衆議院

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第11号 平成20年5月7日(水曜日)

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平成二十年五月七日(水曜日)

    午後一時開議

 出席委員

   委員長 平沢 勝栄君

   理事 高木  毅君 理事 三ッ矢憲生君

   理事 三原 朝彦君 理事 山中あき子君

   理事 近藤 昭一君 理事 武正 公一君

   理事 谷口 和史君

      愛知 和男君    伊藤信太郎君

      猪口 邦子君    宇野  治君

      小野 次郎君    木村 隆秀君

      塩崎 恭久君    篠田 陽介君

      鈴木 馨祐君    橋本  岳君

      牧原 秀樹君    御法川信英君

      山内 康一君    篠原  孝君

      田中眞紀子君    野田 佳彦君

      鉢呂 吉雄君    松原  仁君

      上田  勇君    赤嶺 政賢君

      笠井  亮君    照屋 寛徳君

    …………………………………

   外務大臣         高村 正彦君

   外務副大臣        小野寺五典君

   外務大臣政務官      宇野  治君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 井上 美昭君

   政府参考人

   (警察庁刑事局長)    米田  壯君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 石川 和秀君

   政府参考人

   (外務省大臣官房広報文化交流部長)        山本 忠通君

   政府参考人

   (外務省総合外交政策局軍縮不拡散・科学部長)   中根  猛君

   政府参考人

   (外務省北米局長)    西宮 伸一君

   政府参考人

   (防衛省防衛政策局長)  高見澤將林君

   政府参考人

   (防衛省運用企画局長)  徳地 秀士君

   政府参考人

   (防衛省地方協力局長)  地引 良幸君

   外務委員会専門員     清野 裕三君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月一日

 辞任         補欠選任

  丸谷 佳織君     谷口 和史君

同月七日

 辞任         補欠選任

  中山 泰秀君     牧原 秀樹君

  山口 泰明君     橋本  岳君

  笠井  亮君     赤嶺 政賢君

同日

 辞任         補欠選任

  橋本  岳君     山口 泰明君

  牧原 秀樹君     中山 泰秀君

  赤嶺 政賢君     笠井  亮君

同日

 理事丸谷佳織君同月一日委員辞任につき、その補欠として谷口和史君が理事に当選した。

    ―――――――――――――

五月七日

 千九百九十四年の関税及び貿易に関する一般協定の譲許表第三十八表(日本国の譲許表)の修正及び訂正に関する二千八年一月二十二日に作成された確認書の締結について承認を求めるの件(条約第三号)

 社会保障に関する日本国とオランダ王国との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第八号)

 社会保障に関する日本国とチェコ共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第九号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 理事の補欠選任

 政府参考人出頭要求に関する件

 千九百九十四年の関税及び貿易に関する一般協定の譲許表第三十八表(日本国の譲許表)の修正及び訂正に関する二千八年一月二十二日に作成された確認書の締結について承認を求めるの件(条約第三号)

 社会保障に関する日本国とオランダ王国との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第八号)

 社会保障に関する日本国とチェコ共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第九号)

 国際情勢に関する件


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     ――――◇―――――

平沢委員長 これより会議を開きます。

 理事の補欠選任についてお諮りいたします。

 委員の異動に伴い、現在理事が一名欠員となっております。この際、その補欠選任を行いたいと存じますが、先例によりまして、委員長において指名するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

平沢委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 それでは、理事に谷口和史君を指名いたします。

     ――――◇―――――

平沢委員長 次に、国際情勢に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房参事官石川和秀君、総合外交政策局軍縮不拡散・科学部長中根猛君、北米局長西宮伸一君、警察庁長官官房審議官井上美昭君、刑事局長米田壯君、防衛省防衛政策局長高見澤將林君、運用企画局長徳地秀士君、地方協力局長地引良幸君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

平沢委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

平沢委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。伊藤信太郎君。

伊藤(信)委員 自由民主党の伊藤信太郎でございます。

 高村外務大臣にお伺いしたいと思います。

 つい先ほどまで中国の国家主席であられる胡錦濤さんと会談をなさっていたと思いますけれども、ここにおいて、今、日中が目指しております戦略的互恵関係、そしてまた、ことしを日中関係の飛躍の年にしよう、そういう大きなもくろみがあるわけですけれども、政治の面あるいは経済の面、文化交流の面、また地球的課題についての協力面、そういう会談の中での具体的な進展があったかどうか、お聞かせ願いたいと思います。

高村国務大臣 先ほどまで福田総理と胡錦濤国家主席の会談に同席していたわけでありますが、非常に充実した有意義な会談であったと思っております。

 両首脳は、多くの共通認識を得て、その方向性を示す指針となる共同声明に署名をいたしました。

 互恵的な協力を進める観点からは、気候変動問題に関し、二〇一三年以降の実効的な枠組み構築に向けた協力やセクター別アプローチへの前向きな評価で一致をし、その成果を気候変動に関する共同声明として発出をいたしました。

 また、国民同士の相互理解を深めることが極めて重要との観点から、両首脳は、青少年交流の重要性や政策の透明性を高めることなどで一致をいたしました。

 アジア地域及びグローバルな課題への貢献との観点からは、東アジア地域協力、北朝鮮問題、国連安保理改革等、多岐にわたる議論が行われました。

 日中両国が直面する諸課題についても率直な意見交換がなされました。

 東シナ海資源開発問題については、これまで日中間で有益な協議が積み重ねられ、大きな進展があり、長年の懸案に解決のめどが立ったことが確認されました。今後さらに細目を詰めて、できるだけ早期に合意することで一致をいたしました。

 中国産冷凍ギョーザ問題については、一日も早い真相究明のため、日中双方が捜査と協力をさらに強化していくことで一致をいたしました。

 チベットの問題については、胡主席から、四日にダライ・ラマ氏側との接触、話し合いを行ったとの説明がありました。これに対して、総理からは、本格的対話に向けた第一歩として評価し、対話の継続を通じ、国際社会の懸念解消につながることへの期待を表明されたところでございます。

 なお、昨六日の福田総理主催の非公式夕食会では、胡主席から、日中両国はアジアと世界の平和と安定に貢献する能力を有しており、福田総理とともに戦略的互恵関係を発展させたいとの発言があったほか、胡主席から、パンダ一対を研究協力のため提供するとの申し出がありました。また、トキの保護における日中協力の重要性についても意見交換が行われました。

 胡主席は十日まで滞在の予定でありますが、今回の訪日が日中関係をさらに発展させ、戦略的互恵関係構築の深化につながる訪問になることを心から期待しているところでございます。

伊藤(信)委員 きょうという日を数えてみますと、田中内閣のときに大平外務大臣とともに北京に行き、日中国交正常化がなされてから、ちょうど三十五年七カ月八日がたっているわけであります。この三十五年の間に、日本を取り巻く環境も、また中国自身も大きく変化したと思います。ことしという年、そして今回の胡錦濤主席の来日が、新しい日中関係をまた新しいパラダイムで開く、そういう大きなダイナミズムを生むことを強く期待するわけであります。

 その中で、今、一つ触れられなかった問題で、知的財産権の問題があると思います。この知的財産権の問題、きょうの会談では議題として出ましたでしょうか。

高村国務大臣 議題として出ました。これについても双方でこれから協力をしていく、こういうことでございます。

伊藤(信)委員 ありがとうございました。ぜひ、外務大臣の強い指導力で日中新時代が開けることを強く期待するものであります。

 ここで本当の一般質問に入るわけでございますけれども、そもそも論で、日本の行政官庁にはいろいろありまして、それぞれ行政官庁には設立目的があるわけでございますけれども、外務省のレゾンデートルといいますか存在理由というのはどこにあるのかということについて、外務大臣はどのようにお考えか、お聞かせ願いたいと思います。

高村国務大臣 我が国国民の幸福及び我が国の平和と繁栄を確保することが我が国の国益でありまして、これを外交を通じて追求していくことが外務省の存在理由でございます。

 そのような観点から、外務省設置法は、外務省の任務として、「平和で安全な国際社会の維持に寄与するとともに主体的かつ積極的な取組を通じて良好な国際環境の整備を図ること並びに調和ある対外関係を維持し発展させつつ、国際社会における日本国及び日本国民の利益の増進を図る」と定めているわけであります。

 今日の国際社会は、アジア地域の安定と繁栄、米州やアジア太平洋、欧州での地域協力や経済統合の動きなど、好ましい発展が見られる一方で、北朝鮮をめぐる問題や国際テロ、気候変動を初めとする環境問題等、世界は依然として多くの課題に直面しているところでございます。

 このような国際環境の中で、我が国が担う国際的責任は質量とも重大となっており、外交政策を担う外務省の責務もこれまで以上に重要になってきていると考えているところでございます。

伊藤(信)委員 まさに立派なテーゼといいますかお題目が述べられたわけでございますけれども、外務省の存在理由ということとともに、今、多分、外交政策の究極目的ということもお答えいただいたんだろうというふうに認識いたします。

 そこで、よく外交で出てくる言葉に国益という言葉が出てきます。これは非常によく使われているんですけれども、使っている人あるいは文脈によってその意味するものが非常に大きく異なると思うんですね。さらに、本当に国益という言葉を発した場合に、そのことが一枚岩といいますか、一つのテーブルにのっかるようなことを指しているのかどうか、そのことについてもいろいろな考えがあるんだろうと思います。

 まず、国益というものはどういうものなのか、概念として大臣がどのようにお考えか、お考えをお聞かせください。

高村国務大臣 十年前に私が外務大臣をやったころは、外務省は国益という言葉を余り使わなかったんですよ。私があるところで国益という言葉だけを使って演説をして、それからみんなが使うようになって、それは、使うようになって非常にいい面と、何か短期的国益だけが国益だみたいな、そういう、余り私が予期しなかった面と両方出てきていると思うわけでありますが、ごくごく一般的に言って、我が国国民の幸福及び我が国の平和と繁栄を確保すること、これが国益である、そしてその確保は世界の平和と繁栄の実現なくしてはあり得ない、こういう認識の上で国益を追求していきたい、こう考えているところでございます。

伊藤(信)委員 まさに概念としてはそのとおりだろうと思います。

 しかし、外交においては、複数のアクターといいますかプレーヤーがいるわけで、それぞれのプレーヤーが、主体が国であれば国という単位でそれぞれの国益も追求なさるでしょうし、またそれぞれの国で、国益というものに対するとらえ方自体も多分差異があるんだろうと思います。

 そういった中で、今おっしゃられた究極の国益、要するに、日本国民がすべて幸せになり、また地球社会全体が調和的発展という究極の目的を遂げるために、それぞれの政策判断をする中で、やはり判断基準というものをどうとるかということが常に問われるんだろうと思います。

 どこの国でも、地球上全体を戦争にしてしまおうとか、地球を温暖化して人類が住めなくなるようにしてしまおうとか、自分のところだけで水を全部飲んでしまってほかの人たちには水がなくてもいいとか、そう考えている国民も国もないと私は信じています。

 しかしながら、個別の状況を見ると、やはり国家エゴといいますか国民エゴということで、そのときの、少なくともその政権がもっている間の自国民の短期的利益を守るために、それも一つの国益だと思いますけれども、全体益あるいは長期的ビジョンにおける国益といいますか、地球益が失われるということが多々あるんだろうと思います。

 それからまた、日本は民主主義の国でありますし、いろいろな地域もある、いろいろな産業セクターもある、年齢の差もあるし、男と女の違いもありましょう。いずれにしても、国民は、日本国民ということでは一つでありますが、同時に、それぞれ違う利害関係や考え方も持っているわけでございます。

 そういった中で、国益という観点で外交判断をするとなると、利害の相反する国の内外の利害調整や、あるいは、利害が相反する場合、どちらかに軸足を置いて判断しなければならないという局面もあるかと思います。そういった場合、クライテリアといいますか、判断基準の優先順序というのはどのように考えたらいいのか、またどのように大臣はお考えなのか、お聞かせ願いたいと思います。

高村国務大臣 これは一般論として申し上げることは困難というか不可能に近い、近いというか、不可能と言ってもいいわけです。個々の事案に応じて、いかに国民全体の幸せを実現し、我が国の国益を確保すべきかという観点に即して、個別具体的に判断するべきものであると認識をしております。

伊藤(信)委員 確かに、こういう問題は一般論としてお答えいただくのは大変困難だと思いますので、固有名詞を使わないで、少し絞った形で一つ二つ例を挙げたいと思います。

 例えば、外務省のアドバイスに従わないで非常に危険な国に日本人が渡航する。渡航した結果、そこで拉致、誘拐されて身の代金あるいは日本のある外交判断を要求されるという場合、またそのことによって大きな経済的損益が日本国全体としてあるという場合、一名の日本人の命というものと、日本国、日本国民全体と言ってもいいでしょう、その利益というものをどういうふうにしんしゃくしたらいいのか。

 あるいは、領土の問題。個別の領土名は申し上げませんけれども、ある領土を、本来日本の領土でありますから、奪還しなければならない。しかしながら、その交渉を余りアグレッシブにといいますか急激に、またそこだけにアドヒアランスといいますか集中して偏執的にやりますと、そこの国との相互関係の発展に大きな阻害要因になるという場合もあるかと思います。そういった場合、まさに高度な政治的判断、外交判断が求められるというわけです。

 これは大臣の個人的な価値判断の優先順位ということになるかと思いますけれども、高村大臣としては、0、1のデジタルではないと思いますけれども、どちらの方により重点を置いて、そのような場合、御判断なさろうとお考えでしょうか。

高村国務大臣 先ほどお答えしたとおりでございますが、一般論として申し上げることは非常に困難でありまして、個々具体的に、事案に応じて私は判断していくという以外にない、こういうことであります。

 今の日本の世の中的にはこのくらいだけれども、自分はどっちの方だとか、こういうことはあるかもしれませんけれども、それも具体的事案から離れて一般論として申し上げる話ではないんだろう、こういうふうに思っております。

伊藤(信)委員 さて、日本のように、島国であって、かつ、多くの資源を輸入して付加価値をつけて輸出している、また海外との交流によって存在意義等もある、こういう国において外交というのはまさに国家の生命線だろうと私は考えているわけであります。したがいまして、日本が二十一世紀に発展していく中で、やはり外交力の強化というものは多分最優先課題だろうというふうに考えているわけです。

