衆議院

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第11号 平成19年5月11日(金曜日)

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平成十九年五月十一日(金曜日)

    午前九時三十一分開議

 出席委員

   委員長 山口 泰明君

   理事 小野寺五典君 理事 嘉数 知賢君

   理事 三原 朝彦君 理事 やまぎわ大志郎君

   理事 山中あき子君 理事 長島 昭久君

   理事 山口  壯君 理事 丸谷 佳織君

      安次富 修君    愛知 和男君

      伊藤 公介君    宇野  治君

      小野 次郎君    河野 太郎君

      高村 正彦君    篠田 陽介君

      新藤 義孝君    鈴木 馨祐君

      松島みどり君    三ッ矢憲生君

      山内 康一君    笹木 竜三君

      細野 豪志君    前原 誠司君

      笠  浩史君    東  順治君

      笠井  亮君    照屋 寛徳君

    …………………………………

   外務大臣         麻生 太郎君

   外務副大臣        岩屋  毅君

   防衛副大臣        木村 隆秀君

   外務大臣政務官      松島みどり君

   政府参考人

   (内閣府沖縄振興局長)  清水  治君

   政府参考人

   (外務省大臣官房長)   塩尻孝二郎君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 深田 博史君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 猪俣 弘司君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 伊原 純一君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 水上 正史君

   政府参考人

   (外務省総合外交政策局軍縮不拡散・科学部長)   中根  猛君

   政府参考人

   (外務省北米局長)    西宮 伸一君

   政府参考人

   (外務省経済局長)    小田部陽一君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房総括審議官)         内藤 邦男君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房政策評価審議官)       中尾 昭弘君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房審議官)           笹谷 秀光君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房審議官)           佐久間 隆君

   政府参考人

   (農林水産省総合食料局次長)           佐藤 和彦君

   政府参考人

   (防衛省運用企画局長)  山崎信之郎君

   政府参考人

   (防衛施設庁長官)    北原 巖男君

   外務委員会専門員     前田 光政君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月十一日

 辞任         補欠選任

  猪口 邦子君     安次富 修君

  笠  浩史君     細野 豪志君

同日

 辞任         補欠選任

  安次富 修君     猪口 邦子君

  細野 豪志君     笠  浩史君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 新たな時代における経済上の連携に関する日本国とシンガポール共和国との間の協定を改正する議定書の締結について承認を求めるの件(条約第一七号)

 戦略的な経済上の連携に関する日本国とチリ共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第一八号)

 経済上の連携に関する日本国とタイ王国との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第一九号)


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     ――――◇―――――

山口委員長 これより会議を開きます。

 新たな時代における経済上の連携に関する日本国とシンガポール共和国との間の協定を改正する議定書の締結について承認を求めるの件、戦略的な経済上の連携に関する日本国とチリ共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件及び経済上の連携に関する日本国とタイ王国との間の協定の締結について承認を求めるの件の各件を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 各件審査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房長塩尻孝二郎君、大臣官房審議官深田博史君、大臣官房審議官猪俣弘司君、大臣官房参事官伊原純一君、大臣官房参事官水上正史君、総合外交政策局軍縮不拡散・科学部長中根猛君、北米局長西宮伸一君、経済局長小田部陽一君、内閣府沖縄振興局長清水治君、農林水産省大臣官房総括審議官内藤邦男君、大臣官房政策評価審議官中尾昭弘君、大臣官房審議官笹谷秀光君、大臣官房審議官佐久間隆君、総合食料局次長佐藤和彦君、防衛省運用企画局長山崎信之郎君、防衛施設庁長官北原巖男君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

山口委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

山口委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。河野太郎君。

河野(太)委員 自民党の河野太郎でございます。

 質問に入る前に、ちょっと委員長に一言、二言申し上げたいと思いますが、かつて私がこの委員会の理事をやっておりましたときに、もちろん、この委員会の所管大臣は外務大臣でございますが、外務大臣に対する質問通告がないときには、副大臣でも政務官でも、御出席いただければ結構ですということでございました。外務大臣もお忙しいでしょうからということで、今回は大臣でなくても結構でございますと私は申し上げたんですが、どうも何か最近は、所管の委員会だから大臣は質問通告があってもなくても出席をしなきゃいかぬということのようでございますが、少しそれは変なのではないかなと。質問通告があれば外務大臣はもちろん御出席をいただかなければならぬのでしょうけれども、質問通告がないときに、それでも大臣がいなきゃいかぬというのは少しおかしな話ではないか。かつてそんなことはなかったわけでございますので、一度その辺のことを理事会でしっかり御議論賜りたいと思います。

 それから、きょうの委員会がありますよということでございましたが、この三件をやりますというのが決まったのは、随分最近になって、確定をしましたという御連絡をいただきました。大体この三つですという話ではございましたが、本来、質問通告は四十八時間前というのが国会のルールのはずでございます。四十八時間前に質問通告をしようとするならば、何をテーマに委員会が開かれるのかというのは、そのさらにもっと前に決まっていなければならない、もっと前に確定をしていなければならないわけで、ぎりぎり四十八時間のところでこれだと言われて、さあ四十八時間前に質問通告をしろと言われても、それはできない相談でございますので、少し、その審議の内容、審議の日程、きちっきちっと、四十八時間前に質問通告ができるようにしていただきたいと思っております。

 今、世の中、特に納税者は非常に行政の無駄遣いに対して厳しい目で見ていられます。質問通告が直前になりますと、外務省の関係の方々は、質問が来るかどうかわからぬから全員徹夜で待っているみたいなことになるわけで、これは非常な無駄でございます。四十八時間前にきちっと通告ができれば、必要な人はその質問に対する回答をするし、必要ない人は帰ればいいということでございますので、行政の無駄を削減するという意味でも、質問通告の時間を四十八時間前というのをやはりきちっと守れるような体制を委員会の方もつくらぬと、行政だけの問題ではないというふうに思いますので、そのあたりの仕切りを委員長にしっかりお願いをしたいというふうに思います。

山口委員長 はい。

河野(太)委員 文句だけ申し上げた上で、質問に入りたいと思いますが、きょうは農水省にも御出席をいただいております。

 まず、今回の条約の中で、日本に入ってくるマンゴーの関税が撤廃をされることになります。今までマンゴーに三%の関税がかかっていたのが、関税が撤廃されるということになりますが、つい先日、宮崎県の東国原知事がマンゴーの宣伝を一生懸命やっておられました。

 国内産のマンゴーに対して今回のこの関税撤廃はどういう影響が出るか、まず農水省の方から御答弁いただきたいと思います。

佐久間政府参考人 マンゴーの関税撤廃の影響についてお尋ねでございます。

 国内で確かにマンゴーが扱われておるということでございますが、国内のマンゴーにつきましては、非常に高品質で、贈答用等のものが中心ということになりますし、関税の撤廃についての影響については非常に限られたものだというふうに考えております。

河野(太)委員 国内でつくられているマンゴーはアップルマンゴーで、今回の対象国になっている国々から入ってくるマンゴーはそれと違った小ぶりのものだ、つまり、マーケットが完全に分かれているので、今マンゴーの関税を撤廃しても影響がないということなんだろうと思いますが、実は、同じようなものはマンゴー以外にもございます。

 例えばサクランボ、日本でつくられている佐藤錦と外国から入ってくるアメリカンチェリーのようなものは、完全にマーケットが違うわけでございます。片やキリの箱に入っている、片やプラスチックのケースに入って、どさっとグラム幾らで売られている、そういうマーケットの違いがあるわけでございますが、マンゴーの関税はあっさりと撤廃されるに比べまして、サクランボは七年間で撤廃ということになっております。

 明らかにマーケットが違うものであるということでは変わらないのに、片や即時撤廃、片や七年間、この差はどこからくるのでしょうか。

佐久間政府参考人 日本・シンガポールEPA改定協定におきますサクランボ、いわゆる桜桃の取り扱いについてでございますが、御指摘のように、現行税率八・五%のものを七年間で段階的に関税撤廃を行うことといたしております。

 これは、桜桃につきましては、我が国におきまして、果樹農業振興特別措置法に基づきます政令指定品目となっておりまして、山形を初めといたしまして、果樹農業の振興を図るための我が国の重要品目であります。

 また、シンガポールとのEPA改定交渉におきまして、桜桃につきましては、特に先方から関心品目とされなかったということで、段階的撤廃といたしたところでございます。

 なお、シンガポール以外とのEPAにおきましても、桜桃につきましては段階的撤廃という形になってございます。

河野(太)委員 こっちは何とか品目に指定され、向こうの関心が特になかったから段階的だというような後ろ向きなことで本当にいいのかなと。明らかにマーケットが同じで日本の国内に影響が出るものを段階的に撤廃するというなら、それはそれで納得がいきますが、全く市場が別で影響が出ないものが、向こうの重要品目に指定されていない、向こうの関心品目に入っていない、だから段階的にやるというのは、いかにも日本の農水省は後ろ向きだ、そういうイメージを植えつけることになるのではないでしょうか。

 何で影響のないものを段階的にしなきゃいけないのか、そこのところをきちっと御説明いただきたいと思います。

笹谷政府参考人 先生御指摘のとおり、EPAの交渉におきましては、相手国との何回かのリクエストオファーの交換、それからそれぞれの生産事情、貿易事情、輸出関心などきめ細かく議論しながら定めていくわけでありまして、その際、今のサクランボの例のような扱いを我々としてはしたいというものについて御理解が得られた場合には、その後対応するということで、一律に何かするわけではなくて、いわば相手国との関係の中で調整をしてきているということが実態でございます。

河野(太)委員 例えば、今回、私が驚いたのは、日本で絶対つくっていないドリアンのようなものまで関税がかかっております。ドリアンの関税が五%だそうです。そのほかに、ランブータンとかマンゴスチンとか、到底日本でつくっていないようなものまで、低いとはいえ、関税が課せられております。一体全体、何のためにこんな関税をつくっているんでしょうか。

笹谷政府参考人 ドリアンの関税につきましては、そのものずばりは国内で生産がない場合もありますが、それとの果樹全体の競合関係など総合的に勘案いたしまして、現在、果樹の国内の需要につきましては、伸びが鈍化をしている、国民一人当たりの消費量が鈍化をしているという中で、果樹全体としての調整の中に考えているということでございます。

河野(太)委員 もう日本の農水省の政策のばかばかしさを露呈していると思います。ドリアンのようなものを入れて何か日本の果物に影響が出るとは到底思えません。

 今、日本の農業は、実は残念ながら農家の高齢化が非常に進んでおります。一生懸命、日本の国の周りに塀を建てておりますが、国内の農家、だんだん若手の方が農業に入ってこられなくて、平均年齢がだんだん高くなっている。その一方で、隣の中国の経済が成長するにしたがって、中国人の食べるものが変わってくれば、当然、外国から中国に対していろいろなものが輸出されることになります。安定供給ということを考えると、むしろ日本は、生産国ときちっとした関係を結んで、日本に安定的に食料品が入るようなことを考えなければならぬというふうに思いますが、農水省は、一体全体、そういうことは考えていないんでしょうか。

 農水省がこれまでやってきた農業政策が正しければ、本来なら、農業でお金もうけをしようと、もっと若者が胸張って農業に入ってくることにならなければいけないと思いますが、これまでの農水省の政策の結果、日本の農業は疲弊し、日本の農家は高齢化になり、しかも今、日本の食料の安定供給が危うくなってきている。その流れを変えるためにも、今、日本はFTAに打って出なければいかぬというところが多々あると思いますが、いつまでこういう後ろ向きな政策をやるんでしょうか。何年たてば、日本の農業は若者が胸張って入ってこれるような産業になるのか。あるいは、日本の食料品の安定供給を農水省はどう考えているんでしょうか。

内藤政府参考人 お答え申し上げます。

 我が国農業につきましては、御指摘のように、従事者の減少、高齢化、EPA交渉の進展を含む経済のグローバル化が進んでおります。そういう中におきまして、私どもとしましても、国民に安定的に食料を供給するというためには、まず農業の体質強化を進めなければいけないということが緊急の課題になっております。そのためには、構造改革を推進しまして、国際競争力を備えた農業経営の育成、確保ということが急務の課題となっております。

 このため、現在、政府といたしましては、これまですべての農家を対象としてきたものを改めまして、品目ごとの価格に着目して講じてきた対策を改めまして、担い手に対象を絞り、経営全体に着目して講じる品目横断的経営安定対策への転換を図っております。また、この対策の導入にあわせまして、米の生産調整支援対策の見直し、さらに、地域の共同活動によりまして農地、農業用水等の資源、環境保全向上を図る農地・水・環境保全向上対策の導入、こういった三本柱から成る政策改革を十九年度から一体的に実施しているところでございます。

 さらに、農林水産省といたしましては、残された大きな課題でございます農地政策につきましても、担い手への利用の集積を加速する、こういった観点から、制度、予算等全般にわたる政策改革の検討を進めているところでございます。施策の具体化を急いでまいりたいと考えております。

河野(太)委員 日本のFTAを妨げているのが農水省だというのは、国内、国外、もう明らかでございます。

 私の地元も農業がございますが、都市近郊農家の中には、FTAをやって米を自由に海外から入れさせよう、日本の米の値段より安い外国の米が入ってくれば、その浮いた分で、産地直送の、おいしくて、少し高いけれども安全な野菜、果物、そういったものを消費者がもっとたくさん買ってくれるのではないか、そういう期待をされている農家もございます。

 農水省は、これから日本の農業をどう考えるのか、あるいはFTAをどう考えるのかというところで、今までのような硬直的な考え方ではなく、もう少ししっかり前を向いた政策をやっていかなければならないな、これは自民党の中でも、そういうふうに切りかえていくところはしっかり切りかえていかなければならぬというふうに思います。

 さて、先日発表されました工程表の中で、今後二年間で十二のFTAという話がございます。今、外務省の中で、このFTAのための体制、一体何人の人数が割けるのか、その体制は諸外国のFTAをやっている体制と比べてどうなのかということを教えていただきたいと思います。

小田部政府参考人 我が国におきましてFTA、EPAに取り組む体制でございますけれども、官邸の主導のもと経済連携促進関係閣僚会議を開催されておりまして、外務省、当省が全体の調整役となっております。その枠組みの中で、財務省、農林水産省、経済産業省など関係するすべての省庁、日ごろから緊密に協議しつつ、一体となってEPA交渉に取り組んでいるわけでございます。

 したがいまして、外務省だけがやっているというわけではございませんが、外務省におきましては、産業界あるいは学界といったさまざまな分野における専門家、これらの方を任用しつつ、交渉の推進役を担っております経済局を中心に、国際法局あるいは地域局とともにEPA構築体制というのを構築しているところでございます。したがいまして、単に経済局の人数だけじゃなくて、外務省の相当程度多くの人数が本件にかかわっているということでございます。

 諸外国における体制でございますけれども、これは各国によって区々でございます。例えば、お隣の韓国におきましては、外交通商部の中にFTA推進団という専門部局を設けて、その推進団を中心に交渉をしているというふうに承知しているところでございます。

