衆議院

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第10号 平成19年5月9日(水曜日)

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平成十九年五月九日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 山口 泰明君

   理事 小野寺五典君 理事 嘉数 知賢君

   理事 三原 朝彦君 理事 山中 あき子君

   理事 長島 昭久君 理事 山口  壯君

   理事 丸谷 佳織君

      愛知 和男君    伊藤 公介君

      猪口 邦子君    宇野  治君

      小野 次郎君    河野 太郎君

      高村 正彦君    新藤 義孝君

      鈴木 馨祐君    橋本  岳君

      松島みどり君    三ッ矢憲生君

      山内 康一君    笹木 竜三君

      田中眞紀子君    高井 美穂君

      長妻  昭君    前原 誠司君

      東  順治君    笠井  亮君

      照屋 寛徳君

    …………………………………

   外務大臣         麻生 太郎君

   外務副大臣        岩屋  毅君

   経済産業副大臣      山本 幸三君

   外務大臣政務官      松島みどり君

   防衛大臣政務官      大前 繁雄君

   政府特別補佐人

   (内閣法制局長官)    宮崎 礼壹君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 木寺 昌人君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 伊原 純一君

   政府参考人

   (外務省北米局長)    西宮 伸一君

   政府参考人

   (外務省中東アフリカ局長)            奥田 紀宏君

   政府参考人

   (防衛省防衛政策局長)  大古 和雄君

   政府参考人

   (防衛施設庁長官)    北原 巖男君

   外務委員会専門員     前田 光政君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月九日

 辞任         補欠選任

  篠田 陽介君     橋本  岳君

  笠  浩史君     高井 美穂君

同日

 辞任         補欠選任

  橋本  岳君     篠田 陽介君

  高井 美穂君     笠  浩史君

    ―――――――――――――

五月八日

 新たな時代における経済上の連携に関する日本国とシンガポール共和国との間の協定を改正する議定書の締結について承認を求めるの件(条約第一七号)

 戦略的な経済上の連携に関する日本国とチリ共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第一八号)

 経済上の連携に関する日本国とタイ王国との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第一九号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 新たな時代における経済上の連携に関する日本国とシンガポール共和国との間の協定を改正する議定書の締結について承認を求めるの件(条約第一七号)

 戦略的な経済上の連携に関する日本国とチリ共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第一八号)

 経済上の連携に関する日本国とタイ王国との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第一九号)

 国際情勢に関する件


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     ――――◇―――――

山口委員長 これより会議を開きます。

 国際情勢に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房審議官木寺昌人君、大臣官房参事官伊原純一君、北米局長西宮伸一君、中東アフリカ局長奥田紀宏君、防衛省防衛政策局長大古和雄君、防衛施設庁長官北原巖男君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

山口委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

山口委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。前原誠司君。

前原委員 おはようございます。民主党の前原でございます。

 それでは、きょうは、主に外務大臣にお答えをいただいて、質疑をさせていただきたいと思っております。また、FTAについては、山本副大臣がお越しでございますので、伺わせていただきたいというふうに思っております。

 まず、大臣、ゴールデンウイーク、お疲れさまでございました。アメリカ・ワシントン、ロシア、それからエジプトのシャルムエルシェイク。ロシアは、寝ておられない、泊まっておられないんですね。非常に大変な日程をこなされての外遊、本当にお疲れさまでございました。

 私も、お会いはしませんでしたけれども、同時期にワシントンにおりまして、幾つかのお話を伺ってまいりまして、2プラス2、また日米外相会談あるいは日米首脳会議、こういったものを中心に話を進めていきたいというふうに思っております。

 今、日米で話し合うことというのは本当にたくさんのテーマがあります。一つはイラクの問題、北朝鮮の問題、それからミサイル防衛、米軍再編、環境・エネルギー、そしてまたF4後継機FXの話、また貿易協定をどうするかという話、あるいはアメリカは再来年が大統領選挙でありますので大統領選の話、そしてまた中国の話、こういういろいろなテーマがあるわけであります。

 まず、大臣にお伺いをしたいのは、いわゆる従軍慰安婦問題。これは私は、アメリカに行く前にアメリカの知人を含めていろいろ話をしてまいりましたけれども、かなり日本と温度差があったような気がいたします。この外務委員会でも大臣とは議論をさせていただきましたけれども、間違った認識を持っていることについては正していかなくてはいけないということはそのとおりだというふうに思っております。

 ただ、その従軍慰安婦の問題について、狭義の強制性あるいは広義の強制性を議論してもそれはアメリカには伝わっていない。むしろ、それを議論することが、日本はあの件について事実を否定するのか、あるいはエクスキューズに聞こえるというようなことでありますし、また、大臣もお気づきになったと思いますけれども、拉致問題に対して極めて日本に対してシンパシーを持っている人たちが、この問題については同様に極めて厳しい考え方を持っておられるということでございます。

 下院でいわゆる従軍慰安婦の問題というものについて決議が出されるということでございますが、これに対してどういう見通しを持っておられるのか。また、日本政府としてあるいは外務大臣として、この日米関係、あるいはこれはさらにアジアとの関係に飛び火をしていく問題であると思いますので、現時点においてどのようにこれを収束させようと考えておられるのか、その点についてお伺いをしたいと思います。

麻生国務大臣 安倍総理の今回の訪米に当たって、総理と大統領との会談の前に、安倍総理とアメリカ上下両院の重立ったところ、院内総務、また下院議長ペロシ等々、ペロシさんが司会というか議事進行を務められたという経緯になっておりますけれども、会談をしておられますが、総理としては、辛酸をなめられた慰安婦の方々に、人間としてまた総理として心から同情するとともに、そうした極めて苦しい状況に置かれたことについて申しわけない気持ちでいっぱいである、二十世紀は人権侵害の多かった世紀であり、二十一世紀が人権侵害のないすばらしい世界になるよう日本として貢献をしていきたいということを言われ、ブッシュ大統領から、こうした対応は非常に誠意のあるものであった旨述べられたというのが、私はこの席に同席したわけではありませんけれども、これを情報としてちょうだいをし、その席に出ました院内総務等々から、その後、次の次の日だったかの夕食会で会って同様の話を得ております。

 この話は、今、よく御存じのとおりで、いわゆる従軍という、そのいわゆるがついているところが非常に大事なところで、従軍ということになりますと、医者とか記者とかいうのと少し一緒になる傾向がありますので、いわゆる従軍された方々からよく批判の出るところでもあります。したがって、いわゆるという言葉がこの言葉についているんですが、では、これが英語になるかというとなかなか難しいところなんですが、そういった話もあります。

 いずれにいたしましても、こういった述べられたという経緯がありますので、私どもは安易な予想を立てるわけにはいきませんけれども、それに出られた院内総務等々の話から、この問題に関してはこれ以上大きく燃え上がっていくというような雰囲気ではないというように理解をいたしております。

前原委員 安倍総理と上下両院の、院内総務含めて、重立った方々との会談を段取りしていただいたのがハワイ出身のダニエル・イノウエという上院議員でありまして、私もイノウエ上院議員とお会いをいたしまして、感謝を私からも申し上げました。

 ただ、決議が出される、それが採択をされるかどうかというところの問題はありますし、また、もちろん説明を上下両院の重立った方々にするということは大事でありますけれども、だれに対して謝っているのかという批判もこれまた一方であります。

 そういう意味では、やはり今後の政府としてのメッセージの発信のされ方というのは極めて重要でありますし、また、これが採択をされないような取り組みというのは、引き続き、もちろん騒いで採択するなという問題ではございませんけれども、これを鎮静化させるということ、それがやはり、第二、第三のこういった問題、また南京に関する映画がつくられるような話も聞いておりますし、そういう意味では、これをまずは鎮静化させることが日本の国益につながるというふうに私は思うわけであります。

 今、外務大臣は、これは採択をされない、こういう見通しをおっしゃったように私は見受けましたけれども、そういう見通しを持っておられるということでよろしいんでしょうか。

麻生国務大臣 前原先生もダニエル・イノウエに会われたというお話を伺って、ありがとうございました。私も、一日でしたか、ダニエル・イノウエという方と隣で飯を食っていろいろ話をさせていただきましたし、そのマイク・ホンダという本人にも会いました。

 この問題が、今の段階で、否決になるとかどういったようなこと、見通しを申し上げるほど内容がよく見えているわけではありません。また、今後どういう方向になっていくかも見えませんが、この種の発言、年間大体八千から一万ぐらいこの種の決議が出されると思いますけれども、そういった中で、これが大きくクローズアップされていくというのは私どもとして望むところではありませんので、そういった話の中の一つとして、人様の議会の中に入ってやめろと言える立場にあるわけではありませんけれども、そういった努力は引き続きしていかねばならぬものだと思っております。

前原委員 引き続きその努力をしていただきたいと思いますし、何よりも、政府として、また責任あるお立場の総理とか外務大臣の発言というのが大切だと思いますので、ぜひその点には、今までも特に外務大臣は留意して発言をされてきたと思いますけれども、政府の中にはまだまだ強制性の狭義、広義にこだわっている人もおられるようでありますけれども、そういった問題についてしっかりと閣内で意思統一ができるように努力をしていただきたい、この点についてはこれだけにしておきたいと思います。

 次に、北朝鮮の問題について、どういう議論がなされたかということも含めてお話をさせていただきたいというふうに思うわけでありますけれども、米朝の直接協議の中で議論になりましたのが、いわゆるBDAの問題、金融制裁の問題でありました。これについては、私もいろいろな方とお会いをいたしましたけれども、アメリカ内部でも相当批判が強い問題であるという気が私はいたしました。つまりは、ヒル国務次官補の暴走ではないかとか、あるいは、結果として失敗をしたというような話が多々聞かれました。

 もちろん、まずは核の廃絶に向けて動き出すということが大事なわけでございますけれども、金融制裁の問題はもともと六者協議の議題ではないんですよね。それが六者協議の議題にのって、振り回されて、そして結果的に何も初期段階の措置も動いていない、こういう状況についてどのように考えるかということが大事なのだと思っております。

 まず、BDAが六者協議の俎上にのっているということと、そして初期段階の措置の見通しについて、簡単で結構でございますので、外務大臣、今の御見解をお聞かせいただければと思います。

麻生国務大臣 BDAの対応につきましては、前原先生が言われましたとおり、もともとこれは六者協議の話題の対象ではありません。これはアメリカと北朝鮮との間の話、もしくはアメリカの財務省というか、国内法の主たる話であって、国際法上、何ら我々としてはかかわりあるところではない。

 しかし、この問題で、約二千五百万ドルでしたかの金のことに関して北朝鮮が、銀行に凍結をされているということが現実である以上は六者協議には応じないという話を、前回の六者協議が開始される冒頭でこの話が出ましたものですから、そこでやむを得ず、アメリカと北朝鮮との間でこの話を別にやってもらうということにならざるを得なかった。その間、残りの四者は皆蚊帳の外みたいな形で事が推移したというのが経緯です。

 その後、これはアメリカの国務省というより財務省の話なものですから、アメリカの財務省と国務省と北朝鮮ということになろうと思いますが、ちょっと他の二国の話ですので、こちらが直接かかわったわけではありませんので詳しくわかっているわけではありませんが、ニューヨークで会談を行っていろいろやったという経緯があります。

 その内容がいま一つよく見えていませんが、いずれにしても、アメリカは、この二国間の問題で、国内法上いろいろ問題はあるけれども一応凍結された問題は解いたという形になって、アメリカの手を離れた。したがって、六者協議に応じてくる、初期段階を実施するという段階になっていた、残り四者としてはそのように理解をしていたんですが、凍結された後の金が北朝鮮に送金されることがないという話で、送金される手続までおれたちの責任じゃないというアメリカの言い分はまことにもっともなんですけれども、そのことに関してごたごたして、今日に至るまでその決着が出ていないということになっております。

 この問題は結構長引いておりますので、アメリカ自身としても、何回となく数日間で終わるよという話はありましたし、今回も似たような話がありましたので、二週間前も同じようなことを言っておったけれどもだめだったじゃないかという話なので、そんな簡単な話じゃないんじゃないかという話は今回もありましたので、言ってはおります。ただ、今週中にとか、いろいろ答えは出ておりますので、確かにそういう問題のところまで来ているのかもしれませんけれども、向こう側の対応の仕方なものですから、アメリカとしては、甚だいらいらしているというところまで来ていると思われます。

 初期段階というものは四月の十三日のはずですから、そういった意味ではもう一月近く既に延びておりますので、我々としては、このままずっとほたっておいたままさらにあと一月というような話かということに関しては、かなり意見の激しくなってきたところでありまして、ブッシュ大統領また安倍総理の間では、忍耐にも限度がある等々、いろいろな表現がアメリカ側から出始めている、大統領府の方から出てきておるというのと、交渉現場の国務省との間に温度差があるかなという感じがしないわけでもありません。

 いずれにいたしましても、初期段階の実施ということをやらせるための前段としてこのBDAだったんですから、アメリカ側としては、一応解決したんだから次は初期段階というところに話を行かせるべく、今我々としても、ロシア、中国、いずれも同じ方向で圧力を強めつつあるという段階にあると思います。

    〔委員長退席、山中委員長代理着席〕

前原委員 少し現状を端的に御説明いただきたいんですが、北朝鮮からすると、金融制裁は解除されていないと。つまりは、今回の経緯を見ていると、BDAというものをアメリカは取引禁止銀行に初めは指定をした。しかしながら、BDAから、さっきおっしゃった二千五百万ドル、五十一口座か五十二口座かわかりませんが、約五十口座については中国銀行にまず移すという話がなされていて、二、三日のうちに解決するんじゃないかということで、上海で六者協議で集まった人たちは待っていたわけですよね。だけれども、中国銀行がそれを受け入れないという話になってきて、そしてアメリカはどんどん妥協に妥協を重ねていったわけですね。

 しかしながら、結果的には、中国銀行は上場している金融機関でもあり、私も今回、ネグロポンテという今度国務副長官になった方とお会いをしたときに、ネグロポンテ自身も言っていましたよ。つまりは、一部は不正な行為によって得られた金がいわゆるリザーブされている口座だ、こういうことをはっきり言っていましたよ。だから、そういうことをアメリカ自身も認定している。つまりは、覚せい剤あるいはにせ札、そういうもので得た不正なお金をため込んでいる口座があるということをアメリカが認定している。

 だから、初めはBDAをアメリカは取引しちゃいかぬよということを言った。だけれども、その前提条件つきで中国銀行に移しなさいと。中国銀行は、不正な金があるというのを認定していて受け入れろというのは何事だ、中国銀行の評価にかかわるということでそれを拒絶している、こういうことですね。

 今私が知っている限りでは、ロシアの銀行に対して、その口座を移しかえて、アメリカは、ロシアの金融機関に対しては金融制裁を行わない、取引をしちゃいかぬよということも言わないというところで話をまとめようとしているという話を聞いたんですが、大臣、その現状についてお答えをいただきたいと思います。

麻生国務大臣 これは、日本の銀行でどうだとか輸銀でやってくれないかとか、ありとあらゆるうわさも出ましたし、実際は来てないんですが、おまえのところも来たろうという話があったので、おれも調べてみたけれども来てないという話もしたことがあるんですが、ロシアの銀行にやってくれないかという話が行ったということまでは、そうらしいと。これは直接ラブロフに聞いたわけではありません。ありませんけれども、今のその段階のことに関しては、交渉中である等々のうわさが広まっていることは事実です。事実ですけれども、それが確実に、ロシア側に聞いても、そうだろうと言っても、事実であってもそうだと言うことはまずあの国はありませんから、そういった意味では、今の段階、うわさの段階以上、裏がとれているわけではありません。