 しかしながら、同時に、日本はもちろん民主主義の国でありますので、外交の意思決定過程というものも当然、議会制民主主義の中でいろいろと論議されるわけでございます。そうすると、なかなか難しいのは、それぞれの政治家が選出されているいろいろな選挙基盤、支持母体というものと日本全体としての全体利益というものが乖離している、また、短期的には非常に日本が顔を失う、あるいは経済的に利益を失うように見えるけれども、長期的に見ればそれがいわゆる国益になるんだという場合があると思います。

 そういういろいろな乖離というものに対して、どういう方法で大臣は調整し、また国民が納得すべく外交政策を進めていこうとお考えになっているのか。少し幾つかの質問がまじっていますけれども、お答え願いたい。

高村国務大臣 御指摘のとおり、外交政策によって国民が受ける影響は必ずしも同一ではない。国益の観点からは短期的に不利に見えても、中長期的な観点からは利益になる場合もあり得る。ただ、だからといって、短期より中長期の方が大切だと具体的事例から離れて言い切ることも、それはそう簡単ではない話だと思います。種々の要素を勘案しつつ、国民全体の幸福を実現し、我が国の国益を確保するという観点から外交に取り組んでいく考えであります。

 少なくとも、私は、外交をやる上で、選挙区の要望がこうであるかということを考慮に入れたことはございません。

伊藤(信)委員 まさに立派な外務大臣の態度だろうと思います。

 しかるに、それぞれの役所の意思決定過程はあるんだろうと思いますけれども、私は、外交における意思決定過程というのは、ある意味で少し違う部分があるんじゃないかなと思うんです。高村大臣が認識しているところの日本の外交の意思決定過程というのは、どのようなことになっているんでしょうか。

高村国務大臣 外交政策については、外務省内の担当部署が関係部署と調整しつつ、案件に応じて私や副大臣、政務官と協議し、また必要に応じ官邸や関係省庁とも協議しながら、最終的には私の責任で決定をしております。

伊藤(信)委員 今の話を少し割って考えると、外交案件の種別とかレベルによって意思決定過程が違うというふうにも考えられるのではないかなと思うんですね。比較的ルーチンなものは課長レベル、あるいはもう少し現場レベルで決められることも多いのではないかな。しかし、非常に大きな案件については、やはり外務大臣決裁であり、あるいは局長、あるいは審議官、事務次官ということもあるのではないかなと思いますけれども、いかがでしょうか。

高村国務大臣 委員がおっしゃったとおりだと思いますが、仮に課長レベルで個々のことを決めたとしても、最終的には責任は私に帰する、こういうことだと思っています。

伊藤(信)委員 そこで、ちょうど日中復交三十五年でございますけれども、あのときはまさに、あの時期に中国と国交正常化するかどうか、国論が二分したんですね。当時の自民党はむしろ親台派と言われる方の議員も多かったわけですけれども、田中総理、大平外務大臣の政治決断によって日中国交正常化がなされたわけでございます。

 最近、国論を二分するような外交案件がどれぐらいあったかどうかわかりませんけれども、国論を二分するような、そういう外交案件の場合、総理大臣と外務大臣の関係、あるいは最終決定者、また、意見が違った場合どのように調整なされるのか、大臣の考え方をお伺いします。

高村国務大臣 外交を含めて政治の最終的な責任は、内閣が全体として負うべきものであります。外交政策については、内閣総理大臣の方針のもとで、外務省の長である外務大臣が責任を持って決定するものと認識しております。

伊藤(信)委員 通常はそういうことなんだろうと思いますけれども、往々にして国論を二分するような場合はいろいろな議論があるだろうと思いますが、ここではこれ以上、話は進めないと思います。

 そこで、きょうは小野寺副大臣はお見えではないんですけれども、逆にお見えでないので、副大臣、政務官という制度が置かれて数年たつわけですけれども、彼らの役割というのはどのように機能しているのか。もともとラインなのか、スタッフなのかという考えもありますし、また、意思決定に、先ほど大臣からも御言及がありましたけれども、どの程度参画しているのか。そしてまた、その意思決定に参画するにふさわしい権限とか情報、あるいは環境とか条件というのは、副大臣、政務官に与えられるのかどうか。大臣の御認識をお伺いしたいと思います。

高村国務大臣 外務省におきましては、副大臣及び政務官にそれぞれの担当分野が割り当てられておりまして、私のもとで一体となってさまざまな分野の外交政策を推進しております。

 副大臣及び政務官は、それぞれの担当に関し担当部局より説明や報告を随時受けており、また、大臣の決裁を必要とする文書については、原則として事前に担当の副大臣や政務官の決裁を受けることとされているわけであります。少なくともその限りで決定に参加しているわけであります。

 また、副大臣及び政務官は、国際会議や二国間会談等、多くの主要な外交行事に我が国の代表として参加し、外交当局の政治レベルの責任者として外交の現場で活躍しております。

 このように、副大臣及び政務官は、外交政策の意思決定過程に適切に参画し、また、外交の現場においてリーダーシップを発揮していると認識しております。

 副大臣及び政務官はいろいろな面で活躍してもらわなきゃ困るわけでありますが、ひとつ、国会審議においてもっと活用していただきたいと心からお願いする次第でございます。

伊藤(信)委員 そういう国会環境がつくられるように、私ども与党も野党とよく相談して努力したいと思います。

 その中で、今、野党の話も出ましたけれども、外交政策は防衛政策と並んで、どうしても秘密、秘密というものがあります。しかしながら、民主主義の国においては、やはり国民に外交政策の正当性というものを理解してもらう必要がありますね。

 そういった中、マスコミや世論にどうやって説明するのか。往々にしてマスコミ、あるいはそれに伴って世論というものが、外交全体をとらえるのじゃなくて、ある一部の部分をセンセーショナルにとらえて、ある意味では国益に反するような報道や世論形成がなされるという場合も多いかと思います。

 そういった状況に対して、外務大臣としてどのように世論を説得する、あるいはマスコミに対して対応するのか、その辺の考えをお聞かせください。

高村国務大臣 我が国が民主主義国家として外交政策を実施していくためには、マスコミや世論の動向にも留意しつつ、タイミングよく、かつ、わかりやすい情報発信を行い、説明責任を果たしながら国民の理解を得ることが極めて重要と考えております。そのために、私も機会をとらえて主要な外交政策について国民の皆様にお伝えするように努めているところでございます。

 外務省といたしましては、記者会見や各種外交案件に関するブリーフ、報道発表の発出等による新聞、テレビ等の各種メディアを通じた的確な情報発信に努めるとともに、外務省ホームページの充実や各界有識者へのメールマガジンの送付といったITを活用した情報発信にも積極的に取り組んでいるところでございます。

 国民の声を聞くとの観点では、外務省は、国民と直接対話する外務大臣の講演会を初めとする広報事業や広聴活動を通じて、双方向のコミュニケーションに取り組んでいるところでございます。

 そのような機会を通じて得られる国民の声を謙虚に受けとめながら、外交政策を立案しております。

 外務省としては、これらの活動を通じて、我が国の外交政策が国益に合致し、我が国の平和と繁栄、さらには国際社会の平和と安定に資するものであることについて、国民の皆様に御納得いただけるよう今後も努力してまいりたいと思います。

 委員おっしゃるように、民意と、それが本当にその民意を発しているときの国民のためになるのかということが、一〇〇%同じとは限らない。特に外交の場合、そういうことが歴史上もいろいろありました。それは、日露戦争が終わるときの話もそうですし、それから、戦前熱狂的支持を受けた外務大臣がやったことが国益に物すごく反したこともあるし、だから、そういうことも考えながら、ただ、正しい政策が民意と一致することが望ましいということは間違いないことなので、そのために全力を尽くしてまいりたい、こう思っております。

伊藤(信)委員 今はグローバル社会の時代で、首脳あるいは外務大臣が世界じゅうを飛び回っています。そういった中において、なかなか日本の外務大臣が国際会議や二国間協議にすぐ飛んでいけないという状況があります。それだけではありませんけれども、日本の外交はいま一つ機動性を欠いているというのは、多分現実としてあるんだろうと思います。

 日本の生命線である外交力をもう少し強化するために、機動性というのを強化していく、確保していくことは非常に喫緊の課題だと思いますが、この機動性の確保には、どのような手段、改革が必要とお考えか。

高村国務大臣 いろいろあると思うんですが、先ほどもちょっと述べましたように、国会に御理解願うというところもあると思いますし、それから、政府専用機、あんなばかでかい専用機じゃなくて、もっと小型、中型の、足の長いものがあればいいなと思うことはよくありますし、いろいろあると思います。

 確かに、日本が、ことしの二月ですか、ミュンヘンの安保関係の協議に出たときに、ほかの中国なんかはよく出ているのに日本からは初めてですねと言われてびっくりしたことがありますけれども、ちょうど国会の最中は行けない、予算審議の最中は行けないというようなことをずっと本当にやっていていいのかな、何のために副大臣をつくったのかな、そういうようなことも考えさせられるところがございます。

伊藤(信)委員 これで質問を終わります。

 ありがとうございました。

平沢委員長 次に、鉢呂吉雄君。

鉢呂委員 民主党の鉢呂吉雄です。

 高村外務大臣については、連休中、パキスタン、アフガニスタン訪問、また今、日中首脳会談ということで、きょうはそういう形でありますが、一般質疑ということで、私は、日ロ問題に限って四十五分間、お話をさせていただきたいと思います。

 戦後、もう六十三年たちました。また、日ロの国交回復も、一九五六年でありますから五十年になんなんとしておる中でございます。しかし、北方四島に住んでいらっしゃったいわゆる旧島民の皆さんも平均年齢が七十五歳とお聞きをいたしまして、この領土問題、北方四島問題の解決が遅々として進まないというような状況でございます。

 その一方、ロシア経済が大変急激に復興しておる。日ロの経済関係も、貿易額がことし二兆五千億ということで、六年前に比べても五倍、貿易額二兆五千億円という形で急展開をしておるわけでありまして、この領土問題と日ロのさまざまな関係について、きょうは外務大臣の御意見をお聞かせいただきたい。

 四月には、ラブロフ外務大臣と高村外務大臣の外相会談、そしてまた福田総理がモスクワに行きまして、プーチン大統領、メドベージェフ新大統領、きょうはメドベージェフ新大統領の就任式という日でもございますので、そういう中で最近の日ロ関係、外相会談、首脳会談を踏まえて御答弁をいただきたい、こういうふうに思います。

 四十五分ですから、最初、私が質問通告した前段の、一九九〇年―二〇〇〇年代の日ロ関係のさまざまな評価については少しはしょりをさせていただいて、本当は聞きたいところです、高村大臣が一九九八年から一年間余、外務大臣をやっておりましたから。私の見方では、一九九〇年代は非常に日ロ関係の領土問題解決の機運は高まった。川奈会談、クラスノヤルスク声明、あるいはまたモスクワ宣言等もありまして、もちろん、東京宣言がその基礎になっておるわけでございます。しかし、二〇〇〇年代に入って、非常に停滞といいますか、特に小泉政権になってから停滞になっておるのではないか、私はこういうふうにとらえておるわけであります。

 そういう中で、一つは、二〇〇一年の三月に、森・プーチン会談のイルクーツク声明、これにおきまして、ロシア側が持ち出したか定かではありませんが、いわゆる一九五六年の日ソ共同宣言に基づいて、これが出発点を設定した法的文書であることを認めという中で、東京宣言に基づいて四島の帰属に関する問題解決という文言でございました。日ソ共同宣言は、もちろん、平和条約を締結していわゆる歯舞、色丹の二島を返還するということが、国会、議会でも批准をされておる日ソ共同宣言であります。

 そこで、高村大臣に、問題を少しはしょりますが、このイルクーツク声明を今の段階で、福田政権、福田内閣としてどのように評価をするのか。とりわけ、二島返還を持ち出した日ソ共同宣言についての高村大臣のお考え、率直なところをお聞かせいただきたい。

 同時に、時間がありませんので言いますが、昨年の十二月二十一日、森元首相がプーチン大統領と会談した際に、このイルクーツク声明というものに基づいて領土交渉を進めるよう呼びかけた、こういうふうに森元総理も記者等に言っておるようであります。当然、これは福田内閣とある面では一体で、こういったプーチンさんに対する呼びかけをしたのではないか、こういうふうにも思われるわけですが、このイルクーツク関係についての高村大臣のお考えを聞かせていただきたいと思います。

高村国務大臣 二〇〇一年のイルクーツク声明は、一九五六年の日ソ共同宣言が平和条約交渉の出発点を設定した基本的な法的文書であることを確認した上で、一九九三年の東京宣言に基づき、北方四島の帰属の問題を解決することにより平和条約を締結すべきことを再確認した重要な文書である、こう考えております。政府としては、これらの文書を含むこれまでの諸合意及び諸文書に基づき、北方四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結するとの従来の基本方針に従い、強い意思を持ってロシアとの交渉を進めていく考えでございます。

鉢呂委員 外務省が発行しております「われらの北方領土」という冊子が、毎年これは発行しておるんですが、きょう、このロシア関係についての冊子が私どもに配られました。日ロ関係についての歴史的な形を非常にコンパクトにまとめておるものでございます。

 その中で、最初の方の結びのところで、政府がロシアとの交渉を強力に推進するためには国民の一人一人の理解と協力が不可欠です、そのためにも北方領土返還に対する国民の総意をますます強固なものとして、これを明確に表明し続けなければならないと思います、こういうふうに外務省が書いております。

 私の見ておるところ、交渉過程の中にありますからすべてを述べるというのは難しいかもわかりませんが、やはり歴史的な形となるような、十年前とか、そういうものについては、もう少しく国民にその当時の交渉過程というものを知らしめていただかなければ、国民の皆さん、北海道なんかは領土問題に対する熱意というのは失われずに持っておりますが、だんだん風化するような形になっても困る、私はこういうふうに思っておりますので、よろしくお願いをいたしたいんです。