河野(太)委員 マンパワー的にいって、例えば日本と韓国を比べた場合、FTA推進のための体制に差があると今外務省は考えておられますか。

小田部政府参考人 よその国の体制を逐一コメントするのはいかがかと思いますけれども、例えば、韓国におきましては、委員御承知のように、先般締結されましたアメリカとのEPA、FTA交渉の際には、従来とは全く異なる陣容、人員を大幅に強化して取り組んだというふうに承知しております。

 したがって、韓国、我が国もそうでございますが、そのおのおのの時点でどういうふうな国とどういう交渉をやっているかによってある程度柔軟に対応しているということでございますので、なかなか一概に、韓国と日本のどちらがより陣容強化であるかというのは、申し上げることは難しいところでございます。

河野(太)委員 今後二年間で十二のFTAということに十分な体制が、今外務省の中で組まれておりますでしょうか。

小田部政府参考人 我々としては、残されているFTAを締結するという任務を担っているわけでございます。したがいまして、我々の、外務省全体の勢力の中で、最大限を尽くして取り組んでいくということでございます。

河野(太)委員 二年間で十二のFTAという目標を掲げながら、それをやるために十分なリソースがあるかどうか。それは、その中でやるんですというのは、かつての帝国陸軍のインパール作戦なんかと同じような、精神論でやれば何とかなるということでしかないと思うんですね。

 そういう目標を掲げるならば、一体全体、何人の人数が必要なのか、どれぐらいのリソースが必要なのか、きちっと見積もった上で、どこが足らないのか、どこは十分なのか、そういう判断がなければ、何事も精神論で終わってしまう。一体我々はあの帝国陸軍の失敗から何か学んだのかというと、どうもそうではないような気がいたします。

 目標を掲げるならば、それに向けてもう少し、少なくとも体制のように、相手のことはなかなかできないかもしれませんが、こちら側の体制についてはきちっと、できるところは組んでいく、足らないところは手当てをする、そうしたことをしっかりやっていただかないと、単なる目標、かけ声だけになってしまうのではないかと少し心配をしております。

 さて、今、日本とオーストラリアのFTAのいろいろな動きがございますが、例えば日本とオーストラリアがFTAを結ぶと、似たような状況にあるニュージーランドの経済には非常にネガティブな影響が出るということをニュージーランドは心配しているようでございます。

 これと同じようなことはほかの地域にも当然起こり得るわけで、例えば、今、日本と湾岸諸国GCCのFTAをやろうということで動いておりますが、日本とGCCのFTAを締結することになると、近隣諸国でFTAのないところ、例えばヨルダンのようなところに影響が当然マイナスに働くんだろうというふうに思っております。

 ただ、ヨルダンという国は、今の日本との関係を考えると、外務大臣も提唱されております平和と繁栄の回廊の相手先は、ヨルダンというのは非常に重要な国でございます。例えば、日本がGCCとFTAをやろうとするならば、中近東において、もちろん湾岸は我々のエネルギーの輸入先でありますから非常に経済的にも重要な国々でありますが、その周辺で、確かに石油は出ませんが、政治的に重要な国であるヨルダンのようなところも湾岸と同じように足並みをそろえてFTAをやる。あるいは、日本がパレスチナに対して支援をするというならば、パレスチナの製品をヨルダンに出して、それを湾岸に売ろうとする回廊計画でありますから、湾岸だけでなくて、日本に売れるものがあれば、日本は関税を撤廃してそれを受け入れるよというような姿勢があってもいいと思うんでございますが、GCCだけにこだわらず、もう少し広く中近東、FTAというものを考えるということがあってもいいんではないかと思いますが、いかがお考えでしょうか。

麻生国務大臣 おっしゃるのは大筋正しいと思っております。今まで伺った中で、最もきょうはさえておられる御意見が出てくるんで、感心して聞いていました。日によって違うのかどうかは知りませんけれども、とにかくえらいさえておられますなと思って、感心して拝聴していたんです。

 今マンパワーの話をされましたが、これはもう絶対量が不足していることは確かです。基本的には、例えばこの前やりましたメキシコとのときの協定書というか締約書は、一カ国で大体これぐらいの厚さになります。それが二カ国、三カ国と、スペイン語、英語、日本語と三つやります。小泉総理のときに、小泉総理が座っている席よりはるかに高くて、テレビに映らないから急遽つくりかえるほど書類が高く積まれるというほどの、いわゆるマンパワーを要する作業なものですから、我々としては、この期間だけ、短期任用の役人を雇用せいという法律をつくっていただいておりますので、あれを使わせていただいて、二年間、国際弁護士だけ、これだけやるというのを採用して、かなりその分を補ったんです。

 英語の部分は結構補いましたけれども、スペイン語になりますとなかなかこれまた難しいとか、いろいろなところもあって随分苦労しておりますけれども、おかげさまでああいうひな形が幾つかできましたので、近ごろは、このひな形を向こうに渡して、これで不満のところだけ持ってこいというような話を我々として向こうにすることをやって、向こうはこっちだけやっておりますが、こっちは幾つもやっていますので、そういった話をさせていただけるようになり始めたりして、結構いろいろ進み始めております。

 このGCCというのは、今おっしゃったように、農業産品等々もありませんし、石油等々の関係がありますので、ここは早目にやらないかぬ。これは前々から懸案でもありましたので、早目にやらせていただきます。

 今ヨルダンも、売るものはないけれども使うもの、いわゆるこの国の存在意義というのは、パレスチナとイスラエルの、この間の平和の回廊等々に非常に関係ある国だから、これは早いところやった方がいいんじゃないかというのは全くごもっともの御指摘だと思いますので、このGCCをまず最初にやらせていただきますけれども、これが終わり次第ヨルダンというのは当然のこととして考えるべき国だ、私もそう思います。

河野(太)委員 ありがとうございます。

 日本が本当にパレスチナの問題に突っ込んでいこうとするならば、やはりそのプレーヤーの中に日本と密接な関係をつくっていかぬといかぬと思いますが、もう既にイスラエルは大体アメリカがくっついているわけで、エジプトは、何かやろうとすると人口も多いので金はかかるんだろうと思います。ヨルダンは人口がそう多くないわけですから、むしろヨルダンに積極的に日本が打って出て、ヨルダンと日本の関係を緊密にすることによってパレスチナ問題での日本の発言権を確保するというようなことを、恐らく外務大臣もお考えで回廊計画というのを出されたんだろうと思います。そうしたことを私も全面的に支持していきたいと思っております。

 さて、この三つの協定の中で、特にタイとの協定の中で、一時騒がれましたのが、タイ向けの、あるいはタイの関税表の中に入っております有害廃棄物の税率が下がる、あるいは撤廃されることによって、日本からタイに有害廃棄物が出されるのではないかというような騒ぎがございました。そういうことはないと私は思っておりますが、そういうことが本当にないかどうか、外務省の方から少し丁寧に御説明を賜れればと思います。

小田部政府参考人 日本とタイのEPAにおきまして、個別の品目の取り扱いにつき規定する譲許表というのがございますが、その譲許表は通関上の分類に基づいて作成されております。

 したがいまして、どの品目が廃棄物に該当するか該当しないか一律に特定することは極めて困難であるという次第がございますので、このような状況において、関連の品目を全部除外するということになると、廃棄物に該当しない物品までも除外されることになってしまう、そういう背景がございます。したがいまして、譲許表におきましては、廃棄物についても関税を撤廃することとしているところでございます。

 しかしながら、これにより有害廃棄物の輸出入を促進する意図は毛頭ございません。本協定におきましては、日・タイ各国による有害廃棄物の規制を妨げるものではないという趣旨を明確にしているところでございます。したがいまして、実際上も、バーゼル条約に基づく有害物質の輸出入規制は従来どおり実施されることになっておりますし、この協定によりまして有害物質の輸出入が促進されることは全くございません。

河野(太)委員 非常にわかりにくい説明だったんですが、タイ向けにその有害廃棄物の税率が撤廃された、あるいは税率が下げられたのか、あるいは、日本がやっているほかの国とのFTAの中でも同じ品目の税率が撤廃されている、あるいは税率が引き下げられている、そういうことなんでしょうか。それとも、タイとのFTAの場合にだけ特定の品目の関税が撤廃された、あるいは税率が引き下げられているんでしょうか。

小田部政府参考人 有害廃棄物の取り扱いにかかわります規定、具体的には譲許表上の取り扱いでございますが、本件は日・タイのEPAだけに限ることではございません。ほかのEPA、FTAについても同様の扱いということにしております。

河野(太)委員 私の理解は、関税表の中で品目ごとに何%か撤廃をしなければいかぬ、あるいは税率を下げないかぬということから、いろいろなものの税率を下げた。その中には、例えば水銀とか木くずとか、有害廃棄物になり得るようなものも関税表の中に入っていて、そういうものの関税が撤廃され、あるいは税率が引き下げられているが、それは別に日本とタイの場合に限るのではなくて、日本がやっているどこの国とのFTAでも、そういうものの関税が撤廃され、あるいは税率が引き下げられているが、少なくともこのFTAよりもバーゼル条約の方が優先するので、そういうものが当該の相手国に輸出されることはない、そういう理解でよろしいんでしょうか。

小田部政府参考人 委員が言われたとおりでございます。

河野(太)委員 わかりました。こういうことが、今後、相手国に誤解を与えないような説明をすることも必要だと思いますし、我々も、そういう際にはきちっと相手国に説明をしてまいりたいというふうに思っております。

 今、世界じゅうの国がFTAをやろうという動きになっているときに、何となく日本だけがどこともネガティブだ。GCCのように、農業をやってないところとは何となくやれそうだけれども、農業を相手がやっていると何となく日本とのFTAができないような雰囲気が今できつつありますが、そういうことではやはりいかぬのだろうというふうに思っております。

 日本がきちっとこの世界の中で、波におくれることなく、二十一世紀、新しい発展ができるために、FTAというのはきちっと使えば非常に大事な道具だと思っております。ぜひ、政府内でそういう意思統一をしっかりやった上で、まず二年間で十二のFTAという目標が達成できるよう、最大限の御努力をいただきたいと思います。

 質問を終わります。ありがとうございました。

山口委員長 先ほど冒頭に河野委員から二点ほど御提言がありましたけれども、理事の皆さんとも協議しながら活発な委員会としたいので、これからもよろしく御提言をお願いいたします。

 次に、笹木竜三君。

笹木委員 民主党の笹木竜三です。

 質問を始めさせていただきます。

 きょうは、この委員会で、日本とシンガポール、日本とチリ、日本とタイでの経済連携協定のことについての質問ということで、その点についての質問をさせていただきます。

 最初に、大臣に基本的な認識をお伺いしたいんですが、こういう経済連携協定を結んでいく、今回の場合にはこの三つの国とですが、この意義についてはどういうものであると認識をされておられますか。経済連携協定を結んでいくということの意義ですね。

麻生国務大臣 御存じのように、EPAとかFTAとか今いろいろありますけれども、基本的には、従来の、物品の関税を削減するとか撤廃するとか、それからサービスの協定等々、サービス、貿易の自由化だけでなくて、投資とか、それから知的財産権の保護とか、競争、それから税関の手続、加えて人の移動等々、幅の広い分野でこういったものが自由化されるということになっていっている。いわゆるそれがEPA、エコノミックパートナーシップと称するものですけれども。

 タイとは、これは日本の場合は世界第七位の貿易パートナーということになっておりますので、そういった意味では、世界百九十二カ国、貿易だけ見れば上から七番目ぐらいに重要な国ということになろうと存じます。そういった国ときちんとしたEPAみたいなものができますと、かなり両方で協調、調和がとれた形で、片っ方だけというような話ではなくなりますので、どっちが得した、損したという話じゃなくなって、両方で一緒になってやっていくというようなことは、極めて意義としては大きなものになろうと思います。

 日本というのは、このアジアの中において、日本とASEANとか、中でもタイというのはかなり大きな経済力を持っている国でもありますので、そういった意味をもちましても、この交渉が妥結できるということは極めて大きな経済的な意義。人の交流というのが加えて入っておりまして、従来のFTAとは、さらに深いものになるであろうと思って期待をいたしております。

    〔委員長退席、やまぎわ委員長代理着席〕

笹木委員 お話ありましたように、物の貿易だけじゃなくて、サービスとか投資とか、あるいは人の交流ということでも非常に意義が大きいんだというお話で、そのとおりだと思います。

 それで、ことしの五月、きょうの三カ国とじゃなくてASEAN全体とで、その経済連携構想について大枠で合意をしたというように報道をされています。麻生大臣も、このASEAN全体とも経済連携協定、これを積極的に速いスピードで進めていくべきだというふうにお考えになっておられるんでしょうか。

麻生国務大臣 ASEANの中にも経済力にかなり差がございます。CLMVとよく言われる、カンボジア、ラオス、ミャンマー、ベトナム、四つの国がちょっと経済力としては格差があるんだと思います。

 そういった意味で、私どもとしては、こういった国々とも早くやるためにということで、基本的には早くやった方がいいと私も思いますが、かなりの差がありますので、例えばカンボジアというところを例に引きますと、ここは、御存じのように、戦争やらクメールルージュの話やらでくちゃくちゃになった経緯もあります。ここには今、民法、商法、民事訴訟法等々が余り完備されているとは言いがたいところに日本の企業が出ていくというのは、司法やら何やらの面から見ても、かなりこちらの方が危険負担を伴いますので、法律を整備してもらいますということで、法務省からだったかと記憶しますが、女性のいわゆる司法官を今三、四人、向こうにずっと派遣して、向こうの人たちと一緒に民法、民事訴訟法等々をつくっておるというのをやっておる。これができ上がりますと、日本のほぼ民法と似たようなものができ上がりますと、こちらも安心して商売がしやすくなる。そういうような環境づくりというのに今精力を注いだりしておりますので、基本的には日本とASEANの協定ができ上がるような準備はぜひやりたいものだと思っております。

笹木委員 おっしゃることもよくわかりました。

 ここで、よく言われることなんですが、これはEPA、経済連携協定の交渉じゃありませんが、例えば中国とか韓国は既にASEANと、これは物の貿易、FTAではありますが、日本に比べて非常に進んでいると言われています。例えば協定ということでいっても、中国、ASEANでの協定というのは、今後五年以内に詰めようという話になっているというふうに聞きます。

 日本の場合、この間、大枠合意したとはいいますけれども、関税撤廃までの期限を十年にしていると言われています。早ければいいというものだけでもないんでしょうが、しかし、よく言われるように非常にスピードが遅い。中国とか韓国に比べても、日本はこの取り組みが非常に遅いんじゃないか。先ほどの質問で、そうしたスタッフの数とかの体制があるというお話もあったようですが、こういうことについてはどういうふうに認識をされていますか。日本は日本でいいんだ、こちらのペースでやっているんだから関係ない、そういうふうに思われるのか。いや、今までよりももっとスピードアップを図るべきだと思っておられるのか。そのことについて御意見を伺いたいと思います。