 ただ、いずれにしても、送金する手法がないと言うから、そんなものは現金で引きおろして運べばいいじゃないか、こうやって運んでいけばいいことじゃないか、何がそんなに問題なんだと言ったら、途中で盗まれると言うから、そこまで言われたら、とても話にならぬと言って、私どもの知ったこっちゃないと言って、それ以上話をしていないんですが、本当にそう言うそうです。

 したがって、ちょっと幼稚過ぎるというか、初期段階のもっと前みたいな話で、とてもじゃないなという感じがしますけれども、事はそういった段階で、本当に、送金する手段としてというところ、二千五百万ドルという送金の手段がいろいろ今もめているのが一番大きな理由のように、私どももそこの点に関しては理解を同じにしていると存じます。

前原委員 先ほどからお話をしているように、六者協議のもともと議題になかった金融制裁の問題をいわゆる取引材料にしている。そして、それが結果的にうまくいっていない。そして、妥協に妥協を重ねて、不正なお金というものを認定しながらも、それについてはおとがめなしにしようとしている。しかし、その見返りであったはずの初期段階の措置がうまくいっていない。これは、完全に現段階においては失敗していますよね。

 ですから、これは、もちろん日米の信頼関係とかアメリカが大事なパートナーというのはありますけれども、アメリカの中でもこれについてはすごい批判なんですよ。つまりは、ライス・ヒル路線というものについて、これは問題があったんじゃないかということですよね。

 ですから、ここについてまずどういう評価を下すかということは私は大事なことだと思うんです。現時点では、これは失敗している、問題があったと私は思いますが、大臣、いかがですか。

麻生国務大臣 このことに関しましては、もう何カ月も前から、アメリカ側の財務省、主にキミット以下のところだと思いますが、意見が全く対立をしたままで来ておる、今言われたアメリカの国内の中でいえばそういうことになっておる、事実だと思いますね。

 私どもとしては、少なくともこの話は、初期段階に行くための手段として、ある程度やむを得ずアメリカが妥協したんだったら、初期段階に行かなきゃもともと意味がないじゃないかという話をしていますので、向こうとしては、初期段階に本当に移行していく意向があるのか、それとも、単なるこれを使って引き延ばしをしているのか、よく私どもとして見えていないというところだと思っています。

 したがって、何らかの形で、何々銀行を使って最初に向こうに送金が行われた後、本当に初期段階の実施に移してくるだろうかということに関してまた疑問がわいてきているというのが正直なところでありますので、ちょっとこの種の話は、前原さん、結果が出ませんと何とも言えませんけれども、この金が実際に移転した後の北朝鮮側の態度が何ら変化がないというのであれば、この政策は失敗だったと言わざるを得ないと思っております。

 ただ、実際、それによって動いてくれば、これはまた一つのそれなりの評価ということになろうと思いますので、成功とも失敗とも、今の段階でちょっと正確に申し上げる段階にはないと存じます。

前原委員 日米外相会談でも、先ほど日米首脳会談のお話を大臣自身が引用されておりましたけれども、忍耐は無限ではない、したがって、必要であれば圧力を強化という認識を共有したということは日米外相会談でも確認をされたことだというふうに思います。もちろん、どの時点でというのはなかなかそれは今言える話ではないというふうに思いますけれども、およそどういうような状況の中で、どういう時点で、そしてまた、必要であれば圧力を強化する、つまりは、制裁をまた加えるということでありますが、具体的に圧力を強化する中身ですよね。

 では、どういうものをその圧力の中身として考え得るのか。日米間でそういう忍耐の限度があるということになれば、そういうやはりオプション、選択肢を持っておかなきゃいけないわけでありまして、それがどういったものなのかということについてお答えをいただきたいと思います。

麻生国務大臣 北朝鮮のいわゆる六者協議のための対応が今後どうなってくるかというところが一番の問題のところだと思いますが、少なくとも、金が送金されたという前提に立って、その後なおかつ全然反応が出されてこなかったということになった場合は、それは圧力のレベルを上げねばならぬということになろうと存じます。それはアメリカも多分双方一致しているところなんですが、私ども、大統領と総理との間の一致したところは、あめだけではなくてむちが必要になるかもしれぬということになっているんだというように御理解いただければいいと存じます。

 では、どういう措置があるかということについては、私どもの担当というより、むしろ内閣府でいろいろやっておられると思っておりますので、ちょっとその手口等々を今言われるかどうかは別にいたしまして、万景峰の話やら何やら含めまして、いろいろ私たちから見て、日本独自でやりましたこの万景峰等々、出入国の禁止等々の措置はかなり効果が上がっていると思っております。それをさらにどうするかという話は、ちょっと今の段階で、どういう方法があるかいろいろ聞いてはいますけれども、これは内閣府の所管と御理解いただければと存じます。

前原委員 このBDAの問題が仮に解決しても、解決というのは送金がなされた、それで北朝鮮が初期段階の措置に移らなかったら、その段階においては考えなきゃいけないという御答弁だったと思います。

 それについては納得をするわけでありますけれども、私の予想ですよ、あくまでも見方でありますが、何らかやってくるかもしれないけれども、金融制裁にここまでこだわるというのは何か。つまりは、日本円でいうと二十九億円ぐらいですよね、二千五百万ドルというのは。それだけのお金でこれだけ引っ張るということではないんだろう。恐らく、この関連で、相当程度の金融機関が北朝鮮関連の口座あるいは取引について慎重姿勢あるいは停止をするようなことをやっているのではないか。ですから、このBDAの問題が解決をしても、動き出さない可能性も高いと私は実は思っているんです。これは別にお答えは要りません。

 圧力の強化ということも必要でありましょう。ただ、私は、それと同時に、やはり北朝鮮の最大の目的は何なのか。ここまで核を開発して、国民をいわゆる貧乏のどん底に追いやって、餓死する人もたくさんいる。しかし、先軍政治ということで、軍隊、そして警察力、そして核、ミサイル、こういったものにどんどんお金をつぎ込んでいく。これは、なぜ金正日がこういうことをするかというと、体制維持にほかならないと思うんですね。体制維持のためには、イラクのように、核を持っていないと、ミサイルを持っていないと、簡単にやられてしまう。したがって、やったらやり返すというような、ある意味での抑止効果というものをねらって、それが体制の維持にミサイルや核というものが使われているんだろう。それは別に北朝鮮の国民がどれだけ貧しくなったって、餓死しようが、そんなものは知らないということだと思うんですね。

 そういうことであれば、逆手にとれば、体制維持というものを違う形で保証するというか、保証するという言い方は少し行き過ぎた言葉かもしれませんが、違った面で、外交的な努力の中でこういったものをやっていくということも、私はあっていいと思うんです。これは、各国がそれぞれでやると分断作戦なんかに利用されてだめだ。したがって、日中韓、この三カ国が協力をする中で、北朝鮮の経済にコミットメントをしていくという形をこれからつくっていくことも私は大事なのではないかと思うんですね。

 やはり、日中韓が連携をするということの大事さ、これは、この間、外相会談、三人で会われて、私は非常によかったと思いますけれども、例えば今度はオーストラリアでAPECがございますよね。そういったところで、例えば、日中韓の三カ国の首脳が、別々ではなくて一緒に会談をして、北朝鮮問題について取り上げる。そして、具体的に、後でFTAの話をいたしますけれども、日中韓の経済協力、つまりは、EPAかFTAかはいいんですけれども、ASEANプラス3でお互いが何かASEANの分捕り合戦をやっているような状況になっていますね、FTA、EPAで。私は、それはばかげていると思っているわけです。

 韓国とアメリカがFTAの妥結をした。今度は日本はどうするかという話になっている。そういう中で、やはり中国という巨大なマーケットも含めた、中国と日本と韓国の経済連携、FTA、こういったものを行う中で信頼関係を醸成していって、僕は北朝鮮に燃料の支援とか食糧の支援をやっていても焼け石に水だと思うし、それがどこに行っているかわからない、そういうことであれば、この三カ国が協力する中で、例えば経済特区を北朝鮮の中につくって経済の自立みたいなものを北朝鮮に働きかけるような、三カ国が真剣に、体制転覆ではなくて、いわゆる日中韓の経済協力の一環として、北朝鮮の例えば経済の立て直しに我々本気で力をかしますよと。つまりは、燃料を支援する、食糧を支援する、軍隊に行っていて一般の国民に行っていないかもしれない。しかし、経済がある程度立ち直るような、そういう窓口をつくれば、北朝鮮の対応の変化というのは出てくるんじゃないか。

 これは私は突拍子もない話ではないと思っているわけですよ。実際問題、今北京大学とそれから中国の社会科学院の中で共同研究をされているテーマの一つでもあるんですね。そういうことを考えると、圧力、あるいは安全保障、ミサイル防衛、こういうことも必要です。しかしながら、それと同時に、やはり日中韓の連携の中で、北朝鮮に対するコミットメントを深めていく、そういう意味で。私は、そういった違うアプローチといったものも必要だと思いますが、まずは、そういうためには、やはり三カ国の首脳が信頼関係を構築する。ですから、APECなんかでそういう三カ国が会って、そして首脳会談をする。そして、日中韓のEPAやFTA、それから北朝鮮に対する経済面でのかかわり合い、具体的には例えば特区とか、そういうものを話をするということが重要なのではないかと私は思いますが、私の考えについていかが思われますか。

麻生国務大臣 おっしゃるように、何となく、テロ支援国家等々、テロの温床と言われるもとのもとは、多分、宗教とかいうようなことに、宗派間の対立とかいろいろな話を中近東の話から皆されますけれども、そんな問題ではなくて、貧困と将来に対する絶望、その二つがやはりテロに走らせる大きな根幹になっているということは間違いないと思っております。

 それは国家でも同じであって、北朝鮮という国家を見ました場合に、これはロシアも同じことを北朝鮮に言ったそうですけれども、少なくとも、日本とうまくやっていく以外に経済復興につながっていく方法はない、あなたの国にはないと。ロシアはやってくれぬのかといったら、八十億ドルだか何十億ドルだか忘れましたけれども、ロシアは、貸した金が全く返ってこない、それが返ってこない限りは、新たにやることはうちは法律としてできないといって、八割だか何かまけるといった話だけれども、そのまけ方が足らぬといって、八十億ドルで六十四億ドルぐらいの金をチャラにしてやるといったら、そんなものではとても足らぬというような話で、もう問題にならぬということになったと。これはBBCやらCNNでよくやっているニュースの一つですが。そういう話になったという状況から見て、これはかなり状況としては、経済状況は我々が外で思っているよりは深刻というのは、私も前原先生と同じです。

 したがって、そこのところをどうするかというのを日中韓でやるということに関しましては、私ども、この間、エジプトのシャルムエルシェイクというところで、宋旻淳、今の韓国の外交部長と話したときに、近々、日中韓というのをどこかでやることになっている、六月初旬ぐらいでということ、ちょっと国会の日程のあれや何かがありますものですから、そこのときにやるというときにこの問題をという話は、既にいろいろな形でしております。

 そのときに、やはり本当に向こうがそれをやるかよということに関する信頼関係の醸成が今ほぼ絶望的に、少なくとも日朝の間にありませんものですから、韓朝とか中朝の間でその種の信頼関係とかいわゆるクレジビリティー、信頼醸成というようなものがあるのかと言われると、何となくそこのところも、韓の方も余り、かつてほどないみたいですし、北の中に対する信頼というか何というのか、そういったものもかつてに比べて格段に落ちているような感じがしますので、そういうところが、三つで合わせたところで向こうの対応をちょっとはかってみないと何とも言えないとは思いますけれども、今言われた御提言というか御提案というのは傾聴に値するものだと存じます。

前原委員 私がなぜこういうことを言うかというと、北朝鮮が暴発をする、あるいは恐らく体調もそんなによくないと僕は思うんですよ、金正日は。ですから、後継指名をするしない、あるいは体調が悪くなってそういう独裁者がいなくなったときにどういう事態が起こり得るのか。私は、ミサイル、核というものが結びついて一番被害をこうむる可能性があるのは日本だと思っているわけですよ。ということは、この核の暴発、ミサイルを組み合わせたものが日本に飛んでこないためのリスクマネジメントは日本が率先してやらなきゃいけない。だから、ミサイル防衛も必要ですよ。だから、圧力もある程度必要かもしれない。

 ただ、そういうことを考えたときに、やはり、私はさっき大臣がおっしゃったとおりだと思うんですよ。中朝間も昔ほどの関係ではない、むしろかなり冷え込んでいる。韓国も、もう大統領選挙前ですから、十二月に大統領選挙があるという中で、今のいわゆる盧武鉉路線というものが継承されるかどうかわからない。だから、逆にそういう時期に、私は日中韓の三カ国の信頼関係をつくって、マルクスが言った言葉で、私はこれは私の感覚的に当たっているのではないかと思いますけれども、やはり下部構造が上部構造を規定する、経済をしっかりと協力する中で、政治体制の違いとかを超えて、そして北朝鮮に対するコミットメントを深めていくということは私は極めて大事なことだというふうに思っておりまして、そういう意味での取り組みを私はぜひ進めていただきたいということをお願いしたいと思っております。

 できるだけ日中韓の外相会談をどんどんやっていただいて、そして三カ国の首脳会談、一緒に集まるようなところがあればそれをやって、それを実績にして、ぜひそういうものを高めていただきたい、このように思っております。

 ちょっと時間がなくなってまいりましたが、二つのことについて、山本経産副大臣、そしてきょうは宮崎内閣法制局長官にお越しをいただいておりますので、お二人に質問をさせていただきたいと思います。

 ナイ・アーミテージ・レポート2というのが出されておりまして、山本副大臣もアメリカに行っておられたという話を私は聞いておりまして、いろいろな方とお話をされたというふうに思います。中身は私はかなり賛同するところが多いんですけれども、初めて見たときに、若干意外だった、驚いたのは、経済の協力について中心に書かれていて、特に日米のFTA、こういったものをしっかり進めていくべきだということ。

 やはり経済の協力関係というものが安全保障や政治の安定にもつながっていくし、ここは結構シビアに書いてあって、日本はこれから人口減少社会、そして少子高齢化が進んでいく中で、しかも台頭する中国というものが隣にある。日本の価値を高めていくためには、やはり競争力にさらしていく中でさまざまなイノベーションを引き起こし、そして競争の中で発展の巡航速度を維持していくことが大事だということがこれには書かれている。

 私はこれは基本的に賛成なんですが、米韓のFTAが交渉妥結をいたしました。先ほど日中韓ということもお話をしました。ASEANとも日本は話し合いがまとまったということでありますけれども、今回、日米首脳会談でFTAの話が取り上げられなかった。私は、このことについては少しがっかりいたしました。

 日米FTAについて経済産業省としてはどう考えておられるのか、また、それは具体的なタイムスケジュールにのせていこうとしているのかどうなのか、その点についてお答えをいただきたいと思います。

山本(幸)副大臣 私も先生と同じように、ワシントンに同じころ行っておりました。そのときに、ちょうど米韓FTAの妥結ということがありまして、かなり話題を持っておりました。そして、私も御指摘のアーミテージ・レポートも読みまして、それで、これは一つの大きな課題だなというように思いまして、若干フライングぎみかもしれませんけれども、私はアメリカに参りまして各有識者と、自分としては日米FTA、EPAを積極的に進めるべきだという意見を開陳して、ぜひ研究を始めようということを申し上げてまいりました。

