衆議院

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第6号 平成19年4月11日(水曜日)

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平成十九年四月十一日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 山口 泰明君

   理事 小野寺五典君 理事 三ッ矢憲生君

   理事 三原 朝彦君 理事 やまぎわ大志郎君

   理事 山中あき子君 理事 長島 昭久君

   理事 山口  壯君 理事 丸谷 佳織君

      愛知 和男君    伊藤 公介君

      猪口 邦子君    宇野  治君

      小野 次郎君    高村 正彦君

      篠田 陽介君    新藤 義孝君

      鈴木 馨祐君    寺田  稔君

      松島みどり君    山内 康一君

      岩國 哲人君    笹木 竜三君

      神風 英男君    長妻  昭君

      原口 一博君    東  順治君

      赤嶺 政賢君    笠井  亮君

      照屋 寛徳君

    …………………………………

   外務大臣         麻生 太郎君

   外務副大臣        岩屋  毅君

   外務大臣政務官      松島みどり君

   会計検査院事務総局第二局長            千坂 正志君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  鈴木 敏郎君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 後藤  博君

   政府参考人

   (外務省大臣官房長)   塩尻孝二郎君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 木寺 昌人君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 新保 雅俊君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 佐渡島志郎君

   政府参考人

   (外務省北米局長)    西宮 伸一君

   政府参考人

   (外務省中東アフリカ局長)            奥田 紀宏君

   政府参考人

   (外務省国際法局長)   小松 一郎君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           村田 直樹君

   政府参考人

   (防衛省防衛政策局長)  大古 和雄君

   政府参考人

   (防衛省運用企画局長)  山崎信之郎君

   政府参考人

   (防衛施設庁施設部長)  渡部  厚君

   外務委員会専門員     前田 光政君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月十一日

 辞任         補欠選任

  嘉数 知賢君     寺田  稔君

  笠  浩史君     原口 一博君

  笠井  亮君     赤嶺 政賢君

同日

 辞任         補欠選任

  寺田  稔君     嘉数 知賢君

  原口 一博君     神風 英男君

  赤嶺 政賢君     笠井  亮君

同日

 辞任         補欠選任

  神風 英男君     岩國 哲人君

同日

 辞任         補欠選任

  岩國 哲人君     笠  浩史君

同日

 理事嘉数知賢君同日理事辞任につき、その補欠として三ッ矢憲生君が理事に当選した。

    ―――――――――――――

四月十日

 イーター事業の共同による実施のためのイーター国際核融合エネルギー機構の設立に関する協定の締結について承認を求めるの件(条約第二号)

 イーター事業の共同による実施のためのイーター国際核融合エネルギー機構の特権及び免除に関する協定の締結について承認を求めるの件(条約第三号)

 核融合エネルギーの研究分野におけるより広範な取組を通じた活動の共同による実施に関する日本国政府と欧州原子力共同体との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第四号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 理事の辞任及び補欠選任

 会計検査院当局者出頭要求に関する件

 政府参考人出頭要求に関する件

 イーター事業の共同による実施のためのイーター国際核融合エネルギー機構の設立に関する協定の締結について承認を求めるの件(条約第二号)

 イーター事業の共同による実施のためのイーター国際核融合エネルギー機構の特権及び免除に関する協定の締結について承認を求めるの件(条約第三号)

 核融合エネルギーの研究分野におけるより広範な取組を通じた活動の共同による実施に関する日本国政府と欧州原子力共同体との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第四号)

 国際情勢に関する件


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     ――――◇―――――

山口委員長 これより会議を開きます。

 理事の辞任についてお諮りいたします。

 理事嘉数知賢君から、理事辞任の申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

山口委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 引き続き、理事の補欠選任についてお諮りいたします。

 ただいまの理事辞任に伴う補欠選任につきましては、先例によりまして、委員長において指名するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

山口委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 それでは、理事に三ッ矢憲生君を指名いたします。

     ――――◇―――――

山口委員長 次に、国際情勢に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房長塩尻孝二郎君、大臣官房審議官木寺昌人君、大臣官房審議官新保雅俊君、大臣官房審議官佐渡島志郎君、北米局長西宮伸一君、中東アフリカ局長奥田紀宏君、国際法局長小松一郎君、内閣官房内閣審議官鈴木敏郎君、法務省大臣官房審議官後藤博君、文部科学省大臣官房審議官村田直樹君、防衛省防衛政策局長大古和雄君、運用企画局長山崎信之郎君、防衛施設庁施設部長渡部厚君の出席を求め、説明を聴取し、また、会計検査院事務総局第二局長千坂正志君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

山口委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

山口委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。原口一博君。

原口委員 おはようございます。民主党の原口一博でございます。

 まず、障害者の権利条約、署名式が三月三十日にニューヨークの国連本部で行われたというふうに承知をしていますが、これは超党派で中山太郎先生を会長に今まで進めてきました。我が国がまだ署名をなさっていない、五十にも及ぶ条文を精査して、国内法との整合性、これをとらなきゃいかぬということで、まだ精査中というふうに聞いておりますが、ぜひ早急に署名をし、そしてこの国会の中でも批准という形が望ましいのではないか、このように考えています。

 障害者権利条約の批准に向けたまず事実関係と今後の対応、それから、外務大臣のこの批准に向けた決意を伺いたいというふうに思います。

麻生国務大臣 御指摘のありましたとおり、去る三月の三十日、障害者権利条約が署名開放されておりますので、ニューヨークの国連本部で八十三カ国と欧州共同体が本条約に署名ということになっております。

 この条約につきましては、これは国内の関係省庁間で検討を行ってきておりますけれども、御存じのように、これは原口先生、副会長をしておられたので、国内法整備のあり方を含めいろいろ整備すべき点が多岐にわたっておりますというのはもう御存じのとおりだと思いますので、これは引き続き検討を続けていかないかぬところだと思っておりますが、これはできるだけ早期に条約に署名をするということに関しましては、私どももそういったことを目指しておるところでございます。

 今、障害者権利条約に係る対応推進チームというのが各役所からの構成員でできてきておりますので検討を行っておりますけれども、日本の場合は、これは条約の起草段階から御存じのように交渉に積極的に参加した経緯もありますので、可能な限り早くこれを署名、締結を行いたいと思っております。

原口委員 積極的な御答弁をいただきました。

 大臣が御答弁されたように、この権利条約を主導してきたのは日本であり、とりわけNGOのネットワークの皆さんでありました。政府においても大変な力を注いでこられたわけで、これは、政府あるいは国会、国民共同して権利条約の批准へ向けた動きをスピードアップしたい、このように考えます。

 さて、懸案の事項について幾つか伺いたいと思いますが、まず、六者協議について、北朝鮮の核問題についてですが、これは、もうじき初期の期限が迫っています。初期段階の措置の期限が迫る中で、BDA問題の解決がきょうの報道によるとなされたのではないかというふうに承知をしています。

 BDA、バンコ・デルタ・アジアの中には不法な資金もあって、それがいわゆる凍結の大きな理由だったのではないか。それを民間銀行たる中国銀行にその資金を移すということには、そもそも信用と秩序、法と正義をもととする金融の世界においては無理があったのではないかと私も思っておりましたが、きょうの報道によりますと、アメリカはBDAの北朝鮮関連の資金そのものの凍結を解除した、このように報じられておりますが、事実関係をまず伺いたいというふうに思います。

麻生国務大臣 報道にもございますとおり、昨日、十日になりますか、これは国務省じゃなくて財務省です、財務省は、マカオ当局が現在バンコ・デルタ・アジアで凍結されております北朝鮮関連のすべての口座を解除する用意があると理解をしていると言い、アメリカとしては、問題となっている口座を解除するというマカオ当局の決定を支持する旨発表いたしております。

 これを受けまして、マカオ当局は、いわゆる口座を保有している人が希望すればいつでも資金を受け取ることができると述べたものと承知をしておりますが、これに対して北朝鮮側から、これに対する反応というのはどういう反応をしたか、直ちにとりに行ったかどうしたかということに関しましては、今私どもとして、反応は今のところ何もなされていないと承知をいたしております。

 御存じのように、この問題につきましては、日本は当事者では全くありませんので、コメントする立場には全くないんですが、いずれにいたしましても、この六者協議の合意にあります初期段階の措置が早期に実施されていくということは、これは主に国務省のマターではあるんですが、財務省のマターであるBDAにひっかけて話が全然進まないという状況が、話をうまく前に進ませたいのにとめておった大きな阻害要因の一部が一応アメリカ側のところでひっかかっていたとするのであれば、その問題はこれによって一応アメリカの財務省の手を離れたという形になっておると理解をしておりますが、それに対してどのような対応が向こうから出てきて、どうするかというのは、ちょっと今のところ、予測の段階を超えておりません。

原口委員 私は、この論理がやはりうまく説明できるのかなと思っています。

 全面的なアメリカの譲歩というふうにも見れるし、そもそも資金が凍結された理由は、何も北朝鮮に対する経済制裁というよりも、不法に集めた、聞くところによると偽札やあるいは麻薬によって得た資金であるから、法と秩序に基づいて凍結されていた、このように考えていますが、これは事務方で結構ですから、事実関係だけお答えください。

佐渡島政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、アメリカの関連法規に基づきまして、米当局がその法の、例えば資金のロンダリング等、違法なものによって集めた資金の疑いがあるということで措置をとり、このような結果に至っているものと認識をしております。

原口委員 とすると、やはり中国銀行に移すという選択肢も、民間銀行がそれを受け入れるのか、金融機関が受け入れるのかということはありますけれども、今回のBDAそのものの資金を凍結解除する、そのことの根拠、つまり法ではなくて、むしろ政治的な決着だ、六カ国協議の合意の中の決着なんだ、このようにとらえてよろしいんでしょうか。

麻生国務大臣 これはちょっとなかなか、アメリカの判断ですので、こちらから見た場合、予測の範囲、もしくは外から見ている範囲の域を超えませんということをまずあらかじめお断りした上、少なくともこの話は、財務省と国務省との立場はかなり違っておって、財務省は、基本的には国内金融秩序、最初に原口先生御指摘のとおり、秩序に基づいてやった一連の行動。傍ら、国務省の方としては、六者協議によって、核の問題に関する解決を先に動かす際にこの問題がひっかかったという立場に立って、本来は六者協議と全く関係ない話、そのことはおっしゃるとおりなんですが、これをネタにして、これがなければどうにも動かないというものだから何とかしてくれという、アメリカ国内でいろいろ協議が行われたものと推測をいたしております。

 結果として、アメリカとしては、核というものが非常に大きな問題だということから、この問題に関して、中で多分いろいろな話をし合った結果、アメリカとしてはこの問題に関しては一応財務省の手を離れて、バンコ・デルタ・アジアの金をどうこう言うつもりはありません、ただし、このお金があちこち移動するに当たってアメリカの銀行を使うとかそういったことは、この国、アメリカとして、銀行として、いわゆる銀行というのはお金を預かっているだけじゃなくて送金とか為替とかいろいろなことをしますので、その種のことをアメリカはそういうシステムやら何やら使わせることはしませんよという話が一連の答えとして、妥協としてそこらが出てきたのかなと推測をいたしております。

原口委員 これは、アメリカ、同盟国、ともに世界の金融秩序を支える国の判断ということで、少し議論が必要かなと思っています。

 そこで、初期の段階の措置とすればもう一つあって、テロ支援国家指定を解除する作業を開始するということでございますが、では、これを受けて北朝鮮側は何をやるのか。たしか期限が十四日ですよね。きょう、もう残すところあと数日でございまして、本当に期限内にできるのか、あるいはテロ支援国家の指定解除ということをアメリカもやってくるのか。

 さらにもう一つ、きのうですか、政府は、北朝鮮船舶の入港禁止及び輸入禁止の措置を半年間延長する閣議決定をなさったというふうに伺っていますが、その事実関係と理由を教えてください。

麻生国務大臣 まず最初に閣議決定の方からですが、御存じのように、北朝鮮籍船舶の入港禁止措置が一つ、もう一点は、北朝鮮からのすべての品目の輸入禁止措置につきましては、昨日の閣議におきまして、二つの措置、両方とも六カ月間継続するという手続をとっております。

 これは、過日の核実験と称するもの以後、いろいろ国連決議もありまして、国連決議以外にも、日本政府として、北朝鮮に対して、拉致、核、ミサイルについてのいろいろな問題に対していろいろやってきたのもこれまで御存じのとおりなので、その間、何ら誠意ある対応とか反応というのは今までのところ全く示しておりませんので、我々としてはこれを継続する必要があると思っております。

 期間につきましては、これは向こうの誠意ある対応が、きちんとしたものが出されれば、それは別に六カ月待たずして、そういったきちんとした対応がなされればそれを外すのにやぶさかではありませんけれども、少なくとも、今のような態度で拉致問題を解決済みというような話でいっている間は、我々としては、日本の平和とか安全とかそういったものを維持するために特に必要という観点から、今回、六カ月間のあれが必要であろうと思って措置をさせていただいたという経緯です。

原口委員 北朝鮮は、六十日以内に実施する初期段階の措置として、寧辺の核施設を最終的に放棄することを目的としてシャットダウンする及びシールする、このことが誠実に行われなければいけませんし、IAEA要員の復帰、それからすべての核計画の一覧表についての協議、これも進んでいなきゃいけないというふうに思います。

 そこで、二つ伺いたいんですが、一つは、今外相がお話しになったように、拉致の問題です。拉致はテロであるということであれば、アメリカがテロ支援国家のリストから北朝鮮を外すことについてどのような御見解をお持ちなのか。それからもう一つ、私がどうしても不思議でならないのは、第二次小泉訪朝のときに、再調査を北朝鮮側は約束したはずで、そうであるにもかかわらず、にせ遺骨を提供したり、すなわち、その後はもう拉致問題を解決済みであると主張を大きく変えている。なぜこのように態度を急変させたのか、どのように分析なさっているのか。

 この二点について伺いたいと思います。

麻生国務大臣 まず、六十日以内の話がございましたけれども、これは二月十三日ですから、二カ月、六十日というと四月十四日ということになろうと存じますが、いわゆる寧辺の核施設のディスエイブルメント、停止、そしてIAEAの監察する人の視察を入れる等々の話に関しまして、いわゆる初期段階の措置ということをとることになっているというのは、これはあと三日という段階になってまだBDAの問題をやっておりますので、その意味におきましては、この二月の合意を実施するということは現実問題として困難になりつつあるであろうと思われます。

 いずれにいたしましても、これは早期に実施しなくちゃなりませんので、二月から六十日を超えますけれども、我々としては、引き続きこの問題についてはやっていかないかぬと思っております。

 それから、今御指摘のありました北朝鮮の再調査の話ですが、これは少々長くなりますけれども、平成十六年の五月の日朝首脳会談において、御指摘のありましたように、金正日は、安否不明の拉致被害者の消息確認について、改めて白紙に戻して、徹底した再調査を行う旨約束をしております。もうこれはこのとおりになっておりますが、その後、北朝鮮側は、調査委員会というのを設置して鋭意調査は行ったということで、調査結果を我が方に対して通報してきております。その内容は、北朝鮮から得られた物証とか情報には、北朝鮮側の説明を裏づけるものというようなものは、少なくとも日本側から見たら皆無、何の物証があるんだ、それは言っているだけの話で物証がないということで、皆無でした。また、横田めぐみさんのものとして渡された遺骨というものは、御存じのように別人のDNAが検出されたということはもう御承知のとおりであります。以来、今日に至るまで、拉致問題は解決済みというのは北朝鮮側の主張であります。

 先般、三月上旬にハノイで開催されました日朝正常化のための作業部会、例の六者協議の中の五部会のうちの一つの作業部会ですが、この作業部会というところにおきましては、この問題については解決済みだという態度を繰り返すだけでありまして、加えて途中退席ときたものですから、少々こちら側としてもかなり険悪な雰囲気になったことは確かでありまして、北朝鮮の態度は極めて、ふざけているなんという表現は余りこういうところで使う表現じゃありませんな、もうちょっと適当な言葉があるなと思いますが、甚だ……(発言する者あり)遺憾ですかな、まあ遺憾というのは余り好きな言葉じゃないんですけれども、そういったことです。

 それで、日本としては、これを北朝鮮側に対して働きかけを継続していくことになるんですが、こういうようなものは生半可な話じゃありませんので、強い意思を持ってやらないかぬのだと我々も思っております。

 もう一点、最初の、前に御指摘のありましたアメリカの話、指定解除の話をしておられましたけれども、二月の六者協議のときに合意されましたのは、これはあくまでもアメリカがテロ支援国家の指定解除をするという作業を開始するということであって、指定の解除について合意をされたわけではない、ここのところは物すごく大事なところだと存じます。これは一義的には米国の判断に基づくことになるのはもう当然のことですけれども、この解除を検討するに当たりましては、拉致問題の解決は重要な要素の一つということはもうたびたび申し上げてきておるとおりなので、日本としては米側に対しても引き続き働きかけておるのはもちろんのことですけれども、おかげさまでこの問題というのは国連の場でいろいろ言われることになりましたので、アメリカがこの問題について日本に断りなく一方的に解除するということは考えられる状態にはございません。

 先ほど、済みません、英語を使い間違えておりました。ディスエイブルメントじゃなくて、シャットダウンが正しい当時の表現であります。

原口委員 そうですね。大事なところは、解除に向けた作業の開始であって、これは解除ではないということをしっかりと踏まえておきたいし、さらに言うと、この拉致問題が解決をしないとテロ支援国家の解除というのはあり得ない、私はそのように考えております。

