衆議院

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第5号 平成19年3月28日(水曜日)

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平成十九年三月二十八日(水曜日)

    午前九時十二分開議

 出席委員

   委員長 山口 泰明君

   理事 小野寺五典君 理事 嘉数 知賢君

   理事 三原 朝彦君 理事 やまぎわ大志郎君

   理事 山中 あき子君 理事 長島 昭久君

   理事 山口  壯君 理事 丸谷 佳織君

      伊藤 公介君    猪口 邦子君

      宇野  治君    上野賢一郎君

      小野 次郎君    河野 太郎君

      高村 正彦君    新藤 義孝君

      鈴木 馨祐君    藤野真紀子君

      松島みどり君    三ッ矢憲生君

      山内 康一君    小川 淳也君

      楠田 大蔵君    笹木 竜三君

      長妻  昭君    平岡 秀夫君

      笠  浩史君    鷲尾英一郎君

      東  順治君    佐々木憲昭君

      照屋 寛徳君

    …………………………………

   外務大臣         麻生 太郎君

   内閣官房副長官      下村 博文君

   法務副大臣        水野 賢一君

   外務大臣政務官      松島みどり君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 三浦  守君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 吉田 秀司君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 長嶺 安政君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 猪俣 弘司君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 伊原 純一君

   政府参考人

   (外務省総合外交政策局軍縮不拡散・科学部長)   中根  猛君

   政府参考人

   (外務省北米局長)    西宮 伸一君

   外務委員会専門員     前田 光政君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月二十八日

 辞任         補欠選任

  愛知 和男君     藤野真紀子君

  篠田 陽介君     上野賢一郎君

  田中眞紀子君     楠田 大蔵君

  長妻  昭君     平岡 秀夫君

  前原 誠司君     小川 淳也君

  笠  浩史君     鷲尾英一郎君

  笠井  亮君     佐々木憲昭君

同日

 辞任         補欠選任

  上野賢一郎君     篠田 陽介君

  藤野真紀子君     愛知 和男君

  小川 淳也君     前原 誠司君

  楠田 大蔵君     田中眞紀子君

  平岡 秀夫君     長妻  昭君

  鷲尾英一郎君     笠  浩史君

  佐々木憲昭君     笠井  亮君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 国際刑事裁判所に関するローマ規程の締結について承認を求めるの件(条約第一号)

 国際刑事裁判所に対する協力等に関する法律案(内閣提出第四八号)


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     ――――◇―――――

山口委員長 これより会議を開きます。

 国際刑事裁判所に関するローマ規程の締結について承認を求めるの件及び内閣提出、国際刑事裁判所に対する協力等に関する法律案の両案件を一括して議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 両案件審査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房審議官長嶺安政君、大臣官房審議官猪俣弘司君、大臣官房参事官伊原純一君、総合外交政策局軍縮不拡散・科学部長中根猛君、北米局長西宮伸一君、法務省大臣官房審議官三浦守君、大臣官房審議官吉田秀司君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

山口委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

山口委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。丸谷佳織さん。

丸谷委員 おはようございます。公明党の丸谷佳織でございます。きょうはどうぞよろしくお願い申し上げます。

 先日、三月二十日の本会議でも質問をさせていただきました、本日議題となっております国際刑事裁判所の設立に関するローマ規程の承認案件及び国際刑事裁判所に対する協力等に関する法律案に関しまして、賛成の立場から質問をさせていただきます。

 先ほど申し上げましたが、先日も本会議の方で問題意識は御理解していただいていると思います。その点について、きょうはフォローアップという意味でもうちょっと深くお伺いをさせていただきたいと思いますので、法務省の方からも副大臣来ていただいておりますが、どうぞよろしくお願い申し上げます。

 まず一問目としまして、このICC締結の意義というものを、大臣の御所見を本会議場でお伺いいたしました。大臣の方からは、ICCが管轄権を有する犯罪を犯した個人を処罰する包囲網の一翼を我が国として担っていくとの決意も表明していただいた次第でございます。実際に、これは国内法の補完性という意味でのICCでございますので、まず法整備がきちんとされている国においてはその国内法において裁判が実施されるわけでございますが、実際にICCの意味合いというのは、大臣がおっしゃった、法の包囲網を国際社会がつくっていくという意味が非常に強いと承知をしております。

 しかしながら、この包囲網、現在、残念ながら、まだ実に目が粗い包囲網だと言わざるを得ない状況だと思います。というのは、現在の締約国というのは百四カ国、我が国が締約をしまして百五カ国になります。国連加盟国は百九十二でございますので、百五としますと、四五%は非締約国であるということを考えますと、まだ目の粗い包囲網を、いかに細かな目の包囲網にしていくかという努力が必要であると存じます。

 その中で、大臣の方からも、特にアジア諸国においては締約国が少ないという状況を見て、アジアの一国としての我が国がアジア諸国の締約に働きかけていきたい旨の御答弁もいただきました。実際に働きかけをどのようなアプローチをもって行っていくのかという視点も重要かと思います。例えばカナダにおきましては、ICCの開発途上国の批准をふやすために、国内法整備を手助けする法律家を非締約国である開発途上国に派遣しているという例があるそうでございます。

 こういった形での具体的なアプローチを我が国として考える段階に入っていると思いますが、この包囲網を細かな目にしていくために、我が国としてどのような働きかけをアジア諸国に行っていくことができるとお考えでしょうか。この点についてお伺いいたします。

麻生国務大臣 御指摘のように、今アジアでいきますと、大洋州を入れまして約六十カ国、そのうち締約国は約十二だと思います。それから、アフリカ五十三カ国で二十九カ国。おっしゃるように、全体で見ますと、ヨーロッパ等々、ヨーロッパへいきますと今度は、チェコ以外は皆締約国になっておりますので、地域差があることは確かでございます。

 そういった中にあって、アジアの中に日本が締約国になりますと、日本としてこういった意義というものを他の国々に対していろいろ言っていかねばいかぬところだと思いますが、基本的には法の支配というものを推進していくということが一番肝心なんだと思います。

 ただ、今申し上げましたような国々の中でいうと、そんなことよりほかに、まだこれもできておらぬ、あれもできておらぬという国もあろうと思います。そういった意味では、我々としては、いわゆる三権分立の司法という部分について、経済はそこそこだけれども、法の支配と言われる三権の司法の部分に関してはいま一つ、なかなかまだそこまで手が届いていないという国々に対して人を出して、いろいろ人的貢献をしていくとかいうことを含めまして、考えていかなければいけない部分もあろうと思います。

 現実問題として、例えば今カンボジアでやっておりますのは、そういった意味では、カンボジアにおけますいろいろな民法、商法、民事訴訟法の手伝いを、今法務省からいろいろ行っておりますけれども、そういったのを含めまして、こういったことが今後必要なことになっていくであろうと思っております。

丸谷委員 今、カンボジアの例を大臣の方から挙げていただきましたけれども、今後の課題でございますが、例えば司法協力分野へのODAの拡充の必要性というものも考えることができるのではないかと思います。特にICCの締約を機にということではございませんけれども、そこのグッドガバナンスという意味でも司法制度は非常に重要になってきますし、また当然、ICCという角度からとってみても、その国内法の整備ができるか否かによって締約できるか締約できないかというところで悩んでいる国もあると思いますので、例えば開発途上国に対する司法協力というのを今後ODAの一つの柱として我が国として支援を考えていくということはいかがでしょうか。

麻生国務大臣 ODAといいますと、何となくインフラの話ばかりがよく出ますけれども、現実問題としてそれ以外にもいろいろしておりますのはもう御存じのとおりなので、そういった意味では、この部分というものは必要なことだと私どもは思います。

 ただ、難しいのは、そういったのは向こうから言われませんと、こっちからこれをやれというのは、なかなかちょっと言いにくいところは確かにございます。したがって、先方からの要望というものもある程度導き出してやるような形にしていくというのが、従来の、向こうから希望があったのを選択して、これはやります、これはやりませんというのとは少し違う形になろうと存じます。

 そういった意味では、司法に関しての協力要請というのが出てくればその段階で考えさせていただくという意味で、こっちから、この法律とかあの法律というのは、なかなかちょっと言いにくいところがあるというのも現実でございます。

丸谷委員 そういった司法協力の必要性というのは大臣も認識していただいているということでございますので、今後の外交の柱として、開発途上国に対してどのような国づくりをしていくかの視点において、またぜひ御検討していただきたいと思います。

 このICCの加盟国、まだ非締約国に関しては国連の約四五%に及ぶという話をさせていただきました。実際に、中東は締約国が一カ国ということ、あるいは国連安保理の大国、アメリカであったりロシアであったりも締約をしていません。それぞれ国によって、あるいは地域によって締約をしていない理由はあると思います。

 大きく三点あるのではないかという指摘もされておりまして、一点目は、ICCの活動が自国の主権との関係で問題を生じ得るとの懸念から加盟を見合わせている場合。二つ目のパターンとしては、ICCに加盟をすれば自国民がICCの裁判権に服することになるおそれがあるとの懸念から加盟を見合わせている場合。また三点目として、ICCによる検察権行使が公正に行われるかどうかについての懸念からそもそも加盟を見合わせている場合というふうに指摘をされておりまして、三点目の検察権行使が公正に行われるかどうかそもそも不安があるということであれば、これはなかなか、考え方によって、日本が、いや、大丈夫ですよと言っても加盟を促進することは難しいかと思います。

 ただ、一点目の、ICCの活動が自国の主権との関係で問題を生じ得るとの懸念から加盟を見合わせている場合、こういった主権との関係から見合わせている場合は余り合理的な懸念ではないのだろうと思います。なぜなら、これは補完性という意味でのICCだということをきっちりと理解していただく、プラスそこの国の法整備が、ICCが管轄するような案件に関してきちんと対応できる法整備をしていれば主権の侵害にはならないということがあるんだろうと思います。そういった意味からでも、特に開発途上国に関しては、国内法の整備をお手伝いできることがあればすることによってICCの締約の促進につながるというふうに確信いたしますので、ぜひこの点も今後の検討課題としてまた積極的に取り組んでいただきたいと思います。

 二点目の質問でございますが、実際に我が国がこのICCにどのように貢献をしていくことができるのか。

 言うまでもなく、我が国はICCの分担金最大拠出国としての経済的な役割を担っております。プラス、本会議でも大臣から御答弁をいただきました人的な貢献、我が国にも優秀な人材がおりますので、そういった方たちをしっかりとICCの中で役立てていく、人的貢献もしていきたい旨の御発言をいただきました。

 もう一つ、ICCの締約国会議の中には議長団が形成をされるとお伺いをしております。この議長団は、三年の任期で選出をされます議長お一人プラス二人の副議長、そして十八人の構成員から成る議長団だということでございます。この議長団の実際に担っていく役割、想像するところでございますけれども、実際には締約国会議のコアの部分として運営に当たり、あるいはICCの経済的な効率性を高めていくためにどうするか等の議論も中心になってしていただくのかなというふうに思うわけですが、ぜひ我が国もこの議長団というものでしっかりといすをとっていくという姿勢で臨んでいただきたいと思います。

 議長団の選出というのは国ベースで行われまして、実際には国連大使が議長等の任務を果たしているというふうにお伺いしておりますけれども、我が国の貢献のあり方として、議長団に参加をしていく、また影響力を行使していき、ICCの独立性と正当性を維持していくような、そういった責任を果たしていただきたいと思いますが、この点についてはいかがお考えでしょう。

麻生国務大臣 今御指摘にありましたように、今議長団というのが、議長がたしかコスタリカ、そして副議長が二人、南アとオーストリアだったかな、から出ていて、三名で構成をされていると存じます。任期は三年ということで運営をされていっていると存じます。

 基本的に今、確かに拠出国としては、これは通年でいきますと約三十億ぐらいの分担金を払うことになろうと思いますので、国連分担金の比率からいっても、日本の場合はかなり大きな分担金、一番大きな分担金になろうと思います。そういった中にあって、日本も入っていっていきなりすぐの話ではありますけれども、私どもは、これに加盟した以上は、この組織というものがきちんと運営されていくというのは非常に大事なことだと存じます。その意味でも、人というものがどうやって、それを運営するのは人になりますので、そういった人的な面につきましては私どもも意欲を持ってやっていかねばならぬところだ、私もそう思います。

丸谷委員 よろしくお願いいたします。

 私の方から、本会議で三点、二〇〇九年に招集されますローマ規程の検討会議において、ぜひ日本政府として提案をしていただきたい三点を挙げさせていただきました。一点目は、十八歳未満の子供、いわゆる子供兵士徴兵の問題でございます。そして、テロリズムの犯罪化とまた大量破壊兵器の使用についてのローマ規程の取り扱いについて提案をさせていただいた次第でございますけれども、いずれの点においても、政府の方からは議論に積極的に参加をしていきたいという御答弁をいただきました。議論に積極的に参加をしていただくのは非常に喜ばしいことでございますけれども、実際にどのような方針を持って参加をされるのかというところをぜひお伺いしたいと思います。

 例えば、子供兵士の場合ですね。実際には、子どもの権利条約があって、その後に選択議定書が採択をされました。この選択議定書は十八歳未満の者の徴兵制を犯罪化しております。子どもの権利条約の方は十五歳未満ということで、ローマ規程においては選択議定書の十八歳未満というところで子供兵士の年齢を区切ってはどうかという提案をすることについて、我が国として提案をしていくというお考えはお持ちでしょうか。もしそれはいかがなものかなということであれば、何が問題点になってきて、どういう懸念があるのか、この点について教えていただきたいと思います。

麻生国務大臣 児童の権利条約との関係で今御質問があっておりましたけれども、児童の権利に関する条約を踏まえ、十五歳未満の児童につき軍隊への強制的徴集を禁じるというのは、これは戦争犯罪と規定をいたしておりますのはもう御存じのとおりであります。一方、武力紛争における児童の関与に関する児童の権利に関する条約の選択議定書というのがございますが、これは十八歳というところに三歳の乖離があるということの御指摘なんだと思っておりますが、この点に関しましては、いろいろな場面でこれまでずっと話題になってきたところでもあります。

 そういった意味で、私どもとしては、これは今どちらをどうとかいうのではなくて、とにかく子供が戦争に参加させられるというのは、これはどう考えても状況としては好ましい状況とは思えませんので、この問題に関してどっちか一方に既に決めて、この態度で、こっちでいこうと決めているわけではございません。ございませんけれども、この問題に関してはいろいろこれまでも話題になってきたところでもありますので、積極的に参加をしていきたいと思ってはおります。ただ、十五歳にしますか十八歳にしますか、それとも十六ですかというような話になってくるんですけれども、まだ何歳と決めて対応していこうと決定したわけではございません。