 もともとEPAということについては、私どもの基本的なスタンスというのは、まず東アジア、これが一番日本を取り巻く生産ネットワークもできておりますので、ここを優先する、それで始めているわけですね。その中には、まずASEANプラス日本、そして、いずれ東アジア経済共同体を目指したASEANプラス6、これは中国も入っておりますし、インドも入ります、それを目指す。それから、安全保障上重要な資源産出国あるいは潜在的な貿易量の拡大余地のある人口大国ということが一つの基準になっておるわけでありますが、もちろんWTO交渉が最大優先事項であります。それについて全力を挙げていかなきゃなりませんが、同時に、やはり経済の結びつきから見れば、非常に強い、日米の間でしっかりとそうしたネットワークをつくるということは大事だと思っておりますので、そういう話を申し上げて、アメリカの有識者も、アーミテージさんももちろんでありますが、もはやそういう段階に来たと自分たちも思う。ただ、農業問題、いろいろあろうから、研究はとにかく早くやろうじゃないかという意見でありました。

 これは今後とも、大臣とも、報告いたしまして、きょうの経済財政諮問会議でもそういう話になると思いますけれども、私どもとしては、積極的に進めていくように頑張ってまいりたいと思っております。

前原委員 経済財政諮問会議では、欧米とのFTAですか、進めていくという提言がなされるというふうに聞いておりますし、やはり安全保障と経済というのは表裏一体だと思います。やはり日本の唯一の同盟国であるアメリカ、そしてまた、ソ連崩壊後もなぜ日米同盟関係が必要なのかということになると、この日米安保体制、同盟関係というのを、この地域の安定のための公共財にしていく、安定のみならず繁栄のための公共財にしていくということになれば、合わせて四割を占める経済が、しっかりとそういう垣根をとって、そしてお互い発展する原動力になっていくということは私は大事だと思いますし、また、それが、先ほど申し上げたような北朝鮮に対する政策も含めて、大きな布石になっていくと思いますので、ぜひ、副大臣、おっしゃったような方向で御努力をいただければということをお願い申し上げたいと思います。

 最後に、宮崎法制局長官、来ていただきましてありがとうございます。

 日本版NSCが閣議決定をされました。その中で、私、幾つか懸念がありますが、きょうは一点だけ、内閣としての見解を伺っておきたいと思うわけであります。

 NSCをつくる大きなメリットは一つ何かというと、安保会議というものを機能させる、充実させる、そして、メンバーで決めたことがすぐ政府の考え方として行動に移すことができるということが大事だと思うわけです。

 例えば、アメリカのNSCあるいはイギリスなんかの閣議決定で、安全保障、外交の問題にかかわっていうと、閣議、つまり閣僚全員が集まらなくても、その担当者会議の閣僚会議で閣議決定になる。つまり、全会一致を原則としていないということがあるわけです。私は、そこは、極めてNSCを機能させるためには重要ではないかということを考えるわけであります。

 ただ、憲法の第六十六条、「内閣は、法律の定めるところにより、その首長たる内閣総理大臣及びその他の国務大臣でこれを組織する。」「内閣総理大臣その他の国務大臣は、文民でなければならない。」「内閣は、行政権の行使について、国会に対し連帯して責任を負ふ。」これが第六十六条の文言でありますけれども、それが結果的に、閣議決定というのは全会一致でなければならないという形になっているわけですね。

 この六十六条からそうなっているのか、いや、別に六十六条は全会一致の閣議決定、これは別に慣習で来ただけであって、憲法上の要請ではないんだということなのか、その点は、法制局長官、いかがなんですか、内閣の見解としては。

宮崎政府特別補佐人 お答え申し上げます。

 今御指摘のように、憲法第六十六条三項は、「内閣は、行政権の行使について、国会に対し連帯して責任を負ふ。」というふうに規定しておりまして、この意味につきましてこれまでどのように言われていたかと申しますれば、このような規定が特に明文で置かれていることから考えますと、内閣の構成員すべてが、一体となって統一的な行動をとることが要請されているんだろうということが一つ、まず中心的にございます。

 それからまた、内閣におきましては、その首長たる内閣総理大臣が、憲法六十八条の規定によりまして、その構成員たる国務大臣の任免権を一身専属的に有しておりまして、内閣総理大臣は、みずからの方針に従わない国務大臣を任意に罷免できるということになっております。このことから、内閣は、通常の選出母体が別にあるといった、こういった会議体とは若干趣を異にする面がありまして、意思決定の最終段階まで意見の一致を見ない場合があることを正面から予定している組織ではないのではないかというふうに考えられる面もあるわけでございます。

 このようなことから、閣議における全会一致の議決方法という考え方は、憲法六十六条三項の趣旨に最も合致するものだというふうに考えられるところでありまして、このことは、御案内のとおり、古く、昭和二十一年七月の制憲議会での金森担当大臣の答弁以来、歴代の総理、官房長官が一致して述べてきておられますし、また、そのように運用されてきているところでございます。

    〔山中委員長代理退席、委員長着席〕

前原委員 時間が参りましたので、これで終わりにしたいと思いますが、一点、ちょっと統一見解、統一見解というか政府見解をもう一度整理していただきたいと思います。

 つまりは、今、宮崎法制局長官からお話があったように、三項をもとにして、いわゆるそれが、内閣が行政権の行使について国会に対して連帯して責任を負うということが、ひいては閣僚全員で責任を負わなきゃいけないという話になっている。

 しかし、他方で、おっしゃったように、内閣総理大臣というのは閣僚の罷免権を持っているわけですね。そうすると、内閣総理大臣が最終的には国会に対して連帯責任を負う。任命権者は内閣総理大臣であって、そして罷免することもできる。ですから、閣議決定、全会一致でなければならないということについては、私はかなり疑問がございます。

 慣行として行われていることで、後づけの理屈になったのかもしれませんが、もう一度、政府として、この第六十六条の三項がなぜ全会一致としているのかということについて、政府の見解をこの委員会にお出しいただきたいと思いますが、お取り計らいいただけますでしょうか。

山口委員長 理事会で協議します。

前原委員 よろしくお願いします。

 それでは終わります。ありがとうございました。

山口委員長 次に、東順治君。

東委員 公明党の東順治でございます。大臣、おはようございます。

 きょうは、私、東アジア共同体ということについて、大臣の見解なりイメージなり、あるいは構想なりをお伺いさせていただきたいと思います。

 平成十七年の十二月ですか、初の東アジア首脳会議で、東アジア共同体の形成を目指すということが宣言されましたけれども、この共同体というものを、我が国として、どういう枠組み、どういうイメージでもってとらえておられるのか、まず、外務大臣、この点からお伺いします。

麻生国務大臣 御指摘のありましたように、一昨年の十二月、マレーシアだったかどこかでやりましたのが第一回目だったと思いますが、東アジア共同体というのが従来と違ったものだというようにとらえるのは、この地域としては初めて、ASEANプラス3にオーストラリア、ニュージーランドそしてインドというのが新たに加わって、イーストエーシア・サミットというところになったという国の構成が、何となく、オリエンタルだけではなくて白人も入った、インド人も入ってきたというところが、従来とまず大きく違ったところだと思っております。そして、いずれも、ちょっと正確にはよくわかりませんが、十一億ぐらいの民を持つインドも入り、そして今、私ども日本としては鉄鉱石それからウラン等々の大量の資源を頼っておりますオーストラリアも入りというところで、少なくとも、形としては従来と違った形でこれを一応スタートさせております。

 それが今からどういった形でこれがなっていくかというところは、今この段階でこれといって決めているわけではありません。しかし、かつて、EECとかECとかEUになっていく経過の中において、最初、こんなものは成り立つわけがないと、私ら、フランスとドイツが一緒になるなんということは考えられないと思っておりましたけれども、結果として、今日、EUというものが、通貨までを一緒にし、いろいろな形で大きく変わりつつある。ユーロの方がドルに対しても高くなる等々の明らかに大きな成功をおさめつつあるということになってきております。

 こういう状況を見ましたときに、やはりアジアの中におりますいろいろな国々、発展段階は同じASEANの中でもおくれているところもあればかなり進んだところもある等々を考えて、こういったところがこのアジアの中で、少なくとも人口としては一番大きな人口を有している地域でもありますので、ここらの経済、日本の経済は一国でとにかく巨大な経済を持っておりますので、その経済、人口、資源等々が一緒になってきちんとやっていくという形は、この地域の繁栄とか安定とかいうものにとっては大きなものになっていくんだろうと思っております。

 では、具体的にまず何からやるかといえば、とにかくまずみんなが納得できるところからいこうというところで、いろいろな、御存じのように各種の枠組みの中で、青少年交流を少なくともやってみようじゃないかという話をやってきたり、いわゆる民主主義の価値観といったところで民主主義じゃない国もありますので、そういった意味においては、今の段階でそこの段階をやっているわけでもありませんし、安全保障分野といえば、なかなかさようなわけにいかないところもありますので、そこらのところまではまだいっておらぬというように御理解をいただいて、その上で、今、こういった会議をしょっちゅうしょっちゅうやっていくことによってお互いの信頼醸成ができたところから少なくともスタートさせていければなと思っておって、これが将来の確たる目標だということを明確に今の段階でつくり上げているわけではございません。

東委員 大臣おっしゃるように、確かに、いろいろな動きの中でやがて収れんされていくということはよくわかります。確かに、第一回の東アジア首脳会議のときは、例えば中国なんかはASEANプラス3というところに固執ということでしたよね。最近は、必ずしもそれに固執しない、ASEANプラス3プラス3、今おっしゃったインド、ニュージーランド、オーストラリア等を入れてということも特に異議を唱えなくなってきているというようなことがあるので、確かに動くんでしょう。あるいはまた、フィリピンのアロヨ大統領ですか、プラス3とプラス6は補完し合う関係だというような発言も出てきている。

 そこで、今おっしゃいましたように、一口に東アジア地域と言っても、ASEANそれからASEANプラス3、ASEAN拡大外相会議、APECあるいはASEAN地域フォーラム、アジア協力対話、太平洋経済協力会議等々の国際的枠組みというのがまさに林立しているわけですね。今後、東アジア共同体というものを進めていく上で、こういった国際的枠組みというのをどういうふうに収れんしていくか。むしろ、アジアの中の大国である日本、また世界の中の大国である日本がどういうふうに収れんをさせていくかという能動的な、そういうこれからの日本外交というのは非常に大事になってくると私は思います。

 大臣は、自由と繁栄の弧、大変すばらしいイメージを出されました。これは外交として私は非常に誇らしいですね、そういうメッセージがきちっと世界に出てくる。そういう構想力をお持ちの大臣ですから、大臣御在任中の間に、まさに今後の東アジア共同体というものをどうイメージし、どういうものにしていくべきであるという日本の能動的なメッセージ、構想、こういうものを出すべきだと思います。状況が動いていくのを静観するという立場というよりも、むしろ指し示す、そして推進をするという日本の外交力、そういったものを、構想力をお持ちの大臣のこのときにきちんと出すタイミングが今来ているのではないか、僕はこう思いますが、いかがですか。

麻生国務大臣 系列的に分けたら多分、東先生、自由と繁栄の弧の中の一環にEASがある、東アジア共同体はその中に位置づけられるべき、系列としてはそういうことになろうと存じます。

 少なくとも、日本の場合、よく経済力を例に引かれますけれども、この間、潘基文という人と話をしておりましたら、アフリカ五十三カ国の経済力を全部足して韓国とほぼ同じ。ということは、日本というのはそれの約六倍ぐらいということになりますから、巨大なことになります。いわゆる中央アジア、ウズベキスタン、カザフスタン、キルギスタン、トルクメニスタン、タジキスタン等々のあれを全部足しまして、三重県のGDPと大体同じということなんだそうです。

 ところが、我々が思っているよりはるかに巨大な経済力を持っている国がその経済力を使って何をしようとしているのかというのがよくわからぬ国にとっては、極めて気味が悪いと思いますね。とにかくにこにこ笑いながら、もうけるときはしっかりもうけているわけですから。いや私は弱者ですからと装いながら、何となくもうかるところはしっかりもうけているやつなんて、嫌なやつですよ、私に言わせたら。僕はそう思いますね、私だったら。だって、事実やっていることはそれですから。

 そうすると、やはりイメージとしてはいかがなものかと思いますので、日本はこういったものを使っていわゆるユーラシア大陸の周辺国をというのは、今御評価をいただきました繁栄の弧のもとの発想なんですけれども、そういった意味では、今取り急ぎどんなことをやっておるかといいますと、二つ具体例を申し上げてみたいと思います。

 ASEANの中でほかのところに比べてちょっと落ちているというところが、多分カンボジア、ラオス、ミャンマー、ベトナム、いわゆるCLMVと称するんですが、この四つの国は正直申し上げて、他のASEANの諸国に比べて、経済という点からいきますとかなり低いと思っております。したがって、そこらの国々に援助するに当たって、金の話よりはいわゆる内容というか、司法、立法、行政でいきますと、その中の行政とか司法のところが極めて弱い。

 したがって、カンボジアに投資してくださいと言われても、民法がないとか商法がしっかりしていないとか民事訴訟法がとかいう話になっておりますので、今現実、カンボジアには法務省からたしか日本の司法官が三、四人行っていると思いますが、そこで今法律をつくっております。商法、民法をつくっております。また、カンボジアのクメールルージュの裁判も、これは裁判官は日本人の野口というのがやっていると思いますが、そういった形で、カンボジアの投資環境を整備するというのをやっております。

 同じように、今度はちょっと離れますけれども、パレスチナというところで、御存じのように、一九四八年にいきなり、おれたちは二千年前はここに住んでいたんだからといってイスラエルという国ができたわけですけれども、それ以来、パレスチナを含みます中近東の、アラブ対イスラエルとか西欧文明対イスラム文明とかいろいろな表現はありますけれども、ごたごたが続いておりますが、そのパレスチナを何とかしないと、多分あの地域の問題は半永久的に継続するということになります。そうすると、あの地域がそういうことになりますと、日本というのはあの地域から化石燃料の主たる原料であります石油のほぼ九割を輸入しております関係上、これは日本にとりましては極めて不安定ということになります。

 したがって、その地域を何とかするために、先ほど申し上げましたように、これは食えるようにせぬとどうにもなりませんので、パレスチナが食べられるようにするための方法としては、その前のイスラエルが建国をしたときにも、キブツと言われる集団農業、もうお忘れかと思いますが、あれがそこそこ成功して、農業としてはイスラエルが成り立ったという大きな背景がありますので、歴史的な事実でもあります。

 したがって、パレスチナでもそれをやらぬかと。資金支援、技術はこっちで出します、そのかわりおたくらは働く、これが絶対条件ですと。場所はそちらがあるわけですからというので、イスラエル、パレスチナ、そして、それを輸出するに当たっては隣国のヨルダンの影響がどうしても必要でありますので、そのヨルダンの三カ国の、シモン・ペレス初めいろいろな人たちを日本に呼んで、交渉もいろいろして、最終的には日本としてはそこに支援をするということを合意しております。

 これに当たっては、当然アメリカにも話をしてみましたけれども、アメリカは、そんなことができるのか、とてもおれたちにはできないと言うから、それはおたくらはできぬ、しかしおれたちは全然この地域に今まで何ら関係のなかった国なので、おれたちだからできるんだからという話もして、今スタートをさせて、今そこに人が入り、今場所の特定を、ジェリコの近くでほぼ場所の指定が終わりつつあるというところに来て、六月ぐらいにはスタートさせたいなというところで話をしつつあるという段階であります。