 さて、やはり外交を考える上で一番大事、政治もみんなそうですが、国民の理解と信頼があってこそ外交は成立する、私はそのように考えていますが、大臣の基本的な御意見を伺いたいと思います。

麻生国務大臣 やはり信頼というのは物すごく大事で、長い歴史の間に積み重ねられてきたものであろうと存じます。個人的な信頼関係はもちろん大事なところだと思いますし、常に、その当事者は、当該問題について信頼関係というものを築いていくという努力は各担当者はしていかねばならぬところだと存じます。

 しかし同時に、その国との関係を長い目で見ますと、あの国の言うことは信用できる、例えば日本は、ポーツマスの条約で、少なくとも、あの当時五百万ポンドの軍事公債というものを、市場で調達した軍事公債は、以後今日まで、一銭たりともまけることなく、一日たりとも期日におくれることなく、日本は国家として世界から借りた金は、ガリオア・エロアの救済基金、新幹線の世界銀行からの借り入れを含めて数々の借り入れを我々しておりますけれども、それに対してこれまで、いまだかつてその約束をほごにした例は一回もないというのは、日本に対するいわゆる金融関係の人たちの高い評価というものが今日の日本の信用のもとになっているのであって、今日の、国債やら何やらいろいろ言われつつも、これだけ安い金利でも、確実に返ってくるという歴史がそれを積み重ねてきたと思っておりますので、御指摘のとおり、信頼は物すごく大きなものだと思っております。

原口委員 国際約束の履行あるいは青年海外協力隊、世界に対するさまざまな貢献、日本に対する世界の信頼は厚いと思います。

 ただ、ここで指摘をしておかなきゃいけないのは、じゃ、国民の外交に対する信頼は一体どうなのか。それで、その観点から三つ、私は情報の開示をきょうこの質問の中でお願いをしたいというふうに思っています。

 一つは、在沖米海兵隊のグアム移転に伴う経費、これの根拠です。会計検査院にきょう来ていただいているので、会計検査院に伺いますが、米軍再編に係る経費の日本側負担、これは国民の税金ですよね、その上限が決められている、それでこの法律を審議しているわけですけれども、この執行状況について、検査院の会計上のチェック体制、これはどのように考えていらっしゃるのか。まだ法律が通っていないからまだだとおっしゃるのか、あるいは、これはグアムでのさまざまな施設についてもチェックをしなきゃいけないと思っていますが、答弁を求めたいと思います。

千坂会計検査院当局者 お答え申し上げます。

 在沖縄米海兵隊のグアム移転経費の日本側負担については、一般会計からの支出や国際協力銀行からの出融資などによるとされておりますが、負担の内容や方法については今後具体化される話であると聞いており、詳細は承知しておりません。

 このため、会計検査院としては、これに対してどのように検査するかということを現時点でお答えすることは難しいところでございます。しかしながら、グアム移転経費については、多額に上ることが見込まれることから、今後は日本側負担の具体的な内容及びその方法を把握することに努めることとしたいと考えております。

 いずれにいたしましても、会計検査院としては、国の支出等が法令等にのっとり適正に行われているか、経済的、効率的に行われているかなどについて、今後とも、与えられた権限の範囲内で厳正に検査を実施してまいりたいと考えております。

原口委員 三月でしたか、世界同時株安が起きて、その引き金の一つがアメリカのサブプライムローンというか、そういういわゆる住宅ローンバブルという言葉は使いたくありませんけれども、ある意味で大きな不安がそこに走った。米側の施設はいわゆる民間の知恵を、力を入れながら国内で整備をしている。それに対して、日本側が負担するこのグアムの施設、それのやはり経費、アメリカ側が出してきた経費の積算根拠ぐらいはしっかり出さぬといかぬと思いますが、きょうは防衛省、副大臣を呼んでいたと思うけれども、いらっしゃらないんだったら事務方で結構です。根拠を出してください。

大古政府参考人 防衛省からお答えいたします。

 沖縄海兵隊のグアム移転に関連しまして、米側では海兵隊八千人の移転が伴いますけれども、その部隊の詳細、部隊ごとの規模、それから施設を整備する場所とか規模につきまして、米側で具体的に検討中でございます。日米の分担額も、合意したものについてお示ししておりますけれども、これについては検討段階の、米国のあくまでも概算としての見積もりでございます。

 特に、我が国の分担の内訳やその積算の詳細につきましては、現在日米間で協議中でございます。防衛省としても、できる限りその縮小を図るべく協議を行っているところでございます。

原口委員 協議の中身を言えと言っているんじゃないんですよ。米側が出してきた積算、だって枠を決めているわけですから、その枠の根拠を示してください、資料を出してくださいと言っているんです。

大古政府参考人 そこの点につきましては、あくまでもまだ現段階で検討段階の米国の見積もりでございます。概算でございます。今後、我が国の分担額については、米国の具体的な詳細が固まった段階で、我が国ひとりできちんと精査することになります。それから、その精査したものに基づきまして予算を要求いたしまして、国会で御審議を受けることとなります。その際には、当然、その積算の根拠とかについてお示ししたいと思います。

原口委員 法律を出してきているわけですから、その時点、その時点で、皆さんだけが外交にかかわっていらっしゃるわけじゃなくて、私たちは国民を代表して、国会という中できっちり議論しなきゃいけない。普天間飛行場が移設をするという話のときも、海上案で幾らかかるんだと日本の政府に聞いたら、答えませんでしたよ。しかし、アメリカのGAOのホームページにはちゃんと書いてありましたよ、一兆円を超えると。私たちは国民を代表して国民に説明しなきゃいけないんですよ。国民に説明するための資料を出してくれと言っているんです。

 きょうは副大臣が来ていませんので、さらにもう一つ、オスプレーの話についてもしておきたいと思います。

 オスプレーについては、これまでいろいろな議員が議論をされていますが、特に特筆すべき議論は、平成十年五月二十七日、衆議院の安全保障委員会、我が党の上原元代議士が小渕外務大臣との間で議論をされています。基地の負担軽減と言いながら、そのとき上原先生が提示された資料によると、MV22、次期主力輸送機、オスプレーですね、これの配備、つまり、普天間の基地の新たな代替基地は、普天間基地の代替ではなくて新たなオスプレー基地じゃないですか、これ。違うんですか。在沖海兵隊へのオスプレーの配備は、これは長島委員も委員会で質問されていますが、アメリカの予算でも明らかであって、防衛省は承知していると思っていますが、その事実関係について伺います。

大古政府参考人 お答えいたします。

 お尋ねのオスプレーにつきましては、一般的に、米軍が今保有いたしますヘリコプターのCH46それからCH53、比較的大型の輸送機タイプのヘリコプターでございますけれども、この後継になるという話は我々も承知しております。

 ただし、このオスプレーにつきましては、沖縄の配備につきましては、累次にわたり外交ルート等で確認しておりますけれども、米側としては具体的な計画を有していないということでございます。

原口委員 国会でうその答弁をするというのはとても大きなことだと思います。

 では、聞き方を変えますね。このエグゼクティブリポートが出ていますよね。ここに持ってきたのは、上原先生と当時の小渕外務大臣の間で議論をされた、これは一九九七年九月三日付、これですよ、エグゼクティブリポート。これは、いわゆる普天間のリロケーション、MCAS、つまりアメリカのマリーンですよね、アメリカのマリーンをどのように移すかというエグゼクティブリポート。その表紙、ごらんになってください。これはオスプレーですよ。中にもオスプレーの記事があって、オスプレーを中心に新しい施設はつくらなければいけないと。こういう文書があるということは御存じですね。

大古政府参考人 今先生がお示しした資料については具体的に承知しておりません。

 ただ、SACOの協議をしているときのお話かと思いますけれども、その時点ではまだ、オスプレーにつきましては開発の初期段階でございました。そういう状況下で、アメリカとしても、量産だとか配備先を決めている状況ではございません。そういう状況下で、SACO協議におきまして、オスプレーの配備を前提として日米で協議したという事実はございません。

原口委員 今のは全くの虚偽答弁です。議事録出しましょうか。ちゃんと小渕総理がアメリカ側に照会されているじゃないですか。小渕総理は当時、こうおっしゃっていますよ。「御指摘の文書に関する米国政府の説明によりますれば、同文書は米国政府部内の内部資料でございまして、運用所要の概要にかかわる調整を日本政府と行うに当たりまして、」云々と。ちゃんと承知しているじゃないですか、政府は。何でうそを言うんですか。

大古政府参考人 過去、小渕大臣がそのような答弁をしたことについては承知しております。ただ、今お示しいただいた資料につきましては、突然の御質問だったので承知していないということで答弁申し上げました。

原口委員 今まで政府内部で何回も議論をして、きょうの主題、私は、今通告どうなっているのかな、細かく細かくやっていますよ。

 では、事前に僕が言っていなかったから承知していないと言ったということですか。そうですか。そんなもので沖縄の基地の負担の軽減なんかできますか。あるいは、どういう新しい機種が入るかというのは、日本の安全保障にとってとても大事なんでしょう。沖縄というのは極東の安全にとってかなめだというから、これだけの基地負担を沖縄の人たちに求めているんでしょう。何でこんな文書さえ知らないんですか。総理にまでなられた方がちゃんとこうやってお答えになっているのを知らぬなんてあり得ぬじゃないですか。この文書はありますね。御存じでしょう。

大古政府参考人 平成十年のことでございますが、当時、衆議院の安全保障委員会で上原委員から御質問がございまして、小渕大臣の方から、「米国政府から御指摘のような文書を提示されたことはなく、したがいまして、その内容についても承知をいたしておりません。」「御指摘の文書に関する米国政府の説明によりますれば、同文書は米国政府部内の内部資料でございまして、」云々というようなお答えをしているということは承知しております。

原口委員 いや、だって、国会でなぜこういうのを指摘するかというと、もう指摘して、皆さんは知っているんですよ、一個一個。これは九月三日ですけれども。

 ではその後の、これも上原議員がこのときに指摘をされている九七年の九月二十九日の文書、これはDODの正式な文書ですよ。こう書いてあります。「MV‐22オスプレイを第一に考慮し、定められる。」と。「滑走路の基準はMV‐22オスプレイを第一に考慮し、定められる。」と書いてあるんです。これはファイナルリポートですよ。そして、「海上施設はまた固定翼機用に転換する飛行場であり、飛行場には固定翼機の滑走路基準であるA級に基づく安全許可が要求される。」こう書いてあるんですよ。もっと読みましょうか。「最大で四機のMV‐22」これはオスプレーですね、「が、誘導路において自力で方向転換でき、また、引き返すことのできる空間を来訪航空機のために確保する。墜落に対応するための用地を、滑走路近くに備える。」と。もうこの時点で指摘されているじゃないですか。

 だから、私はなぜ最初に外務大臣に外交、安全保障の基本を伺ったか。世界に対してこれだけ信頼を得ている日本政府が、沖縄の県民に、あるいは日本の国民に、あなた方は本当に正しいことを言っているんだろうか、自分たちはだまされていないだろうかという思いを自国民に与えてどうするんだと私は思うんです。

 この文書も、もうそのときのオスプレーの配備はアメリカ側がしっかり言ってきているんじゃありませんか。違いますか。

大古政府参考人 今委員御指摘の資料については、米国政府部内で検討を実施する過程で作成されたものと推察いたします。

 ただ、先ほど申し上げましたように、SACOの協議過程ではあくまでもヘリポートとしての議論をしていましたし、ただ、固定翼の連絡機が使うこともあるということで、千三百メートルの滑走路の長さということで決定いたしております。

原口委員 きのう、我が方の、民主党の外交・安全保障部門会議で、防衛省の金澤防衛政策局次長は、現時点で配備の計画は知らない、将来的に配備の計画はないと言っていると。ということは、沖縄にはMV22というのは来ないんですね。配備の計画はないですね。

大古政府参考人 日本政府としては、現時点で米側に沖縄にオスプレーを配備する具体的な計画はないというふうに聞いているところでございます。

原口委員 私は、こういう状況が日本の安全保障を危うくすると思っているんです。安全保障は、たとえそれが厳しいことであっても、事実であるんだったらちゃんと示しをして、そしてそれに真正面から理解を求めるという形をとらなければ、常に隠しているだろう、常にうそをつかれているだろう、こういう思いがあれば、だれも協力しませんよ。

 私は、こういう体質そのものに、これはきょうほかのいろいろなものもありますけれども、皆さんがこれまで答弁をされてきたものは、どこの国の大臣なのか、どこの国の政府なのかというものです。やはり日本の国民の政府をつくりましょうよ。日本の国民の安全を守る、そういう安全保障の議論をしないと、今の答弁ではとても納得をすることができないということを申し上げます。

 それと同じことが、イラクの航空自衛隊の輸送人員です。これについても数字を出せますか。きのう、イラク首相とも直接お話をしました。一体だれをどのように、何人運んでいるんですか、教えてください。

山崎政府参考人 お答えいたします。

 類似の委員会でお答えをして、また重ねて同じような答えになって恐縮でございますが、航空自衛隊の輸送活動の詳細な実績については、これは人員あるいは輸送の内容、物資でございますが、それにつきまして、各国軍とも空輸実績等をほとんど公表していない。それから、自国の軍隊を派遣しております関係諸国あるいは国連との関係、これが、やはり要員の安全確保といった観点にも非常に配慮をしておりまして、多国籍軍それから国連ともに、輸送人員数を含む輸送実績については、要員の安全確保に支障が生ずる情報として非常に慎重な取り扱いをしておりますし、あるいは、我が国に対しても要請をされているというふうに承知しております。

原口委員 これも、二年間の延長を閣議決定されたということですけれども、今みたいな答弁で、じゃ、私たちは国民にどのように説明すればいいんですか。からで飛んでいるかもわからないじゃないですか。

 平均で週五便、そのうちの四便はタリル飛行場からの多国籍軍支援ですよ。国連支援、国連の人員を運んでいるんだと言うけれども、じゃ、計でいいですよ、毎日何人運んだなんて言う必要ない。バグダッド経由でエルビルまで国連の人員を皆さん運んでいるとおっしゃいます。総計何人ですか。

山崎政府参考人 先ほど御答弁申し上げましたように、やはり政府としては、各国との関係、あるいは国連及び多国籍軍の要員の安全確保ということがまず最優先事項であるというふうに考えております。

 公表によります危険が全くないと言えない以上、やはり、公表と非公表、両者の特質を考えながら、空輸実績の詳細な内容については公表をしないということにしておりますので、御理解をいただきたいと思います。

原口委員 どうして、何人運んだかが詳細なんですか。国連人員を何人運んだか。たしか、このエルビルには百のオーダーですね。だから、二百か三百か知らぬ、国連職員がいらっしゃいますよ。その人たちを総計何名運んだかというのが、どうして安全にかかわる情報ですか。自衛隊はそういう危険を回避する能力があるから行っているんでしょう。だったら、民間航空機でいいじゃないですか。安全が一〇〇%確保されないんだったら公表できない、だったら、それこそ特措法の大前提が崩れているんですよ。人員ぐらい教えてくださいよ。

 では、安全が第一だというんだったら、もう出すのをやめればいいじゃないですか。オーストラリア軍か、たしか、地上から、お一人亡くなりましたよ。

 それで、私もアリ・アルサレムに伺って直接C130に乗せていただきましたけれども、三十キロぐらいの鉄板を、下から撃たれる弾を防ぐためにやっていますよ。そのことと人員を言えないことと違うでしょう。

 もう一回答弁ください。

山崎政府参考人 先ほど先生の方から御指摘がありまして、五便のうち四便が多国籍軍という話でございましたけれども、我々、おおむね週五便を飛ばしておりまして、そのうち週一便がエルビル、それから週一便がバグダッド経由ということで、国連に対しては週五便のうちおおむね二便が割り当てられているということでございます。

 それから、なかなか難しい話でございますが、民航機が飛んでいるということも事実でございますが、国連の方としましては、やはり要員の安全の確保のために、とにかく陸上輸送はなかなか難しい、それから民航機についても、そういう安全上の理由から、なるべく軍用機を使うようにという要請が来ておりまして、それについて航空自衛隊としては国連に対して航空輸送を実施しているということでございます。

原口委員 こういうのが、アメリカやいろいろな、国会で許されるんだろうかと思いますよ。運んだ国連の人員もあれしないで、国民の税金を払え、そんなことは決して納得ができないということを申し上げます。

 最後に、麻生外務大臣に、温家宝首相、共同声明も含めていろいろな作業をなさっていると思いますが、中国との間で、特にエネルギー関係、ここはウイン・ウインの関係でなきゃいけない。春暁のガス田についてどのような協議をされるのか、あるいは、拉致やいろいろな問題について中国側にしっかりとしたメッセージを送らなきゃいけないと思いますが、温家宝首相の訪日を控えて、どのような戦略それからお考えで臨んでおられるのか、最後に伺って、質問を終わりたいと思います。

麻生国務大臣 御指摘のありましたとおりに、七年ですか、七年ぶりの中国のいわゆる首相の、首相というかトップの訪日ということに合わせて、昨年の十月の安倍訪中以降、いろいろ日中間の状況打開というのを前内閣から引き続いてやってきた課題ではありましたけれども、昨年の十月に、この問題に関して、一応、戦略的互恵関係を築くということで、訪中ということになって、今回、向こうからの訪日ということになって、それに合わせて、今、きょうからその会議が始まるんです。

 これまで外務省としていろいろ詰めさせていただいた中で、今御指摘のありましたエネルギーの問題につきましては、油田の話等々がありますので、この問題に関して今話を詰めさせていただいております。