麻生国務大臣 これは笹木先生、基本的には、工程表というのがございますので、これに従いまして優先順位をつけてやっていきたいと思っております。

 ただ、中国とASEANの場合、こっちの持っております条件、技術の面からいきますと、かなりこちらの方が力が強いということになりますので、向こう側としては、それがいきなり自由化されたらとてもたまらぬというところもあります。基礎力という産業用語ですけれども、経済の基礎力にかなり差があるところが事を難しくしている。これは農業だけに限らず、そっちの部分もちょっといろいろありますので、中国みたいに、ほぼ同じじゃないか、規模の大きさだけじゃないかというのと少し違うというのが、我々の持っている考え方です。

 ただ、これは向こうにとってはともかく、こちら側にとっては結構優位な話じゃないんですかということを言っても、今度は向こう側が、えっという感じが少しあることも確かでもありましたので、なかなか一概に比較はできないと思います。

 ただ、この数年間、やはりASEAN等々の経済力というものはかなり伸びてきた、私自身はそう思っております。一時期、ASEANの中でフィリピンというのは、他のASEAN六カ国と比べましても少し落ちているかなという感じがしておりましたけれども、フィリピンはこの数年、間違いなく経済力を上げてきておりますので、そういった意味では、状況としては、私どもとして話がしやすくなりつつある環境が出てきていると私どもは期待をいたしております。

笹木委員 もう一点だけ、最初に確認をしたいんですが、FTAであったりEPAであったり経済連携協定であったり、こういうことについては、行く行くはASEAN全体と、これは大枠では合意がされたんでしょう。そして、インドとかオーストラリアとかニュージーランドも、そして日中韓もとか、いろいろな話があります。こういった十六カ国で東アジアの経済自由地帯をつくろうとか、いろいろな議論もあります。

 大臣も、日本は資源がほとんどなくて貿易で食っていく国であるから、基本的にはこの大枠で日本は積極的に進めていくべきだと思っておられるのか。あるいは、いや、そう簡単じゃないよと。実務面でのいろいろな問題は今おいておいて結構なんですが、例えば、中国との問題は今どうするんだ、そんな簡単か、いろいろな議論があるかもしれません。そこら辺についての御認識も確認させてください。

麻生国務大臣 平成十六年の十二月になろうと思いますが、これは東アジアにおきますEAS、東アジア共同体というものにおきまして、経済連携促進関係閣僚会議というのが開かれておりますが、ここで基本方針を決めておって、EPAは東アジア共同体の構築を促す等々のことをここで言っております。

 そういった、まずはということで第一回目をやらせていただきましたときには、もうこれは正直、けんけんがくがくいろいろありましたけれども、考えてみれば、EUが初めて俎上に上った、ECと言われたあのころ、フランスとドイツが一緒になるということを想像した人は世界じゅうにいないわけですから、それが今日できるようになったではないか。だから、そういった意味では、これは希望は持たねばならぬ。

 確かに、こっちはキリスト教でもないし、かつてのシャルルマーニュ大帝みたいな、ああいった歴史もないし、そういった意味では、文化、言語、いろいろ違うものが大きいけれども、これは夢を捨てる話ではないのではないかということで、インド等々を含めまして、こういった大きなものをやるということは、私は、将来の夢としてきっちりおなかに持った上で事を進めるべきものだと考えております。

笹木委員 将来の夢というお言葉があったんですが、夢という程度のものなのか、もう一回確認をしたいんです。

 あわせて、ちょっとこのこともお聞きしたいんですが、中国とは、例えば領土の問題がある、東シナ海の問題がある、あるいは将来シーレーンの問題で、日本にとってのシーレーンの安全の問題があるかもしれない。こういう政治的な問題も当然あります。例えば、自由貿易あるいは経済自由貿易地帯をつくっていく、そうした構想を今よりも進めていくことが、ゼロか一〇〇か、マルかバツかとは言えませんが、今言った領土の問題であったり、あるいはシーレーンの安全上の問題であったり、その他政治的な、中国との問題はいろいろありますが、それにとってプラスかマイナスか、中期的、長期的に見て。どういうふうに認識されていますか。

麻生国務大臣 今、その中で夢と申し上げております大きな理由の一つは、これはやはり中国というものを考えておかねばならぬと思います。

 中国の場合は、これは何といっても、今海賊版等々知的財産権保有の話になりますと、この種のEPAの話は、もうそこで話が全く進まない。やりますといっても、取り締まれる、履行するだけの、やる気はあってもできないというような状況というのを踏まえて、いきなりEPAとやったら、多分、こちらは海賊版で全部やられてということになりかねぬというのがありますので、これは知的な物を持っておるところは、もうとんでもないと。これは多分、世界じゅう似たようなものを抱えていると存じますので、そういった意味では、これはFTAと違って、WTO上のきちんとした義務を履行してくださいというところから今スタートをしなきゃいかぬところだと思っております。

 ただ、基本的には、考えてみれば、ECが始まったときに、少なくともソ連邦がなくなるということを予想した人は一人もおりませんから、そういった意味では、十年先の話は全く予想ができないと思っておきませんと。七九年にアフガニスタンにソ連が侵攻したときに、八九年にソ連がなくなるということを予想した人は世界じゅうおりませんので。

 そういった意味では、何がどうなるかということに関しましては、私は安易に、もうこれは先はないという話をよくみんなされますけれども、そう捨てたものでもないんであって、そこでちょっと希望とか夢とかを持っておかないかぬと言うと、夢程度の話かという御指摘もありましたけれども、そういった意味での夢と申し上げているのであって、こういったものはきちんと履行してもらえるということになりますれば、話は進んでいくんだと思っております。

笹木委員 しつこいようなんですが、先ほど一番最初にお話がありました、例えばASEANの国とのEPAの場合でも、国によっては法律的な足並みをそろえることが必要な国もある、実務上でいろいろ難しい問題があるというお話も今ありました。

 それはそれでわかるんですが、ちょっと分野は違いますが、例えば海外赴任者の年金の掛金の二重払いの問題、これをなくしていく。もうこれは随分前ですよね、なくしていこうというふうに決めたのは。しかし、非常に遅くて、ことしもまたさらに何カ国か、それをようやくクリアできたというお話がありますが、実務的に非常に時間がかかっている。

 そういう実務面での問題はいろいろあると思いますが、そうじゃなくて最後にもう一回確認したいのは、中国との関係でいいますと、政治的な問題はいろいろある。しかし、さっき言った、全体的には日本としては、貿易立国なんだし、経済自由地域みたいなものを東アジアの中でつくっていく基本的な方向性をより一層目指すのか。今夢と言われましたが、日本は、技術力でも貿易の輸出の実績でもまだまだ余裕があるから、そんなに焦ることもないんだよ、そうしたところが本当のところなのか。この御認識をもう一回確認させていただきたいんです。

麻生国務大臣 確かに、人口でいえば約十倍ぐらいになりますか、それが五兆何千億に乗っていきますと、今GDPで四対一か三・五対一ぐらいになりましょうかね、あっちの統計の数字は余りそんな正確じゃありませんものですから、ようわからぬところもありますが、大体四対一とかそんなものだと思います。確かにそういったことになってきている。昔は、もう全くそんな比較にならないぐらいの差だったものが、この十数年の間にわあっと経済が伸びてきて、伸び率からいきますとかなりなものになってきておると思っております。

 それを脅威と言われる方は確かにいらっしゃいますけれども、今までアジアの中で日本の経済力だけが突出しておりましたから、それに比べれば、そういった競争相手が出てきたのは、これは日本にとっては甚だ好機なんだというように考えないと経済というのはやれないものだ、私はそう思っております。

 したがって、今言われましたように、こういったものは、きちんとした基本的なところの約束が履行されるのであれば、私どもとしては、これは日本側にとっていい機会が来ていると考えて、きちんとした方向でまとめるのが双方の国益に資するものだ、私自身はそう思っております。

笹木委員 わかりました。

 それで、まずはタイのことについてお聞きします。

 これは具体的なことですので政府委員の方でも全然構いませんが、まずタイとの関係で、条件を満たせば調理師も日本に入れていくことをするんだ、世界の台所を目指すタイとの関係で日本もいろいろな協力をやっていく、あるいは貢献もやっていくということですが、具体的な計画をお聞かせいただけますでしょうか。

小田部政府参考人 タイとの間のEPAにおきましては、人の移動というところも含めているところでございます。その中で、今委員から御指摘がございましたタイの調理人についても規定されているところでございます。

 具体的には、現行制度のもとでも、タイの調理人が全く日本に入れないということではございません。しかし、今回EPAの過程におきましてタイと協議いたしましたことは、それらタイの調理人の日本入国にかかわる規制というのを緩和するということをタイと話した、そういう経緯がある話でございます。

笹木委員 タイの食品を日本に入れていくに当たってのマーケティングとか、そうしたことの指導もする、そういうこともあるんでしょうか。

小田部政府参考人 日本がタイを初めといたしますASEAN各国と結んでおりますEPAにおきましては、単なる貿易のFTAとは異なりまして、協力という章を設けているところでございます。

 したがいまして、こういうEPAが発効した後、具体的な協力のあり方というのを個々のケースごとに個々の国と協議し、検討し、決めていくということになるわけでございます。

笹木委員 個人的な話になりますが、私は半年ぐらいタイの田舎をずっと回ってきた時期がありまして、タイ料理は大好きなんですが、それで今回、タイが世界の台所、そういう目標を持っている、それに対していろいろな連携をやっていくことも大賛成なんです。

 これはタイだからお聞きするんじゃないんですが、アメリカだってBSEの問題があるわけですから、お聞きするんですが、そうした食についての交流をこれからどんどん盛んにしていくということで、その安全性について、例えば、これからどんどんタイの食品も入れていく、あるいはそうした調理師も入れていく、そして、いろいろ日本に入ってくるについての指導とか、あるいは交流もしていくということですが、タイ国内でとれている食品について、あるいはタイから入ってくる食品の安全性についてどういうようなことを考えておられますか。あるいはトレーサビリティーについて、BSEの場合ですと、日本はアメリカに対して具体的な注文も出していかざるを得なくなったわけですが、そうしたことも含めていろいろ今検討はされているのかどうか、その状況を説明いただきたいと思います。

笹谷政府参考人 先生御指摘のとおり、食品の輸入に関しましても、EPAにおきましてはいろいろ幅広く協力関係を構築しております。

 食品の安全につきましても、両国の食の安全や安心の寄与に資するという観点から、市場アクセスの改善のみならず農林水産業の協力の一環として、例えば、日・タイ両国が食品安全や動植物検疫などについても協力関係を構築できるような仕組みなども盛り込んでいるところでございます。そういう仕組みを通じまして、安全な食料の行き来について構築してまいりたいと考えております。

笹木委員 もう一回確認しますが、これからこういう経済連携協定とかFTAとかを進めていくとなると、いろいろな食品も入ってくるということで、日本の方から、今、例えばマーケティングとかあるいは輸入についての交流とか、そうしたこともやっていく可能性が高い、調理人の交流もこれから可能性が高いということであれば、むしろこちらからいろいろな提案をやって、世界の台所を目指すタイであればこうしたトレーサビリティー体制も必要なんだとか、そうしたことも含めての交流とか、まあ指導と言ってはおこがましいですが、そうしたことも今後必要になってくるんじゃないかと思うんですが、その点についてはいかがでしょうか。何か具体的な取り組みというのは考えておられますか。

小田部政府参考人 日・タイの間におきましては、今次EPA締結に先立ちましても種々の分野での協力というのを行ってきているところでございます。その協力の中におきましては、我が方のJICA専門家を通ずる技術指導等々をやっているところでございます。

 したがいまして、我々といたしましては、今回この日・タイEPAが締結されることを機といたしまして、このような日・タイ間の協力というのを先生御指摘の分野を含め取り進めてまいりたいというふうに思っているところでございます。

笹木委員 大臣でも副大臣でも結構ですが、こういう食品とかが入ってくるのがこれからさらにふえてくる。日本国内でのトレーサビリティー、これも非常に大変というか、実務的にはすごい御苦労があると思うんですが、しかし、これから食料をどんどん外国に輸出していこうという国に対して、日本が日本の国内でのトレーサビリティーのいろいろな知恵とか経験を伝えていく、これも非常に大事なことだと思いますが、そうしたことに今後さらに積極的に取り組んでいかれるつもりがあるかどうか、それだけ最後に確認させてください。

麻生国務大臣 もう笹木先生御存じのように、今から十年前に、すしをこれだけフランス人が、アメリカ人が食うということを予想した人はおらぬと思いますね。私ら学生のころは、おまえら魚を生で食うのかと、大体もうほとんど野蛮人みたいな言い方をされて、甚だ不愉快な思いをよくさせられたんですが、最近はもうみんな、フランス人が日本に来て、すしはやはりシャリがうまいと言うものですから、僕はシャコの間違いだと思って話したらなかなか通じないんで、シャリというのは飯のことだというのがわかって、フランス語っぽい音がするものですから、何となくそういうぐあい、それぐらいになった。

 ところが、フランスの方から、フランスのパリの町において昔日本料理屋なんというのは数十店も、数えるほどしかなかったが、今はとても数えられぬ、しかし、その中にとても怪しげなものがいっぱいあるが、あれは本当に日本の飯かというのを我々は聞かれたわけです。それは調べようがないから、そんなものはおれたちの知ったことかといった話をしたら、文化に対する責任に対して疑問がある、こう話が来たのが、例のミシュランみたいなものを、ランクづけをちゃんとやれとかいう話。あれは向こうからもともと来たんですが、日本の農林省が出てきてやると、おまえらそれは国家統制かみたいな話にすぐまたなりましたのですが、あれはもともとは向こうから来たというのが始まりだったんです。

 しかし、現実問題として、それを賄うだけの人が、料理人の数がそんなにあるかと言われると、これは日本人でなければ日本料理ができないなんてことは絶対ないのであって、そういった意味では、いろいろな人が日本に来られて、そういった人たちに対して、日本の包丁だ、技術だ、魚の選び方だ何だかんだというのは、私はそんなに業界のルールとか修業の年数とかいうのに詳しいわけじゃありませんけれども、そういったものを、そこそこきちんとした人に日本でトレーニングして、その人たちが日本料理人として出ていく。日本料理人の協会のあれでもルールをつくり、ちゃんと日本で試験を受けた人が、タイ人であろうと何人であろうと出ていくというのは、私は基本的には間違っていない方向だと考えております。

笹木委員 ぜひ、そういうトレーサビリティーの確立についても日本の方からいろいろな交流をして、検討をいただきたいと思います。

 それと、チリについてお伺いをしたいんですが、FTA、EPAあるいは経済自由地域とかそういう話になるとアジアでという話が結構多いんですが、チリというのは資源の面でという要素が大きいんでしょうが、銅の問題について。大体、今現状、チリから製錬前の鉱石の状態で入ってくる量、あるいは製錬されて入ってくる量、あるいは日本の企業が向こうに投資をして、向こうで日本の企業が製錬をして日本に入れている量、そうした全体的な銅についてのチリと日本の関係について御説明いただけますか。