 それはいずれも政治とか軍事とかいうアプローチではなくて、経済というアプローチからここにしておりますので、先ほど前原議員の話にありましたように、経済面というのがやはり日本の得意とするところでもありますので、そういうところからのアプローチで今これを進めさせていただいております。

 経済の話と司法の話と両方させていただきましたけれども、そういった形でこの地域におけるいろいろ連携関係、信頼醸成等々が、少なくとも日本のリーダーというのは、おい、おれについてこいというやり方よりは、こういう一緒にやりませんかというのが大体日本のこれまでの手法でありますので、今回も同じようなアプローチでやってみるのがいいのではないか。ちょっとまだ暗中模索なところではありますけれども、今少しずつその方向で事を進めつつある。まだ途中経過ですけれども、今考えていることの一端であります。

東委員 今、アメリカはできないけれども、日本はこれはできるんだ、だから日本の得意分野、こういうところできめ細かくやっていくんだという、こういう発言というか手法というのは非常にいいと私は思いますよ。

 そこで、確かにアメリカは、軍事の面、安保の面で日本にも韓国にも、あるいは台湾問題、あるいはインド、さまざまな形でコミットメントしています。しかし、やがて東アジア地域というものが共同体を形成していく上で、大臣は、アメリカのコミットメントというものがどういう形であるべきと考えられるか。

 これと関連して、安倍総理は最近、アジア・ゲートウェイ構想というのを出しておられますね。このゲートウェイ構想、つまりアジアと欧米とのかけ橋という概念と絡ませて、いろいろな意味で具体的にコミットメントしているアメリカという国が、将来の東アジア共同体形成に当たって、どういう役割を果たすべきだと大臣は考えておられるか。また、そこでアメリカと日本の違いというものをどういうふうに考えておられるか。その辺はいかがですか。

麻生国務大臣 やはり日米安全保障条約というこの同盟関係というものは、アジアの中においても非常に大きな安定勢力として評価の対象になっていると存じます。少なくともこの関係というのは、御存じのように、経済力でいえば一番と二番が一緒になって、ほぼ世界の四〇%の経済力を押さえているという国同士が仲がいいという関係は、これは極めて安定勢力としては大きい。いわゆる基本的な価値観もかなり共有しておるところもある。そこらのところがアジアの中においてどういう影響力があるかといえば、これは今あちらこちらで暴動とか紛争とかいうのが、フィリピンのミンダナオとかスリランカとか、いろいろ例を挙げれば限りなく出てまいりますが、そういったものに対して、アメリカの持っております軍事力のプレゼンス、抑止力の存在というものは極めて大きいものだと思っております。

 問題は、この種の話というのは、一国が巨大な場合、それに対応していくときに当たって、一国がフライングぎみにどんどん事が進むという可能性というのはよくありますので、それに当たって、いやちょっと待てというのは、軍事力以外のもので力を持っているというのは大事なところだと思います。

 したがって、それに対して、日本としては、経済力とか技術力とか金融というものはやはり日本の持っている大きな力の一つだと思いますので、そういったもので、それはアメリカの軍事力というものは大いに利用すべきものだとは思いますし、アメリカも日本の技術力、経済力というのを頼りにしているという部分は、これは双方で持ちつ持たれつの関係だというところを理解して、軍事力が強ければすべてにというわけにはいかないんだというのは現実問題として、今世界で起きている現実を見ていただいたらわかるところ。

 したがいまして、今、日本とアメリカとの関係、日米安全保障条約の持っております力等々を組み合わせて、日本としてはアメリカとの関係というのをきっちり軸にしながら今申し上げたようなところをやっていくというのが基本だ、私はそう思っております。

東委員 昨年の秋ごろからですか、アメリカのブッシュ政権内でアジア版NATO構想というものが持ち上がってきている。ブッシュ大統領自身も、昨年十一月ですか、シンガポールで演説をして、東アジア地域で多国間の防衛協力機構というものの構築が必要だということを訴えられた。あるいはライスさんも、日本、韓国、中国、ロシアを歴訪する中で、六者会合を格上げして地域的な安全保障機構を立ち上げる必要性がある、こういうことまで言及し始めている。

 私は、例えばEUという共同体を見たときに、あれは経済だけの結合体ではなくて、その根底に、不戦としての結合体、あの地域は戦争をしないんだ、つまり不戦なんだ、不戦の協定というものがしっかり根っこにあって、長い歴史を経て、今のような共同体というものをつくり上げてきている。

 ということから考えますと、二十一世紀は確かに一番発展するのはアジアでしょう。今ですらアジアの経済は、アジア域内同士だけでアジア以外のところの貿易額の全体の五〇%をはるかに超えていますよね。それから、中国と日本の貿易額なんというのはアメリカを超えていますよね。だから、経済的にはますます確かに共同体を志向していくんだ、また、志向していかないと経済のバランスが崩れていくという状況にこれから入っていくと思います。

 そうなってくると、やがては安全保障の枠づくりといいますか、安全保障機構というものを視野に入れざるを得ない状況が必ず来ると思います。そうなったときに、日本が東アジアというものとどうコミットメントをしていくのか。

 一つは、やはり、今六者協議というのが行われていますが、果たしてこの生命力がどこまでもつのか。何となくしりすぼみで終わってしまったら何の意味もない。この六者協議というものが、か細い協議の場であるんだけれども、これをてことして、ライスさんじゃありませんけれども、六者間の何か安保対話のメカニズムみたいなところに昇格できないのか。やがては首脳会議ぐらいのところまで昇格をして、やはり最後は政治的に、あるいは軍事的にきちんとした基盤ができて初めて共同体というものの脆弱性がなくなってくる、こういうふうに私は思うわけでございます。

 そこで、大臣に提言申し上げたいんですが、日本は、東アジアの中で、脱亜入欧だとかいろいろな歴史を経ながら、いまいち信頼感を持っていませんね。確かに経済力はある、ありがたいことだ。私も、インドネシアへ行ったりいろいろなところに行ったときに、日本に対する親日感とか、日本のやり方、先ほど大臣がおっしゃった、経済でもって丁寧に進めてくるというやり方、それはもう大変ウエルカムなんだけれども、中国との間はどうなっているんですか、今の韓国とはどうなっているんですかという、片っ方からこういう不安が必ず出てくる。アジア全体で見たときに、これから本当に東アジア共同体の仲間として、またすばらしい共同体をつくり上げていく大きな潜在的力を持っている日本として、私は、この地域を不戦に、つまり、具体的には核軍縮というところの旗振り役に日本はなるべきだと思います。

 また、世界で唯一の被爆国という歴史もこれあり、かつアジアの中で、それこそ防衛庁を防衛省に昇格するだけでえらい騒ぎになっちゃうわけですから、あるいは靖国で、きのうもああいう騒ぎにわっとなっちゃうぐらいに日本に対して非常にセンシティブな地域なわけですから、その日本が率先をして、やはり世界はもう核廃絶に向かうべきだ、いつまでもこれを理想論に終わらせたらだめだという、核廃絶というものに現実感を持たせていくようなアプローチ、日本の主張に従っていけば少しでも進捗をさせていけるなというような主張性というもの、アピールというもの、外交的な主張、そういったところをアジアできちんと日本が出せば、日本海が平和の海に僕はなると思います。

 靖国だ何だかんだと、そんなことでいつまでもいつまでもというよりも、大きく核廃絶を訴える。しかも、要するに、核を持った国がNPTどうだこうだと、自分たちが持っていておまえたちは持つなというこの不公平感というのは常にあるわけですから、だから、やはりアメリカなんかが率先して核廃絶を目指すということ、そういう道をとるべきだというような主張を思い切って日本はやった方がいい、それが本当の意味のアジア・ゲートウェイ構想にもなるというふうに私は思うんですが、いかがですか。

麻生国務大臣 東先生御指摘のありましたように、核兵器の廃絶という話は非常に重要な問題であるので、日本として、国連総会に十何年、とにかく、毎年核軍縮決議案というのを提出して、間違いなく、少しずつではありますけれども、確実にその数をふやしてきているというのはもう御存じのとおりなので、その意味では努力をしていると思いますが、これは、持っている国がやめるという話と、持たない国がやめろと言うのじゃなかなか難しいというのは、別にこれは核に限らず何でもそうです。そういった意味では、私どもとしては、北朝鮮の話とか、よく最近ではイランの話とか出てきますけれども、こういったものは、拡散するということは断固とめないかぬということで、今具体的にいろいろ言っておるのは現実でありまして、今言われました点は大事なところだと存じます。

 それから、ヨーロッパの場合と東アジアの場合において、これはかつてヨーロッパのシャルルマーニュ大帝のあの時代においては、少なくとも今の地域はほぼ同じ帝国の中におった時代というのがありますが、日本の場合は、アジアの場合は、そういった経験は、過去、ジンギスカンのときでも日本は違いましたし、一国でまとまったというそんな歴史がこの地域にはありませんので。また、向こうの場合は、旧約聖書等々、そこそこ皆共通のあれがありますが、こっちはそんなものも違いますし、いろいろな意味で、アジアとヨーロッパとでは、よって立つ歴史背景それから人口の数も大分違いますし、経済格差もかなり激しく違っておりますので、状況としては難しいとは思います。

 しかし、おっしゃるように、こういったものはどこかの国がとにかく音頭をとってやっていかないとなかなかうまくいかないとは思いますので、その中で、やはり経済力からいきますと日本というのは非常に大きいものがありますので、そういったところが声をかけていろいろやっていく努力というのが大事なんだと思っておりますので、これらのところを今いろいろやっていこうとしている、緒についたというところぐらいでしょうか、そういったところだと思います。

 今までは日本は、そういったところで音頭をとってやっていこうという気がありませんでしたから、この国は。したがって、何となく、世界の中にいかに自分を合わせてもうけるかという話が、世界から見たら多分そういうぐあいに思われていると思うんですね。自分から枠組みをつくろうとかいうような気はなかったのが歴史だと思いますので、そういった意味では、今言われたようなのは、今新しく方向として、自由と繁栄の弧というのはその一端なんですけれども、そういった方向にまず踏み出してみた結果、意外と他の諸国からの受けというか理解は、私が思っておったより理解は得られたというのが、私どもとしては希望であります。

東委員 アジアを見ますと、中国、インド、パキスタン、あるいはまた北の核、そういう中で、日本は核を持たない、戦後は大変な平和志向の国家である。しかも、東アジア共同体というものの形成を願っている。それを考えたときに、やはりこういうメッセージをもっと強く、アジアの中で日本がイニシアをとって、世界核廃絶という最終的な、究極な理想に向かって、アジアをまずそうしていくんだというような声を上げるということは、私は非常に大切なことだと思います。

 例えば、アメリカの保守系の新聞のあのウォールストリート・ジャーナル、二〇〇七年の一月四日、ここで注目すべき記事が出ているんですね。それは、シュルツ元国務長官、それからペリー元国防長官、キッシンジャー元国務長官、ナン元上院軍事委員長、みんな元がつきますが、いずれにしても、外交とか安保に携わってきた歴代のアメリカのそうそうたる人物たちがこういうふうに言っているんですね。アメリカ政府は世界の核廃絶に向かって大胆なイニシアチブをとれと言っているんですよ、自分の国の政府に対して。世界の核廃絶というのは非常に緊急性を要する話なんだと。

 なぜ僕はこんな話をするかというと、北の核だとか武器の輸出というのは、下手すると、核アナーキー、もうどこもみんな、テロリストも国もいろいろ持っちゃうみたいなことになっちゃうと世界は終わっちゃう、そういうところまで本当に危険性が高まってきているときだけに、日本が今、アメリカのおひざ元ですらこういう声が上がっているわけですから、まず、アメリカを初め核を持っている国は先行軍縮をしなさい、そして、日本は永遠に核廃絶を目指して闘っていくよ。アジアをそういう平和な地域にしたい、そこにこそ本当の東アジア共同体というものを構築していく大変大きな意味合いがある。そのために、思い切って六カ国首脳会談ぐらいやりましょうよ、いつまでもいつまでも六者協議じゃなくて、というような発言、メッセージ、外交の声、僕は麻生大臣だからこそ訴えるんですよ。あのすばらしい、自由と繁栄の弧という構想を出された大臣だからこそ、ここは思い切ってやられてください。それが非常に私は大事だというふうに思います。

 質疑が終了いたしましたので、答弁は求めませんが、このようなことを訴えさせていただきまして、終わります。ありがとうございました。

山口委員長 午前十一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十時十九分休憩

     ――――◇―――――

    午前十一時二分開議

山口委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。山口壯君。

山口(壯)委員 民主党の山口壯です。

 大臣には、きょうは幾つか項目だけはお伝えしていますけれども、ぜひ、イラクの関係について突っ込んで議論させていただければと思います。

 この間、日米首脳会談あるいは外相会談があったわけですけれども、イラクの話について、まずポイントを幾つか、どういうことを話されたのか、あるいは相談されたのか、一番大事だと思われるポイントを幾つか教えていただけますか。

麻生国務大臣 日米首脳会談の方につきましては、二十七日にワシントンで、キャンプ・デービッドで安倍・ブッシュ会談というのが行われております。この首脳会談において、イラク問題につきましては、安倍総理の方から、イラクの安定化また復興に向けた米国の努力等々も理解しということを述べられ、また、日本としては、今イラク特措法の二年延長というものについていろいろ取り組んでいるという説明をしておられるというように、これは私は現場にいたわけではありませんけれども、報告をそのように受けて、ブッシュ大統領の方からそれに対する謝意等々が述べられたと聞いております。

 私の方は、四月三十日にライス国務長官と日米外相会談を行っておりますけれども、この場において、時間も限られていますので、イラク問題について特別に語ったということはございません。

山口(壯)委員 イラクの問題で一番大事なのは、私は出口戦略ということでよく議論させてもらっています。出口戦略について何か言われましたか。

麻生国務大臣 今回のライス国務長官との間という意味でございますか。(山口(壯)委員「あるいは総理との間」と呼ぶ)総理との間でイラクの出口問題について、出口というものに的を絞って話が行われたとは聞いておりません。

山口(壯)委員 ということは、首脳が二人会ったときにも、あるいは外交の責任者同士が会ったときにも、この出口戦略は話されなかった、こういうことですか。

麻生国務大臣 イラクのこの問題について、出口の話について的を絞って話が行われたということはなかったと聞いております。

山口(壯)委員 日本がこれからどういうふうにイラクの問題にかかわっていくのか。自衛隊が、二年特措法を延長ということは、正直、特措法を二年ということは極めて例外的ですね。特別の措置法をあえて二年も。普通は一年でいいですね。それを二年も。別に一年でも十分まとまった期間ですから、二年でなきゃまとまった期間にならないということはないですから。そういう意味では、この二年というのは、来年の大統領がだれか決まるまでという話ですね。大統領が決まったときに、その大統領がどうするのか、それを見て決めようか。極めて主体的な部分の欠けた対応だと私は思います。

 特に、盟友アメリカが、このイラクの問題でベトナム戦争以上に非常に困ったことになりつつある。しかも、アメリカはこれから多分しばらくの間この後遺症でもって大分疲れたところが出てくるだろうと言う識者がふえています。そういうときに、日本が盟友アメリカにやはりそういうことについても語りかけていくということは、非常に大事なパートナーとしての役割の一つじゃないかと思いますけれども、大臣、いかがですか。