 その際、イルクーツク声明においては、いわゆる歯舞、色丹については日ソ共同宣言にもあるということで、返還を前提とするということで、それと国後、択捉というもののもう二島とを分離して、並行協議という形の交渉方式をとろうとしたわけだったというふうに私どもは受けとめております。きょうは余り時間がありませんから、一々確認しないでいきます。

 ところが、森さんがああいう形で支持率を失って政権交代、小泉さんにかわったわけであります。二〇〇一年の四月なわけでありますが、小泉さんが総理に就任して直後に、いわゆる二島先行返還論というもの、あるいは同時並行協議論というものを否定して四島一括解決論、これは一括解決という形ですから、一括返還ということとは違うんですが、四島を一括解決していくというような宣言をしたというふうに受けとめられておるわけであります。

 高村大臣、このイルクーツク声明といわゆる小泉政権の返還交渉論、これについて御説明をいただきたい、また御評価をいただきたい、このように思います。

高村国務大臣 小泉総理の在任中を含め、政府としては、我が国固有の領土である北方四島の帰属の問題を解決してロシアとの間で平和条約を締結するとの方針のもと、ロシアとの間で交渉を行ってきているところでございます。

 また、政府としては、ロシア側が一九九一年後半以降示してきた領土問題に関する姿勢を踏まえ、北方四島の我が国への帰属が確認されれば、実際の返還の時期、態様及び条件については柔軟に対応する考えであることをロシア側に一貫して伝えてきているところでございます。

 このような意味において、小泉総理の在任中を含め、政府としては、北方四島の我が国への帰属が確認されるのであれば、四島が同時に返還されなければならないという考え方はとってきていないわけであります。

鉢呂委員 それでは、もう一度確認をさせていただきますが、イルクーツク声明当時のいわゆる二島ずつの分離協議論、これについて、その当時、そういう方式でこの交渉をしていこうということであったのか。先ほどお答えになりませんでしたが、昨年の十二月二十一日の森元総理とプーチン大統領との、イルクーツク声明というものを基礎にして、基本にしてということとの関連で、高村大臣にこの点について確認をしておきたいと思います。

高村国務大臣 まことに申しわけありませんが、委員の質問の御趣旨が私はちょっと明確にわからないところがあるわけでありますが、歯舞、色丹及び国後、択捉の、歯舞、色丹の引き渡しの態様の議論と国後、択捉の帰属の議論を同時にかつ並行的に進めていくとの考え方については、おっしゃるように、二〇〇一年のイルクーツク首脳会談で日本側より提案しましたが、その後ロシア側より明確に受け入れられないという回答がなされているわけであります。

 いずれにしても、重要なことは、議論のやり方よりも北方領土問題の最終的解決に向けた進展を図ることであり、政府としては、そのために、北方四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結するとの従来の基本方針に従い、強い意思を持ってロシアとの交渉を進めていく考えでございます。

鉢呂委員 前段はわかりました。

 それで、昨年十二月二十一日の森・プーチン会談では、このイルクーツク声明を持ち出しての森さんの御提案があったというふうに新聞報道でもされておりますが、それについてはどのようにお考えになりますか。

高村国務大臣 私、その新聞報道というものが何かよく、ちょっとわからないわけでありますが、我が方とすれば、一貫していることは、四島の帰属の問題を解決して、そして平和条約を締結する、帰属の問題を解決すれば、その返還、いつだとかどういうふうにとか、そういうことは必ずしもこだわりませんよ、こういうことであります。

 そして、先ほど申し上げましたように、イルクーツク首脳会談で確かに日本側で、歯舞、色丹島、これについては引き渡しの態様、国後、択捉については帰属の議論、同時並行的にやろう、こういうことを言ったわけですが、それはだめだよとロシア側から明確にあったわけでありますから、そのことはなくなって、今申し上げたようなことで今やっている、こういうことでございます。

鉢呂委員 わかりました。

 そこで、二〇〇三年の一月に小泉総理がモスクワを訪問いたしまして、初訪問でありましたが、プーチン大統領と日ロ行動計画を策定しました。これは、政治対話とか経済交流とかいろいろ六つの分野で両国間の密接な協力をすべきことという形でありました。

 この考え方自体、六項目を並列的に並べて、平和条約が二番目に来ておりますから、平和条約の中に領土問題も入っておるんでしょうが、この並列的な六項目を今日まで日ロ関係、総合的に推進してきておるというのが日ロの政治的なあるいは経済的な交流の姿だろうと思うんですが、領土問題とのリンケージといいますか、関連性、リンクする姿が非常に見えなくなってきておるのではないか、こういうふうに一般的には思うわけであります。

 後で東シベリアの油田開発等の問題に触れていきますが、大枠として、外務大臣としてどのように考えていらっしゃるのか、お答えをいただきたいと思います。

高村国務大臣 日ロ行動計画につきましては、採択以降五年間の間に、日ロ間の貿易額が五倍になる等、平和条約交渉を除くすべての分野で進展が見られているわけであります。加えて、日ロ行動計画を補完するものとして、昨年六月に我が国から極東・東シベリア地域における日ロ間協力強化に関するイニシアチブを提案し、プーチン大統領の強い支持を得たところでございます。

 他方で、日ロ行動計画の重要な柱の一つである平和条約交渉だけが進展が見られていないということは議員がおっしゃるとおりでありまして、極めて遺憾であります。

 昨年秋及び本年四月に行われた日ロ外相会談でも、私からこの点を指摘し、単に交渉を続けるのではなくて、実際に進展を得られるようにしなければならない旨、強く主張したところでございます。その上で、双方は、領土問題を解決しなければならないこと、また、日ロ関係を高い次元に引き上げていくためにも、領土問題の最終的解決に向け、双方にとり受け入れ可能な解決策を見出すべくさらに真剣に交渉を続けていくということで一致したところでございます。

 また、さきの日ロ首脳会談でも、ロシアとの間で、これまでの諸合意及び諸文書に基づき、双方が受け入れ可能な解決策を、首脳レベルを含め、今後とも話し合っていくこと、また、そのために両首脳が改めて指示を出すことで一致しました。

 政府としては、このような双方の一致した認識を踏まえ、強い意思を持ってロシアとの交渉を続けていく考えでございます。

鉢呂委員 言葉としてはわかるんですけれども、いいとこ取りといいますか、ロシアにとっての経済協力というものだけがどんどん進んでいく、しかし日本側は、外務大臣もそのようにおっしゃってはいるんですが、結果的に、極めてロシア側は消極的な対応、こういう形になっておるのではないか。したがって、この六つの分野というのは非常に並列的で、何のインセンティブもない、何もリンケージもないという形に最近のロシア関係はなっておるのではないか。

 経済関係で、例えば貿易額は二兆五千億で、過去六年間で今言われましたように五倍ですね、二〇〇一年に五千五百億円でしたから。あるいはまた、トヨタ、日産も工場を建てて、トヨタは二百二十億の投資をした。押しなべて、日産、いすゞ、スズキ等も工場進出をこれから、具体的に計画をして何年までに工場を建てるという形になってきておるわけでありまして、この経済問題との連携、リンクといいますかリンケージといいますか、これを日本としてとり得る道はないのかどうか、ここのところを明確に答えていただきたい。

 単に交渉事でやっていても、一方的に逃げられて、ロシアにとっての日本の貢献度というものだけが進展していくという状況になっておるのではないでしょうか。

高村国務大臣 政府としては、日ロ行動計画に基づき幅広い分野で日ロ関係を発展させていくと同時に、北方四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結するとの基本方針に従い、強い意思を持って交渉を進めているところでございます。他方、日ロ行動計画の重要な柱の一つである平和条約交渉だけに進展が見られていないことは、委員がおっしゃるように、極めて遺憾なことだ、こう思っております。

 この点につきまして、先般の外相会談において、日ロ関係を高い次元に引き上げていくためにも、領土問題の最終的解決に向け、双方にとって受け入れ可能な解決策を見出すべく、さらに真剣に交渉を続けていくことで一致をいたしました。また、四月二十六日の首脳会談において、両首脳は、日ロ関係を高い次元に引き上げるためにも、平和条約交渉の進展を図る必要があることで一致するとともに、これまでの諸合意及び諸文書に基づき、双方に受け入れ可能な解決策を、首脳レベルを含め、今後とも話し合っていくことで一致したところでございます。

 平和条約交渉以外の部分は、必ずしも一方的に日本がロシアを援助するという話ではなくて、例えば、貿易が五年間で五倍になった、こういうことは両方にとって互恵的にいいこと、両方にとっていいことを進めていく中で環境を整えていくということで、何か一方的に援助して、それでそれをただ取られされているという感じではないと。ただし、我々から見れば、大変不満なことは、我々にとって一番重要なことだけが進まないでほかが進んでいくことは、それは委員がおっしゃるとおり不満ではありますけれども、何か一方的に、えさだけとられて食い逃げされたという状況にあるということではないんだろう。

 貿易がふえていく、あるいは日本の自動車会社が大変向こうに工場を建てる、それはロシアにとってもいいことだけれども、日本の経済にとってもいいことであるということだろうと。ですから、委員がおっしゃったことに半分同感でありまして、半分はそうでもないのではないかな、こういうふうに思っております。

鉢呂委員 大臣は、ことしの二月七日の北方領土の日に、こういう談話を出して、記者会見で答弁しております、領土問題が解決しなければ日ロ間の飛躍的な友好関係も望めないと。言葉ではそう言っているんですね、飛躍的な友好関係と。これは、のどに刺さったとげ程度に領土問題を言うのであれば、そのことの解決の方向として、本当に解決できるのかということになりますと、いま一つ、日本の戦略的な交渉の態度というのが非常に弱い、こういうふうに言わざるを得ない。

 高い次元に上げていくんだ、これは福田総理の言葉ですよね。去年就任して以来、今まで使っていない、高い次元での日ロ関係にしていくと。高い次元というのは何だ。大臣に聞かなくても、外務省から聞いていますから言いますけれども、領土問題を解決して平和条約を締結するということだ、こういうふうに外務省は述べておるんです。

 高い次元について、今回の首脳会談でも、プーチンも合意した、これはいいんだと。しかし、プーチンはこういうふうにも言っていますね。これは合意文書の中ではなくて、プーチン大統領は、我々は日ロ関係の性格を質的に変えることに成功した、今回のプーチン・福田会談で質的に変えることに成功したと。これは一体何なのか。

 どうも考えれば、今回の首脳会談で合意した東シベリアの油田開発、共同開発、これは、両国が合弁企業を設立して、これに五年間で百億投資をすると。中身はまだ聞いていませんが、どういう分担なのか聞いていませんが、これは経済分野でロシアにとっては成果かもわかりません。しかし、日本にとって、これは合弁会社に日本側で参画するのは石油天然ガス・金属鉱物資源機構といういわゆる経産省の独立行政法人であります。この機構のことしの計画を見ますと、もう既に、このイルクーツクの石油の合弁会社に百億投入するというものを書いてある。福田さんが四月に会う前に計画俎上にもう具体化がなっているようなものが、質的に変えることに成功したというプーチンさんの談話に通じておるのではないか。

 日本の政府も入ってこのような百億を投資するということと、領土問題解決にこれがつながっていくのかどうか。外務大臣の所感をお聞かせいただきます。

高村国務大臣 どのこと一つが領土問題解決に直結する、そういうことには必ずしもならないかもしれませんが、エネルギーを獲得するというのは日本にとっても非常に重要なことでありまして、これはまさに互恵的なことで、これは別に、領土を返してもらうために一方的に援助をするという話ではないということは委員にも御理解いただけるのではないか、こういうふうに思っております。

 いずれにしても、いろいろな関係を高めていく中で、この問題が解決しないと飛躍的に高まらないということは、ロシア側にもはっきり理解してもらわなければいけない。そういうことで、そういう中で、法と正義に基づく、法と正義だけでなかなか国際外交交渉というのは動きませんので、それを返した方が得なんだよということをロシア側にどう説得するかということをきっちりきっちりやっていきたいと思っております。

 委員と一緒に、森元総理のもとで、日ロ友好議員連盟、委員もまさに大幹部でありますけれども、一緒にやっていた。どんな友好的雰囲気の中でも、私は必ずそのときに、友好的雰囲気を多少壊してでも領土問題を主張していた、相手の人と会うときに。そのことをぜひ思い出していただきたい、こう思っています。

鉢呂委員 今、ロシア側は、エネルギーで大変経済も大国化をしているような状況です。しかし、極東、東シベリアを中心に経済の構造改革が必要だということで、製造業ですとかIT産業、また省エネ産業、こういったもので日本の高度な技術を、あるいはまた資本を必要としておる、こういうふうにも言われております。副首相のナルイシキンさんが昨年一年間で二回も、経済界の人二十名以上を連れて訪日をしておる、こういう状況でございます。

 しかし、これと領土問題との関係で、日本が戦略的にどう押していくのか。今回の油田開発で双方に役立つんだということはわからぬわけではないです、わからないわけではないですが、日本の独立行政法人から百億の、折半して五十億も出すという中で、領土問題だけが置き去りになるのではないか、こういう心配をするわけであります。

 もちろん、高村大臣が領土問題に常に言及していることはよく承知をするわけでございますが、思い出しますが、十年前であれば、ロシアの経済が非常に困窮しておるということで、領土に対するロシア側の見方も、ある面では日本と合意しようという機運もあったというふうに思いますが、今日なかなかそれが見えないという中で、経済交流との関係で日本の戦略性が問われておるのではないかな、こういうふうに今私は考えるわけであります。プーチン大統領もいろいろな発言をしておりまして、領土問題はもう既に決着しているかのような発言もなされるだけに、日本として相当の精力が必要ではないかな、こういうふうに思うわけです。

 例えば、これは総理も高村外務大臣も同じように言っておるんですが、ロシアとの会談で、この領土問題について、双方で受け入れ可能な交渉だ、こういうふうに言っております。時間がもう十五分しかありませんので省きますが、双方受け入れ可能なということは、ある面では日本側も譲歩を前提としての交渉だ、こういうふうに受けとめてよろしいんでしょうか。

