五十万円でございます。

照屋委員 約四千坪で年間たったの二百五十万ですよ。一坪当たり年間約六百円なんです、あんな一等地で。しかも、近くにあるイギリス大使館のおよそ五分の一なんです。それでもアメリカは平成十年から払っていない。とんでもないことであります。これじゃ、まるで未納大国だと私は思いますよ。

 大使館の賃借料については、私の質問主意書に対して政府は、「我が国の民法が適用される。」と答弁している。当然でしょう。しからば、消滅時効は何年ですか。

藤岡政府参考人 在日米国大使館敷地に係る賃貸借契約は、米国から貸付料を受け取り日本の国有地を貸し付ける契約でございまして、我が国の民法が適用されるところでございます。

 本件貸付料につきましては、民法第百六十九条の定期給付債権に当たることから、消滅時効は五年でございます。

照屋委員 平成十年から未払いで、消滅時効五年、それじゃ、不払い、逃げ得じゃないか。

 時効中断の手続はとっているんですか。

藤岡政府参考人 お答え申し上げます。

 法令の規定により、国が納入の告知を行うことで貸付料の消滅時効は中断することができ、その方法で、通常、納入告知書の送付により行っているところでございます。

 本件につきましても同様に納入告知書を送付いたしまして時効中断措置を講じているところでございます。

照屋委員 それはおかしいよ。民法が適用されるんでしょう。皆さん本気で、納入告知書や督促状を送っただけで法的に時効中断が可能だと思っていらっしゃるんですか。お答えください。

藤岡政府参考人 会計法第三十二条の規定によりまして、法令の規定により、国がなす納入の告知は、民法百五十三条の規定にかかわらず、時効中断の効力を有するものとされているところでございます。

照屋委員 本件契約には解除条項というのはあるんでしょうか。

藤岡政府参考人 解除条項はございません。

照屋委員 支払い交渉に当たる主務官庁は、外務省ですか、財務省でしょうか。

藤岡政府参考人 平成十七年十月の照屋議員に対します答弁書におきましても申し述べているところでございますが、支払い交渉に当たっております主務官庁は、外務省及び財務省でございます。

照屋委員 それじゃ、大臣、今聞いておったと思いますが、年間坪当たりたった六百円、しかも、英国大使館の約五分の一、平成十年以降全く払わぬで、支払い督促をしても払わぬ。これ、どうするんですか。私は、さっき未納大国だと言いましたが、いかなる理由があるにせよ、こういう状態はよくないと思うんですね。

 しかも、私が質問主意書を出してから約二年たって、いまだに払わぬ。どんな逃げ口上か知りませんが、酢のコンニャクだのと言って払わなければ済むという問題じゃないと思うんですよ。それで、これは、支払い交渉は財務省だけではなくて外務省も主務官庁だという。しからば、外務省はどのような具体的な対応をしているのか。

 私は、なぜこのようなことを質問するかというと、我が国の在外公館については、ちゃんと適正賃料に基づいて諸外国で賃借をしている。一方のアメリカは、こんな一等地の、約四千坪、一万三千平米の賃料も払わぬ。これだけじゃないんです。なぜ私が怒るかというと、沖縄で爆音被害で苦しんで、国と裁判して、損害賠償をかち取る。この賠償金についても、地位協定に基づく分担金をアメリカは一切払わない。結果、被害を受けるのも県民、国民。結果的に税金で県民、国民が負担をする。そういうことは、私は、主権国家、独立国家としてあってはいけないと思います。

 最後に、麻生大臣の見解をお聞きいたします。

麻生国務大臣 未納大国、昔、未納三兄弟と言われたことがありましたので、その言葉を久しぶりに思い出しましたけれども、これは明らかに公平さを欠いておると思いますので、私どもも、今御指摘にありましたけれども、十何年分に関しましてたまっておるというこの経緯がどういう経緯なのかもちょっとつまびらかにしておりませんので、きちんと調べました上で鋭意交渉をいたしたいと思います。

照屋委員 終わります。

山口委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

山口委員長 これより討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 在外公館の名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員の給与に関する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

山口委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

山口委員長 この際、ただいま議決いたしました本案に対し、三原朝彦君外四名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党及び社会民主党・市民連合の共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を聴取いたします。山中あき子さん。

山中委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提案者を代表いたしまして、案文を朗読し、趣旨の説明といたします。

    在外公館の名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員の給与に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  解決への目途が見えない北朝鮮やイランの核問題、混迷し続けるイラク情勢等、国際情勢は不透明さを増しており、これら問題解決の遅れは更なる地域の不安定化を招来することになる。今、我が国に求められるのは国益を踏まえつつ、国際社会との協力・連携の下、これら諸問題に毅然と対応する外交力である。そのためにも、我が国外交を担う外務省の体制強化と危機管理体制の抜本的改革が急がれる。他方、今日、我が国経済は回復基調にあるものの、財政事情は依然として厳しく、国家公務員定員純減に向けた取組みの着実なる実施が求められている。外務省においては組織改革や手当の見直しに際し、こうした国内事情を重く受け止めるとともに、とりわけ外務公務員の手当に向けられる国民の声に真摯に応えていく必要がある。これらを踏まえ、政府は、本法の施行に当たり、次の事項について検討の上、適切な措置を講ずるべきである。

 一 外務省においては、国際社会の諸問題に的確に対応し、国益を重視した外交を遂行するため、外交体制強化に向けた組織改革を不断に推し進めること。

 一 我が国外交の最前線基地である在外公館等の新設に関しては、我が国の国益と相手国との相互主義の原則等を踏まえ、戦略的にその増強・整備に当たること。

 一 在外公館においては、大規模自然災害や犯罪・テロ等の緊急事態における在外邦人に対する迅速かつきめ細やかな支援を可能とするため、危機管理体制の機能拡充に努めること。

 一 情報の収集・分析体制の強化のため、情報収集等に要する経費の充実及び人材の確保に努めること。

 一 我が国の厳しい財政事情を厳粛に受けとめ、在外公館に関わる予算の効率性・透明性を高めるとともに、その執行に当たっては、適切な支出が図られるよう具体的な措置を講じること。

 一 在勤手当については、国内の財政状況や外交活動を推進する上での必要性を踏まえ、民間企業、諸外国の外交官の給与・手当の水準及び各任地の事情に鑑み、為替・物価等の変動が反映される形で客観的に算出されることにより、必要に応じて在勤手当全般にわたる内容の見直しを行うこと。

 一 在外公館における監査・査察体制の一層の強化を図ること。

  右決議する。

以上でございます。

 何とぞ委員各位の御賛同をよろしくお願い申し上げます。

山口委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

山口委員長 起立多数。よって、本案に対し附帯決議を付すことに決しました。

 この際、ただいまの附帯決議につきまして、外務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。外務大臣麻生太郎君。

麻生国務大臣 在外公館の名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員の給与に関する法律の一部を改正する法律案を可決いただきまして、まことにありがとうございました。

 外務省といたしましては、ただいまの附帯決議の御趣旨を踏まえつつ、今後とも外交実施体制の強化を図り、種々の外交課題に全力で取り組んでまいる所存であります。

    ―――――――――――――

山口委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました本案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

山口委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

山口委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時十二分散会


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