丸谷委員 考え方として、今後二〇〇九年までまだ若干時間があるといえばありますので、この検討会議に当たって、当然、そこに議題が出されてきたときに、さあどうしようかということではないんだろうと思います。予測されるテーマについてどのような方針を持っていくのかというのは、今回これが可決をして締約した暁になるのかもしれませんけれども、ぜひそこは外務省の考え方というのをお示ししていただきたいと思いますので、どうかよろしくお願いいたします。

 では、二点目のテロリズムを犯罪化する、この必要性についての外務省の今のお考えはいかがですか。これも議論に積極的に参加をしていくということでございましたけれども、例えば、ローマ規程が採択されました外交会議におきましては、検討会議では、テロ犯罪と麻薬犯罪についてそれらの定義を決定し、ICCの対象犯罪に含めることを目指して検討が行われることを勧告する、リコメンドするという決議を含む最終文書に我が国としても署名をしております。

 この署名をしたということをもっても、実際には検討をする、議論をするという態度を示したということになるかもしれませんけれども、この点について今政府の見解というのはいかがでしょうか。まだ、議論が出たときには積極的に議論をしていこうという御答弁しかいただけないでしょうか。

麻生国務大臣 これは、丸谷先生御指摘なさるまでもなく、テロというのはいかなる理由をもってしても正当化することはできない、これだけははっきりいたしておると思っております。

 日本も、テロ防止関連条約のもとで、テロ行為を国内法上犯罪ということにしておりますし、自国で訴追するか、もしくは他の関係締約国に引き渡すかということによってこれを取り締まるということになろうと存じます。

 政府としても、これまでこの種の話に関しましては各国とみんなやってきておりますので、そういったところにおきまして、今後とも、この問題につきましては、テロというのは極めて卑劣な行為でもありますので、これに対する態度ははっきりいたしておると存じます。

丸谷委員 実際に、二〇〇九年の検討会議の場において、ICCの中で大きな役割を担っていく我が国として、どのような方針で、どういったテーマを重視して、何を議論していくかということを、やはり外交方針としてぜひお示ししていただきたいということなんですね。

 外務委員会で、例えばバイの交渉、日朝交渉ですとかいろいろなことにおいてはなかなか、そこまではお答えできませんとか、明確にいただけない御答弁があるのは十分理解をいたしますけれども、こういったマルチなものに関して、また我が国が締約をするもの、署名をするものに関して、非常に多額の拠出金、分担金を払うものに対しては、どういった姿勢、方針で臨むのかということぐらいは、ぜひこの外務委員会でお示しできるような外務省であっていただきたいというふうに思いますし、それを、今後今後ということではなくて、早目早目に議論していっていただきたいと思いますので、どうかよろしくお願いいたします。

 では、法務省から法務副大臣に来ていただいておりますので、同様に本会議で国内法の整備及び司法改革について質問をさせていただきました。この点についても私としては若干納得していない部分がございますので、この点についてお伺いをさせていただきます。

 被疑者段階での弁護人の付与の必要性というのを、我が国においても必要だという発言をさせていただきました。長勢法務大臣の方からは、平成十八年の十月から被疑者国選弁護制度が一定の事件について既に実施されておりますという御答弁をいただいております。

 ただ、この制度、大臣がおっしゃったように一定の事件でございまして、対象が短期一年以上の重大事件に限定をされております。もし短期一年以上の重大事件について被疑者段階での弁護人の付与というものが既に実施をされていたのであれば、例えば富山県での冤罪事件は防止できたかもしれませんけれども、鹿児島県の公職選挙法違反事件というのは防止できません。

 私が本会議で主張したのは、すべての事件について被疑者に弁護人を付与する権利を認めていくべきではないか、この点をお伺いしたわけでございますが、改めて法務省の見解をお伺いいたします。

水野副大臣 先生御指摘のとおり、去年の十月から、短期一年以上の事件を対象にして被疑者の国選弁護は始まっているわけなんですけれども、これは、平成二十一年の五月までには、対象事件が死刑、無期もしくは長期三年を超える懲役もしくは禁錮に当たる罪に拡大をされる予定でございます。

 そうはいっても、それでもまだ対象にならない事件というのはあるというお話だと思うんですけれども、ただ、被疑者国選弁護の対象となる犯罪を一定の犯罪に限定したというのは、いわゆる司法過疎地域が存在することや、税金でございますので、公的資金導入に伴う国民の負担を考慮するということを考えると、やはり優先度の高いものをやっていく必要があるということを考えているところでございます。

 このような点を踏まえますと、被疑者国選弁護制度の対象をさらに拡大してすべての被疑者を対象とすることにつきましては、その時点における司法過疎地域の状況やさらなる公的資金の導入に伴う国民の負担等を考慮して、そして議論をされるべきものだというふうに考えてございます。

丸谷委員 ありがとうございました。

 すべての犯罪にも適用させていくためには問題点があるという御答弁をいただきました。司法過疎地あるいは税金の問題ですから、そういった予算の面も含めて問題があるのであれば、司法過疎地をなくす努力をされていると思いますけれども、こういったことを重ねながら、ぜひこの点について、また今後も公明党として訴えていきたいと思いますので、積極的に取り組んでいただきたいと思います。

 続いて、取り調べでの弁護人の立ち会いについてお伺いいたします。

 この点は、取り調べ過程の可視化について、これもまた公明党として、していくべきだと主張させていただいておりまして、実際に昨年の七月からは東京地方検察庁において録音、録画等をされているというふうに聞いておりますけれども、実際に取り組んでみて、現在のところ状況というのはいかがでしょうか。可視化が始まる前と始まった後、何か変化があったのか、ぜひ御報告をしていただきたいと思います。

水野副大臣 先生御指摘のとおり、去年の七月から東京地検において可視化の試行を行っているところでございまして、去年の年末までに十三件、可視化の試行を行っているところでございます。

 今後、他の検察庁、東京地検以外にも拡大をしていこうというふうにしておるんですけれども、東京地検の今のケースというのは、ことしの年末までに試行を行っていく予定でございまして、その結果を踏まえていろいろと、試行ですから、その取りまとめを、結果がどうだったかということを判断していきたい。裁判員制度が始まりますのが二年後の五月までと法律で決まっておりますので、それまでのところでいろいろと議論をしていかなきゃいけない。

 ただ一方で、この取り調べの可視化というのは、被疑者に供述をためらわせるんじゃないかとか、関係者のプライバシーにかかわることを話題にすることが困難になるんじゃないかとかという問題もありますので、法務省としては慎重に検討すべき課題だというふうに考えてございます。

丸谷委員 今、昨年の七月から十二月の間十三件というお話がございましたけれども、具体的な内容はともかく、可視化をしたことによって、例えば取り調べ自体にどういった変化があったとか、そういったことはまだまとめられていない状況でしょうか。もしまとめられていたら、今の段階でお話しできることがあれば、お話ししていただきたいと思います。

水野副大臣 十三件の内容というのは、裁判員裁判の対象の裁判ではあるんですが、その具体的な内容というか具体的な事件名はちょっとお答えを差し控えさせていただきたいと思いますし、また、では弊害とか何かそういうことがあったのかということに関しては、まことに申しわけないんですけれども、捜査機関の具体的な捜査活動に関する御質問になりますので、お答えは差し控えさせていただきたいと思います。

丸谷委員 そうしましたら、元法務副大臣の我が党の富田茂之衆議院議員が実際に韓国・ソウルの南部の地検に行って、取り調べの録音、録画の実施状況を視察してきた報告書を私も読ませていただいたんですね。

 その中では、映像録画の評価について韓国の方に尋ねましたところ、検事の方からは、人権保護の強化と捜査過程の透明性が保障されたというふうに発言をされておりますし、また、調書の作成時間が省けるので二時間もあれば十分取り調べが終了した、被疑者も録画を承知で供述するので真摯な態度になる、また、検事の質問が追及型から対話型に変化していったことによって、調査方法、内容についての異議申し立ても明らかに減少した等の結果も御報告していただいたそうでございます。

 私がきょうお伺いしたかったのは、可視化をしたことによって、弊害だけではなくて、また事件の内容ではなく、実際にどのような変化が起きていますかという質問をさせていただいた次第でございますけれども、それについては、まだ内容の取りまとめができていないという理解でよろしいですか。法務省、いかがでしょうか。

水野副大臣 試行を行っているものについては、先ほど申し上げましたけれども、本年末までの間この試行が実施されるものと承知をしておりますが、最高検察庁において、試行終了後、試行結果を分析、検討し、適宜の時期に検討結果を何らかの形で報告するものと承知をしております。

丸谷委員 では、またその報告をしっかりと私たちも拝聴しながら、今後の我が国における司法制度改革に向けての発言をさせていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 本日、以上で終わらせていただきます。ありがとうございました。

山口委員長 次に、平岡秀夫君。

平岡委員 民主党の平岡秀夫でございます。

 きょうは、外務委員会の質疑ということではありますけれども、私は、法務委員会と外務委員会の連合審査をすべきであるということで要求をいたしておりましたけれども、いろいろ時間の制約等もあって、出張して質問するというふうな形になりました。ちょっと残念ではありますけれども、法務副大臣も含めてしっかりと議論をさせていただきたいというふうに思います。

 国際刑事裁判所については、我々は、できるだけ早くこれを批准し、我が国も国際的な役割をしっかりと果たしていくべきだという主張をしてきておりますので、基本的には批准そのものについては大きな問題があるとは思っておりませんけれども、国内法制化の問題とか、あるいはこれからのICCの運営に当たって我が国としてどう取り組んでいくのかというようなところについて、しっかりと政府の考え方を示していただきたいというふうに思っているところであります。

 そこで、最初でありますけれども、これは外務大臣からお聞かせいただきたいと思います。

 国際刑事裁判所、我々は、先ほど言いましたように、できるだけ早くその規程を批准すべきであるということを申し上げてまいりました。今回、その批准に向けての審議がここで行われてきているということでありますけれども、この国際刑事裁判所の存在の意義についてどのように認識をしておられるか。国際社会の中でどんな役割を果たしてどういうことを期待しているか、その中で我が国がどういう役割が果たせるか、そういう積極的な意義、どんなことを考えておられるか、そこをまず教えていただきたいと思います。

麻生国務大臣 これは平岡先生、やはり初めて常設の国際法の法廷というところが従来にないところなんじゃないんでしょうかね。私どもにとりましては、国際社会にとって重大な犯罪を犯したという人を国際法に基づいて訴追、そしてそこが常設の裁判所ができたというところでありまして、これは、国際社会において、法の支配とかそういった点から考えても、この部分では極めて大きな意義があるんだ、私どもとしてはそう認識をいたしております。意義は基本的にそこだと思います。

平岡委員 今の大臣の答弁でも、積極的な意義を見出しておられるということで、それはそれとして私たちと同じような考え方だと思います。

 それでは、お聞かせいただきたいと思うんですけれども、このICCローマ規程について言えば、一九九八年のローマ外交会議で採択をされたわけでございますね。しかしながら、我が国の加入がいまだに実現されていない。今回の国会で批准について今審議がされているということでありますけれども、ここまで我が国の加入がおくれてしまったのは一体どういう理由があったんでしょうか、その点について外務大臣の見解を示していただきたいと思います。

麻生国務大臣 このICCの規程の締約に当たりまして、幾つかのことが必要だったんだと存じます。

 一つは、この規程の対象犯罪、いわゆる集団殺害等々の犯罪、人道に対する犯罪、それから戦争犯罪等々に関して、国内法等についての整合性やらいろいろな関係についての検討が必要、これが一点目だと存じます。

 それから、ICC、いわゆる国際刑事裁判所に対しまして、実質的な手続やICCの運営を害する犯罪等の処罰につきまして、新たな国内法を整備する必要があるという点が一点。

 それから、各国の実行等々の調査等々もありましたでしょうが、もう一点は、これに加盟いたしますと、相応の分担金を払わねばならぬということになろうと思っております。通年でいきますと大体年間三十億ぐらいになると予想いたしております、少し事情が違うかもしれませんけれども。新たにそういった財政負担が起きてくるということになろうと思いますので、初年度は三カ月にしかなりませんので約七億二千万ぐらいになろうかと存じますが、そういった意味での予算の手当ての問題に対しても対処する必要があった等々あろうと思いますので、法務省を含めましていろいろな関係諸機関との関係を整合性を持って図る。予算の手続、予算上の対応措置等々が多くの時間を要したところだと理解をいたしております。

平岡委員 全然理由になっていないですね。優秀な法務省と外務省の役人が、今説明されたような国内法との整合性とかICCの法廷でのいろいろな違反に対する処罰とか、これを検討するのに五年も六年もかかるということはあり得ませんよ、大臣。大臣はどういう立場でこの国際刑事裁判所を見ておられたかわかりませんけれども、何というか、官僚のそういう形式的な答弁で、この問題を、なぜおくれたかという問題の本質をやはりごまかしちゃいけないと私は思いますね。大臣、そう思われませんか。

麻生国務大臣 見解を異にします。(平岡委員「ちょっと今、隣がうるさかったので」と呼ぶ)やじというのはやはりうるさいと思いますよ、私もいつもそう思っておりますが。

 見解を異にします。

平岡委員 見解を異にするというのは、どういうふうに異にするんですか。異にするのなら異にするで、なぜ、どういうふうに異にするのかというのをちゃんと言っていただかないと、議論が進まないじゃないですか。

麻生国務大臣 役人の一方的な話だけを聞いて、これまで七年もかかったという見解には、異にすると申し上げております。

平岡委員 そうだとすると、大臣が先ほど答弁されたような中身でこれまで批准がおくれてしまったということを、自分も本気でそう信じているということですね。

 それでは、ちょっと例が悪いかもしれませんが、松岡農水大臣の事務所費の問題とか光熱水費の問題で、松岡大臣が答弁しているということで、それで納得している安倍総理と同じですよ。私は、もっと麻生さんは率直に物事を考えられる人だと思いますから、そんな答弁をしていたのでは一般国民からは支持されないということをやはりしっかりと認識していただきたいなと思います。これは別に余談でありますから。しっかりと、本当に本質は何だったのかということをやはりよく自分の頭で考えていただきたいと思いますね。

 そこで、大臣が先ほど、しっかりとこの国際刑事裁判所の意義について述べられました。しかし、残念ながら、国連の安保理の常任理事国であるアメリカとかロシアとか中国は、まだ加入していないんですね。これは、大臣はどういう理由でこれらの国々が加入していないというふうにお考えになっていますか。