水上政府参考人 大まかな点で申し上げますと、日本の輸入の銅の約半分がチリから入っているというのが現状でございます。

笹木委員 それで、製錬をされた銅として入ってくるのはどのぐらいが入っていて、銅の鉱石として入ってくるのはどのぐらいの量なのかについてもちょっと教えてください。

水上政府参考人 ほとんどが製錬銅という形で入っております。

笹木委員 製錬銅として入ってくるものの中で、日本の企業がチリに進出して、そしてその状態で入ってくるのがどのぐらいなんですか。

水上政府参考人 日本の企業が現地で製錬の活動を行っております割合の数字は今手持ちにありませんので、また追ってお答えさせていただきたいと思います。

笹木委員 どうして聞きたいかというと、実はきのうからやりとりしてようやくわかったんですが、実態としては、製錬銅として入ってきているのは四・八%しかないそうですよね。ですから、ほとんどは鉱石として入ってきている。その鉱石として入ってきている量が輸入で七十万トンらしいんです、時間がかかってようやくわかったんですが。その鉱石として入っている七十万トンのうち九〇%は日本の企業が、三菱マテリアルだとか日本の企業がチリで鉱山を持って、製錬しない状態で、鉱石のまま入れている、これが九割らしいです。ですから、七十万トンのうち六十三万トンは、チリの国内における日本の企業の鉱山から日本に鉱石として入っている。チリの国内で製錬された製錬銅として入ってきているのは非常に少ないということです。

 ということは、結局、製錬は国内でしているのがほとんどだということですよね、現状は、このチリの銅について。製錬はチリの国内でやったのを入れているんじゃなくて、鉱石も日本の企業が向こうの鉱山で経営しているものから入ってきているのが九割。入ってきたものも、日本の国内で製錬しているのがほとんどということらしいです。

 ここでお伺いしたいのは、これからEPAを結んでいくと、銅の製錬業というのは日本の国内から、結局どうなるんでしょうね。基本的には、やはり人件費が安いとかいろいろな諸経費が安いということでチリに行って、製錬そのものもチリでやっていくということが当然ふえてくるということですよね。確認させてください。

麻生国務大臣 基本的にはそういうことになると思います。

 笹木先生、これはいろいろ例がございまして、御関心かと思いますが、日本という国はやたらサケという魚を食うんです。今世界に出しておりますサケは、ノルウェーとチリでほぼ八割から九割ぐらいは持っておるわけです。ところが、南半球にサケなんという魚はいなかったわけです。あれは日本が持ち込んで、日本が養殖したわけです。

 ところが、あれは回遊して戻ってくるはずだったんですが、南半球じゃ戻ってこなかったわけです、どこかでいなくなって。北回りか南回りか、ちょっとそこのところのあれはよく知らないんですが。そこで、日本はほうったわけです、できないと。帰ってくるのは一割とか二割しか帰ってこないからできないと言ったんですが、チリは全然違いまして、逃げないように海の中に物すごくでかい囲いをやりまして、日本じゃそんなことは考えられませんが、囲いをつくったものだから、逃げられないから戻ってきちゃうわけです。

 それで、壊れた話がまたもとへ戻って、始まったんですが、今度はサケが全部白身になっちゃうんですよ、南半球だと。白いサケというのは、これは全然売れませんで、そこでまた投げたんですが、今度は日本が出てきて、着色したわけです。食い物によって、えさを変えたらサケが赤くなったわけです。それでまた売れるようになって、世界の今半分ぐらい、半分はオーバーですけれども四〇%ぐらいを押さえるまでになった。これはもう漁業関係の人の話を聞くと、本当におもしろい話が幾らでも出てくるんです。

 こういうことが僕は、チリと日本の間でこうやった結果、物すごくチリと日本の漁業関係の人の、現場で両方とも苦労し合った人の話というのはなかなか、私どもが聞いたら、ううんというような話がいっぱいあるんです。

 ああいう現場の話を聞いていきますと、日本人というのは現場の人と一緒に働くということをさせるところがやはり最もすぐれているんじゃないのかなと思いますので、今の製錬の話も、最終的にとは言わず、遠からず、今言われたような方向になってくるんじゃないかなという感じはいたします。

笹木委員 よくわかりました。

 そういうことだと思うんですが、そこでちょっと心配するのは、例えば環境基準はどうなんですか。製錬における環境基準ですよね。大昔でいうと、日本国内でも足尾銅山の問題とかありましたが、そんなことはもう今はないと思いますが、しかし、それにしても、チリ国内での環境基準と日本国内での環境基準、やはり差はあるんじゃないですか。

水上政府参考人 今回の交渉におきまして、チリにまず環境問題、特に銅の関係で高い関心があるということは我々十分承知しておりまして、議論も行われております。

 そういう意味で、事前の共同研究でもそういう話が出ましたし、また、向こう側との話し合いで、最後に麻生大臣と向こうの外務大臣が署名をしていただいたときに、共同声明というのを出しておりますが、それの中でも、改めて、環境の問題について両国の高い関心をきちんと払って、この協定を運営していきたいということを申し上げていることで明らかなとおり、まさに環境の問題そのものについて、この協定をきちんと運営していきたい気持ちでやっております。

 以上です。

笹木委員 事前にやりとりしても余りはっきりしないものですから、結局これ以上の質問ができないんですが、さらにもっと調べたいと思いますが、ちょっとここら辺は正確に把握してくださいね。もし、ずれがあるとしたら、ちょっとギャップがあるとしたら、何か向こうで、日本の企業がどんどん製錬する量が多くなったけれども、日本国内でやったときよりかなり悪いような状態でやっていて問題を起こす、これでは困るので、そこはしっかり調べてください。

 資源という点で、チリは非常に重視をしてやったということですが、この連休中に総理大臣も中東に行って、そしてGCCの諸国といろいろなことを話をされてきたわけですが、資源の面でこういう動きもあるんでしょうが、細かいことはお聞きしませんが、一つだけ。

 ちょっと、いろいろ資料を見ていてびっくりしたのは、中東は日本にとって非常に大事な国だ、石油を非常に依存している地域だから大事な国だ、イラクにおいて自衛隊を派遣している一つの理由にもなっていると。それだけ大事な地域、国々であるにもかかわらず、これはちょっと経済連携協定とは話が外れますが、例えば留学生の数ですよね。アジアの幾つかの国や東南アジアの幾つかの国に比べても、日本が中東から、留学生交流という面では、日本に入れているという面で非常にお粗末な状況だと聞きます。

 これは細かいことはいいですが、自衛隊を派遣する理由の一つにもなっている、非常に資源を依存している大事な国だと。交流も当然非常に大事な、経済交流も人的交流もそれなりに非常に大事なはずですが、こういう非常におくれている面があることについて、大臣あるいは副大臣、どういうふうに認識をされておりますか。

麻生国務大臣 やはり笹木先生、基本的には、日本のこの種の話は皆、要求ベースにこたえるというペースがもう大体の対応なんです。言ってきたらやりますという感じなんだと思うんですね。

 したがって、アジアからの要望はすごく多かったものですから、そちらの方に、千人なら千人の枠だと、もう楽に千人を超えますから、そちらの方にずっといくというので、こちらの方から戦略的な概念を持って中東に何人、中東もこういうところに何人というような枠を持って、そういった戦略を持って当てはめてどうのという話をしたということは余りないと私は理解をしておりますので、今御指摘の点は踏まえて、今後対応すべきものだと考えております。

笹木委員 今まで余り戦略的にやってこなかった、これからそういうことも含めて考えていくということで、ぜひやっていただきたいと思いますが、あわせて、その戦略的にというお話です。

 シンガポールとの関係で、かなり進んでいる国との関係ですが、これは向こうから、これも要請ということになってしまうのかもしれませんが、日本文化の発信の、そういう日本文化センターみたいなものをつくったらどうかということがシンガポールから提案をされた、こういう報道がされています。

 こういうものも本当は戦略的にやるべきで、向こうから言われるまでもなく、例えば、よく歴史認識のことなんかがありますよね。日本一国が一生懸命広報として他の国に対してやるよりも、アジアで共同制作で何か、例えば日本の近代について、日本にとっては幕末から明治、その時期についてそういうものをアジア全体の歴史の中で共同制作していくとか、いろいろな道があると思います。そういう文化の発信ということもあると思うわけです。

 これはそうした向こうからの提案があったということですが、向こうからの要請ということだけじゃなくて、こちらからむしろ戦略的に、ASEANであったりアジアの国と共同で日本の文化とか歴史を広報していく、ぜひこういうことを、向こうから提案があったら、なおさらいいと思います。シンガポールの近くの香港なんというのは、つい十年、いや十年じゃない、もっと最近までですか、教科書にアヘン戦争なんという言葉もなかったらしいですが、最近はそれが入るようになった。中国自体も、最近は、日本の帝国主義を教科書で批判するだけじゃなくて、例えば清朝の時期にこういう理由があって侵略をされたということも、教科書に一部書くようになった。いろいろなことがあるわけです。

 アジア全体の中で広報していく、共同で広報していく、特にASEANの国とかシンガポールなんというのは非常にいい相手だと思いますが、そのことについて一言、御意見をいただきたいと思います。

麻生国務大臣 やはり笹木先生、例えば、今、文化の話で、言語なんかは最たるものなんでしょうけれども、日本語を教えるというのに、ある程度日本語ができる子供に、より難しい日本語を、いわゆる国語を教える技術というのは、日本は進んでおると思います。傍ら、そこそこ年をとった大人にゼロから日本語を教えるということは、まず技術的に、例えばアメリカではバークレー・メソッドとかいろいろありますけれども、こういったものは日本では確立していない。なぜなら、そういう需要が全くなかったと思っていますし、また、そういった需要をつくろうともしなかったというのが今の御意見なんだと思います。

 それに比べて、例えばフランスやら何やら、日仏学院でいろいろ、あれは全部フランス資本で、全部文化庁のお金なんですけれども、日本より何倍でしたか、四倍だったか何かの金をかけて、どんどんやっているんですが、ああいったようなものがやはりこれから必要になってくるという意識が必要なんだと思います。

 その割に、日本語がこれだけやたら東南アジア等々で普及しましたのも、間違いなく、テレビゲームの攻略本の解説、あれを子供が覚えるがために日本語というのは一番わあっと普及した。これはもう間違いなく子供のときに普及しました。この十年間、東南アジアにおいて、正式に日本語を習うというのを届けている人の数は約倍にふえておりますから、そういったようなところは、あれから入ってきたというのはもう間違いないと思われます。

 いずれにしても、そういったものは、全部、民間の商売人ベースで始まったものがずっと上がってきておりますけれども、これは普及していることは間違いありませんので、そういったものに対応して、もっときちんとしたものを教えるために、日本語学校とかいうことはもう一個別に考えねばいかぬ。同時に、そういったものを大人にゼロから日本語を教えるというメソッドも、ちょっとこれは文部省なりどこなりで開発しないといかぬのかなという感じを持っております。

笹木委員 ぜひそうしたことを戦略的にやっていくべきだと思います。

 最後にもう一点だけ。

 ASEANとの大枠で合意をした、きょう、最初もそのお話でちょっと質問をしました。最初は、確認をさせていただいて、大臣も、例えばASEANと日中韓、中国はいろいろ課題はあるにしても、それにしても日中韓、そしてオーストラリア、ニュージーランド、そうした国を加えた十六カ国での自由貿易地帯、そうしたことも含めて進めていくべきだという話、基本的にやはりそういうことだと思います。

 それで、実務的にいろいろ時間がかかるのはわかりますが、実務的にいろいろ調整が、時間がかかるということはぜひ理由にしないでいただきたいんです、それで取り組んでいただきたいわけです。

 そこで、常に問題になるのが、やはり農業の問題なんだと思います。これはやはり避けて通れないわけで、自分は農林大臣じゃないからということじゃなくて、では、その自由貿易というのを、EPAもどんどん進めていく、特に東アジアの中では進めていく、そうすると、最終的に日本の食料はどうするのか。

 例えばASEANとのこれからの交渉でも、一%枠みたいなことをいって、実質、米のことを想定されているんですか。まあ、いざとなったらやはり米だけはとか、米だけに限らず一品か二品、米プラス一品か二品、これだけはやはり日本は絶対離さないとか、それが基本姿勢だということなのか。

 あるいは、食料安全保障。やはりこれから、アジアでいうと人口が爆発するし、そんなおめでたいことも言っていられないぞということで、では、日本と比較的信頼度が高い二国ぐらいと共同でこの食料安全保障の最低限の部分は確保していくのか。何かそうした見通しがないと、結局、結果的にはEPAもFTAも、韓国に比べても、中国に比べても、あるいはインド、いろいろな動きに比べて、日本は何かようわからぬ、原則がわからぬし、スピードも遅い、そう言われかねないと思うんです。

 ぜひこの食料の問題について、基本的にはどういう方向を考えていくべきなのか。これは避けて通れないので、むしろ積極的に政治の方から農業者にも国民の方にも語っていくべきだと思います。もうぎりぎりそれをやるべき時期だと思いますが、それについて最後に御意見をいただきたいと思います。

麻生国務大臣 食料の話は、これはやはり食べ物、自国の食料ということでいくと、例えば米だけでいきましたら、これは一〇〇%自給ということになりますが、問題は副食物ということになります。

 我々は、昔は一人頭、大体年間米三俵を食べていたんですが、今大体一俵いかないぐらいしか食べないという時代になりました。その分だけ米が二俵余ったというので、減反に次ぐ減反で、今、年間八百万トンぐらいしかできていないと思いますが、それでも食べているお米は大体七百万トン前後ということになっております。したがって、米は一〇〇%自給をしておるというのは事実です。

 ただ、今言われましたように、米が自由化されるとどうなるかという話で、一時期、随分いろいろありました。今でもありますが、笹木先生御存じのように、米というのは、炊いた米をお酢をかけて冷やす、そしておすしができるんですが、一回炊いた米を冷やして食べられるお米というのは実はそうありませんで、日本のお米ぐらい。だから、すしというのはほとんど日本のお米でつくっているんですが、これが中国で今、キロ当たり約千円から千何百円しております。日本では、六十キロ標準米が一万五千円から一万五千五百円ぐらいですから、それからいきますと五倍ぐらいの値段になろうと存じます。

 そういう意味では、今回、温家宝・安倍会談で、お米は中国は輸入禁止だったものが今度輸入を正式にすることになりますので、そうすると、農家のお米は逆に輸出の対象に正式になるということになりますと、農家は減反しないで自分でつくっていいということになろうと存じます。一万五千円で売るか、六万何千円で売るかではえらい違いですから、これはもう全く話が違ってくるんだと思いますので、事情は変わってくるというのがある程度農家の方にわかる。