 問題は、私どもは、共同開発をした方が安く上がるでしょうがと。簡単なことを言えば、その方がお互い利益になるじゃありませんかという話を申し上げております。技術はこっちの方があるんだから。コストも、明らかに安くできるのは、我々と組んだ方がいいということははっきりしておるんじゃありませんかといって、理を説いております。

 そして、それに合わせて、今向こうと細目を詰めておりますが、共同開発する海域の広さというのが非常に問題になるところでして、そこはちょっと、最後の段階で、まだやっておりますので、今の段階で申し上げるわけにはまいりませんので、その点は後日御説明をさせていただきたいと思っております。

 少なくとも、事務屋のレベルでやって、この間、インドのニューデリーでも同じような会議を李肇星外交部長とさせてもらっておりますけれども、この広い海域という海域の定義というのが一番もめるところなので、そこのところの詰めはちょっと、北緯何度、東経何度とかいう話になると、とても私のレベルではありませんので、これは事務屋で詰めてもらわにゃ話になりませんよと。李肇星さん、あんただってわかってないでしょうがと。だからこの話はお互い詰めようやというので、事務屋のレベルではとてもきょうまでに間に合うはずはないから、一応は漠としたものを決めて、後は細目を詰めようという話で事は進めているというので、今までのように、何となくとげとげしい、もう全くという感じではなくなりつつあるというのが、この数カ月間の変化だと御理解をいただいて、ちょっと今まだ細目の詰めがずっと進行中でありまして、結構激しいことになってきております。

 昨年の五月、第一回李肇星との会合をやらせていただいて、今日まで何回直接会ったんだか、ちょっと忘れましたけれども、電話を含めて十回以上会談していると思いますけれども、あの最初のころのとげとげしい雰囲気からは大分変わってきているという感じはいたしますので、先ほど原口先生御指摘のありましたとおりに、やはり信頼関係というのは、少なくとも、かつてほどのとげとげしい雰囲気から、一応最初に会ったときにはほほ笑みが出るぐらいのところまでは来た。

 それぐらいのところで、漠とした言い方で恐縮ですけれども、ちょっとそれ以上、細目にわたりますといろいろ話が難しくなっておりますので、御容赦いただきたいと存じます。

原口委員 もうこれで終わりますが、ほほ笑みを強い握手にされますように祈って、質問を終えます。ありがとうございました。

山口委員長 次に、猪口邦子さん。

猪口委員 どうぞよろしくお願いします。

 まず、自由と繁栄の弧につきまして、外務大臣、もしお時間があればお伺いしたいと思います。

 外交に関しまして日本発の概念やパラダイムが打ち立てられることは極めて少ないのですけれども、麻生外務大臣が示されました自由と繁栄の弧の視座、これは国際的にも非常に評価されていると私も実感しております。そして、今後はこの概念が、国際関係を把握したり分析していく座標軸としてのみならず、世界各地の問題を具体的に解決していく発想の源といいますか、泉といいますか、知的な基盤といいますか、そういうものに発展していく必要があると思うんです。

 そして、この自由と繁栄の弧におきまして、例えば、トルコのような民主的な穏健イスラム国、こういう国々は恐らく非常に重要な位置を占めていると私承知しているんですけれども、具体的な外交戦略に生かすとなりますと、日本とトルコが共同で、例えばイラクの平和構築のための国際会議を調整したり、あるいはパレスチナ問題を解決するためのプロセスを主導したり、日本とトルコ、あるいはトルコじゃなくてもいいんですけれども、そのような穏健国と一緒に日本がプロアクティブに、能動的にこの概念を活用して前向きな外交を展開していく、こういうことはいかがでしょうか。

麻生国務大臣 参議院の本会議に呼ばれておりますのでこれで途中退席させていただきますが、今言われましたようなことは、少なくとも、トルコに限らず、例えば日本と韓国で一緒にやるとか、いろいろなことは十分に考えられると存じます。

猪口委員 ありがとうございます。よろしくお願いします。

 トルコに限らず、民主主義を志向し、あるいはまたその面で実績があり、また、宗教的なあるいはエスニックな相克を経験しているところにおいては穏健な立場をとるような国々、このような国々と日本は共同して、両国間に懸案事項がないとしても、関連地域あるいは世界各地の問題に対して効果的な共同イニシアチブをとる可能性があると思います。

 そして、今トルコのことをお伺いしましたけれども、ついこの数日以内のことですが、エルドアン首相が、イラクの平和再建のための国際会議をいろいろとイニシアチブをとって積極的に推進しようとされていると報道が出ています。例えば、イラクと国境を共有する五カ国、あるいはそれプラス国連安保理の常任理事国、またG8サミット国などを構成国として、そのようなイラクの平和構築のための会議をトルコがイニシアチブをとろうとしている。

 もちろん、志としては、そのような会議について日本が主催するという可能性も潜在的にはあると思いますけれども、このようなトルコのイニシアチブを少なくとも積極的に支援すべきと考えますけれども、副大臣、いかがお考えですか。

岩屋副大臣 まず、先生には、麻生大臣が主導される自由と繁栄の弧について、この方針について高く評価をしていただいておりますことを感謝申し上げたいと思います。

 大臣は参議院に行かれたのでちょっと時間がなかったんですが、これまでの御発言の中でも、例えば、「「自由と繁栄の弧」をつくる」という演説の中で、中近東や中央アジアについてトルコは知識の宝庫である国である、こういうことをおっしゃっておられますし、また、「わたしの考える中東政策」という演説も大臣はされておられますが、トルコは、昔も今も地理上の戦略要衝にある、イスラエルとの関係も悪くない、地域に数少ない国でもある、いろいろな意味でトルコにはこの地域の安定のかなめになってもらわなければ困る、こういうふうにおっしゃっておられまして、先生御指摘のトルコによるイニシアチブについては、私どももしっかりと応援をしていかなきゃいけないと思っております。

 先生が御指摘された会議、イラクの安定化のための国際会議は、最終的には五月四日にエジプトのシャルムエルシェイクというところで開催されることになったと承知をしております。トルコは、この会合をホストする意向を示すなど、この会議の開催に積極的に貢献する姿勢を示しておられまして、我が国としては高く評価をしているところでございます。

 今後、トルコを含むイラク周辺国としっかりと協力していきたいというふうに考えております。

    〔委員長退席、やまぎわ委員長代理着席〕

猪口委員 どうもありがとうございます。新しい展開についても御報告いただきました。

 トルコは、政治の世俗化と一般的に使われる表現ですけれども、セキュラリゼーションに非常に腐心して、そこがこの国の政治的に非常にセンシティブなところでございますが、その微妙なところをしっかりと維持するということに腐心している国でありますので、そういう観点からも重視していくべきである。とりわけ、自由と繁栄の弧の概念を政策の実施において役立たせていくときの重要なプレーヤーになるのではないかと私感じるわけでございます。

 しかし、実際に我が国とトルコの関係の中で、外交関係は極めて良好であると承知しておりますけれども、貿易関係はもう少し強化する必要があろうとも思います。またトルコは、国連安保理非常任理事国を二〇〇九年からやりたいということを強くキャンペーンしているようでございますけれども、このようなトルコの積極的なスタンスにつきまして我が国としてどのようにお考えか、また、貿易関係の強化について何か積極的な方向性をお考えか、お伺いしたく思います。

岩屋副大臣 先生おっしゃるとおり、トルコとは、すべてのレベル、すべての分野で関係を発展させていくことが必要だというふうに考えておりまして、今御指摘がありました経済、貿易分野は極めて重要だというふうに思っております。

 経済関係についてですけれども、日本トルコ合同経済委員会というものがございまして、こういった会議の開催を通じて関係強化を図っているところでございます。

 それから、政府といたしましても、両国の民間の貿易・投資の取り組みを後押ししていきたい、そのためにどういう施策が適切かということをしっかり検討していきたいというふうに思っております。

 それから、二番目に先生が触れられた来年の秋に行われる予定の二〇〇八年安保理非常任理事国選挙、任期は二〇〇九年から一〇年ということになりますが、トルコが立候補を表明しているということは承知をしております。ただ、これは選挙でございますので、この段階で我が方の具体的な対応について申し上げることは差し控えさせていただきたいというふうに思います。

猪口委員 では、少し別の観点から次の質問に移ります。

 今国連のお話が出たんですけれども、国連事務総長はこの一月から潘基文さんになりました。そして、我が国の国際機関の長をとる努力ということの必要性はよく指摘されることでございます。

 そして、国連事務総長の選挙は、地域順に、リージョナルブロック順になされる伝統がありまして、副大臣よく御存じのとおり、アジアから事務総長がかつて出ましたのはウ・タント事務総長がいますけれども、それ以来輩出することがなかなかできなくて、ようやく今回アジアからということで韓国の潘基文さんが就任されたということです。

 アジア枠の番というのは、時々は回ってくるんですけれども、なかなかそれをうまく活用する機会が今までなかったのですが、このように今回まれなアジア枠が回ってきている機会に、我が国としてこのようなことについて積極政策を必ずしもとらなかったと見受けられるのですけれども、それについてはどうお考えなのでしょうか。

 一般的に、国際機関の長の獲得競争において、実は最近は韓国は非常に積極的で、また多くの成功例をおさめつつあるのではないか。中国もそうではないか。私の懸念は、我が国の獲得競争における競争力が韓国などにおくれをとっていることはないのか、これについて政府の積極的な姿勢をもう少しお願いしたい、こういう懸念がありますが、いかがでしょうか。

岩屋副大臣 御指摘のとおり、国連事務総長につきましては、アナン前事務総長の任期が二〇〇六年末で切れるということを受けまして、次期総長の選出プロセスが進められたわけでございまして、本年一月一日に韓国の潘基文さんが第八代の事務総長に就任したということでございます。

 この選挙につきましては、先生御指摘のとおり、ウ・タントさん以来アジアから出ていないということで、我が方としては、アジアから選出すべきだという観点に立ってプロセスに積極的に参加をしたところでございまして、関与したところでございますので、そういう意味では、三十五年ぶりにアジア出身の事務総長が選出されたということは歓迎をしておりますし、喜ばしいことだというふうに思っております。ただ、遠い将来、日本から国連の事務総長が出るということは、あってほしいなというか、あってしかるべきだなというふうに考えております。

 国際機関の長の獲得競争がちょっとおくれをとっているのではないかという御質問でございますけれども、我が国としては、国際機関の長の獲得には一生懸命取り組んでいるわけでございます。時に成果が出ないこともございますが、しかし、しっかり成果を出した事例もたくさんあるわけでございまして、二〇〇五年十月には、国連教育科学文化機関、ユネスコに松浦事務局長が再選されましたし、昨年十二月の国際エネルギー機関、IEAの事務局長選挙においても、田中さんが選出されました。WHOの選挙が負けたということについては御承知のとおりでございますけれども、必ずしもアジアの中でおくれをとっているというふうには思っておりません。

 ただ、もっともっと頑張る必要があるというふうには考えておりまして、今後とも、重要な国際機関の長の獲得、獲得という言葉が余り上品ではないかもしれませんが、それに向けて努力していく所存でございます。

猪口委員 岩屋副大臣御指摘されましたとおり、例えばユネスコの松浦事務局長は非常に大きな成果を上げておられまして、また、国際的にも評価され、ですから再選されたというようなことは、大きな我が国の外交としての成果でもある、外交といいますか、支援を恐らく政府としてもいろいろな形でされているでしょうから、成果であると感じています。

 副大臣が非常に積極的にこういう発想について重要であるというふうに思っていただければ、私として安心でありますが、一般的に考えますと、これからの時代のそのような国際役職につきましては、今までも大変でしたけれども、多分、一層シビアな国際競争がある、国際競争力が個々の候補に問われる時代になっている。

 それは、二十一世紀の国際社会あるいは市民社会そのものが非常に知識集約的にもなっていて、そして、地球的規模の問題といっても非常に多岐に、さまざまにわたり、そのマルチ外交、多国間外交における調整力が一層問われている。そして、そのような高位の役職者個人の資質において期待されるものが、その組織全体にも期待されますけれども、やはりその人、事務局長そのもの、あるいは事務総長の能力に期待される部分というのが、知識集約の時代にあっては、その知識や能力というのは個人に宿るものですから、もちろん組織的なバックアップもあるとしても、非常にそこが重視されていく時代になっていると感じます。それは私の感想なんですけれども。

 ですから、そのような二十一世紀国際社会の体質の変化といいますか、それを踏まえて、やはり他の、特にアジア諸国の候補との関係における競争力を我が国としてかなり戦略的に追求して、勝てる候補の選定あるいは育成、そういうことに英知を結集しなければならない。日本外交にそのような戦略性が必要であろう。意識的にしっかりとその戦略を持っていただきたい。かつ、それは非常に長期戦略かもしれず、あるいは、ことし、来年というような短期で闘わなきゃならない場合もあるかもしれない。そういうことについて、マルチ外交の分野におきます日本の高いレベルでのプレゼンスを獲得する意味でも、どうぞよろしくお願いしたい。

 私のささやかな経験から、例えば、ヨーロッパの小国で非英語圏の国でも、例を挙げますと、オランダなどはこのような分野において非常に明白な競争力を有していると思います。また、幾つかのそういう小国がそうでありますので、ぜひ参考にされてはどうかと感じております。

 それから、もう一つ関連して、機関の長のみならず、機関というのは一般的に事務局ですから主権国家に仕えているわけで、非常に重要なのは、主権国家間の、つまり政府間のマルチラテラルな外交会合がありますが、その議長職の獲得でもあると思います。そういうことにおいても積極政策が必要でありまして、先ほど松浦事務局長の例、私も挙げようと思ったんですけれども、副大臣から指摘くださいましたが、このような実際の政府間会合の議長職としては、軍縮分野で天野之弥大使が在ウィーン国際機関大使としてNPTの第一回準備会合の議長職を獲得したと承知していますけれども、このような一歩一歩の努力、非常に貴重であると思います。

 ですから、ぜひそのような議長職の獲得も、多くの外交分野において日本外交として追求すべきであると思いますが、いかがでしょうか。

岩屋副大臣 猪口先生御指摘のとおりだというふうに思います。非常にシビアな国際競争に勝ち抜いてそういうポジションを獲得していかなければいけないということでございます。

 勝てる候補を選べということでございまして、これもまたおっしゃるとおりでございまして、私ども、統一地方選挙、第一ラウンドで苦労したばかりでございますが、やはり勝てる候補者がなければいけない。なかなか全部勝てないわけでございますが。こういう国際機関の長の選挙におきましても、当該分野の知識、経験、マネジメント能力、調整能力などの資質が極めて大事だというふうに思っておりまして、国際舞台での経験がある猪口先生とか山中先生とか、そういう候補者をしっかり我々やはり育てていかなければいけない、こう思っているわけでございます。

 そこで、外務省としては、選対本部を立ち上げたわけでございまして、先般、麻生外務大臣を委員長とする常設の選挙対策委員会、我々の世界でいうと選対本部をつくらせていただきました。この委員会の基本的活動方針としては、関係府省との密接な連携を行う、それから、この委員会において勝てる候補を選定していく、そして、組織的、体系的、計画的な選挙戦略を展開していくということでございまして、ここにはやはり政治家の知見が必要だというふうに思っているところでございます。

 それから、候補者にはやはり国際機関で経験をしていただくことが大事だと思っておりますので、国際機関へ邦人を送り込んでいくというキャリアアップ支援にもさらに力強く取り組んでいきたいというふうに思っているところでございます。

 それから、先生御指摘の議長職も大事ではないか。全くおっしゃるとおりだというふうに思っておりまして、例えば、先生は多国間の軍縮外交において日本を代表する大使として御活躍をいただいたわけでございまして、そういう人材をどんどんと育てていかなければいけないというふうに思っております。

 また、議長職をとるということは、そこに我が国の国益を、国益というとちょっと品が悪いですが、我が国の考え方を可能な限り反映させていくということで、国際秩序をより望ましくつくっていくために非常に重要だと思っておりますので、議長職を獲得するということについてもこれからしっかりと取り組んでいきたいというふうに思っております。

猪口委員 岩屋副大臣によりますすばらしい答弁をいただきまして、まことにありがとうございます。

 そこで、先ほど、遠い将来いろいろな役職がとれるようにという発言もございましたが、まさに、それが本当に可能になるのかどうか、そこまで展望して現在の政府としての戦略を総合的に、また省庁を超えて考えなければいけないと私は思うんですね。

 例えば、現在の日本の高校生をイメージしていただきたいと思います。現在の日本の高校生が二十年後、ですから三十代かその後半ぐらいになったとき、国際機関では決してその年齢は若過ぎるということはないんですね。その二十年後、国際機関の長をアジア枠で近隣諸国と競うことができるような、勝てる教育をそもそも我が国の大学は提供しているのかというのが次の質問でございまして、これは、文科省の方でも外務省の方でもよろしいんですけれども、政府としてそういう発想が必要なんですね。今の日本人の高校生に焦点を当てて考えてみてください。この世代が将来国際機関枠をアジアの近隣諸国と戦って勝てる、そういう教育が我が国にあるかという心配なんです。

 私は、今自民党の国際局長代理を務めていますので、海外からのいろいろな意見や感想が直接入ってくるんですけれども、最近寄せられました意見に、例えばイギリスの大学の学長らの意見として、イギリスの大学との教育連携を組むことにここ数年ひときわ熱心なのは中国であると。

 いつの時代も留学に熱心な学生は個人としてはいるんですけれども、この時代にあっては、学長同士がトップリーダーシップで戦略的な教育環境を提携して強化して、よって大量の学生がイギリスやアメリカやその他の国々に留学して、高い国際的な資質をその二十代の前半期で身につけていくというような教育環境を広範に我が国も整える必要があり、ましてや、学長によるそのような対外的なイニシアチブにおいて近隣諸国に負けることが現在の段階であるとなりますと、二十年後も懸念されますので、こういう観点におきます政府の対応はいかがでございますでしょうか。