高村国務大臣 双方が受け入れ可能な解決策とは、これは文字どおり双方が合意できる解決策であり、領土問題の最終的解決に向けて、そのような解決策を見出すべく双方が話し合いを行っております。

 また、先般の日ロ首脳会談では両首脳が改めて指示を出すことで一致しましたが、これは両首脳から外交当局に対してそれぞれ交渉の進展を図るべく一層真剣に話し合うよう指示を出すものと理解しており、私は福田総理よりそのような指示を受けているところでございます。

 日本政府としては、我が国固有の領土である北方四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結するとの基本方針に従い、ロシアとの交渉をずっと行ってきたところでございます。北方四島の我が国への帰属が確認されれば、実際の返還の時期、態様及び条件については柔軟に対応する考えであることをロシア側に一貫して伝えてきているところでございます。

鉢呂委員 高村外務大臣のパートナーでありますラブロフ外相が、これは若干古いんですが、今から三年ほど前、二年半前にロシアのテレビ報道で、国境問題解決の必要性は日本とロシアの問題と強調をしております。そして、中国とロシアの領土問題決着の方式を日ロ関係に応用するというような趣旨の話をしておる。そしてまた、包括的なパッケージ方式を提案して、領土問題を領土問題以外の問題と抱き合わせで妥協を見出すべきである、こういうような発言をしておるわけであります。ロシアと日本は、大規模な貿易経済、科学技術上の発展に莫大な利益をもたらす両国であるというような中身で言っております。

 中国とロシアの領土問題の決着に若干、もう十五分しかありませんので触れることは余り多くできませんが、二〇〇四年の十月、実質は六月だというふうに言われていますが、胡錦濤主席とプーチン大統領が中ロの国境線を画定いたしました。三島、いろいろな島の数があるんですが、未解決の三島をフィフティー・フィフティーで解決、二等分といっても面積がきっちり二等分になるわけではありませんが、そういう形で、この中で使われた言葉が、法律論は横に置いて、双方が受け入れ可能な解決方法として、政治状況によって領土問題を解決した、こういうふうに言われておるわけであります。

 この中ロ国境線画定の決着とにらみ合わせて、ラブロフ外務大臣の二年半前の発言も踏まえて、高村外務大臣の所感をお聞きいたしたいと思います。

高村国務大臣 二〇〇四年十一月十四日のテレビインタビューにおきまして、ラブロフ外務大臣は、ロシアはソ連の継承国であり、ソ連が負った義務の中には一九五六年の日ソ共同宣言が含まれる、ロシアは共同宣言を認めているが、その実現には日ロ両国が話し合う必要がある、中ロ国境の最終的画定は両国が真の戦略的かつ完全なパートナーという水準に達したときに可能となった、日ロ関係に対しても未来志向のアプローチをとることが平和条約締結問題に具体的に取り組むため必要である旨述べたと承知をしております。

 このラブロフ大臣の発言が、二島の引き渡しによる領土問題の最終的解決を図るという趣旨であるとすれば、そもそも二島のみの引き渡しで最終決着できたのであれば一九五六年当時に平和条約が締結されていたはずであり、我が方としては絶対に受け入れられるものではないということであります。

 先般の日ロ外相会談においても、ラブロフ大臣との間では、日ロ関係を高い次元に引き上げていくための努力を行うとともに、領土問題の最終的解決へ向け、双方にとり受け入れ可能な解決策を見出すべく、さらに真剣に交渉を続けていくことで一致をしております。

 政府としては、かかる共通の認識を踏まえ、これまでの諸合意及び諸文書に基づき、北方四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結するとの基本方針に従い、強い意思を持ってロシアとの交渉を進めていく考えでございます。

鉢呂委員 双方受け入れのできるというものに対して、先ほど外務大臣は、帰属が確認されれば、返還の態様とか条件とか、そういうものについては柔軟な対応という発言だったと思いますが、今の、二島、二島という形だけではなくて、フィフティー・フィフティーという意味は、二島についてはもう一九五六年の日ソ共同宣言で、平和条約締結という条件はありますが、ある面では帰属が決まっておる。そのあとの択捉、国後の部分も含めて、いわゆる帰属は得撫島との間で国境線を決めるということ以外の、四島の中身にわたってのいわゆる日本として受け入れのできる形というものがあるのかどうか。これはやはり外務大臣として国民の皆さんに示す必要があるのではないか、こういうふうに思いますが、いかがでしょうか。

高村国務大臣 少なくとも、我が方からそのような案を提案するということは全く頭の中にありません。

鉢呂委員 昨年の十月、ラブロフ会談で、領土問題について具体的な交渉をしていこう、こういうふうに合意していたにもかかわらず、ことし四月までに何ら具体的な交渉にならないということで、私どもは外務省から出たペーパーを忠実に読み込んで言っている話ですが、高村外務大臣の方から、何も進展がなかったのではないかというような形で、もっと交渉を進展させていこう、こういう話があったことがこの外務省のペーパーから読み込めるわけであります。

 そして、今回、福田・プーチン会談で、指示を与えよう、双方で具体的に指示を与える、それぞれの外務省のところに指示を与えることについて合意した、こういうふうなペーパーですが、そういう形でよろしいですか。それは質問事項に載っていなかったかもわかりませんが。

高村国務大臣 外務省のペーパーに正確にどう書いてあるか、私、今ちょっと頭の中にありませんが、それぞれが解決に向けて努力するように指示を与えよう、こういう趣旨だったと思います。

 交渉内容の指示というよりも、首脳が外務大臣あるいは外務省に指示するわけでありますから、真剣に取り組めという指示をお互いにして、少なくとも私はそういう指示を受けていますし、ロシア側でも内部でそういう指示があるのではないか、こういうふうに思っております。

鉢呂委員 外務省のペーパーでは、「首脳レベルを含め、今後とも話し合っていくこと、また、そのために、両首脳が改めて指示を出すことで一致した。」と。「改めて指示を出すことで一致した。」ということですから、高いレベルの指示も含めてそういう指示があるんだろう、こういうふうに思っております。

 高村外務大臣は二回目の外務大臣で、ロシア関係では、やはり私は、この二十年間はだらだら交渉しておったにすぎないような、行きつ戻りつ同じところを回っている、一方では経済交流は、それはもう政府が関与しなくても、経済的なところでそれが利益になればどんどん進むという形になっておるという状況ではないかな、こういうふうに思うわけです。

 したがって、この中ロの国境線画定についても十分参考にしながら、もちろん日本側から言うべきような問題でないことはあると思いますが、交渉事ですから、きちんとまとめていく必要があるときにはまとめなければならない。やはり交渉事ですから、日本が次から次へ外務大臣がかわることはいいことではないと私個人は思っておるんですが、福田政権の内政上の安定性はいろいろあると思いますが、外交関係、特にロシア問題についてきちんと成果を上げていただきたい。

 特に、大臣、この間を見ますと、事務レベルでは盛んに交渉はやっておると思います。しかし、それはあくまでも事務レベルの形で、外務大臣交渉やあるいは首脳会談の設定をどういうふうに押し上げて実り多いものにしていくかということですから、やはり外務大臣が継続的にここにかかわって、外務大臣が会ったときには、前回の外務大臣会談を踏まえたような、高い次元というのはどういうことかわかりませんが、継続性と段階的に引き上がった段階での交渉、そしてぎりぎりの決着を目指した交渉にしていく必要があるのではないか。そういう面では、外務大臣が先頭になって政治レベルの精力的な交渉をぜひやっていただきたいというふうに考えるわけです。

 最後に、ぜひこの関係についての大臣のお考えをお聞かせいただきたいと思います。

高村国務大臣 委員もさっきから言っておられるように、日ロ行動計画の中で我々にとって一番重要だと思うことだけが動いていなくて、そのほかだけが動いている。そのほかが動くということも決して日本にとって悪いことではありませんけれども、一番重要な部分が動いていないということは非常に残念なことでありますし、これを何とか動かさなければいけないと考えているわけであります。

 一生懸命この問題に取り組んでいきたいと思いますので、委員の応援もよろしくお願いしたいと思います。ぜひ、私はちょっと議連の活動から離れていますが、議連のロシアの方たちが来たときにも、どんな友好的ムードの中でも、必ず、この問題はあるんですよということをくぎを刺していただきたい、こういうふうに委員にお願いをする次第でございます。

鉢呂委員 時間が五分あるということなので、もう一つだけ。

 きょうメドベージェフ大統領が就任をするということで、新聞等では、双頭政治というんですか、プーチン首相とメドベージェフ新大統領、この二つの頭でやっていくのではないか、こういう形です。外務大臣として、ロシアの政治権力の中身、また、メドベージェフさんはまだ外務大臣はお会いしていないかもわかりませんが、福田総理が会った感じの、外務省の中身を見ますと、儀礼的な形で、儀礼的な形と言うとおかしいんですが、最初に、プーチン大統領にも福田さんは初めて会ったと思いますが、サミットに対するメドベージェフさんとの会談が主だったようで、領土問題については、これまでの会談の成果を踏まえてというような一般的なものだったような感じがあります。ロシアの大統領のかわり方に対して、外務大臣の所見をお伺いいたしたいと思います。

高村国務大臣 メドベージェフ次期大統領、もうすぐ大統領になるんだと思いますが、それとプーチン次期首相ですか、この影響力でありますが、私の立場で具体的にコメントしろというのは無理な話だということは御理解いただけると思います。プーチン大統領もメドベージェフ次期大統領も、現行のロシア憲法が規定する権限に従う旨述べているものと承知をしております。

 いずれにしても、先般、福田総理が、首相という重要な地位につく予定のプーチン大統領及びメドベージェフ次期大統領との間で個人的信頼関係を構築したことは有意義であったと考えております。

鉢呂委員 終わります。

    ―――――――――――――

平沢委員長 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、政府参考人として外務省大臣官房広報文化交流部長山本忠通君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

平沢委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

平沢委員長 次に、松原仁君。

松原委員 ちょうど今質疑でプーチンさんの名前が出てきたところなので、先般、新聞報道でありますが、福田総理がプーチン新首相と話し合ったときに、拉致問題に対して極めて強いトーンでプーチンさんは北朝鮮を非難した、こういう報道がありましたが、中身はどういう中身だったか、教えていただきたいと思います。

石川政府参考人 お答え申し上げます。

 四月二十六日に日ロ首脳会談が行われました。福田総理より、拉致問題を含めましてロシアが北朝鮮に対して影響力を行使するようにということを要請いたしまして、それに対しまして、プーチン大統領から、今後とも協力していきたいという旨の御発言があったところでございます。それからまた、福田総理は、メドベージェフ次期大統領との会談におきましても、本件の解決に向けて協力していくことで一致をしたところでございます。

 ロシアでの政権交代の時期でございますので、拉致問題に関して協力を確認できたということは大変意義があったのではないかというふうに思っております。

松原委員 協力をここでお互いに首脳同士で確認したということでありますが、当然、そうなるとこれは極めて重要な進展の可能性にもなってくるわけであります。

 高村大臣、このプーチン大統領また新首相、新大統領の、拉致問題に対して協力してやっていこう、こういった発言が日本の最高リーダーである福田さんに対してなされた、このことを受けて、これから具体的にどのようなアクションプログラムを想定しておられますか。

高村国務大臣 今までアメリカも協力してくれると言っていますし、それから中国も、具体的な言葉はともかく、それなりのことを言ってくれていますし、韓国も同じであります。

 ロシアからまたそういう話があったというのは非常にいいことでありまして、この問題は、日本だけではなかなか難しい話で、国際連帯をつくって、そういう中で解決に向けて努力をしてまいりたい、こういうふうに思っております。

松原委員 韓国も新しい大統領になったわけであります。李明博政権において、彼のところにおる韓国統一部の金夏中長官が、三月二十七日、人道主義と同胞愛に基づき北朝鮮住民の食糧難解決を手助けする、こういうふうに言っているわけでありますが、同時に、その条件として、北朝鮮が支援食糧の分配透明性問題やその他の人道的懸案についての態度を変える必要がある、こういうふうに言っているわけであります。

 当然、これは何を意味するかといえば、分配透明性問題ということは、支援食糧が、本当に困っている一般の北朝鮮の国民に行かないで、政府で温存されてしまうのではないかということの危惧の表明であるというふうに言えますし、同時に、人道的懸案というのは、これはいわゆる北朝鮮に対して、日本のみならず韓国の人たちも拉致をされている、こういった拉致についての態度を変える必要がある、もっともっと明白に、オープンにするべきだ、こういう意向を李明博政権の韓国統一部長官は三月二十七日に言明したというふうに我々は理解しております。

 その理解は外務省も共有していますか。

石川政府参考人 お答えします。

 委員御指摘のとおり、日韓間では非常に緊密な連携がとられております。四月二十一日に日韓首脳会談が行われましたけれども、この場におきましても、拉致問題を含む人道、人権問題、これは日韓両国にとって非常に重要であるということを確認したところでございます。

 特に、李明博大統領からは、拉致問題の解決のためにできる限りの協力をしたいということをおっしゃっていただけました。また、この際に、李明博大統領からは、今委員御指摘のとおり、北朝鮮支援に関する考え方を比較的明確に御説明いただきまして、いわゆる非核・開放・三〇〇〇政策、これについての説明があったところでございます。これはまさしく、私ども日本政府が、北朝鮮の問題については、核、拉致、ミサイル問題、こういった諸懸案を解決して、国交正常化が実現すれば経済協力を実施する、こういう政策と基本的に同様の考え方であるということを知りまして、心強く感じた次第でございます。

 いずれにいたしましても、委員御指摘のとおり、今後とも、日韓あるいは日米韓で緊密に連携をしていきたいと考えております。

松原委員 これは、もう一回、当たり前の確認なので一瞬の答弁で結構ですが、盧武鉉政権ではこういうことはなかったということでよろしいですね。

石川政府参考人 李明博政権では、核問題と支援について非常に明確に関連づけているということかと思います。

松原委員 李明博になって盧武鉉と随分変わったということの指摘をしているので、盧武鉉は、拉致問題も同じようにきちっとやりましょうとか言っていなかったですねということを確認しているんです。