 やはり最後に言われた米のところが一番最後までひっかかるかなと私も思わないでもありませんけれども、いずれにいたしましても、日本のお米は高い、だけれども安全、うまい、そういったものが日本の農産物の付加価値として大きなものとして評価が出てきている部分が幾つか出てきたというのが、農家にとって将来はもうどんどんこうなっていくと思っていたのが、いや、そうでもないんだという希望を与えるというところが出てこないと農業政策というのは成功しないんだ、私はそう思っております。

 そういった意味では、何となく、余り評判のよくない松岡利勝ではありますけれども、結構この点については頑張っておるということだけは……。

笹木委員 もう時間ですからやめますが、経済自由化をすれば米の輸出の道もあり得るんだ、そういう希望を見せることが必要だというお話がありました。しかし、食料の安全保障をこのEPAとかの動きの中でどうするか、その基本方針は、やはりもう避けられないし、しっかりと明言していくべき時期に来ているんじゃないかなという気がします。

 質問を終わります。

やまぎわ委員長代理 次に、細野豪志君。

細野委員 笹木委員に引き続いて、EPA、FTAの問題について質問させていただきたいと思います。

 まず、これは麻生大臣にお伺いをしたいんですが、世界じゅうでFTAの締結交渉が進んでいて、去年の半ばの時期で世界じゅうのFTAの数というのがもう百五十近くになっている。資料によりますと、アメリカが結んでいるFTAの数が十二、EUは二十四、中国は数は四と少ないんですが、ASEANを含みますから、相手としては範囲が相当拡大をしています。特に最近は、この間も日本もASEANとのめどをつけたということでありますが、ASEANとかオーストラリアなんかがかなりもてておりまして、世界じゅうでFTA、EPAは拡大をして、半ば、どこをどこでとるかという競争になっているような、そんな状況なわけですよね。

 まず大臣にお伺いをしたいのは、そういう数が急増をしているこの状況と、どの国が魅力的かということ、魅力的であると思われる国に対してはかなり競争に近い状況になっているということ、この状況について大臣はどのように評価をされているか、お伺いしたいと思います。

麻生国務大臣 まず最初に数字の方から、今細野先生が言われました部分でいきますと、今年に入りまして三月までのところで、今言われた百五十から、昨年の数字だと思います、この三月で百八十三までふえております。

 それまでふえておりますので、私どもとしてはどう考えるかということですけれども、これは、もともとWTOが余りスムーズになかなか進まぬというところもあって、各国で個別にいろいろやられ始めたという背景はあろうと存じます。しかし、WTOというものを補完する意味でFTA、EPAというのは非常に大事なものだと思っておりますので、そういう意味では日本にとって有益であることはもう間違いありません。少なくとも、この国は資源より通商で成り立っておる国ですから、そういう意味では積極的に推進をしていくべきだと思っております。

 したがいまして、今言われましたように、どの国というのは、日本の持っていないものを持っている国が我々にとっていいということで、基本的に資源もしくは買ってもらえるマーケットの双方、売ってくれるところと買ってくれるところと両方というところが一番大きなことになろうと思いますので、日本の得意とする分野を買ってくれるところ、すなわち、うちは大量末端消費財ではなくてむしろ生産財、資本財というものを主につくって輸出してきている国でもありますので、そういったことの評価の高い国というのを我々としてはむしろFTA、EPAの対象国としていきたいと考えております。

細野委員 私も、日本の国益を考えれば、積極的にやはりFTAは進めていくべきという立場ではあるんですね。それ自体の考え方については私も大臣と立場は変わらないんですが、一つちょっとそろそろ考えなきゃならないと思うのは、果たしてこのFTA、EPAというものがWTOという世界の枠組みと整合的なのか。今、補完的と大臣は答弁をされましたが、本当に補完的かというところは少しそろそろ判断をしていった方がいいんだろうと思うんですね。

 例えば、最近であれば、アメリカと韓国がFTAの交渉で妥結をした。韓国も経済規模としては非常に大きなものがありますから、世界のメジャーどころ同士がもうFTAをやり出したわけですよね。最近は、オーストラリアと中国なんかもやるのではないかと言われていて、そういう貿易相手としては非常に規模の大きいFTAが出てきている。

 従来はWTOの補完的な手段としてのFTAというのがあったんだけれども、今やFTAはそれを場合によっては脅かすような状況になっていて、WTOの補完的というよりは、むしろ関係が変わってきているのではないか。どういう表現をすればいいか、ちょっと私も適切な言葉は見つかりませんが、そういう認識を私は持っています。

 大臣、その辺についてのお考えはいかがでしょうか。

麻生国務大臣 これは先生、国数のところからいきますと、やはりアフリカなんというところに五十三カ国あると思いますが、こういったような国のことを考えてFTAということになりますと、途端に何となくみんな資源がある一部の国だけということになって、ほかの国々、いわゆる発展途上国もしくは最貧国、いろいろな表現がありますけれども、アフリカの場合は、五十三カ国ありますが、エジプト、南アフリカ、モロッコ、ナイジェリアぐらいで全GDPの大体九割ぐらい、四カ国で九割ぐらい押さえていると思いますね。そういたしますと、残りの四十九カ国ぐらいで残りの一〇%、そういった国とFTAとかいうものをやろうなんというのは余り出てこない。そうすると、その国はさらにぐあいの悪いことになろうと思いますので、やはり基本的にWTOみたいな形で、ある程度の大枠はきちんとしていくというのは忘れちゃならぬ大事なところなんだと思います。だから、その中で双方の利益の合うところが出てくる。そこがきちんと組み合っていくというところが大事なところなんだと私は思います。

 ただ、今言われましたように、例えば日本とアメリカのEPAとかFTAということになりますと、それだけで、世界の百九十二カ国で二国だけで四〇%ぐらいということになったら、ほかの国にとりましては、ちょっと待てという可能性が、いろいろ言われる確率は極めて高いということも頭に入れておかないかぬかなと思いますが、同時に、どこかでそれをやられた場合、こっちもやらないとこっちだけ不利益をこうむるということになりますので、そこのところの判断はなかなか難しいところだと存じます。

    〔やまぎわ委員長代理退席、委員長着席〕

細野委員 日米の話は最後に聞こうかと思っていたんですが、大臣が今御答弁をされましたので。

 確かに、日米のFTAというのは最近かなり財界であるとか諮問会議なんかからも出てきていまして、話題になり出しているんですが、これは一つの大きな判断が求められるんだろうというふうに思うんですね、先ほどちょっと微妙だという話をされましたが。ただ、その一方で、例えば韓国とアメリカの交渉なんかは、実は一年たたずに一気に交渉を進めたわけですよ。そうなると、例えばアメリカと中国のFTAなんかも、全然ないだろうという想定をしていると実は間違う可能性もある。それぐらい世界は大きく動き出しているわけですよね。

 そういうことも含めて、さっきちょっと言及はいただきましたが、かなり財界からは日米FTAについて要望が出ておりますが、WTOとの整合性も含めて、今の時点で大臣はどのようにお考えになっているか、もう少し整理をして御答弁いただけますでしょうか。

麻生国務大臣 一昨日の経済財政諮問会議でも同様なお話というものが出ましたけれども、私どもとしては、成長のための日米経済パートナーシップ等々、今、日米の間にいろいろな枠組みというのは物すごく数がありますので、そういった中で日米経済というのを考えていった場合に、さらに規模が大きくなるとか、進化していくとかいろいろなことを考えながらも、やはりこれは将来の課題として検討していくべきではないかということに関して、今回外務省は、他省庁、他省庁というのは農林省とか経産省とかいうのを含めたところと調整の上で将来課題として検討すべきものであるといって、アメリカとEUの名前を挙げて、一昨日の答申という形で出させていただいております。

 これは、今、細野先生も御懸念のとおりのところを幾つか勘案しませんと、おまえら二人だけでいいことをしようとしているのということになりますと、話が非常に込み入ったことになりますので、十分に注意をしてやっていかないかぬところだとは思いますけれども、日米関係は、これはほかの国に比べてまだ関税が下がっておりますからね。だから、それはまだいいと思いますけれども、日本とEUとの関係といいますと、関税障壁がまだEUの方が高いところがありますので、そこらのところがどんと安くなると、日本にとりましてすぐ見えるメリットがそこにあるということになろうと思いますが、こちらもEUの経済力というのはかなりの大きなものになりますので、そういったところも考えて、財界として即という話になってくるところだとは思いますけれども、私どもとしては、将来の課題としてこれは検討してしかるべき問題だと考えております。

細野委員 実は私は、従来はどちらかというとWTO派だったんですね。シンクタンクに勤めていたときにWTOの研究をやっておりまして、当時は日本は、特に外務省はFTA、EPAみたいなものはWTOの枠組みを乱すものだということで、むしろ積極的に評価をしていなかった。消極的だった。ただ、この数年で考え方を大きく変えて、日本も交渉中のものも含めると、もうかなり数がふえてきているので、考え方を徐々に変えつつあるんです。

 先ほどちょっと両方のバランスをとった質問をしましたが、今の時点の私の判断でいうと、私は、日米に関しても、ここはもうはっきりかじを切るべきだと思います。それぐらい世界は先を行っていますし、日本の国益を考えたときに、今大臣はアメリカとの関税の話をされましたが、もう関税の話というのは先進国間においてはテーマとしてはかなり小さいものになっていて、むしろ投資とか制度の均一化、これをとった方が勝つわけですね。デファクトをとった方が勝つ時代に入っていますから。そういう中で、やはり本当に日本が、日本の国益に基づいて産業の競争力であるとかさまざまな意味でのメリットを受けていく意味では、きっちり日米についてもかじを切っていくべきだろうというふうに思うんですね。

 ですので、日米首脳会談をやったときも、一応情報交換をということであったけれども、煮詰まらない状況の中で交渉は終わってしまっていますが、そこはもうそろそろ、かつて私がWTOと言っていた時代からはもう全然時代は変わっていますから、そういう認識を持って、FTAについてはかじを切っていただいた方がいいだろうというふうに私は思っています。

 その中で、まず一つだけFTAについて気になることがあるので、これは政府委員の方に御答弁をいただきたいんですが、いわゆるWTOのガットの二十四条に書いてある実質上すべての貿易という、これを一つのFTAの枠として、国際的な枠組みとしてここで縛っているわけですね。これはよく貿易量の九〇%とか、余り水準の低いものができるとWTOと整合性がないということで、こういうルールで縛っているんですが、日本としては、これについてはどういうスタンスで今いるのか、これは政府委員に御答弁いただきたいと思います。

小田部政府参考人 先生から今御質問をいただきましたガット二十四条8、実質上すべての貿易についてでございますけれども、先生御案内のとおり、ここの実質上のすべての貿易、具体的にどういう意味かという具体的基準はまだ確立されていないところでございます。他方、現在行われておりますWTOドーハ交渉のルール交渉において、引き続きこれは議論が行われております。

 その上で申し上げれば、多くの国々が、少なくとも貿易の九割以上が必要と考えているのは事実であり、我が国も貿易額の九〇%の関税撤廃というのを一つの目安としております。同時にまた、そのような量的基準に加えまして、二国間のEPAあるいはFTAにおきましては、主要分野がすっぽりと自由化対象から外れてはならないという質的基準もあるというふうに考えておるところでございます。

細野委員 九〇%を一つの基準と考えているということでございましたね。やはりそこは、私はラインとして設けておくべきだろうというふうに思っています。

 大臣、通告していないんですが、御所見を伺いたいんですが、私、ここは守るべきだと思うんですよ。というのは、WTOの枠組みから離れたところでもFTAは増殖しているんですが、一方で、余り低い基準のものがどんどん出てきてしまうと、これはFTAを結ぶ可能性のない国、アフリカの小国なんかはFTAを結んでくれるパートナーは実質的にいないですから、そういう国々にとっては、どんどん低いレベルのFTAが結ばれていくと、彼らはもう完全に蚊帳の外に置かれるわけですね。そうではなくて、ある程度高い基準のFTAを日本なんかで結ぶと、それによって他国が、違う二国間もしくは地域でレベルが低いものが結ばれることも防ぐ、そういう効果もありますので、ここは私はある程度きっちり日本としては守っていった方がいいだろうというふうに思っているんですね。

 私が念頭にあるのは日豪なんですが、農業もあるので非常に難しいんですが、やはりある程度、そういう意味で世界の中で理解がされるようなFTAを結ぶべきだと私は考えますが、いかがでしょうか。

麻生国務大臣 最初に言われましたように、外務省はもう全く、細野先生のおかげとは言いませんけれども、WTO派。FTA、EPA派なんかはゼロです。正確にはゼロでした。

 これは河野外務大臣のときに初めて、通産はFTA派だったと記憶しますが、通産のある者が一生懸命言い始めたのが始まり。当時は、もう断固WTOと非常にはっきりしておったんだと思います。三和総研、外務省の連合か知りませんけれども、あのころはとにかくはっきりしておりました。もうおっしゃるとおり。

 それが変わってきましたのは、その河野外務大臣のときにシンガポールと初めてやったのは、農業がないからシンガポールでいいじゃないかといって、これは通産が考えた案なんですけれども、それに乗ったのが多分最初です。それから今日まで幾つか、チリだ何だ幾つか始まったんだと思います。

 いずれにしても、今言われたところ、小田部の方から九〇という数字を挙げましたけれども、ある程度のものをきちんとしておくというのは、最初に申し上げましたように、最貧国等々が壊滅的なことになりかねぬという気がしますものですから、私もそういった意味では、WTOという大枠の中で、FTAを補完的と申し上げましたが、そこが、今言われたように、数字的には九〇がいいのか九五がいいのかいろいろな表現はありますけれども、きちんとしたもので押さえておかないと、これは思わぬところに当初予想していなかった弊害というのが出てくるという可能性は頭に入れて対応すべきものだ、私もそう思います。

細野委員 外務省はWTO派だという話を大臣から聞けるとは思いませんでしたけれども。実際、かつてはそうでしたね。やはり随分変わってきたとは思います。その中で、今大臣がおっしゃったような、世界にきちっと誇れるようなFTA、EPAを結ぶということについては、ぜひ御努力をいただきたいと思います。

 具体的な話に少し入っていきたいんですが、大臣にお伺いをしたいのが、これは私はもともと大変関心があったんですが、相互承認の問題。それぞれの国によって工業製品なんかの基準が違いますね。そういうものが入ってくるときに、例えばタイから入ってくるものを日本で認証するときに、一々日本でそこで審査をするんじゃなくて、タイの方でやって持ってくるという話ですね。

 これは、制度としては非常に重要だと思っていまして、今回も、このタイのものの中でもこのMRAが入っているわけですが、こういうものに対する日本の基本的なスタンス、まず重要性なり考え方なり、外務省としての基本的な方針をお伺いしたいと思います。