村田政府参考人 グローバル化が進展する中で、我が国の大学におきましては、世界を舞台にして活躍できる深い教養と高度の専門性に裏づけられた知的リーダーシップを有する人材の育成が求められていると考えております。こうした人材が実際に国際機関等においてリーダーシップを発揮するためには、外国語を駆使する能力が不可欠でございまして、とりわけ英語力は、グローバルな知識や情報を吸収、発信し、対話、討論するための基本的な能力であると考えております。

 英語教育につきまして、各大学におきましてはさまざまな取り組みがなされておりまして、例えば、英語による授業の実施、卒業時に学生が身につけるべき英語能力の水準についての達成目標の設定、それから国連英検の合格のための学習を大学の単位として認定するといったようなさまざまな取り組みが各大学で行われております。

 また、文部科学省では、国公私立大学を通じまして、教養教育を初めとして、特色あるすぐれた取り組みや、現代的な課題に対応するための先進的な取り組みを支援するプログラムを推進しておりますけれども、こうした支援プログラムの対象として実践的な英語教育プログラムを支援しているところでございます。これまで支援対象となりましたプログラムの中には、例えば、国際的な交渉者の育成をテーマに、英語での交渉力を大学間で競い合う大学対抗コンペティションを実施するなど、ユニークな取り組みも見られるところでございます。

 また、近年、海外からの留学生を受け入れるだけでなく、日本人の学生を長期あるいは短期に海外の大学や大学院に派遣をし、国際化する社会に対応できる優秀な人材の養成を支援するために、奨学金を支給、貸与するプログラムも開始をしたところでございまして、対象人員の増加に努めているところでございます。

 文部科学省としても、今後ともこうした取り組みを通じて、各大学における取り組みを積極的に支援したいと考えているところでございます。

猪口委員 今答弁がございましたが、私の趣旨は、ぜひ学長が国際的な連携を海外の大学と組むようなトップリーダーシップを持って、さらに今説明のありました流れを加速していただきたいという趣旨でございますので、どうぞよろしくお願いします。

 それでは、もう時間もありませんので最後に、軍縮の分野について一つだけお伺いし、私のコメントをつけ加えさせていただきたいと思いますけれども、これはクラスター爆弾の規制に関する内容でございます。

 二月にノルウェー政府主導でオスロで開催されましたこの種の爆弾の規制に関する国際会議に日本政府が出席しましたこと、これを私は高く評価したいと思います。

 類似のものとして、対人地雷がございますけれども、我が国は、御存じのとおり、小渕外相の時代に対人地雷条約に加盟する英断を下しまして、小泉総理のときに我が国の廃棄義務の完全履行をする、そして、欧州以外の大国が後ろ向きの中、我が国は対人地雷におきまして、広く国際社会に対して人道的指導性を発揮してきました。

 このような経験を持つ我が国でございますから、オタワ条約加盟国として、クラスター爆弾問題に対しましても、ぜひ人道的な、また知的な指導力を発揮していただきたいと願っております。それはまた政府としての大きな成果になります。

 同時に、副大臣、大臣もお戻りになりましたけれども、御存じのとおり、このオスロ・プロセスは有志プロセスでありますが、主要国のすべてが参加する包括的な政府間交渉の場、CCWという特定通常兵器の分野があります。できれば、ここにおいてもクラスター爆弾規制の議定書に向けての積極的な動きがあることが望まれ、また、我が国が積極貢献する、それが成功すれば、包括的な政府間で合意できますので大きな成果。そこがおくれますと、このオスロ・プロセスが走っていくだろう。

 二つの方法があるんですけれども、我が国としては、できればCCWが成功すること、しかし、今後交渉過程でいろいろございますでしょうけれども、オスロ・プロセスが主力となったときにも、そのプロセスにくみしていくという立場をよろしくお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。

岩屋副大臣 政府としては、クラスター弾の不発弾等による人道上の懸念が存在するということを十分認識しております。また、レバノン、アフガニスタン等においては、クラスター弾を含む不発弾処理に我が国としても協力してきているところでございまして、この問題に積極的に取り組んでいきたいと思っておりますが、先生御承知のとおり、これは人道上の側面と安全保障上の必要性とのバランスを考慮していかなければなりません。実効的に対処していくことが必要だというふうに考えております。

 そういう意味では、先生今御指摘がありました、幅広い国の参加が得られるCCWの枠組みにおける取り組みを重視しているところでございまして、ここにおける議論に今後積極的に参加、貢献をしていきたいと考えております。

猪口委員 積極的な御答弁、どうもありがとうございました。

 対人地雷もそうなんですけれども、やはり子供が被害に遭う確率が非常に高いんですね。そこに戦時を超えて残りまして、豪雨などがあると住居地、住宅地などにも流出してくるところが農村地帯などではありまして、子供は好奇心に富んで山野を駆けめぐる、その後ろから母親が行く、ですから、子供と女性の被害が比率として非常に大きい武器でございます。これについては、日本としては非常に模範的な対応をした。

 そして、クラスター爆弾は、子弾の方がちょっとおもちゃに見えるそうで、平時においてそれを子供がさわって被害に遭うということが言われています。それが不発弾化しないような技術的措置という、さまざまな交渉すべき観点があり、我が国は科学技術の面で非常に高い水準を持つ国でありますので、途上国も含めた人道被害の最小化に向けて、副大臣おっしゃいました安全保障上の必要という観点とのバランスも必要ということは理解しておりますので、国際協議の中で、にもかかわらず人道的な観点について主導的な役割を我が国として果たしていただきたいという私の切なる思いをお伝えしまして、私の質問は終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。

やまぎわ委員長代理 次に、小野次郎君。

小野(次)委員 おはようございます。

 私の質問に入る前に、今、猪口委員の指摘を聞いていまして、一言だけ私からも指摘とお願いをさせていただきますけれども、我が国の防衛力、兵器体系というのは、基本的に外部からの侵略を防止するためのものだというふうに理解しています。これは当然だと思うんですが、その意味で、私も今までいろいろなところで勉強したところでは、我が国の兵器体系というのは、基本的に国内で必要なときに使うということを主に考えているとすれば、クラスター爆弾というのは、特に、さっき猪口委員も指摘しましたとおり、何年もたってからとか、後でいろいろなまた危害が出て、それは非戦闘員であることが多いということが非常に問題だと指摘されているわけでございます。

 そういう意味で、我が国の兵器体系からいえば特に我が国は使わないという方向、なくすという方向に積極的に動くべきだと私も前から思っていましたので、同僚委員の意見を聞いたところなので、私からも、外務省が一層その面でも積極的にイニシアチブをとられることをお願い申し上げておきます。

 私の質問でございますが、今、高級官僚の天下りに対して、一元化するあるいは規制するということが議論されています。そのときに主に取り上げられている論点というのは、押しつけ的再就職のあっせんということを言われています。それは、裏から言えば、言葉はよくないですけれども、贈賄に近いような割愛の要望ということもあるんですね。つまり、利権をめぐってのことだと思う、裏と表の言い方ですけれども。

 しかし、この問題はもう一つ大きな面があると私は思うんです。それは、揺りかごから墓場までというのは、これは社会福祉の分野で言う言葉で、本来違う分野の言葉ですけれども、大卒というのを念頭に置けば、二十二、三の若い人が一つの役所に入る、キャリアとして入るときに、採用のときは人事院の共通の試験で入りますよね。ところが、それがずっといっておやめになって、やめた後も、長い場合には五年、十年と、いろいろな意味で役所の影響のある再就職先を回る。それが、僕の言っている、揺りかごから墓場まで、ずっと縦割りで各省別にやっているということがいろいろな弊害を生んでいるんじゃないかと私は前から思っていたわけです。

 特に、いろいろな改革が必要になるときとか、いろいろな施策のシフトをしなきゃいけないときに、各省庁の対応を見ると、非常に保守的というのかクローズドな感じで、それはなぜかといえば、さっき言ったように、自己完結的に、やめた後までその役所のお世話になるということが大前提になっていると思うんです。そういう意味で、これを改善、改革しなきゃいけないということは、私は外務省においても同じだろうと思います。

 ちょっとそういう点から申し上げさせていただくと、人事交流というのをいたします。さっき、採用の試験が人事院だ、これはいいことだと僕は思うんですね。次に今度、キャリアパスの中で人事交流というのを各省庁するわけですけれども、私の出身というか、もといた役所というのは警察ですけれども、県警本部長にもいろいろな役所からお見えになります。

 大分前のことですけれども、ある役所から見えた私の知っている県警本部長さん、大体二年なんですけれども、その間に、行った途端に不祥事の連続で、テレビや新聞で名前や顔を見ると、いつも頭を下げている、陳謝している姿ばかりなものですから、東京の会議でお目にかかったときに、いや、出向でお見えになっていて頭ばかり下げていただいて、本当に私、警察のプロパーとして申しわけないですねということを申し上げたら、いや、そうはいったって、小野さん、何千人という部下から信頼されてそういう仕事をしているんだから、立場として受けとめてやっていますよということをおっしゃっていました。

 その方、もとの役所に戻られて、よく、それぞれの役所というのは、出向した人も含めて飲み会というか懇談会があるんですね、年に一回とか二回とか。その方はごく最近までお見かけしていましたから、多分、その二年間警察にいたということは決して嫌な思い出じゃなくて、ファンクラブになっているんだと思うんです。

 それは、今財務省ですか、昔の大蔵省の主計局なんかにも、係長とか主査とかという形で、ほとんどの省庁が勉強に出すんですね。勉強と言っては怒られるかもしれません、出向で出すんですけれども、それも、大体同期で、どの役所も優秀な人が割と行くんです、私は行きませんでしたけれども。

 それも、主計官の方たちというのはその後また偉くなることが多いので、十年、二十年と、仲間というのか上司というのか知りませんけれども、親しくさせていただいた、それが大変いい記憶なり思い出になっている。財務省の方からすれば、各省庁にほとんど何かシンパがいる。何かわからないことがあれば、おたくの役所はどうなっているんだと聞くのは、そういう出向を過去にした人に聞くということはよくあるんですね。そういう意味で、人事交流というのは、省庁間の一つの相互理解を深めていると思うんです。

 役所というのは、それぞれの役所、言葉は違いますけれども、御霊なんということもあるんですけれども、やはり基本的な哲学、コンセプトはちょっとずつ違うものですから、カルチャーが違うものですから、それをお互い理解し合えるというのは非常にいいことだと思うんです。

 その意味で、外務省に他省庁から出向する人の数というのはすごい多いんですよ。私の昔いた役所というのは、超ドメ官庁と言われて、超ドメスティック官庁と言われたところなんですが、それでも同期で入った中の半分は外務省に一度はお世話になっています。恐らく経済官庁の場合には三人に二人とか、その割合で出向されているんだと思うんですが、これははっきり申し上げて、にもかかわらず、では出向して戻った方が外務省のファンクラブになっているかというと、そうじゃないんですね。みんな、帰ってくると、ぼろぼろいろいろなことを飲むたびに、余りいい話は聞かないんですね。

 だから聞くわけではないんですが、きょうはちょっとそういう意味でいろいろな角度から聞いてみたいと思いますが、まず、採用なんですけれども、私たちが学生のころには外交官試験という別のあれで、その後外務1種となりましたけれども、数年前に国家公務員1種に統合されたわけです。その統合した理由というんですか経緯について、まず、副大臣か事務方か、お答えいただければと思います。

岩屋副大臣 経験に基づいた先生の貴重なお話、今承っておりましたけれども、お尋ねの採用試験のことでございますが、御承知のように、外務省は平成十三年度から、これまで独自で行ってきたいわゆる外交官試験を廃止いたしまして、他の中央省庁と同様に、国家公務員採用1種試験の合格者から職員を採用することにいたしております。これは、外交と内政がますます不可分なものになってきたという時代の流れの中で、採用対象者の幅を広げて、外交にも内政にも目配りのきく、従来以上にすぐれた人材を採用していきたいという考え方に基づくものでございます。

 外務省がこの制度を導入してからまだ六年程度しか経過しておりませんけれども、当省としては、幅広く多様な候補者の中から人材を確保できているというふうに考えているところでございます。引き続き、多様化する外交政策の遂行に必要な優秀な人材を確保すべく、その方策について検討していきたいというふうに思っております。

小野(次)委員 昔は、外務省のキャリアで入る人というのは大使の息子さんが多いという話をよく聞いたんですね。この統合する話は、二十年以上前からずっとあったんです。ところが統合されたのは数年前ということなんですけれども、そのときに、私は別に国会議員ではありませんでしたけれども、外務省の説明というのは、語学力に差があるからだとか、国際センスを持った人をとりたいから別の試験をしているんだという説明を長くしていました。その裏で言われているのは、今言ったみたいに、だから大使の息子が多いんじゃないかというささやきもあったんですね。その意味で、六年たって、語学力の点を含めて、外務省は期待したとおりの人材を統合後採用できているというふうにお考えですか。その点を確認しておきたいと思います。

岩屋副大臣 今、語学力について先生御指摘がありましたが、入省後に語学研修及び通訳研修等をかなりしっかりやってきているところでございます。外務省においては、語学力が極めて重要であることは論をまたないところでございまして、採用制度を変えたがゆえに、語学教育それから通訳研修というのをしっかりやっているということで、特段問題が生じているというふうには認識をいたしておりません。

 それから、外交官の子弟の占める割合に変化はあるかということでございますが、これはデータですから私の方から答えさせていただきたいと思いますが、外務公務員採用1種試験を行っていた、つまり外交官試験を行っていた平成十二年度までの採用を含めまして、過去十年間におきましては、1種職員の採用者は毎年二十名から二十九名の間で推移をしておりますけれども、その毎年の採用者に含まれる外務省の省員の子弟の数は大体ゼロ名から二名の間で推移をしておりまして、制度を変えた前後で特に差異は認められないということでございます。

 外務公務員採用1種試験のもと、平成七年度から平成十二年度の六年間に採用された1種職員のうち、省員の子弟であった者は全体で五名。それから、制度が変わった後、平成十三年度から十八年度までの六年間については七名ということでございますから、前後で特段変化はございません。

 引き続き、公正な試験によってしっかりと職員を採用していきたいと考えております。

小野(次)委員 ぜひ今後とも骨太のというか、野趣に富んだ人材を外務省も採用していただきますよう希望を申し上げます。

 二つ目の質問に移りますけれども、これは在外公館の在外手当、特に在外基本手当の話を伺います。書記官クラスの話を念頭に置いて聞いていますけれども。

 実は、三月十六日に、公明党の丸谷委員がやはりこの点について麻生大臣に質問されているようでございます。

 外務大臣の方からは、外務省で情報収集やら何やらするに当たって、やはり現地に行って、日本と違って、自宅に呼んだり、自宅で御飯をとか夫婦で一緒にとか、家族づき合いというのはすごく大事なんですねということをおっしゃっていまして、インフォーマルな形は大事だと思っていますというふうに話をされました。その後、官房長の方からだと思いますけれども、在勤手当については、在外職員が在外公館で勤務する、そのために必要な経費だということで、また改めて外務大臣の方から、公式に食事なんかする場合につきましては、これは在外公館に対しまして交流費というのがあります、基本的にそこで出しています、それから、個人的なつき合いやら何やらする分については、いろいろありますので、これはとても大使館でやれないから、これは在勤手当の中でやってくれという話をしておりますというやりとりがございます。

 それで、ちょっとお伺いしたいんですけれども、きのう、外務省の方から、典型的な在外公館にはどんな職があるんですかというお尋ねをしたところ、大使、公使は別にして聞くと、防衛駐在官、政務担当書記官、経済、広報文化、ここぐらいはわかるんですけれども、領事査証担当、警備担当、通信担当、会計担当、庶務担当書記官、これら職種があるんですね。

 私が聞きたいのは、この前のやりとりを伺っていると、何か別の、交流費で手当てできないようなインフォーマルなというか、家族としてのつき合いとか、それも大事なんだ、人間関係をつくらなきゃいけない。そういう意味がこの手当に含まれているんですよということだと思うんですが、確かに、アタッシェというんですかね、さっき言った防衛、政務、経済、広報文化、領事も一部あると思いますけれども、外部と接触が多い書記官というのはそういうことがあるんだと思います。

 それでは、警備担当書記官、通信というのは、これは特に、私も勤務したことがありますけれども、何重にも囲いがある中に勤務していて、そんな外とちゃらちゃらつき合ったりできない、してはいけない仕事でもあるんですね。そういう方とか、会計の方とか庶務の方、これにも参事官も一等書記官も二等書記官も三等書記官もいるんですよ。そういう方たちも同じ在勤手当が出ているのはどういう理由で説明されるのかということをお伺いしたいと思います。

岩屋副大臣 先生もパリに行っておられたというふうに承知をしておりますが、在外公館にはもちろんいろいろな役職があるわけでございますけれども、今御指摘がありました、例えば官房の職員でございますけれども、これはやはり職務の関係上、例えば税関でありますとか空港でありますとか、入国管理当局の関係者と接触をしなければならないということがございます。それから、通信の担当者は、通信当局あるいは電話会社等の関係者と平素からやはりコンタクトを持つということが大事だというふうに思っておりまして、官房職員もそのために必要な経費を在勤手当から支給するというのは適当ではないかと我々は考えているところでございます。