麻生国務大臣 出口戦略の件につきましては、情勢等々、治安というもの、前々から申し上げておりますように、現場の治安、また今あります政権の安定、もしくは他国等々の動向等々を見ながら日本の出口というものは考えるということもずっと一貫して申し上げてきているとおりだと存じますが、今の状況として、少なくとも、バグダッド周辺における状況というのは、米軍撤退のような状況には適していないという判断を、私たちから見てもそのように思っております。

 また、二年ということに関しては、これはもともと四年でしたもので、今回二年ということになったと記憶をしますが、その意味では、二年の間に事が非常に進展して、一年で事がおさまればその段階で撤退すればよろしいのであって、二年いなきゃいかぬということで法案を出しているわけではないと理解しております。

山口(壯)委員 アメリカがどういうふうに考えているかということについては、現実に、イラク・スタディーグループというベーカーさんがかかわってやっているような助け船を出しているわけですね。でも、ブッシュ大統領自身はそれをはねて、ある意味で助け船に乗らずに、増派すると言っているのは、正直言って彼が非常に少数派のうちの一人という格好ですね、アメリカの中で。いろいろな調査があるんでしょうけれども、七〇%以上の人がいわゆる撤退に賛成だという調査もあるようです。

 そういうことから考えると、やはりアメリカとの間でどういうふうに出口戦略を考えているのか。おれとあなたとの間だからちょっと話そうぜということができるようでないと、本当の意味での同盟ではないと思います。アメリカにどうしてこの出口戦略について話さなかったんでしょうか。

麻生国務大臣 これは総理とブッシュ大統領との間でどのような経緯で話されなかったかというのは、ちょっと残念ながら知っているわけではありません。

 ただ、この種の話というのは、普段の間から、撤退できる状況というものに関しましては、私どもの撤退できる状況というのは、毎回申し上げますように、大まかに分けて三つぐらいのことを申し上げてきたと思っております。そのことに関しましては、アメリカ側も十分そこは認識をしているところだと思いますので、アメリカ側も、そういった状況にできるために増派するというブッシュ大統領の意見と、イラク・スタディーグループというおやじさんの時代のときのいわゆるアドバイザーグループとの間で意見が違って、大統領は自分の意見をとったということなのであって、これは大統領制ですから、少なくとも大統領の最終判断ということなんだと思いますけれども。

山口(壯)委員 大臣は、このまま米軍がいて、事態はどんどんよくなっていくと思われますか。

麻生国務大臣 私ども、正直申し上げて、この種の話というのは、いたからうまくいく、ではいなくなったからうまくいくかと言われると、今の場合、いきなりせえので撤退してうまくいくかなと言われると、さあ、どうでしょう。いなくなった方がうまくいくかしらと正直思います。

山口(壯)委員 例えば、戦争をするときには、フランスとかが反対して、現実に安保理の決議というものが、例えばマンデートを出す形では出ませんでした。したがって、六七八、六八七という、十年前にイラクがクウェートに侵攻したときの決議にあえてさかのぼらなければいけないような一四四一という、正直、へ理屈の決議で戦争をしたわけです。

 そうしたら、今、戦争について終結宣言が出ていないみたいですけれども、主要な戦闘が終了したという宣言しか出ていないようですけれども、でも現実に、大きな主要な戦闘は終了しているということであれば、あとは治安ですね。

 であれば、私が外務大臣だったらこういう発想をしますね。例えば、ブルーヘルメットの部隊を、今、治安維持という目的で、アメリカを外して、北欧とかいろいろな形でもって組むという、これは外務省というか日本が、物すごく大きな構想ですけれども、やってもいいんじゃないんでしょうか。

 アメリカがいるから問題が大きくなっているという部分がどんどん見えてきている。アメリカも引くに引けずに困っている。大人たちはもうそろそろ引いた方がいいんじゃないかと言っているけれども、ブッシュ自身が非常にかたくなにいこじになってしまっている。日本は、何も言わずに、首脳が行ってもそのことに触れもせずに帰ってきてしまっている。何かまるで主従関係かなと思ってしまうぐらいの、このイラクに対する話については、熱いものには全くさわらない。

 そういう意味で、戦争をするんじゃないんですから、今となっては国連の枠組みというのをもう一回模索するということがあり得ると思うんです。私は非常に新しいことを言っているんですけれども、それに対して、日本の方から全くのイニシアチブもあるいは発想もなくて、アメリカに行って、全く聞きもせずに帰ってきてしまっている。二年の間にいつ出たっていいんですよでは、これは戦略じゃないわけです。別に、私は、日本がいつ出るかどうかじゃなくて、イラクをどうするかということを言っているんです。

 今、大臣は、では、アメリカ軍がいなくなったらどうなるんですかと開き直りのことも言われますけれども、だったら、例えばブルーヘルメットの国連の部隊というものも考えてみるというのはどうでしょうか。

麻生国務大臣 少なくとも、私は、基本的には、軍隊というのはブルーヘルメットであろうと何だろうと治安には向かない組織だと思っていますよ。治安というものは警察だと思いますから。したがって、軍隊というものと警察というのは似て非なる組織であって、治安というなら、私は、警察というものを拡大する、組織化するというのがより正しいアプローチだと思います。

 事実、ここはたしか十三万人から三十三万人ぐらいまで治安部隊というのを今増強するようにしている、治安部隊というのは警察を含めて増強しているというように思いますので、正しいアプローチだと思いますが、これは訓練するまでに結構時間がかかる話だとは思っていますので、そういった意味では、僕は、アメリカ軍は撤退させて、その後ノルウェーの軍を入れる、青いヘルメットをかぶせても、基本的には軍隊である間は同じだと思います。

 そういった意味では、やはり現地の中に入り込んでやっていく、治安というものを考えるんだったら、やはり現地人による治安部隊、いわゆる警察というものの方が優先されるべきじゃないかな、私だったらそう考えます。

山口(壯)委員 大臣、では、どうして今米軍は増派されるんですか。

麻生国務大臣 見解が違うからだと思いますが。

山口(壯)委員 見解が違うという話じゃないです。私は今非常にロジックを追って大臣と話をしているわけです。

 今、治安の話であれば警察と言われますけれども、この治安のために米軍が今行っているという格好でしょう。戦争しに行っているわけじゃないんでしょう。治安のための安全確保支援ということで行っているわけでしょう。だから、それを、大臣、警察の方がいいというのであれば米軍はのかなきゃいけないじゃないですか。

麻生国務大臣 見解が違うと思いますというのは、アメリカと日本と見解が違うということを言っているので、ちっともおかしいことはありませんよ。私の場合は、軍隊より警察の方がいいということはアメリカに対して前にも言ったことがありますから。その前提で知っておいてもらわないといけないのであって、見解が違うというのは、具体的な提案に対して、私どもは過去にそういったことをやったことがある。御存じのように、日本は過去に、日本自体が戦前にそういう経験がありますから。

山口(壯)委員 大臣、ということは、今、さらにこの段階で、日本が出口戦略については全くイニシアチブをとるつもりはないというふうに私には雰囲気が伝わってきます。アメリカにつき合っていくだけということのように雰囲気は伝わってきます。でも、現実には、例えば国連の枠組みで一つの仕組みをつくるということも、これは簡単なことじゃないですよ。だけれども、日本としてそれを言ってみる価値、あるいはやってみる価値というのは非常に大きいと思うんです。アメリカがどう言うかということはあわせて根回ししていけばいい。

 でも、現実にアメリカも引くに引けずに困っているわけでしょう。現実には、大統領がかわったら撤退するとは必ずしも限らないです。そこにずっと日本がつき合うつもりなのか。そうじゃないでしょう。日本として、このイラクの事態というものが、アメリカ軍がいるからこそ悪化してきているという面も十分にあるわけですよ。そうしたら、どういうふうに解決するかという発想あるいは構想力を持っていてもいいと思うんですよ。

 今、例えばアメリカ軍がいなくなったらどうするんですかというふうに言われるから、では、例えば国連という枠組みでそういうことも考えられるでしょうと申し上げているんです。

麻生国務大臣 私は、アプローチの仕方として、アメリカ軍がいなくなった場合どうすればいいかというのに対して、ノルウェー等々の北欧のブルーヘルメットをつければいいという御発想のようですけれども、私は、それは一つの考え方としてあるかもしれませんが、しょせん軍隊と警察は違うということを申し上げているのであって、軍隊というものではなくて警察が治安ですから、そういった意味では、治安組織を訓練するためには、アメリカというものが、そこの軍人なり、アメリカの中から警察訓練も御存じのように今やっていますから、そういった意味では、いろいろやっておるという現実をある程度踏まえた上で考えないといかぬということを申し上げて、私の方が非常に現実的に申し上げていると思っております。

 それから、日本に対して、いろいろこれまでやった中で、イニシアチブが全然ないというお話でしたけれども、国民融和というものがないと、治安の回復というものだけ、その面だけ抑えても、基本的な、根本的なところにある国民融和というものがないとできませんよということを申し上げて、イラクの国民融和担当大臣というのを一人と、その他、各派から四人ずつ十二人、日本に呼んで、国民融和というのをやっていったらどうです等々のことをやらないと治安というものに行き着きませんということも申し上げて、これまでもやってきております。

 御存じのように、日本の場合は、治安というものに対して、これは自衛隊がやるわけではありませんので、そういった意味では日本なりに努力をしておると思っております。

山口(壯)委員 大臣と私とで一致している部分は、治安の面については警察の方が合っているということについては一致しているみたいですね、警察力。ところが、今、軍隊、米軍がそこにいるわけですね。ですから、そういう意味では、米軍がそこにいることによって問題も起こっているけれども、現実に米軍がそこにいることによって必ずしも解決しない、そういう面もあるんじゃないんですか。

 では、それをのけたらどうするんだという話ですけれども、現実には、例えば私が申し上げたようにいろいろな手があるんじゃないんでしょうか。なぜそれをアメリカに言えないのか、なぜそういうアプローチができないのか、首脳外交というのはそういうものですね。ある意味で、何か知らないけれども、決められた役人がつくった発言要領を順番に読んでいくようでは本当の首脳外交じゃないです。

 現実に、例えば日米外相会談でも、もうライスさんとは相当会っているわけですから、そういう踏み込んだところもいろいろ議論されてもよかったんじゃないのかな、あるいはそうあるべきではないのかなと。これからアメリカの国力がこのイラクで物すごく落ちますよね。既に相当な負担が来ていますけれども、それもアメリカの有識者のみならずいろいろな人が言い出している。多分、ベトナム以上だと言われている。

 そのときに、日本が、何も、例えば外務大臣がわざわざ行って、あるいは首脳がわざわざ会っているのにそのことについて一切触れないというところに何か主従関係を感じてしまうんです。本当の意味でのパートナー、本当の意味での友達であれば、それぐらい日本から、いろいろ、ちょっとそのことも話をしようぜということをなぜ言えないのか。我々が政権をとらせてもらったらそういうことはきちっと言えますよ。

 そういう意味では、大臣、ぜひ私が言わんとしている意を酌んでいただきたいと思うんです。ロジックではねつけるんじゃなくて、現実にそういう気持ちを持っていただきたいんです。ぜひぜひ、大臣、もう一度答弁をお願いします。

麻生国務大臣 政権をとったらやられるというので、頑張ってください。それが正直なところですね。

 それから、今まで、日本とアメリカの間、少なくとも私とライス国務長官との間にそういったような話は幾度となくしてきておりますので、今回していなかったから、イコールそれが主従関係というような認識は私には全くありません。

山口(壯)委員 この問題については基本的なところの認識があるのかもしれないですけれども、きょうはせっかく鶴岡さんも来ていただいていることだし、最後に気候変動のことについても少し聞かせていただければと思います。

 気候変動についての日米合意があったということですけれども、私は基本的には京都議定書の前の枠組み条約のところにまでアメリカがとりあえずもう一回来ただけにすぎないと思っているんですけれども、このことについては事務方の観点からでも、鶴岡さん、日本から言い出したのか、アメリカから言い出したのか、ちょっとその辺をまず教えていただけますか。

山口委員長 登録がないので。

山口(壯)委員 そうですか。では、大臣にお願いします。

麻生国務大臣 鶴岡審議官のかわりにさせていただきます。貫禄不足で済みません。

 少なくともこの話は、日本とアメリカとの間で、訪米される前から打ち合わせが進んでおりましたので、その現場においてどちらの方が先に言い出したかという話ではなくて、あらかじめ話はほぼでき上がって、アメリカがこの大きな枠の中に乗ってくるような話をかなり前の段階から進めておりましたというのが答えです。

山口(壯)委員 実際に事務方がどういうふうにやりとりしたかというのは、大臣は細かいところまでは御存じないかもしれませんけれども、ぜひ鶴岡さん、後ろに行ってでもちょっとささやくなり、これはどっちかが言い出さないとこういう話は出てきませんから、そんな、どっちからともなく出てきたなんて、水がしみ出すような話じゃないんですから、現実にこういうものをどっちが言い出したのか。私は、日本が言い出したんだったら偉いと思っているんです。その点について、大臣、どうですか。

麻生国務大臣 偉いと言っていただいて結構です。

山口(壯)委員 日本から言い出したということ。そういうことを、我々、これは例えばサミットで来年もやるんでしょう。そういうことについては現実にいい面も非常にあるわけですから、私は応援したいなと思っています。

 ただ、今回、この気候変動の話については、CO2をどうするかということに関して、何かバイオエタノールだとかややこしい話もいっぱい出てきています。その中には、向こうに、アメリカの例えば食糧メジャーみたいな話があって、遺伝子組み換えのトウモロコシ、カーギルだのモンサントだのと会社がいっぱいありましたけれども、そういうところがトウモロコシをいっぱいつくって、しかもそれを独占してしまって、そこの種を買ったら、その会社のその肥料、その除草剤を使わないと効かないとか、しかもその種が一年ぽっきりだから来年また買い直さなきゃいけないとか、いろいろあるわけですね。それが値段をつり上げてしまっている。

 日本としては、そういう意味で、そういう影の部分もしっかり見抜いた上で、この環境問題に関するアメリカとのつき合い方というものをしっかりやっていただければと思います。

 終わります。

山口委員長 次に、長島昭久君。

長島(昭)委員 民主党の長島昭久です。

 引き続きまして、総理の訪米、そして麻生外務大臣の訪米の成果について伺いたいというふうに思います。

 時間が二十五分と非常に限られておりますので、テーマを絞って議論していきたいんですけれども、やはり北朝鮮の問題、先ほど前原委員からも質疑がありまして、そのフォローアップみたいな質疑になりますが、私も今回、連休にワシントンに参りまして、やはりクリス・ヒル次官補の評判がよくないとさっき前原委員も言っておりましたが、私も、会う人会う人、相当批判的だった。

 そのクリス・ヒルが何と言っているか。二月十三日の六カ国合意が行われた直後、三十日、六十日という期限を切って帰ってきた。そのときに、ワシントンのシンクタンクでクリス・ヒル次官補が講演をしていました。そのときに彼は、ブロークン・ウインドー・セオリーという、破れ窓の理論というのを引き合いに出して、こう言っているんですね。何よりも期限が破られることだけは避けなければならない、一度期限が破られると割れ窓の理論のようになる、割られた窓を放置しておくとほかの窓も割れて、やがてだれも気にしなくなると。御本人の談でありますから、非常に意味は重いと思うんですが、その破れた窓がそのまま放置されて六十日が過ぎました。