岩屋副大臣 これは細野先生おっしゃるとおり、非常に重要な分野であると私ども思っておりまして、特にタイとの相互承認の制度は、主に電気製品の分野を対象にしたものですけれども、これはもう先生がおっしゃったとおりでございまして、これがありませんと、一々翻訳する経費でありますとか、それから審査の旅費等のコストがかかるわけでございまして、相互承認制度があればそれを削減することができる。それから、認証を得るための期間を短縮することができる。よって、電気製品の貿易が一層促進をされる。それから、例えばDVDプレーヤーなんかはしょっちゅうモデルチェンジをするわけですけれども、相手国のマーケットのニーズに応じてタイムリーに新しい製品を投入していくことができる。そういういろいろなメリットがあるわけでございまして、この相互承認制度というものにつきましても、一層促進をしていきたいというふうに思っているところでございます。

細野委員 ありがとうございました。

 この相互承認制度なんですが、もう少しお伺いしたいのは、二種類ありまして、一つは相手国の認証機関に任せちゃうという方法と、今回タイでとったように、日本側が注文をつけてやるという方法ですね。シンガポールでは前者をとって、タイでは後者をとったということなんですが、私がちょっと気にしていますのは、この相互承認制度というのは非常に重要だと思うんですが、相手国によって制度が違うわけですね。今度、ASEANとのEPAみたいな話になったときに、ではそれぞれの国と結んだ相互承認制度はどうなるのか、考え方をどう整理するのか。

 例えば、タイとシンガポールも違うやり方をしています。ASEANと結ぶと恐らく出てくるのが、例えばベトナムとかラオスとかカンボジアのように、相互承認はちょっと厳しいんじゃないかという国も、もしかしたらあるかもしれないですね。

 そういう枠組みの中で、そういうそれぞれのレベルの違う国とのさまざまな貿易について、この相互承認制度はどういうふうになるんでしょうか。今の時点で外務省として持っていらっしゃる方針をお伺いしたいと思います。

小田部政府参考人 先生御指摘のように、日本は今まで幾つかの相互承認を結んでいるところでございます。EUがございます。シンガポールがございます。最近はアメリカがございまして、今度はタイでございます。

 この相互承認を結ぶ基本的考え方は、まず我が方、民間業界がどういう御意向を持っておられるかということを優先させて考えているところでございます。その上で、相手国の制度がどういうふうな制度になっているかということで、その上で具体的な対応を決めているところでございます。

 今御質問のありましたASEAN全体との包括的経済連携でございますけれども、まだ交渉中でございますので、本件について煮詰まっている段階には至っておりませんけれども、いずれにいたしましても、今回、日・タイEPAにおいて取り交わしました相互承認の規定については、日・ASEAN全体がどうなろうとも損なわないような仕組みにしたいというふうに思っているところでございます。

細野委員 ちょっと確認ですが、既に結んでいる相互承認のこの制度自体は、ASEANという大きな枠組みになっても基本的にはきちっと守られる、そういう理解でよろしいんでしょうか。

小田部政府参考人 そのとおりでございます。

細野委員 このMRAに限らないんですが、これからいろいろなASEANとの交渉をする中で、それぞれの個別の条項をどうするのかは相当問題になると思うんですね。外務省の方に交渉としてお願いをしておきたいのは、その中で、既に日本がきちっと書き込んだものについて落ちることがないように、それをできるだけ多くの国に反映できるように御努力をいただきたいと思います。これは私からの要望です。

 もう一点、チリとの協定の方で、これは大臣にお伺いをしたいんですが、先ほども笹木委員とのやりとりの中で、銅が非常に大事なんだというお話がございましたね。今後ろから耳打ちされていますが、大丈夫ですか。

 ちょっとお伺いをしたいのは、私、チリとの間には資源条項が入るかなと思っていたんですよ、資源の安定供給に関して。ところが、今回、入りませんでした。インドネシアとの協定には資源条項がもう入る予定になっているので、そちらは見ているんですが、チリとの間で私はいいきっかけになるかなと思っていたので、ちょっとそこは意外だったんですが、なぜ入らなかったのか、これは副大臣ですか、お答えをいただければと思います。

岩屋副大臣 事実関係だけ私の方から。

 先生おっしゃるとおり、チリは、銅とかモリブデンとかリチウム等の鉱物資源の我が国の最大供給国でございます。我が国企業が投資を現地に行っておりまして、その鉱山で生産されたものが我が国に輸入をされているということでございます。

 今回、日本・チリEPAを締結するに当たりまして、チリは、同協定の投資に関する条項に基づいて、このような我が国の企業及び我が国の企業による投資の保護を二国間の義務として約束をするということになります。

 また、日本・チリのEPAにおきましては、物品及びサービスの貿易の自由化及び円滑化に関する規定や、ビジネス環境の整備に関する規定が置かれておりますので、先生がおっしゃる資源に関する独立の条項を設けなくても、協定全体で、チリから我が国への資源の安定供給が図られるというふうに判断をしたところでございます。

細野委員 要するに、投資をもう日本がしていて、資本でもうきちっと抱え込んでいるから、入れなくても安定的に入ってくる、そういう話ですね。それは理解しました。

 恐らくチリはそれでよかったんだろうと思うんですが、今度、インドネシア、ブルネイで資源条項が入るんですね。恐らく最大の山になるのがオーストラリア、どういう資源条項を入れられるか、これはかなり山になると思います。

 そこで、大臣、これは私の個人的な見解なので、ちょっとどこかで覚えておいていただければと思うんですが、ここでかなりきちっとした資源条項を入れるべきだと思うんですね。特にオーストラリアにおいては、やはりウランですよね、最大のウラン供出国ですから。このウランは、正直言うと、今、水面下で中国とかなりとり合いになっています。インドも参入をしてきます。そういう状況の中で、どういう資源条項を入れられるかということをかなりきちっと交渉していただきたいと思っているんですね。

 ちなみに、一つ参考事例として申し上げると、NAFTAの中にある、メキシコとアメリカの資源に関する条項というのは非常にはっきりしていまして、どういう条項になっているかというと、仮に資源が枯渇をして、輸出が難しく、減らすとか制限をするということになっても、他国の割合と変えてはいけませんよ、国内の供給とも差別化をしてはいけませんよということがNAFTAの中には書いてあるんですね。要するに、結果をちゃんと出しなさいよということが書いてあるわけです。比率を変えちゃいけませんよ、アメリカに対して差別的にすることは許しませんよということがNAFTAの条項の中に書いてある。これはかなり強い条項です。

 それで、インドネシアとの条項を見てみますと、安定供給の強化に貢献をする、緊密な調整を行うと、プロセスについては書いてあるんですが、結果については書いていないわけですよ。これは、実は大きな違いなんです。

 特にウランの安定供給、オーストラリアと日本との関係を考えれば、オーストラリアは日本との貿易関係というのを物すごく大事にしていますし、感謝もしています。日本は約束を守る国だという、これはどこかの国への当てつけも若干入っているんですが、そういうことも言っているということで、これはチャンスなんですよね。

 オーストラリアにおいては、プロセスももちろん書いていただきたいですが、結果についてもきちっと言及をした資源条項をぜひ入れていただきたいというふうに私は思うんですが、いかがでしょうか。

麻生国務大臣 NAFTAの例を引かれましたけれども、今の話は、比率という点、計算方式の根底をきちんと枠を決めておるんであって、誠意とかそういう話じゃない、きちんとした計算方式が決まっているのがみそだという御意見なんだろうと。参考にさせていただきます。

細野委員 ここは交渉事ですので、今まさにやっているところだと思いますので、ぜひ御努力をいただきたいと思います。

 日豪なんですが、もう話は始まってしまって、そもそも論にまた戻るんですけれども、日豪に関しては、私はスピードだと思っているんですよ。時間をかけていいところもあると思うんですが、日豪はかなりスピードが大事じゃないか。豪中もかなりいいところまでいっていますし、資源と食料という極めて重要性の高い、しかも、もてもてのオーストラリアが相手ということでありますから、期限は設けずにということを外務省はずっとおっしゃっているんですが、大臣、政治的に、もう少し早くするという意思をぜひ示していただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。

麻生国務大臣 御存じのように、既に、四月の二十三、四日だったと思いますけれども、第一回の会合を開催して、交渉の手続及び交渉範囲を含むという形で、今、認識を共有したというところがまず最初のところであります。

 御存じのように、これは、先ほど笹木さんの御意見でしたか、いろいろいわゆる農産物、農産品に関するセンシティビティー、これが日本語なのかどうか知りませんけれども、十何回センシティビティーという言葉を使って、最終的にあの話をまとめるのに夜中までかかりましたけれども、あのときの条項というのがありまして、ここのところは農業団体はかなりいわゆるセンシティブになっておるということなんだと思っております。

 したがって、私どもとしては、これは農林省と物すごく詰めに詰めた上でこの話はあそこまでいったんですけれども、いずれにいたしましても、スピードが必要と言われるのは、この種の話は迅速さをもってとうとばないかぬところが多々ありますので、私どもとして常におなかの中に入れておきますけれども、これはちょっと今までのEPAとわけが違って、農産物含めて、工業産物含めて、大きな話であります。

 傍ら、向こう側もこれが決まりますと、今、向こうでつくっております自動車工場というのは、日本から直接輸入した方が安くなるんじゃないかとか、多分、向こうにとりましても、雇用の問題を含めて、これはかなり大きな問題が出てくるというのは、双方抱えております問題がいろいろありますので、私どもとしては、こちら側も向こう側も痛みをある程度伴っても、さらに大きな国益に資するという観点に立ってこれは頑張らねばならぬところだ、私自身はそう思っております。

 いずれにいたしましても、我々が持っています優位なところは、日本は手間暇はかかるけれども、約束ができたら必ずきちんと履行するというのが、日本の持っております、御先祖からいただいてきました大きな力でもありますので、我々としては、その点は大いに今売り込みつつ、焦ることはないけれども、きちんとうちはやったらやってきたろうがということに関しては明らかに向こうも認めておりますし、金を払うというのに、いまだかつて一回たりともおくれたことはありませんし、そういったところは、納期をきちんと守る等々は日本の最も売れるパワーであろうと存じますので、今御指摘のいただきました点、迅速さが大事だという点は、十分におなかにおさめて対応させていただきたいと存じます。

細野委員 農業の話がありました。もちろん、難しいのはわかっていますし、向こうも工業製品で弱みがあるというのは、私もオーストラリアの担当者から直接聞いたことがあります。ただ、だから逆に、これは政治的な判断が求められるところだと思うんですね。外務大臣はその窓口になられるわけですので、今前向きにという御答弁もいただきましたけれども、御努力を引き続きいただきたいと思います。

 もう一点、日豪に関して言うと、私がこの関係をこれからもう少し発展、拡大していけるかなと思っていますのは、経済関係だけではなくて安全保障についても今回宣言が出ている。これは非常に私、評価をしています。

 大臣にお伺いをしたいんですが、安全保障に関する日豪のこの宣言を見たんですが、今の時点でそう呼ぶかどうかということも含めて、日米同盟ということをよく言われますが、日豪同盟というふうに大臣はもうお考えになっているのか、将来そうするというふうに政治的な意思を持っていらっしゃるのか、その辺についてのお考えはいかがなんでしょうか。

麻生国務大臣 今、安全保障という御指摘がありましたけれども、これまで日本はオーストラリアとの間で、例えばイラクのサマワにおきまして、我々は治安等々の部分、対策は豪州軍に守られながらやってもらったという経緯があります。もう少し正確に申し上げると、別に借りだけではないのであって、我々は、かつて第一次欧州大戦のときに、オーストラリア軍を地中海まで運ぶのは、日本の駆逐艦「伊吹」というのがこれを保護して送ったという、あれの借りは返したという話があるぐらい、それは、かなり向こうも昔の話からさかのぼって話をしてくるというのは御存じかと思いますが、そういった意味で、テロのときとか災害支援とか、豪州といろいろやってきた長い歴史があります。

 確かに、南太平洋に位置し、太平洋の東側にアメリカ西海岸、こっち側に日本、豪州という地理的なもの、いろいろなものがある中で、これは非常に大きなものだと思っておりますし、そういった意味では、今回の安全保障協力に関する日豪共同宣言というものは、この二国間の安全保障協力というものに対して、いろいろ今後のこの地域のことを考えて貢献するように取り組んでいきたいと思っておりますけれども、今のこの段階でこの共同宣言が軍事同盟を意味するものかと言われれば、今の段階でそういうことはありません。

 では、将来はどうかと言われれば、先ほど申し上げましたように、十年先はまだ私、生きていそうなので、十年先は当てにならぬという今の時代ではありますけれども、十年たったら、おまえ、あのとき違ったじゃないかと言われることになりかねませんので、安易なことは申し上げられませんけれども、今の段階でとしか申し上げられませんけれども、今の段階で軍事同盟というものを考えて今回の共同宣言を発したわけではございません。

細野委員 安全保障の同盟、軍事同盟と言えるかどうかの判断はまだ留保するということでしたけれども、具体的にはそろそろ日豪は始めてもいいんじゃないかと私は思っているんですね。

 といいますのは、今大臣がおっしゃったように、海外の協力において、もう既に何度かいろいろな経験を共有していますよね。その面での何らかの共同作業をそろそろ日本は始めるべきじゃないかというふうに私は思っています。

 ちょうど岩屋副大臣がいらっしゃるので、三年前、安保委員会の視察で行ったときに、ヨーロッパに行きまして、岩屋副大臣も経験されていると思うんですが、非常に私、鮮明に記憶しておりますのは、例えば北欧の方ではSHIRBRIGといって、要するに海外へ派遣するときに一緒に訓練をしているわけです。その共同訓練があるから、どこへ行っても仲よくやれますよと。ドイツもPKOの訓練センターを持っていまして、フランスと一緒にやっておるわけですね。もうこれは何十年もやっているので、かつて昔はドンパチやったけれども、今は物すごく仲よく仏独もやっておるわけですよね。

 日本も今度PKOの訓練施設ができますが、きょう防衛省の方に聞こうかと思ったんですが、時間がなくなりましたので、ちょっとごめんなさい、申しわけないですが、防衛省の方に聞きませんが、そういう施設において、当面は座学が中心だということなんですが、ある程度、一時的にそういう専門的な能力を持った人が来て共同訓練をしていって、地ならしを国内でして海外への派遣に備えるという、これはぜひ日豪はやるべきだと思います。それを別に軍事同盟と呼ぶ必要は必ずしもないですから、そういうあたりから協力を始めるということについて、外務省としてぜひ御検討されればどうかと思うんですが、いかがでしょうか。

麻生国務大臣 ちょっと役人にこの種のことを言わせるのは酷だと思いますので、私の方から。

 基本的には、今回のいわゆる人づくりということを予算を計上して今やろうとしておりますが、例えばPKO、PKFに関しましては、例えばオーストラリアとか、それから今言われました北欧の国々というのは、カナダ、オーストラリア、ノルウェー、この三つだと思いますが、これは明らかにこの人たちは日本より経験が豊かであります。我々は、その点の経験の絶対量が不足しておりますので、いろいろな意味で我々が習うべきところは多いかと思います。