小野(次)委員 これはきのう外務省に教えていただいた資料の中に、どれぐらいの在外職員が単身で赴任しているかというのを教えていただきました。実に、四人に一人までいきませんけれども、二〇%以上の方が単身で行っているんですね。そういう方については、私、自分も国内では単身したことがありますけれども、自宅招宴、自宅にお客を招いてとか、家族単位のおつき合いなんというのは余り想定しにくいと思うんですが、その方についても家族連れの赴任者、これだって、やる気のない人はそれは家族連れで行ったっておつき合いしない人もいると思いますが、ただコンセプトというか一般的な話を言っているんですけれども、家族連れの赴任者と差がないというのはどういう理由によるものか、お伺いしたいと思います。

岩屋副大臣 まず、データですけれども、四月十日現在、在外職員三千二百五十二名のうち、配偶者と同居していないのは七百四十九名ということでございます。

 それから、先生の御指摘の中に実はちょっと現状と違っているところがございまして、単身の在外職員は、家族連れの在外職員に比べまして、住居手当等の在勤手当が全体で二割減額されておるところでございます。例えば住居手当、単身者は限度額二〇%減。それから配偶者手当、当然配偶者がいないわけですから、それも減額をされております。それから子女教育手当、配偶者がいなければ子供もいないということでしょうから。そういうものを含めますと、大体二割減額されているというふうに御承知おきをいただきたいと思います。

 なお、単身の在外職員でありましても、任国政府の関係者と時宜にかなった情報を得るために交際をするということは必要だというふうに思っておりまして、その分は手当てをされているということでございます。

小野(次)委員 今の副大臣の御説明は、半分説得力があるんですけれども、半分説得力がない部分がある。なぜかといえば、私が聞いているのは、在勤基本手当のことをお伺いしているんですね。

 要するに、問題点、問題意識がそもそも、これは配偶者手当や子女教育手当や住居手当と同じなんじゃないのかと。結局、使っても使わなくても手当としては渡してしまっているということであって、この前の同僚議員のやりとりの中で、こういう家族的つき合いがあるからとか、そういうので充てているという説明をされるけれども、実はそれは配偶者手当とか子女教育手当なんかと同じような性格の、要するに、渡してしまう手当ということなんじゃないんですかという問題意識を僕は持っているんです。

 逆に言えば、先ほど触れました丸谷委員のやりとりのときにも出ていましたけれども、できるだけ、必要な経費がかかったら大使館がその都度きちんとそれについて手当てしてあげるという、ちゃんと透明性の高い形で処理すべきなんで、今、私が二つの例を挙げて、この場合はどうして差がないんですかと聞きましたけれども、それも何を聞きたいかといえば、差があってもなくても同じに渡すのであれば、それはそもそも手当なんじゃないのか。手当の性格が強いんじゃないですか、給与の性格が強いんじゃないですかということを御指摘申し上げたので、その意味で、半分は理解できましたけれども、半分はなお改善する余地があるんじゃないかと私は思うんです。

 もし、副大臣、もう一言おありになればどうぞ、なければ先に進ませていただきます。

岩屋副大臣 先生御承知のとおり、在勤手当というのは、非常に、ここのところずっと減額が続いておりました。麻生大臣のイニシアチブのもとで、余りにも他国の実情あるいは民間企業の実情等に比べてこれは問題があるのではないかということで、回復には向かっているわけでございますが、それでも実質ではマイナスということでございますので、外務省としては、外交官が海外でしっかりと誇りを持って働いていただくために、できるだけ手当の充実を図っていきたいというふうに思っております。

 なお、先生が御指摘の、さらに透明性を高めた仕組みにすべきではないかという御指摘は十分に踏まえさせていただいて、今後必要な検討を行っていきたいというふうに思っております。

小野(次)委員 どうもありがとうございます。

 こんな質問を続けていると、さぞかし小野は、では、外務省に行ったときにいじめられたから言っているのかと、私は思われても構わないんですけれども当時の同僚とか上司の方に御迷惑がかかってもいけないので、余談になりますけれども。

 もともとの役所に戻って十年ぐらい私は気がつかなかったんですけれども、あるとき呼ばれて、小野君は同期よりも給与が一号高いよというんです。どうしてかなと思って警察庁の親元からずっとたぐっていったら、十数年前に外務省へ出向したときに、なぜか、特別昇給というのですか一号上げていただいていたんですね。だから、出向で行っていて上げてもらうなんというのは非常にあれなので、私はアテンドの小野なんと言われていましたので、当時国会議員の方をパリでアテンドして結構好評だったんですが、そのお褒めの言葉かなと思っているんです。そういうことで、私は、決していじめられたとかそういうことじゃなくて、外務省にしっかりやっていただきたいという思いで質問を続けさせていただきます。

 三番目に、伝馬船という、これは副大臣あるいは御存じないかもしれませんが、弁当持ちという言葉がありますね、自分が例えばどこか別の役所に行くときに親元から給料を出してもらうということ。これはむしろ官房長がおられたら官房長の方が詳しいと思うのですが、では座布団というのと伝馬船というもののコンセプトを、皆さん御存じじゃないと思うので、わかりやすく説明いただければいいと思うので、お願いします。

塩尻政府参考人 伝馬船の御質問が出ました。

 伝馬船というのは、どういう経緯でつくられた言葉かはあれですけれども、要は、在外公館に各省から御出向いただく、我々、アタッシェということで呼んでおりますけれども、アタッシェが行かれると、やはりその分、先ほど話が出ました会計だとか電信だとか、そういう支えるスタッフが必要になるという事情がございます。そういうことで、アタッシェはふえるけれども官房体制がその分ちゃんとしなければいけないということで、アタッシェを受け入れるに際しまして、会計あるいは通信などの官房要員の定員枠をアタッシェの派遣元の省庁から振りかえる制度ということでございます。

 これは従来、そういうことで各省といろいろ協議する上でやっていたわけですけれども、十四年度にこの制度はもう廃止しようということで、アタッシェは当然、引き続き来ていただく、あるいはふやすということでやっておりますけれども、この伝馬船制度自体は、平成十五年度からもうこの制度は廃止しているということでございます。

小野(次)委員 時間があるので私の方から説明しますけれども、座布団というのは、自分の座席分の一という定員を振りかえてもらうことですけれども、伝馬船というのはどうしてついたか。官房長、私は結構、有職故実に詳しいんですけれども、伝馬船というのは、渡していって空で帰ってくるから伝馬船というんですね。

 平成十八年の二月に、これは民主党の篠原孝議員が環境委員会で質問しています。環境省が海外に行くときに、パリなんかいいところだから五人もよこせ、こういうことが行われているんですよと。ポスト一個とるために定員を五つ動かせ。僕は五というのは聞いたことないですけれども、今まで長い間、外務省にポストをもらうときには、一なら座布団です、そうではなくて複数定員を動かすというのが行われていまして、これが伝馬船というんですね。ひどい話、これは事実かどうかわかりませんが過去にはあったと思います。一台目は数の分だけその省庁から来てもらう、だけれども二台目からは、一以外の残りの伝馬船の部分は自前で運用しますと。つまり、本当に空船で返すということですね。そういうことさえ行われていたということでございます。

 平成十八年の篠原委員の質問に対して神余さんの答弁は、十四年度をもって基本的に廃止しておりますと答えておりますが、資料の二にお配りしていますけれども各省庁の振りかえ数、これを見れば大体うかがい知ることができるんです。

 この中でも、十年間とってもらいましたけれども、一つの年度にかなり数多い振りかえを外務省へしている省庁がまだあるんですね。米印がついていて、ここには、旧経企庁、公安庁からの定員振りかえを含むとなっていますから、これはちょっと別の制度の意味があるのかもしれませんが、それでも今でも、十八年度、十九年度を見ても複数、四とか七とか一気に振りかえているのがあるんですね。この省庁についても、本当にもうなくなったということでよろしいんですか。

    〔やまぎわ委員長代理退席、委員長着席〕

塩尻政府参考人 先ほど答弁申し上げましたとおり、平成十五年度から先ほどお話しになっている制度というのはやめております。

小野(次)委員 ありがとうございます。確認できて大変助かりました。

 これは、やはり本当に、毎年毎年の定員削減とか増員とかというのは、ある意味で財務省とか、大臣は総務省から外務省両方で、総務省の方の定員管理とかそういうところでやっているはずなのに、実は直取引でこうやってその定員が動いているというのは、国会議員にとってもなかなか見えにくいところで動いているわけですから、いいことではないと思うので、おやめになったということであれば了解いたしました。

 四番目は、民間大使の採用についてお聞きしたいと思います。

 これも、外務省からいただいた資料を配らせていただいていますが、過去十年間に結構、これだけの国へ大使を民間から登用した方が行っている。平成十四年度のスイス(軍縮代表部)と書いてあるのは、多分、猪口議員のことではないかと思うのでありますが、ちょっとそれは別にして、申し上げます。

 時間が限られているので先へ進ませていただきますけれども、まず、官房長に伺いたいと思いますが、瘴癘地という言葉がございますね、不健康地、瘴癘地。この瘴癘地という言葉の意味をちょっと確認のために御説明いただければと思うのですが。

塩尻政府参考人 瘴癘地という言葉は、私自身も漢字を書けませんけれども、勤務環境が非常に厳しいところということでございます。ただ、瘴癘地というのは非常にわかりにくい言葉ですし、今はもう我々使っておりません。

小野(次)委員 瘴癘地というのは、熱病があるような地ということの意味らしいんです。寒いところ、熱いところということですけれども、今は何を使っているかというと、不健康地という名前。かえってこの言葉の方がよくないんじゃないかと思うんですけれども。

 今私が伺いたいのは、民間大使の登用をしているけれども、これまたそういう声があるということですよ、そういう世の中の声として、どうも外務省は瘴癘地、不健康地、あるいは発展途上国にはそういうポストを回すけれども、欧米の先進国のポストというのは依然として外務省のキャリアが占めているんじゃないか、渡さないんじゃないかというような声があるんですけれども、実態はいかがでしょうか。

麻生国務大臣 小野先生なんかはパリなんていいところに行っちゃっている方ですから、その先生から言われると、ちょっと待ってください、パリはいつから瘴癘地になったんですかと言いたくなるんですが。警察関係は、その前がベルギー大使、その前がスイスの大使、その前もいいところに行っておられます、特に優遇されているということではありませんけれども。

 一つだけ、さっきの伝馬船の話ですけれども、あれは先生、昔のことをよく思い出してみてくださいね。海外のその方たちは、みんな先進国になっちゃったんですよ。外務省は全部瘴癘地ということになって、六割、七割になっちゃったわけ。これはちょっとどう考えてもおかしいじゃないかといってあの制度をつくって是正をして、結果として、ずっとその種のところが平均化されて、平成十五、六年で大体その必要がなくなったというように、ちょっと経緯がありますので、その点が一点。

 それから、今御質問のありました、特命全権大使等々百二十四ポストのうち民間出身が八人なんですが、この民間出身者の赴任先につきましては、エチオピア、ニカラグアもありますが、ハンガリー、スイス、アメリカといった先進国もあるということでありまして、今そういった意味で特に偏っているというように思っていることはございません。

 それで、これはよく諸外国と比べられてどうですかという御質問を同業者の方というか議員の方から伺うんですが、今、在外におけます大使ポスト百二十四人のうち、いわゆる外務省以外、これは警察とか運輸省とか、ほかの役所からいろいろ来ておられる方々を含めますと、外務省以外から起用されている方が十九人ということになっております。先ほどの民間というのは、そのうちの八人ということであります。

 これを他国と比べるとどうかということをよく言われるんですが、イギリスは百五十三人のうち民間出身者は一人です、それからフランスは百七十四人のうち二人、ドイツは百六十五人のうち二人ということになっておりまして、日本の場合は、こういうところから比べますと、かなり多い。

 いや、アメリカは多いじゃないかという方が出るんですが、アメリカは全然違いまして、システム自体が御存じのようにポリティカルアポインティーと称するので、これは、かわりますと、下にいる局長以下がごそっと全部かわる。四年か八年に一遍起きる話ですけれども、システムが全然違いますので、このポリティカルアポインティーと一緒にされると、こちらの方とはシステムが全然違っておりますという点は御認識をいただければと存じます。

小野(次)委員 私が申し上げているのは、外務省の努力というのを前向きに評価しているわけでございまして、今後ともというか、今後はなおのこと、今まで以上に、今私が言った、世の中にそういう声がありますよと、先進国なんかのポストも含めて、どんどん民間なり他省庁なり、外務省だけじゃない人材登用をぜひ外務大臣に図っていただきたいなと。

 最後に一言だけ。私は天下りの話を冒頭申しました。やはり問題なのは、各省庁の権限とか予算とかが絡んで天下りするということが非常に問題になっているんだ、あるいは批判を受けているんだと思いますけれども、一方で、語学力とか交友の広さとか国際感覚とかという、身についていて役所をやめたって離せないようなもの、体にしみているものが評価されて再就職するというのは、僕は別に問題ないんだろうと思うんです。

 そういう意味で、ぜひ大臣にお伺いしたいんですが、今議論のあります人材バンクの活用について、特に外務省をおやめになる方を念頭に置いてですけれども、御所見なり御認識をお伺いして、私の最後の質問にしたいと思います。

麻生国務大臣 これは、人材バンクというか、いろいろな表現が使われていますけれども、この問題については、今いろいろなところで議論がなされておりますので、私どもとして、いわゆる外務大臣として、所管としてはちょっと違いますので、なかなか発言としては難しいところだと思います。

 小野先生、まあ自分の経験からいきますと、私は石炭会社の社長というか、あれをしていましたもので、それを閉山しましたときに、二千四百二十何人の社員を解雇せざるを得ない立場になりました。当時の代表取締役としては、当時、その再就職の世話というのをあちこちにお願いしに行った経験があります。

 したがって、この種の話というのは、その人を知っていないと、小野次郎というのはどういうやつで、太郎よりはこれぐらいいいという話をきちんと相手に説明してやらぬと、受け取る方がなかなか受け取らないんですよ。向こうは雇う方ですからいろいろ質問してくるのに、全然答えられないというのではなかなか機能しないんじゃないかな、自分の経験からとしては、そんな感じがいたしております。

小野(次)委員 私は、この点については、外務省というのは、余り権限とか利権とか予算は限られていると思いまして、むしろ、各人の持っている資質で再就職されている方が多いんじゃないかなとかねてから思っていましたので、外務省としても、この仕組みの導入について、政府で今検討しているところですけれども、さっき言ったクローズドな感覚じゃなくて、ぜひ広い視野で対応を図っていただければとお願い申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

山口委員長 次に、長島昭久君。

長島(昭)委員 民主党の長島昭久です。

 きょうは温家宝総理がお見えになる、その日の外務委員会、私は四番バッターでしたので中国の話題ばかりで私の質疑する項目はみんな言われちゃうんじゃないかと思ったんですが、ほとんどなかった。何か私は拍子抜けしました。

 きょうの新聞を見ると、一面で「首相、年内訪中 首脳会談で表明へ」。順番からいくと次は胡主席が日本に来られる順番じゃないかと思うんですが、そういうことですね。それから、二面には「環境などで協力 日中が共同文書」「羽田―上海便実現 共同文書に明記へ」、それから「エネルギー研究 日中の機関で提携 共同声明に盛り込む」。こういうことで、昨年の十月の総理の訪中以来、劇的に転換をしたんだろうというふうに思うんですね。

 まさに、外務大臣は、前の最悪の関係だったころも外務大臣をやっておられ、そして今物すごく劇的に変わったところ、だから、両方の雰囲気を、さっき、雰囲気が全然悪かったという話をされていましたけれども、その両方を経験されているので、この間、恐らく外務大臣のお立場で今日の日中関係につながるような努力をされていたんだろうというふうに思いますし、特に昨年の五月のドーハでの日中外相会談というのは、かなり大きな転換点になったんじゃないかと私自身は思っているんです。

 そこで、去年の十月、日中間で合意したコンセプト、まさに日中関係をこれからどうやっていこうかというコンセプトは、戦略的互恵関係。これは何かわかったようでわからないので、きょうはまず冒頭にここをぜひ外務大臣に御説明いただきたいんです。

 九八年の十一月のときには、日中関係を規定している三番目の文書と言われていますけれども、共同宣言を日中間で発出いたしました。そこでは、基本的な枠組みは友好協力パートナーシップというふうに定められていますね。この友好協力パートナーシップから戦略的互恵関係になった、これがどういうふうに変わっていったか。

 少しフットノートを申し上げますと、九六年の四月には、中国はロシアと戦略的パートナーシップを結んでいますね。それから、九七年の十一月にアメリカと戦略的パートナーシップ。中国にとって戦略的という言葉は非常に意味のある言葉だそうですけれども、日本は、その後に共同宣言を発出したんですが、友好協力パートナーシップという、ちょっと抑えた表現になっていた。

 それが、今回、戦略的互恵関係というふうになった。そこのあたりの真意というか、日本側の受けとめ方、あるいは日本側の意図というものを御説明いただければありがたいと思います。

麻生国務大臣 中国側の感覚とこちら側の感覚と、必ずしも一致しているとは限りませんので、その点は長島先生もよくおわかりのところだと思います。

 少なくとも、この四月四日の温家宝のいわゆる邦人記者とのインタビューというのが出ておりますが、それを見ますと、氷を解かす旅という表現を使っております。氷というのは、それは中国における反日感情を言って氷と言っているのか、日本におけます対中感情を氷と言っているのか、ちょっとそこのところの目的語が明確じゃないんですが、氷を解かす旅としたいとの期待を表明して、いわゆる両国関係で少なくとも重要な問題について共通認識というものをつくって、両国関係の発展を促進したいという話が一点。それから二点目に、日本の国民と接触を通じて中国をより理解してもらうことで相互理解の促進にしたいというような話を、前向きな意欲を示している表現と思われますけれども、そういう話をしておられます。