 今回、その過ぎたことを受けての外相会談あるいは総理の訪米であったということを認識しておりますが、前回、岩屋副大臣に私は、ちょうど外務大臣の訪米前でしたから、あるいは総理の訪米前でしたから、この初期段階の措置が六十日以内に履行されなかったことを受けて、きちんとこの点については次のステップについて詰めてこられるんでしょうね、こういう多少僣越な念押しをさせていただきましたところ、御本人を前にして恐縮ですが、もうすぐ安倍総理が訪米されるわけでございますが、総理も、北朝鮮が約束を守っていく、また北朝鮮に約束を守らせるためにはどうすべきかということについても率直に大統領とお話ししたいというふうに言っておられますと。

 ぜひ詳しく御報告いただきたいんですが、総理でも結構です、あるいは外務大臣でも結構です、その首脳会談あるいは外相会談の中で、北朝鮮に約束を守らせるためにはどうすべきか、この点についてどういう議論が交わされたか、ぜひ国民の皆さんに御報告いただきたいと思います。

麻生国務大臣 一部報道がなされておりますように、この北朝鮮問題に関しては、首脳会談の中にかなりな時間を割いてこの問題は討議が行われております。日米双方とも、いわゆる六者会合を通じて北朝鮮の核兵器とか核計画というものの完全な放棄というものが基本的なターゲット、目標ということで、その前にいわゆる初期段階というのがいろいろやられておるんですが、先ほどブロークン・ウインドー・セオリーでしたか、破られたままで、四月の十三日ということになりましょうから、かれこれ一月近くがそれから経過をしているということになります。

 したがって、このことに関してかなり率直な意見交換が行われて、そのときに出た言葉が忍耐は無限ではないという言葉につながっていき、総理がいわゆる一対一のブッシュ・総理会談の後、先方の外務大臣が入られた会合においても総理はこのことを発言しておられて、それに対してブッシュ大統領のほぼ同意みたいな発言が、いわゆる拉致問題等々について考慮に入れる旨等々の話につながっていったので、記者会見において、いわゆる拉致の問題に関しても、この問題に関する議論が拉致問題に関する私の強い思いを弱めるようなことがあってはならないという立場の表明につながった。これは一連、全部、北朝鮮の核の話、拉致の話等々関連しておりまして、かなり長時間にわたって行われて、これ以上何ら進展がないというのであれば、さらに圧力の方を強めなければならないという話に裏がつながっておるように御理解いただいて結構だと存じます。

長島(昭)委員 そうなんですね。圧力の必要性について日米間で改めて合意がなされたということは、私も評価をさせていただいているんです。

 例えば記者団に麻生外相が、日米の外相会談の後に、ここ数日の間で北朝鮮から答えが全く出ないということなら追加的措置をやらざるを得ない、このように会談の直後におっしゃっておられるところを推測すると、次のステップ、つまり圧力を今後どういう形でかけていくかということについて、外相間でかなり突っ込んだ話し合いがなされたんだろうなということは推測ができるんですが、そこでお伺いをしたいのは、これは差し支えない範囲で結構なんですが、具体的にどんな圧力を日米間で頭に描いておられるのか。

 というのは、さっきの破れ窓の理論もそうですけれども、それは前回の副大臣の御答弁もそう、いつも麻生外務大臣の御答弁もそうですが、BDAの問題というのは基本的にはこの六者のプロセスとは関係のない問題だ、こういうことで日本の政府の立場はきているわけですね。しかし、アメリカの場合は、ヒル次官補がそちらにコミットしておりますので、例えばライス国務長官は、日本側の原則論が片やあって、それからヒルさんがコミットしている問題があって、ここをどういうふうに整理して日本に対して説明をしているのか、私はそれは非常に興味深いんです。

 つまりは、本音を言うと、送金の問題を何とか片づけて、次のステップに北朝鮮が入ってくれることを願っている、仮に送金の問題が片づいたにもかかわらず北朝鮮が初期段階をきちんと履行しない場合には圧力を加えようという話なのか。それとも、日本政府が今まで説明してきているように、送金の問題云々というのはもう北朝鮮の勝手な言い分であって、アメリカ側としては、あのBDAの問題を、凍結を解除したところで一応ベルリンでの協議の結論は出してある、あとはもう自分でやれと。したがって、初期段階の措置に入らない理由にはなりませんよ、ここ数日以内というふうに外務大臣はおっしゃっておられますけれども、もうあと数日ぐらいで、送金の問題がどうあれ、北朝鮮がきちんと約束を履行しない場合には、日米間で、あるいは国際社会に呼びかけて圧力がまを上げていこうとされているのか。

 ここの問題を少し詳しくお話しいただきたいと思います。

麻生国務大臣 長島先生、これは難しいところでして、正直なところ、大体二、三日以内で結論を出すとヒルはもう二週間前に言っておるんですね。そのときに結論が出ない。今度また、今週以内に何とかと言うから、二週間前も同じことを言ったじゃないか、そのときも結論は出なくて何だと言ったら、返事はなかった。私、しつこいから、終わった後また個別に呼んで、話が違っているだろうがと言ったら、いや、ちょっと事情が急転して何とかといろいろ言うわけですよ。また今度が急転しないという保証はない、そういうことだなと言ったら、それは、うんと。

 だから、相手が相手だから、相手が相手だからというのは北朝鮮ですから、それは、まともな対応が出てくるというのをたびたび期待してたびたび裏切られたわけですから、我々としては、そうそう向こうの言う話をそれだけ信用しているわけではありませんし、それをたびたび我々に、BDAの話は直接我々がやっているわけではありませんので、ヒル経由でこっちへ入ってきますので、ヒル自身がだまされているのか、よくそこのところはわかりませんから、そういった意味では、この話の指摘もやっております。

 したがって、今回の場合、今言われましたように、送金の話というのは、凍結は解除になっておりますので、その送金の部分だけが今残っておる問題です。その送金ができて二千五百万USドルで入っていった後、直ちに初期段階にすると向こうは言っていますよ。言っていますけれども、するという保証はない、私はそう思っています。

 そういった意味では、これは直ちに今やるか、今の案でいくと、何が何でも今週いっぱいで決まらなかったら日本でやっちゃうのか、向こうがあくまでやると言えば、一週間ぐらいかな、その答えとしては。それぐらいのところじゃないかなと思いますけれども、これはアメリカとは、もういいかげんにしなきゃいかぬなという話をしなきゃいかぬ時期が来るだろうと思っております。

長島(昭)委員 といいますのは、最初、核実験があって、国連決議一七一八、これはもう外務大臣も相当リーダーシップを発揮されて、せっかく国際社会で全会一致で国連の安保理で決めた。その当時はアメリカは何と言っていたかというと、もちろん、ジョゼフとかネオコンの人たちがまだ政権の中に残っていましたから、PSIをやるんだと、つまりもうブロッケードを今にも始めるような、そんなアナウンスがされていたわけですね。

 ところが、月日がたって、そういう強硬派の人たちも一人一人とまた退場していって、そしてクリス・ヒルという、交渉の達人と言われているらしいですけれども。交渉の達人というのも、例のボスニア・ヘルツェゴビナのあの紛争を解決する九五年のデイトン合意を彼はホルブルックのもとでやって、それである種名をはせたということなんですが、あれは、もうムスリムとクロアチアとセルビアとぐちゃぐちゃになっているところを、何とか合意をみんなに納得してもらって、合意がある種目的のような交渉でした。しかし、今回は別に合意が目的ではなくて、きちんと核廃絶に向けてプロセスを動かすことが目的ですから、そういう交渉には実は余り向いていなかったのかなというふうに私は思いますけれども。

 そのとき、当初の、一七一八決議の直後の雰囲気からするとアメリカ側が相当後退している印象があるものですから、そこはやはり日本が、私は常々言っています。この六カ国合意というのは、右の方からすると、北朝鮮なんかと取引して、ばかか、こう言っている。左の方からすると、拉致問題に固執し過ぎて孤立するんじゃないの、こう言っている。しかし、私は、そうではないと。やはりこの六者のプロセスと拉致問題の解決というのをリンクさせて、拉致を動かさない限り六者のプロセスも動きませんよ、それはアメリカも中国もわかっていますね、こういう方向に持っていったという意味では外交的な一つの成果だったんだろうと私は思っているので、なおさら日本の出番だと思っています。つまり、この拉致問題というものをてこにして、圧力をきちんともう一回調整し直して、もちろん日米間もそうですが、韓国とか中国にも働きかけていく必要があるんじゃないか、こう思っております。

 そこで伺いたいのは、今現在日本がやっている圧力政策、つまり制裁は、もう御案内のとおり、北朝鮮から入ってくるものを人、物、金でとめる、こういうことは今ある程度やられています。それから、北朝鮮のミサイルに関係する企業など十五団体、一個人指定して口座の凍結をしているということなんですが、あと、これは内閣府の所管なのかもしれませんが、外務省も恐らく把握していると思うので伺うんですが、仮に日本がさらなる圧力を加えるとしたら、どういう制裁が一応念頭にあるのかということをお答えいただければと思います。やるかやらないかは別にしてですよ。

麻生国務大臣 長島先生、これは結構いろいろ検討はしております。私どもの方もこれに結構かかわっております。その内容をちょっと今の段階で申し上げる段階にはありませんけれども、結構この問題は、次のステップとしてはどうするべきかというのは、かなり前からこの話を詰めてきておりますので、いろいろ今言われましたように、輸入をとめるだけじゃなくてほかのものもあるのではないかという御指摘、全くそのとおりだと思っております。

長島(昭)委員 お立場上、余り過激な発言をできないのかもしれないので、私がかわって申し上げますと、例えば全面輸出禁止とか、それから送金の停止、これは二千五百万ドルのBDAの口座のお金でがたがた言っていますが、日本から大体百億円ぐらい毎年行っているということですから、二千五百万ドルどころの騒ぎではないわけでありまして、この辺をとめるというオプションがまだ残されているということで、私は日本の立場はこの間一貫していると思うんです。

 では、アメリカはどうかというと、これは今回ワシントンでかなり聞き取りをしてわかってきたことなんですが、実は、アメリカはもう目いっぱい圧力をかけているんですね。それは金融制裁も含めて、敵対国に対する貿易はしないとか、あるいはテロ指定国家に対する資金の支援はしないとか、いろいろな。もうほとんどアメリカは、これ以上の制裁をかけることができないぐらいまでかけている。

 それで、さらなる制裁と日米間でいった場合に、何をさらなる制裁として念頭に置いているのかというのが私、いま一つはっきりわからないんです。日本の場合はまだ少し余地がありますけれども、アメリカはほとんどない。そうすると、ほかにどういう手段を念頭に置いているのか、これも説明していただきたいと思います。

麻生国務大臣 銀行の口座というのはほかにもあるんじゃないですかね。

長島(昭)委員 それは世界じゅうにあるというふうに承っております。まあ、一罰百戒でBDAを押さえて、それを国際社会全体に波及する、つまり、アメリカの銀行はもう取引できませんから、世界に彼らが持っている口座をそういう意味では無言のうちに押さえていく、こういうことも一つ考えられるんだろうと思うんですが、私が一つ提案というか考えたのは、やはり国連決議一七一八、これをきちんと履行を、国際社会に向かってもう一度たがを締め直すというのは一つあると思います。

 それで、2プラス2の共同発表の中にも、第二項の共通戦略目標というところの二番目の項目でやはりこう言っているんですね。「すべての国連加盟国が国連憲章第七章下の決議である国連安保理決議第一七一八号の規定を遵守する義務を引き続き有していることに留意しつつ、同決議の迅速かつ完全な実施を達成する。」つまり、裏を返して言えば、これが迅速かつ完全に実施されていないということですね。

 私も、今回、外務省の方に資料をつくってくださいと。つまり、国連決議一七一八がどの程度、これは六十八カ国、そしてEUを加えて一機関が、三十日以内に報告書を提出しろという一七一八に基づいて報告書を提出している。膨大な報告書なんでしょうから、それを、十カ国に絞って結構ですから、要点だけ下さいと言ったら、これは皆さんに配付したいぐらいなんですが、国名が書いてあるんです、こうやって。日本、アメリカ、オーストラリア、カナダ、イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、シンガポール。急いでやったんでしょうね、フランスが六と八でダブっていますけれども。内容が、軍関連及び核、ミサイル、WMD計画関連の特定品目の輸出禁止、ぜいたく品の輸出禁止等を実施済み。十カ国全部同じ。これは多分コピーペーストでつくったんだろうと思いますけれども、もう少し誠意を持って私たちに資料をつくっていただきたいなということを、一言外務大臣に抗議を申し上げておきます。

 これは外交青書でありますが、この一七一八、もう一度おさらいをしますと、すべての加盟国がとるべき措置として、軍関連、核、ミサイル、WMD計画関連の特定品目、ぜいたく品の北朝鮮に対する供給等を防止、それから、北朝鮮の核、弾道ミサイル及びその他WMD関連の計画に関与する個人、団体の資産凍結、それから、北朝鮮の核、弾道ミサイル及びその他WMD関連の政策に責任を有する個人及び家族の入国、通過の禁止、大きく三つ言っているんですね。

 外務省さんからいただいた資料には全部は網羅されていないので私は非常に腹立たしく思っているんですが、現在、国際社会で、この一七一八について、外務大臣からごらんになって、何割というのはなかなか言いづらいかもしれません、どの程度、各国が真剣にこの一七一八を履行しようという努力をしているのか。特に、中国や韓国やロシア、北朝鮮と直接かかわりのあるこういう国々がどういう姿勢でこれまでのところ臨んでいるのか、その評価も含めて外務大臣にお答えいただきたいと思います。

麻生国務大臣 これは長島先生、ちょっと一概には言えないところなんですが、今言われましたように、一七一八でいきますと、日本を初め、アメリカ、カナダ、欧州、豪州の主要国というのは、欧州というのは欧州諸国、EUという意味ですが、基本的には、特定品目等々実施しているというのは先ほど出した紙のとおりですが、どのように具体的にやっているかという、ちょっとコメントまでは差し控えさせていただきます。

 あえて中国と韓国の話が出されましたけれども、内容を詳しく知っているわけではありませんけれども、いろいろな手段で、知っている範囲、ちょっと内容まで言いにくいところが難しいところなんですが、中国は、私はもっとしないかなと思っていました。しかし、現実問題として、中国の北に対する制裁はかなり、私たちの思っていたよりは結構搾っておるという感じは率直なところです。したがって、中国の北朝鮮に対する発言力は、半年前、一年前に比べてかなり低下したのは事実です。

 したがって、北朝鮮の中国に対する、山口先生の言葉をかりれば、主従関係という言葉を使わせていただければ、少なくとも従という感じではなくなってきている、中国も韓国もそう思っておるということまでは私どもの認識としてありますので、かなり進んできているとは思いますけれども、ただ、北朝鮮としてそれでも突っ張っているというところなんだと思いますので、常に瀬戸際まで来ますから、そこまでまだ来ていないのかなと思わないわけではありません。

 いずれにしても、その二国に関して言わせていただければ、かなりのものになってきた、むしろ韓国より中国の方が先に行ったかなと思うぐらいのところが一時期あったぐらいの感じがあります。

長島(昭)委員 ぜひ、この一七一八決議の履行、これは2プラス2でも両国間合意しておりますので、日本側から国際社会に向けてもう一度、何らかの形で、圧力を高めていく一つの手段としてやっていただける、そういう準備がおありかどうか、一言。