麻生国務大臣 これは、私どもの知っている範囲では、アメリカ、ロシア、中国、それぞれ入らない背景というのは少々異にしていると存じます。

 アメリカに関して言わせていただくと、海外で活動しておりますアメリカの軍人等々がICCで訴追されることを危惧というのが大きな理由だと理解をいたしておりますし、各国の決定は尊重するが、締約国とならないというアメリカの決定も尊重してもらいたいということで、ICCを弱体化させる意図は全くないという見解を示しております。

 ロシアは、同じくこれはICCの規程には署名をいたしておりますけれども、締結は行っておりません。今、ICCの規程に関して、いわゆる締結すべく作業中であるということを言ってはおりますけれども、その点に関しての見通し等々についてはいまだ明らかになっておりません。

 中国は、これは規程に署名しておりません。ただし、常設の国際裁判所の設立自体については支持ということで、ICCの活動を見守りたいとしておりまして、ICC締約国会議のオブザーバーとして参加しておりますし、今後ともしていきたいというので、それぞれの国によって事情は異なっておると理解しております。

平岡委員 それぞれの国によって事情が違う、確かにそのとおりなのかもしれません。大臣が調べられた、大臣が調べるように指示されたのかもしれませんけれども、アメリカ、ロシア、中国の加入していない理由というのは、比較的本音ベースがあるかなと、アメリカなんかについて言えば。それに比べると、先ほどの大臣の説明で、我が国の批准がおくれた理由というのは余りにも形式的過ぎるな、こういうふうに思いますね。

 やはり本質は何なのかということをもう少し議論しないと、アメリカとかロシアとか中国がなぜ加入していないのか、ではこれらの国々が加入するためにはどういう事情をつくっていかなければいけないのか、我が国としてどういう努力をしていかなければいけないのかというところがわかってこないんだろうと私は思いますね。

 そういう意味では、大臣のなぜこれまでできなかったのかという答弁については、やはり不満が残ると思います。

 それはそれとして、今、中国、ロシア、アメリカが加入していない理由について説明をしていただきましたけれども、さはさりながら、我が国としては、やはり国際刑事裁判所の存在の意義については非常に高く評価しているわけでありまして、これらの安保理の理事国がこの国際刑事裁判所に参加してくるということは大変大事なことだと思うんですけれども、大臣としては、これらの国々に対して加入を促進していくためにどういう努力をされようと考えておられますか。

麻生国務大臣 今、それぞれ国によって違うということを申し上げましたので、これはやはり、ICCが普遍的なものだというような意義というものを、普遍的な組織とするということが一番期待されているところなんだと思っております。日本としても、加盟した後は、こういったものがきちんとした普遍的な価値観を発揮できているという実態をつくる、もしくは証明できるというようなことが、より積極的説得力を持つのではないかと思っております。

平岡委員 ぜひ説得力のある努力をしていただきたいということをお願い申し上げたいと思います。

 それで、法務委員会との連合は実現できませんでしたけれども、法務委員会からわざわざやってまいりましたので、国内法制との関係を少し議論させていただきたいというふうに思います。

 条約の留保の話ですけれども、これは麻生大臣も、かつて共謀罪のときに、留保の問題で、留保とは何ぞやということを勉強していただいたんじゃないかなというふうには思いますけれども、実は、このICC規程には、百二十条で「いかなる留保も付することができない。」とされているんですね。そして、では我が国はこのICC規程について留保しないで参加できるのかという点が一つの問題になるんだろうと思います。

 そこで、私が聞くところによると、ICC規程の中に例えば文化財に対する攻撃というのがあって、その未遂罪についてもICC規程では処罰の対象になるというふうになっているわけでありますけれども、我が国の国内法ではそういうものについては処罰の対象にならないんだというような状況になっている。

 このことを考えてみると、どうも今回のICC規程を留保しないで参加するというのはちょっと難しいんじゃないかというふうに私は思うのでありますけれども、この点については、留保しないで済む国内法制ができているのか、この点について確認をさせていただきたいと思います。

松島大臣政務官 お答えいたします。

 現在この国会で審議していただいておりますのは、ICC規程と同時に国際刑事裁判所に対する協力等に関する法律という法律も一緒に議論していただいております。この法律に基づきます運用を行うことによりまして、ICC規程上締約国に要求されている義務を果たすことができると考えています。したがって、我が国は留保を付する必要はないというわけでございます。

 なお、ICCで処罰の対象とされている犯罪の中には、理論上は、おっしゃいましたように我が国の国内法で処罰できないものはございます。この点に関しまして、ICC規程は、その対象としている犯罪を各締約国の国内法における犯罪として処罰できるように法整備しろということを義務づけてはおりません。したがって、理論上我が国の国内法で処罰できない対象犯罪があるからといって、問題となることにはなりません。

 仮に我が国で処罰できない場合には、補完性の原則、このICC規程というのは補完性の原則というのが重要なのですが、条約と各締約国の国内の法律が補完し合うというこの補完性の原則によりまして、ICCが管轄権を行使することになっております。

 ただ、こう申しますと、しょっちゅう管轄権を行使されると大変なわけですけれども、ICCが実際に管轄権を行使いたしますのは、十分な重大性を有する事案についてのみでございます。十分な重大性というのは、ICCのこれまでの例でいいますと、何千人という人に対する殺害などを指しております。このことを踏まえますと、おっしゃいますような事案についてICCが管轄権を行使することは、実際には余り想定されません。

平岡委員 補完性の原則ということを言われましたけれども、逆に言うと、その補完性の原則が適用されるということになったときに、我が国の国民が、例えば先ほど指摘したような文化財への攻撃に対する未遂罪で、これは日本では犯罪になっていないから日本では裁けない、そうなったらICCが出てこなきゃいけないというような形で出てきたときに、果たして、法律に犯罪として規定されていないようなものでも我が国の国民がICCに連れていかれる、そういう形のことを我が国としてやるということですか。

 これだけならまだちょっと想定がしにくいのかもしれませんけれども、せんだって参議院の予算委員会で浅尾慶一郎同僚議員が質問されたときに、外務省から提出していただいた資料の中には、例の、人の盾というんですかの問題があって、例えば我が国の平和愛好団体とか愛好者が戦争反対ということで人の盾になっているというようなことがあったときに、これは、ICC規程の中では「文民その他の被保護者の存在を、特定の地点、地域又は軍隊が軍事行動の対象とならないようにするために利用すること。」というのがあって、これについては、国内法では、自己の意思に基づいて同意していた場合には処罰できないというようなことになっている、これは外務省の提出した資料。なっているんですよね。

 こういうようなときにはどうなるんですか。国内法では処罰できないけれども、ICC規程に書いてあるから、ICCの方から逮捕の要請とかがあったときにはこれにこたえていくということになるんですか、どうですか。

猪俣政府参考人 規程との関係での詳細の説明になりますので、私の方から答弁させていただきます。(平岡委員「詳細じゃない、基本的な部分」と呼ぶ)基本的な部分もございます。

 先ほど松島大臣政務官から答弁させていただきましたように、ICC、国際刑事裁判所の対象犯罪のほとんどのものは、国内法によって、殺人罪ですとか傷害罪、逮捕監禁罪等で処罰可能でございますけれども、今御指摘のあった、少なくとも外務省が提出した資料に書いてある四つの類型がございますが、このような我が国の国内法で処罰されない行為についてというのは、理論的にはあり得るということでございます。

 先ほど松島政務官が答弁されましたように、国際刑事裁判所が十分な重大性を有する事案であると認めるということがまさに管轄権を行使する場合になるわけでございますので、今挙げました類型の四つの行為、これが果たして、ICC規程に基づきまして、十分な重大性を有する事案ということでICCが管轄権を行使するかどうかという点での問題はあろうかと思います。

 そういうことを考えますと、仮に十分な重大性があるというようなことであったとすれば、ICC規程に基づきまして、今回国会に提出させていただいております我が国の法律案に従いまして、引き渡しを含みますICCからの協力要請に応じるということで考えているわけでございます。

 したがいまして、先ほど言いましたけれども、実際に管轄権を行使しますのは十分な重大性を有する事案についてということでございますので、そのような事態が発生することというのは実際には想定されないというのが政府の判断でございます。

平岡委員 ここは本当は理論的にちゃんとしておかなきゃいけないところだと思うんですよ。今の答弁の中で、実際には生じないだろうと想定されるからとりあえず国内法制化はしておりませんというのは、私は、やはり一つの対応なのかなというふうな気もしないでもないんですね。だけれども、理論的にはどうなのかということはちゃんと整理しておかなきゃいけない。

 その理論的なところを、さっき前半ちょっと言われたところでいくと、やはりこれは、我が国の国内法で処罰の対象になっていないものであっても、補完性の原則が適用されてICCにおいて処罰される、裁判にかけられて最終的には処罰されるという可能性が理論的にはあるんだ、そういう説明だったと思うんですけれども、それ自体は、どうですか、罪刑法定主義とか、あるいはさらに進んでいけば、憲法あるいは刑事訴訟法で定められた国内の適正手続、こうしたものとの関係で、私は問題が生ずるのではないかと。

 やはり国内法でもしっかりと何が処罰されるのかということについては明確にする必要があるとともに、場合によっては、我が国ではそんなことまではできないんだということであるならば、留保はできないにしても、解釈宣言とかそういうような形で明確にしておく必要があるんじゃないかというふうに思います。

 これはどっちかといえば外務省の方ですね。条約の留保と解釈宣言、やりましたよね、政務官。解釈宣言でもしっかりとやっておく必要があるんじゃないかというふうに思いますけれども、どうですか。

猪俣政府参考人 外務省でございますので、外務省の事務方から答弁させていただきます。

 まず、罪刑法定主義との関係の質問がございました。

 これはまさに、三月九日の参議院の予算委員会で御質問があって、法制局の長官の方からお答えしたとおりでございますけれども、国際刑事裁判所に関する条約でありますローマ規程は、集団殺害犯罪等の重大犯罪について、各締約国に対しまして国内法においてこれを犯罪とするまでのことは義務づけておりません。国際刑事裁判所からの請求に応じて引き渡し犯罪人の引き渡し等の協力をすることをもって足りるということにしているのがまず前提でございます。

 それで、罪刑法定主義でございますけれども、我が国において刑罰を科する場合の本来規定でございまして、国際刑事裁判所による処罰について直接的に適用があるものではございません。ただ、そうではございますけれども、我が国として、同規程に定めます義務に従って、強制力を持って引き渡し犯罪人の引き渡し等の協力を行うこととします以上、当該犯罪人の処罰にかかわる一連の手続の全体が、別途憲法三十一条が保障します適正手続の趣旨にかなうものであることは必要であると考えております。

 この点につきまして三点ほど指摘できることがあるということをそのときも答弁させていただいておりますけれども、一つは、ローマ規程上、国際刑事裁判所が管轄権を行使します犯罪は、集団殺害犯罪等の国際社会全体の関心事である最も重大な犯罪とされるものに限定されておりまして、その構成要件や法定刑なども明定されているわけでございます。

 二つ目は、その規程が規定しております国際刑事裁判所における手続につきましても、捜査、予審それから公判の手続を通じまして、詳細、適正に定められているということでございます。

 三つ目が、我が国における引き渡し犯罪人の引き渡し等の協力の手続についてでございますけれども、これはまさに、今、国会に提出させていただいております国際刑事裁判所に対する協力等に関する法律案の定めるところによることになるわけですが、そこでは、国際刑事裁判所の判断を尊重しつつも、我が国の裁判所による司法審査を義務づけておりますし、それ自体の適正手続も確保されておるわけでありまして、このようなことを考慮いたしますと、我が国による引き渡し犯罪人の引き渡し等の協力を含めて、一連の手続の全体は憲法三十一条の保障する適正手続の趣旨にかなうものと言うことができる。

 したがいまして、さらに言いますと、我が国は、このような協力を行うための前提としまして、我が国自身が集団殺害等の重大犯罪のすべてを国内法によっても処罰することができるようにしなければならないというまでの必要性はないということが、先ほどから説明させていただいている答弁の趣旨でございます。

平岡委員 ちょっと長い答弁で、今全部正確に理解できていない可能性があるので、議事録をちゃんと読み直して、しっかりとまた質問をさせていただきたいというふうに思います。そういう意味では、この点については、私としては、私の見解を出すということについては留保させていただきたいと思います。

 ちょっと別の関心事があるので、そっちの方にとりあえず移ります。

 法案の第五十五条に、証人等買収罪の規定があるんですね。これは共謀罪を審議する法案の中でも議論されたわけでありますけれども、我が国の今までの裁判における証人と弁護人の関係とか、そういうような関係からすると、これは裁判を萎縮させるような形になってしまうんじゃないか、非常に問題であるという指摘が当時もされておりました。

 例えば、こういうふうなことを言っていますね。刑事事件に関して証人等を買収すること自体を犯罪化することは、その必要性が明確でなく、その適用の仕方によっては刑事弁護の実務に萎縮効果をもたらすことが必至である。例えば、証人の自宅を避けて喫茶店や飲食店で打ち合わせ等が行われた場合、これは弁護士が打ち合わせするんですけれども、証言のチェックのために時間をとってもらった証人のために交通費や日当、飲食の費用を弁護士が支払うのは、むしろ社会的な常識の範囲であると考えられてきた、こういうような位置づけになっていると。今度、規程をそのまま国内法制化するとはいえ、このことが逆に今の一般の刑事事件にも影響が及んでくるということも心配されるということであります。

 そういう意味でいくと、この証人等買収罪について、設置するのは適当ではないというふうに思いますけれども、この点についてはどうですか。

水野副大臣 証人等買収罪については、委員今御指摘のとおり、現在継続審議になっております犯罪の国際化及び組織化並びに情報処理の高度化に対処するための刑法等の一部を改正する法律案にその創設を盛り込んでおりますし、今回の法案についても規定するものとしたものですけれども、これは、ローマ規程、いわゆるICC規程の第七十条の四(a)により、各締約国はこういうような法整備を行う義務を負っているわけでございます。

 そして、証人等買収罪の保護法益は、刑事手続において、一般に証言や証拠物の内容等が買収によりゆがめられていないこととこれに対する社会一般の信頼でありますが、このような法益を刑罰をもって保護することには十分な合理性があると考えられます。