石川政府参考人 盧武鉉政権におきましても拉致問題に対する理解はあったと思いますけれども、李明博政権におきましては、核の放棄の問題と北朝鮮の支援というのを非常に明確に関連づけているということでございます。

松原委員 何かそういう実態と違うようなことを言っちゃいけないと思うんだよ。盧武鉉さんは拉致問題に関してそんな熱心じゃなかったというのはだれもが知っていることなんだから。

 それで、私、次に申し上げたいのは、李明博さんが、北朝鮮の食糧支援の場合の分配透明性ということを議論しているわけであります。今、アメリカが北朝鮮に対して、場合によったら人道支援として食糧支援をしようという話がありますが、これに関して日本に対する相談等はありましたか。

石川政府参考人 お答えいたします。

 米朝間で食糧支援の問題を含めまして議論が行われているということについては承知をしておりますが、現時点で、米国が北朝鮮に対する食糧支援の実施を決定したということは承知しておりません。

松原委員 相談があるかどうかというのは、私は相談がないということがあってはいけないと思っているわけでありますが、一つだけ、ぜひともその場合の判断として頭の中に入れておいていただきたいことは、ある脱北者の証言というのがありまして、その脱北者はこういうことを言っていたわけであります。

 今から十年前後前ですか、大変、大飢饉が北朝鮮であった。そのときに食糧難で百万人が餓死したという議論もあるわけでありますが、多くの人が餓死をした。そのときに、いわゆる北朝鮮の政府の中においても食糧が不足をした。もう少しこれが続けば、もちろん一般の人はどんどんと餓死をしているわけでありますが、北朝鮮の政府もついに食糧難を理由にして崩壊する可能性もあったと、可能性でありますが、その脱北者は指摘をしているわけであります。もちろん、人道支援の食糧が一般の飢えた人民に回るのであればこれは価値があるわけでありますが、しかしながら、それが実際に回らなくて政権延命になってしまうということがしばしばあるということを複数の脱北者が指摘をしております。

 今回も、私はアメリカを訪問いたしましたが、北朝鮮自由週間の中でも、北朝鮮の脱北者がたくさん来て、スピーチをしておりました。彼らのスピーチの中でそういった議論が幾つかありました。

 したがって、安易な食糧支援が本当に人道的な意味があるのかどうかということも含め、日本政府は、もし米国から聞かれたときには、そのことを考慮して検討をしていただきたいと思っております。

 高村大臣、御所感をお伺いします。

高村国務大臣 我が国自身がするかしないかと決めるときについては、我が方であらゆる情報をすることは当然でありますが、アメリカ側とも、いろいろな話し合いの中で、当然言うべき話は言ってまいりたいと思います。

 ただ、当然のことでありますが、アメリカが人道支援をするということについて、それをやめろとかそういうことには、直接的な話にはならない。ただし、懸念があるとすれば、その懸念を伝えるということは当然のことだと思っています。

松原委員 公式な見解をおっしゃった上に、今私が申し上げたような懸念があるとすれば、その懸念を伝えるということで私は結構だと思います。

 私は、もとより、金正日政権が崩壊しない限り、真の北東アジアにおける核の脅威もなくならないし、真の拉致問題の解決にもつながらないというふうにかねてからこの委員会で主張してまいりましたが、その意味において、金正日政権が、ことし大変に食糧難になっている。これはもう時間がないから聞きません、食糧難になっております。なっている中で、私は、それは金正日政権を倒すということが、実は北朝鮮の二千万を超える国民のまさに抑圧された状況を解決するために、そして、北朝鮮が何度もうそをついてきている核問題、拉致問題に対しての真実を明らかにするために一番重要なことだと思っておりますから、その懸念を強く伝えてきていただきたいと思います。

 今回、私も米国に行ってまいりましたが、何人かの米国関係者にはその懸念を強く伝えてまいりました。このことは申し上げておきたいと思います。

 さて、実は、今申し上げましたように、今回、きょう傍聴席に来ておられますが、家族会の増元さん、また救う会の副会長、私も、国会の関係がありましたので最後の二日間だけ、北朝鮮拉致問題で米国に行ってまいりました。おびただしい関係者とお会いをしてまいりました。そういったことも含めて、きょうは拉致の問題を中心に、時間が余れば、胡錦濤中国の国家主席も来ているわけでありますから、そこまで踏み込んでいきたいと思っております。

 まず、実は昨年の十一月に、平沼赳夫さんを団長として、家族会、救う会、議連が米国を訪問したわけであります。その趣旨としては、北朝鮮テロ支援国家指定解除、これを何とか食いとめたい、それは北朝鮮のまさに命脈を保つことになってしまう、こういうことで、我々は昨年行ったわけであります。

 きょう申し上げたいのは、私が直接今回行って話をした中身と、私が訪米する前に既に行われた議論をレビューしてもらったものと二つあります。その両方を使いながら御質問したいと思っております。

 あるアメリカの関係者であります、元政府高官であります、北東アジアに関して意思決定に大変に関与する一人であります、恐らく高村さんも個人的に親しいのかもしれませんが、彼は、名前は言いません、北朝鮮テロ支援国家指定解除の可能性が三〇%あると言っておりました。そのとき彼が言ったのは、しかし、日本側が断固として反対ということを表明すれば、この三〇%はどんどん減っていくだろう、こういうことでありました。

 まず、既に何回も答弁していただいているかもしれませんが、確認であります。日本政府としては、テロ支援国家指定解除反対、こういうことでよろしゅうございますか。

小野寺副大臣 四月二十二日、クウェートでイラク周辺国会議があった際に、私の方からライス国務長官にこの問題についてお話をさせていただきました。短時間でありますが、ライス国務長官の方からは、当分の間、テロ指定国家解除の環境にはないということの言明をいただきました。

松原委員 ロスレーティネンさんという下院議員、これはテロ支援国家指定解除反対の法案を出していたわけでありますが、彼女が言うには、ヒル国務次官補と会うごとに北朝鮮との合意のハードルを下げているというふうに彼女は我々に対して言ったわけであります。

 このことに関して、日本側は、ヒル、金桂冠の会談で、そのたびにハードルが下がっているという印象を持っているかどうか、お伺いしたいと思います。

石川政府参考人 お答えいたします。

 北朝鮮は昨年十月の六者会合の成果文書、これに明記されております完全かつ正確な申告を早期に提出し、さらには、二〇〇五年九月の六者会合共同声明に明記された、すべての核兵器及び既存の核計画を放棄する必要があるという立場でございまして、米国はこういう立場をとっておりまして、この立場は従来から一貫しているというふうに認識をしております。

松原委員 一貫しているというか、これは下がっているというふうに米国の議員の方々がおっしゃっていて、実際、今回アメリカに行く前、バーマンさんという下院の外交委員長、これは民主党ですね、カリフォルニア選出です、この方が四月二十九日に、北朝鮮のテロ支援国家指定解除の条件に付す条項を含む、事実上反対の提案をしているわけであります。このことについて外務省はどのように認識しておりますか。

石川政府参考人 アメリカ政府部内のいろいろな立場の表明につきまして、私ども、コメントを云々する立場にございませんけれども、従来より、テロ支援国家指定解除の問題につきましては、累次にわたり、さまざまなレベルにおいて我が方の立場を説明しております。アメリカ側も、その立場についてはきちんと理解をしておりますし、この解除に当たっては日本側ときちんと協議をしていくという認識だと考えております。

松原委員 バーマンさんが四月二十九日にこれを、ロスレーティネン、マンズーロ、シャーマンという三人の方が共同提案者で出して、これは下院で採択をされているわけであります。このことについて、それは評価する立場にないというふうな発言でありますが、日本の立場からいえば、これに関して評価をしないというのは、私は納得できないんだな。こういうものに対して、我々は歓迎するとかなんとかと言うのが、普通、政治的な判断じゃないですか。大臣か副大臣、答弁してください。

小野寺副大臣 四月二十九日の時点での件でございますので、今後、その内容をよく聞きまして、内容について政府部内で検討したいと思っております。

松原委員 副大臣、これは検討を早くしてもらって。もう四月二十九日に出しているんだから。確かに日本はちょうど四月二十九日からゴールデンウイークなんだけれども、しかし、政治にはゴールデンウイークも何もないので、我々はこのときに増元さんなんかと一緒に米国へ行っているわけだから。

 きちっとこのことに関して、高い評価をすると。つまり、こういうことをしても日本政府は何も言ってこないということ自体がどういうことなのか。冒頭言ったように、三〇%の指定の解除の可能性は日本側の断固とした反対の声によって阻止できるということは、指定解除反対という、こういうバーマンさん等のこういった提案に対して、日本政府が、そのとおりだ、我々の思いをよくぞ言ってくれたというふうな声がなかったら、なに、日本は指定解除していいのか、政府はそう思っているのかというふうになってしまうわけですよ。政治というのはそういうものじゃないですか。もう一回答弁してください。

小野寺副大臣 重要な御指摘だとは思っております。また、私自身が、先ほどお話ししましたように、四月二十二日ですが、ライス国務長官に直接このお話をさせていただきました。高村大臣の言葉をかりるわけではありませんが、累次にわたり、言ってみればうんざりするほどこの話はきちっと向こうに伝えさせていただく、そのような努力がこれからも大切だと思っております。

松原委員 アーミテージさんがこの拉致をテロ支援指定国家の要件に入れたというのは御存じのとおりであります。また、アーミテージが、拉致は現在進行形のテロである、こう言ったのも事実であります。今回、そのアーミテージさんが家族会の方におっしゃった内容として、拉致の進展なしにテロ支援国家指定解除をするとしたらそれはけしからぬというふうなニュアンスを言ったそうであります。

 ライスさんとの話し合いのときに、このテロ支援国家指定解除は拉致の問題の解決が大前提だということを小野寺さんは主張なさいましたか。

小野寺副大臣 拉致の問題等もあり、この問題は日本の政府として大変深く問題視しているというお話をしまして、先方からは、当分の間、テロ指定国家の解除の環境にはないというお話をいただきました。ただ、会議の最中の中でのお話ですので、時間は短時間ではありました。

松原委員 ライスさんが、今極めて厳しい環境に自分たちが、ヒル、ライスのラインが、こういうふうな下院の、しかもこれは民主党の議員ですよ、下院外交委員長というのは。今の状況というのは行ってわかるんですが、共和党議員はこの問題でもっと、ヒル氏が北朝鮮と交渉してハードルを下げていることをけしからぬと言いたいけれども、自分の党のボスが大統領ですから、あえてなかなか非難はしない。むしろ民主党サイドが、おかしいじゃないかという声が今上がってきているんですよ。だから、こういうふうな、テロ支援国家指定解除はだめだという法案が下院で、民主党が委員長である外交委員会で通るんですよ。こういう状況になっているんです。

 だから、私は、少なくとも、そうした中において、我々は人権というまさに国際的に普遍的な概念でいくならば、やはりライスさんに対して、環境がそうだから当分の間できません、アメリカの下院議員がいろいろとこういうふうな、四月二十九日のこんなのも出してきて非常に厳しい環境になっているから、民主党議員ですら中には反発する人がいるからできないんだと言うのは、それは彼女の立場からいけばそうでしょう。しかし、日本側としては、拉致の解決なくして、当然核の解決なくして、私は、両方の解決は金正日政権が崩壊しない限りあり得ないと言っているんだけれども、だめだということをやはりこれからは言明していただきたいと思います。拉致を入れてそのことを言明するということを、一応この際、もう一回確認したいと思います。

小野寺副大臣 政府としましては、拉致の問題、大変重要な問題ですので、それを米国政府にしっかりと伝えていきながら、この問題については、日本政府の考え方を継続して伝えていきたいと思っております。

松原委員 シンガポールにおける暫定合意、いわゆるヒル、金桂冠の暫定合意、なかなか明らかになっていない要素もあるようでありますが、日本政府としてはどこまで認識をしているのか、御報告をいただきたい。

石川政府参考人 御承知のとおり、昨年十月の六者会合成果文書におきまして、すべての核計画の完全かつ正確な申告を行うということになっておりまして、現在のところ、それに向けて米朝間の協議が進められているというふうに承知をしております。

 内容につきましては、外交上のやりとりであることもあり、お答えは差し控えさせていただきたいと思います。

松原委員 この委員会でお答えを差し控えるというのは、まあいいでしょう、それは外交上の問題だからというので。しかし、内容を全部把握しているんですね。確認します。

石川政府参考人 お答えいたします。

 私どもとしましては、米国と従来にわたり緊密に連携をとっておりまして、情報交換を緊密にやっております。

松原委員 緊密なのはいいんだけれども、アメリカの例えばこの下院議員の方々が外交委員会でこういったものを通した。なぜかというと、その暫定合意の中身が一応何とはなしに伝わってきて、こんなので妥協するのかということなんですよ。

 実は、私はヒル国務次官補と今回も四十分ぐらい議論をしてまいりました。その間で、私はヒルさんに対して、原子爆弾を製造している工場の場所を、ヒルさん、あなたは北朝鮮側から聞いているのかということを確認したわけであります。私は冒頭、あいさつをした直後にそのことをいきなり聞いたわけでありますが、彼は、率直に言えば、それから十分ぐらい、関係ないとは言わないけれども、そのことに答えないで、ほかの話をしたわけであります。答えない。だから、四十分のミーティングというか会談で、最後、もう一回聞いたんですよ。さっき初めに聞いたのに答えてくれていないけれどもどうなっているんだ、一体、北朝鮮の原子爆弾の製造工場をあなたは知っているのかと。彼は、知らないと言ったんですよ、そのことが問題だと言ったんですよ。

 暫定合意の中身も何も、大体、我々が考えれば、北朝鮮が原子爆弾を持っています、ではどこでつくったんだ、つくった場所を言えませんと。そんな基本的なこと、私は今事実をここで開陳したわけですが、そのことを聞いていましたか。

石川政府参考人 お答えいたします。

 先ほど申し上げましたとおり、日米間では非常に緊密に情報交換をしておりますけれども、ただいまの原子爆弾製造工場の問題につきましてヒル次官補が貴委員に御発言があったことについて私どもがコメントするというのは適当ではないと思っております。