麻生国務大臣 この一七一八に関しまして、加盟国に対してさらにきちんとした履行というアプローチというのは、既にアメリカといろいろ話をしております。

長島(昭)委員 サミットもございますので、またさらにやっていただきたいと思います。

 最後に、もう時間がほとんどないんですが、この首脳会談で、テロ国家指定を解除する協議については、これから長い道のりになるとした上で、拉致問題についても考慮に入れるという立場の表明があった、こういうことですね。これはほっとする情報なんですが、ほぼ同時に発表された例の年次報告、テロ指定国家についての国務省の年次報告が出ました。

 何回か前の委員会で、私は外務大臣に、例の五人の皆さんが、拉致被害者が帰ってこられたあの年、何年という年が事実とは違っていた、二〇〇三年と書いてあったのを二〇〇二年に直すべきだと言って、それは今回直っています。

 ところが、そこを直したついでにと言ってはなんなんですが、記述が非常に簡素化しているんです。これも、暇な方というと申しわけないですけれども、何字あるか数えた人がいて、前回は百六十一ワードあったんですが、今回、百八ワードに削られていて、これは別に字数が短くなっているというだけではなくて、北朝鮮がテロ指定国家であるということを証明する記述があるわけですけれども、その中から、日本人の拉致問題については辛くも残っているんですが、韓国人を拉致した実績とかあるいは外国人拉致への言及が今回消えているんですね。

 それから、プラス、新しく、二月十三日の六カ国協議の合意に、米国は対北テロ支援国家指定解除の手続に着手したと、御丁寧に、なぜ北朝鮮がテロ指定国家として認定を受けているかという理由を説明するパラグラフの中に、そろそろこれも解除しようという話し合いを始めましたという一文を入れて、しかも、日本の関係だけではなく、これは国際的な人権問題であるというふうに我々もずっとこれまで訴えてきたその部分を消していく。

 私は、こういう国務省の態度、姿勢は、ヒル国務次官補の今回の交渉姿勢に見事に象徴されているので、ことしはもう出てしまいました、しかし、これからテロ指定国家解除をする議論、協議が米朝間で始まるわけですから、そこはやはり日本政府からきちんと、ほかの外国の被害者も含めて、アメリカ側にインプットしていただきたい、このことを申し上げたいと思います。

    〔委員長退席、小野寺委員長代理着席〕

麻生国務大臣 今の御指摘は、前々回でしたかね、いただいておりましたので、この話は既にしておりますし、今回のライス国務長官と面会の日にその白書が出ていますので、きょう出たので、出ていると言ったら、えっという顔をしたので、出ているじゃないかという話をして、向こうできちんとこれは対応ができていないという話をしておりますので、この点は向こうにきちんと伝わっております。それが一点。

 それから二つ目は、ブッシュ大統領の記者会見のあったのは、その一連のことと絡んでおりますので、日にちがずれておりますが、私どもはその白書が出る前の日にその内容を知っておりましたから、この話を総理の方からブッシュ大統領に重ねて言ってもらい、ライス国務長官のいる前でもう一回安倍総理から言っていただいたという経緯がありますので、今言われました点、次出てくるときまでというお話がありますので、きちんとした対応をさせたいと思っております。

長島(昭)委員 これで終わりにしますけれども、六カ国合意、いろいろな批判がある中で、私がこの六カ国合意を評価している一点は、拉致問題をてこにしてこのプロセスを動かすということですから、アメリカの拉致問題に対するコミットメントがある種生命線になっていると思いますので、その点、ぜひこれからもきちんと交渉していただきたいと思います。

 ありがとうございました。

小野寺委員長代理 これにて長島昭久君の質疑は終了いたしました。

 次に、笠井亮君。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。きょうは、去る五月一日に行われた日米安全保障協議委員会、いわゆる2プラス2について質問いたします。

 まず、麻生大臣に伺いますが、今回の共同発表で「同盟の変革 日米の安全保障及び防衛協力の進展」という文書が発出されました。これについて、大臣は、この2プラス2後の共同の記者会見の中で、日米同盟にさらに重みと深みを加えることができたというふうに発言をされております。私、英文で拝見していて、ウエート・アンド・デプスということで重みと深みということを言われたわけですが、これは一体どういう意味を込めて言われたんでしょうか。

麻生国務大臣 笠井先生御指摘のとおり使ってあると存じますが、今般の2プラス2の会合の中におきまして、これまでの2プラス2におけるところのいわゆる共通戦略目標とか、それから役割、任務、能力とか、在日米軍の兵力態勢の再編等々の話がこれまでもあっておりますが、その成果を踏まえた上で、再編の着実な実施、きちんとこれは約束どおりやる。前回、十年間何も動かなかったわけですから、着実な実施。それから、BMD協力、いわゆるバリスティック・ミサイル・ディフェンス、迎撃ミサイルのディフェンスの話の強化、加速という意味で、これまでの合意に具体的な形をきちんとしたというところが確認できたということが、私どもの申し上げた背景であります。

 もう一つは、情報のことに関して、情報協力といった幅広いことに関しても確認ができたというところから今申し上げたような表現をさせていただいたというのが背景です。

笠井委員 今大臣言われましたけれども、今回の共同発表を拝見しますと、今指摘された在日米軍の再編の問題についても着実な実施という形で確認したという、これ自身大きな問題でありますが、この問題とともに、私、日米同盟に重みと深みを加えたという点でいうと、新たに重大な中身が含まれている、盛り込まれているというふうに読みました。一つは共通戦略目標ということについて、二〇〇五年二月のときの2プラス2と比べても、より具体的に一連の国名などを挙げながら言及するとともに、特にNATOとの関係について挙げている。

 これは外務省でも結構ですが、日米の合意文書で、これまでNATOとそれから日米同盟の関係、あるいは日本とNATOの関係について言及したものがあったでしょうか。あるかないかだけで結構ですから。

西宮政府参考人 調べました範囲は、日米首脳会談の際に発表されました共同声明であるとか共同発表であるとか、名前がいろいろございます。それから2プラス2の会合、これもいろいろな名前がありますが共同発表、それから日米間の国際約束ということで、大分調べましたけれども、近年ということで申し上げれば、五月一日の2プラス2共同発表以外には、NATOと日米同盟の関係、あるいは日本とNATOとの協力について言及したものはございません。

笠井委員 安倍内閣のもとで初の2プラス2ということにおいて、初めてそこまで踏み込んだ言及があったということであります。

 この共同発表では、NATOの平和及び安全への世界的な貢献と日米同盟の共通戦略目標とが一致をし、かつ、補完的であることを確認しつつ、より広範な日本とNATOとの協力を達成するというふうに述べております。

 そこで、大臣に伺いたいんですが、NATOの平和と安全への貢献と日米の共通の戦略目標がどのようなことで一致するのか、それから補完的というのはどういう意味を込めているのか、伺いたいと思いますが、いかがでしょうか。

麻生国務大臣 今、具体的なところで言えば、多分、インド洋の対アルカイダ、対アフガニスタンテロに対するいわゆる一連のNATOに対する給油、給水等々は具体的な例だと思います。

 少なくとも、今回の共同発表の中で、日米両国は二つあろうと思いますが、国際社会での民主主義等の基本的価値の推進という言葉と、世界の平和、安定及び繁栄を推進するため、国際平和協力活動における協力の推進という言葉を述べていると思いますが、今申し上げましたように、アフガニスタンにおけるテロとの闘いとか、それから、たしかパキスタンの大地震のときにもNATOと多分一緒だったと記憶しますが、域外国との間で関係強化というものも取り組んだというのが、たしかパキスタンの大地震のときだったと思っております。

 そういった意味で、日米同盟のいわゆる共通の戦略目標とNATOの平和及び安全への貢献というのが基本的な価値を共有するという点と、それから、平和と安定のために協力を推進していくということで、今申し上げた例は、アフガニスタンの例、パキスタンの例、いずれも一致し、かつ補完的な関係であると言えるのではないか。具体的な例と言われれば、そういうことだと存じます。

笠井委員 会談後の共同記者会見の中でゲーツ米国防長官は、日本とNATOとの協力について、まさに今、アフガニスタン支援という問題を挙げていたと思うんです。早速、その後、久間防衛大臣は五月四日の日にNATOの事務総長と会談をして、自衛隊が民間人や資材の輸送などもできるかどうかを検討したいというふうに発言されて、私は、これは米国の要求にすぐ応じる姿勢が浮き彫りになったなというふうに受けとめているんです。

 そこで伺いたいんですが、このアフガニスタン支援という問題をめぐって、この間、アメリカ側は軍民共同の地方復興支援チーム、いわゆるPRTの活動に自衛隊が参加することを求めるというふうな話があった。そして、本年一月、安倍総理がNATO理事会で演説した中で、自衛隊が海外での活動を行うことをためらいませんということを述べて、PRTが実施する活動との協力強化ということを表明されたということがありました。

 そこで、今回の共同文書でより広範な日本とNATOの協力を進めていくというのは、こういうPRTへの参加も含めて検討していくということなのかどうか、その点はいかがでしょうか。

麻生国務大臣 今、具体的に、笠井先生、この点に関しましては、主としては資金援助が大きいと思っております。現実問題として、人を、今自衛隊が出せるかという話になりますと、これは治安の話と関連をしてまいりますので、その意味では、自衛隊を出せるかと言われるとなかなか難しいと思っております。

 人間の安全保障無償供与とか、いろいろ御存じのところでもありますので、そういった意味では、日本政府としては、今後、数年間で二十億円ぐらいのものをという話で今話をしつつあるというのが現状でありまして、直ちにPRTに対して自衛隊を派遣して、それで治安活動もというふうな話ではないというように御理解いただければと存じます。

笠井委員 当面は資金援助で、今直ちには難しい、そういうことはないと言われたんですが、私はそういう方向に向かっての一つ大きな確認がしかれたのかなという点では重大だと思っておりまして、国際的な平和と安全への貢献という名のもとにいろいろなことをやるという形で、結局、今難しいと言われた点はまさに微妙な点というか重大な点があって、やはり自衛隊が行くことになれば、そこで協力をPRTでやれば、これは武器使用を前提にした軍事の世界という話が出てくる。NATO軍が展開している地域に自衛隊を出して海外派兵を軍事同盟間で協力していこうということでいうと、ここまでいきますと、日本の政府自体は憲法上できないとしてきた集団的自衛権の行使ということにもつながる非常に危険な方向になってくる、だからこそ、今、すぐできないというふうに言われたんだと思うんですが、しかし、そういう方向に向けての一つ確認なのかなと、私は非常に重大な問題として受けとめております。

 大体、今日、NATOがいろいろ言われております。NATOの漂流ということも言われるほど、イラク戦争でもアフガニスタンへの派兵をめぐっても、加盟国の中でもいろいろ分かれているという事態がある。そういうときに、人道支援、復興支援を口実にして、日米同盟、安保の枠組みを、当面は資金援助ということなんだけれども、しかし、日本を守るということから地球規模に日米安保を拡大しながら、そして、日米同盟ということでついにほかの軍事同盟とも初めてこういう形で補完的関係、共同連携にまで広げたということの意味は、私は極めて重大だというふうに感じております。この問題は引き続き取り上げていきたいと思います。

 さらに、この共同発表の役割、任務、能力の中で、日米政府が、新たに軍事情報包括保護協定、いわゆるGSOMIAの実質的合意をしたことも見過ごせない点だと思います。

 そこで、防衛省、きょう来ていただいていると思いますが、伺いたいんですが、米国はほかの同盟国との間でもこの協定、GSOMIAを結んでいると思うんですけれども、日本との関係でいうと、米国の側から日本に対して最初にこの提案があったのはいつなのか、そして日本が具体的にこれを検討を開始したのはいつごろなのか、その点をお答えいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

大古政府参考人 お答えさせていただきます。

 いわゆるGSOMIAにつきましては、米国は六十数カ国と締結しているというふうに聞いております。

 いつごろから日米間で調整しているかというお話ですけれども、調整の窓口は外務省ですので外務省がお答えした方がいいのかもしれませんが、我々の承知しているところでは、一九八〇年ごろから、いろいろ相互に課題認識があって調整してきたというふうに承知しております。

笠井委員 八〇年ごろからというと、相当、かなり前の話ですけれども。

 そうしますと、これは外務省に伺いたいと思いますが、そういう協議があった、アメリカから提起があって協議があったということでしょうけれども、これまで具体化されずに来たというか、なかなか大変だったという理由は何なのか、どのようなことが、提起があったけれどもやるのはなかなか難しい検討課題があったのか。それを国会でも議論がなかった中で今回実質的合意をしたこと自体、私は問題だと思うんですけれども、政府としては、実質的合意ということで確認するということになりますと、検討課題であったことが解決をしたというふうに判断したのかどうか、その点はいかがでしょうか。

西宮政府参考人 このたび、実質合意ということに至りましたけれども、まだ最後の詰めをしている段階でございますので、交渉中のことということで、お答えを差し控えたいと思います。

笠井委員 一九八〇年代というと、もう二十年以上前からの話ということになります。実際にこういう重大な問題について実質的合意をしておきながら、どんな検討課題があったかも国会で明らかにできない、交渉中の一言ということは、これは極めて重大だと私は思うんです。

 このGSOMIAというのは、六十数カ国と結んでいるという話がありましたが、アメリカの軍事秘密主義を条約化したものでありまして、今でも日本は軍事情報を何でも秘密にする軍事秘密大国と言われ、イラクで航空自衛隊がどれだけ米兵と武器を運んでいるのかさえも秘密である。国民の知る権利という点からいうと、まさに踏みつけにすること自体許されないというふうに私は思います。

 そこで、さらに伺いますが、これは防衛省になりますか、二〇〇五年十月の2プラス2では、共有された秘密情報を保護するために必要な追加的措置が必要とありますけれども、その具体化として今回のGSOMIAの実質的合意がされたというふうに思います。さらに、これはまだこれからということで最終に行かないということですけれども、この協定に伴って、追加的措置として日本国内の法整備が必要かどうかという問題であります。

 七日のイラク特では、久間大臣が、新たな法的措置はとらない、そういう旨の答弁をされておりますけれども、なぜ必要ないというふうに判断をしているのか、また、そのことについても米側も了解しているというか、そういうことになっているのかどうか、伺いたいと思いますが、いかがでしょうか。

大古政府参考人 お答えいたします。

 先ほど、GSOMIAにつきましては、日米間で実質的合意があるということで北米局長の方から答弁がございましたけれども、この合意の範囲内におきましては、我が国の国内法令の範囲内で実施可能なものになるというふうに考えております。そのため、久間大臣が申したように、この協定の締結に伴って国内の法的措置が必要になるとは考えていないというところでございます。

    〔小野寺委員長代理退席、委員長着席〕

笠井委員 国内の法令の範囲で可能ということがありましたが、私は、この協定というのは、米国と同程度の保護を義務づけているものでありますし、直接には政府、自衛隊あるいは軍需産業など秘密を知る者の規制を対象にしておりますけれども、いずれメディアや一般国民を法律で規制する危険性を伴っている。実際に部外者からの不自然な働きかけへの対応要領の策定という動きだとか、あるいは一部で国会議員への規制の是非まで議論になっているというふうに承知しております。これは戦前の軍機保護法を忘れるわけにはいかない。GSOMIAは日本の軍事機密主義をさらに拡大強化して、米軍と自衛隊との一体化を進めて、米国とともに海外で戦争していく実態を覆い隠す役割を果たすものだと言わなければならないと私は思います。