 いろいろな意味で、細かいところはいろいろあろうと思いますが、そういった人で、もう既に退役して民間になっている人だったらいいじゃないかというところからスタートするか、笠井先生、相当いろいろ御理解をいただかないかぬところだと思いますけれども。だから、そこのところは難しい問題をいろいろ抱えていると思いますけれども、やはり一緒にかまの飯を食ったり、いろいろなことをやっていくという方が、いざというときにぱっと行けるというのは、もうこれははっきりしておると思いますので、いろいろな意味で、この種のことは検討に値する御提案だと存じます。

細野委員 どこに出すかとか、どういうふうにやるかということは、日本の政治判断だと思うんですね。ただ、いざやったときにそこでうまくいくかどうかということについては、これは準備をするにこしたことはないわけですから、ぜひ御検討いただきたいというふうに思います。

 そろそろ時間もなくなってきたので、ちょっとはしょりながら聞いていきたいんですが、大臣に次にお伺いをしたいのが、これはちょっとEPAと関係なくて恐縮なんですが、カザフスタンとの、今回のウランの安定供給に対する交渉の問題なんですね。

 そもそも、それについての評価も簡単に触れていただきたいんですが、一つ私が注目をしておりまして、大臣にぜひ御見解をお伺いしたいのが、カザフスタンというのはウランの埋蔵量でいうと世界で第二位なんですね。オーストラリアの次ですから、これは大変大事。第二位なんだけれども、今まで日本にはほとんどウランを出してこなかった。そういう国でありますから、今回のこの合意というのは、最近の外交の交渉でいえば、かなりクリーンヒットのうちの一つだと思います。そういうふうに評価をしています。

 ただ、問題なのは、カザフスタンにはウランの採掘工場もあるし、成形加工工場というのもあるんですが、ウラン濃縮の施設はないんですね。ちなみに、我が国にもウラン濃縮の施設は、日本の国内供給の一割しかありません。ですから、実質的にこれは何を意味するかというと、カザフでウランを掘ったら、それは日本の国に直接持ってきてもほとんど処理できませんから、ロシアのウラン濃縮工場で濃縮されるということを意味するわけですよね。

 今の世界的な枠組みでいえば、ロシアにそこを依存するというのは、もちろんやむを得ないところがあるんですが、日本に限らず、この問題、非常に微妙な問題を実は含んでいるというふうに思っていまして、大臣の御見解を伺いたいと思います。

 一言、余分なことを申し上げれば、大臣は自由と繁栄の弧という演説をされていて、私、あの演説は文章を感銘深く読ませていただいて、こういう価値観外交みたいなことをやることに関しては必要性を認識しておるんですが、カザフスタンなんかはその大切な対象として大臣はとらえていらっしゃるんだけれども、その自由と繁栄の弧にはロシアは入っていないという状況の中で、ウランの問題についてはロシアに依存せざるを得ない状況をどのように外務省としては評価するか、お伺いしたいと思います。

麻生国務大臣 おっしゃるように、今回の交渉というのは、通産省、エネルギー庁としては久々のクリーンヒットというのは正しい、私もそう思います。

 これは、カザフスタンという国にとりましては非常に大きなものを意味したと思っておりまして、どうでしょう、中央アジアという、キルギスタン、トルクメニスタン、タジキスタン、ウズベキスタン、カザフスタン、これを全部足しましても、GDPでいえば大体三重県ぐらいのものの大きさだと思いますが、このカザフスタンのウランというのが実際に動き始めますと、これはかなりなものになると存じます。

 したがって、かつてウズベキスタンの方のGDPはこうだったのに、今カザフスタンの方がウズベキよりかなり高くなった。四、五倍になっていると思いますが、そういった形までふえてきておるというのが現状でもありますので、その意味からいきまして、私どもは、今回のこのウランの話というのは、日本にとりましてかなりよかったと私は思っております、長期的には。

 それで、加えて、今言われましたように、二次処理というか、濃縮のところでロシアに頼るんですが、それから後のところになりますと、今度はこっちに、こっちというのは日本側に来ないと先はできませんから。おまけに、発電ということになりますと、原子力発電、今世界で六つありますうち、日立、東芝、三菱で三つ、それからウェスチングハウスが東芝、フランスのアレバが三菱、それからGEが日立ですから、もうほとんど日本の技術なしでは世界の安全な原子力発電というのはできないというのが実態だと思います。

 その意味では、そちらの部分は必ず日本というので、きちんとそこらのところの、出しますカザフ、濃縮するロシア、後のオペレーションは日本と、いろいろ複雑に入り組んでいるところでもありますので、どこか断たれるみたいな形で、一回どこかでチョーク、縛っちゃうというふうなことにならない状況になっておるところがもう一ついいところだと思っておりますので、ロシアにその点を押さえられると言っていることは事実だと思いますが、その他の部分は日本とかカザフとかそういったところが力を持っているというところで、そこそこ話し合いとしてはでき上がるのではないかと思っております。

細野委員 確かに、ウェスチングハウスをとったことも大きくて、技術力では非常に強いものを持っているので、そこだと恐らくロシアに対してもカザフに対しても、とにかく日本のバーゲニングパワーにはなると思うんですよね。そこはやはりきちっと押さえた上で、資源ナショナリズムがこれだけ高まっていますし、その中枢に今ロシアがあるのは間違いないですから、そこで振り回されることがないようにだけは、この交渉はヒットだと思うだけに、結果としてそうならないようにだけはしていただきたいということを最後にお願いさせていただきたいと思います。

 質疑時間が終わったんですが、ちょっと、あと一問だけ。

 簡単で結構ですが、ちょっと最後に嫌な質問で恐縮なんですが、天下りの問題。

 内閣府から指示を受けて、二回目以降の再就職のあっせん、いわゆるわたりのあっせんですね、これをそれぞれ省庁、調べろという指示が出ていて、外務省も結果を出しているんですが、外務省の調査結果はゼロなんですね。私が知っている限り、外務省の大使経験者の方なんかは、もちろん皆さん能力もおありなんだと思うんですが、相当優良なさまざまな職業についていらして、私は、二度目のあっせんも外務省は当然してきたんだろうというふうに思っていましたので、極めて意外でした。

 確認ですが、この調査期間の三カ年間で、本当にわたりのあっせんを外務省はしていないんですか。それとも、調査中でゼロ件というふうに出たんですか。確認をさせていただきたいと思います。

塩尻政府参考人 お答え申し上げます。

 報告書に公表されたとおり、外務省についてはございませんでした。

細野委員 わかりました。

 これは委員会の場所を変えてまた天下りをやりたいと思いますので、そのときにやらせていただきたいと思います。

 非常に丁寧に御答弁をいただきまして、きょうはありがとうございました。終わります。

山口委員長 次に、笠井亮君。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 先ほどの議論で、大臣から私の名前も出ましたが、理解しがたい部分がありますが、それはまた改めて議論させていただきたいと思っております。

 本題に入りますが、これまでの質疑の中でも若干ありましたが、日本と東南アジア諸国連合、ASEANは去る五月四日に、ブルネイでの経済大臣の会合で、交渉中の経済連携協定、EPAの柱になる物の貿易自由化で大筋合意した。報道によりますと、日本は輸入額の九二%、ASEANは九〇%で関税を撤廃する、そして、関税を撤廃するまでの期限は協定発効から十年ということで、大臣、先ほど触れられましたが、ベトナム、カンボジア、ラオス、ミャンマーについてはいわゆる後発国ということで、四カ国については最大五年の延長を認める方向で調整しているということであります。

 そこで大臣に伺いたいんですが、日本はASEANとの間で、どのような方向でといいますか、大枠なんですが、何を重点にして、ともに繁栄をするということを目指していくのか。双方にとってのEPAのメリットというのは何だというふうにお考えか伺いたいと思いますが、いかがでしょうか。

麻生国務大臣 今四カ国と他の六カ国とを分けてというお話でしたので、それを前提にさせていただいた上で、このASEAN十カ国というのは、日本にとりまして地理的にも近いし、極めて大きな相手なんですが、日本にとりましては、いわゆる域内で、その枠内でやらせていただいておりますいろいろな産業、仕事、工場をつくる、そうすると、でき上がった製品を域内から域内に移すときに、いわゆる関税がかかる、日本製品だからということが、結果的には日本の国際競争力というか、域内競争力を落とす。それが今回、こういった形で一応撤廃されるというようなことになりますと、これは産品、物品に関してですけれども、極めて大きなメリットがあるだろうと思っております。

 それから、日本がそういったメリットを受けるに際して、相手側も当然何らかのものがなきゃおかしいんですが、これは笠井先生、日本の場合は、そこに工場をつくりますと、単に資本を投下し、人を出し、技術を移転しという、これは世界じゅう皆ほぼ同じことをやるんですが、何でASEANだけ、アジアだけこんなに経済が発展したのかというのは、やはり私は、ヨーロッパとかアメリカと違って、日本の場合は、現地に行って、現場に行って働いて、みんなと一緒に働いてみせたというところが物すごく大きかったんだと思っております。

 したがって、日本人の、ああいうぐあいに現場でやるんだという労働に関する哲学、美学というものが浸透していった。あのインドの地下鉄を前に例に引かせていただきましたけれども、あれは一つの例ですけれども、ああいう形のものは、ああ、こういうぐあいにしてというのがやはり実感として体現されていったところは、ASEAN側にとっては大きかった。これはよくいろいろ言われるところでもありますので、向こう側の人は、こっち側はこんなことをしたのがよかったんじゃないかと思っていましたけれども、受け取り方は違って、いや、日本人の働き方が我々にとって最大の輸出だった、彼らにとっては輸入だったということを言われたのが私、非常に印象的だったんです。

 そういった意味では、今回、物品が中心になってFTAということになりましたけれども、VMLC、ラオス、ミャンマー、ベトナム、カンボジア等々が上がってきた段階におきまして、これが将来EPAまで行くような形になれば、私どもとしては、さらなる発展につながっていけるのではないか、双方にとりまして。

笠井委員 私も何度かASEAN諸国を訪問しまして、日本とASEANの政治経済の交流というのが相互依存的に活発になっていることを実感いたしております。一般論として、EPAを締結した利益というのは双方の国のあらゆる産業分野と国民にもたらされるのがベストだというふうに思うんですけれども、現実はなかなかそう簡単にうまくいかないというのが難しい問題だというふうに思います。

 日本とASEAN諸国との貿易収支でいいますと、大まかに言って、我が国の鉱工業製品が大幅な輸出超過ということで、農林水産物は圧倒的な輸入超過という関係になっているというのが現状で、このもとで日本が農林水産物や畜産品とともに食品加工品や軽工業品などの譲許をすると、圧倒的な多数の零細企業などが地域経済を支えている現状をも崩してしまうことになりかねないという識者の指摘も根強くあるわけであります。

 我が国も、EPA締結による有利な産業分野と不利な産業分野についてあるわけで、そういう点では、相当な目配りをして、そして必要に応じて手当てをしていくということは、これはどうしても一層大事になってくるというふうに思うんですが、大臣、この点はいかがでしょうか。

麻生国務大臣 全くおっしゃるとおりだと思いますので、私も、そこのところは、これを一律にやるのは危険、しかも急激にやるのは危険と思っております。時間をかけてある程度やっていかねばならぬというものであって、それでもできないところがありますので、そういったところは、ある程度別の方法、手当てというものがいろいろあろうと思いますけれども、その手当ては別途考えてしかるべきものだ、私自身はそう思います。

笠井委員 具体的な問題といいますか、少しお聞きをしたいと思います。

 日本とタイのEPAの五年後の再協議品目というのがありまして、その中には、砂糖、でん粉、豚肉、ピーマン、キハダマグロなど、いわば日本の食卓になじみの深い品目が多いわけであります。五年後には日本・ASEANの経済連携協定が実際にはできているということも想定されるわけですけれども、これは農水省で結構ですが、五年後の日本とタイのEPAの見直しについて、もちろんそのときの状況といいますか、農産物の貿易の状況にもよるとは思うんですけれども、日本側の再協議品目の一部は譲許するということも当然理屈の上では考えられると思うんですけれども、その点についてはどういうふうに見解をお持ちでしょうか。

笹谷政府参考人 お答え申し上げます。

 今先生御指摘のとおり、今回のタイとのEPA交渉の結果、豚肉、砂糖、合板等の品目につきましては、協定発効後五年目に再協議を行うということになっております。

 再協議の結果につきましてどのような取り扱いとなるかは、まさに先生がおっしゃりましたように、そのときの各般の状況を踏まえながらのタイ側との交渉によることになるというふうに理解をしております。

笠井委員 もう一点、農水省に伺います。

 チリやタイの農林畜産業のコストの問題なんですけれども、チリ産の例えば豚肉の生産コストの指標というのは日本の半分以下、タイは十分の一というふうに指摘する資料もございます。日本と生産コストが大きくかけ離れているということがあるというのが容易に予測できるわけですが、農産物の貿易関税の段階的あるいは即時撤廃という状況の中で、日本側の努力によってこの生産コストの差が縮まることができるというふうにお考えなのかどうか、その辺はどういうふうに見ていらっしゃるか、伺いたいと思います。

佐久間政府参考人 お尋ねのチリやタイとの農産物の生産コストの格差という問題でございますけれども、まず、全体としまして、我が国におきます食料供給コスト、これへ向けての取り組みの状況でございますが、農林水産省におきましては、二十一世紀新農政二〇〇七等に基づきまして、食料供給コストを五年で二割削減するということを目標に、コスト低減に取り組んでいるところでございます。

 生産コスト面につきましては、担い手の規模拡大等を推進するための農地の集積、省力、低コスト技術の開発普及、低価格資材の供給と効率利用、こういったようなことを推進することによりまして、コスト低減に取り組んでまいりたいと考えております。

 また、コスト以外にも農産物の競争力に影響を与えるような要素がございます。コスト低減に加えまして、消費者や実需者の求めるニーズに対応しました我が国の農産物の長所でございます品質、これをさらに高める取り組みも重要と考えております。

 これらの取り組みを有機的に結びつけまして、我が国の農産物の競争力向上に努めてまいりたいと考えております。

笠井委員 コストについて言いますと、しばしば日本とほかの国とのこれが比較をされるわけですけれども、圧倒的な格差というのを埋めることができることをいわば前提にして進められていること自体は、問題があるというふうに言わなければならないと思います。

 次に、人の移動の問題でありますけれども、これは外務省になりますでしょうか。

 日本とタイのEPAでは、介護福祉士とスパセラピストが継続協議になりました。他方で、既に締結をされました日本とフィリピンのEPAでは、この介護福祉士については条件つき受け入れを認めているわけであります。

 こうした状況を考えますと、近い将来ということになりますが、タイ側から介護福祉士についても受け入れの要求があれば、これは交渉のルールから見て受け入れざるを得ないということになり得るのではないかというふうに思うんですが、これについてはどのようにお考えでしょうか。いかがですか。

小田部政府参考人 先生から御指摘いただきましたように、日・タイのEPAにおきましては、介護福祉士につきまして、本件協定発効後二年以内にその受け入れの可能性について結論に達することを目的として交渉を開始するということになっております。