 また、今回犯罪とするのは、証人等に対して、一つは、証言しないことまたは虚偽の証言をすること、二つには、証拠を隠滅、偽造、変造することまたは偽造、変造の証拠を使用することという、現行法上も偽証罪等の犯罪に当たり得る行為を行うことの報酬として金銭その他の財産の利益を供与する等の行為ですので、このような行為を犯罪とすることも十分な合理性があると考えております。

平岡委員 今言われたように、全部が問題だと言っているんじゃなくて、証人等買収、特に、証言をしないことについて金銭その他の利益を供与するといったような、そのところが問題になっているわけですね。今の説明では、私が指摘したところについては全く話が通っていないと思いますね。

 一般の法律、国内法の世界でも、証言をしないことについて金銭その他の利益を供与するということについては、これは処罰の対象になっているんですか。

水野副大臣 そういうことでございます。

平岡委員 ちょっと私の理解とは違いますけれども、そこはちょっと私も確認した上でまた質問させていただきたいと思います。

 私が期待していた答弁というのはそういう答弁じゃなかったんですね。どういう答弁を期待していたかというと、附則の第一条の施行期日のところに、五十五条、五十六条の規定については、先ほど言われた共謀罪の法律の施行の日またはこの法律の施行の日のいずれか遅い日から施行すると書いてある。つまり、あちらの方でしっかりと議論されてどういう取り扱いにするかということが決まらない限りは、この証人等買収罪の規定は適用させないんだ、こういうことを政府として提案している、私はこの答弁を期待しておったんですけれども、そうじゃないんですか。

三浦政府参考人 現在御審議いただいております国際刑事裁判所に対する協力等に関する法律における五十五条、五十六条の罪につきましては、ICCの事件についての証人等買収を処罰するということでございますが、先ほど副大臣の方で御答弁されたのは、この罪とともに、そのベースになっておりました、現在御審議いただいている条約刑法の罪、それらを詰めて、合わせた場合には、ICCの手続における犯罪だけでなくて、我が国の刑事事件についての証人等買収も処罰の対象になるという趣旨であったかと考えております。

 その上で、御指摘の附則の経過規定と申しますか調整規定がございますので、あくまでも、条約刑法の関係で、条約刑法が成立してそちらの方が施行されるという段階になってこちらの方の罪についても施行される、そういう関係になっております。

平岡委員 要するに、私が言ったことは間違っていないということですよね。何かいろいろ前段階が長かったので何が言いたいのかよくわからなかったんですけれども、私が期待していた答弁は、そのとおりですということでいいんですね。

三浦政府参考人 条約刑法の成立を前提とするという点で、そのとおりでございます。

平岡委員 条約刑法の方は、これから、どういう段階なのか知りませんけれども、まだ審議が終わっていない案件でございますから、そちらの方でしっかりと議論するということになるのかもしれません。そういう意味では、五十五条がそのままぱっと施行されるということではないということで、議論はこれからである、そういう前提で考えていきたいというふうに思います。

 ところで、今言ったもう一つの五十六条の方、これも共謀罪のときにかなり議論があった話でありますね。組織的な犯罪に係る証拠隠滅等ということで、団体というのがどんな団体かというので議論されましたね。法務委員会でもしっかりと議論されて、組織的犯罪集団というふうな言葉で、今や与党の方もそういうふうに直していこうというのがもう既に意思決定がされているような段階の中で、また古めかしい条文がそのままここに登場してきたということであります。

 ここでいう団体、括弧の中で定義はしてありますけれども、「共同の目的を有する多数人の継続的結合体であって、その目的又は意思を実現する行為の全部又は一部が組織により反復して行われるものをいう。」こう書いてあって、これはまさに現行の組織的犯罪処罰法の中でもこう書いてあるんですけれども、これが議論になったんです。団体というのは、一体、組織的犯罪集団に限定されるというふうに考えるのか、それとも、一般に合法的な活動をしている労働組合とか会社とかそういうようなものも含まれる概念なのか、これが議論になったんですけれども、これは、前のままの、議論を踏まえない法案が出てきているので、大変私は心外なんです。

 この団体というのは、先ほど私が質問した組織的犯罪集団に限定されるのか、それとも、合法的に活動している団体、労働組合とか会社なんかも含まれるということなのか、どっちでしょう。

水野副大臣 法案五十六条の団体の定義というのは、委員が今おっしゃられたとおりでございまして、そしてこの法案の第五十六条の罪が成立するのは、ICC規程に定める罪が、団体の活動として当該行為を実行するための組織により行われた場合または団体の不正権益を維持する等の目的で犯された場合において、その罪について、国際刑事裁判所、ICCが管轄権を行使する刑事事件に関して証拠隠滅等の行為がなされた場合です。

 それで、御質問の、労働組合とか会社とか、そういう正当な目的で活動している団体については、ICC規程に定める罪が、当該団体の活動として、しかも構成員結合の目的がその罪に当たる行為を実行することにある組織によって実行されるということは想定されません。また、このような正当な目的で活動している団体が不正権益を有することも想定されません。したがって、このような団体について法案第五十六条の犯罪が成立することも想定されません。

平岡委員 その答弁は法務委員会でもされてはいるんですけれども、もしそういう答弁でいかれるというのであれば、法務委員会での議論を踏まえて、与党が修正案あるいは修正試案というのを出してここのところについて直しているんですから、それを踏まえた法案をちゃんと提出されたらいかがですか。どうですか。

水野副大臣 条約刑法のときも、この議論、団体のいろいろな議論があったのは承知をしておりますし、それに対して委員がおっしゃるような議論もあるんでしょうけれども、この五十六条の団体の定義というものは、今答弁したようなことがあります。つまり、普通に活動している会社とか労働組合は対象にならないということを国会答弁などで明言させていただいておりますので、あえて法文上の修正とかをしないでも、このとおりでも大丈夫なんじゃないのかなというふうに考えております。

平岡委員 提出したものを直すというのはなかなか勇気が要る話ですから、できるとは思っていませんけれども。

 これも、いずれにしても附則の一条のところで、五十六条の規定、これはしかし、五十五条に該当する行為に係る部分に限ると書いてあるのでちょっと制約はされてしまうのかもしれませんけれども、五十六条の規定そのものの施行が後送りになっているという形になっているので、これもまた共謀罪の審議等の中でどうあるべきかというような話というのは多分行われるんだろうと。そういう意味では、ここは先送りになっているということであろうと思いますので、その点についてはそこでしっかりと議論するということとして、我々としては見解を留保しておきたいというふうに思います。

 そこで、るる国内法の話をしてきたわけでありますけれども、どうもイメージとしてよくわからないんですよ。我が国は、基本的には国内法の世界でいろいろな処罰の対象になっているものがあって、そういう処罰の対象になっているものについての行為が行われれば国内法で処理される、こういうことになるんだろうというふうに思いますけれども、ICCへの加盟に伴ってつくられるこの法律が適用される場面というのか、幾つか典型的な、こういう場面にはこの法律がこういうふうにきいてくるんだというのをちょっと例示として挙げていただけますか。そこの中に何か問題が潜んでいるかどうか、その点を確認していきたいと思いますので、例示を挙げていただきたいと思います。

松島大臣政務官 例示ということでございます。

 例えば、外国で発生した集団殺害犯罪に関して、外国籍の被疑者が日本に逃走してきた場合、そうした場合に、我が国において当該被疑者を捜査、訴追、今までですと国内法では訴追しない場合もあり得ます。外国で犯罪をした外国人が被疑者で、犠牲者も外国人、こういう場合に、ICCから日本に対してその当該外国人の被疑者の引き渡し請求があれば、日本は、ICC協力法に基づいて、この外国人である被疑者の引き渡し手続をとることがあり得ます。

平岡委員 それ一つだけ言われたんじゃ、ああそうか、日本人は関係ないんだな、これは日本人に適用される法律じゃないんだなというふうにちょっと思っちゃうんですけれども、日本人がかかわるような場合で何かあるんじゃないですか。これはもうきのうしっかりと事前に、どういうふうに日本国民にかかわりがあるのかというのをちゃんとわかりやすくしてほしいということで言ってあるので。お願いします。

松島大臣政務官 日本人がということで申しますと、我が国の、日本の国内法では、殺人罪等の重大な犯罪を国外で行った日本人については、処罰をすることが可能でございます。

 そのため、こういうことがあるのかどうかわかりませんが、例えば、海外で傭兵として活動し殺人を行った日本人が日本国内に戻ってきた場合、こういうとき、我が国で処罰することが可能となっております。(平岡委員「我が国で処罰することが可能、それは国内法に基づいて」と呼ぶ)そうです。この場合は可能です、国内法では。

 したがって、仮に当該日本人が海外で行った殺人がICC対象犯罪に該当する場合であっても、我が国において当該日本人を捜査、訴追した場合には、ICCが管轄権を行使することなく、我が国がICC協力法に従って日本人をICCに引き渡すことはなく、これは日本の中でやります。

平岡委員 今の例は、この法律が適用されないケースを言っているんですよ。されるケースを聞いたんです。

 例えば、傭兵として働きました。傭兵というのは、例えばその国が戦争をする。戦争そのものは犯罪じゃないんですよ、その国においては。そうしたら、人を殺すことが英雄とされる戦争においてたくさん人を殺して、たくさんの勲章をもらって日本に帰ってきた。この人は日本の国内法で訴追されるのかといったら、そんなことは多分ないでしょうね。

 そういうようなケースだけれども、例えばICCの方で考えたときには、その戦争行為がある意味では非常にICCの規程に反するような行為であったというようなときには訴追される可能性があるのかなというふうにもちょっと思うのでありますけれども、どうですか。

猪俣政府参考人 今の最後に挙げられた例でございますけれども、日本人の傭兵がどこかの国あるいはだれかの団体と行って向こうで殺害を行ったということになりますと、当然これは、国外犯規定で、日本に帰ってくればやはり殺人ということで処罰の対象になるということが想定されます。仮にそれが処罰されなかった場合ということを、ちょっと想定しにくいんですけれども、そういう状況があったという、全くの仮定の、万が一の話ということになるとすれば、理論上はあり得るかもしれません。ただし、通常であれば国外犯規定によって当然処罰されるということですので、我が国の国内法によって処罰される例であるということだと思います。

平岡委員 今のは多分おかしいですね。もうちょっと詰めてくださいね。

 例えば、自衛隊がイラクに行って何か正当な業務をしていて人を殺しちゃったというようなときに、これは、国内法に照らせば、人を殺したんだから、殺人だからといってやることは多分ないんですよね。それと同じように、外国の軍隊に雇われて働いた日本人が人を殺したからといって、これが殺人罪になるはずがないんですよ。だから、ちょっと詰めが甘い。ちゃんとそれは整理しないと、こんな国内法では、私は、ちょっと危なくて怖くて、とても承認できないですよ。

猪俣政府参考人 傭兵と日本の自衛隊が国内法に基づいて派遣されて活動する場合と、当然違うと思いまして、正当な派遣行為に基づいて活動している自衛隊と傭兵でやっているというのは立場が違うことでございますので、先ほどの私の答弁は何ら問題ないと思っております。

平岡委員 ちょっと、私の答弁というのは気になるので、政府としての見解を出してください。

 傭兵といったっていろいろあると思うんですよ。例えば、私もわかりませんけれども、個人的なグループに雇われているようなケースもあれば、フランスの傭兵というのは何か正規な軍隊みたいな扱いとして、フランスかどうかちょっと忘れましたけれども、そんなものも多分あるわけですね。そういうところに行った人がそこで人を殺したら犯罪になるんだといったら、もう多分傭兵の仕組みというのは成り立たないんじゃないかという気がします。

 いずれにしても、今やり合っても時間がないので、ちゃんと政府としての見解を示していただくこと、これは外務大臣、約束してください。

麻生国務大臣 平岡さん、いつだったか、あれは「モロッコ」だったっけね、あの外人部隊の、イラクの部分で随分テレビのニュースになって、そしてそのまま行方不明になったケースがあったのは。(平岡委員「前にフランスの傭兵だった日本人というのがありましたね」と呼ぶ)結構ほかにもおられるという話だったので、ほう、時代は変わったなとあのとき思った記憶があるんですけれども。

 今言われましたように、どういうケースがあるかというのは、いろいろ細目、全部もう少し詰めてみぬとわからぬところがあろうと思いますので、きちんと答弁させます。

平岡委員 大臣にお約束いただいたので、私の質問はこれで終わります。

山口委員長 次に、鷲尾英一郎君。

鷲尾委員 民主党の鷲尾英一郎でございます。

 大変失礼をいたしました。ちょっと水をこぼしてしまいましたが、質疑をそのまま続けさせていただこうと思います。外務委員会で質問するのは初めてでございまして、幾分緊張しているのではないかというふうに私自身思う次第でございます。

 それでは、質疑に入らせていただきたいと思います。

 ICCは、個人の国際犯罪を裁く常設の国際裁判所ということでございますが、今回日本が加入するということは、私自身はよいことであるというふうな認識でおるところでございます。

 しかし、加入国が現在百四カ国ということで、世界のうちの約半分でございますが、加入した場合の日本の財政負担というのはいかほどになるのかというところをお答えいただけたらと思います。

麻生国務大臣 お答えします。

 初年度は約三カ月弱になろうと思いますので、入りました平成十九年度は、後半の部分の約七億二千万ぐらいになると存じます。それから、通年でいきますと約三十億ぐらいになるであろうと思っております。これは国連の分担金の比率やら何やらで割り振ってこられますので、正確にこれという額がきちっと、何千何百何十万と決まっているわけではございませんので、今の段階として、約三カ月弱で約七億二千万ぐらいかな、初年度に関してはそう思っております。

鷲尾委員 ありがとうございます。

 続いての質問ですけれども、日本は北朝鮮による拉致被害者が存在するという重大な問題があるわけですが、例えば辛光洙とか、こういう北の工作員の犯罪を裁くためにこのICCというのは有効に機能するのでございましょうか。

麻生国務大臣 鷲尾先生御存じのように、今言われたように、北朝鮮の辛光洙の場合は人の強制失踪というところに当たるんだと存じます。したがいまして、私どもとしては、人の拉致事件というものの解決には資するものだと思っております。

 ただし、ICCの管轄権というものを行使するに当たりましては、幾つかの条件がある中で、これができましたのが二〇〇二年七月一日ということになりますので、それ以前にさかのぼることはできません。したがって、少なくとも二〇〇二年七月以降でなければならないというのが一点。