 いずれにしましても、北朝鮮が早期に申告を提出して、核計画の全体像が明らかにされるということが重要だと考えております。

松原委員 しかし、これは極めて重要なことなんですよ。その程度の議論しかまだヒル氏はしていない。だから、それを聞いたライスはさすがに、こんな状況じゃと。当たり前ですよ。原子爆弾の工場の場所すら、それは、プルトニウムの三十キロか五十キロなんかどこかに隠しちゃえばわからないんですから。原子爆弾の工場の場所は隠せない。不動産ですよ。この基本的な場所をヒル氏は特定していないんですよ、北朝鮮から教えてもらっていないんですよ。

 そのことを、大臣か副大臣、聞いていましたか。

高村国務大臣 どこにあるか聞いているか聞いていないかということについては、聞いておりませんでしたが、いずれにしても、完全な申告の中に核計画というものが含まれるので、そういうものが最終的に出てこない限り、私としては完全な申告ではない、こういうふうに思っております。

松原委員 それは、高村大臣だけではなくて、ライスさんもさすがにこれじゃだめだと思ったんでしょう。

 北朝鮮も、にせ遺骨とか、にせのいろいろなものをつくったりするけれども、にせの原子爆弾製造所は簡単につくれないんですよ、金がかかるから。だから教えないんですよ。もし簡単ににせの原子爆弾製造所がつくれたら、これですと言うかもしれない。

 そういった中で、私は幾つか聞きたいわけでありますが、米側は、アメリカの中にも幾つかの意見があるわけです。北朝鮮が濃縮ウランをつくっていたかつくっていないか、今それをつくっているのかどうか、いろいろな議論があって、例えば、それに関してボルトン前国連大使は、北朝鮮側から提出をされたアルミチューブからウラン濃縮のものが出てきた、また、国家情報長官のマイケル・マコーネル氏も、平壌はウラン濃縮計画を否定し、核拡散を否定しているが、我々は北朝鮮がいずれも続けていると確信をしている、こういうふうに言っているわけであります。

 日本政府としてこのことに関してどういう認識を持っているか、お伺いしたい。

石川政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、ウラン濃縮につきましていろいろな方の御意見があるということは承知をしております。いずれにしましても、米国とは非常に緊密に、先ほど来申し上げておりますように情報交換を行っております。

 ただ、ウラン濃縮の事柄の性質上、あるいは関係国との関係もございまして、具体的な内容については差し控えをさせていただければと存じます。

松原委員 アメリカの場合は、こうやってウラン濃縮があると。ヒルは、それはない、こう思っているのかもしれないけれども、あると。日本側としての見解というのは、核問題にしても拉致問題にしても、アメリカより日本の方が直接的な危機を持つ問題だし、直接的に現在進行形のテロが行われている問題なんだから、アメリカでこういう発言があるのに、日本は発言を控えさせてもらいますと。一体この国の政府は何を考えているんだということになるじゃないですか。

 小野寺副大臣、めり張りをつけて言ってくださいよ、思いを。

小野寺副大臣 御期待に沿えないかもしれませんが、私ども、北朝鮮が早期にすべての核計画の完全かつ正確な申告を提出するよう日米協力して、さらにまた日米韓で連携しつつ引き続き努力していく、そういう所存でございます。

松原委員 米朝のこの協議、非常に私にはわからない、理解できないのは、さっき言ったように、日本が一番の当事国ですよ、拉致問題も含めて。今回、ホワイトハウスのワイルダー上級部長が言ったのは、彼は、アメリカは日本の拉致問題に対して常に深い憂慮と関心を持っているんだ、こういうふうに言ってくれている。我々日本側がこのことに対して余りにも情報や思いを出さないということは、私は政府として極めて責任を果たしていないような感じがしているんですよ。

 さっきの質問にもう一回戻りましょう。

 ロシアの首相になるプーチンさんが拉致問題に関して、ともにやりましょうと言った。李明博は、韓国の大統領はこれを取り上げて、頑張ろうと言っている。アメリカは、今回の訪米でも明らかになりましたが、このことを熱心にやろうとしている。日本は当然、当事国家であります。拉致を、いわゆる継続するテロをされた国家であります。六カ国協議の中でこの四つの国がここまで明示的に拉致問題を何とかしようという環境は、私は、従来よりもある意味で前進をしている、韓国の政権が変わったことが極めて決定的な要素になっていると思いますが。

 六カ国協議というのは、そもそも核の問題を扱うということを言っているけれども、そのテーマの設定というのは参加国によって決めることができるわけであります。私は、この状況の中で、本当にロシアが、この人権問題でどこまでやれるかというのはいろいろな議論がありますが、しかし、少なくともそういった自国の人権問題と切り離してでも拉致の問題は日本との友好のためにやりましょうというふうに思うならば、また、韓国がやろうと言うならば、アメリカがやろうと言うならば、六カ国の中の四カ国が拉致問題をやろうと言うならば、六カ国協議の当然テーマになり得るというふうに思っておりますが、この辺に関しての御所見をお伺いしたい。

高村国務大臣 六カ国協議の一番主たる課題は核問題である、これは客観的な事実であります。ただ、その成果文書の中に拉致問題を含む日朝関係を進めろということも書いてありますし、それについて六カ国協議がこれに関与しない、こういうことではもう既にないわけであります。

 日本は、核の問題と拉致の問題を、それぞれ、人によっては違うかもしれませんが、同等に重い問題だととらえているわけであります。拉致と核あるいはミサイル。しかし、拉致は大変な人権問題で、協力しますよと言ってくれている国がすべて核問題と同じに考えてくれているかどうかということは、必ずしもそうではないという現実がある。

 私たちは、拉致の問題が少なくとも日本国にとっては核問題と同等に大きな問題であり、そして、この問題は単に一国の問題ではなくて、人権の問題ということで、人の命という問題で国際的に普遍性を持った問題であるということでこの問題の大きさを各国に訴え続けて、そして国際連帯をより緊密な形でつくって、そして解決に向けて努力をしていきたい、こういうことをずっとやってきているわけでございます。

松原委員 政治というのはいろいろな側面があって、外交もいろいろな側面がありますが、先ほども話があった、ロシア側も協力しましょうと。ではどういう協力があるのか。それは、六カ国でこれを扱おうというお願いをしてみる。扱わなければ扱わないで、彼らの協力というのはそれまでの協力だ。いや、扱いましょうと言えばそういう協力だ。それは、日本側が相手に対してお願いをしなければ、日本側が口火を切らなければそういう議論にはならないですよ。

 日本側から、ロシア、韓国、アメリカに対して、六カ国で核の問題と並行して、我々の思いとしては拉致問題を扱ってほしいということを言う御決意はありませんか。

高村国務大臣 おっしゃいますけれども、テロ支援国家指定解除の問題についても、アメリカの国内法の、アメリカの問題であることについて、日本側がずっと日本側の意見を伝えて、そして今こういう状況にあると。それは、核が進まないからそういう状況にあるだけだとか、あるいはアメリカの議会の中で反対があるからそう言うだけだ、そういう話では必ずしもないので、そういうことももちろん関係あるけれども、日本政府の努力、もちろん委員の努力もあるでしょう。その他大勢の人の努力があって、そしてこういうところに至っている。日本政府とすれば、ほかの国から見れば、みんなが核をやめさせるためにエネルギー支援もやろうと言っているときに日本政府だけやらないというのはおかしいよと言われながらも、おかしくないんだ、日本にとってはこれは大変な問題なんだと言い続けているということはぜひ御理解をいただきたいと思います。

松原委員 私は、それを理解していないとは言っていないんですよ。

 私の質問は、六カ国でこれを扱うべきだということを日本側からさらに今この段階で言う決意があるかというのを聞いているんです。高村さんがこのことに関して努力をしていないとは思っていないし、しているのもわかっている。しかし、今この段階で六カ国でそれを扱うべきだと言うべきだと私は思っているけれども、高村さんはどうするんですかと聞いているんです。

高村国務大臣 いつどのように言うかは別にして、それはずっと言い続けますよ。そういうことを言い続けてきているから、成果文書の中にも、テロに関するものも含めて日朝関係を進めるということも入っているわけですよ。これは六カ国の合意文書で入っている。

 これは、いつどの時期にどういうふうに言うか、一番効果的かということは別にして、それをずっと言い続けてきているということを事実として申し上げておきたいと思います。

松原委員 ずっと言い続けてきているのならば、改めてまたそれを正式に、正式に外交上どうやるかというのはわからないですが、目に見える形で、韓国、ロシア、アメリカに対して、私は、今までおっしゃってきているとしても、もう一回ここでおっしゃっていただきたいということを強く要望しておきます。

 実際、北朝鮮という国は非常に信用ができない国であります。今回、ヒル国務次官補は、我々に対してそこまで言っていいのかどうかわからない話でありますが、彼は、私は北朝鮮を信用しておりませんと。信用していない相手とどうやって議論しているんだと、それも、アメリカの下院議員が言うには合意の中身を随分ハードルを下げながらという疑問も残っているわけでありますが、彼は信用していないと言った。

 信用できないのは当たり前であります。前から申し上げているように、クリントンのあの合意のときに、核は実はうそをついてやっていた。我が日本の拉致問題に関して言っても、にせの横田めぐみさんの遺骨が出てくる、にせの死亡証明書が出てくる、にせの交通事故証明書が出てくる。北朝鮮が仮に合意してもっともらしいことを全部言っても、その内容を履行する可能性は、極端な言い方をするならば、太陽が西から上っても北朝鮮がそれを履行することはないぐらいに厳しいと私は思っている。

 言葉をかえて言うならば、北朝鮮の核開発をやめさせるには、政権が崩壊しない限りあり得ないんですよ。あえて、だまされるのに担がれようと思って行くなら別ですよ。しかし、政権が交代しない限り、あの国がどこまでうそをつくか、みんなわかっているわけですよ。だから、ヒルだってわかっているけれども、半分担がれたいと思っているのかどうかわからないけれども。拉致も核もそうですよ。

 したがって、冒頭言ったように、食糧支援は懸念をきちっと伝えて、私は、金正日の政権の崩壊というものを目指していかなければいけないというふうに思っているわけであります。このことに関してはどういうふうなお考えか。では、小野寺さん。

小野寺副大臣 私どもが目指しておりますのが、北朝鮮に関しては、これは委員御存じのとおり、すべての核兵器及び既存の核計画を放棄する、あるいは拉致問題についての前進を図るということが大切だと思っております。政権の崩壊云々につきましてはここでお話をすることではありませんが、人によっては改悛の情があることもあるかもしれませんし、いろいろなことも想定できますが、私どもとしては、やはり目的としては、北朝鮮にしっかりとした、国際社会の中で対応できる国になってほしいということだと思っております。

松原委員 これは、改悛の情があるといったってだめなんですよ。なぜだめかというと、拉致問題の主犯は基本的に金正日なんだから。問題の解決というのは、被害者を救出するだけじゃなくて、主犯を捕まえなきゃいけないんですよ。主犯が金正日以外にいるというのであれば、それは日本国民はそんな話は信じませんよ。したがって、もう結論は崩壊しかないんですよ。

 残りわずかな時間ですが、今回、民主党関係者にも会ってきました。そのスタッフというか、恐らくそっちの流れの中ではかなり北東アジア問題に発言力を持つだろうという方々にも会ってきました。彼らは一様に、日本の拉致問題とベトナム戦争のときの捕虜解決問題、同じようなニュアンスで話をした。私は全然違うと思う。もう時間がないので、中身をちょっと答弁してもらってからと思ったけれども、要するに、アメリカは、この人は生きていると思って、そしてベトナムのヘリコプターを使ったりしていろいろとやって、骨を本物かどうかをチェックしたりした、こういう話であります。

 これは、誘拐をするのと戦争において捕虜になって行方不明なのは根本的に違うと思うので、こういったアメリカの民主党の方々の認識、アメリカの民主党の関係者と言った方がいいね、民主党の研究スタッフの考え方というのは私はかなり違和感を覚えたんですが、私の質問の趣旨がわかればちょっと御答弁をいただきたい、大臣。

高村国務大臣 民主党のスタッフの方がどういう観点からそれを言ったのか、私は全く知らないわけでありますが、戦時における捕虜と平時における拉致、誘拐と全く違うというのは、それはそのとおりです。解決の方法について同じ面があるのかないのか、どういうことを言ったのか、それは私は直接聞いておりませんからわかりません。

松原委員 まさに根本的に違う。誘拐をしてその国家が生き残っていれば、それは隠ぺいするわけですから。今の御答弁で結構です。今後恐らく高村さんが向こうのそういった人と会うと、彼らは、ベトナムのときの、こういうふうに言うだろうから、それは違う、こう言ってもらえれば私は大変満足であります。

 さて、そうした中で、やはりアメリカの元高官であります。日本は六カ国協議から脱退の意思を示すぐらいの強硬な態度が求められるんではないかというアドバイスをする人がおりました。今高村さんがおっしゃったように、我々は北朝鮮に対して拉致問題の解決がない限り支援をしない、これは極めて当たり前だと私は思っております。日本の主権であり、人権であるという問題が侵犯をされたわけでありますから。その米側の人が言った、六カ国から日本は場合によったら脱退するぐらいの決意を持つべきだと。これは極めてアメリカの保守政界では有力な方であります。この発言に対して、私は、そうだろうな、それも一つの我々のとり得る外交的な手段になるだろうなと思っております。我々が人道問題、主権問題において毅然とした態度をとることにけしからぬと批判する人はいないと私は思う。そこは我々の判断であります。このことに対して、大臣か副大臣に答弁を求めたい。

高村国務大臣 六カ国協議から抜けるつもりはございません。六カ国協議から抜けて、核の問題にしても、拉致の問題にしても、ミサイルの問題にしても、日本が一国で、今やっていることに不満があるとしても、今やっていることよりさらに有利にできるとはとても思えないからであります。

松原委員 であるならば、私は、さっき申し上げたように、アメリカ、ロシア、韓国、連携をして、きちっと拉致問題を六カ国のテーマに上げるべく全力で取り組んでいただきたいというふうに思っております。北朝鮮に、さっき言ったように、今の政権下において核問題や拉致問題の解決ができるとは私は到底思えない、そのことも踏まえておきたいと思っております。