 まだ交渉を開始しておりませんが、交渉の展開次第では、先生のおっしゃったようなこともあり得ることと思っております。

笠井委員 これまで日本とEPAを締結したシンガポール、マレーシア、フィリピン、メキシコの附属書と、それから今審議しているチリ、タイの附属書を、農林畜産物、水産品目に限って見てみますと、一つの共通点というのがいわば浮かび上がってくるのではないかというふうに思います。

 それは、もちろんそれぞれのEPAの特徴、特色はあるんですけれども、大まかに見た日本側の譲許品目というのは、熱帯果実の連続した関税撤廃、小型パイナップル、牛肉、豚肉、それから鶏肉の関税割り当ての設定、ジュース類、野菜及び野菜調製品の問題なんかでも、現地の生産はないと言ってもいいけれども、しかし他国並みの譲許の品目設定とか、それから品目別の原産地規制の拡大などということが共通してあるというふうに思うんですけれども、この中には、八年から十六年かけて関税率を軽減するという品目もございます。

 そこで伺いたいのは、今交渉中の日本とASEANのEPA、経済連携協定の問題においては、こうした農林畜産物と水産物で譲許する品目についてどのような考え方で協議を行っていくのか、今の時点でおっしゃれることがあったら伺いたいと思うんですが、いかがでしょうか。

笹谷政府参考人 まだ現在交渉中でございますが、日本とASEANのEPA交渉に関しましては、これまで関税撤廃の方式を中心に議論してきたところでございます。五月四日の日・ASEAN経済閣僚会議におきまして、この方式につきまして原則的な合意がなされたところでございます。

 この中で、お尋ねの我が国の農林水産品につきましては、可能なものは関税撤廃に応じるものの、我が国の基幹作物ですとか地域の重要品目等につきましては関税撤廃の例外扱いをするという基本的な方針を念頭に置きまして、その仕組みとしましては、ASEANからの輸入、これは鉱工業品も含む割合でございますが、九〇%強について関税撤廃が行われる、それ以外につきましては、一部について関税削減を行うほかは関税撤廃や削減の対象外とする、こういう枠組みが確保されたところでございます。

 したがいまして、今後、この枠組みに即しまして各品目に関する具体的な内容を固めていくことになるわけでございますが、その際におきましても、これまでのEPAの基本的な方針を念頭に、すなわち国内農林水産業への影響を十分踏まえまして、守るべきものはしっかり守るという方針のもとに政府一体となって取り組んでいく、そういう所存でまいります。

笠井委員 最後になりますが、できれば大臣にということなんですが、日本とASEAN諸国との多面的な協力関係というのは非常に重要だし、必要だということは言うまでもないと思うんです。他方で、今回のタイ、チリとのEPAの日本側の譲許内容というのを見ますと、これまでのEPAの日本側の譲許というのがベースになっている。そして、各国とのEPAがこういう形で続いていくということになっていくならば、我が国でいうと、特に言われる農業分野を実質的に自由化するという方向に行き着くとともに、先ほども申し上げましたが、中小零細企業が主役の地域経済に与える影響は大きいというふうに思います。人の移動も、日本が一たん受け入れをすると、他国からの受け入れを断るのがなかなかこれまた交渉の中で難しいということが出てくる。

 そこで、こういうことに対する国の対策、あるいは国民への説明なしにいわばどんどん芋づる式に受け入れあるいは譲許が進むというレールが敷かれていくということになると、それはそれで問題だというふうに思うんですが、国としての必要な対策とか国民への十分な説明がやはり大前提になるというふうに思うんですが、その点、大臣、いかがでしょうか。

麻生国務大臣 今笠井先生、これは物すごく大事なところだと思いますが、おっしゃるように、例えば農業を見ましても、農業人口というものはぐっと激減をしております。しかも、御存じのように、農業関係従事者の中には、その後継者がいる、いない農家というのを区別しますと、後継者がいる農家というのはさらに少ない。それから、平均年齢が夫婦そろって六十五歳以上の農家の比率が今――全部で残り四十万戸ぐらいしか、とにかく二百万戸と言われていますけれども、いわゆる後継者がいてきちんとそこそこというのはたしか四十万戸、農林省の方が詳しいと思いますが、そういったことになっていると記憶をしますので、長期的に言いますと、ほっておいたらだれがどうするんだということに多分なるんだと思います。

 そこで、農林省、いろいろ頭の痛いところなんだと思いますが、中山間農地等々のものを、きちんと田んぼやら何やらのおかげで日本は治山とか治水とか保水とかいうのがやれてきた部分が、やる人がいないために、農地が荒れるイコール災害に弱いということになりかねませんので、そこらのところはある程度別の方法で考えないかぬとか、集団農園とかいろいろな話が今出ていますけれども、そういったことをやっていく時間という意味の補助、そういったものを考えないかぬ。

 傍ら、人の話ですけれども、こっちは少子化がどんどん進みますと、高齢者がふえるということで少子が進むということは、これは簡単に言えば、わかりやすく言えば、孫がいなくなるということです。孫が激減していくわけです。そこが一番問題なので、おじいちゃん、おばあちゃんが四人で孫が一人という比率がどういうことを意味するかというのが一番問題なんだと思いますが、その高齢者の介護をする若い人の絶対量が不足してくるとなると、その分は何かの形で補うという必要性というのは将来必ず避けがたい、それが嫌なら子供を産んでくださいということになるんだと思います。

 そこらのところのバランス感覚というのを政治としては常に考えておかないと、ある日突然にどうにもなりませんといってロボットが全部できるとはとても思えませんから、ある程度カバーしてもらうにしてもそういうところを考えておいて、政治として常に対策を考えておくという配慮が必要なのではないかという御指摘なんだと思いますけれども、その点に関してはきちんとした長期的な配慮をしておかないと、目先、単年度決算みたいなことではとても対応できない話ではないか、私もそのように思います。

笠井委員 終わります。

山口委員長 次に、照屋寛徳君。

照屋委員 社民党の照屋寛徳です。

 最初に、シンガポールとのEPAに関連して内閣府に尋ねます。

 高市早苗沖縄担当大臣は去る一月、シンガポールを訪問し、同国の先端研究施設であるバイオポリスやシンガポール国立大学と沖縄科学技術大学院大学の協力関係を構築することで合意したと発表しております。具体的には、ことしの夏から始まるサマースクールにシンガポールの研究者や大学院生らを招致することになったようでありますが、実現へ向けての作業状況はどうなっているんでしょうか。

清水政府参考人 お答え申し上げます。

 シンガポールは、国外から多くの優秀な研究者を招聘し、国を挙げて生命科学分野における国際的にも著名な研究拠点をつくり上げてございますので、シンガポール国立大学などの教育研究機関は、沖縄科学技術研究基盤整備機構、そして大学院大学が戦略的に連携協力を進めるべき有力な候補であると認識してございます。

 本年一月に高市大臣がシンガポールを訪問した際には、シンガポール国立大学関係者とも面談し、まずは、沖縄で実施される各種教育プログラムに優秀な学生や若手研究者を派遣してもらう等の連携協力を進めていくということになったところでございます。本年六月に実施が予定されております計算神経科学に関するサマースクールにつきましても、シンガポールからの積極的な参加を呼びかけたと機構より報告を受けているところでございます。

照屋委員 沖縄科学技術大学院大学は、二〇〇一年の構想発表時には二〇〇七年九月の開校が目標であったはずであります。開校へ向けた進捗状況はどうなっているのか、特に現在配置されている主任研究員は何名か、目標は何名で、いつまでに達成できる見込みか、伺います。

清水政府参考人 科学技術大学院大学構想の主任研究者あるいはその準備の状況についてのお尋ねでございますが、この構想の推進主体でございます沖縄科学技術研究基盤整備機構におきましては、シドニー・ブレナー理事長の御尽力もあり、脳神経科学や数理生物学の分野を中心に、既に外国人二十名以上を含みます約百名の研究者、スタッフが沖縄において研究活動に従事しているところでございます。主任研究者につきましては、準教授クラスや小規模ユニットの研究者も含めまして、現在十六名を数えているところでございます。

 大学の開学時期につきましては、平成十五年の関係閣僚申し合わせにおいて、主任研究者が五十人程度に達した時点、それから平成十七年の関係閣僚申し合わせにおきまして、その時点で見て今後七年程度以内を目途に沖縄科学技術大学院大学の実現を期するということにされてございます。すなわち、平成二十四年度までの開学を目指して準備が進められているところでございまして、主任研究者の採用状況につきましては、ただいま申し上げたとおり、おおむね順調に推移しているところでございます。

 現在、うるま市の沖縄県の関連施設を借用して研究活動を行っているために研究スペースに制約がございますが、今年度より恩納村のキャンパスの整備が本格化しておりまして、平成二十一年度にはキャンパスにおいて研究施設の一部供用が始まる予定となってございます。今後、キャンパスの施設整備に合わせて研究者の採用が進められる見込みであると承知してございます。

 内閣府といたしましても、優秀な研究者の着実な採用に向けて沖縄県などとも連携しながらしっかりと支援して、この構想の着実な実施に努めてまいりたいと考えているところでございます。

照屋委員 防衛副大臣がお見えですので、緊急事態でちょっと伺います。

 一部マスコミ報道によると、普天間飛行場の移設に伴うキャンプ・シュワブ沿岸海域のアセス手続前の違法な現況調査に関し、政府は地元反対派の抗議行動を阻止するために海上自衛隊を動員するとの報道がなされておりますが、政府はかかる決定をしたんでしょうか。

木村副大臣 ただいまの先生の御指摘の報道は承知をいたしております。今現在、調査をどのようにするかという検討中でございます。

 しかしながら、先生御承知のように、四月の現場確認におきましても、過去のいろいろな調査におきましても、大変な妨害活動があるわけでございます。現況調査を円滑に今後進めていくための支障等々が生じるおそれがございますので、調査をどのように行うかということは公表を差し控えていきたいと思っております。

照屋委員 官房長官は昨日の記者会見で、海上自衛隊の動員を示唆する発言をしておりますが、防衛省として、海上自衛隊の動員を検討するんでしょうか。

北原政府参考人 照屋寛徳先生に御答弁を申し上げます。

 今、私どもの副大臣から御答弁させていただきましたけれども、極めて大切なことは、この調査、私どもの防衛省の自主的な判断に基づいて行いたいと思っておるわけでございますが、どういうやり方をしながらやっていくかといったことにつきましては、この場で御答弁をすることは差し控えさせていただきたいと思っております。

 いずれにいたしましても、この調査の重要性にかんがみ、円滑にやっていくことが重要である、そのように考えているところであります。

照屋委員 北原長官に尋ねますが、嘉手納基地へ配備されていたF22が、昨日午前三時過ぎから相次いで離陸をしました。この未明離陸による爆音は、嘉手納町の調査で、実に九十八・九デシベルを記録しており、これはもはや騒音ではなく、殺人的な爆音だと周辺住民が怒るのも私は理解できます。米軍は運用上の必要性を理由に騒音防止協定を守っておりません。

 外務省及び北原長官、今回のF22の未明離陸問題に関して、外務省と防衛施設庁はどのような対米交渉をしたんでしょうか。

岩屋副大臣 今先生御指摘のように、昨日十日、F22全十二機が帰任をし、今回の暫定展開は終了したわけでございます。その際に、うち十機が、先生おっしゃるように、午前三時十五分前後及び午前四時三十分前後に早朝離陸を行ったわけでございます。

 外務省といたしましては、これは極めて深刻な問題である、航空機騒音問題は深刻な問題であると認識をしておりまして、できるだけ早朝離陸を行わないように、累次の機会にわたって米側に検討を求めてきましたが、九日午前に、米側から正式に、米側としても検討したんだけれども、F22については特に支援施設が限られていることなど、運用上の理由があって早朝離陸をすることがやむを得ず、理解をいただきたいという旨の連絡があったところでございます。

 そういう意味では、非常に残念な結果でございましたが、外務省としては、今般のことはやむを得ないものと認識しておりますけれども、今後、騒音の影響が最小限になるように最大限の努力をしていきたいと思っております。

北原政府参考人 御答弁申し上げます。

 ただいま岩屋副大臣が御答弁されたとおりでございまして、私ども防衛施設庁といたしましても、現場におきまして、また中央におきまして、それぞれ第一八航空団あるいは在日米軍司令部等に申し入れ等を行ってきたところでございます。

 それで、私どもも、先ほど副大臣が御答弁されましたけれども、この問題、大変重要視をしております。それから、先生も御承知のように、この早朝離陸の問題について、いかなる改善が可能なのかということで、外務省と連携をとりながら、米軍とも今協議をしているところでございますので、こういった点につきまして米側との協議を加速してまいりたい、そのように考えているところであります。

山口委員長 照屋寛徳君、質問時間が終わっておりますので、簡潔にお願いいたします。

照屋委員 はい。

 最後に、タイとのEPAとの関連で尋ねます。

 ここからは急にほろ酔い談義になりますが、御承知のように、泡盛は世界の銘酒であります。現在、タイからの泡盛原料米、沖縄向けの輸入量、一トン当たりの政府買い入れ価格、売り渡し価格及び食糧法三十四条一項三号に基づく政令改正による泡盛原料米を安く輸入する方法を政府に講じてもらって、沖縄の泡盛製造業者のために、沖縄の地場産業を育てる意味で頑張ってもらいたい。

 私が言いたいのは、泡盛原料米は本来安く買える。十倍以上政府がもうかっている。ウチナーンチュが泡盛を飲んで政府がもうかるのは私はけしからぬと思う。もっとも、嘉数先生は全く泡盛を召し上がりませんが。とにかく、沖縄のためにどうすべきか、農水省、真剣に考えてください。お答え願います。

山口委員長 佐藤総合食料局次長、簡潔にお願いします。

佐藤政府参考人 まず数量のお尋ねがございました。

 タイからの泡盛用の米、長粒種でございます。年間ほぼ二万トン程度ございます。これを国が買い入れるわけでございますが、直近の買い入れ価格、大体トン当たり四万五千円程度。それから、これを実需者に売り渡しております。これも直近では大体トン当たり七万二千円程度でございます。

 この結果、差額が出るわけですけれども、これは輸入されますミニマムアクセス米の保管料なり安全性経費などの管理経費に使っておるところでございまして、委員御指摘の食糧法の政令改正をして安くできないかということでございますが、食糧法上の仕組みといたしまして、国内の米需給に影響を与えないものについては納付金の免除というのがございます。例えば、日米地位協定に基づきます条約に関するものであるとか、加工して、それを外に出す、国内で販売しないものとか、そういうものはございますけれども、泡盛原料用のタイからの長粒米、これは国内の米とも競合する面がございますし、また、現に、あられにしたり、みそにしたり、いろいろな用途で入れられておる輸入米とのバランスもございますので、なかなか政令改正をしてというのは難しいというふうに考えておるところでございます。

照屋委員 農水省……

山口委員長 いや、もう以後は慎んでください、もう終わっていますので。

 これにて各件に対する質疑は終局いたしました。

 次回は、来る十六日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時九分散会


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