 二つ目は、いわゆる被疑者、この場合は鷲尾先生の言葉をかりれば北朝鮮ということになりますが、北朝鮮という国もしくはその被疑者の国籍がICCの締結国になっていなければならぬという条件がございます。その意味では、今、御存じのように北朝鮮はこの規程を締結しておりませんので、日本人の拉致事案という事件が直ちに今回のこのICCで裁かれることになるわけではないというように御理解いただければと存じます。

 ただ、これがいろいろな形で一種の圧力になっていくことは確かだろうとは思います。直ちにこれが行使できるというわけではございません。

鷲尾委員 私の選挙区が新潟なもので、引き続いてちょっと拉致に関する質問をさせていただきたいというふうに思うんですけれども、よく報道等で、北朝鮮をならず者国家とアメリカも言いますし、官房長官もそういうふうに言明されることも多うございますが、このならず者国家というのはどういう意味なのかというところを改めてお聞きしたいと思うんです。

麻生国務大臣 これは、ジョージ・ブッシュでしたか、あのならず者国家ということを最初に使ったんだと思いますが、このならず者国家がアメリカの中においてどのような意味で定義がされているかというのは定かではございません。また、官房長官というのは塩崎官房長官だと思いますが、使われたということは聞いておりますけれども、それは多分アメリカの大統領のまねをそのまま言っただけであって、その内容がきちんと定義できているというように私自身は理解をいたしておりません。

鷲尾委員 下村先生、この点は、定義というのはどういうような格好になっているんでしょうか、ならず者国家の意味。

下村内閣官房副長官 お答えしたいと思いますが、今麻生外務大臣からお話ございましたように、定義というのはアメリカにおいても定まっていないと思いますし、そういう中で、日本政府の立場からお答えできるような内容ではないのではないかと思っております。

鷲尾委員 なるべく感覚的な言葉というのは使わないでいただきたいなと思うのでございますが、私自身思いますのは、このならず者国家というのは、恐らく北朝鮮が日本に対してある程度の侵略的な意図を持っておるということなのではないかなというふうに感じておる次第でございます。政府の方でも、使うのであればぜひひとつ検討していただけたらと思います。

 続きまして、拉致問題について、これが六カ国協議の議題に、積極的、主要な項目として上がらないのはなぜなのかというふうなことをお聞きしたいんです。

麻生国務大臣 今、上がらないという言葉を言われましたけれども、これまでの六者会合においてこの拉致問題というものはほとんど全会議で取り上げられてきております。

 そして、これは日本の努力ということもあったんだと思いますが、本年の二月に六者協議の共同声明によりますいわゆる成果文書というのが出ておりますが、その文書の中においても、日朝関係の中においては、非核化とか米朝関係のほかにも、六者会合の枠組みの中で、二者だけ、バイだけじゃなくて、六者協議の枠組みの中でこの拉致問題というのは明確に位置づけられております。そして、六者会合の枠組みの下で、日朝国交正常化のための作業部会というのが正式に設置をされております。

 したがって、拉致問題というのは、この六者会合の中で正式に位置づけられているということがまず第一点であります。

 これを受けまして、去る三月の七日、八日、六者協議の中での第一回ということですけれども、第一回の日朝作業部会というのが開催されましたのは御存じのとおりです。その内容につきましては、残念ながら成果を得られたわけではありません。ただ、我々としては、一年半前にやらせていただいた日朝交渉の中において双方が出した言い分というのに関しては、うちは全く同じことを言いましたので、変わらないということは双方確認をされたということになっております。

 そして、その後、六者会合の全体会議の中において、日本としては、六者会合の中の一作業部会でありますこの部会の報告は、日朝の交渉過程はすべてみんなに報告をしておりますので、その席におきまして、アメリカとたしかロシアだと思いますけれども、少なくとも、日朝交渉というものを進展させるということは朝鮮にとっても利益ではないかというような話をアメリカ側からは述べておりますし、六者会合の段階の中において、いろいろな国々から公式、非公式にその種の発言が明確に北朝鮮に伝わったということは一つの成果だったろうと思っております。

 いずれにいたしましても、核の放棄と同時に、日本にとりましてはこの拉致問題というのは非常に大きな問題だと思います。新潟と言われましたけれども、日本海側は総じて皆この話は敏感で、太平洋側とは大分意識が違うなというのは行くたびに私はよくそう思わせられるんですけれども、非常に敏感な感じが私もいたします。過日も新潟へ行ったときに同様な感じを、寄居中学でしたかな、行ったとき、あの松原のところなんか何となくどんよりしていて、ちょっと雰囲気が暗いですわな、つくづくそういった感じが私もしましたので、感情論としてもなかなか納得しがたいところが、これは御家族の場合は特にそうであろうというのはひしひしと伝わるところです。

鷲尾委員 ありがとうございます。

 ただ、六カ国協議の参加者でも、当然拉致問題に対する温度差というのがあろうかと思うんですが、この温度差を日本と同じ水準にまで上げていくという努力も大変これは必要になってくると思うんです。

 この六カ国協議において、日本の拉致問題についての取り組みの姿勢といいましょうか、先ほど、アメリカとロシアから明確に北朝鮮に対してもコメントがあったという大臣の御発言もありましたけれども、その他の参加者含めて、そしてまたそのコメントのあったアメリカ、ロシアも、別に北朝鮮に対する日本の感情を理解せいという話ではなくて、北朝鮮が侵略的な意図を持っているんじゃないかというところで核の問題含めて六カ国協議で議論されておるんでしょうから、そういう意味におきまして、侵略的な意図をくじくということで、やはり日本の外交努力によってより参加者の温度差を詰めて、できるならば日本と同じぐらいのレベルまで高めないといけないというふうに思うのでございますが、これから拉致問題を解決するに当たってのそこら辺の大臣のお考え、何が重要だと思われますか。

麻生国務大臣 鷲尾先生、今までの経緯を見てもおわかりのとおりに、これは対話だけではらちが明かぬということになろうと思います。これはどう考えても圧力なしで対話だけで話が進まないというのは、これまでの交渉の過程を見ても明らかだと思っております。

 それから、一九九三年のノドン、九十何年のテポドン、そして二〇〇六年のテポドン2と、三回いわゆるミサイルの実験を行っております。このミサイル、一発目のときはほとんど何も世界じゅう反応なし、二回目のところは、たしか私の記憶では議長声明だけで終わり、三回目のときも、今度は共同何とかというのをやろうとしたんですが、昨年の七月、絶対これはだめということで、制裁を科すべしということで、安保理の中で日本が大いに頑張って、結果として制裁という決議を決め、それは約十一日かかりましたけれども、今回の十月のいわゆる核実験と称するものの中におきましては、六日間で結論を得るということになりました。

 そういった意味では、北朝鮮の侵略的意図というものに関しては、国の意図というのはなかなか判別しにくいところでもありますが、少なくともその能力があることは、間違いなくノドンとかテポドンとかいうのにレベルを上げてきておる、しかもそれに核弾頭をつけるというところまでやろうとしているという意図は、我々としては酌み取れるところでもあります。

 日本としては、この種の話はイランの話よりよほどこちらの方が深刻ではないのか。地理的条件からいけば西ヨーロッパに近いものですから、そちらの方に関心もあるし、国としても、人口の大きな国でもありますし、かつてのペルシャ帝国でもありますので、いろいろな意味で、アラブの国々に限らずヨーロッパの国々も脅威というものは大きいけれども、この北朝鮮の場合の話についても、これは我々にとっては極めて地理的に近いこともあるし深刻なんだという点は、昨年の六月のモスクワのG8外相サミットで日本だけが主張しました。アメリカがそれに同調、それ以後、結果的には他国もこれにある程度同調して、一カ月後にテポドン、そして四カ月後には核実験ということになってきておりますので、そういったことは我々が常にウオーニング、警告を発しておりました部分が、予想したもしくは警告を出していたような形が情況証拠としてどんどん進んでおりますので、日本が言っているのはうそでも何でもない本当の話だったということは、現実問題として他国に理解をされるようになりつつある。それが国連の総会におけるアブダクション、拉致という言葉が正式に採用されるに至っていった大きな背景だとも思っております。

 今後ともこの点につきましては、我々緩めるわけにはいきませんので、きちんとその都度、相手側に我々の意図を言い、そして圧力をかけ続けていく。同時に、圧力だけでやって、我々は何も会話の窓口を閉じたわけではありませんので、三月七日、八日、向こうは一方的に打ち切っておりますけれども、我々としては、当然六者協議の場等々で北朝鮮と交渉する、話をする用意があるということはきちっと見せておると思っております。

鷲尾委員 大臣、その圧力として具体的にどういうことが考えられるかというところについても、一言コメントをいただけたらと思います。

麻生国務大臣 鷲尾先生、国連の制裁が決まりましたその後、日本だけ独自の制裁として、新潟に関係するところでいえば万景峰初め、その他のこれまで日本の港に寄港しておりました北朝鮮籍の船の寄港というのは現実的にとまっておりますし、人の往来もとまる等々、いろいろな形での圧力というものはそれなりの効果は確実に上がってきている。これはもうアメリカ側も同じ認識ですし、私自身としても、今回のBDAの話と万景峰の話はかなり大きなものになっている、そのように理解をいたしております。

鷲尾委員 ちょっと話をかえまして、日本の周り、北朝鮮以外にも中国、ロシア、そしてアメリカもこれは核保有国でございまして、北朝鮮の核ミサイルという話になったときには急激に世論も危ないということで盛り上がったと思うんですけれども、大臣は、北朝鮮以外にも中国、ロシア、アメリカと、核保有国に囲まれているという現状についてどういうふうにお考えですか。

麻生国務大臣 御指摘のあります、隣に、東太平洋隔ててアメリカ、日本海隔てて中国そしてロシア、今幾つかのそういった御指摘のありましたところなんですけれども、基本的には、これは北朝鮮とちょっと同列には扱えないところは、いわゆる核兵器不拡散条約、通称NPT条約締結国の核兵器保有国。

 北朝鮮は持っているというふうに言っていますけれども、本当に持っているかどうかは他の国は認めていないというのが現状でもあります。そういった意味においては、北朝鮮の新たな核保有ということは、東アジアに限らず、少なくとも国際社会における平和と安定とかいろいろな意味で、核兵器の技術が拡散する可能性というものも非常に大きな脅威だと思っておりますので、そういったことに関しては、我々としては断じて容認できないということであろうと思います。

 少なくとも、そういった意味で、アメリカ、中国、ロシア等々核兵器保有国に関しましては、核兵器の廃絶というものを主張しております日本としては、核軍縮の話の国連総会への提出等々いろいろやっておりますけれども、そういった具体的措置というものは今後ともとり続けていくことは必要だろうと思っております。

鷲尾委員 北朝鮮の核実験の話があったときにライスさんが来られて、アメリカの核の傘は安全だという話をしておられたと思うんですけれども、それと同時に、非核三原則の話が改めて政府から発表されました。

 例えば、極東米軍が横須賀だとか佐世保とかに核を持ち込んでいる可能性というのもあると思うんですけれども、ここら辺は、しっかりと非核三原則にのっとってモニターはされているんでしょうか、持ち込ませずのところで。

麻生国務大臣 これは日米安全保障条約上のやはり約束ということになろうと思いますが、核兵器が持ち込まれる、いわゆる持たず、つくらず、持ち込ませずのところの持ち込まれる場合においてはすべて事前協議の対象になるということになっておりますのはもう御存じのとおりで、これまでアメリカ側の方から今日まで、核の持ち込みについての事前協議が日本の政府に対してなされたことは過去に例はありません。したがって、一貫してこの点は確かでありまして、もし仮に言われた場合は日本政府としては拒否ということで、この立場も一貫しております。

 アメリカ政府としても、この点に関しては、日本の状況、また国内情勢というのを十分に理解しているところでもありますので、これまで事前協議というものが行われておりませんので向こうから核を持ち込むというようなことはなかったというように、疑いを有しておらないという立場であります。

鷲尾委員 大臣のお話ですと、言われたら拒否する、言われなければどうなっているかわからないという認識でよろしいですか。

麻生国務大臣 両国の信頼関係に基づいてやっておりますので、向こうがその種の事前協議がない以上、少なくとも持ち込まれていることはないという立場であります。

鷲尾委員 非核三原則ということで、政府としてはその原則をしっかりと発表しているわけでございまして、これに抵触する行為というのはやはり少なくともしっかりとモニターしなきゃいけないというふうに思うんです。それすらモニターがなされていないようですので、されていないとして、もし持ち込まれていたら何を意味するかといったら、非核三原則というのは実態としては二原則だなということだと思うので、その点はぜひともどういう実態になっているのかというところを調べてもらいたいなと思うんです。これはどうですか、大臣。

麻生国務大臣 これはずっと申し上げ続けているとおりなんだと思いますけれども、少なくとも核というものが国内に持ち込まれていなければ核の抑止力は作動しないのか、核の抑止力は効果がないのかといえば、そんなことはないのであって、今は技術も進歩しておりますし、そういった確率は昔に比べてさらに減っているというのが私どもの基本的な見解であります。

 したがいまして、向こうが持ち込ませてもらうような事前協議がなされていない以上、我々として、核が持ち込まれて、非核三原則の三番目の原則に反するというような考え方をしておりません。

鷲尾委員 アメリカの言うことをすべて信じるというのも、ちょっと卑近な例ですけれども、昨年、BSEの問題が発生したとき、米国産牛肉の輸出基準が、日本の方で策定したにもかかわらず、それをアメリカの方で一方的に破ったという話もございました。アメリカのというと、アメリカの業者の話ですけれども。

 私は、同盟国だからといって、言われていないから全部信用するというような態度は対等ではないなと思うんですが、大臣、アメリカとの同盟関係をこれから対等にしようというふうにいろいろなところで多分お考えだと思うんですけれども、その考えと今の御発言は若干矛盾するのではないかと思いました。

 では大臣、私の言葉についてコメントをお願いします。

麻生国務大臣 鷲尾先生、同盟関係というのは信頼がなかったら成り立ちません。それは基本です。したがって、その信頼をしない上で同盟をしようなんて、最初から同盟なんかしない方がいいです、私は基本的にそう思いますので。同盟というのは物すごく大事だ、信頼関係というのは。

 だから、その信頼関係を今日まで裏切られたことがないということで、BSEと一緒に比較されましたけれども、BSEの話とこの話とを一緒にされるのは……(鷲尾委員「いや、だから」と呼ぶ)まだ答弁中ですから、私の方に権限がありますので、済みません。そこの順番は、外務委員会以外でも皆同じルールですから。