 それで、私ども、安倍総理の訪中というものを十月にやらせていただいておりますが、そのときの成果というものの中に、今言われました戦略的互恵関係というものを構築するということを言っておるんです。ストラテジックパートナーシップとか、いろいろな言葉がよく使われるところではあるんですが、この戦略的の意味というものは、少なくとも、中国における対日政策というものの変更というのが一番大きかったと存じます。それは、多分、去年の三月の第六回全人代が終わった後の温家宝総理の記者会見等々の内容、その後の胡錦濤主席のスピーチ等々の中を見て、明らかに対日政策の変更というのがはっきりしてきたように思っております。

 それを受けまして、五月のドーハの対中政策を、我々としては、日本としては、それまで約一年少々日中間の外務大臣による会合というのは途絶えておりましたので、たしか四月に中国に対して日中外務大臣会合というのを外務大臣から申し込んだんだと記憶します。その結果、五月のドーハの会談につながっていって、あれからだと思いますが、いろいろな意味で、長島先生、経済面では大きなことが起きております。

 日本からの対中国投資、それから世界じゅうからの対中国投資を見ますと、一昨年は日本以外はマイナスパーセントです。日本だけがプラスの二〇%ぐらいだったと思います。

 しかし、ぐあいが悪くなってきておりましたので、民間の話というのは結構知っている方だったものですから、李肇星外務大臣に対して、このままの日中関係が続くと、政冷経熱というけれども、経も間違いなく冷になりますよ、これはもう明らかにそういうことになってきますから、これはおたくのためにもこちらのためにもならぬのではないか。したがって、日中がともに益する日中共益が目的なのであって、日中友好はその手段ですから、そういった意味では、日中共益にするためには、少なくとも両国関係を、政治のレベルでもある程度戻しておく形をしておかないと、これは経も冷になりかねぬということをそのときに申し上げました。

 結果としてどうなったかというと、去年一年間で、日本の対中投資はマイナス三〇%になっております。四―九で見ますと三一・四%まで減ったというのが去年の実績であります。

 そういったものは現実としてなってきたというのは、やはり双方組んだ方がともに利益としてはあると思っておりますので、そういう意味では、今言ったような日中のいわゆる戦略的互恵関係というものに関しましては、ともにいろいろ抱えております課題が、いわゆる国境線の話というか、海の上での油田の再開の話とかいろいろ抱えておりますので、歴史共同研究を含め、いろいろなものに関して双方できっちりした話をするという努力を今後していって、ともに日中共益に結びつけていこうという理解を双方でされた上で、今回の訪日につながっていったというように考えていただければと存じます。

長島(昭)委員 今、共益という表現をお使いになった。互恵ということと同じ意味だろうというふうに思うんですが、確かに、戦略的関係というものをつくっていく、これは単に短期的な利害得失でがたがたする関係ではなくて、もっと長期的なスパンで物を見ていこう、恐らくそういうことだろうと私は思います。

 あともう一つよく言われるのは、包括的、つまり単にガス田の問題だけ言う話ではなく、貿易も投資も、あるいは安全保障も含めて、日中間をもっと成熟した関係にしていこうということで、一つは、前向きな思いももちろんですけれども、その中には過去の日中関係に対する反省もいささかあったんだろうというふうに思うんですね。

 つまり、よく言われることですけれども、日中友好、日中友好といって乾杯をしていれば何となく過ぎていった、そういうある種のどかな時代があったと思うんですけれども、最近、ナショナリズムの高揚という、両国においてもそうだと思いますが、なかなかそういうものじゃ済まされない状況になってきて、もう一回そこを規定し直したという意味では大きな前進だった、こういうふうに私は思いますし、今回、私も、日中関係が強化されるということについては大歓迎をする一人ではありますけれども。

 ただ、いろいろ新聞報道やあるいは政府からのお話を聞いていると、ちょっと前のめりというか、何かここで完全にエンブレースしちゃうというか、抱き合ってというような感じで、ちょっと大丈夫かなという思いが、多少あまのじゃくなものですからあるんです。それは、一番心配するのは、日中関係を強化するのはいいんですが、そのことによって、別の重要な、我が国にとって非常に大切な国益とかあるいは友人を失っていく、あるいは犠牲にしていくような、そういうことになってはいかぬなと。

 というのは、きょう温家宝総理がお見えになる日なので、歓迎ムードとともに、一つ、あえて私はきょうこの点をお伺いしたいと思っているのは、実は台湾との問題でありまして、この台湾という問題は、確かに中国を考えるときにはどの国も頭の痛い厄介な問題であることは間違いない。中国側は、もうはっきりした方向性というか戦略というか、台湾は中国の一部である、中華人民共和国の領土の一部だ、我々のところに戻ってこなきゃいけないものだ、それ以外は認めない。その目標に向かって、中国という国ですから、そんな一年や二年でそこまでいこうとは思っていないと思います。それは十年、二十年、五十年、百年かけてでも、そういう方向に世界を持っていこうとしているんだろうと思うんですね。

 必ず中国は、相手国が関係を強化してこようとしたときをねらって、あなたは台湾に対してどういう態度をとるんだ、台湾をあなたは認めるのか認めないのか、こういうことを迫っていますね。

 例えば、米中の三つのコミュニケで米中の関係は規定されていると言われていますけれども、きょうはちょっと米中コミュニケも含めて、皆さんのお手元に、米中関係を規定している、七二年、七八年、八二年というこの三つのコミュニケの該当する部分、私が関心を持っている部分についての抜粋を皆さんにお示しいたしましたけれども、この交渉をするたびごとに、中国はアメリカに対して、台湾をある意味切り捨てる、台湾との関係を絶つような方向でかなり迫ってきた。

 一番記憶に新しいのは、あのクリントン政権のときに、クリントン大統領が中国に来たときに、いわゆる三つのノー、台湾の独立は支持しない、それから二つの中国、あるいは一つの中国、一つの台湾は支持しない、それから三つ目は、主権国家ということが資格要件になっている国際機関への加盟は支持しない、この三つを文書化しろ、合意文書に載せなさい、こういうふうに迫った、そんな経緯があります。

 ですから、私も今回、去年の十月から、これから日中の戦略的互恵関係というものがどんどん深まっていく中で、台湾との距離感というか、台湾と日本との関係を外務省はもう一度ここで認識をし直すというか、私は別に、きょうは、今までのラインから外れろという質疑をしようと思っておりません。今までどういう経緯があって、今日の日中関係、あるいは日本と台湾との関係が築かれてきたかということをお互いにちょっと再確認したい、こんなふうに思っているんです。

 そこで、中国側から不評を買いましたけれども、二〇〇五年、今から二年前の二月に、日米間で共通の戦略目標というものを合意いたしました。そのときに、私は本当に日本側からよくここまで言及したなと思うんですが、台湾海峡の問題についての平和的解決ということをはっきりと明記いたしました。

 台湾という存在は、先ほども言いましたように、非常に微妙な存在で、かつて日本は、あそこにある中華民国という政府を承認した。一九五二年に承認をして、約二十年間国家として扱ってきた。それ以来、別に中国と台湾との関係は外から見て変化はしていないにもかかわらず、七二年の日中共同声明以来、中国を正統な、合法的な政府としてみなし、そして台湾を国家としてはみなさない、こういう立場で来ているんです。

 一つ考えなきゃならないことは、台湾を取り巻く環境というものが一つあると思うんですが、私はこれは外務大臣にぜひお答えいただきたいのは、台湾という存在、台湾が、独立と言ってしまうといけないので別の言い方をしますが、平和的に存立をすることというのが、日本にとって、我が国にとっての死活的な利益の一つだろうというふうに思うんです。

 つまり、あそこの海峡の安全が確保されるということは、我が国の通商にとってはまさに死活的な利益にかかわるし、仮にあの台湾が、もし中国に併合というか一緒になるようなことになると、台湾の皆さんがそれを選択されるのはそれはそれで私たち何も言うことはないんですが、そうでない形で一緒になるようなことになった場合には、ちょっと考えていただきたいのは、あの台湾の西側に、例えば中国の原子力潜水艦なんかが待機するようなことになると、なかなか、これは我々がシーレーン、交易をしていく中でも非常に気になる存在だし、アメリカがアジアに対していろいろな意味でアクセスをする際にも非常にそこは気になってくる。

 こういうことでありますから、やはり安全保障上の利益を考えると、台湾が今のまま、ある程度、現状維持と私たちは言っていますが、存立をし続けていくということはすごく重要だと思うんですが、その点について、外務大臣の御所見を承りたいと思います。

麻生国務大臣 冷戦構造が崩壊した一九九〇年以降、かれこれ十七年がたちますけれども、この間において、この北東アジアの中において朝鮮半島並びに台湾海峡というこの二つはやはり大きな問題点であるという認識は、防衛関係をやっておられる方、外交関係に従事しておられる方はひとしく持っておられる認識だろうと私どもとしては思っておりますし、そう思っていない人がいらっしゃるかもしれませんので、期待しています。

 そういう状況にある中で、この台湾海峡の問題というのは非常に大きいので、二年前のお話の御指摘がありましたけれども、ここが、いわゆる三つのノーという先ほどの御指摘がありましたけれども、我々としては、四つ目のノーとして、この地域において武力による一方的な解決は望まないという四つ目のノーは、たしか、小渕総理と江沢民主席との間の会談で小渕総理の方から言われた、七年前の記憶はこれだと存じます。

 そういう状況にありますけれども、今に至るも、日本としては、この問題が中国側の高い関心事項であることはもう我々は十分に理解しておりますが、少なくとも、これに対するコメントというのはいろいろ今まだ文章を詰めておる最中ぐらいのところで、ずっとこの問題は、このところ、最後のところとして、いろいろ向こうの要望とこちらのあれとなかなか一致していないというのが現状であります。

 ただ、日本政府の立場というものは基本的に日中共同声明にあるとおりなんであって、この基本的立場に今全く変更はございませんというのが今我々の公式答弁であります。

長島(昭)委員 後で日中共同声明の真意については改めて伺いたいというふうに思いますが、そういう台湾が今の平和的な存立を維持しようという中で、台湾側もいろいろな努力をしているわけですけれども、今私は、台湾を説明するときにこういう言い方をよくするんです。海に小さな舟を浮かべる。その舟は、舟の位置をそのままに保つためには、潮の流れとか風とか波とかありますから、その流れに逆らうような努力を、こぐとか、努力をしていかないとどんどんそれは流されていく。私たちは現状維持、現状維持と言うんですけれども、現状維持だから何もしなければ今の台湾の立場がキープできるかというと、それはそんな甘い国際環境ではないと思うんですね。

 そういう中で、今台湾の中で起こっていることは何かというと、例えば対中貿易。これは二〇〇五年の統計ですが、米ドルにして七百億ドルを超えている。前年比で一六・三%増。台湾の貿易総額に占める比率は二〇%に近づいてきて、ほとんどもう経済的には相互依存関係が物すごく深まっている。それと同時に、野党の国民党の政治家が北京もうでをする中で、台湾の今の指導者の皆さんからすると、何となく、その波にあるいは潮の流れにどんどんと巻き込まれていくんじゃないか、こういうような、彼らからするとすごく微妙な緊張感が今漂っているんじゃないかな、こんなふうに思っているんですね。

 そういう台湾と日本との関係というのは、ある意味、現状を維持するために何か努力をしなきゃいけないと私は常々思っておりまして、きょうはその観点からお伺いをしたいと実は思っているんです。

 しかも、台湾というのは、外務大臣が提唱されていた自由と繁栄の弧の中でも、外務省が発表したあの地図の中には、台湾の地図が何か吹き出しで消えちゃっていたんですけれども……(麻生国務大臣「消えていた」と呼ぶ)そうなんですよ。それは以前ちょっと御質問したことがあるんです。それは別に意図的じゃなかったと思いますけれども、民主主義あるいは自由主義、価値の外交という観点からすると、やはり台湾の存在というのは私は無視できないということがあるんですね。

 そこで、きょうの本題に入りたいんですが、気がかりなことが一つある。それは何かというと、京都に光華寮という中国人の学生寮があるんです。この光華寮をめぐって、その所有権をめぐっての訴訟が、これはもう四十年前に提起された訴訟でありますが、先月の末に、これの最高裁判決が実は上告から二十年ぶりに出たんです。

 最高裁に伺いたかったんですが、最高裁判所の方は外務委員会に今まで出席したことがないということで、資料提出だけで済まされてしまったんですが、最高裁の方から資料をいただきまして、調べたら、二十年というのは本当に異例の長さでありまして、上告審というのは大体今、平均でいうと三カ月とか四カ月とか五カ月で出る。ところが、これはもう二十年、ある種塩漬けというかたなざらしにされてきた事例なんですが、それが一月の末からぽんぽんぽんと審理に入って、二カ月で判決を出しちゃったんですね。温家宝総理とは余り関係ないのかもしれないんですが、しかし随分手回しがいいな、こう思ったのであります。

 ちょっとそのクロノロジーを見てください。大臣はもうベテランでありますから御存じだと思いますが、日本で一番騒然としたのは、七六年に京都地裁が、中華民国がもともと登記をした物件なんです。(麻生国務大臣「七七年」と呼ぶ)そうですね。中華民国が登記をした建物があったわけですね。それが寮だった、寮生がいた。その寮生の中には、台湾の人たちもいた、あるいは大陸から来た人たちもいた。

 まず、一番最初に、六一年に所有権の移転登記を中華民国の名前で完了しています。その後、六七年に、中国の、大陸系の寮生が入ってきたものですから、中華民国としては、もうそういう人たちには出ていってほしい、これは我々の所有物なんだからそこからは出ていってほしいということで、その明け渡しを求めた訴訟なんですね。それが六七年の九月六日に提訴されました。

 しかし、その後、七二年に我が国政府は日中共同声明で政府の承認の切りかえをやりました。先ほど申し上げたように、中華民国から中華人民共和国に切りかえを行いまして、そのために、これは一審が続いている最中の話でしたので、そもそも承認を失った台湾が訴訟の当事者になれるのか、それからもう一つは、台湾が登記してあるんですけれども、寮の所有権は台湾から中華人民共和国に移るんじゃないか、こういうことが争われて、一審が、今外務大臣からサジェスチョンがありましたけれども、京都地裁で七七年に出て、これは、七七年の判決は、いや、わかった、中華人民共和国に所有権が移転するんだという判決が出たものですから、台湾側が控訴いたしまして、それで八二年に大阪高裁で逆転といいますか、いや、実は台湾の側にあるんだという判決をし、そして京都地裁に差し戻して、また一審も台湾の所有権を認め、八七年に大阪高裁が認め、そして、追い出されそうになっている寮生がそれに対して最高裁に上告した。こういう経緯で今日に至っているんです。

 皆さんも大体おわかりになったと思うんですが、そこで今回、最高裁はどういう判決を下したかというと、まず、一月二十二日にいきなり審理に入るんですが、上告人、これが中国側です、それから被上告人、これが台湾の側を代理している訴訟代理人ですが、この両方にそれぞれの立場を釈明しなさいという求釈明を行ったんですね。回答期限は三月九日。

 ちょっとこのクロノロジーを見ていただきたいんですが、もうほとんどの日本人は覚えていなかったと思うんですよ、この事件がこんなに、二十年間も最高裁で塩漬けになっていたのを。それが、一月二十二日に最高裁が動き出した途端、一月二十五日に外務省の副報道局長が定例会見で、光華寮事件は民事訴訟ではなく政治的案件だ、こういう言及をするわけですね。

 それから、三月二十七日に判決が出ます。判決は、今までの下級審を全部無効にして、ひっくり返したんです。それはどういうことかというと、非常に形式的なところで判決を下したんですけれども、そもそも、中華人民共和国に政府の承認が切りかえられた、被上告人である中華民国の訴訟代理人というのは前の中華民国の政府から授権を受けて訴訟代理していたでしょう、しかし、七二年にその政府そのものを日本国政府は認めなくなったんだから、その訴訟代理事務自体そのものが無効だ、だから、二十年前にさかのぼってもう一回やり直しなさいという判決を下して、二日後に、中国の国営新華社通信は至急電で、日本の最高裁判所は、台湾当局は訴訟権を持たないと認定し一審の京都地裁に差し戻した、こういうふうに高らかに宣言をしているんです。

 これだけ見ると、ははあそうかと思うんですが、今回の判決を、両方の訴訟代理人が提出をした資料を見てみると、最高裁の判決は、まさに中国側の訴訟代理人の出した回答書のロジックそのものなんです。こういうことはよくあるのかと法律の専門家に聞いたら、そういうことは特におかしいことじゃないと。しかし、中国側のロジックそのものだということは一つここで確認をしておきたいと思います。

 先ほど言いましたように、騒然となったと言いました八六年、八七年のころは、京都地裁が中華民国の所有権を認めた段階で、当時の駐日参事官だった陸参事官が遺憾の意を表明したり、あるいは当時外相だった呉学謙外務部長が外相定期協議の中で不満を表明したり、あるいは当時の最高指導者だったトウショウヘイ氏もこういう判決を下すのはいかがなものかということをたび重なる機会にずっと言い続けた経緯が実はあるんですね。

 そこで、ちょっと伺いたいんですが、きょうは法務省に来ていただいていると思いますが、中華民国が一九七二年当時に所有していた建物だとか土地とかあったと思うんですね。その所有権の移転が自動的にというか、日中共同声明で政府承認が切りかわった段階でその所有権の移転が行われることになった物件が幾つかあると思うんですけれども、その具体的な物件の事例は後で外務省に伺いたいんですが、その登記の名義人を変更する手続というのがとられたと思うんですけれども、その手続の概要を教えていただきたいと思います。