 もう一点だけ、防衛省に端的に伺いたいんです。

 二国間の化学・生物・放射線・核(CBRN)防護作業部会の具体的記述も初めてだと思うんですが、この部会の設立はいつなのか。それから、従来は国内においての対処という防衛的な要素が強かったと思うんですが、今回の即応態勢及び相互運用性の改善は、国内外を問わずに日米が共同してこの問題で対処していくということも考えてのものなのかどうか、お答えをいただきたいと思います。

大古政府参考人 まず、この作業部会の設立時期でございますけれども、これについては、昨年の八月七日に第一回会合をいたしまして、そのときに実施要領を日米間で合意していますので、設立時期という意味では昨年の八月七日ということになります。

 それから、この作業部会につきましては、いわゆるCBRN兵器の除染、破棄、防護、被害対処、それから関連する問題につきまして、政策面、運用面、研究開発面から意見交換を行うものでございます。

 ただし、この作業部会につきましては、当然我が国の方としては、自衛隊につきましては、憲法及び法令に基づきまして、それから既存の基本的な政策の範囲内で業務を遂行いたしますので、そういう前提で考えているところでございます。

笠井委員 幾つか今伺ってまいりましたが、やはり新たに今度の2プラス2で盛り込まれている点に重大なポイントがあると思うんです。

 引き続きこの問題をただしていきたいと思いますが、私は、2プラス2が同盟の変革を掲げて、今回まさに日米同盟に重みと深みを加えるというふうにした新たな内容というのは、いずれもこの日米軍事同盟を侵略的に変質させて、日本と世界の平和を一層危険にして、アジアと諸国民の警戒心を高めるだけだというふうに思います。

 世界は今、大きく見れば、軍事同盟全体が解体の方向に向かっている。アジア、アフリカ、ラテンアメリカでも欧州でも平和の共同体が強まっているという状況でありまして、こうしたときに、米国につき従って、かけがえのない日米同盟は揺るぎない同盟として強化というふうな形で軍事優先をさらに強化するという方向は、まさにそういう方向に逆行するものであって、私はあえて大臣に申し上げておきたいんですが、日本の外交の力を弱くするものだと言わざるを得ないというふうに思っております。

 この点を指摘して、質問を終わります。

山口委員長 次に、照屋寛徳君。

照屋委員 社会民主党の照屋寛徳です。

 去る五月一日、ワシントンで日米安全保障協議委員会、いわゆる2プラス2が開催されました。2プラス2では、日米同盟とNATOを補完的関係と位置づけ、NATOとの広範な連携協力を打ち出したほか、米軍再編合意の着実な推進を再確認するなどに至ったようです。

 まず、麻生外務大臣に、今回の2プラス2の意義や課題及び成果に関する総括的な御所見を伺います。

麻生国務大臣 日米安全保障協議委員会、通称2プラス2というのは、今御指摘にありましたように、双方、防衛大臣また国防長官がかわっておった後で2プラス2というのは初めて、ゲーツ国防長官、久間防衛大臣を含めて四者で行われたのは今回が初めてということになろうかと存じます。

 そこでどのようなものが成果として、もしくは評価と言われると、少なくとも、今御指摘のありましたように、在日米軍の再編等々に関しましては、具体的に話を詰めていく話、またBMD、いわゆる迎撃ミサイルの防空システムの協力等々につきましては、意見を交換させていただき、共同発表の文書に載っておるとおりだと思っております。

 また、北朝鮮によるミサイルの発射、核実験、それから中国のいわゆる衛星破壊等々の話が、この一年間、前回の2プラス2から今日までの間に起きておりますので、そういったもののレビューというかおさらいをきちんとさせていただいた上で意見を交換させていただいております。

 その上で、朝鮮半島、台湾海峡、いろいろ、この北東アジアにおきましては、かなり不安定な状況というものがまだ残っておりますので、そういったものに関しまして、この地域において、アメリカの抑止に対するコミットメントというもの、また、来年に予定されております、空母のジョージ・ワシントンへの交代の円滑な実施等々、いろいろなことに関して日米間で確認をさせていただいたのが成果だと思っておりますので、総括としてはどうかと言われれば、そういったいろいろ言っております話に対して具体的な内容を詰めることができるようになったのが、私としては成果と申し上げてよろしいのではないかと思っております。

照屋委員 去る五月一日は、米軍再編の日米最終合意発表からちょうど一年の節目でありました。麻生外務大臣は、米軍再編に関するロードマップ発表から一年を振り返って、この間の日米合意の進捗状況、あるいは日米間の交渉の問題点、国内における関係自治体の反応を含めて、一年後の事態をどのように受けとめていらっしゃるか、尋ねます。

麻生国務大臣 照屋先生御指摘のありましたとおり、昨年の五月に、当時は額賀防衛庁長官、ラムズフェルド国防長官、ライス長官、私というのが前回だったと思いますが、それからちょうど一年たっておるということであります。間違いなく、おっしゃるとおり、ちょうど一年たっておると思います。

 どういったような成果ということが進展かと言われれば、少なくとも、先生の関係される沖縄で申し上げれば、普天間飛行場の代替施設のことに関して言えば、海域調査等々がスタートしたりしておるということも一つだと思います。

 それから、海兵隊のグアム移転に関しましては、米国側におけます統括部局の設置、環境影響評価手続の開始、それから日本側におけますJBIC、国際協力銀行に適切な権限を付与する法案の提出というのは、御存じのとおりであります。

 そして、本年三月のF15の訓練移転の開始というのもございましたし、私ども福岡県に、築城に移ってきたりしている部分もありますので、そういったのがございました。

 それから、来年九月までに日本に返還をされる横田空域の空域部門の特定につきましては昨年の十月に合意をしておりますのも、この一年間の間で言えることだと思っております。

 それから、アメリカ側の部隊運用の話につきましては、これはいろいろ移転を分散させます移転先の施設に関する技術的な検討をやっていく必要があるということで、引き続きこの点に関しましては緊密に努力をしていくということだろうと存じます。

 いずれにいたしましても、沖縄、岩国、地元に関してはいろいろ御意見があることを私ども認識をしておりますので、そういった意味では、抑止力を維持しつつ地元の負担を軽減するという、一見、二律背反するようなところもあるとは存じますけれども、こういった状況を達成するためには、地元の声を十分に反映しつつ、声に耳を傾けるというか、声を取り込みつつ、私どもとしては、地域の振興に全力を挙げていくということで再編を着実に進めていこうという考えでありまして、この一年間の成果と申し上げれば、今申し上げたようなところが成果として申し上げられるのではないかと存じております。

照屋委員 今、大臣の御答弁を聞いて、私の感想でいうと、一年前に合意した着実な実施を日米間で確認し、経過を報告し合った、こういう程度で、具体的な進展はなかったのかな、こう思わざるを得ません。

 ところで、北原防衛施設庁長官も2プラス2では防衛大臣に同行したと思いますが、今回の2プラス2において、いわゆる米軍再編で、嘉手納基地以南の六基地の全面一括返還との関係で、キャンプ瑞慶覧の返還部分は確定したのか、キャンプ瑞慶覧について日米間の調整がおくれているのは何が原因か、いつまでに確定する見通しなのか、そこら辺を詳細にお答えください。

北原政府参考人 照屋寛徳先生に御答弁を申し上げます。

 今先生御指摘の嘉手納以南六施設でございますが、これは昨年の五月一日承認されたロードマップでは、本年の三月までに統合のための詳細な計画を作成するようになっております。今現在、それはまだでき上がっておりません。

 また、こうした中で、先日行われました2プラス2におきまして、私ども日本側から、早期に統合のための詳細な計画を作成できるよう引き続き作業を進めていきたいといった趣旨の発言をいたしました。それに対しまして、米側もこれに同意をしたところでございます。

 そして、こうした中で発表された2プラス2の共同発表の中にも、次のような記述が入っております。すなわち、「閣僚は、統合のための詳細な計画に関する重要な進展を認識し、その完成に向けて引き続き緊密に協議するよう事務当局に指示した。」まず、このような記述が入っているところでございます。

 それで、先生御承知の、この嘉手納以南のキャンプ瑞慶覧を含む返還につきましては、同じく昨年の2プラス2で承認されたロードマップの中に、次のような記述もあるわけでございます。すなわち、「返還対象となる施設に所在する機能及び能力で、沖縄に残る部隊が必要とするすべてのものは、沖縄の中で移設される。これらの移設は、対象施設の返還前に実施される。」そのようにされているところでございまして、いずれにいたしましても、キャンプ瑞慶覧等を含めまして、私ども、沖縄に残す機能それから能力、さらには移設先などの検討も含めて、今、詳細な計画の作成に向けて鋭意協議をしているところでございます。

 先ほど申しましたように、今回の2プラス2でも、引き続き緊密に協議するよう事務当局に指示をされたところでございますので、できるだけ早くこの計画を取りまとめるように協議を加速してまいりたい、そのように考えております。

照屋委員 麻生外務大臣に尋ねます。

 イラクのマリキ首相が、去る五月四日、共同通信と会見した内容がマスコミで報道されました。それによると、イラクでの航空自衛隊の輸送支援活動について、需要は長く続かないとした上で、ことしじゅうにも日本の部隊は必要なくなると言明したようですが、大臣はマリキ首相発言の報道に接してどのような所感をお持ちでしょうか。

麻生国務大臣 所感を申し上げれば、物事が順調に進めば近い将来という希望を述べられたというのが、私の所感と言われればそういうぐあいにお答え申し上げます。

 こういう報道がありましたので、私どもは、イラク政府に、これはどういう意味かということを確認いたしております。マリキ首相に対して、正式に、イラク政府のムハンマド・サルマーン首相府官房長代理が、マリキ首相本人の発言の意図を直接確認したものだとして言ってきております。一、マリキ首相は、あくまで物事が順調に進めば近い将来にはイラクに多国籍軍がいる必要はなくなろうという希望を述べたにすぎない。二、航空自衛隊の活動継続を求めるとの従来のイラク政府の立場は何ら変わっておらず、不変である。三、イラク政府としては活動継続を可能とする法案が日本の国会で承認されることを願っているということで、官房長の代理からは、この報道によりまして日本・イラク間で誤解が生じてはいけないのでということで、先方から私どもの大使館の方に連絡があっておるということが背景であります。

 所感と言われましたので、先ほど申し上げました所感の背景を申し上げさせていただきました。

照屋委員 最後に大臣にお尋ねしたいのは、私は、アメリカのイラク開戦には反対の立場、それから日本の自衛隊派遣にも反対の立場でありますが、先ほどのイラクのマリキ首相発言との関連で、マリキ首相は航空自衛隊の輸送活動継続よりも日本の経験や能力、技術を生かした文民支援を望む意向を表明したようであるとの報道もありますが、日米同盟重視の日本の姿勢とイラク側の日本への期待との重大な食い違いと受けとめるべきではないのか、このことを最後に大臣に尋ねます。

麻生国務大臣 今、日本・イラク間で首脳レベル、それから外相レベル、それから外務省本省、それから在東京のイラク大使館等々、またバグダッドにあります日本大使館等々と日々打ち合わせをして、政策のすり合わせをよくしている、最もすり合わせをよくしているところの大使館の一つだと思います。したがいまして、そう意見が違っているという御指摘は当たらないと思っております。

 最近、私自身で直接話をしましたのが、マリキ首相、それから副大統領のハシミというのと、国民融和担当大臣をやっておりますハキームという人、これはいずれも日本に来日をいたしております。それから、四日の日にはエジプトのシャルムエルシェイクというサイナイ半島の一番先端等々において、イラクのジバリという外務大臣と、イラク支援周辺国拡大外相会議というのがありまして、それに出席したときにも一時間ぐらい話をしておりますけれども、このことで話をし合っておりますけれども、今申し上げましたように、私どもとイラク政府との間に意見の食い違いがあるというようなことは全くなかったと存じます。

照屋委員 終わります。

     ――――◇―――――

山口委員長 次に、新たな時代における経済上の連携に関する日本国とシンガポール共和国との間の協定を改正する議定書の締結について承認を求めるの件、戦略的な経済上の連携に関する日本国とチリ共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件及び経済上の連携に関する日本国とタイ王国との間の協定の締結について承認を求めるの件の各件を議題といたします。

 政府から順次趣旨の説明を聴取いたします。外務大臣麻生太郎君。

    ―――――――――――――

 新たな時代における経済上の連携に関する日本国とシンガポール共和国との間の協定を改正する議定書の締結について承認を求めるの件

 戦略的な経済上の連携に関する日本国とチリ共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件

 経済上の連携に関する日本国とタイ王国との間の協定の締結について承認を求めるの件

    〔本号(その二)に掲載〕

    ―――――――――――――

麻生国務大臣 ただいま議題となりました新たな時代における経済上の連携に関する日本国とシンガポール共和国との間の協定を改正する議定書の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明させていただきます。

 新たな時代における経済上の連携に関する日本国とシンガポール共和国との間の協定は、平成十四年十一月に発効いたしております。その後、平成十八年四月に、物品及びサービスの貿易のさらなる自由化及び円滑化を目指して、改正交渉を開始することが決定されました。

 交渉の結果、改正議定書案文について最終的合意を見るに至りましたので、平成十九年三月十九日に東京において、我が方安倍内閣総理大臣と先方リー首相との間で、この議定書の署名が行われた次第であります。

 この議定書は、現行の協定の内容を部分的に改め、我が国とシンガポールとの間で、物品及びサービスの貿易をさらに自由化及び円滑化するものであります。

 この議定書の締結により、両国経済が一段と活性化されることが期待されます。

 よって、ここに、この議定書について御承認を求める次第であります。

 次に、戦略的な経済上の連携に関する日本国とチリ共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明させていただきます。

 平成十八年二月以来、両国間で本協定の締結交渉を行ってきた結果、平成十九年三月二十七日に東京において、私と先方フォックスレイ外務大臣との間で、この協定の署名を行っております。

 この協定は、両国間において、物品、サービス及び資本の自由な移動を促進し、知的財産の保護を確保し、競争、ビジネス環境の整備等の分野での協力を強化するものであります。

 この協定の締結により、幅広い分野において、両国間の経済上の連携が強化されます。そのことを通じ、両国経済が一段と活性化され、また、両国関係全般が、より一層緊密化されることが期待されます。

 よって、ここに、この協定について御承認を求める次第であります。

 最後に、経済上の連携に関する日本国とタイ王国との間の協定の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明させていただきます。

 平成十六年二月以来、両国間で協定の締結交渉を行ってきた結果、平成十九年四月三日に東京において、我が方安倍内閣総理大臣と先方スラユット首相との間で、この協定の署名が行われた次第であります。

 この協定は、両国間において、物品及びサービスの貿易を自由化し、資本の自由な移動を促進するものでもあります。また、知的財産の保護を確保し、ビジネス環境の整備、人材育成、中小企業等の幅広い分野での協力を強化するものであります。

 この協定の締結により、幅広い分野において、両国間の経済上の連携が強化されます。そのことを通じ、両国経済が一段と活性化され、また、両国関係全般が、より一層緊密となることが期待されます。

 よって、ここに、この協定について御承認を求める次第であります。

 以上三件につき、何とぞ御審議の上、速やかに御承認いただきますようお願いを申し上げます。

山口委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、来る十一日金曜日午前九時二十分理事会、午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時二十九分散会


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