 BSEと同じにされましたけれども、BSEの場合は、これは日本のルールが、向こうが故意にやったとは思いませんが、間違って入ってきたら、そのとおり発見されて、除外された、摘出されたということであろうと存じます。少なくとも今回の、BSEの話と非核三原則の話と一緒にするのは、ちょっと無理があるかなという感じはいたします。

鷲尾委員 確かに一緒にするのは無理があったかもしれません。

 しかし、同盟関係というのは、しっかりとその同盟関係が守られているかどうかというところをモニターしない限りは、本当の意味での信頼関係というのは醸成されないのではないかなというふうに思います。ですから、同盟関係があるからそこには信頼があるんだ、信頼があるから同盟国の言うことは何でも信じるというのは、言葉は悪いですけれどもちょっとのうてんきな話であって、同盟関係が結ばれていたとしても、やはりしっかりと相手の行為をモニターしながら、それは違うじゃないか、同盟国としておかしいんじゃないかという態度が、私は大臣のおっしゃる対等の立場での同盟ということにより近いんじゃないかなと思いますが、いかがですか。

麻生国務大臣 同盟関係があっても、きちんとして、常にいろいろ意見を交換し、率直な意見を言い合うということは、同盟関係というものをより確固たるものにする上でも極めて重要な要素、私も全く鷲尾先生と同じ意見であります。

 その点に関しては、まず信頼と申し上げているのであって、はなから信頼なしで同盟なんというのはやらない方がいいと申し上げているのであって、同盟関係を結んだ後もその同盟が、もしくはその条約がきちんと履行されていくためには、会社でいえば契約と同じですから、その契約がきちんと、買ってくれたけれども、手形はもらった、その手形が落ちるかどうかわからぬという話で、ずっと信頼はできないというのじゃなくて、きちんと履行されるというような信頼関係をつくり上げておくというのはすごく大事なことだと思いますので、率直に意見を言い合うのは極めて大事だというのは、私も全くそう思います。

鷲尾委員 いや、その信頼関係のために、日本がせっかく核廃絶ということでやられておる中で非核三原則をうたっているにもかかわらず、アメリカが同盟国に対してこっそりと持ち込んでいる可能性もこれまた否定できないわけですから、これはしっかりとモニターして、実際に信頼に足る関係かどうかというところを、信頼しているのであればちゃんとその信頼の上で、アメリカさん、持ち込んでいないですねということだって言えると思いますけれども、大臣、どう思いますか。

麻生国務大臣 これはこれまでもいろいろな機会に、遠くは岸会談でしたか、あの辺からスタートしたんだと思いますけれども、これまでもそういった話が行われてきたというのが経緯でありまして、それ以後もいろいろな形で、向こうがないと言ってもあるかもしれぬということで、例えば原子力空母が来たときにはそれをチェックする等々いろいろ行われておりましたけれども、その種の兆候はなかったというのが、第三者的に調べた上でも結論は出ているんだと理解しております。

鷲尾委員 済みません、それではちょっと質問をかえまして、日本はNPT体制に入っているわけですけれども、このNPTに入っていることのメリットとデメリットというのを教えていただけたらと思います。

麻生国務大臣 NPTに入っておりますのは、これはもう御存じのように、ノンプロリファレーション・トリーティー、通称NPT、核不拡散条約というものに入って、いわゆる核をつくるというその技術が拡散するほどの場合、これは国じゃなくていわゆるテロリストに拡散する等々が最も恐れるところでもあろうと思います。そういった意味では、こういった核兵器国というものが、そういった核の技術が拡散するということを抑えるということは、これは我々にとりましては、軍縮という面と同時に不拡散の面から考えても、国際社会における安全保障上、不拡散というところのあれの方がむしろ大きいぐらい、これが変な形でテロリスト等々の手に渡るのを最も恐れているところでもありますので、私どもとしてはその点が第一点。

 それから、NPTに締結をいたしております、そういった立場にありますので、日本としては原子力の平和利用という形で、原子力発電所等々を初め、私どもとしては原子力の平和利用というものの利益を享受しているというのが大きな点だと存じます。

鷲尾委員 原子力の平和利用と代替でNPT体制に入っているのではないかなというふうに思いました。そのNPT体制に入るとかいうことも含めて、一度ゼロベースで考えるということを含めて、国際間の中において日本が外交力をどういう、例えば外交のカード、今は拉致問題に対しては経済制裁、圧力としてどういうものがありますかと大臣にお聞きしたら、大臣の方では、国連の制裁決議もやっている、日本独自で経済制裁をやっているというお話がありました。

 それ以外に日本がどういうことで、例えば拉致問題解決のために圧力をかけられるかというところで、私も明言はしませんけれども、いろいろな意味で、今までの国際上の、NPTもそうですが、ゼロベースで一度考えて、拉致問題解決のためにはどうするかというところをぜひとも一度御検討願えたらなというふうに思います。

 質疑時間が終了いたしましたので、最後のコメントとさせていただきますが、横田代表が御退任されて、もう御年七十四歳ということで、最後ちょっと感情論になっちゃいますけれども、何とか生きているうちにめぐみさんと会わせてあげたいというのが国民感情だと思いますので、何とぞ、拉致の問題についてはタブー抜きにして、いろいろなことで解決の方法を探っていただきたいというふうに思います。

 これで質疑を終わります。ありがとうございました。

山口委員長 次に、山口壯君。

山口(壯)委員 民主党の山口壯です。

 私が民主党最後の質問者になります。

 きょうの質疑を踏まえて、この規程あるいは法案に賛成するかどうかということを決めさせていただくわけですけれども、とりあえず、今、同僚の鷲尾議員から核不拡散の話がありました。

 大臣は、今度インドに行かれます。インドに行かれて、例えばインドが核実験をしたときに、日本は経済制裁に参加しましたですね。割と早く解除してしまった。やはりああいうときに日本がきちっとメッセージを出さなければいけない。そして、アメリカは、去年の三月に米印の協力をして、世界からそれはダブルスタンダードとはっきり見られている。インドの存在とイランの存在をはかりながらインドをよしとした。そういう意味では大臣、今度インドに行かれたときは、ぜひ日本の核不拡散に対してのメッセージをきちっと発することが非常に大事だと思いますが、この点についていかがでしょうか。

麻生国務大臣 一九九八年にインドの核実験というのが行われて、続いてパキスタン、あのときの国際情勢は今言っても始まりませんけれども、あれ以来、日本としては、インドはNPTに加盟すべきだという点は、ずっと一貫してこれまでも言い続けてきました。過日マンモハン・シンというインドの首相、それから、先週でしたか、新しく外務大臣になりましたムカジーというインドの外務大臣が来ておりますけれども、いずれの場合におきましても、今のNPT等々インドの核の話につきましては、過去三回その種の機会がありましたけれども、いずれの場合もその種の話は日本側としては正式に伝えておるところでもあります。

 今後改めて言うまでもなく、これまで言ってきたということを申し上げております。

山口(壯)委員 きょうは、現実に、私は大臣に事前の質問通告をほとんどしていないわけですね。私は、大臣とはいつも、そんなに細かいことを議論した覚えはありません。大臣として哲学を述べていただければいいし、これはいずれ、大臣、事前通告なしの討論というのは党首討論でも必要になることですから、ぜひぜひそのつもりで、きょう私は、練習台にしていただければと。(発言する者あり)ああ、そうですか。きょうは、何かすごくエールの交換が。

 アメリカにどうつき合うかということに先ほどのインドの問題もかかわるわけです。この国際刑事裁判所というもの、これにアメリカが、やはり戦争犯罪とかいうふうに言われると非常に困るなということで、あえて二国間で、自分の国の兵士が訴えられることがないようにということを物すごく根回しして、また協定も結んでいる。

 そういう意味では、この国際刑事裁判所というのは、日本が貢献できる、あるいはすべき非常に大事な分野ですから。特に、今回は国だけではなく個人がその対象となり得るということで、今まで我々が国際法で習ったそういう範疇をもう確実に超えるわけですね。ということは、日本としては、もっともっとイニシアチブをとって、私は、アメリカに、アメリカさん、もう少し前向きになったらどうかということをもっと言うべきだと思います。

 大臣が外務大臣をされている在任期間中に、アメリカにそういう趣旨のことを言われたことは、どうでしょう、まだないんじゃないかと思うんですが、いかがでしょうか。

麻生国務大臣 確かに、山口先生がおっしゃるように、我々が習った国際法やら何やらの範疇を超えていますものね、この話は。そういった意味では、新たな事態になりつつあるということは、私もそのように理解しております。

 したがって、これは、施行されて実際に動き始めますと、それがどのような形になっていくのか、現実問題として、そこそこのいろいろな問題がアメリカに限らずありますので、これでうまくそういった問題が解決される具体例が幾つか出てきますと、これは非常に大きな説得力を持つんだろうと私も思います。

 その意味では、アメリカ、中国、ロシア等々がいろいろ懸念している部分というのは、大国としてわからぬわけじゃありませんけれども、日本としては、これは基本的には、うまく動くか動かないか、これから大いに、締結国の共同作業とか、いろいろな表現があるんでしょうけれども、そういった出ている人の、先ほどどなたか言われました、だれが議長をするとかいったようなことも含めて、いろいろ関係するでしょうけれども、私どもとしては、これは非常に大きな意味を持つと思っております。

 アメリカという国に関しても、ほら見ろ、こんなにうまくいくじゃないかという具体的例を示すのが最もアメリカに対する説得力になるんじゃないのかなと思って、アメリカ自身も、ICCが弱体化されるということはだめですよ、少なくとも今スタートするんだからということで、アメリカもICCを弱体化させる意思はないということだけははっきり明言するところまでは来ておりますけれども、現実問題として、動かし始めた後、どんな具体例が、ちょうどいい具体例が出てくるのを我々としては最も期待をしている、それこそが説得力を持ち得るんだと思っております。

山口(壯)委員 今大臣が言われたのは、心配するなよ、おたくの兵士が訴えられることは、ほら、ないだろう、こういうことを言われんとしているように私には聞こえます。そういうことをもう少し一歩踏み込んで、今の、新しい国際刑事裁判所に、一番の大国なんですから、その大国が入らないから、日本が一番の分担金を負担するような格好にもなっているわけですね。

 だから、これから外務大臣として、あるいはさらにまた違う立場として、アメリカをぐっと引っ張っていく、その辺の決意をぜひお聞かせください。

麻生国務大臣 山口先生、僕は、山口先生ほど、それほどアメリカという国がすべて性善説に基づいた人たちばかりだと思ったこともありませんので、僕は、アメリカはそんなことはないよなんということを言う自信はないんです。あの人たち、だって、我々の人口の三倍ぐらいいるわけですから、確率としては日本の三倍ぐらい起きる可能性はあると思っておかなければいかぬと思っています。

 いずれにしても、私どもとしては、日本がこれに正式に認めていただいて入った以上は、これはアメリカに対しても、もちろんロシア、中国に対しても、特にアメリカに対しては、これは入った方がいいぞという話は積極的に働きかけていきたいと思っております。

山口(壯)委員 先ほど外務大臣の答弁の中に、ICCを弱体化させるつもりはないとアメリカが言っている、そこまで持ってきた、これはいいことです。他方、その言葉と裏腹に、二国間協定を一生懸命結んでいるわけですから、そういう意味では、そういうアメリカに対してきちっと日本がイニシアチブをとって引っ張っていく、この決意は今お聞きしたんですが、ぜひお願いします。

 そして、きょうの日経新聞をぱらぱら見ていましたら、従軍慰安婦の話が出ているんですね。これは私は、意図的に今まで全然取り上げていません。というのは、安倍さんが、広い意味の強制とか狭い意味の強制とか言っていましたけれども、あれは正直言って稚拙です。政治家としては、河野談話を継承する、ピリオド、これでいいです。あとは歴史家に任せた、こうあるべきだったんです。それを広いだの狭いだのと言ってしまったから、物すごいかみつき方をされている。それを踏まえて私はあえてここではこれまで全然議論していません。そこら辺をまず酌み取っていただきたいと思うんです。

 しかし、アメリカは相当深く心配していますね。この批判の中に、河野談話、「官憲等が直接これに加担したこともあったことが明らかになった。」この調査したサンプルというのは限られているわけです。そういう意味では、この調査がすべてではない。しかし、この調査した限りにおいては、「官憲等が直接これに加担したこともあったことが明らかになった。」

 我々、新しいページをめくらなきゃいけないんですね。だから、こういう古いページはもうピリオド、ぴたっと、こうするのが本当は政治家の役目だと思うんです。古いのをめくって、ああでもなかったこうでもなかったというのは、これはむしろ歴史家に任せておいた方がいい。

 ただ、ここで、「官憲等が」と言っているんです。だから、これは軍と違うじゃないか、こういうことを言いたい人が何人かいるんですよ。先ほどもおられたから、私も、そうだ、きょうは彼も呼んでおくんだったなという気もしたけれども。

 しかし、これは余り議論しない方がいいんです。だから、我々もあえて意図的に議論していません。だから、ぜひ、外交をつかさどる麻生大臣としては、余計なことを言うなということを官邸にもしっかり指導されて、この問題については早く新しいページをめくる。河野談話でいいです。

 これであればアメリカも、アメリカもというのは、別に国だけではなくて、ほかのところもみんなこれでオーケーになるはずですから、ぜひこの問題については、古いページは早く閉じて、新しいページをめくれるように、外務大臣として、国内の指導的な役割についてもぜひお願いしたいと私は思います。

麻生国務大臣 山口先生、昔と違いまして、今、これをやると大体一時間後にはもう通訳、訳文されたものをみんな読むという時代になりまして、ここで、この二週間ぐらいの間、麻生太郎と塩崎官房長官、安倍総理との間でどのような形でその対応をしてきたかというのをちょっと言いますと、途端にまた話がいろいろ忙しいことになりますので、私どもとしては、どうしても知りたいというんだったら、こういう場所以外できちんとお答えいたしますけれども、ちょっとここで言いますと、多分これをそのまま見て、日本はちゃんと民主党と組んで裏でこんなことしておるなんて言われたんじゃ、お互いおもしろくないことになりますので、きちんと対応させていただいております。

山口(壯)委員 大臣、ということは、政治家としては新しいページをめくるということに重点を置いていこうという決意としてとってよろしいでしょうか。

麻生国務大臣 新しいページをめくっていく、この間の日中、日韓の首脳会議においても同様な意識を持たれておるようだと思いますけれども、私も全く、これからの時代、建設的な話に切りかえていこうという山口先生の御趣旨に賛成であります。