後藤政府参考人 中華民国名義の不動産のうち、日本国駐在中華人民共和国大使から登記の嘱託がされたものにつきましては、登記所の方で所有権登記名義人の表示の変更の登記が行われたと承知をしております。

 その表示の変更の登記の際には、外務省作成の、登記名義人の名称は、昭和四十七年九月二十九日、中華民国から中華人民共和国に変更された旨の証明書の添付を受けて、登記所の方でその嘱託を受理している、こういう取り扱いでございます。

長島(昭)委員 ありがとうございます。

 外務省の証明がこの登記の名義人の移転には必要だ、書きかえには必要なんだ、こういう話ですが、その外務省が、当時中華民国が所有していた、所有権を持っていた土地や建物の中で、そういう証明を出したものと出していないものがあるんですけれども、そこの詳細について、どういう不動産があったのか、物件があったのかをまずお知らせいただいて、そのうち証明を出したものと出さなかったものも区別して説明していただければと思います。

佐渡島政府参考人 お答え申し上げます。

 私どもが当時委嘱を受けました建物、三件ございます。一つは港区の元麻布、これは恐らく当時の住所で記載されていると思いますが、在日大使館の土地建物、それから大阪市西区にございました在大阪総領事館の土地建物、それから横浜市の中区にございました在横浜総領事館用地という三件があったと承知をしております。それ以外のものにつきましては、私ども、外交領事財産に当たらないということで必ずしも全貌は把握をしておりません。

 今御指摘にございました京都の光華寮とか、それから私どものネットワークに入っておるものとしては長崎県にございます孔子廟、これは土地なのか建物なのかちょっとここではつまびらかではございませんけれども、そういうものもあるようでございますが、それにつきましては外交領事財産に当たらないということで、ほかにどれぐらいあるのか、どういうものがどこにあるのかというのは存じ上げておりません。

長島(昭)委員 その区別をする基準というのは、外交領事財産であるかないかということでよろしいですね。光華寮はそうでないという御判断ですか。

佐渡島政府参考人 そういう判断だったと承知しております。

長島(昭)委員 つまりは、そういう外交領事財産ではないものについて、当時の中華民国、今は台湾と呼んでいるわけですけれども、そこが所有権を持っていた。だから、そこは登記したわけですから、それは変更されないまま七二年を過ぎている。そのことは正しい、事実ですね。

佐渡島政府参考人 そのように推測をいたします。

 というのは、私ども、変えたものについてははっきり承知をしておりますが、その余につきましてはつまびらかでございませんので、当時の登記がそのまま残っただろうと推測をいたします。

長島(昭)委員 ですから、この訴訟というのは極めて典型的な建物の所有権をめぐる民事訴訟なんですね。

 中国側、外務省の副報道局長は、先ほどちょっと紹介しましたが、光華寮訴訟は一般の民事訴訟ではなく中国政府の合法的な権益にかかわる政治案件だ、こういう指摘をされているんですね。しかも、日本側が中日共同声明の原則に照らしてこの問題を適切に処理することを希望するというふうに語っているんですが、この中国側の認識というのは、外務省としてどういうふうに受けとめておられるんですか。

佐渡島政府参考人 お答え申し上げます。

 簡潔に申し上げれば、私どもの見解とは全く違うということでございます。

長島(昭)委員 それを聞いて安心をいたしました。何か外圧まがいのコメントでこういう判決になるのかなと。つまりは、司法の独立ということで、最高裁の出した判決について外務省やあるいは立法府、行政府がとやかく言わない、これが我が国の三権分立の一番重要なポイントだと思いますが、確かに司法の独立は重要なんですが、では国家の独立はどうなのかと私はちょっと実は心配した向きもあったんですが、今の佐渡島審議官の御答弁で十分だった、今回の温家宝さんの訪日には余り関係なかったんだなということがわかりました。ほっとしました。

 ただ、今回の最高裁の論理、別に私はここで批判をしようと思っているわけじゃないんですが、最高裁のロジックというのは、政府承認の切りかえで中国の国の名前が変わったんだ。中国という国家が、清国から、いろいろ混乱があったけれども、国民政府ができたり中華民国になったり、そして、四九年には中華人民共和国になってと。中国という国家があって、そこをある種代表する政府の名前が変わった。こういう認識で、七二年にその国の名前が変わったんだから、それを代表する政府が変わったんだから、もとの代表する政府に授権を受けた訴訟代理人の訴訟行為は無効だ、こういう、私から言うと非常に単純な判断をしたんですが、私は、日本と中国と台湾との三角関係というか、この関係というのは、実はそんな単純な関係じゃなくて、歴代の日本の政府も、いろいろな圧力の中で日中共同声明を出し、その日中共同声明の精神をずっと今日まで受け継いできた。

 つまり、何が言いたいかというと、日本と中国と台湾との関係で複雑なのは、普通、通常の政府の交代というのは、同一の国家領域と同一の国民を対象にしてきちんと入れかわるから簡単なんですよ。ところが、中国と台湾との関係というのは実はそうじゃない。同一の領域の同一の国民、同一の人々を対象にしたものでは実はないんですね。

 細かい議論を、ちょっと時間がないですけれども、例えば、一八九五年の下関条約以来、台湾は日本領だったわけですから、台湾も含む中国国家というのはなかったわけですね。その後、日本はポツダム宣言を受諾して台湾を放棄したんだけれども、蒋介石総統が一九四五年に台湾に来て、そのときに初めて、中華民国というのは中国本土と台湾と両方を領有する国だ、こういう宣言をした。そして、五二年に日本が中華民国を承認したときは、地域限定で承認したんですよね。台湾のあの一帯をコントロールしている中華民国として日華平和条約を結んでいるわけですから。そして、中華人民共和国は、建国、一九四九年以来、台湾を実効支配したことは一度もないんですね。

 こういう複雑な関係の中で、我が国は中国との関係をこれまで切り結んできた。そして、日中共同声明を発出する直前には、中国は復交三原則というのを出して、台湾は中華人民共和国の領土の一部であるということを認めろというふうに、しかも、既に中国に返還されたものであるということを日本はコミットしなさい、こう言ってきたけれども、そのようにはしませんでしたね。

 そこで見ていただきたいのは、手元に、日中共同声明第二項、第三項を掲げました。第二項は、先ほどから何度も言っています政府承認の切りかえ、「中華人民共和国政府が唯一の合法政府であることを承認する。」承認する、レコグナイズですね。そして第三項では、ここが微妙なんですよ。「中華人民共和国政府は、台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であることを重ねて表明する。」これは、中華人民共和国が表明する。「重ねて」というところに思いがこもっていると思いますがね。

 それに対して、日本政府はどうしたかというと、この中華人民共和国政府の立場を承認したわけじゃないんですよ。「十分理解し、尊重し、ポツダム宣言第八項に基づく立場を堅持する。」ポツダム宣言第八項というのは、御案内のとおり、台湾に対する主権を放棄したということであります。

 この承認と、理解し、尊重するという言葉の違いというのは、実は外交用語の中で非常に重要ですよね。この違いをぜひ端的に御説明いただきたいというふうに思います。これは大臣にお願いします。

麻生国務大臣 これは物すごく大事な単語です。

 日本は、御存じのように、サンフランシスコの平和条約に基づいて、台湾に対するすべての権利等々を放棄いたしております。したがって、台湾の法的地位に関して、日本として独自の認定を行う立場にはないというのが、いわゆるサンフランシスコ講和条約のとき以来の一貫したところであります。

 この前提に立ちまして、台湾に関する日本政府の立場というのは、今言われました日中共同声明にあるとおりでして、中華人民共和国を唯一の合法的政府であることを承認した上で、台湾が不可分な領土であることも十分理解し、尊重するということであります。それ以上でもなければ、それ以下でもないというところであります。このような政府の立場というのをこのとき表明して以来、日本としては、ずっとこのことに関しては変更してこなかったというのが我々の現実でありまして、今でもその立場に何ら変わることはないということであります。

長島(昭)委員 今外務大臣がまさに、非常に重要な違いだ、こういうふうにおっしゃった。

 その背景には、今おっしゃったようなサンフランシスコ講和条約に対するコミットメントもさることながら、一つはやはり、台湾に対して中華人民共和国の支配権が現実に及んでいないという事実ももちろんあるし、中華人民共和国の政府の立場を理解し、尊重するということは、台湾を実効支配している、何と言ったらいいんでしょうね、地域的な政治権力そのものを否定するような法的義務を我が国が負ったわけではない、こういうふうに思うんですね。

 尊重ということ、あるいはそれ以外のいろいろな言葉、ここには「理解し、尊重し、」というのと「承認」というのが書いてありますが、実は、中国と国交正常化したときに、いろいろな国がやはり言葉の使い分けをしていまして、日本と同じ、尊重する、リスペクトという文言を使ったのがオランダとかフィリピン。それから、了知すると書きます、これは日本語では認識すると言った方がいいのかもしれません、アクノレッジ。アクノレッジというふうに言ったのがアメリカ。ここに書いてありますね、三つのコミュニケで。

 三つのコミュニケを全部見ていただければ、日本とアメリカと、大体同じようなラインで言っていることを区別しているのがよくわかると思うんですけれども、アクノレッジとレコグナイズと区別している。これは、アメリカとかイギリス、オーストラリア、ニュージーランド。それから、テークノート、留意しますよというのは、ちょっとまた一段下がると思いますが、カナダ、チリ、ベルギー、ペルー、レバノン、アルゼンチン。それから、アグリー、あるいは承認、レコグナイズというふうに言ったのがモルディブとかニジェールとかギニアとか、こういうことでありまして、わざわざこういう言葉の違いをやっているわけです。

 ここで一つ外務大臣にお願いというか指摘をさせていただきたいのは、この米中関係を規定している三つのコミュニケ、これは全部外交青書から抜粋しました。ちょっと奇妙なのは、アクノレッジという単語に対する訳が三種類あるんですよ。七二年の上海コミュニケでは「認識している」とちゃんと書いてあるんですけれども、その後は何か、七八年の共同コミュニケでは「認める」という微妙な表現になって、しかも八二年には「アクノレッジした」という、およそ日本語にはないような表現を使っているんですが、これは全部、認識する、認識する、認識するで統一されたらいかがですか。これはちょっとサジェスチョンです。

佐渡島政府参考人 御指摘のとおり、区々ございます。私も、正直なところを申し上げまして、当時、それぞれの訳文を、仮訳をつくりましたときに違ったものを当てていたという、そこに至った経緯というのはつまびらかではございませんが、私ども推測をいたしますに、サンフランシスコ平和条約に基づく日本の立場、あるいは共同声明に基づく立場というところを訳出したいがために先人たちがいろいろ呻吟をした跡がそこに残っているのではないかなと拝察をいたします。

長島(昭)委員 いや、米中の間を規定するコミュニケの訳文にまで呻吟するというのは、これは本当に大変なんだなと思いますが、要は認識するで私は全く外交上も問題ないと思いますので、これはぜひ外務大臣に御検討いただきたいと思います。

 最後に一点。こういうことで、明らかに外交領事的な財産以外のものについては、それは当然、台湾と日本との間には私的な民間の交流がたくさんあるわけですから、これからも、台湾当局が訴訟を提起するような、あるいは訴訟の対象になるような、そういうことは必ず起こってくる、そういう可能性が否定できないと思うんですね。

 そういうときに、一つの知恵は、アメリカ合衆国がやっているんですが、台湾関係法という国内法をつくって、国と国との関係ではないんだけれども、国内の法的な、いろいろな財産の所有権とかそういうものについては規定をしているんですね。それで、台湾関係法をちょっと、本当に短く読みますけれども、中華人民共和国の承認は、アメリカ法のもとで、台湾当局が一九七八年十二月三十一日以前に保持していた、またはそれ以降に取得した有体または無体の財産に対する所有権またはそれ以外の権利に影響しない、こういう規定をしているんです。これだと裁判所も非常に審理もしやすいし、二十年もこんなことで、寮生だって八十歳ぐらいの方がおられるようですよ。

 ですから、そういうことも含めて、私は、民事訴訟というのは、さっとやって、さっと権利義務関係をきちんと判定するというのが趣旨だと思いますので、こういう台湾関係法みたいなもので日本と台湾との法的な関係をもう一度きちっと整理する、そういう方向を御考慮いただけないか、外務大臣に最後にお答えいただきたいと思います。

麻生国務大臣 今急な御提案ですので、今お話を伺っただけでちょっと全体像がつかめているわけではありませんけれども、少なくともこの種の話というのは、他国の中同士の話が自国の中で行われているということにもなりますので、アメリカもいろいろそういったものを苦労したんだと思いますので、参考にはさせていただきたいと存じます。

長島(昭)委員 ぜひ、日中関係強化、これはもう本当に国ぐるみで、オール・ジャパンで取り組んでいかなきゃいけないと思いますが、そういう中で、もう一つの大事な国益を失わないような、そんな外交を展開していただきたいことをお願いして、質疑を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

山口委員長 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢でございます。

 きょうも委員会の冒頭に原口先生の方からオスプレーについて質問がありました。私も、角度は違いますが、オスプレーについて聞いていきたいと思います。

 それは、配備をめぐっての日米交渉の問題です。

 四月五日付の沖縄の地元の各紙は、SACOの最終報告の草案をつくる段階で、アメリカの海兵隊の垂直離着陸機オスプレーの普天間代替施設への配備が明記されていたということを明らかにしております。九六年十二月に公表された最終報告では、「短距離で離発着できる航空機の運用をも支援する能力を有する。」このようになっておりますが、この部分が、先立つ十一月下旬の草案では、海上施設はヘリコプター及びMV22オスプレー部隊の配備を支援するよう設計される、このように明記されていたわけですね。

 外務大臣に聞きますが、SACO最終報告の草案には、オスプレーの配備、その言及があったんですか。

麻生国務大臣 今のはSACOの最終報告を協議する過程の話なんだと存じますが、御指摘の米国側の文書とされるものについては、政府として全然、米側の文書ですので、これは日本としてコメントする立場にはないのは御存じのとおりです。

 オスプレーの沖縄への配備につきましては、これは米側から一貫しておりまして、我々としてはそれ以上あれしようがないんですが、現時点では具体的に決まっていないとの説明を受けておりまして、SACOの最終報告とございましたけれども、オスプレーの沖縄への配備を前提として書かれているものではないというように理解をいたしております。

赤嶺委員 あの報道されている最終報告の草案なるものは、日本政府としては知らないということですか。

西宮政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の米側の文書とされるものにつきましては、私どもは承知しておりません。

赤嶺委員 地元紙は、なお詳細に報道しておりまして、アメリカの公文書だとわかるようなコピーそのものを示しているわけです。

 その要旨も掲載をされておりますが、九六年十月二十三日のSACO作業部会の記録メモ、恐らく作業の中でどんな議論があったのかというのを米国政府の側がつくった報告用のメモなのかなと思いましたけれども、日本側がMV22オスプレーに合う施設の受け入れへの理解を求めることに困難が伴うだろうと発言した、日本側は困難だと発言したと明記されているわけですね。

 さらに、十一月二十六日の在日米軍、外務省、防衛庁の会合記録、これも新聞に掲載をされておりまして、在日米軍はオスプレーの配備が日本政府によって公表されていない点を指摘し、即座の情報開示を求めた。アメリカが日本に公表をしろよという情報開示を求めた。当時の交渉当事者でありましたキャンベル元国防副次官補も、日本側が非常に懸念した、特に外務省の懸念が強かった、こう述べているわけです。

 最終報告の公表に至る交渉過程の中で、オスプレー配備についてむしろアメリカの側が明らかにしなさいということを求めていたにもかかわらず、日本政府が公表しないと主張したというのが実際のことじゃないですか。いかがですか。

西宮政府参考人 SACOの最終報告に関します米側との協議の詳細については、米側との関係もあり、明らかにすることはできません。

 他方、オスプレーの沖縄への配備そのものにつきましては、米側より従来から一貫して現時点で具体的に決まっていないとの説明を受けておりまして、SACO最終報告はオスプレーの沖縄への配備を前提としたものではございません。

赤嶺委員 外務大臣、今北米局長は米側との協議の関係もありというお話でしたけれども、米国が、早く公表してそういう中身について情報開示すべきじゃないか、この文書の中ではそういうことを強く求めているんですが、その点、いかがなんですか。

麻生国務大臣 赤嶺先生がどのような形でその文書を入手されたか、その文書の内容が正しいかどうか、我々としては判断のしようもございませんし、また、その文書につきまして私どもは公表しないというルールに基づいてやっておりますので、私どもはこの内容について申し上げることはございません。

赤嶺委員 私が入手したというよりも、報道があるものですから、要約もちゃんと書いてあるものですから。

 そうすると、交渉過程のそういう文書というのは存在するわけですね。

麻生国務大臣 報道に関して、我々そんなに、自分のことが報道されて正しかったことは余り記憶にありませんので、報道を一々信用して対応するようなことをしておってはとてもできる話ではないのは、もう御存じのとおりでございます。

赤嶺委員 私は逆に、外務大臣、もうこのオスプレーの配備の報道はかなり以前から続いておりますが、だんだん報道のとおりになってきているな、外務大臣がどうおっしゃろうと、事態はそのように動いているなと思っています。見解の相違といえばそうなる話でしょうけれども、ただ、見解の相違で済まされない問題がオスプレーの配備についてはあるんですよ。これは、配備される側はいわば沖縄県ですから、まず住民の生活と安全にとってどうしてもチェックしなきゃいけないんです。