 時間がわずかとなりましたので、今、中国の胡錦濤さんが来日をしております。質問したいわけであります。

 胡錦濤氏の来日のこの会談において、拉致問題について話し合う予定はありますか。

高村国務大臣 福田総理と胡主席の首脳会談におきましては、北朝鮮の核問題や拉致問題についても議論がなされました。

 福田総理からは、六者会合における中国の役割を評価している、北朝鮮の廃棄に向け、引き続き連携していきたい旨述べました。また、拉致問題を含む日朝関係も前進したい旨述べ、我が国の日朝国交正常化についての方針を説明しつつ、引き続き中国の理解と協力を得たい旨述べました。

 これに対し、胡主席からは、日朝関係が前進することの重要性に言及しつつ、日朝が諸懸案を解決し、国交正常化を実現することを歓迎し、支持する、中国側は、このために必要な協力を行う旨述べました。

松原委員 私は、もちろん、拉致問題の解決のために頑張りましょう、いいですよ、これはいいんですよ。そこに具体的なアクションプログラムが入らなければいけないと私は思う。

 首脳同士のレベルでありますから、さっき言ったように、中国は今六カ国の議長国ですね、違いましたっけ。したがって、福田さんは、中国に対して、拉致を六カ国で扱うべきだということを提言するべきだと思いますが、いかがですか。

高村国務大臣 主張すればそれでいいというのであれば、そういう方法もあるでしょうが、中国との間でどこまでとれるかということを考えてやっていくとすると、福田総理がおっしゃったような言い方で中国が答えたような言い方が現時点で限度ではなかろうか、こういうふうに思っております。

松原委員 仮にそれを言いっ放しであっても、それは福田さんのレベルでやるのか、高村さんがおっしゃるのかわからないけれども、それは言うべきだと私は思います。それが政治のプレゼンスだと私は思っております。

 もう一つ、最後にお伺いしたい。

 今回、中国の国家元首が来日をした。ウィーン条約に反する中国側の三つの責任問題、従来から私は言っておりました。いわゆる瀋陽の不法侵入、瀋陽における日本の領事館、北京大使館の破壊活動、上海の自殺。プラスして今ギョーザの問題もある、ギョーザの問題はウィーン条約とは関係ありませんが。このウィーン条約抵触の三セットに関して、今回の国家元首来日によってゼロクリアになるわけじゃないんで、こういう辛口の話はしたくないけれども、今後とも、このウィーン条約抵触の三つの問題に関して、日本政府は中国に謝罪を求めていく決意がありますか。

小野寺副大臣 瀋陽の領事館事件につきましては、事件後、中国側に抗議を申し入れました。外相間において、領事条約協定の締結を含め、再発防止のための協議を行うということで一致をしております。

 それから、二〇〇五年四月の中国で起きたデモ活動に伴う公館に対する暴力行為につきましては、累次にわたり、陳謝、原状の回復等を含めた中国側の責任ある対応を求め、中国側は国際慣習及び国際法の関連する原則に従って適切に処理する旨述べてまいりました。

 原状回復については、在中国大使館、大使公邸、在上海総領事館のいずれも、中国側の費用負担によって既に修復されております。陳謝についてはなされておりませんが、中国側からはお見舞いと遺憾の意は表明されております。

 上海領事館員の自殺につきましては、中国政府に対して、厳重な抗議を行うとともに、事実関係の究明を累次にわたり求めております。

 いずれにしても、それぞれの事案に対して中国側に適切な対応を求めてきておるところでございますし、これからもそのことを続けていきたいと思っております。

松原委員 もうやめますけれども、要するに、中国という国は日本にとって極めて大事な国であります、拉致問題の解決でも重要なんでありますが。したがって、中国には、きちっと日本が何を考えているか伝える、我々の意思を明確に、白地に黒で書くように伝えるということをしていかなければ本当の友好は生まれてこないと私は思っております。そのために御奮闘していただきたいと思います。

 以上であります。ありがとうございました。

平沢委員長 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。

 きょうは、四月十三日に起きまして、当委員会でも繰り返し問題になりました、沖縄県北谷町の衣料品店で発生した万引き事件について聞いていきます。

 まず、警察庁に聞きますが、現場に駆けつけた憲兵隊員が米兵の息子二人を基地内に連行した問題をめぐって、沖縄県警と憲兵隊との間で、これまでにどういうやりとりがあったのか、説明していただけますか。

井上政府参考人 まず、事件そのものについてでありますが、沖縄県警察本部からの報告によれば、その概要は以下のとおりであります。

 四月十三日に、沖縄県北谷町にある衣料品店内において、外国人による万引きを店員が認知をし、店の外に出た段階で話しかけたところ、暴れ出したので、三名のうち二名を確保し、一一〇番した。なお、被疑少年は、いずれも米軍の家族であり、十八歳未満の少年である。

 その後、沖縄県警察が到着する前に米軍憲兵隊が到着をし、被疑少年二名を手錠で拘束した。通報を受けた沖縄県警察の警察官は、その後に現場に到着し、まだその場にいた憲兵隊員に対し通訳を介して身柄の引き渡しを求めたが、憲兵隊はこれに応じず、憲兵隊事務所に連行したというものであります。

 その後、四月十五日に、沖縄警察署長名で米憲兵隊司令官あてに文書を発し、憲兵隊が本件を認知した経緯、憲兵隊がとった対応の根拠について回答を求めました。

 四月十八日には憲兵隊から回答がございました。しかしながら、この米海兵隊憲兵隊の主張する事実と沖縄警察署が把握をしている事実に大きな違いが生じていることから、関係者から再度事情聴取するなどして確認をし、四月二十三日に再度申し入れを行ったところであります。

 その内容は、事件発生当時、沖縄警察署の警察官が憲兵隊員に対し被疑少年らの引き渡し等を求めたが、現場においては拒否されたことを示し、今後同様の事態が発生しないよう、再発防止への取り組みを要請したというものであります。

 これに対し、憲兵司令官から、その場で、沖縄警察署の見解は理解をした、今回の事件をとらえ、今後憲兵隊の指導教養を徹底する旨の話があったという報告を受けております。

赤嶺委員 外務大臣に伺いますが、大臣は、事件発生後の先月の十六日の本委員会で、アメリカ側の対応について大いに問題があり得る、このように答弁をいたしました。

 その後の、今お聞きになりました現地レベルでのやりとりを通じても、海兵隊員が少年二人に手錠をかけ、その後、現場に駆けつけた警察が身柄の引き渡しと事情聴取を求めたにもかかわらず、それを拒否して基地内に連行したことは明らかであります。

 基地の外での米軍の軍事警察の使用、これは地位協定上も「合衆国軍隊の構成員の間の規律及び秩序の維持のため必要な範囲内に限る」と極めて限定をされています。外務大臣は、今回の憲兵隊の行動について、地位協定に違反する行動としてアメリカ側に抗議をし、是正を求めておりますか。

西宮政府参考人 ただいま委員御指摘の事案につきまして米側に説明を求めたところでございますが、憲兵隊は、二名の米国人が商店で窃盗を働き逃げ出そうとしているとの通報を受けて、現場に急行の上、この米軍人家族が暴力を働く可能性があったということで、それを防ぐために手錠をかけたが、逮捕したわけではないとの説明を受けておるわけでございます。

 もっとも、このような初動の対応は別といたしまして、県警が現場に到着した後につきましては、憲兵隊と沖縄県警との間で十分な調整がなされないまま米軍人家族が施設・区域内に戻されたという状況が生じたことは遺憾であると考えておりまして、四月十七日に、米側に対して、こうした遺憾の意を伝達するとともに、施設・区域外の警察権の行使に当たっては地位協定及び関連取り決めに従って沖縄県警に協力するよう申し入れたところでございます。

赤嶺委員 もう現地レベルでは、先月の時点で決着がついているわけですね。遺憾の意を伝えたということでありますが、外務大臣、そういうことですか。外務大臣みずからが伝えられたんでしょうか。

高村国務大臣 私みずからではありませんが、遺憾の意をきっちりと我が方からアメリカ側に伝えているということでございます。

赤嶺委員 私は、あの少女の暴行事件が発生した後、外務大臣が、共同パトロールだ、こういうことを国会で述べられたときに、これにはさまざまな問題があるということを指摘いたしました。地位協定の運用改善で解決するといっても、決められた地位協定さえ守られていないというのが現状なんですよ。それで、私は、こういう問題には毅然と抗議すべきだ、遺憾の意を伝えただけではとどまらない、それは、そういう類似の事案がこれまでも繰り返されてきたからだということを申し上げたいんです。

 ただ、一点確認しておきたいんですが、先月の二十五日の安保委員会で、北米局長は、米軍の軍事警察、今も述べられたわけですが、二名が窃盗を働いている、これを発見した店員から逃げ出そうとしているとの通報を受けて、沖縄県警察に連絡を行い、軍事警察も現場に急行したとの説明を受けている、このように答弁をいたしました。ところが、警察庁は、四月十三日の当該事案発生後に、沖縄県警察署の通信室に憲兵隊から、当該事案の発生現場付近で外人の関係するけんかがある旨の入電があった、このように説明しているんですよ。

 一方は窃盗と言い、一方はけんかがあると言う。憲兵隊は、窃盗事件が発生しているという通報を受けながら、県警にはけんかだという連絡をしているわけですね。これはどういうことでしょうか。県警にはうその説明をしたということになりませんか。

西宮政府参考人 御指摘の点につきましては、県警と憲兵隊の報告の間には若干の隔たりがあるように感じておりますが、私どもが在京米国大使館を通じて聴取したところによりますと、憲兵隊は、基地職員からの通報を受け、沖縄県警察に連絡するとともに、憲兵隊を現場に派遣したということでございまして、必ずしも連絡の中身については回答がございませんでした。

 なお、先ほどの点に追加させていただきますれば、五月二日にさらに米側に、十分に調整が行われないままこのような事態になったことにつき説明を求めましたが、そのときの回答においても、在京米大からは、調査の結果、アメリカの憲兵隊は沖縄県警が米軍人家族を逮捕すると考えていなかったようである、当日のやりとりについて県警と憲兵隊の報告の間に引き続き隔たりがある、両者の間に誤解があったと考えることは不幸であるが、憲兵隊を含む在日米軍は本件に関する沖縄県警の捜査に対し全面的に協力することにコミットしているとの回答を得た次第でございまして、先ほど申し上げましたように、このような十分な調整がなされないまま施設・区域内に当該家族を戻したということは遺憾であるということでありまして、五月二日にも改めまして米側に対しまして、十分な調整がなされなかったことは遺憾である、憲兵隊が施設・区域外で警察権を行使するに当たっては地位協定及び関連取り決めに従って沖縄県警に協力するように申し入れたところでございます。

赤嶺委員 地位協定、関連取り決めを米側が守らなかった、当初の連絡も、けんかだと言って、あたかも地位協定上何がしかの根拠があるかのような雰囲気をにおわせたり、逮捕じゃなかったと言ってみたり、この間の過程を見ると、地位協定に違反しておきながら違反していないんだということを取り繕う米憲兵隊の姿が私は見えてきていると思うんですよ。

 ところで、先月の沖縄の地元新聞の取材によるものですが、複数の海兵隊関係者の話として、憲兵隊の新隊員訓練では、日常的に、県警より先に身柄をとり基地内に連れ戻せと指導している、このように報じています。これが事実とすれば極めて重大です。

 外務省は、憲兵隊で具体的にどのような教育が行われているか、つかんでおりますか。

西宮政府参考人 御指摘の報道につきましては承知しておりますが、具体の中身につきましては把握しておらず、コメントは差し控えたいと思います。

 ただ、その上で申し上げれば、米側も地位協定及び関連取り決めを当然遵守すべきであるとの考えのもとで行動してきていると認識しておりますし、そういった考え方に合致しないこの間の事例などについて、我々としても、遺憾の意を申し入れるとともに、沖縄県警に十分協力するよう申し入れているというところでございます。

赤嶺委員 いわば地位協定の取り決めに反するような行動を子細に追っていくと、地位協定の網の目をくぐり抜けてでも米軍の優先的な身柄の確保を何とかしたいというような経過が明らかだし、私は、この報道は十分に根拠がある、きちんと、米海兵隊において、憲兵隊においてどんな教育がされているか、日本政府はつかむべきだと思います。

 ちょっと時間がないんですけれども、もう一点聞きますが、これも警察庁に聞きますが、三月十六日に沖縄市内で発生したタクシー強盗事件、沖縄県警は容疑者の憲兵隊員を米軍基地内の拘禁施設に拘禁するよう求め、アメリカ側から善処するとの回答があったと答弁しております。いつだれがだれに対して要請を行い、容疑者の憲兵隊員はいつ拘禁されたんですか。

米田政府参考人 この要請は、四月二日、沖縄警察署長から憲兵隊の司令官に対してなされました。その時点で、米軍からは善処するという回答をいただいておりまして、そして、四月十一日に米軍の中で拘禁施設で拘禁をしたということでございます。

赤嶺委員 要請が四月二日、そして拘禁が四月十一日。その犯人の憲兵隊員は十日間近く拘禁されていないわけですね。

 警察としては、共犯の少年を四日、五日に逮捕できたから問題ない、そういう立場をおっしゃっていたんですが、そういう立場なんですか。

米田政府参考人 捜査への支障という点から申しますと、共犯少年は四月四日と五日に逮捕されておりまして、通謀のおそれはなかった、それから、拘禁はされておりませんが、米軍の監視下にこの米兵はございましたので逃亡のおそれもなかったということで、捜査への支障はなかったものと考えております。

赤嶺委員 私、警察庁も本当に、この間の米軍犯罪の事案を考えてみると、非常にだらしないと思うんですね。いわば、県警が要請してから十日近く、監視下に置かれていたと言いますけれども、憲兵隊員が基地の中を自由に歩いているんですよ、タクシー強盗の犯人の憲兵隊員が。少年四人の逮捕にしても、実際に身柄の引き渡しが行われたのは要請から三日後のことですよ。だれが考えても、このぐらいあれば口裏合わせは十分できたはずだと考えるのが自然だと思いますが、外務大臣、いかがですか。