山口(壯)委員 アメリカが心配しているというのは、人権の問題なんですね。この人権の問題については、我々アジアの中でいろいろな観点があり得るわけです。

 私は、ちょうど天安門事件の直後に中国に赴任になって、おじいさんのおられた中国だと思って行ったわけです。中国は当時、天安門事件についてアメリカがとやかく言うのは内政干渉だと、アメリカは一生懸命人権の問題だと、そこにもう完全なすれ違いがあるわけです。私の仕事は、まず援助をとめて、その後再開するという二つの仕事を一遍に言われて行ったんですけれども、この人権の問題については、アメリカが日本に対して誤解がないように。

 中国との間では結構大変だったんです。その前、トウショウヘイがチャイナカードだと言っていたのが、やはりちょっと違うのかなということになった。今になったら、今度また中国とアメリカがすごく、違う意味での強いきずなを持っていますけれども、大分時間がかかりましたね。一九八九年から十年以上かかっている。

 そういう意味では、日本が、こういうつまらないというか稚拙な、これは申しわけないけれども安倍総理の稚拙な対応だったんです。だから、そういうことで日米関係が傷つくことがないように、外務大臣としてきちっとそこの辺の対応をしていただきたいというのが私の願いです。

 今の国際刑事裁判所の話に戻りますけれども、法の執行の担保ということで、我々が、アメリカさんが心配するようなことは全くないんだよという前提のもとに、これから国際刑事裁判所がしっかりしたものになるようにするためには、日本として裁判官を送るということも非常に大事なことだと思います。

 今、具体的に名前を挙げていただく必要はありませんけれども、でも、麻生大臣としてあるいは外交当局として、きちっと日本人裁判官を送っていただくことが非常に大事だと思いますので、この点についての答弁をお願いします。

麻生国務大臣 御存じのように、これは補欠選挙というのが……(山口(壯)委員「十月に」と呼ぶ)ええ、行われますので、今、補欠選挙というのを今後考えていかなければいかぬところなんだと思っておりますが、入っていきなりというのもどうかと思いますけれども、いろいろな意味で、人選を含めまして、これはやっていかなければいかぬところだと思っております。

 山口先生、これは結構人は、我々としても、法務省やら何やらいろいろかりて、今、例えばカンボジアのクメールルージュの裁判というのは、日本では全然載りませんけれども、あれは裁判官は日本人ですから、野口というんですけれども。こういうのがいろいろ、新聞なりマスコミには載ってきませんけれども、そこそこのところで、そういった国際機関というところに勤めるとか奉職するというような人が、今、少しずつではありますけれども育ちつつあるのかなと思って、我々としては楽しみにしております。

 このICCに関しても、今回は一名の補欠選挙ですけれども、二〇〇九年には六名の裁判官のポストがあくということになろうと思いますので、そういった時期までにはきちんと対応ができるように、我々としても対応してまいりたいと思います。

山口(壯)委員 裁判官の数については地域割もあって、今、韓国から一人裁判官が出ておられる。これはどうしても日本として、国際社会の中で日本が果たすべき大きな分野ですから、そこに裁判官を送っておくというのは本当に必須の事項だと思いますので、ぜひ麻生大臣、この点についてもお願いします。

 この国際刑事裁判所については、平岡議員の方から先ほどお願いした統一的なお答えを、麻生大臣がお答えになられたことをぜひ正式に委員会の方に提出していただきたいと思います。それをいただくことを条件に、民主党としても賛成させていただきたいと思います。

 ぜひこれから我々としても、この国際刑事裁判所について、費用の問題もかかるでしょう、いろいろな問題について与野党を超えて協力していきたいと思います。麻生大臣のこの分野についてのますますのリーダーシップを期待して、私の質問を終わります。

山口委員長 次に、佐々木憲昭君。

佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。

 ICCローマ規程は、国際社会において武力紛争が絶えず、戦争犯罪や人道上看過できない惨害が引き起こされてきた、こういう状況のもとで、重大犯罪を処罰し、その根絶を目指すものであって、大変重要な制度だというふうに思います。

 日本は憲法にある国際平和の実現を目指す立場からも、ICCに加入し、積極的に役割を果たすべきだと考えております。

 以下、幾つかお尋ねをいたします。

 まず、外務大臣の基本的姿勢をお聞きしますが、日本は、この規程を採択した九八年のローマ会議の最終合意文書に署名をしたわけですが、そのときにこう言っていたわけです。国際社会の長年の悲願であったICC設立を全面的に支持すると。それから、そのローマ会議の中で、日本代表はこう言っております。ICCは国際機関として形成すべきである、それには関係国すべての協力がなければならない、普遍的な参加を基礎として設立されるべきである、裁判所が効果的に機能するかは国際的な協力と各国の司法協力にかかっている、こう述べていたわけです。

 これは大変前向きな姿勢だと思うんですね。日本のこの立場というのは現在も変わらないのか、この点確認したい。外務大臣。

    〔委員長退席、やまぎわ委員長代理着席〕

麻生国務大臣 基本的に変わっておりません。

佐々木(憲)委員 ところが、本年閣議決定によって加入を決めるまで、実に九年近くもかかっているわけですね。先ほども少し議論がありました。その間に署名開放期間が過ぎ、規程は五年前に発効してしまっているわけです。

 今になってようやく加入するというわけですけれども、この初期の立場からすれば、署名開放期間のときに、そのときから積極的に推進、批准に努力をして規程の発効を進める、こういう立場に立つべきではなかったのか。日本は、各国による協力の必要性を強調しておきながら、なぜ率先して批准せず、規程が発効しICCが機能し始めるまで加入しなかったのか。これは先ほど確認した当初の立場からいっても反するのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

麻生国務大臣 これは、先ほど平岡先生だかの御質問にも一部答弁をさせていただきましたので、重複しているところもあろうかと思いますが、ローマ規程の締結に当たりましては、御存じのように、対象の犯罪になります対象犯罪というものの内容が、いろいろ国内法との関係で未整理ということになるということで、いわゆる人道に対する犯罪等々が、集団殺害犯罪とか未遂とかいろいろありましたので、そういったところが、新たな国内法の整備等々やらなければならないというので、ICCの運営を害する罪なんというのは、これは処罰などを決める新たな国内法が必要だろうというのが一点。

 それから、御存じのように、各国の実行状況というのがございます。

 それから、もう一つは、やはり分担金の話でありまして、今、我々としては、ここに年間で約三十億ぐらいになるであろうと思われます支出が新たに発生することになります。初年度だけで割りますと、約七億二千万ぐらいの新たな分担金が急遽発生をすることになりますので、そういった意味では、財政再建の折から、この種の、新たに三十億というのは大きいなというのが正直な実感でもあったと存じております。

 また、少なくともこういったのをいろいろやらせていただいて、ことしある程度税収が伸びたこともありますでしょうけれども、いろいろな他国の中にあって、先ほど山口先生の御質問にもありましたように、このICCというのは非常に大きな話で、これまでの我々が習った国際法とはもう全然あれが違った概念に立っておりますので、こういったものが出てくる時代というのに対応していくためには、我々としては、少なくとも積極的にやる値打ちがあるのではないかということが大きな背景になって、スタートのときはそういった意識だったんですけれども、国内法等の整備と支出の問題、二つあったのがやはり大きかったかなというのが率直な実感です。

佐々木(憲)委員 今二つの理由を挙げられましたけれども、そういうことに八年も九年もかかるというのは信じがたいわけであります。その理由はもっと別にあるんじゃないか。

 例えばアメリカとの関係、そういうふうに思わざるを得ないわけですが、例えば、このICC規程に関して、アメリカの対応というのが非常に問題になっております。クリントン前大統領は規程に署名をしました。しかし、規程には著しい欠陥があるということで、全く批准しようとしなかったんですね。理由は、ICCができれば自国の兵士が戦争犯罪で訴追されかねないということを言っている。ブッシュ大統領もICCに反対なんですね。署名の撤回を表明しているわけです。

 これは私は理解しがたい豹変ぶりだと思うんですね。米兵が裁かれるのは都合が悪いから撤回せよ、これは余りに不誠実だと思うんですね。

 これまでの多国間協定において、これは外務省に聞きますが、署名が撤回された前例はあるのかどうか、あるいはアメリカの署名撤回は国連によって受理されたのかどうか。この点お聞きしたいと思うんです。

松島大臣政務官 お答えいたします。

 御指摘の、署名の撤回という表現をされましたが、その表現が適切かどうかは別として、一般論としまして、ある条約の署名国が、署名した条約を締結しなければならない法的義務を負うというわけではございません。署名した条約の当事国とはならない意図を署名後に明らかにすることは、ウィーン条約第十八条の規定によっても認められていることであります。

 そのような事例として、例えば次のようなものがございます。

 一つに、このICCローマ規程につきましては、二〇〇二年、署名国である、今おっしゃいましたアメリカ合衆国及びイスラエルが、ICCローマ規程の当事国となる意図はないこと、したがって署名から生ずる法的義務を負わないこと等について、国連事務総長あてに通知しております。

 また、アメリカ合衆国は、このほかにも、一九七七年に作成されましたジュネーブ第一追加議定書の署名国でありますが、八七年に同追加議定書を締結しない方針を決定し、その旨を寄託国でありますスイス政府に通知したというように説明しております。

 こういった事案がございます。

佐々木(憲)委員 今回の米国の署名撤回は国連によって受理されたのかという点は。

松島大臣政務官 米国の署名撤回は、米国が国連事務総長に通知いたしまして、国連事務総長が国連のホームページにおいて公表しているリストにおきましては、ICC規程の署名国リストに米国の名前が記されていますが、その脚注におきまして、米国の通知、つまり、一たん署名したけれども法的義務を負わないというアメリカ合衆国の通知、これについてもホームページに明記されております。

佐々木(憲)委員 今までの事例というのは極めてまれな事例でありまして、アメリカが現実にとっている行動というのは、非常に私は問題が大きいと思います。

 二〇〇二年にローマ規程が発効の段階を迎えると、先ほどもちょっと議論がありましたが、二国間協定を結んで、米兵の引き渡しをさせないという仕組みをどんどん広げてきているわけですね。ある意味では規程の骨抜きであります。

 例えば、アメリカは、このICC設立条約を批准したケニアなどアフリカ諸国に対して援助を凍結するという措置をとる、アメリカの言うことを聞く国には援助をふやす、こういう形で、援助をてこに自国の論理を通そうというわけで、これは余りにも横暴だというので、国際的にも批判が強まっているわけです。

 それで、外務省にお聞きしますが、米兵の犯罪に免責を与えるこのような協定は、アメリカは二国間協定として何本結んでいるんでしょうか。

松島大臣政務官 アメリカ合衆国によりますと、約百カ国と二国間合意を締結しています。

 しかしながら、このICCローマ規程の加盟国はこの百のうちの四十でございます。そしてまた、主要な加盟国、EUの諸国すべて及びカナダ、オーストラリア、ニュージーランド、韓国などもこのような二国間合意は締結しておりませんし、我が国としても締結することは考えておりません。

佐々木(憲)委員 昨年八月の米議会調査局の資料では、百本だということなんですね。

 しかし、これは、アメリカの方針としては、加盟国、加盟国外にかかわらずどんどんやっていくんだ、こういう方針だというわけですね。

 そうなりますと、一方でこのICC加盟国が広がって網の目が細かくなっていく。同時に、アメリカ自身が網の目をどんどん広げている。骨抜きが進んでいるというとんでもない話であります。

 これは外務大臣にお聞きしますが、まさに今日本が加入しようとしているこのICCの訴追逃れの仕組みをアメリカ自身が広げる、この動きは真っ当なものではないと私は思うんですが、大臣どうお考えですか。

麻生国務大臣 基本的には、我々としては、このICCという新たなものがきちんと施行というか作動するように、入った以上はやらなければいかぬというのは当然のことであります。

 また、その他の中において、それぞれの国によっていろいろな動きがあるというのはある程度やむを得ないところだとは思っていますが、先ほど山口先生にもお答えいたしましたように、基本的にこういったものがきちんと作動するようにするためには、アメリカもこれに入った方がアメリカの国益にも沿うのではないかという点が一番大事なところなんだと思っております。国益に沿わないことはやりませんから、みんな。だから、そういった意味では、入った方が国益に沿うんだという実態をきちんと証明していくということの方が大きな効果があると存じます。

    〔やまぎわ委員長代理退席、委員長着席〕

佐々木(憲)委員 骨抜きの動きが強まっているわけでありまして、それに対しても何か物を言わなきゃいけないと思いますよ、抽象的なことではなくて。

 日本の役割というのは、そういう意味でも非常に大きいと思うんですが、例えば、アジアの点について聞きますと、外務省の説明によるとアジアの署名国というのはまだ少ないということでございますが、大洋州を除いてアジアに限定いたしますと、署名をしている国はどこでありますか。

松島大臣政務官 アジアの中で署名している国は、カンボジア、モンゴル、韓国そしてタジキスタン、東ティモールでございます。

佐々木(憲)委員 アジア全体としては、比較的出おくれているわけであります。

 外務省は、アジアの重要な一員である我が国による締結はICCをより普遍的なものにするために重要である、こういう説明をされています。この立場に立つなら、やはり日本はもっと早く批准すべきだったし、規程をアジアに広げる努力をすべきだったと思うんですが、おくればせながら加入するわけですけれども、アジア諸国の中で、積極的にこのICCの加盟を促進する、そういう外交的な姿勢を見せている国はありますか。

松島大臣政務官 自国について、今入っていないけれども、熱心にやろうとして、これから取り組もうとしているのはインドネシアがございますけれども、対外的に向けて責任を持って加入を進めていっているというのはまだ余り承知しておりませんで、日本が入ってから、日本がとにかくリーダーシップをとって頑張っていきたいと思います。

佐々木(憲)委員 そういう意味で、日本が、おくればせながらこれに加入をして、積極的な推進の立場に立っていくということは大変重要だと思うので、最後に、外務大臣のアジア外交における面での決意をお聞きしたいと思います。

麻生国務大臣 今アジア大洋州入れて六十カ国ぐらいだと思いますが、ちょっと大洋州の方は正確にあれがないんですけれども、アジア大洋州で六十カ国中十二カ国が加盟しておると思っております。ほかの地域に比べて、ヨーロッパなんかに比べて圧倒的にそこらのところは少ないというのは、現状確かだと思います。

 そういった意味では、これは、日本が入ることによりまして、日本も入ったのかという形になって、分担金もかなりのものになりますし、いろいろな意味で、先ほど山口先生から人も出せというお話が出ていましたけれども、人も出す、裁判官も出します、何も出しますという形で、いろいろな形でこの部分で貢献をしていくところは大きい、私どももそう思います。