 オスプレーは、開発過程で事故を繰り返してきた経過があります。外務省は、その事実関係についてどのように把握しておりますか。

岩屋副大臣 オスプレーによる事故でございますが、米軍航空機の米国における事故について政府としては確たることを申し上げる立場にはございませんけれども、これはもう先生も御承知かと思いますが、オスプレーにつきましては、構成部品の異常等によりまして、九二年七月バージニア州で、二〇〇〇年四月アリゾナ州において、二〇〇〇年十二月ノースカロライナ州において墜落事故が起きたということは承知をしておりますが、その後問題解決の取り組みが行われているというふうに承知をしております。

赤嶺委員 事故を繰り返してきているわけですね。

 ただ、オスプレーが配備されると基地の機能ががらりと変わります。今までの基地の機能とは全く違う意味を持ってきます。従来の、今普天間飛行場に配備されているCH46Eヘリとの比較において、オスプレーはどのような違いがあるんですか。これは外務省、把握しておりますか。

岩屋副大臣 このオスプレーはCH46やCH53の後継機と位置づけられているわけでございます。それで、もう先生も御承知のとおり、オスプレーは、ヘリコプターのような垂直離発着と固定翼機のような短距離離発着の両方の機能を有しております。巡航時にはプロペラ機と同様の高速長距離飛行が可能になっている、そういう機種であるというふうに認識しております。

赤嶺委員 つまり、従来の普天間飛行場のヘリというのは、長距離飛行は無理ですから艦船に搭載をして戦地に赴く。ところがオスプレーの場合には、航続距離も長い、それから輸送重量も今のヘリよりもかなり機能が大きい。しかも、それらが事故を繰り返してきた。

 今までの基地の性格も変え、そして住民の生活と安全にとっても重大だというのがオスプレーのこれまでのアメリカでの動きを見ても明らかなわけですから、私は、オスプレーの導入の交渉過程について、これはあったというのを報道を信じるわけにいかないだろうというようなそんな話じゃなくて、やはりそういうものが繰り返されているわけですから、まず日本政府自身が、交渉経過そしてその草案なるもの、これの内容をきちんと明らかにすべきではないかともう一度伺いますが、いかがですか。

西宮政府参考人 繰り返しになって恐縮でございますけれども、SACO最終報告にかかわりまする米側との協議の詳細については、米側との関係もあり、明らかにすることはできませんが、オスプレーの配備につきましては、申し上げましたとおりで、従来から一貫して、現時点で具体的に決まっていないとの説明を受けております。そして、SACOの最終報告はオスプレーの沖縄への配備を前提としたものではございません。

赤嶺委員 SACO最終報告では、オスプレーの配備を前提にしたものでないように交渉して、そのように仕上がったというのが事の真相だと私は思いますよ。これを明らかにしないというのは私は本当にけしからぬ話だと思います。

 では聞きますけれども、政府はこれまでオスプレーについて、将来、現在米海兵隊が使用している輸送ヘリを代替していく予定であることは先ほどもお認めになりました。昨年六月の沖北の委員会で私の質問にも、当時の河相北米局長は、一般的に言って、海兵隊がオスプレーの開発計画を行っているということ、そして海兵隊が有しているCH46、それからCH53、このヘリコプターについてはオスプレーに代替更新していくんだという、この一般的な予定があるということは政府としても承知しておりますと。さっき岩屋副大臣も同趣旨のことを答弁されております。

 外務大臣も、オスプレーへの一般的な代替計画があるということはお認めになりますか。

麻生国務大臣 開発が開始されてからかれこれ二十年ぐらいになろうかと、千九百八十何年からスタートしているんだと思いますが、その間、先ほど副大臣の方から御説明いたしましたように事故等々があって、二〇〇〇年代に入ってから事故を聞いておりませんが、少なくとも、技術をいろいろ進歩させる、この種の軍事技術の進歩というものは当然のことだと存じます。それに伴いましてそういったものが、もしうまくきちんとしたものができ上がれば、いい完成品ができ上がれば、それに置きかえていこうとする努力を向こうがするのは当然だ、基本的な認識としてそのように考えております。

赤嶺委員 オスプレー以外にCH46やCH53の後継機というのはあるんですか。

麻生国務大臣 ちょっと私、この種の軍事技術にそんな詳しいわけではございませんので、石破先生あたりに聞いていただいた方がいいのかと思いますけれども、私ちょっと詳しくありませんので、防衛省の方が詳しいと存じます。

大古政府参考人 委員御指摘のCH46、CH53、比較的大きい輸送用ヘリコプターでございますけれども、これの後継機としてオスプレー以外のものを開発しているという話については承知しておりません。

赤嶺委員 オスプレー以外は後継機の開発は承知していないということを今言われましたけれども、ということは、いずれ沖縄のヘリ部隊にも配備されるということになるんじゃないですか、外務大臣。

麻生国務大臣 先ほどからお答えをいたしておりますとおりに、今、SACO等々の状況の中において正式に向こうから通告を受けたことがないと申し上げているのであって、今後永久にないかなどということは私どもにはちょっとわかるところではございません。

 ただ、今防衛省の方からお話がありましたように、これ以外の新しいヘリというものを開発していないというのであれば、これがある程度完成品になった段階でそれに置きかえる可能性というものは我々としては十分に考えておく必要はあろうとは存じます。

赤嶺委員 ところが、今回の報道が出たときに、島袋名護市長と東宜野座村長は、政府からオスプレー配備はないと聞いていると述べている。しかし、もし市長や村長が将来にわたってオスプレーの配備はないと御理解しているのであれば、それはちょっと正しい理解なのかなときょうの議論も含めて思うんですが、この点、どうですか。

麻生国務大臣 私ども、この種の外国と交渉するときにはやはり公文書もしくは正式な文書提案に基づいて交渉いたしますので、伝聞とか口頭等々ではなかなか確たることが申し上げられないんだというのが基本的な立場です。もうよく御存じのとおりであります。そういったのが今の状況でございますので、どういう御理解を市長さんもしくは現地住民の方がしておられるかは私の存じ上げるところではございません。

 ただ、そういった可能性というのは、先ほど、これまでの経緯から申し上げたとおりであります。

赤嶺委員 もう辺野古の基地建設、防衛省は違法な環境事前調査に着手しているわけですね、しようとしている。基地建設は着々と進めるけれども、でき上がったらそこにヘリではなくオスプレーという配備については隠し続けて、基地ができ上がったら、配備時期に重なるわけですから、配備をする、こういうやり方は許されないということを指摘しまして、質問を終わります。

山口委員長 次に、照屋寛徳君。

照屋委員 社民党の照屋寛徳です。

 心配していたことが現実になりました。一九九六年、SACO最終報告に向けた日米の事務レベル協議で、MVオスプレーの配備を前提とした普天間飛行場代替施設の滑走路の長さや施設規模などについて具体的に協議していたことが、日米作業部会のメモで明らかになりました。普天間基地の辺野古移設に伴って、オスプレーが配備されることはもはや明らかであります。ところが、政府、外務省はいまだに日米交渉によるオスプレー配備計画を公表せず、沖縄県民に対して何らの説明責任も果たさず、すべて秘密主義で事を運ぼうとしております。

 既に他の委員からも質問がありましたが、視点を変え、重複しないように質問いたします。

 まず、一九九六年十月二十一日から二十三日までの間、ワシントンで開催された日米作業部会の日本側参加者はどなたでしょうか。

岩屋副大臣 平成八年、一九九六年十月二十一日及び二十二日、先生御指摘のように、ワシントンにおいてSACOに関する日米間の非公式の協議が行われております。

 この協議におきましては、普天間飛行場の移設の問題を中心といたしまして、SACOに関して種々の意見交換を行ったところでございますが、非公式な協議でありましたことから、出席者及び協議の内容についてはお答えを差し控えさせていただきたいと思います。

照屋委員 これは、作業部会、正式にやったんじゃありませんか。

岩屋副大臣 非公式の協議であったということでございます。

照屋委員 非公式の協議の場でも結構ですが、滑走路の長さや施設規模について具体的に議論したことはありませんか。

岩屋副大臣 先ほどからお答え申し上げておりますように、協議の中身については差し控えさせていただきたいと思います。

照屋委員 オスプレーの問題も、あるいは沖縄返還の問題も、政府の姿勢というのは一貫して、外交、安全保障に関しては、知らしむべからず、よらしむべしで、一切、県民、国民は知らぬでもいいんだ、そういう秘密主義では私はいかぬと思うんです。

 それで、先ほど岩屋副大臣は、アメリカにおけるオスプレーの墜落事故や死亡事故について、事実関係、掌握している部分について御答弁がありましたが、そこで私が尋ねたいのは、岩屋副大臣は、現段階でオスプレーは欠陥機だという認識か、それとも、安全な飛行機だという認識なんでしょうか。

岩屋副大臣 開発段階において、先ほどお答えしたような事故があったということは承知をしておりますが、その後、問題解決のさまざまな取り組みが行われてきているというふうに承知をしておるところでございます。

照屋委員 私は、単刀直入に、開発段階で起こったこと、その後のオスプレーの改良のことを聞いているんじゃなくて、今現在、岩屋副大臣は、オスプレーについて欠陥機だという認識か、それとも安全な飛行機だという御認識か、どっちかを聞いているんです。

岩屋副大臣 先生、一般論で恐縮でございますけれども、もし米軍のヘリの後継機としてオスプレーという機種が広範に使用されるということになりますならば、それは、欠陥が克服されたという状況でそういう事態が生ずるものだというふうに考えているところでございます。

照屋委員 どうもはっきりしない、要領を得ないんですが、率直に、単刀直入におっしゃってください。このオスプレーの配備については県民がみんな不安を抱いているんです。そして私は、この試作段階から現段階においても、いまだオスプレーについては安全なものではないという認識なんですが、もう一度、くどいようですが、お聞かせください。

麻生国務大臣 照屋先生、これは人様のところで人様の会社の人がつくっている話で、こちら側からその製品をどうのこうのと言っても、これは余り私どもとして客観的な答えが出せるものではないと思います。

 ただ、基本的に、事故が起きた場合は、その乗り物に乗って運転をする方が死ぬ確率は極めて高いのであって、そういった意味では、そういったものが配備される上は、配備された試作機もしくはヘリに乗らされる方が、欠陥車とわかってその上で乗るだろうかと言われると、これは乗らされる方としても、当然のこととして、乗りたくないということになるのが普通だ、私は常識的な話しかできませんけれども、そう思っております。

 もちろん、落ちたら、その地域の人は大変だけれども、乗っている人の方がもっと大変だということにもなろうと思いますので、そういった意味では、そういった欠陥と決めつけるようなお話ですけれども、欠陥とわかった上で配備されるということは常識的には考えられない。

 したがって、欠陥が、試作の段階ですから当然あったとは存じますけれども、少なくとも我々の知っている範囲では、この六、七年間はその種の事故の話を聞いておりませんので、私どもとしては、その欠陥がいろいろな形で修復され、修理され、改善されという形になっていっておるのではないかというように理解をしております。

 では、その現物をどうかといえば、私はその現物に乗ったこともなければ見たこともありませんので、正直なところ、これ以上のことは申し上げられませんけれども、基本的には、欠陥というものは改善をして出してくるというのが通常の対応だと存じます。

照屋委員 SACO最終報告から、今や、ロードマップによるV字形滑走路をシュワブ沿岸部につくろう、こういうことで日米が合意をしたわけですが、アメリカは、SACOからロードマップに至るまで、普天間飛行場の代替施設が陸上になろうが海上になろうがオスプレーを配備するんだ、こういうことは一貫して交渉の過程で日本政府に伝達したのではありませんか。

麻生国務大臣 先ほどから御答弁を申し上げておりますとおりに、少なくとも、私どもの知っている範囲、米国側から正式にオスプレーの配備についての打診があったということを私どもの方としては承知いたしておりません。

照屋委員 それでは、こう聞きましょう。

 麻生大臣、二〇〇六年、昨年の六月に、ウェーバー在沖アメリカ四軍調整官が、普天間飛行場の部隊に二〇一四年から二〇一六年の間にオスプレーを配備する計画があることを明らかにしたことを大臣は承知しておられますか。

麻生国務大臣 昨年の六月、ウェーバーという米軍の在沖縄第四軍調整官の発言に関する報道のことを言っておられるんだと存じますが、その報道については承知をいたしております。

 かかる報道を昨年受けましたものですから、改めて米側に照会をいたしております。その結果、オスプレーの沖縄配備につきましては、現時点で具体的には決まっていないとの回答を得たというのが私どもの認識であります。

照屋委員 大臣、今の回答は、米側のどういう機関から我が国へ伝えられたのでしょうか。

西宮政府参考人 外交ルートで伝えられたものでございます。外交ルートで照会して、外交ルートで伝えられたものでございます。

照屋委員 最後にお伺いしますが、キャンプ・シュワブに普天間飛行場の代替施設をつくるわけですが、この新しい基地にアメリカがオスプレーを配備すると言った場合、日本は断れるのか。それとも、基地の運用はアメリカの自由だから、それは認めざるを得ない、そういう立場なのでしょうか。要するに、基地の運用はアメリカの専権事項だから、我が国としては手も足も出ない、アメリカの言うがまま従う以外ない、こういう立場なのでしょうか。

西宮政府参考人 繰り返しで恐縮でございますけれども、米側から現に配備の具体的な計画はないという回答を得ておりまして、ただいまのような仮定の質問にはお答えいたしかねます。

照屋委員 これは県民が強い不安を抱いているので、外務省、もっと県民、国民の立場に立って、主権国家として、独立国家としてもっと毅然とした姿勢で臨んでほしいと思います。

     ――――◇―――――

山口委員長 次に、イーター事業の共同による実施のためのイーター国際核融合エネルギー機構の設立に関する協定の締結について承認を求めるの件、イーター事業の共同による実施のためのイーター国際核融合エネルギー機構の特権及び免除に関する協定の締結について承認を求めるの件及び核融合エネルギーの研究分野におけるより広範な取組を通じた活動の共同による実施に関する日本国政府と欧州原子力共同体との間の協定の締結について承認を求めるの件の各件を議題といたします。

 政府から順次趣旨の説明を聴取いたします。外務大臣麻生太郎君。

    ―――――――――――――

 イーター事業の共同による実施のためのイーター国際核融合エネルギー機構の設立に関する協定の締結について承認を求めるの件

 イーター事業の共同による実施のためのイーター国際核融合エネルギー機構の特権及び免除に関する協定の締結について承認を求めるの件

 核融合エネルギーの研究分野におけるより広範な取組を通じた活動の共同による実施に関する日本国政府と欧州原子力共同体との間の協定の締結について承認を求めるの件

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

麻生国務大臣 ただいま議題となりましたイーター事業の共同による実施のためのイーター国際核融合エネルギー機構の設立に関する協定の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明させていただきます。

 この協定は、平成十八年十一月二十一日にパリにおいて、我が国政府、欧州原子力共同体、中国政府、インド政府、韓国政府、ロシア政府及び米国政府の代表者により署名が行われたものであります。

 この協定は、イーター事業を実施する主体であるイーター国際核融合エネルギー機構の設立、組織、任務、資源等について規定するものであります。この協定に基づき国際機関であるイーター国際核融合エネルギー機構が設立されることにより、イーター事業の共同による実施が可能となります。

 イーター事業の早期の実施に向けて積極的に貢献を行ってきている我が国がこの協定を締結することは、持続的な核融合発電の実現等に寄与するとの見地から有意義であると存じます。

 よって、ここに、この協定の締結について御承認を求める次第であります。

 次に、イーター事業の共同による実施のためのイーター国際核融合エネルギー機構の特権及び免除に関する協定の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明させていただきます。

 この協定は、イーター事業の共同による実施のためのイーター国際核融合エネルギー機構の設立に関する協定とともに、平成十八年十一月二十一日にパリにおいて、我が国政府、欧州原子力共同体、中国政府、インド政府、韓国政府及びロシア政府の代表者により署名が行われたものであります。

 この協定は、イーター国際核融合エネルギー機構等に対して、裁判権からの免除、強制執行の免除、直接税等の免除等の特権及び免除を付与することを目的とするものであります。

 この協定によりイーター国際核融合エネルギー機構等に対して特権及び免除が付与され、イーター事業を確実に実施するための環境が整備されることになります。これは、我が国の利益にも資するものであり、我が国がこの協定を締結することは、有意義であると存じます。

 よって、ここに、この協定の締結について御承認を求める次第であります。

 最後に、核融合エネルギーの研究分野におけるより広範な取組を通じた活動の共同による実施に関する日本国政府と欧州原子力共同体との間の協定の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明させていただきます。

 政府は、平成十七年七月以来、欧州原子力共同体との間でこの協定の交渉を行ってまいりました。その結果、本年二月五日に東京において、私と先方リチャードソン駐日欧州委員会代表部大使との間でこの協定に署名を行った次第であります。

 この協定は、イーター事業及び平和的目的のための核融合エネルギーの早期の実現を支援する「より広範な取組を通じた活動」を実施するための具体的な手続及び詳細に関する枠組み等を定めるものであります。

 この協定の締結により、「より広範な取組を通じた活動」を欧州原子力共同体と共同で実施することが可能となるとともに、平和的目的のための核融合エネルギーの早期の実現に寄与することが期待されます。

 よって、ここに、この協定の締結について御承認を求める次第であります。

 以上三件、何とぞ御審議の上、本件につき速やかに御承認賜りますよう、よろしくお願いを申し上げます。

山口委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時十九分散会


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