西宮政府参考人 御質問に直接お答えできないかもしれませんが、捜査にかかわることにつき、外務省としてお答えする立場にはございませんが、私どもといたしましても、警察による捜査は法と証拠に基づき適切に行われたものと承知しており、その後、起訴され、身柄の引き渡しも行われたものというふうに承知をしておる次第でございます。

赤嶺委員 法と証拠に基づいて適正に行われていない疑いを持っているから、いろいろ聞いているわけです。

 それじゃ聞きますが、警察側がアメリカ側に対して拘禁施設への要請を求めるのはどういう場合ですか。

米田政府参考人 これはちょっと一概に申せません。それぞれ個別の事案で、捜査の必要性がある場合にそのようなこともあるということでございます。

赤嶺委員 それじゃ、拘禁要請をして、いわば警察の要請にこたえるかどうか、これを判断するのはどこが行うんですか。

米田政府参考人 それは、米軍のしかるべき責任を持っている者ということになろうかと思います。

赤嶺委員 そうすると、アメリカ側には警察の拘禁要請にこたえる法的義務はあるんですか、明文規定もあるんですか。

米田政府参考人 それは、地位協定等の問題であろうかと思いまして、警察からお答えする立場ではないと思いますけれども、私どもは、そういう法的根拠があるとは承知しておりません。

赤嶺委員 結局、外務大臣、運用改善とはいっても、犯人の身柄の拘禁要請をしても向こうは拘禁する義務もない、いわば証拠の隠ぺいがあったにしても、警察側が、いや、法と証拠に基づいて適正にと言われても、大いに疑わしいような事態というのが基地の中では繰り返されているわけです。

 運用改善では今のような不平等の日米関係は改まらない、日米地位協定の抜本的見直し以外にないということを申し上げて、質問を終わります。

平沢委員長 次に、照屋寛徳君。

照屋委員 社会民主党の照屋寛徳です。

 高村大臣、連休中の外国訪問、御苦労さまでございました。きょうは、ちょうど一月前の四月七日、沖縄県浦添市で猛毒のマスタードガスが入った化学兵器である可能性を秘めたM57迫撃砲弾が発見されたことに関連してお尋ねをいたします。

 六十三年前の悲惨な沖縄戦は、鉄の暴風とも称され、約二十万トンの砲弾が小さな島に撃ち込まれました。そのうち約一万トンが不発弾だと言われております。沖縄戦終結後六十三年を経た今日でも、不発弾問題は日常的に生起する深刻な問題であります。

 そこで防衛省に尋ねますが、まずは、四月七日に浦添市で発見された不発弾の数や、発見に至る経緯をお答えください。

徳地政府参考人 お答えを申し上げます。

 本件につきましては、陸上自衛隊の第一〇一不発弾処理隊が、先生が今おっしゃられましたように、四月七日でございますけれども、沖縄県の警察本部の方から不発弾処理の要請を受けまして、四月十一日、浦添市内の民有地に行きまして、ここで発見されました七十六発のうちの二十二発につきましては、この砲弾の内部に液体のようなものが入っているということを確認しております。

 そして、これら二十二発につきましては、現場におきましては、発煙弾の可能性もあるわけでございますけれども、他方で、化学弾であるという可能性も排除できなかったので、そのままの状態で別の場所に移すということのリスクを考慮いたしまして、とりあえず移すのを取りやめております。

 そして、今申し上げましたように、これらの砲弾は米国製のM57という迫撃砲弾でございまして、液体発煙弾か、あるいは化学弾のいずれかの可能性がありますので、関係省庁間で連携を密にしながら、アメリカ側への照会それから専門家からの意見聴取などによりまして情報収集を行っております。

 この砲弾は、直ちに危険な状態ではございませんけれども、先ほど申し上げましたように、現時点では化学弾であるという可能性を排除できない状態にございますので、内閣官房を中心に関係省庁で協議をいたしまして、できるだけ早く密封容器によりまして別な場所に移して保管をする、こういう方針のもとで当面の緊急対応をすることといたしております。

 第一には、環境省が予算を計上いたしまして防衛省に支出委任をして、防衛省が事業者と契約を行って、沖縄県の一時保管庫までの移送を実施する。それから第二に、米国への当面の照会を初めといたしまして、砲弾の識別に必要な作業は引き続き関係省庁が協力して行う。それから三番目に、事案処理そのもののあり方につきましては引き続き関係省庁間で調整をすることといたしまして、アメリカ側への働きかけ、調整等は主に外交ルートを通じて外務省さんの方で行うといったこととなっております。

 そして、防衛省といたしましては、去る四月三十日の閣議で使用の承認が得られました予備費の支出委任を環境省の方から受けまして、四月三十日のうちに現に密封容器を保有している会社との契約を行っておりまして、できるだけ早く沖縄県の一時保管庫まで移送して保管をするため、現在、作業中でございます。

照屋委員 大臣、今の答弁でもありましたように、単なる不発弾というか、化学兵器の可能性も依然としてあるとの答弁でございましたが、やはり沖縄県民がいまだに不発弾処理問題で苦しんでおるということを、ひとつ大臣もおわかりいただきたいと思います。

 ところで、化学兵器の可能性もあるようですが、米側に対しては、いついかなる方法で、どのような機関に照会をしているのか、その結果はいつごろまでに判明する見通しでしょうか。

西宮政府参考人 我が国政府からの要請を受けまして、具体的には外務省から要請したわけでございますが、まず、現地におきまして、四月十九日、これは在沖の米海兵隊に調査を依頼いたしまして、在沖米海兵隊が砲弾を調査いたしまして、外観から、この砲弾が一九四三年製の米国のM57迫撃砲弾であるということが確認されたのが第一点目でございます。そして現在、米側におきましては、在沖海兵隊が現場で確認した情報をメリーランド州のインディアンヘッドというところに所在してございます統合不発弾処理支援チームというところに送って、砲弾の特定に必要な情報の収集などの対応を行っているということでございます。

 特定の日付があるということではございませんが、米側といたしましても、現地の住民の方の安全というのは最優先事項であり、砲弾の確認のために引き続き協力していくという連絡を受けておるというのが現状でございます。

照屋委員 最初の答弁にありましたように、民間地域で見つかって、いまだに民間地域に置いたままなんですね。政府は、浦添市で発見された化学弾の可能性がある不発弾を暫定的な保管場所に移転する方針のようですが、私は、危険な不発弾をいつまでも民間地に置くことは許されないと思います。発見当時、付近住民から私の国会事務所にも何本も不安を訴える電話が入りました。いつまでに暫定的な保管場所へ移すのでしょうか。

徳地政府参考人 作業予定についてのお尋ねでございますけれども、本日に事前準備、それから、あす、あさって、八日及び九日に砲弾の密封容器への収納作業を行いまして、十日に保管庫の方に移送をするという予定で現在進めておるところでございます。

照屋委員 不発弾の移送日は今わかりました。これまた市民から、移送ルート、これはあらかじめ市民に周知をすべきだと私は思うんですよ。

 というのは、かつて米軍が沖縄に貯蔵していた毒ガスを撤去した際に、あらかじめ住民にルートを公表して撤去したわけですね。そういうルートを明示しないと、公表しないと、やはり住民は不安におののいておるわけですから、この移送ルートの事前の公表についてはどういうお考えなのでしょうか。

徳地政府参考人 お答えを申し上げます。

 先ほど申し上げました二十二発の砲弾につきましては、我が方といたしましても、これは化学弾であるというふうに判断をしているわけではありませんで、そういう疑いもあるんだということで、そういう可能性を排除できないということではあります。

 ただ、この二十二発につきましては、信管が作動状態にないということから、そのままで爆発する危険性もございませんし、それから、仮に化学弾であったといたしましても、外部に、先ほど申し上げた液体が漏れ出すというような状態でもございませんし、周囲への環境面なり安全面での影響も出ておらないということでもございますし、さらに、その移送に当たりまして安全にこん包をして移送するための密封容器も手配をしておりますので、特に周辺住民の方々に具体的な輸送ルートまでお知らせをするということは今のところ考えておりません。

照屋委員 それは、僕は沖縄県民の不安な気持ちにこたえることにはならぬと思うよ。たかが不発弾、されど不発弾で、現に、不発弾が発見されてその付近にあった保育園の園児が亡くなったという事案もあるんだよ、不発弾をユンボでひっかけて。だから、それは化学弾の可能性を全く排除できないというんだから、そんな態度じゃ私は困ると思うね。もっと浦添市の不発弾に対しては、防衛省、真剣な対策をしないと、不発弾だといって甘く見ちゃいかぬと思うよ。

 ところで、不発弾が発見されることに伴う当該発見場所の自治体が、さまざまな対策、対応をとるためにいろいろな出費を要したと思われますが、私は、戦争を開始した国の責任との関連で、そういう自治体の出費についてはすべて国において補てんされるべきである、このように思いますが、最後に高村大臣の御意見と、それから防衛省の意見も、そして同時に、大臣、やはり不発弾処理、もっと住民の不安を解消するような、私は、事故が起こってからじゃ遅いので、先ほど言いました繰り返しになりますが、いたいけな保育園の園児が亡くなった事案も現に沖縄であるわけだから、皆さんが考えている以上に、発見された民間地域の市民は不安を抱いていますよ。何本も何本も僕に電話が入っているんです。そのことを大臣、どうでしょうか。

徳地政府参考人 先ほども少し申し上げましたけれども、先ほどの二十二発の砲弾は、通常の不発弾と異なりまして信管が作動状態にないということで、そのままで爆発する危険性はないものでございますけれども、いずれにいたしましても、不発弾処理一般ということについて申し上げますと、不発弾の処理、回収等を行う陸上自衛隊、それから避難区域内の警戒等を警察が行う、それから、関係市町村におかれては周辺住民に対する避難誘導を行っていただくということで、自衛隊、警察、それから関係自治体等が協力して取り組む、こういうことが従来からの不発弾処理の体制となっております。

 そして、防衛省・自衛隊といたしましては、自衛隊法の附則の第四項に規定、根拠がございますので、第二次世界大戦の際に用いられて残留されたままとなっております不発弾の処理、除去、これを公共安全の確保の観点から、戦後処理の一環として当分の間自衛隊として行っておるわけでございまして、防衛省・自衛隊といたしましては、引き続きこの不発弾の処理が適切に行われるように努めてまいりたいと思っております。

照屋委員 これで終わりますが、あなたのはっきりしない答弁を聞いていると、私の怒りの方が不発弾状態になりますが、これは、いずれ私の不発弾は爆発しますよ。それは私個人の私憤で爆発するんじゃなくして、県民の不安で爆発するんです。

 そのことを申し上げて、終わります。

     ――――◇―――――

平沢委員長 次に、本日付託になりました千九百九十四年の関税及び貿易に関する一般協定の譲許表第三十八表(日本国の譲許表)の修正及び訂正に関する二千八年一月二十二日に作成された確認書の締結について承認を求めるの件、社会保障に関する日本国とオランダ王国との間の協定の締結について承認を求めるの件及び社会保障に関する日本国とチェコ共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件の各件を議題といたします。

 政府から順次趣旨の説明を聴取いたします。外務大臣高村正彦君。

    ―――――――――――――

 千九百九十四年の関税及び貿易に関する一般協定の譲許表第三十八表(日本国の譲許表)の修正及び訂正に関する二千八年一月二十二日に作成された確認書の締結について承認を求めるの件

 社会保障に関する日本国とオランダ王国との間の協定の締結について承認を求めるの件

 社会保障に関する日本国とチェコ共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

高村国務大臣 ただいま議題となりました千九百九十四年の関税及び貿易に関する一般協定の譲許表第三十八表(日本国の譲許表)の修正及び訂正に関する二千八年一月二十二日に作成された確認書の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。

 この確認書は、世界貿易機関を設立するマラケシュ協定に含まれている我が国の譲許表に関し、医薬品関連の関税撤廃の対象産品の見直しに伴う修正等を確認するためのものであります。

 我が国がこの確認書を締結することは、国際貿易を促進するとの見地から有意義であると認められます。

 よって、ここに、この確認書の締結について御承認を求める次第であります。

 次に、社会保障に関する日本国とオランダ王国との間の協定の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。

 政府は、オランダ王国との間で生ずる年金制度、医療保険制度等への二重加入等の問題の解決を図るべく、平成十七年十月以来、同国政府との間で協定の締結交渉を行ってまいりました。

 その結果、本年二月二十一日にハーグにおいて、我が方渋谷特命全権大使と先方ドナー社会・雇用大臣との間で、この協定の署名が行われた次第であります。

 この協定は、日・オランダ間で年金制度、医療保険制度等への強制加入に関する法令の適用の調整を行うこと等について定めるものであります。

 この協定の締結により、年金制度、医療保険制度等への二重加入等の問題の解決が図られ、保険料負担が軽減されること等により、両国間の人的交流が円滑化され、ひいては経済交流を含む両国間の関係がより一層緊密化されることが期待されます。

 よって、ここに、この協定の締結について御承認を求める次第であります。

 最後に、社会保障に関する日本国とチェコ共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。

 政府は、チェコ共和国との間で生ずる年金制度、医療保険制度等への二重加入等の問題の解決を図るべく、平成十九年六月以来、同国政府との間で協定の締結交渉を行ってまいりました。

 その結果、本年二月二十一日にプラハにおいて、我が方熊澤特命全権大使と先方ネチャス副首相兼労働社会大臣との間で、この協定の署名が行われた次第であります。

 この協定は、日・チェコ間で年金制度、医療保険制度等への強制加入に関する法令の適用の調整を行うこと等について定めるものであります。

 この協定の締結により、年金制度、医療保険制度等への二重加入等の問題の解決が図られ、保険料負担が軽減されること等により、両国間の人的交流が円滑化され、ひいては経済交流を含む両国間の関係がより一層緊密化されることが期待されます。

 よって、ここに、この協定の締結について御承認を求める次第であります。

 以上三件につき、何とぞ御審議の上、速やかに御承認いただきますようお願いを申し上げます。

平沢委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、来る九日金曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時四十四分散会


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