佐々木(憲)委員 以上で終わります。

山口委員長 次に、照屋寛徳君。

照屋委員 社民党の照屋寛徳です。

 国際刑事裁判所の設置は、国際社会において頻発する地域紛争、民族紛争に対処するとともに、人道に対する犯罪、戦争犯罪、集団殺害犯罪、侵略犯罪に対して法の支配を徹底しようというものであり、社民党は賛成の立場であります。

 ところで、アメリカはICC加入を拒否するなどの強硬な態度を示しているようです。それにとどまらず、百カ国以上の国々と二国間協定を締結し、海外展開している米軍兵士などがICCに提訴されることがないようにとの手段を講じております。法の支配、法と正義、民主主義の価値観に照らし、かかるアメリカのこそくな態度は到底理解できません。

 麻生外務大臣は、ICC加入を目指す立場から、ICCを拒否するアメリカの態度をどのように思っておられるのか。特に、法と正義、自由と民主主義の価値観を共有する我が国の外務大臣の所信をお伺いします。

麻生国務大臣 先ほど類似の御質問がありましたので、ちょっと重複するかもしれませんけれども、基本的には、アメリカの場合は、海外で活動しております米国軍人が今回のICCで訴追されることを懸念ということが未締結の一番大きな理由だと承知をいたしております。

 他方、アメリカとしては、この締約国となります各国の決定を尊重するが、条約を締約しないというアメリカの立場も尊重されるべきということで、ICCを弱体化させる意図はないということを数次にわたって表明いたしております。

 二国間合意につきましては、外務省といたしましても米側と数次にわたって意見交換を行っております。その中において、いわゆる理論的な可能性、現実問題はともかく、理論的な可能性とはいえ米国の同意なく米国民がICCに引き渡されることを懸念というのは、先ほど御質問があっておりましたのと似たような趣旨だろうと思いますが、この中において、すべての米国国民について米国の同意なくICCに引き渡さない旨の二国間合意の締結というものを各国に提案しておるというのが先ほど山口先生からも同じような御指摘をいただいた点だと思いますけれども、日本は、五年前、二〇〇二年以降だと思いますが、以来、二国間合意について米国と数次にわたって意見交換を行っているというのは事実であります。

 しかし、最も重大な犯罪を犯したというような者の訴追を確保するということは、ICCの趣旨にかんがみて、これはどう考えたって締結に当たっては二国間合意というようなことでそこに穴をあけることには我々は賛成できないということははっきり表明をいたしております。

 なお、先生、ICCの締約国の中でありますイギリス、フランス、ドイツ、イタリアなどを初めとする、一カ国を除いたか、ほとんど全部のEU諸国、それから、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、韓国は、米国との間で二国間合意の締結というものはしていないと承知しておりますので、私どもとしては、今先ほど申し上げたように、態度としてはこの態度を一貫してまいりたいと思っております。

照屋委員 我が国には、憲法を頂点とする憲法法体系と日米安保条約を頂点とする安保法体系が併存しております。現実には、安保法体系が優先され、憲法法体系は侵食されているというのが実態です。

 ところで、日米安保条約に基づく日米地位協定や刑事特別法、民事特別法の効力と、ICCローマ規程の効力は、どちらが優先されるのか、外務省に尋ねます。

松島大臣政務官 ICCローマ規程には九十八条二という項目がございまして、これは、「裁判所は、被請求国に対して派遣国の国民の裁判所への引渡しに当該派遣国の同意を必要とする」という国際約束がございます。つまり、この派遣国というのは、この場合、アメリカ合衆国ということになりまして、その国民を引き渡す際には、その国の、大もとのアメリカの同意を必要とする国際約束がございますので、それに基づく義務に違反する行動を求めることとなり得る引き渡しの請求を行うことはできません。

 というわけで、ICCローマ規程よりも日米地位協定あるいは日米犯罪人引き渡し条約の方が優先的になります。

照屋委員 日米地位協定及び刑事特別法によって、在日米軍はさまざまな特権・免除を与えられております。在日米軍の軍人には、主権国家としての我が国の警察権、裁判権が基本的に及ばないのであります。しかも、このような不平等、不公平な日米地位協定について、政府は、抜本的な改正ではなく、見直して事を済まそうとする姿勢を一貫しております。

 アメリカがICC加入を拒否している中で、ICCが管轄権を有するいわゆるICC犯罪が日米安保に基づいて我が国が提供した基地内で発生した場合、並びに在日米軍基地から出兵した兵士らによってICCローマ規程締約国以外の国で犯罪が惹起された場合、ICCにおいて裁くことは可能でしょうか。

松島大臣政務官 ICC規程の解釈上も、おっしゃいましたように我が国に駐留する米軍人にかかわる刑事裁判権の問題については、我が国はまず日米地位協定に従って対処していくことになります。これが先です。

 なお、ICC規程の締約国でありますNATO諸国や韓国に駐留する米軍人にかかわる刑事裁判権の問題につきましても、NATO地位協定や米韓地位協定に従った対処となると理解しています。

 つまり、日本だけじゃなくて、NATOや韓国も米軍との協定というものを優先する、ICC規程というのはそういう性格のものでございます。

照屋委員 どうも質問に対するきちんとした答弁になっているとはとても思えませんね。

 ところで、私は、このICCローマ規程との関連で、法務省に一点お伺いをします。

 私は、昨年七月、横須賀刑務所を視察しました。横須賀刑務所は、日本の裁判所で実刑判決を受けた在日米軍兵士を収容する唯一の刑務所です。問題は、横須賀刑務所で服役する日本人受刑者と米国軍人軍属らの受刑者の処遇に著しく差があることであります。

 米兵の受刑者らは、ステーキ、フルーツ、コーヒー、牛乳、ケーキなど、補充食料として一人当たり年間一トンの差し入れ、支給が行われておるんです。私は、お願いして検食してみました。刑務所では検食というんです、試食じゃない。これは、比べて両方食べましたが、物すごい差ですよ。そのほか、入浴や暖房設備の扱いも歴然たる差があり、行刑の目的である教化改善による社会復帰ではなく、まるで米兵受刑者は軍隊復帰を目的とするかのような扱いです。だって、シャワー、毎日入るんです。シャンプーやリンスも差し入れなんです。

 法務省は、補充食料や冷暖房あるいは入浴、この差別についてどのような改善策を講じようとするのか、そのままでいいのか。行刑の目的に照らして、私はおかしいと思いますよ。いかがでしょうか、法務省の見解を伺います。

吉田政府参考人 お答え申し上げます。

 横須賀刑務所における米軍関係受刑者と日本人受刑者との処遇格差についてのお尋ねですが、まず、入浴につきましては、米軍関係受刑者は土曜日や休日を含めて毎日シャワーを使用させているところでありますが、日本人受刑者につきましても、夏季は週に三回、夏季以外は週に二回入浴させるほか、入浴させない平日にも、必要に応じてシャワーを使用させているところであります。

 次に、暖房につきましては、米軍関係受刑者及び日本人受刑者のいずれにつきましても、おおむね十二月ごろから翌年四月ごろまでの期間、一定の気温以下となった場合に、居室内のスチームまたは廊下のストーブを使用することとしております。なお、昨年十二月から、暖房設備のある居室に収容されている日本人受刑者につきましても、米軍関係受刑者と同様の場合に、朝夕各三十分間居室の暖房設備を使用することとしています。

 三つ目の、米軍当局からの補充食料提供の件につきましては、現在、その改善に向け、米軍側と協議を継続しているところであります。

山口委員長 照屋寛徳君、時間が経過しておりますので、簡潔にお願いします。

照屋委員 行刑目的として、差をつける合理的な理由がないんです。皆さんは暖房設備をやったと言うんだが、日本人受刑者は廊下に暖房設備があるだけですよ。寒いからといって自由に房の中から廊下へ出て当たることはできぬでしょう。法務省、ちゃんとしてくださいよ。何か答えてください。

山口委員長 吉田大臣官房審議官、簡潔明瞭に。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 格差是正ということにつきましては私どもも当然考えておりまして、今後とも改善に向けて努力をしてまいりたいと思います。

照屋委員 格差でごまかされましたが、刑務所の中まで格差があるというのは驚きました。

山口委員長 これにて両案件に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

山口委員長 これより両案件を一括して討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、これを許します。長島昭久君。

長島(昭)委員 民主党の長島昭久です。

 私は、民主党・無所属クラブを代表し、国際刑事裁判所に関するローマ規程及び同協力法案につきまして、賛成の立場から討論いたします。

 民主党は、マニフェストにおきまして、ICCへの早期加盟を掲げ、この問題に真摯に取り組んでまいりました。したがいまして、私どもとしては、今回の加盟は遅きに失したと申し上げざるを得ません。そこで、以下、今後の課題も含め、気がかりな点を幾つか指摘させていただき、賛成討論としたいと存じます。

 まず、ICCへの最大の資金拠出国となる我が国の発言権をいかに確保していくかの具体策、あるいは人材の供給、育成策、いまだに加盟していない国々への働きかけなどについては今後の課題であると思います。この点も、きちんとこれから詰めていただきたいというふうに思います。

 政府は、国内法の未整備を理由としてICCへの加盟をおくらせてまいりましたが、実際には、ローマ規程には犯罪とされながら、日本の国内法で処罰されない行為も存在しております。先ほど質疑の中にも出てまいりましたけれども、出生の妨害、病院、学校等への攻撃、過度の環境破壊、人間の盾の利用等につきまして、態様によっては漏れが生ずる懸念もございます。

 ローマ規程には、重大性の要件や補完性の要件があり、支障を生じる例はまれだとは思いますけれども、この条約は、国際正義の永続的な尊重及び実現の保障を目指すものであります。政府は、共謀罪審議において、条約の存在を盾に、対象犯罪を意図的に広げた経緯もあるだけに、より厳密な条約の解釈とともに、法案に規定する証人等買収罪及び組織犯罪証拠隠滅罪の適用についても慎重な対応を求めたいと思います。

 また、容易に国境を越えるテロネットワークの現状から、テロ犯罪の検討は大変重要でありますし、北朝鮮による拉致事件への人道に対する犯罪の適用、PKO等で活動する日本人の扱い等の課題もあり、単にICC加盟にとどまらず、政府には、国際的に重大な犯罪の防止及び処罰に向け、積極的かつ主体的な取り組みを望むものであります。

 最後に、この条約及び協力法を実効性あるものとするよう、今述べた諸課題を解消し、ICCをよりしっかりとした組織にしていくべきことを強調し、私の賛成討論といたします。

 ありがとうございました。(拍手)

山口委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

山口委員長 これより採決に入ります。

 まず、国際刑事裁判所に関するローマ規程の締結について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

山口委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 次に、国際刑事裁判所に対する協力等に関する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

山口委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

山口委員長 この際、ただいま議決いたしました法律案に対し、三原朝彦君外五名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、日本共産党及び社会民主党・市民連合の共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を聴取いたします。やまぎわ大志郎君。

やまぎわ委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表しまして、案文を朗読し、趣旨の説明といたします。

    国際刑事裁判所に対する協力等に関する法律案に対する附帯決議(案)

  国際社会全体の関心事でもある最も重大な犯罪を行った個人を処罰する国際刑事裁判所の設立は、国際社会における重大な犯罪行為の撲滅及び予防並びに法の支配の徹底という観点から、極めて意義深いものである。現在、この裁判所は、集団殺害犯罪、人道に対する犯罪及び戦争犯罪について管轄権を行使でき、定義等が整い次第、侵略犯罪についても管轄権を行使できることとされている。人道に対する犯罪には、「人の強制失踪」として拉致も含まれており、北朝鮮による日本人拉致問題を抱える我が国が国際刑事裁判所ローマ規程の締約国になることには大きな意味が認められる。

  また、二〇〇九年に招集されるローマ規程の検討会議では、侵略犯罪の定義等の整備のほか、テロ犯罪及び麻薬犯罪について、管轄犯罪に含めるか否かを検討することが予定されている。

  我が国がローマ規程に加入した暁には、本規程の見直しをはじめ、まだ発展途上にあるこの裁判所の運営及び活動に対し、締約国として国際社会に対し明確なビジョンを示し、最大限の貢献を行っていく必要がある。

  これを踏まえ、政府は、本法の施行に当たり、次の事項について特段の配慮をすべきである。

 一 国際刑事裁判所の運営等に対し、最大拠出国にふさわしい発言権の確保に努めつつ、裁判官及び検察官をはじめとする裁判所職員の輩出のために人材の発掘及び育成にかかる体制を強化すること。

 一 国際刑事裁判所の設立に関するローマ規程に基づき国際刑事裁判所が管轄権を有し、かつ、管轄権を行使し得る重大な犯罪について、国内で捜査し訴追し、かつ、処罰するための体制及び運用の確保に努めること。

 一 国際刑事裁判所からの協力要請に適切に応えられるよう、我が国の刑事司法制度のさらなる信頼性向上に常に努めること。

 一 国際刑事裁判所が管轄する犯罪に対する法の支配を徹底させるため、対象犯罪の予防及び厳正な処罰に向けた取組を国際社会に広く行き渡らせるよう努めること。

 一 国際刑事裁判所に対する協力において、証人として国内受刑者を移送する制度の運用に当たっては、受刑者に対し、制度の趣旨、手続、移送期間及び方法等について十分な説明を行うとともに、移送の決定に際しては、受刑者本人の意思を十分尊重するよう努めること。

 一 国際刑事裁判所に対する協力において、被疑者として引渡犯罪人を引き渡す制度の運用に当たっては、引渡犯罪人に対し、制度の趣旨、手続及び方法等について十分な説明を行うとともに、引渡しの決定に際しては、本法に規定された要件及び手続を厳守すること。

 一 我が国から移送又は引渡しをされた受刑者又は引渡犯罪人が、国際刑事裁判所において、ローマ規程で保障された人権基準を満たす取扱いを受けることを確保すること。

  右決議する。

以上でございます。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

山口委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

山口委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付すことに決しました。

 この際、ただいまの附帯決議につきまして、外務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。外務大臣麻生太郎君。

麻生国務大臣 国際刑事裁判所に対する協力等に関する法律案を可決いただきまして、まことにありがとうございました。

 政府といたしましては、ただいまの附帯決議の御趣旨を踏まえつつ、国際刑事裁判所に対する協力を通じ、国際社会における重大な犯罪行為の撲滅及び予防並びに法の支配の徹底に寄与していく所存であります。

    ―――――――――――――

山口委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました両案件に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

山口委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

山口委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時四十九分散会


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